・---・アル日ノ鎮守府:夕立・---・


提督「3月も目前とはいえ、まだまだ寒い日が続くなぁ」ヌクヌク

翔鶴「暦上ではもう春なんですけれどね」ヌクヌク

瑞鶴「やっぱりまだまだコタツが止められないよねぇ」ヌクヌク

提督「コタツに入りながら温かいお茶を飲む。思わず仕事を忘れて昼寝をしたくなる瞬間だ」

瑞鶴「その気持わかるかもー。このヌクヌクが眠さを誘っちゃってもう」ダルーン

翔鶴「瑞鶴はしょっちゅうここでお昼寝してるでしょう」

瑞鶴「まぁね」テヘッ

提督「はははっ……あ、もうお茶飲んでしまったか」

翔鶴「ではお注ぎしま……あら、ポットのお湯が」ナイ

提督「冬はどうしてもお湯の消費が多いからしょうがないさ」

翔鶴「すみません。ちょっと沸かしてきますね」サッ

瑞鶴「あ、翔鶴姉ぇ。ついでになんかお菓子持ってきて―」

翔鶴「自分で持って来なさい」

瑞鶴「むぅ~。てーとくさーん翔鶴姉ぇがいじわるするぅ」ブーブー

提督「そう言うなって。あぁすまないが翔鶴。ミカンのおかわりも頼めるかい? もう少し食べたくなった」

翔鶴「提督まで……。もぅ、しょうがないですね」

瑞鶴「やっぱり提督さんには甘い」ボソッ

翔鶴「聞こえてるわよ瑞鶴」スタスタ


引用元: 翔鶴「瑞鶴、あまり提督の邪魔をしちゃだめよ?」 



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297: ◆kVQhfnJMM6 2015/02/25(水) 22:10:50.30 ID:fFit0kCi0


ガチャッ


夕立「っぽい」ヒョコッ



瑞鶴「あれ、夕立だ」

提督「どうかしたか」

夕立「てーとくさん。一緒におはなししましょ」トコトコ

提督「ああ、休憩中だしいいよ。ちょうど一人分コタツが空いてるから入りなさい」

夕立「提督さんと一緒に座りたいなぁ」

提督「一緒って……さすがにくっついて座ると狭くなっちゃうぞ」

夕立「大丈夫っぽい。提督さんちょっとだけ下がってもらえる?」

提督「うん? あぁ」

夕立「こうするっぽい。いつもとあんまり変わらないでしょ?」ストン

提督「お、おぉっ?」

夕立「はふぅー。オコタって温かくて気持ちいいっぽい―」ダルーン

提督「えっと……これはどうすればいいんだろう?」

瑞鶴「すっぽり収まっちゃってるね」

夕立「提督さん、頭撫でてほしいっぽい―」グリグリ

提督「まるでお犬様のようだ」ナデナデ

夕立「わふー」ニコニコ

瑞鶴「ぽいぬだね」

提督「なんだそりゃ」


298: ◆kVQhfnJMM6 2015/02/25(水) 22:15:37.80 ID:fFit0kCi0

夕立「~♪」

提督「夕立ー、俺ちょっと寒くなってきたぞ―」

夕立「寒いっぽい?」

提督「足はコタツの中だからいいけれど、身体が離れちゃったからなぁ」

夕立「んー、じゃあ夕立のこと抱きしめる?」

提督「いやぁソレはさすがに」ネェ?

夕立「お腹に手を回せばあったかいよっ」グイッ

提督「あぁこら……」

夕立「ふふーん。提督さんの身体も温かいっぽい!」

提督「まいったな」アハハ

夕立「提督さん、夕立温かい?」

提督「……ああ。とっても温かい。ありがとう」

夕立「ふふっ」ニコニコ

瑞鶴「毎度のことながらお父さんと子供って感じだねぇ」

提督「そう見えるんならまだいいんだがね?」

夕立「違うよ! 夕立、提督さんのお嫁さんになるっぽい!」

提督「もうちょっと大きくなったらな」ナデナデ

夕立「もうちょっとって、いつっぽいー?」

提督「戦艦になった頃かなぁ」

夕立「むぅー」←ある意味すでに戦艦級(打撃力的な意味で)

瑞鶴「………………」


299: ◆kVQhfnJMM6 2015/02/25(水) 22:20:37.31 ID:fFit0kCi0


瑞鶴「……んーっと」ゴソゴソ


瑞鶴「………………」モゾモゾ

提督「ん? 瑞鶴?」ドコイッタ

瑞鶴「(ゴンッ)あいたっ……。――――ばぁっ!」ガバッ

提督「!」

瑞鶴「へへっ。私も一緒にくっつけばもっと温かいよね」ヨコカラ、ギュット

夕立「瑞鶴さんも来たっぽい」

瑞鶴「わーホントだ。夕立の身体あったかい~」ギュウッ

提督「……狭くなった」

瑞鶴「文句言わないの」ギュー



セッカクダカラ ミカンタベサセテアゲルッ
ユウダチモ ヤルッポイ!
イヤイヤイヤ



翔鶴「………………」


あっ……


304: ◆kVQhfnJMM6 2015/02/26(木) 21:00:17.48 ID:ZHtlRgiU0

・---・オマケノ鎮守府:翔鶴・---・


翔鶴「………………」ゴゴゴゴゴ



提督「……なあ、瑞鶴よ。気のせいか背後からとんでもない殺気が」

瑞鶴「うん。奇遇よね。私も」

夕立「っぽい?」

提督「振り返るべきか? ここは振り返るべきなのか?」

瑞鶴「振り返るべきなんだろうけど、果たして振り返った先に未来はあるのか」

提督「俺はどうすればいいと思う?」

瑞鶴「私もどうしたら良いと思う?」

夕立「???」クビカシゲー

提督「とりあえず……」

瑞鶴「……とりあえず」



『ごめんなさい』



翔鶴「あら、どうして二人して謝っているのですか? それに、二人の先には誰もいませんよ?」ニコニコ



夕立「? 提督さん。ミカン、食べるっぽい?」ハイ

提督「……ああ。頂こうかな。しばらく食べられないかもしれないし」

瑞鶴「わ、私もかなーって……」

夕立「二人とも固まってるっぽい? どうかしたの?」

翔鶴「うふふふふふふっ。どうして固まってるんでしょうね? 今戻ってきた私には解らないわぁ」ゴゴゴゴゴゴ


どうしたんでしょうね?(棒読み)


310: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/01(日) 16:30:08.70 ID:7yRUqlP20

・---・コタこみゅ:那珂 鳳翔 扶桑・---・


山城『――いいですか提督。扶桑姉様に"もしも不埒な真似を働いたら"……わかってるわよね?』ゴゴゴゴゴ



提督「山城の扶桑好きも困ったものだ。姉妹仲が良好な証拠なんだろうけれど……たまにぶっ飛んでる時があるからなぁ」

提督「さて、お茶にお菓子にミカンもある。お代わりのためのポットも満タン。準備完了だな」



knock knock knock

那珂「那珂ちゃん、さんじょーうっ!」キラッ☆

鳳翔「提督。那珂・扶桑・鳳翔、ただ今参りました」

扶桑「お邪魔いたします」



提督「いらっしゃい三人とも。この季節限定の極上な空間へようこそ。ささ、コタツに入ってゆるりと寛いでくれ」

那珂「おっじゃましまーっす」

鳳翔「執務室に畳とコタツというのは未だに違和感がありますが、この畳はどうされたんですか?」

提督「どこからか瑞鶴が持ってきたんだ。コタツと一緒に倉庫に入ってたのかも」

扶桑「もっと言えば鎮守府にコタツというのも、不思議な感じがしますね」

提督「でもまあ心地いい空間なんだからしょうがないかな。褒められたことじゃないけど、他がダメでも俺は許可しようじゃないか」

那珂「さっすが提督。話わかるぅ」

提督「ははは。それじゃあまずはお客様へお茶の一杯をば」ゴソゴソ

鳳翔「あっ提督。お茶でしたら私がやります」

提督「いいのいいの。鳳翔たちはお客様なんだから。客に茶を入れさせるのはダメダメだ」コポポポポ……

鳳翔「それは……。でも、なんだか申し訳ないですね」

扶桑「まあまあ鳳翔さん。いつも忙しなく働いていらっしゃるんですから、時にはお休みも必要ですよ」

那珂「そーそー。那珂ちゃんも艦隊のアイドルとして頑張ってるけど、オフもちゃーんと入れてるんだからねっ」

鳳翔「私としては苦にも感じていないのですが……で、ではその、お願い、しますね」オズオズ

提督「お茶の入れ方なら鳳翔や翔鶴のをよく見てるから、今日はその成果を見ると思ってもらえれば、ね」


311: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/01(日) 16:35:21.70 ID:7yRUqlP20

那珂「はぁーコタツとお茶って落ち着くねぇ」

扶桑「そうね。この感覚もフネでは得られなかったもの……。なんだか幸せだわ」

那珂「扶桑さんが言うと重みが違うね」

扶桑「うふふっ。そうかしら」ニコニコ

鳳翔「あの、提督。すでに参加された皆さんから伺っているんですが、その……本当に私たちにミカンを?」

提督「ああもちろん。と言っても強制じゃないよ。最初に話した瑞鶴とここに来た子たちによってミカンを食べることが前提になってるけれど、あくまでもこの場は寛ぐこと語らうことが第一だ。まあ目的の一つくらいに考えてもらえればいいかな」

鳳翔「た、食べさせていただくことは嫌ではないのですが、さすがにちょっと恥ずかしいですね」

扶桑「私も……特にすぐ近くで見られていると思うと余計にそう思ってしまいます」

提督「大鯨も結構気にしてたし、こう言うのは駆逐艦の子たちの方が受け入れやすいのかもしれないな。や、鳳翔や扶桑の気持ちももちろん分かるが」

那珂「うーん、二人とも固いなあ。じゃあここは那珂ちゃんがトップバッター行っちゃおうかな―」アーン

提督「……まだミカン剥いてもいないんだが」

那珂「なんならお菓子とかおせんべでもいいよー」

提督「じゃあこのマシュマロでも」ハイ

那珂「はむっ。ん~っ、ふわふわ」

鳳翔「まぁ」クスクス

扶桑「那珂は恥ずかしくないの?」

那珂「ぜ~んぜん」モグモグ

提督「さすがにこの位じゃあ動じないかな」ミカンムキムキ

那珂「伊達にアイドルやってません! バラエティーもやってナンボなんですっ」

提督「バラエティー言うな。ほら、ミカンが剥けたぞ―那珂。あーんだ」

那珂「え、でもこれ一個丸々なんだけど……」

提督「バラエティーもいけるんだろう?」

那珂「やーでもそう言うヨゴレ系は艦隊のアイドルとしてダメかなーって」ネ?

鳳翔「ふふっ。ファイトですね」ニコニコ

扶桑「そうね。アイドルだものね」

那珂「酷くないかなっ?!」


312: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/01(日) 16:40:17.00 ID:7yRUqlP20


提督「結局二三粒ずつに落ち着きましたっと」

那珂「いっぺんに食べたら汁が飛んじゃうもんー」モグモグ

扶桑「でも、小粒のミカンだったらこの位が一番食べごたえもあって美味しく感じますね」モグモグ

提督「汁が飛び跳ねたりしないからね。俺も大体はこうかな」

鳳翔「お洗濯を考えると、果汁と言えどシミは馬鹿にできませんからね」

提督「うむ。これ以上鳳翔に迷惑をかけられん」

那珂「そーそー」アーン

鳳翔「私は特に迷惑だとは思っていませんよ」

提督「それでもだよ。日常面でただでさえ頼っている部分が多いんだから」

扶桑「鳳翔さんがいなかったらたくさんの事が出来なくなってしまうわね」

提督「と言う訳で実はこの鎮守府。責任者の俺よりも鳳翔の方が偉いのだよ」ハイ

鳳翔「そ、そう言いながらミカンを向けないでください……っ」

那珂「ミカン美味しいよー」←もう食べさせてもらった

扶桑「甘酸っぱくて美味しいわね」←まだ自分の番じゃないので安心


鳳翔「で、ではそのっ。提督も一緒にと言うのはどうでしょうか?」

提督「うん?」オレ?

鳳翔「私も提督にミカンを食べさせてあげます。そうしたら、おあいこですよね?」

提督「お、おぅ」

那珂「ココに来てまさかの逆パターン?」

扶桑「これは提督も恥ずかしいのではないですか?」

提督「実は涼風と敷波に食べさせてもらってて、初めてというわけではないんだなこれが」

鳳翔「あ、あら……?」

那珂「そうだったの?」

提督「でも鳳翔に食べさせてもらうのもそうある事でないから、それはそれで楽しみかも」

扶桑「提督は緊張よりも楽しみになっているみたいですね」クスクス

那珂「じゃああとで那珂ちゃんも食べさせたげるねー」

鳳翔「(おあいこを狙ったのですが……)」


313: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/01(日) 16:45:12.79 ID:7yRUqlP20


鳳翔「うぅ、たしかにこれは恥ずかしいですね……」モグモグ

提督「うん。中々に新鮮だった」モグモグ

那珂「鳳翔さん顔まっかっかー」

提督「ははは。童心に還ったと思って楽しむのがコツかな。――――な、扶桑?」

扶桑「へっ? わ、私……ですか」ギクッ

提督「那珂、鳳翔と来たら次は扶桑の番だからね」

扶桑「すでにミカンを頂いてしまったのですが……」

提督「大丈夫。おかわりならまだあるさ」

鳳翔「もちろん扶桑さんも食べますよね?」ニコニコニコ

那珂「扶桑さん一人だけやらないのはナシだよ」

扶桑「あ、あらぁ。ふこ……なわけじゃあないけれど、いざ自分の番となるとやっぱり恥ずかしいというか」

提督「みんな最初はそう言うんだ。逆に考えれば最初だけ。ささ、遠慮なく口をあーんとだな」アーン

鳳翔「あーんですよ。扶桑さん」

那珂「おっきく口を開けてみよ―!」

扶桑「」

提督「今ならさっき那珂も食べたこのマシュマロもセットでプレゼント」

扶桑「そ、そちらは大丈夫ですのでっ! ……うぅっ、あ、あーん」

提督「はいよくできました」

扶桑「こ、子供じゃありません……っ」

鳳翔「うふふふっ。こう言うのは見ている分にはいいですね」

扶桑「鳳翔さんまで……で、でももう次は大丈夫です。えぇ、恥ずかしくありませんともっ」

那珂「ていとくー。那珂ちゃんもっと食べたいなー」

提督「今回は那珂が一番楽しんでるかもな」

那珂「今度はミカンじゃなくてチョコレートね」

提督「はいはい」スッ

那珂「あ、一個丸々とかそう言うのはもういいから」

提督「……残念」パキッ


コタこみゅ


318: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/01(日) 20:05:24.63 ID:7yRUqlP20

・---・オマケノ鎮守府:山城・---・



………………

…………

……



提督「――――ん、あ? いかん、ついコタツでうたた寝しちまったか……って」アレ?



??「……あら提督。お目覚めになりましたか?」クックック



提督「え? なんで俺簀巻きになってるの? と言うかそこにいるの山城だろ」

山城「そりゃあもう当然でしょう。私、言いましたよね? 扶桑姉様に不埒な真似を働いたら……って」

提督「いや、不埒も何もあれはあの場の通過儀礼というか誰もが通った道というか」

山城「姉様から顛末は聞いてますよ。……姉様の受けた屈辱は私の屈辱……倍返しします!」クワッ

提督「いやいやだから屈辱も何も最初以外は扶桑も楽しんでたって。 ……おい、そのデコポンはなんだ。なんでまるまる一個持ってるんだ」

山城「提督も食べてみたらわかりますよ……ふふ、フフフ」ユラ~リ

提督「そんなのひと口で食べたら顎が……と言うか皮も剥いてないじゃないか! ふ、扶桑は……扶桑はいないのか?!」




扶桑「提督。あまり山城を責めないであげてください。山城も本当は提督にミカンを食べさせてあげたいんですから」

山城「ね、姉様?! わっ私は別に提督なんかに……!」アタフタ

扶桑「うふふ。じゃんけんに負けてしまった時の山城、とても残念そうな顔をしていたから」

山城「あわわわわわわっ。そ、そんなワケないじゃないですかっ」

扶桑「あら、違ったの?」

山城「いやソレも違うというかその……うぅ、不幸だわ」

提督「あー……そういう事ならこんな事しなくても普通に食べたぞ」

山城「な、なっ……! も、もう提督はコレ食べて反省してください!」ガポッ

提督「モガーッ?!」


提督の顎 大破


324: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/04(水) 00:20:37.24 ID:CKVLZ+Ha0

・---・アル日ノ鎮守府:武蔵・---・


武蔵「さあ、この酒は私の奢りだ。遠慮なく呑んでくれ」トクトクトク……

提督「ん、ああ。ありがとう」オットット

武蔵「月を見るには少し寒いが、たまにはこう言うのも悪くないだろう?」

提督「武蔵が来た頃には寒くなってたからなあ。それまではこうして月を見ながらってのはやってたよ」

武蔵「ではまたその時にでもお呼ばれするかな」

提督「見た目通りというか、ほんと酒豪だなあ」

武蔵「フッ、この武蔵が酒に負けるとでも?」

提督「だな。 にしても、武蔵の方から誘ってくるなんて珍しいというか。なんかあったのか?」

武蔵「なあに。酒は一人で呑んでも楽しくない。連れがいた方が楽しいに決まってる」

提督「それには同意かな。 ……ふぅ。やはり月を見ながらというのはいい酒になるな」

武蔵「月見酒とはよく言ったものだ。月が肴となるからツマミなんぞなくとも十分」

提督「なるほどな。だがあえて言わせてもらおう。鳳翔の作るツマミは絶品だと」

武蔵「アレは例外だろう。おいそれと比べられんよ。それに、鳳翔がこの鎮守府にとっては月ではないか」

提督「お、なかなかイイことを言うじゃないか」

武蔵「当然だよ。私は武蔵だ」キリッ


325: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/04(水) 00:25:36.73 ID:CKVLZ+Ha0


提督「それにしても、やっぱりいつ見ても満月というのはいい。三日月も捨てがたいがね」

武蔵「そう言えば、知っているか提督よ。はるか南洋ではこの月がより大きく見えると」

提督「なんだそりゃ。聞いたことないな」

武蔵「まあそうだろうな。ほぼ作り話のようなものだから」

提督「なんだそりゃ」

武蔵「だがこれはどうだろうか。月は変わらないかもしれないが星は大きく見える。溢れんばかり空一面の輝きだぞ? 壮観だろう」

提督「あーそれならわかる。建物の明かりがなく遮るものもないから綺麗に見えるらしいな」

武蔵「ソレと比べると、ここから見える空はなんとも…………暗い。月ばかり目立って星が見えん」

提督「例え田舎と言えど大海原には敵わないなぁ」

武蔵「海で見る星や月はまた格別だ。だが同時に目の前の恐ろしさを再認識する」

提督「恐ろしさ?」

武蔵「足元。そこは月だけが歪んで映える漆黒の闇。言ってみれば底の見えぬ大穴の上にいるのと同じことだ。……オマケに暗闇の如く水底は冷たい」

提督「………………」

武蔵「光あれば闇がある。そして闇が深ければ深いほど光は輝く。――――うん。おかげで今日も酒が旨い」グイッ

提督「あれ、途中まで深イイこと言ってる気がしてたのに」アレレー?

武蔵「なぁに。そんなことを言う"キャラ"じゃないなと思ったんだよ。気にしないでくれ」

提督「あ、あぁ……」



武蔵「それにしても、一体この武蔵の出撃はいつなんだろうなぁ提督よ。暇すぎてつい柄にも無いことを言ってしまったではないか」

提督「う」

武蔵「この月を、また大海原で眺めたいものだよ。たとえ戦の最中でもな」

提督「ど、努力します」


武蔵「……大和や信濃も、この月を眺めてるのかなぁ」ボソッ


提督「うん……?」

武蔵「いや、なんでもない。――む、酒が切れてしまったか。やはり一本では足らぬな」

提督「ほぼ武蔵が一人で呑んでたぞ」

武蔵「では今度は提督の奢りといこうではないか。秘蔵の一本や二本あるのだろう?」ニヤッ

提督「しょうがないなぁ」

武蔵「さ、今日はトコトン呑むとするか! もちろん、最後まで付き合ってもらうぞ」

提督「はいはい」


しぶやん

332: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/05(木) 23:00:25.46 ID:lkMz2FGv0

・---・ヒマヒマ瑞鶴・---・


瑞鶴「提督さーん。瑞かk

提督「残念ながら今はソレどころじゃない。もう直すぐ出掛けねばならんからな」イソイソ

瑞鶴「ぶぅ~。って、お出かけ?」

提督「言ってみれば提督会議、みたいなものかな。軍の今後の作戦方針とか決めるのに出ないといけないんだ。俺みたいなのでもね」

瑞鶴「ふうーん。それって一人で行くの?」

提督「翔鶴も一緒。秘書艦だからな」

瑞鶴「じゃあ私も一緒にいくー」

提督「だーめ。遊びじゃないんだから。そんな事を言ったら誰か他にも行くって言い出しそうで……」       ッポイ!  ドウカシタノ、ユウダチ?

瑞鶴「私だって遊びで言ってるんじゃないもん」

翔鶴「瑞鶴、変なことを言って提督を困らせちゃダメよ」

瑞鶴「困らせてなんかないもん」プクー

翔鶴「なら尚更ダメでしょう。あ、提督。もうすぐバスの時間が」

提督「普段から出かける癖がついてないとこう言うとき困るんだよなぁ」

翔鶴「忘れ物はありませんか?」

提督「たぶん。……よし、じゃあ行くか」

翔鶴「はい。瑞鶴、お留守番は頼むわね」

瑞鶴「ぶぅーっ!」アシ パタパタ

提督「ちゃんとお土産買ってくるから。悪いがソレで我慢してくれ」ナデナデ

瑞鶴「……ケーキがいい」

提督「わかったわかった。俺たちがいない間の事は鳳翔に頼んであるから、なんかあった時はよろしく頼む」

瑞鶴「むーん」


333: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/05(木) 23:06:07.96 ID:lkMz2FGv0


瑞鶴「………………」



シーン……



瑞鶴「(提督さんたちのいない執務室は、とっても静か)」

瑞鶴「(提督さんがいないのがわかってるからなのか、ベッドにもコタツにも、ほぼ主になってる加古や初雪はいないんだよねぇ)」

瑞鶴「(私の他にあのあとやって来た鳳翔さんがいるけど、仕事中だからか話ししてないし)」

瑞鶴「(まあ、私としても鳳翔さんのジャマをすることは本意じゃないしね。提督さんなら気にしないけどっ)」

瑞鶴「(それよりなにより気になるのは……)」



零戦妖精『』フヨフヨフヨ

九九妖精『』クルクル

九七妖精『』ゴソゴソ



瑞鶴「(鳳翔さんと一緒に鳳翔さんところのコたちも一緒に来たってことかなあ)」



九七妖精『っ』ハイ



鳳翔「あらあら。ありがとうございます。ではこちらにお願いできますか?」



九七妖精『☆』



瑞鶴「(しかも普通にお手伝いとかしてるし。なんて言うかもう流石としか言いようがない)」



零戦妖精『』ジャンケン

九九妖精『』ポイ

零戦妖精『♪』カッタ!

九九妖精『』ガーン……



瑞鶴「(まあ遊んでる子もいるけど……うん。ホントさすが)」


334: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/05(木) 23:10:17.86 ID:lkMz2FGv0


瑞鶴「(やることもないし、私も部屋に戻ってゴロゴロしてようかなぁ)」ポリポリ



零戦妖精『っ』クイクイ



瑞鶴「ん? どうかしたの」



零戦妖精『』ジー

九九妖精『』ジー



瑞鶴「えっと、コレ? アンタ達もポテチ食べたいの?」



零戦妖精『ッ』コクコクコク

九九妖精『』キラキラ



瑞鶴「じゃあ、はい……と言ってもこのままじゃ大きすぎるから割ってあげるね。零すからちゃんとこのお皿の上で食べるんだぞ―」



零戦妖精『~♪』サクサク

九九妖精『☆』ポリポリ



瑞鶴「ふふっ。アンタ達も戦闘ともなれば阿修羅もびっくりなのにねー」ニコニコ



九七妖精『』タリー



瑞鶴「仲間外れにはしないって。いっぱいあるから一緒にどうぞって」ナデナデ



九七妖精『!』キラキラ



キャッキャキャッキャ



瑞鶴「……うちの子達にもあとでなんか持って行こっかな」


335: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/05(木) 23:15:10.17 ID:lkMz2FGv0

鳳翔「うふふっ。瑞鶴さんは退屈されているみたいですね」ニコニコ

瑞鶴「何にもやることがないから暇で暇でしょうがない」

鳳翔「では、せっかくですのでお茶にしましょうか。ちょうどこの子たちもおやつを食べているみたいなので」

瑞鶴「うんっ。そうしようそうしよう」ガタッ

鳳翔「今用意しますので少しお待ちくださいね」



瑞鶴「あー、落ち着く」ホッコリ

鳳翔「こう言う時間が一番幸せかもしれませんね」

瑞鶴「ほんとほんと。でも演習とか出撃とかもないし。ついでに雲龍達もいない。何もなさ過ぎるのも嫌かな―」

鳳翔「あの子たちは基本独自に動いていますからね。提督も把握が大変みたいですよ」

瑞鶴「いいのかなぁとも、いいなぁとも言えるような? そもそも、こっちは動けないのにあっちは動けてるのって……資源ってどうなってるんだろ」

鳳翔「別で管理していますね。どちらかと言うと、雲龍さんたちが持ち帰った資源を私たちが少し分けてもらっている、と言ったところでしょうか」

瑞鶴「何と言うか、うちの鎮守府って一体……」

鳳翔「配給が他と違いほぼありませんから、その分やりくりがどうしても大変になってしまうんです」

瑞鶴「そんなに違うの? 私は前は中央にいたからそう言うのって気にしたことなかったけど」

鳳翔「そうですねぇ……。例えば、通常100の配給があるとすればここは10、いえ……20くらいでしょうか」

瑞鶴「ナンテコッタ」

鳳翔「提督曰くこれでも交渉の末だったみたいですけれどね。当初はもっと少なかったとか」

瑞鶴「うげぇ……むしろよくここまで来れたと驚くべきなのかも」

鳳翔「遠征を頑張ってくださった皆さんのお陰ですね」



九九妖精『ッ――――ッ!!』パタパタ



鳳翔「ふふっ。もちろん皆さんの協力があってこそ、安全に資源を運んでこられました。ありがとう」ナデナデ



零戦妖精『』フンスッ

九七妖精『』クルクル


336: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/05(木) 23:20:14.81 ID:lkMz2FGv0

瑞鶴「そう言えば、提督さんと翔鶴姉ぇは結局何しに出かけたんだろう。会議みたいなこと言ってたけど」ズズズ……

鳳翔「提督会議ですね。主に行われるのは今後の作戦方針決定……言ってしまえば、なにか大規模な作戦がある時に行われています」

瑞鶴「えっ? 大規模作戦?」

鳳翔「はい。ですのでおそらくは近々何らかの形で発動されるかと」

瑞鶴「じゃあ私たちも出撃するかもってこと?!」ヤッター!

鳳翔「え、えぇ。ですが……」

瑞鶴「?」

鳳翔「仮に作戦が発動されたとしても、まずこちらには出撃命令は出ないと思います。良くて近海哨戒かと」

瑞鶴「えぇー……」ナゼニ

鳳翔「他との戦力差もありますが、一番の要因は……」

瑞鶴「上と提督さんの不和?」

鳳翔「かと……」

瑞鶴「提督さん、お父さんのこと嫌ってるもんねぇ。その逆も然りみたいだし。はぁーっ。出撃できると思ったのにー」ガッカリ

鳳翔「追い打ちを掛けるようで申し訳ないですが、こちらの資源の問題もありますね」

瑞鶴「はあ~……っ。もう、早く貯まらないかなあ! せめて演習とかはしたーいっ」ヒマー!!



九七妖精『』ポンポン

九九妖精『』ナデナデ


瑞鶴さんは暇を持て余しています


344: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/07(土) 17:10:43.86 ID:IbouraEh0

・---・ヲトメ翔鶴・---・


提督「ここに来るのも年に数えるほどだから未だに見えるものが真新しく感じるよ」

翔鶴「私は初めてでした。あとは、そうですね……こちらは艦娘自体が稀なんでしょうね。結構見られていました」

提督「……すまんな。見世物みたいな事になってしまって」

翔鶴「提督のせいではありませんよ。艦娘の事をよく知らない人から見たら当たり前かと」

提督「艤装装備してなかったらなんの違いもないのにな」

翔鶴「艦娘とは言え異性が同じ場にいるのに慣れてないのかもしれませんね」

提督「いい歳して異性慣れしてないとか、思春期のガキかっつの。なあ?」

翔鶴「あら、では提督は慣れていらっしゃるのですか?」

提督「そりゃあもう。日々みんなと暮らしていれば慣れてしまうってものさ。なんと言うかもう気分はお父さん?」

翔鶴「……そう言う意味ではないのですが」

提督「んー、まあ俺だって男だから興味はあるけど"そう言うトコロ"には行かないから。なんたって翔鶴いるし」ギュッ

翔鶴「べ、別にそんなつもりで言ったわけではないです……」ギュッ

提督「の割には手をギュッと握られているんだが」

翔鶴「き、気のせいですっ」

提督「ははは。さてと、もうすっかり夜だしあんまりここに長居してもしょうがないから宿に引き上げるとしよう」

翔鶴「………………」プクー

提督「――――の前に夕飯かな。あとはせっかくだから甘いものも食べていこうか」

翔鶴「はい」ニッコリ


345: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/07(土) 17:15:30.10 ID:IbouraEh0

……

…………

………………



提督「いやぁたまには外の料理を味わうのもいいな。味を比べるのは失礼かもしれないけれど」ウマカッタ

翔鶴「………………」

提督「それに食後のケーキもなかなか。間宮さんに言ったら鎮守府でも作ってくれるかな」

翔鶴「そう、ですね」

提督「あ、あー……。えっとだな。本当にいいのか? 無理しなくてもなんなら今からでも宿変えるぞ?」

翔鶴「い、いえっ! そう言うわけではないです。私は問題ありませんのでっ。で、でもこんな事もあるんですね」

提督「直前になって部屋のトラブルとかなぁ。しかも運悪く他の予約でもう部屋埋まってて空きもなく、結果的に二人で一部屋とか」

翔鶴「水漏れじゃあどうしようもないですからね……」

提督「こんなこと、絶対にみんなには言えないな」

翔鶴「です、ね」

提督「………………」

翔鶴「………………」



『どうしよう。会話が(続きません……)続かない……』チラッ



隣り合った二組の布団『』ドンッ☆


346: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/07(土) 17:20:10.00 ID:IbouraEh0


提督「そ、それにしてもアレだな。今回の会議……南洋パラオ方面での大規模作戦となると、夏のAL/MI作戦以来か! 今回の作戦が成功すれば、資源地帯における輸送船団の安全度も変わってくるな」

翔鶴「そ、そうですね。これまでは襲撃に備えての小規模船団でしたが、これで本土への輸送も改善されるはずです」

提督「うちも配給が増えるといいんだがなあ」ムリカナ

翔鶴「増えるといいですねっ!」

提督「………………」

翔鶴「………………」



『しまった……また会話が途切れてしまった……』チラッ



隣り合った二組の布団『』シンコンサン イラッシャアーイ!



提督「(まあ、部屋が一緒になってしまったものは仕方がない。それにそう広くない部屋だから布団が隣り合わせなのも、まあしょうがないだろう。でもコレはなぁ)」

翔鶴「(て、提督と二人っきり……ですか。嬉しいはずなのに緊張でそれどころじゃないです。だっ大体こう言うのはもうちょっと時間をかけて……)」



提督「と、とりあえず風呂に入りに行こうか! 温泉で一日の疲れをとって布団に入る。うん。いいじゃないか」

翔鶴「はっはい! ではすぐ準備をしますので……っ」

提督「これで混浴とかだったらもう笑うしかないよな」

翔鶴「さすがにそこまで露骨ってことはないと思いますが……」


347: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/07(土) 17:25:10.72 ID:IbouraEh0


……

…………

………………



『0時以降は浴室点検掃除のため、露天風呂は交互混浴になります』ドドン☆



提督「」

翔鶴「」


そのまさかでした


351: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/07(土) 20:05:20.61 ID:IbouraEh0

・---・オマケノ鎮守府:瑞鶴・---・


瑞鶴「えっ、提督さんと翔鶴姉ぇって泊まりなの?!」

鳳翔「はい。せっかくなのでたまには都会の空気を吸ってくると仰っていました」

瑞鶴「ぐぬぬ……やっぱり着いて行けばよかった」

鳳翔「ですが実際は暗くなるまで作戦会議で拘束されると思いますので、観光や散策と言った自由はないかもしれませんね」

瑞鶴「でも、でもだよ! ただでさえ進みの遅い二人が……二人っきりで、お泊りなんて。絶対になんかあるに決まってるよっ」

鳳翔「それはいくらなんでも深読みし過ぎでは……」

瑞鶴「彩雲は? 彩雲はどこ?! えぇい時間が惜しいから雲龍のトコから景雲改借りてきて……ッ!!」

鳳翔「ず、瑞鶴さん落ち着いて。それに、私たちでは景雲改は扱えませんよ」

瑞鶴「私達はって……。ホントは鳳翔さんも気になってるの?」

鳳翔「い、いえっそんな。私は、なにも……」アタフタ

瑞鶴「ほんとにぃー?」

鳳翔「うぅ……」マッカ

瑞鶴「でもホント、なんかあったらどうしよう……。もぅ、翔鶴姉ぇったら重要なコトは教えてくれないんだからぁあー!」キーッ


なんか起こりそうなイベントは発生しています


357: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/10(火) 22:00:17.94 ID:mGuYrp/M0
注:お酒の勢いを卵で割って作った結果なのでノリがいつもと違いますん 予めご了承ください





・---・コンヨク翔鶴・---・


提督「………………」

翔鶴「………………」



提督「(広々とした露天風呂に背中合わせで浸かってる俺と翔鶴がいましたとさ)」

提督「(だって離れて入ってたら余計気まずいというか……)」

提督「(時間的に誰も来ないだろうし、どうせ後でここも掃除するんだろうからとタオルで局部は隠してる。マナー違反ドンと来いだ)」

提督「(翔鶴にも羽根を伸ばしてもらいたくて、どうせなら露天風呂のある宿って事で取ったのが色んな意味で裏目に出たか?)」



提督「し、しかし。時間が時間だからか他に誰もいないなあ」

翔鶴「そっそうですね。だからこそこの時間にお掃除をされるんだと思いますが……」

提督「なんというか、その……すまんな」

翔鶴「え? どうしてですか?」

提督「混浴のこと。俺も知らなかったんだよ」

翔鶴「もう過ぎたことですから……。私は気にしていません」

提督「部屋にしてもココにしても。俺の落ち度ばかりだな。格的に人で賑わう場所じゃないから翔鶴も安心して過ごせるかと思って宿取ったんだがなあ」

翔鶴「そのお心遣いだけで十二分です。それに、お部屋の件は提督のせいではありませんよ」

提督「まあそうなんだが。ここに決めた者の責任としてね」

翔鶴「……私は、今も十分幸せですよ」ピトッ ←背中をくっつけた

提督「!」ビクッ

翔鶴「そんなに驚かないでください」クスクス

提督「こんな状態で無理な注文かと」

翔鶴「異性慣れしているのではなかったのですか?」

提督「ま、まいったな」ハハハ……


358: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/10(火) 22:05:06.70 ID:mGuYrp/M0


そよそよそよ……


翔鶴「……静かですね」

提督「あ、ああ。もう日も跨いでるからってのもあるかな」

翔鶴「今日の夜にはもう鎮守府に戻っていると思うと、ちょっと名残惜しい気もします」

提督「名残惜しい? それはまたなんで」

翔鶴「こうして提督のことを独占できますから。秘書艦の手前、普段あまり自分勝手なことはできませんからね」

提督「俺としては気にしない……が、そうも言ってられないか」

翔鶴「ええ。ですから今だけはこうして一緒にいようと。そう考えれば恥ずかしさや緊張も飛んでいってしまいました。むしろ同じ部屋や混浴は好都合かもしれませんね」

提督「………………」ポリポリ

翔鶴「だから、せっかくなのでちゃんと顔を見てお話しませんか?」

提督「えっ? いやそうするとかなり大変なことになるんじゃ……」

翔鶴「提督一人にマナー違反はさせませんよ。秘書k……私も一緒です」

提督「なんか今の翔鶴はえらく積極的というか、押しが強いというか」

翔鶴「たまにはいいじゃないですか」ニコニコ


359: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/10(火) 22:10:12.40 ID:mGuYrp/M0

提督「まあ、なんだ。この事が皆に知れたら大変なことになるな。極めて危険な見栄えだ」←ノボセるので半身浴に切り替えた

翔鶴「そうですね。特に瑞鶴が知ったらいろいろ言いそうです」←タオルを身体に当てつつ同上

提督「瑞鶴には泊まってくるって伝えてないんだっけ?」

翔鶴「もしも伝えていたら絶対について行くって言って聞かなかったかと」

提督「……だなあ」

翔鶴「そしたらこうして提督を独占なんてできませんでしたね」ピトッ

提督「そ、そうだな」

翔鶴「提督も私のことを独占できませんでしたよ?」ウワメヅカイー

提督「俺は翔鶴のこと十分独占してるつもりだけど……」

翔鶴「足りません」ギュッ

提督「し、翔鶴さん。この格好でそれは多分にダイタンじゃないかなっ!」

翔鶴「今だけ……うん。今だけ、です」


提督「――――――」ドキドキ

翔鶴「すごいドキドキ言ってますね」

提督「あ、当たり前だろう。しない方がおかしいってもんさ」

翔鶴「私も相当緊張しているんですよ?」

提督「それは……うん。腕から伝わってくるからわかるよ」

翔鶴「同じですね」

提督「う、うむ」

360: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/10(火) 22:15:34.86 ID:mGuYrp/M0


翔鶴「………………」

提督「………………」


翔鶴「もう少しだけ、こうしていてもいいですか?」

提督「り、理性の消耗が凄いんだが」

翔鶴「……崩壊してもいいのに」ボソッ

提督「いやいやいやいやいや!」

翔鶴「ふふっ。分かってます。全部終わるまでは、ですよね? だから今はここまでです」ギュッ

提督「普通の格好だったら大歓迎なんだが」

翔鶴「うふふっ。場所と雰囲気、そして役の三得ですよ」

提督「このままだと一緒に寝そうで怖いね」

翔鶴「お布団が隣同士ではありませんか」

提督「……そうだった」


進んだような進みすぎたような、はたまた進んでなさそうな そんなカンケイ


366: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/12(木) 20:05:20.93 ID:E17ij8TV0

・---・オヤスミ翔鶴・---・


提督「温泉入ってたら1時を回っていた件について」

翔鶴「少しお話しすぎましたね」

提督「まあね。結局上がるまで誰も来なかったし」

翔鶴「私たちもそろそろ寝ますか?」

提督「今から寝たら起きるまで……5時間位か」

翔鶴「さすがにこれ以上遅くなったら朝起きられなくなってしまいます」

提督「鎮守府じゃないから多少寝坊してもいけれど……気分の問題もあるかな。じゃあ電気消してもう寝ようか」

翔鶴「はい。おやすみなさい提督」

提督「おやすみ。翔鶴」パチン



ゴソゴソゴソ……



提督「(さてと、さっきのアレで半分以上眠気が飛んでるけど布団に入ればきっと――――ん?)」ナンダロ

提督「なんか妙に温か……いぃ?!」

翔鶴「(布団の中から)こんばんは」ニコッ


367: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/12(木) 20:10:27.75 ID:E17ij8TV0


提督「し、翔鶴?! 何やってんだ!」

翔鶴「シー。大きな声出したらダメですよ提督」メッ

提督「いやいやそうじゃなくてだなっ。……あいや、むしろ俺が布団間違えた側か?」

翔鶴「いいえ。こちらは提督のお布団であってます」

提督「じじゃあどうしてっ」

翔鶴「先ほどお風呂でも言いましたが、今だけ……いえ、今夜だけ、です」

提督「こ、今夜って。あれは風呂での話じゃなかったのか?」

翔鶴「提督も仰っていましたよ。このままだと一緒に寝そうだと」

提督「確かに言ったがなぁ。実行するのとは話が別だろう」

翔鶴「鎮守府に帰ったらまたいつもの通りですから、その……今は自分に素直になってみようと」

提督「素直になりすぎだよ。正直驚きっぱなしだ」

翔鶴「提督だからこんな事をするんですよ?」ジー

提督「……翔鶴ってこんなにオセオセだったっけか?」

翔鶴「ふふっ。今知ってるのが私の全てではないということです」

提督「まあ、そうかもしれないが……なあ?」

翔鶴「頭、撫でてほしいなぁ」ウワメヅカイー

提督「まったくもう。もうちょっとお淑やかな子だと思ってたんだけれどね」ナデナデ

翔鶴「幻滅しました?」

提督「いいや。幻滅なんかするもんか。ただ、瑞鶴の姉なだけあるかなって思った」

翔鶴「ええ。私は瑞鶴の姉ですから」ニコニコ


368: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/12(木) 20:15:19.35 ID:E17ij8TV0

提督「で、この分だと本当に一緒に寝るのか?」

翔鶴「もちろんです。今更戻ったりはしません」

提督「もう一組の布団がもったいない、って言うのは置いといてだ。艦娘とはいえ女が男の布団に入ってるんだぞ? そこの所はわかってるのか?」

翔鶴「そうですね」

提督「襲われても文句は言えないんだぞ?」

翔鶴「営みだけが愛情表現ではない、と」

提督「………………」

翔鶴「ダメ、ですか?」

提督「…………はぁ。ワカッタわかったよ。もう好きにしてくれ。あと、余程のことがない限り襲ったりもしないから安心してくれ」

翔鶴「はい」ギュッ

提督「本当に積極的なのな」

翔鶴「せっかくの機会ですので」ギューッ

提督「それもそうか」

翔鶴「提督は抱きしめてくれないんですか?」

提督「ん、ああ」ギュッ



369: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/12(木) 20:20:10.25 ID:E17ij8TV0


翔鶴「あったかいですね」

提督「さっきまで温泉入ってたからかな。布団と合わせるとぬくもりがもう最高だよ」

翔鶴「それだけですか?」

提督「……あと翔鶴って言う抱きまくらのお陰で大変いい思いをさせて頂いております」

翔鶴「ふふっ。あまり抱き心地は良くないかもしれませんが……」

提督「そんな事はないさ。これ以上を望むなんて贅沢だよ。ありがとう」ギュッ

翔鶴「お粗末さまです」ギュッ

提督「しかし、なんだな。ここだけとは言え普段からすると相当なことをやってるような」

翔鶴「そうですね。他の方もいらっしゃるので、手を繋ぐとか頭を撫でてもらうくらいですからね」

提督「こんな感じに?」ナデナデ

翔鶴「はい。私、提督に頭を撫でられるの好きです」

提督「俺もだ。翔鶴の髪の毛は柔らかくて撫で甲斐があるし、それに今はシャンプーの匂いがする。風呂上がりって感じするよ」

翔鶴「こちらは提督の匂いがしますよ」

提督「あれ、俺まさかの加齢臭?」ウソン

翔鶴「違いますよ。提督の匂い、です。加齢臭なんかじゃないです」

提督「違いがよくわからん」

翔鶴「私だけがわかっていればいいんです」

提督「そんなものか?」

翔鶴「はい」クスッ


370: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/12(木) 20:25:26.51 ID:E17ij8TV0

提督「……今何時かな」

翔鶴「まだそんなに時間は経ってないと思いますよ」

提督「名残惜しいけれど、本当にもう寝ないと起きられない」

翔鶴「ですね。今度こそお休みしましょうか」

提督「ああ……って、翔鶴さん」

翔鶴「はい?」

提督「離してくれないと寝られないんだが」

翔鶴「このまま眠ればいいじゃないですか」ギュッ

提督「さすがにこの体勢で寝るのも中々辛いものがあるなぁ」ウデトカ

翔鶴「将来当たり前になるかもしれませんよ」

提督「………………」ギュウッ

翔鶴「あっ」

提督「俺的には腕枕でもいいんだが。今日だけ、な?」ポンポン

翔鶴「……はい」

提督「おやすみ」

翔鶴「おやすみなさい」


いちゃらぶ?


378: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/13(金) 20:50:12.20 ID:YEv9KPhN0

・---・オマケノ鎮守府:提督・---・


提督「――――うん? まあそうだな。たしかにあの夜は大変だった。主に理性面で」

提督「考えても見てくれ。タオル一枚身体に這わせただけのほぼ全裸だぞ? 腕とか脚とか、柔肌が丸見えなんだぞ?」

提督「オマケに風呂場だからか長い髪の毛をくるくるとまとめていたと来たもんだ。そこから覗くうなじからの背中を見てしまったら誰だってグッとくるだろうに」

提督「そりゃあ俺だって男だから人並みに 欲もあるしね。酔っ払ったとかで見境がなければ襲ってたかもわからん」

提督「え? 翔鶴が大事じゃないのかって? そりゃ大事さ。でもソレとコレは話が違うだろ」

提督「人間堪えるのにも限界ってもんがあるからな。もっとも、堪えることができなきゃ艦娘の指揮官なんてできっこないがね」

提督「まあそれにしても……肩と肩が触れ合った時と、翔鶴に腕を組まれてもたれ掛かられた時は本当にヤバかった。ウン」



提督「あとはそうだなあ。布団の那珂――あいや、中。アレもヤバかった」

提督「だって抱きしめてるんだぜ? 浴衣一枚着ただけの女の子をだ。だから自然とその、浴衣越しとはいえ当たってしまうんだよ。 ……翔鶴の胸が」

提督「柔らかかったかって? なにをそんな――――――当たり前だろ」

提督「とは言え、ソコから伝わる鼓動は嘘をつけなかったな。あんなに積極的だった翔鶴も実のところは緊張してたんだろう。場が場だし」

提督「かく言う俺も心臓バクバクでね。なんせ抱きしめてる手をおろせば尻がある。前に持ってくれば胸がある。結局動かさなくても髪の毛があると。無理もないだろう?」

提督「一番心配だった我が愚息だが……幸いにしてなんとか起動をかけずに済んだ。非情に危険なラインだったが俺は煩悩に耐えたんだ!」

提督「もう少し翔鶴が積極的な行動に出たら危なかった。それくらいギリギリの水際だったと理解してくれ」

提督「それに朝起きた時の片腕の痺れっぷりというか鈍かった血の巡りっぷりというか。あー巡ってるなぁってのも感じたよ」

提督「結果的に羽根を伸ばしてもらうつもりが二人して寝不足だ。帰ってからお互い夕飯もそこそこに部屋に戻ったのは言うまでもない」

提督「何故かって? そりゃあもう、お互い抱きしめ合ったまましっかり寝られますか? と言うことだ」

提督「帰ってきたことでまた元通りになると思うが、ホンの少しだけ残念だと思うのはしょうがない事なのかな。少しだけだぞ?」














提督「なに、据え膳食わぬは男の恥? 翔鶴の気持ちも察してやれこのED野郎だって? ンな事くらいわかってるよ。あと、俺は不能じゃないぞ。ただ……今がその時じゃないだけだ」

提督「ちゃんと全部終わったら大手を振って進むさ。だからそれまでは我慢だ。 ……たまーに、辛くなる時があるけれどな」



この すれ は KENZEN な すれ です


385: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/15(日) 21:45:22.70 ID:CLN5otY60

・---・鶴タチノ休息・---・


『……私は、今も十分幸せですよ』

『ですから今だけはこうして一緒にいようと。むしろ同じ部屋や混浴は好都合かもしれませんね』

『もう少しだけ、こうしていてもいいですか?』

『……崩壊してもいいのに』

『提督は抱きしめてくれないんですか?』

『将来当たり前になるかもしれませんよ』



………………

…………

……



翔鶴「私は……勢いに乗ってなんてことを……!! 思い返すと恥ずかしいを通り越してはしたないわ」マッカッカ

瑞鶴「ん? どうかしたの翔鶴姉ぇ」

翔鶴「自分にあんな一面があったなんて今じゃ信じられない」ウン

瑞鶴「ねえ、だからどうかしたの翔鶴姉ぇ」

翔鶴「やっぱり提督と二人でいると気持ちが急いてしまうのかしら……」

瑞鶴「うん。なんだか分からないけどあの日絡みだってことは理解した」

翔鶴「……えっ? 瑞鶴、今なにか言った?」

瑞鶴「非情に興味深いことを口走ってたねぇ。恥ずかしいとか、あんな一面とか。ナニしたの?」

翔鶴「な、何もなかったわよ……?」

瑞鶴「いや、嘘はもうちょっと上手くつこうよ」



386: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/15(日) 21:50:50.28 ID:CLN5otY60

瑞鶴「それで、やっぱりあの日の夜に提督さんとなんかあったの?」

翔鶴「い、言いません。何もありませんでした」

瑞鶴「●●●な事とかあったんじゃないのー?」ニヤニヤ

翔鶴「ち、違いますっ」

瑞鶴「じゃあ●●●なハプニングとかー」

翔鶴「あっ……ありません」

瑞鶴「じゃあ●●●なイベントー?」

翔鶴「もぅ、どうしてさっきからずっとえ、……ぇっち、な事ばかり限定してくるの?」

瑞鶴「そりゃ普通のこと聞いてもしょうがないじゃん。私は絶対何かあったって踏んでるからね! あんなオイシイ展開で何もないなんてあり得ないよっ」

翔鶴「だ、だから何もないって」

瑞鶴「手を繋いだ、抱きしめた、キスをした、身体に触れた――――いっこもないの?」

翔鶴「そ、それは」

瑞鶴「それとも、更に進んでもう致しちゃったとか?」

翔鶴「いた……?! ず、瑞鶴ッ!」

瑞鶴「……まあ私も鬼じゃないからね。翔鶴姉ぇが嫌だって言うのなら聞かないよ。それに提督さんのことも信用してるしっ」

翔鶴「………………」

瑞鶴「と言うわけで翔鶴姉ぇ、喉乾いてない? 鳳翔さんからイイモノ貰ってきたんだー♪」ドンッ



大吟醸:鶴殺し『』ヒャッハアァァァァァァッ!



翔鶴「」

瑞鶴「たまには姉妹二人で一杯っていうのもいいでしょ? ……もっとも私はお酒飲んだことないけどね」



大吟醸:鶴殺し『』一番場内、高速進行オォォォォォォッ!



翔鶴さん、ぴーんち



394: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/17(火) 22:00:56.60 ID:Qi9G57O30

・---・アル日ノ鎮守府:瑞鶴・---・


瑞鶴「――と言うわけで、結局なんも覚えてなかったんだよねぇ」アシプラプラ~

提督「そうかー覚えてなかったのか―」サラサラ

翔鶴「………………」

瑞鶴「翔鶴姉ぇがお酒に弱いからこそって狙ったんだけどねー。気がついたら二人揃って布団に倒れこんでた」

翔鶴「私もお酒を飲み始めた所までは覚えているのですが……」

提督「にしても鶴殺しとはまた直球な名前の酒とはね。二人にしてみればまさにその通りになったわけだ」

瑞鶴「うん。私はやっぱりお酒はいらないかな。もしかしたら聞けたのかもしれないけどさ、覚えてないんじゃなーんの意味もないし」

提督「二人でひとビン全部開けたのか?」

翔鶴「半分くらいですね。残ったのは部屋に置いたままです」

提督「せっかくだから俺もどんなのか呑んでみたいな。もし要らないなら貰ってもいいかな」

翔鶴「はい。では後ほど持ってきますね」

提督「今日は雨上がりのいい天気だからな。花粉が少し気になるが夜にはイイ月が見られそうだ」

瑞鶴「私はお茶かラムネでいいかなー」


395: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/17(火) 22:05:57.72 ID:Qi9G57O30

瑞鶴「でさ、提督さんと翔鶴姉ぇって一緒に寝たの?」

提督「ここで俺たちに聞くか」

瑞鶴「搦手がダメなら直接聞くしかないでしょ?」

翔鶴「もういいでしょう瑞鶴」

瑞鶴「だって気になるんだもんー」ブーブー

提督「じゃあハッキリと言ってあげようかな。俺は翔鶴と寝ました」キリッ

翔鶴「て、提督?!」

瑞鶴「うはっ。ついに提督さんと翔鶴姉ぇのカンケイが明らかになった!」

提督「更に言うならば部屋も同じ……まあ一緒に寝たんなら分かることだけどな」

翔鶴「ううぅ……」マッカ

提督「なんせ本来翔鶴が使うはずだった部屋が不具合で急遽使えなくなってしまってなぁ。他に部屋も空いてなくて仕方なく一緒に寝てもらったんだ」

瑞鶴「うんうんっ……うん?」エ?

提督「だからちゃんと布団も二組敷いてあったんだぞ。なあ翔鶴」

翔鶴「えっ? あ、はははい!」コクコク

瑞鶴「じゃ、じゃあ一緒に寝たってのは……」

提督「そういう事になるね。寝不足だったのは温泉入ってて時間的に遅くなったのと布団に入りながら話してたからな。なんだか学校の修学旅行を思い出したよ」

瑞鶴「……なぁーんだー。結局ナニもなかったのか―」ツマンナイー

提督「期待に沿うようなことはないぞ」

瑞鶴「ちぇーっ。面白くなぁい。せっかくの機会だったのに、提督さんも男見せないと!」

提督「海軍軍人は常に紳士たれ、ってのはいい言葉だと思う」

瑞鶴「はぁーっ。こりゃあまだまだ時間かかりそうな予感だよ」ヤレヤレ


嘘はついてませんネ


404: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/19(木) 22:05:47.41 ID:0X1t0frm0

・---・コンナノデキマシタ・---・



――――ドドーンッ!



偵察妖精1『鳳翔さんの部隊、全弾命中です』

偵察妖精2『優勝はこれで決まりなのです』

偵察妖精3『と言うか急降下爆撃の的は全部同じ所にあたってるので見た目的には一発なのです』



オメデトーデス!!



鳳翔「あらあら」ニコニコ

瑞鶴「むむぅ。今回こそは行けると思ったんだけどなあ」←二発外れた

翔鶴「やっぱりまだ鳳翔さんには敵わないわね」←一発外れた

大鯨「はい……。そしてやっぱり最下位は私ですかぁ」トホホ

鳳翔「大鯨さんはまだ空母としての日が浅いですからね。初めから上手い人はいません。私もお手伝いするので頑張っていきましょう」

大鯨「と言うことは昔は鳳翔さんも……?」

鳳翔「もちろんです。航空隊の皆と切磋琢磨したからこそ、こうして結果となって実を結んでいます」

大鯨「なるほど。が、がんばりますっ!」

瑞鶴「全部同じ所に当てるとか、一体どれだけの訓練を積んだらなれるんだろう」ウムム……



九九妖精『』フンスッ

九七妖精『』クルクルクル



鳳翔「うふふっ。本日もお疲れ様でした」ナデナデ



補足:鳳翔さんは彩雲を例外として、意図的に零式ニ一、九九艦爆、九七艦攻を使用しています ただし練度は他所で言うFanatic
   詳しくは前スレ最後の方を参照のほど……


405: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/19(木) 22:10:52.04 ID:0X1t0frm0

瑞鶴「もうこうなったら練度よりも火力に走った方がいいかもなあ」

翔鶴「火力?」

瑞鶴「多少命中率が悪くても、当たれば一撃で仕留められる程の大火力! 80番よりも威力のある爆弾とか魚雷とかさ。例えるなら41センチ砲に対する46センチ砲みたいなやつ」

大鯨「扶桑さん達や武蔵さんの……。確かに訓練で見るあの威力は凄いですよね」

瑞鶴「でしょ? だから私もそんなの欲しいなーって」

翔鶴「確かにそれはありかもしれないけれど……」ウーン

鳳翔「そう言えば、瑞鶴さんたちが真珠湾で使った80番は長門さんの41センチ砲弾を加工したものでしたよね」

瑞鶴「5号ね。実際に使ったのは戦艦を狙った赤城たちの組だけど」

翔鶴「私たちは練度の問題もあって、主に飛行場や小型艦艇への攻撃でした」

瑞鶴「だから実際に私たちがアレを使ったことってないのよねぇ。最も今はまた別だけど」

鳳翔「あ、あらあら……。失礼いたしました」

大鯨「でっでも、同じことを考えると46センチ砲弾でも加工すれば作れるってことですよねっ? もし完成すれば威力も高いのでは……?!」

瑞鶴「でしょでしょ。妖精さんに頼んだら作ってくれるかな?」

翔鶴「ちょっと瑞鶴。そんな勝手なことしたらダメよ」

瑞鶴「えぇー。ちょっとだけだから、ね? いいでしょ翔鶴姉ぇ」オネガイー

翔鶴「でも……」

瑞鶴「お願いお願い、おねがーいっ!」ネ?

鳳翔「せっかくですから提督に話してみては如何でしょうか。この事は私もちょっと興味あります」

大鯨「私もありますっ!」



九七妖精『』キラキラキラッ☆



鳳翔「この子たちもですね」

翔鶴「鳳翔さんたちまで……。わ、分かりました。では汗を洗い流したら聞いてみましょうか」

瑞鶴「やたっ! じゃあ急いでシャワー済ませなきゃ」タタタタッ

翔鶴「あ、瑞鶴……! もぅ」

鳳翔「ふふ。瑞鶴さんはやる気満々みたいですね」


406: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/19(木) 22:16:14.08 ID:0X1t0frm0

―執務室―


提督「ん? 46センチ砲弾を爆弾に改造したいって?」カミノケ マダ ヌレテルゾ

瑞鶴「そう! 目指せ"46センチ砲爆弾"」イイノッ

提督「砲なのに爆弾とはこれ如何に……は置いとくとして。一体急にどうしたんだ?」

翔鶴「私たちが普段使っている爆弾や魚雷よりも威力のあるものは作れないかという話になりまして」

鳳翔「それで、41センチ砲弾から作れたのなら46センチ砲弾でも出来るのではないか、と」

提督「ふーむ。どうしたものかな」

大鯨「や、やはりダメでしょうか」

提督「ダメとは言わないよ。ただなんともタイミングがいいと言うかな。ちょうどこんな情報があるんだ」ハイ

瑞鶴「あ、今月の艦隊広報」

提督「なんでも前線には新型の深海棲艦が多数目撃されてるらしい。そのどれもが重武装・重防御で、通常の攻撃ではなかなか通らないとか」

鳳翔「そう言えばそんな事も書いてありましたね」

提督「うちにはあまり縁がない話かもしれないけれど、この先も無いとは限らないからな。いざという時に歯がたたないんじゃどうしようもない」

翔鶴「では、改造の許可をいただけるんですか」

提督「まずは試しでってことで。妖精さんが作れるかもあるし、効果があるかも試してからだな。その範囲でなら……うん。許可しよう」

瑞鶴「いよっし!」グッ

大鯨「良かったですね、瑞鶴さんっ」

提督「妖精さんには俺の方から話をしておくから、完成したら誰か試験を――――」



ガチャッ


工廠妖精1『そんなこともあろうかと!』

工廠妖精2『すでに手は打っていたです!』

工廠妖精3『パパパッパッパッパ、パァウァー!!』

工廠妖精4『Power is everything』



『?!』ビクッ


407: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/19(木) 22:20:47.88 ID:0X1t0frm0


提督「て、手を打っていた……?」エ?



工廠妖精1『はいです。もう完成してるです』フンスッ

工廠妖精2『私たちにかかればそんなのはオチャノコサイサイです』フンスッ



瑞鶴「ってことはもうすぐにでも使えるってこと?」



工廠妖精1『モチの』

工廠妖精2『ロンです』



瑞鶴「やったあ! それじゃあ早速沖に出て試験開始よっ」

大鯨「はい! 頑張りましょう」ワクワク

提督「せっかくだから俺も見に行こうかな」



ワイワイガヤガヤ……



………………

…………

……




鳳翔「……あら? そう言えば」

翔鶴「鳳翔さん。どうかしましたか?」

鳳翔「え、えぇ。今更になって思ったのですが、46センチ砲弾って重さはどれくらいなんでしょうね? 41センチで80番相当となると46センチでは重量過多になりそうで、その……飛べないかもと」

翔鶴「あ」ソウイエバ

鳳翔「な、なんともなければそれで良いのですが……ね」アハハ……


もちろん飛べませんでしたとさ


413: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/22(日) 15:10:29.81 ID:80zCfcxd0

・---・アル日ノ鎮守府・---・


提督「平和だなあ」

瑞鶴「ねー。何もすることがない休日の昼下がりって感じ」

提督「今日は天気もいいし、外出するにはもってこいの日和だよ。でも俺は鎮守府から出られないけどな」

瑞鶴「私も同じく―」

提督「何事も無く淡々と一日が過ぎていく。うん。イイ日だ」

瑞鶴「このご時世でそんな事考えてるのって提督さんだけだと思うなー」

提督「だよな」ウン

瑞鶴「私としては出撃とか出撃とか、演習とか演習とか……」

提督「ついこの前までの極限状態と比べればだいぶ余裕もできてきたし、みんなの不満もたまってる。通常モードに戻すのもアリかな?」

瑞鶴「そうしようよー。もう退屈すぎて頭からキノコ生えてきそう」ダルーン

提督「なんだそりゃ」

瑞鶴「それだけ退屈なの―」

提督「俺が不甲斐ないばっかりに申し訳ない」

瑞鶴「じゃあ頭撫でて」ン

提督「仰せのままに」ナデナデ

瑞鶴「んー、癒やされる」キラキラ

提督「そうか? 男の手だぞ?」

瑞鶴「いいのー」

提督「さいですか」ナデナデ

瑞鶴「はぁー。今日はこのあと何してよっかなー」ゴロン

提督「……そう言いながら俺の脚を枕に寝転がるな。この状態でも頭を撫でてればいいのか?」

瑞鶴「んー」ゴロニャーン



ガチャッ



翔鶴「あの、提督……」

提督「おかえり翔鶴。どうした、なんか妙な顔して」

翔鶴「いえ、あの、それが……」

瑞鶴「んー?」ムクリ



翔鶴「作戦命令書が、届きました」




――――発動 渾作戦




・・-・・渾沌トシタ海原ニ煌メク月ノヨウニ・・・

420: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/25(水) 21:05:13.71 ID:MmwG8kZf0
注意:独自要素の塊につき、以下の内容に嫌悪感のある方回避推奨
(オリジナル展開・<現状>オリジナル艦娘・ご都合主義)




・・-・・渾沌トシタ海原ニ煌メク月ノヨウニ・・・




――今度こそ、今度こそ私は護りぬいてみせる。絶対に――






提督「………………」

翔鶴「………………」

瑞鶴「………………」



渾作戦命令書概要:○月△日ヨリ、作戦本隊進軍支援ノタメ敵部隊ニ対シ遊撃部隊ヲ以ツテ陽動作戦ヲ実施セヨ
         敵ノ目ヲ引キ付ケ戦力分断オヨビ誘導セシメルコトヲ第一トシ、陽動ノ成功ヲ期待ス



提督「指令書だな……」

翔鶴「そう、ですね」

瑞鶴「うわーここに来てから初めて見たかも」

提督「俺もここに来て初めて見たな」

翔鶴「私もですね」

瑞鶴「………………」エー


421: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/25(水) 21:10:21.16 ID:MmwG8kZf0

提督「作戦自体は予定通りだったが、まさかウチからも戦力を出せとはなぁ。こっちは正直想定外だった」

翔鶴「命令書を見る限りでは作戦支援のためみたいですね」

瑞鶴「これ、支援っていうか陽動……囮よね?」

提督「下に書いてあるのが本筋っぽいけどな。本隊の安全な進軍のために敵前で声高に叫んで敵艦隊を釣り上げろってことだろう」

瑞鶴「敵艦隊の釣り上げ……なんかイヤな事思い出すなあ」エンガノ

翔鶴「作戦支援のため、と言うのはわかりますが……」

提督「別にハッキリ言っていいぞ?」

翔鶴「その、まるで捨て駒のような感じがします」

提督「するっていうかまんまだろうね。被害が出ようがとにかく目立ってくれってことだろうし」

瑞鶴「もともと期待してないから上手く行けば儲けもの、みたいな?」

提督「アレの考えそうなことだよ。反吐が出るな」



翔鶴「それで提督。如何がいたしますか?」

提督「如何もなにも命令だからね。出ろと言われたからには従わにゃならん」

翔鶴「し、しかし……」

瑞鶴「んーますますアノ事が頭に過るわね。うん。あんまり気分良くないわ」

提督「……まあ、安心してくれ。俺はバカ正直にこの命令に従うつもりはない。軍人たるもの、やはり出るからにはしっかり戦果はあげてこようじゃないか」

翔鶴「いいんですか?」

提督「構うもんか。釣り上げろとは書いてあるけれど戦うなとは書いてない。書いてないってことはやってもOKと言うことだ」

瑞鶴「それって屁理屈って言うんじゃないかなあ」

提督「応用力があると言って欲しいな。とにかく、うちは戦って誘き寄せる方法で行こうと思う。いいかな」

翔鶴「私は問題ありません」

瑞鶴「やっぱソッチの方がいいわよね」



422: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/25(水) 21:15:10.13 ID:MmwG8kZf0

瑞鶴「と言うことは、いざ接敵となれば全力でやっちゃう感じ?」

提督「敵本隊までを狩ることはしないがね。さすがに命令そのものを無視する訳にはいかないから、目的の第一は囮で行くさ」

瑞鶴「ざーんねん。でもまあ動き回れるだけいいかな」

提督「それで翔鶴。今回の編成についてだが……」

翔鶴「主任務は囮ですので、ある程度の規模の方が誘引と言う面からすれば効果的かと思われます」

提督「となると最大で主力級か」

翔鶴「はい。扶桑さんを中心とした打撃艦隊、私たちを中心とした航空艦隊が"撒き餌"としてより引き付けやすいかと」

提督「……囮で出てくれって言ったら山城あたりにどやされそうだ」

瑞鶴「あとは水雷戦隊って手もあるんじゃない? ちょっと規模は小さくなるけど、古鷹や川内たちだったら足も速いし」

提督「ふむ。姉妹間の連携に富む古鷹たちなら昼間さんざん引っ掻き回して夜戦で派手にやるなら大いにありだな。夜戦限定なら川内たちが凄いことになるか」

翔鶴「せ、川内さんですとわざと夜戦まで延ばしそうですね……」

瑞鶴「あーでも、肝心の資源ってどうなの? せっかくの出番なのにまた動けない戦えないとかだったら意味ないし」

翔鶴「現在の資源備蓄は最大時の六割程となっています。瑞鶴の言うような戦闘についても、ある程度まとまった戦力でも余程のことがない限り対応できますね」

提督「わかった。編成についてはもうちょい詰めようと思うからいくつか候補を出していこうか」

翔鶴「はいっ」

瑞鶴「囮って響きは嫌だけど、戦闘なら望むところよね。やってやろうじゃない!」





??「………………」


432: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/27(金) 21:10:21.99 ID:m1tDodF70

―翌日―

提督「みんなおはよう」



オハヨウゴザイマース!



提督「早速だが聞いてくれ。この鎮守府にもついに大規模作戦への出撃命令が来た」



ザワザワザワッ



扶桑「大規模作戦への……」

山城「出撃命令……」ゴクリ

武蔵「ほぅ」ニヤリ


川内「大規模作戦って言ったら、当然夜戦は付きものだよね!」ワクワク

夕立「素敵なパーティー、よりどりみどりっぽい!」

深雪「ッしゃあ! ついに深雪スペシャルの本領を発揮する時が来たぜッ」



提督「ちなみに我々に課せられた命令は陽動……つまりは囮だ」



――――ピタッ


433: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/27(金) 21:15:14.00 ID:m1tDodF70

神通「陽、動……?」

川内「あれ、最近じゃ夜戦のこと陽動って言うんだっけ?」

那珂「まず間違いなく言わないんじゃないかな」

叢雲「朝から頭痛くなってきたわ……」ハァ



提督「最前線にて敵の部隊を刺激して、戦力を釣り上げて攻略本隊の進軍を援護するのが目的となる」



ザワザワザワ……



時雨「……と言うことは、戦闘よりもわざと見つかるように騒ぎ立てる方が重要みたいだね」

村雨「釣り上げってことは、意外と戦力よりも素早さを求められてるのかも」

涼風「んじゃほとんど戦闘はしないって感じかぁ」

川内「戦闘しないってことは夜戦もない……」ジャアイイヤー

夕立「ソロモンの悪夢はお預けっぽいー」ツマンナイッポイー



ナーンダァー
ソレダケカァ
ジャアドウデモイイカナー



敷波「……こんな空気が許されてるの?」

綾波「ま、まあまあ」ネ?



434: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/27(金) 21:20:26.73 ID:m1tDodF70


提督「――まあみんなが言いたいことは分かるが、内容はともかくとして命令が来た以上出ない訳にはいかない。そこで今作戦への出撃編成についてだが……」



提督「まず鳳翔――――陽動部隊旗艦として全体への指示を頼む。艦載機を活かしての対潜哨戒も行ってくれ」

鳳翔「……はい。かしこまりました」

提督「続いて、神通――――砲雷撃戦時の切り込み隊長かな。麾下の駆逐艦とともに戦闘及び対潜任務に当ってくれ」

神通「っ。……了解いたしました」キリッ

川内「神通ガンバ~」フリフリ

那珂「川内ちゃんあからさまにやる気なくなったね―」

提督「神通の麾下に入るのは、吹雪。頼んだぞ。作戦中は神通や鳳翔の指示に従って動いてくれ」

吹雪「は、はい!」

提督「そして最後に――――瑞鶴」

瑞鶴「……へっ? ここで私?」

提督「ああ。鳳翔には対潜哨戒を主任務としてもらうので、索敵と敵艦隊への先制攻撃は瑞鶴が頼りだ。よろしく頼んだぞ」

瑞鶴「う、うんっ。わかったわ!」

提督「以上が陽動部隊の編成だが、それに加えて――――今回は俺自身も出撃する」



ヘー、提督モ出ルンダー
囮ナノニネー
モノズキダネー
ネー



………………



『えぇーッ?!』ザワザワッ!!


440: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/28(土) 14:00:52.65 ID:3bnTq0Ru0

古鷹「て、提督ご自身も出撃されるんですかっ?!」

那珂「いくらなんでもムチャクチャじゃないかなっ?」

白露「そーだそーだ」

夕立「それなら夕立も一緒に行くっぽい!」



ギャーギャー!!



武蔵「まあ待て皆。そういっぺんに騒ぎ立てては話が進まんではないか。ここはこの武蔵に任せてもらおうか――――提督よ。二三質問があるがいいかな」

提督「ああ。なんだ」

武蔵「まず皆が疑問に思った提督自身の出撃。私は新参者ゆえここの勝手は把握しきれてないが、反応を見る限りよくあることではなさそうだ。囮任務になぜ提督まで出る必要がある?」

提督「簡単に言えばみんなを守るため、かな。もっとも戦場じゃ俺が護って貰う完全お荷物な立場だが」

利根「守るじゃと? どう言うことじゃ」

提督「攻略本隊にとって陽動部隊は無視できる存在じゃない。自分たちの進軍がかかってるからな。となると自分の都合に合わせて動いてもらいたいものだろう? 例えこちらが損害を受けていたとしてもだ」

筑摩「まさか陽動部隊を犠牲にしてでも進軍する可能性がある、とでも……?」

提督「ないとは言えないだろう? みんなの中にはかつてソレを身をもって経験した者がいるはずだ」


扶桑「………………」

山城「………………」

時雨「………………」

瑞鶴「………………」

武蔵「むぅ」


提督「何も被害怖さに囮を演じないとは言わない。でも勝手に他所の指揮下に置かれて無闇に被害を受けたら無駄骨、沈んだら犬死もいいところだ。その点俺が一緒ならゴリ押してでも話をつけることができると言うわけだ」


441: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/28(土) 14:05:42.37 ID:3bnTq0Ru0


武蔵「……なるほどな。まあ提督が出る理由は理解した。しかし危険なことに変わりないな。我々は艦娘だが提督は人間なんだぞ」

提督「まあそこはみんなに迷惑をかけるかも知れないが……うん」



鳳翔「ご安心ください。私たちがいる限り提督には弾一発と当たらせはしませんから」

神通「陽動任務も提督の護衛も、完遂してみせます」

吹雪「私たちにお任せください!」

瑞鶴「そうね。幸運艦の真髄を提督さんにも見せてあげよっかな―」

提督「――――だそうだ」



武蔵「ふっ。そうまで言われてはもうどうしようもないな。では二つ目の質問だが、今回の編成の意図はなんだろうか。軽装機動部隊とも取れるが、直掩艦が少なすぎるし些か艦種の纏まりにも欠けると思うが」

提督「うん。まあ最初は足の速い水雷戦隊や囮として魅力的な主力隊の投入も考えたんだが……率直に言うと、まとまった戦力を動かす資源がない」

武蔵「………………」ピクッ

川内「うわ、切実」

那珂「現実ってキビシイねー」

叢雲「情けなすぎて涙も出ないわ」

提督「正確には無くはない。これまでみんなが遠征を頑張ってくれたおかげでほぼ全盛期並みに回復したと言ってもいいだろう」

武蔵「……では、何故だ?」

提督「実はこれは箝口令が出てるんだが……先に行われた味方主力部隊を中心としたAL/MI作戦。作戦自体は大成功に終わったんだが、その帰り道に本土近くで敵の大規模な機動部隊と遭遇したんだ」

武蔵「なんだと? 敵艦隊の接近を許していたのかッ?」

提督「幸いにして主力部隊がたまたま放っていた連絡機が早期発見したおかげで撃破し事なきを得たが……一歩間違えば戦勝に湧いた所に本土空襲を許して大変なことになっていたかもしれん」

古鷹「でも何故そんな大部隊が本土近くまで、それもちょうど主力艦がいない時に――――って、まさか」

提督「どうもアチラさんに我々の暗号が解読されている節がある。でないとあんな都合よく合間を狙うなんてできっこない。それくらいタイミング的には良すぎたんだよ。もっとも上は偶然と取り付く島もなく一蹴したがな。なんせ認めたら責任問題は自分たちに来るから」


442: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/28(土) 14:11:03.49 ID:3bnTq0Ru0

武蔵「……無能めが」チッ

提督「まあ最も、お茶を濁したのかすぐに"当初の予定通り暗号改正と言う名目"で暗号が変わった。だからもう大丈夫だと思うが、今回も攻略本隊は全力で出る。当然早い段階で察知されるだろうから強襲と言う名の二度目があったって不思議じゃない」

武蔵「つまり残った我らは本土防衛のための切り札、と?」

提督「うん。今回の作戦に重巡以上と翔鶴を連れて行かないのもそのためだ。本当は瑞鶴も防衛に回したいが……一応空母二人ずつに分けるからなんとかなるだろう。みんな俺がいない間は翔鶴の指揮で動いてくれ」

翔鶴「提督不在の間は、すべての遠征任務を中止し交代で索敵・哨戒を行います。編成についてはまた後ほど発表しますね」



利根「(ほうほぅ。となると決め手となるのはやはり索敵! ここは索敵も攻撃もこなせる我ら利根型の本領発揮と言ったところかのぅ)」

川内「(出撃と違って防衛なら近い分戦う時間も長いはず。となると念願の夜戦も――――ッ!)」

白露「(敵を見つけたら真っ先に突撃するのはきっと駆逐艦! そしてこのあたしが一番乗り、いい響きよね~っ)」

夕立「(ソロモンの悪夢って意外と近くにあったっぽい? 夕立頑張ったら、あとで提督さんにたくさん褒めてもらえるっぽい?!)」



ズゴゴゴゴゴゴゴ……



敷波「……なんだろ。なんか周りから邪なオーラが漂ってくるような」

綾波「?」



提督「とにかく、これはこの鎮守府始まって以来の大規模作戦参加だ。もしかしたら防衛側の方が激戦になるかもしれない。残った皆も気を引き締めて哨戒にあたってほしい。武蔵、他に質問はあるか?」

武蔵「いや、もう大丈夫だ。提督が留守の間はこの武蔵が皆を守る盾となり敵を倒す鉾となろう」

提督「よろしく頼む。他に誰か質問はあるか? ――――ないようならこれで締めよう。以上だ」



『はーいッ!!』←思惑のある者達の元気な返事



提督「あ、作戦参加者は申し訳ないがこの後も残ってもらえるか。詳細を伝えるから」


443: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/28(土) 14:16:19.27 ID:3bnTq0Ru0


・・-・・・・-・・・・-・・


提督「――さて、関係者だけになった所で本当のコトを打ち明けるとするかね」

瑞鶴「へっ? 本当のって……さっきは違うの?」

提督「翔鶴、ドアに鍵はかかっているな?」

翔鶴「はい。大丈夫です」

提督「今回の作戦、囮を演じるのは本当だ。この通りちゃんと正規の命令書もきてる。ただみんなには裏方及び敵味方両方の囮役になってもらいたい。6人の艦娘たちのために」

瑞鶴「6人……? えっ、それってもしかして」

鳳翔「この人選を聞いた時にまさかとは思いましたが、そういう事でしたか」

提督「うん。この作戦に真の意味で参加するのは俺たちじゃない。本人たちの強い希望によって雲龍たち第三艦隊だ。つまり俺たちは第三艦隊の影武者かエスコート役と言うわけだな」

神通「雲龍さんたちが……」

翔鶴「鳳翔さんたちには通常通りの囮を演じて頂きながら、万一に備えて攻略本隊より雲龍さんたちの存在を秘匿しきって頂きます」

瑞鶴「なるほど。つまり囮の囮ってコトかぁ」


瑞鶴「(て言うか命令書来たのって昨日よね? それでこの展開ってあれから一体何があったのか)」ムムム


提督「どこから仕入れてきたのか知らないが、俺よりも早くこの作戦のことを察知しててなぁ。命令書が届いた夜に全員で直談判に来たよ」

吹雪「そ、そうだったんですか……」スゴイ

提督「本来だったらダメって言う所なんだがなぁ。これならどうだとばかりに資源を出してきた。鎮守府の備蓄資源は彼女たちナシには語れないからダメとは言えなかったんだよ」

瑞鶴「まさにワイロ……何があの子たちをここまで駆り立てるのか」

翔鶴「さ、さあ……。たぶん、かつての鬱憤かなぁ?」

提督「俺が出るのも本当の所はソレなんだ。最初は翔鶴に頼もうと思っていたんだが、本土のことも考えると戦力を減らしたくなかった。残った皆への指揮の問題もあるからな。……夏に瑞鶴に打ち明けたことがこんな所で生きてくるなんてなぁ」

瑞鶴「ふふん。伊達に執務室に入り浸ってないもんねっ!」フンスッ

翔鶴「何度も言ったけれど、あまり褒められたことではないのよ瑞鶴」


444: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/28(土) 14:20:44.50 ID:3bnTq0Ru0


提督「そしてもう一つオマケの情報だ。先に本土に接近しかけた敵機動部隊だが、報告上は攻略隊の戦果となってるが事実は違う。すでに満身創痍だった状態に介錯しただけだ」

瑞鶴「あ、なんかもうオチが読めたかも。ソレも実際は雲龍たちがってことでしょ」

提督「その通り。いつもの襲撃帰りに発見したらしくてな。まあ装備の差でもって一方的に叩いていたんだが、間が悪いというかそんな時に攻略隊が帰って来たものだから強制的に切り上げて撤退したらしい」

鳳翔「戦闘中でも己の枷を忘れず冷静に行動できる。あの子たちはもう立派に一人前ですね」

提督「立派になりすぎて大規模戦闘に参加したがるようにもなってしまったがね」

吹雪「わ、私も冬月ちゃんたちと話しますけど、なんだか最近白雪ちゃんに似てきたと言うか……弾幕がどうとか速射性がどうとか」

提督「頼もしいがこの先も隠し通せるか心配でしょうがない……」ハァ

翔鶴「あはは……」

提督「と、そう言えば翔鶴。第三艦隊の現在の状態はどうなってるかな」

翔鶴「はい。雲龍さんたち第三艦隊は現在整備、補給を終えて待機中です。出撃が深夜なのでお休み中かと」

提督「わかった。それじゃあ鳳翔たちも時間まで準備と休憩に入って構わない。ここへの集合は二二○○。出撃はその三十分後に秘密ドックからだ。よろしく頼むぞ」



『はいっ!』



渾作戦陽動部隊参加艦

・提督(非戦闘艦座乗)
・陽動表本隊:鳳翔(旗艦)、瑞鶴、神通、吹雪
・陽動裏本隊:雲龍、天城、葛城、冬月、夏月、花月



450: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/30(月) 21:55:14.50 ID:b4WmUhPI0


―――― 二二三○ 母港秘密ドック ――――


妖精1「出撃準備急ぐです」

妖精2「出撃準備よ~そろ~」

妖精3「もやいを解くです」

妖精4「連絡電話線切り離しちゃいます」


パタパタフワフワ……


鳳翔「総員整列」



ザッ



鳳翔「提督、全員揃いました。いつでも出撃可能です」

提督「ありがとう鳳翔。しかしまあ、このメンバーで揃うのもなんだが不思議な感じがするな」

鳳翔「そうですね。特に出撃前ですから尚更でしょうか」クスッ

提督「まさかウチでこんな事をやるなんて思いもしなかったよ。やっと"らしく"なったのかもな」

鳳翔「うふふっ。かもしれませんね」ニコニコ

提督「それと……雲龍、その日の丸ハチマキはなんだ? 第三艦隊はみんなお揃いみたいだが」

雲龍「こレ? せっかくだから作ってみたノ。戦って感じするでショ?」

天城「すみませン提督……。雲龍姉様がどうしてもト言うものですから」←でも嬉しそう

提督「ダメとは言わないさ。気合入れるのはいいが、本来の目的が陽動ってことは忘れないでくれよ」

雲龍「見敵必殺。派手に暴れて敵艦隊をおびき寄せればいいのよネ?」

提督「oh... お願いだから悪目立ちだけは止めてくれよ」

雲龍「善処するワ」

天城「わ、私たちモ注意しますので……」

瑞鶴「もういっそ露払いのごとくやっちゃえばいいんじゃないかなー」

提督「はぁ~。まぁいいか……。この方が普段のうちっぽいよ。それじゃあここで長く喋ってるのもアレだからそろそろ行くか。翔鶴、あとのことは頼んだよ」

翔鶴「はい。秘書艦翔鶴、鎮守府での指揮を引き継ぎます。提督も皆様もお気をつけて……ご武運を!」ビシッ

瑞鶴「うんっ。翔鶴姉ぇもね!」ビシッ

雲龍「夜明けまでは私たちが提督のフネを護衛するワ。大型空母に乗ったつもりでいてちょうだイ」

天城「提督のフネにハ指一本触れさせません!」

提督「よし、では陽動部隊出撃だ」



妖精1『出港です』

妖精2『両舷微速前進。出だしは寝台特急の如くゆっくりとです』



ザザザザザ……



翔鶴「皆さん、どうかお気をつけて……」


451: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/30(月) 22:00:41.30 ID:b4WmUhPI0


………………

…………

……



瑞鶴「なんだろうなぁ。もう今度から出撃はこのフネで行けばいいんじゃないかなー」ダルーン

神通「ず、瑞鶴さん……っ」オロオロ

鳳翔「まあ、瑞鶴さんが言わんとしていることはわかりますが……」

吹雪「出撃してすぐなのにもの凄い力の抜け方ですね」

瑞鶴「どうせ敵さんなんてすぐに出てこないでしょ? 交代はまだだから今のうちに休んでおかないと。ね、提督さん」

提督「本来の用途は艦艇間とかの短距離移動用、つまり外海を航行するのには速力・航続力共に極めて不向きな"ハズ"のフネなんだけどなー」コレ

瑞鶴「やっぱり妖精さん?」

提督「何をどうやったか検討もつかないが、サイズにして倍以上になったな。短艇どころかもはや立派なフネだし。他にも各種外洋航行能力が飛躍的に増したらしい。残念ながら武装はないが、電探はあるから索敵もある程度はできる」

瑞鶴「それってもう別物って言うんじゃあないかな。元は内火艇なんでしょ?」

提督「だよなぁ。まあ操船も妖精さんがやってくれるからこちらはこうしていられる訳だがね」

瑞鶴「オマケに狭いながらも台所にお風呂に仮眠室付き。うんっ、至れり尽くせりよね。このソファーも執務室のみたいにフカフカだしー」ゴロン

提督「……そう言いながら俺の足に頭を乗っけるのは何故かね」

瑞鶴「いいじゃーん。提督さん頭撫でてー」ゴロニャーン

提督「しょうがないなぁ」ナデナデ

鳳翔「あらあら、まあまあ」ニコニコ


神通・吹雪「(いいなぁ……)」


神通「で、でも提督……。私たちは外で警戒していなくても、いいんでしょうか?」

提督「今は雲龍たちが夜間哨戒中だから大丈夫だ。その代わり交代の時間になったらよろしく頼む」

神通「は、はい……!」

吹雪「それにしても、艦娘である私たちがフネを使うってなんだかおかしな感じがしますね」

瑞鶴「いいのいいの。着艦した艦載機の気持ちになってのんびr――――



ドドーンッ!!



『?!』


452: ◆kVQhfnJMM6 2015/03/30(月) 22:05:13.80 ID:b4WmUhPI0

ドドドーンッ!!


瑞鶴「な、なにっ?」ガバッ

提督「敵襲か?」

神通「甲板へ出ます。吹雪、続きなさいッ」ダッ

吹雪「は、はい!」タタタ……

提督「さすが深海棲艦。少しでも外海に出たらそこはすでに奴らの庭ってか。夜とは言え幸先良くとは行かなかったな」

鳳翔「どうやら爆撃や砲撃ではないようですね。それに誰かに直撃したわけでもないようです。音も連続して聞こえてきませんし、雷撃……? 潜水艦でしょうか」

提督「時間的にそうかも知れない。外の雲龍に連絡をとってみるか。――こちら提督。雲龍、今の音は何だ? 敵の攻撃か?」


雲龍『ザザッ――こちら雲龍。音探に感あリ。敵対行動を取ったため今冬月たちが対潜制圧を行ったところヨ』


提督「敵潜……。それで、仕留めたのか?」


雲龍『ザザッ――夜だから視認したわけじゃないけれド……音探に反応はなくなったわネ。それに魚雷を放った形跡もないワ』


提督「了解した。冬月たちにはありがとうと伝えておいてくれ。夜は潜水艦の時間だ。引き続き哨戒を厳に頼む」


雲龍『ザザッ――了解!』


提督「ふぅ。いつもみんなはこんな思いをしてるのかと考えると、本当に頭が上がらないなぁ」

瑞鶴「特に私たち空母は夜は艦載機飛ばせないからねえ。丸腰もいいところよ」

鳳翔「頑張れば飛行甲板を照らすなどして飛ばせないことはありませんが、得られる戦果の割に危険度が高すぎますからね」

提督「煌々と飛行甲板の明かりを照らすなんて、海上じゃ私はココにいますって敵に教えるようなものか」

瑞鶴「そうね。……って、そう考えると雲龍たちはどうして平然としてるの? 出撃しすぎて慣れたとか?」

鳳翔「雲龍さんたちが運用している艦載機には夜間戦闘能力が付与されているんですよ」

瑞鶴「あぁー。そう言えば前に夜襲が基本って聞いたことあったかも。なんか信じられないなあ」

鳳翔「艦載機の世代の違いを痛感してしまいますね」



瑞鶴「(でも鳳翔さん所の子たちならちょっと練習すればすぐにでも実用化しそうでコワイ)」


458: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/01(水) 20:50:17.62 ID:nR63C4N80

提督「――――○五○○、夜明けか。そろそろ雲龍たちの交代の時間だな」チラリ

鳳翔「そうですね。あれ以降戦闘がなかったのは幸運でした」

提督「全くだ。だいぶ気の持ちようも変わってくる。何より空が明るくなるってだけでこんなに安心できるなんてな」フゥ

鳳翔「闇夜の一撃ほど怖いものはありませんから」

提督「いつだったか武蔵が言ってたっけ。夜はまるで自分が底見えぬ大穴の上に立ってるみたいだって」

鳳翔「特に月の出ていない日は、常に誰かに見られているんじゃないかと思う時もありますね。それくらいフネにとっても艦娘にとっても、夜は危険な時間です」

提督「みんないざ戦となればこう言う事を幾度と無く経験してるんだと思うと……ああ、一部を除いてか」

鳳翔「ま、まあ川内さんはトクベツですからね……。でも、だからこそ太陽が登った時の安堵と感謝があるんですよ」ニコニコ

提督「お日様サマサマってかね。さ、じゃあ雲龍たちも疲れてるだろうから交代させようか」

鳳翔「では、瑞鶴さんたちを起こしてきますね」スッ

提督「ああわかった。しかし鳳翔はほとんど寝てなかったようだが大丈夫か?」

鳳翔「昨日のうちにお休みを頂きましたから問題ありません。それでしたら提督の方こそ徹夜になってしまっていますが……」

提督「さすがにあとで少し眠るさ。こういう時は責任者が一番休めないからな」

鳳翔「ご無理なさらないでくださいね。戦闘は私たちが行いますが、作戦指揮などは提督が行なうのですから」

提督「だな。ありがとう鳳翔」


459: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/01(水) 20:55:18.32 ID:nR63C4N80


瑞鶴「さってとーっ。それじゃ行ってきますかね!」

雲龍「瑞鶴姉。あとはよろしくネ」

瑞鶴「任せといて。敵が来てもサラッとやっとくから」

雲龍「できれば私たちの分も残しておいてくれると嬉しいんだけド……」

瑞鶴「今のアンタたちの任務は休むことなんだから、次に備えて寝ときなさいよー。大丈夫だって! 獲物なんてこれからたくさん出てくるんだから」

雲龍「……そうネ」クスッ

提督「む、そう言えば雲龍たちが戻るとなると護衛役は神通と吹雪だけになってしまうな。二人だと陣形組めないから単縦陣にすべきか……」

雲龍「そういう事なら交代で冬月たちを残しましょうカ?」

提督「んーいや、現状は大丈夫だろうからゆっくり休んでくれ。哨戒を密にすれば奇襲は防げるしな。ただ万一の時は悪いが起きてもらうぞ」

雲龍「わかったワ。じゃあ、私たちは休むわネ」

瑞鶴「となると、彩雲は多めに持っておいた方がいいかなー」

鳳翔「当初の予定通り私は周囲の対潜哨戒を行いますので、索敵は瑞鶴さんの彩雲が頼みです。よろしくお願いいたします」

瑞鶴「了解! ……うーん、そう考えるとココで艦載機入れ替えとか出来るのって結構大きいかも?」

鳳翔「そうですね。本来でしたら一度出撃したら変更はおろか補充もできませんから」

瑞鶴「やっぱり今度からコレで出撃したいなー?」チラッ

提督「楽しようとしない。さ、みんな頼んだぞ」

瑞鶴「はぁーい」



………………

…………

……


460: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/01(水) 21:00:40.41 ID:nR63C4N80

―それからしばらく時間は流れ……―

瑞鶴「あっつぅ……日差し強いなぁ」グイッ

鳳翔「鎮守府からはるか南方となると、赤道も近いので気候は常夏ですからね」

瑞鶴「日焼け止め塗ってないとあっと言う間に日焼けしそう。やる気なくなるなあ」


提督『ザザッ――そう言うと思って、ちゃんと冷たい飲み物を用意してあるから休憩の時にでも飲んでくれ』


瑞鶴「やたっ。提督さん気が利く―♪」


提督『ザザッ――もう敵の勢力圏だからな。気を抜いてもらっては困るが張り過ぎてもいざって時に良くない。適度な緊張感で行こうじゃないか』


瑞鶴「ほーんと、普通じゃ考えられない空気よねえ。きっと本隊って今頃ピリピリしてるんじゃない?」

鳳翔「まあ、それも軍としてあるべき姿なのかもしれませんけれどね」

瑞鶴「カタッ苦しいのは嫌だなー。そう言えば、もう本隊って近くまで来てるのかな」


提督『ザザッ――最後の通信では俺たちより南西ニ○○キロ後方を進軍しているらしい。その内偵察機とかも飛んでくるかもな』


鳳翔「もしも雲龍さんたちが外に出ていたら急いで入れ替わらないといけませんね」

瑞鶴「エスコート役も大変だー」


提督『ザザッ――さっきも言ったが気だけは抜かないでくれよ。特に雲龍たちが出てきた時は、だ』


瑞鶴「んー、うちで一番気合入ってるのって言ったらやっぱり神通かなあ。海の上とフネの中じゃあエライ違うし」

神通「ず、瑞鶴さんが普段と変わりなさ過ぎるんですっ」

瑞鶴「んんー、こればっかりはもう性分としか言いようが」ウムッ

神通「もうっ……。索敵はお願いしますよ」

瑞鶴「そこは大丈夫。こう見えて気は抜いてないから!」

461: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/01(水) 21:05:05.40 ID:nR63C4N80
昨日からインフルエンザにかかったって言ったらエイプリルフール扱いされそうな今日この頃
39度台うろうろしてるので今日はここまで……
よろしければまたお付き合いください





--・-・ ・・ ・-・-・ ・--・ ・・-


神通「こんな私でも、提督のお側にいられて……本当に嬉しいです」



奥様の名前は神通。そして、だんな様の名前は提督。



提督「まだまだ平和には遠いかもしれないけど、それでも神通となら絶対上手くやっていけると俺は思ってる。これからもよろしくな」



ごく普通(?)の二人は、ごく普通(?)の恋をして、ごく普通(?)のケッコン(結婚)をしました。



神通「は、はい……! あの、不束者ではありますが……末永く、よろしくお願いいたします」



でも、ただ一つ違っていたのは……



………………

…………

……



神通「――そこ、突っ込みが甘い! もっと身体を捻って。でないと急旋回の寸前に速度が落ちた所を集中砲火浴びますよ!」


駆逐艦's『は、はい!』


神通「実戦においては射程距離を素早く掴めるようになさい。目や兵器の性能に頼らず感覚も鍛えるのです。その一瞬の判断が戦況を左右します」

神通「ではもう一度最初から――――かかりなさい!」



……奥さまは二水戦だったのです



<<奥さまは二水戦、6月31日から始まるよー>>

467: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/04(土) 10:15:26.81 ID:b+izS+E90

提督『ザザッ――これから雲龍たちも出るぞ。数が増えるから陣形を一旦変えるんで各自そのつもりで』


瑞鶴「お、いよいよかぁ。そう言えば雲龍たちと一緒に戦うのはフネだった頃も含めて初めてだっけ。なんか感慨深いかも」

鳳翔「普段のあの子たちの様子がわかるいい機会ですね」

瑞鶴「鳳翔さんとしてはみんなの力量も見ちゃう感じ?」

鳳翔「そんな偉そうなことは言えませんよ。これまでの戦果と貢献が十二分な証明かと」

瑞鶴「第一航空戦隊って?」

鳳翔「ふふっ。かもしれませんね」ニコニコ

瑞鶴「……だって。良かったわね雲龍たち。初代一航戦からのお墨付きよ!」


雲龍『ザザッ――鳳翔に言われると悪い気はしないわネ。これからももっと頑張るワ』

天城『ザザッ――天城たちでモ皆さんのオ役ニ立てる。それだけで、天城ハ幸せです』

葛城『ザザッ――ボクも二人に負けないようにしないトなあ』


瑞鶴「頑張んなさいよ。あと、もちろん冬月たちもねっ。秋月型対空駆逐艦としての名に恥じないように」


冬月『ザザッ――はイッ! もちろんでス。いつか秋月姉さまにお会いしたいですネ!』

夏月『ザザッ――ン。……頑張ル』

花月『ザザッ――瑞鶴さンは、秋月姉さまと一緒に戦ったことがあるンですよね?』



瑞鶴「もちろん。あの子は私や翔鶴姉ぇの側でその名に恥じぬ活躍をしてくれたわ――――初めて会った時も、別れの時もね」



468: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/04(土) 10:20:17.16 ID:b+izS+E90


妖精1『――んっ? 電探に反応。航空機接近です』



瑞鶴「っ」ピクッ

鳳翔「あらあら。いらっしゃいましたか」

雲龍「私たちが出た途端? 早いわネ」

天城「対空戦、準備します!」

神通「……吹雪。準備を」

吹雪「はい!」



妖精2『あ、あー……。ゴメンナサイです。味方識別に応答したので、味方偵察機みたいです』



雲龍「あらラ」

瑞鶴「んもぅ、ビックリしたなあ」

神通「………………」



妖精1『ゴメンチャイです。でも、こちらに接近してきているです』

提督『ザザッ――本隊の偵察機だろう。俺たち次第とはいえ偵察はしっかりやってるようだな。雲龍たちの姿を見られるとマズイから一旦こっちに戻ってきてもらえるか』



雲龍「了解。戻るワ。 ……出たばっかりだけどネ」ボソッ

瑞鶴「味方の偵察機が来るたびにこうするのって面倒くさいね」

天城「こればかりハ仕方がありませんからね。では、ちょっト失礼いたします」



提督『ザザッ――しばらく戦闘から遠のいてたからな。今のでいい感じに気が引き締まったんじゃないか』



瑞鶴「こんな引き締まり方ヤダー」

雲龍「むしろ出鼻をくじかれた気がしてしょうがないワ」



提督『ザザッ――こんな事もあるさ。瑞鶴、こちらも偵察機は随時出しておこう。雲龍たちもまた出た時には頼むぞ』



瑞鶴「はーい」

雲龍「了解。ま、今は戻るわネ」


469: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/04(土) 10:25:24.80 ID:b+izS+E90

………………


瑞鶴「そう言えばさっきの事で思ったんだけど、普段アンタたちが外に出てる時って味方と遭遇しかけたらどうしてるの?」

雲龍「逃げてるわヨ。そのための念入りな偵察だし、性能の良い電探だし、景雲改だかラ」

瑞鶴「さっきみたいな味方識別が来た時とかの対応は?」

雲龍「もちろん無視してるかナ。仮に迎撃機を上げられても姿を見られないうちに逃げればいいわけだし、レシプロじゃあの子には追いつけないかラ」

瑞鶴「うわー。味方からすれば深海棲艦の正体不明の高速機って思われてそう」

雲龍「かもネ。……っと、そろそろ偵察機が還ってくるワ。交代を出すから一旦風上に向かうわネ」

瑞鶴「はーい」



………………



天城「そろそロ時間ですね。後続ノ偵察機、発艦させます」

瑞鶴「うん。了解」



………………



葛城「すみマせん。偵察機を発艦さセます!」

瑞鶴「あ、うん……わかった」



ゴオォォォォォォォォォ……



瑞鶴「相変わらず雷みたいな音だけど、なんて言うか……さ。念入りなのはわかるけどずいぶん頻繁に偵察機出してるよね」

雲龍「噴式機の欠点ってネ。速いのはいいけれど、レシプロと比べて艦載機としては足が極端に短いかラ」ショウガナイノ

瑞鶴「彩雲なんてまだ還ってこないのに、こんなに違うとはなぁ。……あ、だから私が長距離担当なのか」ナットク

雲龍「これでも他のよりは長いのヨ? 同じだったら索敵すら満足にできないもノ」

瑞鶴「これでまだ長い方って……うーん。噴式機って憧れたけど結構扱いが大変なのね。ちょっと予想外だったかも」

雲龍「夢を壊してゴメンネ」

瑞鶴「でも速いのは羨ましいわね。みんな400kt超えるんでしょ? 私の烈風改でも辛うじて350kt超えるかどうかなのに」

雲龍「噴式震電は頑張れば480ktくらいかしラ。橘花改や景雲改でも450~60ktは出てるはずヨ」

瑞鶴「」ウソン

雲龍「うふフ。速さもそうだけど、私たちの全力を見せる時に期待してテ」



雲龍「たぶン――――――まもなく引っ掛かるかラ」ボソッ



雲龍「」サッ

天城「」コクッ

冬月「」ビシッ

瑞鶴「?」


473: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:10:43.60 ID:WEdpZGWD0
※戦闘描写がちょっとアレなのは仕様です※


神通「ッ?! 敵艦隊発見セリ 大型艦ニ、小型艦四! 方位三-五-○、距離約ニ○○○○」

吹雪「っ」ギュッ

瑞鶴「近ッ?! いつの間に接近されたの。偵察機は何やってたのよ」

雲龍「違うワ。湧いた……いえ、浮上してきたノ。海の底からネ」

瑞鶴「海の底? どうしてそんなの分かる――――あ」マサカ

雲龍「……そう言うこト。艦娘に"戻った"とは言え、昔の名残なのか感覚とか直感でなんとなく来るってわかっちゃうノ。絶対じゃないしあんまり遠いとわからないけれどネ」トオイメ

瑞鶴「………………」

神通「敵艦進路変更。単縦陣で急速接近中! 大型艦は詳細不明なれど重巡一、軽巡一の模様。牽制射撃開始します」ドンドンッ



敵艦隊『』パパパッ



吹雪「発砲炎! 敵艦発砲を確認、司令官は回避を! 私も牽制続きます。いっけぇー!」ドンッ

鳳翔「相手も撃ってきましたね。今はお互い牽制ですが体勢を整えられる前に対処してしまいましょう。……こちら鳳翔です。神通さんが敵艦隊を発見しました。瑞鶴さんたちに航空攻撃をお願いしてもよろしいでしょうか」


提督『ザザッ――ああ構わん。隠密行動は終わりだ。他も呼び寄せるくらい盛大にやってくれ! こちらも回避行動を取りながら本隊に向けて暗号を飛ばす』


瑞鶴「暗号? そんなの飛ばしてこちらが囮ってバレないの?」


提督『ザザッ――バレない。なんせ一言"お腹が鳴ったらかーえろ"って送るだけだ。ソレだけで向こうは分かる』


瑞鶴「な、なにそれ……。まいいや。それじゃあ攻撃隊発艦させるわね」

雲龍「冬月、周りに他の反応はあル?」


冬月『ザザッ――こちら冬月。今のところ周囲に敵潜水艦及び艦船の反応はありませン! 遠方に第二波とみられる反応が出ましたが圏外なので今は無視できまス。発艦いつでもどうゾ』


474: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:15:44.20 ID:WEdpZGWD0


雲龍「了解。私たちも発艦行くワ。天城、葛城。風上に転舵。兵装は甲、橘花改のみ出すわヨ」

天城「わかりました!」シャンッ

葛城「ウん。了解!」シャンシャンッ

雲龍「よし、発艦開始!」ジャランッ



ゴオォォォォォォォォォ……



神通「!」ドンドンッ

吹雪「これが、噴式機……ッ」ドンッ  ザバーッ


瑞鶴「……ホント数が揃うと耳が痛いって言うか凄い音。私も負けてられないわね。彩雲、攻撃隊の指揮管制よろしくね。彗星、流星改、必中を期してちょうだい。発艦開始っ!」


彩雲妖精『』グイッ

彗星妖精『』ニコッ

流星改妖精『』ビシッ


瑞鶴「よし、続いて第二次攻撃も用意しないと。……そう言えば雲龍たちは橘花改ってやつだけ出したみたいだけど、爆装と雷装どっちなんだろ。兵装偏ってもアレだし……」

雲龍「そのどちらでもないワ」

瑞鶴「え、違うの?」

雲龍「でも強いて言えば爆装、なのかしラ?」

天城「天城たちニ普通ノ爆弾ヤ魚雷なんテ必要ありません。ましテ対艦戦闘デ"無誘導"でハ足手まといにしかならないので……」

瑞鶴「無誘導って……」ン?

葛城「まあ、見ていてくダさい。初めてだと凄いものが見られまスから♪」

475: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:20:22.95 ID:WEdpZGWD0

重巡リ級『………………』ドンッ   ザバーッ!   ドドンッ


爆弾?『』ヒュウゥゥ……


重巡リ級『ッ』ヒラリ


爆弾?『』クイッ


重巡リ級『ッ?!』



カ―――――ッ!!



偵察妖精1『誘導弾、全弾命中したです。駆逐艦級は全滅、軽巡は大破漂流、重巡は中破の模様です』

偵察妖精2『その後の瑞鶴さんの攻撃で艦隊殲滅完了です』



瑞鶴「」ボーゼン


雲龍「戦闘終了。仕留めきれなかっタ……残念」

瑞鶴「いやいや、ソレよりも何よりも! ナニよアレ?! 誘導って」

雲龍「えエ。誘導弾ネ」

瑞鶴「そんなの聞いてないんだけど!」

雲龍「言ってないからネ」シレッ

瑞鶴「なんなのよぉ。あんなのって反則じゃん」

雲龍「そんなこと言われてモ……。これが私たちが夜間攻撃できる答えかしらネ。変な所狙わない限りは自分から向かってくれるかラ」

天城「ヨ号熱磁気探知誘導弾っテ言うらしいですね。元ハ陸軍のイ号弾ト言ウ名前だったとか」

瑞鶴「まあ、中身はともかく倒せたから良かったけどさあ。なんか、こう……うん。やっぱり反則」

雲龍「そうかなァ」


476: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:25:38.99 ID:WEdpZGWD0

神通「……更ニ敵艦見ユ。冬月さんの言っていた敵第二波が接近中です」ジリッ……

吹雪「今度は戦艦らしき艦影も見えまs――うわ?! もう撃ってきた」ザバーッ!

神通「さすが前線ですね。本隊でないのにこの戦力とは」

吹雪「陽動が成功しているってことでしょうか」

神通「かもしれませんね。戦艦以外の砲撃は届かないので、航空攻撃が完了するまでは回避に専念します」

吹雪「はい!」



瑞鶴「……戦艦か」

鳳翔「徐々に集まってきていますね」

瑞鶴「さすがの私もアレ食らったらひとたまりもないなぁ」

鳳翔「そうですね。これ以上近づかれる前に撃破してしまいましょう。雲龍さんたちは戦艦の無力化を優先的にお願いいたします」

雲龍「えェ。みんな、第二波出すわヨ」


冬月『ザザッ――冬月より緊急連絡! 敵増援"浮上中"。左舷前方!』


瑞鶴「くっ。増援ですって……?」

鳳翔「あらあら。困りましたね」

雲龍「合流されたら面倒だワ」

瑞鶴「(どうする……。せめて浮かんでくる前に目の前の敵をやれるだけやっておくか……)」

雲龍「――――うン。それじゃ鳳翔。私たちは一旦別行動するわネ。あ、航空攻撃は出すから安心しテ」

瑞鶴「え? べ、別って」チョット

雲龍「新手相手に冬月たちと砲撃戦してくるワ。こう言う時は私が測距観測しなきゃいけないかラ」

瑞鶴「はぁ?! 砲撃戦ってアンタ空母でしょうが!」

天城「ゴ安心ください。周囲ニ他ノ反応はありませんので、こレ以上奇襲ノ心配はないです」

瑞鶴「いやちょっと待ってよ! だからなんで空母が……ほ、鳳翔さーん!」

鳳翔「くれぐれも無理だけはしないでくださいね」

雲龍「任せといテ。鳳翔たちには第三艦隊の本領を見せてあげるワ」

瑞鶴「」エー……


提督『ザザッ――行かせてやってくれ。これもお願いごとのうちの一つなんだ。なにかあった時は独自行動だって』


瑞鶴「行かせてやれってそんな……はぁ。もうなんなのよぉ! とにかく、私も攻撃機出すからね!」グイッ


雲龍「それじゃあまた後デ。皆、行くわヨ」


鳳翔「神通さん、私たちは瑞鶴さんの攻撃隊発艦後に回避行動を取ります。断続的に援護しますが対処はお任せしますね」

神通「分かりました。吹雪、いきますよ」

吹雪「はい!」

瑞鶴「さぁて、まずはやっかいな戦艦からやっちゃいましょうか!」グイッ


477: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:31:08.67 ID:WEdpZGWD0


冬月「――浮かび上がりましタ!」ガシャッ

雲龍「軽巡一に駆逐が五ってところかしラ。慌てて飛び出してきたのカ……これならあなた達だけで対処できそうネ」

天城「雲龍姉様。それでハ天城たちハ瑞鶴さんたちノ援護ニ回ります」

雲龍「了解。戦艦は瑞鶴姉がやるだろうから露払いをしてあげてネ」

葛城「うん。わカった」ザザザッ

雲龍「冬月たち、転舵後一○○○○を割ったら射撃開始。最初の四射で夾叉とって先頭から各個撃破するわヨ。即応弾と予備砲身の用意はいイ?」

夏月「……無問題」

花月「砲身を都度交換する方針に放心した……ンー、やっぱり砲身系はイマイチマンネリ気味ねぇ」

雲龍「着弾修正は撃ちながらやるワ。各主砲二度ずつ下げておいてネ。行くわヨ。距離一○五○○……一○三○○……」ジー



敵艦隊『』パパパッ



夏月「……撃ってキタ」

花月「ちゃンと狙ってくれないと張り合いがないわぁ」

冬月「照準各各、毎秒交互射撃準備よシ! 即応弾六○発装填完了!」ギュッ


雲龍「了解。少し脚が速いわネ……修正左五度……一○ニ○○……上下角各二度デ……一○一○○……よーイ、撃ッ!」サッ



ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ



雲龍「……遠遠遠、夾叉。各砲四番砲の照準に修正。連続射撃、開始。撃ッ」



ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ……



雲龍「目標沈黙を確認。標的を二番艦に変更。照準修正右……七度。撃ッ」



ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ



………………

…………

……


478: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/05(日) 19:35:13.91 ID:WEdpZGWD0

瑞鶴「――攻撃隊より入電! 敵戦艦無力化に成功。残敵掃討に移る」

鳳翔「戦艦がこんなに早く出てきたことに少し驚かされましたが、なんとかなりましたね」

神通「いくら私たちでも、戦艦相手では少し荷が重いです」フゥ

吹雪「瑞鶴さんたちがいて本当に助かりました」

瑞鶴「空母は砲撃なんて想定してないからね。さっさとやっつけるに限るのよっ。ねー」イイコイイコ


彗星妖精『♪』キラキラ

流星改妖精『☆』ニコニコ


瑞鶴「――って、そう言えば雲龍たち大丈夫かな。空母なのに砲撃戦に参加するとか言ってたけど……」



雲龍「呼んだかしラ」

冬月「ただ今戻りましタ!」ビシッ



瑞鶴「アンタたち、もう戻って?! 被害は受けてないの?」

雲龍「せいぜい至近弾って所ヨ。なんの問題もないワ」

鳳翔「敵増援は無事に撃退できましたか?」

冬月「はイ! 殲滅完了でス!」

雲龍「大した戦力じゃなかったからこの子たちだけで十分だったワ」

瑞鶴「え」セン、メツ?

神通「この短時間で、あなた達三人だけで……?」

夏月「……問題ナイ」グッ

花月「この新式砲があれば、ただの対空駆逐艦だなンて言わせませンからー」ホラ

吹雪「なんか同じ10センチ連装砲なのにずいぶん小さな砲だね。だけど砲身が凄い長い」

冬月「八○口径でス! しかも毎分三○発も撃てるので中型艦までなら面制圧力はスグレモノでなんでス」フンスッ

吹雪「三○発も?! いいなぁ」ジー

夏月「……たダシ砲身は要交換」

花月「あンまり撃ち過ぎると爆発するかもー?」

吹雪「えぇー、それはちょっと」

瑞鶴「ま、まあ無事だったならいいけどさ。それにしてもアンタ、いつもこんな事やってるの?」

雲龍「えェ。基本見てるだけだから自分にも砲があったらいいなって思うけど、その代わり大型艦相手ならコレを飛ばすかラ」つ『橘花改』サッ

瑞鶴「……私の常識が通用しない」ハァ

雲龍「そんなことを言ったら、私たちの存在そのものが常識の外よネ」ウンウン


486: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/08(水) 22:10:18.87 ID:u+XiGXHB0

提督「みんなまずはお疲れさま。ひとまず周囲に敵影はないから一休みしてくれ。あと、念のため妖精さんによる艤装の軽い整備は受けておいてくれよ」

鳳翔「戦場でもホッと一息つける場所があるだけでもだいぶ気の持ちようが違います」

瑞鶴「まったくよ。なのに提督さんは普段は使わせてくれないって言うしー」ブーブー

提督「これありきで動いてたらいざって時困るだろうに。たまに使えるからこそありがたみもあるってものさ」

瑞鶴「そんなものかなあ」

雲龍「ところで提督。陽動ってこの後も続けるノ?」

提督「ん。現状は盛んに電波を発しながら敵をおびき寄せつつ北東へ向けて進んでる。本隊は主目的である南東方面を進軍中でまだ突入を開始してないから、それまでは続けた方がいいだろう」

雲龍「きっと獲物も多いんでしょうねェ。こっそり本隊を追いかけて漁夫の利を狙うのハ……」ダメ?

提督「そんなことできるわけないだろう」ダーメ

雲龍「ちェー」

瑞鶴「砲撃戦まで参加しといてアンタまだ足りないって言うの?」

雲龍「こんなの序の口にもならないワ。ねェ?」チラッ

天城「まダ空母とハ対峙していませんからね。戦艦だけでハ一方的すぎテ物足りないです」

葛城「泊地襲撃じゃないから夜襲もなイしねー」

瑞鶴「……次元が違うわ」

鳳翔「まだ陽動任務は続きますから、会敵する機会もあると思います。それで納得していただくしかないかと」

瑞鶴「ねー」ウン



冬月「っ……」フラリ



雲龍「冬月、どうかしたノ?」

冬月「いいエ。ちょっと目眩ガ……」フラフラ

瑞鶴「ほらー。徹夜とかしてるからやっぱり疲れてるのよ。ちゃんと休んでおかないと!」

吹雪「大丈夫? 冬月ちゃん」

冬月「すみませン……。大事な時ニ」

瑞鶴「アンタたちが元気いいのは良くわかったけど、自分の都合だけじゃなくてちゃんと全員の体調くらい考慮に入れなさいよ。アンタたちは六人で艦隊なんだから」ネ

雲龍「……そう、ネ。気をつけるワ。夏月と花月は大丈夫? 無理してなイ?」

夏月「……平気ダ」

花月「大丈夫ー」

雲龍「冬月、あなたは少し休んでなさイ。良くなるまでは外に出ちゃダメヨ」

冬月「はイ……すみませン」シュン


487: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/08(水) 22:15:19.87 ID:u+XiGXHB0

……

…………

………………



妖精1「――本隊より入電です」

妖精2「ワレ突入ヲ開始ス、繰り返すです。ワレ突入ヲ開始ス。陽動作戦成功です」


提督「本隊がついに行ったか……ちょっと早い気もするが、あちらさんも前進しててお互いに近づいてたのかもな」

瑞鶴「作戦成功ってことは、もう私たちは用ナシって?」

提督「まあ正直帰ってしまっても怒られはしないな。任務は果たしてるわけだし。だが……まだ満足してないんだろう?」

瑞鶴「んー、正直ね。連戦とはいえ一回だけだし。久しぶりだからか動き足りない気分」

雲龍「言わずもがなネ。でも今は冬月の体調も心配だから自重しておくワ」

提督「そうか……。よし、じゃあ帰る前に退路の確保くらいはやっておこうか。ここはまだ敵陣の真っ只中、帰りますと言ってそう簡単には帰してくれないだろうしな。海に出ずに甲板使っていいから、全員で当たらず何名か交代で行こう」

瑞鶴「うん。それならいいかな」

雲龍「私も異議ないワ。ところで冬月はどうしてるノ? ちゃんと寝てるかしラ」

鳳翔「はい。冬月さんは仮眠室でお休み中です。吹雪ちゃんが付き添いで控えてます」

雲龍「……そウ。なら安心ネ」

瑞鶴「さ、それじゃあ消化試合とは言え策敵しつつ見敵必殺と行きましょう!」



ゾロゾロ……



提督「……ふぅ。やっと一息つけるかな」

鳳翔「お疲れさまです。提督」ニコニコ

提督「ああ。鳳翔もお疲れさま。何事も無く終わって良かったよ。むしろちょっと拍子抜けなくらいだが……囲まれて被害を受けることまでは頭に入れてたからなぁ」

鳳翔「ふふっ。まだ終わったわけではありませんよ。鎮守府へ帰るまでが出撃ですから」

提督「だな。本当に気を抜くのは帰ってからにしよう。勢力圏を抜けるまでもうひと踏ん張りと行くか」

鳳翔「はい。頑張りましょう」

提督「……でも、お茶を飲むくらいは許されるよな? 朝から何も飲んでないんだ」

鳳翔「あらあら。ではすぐに用意いたしますね」






夏月「……ン」ピクッ

花月「どうしたンですかー?」

夏月「……イや、なんでモ」

花月「???」

夏月「………………」ズキッ……


498: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/10(金) 20:45:38.98 ID:B8P1HRUB0


天城「――偵察機よリ定時連絡。天城偵察隊、今のとこロ会敵ありません」

葛城「こっちもないカなー。どウする? 範囲広げテみる?」

雲龍「いいエ。このままでいきましょウ。前方を集中的に策敵して、確実に退路を確保しましょウ」

天城「わかりました!」

葛城「了解―」





瑞鶴「もうすぐ夕暮れねぇ」

雲龍「結局あれから敵は現れないわネ。索敵も全然引っかからないワ」

瑞鶴「出てくる時はワラワラ来るのに来ない時はサッパリ。何処にいるんだか」

神通「深海棲艦もこちらが囮と分かった以上、突入した本隊に戦力が向いているのではないでしょうか」

瑞鶴「あーそれあるかも。あからさまに戦力が違うもんね」

雲龍「本隊ってそんなに戦力が揃ってるノ?」

瑞鶴「そりゃもう! 提督さんの同期の人のところみたいだけど、戦力がこことは段違い。戦艦も空母も巡洋艦も駆逐艦も、みーんな数も質も上よ」

雲龍「へェ」キョウミシンシン

瑞鶴「まあ、と言っても質じゃあウチも負けるつもりはないけどね! 少数精鋭って」ネ!

雲龍「……本隊、戦ってみたいなア」ボソッ

瑞鶴「アンタの存在が普通になったら演習でも何でもやんなさいって。ソレまでは我慢よ」

雲龍「はーイ」

神通「私からすると、戦艦よりも空母が5人もいらっしゃるこちらの方が脅威ですけれどね」

雲龍「さすが神通よネ。神通にとって戦艦は怖くないト」

神通「そ、そう言う意味ではないです。戦艦は標的としては大きいし空を飛んでいないので……何より動きが鈍いので狙いやすいですよ」

雲龍「わォ」

瑞鶴「戦闘モードの神通ほど怖いものはないと思う」ウン

雲龍「同感ネ」ウン

神通「そう、ですか……?」

瑞鶴「あーあ、にしても連戦だったとは言えこのまま一回だけか……もうちょっと暴れたかったなぁ」



妖精1『電探に反応! 今度は味方識別はないです。敵機発見です』

妖精2『数一、距離三五○○○。哨戒中の偵察機と思われるです』


499: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/10(金) 20:50:28.95 ID:B8P1HRUB0

神通「――――ッ!」ピクッ

瑞鶴「きたか?! ここにきてついに空母のお出ましね。方角はどっち?」



妖精1『ほぼ真南を飛行中です』



瑞鶴「南か……場所は違えど本隊がいる方向ね。こっちの索敵圏外から飛んできたのかしら」

雲龍「どうすル? 見つかる前に直掩機で撃ち落としちゃウ?」

瑞鶴「まって。いっその事送り狼に――――」



妖精1『続いてほぼ同じ方向やや前方に水上電探にも感ありです。……あ、あれ?』

妖精2『どうしたです?』

妖精1『敵の反応の中に、味方と思しき反応も一つあるです?』

妖精2『距離が遠すぎて正確な情報が取れないです』

妖精1『誤認の可能性もありますがとりあえず第一報です』



瑞鶴「敵の中に味方? この付近に友軍はいないはずだけど」

神通「損傷を受けた味方が退避していたのでしょうか?」

瑞鶴「でもそれなら誰か護衛を付けるはず。なのにいないって事は……」

雲龍「まさか、もう沈んだ後じゃア」

瑞鶴「その可能性も否定出来ないわ。神通、急いで提督さんたちに連絡を」

神通「はっ!」ダッ

瑞鶴「雲龍、いつでも攻撃隊出せるようにしとくわよ。最悪を想定して全力装備で」

雲龍「了解。近くの景雲改を至急向かわせるワ。あと、天城たちも呼んでおくわネ」

瑞鶴「さぁ……今日最後の出撃かしらね」ゴクリ


500: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/10(金) 20:56:19.83 ID:B8P1HRUB0


瑞鶴「――――夏月と花月も体調不良ですって?!」

鳳翔「それが、二人とも急に頭が痛いと……」



夏月「うウゥ……」ズキズキ

花月「頭痛で頭が痛いわぁ」ズキズキ



雲龍「さっきの冬月といいこの子たちといイ……どうしたのかしラ」

瑞鶴「もう、どうしてこんな時に」

提督「とりあえず二人も仮眠室へ運ぼう。それで、電探の反応は?」



妖精1『未だ敵反応の中に味方の反応もあるです。囲まれているみたいです? あと、航空機の反応は消えたです』

妖精2『艦型反応を確認できるまであと少しです』



提督「見つけた航空機はその艦隊の偵察に来ていたんだろうか……しかし何にせよ味方が襲われている以上事態は一刻を争う。まずは攻撃機を出そう。瑞鶴、準備はいいか?」

瑞鶴「バッチリよ! 偵察機を見つけた以上近くに空母もいるだろうから、烈風改も今回は出すわ」

雲龍「私たちも全力出撃で行くワ。天城も葛城も準備完了ヨ」

提督「雲龍たちの航空機を味方に見られてしまうが……」

雲龍「緊急事態ヨ。それに、突入は誘導弾のみの一航過にするかラ。これなら見られるのは最低限になるワ。戦場での識別誤認はよくあること、でしょウ?」

瑞鶴「音はどうしようもないけど、後は私の彗星や流星改が派手に飛び回って囮になるわ。だから大丈夫」

提督「よし、じゃあ直ちに全機発艦。絶対に味方を助けるんだ」



『はっ!!』



妖精1『艦娘反応はあるです?』

妖精2『まもなく出るです……来たです――って、アレ? この反応は……』マサカ



冬月さんたちと同じ秋月型、です……?




冬月「」ピクッ

夏月「……ム」

花月「ッ」

吹雪「どうかしたの?」

冬月「……行かなきャ」ムクリ

吹雪「え?」


505: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/12(日) 18:10:13.90 ID:Zbg5Emiq0



―気がつけば、海の上に立っていた


――気がつけば、異形のモノに囲まれていた


―――気がつけば、戦闘を開始していた


――――気がつけば、自分が何者であるかを理解した そして目の前のモノが敵であることも"思い出した"


自分は艦娘で相手は倒すべき敵、深海棲艦


多勢に無勢……被弾多数で戦況はあまりにも劣勢だけど、負けるものか 今度こそ……絶対に 自分の使命を果たすんだ


尊敬する先輩たちに誇れるよう 会えなかった妹たちのために誇れるよう



??「まだ……まだ、沈みません。沈むものか! 今度こそ絶対に艦隊の防空を……っ!」



その時、轟音とともに目の前の敵が次々に吹き飛んでいった


同時に頭上を雷みたいな音とともに信じられない速さで駆け抜けていく見たこともない航空機の群れ



??「あれは、一体……」



506: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/12(日) 18:15:27.39 ID:Zbg5Emiq0


提督「捉えた! 友軍は、味方は無事か?!」

瑞鶴「上空管制中の彩雲より入電。味方を囲んでいた深海棲艦は殲滅。雲龍たちの誘導弾がやってくれたわ。私の出番がなかったわね……でも空母が見当たらない。近くにいなかったのかしら」

提督「まあいないならいないで一安心だ。それで味方は大丈夫か」

瑞鶴「黒煙を上げているも無事な模様よ。沈んでないわ。ただ、煙のせいで上からじゃ誰なのか判別がつかないみたい。一応攻撃終了につき帰投するわ」

提督「無事ならそれでいい。本当なら本土まで護衛していきたいが……」

雲龍「なんなら私たちは単独で帰るけド?」

提督「冬月たちの体調を考えるとそうも言ってられないだろう。申し訳ないがここは応急救援物資だけ渡しt



ガタガタッ



――――しテ! 離してくださイ!

……離セ

ちょぉーっと、ここを通してくれると嬉しいンですけどねー


ちょ、お、おお落ち着いてみんな……!!  あぅっ!



提督「……ん? なんだか仮眠室の方が騒がしいな。どうしたんだ」



バンッ!



冬月「司令官! 冬月たちを行かせてくださイ!」

雲龍「あなたたチ……どうしたノ?」

提督「ふ、冬月?! それに夏月に花月まで」

夏月「……私ハ征くゾ」

花月「どうしても行かなきゃいけないンですよね―」

提督「な、何の話だ? それに行くって何処に」

冬月「あの傷ついた友軍を……! 秋月姉さまを助けに行クンデス!」クワッ

瑞鶴「!!」



冬月「あソコこにいルノハ秋月姉さまナンでス! "私タチには分かる"ンでスッ!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


507: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/12(日) 18:20:13.95 ID:Zbg5Emiq0

提督「お、おい冬月……?」ソノ目……

冬月「オネガイシマス……行カセテ、クダサイ……!」

夏月「………………」

花月「………………」


妖精1『?! 電探に反応です。敵編隊接近ですッ。大編隊です!』


提督「ッ。数は?!」


妖精2『西北西、距離三八○○○、数一○○以上です!』


提督「くっ。まさかさっきの偵察機……俺たちのことも見つけてたのか!」

鳳翔「もしくは今傷ついている……秋月さん? のとどめを刺しに来た可能性もあります」

瑞鶴「ど、どうしよう提督さん。直掩機下ろしちゃったし攻撃隊も帰ってきたばかりで補給が……」

雲龍「私たちも同じヨ。どうしても時間がかかるワ」

冬月「姉サマ!!」ダッ

夏月「敵機……狩ルッ」ダッ

花月「イキマス」ダッ

提督「あっ、こら三人とも――ッ!!」

瑞鶴「それよりも提督さん! 私たちも対空戦闘に備えないと!」

雲龍「距離的にも私たちが発艦させるのはギリギリヨ。間に合わないかもしれなイ」

神通「私たちは対空戦に出ます。吹雪、大丈夫ですか?」

吹雪「ちょっと突き飛ばされた時に腕をぶつけただけです。大丈夫です!」

神通「よろしい。では行きます」ダッ

吹雪「はい!」タタタッ

鳳翔「提督。私も艦載機を出しますね」

提督「鳳翔……。しかし鳳翔の艦載機では」

鳳翔「こんな事もあろうかと、ちゃんと戦闘機の子も連れてきています。数は少ないですが頼りになりますよ」

瑞鶴「私たちも補給を急ぐわ!」

雲龍「全力で出したのがこんなところでアダに……」クッ

提督「……すまないがよろしく頼む。細かい指示は出さないが、ただ一つ。絶対にみんな生きて還るぞ。いいな?」


………………


夏月「……前方、敵機ダ。ワンサカイルゾ」

花月「アラアラァ。獲物ニハ事欠カナイワネェ」

冬月「対空戦用意。全兵装開放及ビ緊急特射機能ヲ使用スル。即応弾限界装填。弾切レト砲塔ノ爆発ニ十分注意ヲ。絶対ニ姉サマヲ……助ケル」

夏月「……ウム。征クゾ」

花月「花月モホンキ、出シチャウワァ」


冬月「――――総員、突撃!」ガシャンッ



………………

…………

……

508: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/12(日) 18:25:12.99 ID:Zbg5Emiq0

……ゴゴゴゴオォォォォォォォォォォ


秋月「くっ……今度は敵機、ですか。せっかくの対空戦なのに、身体と装備がボロボロではどうしようもないか」フラフラ

秋月「まだ何もできていないのに、今度こそ護るって決めたのに。ここまで、ですか……今回は早かったなぁ」フラフラ



深海タコヤキ艦載機『』ヒャッハアァァァァァァァァッ!!



秋月「せめて……一撃だけでも」ググッ



深海タコヤキ艦載機『チェゲバラ?!』ボンッ!



秋月「え?」ナニ



――サマー!!



秋月「こ、声が。どこから……」



――ネエサマー!!



秋月「?! 敵――――じゃ、な…い……? あれは」



??『前方ニ展開、姉サマヲ護レ! ココガ我ラ秋月型対空駆逐艦末裔ノ本懐ゾッ』

??『……右舷接近ノ奴ハ、貰ウゾ』

??『ジャア花月ガ反対側ネェ』



――それは突然戦場に割り込んできた


―――私のことを"姉さま"と呼ぶ異形と同じ色の目をした子たち


――――私は……あの子たちのことを、知っている……?



??『……各砲、各個ニ全力迎撃。一機モ逃ガスナ! 撃チ方、始メッ』クワッ


509: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/12(日) 18:30:14.77 ID:Zbg5Emiq0

妖精1『敵編隊、ふた手に分かれたです』

妖精2『秋月さんに向かった編隊は、助けに行った冬月さんたちの対空砲火で七面鳥のごとく撃ち落とされてるです』

妖精1『電探の反応がみるみる減っていく……。あれはきっと新装備の特射モードです。今頃主砲を機関砲のごとく撃ちまくってるです』

妖精2『パラオの七面鳥撃ちです?』

妖精1『七面鳥撃ちです』

妖精2『七面鳥が食べたいです』


瑞鶴「……その言い方やめて。あと連呼しないで」


妖精1『テヘペロです。こちらに接近中の編隊、高度四○○○で数はおよそ五○程です』

妖精2『機関全速。回避運動開始です』


瑞鶴「こっちはそろそろ補給が終わるわ。でも回避始まっちゃったし発艦ギリギリ間に合わないか……」

雲龍「同じク。ここは鳳翔に任せるしかないわn―――!」

瑞鶴「どうかしたの」

雲龍「ふ、ふフ……うふフフフっ。ソコにいたのネェ」

瑞鶴「う、雲龍?」

雲龍「……見ィツケタ」ニタァ

瑞鶴「」ビクッ

雲龍「瑞鶴姉、回避運動が終わったら即攻撃隊を出すわヨ。速度が合わないから後から頑張ってついてきてネ」

瑞鶴「えっ? じゃ、じゃあ!」

雲龍「フフ……ッ。空母は二杯カ。詰めが甘かったのは認めるけれどコケにされたお返しが必要よネ。ヤられっぱなしはキライだわァ」




神通「鳳翔さん、来ました!」




鳳翔「今回は潜水艦も現れず出番がありませんでしたからね。皆さんにとってもようやくといったところでしょうか」


零戦妖精『』ネー

九七妖精『』ツマンナカッタ


鳳翔「数は五○程だとか。私たちを狙うにしてはずいぶんと舐められたものですね」ニコニコ


零戦妖精『』ウンウン


鳳翔「一人五機墜とすだけの簡単なお仕事です。秋月さんたちも心配なので時間を掛けず手早く仕留めましょうか」


零戦妖精『』グッ!


鳳翔「ふふっ。気合充分ですね。では――――」スッ





鳳翔「風向きヨシ。零式戦十機、全機同時発艦、開始」グイッ


522: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/16(木) 19:30:17.83 ID:p+CNCNpG0


??『………………』ザザッ



秋月「あ、あなたたち……?」



??『……バラけると面倒ダ。早速一発お見舞いスルゾ』ジャキンッ

??『一番砲対空燃料気化弾装填完了』

??『同じく―』

??『ウム。撃ッ!!』ドンッ!


??『姉サマ! 目ヲ瞑ッテ!』



秋月「え、え?」


パパパパパッ――――!! ズズ……ン!


秋月「うわあッ?! く……っ」メガ



??『先頭集団消滅確認。正面ニ回リコンデキタ雷撃機、割リ当テ一~九。電探連動ヨシ。斉射』


ドッドッドッドッド……ボンッ


??『……三番砲暴発、使用不可。敵機制圧完了。砲身交換急ゲ。続イテ右舷上空急降下接近、数十八。左舷雷撃機展開シツツ接近、数九』

??『マカセロ。上ハ全部貰ウゾ』

??『一番・二番砲使用不能。機銃併用開始。ウルサイカラ近ヅイチャダメヨォ』


ブオォォォ……ブオオォォォォ


??『……艦爆、殲滅。主砲三基破損、一基機能低下ダ』

??『了解。敵機撤退ヲ開始。逃スナ』

??『ハァイ』

??『堕チロ』


ズドドドドッ……!!


523: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/16(木) 19:35:21.06 ID:p+CNCNpG0


秋月「」ボーゼン



??『――――残存機、ナシ。殲滅完了』

??『……他愛ナイ』

??『コレガ本当ノ、砲塔マデ無クナッテ放心、ヨネェ』




秋月「あ、あの……」



??『ッ?!』サササッ



秋月「え?」ナゼ セ ヲ……?



??『あのッ。ご、ご無事……デス、か?』



秋月「えっ? あ、はい。なんとか、大丈夫です……が」



??『……良カッタ』

??『あンしン、したわぁ』



秋月「あなたひょっとして……冬月、でしょう? あとの二人も、名前は分からないけれど同じ秋月型……」



冬月「………………」

夏月「………………」

花月「………………」


524: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/16(木) 19:40:40.44 ID:p+CNCNpG0

秋月「ど、どうしてこっちに顔を向けてくれないの?」

冬月「確かに私は8番艦の冬月でス。でも……ごめんなさイ。秋月姉さまにこんな顔や身体は見せられないし、お見せしたくないのでス」グッ

夏月「……我ラ、秋月型の面汚シ」

花月「一度敵の手に墜ちた裏切り者なンです」

秋月「敵の、手に……?」



冬月「お助けできたことは本当に嬉しいですシ、このまま胸を張って憧れの姉さまにお会いしたかっタ。でも、今の冬月たちにはその資格はないのでス」

秋月「資格……」

冬月「いつか、いつか海が平和になったラ……その時h


秋月「ありがとう。助けてくれて。でも、妹たちに助けてもらう姉じゃあ姉である資格はないですね! これでおあいこ!」


冬月「えッ?」

秋月「それに、憧れと言われてもいまいちピンとこないというか。防空駆逐艦とか偉そうなことを言っておいて結局護りきれず沈んでしまったというか」ウン

夏月「姉サマ……?」

秋月「とにかく、資格だの何だのそんなことは気にしてません! むしろ会えなかったぶんまで妹たちの顔が見たい。いえ、見ます!」マワリコミッ



冬月「あ」

夏月「ム」

花月「ッ!」





秋月「……うん。やっと見られた」


525: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/16(木) 19:45:44.50 ID:p+CNCNpG0

冬月「ヘン、ですよネ。目とか半分黄色いし髪の毛もおかしな色。腕や足も一部白かったりっテ……化け物みたいニ」

秋月「そんなことは気にしません。眼や肌の色が違う人なんてたくさんいます」

夏月「し、シカシ……」

秋月「何より、妹たちを"そんな事"で差別する姉は姉じゃありません!」フンスッ

花月「………………」

秋月「あなたたちにもいろんな事があったんでしょう。それでいいんです。こちらこそこんなボロボロの姿で情けないけれど……こんにちは、ひさしぶり、はじめまして、おかえりなさい――いろんな事が頭に浮かぶけれど、まずは "ありがとう" あなた達こそ秋月にとって誇りそのものです」ニコッ

冬月「ねえさマ……! ごめんなさイ、ごめんなさイ……ッ!」ポロポロ

夏月「う、ウゥ……ッ!」ポロポロ

花月「姉さま……」ポロポロ

秋月「もう泣かないで。それよりも、あなた達の名前を教えて? ちゃんと挨拶をしたいから」

夏月「……私ハ夏月。11番艦だが45年4月生まレダ」

花月「花月、です。姉さまの沈ンだ二ヶ月後に生まれました。秋月型最終艦です」

秋月「夏月に花月……二人とも良い名ですね。そう、秋月には11人もの妹が……。そうだ、涼月や初月、他のみんなも一緒ですか?」

冬月「……いいエ。残念ですが私たちだけでス」

秋月「そうですか……。でもこうして妹たちに会えたんだから、きっと逢えますね」



ゴオオォォォォォ……!



秋月「? あれは……さっきの航空機」

冬月「うちの攻撃隊ですネ。全力編成みたいなんで、きっと雲龍さんたちがさっき来た敵機の母艦を仕留めに行くんだと思いまス」

夏月「……母艦、見ツケタカ」

花月「これであンしンねぇ」

秋月「雲龍さん? あの雲龍型のですか? でもあんなの見たことない……」

冬月「元は未成機ですかラ。とは言え自慢の航空隊ですヨ!」

秋月「あの飛行機といいあなたたちの装備といい、沈んだ後に一体何があったんだろう」

冬月「いろいろあったんデス」

夏月「……アア」



提督『――――おぉーい! みんな大丈夫か―!』



秋月「?」

冬月「司令官でス。あちらも無事なようですネ」

秋月「司令官?」

夏月「……そう言エバ、放り出してきてシマッタ」

花月「あはは……」


533: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:05:24.19 ID:L/ZrNFA/0


―船室内―

冬月「司令官。ご紹介しまス。我らが秋月型、その栄光たる一番艦の秋月姉さまでス!」

秋月「え、栄光はチョット……。防空駆逐艦秋月です。この度は助けていただきありがとうございますっ!」ビシッ

提督「提督だ。被害は受けているようだが無事で一安心だ。狭い船内だが、しばし寛いでくれ」

花月「さあさぁ、姉さまはこちらにどうぞ」

瑞鶴「久しぶりねー秋月。あ、でもこの姿じゃ初めましてか」

秋月「はい! 瑞鶴さんもお元気そうで何よりです」

雲龍「あなたを襲った敵機の母艦は艦隊含めて一隻残らず仕留めておいたから、安心してネ」

秋月「も、もう仕留めたんですか?」

雲龍「もちろン」フンス

瑞鶴「私の攻撃隊が着いた頃には取り巻きしか残ってなかったんだけどー」

雲龍「早い者勝ちヨ。……この場合は"速い"者勝ち、かしらネ」

瑞鶴「噴式相手に追いつけるわけがない」

天城「昔かラ言うではありませんか。兵ハ神速ヲ尊ぶ、と。つまリ速いことはイイことなのです」

瑞鶴「納得行かない!」

秋月「えっと……?」

提督「あー、疲れているところ早速で申し訳ないが、状況だけ確認させてもらってもいいかな。一体どうして一人でこんな所に? 護衛はいたのか?」

秋月「はい。いえ、ここには一人だけです。それがその、自分でも何がなんだかよくわからなくて。気がついたらここにいた、としか……すみません。ハッキリと答えられません」

提督「気がついたらと言うことは、本隊にいたわけではないのか?」

秋月「本隊? なんですかそれは 小沢機動部隊のことでしょうか」

瑞鶴「」ピクッ

提督「小沢?」

瑞鶴「……フネだった私たちがいた最後の機動艦隊よ。と言っても中身の無いハコだけだったけどね。そこで私も秋月も沈んだの」


534: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:11:13.44 ID:L/ZrNFA/0

提督「ふむ……これはどういう事だろうか?」

鳳翔「さ、さあ。何ぶん初めてなものでなんと言ったらいいものか……」ウーン

瑞鶴「ねえ秋月。最後の記憶ってある? やっぱりエンガノ?」

秋月「最後……。対空迎撃中に意識が吹き飛んでから、なにか暗い所を彷徨っていたような……? それで、気がついたらここに」

瑞鶴「んー、と言うことはいきなりここに出てきたってことなのかな。艦娘として」

提督「そんな事ってあるのか?」

瑞鶴「私たちにもわかんない」

提督「うーん……。とりあえず、自分が何者で艦娘がなんであるかは分かるかい?」

秋月「はい。それはわかります。あと戦っている相手がなんなのかも。でも、なんだか記憶が混ざりあっているというか……地に足がついてないというか、不思議な感じです」

提督「以前の雲龍たちのこともあるし、妖精さんに見てもらった方がいいかな」ヒソヒソ

鳳翔「そう、ですね。所属とかもないみたいですし」ヒソヒソ

秋月「?」

提督「なあ秋月。もし良ければうちに来るかい? 小さな鎮守府だが俺たちは歓迎しよう」

秋月「よろしいのですか?」

提督「このままだと行く宛もないだろうし、何より今の君は大破状態だ。いつまでもそのままってワケにはいかないだろう」

秋月「そ、そうですね……」←服も破れているので大きいタオルを借りている

提督「それに、なにより冬月たちも喜ぶ」

秋月「あっ……!」パァッ

提督「ンンッ。駆逐艦秋月、我が鎮守府へようこそ。貴艦の活躍を大いに期待する。よろしくな」ニコッ

秋月「は、はい! 秋月、防空駆逐艦として艦隊をお護りします!」ビシッ


535: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:15:20.94 ID:L/ZrNFA/0

提督「あ、そうだ秋月。その冬月たちのことなんだが……」

秋月「?」

提督「もう顔を合わせてしまっている以上隠し事にもならないが、実は鎮守府にいる他の皆にはナイショにしてほしい」

冬月「………………」

秋月「内緒ですか? それは、何故……」

提督「詳しくはおいおい話すか冬月たちから聞いてもらうとして、ここにいる者達以外には存在を知られてはいけないんだ。彼女たち自身のためにも」

瑞鶴「あとは翔鶴姉ぇも知ってるわ。今回は鎮守府にいるけど」

雲龍「今こうして一緒に話してるけど、戻ったら普段は別々の生活を送ってるのヨ。少なくとも、この戦いが終わるまではネ」

夏月「……ウム」

花月「隔離生活って、なンだか妙な響きよねぇ」

秋月「で、ではこれからは冬月たちには会えないのですか?」

提督「大っぴらにはな。でも秋月はもう存在を知っているし何よりも身内だ。いくつか制限はかけるが好きな時に会いに行ってもらって大丈夫だよ」

瑞鶴「いれば、だけどね」

提督「……まあな」



秋月「……自分たちを一度敵の手に墜ちた裏切り者と言っていたのですが、それと関係があるんですか?」

提督「裏切り者か。何と言うか言い得て妙だな。言ってしまえば彼女たちは元深海棲艦なんだ。だから艦娘に戻った今でも名残として身体の一部に特徴が見られる。冬月たちの目、見ただろう?」

秋月「あ……そういう事、だったんですか」

提督「戻った事自体も奇跡に近く原因も不明だし方法も答えもない。つまり他に例がない以上うかつに存在がバレたり上に報告があがると、彼女たちが危険な目に合うかもしれない。だからこそ俺たちは秘密にしたんだ。当事者を除いてね」

瑞鶴「私は後から知った側だけど」

提督「好奇心は怖いな……。ま、まあとにかく。秋月も他の者の前でうっかり口に出さないように気をつけて欲しい。当事者の一人としてね」

秋月「わ、わかりました」

提督「うん。よろしく頼む。さてと……じゃあ還るか。秋月を含めて戦闘不能艦4人じゃあどうしようもない。戦力低下もいいとこだしまた襲われる前に撤退だ」

瑞鶴「えっ? 4人ってだれ?」

提督「冬月たちだよ。身体は元気だが艤装がダメだ。もう使いものにならない」

瑞鶴「じゃあ攻撃を受けたの?」

冬月「いえ、そうではないんですガ……」

夏月「……主砲、壊レタ」

花月「ほンき、出し過ぎました」

瑞鶴「? まあ壊れちゃったのなら仕方ないわね」

提督「妖精さん。鎮守府へ帰投しよう。あと本隊へ向けて暗号を頼む。内容は"空腹でござる"で」



妖精1『はいです』

妖精2『私もお腹が空いたです』グゥー


536: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:20:24.85 ID:L/ZrNFA/0


秋月「……そんな事があったんですね」←コトの顛末を聞いた

冬月「改めてすみませン。我らが情けないばかりニ」

夏月「……誘惑に負ケタ」

秋月「もう過ぎたことです。それよりもあなた達が今無事でいられることの方が重要ですから」

雲龍「そうネ。見つけたのが鳳翔で出会ったのが提督で良かったワ」

秋月「皆さんは別々の生活を送っているとありましたが、普段はどうしているんですか?」

天城「天城たちハ出撃ができなイ後悔がありましたので……。主ニ出撃を」

夏月「……ウム」

雲龍「ヘタすると月の半分は部屋を空けてる事の方が多いわネ」

秋月「そ、そんなに出撃されてるんですか?」

雲龍「楽しいわヨ」

秋月「」エー

冬月「で、でもこれからしばらくは出撃もできませんかラッ」ネ?



………………

…………

……


537: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:25:27.53 ID:L/ZrNFA/0


提督「――――と言うわけで、新しくこの鎮守府に加わることになった秋月だ。みんな、よろしく頼む」

秋月「秋月です。よろしくお願いいたします!」



ヨロシクー



提督「作戦参加記念と歓迎会はこの後やるとしてだ。誰かここの案内をしてもらえると助かるのだが……」

白露「はいはーい! あたしたちが案内しまーす!」イッチバーン

提督「じゃあ白露たちにお願いするよ。秋月、何かわからないことがあったらいつでもここに来て構わないから。自分の家だと思って寛いでくれ」

秋月「は、はい!」

白露「それじゃ秋月、いくよー!」

村雨「まずはこの建物からかしらね?」

春雨「お風呂も案内しましょうっ」

提督「ははは。それじゃあ頼んだよ。よし、じゃあ今日もいつもと変わらず頑張っていこう。解散!」



………………



白露「そう言えば、秋月って一人部屋なんでしょ? 寂しくないの?」

春雨「もしよろしければ、春雨たちの部屋に来ますか?」

秋月「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫っ。なんたって秋月には11人も妹がいるんですから! 今はまだ一人ですが、そのうちきっと賑やかになりますよ」



秋月「(それに――――)」


540: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/17(金) 21:30:22.66 ID:L/ZrNFA/0


―夜―

時雨「昼間はああ言っていたけれど、やっぱり少し心配だよね」

村雨「もう一度誘ってみましょうか」



knock knock knock



夕立「いないっぽい?」

白露「もういっかいっとー」



knock knock knock



春雨「もうお休みされてしまったのでしょうか?」

時雨「ここに来たばかりだからね。慣れない環境だから疲れたのかもしれない」

村雨「今日の所はそっとしておきましょうか」

夕立「また今度誘うっぽい―」



………………

…………

……



冬月「姉さまの隣は私でス!」

夏月「……冬月、ズルイ」

花月「ここは公平にジャンケンなンてどうかしらー」

秋月「ま、まあ三人とも落ち着いて……」ネ?



イッソ ワタシガ ウエ ニナルワァ
エェッ?!



雲龍「ここも賑やかになったわネ」

天城「はい。雲龍姉様」ニコニコ

葛城「まあ、明るいのは悪いことじゃなイよね。あの子たちも楽しそウだし」

雲龍「それにしても、昼間会わないぶん夜一緒に寝ようなんてよく考えついたこト」

天城「しばらくハ出撃ガ出来ませんからね。ちょうどいいかもです」

雲龍「私たちもたまにはゆっくりと休みましょうカ」ノビー

葛城「みンなー。もう電気消スよ―」


ハーイ


冬月「姉さま、おやすみなさイ」

秋月「はい。おやすみなさい」



秋月「(一人だけど、ひとりじゃないから)」


546: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/19(日) 20:00:08.16 ID:en4fI1Lo0

・---・オマケノ鎮守府シリーズ・---・


――ソノ1 鎮守府


武蔵「ところで提督よ。結局のところ戦闘は行ったのか?」

提督「ん? ああ。増援が来た時はちょっと驚いたがなんとかこなしてきたよ。みんなが普段どういう風に戦ってるか観察できたかな」

武蔵「そう、か。それは良かったな……うん。戦えたことは喜ばしい。羨ましいぞ妬ましい」

提督「?」

利根「本土接近の敵機動部隊なんておらんかったではないか……」ジー

筑摩「私たち、毎日哨戒に出ていたんですよ?」

川内「夜戦できなかった……」

提督「いや、来るなんて言ってないだろ? 前回来たから今回も可能性として……」

利根「吾輩たちを騙しおったな! 純情を弄びおったな?!」

川内「夜戦の恨みは怖いんだぞ―!」

武蔵「そうだ。戦闘の恨みは恐ろしい。これは我らをしばらく優先的に出撃させてもらわねばな」

利根「交渉の余地はない!」

筑摩「姉さんもこう言ってますし、提督の誠意ある回答を希望します」

提督「あ、あー……その事なんだがなぁ」

武蔵「なんだ。資源は全回復ではないとは言え戻ったのであろう? 練度のことなら気にするな。撃ってればどうにかなる!」

川内「夜戦してればどうにかなるよ!」

提督「すまん! 諸事情によりまた"なくなった"」ゴメンネ

武蔵「」

利根「な、な……」

筑摩「あら……」

川内「」ヤセン……




―鎮守府の備蓄資源―

燃料:員数外くらいなら……
弾薬:撃った弾を戻したいくらい
鋼材:リサイクル要推奨
ボー:なんで赤土じゃダメなんですか!


547: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/19(日) 20:05:12.08 ID:en4fI1Lo0

――ソノ2 コワレタ


工廠妖精1『これはしばらく使い物にならないです』

工廠妖精2『直すのにも時間が掛かるです』


提督「そうか……。まあやむを得ないか」


工廠妖精1『冬月さんたちは、直るまでの間は従来の兵装です』


冬月「うぅ、これに慣れた後だト……」

夏月「……重イ。遅イ。弱イ」

花月「こンなのじゃハエも墜とせないわあ」

秋月「なにを贅沢言っているのです。兵器の性能に頼らず己の腕で勝負しないと!」ウムッ

冬月「そうは言いますガ……。姉さまを護れたのもこれのお陰ですシ」

夏月「……一度使うと戻レナイ」

花月「ねぇ」

秋月「あの時は気づかなかったけど、よくよく考えたらかなりの連射速度だったような? ずいぶんコンパクトだしこれは主砲……機関砲?」

夏月「主砲ダ。間違いナイ」

花月「ただちょぉっっとだけ、速く撃てるンですけどね」


工廠妖精1「通常で毎分三○発。緊急時の特射モードを使うと毎分一ニ○発撃てるようになるです」


秋月「ひゃっ?! えぇッ!」ウソンッ


工廠妖精1「即応弾の弾倉が限界装填で各砲一ニ○発なので、それぞれ撃ちっぱなしで三○秒で打ち止めです」

工廠妖精2「しかも砲塔耐久の限界を超えて撃つので射撃後はこの通り壊れちゃいます」

工廠妖精1「ヘタすると撃ってる最中に暴発するかもですが、秋月さんも欲しいです?」

工廠妖精2「今なら三銃身回転式機関砲と音響感知式対潜魚雷もセットにつけちゃいます」


秋月「いえ、秋月は結構です……」コワイ

提督「それで、修理にどれくらい時間かかりそうかな」


工廠妖精1「半月もあれば……です」タブン


提督「なんだ。じゃあ少しの辛抱じゃないか」


工廠妖精2「ただ、直すための材料というか資源がちょっと多いです」

工廠妖精1「なにせ特製品なのです」


提督「そうなのか? まあみんなが頑張ってくれたおかげである程度回復したから大丈夫だ」

冬月「雲龍さんからもこちらの資源を使っても良いと許可をもらってまス!」

提督「で、どれだけ必要なんだ?」


工廠妖精1「そうなのです? じゃあ全部でこれくらいお願いするです」スッ


提督「?!」デデドン!



資源が(再び)消えた日


548: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/19(日) 20:10:07.21 ID:en4fI1Lo0

――ソノ3 鳳翔のホンキ


提督「指揮官として特定の誰かを贔屓するのは良くないんだが、今回の作戦であえてMVPを選ぶとしたら……」

翔鶴「話を聞く限りですとやはり冬月さんたちでしょうか?」

提督「まあそれもあるな。なんせ秋月を護りながら三人で五○機近い敵機を墜としたんだから。だが、上には上がいるんだよ」

翔鶴「上?」

提督「鳳翔だよ。鳳翔は一人でやっぱり五○機近い敵機を墜とした。それも今となっては旧式の零戦十機で」

翔鶴「そ、それはまたなんとも」スゴイ

提督「フネから見てたが、まず全部いっぺんに発艦させるって時点ですごい。矢を何本持ったんだって話。しかも回避運動中だぞ?」

翔鶴「私には到底出来ません……」

提督「後はもう手品でも見てるかの様な、それはそれは鮮やかなお手前ですよ。練度は極めるとこうなるって言う良い見本を見せてもらった」

翔鶴「私たちとの模擬戦でも、こちらが数や性能において格段に優っているはずなのに優勢を取れることがめったにありません」

提督「妖精さんの腕も確かだが、やっぱり鳳翔だよ。右に左にフネが動いてるのに甲板でニコニコしながら立ってられるんだぜ? まるで運動会で我が子の勇姿を見てるお母さんみたいに」

翔鶴「逆立ちしても真似できませんね」

提督「改めて鳳翔の凄さを確認した。いい経験だったよ」

翔鶴「私も瑞鶴もまだまだ精進しないといけませんね」






鳳翔「あ、あの……」←横で聞かされている



549: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/19(日) 20:15:07.26 ID:en4fI1Lo0

――ソノ4 ユウレイ秋月


瑞鶴「どう秋月。ここでの暮らしにはもう慣れた?」

秋月「はい! 皆さんがとても良くして下さるので、もうすっかり」

瑞鶴「そりゃ良かった」

翔鶴「いろいろ大変なこともあるでしょうけれど、何かあれば遠慮せず言ってくださいね」

秋月「ありがとうございます。再び翔鶴さんや瑞鶴さんと一緒に戦えるだけで秋月は満足です」

瑞鶴「健気な……」

秋月「今度こそ、ええ。今度こそ秋月がお護りいたします!」

瑞鶴「まあ、期待してるわ」


瑞鶴「(出撃自体あまりないなんてのは……今言わなくてもいいよね?)」


翔鶴「あ、そう言えば私、秋月さんの妙なウワサを聞いたんだけれど……」

秋月「秋月のですか? なにかしたかなぁ」

瑞鶴「隙あらば質素な食生活を送ろうとしてるって?」

秋月「うぅ。どうにも昔の癖が抜けなくて、つい……」アゥ

翔鶴「違うわよ。白露ちゃんたちが言ってたんだけれど、夜に訪ねてもいつも出ないって」

瑞鶴「アンタそんなに早く寝てるの?」

秋月「あ、それは……その」チラチラ

瑞鶴「?」

翔鶴「……なるほど。冬月さんたちですね。今は私たちしかいないので話して構いませんよ」

秋月「は、はい。部屋は頂いたのですが、寝る時はいつも向こうなので」

瑞鶴「あーそういう事か。そりゃあ白露たちが来ても出ないわけだわ」

翔鶴「提督が秋月さんの部屋を一階にしたからなにか理由があるとは思ってましたが……」

秋月「外に出なくても部屋から直接行けるようにしてもらったのですが。や、やっぱりダメでしょうか……?」

翔鶴「いいえ。せっかくの姉妹艦ですもの。特にあの子たちは出かけたがりだから、一緒にいられる時はいないとね」

瑞鶴「でも、ちゃーんと周りの注意は忘れずにね。鍵の締め忘れでバレましたーなんて笑い話にもならないから」

秋月「はい。しっかり心がけてます」

翔鶴「あなたもよ瑞鶴。好奇心旺盛なのはいいけれど、うっかり話さないようにね?」

瑞鶴「藪蛇だったか……」


へびさん


556: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/21(火) 19:30:20.96 ID:Ydpl+o9B0

・---・アル日ノ鎮守府:翔鶴型 秋月・---・


大鯨「今日のお夕飯は洋風にしてみました。甘ぁいコーンをたっぷり使ったコーンスープに、メインは濃厚なデミグラスソースの煮込みハンバーグ。お野菜は食べやすいように一口サイズになってますし、別添の人参は甘く煮詰めたグラッセにしてありますよ」

鳳翔「ごはんとパンはお好きな方をお召し上がり下さいね。もちろん、両方でも構いませんよ」ニコニコ

深雪「うっひょろほ~い! 肉だ肉だ!」

白露「イチバンおっきいやつをちょーだい!」イッチバーン

利根「なんじゃとッ。大鯨よ、吾輩にもイチバンいいものを頼むぞ」

夕立「うっひょろほーいって、なあに?」

叢雲「そんなの私が知るわけ無いでしょ」



キャーキャー!!



瑞鶴「みんなお肉料理だと眼の色変えるよねえ」

翔鶴「場所柄、お魚を使うことが多いからかしらね」

瑞鶴「って言うか駆逐艦の子たちに平然と混ざってる利根って一体……」

翔鶴「瑞鶴も大きいの貰ってきたら?」

瑞鶴「わ、私はこの普通のでいいの!」

秋月「………………」

翔鶴「秋月さん、どうかしましたか? 具合でも悪いの?」

秋月「あ、いえっ。そう言う訳ではないのですが、その」

瑞鶴「なぁに。アンタまだ食生活慣れてないの?」

秋月「あはは……。もちろんハンバーグを頂けるのはとても嬉しいのですが、どうしても頭の何処かで『最後の晩餐じゃあ?』とか『コレで明日からはカンパン生活か』なんて考えてしまって……」

瑞鶴「不憫すぎる」

翔鶴「まだそう日も経っていませんから違いに戸惑うのも無理はないかと。ゆっくりでいいから慣れていきましょうね」

秋月「すみません……」

瑞鶴「別に謝ることじゃないわよー。こう言う時はにっこり笑って大口開けてパクっとひと口! ……あむっ。むぐむぐ……んんーっ、肉料理の醍醐味はやっぱりハンバーグよねぇ♪」キラキラ

翔鶴「ちょっと瑞鶴。まだいただきますしてないでしょう」

瑞鶴「みふぉんをみふぉんー(見本よ見本ー)」モグモグ

翔鶴「もぅ」

秋月「ふふっ」ニコニコ


557: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/21(火) 19:35:16.16 ID:Ydpl+o9B0


イタダキマース!



秋月「ううぅ……牛缶よりも圧倒的に美味しい」モグモグ

瑞鶴「缶詰と比べること自体まず問題なのよ」

秋月「早く慣れたいと思う反面、これに慣れたらまた質素に戻った時の反動が……」コワイ

瑞鶴「不器用ねえ」

翔鶴「瑞鶴。そんな事言っちゃダメよ」

瑞鶴「そもそも、作ってるのはあの鳳翔さんと大鯨よ。これでマズイとか言ったらもう鎮守府全員を敵に回して戦争よ戦争」モグモグ

秋月「大鯨さんと言う方にあまり馴染みがないのですが、これだけ料理がお上手ですとやっぱりスゴイ方なのですか?」

翔鶴「むしろ秋月さんには"龍鳳"の方が聞き覚えがあるかしらね」

秋月「龍鳳さん……あ、あぁ! 乙部隊で隼鷹さんたちと一緒だった」

翔鶴「ええ。それで大鯨と言うのは空母に改装される前の名前なの」

瑞鶴「潜水母艦大鯨ってねー。ま、今じゃ潜水母艦の前に『航空』が入るけど」

秋月「……航空潜水母艦、ですか? 初めて聞く艦種です」

翔鶴「大鯨さんにもいろいろと思う所がありまして……。それで提督がその意向を尊重して、本来であれば不可能なはずの航空艤装を妖精さんにお願いしたんです」

瑞鶴「潜水母艦でありながら空母でもある。まあ、おかげでちょっと航空戦力は龍鳳よりも劣ることになっちゃったけどね」

秋月「な、なんだかここはその……えっと」

翔鶴「変わってる、って?」

秋月「あぅ。すみません……」

翔鶴「いいえ。秋月さんの仰る通りここはちょっと変わっています。アノこともありますし」

秋月「………………」コクン

瑞鶴「でも悪いことじゃないでしょ? 空気は軽いかもしれないけど、居心地はいいし料理も美味しい。そして提督さんも優しいしで、うん。マーヴェラス」

秋月「軍らしくない。と言われるととても納得できます」

翔鶴「提督がそう言うのをとても嫌っていらっしゃるから」

瑞鶴「自分も軍人なのにね―」

翔鶴「そこが提督の良い所でもあります」

瑞鶴「そこに翔鶴姉ぇが惚れたのかなぁ」ニヤニヤ

秋月「?」


558: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/21(火) 19:40:39.66 ID:Ydpl+o9B0

秋月「そう言えば、肝心の司令がいらっしゃいませんね。もう食べ始めてしまいましたが良かったのでしょうか」

翔鶴「まだ書類作業が残っているとかで……終わったら来るそうよ」

瑞鶴「最初は翔鶴姉ぇも残ってようとしてたんだよねー」

翔鶴「秘書艦なんだから当然でしょう」

瑞鶴「結局提督さんに諭されてここにいるわけだけど」

翔鶴「……食べ終わったらすぐに戻ります」

秋月「翔鶴さんと司令は信頼しあっていますよね。素晴らしいと思います!」

瑞鶴「そりゃもうお互いホの字でございますからぁ?」ニヤニヤ

翔鶴「瑞鶴。はしたないわよ」

秋月「ホの字……。好き合っているということですか?」

瑞鶴「そーそー。しかも外泊したほどの仲よ」

翔鶴「が、外泊と言っても先の作戦のための会議へ出席しただけです。遠方なので日帰りは難しかったから……」

瑞鶴「私はその時絶対なんかあったと踏んでるんだけど、秋月はどう思う?」

秋月「え、えぇっと……。あ、秋月はその時まだここにいなかったので」

翔鶴「勘ぐりはやめてって言ったでしょう瑞鶴。何もありませんでした」

瑞鶴「ナニも?」

翔鶴「………………」



ゴチンッ



瑞鶴「……痛い」アゥ

秋月「あ、あはは」


すめばみやこですヨ


563: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/25(土) 21:10:33.82 ID:pPH6xvVE0

・---・アル日ノ鎮守府:翔鶴 提督・---・


翔鶴「困りましたね……」

提督「あぁ。ほんと困ったなぁ」



資源在庫表『』



翔鶴「まさかまた制限をかけることになるとは思いませんでした」

提督「俺もだ。だがしかしこうするより他はなかったしあの子たちを責めるのはお門違いってやつだ」

翔鶴「もちろんです。ですが、真実を知っている私たちはともかくそれ以外の方たちには納得がいってないみたいで……」

提督「だよなぁ……。作戦から還って来たら資源がなくなりましたなんて、誰が聞いても納得しないし信じるわけがない」

翔鶴「私も知らなかったら何かの冗談だと思ったでしょうね」



資源在庫表『』ナンドミテモ スウジハ フエンッ!


564: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/25(土) 21:15:46.60 ID:pPH6xvVE0

提督「また一から貯め直すより他はないかな」

翔鶴「川内さんたちや駆逐艦の子たちには申し訳ないですが……」

提督「船団護衛に重巡以上は効果はあるが収支は赤字にしかならないからね。どうしても負担の掛かり方が偏ってしまう」

翔鶴「戦力があるところだったら、戦闘組・遠征組で分けられるんでしょうけれどね」

提督「我が鎮守府は全員が戦闘要員だ」

翔鶴「私たち大型艦はまたしばらく出撃不能です」

提督「あー武蔵たちの追求を受ける日々が辛いよ。だが皆の練度を上げることも重要だ。なけなしの資源をやりくりしてどうにか訓練なり演習なりに出してあげないと」

翔鶴「この間武蔵さんが仰っていましたね。練度は撃っていればどうにかなる、と」

提督「逆に言えば撃たなければどうにもならないってことだね。確かにたくさん撃てば感覚も鍛えられるから言い得て妙だ」

翔鶴「なにか良い案はないでしょうか……」

提督「コトが戦闘である以上資源を使わずにって言うのは無理だよなあ。しかし動かすための資源はドカ貧」ムゥ

翔鶴「使用する資源は少なくて、かつ効果が見込める方法……かぁ」ウーン



ワーワー!!



提督「……ん? なんだか外が賑やかだなぁ」ドレドレ

翔鶴「吹雪ちゃんたちですね。みんなでボールを使って遊んでいるみたいです」

提督「俺も子供の頃はやれドッジボールだのなんだので遊んだっけ」

翔鶴「今日は天気も良いので、外に出るのにはちょうどいい日かもしれません」

提督「花粉も落ち着いたしな。……ん、待てよ。ドッジボール……」

翔鶴「?」


565: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/25(土) 21:20:56.05 ID:pPH6xvVE0


吹雪「はいっ! 白雪ちゃん」ポーン

白雪「っとと……深雪ちゃん、いくよ」ポーン

深雪「任せろッ。行くぜ、瑞鶴さんに深雪スペシャル!」バシッ

瑞鶴「うわぁ?! ちょちょっと、みんなで続けようって話してたのにどうしてスマッシュかますのよ!」

深雪「いやーついウッカリ」テヘペロ

利根「瑞鶴がヘマするから吾輩の所まで来ないではないか……」

瑞鶴「私のせいじゃないっての。もう、じゃあもう一回ね」

吹雪「まずは10回を目指して頑張りましょう」

瑞鶴「いくわよ。それっ」ポーン

利根「うむっ。吹雪よ、吾輩の天空トスを受けてみよ!」



筑摩「ふふっ。姉さん楽しそう」ニコニコ

提督「賑やかじゃないか」

翔鶴「こんにちは」

筑摩「あら、提督に翔鶴さん。お疲れさまです」

提督「あれはバレーのラリーか?」

筑摩「みたいですね。みんなで長く続けようとしているみたいです」

翔鶴「筑摩さんは入らないんですか?」

筑摩「ええ。こうして利根姉さんたちのことを眺めているので十分楽しんでます」

提督「観戦も悪くないが、やはりみんなで動いてこそ楽しいものだぞ。と言うわけで筑摩、みんなでドッジボールでもやらないか?」

筑摩「ドッジボール……ですか?」

提督「訓練の一環と称した運動ってやつをネ。例の資源のせいで再び艦隊行動を制限しないといけなくなったから」

筑摩「と言うことは、あれはやはり事実だと……?」

提督「信じられないのもわかるけれどね。俺が移動するのに使ったフネの修理にどうしても必要だったんだ」



翔鶴「(表向きは提督のフネのためと言うことになってます。いますが……)」



566: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/25(土) 21:25:55.50 ID:pPH6xvVE0

瑞鶴「……あれ。提督さんと翔鶴姉ぇだ」

白雪「司令官。お疲れさまです」

深雪「おいーっす」

提督「やあ。みんな元気だな」

利根「それはもう。出撃もないせいで元気は有り余っとるな!」

提督「そんなみんなに訓練と遊びを両立させた素晴らしいものを教えてあげようかと」

吹雪「訓練と遊び、ですか?」

瑞鶴「そんなのあったっけ?」

提督「ドッジボールだ」

瑞鶴「ドッジボール? なんでまた」

提督「相手にボールをぶつけないといけない以上、当然狙って投げるだろう? それ即ち砲雷撃と同じことだ」

吹雪「それは……」ネー

白雪「まあ、似てると言えなくもないような?」ネー

提督「更に狙われるということは避けるということ。それ即ち回避と同じだ」

利根「おぉ、確かにその通りじゃ」

瑞鶴「ここで素直に納得しちゃいけないような気がする」

提督「正直に言えばこじつけだけどね。だけど感覚を鍛えるにはちょうどいいんじゃないか? 避けるための反射神経にしっかり動くための下半身の安定にって」

瑞鶴「それならまあ、うん」

提督「本当なら海の上であれこれさせてあげたいけれど、今しばらくはコレで我慢してもらえないだろうか」

吹雪「い、いえ。私たちはそんな! むしろ気を使って頂いて申し訳ないくらいで……」

利根「ふむ。訓練や実戦に備えての基礎固めといったところかのぅ。艤装を扱える腕や足腰がなければ意味もないしの」

提督「遊びながら鍛えられる。そして誰でも出来る。資源を貯めないといけない現状ではこれが一番かなと」



白露「イチバン?!」バッ


567: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/25(土) 21:30:40.63 ID:pPH6xvVE0

提督「おおぅ?! 白露か」

白露「なになに? なんか面白いことですかー?」キラキラ

時雨「白露。まあ落ち着こうよ」

夕立「提督さん。あそぼあそぼー」ガバッ

提督「こ、こら夕立。背中に乗りかかるなって。は、話が進まない」

夕立「夕立、結構暇っぽい―」アソボー

提督「最近夕立の瑞鶴化が激しい件について!」

瑞鶴「ここで私なの?!」

村雨「はいはーい。夕立はこっちで大人しくしてましょうねー。はい、ステイ」

春雨「司令官。夕立姉さんがご迷惑をおかけいたします」ペコリ

夕立「姉妹の扱いがぞんざいっぽいー……」

提督「ま、まあそこまでじゃないから大丈夫だよ。とにかく、ドッチボールをやってみるのはどうかなと。もちろんそれ以外でも構わないよ」

瑞鶴「んー。まあ暇つぶしには持ってこいかもね。身体も動かせればいい運動になるし」

深雪「訓練再開までの準備運動ってかー。いよっし、ここは深雪サマ大活躍で弾みをつけてやるぜぃ!」

白露「イチバンは渡さないよ! あたしだってやる時はやるんだから」

時雨「そう言えば、夕立は身体が鈍ってるって言ってたよね」

村雨「私たちが狙ってあげるからたくさん逃げてみるー?」

春雨「し、集中攻撃は好きではありませんが……姉さんたちのためなら、春雨、やります」フンス

夕立「っぽいー?!」


提督「これでしばらくはなんとかなる……かな?」

翔鶴「そうですね。身体を動かせればなんとかなるかと」

提督「子供の頃なら俺も参加したんだがなぁ。いかんせん歳を取り過ぎた」

翔鶴「あら、まだ十分お若いではないですか」

提督「兵学校卒業以来机や書類相手ばかりですっかり鈍った」

翔鶴「だからこそ、と言うのもありますよ?」

提督「……む」


ドッジボールが訓練科目に(しばらく)追加されました


573: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/28(火) 19:15:35.21 ID:6DXZfzU+0

・---・鶴タチノ休息・---・


瑞鶴「戦闘から帰ってきたらまた長い休みが待っていたのでしたっと」

翔鶴「こればかりはどうしようもないわね」

瑞鶴「前に鳳翔さんからもチラッと聞いたけどさ、ウチって本当に資源に余裕が無いんだね」

翔鶴「基本は配給が全てだから……遠征だけでは限界があるわ」

瑞鶴「一時間半とか三時間位でパッと資源が稼げる遠征ってないものかねぇ」メメタァ

翔鶴「そう、ねぇ。もしあったら資源に苦労することはないかも?」

瑞鶴「そもそもさ、あの子たちの艤装修理のために使っちゃったわけだけど、あれって直せたんだ。深海棲艦の技術なんでしょ?」

翔鶴「普通だったら直せないらしいんだけれど、そこはもう妖精さんの技術というか腕というか」ネ?

瑞鶴「私たちもあぁ言うの装備できたら誰にも負けないんだろうけどねー」

翔鶴「妖精さん曰く、資源さえあれば量産は出来るって言ったたわよ」

瑞鶴「ホントっ?! じゃあ私も噴式震電とか橘花改とか……」

翔鶴「でも私たちには絶対に扱えないわ。例えどんなに訓練してもね」

瑞鶴「えーそんなことナイと思うけどなぁ。やってみないと分かんないじゃん」

翔鶴「……一度だけね、装備したことがあるの」

瑞鶴「そうなの?」

翔鶴「まだ雲龍さんたちが来たばかりの頃よ。技術調査の一環で私たちが扱えるかを試してみたんだけれど……」

瑞鶴「ど?」

翔鶴「艦載機式符を矢に変えた上で試したんだけれど、噴式機の吐き出す熱に甲板が耐えられなくて失敗したわ」

瑞鶴「うわぁ……」

翔鶴「他にも色々調査したけれど、結局は専用装備ということで結論付けたの」

瑞鶴「そっかあ。でも、雲龍たちの艦載機はしょうがないとしても、冬月たちが使ってるあの高角砲はもうちょっとどうにかした方がいいんじゃない? 本気出したら絶対壊れるってちょっと……」

翔鶴「それこそがロマンだって妖精さんは言ってたわ」

瑞鶴「ピーキーすぎるロマンって一体」ウーム


高性能とピーキーはロマン枠


578: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/30(木) 08:26:20.58 ID:oNGsjYI/0

・---・チェーンジ・---・


翔鶴「提督。まもなくニ三○○です」

提督「もうそんな時間かぁ」

翔鶴「そろそろお休みになってくださいね」

提督「だな。幸か不幸か出撃が無くなったせいで書類が少なくて済む。素直に喜べないがね」

翔鶴「ですね」クスクス

提督「そう言えばさっきから妙に静かになったが……」チラリ



瑞鶴「Zzz……」グースカピー



翔鶴「もう瑞鶴。眠たいならここのベッドじゃなくてちゃんと部屋に戻りなさい」

瑞鶴「……んぅー」ゴロン

提督「まあまあ。こんな時間だから仕方ないだろう。どれ、おネムな姫様を部屋まで運んであげるとするかな」

翔鶴「提督は瑞鶴に甘すぎです」ムゥ

提督「そうかなぁ」



knock knock      knock knock



翔鶴「あら、誰か来ましたね」

提督「こんな時間に誰か用かな。どうぞー」



ガチャッ



秋月「あ、あのぉ。夜分遅くにすみません司令。秋月です……」ソローリ

提督「秋月? どうしたんだ」

翔鶴「何かありましたか?」

秋月「いえ、その。そうではないんですが……あのー」キョロキョロ

提督「???」

翔鶴「???」

秋月「えっと……。も、もう大丈夫ですよ!」

提督「は?」ダイジョブ?



ガタンッ

??『こんばんハ。提督』



提督「雲龍ッ?!」ビクッ


579: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/30(木) 08:30:54.32 ID:oNGsjYI/0

雲龍「こんな夜更けにゴメンなさいネ。でも、どうしても相談したいことがあって来たノ」

提督「いや、それはまあ構わないんだが……一体何処から出てきてるんだよ」

翔鶴「本棚の裏に隠し通路が」イツノマニ

雲龍「ちょっと、ネ。何かあった時のために作ってもらったノ」

提督「まあその前にアレだ。秋月、悪いがドアを閉めて鍵をかけてくれるか。見られたり来たれたりしたらマズイ」

秋月「は、はい。失礼します」ガチャン

翔鶴「まるでこの間の作戦前みたいですね」

雲龍「……そう言えバ。あの時もこんな時間だったわネ。みんな揃ってここへ来たっケ」

提督「最近隠れる気がなくなってきてないか? ちゃんとリスクは頭に入れててくれよな」

雲龍「わかってるワ。安心してちょうだイ」

提督「それで、相談とはなにかな。こうまでして来たってコトはなにか重大な事でも?」

雲龍「実は妹の葛城のことデ――――」



ガタッ

??『あっ、こ、こラ葛城。ダメでしょう!』

葛城「いいじゃんいいジゃん。もう、雲龍姉ぇも天城姉ぇも心配症なんダから―」ヒョコッ

提督「は……?」

翔鶴「か、葛城……さん?」エ

天城「す、すみませン提督。それニ翔鶴さんも。夜分失礼します……」

雲龍「」アチャー

葛城「翔鶴さんニ提督。こんバんは」オテテフリフリ

提督「え、あ……え?」

雲龍「まあえっト。こういう訳でネ」ウン

葛城「聞いてよ二人ともー。雲龍姉ぇたちったら変なコト言ウのよ。私が変わっタって!」

提督「うん。まあなんだ。キミは本当に葛城だよな?」

葛城「ちょ、あなたまでそんなことを言うの? みんなしてホント失礼ちゃうワねっ」

提督「」エー


580: ◆kVQhfnJMM6 2015/04/30(木) 08:36:14.02 ID:oNGsjYI/0

葛城「私が雲龍型三番艦葛城でなくてなんだって言ウのよ」

天城「か、葛城。とにかくちょっト落チ着いてっ。ね」オロオロ

提督「えーっと……これは一体どうしたものか。夕飯何食べた?」

雲龍「みんなと同じものヨ。まさか持ってきてくれる鳳翔がヘンなもの入れるとは思えないシ」

提督「うん。それは俺も同意だ」

翔鶴「葛城さんはいつから……こんな?」

雲龍「ご飯食べ終わって、お風呂で転寝をしてたノ。それで上がってきたラ……」コウ

天城「あ、天城たちモ少々混乱気味でして」ハイ

葛城「だぁから私は普通だッての!」

雲龍「ボクっ子で、私に似て少しのんびり屋だったはずなのニ……」

葛城「いやいや、雲龍姉ぇこそ誰のこと言ってルのさ。私がボクっ子? のんびり屋? ありえないでシょー」ナイナイ

天城「もっとオ淑やかナ性格のはずなんですが……」

葛城「私は十分にお淑ヤかよ!」



イヤイヤイヤ

アリエマセン

ムキィーッ!



提督「……これはまぁ、うん。確かにここへ来るわなあ」

翔鶴「あはは……」

提督「ガラリと性格は変わってるが、葛城であることに違いはないみたいだ」

翔鶴「そのようですね。しかし、なんと言うかこう、今の葛城さんを見てると――――」



瑞鶴「……んぅーウルサイなぁ。こんな時間になんなのよぉ」ムクリ



雲龍「あ、瑞鶴姉」イタノ

葛城「」ピクッ

瑞鶴「えぇ……雲龍? なんでアンタがここにいんの。それに天城に葛城まで」ゴシゴシ

天城「すみません。オ休みのところ」ペコリ

雲龍「実は葛城が――――――」

葛城「ず、瑞鶴センパイ! お疲れさまです!!」ズイッ



瑞鶴「……は?」


葛城さんの性格がVer1.50になりました


586: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:00:33.31 ID:U2qiiPyI0
注:この後の葛城サンの発言に他意はありません 念のため



・---・スキスキ センパイ!・---・


葛城「瑞鶴センパイ! お疲れさマです!!」ズイッ

瑞鶴「は、はぁ? アンタ葛城よね? 急にどうしたのよ」

葛城「私、瑞鶴センパイのファンなンです! 憧れてマすっ! お慕い申し上げてマすッ!」ズズズイッ

瑞鶴「ちょちょちょ……たっタンマ! 説明を、誰か説明をお願いーっ」ヘルプミー

天城「はいはい。いいかラ葛城ハ落チ着きなさい。瑞鶴さんガ困っているでしょう」

雲龍「葛城、ステイ」

葛城「私は犬じャない!」

瑞鶴「な、なんなのよ一体。私が寝てる間に何が起こってるわけ……?」

翔鶴「えっと……。実は葛城さんの性格が変わってしまったみたいなの。この通りに」

瑞鶴「変わるとかそんな次元じゃないわよ」コレ

提督「結果は見ての通りだが原因は不明。本人も変わったという記憶はないと言ってるし、どうしたものか」

瑞鶴「やっぱり元深海棲艦なのが関係してるの?」

提督「可能性があるともないとも言えないな」

葛城「もぅ。みんなして私のことヘンって言っテるし。私の方こそ説明して欲しいくラいよ」

雲龍「頭が痛くなってくるわネ」

天城「雲龍姉様ニ同じく……」


587: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:05:20.21 ID:U2qiiPyI0

提督「とりあえず現状は把握した。原因がわからない以上追求しても押し問答になりそうだから先を見よう。葛城、今自分が置かれている状況はわかってるよな? 自分が何者であり、どうして他の艦娘とは違うがということだ」

葛城「それはわかっテるわ。私たちは元深海棲艦。髪の毛の先端が色が違うのも、手や足の一部が違う色なのもそのせいダって」

提督「ふむ。記憶は問題なさそうだな。じゃあ、何か変わったこととかあるかな」

葛城「そう言わレても……」

提督「なければそれでいいが、どんな些細な事でも構わないよ」

葛城「ウーん。この状況以外にないカなあ」

提督「じゃあ今度は雲龍たちに聞いてみようか。普段と比べて性格以外で何が変化はあるかな」

雲龍「性格の部分が強すぎて他が出てこないけれド……強いて言うならバ」

天城「葛城って、瑞鶴さんのことこんなニ大好きでしたっけ? もちろン普段仲ガ悪いとかではなくて」

葛城「なに言ってるのよ天城姉ぇ。瑞鶴センパイは私たち雲龍型……いいえ、全空母憧れの的じャない!」


雲龍・天城『えっ?』

提督・翔鶴『えっ?』





瑞鶴「え?」ナゼニ



588: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:10:43.69 ID:U2qiiPyI0

葛城「瑞鶴センパイと言えば、開戦から機動部隊の最期までを戦い抜いた歴戦の猛者! 敵機動部隊と何度も雌雄を決した豪傑なのよっ。格下相手と序盤のオイシイ所だけ持ってって後半の激戦を知らずにさっさとリタイアした先達たちとは格が違ウのよ!」←葛城サンの個人的見解でス

瑞鶴「」エー

翔鶴「そ、それは多方面に波紋を広げそうな……」ヤメテ

葛城「しかも戦った戦場尽くをほぼ無傷で凌いダのよ? 最期は物量の前に矢尽き刀折れて沈んじゃったけど、誰もが認める数多の戦果をあげ続けて、次なる戦いのために被害は受けないナんて。これで憧れないなんて選択肢あると思う? ないワよね」

瑞鶴「」

雲龍「まぁ、それは確かにねエ」ウン

天城「天城モ否定はできません……」

翔鶴「わ、私も最期以外は一応一緒にいたんだけれど……ね。被害担当艦としてDEATHが」ホロリ

葛城「そんなセンパイにあやかりたくて、私も迷彩をおソロにしたし、頑張って弓道だって覚えたんダから!」

雲龍「そう言えば、あの子の艤装私たちと……」

天城「は、はい。いつノ間にカ弓に」

瑞鶴「て言うか、アレ私にとっては死装束だからイヤなんだよなぁ」

葛城「あ、あれ?」アレ?


589: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:15:33.19 ID:U2qiiPyI0

葛城「せ、センパイ。いつもの迷彩柄のお召し物は……?」

瑞鶴「だから、あれは私にとって縁起の良いものじゃないから着ないわよ。ほら、翔鶴姉ぇと同じでしょ」

葛城「あ、ぅ……。でっでも、そのお召し物もとっても似合っテます! さすガです!」

瑞鶴「」ナンテコッタ


提督「な、なんと言うか……。性格と同時に凄まじいまでの瑞鶴愛が芽生えたというか」ナァ

翔鶴「姉として妹が慕われるのは喜ばしく誇らしいのですが……」ネェ

天城「なんだカ葛城ノ性格ヤ言動まデ瑞鶴さんそっくりニ感じますね」

雲龍「……性格ばかりで気づくのが遅れたけど、アナタ胸縮んダ?」ドタプーン

天城「えっ?」ドタプーン

葛城「なッ?!」ペターン

雲龍「何もソコまで瑞鶴姉に似せなくてモ」

翔鶴「瑞鶴?」

瑞鶴「なんでここで私を見るのよ翔鶴姉ぇ!」

葛城「わ、私だって好きで小さいわけじゃなイもん! 雲龍姉ぇたちが大きすぎるから余計目立ツだけ! ねっセンパイ?」

瑞鶴「だからここで私にふらないで。同じ姉妹なのに、どうして……」ブツブツ

葛城「そもそも私の機関が二人と違って駆逐艦からの流用ダから……ブツブツ」

翔鶴「あ、あはは……」



雲龍「まア。私の妹だから大きくはなるでショ。そのうチ。きっト。たぶン……?」

葛城「とっとニかく! 私の憧れは瑞鶴センパイなの。センパイみたいに活躍できるようにこれからも研鑽スるわ」

提督「その心がけは大事かもな。雲龍たちにとって瑞鶴は立派なお姉さんというわけだ。普段は難しいがいろいろ教えてあげたらどうだ」

瑞鶴「まあそれはもちろんいいけど……。結局、葛城の性格はどうするの?」

提督「棚上げだな。現状慣れてないだけで問題はなさそうだし、何かあったらまたその時にでも」

雲龍「そうネ。葛城が私たちの妹なことに変わりないシ」

天城「今感じていル違和感も、徐々ニ慣れていくト思います」

葛城「だから私は……まあ、もうイっか」ウン

提督「さ、それじゃあ時間も遅いしもう寝るとしよう。秋月もソファーじゃあカワイソウだ」

瑞鶴「あ」ソウイエバ



秋月「………………」Zzz


590: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:20:19.66 ID:U2qiiPyI0

翔鶴「私たちが盛り上がっている間に寝てしまったんですね」

提督「なんだかんだ0時前だしね。冬月たちもとっくに寝てるんじゃないかな」

雲龍「今回のことでこっちの事前偵察を頼めるのが秋月しかいなかったかラ……」

天城「申シ訳ないことをしてしまいました」

提督「俺が向こうまで運んでいこう。瑞鶴たちもせっかくだから一緒に寝てくればどうだ?」

葛城「あ、それ賛成っ! 提督(あなた)イイコト言うじャない。センパイ、一緒に寝まシょう!」

瑞鶴「いいけど……」

翔鶴「よろしいのですか?」

提督「出撃もできないし、明日の昼前までだったらなんとか誤魔化せておけるだろうから。朝鳳翔にはそれとなく言っておくさ」ヨイショ

秋月「んんっ……ふゆづき……」ギュッ

提督「軽いなあ。早く食生活にも慣れてもらわないと」

瑞鶴「いいなあ」ウズウズ



………………

…………

……


591: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/03(日) 10:25:14.54 ID:U2qiiPyI0

―数日後―

翔鶴「提督。こちらの書類についてですが」

提督「それは確か先週送られてきたヤツのどっかに……」



コココンココ コココ



翔鶴「あら。今日もいらっしゃったみたいですね」

提督「……はぁ。いまは大丈夫だぞ―」



ガタンッ

葛城「こんニちは。瑞鶴センパイいる?」ヒョコッ

提督「瑞鶴なら今食堂にお菓子取りに行ってるが……」

葛城「フーん。じゃあちょっと待たせてもらおウかなー」

提督「………………」

葛城「あ、これ美味シそう。いただきマーす」サクサク

提督「なあ、葛城よ」

葛城「んー?」モグモグ

提督「来るなとも言わないし拒否することもないが、もう少し慎重になってくれよ。存在がバレたらマズイのは分かるだろ?」

葛城「それはわかってルわよ。だからこうしてちゃんと確認してるデしょ?」モウヒトツ

提督「いや、まあそうなんだが……」

葛城「だいたい雲龍姉ぇも天城姉ぇも気にして遠慮しすぎナのよ。冬月たちは秋月のこともあるしまあしょうがなイけど」

翔鶴「むしろお二人の考えが推奨なんですがね……」

提督「バレたらどうするんだかな」

葛城「いつバレるかなんて後ろ向きに心配するよりも、私は確認した上で堂々と瑞鶴センパイに会いに来るわ!」フンスッ

提督「……まあ、前向きなのはいいことなのか?」

翔鶴「ど、どうなんでしょう」ウーン



ガチャッ



瑞鶴「ただいまー……って、あれ? アンタまた来てたの」

葛城「こんニちは! センパイ」

瑞鶴「ホント元気ねぇ。あ、コレ食べる? 鳳翔さんに作ってもらったの」

葛城「ゼヒ!」キラキラ

提督「……ノックもせず開けるのは瑞鶴だけ。だがもし誰かがうっかり開けたらと思うと」

葛城「なに言ってルのよ。センパイはそれだけあなたの事を信頼してるんデしょ。ね、センパイ」

瑞鶴「うん? んー……んっ。まあね!」←気にしてなかった

提督「……ホント、頼むぞー」


ずいかく が ふたり?


597: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/06(水) 19:10:26.20 ID:GfUC5sUm0

・---・アル日ノ鎮守府:利根・---・


利根「筑摩よ。来るべき戦に備えて本日の訓練は索敵は念入りに行なうぞ」

筑摩「そうですね。本日は貴重な燃料を使用しての戦闘訓練ですので、無駄には出来ません」

利根「うむっ! 瑞鶴に大鯨、他の偵察機はいらん。我らが利根型が全方位を務めるぞ」

大鯨「わかりました。では攻撃はお任せください」

瑞鶴「はいはい。じゃあ私はその分直掩機を上げておこうかな」

利根「相手は武蔵率いる打撃艦隊。懐深く攻めこまれては軽装な我らに勝ち目はない。先手必勝で叩くぞ」

瑞鶴「翔鶴姉ぇが補佐に入ってるから油断も出来ないしね。でも、まずはセオリー通り来るかも?」

利根「ふふふふ……いつまでも新参者と侮るなかれ。利根機動艦隊、いざ出陣じゃ!」

筑摩「確実に先手を取りましょう。索敵機、発艦開始します」ガションッ

利根「吾輩も続くぞ。発艦じゃッ……って、むぅ?」ガコッ

筑摩「姉さん。どうかしましたか?」

利根「あれ、おかしいのぅ。カタパルトが……」ガコンガコン

那珂「だいじょうぶー?」

夕立「故障っぽい?」

利根「へ、平気じゃ。この位ちょっと力を入れてしまえば……!」グググッ

瑞鶴「ちょ、ちょっとそんなに乱暴にしたら」

利根「くっ……この……!」グギギ



バキン!



『あ』



利根「あ」コワレタ


598: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/06(水) 19:15:48.88 ID:GfUC5sUm0


提督「――――それでさっきからしょんぼりしてるのか」

瑞鶴「そりゃあんな無理に力入れたら壊れるわよねえ」



利根「吾輩のカタパルトが……」

筑摩「姉さん。元気を出してください。ね? 機械な以上故障する時もありますよ」

利根「ち、ちくまあ」オロローン


筑摩「(あぁ、しょんぼり顔に涙を浮かべる姉さんも不謹慎ですがまた保護欲をソソりますね)」ハァハァ


提督「とりあえず、壊れた利根のカタパルトは修理に出した。まあ明日にでも直るんじゃないかな」

利根「肝心な時はいつもそうじゃ。航空機を運用できない吾輩なんぞ、ただの重巡以下……散っていった戦友たちに申し訳もたたん」

提督「誰も散ってないって。今日のことは残念だったがまた訓練日を作るから」ネ

利根「……寝る」トボトボ



ゴソゴソゴソ



提督「そう言いつつ何故ここのベッドで寝るのか」

瑞鶴「やっぱり目の前にベッドがあるからじゃない? 私もよく使うし」

提督「初雪や加古もそうだが、使用目的が明らかに間違っている……!」

瑞鶴「気にしない気にしない。じゃ、私は先部屋に戻ってるわね」

筑摩「私も姉さんの分のお洗濯物を畳まないといけないので、失礼いたします」

提督「利根はこのままでいいのか?」

筑摩「そう、ですね。では起きたら戻るよう伝えていただけますか」

提督「了解だ」


利根「Zzz」


599: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/06(水) 19:21:03.27 ID:GfUC5sUm0

提督「………………」サラサラ

利根「Zzz」

提督「………………」ペタン

利根「Zzz」

提督「………………」オワッタ


提督「(マジ寝か)」



knock knock

翔鶴『翔鶴です』



提督「はいよー」



翔鶴「戻りました提督……って、あら?」

提督「お疲れさま。ありがとう翔鶴」

翔鶴「いいえ。これくらいなんともありません。それよりも……瑞鶴、またここで寝てるの?」


瑞鶴?『Zzz』


翔鶴「まったくもう。寝るならちゃんとお部屋で寝なさいっていつもいつも――――?」アレ

提督「ははは。残念ながら瑞鶴ではないのだ」

翔鶴「利根さん……ですね」


利根『Zzz』


提督「今日のことでチョットな。まあ、不貞寝というやつだろう」

翔鶴「髪型とリボンでつい瑞鶴とばかり……」

提督「似てるよなあ。同じ格好させて後ろ向きに立たれたら判断付かないかもしれないよ」

翔鶴「ですね。でも、瑞鶴の方が少し背が高いかもしれません」

提督「そう言うワケだから、ここは静かに書類作業といこうじゃないか」

翔鶴「あ、その事ですが提督。妖精さんがお話があると」

提督「妖精さんが? なんだろう」

翔鶴「急ぎではないと言っていましたが……」

提督「まあ、せっかくだから休憩がてら行ってみようかな。翔鶴はどうする?」

翔鶴「お供いたします」

提督「ん。じゃあちょっと行ってくるか。利根はまあ、しばらくこのままでもいいだろう。せっかくぐっすり眠ってるみたいだし」


……この判断が後の騒動カッコカリを引き起こすこととなる……?


606: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/09(土) 17:36:25.93 ID:tp1lfnwf0

・---・ヤッチマッタZE・---・


葛城「さァーて! 今日も瑞鶴センパイの所に遊びに行こウかな」

雲龍「あのねェ。そんなしょっちゅう遊びに行ってたら本当にバレるわヨ?」

葛城「ちゃんと注意してるッてば。あ、お菓子とか持ってった方がいいカな―」

天城「葛城ハ本当ニ瑞鶴さんノ事がオ気ニ入りなのね」

葛城「もっチろん。腕を上げて、いつか絶対に一緒の艦隊組むんダから! この間の作戦のセンパイカッコ良かっタなあ」キラキラ

雲龍「完全にお熱ネ」

天城「ですね」

葛城「じゃ、行ってきマーす」タタタッ


雲龍「はァ……。出撃が再開できたら少しは落ち着くかしらネ?」

天城「それまではもうしばらくノ辛抱、ト言っタ所でしょうか」

雲龍「冬月たちの艤装修理が終わるまであと少シ。何事もなければいいけれド」


607: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/09(土) 17:40:40.89 ID:tp1lfnwf0

葛城「ふっふフーん。セーンパイっと」コココンココ コココ



………………



葛城「あれ?」コココンココ コココ



………………



葛城「誰もいないノかな……? 提督も?」ガタタッ



しーん……



葛城「見事にもぬけの殻ね。お夕飯にはまだ早いし、燃料がないから出撃モない。……ああ、言ってて悲しくなっテきた」ホロリ

葛城「翔鶴さんもいないし、こりゃあ出直してきた方が――――ん?」チラッ


??『Zzz』


葛城「あの髪型に白いリボンって……ひょっとしなくても瑞鶴センパイよね。むこう向いてるからお顔は見えないけど、やっぱり寝顔も素敵なんだろウなあ」

葛城「瑞鶴セーンパイっ! 葛城、来ちゃいマした」


瑞鶴?『……んぅ。かつらぎ……じゃと?』モゾッ


葛城「ん?」ジャト?


瑞鶴?『……おぉ、おぬしかつらぎかぁ。ひさしいのぅ。くれいらいじゃ』モゾモゾ



葛城「」ビクッ




葛城「(やっ……やっちゃったあぁああぁぁぁーッ!)」


608: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/09(土) 17:45:46.78 ID:tp1lfnwf0

葛城「」ダラダラダラダラ

利根「……いままでどこにいたんじゃ。あねのあまぎもいっしょか? むさしのようにながいひるねかの」フワフワ

葛城「そ、そんなカンジ……デス」

利根「……ひょっとして、わがはいのことだだれだかわかっとらんな?」ジー

葛城「え、エート」オロオロ

瑞鶴?「……おぼえておらぬか。とねじゃよ」ネムイ

葛城「いやぁーマア、ソノ」

利根「……みてのとおり、わがはいちとねむいのじゃ。すまぬがはなしならまたあとにしてくれるとありがたい……」モゾモゾ

葛城「ど、ドーゾ」

利根「うむ……またあとでのぅ」Zzz

葛城「………………」

葛城「(ど、どうシよう)」ヤバイ



ざわざわ……



葛城「(だ、誰か来る! とりあえず戻らナいと!)」ダッ



ガタンッ

ガチャッ



提督「――――部屋に戻ってたんじゃなかったのか?」

瑞鶴「だって一人だと暇だったんだもん。だから提督さんと遊ぼうと思って」

提督「遊ぼうって……」

翔鶴「たまには注意してもいいんですよ? この子のためにも」

提督「んー、まあな」

翔鶴「もぅ」

瑞鶴「えへへー。やっぱり提督さんは優しいなっ」

翔鶴「優しさと甘やかしは違いますよ提督」

提督「まあまあ」

瑞鶴「とりあえず翔鶴姉ぇ、お茶でも飲もうよ」

提督「そうしようそうしよう」

翔鶴「はぁ……。わかりました。では今用意しますね」


利根「……むう?」ムクリ

利根「………………」キョロキョロ


利根「……ゆめ、か?」


609: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/09(土) 17:50:49.86 ID:tp1lfnwf0

………………


提督「それで、よく眠れたか利根」

利根「うむっ。一眠りしたらスッキリしたぞ。カタパルトの事は残念じゃったが、次こそは吾輩の活躍を見せつけるのじゃ」

提督「それは安心だ」ヨカッタ

瑞鶴「あの時の慌てようったらすごかったもんね―」ズズズ……

利根「しょうがなかろう。吾輩にとってカタパルト故障は切っても切れぬ因縁なのじゃ」

提督「嫌な因縁だな」

利根「全くじゃ。彼奴とは真の意味で分かち合えた時が本当の力を発揮できるであろう」

翔鶴「まぁ」クスクス


利根「……ところで、つかぬことを聞くがここに葛城がおらんかったか?」

提督「は?」ピタッ

翔鶴「え?」ピクッ

瑞鶴「葛城……?」

利根「うむ。瑞鶴は知っておるじゃろ。雲龍の末妹じゃ」

瑞鶴「いやそれはわかるけど……」ナンデ

利根「なんかこう、枕元に葛城の姿を見た気がしたのじゃ。会話もした気もするが、皆が知らぬ所を見ると吾輩の夢の中の話だったようじゃな」

提督「ま、まあ利根は今まで寝てたんだし、混同することもあるよな」

利根「うーむ……確かにその通りじゃが、何故吾輩は夢の中のあやつを"おっどあい"にしてしまったのかのぅ」ムムム

提督「………………」チラッ

翔鶴「………………」チラッ

瑞鶴「葛城ねえ。あの子には悪いことをしたわ。一番大事な時に先達である私たちはもういなかったわけだし」

利根「瑞鶴のせいではない。時期や間が悪かっただけじゃ。それに、今の世ならあやつらも活躍できるであろう」

瑞鶴「……そうね。案外人知れず暴れまわってるかも」

提督「あっ。そう言えば今日中に仕上げないといけない書類があるんだった。仕上げちゃわないと」

翔鶴「そ、そうですね。徹夜になったら大変ですし」イソイソ

利根「む。そうか。では吾輩はこれにて失礼させてもらおうかの」

提督「急にすまんな。カタパルトは明日には直ってるから、工廠に取りに行ってもらえるか」

利根「了解じゃ!」



提督「……翔鶴。至急雲龍たちに確認を」ヒソヒソ

翔鶴「はい」ヒソヒソ


610: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/09(土) 17:55:37.04 ID:tp1lfnwf0

雲龍「――――コノ度ハ、愚昧ガ大変ゴ迷惑ヲ、オ掛ケ致シマシタ」フカブカ

天城「姉デアル天城タチノ監督不行デス」フカブカ



葛城「ビエエェェェンッ!」←たんこぶ二つ



提督「……と言うことは、やっぱり利根の話は事実だったのか」

雲龍「提督がいない時は扉を開けないようにって言ってあったんだけれド……」

天城「慢心しテ勝手ニ開けタ挙句、眠っていタ利根さんヲ瑞鶴さんト間違えたみたいでして」

提督「うーん。なんと言うか、ちょうど翔鶴とそんな話をしたばっかりだった」

翔鶴「あはは……」

雲龍「葛城曰く、半分寝てたらしいけれド……」

提督「ああ。本人も夢の中の出来事だと思ってるから完全に露呈したわけじゃないかな。でも、言われた時はさすがに驚いたよ」

翔鶴「雲龍さんたちの特徴を当てられると、見間違いとも言えなくなりますからね」

天城「それで、天城たちはこれからどうなるんでしょう……?」

雲龍「やっぱりしばらく会わない方がいいのかしラ」

葛城「え、そっソれは……!」ヤダ

雲龍「葛城」

葛城「あぅ……」ションボリ

提督「まあ、今度からちゃんと気をつけてもらえれば今までどおりで構わないよ。みんなに不便を強いてるのは事実だから」

葛城「……イいの?」

提督「ただしちゃんと約束は守ってくれよ。誰もいない時は開けない。今回みたくなりたくなければこれは絶対だ」

葛城「う、うん!」

提督「ほんと頼むぞ。 ……しかし、いろいろと限界かね。知る者も増えたし隠し通すのにも限度があるな」

翔鶴「いろいろと考えなければいけませんね」

提督「ああ」


だって好きなんだもん


616: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/12(火) 21:10:24.07 ID:WuzIibbH0

・---・続・月夜ノ鳳鶴・---・


提督「今日はまた一段と暑いな……!」

提督「最近は寝る時も冬布団だと寝苦しい日も増えてきた。むしろ蹴っ飛ばしてる時さえある」

提督「そう遠くなく半袖にもなるだろう。それはつまり……」



提督「鳳翔。今夜辺り久々にどうかな」クイッ

鳳翔「あらあら。では何か肴を用意いたしますね」

提督「うむっ。期待してるよ」ワクワク



翔鶴「………………」



617: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/12(火) 21:15:29.76 ID:WuzIibbH0


提督「――ここへ来るのも半年ぶりか。なんか、つい最近までやってたような気もするってのに」

鳳翔「ふふっ。今夜使われるとのことでしたので、掃除はしっかりとしてありますよ。さぁ、どうぞ」

提督「ありがとう。んっ……ほぅ。いやあ部屋で呑むのとはまたひと味ちがうな!」

鳳翔「やはり外の空気を肌で感じているせいでしょうかね」

提督「月見酒の醍醐味ってやつだよな。まあ、これでキレイに晴れてたらもっと良かったんだが」

鳳翔「ですね」ニコニコ

翔鶴「………………」

提督「翔鶴はどうしたんだ。ずいぶんと大人しいが」

翔鶴「いえ、別に……なんでもありません」グイッ

提督「ああこらそんないっぺんに飲んだら……」

翔鶴「だいじょうぶですっ。私だってお酒くらい飲めます」ジィッ

提督「それは呑むじゃなくて"飲む"だぞ」

翔鶴「いっしょですっ」グイッ

提督「」エー

翔鶴「だいたい提督は鳳翔さんと仲が良すぎです。お酒飲む時はだいたい一緒ですしー」ブゥ

提督「そりゃあ数少ないお酒仲間だからなぁ」

翔鶴「私じゃダメですか?」ボソッ

提督「む……」

鳳翔「あらあら。まあまあ」


618: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/12(火) 21:20:19.95 ID:WuzIibbH0

翔鶴「Zzz」スヤスヤ

提督「そしてあっと言う間に潰れてしまった……」←膝枕中

鳳翔「翔鶴さんはお酒に強くありませんからね」

提督「だからいつもはお茶にするか、飲んでもゆっくり少しずつって言ってるんだがねぇ」

鳳翔「ふふっ。でも、翔鶴さんの気持ちも理解できます。相手が提督だからこそ、こうして一生懸命なんだと」

提督「それはまあ、俺だってわかってるさ」

鳳翔「あら。それはそれでなんだか妬けてしまいますね」ニコニコ

提督「勘弁してくれ」

鳳翔「どうしましょうかねえ」

提督「ははは……。しかし、時の流れってのは早いものだな。気が付くと翔鶴が一番長くなってしまった」

鳳翔「初代の吹雪ちゃんが二ヶ月ほどで、あとを継いだ私が半年くらいでしたでしょうか」

提督「ああ。そしてあの事件の寸前に来たのが翔鶴だ」

鳳翔「そのすぐ後でしたね。提督が秘書艦に任命したのは」

提督「今となっては頼りになる右腕的存在だよ。本当に感謝ばかりだ」ナデナデ


翔鶴「うぅ……ん」ムニャ……


提督「もちろん。鳳翔や吹雪、それに他のみんなにだって感謝はしてるぞ。みんなあっての鎮守府だ」

鳳翔「まあ」フフフ


もうすぐいちねん


619: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/12(火) 21:25:26.22 ID:WuzIibbH0

・---・オマケノ鎮守府:翔鶴・---・


提督「さて、それじゃあこの辺でお開きにしようか。俺は寝てしまった翔鶴を部屋まで連れて行くよ」

鳳翔「では私はお片付けを。ついでに朝食の下ごしらえをしてしまいます」

提督「いつもありがとう鳳翔。大鯨や間宮にも伝えておいてくれ」

鳳翔「ふふっ。わかりました。では、おやすみなさい」

提督「おやすみ。……さ、お姫様。お城へ戻る時間ですぞ」ヨイショ

翔鶴「んー……」ギュッ

提督「なんと言うか、完全に酔っぱらってるなぁ。こんな状態の翔鶴も珍しいというか」

鳳翔「ですね」ニコニコ



………………

…………

……



提督「まさか部屋に誰もいないとは。鍵もかかってたし……瑞鶴は何処へ行ったんだ?」

提督「放置する訳にはいかないから執務室のベッドへ連れてきたが、さてさて。これは困ったなぁ」


翔鶴「Zzz」ギュッ


提督「しっかりと掴まれてしまって離れられない」ウン

提督「無理に起こすのは悪いし……しょうがないか」



ゴロン



提督「なんだか会議に出た時の夜を思い出すなぁ。なんて」

提督「しばらくしたら翔鶴も起きるだろうし、その時に部屋に戻ればいいか」


その後目を覚ました翔鶴が驚いたのはまた別のお話


625: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/15(金) 20:50:21.07 ID:TRhZC49V0

・---・鶴タチノ休息・---・


瑞鶴「ついに翔鶴姉ぇが鎮守府内でも朝帰りをした件について」

翔鶴「そんな人聞きの悪い事を言わないでっ。酔い潰れてしまっただけよ」

瑞鶴「酔い潰れるほどお酒飲んでナニしてたんですかねえ」ニヤニヤ

翔鶴「またゲンコツされたいの?」グッ

瑞鶴「――――」←お口チャックの仕草

翔鶴「もぅ。大体提督が鳳翔さんと仲が良すぎるのが……」ブツブツ

瑞鶴「何を焦ってるのかねぇ。確かに提督さんは鳳翔さんと仲いいけどさ、だからって翔鶴姉ぇが捨てられたわけじゃないでしょ?」

翔鶴「それはそうだけど……。その捨てられたって言い方はチョットね」

瑞鶴「あーあ。人間ってメンドクサイよね。ケッコンは一人までーなんて言わずに好きなだけすればいいのに」

翔鶴「一人だからこそ意味がある、とも言えるんじゃないかしら。それに、そうなったら特定の誰かに偏ってしまうかもしれないし」

瑞鶴「昔と今じゃあいろいろ違うんだねー。頑張ってね翔鶴姉ぇ。私含めてライバルは多いよ」

翔鶴「それは……って、ちょっと待って瑞鶴。あなたもなの?」

瑞鶴「へへっ。さぁてね! うかうかしてると横からかっさらわれちゃうかもよ―」ホホホ

翔鶴「えっ? ちょっと瑞鶴、え?」アレレ


翔鶴さんは驚いています


631: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/17(日) 21:15:23.61 ID:upcNWyG50

・---・アル日ノ鎮守府:翔鶴、瑞鶴・---・


ガチャッ

瑞鶴「おっはようございまーす」

提督「おはよう瑞鶴。今日はまたずいぶん早いご出勤で」

瑞鶴「なんか目が覚めちゃってねー。うん。寝覚めスッキリって感じ」

提督「それは重畳。で、おとなりの翔鶴は……」

翔鶴「お、おはようございます……」クマー

提督「どうした? なんか目にクマができてるみたいだが。夜寝られなかったとか」

翔鶴「いえ、大丈夫です……。お気になさらず」

提督「どうみても大丈夫そうには見えないんだが」ウン

翔鶴「そんなことは……では、書類まとめちゃいますね」

提督「あ、あぁ。……なあ瑞鶴。翔鶴はどうしたんだ?」

瑞鶴「んー、ちょっとハッパを掛けたつもりが逆効果になっちゃた、みたいな?」

提督「なんだそれは。ケンカでもしたのか」

瑞鶴「まさか。で、翔鶴姉ぇがこんな感じだから手伝おうと思うけど何からしたらいいかな」

提督「今日は貴重な資源配給日だから資源在庫表の更新かな。あとは前回からの増減をまとめなきゃいけないから、それを手伝ってもらえると嬉しい」

瑞鶴「りょーかいっ。まあ今回のことは私にも責任あるから、翔鶴姉ぇの補佐はちゃんとするわ」


632: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/17(日) 21:20:52.38 ID:upcNWyG50


翔鶴「………………」ウツラウツラ

提督「………………」

瑞鶴「………………」サラサラペタン

翔鶴「………………」コックリコックリ

提督「翔鶴。大丈夫か?」

翔鶴「……えっ? あ、ははい。すみません」

提督「辛いならベッドで寝ててもいいんだぞ」

翔鶴「いえそんな。お仕事中ですから」

瑞鶴「(大丈夫かな―)」



………………



翔鶴「………………」ボー

翔鶴「………………」ウツラウツラ

瑞鶴「完全にオネムだね」

提督「ハァ。翔鶴。おーい翔鶴」

翔鶴「……はっ」ビクッ

提督「二時間だ。今から二時間しっかりと寝てきなさい。そうすればだいぶマシになるから」

翔鶴「で、でも」

提督「だーめ。残念ながらこれは提督命令です。業務に支障が出てるから無理にでも従ってもらいます」

翔鶴「あ、ぅ……」シュン

提督「そこのベッドを使っていいから、一度ちゃんと寝て眠気をとっておいで。仕事のことは気にしなくていいから」

翔鶴「すみません……」

提督「誰だって眠たい時くらいあるさ。無理に起きて能率の悪いことするよりかは、一度リセットして改めての方が絶対にイイ。翔鶴も俺によく言うだろう?」

翔鶴「そう、ですね。ではちょっと失礼して」

提督「そして今ならなんとテイトク自らがベッドまで運んでくれるサービス付きです」ヒョイッ

翔鶴「わ、わっ」

提督「どうする、ココで寝るかそれとも部屋に戻る?」

翔鶴「で、ではその……ここでオネガイシマス」

提督「かしこまりましたお嬢様。ではしばしお捕まりをば」

瑞鶴「いーなー」


633: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/17(日) 21:25:24.84 ID:upcNWyG50

翔鶴「Zzz」

提督「やっぱり眠たかったんじゃないか。我慢しなくても良かったのに」

瑞鶴「そこはほら、翔鶴姉ぇも秘書艦としてのプライドがあるじゃない?」

提督「だからこそ余計になんだがねぇ。で、昨日なにがあったんだ」

瑞鶴「早く翔鶴姉ぇと提督さんがくっつくようにけしかけました」

提督「………………」

瑞鶴「いまが戦の最中ってのはわかるけどさ。やっぱり翔鶴姉ぇには幸せになってもらいたいし」

提督「俺だって先のことはちゃんと考えてるよ。ただ、瑞鶴の言うように今は真っ只中。幸せにかまけてうつつを抜かして、なんてな。ましてそれで誰かを欠くような事をしたら死んでも死にきれん」

瑞鶴「だよねぇ」

提督「まあなんだ。暖かく見守ってもらえればと思うよ」

瑞鶴「ん。じゃあ生温~く見てるね。"お兄ちゃん"」

提督「なんだそりゃ」

瑞鶴「だって翔鶴姉ぇと提督さんがくっついたらそうなるでしょ? 前も言ったかもしれないけど」

提督「この歳でお兄ちゃん呼ばわりされると違和感満載だな」

瑞鶴「うん。私も言ってて変な感じ。提督さんは提督さんだよね」

提督「いつも通りが一番かな。さあさあ、いい加減仕事に戻ろう。翔鶴が起きたら全部片付いてて驚かせるくらいに」

瑞鶴「了解。あ、でもそう言えばもうすぐ配給の時間じゃない? 準備しないと」

提督「もうそんな時間に……じゃあ吹雪たちに伝えておくか。みんな部屋にいるかな」

瑞鶴「私もついて行こうっと」

提督「書類進めておいてくれるとありがたいんだがね」

瑞鶴「気にしない気にしない。さ、いこっ」グイグイ



……パタン


634: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/17(日) 21:30:37.46 ID:upcNWyG50

・---・オマケノ鎮守府:瑞鶴・---・


――工廠にて――


瑞鶴「――ってコトを提督さんと話してたんだけどさ」


彗星妖精『』クルクルクル


工廠妖精1『ふむふむです』

工廠妖精2『二人のシンテンは我々も気になってるです』


瑞鶴「こればっかりはご時世とか二人のタイミングとかあるから急かせないけどさ。なんかイイ案ないかなー」ムニー


彗星妖精『みぃ~』ミョーン


工廠妖精1『案です?』

工廠妖精2『ケッコン指輪的な?』


瑞鶴「まあそんな感じ。ケッコンとかじゃなくてもなんかこう結びつけるものがあればなーって」


彗星妖精『ッ』ハイ


瑞鶴「ふふっ。ありがと」ナデナデ


彗星妖精『~♪』


工廠妖精1『なるへそなるへそ』

工廠妖精2『ちょっと違うかもしれないけど、なんとかなるかもです』


瑞鶴「ほんと?」


工廠妖精1『少し時間を貰えればです』

工廠妖精2『資源はほぼ使わないから安心です』


瑞鶴の発案で妖精さんがナニかを始めました


639: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:10:58.67 ID:fTSOBlZn0
注:長くなったので二つに分けます



・---・発覚・---・


――第三艦隊使用全装備、修理完了


雲龍「やっと出撃再開できるわネ」

冬月「お待たせいたしましタ!」

天城「先ノ作戦でハ囮任務とハ言え、結果ニ満足できたとハ言いきれません。これもまだまダ天城たちガ未熟であル証拠だト思います」

葛城「えーでも瑞鶴センパイカッコ良かったけドなあ。特に最後の発艦の時なんて超本気モードって感じで!」

雲龍「瑞鶴姉でなく私たちの問題ヨ。装備の優劣に驕ることなく結果を出すためには、まだまだ私たちは鍛錬が足りないというこト」

葛城「千里の道も一歩からってワケね」

雲龍「そうそウ。じゃあどうする? 準備出来たらすぐにでも出撃すル?」

天城「天城ハ構いません。オ休みはたくさんいただきました」

葛城「もうちょっと瑞鶴センパイとお話したいけど……一緒の艦隊組むための修行も必要ヨねっ。私も問題ナいわ」

雲龍「冬月たちは? いいかしラ」

冬月「はイ! いつでも行けまス!」

夏月「……ウム」

花月「お休みも嬉しいけど、やっぱり花月たちは海に出てなンぼ、よねぇ」

雲龍「了解。じゃあ早速だけど、今夜から出ましょうカ。と言うわけで秋月、しばらくは留守にしてゴメンナサイだけド……」

秋月「はい。皆さんのご活躍とご武運をお祈りいたします。 冬月、夏月、花月。秋月型の名にかけてしっかりと雲龍さんたちを護るのですよ」

冬月「わかりましタッ。姉さま、行ってまいりまス!」

秋月「司令へはこの後秋月から伝えておきますね」

雲龍「ありがとウ。それじゃあみんな夜までに準備を済ませておいてネ。出撃は……零時にしましょウ。始まりとしてはうってつけだワ」


………………

…………

……


秋月「――と言うわけで、雲龍さんたちは今夜出撃されるそうです」

提督「わかった。今までは気が付くと出掛けてたり帰ってきたりでなかなか行動が把握しきれない部分があったけど、秋月のお陰でより把握しやすくなったかな」

翔鶴「ですね」

秋月「いえ、秋月はそんな……っ。で、ではこれにて失礼いたします」


……パタン


提督「これでしばらく資源は雲龍たち頼みになってしまうな」

翔鶴「私たちだけでも遠征で得ることはできますが、どうしても限界がありますからね」

提督「まったくだよ。彼女たちの頑張りに応えるためにも、やりくりはしっかりしないとな」

翔鶴「はい」

提督「珍しくここにいない瑞鶴にもあとで言っておかないと」

翔鶴「何処に行ったんでしょうかね。部屋にもいませんでしたし……」


640: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:15:34.60 ID:fTSOBlZn0

秋月「……ふぅ」テクテク

秋月「(今日から暫く夜は一人……。ここへ来てからずっとあの子たちと一緒だっただけに、少し寂しい気もするかも?)」

秋月「あ、でもせめてお見送りくらいは――――」


??『ん? 誰か出かけるの』


秋月「わひゃっ?! せ、川内さんっ」

川内「やほー」オテテフリフリ

秋月「こ、こんにちは」

川内「秋月は今ひとり?」

秋月「え、えぇ。今まで司令の所へいました」

川内「提督か翔鶴さんが出かけるところだったとか」

秋月「あ、いえそうではなく……っ」アタフタ

川内「違うの? じゃあ誰だろ……あ、出かけるで思い出したけど、たとえ誰かに誘われても予定にない訓練とかはダメだぞ―。いま資源に余裕が無いから」

秋月「そう、みたいですね」

秋月「(その一端に自分が関わっているのがまたなんとも心苦しいのですが)」

川内「私も余裕さえあれば夜戦とか思いっきりやりたいんだけどねぇ。まあ、ないものはしょうがないからしばらくは遠征に精を出してるってわけなのよ。秋月にもそのうち手伝ってもらうからそのつもりでね」

秋月「わかりました。護衛ならお任せくださいっ」

川内「んっ。じゃあ私はこれから寝るから」

秋月「お休みですか?」

川内「基本夜型だからね~」ジャネ

秋月「お疲れさまです……」


秋月「(そう言えば瑞鶴さんが言ってたっけ。川内さんは夜戦が好きだから夜になると元気が良くなるって)」


641: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:20:22.94 ID:fTSOBlZn0

―川内型の部屋―

川内「あーなんかいいことないかなー」ゴロンゴロン

神通「いいこと……?」

那珂「洞窟探検はいいの?」

川内「アレ? 散々怪しいと期待させといて結局何もなかったってオチだったし。もういいかなって」

神通「(ホっ……)」

那珂「それ以外の川内ちゃんのいいことってみんな夜戦ばっかりな気がするかも」

川内「そうとも言う。遠征ばっかりでもう飽きちゃった」

那珂「やっぱりー」

神通「姉さん。遠征も立派なお仕事ですよ」

川内「そうなんだけどさぁ。やっぱり私たちって戦ってナンボじゃん? 夜戦してナンボじゃん?」

神通「それは……」

那珂「夜戦は川内ちゃんだけじゃないかな」

川内「那珂だって好きなくせに。神通も好きでしょ? 夜戦」

神通「え、えぇ。まあ」

那珂「夜間ライブは那珂ちゃんたちの宿命とも言えるよね」

川内「でしょ? だからなんかないかなーって」ゴロゴロ

那珂「寝転がりながら言ってても全然説得力ないけどねー」

神通「あはは……」

川内「神通が羨ましいよ。この間の作戦では思いっきり戦えたんだし。こっちは夜戦ができるって期待したものの結局哨戒どまりだもん」

神通「お、囮という都合上いろいろと大変でしたよ……?」

川内「それでも戦えただけいいじゃん。まさか神通たちが還って来たら資源無くなっちゃうなんて思いもしないし」

那珂「やっぱり提督はプロデューサーらしくココにドシーンって構えてた方がいいよねー」

神通「(プロデューサー……?)」

川内「やることないしとりあえず夜まで寝るわぁ。夕飯になったら起こして」

那珂「昼夜逆転してても、いざ遠征ってなればシャンとしてるのも川内ちゃんらしいよね」

神通「そ、そう……かな」


knock knock

??『吹雪です』


那珂「吹雪ちゃん? いいよー」

吹雪「失礼します。司令官から次の遠征についての資料を預かってきました」ガチャッ

川内「……また遠征かぁ」ゴロン

那珂「ちょうど話してたところだったね」

吹雪「そうなんですか?」

神通「今の私たちの主なお仕事ですからね。ありがとう吹雪さん」

吹雪「はいっ」


642: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:25:20.28 ID:fTSOBlZn0

吹雪「えっと、この後は……」トコトコ


大鯨「あ、吹雪ちゃん。ちょうどいい所に」


吹雪「大鯨さん。どうかしましたか」

大鯨「いま鳳翔さんとお菓子を作っていたところなんですけれど、良かったら味見をお願いできないかなって」

吹雪「いいんですかっ」キラキラ

大鯨「はい。もうすぐ焼きあがるので、お暇でしたら食堂までいらしてくださいね」ニコニコ

吹雪「もちろんです。万難排除してでm」ムギュ

初雪「ん! ……行くっ」フンス

深雪「お菓子と聞いちゃあ深雪サマも黙っちゃいられないぜぃ!」

吹雪「ふ、二人ともっ。なんで乗っかるのぉ」ガクガクガク

初雪「……お約束」

深雪「抜け駆けはゲンキンなんだぜー吹雪」

大鯨「ふふふっ。では初雪ちゃんも深雪ちゃんもいっしょですね」

初雪「んっ」コクコク

深雪「鳳翔さんと大鯨さんが作るんだったら味に間違いはないよなー。楽しみ楽しみ」

吹雪「降りてよぉ―!」オモイ!

深雪「なあなあ、一体何のお菓子を作ったんだ」

大鯨「前に雑誌で見た中がしっとりとしたクッキーを作ってみようということで、間宮さんに教えてもらいました」

初雪「……おぉ。さくさく、しっとり」

深雪「こりゃあますます期待が膨らむなあ!」

吹雪「も、もう限界」ベシャッ

初雪「……吹雪、沈没」ナームー

深雪「やっぱ二人して乗っかったのはトップヘビーだったかー」ウンウン

吹雪「な、ならせめて早くどいて……」

深雪「じゃあ大鯨さん。早いところ行こうぜ―。時は金ナリ急がば回れだ」

初雪「……クッキーが待ってる」

大鯨「そ、それは意味が違いますよ。それに吹雪ちゃんが」

深雪「ダーイジョブ大丈夫。吹雪はやればできる子だから」

初雪「……がんばれ。できる。きもちのもんだい」ネ

吹雪「えぇー」ソンナ


643: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:30:34.35 ID:fTSOBlZn0

吹雪「二人してひどいよー」プンスカ

深雪「まーまー。ほれ、もうひと口食べよーぜー」ハイ

吹雪「まったく……むぐむぐ……もぅ」

初雪「……うまうま」

瑞鶴「試食のはずがすっかりおやつタイムに入ってるわね。んー、おいしっ」モグモグ

鳳翔「初めて作りましたが、お口にあったみたいでよかったです」ニコニコ

吹雪「そう言えば、先ほど瑞鶴さんは執務室にいませんでしたが今までどちらに?」

瑞鶴「ん? ちょっと工廠までね。妖精さんに頼み事」

深雪「工廠で何してたんですか?」

瑞鶴「それはヒミツ~。まあ悪いことじゃないからそこは安心して」

吹雪「はぁ」

瑞鶴「ねぇ鳳翔さん。このクッキーって味は一種類だけ?」

鳳翔「まずは試作ということだったので……」

瑞鶴「チョコとか抹茶とか混ぜたらもっと美味しくなるんじゃないかなー。ほら、チョコクッキーとかもあるし」

大鯨「チョコクッキーですかあ」

鳳翔「……そう、ですねぇ。後で焼く皆さんの分の生地が残っているので、せっかくですから作ってみましょうか」

大鯨「作り方は変わらないと思うので、すぐ出来そうですね」

鳳翔「ちょうどチョコレートとお抹茶もありますね」

大鯨「はいっ」

瑞鶴「フフフ……これで新味試食権ゲットよ」

深雪「やりましたなあお代官様。ささ、こちらをお納めくだせぇ」フフフ

瑞鶴「深雪屋、お主も悪よのぅ」ホホホ

吹雪「あ、あんまり食べるとお夕飯入らなくなっちゃうよ?」

初雪「……甘い物は別腹。ダイジョブ」

瑞鶴「そうそう。そして美味しいものなら尚更よ。あ、あとで翔鶴姉ぇと提督さんにも持ってってあげよ―っと」


644: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/20(水) 20:35:23.48 ID:fTSOBlZn0


瑞鶴「はい、二人に差し入れを持ってきたよー」

提督「おぉクッキーか。仕事の合間の甘いモノは嬉しいな」サクサク

翔鶴「瑞鶴。あなた今まで何処に行ってたの?」

瑞鶴「ん? ちょっと工廠まで。あとついさっきまではこのクッキー食べに食堂へ」

翔鶴「工廠……また何か変なコト考えてるんじゃないでしょうね」

瑞鶴「そんなわけないじゃんー。ほらほら、翔鶴姉ぇも食べてよっ。鳳翔さんたちの新作だよ。味は私のお墨付き」ハイ

翔鶴「……確かに、美味しいわね」サクサク

瑞鶴「でしょ?」

提督「工廠に行くのは構わないけれど、資源に余裕が無いからあんまりヘンなことには使わないでくれよ」

瑞鶴「そりゃもう! ちゃーんと有意義なことに使いますとも。提督さんにとってもみんなにとってもね」

提督「俺も?」

瑞鶴「そうそう」ニコニコ

提督「なんかその笑顔がすごくコワイんだが……」

翔鶴「私もです……」

瑞鶴「(ニッコニコ)」

翔鶴「あ、そうだ瑞鶴。雲龍さんたち第三艦隊は今夜から出撃を再開するそうよ」

瑞鶴「今夜から? またなんともすごい時間帯に」

翔鶴「みんなが寝静まった頃に、と言うところでしょう。葛城さんに会いに行くなら今のうちよ」

瑞鶴「いやぁもう毎日のように会ってるから……別にいいかなーって」

翔鶴「そんなこと言ったら葛城さんがかわいそうよ」

瑞鶴「でもここんトコ毎日のようにあっち行ってるしー」ウーン

提督「だからこそ激励に行ったら喜ぶんじゃないかな。慕われてる先輩としてはね」

瑞鶴「……まあ、二人がソコまで言うなら」

翔鶴「このクッキーも持っていったらいいんじゃない?」

瑞鶴「だね。じゃああとでちょっと行ってこようかな」



………………

…………

……


650: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:30:46.68 ID:V0QGuTPp0
注:最初に二つに分割と言ったな アレは嘘だ



――深夜


雲龍「……そろそろ時間ネ。みんな準備はいイ?」

葛城「もっチろん! 久々だから派手に暴れてヤるわ」

天城「艦載機ノ整備及び、燃料・弾薬共ニ準備万端です」

冬月「こちらも各装備点検完了済みでス」

雲龍「了解。念のためもう一度周囲に誰かいないか確認してから出ましょうカ」

天城「はい。水上・対空電探共ニ反応はありません。皆さン既にオ休ミ中かと」

雲龍「よシ。……いつもこの瞬間だけは慣れないわネ。昼間なら鳳翔とかが教えてくれるかラ」

葛城「さすがに夜までは頼めなイって?」

雲龍「こんな遅くまで私たちのわがままに付き合わせるわけにいかないからネ」

天城「いつか、みんなデ堂々ト出撃できル日ガ来るといいですね」

雲龍「……そうネ。さ、それじゃあみんな寝てる間に出ましょウ」

冬月「前衛はいつも通り私ガ。両翼は夏月と花月が努めまス」

雲龍「湾を出るまでは単縦陣で行きましょウ。あとで夜間陣形変更の確認もやっておきたいかラ」

花月「それなら花月がいちばン後ろねぇ。夏月にはまンなかをお願いするわあ」

夏月「……了」

雲龍「では、第三艦隊出撃すル。久々の実戦だけど、油断はしないでネ」



『ハイッ!』



………………



川内「………………」ムクリ

神通「Zzz」

那珂「Zzz」

川内「………………」ゴソゴソゴソ



……パタン


651: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:35:42.95 ID:V0QGuTPp0

ザザーン

川内「夜はいいよねぇ。夜はさ……なんて毎度のごとく独り言ってねー」

川内「どうせ誰も聞いてないし。気にしない気にしないっと」

川内「波の音を聞きながら星空を眺める。最高だねえ。これで夜戦ができればもっと最高なんだけどなー」ゴロン


――最近は夜外に出ても寒くない。こうして屋根に寝転んでても冷やっとしないし


川内「………………」

川内「……雲量およそニ、月の光量ほぼ問題なし。ちょっと風が強いけど……うん。やっぱり夜戦にはちょうどいいや」

川内「でもめったに夜戦なんて起こらないし、やっぱり敵さんも夜は眠かったりしてねー――――?」ピタッ


ザザーン


川内「………………」ジー


ザザーン……ユラリ


川内「!」ググッ


――自然の波に逆らうような波紋。途切れ途切れの光の反射……間違いない。"なんかいる"

――フネならもっと大きな波紋や影が出るからあれは艦娘? いや、でも夜間訓練は休止中だしそもそも完全に時間外。他所から来るにしてもこんなところにこんな時間に来るはずがない。第一来るなら連絡くらいあるはず。緊急かそれともあれは……深海棲艦。まさか夜襲?!

――でもおかしい。夜襲ならなんで"沖に向かおうとしてる? 今なら無防備なココを奇襲して襲いたい放題のはず。なのにあんなにゆっくりと……まるで散歩に出かけるみたいな動きを?


川内「あれは一体……罠?」


――みんなを起こす時間と余裕はない。こんなだから艤装の殆ども持ってない。あるのはいつも身につけてるクナイ型の小型魚雷……


川内「……行くか。やれやれ。こんな夜戦は望んでないんだけどなぁ」グッ


――私に何かあったら後はよろしくね。二人とも


652: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:40:55.45 ID:V0QGuTPp0

花月「?」ピクッ

葛城「ん、どうかシたの?」

花月「あ、いえ。なンか気配を感じたなぁって」

葛城「気配ですって? 雲龍姉ぇ、天城姉ぇ」

雲龍「天城、冬月。電探に反応ハ?」

天城「……いいえ、どちらモ周囲ニ反応はありません」フルフル

冬月「こちらもでス」

花月「気のせい、かしらぁ?」アレレ

葛城「久々の出撃だから感覚が鋭くなってるんじゃナいの?」

花月「……かもしれませン」

葛城「まあ夜は気にしすぎるくらいでちょうどいイわよ。引き続きよろシくね」



………………



川内「……見えたっ!」シュタタタッ


――艦影は……大小合わせて六か。一瞬気づかれたような動きをしたけど見つかってはいないみたい


川内「さすが妖精さんの特殊装備ってね。電探を誤魔化しちゃったからこの暗闇じゃ己の目以外に頼るものはないよ。狙うは単縦陣の最後尾……カモ番のちッこいの!」



…………



花月「……やっぱり、なンだか見られてるような気がするわぁ」ウーン

葛城「でも電探には反応なイわよ? それとも水中から?」

夏月「……無反応ダ」

葛城「となるとやっぱり気のせいってことになルけど」

花月「うーン」……タタタタッ

花月「?」 タタタタタッ!



バッ――!!



花月「ッ?! て、てきs」



ドーモ。テキカンタイ?=サン。センダイです


653: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:46:12.01 ID:V0QGuTPp0

雲龍「な、なニッ?!」

天城「探照灯! 至近距離かラ直射されてます!」

葛城「くっ……眩しくて何も見エない!」


川内「動くな! 全員大人しくしろ。言葉くらい通じるでしょ? でないと……」グッ

花月「あわわわ……っ」アタフタ


冬月「花月!」

夏月「……チッ」ジャキンッ

雲龍「ま、待っテ! 私たちは敵じゃなイ。味方ヨ」

川内「そんな目をした味方なんて聞いたことないね。まるで深海棲艦みたい」

雲龍「う……と、とにかく敵意はないワ。だからそっちも落ち着いテ。あと、探照灯を下げてほしいワ」

川内「ならどうして闇夜にこそこそと動いてるの? 敵味方識別にも反応ないなんてやましい証拠が満載よ。これで信じろって無理な相談じゃない?」

天城「そ、それは……」

川内「所属と名前、目的を答えなさい。ここはこの鎮守府の領海内だから許可無く侵入した場合こちらに臨検する権利がある。でも、少しでも怪しい動きをしたら……」グイッ

花月「」ヒィッ

雲龍「わかっタ。降参すル。だからお願い、探照灯を下げテ。まぶしすぎて目が痛いワ」

川内「じゃあまずそっちから武器を下ろしなさい。ちっこいのが狙ってるその砲よ。そしたらこっちも探照灯を消す」

雲龍「冬月、夏月、主砲仰角九○度、全部反対側に向けなさイ」

冬月「……はイ」スッ

夏月「………………」スッ


654: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:50:53.52 ID:V0QGuTPp0

川内「……確認した。じゃあ次は所属と名前と目的よ。嘘はつかないでね」パチン

雲龍「雲龍型航空母艦一番艦、旗艦を務める雲龍ヨ。所属ハ……」

川内「………………」

雲龍「ここヨ」

川内「……もうちょっと上手い嘘のつき方もあると思うけど。わざと? それともバカにしてる?」

雲龍「違うワ。本当に所属はこコ。あなたが知らないだケ」

川内「実際ここにいる私が知らないってことは信じられないってことだけど?」

雲龍「でも事実は事実。私たち六人はもう一年も前からここの所属ヨ」

川内「ならその証拠を見せなさい。誰が見ても納得できる証拠をね。出せる?」

葛城「そ、その前に花月を離しナさい! こっちに敵意がないことはわかったでシょう。首元に魚雷を押し付けるなんてかわいソうよ!」

川内「要求できる立場にないくらいは理解してほしいねえ」

葛城「で、でも!」

雲龍「葛城、落ち着きなさイ。その人の言うとおり……言葉で言って信じてもらえないなら態度で見せるしかないのヨ」

天城「態度で……? ね、姉様まさかっ。それはいけません!」

雲龍「もうどうしようもないノ。どんなものにも花月の命には代えられなイ。……ねえアナタ、今から一本だけ空に矢を射ッテモイイカシラ」

川内「許可するとでも?」

雲龍「本当ニ、オ願イ、コノ通リヨ。私ノ命ニカケテデモオ願イスルワ」ゴゴゴゴゴゴゴ

花月「雲龍さン……」

川内「……わかった。でも少しでも怪しい動きをしたら」

雲龍「シナイワ。絶対ニ。 葛城、鏑矢ヲ出シテ。緊急時吹鳴照明弾用意」

葛城「了解。……こうなった以上もうダメかもしれナいね」スッ

雲龍「……エエ」

葛城「ハぁっ。なんだかんだ、ここでの生活は楽しかっタなあ」グイッ

川内「さっきから見てたけど、あなた本当に艦娘なの? その頭から出てる緑色の角みたいなのとか、左目から揺らぎ出てる蒼いオーラみたいなのとかどうみても深海棲艦のそれよ?」

雲龍「……世の中、言葉じゃ説明できないことなんてたくさんあるのヨ。あとで神通に聞いてみるといいワ。 "川内"」フゥ

川内「え? なんで神通や私の名前を」




ピイィーッ! ヒュルルルルルルル……パパパッ


655: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 17:56:14.20 ID:V0QGuTPp0

提督「Zzz」グースカピー


―――ピイィーッ! ヒュルルルルルルル……パパパッ


提督「んんッ、なんだ……?! こ、これは鏑矢! いかんッ」ガバッ


………………


大鯨「……な、なんですかぁ」モゾ……

鳳翔「ごめんなさい大鯨さん。私は少々出て参ります」スッ

大鯨「えっ鳳翔さん、艤装まで装備されて何処へ……?」

鳳翔「呼ばれてしまいましたからね。あの子たちに」

大鯨「?」


………………


神通「………………」ゴソゴソゴソ

那珂「Zzz」

神通「(姉さんの布団は空……熱も残ってない。と言うことは、これはやはり……)」

神通「ある意味で恐れていたことが現実になった、と」スッ


………………


叢雲「もぅ。なんなのよこんな時間に……」ネムイ

敷波「……また川内さんの暴走?」アフゥ

綾波「いくら夜戦が好きでも、ここまで迷惑を掛けるような方じゃないかと……?」

深雪「すげー。照明弾が音を立てて降下してるぜ。花火みたいだ」

磯波「でも、どうして上げてるのかな?」

吹雪「み、みんな落ち着いて! とりあえず司令官から指示があるまでは絶対に部屋から出ないでね!」ガチャッ

白雪「吹雪ちゃんはどうするの?」

吹雪「白露ちゃんや秋月ちゃんたちにも伝えてこないと! 白雪ちゃん、誰かが外に出そうになったら止めてくれる?」

白雪「う、うんっ。わかった」


初雪「Zzz」


………………


瑞鶴「な、なんのこれ。誰が照明弾なんかを……」

翔鶴「雲龍さんたちよ」

瑞鶴「え」ナンデ

翔鶴「これはね、第三艦隊の存在が私たち以外に露呈した時の知らせなの。もちろん鎮守府周辺限定の話しよ?」

瑞鶴「ってコトはまさか」

翔鶴「そのまさか、ね」

瑞鶴「葛城は、みんなはどうなっちゃうの?」

翔鶴「……まだ分からないわ。とにかく、行かないと」スッ

瑞鶴「わ、私も行く!」ガタッ


656: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/24(日) 18:01:03.72 ID:V0QGuTPp0

雲龍「……鎮守府に明かりが灯り始めたワ。もう直鳳翔たちが来ると思ウ。もちろん提督もネ」

天城「これデ隠シ切ることハ不可能になりましたね」

葛城「ある意味覚悟してたことダしね。むしろここまで隠し通せたことがスゴイんじゃなイかな」

冬月「これから、どうなるんでしょウ?」

雲龍「どうなるもこうなるも、最早流れに身を任せるより他はない……かしらネ」


川内「……アンタたちって一体。ほ、本当にここの所属なの?」スッ

花月「あ」フラリ

冬月「花月!」ギュッ

雲龍「我らは影。我らは闇。この戦争が終わるまで表に出ることを禁じられた存在――――って言ったら、物語っぽくてかっこいいのかしらネ?」

天城「ね、姉様。それハ事実ですがどちらかト言うト思春期特有ノ痛イ系物語になってしまいます」

雲龍「あラ」

葛城「なんか緊張の糸が切れちゃっタなー。もうどうにでもなれっテ感じ。今ならなんでも行け入れられそウかも」

川内「影、闇……。私ってひょっとして、開けちゃいけない系の箱の蓋を開けちゃった感じ?」

雲龍「そんなことないワ。あなたの行動は理に適ってるし落ち度なんてなイ。あるのはむしろこちら側。もしも反対の立場なら、私たちだってそうしたはズ」

天城「しかし、夜間でここまでハッキリ見つかってしまうのハ完全ニ誤算でした。最後まデ電探にモ反応ありませんでしたし」

川内「あ、あー……たぶん妖精さんの艤装のおかげかも。夜戦で電探にも映らなかったらスゴイよねって話してたら作ってくれたの」コレ

雲龍「……なるほド。本当にここの妖精の技量は素晴らしいわネ」

川内「ね、ねえ! みんなに見つかっちゃマズイなら私黙ってるよ? これも私のイタズラってことにすれば、今からでも……」


??『――その必要はありませんよ』


川内「あ……」

鳳翔「こんばんは。川内さん」

神通「やはり姉さんでしたね」

吹雪「夜の川内さんに敵う人はいませんからね」

川内「鳳翔さんに神通、それに吹雪まで……」

雲龍「ごめんなさい鳳翔。見つかってしまったワ」

鳳翔「仕方がありません。いつかが今日になってしまっただけのことです」

瑞鶴「みんな大丈夫っ?」

葛城「ず、瑞鶴センパイっ」アタフタ

雲龍「それはみんな来るわよネ……ところで提督と翔鶴は?」

瑞鶴「翔鶴姉ぇたちはフネで来るって。ほら、提督さんはこうできないから」パシャパシャ


663: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:15:48.07 ID:/I+axZit0

提督『みんなー!』



瑞鶴「あ、提督さんたちもやっときたみた……い?」ナニアレ

雲龍「あラ」

鳳翔「まあ」

翔鶴「すみません皆さん。お待たせいたしました」←ロープを引っ張っている

提督「みんな大丈夫か? 怪我とかはしてないな?」←手こぎボートで曳航されている

瑞鶴「いや、まあみんな無事だけどさ……」

神通「て、提督。その、えっと」

提督「……何も触れないでもらえるとありがたい。フネで来られなかったのも察してもらえると」ハズカシクテ ナキソウ

翔鶴「同じく……」

瑞鶴「二人して何やってんだか」

鳳翔「それよりも提督。今回のことですが……」

提督「あ、ああ。とりあえず、全員執務室へ集合してもらえるか。もちろん川内や雲龍たちもだ」

雲龍「了解」

葛城「堂々と行けるのは初めてじゃないカしら。なんか新鮮でイイわね」

天城「あなたはもウ少シ緊張感ヲ持ちなさい」

川内「あの、提督。私……」

提督「今は何も言わなくていい。それにこの後お説教をするわけでもないよ。だからそんな悲しそうな顔をしないでおくれ」

川内「で、でも!」

提督「状況を見る限り、いつもの様に夜起きてた川内がたまたま出撃時間が被った雲龍たちを見つけてしまった。ただそれだけの事だろう?」

川内「それは、そうだけど」

提督「知らなかったんだからどうしようもない。むしろ隠してた俺にこそ責任がある。だからこそ、いろいろ説明しなきゃならない」

川内「………………」


664: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:20:30.15 ID:/I+axZit0

提督「川内にもそうだし、あっちから何事かとこっちをみてる他のみんなにもな」

瑞鶴「え、と言うことはひょっとして」

翔鶴「よろしいのですか?」

提督「これで誤魔化したら不信感が残るだろうしね。それになんと言うか限界かなって。この間の葛城の……いや、瑞鶴の頃から考えてたんだ」

鳳翔「確かに人数が増えるほど隠していくのは難しくなりますからね」

提督「あとはまあ、信じてみたくなった。今日まで苦楽を共にした仲間を」

翔鶴「提督……」

瑞鶴「うん。いいんじゃないかな。きっとみんな受け入れてくれると思うよ」

翔鶴「私も瑞鶴の意見に賛成です」

提督「鳳翔たちはどうかな。反対?」

鳳翔「リスクが無くなるわけではありませんが、それはまた新たな対策としてみんなで考えていけば良いと思います。私は賛成ですね」

神通「……私も、提督の判断を支持します」

吹雪「私もです。一緒に生活が出来るなら、それは嬉しい事ですからっ」

提督「雲龍たちも、いいかな? こればかりは俺たちだけの判断で動けない」

雲龍「そう、ネ。瑞鶴姉や秋月を見て羨ましい気持ちもあったのは認めるワ。正直もっと先のことだと思ってたけれど……私は構わないワ」

天城「天城モ構いません。それでどのようナ結果だったとしてモ受ケ入れます」

葛城「私はこの間ニアミスしちゃったし大きなことは言えないけど、やっぱり堂々と瑞鶴センパイとお話できたら嬉しいかナって」

瑞鶴「アンタはそれしかないのかいっ」

冬月「私たちも構いませン!」

提督「……ありがとう。じゃあ改めてみんな執務室に集合してほしい。全員集まって欲しいが、もしも寝ていたら無理に起こさなくてもいいから」

瑞鶴「たぶんみんな起きてるんじゃないの? ……あーでも初雪と加古あたりは気づいてなさそうかも」


翔鶴「では提督。戻りましょうか」

提督「あぁうん。なんだかもの凄い惨めな気持ちになるなぁ。傍から見たこの図は」

葛城「手足を縄で縛ったらもう立派な捕虜ね! 罪は、そうねぇ……覗きカしら」

提督「勘弁してくれ」


665: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:25:24.76 ID:/I+axZit0

―執務室―


ざわざわ……


提督「みんなお休みのところ申し訳ない。そして夜遅いのに突然の照明弾と警報吹鳴に驚いたと思う。まずは重ねて謝罪させてもらう」ペコリ


初雪「……眠い」ブニャブニャ

加古「くかー」Zzz

古鷹「ちょ、ちょっと加古。立ちながら寝ないでっ」


提督「最初に伝えておくが、これは決して敵艦隊の奇襲攻撃によるものではない。その点については安心してほしい」


白露「まあもしそうだったら今頃こうしてないだろうからねぇ」

夕立「鎮守府、ボロボロになっちゃうっぽい?」

時雨「みんな寝ていたっていう事でなら、そうなるかもね」

敷波「……ここ、ホントに鎮守府?」

叢雲「アンタも慣れれば気にしなくなるわよ」

敷波「それもそれでどうかと思う」


提督「そして、奇襲でないなら何故このようなことになったか。今からその理由をみんなに伝えようと思う。今日これまで、一部以外に秘密にしていた鎮守府における最高機密事項だ」


利根「さ、最高機密じゃと……。そのようなものがここにあるとは」ゴクリ

筑摩「なんだか緊張してきてしまいますね」

武蔵「フッ。この武蔵もかつては最高機密と言われた存在。並大抵のことでは驚かないぞ」

山城「夜中に突然叩き起こされて秘密を暴露とか、こんな展開に不幸を覚えるわ……」

扶桑「そう言わないの山城。提督にもきっとなにかお考えがあるのよ」


提督「まあ説明するよりも実際に見てもらった方が早いだろうから――――入ってくれ」


ガチャッ


『!!』


666: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:30:25.12 ID:/I+axZit0

ざわざわ……!


アレダレ?
ナンダカ、目ガ……
ヨクミルト、手トカ足モ……


雲龍「……やっぱり、みんな驚くわよネ」

天城「覚悟していたとはいえ、奇異ノ視線ト言うのはやはリ気分ノ良いものではありませんね」

葛城「見世物じゃないぞーって言っテみる?」

天城「止めなさい」

雲龍「あ、時雨」オテテフリフリ


時雨「! お、驚いたなぁ。まさか雲龍たちがいるなんて。でも、あの姿は一体……」

夕立「知り合いっぽい?」

時雨「知り合い……うん、そうだね。扶桑たちのこともそうだけど、雲龍のことだって忘れたことはないよ」

春雨「あの、なんと言ったらいいのでしょう。言葉が見つからないのですが、えっと」

村雨「見た目がおかしいって?」

春雨「あ、その……は、はぃ」アゥ

村雨「確かにこの言い方以外に出てこないけれど、ソコも含めて提督から説明があるんじゃないかな」


利根「なんじゃ。葛城のやつおるではないか。それに天城に雲龍の姿も。この間は何故いないなどと言っておったのじゃろうかのぅ」

筑摩「ひょっとするとその事が機密事項なのかもしれませんよ? ほら、皆さんチョット雰囲気が違うと思いませんか」

利根「ぬなっ。そ、そう言われてみれば……」ウムム


提督「知っている人は知っていると思う。雲龍型の雲龍、天城、葛城と、この間やってきた秋月の妹たちである冬月、夏月、花月だ」

提督「そして彼女たちは――――元・深海棲艦でもある」


川内「!」



……え?


667: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:35:20.96 ID:/I+axZit0

ざわざわ!


加古「……んぁ」パチリ

古鷹「深海、棲艦?」

山城「……嘘でしょ。そんなっ」

扶桑「深海棲艦が艦娘に……」

敷波「そ、そんな事ってあり得るの?」

叢雲「聞いたことないわよそんなの」

綾波「では、今まで倒してきた敵というのは……?」


提督「静かに! まずはこちらの説明を聞いてほしい。質問もあとでまとめて受け付ける」


ぴたっ


提督「……ありがとう。元・深海棲艦と言うことで皆動揺していると思うが、これだけは言っておきたい。彼女たちの場合は例外だ。全てに当てはまるわけじゃない」

提督「深海棲艦が艦娘であると決まったわけじゃないしその逆も然り。もしかしたら彼女たちも本当の意味で深海棲艦でなかったのかもしれない」

提督「そしてもっと言えば戻った原因も方法も不明のまま。偶然がいくつも重なった結果としか言いようがないんだ」

提督「もう一年も前になるが、ちょうどその時一緒にいた翔鶴、鳳翔、神通、吹雪とともに、一度はその存在を秘匿しようと決めていた」

提督「公にしたら混乱は必至だし、彼女たちの身も危ない。そして戦いに躊躇が生まれたらこちらも危ない、と言うことでだ」

提督「だけどこの鎮守府も人数が増えた。人数が増えるということは行動が広がるということで、監視の目も届きにくくなる。そして今夜ついに発見されてしまった」


川内「………………」


668: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:40:29.56 ID:/I+axZit0

提督「誰が見つけたという話じゃない。場所は違えど一緒に生活している以上いつか起こり得た話だ。イイ悪いを決めるつもりもない」

提督「見つかったから公にしたと捉えられても仕方ないと思う。だけど良い機会だとも判断したんだ。今日まで苦楽を共にしてきた皆なら、きっと共有できると」


加古「んー、つまり信頼してもらえたってことかな? 本当の意味で」ポケー

古鷹「か、加古」


提督「……試しているわけじゃあないがね。気を悪くしたら申し訳ない。だけど公にするのはこの鎮守府の中だけだ。もし中央にバレたら彼女たちの身が危ないし俺たちも危なくなる。なんとしてもこの中で守り通す必要がある。そのためにはみんなの協力が不可欠なんだ」

提督「どうか、一緒に彼女たちを守ってほしい。そしてどうか "一緒に生活すること" を許してほしい」ペコリ



……しーん……



提督「………………」

武蔵「ふむ。やはりここは私が行くしかなかろうて。では提督よ。質問をいいかな」

提督「ああ。なんだ」

武蔵「今さらこんなことを聞いても詮無いが、何故今まで皆に隠していたんだ。まさか信用されてなかったとか……」

提督「いや、誓って決してそんなことはない。信用云々の前に、人としての心理を警戒しただけなんだ」

武蔵「人としての心理か。伺っても?」

提督「今話している時点で俺も資格はないかもしれないが、みんな大好きここだけの話・内緒の話ってやつだ。みんなが知らないような秘密をこっそり教えたくなるって気持ち、分かるだろう? 誰かがソレを始めたらもう止められない。あっと言う間に広がっていくだろう」


669: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:45:29.25 ID:/I+axZit0

大鯨「な、なるほど……」

叢雲「人の口に戸は立てられぬってワケね。納得だわ」

提督「知っている人が多ければ多いほどリスクは高まり速度は早くなる。ならば最小限に留めようと。そういう訳だったんだ」

武蔵「ふむ。なるほど確かに説得力はあるな。理にも適っている。では何故今はいいのだ? こちらを信頼してくれる気持ちは嬉しいがリスクとやらは高まってしまったぞ?」

提督「武蔵の言うことは最もだ。正直に打ち明ければ信頼よりもリスクは怖い。こっちの信頼とはイコールと限らないからね。でも、きっかけはどうあれ俺は打ち明けることにした。リスクよりも信頼を取ったんだ。みんなとなら秘密を共有できると」

武蔵「……オモイなあ」フフッ

提督「すまん」

武蔵「だが指揮官が艦を……いや、我らを真に信頼してくれる気持ち。これは我らにとって何物にも代えられぬ僥倖ではないだろうか? なあ皆よ」


綾波「つまり私たち駆逐艦も大切にしてくださると」

敷波「まあ消耗品扱いは嫌だからね」

深雪「うちの司令官がそんなコトするわけ無いじゃんー」

古鷹「ですね」クスクス

加古「なんか寝てる場合じゃない気がする」パチクリ

山城「こんな時くらいちゃんと起きてなさいよ。まったく……あの人の信頼が重いわ」

扶桑「その割には、とても嬉しそうよ?」


武蔵「……と、言うわけだ提督よ。信頼を勝ち取れていたようだな」

提督「ああ。本当にありがたいことだ」

武蔵「では最後の質問だ。 部屋割りはどうする?」

提督「部屋割りは――――って、いいのか?」

武蔵「ここでソレは無粋ってものだろう提督よ。皆まで言うな。 なあ? 雲龍たちよ」

雲龍「……そうネ。無粋になってしまうわネ」クスクス

武蔵「我らは新たなる戦力の"正式"加入に歓迎するぞ。……と言っても、知ってると思うが作戦行動は殆どないがね」

深雪「よし、じゃあ早速空き部屋をササッと準備してしまいますかぁ」

白雪「そう言えば秋月さんは今一人だから……」

磯波「これからは冬月さんたちと一緒の部屋かな?」

時雨「雲龍たちの部屋はどうしようか――――――」


雲龍「………………」



………………

…………

……


670: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/27(水) 20:50:59.09 ID:/I+axZit0

太陽『』 サイタマー


雲龍「……朝日ネ」

天城「ですね」

葛城「結局作戦失敗したけど徹夜しちゃッたと」

雲龍「まさか、私たちがここから朝日を眺める日が来るなんてネ」

天城「ちょっと、夢のようですね」

雲龍「今までの生活も悪くはなかったけれド……」

葛城「堂々としていられるのは嬉しイって?」

雲龍「そう、ね……うン。嬉しいワ。それニ」チラリ


冬月「Zzz」

夏月「Zzz」

花月「Zzz」


雲龍「この子たちともある意味で部屋が一緒のまマ。本当に有難いことだワ」

天城「元々あっタ壁ヲ取リ払ってしまいましたからね。とてモ広いです」

葛城「どうせなら瑞鶴センパイたちの隣の部屋が良かったけど、まあ遊びに行けばいいだけだシねっ。ああ、堂々と遊びに行けるこの幸せ……!」キラキラ

雲龍「本当に瑞鶴姉のこと好きなのネ」

葛城「もち!」


ガチャッ


秋月「戻りました」

雲龍「あら秋月。おかえりなさイ」

秋月「鳳翔さんが朝ごはんの準備ができたので来てくださいとのことです。食堂までご案内しますね」

葛城「そう言えばここの中のこと全然知らないノよね。私たち」

天城「あとでいろいろト案内してもらわないといけませんね」

雲龍「そうネ。今日からここで暮らすのだものネ」


雲龍「(元・深海棲艦と言うことに変わりないけれど、今ならはっきりと言えるかもしれない。自分は艦娘なんだって)」


葛城「夜以来だからお腹も空いたし、早く行きマしょ。あ、冬月たち起こさナいと」

天城「まずハ全員で、ですね」

雲龍「……ええ、全員で行きましょウ」


なかまいり


679: ◆kVQhfnJMM6 2015/05/29(金) 20:05:29.29 ID:7Xa1XpgW0

・---・オマケノ鎮守府:瑞鶴・---・


葛城「さぁ瑞鶴センパイ! 一緒に訓練行きマしょ!」グイグイ

瑞鶴「だーから訓練しようにも燃料とかがないの!」

葛城「そんなのちょっと敵泊地から失敬すればすぐ貯まりまスって」ネ

瑞鶴「そんなことが出来るのはアンタたちだけでしょうが」



ジャアイッショニアソビマショウ!

ボスケテー



提督「瑞鶴の懐かれ度が目に見えて上がってるなぁ」

翔鶴「我慢する必要がなくなったからでしょうか……」アハハ

提督「ますますこの部屋が賑やかになりそうだ。執務室ってなんだってくらいに」

翔鶴「お仕事の邪魔になるようならば出て行ってもらいますか?」

提督「それこそ今さらだろう。賑やかなラジオだと思えばなんとかなるさ」

翔鶴「は、はぁ」


瑞鶴「提督さーん! 助けてよ~」

提督「いいじゃないか瑞鶴。後輩の面倒を見るのもセンパイの役割だぞ」

瑞鶴「いやまあそうなんだけど……でもぉ」

提督「暇がなくなっていいコト尽くめじゃないか」

瑞鶴「そうなんだけど……そうなんだけどぉ!」ムゥー!

翔鶴「瑞鶴、あまり提督の邪魔をしちゃダメよ」

瑞鶴「翔鶴姉ぇまでー」トホホ

葛城「あのー瑞鶴センパイ。ひょっとして迷惑デした?」

瑞鶴「迷惑じゃないとでも?」

葛城「あぅ」シュン

瑞鶴「う……。わ、わかったわよ! 確かここに吹雪たちがよく遊んでる双六があるからそれでね。いい?」

葛城「はい!」キラキラ

瑞鶴「じゃあ適当にあと何人か探してきましょ。ついでに食堂行ってお菓子もね」


瑞鶴さんはすっかり懐かれました