ー修練場・天井裏(亜空間)ー



空鶴「………」

銀城「……おい」

空鶴「………」

銀城「……おい、アンタ」

空鶴「………」

銀城「……ったく、返事も無しかよ。浦原が言うには、この部屋の音は、絶対外に漏れねえんだろ?」

銀城「中に入ろうにも、アンジーとキーボは、この部屋のこと知らねえし……それ以前にこの部屋は、アンタと “ もう一人 ” が認めた存在しか入れねえ仕組みだそうじゃねえか」

空鶴「………」

銀城「だったら、音が外に漏れることは絶対に無いはずだろ?」

銀城「押し黙る理由もねえだろうに」



引用元: ・【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】 



BLEACHイラスト集 JET (愛蔵版コミックス)
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322: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:37:37.49 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……黙る?」

空鶴「バカ言いやがれ、そんな理由、ハナからねえよ」



空鶴「ここはおれの家だ。おれはここの家主だ」

空鶴「いつ何を言おうが言うまいが、おれの自由だ」



空鶴「コソコソする理由なんざ、どこにもねえ」



銀城「……そうかい、アンタらしいな」



323: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:39:14.21 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーで、なんのつもりだ、元居候? おれは、テメエが “ 今日おれの家に泊まりたい ” って言うから泊めてやったし、 “ テメエも ” 、この部屋に入れてやった」



空鶴「テメエがウロチョロして、おれの家の邪魔にならねえようにな」



銀城「………」



空鶴「だが、おれはアンジー達が下に来た時、 “ テメエには ” 出て行くよう、何度か命じたはずだ」

空鶴「なのに、シカトこいて残りやがった」



空鶴「……覚悟は、できているんだろうな?」



324: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:40:51.95 ID:l52JXZ7WO



銀城「……それを言うなら、アンタこそ、覚悟はできてんのか?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらのやりとりを、勝手に見て、聞いちまってる」

銀城「それは、アンタだって同じのはずだ」



空鶴「………」



325: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:41:43.22 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……覚悟も雑煮もあるかよ」



銀城「………」



空鶴「ここは、おれの家だ。ここの主は、おれだ」



空鶴「何を見ようが、何を聞こうが、おれの自由だ」



326: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:44:04.47 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そいつはどうかな」



空鶴「………」



銀城「あいつらが抱えていることは、あいつらの問題だ。アンタには関係ねえだろ?」

銀城「なのに、どうして、勝手に見てる?」

銀城「……どうして、勝手に聞いてやがんだ?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらは見世物じゃねえぞ?」



327: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:44:59.42 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーバカいえ、おれはお客様なんかじゃねえ」



銀城「………」



空鶴「……ただ、家主として、ケジメつけただけだ」



328: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:45:43.18 ID:l52JXZ7WO






空鶴「ここは、おれの家だ」






空鶴「だから、居候に泣かれたままなのは、気に入らねえんだよ」






329: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:47:25.16 ID:l52JXZ7WO



銀城「……まあ、泣かれたまま、 “ お別れ ” なんざ誰だって御免だな」

銀城「だから、 “ 万が一 ” を考えて、アンタも待機してたってわけだ……」



空鶴「………」



銀城「……アンタも割と、リアリストの部類だったんだな。意外だったぜ」



330: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:48:50.16 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……あいにくだが、おれは夢見る花火師。寝ても覚めても浪漫を忘れたことはねえ」

空鶴「だからこそ、たっぷり寝る必要がある。だったら、見れるもん、聞けるもんは、さっさと見聞きしてスッキリさせる。おれが今日ここにいたのは、それだけの理由だ」



銀城「………」



空鶴「……何があろうが、どんなに泣かれようが、おれの夢が湿気ることはねえ」



空鶴「絶対にな」



331: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:51:31.30 ID:l52JXZ7WO



銀城「……はっ、 “ テメエらのことは、テメエらでケジメつけやがれ ” ってわけか」

銀銀「訂正するぜ、 “ アンタらしい ” 」



空鶴「……さっきから家主のやることなすこと、ケチばっかつけやがって…」

空鶴「あいつらでどうにかできるもんなら、あいつらにやらせるべきだろうが」



銀城「………」



空鶴「どこの誰だろうが、そいつらだけでケジメつけようとするからこそ、誇れるもんだってあるんだ」

空鶴「なのに、そうじゃねえ奴が、ハナから出しゃばったらどうなる?」

空鶴「まだ、身内でケリつけられるかもしれねえ話に、ズカズカ踏み込んだらどうなる?」

空鶴「あいつらでケジメ突き立てようって時に、横槍入れて別の得物で突き立りゃ、何が、どうなる?」



空鶴「誇りはどうなる?」



銀城「………」



332: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 21:52:18.18 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーー誇りを残せるに越したことはねえ」



空鶴「誇りを残せるから、応えられることもある……」



空鶴「……テメエだって、本当はそのくらい、わかってるはずだ」



銀城「………」



333: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:00:23.35 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーって、んなことよりも、テメエこそ、どうしてここで出歯亀してんだ?」

空鶴「ここの家主はおれで、あいつらはおれの居候だがーーー今のテメエは違う……」



銀城「………」



空鶴「……なのに、 “ 危なくなったら ” 連絡するよう居候に頼んで、その通りに来てーーーいったい何のつもりだ?」



空鶴「 “ 万が一 ” が、そんなに気になんのか?」



334: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:01:41.61 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そういう問題じゃねえよ」

銀城「……ガキってのは、危なっかしいもんなんだよ」

銀城「信じる信じないの問題じゃねえ。気づいた時には目で追っちまってるもんなんだ」



空鶴「………」



銀城「……それだけ、ガキはどうなるかわからねえしーーー」



銀城「ーーー目を逸らすことはできねえ。誰が、何と言おうとな」



空鶴「………」



銀城「……それだけの話だ」



335: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:02:55.83 ID:l52JXZ7WO



銀城「……あー、お互い、どうにも夜に酔い過ぎたようだな」

銀城「らしくねえぜ、こんなのはよーーー」



空鶴「ーーー最後通告だ」



銀城「………」



空鶴「出てけ、元居候」



空鶴「テメエの出る幕は、もう無え」



336: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:03:28.96 ID:l52JXZ7WO









銀城「……あばよ」ヒュンッ









337: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:04:08.10 ID:l52JXZ7WO



空鶴「………」






空鶴「…………」









空鶴「………………」



338: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:05:16.90 ID:l52JXZ7WO



空鶴(…… “ ガキは、どうなるかわからねえ ” かーーー)




空鶴(ーーーそこだけは乗っかってやっても良いか)




空鶴(……光で闇を輝かせるのが、花火師だあ?)




空鶴(……テメエの心に、人の心が入っただあ?)




空鶴(ーーーあんなガキ共が、あんな言霊吐き出すとはな……)




空鶴(……世の中、いったい全体どうなってんだろうな……)




空鶴「……なあ、 “ あんた ” はどう思うよーーーー」



339: ◆02/1zAmSVg 2019/10/24(木) 22:05:50.00 ID:l52JXZ7WO









空鶴「ーーー海燕(アニキ)ーーーー」









340: ◆02/1zAmSVg 2019/10/25(金) 22:11:48.52 ID:dexucHa3O



ー志波家の屋敷・廊下ー



キーボ(ーーーあれから翌日)


キーボ(ボクとアンジーさんは、いつも通りに起きて、いつも通りに朝食を摂りました)


キーボ(……厳密に言えば、ボクは寝なかったので、起きたという表現は何か違うかもしれませんがーーー)


キーボ(ーーーそれでも、寝る時間を用いて、アンジーさんのこと、これから描く絵のことを、考えることができました)


キーボ(どういった風に描くか、今から楽しみです)


キーボ(ただ、今日は、この後の時間、どういうわけか真宮寺クンから修練場まで来るよう呼び出しを受けています)


キーボ(朝食が終わった後に、急に言われました)


キーボ(それは、アンジーさんも一緒……)



341: ◆02/1zAmSVg 2019/10/25(金) 22:23:14.86 ID:dexucHa3O



キーボ(ーーーそして、そのアンジーさんは、現在、朝風呂の真っ最中です)


キーボ(なんでも、アンジーさんは今日、“ やらなければいけないこと ” があるらしく、そのため心身ともにスッキリした気持ちで臨みたいのだそうです)


キーボ(朝風呂は有料なので、ご給金を使うことになりますがーーーそれでもとアンジーさんはお金を支払い、ひと風呂浴びることにしました)


キーボ(それが終わったら、ボクと一緒に修練場まで行くことになっています)


キーボ(お風呂に入った時間を考慮すれば、おそらくは、ちょうどいい時間で修練場まで到着できるでしょう)


キーボ(それにしても、真宮寺クン、この休日にいったい何の話を……)



342: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:00:38.13 ID:o8QAgG30O



キーボ(……もしかしたら、百田クン達に関わることでしょうか?)


キーボ(百田クン達は、現在アルバイトや勉強などで多忙のようですがーーー)


キーボ(ーーーそろそろ、落ち着ける頃合なのかもしれません)


キーボ(いくら超高校級といえど、ある程度の休息がなければ、参ってしまう)


キーボ(それを考えれば、丸一日休める日が、定期的に必要となる)




キーボ(もっとも、 “ その日がいつになるか ” までは、真宮寺クン達もわからないようで……具体的な日にちまでは述べてくれませんでしたがーーー)




キーボ(ーーーそれは、この間までの話。昨日の夜中辺りに、休む日がいつになるか決まったのかもしれませんね)


キーボ(その日が、近づいているということ ーーーそれを、真宮寺クンはボクらに伝えようとしている)


キーボ(百田クン達がこちらに来れるかもしれない)


キーボ(そんな日が近いとわかればーーーその時に向けた準備もしやすくなりますからね……)



343: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:03:20.72 ID:o8QAgG30O



キーボ(……百田クン達も、真宮寺クンも……苦しんでいるはずです)




キーボ(自分達が、作り物なのではないか?)




キーボ(そのことに、きっと苦しんでいる……)


キーボ(……真宮寺クンは、その苦しみを、なんとかしたいと考えた)


キーボ(だから、ボクらを呼び出し、百田クン達が丸一日休める日について、伝えると同時にーーー)




キーボ(ーーー昨日、ボクがアンジーさんに話したことを、今日この場で詳しく聞くことにした)


キーボ(……それを参考にすれば、他の全員が抱える苦しみもなんとかできるのではないか?ーーー)




キーボ(ーーーおそらくは、そう考えた)



496: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 16:30:48.33 ID:WKShCB+kO



キーボ(……だとすれば、渡りに船ですね) 


キーボ(昨日、最後に修練場を出てから今日の朝食前に至るまで、真宮寺クンは自室にいませんでした) 


キーボ(ーーー昨晩の空鶴さんの話によれば、真宮寺クンは別の部屋で、 “ 何か ” をしていたようです) 


キーボ(そして、それに集中するため、真宮寺クンは一人でいる必要がありーーー集中し過ぎた結果、疲労で別の部屋で寝落ちしてしまった) 


キーボ(……寝室以外で寝たことの罰として、空鶴さんは真宮寺クンを起こさず、別の誰かが起こすことも許さずーーー) 




キーボ(ーーー布団もかけずに、寝させたままにすることに決めた) 




キーボ(そうした罰を与えたと、空鶴さんは昨晩話していた) 


キーボ(故に、ボクがアンジーさんに伝えたことを、真宮寺クンにも詳しく伝えることはできなかった) 




キーボ(ですが、今からであれば、しっかり伝えられる) 




キーボ(伝えれば、真宮寺クンの苦しみも、良い方向に和らぐかもしれませんしーーー) 


キーボ(ーーーその後、ボクら三人で、百田クン達に同じ話をすればーーー) 


キーボ(ーーーもしかしたら、全員の苦しみをーーー) 






岩鷲「おー、どうした、キーボ? こんなとこでよ?」 

 
345: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:10:05.01 ID:o8QAgG30O



キーボ「あっ、岩鷲クン」

岩鷲「ここは女風呂の近くだぞ? そんなとこで、なんで突っ立ってるんだ?」

キーボ「ああ、それはーーー」



岩鷲「ーーーまさか、覗きか?」



キーボ「なっ、やめてください! ボクはそんなことしませんよ!」



岩鷲「……じゃあ、なんで、こんなとこに突っ立ってるんだ?」



346: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/26(土) 21:12:55.39 ID:o8QAgG30O



キーボ「それは、念のためにです」

岩鷲「? どういうことだ?」

キーボ「ああ、いえ……ちょっと真宮寺クンと待ち合わせをしておりましてーーー」

キーボ「ーーーそれで、万が一その時間に遅れることがないよう、一定時間を過ぎたら大声でアンジーさんに伝えることにしたんです」



キーボ「念のために」



岩鷲「ああ……そういうことか」



キーボ「あまり必要はないとは思いますがーーーそれでも念には念を入れておくことに越したことはない」



キーボ「そう、ボクとアンジーさんは考えたんです」



347: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:14:17.45 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……まっ、時間を守ろうとするってのは良いことだと思うぜ」

岩鷲「それに、キーボなら、アンジーちゃんに声を届けるのにピッタリだしな」



キーボ「ええ、ボクには声のボリュームを大きくする機能がありますからね」

キーボ「これならば、浴槽まで充分に伝わるでしょう」

キーボ「ロボットとして機能をもって、人の役に立てる。嬉しい限りですよ」



348: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:15:05.74 ID:o8QAgG30O



岩鷲「………」



キーボ「ーーー?」



キーボ「どうかしましたか? 岩鷲クン?」



349: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:17:00.92 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……あー、いや、キーボ、オメーはよーーー」



キーボ「……?」









岩鷲「ーーーなんだか良い面構えになったな」



350: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:17:53.92 ID:o8QAgG30O



キーボ「……そうですか?」

岩鷲「ああ、昨日の時は、なんだか元気ねえ感じだったがよーーー」

岩鷲「ーーー今じゃ、だいぶスッキリしてるように見えるぜ」

キーボ「………」

岩鷲「そして、それは、オメーだけじゃねえ」

岩鷲「朝会った時、アンジーちゃんも、真宮寺も “ 吹っ切れた ” って感じだった」

岩鷲「しかも、オメーよりも、ずっとだ」

キーボ「………」

岩鷲「昨日も今日も休日、元気のたまる日には違いねえがーーーそれだけで、そこまで吹っ切れた感じを出せるとも思えねえ」

岩鷲「なんか、あったのか?」



351: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:18:53.34 ID:o8QAgG30O



キーボ「……ええ、実はアンジーさんと、昨日いろいろと話をしましてね」



キーボ「それで、お互いに知らなかったことを知れたんです」



岩鷲「………」



キーボ「……そうして、いろいろな、わだかまりが解けたんです」

キーボ「そうなったという “ 結果 ” は、真宮寺クンにも伝えました」

キーボ「それが、ボクらが吹っ切れたように見える、理由なのでしょうね」



352: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:19:44.90 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……なんにしろ、良かったぜ」



岩鷲「居候の元気な面構えが見れてよ」



岩鷲「やっぱ我が家ってのは、こうでなくっちゃな!」



キーボ「岩鷲クン……」



353: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:25:01.33 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……それと、キーボ」



キーボ「?」



岩鷲「……今のオメーが、胸に込めてるその気持ちだがよーーー」







岩鷲「ーーー大事にとっとけ」



354: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:27:05.84 ID:o8QAgG30O






キーボ「………」






岩鷲「………」






355: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:29:50.82 ID:o8QAgG30O



岩鷲「ーーー詳しいことまで、こっちから詮索するつもりはねえが……オメー達は、何かを知ることで良い面構えに変わった」



キーボ「……そうですね」



岩鷲「……そいつは、 “ てめえが知るべきことを知れた ” ってことだ」

岩鷲「その上での答えを “ てめえ自身で見出した ” ってことだ」



キーボ「………」



岩鷲「……その生き様は、一生もんの、 “ 誇り ” になる」



岩鷲「誇れる自分がいれば、その自分を、掴み続けようって気持ちにもなれる」

岩鷲「そうだ、そんな自分を信じて、前に進んでいくことだって、できるんだ」

岩鷲「今のオメーが、胸に抱いているのは、そういう気持ちなんじゃねえのか?」



キーボ「………」



356: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:31:50.81 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……その気持ちを胸に残す」

岩鷲「そうすりゃあ、これからも、 “ てめえが知るべきことを知る ” ために、 “ てめえ自身で答えを見出す ” ためにーーー」



岩鷲「ーーーこの手を伸ばそうって気になれる」



岩鷲「何度だって、てめえが知るべきことを知れる」

岩鷲「何度だって、てめえ自身で答えを見出せる」

岩鷲「何度だってーーー想いの価値を、信じてやれる……」



キーボ「………」



岩鷲「……そういうもんなんだ」



357: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:33:45.64 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……だから、オメーがいま胸に込めてる気持ちーーー大事にとっとけ」



キーボ「………」



岩鷲「……この俺! 自称【元・流魂街一の死神嫌い】にして! 自称【西流魂街の深紅の弾丸】にしてーーー」







岩鷲「ーーー自称【西流魂街のアニキと呼びたい人】【ナンバーワン】からの言葉だ! 間違いねえぜ!」



358: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:35:13.31 ID:o8QAgG30O



キーボ「……そうですね。キミの言う通りです」

キーボ「……ありがとうございます! キミの気持ち、ボクの心に受け止めます!」



岩鷲「ははっ、そいつは嬉しいな!」

岩鷲「よしっ、なら俺もオメーのその気持ち、ありがたく受け取っておくぜ!」



キーボ「岩鷲クン……」



ガララッ……!



359: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:36:08.46 ID:o8QAgG30O



アンジー「……ふいー、サッパリしたよー!」ホカホカ

キーボ「あっ、アンジーさん!」

岩鷲「おおっ、アンジーちゃん! 風呂は終わったのか!」

アンジー「そうだねー、終わってポカポカだよー」ポカポカ

アンジー「待っててくれて、ありがとねー! キーボ!」ガララッピシャンッ

キーボ「いえ、このくらい、朝飯前ですよ!」

岩鷲「朝飯は食ったばかりだけどな!」

アンジー「にゃはははー! そうだねー!」

キーボ「……まったく、ロボットじゃないんですから、変なところで揚げ足を取らないでください!」



360: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:37:53.31 ID:o8QAgG30O



キーボ「……って、アンジーさん、そろそろーーー」

アンジー「わかってるよー、是清のことでしょー?」

アンジー「今から行くよー! にゃはははー!」

キーボ「それでは、岩鷲クン! 行ってきます!」

アンジー「行ってくるくるー!」

岩鷲「おう、行ってこい!」



スタスタ……



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



361: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:41:17.47 ID:o8QAgG30O



ー志波家の屋敷・修練場ー



バタンッ……ガチャッ!



真宮寺「ーーー来てくれて、ありがとう。二人とも」



キーボ「……それで、今日はどういった要件なのでしょうか?」



アンジー「そうだねー。大事な話だとは思うけど、何なのかなー?」



362: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:44:29.42 ID:o8QAgG30O



真宮寺「……実のところを言うとネーーー」



キーボ「………」



アンジー「………」



真宮寺「ーーー今日、百田君達が、ここに来る」



363: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:46:14.75 ID:o8QAgG30O



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「そうなったのは、僕が映像と音声付きのメールを送ったからだ」



キーボ「? 映像と音声の付きのーーー」

アンジー「ーーーメール?」



真宮寺「……実は、聞いていたんだヨ」



キーボ「? 何をーーー」



真宮寺「君達が昨日、この修練場でした会話を、ネ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを僕は、聞いていたんだヨ」

真宮寺「……それも、最初の方から」

真宮寺「天井裏に、潜んで、覗き見ながらーーー」



364: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:47:57.88 ID:o8QAgG30O



キーボ「……何を言っているんですか? そんなはずはーーー」



真宮寺「………」ピッ



キーボ&アンジー「「………!」」



ヒュウンッ……!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



365: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:49:29.10 ID:o8QAgG30O



ー志波家の屋敷・天井裏(亜空間)ー



キーボ「なっーーー」

アンジー「ここはーーー」



真宮寺「この空間こそが、僕が潜伏していた天井裏部屋サ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……このリモコンを使って、下の修練場から空間転移したのサ」スッ



アンジー「……下ってーーー」

キーボ「ーーー!?」



366: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:50:50.60 ID:o8QAgG30O



キーボ(ま、間違いない……!)




アンジー「……!」




キーボ(この空間の下側にある景色ーーー)




キーボ(ーーー間違いなく、修練場のーーーー)



367: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:53:19.00 ID:o8QAgG30O



真宮寺「昨日、僕はこの空間に潜伏し、君達のやりとりを見聞きした」

真宮寺「……それと同時に、その内容を撮影し、録音した」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを、メールと一緒に百田君達に送信したんだ」



アンジー「なっーーー」



真宮寺「ーーーあァ…… “ ロボットやってなかったら ” から先は、送る前に削除しておいたから」



真宮寺「そこは、安心して欲しいかな……」



アンジー「~~~っっ、!!」



368: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:54:25.22 ID:5pLn/D61O



キーボ「ち、ちょっと、どういうつもりですか!? 真宮寺クン!?」



キーボ「こんな急にみんなが来るなんて……いや、それ以前に、なんて勝手なことをーーー」



真宮寺「……ごめんヨ。キーボ君、夜長さん」



真宮寺「本当に、ごめんヨ」



369: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 21:55:18.70 ID:5pLn/D61O



アンジー「……謝る、くらいなら、最初からーーー」ギラッ



真宮寺「ーーーだけど、どれも必要があると思ってそうしたことだ」



キーボ「必要!? どういうーーー」



真宮寺「ーーー目を逸らすわけには、いかなかったからサ」



370: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:45:41.85 ID:5pLn/D61O



キーボ「!?」



真宮寺「……こんなことをした理由、それはキーボ君が夜長さんとの対話にーーー」



真宮寺「ーーー “ 万が一 ” 、失敗した場合を、考えたからだ」



真宮寺「……失敗した時の資料、すなわち映像と音声のデータが残っていれば、今後に活かすことができるからネ」



キーボ「………」



真宮寺「無論、それはキーボ君に聞けば解決することかもしれない」

真宮寺「だけど、それは、あくまでもキーボ君の視点での情報でしかないし……その時のキーボくんと夜長さんの様子の全てが、わかるとは限らない」

真宮寺「その時の様子の全て、それを客観的に見聞きすることで、気づけることもある」



アンジー「………」



真宮寺「だから、僕は、君達のやりとりを見聞きすることにした」



真宮寺「……撮影し、録音することに、決めたというわけサ」



371: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:47:57.46 ID:5pLn/D61O



キーボ「ーーーそれで?」



真宮寺「………」



キーボ「そうして、撮影し、録音したものをーーーなんで百田君達に送ったんですか?」



372: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:49:12.76 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……それはもちろんーーー」



キーボ「………」



真宮寺「ーーーあの会話は、百田君達に、すぐにでも見せるべき、聞かせるべき内容だと、判断したからサ」



アンジー「………」



373: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:51:02.11 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……百田君達もまた、苦しんでいるんだ」



真宮寺「自分達が、物であるかもしれないということに苦しんでいる」

真宮寺「それを証明しているかのような世界を前に、苦しんでいる」

真宮寺「自分達が、物であるということを裏付けるかような……大多数の認識に苦しんでいる」



真宮寺「まるで、世界全体が自分達を人と認めず……物だと言っているかのような感覚に、とても苦しんでいるんだ」



アンジー「………」

キーボ「………」



374: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:52:19.29 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……それで、物だと思い込まされて、終わりを迎えたが最後ーーー待っているは “ 死 ” なのだから」

真宮寺「そうした痛みに……死の恐怖に、百田君達は、心を呑まれそうになっている」



アンジー「………」

キーボ「………」



真宮寺「恐怖を退けるには、あの会話を見聞きして貰うのが一番」



真宮寺「そう判断したからこそ、撮影し、録音したものをーーーさっき百田君達に送ったというわけサ」



375: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:53:51.02 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……実際、あの会話は、心に響いた」

キーボ「!」

真宮寺「……どんな自分であろうと、その心と想いは本物」

真宮寺「どのような存在でも本物であり、そこに込められた心と想いもまた本物。その意味が変わることはない」

真宮寺「その言葉が響いたからこそ、君達のあの会話を、何度も繰り返しーーー再生した」



真宮寺「その果てに、僕は、心の底から信じられるようになった」



真宮寺「……たとえ、僕のような存在でもーーー心はあり、想いがある」

真宮寺「そんな僕の中にもーーー誰かの心と想いがある」

真宮寺「その全てが、信じられるものなのだと、誰もが『想い』として昇華しーーー僕の中に込められるものなのだと」



アンジー「………」



376: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:55:09.51 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……みんなは、こんな僕に、想いを向けてくれた」

真宮寺「こんな僕だって、変われると信じーーー『想い』を向けてくれたはずなんだ」



真宮寺「ならば、それは、絶対に意味あることだったんだって」



真宮寺「……自分がいかなる存在だろうと、それに心を呑まれなければーーー人を人として、大切にできるって」

真宮寺「そうやって信じれば、『想い』を背負うことができるーーー」



真宮寺「ーーーきっとみんなは、そう想ってくれた」



真宮寺「僕も……心の底からそう想えるようになったんだ」



377: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:55:44.42 ID:5pLn/D61O






キーボ「………」






アンジー「………」






378: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:56:54.42 ID:5pLn/D61O



真宮寺「断っておくけど……僕はもう、かつて僕の中にいた、 “ あの人 ” に頼る気はない」

真宮寺「かつての僕が、 “ あの人 ” を理由に為したことを、正当化する気もない」

真宮寺「……それでは、絶対に、誰にも報いることができないしーーー」



真宮寺「ーーーさよならは、したくないからネ」



キーボ&アンジー「「………?」」



真宮寺「……僕はきっと、浅ましくて、恥知らずなことを言っている」

真宮寺「だけど、それは、確かな僕の気持ちなんだ」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「君達と、みんなと、さよならをしたく、ないんだヨ」



379: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:57:50.65 ID:5pLn/D61O



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……僕は、みんなが、君達が、愛しくてたまらない」

真宮寺「……今日この日まで、関わることを認めてくれた信頼がーーー『想い』が、とても嬉しかったから」

真宮寺「僕さえも、人として扱い、大切にしてくれたその意志にーーー心を動かされたから」

真宮寺「……それを為すこともできる、人の心と想いが、とても美しいから」



キーボ「………」

アンジー「………」



380: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:58:38.16 ID:5pLn/D61O



真宮寺「だから、僕は、人の心と想い……その全てを、大切にできるようにならなくてはいけない」



真宮寺「……勝手な価値観や幻想をもって、想いを踏み躙ることーーー」



真宮寺「ーーーそんなことに、もう、 “ 意味は無い ”」



真宮寺「そうした “ 意味 ” を、見出さなくてはならない」



381: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 22:59:35.64 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……僕はもう “ あの人 ” に頼らない」

真宮寺「少なくとも……以前のような形で頼るわけにはいかない」

真宮寺「そう、君達が、以前とは違う形で、神さまと向き合うことにしたようにーーー」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「ーーー僕も、 “ あの人 ” と、違う形で向き合わなくては、ならない」



真宮寺「これ以上、心を離したくない、から……」



382: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:02:17.52 ID:5pLn/D61O



真宮寺(……いずれーーー)




キーボ「………」




真宮寺(ーーーいずれ、別れるとしてもーーー)




アンジー「………」




真宮寺(ーーーそれでも、僕はーーーー)



646: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:42:24.68 ID:rsj1P2SCO



真宮寺「……わかってる。生前、あんなことをして、今さら何を言っているんだって話だヨ」

真宮寺「死んでからだってーーー結局は、無神経なことをしてしまった」

真宮寺「……勝手な考えで、おかしなことをしてしまった」



真宮寺「……間違いを、重ねてしまったんだ……」



キーボ「………」



真宮寺「……まだ、気づけていない間違いもあるはずだ」



真宮寺「それもきっと、たくさん」



真宮寺「僕はどこかでーーー間違え続けているんだ……」



アンジー「………」



384: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:04:22.89 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……ごめんなさい」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「夜長さん、キーボ君、ごめんなさい」

真宮寺「君達を……人を、人として、大切にできなくて、ごめんなさい」

真宮寺「君達を、見世物にして、ごめんなさい」

真宮寺「死んでも自分を変えられなくてごめんなさい。間違いばかりで、言い訳して、ごめんなさい」

真宮寺「人の心と想いに、報いることができなくて、ごめんなさい」



真宮寺「……君達の、みんなの信頼にーーー」









真宮寺「ーーー『想い』に、報いることができなくてーーー本当にごめんなさい」



385: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:06:01.09 ID:5pLn/D61O









真宮寺「……ごめ、ん、なさい……っっ、!!」









386: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:07:32.23 ID:5pLn/D61O






キーボ「………」






アンジー「………」






387: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:09:20.69 ID:5pLn/D61O



アンジー「……是清?」



真宮寺「……夜長、さん、?」



アンジー「……謝るのは、アンジーたちにだけじゃないよね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「……今日でなくても良い。時間がある時、いろいろ思い出したり、考えてからでも良い」



アンジー「……アンジーや他の人と、相談してからでも良い」



388: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:11:27.27 ID:5pLn/D61O



アンジー「……誰だって、間違える」

キーボ「………」

アンジー「そうなる理由は……いっぱいあるから」

真宮寺「………」

アンジー「……予想外なこと、誰かと一緒にいられる嬉しさ、そのふたつが混乱や油断を招くことだってあるしーーー」



アンジー「ーーーあるいは、望んだ “ 結果 ” を求めるあまり、おかしくもなってしまう」



キーボ「……!」

真宮寺「……っ、」



389: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:12:57.10 ID:5pLn/D61O



アンジー「……そうした間違いの何もかもに、自力で気づけるとは限らない」



真宮寺「……!」



アンジー「何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか?」

アンジー「ひとりじゃ気づけないことだってある」

アンジー「 “ 死 ” という不安を前に、心が追い詰められていたのなら、なおさら……」



真宮寺「………っっ、!!」

キーボ「………」



アンジー「……だから、少し時間をかけても良いし、アンジーや他の人と相談してからでも良い……」



アンジー「……それから、いつか全員に、しっかり謝らないとねー?」



アンジー「でないと……罰が当たっちゃうんだよ?」



390: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:14:15.93 ID:5pLn/D61O



真宮寺「…………そう、だネ」



アンジー「………」



真宮寺「君の言う通りだヨ、夜長さん……」



キーボ「………」



真宮寺「……僕は、謝る」



真宮寺「自分の、何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか? 考え続けなくてはならない……」



真宮寺「……そうして、いつか必ずーーーー」



391: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:15:04.93 ID:5pLn/D61O









真宮寺「ーーー謝る、ヨ……」









392: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:17:07.29 ID:5pLn/D61O



アンジー「……落ち着いたら、また 【鰤清劇場】お願いね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「キーボが来る前にも言ったけどーーーアンジーは是清の劇場がとても嬉しい」

アンジー「……是清は、聴く人を想って、自分なりに、何かをわかりやすく説明しようとしてくれてる」

アンジー「それが、アンジーはとても嬉しいの」



真宮寺「……!」



アンジー「ーーーそれに、是清は、もっと人の心を……想いを大切にできるようになりたいんでしょ?」



アンジー「だったら、お客さんの期待を裏切ったらダメだよ?」



393: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:18:09.69 ID:5pLn/D61O



アンジー「……それも、一緒の家に住む、お客さんの期待でーーー」



アンジー「ーーーこれからも、一緒に住み続けるんだからーーー」



真宮寺「……!!」



アンジー「ーーー楽しみに、してるから……」



真宮寺「………」



394: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:20:25.67 ID:5pLn/D61O



キーボ「…………これだけは、言わせて貰います」



真宮寺「……キーボ、君、?」



キーボ「キミが見聞きしていたあの会話ーーー」



キーボ「ーーーそれができたのは、キミの気持ちが、ボクの心の奥深くに、残っていたからでもあるんです」



真宮寺「!!」



キーボ「生前のキミと、死後のキミーーー」



キーボ「ーーーその両方の、気持ちが残っていた」



キーボ「他ならない、今のボクの心の、奥深くに、です」



真宮寺「………」

アンジー「………」



395: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:21:28.68 ID:5pLn/D61O



キーボ「だからこそ、ボクはコトダマが時に “ 死 ” を招くと理解した上でーーー」



キーボ「ーーー【どう向き合い】【どう生きるか】ーーー」



キーボ「ーーー【その答えを見出し】【表現することができた】」



キーボ「……ボクは、これからも、そうあり続けようと思います」



キーボ「それが、報いることでもある」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「……先ほど、この場に放たれた気持ちーーー」



キーボ「ーーーその全ては、既にもう、この心の中にーーーー」



396: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:22:25.14 ID:5pLn/D61O



アンジー「………」






真宮寺「……キーボ、君……」






キーボ「……それだけ、です」



397: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:22:59.26 ID:5pLn/D61O



真宮寺「………」





真宮寺「…………」









真宮寺「………………」



398: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:23:43.25 ID:5pLn/D61O



真宮寺(ーーーごめんなさい、キーボ君、夜長さんーーー)




真宮寺(ーーー本当にごめんなさい)




真宮寺(ーーーそして、ありがとう)




キーボ「………」



アンジー「………」




真宮寺(ーーー本当に、ありがとう)



399: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:27:11.57 ID:5pLn/D61O



キーボ「ーーー真宮寺クン」



真宮寺「ーーー?」



キーボ「さっき、今日中に、百田クン達が来ると言っていましたがーーー」



キーボ「ーーーそれは、今からどのくらい後になりますか?」



400: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:28:02.74 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……ちょっと待っててネ」ガサゴソ




真宮寺(さっきの返信メールの、全員での到着予定時刻と現在の時刻ーーー)カパッ




真宮寺(ーーーそれらを比較するとーーー)




キーボ「………」




真宮寺「ーーー伝令神機の時刻表示によれば、あと三十分近くはあるネ」



401: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:31:49.72 ID:5pLn/D61O



キーボ「ーーーなるほど」



アンジー「……うんうん、やっぱり、どんなに早く行こうとしてもーーー時間はかかっちゃうよ」

アンジー「……向こうも、忙しかったり、出かける準備だったりで、いろいろ大変だろうからねー……」



真宮寺「……それに加えて、瀞霊廷(向こう)では、空間転移装置の設置が “ 基本 ” 認められていない」



キーボ「………」



真宮寺(……そう、もし旧総隊長の危惧通り、装置を悪利用された場合ーーーその『責任』を取れる立場でなければ、設置も私的な利用も許されない……)



真宮寺「……それらを考慮すれば、移動に時間がかかってしまうのは、仕方のないことだと思うヨ」



402: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:33:17.49 ID:5pLn/D61O



キーボ「……それでは、今のうちに情報共有をしませんか?」



真宮寺「? 情報ーーー」



アンジー「ーーー共有?」



キーボ「……ボクは、この世界でキミ達に再会した時、嘘を言ってしまいましたから……」



403: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:34:11.72 ID:5pLn/D61O



真宮寺&アンジー「「!!」」



キーボ「……なぜ、【超高校級が集められて】【コロシアイをさせられたのか】ーーー」



キーボ「ーーーそれが、わからないという、嘘を」



キーボ「そのことは、もう、察しているはずです」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「だから、空いている時間を使って、ボクの知っている真相を話したいんです」



404: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:36:23.46 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……このタイミングでそれをする理由は?」



キーボ「それは、主に二つあります」



アンジー「……ふたつ?」



キーボ「まず、一つ目の理由ですがーーー」



キーボ「ーーーここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのが、ここにいるキミ達だけで済むということです」



真宮寺「………」



キーボ「ボクの聴力をもってしても、キミがこの天井裏部屋……修練場のすぐ近くの空間に潜伏していることには気づけませんでした」



キーボ「そう、キミの呼吸音などに、まったく気づくことができなかった」



キーボ「そのことから考えて、この空間の音は、絶対に外に漏れない仕組みのはずです」

キーボ「ならば、ここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのは、ここにいるキミ達だけで済む」

キーボ「つまり、話している最中に百田クン達がこの家に到着したとしてもーーー彼らはこの空間の外にいるため、会話内容がうっかり伝わってしまう可能性はない」



アンジー「………」



405: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:38:15.07 ID:5pLn/D61O



キーボ(……もし、百田クン達が何らかの方法で、この空間内に入ったとしてもーーーこのくらいの広さの空間ならば、入って来た時点で気づけるはずです。ボクの聴力があれば)




キーボ(そして、気づいた時に、いったん話を切り上げれば、会話内容が伝わることはない……)




キーボ「……とにかく、ここでボクが真相について話しても、現状それを共有するのは、キミ達だけで済む 」




キーボ「そうではありませんか、真宮寺クン?」



406: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:41:03.57 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……その通りだヨ、キーボ君」



キーボ「………」



真宮寺「この空間の音が、外に漏れることは絶対にない」



アンジー「……それは、ここにいるアンジーたち、全員で話してもー?」



真宮寺「……そうだネ」



真宮寺「三人がかりでも……いや、それ以上の人がいたとしても、それらの声は決して外に漏れたりなどしない」



真宮寺「この空間から、下の修練場の音を聴くことはできても、逆は絶対にできない」



真宮寺「そこは、確かに保証するヨ」



407: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:43:42.28 ID:5pLn/D61O



キーボ(やはり、そうでしたか……)


キーボ(……しかし、そこまで音漏れ対策ができているとなると、空鶴さん達……アンジーさんを心配していただろう他の人達も潜伏していた可能性がーーー)


真宮寺「………」


キーボ(ーーーまあ、潜伏していたかどうかにつきましては、後で確認を取れば済む話。今どうこう言うべきことではありませんね)


キーボ(……もっとも、本当に空鶴さん達も潜伏していたのなら、流石に彼女達にもいろいろと物申さなくてはならなくなりますがーーー)


キーボ(ーーーその内容については、また後で考えるとしましょう)


キーボ(いま、やるべきことはーーーー)



408: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:44:15.43 ID:5pLn/D61O



アンジー「……それで、それで? ふたつ目はー?」

キーボ「………」

アンジー「ふたつ目の方は?」

キーボ「………」



アンジー「……キーボから、いま真相を話そうとするーーー」



アンジー「ーーーふたつ目の理由はー、何ー?」



409: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:49:43.89 ID:5pLn/D61O



キーボ「二つ目の理由……それは、備えるためです」

アンジー「備える……?」

キーボ「これから、全員に向けて、ボクの知る真相を伝える必要が出てくると思います」

真宮寺「………」

キーボ「それは、時間を置いてから実行した方が良い場合もあるでしょうしーーー」

キーボ「ーーー百田君達と再会してすぐ実行することになるかもしれません」



キーボ「百田君達が、真相を受け入れられる精神状態にあれば、きっとそうなるでしょう」



キーボ「……問題を、早めに解決できるに、越したことはありませんから」



アンジー「………」



410: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:51:26.00 ID:5pLn/D61O



キーボ「……それでもし本当にそうなった時、よろしければお二人には、合いの手を入れるなどサポートして欲しいのです」

真宮寺「サポート……」

キーボ「ええ、サポート」

キーボ「アンジーさんが、今日まで真宮寺クンの話に、合いの手を入れてくれた時のように、二人でボクの話をサポートして欲しいのです」

アンジー「………」

キーボ「お伝えする内容が内容なので、サポート……備えがあった方が、よりみんなも受け入れやすくなると判断しました」

キーボ「なので、よろしければ、そのためにもどうか聞いては頂けませんか?」



キーボ「ボクの知る、真相を」



411: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:52:26.59 ID:5pLn/D61O






真宮寺「………」






アンジー「………」






412: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:53:17.61 ID:5pLn/D61O



アンジー「……アンジーは、良いと思うよー?」

キーボ「アンジーさん……」

真宮寺「………」

アンジー「……きっとショックな話なんだろうけどーーー」



アンジー「ーーーそれでも、今の、アンジーが信じたいものが、きっと本物だろうから」



アンジー「それを思えば、大丈夫」



キーボ「………」



アンジー「だから、アンジーは聞く」

アンジー「そうして、アンジーは、キーボの、支えになりたいな」



413: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:54:11.22 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……僕も、同意見だヨ」



アンジー「………」

キーボ「………」



真宮寺「……夜長さんがそう言ったから、僕もそうするとかじゃない」

真宮寺「僕は今回、夜長さんと同じことを思ったーーー」



真宮寺「ーーーただ、それだけ」



真宮寺「紛れもない、僕自身の責任だ」



真宮寺「その上で、ぜひ真相を、伝えて欲しい」



414: ◆02/1zAmSVg 2019/10/26(土) 23:54:49.25 ID:5pLn/D61O



キーボ「……わかりました」



キーボ「そして、ありがとうございます」



キーボ「覚悟して、頂いて」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「……それでは、真相を、お伝えします」



キーボ「実はーーーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



415: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 01:58:17.12 ID:WKShCB+kO



キーボ「ーーーということなんです」






アンジー「………」

真宮寺「………」






キーボ「……以上が、ボクの知っていることの全てです」



416: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 01:59:55.63 ID:WKShCB+kO






アンジー「………」






真宮寺「………」






417: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:01:11.11 ID:WKShCB+kO



キーボ(……何も返事がない)




キーボ(無理もないことですね……)




キーボ(……ですが、アンジーさん達ならば、きっとーーー)








真宮寺「ーーー妙だネ」



418: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:02:04.86 ID:WKShCB+kO



キーボ「ーーーへ?」

アンジー「ーーーうん、おかしい」

真宮寺「どうなっているのだろうネ? これは?」

アンジー「うーん……」



キーボ「……ち、ちょっと待ってください」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「どこがどう、おかしいんですか?」



419: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:04:22.22 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……いや、もし君が述べた通りの内容が真相だとするならばーーー完全に矛盾するんだ」

真宮寺「そう、僕達が、尸魂界(こっち)に住んでいる人達から聞いた、現世の情報と」

アンジー「もし、キーボの言う通りなら、二ヶ月もここにいたアンジー達が、そのことを知れなかったのはおかしいよねー?」



キーボ「………」



真宮寺「……僕達が聞いた限りでは、現世は君が言うような世界じゃないはずだしーーー」

真宮寺「ーーーそれに加えて、君が終わらせたという “ それ ” も、まだ終わっていないはずだ」



キーボ「………!?」



真宮寺「 “ それ ” は、君が先ほど述べていたようなものですらなくーーー通常の遊戯として、今も続いているはずなんだ」

キーボ「………」



アンジー「……どうなってるんだろうねー?」

真宮寺「やはり、これはーーーー」



420: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:05:01.44 ID:WKShCB+kO









キーボ「ーーーやはり、死神が情報操作しているんでしょうか?」









421: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:08:18.20 ID:WKShCB+kO



真宮寺「ーーーうん?」

アンジー「……どういうことー?」



キーボ「ああ、いえ……」

キーボ「キミ達が述べた矛盾についてはーーー死神が死者に対し、記憶操作を施しているとすれば、説明のつくことだと思っています」



アンジー「!」



キーボ「死神達だって……『自分達』を支え続けてくれたこの世界が、大切で仕方ないはずです。きっと、より良い世界に築かれて欲しいはずなんです」

キーボ「ならば、今の世界の『在り方』が、異なり過ぎる倫理をもって破壊されていくことなど、あってはならないことでしょう」



キーボ「……死神達がボクらと同じ倫理観を持っていると仮定した場合ーーー尸魂界が、 “ 外の世界 ” のようになって欲しいはずがない」

キーボ「『自分達』が築き上げた世界を大切にするあまり、一線を超えることだってあり得ると思います」



キーボ「だから、死神達は、死者が現世で生きていた時の認識……記憶を作り変えてーーー」



真宮寺「ーーーなるほど、そういった考え方もあるんだネ」



422: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:09:06.81 ID:WKShCB+kO



キーボ「……?」

アンジー「………」



真宮寺「……それも考えられない話ではないけれど、僕は別に理由があると考えている」



キーボ「……どういうことですか?」



真宮寺「君達がまだ、辿り着けていない先があるということサ」



キーボ「………??」



423: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:10:19.16 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……ひょっとしたら、死神の上層部はそれを知っているのかもしれないネ」



キーボ「……はい?」



真宮寺「詳細はわからないけれどーーーおそらく僕達は、霊なる存在が引き起こした事件に巻き込まれたんだ」



真宮寺「それも、死神の上層部しか知ることを許されないような……大事件に」



424: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:11:53.29 ID:WKShCB+kO



キーボ「……えっ、?」



真宮寺「……そうでも考えないと、説明のつかないことがある……」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「……今の状況にしてもそうだ」

真宮寺「【僕達全員が霊力に目覚めた】この状況ーーーあまりにも不自然じゃないかな?」



425: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:14:57.80 ID:WKShCB+kO



キーボ「!」

アンジー「………」



真宮寺「……いや、DNAにもよるようだけどネ?」

真宮寺「当人のDNAによっては、尸魂界などの特殊な環境にいることで、霊力を得たり取り戻したりするケースもあるようだけどーーー」



真宮寺「ーーーある程度の条件を満たさない限り、一時的なものでしかないという話だ」



真宮寺「……僕達ほぼ全員が、恒久的な霊力に目覚めるなんて、どう考えても不自然なんだ」



キーボ「………」



真宮寺「しかも、キーボ君以外は、【尸魂界の同じ時間の同じ場所】に送られた」

真宮寺「心中したわけでもないのにネ」

真宮寺「これは、霊なる存在が僕達に何かしらの干渉をした結果としか思えない」



426: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:17:47.53 ID:WKShCB+kO



アンジー「…… “ あれ ” のファンの、悪い幽霊軍団の仕業かな?」

キーボ「!?」

アンジー「悪い幽霊軍団が、自分たちで楽しむために……アンジーたちを使ったのかな……?」



真宮寺「……そうだネ。そうした霊なる存在が、何らかの理由をもって、非公式に真似事を行った」



キーボ「………!!」



真宮寺「そして、それはキーボ君達が終わらせたわけだけどーーー」



真宮寺「ーーーそれこそが、霊なる存在の撃退に繋がり、今の状況に繋がったのかもしれない」



427: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:19:48.24 ID:WKShCB+kO



キーボ「ーーーはい?」



真宮寺「……僕らの巻き込まれた “ あの事件 ” ーーー」



真宮寺「ーーーそれは、【放っておけば】【尸魂界に甚大な被害をもたらすもの】だった」



キーボ「………!?」



真宮寺「死神の上層部は、それに気づいたんだ」

真宮寺「だから、それを終わらせた君達には、感謝している」



キーボ「………」

アンジー「………」



428: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:22:20.62 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……本当は直接お礼を言いたいけどーーー “ あの事件 ” は、混乱防止のため、死神の上層部以外は知ることを許されない重大機密となっている」

真宮寺「それも、特別な場所でもない限り……口にすることすら許されない程の機密となってしまっている」

真宮寺「故に、直接的にお礼を言うことは叶わなくてーーー」



真宮寺「ーーーお礼は君達に対する厚遇という形だけで、行われることになった」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「だからこそ、キーボ君達と親しい関係にあった夜長さんは、ここで雇われーーー恵まれた部類の生活を送ることが可能となった」



アンジー「………!」

キーボ「……!?」



真宮寺「だからこそ、キーボ君が瀞霊廷に住む申請が通った」



真宮寺「そういうこと、なんじゃないかな?」



429: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:23:06.35 ID:WKShCB+kO






キーボ「………」






アンジー「………」






430: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:24:01.51 ID:WKShCB+kO






真宮寺(……キーボ君と夜長さんが見たという “ 夢 ” ーーー)








真宮寺(ーーーあるいは、それも、何かしらの関係がーーーー)






431: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:25:21.25 ID:WKShCB+kO



アンジー「……うーん、なんかフワフワし過ぎてよくわかんないやー」

キーボ「ーーー確かにこの話、どうにも、全体的に、あやふやな印象を受けます」

キーボ「…… “ あの事件 ” が、【放っておけば】【尸魂界に甚大な被害をもたらすもの】という話ですがーーーあれで具体的にどんな被害をもたらすというんですか?」



真宮寺「………」



キーボ「……もし、あれのために、一年に百人ずつ亡くなったとしても、世界全体の魂魄バランスを揺るがすわけではないでしょう……」



キーボ「人は、何十億と生きているのですから」



キーボ「そうした観点から見て、尸魂界に甚大な被害が出るとは考えづらいのですがーーーー」



432: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:26:20.74 ID:WKShCB+kO



真宮寺「ーーーまァ、自分でもかなり飛躍した話だとは思っているヨ」



キーボ「………」



真宮寺「君の疑問に対する解も持っていない」



真宮寺「根拠に乏しい、虚構の推論と言わざるを得ないヨ」



433: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:27:28.73 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……だけど、まったくあり得ない話ではない。違うかい?」

キーボ「……もちろん、絶対にあり得ないとは言いきれませんがーーー」

アンジー「………」

キーボ「ーーーそうだとしても、現状それが本当であるか確かめることはできないでしょう」



キーボ「……そういった、 “ 夢 ” のような、真相だったとしてもーーー」



真宮寺「!」



キーボ「ーーー確かめる術は、ない」チラッ…



アンジー「……?」キョトン



434: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:28:26.09 ID:WKShCB+kO






キーボ「……それでも、確かめようと言うのならばーーー相応の立場が、必要になる」






アンジー「………」






435: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:34:27.05 ID:WKShCB+kO






キーボ「たとえるなら、様々な人の心と想いを大切にできる『歯車』ーーー」









キーボ「ーーーそんな、立場が、必要になるでしょうね」






436: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:35:47.03 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……?」



アンジー「………??」



キーボ「………」



真宮寺「……君は、何を企んでいるのかな?」



437: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:36:21.28 ID:WKShCB+kO



キーボ「……さあーーー?」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「ーーーなんでしょうね?」



438: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:37:00.03 ID:WKShCB+kO



……ガチャガチャッ!




キーボ&アンジー「「!?」」

真宮寺「………」




バンバンバンッ!!



439: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:37:46.91 ID:WKShCB+kO



キーボ(……扉を、叩く音ーーー)


アンジー(ーーーガチャガチャバンバン…下からーーー)


キーボ(ーーーつまり、これはーーー)






真宮寺「ーーー来たようだネ」



440: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:38:50.43 ID:WKShCB+kO



真宮寺(……予定よりも早い到着だネ。それだけ急いで来てくれたってことなんだろうけどサ)


キーボ「………」

アンジー「………」


真宮寺(……とにかく、まずは、下まで降りてーーー)ピッ




キーボ&アンジー「「!!」」



ヒュウンッ……!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



441: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 02:43:32.27 ID:WKShCB+kO



ー志波家の屋敷・修練場ー



キーボ「………」

アンジー「………」



ガチャガチャ……ダンダン!



真宮寺「ーーー今から、開けるヨ」ガチャッ…



バタン……!!



キーボ「………っ、!!」



ダダダッ……!!



赤松「……っ、キーボ、くん……!!」



442: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:10:17.48 ID:WKShCB+kO



キーボ「あっーーー」

アンジー「………」



ゴン太「……ああ! やっぱり、キーボくんだ!」



天海「……キーボ君……!」



赤松「また会えたね……! 私だよ! ピアノバカの、赤松楓だよ!」




キーボ(赤松さん、ゴン太クン、天海クン……!)



443: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:11:39.69 ID:WKShCB+kO



茶柱「ううっ……お久しぶりですね、キーボさん! 再会できて、転子は喜ぶべきなのか悲しむべきなのか……」

東条「それは難しい問題ではあるけれど……少なくとも茶柱さんには喜ぶ権利があると思うわ」

星「……それに、この尸魂界じゃ、生前の知り合いと再会なんて、なかなかにできることじゃねえからな」



星「喜んだって罰は当たらねえだろうよ」



茶柱「……そうですね! それでは、転子は全力で喜びます! 会えて嬉しいです、キーボさん!」




キーボ(茶柱さん、東条さん、星クン……!)



444: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:13:03.44 ID:WKShCB+kO



入間「……ひゃーっひゃっひゃっ! 久しぶりだなあ、キーボ!!」




キーボ(入間さん!)




ゴン太「……い、入間さん!? まだ目赤いよ!? 大丈夫!?!」

入間「うるせえぞ、ゴン太! ……んなことよりも、キーボ!どうだった? オレ様の発明の味は!」

入間「ロボのオメーでもイッちまったかあ?」



キーボ「……ええ!素晴らしい発明でしたよ、入間さん!」



入間「……ひううっ、マジメに返されたあ……!」



445: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:14:11.35 ID:WKShCB+kO



王馬「……うんうん、入間ちゃんって、本当に発明だけはすごいよねー!」

王馬「なんたって、ご飯食べられるようになったくらいでーーーロボの口からあんな血液ドロドロのクッサい台詞を吐き出せられるんだからさー!」

王馬「あっ、でもどっちにしろ、鉄クサイことは変わらないかー!」




キーボ(……王馬クン、キミって人は本当にーーー)




百田「ーーーよせ、王馬」



446: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:18:33.29 ID:WKShCB+kO



百田「ーーー入間もだ。こんな時くらい素直になったって良いんだぞ、お前ら?」



王馬「………」

入間「………」



百田「ここには、仲間しかいねーんだから……」




キーボ(百田クン……)



447: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:19:18.69 ID:WKShCB+kO



百田「……そういうこった、キーボ」



キーボ「………」



百田「オメーの『想い』……オレ達が確かに受け取った!」



448: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:20:07.03 ID:WKShCB+kO






キーボ「みな、さん……」






アンジー「………」






449: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:22:00.03 ID:WKShCB+kO



百田「……アンジーのことも、ありがとな」



キーボ「!」



アンジー「………」



百田「オレは、キーボみたいに、やれなかった」

茶柱「……っ、それを言うなら、転子は……! 転子は……!」

赤松「私は……っ、!!」

ゴン太「ゴン太は……っっ、!!」

東条「………」

星「………」

入間「………」

王馬「………」

天海「………」

真宮寺「………」



450: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:23:58.76 ID:WKShCB+kO



アンジー「……ごめんね、解斗、みんな」



アンジー「心配かけて、本当に、ごめんね」



茶柱「なっ、アンジーさんが謝ることじゃーーー」



アンジー「謝るよ」



茶柱「!」



アンジー「だって、アンジーは、差別していたから」



451: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:24:47.50 ID:WKShCB+kO



ゴン太「差別……?」

キーボ「………」



アンジー「……アンジーは、解斗たちのことを、『物』だって思ってた」



百田「………」



アンジー「『すごい才能』があって……そうでなくても瀞霊廷に住めるってだけでーーー」



アンジー「ーーー運良く、『人』になれた、『物』だって、思ってたんだよ」



天海「………」

王馬「………」



452: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:27:26.87 ID:WKShCB+kO



アンジー「……だから、解斗たちを差別して、キーボが来たことを教えなかった」

アンジー「キーボのことを教えないよう、是清にも、キーボにも、口止めさせた」

アンジー「解斗たちが忙しいのを理由に、口止めさせたんだ」



真宮寺「………」

キーボ「………」



アンジー「……勝手な話だよね」

アンジー「忙しくても、そうでなくても……キーボと会うか決めるのは、解斗たちなのに……」



453: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:28:40.53 ID:WKShCB+kO



茶柱「アンジーさん……」

赤松「………」



アンジー「……キーボと是清のことも『物』だってーーー」



アンジー「ーーーそれどころか、アンジーだけの『物』だって思ってた」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーは、自分を、『人』だって想いたくて……物であることが嫌でーーー」



アンジー「ーーーそのために、ふたりを、アンジーだけの『物』にしたの」



真宮寺「………」



571: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:45:44.09 ID:UKb+9Q+UO



アンジー「……『物』だと思っている、だから、アンジーはみんなに黙って、キーボを独り占めしてーーー」



アンジー「ーーー是清の劇場を、聞き続けた……」



真宮寺「……!」



アンジー「……あの時、アンジーは、是清の劇場が嬉しかった」

アンジー「だけど、それは、 “ わかりやすく説明しようしてくれてるから ” ……だけじゃなかった」



アンジー「……『超高校級の民俗学者』は、短い時間で、これだけの知識を持てる、劇場もできる。そんな是清を思い通りにできる自分は『すごい』ーーー」



キーボ「!」

真宮寺「………」



アンジー「ーーーそんな風に思うことも、できたから」



455: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:34:55.08 ID:WKShCB+kO



アンジー「……是清がキーボに、この世界について説明していた時ーーー期待してた」

アンジー「……流魂街と瀞霊廷の違いだとか、それらを聴くことでーーー」



アンジー「ーーーキーボが、アンジーと同じ気持ちになることを……期待してたんだ」



キーボ「………」

真宮寺「………」



アンジー「……是清の説明を聴けば、キーボもアンジーと同じ気持ちになる」

アンジー「そうなれば、誰よりもアンジーを理解して、大切にしてくれるーーー『物』になるだろうって」



アンジー「……そんなことを、期待してたんだ……」



456: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:37:19.91 ID:WKShCB+kO



アンジー「……アンジーだけの『物』ーーー『すごいもの』があれば、誰かに自慢して、誇ることができる」

アンジー「そうして、自分を、『人』だって想える」

アンジー「……それなら、少なくとも人として死ぬことができる。それなら、痛くないし、こわくない。死んだって大丈夫ーーー」



アンジー「ーーーそんな風に “ 死 ” から目を逸らして逃げていた」



アンジー「……真剣に向き合おうとしなかった」



入間「………」



アンジー「……人を『物』にすること」



アンジー「それは、人を “ 死 ” に近づけることなのに……」



アンジー「…… “ 死 ” と向き合っていないから、簡単に踏み切れる……」



457: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:38:57.96 ID:WKShCB+kO



アンジー「……そうやって逃げてーーーキーボと是清を、アンジーだけの『物』にした」

アンジー「解斗たちのことも……運良く『人』になれた『物』だって、差別したままーーー」



アンジー「ーーーいや、自分の思い通りにしていい『物』をふたつも持てた、アンジーの方が『すごい』ーーー」



アンジー「ーーーきっと、そんな風にだって、思ってた」



アンジー「……アンジーは、そういうことをしていたんだよ……」



キーボ「………」

真宮寺「………」



458: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:41:00.16 ID:WKShCB+kO



アンジー「……そんなの、おかしいのに」



アンジー「キーボも、是清も、解斗たちもーーー人だったのに」



アンジー「だから、『物』にされることが、悲しかった」



アンジー「……気分ひとつで、価値のない物にされてしまうのがーーー嫌だった」



アンジー「……そのまま、終わりを迎えることの、痛みがわかる」



アンジー「……死の恐怖がわかる」



アンジー「わかるから、解斗たちも是清も、踏み出すことができなかったんだよ」



459: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:41:40.05 ID:WKShCB+kO



百田「………」

赤松「………」

茶柱「………」

天海「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

入間「………」

王馬「………」

真宮寺「………」



キーボ「………」



460: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:44:16.29 ID:WKShCB+kO



アンジー「……そうした痛みとこわさーーー “ 死 ” に、耐えられそうになかった」



百田「………」



アンジー「……解斗たちも是清も、他の人から『超高校級』の意味を、聞いてしまってた」



アンジー「それで、自分達が、物かもしれない現実ーーー」



アンジー「ーーーそれを突き立てられた……」



茶柱「………」



アンジー「……そんなことされたら、苦しくてたまらない」

アンジー「自分を、しっかりと信じきれなくなって……耐えられなくなっても、おかしくない」

アンジー「耐えられないまま、間違えるのが嫌だった。踏み外してしまうことがこわかった」



アンジー「……言葉を大きく間違えれば、 “ 死 ” を招くことだってあるんだから……」



真宮寺「………」



461: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:45:42.16 ID:WKShCB+kO



アンジー「……みんな、それが嫌だった。優しい人だった」

アンジー「作り物だとか、そういうことに呑まれない。強い『人』だった」

アンジー「……だから、上手くやれなかった、踏み出せなかった」



赤松「………」



アンジー「……それでも、踏み出そうと、解斗は立ち上がってくれたけどーーー」



アンジー「ーーー解斗も、アンジーの言葉を前に踏み出せなかった」



百田「………」



アンジー「……今の自分から才能や立場がなくなっちゃえば、価値が減っちゃう感じがするからーーー」



アンジー「ーーーそうやって、もっと物にされる感じがして、 “ 死 ” がさらに近づいてしまうような気がしたんだよね?」



462: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:46:34.80 ID:WKShCB+kO



アンジー「……それが、すごく苦しかった」



アンジー「踏み外しそうになるくらい……こわかった」



百田「………」



アンジー「だから、解斗は “ あの時 ” 何も答えられなかったんだよ……」



463: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 13:56:47.54 ID:WKShCB+kO



アンジー「……なのに、アンジーは、隠した」



アンジー「…… “ あの時 ” 、解斗たちの気持ちが、言葉に込められてたはずなのに」

アンジー「……是清がアンジーのためにいろんなお話をする時だってーーー是清の気持ちが、言葉に込められてたはずなのに」

アンジー「そう、アンジーを、信じて必要としてくれた気持ちが、込められてたはずなのに」



アンジー「……こんなアンジーを! 人として扱ってくれた! 確かな気持ちが、込められていたはずなのに……!」



アンジー「……アンジーは、隠した」



アンジー「……昨日、アンジーが……! キーボの気持ちを踏みにじった時のように……! 隠した……!」



キーボ「………」



アンジー「みんなに嫉妬して差別してーーー雲で隠したんだ……!」



464: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:00:55.36 ID:WKShCB+kO



アンジー「……ごめんね」






百田「………」



キーボ「………」



真宮寺「………」






アンジー「……本当に、ごめんね……っっ、!!」



465: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:02:09.56 ID:WKShCB+kO



百田「………」

キーボ「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

天海「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

入間「………」



466: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:02:53.35 ID:WKShCB+kO



百田「……オメーの言いたいことは、よくわかったぜ、アンジー」



アンジー「………」



百田「……だから、その答えを、今ここで言ってやる」



アンジー「……?」






百田「……ありがとよ」



467: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:07:30.58 ID:WKShCB+kO



アンジー「!?」



百田「オメーの気持ち、オレ達が確かに受け取った!」



アンジー「………?!?!」



百田「アンジー! オメーは謝った!」

百田「それは、自分の胸の痛みやこわい気持ちと……真剣に向き合ったってことだ!」

百田「……弱さと向き合って、苦しんで! それでも『自分』を信じてーーー」



百田「ーーーそうした勇気……『想い』と共に! オレ達の元に踏み出してくれたってことだ!」



百田「オレ達の全てを、大切にしてくれたってことなんだ!」



アンジー「……!」



468: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:09:28.15 ID:WKShCB+kO



百田「……そいつは、オレ達のことを、人として見ていたってことだ! だからこそ、できたことなんだ!」

百田「物でもなければ『物』でもねえ……かけがえのない人なんだって!」



百田「そう認める気持ちだって、オメーにはあった! だから、それを信じて、やってのけた!」



百田「だったら、ボスとして、礼を言わねえわけにはいかねえ!」

百田「そうだろ!」



アンジー「解斗……!」




キーボ(百田クン……!)




百田「オレ達はオメーを許すぜ、アンジー!」



469: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:10:09.41 ID:WKShCB+kO



アンジー「……っ、でも、アンジーはーーー」



百田「ーーーそれでも、オメーが納得できないってんならーーー」



アンジー「………」



百田「ーーーオメーもオレ達の『想い』、受け取ってくれ!」



470: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:11:21.79 ID:WKShCB+kO



アンジー「……解斗たちの、『想い』?」



百田「そうだ! オレ達と一緒に、何かやろうぜ!」



アンジー「!?」



百田「内容はなんでもありだ!」



百田「アンジーとキーボと一緒に! 絵を描いたりーーー」



百田「ーーーカルタや花札で遊んだりでも良い!」



百田「オレ達とも一緒に何かして、『想い』を残してくれ!」






百田「それが、オレ達の『想い』だ!」



471: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:21:00.48 ID:WKShCB+kO



王馬「……ホント、百田ちゃんってウザいよねー」



百田「!?」



アンジー「……小吉?」



王馬「勝手に、みんなのことまで決めちゃってさー」



キーボ「……ちょっと、王馬クンーーー」



王馬「……いくら、その答えが決まってるとはいえ、自分以外にもそれを言わせてあげないなんてーーー」







王馬「ーーーボスの名が泣くよ?」



649: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:57:04.38 ID:rsj1P2SCO



赤松「ーーーそうだよ! 私だって、アンジーさんを許すよ! アンジーさんは、人と! 友達同士に、なれる人なんだから!」

天海「俺も同じ気持ちっす。それに、俺達は、人に向けたショーも考えている……」

天海「……それを、俺達全員で、一緒に、楽しんで欲しいっす」

天海「ショーは、それをする人、お客になる人……その両方が全員揃うことで、より楽しいものになるんすから」

王馬「そうそう! せっかく、いろいろ考えたんだからさ! お客さんになってくれなきゃ、こっちとしても困るよー!」

王馬「あっ、これは、嘘じゃないよ! ホントだよ! オレはホントの嘘つきだからね!」

星「……ショーについて、いろいろ考えることができたのはーーー夜長、お前もまた、俺達を人と見てくれたからだ」

星「その心が、俺達のこの気持ちへと、繋がってる。だからこそ、みんな、許すことができる……」

キーボ「……ボクだって、気持ちは同じです! みんなで、何かして、『想い』を残しましょう! アンジーさん!」

茶柱「その気持ち! 転子たち救護組も同じです! もし、自分だけではどうしようもないことがあるならーーー言ってください! 相談に乗ります!」

東条「そう、それぞれに合った、やり方で……」

ゴン太「ゴン太はまだまだ勉強中だけどーーーそれでも、相談に乗るよ! 虫さんと一緒に!」



651: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 21:01:27.60 ID:rsj1P2SCO



ゴン太「……うん、そうだよ! どうにか、みんなで虫さんと和むことができればーーーきっと、どんなに苦しい時だって……!」

入間「む、虫プレイとかぁ……! 一緒にヤるんなら、はじめはもっと別のぉ……っ、!!」

真宮寺「『想い』を残すーーー何をどのようにして行うかは、よく精査した上で決めた方が良さそうだネ……」

星「……スポーツなら、安全なやり方を含め、いくらか教えられるぜ?」

東条「星君が教えてくれるなら心強いわね。ただ、それでも一応……万が一怪我をするようなことがあったら、いつでも言ってちょうだい。応急処置は私がするわ」

王馬「キー坊の場合は、入間ちゃんに修理して貰うことになるだろうけどねー」

キーボ「なっ、王馬クン! ここでまたロボット差別ですか!?」

入間「ムシすんなよぉ……! それと、キーボは言われずとも直してやるからなぁ……!」



アンジー「………!!」



百田「……たはは、まさか、王馬に一本取られちまうたあな……」

王馬「にしし! 今更だね、百田ちゃん! 普段から、一本どころか、三振ノックアウトの癖してさー!」

百田「う、うるせー! オレは野球よりもテニス派なんだよ!」

入間「言い訳になってねーぞ、ダボ!」

百田「あー、もー、とにかく、そういうこった、アンジー!」ビシッ



474: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:27:25.59 ID:WKShCB+kO












「「「「「「「「「「「これが、みんなの『想い』だ!」」」」」」」」」」」












475: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:37:24.75 ID:WKShCB+kO









アンジー「………っっ、!!」









476: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:40:06.77 ID:WKShCB+kO



キーボ「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

入間「………」

百田「………」



477: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:40:42.37 ID:WKShCB+kO



アンジー「……うん、わかったよ、みんな!」



キーボ「!」

真宮寺「……!」



アンジー「みんな一緒に! 神った『想い出』! 作っちゃおー!」



478: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:42:37.51 ID:WKShCB+kO



キーボ「……アンジーさん……!」

真宮寺「……夜長さん……」

百田「おう! その通りだ、アンジー!」

百田「よし! それなら、さっそく何やるか決めねーとな!」

入間「な、ナニをヤるかぁ!? こんな大人数で、そんな……!?」



赤松「……だったらさ、アレやらない?」



ゴン太「? アレって何なの? 赤松さん」



入間「ま、また、ムシかよぉ……!」



赤松「ほら、前に話したでしょ?」

赤松「……もしここに、同じ学園の仲間が来たら、全員でやろうってーーーー」



479: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:44:47.38 ID:WKShCB+kO



キーボ「……?」



真宮寺「………」



アンジー「……アンジーも良いのかな?」



赤松「もちろんだよ、アンジーさん! それに、こういうのは全員でやった方が良いに決まってるんだから!」



アンジー「……ありがとう、楓……」



480: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:45:40.37 ID:WKShCB+kO



キーボ(……なんでしょうか?)




キーボ(先ほどから、何の話をーーー)




百田「ーーーよし、さっそくやるぞ、オメーら!」



アンジー「……うん!」



481: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:46:20.69 ID:WKShCB+kO



タッタッタッ……!



キーボ「!?」



赤松「いくよー、みんなー!」

赤松「せーのっ、!!」



482: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:47:16.59 ID:WKShCB+kO












「「「「「「「「「「「おかえり(なさい)(っす)(だな)! キーボ(くん)(さん)!」」」」」」」」」」」












483: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:47:59.04 ID:WKShCB+kO





キーボ「………」






キーボ「……えっ、?」






484: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:48:43.50 ID:WKShCB+kO



王馬「……もー、ノリ悪いなー! これだからロボットはーーー」



キーボ「あっ、えーとーーー」



キーボ「ーーーこれは、いったいーーー」



アンジー「……おかえりの、あいさつだよ」



キーボ「!?」



485: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:50:09.98 ID:WKShCB+kO



赤松「……実はね? 学園の仲間が来たら、こうして、おかえりを言うことにしてたんだ……」



百田「オレ達、全員の『想い』を込めてな!」



キーボ「………!!」



486: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:50:50.55 ID:WKShCB+kO






アンジー「……遅くなっちゃったけどね」






キーボ「アンジーさん……」






487: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:52:13.59 ID:WKShCB+kO



王馬「……まー、ここ何週間かは、かなり忙しくて全員が一斉にやってこれる機会なんてなかったしーーー」

王馬「ーーー今日の場合はたまたま都合がついただけだから、どのみち遅くなってたとは思うけどね」



アンジー「小吉……」



星「……それに、今こんなこと言うのもなんだがーーー本来こうやって出迎えをするのは、遅いに越したことはねえからな」

天海「……同じく死後の世界に来たら来たで悲しむことになる……複雑な問題っす」

東条「事実、すごく悲しむ人がいることを考慮すればーーー」



入間「………」

ゴン太「………」

茶柱「………」

百田「………」



東条「ーーーそう、一概には、間違いとも言い切れないわ」



488: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:52:45.72 ID:WKShCB+kO



アンジー「……みんな……」



真宮寺「………」



キーボ「………」



489: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:54:07.32 ID:WKShCB+kO



茶柱「……実際、転子は複雑です」




キーボ(茶柱さん……)




茶柱「……まさか、男死が来ることで、こんな複雑な気持ちになるだなんて……!」



490: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:54:51.11 ID:WKShCB+kO



キーボ「……えっ、?」



アンジー「……!」



真宮寺「………」



王馬「……あー、やっぱり、茶柱ちゃんは、そうくるよねー」



491: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:55:50.83 ID:WKShCB+kO



入間「……おい、茶柱。一応聞いとくが、お前、いつからキーボを “ 男 ” って認めたんだ?」

茶柱「……男らしく、女子をたらし込むというのならば、例外なく男死です!」



キーボ「……はい? たらし込む?」



アンジー「………」



キーボ「いったい何のーーー」



真宮寺「ーーーそれはそうと、キーボ君……」



キーボ「?」



真宮寺「……君は、おかえりって言われたら、どうするのかな?」



492: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:56:32.05 ID:WKShCB+kO



キーボ「あっ……!」



アンジー「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

百田「………」

入間「………」



493: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:58:28.43 ID:WKShCB+kO



キーボ(ーーーそうでした、その通りでした)




アンジー「………」

真宮寺「………」

茶柱「………」

赤松「………」

ゴン太「………」

東条「………」

星「………」

王馬「………」

天海「………」

入間「………」

百田「………」




キーボ(ーーーみんなの『想い』が、ここにある)




キーボ(他ならない、ボクに向けてくれた……)




キーボ(……そんな、あたたかい、心がーーー)




キーボ(ーーーならば、ボクの放つ言葉はーーーー!)



494: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 14:59:13.77 ID:WKShCB+kO









キーボ「ーーーただいま!」









 

498: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 16:42:51.37 ID:WKShCB+kO



ーエピローグー






ー砕かれた先にある世界ー



499: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 16:45:15.17 ID:WKShCB+kO



キーボ(ーーーあれから、半世紀以上ものの時が経ちました)




キーボ(百田クン達と再会したあと、ボクら三人でみなさんに真相をお伝えしーーーみなさんは深い覚悟をもって、受け入れてくれました)




キーボ(その上で、改めてそれぞれの辿る道を考え、見出しーーー)




キーボ(ーーー歩むことになりました)



500: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 16:46:29.24 ID:WKShCB+kO






キーボ(そうして、歩み続けている)






キーボ(半世紀以上が経過した現在でも、なりたい自分を見出し……その道のままに、歩み続けているのです)






501: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:00:56.94 ID:WKShCB+kO



キーボ(その過程で、茶柱さん、ゴン太クン、東条さんの三人はーーー)




キーボ(ーーー真宮寺クンの話していた通り、護廷十三隊の死神となりました)




キーボ(それも全員が、救護部隊……【四番隊】の死神となったのです)


キーボ(それからは、医療霊術である回道や隊士への心理的ケアなどを必死に研究し、鍛錬と実践に励んでいます)


キーボ(その結果、多数の護廷隊士が、彼女達によって心と命を救われることとなりました)




キーボ(そうして、人の心と命を護り続けています)




キーボ(……これは、みなさんのたゆまぬ努力の結果ではありますがーーーそれができたことには、四番隊の虎徹隊長を中心とする先達の方達が、尊敬に足る存在だったことも大きかったと思います)


キーボ(だからこそ、先達の支えになりたいと思うことができ、その気持ちのままに、己を磨き上げることもできた)




キーボ(ボクは、そう考えています)



502: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:02:29.31 ID:WKShCB+kO



キーボ(……もちろん、通常の死神としての鍛錬も、怠ってはいません)




キーボ(茶柱さん達は、斬魄刀との “ 対話と同調 ” 、瞬歩の修得に成功し……さらにはそれぞれ白打の鍛錬に励んでいます)




キーボ(その結果として、茶柱さんは技術を中心とした、ゴン太クンは力を中心とした白打を、扱えるようになりました)




キーボ(……もっとも、 “ 千里通天掌 ” の修得は流石にまだ先の話でしょうが……)



503: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:04:33.27 ID:WKShCB+kO



キーボ(……なお、東条さんも、白打を身に付けています)


キーボ(技術や力に特化したものではありませんがーーーその二つをバランスよく合わせもった格闘スタイル、それを身に付けているのです)


キーボ(一対一の模擬戦闘では、茶柱さんとゴン太クンに、勝るとも劣らない戦いを見せていたくらいでした)


キーボ(また、東条さんは、他にも鬼道の才能などにも秀でており、基本能力の優れた死神として……多数の方から評価され続けています)




キーボ(今では、既に高い立場を得ており、霊圧は副隊長クラスです)




キーボ(もしかしたら、近いうちに副隊長に昇進するかもしれません)



504: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:08:27.00 ID:WKShCB+kO



キーボ(……もっとも、東条さん自身は、評価され、上に行くことを恐怖していますがーーー)




キーボ(ーーー東条さんには仲間がいる)




キーボ(護廷の二字の名の元に、人を護る、大勢の仲間がいる)


キーボ(四番隊の、護廷隊の、仲間がいる)


キーボ(側には、恐怖のあまり誤った判断を下すことの痛みを知る、ゴン太クンがいる。仲間に心を開いて感情を表現することの大切さを知る、茶柱さんがいる)


キーボ(今は、そうした仲間と共に、恐怖を背負うことができる)


キーボ(だから、東条さんが、どこまで上り詰めようと、どんな力や実績、称号を手に入れようとーーー)




キーボ(ーーーそれに振り回されることなく、仲間と共に、人を護り続ける)




キーボ(……そんな、隊長格に相応しい存在として、歩み続けることができる)




キーボ(ボクはそう信じています)



505: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:13:56.90 ID:WKShCB+kO



キーボ(……次に、入間さんと百田クンですがーーー)




キーボ(ーーーまたもや真宮寺クンの言っていた通り、護廷十三隊ではなく、貴族お抱えの死神となりました)




キーボ(それも、【四楓院家】という、大貴族の抱える技術開発部門ーーー)




キーボ(ーーーそこの科学者として、働くことになったのです)




キーボ(ただ、その技術開発部門は、名目上のものらしく、入間さんと百田クンしかいません)


キーボ(……どういうことなのか、人事に質問したそうですがーーーその後に四楓院家の現当主の方がやって来て、瀞霊廷の外で研究を行うよう命じられたそうです)


キーボ(瀞霊廷に在住していない、某フリー科学者の元まで行くようにと)


キーボ(そう、入間さん達は、浦原さんの元まで出向いて研究を行い、その成果を四楓院家に還元するように言われたのです)


キーボ(そのため、入間さんと百田クンは、浦原さんの元で助手をするという形で、必死に勉強し、技術開発のための研究を重ねています)


キーボ(その成果は、四楓院家もしくは浦原商店の商品となり、今でも尸魂界の役に立ち、人を支え続けている)




キーボ(……事実、そうした入間さん達の発明品を、ボクも浦原商店などから定期的に購入し、毎日の生活を支えられているのです)



506: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:18:25.35 ID:WKShCB+kO



キーボ(……このまま研究を続ければ、入間さん達の発明で尸魂界はさらなる発展を遂げていく)


キーボ(百田クンも、霊王宮の守護を任されるに足る何かを、創り出す日が、きっとやってくる)


キーボ(その後、霊王様やその守護を任される死神と出会い、そこでコミュニケーションや霊王宮の研究を行えばーーー)


キーボ(ーーー霊王様や霊王宮が、世界全体にとってどういう存在なのかを、理解することもできるでしょう)




キーボ(そうして、世界の仕組みを、より深く知ることができるはずです)




キーボ(また、霊王宮の守護を任された暁には、尸魂界にも宇宙のような場所があるか否か? 自分達の手で徹底的に確かめると話していました)


キーボ(百田クンと入間さんでロケットのようなものを開発し、霊王宮のさらに上……宇宙かもしれない場所ーーー)




キーボ(ーーーそこに敵となるような存在が潜んでいないか? 確かめるという名目で、探検するとのことでした)



507: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:21:29.23 ID:WKShCB+kO



キーボ(……そこには、まだ自分達の知らない知的生命体がいるかもしれませんしーーー)




キーボ(ーーーそうでなくともまだ見たことのない素晴らしい何かがあるかもしれない)




キーボ(そこに辿り着いて、社会全体に発表すればーーー地上にいる人達も、新たな知的生命体や素晴らしい何かの存在を知り、その価値を知ることができる)


キーボ(その人達が、百田クン達に続き、空の上まで出向いて……新たな知的生命体や素晴らしい何かと触れ合うことができるかもしれない)


キーボ(……もちろん、霊王宮の警備上の理由などもあって、大勢の人達が空の上に行くことには問題があるかもしれませんがーーー)




キーボ(ーーーそれでも、研究を続けて、己が発想力を鍛え続ければ、その発想力をもって解決できるかもしれない)




キーボ(……そうした気持ちをもって、百田クンと入間さんは、お互いの手を取り合っている)




キーボ(その上で、霊王宮という名の “ 目に見える光 ” 、その先にある “ 可能性の闇 ” ーーー)




キーボ(ーーー霊王宮のさらに上の方まで、手を伸ばす予定、とのことでした)



508: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:23:16.19 ID:WKShCB+kO






キーボ(……ボクは、そうしているお二人を想像すると、とても心があたたかくなります)








キーボ(まるで、自分のことのように、誇らしい)






509: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:26:02.51 ID:WKShCB+kO



キーボ(……なお、浦原さんは普段は現世の日本に住んでいるということなので、入間さんと百田クンも、必然的に同じ場所に住むことになりました)


キーボ(そこで、百田クン達は、現世で生き残ったみんなと会おうとも考えたようですがーーーそれは叶いませんでした)


キーボ(百田クン達に限らず、生前の記憶を封じる処置を取らずに死神になった者は、自分から生前の関係者や関係組織と接触することを、掟で固く禁じられているのです)


キーボ(偶然を頼って会おうにもーーー浦原さんからの情報によると、現世で生き残ったみんなは、日本国内に在住していないらしく、偶然会うことは不可能でした)




キーボ(……もし、会える時が来るとすればーーーー)



510: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:28:35.28 ID:WKShCB+kO



キーボ(ーーーそして、赤松さん、王馬クン、天海クン、星クンの四人は、またしても真宮寺クンの言う通り、音楽芸人となりました)


キーボ(赤松さんの演奏と王馬クン達の芸は、観客を巻き込んだショーでもありーーー)




キーボ(ーーー流魂街の住民、瀞霊廷の貴族、平民、死神に関係なく、人の心を照らし……多くの人々から絶賛されています)




キーボ(……ボクら三人も、その中に含まれています)


キーボ(【三番隊】の鳳橋隊長も、赤松さん達のファンを公言し、実際に演奏を聴いて芸を見るためにーーー何度も貴重な時間を割いてくれています)


キーボ(他にも、多数の死神が赤松さん達のファンであり……何者かが赤松さん達に危害を加えることのないよう、目を光らせたりーーー)




キーボ(ーーーある時には、赤松さん達を直接守ってくれることだってあります)




キーボ(……赤松さん達が流魂街に出向いた時、尸魂界に生息する虚に狙われることも稀にありましたからね。多くの方から守って頂けるのは本当にありがたい)



511: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:30:01.31 ID:WKShCB+kO



キーボ(……なお、赤松さん達が初めて虚に狙われた際は、死神に助けて貰った後、赤松さん達の才能の形が一風変わったものになりました)




キーボ(……それは、銀城さん曰く【因子を持つ存在が】【虚に襲われた】ことにより、起きることもある現象とのことですがーーー)








キーボ(ーーーそれはまた、別の話)



512: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:31:19.05 ID:WKShCB+kO



キーボ(……信じてますよ、王馬クン)




キーボ(キミは嘘つきでロボット差別のようなことをしますがーーー)




キーボ(ーーーその嘘の風船には、キミ達の想いが詰まっていると)




キーボ(赤松さん達と一緒に、そして観客と一緒に想い描いた夢が、風船の中で自由に泳いでいると)




キーボ(ボクは信じていますからね)



513: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:32:42.69 ID:WKShCB+kO



キーボ(……結局みんな、大まかには、真宮寺クンが話していた通りの道を辿ることになりましたね……)




キーボ(ーーーそれで良い)




キーボ(なぜなら、その道は、想うままに選択し、想うままに進んだ道なのですから)




キーボ(だからこそ、それに意味を感じ、価値を信じることができる)




キーボ(ならば、それで良い)




キーボ(そうして歩んだ道なら……どんなに痛くて苦しくても、後悔はない)




キーボ(きっと、そうなんですから……)



514: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:34:01.41 ID:WKShCB+kO



キーボ(……そして、そうした道を歩むのは、王馬クン達だけではありません)






キーボ(そう、残るボクら三人も、またーーーー)



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー




515: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:48:37.77 ID:WKShCB+kO



ー尸魂界・志波家の屋敷ー



アンジー「ーーー今日も楽しかったねー、キーボ!」

キーボ「ええ! ボクも楽しかったですよ、アンジーさん!」

アンジー「キーボとふたりで、すっごい神った絵描けたよー! にゃはははー!」

キーボ「休暇をとって正解でしたね。今日こうして時間をかけなければ、ボク達の絵はここまで昇華されなかったでしょうから……」






真宮寺「ーーーやあ、お疲れ様、夜長さん、キーボ君」



516: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:50:06.78 ID:WKShCB+kO



キーボ「あっ、真宮寺クン、お疲れ様です」

アンジー「お疲れ、是清ー! 今日の仕事と修行は終わりー?」



真宮寺「うん、今日の分はネ……」



真宮寺「ーーーククク、それにしても、花火作りは本当に奥が深いヨ!」

真宮寺「半世紀かけて未だに、学ぶことはまだまだ多い!」

真宮寺「尸魂界の花火は霊子で構成されている以上、現世のものよりも自由度が高く、難易度は高いと、弟子入りの際に覚悟していたけれどーーー」



真宮寺「ーーーまさか、これほどまでとは夢にも思わなかった! あァ、この感動を、言葉にせずにはいられないヨ!」



517: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:51:16.42 ID:WKShCB+kO



アンジー「にゃはははー! 是清は相変わらずだねー!」



キーボ「ええ、空鶴さんに弟子入りしてから今に至るまで、ずっと同じことを言い続けています」

キーボ「ボクが出した統計によれば、これでーーー」



アンジー「ーーーあー、数字はともかく、どうかな? 是清ー?」



アンジー「今日の【鰤清劇場】は、どんな感じー?」



518: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:52:11.45 ID:WKShCB+kO



真宮寺「ーーーごめんネ、夜長さん。申し訳ないけど、今日は披露できそうにないヨ」

アンジー「あれま? そうなの?」

真宮寺「休日中にいろいろと調べたんだけど、その時点で考えがまとまらなくて……」



真宮寺「……すまないネ、本当に」



アンジー「気にすることないよー! やろうとしてくれたことだけでも、アンジーは嬉しいよー!」

キーボ「そうですよ、真宮寺クン! ボク達のために貴重な休日を使って調べてくれたのでしょう?」

キーボ「それだけでも、ボク達は嬉しく思いますよ!」



真宮寺「………」



519: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:54:18.63 ID:WKShCB+kO



キーボ「……それに、キミが作る、【誓いの花火】を待っている人は、たくさんいるんでしょう?」






真宮寺「……そうだネ。確かにそうだヨ」






キーボ「それに加えて、クライアントの要望に応じて【打ち上げタイプ】【手に持つタイプ】【その他のタイプ】に分けーーー調合だって変えなくてはいけません」






キーボ「……大変、でしょう?」



520: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:57:44.41 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……人それぞれ、込めたい『想い』の形は違う」

真宮寺「そうした違いと向き合い、その人に合ったものを考えることが、人と向き合うことでもある」



真宮寺「その事実から、目を逸らすわけにはいかないヨ」



アンジー「そうそうー! だから、今は劇場しないで、カラダ休めて、明日に備えるべきなんだよー!」



キーボ「ボクもそれに賛成です!」

キーボ「なので、ボク達だけでなく……クライアント、そしてキミ自身も大切にしてください! 真宮寺クン!」

キーボ「キミが、今すぐここで寝たとしても、ボクが守ってみせますから!」




真宮寺「ーーーありがとう」



521: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 17:58:32.28 ID:WKShCB+kO



真宮寺「ーーーと言って綺麗に終わらせたいところだったけどーーー」



キーボ「?」






真宮寺「ーーーキーボ君、 “ その刀(ひと) ” は大丈夫なのかい?」



522: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:00:12.77 ID:WKShCB+kO



キーボ「……それは、どういった意味なのでしょうか?」



真宮寺「いや、君がつい最近、名を教えて貰ったという “ その刀(ひと) ” はーーーどうにも呟きが多いという話だったからネ」



真宮寺「実際、他の人は、君がそうした呟きに反応していると話していた」

アンジー「あー、確かにー!」



キーボ「………」



真宮寺「だけど、今の君はそうした反応をしていない」

真宮寺「だとすれば、説得して御しきれるようになったと思いたいところだけどーーー」






真宮寺「ーーー大丈夫だよネ?」



523: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:01:11.23 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……戦闘中に喧嘩とかしないよね?」



キーボ「………」



真宮寺「……何か言ってヨ」






真宮寺「……【黒き死覇鎧を纏った】【白の鉄神】ーーー」






真宮寺「ーーー “ 超始解級の死神ロボット ” 、キーボ君?」



524: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:03:11.97 ID:WKShCB+kO



キーボ(死神ver)「ーーー大丈夫ですよ。喧嘩なんてしません」



キーボ「この斬魄刀(ひと)が、浅打だったこれまでと同じようにーーー共に戦いますよ、虚と」



真宮寺「………」



キーボ「ーーーただ、この斬魄刀(ひと)、口をひらけばあまりにも理解しがたいことばかり呟くんですよ」



525: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:05:02.08 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……どんな感じなんだい、それは?」



キーボ「……少なくとも、この斬魄刀(ひと)と比べればーーー」



キーボ「ーーー周りに、親しい人しかいない時の入間さんの方が、遥かに常識的な言動を取っていると思います」



アンジー「……自重しない美兎の方がマシって……」



真宮寺「それは凄まじいネ……」



キーボ「ええ……なので、ボクは思考を重ねた結果、この斬魄刀(ひと)の言葉は普段は心に留めるだけにしてーーー返答は夜の対話の時に行うことにしたんです」



526: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:06:07.22 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……ちなみに、今は何て言ってるんだい?」



アンジー「アンジーも気になるー!」



キーボ「……いや、ちょっと、人に伝えるには、いささか以上に気が引ける内容でーーー」







キーボ「ーーー申し訳ありませんが、あまり気にしない方針でお願いします」



527: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:07:00.10 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……わかったヨ。そこまで言うなら気にしないヨ」



アンジー「アンジーもねー! アンジーは日本語だけじゃなくて、空気も読めるのだー!」



キーボ「……ありがとうございます」



528: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:09:02.41 ID:WKShCB+kO



アンジー「……あー、そうそうー」



アンジー「アンジーねー、気になることがあるんだけどーーー」



キーボ「……?」






アンジー「ーーーキーボは、次いつアンジーと “ 一日 ” 一緒にいられるー?」



529: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:10:49.31 ID:WKShCB+kO



キーボ「……そうですね。スケジュールを再計算してみたところ、二週間後の同じ曜日が妥当かと」

キーボ「この日ならば、一日近く一緒にいられますよ! アンジーさん!」

アンジー「……あれ? キーボ、来週はダメなの?」

キーボ「すみません、その日は眠八號さんとの先約が入ってまして」



アンジー「……んー?」



キーボ「……ありがたいことに、彼女から付きっきりで、斬魄刀との対話に関する指南を頂けるとのことでーーーー」



530: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:13:27.16 ID:WKShCB+kO



アンジー「………」



キーボ「……アンジーさん?」



アンジー「主とアンジーは言いました。女心を弄ぶ屑鉄は自爆しろ、と」



キーボ「ちょっ!? 縁起でもないこと言わないでください!!」

キーボ「というか、“ 女心を弄ぶ ” !?」

キーボ「真っ赤な誤解ですよ! ボクと眠八號さんはそんな関係じゃありません!」



アンジー「……本当、キーボ?」



キーボ「本当ですよ! 信じてください!」



アンジー「……そっかー、なら良いけどー」



真宮寺「まァ、誤解じゃなかったら、涅隊長の手でネジ一本まで分解されることになるだろうけどネ」



キーボ「恐ろしいことを言わないでください! そして、蒸し返さないでください!」



真宮寺「ククク……ごめんヨ。ちょっと気になってネ」



キーボ「いや、蒸し返すのは、本気で勘弁してください!」

キーボ「ただでさえ普段から、涅隊長と大前田副隊長のお二人に、 ただならぬ目で睨まれているんですから!」



531: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:14:53.36 ID:WKShCB+kO



アンジー「ーーーえっ……」



キーボ「誤解を招くような発言はくれぐれもーーー」



真宮寺「……大前田副隊長ってーーー」



アンジー「ーーー何かなー?」



532: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:15:41.89 ID:WKShCB+kO



キーボ「……?」キョトン



真宮寺「……いや、涅隊長はわかるヨ? 眠八號さんの父親だからネ」



アンジー「だけど、そこでー、どうして、まれち……あの人が出てくるのかなー?」



533: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:16:52.10 ID:WKShCB+kO



キーボ「……ああ、実はこの前、茶柱さん達と合同任務をした際、同じく四番隊の希代さん……大前田副隊長の妹さんと仲良くなりましてね」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それ以降、大前田副隊長のボクを見る目がさらに厳しくなってーーー」



アンジー「屑鉄自爆しろ」



キーボ「ーーーええっ、!?」ガガーンッ



534: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:18:22.40 ID:WKShCB+kO



アンジー「………」



キーボ「ち、ちょっと、違うんですよ! 確かに希代さんにも付きっきりで、斬魄刀との対話に関する指南をして頂ける予定はありますが、決してそんなーーー」



キーボ「ーーー【屑鉄爆発しろ☆】!? キミまで何を言っているんですか?」



真宮寺「ククク……どうやら、自分の斬魄刀にまで批難を受けたようだネ」

アンジー「……今回ばかりは刀が正しいみたいだねー」

アンジー「うんうん、女心のわからない屑鉄だからねー、しょうがないねー」



キーボ「うっ……」



真宮寺「まったく、これでは卍解修得まで何千年かかることやら。先が思いやられるようだヨ」



535: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:21:09.37 ID:WKShCB+kO



キーボ「ぐぬぬ……確かにボクにもまだわからない心があるようですが、決してこのままでは終わりませんよ!」



アンジー「………」



キーボ「そうでもなければ、この理解しがたい斬魄刀と……もう一人のボクと一生付き合っていくなんて不可能ですから!」



真宮寺「………」



キーボ「絶対にわかってみせますよ! 刀心も! 女心も!」

キーボ「そうやって人の心と向き合い、対話して理解して、いつか卍解を修得してーーー」



キーボ「ーーー様々な心と想いを、大切にできる『歯車』にーーー」



キーボ「ーーーそう、隊長になってみせます!」






キーボ「それが、ボクの歩み続ける、 “ 道 ” です!」



536: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:26:25.64 ID:WKShCB+kO



アンジー「……うんうん、わかろうとしてくれるなら大丈夫だよー!」

アンジー「それなら後で、お菓子、また食べさせてあげるねー!」



キーボ「……えっ、?」

真宮寺「………」



キーボ「……待ってください、今日の分は既に頂いてーーー」



アンジー「……今日、キーボは、アンジーに、一日ずっと付き合ってくれた……」



キーボ「………」



アンジー「それに加えて、ずっと心に、その斬魄刀(ひと)の言葉受け止めて、大変だったよね?」



537: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:27:20.47 ID:WKShCB+kO



キーボ「……この斬魄刀(ひと)の相手が大変なのは、確かですね」



アンジー「でしょでしょー?」



キーボ「………」



アンジー「……だから、アンジーが作った、お菓子、キーボに、また食べさせてあげるんだー」



538: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:28:34.63 ID:WKShCB+kO



キーボ「……良いんですか?」

キーボ「また、作らなくてはいけなくなりますよ?」



アンジー「うんうん、問題ナッシングだよー!」

アンジー「キーボだったら、いくら食べてもデブデブにはならないしーーー」



キーボ「………」



アンジー「ーーー何より、美味しく食べてくれる人がいる」



アンジー「それなら、アンジーは、いくらでも作れちゃうよー!」



539: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:29:54.45 ID:WKShCB+kO



キーボ「……ありがとうございます、アンジーさん」

キーボ「アンジーさんのお菓子、楽しみにしています!」



アンジー「ふっふー、期待しててねー、キーボ!」

アンジー「アンジーたちだったら、デブデブになっちゃうくらい、甘くてトロトロなのをーーー」






アンジー「ーーーいっぱい、いっぱい、食べさせて、あげる」






アンジー「……満足するまで、ね?」



540: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:30:49.46 ID:WKShCB+kO









キーボ「……はい!」









541: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:33:28.20 ID:WKShCB+kO



真宮寺「……アー、ちょっと良いかな?」



キーボ&アンジー「「?」」



真宮寺「いや、無粋なことを言うようでなんだけれどもネ……?」



キーボ「………」



真宮寺「……卍解修得は、あくまでも、隊長になるための基本条件の一つであって、それで隊長になれるとは限らない、ということーーー」



真宮寺「ーーーそこは、わかっておいて欲しいかな……」



542: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:37:53.20 ID:WKShCB+kO



キーボ「ーーーわかってますよ! だからこそ、様々な人の心と想いを、大切にできる存在になるんです!」

キーボ「その結果こそが隊長なんです! それは、ボクら【十三番隊】の教えが、朽木隊長の教えが証明していることです!」エッヘン

アンジー「……んー? でもでもー、隊長の椅子って、もう空きゼロだよねー?」

真宮寺「そうだネ、空きがゼロである以上は隊長になれないはずだヨ」



真宮寺「……それでも隊長になるのであれば、隊士二百名以上の立会いのもとで、現隊長と一対一で斬り合うしかなくなるけどーーー」



キーボ「そんなことするはずがないでしょう! そんなことしたら、朽木隊長に恩を仇で返すことになりますし! 何より、生き残れたとしても、絶対に茶柱さん達と苺花さん達から処されますよ!」



キーボ「……ボクが隊長になる時は、ボクがその器を持った上で、誰かが引退したその時です!」



543: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:39:02.92 ID:WKShCB+kO



真宮寺「ククク……そうかい。ならば、その斬魄刀(ひと)に夜長さん……共に生きる誰かとのコミュニケーションに、いっそう励むことだヨ、キーボ君」



キーボ「……!」

アンジー「………」



真宮寺「その斬魄刀(ひと)にも、夜長さんにも、誰にも恥じることのないようーーー」



真宮寺「ーーーしっかりと、生きないと、ネ?」



544: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:40:03.45 ID:WKShCB+kO



キーボ「……もちろんですよ、真宮寺クン!」



真宮寺「………」



キーボ「ボクだって、これからも、しっかりと生き抜いてみせます!」



キーボ「キミにも、負けませんからね!」



545: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:40:46.03 ID:WKShCB+kO









真宮寺(……その意気だヨ、キーボ君)









546: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 18:42:13.81 ID:WKShCB+kO



カランカラン……!



真宮寺「……おや、これはーーー」

キーボ「誰か来たみたいですね」スッ…

真宮寺「……僕が行くヨ。キーボ君は、そこでゆっくりしてて」

キーボ「……そうですか?」

アンジー「そうだよー、キーボはお客様なんだから、そこにドッシリだよー」

アンジー「アンジーはここの居候だから、行くけどねー!」

アンジー「ゆっくりマッタリ待っててねー、キーボ!」

キーボ「……わかりました。お願いします」



スタスタ……



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



547: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 20:32:56.22 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「………」


キーボ(……二人とも、客人との話に時間がかかっているようですね)


キーボ(……いや、アンジーさんの霊圧がこちらに近づいていることからみて、もう終わってはいるのでしょうがーーーそれでも時間がかかり過ぎている)




キーボ(どうかしたんでしょうか?)




キーボ(……まあ、玄関近くで空鶴さんの元気な霊圧が感じられますしーーーそれ以前に、アンジーさんは、ずっと “ あの霊的グッズ ” で、守られている)


キーボ(それらを考えれば、危険はないとは思いますが……)


キーボ(……ですが一応、集音器の精度を上げて、アンジーさん達の状態を確認するべきでしょうか? 一応現在は非常時以外は禁止されていることですがーーー)




キーボ(ーーーいや、それなら、普通に、アンジーさん達の元まで出向いた方がーーーー)




548: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 20:35:07.18 ID:UKb+9Q+UO



ガララッ……!



真宮寺「キーボ君……」

アンジー「……キーボ」

キーボ「あっ、アンジーさん! 真宮寺クン!」

キーボ「どうかされたんですか? かなり時間がかかっているようでしたがーーー」



アンジー「ーーーあー、ちょっとねー」



真宮寺「ーーーごめんヨ。確認のために話し込んでしまってネ……」



549: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 20:52:31.99 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「……確認?」



アンジー「……そうだよー、神さまカードにも必要な本人確認だよー」



真宮寺「目の前にいる相手が、誰であるか、をネ……」



550: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 20:53:36.14 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「……?」



アンジー「………」



真宮寺「………」



キーボ「それは、どういうーーー」




……スタスタ……




……スウッ……



551: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 20:54:34.85 ID:UKb+9Q+UO









「…………」









552: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:01:59.83 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「……え、えーと……?」




「…………」




キーボ「……あー、その、初めまして。ボクは、護廷十三隊、十三番隊の死神ロボット、キーボと申します」




「…………」




キーボ「……すみませんーーー」




キーボ「ーーーお手数ですが、あなたが、どなたなのかーーー」




キーボ「ーーーそれで、こちらにどのようなご用件か、お聞かせて頂いても、よろしいでしょうか?」



553: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:06:03.15 ID:UKb+9Q+UO



アンジー「……キーボなら、わかるんじゃない?」



キーボ「……はい?」



アンジー「名前、聞かなくてもさ」



キーボ「??」



真宮寺「……もし、僕達からヒントを出せるとすればーーー」



真宮寺「ーーーこの『人』は、『死神の名を冠する者達』によって、価値を見出され、ここまで辿り着いた魂であることーーー」









真宮寺「ーーーただ、それだけだヨ」



554: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:10:25.89 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「……『死神の名を冠する者達』……?」




キーボ(まさか、それってーーー)




「ーーー久しぶり」




キーボ「ーーーえっ、?」




「ーーーそして、ありがとう」




キーボ「ーーー!?」



555: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:11:29.52 ID:UKb+9Q+UO




「……決して忘れない」




「 “ あの暗闇 ” を空の光で照らし、道を見出してくれたのは、誰だったかーーー」




「ーーー決して忘れることはない」




「この心に、今も残っているーーーー」




556: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:12:09.02 ID:UKb+9Q+UO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」









557: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:13:22.90 ID:UKb+9Q+UO




「ーーーあの時、暗闇を照らして、道を見出してくれたからーーー」




「ーーーその道を歩んで、人の世を生き抜くことができた」




「夢を、叶えることができたんだ」




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




「……だけど、夢は、いずれ終わりを迎える」




「その果てに、黒崎さんによって新たな道が見出されーーー」




「ーーー歩みを続け、探し出し、こうして、ここに辿り着いた」




558: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:14:23.42 ID:UKb+9Q+UO






キーボ「ーーーキミ、はーーーー」






「……改めて、言うよーーーー」






559: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:15:08.40 ID:UKb+9Q+UO






「ーーー道を、見出してくれてーーー」








「ーーー本当にありがとう」






560: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:16:17.16 ID:UKb+9Q+UO



アンジー「………」



真宮寺「………」



キーボ「あ、ああ……!!」




キーボ(ーーー間違いない! この『人』は、紛れもなくーーー)




「…………」



561: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:18:36.26 ID:UKb+9Q+UO




(ーーー其れは花火)






(血を糧とした鉄の刃で振り下ろされる光と、眼前に広がる可能性の闇が想い描いた、夜空の輝き)






(そのかけがえのない価値は、時に代償として、我が身を別れの業火で焼き焦がす)






(それでも、恐怖を退け、心が見出した輝きはーーー)






(ーーーきっと、 “ 勇気 ” となって、胸に刻まれる)




562: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:19:44.56 ID:UKb+9Q+UO









「ーーーただいま!」









563: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:20:40.75 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「……おかえりなさい!」

キーボ「そして、こちらこそ、ありがとうございました!」




「…………」




キーボ「最後まで、生き抜いてくれて!」



アンジー「………」

真宮寺「………」



キーボ「ボクは、それがとても嬉しい」



564: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:21:40.71 ID:UKb+9Q+UO



キーボ(……死者(こちらがわ)となってしまった、悲しみはあれどーーー)




「…………」




キーボ(ーーーそれでも、嬉しい)




キーボ(また、会えて!)



565: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:22:46.24 ID:UKb+9Q+UO









キーボ「本当に、おかえりなさい! そしてーーーー」









566: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:26:20.38 ID:UKb+9Q+UO









キーボ「ーーーようこそ、尸魂界(しごのせかい)へ!」









567: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:28:04.55 ID:UKb+9Q+UO




「ーーー輝きとは、重なり」









「或る時は刀、或る時は弾丸、或る時はふたつ混じる一夜の夢となって、世に現れる」









「最後に名乗り上げるは、 “ 機械仕掛けの死神 ” 」









「祈るように重なり、愛しあうように輝き、心中のように壊れあう、夢夜の歯車」









「この世の全ては、終わりを迎え砕かれる、黒の棺にある」




568: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:29:16.81 ID:UKb+9Q+UO




「砕かれた先に、ある世界ーーー」













「ーーー想い描くは、胸の痛み」




573: ◆02/1zAmSVg 2019/10/27(日) 21:54:47.69 ID:UKb+9Q+UO



キーボ「………」


キーボ(……客人との話に時間がかかっているようですね、二人とも)


キーボ(……いや、アンジーさんの霊圧がこちらに近づいていることからみて、もう終わってはいるのでしょうがーーーそれでも時間がかかり過ぎているように思えます)




キーボ(どうかしたんでしょうか?)




キーボ(……まあ、玄関近くには空鶴さんの元気な霊圧が感じられますしーーー特に、アンジーさんは、ずっと “ あの霊的グッズ ” で、守られている)


キーボ(…… “ あの霊的グッズ ” は、貴重かつ扱える場所が限られるもののーーー故に、その効力は強大)


キーボ(そう、近くで意識を保つ一定の有機生命体ーーー真宮寺クンにまで、効力が及ぶくらいには)




キーボ(それらを考えれば、危険はないとは思いますが……)




キーボ(……ですが一応、集音器の精度を上げてアンジーさん達の状態を確認するべきでしょうか? 一応現在は非常時以外は禁止されていることですがーーー)




キーボ(ーーーいや、それなら、普通に、アンジーさん達の元まで出向いた方がーーーー)



575: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:37:29.60 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ0ー



コンニャク型ホロウ(以下コンニャクン)「なんだ、この名前はーー!!」



プルプル……



東条(死神ver)「くっ……!」



コンニャクン「……ぬるっぷっぷっぷ!」プルプル



東条(あの虚……どうしても斬れない……!)




東条(まさか、あんな虚がいるだなんて……!)




東条(ううっ、コンニャク……! コンニャク……!)



576: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:39:24.72 ID:/l1W7lqoO









『力が、欲しいか……』









577: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:41:41.09 ID:/l1W7lqoO



東条「!?」



『欲しければ、くれてやろう』



東条(……この声、まさか私の斬魄刀からーーー)




『さあ、呼ぶのだ、キルミー……』




『我が名は、【ーーーーーー】』



578: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:43:08.46 ID:/l1W7lqoO



東条「……ついに、自分から語りかけてくれたのね」



『………』



東条「……ありがとう」


東条「……ようやく、わかったわ。斬魄刀(あなた)の名前ーーー」



『そうだ! 我の名はーーーー』



579: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:44:40.32 ID:/l1W7lqoO









東条「【斬・鉄・剣】!」









580: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:46:32.42 ID:/l1W7lqoO



東条「………」



コンニャクン「………」



東条「破道の九十、【黒棺】」ゴオオッ!



コンニャクン「るぱんっ、!?」ドゴオンッ



581: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:47:42.04 ID:/l1W7lqoO




「硬い鉄さえも斬り伏せる、美しい貴女は、まるで剣のよう」






「そんな貴女を前にして、決して斬れない柔らかな貴方は」






「今晩のおかずの、コンニャクに似ている」






~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~



ー四番隊隊舎・東条の寝室ー



東条「……夢!?」ガバァッ


浅打『………』




582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/28(月) 00:54:21.53 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ1ー



ユーハバッハ「ーーーリューダース・フリーゲン、今、私の前に居るお前は、預言者か?」

リューダース「は……え……あの……?」

ユーハバッハ「答えろ、私は今、 “ お前は預言者か? ” と問うている」



リューダース「……ひ……いえ……違います……」

ユーハバッハ「ならば、なぜ、遠い未来の話などする?」



ユーハバッハ「私は “ 今 ” の話がーーー」



リューダース「す、すべては、彼の預言を信頼したまでです!」

葉隠「そうだべ、社長! 俺の占いは3割当たる!」



ユーハバッハ「ーーー良かろう、許す」



ハッシュ「なん…だと…?」

イーバーン「ーーーというか、誰だね君は!?」ガビーンッ



葉隠「10万」

ユーハバッハ「立て替えよう」



イーバーン「陛下ーーー!??」ガガーンッ



583: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 00:58:38.13 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ2ー



苗木「くっ……!」

霧切「そこまでよ、苗木くん」

苗木「……霧切さん! どうして、こんなことをするの!?」

霧切「こんなこと、とは?」

苗木「こうやって、未来機関にクーデターを起こしてることについてだよ!?」

霧切「………」

苗木「何で、キミがこんなことーーー」

霧切「すべては、世界を、正しい形に戻すためよ」

霧切「そう、『彼』が、天に立つ、正しい世界へと」

苗木「正しい世界!? 『彼』!?」

苗木「何を言っているんだよ?! 霧切さん!!」

霧切「……苗木くん、あなたも忘れてしまっているのね」

霧切「きっと、あなたも、おかしなアニメを見過ぎたんだわ」

苗木「だから! 何の話をーーー」

霧切「思い出して、苗木くん」

苗木「!」

霧切「人類史上最大最悪の絶望的事件を解決に導けたのもーーー」

霧切「ーーー塔和タワーやジャバウォック島での事件を収束させられたのもーーー」

霧切「ーーー未来機関の同士討ちをくい止め、おかしなアニメから世界を守ることができたのも全部ーーー」



霧切「ーーー葉隠くんのおかげじゃない……!!」



~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~




月島「占い料金の支払いについては、こんな感じで良いかな?」

葉隠「いや、流石にそれは……」(世界滅ぶべ)




584: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 01:01:50.00 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ3ー



東仙(蝿)「ーーーそして、それがお前か、狛村ーーー」



狛村「………」



東仙(蝿)「ーーーふむ、思っていたよりーーー」



東仙(蝿)「ーーー醜いな」



ゴン太「その言葉はムシできないよ!」



東仙(蝿)&狛村「「………」」



東仙(蝿)&狛村「「………え?」」



ゴン太「ダメだよ虫さん! “ 醜い ” って言葉は、人に向けたら悪口になるんだよ!? 悪口を言うだなんて、紳士として見過ごせないよ!」

田中「その通りだ、剛腕なる蟲の賢者よ! かの人狼は、畜生道に堕ちながらも! 常人と隔たりし我が身を、衆目に晒す存在へと進化を遂げたのだ!」

田中「それも、恐怖に満ちし外界の中で、覇王である我の、破壊神暗黒四天王がごとく!」

田中「ベルゼバブよ! どうして貴様は、人の過去生を持ちながら、かの人狼の勇気ありし心の美しさに気づかぬのだ!?」



東仙(蝿)「………」

狛村「………」



東仙(蝿)「……すまなかったな、狛村、どうやら私は己が言葉に恐怖を宿らせることを怠っていたようだ」

狛村「……あ、ああ、貴公が再び人の心を見れるようになれたのならば、儂はーーー」



檜佐木(ーーーつーか誰だ!? あの二人!?)ガビーンッ



田中「鉄拳断風!」フッ



檜佐木(しかも、消えた!?)ガガーンッ



585: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 01:03:57.98 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ4ー



藍染(詐欺師)「やあ、また会えて嬉しいよ、雛森くん」

雛森「藍染隊長! 生きてたんですね!」ダキッ

藍染(詐欺師)「ははっ、急に抱きつかれるとはね」

雛森「ああ、この包容力……! 間違いなく、藍染隊長……!」ポニョポニョ

藍染(詐欺師)「甘えん坊さんだね、雛森くんは……」ナデナデ




…………………………………………………………………………




藍染「……覚えておくと良い、ギン」

ギン「………」



藍染「憧れは、理解から最も遠い感情だよ」



ギン(乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん、乱菊は間違えへん)ブツブツ



586: ◆02/1zAmSVg 2019/10/28(月) 01:08:02.09 ID:/l1W7lqoO



ーおまけ5ー



一護「……兄貴ってのが、どうして一番最初に生まれてくるか知ってるか……?」

一護「後から生まれてくる……弟や妹を守るためだ!!」




…………………………………………………………………………




TV『兄貴が妹に向かって “ 殺してやる ” なんて……死んでも言うんじゃねェよ!!』



苗木「………」

九頭龍「………」

天海「………」



苗木&九頭龍&天海「「「…………」」」



ガシィッ……!



~~~~~~~~

~~~~~~

~~~~

~~




苗木(あの日、ボクら三人は、希望ヶ峰学園で、黒崎一護ファンクラブを結成した)



苗木(なお、そのあと、朽木白哉のアンチとなり、それから手の平返してファンに転向したりーーー)



苗木(ーーーあの大前田稀千代のファンになったりすることもーーー)



苗木(ーーーあの時のボクらは、まだ知らない)



山田「苗木殿! とうとうオークションに出ましたぞ! 稀千代フィギュア!」

苗木「なんだって!? 今すぐ落札だ!」



590: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:25:09.24 ID:l+mAL6VyO



ーおまけ・ファイナルー



茶柱(死神ver)「ーーー縛道の四【這縄】!」



ヒュルヒュル……!



ジジ「あははっ、無駄だよーーッ」ヒュンッヒュンッ



茶柱「くっ……!」ザッ



ジジ「基礎スペックが違いすぎーーッ、ボクから斬魄刀を奪い返すなんてムリムリ!」



茶柱(ーーーどうして、こんなことに、なってしまったのでしょう……!)


茶柱(仕事を終えて現世に来たらーーーこの、滅却師に、襲われました……!)


茶柱(それで、突然この人が転子に血をかけようとして来たので、とっさに避けました……)


茶柱(……しかし、少しだけ血が、斬魄刀にかかってしまいーーーそれからどういうわけか、言うこと聞いてくれなくなってしまい、奪われてしまった……!)


茶柱(義魂丸(あの子)は、浦原さんに義骸に入れて貰い、現世の旅館の予約に向かわせたのでここには居らずーーー伝令神機も破壊されたせいで、尸魂界に助けを求めることもできない……!)


茶柱(……現世旅行を楽しむはずが、どうして、こんなことにーーーー)



591: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:29:27.83 ID:l+mAL6VyO



ジジ「ねえーーッ、どうして、ボクの側に来てくれないのかなーー?」

茶柱「そんなこと、できるはず、ありません! 近づいたら、あなたの血を浴びせるつもりでしょう!」

ジジ「え~~? 別に良いじゃん、腕章見るにお姉さん四番隊でしょ? 血なんてケガ人から浴びまくりじゃない?」

茶柱「斬魄刀(その子)は、あなたの血を浴びてからおかしくなりました! その血に何か秘密があるんでしょう!?」



ジジ「……うん、そうだよ」ケロッ



ジジ「ボクの血を浴びるとね、みーんな、ボクのゾンビ、操り人形になっちゃうのーーッ!」



茶柱「!?」



ジジ「だからぁーーッ、死神のお姉さんもーーー」







ジジ「ーーーボクの血を呑んで、ゾンビになって欲しいんだ!」



592: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:32:48.58 ID:l+mAL6VyO



茶柱「……ふざけないください! そんなバカなことやめて、さっさと斬魄刀を戻して、返してください! そして、二度と転子たちの前に現れないでください!」

ジジ「もーーッ、そんなこと言わないで、お姉さんもボクのゾンビになろうよぉ! バンビちゃんみたいにさ!」

茶柱「ば、ばんび!? 斬魄刀(その子)は、そんな名前じゃありません!」

ジジ「ーーああっ、違うよぉ! バンビちゃんってのは、この斬魄刀のことじゃなくて、ボクの大切なゾンビちゃんナンバーワンなの!」



ジジ「ちなみに、今は、ボクの影の中でスタンバッてる真っ最中ーーッ!」



茶柱「なっ、他にも被害者が……!? というか、影の中や “ ばんび ” って、まさかーーー」

ジジ「バンビちゃんはねー? 能力的に目立つし何よりバカだから、現世じゃ滅多に戦わせられなくってね! 今は影の中で、お腹とお胸に穴を空けて! ボクの血と命令を待ってるんだよぉ!」

茶柱「あ、穴……?」

ジジ「ああっ、バンビちゃん! そんな健気なところも、だい好きだよ! 早くお姉さんと一緒に抱きしめたぁーい!」キュンキュン

茶柱「……っ、!?」

ジジ「お姉さんも、今ここでゾンビになれば、ジジだけじゃなくてバンビちゃんのお友だちになれるよぉ! これは受けるしかないね、うん!」



593: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:38:08.43 ID:l+mAL6VyO



茶柱「な、なんで、そんなに人をゾンビにしたがるんですか!?」

ジジ「ん~~? 今日に関してだけ言うならーーー病気のせいかな~~?」

茶柱「はあ!?」

ジジ「あのねー? 実は、なんか地獄から来たっていうマント付けたオチビちゃんがいてさーーッ、ボクにお姉さんの写った写真を渡してきたんだよ~~!」

茶柱「……地獄!? 写真!?」

ジジ「そして、そいつが言うには、今日のボクは病気になっていて、それも【今日、渡された写真に写った女死神にイタズラしたくなっちゃう病】なんだって~~!」



茶柱「……な、何を言っているんですか!? そんなピンポイント過ぎるバカな病気あるわけないでしょう!」



ジジ「でもねでもね! 実際にイタズラしたくなっちゃったんだよぉ! 何やったのか、いろいろと聞き出そうとしたけどーーーお姉さんの情報が書かれた紙を置いてった後、どっかにドロンしちゃった!」



ジジ「ホント、ムカつくよねーーッ!!」



594: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:42:42.28 ID:l+mAL6VyO



茶柱「………!」



ジジ「ーーーボクだってムカつくの我慢してるんだから、お姉さんもゾンビになるくらい我慢してよ~~?」



茶柱「ふ、ふざけーーー」



ジジ「それにさ~、ボクがお姉さんをこんなにもゾンビにしたいのは、お姉さんのせいでもあると思うよ~~?」

茶柱「なっ、!? 今度は、転子に責任転嫁ですか!?」

ジジ「ボクだってー、誰でもゾンビにしたいわけじゃないんだよ~? プライベートでゾンビにするなら、お姉さんみたいな、かわいい女の子限定だからね~~!」



茶柱「!?!」



ジジ「ーーーかわいい女の子のカラダに、ボクの血が宿って、ボクのコトしか考えられない身重のカラダに変わっちゃう……!」



ジジ「ああ、想像するだけで、ボク濡れちゃうよお……っ!!」ゾクゾクゾクッ



茶柱「~~~~!?!?」ゾワアーッ…



595: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:47:26.88 ID:l+mAL6VyO



ジジ「……だからさ、お姉さんもーーー」



茶柱「近寄らないでください! そして、斬魄刀(その子)を返してください!」

茶柱「でなければ、転子は、転子はーーー!」ジワッ



ジジ(……あれー? ひょっとして、これ、なんか時代劇とかでやってる、ベロ噛んで死ぬってやつ?)


ジジ(……う~ん、このお姉さん死神がガチ死にしたら、いろいろ面倒ゴトになって、リル達に怒られそうなんだよねーーー)


ジジ(ーーーあーあ、せっかくかわいい女の子なのに、もったいないな!)


ジジ(……ホント、どうしよっかなーーー)




茶柱「うっ……ううっ……っ、!!」ウルウル…




ジジ(ーーーもうちょっとだけなら、良いよね~、うんうん!)キラキラ…




ジジ「ーーーあっ、そうだ!」



596: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:53:11.45 ID:l+mAL6VyO



茶柱「!?」

ジジ「この、ボクの血で濡れたお姉さんの斬魄刀を、神聖滅矢の代わりに、神聖弓で打ち出すってのはどうかな!」ギュイーンッ

茶柱「ゆ、弓……?」

ジジ「お姉さんが大切にしているこの斬魄刀で、お姉さんの大事なトコ、優しく貫いてあげるぅーーッ!」

茶柱「ひっ、!?」ビクッ

ジジ「これならお姉さんの言う通り近づかないし、斬魄刀だって返せちゃう! イッセキニチョーだね!」



ジジ「……これで貫かれたら、お姉さんはめでたくボクのゾンビだよ? あっはぁっ……!」



茶柱「ぐっ……!!」ギリギリッ



ジジ(ああっ、やっぱり、かわいい子だなぁ! よし、あとちょっとだけ遊んでーーーー)



597: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 02:59:39.33 ID:l+mAL6VyO



ジジ「……さっ、大人しくゾンビにーーー」



茶柱「ーーー断固お断りです!」



ジジ「ええ~? そんなに拒否られるなんて、ジジ悲しいな~~、女の子同士なのに~~」



茶柱「……何が、女の子同士ですか!?」クワッ



ジジ「ーーーん?」



茶柱「転子は四番隊ですよ!? 身体つきを見れば、あなたの性別くらいわかります!」



ジジ「………」



茶柱「死神になってからは、 “ 口に出すこと ” は、避けるようにしていた言葉ですがーーー今回ばかりは、ハッキリとコトダマとして打ち出させて頂きます!」



598: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 03:00:26.71 ID:l+mAL6VyO









茶柱「ーーーこの、男死!!!」









599: ◆02/1zAmSVg 2019/10/31(木) 03:05:40.63 ID:l+mAL6VyO









ジジ「ーーーーーーーーーーーーーーーー」









600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/02(土) 13:59:40.32 ID:7VsFZ2PpO



茶柱「ーーーなんですか!? 急に黙って!? 自分が、最低最悪に気持ち悪くて、悍ましい 犯罪者の変態男死という自覚があるなら、さっさとーーー」



ジジ「ーーーうん、きーめた!」



茶柱「!?」



ジジ「お姉さんは、一度殺してからゾンビにしてあげるよぉーーッ!」



茶柱「なっ、!?」



ジジ「ホントはねー? イタズラと言っても、ちょお~っと、からかってあげた後は、斬魄刀もろとも、解放してあげる予定だったんだよーーッ!?」



ジジ「……だけど、お姉さんにそんな、きたないお口があるせいで、気が変わっちゃった~~!」



ジジ「……一度殺してからゾンビにして、意志を残したまま、ちゃあ~んと、おしおきして調教してーーー」



ジジ「ーーーボクの体液のよく通るお口に、キレイキレイしてあげないとねっ、!!」



601: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:01:38.27 ID:7VsFZ2PpO



茶柱「お、おしおき……っっ、!?!」



茶柱「それに、調教に、体…液…!?」



茶柱「う、ああ、あっーーー」サアアッー



ジジ「お姉さん、ボク好みのかわいい女の子で良かったねー! もし、少しでもアウトだったら、生きたままゾンビにして適当に使い潰すか、完全に殺すかのどっちかだったろうからさーーッ!」

ジジ「ボク好みのかわいい女の子だから、 “ おいた ” しても、バンビちゃんと同じで躾けられるだけで済むし、何よりバンビちゃんとお友だちにだってなれるんだよぉ?」

ジジ「そして、どっちも、ボクは、ちゃあ~んと、たあ~んと、愛してあげるんだぁ! ずう~っとね!」



ジジ「ホントに良かったねー、お姉さん!」



茶柱「い、嫌ですよ……! そんなの絶対の絶対にーーー」フルフル



ジジ「もう、遅いよ」キュウウーッ…



茶柱「!?」



ジジ「死神卒業おめでとう、転子ちゃん?」



……ビュウーンッ!



602: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:02:41.72 ID:7VsFZ2PpO









「ーーー霜天に坐せ!! 【氷輪丸】!!!」









603: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:04:30.44 ID:7VsFZ2PpO



茶柱&ジジ「「!?」」



ビキビキッ!!!



茶柱「なっーーー」


ジジ(神聖弓と斬魄刀が凍って……! これはーーー)



「大丈夫か、茶柱?」スタッ



茶柱「えっ、あっ……」



「……ここは下がってろ、あとはオレに任せとけ」



ジジ「……まさか、そんなーーーっ!?」



604: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:05:45.25 ID:7VsFZ2PpO



「……ったく、休んで現世に来てみりゃあ、つまらねえことになってやがる」



茶柱「………」



「……人の気持ち踏みにじって、あげくの果てには、 “ 他人の力 ” で、人を殺そうなんざーーー」



ジジ「………」



「ーーー笑えねえにも程があるぜ?」



605: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:06:24.20 ID:7VsFZ2PpO



「だからよ、ゾンビ滅却師ーーー」



ジジ「キミは……!」



「ーーーここで、テメーとーーー」



茶柱「あなたは……!」



「ーーーケリをつけてやる!」



606: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:07:01.71 ID:7VsFZ2PpO









「ーーー卍・解!!」









607: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:07:59.57 ID:7VsFZ2PpO



終里「ーーー【大紅蓮氷輪丸】!!!」






ジジ「ーーー誰!?」ガビーンッ

茶柱「ーーー女氏!!」キラキラ…



608: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:09:09.45 ID:7VsFZ2PpO



これにて、おまけ編の投下は終里です。




……そして、この後はーーーー



609: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:10:43.20 ID:7VsFZ2PpO




ー砕かれた先にある世界ー




ーアフター・ワールドー




610: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:13:39.71 ID:7VsFZ2PpO



ー現世・某所ー



入間(死神ver)「……くっ、!」ドサッ!


入間(ちくしょう……脚が動かねえ)ハアハア…


入間(……肩もロクに動かせねえ……霊力も足りねえ……)ヨロッ…



ホロウ「グオオッ……」ピクピク…



入間(クソッ……あの虚、やってくれるぜ……!)


入間(オレ様の結界ーーーそれを、別の結界で上書きしやがった……!)



611: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:18:26.27 ID:7VsFZ2PpO



ピキーンッ!!



入間(そのせいか、結界の効力が変わっちまった……!)


入間(……そう! その効力による、超防御補正が! オレ様や持ち物から消えーーー)




入間(ーーーそれどころか! 内部の、侵入まで可能に……!)




入間(電子機器も、機能しなくなった! 助けも呼べねえ……!)




入間(……義魂丸(ウサ太郎)も、いまはアテにはならねえと来た)



入間(義骸)「」バチバチ…



入間(ウサ太郎の義骸……アレは、オレ様特製マシン内蔵の、サイボーグ型だっつーのにーーー)




入間(ーーー電子機器がイカレちまうんじゃ、どうしようもねえ! 胸の  で、大人しく挟まれてろ、本体!)ポヨン




入間「……ちくしょうが……!」



612: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:20:41.66 ID:7VsFZ2PpO



入間(……にしても、小規模とはいえ、まさかこんな結界張れる虚がいるたあな)


入間(あの虚……生前に電化製品に恨みでもあったのか?)



ホロウ「グオッ……オッ……」ピクピク…



入間(……はあ、まったく、どうなってんだ、こりゃ……)


入間(……せっかく、この空座町とは違う重霊地まで来てーーーその波動を利用したスゲー霊術で、世紀の大発明をしたってのに……)


入間(……霊力体力が底ついたタイミングで! なんで、サイボーグキラーな奴が出てくんだよ……!)



613: ◆02/1zAmSVg 2019/11/02(土) 14:24:42.63 ID:7VsFZ2PpO



入間(……いや、よそう、逆切れは。時間の無駄だ)


入間(思えば、オレ様の結界ーーーその効力がこの辺りでは弱るなんざ、はじめからわかっていたことだったじゃねえか)


入間(なら、運悪く結界を上書きされたって、そこまでおかしな話じゃねえ。場所によっては弱るような結界しか作れないーーーそんなオレ様も悪かったんだ……)



ホロウ「オオッ……」ピクピク…



入間(……ただ、幸いなことに、あの虚の戦闘力は、オレ様の薬品で、イソギンチャク並みに落ちている)


入間(とはいえ、耐久力とかは変わらねえ。これ以上何もしようがねえがーーー時間稼ぎには充分だ)




入間(……このまま、この町の担当死神が来るまで……あるいはオレ様の力が回復するまで、やり過ごせばーーー)




???「だ、大丈夫ですか?」



614: ◆02/1zAmSVg 2019/11/04(月) 17:53:32.70 ID:qMYa2OE+O



入間「……ああ? なんだ、テメー……!?」



???「あの、その……動けますか?」



入間「……?!?」パクパク…



???「……う、動けないなら、僕がおぶりましょうか?」



入間「……テ、テメーは……!?」



???「……あっ! いや、 “ 胸の感触を背中に ” とかーーーそういうことは考えてませんからね?!」

???「……だ、だけど! そこに……! ユウレイ(あなた)のーーーし、死体が……!!」ブルブル…



入間「……!!!」

入間(義骸)「」バチバチ…



???「ーーーし、しかも、あんな化け物がいて……!」



ホロウ「ググオッ……」ピクピク…



???「それって……そういうこと、そういう状況ってことでしょ!?」



615: ◆02/1zAmSVg 2019/11/04(月) 17:55:26.44 ID:qMYa2OE+O






???「……だったら、い、急いで逃げないとーーー」






入間「ーーーテメエ、最原!??」






616: ◆02/1zAmSVg 2019/11/04(月) 17:57:16.58 ID:qMYa2OE+O



最原?「……サ、サイハラ?」


入間(……いや、待て待て! おかしいぞ、これは! だって、最原の奴はいま……!)


入間(……つーか、それ以前に、あのコロシアイから何十年経ったと思ってやがる! それで、最原がこんなに若いはずがねえ!)


入間(帽子も被ってるし……他人の空似か?)


最原?「えっ、あっーーー!?」


入間(……なんにせよ、こいつは霊力があるだけの一般人みてえだな。なら今すぐ、どうにか安全な場所までーーー)


最原?「な、ななっーーー」






最原?「ーーーなんだ、アレ!?」



617: ◆02/1zAmSVg 2019/11/04(月) 17:59:52.06 ID:qMYa2OE+O



入間「ああ!? なんだ、急にーーー!?」



ホロウ「………」シュルシュル…



最原?「なんだ、あの化け物……!? 急に身体全体が白くなってーーー」


入間(……オイオイ! あの虚、まさかの脱皮するタイプかよ!?)



ホロウ「………」シュルシュル…



入間(マズイ! 最近のあのタイプは、脱皮で身体の異常をリセットできる傾向にある!)


入間(それで、オレ様の薬品の効果をリセットされでもしてみろ……! オレ様達も、この町の人間達も、みんな……!)



618: ◆02/1zAmSVg 2019/11/04(月) 18:11:05.76 ID:qMYa2OE+O



最原?「な、なんなんだよ、アレ!? 本当に、何がどうなってーーー」




入間(ーーーどうする、どうするよ、入間美兎!)




入間(肩も脚もロクに動かねえ、霊力も足りねえ……これじゃ、斬魄刀も鬼道も使えねえ!)


入間(また、あの薬品を使おうにもーーーさっき使いきっちまった……!)


入間(力の回復を待つにしたって、そんな時間はもう……! この町の担当死神もどういうわけか、まだ来ねえ!)




入間(クソッ! どうすればーーーー)



619: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 02:17:37.65 ID:BtetpelwO









入間(ーーーいや、待てよ!)ピコーンッ!









620: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 02:21:36.09 ID:BtetpelwO



最原?「……な、なんか、ヤバイですよ、アレ! 早く逃げましょう! さあ、僕の背中に乗ってーーー」

入間「……おい! テメーいつから、霊力を得た!?」

最原?「えっ、あっ……?」

入間「……いや、訂正する! テメーいつから、幽霊が見えるようになった!?」

最原?「!!」

入間「いつからだ!」

最原?「ひっ、!?」ビクッ

入間「いつから幽霊が見えるようになった!? 答えやがれ!!」



621: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 02:26:32.22 ID:BtetpelwO



最原?「……み、三日前です! 修学旅行! はじまりの日からーーー」



最原?「ーーーそう、その日から! なぜか死んだ人が見えるようになって……!」


入間(三日前……!)


入間(……なるほど、こいつのDNA次第ではあるがーーーこの重霊地の特性を考えれば、ありえねえ話じゃねえ)


入間(そうだ、何週間か……条件次第じゃ、恒久的に霊力に目覚めることも、絶対にありえねえ話じゃねえんだ)


入間(いや、この際、目覚めた経緯はなんでもいい! 大事なのは、霊力に目覚めて三日も経ってるってとこだ!)


入間(それだけ霊力の馴染んだ奴なら、この発明品が活きてくる!)スッ…



622: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 19:12:48.51 ID:WxjiUd/FO









入間(ーーーそう、この、【男のロマン! 死神変身ベルト】でな!)ババーンッ!









623: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 19:17:21.83 ID:WxjiUd/FO



最原?(……えっ、なに? なんなの、急に?)


最原?(……なんだよ、そのベルト?)キョトン




入間(このベルトはもともと、義魂丸(ウサ太郎)のために、発明したもんだ!)


入間(このベルトには、オレ様の霊力(死神能力)が込められていてーーーそれをパワードスーツのように身に纏う形で、死神に変身できるっつー代物だ)


入間(もっとも、今のところ、精神的にオスで霊力の馴染んだ奴じゃねえと変身できねえ仕組みだがーーー変身さえできれば、その瞬間、戦闘の方法やスキルが頭の中に叩き込まれる!)




入間(つまり、どんな素人  だろうと、理論上は虚をぶっ倒すことが可能になるってわけだ!)




入間(もちろん、死神の力の譲渡は基本的に重罪だがーーーこれはあくまで外付けアイテム。霊力を身に纏うだけで、魂魄構造を変質させるわけでもねえし、緊急時での一時的な処置に過ぎねえ)


入間(今の掟では、ギリギリ罪に問われない……はずだ! 手続き上はそうなってる!)




入間(いや、罪に問われたとしても、この状況を切り抜けるには、これしか……!)



624: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 19:20:41.02 ID:WxjiUd/FO



ホロウ「グオオ……!」シュルシュル…



最原?「!?」




入間(……ヤベエ! 脱皮が終わりかけてやがる!)




入間(このままじゃーーーー)



625: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 19:22:12.92 ID:WxjiUd/FO



最原?「と、とにかく、逃げーーー」



入間「ーーーおい! テメー!」



最原?「っ、!?」



入間「このベルトを腰に巻け!」スッ



最原?「えっ……?」



入間「それで、“ 変身 ” って言いやがれ!」



入間「そうすりゃ、フィクションのヒーローみてえに、変身できる!」



626: ◆02/1zAmSVg 2019/11/05(火) 19:27:47.52 ID:WxjiUd/FO



最原?「……はあ!?」

入間「その力で、あの白い奴と戦うんだ!」

最原?「……ま、待って!? キミは、何を言ってーーー」



入間「でねえと、テメーは死ぬぞ!」



最原?「!?」



入間「……いま、あの白い奴から身を守るには、それしか方法がねえんだ!」

最原?「なっーーー?!」

入間「恥を承知で頼む! いまはそれを巻いて、戦ってくれ!」

最原?「……で、でもーーー」



入間「……お願いだよ! お礼はするから! なんでもしてあげるから!」



627: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:31:08.47 ID:N3Dty6MdO



最原?「……な、なんでも……!?」ゴクッ

入間「そうだよ! アタシが、なんだってしてあげる! だからーーー」



最原?「ーーーあっ、いや、それでも、そんなーーー」



入間「ーーーっ、テメー、このまま終わっても、良いのかよ!?」



最原?「!?」



入間「あの白い奴に、食い殺されても良いのかよ!?」



最原?「く、くいころーーー!?」



入間「あの白い奴はそういう存在だ!」

入間「食われて終わってーーーそんな最後で本当に良いのかよ!?」



最原?「っ、!」



628: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:32:43.49 ID:N3Dty6MdO



入間「……テメーはいま生きてる!」

入間「それは、死ねない理由が、あるからじゃねえのか!?」



最原?「っっ、!!!」



入間「……テメーにも、生きる理由があってーーーそのためにも、死ぬわけにはいかねえんじゃねえのか!?」



629: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:35:24.90 ID:N3Dty6MdO



最原?(……そうだ! 僕には、生きる理由がある! 生きる楽しみがある!)


最原?(だから、僕は……何度馬鹿にされたって、何度置いてきぼりにされたってーーー耐えることができた!)


最原?(だったら、まだまだ、生きなきゃダメだ! ここで、死ぬわけには……!)




ホロウ「グオオ……!」シュルシュル…




最原?(……で、でも、やっぱり、僕にはーーーー)ガクガク



630: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:37:40.78 ID:N3Dty6MdO



ホロウ「……グオオッ!」ピカーンッ!



最原?「!?」



入間(マズイ! 脱皮を終えやがった!)



ホロウ「グオオ……!」ギラッ!



最原?「ーーー!?」ビクッ



入間(……動いて、動いてよ! アタシの肩……! アタシの脚……!)ググッ…



最原?(あの怪物……この娘を睨んでーーー!?)ブルブル…



631: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:39:45.29 ID:N3Dty6MdO



ホロウ「グオオ……!」ギラギラ…



最原?(い、いやだ……! こわい……!!)ガクガク



入間「~~~!!」ググッ…ググッ…



最原?(……だけど、この状況……! 『彼ら』なら、きっとーーー!!)ブルブル…



ホロウ「グオオオォォ!!」ダダダッ!!



入間「あっ……?!」



632: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:40:47.89 ID:N3Dty6MdO



最原?「……やっ、やめろおおおーー!!」ザッ!



ホロウ「!?」



入間「!!」



最原?「……うっ、うわあああーー!?!」スチャッ!



633: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:41:32.62 ID:N3Dty6MdO









最原?「ーーー変、身、っ!!!」









634: ◆02/1zAmSVg 2019/11/07(木) 20:42:24.41 ID:N3Dty6MdO



ビカーッ!!



ホロウ「グオッ!?」



入間「お、おお……!?」



最原?「………!?!」



キュイーンッ…!!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



635: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:18:28.20 ID:rsj1P2SCO



入間「ーーーやるじゃねえか、テメー……」

最原?(死神ver)「………」

入間「……まさか、一撃で虚をぶった斬るなんてな……」

最原?「………」

入間「……まあ、オレ様の発明がすごかったこともあるがーーーそれでも、テメーが “ 勇気 ” 出して立ち向かわなきゃ、この結果はなかった……」



最原?「………」



入間「……ありがとよ、助かったぜ」



636: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:23:45.28 ID:rsj1P2SCO









最原?「…………」









637: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:25:15.01 ID:rsj1P2SCO



入間「……この恩は忘れねえ」



入間「もし、何か、オレ様にして欲しいことがあるならーーー遠慮なく言ってくれ」



入間「できる限り、叶えてやる」



最原?「………」



638: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:26:30.10 ID:rsj1P2SCO



入間「……おっと、そういや、自己紹介がまだだったな」



最原?「………」



入間「……オレ様は、死神、アンド浦原商店一の看板娘ーーー」



入間「ーーーそんでもって、美人過ぎる天才美人発明家、入間美兎様だ!」



入間「……なあ、テメーはーーーー」



639: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:29:33.04 ID:rsj1P2SCO



最原?「……最○」ボソッ



入間「!?」



最原?「……僕の名前は、最○終×」



入間「……!!」



最原?(……年齢は15歳、髪の色はブラック、瞳の色はオリーブ、職業は高校生)




最原?(……そう、ただの高校生)




最原?(……才能もなければ、努力もできずーーー)




最原?(ーーー友達ひとり作ることも叶わない、その程度の存在でしかない……)



640: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:31:07.89 ID:rsj1P2SCO



最原?(……そんな僕が、『ヒーロー』に……フィクションのような存在になんて、なれるはずがない)


最原?(……ユウレイが、見えるはずがない)


最原?(こんなに『可愛い女の子』が……僕を認めてくれるはずがない)


最原?(……必要としてくれる、はずがないんだ)



入間「……?」キョトン



最原?(……冷静になれば、わかること)


最原?(きっと、全ては、僕の願望が生み出した、儚い夢)


最原?(……目を覚ませば、きっとまた、あの現実にーーーー)



641: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:34:15.12 ID:rsj1P2SCO



入間(……なんだ? なんで、黙りこくってーーー)


入間(ーーーああ、なるほど、現実味がねえのか)



最原?「………」



入間(……そりゃそうだ。宇宙一の美女のオレ様に感謝されるなんざーーー●●には刺激的過ぎる話だ)


入間(虚の存在や死神能力のことも含め、夢か何かだと思っちまうのも無理はねえ)


入間(……まあ、それもあながち間違いとは言いきれねえんだがな)



最原?「………」



入間(……テメーの願いは、できる限り……叶えてやるつもりだ)


入間(だが、それらを含めた……オレ様に関する記憶は、記換神機で封じられちまう)


入間(……アレは、一定以上の霊力を持つ奴には効きづらいがーーー逆に言えば、それがなくなれば、問題なく効いちまう……)




入間(……そう、テメーの霊力が、あと何週間かで消える場合ーーーその時は絶対に、記憶を封じなきゃいけねえんだ)




入間(そうなりゃ、オレ様のことも……夢に変わってーーーー)



642: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:36:27.38 ID:rsj1P2SCO



最原?(ーーーこの夢が終わりを迎えた時、きっと、いつもの……辛い現実が待ち受けている……)


最原?(……誰からも、必要とされない、ツマラナイ現実が、また……)



入間「………」



最原?(……だけど、それでも、僕はーーー)




最原(ーーーこの夢を、忘れたくない)




最原?(こんな僕を信じて、必要としてくれた、『この人』を……)




入間「………」




最原?(……忘れてなんて、なるものか)



643: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:37:41.68 ID:rsj1P2SCO



最原?(入間さん……僕は、キミを、死なせはしない)




最原?(キミは、僕の中で、輝き続ける……)




入間「……なあ、最○? テメーは、これからーーー」




最原?(……そう、勇気をくれた『彼ら』のようにーーーー)



644: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:38:55.22 ID:rsj1P2SCO









最原?(ーーーダンガンロンパの、みんなのように!)









645: ◆02/1zAmSVg 2019/11/08(金) 20:40:38.22 ID:rsj1P2SCO



以上で本当に完結です。

この後どうなったか……あるいはどんな物語が始まったかは、ご想像にお任せします。



……これまで、本当にありがとうございました!