【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」 中編

720: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 21:57:33.20 ID:mnCcr+a9o

 * 工廠 入渠ドック *

黒潮「わけわからへん。この島、いったいなんなんや……うち、夢でも見てるんか」

陸奥「そう思うのも仕方ないわね。みんな訳ありなのよ、この島の艦娘たちは」

明石「まともな着任した艦娘がほぼいませんからねえ!」アハハー

黒潮「いや、それ笑うところちゃうんちゃうか」

朝雲「笑わないとやってられないところもあるわよ?」

黒潮「なんか、もうやけくそやな……」

龍驤「まあまあ、笑う門には福来るて言うし、ぶすっとしてても事態は好転せえへんよ。ストレスためないほうがええで」

雲龍「心配事があるんだろうけれど、今は自分を気遣ったほうがいいわ」

黒潮「ん……」ウツムキ

朝雲「元気ないとこ悪いんだけど、黒潮!」

黒潮「……なんや」

朝雲「山雲を助けてくれてありがとう!」ペコッ

黒潮「……っ」

引用元: 【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」 



721: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 21:58:24.31 ID:mnCcr+a9o

雲龍「どうしたの?」

黒潮「……いや、助けたのは、たまたまや。たまたま、見つけただけやし……」

朝雲「だとしても、お礼を言うのは当然よ」

雲龍「私もたまたま、龍驤に助けられたわ。お世話になったなら、その気持ちを伝えたいと思うもの」

白露「初春も捨て艦にされたって言ってたけど、もしかしてそんな艦娘ばっかりなの?」

龍驤「その辺の事情はそれぞれやな。うちと陸奥は……厄介払いされたって感じかなぁ?」

陸奥「まあ、そういうことにしておこうかしら」

明石「私もそんな感じかなあ……私たちの場合はご丁寧に雷撃処分までされましたけど」

島風「えええ!?」

朝雲「明石さんにしても、龍驤さんたちにしても、共通してるのは、その当時の司令官がクズすぎるところよね」

陸奥「朝雲のところはどうだったの?」

朝雲「前は本当におバカだったんです。今はもう別人みたいにちゃんと働いてるみたいだけど」

白露「ってことは、改心したんだ?」

朝雲「練習巡洋艦の香取さんが再教育したの。前は古鷹さんが馬鹿みたいに甘やかすから、本当にもう勘違いしまくってて……」ハァ

722: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 21:59:06.70 ID:mnCcr+a9o

古鷹「朝雲さん呼びました?」ヒョコ

朝雲「うひゃあ!? よ、呼んでないですよ!?」

龍驤「古鷹、山雲はどないやった?」

古鷹「修復材を入れたプールに入ってもらっていますが、顔色がだいぶ良くなりました。そろそろ目を覚ますと思います」ニコッ

雲龍「そう。じゃあ、次は私の番ね、見てくるわ」

龍驤「よろしく頼むでー」

朝雲「目を覚ましそうなら呼んでくださいねー!」

黒潮「……うん。助かりそうならええことや……うん」

島風「……黒潮は、雪風たちが心配なの?」

黒潮「まあ、せやな……雪風たちから一刻も早くあいつら遠ざけたくて、ろくに話もせんで後にしたから……」

白露「それじゃ、提督准尉から保提督の鎮守府に連絡が取れないか、聞いてみようよ?」

723: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 21:59:48.26 ID:mnCcr+a9o

島風「うん、そうしよう!」

黒潮「ちょっ、余計なことせんでも」

不知火「そういうことでしたら、不知火からも進言してみます。中将にも事態の確認を促してみますので」スッ

黒潮「不知火……!」

不知火「黒潮。不知火も陽炎型ですから、遠慮は不要ですよ」クルッ

黒潮「……そか……そやな……」

明石「さ、お話はこのくらいにしておいて、3人とも体に異常がないか検査するから、中に入って!」

白露「はーい! 白露が一番でいい?」

黒潮「うん、うちはええよ」

島風「私、最後でいい? ちょっとここの提督さんとお話ししてくるから!」ビュンッ

明石「わかりま……って、速っ!?」


724: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:00:38.02 ID:mnCcr+a9o

 * 入渠ドック内 *

龍驤「……なあ朝雲?」

朝雲「はい?」

龍驤「ちょっち訊くけどな……きみ、ほんまに朝潮型?」

朝雲「それ、どういう意味ですか?」ムス

龍驤「ああ、気を悪くせんといて。一か所、気になることがあってなあ……」ジッ

龍驤「朝雲は、朝潮型にしてはちゃんと胸があるなあ思て……」

朝雲「ど、どこを見てるんですか!?」バッ

古鷹「本当ですか? 良かった、効果あったんですね!」

朝雲「古鷹さん!?」

龍驤「ちょっ、朝雲、きみ何かやっとったん!?」

朝雲「いやっ、そのっ……!」ワタワタ

古鷹「私がしてあげたんです!」

龍驤「え?」グリッ

725: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:01:33.24 ID:mnCcr+a9o

古鷹「見様見真似ですけど、マッサージを……」

龍驤「マジで!?」ズズイッ

古鷹「龍驤さんも御希望でしたら、お風呂の後に伺いますよ?」

龍驤「是非! 是非によろしゅう!!」ガッシ

古鷹「では、夜にお邪魔しますね!」ニコ

朝雲「……龍驤さん、龍驤さん」チョイチョイ

龍驤「うん? なんや?」

朝雲「一応断っておくけど、結構どころじゃなく痛いですからね?」ヒソヒソ

龍驤「ほーん。まあ、その程度の代償で済むならうちは構へんで! ちなみに、どんなマッサージなん?」

朝雲「マッサージっていうか……その……おなかや背中の贅肉を集めて胸に寄せるんです」カァァ

朝雲「東南アジアだかでニューハーフの人たちが自前で胸を作るためにやってたっていうのをテレビで見て……」

朝雲「それを見様見真似で、ほぼ独学で習得したんです」

龍驤「独学!?」

朝雲「私、それで実験台にされたんですよ」ハァ

龍驤「ははぁ……」

726: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:02:18.28 ID:mnCcr+a9o

朝雲「ひどいんですよ、体中の肉を痛いくらい揉み解したうえで無理矢理寄せて引っ張って作るから、体中突っ張るし……」

朝雲「それを最低でも1か月くらい続けないと胸に脂肪が固着しないから、すっごい苦行で」

龍驤「ま、まあ、それでもうちは大丈夫や!」

朝雲「それから、無駄な肉を移動させるわけですから、失礼なこと言いますけど、痩せてる人には効果ありません」

龍驤「それやったら、前の鎮守府で食わされすぎたから、ダイエットせななーって思っとったし、かえって好都合やで」

朝雲「そうですか……」

龍驤「朝雲? どうかしたん?」

朝雲「古鷹さんのマッサージ、身体的にも痛いんです。でも、それ以上に……」ドヨーン

朝雲「自分の体にこんなに余分な肉がついてたっていう、精神的なダメージがすごくて……」ハイライトオフ

龍驤「……」

朝雲「あれだけ痛い思いとみじめな思いをして、成果がこれだけっていうのもショックではあるんですけど」ズーン

龍驤「う、うん、その、ご、ごめんな?」

727: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:03:03.23 ID:mnCcr+a9o

朝雲「いえ……せっかく古鷹さんにお世話になって、こういう言い草もよくありませんよね」ハァ…

龍驤「うん、難しい問題なのはうちもよーくわかってるから」ヨシヨシ

龍驤「それから……も一つええか? 朝雲も気になったかどうかなんやけど」

朝雲「……なんですか?」

龍驤「白露て、あんなに胸小さかったかな?」

朝雲「そういえば……」

龍驤「白露型は改装すると胸が大きなる子が多いんや。中でも、白露や村雨は改装前でもまあまああったって記憶してる」

龍驤「けど、あの白露は全然そんな感じせえへん。ちゅうか、むしろうちと同じくらいやった」

朝雲「……体のどこかがおかしいとか?」

龍驤「明石も気にしてたから、検査言うたんやないか? 何かあったんやろか……」

728: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:03:48.22 ID:mnCcr+a9o

 * 執務室 *

提督「違法改造?」

島風「違法っていうか、無茶な改装、って言ったほうがいいのかなぁ」ウーン

島風「白露の艤装はね、明石さんに無理を言って魔改造してもらったの」

提督「マカイゾウ?」

大淀「普通じゃない改造のことを俗にそういいます。魔法のような改造、だから魔改造ですね」

提督「言葉の響きがやべえな。大丈夫なのかよ、それ」

島風「……あんまり大丈夫じゃないと思うんです」

提督「!」

島風「私、島風は、唯一無二のスピードを誇る、疾きこと島風の如し! な、特別な駆逐艦なんです」

島風「そのおかげもあって……ううん、そのせいで、島風型は私一人なんです」シュン

大淀「島風さんは駆逐艦の中でも珍しい、姉妹艦が建造されなかった艦なんですよ」

提督「……一代限り、ってやつか」

729: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:04:33.14 ID:mnCcr+a9o

島風「そんな私に声をかけてくれたのが白露で……」

提督「島風の姉になるとか言ってた話か?」

島風「そうなんです。でも、島風は速いんですよ! 白露が追いつけるわけなくって……」

島風「それで白露は、明石さんに無茶なお願いをしたんです」

島風「艤装をばらしてすっごい速いタービンに替えたり、とにかくいろいろ、原型がないくらい改造して!」

島風「改白露型どころか、準島風型みたいな艤装で、島風を追いかけてきたんです」

島風「……島風は、それがすごく、嬉しくて」

島風「今まで、島風を追いかけてくれる人はいなかったんです。いつも遠征に出てる睦月型のみんなは疲れてるし」

島風「戦艦や重巡のお姉さんたちは最初から諦めてて追ってこないし」

島風「だから、白露に構ってもらえるのは、嬉しかったんです」

島風「……でも、白露はかなり無理をしてるみたいで」シュン

提督「無理? 体のほうが追いつかないってことか?」

島風「すっごい負担がかかってるはずなんです。その証拠に、白露の体は痩せて筋肉質になったし……」

島風「だから、さっき白露がドックに入って検査を受けてるけど、本当に大丈夫なのか心配だし……結果を聞くのが怖いんです」

730: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:05:18.26 ID:mnCcr+a9o

提督「……」

大淀「……」

提督「……羨ましいもんだな」

島風「!?」

提督「俺にも弟がいたが、今は関わりたいとも思わねえ。あれは俺を完全に見下してるからな」

提督「だが、島風は、お互いを気遣える姉妹を手に入れた。いいことじゃねえか」

島風「……」

大淀「提督……」

提督「白露が心配なら、検査の結果はちゃんと聞いてきな。そのうえで、何をしてやれるか、一緒に悩んでやればいい」

島風「……准尉さん!」スクッ

島風「島風、白露の検査の結果聞きに行ってきます!」ダッシュ!

 ドドドド…

提督「……騒々しい奴だな」

大淀「提督……」

提督「とりあえず、変なもんくっつけられたりしてねえといいな」

大淀「はい!」

731: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:06:03.40 ID:mnCcr+a9o

 * ドック内 入渠用プール *

山雲「……」

雲龍「だいぶ顔色が良くなってるわね。これならすぐに目を覚ましそう」ニコ

雲龍「それにしても、後頭部に打撃痕だなんて」

雲龍「後ろから誰かに襲われたのかしら」ウーン

山雲「……ん……」

雲龍「!」

山雲「う……」

雲龍「山雲? 山雲!」

山雲「う、うう……っ」

雲龍「そうだ……彩雲、みんなを呼んできてくれる?」シャランッ

 彩雲<バルーン!

雲龍「……」

山雲「う……こ、こは……」パチッ

732: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:06:50.25 ID:mnCcr+a9o

雲龍「目が覚めた?」ヌッ

山雲「!?」

雲龍(の胸部装甲:山雲視点)「山雲? 大丈夫?」ズドーン

山雲「」

雲龍(の胸部装甲:山雲視点)「どうしたの? 山雲?」ユッサユッサ

山雲「」

山雲「」

山雲「」アワブクブク

雲龍「!?」

龍驤「雲龍! 山雲が目を覚ましそうやって!?」

朝雲「山雲ー!!」

山雲「」チーン

雲龍「えっ? えっ?」オロオロ

朝雲「や、山雲!? なんで泡を吹いてるの!? 山雲ーー!」

733: ◆EyREdFoqVQ 2019/07/28(日) 22:07:33.12 ID:mnCcr+a9o

龍驤「……なんや、目を覚ましておらんやん。どういうこっちゃ」

雲龍「いえ、あの、目を覚ましたんだけど……また、気絶したっていうか……」オロオロ

龍驤「ええ……?」

 タタタタ…

朧「泡を吹いたって!?」ガラッ

雲龍「!?」ビクッ

龍驤「朧は何しに来たん!?」

741: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:12:18.82 ID:S0IxyqgSo

 * 数日後 執務室 *

 扉<コンコン

五月雨「失礼します、黒潮さんをお連れしました!」チャッ

黒潮「……」ス…

提督「ん、ご苦労さん」

五月雨「提督……そのお顔の様子からすると……」

大淀「ええ、あまり良い結果が得られなかったみたいです」

提督「しょうがねえさ。何でもかんでも、こっちが思ってるように都合よく話が進んでくれたりはしねえ」

提督「さて、何から黒潮に話してやったらいいもんかね……まずは座んな。どうせ今の俺たちにできることはねえ」

黒潮「……」ストン

五月雨「あ、あの、私も、ですか?」

提督「ああ。お前の意見も聞かせてくれ」

五月雨「はぁ……」ストン

黒潮「……うちだけ呼んで聞かせればええやんか」

提督「いいから第三者の意見も聞いとけ。大淀も同席頼む」

大淀「はい」ストン

742: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:13:03.34 ID:S0IxyqgSo

提督「じゃあ、不知火と初春の調査結果について報告する」

提督「まず保提督。一応、怪我自体は大したことねえが、ひどく落ち込んでるって話だ」

提督「今更ながら、自分のやったことを悔いているらしい。何もかも遅いがな」

黒潮「……」

大淀「保提督の処罰はどうなったのでしょうか?」

提督「減俸と謹慎1か月、一階級降格と、思ってたより軽いな。罪を全面的に認めちまってるせいで、同情でも買ったか」

提督「保提督を唆したチンピラどもには、それなりに重い処罰が下ったみたいだが……それでも執行猶予がついてやがる」

提督「残念ながら、そいつらはそれほど悪びれてねえみたいだ。ったく、面白くねえ」

黒潮「……」

提督「次。雪風が行方不明だ」

黒潮「!!」ガタッ

五月雨「提督……!」

提督「鎮守府に戻ったあと、艤装を身に着けてすぐ黒潮の後を追いかけたらしい」

黒潮「……っ!」ガタッ

743: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:15:11.82 ID:S0IxyqgSo

提督「どこに行くつもりだよ。黒潮、座ってな」

黒潮「座ってなんかいられるかい!!」

五月雨「ちょっと待ってください! 提督、ほかの人たちはどうなったんですか?」

提督「嵐と萩風は保提督の鎮守府に戻ってるが、出撃はしてねえ。姉妹艦を一度に二人失ったもんで、塞ぎこんでるって話だ」

黒潮「……!」ギリギリッ

提督「それから黒潮。お前の処遇についてだが、解体することに決まったそうだ」

黒潮「はぁあ!?」

五月雨「そんな!!」ガタッ

提督「お前が海に放り込んだチンピラのうちの一人が、政治家の息子なんだとよ」

大淀「!」

提督「そいつの親がお前の処遇に口を出してきたんだ。お前が保提督の鎮守府に戻ったら、解体処分しろってな……!」

提督「ったく、どうしてこう『えらいやつ』ってのはこう我が儘なんだろうな。頭おかしいんじゃねえか、くそが!」

五月雨「……提督、黒潮ちゃんは元の鎮守府に戻れないんですか!?」

提督「今は無理だな。保提督の鎮守府の周囲で厳戒態勢が敷かれてる」

744: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:17:42.78 ID:S0IxyqgSo

提督「人間を守るはずの艦娘が、民間人に手を出したのが奴らは余っ程気に入らなかったようでな」

提督「そのせいで、萩風たちへの接触は中将麾下の不知火でも難しいとさ。国家権力なのはこっちも同じはずなんだがな?」

五月雨「……」

提督「それから、雪風は雪風で足取りが掴めねえ」

大淀「どうしてですか?」

提督「雪風捜索中、その周辺海域で見たことのない深海棲艦が目撃されてる」

提督「不知火たちにも同じように本営から警告が出されてるし、事実そういう連中を目撃してるそうだ」

大淀「提督……それじゃ、さっき遠征部隊を呼び戻せと仰ったのは……!」

提督「下手に動けば被害が出そうだと思ってな」

黒潮「……」

五月雨「どういうことなんでしょう……」

提督「ともかくだ、海は海で物騒だし、保提督の鎮守府に近づいたとしても、どうにもならねえって話だ」

黒潮「せやったら、どうすんねんな……」

提督「だから俺は待つことにする」

黒潮「何もせん、っちゅうんかい!」

提督「ああ、何もしねえよ。果報は寝て待てって言うしな」

745: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:19:51.69 ID:S0IxyqgSo

提督「雪風ってのは幸運艦なんだろ? もしかしたら、お前みたいに運よくこの島に流れてくるかもしれねえし」

五月雨「……そ、それはだめですよ!」

提督「じゃあ、迎えに行くか? 行って見つけて無事に戻ってこられるか?」

五月雨「……」

提督「無理だろ? 待つしかねえんだよ」

黒潮「そんな都合よくいくかいな」

提督「さあな。それともお前、自殺しに行くか?」

黒潮「……」ギリッ

大淀「提督!」

提督「それよりもだ、黒潮にいくつか聞きたいことがあるんだが」

黒潮「……なんや?」ジロッ

提督「お前は海に出た後、羅針盤を見てたか?」

黒潮「? まあ、見てたけど……習慣付けみたいなもんやったし」

提督「……ということは、その針の向きに、逆らって進んだりはしてないんだな?」

黒潮「……」

提督「別にそれが悪いとかいいとか、そういう意図はねえよ。深く考えなくていい」

提督「この前、敷波が言ってたんだ。羅針盤に逆らって戻ってきた艦娘に会ったことがない、ってな」

提督「白露と島風は羅針盤の針がぐるぐる回っててびっくりしたとも言ってたし、お前はどうだったのか気になったんだ」

746: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:20:59.78 ID:S0IxyqgSo

黒潮「……そういうことなら、うちは特に何も面白いことはないで」

提督「そうか」

黒潮「……あ、でも」

提督「?」

黒潮「山雲を助けるちょっと前やったかな……羅針盤の針が異常なほどぶるぶる震えてて」

黒潮「針の方と逆を見たら、黒い雲がぶわーーって通ってったんよ」

黒潮「なんていうか、見てて背筋が寒くなるような、おどろおどろしい雲やったん。あれは正直やばかったんちゃうかな……」

大淀「その後で山雲さんを助けたんですか?」

黒潮「うん。あの黒い雲がわーっと通り過ぎた後、その通り道を羅針盤が指してて」

黒潮「何かと思って進んでみたら、気絶した山雲がぷかぷか浮いとったんよ」

提督「その、雲を見たのがいつごろだったかは覚えているか?」

黒潮「……あんまりよく覚えてないけど、うちが出港してから2、3日ってあたりちゃうかな」

提督「……」

五月雨「提督……?」

747: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:22:40.68 ID:S0IxyqgSo

提督「どうもな、その黒い雲、雪風が海に出てすぐくらいから発生してるみたいなんだ」

黒潮「……黒い雲が雪風やっちゅうんか?」

提督「いや、そうじゃねえ。黒い雲の正体は無数の深海棲艦だって言われてる」

提督「俺は、もしかしたらそいつらが雪風を追いかけてるんじゃねえか、って思ってんだよ」

五月雨「ど、どうしてですか!」

提督「雪風が、羅針盤を無視したから……ってのはどうだ」

黒潮「……!」

提督「雪風が黒潮を探すために、羅針盤を無視して無茶苦茶に海を駆けずり回ってるとしたら……」

大淀「……それが、深海棲艦を呼び寄せたと?」

提督「羅針盤を見れば危険を察知することができる。しかし、見なかったり無視した時はその限りじゃない……」

五月雨「それじゃ、雪風ちゃんは……!」

提督「さあて、な。今の俺たちに確かめる術はねえぞ」

黒潮「……」ヘタッ

提督「今は祈っとくしかねえな。雪風が幸運であることに」


748: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:23:46.64 ID:S0IxyqgSo

 * 一方そのころ V提督鎮守府(もとN提督鎮守府) *

妙高「通してください! 急患です!」

寝かされて運ばれる鳳翔(大破)「……」ガラガラガラ

加賀「鳳翔さん!?」ギョッ

赤城「何があったんですか……っ!」

望月(大破)「うう……痛ってえ……」フラフラ

卯月(大破)「弥生、しっかりするぴょん……!」ヨロヨロ

弥生(大破)「……卯月、こそ」ヨロヨロ

赤城「皆さん、鎮守府正面の対潜哨戒に行ってたはずでは!?」

加賀「いくらなんでも、そこまで攻撃は激しくないはずよ。一体、何があってこうなったの……!?」

卯月「よ、よくわかんない、ぴょん……!」

弥生「……鳳翔さんが、危ないって、叫んで、それ、から……」フラ

加賀「! 危な……!」ガシ

望月「ほんと、マジ、わけわかんないって……とんでもない数の艦載機だったし……」

赤城「……艦載機……!?」

749: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:24:33.30 ID:S0IxyqgSo

弥生「そうだ……あの子は、無事……?」

加賀「あの子?」

卯月「うーちゃんたちが襲われてから、大怪我してた艦娘を助けたんだぴょん」

 ガラガラガラ…

赤城「あれは……」

寝かされて運ばれる雪風(大破)「……」ガラガラガラ…

加賀「あの子は……雪風?」

望月「……あー、来たってことは、無事、だったのかな……?」

卯月「一安心だぴょん……」ヨロ

加賀「!!」ガシ

赤城「加賀さん、この3人も私たちがドックへ運んであげましょう」ヒョイ

望月「お、おお……?」カカエラレ

750: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/15(日) 17:26:21.66 ID:S0IxyqgSo

加賀「そうね。こっちの2人は任せて」ヒョイヒョイ

望月「……」

赤城「どうかしたの?」クビカシゲ

望月「あー、いや、あの……赤城さんや加賀さんと、今まであんまり喋ったことなかったし、ぶっちゃけ怖いイメージあったんだけど」

望月「全然、そんなことなかったんだなーって……」ポリポリ

赤城「ふふふ、怖いだなんて、そんなことはありませんよ。ね、加賀さん?」

加賀「……そうね」

赤城「加賀さんはとても優しいんですから。話していればわかりますよ。ね? 加賀さん?」ニコニコ

加賀「……早く行きますよ」スッ

望月「……耳まで赤くなってる」ボソ

赤城「ね? かわいいでしょう?」クスッ

赤城「……それにしても、鳳翔さんたちを含めた4人……いえ、5人ね……それをここまで追い込むなんて」

赤城「深海棲艦とはいえ、一体何者なのかしら……!」

754: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:08:47.19 ID:g5rkcZrko

 * それからしばらくして 工廠 *

黒潮「」ズーン

五月雨「そういうわけで提督からは、出撃も遠征も控える、という話になりました」

山城「黒潮が落ち込んでるのはそういうことなのね」

龍驤「なるほどなあ……そらかける言葉が見つからんわ」

金剛「黒潮も可哀想デース」ナデナデ

黒潮「……」パシッ

金剛「Oh, これは相当にnervousになってマスネ」

龍驤「黒潮なあ、いくら何でも手を叩き落とすことはないやろ」

金剛「Hey 龍驤 Stop デス。今の黒潮を責めるのは酷デスヨー」

龍驤「ええんか……?」

金剛「今はそっとしておいて欲しいんでショウ。手を出した私が悪いだけデス」ニコ

金剛「人生にはどうにもならないときがありマス。時間をかけて、ゆっくり傷を癒すのも必要なことデース」

龍驤「えらい大人の意見やな」

755: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:09:31.63 ID:g5rkcZrko

金剛「私も榛名が砂浜に倒れていたのを見たときは、胸が張り裂けそうになりマシタ」

金剛「同じ姉妹艦の身を案じている黒潮の気持ちがどれほどのものか、いくらかは理解しているつもりデス」

山城「そのあとは違う意味で胸が張り裂けそうだったのはどこの誰だったかしら」ボソッ

金剛「」ピシッ

龍驤「……なにがあったんよ」

山城「榛名がその後目を覚ましたんだけど、そのまま提督に抱き着いてキスしたのよね」

龍驤「は?」

五月雨「き、キス、ですか……!?」カオマッカ

山城「あの時は扶桑お姉様も大破してて大変だったっていうのに、金剛は妹にヤキモチ焼いてそれどころじゃなかったんだから」

五月雨「そ、それで金剛さんはあんなに取り乱してたんですか」

金剛「と、取り乱して当然デース! テートクの唇は、簡単に奪われていいものではありまセーーン!」グワッ

龍驤「金剛うるさいで。びー・くわいえっと、や」

金剛「ぐぬぬ……」

756: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:10:16.66 ID:g5rkcZrko

山城「そういう金剛も、この鎮守府に着任してすぐ提督とキスしたって聞いたわよ?」

龍驤「はぁあ!?」

五月雨「本当ですか!?」

金剛「あれはただの挨拶デース!」

龍驤「認めるんかい……」

五月雨「あわわ……」カオマッカ

金剛「だってだって、ずーっと我慢していた My burning love を、完全燃焼させる相手が見つかったんデスヨー!」

金剛「思い立ったが Lucky day !! 遠慮なんかしてられないデース!」

山城「我慢? なんで我慢なんかしてたのよ」

金剛「前の鎮守府にいたQ中将は既婚者デス! 既婚者に手を出すのは My Policy に反しマース!」Boo!

金剛「それに、Q中将の奥様は素晴らしい大和撫子デシタ。Q中将のお体が心配で、お忍びで鎮守府に通ってたくらいデス!」

金剛「あそこまで奥ゆかしくていじらしい女性ならば、同性でも応援したくなるというのが人情というものデスヨ」

山城「ふーん……つまり、負けを認めたの?」

金剛「愛情に勝ち負けを求めてはいけまセン。私は、Q中将の最期を看取るのは奥様が相応しいと思っただけデス」

757: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:11:16.65 ID:g5rkcZrko

山城「看取る? ちょっと、なに勝手に殺してるのよ」

金剛「いえ、Q中将は先日亡くなられまシタ」

五月雨「ええっ!?」

龍驤「病気かなにかなん?」

金剛「Yes. 癌を患ってマシタ。意地っ張りで見栄っ張りで、自分の弱いところを絶対に部下に見せようとしない、頑固な人で……」

金剛「だけど、思い遣りがあって、こちらを向かずにそっと手を差し伸べてくれる、昭和のお父さんみたいな人デシタ」ウルッ

山城(今で言うツンデレってやつかしら)

五月雨「……良い提督さんだったんですね」ウルッ

金剛「Yes」ニコ

龍驤「さよか……羨ましいもんやな」

金剛「ンー……でも、Q中将の訃報を聞いたときは、どうしようもない喪失感に苛まれマシタ」

金剛「生あるものには必ず死が訪れるのが自然の摂理とはいえ、好きな人を失う悲しみは誰にとっても耐え難いものデス」

五月雨「……はい……」ウツムキ

山城「……っ」プイ

龍驤(あー、扶桑が言うとった時雨の話か……)

758: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:12:01.53 ID:g5rkcZrko

金剛「黒潮には、そういうつらい思いをさせたくありマセン。Isn't it ?」

山城「それはその通りよ……」スクッ

五月雨「ど、どこへ行くんですか!?」

山城「どこだっていいじゃない。良いニュースが聞きたいなら、私なんかいないほうがいいわ」スタスタ…

五月雨「そ、そんなことないですよ!」ガタッ

龍驤「ああ、ええからええから。気にせんと座っとき」

五月雨「でも!」

龍驤「ひどい話や思うけど、山城は自他共に認める不幸体質や。せやから、自分がここにいたら良い報せが回ってこないて思うてるん」

龍驤「山城も山城なりに黒潮に気を使こてくれてるってことや。難儀な奴っちゃで、ほんま!」クス

金剛「少々口下手で言葉足らずなところもネー」フフッ

 パタパタパタ…

吹雪「黒潮ちゃん、いる!?」

五月雨「!」

吹雪「雪風ちゃんが見つかったって!!」

黒潮「!!」ガバッ

金剛「Oh... What a right timely...」

五月雨「……」

龍驤「ほんま、山城は損な役回りやなぁ」

759: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:13:01.98 ID:g5rkcZrko

 * 執務室 *

提督「前にN中佐……今は大尉だが、そいつがいた鎮守府。あそこで保護されたそうだ」

黒潮「無事……やったんや」ホロリ

提督「ただ、俺が危惧した通り、雪風は羅針盤を無視して海を渡ってたせいで厄介な奴に目をつけられたらしい」

提督「空母ヲ級3隻に軽空母ヌ級2隻を随伴艦とした、空母棲姫率いる航空戦隊。雪風を襲ったのはそいつらだと」

提督「N大尉の鎮守府は大湊にあるんだが、その大湊から雪風を連れて出航すると、どこからともなく艦載機が襲ってくるそうだ」

五月雨「どういうことですか!?」

提督「わかんねーよ。とにかく数が多いうえに練度も高くてな、向こうの赤城や加賀の艦載機でも歯が立たないときてる」

提督「だから、雪風をここまで連れてくるのは不可能に近い。つうか、まともに海に出られねえだろう」

黒潮「……!」

提督「かといって俺たちも黒潮を連れて向こうに行くわけにはいかねえ。行けばお前は捕まって解体処分だ」

提督「お前と雪風を会わせたいとと思ってはいるが、向こうは海に出られず、こっちは雪風に近づけねえとなると、どうしようもねえな」

提督「多分、黒潮が見たのは空母棲姫の放った艦載機だと思うんだが……どうだ黒潮。どのくらいの航空戦力、あるいは対空砲を準備すればいい?」

760: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:13:46.60 ID:g5rkcZrko

提督「ちなみにこっちは空母が龍驤と雲龍。対空要員は……」

黒潮「いや、もうその時点で厳しいと思うで」

龍驤「ちゅうか、余所の鎮守府の一航戦が無理やったんやろ? うちらの手数じゃ、烈風ガン積みでも厳しいかなあ……」

提督「そうか……どうしたもんかね」ハァ

金剛「テートク? 空母棲姫を倒すつもりデスカ?」

提督「……お前が雪風である限り、私はお前を逃がさない」

提督「加賀が空母棲姫と交戦中に聞いたらしい、雪風に向けられた言葉だ」

黒潮「……」

提督「一説によれば、深海棲艦てのは人間に対する恨みから生まれたんだってな」

提督「で、加賀が言うには、空母棲姫の口振りから、雪風が航行中に何かしら空母棲姫の恨みを買うような真似をしたっぽいんだ」

提督「残念ながらそれが何なのかはわからねえが、奴が雪風を赦す気は毛頭ないようだ」

提督「雪風を連れて海に出ると、しばらくの間はその海域の奴らが出てくる。だが、少し遠出するとあの黒い雲のような艦隊が見えてくるらしい」

五月雨「……察知されてるってことですか」

提督「雪風が艦娘として活動を続ける気なら、空母棲姫を倒さない限りはこの先ずっと雪風の障害になる」

提督「早かれ遅かれ、空母棲姫の撃破が避けては通れねえ道になるだろうよ。そうなると、雪風が地道に練度を上げるしかねえ」

龍驤「なんだか、気が遠くなりそうな話やな」

761: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:14:32.00 ID:g5rkcZrko

提督「雪風はまだいい。面倒な敵に目をつけられただけだからな」

金剛「まだ?」

提督「ああ、問題はお前だ、黒潮」

黒潮「……!」

提督「どうやって黒潮を保提督の鎮守府に戻してやるか……そっちのが難題なんだよ」

五月雨「提督、何かいい方法はないんですか?」

提督「なくはねえよ。手段としちゃあ最悪の極み、すっげえやりたくねえってだけの話だ」

金剛「Oh...」

黒潮「……どんな方法や」

提督「この前も言ったが、雪風を襲ったバカの父親を失脚させる。黒潮が海に放り込んだあのバカを、完全に悪役に仕立て上げてやるんだ」

提督「バカの父親は与党議員。議員の息子が未遂とはいえ婦女暴行なんてしてたら、野党連中にとっちゃ願ってもねえスキャンダルだ」

提督「それに、資料だけ見ると雪風ってのは随分幼い容姿をしてる。そいつを襲ったとなりゃあ世間だって黙っちゃいないはず」

提督「悪いのは議員の息子ってのを前面に押し出して、黒潮の行為を正当防衛として世間的に認めさせる、ってシナリオに持っていきたい」

提督「この手の話はマスコミも大好物だろうからな。トップニュースで報道してくれんじゃねえの」ケッ

762: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:15:16.78 ID:g5rkcZrko

五月雨「……でも、それって……」

提督「そうさ。一番の問題は、それをやるためには雪風を世間の晒し者にしなきゃいけねえってとこだ」

提督「この一件で傷付いてるであろう雪風を、マスコミ連中は面白可笑しく話を盛り上げ囃し立ててくれるんだぜ? やってられっかよ」

龍驤「そら確かになぁ……」

提督「それに、晒し者になるのは雪風だけじゃねえよ。黒潮も、萩風たちも最悪そうなる。下手すりゃ保提督鎮守府の艦娘全員かもな」

金剛「……確かに、とてもおすすめできるような手段ではありまセンネー」ウーン

提督「黒潮の行為を正当化するためには、雪風たちの協力がねえと難しい」

提督「だが、雪風にそんなことをさせられるかと言えば、させたくねえんじゃねえか、と俺は勝手に思ってる」

黒潮「……まあ、させたかないわ、うん……」

五月雨「……」

提督「それからもう一つ。この事件を表沙汰にした場合、艦娘の扱いがどうなるかが誰にも保証できねえ」

提督「海軍の上層部ですら意見が割れて躊躇している艦娘の存在の公表を、この一件でやっていいのかどうかが、俺にも判断つかねえんだよ」

金剛「何か問題があるんデスカ?」

提督「問題山積みだろうが。今まで艦娘の存在は、一応機密情報だったんだ。艦娘が世間に公表されたらどうなると思う?」

提督「何の責任も背負おうとしねえ外野が、無責任に煽って騒いで文句を言いに来まくるに決まってるじゃねえか」

763: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:16:01.53 ID:g5rkcZrko

提督「古鷹も言ってたろ、変なデモ隊が鎮守府周りに現れたって。五月雨も体験済みだろ」

五月雨「……あの、言葉の通じない人たちがいっぱい現れるってことですか」ゾク

提督「楽観的に見れば艦娘に好意的な人間も多いと思うが、そうじゃねえ奴らだって一定数いるだろう」

提督「一見好意的でも、艦娘を利用しようとするクズも出てくるはずだ。視聴率欲しさに見世物にしたがってる奴らも多そうだ」

黒潮「……」

提督「俺の忌み嫌ってる中佐みたいに、艦娘が今のシーレーンにおいて必要不可欠な存在であることをアピールしたがってるのもいる」

提督「海軍である自分が力を持っていることを世に知らしめて、個人的に強力なコネを作ろうとしてやがるからな」

金剛「ンー、少し悲観しすぎな気がしマース」

提督「お前の周囲はまともな人間が多かったかもしれねえが、俺は人間なんか信用してねえ。それが海軍であってもな」

提督「深海棲艦と戦えるのが艦娘しかいないから、海軍を編成して艦娘の支援をしている、ってのが建前だが……」

提督「だったらどうして、黒潮の行為を正当だと弁護する奴が現れねえんだよ。くそが……!」ダンッ!

黒潮「……」

金剛「テートク……」

龍驤「……」

五月雨「……」

764: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:17:01.75 ID:g5rkcZrko

提督「……話を戻すが、雪風を世間に公表すれば、そこからなし崩し的に、すべての……世界中の艦娘が世間に晒されることになる」

提督「影響範囲がでかすぎて、どんな問題が出てくるか……いや、どれだけ問題になるか、俺には見当も付かねえ」

提督「それを避けようと思うと、黒潮を向こうに合流させる方法ってのが、思い付かねーんだよ……」

黒潮「……」

五月雨「……」

金剛「……難しいデスネー」ウーン

龍驤「確かに、こりゃ二の足を踏むわなぁ……」

提督「とりあえず、雪風には海に出ないように指示しているそうだ」

提督「その黒い雲……空母棲姫か。そいつらがどうやって潜んでいるのか、それも調べて対策を考えねーと……」

 コンコン

大淀「失礼いたします。提督、海軍と思しき見慣れない船が、島に近づいてきています」

提督「あぁ? ……どこの船だかわかるか?」

大淀「いえ。ただ、長門型と金剛型の戦艦6隻を従えて進軍してきたみたいです」

提督「艦娘連れてきてんのか……黒潮、悪いが姿を隠しててくれ。もしかしたらお前を探しに来たのかもしれねえ」

黒潮「!」ビクッ

提督「大淀はどこの船か確認を頼む。五月雨と龍驤は黒潮を連れて匿っててくれ」

765: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:19:01.49 ID:g5rkcZrko

 * 埠頭 *

仁提督「こんな辺鄙な島に鎮守府があるとは……墓場島とかいう名前の割には小綺麗な島じゃないか」キョロキョロ

仁霧島「提督、丘の上に無数の艤装やら単装砲やらが並んでいますが……」

仁長門「もしかして、あれが墓場ということなんだろうか?」

仁陸奥「それだと、聞いていた話と違うわね」

仁提督「そうだとしても、くだらんな。あんなものを後生大事に飾っておくより、さっさと溶かして資材に変えてしまえば良かろうに」

仁提督「弾薬にしても燃料にしても、いくらあっても足りんのだ。こんな戦争、とっとと終わらせなければならん」

仁霧島「……本当に誰もいませんね」

仁比叡「さっき人影が見えたんだけど……あっ」


如月「……あれ、誰かしら」

潮「提督……じゃない、ですね?」

初春「金剛姉妹か? 長門と陸奥もおるようじゃが……」

霞「霧島さんがいるわ。余所の鎮守府の人たちかしら」

敷波「司令官、呼んでくる? あたし行ってこようか?」

電「それが良さそうなのです」

766: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:19:46.61 ID:g5rkcZrko

仁陸奥「駆逐艦の子たちね。この鎮守府の子たちかしら」

仁提督「丁度いい、練度が高い順に連れて帰るか。長門!」

仁長門「!!」

仁提督「何人か捕まえてこい。練度の高いやつを優先して見繕ってくるんだ!」

仁長門「捕まえ……いいのか!?」キラーン

仁長門「ふ、ふふふ……胸が熱いな!」


霞「っ!?」ゾク

潮「な、なんかこっち見てるけど……!?」

如月「あの長門さん、ちょっと目つきがやばくない?」

初春「……いかん! あの長門はまずい!!」

敷波「ま、まずいって何が!?」

初春「皆、逃げるんじゃ! 襲われても知らんぞ!」

電「えええええ!?」


767: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:21:02.09 ID:g5rkcZrko

 キャアアーー

仁陸奥「ちょっと、長門が変な顔してるから逃げちゃったじゃない」

仁長門「よーし、追いかけっこだな! 待てぇぇぇえ!!」ダッ

仁陸奥「……」

仁提督「おい長門! 遊びじゃないぞ! さっさと捕まえてくるんだ!」

仁長門「ふははははははぁぁぁぁあああ!!」

仁陸奥「聞いてるのかしら……」

 ズドドドド…

電「お、追いかけてきたのです!」

初春「くせ者じゃああ! 出会え、出会ええええ!」

敷波「し、しれいかーーーーん!!」

潮「長門さぁぁぁん!!」

仁長門「私ならここだぞぉぉぉ!!」

霞「あ、あんたじゃないわよっ!!」


768: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:22:22.22 ID:g5rkcZrko

 * 鎮守府正面ロビー *

 キャァァァァ

金剛「なんだか叫び声が聞こえマスヨ?」

提督「ったく、なんだってんだよ……面倒臭え」

敷波「し、司令官っ!!」ダッ

提督「!」

潮「たす、助けてくださいっ!」ヒシッ

電「追いかけられているのです!」ヒシッ

如月「も、もうやだっ……!」ヒシッ

提督「なんだなんだ、どうしたって……」

仁長門「うおおおおおおおおおお!!!」ドドドド

提督「……長門?」

仁長門「むっ、誰だ貴様は! そこをどけ!」キキーッ

提督「……あぁ?」ギロ

金剛「テートクに向かって『どけ』とは良い度胸デース」ユビヲバキボキ

敷波(金剛さんって意外と武闘派……?)

769: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:23:01.97 ID:g5rkcZrko

提督「長門みたいだが……誰だこいつ。俺の知ってる長門じゃねえな」

如月「そ、それが、余所の鎮守府から来た長門さんみたいなの」

提督「ふーん……」

仁長門「貴様! そこをどけと言っているのがわからないのか!」

金剛「Hey you, テートクに向かって二度目の暴言、そろそろ許してはおけまセンヨー?」ニジリ

仁長門「提督だと? この男がか」ピク

提督「俺はこの島の鎮守府の管理者、提督准尉だ。お前こそうちの艦娘を怯えさせて、何しようってんだ」

仁長門「知れたこと! 我が仁提督鎮守府へ編入させ、活躍の場を与えようというのだ!」

提督「あぁ?」ピク

如月「編入……って、私たちを移籍させるつもり!?」

仁長門「そうだとも! 我が艦隊には駆逐艦が致命的に不足しているんだ……!」

770: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:23:52.55 ID:g5rkcZrko

仁長門「こんなにも愛くるしい駆逐艦たちを、こんな辺鄙な鎮守府で遊ばせておいていいものか! いや、ない!」

仁長門「だから私が連れて行く!」キリッ

金剛「連れて行く、じゃありまセン。勝手過ぎる言い草デスネー」イラッ

提督「つまり人攫いか。憲兵の出番だな」

仁長門「なんでそうなる!!」

提督「なんでもなにもそうじゃねえか。本人と保護者の同意もなしに連れて行けば捕まるのが法治国家ってもんだろうが」

提督「ん、待てよ? 艦娘には適用されねえのか?」クビカシゲ

金剛「テートク、今はそこは重要じゃないデース」

提督「まあいい、どっちにしたって連れて行くのは無理だ。諦めて帰んな」

仁長門「フ……何を愚かなことを! このビッグセブンとともに征きたくない駆逐艦娘がいないわけがないだろう!」

如月「私は嫌よ!」

仁長門「!?」

771: ◆EyREdFoqVQ 2019/09/29(日) 23:24:32.09 ID:g5rkcZrko

潮「私も嫌です!」

電「電も嫌なのです!」

敷波「あたしも絶対やだ!」

霞「私だって断固断るわ!!」

初春「当然じゃのう。去ぬが良い」シッシッ

仁長門「なぜだぁぁぁ!?」ブワッ

金剛「当然デス」Huh!

提督「あんだけ怯えさせておいて、一緒に来てくれると思ってんのかこの馬鹿」

仁長門「私は遊んでやろうとしていただけだぞ!!」

霞「遊ぶ!? 冗談でしょ、何をされるか分かったもんじゃないわ!」フシャー!

金剛「テートク? さっき大淀からあった連絡……」

提督「そいつか……仁提督鎮守府とか言ってたな。おい、そこの誘拐犯、仁提督とやらが来てんだろ? 案内しろ」

779: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:30:45.60 ID:OT7OSUtjo

 * 埠頭 *

仁提督「なに、そう難しい話ではない。練度の高い駆逐艦を6隻、こちらに差し出せば良いのだ」

提督「断る」

仁提督「おい!?」

提督「話は済んだな。帰れ」クルリ

仁提督「」ピキキッ

霞「10秒で済んだわね」

初春「にべもないのう」

提督「話すだけ時間の無駄だ」

霞「まあ、同意するけど」

仁提督「待たんかあああ!」

提督「だから嫌だっつってんだろうが、面倒臭え」

780: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:31:30.70 ID:OT7OSUtjo

仁提督「貴様、准尉のくせに上官に対していその口の利き方はなんだ!」

提督「ふん、てめえこそ、それが人に恵んでもらう態度か? 物乞いの分際で」

仁提督「物乞い……っ!」

提督「物乞いじゃなきゃ人攫いだ。うちの駆逐艦、無断で連れて行くとか言ってたのはどこのどいつだ? 憲兵に言うぞ?」

仁提督「だ、誰もそんなことは言っていない!」

提督「そうか。だったら帰れ、俺はお前なんかに身内を差し出すような真似はしねえ」

仁提督「ぐぬぬ……下士官のくせに口の減らない男だ!」

「テートクー!」

提督「!」

金剛「テートクのために、応援を呼んできまシタヨー!」

榛名「榛名もお手伝いいたします!」

扶桑「私たちも、提督のお役に立てることがありましたらお手伝いさせていただきます」

山城「……まあ、どのくらいお手伝いできるかわかりませんけど」

781: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:32:18.70 ID:OT7OSUtjo

提督「戦艦勢揃いか……大袈裟だな」

比叡「お相手さんが戦艦6隻揃えてきたということでしたから!」

陸奥「それに出撃も制限中だったでしょう? 暇だから必然的にみんな来ちゃったの」

提督「そういやそうだったな……」


仁金剛「オーゥ、あちらには私たちもいるみたいデース」

仁比叡「あ、でも霧島はいないみたいですよ、金剛お姉様」

仁提督「ぐぬぬ……辺境とはいえ、戦力は揃えておるのか」


長門「ふむ……あちらには私や陸奥もいるのか」スタスタ

潮「! 長門さん!」ダッ

電「長門さんなのです!」ヒシッ

初春「おお、長門が来たか!」

長門「? どうしたんだ?」

782: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:33:00.96 ID:OT7OSUtjo

電「あっちの長門さんに追いかけられたのです!」ダキツキ

潮「目が血走ってて、すっごく怖かったんです……!」ウルウル

初春「うむうむ、やはりこちらの長門は安心するのう」スリスリ

長門「そうか、私がいない間に怖がらせて、悪いことをしたな」

敷波「長門さんは悪くないんだから謝ることないよー」


仁長門「……うぐううう!」ギリギリギリ

仁比叡「ひえっ……」

仁霧島「血涙を流すほど悔しいんですか……」

仁榛名「駆逐艦欠乏症だとか仰ってましたから……」

仁陸奥「なによそれ……」アタマカカエ

仁提督「……! あ、あれは!」

仁金剛「? どうしマシタ……!?」

783: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:33:45.68 ID:OT7OSUtjo

大和「それにしても、駆逐艦を狙うなんて、酷いことをなさいますね」

仁金剛「大和!?」

提督「まあな。とりあえずお前らが揃って来てくれたのはありがたいが、連中との話は終わったぞ」

大和「そうなんですか?」

提督「あいつ、あの白露たちのもと司令官だ。海域の攻略に行き詰まって、うちの駆逐艦を寄越せと言ってきやがった」

全員「「……!」」

提督「その話もさくっと断ったからな。もう持ち場に戻っていいぞ」

仁提督「待て待て待て! なぜ貴様が大和を連れているんだ!」

提督「……またかよ」ハァ

仁提督「こんなところで大和を寝かせておく気か! おい大和! うちの鎮守府なら、何度でも出撃させてやるぞ!」ズカズカズカ

仁提督「こんな貧乏くさい鎮守府なんかおさらばして、うちに来るんだ!」テヲノバシ

大和「……あぁ?」ギロリ

仁提督「」ビクッ

長門「……つくづく提督そっくりだな」

比叡「ほんっと、似てますねー……」

784: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:34:30.21 ID:OT7OSUtjo

大和「どこのどなたか存じませんが……あなたも、この大和を所望なさるんですか?」

仁提督「お前がいればどんな海域も怖くはない! 我が艦隊の破竹の勢いは誰にも……」

大和「度胸と勢いだけですか。考えなしの未熟者に命を預ける気は毛頭ありません」プイッ

仁提督「な……っ!」

大和「この鎮守府の提督准尉は思慮深く、そして各々の幸せを熟慮した指揮を執っておられます」

大和「あなたのような、艦娘をただの駒にしか見ていない輩とは違うのです」

仁提督「こんな男が……こんな口も態度も目つきも悪いこの青二才がか!」

大和「提督? この方は、提督の実力を侮っておいてのようですね。ここは私たちにお任せできないでしょうか?」

提督「任せろって……どうする気だよ」

大和「演習などなさってはいかがでしょう?」

仁提督「ほう……!」

提督「演習ねえ……」

785: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:35:15.65 ID:OT7OSUtjo

大和「今の彼ら相手でしたら、負ける要素はありません」ニコ

仁提督「なにぃ!?」

仁霧島「それは聞き捨てなりませんね。精鋭の戦艦6隻に勝てる自信がおありですか」ズイ

大和「ええ、『蜂の巣にできる切り札』があります。ね? 提督」

提督「!」ピーン

仁霧島「切り札?」

提督「……ああ、そうだな。誰が凄んだところで結果は同じだ」ニヤリ

提督「全員ぼろ雑巾にしてやってもいいが……戦艦の修復は時間がかかる。1対1でやろうじゃねえか」

仁霧島「それほど自信がおありですか……!」

仁提督「面白い、力の差を見せつけてやろうじゃないか!」

提督「よし、大和、ちょっと来い」

大和「はいっ!」


786: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:36:00.59 ID:OT7OSUtjo

仁長門「仁提督、私を出してくれ! 名誉挽回のチャンスを……!」

仁提督「馬鹿者、ここは練度の高い金剛を出すに決まっているだろう! 霧島!」

仁霧島「はいっ!」

仁提督「金剛の実力なら負けることはないだろうが、お前も良い作戦を考えてやれ!」

仁霧島「お任せください!」

仁提督「それから榛名に、比叡が船の厨房で赤飯を作り出さないように見張れと伝えておけ!」

仁霧島「わ、わかりました……!」

仁長門「提督、忘れるんじゃないぞ、本来の目的は大和に勝つんじゃなく、駆逐艦たちの保護だからな!」

仁提督「わかっているから後にしろ!」

仁陸奥(また話を聞いていないケースねこれは……)

仁長門「この戦い、演習とはいえ負けるわけにはいかないんだ……!」

仁陸奥「長門も一体どうしたの?」

仁長門「この鎮守府の提督准尉……とんでもない外道かもしれないんだぞ!」

仁陸奥「どういうこと……?」

787: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:36:45.68 ID:OT7OSUtjo

 * それからしばらくして *

仁提督「こちらの準備は整ったぞ。いつでも演習可能だ!」

提督「そうか」

仁提督「どうした、相手の大和の姿が見えないな」

提督「こっちはまだ準備中だからな」

仁提督「怖じ気づいたか? 貴様のような未熟者が大和を持つなど十年早いんだ」」

仁提督「せっかくだ、俺が勝ったら大和は貰ってやろう! がはははは!」

提督「何寝言こいてんだ。お前んとこの金剛がいくらご自慢の艦娘でも、こっちに砲弾を当てることはできねえよ」

仁提督「まだ言うか!」

提督「ああ言うね。お前がそんなことを言うんなら、俺も勝ったら何かもらってやろうじゃねえか」

大和「提督、お待たせしました! 準備完了です!」

仁提督「!? な、なぜ大和がここに!?」

提督「あぁ? 俺は大和を演習に出すなんて一言も言ってねえぞ?」

788: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:37:30.55 ID:OT7OSUtjo

仁提督「なんだと!? それじゃ相手は……」

提督「さあ、お互い準備できたぞ! 演習開始だ! 霞、合図しろ!!」バッ

霞「わかったわよ!」

 ドーン

仁比叡「ねえ、敵艦が見えないんだけど」

仁霧島「……まさか」

 ボチャーン

提督「砲弾の着水が演習開始の合図だったな」

仁提督「お、お前の艦娘はどこへやった!」

提督「ああ? あそこにいるじゃねえか。見えねえだけでな……!」ニヤァ

789: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:38:15.68 ID:OT7OSUtjo

 * 洋上 *

仁金剛「……合図はありまシタガ、敵影がありまセン……」

仁金剛「もしかして、恐れをなしての不戦勝デスカ?」ドヤッ

仁霧島「金剛お姉様ーーーっ!!」

仁金剛「オーゥ、霧島ー! 作戦は必要なかったデース!」

仁霧島「違います! 下です! 下ーーーー!!」

仁金剛「下?」

 魚雷<ゴボボボボボ!

仁金剛「!?」

 ドガァァァン!


790: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:39:00.26 ID:OT7OSUtjo

 * 埠頭 *

仁提督「……!!」アングリ

提督「魚雷命中。中破判定か、流石に頑丈だな」

仁提督「き、きさ、貴様っ……!」

提督「戦艦には潜水艦。まあ、相手がわかってるなら当然だよな」

仁提督「み、認めん! 認めんぞ! こんな卑怯な手で勝って貴様は嬉しいのか!」

提督「卑怯? どこが卑怯なんだ?」

仁提督「姿を見せずに海の中からなんて卑怯だと思わんのか! 正々堂々戦え!」

提督「潜水艦は潜水してなんぼだろ? なんで潜水艦がわざわざ浮上して敵の真ん前から雷撃しなきゃなんねーんだ?」

仁提督「戦艦に潜水艦をぶつけるのが卑怯だというんだ! 水上艦を出せ!」

提督「嫌だね。高い練度の戦艦とまともにやりあえば、圧倒的な火力で反撃すら許さないまま潰されるのが目に見えてる」

提督「俺たちのやってることは戦争だ。奇襲に夜襲に兵糧攻め、勝つためにあらゆる手を尽くすことは卑怯でもなんでもねえ」

提督「お前だって、自慢の艦隊を維持するために不要な艦を切り捨てたりしてきたんだろ?」

仁提督「……!」

791: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:39:45.78 ID:OT7OSUtjo

提督「俺も俺ができることをやってるだけだ。どうやったら被害を抑えられるか、どうやったら打ち勝てるか」

提督「どうやったら、これまで散々駆逐艦を切り捨ててきて、必要になったら慌てて余所の鎮守府へ掻っ攫いに来るようなやつに……」

提督「赤っ恥をかかせられるか、ってなあ……!」ズイ

仁提督「き……!」

提督「大和、あの二人はどうしてる」

大和「あちらで演習の様子を見ていると思います」

提督「会うつもりはあったか? あるなら連れてきてくれ」

大和「わかりました」スッ

提督「さて。何の話か、さすがにもうわかってるよな? 仁提督よぉ……?」ニィ

仁提督「貴様、最初から……我々のことを知っていたのか!」

提督「戦艦好きとは聞いていた。まあ、まさかそっちから現れて難癖付けてくるとは思わなかったがな」

仁提督「おのれ、謀ったなあ……!」

792: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:40:30.48 ID:OT7OSUtjo

仁長門「仁提督、やめるんだ。勝負は付いた、我々の負けだ」スッ

仁提督「ば、馬鹿な。この試合は無効だ! この勝負はなかったことに……」

仁長門「仁提督! これ以上の言い訳はよせ! 見苦しいぞ、恥を知れ!」

仁提督「ぐ……!」

提督「……」

仁長門「提督准尉、仁提督の非礼は詫びよう。それと……」

提督「ん?」

仁長門「貴様と話がしたい。訊きたいことがある」クイ

提督「あぁ……?」

大和「提督、白露さんたちを連れて来まし……どうなさいました?」

提督「向こうの長門が話があるんだとよ。大和は白露と島風を守ってやってくれ」

大和「は、はい……」

島風「なにがあったんだろうね?」

白露「さあ?」

793: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:41:15.39 ID:OT7OSUtjo

 * 埠頭と丘の間の通り道 *

提督「聞きたいことってのは、なんだ」

仁長門「如月のことだ」ギロリ

仁長門「如月の衣服の下の傷はなんだ!?」エリクビツカミ

提督「……見たのか?」ジロリ

仁長門「見えたんだ。あの傷は、貴様がつけたのか」グイ

提督「……」

仁長門「答えろ!」グワッ

提督「……他言するなよ」

仁長門「!」

提督「如月は、この島の砂浜に大破して流れ着いてきた」

提督「あいつは、海軍が開発する新兵器の実験台にされていたんだ。あいつの傷は、そこでつけられた傷だ」

仁長門「っ!? それは本当か……!?」

794: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:42:00.64 ID:OT7OSUtjo

提督「しばらく前に、Z提督とかいう奴が捕まったことが海軍の新聞に載ってたんだが……」

仁長門「お、覚えているぞ……その事件か!」ワナワナ

提督「知ってんなら話が早えな」

仁長門「その被害者があの如月か……だとしたら、すまない、どうやら私は誤解していたようだ」スッ

提督「おいおい、素直が過ぎるぞ。俺の出まかせだったらどうすんだ」

仁長門「貴様、嘘なのか!?」

提督「嘘じゃねえよ。ただ、そんな風にホイホイ信じていいのかっつってんだよ」ハァ

仁長門「ぐ……そういう貴様こそ、その如月の話が本当だとしたら、簡単に話していいものなのか? デリケートな問題だろう!」

提督「……お前の目が、真剣だったからな。如月の体の傷と、その仕打ちに真面目に怒りを覚えてたんだろ?」

提督「だったら、話してもいいと思っただけだ」

仁長門「……」

提督「それから如月だけじゃない。この島にいる艦娘の多くは、理由こそ違うが大破轟沈してそのまま流れ着いてきた奴らだ」

提督「俺は、あいつらを保護するため、特例としてこの島限定で着任できるようにしたんだ」

795: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:42:45.39 ID:OT7OSUtjo

仁長門「それじゃ、この島の駆逐艦たちはこの島から出られないのか……!?」

提督「駆逐艦に限らねーがな。だからこの島にいる奴らは余所では働けねえ」

仁長門「なぜそんなことを……」

提督「あいつらは、人間の勝手で沈められたんだ。俺はそんな連中と同じになりたくねえ」

提督「運良く助かるならいいが……丘の上にある艤装は見たか? あれは全部、この島に流れ着いてきた艦娘の墓標だ」

提督「潮の流れが強いもんで、水葬できずに砂浜に打ち上げられるんで、ああやって埋葬してる」

仁長門「如月がこの島に流れ着いたのも、その潮の流れのおかげだったと……?」

提督「かもな。まあ、白露と島風は大した怪我もなく……仁提督の勝手な判断で艦隊から見捨てられただけだが」

仁長門「……なるほど。ある意味では噂通りなのか」

提督「追放された艦娘が、ってやつか?」

仁長門「ああ。我々はその噂を聞いて、余所の鎮守府で不要になった駆逐艦を引き取るつもりでいたんだ」

提督「うちは預り所とかレンタルなんとかじゃねーんだぞ。ふざけてんのか、くそが」

仁長門「ふ、ふざけてるつもりはない! 私はそんな可哀想な駆逐艦がいたなら、保護して全力で可愛がるつもりだったんだぞ!」

提督「……お前、駆逐艦をペットか何かと勘違いしてねーか?」

仁長門「そんなことはない!」ゴォッ

提督「本当かよ」ジト

796: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:43:30.53 ID:OT7OSUtjo

仁長門「それに……身も蓋もない言い方をしてしまうが、仁提督は、ケチで極端なんだ」

提督「ケチ、ねぇ」

仁長門「仁提督は、これまで遠征で頑張ってくれていた睦月型にキス島の戦闘を任せているんだが……」

仁長門「装備をドラム缶から変えていないんだ」

提督「……はぁ?」

仁長門「どうせ今回だけだからと、駆逐艦の装備を揃えるつもりもないらしい」

提督「馬鹿じゃねーのか!?」

仁長門「素直に武器を開発すればいいと、我々も何度も進言した! しかし彼は目的のこと以外に金や手間をかけたがらないんだ!」

仁長門「我々の意見はまったく聞き入れてもらえず、大淀にも匙を投げられ……」

仁長門「そんな折に噂を聞いて、島にめぼしい艦娘がいないか、探しに来たということなんだ」

提督「そうかい。じゃ、無駄足だったってことだな」

仁長門「そういうことになるな……」ガックリ

提督「そんなに駆逐艦を編入できなかったのがショックだったのか」

797: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/03(木) 00:44:22.66 ID:OT7OSUtjo

仁長門「それもあるが……この島の実情が噂よりひどかったことのほうがショックだ」

仁長門「この島の駆逐艦たちも可愛い子ばかりじゃないか。それなのに、みな轟沈を経験していると思うと……」グスッ

仁長門「そういえばさっき、白露と島風もいたな」

仁長門「我々の鎮守府にもいたんだが、ろくに構うこともできないうちに、仁提督はあの二人を……」ブワッ

仁長門「今頃二人は何をしているのか! 無事でいるのか!! そう、思うと……うううう!」ナミダジョバーー

提督「そいつら、今うちにいるぞ」

仁長門「……え?」

提督「運がいいのか、航行中に羅針盤があてにならなくなって、それでうちの鎮守府に迷い込んだって感じだからな」

提督「たいした怪我もしてねえし、まあ元気なもんだったぞ」

仁長門「さ、さっきの二人が……そうなのか? よ、よかっ……」ジワッ

仁長門「良がっだぁぁぁぁぁああ!!」ナミダジョバーーーー ズドドドド…

提督「おい!? どこ行くんだ!?」

扶桑「……おそらく、あの二人の駆逐艦のところではないでしょうか?」コソッ

提督「!? お、お前、どこに潜んでた!?」

扶桑「万一があってはならないと思いまして。艤装を隠してそちらの草叢に潜んでいました」

扶桑「金剛型の皆さんから、私たちではじっとしていられないから、ということでしたので」フフッ

提督「……」

801: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:06:01.93 ID:1eXZRzVZo

 * 埠頭 *

仁霧島「艦隊の頭脳として言わせてもらいますが、今回の模擬戦の結果は司令の慢心が原因です」

仁霧島「我々戦艦の力を過信するあまり敵の戦力を考えず、結果金剛お姉様を危険な目に合わせた司令の判断、稚拙極まりないと言って過言ではないでしょう」

仁提督「そ、そこまで言うか」

仁霧島「ええ、大淀共々以前から申し上げておりますが、姑息とか卑怯とか相手を貶める言葉でご自身を正当化するのは、いい加減におやめください」

仁霧島「司令が我々を信頼してくださるのはありがたいことですが、我々が戦えない相手と戦えば負けます。至極当然の結果です!」

仁提督「……」

仁陸奥「それから、この島で駆逐艦を引き抜くにしても、白露や島風と知り合ってるのならいい印象を持たれてる訳がないわ」

仁陸奥「諦めて睦月型に装備を用意してあげたらいいじゃない」

仁提督「し、しかし……」

仁陸奥「しかし、って、何が不満なのよ」ムッ

仁陸奥「特定の艦種だけじゃ相手できない相手もいるって、今回の件で分かったでしょ?」

仁提督「……いや……」

802: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:06:47.18 ID:1eXZRzVZo

仁霧島「常々言わせていただいておりますが、戦艦だけの艦隊では問題がございます。そのお考え、改めて戴かないと困ります!」

仁提督「うぐ……」

仁霧島「お返事は!」

仁提督「ぐぅぅぅ……!」

 ズドドドド…

白露「……ねえ、何か聞こえない?」

島風「なにって……あ、あれ!」

仁長門「うおおおおおお!!」ズドドドド…

仁陸奥「長門!?」

大和「こっちに向かって走ってきてますね……」

仁長門「うおおお! 白露ぅぅぅ! 島風ぇぇぇ!!」ズドドドド

白露「……な、なんかすっごい顔して私たちのこと呼んでるんだけど!」

803: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:07:36.06 ID:1eXZRzVZo

島風「に、逃げよ白露!! はやく!!」ダッ

白露「えええ? う、うん!」ダッ

仁長門「うおおお! 白露も島風もよく無事で……って、なんで逃げるんだあああ!」

 ズドドドド…

榛名「すごい勢いで通り過ぎて行きましたね……」

初春「まあ、涙と鼻水ですごい顔になっておったからのう……逃げられても已む無しじゃ」

提督「……あの長門は何考えてやがんだ」

扶桑「二人の無事に感極まっただけだと思いますが……」

山城「扶桑お姉様!」

大和「提督! ご無事でしたか!」

金剛「何の話をしてきたんデスカ?」

提督「うちの鎮守府の事情を訊かれた。一応、駆逐艦が傷付けられるのは耐えられないくらいの常識は持ってるようだな」

仁陸奥「まあ、そうね。知ってるかもしれないけど、私たちの鎮守府って、駆逐艦は遠征に行く睦月型の子たちだけなの」

804: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:08:31.81 ID:1eXZRzVZo

仁陸奥「おかげで長門は、駆逐艦との触れ合いが欲しいって普段から言ってて……」

提督「それであの有様か」

長門「……」ズーン

潮「な、長門さん?」

長門「あれが余所の私か……」

仁陸奥「……そっちの長門はまともそうね」

潮「え、ええ……とっても優しいんです。お裁縫も上手ですし」

電「エプロンを作ってもらったのです!」

比叡「お料理も上手ですよ!」

仁陸奥「なにその女子力の固まりみたいな長門」

榛名「包容力の固まりでもありますよ? 榛名も見習いたいです!」

扶桑「そのおかげで駆逐艦の子たちにも慕われているわね」

仁霧島「艦娘には個体差があると言われていますが、その一端でしょうか……?」

805: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:09:17.06 ID:1eXZRzVZo

伊8「提督」スタスタ

提督「ん、はっちゃんか。急に呼び出して悪かったな」

伊8「戦闘は、あまり好きじゃないけど、頑張りました」フンス

仁提督「……俺の戦艦が、こんな奴に、手も足も出せないのか……」ポツリ

提督「そういうことだな。何に拘ってんのか知らねーが、戦艦だけでことを進めようなんざ……」

仁提督「何を言う! 戦艦の主砲こそ戦場の華! 巡洋艦や駆逐艦でちまちま撃っても、奴らが恐れなど抱くものか!!」

仁陸奥「え……?」

提督「何言ってんだ?」

仁提督「提督准尉、貴様にはわかるまい! こんな僻地で過ごしてきた貴様には!」エリクビガシッ

仁提督「奴らに……深海棲艦どもに、街を粉々にされた、この俺の恨みはわかるまい!!」

提督「恨み?」

仁提督「その通りだ! 港町を砲撃し、瓦礫に変えたあいつらへの恨み……貴様にわかるものか!!」バシッ

提督「っ……」ヨロッ

806: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:10:32.21 ID:1eXZRzVZo

仁提督「駆逐艦の砲撃も、巡洋艦の砲撃も、あいつらが放った砲弾の威力とは雲泥の差だ……だが、戦艦なら!」

仁提督「戦艦の砲撃なら! 戦艦の持つ大口径主砲なら、あいつらを木っ端微塵に粉砕できる!!」

仁霧島「提督……だからあなたは私たちを……」

仁提督「戦艦の持つ破壊力こそが奴らに絶望を与えるんだ。拘って何が悪い!」

提督「……何言ってんだ? 馬鹿じゃねえの?」

仁提督「!?」

仁陸奥「ちょっと!?」

提督「いや、馬鹿だろ。何度も言ってんだろ、戦艦じゃ勝てない相手がいるのに、戦艦に拘り続けるのは馬鹿だって」

提督「お前、単に敵を吹っ飛ばしたいってだけだろ? それでいいわけがねえだろが」

提督「本当に仇を討ちたいなら、丁寧に、詰め将棋のように、端っこから、逃げ道を消して、確実に、息の根を止めてやる……」

提督「復讐ってのは、そういうことじゃねえのか?」グイ

仁提督「く……」ギリッ

807: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:11:17.03 ID:1eXZRzVZo

提督「それになあ。お前の復讐劇に付き合わされる連中の身にもなってみろ」

提督「戦艦にとっての潜水艦みたいに、かなわない相手に何百回挑んだって、労力の無駄だぞ? 資材も金も時間も、無駄なだけだ」

提督「負けたからと言って反省する気配もねえ。力押しのごり押しが通用しない相手は、卑怯なことをする相手が悪いと責任転嫁」

提督「失敗から何かを学ぶのが人間だ。それがねえお前は、艦娘にとっての『ひとでなし』になっちまうだろうが」

仁提督「……っ」

提督「やり返したいんなら頭を使え。あいつらにだって知恵があるんだ、こっちが使わなきゃ不利は当然」

提督「そもそも頭に血が上りすぎなんだよ。復讐したいんなら誰相手に喧嘩を売るべきか、ちゃんと相手を選びな」ポイ

仁提督「……ぐっ」ドスン

提督「それから、お前らこの島から駆逐艦を連れてくつもりだったようだが……」


 * 説明中 *


仁陸奥「それじゃ、ここにいるみんなは轟沈を経験してるの!?」

仁霧島「そのような特例が出ていたなんて……初耳です」

808: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:12:01.90 ID:1eXZRzVZo

提督「そういう意味でもあまり有名になりたくないんだけどな。こうやって、誰かが来る都度、こうやって説明すんのも面倒臭えし」

提督「お前らみたいに間違った噂を信じて来客が増えんのも、はっきり言って迷惑だ」

仁霧島「そのような事情では、この鎮守府から引き抜きというのは不可能ですね」

仁陸奥「そうね。やっぱり睦月型の子たちに、ちゃんとした装備を渡してあげるべきよ」

提督「そうしてくれ。どうせそいつのことだ、新しく駆逐艦を連れてきても、用が済んだら解体するんじゃねえの」

仁霧島「やらないとも言い切れませんね」ジトメ

仁陸奥「むしろ最初からそのつもりだったんじゃない?」ジトメ

仁提督「……」ウナダレ

提督「とにかく、この島から艦娘を連れ出すのは諦めろ。金剛たちの修理が終わったら、さっさと引き上げたほうがいいぜ」

仁霧島「そうさせていただきましょう……提督准尉、余計なお手間でした。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」フカブカ

提督「苦労してんな、お前らも」ハァ

仁陸奥「私たちは主力として活躍させてもらってるし、そういう意味では、いい思いをさせてもらってるからいいんだけど」

809: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:12:47.04 ID:1eXZRzVZo

提督「空母連中はいないのか?」

仁陸奥「いないわけじゃないわ。今回は呼ばなかっただけよ」

仁霧島「それに対空でしたら、比叡お姉様と榛名お姉様が対空電探と三式弾を載せていますし……」

提督「そうじゃなくてだな、今は空母棲姫が出没するって話があったろ。そいつらに襲われたらたまったもんじゃねえ」

提督「ここに来たってことは遭遇しなかったんだろうが……黒い雲のような艦載機の群れ、途中で見えなかったか?」

仁霧島「いえ。私の水上観測機からは、そのような報告はありませんでしたよ?」

提督「たまたま運良く遭遇しなかったのか……?」

仁提督「いいや……その話なら、もう決着がつくはずだ」

提督「なに?」

仁提督「本営から、空母棲姫の出没条件がわかったと連絡が来た。だから、俺はこの編成で来たんだ」

提督「本営から? なにか指示があったのか」

仁提督「空母棲姫を討つため、本営中将の配下である中佐が連合艦隊を編成し、撃滅にあたることに決まった」

提督「中佐……!?」

810: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:13:35.91 ID:1eXZRzVZo

如月「なんで中佐が……!?」

大和「また、あの男ですか……!」

仁霧島「どうしたんですか?」

提督「どうしたもこうしたもあるか……! あれが絡むと、絶対ろくなことが起きねえってのに……!」

大和「あの男、今度は何をしようとしているんです?」

仁提督「空母棲姫は、ある鎮守府の雪風を追いかけていることがわかった」

仁提督「中佐は空母機動部隊の連合艦隊を準備し、その雪風をわざと海に出して空母棲姫を誘き寄せて叩く算段だ」

提督「最悪のパターンじゃねえか! なんでそんなに行動が早いんだよ、くそが……!」

仁提督「なぜだ? 深海の大物が駆逐艦一隻に釣られてくるんだぞ。十分すぎるリターンじゃないか」

提督「その雪風の姉妹艦は……残された奴らはどうする!!」

仁提督「甘いことを言うな。これは戦争だと、貴様も言ったばかりだろう……!」

提督「被害は想定しても犠牲はないに越したことねえだろう!」

仁提督「随伴のヲ級ですら海域の最奥にいるようなやつだぞ! 犠牲を出さないなんてぬるいことを言っていられるか!」

811: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:14:16.96 ID:1eXZRzVZo

仁提督「それにこれはもう決定事項だ! 今回の決定でテレビ局も動いている!」

提督「テレビ局!?」

仁提督「海軍も政府も腹を決めたらしい。我々の敵である深海棲艦が一体どういう奴らなのか、テレビ放映して国民に知らしめる気だ」

提督「艦娘も映す気か!?」

仁提督「そうなるだろうな……!」

提督「ふざけんな!! 他人事みたいに言いやがって……!」ガシッ

仁提督「ぐ……っ!?」ギリッ

大和「て、提督! おやめください!」

仁陸奥「落ち着いて! 仁提督を責めてどうするの!」

如月「司令官!」ガシ

提督「く……っ!!」パッ

仁提督「ぐ、げほ、げほっ……き、貴様が不満だろうと、もう始まってしまったことだ……止めることはできん!」

812: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:15:02.98 ID:1eXZRzVZo

提督「冗談じゃねえぞ……」

仁提督「抗議する気ならやめておけ! 我々のような末端の提督に、その決定に意見する資格も、止める権利も力もないのだ……!!」

提督「なにか資格だ! そんなもんくそくらえだ!」

仁提督「そもそも今から行っても遅いと言っている! 出向いたところで海域は封鎖されているし、今から向かってももう終わっているぞ!」

如月「え……?」

提督「……それじゃ、もう、その作戦を始めたってのか……?」ワナワナ

仁提督「俺はこの島に来る途中まで、衛星ラジオで開戦の様子を聴いていたんだ。霧島、船内の通信機で上に今の戦況を確認してくれ」

仁霧島「わ、わかりました!」タッ

提督「……電と初春は、工廠にいる大淀に今の話の確認を取るよう伝えてくれ」

電「わかりましたなのです!」タッ

初春「任せよ!」タッ

仁提督「俺の話が信用できんのか」

提督「違ぇよ。そっちで把握できる情報と、俺たちが催促した情報に差がないか確認したいだけだ」

813: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:16:01.76 ID:1eXZRzVZo

提督「俺が一番信用してねえのは俺の真上だ。あれはこっちにまともな情報を寄越さねえからな」

仁提督「貴様が信用されていないだけじゃないのか」

提督「まあ、それもあるな。俺も中佐に信用されたいとは思ってねえから、お互い様だ」

仁提督「中佐だと!? 貴様は中佐の部下か!」

提督「不本意ながらな。俺はあれに邪魔者扱いされて、こんな島にいる」

仁提督「……」

仁陸奥「仁提督、彼の中佐と仲が悪いって話は本当じゃないかしら」ヒソヒソ

仁提督「そうか……?」ヒソヒソ

仁陸奥「ええ、この前、中佐が大怪我した話って大和が関係してるでしょ?」

仁提督「……確かに、中佐の名前を出したときに、大和もあからさまに嫌な顔をしていたな」

仁陸奥「ねえ、提督准尉。今回の空母棲姫要撃の件、何も聞いていないの?」

提督「なーんにも聞いてねえな。あいつからは重要な話はひとつも流れてこねえ。仕方ないから中将から聞いてるくらいだ」

仁提督「中将!?」

提督「ああ、ちょっとした伝手があるんだ。さっきの轟沈艦の話で世話になって以来だな」

814: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:17:01.49 ID:1eXZRzVZo

仁提督「……わからんな」

提督「?」

仁提督「なぜ貴様は中佐に歯向かう? その上で、沈んだ艦娘にそこまでするんだ」

提督「……気に入らねえってだけだよ。どっちもな」

仁提督「貴様が雪風を気にかけているのはなぜだ? 雪風の知り合いか?」

提督「俺じゃねえ。雪風の身内がいる」

仁提督「身内? ……もしや、民間人に暴力をふるって指名手配された艦娘か。単艦で海に出て、最後にこの島に流れ着いたか」

提督「……さあてね」チラッ

仁陸奥「……丘のほうを見たってことは、もしかして沈んだの?」

提督「……」プイ

仁陸奥「そう……」ウツムキ

如月(司令官って、こういう思わせぶりな仕草、得意よね……)

敷波(演技派だ……)

815: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:18:01.22 ID:1eXZRzVZo

仁提督「沈んだのなら、それ以上雪風を気遣う必要はないだろう」

提督「手前はいちいち癪に障るな……!」

仁提督「当然だ。艦娘は建造によって作られる兵器だ、逐一感傷に浸っていられるか」

提督「兵器だと? 笑ったり泣いたりするこいつらが兵器だと?」

仁提督「人為的に造られたのなら兵器だろう。人である証明もできない以上、無責任に人だと言えるか! 人語を解せば人扱いか!」

提督「人並みの考えや感情を持っててそれを無視できる方がおかしいだろうが! お前こそ人でなしじゃねえのか!」

仁提督「軍に属している以上、艦娘も俺たちも使われるのは当然のことだ! 俺たちはそういう組織なんだぞ!」

仁提督「貴様は艦娘に入れ込みすぎだ! 何が貴様をそこまで駆り立てるんだ!」

提督「……どうせ、言ってもわからねえだろうよ」ギリ

仁提督「……ふん、大体わかった。さては艦娘に懐柔されたか」

提督「懐柔じゃねえよ! 単純に、理不尽だと思わねえのか! こいつらの受けた仕打ちを!」

仁提督「だから戦争とはそういうものだ! 人間であっても、艦娘であっても、そこに違いはない! 何度も言わせるな!」

816: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:18:46.72 ID:1eXZRzVZo

提督「そうかよ……だったらもう話すことはねえ」クルッ

仁提督「どこへ行く気だ」

提督「雪風がどうなったか、大淀に話を聞きに行く」

仁霧島「司令! 状況、確認できました!」タタッ

仁提督「ん、報告してくれ。提督准尉も聞くといい」

提督「……チッ」

仁霧島「よろしいでしょうか。まず、戦闘開始は本日1130、戦闘終了が同1310……」

仁霧島「指揮を執ったのは中佐、艦隊旗艦は中佐鎮守府の赤城。そして提督9名とその配下の艦娘54名、総勢60名の艦娘が戦闘に参加しました」

仁霧島「目標は敵航空母艦である空母棲姫、およびその随伴艦である航空母艦5隻、内訳は空母ヲ級3隻と軽空母ヌ級2隻」

仁霧島「戦果として、敵艦隊は6隻すべて撃沈。海軍の被害は……66名中、5名が轟沈、24名が大破、14名が中破しました」

提督「……」ムス…

仁提督「……続けてくれ」

仁霧島「はい。戦闘後に本営が会見を行いました。会見の席に上がったのは中佐、J少将、政府高官が2名」

仁霧島「今回の戦闘の影響と被害状況について政府高官から説明があり、その後中佐から艦娘と深海棲艦についての説明が行われています」

817: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:19:34.23 ID:1eXZRzVZo

仁霧島「そこで、今回見せた深海棲艦……空母棲姫は、深海棲艦の中でも力の強い深海棲艦であること……」

仁霧島「そして、それを撃退できた自分たちの艦娘は、深海棲艦に対抗できるただ一つの戦力であるということ……」

仁霧島「そして、その艦娘を率いているのは、海軍の中でも選りすぐりの精鋭であること……!」

仁霧島「テレビで流された音声の情報をいただきましたが、中佐はこのような演説を行っておりました」

提督「……チッ」

仁提督「どう思う、提督准尉」

提督「だいたいは奴の思い描いたシナリオ通りじゃねえか」

提督「中佐が欲しいのは名声だ。機密情報だった艦娘のお披露目に、深海の大物退治の陣頭指揮も執れて」

提督「自分の権力と力をテレビカメラの前で誇示できたんだ、チヤホヤされて幸せの絶頂なんじゃねえの」ケッ

仁提督「……なるほどな」

提督「ところで、ひとつ質問いいか?」

仁霧島「は、はい、なんでしょうか」

818: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:20:17.91 ID:1eXZRzVZo

提督「空母棲姫の狙いは雪風だ……その雪風がどうなったか、わかるか?」

仁霧島「……どこの鎮守府の所属かはわかりますか?」

提督「確か、保提督だったか」

仁霧島「保提督……その方は、今回の作戦には参加なさっていないようですが」

提督「だとしたら、別の鎮守府に編入されたのか?」

大淀「提督、雪風さんは無事です。中破こそしましたが、本営には戻ったということです」スッ

提督「大淀……!」

仁提督「それは確かなのか?」

大淀「はい、不知火さんが丁度本営におりましたので、そちらで把握している情報をいただきました」

仁霧島「ほ、本営から直接、ですか!?」

仁提督「准尉、これが貴様の言う伝手という奴か」

提督「中将麾下の不知火が、この鎮守府のお目付役だ。この鎮守府には憲兵も特警もいない。その代わりを担っている、とでも思ってくれ」

819: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:21:17.07 ID:1eXZRzVZo

提督「大淀、中佐はどうした? 赤城はいなかったのか」

大淀「赤城さんは留守のようでした。代わりに中佐鎮守府の職員らしき人が出たんですが、後にしろと言われまして」

提督「それで不知火に連絡したのか。やっぱ中佐んとこの人間連中はくそだな」

提督「とにかく雪風が無事か……轟沈したのはどこの鎮守府の艦娘だ」

大淀「はい……B提督鎮守府の5名ですね」

提督「B提督鎮守府……?」ピク

仁提督「霧島。どうなんだ、正しいのか」

仁霧島「私の情報と合致しています。誰が轟沈したかの詳細はありませんが、B提督の艦娘5名がくだんの雪風を庇って轟沈したとあります」

仁提督「ということは、その雪風はB提督鎮守府の艦隊に入っていたわけか……」

山城「冗談じゃないわ……!」

提督「どうした? 山城」

山城「どうしたもこうしたも……目の前で仲間が沈められるのを見てて、平気でいられる艦娘がどれだけいると思うの?」

仁提督「おい、何をそんなに興奮しているんだ。落ち着け」

820: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:22:02.85 ID:1eXZRzVZo

山城「落ち着いていられるわけないじゃない……轟沈よ!? 沈んだのよ!?」

山城「……雪風って、幸運艦って呼ばれてるでしょう? 時雨もそうだったわ」

山城「その時雨が以前、言ってたのよ。自分は幸運艦になんかならなくて良かった。他のみんなが沈んで、自分だけ生き残るのはつらい、って……」

提督「……」

山城「それがどれほどの悲しみか……雪風は、どう思っているのかしら……」ウツムキ

提督「……雪風もケアしてやらなきゃならねえ状態ってことか」

 クイクイ

提督「ん?」

敷波「……あのさ、司令官」

電「……」

敷波「B提督って、もしかして……」

提督「俺もそうなんじゃねえかって思ってるが……そういうことだな?」

821: ◆EyREdFoqVQ 2019/10/15(火) 00:22:47.59 ID:1eXZRzVZo

電「……どうして」ウツムキ

電「どうしてあの人は……!」フルフル…

電「どうしてなんですか……!!」

大淀「い、電ちゃん……?」

提督「敷波。B提督ってのは、そういう奴だったか?」

敷波「ううん……あたしは、ここまで酷いなんて思ってなかったけど……!」

仁提督「B提督を知っているのか」

提督「……ああ」

敷波「知ってるよ。あたしと、電と、由良さんを捨てた、あたしたちの元司令官だもん……!」ギリッ

仁提督「……!」

825: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:39:45.70 ID:CGh4h9Qto

 * 入渠ドックわきのテーブル *

提督「ここなら邪魔も入らねえ。まあ、あんな地雷を踏むとは思わなかったがな」

提督「とりあえず、あんたが聞いた話を聞かせて欲しいんだが」

仁提督「……雪風たちを襲ったのは、艦娘を持たない他国のスパイだと聞いていた」

仁提督「しかし、実行犯の一人が政治家の息子となると、その話も眉唾物だな」

提督「俺はスパイの関与を今初めて聞いたぜ。俺には真犯人を隠匿するための後付けの嘘にしか思えねえ」

仁提督「だからと言って黒潮に対する処分が軽くはならんだろうな」

提督「なぜだ」

仁提督「艦娘が、海軍の備品として扱われているからだ」

提督「……」

仁提督「俺を睨んでもその事実は変わらん。日々の任務にも、建造と解体の任務があるだろう」

提督「うちじゃやってねえよ」

仁提督「そうか。まあ、人それぞれだ、好きにするといい。だが、この任務はどこの鎮守府にもあるものだ」

仁提督「貴様の考えに賛同する者もいるだろうが、それはごくごく少数派だ。艦娘を率いる多くの者は、艦娘とは一線を引いている」

仁提督「そもそも、建造ドックから出てきて、解体すれば資材が残るような人型のなにかを、人間と呼ぶのはさすがに無理がある」

826: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:40:30.81 ID:CGh4h9Qto

提督「仁提督は……艦娘の処分は慣れたものか?」

仁提督「そう……だな。特にどうとも思わん。余計な感情もなく、日々の任務で黙々とこなすだけだ」

提督「ふん……」

仁提督「……なるほど」

提督「どうしたよ」

仁提督「本営は、我々が艦娘を躊躇なく処分できるように、そういった任務を課しているのかもしれんな」

提督「……」

仁提督「話が逸れたな。で、貴様は、雪風たちを助けた黒潮の名誉回復を考えていると」

提督「……そうだ」

仁提督「ふむ……今からでは遅いかもしれんな」ウデグミ

提督「遅い?」

仁提督「中佐が艦娘についての情報を公にした。となれば、艦娘の世間での扱いについてもある程度決まったんだろう」

仁提督「そこで艦娘が人間に危害を加えた場合の要綱も織り込まれているはずだ。ついこの前、それを考えるきっかけになった事件もあった」

提督(以中佐の話か……)

827: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:41:15.78 ID:CGh4h9Qto

仁提督「そこの提督自身にとんでもない問題があったとはいえ、艦娘たちに反抗されて鎮守府が崩壊した事件だ。聞いたことはあるか?」

提督「……まあ、知らなくはねえよ」

仁提督「不愉快そうだな。もしかして、詳しく知っているのか?」

提督「さぁな」プイ

仁提督「……ともかく、そいつのように致命的な悪事を起こしていない限りは、立場をひっくり返すのは難しいだろう」

提督「致命的な悪事ね……既に起こしてるんだがな」

仁提督「何だと?」

提督「雪風たちの司令官だった保提督は、厳秘情報扱いだった艦娘を一般人と接触させようとしたんだ」

提督「艦娘から艤装を奪い無力化させた上でな」

仁提督「……!」

提督「艤装を外して可愛い服を着せ、めかし込んだ艦娘を外に連れ出した保提督を訝しんだのが黒潮だ」

提督「艦娘を連れ外出した保提督を尾行して、入っていった建物から出てきたのは保提督一人」

提督「黒潮が保提督を問い詰めれば、保提督は知らぬ存ぜぬと言い出した」

提督「この時点で、いろんな意味で致命的だと思わねえか……?」

仁提督「……」

828: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:42:00.41 ID:CGh4h9Qto

提督「黒潮が現場に入ったとき、雪風たちは襲われる寸前だった。衣服は破かれ、手足には引っ掻き傷も受けていた」

提督「可愛い妹分がそんな目に遭っていたら、ブチ切れんのも当然だ。全員、海に投げ捨てようって考えてもしょうがねえだろ」

仁提督「だから海に連れ出したのか……しかし、保提督たちが命拾いしたのはなぜだ」

提督「途中で冷静になっちまったんだよ。こんなことをしたら余計に雪風たちに迷惑をかけちまう」

提督「だからと言ってこのまま保提督の下で働けるはずもねえ。黒潮はもう、その時点で戻る気はなかった」

提督「どう思うよ? 奴がやったことは艦娘の  交際……いや、売 の斡旋だ。売った側も買った側も、お咎めなしってのはどうかしてる」 

仁提督「……」

提督「それから、艦娘を見せろと言ってきた奴らは、保提督の悪い知り合いらしい」

仁提督「知り合いだったのか!?」

提督「いじめっこといじめられっこってやつだとよ。昔の話を持ち出して、それをネタに強請られてたらしいぜ」

提督「大人になってまで子供みたいなことをしてる奴らに提督させてんだ、任命責任という奴を問われてもいいと思うがな」

仁提督「……そんなことをさせていては限がない。海軍は慢 的に人手不足なんだ、ただでさえ提督業は人離れが多いからな」

提督「そうなのか?」

829: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:42:45.68 ID:CGh4h9Qto

仁提督「本来、戦争なんかに縁のない、縁を作ってはいけない民間人にこんな仕事をさせるほうがおかしいんだ」

仁提督「適性があっても、艦娘がぼろぼろになって帰ってくるのを見るのが苦しくてやめた奴も多い」

提督「……ふん、本当かよ」

仁提督「皆が皆、貴様のように強い人間ではない。覚悟がなければ心が折れるのも仕方ないことだ」

提督「やけに理解ある言い草だな?」

仁提督「過去のトラウマというものは、どんな人間も弱くしてしまうものだ。貴様にもないのか?」

提督「……なくはねえよ。吐き気がする程度にだがな」

提督「とにかく。本営が今回の保提督のやったことを隠そうとしてるってことはわかった」

提督「バカの父親が政府とどこまで懇ろなのかは知らねえが、都合の悪い事実を揉み消したいくらいには重要な奴なんだろうな」ハァ

仁提督「……提督准尉。この話が事実だとして、なぜ貴様は俺にこの話をした?」

提督「あんた最初に言ってたろ。俺たちが口を出しても無駄だ、みたいなことをよ」

提督「どうせ無駄なら、あんたにも俺の無力感を味わってもらおうと思ってなあ」ニヤリ

仁提督「……それこそ無駄なことを」フン

提督「そーだな。こんな話、うちの連中に愚痴るわけにもいかねえ」

830: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:43:30.64 ID:CGh4h9Qto

提督「話はこれで終わりだ。金剛の修理が終わったら、もうこの島に用はねえだろ」

提督「さて……問題は、雪風をこれからどうするかだな」

仁提督「……貴様は雪風も助けるつもりか?」

提督「おそらく、中佐や本営は雪風の処分をどうしようか考えているはずだ」

提督「連中が隠したい保提督の悪事を知る被害者だ、そのまま放ったらかしにしとくわけにはいかねえだろ」

仁提督「かもな。だが、どうやって助けるつもりだ」

提督「さあな?」

仁提督「ヘラヘラしているが、貴様に手はないだろう。ただでさえ今回の空母棲姫邀撃の話も聞いてなかったんだろう?」

仁提督「本営に頼むにしても、中佐が貴様に雪風を渡すとは思えん」

提督「……」

< テートクーーー!

提督「!」

仁提督「この声……金剛か?」

831: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:44:30.63 ID:CGh4h9Qto

金剛「失礼しマース! Tea break にしまセンカー?」シュピッ

仁提督「……貴様のところの金剛か」

提督「あんな大声出さなくてもいいぞ?」

金剛「No ! わざわざ人払いをしてこんなトコロで meeting してるんデスから、knock は必要デショー?」

仁提督「あの声がノック代わりか。気が利くな」

金剛「それからテートク? 向こうの比叡が厨房を借りたいと言ってきてるんですケド……」

仁提督「やめさせろ」クワッ

金剛「What !?」

仁提督「絶対に比叡を厨房に近づけるな。死人が出ても知らんぞ」

提督「……」

金剛「アー……わかりまシタ。使わせないようにしマス」ヒキカエシ

提督「……そんなにひでえのか」

仁提督「ああ、ひどいぞ。トラウマものだ」

提督「そういや長門も騒いでたな……化学兵器とか言ってやがったか」

832: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:45:15.51 ID:CGh4h9Qto

仁提督「比叡もそうだが、貴様のところの長門はえらく駆逐艦に好かれていたな。落ち着いてもいるし……」

提督「反面教師を見てきたんだよ。元居た鎮守府の提督が、筋金入りの変 だったからな」

仁提督「……誰も彼も、訳ありなのはみな同じか」フゥ

提督「……」

仁提督「……人払いはしてあるんだったな」

仁提督「俺の住んでいた街が深海棲艦に壊されたことはさっき言ったが……」

仁提督「正直に言えば、俺にとってそれはあまり重要じゃない」

提督「おい……!?」

仁提督「昔の話だ。俺は当時陸自だったんだが、その日は非番で、海の見える砂浜を愛犬を連れて散歩してたんだ」

仁提督「その途中……深海棲艦の駆逐艦が浅瀬で死にかけていたのを、その街に住んでいた子供らが見つけてな……」

仁提督「あろうことか、深海棲艦に石を投げてぶつけて遊んでいたんだ」

仁提督「深海棲艦がやばい存在だってことは知っていた俺は、すぐに子供を避難させ、急いで海自に連絡しようとした」

提督「……」

833: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:46:00.77 ID:CGh4h9Qto

仁提督「ところが、子供は一向に言うことをきかん。俺も苛立って、担いで連れて行こうとした矢先に、いきなり砲撃を受けた」

提督「!」

仁提督「運良く外れたが、瀕死の駆逐艦を迎えに来たのか、連中の仲間が4隻、こっちを睨んでいたんだよ」

仁提督「それを見て慌てて逃げ出した子供の一人がすっ転んだのを、俺の犬が庇って……」

提督「……」

仁提督「直撃はしなかった。ただ、爆風であいつは吹っ飛ばされて……」ウツムキ

提督「……」

仁提督「ひどいもんだった。子供の親は、子供が深海棲艦に石を投げるのを見てたらしいが、何の注意もせず……」

仁提督「愛犬を殺された俺に、子供の怪我の責任を押し付けてきやがった」

仁提督「そんなことを言ってる場合じゃない、ここから早く逃げろと言っても聞く耳も持たず」

仁提督「深海棲艦は街中へ逃げた子供を追って、市街に向けて砲撃し始めたんだ」

仁提督「……そのころからだな、子供を好きだと言えなくなったのは。駆逐艦連中も幼い容姿の奴らが多いからな……」

提督「……」

834: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:47:00.49 ID:CGh4h9Qto

仁提督「海自への要請で来たのは、伊勢型戦艦の日向を旗艦とした艦隊だった。あいつらはあっと言う間に深海棲艦を始末していった」

仁提督「痛快だったさ。軽巡や駆逐艦の砲撃とは次元の違う、破壊力のある砲弾が次々深海棲艦を沈めていったのは」

仁提督「……俺の状況説明を受けた日向は遅参したことを詫び、俺に海軍の存在を教えてくれた」

仁提督「そうして、俺は海軍に身を置くようになったんだ」

提督「なるほどな。ま、人間なんて守ろうなんて思わないほうが健康的だぞ?」

仁提督「そう一括りにするな……と、言いたいが、あの時は……失望感が半端なかったな」

仁提督「街を破壊されたことに俺がそこまでショックを受けなかったのも、違う意味でショックだった」

提督「……街を壊されたことを恨んでたんじゃないのか」

仁提督「そんなものは建前だ。愛犬の敵を取りたくて戦っているなんて、誰にも言えたもんじゃない」

仁提督「それを隠したくて、街を破壊されたことに怒りを覚えたと、自分も含めて周囲に言い聞かせてきただけだ」

提督「……」

仁提督「フッ……情けないだろう、笑いたければ笑え」

提督「あぁ? 馬鹿か? 笑える話じゃねえだろうが」

仁提督「……!?」

835: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:47:46.91 ID:CGh4h9Qto

提督「犬だろうが猫だろうが、敵を取りたいってことは、そいつが大事な存在だったんだろ」

提督「笑える要素がどこにある」

仁提督「……」

提督「……」

仁提督「ふう……」ミアゲ

提督「……」

仁提督「この話を……誰かに」フルッ

仁提督「肯定してもらえるとは……思っても、いなかった」ウツムキ

提督「……」

仁提督「あいつらには、たかが、と言われたんだ……」

仁提督「……たかが、じゃないんだ」

仁提督「俺にとっては……あいつは……」フルフル

提督「……」



836: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:48:30.65 ID:CGh4h9Qto

 * 鎮守府 埠頭 *

大淀「仁提督、お帰りになられましたね……」

提督「……だな」

大淀「これから、どうしましょう……?」

提督「……どうしようもねえな。参ったぜ」ハァ…

大淀「赤城さんとも連絡は取れませんし、中将も今は不在と、不知火さんから連絡がありました」

提督「その不知火は本営で待機しろって話だろ……動きようがねえな」

提督「そうこうしてる間に、本営は勝手に話を進めていくだろうし……」

黒潮「……司令はん」スッ

提督「……黒潮か」チラッ

黒潮「もうええよ。死人に口なしって言うやん」

黒潮「保提督に歯向かった時点で、うちは解体されるって決まっとったんやから、こうして生き永らえてるだけで儲けもんや」ニコ

提督「……」

837: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:49:16.15 ID:CGh4h9Qto

黒潮「雪風も、無事やって聞いたし。雪風を追っかけてた空母棲姫も倒せたんやろ?」

黒潮「これで雪風も安心や。ええんや。これで」

提督「……」

大淀「……黒潮さん……」

黒潮「辛気臭いでー! ほらー、解決したんやし、笑わんと!」

提督「……解決?」ジロリ

黒潮「……」

提督「お前のその面で解決か。それでいいんだな……?」

黒潮「……」ウツムキ



提督「大淀」ヒソッ

大淀「はい」

提督「黒潮が夜中に脱走しないか、誰かに見晴らせておけ」

大淀「!」

 * * *

 * *

 *

838: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:50:00.62 ID:CGh4h9Qto

 * 翌日 執務室 *

提督「……」ムスッ

潮「あ、あの……提督、顔が怖いんですけど……」ガタガタ

提督「……回り番とはいえ、こういう日に限って秘書艦が潮ってのはどうなんだ?」ハァァ…

潮「わ、私に言われても……!」

提督「まあ、そーだよな。とにかく潮に当たり散らしたりはしないから安心しろ」

潮「もしかして……黒潮ちゃんのことですか?」

提督「まあな……あいつ今どうしてるか、知ってるか?」

潮「……生気がない感じ、でしょうか……」

提督「そうか。立ち直れと言われて立ち直れる状況じゃねえし……どうしたもんかねえ」

潮「……あの」

提督「うん?」

潮「黒潮ちゃんは、遠慮……してます、よね? 提督にも、私たちにも……」

提督「あー……そうっぽいな。死人に口なしとか言ってやがったし、どうも悪い意味で諦めが入ってる気がするぜ」

提督「もしかしたら昨晩のうちに保提督の鎮守府に乗り込むんじゃねえかって、心配になるくらいだった」

839: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:50:45.87 ID:CGh4h9Qto

提督「せめて雪風たちの件が、ちゃんと落ち着く形で解決できりゃあいいんだが、こっちからは手を出せる状況にない……」

潮「みんなも気を遣いますし……元気になれるニュースがひとつでもあればいいんですけど」

 扉<コンコン

朝雲「ほーんと、そうよー? 元気になってくれなきゃ困るわ」ガチャ

提督「朝雲か。なんでお前が困るんだ?」

朝雲「私、後発にあたる陽炎型には、負けたくないって思ってるんだけど。あんなに元気がないとちょっとねー」

朝雲「それに、山雲を助けてもらったのに、本人の元気がないのも良くないと思わない?」チラッ

提督「!」

山雲「お邪魔しまぁ~す」スッ

朝雲「司令、改めて紹介するわね。朝潮型駆逐艦6番艦の山雲よ」

山雲「山雲ですぅ~、よろしくお願いしまぁ~す!」

提督「お、おう……怪我はもういいのか」

山雲「おかげ様で~、体のほうは、大丈夫ですぅ~」

840: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:51:30.76 ID:CGh4h9Qto

提督「……」

山雲「司令さ~ん? どうか、なさいましたか~?」

提督「いや。お前と話してると、俺が早口になった錯覚に陥りそうだ」

山雲「ふぅ~ん、そうかしら~?」クビカシゲ

提督「……なあ朝雲? こいつ、もとからこんな感じなのか?」

朝雲「え? ええ、そうだけど。でも、砲雷撃戦で足を引っ張ったりなんかしないから、大丈夫よ?」

提督「ならいいんだけどよ……」

山雲「山雲は~、ちゃあんと戦えますからぁ~、大丈夫ですぅ~」

提督「……」

潮(提督、微妙そうな顔してる……)

提督「まあいいや、とりあえずいつもの質問しとくか」

山雲「あ~、それなんですけれど~」

提督「うん?」

山雲「私~、そのときって~、生まれたばっかりだったと思うんですよ~」

提督「生まれた……どういうことだ?」

841: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:52:16.10 ID:CGh4h9Qto

朝雲「私もそうなんだけど、山雲は俗にいうドロップ艦なの。海で見つけて拾ってくるタイプの艦娘」

提督「雲龍みたいなもんか」

朝雲「ええ。山雲は、どうもドロップ直後に被害にあったみたいなのよ」

山雲「そうなんです~。気付いたら、頭の後ろに大きなコブも出来てて~」

朝雲「背中にも痣が出来てて、なにかに叩きつけられたような感じの怪我だったの」

提督「それを黒潮が運よく見つけたと……」

朝雲「山雲が中破で済んだのも、空母棲姫が雪風を追いかけるのに必死だったって考えれば納得できるわ」

提督「なるほど、見過ごされたってか。時系列考えても、そう考えるのが無理ねえな」

山雲「ですから~、これから頑張るぞー、って、意気込む前に、こうなっちゃったんですよ、ねー」

潮「運が良かったのか悪かったのか、わかんないですね……」

山雲「うーん、山雲は~、運が良かったと思います~」

山雲「だって今、朝雲姉と~、一緒にいられるんですから~!」ニコニコー

提督「……つうことは、聞くまでもねえってことか」

朝雲「そういうことです!」フンス

朝雲&山雲「「ねー」」カオヲミアワセー

842: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:53:00.63 ID:CGh4h9Qto

提督「……」

潮「……な、仲がいいんですね」

提督「……」

潮「て、提督?」

提督「……黒潮の一件、早めになんとかしてやらねえとな」ウーン

提督「黒潮が姉妹艦との繋がりを絶たれてああなってるんなら、朝雲たちみたいに姉妹で仲良くしてる姿を見せるのは、ちょっと酷だ」

提督「不知火も最近はこっちにいない時間が多いし、妹じゃねえからな……」ウーン

潮「……」ニコー

提督「……なんだ?」

潮「あ、いえ……やっぱり、提督は、お優しいんですね」

提督「そうかねえ……」アタマガリガリ

朝雲「ふふふ、司令ったら照れてる?」ニマー

提督「放っとけ」プイ

山雲「ふ~ん、思ったより、優しそうな人なんですねぇ~」

提督「優しくしてるつもりはねえよ。できる範囲で艦娘の希望を叶えようとしてるだけなんだがな」

843: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:53:45.62 ID:CGh4h9Qto

山雲「それじゃあ山雲も~、お願いしてもよろしいでしょうか~?」

提督「ん? なんだ?」

山雲「山雲は~、土いじりがしたいんです~」

提督「土いじり?」

朝雲「山雲は畑仕事をやりたいの。丁度人手が欲しかったんでしょ?」

提督「そういう話なら渡りに船だな。ビニールハウスも増やす予定だったし、初雪と分担して管理してもらってもいいか」

山雲「ありがとうございます~」パァ

朝雲「良かったわね、山雲!」

山雲「それからぁ~、もうひとつ、司令さんに聞きたいことがありまして~」

提督「なんだ?」

山雲「司令さんは~……」ユラッ

提督「……!」

潮「!」

山雲「胸部装甲の大きい艦娘がお好きなんですかぁ~……?」ジトォ

朝雲「や、山雲!?」ゾクッ

844: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:54:30.62 ID:CGh4h9Qto

山雲「雲龍さんも大きかったし~、今いる秘書艦さんも、ねー……?」グリッ

潮「ひっ!?」ビクッ

山雲「朝雲姉もなんだか微妙にあるみたいだし……朝雲姉に、何か、したんですかぁ~?」ハイライトオフ

朝雲「や、山雲、誤解よ! 私は司令にはなにもされてないってば!」

提督「……」

潮(て、提督があの顔になってる……まさか)ハッ

提督「潮。正直に言っていいよな?」

潮「……そ、それ、私が止めても、言いますよね?」

提督「お前がどう思うかってのもあったんだが……まあ、それもそうか。おい、山雲」

山雲「!」ギョロッ

提督「俺はお前らの胸のサイズなんぞに興味はねえぞ」

山雲「!?」

朝雲「なにそのどストレートなぶっちゃけ方!?」ガビーン

845: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:55:15.83 ID:CGh4h9Qto

提督「ぶっちゃけついでに、胸の大小なんか俺の知ったこっちゃねえし、いちいち気ぃ遣うのも面倒臭え」フン

朝雲「もうちょっとオブラートに包んだ言い方ないの!?」ガビーン

山雲「」アッケ

潮「私、知ってます……提督は、そういう人なんですよね……」ガックリ

朝雲「いくら独身宣言してるとはいえ、もうちょっとデリカシーのある言動をお願いしたいんだけど」ガックリ

提督「そういうの面倒臭えから嫌なんだ」

朝雲「そーですね、司令はそういう人でしたもんねー……」

提督「それをさておいても、そいつは俺が何かして解決するような問題じゃねえだろが」

提督「努力してどうにかなる類の悩みでもねーし、他人に当たんのも論外だし、せいぜい泣いて発散するくらいしかねえだろ」

朝雲「う、うーん……」

提督「それでも俺になにかしろってんなら、ついでに俺の身長も伸ばしてくれよ。あと3センチでいいからよ」

朝雲「そんなこと無理に決まってるじゃない……」

提督「つまりはそういう話だってことだ。嫉妬するのはしょうがねえ」

846: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:56:00.58 ID:CGh4h9Qto

提督「ただ、それを当たり散らしたって良い結果にはならねえし、それを承知で暴れる気なら、俺も容赦しねえぞって話になる」ジロリ

提督「それに、胸がありゃいいってもんでもねえぞ。潮はそれがきっかけで、前の鎮守府でひどいセクハラ受けてたからな」

潮「……」シュン

提督「山雲がその手の話題を嫌がるんなら俺はしねえよ。ただ、あんまり沸点が低すぎるのは見過ごせねえからな?」

山雲「……」

朝雲「山雲……?」

山雲「……なんていうか~」ハイライトオン

山雲「無理矢理納得させられた感じがするわね~?」ウーン

提督「泣き言言いたいんなら付き合ってやる。ただ、お前の望むリアクションは期待すんな、俺にはデリカシーがねえからな」

朝雲「それ、威張って言うことじゃないでしょ……もう」ハァ

提督「それより、さっきの山雲の様子なんだが……お前、本当に大丈夫か?」

山雲「? 山雲が~、どうかしましたかー?」クビカシゲ

提督「自覚ねえのかよ……正直に言わせてもらうぞ。お前、深海棲艦と関係あるか?」

山雲「……え……ええ~?」

潮「て、提督!?」

朝雲「ちょっと司令!? どういう意味よ!?」

847: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:56:45.72 ID:CGh4h9Qto

提督「なんとなく、なんだけどな。さっきお前の放ってた殺気が、どうもル級の雰囲気に似てた気がするんだよ」

提督「艦娘と深海棲艦が決して遠い存在じゃないことはわかるが、そこまで雰囲気が似るものなのか?」

提督「お前らも感じなかったか? 山雲の目がマジだったときの、水中みたいな息苦しさを」

潮「……」

提督「山雲が、この鎮守府にいる間に深海棲艦になっちまったら目も当てられねえ」

提督「山雲に自覚がないなら猶更危険だ。何かされた記憶はないか? 些細なことでもなんでもいいから思い出せ」

山雲「そ、そう、言われても~……」

山雲「気が付いて~、海の上に立ってたと思ったら、ガーン、って、衝撃が来て……」ウーン

山雲「そのあとは、覚えてないわ~」

潮「全然、わからないですね……」

提督「……衝撃……空母棲姫は、山雲を攻撃目標に入れていなかった」

提督「当然、爆撃された痕もない。単純に全身を打ち付けたような怪我だった……」

提督「つうことは、山雲は空母棲姫に激突されたってことだよな……!? もしかしてそれか!?」ガタッ

朝雲「し、司令!? それってどういうこと!?」

848: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:57:35.96 ID:CGh4h9Qto

 * 工廠 *

明石「まーた新しい説をねじ込んできましたねー」

提督「深海棲艦と接触した艦娘なんて、そうそういないだろ?」

明石「まあ、大体は接触というか、近づく前に砲雷撃戦で沈んでますからねえ」

明石「危ない相手ほどアウトレンジで戦いますから、激突なんて滅多におこらないですよ」

山雲「つまり~、山雲は、轢き逃げに遭ったってこと~?」

提督「ああ、そういうわけだからお前はしばらく通院だ。山雲は工廠に通って経過を診てもらえ」

明石「深海棲艦との直接的な接触が艦娘に影響するかどうか、ですね。調べてみます!」

提督「……今度ル級にも聞いてみるか。でも最近、あいつ穏やかだよな?」

朝雲「ええ、昔よりも雰囲気が柔らかいっていうか」

潮「や、やっぱり、怒ってるかどうかだと思いますよ……?」

提督「多分、そうなんだろうな……」ウーン

山雲「ねーねー朝雲姉~、ル級さん、って、誰~?」

朝雲「え? 文字通り戦艦ル級さんよ? 深海棲艦の」

山雲「えええええ……?」

提督(こいつでも驚いた顔はするんだな……)

849: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:58:15.70 ID:CGh4h9Qto

 ドドドド…

白露「明石さぁぁぁぁん!」キキーッ

提督「? 白露か?」

明石「ど、どうしたのー?」

白露「大変! 大変なの! 島風が……!!」



 * 砂浜 *

白露「こっち! こっちだよ!」

提督「……島風はなにやってんだ」

島風「」キュゥ…

白露「ごめんなさい、前方不注意で……あたしがちゃんと見ててあげなかったから!」

提督「それで、そっちは誰だ?」

850: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/10(日) 16:59:15.79 ID:CGh4h9Qto

三隈「最上さん! 最上さん、しっかりなさって!」

最上「」キュゥ…

白露「提督ごめんなさい! 島風が前を見ないで走ったせいで、この人と衝突しちゃったの!」

提督「衝突って、海でか?」

白露「うん、この島の周りをぐるっと、航行トレーニングしてたんだけど……」

三隈「お気になさらないで、最上さんも衝突事故をよく起こすんです。不用意にあちこちへ突き進むから……」シュン

提督「気にしないわけにもいかねえだろ。とりあえずどこの誰だ? ここで入渠するって連絡してやらねえとな」

三隈「あ、ありがとうございます。私、部提督鎮守府の三隈と申します。それから、ついでと言ってはなんですけれど……」

提督「なんだ?」

三隈「私たちは、××島の提督准尉という方を探しているんですけれど……もしかして、あなたでしょうか?」

提督「ああ、俺だが……」

三隈「良かった、無事に辿り着けましたのね……!」

提督「?」カオヲ

白露「?」ミアワセ

854: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:18:32.71 ID:BuX++sWso

 * 執務室 *

三隈「提督准尉、こちらをご覧ください。私たちの提督である部提督……正確には部提督代理からです」スッ

提督「代理?」ウケトリ

三隈「は、はい……部提督はある事情で、鎮守府を離れておりまして……」

提督「ふーん……」ガサガサ

三隈「その書類の内容については、三隈たちも知らされておりません」

三隈「ですが、その書類を提督准尉に届けて、必ずご覧になっていただいて、それを見届けるよう指示されました」

提督「なんだそりゃ。俺がこれを見たのをちゃんと確認しろってか」

三隈「はい」

提督「信用されてねえってか? まあ、いいけどよ……」ペラリ

三隈「……」

提督「……」ペラリ

提督「それで三隈。なんでお前がわざわざこれを届けに来た?」

提督「定期便でいいじゃねえか。お前が来て、見たかどうか確認しろとか、普通じゃねえよな?」チラッ

三隈「そ、それは……」ウツムキ

855: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:19:17.51 ID:BuX++sWso

提督「……潮」

潮「は、はい」

提督「こっちの書類を見てくれ。こいつ、なかなか愉快なことやらかしてんぞ」ニヤッ

潮「え……?」ショルイウケトリ

三隈「……!」

潮「……え、えええ!? こ、こんな……本当ですか!?」

提督「おそらく本当だ。で、こっちの書類にはこう書かれてんだよ」

提督「部提督鎮守府所属、重巡洋艦最上、並びに三隈。両名に、部提督鎮守府から××国××島鎮守府への異動を命ずる、ってな」ニヤリ

三隈「……」グッ

提督「まあ、当然っちゃあ当然だよな。手前の上司を撃つような奴が、そこに居続けられるわけがねえ」

提督「見ろよ! 余程悔しいんだか、煮るなり焼くなり好きにして構わないなんて書いてきてんぞ!」

提督「下手打った手前の自業自得じゃねえか……負け惜しみもいいとこだ! くっくっくっ……!」

潮(うわぁ……提督が悪人の笑顔になってる……)アワワ…

856: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:20:02.49 ID:BuX++sWso

三隈「……提督准尉!」キッ

潮「!」ビクッ

三隈「あなたは、最上さんを……私たちを、どうするおつもりですか!?」ジャキッ

提督「うん? どうするって……何かあんのか??」キョトン

三隈「えっ」

潮「……」アタマカカエ

提督「潮? なんで三隈はこんなに殺気立ってんだ?」クビカシゲ

潮「提督が悪い顔して笑ってるせいです!」プンスカ!

提督「……俺、そんな誤解を招かれるようなことしてたか?」

潮「してました!!」プンプンプーン!

提督「……潮にこんなに怒られたの、初めてかもしれねえ」ボソ

三隈「……」

857: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:20:47.22 ID:BuX++sWso

提督「とりあえず、三隈には一言言わせてもらうか」フー

提督「三隈、よくやった」ニヤァ

三隈「!?」

潮「……て、提督!?」

提督「何を驚いてんだよ、これは賞賛するべきじゃねえの? 潮もそう思うだろ?」

潮「それは思いますけど!」

三隈「……」アッケ

提督「セクハラなんざかます方が悪いんだよ、ざまあねえや」クックック

三隈「……あのう……」

潮「は、はいっ!?」

三隈「ここの提督は、変わってらっしゃいますのね?」

潮「……そ、そうですね……変わってるんです」ハァ

858: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:21:32.32 ID:BuX++sWso

 * 工廠 *

山雲「最上さんの検査結果~、特に問題ないそうですよ~?」

三隈「ああ、よかった……」ホッ

山城「それにしても無茶するわね、自分の提督の……アレを撃つなんて」ポ

扶桑「でも、そのおかげでその鎮守府から追放……というより、解放? されたのよね?」

三隈「ええ……私のせいで、最上さんは……」シュン

明石「気を落とすことなんかありませんよ!」

扶桑「離れられたのはいいことだと思うわ。それにこの鎮守府なら安心よ。ね? 山城?」

山城「そうですね……ここの提督、色気には興味なしですからね」

白露「ここの提督なら、三隈さんに撃たれることもないだろうねー!」

朝雲「物資が少なかったり、いろいろ不便ではあるけど、住めば都って言いますから!」

859: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:22:17.47 ID:BuX++sWso

三隈「……もしかして、みなさんも訳ありだったりするんですか?」

山城「そうね……一人残らず訳ありよ。そうなんでしょ? 提督」

提督「まーな」

扶桑「……提督? どうかなさいました?」

提督「あー……いや、正直、三隈が羨ましくてな……」

三隈「羨ましい?」

明石「あ、もしかして……言っちゃ」

提督「俺も中佐の●●●●ぶっ潰してやりてえぞ、くそが……」ハァァァ

三隈「はい!?」カァァ

山城「ちょっと!?」カァァ

明石「ダメですよ、って、遅かったか……」アタマカカエ

朝雲「もう……その辺のデリカシーはほんっとないんだから」セキメン

山雲「いけませんわー、それはセンシティブですぅ~」ポ

860: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:23:01.23 ID:BuX++sWso

提督「いいだろ別に。三隈だって実際に部提督に主砲で実行したんだからよー」

扶桑「流石に、そのように言葉に出すのは控えたほうがよろしいかと。女性ばかりの席ですし」

提督「しゃーねーな……」

明石「それにしてもですよ、最上さんと三隈さんの処分も、よく異動だけで済みましたね?」

三隈「最上さんは、とても長い間セクハラされてたんです」

三隈「目撃者もたくさんいますし、提督に問題があると何度も憲兵さんに訴えていました」

提督「その実績があったんで、解体処分まではいかなかった、ってこったろうな」

提督「だからって、三隈に直接書類持たせて直行しろとか、普通やるかよ?」ムスッ

白露「提督、不機嫌そうだね……」

提督「当然だ。黒潮や仁提督も言ってた噂を信じて、問題がある艦娘をこの島に送り付ける奴が現実に出てきてる」

朝雲「迷惑な噂が現実になりつつあるのね……!」

提督「この調子だとこの狭い島に、三隈たちみたいに次々と艦娘が送られてくるかもしんねーんだぞ。くそが」

861: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:23:46.95 ID:BuX++sWso

明石「結構な人数になりましたからねー。部屋数も増やさないといけなくないですか?」

提督「ドックだって拡張しねえとな。くそ、あんまり本営にこの手の頼み事はしたくねーんだけどな……」

大淀「提督、こちらにおられましたか」スッ

提督「!」

大淀「……あ、あの、提督?」

提督「なんかすっげー嫌な予感がすんだよな。お前の抱えてるFAXの束……」ウヘェ

大淀「……」

提督「また、艦娘が送られてくるのか?」ウンザリ

大淀「はい……」シュン

提督「……」

862: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:24:32.22 ID:BuX++sWso

白露「泣ーかした、泣ーかしたー」

提督「!?」

大淀「!?」

明石「せーんせーに言ってやろー」

提督「……頭、掴まれたいかお前ら」ワキワキワキ

白露「きゃーーー!」ダッシュ

明石「ちょっ、速っ!?」

山雲「逃げるくらいなら~、言わなきゃいいのにね~?」

提督「なにやってんだか……はぁ、しょうがねえ。大淀、そいつ、見せてくれ」

大淀「はい……」


三隈「……あのう、事情が良く飲み込めないのですが……」

朝雲「あー、それはですね……」


863: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:25:16.59 ID:BuX++sWso

 * 執務室 *

提督「到着は明日か……」フー

大淀「……」

提督「4人とも命令違反ねえ……なんでそういう連中をこっちに送り付けてくるのかね」

大淀「……」

提督「……大淀?」

大淀「は、はい!?」

提督「大丈夫か? 元気ねえっつうか……いや、まあこんなもん来たんじゃ元気も失せるか」

大淀「え……いえ、私は大丈夫です」

提督「……そうか?」

大淀「大丈夫です!」

提督「……」

大淀「……」

提督「本当にそうか?」ズイ

大淀「ふえっ!?」ビクッ

864: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:26:02.23 ID:BuX++sWso

提督「お前は気付いてるかわからねえが、今まで見たことないくらいの落ち込んでるからな……さすがに心配だぞ」

大淀「い、いえ、その……わ、私はいいです……」

提督「……本当にか?」

大淀「はい……この知らせが原因では、ありませんから……」

提督「……」

大淀「ちょっと……昔を思い出しただけですので」

提督「昔……?」

大淀「……前の鎮守府で……艦娘の解体の話題になると、よく言われてたんです。そんなつらそうな顔をするな、って」

大淀「この資料を持って行ったときに、提督が……その、前の提督と似たような、うんざりした顔をしてましたので」

大淀「つい、その時のことを、思い出してしまったんです……」

提督「……」

大淀「それだけです……私が、ふと、思い出しただけで、提督が悪いなんてことはありません」

大淀「……ですから、提督は、お気になさらないでください」

提督「ふーん……なあ、大淀?」

大淀「……はい?」

865: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:26:47.25 ID:BuX++sWso

提督「俺は、お前がいてくれて助かってるぞ」

大淀「……」

提督「お前の働きはみんなのためになってるし、俺もお前を頼りにしてる」

提督「だから、その……なんだ」

大淀「……」

提督「……他人を褒めるってのは難しいな。俺、変なこと言ってないよな?」

大淀「……い、いえ……」ウルッ

提督「お、おい」

大淀「あり……ありがとう、ございます」ポロポロ

大淀「私……前のところでは、疎まれていると、感じていたので……」

大淀「そんなふうに、お褒めの言葉を、いただけたのが……」グスッ

提督「……」アタマガリガリ

大淀「うれ……うれし……う、うえ……」ボロボロボロ

提督「大淀!? だ、大丈夫か?」セナカサスリ

大淀「だい、だいっ……ふえ、ふええええ……!」グスグス


866: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:27:32.06 ID:BuX++sWso

 * *

大淀「……」ダキツキ

提督「……落ち着いたか?」ダキツカレ

大淀「……」

提督「大淀?」

大淀「……」ギュ

提督「……まあ、たまにゃあいいか」

大淀「……」

大淀(……どうしよう)ミミマデマッカ

大淀(感極まって提督に抱き着いて泣いたのは終わったことだから仕方ないとして)

大淀(恥ずかしくて顔が見せられない……)ギュウ

提督「……俺は、大淀に頼りすぎてたか?」

大淀「えっ」ミアゲ

提督「いや、俺が休まないから、大淀も休ませられなかったのが悪かったのかと思ってな」

提督「そもそも俺がこんなんだしな。気が休まらないのは良くねえ」

大淀「え、あの」

提督「とりあえず、今日の業務はこれまでにしとくか。その顔、見られたくないだろ」

大淀「……!」カァァ

提督「どうする? 部屋まで送ってくか?」

大淀「し……しばらく、執務室に引き籠らせてください」カオマッカ

提督「お、おう」


867: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:28:31.83 ID:BuX++sWso

 * 夕方 執務室 *

 RRRR... RRRR...

提督「……」

通信『はい、中佐鎮守府です』

提督「××島鎮守府からの定時連絡だ。こちらは提督准尉……赤城はまだいないのか?」

通信『ええ。私は航空母艦、加賀です。あなたが不知火を中将のところへ着任させたひとね?』

通信『彼女に居場所と役目を与えてくれたこと、感謝しているわ』

提督「大したことはしてねえよ。俺は……」

通信『……どうしたの』

提督「いや、なんでもない」

通信『?』

提督「とりあえずだ、今日あったことの連絡を……」

通信『……中佐なら、まだ戻ってきていません。それから私も、あの男のことは良く思っていないから、警戒しないで』

提督「!」

868: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:29:17.80 ID:BuX++sWso

通信『急に口調が変わったから、私を警戒しているのだと思ったのだけれど。違ったかしら』

提督「……」

通信『あの男のせいで、赤城さんはいつも険しい顔をしているの』

通信『赤城さんは赤城さんで、私たちに厄介事が飛び火しないよう、私たちを遠ざけているし……』

提督「まあ……確かにな。ちょっと行き過ぎてるときもあるな」

通信『……あなたも、そう思うのね』

通信『それで、今日も無茶というか……ちょっとした揉め事があって』

提督「揉め事?」

通信『ええ。もし、私たち艦娘に、戦うなという人たちが現れたら、あなたはどうしますか』

提督「そりゃあれか、メディアの馬鹿どもか」

通信『……テレビ局の人たちであることは違いないわね』

通信『彼らからは、深海棲艦と話し合いができないか、女性が戦うことに異論はないのか……そういう質問が飛んできたの』

通信『その会見の席には、J少将という方が中佐と同席していたのだけれど、彼が、なぜ艦娘が戦っているのかを説明していたわ』

通信『例えば、深海棲艦には現代兵器が決定的な打撃にならず、海自や海保では太刀打ちできないこととか』

通信『自分たちの力が及ばず、艦娘に頼らないと国を守ることすら叶わないのが、悔しくて仕方がないとも語っていたわ』

提督「……」

869: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:30:01.07 ID:BuX++sWso

通信『それでも文句を言う人がいて。私たちは後ろに控えて話を聞くだけだったのだけれど、赤城さんが……』

提督「……どうしたんだ?」

通信『その文句を言う人の前まで歩いて、自分の弓を差し出して、こう言ったの』


  『私たちの存在意義は、この国の人命と財産を守ること。深海棲艦との戦争を終わらせることです』

  『私たちに戦うなというのなら、この弓を取り上げて、この場で折ってください』

  『私たちの代わりに、この国の人命と財産を、あなたがたが守ってみせてください』

  『あなたは、あの空母棲姫とも、話し合えば戦争を終わらせられるとお考えなのでしょう?』


提督「……」

通信『空母棲姫との戦闘を見た後だったからでしょうね。さすがにその人も狼狽えていたわ』

通信『そのあと、赤城さんはJ少将に下がるよう言われて、私たちも会場を後にしたのだけれど……』

通信『赤城さんは全く表情を変えなかったの。会見の最中も、その前も……その後も』

通信『もしかしたら、テレビ局の人が狼狽えていたのは、質問の内容じゃなくて、赤城さん自身だったのかも……』

870: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:30:51.62 ID:BuX++sWso

提督「お前も怖いと思ったのか?」

通信『赤城さんの覚悟は重いわ。私たちを寄せ付けないくらいに』

提督「ふん。だが、確かに艦娘たちにとっちゃあ、そいつの発言は面白くねえよな。外野の分際でうるせえって話だ」

提督「どの辺が赤城の逆鱗かは知らねえが、それに近いことを言えば、そうなってもしょうがねえ」

通信『……』

提督「てぇことはなんだ、赤城は居残りでお説教か?」

通信『いいえ、単純に秘書艦だから中佐の付き添いよ』

通信『J少将からは言い過ぎだとお叱りを受けたけれど、無知で無粋なマスコミに冷や水を浴びせたことには、溜飲が下りたとも言われたわ』

提督「……ふん、ちったあまともな奴も少しはいるもんだな。中佐とつるんでる時点で、どれほどのもんかはわからねえが」

通信『そうね……』

提督「そうすると、赤城が戻るのは夜か。明日には話ができるか?」

通信『ええ。ただ……』

提督「ただ?」

871: ◆EyREdFoqVQ 2019/11/27(水) 01:31:52.88 ID:BuX++sWso

通信『あまり赤城さんに無理難題を押し付けないでくれるかしら』

通信『これ以上、迷惑も苦労もかけたくありませんから』

提督「無理、ねぇ……そうか。それじゃ、今後は軽い雑談程度の報告にさせてもらうか」

通信『……』

提督「まだ何かあんのか?」

通信『いいえ。赤城さんとは、雑談も満足にできていないことを思い出したから』

通信『あなたが少し、妬ましく思っただけよ』

提督「……」

通信『……』

提督(どうしろっつうんだよ、面倒臭え……)

通信『悪かったわね、面倒臭い女で。自覚してるのよ、これでも』ハァ

提督「……」


875: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:44:30.97 ID:dy6IoZCVo

 * 翌日 執務室 *

吹雪「そういえば、司令官はいつお休みしてるんですか?」

提督「休み?」

吹雪「そうです。私、提督が一日お休みしてるとこ、見たことありませんよ?」

提督「つってもなあ……休んだって、別段何もすることがねえんだよな。気分転換なんて日頃からやってるようなもんだし……」

吹雪「その言い方だと、司令官が普段からさぼってるって言ってるみたいになりますよ」

提督「まあ、その通りだろ。普段から最低限のことしかしてねえし、深海棲艦を積極的に倒そうとも思ってねえし」

吹雪「でも、書類とか点検とか、司令官はきっちりしてますよね。普段から面倒臭い面倒臭いって口癖のように言ってるくせに」

提督「後から間違ってたから直せって言われるほうが面倒だ。大淀にも余計な手間かけさせるじゃねえか」

吹雪「司令官って、ほんっとーに、ああ言えばこう言いますよね……」

大淀「……ぷっ、くすくす」

吹雪「! お、大淀さん? な、なんで笑うんですか!」

大淀「いえ、いつの間にか、提督のお話になっていたものだから、つい……」

876: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:45:16.89 ID:dy6IoZCVo

提督「もともと大淀の休みをどうするかって話だったんじゃねえか。なんで俺の話に逸れるんだよ」

吹雪「そ、そんなつもりはないですよ!?」

提督「そうか? まあいいや……それで、大淀は本当に大丈夫なのか? 今の勤務体制のままで」

大淀「はい、もともとこの島の仕事量もそれほど多いわけではありませんので、自由になる時間もいただいてます」ニコ

大淀「提督の仰る通り、仮に一日丸ごとお休みをいただいても、それはそれで暇を持て余してしまいますから」

提督「……そもそも娯楽が限られてるからなあ。近くに気晴らしできる施設でもありゃあいいんだがな」

吹雪「司令官はどんな施設があったらいいって思ってるんですか?」

提督「うん? 俺は別に……って、だからなんで俺の話になってんだよ」

大淀「っく、ぷくく……」プルプル

吹雪「お、大淀さん、笑いすぎですよぉ!」

大淀「す、すみません……ふふふ……」

提督「やれやれ……で、今日の予定はどうなんだっけか? 命令違反の連中が来るのって何時ごろだ?」

吹雪「え? ええっと……マルキュウサンマルですね!」

提督「じゃあ、そのころまでに準備してお出迎えってか」

877: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:46:46.31 ID:dy6IoZCVo

大淀「はい、金剛型の皆さんに大和さんも協力して、お茶と菓子を用意すると言っていました」

提督「そうか。ちったあ暗い雰囲気をなんとかできるといいな」

吹雪「……」

提督「どうした?」

吹雪「艦娘が背きたくなるような命令を出す人が、多すぎますよね……」

大淀「吹雪さんも、捨て艦にされたと聞いていますが……」

吹雪「私を捨て艦にした前の提督は、それこそ苦渋の決断だったと記憶しています」

吹雪「重要な戦闘を前に私が大破したんですけど、危険を承知で進軍すると……私に、どうにか逃げて耐えてほしい、と」

吹雪「結局、私はその期待に応えられなくて……」

提督「一見美談に聞こえるが、力不足の艦娘を無理矢理強行させたわけだからな。そいつの肩は持ちたかねえ」

吹雪「……」シュン

提督「が、これから来る奴らに比べりゃあ、マシというか、まともな神経してると思うぜ」

大淀「……そうですね。あまりに更迭された理由が我儘すぎて……」

878: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:47:30.80 ID:dy6IoZCVo

 * 埠頭 *

 輸送船<ザァァァ…

提督「来たみてーだな」

吹雪「……あれ? あれってもしかして……」

 ザッ

吹雪改二「……初めまして、提督准尉。私は止提督鎮守府所属、吹雪です」ケイレイ

吹雪「……!」

提督「ご苦労さん、俺が提督だ。お前は吹雪の……改装艦か」

吹雪改二「はい。特型駆逐艦、吹雪の第二改装です」

吹雪「うわぁ……格好いい! 私もあんな風になれるんですね!」

提督「はしゃぐな。それより、命令違反した艦娘を連れてきたって聞いてるが」

吹雪改二「はい。今、連れてまいります」クルッ


879: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:48:15.92 ID:dy6IoZCVo

吹雪「司令官! 私も頑張って第二改装になりますね!」

提督「その話はあとでな。へらへらしていい時間じゃねえぞ」

吹雪「す、すみません!」ビシッ


吹雪改二「お待たせいたしました。こちらをお受け取りください、移籍手続きの書類と、手錠の鍵です」ジャラ

提督「……手錠ねえ」ス

「ってえな! 押すんじゃねえよ!」

吹雪「!」ビク

摩耶「こんなもんで拘束しておいて急かしやがって! 危ねえだろうがよ!」

霧島「摩耶。慎みなさい」

摩耶「ち……わかってますよ、霧島さん」

川内「うーん、すごいところに流されたねえ、私たち」キョロキョロ

若葉「……」


880: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:50:00.77 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「こちらの四名……戦艦霧島、重巡洋艦摩耶、軽巡洋艦川内、駆逐艦若葉が、貴艦隊所属になります」

提督「ふーん……」

摩耶「……ああ? 何見てんだよ、くそが!」ギロリ

提督「ああ? うっせーぞ、くそが」ジロリ

摩耶「んなっ!? て、てめえやんのか、おいっ!?」

霧島「やめなさい摩耶!」

摩耶「……っ!」

提督「……」

霧島「あなたが提督准尉ですね。ご無礼をお許しください」ペコリ

提督「気にすんな。あんな理由で連れてこられたんじゃ喧嘩も売りたくなるし、隙を窺いたくもなる」ニヤ

霧島「!?」ハッ

提督「お前の目にも、ちょっと殺気が宿ってたからな。お前も気に入らねえんだろ? いろいろとな」クックックッ

霧島「……」

881: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:51:30.89 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「……提督准尉、大丈夫なんですか?」

提督「何がだ?」

吹雪改二「この場を……この人たちを任せていいか、という意味です」

吹雪改二「そこにいる『私』では、頼りないと思いますが?」

吹雪「っ!」

提督「心配いらねえよ。うちの吹雪だって、そこまで心配になるタマじゃねえし……」チラッ

<提督ー!

提督「ほれ、応援も呼んでる」ユビサシ

龍驤「お待たせやー!」

神通「遅くなって申し訳ありません」

雲龍「待たせてしまったみたいね。ごめんなさい」

882: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:52:30.66 ID:dy6IoZCVo

三隈「……どうして私もなんでしょう……?」

陸奥「ずっと工廠に籠りっぱなしは不健康だからでしょ」

提督「龍驤、こいつ預かっといてくれ」ジャラッ

龍驤「うん? もしかして……手錠かけられてるん?」

提督「そういうこった」

龍驤「ほほーん……ま、ええわ。うちらに任しといてや!」ムネポーン

提督「ああ、頼むぜ」

陸奥「あなたたちがこの島に配属になった人たちね。案内するわ」ニコ

霧島「……はい」

摩耶「……霧島さん、このくらいの相手なら……」ヒソッ

龍驤「おお、なんか怖いこと考えてるん?」

摩耶「っ!」

雲龍「あなた、高雄型の摩耶ね。対空装備が充実してるって噂の」

龍驤「お出迎えが空母に航空巡洋艦やからなあ。一矢報いるつもりかもしれんねえ」

883: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:53:16.07 ID:dy6IoZCVo

龍驤「まあ、あんまり気張らんでええよ? うちらも似たようなもんやったからね!」ニパー

三隈「……まあ! 皆さん、そういうことですの?」

若葉「! もしや……その口振りだと、三隈さんもなのか」

陸奥「そうね……というか、やったことなら三隈が一番すごいんじゃないかしら」

霧島「え……?」

摩耶「……つまり、あたしたちと同じような連中のたまり場ってことか?」

龍驤「雲龍はちょっとちゃうけど、そんなとこやねぇ」

摩耶「……」

龍驤「そういえば神通はどんな理由やったんやっけ?」

神通「私も、厄介払いされたんです」ニコ

龍驤「なんや、訳ありそうな笑顔やなあ」

神通「ええ、正直に言えば、あまり語りたくはありませんね」フフッ

川内「……」

884: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:54:01.06 ID:dy6IoZCVo

 *

提督「サインはこれでいいんだな?」

吹雪改二「……はい。確かに」

提督「さて、俺たちも行くか。んじゃ……」

吹雪改二「提督准尉、少しお時間をいただけますか? いくつか、あなたに質問があります」

提督「ん?」

吹雪改二「……そちらの、秘書艦の吹雪にも」ジロリ

吹雪「……!」ビク

提督「おいおい、尋常じゃねえ目しやがって。何のつもりだ?」

吹雪改二「……提督准尉は」


吹雪改二「S提督を、御存知ですか」


提督「!」

吹雪「!!」

885: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:55:01.01 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「今の反応……やっぱり、そうなんですね」

吹雪「し、司令官!? S提督って……いったい何があったんですか……?」

提督「本営から回ってきた軍の新聞で見たが、S提督は退役したんだよな?」

吹雪「え……?」

提督「ったく、どうしてこう人が身構えてもいねえときに……不意を衝いてそういう話ぶっこんで来んなよな、くそが」ハァ

吹雪「あの、司令官……? S提督が退役したって……」

提督「で? その話を俺とうちの吹雪にするってことは、お前はS提督の関係者か?」

吹雪改二「……おまえの……」

吹雪「っ!」ゾク

吹雪改二「おまえのせいで、司令官は……!!」ギロッ

吹雪「わ、わたしの、せい……!?」

886: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:56:30.74 ID:dy6IoZCVo

提督「どういうことだよ。おい、説明しろ」

吹雪改二「……わかりました」ス…

吹雪改二「S提督は、お優しい方でした」

吹雪改二「そのS提督が、作戦成功のため、たった1度だけ、無理な進軍をして、沈めてしまった艦娘がいます」

提督「……吹雪のことだな?」チラッ

吹雪改二「そうです。その作戦を執って成功を収めたS提督はやがて自己嫌悪に陥り、廃人寸前にまで陥ったと聞いています」

吹雪改二「事態を重く見たそのS提督の艦娘は、何度か建造を試みて、私を建造したんです……!」

吹雪改二「私は、S提督にとても可愛がっていただきました。私も、それに応えようと、努力して艦隊の主力にまでなったんです。なのに……!!」

吹雪改二「S提督は……お辞めになったんです……! 私を……『吹雪』を沈めた罪は消えないと言って……!!」

吹雪改二「私が頑張ってる姿を見るのがつらいって! 私を見ると、沈めてしまった吹雪に申し訳が立たないって!!」

吹雪改二「司令官は……S提督は、『私』を見てなんかなかった。私の努力も、私の顔も、見てなかった……」

吹雪改二「私を通して……沈んで、過去になったはずの……お前しか見てなかったんだ……!!」ギロリ

吹雪「……っ!!」

887: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:57:30.58 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「どうして!? どうして、沈んだお前にしか、S提督は目を向けてくれなかったの!?」

吹雪改二「近くにいるのは私なのに! 私が吹雪なのに!! 頑張ったのは私なのに!」

吹雪改二「司令官を……S提督を好きなのは、この私なのに!! S提督が見ているのは、この私なのにっ!!」

吹雪改二「どうして……どうして私は、身代わりでしかないの……!?」ブワッ

吹雪「……」

提督「……」

吹雪改二「……今の司令官……止提督からは、ここは、いらない艦娘が集められる島だと聞いていました」

吹雪改二「けれど、よくよく調べてみれば、轟沈した艦娘が流れ着く島だって……」

吹雪改二「もしかしたら……S提督が沈めてしまった、『私』がいるかもしれないって……」

提督「それで、わざわざ出向いて探しに来た、ってか?」

吹雪改二「……まさか、こんなにあっさり、見つかるなんて、思っていませんでしたよ」ニヘラ

吹雪改二「それも、何も知らないで、幸せそうににこにこしてて……」プルプル

吹雪「そ、それは……」

888: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:58:16.86 ID:dy6IoZCVo

提督「知らないも何も、吹雪にはS提督のことなんざ何も知らせてねえんだ。知らなくて当然だろうが」

吹雪「司令官……!?」

吹雪改二「……許せない」ジロッ

提督「……!」

吹雪改二「S提督は、ずっと苦しんでいたのに……」

吹雪改二「S提督は、ずっとお前のことを気にしていたのに……」

吹雪改二「S提督の気も知らないで、のうのうと笑っていられる『私』がいるなんて」ジャキッ

吹雪「!」ジリッ

提督「吹雪、下がってろ」

吹雪改二「S提督を苦しめる、悪い吹雪は……ここで、消えてしまえばいいんだ……っ!!」

提督「言いたいことは言い終わったか?」ガシッ

吹雪改二「っ!? ……な、なにこの馬鹿力! は、放して……!」グイ

吹雪「司令官!? そんな風に真正面から連装砲を掴んじゃ危ないですよ!!」

889: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 17:59:15.23 ID:dy6IoZCVo

提督「ああ? 何言ってんだ、こうしねえとお前が撃たれるだろ」

吹雪改二「……い、いいから放して! そこをどいて! 私の邪魔をしないでっ!!」グイッ

提督「勝手なことばかりぴーぴー言いやがって……こっちも言いたいこと言わせてもらうぜ」メキッ

吹雪改二「!?」ビクッ

提督「S提督がうちの吹雪のことを考えてた? だから何だ! 考えてるだけでうちの吹雪が幸せになるわけねえだろうが!」

提督「お前が身代わりだ? それの何が悪い! S提督に可愛がってもらってたのは、うちの吹雪じゃなくて、間違いなくお前だろ!」

吹雪「……司令官……」

提督「お前こそうちの吹雪がどれだけ悲しんでどれだけ泣いたか!」

提督「知りもしねえのに自分のことばっかぎゃあぎゃあ喚きやがって! ああうざってぇ!!」

吹雪改二「う、うざ……っ!」

提督「捨てられたのはこっちの吹雪も同じなんだよ! それも、お前のように育ててもらうこともないうちにな!」

提督「第一、身代わりが不服なら、そう訴えろよ! お前が建造された時にも文句を言えただろうが!」

890: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:00:32.29 ID:dy6IoZCVo

提督「S提督もS提督だ! 吹雪を沈めたのも手前の決断した結果じゃねえか! 沈めるのが嫌なら撤退する決断もあっただろうがよ!」

提督「そんな女々しい奴が戦争やっていけんのか! どのみちどこかで挫折して逃げ出すのも、ある意味目に見えてたんじゃねえのかよ!」

吹雪改二「……っ!! し、司令官を悪く言うなっ!!」

提督「なんで庇うんだよ! S提督ってやつは、ここまで慕ってる艦娘を見捨てて、自分の都合で逃げ出したんじゃねえか!」

提督「沈んだ吹雪の面影を別のやつに重ねて、まともにそいつを見ようとしねえ! そのくせ成長したら見るのがつらいだ!? ふざけんな!」

提督「こっちの吹雪も! お前も! 結局はS提督の気分のいいように利用されただけじゃねえか!!」

吹雪改二「そんなことない……そんなことないっ!!」ブワッ

提督「意識していようがいまいが、結果的には同じだろうが!」

提督「一度目は、最初の吹雪を捨て艦で沈めて! 二度目はお前を見捨てて!」

提督「三度目は、お前にうちの吹雪を殺させようとした!!」

吹雪改二「そ、ん……!」

提督「S提督は、吹雪を3回も殺してるのと同じようなもんじゃねえか!」

891: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:01:15.96 ID:dy6IoZCVo

吹雪改二「そんなこと……そんなことない……!」フラ…ヘタッ

提督「お前は、そんな奴をまだ信じてんのかよ!!」

吹雪改二「S提督は……そんなことぉ……」グス…

吹雪「し、司令官、さすがに言いすぎですよぉ……」

提督「あ? お前までS提督のことを庇うのか?」

吹雪「い、いえ、そうじゃなくて、そっちの私にです……なにもこんなに泣かさなくてもいいじゃないですか」

吹雪改二「う、うううぅ……えぐ、えぐ」ボロボロ

提督「……ったく、しょうがねえな……」

吹雪「ええっと、私、ティッシュ持ってきます!」タッ

提督「……」

吹雪改二「ぐすっ、ぐすっ」

提督「……おい、お前」シャガミ

吹雪改二「……?」

892: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:02:16.35 ID:dy6IoZCVo

提督「今は止提督の下で働いてるんだったな?」

吹雪改二「……」コク

提督「やっていけてるのか?」

吹雪改二「……?」キョトン

提督「あー……あの止提督の下でこれからも働いていけるか、って訊いてんだ」

吹雪改二「……あう……」ウルッ

提督「なんだよ、いきなり気弱になるなよ……やりづれえ」

吹雪改二「……」シュン

提督「……吹雪、お前は止提督とS提督とどっちがいいんだよ」

吹雪改二「……そ、それは……」

提督「この場には俺とお前だけだからな。本音をぶちまけてみろ」

吹雪改二「わ、私は……S提督のほうが、いい、です」

提督「そのS提督には、お前の言いたいことはちゃんと言ったか?」

吹雪改二「……」フルフル

893: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:03:31.73 ID:dy6IoZCVo

提督「だったらちゃんと言ったほうがいいぞ。S提督がお前を見てないなら、ちゃんと見ろって言ってこい」

吹雪改二「で、でも……」

提督「やめたとしても関係ねえよ。お前はS提督にちゃんと向き合ったのか? 今までのお礼なり思いなり、ちゃんと伝えたか?」

吹雪改二「……」

提督「S提督に未練があるんだろう? 取り合ってもらえなかったと思ってるから、うちの吹雪に矛先を向けたんだろう?」

提督「うちの吹雪に当たることはできるのに、S提督に当たりには行けないのか?」

吹雪改二「……」ウツムキ

吹雪「あのう……知ってたら、ですけど、S提督は、今どこに行ったんでしょう?」ヒョコッ

提督「!」

吹雪改二「……」

吹雪「私は、轟沈しちゃったから、この鎮守府から離れられないけど……一言だけ、言っておきたいかな……」

提督「一言? 何だ?」

吹雪「もし伝えられるなら……私は元気だから、未練があるなら、早く忘れて欲しい、って伝えてほしいです」

提督「お前……いいのか?」

894: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:05:30.69 ID:dy6IoZCVo

吹雪「私が頑張ってるってことを認めてほしかったんだけど、それがS提督にとって嫌な思い出なら、その方がいいなって」

吹雪「それに、S提督には、こっちの吹雪がいますし!」ニコ

吹雪改二「……!」

吹雪「私より後に着任したのに、短い期間で第二改装までできたんだから、その頑張りはきっとS提督にも届いていたはずです!」

提督「なるほど……『認められた』からこその第二改装、か」

吹雪改二「……あ……う……!」ポロポロポロ

吹雪「ああ、泣かないで!」ティッシュサシダシ

提督「箱がらみ持ってきたのかよ……」

吹雪「提督が泣かせすぎるからですよ!」プンスカ!

吹雪改二「ううっ、ぐず……ぢーん!」ズビー


895: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:07:00.70 ID:dy6IoZCVo

 *

提督「少し休んでから戻っても良かったのにな。泣き腫らした顔で戻ったら向こうも驚くだろ」

吹雪「……きっと、早くS提督を探しに行きたいんですよ、あっちの吹雪ちゃんは」

提督「そうか。それにしてもまあ、こっちの吹雪も成長したもんだ、自分に殺意を向けた相手にあれだけ優しくできるとはな」

吹雪「……」

提督「どうした?」

吹雪「ごめんなさい司令官……私、そんないい子じゃありません」

提督「?」

吹雪「S提督が、私のことを忘れられなかったって聞いたとき……私、喜んじゃったんです」

吹雪「あっちの吹雪に、勝ったって……心の中で思っちゃったんです」ウルッ

吹雪「最低ですよね……私より努力した相手が、私のことを嫉妬してたことに、優越感を持ったっていうか……いい気になっちゃって」

吹雪「ひどいですよね、私……」グスン

提督「……まあ、思うくらいはいいんじゃねえか」ナデ

吹雪「……」

896: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:08:15.69 ID:dy6IoZCVo

提督「この島に着任した時だって、S提督に認めてもらうって目標作ったもんな。忘れられてなかったのを嬉しいと思うのはしょうがねえ」

提督「俺が吹雪にS提督の辞職を伝えなかったのも、それを知ったお前が自棄を起こさないか心配だったからだし……」

吹雪「司令官……!」パァ

提督「誰かに強く思われてることが嬉しいってのも、最近なんとなくわかってきた気がすんぜ……」ハァ

吹雪「! ど、どうしてそこでため息なんかつくんですか!」

提督「……深い意味はねえよ。なんか、お前とのやり取り思い出して、恥ずかしくなっただけだ」

吹雪「は、恥ずかしいって、そんなあ!」

提督「あんなお前みたいな青臭い台詞吐いて……普通なら俺が言うなってツッコミ入るよなあ」

吹雪「そんなことありません! 司令官だって苦労されてるんですから!」

提督「それに、俺はまだ最悪の事態を想定してるからな。俺がいきなり死んでも、悲しまないようにしたいんだが……」

吹雪「んなっ!? まだそんなこと言ってるんですか!!」

提督「それにしても、あれだな。吹雪は、どこの吹雪でも泣き虫だってことはわかった」

吹雪「もーおーー! 話を逸らさないでください! しれーーーかーーーん!!」プンスカ!

897: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:09:30.78 ID:dy6IoZCVo

朧「提督。まだそういうことを言ってるんですか」ジト

扶桑「まあ。人をあれだけ煽っておいて、ご自身がそうでは示しがつきませんね」フフッ

吹雪「ふえっ!?」ビクッ

提督「……お前ら、いつから話を聞いてた? 結構前から視線を感じてたんだが」

扶桑「気付いてらしたんですか」

朧「えーと、あっちの吹雪が不穏な空気を出したころからです」

吹雪「それ、ほぼ最初からじゃない!?」

朧「龍驤さんたちが新しく来た人を迎えに行くって騒いでたので」

扶桑「ちょっと野次馬根性が働いてしまいました」ニッコリ

提督「いい笑顔しやがって……」

朧「それで、あの吹雪はいったい何の用だったんですか?」

提督「あいつは、S提督の……吹雪を捨て艦にした提督のところにいたんだとよ」

朧「え!?」

898: ◆EyREdFoqVQ 2019/12/14(土) 18:10:16.22 ID:dy6IoZCVo

提督「で、吹雪に一言物申す、って感じで……まあ、その話はあとだ。あの4人は食堂に案内したんだよな?」

扶桑「ええ、そのはずです」

提督「思わぬところで時間食っちまった。俺も急いで食堂に向かうが、吹雪は大丈夫か?」

吹雪「は、はい!」

 タタタ…

朧「……扶桑さん?」

扶桑「なぁに?」

朧「さっき、吹雪が提督たちに向かって連装砲を構えたとき、全砲門……」

扶桑「……ええ、撃てる状態にしてたわ」ニコ

朧「……」ウヘァ

扶桑「大人げなかったかしら」フフッ

朧「どうなるかと思いましたよ……」ハァ

扶桑「そういうあなたも、提督があの子の連装砲を掴んだ時に、目の色を変えてたみたいだけれど」

朧「提督のああいうところ、朧は嫌いなんですけど」

扶桑「放っておけないのね?」

朧「……まあ、そうですね。お世話になってますから」

907: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:07:16.61 ID:B4/8xNuCo

 * 食堂 *

金剛「Welcome to our fleet ! キーリシマーー!!」ダキツキー

霧島「こ、金剛お姉様!?」ダキツカレー

比叡「霧島ずるい! 金剛お姉様、私にもハグプリーズです!!」バッチコイ!

榛名「比叡お姉様!?」

若葉「……随分熱烈な歓迎だな」

龍驤「金剛型は仲が良えからなあ」

那珂「川内ちゃーん!」フリフリ

川内「あぁ、那珂もいたんだ」

那珂「せっかくだから、那珂ちゃんも川内ちゃんをハグしよっか?」

川内「いいって、そういうガラじゃないし」

那珂「そーぉ?」

川内「そうそう。今回の異動の理由も誉められた話じゃないしさ」

摩耶「っつうか、異動の理由そのものも納得いかねえけどな……!」

908: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:08:01.34 ID:B4/8xNuCo

長門「その理由が4人とも命令違反と聞いていたが?」

摩耶「そっちの二人はよく知らねえけど、あたしたちはそうさ。あたしと霧島さんは、特攻しろなんて命令出されたからな」

金剛「What's !?」クワッ

比叡「はぁ!?」クワッ

榛名「どういうことですか!」クワッ

摩耶「どうって、その通りだよ。この前、空母棲姫との戦闘があったの知ってるだろ? そいつが目の敵にしてたのが、とある雪風らしくてさ」

摩耶「そいつが沈められると空母棲姫が逃げるかもしれないから、絶対に雪風を守れって指示があったんだよ」

摩耶「そのせいで……雪風を編成に入れてた艦隊は、雪風以外全員沈んじまったんだ……!」

由良「……」

摩耶「雪風が一人取り残されて、今度はあたしたちに雪風の盾になれって指示が飛んできて……」

摩耶「あたしたちは死んでもいいから、雪風だけは守れってさ。ふざけんなって話だよ」

榛名「それ……本当なの!?」

霧島「ええ、本当です。榛名お姉様」

榛名「……」

909: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:08:46.36 ID:B4/8xNuCo

霧島「私たちが所属していたC提督の艦隊は、私と摩耶、それから駆逐艦たちの4人で作戦に参加していました」

霧島「当初、私たちは敵空母艦隊の艦載機から護衛対象……雪風を守ることを作戦目標としていたんです」

霧島「しかし、相手が空母棲姫だとは誰も知らされておらず、私も、情けないことに冷静な対応ができず……!」

摩耶「それでも最初は良かったんだ。ひたすら艦載機を墜として、敵戦力を削っていくしか、あたしたちにはできなかったけどさ」

霧島「駆逐艦の子たちの練度が低かったから大変だったけど、そんな中でも、摩耶は対空砲火のレクチャーをしてくれました」

霧島「慣れない戦い方でありながら、誰も沈まず私たちが最後まで戦い抜けたのは、摩耶のおかげです」

摩耶「何言ってんだよ、霧島さんの一撃がなきゃ、あたしたちは今頃沈んでたんだぜ!?」

霧島「でも、そのせいでみんな散り散りに……」

長門「? そのせい、というのはどういう意味だ」

摩耶「命令はもう一つあって、あたしたちには空母棲姫に直接攻撃するなって指示が出てたんだよ」

長門「それは、空母棲姫に気付かれるな、という意味か?」

摩耶「最初はあたしたちもそう思ったんだけどよ……多分、うちのC提督は、中佐の艦隊に手柄を取らせようとしたんだと思う」

神通「!」

910: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:09:30.98 ID:B4/8xNuCo

長門「そのために、自分の艦隊を危険にさらしたというのか……!?」

摩耶「雪風が取り残されて、今度はあたしたちが雪風を守るってときに、あいつは空母棲姫に反撃するなって言ったんだ……!」

摩耶「確かに、あたしたちは艦載機を相手するのに手一杯だった。けど、対空装備を持たない霧島さんは別だろ?」

霧島「……摩耶は、ここは私たちに任せろ、と言ってくれたんです。空母棲姫に、一撃入れてくれ、と……」

霧島「でも、私には、わからなかった……司令が一体何を考えているのか、理解できなくて……」

霧島「駆逐艦の子の悲鳴が聞こえるまで、私は、迷ってしまっていたんです……!」

金剛「霧島……」ギュ ナデナデ

霧島「……」グス

龍驤「ちゅうことは、霧島が空母棲姫に反撃したのが命令違反、ってことになるん?」

雲龍「おかしいわ。そんな命令、そのものが間違ってる」

摩耶「そう思うよな!?」

雲龍「ええ。どうかしてるわ」

陸奥(同意はするけど、言い方に遠慮がないわね、この子)タラリ

911: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:10:19.05 ID:B4/8xNuCo

摩耶「聞いたか霧島さん! やっぱりあの命令がおかしかったんだ! 霧島さんは間違ってねえ!」

霧島「……いいえ、私の判断は間違っていたわ」

霧島「私の判断がもっと早かったなら、摩耶たちに大怪我を負わせることもなかった……」

霧島「もっと早く判断していれば、B提督の艦隊の子たちを助けることができたはず……それを、私は……私は……!」

摩耶「そんなことないって! 霧島さんは……」

 ガタン! (由良が俯いたまま勢い良く立ち上がる)

由良「……」

長門「……由良?」

由良「ここにいる人は、誰も悪くないわ」

由良「悪いのは……B提督よ」

長門「!」

由良「あの人が……あいつが、全部……!!」ギリッ

那珂「由良ちゃん……?」

912: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:11:00.82 ID:B4/8xNuCo

由良「……この場に、電ちゃんたちがいなくて良かったわ」スッ

龍驤「由良? どこ行くん!?」

由良「……」チラッ

霧島「……?」

由良「ごめんなさい」スッ

摩耶「!」

 スタスタ…

「「……」」

摩耶「なあ、なんであいつ、霧島さんに謝っていったんだ?」

霧島「さ、さあ……」

長門「それはおそらく、由良が以前、B提督の鎮守府にいたからだろう」

摩耶「なっ!? それじゃ、あいつ……!」

神通「由良さんは、大破進軍による轟沈ののち、この島の砂浜に流れ着きました」

川内「……え?」

若葉「轟沈経験艦だと言うのか?」

913: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:11:46.21 ID:B4/8xNuCo

長門「由良は着任してどのくらいになる?」

神通「私より数日早い程度ですから……半年ほどになりますね」

摩耶「じゃ、じゃあ今回の戦闘とは関わりようがねえじゃねえか!? どうしてあいつが謝るんだよ!」

雲龍「そうね。彼女は悪くないわ」

若葉「疎ましかろうとかつての身内……直接の関係はなくとも恥じ入る気持ちは、若葉もわからなくはない」

龍驤「……さよか」

 ゾロゾロ

朝潮「失礼いたします! ただいま遠征から戻ってきました!」ビシッ

如月「……あら? 司令官はいないの?」

龍驤「うん、異動の手続きする言うてたけど……ちょっち遅いなあ?」

霞「ったく、どこで油を売ってんのよ、あいつは」

五月雨「あ、あの、さっき由良さんが怖い顔をして外に行ったみたいなんですけど……!」

敷波「……なにかあったの?」

長門「ああ、ちょっとな……」

敷波「……あたし、ちょっと由良さんのところに行ってくる」クル

914: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:13:02.48 ID:B4/8xNuCo

初春「ふぅむ。やはり事情が事情だけに、簡単に和気藹々とはいかぬか」

那珂「そうしたくはなかったんだけどねー」

霞「そんなの予想できてたじゃない。そうならないよう、あいつがここにいなきゃいけないってのに、本っ当、どこにいるんだか」

山城「まさか、扶桑お姉様と二人きりで何かしてたりしてないでしょうね!?」ヌッ

比叡「うわ、びっくりした!?」ビクッ

龍驤「ちゅうか、山城はなんでそんな発想になるんよ?」

山城「この鎮守府に来てからというもの、扶桑お姉様はよく笑うようになったわ……もう、笑顔が眩しくて眩しくて直視できないくらい」

龍驤「そらええことやんか」

山城「でも、その笑顔で語る話題が提督のことばかりなのよ……!? ことあるごとに『提督に感謝しないと』なんて言ってくるのよ!?」

陸奥「ああ……」

山城「このままだと扶桑お姉様は提督の毒牙にかかって……ああああ不幸だわぁぁ!!」

龍驤「……毒はあっても牙はあるかな?」

雲龍「あっても見かけ倒しだと思うわ」

龍驤「なんでや?」

雲龍「なんとなくだけど」

龍驤「……」

915: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:14:01.21 ID:B4/8xNuCo

長門「まあ、遠からずか。あの男、困ったことに嫌われたがりだからな……自ら火炙りにされたがっていると言うか」

霞「あー……」

初春「確かに、そういうきらいはあるのう……」

山城「とにかくそんなことはどうでもよくて! 扶桑お姉様はどこへ行ったんですか!?」

那珂「扶桑さん、食堂には来てないよ?」

陸奥「山城こそさっきまでどこにいたの?」

山城「工廠よ。最上と島風が目を覚まして、明石に怪我の具合を診てもらってるんだけど、そのときに扶桑お姉様がいないことに気付いて……」

三隈「最上さんが目を覚ましたんですか!?」ガタッ!

山城「ええ、ちゃんと話もできてるし、大事ないみたいよ。朝雲と山雲とも話をしてたし」

三隈「私、工廠に行ってきます!」タッ

山城「私も扶桑お姉様を探してくるわ……!」タッ

金剛「早く戻ってきてくださいネー!」

榛名「せっかくのお茶会なのに、みんなで集まれないのは残念ですね……」シュン

若葉「……ここの山城さんは随分心配性だな」

五月雨「それは……仕方ないと思います。この島に来た直後の扶桑さんは、それこそ……」ウツムキ

若葉「……」

916: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:14:46.41 ID:B4/8xNuCo

那珂「もー、だんだん雰囲気が暗くなっちゃってるよー!? 折角の歓迎会なんだから、もっと明るくいこーよー!」

神通「……」ピク

川内「!」ピク

若葉「む……!」

朝潮「厨房から甘い匂いが……!」

金剛「比叡!」

比叡「はい! 焼きあがったみたいです! 仕上げに行ってきます!」ダッ

霧島「えっ、どうして比叡お姉様が厨房へ向かうんですか!? 早く止めないと……!」

長門「心配しなくてもいい。私も驚いたが、ここの比叡は料理上手なんだ」

霧島「そ、そうなんですか……!?」タラリ

如月「とにかく、みんなを呼んできましょ? 司令官ったら、どこにいるのかしら」タタッ

陸奥「私も工廠に行ってくるわ。三隈や山城がちゃんとみんなを呼んでくるか怪しいし」スッ

917: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:15:21.22 ID:B4/8xNuCo

龍驤「せやなあ……あとのみんなはどこにおるん?」

雲龍「はっちゃんが漁に出てるのと、畑に初雪がいるはずよ。大淀が声をかけに行くって言ってたわ」

龍驤「あー……畑なあ」

摩耶(初雪が畑……?)クビカシゲ

川内(罰ゲームかな?)クビカシゲ

金剛「それでは皆さんが戻ってくるまで、お話しまショウ!」

摩耶「はぁ……歓迎してもらうのはありがたいけどさ、いいのかよ?」

長門「いいのか、というのは、どういう意味だ?」

摩耶「あたしたちは命令違反を犯して、おまけにC提督をぶん殴ってきたんだぜ? どういう立場の艦娘か、わかってんだよな?」

摩耶「だってのに、来て早々手錠も外してもらって、こんな扱いされていいのか、ってんだよ」

大和「大丈夫だと思いますよ?」スッ

霧島「!?」

川内「大和……さん!?」

若葉「……これは驚いた」

918: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:16:16.45 ID:B4/8xNuCo

摩耶「その……大丈夫だって根拠は?」

大和「提督が問題ないと仰っていましたから!」ニコ

摩耶「……」

長門「すまんな、この大和は提督を盲信していてな……」

川内「そうなんだ……」

若葉「それはともかく、どうしてその大和さんが厨房から出てくるんだ?」

大和「それは勿論、お料理していたからですよ? 比叡さんが来ましたから、交代してきたんです」

長門「この鎮守府には間宮と伊良湖がいないんだ。だから、厨房は回り番で担当している」

霧島「……」

霞「比叡さんが来るまではみんな自分でご飯作ってたわよね」

朝潮「司令官に作っていただいたこともありました!」

五月雨「そ、それ、本当ですか!?」

919: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:17:01.37 ID:B4/8xNuCo

雲龍「この前はそばやうどんを茹でてたみたいだけど?」

長門「今は自分用に早めの朝餉を取るときくらいしか、厨房に入らないんじゃないか?」

霞「あいつが厨房の様子を見に来て、ぶつくさ言いながら手伝ってたこともあったわよ。それでも結構昔だけど」

大和「今は厨房の人数も十分ですし、安心して私たちに任せているんだと思います」

若葉「……ということは、若葉たちも厨房の手伝いをする必要があるということだな?」

長門「いや、不得手だということなら無理に手伝いはお願いしないぞ。代わりの仕事もあるしな」

龍驤「せやなあ。畑仕事は初雪がやっとるし……」

摩耶「初雪が!?」

川内「罰ゲームじゃなかったの!?」

龍驤「……なんか、利根の気持ちがわかった気がするで」

920: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:17:46.43 ID:B4/8xNuCo

 * 工廠 *

利根「ふえっきし! むう、誰ぞ吾輩の噂をしておるのか?」

朝雲「今頃食堂で、みんな来ないねって話をしてると思いますよー?」

最上「? なにかあったの?」

山雲「今日は~、新しい人が入ってくる日なんだそうです~」

白露「最上さんも入ったばかりでしょ? 目を覚ましたんなら、一緒に参加してもらって、歓迎されなくちゃ駄目じゃないの?」

利根「うむ、その通りじゃ。なにより三隈も心配しておろう、早く顔を出しに行くが良かろう」

島風「検査終わったよー! 早く食堂に行こう!」トテテッ

朝雲「ちょっと待ちなさいよ、明石さんは?」

明石「私は後片付けをしてから行くから、先に行っててもかまいませんよ!」

島風「だって! 御馳走を用意してるっていうし、早く行こうよー!」

白露「じゃあ、最上さんも一緒に行こっか!」

最上「う、うん」

島風「うん! それじゃ、食堂まで競争だよ!」

最上「えっ」

921: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:18:31.04 ID:B4/8xNuCo

白露「位置についてー! よぉ~い!」

白露&島風「「どん!」」

 ドドドドドド…

最上「えっ!? ちょっと、待ってよぉー!」タタタッ

朝雲「……あの二人、最上さんが病み上がりだってわかってないわよね……」アタマカカエ

利根「島風があの元気じゃからなあ……」

明石「というかあの二人、最上さんそっちのけで競争おっ始めてない?」

全員「「……」」

山雲「そうね~、あの二人なら、ありえるわ~」

 コンコン

三隈「失礼します、最上さんが目を覚ましたと聞いてきたんですけれど!」チャッ

朝雲「えっ? たった今部屋を出たんだけど、すれ違わなかったんですか!?」

三隈「え、ええ……?」

山雲「それじゃ、島風ちゃんたちはどこへ行ったの~……?」

山城「扶桑お姉様!! 扶桑お姉様はどこにいるの!?」バーン!

利根「揃いも揃って何をやっとるんじゃ……」アタマカカエ

明石「仕方ない、探しに行きますか……」ハァ

922: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:19:16.42 ID:B4/8xNuCo

 * 砂浜 *

黒潮「……」トボトボ

 ザザーン

黒潮(……うち、なにしとんのやろなぁ……)ハァ

黒潮「……?」

海を見てたそがれている電「……」

黒潮「……」

電「……」チラ

電「……」ペコリ

 (電が黒潮に軽く会釈をして、また海に向き直る)

黒潮「……」

電「……」

黒潮「……」

電「……黒潮ちゃんは、雪風ちゃんのこと、聞きましたか……?」

黒潮「!」

923: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:20:01.27 ID:B4/8xNuCo

電「……」

黒潮「……うん、まあ、一応、な。助かったっては聞いてる」

黒潮「けど、雪風を庇って沈んだ子がたくさんいる、とも聞いてる。うちのせいで……」

電「……電のせいなのです」

黒潮「!?」

電「雪風ちゃんは、B提督の艦隊に編入されました」

電「そのB提督の初期艦は、わたしなのです」

黒潮「……!!」

電「B提督に、こんなことをしちゃいけないって……説得できなかった電が悪いのです」

電「電が、説得できなかったから……ほかのみんなが、沈んでしまったのです……!」グスッ

黒潮「いや、そんなん電の責任とちゃうやろ……うちがここに来る前から、電はここにおったんちゃうん?」

黒潮「そしたら、電は関係ないやんか」

電「そんなことは……」

924: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:20:46.27 ID:B4/8xNuCo

黒潮「うちこそ、雪風を助けるつもりだったのに、逆に危険な目に遭わせてもうたん……」

黒潮「雪風が空母棲姫に狙われたのも、うちが一人で海に出たせいなんや……!」

電「でも、黒潮ちゃんがいなかったら、雪風ちゃんはもっと酷い目に遭っていたのです」

電「黒潮ちゃんの怒りは当然だと思うのです」

黒潮「そこまではそうかもしれんけど、その後のうちの身の振り方が問題やったんや」

黒潮「雪風が空母棲姫に狙われへんかったら、沈んだ子たちも沈むことがなかったんちゃうんか、て」

電「……そうかもしれません」

電「でも、B提督が変わってくれない限り、違うところで、同じことをしないとは限らないのです」

黒潮「……」

電「……」

黒潮「……」

925: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:22:00.37 ID:B4/8xNuCo

電「黒潮ちゃんは、歓迎会には行かないのですか?」

黒潮「……気分やないよ。電は?」

電「電は、ここでみんなをお迎えするのです」

黒潮「? ここに、新しい艦娘が来るん?」

電「そうじゃないのです。この浜には、轟沈した艦娘が流れ着いてくるのです」

黒潮「え……?」

電「電も大破して航行不能になって、運よくこの島に流れ着いたところを司令官さんたちに助けてもらいました」

電「空母棲姫に沈められた艦娘が流されてくるとしたら、きっとここに流されて来ると思うのです」

黒潮「沈んだ子たちを、助けられるってことなん……?」

電「司令官さんは、生きていれば奇跡だって言っていました。遺言が聞ければ良いほうだとも……」

黒潮「……」

電「だから、電はここにいて、流れ着いてきた子たちを労いたいのです」

電「流れ着いてきた子たちに、声をかけてあげて……弔ってあげるのです」

黒潮「……さよか。すごいなあ、電は。立派や」

電「そんなこと、ないのです……」

黒潮「良かったら、うちにも手伝わせてもらえへんかな……!」

電「! ……わかったのです。手伝ってもらえますか?」ニコ

926: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:22:46.65 ID:B4/8xNuCo

 * 鎮守府内 廊下 *

吹雪「急いでください、司令官!」

提督「ああ……ん? ちょっと待て」

吹雪「! 由良さん……敷波ちゃんも!」

由良「……提督さん」

敷波「司令官……!」

提督「何かあったのか」

由良「どうして……どうしてB提督には、何も罰がないんですか!」

提督「……」

由良「あんな、無茶な艦隊運営をして! どうして……!」

提督「あいつは、部下を失った可哀想な提督……って評価をして貰ってんだろうな」

由良「そんなの……!!」

提督「俺だって納得できねえよ。だが、作戦の指揮を執って成功に導いた中佐が、慈悲深いところを見せた、って言われてるらしいぜ」

由良「……!」

927: ◆EyREdFoqVQ 2020/01/20(月) 00:23:46.65 ID:B4/8xNuCo

吹雪「そ、それじゃ、B提督は……!」

提督「一応、完全にお咎めなしって訳じゃねえが、結局は中佐の配下に加わるって予定調和が待ってるだけさ」

由良「……なんてこと……!」

提督「ついでに言うとな、B提督だけじゃなく、C提督とか言う奴も、中佐と繋がりを持ちたがってるみたいでな」

提督「作戦がうまくいったら、これからも協力させて欲しいとか言ってきたんだと」

吹雪「そ、それって本当ですか!?」

提督「本営にいる間、不知火が聞いたんだとよ。中佐が優秀な人材を集めてるらしくて、本営のお偉方に頭を下げに来たんだと」

提督「その噂のおかげで、C提督みたいな困った連中が、中佐にアピールしたがってるみたいなんだ」

敷波「そんなにしてまで、中佐に取り入られたい人がいるの……!?」

由良「……」ギリッ

 「おい……」

提督「!」

摩耶「今、C提督って言ってたな……その話、本当か?」スッ

提督「……」

931: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:33:02.53 ID:XeT7i2ZBo

 * 鎮守府内 別の廊下 *

白露「いっちばーん!」ドドドド

島風「はっやーい!」ドドドド

最上「ひぃ、へぇ……ま、待ってよ~!」

最上「あの二人おかしいよ……めちゃくちゃ速いし、息も切らせてないし……!」

最上「やばっ、あの角で見失いそう! 急がないと!」ダッ

伊8「……ん?」スッ

最上「!? きゅ、急に出てこないで! うわあああ!」

 ゴロゴロゴロズデーン

最上「あ、あたたた……」

ル級「勝手ニ走ッテキテ、勝手ニ転ンダワネ」

伊8「大丈夫?」

最上「う、うん。とにかく、衝突しなくて良かったよ」

伊8「オウ。はっちゃんを避けて転んだんですか」

最上「あはは……知らない場所を走ったら危ないよね。ごめんごめん」

932: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:33:47.84 ID:XeT7i2ZBo

ル級「アノ二人ヲ追イカケテタノ?」

最上「うん、食堂に案内してもらうはずだったんだけど……」

伊8「あの二人を走らせたら誰も追いつけませんよ?」

ル級「案内役ニハ、ナラナイワネ」

伊8「はっちゃんたちも食堂へ行くので、一緒に行きましょう?」

最上「あ、ありがとう、助かるよ! 僕は最上! よろしくね!」

伊8「伊号潜水艦、8です」

ル級「……」

伊8「どうしたの?」

ル級「ソウイエバ、私ノ名前ッテ、ナイワネ……」クビカシゲ

伊8「あー……ル級っていうのも、私たちがつけた識別のための名称だし……」

ル級「マア、ル級デモ構ワナイワ。ソノウチ良イ名前デモ考エテミヨウカシラ」

最上「……」

ル級「? 最上? ドウカシタノ?」

最上「し、し、深海棲艦ーー!?」ヒョエーー

伊8「驚くの遅すぎない?」

ル級「コノ反応ノ遅サハ衝突ヲ招クワネ」


933: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:34:32.61 ID:XeT7i2ZBo

 * 砂浜 *

由良「……ってことがあって」

提督「そういうことかよ……ほんっとに面倒臭えな」

如月「司令官、ここにいたのね……って、どうしたの?」

提督「ん? ああ……あれだ、あれ」ユビサシ


黒潮「だから、さっきからうちのせい言うとるやんか!」

摩耶「あたしのせいだって言ってんだろ!」

電「電のせいなのです!」


如月「……あれ、なにしてるの?」

敷波「みんな、B提督の艦娘が轟沈したのは自分のせいだって言い張ってるんだよね」

由良「そんなの、誰も悪いわけないじゃない……!」

提督「まったくだ。なんでこう、どいつもこいつも背負い込みたがるのかねえ」ハァ

如月「あらぁ? 司令官がそれを言います?」ニコー

由良「電ちゃんのああいう姿勢は、提督さんの影響じゃないんですか?」ジト

敷波(まあ、電は前から結構頑固な性格だって、あたしは知ってたけど)

934: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:35:18.07 ID:XeT7i2ZBo

提督「俺のことはほっとけ。それよか、あいつらなんとかなんねーのか」

敷波「えー? それこそ司令官がなんとかする話なんじゃないの?」

提督「俺に一日に何人説得させる気だよ、面倒臭え」

敷波「でもさ、あたしたちが何か言って納得してくれると思う?」

提督「……」

敷波「みんな原因がそれぞれの提督たちなんだしさ。同じ立場の司令官が言いくるめてあげないと、ずっとあの調子だと思うよ?」

由良(言いくるめる、って言い方……)タラリ

提督「……そーなんのかねえ、やっぱり」ハァ

敷波「まー、司令官の言い草もわかるんだよね」

敷波「由良さんも言ってる通り、悪いのはB提督たちなのに、電は自分のせいにしちゃってさ、何やってんだろって」

敷波「でも電もさ、初期艦としてB提督を導くつもりで必死になってたんだし……」

敷波「必死だったからこそ、自分がやってたことに責任を感じすぎてるんじゃないかなー、きっと」

提督「……」

由良「そうね……作戦がうまくいかなかったとき、電ちゃんは一生懸命ほかの方法を考えてくれてたのよね」

由良「聞き入れてもらえたことは殆どなかったけれど……!」

935: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:36:03.02 ID:XeT7i2ZBo

敷波「無駄にプライドが高いんだもん。司令官みたいに話を聞いてくれたりしないしさ!」

敷波「なんか思い出したらむかむかしてきちゃった」ムー

如月「うーん……ちょっと、食堂で待ってるみんなに遅くなりそうって伝えてくるわね」クル

由良「ええ、お願い」

提督「……」


摩耶「お前らが責任感じることはねえんだよ!」

黒潮「きっかけはうちが作ったんやんか!」

電「みんな関係ないのです! 電の力不足だったのです……!」


提督「しゃあねえな……」スタスタ

由良「提督さん?」

敷波(説得してくれるのかな……それとも……)

提督「……おい、お前ら」

電「!」

936: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:36:48.95 ID:XeT7i2ZBo

提督「阿呆臭えからもうやめろ」

電「!?」ギョッ

摩耶「はぁ!?」ギロッ

黒潮「なんやて!?」グリッ

提督「ああ? 聞こえなかったんならもう一回言ってやる、俺は阿呆臭えって言ってやったんだよ」

由良「」マガオ

敷波「ああ……やっぱり……」ウヘェ

電「し、司令官さん!?」

提督「お前らが責任感じるのは勝手だ、好きに懺悔してろ。だがな、そんなことに大した意味はねえ」

提督「まず電。お前、この島に来て半年以上経ってるよな。その間、B提督になにか助言なり連絡なりしたのか?」

電「それはしてないのです……でも」

提督「でも、なんだ? 初期艦だろうが何だろうが、半年も話す機会がねえならお前はこの件に関係しようがねえ」

提督「お前が本営に行って首を突っ込んだって、門前払いされて終わりだろ。何もできねえよ」

提督「次、黒潮。雪風が空母棲姫に目をつけられたのは、お前が行方をくらませたのが原因っちゃあ原因だが……」

提督「それ以前に、保提督が雪風たちをクズどもに差し出したのが、ことの発端じゃねえか」

黒潮「う……」

937: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:37:36.44 ID:XeT7i2ZBo

提督「手前の部下を、保身のために生贄に出して、黒潮の怒りを買った保提督が悪い。以上」

提督「最後に摩耶。B提督の艦隊に接触したのはいつだ? 事前に話はできたのか」

摩耶「へっ? ば、馬鹿言うなよ、事前ミーティングなんかできるかよ。海上での合流だったし、どんなメンバーかすら知らなかったんだぜ?」

提督「だったら、そんなんでB提督の艦隊まで守れるとかほざくな、非現実的だ」

摩耶「ぐ……!」

提督「ただでさえ得体のしれない敵を相手に、出会ったばかりの味方と連携なんて無理に決まってんだろ」

提督「第一、お前は自分の仲間をほったらかしていい状態だったか?」

提督「対空防御の術を知らねえ霧島に任せてたら、霧島含めてお前の仲間が沈んでたんじゃねえのか」

摩耶「……」

提督「対策でも何でも、そんなもんC提督とやらがやらなきゃ話になんねえよ。やってなかったC提督の落ち度じゃねーか」

提督「どいつもこいつも、自分にできること以上のことを自分に求めすぎだ。この業突く張りどもめ」

電「し、司令官さんも人のことは言えないのです!」

提督「ああ? 俺だって無理なもんは無理だってお手挙げしてるだろ。手が届く範囲ならその限りじゃねえってだけで」

黒潮「う、うちが無関係っちゅうことにはならんやろ……」

提督「確かに無関係じゃねえなあ。が、今更お前がしゃしゃり出たところで、事態は何か好転するか?」

938: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:38:18.09 ID:XeT7i2ZBo

提督「保提督の不祥事も、今回の空母棲姫騒ぎで有耶無耶にされようとしてる。世間に対する艦娘のプレゼンもひと段落」

提督「そこへスキャンダルの種になりそうなお前が現れたら、この騒ぎを収束させたい奴らは全力でお前を捕まえに行くはずだ」

提督「そうなりゃあ、お前、文字通り消されるぞ」

黒潮「……っ」

提督「とにかくだ、これからどうなるかわからねえにしろ、まだ雪風は生きてんだ」

提督「雪風にこれからも生きてて欲しい、なんとか幸せになって欲しいって考えてるなら……」

提督「黒潮が生きてるっていう雪風へのグッドニュースは、用意しておきたいと思わねえか?」

摩耶「……確かに、そりゃあ……!」

電「そうなのです……!」

黒潮「……」

提督「艦娘の情報も一般人に知れ渡っちまった今なら、同情を買われて戻れる可能性もあると思いてえな……」

摩耶「だったらあたしが雪風を保護しに行って……」

提督「だからそういう勝手な真似してんじゃねえよ。たかが一兵卒がそこまで出しゃばっていいと思ってんのか。生意気だ、くそが」

摩耶「あぁ!? ふざっけんなよ、くそが! お前こそあたしを誰だと思ってんだ!」

939: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:39:02.83 ID:XeT7i2ZBo

提督「そんなん知るか。命令違反で島流し食らったバカが偉そうな口きいてんじゃねえぞ、くそが!」

摩耶「あぁあ!? お前こそこんな辺鄙な島で干されてんじゃねーか、下っ端のくせに偉そうにすんなよな! くそが!」

提督「くそが……って、真似してんじゃねーよ! オウムかてめーは!」

摩耶「真似てんのはお前だろ! くそ野郎が!」

敷波「……あのさあ、唐突にイチャつくのやめてくんないかな」

提督&摩耶「「イチャついてねーよ!」」

由良「息ぴったりじゃない」ジトメ

提督「ったく……まあいい、とにかくこんなくっだらねえ言い争いする気はなかったんだ」

提督「お前らも少し頭を冷やせ。自分のせいだって責めてるようだが、俺にしてみりゃお前らは被害者だ」

摩耶「……あたしもそうだってのか」

提督「俺にはそうとしか思えねえな。摩耶、お前の僚艦に三日月っていたろ」

摩耶「!」

提督「本営にいた不知火にな、お前が引き連れてた駆逐艦たちと話す機会を作ってもらったんだ」

提督「その時にいろいろ聞いてもらった。今回のことの顛末、お前と霧島の様子、雪風のこと……」

提督「それから、お前が激昂してC提督の鼻っ柱を殴ったことも、な」

摩耶「っ……わ、悪いかよ!」

940: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:39:47.85 ID:XeT7i2ZBo

提督「悪かねえよ。むしろC提督なんかぶっ殺せりゃ最高だったんだがなあ……なんで拳骨一発で済ますんだよ」

摩耶「はあ!?」

提督「黒潮の件も今更だけど、保提督もクズどももまとめて海の藻屑で良かったんじゃねえかなあ」

黒潮「ちょっ……そこまでやるん!?」

提督「やれとは言ってねーよ。こうだったら良かったなーってのを素直に口にしただけだ」ケッ

由良「そういうのは素直とは言わないと思うんだけど」

電「この手の発言にはオブラートを包む気がないのが、司令官さんのどうしようもないところなのです……」

敷波「まあ、言い方はアレだけどさ。黒潮や摩耶さんのやったこと、司令官は駄目じゃないって言ってるわけでしょ?」

提督「おうよ」

摩耶「……じゃあ、あたしたちはどうしたらいいんだよ」

提督「とりあえずだ、今は食堂に戻らねえか? せっかくうちの連中がお茶を用意して待ってんだからよ」

摩耶「それでいいのかよ……」

提督「罪の意識で自分をいじめ過ぎなんだよ、お前らは。叩いてもらうっつーか、罰をもらって気を楽にしたいんだろ」

提督「悪くもねえのにそんなことしたって意味ねえんだ。つまんねー意地の張り合いしてねえで、頭空っぽにして休め」

摩耶「……」

941: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:40:33.19 ID:XeT7i2ZBo

敷波「だいたいさぁ。みんな、自分が悪いって言ってるけど、お前が悪いー、って話は誰もしてないよね」

敷波「お互いに、やったことを仕方ないって思ってるんなら、誰が悪いってならなくない?」

摩耶「……」

黒潮「……」

電「……」

摩耶「……なあ、行こうぜ」

電「!」

摩耶「さっき黒潮の話や電の話を聞いたけど、あたしはお前らが悪いなんて思わなかったんだよな」

摩耶「お前らはどう思う? お互いのことや、あたしのこと。悪いって思ったか?」

黒潮「……うちのほうが悪い思っとったなあ……巻き添えや思ってたわ」

電「電も、二人は悪くないと思ったのです……」

摩耶「そか。だったら、あたしたちは誰も悪くないのかもな……」

電「……なのです」

黒潮「……せやったら、ええなあ」

由良「もうっ! 由良は最初からそうだって言ってるでしょ!?」プンスカ

摩耶「わ、悪かったよ! 落ち着けって、な?」

942: ◆EyREdFoqVQ 2020/02/22(土) 23:41:25.67 ID:XeT7i2ZBo

提督「由良が怒るのも無理ねえよ。少しは話を聞けっつうんだ」

由良「ですよねっ!? ねっ!?」

敷波(今まで見たなかで一番迫力ある「ね?」だなあ……)

提督「電、せめてお前くらいは由良の言うこと聞いてやれ。由良は轟沈した後も、お前を真っ先に心配してたんだからな」

敷波「そうそう。電が初期艦だからって気負うのは仕方ないのかもしんないけどさー?」

電「あ……その、ごめんなさい、なのです……」シュン

由良「……もう。今回だけよ?」

電「はい……敷波ちゃんも、ごめんなさい、なのです……」

敷波「あ、うん。まあ、あたしも偉そうなこと言えないんだけどさ」

提督「……黒潮」

黒潮「!」

提督「雪風の件、心配するなとは言えねえが、俺たちにできることはする」

提督「だから、諦めるのはまだ早えぞ」

黒潮「……」コクン


由良「ねえ、敷波ちゃん」ヒソッ

敷波「? なんかした?」

由良「ごめんね、なんだか妙に提督さんの言うことに素直っていうか、フォロー入れてるって思っちゃって」

敷波「あー、司令官見てると、なんかねー……言いたいことはちゃんと『正しく』言わないと、相手に伝わらないよね、ってさ」

由良「ああ……」ウナヅキ

947: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:10:51.63 ID:fEUe6tqmo

 * 食堂 *

若葉「……」ポカーン

川内「……」ポカーン

初雪「ねえ、みんなに説明してなかったの?」

ル級「シテナカッタミタイネエ?」

摩耶「ちょっと待て! どう見てもおかしいだろこれ!?」

由良「え? なにが?」キョトン

摩耶「なんで深海棲艦が艦娘に交じってお茶してんだよ!? 普通じゃねえよ!?」

伊8「うん、普通じゃないけど、このル級さんはこの鎮守府のお客さんだから」

川内「きゃ……客、なんだ」

ル級「マア、ソノ通リネ。ココニ所属シテルワケジャナイカラ」

摩耶「マジか……いいのかよ」

朧「朧たちも最初はびっくりしたけどね」

潮「たまに演習の相手になってくれますよ」

最上「さっき話してみたら結構いい人だったよ?」

三隈「最上さんは順応力がありすぎますわ……」

948: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:11:36.17 ID:fEUe6tqmo

若葉「敵のスパイじゃないかとか、疑われたりしなかったのか」

朝潮「ル級さんもこの島に流れ着いてきた人ですから、そういう考えには至りませんでした!」

若葉「いいのかそれで……」タラリ

ル級「コノ鎮守府デ暴レタリナンカシナイワヨ。ココノ食ベ物オイシイシ」

摩耶「飯目当てかよ!」

吹雪「いえいえ、ご飯は大事ですよ!」

摩耶「いや、そうかもしんねーけどよ……」

ル級「トコロデ、提督ハドコニ行ッタノ?」

由良「提督さんなら、食堂に入って真っ先に金剛さんに鹵獲されてたけど」キョロ

電「鹵獲……」タラリ

朧「えーっと、提督は……あ、あっちです。あそこ」ユビサシ


提督「……」

霧島「……あ、あの、金剛お姉様?」

金剛「どうしまシタ?」

949: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:12:23.30 ID:fEUe6tqmo

霧島「私が提督の正面の席というのは、その……」

金剛「Oh, これからの私たちの提督デス。Communication は大事デスヨー!」

榛名「はい、榛名もそう思います!」


如月「それと提督の両隣を金剛さんと榛名さんが陣取るのは、どういう理屈なのかしらね?」

大和「私たちが厨房のお手伝いをしている間に、金剛型で輪形陣を組むなんて……!」

比叡「ま、まあまあ、落ち着いて! 誰がどこに座るかは、順番ですよ、順番!」

利根「順番とは言うが、吾輩たちにはなかなか順番が回ってこなんだがのう?」

如月「えっ」

大和「利根さん!?」

利根「そこでなぜ驚く?」

比叡「いやあ、だって利根さん、司令の隣に座りたいって言う人だと思ってませんでしたから!」

如月「えっ」

大和「比叡さん!?」

950: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:13:52.03 ID:fEUe6tqmo

利根「おぬし……意外と人のことは見ておるんじゃな」

比叡「? どういう意味ですか!?」クビカシゲ

利根「まあともかく、たまには込み入った話も良いではないか。吾輩にも気分というものがある」

利根「そもそも、金剛の言う通りコミュニケーションは大事である。それはおぬしたちに限った話ではない」

利根「鎮守府全体の円滑な人間関係を築くためにも、新しく入ってきた者たちに機会を与えるのも必要ではないか?」

大和「そ、それはそうですが……」

利根「というわけで、最上や三隈も提督の前に座らせたほうが良いと思ってな」

三隈「そう仰いますから呼ばれてきたんですけど……」

最上「確かに僕は提督とお話しするの、初めてなんだけどね?」チラッ

如月「あの状況だと、ちょっと……ねぇ?」チラッ

利根「ぬ?」


金剛「Hey, テートクゥ、アーンしてくだサーイ!」ミギカラグイグイ

榛名「提督! 榛名が食べさせてあげますね! あーん!」ヒダリカラグイグイ

提督「……」


利根「……提督の顔が能面のようじゃの」

951: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:14:36.97 ID:fEUe6tqmo

如月「あんまり押しが強すぎると司令官には苦痛にしかならないから、ほどほどにして欲しいんですけど」フゥ

大和(大和も同じことをして叱られそう……危ないところでした)

三隈「こちらの提督は、女性が苦手なんですか?」

大和「苦手というより、色欲がないと言いますか……恋愛事を拒絶していると言ったほうが正しいですね」

最上「女性にくっつかれて仏頂面する男の人なんて初めて見たよ。みんなでれでれになると思ってたんだけど」

三隈「部提督はとくに好色家でしたから」ハァ

如月「それより、そろそろ止めたほうがいいかも。あまり調子に乗ってべたべたすると……」

 ガシッ ガシッ

大和「……あっ」

提督「……」タブルアイアンクロー

金剛「Nooooooooooooo !!!」メキメキメキ

榛名「あひぃぃぃぃぃ!!」メキメキメキ

比叡「ひえええ! し、司令! お姉様たちから手を放してくださいー!」

霧島「」シロメ

如月「やっぱり……」

952: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:15:21.18 ID:fEUe6tqmo

三隈「……私たち、近づいて大丈夫なんですか?」

利根「金剛たちが引っ付きすぎておるだけじゃ。いきなり取って食うような真似はせん、心配せんで良い」

最上「……なんだか他人の気がしないなあ」ウーン

三隈「最上さん……」


 * 席替えしました *


提督「悪いな、見苦しいもん見せた」

霧島「い、いえ……金剛お姉様たちは、いつもこのような調子なんですか?」

提督「普段はもうちょっと大人しいんだがな。お前が来てはしゃいだのかもな」

霧島「も、申し訳ありません」

提督「お前が謝るなよ。破目を外した姉が悪い」

摩耶「そーだよ霧島さん、霧島さんがこんな奴にぺこぺこする必要なんかないって」

霧島「摩耶!? こんな奴って……!」

提督「気にすんな。俺は気にしねえ、っつかいちいち相手にしねーよ」ンベー

摩耶「……!」ムカッ

953: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:16:06.16 ID:fEUe6tqmo

三隈「売り言葉に買い言葉ですわ……」ボソ

最上「いちいち相手にしてるよねー」

三隈「最上さん声が大きいですよ!?」ギョッ

提督「まあ、それはさておいてだ。ある程度のことは不知火を通して三日月から話を聞いたが……」

霧島「!」

提督「戦況報告書と三日月の言い分の両方を見る限り、お前らはできることをやった、って評価するほかねえな」

提督「お前らの艦隊があれ以上の戦果を挙げるのは難しそうだ。お前らが気に病んでもしょうがねえ」

霧島「で、ですが……」

提督「……ですが?」イラッ

最上「うわあ、露骨に嫌な顔してる」

三隈「最上さん!? 思いっきり口に出てますよ!?」

提督「別に嫌な顔してもいいだろが。もういい加減『自分が悪いんです』とか『でも……』って言うのやめろっつーんだよ、ったくよー……」

霧島「……」シュン

最上「ふぅん……なるほどー」

提督「……?」

954: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:16:51.39 ID:fEUe6tqmo

最上「ねえ三隈、この提督はそんなに悪い人じゃないみたいだよ?」

摩耶「!?」

霧島「!?」

三隈「んななな、何を言い出すんですの、もがみんは!?」ヒィィ!

三隈「も、申し訳ございません提督! 最上さんが失礼なことを……!」ペコペコ

提督「別に気にしねえから、そんなにペコペコすんな。俺もそんなに偉くねえよ」

三隈「……ご、ご容赦いただけるんですか?」

提督「容赦って、大袈裟だな」

 ツカツカツカ

山城「ちょっと」ペチーン

提督「あてっ」

大和「や、山城さん!? 提督になにをなさるんですか!」

山城「提督があまりに寝惚けたことを言うから、思わず手が出ただけよ」ハァ

大和「だからと言って提督の頭をはたくとか……!」

955: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:17:36.36 ID:fEUe6tqmo

山城「仮にも、いち鎮守府を預かる身分の人間が、自分で自分を偉くないとか言わないでくださいます?」

山城「偉くもない人の部下になってる私たちが悲しくなりますから」プイ

大和「山城さん!?」

山城「この程度のことで怒る人でもないでしょ。情けないんだか寛大なんだかわからないですけど」

大和「山城さんっ!?」ガタッ

提督「大和落ち着け、山城の偉い偉くないの言い分ももっともだ。それから扶桑もいちいち頭下げに出てこなくていいぞ、座ってろ」チラッ

扶桑「あら、お気付きでしたか」

提督「偉くはないと言ったが、これでもいち鎮守府の責任者だ。この鎮守府のために俺の力を利用しないつもりはない」

提督「やりたいことがあるんなら好きにやらせるから、言いに来い。俺ができる範囲で動いてやる」

若葉「では、提督。あなたに質問がある」スッ

提督「なんだ?」

若葉「駆逐艦、若葉だ。この鎮守府での禁止事項を教えて欲しい」

提督「禁止事項ねえ……仲間割れすんな、ってことくらいか?」

提督「あとは工廠で火遊びすんなとか、飯ん時に騒ぐなとか、ごくごく常識的なルールくらいしかねえぞ」

956: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:18:21.32 ID:fEUe6tqmo

川内「ねえねえ、夜戦は!? 夜戦はしていいの!?」バッ

提督「やせん?」

川内「そう、夜戦だよ、夜戦! 夜の戦い! やーせーん!」

提督「そんなことか、好きにしろ」

川内「ほんと!? やったああああ! 待ちに待った夜戦だあ! 夜戦ができるよーーーー!!」ウワーイ!

神通「ね、姉さん、食堂で騒いでは駄目ですよ」

那珂「川内ちゃんは相変わらずだねー」アハハ

山城「まったくもう、少しは静かにできないのかしら、あの夜戦馬鹿」ハァ

若葉「いや、無理もないんだ。前の鎮守府の止提督は、夜戦を禁じていたからな」

山城「はぁ?」

若葉「止提督は、とにかく慎重で無理を嫌う人だった……臆病と言っても差し支えない」

若葉「夜戦はしない、中破艦が一隻でも出たら撤退、弱い敵艦隊しか出てこない海域ばかりひたすら巡回……」

若葉「強くなりたかった若葉には、あまりに苦痛だった」フゥ

提督「だから命令違反した、って話か」

957: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:19:06.21 ID:fEUe6tqmo

若葉「その通りだ。ある日、敵の輸送艦隊を見つけて邀撃しようとした」

若葉「昼のうちに敵艦を残り一隻、輸送ワ級を残すのみとしたんだが、止提督からはその追撃を制止された」

若葉「敵の輸送艦をそのまま見過ごすことが彼の正義だというのなら、若葉は賛同しかねる」

若葉「旗艦だった若葉は川内さんと一緒に夜戦に突入し、ワ級を沈めて敵艦隊を撃破した報告を止提督にして……」

若葉「そして若葉と川内さんは、激高した止提督に、この鎮守府へ飛ばされた、というわけだ」

山城「ろくでもないわね……」

摩耶「そいつ、馬鹿じゃねえの?」

霧島「ま、摩耶!?」

提督「俺も馬鹿だと思うがな」

若葉「!」

提督「若葉はそん時、夜戦で確実に仕留められるって自信か確信があったんだろ?」

若葉「周囲の敵影なし、練度の高い敵でもない。若葉たちは無傷で、敵の偵察機もなかった。悪い条件はなかったと認識している」

提督「ふぅん……俺は現場のことはわかんねーから、お前らの感覚を信じるしかねえが」

提督「安全か危険かはさておいても、敵輸送艦を見逃すのは、確かに海軍としちゃあよろしくねえよな。悪い判断じゃねえ」

958: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:19:51.48 ID:fEUe6tqmo

若葉「? 提督は違うと思っているのか?」

提督「俺個人としてなら、どうでもいいかねえ」

摩耶「おい!?」

若葉「提督は、深海棲艦の邀撃を第一に考えていないのか?」

提督「それは第一じゃねえな。俺は、うちの艦娘がやりたいことを第一に考えてる」

提督「だから、もし若葉がすべての深海棲艦を倒したいんなら、それはそれでいい。ただ、うちと親交のあるル級を巻き込まない方法を考えるさ」

ル級「アラ、私ノ話?」ヒョコッ

若葉「!」ジリッ

提督「おう。でだ、俺はル級個人とは仲良くする気でいるが、ル級以外の深海の連中とは関わりがねえ」

提督「だから、ル級がこいつは巻き込むな、ってやつがいない限りは好きにしろ、って感じだな」

若葉「あくまで個人的な付き合いだと?」

提督「そうだな」

若葉「ル級……さん、も、そうなのか?」

ル級「エエ。私モ、人間相手ナラ、彼以外ト接触スル気ハナイワ」

959: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:20:36.39 ID:fEUe6tqmo

摩耶「なあ、この話、本営には話してないのか?」

提督「話してねえし、これからも話す気はねえ。話したってろくでもねえことになることは目に見えてる」

若葉「ろくでもない……?」

霧島「そうでしょうか……むしろ、彼女を通して深海の大物と交渉し、友好関係を結ぶようにしたほうが……」

提督「そこまでやってらんねえよ、面倒臭え」

摩耶「はああ!?」

霧島「めん……っ!?」

三隈「あの……ちょっと本音がひどすぎませんか?」

最上「うん、びっくり……」

若葉「……言うに事欠いて、面倒とは」クラッ

提督「面倒だろうがよ。ル級は、深海棲艦を代表してここに来てるわけじゃねえんだぞ?」

提督「俺は、ル級とはお互いに迷惑をかけない範囲で付き合う、って話をしたんだ。それ以上のこと頼む気はねえ」

霧島「し、しかし、休戦協定などが結べれば、そこから……」

提督「知らねえよ。そもそも俺は人間の平和のために働く気はねえぞ」

摩耶「おい!? そりゃ聞き捨てならねーぞ!? 人のために働かねえって……!」ガタッ

960: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:21:21.64 ID:fEUe6tqmo

提督「その人間どもの私利私欲と我儘に突き合わされて、この島に異動させられたのはどこの誰だ?」

摩耶「ぐ……!」

霧島「……」ウツムキ

若葉「なるほど。さては提督も人間に嫌われてこの島に流された口か」

提督「そういうこった。ちょっと仲良くなったル級に、いきなり人間のために働け、なんて言いたかねえな」

ル級「提督ガコウイウ立場ダカラ、私モ気楽デイラレルノヨネ」フフッ

最上「それじゃあ、提督はなんのために戦ってるのさ?」

提督「俺は、お前らも含めて艦娘が人間の手を借りずに生活できるようになればいいと思ってる。それが俺の望みだ」

全員「「……!」」

提督「お前らこそ望みはなんだよ? なんで戦ってる」

全員「「……」」

若葉「若葉は、若葉自身の復讐のためだ」

提督「!」

961: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:22:07.10 ID:fEUe6tqmo

若葉「若葉は止提督のところへ来る前に、また別の提督のところに所属していた」

若葉「そこで若葉は、ある深海棲艦に打ちのめされた」

若葉「若葉はかつての提督に、何度もその深海棲艦への攻撃を進言した。しかしその進言は認められず、止提督の鎮守府へと異動になった」

提督「なるほど、お前はそいつを倒したいってわけか」

若葉「そのために、若葉は強くなりたかった。川内さんも強くなりたいと言っていたが、止提督のもとでは望むべくもなく……」ガクッ

若葉「だから聞きたい。提督。あなたは、若葉が強くなりたいという希望を、叶えてくれるのか?」

提督「……叶えてやりたいところだが、資材不足がネックだな」

若葉「それなら、若葉が遠征でもなんでもやろう。自己研鑽のためにも、いくらでもこき使ってくれて構わない」

提督「そうか。それならまあ、適当に頑張りな」

若葉「……」コク

提督「ほかの連中はどうなんだ?」

三隈「あの、提督? 三隈は、最上さんに変な真似さえしなければ構わないのですが……」

提督「ああ、セクハラか。俺もそういうのは嫌いだから安心しろ」

三隈「ええ、先程の金剛さんたちのやりとりを見てても、女性に囲まれることが全然嬉しくなさそうでしたものね」

三隈「良くも悪くも、安心しました」

962: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:23:06.30 ID:fEUe6tqmo

最上「……えーっと、僕からは特にないかな。みんなの役に立てれば嬉しいよ」ニコ

提督「……」

最上「どうしたの?」

提督「なあ三隈、最上は前の鎮守府でセクハラ受けてたんだよな?」

三隈「え、ええ……」

提督「そういうやつって、もっと男に対して露骨に拒否してくるかと思ったんだが……」

最上「僕、スキンシップそのものは嫌いじゃないんだ。ただ、部提督は調子に乗りすぎててさ……がっつきすぎ、っていうか」

提督「嫌じゃなかったのか?」

最上「嫌だったけど、部提督にそこまで悪い感情はなかったんだ。むしろ僕が我慢したせいで気を持たせちゃったのが悪いんだって思ってるよ」

最上「僕がなあなあにしないでしっかり拒絶して、ちゃんと部提督に怒らなかったから、三隈にあんなことをさせちゃったんだ……」シュン

三隈「み、三隈は迷惑だなんて思ってません!」

最上「でも、結果的に三隈が怒って部提督に砲撃して、怪我をさせたわけだからね。僕が悪いっていうのは間違ってないと思うよ?」

最上「どっちにしても、僕は部提督から離れたほうが良かったとは思ってるし……」

最上「さっきも言ったけど、提督は悪い人じゃなさそうだし。僕はこの鎮守府に来て、良かったと思ってる」

三隈「もがみん……!」ウルッ

963: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:23:51.36 ID:fEUe6tqmo

最上「提督、改めて、僕と三隈をよろしくね!」ニコ

提督「ああ、よろし……」

三隈「もがみーーーん!!」ダキツキー!

最上「うわああ!?」ドガラシャーン

提督「……」

三隈「もう大丈夫ですわ! 最上さんに触っていいのは私だけになりましたから!」ギュウ スリスリスリ

若葉「三隈さん、三隈さん」チョイチョイ

三隈「は、はい?」

若葉「三隈さんが押し倒したせいで最上さんが気絶してるぞ」

最上「」キュウ…

三隈「くまりんこーーーーー!?」

提督「何やってんだ……」アタマカカエ

摩耶「えーっと、なんか話がぐだぐだでわかんねーけどさ、とにかくあたしたちも好きにしていいんだな?」

提督「ん? ああ、つってもできる範囲でだけどな。出撃したいんなら、書類揃えて俺に寄越せ。ハンコは押してやる」

964: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:24:36.37 ID:fEUe6tqmo

提督「ただし。言い忘れてたが、死にたい奴は見捨てるからな。手前で生きる意志のないやつは、俺の知ったこっちゃねえ」

提督「誰かを巻き込んで特攻すんのもなしだ。死にたきゃ一人で勝手に死んでくれ」

摩耶「いやまあ、そうかもしんねえけど、もうちょっと言い方ってもんがねえのかよ……」

提督「あん? お前だって似たようなもんだろうが」

摩耶「ああ!? お前なんかと一緒にすんじゃねえよ、くそが!」

 ゴォッ

摩耶「!?」ゾクッ

大和「摩耶さん……先程から聞いていれば、提督に対してその言葉遣い、どういうおつもりですか?」ゴゴゴゴゴゴ

摩耶「ちょっ……大和、さん……!?」タジッ

提督「おい、やま……」

 ズォッ

霧島「うちの摩耶が、なにか……?」ゴゴゴゴゴゴ

比叡「ヒエッ!?」

965: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:25:21.45 ID:fEUe6tqmo

大和「いいえ? 少々、躾がなっていない艦娘が見受けられたようですので」ズゴゴゴゴゴ

霧島「おや、摩耶は優秀な艦娘です。なにか勘違いをなさっておいででは?」ズゴゴゴゴゴ

敷波「ちょっ、なになに!? なにが始まんのさ!」ブルブル

初雪「に、逃げなきゃ……」ガタガタ

大和「……」ドドドド

霧島「……」ドドドド

陸奥「これ、止めに行かないと……」

長門「大丈夫だ、提督に任せておけ」

提督「はぁ……まあ、俺の出番だろうな。おい大和」ズイッ

大和「ふえっ!? て、提督!」

提督「仲間割れはすんなって、説明したばっかなんだがなあ?」ジロリ

大和「は……も、申し訳ありません!!」ペコッ

提督「この程度のことで殺気撒き散らしてんじゃねえぞ、ったく……! ちょっと大人しくしてろ」

大和「は、はいっ! 本当に、申し訳ありませんでした!」ペコペコ

霧島「……」

966: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:26:06.09 ID:fEUe6tqmo

提督「悪いな霧島、うちの大和はなんでか知らねえが俺のこととなるとムキになるんだ」

陸奥「なんでか……って、ちょっと、わかってないの?」ヒキッ

長門「まあ、あえて知らないふりをしてるのか知らないが、そういう男なんだ、提督は」

陸奥「……私が言うのもなんだけど、それはそれで大和が気の毒ね」

提督「摩耶もビビらせて悪かったな」

摩耶「び、ビビッてなんかねえし!」

霧島「私こそ出過ぎた真似を……」

提督「出過ぎてねえよ。仲間思いでいいことじゃねえか」

霧島「……」

摩耶「と、とにかく、霧島さんは悪くねえよ!」

提督「ああ、そうだな。そもそも、霧島の、何が悪くてここに寄越されたのかがわからねえ」

霧島「……?」

967: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:26:51.23 ID:fEUe6tqmo

提督「あの海域での戦闘履歴も不知火に調べてもらった」

提督「赤城が空母棲姫にとどめを刺した、艦載機の一斉爆撃の直前に、霧島の一撃が空母棲姫の艤装を直撃してる」

提督「爆撃直前に空母棲姫が大きくぐらついて、防御できなかったそうじゃねえか。こいつは霧島の手柄だろう?」

摩耶「それ、マジか!?」

提督「映像を不知火と一緒に見てた中将が分析したそうだ」

霧島「……」

提督「まあ、そうであってもなくても、お前らに空母棲姫を撃つなと命じたC提督が無能なだけで……」

提督「お前があの時命令を無視しなきゃ、もっと空母棲姫に艦娘を沈められてたかもしれねえよな?」

提督「霧島が頭を下げる必要はねえよ。背中まるめてねえで、胸を張れ。お前は間違っちゃいねえんだ」

霧島「本当……ですか……?」

摩耶「そうだぜ、霧島さん!」

提督「お前、さっきからずっとそんな調子だな。どうしてそんなに自信なさげなんだ?」

霧島「……私は……」

霧島「私はこれまで、C提督に認めてもらったことがありませんでした。いつも、作戦の邪魔をするなと……」

提督「邪魔?」

968: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:27:36.28 ID:fEUe6tqmo

摩耶「霧島さんのすごいところは、相手のバイタルパートを正確に射貫く砲撃の正確さなんだ」

摩耶「C提督はいっつもラッキーヒットって言ってたけど、あたしはそれを何度も見てるから、あれは絶対狙ってやってるってわかるんだよ」

摩耶「それで、霧島さんはいつも主要な敵艦への援護攻撃をC提督から指示されるんだけど、だいたい霧島さんの攻撃で敵艦が沈んじまうんだよな」

提督「そりゃすごいことじゃねえか」

摩耶「それが、予定とは違うとか言って、C提督は霧島さんにいっつも八つ当たりしてたんだよ!」

提督「は? 本っ当にバカじゃねえか、そいつ」

摩耶「だよなあ!」

霧島「……」

提督「損害なく速攻で片付けられるんならいいじゃねえか、別に誰が沈めようが関係ねえ。なんで褒めてやんねーんだ?」

摩耶「だよなあ!! 本っ当、そう思うぜ!」

霧島「……!」ウル

摩耶「霧島さんがあたしと一緒にこの島に送られたのも、あたしの不始末の監督責任だって、言いがかりつけてだぜ!?」

提督「それなら、霧島も一緒にC提督殴っときゃ良かったんじゃねえか?」

摩耶「いや、さすがにそれはまずくねえか!?」

提督「変なとこ控え目だな?」

969: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:29:08.90 ID:fEUe6tqmo

摩耶「あたしだけならいいって思ってたからさ。霧島さんまで殴ってたらさすがに解体されてたかもしんねーし……加減だってしたんだぜ?」

提督「……まあ、しゃあねえな」

摩耶「あたし的には、霧島さんまでこの島に送られるのも心外だったんだけどさ。まあ、あいつから離れられるなら、悪くねーかな……」

提督「ああ、それ自体は悪くねえな。駆逐艦連中も余所の鎮守府に送られるって聞いてる。少しは精神的にマシじゃねえかな」

摩耶「そっか……三日月たちの行く先の鎮守府もまともだといいんだけどな」

提督「……そうだな」

摩耶「ところでさ、おまえ、さっきあたしたちに好きにしろって言ってたよな?」

大和(おまえ!?)ピクッ

如月(ああ、大和さんも反応してるわ……)キキミミ

提督「ああ」

摩耶「じゃあさ、もしあたしたちが出撃するとき、霧島さんに一度艦隊の指揮をとらせてくれねーか?」

提督「旗艦にしろってか?」

摩耶「そうそう。あたしは霧島さんが指揮取ったらいい感じになると思ってんだけど……駄目か?」

提督「いや、全然構わねえぞ。試しに何回かやってみて、問題ねえなら任せていいだろ。後で長門に相談してみな」

摩耶「いいのか!? ……霧島さん!」

970: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:29:50.68 ID:fEUe6tqmo

霧島「ま……任せて、いただけるのですか」

提督「いいんじゃねえの。やってみな」

霧島「……は、はいっ! 艦隊の頭脳と呼ばれるよう、頑張ります!」ビシッ

提督「あんまり気張るな。適当でいいぞ」

霧島「はいっ!!」ゴォッ

大和(気合入りまくりなんですけど……)

霧島「霧島! 気合! 入れて! 行きます!!」ゴオオオ!

比叡「それ私の台詞ー!?」

提督「ただ、戦艦が増えると資材の減りも早くなっちまうんだよなあ……」

若葉「それは大丈夫だ。若葉に任せろ」キラリ

提督(あんまりやる気出さなくていいんだがな……)



金剛(それより早くほどいて欲しいデース)モガモガ ←懲罰中

榛名(榛名は提督になら縛られてても大丈夫です!)ウットリ ←懲罰中

雲龍「ねえ……なんだか嬉しそうにしてない?」ユビサシ

龍驤「しっ! 見たらあかんで!」ユビオサエ

971: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:30:36.33 ID:fEUe6tqmo

 * *

摩耶「それにしてもよぉ……なんでこの鎮守府に出入りするようになったんだ?」

ル級「ソウネエ……毎日毎日、潜水艦ニ小突カレルダケデ反撃デキナイ戦闘ヲ一日数十回、三カ月クライ続ケレバ理解デキルカモネ?」ニタリ

金剛「Oh... もしかして、オリョールにいたんデスカ……」

摩耶「そりゃ最悪だな……」ウヘェ

霧島「想像したくありませんね」アオザメ

榛名「?」←わかってない

972: ◆EyREdFoqVQ 2020/03/08(日) 22:31:36.53 ID:fEUe6tqmo
今回はここまで。

次回か次々回でスレも埋まりそうなので、スレ立てはそのときに行います。