麦野「私が暗部に落ちる前に」 前編

383: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:52:20.91 ID:vWq3dp/r0
◇ ◇ ◇ ◇


『んー。結構遅くなっちまったな』

──、そうだね。

『暗いから足元、気をつけろよ』

──……ねえ?

『なんだよ』

──、道、あってるの?

『……』

──?

引用元: 麦野「私が暗部に落ちる前に」 



とある科学の超電磁砲S 麦野沈利つままれストラップ
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384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:53:43.19 ID:vWq3dp/r0
『アッテル』

──、ねぇもしかして

『アッテル』

──、はまづら、ねぇ

『……』

──、いんてる?

『ハイッテル』

385: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:55:15.76 ID:vWq3dp/r0
──迷った?

『迷ってねえよ! この裏道抜けるほうがちけーんだよ!』

──、ほんとに?

『地図だとそうなってる』

──、……

『っだああ!! そんな目でみんな!!』

──、バカ面

『誰がバカ面だ! 俺は浜面だっての!』

386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:57:06.30 ID:vWq3dp/r0
──、……はまづら。

『そうそう、俺は浜面だ』

──、囲まれてる。

『あん?』

──、私が合図したら、すぐに走って。

『なんで?』

──、いいから。

『だからなん──』

──、いいから、行けっ!

『ッ!!』

387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:58:10.79 ID:vWq3dp/r0



研究者『キャパシティダウン、起動しろ』


ィィィィィィィィイィイイィィィン………………………………

388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 13:58:57.52 ID:vWq3dp/r0
──っ?! あ……ぐ……頭が……っ

『沈利っ?! おい、どうした?!』

──、いたい……

『おい?! 大丈夫かっ?!』

──、はまづら、だめ、……逃げて……

『バカ! お前も一緒にくるんだよ!』

389: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:01:28.29 ID:vWq3dp/r0
傭兵『ヘイヘイ、どーこ行くんだよお二人さん。ちょっと待ちなよ』

チャキ

──、……く……完全に囲まれた……。

傭兵『よう? お嬢さん。いや……原子崩しよぉ。あんたに用事があって来たんだぜ? 何の用かは……わかるだろ?』

スッ

『沈利に何の用だッ!』

傭兵『おお? この状況で女の子を守るたぁ殊勝な心がけだ、良い男になるぜ少年。だがおじさん達はその子の、まぁ、なんというか、保護者でね。迷子のお嬢さんを捜してたんだよ』

『嘘つけっ!』

傭兵『嘘じゃないさ、だいたい君は知っているのかい? そこに居るお嬢さんが何かを』

『麦野沈利、俺の友達だ』

傭兵『友達……友達ねぇ、ははは、友達? まるで普通の人間みたいだなぁ。なぁ? 原子崩しよぉ』

『帰れよ、お前ら!』

傭兵『そうはいかねぇ、お嬢さんをつれて帰るのがおじさんの仕事だからねぇ』

390: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:02:48.90 ID:vWq3dp/r0
──……。ブルッ

『……沈利?』

──、……やだ、かえりたくない……。

『大丈夫、大丈夫だからな?』

傭兵『へぇ、妬けるねぇ。こんな状況で励まし合いってか?』

『……』

傭兵『辞めとけ辞めとけ、これが見えるだろ? 銃だよ、本物だぞ? 当たったら痛いぞー、当たり所によっちゃ死んじまうかもな』

『……く』

傭兵『あんま抵抗すんなよー? あんまり反抗的だとお前もこわーーーいおじさんがいっぱいいる施設で脳みそいじられておかしくなっちゃうからなー?』

『くっそおおおおッ!!!!』

傭兵『丸腰で突っ込んでくるとは……バカがっ』

ガン

391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:04:11.43 ID:vWq3dp/r0
『がはっ……』

──、はまづら!

傭兵『バカだなーお前さ。この体格差考えろよな。でもお前みたいなバカは嫌いじゃないぜ。ははは。おいお前ら、抑えとけ』

ボカッ

『ぐあぁ!!』

傭兵『でもよーあーあー、だめだこりゃ。あの世行き決定だなおい、まだ抵抗しないってんなら俺は見逃してやってもいいと思ってたんだぜ? 本当だぜ?』

ドガッ

『……っ!』

傭兵『何も抵抗せず、この場の事は忘れる約束をしてくれたらよぉ……誰も殺さず済んだのによ』

『沈利をどうするつもりだ!』

傭兵『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』

『沈利に何かしてみろ! ぶん殴ってやるからな!』

傭兵『おーおー、そうかいそうかい。そりゃ楽しみ……だっ!』

ガン!

『ぐは……っ』

393: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:06:47.93 ID:vWq3dp/r0


傭兵『あのさー……俺も子供をいたぶる趣味はさすがに持ち合わせてねーんだ。だからもうこれ以上俺に殴らせんなよ、楽に死んどけ』


────、パァン…………。



394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:08:11.07 ID:vWq3dp/r0
傭兵『……よう。そっちのほうは、いいのかよ?』

研究員『いま起動させたよ’メモリー’』

傭兵『そーかい』

研究員『引き上げだ』

傭兵『了解』

研究員『……』

395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:09:30.77 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──



あれ

わたし

なにしてるんだろう

はまづらは?

あれ?

はまづらってだれ?

え?

ここどこ?

わたし、なにしてるの?

なにを、していたの?

396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:09:56.86 ID:vWq3dp/r0
えっと

今日は

朝からいつもの研究で

あれ

いつもの研究?

美味しかった

あれ?

何が美味しかったんだろう?

397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:10:38.31 ID:vWq3dp/r0
目の前には大勢の大人

いつもどおり白衣を着ている

あれ?

でも、今日は皆、ヘンな服きてる

まるで

まるで、軍隊みたい?

軍隊?

あれ? なんで?

ここは?

いつもの研究所じゃ、ない?

398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:12:07.70 ID:vWq3dp/r0
着ている服もいつもと違う

違う

何かが違う

何が違う?

わからない

けど、何かが

何かが違う

……気がする

399: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:13:26.68 ID:vWq3dp/r0
目の前の景色は見える

見えるけど理解できない

何か

すべての輪郭が曖昧で

ぼんやりとしていて

とけてしまいそうで

音が

音が一切聞こえない

私の耳はどうなってしまっているんだろう

400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:13:56.66 ID:vWq3dp/r0
『沈利っ!』

……だれだろう

誰かから名前を呼ばれている気がする。

音は聞こえないはずなのに

……やさしい声だなあ。

『沈利っ!』

……こんなやさしい声、いままで聞いた事ない。

……ああ、ずっと聞いていたいなぁ。

『沈利っ!』


『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』

401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:14:40.73 ID:vWq3dp/r0
……あれ?

はまづら?

はまづら……?

はまづら……

浜面?

浜面……

浜面、仕上

浜面仕上

……とても

……とても、やさしいなまえ。

402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:15:18.40 ID:vWq3dp/r0
この服を選んでくれたのは誰?

私を助けてくれたのは誰?

鮭味を教えてくれたのは誰?

名前を呼んでくれたのは誰?

やさしくしてくれたのは誰?

私を友達って言ってくれた人は誰?

私が、守りたい人は、誰?

403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:15:47.33 ID:vWq3dp/r0


はまづら。

浜面、仕上。


そう!


はまづら!

はまづらだ!


……はまづら、なんだ!



────、パァン…………。



404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:19:46.80 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──


傭兵『で、その’メモリー’で記憶とやらは回収できたのかよ?』

研究者『ああ、おそらく。反応があったからね』

傭兵『……ふーん』

研究者『興味なさそうだね』

傭兵『俺としてはもうこの都市からの仕事を遠慮させてもらいたいところだよ』

研究者『ははは』

傭兵『笑い事じゃねーよ。それじゃさっさとお嬢さんを回収して帰るか』

405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:22:31.27 ID:vWq3dp/r0
──、……ロ……ス



傭兵『あん?』



──、…………コ……………ロ……


ヨロッ


傭兵『お、おい? 起き上がったぞ、あいつ?』

研究員『大丈夫、キャパシティダウンが起動しているから演算には集中できないはずだよ。何もできやしない』

傭兵『そうか?』



──、……コロス……


ドッ


傭兵『あん?』

406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:23:22.44 ID:vWq3dp/r0
傭兵『ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』



研究員『め……原子崩し……ッ?! まさか、キャパシティダウンが効かない……だと……ッ?!』



──、コロ……ス……コ……ロ……スッ


ドッ



──、コロス……



──、コロス


ドッ




コロス



コロス




コロス

407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:24:59.31 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──


私が正気に戻ると、目の前には誰も居なかった。

ただ、はっきりと覚えているのは

うざったい周波数をまきちらす車を爆発させた事

襲い掛かってくる男たちを能力を解放して爆ぜた事

浜面の体からとめどなく出る赤い液体。

408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:26:53.56 ID:vWq3dp/r0
結論から言うと、私は逃げた。

その場から。そして、浜面から。

逃げた。

こわくなったのかもしれない。

何もしゃべらない浜面を見ているのが

うつ伏せで動かなくなってしまった浜面を見ているのが

とても、

こわ……かった……から。

409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:28:47.42 ID:vWq3dp/r0
その後も何回か襲撃を受けた。

恐らくあの博士が寄越したんだろうと思う。

その度に能力を開放して蹴散らした。

四六時中命を狙われる生活は、相当のストレスだったけど。

その頃はただ生きているだけで、死んでいるのと何も変わらなかったと思う。

そんな時、薄汚れた路地裏で私はあいつと出会う。

最高で最低な、本当にクソッタレな出会いだった。

410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:31:33.70 ID:vWq3dp/r0
『こいつときたら、本当に壊すことでしか生きられないのね』

──、誰よ、アンタ。

『こいつときたらーー! 年上に対する礼儀ってのがなってないわよ!!』

──……フン

『あー、気に入った。その態度が気に入ったわ。あんた、ウチで雇ってあげるわ、感謝しなさい』

──、は?

『あたしの所に来るってんなら、今あんたにちょっかい出してる組織の一つや二つ、潰してあげるわよー? それにアンタ、どこにも行くところ、ないんでしょ?』

──、そうだけど……

411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:32:15.49 ID:vWq3dp/r0
『だったら交渉成立ね、あたしは働き手が欲しい、あんたは居場所が欲しい。そうじゃない?』

──……。

『さっそくだけど仕事、お願いしたいのよね。ちょっとしたゴロツキなんだけど、5.6人シメてきてくれない? 方法は任せるから』

──、ち、わかったわよ。

『あーそーそー、アンタのコードネームだけど、しばらく’アイテム’って呼ぶからそのつもりで』

──、アイテム?

『そ、アイテムね。そのうち人数が増えたらそれを組織名にでもしようと思ってるから。それじゃよろしくねーん』

412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:34:08.09 ID:vWq3dp/r0
◇ ◇ ◇ ◇


麦野「……という、ワケなのよ」

フレンダ「……」

滝壺「……」

絹旗「……え……?」

フレンダ「え?」

滝壺「……」

フレンダ「えぇえっ?! け、結局。ど、どいう事なの?! 浜面! 死んじゃったのっ?!」

413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:41:29.21 ID:vWq3dp/r0
滝壺「死んでたら、いま生きてないよ。フレンダ」

フレンダ「むむむ……、昔死んでたと思った浜面がひょっこり実は生きてましたーって、どこのドラマよそれ」

麦野「ほんとにね。だから最初にアイテムで浜面に会った時は心臓がどうにかなるんじゃないかと思ったくらいなんだから」

絹旗「はぁ……まさか二人の間にそんな超エピソードがあったなんて」

フレンダ「人に歴史アリって訳よ」

滝壺「それで、麦野の悩み事は?」

麦野「そう。それなのよねぇ……」

絹旗「それ、といいますと?」

414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:45:04.35 ID:vWq3dp/r0
麦野「それとなく昔の事を聞いてみても私とは会ったこと無いって言うし……」

フレンダ「その浜面と、この浜面が別人だっていうの?」

滝壺「他人のそらに?」

麦野「でも、別人と言うにはあまりに似すぎてるのよね」

絹旗「私としては浜面超サイボーグ説を推しますね」

麦野「それはないわ、ちゃんと心臓がドキドキしてたから」

滝壺「まるで確認したみたい」

麦野「確認したもの、あいつが居眠りしてる最中に」

フレンダ「え?」

絹旗「え?」

滝壺「え?」

麦野「?」

415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 14:47:52.45 ID:vWq3dp/r0
麦野「まだ他にもいろいろ確認したわよ、あいつが眠ってる間に──」

フレンダ「あーーーーー!!!!!」

麦野「なによ、もう、フレンダ」

フレンダ「それ以上は、……ストップよ麦野。……刺激が強い」

麦野「そう?」

絹旗「(超鼻血でるとこでした)」

滝壺「……」ボー

416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 15:00:52.81 ID:vWq3dp/r0
フレンダ「……ん?」

絹旗「どうしました?」

フレンダ「ねー、むぎの?」

麦野「なに?」

フレンダ「あのさー、さっきの話で一つ質問なんだけど」

麦野「うん」

フレンダ「むぎのが毎晩抱いて寝てるヌイグルミってまさか、そのときの……?」

麦野「フーーーーーー……レ、ン、ダァ…………」

フレンダ「え? え? そうじゃないのっ?! ねぇ?! ねぇむぎのっ!」

麦野「後でお仕置きね」

チーン

フレンダ「なんでっ?!」

417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 15:10:04.18 ID:vWq3dp/r0
絹旗「麦野。私からも質問、超いいですか?」

麦野「うん」

絹旗「私は浜面が過去何をやってたか、なんて超知らないですけど。それでもなんとなくそんなに超悪いヤツでは無いと思うんです。バカですけど、超バカですけど」

麦野「バカなのは否定しないわ」

フレンダ「バカを否定されない浜面、バカ面ね」

麦野「……お仕置き追加ね、フレンダ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

フレンダ「なんでっ?!」

滝壺「一言余計」

フレンダ「うぅ……」

絹旗「それで、麦野はどうしたいんですか?」

麦野「私は……」

418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/23(日) 15:11:23.38 ID:vWq3dp/r0
麦野「私、……浜面の事、好き、なんだと思う」

フレンダ「ついに言ったわね、麦野」

絹旗「なんとなく超そんな気はしてましたけど」

滝壺「うん」

麦野「でも……、その。ね? なんとなく、この気持ちそのものに自信が持てないというか……。昔の浜面を勝手に今の浜面に投影してるだけなんじゃないかなって、もし別人だったらどうしよう……って」

フレンダ「そりゃまぁ、何年も前に居なくなってたと思った人がひょっこりでてきたらねぇ」

絹旗「しかもそれが同じ浜面かどうかわからない状況じゃ、超しょうがないですよね」

麦野「……うん」

フレンダ「っだあぁ、それにしてもアノ浜面がねぇ~……」

439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 00:55:19.50 ID:dCZT4GL20
麦野「……あー……、どうすればいいんだろー……」

絹旗「どうするって……」

フレンダ「どうすればいいのかな……」

滝壺「……」

麦野「それを相談しに来たんじゃない」

絹旗「正直チケットの取り方とか聞かれたから、超そっち方向の相談だと思ってたんですけど」

フレンダ「予想の斜め上をはるかに超えてヘビーだったわけよ」

麦野「……やっぱり、私、重いかなあ……?」

440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 00:56:13.63 ID:dCZT4GL20
絹旗「うむむ……」

フレンダ「絹旗、例えば私がいきなり’絹旗っ、実は私はあんたの事が、あんたが死ぬ前から好きだった’とか言ってきたらどう思う?」

絹旗「超びびりますよそれ、どんなホラーですか」

フレンダ「そうよねぇ……」

麦野「……むー……」

442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:01:42.19 ID:dCZT4GL20
フレンダ「でもこれ、考え方によっちゃとってもロマンチックな話じゃない? だって、死に別れた二人が奇跡の再開を果たすのよ? オペラや小説じゃハッピーエンドな訳よ」

絹旗「でもあの浜面がその浜面じゃない可能性もあるんですよね?」

フレンダ「あの浜面とかその浜面とか……浜面のくせにややこしいわね……」

滝壺「……」ボー

フレンダ「そうねー……、でもまあ麦野の話を聞く限り要点は一つよね」

麦野「うん?」

フレンダ「要するに、過去面と今面が同一人物ならすべて丸くおさまるわけよ」

麦野「それはまぁ……そうだけど」

絹旗「過去面に今面って、どんな呼称ですか」

フレンダ「ややこしいからそう呼んだ」

滝壺「真東から電波きてる……」

443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:11:47.21 ID:dCZT4GL20
フレンダ「過去面が今面だって証明できれば、麦野は後ろめたい気持ちなんてなく今面の事を好きになれるって寸法よ!」

絹旗「でもそれ、どーやって確かめるんですか? 麦野が今面に聞いても超ダメだったんでしょ?」

麦野「そうね、あれは’昔の事を忘れてる’っていうより単純に’知らない’っていう感じだったから……はは、あの時は結構キツかったなぁ……」

フレンダ「あ~、も~。そこ! ウジウジしないっ!」

絹旗「過去面が今面だって証明できる何か超良い方法があるんですか? フレンダ」

フレンダ「ふふふ。結局、私に策がある訳よ」

絹旗「へぇ、どんなですか?」

444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:13:16.82 ID:dCZT4GL20
フレンダ『はーまづらー』

浜面『なんだ?』

フレンダ『ちょっと後ろ向いてて、あと、目つむってて』

浜面『はぁ? なんで俺がそんな事……』

フレンダ『……ばか、恥ずかしいからに決まってるでしょ……』

浜面『は? はぁああ?! おい、フレンダ何をっ、なんでバニーの衣装なんか持ってッ?!』

フレンダ『浜面の●●●……はやく後ろ向いてよ……』

浜面『わ、わかった! わかったから!』

フレンダ『絶対こっち見ないでよ?』

浜面『お、おう? おう!』

フレンダ『……』

浜面『……』



フレンダ「そこで背後からこの新開発のハンマーで思いっきり今面の頭をぶんなぐるッッッ!!!!」

絹旗「殺人だーーーーーーーっ?!」

445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:16:57.20 ID:dCZT4GL20
フレンダ「頭部へのショックを与えて過去の記憶を取り戻す訳よ」

絹旗「どんな理論ですか」


麦野「それ、やってみたけどダメだったわ」


フレンダ「……」

滝壺「……」

絹旗「……」

麦野「なに? 皆黙っちゃって?」

フレンダ「……やったんだ」

絹旗「……超実行済みでしたか」

麦野「ダメよ、その手は効かないわ。何回やっても絶対避けるからアイツ」

フレンダ「今面よ……安らかに……眠れ……」

絹旗「まだ死んでませんってフレンダ」

滝壺「……」ボー

446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:20:37.57 ID:dCZT4GL20
絹旗「ゴキブリ並の超回避ですよね、さすが浜面」

フレンダ「浜面じゃないわ絹旗、今面よ」

滝壺「いまづら」

絹旗「……なんだか超めんどくさいですね」

麦野「……はー……」

フレンダ「!」

絹旗「何か良い手、思いつきました?」

フレンダ「これだ……これしかない!」

絹旗「……超いちおう聞いてみますから、言ってみてください」

447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:28:12.26 ID:dCZT4GL20
フレンダ『浜面』

チャキ

浜面『なんだフレンダ? 銃なんか構えて刑事ゴッコか?』

フレンダ『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』

浜面『あん?』

ガン!

浜面『ぐは……っ?!』

フレンダ『ふん、結局、あんた下っ端のくせに生意気な訳よ』

浜面『フレンダ……何をッ?!』

フレンダ『うるさい!』

ドガッ!

浜面『……っ!』

フレンダ『変 っ! 変 っ! 変 っ!!!』

ドガ バキ ドゴ

フレンダ『あのさー……俺も子供をいたぶる趣味はさすがに持ち合わせてねーんだ。だからもうこれ以上俺に殴らせんなよ、楽に死んどけ』


────、パァン…………。

448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:29:00.04 ID:dCZT4GL20
フレンダ「とまぁ、こんな感じで当時を再現すれば何か思い出すんじゃない?」

絹旗「一理ありますね」

麦野「……」

フレンダ「ね? どう? 麦野」

麦野「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

フレンダ「え? なに? なんで無言で? え? え?」

麦野「ふ、レ、ン、ダぁ……、……アイツを傷つけるのはいくらお前でも容赦しないよ……?」

フレンダ「むぎの! むぎのおちついて! これはあくまで仮定の話であって! きゃー!!!」


────────

────

──


絹旗「おーい、生きてますかー?」

滝壺「ご臨終です」

チーン

フレンダ「生きてる! 生きてるから!」

450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:34:10.04 ID:dCZT4GL20
◇ ◇ ◇ ◇

フレンダ「でも結局、ハッキリしないのは麦野よ」

麦野「……ん?」

フレンダ「過去面と今面のどっちが好きなのさ?」

麦野「どっちって……そんなの選べない……」

フレンダ「仮によ? 過去面と今面が同一人物だとするじゃない? それだったら良いよ、でも違った時に麦野はどうするのさ?」

麦野「……」

フレンダ「麦野は過去面の事が好きだったかもしれない、でもそれは過去面が今面だったらっていう前提のもとでしょ?」

麦野「それは……」

フレンダ「もしさ、過去面と今面が全然関係ない赤の他人で、それでも好きって、浜面の事が好きって麦野は断言できるわけ?」

麦野「……」

絹旗「フレンダ、だから今それを相談して」

フレンダ「絹旗は黙ってて、私は今麦野と話してるんだから」

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:44:59.30 ID:dCZT4GL20
絹旗「なっ」

フレンダ「いいから黙っててよ!」

絹旗「っ」ビクッ

フレンダ「むぎの、よく聞いて」

麦野「……うん?」

フレンダ「仮にこの告白が成功してアイツが麦野と付き合ったとするじゃない?」

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:46:20.89 ID:dCZT4GL20
フレンダ「そりゃ幸せだろうさ、幸せだろうね。見てるコッチが嫌になるくらい幸せになるだろうさ」

麦野「……」

フレンダ「でもある日、ふとした事から過去面と今面が別人だって知ってしまうの」

麦野「……」

フレンダ「しかも最悪な事に、それが浜面に知られてしまうの」

麦野「……」

フレンダ「自分の愛する人が、本当に好きだったのは’自分に良く似た他人だった’なんて事知ったらさ、その時浜面、どんな顔すると思う?」

麦野「どんな……って」

フレンダ「ああもうハッキリしないなあ!」

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:48:38.23 ID:dCZT4GL20
フレンダ「あたしがイライラしてるのはね、麦野」

グイッ

麦野「……え?」

フレンダ「煮え切らない麦野に、じゃない。その煮え切らない麦野に! あたしが浜面を好きって気持ちが! 負けそうだって事に! イライラしてんのよ!」

麦野「……フレ、ンダ?」

フレンダ「むぎの、歯ァ食いしばりな!」

パン

454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 01:57:15.91 ID:dCZT4GL20



フレンダ「あたしだってねぇ!」




フレンダ「あたしだって浜面の事が好きだよ! ああそうさ! あのバカの事が好きなんだ!」




455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 02:00:27.57 ID:dCZT4GL20
フレンダ「そりゃ救えない程バカで! 変 で! おっちょこちょいで調子乗りだけどさ! あたしの事……ちゃんと、ちゃんとあたしの事を見ててくれるんだ……」

フレンダ「ファ……ファミレスで困ってたら助けてくれたり……、ちょっとお願いしたらすぐなんでも作ってくれたり……、いろいろ知らない事教えてくれたり……」

フレンダ「ああこの人ならひょっとして! って思ってたけど、けど……けどさ……」

フレンダ「あんな話聞いた後にそんな事言えるわけないじゃない!」

フレンダ「あたしには、昔の浜面の事なんかわかんない! どこで何してたかも知らないし!」

フレンダ「でも……でもさ……」

フレンダ「昔の事なんか関係ないって、これから知っていけばいいって思ってたところなのに……」

456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 02:01:18.16 ID:dCZT4GL20
フレンダ「ずるいよ……」

フレンダ「麦野がどれだけ浜面の事思ってるか! 知っちゃったからには何もできないじゃない!」

フレンダ「二人にそんな過去があったなんて事言われたらさ……何もできないじゃない……」

フレンダ「勝てる訳……ないじゃない……」

フレンダ「……ずるいよ、むぎの……」

フレンダ「……ずるい、よ……」

474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:31:15.65 ID:dCZT4GL20
◇ ◇ ◇ ◇

……。

とても懐かしい夢だった気がする。

例えば、昔持っていたはずのわりと大きいクマのヌイグルミがいつの間にか無くなっていた事とか。

例えば、なぜか知らないけれどいつの間にかクローゼットの中に紛れ込んでいたワンピースとか。

無くなっていたものが有ったり、有るはずのものが無くなっていたり。

それから

誰かと一緒に

居た気がする。

そんな夢。

……。

475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:34:26.26 ID:dCZT4GL20
あの小さい石ころみたいな、キラキラした謎の部品みたいなもんを拾ってからここ最近、ずっとそんな夢を見ている。

やけにリアルで、まるで自分が経験してきたかのように臨場感のある夢。

どっからどこまでが現実で、どっからどこまでが夢なのか曖昧な世界は、けれどもなぜか温もりに満ちていた。

その夢はきまって一人の女の子と一人の男の子の出会いから始まる。

めちゃくちゃ可愛いけれど、世間知らずというか。そんな女の子。

そんでもって、どこにでもいる普通の男の子。

夢の中で男の子は女の子に振り回されっぱなしで、だけど男の子はそれも案外悪くないと思っている様子だった。

……でも、

夢の終わりにはいつも残酷な結果だけが待っていた。

乾いた音で目が覚める。

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:35:36.43 ID:dCZT4GL20
休日だというのに珍しく早い時間に目が覚めたので、

布団の中にあるはずのリモコンをもぞもぞと探し、旧世代のテレビに向かって

「起きろ」

と信号を送る。

彼はその眠りを妨げられたにも関わらず文句一つすら言わず、命令に忠実に従った。

ニュースや情報系番組が多くを占めるこの時間帯にザッピングを繰り返し、とある戦隊ヒーローの番組が目にとまった。

小さい頃に見たテレビのヒーローに憧れていた俺としては、チャンネルをここで止めるのがジャスティス。

男だったら誰しも大なり小なりヒーロー願望っていうか、

そういうくだらない妄想を抱く時期があると思う。

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:36:47.05 ID:dCZT4GL20
簡単なあらすじはこうだ。

「たった一人の女の子を守るためにテレビのヒーロー達はその身一つで巨大な悪に立ち向かっていく」

いつの時代にもお決まりのパターン。

ヒーロー達は敵の怪物に倒されても倒されてもめげずに立ち向かっていく。

爆薬が炸裂し、耳を劈く破裂音が響き、全てを溶かす閃光が散る。

怪物の攻撃で血を流し、骨が折れても、ヒーロー達のその真っ直ぐな心までは折れない。

何が彼らをそうさせるのか、

彼らの強さは何なのか。

眠い頭で考えてもわからない、

きっとヒーローだけが持っている特別な何かが彼らを駆り立てるんだろう。

そして、放送時間の終わりが近づくと、彼らはお決まりの台詞と必殺技で悪を蹴散らした。

そうしてヒーロー達は一般大衆の中へと帰っていく。

478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:38:11.65 ID:dCZT4GL20
ああ自分もこんな風に生きることができたらどんなに良いんだろうか。

小さい頃、確かに持っていた憧れ。

けれどいま、

真っ黒で冷たい学園都市から見上げる空は、くすんで見える。

起き抜けに薄汚れたワンルームの部屋を適当に片付ける。

アイテムの集合時間までの時間をどう潰そうかと考えた挙句、伸びをひとつすると、履き慣れたスニーカーを選んで外に出た。

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:42:38.91 ID:dCZT4GL20
適当に路地裏をプラプラ歩くと

どっかの能力者同士が喧嘩をしていた。

片方はどういう理屈か重力に逆らって垂直の壁を走り、

もう片方はそれを待ち受ける。

壁を蹴って加速をつけたパンチが顔面に届く直前に、

これまたどういう理屈か今まさに殴りかかろうとしていた男の動きがスローモーションになった。

そこまで歩きながらなんとなく見て、興味を無くした俺の両足は別の場所へと向かう。

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:44:53.99 ID:dCZT4GL20
小さい頃、最初はアレを魔法だと思った。

けれど、どうやらそれは魔法ではなく超能力というものらしい。

何がどうなっているのかはわからない。

脳のある部分をいじくってカリキュラムを受ければ俺でも能力が使えるらしい。

というのを聞いた瞬間に頭の中がそれでいっぱいになった。

「学園都市に行きたい」

行った後の事なんか当時はそれほど深く考えちゃいなかった。

きっと自分は超能力者になるだろうし、

きっと自分はか弱い女の子を守るヒーローになるんだろうと思っていた。

だけど現実はそんなに甘くなかった。

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:51:10.26 ID:dCZT4GL20
入学して一番最初の身体検査ではレベル0判定。

それでも最初はクラスの大半もそんなもんだ。

けれど、日が経つにつれ、周りの者も何かしらの能力を扱えるようになっていく。

しだいに俺みたいなレベル0は周囲からおちこぼれの烙印が押されるようになった。

不思議と悔しさみたいなモンは沸いてこなかった。

「ああ、やっぱり自分にはヒーローなんて無理なんだろうな」

ド派手な技で敵を翻弄し、華麗にやっつけ、救うべき誰かを救う。

「やっぱり、自分には無理だったんだ」

わかっていた事じゃないか。

当たり前だ、誰しもがヒーローになれるわけじゃない。

人間、諦める事も肝心なんだってな。

482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 21:56:16.20 ID:dCZT4GL20
ふらふら、ふらふら。

倒れる直前のコマみたく、あっちにブレたり、こっちにブレたり。

けれども、まだ倒れたくない。

ふらふら、ふらふら。

力が無い。

その事実だけで路地裏で暴れても虚しさだけが付きまとう。

それから何人かとツルんだけど、

そいつらだって結局同じレベル0っていう輪の中で付き合って、

見下されない同格のクズが欲しかったっていうだけで。

都合のいい話だと思う。

利用して利用された。

クズはクズらしく生きる。

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 22:00:32.96 ID:dCZT4GL20
思い描いた理想とか

守りたかった何かとか

きっと、たぶん

こんな自分にも、おちこぼれる前は何かがあったんだと思う。

むしろ何かがあって欲しかった。

……けれど、思い出せない。

思い出そうにも、……真っ白だ。

真っ白。

何も無い。

残念ながら、本当に自分には何も無い。

ただのクズだった。

ただのクズであるが故に、何回警備員に捕まって留置場に何回ブチ込まれようが、更正の余地なんてあったもんじゃない。

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 22:05:53.57 ID:dCZT4GL20
駒場さんと出会ったのは、それから少ししてからだった。


『お前が浜面仕上か?』

『……誰だ?』

『駒場という者だが……、率直に聞こう。お前、力が欲しくないか?』

『力?』

『そうだ』

『……興味ねーな』

『なぜ?』

『はっ、無能力者の俺が力を得た所でどうなるってんだよ、今更何も変えられないし、変わらねーんだよ』

『ちょっと違うな……』

『何が違うってんだ』

『無能力者でも、適切な力を身に着ける事で能力者とも対等に渡り合える事ができる』

『できねーよ』

『科学を生かせば可能だ』

『はぁ?』

『お前には手先の技術があると聞いている、協力して欲しい』

485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 22:11:36.66 ID:dCZT4GL20
『やだね、何で俺がそんなめんどくさい事』

『……俺の友人が殺された』

『……?』

『能力者にだ』

『……』

『……能力者といっても大半はレベル1かレベル2。やつ等のストレスの捌け口として無能力者が襲われている』

『……』

『……俺は、それを救いたい』

『救う、だ?』

『ああ』

『できるのかよ、本当に、そんな事が』

『……できる、俺とお前。……仲間の力があれば』

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 22:13:37.86 ID:dCZT4GL20
『おい』

『……む?』

『だったらよぉ、リーダーはこの浜面仕上様、だよなぁああっ?!』

ドガッ

『……ふむ、良いパンチだが軽いな』

『いっ?!』

487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/24(月) 22:18:05.52 ID:dCZT4GL20
殴っても殴っても倒れない大男。

殴って、蹴って、叩いて、跳ねて。

いつの間にかぶっ倒れて、

気がついたら心配そうに俺の顔を覗き込んでやがった。

『すまん、つい力を入れすぎてしまった』

とか言われた日にはもう笑う事しかできなかった。

『わかったァ、わかったよ。あんたの仲間になる』

『……歓迎する』

『あんた、名前は?』

『……駒場、駒場利徳だ』

『わかったぜ、ボス』

その日俺は、スキルアウトに拾ってもらった。

491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:31:45.76 ID:ZhTHicm10
◇ ◇ ◇ ◇



本名。

内緒。

フレンダって名前もどこかの雑誌モデルが使ってた名前を拝借したものだ。

別に裏の世界では偽名を使うのは不思議な事じゃないし、

現に麦野や絹旗なんかは対外的には原子崩しや窒素装甲の能力名で通ってる。

一部の気が置けない人間にのみ本名を公開する。

例えば、仕事仲間とか。

私は学園都市の能力開発を受けた訳じゃないから能力が使えない。

だからフレンダ。

492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:33:59.95 ID:ZhTHicm10
私が暗部なんていうアブノーマルな仕事をしているのは

「結局、まぁ人生楽しめればいいんじゃないかな」

それくらいの認識だ。

楽しめて楽ができたらそれでいい。

暗部は給料だって悪くない、

普通だと一生かかったって稼げない位のお金を手に入れる事だって難しい事じゃない。

せいぜい頑張って稼いで、後はどっか税金の安い外国でのんびりすればいい。

ただし、死ななければ、だけど。

493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:34:50.66 ID:ZhTHicm10
自信満々の能力者を嵌めた瞬間に見せるあの絶望に満ちた顔を見るのも嫌いじゃないし。

そもそも私は他人の人生にあまり興味がない。

アイテムのメンバーにしたってある意味普通の友達っていう認識だし、

依頼で殺さなきゃいけなくなった人間の「それまでの人生」というものに興味が希薄だ。

雇い主が良い人間だとか悪い人間だとかそういうのはどうでもいい。

お金が貰えればそれでいいし、依頼を複数人でやらなければいけない以上は協力だってする。

たまーにミスって麦野からお仕置きされる事もあるけど、あはは。

結局、それはまぁ、ご愛嬌って訳よ。

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:36:24.65 ID:ZhTHicm10
思えば生まれた時からナイフを握っていた気がする。

例えばそれは、ただリンゴの皮を剥く為だったかもしれないし。

例えばそれは、ただ、自分の身を守る為だったかもしれないし。

例えばそれは……。

……今となっては、どうでもいい話だ。

本当にどうでもいい。

ただの、ありふれた話。

裏の世界に私と同じ経験をしたコなんて五万と居るに違いない。

私を含めて暗部に居る人間なんて多かれ少なかれ闇を抱えている。

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:44:15.70 ID:ZhTHicm10
私がアイテムに来る前は「5歳の殺し屋」なんてのと一緒に仕事をした事がある。

私は普段、キャンディと魔女っ子アニメが好きなその子のお守りをしたいた。

よく泣くし、よく笑って、誰にでも懐く。

どこにでもいる五歳児だった。

それでもきちんと給料をもらって仕事をこなしていた、

彼女に任されたのは主に「暗殺」

キャンディの中に毒を盛って「おじちゃん、これあげる」と、ターゲットを死に至らしめた事もあるし、

玩具の中に爆弾を仕込んだ事もあった、本人が自覚をもっているかどうかは別として。

そういえばいつも仕事場に人形を持ち込んできてその度に当時のリーダーに怒られてたっけ。

いや、良い大人が5歳児に向かってマジギレよ?

ありえねーっつーの。

結局、どこにも置き場がなくなって私が引き受ける事になったんだけど。

アイテムに配属になってから風の噂で「死んだ」って事を聞いた時は、

「明日は自分が死ぬのかな、にゃはは」

さすがにちょっとだけ強がった。

だって5歳だよ? フツーお父さんお母さん悲しむよ? あ、フツーじゃないから悲しまない? 

いやいや、そんな事ないでしょ……たぶん。

496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:45:03.33 ID:ZhTHicm10
私が本名を明かさない原因もそこらへんにある。

どうせいつか消えるなら、

「せめて祝福されて生まれてきたはずの自分」は生きていて欲しい、という事だ。

乙女な願望?

こちとら乙女だっつーの。

偽名のまま死ねば偽名の私だけが死ぬ、それで済む。

本当の私はパパとママの胸の中へ……って?

……あはは、ありえねー。

だって、二人とも私が殺したんだから。

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:50:48.29 ID:ZhTHicm10
パパは酒が切れると暴れだす典型的なドランカー。

ママは金さえ貰えれば1ドルにだって股を開く 婦。

この国の子供が思い描く「幸せな家庭」なんてものとは無縁の生活だった。

「誰のおかげで生きていけると思ってるんだ」

ご飯を食べるたびに振るわれる暴力、日に日に増えるアザ。

「ごめんね、ごめんね。大丈夫?」

ごめんねが口癖の母親の首筋には他人のキスマーク。

借金取りが来る日には決まって父親はどこかに逃げて

私と母親だけが誰のものともわからない足音に眠れない夜を過ごした。

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:56:03.19 ID:ZhTHicm10
ああ神父さん。

どうすれば私は幸せになれるのでしょうか。

助けを求めに駆け込んだはずの教会で 的暴力を受けた。

おまわりさん。

たすけてください。

破れた服で駆け込んだ法の番人はこの世のものとは思えない最低な笑みで私を辱めた。

499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 07:56:57.64 ID:ZhTHicm10
結局、この世はそうなっているのだろう。

自分の置かれた立場がどうとか、どうすれば幸せになれるとか深く考えるヤツがバカなのだ。

だってほら、救いの手を差し伸べてくれるはずの大人はどこにもいない。

軽くていい。

ラクでいい。

あえて苦しい思いをしなくてもいい。

だって、きっと、もっと人生はシンプルなはずなんだ。

500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 08:00:34.06 ID:ZhTHicm10
「あはっ。あははははははは、あはははははははははははははははははははは」

笑いがこぼれる。

……ひどい格好だ。

服は破れてボロボロ。

下着には薄汚れた白い液体。

月明かりに照らされた肌は青黒い。

私は笑った。

笑った。

あはは。

あははは。

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 08:03:46.24 ID:ZhTHicm10
表通りから2本裏の筋を進んだところに家がある。

どこにでもあるボロアパートだ。

築数十年を経過して木のドアはいつも開きっぱなし。

私はただいまも言わずにリビングに忍び込んだ。

あはははははは。

父親がテレビを見て笑っている。

頬が赤い、既に朝から何杯もの酒を入れているのだろう。

暢気なものだ。

今から殺されるとも知らずに。

502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 08:05:48.44 ID:ZhTHicm10



右手にはナイフ。


例えばそれは、リンゴの皮を剥くときと同じ要領で。


だけどその日、私は明確な殺意をもってパパとママを殺した。


人生はもっとシンプルでいい。


さあ、これで苦労は終わった。


これからはきっと良い事が待っているに違いない。

503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 08:10:37.75 ID:ZhTHicm10
────────

────

──

どうやら私が売られる事が決まったらしい。

買い手は日本という国の何とかっていう富豪だとか。

こんな貧乏な国で子供を買うなんて物好きが居たものだ。

半年世話になった女からは、

「あんた、高い値で売れるらしいから何かご褒美してあげるわ、欲しいもんはある?」

と聞かれたから。火薬をくれ、とびきりいいやつ。

と答えるとにっこり笑って、

「クレイジーね、良いアサシンになるわよ、あんた」

豪快に笑っていた。

504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 08:13:41.65 ID:ZhTHicm10
良い事ってのが何なのかまだわからないけれど

日本に行けば何か良い事があるのだろうか

……でも、どんなクソッタレな生活が待っていたとして

私がすることはシンプルだ。

ラクなように、軽く生きる。

無理はしない、苦しい事は避ける。

シンプルに、シンプルに。

自分ひとりでだって生きていける。

この半年だってなんとかなった

これからだって、きっとそう。

シンプルに、

シンプルに。

513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 13:54:35.31 ID:ZhTHicm10
それから、日本に来た後は一通り日本の事について学ばされてからこの学園都市に投げ込まれた。

私に日本語と殺しを教えてくれた女は

めんどくさそうに私の働きの何パーセントが胴元にいってうんぬんかんぬんという話をした後に、

「じゃ、せいぜい長生きしなさいな」

これまためんどくさそうにプラプラと片手を振って、私でも知ってる高級車で去っていった。

514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 13:55:25.44 ID:ZhTHicm10
それからはいくつかの組織を転々とする生活が始まった。

生き残る為には裏切り、寝返り、殺し、なんでもありのバトルロワイヤルみたいな世界が広がってるモンと思ってたらどうやら違うらしい。

いくつかの組織に加入・脱退を繰り返したがどこも基本的に4~5人でまとまって行動する。

学園都市という特性もあるのだろう、構成する人間の多くは私と同じか少し年上くらいの若いメンバーだった。

皆何かしらの能力者であり、皆何かしらの後ろめたい過去を持っていた。

何かの怪しい実験に携わった者、刑務所から逃げて来た者。ここでは出生が曖昧なくらいで普通だった。

515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 13:56:02.26 ID:ZhTHicm10
だから私の髪と青い目が特別目立つ事も無かったし、あらためて質問される事もなかった訳よ。

まぁ聞かれても適当にごまかすんだけどね。

めんどくさいじゃない?

同情なんてして欲しくないし、まぁどいつもこいつも同情なんてしてくれるヤワな相手じゃないんだけどね。

私はフレンダ。

それでいいじゃない。

連中には本名だって教えてやらない。

ただのフレンダ。

謎の女って感じでいいじゃない。

結局、私はそれほど他人を信じる事ができないんだと思う。

だから私はフレンダを名乗る。

516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 13:58:50.64 ID:ZhTHicm10
基本的にココでの生活は自由だ、拍子抜けするくらい緩い。

仕事以外の時間は何をするのも自由。

買い物に行くのも良いし、武器を密輸するでも良い。

学校に行っても良いし(実際行ってる人間はいなかったが)株取引で一山当てるも良し。


ある日突然リーダーの元に依頼の電話がかかってきて、仕事が発生する。

仕事は大抵殺し、短い労働時間で嘘みたいな大金が転がり込む。

しかもいつもいつも成功するとは限らない。

酷い時は結成から3時間で組織が壊滅する事もあった。

生きるのはつまらないけれど、死ぬのはもっとつまらないから、仕事をこなしながらいつも逃げる準備だけはしていた。

雲行きが怪しくなると味方を売って生き延びる。

それでも大丈夫だ。

結局、そんな状況まで追い込まれるという事は、もう二度とメンバーと顔を合わせる事は無いという事だから。

乗り込んだ船が沈没しそうならば、そんな沈み行く船からはとっとと逃げてしまえばいい。

結局、それが利口って訳よ。

517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 14:00:32.22 ID:ZhTHicm10
けれど参った。

私が関わった組織が立て続けに壊滅してしまった。

それだけならまぁ、いつもみたく新しい配属先を待つだけ……なのだが。

さらに参った事に私を学園都市に送りこんだ派閥まで抗争に巻き込まれて潰されてしまったらしい。

えーっと

つまり

結局、暗殺家業、クビって訳よ。

これにはさすがに参った。

金はあるが一生を生きていけるかと聞かれると圧倒的に足りない。

518: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 14:08:37.81 ID:ZhTHicm10
さてどうしようと立ち往生していた時に知らない番号から電話がかかってきた

不思議に思いながら通話ボタンを押すと

「あんた、失業中なんですって?」

馴れ馴れしい女の声だった。

「失礼な、これでも立派に働いてる訳よ」

「知ってる、けれど慣れもしないデイトレードなんてするもんじゃないわよ? その株ダメね、明日には300万円の損害が出るわ」

「なんでそんな事知ってるのよ」

「あら? この世界ではね、情報が命なのよ? ね、────ちゃん」

「……っ」

「あらあら? びっくりした? フレンダって呼んだ方が良かったかしら?」

519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/25(火) 14:13:46.46 ID:ZhTHicm10
「あなた……何者……っ?」

「原子崩しからは電話の女って言われてるわ。って、んな事はどうでもいいのよ。それよりフレンダ、この街の暗部の人間が後ろ盾を無くしたままどうするつもりよ? このままじゃあんた飢え死によ?」

「さー? このまま社会に無償奉仕ってのもいいかもしれないわね、せっかく学生の街なんだし普通に学生やるとか?」

「こいつときたらー! 口ごたえだけは超一流ね! いいわ! 気に入った! 無償で殺し? 普通の学生? んな事するんだったら、あたしがあんたを雇ってあげる」

「あたしが? あんたの元で?」

「暗殺のスペシャリストを探してたとこなのよね。うちには爆弾がいるんだけど、どうもあいつはド派手に立ち回る事しかできないみたいでね、任せられる仕事の幅が小さいのよ」

「?」

「会えばわかるわ」


その後に指定された場所で待っていた女が、

学園都市に7人しかいないレベル5の第4位。

原子崩し──、麦野沈利その人だった。

後に絹旗と滝壺が加わって今のアイテムの形になる、少し前の話だ。

532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 07:21:25.25 ID:BDi6VSSR0
麦野「新しいのって、あんたね?」

フレンダ「結局、そうみたいね」

麦野「私は麦野、この組織のリーダーだからよろしく」

フレンダ「よろしく麦野、フレンダよ。組織って、他にも何人か居るわけ?」

麦野「下っ端は何人かいるけど、正規メンバーはこれから増える予定」

フレンダ「ふぅん」

麦野「あぁそうそう、フレンダ? 先に言っとくけど、私の機嫌を損ねる様な事したらお仕置きだからね」

フレンダ「へっ?」

麦野「だーかーらー、私の足引っ張んなっつってんの。日本語わかる?」

フレンダ「りょ、了解な訳よ」

麦野「それじゃ、行くわよ」

フレンダ「どこに?」

麦野「仕事」

533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 07:37:19.15 ID:BDi6VSSR0
ドカン!

ドガッ!

「ギャハハハ、死ねッ死ね死ねッッ!! ミナゴロシだ!!」

遠くから愉快な声が聞こえる。

あれはおそらく本物だ、人を殺すのをなんとも思っちゃいない、遊びと同じくらいの感覚でソレができる、本物の殺人者のソレだ。

そういう意味ではまぁ、私も同じかもしれないけれど。

「オラオラどうした? 足止めたら死ぬぞ? 止めなくても死ぬけどなァ!!」

それにしても、本当に愉快な声だ。

麦野の能力──原子崩しというらしい──が発動して、それが壁も遮蔽物も関係なく貫通しターゲットの命を根こそぎ奪う。

学園都市は常識では考えられない事が起こるのはある意味日常茶飯事だと思っていたがさすがにこれは……

「なるほど、電話で聞いた通りの爆弾な訳よ」

麦野が能力を開放する毎にガタガタと施設が軋む、大地ごと揺らすっていったいどれだけ高位能力者な訳っ?!

……これは間違って逆らいでもした日には大変な事になるなぁ。

534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 07:43:10.25 ID:BDi6VSSR0
そんな事を考えながらピアノ線を使って簡単なトラップを仕掛ける、

誰かがこれを踏むかひっかけるかするとナイフが飛んできてズブっと昇天する仕組みだ。

逃げる時に追われたら目くらまし程度には役に立つだろう、逃走ルートを確保しながら施設の奥へ進む。

今日の仕事は「殲滅」と「目的物の回収」

おそらく放っておいても「殲滅」は麦野が一人でやってしまいそうだから私はさっさと目的物の回収に向かう。

「えぇっと、確か地図ではこの奥の突き当たりの部屋だったわね」

作戦会議の時「あー、めんどくさい事は任せたから」って言われてちょっとびっくりしたけど、

あんたリーダーじゃないのっ?! って。

でも、まぁ。

「初陣だし、名刺代わりにデキル女をアピールするには絶好のチャンスって訳よ」

535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 07:53:09.31 ID:BDi6VSSR0
合流地点まで戻るとそこには既に麦野が待機していた。

麦野「首尾は?」

フレンダ「上々」

小型のキャリーバックを見せる。
すると麦野は「うん」と短く頷いて、

麦野「合格ね」

フレンダ「そう」

麦野「実は黙ってたけど採用試験も兼ねてたから、今回の任務」

フレンダ「薄々そんな気がしてた訳よ」

麦野「あら? もっと喜んでいいのよ?」

フレンダ「なぜ?」

麦野「もし’使えない’と判断したら、私があんたを殺すように指示されてたから」

536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 07:55:49.91 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「……」

麦野「やだなーもー、フレンダちゅわ~ん? そんなに硬くなっちゃって、そんなのジョークに決まってるにゃーん?」

フレンダ「え? あ? あぁ、そう、そうなのね? あはは」

麦野「麦野沈利だ、改めてよろしく」

フレンダ「う、うん。むぎの」

麦野「これで本格的なアイテムの旗揚げね」

フレンダ「はふぅ……なんだかお腹空いた訳よ」

麦野「それじゃあ歓迎会も兼ねて、ファミレスでも行こっか」

フレンダ「ふぁ、ファミレスぅ?」

麦野「なによ、嫌ならいいけど?」

フレンダ「い、行く行く。結局、仕事終わったばかりでお腹と背中がくっつきそうな訳よ」

537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:07:28.39 ID:BDi6VSSR0
────────

────

──

それからしばらくは二人で仕事をこなした。

麦野が壊して、私が盗む。

あるいはその逆も。

麦野に関して言えば最初は「底知れない怖い人」っていう印象だった。

なんかもう仕事中の目とかヤバイし、言葉遣いも当社比200%くらい凶暴になるし、

キレると手がつけられないし、平気で死ぬだの殺すだの言うし……って、それは私もか。

その後加入してきた絹旗、滝壺との間に誰が言い出した訳でもないけど「さわらぬ麦野にたたりなし」っていう暗黙の了解があったりする。

ってか「怖い」っていうのは今もそれほど変わって無いけど。

それでもずいぶん麦野も丸くなったと思う今日この頃な訳よ。

……あれ?

538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:12:38.16 ID:BDi6VSSR0
そういえばいつからだろう?

いつから麦野がちょっと優しくなったかなぁなんて思うようになったんだろ?

いつから……?

う~ん?


浜面「ほら、レモンティー。持ってきたぞ」

フレンダ「遅い」

浜面「仕方ねぇだろ! ティーパックが切れてて出してもらってたんだからよ!」

フレンダ「ふん、浜面の分際で口ごたえとは100年早い訳よ」

浜面「はぁ~……なんでこううちの女子はこんなに高圧的なんだよ……」

フレンダ「そんなの当たり前じゃない」

浜面「?」

フレンダ「結局、浜面だからでしょ」

浜面「ものっすごく見下されてる気がするんですがフレンダさん」

フレンダ「うん」

浜面「うんって、うんってオイ、即肯定っ?!」

フレンダ「あ~も~、うるさいなぁ、レモンティー冷めちゃうでしょ?」

浜面「それが冷めるのと俺関係ねーじゃねえか!」

フレンダ「はいはい」

539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:17:32.48 ID:BDi6VSSR0
浜面「で、他の面子は?」

フレンダ「まだ着てない」

浜面「今日の集合時間って何時だっけ」

フレンダ「3時」

浜面「はぁ……、久々に早く起きたから遊びにいこうとしてたのに」

フレンダ「結局、あんた街中でも目立つから」

浜面「そんだけの理由で俺、連行されてきたのっ?!」

フレンダ「連行って人聞きが悪いわね、私もプラプラしてて暇だったから丁度いいじゃないお互いさー」

浜面「ん……まぁな、そりゃそうだ」

フレンダ「ね?」

浜面「はー……ったくよー、ワガママが多いぜウチは」

540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:22:37.79 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「で、浜面は何飲んでる訳?」

浜面「ダージリン」

フレンダ「ダージリン?」

浜面「そう書いてた」

フレンダ「結局、渋いのが浜面にはお似合いねー。ピーチティーとか言われたらブン殴ってるトコだったわ」

浜面「ピーチティーと俺に謝れ」

フレンダ「ごめんなさいピーチティーさん」

浜面「俺はっ?!」

フレンダ「100万円くれたら謝ってあげる」

浜面「よろしい、ならば法廷で会おう」

フレンダ「ばかじゃない?」

浜面「おめーだろ!」

541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:31:23.50 ID:BDi6VSSR0
ズズズ

浜面「……」

ズズズ

フレンダ「……」

浜面「……プハー、あっちー、うめー」

フレンダ「静かに飲めないの?」

浜面「どう飲もうが俺の勝手だろ」

フレンダ「下品に飲まれるとこっちまで不味くなるんだけど」

浜面「フレンダ、お前あれだろ?」

フレンダ「な、なによ」

浜面「スパゲッティ音立てて食べると嫌がるタイプだろ?」

542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:31:57.39 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「へ?」

浜面「ああ~、なんでだろうなぁ。同じ麺類でもうどんやラーメンはこう、ズズズっと食べるのが当たり前なのにさぁ。同じ麺類なのにスパゲティだけ音立てて食べちゃだめなのはなんでだろうなぁ?」

フレンダ「知らない、文化の違いじゃない?」

浜面「あのよぉ、日本茶だって音立てて飲むのが普通だぜ? それで冷まして飲みやすくする、これぞ日本人が古来から編み出してきた文化って訳よ。それを文化と言うならばなぜダージリンにその文化を適用してはいけないのかっ!」

フレンダ「う」

浜面「ようするに音立てて飲んだっていいだろ」

ズズズ

フレンダ「な、何よ。屁理屈じゃない、そんなの」

浜面「食事中に屁とか言うなよ」

フレンダ「う」

浜面「……」

フレンダ「ご、ごめん」

543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:34:44.81 ID:BDi6VSSR0
浜面「……」

フレンダ「……?」

浜面「……ぶ」

フレンダ「ぶ?」

浜面「ぶわっはっはっは! 何っ?! ちょっと真剣な顔したら黙ってやがんの! ぶわっはっは!!」

フレンダ「……」

浜面「どーでい、普段のツケを返してやったぜ」

フレンダ「コロス」

ヒュン

浜面「どえぇぇええい?! フォークを投げるなっ!」

ヒュン

浜面「死ぬ! 死ぬっておい!」

フレンダ「えぇ~い、もう死んじゃえ~!」

544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:38:07.81 ID:BDi6VSSR0
浜面「フレンダ落ちつけ、話し合おう、まだ俺たちはわかり合える」

フレンダ「……ハァ……ハァ……」

浜面「な? だからその右手のフォークを仕舞うんだ」

フレンダ「……ハァ……」

浜面「良い子だから、な?」

フレンダ「なによバカにして……私に常識がないと思ってるわね?」

浜面「んな事ねーよ」

フレンダ「結局、そう思ってるからバカにしたんじゃないの?」

浜面「バカにはしてねぇ、ちょっとからかっただけだろ?」

545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:40:59.80 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「同じじゃない」

浜面「ごめんって」

フレンダ「許してあげない」

浜面「な? このとーり」

フレンダ「……ダージリン」

浜面「は?」

フレンダ「私もダージリン、入れてきて」

浜面「お? おう」

546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:44:28.82 ID:BDi6VSSR0
浜面「入れてきたぞ」

フレンダ「ありがと」

浜面「どういたしまして」

フレンダ「……あのさー」

浜面「ん?」

フレンダ「私ってさ、やっぱり常識ない風に見えるの?」

浜面「んな事ねーんじゃね?」

フレンダ「どっちよ」

浜面「まぁ、異国の人だなーとは思うけど」

547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:46:02.20 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「……そ」

浜面「んだよ、遠い目しちゃってさ。らしくねえな」

フレンダ「はぁ? 浜面のくせに生意気よ」

浜面「そうそう、そうやってる方がフレンダらしいぞ」

フレンダ「浜面ってさ……」

浜面「あん?」

フレンダ「ひょっとして、さ」

浜面「?」

フレンダ「Mなの? 罵られるのがイイの?」

浜面「なんでだよ!」

フレンダ「あはは。結局、そういう反応がキモイのよね」

浜面「……ひでぇ……」

548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:49:27.73 ID:BDi6VSSR0
ズズズ

フレンダ「……ん、美味しい」

浜面「そーかよ」

フレンダ「でも外国でこんな飲み方したら顰蹙モンだからね」

浜面「はっ、パスポートも持ってねぇよ」

フレンダ「それじゃあ動物園に帰る時大変よ?」

浜面「俺は日本人だ!」

フレンダ「あはは」

浜面「ったく」

550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:53:54.50 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「は~、暇だわ……」

浜面「そういやぁ、フレンダさ」

フレンダ「うん?」

浜面「お前、結局何人な訳?」

フレンダ「地球生まれのサイヤ人」

浜面「なるほど……だから金髪なのか……」

フレンダ「そゆこと」

551: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:55:30.56 ID:BDi6VSSR0
浜面「お前の戦闘能力は?」

フレンダ「53万」

浜面「それじゃあ地球に転がってる七つの球を拾いにいかねーとな」

フレンダ「そうね、気がむいたら」

浜面「俺が死んだら生き返らせてくれよな」

フレンダ「嫌よ、なんであんたなんか」

浜面「はぁ? こんだけお前らに尽くしてんだろうが」

フレンダ「……ま、たしかに。結局、下僕が居ないと生活が不便になりそうね」

浜面「あ、復活させるけど下僕枠なのね」

フレンダ「な~に? 不満なワケ?」

浜面「いや、別に」

552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 08:59:53.34 ID:BDi6VSSR0
浜面「で、結局どこの出身なんだよ」

フレンダ「そんなに知りたい?」

浜面「……ま、いいや別に」

フレンダ「あ、そ」

浜面「誰だって言いたくない事の一つや二つあるだろ」

フレンダ「ふ~ん、浜面にもいえない事とかあるの?」

浜面「言えないっつーか何つーか……」

フレンダ「ハッキリしないわね」

浜面「こう見えて色々あんだよ」

553: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 09:00:59.09 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「チンピラ風情にも色々あるのね」

浜面「なんかよぉ、正直よくわかんねーんだ」

フレンダ「よくわからないって何なのよ」

浜面「思い出そうとしても、こう、モヤモヤしてるというか。記憶にモヤがかかってると言うか」

フレンダ「ふーん」

浜面「なんつーか、んー、わかんねーんだ」

フレンダ「何それ、全然わかんない」

浜面「俺だってわかんねーよ」

フレンダ「あのさー、浜面」

浜面「あん?」

フレンダ「好き」

561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 10:59:26.21 ID:BDi6VSSR0
◇ ◇ ◇ ◇


私を救ってくれた少年は私に関わったばかりに消されてしまった。

あれが裏社会のやり方だという事に、裏社会に入ってから気がついた。

事情を知った人間は例え子供だろうが容赦しない。

非道だと思ったが今はもう自分も他人の事をどうこう言える立場に無い事は理解している。

最低な生活をしていると思った。

けれど、生きる為には仕方ない。

仕方ないと割り切った。

ブチ殺した人間は、両手を超えてからもう数えていない。

依頼のある夜は適当にコンビニのシャケ弁を食べて朝方にヨロヨロと帰ってくる。

依頼の無い日は適当に街を歩いて、持て余した報酬でご飯を食べて服を買う。

一人で。

563: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:04:39.35 ID:BDi6VSSR0
原子崩し、この力が一体何の為にあるのか。

能力を植えつけた本人はもう既にこの世を去ってしまった。

私が襲われる事がなくなった、という事は、つまりそういう事なのだろう。

だから、本当の事はわからない。

ただ、わかることは。

この力は何も救わないという事だ。

壊すのみ。

破壊のみ。

ただ、目の前にある障害を薙ぎ払う為に存在する力。

本当に救いたい人すら救えない、……本当に役に立たない力だ。

564: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:09:04.52 ID:BDi6VSSR0
けれど、

街を歩けば誰かの姿を無意識に探してしまう。

手をつないで歩いてくれた誰かの姿を。

一緒に買い物をしてくれた誰かの姿を。

はまづら。

はまづら、しあげ。

──お~い、どこいくんだよ。

──似合ってんぞ、その服。

──何やってんだよ、沈利っ。帰るぞっ!

聞こえるのは幻聴。

過去の声ばかり。

幸せだった記憶ばかり。

565: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:10:22.56 ID:BDi6VSSR0
本当にあの少年は死んでしまったのだろうか。

実は、今もどこかで生きてやしないだろうか。

元気で、今もヒーローを目指しているんじゃないか。

嘘、

嘘。

本当はわかっている。

そんな事は無いと。

一度だけゲームセンターでクレーンゲームをしようと思ったけれど、

なんとなく気が引けてしまってそれ以来あそこには近づいてすらいない。

566: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:11:18.84 ID:BDi6VSSR0
古びたクマのぬいぐるみがおかえりを言ってくれた気がするのでとりあえず「ただいま」を告げておいた。

これだけは捨てられなかった。

未練がましく、それを持ってベッドに倒れこむ、

……つかれた。

ぬいぐるみをぎゅっと抱く。

少しだけ安心する。


ねえはまづら、今日は新しい子が来たんだよ?

フレンダって言うんだって。

ちょっと嘘っぽい名前だけど、仲良くなれるかなあ。

それとも、仲良くなんてならない方がいいのかな。

私と関わってもロクな事、ないから……。

ねえはまづら。

はまづらだったら、どうするのかなあ。

567: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:15:28.45 ID:BDi6VSSR0
あー、

だめだ。

なんかだめな感じにだめだ。

私は暗部組織アイテムの麦野沈利だ。

ただの麦野沈利にはもう戻れない。

……もっとも、最初から私は麦野沈利ではないのだけれど。

原子崩し。

その記号が私。

それが私そのもの。

あんな幸せな記憶なんて、

麦野沈利だった記憶なんて、

最初からなかったんだ。

原子崩しで居よう、冷徹非情な原子崩しで居れば苦しまなくて済む。

568: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:22:20.55 ID:BDi6VSSR0
原子崩しで居ている間は嘘みたいに仕事に打ち込めた。

仕事に打ち込んでいる間は良い、それ以外は何も考えなくて済むから。

学園都市の最底辺、クソッタレが集う場所。

原子崩しにはピッタリ、お似合いだと思った。

これ以上は無い、最高だ。

ただ壊せば良い、破壊すれば良い、それ以外は知らない。知ったこっちゃ無い。

与えられた仕事をこなす、こなす、こなす。

ころす、ころす、ころす。

それ以外は何もしない、電話の女もそれをわかっているのか、ぶつくさ文句を言いながらそういった仕事以外は私には頼まなかった。

569: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:24:09.49 ID:BDi6VSSR0
こわす、こわす、こわす。

うん。

それが原子崩し。

それでいい。

優しさなんて原子崩しには欠片も必要ない。

麦野沈利ではないのだから。

それでいい。

570: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:28:51.04 ID:BDi6VSSR0
「なははー、むーぎの。終わったよー」

その点フレンダは、よく働いてくれた。

「結局、私がいなけりゃ麦野を支える人間が居ない訳よ」

最初はちょっと警戒したけど、なんてことはない。

時折見せる悲しそうな目は、何かこの子に深い過去がある事を物語っていたけれど

そんなの暗部組織に属しているのだから当たり前といえば当たり前の事だった。

ましてや女性、何があったのかは想像に難くない。

だけど、この子が言い出さないなら聞かない。

私だって言わない。

けど仕事は速いし、正確。

たまにお仕置きが必要だけど、背中を預けるには申し分なかった。

571: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:33:27.42 ID:BDi6VSSR0
しばらくは二人でコンビを組んだ。

必然的に、二人で過ごす時間も増えて、会話も増える。

フレンダ「ねー」

麦野「なぁに?」

フレンダ「麦野はさー、彼氏とかいない訳?」

麦野「何を聞くかと思ったらそんな事?」

フレンダ「結局、興味あるもんね」

麦野「くっだらないわねー」

フレンダ「むー?」

麦野「んな事言ってる暇があったら仕事するのよ仕事」

フレンダ「あのさー、ちょっと最近仕事多すぎない? 二人だとオーバーワークだと思うよ」

麦野「だったら追加の要員、頼んでみようかしら」

フレンダ「っだああ。結局、それだと仕事の量は変わらない訳よ……」

572: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:34:45.59 ID:BDi6VSSR0
麦野「フレンダこそどうなのよ」

フレンダ「私?」

麦野「お気に入りの男でもできたの?」

フレンダ「んにゃ、全然。私麦野が好きだし」

麦野「はいはい、ありがとね」

フレンダ「なはは、冗談なのだー」

麦野「どうだか」

フレンダ「んん、呆れ顔のむぎの……たまらーん!」

麦野「っだあ! 抱きつくな暑苦しい!」

573: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:39:58.84 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「あのさー」

麦野「何よ」

フレンダ「結局、私たちって冷静に考えるとフツーの恋愛なんてできないと思うのよね」

麦野「フレンダにしては真面目な声色じゃない」

フレンダ「だってよー? 考えても見てよ、普通の男を好きになったとして、デートしてる最中に麦野から電話が掛かってきて’仕事よ’って呼び出されたら行かなくちゃいけないわけでしょ?」

麦野「そうね」

フレンダ「っだー、結局そういう細かいところから男女の仲ってのは崩れていくのよ、だんだん意思の相違が生まれていくって訳よ」

麦野「随分詳しいのね」

フレンダ「私に日本語を教えてくれた人が言ってた」

麦野「へぇ」

フレンダ「だから、私には恋愛はムリかなーって、諦めてる」

麦野「子供のくせに何悟った気になってんのよ」

フレンダ「むー」

574: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:44:12.70 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「だってほら、せっかくお互い好きになって結ばれたんだから、隠し事はしてほしくないでしょ?」

麦野「そんなもんかしら?」

フレンダ「えー、絶対そうだって。麦野はさ、例えば付き合ったとして男がよ? もし浮気してるの黙ってたらどうする?」

麦野「殺す」

フレンダ「っだああ! そうじゃなくて! 能力禁止!」

麦野「ん……まぁ、嫌な気持ちになるんじゃない?」

フレンダ「そうだよね、だからこんな仕事してる事も隠しちゃだめなのかなーって思うのさ」

麦野「クソ真面目ね、んな事言ったら普通引くわよ?」

フレンダ「なははー、私ってバカだけど、そういうところはキッチリしたいのよ」

麦野「バカだからね」

フレンダ「バカだから」

麦野「バカだからね」

フレンダ「うきー! 二回言うなー!」

575: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:46:43.23 ID:BDi6VSSR0
麦野「別にさ、言いたくない事は言わなくてもいいんじゃない?」

フレンダ「そうかなあ」

麦野「誰にだって言いたくない事の一つや二つあるでしょ」

フレンダ「それはまぁ……そうだけど」

麦野「好きになった男だって、……つーか、男なんて脳みそ×××みたいなもんだからいまいち信用できないのよね」

フレンダ「うわ~……ここファミレスだよ? 食事中だよ?」

576: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:49:42.69 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「ま、私に彼氏が出来たら紹介してあげるって訳よ」

麦野「いらないわよ」

フレンダ「まーまーまー、妬み?」

麦野「ばっか!」

フレンダ「ふふふ、麦野ったら乙女なんだからーもー!」

麦野「フーーーーーー……レンダぁ……、人をおちょくるのも大概にしろよ……」

フレンダ「きゃー! むぎのおちついて! ここファミレス! 公共の場!」

577: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:51:40.61 ID:BDi6VSSR0
とまぁ。

こんな感じだ。

猫みたいに気まぐれで

何考えてるのかいまいち読めない

けど

一緒に居て飽きない、

バカだけど。

すっごいバカだけど。

578: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 11:58:12.91 ID:BDi6VSSR0
数年間一人で仕事をこなしてきて、フレンダが加わり、その後絹旗と滝壺が同時期に加入して現在のアイテムの正規メンバーが揃った。

フレンダは優秀なアサシン、たまにポカをやるけど、仕事に関してはプロ、たまにポカをやるけど。

爆薬とナイフを使った近接格闘の熟練度はこの業界探したって稀有な部類だと思う、たまにポカをやるけど。

絹旗は窒素装甲があるから主に前線で出張ってもらってる。

私からするとてんで子供だけど大人になりたくて背伸びをしている感じ、趣味がかわってる。

悪い子じゃないと思うけど、ここに居るって事はこの子も相当の闇を抱えているのだろう。

滝壺は、よくわかんない。よくわかんないけれど、能力追跡(AIMストーカー)という能力の使い手。

居てもらわなきゃ困る、今やアイテムの核だ。

なんだかんだと、良くも悪くも五月蝿い連中が揃ったものだと思う。

女ばかり揃えたのは電話の女の趣味としか思えないが。

580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:02:45.77 ID:BDi6VSSR0
集まる度にやれ新作の水着がどうだとか、

流行の映画がどうだとか、

昨日のテレビ番組が面白かったとか、

道行く男で誰がカッコイイだとか。

まるで普通の女の子達がする会話を楽しんだ。

ああ、楽しんださ。

私達4人は普通ではない、アブノーマル。

普通への憧れは共通に持っていたらしい。

こんなファミレスを根城にしているのにもそういう理由(だと思う)

仲良し4人組……という訳ではないのだけれど、外から見るとそう見えているかもしれない。

なのに本当は殺し屋集団だって、一体どこの誰が気づくのだろうか。

581: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:09:23.18 ID:BDi6VSSR0
けれど、基本的にお互いのプライベートにはノータッチを決め込む。

もちろん休日一緒に遊びには行ったりするけれど、だからといってベッタリを決め込むわけではない。

あくまでアイテムあっての、仕事あっての繋がりだと言う事を忘れてはいけない。

と、原子崩しに言い聞かせる。

実際仕事さえ回せれば何をやっても良いのだが、仕事に影響が出る事は避けなければいけない。

と、原子崩しに言い聞かせる。

ま、結局何が言いたいかと言うと。

こんな生活も案外悪くないという事だ。

仕事は順調、一人でやっていた時ならいざ知らず。

私、フレンダ、絹旗、滝壺というカードが揃った今、任務の遂行に特に何か問題があるわけではない。

それに面倒な下見やら後片付けは下部組織に任せておけばいい。

仕事仲間との人間関係も良好。

そうなると出てくるのだ

麦野沈利が。

582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:10:39.60 ID:BDi6VSSR0
ねえはまづら。

私、少しくらいなら、楽しんでもいいよね。

ちょっとだけ

ほんのちょっとだけなら

いいよね。

ね?

はまづら。

583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:16:28.84 ID:BDi6VSSR0
少なくとも仕事の時間以外は楽しんでもいいんじゃないか

そう考える事にした。

たったこれだけの事が私の中で「驚くべき変化」だった。

そうすると、昔浜面と一緒に行ったスーパーにも行けたし

あの変わったラーメンを売ってる店にも行けたし

ゲーセンにも行くことができたし(4人でだけど)

服装も少し変わった。

「あれ? むぎの、そんな服もってたの?」

何も考えていないようでよく見てるな……滝壺。

「そう、似合う?」

「あー! そういえば第7学区のモールでセールやってるのよ! みんな行く?」

「超行きたいです」

「うん」

「それじゃあミーティングを切り上げていきましょうか」

「結局、ミーティングって言うけど何もやってないじゃない」

「超禁句ですよそれ」

「禁句」

584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:23:56.12 ID:BDi6VSSR0
「……で、あの映画のどこが面白かったの?」

「麦野、超わからないんですか? あの映画の楽しみ方が」

「いや、開始5分で飽きてあとの175分が苦痛だったんだけど、新手の拷問?」

「なんだ、超ちゃんと楽しみ方わかってるじゃないですか」

「……絹旗、あんたがわからないわ」

「さー、来週は何を超見ましょうか」

「あんた、毎週きてるの?」

「超基本ですよ麦野」

「……いや、趣味は人それぞれよね、うん」

585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:25:48.11 ID:BDi6VSSR0
「滝壺は休日何してるの?」

「……電波を追ったり」

「……」

「日に当たったり」

「……?」

「……水辺に出かけたり」

「ようするに散歩ね?」

「そうとも言う」

「……変わった子ね、本当」

586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:28:36.10 ID:BDi6VSSR0
「じゃじゃーん、ここがマイルームな訳よ!」

「意外と綺麗なのね」

「意外ってどういうことむぎの!」

「なんかこう、もっと赤とかピンクとかでごちゃごちゃしてると思った。色の暴力的な意味で」

「色の暴力って、そんな部屋で落ち着けるわけないじゃない。和こそ日本の心よ」

「……フレンダさ、やっぱり国籍日本だろ?」

「きひひっ、内緒内緒♪」

587: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:30:31.66 ID:BDi6VSSR0
徐々に

本当に徐々に。

周囲からするとくだらない事だと思う。

だけど本当に

階段を一段ずつあがるように

麦野沈利を受け入れる事ができていた。

ねえ、はまづら。

私、毎日

ちょっぴり楽しいかもしれない。

588: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:31:44.49 ID:BDi6VSSR0



少なくとも



少なくともその日までは。



そんな風に思っていた。




589: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:33:30.29 ID:BDi6VSSR0


電話の女からの連絡はいつも突然だ。


「いよー、日ごろの労働、ご苦労ご苦労」

「労う暇があったら給料上げなさいよ、ストライキするわよ?」

「こいつときたらー! あたしだって少ない給料でひーこらいってんだから我慢しなさい!」

「雇い主だったら従業員のケアをするのは当然じゃない?」

「あんたって本当に口が減らないわね……いいわ、探してきてあげる」

「探す?」

「あんたらの小間使いよ、足が欲しいって言ってたでしょ?」

「いや、別に?」

「こいつときたらー!」

仕事の電話かと思って出てみたら「新しく足をつけるから探してくる」勝手な女だ。

まぁいいか。

どうせ使い捨てだ。

それくらいの認識だった。

記憶の片隅に残るか残らないかの些細な出来事。

本当に、些細な出来事だった。

590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:35:12.34 ID:BDi6VSSR0


嘘だと思った。

いや

目を疑った?

ちがう

世界を疑った。


だからあの時、電話の女から送られてきた資料を見て息をのんだし、迷わず自分の下につける様に請求した。

「あら? 小間使い、こんなチンピラでいいの? あんたらイケメン様をご所望じゃなかったっけ?」

めずらしく疑問を呈してきたから適当にあしらっておいた。

同姓同名なんて世の中珍しくもない。

だから実際会うまでそんなに期待して……いや、期待はしていた。



浜面仕上なんて珍しい名前、そうそう居てたまるかって。


591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:38:40.00 ID:BDi6VSSR0
電話の女は「オッケー、それじゃあ明日から早速働いてもらうから、自己紹介くらい済ませといてね」いつもの調子で通信を切った。



……浜面、仕上?



上等じゃない。

もし全然検討違いの人物だったら

その場で殺してやろうと思っていた。

わりと真剣に。

麦野沈利の心を弄んだ罪で。

592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 12:43:26.68 ID:BDi6VSSR0
だけどその日現れた人物は

「えーっと、あんたがアイテムの麦野さんでいいのか?」

私の記憶に残る浜面仕上の面影を色濃く残していた。

ボサボサの頭、汚い金髪。

チンピラ風のナリ。

だけど輪郭や目じり、声の感じや物腰など

この浜面仕上は私が「はまづら」に感じていた事の多く持ち合わせていた。

「はじめまして、俺は浜面仕上というモンだ、よろしく頼む」

不意に握手を求められ思いっきりその手を跳ね除けた

「な……馴れ馴れしくしないで、あんたはただの下っ端なんだから」

精一杯のつよがりだった。

601: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:08:17.72 ID:BDi6VSSR0
────────

────

──


浜面仕上

能力、無し。
カテゴライズ、無能力。
特技、ピッキング、運転。

有名でも無名でもない普通の高校に在籍。

しかし実際は年に数回登校すれば良い方で

第七学区のスキルアウトに所属

元・リーダー駒場利徳の死後、後任を任されるも、とある任務に失敗。

その後失脚していたところを電話の女に

「捕獲される……ね」

602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:09:13.52 ID:BDi6VSSR0
「何よ、あたしの書類にケチつけるわけ?」

「詳しい事がわからないじゃない、これじゃあさ」

「こいつときたらー! なんでそんな下っ端に詳細な履歴書が必要なのさ!」

「なんでって、当たり前でしょ? 一緒に働くんだから、しかも私はリーダーだから下っ端の過去を知るのは当然の権利だと思わない?」

「しるかー! ……あ」

「なに?」

「一個だけそれに書いてない事があったわ、そういえば」

「はやく教えなさい殺すわよ」

「こいつときたらー! あたしはあんたの上司なのよー!」

「いいから早く」

603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:10:10.56 ID:BDi6VSSR0
「まーいいわ、バニーが好きなんだって。えらく健康的な趣味ね」

「……は?」

「だからバニーよバニー、何よ? 知らない?」

「それくらい知ってるわよ!」

「ふふん? 気をつけなさいよ、年頃の男は何しでかすかわっかんないんだから~♪」

「お前……絶対楽しんでるだろ」

「楽しまなきゃこんな仕事してられないってーの」

「いつか……殺す」

「きゃーこわーい」

604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:14:33.53 ID:BDi6VSSR0
「とにかく、浜面仕上について早急に調べて頂戴。24時間以内に」

「こいつときたらー! 注文の多い料理店かー!」

「電話回線ハックして寸分違わぬ座標に原子崩しを」

「どえぇ! わかった! わかったから!」

「あら、良い子ね」

「上司を脅す部下なんて信じられない……」

「ふん」

「それにしてもさー、原子崩しさんや?」

「何?」

「随分浜面仕上の肩、持つじゃない? 惚れたの?」

「ばっ……か! てめぇ! 言うに事欠いてそれか! 次に会った時が命日だと思いやがれ!」

「かっかっか! あっかんべーだ」

「あっかんべーって……子供か」

606: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:25:34.90 ID:BDi6VSSR0
「用事が無いならもう切るわよ」

「用事も何も、もともとそっちから掛けてきたんじゃない、原子崩し」

「うるさい!」

ピ

……結局その後。

電話の女も浜面仕上の件に関してはあまり深く調査できなかったらしい。

登録されているあまりに情報が少なすぎた。

高位能力者であれば書庫に潜り込めばそれなりに情報が揃っているのが相場だが

230万人のうち約6割を占める有象無象の無能力者までをも隅から隅に全てを把握できているわけではないらしい。

というかそもそも無能力者のデータにそれほど価値がないのであまり収集されていない……というのが本音だそうで。

学園都市と言えど把握できていない事もあるんだと落胆の色を隠せなかった。

607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:26:45.11 ID:BDi6VSSR0
たかが無能力者一人。

……いや。

うん。

正直に

ありのまま話すならば、

自分は今、おそらく今までにない程、舞い上がっている。

はまづら。

だってはまづらだ。

はまづらとまた、会えたんだから。

ぎゅっと、ぬいぐるみを抱く手に力が入る。

ね?

浜面、あなた、はまづらだよね?

ね?

608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:34:17.20 ID:BDi6VSSR0
さっきはそっけない態度とっちゃったけど。

っていうかいきなり握手とかムリ!

緊張してて手に汗滲んでたし!

っかぁ~……でも手ぇ払いのけたのはマズかったかなぁ……

……やっぱり感じ、悪いよね。

うん、明日にでも謝っておこう。

私の事、覚えてない感じだったけど

お話したら、思い出してくれるよね

きっと。

ね?

ふふ、はーまづらぁ♪

609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:37:06.11 ID:BDi6VSSR0
明日はどんな服を着ていこう

ちょっとオシャレしちゃおうかしら

うん。

いいよね。

ちゃんと大人になった私を見てもらいたいし

頑張ってメイクしちゃうんだから

610: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:38:15.33 ID:BDi6VSSR0
────────

────

──


っとっととと。

あぶないあぶない。

ギリギリまで服選んでたらもうこんな時間

ええい、走れ私。

初日から遅刻とはリーダーの威厳が無くなってしまう。

611: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:39:14.08 ID:BDi6VSSR0
浜面「はぁ?! ぶっとばすぞクソガキが! お前がやったんだろ!」

絹旗「超言いがかりは辞めてくださいよ」

浜面「俺のステーキ食っただろって言ってんだよ!」

絹旗「はぁ? どこに超ショーコがあるんですか?」

浜面「だったら表出ろよ、女と言えど食い物の恨みは恐ろしいってところを教えてやるぜ」

絹旗「超望むところですね」

612: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:40:14.67 ID:BDi6VSSR0
麦野「ちょっと、何の騒ぎよ?」

フレンダ「あ、おっはよー。むぎのむぎの。今さー、新入りが絹旗のちょっかいにブチ切れたトコよ」

麦野「へ?」

フレンダ「ふふ……わかる、わかるわよ麦野。新入りに舐められない為にどっちが上かハッキリさせときたい、それがずばり今の麦野の心境でしょう!」

麦野「え? いや……」

フレンダ「でーもだいじょーぶ! もうすでに先手は打たせてもらって訳よ!」

麦野「そ、そう?(よ……よけいなことをぉおおお~~~~!! フレンダぁあああ~~~~!!!)」

フレンダ「ま、歓迎会的な意味だし、絹旗にも程ほどに手を抜くように言ってあるから安心安心、そんじゃ高みの見物といきましょー」

613: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:42:16.53 ID:BDi6VSSR0
絹旗「窒素ぱーんち」

浜面「ぐお」

絹旗「窒素きーっく」

浜面「ぐへ」

絹旗「窒素たーっくる」

浜面「ぼへ」

絹旗「……浜面、超弱いです……」

浜面「む……無念だ……」

ガクッ

絹旗「浜面ぁ! 立つんだ浜面ぁ!」

浜面「燃えたよ……燃え尽きた……」


フレンダ「……なにこの茶番」

614: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:47:47.71 ID:BDi6VSSR0
浜面「はぁ?! レベル4だぁ?!」

絹旗「えぇそうですけど?」

浜面「そんな相手に最初から勝てるわけねーだろーが!」

絹旗「ふふん? でもタンカ切ってる時の浜面、ちょっとだけ超かっこよかったですよ?」

浜面「そ、そうか?」

フレンダ「結局、デレデレしちゃってキモい訳よ」

浜面「んだとぉ?」

絹旗「浜面、やめといた方がいいですよ。フレンダはナイフと爆薬のスペシャリストです、数秒後には面白死体の出来上がりですよ?」

浜面「アイテムは化け物揃いか……」

615: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:49:49.12 ID:BDi6VSSR0
絹旗「それからこちらが滝壺さん」

滝壺「よろしく、はまづら」

浜面「おお? ……なんか普通の子だな」

滝壺「普通?」

浜面「おう」

絹旗「彼女の能力はAIMストーカーといって、一度記憶した能力者については銀河系の果てに居ても超発見できる能力です」

浜面「全然普通じゃねえ!」

滝壺「おもしろいね、はまづら」

浜面「え? 急に褒められた」

滝壺「芸人みたい」

浜面「泣いていいか俺」

616: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:51:52.79 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「で。あたしはフレンダっ、よろしく」

浜面「へいへい」

フレンダ「むー?」

浜面「んだよ」

フレンダ「浜面ってさー」

浜面「あん?」

フレンダ「●●でしょ?」ボソッ

浜面「は……はああああっ?!」

フレンダ「あ、やっぱり」

浜面「やっぱりってなに!」

フレンダ「きひひっ、弱みはっけーん♪ これからよろしくねーん、はまづらくーん?」

浜面「お……鬼だ……」

617: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/27(木) 23:56:09.20 ID:BDi6VSSR0
フレンダ「で」

浜面「お、おう?」

フレンダ「此方にお控えしてらっしゃる方がわれらがリーダー、麦野沈利様ってわけよ」

浜面「お、おう。昨日ちょっと挨拶したけどよ、よろしくな」

麦野「あ、うん。よろs──」

フレンダ「言葉遣いがなっとらーーーーん!!!」

バシッ!

浜面「いってぇええええ!! なにすんだよ!」

フレンダ「よろしくお願いします麦野様でしょー!」

浜面「はぁ? なんでだよ!」

フレンダ「はーまづらぁ、あんたはアイテムの何?」

浜面「何ってなんだよ?」

フレンダ「下部組織であたしらの足で下っ端な訳よ」

浜面「雑用係とは聞いていたがこの待遇か……」

フレンダ「きひひっ、立場をわきまえるわけよ♪」

621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:00:31.83 ID:HfQz755w0
浜面「……はぁ、変わったやつ等だなぁ……」

麦野「あの、はまづ──」

絹旗「まぁまぁ、フレンダもはしゃいでるんですよ、超許してあげてください」

浜面「あれがか?」

絹旗「ええそうですよ、あんな超嬉しそうなフレンダ見るの久しぶりですよ」

浜面「ははっ、そうかい」

絹旗「きっと自分より下の人間が入ってくれて超嬉しいんでしょうね、保身的な意味で」

浜面「さらっと毒のある事言うよなお前……」

絹旗「お前じゃないです」

浜面「う?」

絹旗「絹旗最愛、モアイじゃないくてさいあいですから」

浜面「絹旗な」

絹旗「超よろしくおねがいします、せいぜいコキ使ってやりますから超覚悟しといてくださいね」

浜面「へいへい、わかったよ」

622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:06:10.16 ID:HfQz755w0
フレンダ「ひざかっくん!」

浜面「ぶへっ?!」

フレンダ「浜面声でか~い、きも~い」

浜面「うるせえよ! ああわかったフレンダ! お前は敵だ! 今決めた! 俺が決めた!」

フレンダ「はぁ~? ケンカ売ってるわけ?」

浜面「上等だぁ! 表でろやこら!」

絹旗「あ~、はいはい。周りのお客さんに迷惑ですからその辺りに……、ほら、さっきから麦野がすごい顔で睨んでますよ」ボソッ


麦野「……(なによ~! も~! みんなして浜面浜面って!!)」

麦野「……(私だって、私だって……)」

麦野「……(浜面と喋りたいんだから~~~!!!)」


フレンダ「……(確かにさっきからブツブツと何か言ってる訳よ)」

浜面「……(こえぇ……)」

フレンダ「……(し、静かにしてた方がよさそうね)」

浜面「……(なぜか知らんが同意見だ、フレンダ)」

623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:08:28.57 ID:HfQz755w0
滝壺「……」ボー

絹旗「……」

フレンダ「……」

浜面「……」

滝壺「……」ボー

麦野「……(はっ?!)」

滝壺「……」ボー

麦野「……(ひょっとして、今、浜面と話するチャンスっ?!)」

滝壺「北北西から電波きてる……」

麦野「……(よ、よし。いける、息を吸い込んで……)」

スー

ハー

スー

ハー

624: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:15:43.97 ID:HfQz755w0
麦野「ねぇ、はま──」

浜面「電波?」

滝壺「うん」

浜面「さっきの、AIMなんとかってやつと関係あるのか?」

滝壺「私の能力は他人のAIM拡散力場を捕捉すること」

浜面「お? おう?」

滝壺「私の趣味はAIM拡散力場浴」

浜面「わからんが日光浴みたいなもんか?」

滝壺「そうとも言う」

浜面「変わってんなオイ」

滝壺「はまづらも、やってみる?」

浜面「AIM拡散力場浴なんてもんどうやったらできるんだよ」

滝壺「フォースを感じて……コスモを……、それから──」

浜面「違う作品いっぱい混ざってるっ?!」

625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:21:18.42 ID:HfQz755w0
────────

────

──


フレンダ「そんじゃ、もう時間だし今日はそろそろ解散しよっか」

浜面「うお、もうこんな時間か」

絹旗「わりと居ましたね今日は、時間が早く感じましたよ」

滝壺「楽しかった」

フレンダ「さ~、帰ろう帰ろう」

絹旗「それじゃあお先に失礼します」

滝壺「わたしも」

浜面「んじゃ俺も」

フレンダ「ばいば~い」

626: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:25:12.95 ID:HfQz755w0
フレンダ「さ~、かえろむぎ……」

麦野「フーーーーーーーー……れ、ンだぁ…………………………………………」

フレンダ「ひっ?!」

麦野「フレンダちゃ~~~~~~~~~~~~~ん?」

フレンダ「は。はひっ?!」

麦野「フレンダちゃんさあ………………フレンダちゃんよぉ………………」

フレンダ「な、なにむぎの」

麦野「今日はさぁ………………とっても、とーーーーっても気分が良かったんだよ………………、朝からさぁ………………いや、昨日の夜からだっけなァ……」

フレンダ「そう、なんだ」

麦野「せっかくの初日だ、舐められない様にどっちが上か示す………………それも良いだろうけどよぉ………………」

フレンダ「う、うんうん。私ったら結局麦野の右腕だから気を回した訳よ!」

麦野「…………だーーーれがんな事やれっつたよぉ……………………」

フレンダ「え?」

627: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 00:26:42.12 ID:HfQz755w0
麦野「だーーーーーーから、………………誰がんな事やれっつたんだよ…………………………」

フレンダ「いや、私が……」

麦野「アァ?!」

フレンダ「ひぃ?! 落ち着いてむぎのはなせばわかる!」

麦野「逃げんなフレンダァ!」

ドッ

フレンダ「逃げない! 逃げないからビーム打たないで! ひぃぃ~~~~~~~~~」


────────

────

──


麦野「結局浜面と喋れなかった、くすん」

麦野「あ、明日こそ……!」

632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 10:59:53.11 ID:HfQz755w0
◇ ◇ ◇ ◇


浜面仕上を好きになった理由はいくつかある。

元々恋愛に興味はあったし、っつーかそういうのに憧れる感情もあったし。

でもね

実際、恋愛ってこんなにつまんないもんなのかなーって。

だってさ

浜面を見る度に、なんか、こう

胸が苦しくなってさ。

なはは、苦しい事からは一目散に逃げ出すのが心情の私なのにさ

なんっか、こう。

逃げ出せないんだよね。

この感情からは。

633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:00:42.95 ID:HfQz755w0
「いつから?」

いつから浜面の事を好きになったのか

って聞かれても正直なところわかんない。

馬が合うっていうか

ヘタレだけど。

一緒に居て楽しい……というか落ち着けるというか。

ヘタレだけど。

それに、あんなのでも意外と頼りになるのよね。

ヘタレだけど。

素で居れるというか、背伸びしなくてもいい。

……あれ?

これってひょっとしてベタ惚れってヤツなのかな

なはは

浜面の分際で生意気なのよ!

ヘタレのくせに。

あーもー!

モヤモヤする!

634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:01:14.08 ID:HfQz755w0
私をモヤモヤさせている理由は実はもう一つある。

麦野だ。

ここ数週間(浜面がきてから)麦野の様子がおかしい。

それは比較的付き合いの浅い絹旗や滝壺なら見落としてもおかしくない程微小な変化だったけど

結局、伊達に何年も麦野と一緒に居てる訳じゃないというか。

ファミレスに居るときにしたって仕事中にしたって浜面の事よく見てるし

荒い言葉遣いに見せかけて敵意は篭ってないし、どっちかというと照れ隠しな様にも思えるし。

浜面が居ない時はいっつも「あのバカ……」とか「はーまづらぁ……」とか上の空だし。

多分、麦野は浜面の事が……?

ブンブン

頭を振る。

いや、そんなわけない。

あの麦野が? あんなチンピラと?

ないない、ありえない。

……って、そのチンピラを好きになっちゃったのはどこの誰なのよ~~~~~!!!!!

635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:01:49.01 ID:HfQz755w0
あ、来た。

きひひっ

私の心をこんな風にしやがって浜面……ゆるせーん!

というわけで、ちょーっとイタズラしたい気分な訳よ。


滝壺「むぎのは?」

浜面「あと30分くらいしたら来るんじゃね?」

フレンダ「……なーんで麦野が来る時間を浜面は知ってるわけなの?」ニヤニヤ

絹旗「超謎ですね」ニヤニヤ

浜面「な……なんだよお前ら」

フレンダ「さぁねーはーまづらぁ」ニヤニヤ

636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:02:28.21 ID:HfQz755w0
絹旗「麦野の家に泊まった事実は認めるんですね?」

……麦野ったら、大胆ね。
こんな野獣と一つ屋根の下なんて襲われても文句言えない訳よ。
それが狙いだったのかな


浜面「あいつはベッドで寝たけど俺は廊下だぜ?! この扱いからわかるだろーが!」

なにそれ。
まるでベッドに誘ってるみたいじゃない。
「いつでも来ていいわよ」って事じゃないの?


浜面「だ……だいたいっ! 麦野は俺の事なんか全然好きでもなんでもねーよ!!」

……ふーん……、
鈍感なんだなぁ、浜面って。
まぁそこも浜面の魅力の一つなんだけど。
とか思ってしまう私も結局麦野の事をとやかく言えないわね。

637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:03:23.86 ID:HfQz755w0
絹旗「ファミレスの件といい……きっと超自覚無しなんでしょうね……」
フレンダ「むぎの……不憫……」

と言いながら内心で笑ってる
あー、汚い。
たぶん、いま思いっきり汚い顔で笑ってるな私。


フレンダ「麦野も一緒ってコト」

……私とね。

640: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:15:33.76 ID:HfQz755w0
────────

────

──



「はぁ……私って一体なんなんだろ……」

ため息ひとつ。

浜面なんかの行動ひとつで一喜一憂しちゃってさ、バカみたい。

いっその事告白でもしてみる?

ははっ

私が浜面に告白?

ありえねーっつーの

だって●●いし変 だしチンピラだし

結局、どう考えても私の美貌とはつりあわないって訳よ!

641: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:17:18.33 ID:HfQz755w0
「……はぁ」

わかってる。

間違っても自分からは絶対告白なんてできない。

だいたい、そもそもマトモな恋愛ができるとは思わない。

こんな仕事をやっておいて今更幸せを求めてどうするのよ。

そういうのとは別に生きていくって、あの時決めたんじゃないの?

シンプルに

ラクに生きる

それが私じゃないの?

642: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:18:56.52 ID:HfQz755w0
適当にヘラヘラ笑って生きていければそれでいい。

苦しい事からは逃げ出して

ラクな道を選び続ける、それが私じゃないの?

「……はぁ」

浜面、晩御飯何食べるのかな……。

あいつさー、いっつも何食べてるのかな

インスタントとかで済ませてるんだろうな

うわ、栄養偏ってそう

ふふ、こんな事もあろうかと料理の腕を鍛えていてよか……

「って、ちが~~~~~~~~~う!!!!!」

……なんか、苦しい事ばかり……。

これが恋愛なの?

643: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:19:47.93 ID:HfQz755w0
だめだ。

意識すればするほど浜面が日常のふとした隙間に入り込んでくる。

たぶん。

これは、理屈じゃない。

……苦しい。

浜面が他の女の子と一緒に居たら、やっぱりちょっと嫌だなぁ……って思うし

もっと浜面の事知りたいなぁ……って思うし

けど、なんか素直になれなくて

あいつの前じゃ、その

からかったりして、気を引こうとしてるけど

な~んか、空回りなのよね

644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:20:42.21 ID:HfQz755w0
あー

違うな

こんなの私じゃないなー

くっそー

浜面めー

ちくしょー

あー

これか

これがたぶんそうなのか

好きっていう感情なのかな

思い描いていたのとは随分違うけれど

……あー

だめだなー私

645: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:21:21.95 ID:HfQz755w0
結局……告白なんて絶対できない訳よ

こんな私が付き合ってどうするわけ?

幸せ?

幸福?

くだらないくだらない

ありえないありえない。

フレンダを名乗る以上は

そういう感情とはオサラバな訳よ

……でも

あー

もー!!

寝る! 

今日はもう寝るっ!!

646: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 11:25:36.57 ID:HfQz755w0






──だからフレンダの気持ちを聞いた時は

──だから麦野の話を聞いた時は


──こいつには絶対負けない

──こいつには……勝てない


──そう思った訳よ

──そう思った。






652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:07:49.09 ID:HfQz755w0
◇ ◇ ◇ ◇


フレンダ「あのさー、浜面」

浜面「あん?」

フレンダ「好き」

浜面「はぁ?」

フレンダ「だから、好き」

浜面「どうしたんだよ、オマエ」

フレンダ「だから」

浜面「お? おう」

フレンダ「私は、浜面の事が好きなの」

浜面「……本気なのか?」

フレンダ「冗談でこんな事言うと思ったの?」

浜面「いや」

フレンダ「あのさー」

浜面「?」

653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:08:43.49 ID:HfQz755w0
フレンダ「でも結局、私ってフェアプレーが好きなのよね」

浜面「お? おう」

フレンダ「だから、ちゃんと選んでね」

浜面「選ぶって?」


麦野「私か、フレンダか、どっちかをって話」


浜面「むっ?! ぎの!?」

フレンダ「あら。随分遅かったじゃない、麦野さん?」

麦野「うるせぇ売 が」

フレンダ「……負けないから」

麦野「……上等だァ」

654: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:10:44.04 ID:HfQz755w0
────────

────

──


浜面「……という事があったんだが」

絹旗「超知ってますよ」

滝壺「知ってる」

浜面「耳が早くて助かる」

絹旗「はぁ……、それにしても二人ともこんな超三下のどこがいいんだか……」

滝壺「三下」

浜面「泣いていいかな俺」

絹旗「とにかく超しっかりしてください浜面、そんな調子じゃこの先超やっていけませんよ」

滝壺「しっかり」

浜面「って言ってもよ……、どうしたらいいんだ」

655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:12:13.77 ID:HfQz755w0
絹旗「どうしたらって」

滝壺「片方を選べば片方が泣く」

絹旗「超女泣かせの浜面ですね」

浜面「なんでこんなコトに……」

絹旗「いいじゃないですか、いっそ両手に花を持ってみては?」

滝壺「一夫多妻」

浜面「できるかんなこと!」

絹旗「超甲斐性無しですもんね」

滝壺「へたれ」

浜面「滝壺さんさっきから地味にひどいです……」

656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:16:57.67 ID:HfQz755w0
絹旗「浜面、これだけは超言っときますけど」

浜面「おう?」

絹旗「私は麦野もフレンダの事も超好きです、向こうはどうかわからないですけど、仕事仲間以上に友達だと思ってます」

絹旗「だから、どっちかでも泣かせたら私が超ぶっとばします」

浜面「……結局、どっちを選んでもぶっとばすんじゃねえか」

絹旗「だいたい、そのどっちを選ぶかで悩んでるコト事態が贅沢なんですよ、馬に蹴られて超死んでください」

浜面「……いっそのコト死んでしまいたい」

絹旗「どんだけ超ヘタレなんですか……」

滝壺「大丈夫、どっちを選んでも私と絹旗は、はまづらを応援してる」

浜面「はぁ……」

657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:18:39.35 ID:HfQz755w0
────────

────

──


浜面「……フレンダ?」

浜面「……麦野?」

浜面「あいつら揃いも揃ってなんだってんだよ」

浜面「……いや、つーかなんで俺……」

658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:20:37.29 ID:HfQz755w0
浜面「はぁ……」

土御門「にゃー、色男にため息なんか似合わないぜい?」

浜面「誰だ?」

土御門「グループ……って言えばわかって貰えるかにゃー?」

浜面「暗部っ?!」

土御門「おっと、無駄な抵抗は辞めといた方が身のためだぜい?」

浜面「……何が狙いだ」

土御門「教える必要は無い、ついて来てもらいぜい。大人しくしてれば無事にお家に帰してあげるにゃー」

660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:27:01.68 ID:HfQz755w0
浜面「……」

土御門「そんなに警戒しないで欲しいにゃー」

浜面「銃を構えながら言われてもな」

土御門「まーまー、いいからいいから。悪いようにはしないぜい」

浜面「ことわ」

土御門「調子に乗るなよ無能力者、これは命令だ。お前の命を奪うのは息をするより容易い、お前は俺に生かされているだぜい?」

浜面「くっ」

土御門「わかったらさっさと歩くにゃー」

661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:31:15.94 ID:HfQz755w0
土御門「出せ」

「はい」

ブロロロロロロロロロロロロロロロ……

浜面「どこに向かっている」

土御門「知る必要は無い」

浜面「俺を攫ったところで正規メンバーは動かないぞ」

土御門「んな事はわかってるにゃー、たかが下っ端の為に危険を晒すバカはこの世界に居ない」

浜面「何が目的だ」

土御門「'メモリー'」

浜面「’メモリー’?」

土御門「それとまぁ、あとは慈善事業みたいなもんだが……」

浜面「は?」

土御門「なんでもないにゃー」

662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:36:28.91 ID:HfQz755w0
土御門「それにしても今アイテムも随分と荒れてるみたいだにゃー?」

浜面「何の話だ」

土御門「王子様をめぐって二人のお姫様が火花を散らしてるって話だぜい」

浜面「なっ……」

土御門「おや? どうしてそんなことを知っているのかって顔をしてるぜい?」

浜面「まさか……内通者が」

土御門「そのまさかだぜい」

浜面「嘘だろ……」

663: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:40:26.50 ID:HfQz755w0
土御門「嘘だと思うか?」

浜面「いるのか……誰か、裏切り者が」

土御門「さぁーてね」

浜面「くっ」

土御門「おっと、暴れても無駄だぜい? その縄はちょっと特殊な結び方をしていて、暴れれば暴れるほどキツくなっていくんだにゃー」

浜面「……」

土御門「さっきはたかが下っ端の為に危険を晒すバカはこの世界に居ないって言ったけどにゃー」

浜面「……」

土御門「王子様の為だったら、毒リンゴを食べてくれるお姫様も居るかもしれないしれないぜい」

664: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/28(金) 15:46:12.00 ID:HfQz755w0
浜面「……回りくどい手使いやがって」

土御門「それは俺にとって褒め言葉だぜい」

浜面「……」

土御門「さて、’メモリー’ってのは……コイツか」

キラッ

浜面「それは……っ!」

土御門「その顔だとコレが一体何なのか知らない様子だな」

浜面「……」

土御門「特別に教えてやる、これは──」

673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:23:57.70 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇


麦野「……」

フレンダ「……」

絹旗「……」

滝壺「……」

麦野「で、浜面は?」

フレンダ「さー?」

絹旗「遅れるとか休むとか、連絡は超うけてませんけど」

滝壺「知らない」

674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:25:37.53 ID:wwESUBR30
フレンダ「誰かさんに嫌気が逃げちゃったんじゃない?」

麦野「フレンダ、テメェ。言ってくれるじゃねえか……」

フレンダ「何? 気に入らなければ殺すの?」

麦野「あんだと!」

フレンダ「べっつに~? 私は殺されてあげてもいいけど、それだと浜面が悲しむかな~って思っただけ」

麦野「……ちっ」

フレンダ「むぎのさー、いくら浜面が居ないからってそういう態度辞めてくれない? 結局、裏表のある人間って嫌われると思う訳よ」

麦野「アァ?!」

フレンダ「ふん」

675: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:28:34.38 ID:wwESUBR30
麦野「……ちっ。猫被ってんのはお前の方だろーが」

フレンダ「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」

麦野「テメェ……人が下手に出てりゃァ付け上がりやがって!!!」

フレンダ「だから、いつでも殺しなさいって言ってるじゃない」

麦野「あぁ殺してやるよ!」

フレンダ「こっちだってね、命かけてんのよ!」

麦野「っ」

フレンダ「絶対……絶対、麦野なんかに負けないから」

676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:30:40.83 ID:wwESUBR30

絹旗「むむ……空気超最悪ですね滝壺さん」

滝壺「そうかな」

絹旗「超マイペースですね……私はもうさっきからハラハラで……」

滝壺「大丈夫」

絹旗「そうでしょうか……」

滝壺「きっと、うまくいくよ」ニコッ

絹旗「はぁ……、そうだといいですが。それにしても浜面……超遅いですね」

滝壺「そうだね」

絹旗「ったく、どこで超油うってるんだか……」

677: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:36:35.16 ID:wwESUBR30
絹旗「……(ここは私の超出番ですね)」

絹旗「……(ふふふ、昨日映画で超見ましたよ)」

絹旗「……(こんな時はとりあえず話題を別のものに超そらす!)」

絹旗「……(これで超完璧に場の空気も復活です)」

678: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:43:57.22 ID:wwESUBR30
絹旗「そういえば、最近グループの動きが活発だとかって噂、超知りませんか?」

滝壺「グループ?」

絹旗「ええ、’なんとか’っていうデバイスがどうのこうので……」

麦野「’メモリー’でしょ?」

絹旗「耳が超早いですね麦野」

麦野「電話の女から聞いたわ」

フレンダ「結局、その’メモリー’って何な訳?」

絹旗「さあ……そこまではわからないですけど」

麦野「ハエにちょろちょろ動き回られるのは不快ね」

絹旗「どうしますか?」

麦野「狙いが私らに向かない限りは静観でいいでしょ」

フレンダ「メモリーだか何だか知らないけど、学園都市って意味不明な研究ばっかりやってるわね、記憶なんか弄ってどうするつもりよ」

679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 06:45:31.88 ID:wwESUBR30
絹旗「まぁまぁ」

滝壺「北北西から電波きてる……」

フレンダ「は~」

麦野「……」

絹旗「それにしても浜面、超遅いですね」

滝壺「……」ボー

フレンダ「……」

麦野「……」

絹旗「……(あ、あれ? 超失敗ですかっ?!)」

絹旗「……(重い……空気がっ)」

680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:09:46.87 ID:wwESUBR30
────────

────

──



Prrrrrrrrrrr......

滝壺「むぎの、電話だよ」

Prrrrrrrrrrr......

滝壺「むぎの、電話」

麦野「あーもー、わかってるわよ!」

Prrrrrrrrrrr......

麦野「誰かしら……、わざわざアジトに電話って」

絹旗「浜面じゃないですか?」


ピ

麦野「もしもし?」

『……』

麦野「どちら様?」

681: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:10:34.64 ID:wwESUBR30
『……あー、聞こえてるかにゃー? 麦野沈利は居るか?』

麦野「私よ」

『はー、よかったよかった』

麦野「誰だ? どうしてこの番号を知ってる」

『まーまー、細かい事は気にしちゃいけないぜい』

麦野「……用件は?」

『おたくの下っ端を預かった、返して欲しくば麦野沈利。一人で指定した場所に来い』

麦野「話が見えないわね、うちに他の組織に掻っ攫われるようなバカは居ないけど」

『浜面仕上』

麦野「っ!」

『どうだ、理解したか麦野沈利』

682: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:11:32.40 ID:wwESUBR30
麦野「かっ、下っ端一人の命でこの麦野沈利様を引きずり出せると思ったのか! 私も随分甘く見られたモンだなァ!」

『だったら。ほれ、声を聞かせてやるにゃー』

──む、ぎの!

麦野「はまづらっ?!」

──ダメだ麦野! くるな! くるんじゃ──

『おっとっと、それまでだぜい。余計な事は言ってくれるなよ』

麦野「……ちっ」

『さあどうする麦野沈利』

麦野「……」

『来るのも来ないのも自由ですたい、もちろん来てくれるのであれば相応のもてなしはさせてもらうぜい』

麦野「……浜面は無事なんだろうな……」

『誓って無事だぜい、傷一つ付けちゃいない。俺だってまだ殺されたくないからにゃー』

麦野「……ふん」

683: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:12:14.12 ID:wwESUBR30
『決心は固まったか?』

麦野「あァ……固まったよ……」

『そうか』

麦野「テメェをブチコロス決心がなァ!!」

『血気盛んだな、それは結構な事だが麦野沈利、少しばかり周囲への目配りが足らないんじゃないか?』

麦野「アァ?!」

『無能力者と言えど、組織に属している人間が一人になるタイミングってモンはそうそうやってくるモンじゃない、そいつの行動を教えてくれる誰かでも居ない限りな』

麦野「……何が言いたい」

『何も。ただ、お陰で簡単に事を運ぶ事ができたにゃー、感謝感謝ですたい』

684: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:15:19.28 ID:wwESUBR30
麦野「……そんな手にひっかかるとでも?」

『信じるか信じないかは自由だ』

麦野「ち」

『ただ、……思い当たる節は無いか?』

麦野「ねぇよ!」

『本当に無いか? お前に消えて欲しいと思っている人間……案外身近に居るかもだにゃー』

麦野「……」

『それじゃあ招待状を送っておくぜい、しっかりおめかしをしてくるんだな』

麦野「……テメェの血で染めてやるよ」

ピ

687: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:27:18.48 ID:wwESUBR30
絹旗「麦野、大声だしてましたけど、一体何だったんですか? 浜面がどうかしたんですか?」

麦野「攫われた、別の組織に」

滝壺「さらわれた?」

麦野「あぁ、返して欲しくば一人で来いだとさ」

フレンダ「そんなの罠よ」

絹旗「確かに、超怪しいですね」

滝壺「わな」

麦野「……私もそう思う」

フレンダ「そうよね」

麦野「ただ……問題は別の所にあるのよね」

絹旗「別?」

麦野「そもそもなんでこの組織は下っ端如きの命でアイテムのリーダーを誘き寄せると思ったのか……冷静に考えればヘンなのよね」

688: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 07:29:50.48 ID:wwESUBR30
フレンダ「結局、何が言いたいわけ?」

麦野「……どうやら相手はうちの内部事情に詳しいって事、しかも相当ね」

絹旗「それって」

麦野「ユダが居る様ね、この中に」

滝壺「……」

絹旗「超裏切り者……ですか」

フレンダ「……」

麦野「さあ、名乗り出るなら今のウチよ」

滝壺「……」

絹旗「……」

フレンダ「……」

麦野「挙手は無し、……か」

689: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:00:33.81 ID:wwESUBR30
フレンダ「あのさー」

麦野「何?」

フレンダ「結局、言いがかりは辞めて欲しいのよね」

絹旗「そ、そうですよ。裏切りなんて」

滝壺「裏切り」

フレンダ「仮にアタシらの中の誰かがそんな事したとして、アタシらに一体何のメリットがある訳よ」

絹旗「そ、そうですよ」

麦野「……そうよね、でも正直、疑心暗鬼よ」

絹旗「敵の狙いはそこですよ、内輪で揉めてる間に一気にアイテムを超攻撃するつもりじゃないですか?」

麦野「そうね、……そうも考えられるわね」

滝壺「むぎの?」

690: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:01:31.86 ID:wwESUBR30
フレンダ「それより浜面はどうするの? 麦野、行くの?」

麦野「行くに決まってる……ただその前に一つハッキリさせておきたい事がある」

フレンダ「な、なによ」

麦野「フレンダ、ちょっと顔貸せや」

フレンダ「何でよ」

麦野「いいから来いっつってんだろ!!」

 
693: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:15:48.75 ID:wwESUBR30
────────

────

──


麦野「……」

フレンダ「なによ、二人きりで話したい事ってさ」

麦野「……」

フレンダ「……」

麦野「……」

フレンダ「……」

694: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:32:24.50 ID:wwESUBR30
麦野「……」

フレンダ「……」

麦野「……」

フレンダ「……」





麦野「そこまでして……」

フレンダ「は?」

麦野「そこまでして……そこまでして浜面が欲しいのっ?!」


695: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:33:14.53 ID:wwESUBR30
フレンダ「な、なに言ってるの?」

麦野「あんたでしょ! あんたなんでしょ! あんたが! あんたが……浜面を……アイテムを売ったんでしょ!!」

フレンダ「はっ、何を言うかと思ったらそんな事……」

麦野「そんな事だってっ?!」

フレンダ「言いがかりは辞めて欲しいわ、どこにそんな証拠があるのよ。ほら、出してみなさいよ」

麦野「ぐ……」

フレンダ「あーもー、胸糞悪いなぁ……何の話かと思ったら犯人扱いかよ」

麦野「私が邪魔なんでしょ……だからこんな事……っ! 返してよ! はまづらをかえしてよ!」

696: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:33:45.33 ID:wwESUBR30
フレンダ「見くびらないでよ!!」

麦野「っ?!」

フレンダ「私はそこまで落ちぶれちゃいないわよ」

麦野「だって、あんたは……」

フレンダ「敵同士だからっていうの? 自分の立場くらいわかってるわよ」

麦野「でも、でも……」

フレンダ「麦野、あんたね、甘えてんじゃないわよ」

麦野「誰が甘えてなんか」

フレンダ「甘えてるじゃない、いつも何でも誰かのせいにしてさ、そうやって逃げてるんだ麦野は」

麦野「そんなこと!」

フレンダ「ないって言えるの?」

697: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:35:18.46 ID:wwESUBR30
フレンダ「正直さぁ、……イライラするんだよね。浜面浜面ってさ、あんたは何? アイテムのリーダーじゃないの? 私らのリーダーじゃないの? 公私混同してんじゃないわよ」

麦野「……」

フレンダ「そのリーダーが何? ちょっと電話がかかってきて浜面が攫われたって聞いたら真っ先にすることが仲間を疑う? 根性腐ってんじゃない?」

麦野「……フレンダ、言ってくれるじゃない」

フレンダ「そりゃ言うわよ、今まで言えなかった分まで余計に言ってやろうか?」

麦野「……」

フレンダ「都合の悪い事が起きたら全部他人のせいにしてるじゃない?」

麦野「そんな」

フレンダ「だから、否定できるのかっつーの」

麦野「……っ」

フレンダ「挙句浜面が攫われたのは私のせいにしてさ、恥ずかしくないの? それでもリーダーなの?」

麦野「く……」

698: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:38:30.26 ID:wwESUBR30
フレンダ「ああもうイライラするなぁ……」

麦野「それはこっちもよ」

フレンダ「結局、麦野はどうしたいの?」

麦野「?」

フレンダ「私を殺せば満足? そりゃそうでしょうね、私が居なくなればライバル、居なくなるもんね。やったね麦野、ほら、殺せよ。殺してみろよ、やってみろよ」

麦野「この……言わせておけば、そんなに殺して欲しいのか!!」

フレンダ「殺す? できるの? あんたに」

麦野「舐めてんじゃねぇぞ……フレンダァ……クソガキが……、テメェなんてなぁ……指一本動かさなくても100回ブチ殺せんだよォぉぉぉぉぉッ!!」

699: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 08:42:16.89 ID:wwESUBR30
フレンダ「ただ、私を殺せば同じだよ」


フレンダ「あの日、麦野から浜面を奪った男と、一緒だよ」


フレンダ「それでもいいなら、やればいい」


フレンダ「ほら、良く狙えよ。殺せよ、殺してみろよ!」


フレンダ「原子崩し!」


フレンダ「私は逃げも隠れもしない!」


フレンダ「ただ……、麦野がそれでも私を殺したいっていうなら……、過去と同じ道をたどるっていうなら。浜面仕上を悲しませるっていうなら!」


フレンダ「まずはそのふざけたその幻想を、ぶち壊してやるって訳よ!」


704: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:24:23.21 ID:wwESUBR30
タンタンタン。



細い路地を駆ける。

相手は原子崩しの麦野沈利だ、その視界に入る事はつまり死を意味する。

幸いこのアジトがある場所は廃工場に囲まれた場所、隠れる場所ならばいくらでもある。

背後から何度か規則的な爆発音がした、時限式で仕掛けておいた爆弾が炸裂したのだろう。

けれど、これくらいで大人しくなってくれる相手ではない事は痛いほどよくわかっている。

「結局、こうなっちゃった訳よ」

しょんぼりと肩を落とした。

705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:29:53.74 ID:wwESUBR30
廃工場の壁に背中を預ける。

耳を澄ませば聞こえてくる、追ってくる足音。

命を狩る死神の足音。

あんなタンカをきってしまったものの、

どう相手を倒すかではなくどう生き残るかを考えるのがやっとだ。

「はぁ……」

ため息が漏れる。


けれど、

今回みたいなケースでなくとも、

私達は遅かれ早かれいずれこういう事態にはなってしまっていたのだろうと思う。

いつまでも仲良し4人組というわけにもいかないだろうし。

なまじ能力があるばかりにお互いが一度険悪なムードになってしまえば、

後は「殺す」だの「殺される」だの、

そういう血なまぐさい争いがやってくるに違いない。

ゴッ! 耳を劈く音が轟く。

ガラスやコンクリートがバラバラになって空から降り注ぐ光景はなかなか拝めるもんじゃない。

706: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:35:17.84 ID:wwESUBR30
私は自分がああならない為にできるだけ足音を殺して移動する。

今まではその背中に頼もしささえ覚えていた。

『むぎの、たすけて~』
『もう、何やってんのよフレンダ、ドジね』
『だってぇ~』
『いいから、後は任せなさい』

今じゃ背中から撃ち殺されても不思議ではない。

707: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:36:23.42 ID:wwESUBR30
ピアノ線、時限爆弾、起爆ツール……様々なトラップを仕掛けながら走る。

背後でたまに聞こえてくる不規則で巨大な炸裂音が、麦野の恐ろしさを物語っている。

全てを根こそぎ消し去るメルトダウナー。

距離さえ取ってしまえば滝壺とコンビを組んでいない分、精度そのものは大した事はない。

けれど脅威である事は間違いない。

あんなもの一撃でも食らってしまえば下半身と上半身がおさらばしてしまっても不思議じゃないから。

一撃だってくらってやるわけにはいかない。

直後、とびきり大きな音と同時に空に向けて放たれた光が視界に入ってきた。


「まるで子供がダダこねてるみたい……」


短い感想。
それと、ため息ひとつ。


「ああこりゃ本当に死ぬかも、なはは……」

708: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:41:04.50 ID:wwESUBR30
「そうか、じゃあ死ね」

さあ別の場所に移動しようか、姿勢を低くして走ろう。
そうしようとしたまさにその時
視界を確保しようと上げた顔を一瞬だけ下げると、
誰かの膝が鳩尾にめり込んでいた。
遅れて痛みと恐怖がやってくる、
あまりに突然の事に息ができない。
頭の理解が追いつく前に体が反応して体勢を立て直して距離をとる。

「ケホッ、ケホ! ……む、ぎの」

……いつ?!
どうやって追いついたのっ?!

「簡単なんだよ……かァァァァァアアアアんたんなんだよ、フレンダァ……テメェの子供騙しみてええなトラップが教えてくれたからなぁあぁぁあああ!!!」

目の前の麦野は全身の毛が逆立っているかのような形相で私を見下していた。

709: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:43:59.84 ID:wwESUBR30
絶望。

次の瞬間私が感じたのはありふれた恐怖でも痛みでもなく、絶望だった。

ああ、これだ。

これが原子崩しなんだ。

そこらの能力者が束になっても勝てる訳がない。

これが学園都市に7人しかいないレベル5の第4位なんだ。

浜面、あんたとんでもない女に惚れられちゃった訳よ。

710: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:45:12.33 ID:wwESUBR30
「くそっ!」


咄嗟にポケットに隠してあった小型の爆弾を投げる。

当たるとは思わない、致命傷を与えられるとは思わない、

めくらましでも何でも、とにかく一瞬でも時間を稼げればいい。

命懸けで物陰に向かって走る。

振り返るとさっきまでいた場所が「そのまま溶けていた」

背中に薄ら寒いものを感じながら逃げる、逃げる、逃げる。


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!! 逃げろ逃げろ!!! もっと私を楽しませろ!!!!!」

711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 10:46:49.02 ID:wwESUBR30
……あちゃあ。

麦野、思考が仕事中のソレだよ。

人の命を何とも思っちゃ居ない。

まさに原子崩しそのもの。

生きる爆弾ね……アレは。


「まったく、厄日ね……」


絹旗も滝壺も巻き添えを食わないようにちゃんと避難できたかなぁ。

って、死ぬかもしれない状況で他人の心配してる場合かっつーの。

浜面、無事かな。

ってか、無事よね。

グループも上手い事やってくれるんでしょうね。

ここまで詰めてきといて、最後の最後に「やっぱりダメでしたー」ってのは勘弁願いたい訳よっ!

712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:10:19.88 ID:wwESUBR30



私、思うんだけどさ。

結局、ハッピーエンドが物語の基本って訳よ。

きひひっ。



714: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:14:35.51 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇


土御門『メモリーは人の記憶を自由自在に操作できるらしい。資料によると過去には子供の記憶の改竄という形で使用された事があるみたいだ』

一方通行『子供だァ?』

土御門『その様だな』

海原『……』

土御門『そうして改竄した記憶は’メモリー’本体の中に保存され、また違う誰かの記憶と入れ替える事が可能……読んで字の如くの記憶媒体、メモリーだにゃー』

結標『……』

一方通行『……』

土御門『あれ? なにこの空気、皆真剣な顔してどうしたんだにゃー?』

715: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:15:18.69 ID:wwESUBR30
海原『回収って、その’メモリー’とやらの在り処はわかっているんですか?』

土御門『今は浜面仕上という人物が保有しているみたいだにゃー』

一方通行『浜面だァ?』

土御門『なんだ一方通行、知っているのか?』

一方通行『……いや、しらねェな。誰だァそいつ』

土御門『アイテム下部組織に所属している、まぁ、あのかしまし女達の使いっ走りだにゃー』

結標『その使いっ走りがどうしてそんな’メモリー’だなんて大層なシロモノを保有してるのよ』

土御門『どういう経緯で浜面仕上の手に’メモリー’が渡ったかまでは知らないにゃー、俺らの仕事はそいつを回収するだけだぜい』

一方通行『俺ァ、パスだ。今日はもう充分も働いたからなァ。これ以上は残業代をもらわねーとワリにあわねェ』

海原『僕もできれば遠慮願いたいですね』

土御門『二人ともつれないにゃー……、まぁ、正直あんまり俺自身乗り気ではないんだが……付き合いってのもある程度は考えていかないと裏家業もやってけないんだぜい』

一方通行『知るかァ、交渉はお前の役目だろォが』

土御門『にゃー』

海原『ところでその依頼主はどういった方で?』

土御門『第7学区にある研究施設みたいだにゃー』

一方通行『……帰る』

716: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:16:45.21 ID:wwESUBR30
海原『待ってください、……どちらへ?』

一方通行『帰るンだよォ』

海原『そうですか』

一方通行『俺に何か用かァ?』

海原『いえ、残業代を要求するくせにタダ働きとは随分気前がいいなと思いまして』

一方通行『……お前も同じクチだろーがァ』

海原『ええまぁ』

一方通行『ふン、ついてくるなら勝手にしろ』

海原『それでは、勝手にさせていただきますよ』

結標『二人とも、待ちなさい』

一方通行『おいおい、なンですかァ? 邪魔ァするってンなら……』

結標『はぁ? タクシー役をやってあげるって言ってんのよ』

海原『……珍しく三人の意見が合いましたね』

一方通行『たりめーだろォが』

結標『ええ……そうね、許せないわ……』



一方通行『ガキの敵は社会の敵だァ』
結標『子供の敵は社会の敵よ』
海原『子供の敵は社会の敵ですから』


ヒュウウゥゥゥゥウウウ……


土御門『……、にゃー?』

718: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:21:01.39 ID:wwESUBR30
────────

────

──


土御門『姉さん、事件です』

土御門『飛び込みの仕事をとったらなぜか三人からストライキをくらいました』



土御門『……仕方ない、一人でなんとかするにゃー……』

土御門『しかし、アイテムっつったらあの原子崩しが厄介だにゃー……』

土御門『一人ではどうにもならんぜい』

土御門『どうする……』

719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:26:31.55 ID:wwESUBR30
フレンダ『麦野から電話があったって?』

絹旗『ええ』

フレンダ『浜面の事?』

絹旗『超その通りです』

フレンダ『も~、まどろっこしいわね。結局、私はなんとかして二人をくっつけたいと思う訳よ』

滝壺『賛成』

絹旗『私も超賛成ですが、二人があんなんじゃ全然前に進みませんよ』

720: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:28:09.14 ID:wwESUBR30
滝壺『どうする?』

絹旗『超どうしましょう……』

フレンダ『どうするのよ』

土御門『どうする……』

滝壺『どうする』

フレンダ『どうしよう……』

土御門『どうする……』

絹旗『……?』

土御門『……?』

フレンダ『……?(あれ、この人どこかで?)』

絹旗『……?(このグラサンと金髪、どこかで)』

滝壺『……』ボー

土御門『あ、アイテム』

フレンダ『あーーー!! 思い出した、グループの土御門な訳よ!』

721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:32:23.67 ID:wwESUBR30
絹旗『こんな所で会うとは』

ザッ

土御門『ちょ、ちょっと待つにゃー。こっちは戦う気なんか無いぜい』

フレンダ『……はぁ、こっちも今そんな場合じゃない訳よ』

土御門『……まったくだにゃー』

滝壺『何か悩み事?』

土御門『……ああ』

滝壺『私でよければ、話を聞くよ?』

土御門『いや、そいつはマズイだろ』

滝壺『大丈夫だよ、敵に秘密を握られても私はあなたを応援してる』

722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:34:07.24 ID:wwESUBR30
土御門『……』ゾクッ

土御門『……(なんだこの威圧感は)』

土御門『……(くっそ~、こんな仕事やっぱり請けるんじゃなかったにゃー)』

土御門『もういいやぶっちゃけあんたらのトコの浜面の事なんだけど』

フレンダ『あら?』

絹旗『奇遇ですね』

土御門『にゃー?』

フレンダ『私らも今、その事で悩んでたのよ』

土御門『……にゃー?』

723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:37:25.85 ID:wwESUBR30
土御門『……ククク……それにしてもあの第4位がねぇ……』

フレンダ『たぶん、あんたの言うメモリーっての浜面が持ってるよ』

土御門『本当かっ?!』

フレンダ『パズルのピースみたいなやつでしょ?』

土御門『ああ』

フレンダ『……あ、良い事思いついた』

土御門『……奇遇だな、俺もだぜい』

フレンダ『それじゃあ取引というこうじゃないの、グループさん?』

土御門『アイテムってのはなかなかどうして、抜け目がないにゃー』

724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:41:21.98 ID:wwESUBR30
フレンダ『それじゃあまぁ、あのバカ二人の為に一芝居打つって訳よ!』

滝壺『おー』

絹旗『なんだか超ワクワクしてきましたよ!』

土御門『じゃあ作戦を考えるぜい』

フレンダ『待って、そろそろ麦野が到着するから、詳しい事は後でいい?』

土御門『ああ』

フレンダ『ふふ。結局、この役者のフレンダさんに全て任せる訳よ!』

725: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:44:41.84 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇

フレンダ「でもまぁ、二人にあんな過去があったなんて予想外だったけど」

フレンダ「土御門の読みどおりなら、さいっこーのハッピーエンドが待ってるはずよね」

キュィィィィイイイイイイイイイイイイン

ドッ

フレンダ「ひああっ?!」

フレンダ「あ、……当たるかと思った……たぶん適当にめちゃくちゃ打ってるんだと思うけど……」

フレンダ「ああもう! 気合で生きてたどり着け! 私!」

フレンダ「麦野! あんたの幻想、ぶっ壊してあげるからね!」

727: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 11:55:00.21 ID:wwESUBR30
────────

────

──


土御門『それだと’メモリー’の中に眠ってる記憶は浜面仕上のものになるな』

フレンダ『なんで?』

土御門『おそらく一度は麦野沈利に向けて使用されたハズだにゃー、でも’メモリー’にはターゲットの指定が曖昧になるっていう欠陥があるみたいだ』

絹旗『それが何だっていうんですか?』

土御門『おそらく’子供に向けて使用する’くらいの曖昧な指示しか入力できなかったはずですたい、だったら浜面仕上の記憶が奪われたってのも話が通じるにゃー』

フレンダ『過去面はやっぱり今面だった訳ね?』

土御門『それの裏づけもあるぜ?』

滝壺『裏づけ?』

土御門『知り合いにとびきり腕の良い医者が居て、当時の治療記録を見せてもらった。そしたらあったんだ、胸の辺りを拳銃で打ち抜かれた少年の治療記録がな、だいたいの日付もその話と合う』

フレンダ『そんなの治せる医者がいるってのが驚きだわ』

土御門『ここは学園都市、治療技術だって外との比較にはならないにゃー』

728: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:01:05.66 ID:wwESUBR30
土御門『傷口にしたって最初から無かったのと同じくらい綺麗に治るんだぜい?』

フレンダ『へぇ、それじゃあ探しても見つからない訳だ』

土御門『資料によるとそれ以降メモリーに関する研究は凍結していたんだが……最近ある会社がその技術に注目して大きい金が動いているみたいだ』

絹旗『なんていう会社ですか?』

土御門『読めるか?』

絹旗『……、あれ? ここって』

フレンダ『この前、私らが沈めた研究所の?』

土御門『どうやら話が繋がってきたな、おそらくそこに居たんだろうな。当時’メモリー’を使用した研究者が』

フレンダ『あ、そういえばあの時……やけに抵抗してくる研究員が居た訳よ』

土御門『金の成る木を奪われないように必死だったんだろう』

絹旗『で、その時’メモリー’が浜面の手に渡ったと』

土御門『そういう話だろうな』

フレンダ『ふえぇ~、何よこの偶然』

土御門『皮肉なモノだな、自分の記憶を自分で抱えて、本人はそれを知らないなんて』

729: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:04:23.41 ID:wwESUBR30
フレンダ『それより、あんたは良い訳?』

土御門『にゃー?』

フレンダ『あんたの仕事は、’メモリー’を回収する事じゃないの?』

土御門『回収はさせてもらうさ、それが仕事だからな』

フレンダ『……』

土御門『ただ、おそらくその後’メモリー’が依頼主の手に届く事はないだろう』

滝壺『なぜ?』

土御門『学園都市に7人しか居ないレベル5の第1位に目を付けられて生き残れるはずが無いにゃー……、たった一人を除いてな』

730: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:07:01.25 ID:wwESUBR30
フレンダ『あのさー、協力させといてこんな事を言うのもアレだけど』

土御門『にゃー?』

フレンダ『それでいいの? あんたは』

土御門『だってあいつら……こうでもしないと言う事聞いてくれないんだもん……』

フレンダ『お互い大変ね』

土御門『心中お察しするぜい』

731: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:12:20.27 ID:wwESUBR30
────────

────

──


フレンダ「はぁ……はぁ……っ」

フレンダ「あと、少しっ」

麦野「ど~こ~、行くんだ……フレンダぁ……」

フレンダ「くっ、むぎの!」

麦野「ちょろちょろちょろちょろちょろちょろちょろちょろ……、ネズミみたいに逃げやがってよぉォオオオオ!!!」

フレンダ「えへ」

麦野「いい加減堪忍袋の緒が切れてるんだコッチはァアア!!!!」

733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:16:23.64 ID:wwESUBR30
フレンダ「……あー……」

フレンダ「あとちょっと、あとちょっとなのにさ……」

フレンダ「最後の最後で、私がシクってたらダメよね……」

フレンダ「皆この日の為に……頑張ってきたんだから」

フレンダ「あと、ちょっと……」


麦野「何をブツブツ言ってんだクソアマが!!」


フレンダ「むぎの」

麦野「アァ?!」

フレンダ「これでもくらえーーー!!」

麦野「ちっ、無駄な足掻きを」

フレンダ「必殺! 煙玉っ!!」

麦野「煙幕かっ?! く、前が見えなっ……」

735: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:22:17.42 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇

海原『殲滅。終わりましたよ、コッチは』

土御門「わかった」

海原『それじゃあ後は手はず通りにお願いしますね』

土御門「感謝する」


◇ ◇ ◇ ◇

土御門『そっちはどうだ?』

絹旗「いつでもいいですよ」

滝壺「おっけい」

土御門『後は主賓だけか』


◇ ◇ ◇ ◇

フレンダ「ひぃぃ~~~!! 死ぬっ! 死ぬっ!」

麦野「待ちやがれ!」

738: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:34:00.16 ID:wwESUBR30
フレンダ「……」

ぴた

麦野「追い詰めたぞ、フレンダァ」

フレンダ「麦野」

麦野「何だァ?! 今更命乞いか?!」

フレンダ「それもいいかもしれないけど、少しだけ話を聞いて欲しい訳よ」

麦野「下らない話だったら3秒で殺す」

フレンダ「麦野が覚えてるはまづらは、最後になんで麦野を庇ったんだと思う?」

麦野「はぁ?」

フレンダ「私、思うんだけど。それって好きだったからだと思うんだよね、好きだから守りたい。愛しいから守りたい、そうだと思うんだよね」

麦野「今その話は関係」

フレンダ「どっこいそれが関係あるのよ」

739: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:36:38.61 ID:wwESUBR30
麦野「一体何の話を」

フレンダ「麦野さあ、過去に囚われるのはもうウンザリでしょ?」

麦野「……?」

フレンダ「いちいち過去を気にして好きな人を好きになれないなんてバカげてると思うのよ」

麦野「はぁ……?」

フレンダ「だからさ」

フレンダ「結局、そんなの気にせず、お互い思いっきり好きになればいいって訳よ!」

742: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:49:13.81 ID:wwESUBR30


フレンダ「結局、二人は運命のイタズラですれ違ってただけなのよ」


フレンダ「でもさ、すれ違いっぱなしってさ、そんなの嫌じゃない?」


フレンダ「だからこのフレンダさんが麦野に思いが通じる魔法を使ってあげる」


743: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:55:16.44 ID:wwESUBR30
フレンダ「でも。ごめんね麦野。私、麦野に嘘ついてた」

フレンダ「だから、さっき麦野が私にむかって裏切り者って言ったけど、なはは。本当は否定できないのよね」

フレンダ「私さー。浜面の事、好きじゃないんだ」

麦野「……え?」

フレンダ「麦野がなかなか素直になってくれないもんだからさ、危機感を煽るというか、ライバルが居たら燃えてくれるかなーと思って、えへへ」

フレンダ「気持ちを確かめるような事してごめんね? でも伝わった、どんだけ麦野が浜面の事を好きなのか、痛いくらいにわかったよ」

麦野「フレンダ……あんた……」

744: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 12:58:28.41 ID:wwESUBR30
フレンダ「聞こえてるか浜面っ!」

フレンダ「あんたが守りたかった麦野沈利は、ここに居る!」

フレンダ「あんたにずっと思いを寄せていた麦野沈利は、ここに居る!」

フレンダ「思い出せバカ! 全部ちゃんと思い出せー!!」

フレンダ「そんで約束しろ! ちゃんと麦野を幸せにするって私に約束しろー!」

745: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:03:18.44 ID:wwESUBR30
土御門「よし、’メモリー’の機能をリセットできた! 気分はどうだ?」

「お? おう」

土御門「……」

「……」

土御門「……だめ、か?」


「いや、全部、思い出したさ……全部な」


絹旗「だったらとっととお姫様の元に行ってあげてください」

「いてぇ! 蹴るんじゃねえよ絹旗!」

絹旗「ほら、麦野、待ってますよ」

滝壺「お幸せに」

746: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:08:02.89 ID:wwESUBR30
────────

────

──


「……よう」

「結局、遅いのよ、バカ」

「うるせ」

「麦野、泣かせたら殺すから」

「……泣かせねぇよ」

「うん、それ聞いて安心した訳よ。そんじゃお邪魔虫はたいさーーーん、あとは勝手に二人でイチャイチャしててね」

747: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:12:26.47 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇

「沈利」

「……はま、づら?」

「なんつったらいいのか……久しぶりって言えばいいのかな」

「……バカ」

「バカじゃねえよ」

「……バカ」

「……お、おう」

「バカ」

「はまづらのバカバカバカバカバカ、バカ」

「……バカ」

748: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:16:26.48 ID:wwESUBR30
「えーっとだな……沈利。俺はどうやら’メモリー’ってやつで記憶を消されていてだな」

「そんなの知らない」

「あ、あのー?」

「でも、でもさ」

「うん?」

「浜面。私の知ってるはまづら、なんだよね?」

「お、おう。たぶんな」

ギュウ

「ぐえっ」

「もう離さないから、ゼッタイ」

749: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:23:27.26 ID:wwESUBR30
────────

────

──


「なかなかオアツイ事になってるにゃー、見てるこっちが恥ずかしいぜい」

「これにて一件落着って訳よ」

「あのバカに事情を説明するのに苦労したぜい、なんせバカだから事情の飲み込みが遅い遅い」

「超バカですからね」

「バカ」

「ま、これで’メモリー’の回収も終了、俺の仕事もここまでって訳だ」

「今回は礼を言っておくわ」

「よせ、馴れ合う気は無い。これはあくまで今回限りのマジックショーだ」

「とか言いながら超楽しんでましたよね」

「うん」

「結局さっき「いけ! 押し倒せ!」とか一人で叫んでた訳よ」

「さーて、帰るにゃー」

「あ、逃げた」

「にげた」

「超逃げましたね」

750: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:27:51.95 ID:wwESUBR30
「ふぃ~、疲れた疲れたァ……」

「超お疲れ様です」

「おつかれ」

「アカデミー助演女優賞でも貰いたい気分よ」

「レッドカーペットでも敷きますか?」

「辞めとく辞めとく、じゃあ私たちもせっかくの二人の再会を邪魔しちゃ悪いし帰る訳よ」

751: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:31:27.79 ID:wwESUBR30
「超久しぶりに温泉でも行きますか?」

「いいね」

「祝杯のビール……の代わりに牛乳で乾杯かー、いいかも」

「それじゃあ超行きますか」

「うん」

「あいたたた……全身の筋肉が悲鳴をあげてるわ……」

「世界の温泉に浸かれば一発で超回復ですよ」

「麦野ったら手加減なしだもんなー、本当に死ぬかと思ったもん、なははは」

753: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:35:28.36 ID:wwESUBR30
「でも本当、超迫真の演技でしたよ」

「そうかな?」

「そうですよ。なんかもう本当に浜面が好きだぞー、モタモタしてたら私がとっちゃうぞーっていう超オーラみたいなのが滲みでてましたよ」

「にゃははは、でしょでしょー? そこは役者のフレンダさんの本領発揮な訳よ」

754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 13:36:18.84 ID:wwESUBR30
「きぬはた」

「はい?」

「耳貸して」

「なんですか?」

「あんまりそれ、言わない方がいいよ」

「え?」

「全部が全部、嘘じゃないと思うから」

「……それって? どういう事ですか?」

「うーん……」

「?」

「きぬはたがもう少し大人になったら、わかるかも」

766: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:07:11.99 ID:wwESUBR30




「二人ともー! なにしてるのー! 先いっちゃうわよー!」


「超まってくださいよー、フレンダー」




767: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:12:49.51 ID:wwESUBR30





後日談






768: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:16:37.05 ID:wwESUBR30
「フレンダー、超映画いきましょうよー」

「えー、嫌よ」

「なんでですか」

「あんたの趣味と私の趣味、合わないから」

「それじゃあフレンダが見たいB級映画でいいですよ」

「B級限定かいっ!」

絹旗はあの日以来、ちょっぴり私に懐くようになった。

なぜかはわからないけれど、滝壺に聞いたら

「大人になりたいんじゃない?」

よくわからない回答を貰った。

結局、絹旗って子供だからねぇ。

770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:22:16.15 ID:wwESUBR30
滝壺は滝壺で変わらずボーっとしてる。

変わった事といえばあのにゃーにゃー言ってる金髪のグラサン男と最近一緒に居る事が多い事くらいだろうか

なんでもあのグラサン男には複雑な恋愛事情(私の周りはこんなのばっかりか)があるらしく、相談に乗ってあげてるそうな

どんな相談なの? って聞いたら

「……血」

と言われた。

謎だ。

773: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:25:46.55 ID:wwESUBR30







麦野は、死んだ。








775: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:30:31.82 ID:wwESUBR30
つい先週の事だ。

私がそれを知ったのは風呂に入ってる最中だったし

絹旗がそれを知ったのはレンタルDVDを見ている最中だったし

滝壺がそれを知ったのは散歩に出かけている最中だった様だ。

突然の事だった。

あまりに突然すぎて、三人が三人ともその目と耳を疑った。

……ただ

たぶん、きっとそれは起こるべくして起こったのだろう。

777: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:33:42.06 ID:wwESUBR30
「おーい、コラ。勝手に殺すな、人を」

フニ

「む、むぎの」

「もう麦野じゃねーっつの」

フニフニ

「あ、そうだったね」

フニフニフニフニ

「わかった、わかったからホッペをフニフニするの辞めて欲しい訳よむぎ……っと。でも、浜面……って呼ぶのもおかしいかな」

781: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:39:16.83 ID:wwESUBR30
「沈利でいいじゃない」

「あら? でも。結局、それは旦那さん専用だと思う訳よ」

「べ……べつに、あいつだけの名前って訳じゃ」

「きひひっ、赤くなっちゃってか~わいいっ」

「ふ、フレンダ! もう! からかわないでよっ!」

「そのドレス、とっても似合ってるわよ、むぎ……じゃない、沈利」

「うん……ありがと」

786: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:46:51.18 ID:wwESUBR30
「で、その旦那さんはどこに居る訳よ?」

「さっきトイレに行くって言ったまま」

「結局、そういうところがキモいのよね。いまさら緊張してるのかな?」




「はぁ~~~~~~~~~~、オチツカネェ……」

「はうっ?!」

「またトイレいくか……」

「って! さっきから何回トイレいってんだ俺は!」

787: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:47:44.49 ID:wwESUBR30
「あ。ちょうどいい所に。お~い、浜面ぁー」

「土御門?」

「よ。結婚おめでとさん、神父つれて来たぜよー」

「なんで僕がこんな事を……」

「つべこべ言うな、めでたい場だにゃー」

「ま、まぁ、あの子にゆかりのある人間なら仕方ない……」

「こちらは?」

「いつかお前がファミレスに連れてった女の子の保護者……みたいなもん?」

「ああ! あの時の!」

「まったく、いいかい? これはあくまでその時のカリを返すためであって──」

「あーはいはい、そんじゃ後でな。浜面」

789: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 14:56:18.37 ID:wwESUBR30
「わ~! すっごい綺麗な建物だねって! ミサカはミサカははしゃいでみたり」

「行儀よくしてろォ、めでてェ場だァ」

「ん~、結婚式ってどんなのかなー! って、ミサカはミサカは将来自分が当事者になったつもりで考えてみる!」

「はっ、お前と結婚するなンざァよっぽどの物好きなンだろォよ」

「どうしてあなたは不機嫌になるの? って、ミサカはミサカは疑問を口にしてみる」

「うるせェ」

「ヘンなひと、ってミサカはミサカはあなたの事を罵倒してみる」

791: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:00:39.78 ID:wwESUBR30
「とうまとうまー! どこに美味しい料理があるのー?」

「っだああ!! インデックス! 披露宴まで待てないのかお前は!」

「ひろーえん? それは美味しいの?」

「披露宴も知らないシスターって……」

「ちょっととうま! 私は美味しいか美味しくないか聞いているんだよ! ちゃんと答えて欲しいかも!」

792: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:06:33.99 ID:wwESUBR30
「ひゃ~、結構いっぱい人きてるのね」

チラッ

「そうみたい」

「あんまり見た事ない人も居るみたいだけど」

「土御門に頼んだらこうなったのよ」

「謎の交友範囲ね」

ガチャ

「沈利~?」

「あ、旦那さんじゃない」

「おうフレンダ、到着してたのか」

「浜面こそ新婦を放っておいてドコ行ってたわけ?」

「う」

「どうせトイレにでも逃げてたんでしょ?」

「なぜそれを」

「見ないでも大体わかるわ」

「エスパーか」

793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:09:49.31 ID:wwESUBR30
「そんじゃ私はこれで、絹旗と滝壺待たせてあるから先に行ってるね」

「あ、ちょっと待ってフレンダ」

「ん? なーに沈利?」

「あの、あの時のことなんだけど」

「ストー……プ、それはもうナシ、ね?」

「けど」

「沈利、今幸せ?」

「うん、幸せだよ」

「そっか、ならいいの、私は二人が幸せならそれで」

「でも」

「でもはナシ」

「……うん」

「そんじゃ、楽しみにしてるからね~ん」

795: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:22:13.72 ID:wwESUBR30
それでは、新郎・仕上、新婦・沈利の挙式を行います。


「わぁ……あのドレス、とってもキレイだねってミサカはミサカは感想を述べてみる!」
「確かになァ」
「ミサカもあんなの着れる日がくるのかなぁ……、ってミサカはミサカは自分の願望を包み隠さず明かしてみる」
「……そのウチくるかもなァ」

797: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:32:58.55 ID:wwESUBR30
新郎、仕上。

あなたはこの女性を、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、

これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか。

「はい、誓います」

798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:34:41.43 ID:wwESUBR30
新婦、沈利。

あなたはこの男性を、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、

これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか。

「はい、誓います」

799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:35:46.53 ID:wwESUBR30
あなた方は自分自身をお互いに捧げますか

「はい、誓います」

800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:37:29.97 ID:wwESUBR30
それでは、誓いの口付けを。


「ひゅーひゅー!」
「超似合ってますよ! 二人とも!」
「二人とも、顔真っ赤」
「お前らなぁ……こんな時までちゃかすんじゃねーよ」
「ほら、さっさとキスしちゃう訳よ」



ちゅ

……

…………

……………………

801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:38:44.98 ID:wwESUBR30
偉大なる神よ!

この二人に大いなる祝福を与えたまえ!!


「とうまとうま」
「ん?」
「結婚式って、ちょっと、いいかも……」
「そうだなぁ」

803: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:48:43.36 ID:wwESUBR30
◇ ◇ ◇ ◇

「そんじゃー、ブーケトスいくわよー」


「ねぇねぇ、ブーケトスってなに? ってミサカはミサカは未知の単語に関心をもってみる」

「あァ? たしかァ……あの花を受け取った人は次に結婚できる……とかだったような」

「ゼッタゼッタイゼッタイ取る! ってミサカはミサカは腕まくりしてみる」

804: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:49:49.40 ID:wwESUBR30
「とうまとうまー、ブーケって美味しいの?」

「アホか! 花まで食う気ですかインデックス!」

「なんだお花かー」

「インデックス、ブーケトスって知らないのか?」

「なにそれ?」

「あれを取った女性は次に結婚できるらしいぞ?」

「……」

「え?」

「とうま! 私あれとってくるね!」

「お? おう?」

805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:50:52.19 ID:wwESUBR30
「ククク……皆さん超狙ってますね……しかし、私には窒素装甲があります」

「AIMストーカーで全員の動きは把握済み」

「どんだけ真剣なのよ、あんた達」

「こっち! こっちに投げてってミサカはミサカはお願いしてみる!」

「こっちに投げて欲しいかも!」

「こっちに超お願いします」

「こっちも」

「あーもー、後ろむいて投げるんだから文句いわない」

807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:53:18.03 ID:wwESUBR30
「沈利」

「うん?」

「愛してる」

「バカ」

「知ってる」

「私もよ」

「……おう」

「いちゃいちゃしてないで早く投げてー!」

「うるせー!」

「あははは」

810: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 15:56:53.12 ID:wwESUBR30
「そんじゃ、行くわよ~」


────────

────

──


結局、私はフレンダのままだ。

何も変わらずフレンダのまま。

けど、それはそれでいいんじゃないか。

苦しい事からは逃げて

ラクに

シンプルに生きる。

それがフレンダだから。

813: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 16:01:34.95 ID:wwESUBR30
麦野……じゃなかった、

沈利は浜面が幸せにするだろうし

放っておいても二人は結局納まるところに納まっていたのかもしれない

そんなのわからないけれど。

でも、沈利のあの笑顔で

少し救われた気がした。

814: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 16:03:55.96 ID:wwESUBR30
私はいつまでフレンダを続ければいいのかな。

このまま死ぬまで?

ずっとこのまま?

……まぁでも

幸せってヤツがいつやってくるかわからないし、

そいつがやって来た時にでもまた考えればいいか。

815: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 16:04:40.58 ID:wwESUBR30
HAPPY ENDは

誰にとってのHAPPYなのだろう。

もしかしたら私がフレンダで無くなる日に

その答えが見つかるのかもしれない

816: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 16:05:45.09 ID:wwESUBR30
……だよね?

誰にでもなくぽつりと言葉を漏らすと、

手の中のブーケがそっと笑いかけてくれた気がした。

817: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/01/29(土) 16:07:14.29 ID:wwESUBR30
以上

フレンダ「私が恋に落ちる前に」

もとい

麦野「私が暗部に落ちる前に」

でした。


お付き合いいただき感謝。
レス返しは後ほどさせていただきます