前回 【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」

12: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 23:13:20.56 ID:vVyxVwG70
――――艦載機保管庫。

「ピカピカ、デキタ」

 今日も今日とてほっぽちゃんは艦載機を整備しながら、毎日必ず来る空母の誰かを待っています。

 そして、今日もまたドアの開く音に目を輝かせながらほっぽちゃんは振り向きます。

「オ菓子、置イテ……ケ?」




「――久シブリダナ、北方」



――――翔鶴、遠方偵察中。

(今日も異常無し。帰って瑞鶴にご飯作らないと)

「――あら? アレ、何かしら?」

 ――モウッ! 何デ私バカリ追イカケルノダコノ鳥達ハッ!

「……助けた方が、良いのよね?」



――――海岸。

「あ、あの、大丈夫?」

「腹減ッタ……死ヌ……」

「クッキーで良ければありますけど、食べますか?」

「食ウ!」

「ひゃあぁぁぁぁっ!? 指ごと食べないで下さいぃ」

「オイヒイゾ、コリェ」

「んぅ……指、離してもらえないでしょうか……」

「――ムグムグ」

「ひゃあぁぁぁぁっ!?」

(面白イカラモウ少シコウシテヨッカナ)

引用元: ・【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」 



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13: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/15(日) 23:14:15.37 ID:vVyxVwG70
――――提督執務室。

(何だこの状況は……)

「北方、元気ニシテイタカ?」

「シテタ!」

「ソウカ」

「瑞鶴、そんなに似てる?」

「うん、翔鶴姉っぽい」

「勝手ナコトヲ言ウナ。似テナドイナイ」

(鳥に追い掛け回されてたところとか、そっくりだと思うけど)

「あの、私の指は食べ物じゃ……」

「ムグムグ」

「んぅ……やめて下さいぃ……」

(癖ニナッチマウナ、コレ)




――――港湾棲姫、空母水鬼、レ級がまとめてやってきました。

27: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/16(月) 09:34:03.86 ID:biMntBZ00
「浦風、世の中って残酷ね」

「姉さん、元気出すんじゃ」

「私にも何かもっとこう、インパクトがあればいいのかしら……」

「姉さんは今のままでも十分魅力的じゃて」

「髪をお団子にしてみる? いえ、それだとあの強烈な個性の那珂と被るわ。それなら露出を多く――ダメだわ、雲龍みたいな服は羞恥心が邪魔してしまう……」

(姉さんがこのまま考え込んで突拍子もない色物になってしまうんは、うち嫌じゃ……)

「スク水空母、メイド空母、全身タイツ空母……どれもピンと来ないわね」




 今のままがいいと泣かれたので思い止まりました。

28: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/16(月) 09:34:35.84 ID:biMntBZ00
「これは、ありとあらゆる可能性を映し出す鏡」

「不幸だったり、幸せだったりするです」

「覗く、覗かない、自由です」

「見て嫌な気分になっても保証しないです。悪しからず」

「最初の実験台、誰がなるです?」

「秋月さん、決まりです」

「――●●●なのでも、最後まで見届けるですよ?」




――――まだ関係がそこまでに至っていない艦娘には、その場面しか映らない深刻なエラーが発生しています。

53: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/16(月) 22:32:27.95 ID:biMntBZ00
 “勿体無いですから”、そう口にしながら彼女はケッコンカッコカリすることを望んだ。冗談の様に聞こえるが、その言葉に嘘偽りは一切無い。

 ――もしまた戦いが起こった時、余分に燃料などを消費するのが勿体無い。

 ――今一歩踏み込ませてもらえず、最後の壁を越えられない時間が勿体無い。

 ――秘書艦日に一人で部屋に戻ると、光熱費が勿体無い。

 次々と並べられる“勿体無い”に、その精神を尊重すると言った提督が折れるまで、そう時間はかからなかった。
 この鎮守府に来て初めて、秋月が“欲しい”と口にしたもの。それは、彼との絆なのだった。




「暖房なんていりません。こうすれば、暖かいですから」

 ――少し欲張りになった彼女を、誰も責めはしない。

55: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/17(火) 12:37:45.20 ID:W9TMoAyZ0
――――海上。

(今日も良いお土産が手に入りましたし、加賀が怒る前に急いで戻らないといけませんね。――あら?)

「アレは、対空射撃でしょうか……。あそこは無人島だったはずですが」

 何かトラブルかもしれないと、赤城はその無人島へと慎重に近付いて行く。万が一、また何かしらの施設が秘密裏に作られているなら、それを彼女が見過ごしておけるはずもない。

(音から判断するに一人、出来れば抵抗などはしないでくれると有り難いのですが……)

 終戦後も、最近までは戦いに身を置いていた赤城。たった一人相手に遅れをとることなど有り得ないが、同じ艦娘を攻撃するような事態は避けたいというのが本音だった。
 勿論、何らかの事情でここに流れ着いて出られなくなったはぐれ艦娘の可能性もあるので、警戒されないよう艦載機を発艦させずに音のした方へと近寄っていく。
 そして、少し開けた場所に出た赤城の視界に飛び込んできたのは――。




「お腹……空きましたぁ……」

 土で汚れ、木の枝でところどころ破けている緑色の着物を着た、自分に馴染みのある名前を持った艦娘のへたり込む姿だった。




――――対空射撃で鳥を落とそうとしていた天城が保護されました。

79: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/18(水) 09:43:58.74 ID:ENCE7F3n0
~川内の場合~

『提督、朝だよ。私だってちゃんと起きてるんだから、ほら起きて』

『何? まだ寝てるの? ははーん、さては昨日夜戦したんでしょ? いいのいいの、隠さなくっても』

『やっぱり夜戦はいいよねー。提督、今から行くから私と夜戦、する?――って今は朝か。朝戦って、あるの?』




~神通の場合~

『あの、朝です。提督、起きて下さいね?』

『提督、起床時間を過ぎています。起きてもらえないと、その……困ってしまいます』

『昨日は寝るのが遅かったのでしょうか……。提督、早く寝るには、適度な運動が効果的ですよ。今から、お誘いしに行きますね』




~那珂の場合~

『艦隊のアイドル! 那珂ちゃんの目覚ましボイスだよっ、キャハ! 提督、早く起きて那珂ちゃんに会いに来てね?』

『那珂ちゃんはーアイドルだからースケジュールを守ってくれなきゃ困っちゃうんだよー?』

『仕方無いなー那珂ちゃんスマイルを朝一番に見たいなんてすっごく贅沢なんだよ? 次からはーちゃんと予約しておいてね? 色々予約特典付けて、あ・げ・る、キャハッ!』

87: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/19(木) 12:50:51.60 ID:CDkHiezA0
・ヴェールヌイ『ハラショー、これは良い湯だな』、投下します

やっぱり姉妹

88: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/19(木) 12:51:20.89 ID:CDkHiezA0
「司令官」

「んー?」

「どうして頭をポンポンしてるんだい?」

「髪を上げてるのが珍しかったんで手が勝手に、な」

「……司令官は髪を触るのが好きな変態さんなのです」

「グサッと来るからやめろ」

「冗談だよ、電に似ていただろ?」

「よく似てたぞ。二人から言われたみたいに思えて余計にキツかったぐらいには」

「そう拗ねないでくれ司令官。本当にそう思っているなら、こうして一緒に温泉に入ったりしないさ」

「――なぁ、ヴェールヌイ」

「何だい?」

「前は恥ずかしいって一緒に入るの嫌がってたよな?」

「そんな時もあったね」

「何で入ろうと思う気になったんだ?」

「見られても恥ずかしくなくなったからだよ」

「……普通、逆じゃないか?」

「未成熟な子供の身体を見て司令官が興奮するというなら、見せたかもしれないな」

「割と本気で悩んでる問題だからやめてくれ」

「……こうして意識してしまうと、流石に恥ずかしいな」

「ここに帽子は無いから、顔が赤いのは隠せんぞ」

「――司令官」

「何だ?」




「今にも逆上せそうだ」

「今すぐ上がれ、そんなハプニングはいらん」

89: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/19(木) 12:51:46.42 ID:CDkHiezA0
「――どうだい、司令官」

「くるっと回ってポーズを決めたのが可愛かったな、もう一回」

「……夕食の準備が出来ているだろうから、早く戻ろう」

「浴衣姿も可愛いぞ」

「司令官、どうしても廊下で寝たいというなら止めはしない」

「照れ隠しに部屋を追い出そうとするのはやめろ。凍え死ぬ」




「ハラショー、コイツは料理人の腕を感じる」

「一応どっかの爺さん行きつけの旅館だからな。サービスから何から何まで一流だ」

「司令官、マグロとイカを交換しよう」

「別に構わんが」

「交渉成立だね――じゃあ、はい」

「……お前、交換がしたかった訳じゃないだろ」

「何の話だい? とりあえず、早く口を開けてくれると助かる」

「分かったよ、ほら」

「――うん、新鮮で美味しいな」

「・・・・・・仕返しか、おい」

「どうしたんだい、司令官」

「俺もしてやろうと思ったが、やらなくていいな」

「司令官、心の狭い男は嫌われるよ」

「嫌いか?」

「そう聞きながら準備する司令官は、嫌いじゃない」

「……ほら、イカだ」

「スパシーバ」




――――すぅ……すぅ……。

 ――――(二人きりになると途端に甘えてくる辺りは、姉にそっくりだな)

――――流石にそれは……恥ずかしいな……すぅ……。

 ――――……寝言、だよな?

90: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/19(木) 12:52:17.79 ID:CDkHiezA0
~高雄の場合~

『提督、起床時間です。本日はどういたしましょう』

『えーっとえーっと、高雄、まだ待機していた方がよいでしょうか?』

『私の秘書艦日が、今日で良かったわ。提督、今から起こしに参ります』




~愛宕の場合~

『ぱんぱかぱーん! 提督、朝ですよ~』

『提督、ちょっと起きるの遅すぎじゃないかしらー?』

『んもぅ、提督ったら意外とお寝坊さんなんだから。新妻ルックで起こしに行くから、待っててくださいね?』




~摩耶の場合~

『おい、朝だから起きろ』

『チッ、起きろって言ってんだろ、クソがっ!』

『よーし、あたしに喧嘩売ってんだな? 今から起こしに行くから覚悟しとけよっ!』




~鳥海の場合~

『司令官さん、起きて下さい。朝ですよ?』

『私の計算では、これ以上寝ていると艦隊運営に支障が出てしまいます』

『この時間まで寝ているということは、司令官さんは相当お疲れなんですね。明石さん特製栄養ドリンク、お持ちします』

112: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/20(金) 17:21:26.88 ID:xXZCE1700
・空母水鬼&翔鶴『被害担当深海棲艦』 、投下します

五航戦が三人

113: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/20(金) 17:21:53.73 ID:xXZCE1700
「空母水鬼だから……スイ?」

「翔鶴姉、それだと似た名前の子が来たら紛らわしくない?」

「“子”トハ何ダ。子供扱イハヤメテモラオウカ」

「だって、アンタ達ちっこいし」

「黙レ、オ前ノ方ガ子供ダロウ」

「何ですって!?」

「瑞鶴、喧嘩しちゃダメよ?」

「だってコイツが私のこと子供って言うから……」

「ソウイウトコロガ子供ダト言ッテルンダ。モウ少シ落チ着キヲ持テ」

「ふふっ、瑞鶴に子供っぽいところがあるのは確かね」

「翔鶴姉までやめてよ、私もう子供じゃないってば」

「拗ネル辺リ、ヤハリ子供ダナ」

「何よ、鳥に追われて泣きべそかいてたのを翔鶴姉に助けられた癖に」

「誰モ泣イテナドイナイ。アノ程度、嵐ニ巻キ込マレタリ、漁船ニ轢カレカケタノト比ベレバドウトイウコトハナイゾ。全ク、何故私バカリガアンナ目ニ……」

(やっぱりコイツ、ちょっとだけ翔鶴姉に似てるかも)

「――スイカク」

「? 翔鶴姉、何?」

「その子の名前、スイカクっていうのはどうかしら?」

「翔鶴姉がいいって言うなら私はいいけど、アンタは?」

「スイカク、カ……何故カハ分カラナイガ、ソノ名ニ抵抗ハナイ」

「じゃあ決まりね、貴女は今日からスイカクよ。よろしくね、スイカク」

「名ヲ貰ッタコトニハ感謝シテオクガ、馴レ合ウ気ハ無イ。ソコハ勘違イシナイデキャンッ!?」

「五航戦の二人、空母水鬼を提督のところに連れて行く時間は既に過ぎて――?」

「ウゥ……痛イ……ドウシテ私バッカリ……」

「加賀さん、毎回だけどノックしてから入って来てくれない?」

「気配で私が来るのを気付けないようではまだまだね」

「スイカク、大丈夫?」

「大丈夫ナ、訳ガ、無イダロウ!」

「涙目で地団駄踏む翔鶴姉ってあんな感じなのかな?」

「また手のかかる子が増えるというの? 大概にして欲しいものね」

「手ニ持ツナ! 私ハ一人デモ大丈夫ダ!」

「その調子だと提督の執務室に着くまでに猫に追いかけられてしまいそうだけど、いいの?」

「……今回ダケダゾ?」




――――見た目が翔鶴で中身は二人を足した感じか、面白いな。

 ――――コンナ奴等ト一緒ニスルナ。

――――うふふ、スイカクったら。

 ――――(むぅ……)

――――(本当に、手間が増えそうね……)

114: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/20(金) 17:22:19.73 ID:xXZCE1700
~伊勢の場合~

『提督、朝ですよ。飛行甲板も朝日浴びてピッカピカ!』

『まだ寝てるの? 寝入りが悪いなら運動がてら刀の素振りとかってどうかな? いける?』

『提督が寝坊ってどうなのさ日向――っていない!? 何でこんな時だけ素早いのよ、私が起こしに行くから日向はここで待っててってば!』




~日向の場合~

『提督、起きる時間だ』

『これからは早寝早起きの習慣が大事だな』

『君、まだ寝てたんだ。私に出来る範囲は済ませておいたから、後は自分でちゃんとやるんだぞ?』




~扶桑の場合~

『提督、朝ですよ。起きて下さいね』

『少し今日は寝坊されているのかしら? 妹の山城共々、待機しておきますね』

『あのー……提督? 提督ー?――扶桑、ここに待機しています。貴方の側に、これからもずっと……』

119: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/20(金) 20:25:59.87 ID:xXZCE1700
~陽炎の場合~

『おはよ司令、起きる時間になったわよ』

『司令、まだ寝てるの? あまり遅いと怒るわよ』

『司令、司令ったら!……ふんっ、いいわよもう……起きたらいっぱい話したいことあるから、付き合ってよね』




~不知火の場合~

『司令、起床時間です』

『不知火の起こし方に、何か落ち度でも?』

『やはり何か落ち度が……司令、ご指導ご鞭撻、よろしくです』




~黒潮の場合~

『司令はん、朝やで。起き~や~』

『司令はんはお寝坊さんやなぁ。ぼちぼち起きんとあかんよ~?』

『まだ寝とんのかいな、しゃあないなぁ。司令はん、一つ貸しやで?』

121: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/20(金) 22:00:24.99 ID:xXZCE1700
~島風の場合~

『提督起きるのおっそーい!』

『提督、まだ寝てるの? 私、待つのあんまり好きじゃないよ……?』

『おっそーい……おっそーい……遅いなぁ……ね、連装砲ちゃん。――アレ? 今何か爆発しなかった?』




~天津風の場合~

『あなた、朝よ? 起きなさい』

『島風も待っているわ。あの子が寂しがるから、早く起きて』

『あ・な・た? 島風が待っているって言ったの、聞こえなかった?――連装砲くん、ゴー』

125: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/21(土) 11:13:36.16 ID:QzTD7edz0
「司令官、皆さんが司令官としている夜戦というのは具体的にどうすればいいんでしょうか。朝潮、いつでも受けて立つ覚悟です!」

「朝潮、とりあえず食堂でその話題はやめような。何人か大惨事になってるから」

 ――大井っちー、大丈夫?

 ――那智姉さん、どうしたの?

 ――村雨姉さん、大丈夫ですか?

 ――曙、はい、水。

 ――摩耶姉さん、ご飯粒を飛ばさないで下さい。

 ――利根姉さん、お茶です。

 ――山城、大丈夫?

「? では、この後司令官の部屋で教えて下さい」

(……刺さる視線と哀れみの視線と頑張れって視線が混じってるが、俺にどうしろってんだ)




 朝潮食堂夜戦発言事件。被害者は七名。加害者である朝潮がその意味に気付き、暫く食堂に立ち寄るのを控えるようになったのは、言うまでもない。

129: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/21(土) 21:34:02.52 ID:QzTD7edz0
~加賀の場合~

『提督、朝食の用意が出来ています、起きて下さい』

『まだ寝ているの? 流石にそろそろ支障が出ます』

『また三週間寝続けるつもりですか?――まぁ、私の膝の上ならそれでもいいけれど』




~赤城の場合~

『提督、朝ごは――いえ、朝です。起きて下さい』

『一航戦赤城、如何なる状況にも即座に対応出来るよう、備えておきますね』

『提督が安心してお休みになっていられる平和な世界……私達が、これからも守ってみせます。――寝顔を眺めるぐらいの役得はあっても、いいですよね?』




~蒼龍の場合~

『提督、朝です! 早起きなら飛龍にも負けません!』

『あのー、そろそろ起きてくれないと朝御飯が冷めちゃうから……』

『やだやだやだぁ! 折角早起きして作ったのに食べてくれなきゃやだぁ!』




~飛龍の場合~

『提督、朝です。起きて顔洗ってきてね』

『ねぇ多聞丸、寝坊って軍人としてどうだと思う?』

『めっ! 早く起きないと蒼龍が拗ねちゃいますから!――それに、あんまり寝坊してるとまた物が提督に飛んでくようになるかもしれませんよ?』

133: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/22(日) 16:06:01.92 ID:faxS2jxa0
~長門の場合~

『提督、起きる時間だ』

『疲れているのか? 分かった、このビッグセブン長門に任せておけ』

『私のコレクションを一つ貸そう、コレを抱いて寝ればよく眠れるはずだ。――なっ!?……私の抱き心地は、あまり良くないと思うのだが……』




~陸奥の場合~

『提督、朝よ? ちゃんと起きてきてね』

『夜更かしはお肌の大敵、提督もあまり遅くまで起きてちゃダメよ?』

『あんまり起きるのが遅いと……勝手に火遊び、始めちゃうかもしれないわよ?』

134: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/22(日) 16:06:37.66 ID:faxS2jxa0
「では、お願いします!」

「いや、お願いしますって言われてもな……」

 ソファーに背筋を正して座り、指南を待つ朝潮。その真っ直ぐで純真な瞳に見つめられるのに堪えかね、提督は視線を逸らす。
 しかし、そうしたところで状況が改善するわけでもない。今後のことも考え、“夜戦”とは何なのかを説明する良い機会なんだと自分に言い聞かせ、彼は話すことにした。

「あー……朝潮、お前の言っている“夜戦”っていうのはな――」




「……」

「……」

 一通り夜戦についての説明が終わった後、訪れた長い沈黙。話が進むにつれ次第に俯いていった朝潮の顔は、今は熟れたトマトのようになっている。
 対する提督も、そんな彼女にどう言葉をかけていいものやらと頭を悩ませていた。

「――あの」

 先にこの沈黙を破ったのは、朝潮の方だった。依然紅潮している顔を勢い良く上げ、提督を真っ直ぐ見つめる。

「ご、ご命令とあらば、司令官との夜戦も、うっ、受けて立つ覚悟でしゅっ!」

(噛んだことにすら気付かないほどテンパってるな。さて、本格的にどうしたもんか、この状況)

 彼女が提督とケッコンカッコカリしてから数年。着任から数えれば、更に数年の月日が経過している。
 それだけの年数が経過しているということは、見た目が多少幼くとも、内面は十分に成長していたとして何らおかしくはない。
 これは朝潮だけに限らず他の多くの駆逐艦娘にも言えることであり、だからこそ提督は安易に断ることも受け入れることも出来ずにいた。

「や、夜戦がそういった意味だというのはたった今知りましたが、知識が無いわけでありません。ですから、その……本当に司令官となら、私は……」

「――朝潮」

「は、はいっ!」




「一緒に風呂、入るか」

135: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/22(日) 16:07:05.33 ID:faxS2jxa0
 ちょうど良い温度の湯に浸かりながら、提督は浴槽に背を預けゆったりと寛ぐ。
 一方の朝潮はというと、借りてきた猫のように大人しく身を預けていた。

「朝潮、体勢しんどくないか?」

「大丈夫、です」

「……うりゃ」

「ひやっ!?」

 脇腹を軽くつつかれ、ビクリと身体を震わせる朝潮。この状態で夜戦に挑むなど到底無理だなと思いつつ、提督は苦笑する。

「司令官、い、今のはどういった意図があっての行為なのでしょうか」

「ただのイタズラだよ、そう構えなくても大丈夫だ」

「そ、そうですか」

「……なぁ、朝潮。怖いなら無理するな。別に今でなきゃいけない訳じゃない」

「いえ、かっ、覚悟は出来ています!」

「そうか。じゃあ――」

「っ……!」

 提督の腕が動くのに反応して、朝潮はギュッと目を瞑り、身を強張らせる。
 しかし、彼女に訪れたのは優しく包み込む様な感覚であり、若干の戸惑いと共に目を開いた。

「ゆっくりでいいんだ、ゆっくりで。ちゃんとお前のペースに合わせるから」

「司令官……んっ」

 ようやく力が抜けてきた朝潮の身体を抱き締めたまま、提督は見上げる彼女にそっとキスをする。
 それは、二人が逆上せかけるまで何度も何度も繰り返されるのだった。

140: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/22(日) 22:42:00.23 ID:faxS2jxa0
 暖まった身体を冷やさないよう、二人は風呂を上がり身体と髪を乾かすと、早々にベッドへと一緒に入る。
 そのまま提督は寝ようと思っていたのだが、“もう少し続きをお願いします”という消え入りそうな声と、胸元を握る小さな手に阻まれることとなった。

「焦るな、って言ったはずなんだが?」

「……です」

「?」

「――好き、です」

 不意打ち、そう言い表す他に無かった。彼女の口からその単語が出たのは、これが初めてだ。
 最初に抱いたのは尊敬、それは次第に敬愛へと変わり、数年を経て正に今、自分の中で確かな愛情へと変わったのを朝潮は感じていた。
 だからこそ、そのたった一言に籠められた想いはとても強く、提督にもそれがしっかりと伝わる。

「……これだけは先に言っとく。俺はロリコンじゃない」

「ろり、こん?」

「分からんなら気にしなくていい。とにかく、だ。無理だと判断したらやめる。それでいいな?」

「はい――んっ」

 まずは、風呂場で何度もかわしたキスの続きから始める。一つ違うのは、今度は朝潮の方からも積極的に求めるようになっていることだ。
 たどたどしくも、懸命に、胸の奥から溢れてくる気持ちを伝えようと、息をするのも忘れて唇を突き出す。

「――っはぁ、はぁ……」

「朝潮、俺は逃げ――」

 言い切る前に、朝潮の唇は提督の唇へと再び重ねられる。
 息が苦しくなれば離れ、また息を吸い込み重ねる。それを幾度となく繰り返し、お互いの唾液がそっくりそのまま交換されたのではないかと思えるようになって初めて、彼女は一呼吸置いた。

「――満足、したか?」

 その問いかけに答えは無く、代わりに提督の両頬に朝潮の手がそえられる。
 そして、再び軽く唇が触れるようなキスをした後、にっこりと笑ってから――ストンと、眠りに落ちた。

(凄く満足そうな顔して寝ちまったな……初霜みたいに、朝潮も明日から物凄く甘えるようになったりするかもしれんのか……まぁ、今更悩むほどのことでもないな)

「――お休み、朝潮」




――――朝潮、起きた。起きたから一回ストップ。

 ――――何秒待機すればいいでしょうか?

――――何秒とかじゃなくてな? 着替えて顔を洗って朝食をだな……。

 ――――……ダメ、ですか?

――――(……前言撤回、これはかなり大変になりそうだ)

147: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/23(月) 18:41:53.26 ID:gcA1fxtJ0
「北方」

「ンー?」

「誰モ、取ラナイ。ユックリ、食ベヨウ」

「ンー、ムグムグムグムグ」

「取ラナイト、言ッテイルノニ……」

「コラ、ソレハ私ノ菱餅ダ! 返セ鳥! 返セト言ッテイルダロー!」

「モゴモゴ」

「レキちゃん……あの……指をね?」

「……モゴモゴモゴモゴ」

「ひゃあぁぁぁっ!?」




 北方の菱餅を盗った提督は素直に出てきなさい。戦艦のNさんと空母のHさんが話があるそうです。

159: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/23(月) 22:59:06.77 ID:gcA1fxtJ0
・五月雨『平凡な私の日常』、投下します

夕張特製音爆弾

160: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/23(月) 22:59:33.48 ID:gcA1fxtJ0
「おはよ五月雨」

「涼風おふぁよぉ~」

「顔洗って目覚ましてきなよ」

「うん、そする……」




 ――ちょっ、まっ!?

 ――……アレ?

(あちゃートイレと間違えたか。とっととドアの鍵直してもらわないとなー)




「五月雨、醤油を取ってよ」

「えぇーっと、コレかな?」

「ありが――五月雨、コレはソースだね」

「アレ? あっ、こっちだ」

「そっちは濃口、うす口を出してくれるかな?」

「わわっ、えーっと……あった!」

「五月雨、それはめんつゆ……」




「夕張さん、遊びに――」

「ストップ! 五月雨ちゃんストップ!」

「え?」

(コードよし、部品よし、危険物は所定の位置に入れてるからよし!)

「お待たせ五月雨ちゃん。で、今日はどうしたの?」

「夕張さんと遊びたくって、何か面白いもの無いですか?」

「五月雨ちゃんが遊べそうな物かぁ……ちょっと待っててもらえ――っていない!?」

「夕張さん、これ何ー?」

「あ゛っ……さ、五月雨ちゃん、それをゆっくりと置いてこっちに戻ってきて、ね?」

「はーい。――あっ」




――――この後二人で耳が聞こえなくなって入渠した。

161: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/23(月) 23:00:01.00 ID:gcA1fxtJ0
「まだちょっと耳がキンキンするなぁ……あっ、比叡さん」

「ちょうどいいところで会いました! 五月雨、今日も一緒に料理に挑戦しませんか?」

「今日は何を作るんですか?」

「ビーフシチューです」




「気合い! 入れて! 作ったはずなんだけどなぁ……あれぇ?」

「出来ちゃいましたね、美味しいカレーが……」

「――五月雨、そこにあるルウってカレーのじゃないですか?」

「え?……あっ」

「な、何はともあれ美味しくは出来ましたし、一緒に食べましょう!」

「そ、そうですね!」

((……はぁ))




(何だろう、今日私何かを忘れてるような気がするんだけど、何だっけかなぁ?)




「――俺、五月雨に嫌われるようなことしたか……?」




――――フタサンサンマルに気付きました。

169: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/24(火) 08:42:14.09 ID:8GWq1Q3y0
~吹雪の場合~

『司令官、おはようございます! 朝です!』

『朝御飯も出来ていますよ、司令官。もうそろそろ起きて下さいね』

『司令官、とにかく一度起きてください。もう少し寝るなら、中庭かどこかでひなたぼっこしながらにしませんか?』




~白雪の場合~

『司令官、起床のお時間です。起きて下さい』

『少々いつもより起きられるのが遅いようですが、お疲れなのでしょうか?』

『フライパンで弾幕張ります。騒音にご注意下さい』




~初雪の場合~

『朝、です……起きて』

『起きないの……? まっ、いっか』

『ズルい、私も寝たい……横、お邪魔します……ふぅ、お休みなさい』




~深雪の場合~

『司令官、朝だぜ! とっとと起きて一緒に飯にしよっ!』

『何だまだ寝てんのか? せっかく深雪さまが起こしてやってるってのに、しょうがねーなー』

『喰らえっ! 深雪スペシャル!――アレ? 司令官? おーい……しまった、また寝ちまったよ』




~磯波の場合~

『あの、朝です。起きて下さいね?』

『あっ、あの、そろそろ、起きて下さいませんか……?』

『うぅ、まだ寝てるんですね……おっ、起きて?』



~叢雲の場合~

『朝よ、起きなさい』

『まだ寝てるの? だらしないわね、いいからさっさと起きなさい。酸素魚雷を喰らわせるわよ』

『頑張れとは言ったけど、アンタは限度ってものを知らないの?……今日からは、起きられる程度に頑張んなさい』



~綾波の場合~

『司令官、おはようございます。気持ちの良い朝ですねー』

『朝ごはんの用意、出来ていますよ。今日は玉葱とうす揚げの味噌汁にしてみました』

『白雪ちゃんに教わったアレ、試してみましょうか。せーのぉ――み、耳栓忘れてましたぁ……』



~敷波の場合~

『あっさでーす。おっきてー』

『とっとと起きてよ、あたしも忙しいんだけど』

『うわっ、熟睡してる……司令官、頑張りすぎは良くないよ。まっ、ゆるゆる行こうよ。あたしも力になるし、ね?』

193: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/24(火) 22:15:14.93 ID:8GWq1Q3y0
「やったわ浦風、私と浦風の話がリクエストされたわ!」

「姉さん、まだリクエストされただけじゃけぇ。ダイスの結果次第で選ばれんこともあるんよ?」

「大丈夫よ、私ももう不幸体質は薄れてきてるし、きっとダイスの女神も私達に微笑んでくれるわ」

 ――開幕を告げよう。

 ――第一投! 開幕直後ニ鮮血乱舞! 烏合迎合ノ果テ盟友ノ奮戦ハ荼毘ニ伏ス! 回セ回セ回セ回セ回セ回セ回セ回セ回セー!

「……何、このうるさいダイス」

「夕張さんがお遊びで作った言うとったよ……?」

 ――2!

「結果の言い方は案外普通なのね」

「それが分からんと意味無いけぇね」

「さぁ次よ、まだ二回もあるし希望はあるわ」

 ――第二投。提督のリクエストを掴むのは私デース! バァァァァニング・ロォォォォル!

(何やってるのよ金剛)

(そういえば協力したって金剛姉さんが言うとったなぁ……)

 ――4デース!

「外れ……ま、まだ一回残ってるわ。きっと大丈夫よね」

(うちはもう諦めとるよ、姉さん)

「最後の一回……お願い!」

 ――サイコロなんぞ、振ってんじゃねぇ!!

「全否定ね」

「全否定じゃねぇ」

 ――6!

「2、4、6……ダメ、だったわね」

「姉さん、元気出すんじゃ。また次があるけぇ」

「提督も最近浦風の可愛さを伝えても苦笑いしかしてくれなくなったし、不幸だわ……」

(“一時期の山城を思い出す”ってため息吐いとったねぇ提督さん。――でも、可愛いのはもう分かってるって言って貰えたんは、ぶち嬉しかったなぁ)




 浦風のする話の比率は大鳳のことが大半だと提督が心の中で思っているのは、内緒である。

194: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/24(火) 22:15:45.89 ID:8GWq1Q3y0
・早霜&軽空母『那智さんだけのはずだったのだけど……』

・蒼龍&ほっぽ『飛龍だけズルい』

・赤城『雪……』

・川内&??『夜戦!?』

・陸奥『駆逐艦の子にお化粧を』

・卯月『司令官』

以上六つでお送りします

196: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/24(火) 22:20:39.17 ID:8GWq1Q3y0
「ここで弾薬とボーキを2消費して赤城さんの“一航戦の誇り”発動! 流星のダメージプラス2!」

「む……燃料1消費して、舞風の“踊らない?”、発動。コインが表なら回避――表、回避します」

「嘘でしょ!? 弾薬無いし、ターンエンド……やっぱこのデッキ重すぎるのかなぁ……」

「私のターン、いきます。弾薬と鉄を2消費して吹雪を改二に改造、吹雪改二が旗艦の時、第十一駆逐隊の砲撃と雷撃ダメージプラス1。吹雪改二、白雪、私、叢雲で旗艦の夕張を弾薬4使って砲撃。弾薬を更に1消費して白雪の“弾幕張ります”で回避を一回無効化、残りの弾薬を全消費して私の“本気出す”も発動。必中ダメージプラス2。第十一駆逐隊が揃ってるから叢雲の“私の前を遮る愚か者め!”を発動、かばう無効。次ターン動けないけど、これで止めだし問題ない……」

「回避判定二回、一回だけ成功で……あーもうどのみち私の負けよっ! 吹雪改造からのオーバーキルコンボやめてよ初雪ー」

「やるからには、最後まで本気出す」




 もう少しバランス調整できたら販売予定。




~続かない~

201: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/25(水) 17:14:30.24 ID:tPEqyKBE0
・早霜&軽空母『那智さんだけのはずだったのだけど……』、投下します

酒があまり飲めないので詳しくはない、バーはよく行くけど

202: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/25(水) 17:14:56.36 ID:tPEqyKBE0
「テキーラ!」

「隼鷹、アンタねぇ……」

「飛鷹さんは、どうされますか?」

「一杯目だし、私には何か軽いのお願い出来る?」

「はい、他の皆さんは?」

「じゃあカルーアミルクにしよっかな」

「私はモスコミュールを」

「うちにはフルーツ系で何か作ってぇな」

「カクテルはあまり詳しくないので、早霜ちゃんにお任せします」

「私もテキーラにしようかしら」

「千歳お姉まで……あっ、私はカンパリオレンジね」

「分かりました。少し、待って下さいね」

(フッ……フフ……普段話さない人が、こんなにたくさん……)

「鳳翔さんとこだと日本酒が基本だし、色んなカクテルも飲めるってのは嬉しいねぇ」

「いきなりテキーラ頼んどいて何言ってんのよ」

「お酒を出してもらうのって、何だか新鮮ですね」

「鳳翔は全部飲み干さんようにしぃや?」

「でも、何で早霜ちゃんがバーなの? 千歳さんか那智さんとかが趣味で始めるなら分かるけど」

「那智さんがカクテルにも手を広げようとしていると聞いたから、試しにネットを見ながら作ってみたのがきっかけで……気付いたら、このバーが……フフ……バーって、こんな簡単に作れるものなのね……」

「へ、へー……」

「(ねぇ祥鳳お姉ちゃん、那智さんの意図は何となく分かるけど、早霜ちゃん大丈夫なのかな?)」

「(少なくとも手際は良さそうだし、大丈夫……と、思いたいわね)」

「こうしてステアしていると、不思議と気持ちが落ち着くのは何故かしら? フフ……ンフフ……」

「(大丈夫だよね? 本当に大丈夫だよね!?)」

「(ちょっと不安になってきた……)」

「ヒャッハー! もう一杯!」

「じゃあ私もお願いしようかしら」

「カクテル飲みなさいよ、カクテルを」

「千歳お姉、張り合うのやめて」

「今、入れますね。……はぁ、どこかに、美味しいサングリアは無いかしら……」

「サングリアなら鳳翔の店に作らせたんがあるで。うちが飲みたい言うて――って早霜飲めるんか!?」




 鳳翔の作ったサングリアをチビチビ飲みながら、今日も人見知りを克服しようと早霜は頑張っています。

206: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/26(木) 21:43:18.64 ID:PjkrG+IY0
・蒼龍&ほっぽ『飛龍だけズルい』 、投下します

207: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/26(木) 21:44:22.39 ID:PjkrG+IY0
「こんにちは、ほっぽちゃん」

「オ菓子、オイテケ!」

「マフィン作ったけど、食べる?」

「マフィン、オイテケ!」

「ほっぽちゃん、欲しいときは置いてけじゃなくてちょうだいって言うのよ?」

「チョー、ダイ? チョーダイ、チョーダイ……マフィン、チョーダイ!」

「はい、良くできました。マフィンどうぞ」

「モキュモキュモキュモキュモキュモキュングッ……蒼龍、モウ一個オイテ――チョーダイ!」

「はいはい、マフィンは逃げないしいっぱいあるからゆっくり食べようねー」

(手触りモチモチ、モキュモキュ食べるのも可愛いなぁ……)

「食ベタ! 蒼龍、レップウ!」

「はいはい烈風、ってはやっ!? もう食べちゃったの?」

「レップウ! レップウ!」

「ほっぽちゃん、分かったから身体をよじ登らないで? ね?」

「――肉マン?」

「それは食べ物じゃないから食べないでくれると嬉しいなぁ……」

208: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/26(木) 21:44:53.92 ID:PjkrG+IY0
「蒼龍、飛龍ハ?」

「飛龍は後から来るって」

「ソッカ。飛バスノ、イッパイノホウガ、タノシイ」

「そうだね、じゃあ皆の予定が揃ったら一度空母全員で飛ばしてみよっか」

「ホント!? 嘘ツイタラ、蒼龍ノ肉マンオイテケ!」

「あはは、それはちょっと無理だけど……うん、約束する」

「ウン!」

(あー……ほっぽちゃん可愛いなぁ、こんな子供欲しいなぁ……)

「蒼龍、墜チル」

「へっ!? うわわっ!」

「蒼龍、飛バスノ、ヘタ?」

「そっ、そんなことないよ?」

「ジャア、何番目?」

「じゅ、十本の指には入るかなぁ……」

「ソレッテ、スゴイ?」

「う、うん、凄い凄い! あ、あはははは……」




――――飛龍、飛龍ハ何番目?

 ――――ん? 何の話?

――――ひ、飛龍には負けてないからっ!

213: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/27(金) 14:02:36.51 ID:D/laJHjs0
~おまけ~

「イラナイト、言ッテイルノニ……」

「わんこ、食ベテ!」

「ダカラわんこデハナイト、言ッテイルダロウ」

「マフィン、美味シイ!」

「北方、私ハイイ。自分デ食ベロ」

「わんこ、ズット見テルダケ。一緒ニ遊ベバ、楽シイヨ?」

「私ハ見テイルダケデ――北方、人ノ話ヲ聞ケ」

「わんこモ遊ボ! セツブンッテ遊ビ、コノ前覚エタ!」

「ソレハ遊ビデハ無イシ、わんこデハ……分カッタ、私ノ負ケダ。少シダケダゾ?」




――――付キ合ワセテスマナイ……。

 ――――このビッグ節分鬼長門に遠慮は無用だ。わんこも全力で来い!

――――エイッ! エイッ!

 ――――(高速修復材、また頼まないといけないかしら……)

215: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/27(金) 23:12:20.16 ID:D/laJHjs0
・赤城『雪……』、投下します

実は一人じゃなかった

216: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/27(金) 23:12:47.88 ID:D/laJHjs0
「うん、上々ね」

「――フラッと執務室から出ていったと思ったら、かまくらなんか作ってたんだな」

「提督、一緒に入られますか?」

「一航戦がサボりの誘いか?」

「はい、サボっちゃいましょう」

「……そうだな、こう寒いとやる気も出んし、そうするか」

「では、いざかまくらです」

「今、少し言うの恥ずかしかっただろ」

「そういうツッコミは……いりませんよね?」

「いる」

「いりません」

「必要だ」

「不要です」

「……やめよう、不毛だ」

「そうですね、入りましょう」




「雪だるまです。二人とも仕事しろ、とか言いません」

(最近、霰が何を考えてるか本気で分からなくなってきたわ……)




 かまくら、雪だるま、雪だるま、雪だるま、霰だるま。

217: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/27(金) 23:13:14.32 ID:D/laJHjs0
「それで、かまくらでどうするんだ?」

「そろそろ来られると思います」

「来る?」

「はーいお待ちどおさまー」

「お待ちしてました間宮さん」

「お前、かまくら作ってただけじゃなかったのか……」

「お餅と悩みましたけど、お正月にいっぱい食べたので甘酒にしていただきました」

「ではごゆっくりー」

「後で加賀に確実に怒られるぞ、コレ」

「ふふっ、今更です」

「――酒とは付いてるが、コレだけは普通に飲める」

「身体が芯から暖まりますね」

「ジョッキじゃないのか?」

「甘酒をジョッキで飲むような女性が提督は好みなんですね、次からそうします」

「冗談だ、流石に引く」

「……」

「? どうした?」

「酔いました」

「随分と意識のはっきりした酔っ払いだな」

「肩、お借りしますね」

「聞くならせめて聞いてから借りろ」

「甘酒、美味しいです」

「……そうだな」

「飲み終わったら一航戦赤城、寝ます」

「寝るな」




――――赤城さん、かまくらを作って甘酒を飲んで昼寝をしていたそうですね。

 ――――サボる一航戦……いえ、知らない一航戦ですね。

219: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/28(土) 21:26:11.53 ID:GvTU+3hA0
・川内&??『夜戦!?』、投下します

疾風のように現れて、疾風のように去っていく

220: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/28(土) 21:26:40.94 ID:GvTU+3hA0
 ――冬の静かな夜、鎮守府裏の山に二つの影が走る。
 速度は互角、双方一定の距離を保ちながら、障害物の多いこの場所を縦横無尽に駆けていく。

(コレは久しぶりに骨があるかも、ちょっと変わった格好してるけどちっさいし駆逐艦娘かな?)

 白いマント、白い服、白いスカート、白い靴、白い仮面、白いマフラー、三日月のマークの付いた白い帽子というなかなか目立つ上に奇抜な出で立ちの少女。
 体躯に見合わぬ身体能力と持久力から、相当な練度の駆逐艦娘だと川内は推察する。

「……さ……んて」

「?」

 微かに聞こえた少女の声。そこに感じた小さな違和感に思考が回るのを押し止め、目の前の不審者を追うことに集中する。
 そもそも、ステージで使ってから気に入り、“何かそれっぽいから”という理由で愛用するようになった目を覆うタイプの仮面を着けた川内も不審者に見えなくもないが、それはそれである。

「そろそろ鬼ごっこおしまい! 顔を見せてもらうよ!」

「っ!」

 懐から取り出したボール状のモノを、相手の進行方向に投げつける。中には強力な粘着剤が入っており、踏めば専用の液体をかけるまで絶対に取れない捕獲用のアイテムだ。
 かなり広範囲に飛び散るので、初めて目にした者が咄嗟に避けるのは非常に難しい――のだが、少女は前からそのボールを知っていたかのように大きく後ろへ跳躍し、避けて見せた。

(おーいいじゃんいいじゃん)

「――でも、コレで詰みだよ」

 跳躍した先に先回りした川内の手刀が、少女の首筋に吸い込まれる――はずだった。

(ちょっ、マジっ!?)

 まるで完全に予測していたかのような身のこなしで追撃すらもかわし、少女は川内の腕を取り投げ飛ばす。

「たっ、とっ、とぉ……驚いた、何者?」

「っ……」

 その驚くべき身体能力とは裏腹に、わたわたと手を振って慌てる可愛らしい様子を見せるが、正体を確認するまでは川内も警戒を解くわけにはいかない。

「言わないってんなら多少怪我させるかもしれないけど、恨まないでよ?」

「……はぁ~」

 深いため息が意味するのは観念したというサインらしく、少女はその仮面を脱ぎ始める。
 そして、出てきた顔を見て川内は納得と驚きの入り交じった表情を浮かべた後――。




「あははははははっ! こんな夜中にそんな格好で何やってんの三日月!」

 盛大に笑うのだった。

221: ◆UeZ8dRl.OE 2015/02/28(土) 21:27:06.53 ID:GvTU+3hA0
「睦月型で劇するの?」

「はい……」

「劇で、その衣装?」

「夕張さんに“三日月ちゃん、三日月が好きならコレがいいよ”って……」

「うん、衣装頼む相手間違えてるよ、それ」

「通気性とか防寒は凄くて、着心地はとてもいいんです」

「でも、見られるの恥ずかしくてこんな夜中に裏山でアクションシーンの練習しなきゃならないのに、本番出来る?」

「……頑張ります」




 成功してしまったので次回以降も決まってしまい、三日月の月光仮面姿が時折夜の裏山で見られるようになりました。

229: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/01(日) 22:56:53.21 ID:ZYdxztaF0
・陸奥『駆逐艦の子にお化粧を』、投下します

提督ならば化粧品について詳しくても何らおかしくはない

230: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/01(日) 22:57:21.42 ID:ZYdxztaF0
「じゃあ皆、お姉さんの話をよーく聞いてねー?」

 ――はーい!

「まずは悪いお手本よ。これは以前、買い置きの化粧品を使った駆逐艦の子を撮影した写真」

「っ!? す、すすす凄いメイクね、誰だか全然暁には分からないわ」

 ――(アレ、絶対に暁だ……)

「チーク塗りすぎ、アイライン濃すぎ、アイシャドウは何故か緑と紫系、唇はお化けみたいに真っ赤っか、左右でまつ毛の長さが違う等々、失敗の宝庫みたいになってるわ。安いCANM〇KEやSw〇ets&Swe〇tsみたいなメーカーの物だったからいいけど、少し値の張る基礎化粧品から使っていたとしたら、一回で三千円から五千円以上無駄にしてたかもしれないわね」

 ――ご、五千円……。

「ちゃんとしたメイクの仕方を覚えていないと、お肌が荒れてしまうこともあるの。勿論、私達艦娘はそういう面ではかなり得をしているけれど、念には念を入れておいても損は無いわ。恋する女の子は尚更、ね? だから、今はまだ皆には必要ないかもしれないけど、しっかり覚えて頂戴。陸奥お姉さんとの約束よ?」

 ――はいっ!

「じゃあ、今から私が皆を今よりもっと可愛く変身させてあげるわね」

231: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/01(日) 22:58:22.51 ID:ZYdxztaF0
「――で、あぁなった訳か」

「どう? 皆見違えたでしょ?」

「可愛くなりたいとか綺麗になりたいって気持ちがあるってのは良いことだ」

「あらあら、はぐらかしてもダメよ? ドキッとしてたのバレバレなんだから」

「……否定はしない」

「貴方は本当に幸せ者ね。あんな可愛い子達に慕われてるんだもの」

「それも、否定はしない」

「――駆逐艦陸奥、見たくない?」

「長門が可愛がってくれそうだな」

「それは……」

「“悪くないかも”って顔、してるぞ」

「そ、そんなことないわよ?」

「長門お姉ちゃん、とか呼んでみたらどうだ」

「小さくなった時無反応だったし、言っても眉間に皺寄せて心配するだけだと思うけど……」

「まぁ、試すのはタダだから言ってみろ。案外喜ぶかもしれんぞ」

「――それはつまり、火遊びしてくれるってこと?」

「……そうなるな」




――――どうだった?

 ――――……コーヒー噴き出した後、優しく撫でてくれたわ。

237: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/02(月) 21:27:52.00 ID:ixwhLVtm0
・卯月『司令官』、投下します

238: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/02(月) 21:28:18.44 ID:ixwhLVtm0
「卯月、どうした?」

「膝、乗せて欲しいぴょん」

「わざわざ聞かなくても今までは乗ってただろ」

「じゃあ乗りまーっす」

「――卯月」

「んー?」

「コアラみたいに抱き着かれると、書類が書けん」

「うーちゃんは大人しくギュッとしてるだけでぇーっす」

「後で相手してやるからイタズラしてきていいぞ。俺が巻き込まれない範囲で」

「……今日は、司令官とずっとこうしてたいの」

「……分かった」

「ありがとぴょん」

「じゃあ今日は俺がお前にイタズラするか」

「司令官がそうしたいならぁ、いいよ?」

「……冗談だ」

「残念無念ぴょん」

「残念がるなそんなこと」

「卯月、好きな人にしかイタズラしないぴょん。だからしてくれるの嬉しいぴょん」

「くれぐれもそれを外で言うなよ、本当に通報されるから」

「チューしてる時点で手遅れだぴょん」

「それはもう通報されたから諦めた」

239: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/02(月) 21:28:54.68 ID:ixwhLVtm0
「なぁ、一つ聞きたいんだが」

「うむ、苦しゅうない、言ってみるぴょん」

「お前本当にウサギからコアラに転身でもしたのか?」

「うーちゃんはリンゴ五百個よりは軽いから大丈夫ぴょん」

「比較するには桁が一つ大きいだろおい」

「司令官はお腹が空いて食堂に行きたい、うーちゃんは離れたくない、うーちゃんもお腹空いた、一石三鳥ぴょん」

「良かったな、明日の青葉新聞の記事にも載るから一石四鳥だ」

「今日はこのまま寝るまで離さないぴょん」

「明日筋肉痛になるな」

「うーちゃん重くないもん! ぷっぷくぷー!」

「これはこれで良いんだぞ、娘の成長を感じる父親の気持ちが分かって」

「……卯月、娘じゃないぴょん」

「――そうだな、娘だと色々と困る」

「うーちゃん、てーそうの危機?」

「そういうのは仔兎から兎になってから言え」

「仔兎美味しいらしいぴょん」

「頭からバリバリと食えばいいのか?」

「そういう食べられ方は嫌ぴょん」




――――卯月、洗いにくい。

 ――――ボディーソープを間に垂らせば解決するぴょん。

――――それだけはやめろ。

241: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/02(月) 21:39:29.81 ID:ixwhLVtm0
「叢雲、コレ着けてみてくれない?」

「アンタ、頭大丈夫?」

「ほら、背中に羽が浮いてるみたいで綺麗だと思わない?」

「周囲から浮いた存在になるのは御免よ」

「ちゃんと射出も出来るし」

「アンタは私をどうしたいの?」

「残念だけど、どうしても着てくれそうにないわね……仕方無い、弥生ちゃんのも作ったから弥生ちゃんに頼んでみよっと」

「弥生も着るとは思えないけど、まぁ精々頑張んなさい」




 着てくれました。ユキ=アネサは一秒で断られました。




「あの、何で扇と丼を……」

「名前的には扇、服の色と声は肉丼だから」

 ムドオンカレーは作らない、眼鏡はかけない、デカい。

245: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 02:47:11.33 ID:KNBbBs4e0
「赤城さん、今回は菱餅を食べないように――」

「はい?」

「……雛あられ、ですか」

「加賀も食べますか?」

「いえ、私は大丈夫です」

「霰です。あられ食べたい」

「その前に、霰は菱餅の着ぐるみを脱いで着替えてきて」

「菱餅が、何かしたの……?」

「菱餅に罪はありませんよ、加賀」

「そう……赤城さんと霰は別撮りで構わないようね」

「「ごめんなさい」」




 百五十人雛壇は良い宣伝になりました。

247: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 02:49:56.65 ID:KNBbBs4e0
「夢幻少女か……胸が熱くなるな」

「勝ち残れば優秀な艦載機をくれるというの?」

「こまけぇこたぁいいんだクマ!」

「あら、あらあら、●●●もいじゃうぞ」

「叢雲の酸素魚雷を食らうデース! バニッシュメント・ディス・ワールド!」

「北上さん、よさこい踊らない?」

「ちょっと待って大井っちーこのマカロンとクッキー食べてからねー」

「姉様!? 何だ提督か……書類ならマジックハンドで渡して下さい、でないと殴っちゃいますよ?」

「ちょっ、あんまり触ると罰金バッキンガムよ!」

「買っておいた抹茶プリンを食べられるなんて……はぁ、空はあんなに青いのに……」

「食べました。代わりにこの抹茶ドーナツを」

「は・る・な、100%♪」

「シンバル持ったゴリラの縫いぐるみとか舐めてんのか? クソがっ!」

「司令官司令官司令官! この何が入ってるか分からないけど美味しいコロッケを食べて!」

「あぁ~暁のケーキがミキサーに~」

「ハラショー、この喋る鳥からは力を感じる」

「ひらがな三つでまるゆちゃん」

「この大鳳より人気があるなんて……あの女神、許せない!」

248: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 02:50:25.53 ID:KNBbBs4e0
「龍田殿、例えエルフ全員を敵に回しても貴女は守るであります」

「天龍ちゃんと今度あのオセロしてみようかな~」

「睦月は睦月はセロリが嫌いって言ってみたり」

「司令官、どうしてボクの写真が部屋一面に貼ってあるの……?」

「弥生、金魚が好き、です……後、発明も」

「菊月だ、天誅ガールズというアニメを共に見よう」

「那珂ちゃん、ウサギを頭に乗せてる妹が欲しいなー」

「わ、私は那智などではない! な……な……ナツ! そうナツだ!――ふぅ、誤魔化せたか。こんな格好をしているなどと皆に知られる訳にはいかない……」

「珊瑚ですか? 不愉快です!――って書いたらまたツイッターが炎上しました……」

「ヒャッハー! ちょこまか逃げるならハンマーで壁をぶち壊せー!」

「なかなか初霜のコークスクリューは痛いぞ……だが、悪くない」

「ノモブヨ、ヲキイサンカ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デーリブラ!」

「鈴谷が勇者の一族とかマジありえないんですけどー」

「司令官を抱き締めて、海の底まで」

「かーっ! その顔いいねぇ! あっ、谷風さんのパン  写真送っといたから」

249: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 02:51:29.66 ID:KNBbBs4e0
「提督に書いたお手紙を届けてって頼んだんだけど、途中で風に飛ばされたらしいのね……」

「司令官様? あのー……ゾンビメイク、してみませんか?」

「大和はやまにゃんじゃありません!」

「埴輪のイラスト描くホー」

「ちょっと待って、阿賀野だけED流れなかったんだけど……」

「磯風だ、兄くんと会うのは前世以来だな」

「どうしてこの超弩級戦艦ビスマルクがシスターの格好をしなければならないの? 何? 他の子だと胸部装甲が足りないですって!?」

「ベタがまだここ塗れてない……ような気がします。ベタ塗りです!」

「て・い・と・く、提督! あ、あの……一緒に山に登りませんか?」

「どこかにいい浅瀬は無いかでゲソ」

「清霜は殺されずに卒業出来るもん!」

「“運河の魔女”って二つ名……ありです!」

「山雲はーおにぎりって呼ばれたらー立てばいいのー、ねー?」

「朝雲はたい焼きで立てばいいのね、分かったわ。……うぐぅって何? 鳴き声?」

282: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 22:16:08.41 ID:KNBbBs4e0
「超弩級駆逐艦清霜! サイコロ振ります!」

 ――99!

「どーう? 清霜凄い? カッコいい?」

「――え? コレじゃダメなの?」

「大きい数字の方が強くてカッコいいと思ったんだけどなぁ……」

 ――1、5、6。

「次も超弩級駆逐艦清霜に振らせてね?――えっ? なれるもん!」

283: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/03(火) 22:17:31.87 ID:KNBbBs4e0
・鳥海『あっ、眼鏡が……』

・チビ舞風&野分『(カワイイ)』

・陽炎&曙『お話したいの?』

・清霜&翔鶴『艦載機はちょっと……』

・南雲機動部隊『大概にして欲しいものね』

・浦風『えぇ加減にせぇ言うとるんじゃ!』

以上六本でお送りします

時空が歪んでますが安価としての位置を優先します

299: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/04(水) 21:03:47.51 ID:bqZY148Z0
タイトル変更

・鳥海『計算通りです』 、投下します

太ももとへそ

300: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/04(水) 21:04:15.74 ID:bqZY148Z0
「司令官さん」

「何だ?」

「耳、気になりますか?」

「あぁ、少し奥でゴロゴロしてる感じがあってな」

「でしたら、ここに寝て下さい」

(耳掃除か……鳥海なら心配いらなさそうだな)

「じゃあ頼む」

「はい、どうぞ。頭をこの辺りにお願いしますね」

「ん、分かった。――なぁ、鳥海」

「何ですか?」

「耳掃除で頭を撫でる必要は無いと思うぞ」

「リラックスしてもらう為です」

「いや、このままだと確実に寝るから耳掃除だけ頼む」

「私の計算では十分もすれば司令官さんは夢の中です」

「そんな無駄なことにその計算能力を使わんでいい」

「無駄じゃありません。凄く重要です」

「とにかく、耳掃除をしてくれ」

「では、いきます。侵入角が――で、耳かきの長さが――だとすると……」

「待った、鳥海ストップ、耳掃除に計算式は必要ない」

「冗談です。リラックス出来ましたか?」

「本当に大丈夫だよな? やったことあるんだよな?」

「心配しないで下さい。摩耶姉さんにいつもやってますし、慣れてます」

「そうか……だったら大丈夫そうだな」

「姉さん耳掃除苦手で暴れるから、結構耳掃除するの大変なんですよ?」

「なんとなく想像できるし、微笑ましい光景だ」

「コレ、私が言ったことは秘密にしておいて下さいね、怒られてしまいますから」

(知ってるの鳥海か愛宕達ぐらいだろうし、すぐバレそうな気がするが……)

「――はい、片方出来ました」
「確かに上手いな、速いし」

「どうすれば傷付けずに速く出来るかちゃんと計算してますから、当然です。司令官さん、反対を向いて下さい」

「あぁ、分かった」

(電の時の失敗はしないように、なるべく水平をキープして……)

「……司令官さん」

「ん? 何だ?」

「あの、もう少し下を向いてもらえませんか?」

「それだとやりにくくないか?」

「いえ、下を向いてもらった方がやりやすいです。そう計算でも出ています」

「そうか……? 息が気になるとかあったら、すぐに言ってくれ。ブスッてのは困る」

「大丈夫です。それは計算に入ってますから」




 バレンタインの魔の手が鳥海のバルジを襲いました。

302: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/06(金) 22:59:05.91 ID:VEdyXsVg0
・チビ舞風&野分『(カワイイ)』 、投下します

303: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/06(金) 22:59:33.52 ID:VEdyXsVg0
「のわき~」

「まいか……ぜ?」

「のわきのわき、いっしょにおどろ?」

 その時の野分の心境を言い表すとすれば、小さい頃いつも一緒に遊んでいた女の子と十年振りに再会し、当時から密かに胸の内で芽生えていた恋心に気付かされた学園物男主人公の様な衝撃を彼女は受けていた。

(これが舞風なの? 舞風が小さいだけでこんなに可愛く見えるなんて……)

「のーわーきー」

 袖を引っ張りブラブラと腕を揺らす、推定二~三歳前後の舞風。元々寂しがり屋な節がある彼女に無視は禁物であり、硬直している野分を見上げながら頬を膨らませている。
 姉妹というより親友の関係に近い二人であるからこそ、少し思考が幼くなっても野分に舞風は完全に心を許しているし、野分は戸惑いを隠せないでいた。

「――舞風、抱っこしてもいい?」

「いいよ?」

 ノータイムの返答、自分の口から出た言葉、そのどちらにも驚きつつ、恐る恐る野分は舞風を抱き上げる。
 少しずっしりと重みを感じるものの、那珂と舞風のダンス演習を乗り越えた彼女にとっては苦でもない。顔の前まで持ち上げて間近で見た小さい親友の笑顔に、野分の表情も自然と優しいものへと変わる。

「じゃあ、踊りましょうか」

「おどろおどろ、ワンツーワンツー」

 首を左右に振ってリズムを取る舞風を抱いたまま、ダンス練習場へと向かう。
 その時の二人は、いつもの友達のような関係ではなく、仲良しな姉妹の関係に見えた。

304: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/06(金) 23:00:00.73 ID:VEdyXsVg0
「――のわき、つぎこれ!」

「その曲ね、いいわ」

 ダンス練習用の曲を次々と流しながら、二人は一緒に踊り続けていた。
 普段はぎこちない笑顔や真剣な顔でダンスに付き合っていた野分も、今日は自然に笑みを浮かべている。

「ここでターン!――っと、っとっ、きゃあっ!?」

「舞風!?」

「あたた、しっぱいしっぱい、こけちゃった」

「怪我は……無いみたいね。ずっと踊ってたし、そろそろ休憩しましょうか」

「うん、そだね」

 壁に背中を預けて二人で座り、しばしの休憩を取る。軽く二時間は踊っていたこともあり、火照った身体に床の冷たさが心地好いものとなっていた。

「――ねぇ、のわき」

「何、舞風」

「すこし、もたれていい?」

「うん、いいわよ」

 肩に感じる重み、それはどこか安らぐもので、野分もまた頭をそちらに傾ける。
 舞風から小さな寝息が聞こえてきたのと、野分の意識が深く落ちていくのに、あまり時間の差は無かった。




――――どうした陽炎、ネギと卵なんか持って。

 ――――鳳翔さんにもらったの。汗掻いたまま着替えもせずに寝て、風邪引いた妹二人の世話よ。

314: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/09(月) 10:45:56.19 ID:yjHDBA5R0
・陽炎&曙『お話したいの?』、投下します

315: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/09(月) 10:46:40.18 ID:yjHDBA5R0
「――曙? こんなところで会うなんて奇遇ね、一人?」

「一人よ、悪い?」

「別に悪いなんて思ってないわよ、私も一人だし」

「……とりあえず、座れば?」

「それもそうね、じゃあ遠慮なく」

「陽炎のそれ、何?」

「普通のカフェラテだけど」

「ふーん、もっと色々アレンジしたのを飲むと思ってた」

「曙の中の私のイメージってどうなってんのよ……それで、曙は?」

「モカ」

「一口貰ってもいい?」

「別にいいけど……」

「あぁ、代わりに私のも一口飲んでいいわよ」

「……砂糖は?」

「スティック半分」

「やめとく」

「――モカ、結構甘いわね」

「陽炎ってクソ提督と一緒なの?」

「私にはカカオ九十九パーのブラックチョコなんて食べらんないって」

「何それ、聞くだけで口の中苦くなってきた……」

「司令が眠気覚まし代わりに常備してるから、試しに貰ってみれば?」

「ミントタブとかそういうの食べなさいよ、あのクソ提督」

「ミント苦手で間違えて口に含んだら洗面所に駆け込むらしいわね。黒潮がたまにそれでからかって遊んでるらしいわよ」

「ふふっ、やっぱりちょっと情けないのがクソ提督らしいかも」

「司令はいざって時に頼れればそれでいいのよ。……まぁ、ほったらかしにされた時はかなりムカついたけど」

「――陽炎、もう大丈夫だから」

「んー? 何の話?」

「漣か潮にでも頼まれて来たんでしょ?」

「私が来たのは偶然よ、偶然」

「陽炎はス〇バ派って、黒潮に前に聞いた」

「たまには気分で違う店に来たりもすることもあるわよ」

「……あっそ、まぁいいけど」

「それよりこの後どうするの? 一緒に買い物でも行く?」

「ううん、そろそろ戻って謝らないと。喧嘩したまま鎮守府に戻るの嫌だし」

「そ、じゃあ買い物はまた今度ね」

「覚えてたらね」



「――苦っ、砂糖半分じゃやっぱり足りなかったかも……」



――――陽炎と曙が買い物? 珍しい組み合わせだな。

 ――――私が教えた店に行くと言っていた。お互い気が強いという点で気が合ったのだろう。

321: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/10(火) 10:34:50.70 ID:4Th26owf0
・清霜&翔鶴『艦載機はちょっと……』、投下します

日向がアップを始めました

322: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/10(火) 10:35:30.11 ID:4Th26owf0
――――工廠。

「夕張、ちょっと艤装を見てもらえないかしら?」

「あっ、今ちょっと取り込んでて後に――」

「翔鶴さん、航空甲板貸して!」

「き、清霜ちゃん?」

「航空戦艦って空母と戦艦の合体した最強の艦種なんでしょ? 私も艦載機飛ばしたい!」

「……夕張、どういうこと?」

「どうもアニメで合体ロボット物見せたらそういう結論に至っちゃったみたいで……」

(駆逐艦娘の子がたまに肩車したりして遊んでるのを見かけるけど、その影響かしら……)

「ごめんなさい、清霜ちゃん。この航空甲板は貸せるようなものじゃないし、私専用だから例え他の空母の皆さんでもこれは扱えないの」

「じゃあじゃあ艦載機の飛ばし方教えて!」

「飛ばす為には航空甲板が無いと……」

「でも、ほっぽちゃんは飛ばしてるよ?」

 ――次ハ三回転捻リ!

 ――蒼龍、合わせてよ?

 ――言われなくても!

「あの子は、少し特別だから」

「清霜もいつかは飛ばせるようになる?」

「――どう頑張っても、清霜ちゃんに艦載機は飛ばせないの」

「……うん、そうだよね。私、駆逐艦だもん」

「でも、艦載機は飛ばせなくても他の物は飛ばせるようになるかもしれないわ。――ねぇ、夕張?」

「へっ?」

「夕張なら出来るわよね。いつも私達の為に新装備の開発や調整を本当に頑張ってくれていたもの」

「ホント!? 夕張さん、清霜にもいつかは飛ばせるようになる?」

「えっ、いや、出来なくは無いかもしれないけど、そんな開発提督が認めてくれるかどうか……」

「司令官がいいって言ったら作ってくれるの!? じゃあ今から頼んでくる!」

「あっ、ちょっと清霜ちゃん!? 翔鶴さん、私に振るなんて酷いですよぉ……」

「ふふっ、がむしゃらに頑張るあの子を見てたら、加賀さんにずっと挑み続けてる瑞鶴と重なるの。だからつい応援したくなってしまって」

「まぁでも、提督が許可する訳無いですよね。とりあえず翔鶴さん、航空甲板見せて下さい」

「あらやだ、その為に来たのすっかり忘れてたわ。じゃあお願いね」




 自律型艦載機の研究開発が開始されました。

328: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/11(水) 20:50:04.38 ID:Qsh5gqK30
・南雲機動部隊『大概にして欲しいものね』、投下します

赤城さんをキレさせたら大したもんですよ

二航戦はこんなこと言わない

329: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/11(水) 20:50:33.55 ID:Qsh5gqK30
「――なかなか綺麗に揃いませんね」

「飛龍、蒼龍、もう少し私達に合わせてちょうだい」

「加賀さん達こそ、もうちょっとこっちに合わせてもらえませんか?」

「一航戦のお二人なら簡単ですよね」

「今までこういう艦載機の飛ばし方はあまりしたことがありませんでしたから、なかなか難しいです」

「赤城さんの言う通りね、実戦でこんな飛ばし方は必要無かったわ」

「それはつまり、お二人より私と蒼龍の方が戦闘以外では艦載機をうまく操れると認めるってことですか?」

「どうしてそうなるのか理解に苦しみます」

「加賀、威嚇しちゃダメですよ。互いの息を合わせようとしているのにこんな風にいがみ合っていたら、まとまるものもまとまらなくなります」

「――そういう赤城さんも、単独行動大好きですよね? 勝手に飛び出して帰って来ない日多かったし……」

「蒼龍、そのことについて不満があるなら今ここで全部聞きますよ?」

「ついでに言わせてもらうなら、加賀さんは赤城さんに甘過ぎます」

「私は甘くしたつもりはありません」

「この前は元帥のところの卯月に負けてたし、平和ボケしてません?」

「頭に来ました。そこまで言うなら試してみますか? 実戦で」

「その怒りっぽいところも直した方がいいんじゃないですか?」

「飛龍、少し言い過ぎよ。加賀も落ち着いて」

「赤城さんにはもっと本音出して欲しいなぁ。誰とも本気でぶつからず、いつも壁がある気がするし」

「私は別に壁を作っているつもりは……」

「蒼龍、言うだけ無駄だって。赤城さんは鎮守府に居るより外で美味しいご飯食べてる方が好きな人なんだから」

「っ……」

「――流石に我慢の限界です。構えなさい、二人とも相手をしてあげるわ」




「――喧嘩、ダメェェェェェ!」

330: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/11(水) 20:51:00.64 ID:Qsh5gqK30
「ごめんね、ほっぽちゃん……」

「皆、仲良クシナキャ、メッ!」

(可愛い)

「蒼龍、顔がだらしなくなってますよ」

「全く……私達と本気で演習したいからと怒らせるような言動を繰り返すなんて、本当に大概にして欲しいものね」

「何ていうかこう、今のお二人は完全に牙が抜けてる感じがしたからつい……」

「でもでも、艦載機の息を合わせるのがお二人の方が下手なのは事実ですよ?」

「そこは認めます」

「私もそれについては認めます、単独行動も事実ですし……」

「――赤城さんが出ていっていた理由、ちゃんと私達も知ってます」

「ごめんなさい、あんなに悲しそうな顔されるとは思ってなくて……」

「いえ、いいんですよ。理解して貰えていたのなら、いいんです」

「仲直リ?」

「うん、ちゃんと仲直りしたよ」

「まぁ、私も少し大人げなかったわね」

「赤城さん、今度ご飯連れてって下さい」

「いいですね、四人で行きましょうか」

「オ土産、買ッテキテ!」




 菱餅を五人で頬張りながら仲直りしました。

336: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/12(木) 22:52:56.90 ID:yUSUK4N70
・浦風『えぇ加減にせぇ言うとるんじゃ!』 、投下します

(浦風依存度が危険領域に達しつつあるけど)大丈夫だ、問題ない

337: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/12(木) 22:53:24.79 ID:yUSUK4N70
「――姉さん?」

「な、なぁに浦風」

「うちと姉さんでした大事な約束、覚えとる?」

「忘れるわけ無いじゃない。ちゃんと覚えてるわ」

「そうじゃ、姉さんが忘れとるわけ無い。じゃけぇこれは念のためじゃけど、全部言うてみ?」

「夏は別々のベッドで寝る」

「夏は暑いし、一緒に寝とるとぶち寝苦しいけぇね」

(その分、冬は天国だわ)

「次、二つ目じゃ」

「写真は許可を取る」

「いくら何でも隠し撮りはえぇ気せんよ?」

「や、約束してからは一度も隠し撮りはしてないわよ?」

「最後、問題の三つ目じゃ」

「尾行しない」

「――姉さん、この前後ろからつけて来とったじゃろ」

「か、勘違いじゃないかしら?」

「目が泳いどるよ。正直に言うたら怒らんけぇ、言うてみ?」

「……しました、ごめんなさい」

「よぅ正直に言うてくれたね姉さん。――じゃけえ、うちの写真を半分処分でこの話は終わりじゃ」

「うっ、浦風!?」

「そこ退き、机の引き出し開けられんけぇ」

(引き出しの中……)

「仕方無いわね、悪いのは私だもの。処分されても文句は言えないわ」

「USBとSDカードは確かここじゃったかなぁ……」

「浦風待って、そっちはダメ。私がこの数年集めた宝物がそこにはたくさんつまってるの」

「――姉さん」

「わ、分かってくれたの?」

「うちが陽炎姉さん達の部屋に戻るんと、写真処分、どっちがえぇかねぇ?」

「写真でお願い」

338: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/12(木) 22:53:51.95 ID:yUSUK4N70
(浦風のメイド服姿が……チャイナ姿が……)

「これに懲りたら、もううちのこと尾行しちゃいけんよ?」

「えぇ……もう絶対にしないわ……」

「心配せんでも、うちはちゃんと姉さんのとこ帰ってくるけぇ」

「LINEはしてもいいわよね?」

「既読が付いて五分で不安にならんのじゃったらえぇよ」

「努力はしてみるわ」




 十分が限界でした。

362: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/13(金) 22:04:31.76 ID:HW4s92Tj0
「今回は、この武蔵がダイスを振らせてもらおう」

「全ダイス、一斉射!」

 ――3! 4! 5!

「ふむ、また前回とは少し違った目になったな」

「1と2が少なめなのはいささか不本意なところではあるが、仕方あるまい」

「……時に大和、細くて堅いものはないか? 後、パテも頼む」

363: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/13(金) 22:12:47.69 ID:HW4s92Tj0
・黒潮『司令はんとまったり』

・天城&那珂『全艦娘アイドル化計画』

・浦風『提督さん、どうじゃ?』

・ちび浦風&大鳳『姉さんのテンションがおかしい』

・山城『提督、少し休んだらどうですか?』

・飛鷹&妙高『静かに酒を』

以上六本でお送りします

364: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/13(金) 22:14:54.66 ID:HW4s92Tj0
・黒潮『司令はんとまったり』 、投下します

黒潮はイントネーションが京都よりで言ってることは商売系関西弁っぽい?

365: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/13(金) 22:15:22.00 ID:HW4s92Tj0
「司令はん、今晩何食べたい?」

「任せる」

「納豆キムチドリアン入りお好み焼きデスソースがけでもえぇの?」

「せめて黒潮も食べて美味しいと感じるものにしてくれ」

「ほな、ホットケーキでも焼こか」

「それ、今お前が食いたいだけじゃないのか?」

「嫌やわ~そんなん当たり前やん」

「だったら焼いてきてくれ。ちょうど間食には良い時間だしな」

「えぇよ~。司令はんのはこんがり焼いてくるわ」

「黒焦げはやめろよ?」

「そんな勿体無いことしたら罰当たるからせぇへんよ。絶妙にホットケーキっぽぅない食感にするだけや」

「だからやめろ、美味しく作ってくれ」

「心配せんでも大丈夫や。うちが司令はんにまずいもん作るわけないやんか。うちの愛情たっぷり入れとくから、期待して待っとってな~」

「――あぁいうのを一切躊躇いなく言えるのが、アイツの凄いところだよな……」

366: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/13(金) 22:15:55.98 ID:HW4s92Tj0
「おまっとぅさん、出来たで~」

「あぁ、ありがとな。その横にあるのはどれがどれだ?」

「右からマーガリンやろ、メープルシロップやろ、イチゴジャムに、デスソースや」

「お前のその熱いデスソース推しは何なんだよ」

「冗談や冗談。ただのタバスコやから安心してえぇよ」

「そうか、タバスコなら安心――な訳あるかっ!」

「司令はん、辛いん大丈夫やんか」

「そういう問題じゃ無いだろ……」

「ほな、うちが使おか」

「あっ、おいっ!?」

「――うん、ちょっと酸っぱいけど美味しいわぁ、このラズベリーソース」

「……俺も二枚目はそれにするか」

「司令はん」

「何だ?」

「何だやのぅて、あーんや」

「……あーん」

「はい、司令はん」

「――ラズベリーもなかなかいけるな」

「うちのあーん代、百万円払(はろ)てな?」

「相当なぼったくりだな」

「なぁ、司令はんもはよしてぇや。それでチャラにしたげるわ」

「急かすなよ、ほら」

「――うん、イチゴジャムも甘くて美味しいわぁ」

「黒潮、結局晩飯はどうするんだ?」

「そやなぁ、またお好み焼きでもしよか」

「お好み焼きか、そりゃ楽しみだ」

「モダン焼きも出来るけど、司令はんはどっちがえぇの?」

「じゃあ今回はモダン焼きで頼む」

「ほな、これ食べたら先にちょっと準備してくるわ」

「分かった」




――――黒潮、熱い、せめて冷ましてからにしてくれ。

 ――――うちの愛情の熱さや、頑張ってそのまま食べてぇな。

――――無茶言うなよ……。

 ――――あっ、うちにはちゃんと冷ましてからあーんてせな怒んで?

――――お前も大概良い性格してるよな。

374: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 00:25:31.46 ID:VverVzgF0
・天城&那珂『全艦娘アイドル化計画』 、投下します

諦めないよ、那珂ちゃんはアイドルだから

375: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 00:26:00.61 ID:VverVzgF0
「天城さん、那珂ちゃんと一緒に歌おっ!」

「えーっと、話が見えないんですけど……」

 勢いよく雲龍型の私室の扉を開けて走り寄り、ぶつかりそうなほど顔を間近に近付け、開口一番歌おうと誘う艦隊のアイドル。
 天城が助けを求めて隣の姉へと視線を送るも、雲龍は開けっ放しの扉を閉めに行った後、また元の位置に座って何事も無かったかのように朝食を食べ始めていた。
 救いの手は無いのだと諦め彼女が前に視線を戻すと、キラキラした目が出迎える。

「天城さんって、お風呂で鼻唄を歌うのが好きなんでしょ?」

「な、何で知ってるんですか!?」

「那珂ちゃんはー情報提供者の名前を明かしたりしないんだよー?」

 着任間もない天城が入浴中に鼻歌を歌っているのを知っている人物など、彼女が知る限り一人しか居ない。
 またもや視線を横に向けると、そっぽを向いておにぎりを黙々と食べる姉の姿が目に入り、言ったのは雲龍だと天城は確信する。
 ただ、それがわかったところで、両手をがっしりと掴みずっと熱い視線を送り続けてくる那珂をどうにか出来るというわけでもない。

「その一緒に歌うというのは、からおけとかいう場所に行って歌うということですか?」

「それもいいけどー那珂ちゃんと一緒にステージで歌うのが楽しいと思うなー」

「む、無理ですよそんなの!」

「雲龍さんはオッケーしてくれたよ?」

「雲龍姉様が? 本当なんですか、雲龍姉様」

「優秀な調理器具をくれると言うから」

「姉様……」

 完全に買収されている姉に嘆きながら、天城はなおも抵抗しようと断る口実を探す。

「人に聞かせられるほど上手くは――」

「那珂ちゃんがレッスンするからノープロブレムだよ!」

「踊れ――」

「野分ちゃんも一週間で完璧に踊れるようになっちゃった、きゃはっ」

「恥ず――」

「那珂ちゃんのステージ衣装はー雲龍さんと天城さんの服よりも露出は少ない方だと思うなー」

「私は着物ですから、そんなに露出は――」

「アイドルスキル! 早着替えカッコ脱がすだけバージョン!」

「きゃあっ!? やっ、やめ――」

「……那珂ちゃんは、絶対お色気路線には変更しないんだからー!」

「あ、アレ……? 一難、去ったのでしょうか?」




 天城のキャストオフ、効果は抜群だ。那珂ちゃんは撤退した。

377: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 01:32:29.03 ID:VverVzgF0
~おまけ~

「そこ、ちゃんと胸が破裂しそうってところを強調しなきゃダメなんだよ?」

「胸が破裂!?」




「愛しいお兄様がいると思って切なさを表現してね?」

「私には姉様しか居ないんですけど……」




「学園の歌姫っぽくだよ!」

「そもそも私は学校に通ったことが……」




「平安の世から転生を繰り返してまた現代で出会い切ないほど惹かれ合う気持ちを表現して!」

「へ、平安? 転生?」




「犬耳の王女様が国の人達を元気付けるのをイメージして!」

「無茶言わないで下さい!」




 那珂ちゃんのレッスンは的確(?)で完璧(?)でした。

381: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 21:47:16.42 ID:VverVzgF0
・浦風『提督さん、どうじゃ?』、投下します

提督と大鳳の気持ちが通じ合った瞬間

382: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 21:47:42.35 ID:VverVzgF0
「提督さん、どうじゃ? うち、綺麗になっとる?」

「少し雰囲気は変わってるが、綺麗よりはまだ可愛いって感じだな」

 チラリと一瞥し、感想を述べる。流石に化粧に気を遣っている陸奥だけあって、浦風の良さが際立つメイクが施されていた。

「可愛くはなっとるん?」

「……なってる」

「んー? 提督さん、目逸らしながらじゃとよぅ分からんじゃろ? こっち見ながら言うてみ?」

 自分に視線を向けぬまま答えた提督に、浦風は子供に問うような口調で重ねて感想を聞く。その表情は、とてもにこやかだ。

「もう十分見た、書類書かせろ」

「全然さっきから進んどらんし、こっちに来て休憩したらどうじゃ?」

「今日はいつになく積極的だな、浦風。何か良いことでもあったのか?」

「話逸らそうとしても無駄じゃて。提督さん、お茶入れたけぇ冷める前にこっち来るんじゃ」

 明らかに駆逐艦娘の化粧による変化を次々に見せられて動揺しているのはバレバレであり、浦風は早く諦めてこっちに来いとソファーをポンポンと叩いて招く。

「――はぁ、分かったよ」

 何とかペンを走らせ書類に集中しようとしていた提督も、結局最後は折れて腰を上げるのだった。

383: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/15(日) 21:48:18.51 ID:VverVzgF0
「姉さんに言われるんも嬉しいけど、提督さんに言われるのもぶち嬉しいけぇ、ちゃんと言って欲しいんじゃ」

「化粧なんぞしなくても、浦風は可愛いと思うぞ」

「コラ、その答えは女の子の気持ちを無視しとるよ」

「事実を言っただけだろ」

「もっと可愛くなった自分を見せたいって願うんは、いけんこと?」

「……悪いとは言ってない」

「提督さん、今思うとることを正直に言うてみりゃえぇだけじゃけぇ、言うてみ?」

「……大鳳の気持ちが、かなり分かった」

「んー? それだけじゃとうちにはちゃんと伝わらんけぇ、もう一回じゃ」

「……三十路手前で不覚にもドキッとさせられまくって休憩したいんだよ、ちょっと化粧しただけでこれとかメイク恐ろしすぎなんだよ、ロリコン扱いされるかも分からんが全員いつもより可愛かったよ、コレでいいか!?」




「――うちだけを見て、次は言うてね?」

389: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/16(月) 22:16:22.39 ID:oAsNePAM0
・ちび浦風&大鳳『姉さんのテンションがおかしい』、投下します

浦風が望んだことを否定したりはしない

390: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/16(月) 22:16:51.37 ID:oAsNePAM0
「あぁもう可愛くてたまらないわ! このまま小さくなったままにならないかしら? でも成長していく浦風も見たいし、いっそ二人になってくれたら解決するのだけど、流石にそれは無理よね……」

「ねぇさん」

「あら? なぁに浦風、ジュース?」

「ちぃとおちつくんじゃ。はたからみたら、そうとうあぶないひとになっとるよ?」

「そう? 私は至って普通だし、いつも通りよ?」

「そのたいりょうにかかえたこどもふくは、なんじゃの?」

「勿論、浦風に今から着てもらうわ。この日の為に密かに買っておいたの」

「うち、かげろうねぇさんたちのへやにきょうからいっしゅうかん――」

「最初はこの服を着てみてくれないかしら? きっと今の浦風に似合うと思うわよ」

(……ねぇさんにわるぎはない。わるぎはないけぇ、みっかぐらいはがまんじゃ)

「ふふっ、とっても幸せな一週間になりそうね」

(――いつかぐらいは、つきあおうかねぇ……)

391: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/16(月) 22:17:19.16 ID:oAsNePAM0
「ねぇさん、はしでたべれるけぇ、スプーンとフォークはいらんよ?」

「持つだけでいいの、撮らせてくれない?」

「……これでえぇの?」

「えぇ、ありがとう浦風」

(かなりはずかしいけぇ、このしゃしんはていとくさんにみせんようにいうとかんといけんねぇ……)

「さぁ、しっかり食べてちょうだい」

「ねぇさんのつくるハンバーグ、ひさしぶりじゃね」

「いつもは浦風に作ってもらうことが多いし、今日から一週間は私が腕によりをかけて作るわね」

「ちいそぅはなっとるけど、うちもつくれるけぇてつだうよ?」

「大丈夫よ、たまには浦風も私に任せてゆっくりしてて」

「ねぇさん……」

「その代わり、提督とどうしてそういう雰囲気になったかは後で聞かせてね?」

「そ、それはちょっとはずかしいけぇかんにんしてつかぁさい……」




――――ねぇさん、なべふいとる!

 ――――あっ!?

400: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/17(火) 21:52:25.17 ID:6UsDhP6y0
・山城『提督、少し休んだらどうですか?』、投下します

はいかイエスで答えてください

401: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/17(火) 21:52:53.03 ID:6UsDhP6y0
 朝の執務室で軽快に動いていた二つのペン。その片方が不意に止まり、それを手にしていた山城が立ち上がりながら口を開く。

「提督、今日はこのぐらいにしませんか?」

「まだ朝だぞ、いくらなんでも早過ぎるだろ」

「今日はこのぐらいにして、休みませんか?」

「いや、だから早い――」

 その時、提督は目の前で起きる惨事を見て思い出す。
 山城が同じ言葉を繰り返すのは、言うことを聞けというサインであることを。

「提督、私と一緒に今日は休みますよね?」

「あ、あぁ、そうするか……」

 同意の返事に満足したのか、彼女は提督の使っていた机から離れ、二人分のお茶を淹れに行く。
 その嬉しそうな後ろ姿と、実力行使によって大破した執務机を見比べ、彼は深く溜め息を吐くのだった。

402: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/17(火) 21:53:20.60 ID:6UsDhP6y0
「で、休むはいいけど何するんだ?」

「何でもいいですから、適当に提督が話をしてくれます?」

「適当にってなぁ……本当に何でもいいのか?」

「私や扶桑姉様の事を提督はいっぱい知ってる癖に、私達が提督のことをあまり知らないのは、不公平です」

 扶桑に関してはお前が話したんだろと口から出そうになったのを呑み込み、何を話せばいいのやらと提督は思考を巡らせる。
 それを一時中断させたのは、足に感じた重みだった。

「――山城、寝るなら部屋に戻れ」

「今戻ったら姉様に秘書艦の仕事はどうしたのって怒られるじゃないですか。……重いとか、言わないですよね?」

「……寝たら起こすぞ、話をせがんだのはお前なんだから」

 山城は返事の代わりに、腰の辺りを軽く引っ張り早くしろと催促する。
 その仕草に自然と頬が緩むと同時に、提督は今からする話を何にするかを決めるのだった。




――――散々扶桑の魅力については聞かされたし、今日は俺が知ってるお前の魅力と、俺がお前に受けた仕打ちにどう感じてたかについてでも話すとしようか。

 ――――この体勢でそんな話をされるなんて、不幸だわ……。

406: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/19(木) 17:34:40.82 ID:+Hlt1CMR0
・飛鷹&妙高『静かに酒を』、投下します

頭が上がらない艦娘が、また二人

407: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/19(木) 17:35:10.50 ID:+Hlt1CMR0
「鳳翔さん、こんばんは」

「あら飛鷹、いらっしゃい」

 夜も更けてきた頃、居酒屋鳳翔を訪れた飛鷹。いつもならばワンセットでついてくる相方は秘書艦日のため同行しておらず、この日は彼女一人だった。

「こんばんは、飛鷹さん」

「妙高? 貴女がここに来てるなんて珍しいじゃない、一人?」

「妹達が全員用事で出掛けてしまったものですから。そういう貴女こそ、お一人でというのは珍しいですね」

「今日アイツ秘書艦日なのよ。どう? 今日は寂しく一人で飲みに来た者同士、一緒に飲まない?」

「私で良ければ、お付き合いします」

「じゃあ決まりね」

 妙高の隣の席に腰を下ろし、飛鷹は日本酒を熱燗で頼む。
 それに合わせるかのように妙高も残りをグイッと飲み干し、二本目の熱燗を頼んだ。

「ふぅ……」

「……」

 普段はあまり交流が無いからか最初の話題が見付からず、二人の間に暫し沈黙が流れる。

「――ふふっ、二人とも姉妹と一緒じゃないと本当に静かなのね」

「騒いでるの基本的に隼鷹だけだし、一緒に騒いでるみたいに言わないでもらえません?」

「私はハメを外しすぎないようにと言い含めていたりしただけで……」

「あら、ごめんなさい」

 熱燗二本と共に出された助け船に乗り、二人は少しずつ自分の姉妹艦について話し始める。

「冷蔵庫開けたら缶ビールがギッチリ詰まってた時は、本当にどうしようかと思ったわ……」

「私達の部屋では大量の酒瓶が邪魔に……あれ以上増やして、どうするつもりなのでしょうか」

「隼鷹の保管庫にでも放り込ませてもらったら?」

「絶対にやめて欲しいと言われてしまいました。“あそこに置くと呑まれる”、と」

「いくら隼鷹でも人のにまで手は出さないから大丈夫、なはず、多分、きっと……」

 最初は愚痴から始まった会話。それも酒が進むにつれ、次第に自慢へと変わっていく。
 普段はあまり話さない相手であるが故に、本人達には絶対に言わないようなことを口にする二人を肴にして、鳳翔はちびちびと酒を飲むのだった。

410: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/19(木) 20:58:53.63 ID:+Hlt1CMR0
 思えば、俺はアイツの指輪を受け取りはしたが、互いに好意を口にしたことはあっただろうか。

 あの日、喉元に突き付けた刃に怯むこともなく、こんなものより怖いものが山ほどあると言ったアイツの目を、今でも俺ははっきりと覚えてる。

 それまでの自分を捨てる覚悟が出来ずにいた俺に、覚悟させたのはあの目だ。

 たまにもう一度あの目を無性に拝みたくなるが、一向にその機会は訪れそうにない。

 例えば俺が襲われて死にかけたら、また拝めるんだろうか。

 フフ、怖いかって言ったら、アイツはどんな顔をするんだろうか。

 そんな考えが頭にふっと浮かぶ程度には、アイツのことが大切になっちまってるらしい。

 あの龍田にまで気に入られたってんだから、俺の目に狂いは無さそうだ。

 軽くなった刃と、重くなった背中。

 俺達の心をアイツが守るってんなら、アイツの心は俺達が守ってやる。




 ――俺の名は天龍。どうだ? 俺が居たら少しも怖くないだろ?

411: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/19(木) 20:59:20.78 ID:+Hlt1CMR0
「――それで? 何でここに戻ってきちゃったの~?」

「……言ってから我に返って、気付いたら突き飛ばして逃げてたんだよ」

「あらあら、天龍ちゃんったらおバカさんなんだから~」

「うるせぇ!」

424: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/20(金) 10:56:55.84 ID:lqcXxKh60
・磯風『しれぇ』

・プリンツ『ビスマルク姉さんに怒られちゃった……』

・由良『暑さ寒さも』

・鎮圧訓練

・雷『頼り頼られ』

・陽炎&曙『何よそれ』

以上6本でお送りします

427: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 08:19:17.20 ID:8TdOGJ630
・磯風『しれぇ』 、投下します

弱いのもいれば強いのもいる、強要ダメ、絶対

428: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 08:19:42.94 ID:8TdOGJ630
「――磯風、この酒は何だ?」

「腹を割って話すには、これを飲みながらが一番だと聞いた」

「飲めない人間とどうやってこれで腹を割って話すんだよ」

「司令は酒が飲めないのか?」

「全く飲めないってことはないが……そもそも、お前こそ飲めるのか?」

「この磯風が飲めないはずがない」

(自信満々だが、飲んだ経験は無しってことか……)

「とりあえず、飲むならせめて飲みやすい酒にしてくれ。コレはかなりキツい」

「分かった、司令に合わせよう」

「カクテルとかでもいいよな?」

「正直、どれがどういうものなのかさっぱりだ。好きに選んでくれて構わない」

「あぁ、そうさせてもらう」

429: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 08:20:11.43 ID:8TdOGJ630
「そういう訳だから早霜、頼む」

「えぇ、分かりました。司令官にはいつものを、磯風さんには……コレなんてどうかしら」

「何だ、これは?」

「チョコレートリキュールです。お口に合えばいいのだけれど」

「チョコレートの酒などというものもあるのか。司令、まずは乾杯だ」

「あぁ、乾杯」

「――確かに甘いな」

「お前、一気に飲み干しちまったのか……」

「何だ、飲み干してはいけなかったのか?」

「いや、いけなくはないが」

「そうか。早霜、もう一杯同じのを頼む」

「はい、すぐに」

(コレは本当に酒に強いのかもしれんな)

「そういえば磯風、俺と話したいことって何だったんだ?」

「む、そうだった。司令、どうして浜風や谷風、浦風とケッコンカッコリとやらをしたのか、詳しく聞かせてもらいたい」

「プライベートな話なんで断る」

「まだ酒の量が足りないようだな。司令、飲んで飲んで飲みまくれ」

「飲んでも話さんし、そんなに飲めないって言っただろ」

「美味いぞ? 早霜、もう一杯だ」

「味とかじゃなくて体質的な問題なんだよ。……にしても、ペース早いなお前。何杯飲む気だ?」

「無論、司令が話してくれるまでら」

「だから話さないと――“ら”?」

「やはり料理の腕か? 浜風の料理は確かに美味い。だが、それだけが理由というのはどうなのら司令」

「そんなことは一言も言っとらん。後、お前酔ってるだろ」

「この磯風がこれしきの酒に負けるわけがない。早霜、もう一杯ら」

「磯風、それで最後にしとけ。……磯風?」

「料理が出来ないのがなんら、多少世俗に疎いのがなんら、私らって不慣れなりに努力しているんらぞしれぇ」

「それはお前の大好きな第十七駆逐隊の奴等にも分かってるさ。だから、グラスを置け、な?」

「む……しれぇも飲め、さっきから飲んでないぞ」

「はっ? いやちょっと待て磯ふぐっ!?」

「なんら、飲めるんじゃないかしれぇ」

(早霜、見てないで助けてくれ、頼む。おい、サングリア飲みながらそっぽ向くな、早霜、早霜っ!?)

「今日は朝まで付き合ってもらうぞしれぇ、まだまだ航行不能になるには早い」

(……勘弁してくれ)

430: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 08:20:39.08 ID:8TdOGJ630
――――提督、おはようございます。昨日磯風が部屋に戻ってこなかったのですが、どこに居るかご存知ですか?

 ――――今頃俺のベッドで気持ち良さそうに寝てる。悪い浜風、ちょっと寝るから昼に起こしてくれ。

――――はい、了解しました。……ん? 磯風が提督のベッドで寝てる……?

 ――――(あー頭が痛ぇ……磯風には酒飲ませるなって、起きたら浜風に言っとくか)

437: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 20:50:37.47 ID:8TdOGJ630
・プリンツ『ビスマルク姉さんに怒られちゃった……』 、投下します

むしろ客はそのままを望んでいる

438: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/21(土) 20:51:04.65 ID:8TdOGJ630
「プリンツ」

「わあっ!? フォイヤー!……って今は艤装無かったんだっけ」

「一々声かけただけで砲撃しようとするな。それで、何をそんなに熱心に読んでるんだ?」

「提督には関係無いもの」

「――接客の基本、か」

「わっ、勝手に見ないで!」

「お前、それ内容ちゃんと理解出来てるのか?」

「で、出来てるに決まってるでしょ」

「客に苦情を言われたら?」

「クー・ジョー? 何それ?」

「プリンツ、時間の無駄だからそれ読むのやめろ」

「時間の無駄ですって!? 全然そんなことないし!」

「大体、何で急にそんな本読み始めたんだよ」

「ビスマルク姉さんに、接客もまともに出来ないなら国に帰れって怒られちゃって……」

(何かやらかしたってことか。むしろ、まともに出来てるアイツ等がおかしいんだがな……)

「それならレーベやマックスに教えてもらったらどうなんだ?」

「レーベにはボクには難しそうだって言われて、マックスはレーベに無理なら私にも無理って……」

「あー……だったら漣か間宮、大鯨辺りに話を聞いてきたらどうだ?」

「その人達とは一度も話したことないし……」

(ん? ひょっとしてコイツ……)

「大丈夫だ、思い切って話しかけてみろ。いきなり砲撃でもしない限り、普通に教えてくれる」

「……ホントに?」

「あぁ、ここの艦娘は外敵以外にはとことん優しいから安心しろ」

「――じゃあ、提督が教えて」

「……は?」

「ビスマルク姉さんを連れて帰るの暫く保留にしてあげるから、提督が私に日本のマナーと接客の基本教えて」

「ちょっと待て、どうしてそこで俺になる」

「ついでにビスマルク姉さんにホントに相応しいかどうか、見極めてやるんだから!」

「俺は接客業の経験なんか無いんだが?」

「茄子は生る!」

「それを言うなら為せば成るだ。全く、お前とユーには一度ちゃんと日本語覚えさせなきゃならんな……」

「あっ、ドイツ語で教えてくれたら分かりやすいかも」

「だからまだ教えるとは言ってない!」




――――Admiral、プリンツの様子はどう?

 ――――ビスマルク店長、店員の教育はお前の仕事じゃないか?

――――あの子がここに馴染む良いきっかけになりそうだもの。Admiralに任せるわ。

 ――――……はぁ、分かったよ。

443: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/23(月) 02:27:24.12 ID:XeBNqtcv0
・由良『暑さ寒さも』、投下します

444: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/23(月) 02:27:49.60 ID:XeBNqtcv0
「提督さん、暑い」

「そりゃ冬の恰好してたら暑いだろ」

「この前まで寒かったよ?」

「季節の変わり目だからな、気温が不安定なのは仕方無いさ」

「上、脱ぐからちょっと待って」

「半袖一枚は流石に寒くないか?」

「暑いよりいい。汗かきたくないし、寒くなったら提督さんにくっつくから」

(もう半分くっついてるようなもんだと思うんだが……)

「提督さん、忘れ物は無いよね?」

「必要なものは一式揃ってる、大丈夫だ」

「帰ったらぼた餅食べたい」

「間宮が大量に作ってるはずだから、帰ったら食堂行くか」

「うん」

「――ここだ、降りるぞ」

445: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/23(月) 02:28:38.71 ID:XeBNqtcv0
「提督さん、周りの掃除はこのぐらいでいいの?」

「あぁ、これぐらいやれば大丈夫だろ」

「じゃあはい、お水」

「墓石は俺がやるから、由良は水鉢とか拭いてくれ」

「うん、分かった」

「くれぐれも割るなよ?」

「大丈夫、ちゃんと昨日練習したから」

(割るかもって思ってたってことか……)

「――提督さん」

「何だ?」

「私達は死んだら消えてしまうから、お墓には一緒に入れないね」

「……そう、だな」

「私が先に死んだら、頑張って提督さんにとり憑くね」

「その時はゆっくり向こうで待ってろよ」

「嫌」

「下手すると俺の背中に百人以上とり憑くことになるんだぞ? 流石にそれは勘弁してくれ」

「頑張って」

「何を頑張れっていうんだよ……」

「頑張って、長生きしてね?」

「……努力はする」




――――提督さん、寒い。

 ――――由良、電車でがっしり抱き着くのはやめないか? 視線を凄く感じるんだが……。

――――後一分だけ、ね、ね?

 ――――……一分だけな。

447: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/23(月) 21:15:28.36 ID:XeBNqtcv0
・『鎮圧訓練』、一旦投下します

ちょっと内容が内容だけに思案中

448: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/23(月) 21:15:56.50 ID:XeBNqtcv0
 深海棲艦の脅威が去り、人々は平和を取り戻していた。
 しかし、今も昔も最も人を襲っていたのは、人である。
 その抑止力として彼女達が選ばれるのは、至極当然の流れと言えた。

「――自爆」

「至近距離での爆発かつ一軒家を吹き飛ばす程度の威力であれば、流石に大半の艦娘が一時的に行動不能になると思われます」

「銃火器」

「妖精さんの作成物でなければ、駆逐艦娘が怪我をする程度かと」

「毒ガス」

「現状、人間に軽く身体構造が似てきているとはいえ、私達に脱力感や痺れを感じさせるのが関の山です」

「近代兵器……は考えなくていいか。密約がどうこうって話を元帥から聞いてる」

「仮に近代兵器を持ち出された場合は、どうされるおつもりですか?」

「イレギュラーにはイレギュラーで対処する。使いたくはないがな」

「そう……では、後は訓練ですね」

「ついでに安心安全な鎮守府ってイメージを更に定着させとくか」

「鎧袖一触よ、心配いらないわ」

「加賀、手加減忘れるなよ?」

451: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/24(火) 20:30:56.67 ID:mlbqI96k0
続き投下

狙った犯人は皆目が死んでる、大体こんな感じ

452: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/24(火) 20:31:23.87 ID:mlbqI96k0
――――鎮守府入口。

「はーいちょっとそこの人止まってー」

 ――私に何か?

「鎮守府への危険物の持ち込みは、固くお断りしています」

「贈り物は嬉しいけどーそういうのはちょっと那珂ちゃん嬉しくないなー」

 ――何を証拠ぶっ!?

「怪我させないようにって難しいなぁ……」

「口、頭、腕、手、足、足首、拘束完了です」

「時限式か着火済みじゃなかったらこれでオッケーだね。後、神通お姉ちゃんちょっと絞めすぎ、犯人役の人とっても嬉しそうだけど」

「……訓練とはいえ、実戦を想定すべきでした」

「神通、ストップストップ! 本気で白目向き始めてるって!」

(んー、テロより神通お姉ちゃんを止める方が大変かなー?)




 まず、入れない。

453: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/24(火) 20:32:32.54 ID:mlbqI96k0
――――遊技場。

「みんなー、睦月に付いてきてねー」

 ――はーい!

「弾が小さいと避けるのも弾くのも掴むのも面倒だな」

「あらあら、火遊びしたいならお姉さんと向こうでしてみない?」

「おいおっさん達、ガキ共を守りてぇならもっと腰入れて構えろ!」

「そんな構え方じゃ怪我しちゃうんじゃないかしら~?」

 ――は、はい!

「うん、ちょうどいいわ。盾を構えるならその角度です」

「この程度の衝撃で怯むな! 後ろに居る者達のことを考えろ!」

「長月、その防護盾へしゃげる威力の銃火器飛んできたら普通耐えらんねぇって」

「……それもそうか」




 入ったら、犯人が危ない。

454: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/24(火) 20:33:00.24 ID:mlbqI96k0
――――鎮守府近辺。

『やりました』

『上々ね』

『ちょっ、誰かほっぽちゃん止めて!』

『蒼龍ってば、ちゃんと見張っててって言ったのに……』

『スイカクも手伝ってくれなくても大丈夫よ?』

『あっ、ほっぽちゃん見っけ! 私が捕まえるから皆よろしく!』

『後であのトリモチ剥がしに行くの大変そうね……』

『優秀なトリモチ……』

『雲龍姉さん、トリモチは貰っても使い途がないですから……』




 車やヘリなどで大移動したら察知されて潰されます。

457: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/25(水) 23:05:28.31 ID:Wc6cQMPm0
タイトル変更

・雷『偶々』、投下します

458: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/25(水) 23:05:55.08 ID:Wc6cQMPm0
――――住宅街。

「ねぇおばあちゃん、重そうだし荷物持ってあげるわね」

 ――おやまぁこれはどうもご親切に、じゃあお願いさせてもらおうかねぇ。

「私に任せて、どこまで運べばいいのかしら」

 ――〇〇というところまでです。

「分かったわ、足元に気を付けて付いてきてね?」

 ――えぇえぇ、分かりました。

「今度からはタクシーを使った方が安全よおばあちゃん」

 ――こうして歩くのが何よりの楽しみでねぇ、どうしてもタクシーは使いたくないんですよ。

「でも、荷物をたくさん持ってふらふら歩いてると危ないし、歩くなら買い物は程々にしなきゃダメよ?」

 ――今度からは気を付けようかねぇ。

459: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/25(水) 23:06:21.79 ID:Wc6cQMPm0
「ここがおばあちゃんのおうちね」

 ――ほんに有り難うございました。お礼にお茶とお菓子をご馳走しますから、上がっていって下さいな。

「おばあちゃん、いいのよお礼なんて。困った人が居たら助ける、当然のことだもの」

 ――じゃあお茶に付き合ってくれる者も居らん寂しい老人を助けると思って、飲んでいってくれませんかねぇ?

「うーん、そういうことなら断る訳にはいかないわね、お邪魔しまーす」

 ――はい、どうぞ。




「――ふぅ、落ち着く味だわ」

 ――お煎餅もたくさんありますから、どうぞ。

「ありがとうおばあちゃん」

 ――帰る時にはこのリンゴも持って行って下さいねぇ。

「そこまでしてもらうのは……」

 ――いいんですよ、いっぱいありますから。

「……じゃあ、もらって帰るね」

 ――えぇえぇ、どうぞぉ。

「今度、私も美味しいみかんを持ってきてあげるわ」

 ――また来てくれるのかい? ありがとうねぇ。

「――じゃあ、そろそろ帰らないと。お茶とお煎餅、美味しかったわ」

 ――そうかいそうかい、またいつでもおいで。

「次は妹か姉も連れてくるわね」

 ――そりゃ楽しみだねぇ。

460: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/25(水) 23:06:49.66 ID:Wc6cQMPm0
 ――お爺さん、今日艦娘さんに会いましたよ。

 ――ほんに貴方の言う通り、良い子でした。

 ――また来てくれると言うてくれましたし、孫が出来た様な気分ですよ。

 ――ですから、まだまだもう少しこっちで頑張りますね。

468: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/26(木) 21:14:11.76 ID:V6cRD+WZ0
・陽炎&曙『何よそれ』、投下します

ジゴロにする気は無いです

469: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/26(木) 21:14:51.65 ID:V6cRD+WZ0
 喧嘩の仲裁の様なことをしてから以降、時折曙と出掛けるようになった陽炎。
 姉妹艦以外との交流は別段珍しくもなく、それを咎める者など居るはずもない。
 ――しかし、残念ながらこの二人の姉妹の中には、小悪魔のようにイタズラが大好きな者が二人居たのだった。

「陽炎、今日は雪風と遊びませんか?」

「うん、いいかもいいかもー」

「うわー陽炎好かれとんなーこれはお姉ちゃんとして無視する訳にはいかへんなー」

「ちょっとそこの関西弁、これどういうこと?」

 ベッタリと両脇からくっつく妹二人をとりあえず撫でつつ、陽炎は黒潮をジト目で見る。
 彼女が何かを企んでいるのは明白であり、ろくなことにはならないという結果が目に見えていたからだ。

「嫌やわ~うちは何もしてへんで? ただ、ちょっと最近陽炎が構ってくれへんようなったんちゃうかな~って二人の前で聞こえるように言っただけや」

「アンタねぇ……」

 何もしてないに一人言は含まれないのかと問うても時間の無駄になるのが陽炎には分かっていた。
 なので、あえてそこには触れず、彼女は両脇の二人に優しく諭す。

「今日は曙と先に約束があるから、帰ってからか明日遊んだげるわね」

「むぅ……約束があるなら仕方無いですね」

「そっかー、残念残念……」

 寂しそうな二人の頭をまた撫で、陽炎は踵を返し部屋を出ようとした。
 しかし、先程より少し大きな手が彼女を後ろから拘束する。

「なぁ陽炎、うちも構ってぇや~」

「怒るわよ? ってか殴るわよ?」

 額に青筋を浮かべながら後ろに顔を向ける彼女の前で、ドアをノックする音が響く。
 恐らく待ち合わせ時間を過ぎても来ない自分を迎えに来た曙だと思い、陽炎は直ぐ様手を伸ばしドアを開けた。

「悪いわね、ちょっと待ってすぐに出――曙、アンタその背中のどうしたの?」




 そこには、背中に妹を抱えて息を切らせた曙の姿があった。

470: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/26(木) 21:15:20.65 ID:V6cRD+WZ0
「はぁ……はぁ……いい加減降りなさいよこのバカなみ!」

「今日のラッキーアイテムは曙って出たんで、それは無理な相談かなーって」

「降・り・ろ!」

「うん、それ無理」

 後ろで同じように自分におぶさろうとする黒潮に拳骨を落とした後、陽炎は頭を抱える。
 二人が共謀してイタズラを決行しているのは明白であり、理由が単に面白そうだからというのも、彼女には長い付き合いから既に分かっていた。

「それで? アンタ達どうしたいの? あんまりしつこいと本気で怒るわよ?」

「私はもう怒ってるわ。だから降りろって言ってんでしょ!」

「はにゃあ!? まだだ、まだ終わらんよ!」

 投げられた漣は器用に受け身を取り、また曙へと突進する。

「……ウザい」

「曙ちゃんの冷ややかな言葉と視線いただきました!」

「何で嬉しそうなのよアンタは!?」

「曙、話が進まないからちょっと待って」

 いつまでも終わりそうに無い絡みを一時停止させ、陽炎は二人に話すよう催促する。
 そして、それを待っていたかのように二人は声を揃えてこう言った。




「「ショッピングに人数制限は無い!」」

471: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/26(木) 21:15:49.28 ID:V6cRD+WZ0
――――悪いわね、ゆっくり回るつもりだったんだけど。

 ――――陽炎のせいじゃないから謝らないでいいわよ、それに……。

――――それに?

 ――――……たまには賑やかなのもいいかなって、思うし。

――――賑やか過ぎないといいんだけど……コラ雪風! 時津風! 走って人にぶつかるんじゃないわよ!

496: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/27(金) 21:13:07.28 ID:CkM37cvV0
・望月『んあ?』

・金剛『目を離さないでって言ったのにー!』

・時津風『んー? なになにー?』

・摩耶&鳥海『改二祝い』

・神通『あの……いえ、何でもないです』

・球磨『難しいk……ムズカシイ』

以上6本でお送りします

501: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/30(月) 00:42:29.35 ID:Cf26c1s70
・望月『んあ?』、投下します

もっちーの髪もいいと思います

502: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/30(月) 00:42:58.58 ID:Cf26c1s70
 珍しく望月から誘われ、提督は一年振りに彼女と二人で外へと出掛けることとなった。
 どこに行くかは先に決めてあったらしく、言われるがままに彼は歩を進めていく。

「なぁ、どこへ行くんだ?」

「んー? 行きゃ分かるって」

「そうか。後な、望月」

「んあ?」

「歩け」

「めんどいからパス」

 まだ小柄で軽いのを理由に背中におぶさり、肩に頭を乗せて脱力状態の望月。
 端からだと仲良しな兄妹にしか見えないので余計な手間は省けるものの、デートとして考えるとどうなのだと提督は頭を悩ませる。

「司令官、そこ右」

「了解」

「そういやさぁ」

「何だ?」

「あー……やっぱいい、後で聞く」

「何だかよく分からんが、分かった」

 その会話以降ナビ以外特に何かを口にする訳でもなく、望月は黙り込む。
 少し不思議には思いつつも、普段から無言で一緒にダラダラするのが好きなのは知っていたので、提督も特に無理に話しかけたりもせず、ひたすら歩くのだった。

503: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/30(月) 00:43:28.01 ID:Cf26c1s70
「――あい、着いたよ」

「らしいといえば、らしい場所か?」

「それ、どういう意味?」

「寝転がったり、昼寝には良さそうだ」

 案内され着いた場所は、近くの河川敷だった。
 提督の予想通り、たまにフラッと出かけてはここで寝転がってのんびりするのが望月は好きなのだ。

「そういや二人で来たことは無かったと思ってさ」

「人は通るがそこまでうるさいって訳でもないし、ゆっくりするにはちょうどいいな」

「うん、まぁ……ね」

 どこか歯切れの悪い望月の様子が珍しく、体調でも悪いのかと提督は顔色を窺う。
 その顔はほんのりと赤くなっており、更に珍しいものを目撃することとなる。

「何だ? どうかしたのか?」

「あの、さ……コレ」

 道中は提督の手にぶら下がっていた望月の荷物の中から、巾着袋に入った何かが彼へと突き出される。
 その中に入っているのはどう見ても弁当箱であり、コレが今日外に連れ出された理由なのだと提督は即座に察した。

「手作りの弁当も初めてだな」

「味はまぁ、睦月姉とかに食べてもらったから保証する」

「じゃあ早速食べさせてもらうとするか」

「あい、食べ――させる!?」

 少し慌てる望月がとても可愛らしく、冗談ではなくそうさせるのもいいかもしれないと提督は考えるのだった。




――――司令官、何やってんの?

 ――――ポニテにしてる。

――――……ま、いいけど。

 ――――三つ編みもいいかもな。

――――ってか何でヘアゴム持ち歩いてんのさ。

507: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/31(火) 01:38:08.35 ID:Ajgm62Pf0
・金剛『目を離さないでって言ったのにー!』 、投下します

508: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/31(火) 01:38:34.96 ID:Ajgm62Pf0
「起きたら居ないなんて酷いデース……」

「今の時間を確認して、乱れた浴衣を整えて、顔洗ってさっさと起きろ」

「Heyテートク―、今なら時間も場所もOKネ」

「からかうなら時間と場所を弁えろ」

「むぅ……仕方無いから我慢しマース」

 布団に引き込もうとする金剛の頭を抑え、手を振って洗面所へと促す。
 旅館で一夜を過ごし、少し二人でゆっくりしてから帰ろうかと提督は考えていたのだが、予想以上に彼女が起きるのが遅かったのもあり、あまりのんびりとしている時間は無かった。

「金剛、土産は適当に買ってきといたからな」

「ありがとうございマース」

「今から帰ったら夕方までには帰れるだろ」

「――やっぱり、鎮守府が一番落ち着く?」

「落ち着くんじゃなくて、不安にならないってだけだ」

「私も帰って妹達の顔を早く見たいわ」

「なら、さっさと支度しろ」

「えぇ、これで支度は終わりよ」

 座って待っていた提督を、後ろから金剛は抱き締める。
 いつもの激しいものではない優しく包み込むような抱擁に、彼もそれを振り払って急かしたりはしなかった。

「やっぱりお前が普通に話すと違和感あるな」

「こっちの方がいいデスか?」

「普段はな、二人の時は好きにしろ」

「――提督」

「何だ?」

「鎮守府で旅館にあるみたいな浴衣、着て欲しい?」

「……」

「沈黙はイエスと受け取りマース」

「真面目な話かと身構えて反応が遅れただけだ、別にどっちでもいい」

「嘘は良くないネー。着て欲しいと思ったはずデース」

「何を根拠に言ってるんだよお前は」

「湯上がりの私を見たテートクの顔を見れば、そのぐらいすぐに分かりマース」

「エスパーじゃあるまいし、何考えてるかなんか分からんだろ」

「……分かるに決まってるじゃない、私はずっと貴方を見てきたんだもの。だから――」




――――貴方も私から目を離したらノー、なんだからね?

509: ◆UeZ8dRl.OE 2015/03/31(火) 01:39:01.78 ID:Ajgm62Pf0
――――Heyテートクー、鎮守府の中なら触ってもいいしハグもキスも大歓迎ネー!

 ――――時間と場所を弁えない奴にはどれもせん。

――――じゃあ今から寝室にレッツゴーデース!

 ――――場所だけじゃなくて時間も弁えろって言ってるだろ!

513: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/01(水) 11:29:32.59 ID:92VyR8Cl0
・時津風『んー? なになにー?』 、投下します

514: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/01(水) 11:30:00.64 ID:92VyR8Cl0
「あっ居た居た、時津風ちゃん」

「明石さん? あたしに用事?」

「うん、とっても大事なお話があるの」

「なになにー?」

「時津風ちゃんは提督のこと、好き?」

「しれー? うん、ちゃんと遊んでくれるしご飯美味しいし優しいから好きだよ」

「じゃあ次の質問。雪風ちゃん達とずっと一緒に居たい?」

「そりゃ居たいよ。うん、居たい居たい」

「ここで皆とずっと一緒に居たい?」

「うんうん」

「それなら今日提督のところに行った時、“ケッコンカッコカリして下さい”ってお願いしたらずっと一緒に居られるようになるよ」

「そなの? ひょっとしてそれお願いしなきゃ、皆とお別れしないとダメ?」

「そうなるかもしれないですねー」

「んなバカな。そんなのヤダヤダー!」

「でも、提督にお願いしたら絶対にお別れしなくて済みますから」

「分かった、お願いしてくる! 明石さん教えてくれてありがとー!」

「いえいえ、どういたしましてー……さてと、次は誰に促そっかなー」

515: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/01(水) 11:30:27.07 ID:92VyR8Cl0
 ――しれーしれーしれーしーれーえー!

「そんなに呼ばんでも聞こえてるし、ドアは誰かに当たらないように静かに開けろ。で、そんなに急いでどうしたんだ?」

「ケッコンカニカンして!」

「……言い間違いはいいとして、何でお前の口からそんな言葉が出てくる」

「明石さんがそれしないと皆とお別れしなきゃいけなくなるかもって、だから時津風もするするー」

(アイツまた勝手に……)

「安心しろ、お前の意思を無視して他鎮守府に行かせるようなことはしない」

「ホント?」

「あぁ、それにそんなことしたら悲しむ奴が居るだろ。せっかく夢の実現が近付いてきてるのに、邪魔するようなことしてどうする」

「そっかぁ、じゃあカニカンしなくていいんだ」

「ケッコンカッコカリな。それに関してはお前がちゃんと内容を正しく理解してからだ」

「しれーはそれ、したいの?」

「必要になったら、な」

「雪風とも必要だからしたの?」

「必要……まぁ、必要だったからだ。今も昔も寂しがりで怖がりだからな、アイツは」

「ふむふむ――えいっ」

「ん? どうした、急に」

「しれーも寂しがりで怖がりだって皆が言ってたよ。だからあたしも傍にずっと居てあげる」

(アイツ等そんなこと言ってやがったのか……)

「ありがとな、時津風。そうしてくれると嬉しい」

「えへへー。あっしれーしれー、お腹空いたからご飯作って」

「あのなぁ、いい加減お前も自分で作るということを覚えろ」

「えー? しれーが作ってくれればあたしが作る必要ないないー」

「はぁ……何がいいんだ?」

「魚食べたい!」

「分かった、じゃあ作り方教えてやるから一緒に来い」

「え、んなバカな」

「いいから来い、雪風だってある程度は自分で出来るんだぞ」

「わわっ、引っ張んないでよしれー、しれーってばー!」




――――炭一歩手前か……。

 ――――うっ……だって初めてだったんだもん。

――――じゃあお前はそっちの俺が作った煮魚食え、これは俺が食う。

 ――――んー、じゃあさじゃあさ、半分こしよ?

――――……そうするか。

520: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/02(木) 21:44:54.94 ID:71GGDmAZ0
・摩耶&鳥海『改二祝い』、投下します

摩耶様の乙女度が上がりました

521: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/02(木) 21:45:21.62 ID:71GGDmAZ0
「どうだ提督、この摩耶様の改二姿は」

「防空面でまた一段と性能が上がったみたいだな、何か飛んできた時は頼りにしてるぞ」

「お、おぅ……」

「(司令官さん、姉さんはそういうことを聞いたんじゃ……)」

「(分かってる、まさかここまで目に見えて落ち込むとは思ってなくてな)」

「んだよ、アタシ除け者にして二人で内緒話かよ……」

「摩耶」

「あんだよ、まだ何かあんのか?」

「全体的に前より可愛らしくなったな」

「なっ、かわ!? 何言い出しやがんだ急に!?」

「改造前も良かったが、今の方が俺は好きだぞ」

「そ、そうかよ……可愛いか、ふーん……」

(よし、機嫌治ったか)

「――司令官さん」

「ん? 何だ鳥海」

「私、まだ何も言われてません」

(あっ……)

「可愛いのは姉さんだけですか。私も姉さんと色彩とデザインのよく似た改造になったのに、姉さんだけですか。司令官さんは摩耶姉さんだけ褒めるんですね」

「鳥海、それは誤解だ。先に摩耶を褒めただけで俺はお前の改二姿も可愛いと思ってる」

「……ふふっ、司令官さん凄く焦ってたのが丸分かりです」

「お前……質の悪いからかい方はやめてくれ、全身に嫌な汗掻いたぞ」

「姉さんだけ先に褒めたのは事実です。後、防空が姉さんなら夜戦については私に任せて下さい」

「あぁ、頼りにしてる」

「(――ところで司令官さん、姉さんとは夜戦しないんですか?)」

「(急に何を言い出すんだお前は……アレ見ろ、出来ると思うか?)」

「可愛いか……ふーん……いやいや、アタシは可愛いって柄じゃ……でも、そう言われるのも悪くないかもなぁ……」

「……手、繋ぎましたか?」

「繋いだら五秒後に投げられたが?」

「姉さん……」

「普段着ちょっと新しい感じに挑戦してみっかなー、このミニハットとか今まで被ったことなかったし、鈴谷ならこういうの売ってる店知ってっかな……」




――――司令官さんがもっと積極的にリードしてあげて下さい。

 ――――骨がイキそうだし積極的に入院することになりそうなんだが……。

――――男は度胸という言葉があります、司令官さん。えいっ。

 ――――うおっ?……なっ、なっ……何してやがんだクソがー!

――――げふっ!?

 ――――(……壁ドンは姉さんには刺激が強かったみたいですね)

525: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/05(日) 04:14:13.71 ID:wX3Q6i2q0
・神通『あの……いえ、何でもないです』 、投下します

次発装填(あーん待機)済みです

526: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/05(日) 04:14:41.40 ID:wX3Q6i2q0
 彼女らしく控え目で春先らしい服装に身を包み、待ち合わせ場所へと神通は現れる。
 現在の時刻は待ち合わせ時間の三十分前。周囲を見回して提督が居ないのを確認した後、彼女は手鏡でおかしなところがないかチェックし始めた。

(川内と那珂に強引に外で待ち合わせにさせられたが、やっぱり性格的にかなり早く来るよな、神通は……)

 少し離れた位置で気取られないように身を潜めていた提督も、彼女の姿を確認して待ち合わせ場所へと遠回りで向かっていく。
 手間ではあるが、普段は人一倍気を遣う神通への配慮としてはこれが妥当というものだ。

「――悪い、待ったか?」

「いえ、私も今来たところですから気になさらないで下さい」

「じゃあ行くか」

「はい」

 提督の隣を付かず離れず静かについてくる神通の表情は、普段よりも更に柔らかい。
 戦いの際に見せる凛とした表情と、今見せている温和な笑み。そのどちらもが彼女らしく、彼は自然と頭の中で今までに見てきた神通の様々な表情を思い浮かべる。

「――提督? どうかされましたか?」

「ステージ衣装をお前が最初に着た時に見た、恥ずかしくて死にそうって表情思い出してた」

「……お願いですから忘れて下さい」

「甘いもの食べてる時の幸せそうな表情なんかも思い出してたし、何か甘いもの食いに行くか」

「そう言われてしまうと複雑な気分になりますけど、行きます」

 少し困った様な笑みを浮かべながらではあるものの、やはり甘いものには惹かれるものがあるらしく、即答する。
 そして、店へ向かう道中また違う表情が見れるのではないかと手を差し出した彼が見たのは、この日一番の朗らかな笑みだった。




――――神通、俺はもう無理だ……。

 ――――油断しましたね、次発装填済みです。

――――すまん、からかったのは悪かったから延々甘味攻めはやめてくれ……。

529: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/05(日) 21:11:33.24 ID:wX3Q6i2q0
・球磨『難しいk……ムズカシイ』 、投下します

頭のアホ毛抜いたら言わなくなる(かもしれない)

530: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/05(日) 21:12:01.05 ID:wX3Q6i2q0
「球磨」

「何だクマー?」

「今日、自分の名前を言う時以外でクマ禁止な。三回言ったら罰ゲーム」

「クマ!?」

「今の含めて後二回、罰ゲームは妹達に明日一日撫で回される。恨むなら企画した妹達を恨め」

「それを実行しようとする提督も恨むク……そもそも、球磨が付き合うどうかは自由のはずだク……」

「前者は北上にハメられた。後者はお前が尻尾撒いてこの程度のゲームから逃げるなんてカッコ悪いことしないって四人が言ってたぞ」

「確かにそこまで言われたら引き下がれないク……そのゲーム、受けて立つ!」

「そうか、じゃあ日付が変わるまで頑張れ」

「ヴオー! やってやるクマー!」

「後一回な」

「あ」

531: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/05(日) 21:12:27.42 ID:wX3Q6i2q0
「球磨、そこの書類取ってくれ」

『自分で取るクマー』

「じゃあ茶淹れてくれ」

『火傷するぐらい熱いの淹れてやるクマ』

「……プラカードは卑怯だろ」

『ルールをちゃんと決めておかないのが悪いクマー』

「――ん? 北上からLINE?」

『もしも球磨姉が筆談しようとしたら、そんなセコい姉は球磨型には居ないって言っといてー』

「……読まれてるぞ、お前」

「優秀な妹で困るク……」

「妹に撫でられるぐらい、我慢してやったらどうだ?」

「姉の威厳を守る為にも絶対に言わないクッ!」

(あっ、舌噛んだ……)

「そ、そういえば球磨が勝ったらどうなるか聞いてないガー」

「勝ったら妹達から鮭満喫ツアープレゼントだそうだ」

「それは楽しみだガー」

「……明日から語尾、それにするか?」

「絶対にしないガー」




――――球磨、頭どうだ? 気持ち良いか?

 ――――ヴオー……気持ち良いクマー……。

――――今ので三回な。

 ――――あっ、し、しまったクマー!?……でも、頭洗ってもらえるのは幸せだしもういいクマー……。

561: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/06(月) 23:20:34.86 ID:LKfx/or/0
・阿賀野『長女は阿賀野なの!』

・元帥艦隊と演習

・赤城『筍の季節』

・飛鷹『コンビーフって何?』

・皐月と磯風『武勲』

・プリンツ『接客のノウハウ』

以上六本でお送りします

562: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/07(火) 08:07:57.27 ID:CCR+L4sz0
・阿賀野『長女は阿賀野なの!』、投下します

スペックは高い残姉ちゃん

563: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/07(火) 08:08:26.10 ID:CCR+L4sz0
「能代がね、阿賀野も酒匂を見習えって言うんだよ。一番お姉ちゃんは阿賀野なのに……」

「そうか、とりあえず書類が書きにくいから頭の上で寛ぐのをやめろ」

「提督さん、どうしたら阿賀野を見習えって言ってくれるようになると思う?」

「まずは人の話をしっかり聞くことから始めるといいと思うぞ、重い」

「能代のお話長いし、聞いてると眠くなっちゃうの」

「手始めに俺の話をちゃんと聞けお前は」

「提督さん、そろそろお仕事終わった?」

「お前なぁ……」

「あっ、そこ字間違ってる」

「ん?……確かに、間違ってるな」

「珍しいね、提督さんが字間違えるなんて」

「俺だってたまには間違える。というか、よく分かったな」

「これぐらい誰でもすぐに分かるでしょ?」

(そういえばコイツ、スペック自体は高いんだよな。普段が普段だからつい忘れそうになる……)

「提督さん、そろそろお腹空いちゃった」

「そうだな、そうするか」

「今日はハンバーガー食べたい気分かも」

「また服にケチャップ付けて能代に怒られるなよ?」

「提督さん、阿賀野だって付けない日ぐらいあるんだから!」

「そこはいつも付けてないって言えるようになれ」

564: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/07(火) 08:09:08.32 ID:CCR+L4sz0
(――で、昼食べて戻ったら即これか)

「提督さん、今日は少し肌寒いね」

「デカい抱き枕が暖かいお陰で冷える心配は無さそうだがな」

「阿賀野は抱き枕じゃなくて提督さんのお嫁さんでしょ?」

「能代にのし付けて返しとくか」

「ちょ、ちょっと待って! 阿賀野は返品出来ないよ!?」

「冗談だ。ほら、もうちょっとこっち来い」

「は~い。えへへ、提督さん」

「何だ?」

「ずっとこれからも一緒にお昼寝しようね」

「……忙しくなければ、な」





――――提督さん、今日もお昼寝しよ?

 ――――コレ片づけたらな。

――――じゃあお昼寝の為に阿賀野もお手伝いするね。

 ――――(毎回こうして手伝ってくれると助かるんだが……)

――――さー阿賀野の本領発揮するからね!

570: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:01:40.26 ID:61rmt4Gs0
・元帥艦隊と演習、途中までですが一度投下します

571: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:02:15.34 ID:61rmt4Gs0
 一つは、長き戦いに終止符を打った提督の待機艦隊。
 一つは、その戦いを裏から支え、純粋な練度のみなら他の追随を許さぬ元帥の娘達艦隊。
 両艦隊六名ずつで演習場にて相対し、密かに闘志を膨らませていく。

「前回は不覚を取りましたが、今回は負けません」

「うーちゃんは恐かったから必死で抵抗しただけぴょん」

「黙れこの腹黒兎め、今日は私が沈めてやる」

「卯月ちゃんは腹黒くないよ、ちょっと優しさがねじ曲がってるだけで」

「潮、それフォローになってない」

「霧島、お手柔らかにお願いします」

「大和さんと武蔵さん相手となると、久しぶりに全力が出せそうですね」

「吾輩もちと本気を出そうかの」

「ふふ、終わったら鳳翔さんのお店で一杯飲んで帰らないと」

「ねぇねぇ木曾、何で笑ってるの?」

「姉貴達とやり合う時の良い練習になりそうだからな、俺としては願ったり叶ったりな演習なんだよ」

「全く、私は反対したのに……」

 普通に会話こそしているが、その場に張り詰めたプレッシャーは並の者では耐えられない程に重い。
 のんびりと観戦を楽しもうとしている者も、六対六でなければそこに立っていたはずの者ばかりだ。
 編成としてはバランスの良い提督の艦隊と、基礎を徹底した上での変則的な戦いを得意とする元帥の艦隊。
 個と隊の力は簡単に物差しで計れる次元を越えており、壮絶な戦いが繰り広げられるのは誰の目にも明らかだった。

「全員分かってるとは思うが、演習場全壊とかはやめろよ?」

「細かいことを気にする奴だ。それぐらいすぐに修繕出来るじゃろ」

「修繕費用出してくれますかね元帥殿?」

「うちの可愛い娘達に勝てたら出してやらんこともないぞ」

「その言葉忘れるなよクソ爺」

「ふんっ、ひよっこに年季の違いを教えてやる」

 師と弟子、そういう意味合いも兼ねている強者達の宴が今、始まりを迎える。




――――演習、始め!

572: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:02:51.08 ID:61rmt4Gs0
「空は取ります。木曾、まずは雷撃を」

「了解!」

 当てる為ではなく牽制の為の雷撃が六発、木曾より放たれる。
 駆逐艦四隻によるコンビネーションが非常に厄介な事は全員が知っており、その足を一瞬でも止めさせるのが目的だ。

「凪ぎ払え!」

「昔馴染みの好(よしみ)だ、一瞬で終わらせてやる!」

 動く暇を与えはしまいと、大和型による砲撃が降り注ぐ。盛大に水柱が何本も上がり、一瞬双方の姿が視認できなくなる。
 しかし、それだけで攻撃の手を休めたりはしない。

「利根、大和は左へ。武蔵、木曾は右へ。島風は正面から突破、旗艦の首を取ります」

 加賀の指揮に従い、五人は相手を囲うように陣形を展開していく。案の定水柱の向こうからは大して――というよりほぼ無傷の艦隊が顔を見せた。

「うーちゃん死ぬかと思ったぴょん」

「私の背中に一瞬で退避しておいて、よく言えたものです」

「キリぴょんなら防ぐって信じてたぴょん」

「流石に手は痺れましたが、防げないことはないかと」

 砲弾を弾き痺れた手をひらひらと振りながら、霧島は今の砲撃を撃った二隻のうちどちらを攻めるかを考える。
 自分に戦い方を教えた武蔵か、その武蔵の姉でありまだ手合わせしたことが無い大和。
 出た結論は、まだ戦ったことの無い相手との実戦データ収集だった。

「私は大和さんを狙います」

「じゃあお願いぴょん」

 背中から飛び降り、卯月は既に行動を開始している三人組の後を追う。
 上空では加賀と千歳の艦載機が激しく機銃を撃ち合っており、百を超える線が空に絶え間無く引かれていた。

(牙が抜けているとはいえ、姉弟子相手ではやはり厳しいものがありますか……)

 千歳が拮抗状態のまま抑えられる時間を百八十秒と仮定し、奥の手がバレている兎はどう加賀を落とすかを考える。
 それと同時に、合流した三人とスピード狂を網で絡めとる作戦を開始するのだった。

573: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:03:26.23 ID:61rmt4Gs0
 左右に展開した四隻からの集中砲火を浴びながらも、元帥艦隊の主軸四隻の勢いは止まらない。
 それを一人で真っ向から相手することになった島風だが、この程度で臆する様な彼女ではなかった。

「連装砲ちゃん、やっちゃってー!」

「来たね」

 先頭を進んでいた朧に向けて砲撃後、少し右に旋回しながら雷撃も放つ。
 最初の砲撃こそ回避されたものの、続く雷撃が四隻の足を止めさせ、島風は追撃を仕掛けようとした。

「速いのは航行速度だけじゃないんだよ!」

「――正射必中」

「おうっ!?」

 連装砲ちゃんによる砲撃を放とうとした瞬間、額を貫くように飛んでくる砲弾が見え、彼女は身体を仰け反らせて回避行動を取った。
 それを撃ったのは潮であり、更に続けて数発を島風へと放つ。

「ちょっ、まっ、お゛うっ!?」

「朧ちゃん、曙ちゃん」

 何とか身を捻り回避していたものの、正確に身体の中心線を狙った砲撃が、とうとう島風の胸部を捉える。
 そこへ間髪入れずに曙の砲撃が放たれ、完全に足の止まった彼女へと朧が接近し、両手でがっしりと掴む。

「お休み」




 この演習において島風が最後に見たモノは、眼前に迫る水面だった。

574: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:04:03.24 ID:61rmt4Gs0
「むむ、流石に四対一じゃとちと島風でも分が悪すぎたようだのぅ」

「駆逐艦で武蔵と互角に渡り合える数少ない四人だそうですから……」

「じゃが島風のお陰で包囲陣形は整ったぞ。後方の二人が若干気がかりではあるがな」

「――どうやら、そのお一人が大和に用があるみたいですね」

 自分に向けられた砲門に気付き、大和は身構えた。
 先程の挨拶への返事だと言わんばかりの砲撃が迫り、放った相手と同じ様に彼女はそれを手で弾き飛ばす。

「ふぅ……売られた喧嘩は買う主義ですので、お相手してきます」

「お主も相変わらず見かけによらぬ血の気の多さじゃな」

「大和は、あの武蔵の姉ですから」

 にこやかに利根に言葉を返した後、霧島へと向けた表情は“大和型一番艦”の顔だった。

「――戦艦大和、推して参ります!」

575: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:04:29.24 ID:61rmt4Gs0
「卯月ちゃん、木曾さんと利根さんどうする?」

「キソーはうっしー、とねねはぼのちゃんお願いぴょん」

「朧は聞くまでもなく武蔵さんよね」

「今日こそあの人投げ飛ばす……!」

 空を抑えていられるタイムリミットが刻一刻と迫り、卯月達は四人で固まるのではなく一対一に持ち込む形に変更する。
 それぞれに相手を決め散会し、卯月は再び旗艦同士の一騎討ちへと向かう。
 ここからは時間との勝負であり、千歳が劣勢に追い込まれるか他の面々が落ちると元帥艦隊にはかなり不利となる。
 あくまでこれは艦隊戦であり、旗艦を落とせても被害が甚大ならば勝ちとは言い難くなってしまうのだ。

(別にあの人を喜ばせるつもりはありませんけど――)




「“元帥”という階級を飾りにするわけにはいかないんだぴょん」

576: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/11(土) 22:04:56.43 ID:61rmt4Gs0
「やりますね、霧島」

「お褒めに預かり光栄です」

 大和と霧島は互いに距離を徐々に詰め、回避行動を取れない距離まで近付く。
 そして、砲門を静かに構え、普通ならば絶対にやらない至近距離での撃ち合いを始めた。

「大和型の真価、見せて差し上げます」

「データ以上の方であることを楽しみにしています」

「全砲門、一斉射!」

「距離よし、撃てー!」

 撃ち、弾き、弾き、撃つ。ひたすらそれを繰り返し、一歩も退かずに撃ち合いを続ける。
 次第に正確に弾く余裕は無くなっていき、二人の拳からは血が流れ始めていった。

「くっ……」

「つぅっ……」

 数十の攻防の末、二人は全弾を撃ち尽くす。
 流石に大和型の装甲は厚く霧島より損傷は軽微だったが、大和も肩で息をする程に疲弊していた。
 互いに息を数秒整える時間を取り、その後、笑みを浮かべる。

「ふふっ、これでは武蔵のことをとやかく言えないですね」

「データ以上の強さ、やはり素晴らしいです」

「――続けましょうか」

「――望むところ、です」




 ――砲撃戦カラ肉弾戦ニ移行ス。

588: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/19(日) 11:42:38.99 ID:/s6YKl7r0
「吾輩の相手はお主か、曙」

「そうよ」

「すまぬが負けるわけにはいかん。恨みっこ無しじゃぞ?」

「私も負けたら何だかんだまた卯月に言われそうだし、大人しく負けて」

「それはお主の――頑張り次第じゃな!」

 利根は今日も絶好調なカタパルトから試製晴嵐を飛ばし、砲を構えた。
 曙もそうなるのは当然最初から分かっており、高角砲で晴嵐を狙いながら一度距離を取る。
 何より怖いのは前後左右全てから攻撃されることであり、回避は最優先すべき行動だ。

(武蔵の奴は何と言っておったかのぅ……確か曙は、バランス型じゃったか?)

 器用に対空砲火と砲撃と回避行動を繰り返しながら、着実に晴嵐を落としながら相手を狙う曙。
 出来れば時間をあまりかけずに落としたいということもあって、利根は温存していた晴嵐も全て飛ばし、動きを完全に封じようと試みる。

(また増えた、ウザいなぁ……)

 基本的に対空は曙が任されることが多く、この戦い方は彼女にとっては慣れたものだった。
 バランス型というよりは万能サポート型に近く、突出して何かが凄いというものは曙にはない。
 しかし、突出しない分どんな場面でも対応出来るのが彼女の強みだ。



「ちょこまかと動くのもそろそろ終わりにしてもらうぞ」

「仕方無いでしょ、駆逐艦なんだから」

「うむ、それもそうじゃな。では動いているのを狙うとしよう」

(晴嵐は今飛んでるので全機よね、後は――っ!?)




 気付いた時には手遅れ、それが戦場である。

589: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/19(日) 11:43:21.66 ID:/s6YKl7r0
 真っ直ぐに武蔵へと迫る駆逐艦。その手にあるべきはずの砲は、今は仕舞われていた。

「最初から砲撃戦を捨てるか」

「どうせ貫けないし、撃つよりこっちが早い」

「お前のその誰にも臆さず真正面からぶつかる精神、私は好きだぜ」

「愛の告白は……なんていうか、困る」

「む、振られたか」

「耐性、付いた?」

「負けず劣らず賑やかで馬鹿騒ぎが好きな鎮守府だったんでな、多少からかわれた程度ではもう動じんさ。あの兎だけは未だに皮を剥いでやりたいがな……」

「――そろそろ、いくよ」

「――あぁ、かかって来い!」

 大和と霧島が肉弾戦ならば、この二人が今から行うのは海上でやる柔道の試合のようなものだ。
 一発殴れば武蔵の勝ち、にも関わらず彼女がそうしないのは、殴ろうとすれば負けるからである。

「相変わらずお前の動きは、肝が冷えるっ」

「その重武装で反応するのも十分異常だと思う」

 並行に航行している状態から滑るように懐へと入り込み、足を崩そうとする朧。
 それを先読みし武蔵は払いのけるが、その手を掴まれ更に体勢を崩されかけ、彼女へ砲身を向けて退かせた。

「艦娘の戦い方としては下の下なのかもしれんが、それ故に対策が取り難いというのはやはり脅威か」

「しっかり防いでから言わないで欲しい」

「この程度なら防いで当然、だろ?」

「……」

 ニヤリと笑う武蔵を見て、朧は昔と変わらず衰えていないと確信した。
 そして、卯月が見せたものよりはやや抑え目に加速し、小回りの難しい彼女の背後へと回り込もうとする。

「そう簡単に後ろは取らせん!」

 その場での急旋回は難しい為、前へと進みながら武蔵は身体を朧が回り込んだ方へと旋回させる。
 しかし、これが悪手だったとすぐに気付くこととなる。

(む、この動きはまずかったか……)

 最初からその動きを読んでいたかのように既に間近まで接近していた朧を見て、武蔵は行動の優先順位を切り替えた。
 自分の身体を掴もうとする手に体勢を崩されるまでの僅かな時間を使い砲を構え、目視で確認出来た敵目掛けて放つ。
 浮遊感がその後すぐに襲い掛かるが、艦隊戦としての役割は果たせた彼女の顔は笑っていた。

595: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/20(月) 22:02:59.01 ID:j/Dxs98P0
「潮は大人しい、ってイメージは捨てた方がいいらしいな」

「戦うのは苦手ですよ?」

「……お前、あの中だと一番ヤバい感じがするぜ?」

「――お喋りしに来た訳じゃないので、そろそろ寝てください」

(張り付けた様な笑みってのはこういうのを言うんだろうな)

 身震いしそうな程冷たい笑みを浮かべ、潮は砲を構えた。
 先の島風との戦いからも分かる通り、その射撃能力はずば抜けて高い。

「何発撃ったらそれだけの技術が身に付くのか、教えてもらいてぇなぁ!」

「一発でも外せば誰かが沈むかもしれないと思ったら、外さなくなりますよ?」

(そんな緊張感を持続したままずっと戦うなんてのは……出来るから、この強さってことか)

 眉間、首、胸、腹、太股、どれも回避せざるを得ない部位への砲弾が木曾へと迫る。
 かする程度の最小限の動きを心掛けないと、次弾への対処が出来ない辺り、その異常な速射能力も窺い知れた。

(改造砲か……それならこれでどうだ!)

「?」

 一定の距離を保っていたのを急に崩し、木曾は全速で突撃する。
 明らかな愚策とも思えるが、そこに何か秘策があると考え潮は足を集中的に狙うことにした。

「そっちが改造砲を使うってんなら、俺はコイツを使わせてもらう!」

(っ!? マントに弾が……)

 木曾は羽織っていたマントを片手で掴んで脱ぎ、足元で振る。
 綺麗にその中へと潮の弾は吸い込まれ、跡形も無く消えた。

「この距離なら――」

「それは私の台詞ですよ?」

「ぐぅっ……だが、これで!」

 至近距離から腹部に被弾し、視界がぐらりと揺れる。
 しかし、それに堪えて木曾は潮へと相討ち覚悟の魚雷を放った。

(締まらねぇ戦いだなぁ……だが、これで俺達の勝ちだ)




「詰めが甘いです、木曾さん」

 この演習中で最後に木曾が見たのは、最初と変わらぬ身震いするような笑みだった。

598: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/22(水) 21:33:03.55 ID:6mtZKx6X0
(私よりも鳳翔さんに近い艦載機の繰り方、何の気兼ねも無く鳳翔さんがこちらへ来られたのも頷けるわね。――けれど、姉弟子として負ける訳にはいきません)

 空で激しく繰り広げられていた戦いは時間が経つにつれ加賀が優勢になっていき、現在は完全に空を掌握するのも時間の問題というところまできていた。
 対する千歳も最初から時間稼ぎにのみ重点を置いていた為、その役割はもう十分に果たせていると言える。

(加賀さんに赤城さん、鳳翔さん、龍驤さん、他の人達も合わせると、空母の質はやっぱりこの鎮守府が一番ね)

 特に悔しそうな表情も見せず、演習後の酒盛りへと彼女は思いは馳せる。
 酒の肴になる話には事欠かないのは明白であり、今から誰と飲めるかを考えながら、千歳は卯月に制空権喪失の通信を入れるのだった。

599: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/22(水) 21:33:36.77 ID:6mtZKx6X0
 演習は佳境に突入し、轟沈判定を受けたのは曙、島風、木曾の三名。
 大和と霧島は中破状態で戦闘続行中。
 朧は武蔵を投げるという目的を達成して満足し、武蔵と談笑中。
 利根は小破、潮は中破でそれぞれ旗艦の援護へと向かっていた。

「――艦隊戦、とは一体何なのかしら」

「深海棲艦とは相手の仕方が違う以上、こうなるのは仕方無いぴょん」

「貴女達が深海棲艦でなくて本当に良かったと思います」

「こんな可愛い子が深海棲艦な訳無いでぇーっす」

「あくまで“子”と言い張るのね、いいけれど」

「――だって、“子”ですから」

「……そう」

「じゃあ、そろそろ始めるぴょん」

「えぇ、そしてすぐに終わらせます」

 開幕の一撃、それは加賀の艦載機による真上からの奇襲。
 既に発艦していた彗星による爆撃が、卯月目掛けて投下される。

「狙いが綺麗過ぎ、的」

「第二次攻撃隊、発艦。作戦そ・ほ・ひ」

 真上に掲げた砲で落ちる前に処理を終え、卯月は直ぐ様正面へと構え直す。
 当然加賀も攻撃の手を緩めず、次の攻撃隊を飛ばした。

(あの加速は知っていれば避けられる。ただ、それは相手も分かっているはず……)

(潮の援護が見込めるかどうかという程度、期待はせずに隙を突きましょうか)

 近接格闘ならば朧、射撃なら潮、総合補助なら曙が一番秀でている。
 では、卯月は何故元帥の護衛として優秀なのか――それは、直感の鋭さにある。

(変則的な戦い方だけで務まるようなものでは無いと思っていましたが……)

 駆逐艦にとっては少量の被弾が命取りになる。それが、一般的な考え方だ。
 だが、この卯月に関しては違っていた。

(右……左、後ろ……左)

 至近弾、掠り弾、結果的にそうなる軌道の攻撃には一切反応せず、直撃になる軌道の攻撃を放とうとする艦載機だけを撃たれる前に撃墜していく。
 冷静な思考判断と、野性的な直感、その二つを同時に駆使出来るからこそ、彼女は元帥艦隊旗艦兼元帥護衛という役割を全う出来ていたのだ。
 生き残り、生かす為に特化した卯月。ある意味で初霜に似た彼女の強さは、どこか優しさを秘めていた。

600: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/22(水) 21:34:04.38 ID:6mtZKx6X0
「悪いがここから先へは行かせられぬ」

「通して下さい」

「むむっ、問答無用というやつか」

「今は戦ってるんです。話そうとするのがおかしいんですよ?」

「ふむ……確かに一理ある。じゃが、吾輩は語らうことが好きでな、すまんが絶対に付き合ってもらうぞ!」

「――邪魔を、しないで」

(これは一対一だと木曾が負けたのも無理ないのぅ。中破まで追い込んだだけでも大金星じゃ)

「考え事なんて余裕あるんですね」

「余裕か、そう見えるならお主の目は節穴じゃぞ?」

「ただの忠告ですから、気にしないで下さい」

「ほほぅ、それは感謝しなくてはならんな」

「……挑発のつもりでしょうか」

「言ったであろう? 語らうのが好きだ、と」

「私は嫌いです」

「――消えぬ傷か、難儀だなお主も」

「っ……」




 ――どうだ? 語らうのも立派な戦術の一つなのじゃぞ?

609: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/23(木) 22:28:54.70 ID:r04OVrsN0
「う~さぎうさぎ、何見て跳ねる、怖いお空を見て跳ねる~」

 跳ねるように、ステップを踏むように、卯月は艦載機を落としながら追い詰めていく。
 対する加賀は、勝機を掴める一瞬をひたすらに待っていた。

(……こんなに戦っていて気分が高揚するのは、いつ以来かしらね)

 平和が、安らぎが、無意識の内に彼女の“艦娘”の部分を弱めていた。
 勝利への渇望、生死をかけた緊張感、秘書艦としての責務。
 捨てたわけではなく、ただどこかでもう必要ないと切り捨てた“力”を、再び加賀は身体に巡らせる。

「――この勝負は、譲れません」

(これが、あの武蔵の認めた力ですか……)

 艦載機の動きはより滑らかに、より激しく、兎を狩ろうと牙を剥き出しにする。
 そう簡単に狩られる程この兎は弱くないものの、表情からは余裕が消えていた。

「どうしました? 歌わないのですか?」

「ここからは、そんな遊びは必要無いでしょう」

「そう……」

「えぇ、では――」




――――私も本気で行きます。

610: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/23(木) 22:29:24.95 ID:r04OVrsN0
「――で、結果が同時轟沈判定か?」

「私の方が早く落としました」

「うーちゃんが先にビシッと決めたぴょん」

「こりゃ修繕費は折半かのぅ」

「それぐらい払えこの古狸め」

「ほーしょーさーん」

「千歳、お願いだから離れてちょうだい、ね?」

「曙ちゃんはね、とっても可愛いんです。ずっと見てるだけで幸せになれるぐらい好きなんです」

「そ、そうか、それほど大事に想える相手が居るのはいいことじゃな」

「曙、顔赤いよ?」

「うっさい!」

「ずっと殴り合ってたって……お前等も大概だな」

「つい止まらなくなってしまって……」

「とても有意義な時間でした」

「あまづがぜぇ……良いどころ見ぜられながっだよぉ……」

「はいはい、貴女もちゃんと役割を全うしてたんだからそんなに落ち込まないの」

「――さて、それじゃあそろそろお暇しようかの」

「次は葬式ぐらいまで顔を会わせないことを願いますよ元帥殿」

「お前の葬式なんぞ来たくも無いわ」

「アンタのだよ!」

「(相変わらずですね、この二人は)」

「(とっても仲良しだぴょん)」

「二度と来るなクソ爺ー!!」




――――して卯月よ、もう懸念は無いか?

 ――――無いです。例え次の世代へバトンを繋いでも、彼女達が居れば崩れることは無いでしょう。

――――そうか……では、もう一踏ん張りするとしよう。

 ――――はい、付き合いますよ、最後まで。

613: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/24(金) 21:23:55.13 ID:cy/MYjqB0
赤城『筍の季節』、投下します

牡丹が咲くと筍の全盛期

614: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/24(金) 21:25:47.26 ID:cy/MYjqB0
「ほら提督、ここにもあそこにもありますよ」

「パッと見ただけで分かるのは流石だな」

「詳しい方に教えて頂きましたから」

 筍は土から完全に出ているモノではなく、頭が少し出た程度のモノを掘るのが基本だ。
 猪などはこれを掘り起こし食べるので、食べるのに適しているのがそのタイミングだということは動物達が証明してくれている。

「先を越される可能性もある、ってことか」

「逆に言えば、自然界の動物も狙いたくなる美味しさだということです。あまり出来が良くないと見向きもしないそうですよ?」

「赤城も出来が良くないのは見分けられそうだな」

「流石にそこまでは――あっ、これ美味しそうな感じがします」

(断言出来ないだけで感じ取りはするのか……)

 傷付けないように手際よく掘るのを見ながら、無人島でも彼女なら確実に生き残るだろうと提督は考える。
 しかし、それと同時に以前にも増して可愛く笑う赤城の姿に、彼も自然と笑みを浮かべていた。

「最近は鎮守府に居る時間も増えて、毎日色々な話を駆逐艦娘達に催促されてるらしいな」

「旅行の参考になるからと、ひっきりなしです」

「土産が減ったとボヤく奴も数名居るが、それ以上に他の奴等がそこかしこに今は旅行に行ってるからトントンか」

「たまにその案内役に駆り出されたりもしますし、結構大変です」

「大変そうには全然聞こえんぞ?」

「ふふっ、そうでしょうか」

 そんな会話をしているうちにある程度の量が貯まり、二人は竹林の持ち主に挨拶をして山を下りる。
 そして、掘り立ての筍を間宮の元へと持ち帰った。

615: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/24(金) 21:26:31.23 ID:cy/MYjqB0
「筍ご飯に焼き筍、筍の刺身に煮筍、筍の佃煮、贅沢な筍のフルコースですね」

「これだけ並ぶと凄いな」

「アクがほとんど出ない良質な筍でしたし、作っている最中に絶対に美味しいと分かりましたよ」

「では、早速いただきます」

「いただきます」

「――刺身は筍本来の味がしっかりと感じられて美味しいですし、焼き筍はワサビ醤油が凄く合いますね」

「筍ご飯も美味いな、これを食べてから今度は白米に佃煮と山椒、フキを乗せた茶漬けで食べるのも最高に良い」

「先端と輪の部分の食感の違いも堪りません」

「これは来年も掘りに行くべきだな」

「えぇ、その時はまたお供します」

「当たり前だ、猪避けが居ないと危なくて行けんぞ」

「猪……出来れば山の中で静かに暮らしているモノには会わずに済ませたいですね。田畑を荒らしている訳では無いのであれば、わざわざ戦う理由もありませんし」

「前に山に探しに行かなかったか?」

「アレは人里に近付かないように追い払っただけですから」

「そうか、てっきり食べたくなって探しに行ったのかと……」

「提督、流石に私も傷付きますよ……?」

「冗談だ冗談。ほら、しっかり食べろよ」

「そうですね、今日のところは筍に免じて聞かなかったことにしておきます」

(……妙に子供っぽい時が増えた気がするが、良い傾向……だよな?)




――――赤城、何して――。

 ――――提督、静かにして下さい。

――――(……霞?)

 ――――旅の話をしてたら寝ちゃったんです。

――――……お前は、本当に良く分からんな。

 ――――はい?

――――いや、何でもない。じゃあまたな。

623: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/26(日) 22:03:47.55 ID:XhO0FJBu0
・飛鷹『コンビーフって何?』、投下します

日々お品書きが増えていく居酒屋鳳翔

624: ◆UeZ8dRl.OE 2015/04/26(日) 22:04:26.43 ID:XhO0FJBu0
「コンビーフって、牛缶とは違うの?」

「牛缶は濃い目に既に味付けされた後に詰められてる。コンビーフは塩漬けにしただけだから、色々応用が利くんだよ」

「ふーん、提督は良く食べるの?」

「いや、俺も実はあまり食べたことがない。たまたまこの前鳳翔が作った試作品を食べたら美味かったから、お前もどうかと思ってな」

「そういうことなら、試してみよっかな」

「では、お二人分用意しますね」

 マッシュポテトに混ぜ込んだモノ、ワサビとマヨネーズで和えたモノ、ピザ風にチーズとトマト、玉葱と一緒にトーストに乗せたモノ。
 シンプルな品々がカウンターに並んでいくものの、酒の肴に相応しいように鳳翔が細かい手間を加えているので、見た目だけで味を判断することは出来ない。

「はい、どうぞ」

「おっ、出来たか」

「へー、コンビーフってこういうものなのね」

「クラッカー等も用意してますので、お好きに召し上がって下さい」

「じゃあまずはこのマッシュポテトから」

「飛鷹はワインか……じゃあ何か俺も軽いのを頼む」

「はい、すぐにお入れしますね」

「――もっとしつこいかと思ったんだけど、思ったよりさっぱりしてるわね」

「調理の仕方もあるが、じゃがいもと合わせるのが一番ポピュラーなだけあって、相性がいいんだよ」

「こっちはクラッカーに乗せるの?」

「そのままでもいけるぞ」

「じゃあまずはこれだけで……うん、少しツンと来るけど酒の肴にはピッタリね」

「牛肉とワサビは結構合うからな、味が多少濃くてもワサビが後味をさっぱりさせてくれる」

「ついつい食べ過ぎそう……」

「こっちのトーストを食べ過ぎたら間違いなく太る」

「提督? まだ食べてない状態でそういうこと言わないでくれない?」

「ワイン二杯目要求しながら言われても申し訳無いとは思えんぞ」

「仕方無いじゃない、美味しいんだもの」

「ふふっ、ありがとうございます」




――――結局あの後出されたのも完食しちゃったわね……。

 ――――次も頼もうって気にはなったか?

――――頼むのは四回に一回ぐらいにする。

 ――――(……三回に一回ぐらいにはなりそうだな)



次回 【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」 後編