1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 22:24:57.64 ID:tKJ6jueCO
初春「佐天さぁん!ちょっと聞いて下さいよ佐天さぁん!」

佐天「なにさ初春…?アホの子みたいにテンション高いじゃん」

初春「実はですね、実はですね、私XBOXを買ったんですよ!」

佐天「えっくすぼっくす?なにさそれ。ジュークボックスみたいなの?」

初春「全然違いますよぉ!XBOXっていうのは、マイクロソフトが発売したゲーム機ですよ」

佐天「ゲーム機?プレイステーション以外にもゲーム機なんかあったんだ」

引用元: 初春「これがXBOXの力…」 



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4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 22:33:48.33 ID:tKJ6jueCO
初春「ノンノンノン!甘いですね佐天は。プレイステーションなんて一般人向けのハードですよ」

佐天「ふぅん…。じゃあさアレは?なんだっけ、ゲーム…なんとか」

初春「もしかしてゲームキューブですか?」

佐天「あ、そうそう。それだよ、マリオとか出来るんだよね」

初春「はい、佐天にデコピィーンッ!」サッ

バチコーン!

佐天「痛っ!?…ちょっと、なにすんのさ初春!」

初春「ゲームキューブなんてオコチャマのハードですよ!大人は黙ってXBOXなんです!」

佐天「そんなの知らないわよ…、痛たた」サスサス

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 22:39:50.86 ID:tKJ6jueCO
初春「仕方ないですねぇ佐天さんは。じゃあ今から佐天さんの家でXBOXの凄さを見せてあげますよ!」

佐天「見せてあげますよって、初春ん家に本体取りに行かないとダメじゃん?」

初春「ご心配無く!ちゃんとソフト一式共にリュックに入ってますから!」ガチャガチャ

佐天「はぁ…、通りでいつもより膨らんでる訳だね。でも教科書とかはどうしたのさ?」

初春「もちろん置き勉ですよ!決まってるじゃないですか」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 22:52:28.24 ID:tKJ6jueCO
初春「ささっ!早く行きましょうよ佐天さん!なんのソフトがいいかな」タッタッタ

佐天「ちょっと待ってよ初春!そんなに走ったら転ぶよ」

初春「ソニックメガコレクションがいいかな、それともパンツァードラグーンオルタかな…」タッタッ

佐天「何でもいいからちょっと待ってって!…なんでゲーム機背負ってるのにそんなに走れるのさ」

初春「XBOXは私の身体の一部ですからね!」

『SEーGAー♪』

佐天「あれ、初春のケータイ鳴ってるよ?」

初春「あ、本当ですね?一体誰かな、こんな時に。折角佐天さんにXBOXの素晴らしさを教えてあげようと思ったのに」ピッ

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 23:07:29.92 ID:tKJ6jueCO
―路地裏―

初春「うんしょっ!うんしょっ!」ガチャガチャ

黒子「ちょっと初春!さっきから何をガチャガチャ言わせてますの。尾行が気付かれますのよ」

初春「ごめんなさい、ちょっとXBOXが…」ガチャガチャ

黒子「なんですの、えっくすぼっくす?」

初春「詳しい説明は後です、ターゲットが接触しますよ!」バッ

黒子「む、本当ですわね。ちゃんと作戦を覚えていまして」

初春「バッチリですよ、あの生徒がスキルアウトと取引している所を現行犯でジャッジメントするんですよね」

黒子「上等ですのよ、初春はバックアップをお願いしますの」タッ

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 23:19:53.77 ID:tKJ6jueCO
初春「でも、なんで大能力者がスキルアウトなんかに協力を…」

黒子「十人十色、人が考えてる事などそれぞれ違いますのよ。彼らに共感する者がいてもおかしくありませんの」

初春「なるほど…そうかも知れませんね……。学園都市の歪みを目の当たりにしたような気がしますね」

『SEーGAー♪』

初春「し、しまった!?ケータイをマナーモードにし忘れて!」

黒子「初春あなた何をやってますのよ!!」

「あそこだ、あの陰にジャッジメントが。逃げるぞ!」

初春「あ、逃げられちゃいますよ!」

黒子「追いますのよ初春!」ダッ

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 23:33:12.38 ID:tKJ6jueCO
黒子「初春はスキルアウトの方を追って下さいまし、私は生徒の方を追いますのよ!」タッタッ

初春「は、はいぃ分かりました!」ガチャガチャ

その後、私は白井さんと二手に別れてターゲット追った。路地裏とはいえ夏の陽射しが強く、私の額は直ぐに汗だらけになっていった。

初春「はぁはぁ…、こんな時ワートホグがあったらなぁ…」ガチャガチャ

XBOXのヒンヤリとした金属の冷たさを背中に感じながら私は走り続ける。
しかしその感触も路地裏を抜けた瞬間に途絶え、代りに後頭部にズキリとした痛みが徐々に広がってくる。

気がつけば地面に倒れた私と、鉄パイプを構え私を見下ろすスキルアウトの姿があった。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 23:42:16.22 ID:tKJ6jueCO
初春「ま、待ち伏せ…!?でもなんで私が追って来てるって…」

激しい頭痛に見舞われながら、私は気付く。そう、背中のXBOXの事に……。
恐らくは、リュックから漏れるXBOXの音を感じ取られたのであろう。

初春「くっ、まさかこんな誤算が…。とにかく今は逃げないと…」

ふらつく脚に力を入れて、私はとにかくこの場から離れようとする。
しかし、相手も私が戦闘向きの能力者でない事を悟ったのか逃げずにこちらに向かってくる。
スキルアウトと手負いの私と差のは大きく、あっという間に距離を縮められてしまう。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/15(日) 23:53:11.69 ID:tKJ6jueCO
振り返った私の眼に映った物は、高らかに鉄パイプを振り上げ私に降り下ろすスキルアウトの姿。
私は思わず眼を瞑り、鉄パイプの衝撃に恐怖する。

初春「……ぐっ!!」

背中を殴打された私は、その勢いで自動販売機に衝突する。
ゴロゴロと地面を転がる私だが、その時先程とは違う違和感を感じていた…。

初春「あ、あれ…?全然痛くない…」

先程の頭の痛みと比べて、背中は全くと言っていい程痛みは無い。

初春「背中…。ま、まさか!?」

私は慌て背中のリュックから中身を取り出す。現われた無骨な黒い物体はやはりXBOXそのものであった。

初春「わ、私のXBOXが…!?壊れて無いかな!」

酷く狼狽した私は目の前の自販機のコンセントを引き抜き、代りにXBOXを接続した。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 00:02:05.24 ID:h4jM1mVpO
その瞬間、私の耳に聞こえて来たのはXBOXの冷却ファンの音。

初春「動く……動きますよコイツ…」

不思議そうに私を見つめるスキルアウトに、私はニヤリと犬歯をむき出し、XBOXを構える。

初春「いける…、いけますよ、このXBOXならッ!」

私は軽く跳躍すると、片手に鷲掴みにしたXBOXをスキルアウト目掛けて降り下ろす。
不意を付かれたスキルアウトだが咄嗟に鉄パイプで私のXBOXを防ごうとする。
火花を散らして、激しくぶつかりあう二つの鈍器。その衝撃波で周りの落ち葉が宙に舞っていた。

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 00:15:06.47 ID:h4jM1mVpO
思わず驚愕の表情を浮かべるスキルアウト。だが私はその隙を逃しはしない、片足に力を加えてさらに前へと押し出す。
その瞬間、鉄パイプはスキルアウトの手を離れ地面を転がり落ちる

初春「覇ぁぁぁぁぁッ!」

そのままの勢いで降り降ろされた私のXBOXはさも死神の鎌の如く、轟ッという衝撃音を響かせて相手のこめかみに直撃した。

初春「わ、私が一人でスキルアウトを……。これがXBOXの力…」

先程の喧騒とはうってかわって、静寂に包まれたこの場に私はただXBOXを片手に佇んでいた。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 00:32:15.86 ID:h4jM1mVpO
固法「そう…。もう一人の方は取り逃がしてしまったのね」

黒子「すみませんですの。私としたことが」

固法「気にしないで頂戴。片方を捕まえれただけでも御の字よ」

黒子「しかし、所詮は末端のスキルアウト。詳しい背景は何も分からないでしょうね…」

固法「また一からやり直しって事ね…、初春の様子はどう?」

黒子「頭の傷も浅い様ですし、心配はありませんのよ」

固法「けど、一体どうやって初春さんが一人でスキルアウトを?」

黒子「それが…、XBOXを使った等とうわ言の様に」

固法「えっくすぼっくす…?って、あのゲーム機のXBOX?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 00:43:57.97 ID:h4jM1mVpO
初春「私がXBOXでやったんですよね…?」

黒子「私に聞かれましても困りますわよ。覚えていませんの?」

初春「うーん…ぼんやりとは覚えてるんですけど。まるで夢だったみたいな感覚なんですよね」

黒子「なんですのそれは…?何にしてもあの様な無茶は止めて下さいましよ」

初春「分かってますよ、もう痛いのは懲り懲りですしね」

黒子「分かればよろしいんですのよ。それでは私はここで」

初春「はーい、それじゃ私は佐天さんの家に」ガチャガチャ

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 01:03:06.79 ID:h4jM1mVpO
私は白井さんに別れを告げて駅前の道をヒタヒタと歩く。周りは学校帰りの学生で溢れ返り、私も流されるように歩を進めていた。

初春「XBOXのグラフィックの美麗さにきっと、佐天さんの開いた口が塞がらないんだろうなぁ。楽しみだなぁ」ガチャガチャ

私はリュックからソフトを何本か取り出して、シュミレートをする。

初春「どうせなら御坂さん達にテレビを持って来てもらってヘイローの16人対戦もいいかも!」

そこまでを口にして私はXBOXが複数台必要だった事に気付き、少し苦笑する。

初春「ヘイローは面白いけどそこが唯一の欠点かなぁ」ガチャガチャ

リュックを抱き締め、その中のXBOXの感触を腕に感じたその瞬間、私の頭にズキリとした衝撃が広がった。

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 01:20:28.06 ID:h4jM1mVpO
思わず壁に手を付き身体を預ける。しかし、その衝撃は止む事なく広がり続ける。
余りの衝撃に気を失いかけたその時、フッと嘘のように全て消え去ると途端に思考がクリアになった。

初春「な、何これ…。頭の中に何か浮かんでくる。レーダー?」

XBOXお得意のFPSを彷彿させる様な地図とその場にいる人物が、瞬時の内に脳裏に表示される。
突然の出来事に驚きはしたが、その地図に表示されている人物達とは別に赤いマークで表示されている物が目に付いた。

初春「これは…なんだろう?」ガチャガチャ

気になった私はフラフラと脳裏に浮かんでいるその地点へと足を運んだ。

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 01:33:56.56 ID:h4jM1mVpO
その先に目に付いたのは、見慣れた常盤台の制服だった。顔も見覚えがある、確か前に会った泡浮さんだ。
私は思わず声を掛けようとしたが、少し思いとどまった。何故なら彼女が手にしていた手提鞄が、先程のスキルアウトとの取引現場で大能力者が手にしていた鞄その物だったからだ。

初春「そういえば…、帽子を深く被っていたのとジャージ姿という服装で男性と思い込んでいたけど…。まさか彼女がさっきの」

そこまで思案した瞬間、クルリと泡浮さんは後ろを振り返った。私は思わず物陰に隠れようとしたが、それは叶わなかった。
彼女の視線が、何一つ迷わず私を捉えていたからだ。当然目があった私は、ヘビに睨まれたカエルの様に背筋に悪寒が走り身動きが取れなくなった。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 01:50:02.81 ID:h4jM1mVpO
泡浮「あら、御機嫌よう。確か初春さん…でしたかしら?ジャッジメントのマークが近付いてくるから何かと思えば。貴方はジャッジメントでしたのね」

初春「マーク…?近付いてくる?一体何を言ってるんですか!」

泡浮「分かりますでしょう?迷わず私を追って来れたと言う事は貴方もGatesを持つ者」

初春「ゲイツ…?じゃあ泡浮さんもこの現象を」

泡浮「いえ……貴方とは少し違うかも知れませんわね」

そう呟くと彼女は手に持った鞄から中身を取り出す。その中から現われた物は…。

初春「え、XBOX……?ち、違う、あのXBOXは私の物と違う!?」

彼女が手にしている大きく、黒い物体。私のXBOXの様な無骨さは無く洗練されたフォルム、その美しさに私は思わず見とれてしまっていた。

泡浮「この機種は……、XBOX360ですわ!」

初春「え、えっくすぼっくすさんろくまる……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 02:00:02.47 ID:h4jM1mVpO
泡浮「このような出会いで無ければ私達…、お友達になれたかも知れませんわね!」

泡浮さんは私に目掛けて跳躍すると、手に持ったXBOXを振りかざしてきた。思わずリュックを前に突出し受け止めようとする。

初春「…くっ!」バッ

泡浮さんのXBOXが触れた瞬間、リュックの生地がまるで半紙の様にあっさりと引き裂かれた。
そして、中のXBOXとぶつかり激しく火花が飛び散る。

初春「くっ…、同じXBOX同士なら負けませんよ!」

歯を食いしばり両手を踏ん張って叫ぶ私に、泡浮さんは冷たい瞳で淡々と告げる。

泡浮「すみません、同じではありませんのよ……」

彼女が軽く力を込めると、私の両腕にとてつもない負荷が伸掛り堪らず後方に吹き飛ばされる。

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 10:16:51.22 ID:h4jM1mVpO
初春「がっ……はぁ!」ドサッ

後頭部から地面に叩き付けられた私は、思わず頭を抱えてうずくまる。

泡浮「やはり旧式では話になりませんか…。名残惜しいですがここでお別れですわね」

微笑を浮かべて静かに私の元に歩み寄ってくる泡浮さん。私と彼女の機種の性能差は明らかだった。

初春「XBOXの性能の差が戦力の決定的な差ではないことを教えてあげますよ…」

私は壁に手を付き、なんとか地面から立ち上がる。私の体力は既に立っているだけで精一杯だ。

泡浮「あら、まだ立ち上がれるのですか。起き上がらなければ楽になれましたのに」

初春「ま、負ける訳にはいかない…、ジャッジメントとして。そして私の信じるXBOXの為に!」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 10:33:55.69 ID:h4jM1mVpO
泡浮「ならばここで廃棄処分です、貴方の旧式の滑稽なXBOXと共にッ!」

牙を剥き、野生動物の様な瞬発力で私に襲いかかってくる泡浮さん。私は震える両手で再びXBOXを盾にその攻撃を受ける。

初春「ぐっ……ぎぎぎッ!」

私は犬歯を剥き出しにして、彼女から振り降ろされた死神の鎌、XBOX360を受け流そうとする。その衝撃はやはり凄まじく、私のXBOXのボディがギリギリとめり込んでいく様な錯覚を感じた。
しかし、そんな私を嘲笑うかの様に、うっすらと笑み浮かべ彼女は死刑を執行しようと立ちはだかる。

泡浮「何故そこまで足掻くのですのか?私のスペックは文字通り貴方の機種の三百六十倍。兵器としてこれだけの差を覆す事など不可能ですわ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 10:48:42.74 ID:h4jM1mVpO
初春「確かにそうかもしれません……。でも…、でも私のXBOXは兵器じゃない!私の身体の一部なんですよッ!」

私は咄嗟に左手のみでXBOXを支えると、右手でコントローラーを掴み彼女の側頭部目掛けて投げ付ける。

泡浮「……なっ!?小癪な真似を!」バッ

泡浮さんは超反応で片手を上げコントローラーを防ごうとする。しかし、私はコネクタ付近のコードをたわませ軌道を変化させる。
その軌道は獲物を逃さぬ大蛇の如く、彼女のガードを掻い潜り後頭部へと直撃した。

初春「だぁぁぁぁぁぁッ!!」

そのままの勢いでコントローラーを一気に振り抜く。その威力は遠心力も加わり、まさに一撃必殺の理であった。
泡浮さんの身体は空中で半回転して、受け身も取れずに地面に直撃する。

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 11:00:32.67 ID:h4jM1mVpO
初春「や…、やったのかな?」

私は地面に膝を付くと、ゼイゼイと肩で息をする。
いくらXBOX360が強力だろうとも、操るのは生身の人間…。いくら破壊力が高くとも、先に攻撃を食らえばその生身の身体は一溜まりも無いはず。

初春「取り敢えず支部の方に連絡しないと、固法先輩喜ぶだろうなぁ」

私は携帯電話を取り出すと、固法さんの番号にコールする。一度、二度…、そして三度目のコールが私の耳に届く前に携帯電話は地面へ転がり落ちていた。
何故なら、泡浮さんが再び私の目前に立ちはだかったいたからだ。

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 11:15:53.28 ID:h4jM1mVpO
愕然とする私を前に、彼女はただ呆然と前方の虚空を眺めていた。

泡浮「わ、私が血…?この気高い常盤台の私が、旧式のXBOX如に血ですって…」

相手は隙だらけだ、なのに私は指一つさえ動かす事が出来ない…。まるで嵐の前の静けさ、本能がそれを感じているかの様だった。

初春「に…、逃げないと。とにかく遠くに…!」

おぼつかない足取りで、私は必死に走りだそうとする。しかし、震える両足はまともに言う事を聞いてきれず、心は焦るばかりだった。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 11:33:38.74 ID:h4jM1mVpO
泡浮「許しません……、許さんぞ、このジャッジメントの虫ケラ共が!」

彼女の叫び声が耳に入った瞬間、私の身体は宙に浮いた。そして、間髪を入れずに激しい打撃が叩き付けられる。

初春「がはぁ……ぐぶっ!」

彼女に髪の毛ごと頭を鷲掴みにされ、何度もXBOX360で殴打をされる。その威力により私の身体は悲鳴を上げ、骨の軋む音が耳へと伝わった。

泡浮「ゲイツポイントたった3000の下級ゲーマがッ!」

彼女の渾身の突きが私のみぞおちに突き刺さり、私は引き抜かれた頭髪と共に後方の交差点まで吹き飛ばされた。

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 11:46:31.57 ID:h4jM1mVpO
初春「ゲ…ゲイツポイント…?」

薄れ行く意識の中で、私は脳裏に映るコンソールを確認する。そこには、相手の名前の横に数値が表示されていた。

初春「これがそうなのかな…。三万……四万…、ま、まだ上がっていくの!」

泡浮「下級ゲーマとエリートゲーマの差が分かったようですわね…。それでは大人しく止めを受け取って下さいませ!」

私の頭上目掛けてXBOX360を振りかざす彼女。しかし、私は迷う事無く、コントローラーを交差点を通り過ぎる車の一台目掛けて投げ付ける。

初春「まだです…、まだ終わりじゃありません!」

コントローラーが車のバンパーに絡まると、ピンとコードが宙に張り私の身体はコードと共に車に引っ張られた。

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 11:57:48.36 ID:h4jM1mVpO
泡浮「それで逃げ切ると思って…?忘れたのですか、XBOX同士は惹かれ合う。どこに隠れようがコンソールに表示されておりますわよ」

彼女の言う事は百も承知だ、真っ赤にマークされたアイコン。これが互いにを導き合わせる…、しかし私はそれとは別に緑のアイコンを視認していた。

初春「何のマークかは分からない…でも、このアイコンに掛けるしか無いんです!」

暫くの間、身体を流れに任せて体力の回復に努める。数回右折を繰り返した所で私は再びコードどを振るい、コントローラーをバンパーから引き離す。
三回転ほど地面を転がり、目的地の前で起き上がる。そのアイコンが指す先はGEOだった。

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 12:06:53.60 ID:h4jM1mVpO
初春「ゲオ…?こんな所に一体何が…」

その時ゆっくりと自動ドアが開き、中からある人物が現われた。見慣れた常盤台の制服に身体を強張らせるが、さらに見慣れたその顔にフト安堵する。

御坂「あなただけに~ついてーいく~♪今日も運ぶー戦うー増えるー♪そして~食べられる~♪」

初春「み、御坂さん!?どうしてこんな所に」

御坂「あれ、初春さん?どうしてって決まってるじゃないのピクミンを買いに来たのよ」

初春「ぴくみん…?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 12:25:00.18 ID:h4jM1mVpO
御坂「そうそう、チマチマとオリマーの後を付いてくるピクミンが可愛いくってさ!」

初春「えっ…?でも、ゲームキューブなんてオコチャマのハードじゃないですか」

御坂「オコチャマって……、いくら初春さんでも怒るわよ。よーしいいじゃない、ちょっと私の寮に来なさい!今からゲームキューブのなんたるかを」

初春「御坂さん、危ないっ!」

私は咄嗟に御坂さんの身体を抱えて身を伏せる。私達の後ろから飛んできたXBOX360のコントローラーがGEOの扉に直撃し、粉砕されたガラスが私達の上に降り掛かった。

泡浮「どこに逃げたと思えば…、御坂さんに助けを求めたのですか?」

御坂「あ、泡浮さん!?なによいきなり、危ないじゃないの!」

泡浮「いくらレベル5といえども、このXBOX360の敵ではありませんよ…。大人しく地面に平伏しなさい!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 12:37:28.25 ID:h4jM1mVpO
泡浮さんは再びXBOXのコントローラーを振るい、御坂さんに向けて投げ付ける。
たが、その速度を遥かに上回る反応速度で手持ちのビニール袋で受け止める。流石はレベル5と言ったところだろうか。

初春「御坂さん、気を付けて下さい。本体の威力はそんな物じゃ無いんです!」

御坂「え……ちょっと…、今ベキィって…。予約して買ったばかりのGEOの袋からベキィって…」ガクガク

初春「泡浮さんあなたの目的は一体なんなんですか!私達を傷付けて何になると言うんです」

泡浮「レベル5は勿論、シェアの大半を占めるSONYのプレイステーションさえも駆逐出来るんですわ。このXBOX360ならば…。そのマイクロソフトの邪魔をする者ならばジャッジメントであろうと、レベル5であろうと粉砕する、ただそれだけですわ!」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 12:53:34.92 ID:h4jM1mVpO
初春「そんな事の為にスキルアウトなんかに協力を…?」

泡浮「そんな事ですか…、知らないという事は幸福なのでしょうね」

初春「目を覚まして下さい泡浮さん!ゲーム機とは傷付け合うだけの道具じゃないはずです!」

泡浮「それしか知らない子供が!このままではゲームシェアはプレイステーションに全て奪われてしまう、その様な事すら分からないのですか!」

初春「XBOXの力はそんな物も乗り越えられるはずです!」

その刹那、私達の眼前を一つの光が通り過ぎる。遅れて激しい爆音と衝撃波が私達に伝わる。

泡浮「こ、この光は……。超電磁砲?」

御坂「あんたら…、ソニーだマイクロソフトだ…?天下の任天堂をディスってんじゃないわよ!」

片手を前に突出し、凛々しい表情でレベル5御坂美琴その人が吠えた。

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 13:19:04.60 ID:h4jM1mVpO
御坂「何悪巧みしてるか知らないけど、ピクミンを買う権利を手に入れてまで苦労した私の怨みをタダで済むと思わない事ね!」バッ

泡浮「いいでしょう。撃って御覧なさい…、貴方の超電磁砲と私のXBOX360どちらが上かハッキリさせましょうか」

御坂「後悔するんじゃないわよ!その薄ら笑い、今すぐ叩き潰してやるわよ!」

御坂さんは再びコインを弾き、泡浮さん目掛けて超電磁砲を射出する。泡浮さんも悠然とXBOX360を構える。
そして、一瞬眩しい光が辺りに広がり、その後私の眼に映ったのは超電磁加速したコインを受け止めるXBOXの姿だった。

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 13:31:23.73 ID:h4jM1mVpO
御坂「う、嘘っ!?なんで…」

泡浮「この流曲線のボディならば……、はぁ!!」ブォン

泡浮さんはXBOXのボディで燻っていたコインを左後方へ受け流す。

泡浮「そして、この巨大なXBOX360を相手の眼前に突出し…」バッ

御坂「……くっ!視界が、前が見えない!?」

初春「危ない御坂さん!コントローラーがきます!」

泡浮「側面からコントローラーで突くッ!」

視野外からの攻撃に避ける事もままならず、御坂さんは脇腹にコントローラーの直撃を受ける。

御坂「が……あぁぁ!」ドサッ

泡浮「これが本体とコントローラーによる基本的戦法ですよ。XBOXの表面積の大きさがなせる技でしょうか」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 13:52:06.07 ID:h4jM1mVpO
初春「この人は知り尽くしている…、XBOXの全てを!御坂さんダメです一旦引きましょう」

御坂「引くですって…?冗談じゃないわよ、花札時代から日本の娯楽を支えてきた任天堂が…。世界の配管工が、黒船に負ける訳には行かないのよ!」

泡浮「黒船に屈するのは遠い昔から決まっている事です…。XBOXという黒船に不平等条約を結びなさい!」

泡浮さんはXBOX360を全身のバネを利用して前方に捻り出す。その速度はまさに光速、全てを貫く狼の一撃であった。

御坂「ディスクに傷が付くのを仕様と言い張るマイクロソフトを決して忘れない…、任天堂のアフターサービスを忘れちゃいけない…!」ブォン

初春「超電磁砲…?でもコインはXBOX360には……!」

泡浮「これで全て終わりですよ、御坂美琴。いや、常盤台のレールガン!」

御坂「そして…、私の可愛いピクミンの怨みを忘れさす訳にはいかないのよぉぉぉぉおぉッ!」

泡浮「なッ!コインでは無く割れた8cmディスクを弾に…!?」

超電磁回転が加わったピクミンのディスクは真直ぐと泡浮さんの身体を捉えて空を舞った。
ぶつかりあうゲームキューブディスクとXBOX360。だが、いとも簡単にピクミンはXBOX360のボディを貫き、泡浮さんの額に直撃した。
堪らず後頭部から地面に叩き付けられる泡浮さん……。その瞬間、夢か幻か…、超電磁回転したディスクからピクミン愛の歌が聞こえた様な気がした。

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 14:07:47.55 ID:h4jM1mVpO
泡浮「そ、そんな……。XBOX360が旧世代の…、しかもソフトに負けるだなんて有り得ませんわ…!」

御坂「一度しか言わないから耳の穴かっぽじって良く聞きなさいよ。アンタの敗因はたった一つ、シンプルな答えよ…。ピクミンを楽しみにしていた私を怒らせた、ただそれだけよ」

そう呟くと御坂さんはニヤリと笑みを浮かべる。その姿は任天堂もマイクロソフトもソニーも関係無い、ただのゲーム好きな少女そのものであった。

泡浮「ふふ…、貴方のお陰で思い出しましたわ。子供の頃湾内さんとアイスクライマーで足の引っ張り合いをしていた頃を……」

御坂「アンタとは気が合いそうね、今度家に遊びに来なさい。アイスクライマーとファミリーコンピュータを用意して待ってるわ」

泡浮「み、御坂様……」

御坂「それじゃ初春、後は任せたわよ。私は他のゲーム屋回ってくるわ!」ダッ

初春「え?ちょっと御坂さぁん!」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 14:17:36.02 ID:h4jM1mVpO
―ジャッジメント支部―

黒子「なるほど、まさか同じ中学の生徒が犯人だったのですね…。まさに灯台下暗しですの」

初春「それで、彼女はXBOX360で何をしようとしていたんですか?」

黒子「その事なのですが……、XBOX360というハードはこの世に存在しませんの」

初春「え!?でも実際に泡浮さんはXBOX360を」

固法「厳密に言えば今の時代には存在しないって事ね」

初春「うーん……、つまりはどういう事なんですか?」

黒子「泡浮万彬、彼女は未来予知の大能力者でしたのよ。もっともゲーム業界限定の能力みたいでしたが」

初春「それじゃ、あのXBOX360は」

固法「そ、彼女が能力で未来を覗き見て造り出したオーパーツって所かしら」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 14:29:06.61 ID:h4jM1mVpO
黒子「それの試作品をスキルアウトに横流しし、工場で大量生産を企んでいましたの」

初春「確かに、今のゲーム市場にあんな高性能なゲーム機が現れたらシェアはXBOXの一人勝ちですもんね」

黒子「ま、それはあくまでも机上の空論でのお話し。実際にはそう上手くいきませんのよ」

初春「…どういう事ですか?」

固法「あの性能で一般的な価格に押さえれたのは、材料費が未来で下がっていたからよ。今の時代で再現しよう物なら、似ても似つかぬ粗悪品が出来上がるって事よ」

黒子「どの様にしても正しい未来に修正される様に因果率が働いているのですかね」

初春「そうですか…、それじゃ泡浮さんの言う通りXBOXはこれから」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 14:46:14.35 ID:h4jM1mVpO
黒子「どうしましたの初春?もしやプレイステーション2かゲームキューブに乗り換えるつもりですの」

初春「この前言ってくれましたよね、白井さん。人の考えなんて十人十色だって…。だから私は迷いませんよ!」

黒子「ふふ…、流石はドリームキャストのハードウェア撤退を乗り越えて来ただけはありますわね」

初春「え…!?なんでその事を…」

驚く私に、白井さんは静かに自分のカバンから黒光りする物体を取り出す。携帯ゲーム機にしてはやけに大きいその物体のスイッチを白井さんは入れる。

『SEーGAー♪』

初春「こ、これはゲームギア!?まさか白井さんも」

黒子「そう、SEGAマニアですわよ」

白井さんは優しく歌う様にそう呟いた。


固法「はぁ…。PC-FXとPC原人復活しないかしら……」ボソッ

黒子「何か言いまして固法先輩?」

固法「ううん…なんでも」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 14:57:25.48 ID:h4jM1mVpO
―佐天宅―

佐天「ちょっと初春!アンタばっかりスコーピオンに乗ってズルいよ!」ガチャガチャ

初春「ふっふーん!ヘイローの世界じゃ喰うか喰われるかなんですよ!大人しく私の迎撃スコア更新の礎になって下さい!」ガチャガチャ

佐天「あーもう、腹立つなぁ!糞箱売ってくる!」ブチッ

初春「あ!?ちょっと待って下さいよぉー!次は手加減しますから!糞箱って言わないで下さいよぉ佐天さぁん!」ズルズル

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/08/16(月) 15:10:44.90 ID:h4jM1mVpO
―常盤台寮―

黒子「事後処理も色々と大変ですのねぇ…、ただいまですのよー」ガチャリ

御坂「引っこ抜かれて~あなただけについて行くー♪今日も運ぶー戦うー増える♪そして食べられる~♪」ガチャガチャ

黒子「あら、お姉様。早速ピクミンをプレイなされてますのね。ずっと楽しみにしてらしたものねぇ……あら?」

御坂「ほったかされてーまた会ってー投げられて♪」ガチャガチャ

黒子「ど、どうしましたのお姉様?これは、ピクミンでは無くどうぶつの森+ですのよ……?」

御坂「でも~私たちーあなたに従い尽くしますぅ♪」ガチャガチャ

黒子「お姉様ぁ!気をしっかりなさいませ!どうしましたのお姉様ぁぁぁ!?」ユッサユッサ

御坂「今日も運ぶー戦うー増えるぅ♪そして食べられるぅ……」ガクッ

=おしまい=