1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:35:49 bzO4AeNU
・LUNKHEADの『白い声』を題材にしたssです
・ベルトルトが語ってるだけ


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2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:38:57 bzO4AeNU

僕のとなりにはいつもライナーとアニがいた

僕らはいつも3人一緒だった


でも



「自分は独りなんだ」



そういうふうに思っていないと

ふたりに頼りすぎてしまいそうで怖かった


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:40:14 bzO4AeNU

だからあの日から

僕らが故郷に帰れなくなったあの日から



僕は独りぼっちで生きていける

生きていけなきゃいけないんだ



そういうふうに思い込もうとした

強くなろうと心に決めた


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:50:26 bzO4AeNU

ねえライナー

君は僕がアニに対して恋愛的感情を持っているって
そう思ってたみたいだけど


それは君の勘違いだ


いや、半分は間違っていないかもしれない


確かに僕は故郷にいたころアニのことが好きだった

それが友だちとしての好きとは違うことも自覚していた


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:52:35 bzO4AeNU

でもね、5年前

はじめて壁を壊した時に思ったんだ



僕には人を好きになる資格なんてないんだって




だからあの時
壁と一緒にアニへの気持ちも壊したんだ



今だってアニのことは好きだし、信頼してる

でもそれは仲間として、友だちとして


6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:53:52 bzO4AeNU

誰かを本気で想うことや

心の底から笑うこと


そういうことと引き換えにしても

僕は強くなろうと心に決めた


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 12:58:59 bzO4AeNU

本当は誰かに伝えたかった


叫びたくて


わかってほしくて



でも

そういう気持ちを隠すことが

強さだとずっと思っていたんだ


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 18:57:18 bzO4AeNU

だから僕は誰の心にも触れないで

透明なように生きようとした



あの頃の僕はエレンが言うように

ライナーの腰巾着でしかなかったんだ




でもこんなふうに生きることが


怖くない日なんてなかった


迷わない日なんてなかった


みんながあまりにも優しかったから


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 18:59:23 bzO4AeNU

どんなに僕が心に厚い壁をつくっても

君たちはその壁を壊してきた


ライナーの後ろに隠れる僕にも

優しく明るく接してくれた



嬉しかったよ


でも苦しかった


どうして僕はみんなと普通に出会えなかったんだろう

僕が、僕らが、普通の人間だったなら


考えても無駄だとわかっていたのに


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:01:20 bzO4AeNU

そうしてついにその日がやってきて

僕は再び壁を壊した




それは世界でひとり自分だけが

あまりにも無力に思えた日だった


おかしな話だ


僕は人々の生活を、平和をこんなにも簡単に奪ってしまえるほどの
大きな大きな力を持っているのにね



僕が過ごしたこの街は

僕が壊したこの街は

あまりにキラキラまぶしすぎて

何もかもがキレイに見えた


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:03:35 bzO4AeNU

故郷に一歩近づけたはずなのに

嬉しいはずなのに


どうしてあんなに涙が溢れたんだろう




ライナーは覚えてるかな


その日の夜、君がはじめて僕に弱音を吐いてくれたこと


「そうやって独りで生きてきたんだ」


君は笑いながらちょっと泣いた


僕はなんだかほっとしてしまった


僕だけじゃなかったってほっとしたんだ


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:09:31 bzO4AeNU

世界でひとり自分だけが

無力だと思ったあの日


この目にうつってたほかの誰かも

同じことを思っていたのかな








もう冷たく、動かなくなってしまった君は

それでもとてもいい顔をしている


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:11:05 bzO4AeNU


君は最期まで立派な戦士だった





僕も最期まで立派な戦士でいられたかな






そして、君と僕は

“人生"という名の扉をひとつぬけたみたいだ


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:16:19 bzO4AeNU


僕が唯一持っていた自分の意志


たったひとつだけ願ったこと



「3人で故郷に帰る」



もう叶うことはないみたいだ






そしてこれは僕の最期の願い


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/08/29(木) 19:17:09 bzO4AeNU

どうかアニ


君だけはどうか、どうか、





無事でありますように................







fin