1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:22:08.41 ID:aCeg09wn0
梓「え」

ゴルゴ「・・・」

放課後、唯たちに遅れて梓が部室を訪れると、全身黒ずくめの
巨大な男が壁にもたれかかっていた。

澪「よかったな、梓!!」

紬「よかったわね、梓ちゃん」

律「これで私たちが卒業しても一人ぼっちにならなくて済むな!!」

引用元: 唯「新入部員のデューク東郷君だよ!!」 



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:24:31.66 ID:aCeg09wn0
梓「ちょ、ちょっと何言ってるんですか?っていうかこの人この顔で私の後輩!?」

律「こら、さらりと失礼なこと言うな。東郷君は梓と同学年だぞ」

梓「え…だって今まで見たことないですよ」

紬「東郷君は今年から転入したらしいの」

澪「ほら、待望の新入部員なんだから仲良くしなきゃ」

ゴルゴ「・・・デューク東郷だ、よろしく」

梓「な、中野梓です、よろしくお願いします」

唯「ほら二人とも、握手握手」

唯に背中を押された梓は、渋々手を差し出した。

ゴルゴ「・・・」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:26:22.31 ID:aCeg09wn0
梓「・・・え、あの・・・?」

ゴルゴ「"利き腕を"人にあずけるほど、俺は"自信家"じゃない…
だから握手という習慣も・・・俺にはない」

梓「はぁ?」カチン

律「東郷君は照れ屋だな!!」

唯「ツンデレだね!」

梓「何言ってるんですか!!こんな失礼n」

紬「お茶が入ったわよ~」

――――――
唯「あ、椅子が足りないね」

澪「和に、余った椅子がないか聞いてくるよ」

ゴルゴ「・・・不要だ」

唯「え、でも・・・」

ゴルゴ「座らないのは、ただの習慣にすぎない・・・気にしないでくれ・・・」

紬「でもそれじゃあ、お菓子食べれないわよ?」

梓「本人がいいって言ってるんだからいいじゃないですか、東郷君の分は
私が食べちゃおっかな~!!」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:28:10.58 ID:aCeg09wn0
ゴルゴ「・・・そうしてくれ」

梓「!」カチン

梓「冗談だってば・・・先輩がせっかく用意してくれたんだから、失礼でしょ?」

ゴルゴ「あんたは、人間の欲について勘違いしているようだな・・・"自分を納得させる"ため、
には、物欲を捨てると、いう"教え"もあるんだ・・・」

梓「いやそういう話じゃなくて・・・」

澪「ところで東郷君は何か音楽やってたの?」

ゴルゴ「いや・・・」

唯「そっか~でも大丈夫!わたしもけいおん部入ってからギター始めたから」

律「何かやりたい楽器ある?」

ゴルゴ「尺八・・・」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:31:07.28 ID:aCeg09wn0
梓「はぁ?」

紬「じゃあ今日の帰りに尺八を買いに行きましょう!」

梓「ちょ、ちょっと待ってください!!尺八はその、ジャンルが違うっていうか
私たちの音楽には合わないんじゃ」

唯「えぇ~やってみなきゃわかんないよ」

澪「それに、本人がやりたい楽器をやるのがベストだしな」

梓「だからっていくらなんでも尺八は・・・」

その後、梓の必死の抵抗虚しく、ゴルゴのパートは尺八に決定してしまった。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:32:52.18 ID:aCeg09wn0
――――――
#2 整頓!

澪「というわけで、大掃除をします」

ふとしたきっかけで、部室が唯たちの私物まみれになっていたことが露呈し、
大掃除をすることとなった。

――――――
律「だいぶ片付いたな」

澪「しかし、私たちの私物じゃないのもだいぶあるな」

唯「見て見て~なんか出てきた~」

律「おぉ!高そうなケース!」

ケースを開けると、そこには古びたギターが納まっていた」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:35:00.06 ID:aCeg09wn0
梓「・・・ギター?」

ゴルゴ「・・・」

ガチャ

さわ子「あら懐かしいわね、ここにあったのか~」

梓「先生・・・ひょっとしてこれ、先生のですか?」

さわ子「そうよ、それはあまり使ってなかったけどね」

唯「私物はみんな持って帰ることになったので、さわちゃんも、はい!」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:36:15.34 ID:aCeg09wn0
さわ子「えぇ~・・・」

さわ子「も、もう最近弾く時間もないし、お店に売って部費の足しにしてちょうだい」

唯「え!いいの?」

律「っていうか押し付けられてるし・・・」

ゴルゴ「一つだけ確認しておくが、・・・今の依頼内容に嘘偽りは、ないな・・・?」

さわ子「え?」

梓「気にしないでください、ちょっとおかしい人なんで」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:37:34.04 ID:aCeg09wn0
――――――
唯「うぅ、カビ臭い・・・ひどい~!私ばっかり~!」

件のケースを重そうに持ちながら、唯が文句を言った。

律「ジャンケン三連敗はお前の責任だろ~」

唯の少し先を歩く律たち。けいおん部メンバーはさわ子のギターを売却するため、
楽器店を目指していた。

紬「唯ちゃんご苦労様、そろそろ時間よ」

唯「次は負けないからね!!」

ゴルゴ「・・・」

澪「なぁ、これなんだけど・・・」

そういうと、澪はメンバーにチラシを見せる。

律「棚・・・?」

澪「こんなの部室に置けないかな、一つあれば色々整理できると思うんだ」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:39:27.95 ID:aCeg09wn0
――――――
澪の提案した棚を購入するため、唯たちはホームセンターを訪れていた。

唯「見て見て、何かかっこいい!!」

腰に工具を収納するホルスターを巻きつけ、ガングリップの電動ねじ回しを収納した唯。
まるで西部のガンマンを彷彿させるようなスタイルだ。

唯「ズキュー・・・」
ズキュウゥゥン!!

唯が銃声を模しながら、ホルスターのねじ回しに手をかけ引き抜こうとした瞬間、
唯が手にした電動ねじ回しがバラバラになった。

ゴルゴ「・・・」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:41:58.13 ID:aCeg09wn0
驚いて、梓は音の主に振り向くと、そこには拳銃を手にしたゴルゴの姿があった。
その銃口からはほのかに煙が立ち上がっている。

梓「ちょ・・・ちょ・・・」

混乱のあまり言葉にならない梓。

ゴルゴ「銃口を人に向ける時は・・・引き金を引く時、だ・・・
それに言っておくが・・・銃を手にしている時は、絶対に俺の背後(うしろ)に立つな・・・
つい手が出てしまう・・・お前を殺したくないんでな・・・」

唯「あぁそっかそっか~ごめんよ~」

ペロッと舌を出して、唯はホルスターを取り外して商品棚に戻す。
律と澪はゴルゴと唯を呆れ顔で見ている。

梓「ちょっと、ちょっと!!なんでそんな冷静なんですか!?
っていうか東郷君なにやってんの!?」

ゴルゴ「冷静になれ・・・静かに話すのだ・・・」

梓「むきーーー!!」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:46:11.81 ID:aCeg09wn0
――――――
律「くそー・・・あそこから四連敗するとは・・・」

ホームセンターを後にした唯たちは、楽器店へ到着していた。
あの後、ジャンケンで徹底的に負けた律は楽器店まで一人で
ギターケースを運ぶはめになっていた。

唯「勝利のチョキ!」

律「やっぱりあのときグーにしておけば・・・」

ゴルゴ「あの場を逆転できる手段があったのなら、よけいな口を利いてないで行動する事だ・・・」

唯たちの会話が終わるのを見計らって、店員が声をかける。

店員「お待たせ致しました。このギター、50万円で買い取らせていただきます」

唯・律・澪・梓「ご、50万円!?」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:51:26.57 ID:aCeg09wn0

店員「あ、あの・・・?」

律「何でそんな値段がつくんですか?もしかして、ムギに気を遣って・・・?」

店員「いえ、それは関係ありませんよ」

店員「このモデルは60年代初めに生まれたギターでして当初は材料や形が定まっておらず
様々な仕様のマイナーチェンジを繰り返しつつ現在の形になったとのことです。
お客様にお持ちいただいたこのギターは指板にハカランダという今になっては貴重な木が使われておりまして
これが高い値段の一つの要因になっております。残念なことにこのギターはテイルピースという形状で
フルオリジナルじゃないため少し値段が落ちてしまいますがストラップテイルピースの方が
演奏性に優れているためこちらの方を好むお客様も多くそれほどのマイナスになりません。
しかもこのギターは長いことしまわれていたそうであまり傷やフラットの減りがなく年代物にしては
大変コンディションがいいのでこの金額で買い取らせていただきました」

ゴルゴ「ギターの説明がいつまで続くのだ・・・? その説明は依頼内容に関係あるのだろうな・・?」

店員「・・・と、とにかく貴重なギターなんです!」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:54:58.95 ID:aCeg09wn0
――――――
翌日、唯たちは届いた棚を部室に設置し、大掃除の続きをしていた。

さわ子「やっほー!!」

唯・律・澪・紬・梓「ギクッ」

さわ子「これが昨日買った棚ね?へぇー良いじゃない」

律「ソー」

さわ子「ちょっと何!人が話しかけてるのに・・・」

律「!!さ、さわちゃん!来てたんだー、気づかなかった!」

さわ子「もう・・・で、昨日のギター、いくらになったの?」

唯・律・澪・紬・梓「!!」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 17:58:31.80 ID:aCeg09wn0
さわ子「・・・?売りに行ったんでしょう?昨日」

梓「え、えーと・・・」

律「い、いちま・・・」

ゴルゴ「50万だ」

唯・律・澪・紬・梓「ッ!!」

さわ子「え?」

ゴルゴ「50万円だ」

さわ子「50万円にもなったの!?」

律(東郷君・・・)

澪(あっさりと・・・)

梓(なんという正直者・・・)

ゴルゴ「これが買取証明書だ」

さわ子「え、えーと・・・」

ゴルゴ「・・・?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 18:03:28.90 ID:aCeg09wn0

さわ子「50万円全額部費にするのはちょっと・・・」

ゴルゴ「それはあくまでも"結果"だろう。俺は、依頼された通りの仕事を終えた・・・」

梓(・・・凄い迫力・・・)

ゴルゴ「ところで・・・俺への依頼の"約束事"は知っているな・・・?
依頼者が、俺を罠にはめたり、裏切ったりした時は・・・」

さわ子「うぅ・・・」

唯(・・・何だかさわちゃんがかわいそうになってきた・・・)

律(でも空気に押されて何も言えない・・・)

渋々承諾するさわ子。

さわ子「不精しないで自分で売りに行けば良かった・・・」

ゴルゴ「・・・時代を逆行させる事は、誰にも出来ない・・・思い出は懐かしむだけにしておく事だ・・・」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 19:41:59.22 ID:aCeg09wn0
#5 お留守番!!

憂「あ、お姉ちゃんだ」

修学旅行を楽しむ唯から、憂にメールが届く。

梓「どうしたの?」

憂「教室にお弁当箱忘れたから、家に持って帰ってって」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 19:45:33.82 ID:aCeg09wn0
――――
憂「・・・ごめんくださ~い」

唯たちの教室を訪れる憂たち。当然、そこには
3年生の姿はない。

純「ねぇねぇ澪先輩の席は?」

梓「確か、ここだったかも」

純「へぇ~」

澪の席に腰を下ろす純。

純「・・・"引け"?」

澪の机から、"引け"と書かれた紙がはみ出ている。

ゴルゴ「・・・よせ」

 
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 19:59:25.22 ID:aCeg09wn0
いつのまにか掃除用具入れにもたれかかったゴルゴが、
低い声で純を制止する。

純「東郷君!?いつの間に・・・」

ゴルゴ「おれを巻き込むと、取り返しがつかなくなる・・・
おぼえておいてもらおう・・・おれを巻き込まないことだ・・・」

梓「まーた始まったよ・・・」

憂「そっか、東郷君また勘違いしてるんだね」

ニコッと笑うと、憂は素早く"引け"と書かれた紙を引き抜いた。

ゴルゴ「・・・!!」

出てきたのはいたずら書きがされた紙であった。

憂「ね、爆弾じゃなかったでしょ?」

純「ふふっ、東郷君って本当に怖がりだよね」

ゴルゴ「死の恐怖・・・恐怖だけが我々を危険から遠ざけてくれる。
そうすれば生き残っていく事ができる・・・俺は・・・そうしてきた・・・」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 20:04:41.34 ID:aCeg09wn0
――――
梓「何でバッティングセンターなの・・・うぁ!」

純「だって野球漫画だったから、やってみたくなったんだ・・・のわ!」

翌日、梓たちはバッティングセンターに来ていた。

純「こんなの当たるわけないよ・・・私、UFOキャッチャーやってくるね」

そう言うと、純はバットを置いてUFOキャッチャーへ向かう。

ゴルゴ「最後までチャンスを待つのがほんとうのプロ・・・」

憂「ねぇ、東郷君もやってみなよ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 20:11:46.27 ID:aCeg09wn0
ゴルゴ「・・・」

梓「・・・もしかして東郷君ってスポーツ苦手?」

いやらしい笑顔で梓がゴルゴに視線を向ける。

ゴルゴ「俺には、関係の無い話だ・・・
だが、俺に牙をむいてくる奴を・・・俺は許さない・・・」

梓「ならあそこ。当ててみてよ」

梓はゴルゴを挑発するように、「ホームラン」と書かれた的を指差した。

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 20:17:15.75 ID:aCeg09wn0
少し間をおいて、ゴルゴが壁から背を離す。バッティングホームには立たず、
その外側から換気扇越しに、「ホームラン」とかかれた的を見つめる。

ゴルゴ「一、二、三、四、五・・・
直径三〇センチの換気扇の羽根が、一秒に二回転・・・羽根の隙間は十度、
外周部を狙った場合にブレット(弾頭)が占める幅は二度。
一二〇分の一秒の間に、厚さ五センチの羽根を直径一・二センチのブレットが通過し終えればいい。
秒速七・五メートル以上の速度があれば狙撃が可能という事か・・・」

手際よくM16を組み立て、「ホームラン」と書かれた的に照準を合わせる。

梓「と、東郷・・・君?」

ズキュウゥゥン!!

バッティングセンターに銃声が響くと同時に、「ホームラン」と書かれた
的に穴が開いた。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 20:26:40.13 ID:aCeg09wn0
#5はこれで終わりです。
ご飯&お風呂行きながら続き考えておきます。

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:31:50.49 ID:aCeg09wn0
――――
#5.5 盗難!!

純「それがホームラン賞?」

大きな亀を抱えた梓を見て、純がつぶやく」

憂「梓ちゃん、良かったね!」

梓「・・・でもこんな大きいのどうしよう・・・トンちゃんの10倍は・・・あ」

純「?」

――――
トンちゃんの給餌を忘れていた梓は、休日の学校を訪れた。

梓「・・・ふぅ、良かった」

梓はトンちゃんに餌をやると、一人で安堵した。憂たちとはバッティングセンターで
別れ、後に憂の家で合流することになっている。

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:35:34.63 ID:aCeg09wn0
ガタッ

梓「・・・!?」

物音の方向に目をやると、そこには二人の男が立っていた。
年は20前後といったところだろうか。

???「なんだ、ガキじゃねぇか。ヒヤヒヤして損したぜ」

???「運がいいな、女子高生までご馳走になれるなんて」

話ながら、金庫や楽器を手にして男二人が近づいてきた。

梓「ど、泥棒・・・!」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:38:58.56 ID:aCeg09wn0
???「おっと、大声出しても無駄だぜ。この雨音じゃあな」

???「おとなしく言われた通りにしていれば、痛い目見なくてすむぜ?」

いやらしい目つきで男が梓を見つめる。

梓「い、いや・・・」

これから自分がどのような目に合うのか、おぼろげながらも想像のついた
梓は、恐怖のあまり小さな声しか出ない。

???「ほら、押さえつけとけ」

???「お前が先かよ」

???「先輩のことは立てるもんだ」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:41:30.85 ID:aCeg09wn0
ビシッ ビシッ

男二人が距離を詰め、梓に手をかけようとした瞬間、
男二人の額に穴が開き、その場で崩れ落ちた。

梓「・・・?」

恐怖と混乱が消えぬまま、ドアの方へ目をやると、

煙を立てて空いた二つの穴から、目がこちらを覗いている。
――今ではもう見慣れた目だ。

梓「東郷君・・・?東郷君!」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:45:36.62 ID:aCeg09wn0
腰を抜かして立てない梓のもとへ、ドアを開けて入ってきた
ゴルゴが近寄る。

ゴルゴ「・・・」

梓の無事を確認し、ゴルゴは携帯を取り出す。

ゴルゴ「ああ、東郷だ、部長に伝えてくれ・・・終わった・・・とな!」

その一言で通話を終えて携帯をしまうと、ゴルゴはその場を立ち去ろうとした。

状況が掴めないままポカンとしていた梓は、ふと気づいたようにゴルゴを呼び止める。

梓「待って!!・・・ありがとう」

ゴルゴ「・・・礼は不要だ」

梓「で、でも私を助けてくれて・・・」

ゴルゴ「・・・俺には関係のない事だ・・・俺は"救出者"じゃない・・・
俺は、お前に危害を加えようとする者を、排除するよう依頼されただけだ・・・救出者じゃない・・・」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:48:16.84 ID:aCeg09wn0
――――
数ヶ月前。

律「せめて新しい部員が入部するだけでいいんだ、頼む!!」

ゴルゴ「・・・断る」

唯「でもこのままじゃ、私たちが卒業してからあずにゃん一人になっちゃうよ・・・」

紬「こういう依頼じゃだめですか?けいおん部に入部するのではなく、梓ちゃんの
ことを守る・・・」

ゴルゴ「俺への依頼はその女のボディーガードの様だが、俺の仕事ではないようだ・・・
俺は基本的にボディーガードは引き受けない・・・」

律「じゃあ、梓に危害を加える輩をやっつける、って依頼なら?」

ゴルゴ「・・・」

ゴルゴ「・・・1度だけだ」

澪「え?」

ゴルゴ「その女に危害を加えようとする者を排除するのは一度だけ・・・。一度実行すれば、
この任務は終わりだ」

唯「それじゃあ・・・!」

ゴルゴ「・・・引き受けよう」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:51:38.21 ID:aCeg09wn0
――――
梓「また訳のわからないこと言って・・・」

ようやく梓の顔に笑顔が戻った。

梓「せめて何かお礼を・・・亀のぬいぐるみももらっちゃったし・・・
そうだ、今度アイス奢ってあげる!!」

ほんのりとした照れくささで、梓は自分でもわけのわからないことを口走った。
とてもバカな、礼にはつりあわないような申し出をしたと思い、梓は思わず赤面する。

ゴルゴ「不要だ・・・俺は今日でこの町を去る」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:53:16.15 ID:aCeg09wn0
梓「え・・・?」

梓の顔から照れた笑顔が消える。

梓「去るって・・・どういうこと・・・?」

ゴルゴ「・・・俺の任務は終わった」

梓「・・・?任務って何?東郷君は尺八がやりたくてけいおん部に入ったんじゃないの?
数ヶ月もしたら文化祭だってあるんだよ?今日までだって一緒に練習してきたじゃない!」

ゴルゴ「あんたたちのすることに興味はない・・・
そして、おれのことにも興味をもたれたくはない・・・」

梓「酷いよ・・・私は友達だと思ってたのに・・・そりゃあ最初は失礼で無愛想だなって
思ってたし、拳銃とか持ってる非常識な人だと思ってかけど・・・
今日のことだって凄く楽しかったんだから・・・!!」

梓の頬を涙が伝う。

ゴルゴ「女のうらみごとを聞いてやるムードにはなれないんでな・・・」

梓「・・・」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:55:16.67 ID:aCeg09wn0
相変わらずの愛想のなさに、梓は腹を立てながらも涙が止まらなかった。
訳のわからないことを言うゴルゴを説得できた試しは一度もない。
今回もそうなのだろうか。ただ一回、今回だけは訳のわからないまま
にして欲しくなかった。

ゴルゴ「世話になったな・・・」

そう言うと、ゴルゴは机の上に置かれた、ホームラン賞の亀を手に取り、
床に座り込んだ梓の上にそっと置き、ドアを開けて部室を出ようとした。

梓「・・・東郷君!!」

ゴルゴ「おれの名はゴルゴ13・・・おれが相手に名乗ったのは今度がはじめてだ」

そう言い残して、ゴルゴは部室を後にした。

梓「ゴルゴ13・・・」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 21:58:36.27 ID:aCeg09wn0
――――
梓「・・・というわけで、是非部室にいらしてくださいね」

講堂のステージに立つ、梓、憂、純。
唯たちが卒業し、憂と純がけいおん部に加わったものの、
最低でもあと一人以上、部員が増えなければ、けいおん部は廃部になってしまう。

それもあって、今日の新歓ライブは一層気合いを入れている。

梓「では次でラストです。賛美歌13番・・・」

今までの曲とまったく雰囲気が異なる賛美歌13番の演奏が始まる。
――ゴルゴ13。彼の名を聞いた梓は、彼の名と共通する名をもつこの曲を、
彼と過ごした日の思い出の曲に位置づけていた。

客「・・・?」

明らかに場違いな曲に、思わず会場も静まり返ってしまった。

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/04(金) 22:00:25.37 ID:aCeg09wn0
――――
純「・・・だからあれはやめようって言ったのに~」

梓「だって・・・」

新歓ライブが終わり、部室を目指す梓、純、憂。

憂「まぁまぁ、こうなったら後は待つしかないよ」

そう言って、憂が部室の扉を開ける。
そこには、全身黒ずくめの巨大な男が壁にもたれかかっていた。

梓「・・・!!」

???「・・・用件を聞こう」

――――fin