・雲龍『お礼』、投下します

※建造時に戦闘以外に必要な一般常識とかを意図的に奪われているので若干口調や行動が突飛なものになっていたりするという設定あり

引用元: ・【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」 



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472: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/08(木) 11:35:32.69 ID:OKljPZga0
――――提督私室。

「提督、朝です」

「ん……? 雲龍、か? どうした、こんな朝早く」

「今日は私が秘書艦だから、起こしに来たの」

「それはそうだが、別に起こしに来なくてもいいんだぞ?」

「えっと……お礼」

「お礼?」

「そう、優秀な艦載機をくれたお礼。まだしてなかったから」

「アレは必要だから与えただけだ」

「……朝食、作って来たから食べて」

(朝食か……断る理由は無いな)

「有り難く食わせてもらう。着替えるから少し待っててくれ」

「着替えるのを――」

「却下というか拒否だ」

「……そう」

473: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/08(木) 11:35:59.94 ID:OKljPZga0
「簡単な物しかまだ作れないから、他の艦娘の料理より見劣りはするかもしれないけど」

「おにぎりと味噌汁だな。……うん、おにぎりと味噌汁だよな」

「おにぎりの具は、たくさん入れたから」

(確かにたくさん入ってそうだ、バレーボールぐらいあるぞコレ……)

「味噌汁は、赤と白を合わせてみたの」

「俺の好み、間宮にでも聞いたのか?」

「……食べて」

(都合が悪くなるとすぐに流すなコイツ。まぁいい、とりあえず食べるか)

「――最初の具は昆布か」

「全部で具は五種類入れたの」

「この大きさだと作るの大変だっただろ」

「おれ……秘書艦の仕事を、しただけ」

「秘書艦の仕事に“朝食を作る”は含まれてないぞ」

「味噌汁も、飲んで」

「――うん、赤が気持ち少ない気もするが、あっさりとした味に仕上がってて朝飲むにはいい」

「口に合ったのなら、良かった」

「ところで、お前は食わないのか?」

「失敗したのを食べてきたから、平気」

「……そうか」




「雲龍、ちゃんと喜んでもらえているでしょうか」

「鳳翔さん……わたし、もう食べられません……」

474: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/08(木) 11:36:17.48 ID:OKljPZga0
――――提督執務室。

「雲龍、一つ確認しておきたいんだが、お前の頭の中の秘書艦像はどうなってるんだ?」

「私、何か間違っているの?」

「チャイナ服が間違っていないなら何が間違いなんだ逆に」

「コレを着ると提督が喜ぶと聞いたのだけど」

「誰にだ?」

「飛鷹に」

(この前謝ったのにまだ根に持ってやがったなアイツ……)

「人を喜ばせるのって、難しいのね」

「艦載機の礼なら朝の食事で十分だ。もう無理に俺に何かをしようとしなくていい」

「これは、私が望んでしていることだから」

「……程々に頼む」




――――昨日はどうでしたか?

 ――――少しは喜んでくれていた……と、思う。入浴とベッドを共にするのは断られてしまったけど。

――――……雲龍、次は私に全部相談して下さい。

 ――――?

――――(流石にまだそういった知識は……いりませんよね?)

481: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/09(金) 07:49:36.67 ID:njO4BUBB0
・野分『身体の節々が痛い……』、投下します

那珂ちゃんのライブ出演者が増えました

482: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/09(金) 07:50:08.81 ID:njO4BUBB0
――――特別ダンス教室(水上)。

「野分、そこでスピン!」

「す、スピン?」

「台風をイメージして!」

「そんなこと言われても……」

「隣の那珂さんをお手本に!」

「那珂ちゃんトルネード!」

(トルネードは台風じゃなくて竜巻じゃ……それにしても、息一つ乱さずあんなに激しく動き続けられるなんて、那珂さんはやっぱり凄いわ)

「やっぱり練度の問題かな、ちょーっと動きがぎこちないんだよね」

「踊るのは今日が初めてなんだから、そんなにうまく踊れる訳無いでしょ」

「じゃあ今日から特訓だね! 那珂ちゃんのバックダンサーへの道は遠く険しいよ?」

(決定事項!?)

「大丈夫だって野分、私も一緒にやるから」

「那珂さんのライブ、天龍さんと龍田さんの演武とか長月の氷柱割りとか、前座が超人染みてるし、川内さんと神通さんも居るのにバックダンサーなんてとてもじゃないけど私には……」

「やる前から諦めんのは早いってーやろうよのわっちー」

「のわっちはやめて」

「野分ちゃんってーまだ艦娘としての演習したことないよね?」

「はい、まだしたことはありませんが……それが何か?」

「じゃあダンスの練習しながら演習もしちゃえば一石二鳥だね、那珂ちゃん天才!」

「あたしも賛成ー! 早速提督に許可取らなきゃ」

「えっ? 舞風、踊りながら演習ってどういう……」

「心配いらないよ野分、慣れればどうってことないから」

(演習で……踊る?)

483: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/09(金) 07:50:35.55 ID:njO4BUBB0
「野分ちゃん、舞風ちゃんとステップしっかり合わせてね」

「は、はい!」

「じゃあもう一回行ってみよー」

「お願いします!」




「そこでジャンプ!」

「と、跳ぶんですか!?」

「跳べない艦娘はただの艦娘、だよっ!」




「動きが遅れたらー那珂ちゃんの弾がどんどん当たっちゃうよ、キャハッ」

(本当に動きが狂った場所をピンポイントで……)




「今日はコレでおしまいだよ、明日も頑張ろうね」

「は……はい……お願い……しま……」

「あっ、顔から倒れた。野分ーだらしないぞー」

(何で、昼から夕方まであれだけ動いて平気なの……?)




――――野分、お前その大量の湿布どうしたんだ?

 ――――……司令、ここの艦娘の皆さんは凄いですね……。

――――変わった奴は多いが、頼りになるのは確かだな。

 ――――駆逐艦野分、精一杯ダンス演習をこなしてみせます!

――――(野分はそっち方向に突き抜けるのか……まぁ舞風と仲良いならそうなるよな)




 一週間後、そこには見事に練度が最高に達してダンスをマスターした野分の姿があった。

491: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 00:15:39.92 ID:Legt71Qd0
※アニメの内容に触れています。読まれる際はご注意下さい。




「少し気合いを入れ過ぎました……」

「流石に前にやった劇とは違って、本格的でしたね」

「睦月、テレビに出れて感激ー!」

「パン  ……練度ゼロ……うぅ……」

「カラコン毎回着けるのめんどくさいっぽいー」

「まさか浦風に出番が無いなんて……」

「姉さんも無かったねぇ」

「ごめん飛龍、出撃シーンカットになっちゃって……」

(はみ出てカットしたところって、スタッフの人に言ったら見せてもらえるのかな)

「響、何で暁のセリフの後にハラショーって言ったの?」

「アドリブでいいと言われたからだよ」

「間宮さん、あんなにあんみつ大盛りにして大丈夫なのかしら」

「アニメ放映期間中だけ、あの量で作るそうなのです」

「私も夜戦やりたかったなー」

「球磨の活躍シーンが少ないクマー」

「多摩も少ないにゃ」

「久し振りに、身体が火照ってきてしまいました」

「那珂ちゃんはーやっぱりアイドルだよ、キャハッ」

「北上さんが黙ってお手洗いに行くのなんて、私は気にしないですけど」

「大井っちーあの演技だと説得力無いよー?」

「出番? いらないねぇそんなものは」

「大和はもう出番が決まっていますから」

「この戦艦武蔵を出さないだと……? 大和は出るというのに、また秘匿扱いか……」

「ぶるまぁとやらは初めて履いたが、なかなか動きやすかったぞ」

「利根より絶対私の方がはっやーい!」

「走って汗をかくだけで傷む程、肌も髪も手入れは怠っていないのだけど……」

「私が秘書艦か……胸が熱いな」

「化粧品、収録する時は良いのを使わないとね」

「オペレーターということは、私は出撃しなくて良さそうですね」

「大淀さん以外に適役が居なかったんです」

「夕張さん、何で二人で裏方やるって言ってたのに自分はちゃっかり出てるんですか? 私も深海棲艦のCG凄い頑張ったんですよ?」

「あっ、バレてた? いいでしょ、後ろ姿ぐらい」

「朝潮達はセリフがありませんでしたね……」

「この遠さだと、パッと見ただけじゃ私なのか朝潮ちゃんなのか分からないわねぇ」

「大きな画面に小さな大潮……」

「別に私はどうでもいいわ」

「やっと会えた! 通行人Aよ、よろしくね!」

「ご、ごめんなさい、私が転けたせいで三回も撮り直すことになっちゃって……」

492: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 00:16:15.59 ID:Legt71Qd0
「これ、結局綾波とあたし、どっちが出たカットなの?」

「どっちなんでしょうねー」

「一番先に、サービスシーンお披露目!」

「僕達三人はどうして昼間にお風呂に入っているんだろう。演習でもしていたってことなのかな……」

「村雨の、ちょっと良いとこ!……見せすぎじゃない?」

「Oh……私の日本語力が疑われてしまうネー……」

「ちょ、ちょっと抜けてるお姉様も素敵ですよ!?」

「比叡姉様、フォローになっていないかと」

「一番最初に画面に映るのが榛名で良かったのでしょうか……」

「瑞鶴の出番はいつなのかしら……」

「翔鶴姉、一話から出れていいなぁ……」

「セリフがパンパカパーンだけだと、アホな子みたいに見えないかしらー?」

「中破する為に出たボクよりはマシだと思うよ……」

493: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 00:16:53.15 ID:Legt71Qd0
「大半が合成か水着着用の上とはいえ……吹雪のはどうにかならなかったのか?」

「成長物語って銘打ってやってますから、主人公はあぁいうダメなところを出した方がいいんです」

「いや、パン  はダメな部分として必要ない気がするが……」

「だって視聴率をある程度取ればしざ……か、艦娘の更なるイメージアップに繋がるじゃないですか」

「夕張、後で叢雲とゆっくり話して来い」

「吹雪ちゃんには一応納得してもらったんだってばー!」




「あの出撃方法、非効率極まりないわね」

「あくまで広報活動の一環ですし、派手な方が見映えもしますから」

「“ここは譲れません”が口癖の怖そうな空母というのも納得がいかないわ」

「い、一応意味は通じてますし、戦果の凄まじさから畏怖されているだけですよ……?」

「……あたりまえ体操」

「本当にすいませんでした!」




「モーションキャプチャートカイウノ、凄イ大変、疲レタ……」

「お疲れ様、ヲーちゃん」

「何ナノアノ障壁、私ハアンナモノ使ッテナカッタワヨ」

「夕張さんが、ボスは障壁を張るものなんだって、言ってました」

「障壁ラシキモノヲ張レタノハ、アレダケダ」

(そういえば島風ちゃんがそんなこと言ってたかも……)




 製作協力:〇〇鎮守府一同

502: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 22:45:26.14 ID:Legt71Qd0
・五月雨&比叡『一緒に料理』、投下します

榛名が一晩で修復しました

503: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 22:45:53.37 ID:Legt71Qd0
「はい、お醤油です」

「五月雨、それ濃口じゃありませんか?」

「あっホントだ! ごめんなさい、うす口はこっちでした……」

「もう少し五月雨は落ち着いて行動すれば、ドジが少なく――」

「比叡さん、それ塩じゃ……」

「塩? 塩は青の容器だからこの青……ヒェーッ!?」

「比叡さんも結構うっかりさんなんですね」

「ちゃんとピンクの容器を掴んだつもりだったんだけどなぁ……あれぇー?」

「――比叡さん」

「何ですか? こういう時、水で薄めるのはダメだって榛名が言っていた様な気が……」

「私、比叡さんにちゃんと謝りたかったんです」

「謝る? 何の話ですか?」

「あの時は誤射しちゃってごめんなさい!」

「あー、あの時の事ですね。もう昔の話ですし、別に気にしてませんってば。出汁で薄めるって言ってたんだったかなぁ……」

「ずっと忘れてて、この前ようやく思い出せたんです。本当にごめんなさい……」

「そんなことより五月雨、出汁を少し小鍋で作ってもらえますか?」

「へ?」

「二人だけで料理を作って、皆をあっと驚かせる。今はその為に頑張りましょう!」

「……はい!」

「気合い! 入れて! いきます!」




「Hum……ちょっと味が濃い気もするけど、これはこれでdeliciousネー」

「五月雨が作ったのに焦げてないし、間違った調味料の味がしない……やったじゃん五月雨!」

「頑張ったかいがありました!」

「これで少し、ドジっ子から抜け出せそうかな?」

『比叡、五月雨の両名は直ちに提督執務室に来なさい』

「ヒェッ……」

「あぅっ……」




――――料理、美味しく出来たそうだな。

 ――――は、はい! 司令もお食べになりますか?

――――そりゃ楽しみだ。ただ、ちょっとその前に焦げた鍋三つと拳でぶち抜かれた戸棚についての説明をしてもらおうか。

 ――――お野菜を切ってたらいつの間にか焦げちゃってて……。

――――気合いを入れたらちょうど戸棚がそこに……。

 ――――……次は何も壊さず焦がさず作れ。そこまで頑張ったなら、今更もうやるなとは言わん。

514: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/10(土) 23:27:48.61 ID:Legt71Qd0
・ドイツ艦ズ『新たな人員確保』

・雷&霞『一人で歩けるったら!』

・蒼龍『あけおめことよろれーす』

・睦月『おりょ?』

・荒潮&山雲『あらー?』

以上五本でお送りします

520: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/11(日) 18:07:39.61 ID:SXxaiWmG0
・ドイツ艦ズ『新たな人員確保』、投下します

V.Gのどれでも好きな制服を想像してください(ア○ナ・○ラーズとか世代によっては全く分からないかもなぁ…)

521: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/11(日) 18:08:26.99 ID:SXxaiWmG0
「ビスマルク姉さま、私とドイツに帰りましょ?」

「帰りたいなら一人で帰りなさい。私はここでAdmiralと過ごすわ」

「うぅー……レーベとマックスも説得するの手伝ってよー」

「僕もここに居たいし、それはちょっと無理かな」

「帰るの? ふーん、そう……Auf Wiedersehen.」

「一人じゃ絶対に帰らないんだからっ!」

「早く諦めなさい。レーベ、みかんの買い置きはまだあったわよね? どこ?」

「そこの冷蔵庫の横の籠の中だよ」

「Danke、あったわ」

(ビスマルク姉さんがドテーラでコタ・ツーでみかん……)

「――漣から連絡が来たわ。出来たみたい」

「そう、じゃあ明日からプリンツにも手伝ってもらえるわね」

「これで少しは楽になるかな」

「? 出来た? 手伝う?」

「貴女の店での制服が出来たの」

「ビスマルク姉さま、私何も聞いてない……」

「“働かざるもの食うべからず”、“業にいっては業に従え”、ヤーパンのことわざよ」

「手伝ったら一緒に帰ってくれる?」

「Nein.」

「じゃあ手伝わない」

「マックス、寝袋を出してあげなさい。外は寒いわ」

「段ボールと新聞紙も防寒になるよ」

「重巡プリンツ・オイゲン、頑張ります!」

(添付画像?……ふーん、有名なレストランの制服のアレンジなの)




「Gut、良く似合ってるわ」

「ちょっとコレ恥ずかしいかも……別の服じゃダメ?」

「もっと過激な服になるけど、いいかな?」

「止めはしないけど、オススメもしないわ」

「例えばどんなの?」

「バニーガール」

「ライン演習はしたいけどラインダンスはやりたくないなー……」

「プリンツ、覚悟を決めなさい。もうすぐ開店よ、今日も戦争が始まるわ」

「わあっ!? こ、心の準備がまだなのにー!?」


――――お疲れ様、プリンツ。

 ――――あぁ……レーベ……ビスマルク姉さまとマックスは?

――――明日の仕込みをしてるよ。

 ――――……ビスマルク姉さま、楽しそうだった。レーベも、楽しい?

――――うん、大変だけど、楽しいよ。

 ――――そっかぁ……なら、ここに居るのもいいかもね……。

531: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/12(月) 14:48:59.75 ID:s7CXenwq0
・雷&霞『一人で歩けるったら!』、投下します

532: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/12(月) 14:50:35.28 ID:s7CXenwq0
――――ショッピングモール。

(ホント、情けないったら……)

「――霞?」

「っ!? あぁ、雷。アンタも買い物?」

「部屋で使う小物とかをちょっと見に来たの、霞はもうそれで全部?」

「そうよ、帰る前に一休憩中」

「じゃあまた鎮守府でね」

「えぇ、またね」

(……よりによって雷に会うとか、タイミング最悪じゃない)

「そのうち戻ってくるし、いつまでもここには居られないわね。このぐらい、戦ってた時に比べたらどうってことっ!……ナイッ、タラ」

(……はぁ、みじめよね。足挫いて歩けないとか、ホント最悪……)

「“一人で何でも抱えるな”、か。アンタが傍に居ない時はどうすりゃいいってのよ……」





「バカね、困った時は私達に頼っていいのよ?」

533: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/12(月) 14:51:04.04 ID:s7CXenwq0
「雷……? 買い物はどうしたのよ」

「後でまた来るわ」

「タクシー、呼んでくれれば一人で帰れるから」

「そんなのダメよ、お金が勿体無いじゃない」

「往復する時間は勿体無くないっての?」

「何で勿体無いの?」

「……負けたわ。曳航よろしく」

「了解、この雷様に任せといて!」

「背負われるって、何か別の意味でみじめね。電も雷も身長伸びすぎじゃない?」

「か、霞もそのうち伸びるんじゃないかしら」

「そういうことはあたしの目を見て言いなさいな」




――――はい、コレ。

 ――――何これ? 香水?

――――……この前のお礼よ、いらないの?

 ――――そういうことならもらうわね。ありがと、霞。

――――ちょっと、こっちのセリフ取らないでくれる?……ありがと、雷。

538: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/13(火) 20:14:04.03 ID:IIdztUym0
・蒼龍『あけおめことよろれーす』 、投下します

539: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/13(火) 20:15:43.66 ID:IIdztUym0
――――提督私室。

「お前、飛龍と鳳翔のところに飲みに行ったんじゃなかったのか? それと、もう年明けて二週間だぞ」

「えへへ~」

(ダメだ、完全に酔ってやがる……)

「ほら、部屋まで送ってやるから来い」

「やら、やらやら~」

「ごねるな、子供じゃあるまいし」

「やーらー!」

「コラ、腕を引っ張るな」

「ひりゅーには負けません!」

「何に負けないんだよ……」

「かがさんにも、あかぎさんにだって、負けません」

「分かった分かった、とにかくこっち来て一度座れ」

「んー……えいっ」

「うおっ!? 押したら危な――」

「二航戦そーりゅー突撃しま~す」

「むぐっ!?」

「ん~? せまいなぁ……」

(ソファーに二人で寝たら当たり前だ! 早く退け! 何でお前はこう俺を窒息させたがるんだよ!)

「んー! んー!」

「あんっ、くすぐったいれすよ提督ぅ」

「ぶはっ! どうしたんだよお前、酔ってるにしても今日はおかしいぞ」

「……また、見たの」

「……そうか」

「バラバラは、やらなぁ……怖いなぁ……」

「そんなものはただの夢だ、お前はこうしてここに居るだろ」

「うん……」

「お前は、乗り越えて、勝った。そうだろ?」

「うん……」

「なら、そんな顔をするな。飛龍に笑われるぞ」

(まぁ、連れてきたのは確実にアイツだし、気付いてたから連れてきたんだろうが)

「……提督」

「何だ?」

「こーくーぼかんそーりゅー、ぬぎます」

「――は?」

「だって、着物苦しい」

「待て、今脱ぐな、服出してやるからそれを着ろ」

「やらー」

「やだじゃねぇよ、裸で横で寝られてたまるか」

「んー……ブラもいいや」

「だから外すなって言ってんだろー!?」

540: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/13(火) 20:16:42.49 ID:IIdztUym0
――――提督、何で私、提督のシャツ着て寝てたの……?

 ――――着せたからに決まってる。

――――えーっと、それってつまり……。

 ――――安心しろ、酔っ払って記憶があるかも分からん奴に手は出さん。お陰様で一睡もしてないけどな……。

――――あ、あはははは……そうですよね、縮んでないですもんねー……ごめんなさーい!

 ――――(あの恥ずかしがり方はいつもの蒼龍だな、うん。よし、もう一眠り――まずい、この置いてったブラどうすればいいんだ……?)

542: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/13(火) 20:18:06.90 ID:IIdztUym0
「提督」

「何だ?」

「浦風の改二はまだなの?」

「俺に聞いてどうする」

「提督の力でどうにかならない?」

「無茶言うな」

「浦風が改二になったら翼とか生えるのかしら」

「お前は浦風を何だと……いや、天使って答えるんだな。聞くまでもなかった」

「姿を見るだけで私なら轟沈を回避出来るわ」

「天使じゃなくて女神だったか……」




「浦風、何時でもこっち戻ってきていいわよ?」

「……良い人なんじゃ、基本的には」

(度が過ぎてるのが平常な気がするんだけど……)

550: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:45:20.08 ID:VXPe4/Vj0
・睦月『おりょ?』 、投下します

気付くと睦月型総出演になってた

551: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:46:12.85 ID:VXPe4/Vj0
――――睦月型私室。

「如月ちゃん、そのマフラー提督に編んでるの?」

「さぁ、どうかしら」

「じゃあじゃあ誰に編んでるのかにゃー?」

「ひ・み・つ」

「えー教えてよー」

「もう少しで編み終わるから、出来たら教えてあげるわね」

「うん、約束だよ」




「弥生、卯月、何してるの?」

「あっ、えと……」

「ウーチャンハナニモシテナイピョン」

(すっごく怪しいのね……)

「あっあんなところに!」

「おりょ?」

「弥生、戦略的逃走だぴょん!」

「うん」

「あっこら二人とも!」

(弥生も一緒になってってことは、悪いことじゃないのかな?)




「皐月」

「ぼ、ぼぼぼボクに何か用?」

(皐月もおかしいのね……)

「睦月に何を隠してるのかにゃー?」

「む、睦月姉には内緒なんだ! じゃあねっ!」

「……睦月だけ仲間外れみたいで、ちょっと寂しいかも」

552: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:46:40.80 ID:VXPe4/Vj0
「みーかーづき」

「睦月姉さん、何ですか?」

「皆が睦月に隠し事してるみたいなのね。三日月は何か知らない?」

「隠し事? 私は知りませんけど……」

「そっかぁ……ありがと三日月。晩御飯の支度、後で手伝うね」

「はい――晩御飯、今日は頑張ります」




「長月みーつっけた」

「何だ、私に何か用か?」

「長月は睦月に隠し事、もうしないよね?」

「むっ?……悪い、走り込みの時間だ」

「あっ……約束、したのになぁ……」




「望月ー? アレ? どこ行っちゃったんだろ?」

(あー、まずった。買い出し担当とかめんどくさいし見付かるし)

「私、やっぱり皆に嫌われちゃったのかなぁ……」

(……どうすんのコレ、マジめんどくさ……)

553: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:47:54.69 ID:VXPe4/Vj0
(お姉ちゃんらしくしようとしたのがダメだったのかな、張り切りすぎちゃったのかな……嫌われるのは、嫌なのね……)

「あー、むー姉こんなとこに居た~。あたし、すっごい探したんだよー?」

「ふみ、づき……?」

「? むー姉何で泣いてるの? 誰かにいじめられたの? あたしに任せて、いじめたやつらやっつけたげる!」

「文月は……睦月のこと、好き?」

「うん、むー姉だーい好き~」

「……うん、睦月も文月のこと大好きだよ」

「えへへ~。あっそうだ、むー姉早く部屋に戻ろ、皆待ってるよー?」

(睦月を皆が待ってる?)

554: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:48:30.93 ID:VXPe4/Vj0
「皆ーむー姉居たよー」

「た、ただいまー……」

「ようやく戻ってきたか」

「て、提督!? 何で睦月達の部屋に居るの!?」

「私が連れてきた」

「菊月?」

「どうやら一番最初は私の様だな。――姉者、常日頃から私達の為に気を遣ってくれて感謝している。ありがとう」

「姉者、ねぇ……お姉ちゃんじゃなくていいのか?」

「なっ!? 黙れ司令官!」

(な、何がどうなってるのか全然分からないのね……)

「じゃあ次は私ね、はいコレ」

「コレ、如月ちゃんの編んでたマフラー……」

「私の愛がたーっぷり詰まったマフラーよ、大事に使ってね?」

「き、如月ちゃん顔が近いよ!?」

「ふふっ、なーんちゃって。私がコレをあげるって言ったら、皆も何かあげたいって言い出して、それならいっそパーティーにしちゃいましょうってなったの」

(ひょっとして、それで皆は……)

「弥生と、卯月は、コレを……」

「頑張って鳳翔さんに教えてもらったぴょん」

「すっごく可愛いのね、コレは編みぐるみかにゃ?」

「うん、そう」

「激おこ弥生と超絶ラブリーなうーちゃんの編みぐるみだぴょん」

「ちゃんと、笑顔だから……」

「ありがと二人とも、睦月、とっても大事にするね」

「ボクからはコレだよ。名取さんに少し手伝ってもらったけど、ちゃんとボクが編んだんだ」

「如月ちゃんのマフラーと一緒に使うね、ありがと皐月」

「ちゃんと暖かくして風邪引かないでよ、睦月姉」

「文月からはコレだよ~」

「コレは?」

「プラネタリウムーはっちゃんとクマさんに手伝ってもらったんだ~」

(最近よく三人で一緒に居たのは、コレ作ってたんだ……)

「ありがと文月、後で一緒に見ようね」

「は~い」

「私は物を作るのが苦手だ、だからコレにした」

「わぁ……キレイな花……」

「“睦月”に見頃の花だ。来年もまた、この時期に摘んできて見せてやる」

「ありがと長月。睦月の為にわざわざ寒い中摘んできてくれて、とっても嬉しいのね」

「登山も鍛練の一環だ、別に苦でも無い」

555: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/15(木) 17:48:56.29 ID:VXPe4/Vj0
「あたし達でラストか」

「睦月姉さん、腕によりをかけて作りました。食べて下さい」

「デザートはあたし、マジで手間かかったんだから、味わって食べてよ?」

「……うっ……うぅ……」

「ちょっ、いきなり泣くとかやめてくんない!?」

「もっちーむー姉泣かしちゃダメだよ~?」

「あたしじゃねえって!」

「むづぎ、がんげぎぃ……」




――――暖かそうだな、マフラーと手袋。

 ――――当たり前なのですよ。妹の愛情がたっぷり詰まってるにゃしー、いひひっ!

559: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 10:26:34.55 ID:XqllS3Ry0
・荒潮&山雲『あらー?』、投下します

組み合わせで調べたら魔性とか出たけど書けないから自スレ設定で押し通す!!

なお、一般販売品は布、艦娘用は資材で出来ています

560: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 10:27:02.22 ID:XqllS3Ry0
――――荒潮用作業スペース。

「荒潮姉、ちょっといいかしらー?」

「あら~どうしたの?」

「服をねー作って欲しいのー」

「うふふふふ~ちょうど今作っていたところよ~」

「それはー山雲のー?」

「そうよ~?」

「朝雲姉のはー無いのー?」

「あらあら、自分のじゃなくて朝雲ちゃんのを頼みに来たのね?」

「はいー」

(朝雲ちゃんのは昨日のうちに出来てるけどぉ、もう一着作るのも面白そうだわ~)

「山雲ちゃんはぁ、どんな服を朝雲ちゃんに着せたいの~?」

「そうねー、朝雲姉がーもっと可愛くなる服かしらー」

「それならこういうのはどうかしらぁ?」

561: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 10:27:28.13 ID:XqllS3Ry0
――――翌日。

「こっちの組み合わせはどうかしらぁ」

「そうねー、レギンスじゃなくてー、ニーハイがいいかしらーねー」

「それならタートルネックと合わせてみるのもいいわぁ」

「色はー、白ー?」

「青やピンクもありねぇ」

「朝雲姉はー、どれがいいー?」

「私、着せ替え人形じゃないんだけど」

「あらあら、朝雲ちゃんは私のデザインした服を着るの嫌なのかしらぁ……」

「そ、そういう訳じゃないのよ荒潮姉さん。ただ、朝からずっと何着も服を着替えてるから疲れちゃって……」

「山雲はー、とってもー、楽しいわー」

(そりゃ山雲は見てるだけだもんね)

「うふふふふ~じゃあ少し休憩しましょうか」

「お茶、淹れるわねー」

「あっ山雲、私も手伝うわ」

(あらあら、別々に合わせるよりぃ、二人一緒に合わせた方がこの子達は良いのかもしれないわねぇ)




 荒潮ブランド専属モデルが二人増えました。

568: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 10:44:20.65 ID:XqllS3Ry0
・アニメ第三水雷せんたん『楽屋裏』

・初霜『装甲300を希望』

・赤城『食後』

・吹雪改二『成長』

・那珂ちゃん&ぬいぬい『・・・沈め!』

以上五本でお送りします

572: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 18:48:33.21 ID:XqllS3Ry0
・アニメ第三水雷せんたん『楽屋裏』 、投下します

※アニメの若干のネタバレあるのでご注意下さい

573: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/17(土) 18:48:58.39 ID:XqllS3Ry0
――――アニメ二話撮影中。

「吹雪ちゃん、大丈夫?」

「うぅ~逆にあんな風にするの難しいし痛いよぉ……」

「いっそ艤装を改造しちゃうのが早いっぽい?」

「それは流石に危ないのでやめた方が……」

「とくがたくちくかんとくがたくちくかんとくぎゃたくちくかん!」

「川内お姉ちゃんアウトー」

「そういう“那珂ちゃん”だって、私のことは“川内ちゃん”って呼ばなきゃ」

「那珂ちゃんはープロだから公私はちゃんと使い分けられるんだよー?」

「プロがマイク放り投げちゃダメじゃん」

「そういえば吹雪ちゃん、あのポーズってアドリブなの?」

「いや、あれは、そのー……」

「吹雪、階段の踊り場の鏡の前で練習してたよ」

「そうなの? 睦月も部屋で如月ちゃんと演技の練習しよっかにゃー」

「ゆーうーだーちー?」

(あっ……内緒にするって約束だったっぽい……)

「秘密をしゃべっちゃうのはこの口かなー?」

「ご、ごみぇんっぴょいー」

「そろそろ、撮影再開でしょうか……」

「(神通さん、緊張してるのかな?)」

「(神通さんに限ってそれは無いと思うけど……)」

「神通お姉ちゃん、お願いだから本番中に戦闘モードに入らないでね?」

「そうそう、身体火照ったからって演習六時間は長いって」

((……やっぱり神通さんは神通さんだ))

「二人とも、何かあったっぽい?」

「な、何でもないよ夕立ちゃん」

「うん、何でもない何でもない」

「むー、絶対何か隠してるっぽいー!」

「(夕立ちゃんもどっちかっていうとそっち系だし……)」

「(素敵なパーティーに誘われるよね、絶対……)」

 ――撮影再開するから集まってー!

「「「「「「了解!」」」」」」




――――ねぇ提督、ゴウコンって何の略なの? 鎮守府合同艦隊混合演習の略?

 ――――……お前はそのままで良いと思うぞ。

――――? 何だか良く分からないけど、次の撮影も頑張るわ!

584: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 16:58:04.77 ID:pbVgdKu90
・初霜『装甲300を希望』 、投下します

初霜だってたまにはそういう気分になるんです

585: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 16:58:31.72 ID:pbVgdKu90
――――提督執務室。

「なぁ、初霜」

「何ですか?」

「……いや、何でもない」

「ふふっ、変な提督」

「改二、良かったな」

「はい、これでまた守りやすくなります」

「既に完璧だと思うぞ、お前の護衛は」

「装甲盾が無いと装甲は薄いし、完璧とは言い難いわ」

「駆逐艦に大和型クラスの装甲があったら怖いだろ」

「でも、あればもっと簡単に守れます」

「そうだな、こうして膝に乗せてるだけで防弾チョッキになる」

「……一隻でも一人でも多く救えれば、それだけで満足だった」

「あぁ、実際何度も助けられた」

「でも、いつの間にかそれだけだと満足出来なくなってたの」

「……そうか」

「鎮守府に居る間だけ、皆が守ってくれている間だけは……私も甘えても、いい?」

「何度も言ってただろ、初霜のしたいようにすればいい。ここは、そういう場所だ」

「……はい!」

「それで? どうしたい?」

「……暫く、このままで」

「ん、了解」

「後、頭を撫でてもらえると……」

「分かった」

「――提督」

「何だ?」

「絶対、何があっても守ります」

「……あぁ、頼りにしてる」

586: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 16:58:58.79 ID:pbVgdKu90
「ほんに手のかかる妹じゃな」

「子日、護衛の日ー!」

「妹の頼みを聞くのも、悪くない」

「まぁのぅ、可愛い妹の頼みじゃ」

「子日は、可愛いだけじゃ――」

「もうそれはよいわ」

「はぅっ!?」

「痛そうだな……だが、悪くない」

(……ほんに、手のかかる妹達じゃ)

587: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 16:59:24.78 ID:pbVgdKu90
――――夕方、食堂。

「……アレ、初霜よね?」

「初霜じゃねぇ」

「初霜がしれぇのお膝に乗ってます!」




「提督、どれでも好きなのをどうぞ!」

「いや、どうぞじゃなくてな?」

「……嫌なの?」

「……水餃子」

「はい!」

(ここまでになるとは予想してなかった……)

「次は提督の番ですよ」

「初霜は何がいいんだ?」

「えーっと、青椒肉絲にします」

「分かった、ほら」

「――うん、美味しいわ」

「俺も次は青椒肉絲食いたい」

「はい、ちょっと待って下さいね」




「浦風、あーん」

「うち、もうお腹いっぱいじゃけぇごめんね姉さん」

「雪風、食べたいです!」




 はつしも は あまえる を おぼえた!

590: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 23:14:10.13 ID:pbVgdKu90
・赤城『食後』 、投下します

このスレではいっぱい食べる可愛い赤城さんを応援しています

591: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 23:14:37.70 ID:pbVgdKu90
――――北海道。

「ふん、ふん、ふんふふ~ん」

「ジンギスカンか」

「はい、ジンギスカンです」

「赤城の鼻歌は初めて聞いたな」

「あの、実は結構恥ずかしかったのであまり気にしないで頂けると……」

「帰ったら加賀に話すか」

「本当に恥ずかしいのでやめてください」




「――で、何人前だ?」

「そうですね、五人前ぐらいでしょうか」

「……体調でも悪いのか?」

「いえ、今日はゆっくり食べたいので」

(――あぁ、そういうことか)

「じゃあ食べ終わったら追加注文って形でいいな?」

「はい、お願いします」

592: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/18(日) 23:15:07.58 ID:pbVgdKu90
「提督は、お野菜は好きですか?」

「元々好きだが、こういう旨味を吸った野菜は更に好きだ」

「ジンギスカンに限らず、すき焼きや焼きそば、お好み焼きも野菜とお肉が合わさると美味しいですよね」

「お前が食べてると、それだけで美味そうに見えるしな」

「?」

「ほら、もっと食べていいぞ」

「提督もお肉、もっと食べていいんですよ?」

「肉ばっかり食べると後が辛いんでな、今ぐらいの比率でちょうどいい」

「……はい」

「そろそろお代わり頼むか?」

「ではまた五人前、お願いします」

「分かった」




 ――あそこの二人組、どんだけ食べるんだろうねぇ……。

 ――知らないのかい? あの女の人、有名な福の神だよ。

 ――福の神?

 ――あの人一人でも相当な金額食べて帰るし、たまに大勢連れてきて食べてったりもするし、食べ方があまりにも美味しそうなもんで客寄せにもなるって評判さ。で、ついたあだ名が“福の神”。

 ――はぁ~……確かに良く食べるけど、気持ち良い食い方だわ。




(赤城にそんなあだ名が付いてたとは知らなかったな――ん?)

「っ……」

(……今日は、珍しいものに縁がある日のようだな)



――――独特の癖はあるが、美味かったな。

 ――――はい、とても。

――――そうだ、二人で試しにこれ食ってみるか?

 ――――キャラメル、ですか?




 その日、提督は赤城の珍しいところを三度目撃した。

601: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 09:14:00.99 ID:4m7Hu88t0
・吹雪改二『成長』、投下します

602: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 09:14:28.66 ID:4m7Hu88t0
 外からは明るくはしゃぐ駆逐艦娘の声や、砲撃音、怒鳴り声が聞こえてくる陽気な昼下がり。改二になったことを執務室に報告に来た吹雪は、急な事態に目を白黒させていた。

(改二になってすぐに来たからシャワーとか浴びてないし汗臭かったり燃料とかの臭いしないかな最近食べ過ぎてたしお腹回りとか大丈夫かなって司令官の息が首筋に当たってる~!?)

「――吹雪」

「ひゃ、ひゃいっ!?」

「改二になっても、全然変わってないな」

「っ……期待外れ、でしたか……?」

 緊張で強張っていた吹雪の身体を、今度は不安が縛り付ける。提督が何かしらの変化を求めていたのだとしたら、それに応えるだけの変化が自分にあったとは、彼女には到底思えなかった。
 その感情の機微を察して、彼は吹雪を抱く手の力を強める。

「悪い、言い方がまずかった」

「司令、官?」

「背が伸びても、改二になっても、吹雪は吹雪だなと思ったんだ」

「それだと、私がいつまでたっても成長してないみたいです……」

「成長は……してると思うぞ、うん、色々と」

 非難がましい声をあげる吹雪に、声を上擦らせながら提督はフォローを入れる。実際、肩越しに見える胸部装甲や太股に感じるふっくらとした感触は、肉体面の成長を感じさせた。

「確かにあまり目立った性能の向上も無いですし、待機組の人には逆立ちしても勝てないし、料理はまだたまに失敗するし、お腹回りも――」

「待て、後半関係無いぞ。それにウェストは気にするほどじゃない」

「お、お腹は触っちゃダメですー!」

 コロコロと表情を変える吹雪。根が真面目で、少し抜けていて、頑張り屋で、とても優しい少女――ではなく、女性だ。

「――吹雪は、そのままで居てくれ」

「司令官って、ふくよかな女性が好みのタイプだったんですか……?」

「どこをどう聞いたらそうなる、腹摘まむぞ」

「だからお腹はダーメーでーすー!」

 頬を膨らませて抗議する、もう見馴れた、それでいて飽きない初期艦の横顔。その横顔を眺めながら、今までに何度も胸の中で言葉にしていたものが、提督の口から溢れ落ちた。




――――お前が初期艦で、本当に良かった。

609: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 23:31:11.84 ID:4m7Hu88t0
・那珂ちゃん&ぬいぬい『・・・沈め!』、投下します

ジャングルはいつも那珂のちぬい

610: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 23:31:37.78 ID:4m7Hu88t0
――――???

「ここで、こう……難しいわね」

「あっ、ぬいぬいちゃん。何やってるのー?」

「あっ・・・沈め!」

 不知火のめくりからの手刀、miss!!

「ぬいぬいちゃん、その照れたり恥ずかしかったりした時についつい攻撃しちゃう癖は治した方がいいと思うなー」

「~~っ!?」

 那珂ちゃんのデコピン、Critical Hit!!

 不知火は蹲り、涙目で立ち上がることが出来ない!

「それで、何してたの?」

「れ、練習を……」

「練習?」

 ――『皆、ありがとー!』

(――これってもしかして、那珂ちゃんとってもラッキー?)

611: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 23:32:05.55 ID:4m7Hu88t0
「ぬいぬいちゃん! まずは笑顔の練習だよ!」

「笑顔……こう、ですか?」

 不知火の作り笑い攻撃!

 那珂ちゃんはアイドルスマイルで受け流しに成功!

「えーっとぉー、ぬいぬいちゃん、それだとちょっと見た人がちょっと驚いちゃうなー」

「不知火の笑顔に、何か落ち度でも……?」

「不敵な笑みって言葉がすっごく似合うと思うよ、さっきのぬいぬいちゃんの笑顔」

「やはり、不知火には無理なのでしょうか……」

「大丈夫だよ、ぬいぬいちゃん! 那珂ちゃんが絶対ぬいぬいちゃんスマイルを完成させてみせるから!」

「――はい、ご指導ご鞭撻、よろしくです」

612: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 23:32:35.06 ID:4m7Hu88t0
「自分の大好きな人の顔を思い浮かべて!」

「……」

(ぬいぬいちゃん、提督の前でも基本無表情なんだー……)




「テヘペロスマイルー」

「てへぺろ」

「――よし、次いってみよー」

「不知火のてへぺろに、何か落ち度でも……?」

「ペロリと食べられそうな雰囲気の眼力をテヘペロスマイルで発揮しちゃダメかなー」




「笑顔を顔のパーツ毎に完成させてみよー」

「ここをこうして、ここを、こう――どうでしょうか」

「うん、ジャングルでお腹の中に人を飼ってる女の子の笑顔にすっごく似てるね!」




「こちょこちょこちょこちょ~」

「あの、これが笑顔にどう繋がるのでしょうか?」

「ぬいぬいちゃんにはこちょぐり効かなかったかー……」

613: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/20(火) 23:33:01.85 ID:4m7Hu88t0
――――三日後。

「――で、ぎこちなくはあるが笑顔らしきものを作れるようになったと」

「那珂ちゃんの鎮守府オールスターライブへの道の第一歩だよ!」

「何て事考えてんだよお前は……」

「司令」

「ん? どうした不知火」

「いつかは満面の笑みというものをお見せできるよう、これからも日々鋭意努力します」

「あー……まぁ、無理しない程度にやれ。努力するというなら止めはしない」

「はい」




――――陽炎は知ってるのか? 不知火の笑顔修行。

 ――――あぁアレ? 知ってるけど何?

――――寝ぼけた不知火。

 ――――たまに笑ってるわね。

――――……自覚してないと笑うんだよな、アイツ。

 ――――今度スマホで撮ってみて、撮れたら送るわ。

――――頼んだ。

633: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/21(水) 17:22:51.78 ID:+RW8bvdw0
――――工廠。

(艦載機イッパイ……レップウ、アルカモ……)

 少しずつ生活圏が人里(鎮守府)に近付いてきた北方棲姫。今日は偶然見付けた工廠の中にある艦載機保管所に遊びに来たようです。

「ゼロ……テンザン……スイセイ……レップウ!」

 早速お目当てのオモチャを見付けました。嬉しそうに駆け寄ります。

「――めっ! ダメでしょ、勝手にここへ入ったら」

「ッ!?」

 おっと、運悪く整備に来た飛龍に見付かってしまいました。まだまだ警戒心が強い北方棲姫、自分の艦載機を飛ばして威嚇します。

(参ったなぁ、怪我させたら長門がうるさそうだし……)




「――それ、飛ばしたいの?」

634: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/21(水) 17:23:17.56 ID:+RW8bvdw0
――――工廠横、実験スペース。

「ここでなら好きに飛ばしてもいいってさ」

「イイ、ノ?」

「流石に市街地とかに飛ばしたら撃墜するけど、この付近ならいいわよ」

「……」

 烈風を抱えた北方棲姫。長門に続き飛龍にも優しくされ、戸惑っています。
 ここより遠くの海で目を覚まし、ここに来るまでにたくさんの辛い目に遭いました。
 でも、ツリーの星は綺麗で、ご飯は温かく、冷たく閉ざした心を溶かし――そして、思い出させます。




(――タノシイ、ウミ)

635: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/21(水) 17:23:44.99 ID:+RW8bvdw0
――――提督執務室。

「――艦載機の整備が必要無くなった?」

「空母の方々全員がそう仰ってましたし、本当に必要無くなったみたいです」

「まぁ助かるには助かるが、お前的にはどうなんだ?」

「ぶっちゃけちゃうと、管理の手間が省けて大助かりですね」

「……メカ弄りも程々にな」

「はーい」




――――オ菓子、オイテケ。

 ――――はいはい、艦載機の整備ご苦労様。

――――飛龍、今日モレップウ飛バシタイ!

 ――――じゃあ今日は蒼龍と三人でアクロバット飛行やろっか。

――――ヤル!

 ――――(無事馴染めたか……さて、警備に戻るとしよう)




 北方棲姫のほっぽちゃんが艦載機保管所に住み着きました。

650: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/21(水) 21:13:58.28 ID:+RW8bvdw0
・飛鷹『酔った勢い』

・翔鶴『瑞鶴の1日』

・鳥海&摩耶『以前のまま』

・19『色々な艦娘をマッサージなのね』

・弥生&早霜『……』

・古鷹&青葉『誤解』

以上六本でお送りします

また次受け付ける時は考えます…

652: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/22(木) 00:17:23.78 ID:l5+SF6iI0
・飛鷹『酔った勢い』 、投下します

鳳翔さんのお店に鯛を抱えた男の像が増えました

653: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/22(木) 00:17:54.42 ID:l5+SF6iI0
――――居酒屋鳳翔。

「――はい、作っておきましたよ」

「すいません、鳳翔さん……」

「いえ、いいんですよ。私も色々な料理を作るのは楽しいですから」

「これを頼んだのは飛鷹なんだろ? 何で俺が付き合う必要があるんだ?」

「あら、私のお店に来るのはお嫌ですか?」

「そういう意味じゃないから包丁を持ちながらこっちを向くな、意図してなくても背筋が凍る」

「ふふっ、全く説明せずに連れてきたんですね」

「……例え酒の席とはいえ、約束しちゃったものは守るべきだし」

「とりあえず、何を隠しているかは後で聞き出すとして、食うか」

「はい、どうぞ」

「……いただきます」

「――鯛を使った似た様な料理を食べたことはあるが、これはまた少し違う味わいがあるな」

「好き嫌いはあるかもしれませんが、発酵させる類いのお料理よりは食べやすいと思いますよ」

「……」

「飛鷹、食べないのか? お前が食べたいって言い出したんだろ」

「……食べるわよ、食べればいいんでしょ!」

「(鳳翔、何でコイツ機嫌悪そうなんだ?)」

「(彼女、少しこういう料理苦手なんです)」

「(なら、何で食べたいなんて言い出したんだ……?)」

「――あっ、意外と食べれるかも」

「お酒、出しましょうか?」

「これに合いそうなの、お願いします」

「はい、すぐに出しますね」

「食わず嫌いはいかんぞ、お嬢様」

「いいでしょ、ちゃんと食べたんだから」

「それで、わざわざ俺を連れてきてまで食べさせたかった理由は何だ?」

「――七草粥」

「七草粥?」

「そ、七草粥。それと似たようなものよ」

「……どういう経緯でそういう話になったか聞きたいところだな」

「絶対に嫌」




――――風邪、引いたら怒るわよ。

 ――――努力はしてみる。

654: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/22(木) 10:25:05.67 ID:l5+SF6iI0
※アニメのネタバレが含まれます、ご注意下さい




「海に沈んだら髪が痛んじゃう! なーんちゃって――あら? 睦月ちゃん?」

「如月ちゃんが轟沈……如月ちゃんが轟沈……」

「睦月ちゃん!?」

「目からハイライトが消えてるっぽい!?」

「脚本書いた奴は誰だクマー!」

「素直に出てきたら許してやるにゃ」

「今回から脚本は外部委託だし私は無関係よ!?」

「那珂ちゃん的にもーちょっと暗いのはNGかな」

「見付かるようなドジ踏まないし」

「全員の練度が相当低くないと、こんな事態には……」

「望月、落ち着いて……」

「出番だけでもダルいってのに、何だよあの雑な轟沈!」

「あの予告だと私が空気読めて無さすぎデース!」

「全機撃墜を確認しないとかあり得ませんってばー!」

(私のアレの話は出なさそうねー)

(アレって、何なのでしょうか?)

「とりあえず、このブルーベリーを食べて皆落ち着くといいよ」

「北上さん、はいあーん」

「あーん」

「ブルーベリーを食べたのに、何で当てらんないのかしら」

「電、口の横についてるわよ?」

「あっ、ホントなのです……」

655: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/22(木) 10:25:32.69 ID:l5+SF6iI0
「芝居とはいえ、轟沈は避けるべきでは?」

「……過去のトラウマは乗り越えんといかんし、いつ誰が沈んでもおかしくなかったのは事実だ」

「長門さんはどこに?」

「陸奥と部屋に籠っておる。芝居とはいえ、自分の指揮の元で“駆逐艦”が沈むのはあやつにはちと酷な話じゃ」

「“艦”としても、“艦娘”としても、未だ完全には癒えない傷を抱えてる奴がうちには多い。この際全部吐き出させて、どうにかするのもいいかもしれん……とも思ったんだが、これはどうも良い影響は与えそうに無いな」

「――提督ならば、どうされましたか?」

「秘書艦に現場指揮を完全に任せて、あんな作戦をやらせるようなことはない。出撃した艦隊と通信が出来ない状況下であれば話は別だが、可能ならば提督が指揮して然るべきであり、長門に連合艦隊旗艦の経験があったとしてもさせていいものじゃない。艦隊編成や索敵にも問題がありすぎる、“艦娘”を“艦”として運用したにしてもお粗末という他無い」

667: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/23(金) 00:20:18.38 ID:ruan858s0
・翔鶴『瑞鶴との1日』 、投下します

とが抜けてた

668: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/23(金) 00:20:44.66 ID:ruan858s0
――――翔鶴型私室。

「瑞鶴、朝よ」

「んぅ……しょーかくねぇ、あとごふん……」

(もうっ、最近寒いからってなかなか起きないんだから……あっ、良いことを思い付いたわ)

「――あら加賀さん、瑞鶴に何か御用ですか?」

「かっ、加賀さん!? これはその何ていうか寒いから怠けてるとかそういうのじゃ――あれ? 加賀さんは?」

「おはよう、瑞鶴。朝御飯出来てるわよ」

「……翔鶴姉ぇ、その起こし方卑怯」

「普通に起こしても起きない瑞鶴が悪いんじゃない。ほら、顔を洗ってきて」

「はーい」




「今日のお昼は何が食べたい?」

「赤城さんがこの前連れてってくれたお店で食べたアレ、翔鶴姉ぇ作れる?」

「そうねぇ……材料は分かるし、試しに作ってみましょうか」

「やったー!」

「じゃあ鳳翔さんのところから卵とキャベツ、間宮さんに豚肉と粉を分けて貰ってきてもらえる?」

「翔鶴姉ぇは?」

「一応念のために作り方を知ってそうな二人に話を聞いてくるわ。どうせ作るなら美味しい物を食べたいでしょ?」

「うん、じゃあ行ってくるね」

「急いで卵を割っちゃダメよー?」

669: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/23(金) 00:21:11.30 ID:ruan858s0
「――もうそろそろかしら?」

「翔鶴姉ぇ、失敗しないでよ?」

「大丈夫よ瑞鶴、私も料理上手な方々には劣るけどそれなりに料理は――あっ」

「……二つに割れたよ、翔鶴姉ぇ」

「……フライ返しだと返すのが難しいのね、きっと」




「そういえば、翔鶴姉ぇって何で提督さんとケッコンカッコカリしたの?」

「――最初はね、瑞鶴を取られた気がして凄く憎かったの」

「うん、出会い頭に加賀さんと一戦交えたのは後にも先にも翔鶴姉ぇだけだからよく覚えてるよ」

「だって、あの時は加賀さんとも凄く親しそうにしてたし……」

「それでそれで?」

「あの後、落ち着いてから詳しい事情を説明されて、それからも時々提督や加賀さんに貴女がここに来てからどんな風だったかを聞いていたの」

「か、加賀さんは私のことを何て言ってたの……?」

「一貫して“手間のかかる子”って言ってたわ」

(口癖みたいになってるもんなー、アレ……)

「それでね、色々と話を聞いているうちに気付いたの。瑞鶴が二人を慕った理由と、二人と話すのを徐々に楽しんでいた自分自身に」

「加賀さんはすっごく厳しいし、提督さんも少しダメなところもあるけど、どっちも凄く良い人だもん」

「ふふっ、そうね。私と一緒に出掛けてるのに他の女性に目をやったり、蒼龍さんや第六駆逐隊の皆が行った場所に行こうとしたら露骨に避けようとしたり……」

「翔鶴姉ぇ、久しぶりに黒いの出てるから落ち着いて」

「あらやだ、ごめんなさい瑞鶴」

(特注品じゃなかったら握ってるあのマグカップ、割れてたんだろうなぁ……)

「――あっ、もうこんな時間。今から作ると中途半端だし、夕飯は間宮さんのところで食べましょうか」

「うん、賛成ー」




――――翔鶴、どうやった? うまく焼けたん?

 ――――え、えぇ……初めてにしては、多分……。

――――牛肉で焼いてもいけるから、今度試してみるとえぇよ。

 ――――(……焼くの、練習しようかしら)

677: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 00:01:15.66 ID:ufUb6CfM0
・鳥海&摩耶『以前のまま』、投下します

基本は生足

678: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 00:01:42.91 ID:ufUb6CfM0
――――鎮守府。

「二人とも、寒さに強いのね。それほど着込んでもないのに平気そうだし」

「高雄姉さんと愛宕姉さんに比べたら、確かに寒さには強いですね」

「あの二人が寒がりなんだよ」

「羨ましいわ、少し出るのにもちゃんと防寒しないと私には寒くて堪らないもの」

「私達なんかより薄着な方も居ますし、暑さ寒さの感覚も人それぞれですから」

「武蔵の姉御は冬でもサラシ一枚で平気で歩いてるしよ」

「確かにアレは見てるだけでも寒くなるわね……」

「でも、お陰で寒くても好きに服が着れるのは嬉しいです」

「年がら年中服に悩まなくてもいいってのは、確かに楽だよな」

「姉さんの場合、一緒に出掛ける相手が司令官さんの時しか服に関して悩みませんよね」

「別に悩んでねぇし、むしろ一番適当に――」

「その時の様子、こっそり撮影してありますよ」

「それは気になるわ、今見れるかしら」

「おまっ、バカ、鳥海っ!」

「へー、摩耶もこんな顔するのね」

「この時はずっと、スカートにするかホットパンツにするか悩んでました」

「クソがっ! 今すぐ消せ!」

「高雄姉さんと愛宕姉さんも、この動画持ってますよ?」

「なっ……悪いかよ、アタシが着る服で悩んだら」

「ふふっ、誰も悪いなんて言ってないわ――?」

 ――時津風、今日は何をしましょうか?

 ――とにかく外だよ外外~。

「……駆逐艦の子達も何人か、年がら年中薄着よね」

「こ、子供は風の子と言いますし……」

「流石にアタシ等も、あんな布みたいなの一枚でこの時期に外には出たくねぇな」




――――ウザい、こっち見んな。

 ――――断る。

――――ウザいっつってんだろ!

 ――――(今日は鳥海のコーディネートって言ってたな、グッジョブだ)

680: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 12:33:36.88 ID:ufUb6CfM0
――――演習場。

「たっめしっ撃ち~たっめしっ撃ち~」

「足柄、気持ちは分からないでもないが、程々にしておけよ?」

「だって、久しぶりにみなぎってきてるんですもの」

(最近はすっかり大人しくなっていたが、“飢えた狼”は健在の様だな)

「試し撃ちが終わったら今日はカツカレーね。いっぱい揚げなきゃ」

「今夜ばかりは、私も司令官と一杯飲みたいものだ」

「那智姉さんは改二になってどんな感じ?」

「自分ではよく分からないのだが、凛々しくなったと皆が口を揃えて言ってくる」

「そう言われると確かにそうかも、今の那智姉さん、テレビで見た宝塚の男役みたい」

「それは喜んでいい表現なのか?」

「カッコいいって事だから、私は良いと思うわ!」

(……後で司令官にも聞いてみるとしよう)




――――那智姉さん、そういえば提督と夜戦ってよく聞くけど、アレはどういう意味なの?

 ――――……直接聞いてみたらどうだ? 私はそれについてはあまり話したくない。

――――? 何だかよく分からないけど、改二になった記念にしたいって言ってみるわ!

 ――――(司令官、悪いが自分でなんとかしてくれ)

689: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:34:18.80 ID:ufUb6CfM0
・19『色々な艦娘をマッサージなのね』、投下します

690: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:34:44.91 ID:ufUb6CfM0
――――鎮守府マッサージ店、魚雷屋。

「うぁ~気持ち良い~」

「秋雲、駆逐艦としてこのこり方はどうかと思うの」

「アタシだって好きで肩をこんなにガッチガチにしてるわけじゃないって。でも、描いてたら自然とこるんだよねー」

「ちゃんと座ったままでいいからストレッチするの。そしたらマシになるのね」

「ぅあ~い」

「秋雲、ちょ~っと痛いかもしれないけど、我慢するの」

「へ? ちょっ、いだだだだだっ!?」

「たまには目も休ませてあげなきゃダメなのね」

(目、目の奥に突き抜けるような痛みが……)

「はい、後は仕上げをしたら終わりなの、またのご来店をお待ちしてるのね」

「あ……あい……」




 次はマッサージネタを描こう、そう心に決めながら蕩ける秋雲であった。

691: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:35:12.13 ID:ufUb6CfM0
「千歳さんも結構肩が凝ってるの」

「そうなのよ、姿勢と寝方が悪いのかしら」

「千歳さんの場合、それだけじゃないと思うのね」

「あっ、そこ、気持ち良い……」

「ここを~こうなのね」

「んっ……千代田が私の腕を枕にしてるから、特に左側がこりやすいみたいなの」

「千代田さん、腕枕で寝てるの?」

「えぇ、冬場はお互い暖かいし、結構良いのよ?」

(……色々凄い絵になってそうなのね)

「ついでに下半身も一緒にやっちゃうの」

「足はそこまででも――んぅっ!?」

「気付いてないだけで、結構足にも疲れが溜まってるのね」

「そこ、お尻は、ダメっ……」

「ここにツボがあるから、くすぐったくても我慢して欲しいのね」

「違うの、そうじゃ……んっ……」

(いひひっ、千歳さんはここが弱点みたいなの)

「あっ……んふぅ……」




 イクのスナイパー魂がたぎりました。

692: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:35:39.10 ID:ufUb6CfM0
「千代田さんはどこがこってるの?」

「首と肩かな」

「千歳さんもだけど、肩は絶対に“それ”のせいなのね」

「し、仕方無いじゃない。私も好きで大きくなったんじゃないもの」

「イクは悪いとは一言も言ってないの。それに、イクもどっちかっていうとそっち側なのね」

「泳ぎにくくないの?」

「潜水艦を舐めちゃダメなの。背泳ぎと潜水は得意中の得意なの!」

「……視線、気にならない?」

「……気にしたら負けなの」

「後、膝枕すると胸が邪魔でていと――お姉に耳かきとかがやりにくかったり」

(わざと太股と挟んでからかうのも楽しいと思うのね)




 持つ者の悩み、浮き袋二つ。

693: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:36:05.51 ID:ufUb6CfM0
「祥鳳さんは、また腕全般でいいの?」

「えぇ、この前新調した弓の調子を確かめていたらやり過ぎてしまって……」

「じゃあ早速始めるの」

「はい、お願いします」

「まずは肩甲骨周りから徐々にほぐしていくのね」

「――ふぅ……最近は、たまに瑞鳳も揉んでくれたりするんです」

「瑞鳳さんは弓道場は手伝ったりしないの?」

「あの子は艦載機一筋だから……」

「瑞鳳さんの九九艦爆と玉子焼きに傾ける情熱は、凄まじいものがあると思うの」

「傾け過ぎてる面もあるとは思いますけど、自慢の妹です」

「ちょーっと前失礼するの」

「っ……あっ……んっ……んぅ……」

「胸の付け根の辺りも丹念にほぐさないとダメなの」

(変な声が漏れて……でも、気持ち良い……)




 体温も上がって、血行がとても良くなりました。

694: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:36:33.03 ID:ufUb6CfM0
「足つぼマッサージにも負けない、多分」

「じゃあ始めるの」

「っ!……っ!?~~っ!?!?」

「いひひ、どーお? 痛い?」

「お、朧はまだまだ、やれっ……やれ……」

「ギブアップならいつでもしていいのね」

「負け、ないっ……!」

「じゃあ続けるの」

(蟹が一匹、蟹が二匹、蟹が三匹……)

(朧の負けず嫌いは筋金入りなのね)

「朧ちゃん、無理はしないでね」

「な……何も……言えねぇ……」

「一人だけ……何で平気なのよ……」

(潮にだって……朧は、負けない……!)




 一切痛がらない潮に、我慢比べでは勝てませんでした。

695: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:37:01.99 ID:ufUb6CfM0
「摩耶さんがここに来るなんて珍しいのね」

「ちょっと姉貴達のダイエットに付き合ってたらやり過ぎちまってよ」

「どこをマッサージすればいいの?」

「足頼む」

「了解なの!」

「――おー……結構気持ち良いもんだな」

「摩耶さん、すっごく足が綺麗に手入れされてるの」

「別に何もしてねぇよ」

「モチモチスベスベなの」

「アタシを褒めても何も出ねぇぞ?」

「あっ、ここに無駄毛があるの」

「あぁ? どこだよ? すぐに抜くから教えろ」

「いひひっ、冗談なのね」

「……はめやがったな、クソが」

「ほらほら、マッサージはまだ途中なの、うつ伏せになってくれなきゃ出来ないのね」

「次に変なこと言いやがったらぶっ飛ばすかんな」

「そういう物騒なこと言うとーこうなの」

「いででででっ!? 何しやがんだっ!」

「イクはマッサージしかしてないの」

「さっきと全然違うだろ!」

「マッサージはマッサージ、なのね。いひひっ」




 翌日、そこには元気に姉とエクササイズする摩耶の姿が。

696: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/24(土) 22:37:27.95 ID:ufUb6CfM0
「――で、何で俺がお前のマッサージをするんだ?」

「イクだって毎日マッサージしてたら身体が疲れちゃうのね」

「電に頼めばいいだろ」

「提督に、イクはして欲しいの」

「……分かった。但し――」




――――ゴーヤに続いてイクも提督の服をゲットなのね!

 ――――全く、マッサージして欲しいって奴がスク水で来るなよな……。

――――スク水なら手が滑っても言い訳が出来るの。

 ――――いらんことに気を使わんでいい。

704: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/26(月) 16:26:22.08 ID:7dBCE7bS0
・弥生&早霜『……』 、投下します

更新遅れてごめんなさい

睦“月型”だからあのゲームだったり

705: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/26(月) 16:26:49.50 ID:7dBCE7bS0
――――鎮守府、休憩スペース。

(交友を広げる……私に出来るかしら?)

 口数が多い方ではなく、特定の相手以外とはあまり話さない早霜。しかし、この日は勇気を出して自分から積極的に話しかけようとこの場所を訪れていた。

(なるべく、大人しそうな人を)

 自分のペースで話せそうな相手を探し、ぐるりと見回す。元気系を除外、独特な雰囲気を持つ艦娘を除外、そして残った艦娘は――。

「あの……弥生さん」

「……? 弥生に、何か用?」

「・・・・・・」

(何を、話せばいいのかしら?)

 話しかけることには成功した。しかし、話をする為の話題を用意しておくのを、早霜はすっかり忘れていた。
 何か話さなければ変な人だと思われる、そう思って彼女はとにかく頭に浮かんだことを口にする。

「――那智さんの水偵、どう思う?」

「那智さんの水偵……見たこと無い、かな」

「……そう」




 早霜の交友の輪を広げよう大作戦、初日、戦術的敗北により撤退。

706: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/26(月) 16:27:16.80 ID:7dBCE7bS0
(今日は話題をたくさん用意してきたし、これで大丈夫のはずよね)

 夜の三時までかけて考えた話題の数々。今の早霜に問題があるとすれば、寝不足という点だ。

「――弥生さん」

「今日は、何?」

「貴女の趣味は何かしら?」

「えっと……最近はゲーム、かな……?」

(ゲーム、あの初雪さん達がよくやっているアレね)

 趣味というのは、コミュニケーションにおいて大事な要素である。この情報だけで、早霜の目標は達成されたも同然だった。

「良ければ、私にも弥生さんがやっているゲームを教えてもらえる?」

「いい、けど……」

(目の下に隈……大丈夫、かな……?)




 早霜の交友の輪を広げよう大作戦、二日目、相手の情報を入手、戦術的勝利。

707: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/26(月) 16:27:43.87 ID:7dBCE7bS0
「――弥生さん」

(三日連続……何で、弥生に……?)

「何か、用?」

「昨日弥生さんが言っていたゲーム、一緒にやらない?」

 この時の早霜の目が真っ赤に充血していたことから、彼女の努力を察することが出来る。そして、この努力がある意味で最高の結果をもたらすのだった。




――――二十回目で、ようやく勝てたわ……。弥生さん、次は――弥生さん?

 ――――悔しくなんか、ないよ? 全然、悔しくなんか……。

――――(コントローラーがミシミシいっているけれど、大丈夫なのかしら……?)

 ――――(次は、負けない……!)




 翌日から、弥生と早霜が頻繁にゲームをする姿が目撃されるようになりました。なお、誘うのが早霜から弥生に代わった模様。

713: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/26(月) 20:08:56.14 ID:7dBCE7bS0
※分かる人用のおまけネタなので、分からなければ飛ばして大丈夫です。




「弥生さんは誰が持ちキャラなの?」

「都古と、レンと、白レン……かな」

(見事に小さい子ばかりね……)

「早霜は、誰?」

「私はさつきとシオンとリーズかしら……」

(路地裏、同盟……)

「初雪さんや他の方は?」

「初雪は、猫アルクか先生で……望月は、シキ四人。夕立と足柄さんは、赤主と暴走アルクと吸血鬼シオン……漣が、ひすこはで……夕張さんが、メカ翡翠……秋雲が、ワラキー……大和さんが、アルクと秋葉とシエルで……武蔵さんが、圧壊さん……だった、かな?」

「一番強いのは、誰なの?」

「大和さんと武蔵さん、初雪の三人……だと、思う」

(大和型のお二人がゲームしている姿が想像出来ないのだけど……どんな感じなのかしら)




暗黒漣流御奉仕水晶波。

718: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/27(火) 01:46:45.54 ID:2HU82UVa0
・古鷹&青葉『誤解』 、投下します

壁を掴んで回った方が、コーナーは楽

719: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/27(火) 01:47:12.76 ID:2HU82UVa0
――――鎮守府廊下。

「大鳳さん、青葉を見ませんでした?」

「青葉? 青葉ならさっきそこを右に――」

「ありがとうございます!」

「……喧嘩でもしたのかしら?」




「フユキじゃなかった吹雪古鷹が通りかかったら誤解だから話し合おうって言っておいてくれますかくれますよねお願いします!」

「えっ、えっ?」

「吹雪ちゃん、今ここへ青葉が来なかった?」

「来ましたけど、ごか――」

「どっちに行ったか教えてくれる!?」

「あっ、あっちに……」

「ありがとう!」

(……何だったんだろう?)




「待ちなさい青葉!」

「だからアレは誤解です! 事故なんです! 話し合えば人類皆分かり合えちゃうはずです!」

「とにかく止まって!」

「曲がり角の壁を破壊しながら追いかける相手に止まれと言われて止まれる訳ありませんよー!」

720: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/27(火) 01:47:38.26 ID:2HU82UVa0
――――提督執務室。

「また珍しい奴が鎮守府壊してくれたな、なぁ古鷹」

「ご、ごめんなさい……」

「はぁ……原因は何だ。二人とも聞いてやるから言ってみろ」

「青葉に、その……の写真を撮られたと思って」

「写真? 何のだ?」

「風で、スカートが……」

(あー……何となくは把握出来た)

「で、青葉はそれを撮ったのか?」

「青葉はそんな写真撮らないし記事にしないって司令官が一番知ってるじゃないですか! 中庭の風景が凄く絵になってたから撮影してただけですよ!」

「だよなぁ……ってことは、古鷹の通りかかったタイミングが悪かっただけか」

「撮ったかどうかは別にして、悪用はしないと分かってはいたんです。でも、青葉が急に逃げるから……」

「あんな鬼気迫る表情の古鷹見たら誰だって逃げちゃいますよ。青葉、直前にお花を摘んでなかったら今頃部屋に閉じ籠っちゃってたかもしれません」

(興奮すると目が光りっぱなしになるし、昼間とはいえ追いかけられたら逃げたくなる気持ちは分からんでもないな……)

「まぁ何にせよ、お互い誤解だと分かったんだからこの話は終わりだ。後、反省文な」

「「はい……」」

721: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/27(火) 01:48:06.68 ID:2HU82UVa0
――――青葉は良いと思うな、そのパンツ。

 ――――やめてよ、もう……。

――――勝負下着、青葉も黒にしよっと。

 ――――やめてったら。

747: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/27(火) 21:14:56.10 ID:2HU82UVa0
・潜水艦娘『安心安全寒中水泳教室』

・暁&叢雲『レディー叢雲』

・58&まるゆ『黒か白か』

・六駆Vs七駆『メイド服に興味はありませんか?』

・づほ『そんなに好きなら』(※R18です)

・瑞鶴Vs大鳳『幸運と不幸』

以上六本でお送りします

757: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 01:10:34.29 ID:0LSdE6yT0
・潜水艦娘『安心安全寒中水泳教室』 、投下します

758: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 01:11:00.35 ID:0LSdE6yT0
――――鎮守府、海辺。

「いっ、いいいちにんまえのれでーはこのぐらいのさむさへっ、へっくちゅんなんだから!」

「この水着、凄く身体にフィットします」

(……妹に負けてると、何か微妙な敗北感があるわね)

「浦風、スク水も可愛いわ」

「姉さんもよく似合っとるよ」

「白いスク水、これはいいな」

「皆集まってる?」

「うん、集まってるよ」

「じゃあ早速始めるのね」

「はっちゃんはここで本を読んで待ってるから、皆で――」

「ほらほら行こうよはっちゃん。海にどぼーんしよ!」

「待ってシオイ~他に人が居なくても裸になっちゃダメだよ~」

「あ、あかつきはじゅんびばんたんなんだからはやくちゅんよね」

「暁には後で身体が温まる飲み物を入れてあげるよ」

「最近は座ってる時間が長かったし、気を引き締める意味でも寒中水泳はいいわね」

(姉さんは部屋で毎日筋トレしとるし、いらん気もするんじゃけどねぇ)

「陽炎姉さん、ストレッチに付き合って下さい」

「いいわよー」




 寒中水泳教室(という名のスク水布教活動)、始まります。

759: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 01:12:40.06 ID:0LSdE6yT0
――――海。

「目標は、あのブイまで行って帰ってくることでち」

「私達が居るから、足がつったり溺れかけてもすぐに助けるわ」

「浦風、あそこまで競争よ!」

「姉さんハンデ! ハンデが無いといくらなんでもちと無理じゃて!」

「では、私達も競争しましょう」

「流石に妹に負けたら一番艦として格好がつかないわ!」

「暁、顔色が悪いけど大丈夫かい?」

「だ、だだだいじょぶにきっ、きまってるじゃない」

「はっちゃんは、ここでプカプカ浮かびながら本を――」

「無しです!」

「なっ、何が何でも抵抗するよ、今日買ったばかりの新刊がはっちゃんを待ってるんだから!」

「シオイもはっちゃんも寒中水泳教室なんだから手伝おうよ~」

「やっぱり、それなりに皆泳げるわね」

「提督指定の水着の効果もおっきいよ」

「大鳳さん、全力出すとかちょっと大人げないのね」

「っ!? たっ、たすごぼごぼごぼ……」

「暁!?」

「ここはイクに任せて先に行くのね!」

「それじゃあ任せるよ、スパシーバ」

「何かヤケに暁だけ寒さに弱くない?」

「暁だけ“一人前のレディーは自分で水着を選ぶわ”って持参してたでち」

(一人前のレディーとして持参したのが、スク水なの……?)




 暁も提督指定(※違います)の水着を借りて参加となりました。

760: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 01:13:05.81 ID:0LSdE6yT0
――――三十分後。

「流石にそろそろ寒くなってきたわ……」

「うちもちょっと身体が冷えてきたねぇ」

「もうこれで終わりでいいんじゃない?」

「まだまだ本番はこれからでち」

「次は鬼ごっこなのね」

「次ははっちゃんも参加するよ」

「浜風、何食べたらそんなに大きくなるの?」

「? 私は身長は低い方だと思いますが」

「シオイが聞きたいのはそういうことじゃないと思うけど……それよりシオイ、いい加減手伝ってくれない?」

「じゃあ皆で運河行く?」

「それは今度付き合うから、今は鬼ごっこね」

「うんうん、いいね鬼ごっこ、ありです!」

「まるゆさんは暁が捕まえるわ」

「頑張って追い掛けて来てね」

(余裕が感じられるな、これは一筋縄ではいかなさそうだ)




 全員ヘロヘロになるまで追いかけた結果、一人も捕まえられなかった模様。
 なお、飛び入りで現れた軽巡洋艦に追いかけられた彼女達は更に早かったそうな。

761: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 08:50:33.13 ID:0LSdE6yT0
――――提督執務室。

「一般人向けにも寒中水泳教室をやりたい?」

「機能美に溢れるこの水着を広めたいでち」

「きっと売れるのね」

「提督も、着てみますか?」

「着たら撮って皆に送ってあげる」

「女性用のスク水なんぞ着れるか!」

「シオイと行く運河巡りツアーとかどうかな?」

「普通の人にあの距離は無理だと思うな……」

「何にせよ却下だ。カメラ持った奴が押し寄せるような事態は避けなきゃならんし、水着販売なんぞしたらそれこそいらんことを考える輩も出てくる」

「てーとく、いらんことって何?」

「……気にするな」




 〇ーヤの着ていた水着、五万八千円。

766: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 21:59:32.62 ID:0LSdE6yT0
・暁&叢雲『レディー叢雲』 、投下します

767: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 21:59:59.82 ID:0LSdE6yT0
(じー)

「……何よ」

「――堂々とした振る舞い」

「はぁ?」

「立てるところは立てて、引くところは引く」

「一体何の話?」

「叢雲って一人前のレディーなの!?」

「いっ、いきなり何なのよ、私は別にレディーなんて柄じゃないし」

「料理は?」

「まぁ、人並み程度には」

「掃除」

「そりゃ自分の部屋ぐらい片付けるわよ」

「洗濯」

「交代制」

「お化粧」

「毎日はしないわよ?」

「ドラム缶」

「何でドラム缶がその流れに入ってんのよ」

「ドラム缶は淑女のたしなみって熊野さんが」

「アンタ一回淑女とかレディーって言葉の意味を辞書で調べてきたら?」

768: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/29(木) 22:00:38.21 ID:0LSdE6yT0
「そもそも、何でそんなに一人前のレディーに拘ってんのよ」

「子供扱いされたら嫌なの!」

「どう見てもお子様じゃない」

「お子様言うなー!」

「――じゃあアンタはここから出て一ヶ月、一人で生活出来るの?」

「そっ、そのぐらいへっちゃらだし」

「司令官の力も、誰の力も借りずに?」

「うっ……」

「よく聞きなさい。程度はどうあれ、私達はまだ“子供”なの。荒潮や漣みたいに自分で稼ぎ始めてるのもいるけど、基本的には鎮守府内で司令官の庇護があるから可能なだけ、アンタはまずそこを自覚なさいな」

「……それだけしっかり考えてるのに、叢雲もまだ子供なの?」

「少なくとも、アンタよりは大人ね」

「頭をポンポンしないでよっ! もうっ!」

「まっ、精々頑張んなさい。一人前のレディーさん」

「――むっ、叢雲!」

「何よ、まだ何か用なの?」

「……その、ありがとう、なのです」

「ふんっ、別に礼を言われるようなことはしてないわ、じゃあね」

(――よし!)




――――何だかんだ面倒見良いよな、お前も。

 ――――盗み聞きとか趣味悪いわね。

――――お詫びにケーキでどうだ?

 ――――……食べる。

778: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/31(土) 01:49:44.56 ID:4s7ioD0C0
・58&まるゆ『黒か白か』、投下します

779: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/31(土) 01:50:10.99 ID:4s7ioD0C0
――――潜水艦娘私室。

「まるゆ、明日一緒に動物園行こ」

「いいけど、何で動物園に?」

「有効期限が明日までの無料入場券、二枚貰ったの」

「イムヤとかシオイの方が喜びそうだけど、まるゆでいいの?」

「他の皆は用事あるみたいでち。皆で行くなら割り勘して行こうかと思ってたけど、たまには二人っきりもいいよね」

「うん、そういうことなら行こっかな」

「じゃあ明日はお弁当作るでち」

「お弁当作るの、まるゆも手伝うね」

「ゴーヤいっぱい入れるでち」

「緑一色はやだよ……?」

780: ◆UeZ8dRl.OE 2015/01/31(土) 01:50:36.91 ID:4s7ioD0C0
――――動物園。

「うわぁ~動物がいっぱい」

「まるゆは何が見たいの?」

「まるゆはシロクマが見たいな」

「じゃあまずはシロクマ見に行くでち」

「うん!」




「――シロクマ、白いでち」

「だってシロクマだもん」

「でも、シロクマって地肌は黒いってはっちゃんが言ってたよ」

「じゃあまるゆみたいに白い水着を着てるんだね」

(はっちゃんに毛は透明だっていうのも聞いたけど、黙っといた方が良さそうでちね)

「次はゴーヤの見たい動物見に行こ?」

「ゴーヤはペンギンが見たいな」

「えーっと……ペンギンはあっちだね」

「あっ、アレはコウテイペンギンでち!」

「コウテイペンギン好きなの?」

「好きでち! 大好きでち! コウテイペンギンはペンギンの中の潜水艦なんでち!」

「へー、潜るの得意なペンギンなんだね」

「ゴーヤも一度ペンギンと潜ってみたいよぉ……」

(ペンギン、そんなに好きなんだ……)




――――もぐらは見に行かなくていいでちか?

 ――――まるゆ、もぐらじゃないもん!

――――冗談でち。

782: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:01:14.78 ID:GaWW+aCV0
・六駆Vs七駆『メイド服に興味はありませんか?』、投下します

試合に負けて、勝負に勝つ

783: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:01:42.42 ID:GaWW+aCV0
「お願いしますよ一人前のレディーの暁ちゃん」

「もうその手には乗らないんだから」

「なん……だと……?」

「暁、何かあった?」

「一人前のレディーに本当に少し近付いたみたいだよ。――ハラショー、この寿司は美味しいな」

「蟹の押し寿司、メニューに入れたいけど漣がダメって……」

「雷ちゃん、ヲーちゃんにあげるのにこのクッキー貰っていいかな?」

「どうぞ、たまたま卵が余ったから焼いただけだし、喜んで食べてくれるなら私も嬉しいわ」

「電、先に言っとくわ。御愁傷様」

「? 曙、それはどういう意味なのですか?」




「御主人様が暁にメロメロになっちゃうような服、欲しくありません?」

「ほ、欲しい、かも……」

(フィッシュ!)




 陥落まで三十八秒、暁の真のレディーへの道と朧のメイド喫茶蟹フェアへの道は遠い。

784: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:02:09.11 ID:GaWW+aCV0
――――演習場。

「やるからには、絶対負けない」

「暁だって負けないんだから」

「勝ったら選べるのかい?」

「勝てれば選ばせてあげますよー勝てればですがねー」

「漣ちゃんが迷惑かけてごめんね……」

「いいのよ潮、私は全然気にしてないわ」

「電、恨むなら発育の良い自分の身体を恨みなさい」

「絶対に負けられないのです……」




 第六駆逐隊対第七駆逐隊。勝負は四対四の演習方式。

 旗艦を撃沈、または全艦撃沈判定が出た時点で終了。審判は取材待ちの青葉。

 第六駆逐隊が勝利した場合、“可愛い服”が漣より第六駆逐隊へ贈られる。

 第七駆逐隊が勝利した場合、漣製作のメイド服を着て第六駆逐隊は店を手伝わなければならない。




 ――今、試合の前に勝負がついている戦いの火蓋が切って落とされる。

785: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:02:36.43 ID:GaWW+aCV0
「ではでは双方準備はいいですね? 取材、じゃなくて演習始め!」

 開始の合図と同時に飛び出したのは朧。その負けず嫌いな性格は、戦い方にもよく表れている。

(勝ったら蟹メニュー追加、朧がやらなきゃ!)

 それを後方から援護するのが、潮と曙だ。
 自信の無さからひたすら訓練したことにより培った、正確で素早い砲撃を放つ潮。そして、その性格ゆえに培った観察力で状況把握に長けた曙。
 この二人が阿吽の呼吸で砲撃するというのも、見る者によっては珍しく映るだろう。

(負けたら犬耳……負けたら犬耳……)

(べ、別にクソ提督と二人っきりで店を使わせてもらえる権利とかどうでもいいけど、負けるのは嫌だし、それだけなんだから!)

 そして、第七駆逐隊のブレインであり今回の旗艦であり元凶である漣は、ただ意識を相手の一艦のみに集中させていた。

(朧達はほっといてもすぐに勝敗が着く様なことは無いでしょうし、とにかく私は落とされないようにしないといけませんねー)




 待機艦隊の裏に隠れた怪物が一人、静かに漣へと狙いを定める。

786: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:03:06.77 ID:GaWW+aCV0
「ここから先へは行かせないよ」

「不死鳥にだって、朧は負けないから」

「信頼の名も忘れてもらっては困るな」

(ここは、無理矢理にでも通る!)

 相対して十五秒、先に動いたのは朧だった。

「その真っ直ぐなところ、嫌いじゃない」

 近距離から放たれた魚雷、それ等をかわし、通り抜けようとする朧へとヴェールヌイは砲を構える。

「これで――っ!?」

 直感に従い、彼女はそのまま撃たずに身体を大きく捻りその場で旋回する。
 次の瞬間、脇腹辺りを狙っていたであろう砲撃が服を掠め、目標を見失った弾が近くの水面に水柱を立てた。

(流石に今のは危なかったな……まぁいいさ、多少なりとも時間は稼げた)

「――メイド服、似合っていたよ」

「うぅ……恥ずかしいから今はやめて……」




 朧、ヴェールヌイを振り切り暁の居る方向へと航行中。
 ヴェールヌイは潮の足止めへと作戦を移行。
 潮、どう足掻いても犬耳。

787: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:03:33.61 ID:GaWW+aCV0
「いーい? 司令官の好みはね――」

「ちょっと待って、青葉さん!」

「はいはーい、審判の青葉に何か用?」

「ペンと紙貸して」

「おやおや? 勝負はいいの?」

「それより重要だからパス(料理の好みとか今聞いとかないと後悔しそうだし……)」

(小声でボソボソ言っても、青葉には聞こえちゃいました)

「よし、いいわよ雷」

「よく聞いてね、司令官の好みは――」




 雷、曙の二名は勝負を放棄。曙は某人物の好む味付けや料理の話を聞く方が今後の事を考えると有意義と判断、雷は最初から勝っても負けても着るつもりだったので関係無かった模様。




 なお、青葉のペンも雷の話に合わせて動いていたのは、内緒である。

788: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 19:04:06.52 ID:GaWW+aCV0
「来たわね」

「蟹フェアの為、覚悟!」

「暁だってレディーに相応しい服の為に負けないんだから!」

 互いに砲を構え、一騎討ちの狼煙が挙げられ――ることは無かった。




『第七駆逐隊旗艦、漣の轟沈を青葉確認しました!』




「漣、負けるの早い」

「うぐっ……何も言えねぇ……」

「ハラショー、コイツは力を感じる」

「響ちゃんはそういうの着けるの抵抗無いんだね……」

「でね、後はみりんと――」

「ちょっと待って、みりんはどのぐらい?」

「よくやったわ電、流石暁の妹ね」

(胸元の開いたメイド服なんて、絶対に着ないのです……)




 後日、姉三人を味方に引き込んだ漣の策略により、普通のメイド服ならと妥協した電の姿があったそうな。




「写真撮影は青葉にお任せ、可愛く撮ってあげるね!」

 ※写真の一般公開はされておりません、見たければ当鎮守府までお立ち寄り下さい。

791: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/01(日) 20:24:10.79 ID:GaWW+aCV0
 ――第一艦隊。

 弾幕を途切れさせてはならない。もし途切れれば、その瞬間に数の暴力が彼女達へと押し迫り、その柔らかな肢体を蹂躙(じゅうりん)することだろう。

 そうならないためにも、現れた鬼級への迅速な対応は必要不可欠だ。砲撃と補給以外に回避という選択を何度も迫られるのは、戦線が崩れる原因になりかねない。

 吹雪もそれは重々承知しており、短い時間で最適解を出そうと思考をフル回転させる。

(長門さんでも一度に九体は無理。分散しても四から五体。ある程度接近して叩かないと他の深海棲艦が庇っちゃうし、あの密集状態だと空からだけでやっつけてもらうのも厳しいかも……)

 鬼級九隻を叩くだけならば、この艦隊の練度ならば容易だ。しかし、損耗を最小限にかつ戦線は維持となると、途端にその難易度は跳ね上がる。

 ――だが、それはあくまでこの艦隊だけで迎撃するならばの話だ。




「――こちらG地点防衛艦隊旗艦、吹雪です。現在接近中の鬼級九隻に対してこちらから打って出ます。協力をお願いします!」




 日独二国連合艦隊。ここに集う艦娘に、この戦いにかける思いの差こそあれ、その強さに嘘偽りは無い。

817: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/03(火) 12:43:59.94 ID:mU7v8MAM0
 セッツブーン。それは古来より伝わる伝統的な戦。オニーにマメをぶつけ領地から追い出し、フックーを招き入れるというもの。
 毎年やってくるオニーの猛攻を防ぎ、数多くのフックーを招き入れた家にのみ、一年間の安寧が約束されるのである。




「オニー覚悟ー!」

「どういう認識をしているんだお前は。私は鬼ではないぞ」

「エイッ、エイッ」

「くっ、これは堪らん、出ていくとしよう……」

「何ヲシテイルノカシラ」

「鬼ヲ追イ出シテイルソウダ」

「リト、追イ出スノ?」

「人ガ勝手ニ“鬼級”トヤラニ分類シタダケジャナイ。今ハ“リト”ッテ呼ビ名モアルワ」

「意外ニ気ニ入ッテイルンダナ。マァ、私モ“クー”ト呼バレルノハ悪イ気ハシナイ」

 ――エイッ、エイッ。

 ――私は既に外に……いや、投げるのが楽しいのならば付き合おう。

 ――やあっ!

 ――ふんっ!

 ――あいたぁっ!? 投げ返すのってありなのっ!?

 ――良い機会だ、この長門が演習相手になってやろう。

 ――ホッポモ一緒ニヤル!

 ――フォイヤー! フォイヤー!




 “鬼”が内に居てもいいじゃない、だって鎮守府だもの。

821: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/03(火) 21:24:19.69 ID:mU7v8MAM0
「瑞鶴、今年の恵方は――」

「むぐっ?」

「……加賀さんに写真を」

「もがっ!? んーっ! んーっ!」

「瑞鶴、食べながら暴れるなんてはしたないわよ?」

「むぐぅ……」

「ふふっ、冗談だから安心して。じゃあ私も――」

「翔鶴、瑞鶴、少しいい……」

「「・・・・・・」」

「取り込み中のようね。後にしておきます」

「「――ん~~~~~~っ!?」」




「あら加賀、早かったですね」

「……」

「? どうしました?」

「同じ向きで、同じ持ち方で、同じ角度でこちらに……ふふっ」

(何だか楽しそうですね、何があったのか後で詳しく聞いてみましょうか)




 暫く空母の間でネタにされました。

822: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/03(火) 21:52:12.52 ID:mU7v8MAM0
「Hey比叡ー豆の準備はいいデスカー?」

「はい、お姉様!」

「榛名、メニューの追加はOK?」

「はい、大丈夫です」

「霧島、マイクチェックは出来てるネー?」

「完璧かと」

「じゃあ今日も喫茶『バーニングラブ』、オープンデース!」




「金剛お姉様、ご指名です!」

「了解ネー。Heyお客様ーこの豆を見事あそこに立ってる私に当てられたら豆乳ミルクティーをサービスデース。変なところを狙ったらNoなんだからネ!」

「――What? ここはそういうサービスはやってないネー。ぶつけられたいなら漣の店をオススメしマース」




 ※紳士以外のご来店は固くお断りしております。

823: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/03(火) 22:30:53.18 ID:mU7v8MAM0
「――なぁ大和、豆鉄砲という言葉があるのを知っているか?」

「えぇ、当然知っています」

「豆が立派に武器になることを、昔の者達も知っていたということだな、うむ」

「馬鹿な事を言っている暇があったら、穴を塞ぐのを手伝ってくれないかしら」

「大和型が二人揃って節分に壁の穴をパテで塞ぐ……平和とは残酷なものだ」

「この前九州旅行を満喫して、カステラを大量に買って帰ってきたのは誰でしたっけ?」

「それを半分食べちまったのは誰だい?」

「――鬼は外」

「――福は内」

「「全主砲一斉射!」」




 すきま風が吹き抜ける風通しの良い部屋になりました。

827: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/04(水) 00:18:13.88 ID:g6wEPzgf0
「ホント、詰めが甘いのね」

「全然当たらないっぽいー!」

「あの角度でも弾くか……だがこの難易度、悪くない」

「――命中させちゃいます!」

「甘いわっ!」

「はわわわっ!?」

「ふふっ、早くしないと節分終わっちゃうわよ?」

「よりによって初霜とか無理ゲーじゃね?」

「アレは、チート……」

「深雪スペシャル節分バージョンくらえー!」

「その程度じゃ当たらないわ」

「ちくしょー! 何なんだよその金棒!」

「妖精さん特製豆喰い金棒よ。撒き散らしたら勿体無いでしょ?」

「これ初霜、少しは手加減してやらぬか。節分にならぬであろう?」

「ご、ごめんなさい……改二になって能力も上がったから楽しくってつい……」

「子日は角を生やして怒ってる初春に当てちゃおっと。えいっ!」

「ほぅ、妾が鬼か……子日、覚悟は出来ておるのかえ?」

「は、初霜守ってー!」

「今日は鬼役だから、自分で頑張って」

「子日、大ピンチの日~!?」




 結局、反射的に避けるか弾く初霜に当てられた艦娘は現れなかったそうな。

836: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/05(木) 03:13:34.02 ID:ck1BX+aW0
・瑞鶴Vs大鳳『幸運と不幸』 、投下します

837: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/05(木) 03:14:01.68 ID:ck1BX+aW0
――――演習場。

「加賀に挑むのはやめたの?」

「やめてないよ。大鳳とも一度全力でやってみたいと思っただけ」

「別に演習するのは一向に構わないんだけど、午後から浦風とご飯を食べに行く約束をしているの」

「つまり、長期戦は無理ってこと?」

「えぇ、悪いわね」

「それならすぐに始めてすぐに終わらせれば、何の問題もないでしょ?」

「そう簡単に貫けるほど、私の装甲は薄くないわよ?」

「やってみなけりゃ――分かんないわっ!」




――――元・幸運艦対元・不運艦、開始ス。

838: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/05(木) 03:14:29.43 ID:ck1BX+aW0
 空母同士の戦いにおいて、一番重要視されるのは飛行甲板への攻撃だ。
 第一次航空隊、第二次航空隊と分け、全機を一度に発艦させない場合、飛行甲板に一定の損害が出た時点で、新たに艦載機を飛ばすことも、着艦させることも出来なくなってしまう。
 だが、装甲空母である大鳳だけはその範疇に無く、完全に大破しない限りは、独自のスタイルによって発着艦を可能としていた。
 故に、空母同士の一騎討ちにおいて、大鳳は若干有利と言えた。

(艦戦を多目にして、全機撃墜からの攻撃? いえ、短期戦を狙うなら艦爆や艦攻を多目にしているはずだわ。それなら――)

「第一艦爆隊、全機発艦!」

 対艦でありながら、対空の役割もこなす爆戦。その中の一つ、最も使い慣れたものを彼女は選んでいた。

「悪いけど、無様に負けて浦風に会いたくはないから必ず勝たせてもらうわ」

「後で慰めてもらえるんだから、負けてもいいんじゃない?」

 挑発するような姿勢は崩さず、瑞鶴は艦攻と艦爆を発艦させていく。
 元々加賀と勝負をする時も一瞬の攻防で決着が付くのが大半な為、彼女もそれに対応した艦載機を積んでいることがほとんどだ。

「艦戦はどうしたの?」

「ヤられる前にヤるからいらないっ!」

 作戦も何もあったものではない発言に思えるが、瑞鶴の練度を考えると、大鳳からすれば厄介という他無かった。

(回避や対空は一切考えていないようね……)

 七十を超える艦爆と艦攻。一度に飛ばす数を増やせば、それだけ一機一機の動きの精確さを欠いていくものの、ごり押すならば精細な動きは必要ない。

「全機目標大鳳、いっけぇー!」

(このまま防御に回ったら押し切られる、先に轟沈判定を取るしかないわ!)

 一方の大鳳は数ではなく精確さで勝負を決めようと、艦爆隊のみを瑞鶴目掛けて突撃させる。
 速度の大鳳、火力の瑞鶴。艦娘としての能力からすれば逆の戦術を選んだ二人の艦載機は、ほぼ同時に目標へと迫り、互いの姿が目視出来なくなる程の激しい攻撃を行うのだった。

839: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/05(木) 03:14:57.87 ID:ck1BX+aW0
「翔鶴さん、お互い大変じゃねぇ……」

「えぇ、たまに子供っぽくなっちゃうのよね、あの子ったら……」




――――瑞鶴の方が先に轟沈判定出てたはずよ!

 ――――大鳳が先! 絶対に先なんだから!

――――あのー、鈴谷お昼行きたいんですけどー?




 瑞鶴対大鳳、両者同時に轟沈判定が出た為、引き分けとす。

865: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/05(木) 22:10:17.67 ID:ck1BX+aW0
・浦風&卯月『こら、あんまイタズラしちゃいけんよ?』

・島風&長波『連装砲ちゃん遊び』

・飛鷹『どこが晴れよ!』

・秋月『質素倹約』

・長良型『ハンデ』

・川内型『休日の過ごし方』

以上六本でお送りします

873: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/06(金) 23:54:06.34 ID:d3Wj4uzP0
・浦風&卯月『こら、あんまイタズラしちゃいけんよ?』 、投下します

普段怒らない子ほど

874: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/06(金) 23:55:09.95 ID:d3Wj4uzP0
――――空母寮。

「タンスとツボの探索は基本だぴょん」

「ツボなんかありゃせんよ?」

「通じなくてもうーちゃんは挫けないでぇーっす。浦風は普段何してるぴょん?」

「そうじゃねぇ……姉さんと一日まったりしとんのが大半じゃ」

「ベッタリ過ぎて嫌になったりしないぴょん?」

「嫌じゃったら一緒の部屋にずっとなんか居らんよ。――こら、そこは姉さんの私物が入っとるから勝手に触っちゃいけんって」

「うーちゃんの探求心がここを探れと――ウヅキイイコダカラココミルノヤメル」

「?」

「うーちゃんのターンはまだ終わってないぴょん! 浦風の私物チェーック!」

「うちの私物調べても面白いもんは入っとりゃせんよ」

「アルバムにレシピノート、家計簿、裁縫セット、髪留め、救急箱、その他小物類……」

「ほら、面白くないじゃろ?」

「浦風が普段どう過ごしているかが良く分かったぴょん。手のかかる姉を持つと妹は大変だぴょん」

「イタズラっ子な妹を持つのも大変じゃと思うよ」

「うーちゃんはイタズラで皆を楽しませてるだけでぇーっす。ぷっぷくぷー」

「卯月も懲りんねぇ……」

「ウサギがこらしめられる話なんてうーちゃん知らないぴょん。ウサギは皆の人気者ぴょん」

「頭グリグリ」

「あーあーうーちゃんには何にも聞こえないっぴょ~ん!」

(霞ですら涙目で謝っとったし、加賀さんのアレに耐えられるんは、やっぱり赤城さんぐらいなんじゃなぁ……)

「気分転換に浦風の下着チェーック!」

「こら、そこは流石にいけんよ」

「うーちゃんもそういうのが気になるお年頃なんだぴょん」

「だからいけんって」

「よよよぉ? これは……」




「――卯月、うちはいけんって言ったよねぇ?」




――――浦風、魂が抜けたみたいな卯月とすれ違ったんだけど、何かあったの?

 ――――ちぃとイタズラが過ぎるから怒っただけじゃて、何も心配いらんよ。

――――あら、浦風でも怒ることあるのね。

 ――――姉さんはうちを仏か何かと勘違いしとらん?

877: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/07(土) 08:25:11.08 ID:rtGpocF90
タイトル変更

・島風&長波『日頃の感謝を』、投下します

ハンドミキサーでやっちゃった

878: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/07(土) 08:25:37.94 ID:rtGpocF90
――――島風用私室(寝具無し)。

「――それで? 保護者じゃなくてあたしに相談って何さ」

「長波って、お菓子作れる?」

「まぁ、それなりには作れるけど……」

「あのね、天津風と提督にあげるバレンタインのチョコを作りたいの。手伝って」

「お菓子作りならあたしじゃなくて、もっと教えるのが上手い奴に聞けばいいだろ」

「だっ、だってお願いするの恥ずかしいし……」

「あたしに頼むのは恥ずかしくないっての?」

「うん、だって長波だもん」

「――分かった、協力するよ。但し、全部自分で作らないと意味が無いし、うまく出来るかの保証はしないぞ?」

「うんっ! ありがとう長波!」

「こっ、こら、苦しいから飛び付くなって……」

「えへへー」

(――まっ、たまにはこういうのも悪くないか)

879: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/07(土) 08:26:03.33 ID:rtGpocF90
「まずはこれを細かく――」

「連装砲ちゃん、ゴー!」

「ゴーじゃないだろバカ! 細かくしろとは言ったが木っ端微塵にしろとは言ってない!」

「えー? だってこの方が早いよ?」

「お菓子作りに早さは必要ないから、普通に包丁でやればいいんだよ」

「……長波、包丁ってどうやって使うの?」

「・・・・・・島風、ひょっとして料理したこと無いのか?」

「無いよ? 天津風か提督がいつも作ってくれてたもん」

(……甘やかし過ぎだぞ、あの二人)

「良く見とけよ? 包丁はこうやって握って、こう使うんだ」
「おぅっ!」




「痛いよ長波ぃ……」

(これ絆創膏だと天津風にバレるし、入渠させるか明石に頼まないとまずいな……)

「――ねぇ長波、料理作るのって大変なんだね」

「大変かもしんないけど、作って美味しそうに食べてもらえたら嬉しいもんだぜ」

「……うん。よーし、頑張るよー!」

「うわっ!? ほ、包丁振り上げたら危ないだろ!」

「あっ、ごめん」




――――あはははっ、長波の髪美味しそー!

 ――――こら! あたしの髪で遊ぶな!

――――かけっこするの? 負けないよっ!

 ――――走り回るとチョコが床に飛び散るからやめろってば! 後で一緒になって叱られるのはあたしはごめんだからな!




 チョコまみれでお風呂。変な妄想をしたり覗いたりしたい方は、天龍に真っ二つにされるか龍田に串刺しにされるかお選びください。

886: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/07(土) 20:26:26.39 ID:rtGpocF90
~小ネタ集~

「二度と浮上出来ないようにしてやる!」

「その台詞と広げた手はなんだ」

「提督さん、阿賀野と一緒にお昼寝しよ?」

(実際問題、寝心地良くてなかなか意識が浮上しないから困るんだよなぁ……)




「提督、お呼びでしょうか」

「あぁ、ちょっと浜風に聞き――何やってんだ……?」

「湯煎です」

「いや、それは見れば分かるんだが……ん? 頬にチョコ付いてるぞ」

「っ!?」

「あっバカ、手を離すなっ!」

「へっ? あっ、わわっ、きゃあっ!?」

(……風呂に入れんとダメだな)




「――アレ? 叢雲?」

「ふっ、吹雪!? いや、これは違うのよ、別にラッピングをどうしようか悩んでなんて……」

「ふーん? 叢雲もやっぱり司令官にはちゃんとあげたいんだ」

「……何よ、悪い?」

「去年みたいに私からが二つにならないように頑張ってね」

「うっさいわね! 普通に渡すわよ!」




「良い雨だね」

 ――こらー! 時雨ー!

 ――もうバカー! 服がチョコまみれっぽいー!

「チョコの雨、皆はお気に召さなかったのかな? 僕はとっても面白いけど」




 その頃地上では、リトが溺れていた。

888: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/08(日) 10:08:44.56 ID:APiJCSzQ0
――――提督執務室。

「――またか」

「またです」

「またみたいですね」

「しかも理由が異文化交流希望って何なんだ、学校か何かかここは……」

「学校というよりはアミューズメントパークね」

「鎮守府っぽくは無いですよね」

「まぁ理由はどうあれ今日既に来てるらしいから、二人も後で会っておいてくれ」

「「了解」」

(ビスマルクの来た時のイメージでは規律にかなり厳しいと思ってたんだが、プリンツに続いてこれだと認識を改めた方がいいのかもしれんな……)




(郷に入っては郷に従え、来たからにはユーも早く慣れないと……あそこは、食堂?)

――――喫茶“第七メイド隊”。




 異文化交流の第一歩、難易度甲。ユーの運命や如何に。

892: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/08(日) 18:01:29.00 ID:APiJCSzQ0
――――提督執務室。

「久しぶりですね、大淀」

「相変わらず鞭が似合いますね、香取」

「うふふ、教鞭と言ってもらわないと私が危ない人みたいじゃありませんか」

「それで? 大本営所属だったはずの貴女が何故ここに?」

「その大本営から提督の指導をしてくれ、と」

「――冗談を言うような性格ではなかったと記憶していますよ、香取」

「あら。ほほう、なるほど、あの大淀にもそういった表情が出来たのですか」

「……」

「うふふ、これからどうするかはここでじっくり考えるとしましょうか。それでは提督、よろしくお願いします」

「あぁ、ここでは好きに生活してもらって構わない。ただ、あまり派手に動くと血の気の多い奴も居るから、そこだけは注意してくれ」

「はい、そうさせていただきます」

(……暫くは、動向に注意が必要なようですね)




――――香取が着任しました。

895: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/09(月) 09:55:03.15 ID:UzlNWqzx0
・飛鷹『どこが晴れよ!』、投下します

時雨の天気予報(雨限定)

896: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/09(月) 09:55:36.89 ID:UzlNWqzx0
――――喫茶店。

「何で店に入った途端やむのよ……」

「俺が知るか」

「天気予報、晴れだったわよね?」

「時雨曰く、“今日は髪が片方だけ跳ねるから時折雨だよ”、だそうだ」

「分かってたなら教えなさいよ」

「まさか本当に当たるとは思わなかったんでな」

「はぁ……髪も服も濡れるし、ついてないわ……」

「髪を前に下ろしたら貞子が出来る特典がついてる」

「お望みならやってあげましょうか? 呪ってあげるわよ、物理的に」

「――あまり身体を前に乗り出すと、濡れて強調されてるのが更に強調されるぞ」

「?……っ!?」

「雨のせいだから俺に非難の視線を向けるな、周りから見られる前には注意しただろ」

「変態」

「不可抗力だ」

897: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/09(月) 09:56:02.85 ID:UzlNWqzx0
――――???

「――で、晴れたと思って店から出て十分でまた降るってどうなってるの? 提督、貴方本当に呪われてないわよね?」

「狐の嫁入りが重なっただけだろ」

「何で傘買わなかったのよ」

「ビニール傘は嫌って言いやがったのはどこの誰だ」

「あんなの使うぐらいなら濡れた方がマシ」

「その結果がここって方が酷いと思うぞ」

「いいじゃない、飲み物もあるし休めるし」

「……シャワー、とりあえず浴びてきたらどうだ? あるものは使わんと勿体無いし、風邪引かれるのは勘弁だしな」

「……そうね」

「――おい、何で腕を掴む」

「提督に風邪引かせたら私が怒られるじゃない」

「後で大丈夫だ」

「い・い・か・ら!」

(撤退は無理、と……外だと禁欲になるってのに、本当に勘弁してくれ……)




――――結局、ここで一日過ごしちゃったわね。

 ――――(……地獄だった)

――――さぁ、帰り……嘘、でしょ?

 ――――……走るぞ、飛鷹。

――――もうっ! 本当に何なのよ今日はぁぁぁっ!

901: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/09(月) 22:43:03.43 ID:UzlNWqzx0
・秋月『質素倹約』 、投下します

連装砲ちゃん○
連装砲くん◎
長十センチ砲ちゃん×

902: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/09(月) 22:43:29.30 ID:UzlNWqzx0
 物が必要最小限しか無く、整理整頓された部屋。悪く言えば殺風景な部屋で、秋月は牛乳パックを再利用して小物入れや家庭菜園用の鉢を作っていた。

 その隣では、長十センチ砲ちゃんが丸めたビニール袋を上に飛ばして対空射撃して遊んでいる。たまに秋月に当たっているが、その度にコツンとつつくだけで、やめさせようとはしない。

 “内職をする母親”、というのが今の提督から見た彼女の印象だ。

「――あの、見ていて面白いですか?」

「面白くはないが、懐かしい」

「懐かしい、ですか?」

「母親が家で内職の様なことをしていたんでな、その横で遊んだり、膝枕してもらったりしていたのを思い出す」

 どう反応するのが正解なのだろうと、微妙な笑みを浮かべた秋月。それを察してか、提督は更に言葉を続ける。

「質素倹約、良い心がけだ」

「使えるものは使わないと、勿体無いです」

「その点については優秀な場所だぞ、ここは。残飯や廃棄物が出ないからな」

「はい、とても素晴らしいと思います。少し、食事が豪華過ぎて気後れしてしまう時もありますけど……」

「ただ高いだけのものを用意してるわけではないし、間宮達なりにコストを最低限に抑えつつ最高の料理を振る舞ってるんだ。遠慮しないで食べるのが、一番勿体無くないぞ?」

「……はい、提督の仰る通りですね」

「勿論、秋月のその倹約精神は貴重なものだ。豪勢に暮らせとは言わんし、ここが無駄だと思ったら俺に遠慮なく言ってくれて構わん。出来る限りのことはする」

「――じゃあ、暖房が勿体無いのでもう少しこちらに来られませんか? ホットカーペットで十分温かいですよ?」

「……秋月に一定以上近付くと何故か長十センチ砲ちゃんに突撃されたり踏まれるんでな、遠慮しておく」




――――長十センチ砲ちゃん、提督にイタズラしちゃダメよ?

 ――――(ボディーガードのつもりなんだろうな……別に何もしないってのに、はぁ……)

918: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 00:00:06.10 ID:sXLbPOOU0
「マルマルマルマル。提督、どうぞ」

「?――あぁ、バレンタインか」

「忘れていたの?」

「忘れていたというか、忘れていたかったというか……」

「ホワイトデー、楽しみにしています」

「毎回地獄なんだぞ、一週間前から準備で大忙しだ」

「では、これは赤城さんに」

「待て、貰わないとは言ってない」

「嫌々受け取られると、流石に私も傷付きます」

「……不意打ちで渡されたから焦っただけだ。嬉しくない訳無いだろ」

「……そう」

「今年は何だ?」

「フォンダンショコラです。赤城さんに試食してもらったので、味は保証します」

「そうか、じゃあ紅茶二人分淹れてくれ」

「二人分?」

「こんな時間に食べさせようとする秘書艦には付き合ってもらわんとな」

「別に構わないけれど……」

「――それにしても、毎回この時期に間宮が取り寄せるバレンタインチョコの材料の量は凄まじいな」

「艦娘全員が別々の場所で買うよりは、効率的で安く済みますから」

「冷やかされたくなくて、わざわざ外に買いに行く奴も居るみたいだがな」

「――どうぞ、それなりに期待して良い出来です」

「紅茶がか?」

「……」

「分かった、分かったから無言で頭を掴みに来るのはやめろ。いただきます」

「……どうかしら」

「――うん、美味い。ほろ苦くてちょうどいいぞ」

「そう」

(最初は市販品。次は手作りだったが甘過ぎ、三回目でまともになって、今は好みに合わせた味……これを受け取って、嬉しくない訳無いよな)

「? 私の顔に、何かついていて?」

「チョコレート」

「そんなはずありません」

「本当だ、ちょっと顔をこっちに寄せろ。取ってやる」

「自分で取れます」

「いいから、ほら」

「……では、お願いします」




――――っ……やはり嘘でしたか。

 ――――ホワイトデーの少し前払いだ。

――――この程度では全然足りません。

 ――――じゃあ続きはコレ、食べてからな。

922: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:13:55.49 ID:sXLbPOOU0
――――マラソン大会スタート地点。

「何で全員参加なの? 長良姉と鬼怒だけ走ればいいのに……」

「阿武隈、そう言わずに付き合ってあげよ、ね?」

「ひっ、人がいっぱい……」

「当たり前よ、マラソン大会だもの」

「よーし、張り切って行こー!」

「目指せ一位から六位独占!」

 名前入りTシャツ阿武隈、マイペース由良、人が多いと目がぐるぐるする名取、揺れる五十鈴、マジパナイ鬼怒、この前まで着れていたデニムが太股から上がらなくなってきた長良。
 長良型六姉妹、揃ってスタート地点につきました。華やかで個性的な彼女達に、周囲の参加者も大会とは別の意味で色めき立っております。

「帰ったらすぐお風呂入らなきゃ」

「提督さん、見てくれてるのかな?」

「て、提督さんが見てるなら頑張らないと……」

「名取、手と足が一緒に動いてるわ」

「もうすぐスタートだよっ!」

「コンディション最高、良い記録出せそう!」

 テンションにバラツキはあるものの、長女を筆頭に個々の能力は非常に高く、記録には期待が持てます。
 ――それではマラソン大会、スタートです。

923: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:14:25.12 ID:sXLbPOOU0
「長良の足についてこれる?」

「相変わらず長良姉の加速マジパナイ」

 先行で飛び出したのはやはり長良、それを追う形で鬼怒、後の四名は少し出遅れたような形となりました。他の参加者もトップを走る長良の後ろに続いたものの、最初から一キロ二分ペースで走るのはハーフとはいえ苦しいと感じ、大半は徐々に速度を落としていきます。

「五十鈴姉さん、何だか周りから視線が……」

「――走るには邪魔よね、コレ」

「え?――っ!?」

「名取、急に早くなったね」

(……私だって、そのうちあのぐらい大きくなるもん)

 遅れていた四人組から最初に飛び出したのは名取、凄い勢いで先頭(人が少ない所)を目指します。何とは言いませんが、加速すると同時にアレも上下にかなり揺れています。

「五十鈴と阿武隈はどうするの?」

「最後で抜けばいいだけよ、焦る必要無いわ」

「このまま団子で走る、皆を風避けにしてれば楽だし」

「じゃあ私もこのまま走ろうかな」

 会話しながら走るというのはかなり体力を消耗し、息も切れるもの。しかしそこはやはり歴戦の艦娘、喫茶店で午後のティータイムを楽しむかのように会話に花を咲かせながら、上位集団に混じっています。

「遅い! 全然遅い!」

「長良姉と私が速すぎるだけだって」

 一位長良、二位鬼怒と続き、後続との差はかなり開いております。当然のことではありますが、一般人と一緒に走るとその身体能力差は歴然となってしまう模様です。

「――お、追い付いたぁ……」

「あっ名取、追い付いたんだ」

「名取姉、後の三人は?」

「最後まで前には出てこないんじゃないかな」

「名取は何で前に来たの?」

「ま、周りに人が少ないから……」




 そして、大会は先行する三人を追う形のまま終盤戦へと突入します。

924: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:14:51.74 ID:sXLbPOOU0
「――そろそろ、いいんじゃない?」

「うん、いいと思う」

「六位以内にならなきゃ後で走り込み付き合わされそうだもんね……」

「じゃあ行くわよ、五十鈴について来て!」

「阿武隈、提督さんに早く会いたいね」

「べ、別に鎮守府でいつでも会えるし、私は心待ちになんかしてないんだから」

 大会も終盤に差し掛かった頃、長く疎らに伸びた走者の列を怒濤の勢いで追い抜いていく三人組。胸に目が行き、揺れる長い髪に目が行き、“阿武隈”と書かれたシャツに目が行き、一呼吸置いてからその速さに走者達は驚きます。

 ――五十鈴さん、陸でも速いでち。

 ――普段はマイペースだけど由良もやっぱり速いのね。

 ――ゴールしたら阿武隈の前髪弄ってやろっと。

925: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:15:18.78 ID:sXLbPOOU0
――――ゴール地点。

「提督ーもうちょいそっち」

「何でわざわざゴールラインの先に居なきゃならない」

「てーとく、いいからこっち来て」

「絶対その方が面白くなるわ。次は私も出場してみようかしら」

「――おっ、来たっぽいよ」

 ゴール目掛けて迫る六つの影。その誰しもがゴールラインの先を見て更に速度を上げる。
 提督目掛けて突撃する者、ゴーヤ目掛けて突撃する者、北上からなるべく遠い場所を駆け抜けようとする者、皆長距離走の締めとは思えない加速だ。

「提督ー! 長良の走りどうだったー!?」

「五十鈴的には間宮さんのアイスよりゴーヤの方が疲労回復に最適だわ」

(提督さんにこんな人前で抱き着いたら迷惑かな……)

「提督さん、受け止めてくれるよね」

「おーい提督ー! 鬼怒の走りマジパナイでしょー!?」

「何で北上さんが居るの!?」




――――勝利勝利大勝利ー! 最高の響よね。

 ――――この後祝勝会でハッスルする?

――――勢い余って頭突きしちゃった……うぅ……。

 ――――名取、ナイスヘッド。

――――阿武隈、私は盾じゃないんだけど。

 ――――だって北上さんが狙ってるんだもん!

926: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:16:07.41 ID:sXLbPOOU0
・長良型『ハンデ』、投下します

長良型は陸上競技にて最強

927: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:17:40.71 ID:sXLbPOOU0
『マイク、音量大丈夫? チェック、ワン、ツー。さぁ始まりました市民駅伝大会。参加者は一般人から学生、社会人、艦娘と幅広く参加しています。この度は鎮守府にも状況が逐一伝わるよう、私、金剛型四番艦霧島が実況を務めさせていただきます』

(長良姉と鬼怒と島風ちゃん達でチーム組めばいいのに……)

『第一走者は胸と背中に自分の名前が書かれたシャツを着た、阿武隈です。やはり前髪を気にしているのか、ペースはややゆっくりといったところでしょうか』

 ――阿武隈っちー手抜いて走ってたら、名前目立たないよー。

 ――阿武隈さん、頑張って下さい。

「き、北上さんと潮ちゃん!?……わ、私だってやる時はやるんだから!」

『応援の効果により、阿武隈の速度上昇しました。このままの調子なら第一区間でも良い順位が狙えそうね』

「阿武隈、御期待に応えまうっ!?」

『おっと、まさかの前方不注意により前を走る選手と衝突した模様です。流石は阿武隈、期待に応えてくれますね』

「そういう意味じゃないもん!」

928: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:18:08.38 ID:sXLbPOOU0
『さぁいよいよ第二走者へとタスキが渡る時間がやってまいりました。ただいま順位は十八位、可もなく不可もなくといったところでしょうか。第二走者は長良型のダジャレ担当鬼怒、ここからの巻き返しに期待したいところです』

「ダジャレ担当じゃないよ!?」

「鬼怒、パス!」

「お疲れ阿武隈。鬼怒、行きまーす!」

『えー今手元にある私の集めたデータによりますと、“パナイ島マジパナイ”を面白いと解答した艦娘は三名だけのようね』

「このタイミングでその話題出す霧島さんがマジパナイ」

『それはともかく早々と二人抜かし、現在順位は十六位となっています。長女程ではないにしろ、日頃トレーニングしている成果が出ている模様です』

「このまま一気に順位を上げるよ!」

 ――鬼怒、頑張るクマー。後十五人抜くクマー。

 ――抜けない鬼怒はただのおにおこにゃ。

「無茶振りやめて二人とも。後、多摩はおにおこ言うなっ!」

『暖かい声援を受け、第三走者へと良い順位でタスキを繋ぐ為に更に速度を上げます。両腕を上げながら走る彼女のパフォーマンスにも期待したいところです』

「だから無茶振りやめてってば!」

929: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:18:34.35 ID:sXLbPOOU0
『駅伝大会も中盤戦、第三走者は長良型のマイペースクイーン由良。今、彼女へとタスキが渡ります』

「ごめん由良姉、思ったより順位上がんなかった」

「お疲れ様、後は任せて」

『さぁ現在順位は更に二つ上がって十四位。まだまだ一位を狙うのも不可能ではありません』

「タスキって、右肩からかけるの? 左肩から?」

『駅伝では正式なタスキのかけ方に関するルールは無いようね。由良の好きなかけ方でいいんじゃないかしら』

「うん、じゃあ右肩からかけようかな」

『私のデータによると、司令に物をねだるのが上手という意外な一面もあるようです』

「ずっと見ていると、何故か買ってくれるの」

『司令曰く、“あの視線に逆らえた試しが無い”そうです。その粘り強さがこの駅伝でも発揮されることを期待しましょう』

「頑張ったら提督さん、褒めてくれるよね、ね?」

『褒めない方がおかしいかと』

「うん、とりあえず一桁まで頑張る」

『流石は司令効果、データ以上の速さで走り始めました。このペースなら順位を一桁まで上げるのは私の計算上可能ね』

(提督さんに会ったら夕立ちゃんのマネ、してみようかな)

930: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:19:01.06 ID:sXLbPOOU0
『有言実行、九位で第四走者名取へと由良のタスキが渡ります』

「名取、はい」

「頑張ったね由良。私も頑張らなきゃ」

『普段は気弱な性格ではありますが、いざ戦場に立つと並々ならぬ実力を発揮した長良型のメイン家事担当。彼女が一日部屋を開けると何がどこにあるか分からず阿鼻叫喚になるそうです』

「だって、皆覚えてくれないんだもん……」

『そして何より注目すべきはやはりブルマでしょう。ハーフパンツが主流の中、長良と名取だけは昔ながらのブルマを愛用しています』

「こ、コレじゃないと何だか走りにくいからで、別に愛用してるわけじゃないです」

『走りにくいと言うだけあってブルマを履いたその足は速く、一気に八位の走者へと距離を縮めます。観客からも見た目とは裏腹な身体能力に、感嘆の声が上がっているようね』

 ――揺れてるな。

 ――あぁ、揺れてる。

『(……名取には黙っておいてあげましょう)』

「お、応援ありがとうございます!」

931: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:19:29.51 ID:sXLbPOOU0
『とうとう駅伝大会も終盤戦。名取が五位に迫る追い上げを見せ、タスキは長良型の潜水艦係、五十鈴へと渡されます』

「五十鈴姉さん、お願い!」

「任せて、五十鈴にはもう勝利が見えているわ」

『当鎮守府で待機組に含まれない影の実力者の一人、彼女の未来予知とも思える戦いがこの駅伝大会でも披露されることを期待しましょう』

「追撃戦は十八番よ。五十鈴の韋駄天さも見せてあげる」

『瞬く間に一人追い抜き、現在の順位は五位。四位を捉えるのも時間の問題ね』

「あら、四位なんてもうとっくに捉えてるわ。二位までは確実、後はアンカーに委ねて終わりよ」

『自信に満ち溢れた発言、それを慢心とも思わせない素晴らしい走りを見せています』

 ――さ、さっきより更にすげぇ……。

 ――アレで良く走れるな。

 ――五十鈴さん、頑張って。

「ふふふ、帰ったらたっぷりあの子達で補給ね」

 ――ゴーヤに疲労回復効果は無いでちよ!?

『私のデータによると、潜水艦娘と過ごした次の日の五十鈴のコンディションは常に最高です』

932: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:19:57.00 ID:sXLbPOOU0
『遂にこの時がやってまいりました。いよいよ最終走者、長良へと五人分の想いを乗せたタスキが繋がれます』

「舞台は整えてあげたわ。後はよろしく」

「最高のお膳立てありがと五十鈴!」

『一位との差は約二分。かなり絶望的な状況ではありますが、彼女ならやってくれるでしょう』

「追撃します! 逃げる隙など与えません!」

『島風と陸の上ならば互角に渡り合えるその速さは正に神速。駅伝で区間は限られているとはいえ、最初からトップスピードで駆け抜けます』

「遅い! 全然遅い!」

『声援が届く前に過ぎ去るかのような走り、既に一位との差はかなり詰まっています。しかし、流石は現在一位チームのアンカー、逃げ切ろうと相手も速度を上げました』

「よーし燃えてきたぁー!」

『追い上げる、追い上げる、まだまだ追い上げる。ラスト五百メートルで差は五十メートル、勝つのは彼女か、セリフすら無いモブAか!』




――――今、ゴールテープが切られました! 勝利を手にしたのは――。

933: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 10:20:24.53 ID:sXLbPOOU0
「勝利勝利大勝利ー! 最高の響きよね!」

「いくらハンデとはいえ、これを着けて走るのは二度と勘弁だわ」

「うん、重かった……」

「コレって、重いの?」

「この重り気にならないとか由良姉マジパナイ」

「きっ、北上さん近くに居ないよね?」




 艤装よりは軽いけど陸だと重い。長良型は(姉妹艦の多さと日頃の長女のトレーニングに付き合わされていることにより)陸上競技にて最強。

941: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 11:43:04.81 ID:sXLbPOOU0
「司令官、はい、チョコレートよ」

「雷マークのチョコケーキか。また凝ったのを作って来たな」

「当然じゃない、この雷様が毎年同じものを作るとでも思ってたの?」

「去年は文字クッキーだったか」

「アレは型抜きだし皆で作ったから簡単だったわ」

「――少し甘めだが、しつこくなくて食べやすいなコレ」

「味見役に木曾さんに協力してもらったの。木曾さんもほろ苦いの好きだって聞いてたから」

(球磨のケーキを今頃ホールで食ってるんだろうな、アイツ)

「ねぇ司令官、来年はどんなのが食べたい?」

「そうだな……冬っぽいのとかいいかもしれん」

「分かったわ司令官、来年も楽しみにしててね。私、うーんと頑張っちゃうから」

「あぁ、楽しみにしておく」




 本日ミニホール二つ目。

942: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 12:26:50.09 ID:sXLbPOOU0
「司令、今日はばれんたいんとやららしいからチョコレートを浜風と作ってみた。食べてくれ」

「は、浜風は試食したのか……?」

「あぁ、食べていたぞ。“一挙手一投足に至るまで目を離さなかった甲斐があった”と涙ぐんでいた。少し大袈裟だと思わないか?」

(浜風、よくやった!)

「いつまでも見ていないで食べてみてくれ。早くしないと溶けてしまう」

「あぁ、今食べる」

「――どうだ司令、最後にかけたタバスコが程よく甘さを抑えてくれているだろ?」

「っ~~!?」

「……甘いのが苦手と聞いたからタバスコを最後にかけたんだが、何かまずかったのか?」




 磯風はタバスコがお好き。

944: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 12:59:46.02 ID:sXLbPOOU0
「提督、私もチョコレートを作ってみましたのでどうぞ」

「わざわざ他の奴が俺に作ってるからって、お前まで作らなくても良かったんだぞ?」

「いえ、皆さんが作った時に微妙に残ってしまった材料をかき集めて作ったものですので、気になさらないで下さい」

「まぁ確かにボウルとかに多少残るが……全員のところを回ったのか?」

「はい、その時に試食もしていけと皆さんがチョコを下さったので、今月は少し甘味は控えようと思います……」

「チョコレート、美味しかったか?」

「はい!」

「そうか――甘いな、このチョコ」

「も、もしかして提督は甘いチョコは苦手でしたか……?」

「いや、味はほろ苦い」

「甘くて、苦い?」

(わざと余らせたなアイツ等。全員の思いが籠った、優しい味のするチョコだ)




 普段は綺麗に舐めたりパンに付けて処理しています。

945: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 13:31:00.22 ID:sXLbPOOU0
「司令官、チョコレートです」

「三角巾とエプロンってことは、ついさっき作ったのか。でも、冷ますのはどうしたんだ?」

「たった今冷めたので、切り分けて持ってきました」

「……お前、ひょっとして冷めるまでずっと冷蔵庫の前で待ってたのか?」

「はい、司令官に出来立てを食べて頂きたかったので」

「あぁ、じゃあ早速もらう」

「だいぶ慣れてはきましたが、やはりお菓子作りはまだ不安が多くて、あの、お味はどうでしょうか?」

「――うん、ココアパウダーがチョコレートそのものの甘さをちょうど良い甘さに抑えていて美味い。食感も生チョコだから柔らかくて食べやすいな」

「本当ですか? 一週間前から試作に試作を重ねておいて良かったです」

「一週間前から作ってたのか……朝潮、口開けてみろ」

「?」

「そんなに作って疲れただろ。さっき間宮から貰ったチョコ飴だ、お前にやる」

「はひはほうほはいはふ」

「来年も期待してるぞ、朝潮」

「はひっ!」




 試作品は朝潮型で美味しく頂きました。

946: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 14:01:06.57 ID:sXLbPOOU0
「司令官、少しお時間いいですか?」

「春雨か、何だ?」

「チョコレートヲ渡シタインダヨ、ソレグライ察シロ」

「クーちゃん!?」

「そりゃそうか。ありがとな春雨――まさか、チョコ春雨とかじゃないよな……?」

「ちっ、違います」

「それなら安心だ。今、ここで食べた方がいいか?」

「出来れば、感想も聞きたいので」

「じゃあ早速――ん? これは……」

「チョコポテトチップスにしてみました。以前に食べているのをお見かけしたので大丈夫かなと思って……あの、ダメでしたか?」

「いや、変化をつけてくれるのは正直有り難い。やっぱりどうしても同じ物ばかりは段々キツくなってくるんでな、いただきます」

「ど、どうでしょうか?」

「うん、塩気もキツすぎず、かといって甘過ぎず、甘じょっぱくて良い感じだ。チョコで食感が重くなってもいないし、美味いぞ」

「良カッタナ」

「うん、クーちゃんにも後であげるね」

「――サッキソイツガ言ッテイタチョコ春雨トヤラ、実際ニ作ッテミナイカ」

「えっ?」

(流石にそれだけは美味しいとは思えないんだが……)



 チョコ春雨、ここに封印する。二度とその姿を見た者は無かった。

959: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 19:33:25.59 ID:sXLbPOOU0
「提督、チョコは……いりませんよね?」

「何故そうなる」

「もうだいぶ召し上がっているようですから」

「身体がチョコになりそうではあるが、好意を無下にする気は無い」

「――では、気合いを入れて下さいね?」

「・・・・・・は?」

「バケツプリンというのがありましたので、バケツで作ってみました」

「待て、いやちょっと待て、流石にこれは食いきれんぞ」

「好意を無下にはしないと仰ったばかりですよ?」

「……何が狙いだ?」

「どうしても食べきれないのでしたら、私に食べさせて下さい」

「九割お前の胃袋に入れることになるぞ、コレ」

「それは大変ですね」

「嬉しそうに言うな」

「――食べさせ方は、提督にお任せします」

(……うちの一航戦が時折子供っぽくなるのは、良いこと、なのか?)




 一時間ほどかかりました。

963: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 20:53:38.81 ID:sXLbPOOU0
「司令官」

「早霜か、お前もバレンタインのチョコか?」

「えぇ、良ければ受け取って下さるかしら」

「あぁ、有り難くもらう」

「こういった物を作るのは初めてだから、お口に合えばいいのだけれど……」

「これは――キャラメルか?」

「はい、キャラメル、美味しいですよね」

「キャラメルはキャラメルでも、普通のじゃないな……イチゴチョコのキャラメルか」

「お味は、どうでしたでしょう?」

「イチゴの程好い風味が口に広がって、しつこくもなくちょうどいい」

「ンフッ……フフフッ……そう」

「夕雲や他の艦娘にはあげたのか?」

「えぇ、姉さん達と清霜、那智さん、弥生さん、不知火さん、ヲーちゃんには渡したわ」

「来年はもっと作って、他の奴にも渡してみろ」

「……努力は、してみます」




 私室に置いてきた残りは全部巻雲に食べられていた模様。

964: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 20:54:06.04 ID:sXLbPOOU0
「ほらよ」

「おっと、毎年の事だが投げ付けるのはやめろ。落としたらどうする」

「いいからさっさと食えよ」

「お前のは毎年安定してるからな、特に心配も無く食える」

「ウザい、黙って食え」

「――苦いな、やっぱり九十九パーセントは伊達じゃない」

「わざわざこの摩耶様が毎年作ってやってんだ。来月はしっかり返せよな」

「半分鳥海に手伝って貰ってるようだし、鳥海にその分多く返すとするか」

「……こっ、今年はアタシが一人で作ったんだぞ、それ」

「知ってるぞ、先に鳥海に聞いたからな」

「おまっ!? 知ってたんなら先に言いやがれっ!」

「本人から聞いてこそ意味があるだろやっぱり。とうとう“鳥海に付き合わされて”、が使えなくなったな」

「っ……クソがっ、ホワイトデーのお返し覚えとけよ!」

「あぁ、ちゃんと考えてるし覚えてるから安心しろ」




 摩耶様、初めて一人でのチョコ作り。

965: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/14(土) 21:52:24.68 ID:sXLbPOOU0
「司令官、青葉の本命チョコです!」

「その言い方だと義理も誰かに渡したことになるが、誰にだ?」

「出版関係の人達ですよ? やだなー司令官、ひょっとしてヤキモチですか?」

「そうだって言ったらどうする?」

「……あー、ちゃんと渡せましたし、青葉はコレで失礼しちゃうね」

「まぁ待て青葉、まだ食べた感想を一言も言ってないぞ」

「じゃあ一言お願いします今すぐお願いします」

「コーヒーが欲しくなったから淹れてくれ」

「……司令官の意地悪」

「何の事か分からんな」

「ニヤニヤしながら言っても説得力無いよ!」

「いや、耳たぶが赤いから外が寒かったのかと心配してるんだ」

「もうっ! いいから早く食べて下さいよ!」

「分かった、分かったから叩くな。――青葉らしいな、カメラの形のチョコクッキーか」

「メモ帳とペンも考えたけど、青葉にあの二つの再現は難しすぎました……」

「うん、味も良い。これなら全部簡単に食べられそうだ」

「クッキーも、チョコも、青葉にお任せ!……なんちゃって」




 可愛かったので少し取材してから帰しました。

967: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 08:23:03.03 ID:vVyxVwG70
「木曾はチョコスフレか」

「お前に合わせて作った、ちゃんと食えよ?」

「心配するな、ちゃんと食う」

「コーヒー、淹れてやる」

「あぁ、頼む」

「姉貴達にはもう貰ったのか?」

「貰ったぞ。年々球磨のがアートみたいになってきてて、若干食べるのに気が引ける」

「俺にはあそこまでの器用さはないから羨ましいよ」

「そこで羨ましがるだけじゃなく努力するから、こうやって俺は美味いチョコスフレを食べられてる」

「……いくら今日がバレンタインでも、甘い言葉はいらないぞ?」

「じゃあ口直しにコーヒーかチョコスフレ、一口どうだ?」

「お前の魂胆はお見通しだ。いらないね、そんなものは」

「そうか……少し残念だが、仕方無い」

「――まぁ、ちょっとばかしなら付き合ってやっても、いいぜ?」




 食べてるものは苦い、食べてるものは。

973: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 13:26:26.51 ID:vVyxVwG70
・川内型『休日の過ごし方』 、投下します

揃ってオフなら出掛ける三人

974: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 13:26:55.19 ID:vVyxVwG70
――――ゲームセンター。

「神通ー! 那珂ー! こっちこっちー!」

「姉さん、あまり大きな声で呼ばないで下さい……」

「アイドルの那珂ちゃんだってバレたら大変だよー?」

「いいじゃんいいじゃん。ほら、これやろうよ」

「ダンスゲーム、ですか?」

「あっ、那珂ちゃんこれ知ってる」

「画面の矢印があそこに重なるのに合わせて同じ床のパネルを踏むだけ、これなら簡単でしょ?」

「ルールは分かりましたけど、ゲームをやったことのない私に出来るでしょうか……」

「神通お姉ちゃん、アイドルは何でもやるチャレンジャー精神が大事だよ! って訳でゲームスタート」

「えっ、あっ、まだ心の準備が――」




(うんうん、流石は神通だよね。――ちょっとスイッチ入っちゃってるけど)

「リズムとタイミングは把握出来ました。次、この曲にします」

「な、那珂ちゃん今日そこまで激しく動ける服着てきてないよっ!?」

「ようやく、身体が火照ってきました」

「これ戦うゲームじゃないよねっ!?」




 終わってからギャラリーの多さに逃走する神通でした。

975: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 13:27:23.95 ID:vVyxVwG70
「次は私とコレやろうよ」

「今度は、ガンシューティング……」

「(ね、ねぇ川内お姉ちゃん、コレ大丈夫かな?)」

「(大丈夫大丈夫、完全にスイッチ入ったりしないって)」

「持った感じが軽いので、照準が合わせにくいかもしれません」

「それもやってるうちに慣れると思うよ。じゃあゲームスタート!」




「弱点を見せましたね、次発も装填済みです!」

「(スイッチ、入っちゃってるよ?)」

「(あはは……帰ったらおとなしく演習付き合おっか)」

「ふぅ、クリア出来てしまいました。――名前入力? 2…S…S、と」

「何で2SSなの?」

「二水戦、だよね?」

「はい、他に思い付かなかったので」

「じゃあ結構遊んだし、そろそろ帰ろっか」

「あ、あの……」

「分かってるよお姉ちゃん、帰ったら演習でしょ?」

「そうじゃなくて、夕飯の買い物をして帰らないと、冷蔵庫に何も無かったはずです」

「じゃあカレーの材料買って帰って、三人で作ろうよ」

「はい、二人がそれでいいなら」

「那珂ちゃんはー手が荒れるからあんまり料理は――」

「那珂? やっぱり演習しますか?」

「那珂ちゃん料理頑張ります!」




「――神通さんか、相手にとって不足はない」




 謎のWKBから神通がライバル認定を受けました。

979: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 15:02:02.70 ID:vVyxVwG70
「提督、チョコレートです」

「レンジは爆発しなかったか?」

「アレは最初の一回だけ、いい加減その話は忘れてちょうだい」

「どうせお前のことだから浦風に大量に作って部屋に置いてきたんだろ」

「今年は浦風には一つしか作ってないわ」

「俺のがこのトリュフ、ってことは別に作ったってことか。何を作ったんだ?」

「特大チョコフレンチクルーラーよ」

「それ、今頃どうやって食べるか悩んでるんじゃないか?」

「それより今は早く提督が食べてくれないかしら」

「それもそうだな、じゃあ遠慮なく――手で溶けず、口で溶ける、柔らかさはバッチリだな。口に残る感じもそこまでじゃない」

「そう、気に入ってもらえて良かったわ。――提督、たまに思うんだけど、バレンタインが冬じゃなかったらどうなってたのかしら?」

「一つだけ確かなのは、チョコレート以外が贈る物として選ばれてただろうな」




 その頃浦風はナイフとフォークを手にしていたそうな。

980: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 15:02:42.19 ID:vVyxVwG70
 ――どしたのぼのぼの。

 ――別に、何でも無いわよ。っていうかぼのぼのって私のこと?

 ――とりあえずどーん!

「きゃっ!? いったたた……何すんのよ漣!」

 ――御主人様にチョコレートを持った可愛い曙ちゃん一名様ご案内~。

「――と、漣が言ってるが、くれるのか?」

「……はい、コレ」

「ありがとな曙。じゃあ早速――花の形のチョコレート、か」

「わざわざ手間かけて作ったんだから全部ちゃんと食べなさいよ、このクソ提督」

「言われなくてもそのつもりだ」

「ふんっ、チョコレートの食べ過ぎで鼻血出しても知らないから」

「――曙、ティッシュ」

「は? えっ、本当に出たの? 軽く下向きなさいクソ提督」

「悪い、今すぐは全部食えそうに無い……」

「バカなこと言ってないで大人しく鼻摘まんでれば。全く、余計な手間かけさせないでよね」




 鼻血を口実に暫く居座ったのは内緒のお話。ぼのぼのわさわさ。

981: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 15:03:23.20 ID:vVyxVwG70
「提督よ、一応今年も作ってみたが、食うかい?」

「お前は毎回絶対それだよな」

「それだけ自慢の一品ってことさ」

「――しっとりとした食感、しつこさを感じさせない甘さ。確かに完成されてるし、毎年コレでも飽きないって味だ」

「欲しいなら何本でも作ってやるぜ。私もどうせ食べるから、いくらあっても問題はない」

「お前のカステラ好きも大概だな」

「これでもうら若き乙女だからな、私が甘いものに目が無くてもどこもおかしくはないさ」

「うら若き乙女が冬場でもサラシ一枚で外を歩くとか聞いたことが無いんだが?」

「いや何、冷えたら惚れた男に暖めてもらえばいいだけの話だろ?」

「ホットチョコかけてやろうか?」

「……流石にそういう趣味は無いんだが、相棒が望むというなら、まぁ、考えないこともない」

「冗談に決まってるだろ」




 やるならお風呂にしましょう。



次回 【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」