1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 18:59:43.28 ID:uH48FHAZ0
ほむら「前回の時間軸でまどかから>>2を借りていたのを忘れて時間遡航してしまったわ」

ほむら「どうしよう……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384250383

引用元: ほむら「まどかから>>2を借りパクしてしまったわ……」 



2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 19:00:05.67 ID:gHMSw9DAO
ブルマ

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:05:18.15 ID:uH48FHAZ0
ほむら(まどかからこのブルマを借りたのは……あの日)

ほむら(そう、あれは雨上がりの朝のことだったわ)

ほむら(前日の大雨の影響で通りには大きな水溜まりが沢山出来ていて……)

ほむら(誰もが濡れないように足元を見ながら歩いていた)

ほむら(もちろん私も例外ではなく、地面に映る空を眺めながら学校へと向かっていたわ)

ほむら(それが、いけなかったのよね)






7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:06:28.42 ID:uH48FHAZ0
まどか「ほむらちゃん、危ない!!」

悲鳴にも似た声が聞こえたときには既に遅く。

ほむら「え……きゃあ!?」

前を見ていなかった私のすぐ傍を、猛スピードで自転車が走り抜けていった。

突然の出来事に加えて、襲いかかる泥水に怯んだ私は足を取られ……

ざぶん、と大袈裟な音を立てて、尻餅をついてしまったのだった。

深く大きな水溜まりの中へと。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:06:56.26 ID:uH48FHAZ0
全身が泥水にまみれ、肌に張り付いた衣服が重たくなる。

特に直接水の中へ浸かってしまったスカートは致命的なまでに水分を吸い込んでしまったようで、一気に下 まで湿らせて私の体温を奪っていった。

ぶるり、と身体が勝手に大きく震える。

ほむら(……最悪ね)

考えるまでもなく、タオルで少し拭けば何とかなるという状態ではない。

全て着替えなければ、とてもではないが授業は受けられないだろう。

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:07:25.01 ID:uH48FHAZ0
ほむら(なんでこんな馬鹿みたいな……私、何をしているのよ……)

髪から水滴が一つ滴り落ちるたびに、私の心を陰鬱なものにしていく。

ほむら(こんな愚図だからお前は何も出来やしないのよ、暁美ほむら……)

自虐的な思考が渦を巻いて私の身体を飲み込んで沈めていく。

立ち上がる気力なんて、ちっとも湧いてこなかった。

……この時の私は、ちょうど巴さんのこととか美樹さんのこととか、色々と上手くいっていなかった時で。

精神的に弱っていたところだった、という事情もある。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:07:56.82 ID:uH48FHAZ0
まどか「ほむらちゃん!! 大丈夫!?」

水溜まりに足を踏み入れることも厭わず、まどかは私のほうへと駆け寄ってきてくれた。

嗚呼、本当に彼女は優しい。

こんな馬鹿な私のために、心の底から心配してくれている……。

ほむら「…………っ」

だからそんなまどかの善意が眩しすぎて。みっともない自分の姿が嫌で嫌で堪らなくて。

私はこみ上げてくるそれを押さえ切れず……。

ほむら「うっ……うう……うあああっ……!」

子供みたいに大声をあげて、恥も外聞も忘れて泣いてしまった。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:09:49.07 ID:uH48FHAZ0
まどか「ほ、ほむらちゃんっ?! どうしたの、どこか怪我したの?」

ほむら「う、うう……うああん……!」

心配してくれているまどかに答えられるほどの冷静さはなくて、道行く人たちの好奇の視線を気にする余裕もなくて……

私はひたすら涙を流し続けていた。

こうして思い返すと、とんでもなく恥ずかしいけれど……

まあ、この時の私には、周りなんて見えていなかったのだから仕方がない。

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:10:19.61 ID:uH48FHAZ0
まどか「ど、どうしよう、えと……そ、そうだ、とりあえず着替えよう? ね、ほむらちゃん?」

まどかはうろたえながらも手を引いて、同い年の幼児と化した私をなんとか立たせようとしてくれた。

そんなことしたら、まどかの綺麗な手が汚れてしまうのに。

まどか「えと、私の体育着があるから、学校まで行って着替えよう? ね?」

ほむら「ぐすっ……う、うん……」

そうして言われるがまま、優しい声に従って……

私はのろのろと立ち上がり、まどかに着いていくことにしたのだった。

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:10:57.62 ID:uH48FHAZ0


私たちは人目を避けて裏口から校内に入り、更衣室にやってきた。

道中の記憶は曖昧だけれど、まどかが赤子をあやすように優しい言葉をかけてくれていたことだけは、うっすらと覚えている。

まどか「はい、ほむらちゃん。風邪引いちゃう前に着替えよう?」

更衣室で差し出されたのはまどかの体育着。綺麗に折り畳まれており、清潔そのものだ。

……ちなみに、私の体育着は先ほどの『行水』の結果使い物にならなくなっている。

ほむら「でも……」

まどか「あ! ちゃ、ちゃんと洗ってあるからそこは心配しなくていいからね! 臭くないよ!」

そんな心配はしていないのだけれど……。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:11:31.66 ID:uH48FHAZ0
ほむら「本当にいいの? 借りちゃって……」

ここまで親切にしてもらうのが申し訳なくて、私はそれを受け取れない。

一応は身体を拭いたとはいえ、私が着たら絶対汚れてしまうもの……。

決心のつかない私がそう告げると、まどかは意外なことにクスっと笑って、

まどか「なーんだ、そんなこと気にしてたの?」

と、言ってのけた。

まどか「そんなこと気にしなくていいんだよ、だって私たち友達でしょ?」

ほむら「あ……」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:12:07.61 ID:uH48FHAZ0
冷え切った身体にじんわりとまどかの言葉が染み入ってくる。

胸の奥に小さな、でも確かな灯火がともって、私のことを温めてくれた。

ほむら「うん……ありがとう……」

ここまで言われたら、断るわけにはいかない。そんなのまどかに失礼だ。

私は差し出された体育着を両手でしっかりと受け取った。

それはとっても柔らかくて、ふわふわで、まどかみたい。

まどか「えへへ、どういたしまして♪」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:13:59.31 ID:uH48FHAZ0
まどか「それじゃあ私は外で待ってるね」

これから着替える気を使ってくれたのか、まどかは更衣室から出て行こうとする。

でもその前に……

ほむら「あ、ま、待って……!」

私には言っておかなければならないことがあるのだ。

まどか「?」

言わないほうがいいような気もするけれど、きっと言わないのもモヤモヤするから。

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:14:32.32 ID:uH48FHAZ0
ほむら「その……さっきのことだけど」

まどか「さっき?」

ほむら「だから……転んだときのこと」

まどか「うん」

ほむら「私が泣いちゃったのは……その、内緒にしておいてほしいの……」

まどか「ふぇっ?」

まどか「……ふふ、うん! 分かったよ」

まどか「クラスのみんなには内緒だね!」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:15:04.34 ID:uH48FHAZ0
ちょっとしたアクシデントはあったけれど、平穏と呼べる日常の一幕。

魔法少女にとって何ものにも代え難い宝物。

まどかと過ごした幸せな時間の一つ────。

それが、このブルマが私の手元にある理由だった。






20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:20:48.41 ID:uH48FHAZ0
ほむら「……結局、返せなかったのよね」

ほむら「あの後すぐに、まどかは……」

ほむら「…………」

ほむら「どうしましょうか、これ……」

ほむら「こっそり返す? 私が持っておく?」

ほむら「……ここは、そうね……」



>>22

1.こっそり返す

2.隠し持っておく

3.はいて漏らす

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:21:15.42 ID:YhuV708Ao
2

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/13(水) 22:51:09.43 ID:ID2vnu+Y0
ほむら「……とりあえず、盾にしまっておきましょう」

ほむら「こんなもの、いきなり渡されてもまどかが困るだろうし」

ほむら「こっそり返しても、知らない間にブルマが増えたら気味が悪いだろうし……」

ほむら「……このブルマは私だけの秘密、ね」

ほむら「さて、そろそろ学校にいかないと」






35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:51:57.02 ID:ID2vnu+Y0
四時限目は、この時間軸に来てから初めての体育の授業だ。

休み時間の間に着替えを終えた生徒たちが校庭に現れはじめ、思い思いに会話を楽しんだり、軽いストレッチを行っていたりしている。

ほむら「……ふぅ」

私は人の輪から少し離れたところで、一人で突っ立っていた。

今回はまだクラスに打ち解けられていないのだ。

別にそれでも構わない、と思うけれど半分くらいは強がりなのも自覚している。

特に今朝はあんなものを見てしまったせいで気持ちが弱って……。

ほむら「……?」

ふと、視線を感じて思考を中断する。

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:52:25.71 ID:ID2vnu+Y0
まどか「…………」

視線の主は、まどかだった。

彼女は夢の中にいるかのような、そんな具合の惚けた表情をしていた。

ぽけーっ、とした半開きの口元がちょっぴりマヌケで可愛らしい。

でも、なんでそんな顔して私を見ているのかしら。

……いや、私を、というよりは少し視線が下に向かっているような気がする。

あれではまるで────。

さやか「ちょっとまどかー、なに転校生のブルマに見取れてんのさ!」

まどか「え? ……ふえっ!?」

私の考えていたことを代弁してくれたのは、美樹さんだった。

ちょっと言い方がアレだけれど……。

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:54:54.35 ID:ID2vnu+Y0
さやか「んもー、まどかの●●●! いくら太ももが綺麗だからってそんなやらしい目を……」

まどか「ちちち、違うよさやかちゃん! やめてよ!」

両手をブンブンと振り回して、必死に弁解するまどか。見る見るうちに頬を赤く染めていく。

……きっと私のホッペタも、彼女と同じ色になっているわね。

まったく、美樹さんはデリカシーのないことを平気で言うんだから……。

羞恥やら何やらが入り混じって、私は俯いて固まってしまう。

まどか「あっ、ご、ごめんねほむらちゃん! さやかちゃんが変なコト言っちゃって!」

そんな私の様子に気が付いたらしい。まどかは慌てた様子でパタパタと駆け寄りながら声をかけてくれた。

さやか「えー? 見たままを言っただけなんだけどなー」

まどか「もうっ! さやかちゃんは黙ってて!」

当然のようについてきた美樹さんは、当然のようにまどかをからかい続けている。

にやけた口元が、その、なんていうか……ウザキャラっぷりを存分に発揮していた。良い意味で。

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:55:51.21 ID:ID2vnu+Y0
まどか「えと、ち、違うんだよほむらちゃん? わ、私は、え、●●●な目で見てたわけじゃなくて、その……」

まどかは何度もつっかえつっかえ話すから、可哀想になるくらい動揺しているのが伝わってくる。

ほむら「わ、分かってる。分かってるから落ち着いて?」

落ち着かせてあげようとした私のほうも、少しどもってしまった。

冷静な私を装おうとしたのに、失敗だ。格好悪い。

まどか「う、うん……」

それでもまどかは少しは落ち着いたのか、すう、はあ、と呼吸を整え始めた。

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:56:55.38 ID:ID2vnu+Y0
しかし、どうしてまどかは私の太ももを……もとい、私のことを見ていたのだろうか。

ほむら「その……まどか?」

まどか「ふぇっ? な、なに?」

一呼吸置いて、私は少し遠回しに尋ねてみることにした。

ほむら「もしかして私の体育着、何か変なところがあったのかしら」

まどか「ううん、違うよ。そうじゃなくて……あ、そうなのかも」

ほむら「え、嘘っ? どこが?」

まさか思い付きで言ったことが当たりだったなんて。

身嗜みには気を使っているつもりだったのでちょっとショックだ。

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 22:59:14.85 ID:ID2vnu+Y0
まどか「あ、ううん、やっぱりそれも違うの! 変なのはほむらちゃんじゃなくて私の方っていうか」

ほむら「……?」

私の体育着が変、という発言は訂正されたが……ますます良く分からない。

さやか「ねー、まどか。あんた言ってることメチャクチャだって気が付いてる?」

まどか「う、うう……」

美樹さんのストレートな言葉に、困り果てた表情を見せるまどか。

可哀想だけど私も同感だったので、美樹さんを責めることは出来ない。

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:00:47.19 ID:ID2vnu+Y0
まどか「うーん、その、何て言えばいいのかな……」

まさしく『悩んでいます』といった風に小首を傾げるまどかだったが、しばらくあれこれ考えて結論を出したようで……

まどか「えと、あのね……笑わないって約束してくれる?」

と、上目遣いで尋ねてきた。

……うっすらと頬を赤らめたまま。

ほむら(……そんな表情、卑怯だわ)

私には肯定以外の選択肢は残されていなかった。

ほむら「ええ、約束するわ」

まどか「えへ、ありがと……」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:02:24.53 ID:ID2vnu+Y0
まどか「あのね、私なんだか……」

そして、まどかから告げられた言葉は────

まどか「ほむらちゃんのブルマ姿を、見たことがある気がするの」

ほむら「え……?」

まどか「夢の中で、見たような……そんな気がして」

ほむら「……!?」

私を大きく揺さぶって、心を乱すには充分過ぎる力を持っていた。

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:03:29.56 ID:ID2vnu+Y0
さやか「んっほぉ! な、なにソレまどか! まさかあんた、そんな願望が夢に出ちゃった的な!?」

硬直した私よりも先に、大袈裟なリアクションを返したのは美樹さんだった。

……年頃の女子にあるまじき、はしたない笑い声(たぶん)を鼻から吹き出していたのは言及しないであげたほうが良いのだろう。

まどか「が、願望って! そんなんじゃないよ、もぉさやかちゃん!!」

さやか「くくっ、あはは! いやいや照れるなって!」

心底面白がっているのか、興奮を隠しきれない様子で意味もなく飛び跳ねたりしている。

……ちょっとこの子のこういうノリにはついていけない。正直ニガテだ。

さやか「いやー、まさかホントにまどかにこんな形で春が来るとはねー!」

まどか「うううー!! さやかちゃんの馬鹿!!」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:04:39.88 ID:ID2vnu+Y0
姦しくもある意味微笑ましい、二人のやり取りを尻目に……私は一人で思考に没頭していた。

────まどかは、別の時間軸のことを覚えているの?

私の体育着姿を見たような気がする、と。彼女はそう言った。

体育着といえば、脳裏に過ぎるのはまどかからブルマを借りたあの日の思い出だ。

まさか、あの記憶がまどかの中にあるのだろうか。

しかし、あれは何でもないごく普通の日常のワンシーンであったし、この平行世界のまどかがわざわざ覚えているというのも腑に落ちない。

私にとってはとても大切な、幸せな記憶だったけれど……一言で言えばブルマを借りただけなのだから。

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:06:40.96 ID:ID2vnu+Y0
それに、私が転校してきてからもう三日ほど経つけれど

これまでまどかは過去の時間軸の記憶を持っているような素振りは全く見せていなかった。

なのになぜ、私のブルマ姿にだけ反応したのだろうか……。

ほむら(もしかしてまどかはブルマ好きなのかしら)

そんな益体もない考えまで浮かんでしまう。

……まあ、ブルマがきっかけとなった理由なんて考えても仕方がないのだろう。

もっと重要なのは……ある可能性が出てきたということ。

もしも別の時間軸の記憶が、まどかの内に眠っているのなら……

────もしかしたらまどかは、私のことも全部思い出してくれるかもしれない。

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:07:19.65 ID:ID2vnu+Y0
やり直す度に、時間を巻き戻す度に、私とみんなの距離は広がっていった。

私だけがみんなのことを覚えていて、みんなは私のことなんて知らなくて。

世界に独りだけ取り残されるようなこの感覚は、私の心をジワジワと蝕んできた。

最近では少しずつ、その感覚に慣れてきたとはいえ……決して受け入れたくないことだった。

だから、もしも。

もしもまどかが私のことを思い出してくれる可能性があるというなら……。

ほむら(…………)

こんなこと、本当は考えてはいけないのかもしれない。

時間を歪めてやり直すだけでなく、まどかの記憶も歪めてしまうなんて……許されないことなのかもしれない。

でも私は……。

ほむら(ワガママね、私)

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/13(水) 23:10:54.39 ID:ID2vnu+Y0
ほむら(……少しだけ。少しだけ試してみましょう)

ほむら(今のまどかと、過去のまどかの記憶をつなぐ手がかりは、今のところブルマだけ……)

ほむら(なら、ブルマを使ってまどかの記憶を刺激してみるのが良いわよね)

ほむら(例えば……>>49を>>50するとか)



>>48

1.まどかのブルマを

2.ほむらのブルマを

3.杏子の段ボールハウスを


>>49

1.まどかの机に内緒で収納する

2.まどかに直接手渡しする

3.着て1日生活する

4.匠の技でリフォームする

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:17:18.56 ID:D+2FXQA0o
1

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 23:18:27.26 ID:6/qmN/Cio

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:14:01.07 ID:i2kbCJ8E0






まどか「それじゃ、お茶持ってくるから待っててね!」

ほむら「ええ、ありがとう」

ドアが閉まり、まどかの足音が遠ざかっていったのを見計らい、私は魔法の盾からブルマを取り出した。

ほむら(これを、まどかの机に……)

あの子が戻ってくる前に、収納してしまおう。

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:15:47.41 ID:i2kbCJ8E0
……数日前の体育の一件であの子の記憶を取り戻す決心をした私は、今、まどかの部屋に遊びにきていた。

目的は、前の時間軸のまどかのブルマを、彼女の机にしまうこと。

そして、ブルマを見つけたまどかの反応を伺うことだ。

ほむら(ごめんなさい、少し開けるわね)

許可なく机を開けることに罪悪感はあったが、今更やめる気はない。

……部屋中のぬいぐるみ達の視線が気になったけれど、無視。

一番下の大きな引き出しを慎重に引くと、中にはまどかの参考書やドリルなどが入っていた。

ドリルといっても巴さんの髪の毛のことではない。

そっと、その上に紺色の布を乗せて、引き出しを元に戻す。

ほむら(これで良し……と)

あとはまどかが戻ってくるのを待って……。

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:16:42.59 ID:i2kbCJ8E0
まどか「ほむらちゃん、お待たせー」

私が机から離れて、元のクッションに腰を下ろしたのとほぼ同時。

お盆にコップを二つ乗せたまどかが帰ってきた。

並々と注がれた茶色の液体は麦茶だろうか。

まどか「粗茶ですが……なんちゃって♪」

ほむら「ふふ、ありがとう。いただくわね」

コップを受け取り、口を付ける。

ウーロン茶だった。

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:17:18.74 ID:i2kbCJ8E0
ほむら「それじゃあ早速だけれど……」

まどか「はい! お願いしますほむら先生!」

ほむら「ふふっ……では鹿目さん、教科書を出してください」

まどか「はーい」

一応、今日の集まりは『勉強会』という名目になっていた。

数学が苦手だというまどかのために今度の小テスト対策を行うのが目的で、私は先生役。

まどかに勉強を教えるという経験は初めてなので、実はいくらか緊張しているのだけれど……

……時間遡航者である私にかかれば、小テストで満点を取る方法なんていくらでも教えてあげられるわけで。

赤ペン先生に負けないくらい、的確に出題範囲を把握しているのだから、まあ何とかなるだろう。

ちなみに美樹さんも誘ったのだが彼女は、

さやか『べ、勉強会? いやー、あたし今日はちょうど予定があってね、あははー』

と、言ってそそくさと逃げ出していった。

閑話休題。

さあ、お勉強会を始めよう。

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:18:04.27 ID:i2kbCJ8E0


部屋の中央に置かれた、勉強机とは別のテーブルに筆記用具一式を広げて……

私達は肩を並べて、二人きりの個人授業を進めていった。

ほむら「……ここはさっきの公式を使って……」

まどか「あ、そっか。なるほど……」

時々、分かりやすい教え方を考えるのに苦労した箇所もあったけれど、基本的には順調だった。

まどかは飲み込みが良く、少し丁寧に教えてあげればすぐにコツを掴んでくれる。

教えがいのある生徒だ。

ほむら「…………」

こうしてまどかの隣に座って一緒に一つの机に向かって勉強をしていると、自分が普通の女の子に戻ってしまったかのような錯覚に襲われる。

ずっとこの平穏な時間を過ごしていたい、という想いも生まれるけれど、でも。

ほむら(今更後には退けないわ)

後ろ髪を引かれる思いだったが、意を決して行動に移す。

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:18:49.88 ID:i2kbCJ8E0
ほむら「……教科書の例題くらいならもう問題なさそうね」

まどか「うんっ」

ほむら「それじゃあ問題集のほうに取りかかりましょうか。何処にあるの?」

まどか「ちょっと待ってて、今出すから」

そう言うとまどかは立ち上がり、勉強机の方へ向かう。

……いよいよだ。

ごくり、と。私は無意識のうちに、音を立てぬように生唾を飲み込んでいた。

まどか「んしょっ……と」

私の計算通り、まどかは一番下の引き出しに手をかけた。

慣れた動作で中の問題集を取り出そうとして……そして。

まどか「あれ?」

────紺色のソレを見つける。

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:19:29.79 ID:i2kbCJ8E0
まどか「これ……」

ほむら「…………」

まどか「私の、ブルマ?」

両手で包み込むようにして、優しく、ゆっくりと……まどかはブルマを手に取った。

力を入れたら壊れてしまうと信じ込んでいるかのように。

私の位置からではその表情を細かく伺い知ることは出来ないが、彼女の視線は手の中の紺色に釘付けとなっているようだった。

空気がどこか張り詰めたモノに変質した気がしたのは……私だけの錯覚だろうか?

ほむら「……まどか?」

恐る恐る声をかけると、まどかは────

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 09:41:37.85 ID:i2kbCJ8E0
 

・1

まどか「これ……ほむらちゃんの匂いがするよ……」

吸い込まれるように自然な流れでブルマに顔をうずめて、まどかは大きく息を吸い込むのだった。


・2

まどか「これ……ほむらちゃんに貸してあげた……?」

その視線はブルマに向けられてはいたが焦点が定まっておらず、何処か遠く、果てしなき遠い世界を見ているようだった。


・3

まどか「えへ、間違えて引き出しにしまっちゃったみたい♪」

てへぺろ、という言葉が聞こえてきそうなほど軽いノリでまどかは振り向いた。

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 12:35:20.13 ID:X1PoEjSt0
ほむら「……まどか?」

恐る恐る声をかけると、まどかは────

まどか「えへ、間違えて引き出しにしまっちゃってたみたい♪」

てへぺろ、という言葉が聞こえてきそうなほど軽いノリで、こちらへ振り向いた。

まどか「てへぺろー」

というか本当に言った。ベロをちょろっと出して。

まあ、照れ隠しなのだろう。

はにかみながら頬をほんのり赤らめるまどかは可愛らしくて、いつもなら私の心を和ませる魔法をかけてくれるけれど……

ほむら「…………」

今は胸が締め付けられるように苦しい。

……駄目だったの?

95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 12:36:30.39 ID:X1PoEjSt0
まどかがブルマを手にしたときに何かが起こりそうな予感があったのだが、どうやらそれは錯覚だったようだ。

やはり別の時間軸のことを思い出してもらうなんて無理な話だったのだろうか。

また、あの頃のように、同じ時間を歩んでいけるなんて、実現できない奇跡に過ぎないのだろうか……。

ほむら「…………」

まどか「ほ、ほむらちゃん? どうしたの?」

ほむら「え……?」

どうやら落胆が顔に出てしまっていたらしい。

気が付けばまどかが心配そうに私の顔を見つめていた。

ほむら「あ、ううん。なんでもないの」

まどか「でも、なんだかとっても悲しい顔してるよ……?」

ほむら「なんでもない……なんでもないわ、大丈夫よ」

96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 12:44:18.40 ID:X1PoEjSt0
愚かにも程がある。

『まどかに思い出してもらいたい』、なんて身勝手な理由でこんなことをして……

何も起こらなかったからってガッカリして、それを態度に出してしまうなんて。

私は、やっぱり最低の人間だ。

ほむら「…………」

自己嫌悪に陥ってしまうが、今度はまどかに気取られないよう頬の筋肉を意識する。

私はなんとか笑顔を取り繕おうとして────

まどか「あ、も、もしかして、てへぺろがムカついたとか……!?」

ほむら「……え?」

まどかの唐突な発言に、間の抜けた声を返してしまった。

97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 12:55:37.07 ID:X1PoEjSt0
まどか「ご、ごめんねほむらちゃん? てへぺろ嫌いだったんだね……」

……何を言っているのだろうこの子は。

場を和まそうとして、ふざけてみせているのだろうか。

まどか「えと、私もね、最近さやかちゃんから聞いた言葉なんだけど可愛いかなあって思って使ってみたんだけど」

いや、どうやら冗談で言っているわけではないらしい。

まどかは必死に弁明を始めた。

まどか「あ、ち、違うんだよ? 可愛いって、私のことじゃなくて、そんな自惚れたコト言いたいんじゃなくて、えと……っ」

ほむら「……っ」

一生懸命に言葉を探して、身振り手振りを交えるその姿はあまりにも……

ほむら「ぷっ……くくっ」

あまりにも可愛すぎて。

私はつい吹き出してしまったのだった。

98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:04:13.74 ID:X1PoEjSt0
ほむら「ふ、ふふっ。違うわ、怒ってるとか、嫌いとか、そういうのじゃないわよ」

まどか「ふえっ?」

ほむら「ふふっ、と、とっても可愛かったもの、てへぺろ……うふふっ♪」

まどか「え、え……?」

まどかはしばらくきょとんとした表情を見せていたが……少し遅れて状況を把握したらしい。

まどか「あっ……な、なんか馬鹿にしてるでしょ、ほむらちゃん!」

ほむら「そんなことないわ……また見せてもらいたいくらいで……ふふ、あははっ」

まどか「むぅーっ!!」

まどかは目を三角にして、猛犬のようなうなり声をあげる。

猛犬といっても小型犬の類なのだが。

……それにしても、このまどかは表情がコロコロ変わるわね。

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:05:02.57 ID:X1PoEjSt0
まどか「もう! 酷いよほむらちゃん、そんなに笑うなんて!」

まどかは怒っているのに、吊り上がった眉が全然迫力がなくて、顔をリンゴみたいにしているのが可笑しくて、愛おしくて……

ほむら「ふ、ふふっ♪」

私のにやけた口元はしばらくは元に戻らなそうだった。

まどか「あ、あんまり馬鹿にすると私怒っちゃうよ! 激おこプンプンまどだよ!」

ほむら「ぷっ! あは、あははっ!」

また妙なフレーズが飛び出して、私にトドメを刺した。

まどか、もしかしてわざと私を笑い殺そうとしているんじゃないかしら……。

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:06:43.36 ID:X1PoEjSt0


ほむら「あははっ……はあ、はあ、ふぅ……」

まどか「ほむらちゃんのバカ、もう知らないんだからっ!」

ひとしきり声をあげて笑った後には、まどかのご機嫌を取るお仕事が待っていた。

ほむら「ごめんなさい、まどか……あなたがあんまり可愛かったから、その」

まどか「そ、そんなお世辞なんかじゃ誤魔化されないんだからねっ」

まどかはほっぺたを膨らませてそっぽを向いてしまう。まるで子供だ。

いや、まあ確かに私たちは子供なのだが、少なくとも中学二年生のとる態度ではないだろう。

ほむら「……ふふ」

そんな幼なさが残るところも、微笑ましい。

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:07:26.76 ID:X1PoEjSt0
……結局、ブルマを見せることで記憶を取り戻すという狙いは失敗したけれど。

でも、私の落胆と陰鬱な気分は、もうとっくに何処かへ行ってしまった。

ほむら(……これで良かったんだわ、きっと)

私のことを思い出してくれなくたって、まどかはこんなにも愛おしくて、私を笑顔にしてくれる。

それだけで充分に幸せなのだから。

むしろ、過去の時間軸の記憶を取り戻したらきっと辛いことも思い出してしまうかもしれないし……。

ほむら(うん……これでいいんだわ……)

もう忘れよう。まどかに無理やり過去を思い出させるなんて、そんな身勝手な考えは。

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:08:44.04 ID:X1PoEjSt0
ほむら「本当にごめんなさい、まどか」

ほむら「お詫びになんでもするから……許してくれないかしら?」

まどか「……なんでも?」

ほむら「ええ、なんでもよ」

まどか「ホントにホントになんでもしてくれる?」

ほむら「本当よ」

まどか「……えと、そ、それなら……」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 13:13:25.73 ID:X1PoEjSt0
(まどかの要望の候補を三つ安価で決めて、その内のどれか一つを採用)

>>105
>>106
>>107

110: >>1 2013/11/22(金) 15:34:46.78 ID:X1PoEjSt0
1.ほむらちゃんのブルマちょうだい!

2.私の背中を洗って、お風呂で

3.私の背中に乗って

4.ほむらちゃんの今はいてる黒ストちょうだい

>>112



※ブルマくんくんはなんやかんやが済んでからになります

112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 15:38:07.76 ID:ZqpEsiU3o
2

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/26(火) 18:54:04.10 ID:wTb4ZzVT0
まどか「一緒にお風呂に入って、とか」

ほむら「……え?」

まどか「私の背中を流してほしいな、とか……そういうのでも、いいの?」

まどかのお願いは、私の想像の遙か斜め上だった。

ほむら「っ……!?」

頬が熱い……ううん、顔だけじゃなくて身体に火がついて一瞬で私の脳みそが沸騰してしまう。

一緒にお風呂に入ってほしい? 背中を洗って欲しい?

なんでも聞くとは言ったけれど、何故お風呂なのだろうか。

まどかはそんなに私と裸の付き合いがしたいのだろうか。

でも、今回の時間軸じゃ、まだ少ししか交流がないのに、まだそんなに親しいわけでもないのに、なんで?

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/26(火) 18:55:17.13 ID:wTb4ZzVT0
ほむら「そ、その……まどか? お風呂って……本気で……?」

まどか「え……ふえっ!?」

私が尋ねると、まどかは目を見開いて飛び跳ねた。

ほむら「まどかは、私とお風呂に入りたいの?」

まどか「え、あ、ち、違っ、その……あ、あれ、わ、私なんでお風呂だなんて……ひゃああっ!」

取り乱して、妙な悲鳴をあげるまどか。

どうやらさっきのお願いは、無意識でうっかり口にしてしまった類のものらしかった。

私に指摘されて、自分の発言の大胆さに気が付いたのだろう。

……でも無意識で言った、ってことなら、なおさらまどかは……そういう願望が、えと。

まどか「う、うううー……!」

まどかは両手で自分の顔を覆い隠してうずくまってしまったが、指の隙間から真っ赤な頬が見え隠れしていた。

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/26(火) 18:55:51.96 ID:wTb4ZzVT0
ほむら「ええと……」

なんて声をかけてあげればいいのかしら……。

まどか「ち、違うのほむらちゃん! 今のは、その、口が滑ったっていうか、変な気持ちがあったわけじゃなくて」

ほむら「そ、そう……」

まどか「なんだかずっと前にもそんな約束をした気がするっていうか、ずっとほむらちゃんとお風呂に入りたかったっていうか……」

ほむら「……え?」

まどか「って、ひゃっ!? わ、私また変なこと言って……い、今のはナシ! なしだからねほむらちゃん!」

……今、まどかは何て言った?

ずっと前にもそんな約束をしたような気がした?

ずっとほむらちゃんとお風呂に入りたかった?

……後半は凄く気恥ずかしく聞こえるものだけれど、そっちの意味では深く考えないでおこう。

それより私にとって重要なのは、『ずっと』という言葉の意味だ。

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/26(火) 18:56:35.54 ID:wTb4ZzVT0
会って間もないはずの彼女が『ずっと』なんて言い方をするのはおかしい。

いや、おかしくはないかもしれないが違和感がある。

まるで私のことを『ずっと』知っていたかのような口振りではないか。

ほむら(それって、もしかして)

時間遡航者である私にだけ感じ取れるその違和感は、一度諦めた私のワガママを再び燻ぶらせる火種となる。

ほむら(やっぱり、まどかは記憶が……?)

だかそうなると疑問も生まれる。

まどかは『ずっと前にもそんな約束をした気がする』と言ったけれど……

しかし、私には一緒にお風呂に入る約束なんてした覚えはない。

この時間軸ではもちろん約束していないし、過去の時間軸全ての記憶を辿ってもそんな事実はないのだ。

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/26(火) 18:58:15.30 ID:wTb4ZzVT0
ほむら(なら、まどかはなぜ『約束した気がする』なんて言ったの?)

ほむら(この奇妙な齟齬は何を意味するの……?)

ほむら(ただ単に、慌てて変なコトを口走ってしまっただけ?)

ほむら(『一緒にお風呂に入りたい』なんて大胆なことを言ってしまったから誤魔化そうとしただけなのかも……)

ほむら(あるいは、別の時間軸の記憶が混ざり合って、過去の記憶を捏造してしまったとか……?)

ほむら(記憶がこんがらがって、したこともない約束をしたような錯覚に陥っているのかもしれないわ)

ほむら(だとしたら少し危険な兆候なのかもしれない……)

ほむら(…………)

ほむら(……考えすぎかしら)

ほむら(とりあえずどうするか決めましょう。ここはひとまず……)

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/02(月) 08:35:42.02 ID:Xdo+OPbG0
ほむら(……そうだわ)

さてどうしようか、と悩んでいた私に突如として天啓の如く一つのアイデアが降りてきた。

ほむら「ねえ、まどか。確か最近この近くにスーパー銭湯が出来たのよね」

まどか「えっ?」

急な話題の転換に目を白黒させるまどかに構わず、私は続ける。

ほむら「ほら、学校でも話題になっていたでしょう。岩盤浴も露天風呂もあるって」

まどか「あ、うん……」

ほむら「……良かったら、みんなで行ってみない?」

まどか「え? みんなで?」

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/02(月) 08:38:09.07 ID:Xdo+OPbG0
ほむら「そう、美樹さんと志筑さんも誘って。ダメ……かしら?」

まどか「だ、ダメなんかじゃないよ。でもどうして急に、みんなでなんて」

まどかの疑問ももっともだ。

だから私は躊躇いながらも正直に答えることにした。

ほむら「……だって、二人きりでお風呂なんて、ちょっと恥ずかしいし……だから、その」

まどか「っ……! そ、そっか、そうだよね」

みなまで言わなくても察してくれたらしい。

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/02(月) 08:38:50.61 ID:Xdo+OPbG0
まどか「う、うん! 今度、二人を誘ってみよっか!」

まどかは大袈裟に頷いてみせると、私の提案を受け入れてくれた。

ほむら「……決まりね」

……良かった。もし断られたらちょっぴりショックだものね。

ひとまずはホッと胸をなで下ろす。

これで、一緒にお風呂に入って、まどかの様子を見てみることが出来る。

どんな反応をするのか、じっくりと観察しなければ……。

152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/02(月) 08:39:57.48 ID:Xdo+OPbG0
……いや、観察と言ってもイヤらしい意味ではない。

ただ、まどかの記憶を取り戻す手掛かりを見つけられるのではないかと思っているだけなのだ。

決して裸が目当てなのではないことを私の名誉のために主張しておこう。

ほむら(……私は誰に言い訳しているのよ)

どうやら今から既に緊張してしまっているらしい。

まどかとお風呂に入るなんて初めての経験だから、色々と余計なことを考えてしまう。

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/02(月) 08:40:58.33 ID:Xdo+OPbG0
まどか「えと……えへへ」

まどかは、どうなのだろうか。

私とお風呂に入ることに何か特別に思うことはあるのだろうか……。

まどか「約束だよ、ほむらちゃん」

ほんのりと頬を染めたまどかの笑顔からは、私の思い上がりでなければ……

確かな『期待』を伺い見ることが出来た……気がした。

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:51:09.71 ID:G7dekFgT0


その翌日の放課後。

美樹さんと志筑さんを誘ってみたところ話はトントン拍子に進んで、私達は早速スーパー銭湯へ来ていたのだった。

さやか「わお、結構キレーなとこじゃん」

エントランスに入っての美樹さんの第一声は、概ね同意出来るものだった。

新築なだけあって汚れや埃なんてものは一切見当たらないし、ホテルのような清潔感ある内装は私の想像する銭湯とは全く異なっていた。

平日の夕方ということもあり、お客さんの姿は疎らだ。

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:52:20.42 ID:G7dekFgT0
仁美「私、お友達と裸のお付き合いをするのが夢でしたの?♪」

幸運にもお稽古事のスケジュールが空いていた志筑さんは、ちょっと意外なことに、かなり上機嫌。

さやか「でも仁美、銭湯のマナーとか分かるの? タオルを湯船につけちゃいけないんだよー?」

仁美「ふふ、それくらい知っていますわ♪」

よっぽど楽しみだったのだろうか。

普段の彼女よりも柔らかい表情を浮かべている。

163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:52:55.00 ID:G7dekFgT0
まどか「私もみんなとお風呂なんて初めてだから嬉しいな、えへへ」

まどかも嬉しそうで、私も嬉しい。

嬉しいのだけれど……。

さやか「でもあたしらは修学旅行で一緒に入ったことあるじゃん?」

まどか「うーん。それはそうだけど、なんか違うっていうか」

仁美「あの夜のあそこはキツキツでしたわよね、みなさんで入るには」

どうやら三人は過去に一緒にお風呂に入ったことがあるらしく、修学旅行の思い出話に花を咲かせた。

さやか「あー、それに出るの早かったしね」

まどか「だよねだよね、あんまし気持ち良く入れさせてくれなかったし」

仁美「やっぱりもっとゆっくり味わいたいものですわよねー」

記憶の中の入浴時間に不平不満を漏らしながらも、その思い出を共有できる彼女たちはどこか楽しげだ。

……でも、転校生である私には、その輪に入ることが出来ない。

164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:53:25.46 ID:G7dekFgT0
ほむら「……………」

小さなトゲがチクリと私の胸を刺した。

やっぱり私は、単なるクラスメートに過ぎないのだ、と。

部外者に過ぎない、別の時間を歩む『外れた』存在なのだと、改めて現実を見せつけられて────

まどか「……ほむらちゃん!」

ほむら「えっ?」

と、私の思考を中断させたのはまどかの呼ぶ声。

まどか「今年の修学旅行は一緒に楽しもうね♪」

満面の笑顔を咲かせて、愛しい彼女はそう言う。

165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:54:34.31 ID:G7dekFgT0
ほむら「……まどか」

また、気を遣わせてしまったみたいね。

ほむら「……ふふ、そうね。一緒に、修学旅行に行けると嬉しいわね」

まどか「うん!」

そのためにも、今度こそまどかを……。

決意を新たにして、気持ちを引き締め、私は脱衣所へ向かう。

さやか「あははっ、ほむら顔がシリアス過ぎ!」

……笑われてしまった。

166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:55:21.92 ID:G7dekFgT0


お風呂というものは、落ち着いてリラックスして楽しむべきものだと思う。

そう、お風呂に入る時は誰でも自由でなんというか救われてなければダメなんだ、静かで豊かで安らかで……。

などと、ほんの数分前まで考えていたのだけれど。

────やはり、緊張する。

ほむら「…………」

やたらと広い脱衣所に入ってから、私の動きは目に見えて鈍くなってしまった。

銭湯がそういうものとはいえ、どうしても他人の前で服を脱ぐことに抵抗を感じてしまう。

ほむら(どうしよう)

そもそも銭湯経験が少ない私には色々と勝手が分からないことばかり。

私はみっともなくあちこちに視線を泳がせて、皆の様子を伺った。

上から脱げばいいのか、下から脱げばいいのか……いや、そんなこと悩んでも仕方がないのか……。

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:55:58.65 ID:G7dekFgT0
さやか「もぉ、ほむら! 何ジロジロ見てんのよ、●●●!」

ほむら「ふえっ?!」

不意を突かれて、変な声を出してしまった。

さやか「そんなにさやかちゃんの下 が気になるのかー? うっふん♪」

おどけた口調で茶化しながら、下 姿の美樹さんはいかにもなセクシーポーズをとってみせた。

強調された胸に目が行きそうになってしまい、私は慌てて顔を背ける。

……美樹さんって結構あるのね。

ほむら「わ、私は別にジロジロ見てなんかいないわ」

さやか「あはは、冗談だよ冗談」

ほむら「もうっ……」

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:56:26.12 ID:G7dekFgT0
美樹さんの相変わらずのデリカシーのなさに閉口していると、

まどか「……むーっ」

ほむら「?」

まどかの方から何か不満げな唸り声が聞こえた……ような気がした。

ほむら「どうかしたの?」

まどか「えっ? あ、な、なんでもないよ!」

……勘違いだったのかしら?

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:57:21.86 ID:G7dekFgT0
まどかの様子も気になるけれど、しかしいつまでもここでモタついているわけにもいかない。

キョロキョロしてたらまた美樹さんにからかわれてしまうし、私は意を決して周りの目は一度完全に忘れることにする。

ほむら(……よしっ)

さっさと用意してお風呂に入ってしまおう。

自宅でしているのと同じように手早くシャツとスカートを脱ぎ捨て、下 に手をかけてブラのホックを外して……

仁美「まあっ、暁美さんの肌、とっても綺麗ですわぁ♪」

ほむら「っ!!」

急激に耳が熱くなって、手を止める。

何を言い出すのよこの子は。

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:58:34.29 ID:G7dekFgT0
仁美「色白で、きめ細かくて……少し触ってみても?」

ほむら「や、やめてくださいっ……」

私は身構えて後ずさり、手を伸ばしてきた志筑さんから逃げて……

その拍子に、先ほどホックを外したブラがずり落ちてしまった。

ほむら「あっ……」

無防備に晒された私の●●が生暖かい室内の空気に触れる。

何とも言えない開放感を一瞬味わって、背筋をぞくりとしたものが駆け上がって────

ほむら「……っ!!」

私は慌ててタオルで胸元を隠した。

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 08:59:27.33 ID:G7dekFgT0
仁美「あ、ごめんなさい。びっくりさせちゃったみたいで」

ほむら「い、いえ、平気です……」

羞恥で身体が燃えるように熱い。ここ最近そんなことばっかり言ってるような気がする。

このままでは入浴する前にのぼせてしまうんじゃないかしら。

そうだわ、まずは水風呂に入りましょう。そうしましょう。

というか、よくよく考えたら湯船に浸かるときは結局全裸になるんだから、えと、胸を見られたくらいで慌てるのもナンセンスなわけだし……。

ほむら(……落ち着きましょう、いったん)

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/05(木) 09:00:05.34 ID:G7dekFgT0
アレコレ考えているうちに、少しは冷静さを取り戻す。

別に肌を見られたって死ぬ訳じゃないのだ、気にするな、と私は自分に言い聞かせた。

ほむら「……私なんかより、志筑さんのほうが綺麗な肌だと思うわ」

平静を装って、志筑さんの手足を眺めながらそう言ってみたりする。

仁美「あら? うふふ、そうでしょうか。お世辞でも嬉しいですわ♪」

ほむら「お世辞ではなくて本心よ?」

仁美「まあっ、照れちゃいますわぁ」

そんな冗談めかしたやり取りをしていたら少し余裕も戻ってきて……

まどか「……むむむーっ」

ほむら「?」

また、まどかの方から何か聞こえたような?

188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:10:06.08 ID:stn77dPO0


女子らしく騒々しい脱衣をようやく終えて、私達は大浴場に移動した。

……色々とモタついたせいで物凄く時間がかかった気がするわ。脱衣場に入ってからもう五日くらいたったんじゃないかしら。

もちろんそんなわけはないのだが、そんなくだらないことを考えてしまう原因は……

ほむら(……やっぱり恥ずかしいわね)

タオル一枚しか身に纏うものがないこの状況が、私の思考を鈍らせているのだろう。

さやか「さーて、まずはどのお風呂入る?」

湯気で霞む浴場内を見回しながら、美樹さんが言う。

189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:11:08.69 ID:stn77dPO0
当然ながら彼女も一糸まとわぬ姿なのだが、私ほど周囲の目を気にした様子はない。

大ぶりな二つの膨らみが大胆にその存在を主張しており、中学生でありながら『オトナ』のボディラインを形成し始めているのが窺えた。

仁美「悩んでしまいますわねー」

志筑さんは美樹さんほど肉付きが良いわけではないが、お嬢様らしい上品な立ち振る舞いが、ある種の艶っぽさを生み出している。

歩き方一つ取っても、私のような庶民とは違う。
凛と背筋を伸ばした姿勢でありながら堅苦しさはなく、柔らかな印象を見る者に与えた。

確か日本舞踊か何かを習っているのだと言っていたから、きっと稽古で身に付けた動作が日常でも自然と出ているのだろう。

190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:11:44.73 ID:stn77dPO0
そんな二人に対してまどかは……

まどか「ううー……」

俯いて、縮こまって、肌をほんのり朱色に染めて。

可愛い猫のキャラクターが描かれたタオルで、その凹凸の少な……小柄な身体を隠していた。

……色んな意味で親近感が涌く。

若干、私の緊張もほぐれる気がした。気がしたのだけれど……

まどか「……あっ」

ほむら「っ……」

まどかと目が合ってしまい、また頭の中が真っ白になって、私は反射的に天井を見上げて誤魔化した。

うん、染み一つない天井ね。よく清掃が行き届いている証拠だわ。

感心感心。

191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:12:29.06 ID:stn77dPO0
さやか「どったの? 天井に何かあるの?」

きょとんとした顔で美樹さんが尋ねる。

まあ彼女の反応は当然だ。突然連れが天を仰いだら気にもなる。

ほむら「あ、いえ……水滴の数を数えていただけよ」

口からデマカセ。

我ながら適当な返答だったが、美樹さんは特に追及してこなかった。

さやか「はあ。ま、いーや、ほむらは何のお風呂に入りたい?」

ほむら「ええと……」

192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:15:03.89 ID:stn77dPO0
この銭湯では通常のお風呂からジャグジー風呂、電気風呂、ワイン風呂、おりこ風呂と多種多様なお風呂が楽しめることが売りになっていた。

ある意味、アミューズメントパークのようなものとも言えるのかもしれない。

しかし私にそれを楽しむ精神的余裕は今のところなくて。

ほむら(正直、どれでもいいから早くお風呂に逃げ込みたいわ……)

湯船に浸かればこの貧相な身体を晒さずに済むだろうという発想しか出てこかった。

……誰が貧相な身体よ。

まどか「あ、あのねさやかちゃん」

などとどうでも良い一人漫才をしていたら、私が答える前にまどかが口を開いた。

193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:15:48.57 ID:stn77dPO0
さやか「お、まどかは入りたいのがある?」

まどか「ううん、そ、そうじゃなくて、その……」

視線をあちこちに泳がせて、太ももをモジモジと擦り合わせるように動かして……あからさまに落ち着かない様子だ。

もしかして催しちゃったのかしら?

さやか「なーに、トイレ?」

まどか「ち、違うよ! もうっ、さやかちゃんのバカっ」

仁美「さやかさん、もう少し婦女子としての自覚を持たれたほうが……」

さやか「うっ……ご、ごめんなさい……」

……トイレならあっちよ、とか言わなくて良かった。

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/09(月) 19:16:26.53 ID:stn77dPO0
仁美「こほん。ええと、それでまどかさん……どうかしましたの?」

まどか「あ、うん。あのね……」

既に入浴した後のように上気した顔で恥じらうその姿は、例えるなら愛の告白を成そうとする乙女。

まどか「お風呂に入るなら、その」

でも、まどかの口から告げられた言葉は……

私にとって、甘酸っぱい青春の一幕と言うには少々刺激的過ぎるものなのだった。

まどか「まずは、か、身体を洗わないといけないと思うの!」

ほむら「!」

ちらり、と。まどかが一瞬だけ私に視線を送る。

間違いなく、私に何かを期待している眼で。

204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 08:59:38.66 ID:StI6M7sp0
仁美「ああ、確かに……公衆浴場ではまず身体の汚れを落としてから入浴するのがマナーですわよね」

さやか「まどかはマジメだねー」

まどか「え、えへへ」

美樹さん達はそういうふうに解釈したみたいだけれど、私は違う。

まどかが何を意図しているのか、はっきりと分かってしまった。

ほむら(そ、そうよね……元はといえば、そういう約束だったわけだし……)

あえて考えないようにしていたけれど、やはり駄目なようだ。

私は、まどかの背中を流してあげなければならないのだ。

205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:00:14.77 ID:StI6M7sp0
さやか「じゃあパパッと洗って、早くお風呂入ろっか!」

仁美「パパッとじゃダメですわよ? ちゃんと洗わないと♪」

さやか「へーい」

そんな他愛のないやり取りをしながら、美樹さんと志筑さんは洗い場のほうへと向かう。

ほむら「…………」

まどか「……わ、私たちもいこ? ほむらちゃん」

ほむら「え、ええ……」

嫌な訳じゃないけれど、私の足はやけに重たくて、『牛歩戦術』とかいう単語が脳裏を過ぎる。

いや、牛さんはこんなコトで動揺したりしないはすだ。

友人の肌に触れることを想像してドキドキしたりなんてしないはずだ……。

ほむら(……何を考えているのかしら、私)

訳が分からないわ。

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:01:33.14 ID:StI6M7sp0
…………。

のろのろ歩いたところで未来が変わるわけでもなく。

結局私達たちはシャワーが備え付けられた洗い場にたどり着いてしまったのだった。

さやか「へえ、ちゃんとシャンプーもリンスもあるもんなんだね」

仁美「その辺りに関しては店舗によるそうですよ」

さやか「ふーん。ま、さやかちゃんは持参した入浴セットを使うんだけどねー」

気楽な様子で雑談しながら、椅子(銭湯特有のアレだ)に腰を下ろす二人。

彼女らが着々と身体を洗う準備を進めていく横で、私とまどかは……。

まどか「…………」

ほむら「…………」

チラチラとお互いの顔を窺って、どちらも座ることが出来ずにいた。

端から見れば、不審そのものだろう。

207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:02:42.94 ID:StI6M7sp0
ほむら(……この状況で『背中を流してあげるわ』、って言い出すのも……)

絶対に、美樹さんにからかわれる。

志筑さんも必要以上にイイ顔になってしまうに違いない。

それは少し……いや、かなり恥ずかしい。

なんとか自然な流れで、まどかの背中を洗ってあげたいのだけれど、難しそうだ。

まどか「ねえ、ほむらちゃん……その……」

まどかは落ち着かない様子で指先をクルクルと動かして、何度も何度もお腹に円を描いている。

『ほむらちゃん……早くしてよぉ……私もう我慢出来ないよぉ』

そんな心の声まで聞こえてくる……ような気がした。

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:08:37.82 ID:StI6M7sp0
ほむら(くっ……)

あまりまどかを待たせるわけにはいかない、と分かってはいるのだ。

モタモタしていたら美樹さん達にも不審がられるだろう。

しかし。

ほむら(とは言っても……どうすれば良いの……?)

決して、まどかの背中を洗うのが嫌なわけではない。

むしろ、友人として信用されている証と思えば光栄なことだし、小躍りしたくなるような心境だ。

でも、ひたすらに……恥ずかしい!

してあげたいけどするには私の勇気が足りなくて、嗚呼、あと一歩が踏み出せない自分が恨めしい。

……いっそ隕石が墜ちてくるとか、魔女が現れるとか、都合の良い展開は訪れないかしら……。

「わー! こんなにおっきいの初めて!」

ほむら「っ……!?」

209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:09:19.72 ID:StI6M7sp0
「キョーコ、キョーコ! こっちこっち、早くきてよー!」

ほむら(この声は……)

聞き覚えのある、子供らしい甲高い声が銭湯に響いた。

杏子「おいおい、あんまはしゃぐなよ」

ゆま「はーい、ごめんなさーい。……えへへっ♪」

現れたのは隕石でもなく魔女でもなく────二人の魔法少女。

ほむら(佐倉杏子。それに、チ、千歳ゆま……!)

210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/19(木) 09:10:00.81 ID:StI6M7sp0
仁美「ふふ、元気の良いお子さんですわね」

さやか「姉妹かな? 似てないけど」

準備万端だった二人も手を止めて、佐倉さん達のほうへ視線を向ける。

その目は騒がしい子供を非難するようなものではなく、微笑ましく見守っている、といった感じだ。

まどか「どうしたの、ほむらちゃん? あの子たちをじっと見つめて……」

ほむら「あ、いえ……その」

まどか「もしかして、知り合いだったりする?」

ほむら「……違うわ。そういう訳じゃないわ」

嘘はついていない。

この時間軸ではまだ、顔を合わせるのも初めてなのだから。

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/20(金) 20:05:12.83 ID:IufokCza0
……あの子たちの登場に少し驚いたけれど、あまりジロジロ見ない方がいいわね。

まどかにも少し不思議がられているし、佐倉さんに警戒されても困る。

私は千歳ゆまからまどかの方へ向き直り……

ゆま「そうだ、ねえキョーコ! ゆまが背中を洗ってあげるよ!」

ほむら「!?」

少女の無邪気すぎる発言に、全身が強ばって固まった。

216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:05:43.49 ID:IufokCza0
杏子「はあ? いらねーよそんなの」

ゆま「ダメダメ! キョーコってばいっつもテキトーなんだもん、たまにはゆまが洗ってあげないと!」

杏子「ったく……わーったよ、好きにしろ」

ゆま「わーい♪」

全く邪な気持ちのない、純粋な厚意が眩しい。

私もあんなふうに言えたらどんなに楽か……。

さやか「あはは。ほほえましいねー」

仁美「ふふ、そうですわね。洗いっこだなんて羨ま……あ、そうですわ!」

さやか「うん?」

仁美「せっかくだから私たちも洗いっこ致しましょう!」

さやか「ええっ?!」

ほむら「!?」

217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:06:43.98 ID:IufokCza0
仁美「わたくし、お友達と流しっこするのが夢でしたの~♪」

さやか「い、いや、さすがにそれは恥ずかしいっていうか」

なんと好都合なのだろうか。

志筑さんの提案は私にとって正しく渡りに船。この機を逃すわけにはいかない。

ほむら「……良いんじゃないかしら。面白そうじゃない」

さやか「ほ、ほむらまでっ」

まどか「う、うん! 私もいいと思うなー、えへへっ」

さやか「お、おおう……」

仁美「ふふ、そうと決まれば早速……さあさあさやかさん、お背中を流して差し上げますわー」

さやか「……ま、いっか♪ 頼むぞ仁美ー」

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:08:39.94 ID:IufokCza0
……やった。

まどかが後押ししてくれたことで、美樹さんもその気になってくれたようだ。

しかも志筑さんがペアを組んでくれたことで、自然と私とまどかの組み合わせが出来上がる。

ありがとう、志筑さん。

こうも上手くコトが運ぶと何者かに踊らされている気がしないでもないけれど構わない。

ほむら「じゃあ……わ、私がまどかの身体を洗ってあげるわね」

まどか「う……うん、よろしく、ね……」

いよいよ、その時が来たのだ。

219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:09:09.75 ID:IufokCza0
まどか「えと、ここに座ればいい……かな?」

ほむら「何処でも構わないわ」

まどかを座らせて、私はタオルを手に取った。

白くシミ一つないまどかの背中が、私の目の前に、すぐに触れられるほど近くにある……。

ほむら「……っ」

改めて、これまでの時間軸でも経験したことのない裸の距離を実感し、また鼓動が早くなった。

やっぱり、緊張するわ……。

220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:09:48.86 ID:IufokCza0
まどか「……えへへ」

まどかは何度もモジモジとお尻をずらしては座り直している。

私の位置からでは後頭部しか見えないけれど、洗い場に設置された大きな鏡を見れば……。

口元が緩んだ、幸せそうなまどかの顔が映っていた。

ほむら(……しっかり、洗ってあげなきゃ)

まどかの期待を裏切るわけにはいかないものね。

私は、余計な雑念は捨てて、この行為に専念することにした。

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:10:29.07 ID:IufokCza0
ほむら「じゃ、じゃあ……こするわね……」

まどか「うん……」

そっとタオルをまどかの背に触れさせて、両の手を上下運動させる。

ほむら「こう……かしら?」

まどか「あっ……つっ!!」

悲痛な声と共にまどかの身体が跳ねた。

しまった、なんてこと……!!

ほむら「ご、ごめんなさい! 痛かった?」

まどか「う、うん、ちょっとだけ……」

布をどけてみれば、まどかの陶器のような美しい肌がうっすらと紅くなってしまっている。

嗚呼……まどかを傷つけてしまった……!

222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:11:32.22 ID:IufokCza0
まどか「その……も、もっとちゃんと濡らしてからにしてほしいな」

ほむら「ごめんなさいまどか……私、こういうの初めてだから、下手で」

鏡の私は今にも泣き出しそうな顔をしている。

情けなくて、悔しくて、私はまどかの背中に隠れて鏡の世界を遠ざけた。

まどか「ううん、大丈夫だよ。初めてなら、仕方がないもんね」

ほむら「まどか……」

まどか「でも、今度は、もうちょっと優しくしてね……えへへ」

痛かったはずなのに、私のことを嫌いになってもおかしくないのに、まどかはそう笑ってくれた。

こんな私にもう一度チャンスをくれるのね……まどか。

ほむら「わ、わかったわ」

同じ過ちを犯すわけにはいかない。名誉挽回しなければ。

223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/20(金) 20:12:19.36 ID:IufokCza0
ほむら「優しく……優しく……」

美術品の手入れをするかのように慎重に。

それでいて、幼子をあやしてやるかのように愛情を込めて。

私の手はまどかの背を撫で回していく。

まどか「んっ……」

ほむら「どう、かしら……?」

恐る恐る尋ねた私にまどかは、

まどか「はふぅ……うん、気持ちいいよ、ほむらちゃん……」

と、目を細めて切なげな吐息を一つ吐く。

私の指先からも、まどかの身体から緊張が抜けていったことが感じられた。

ほむら「……! そう、良かった……」

まどかが私の手で気持ち良くなってくれることがこんなに嬉しいなんて……。

幸せすぎて、気絶してしまいそう。

232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:27:26.37 ID:RrjIIeAk0
ほむら「え、えと……次は、この辺を……」

小さな背中の上半分は大体洗い終えたので、次は下半分。

タオルを握る手が肩甲骨の周辺部から下りていって、腰辺りに触れた瞬間────

まどか「ん……ひぁっ!」

再び、まどかの悲鳴が上がる。

頭の中で、サア、と血の気が引く音が聞こえた。

ほむら「ご、ごめんなさい! 私ったらまた……!」

まどか「ち、違うよ、痛かったんじゃないよ」

ほむら「え?」

またしてもまどかに痛い思いをさせてしまった、と狼狽える私に、まどかは予想外の言葉を返す。

まどか「ちょ、ちょっと……その、今のトコが……ビックリするくらい気持ち良くて……」

ほむら「っ……!」

233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:28:55.66 ID:RrjIIeAk0
決してイヤらしい意味ではないと分かってはいるのだけれど……

あまりにも刺激が強すぎて、頭がクラクラして、本当に意識を手放すところだった。

ほむら「そ……そう、なの……」

絞り出した声はか細く、まどかの耳に届いたかどうかも怪しい。

ほむら(まどか……まどかは、ここが弱いのね、ここが……)

まどか「あんっ……! あ、ほ、ほむらちゃ……?」

こうやって軽く撫でただけなのに、なのに……あんな声を……。

まどか「だ、ダメっ、ほむらちゃ…………」

ほむら「えっ? あ……!」

嫌がるまどかの台詞で正気に戻り、慌てて手を止める。

私は気がつけば無意識の内に、もう一度まどかの  に触れてしまっていたのだった。

いや、触れたというよりは……その、あ、愛 するみたいな手つきだったような……。

234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:29:30.88 ID:RrjIIeAk0
ほむら「っ!! ご、ごめんなさい!」

ああ、また馬鹿な真似を……!

ほむら「ご、ごめんなさい。その、私、調子に乗っちゃって……」

まどか「だ、大丈夫だよ! ちょっと気持ち良過ぎただけだし……」

ほむら「でも……私なんかにヘンなところを触られて、嫌だったんじゃ」

まどか「ううん! わ、私、ほむらちゃんにならドコを触られたって嬉し……」

ほむら「……えっ?」

まどか「あ……ひゃあっ?! い、今のは、そのっ……」

……なんだか、とんでもない爆弾発言が飛び出したような気がする。

235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:33:16.56 ID:RrjIIeAk0
ほむら「と、ところでこのボディーソープ、どうかしら! 私のお気に入りなのだけれど」

あえて何も聞かなかったことにして、強引に別の話題を振ることにした。

まどか「えっ!? あ、ほ、ほむらちゃんも自分で持ってきてたんだ!」

ほむら「え、ええ。いつものじゃないと落ち着かないから……」

まどか「ふ、ふぅん……くんくん。そっかこれがほむらちゃんの匂いなんだー」

若干……いや、かなりわざとらしかったけれど、流れを変えることは出来たようだ。

まどか「あ……でも……じゃあ今、私……」

ピンク色の会話を公共の場で繰り広げる勇気は私にはない。

このまま普通の雑談を続けたいところだけれど……私の思惑とは裏腹に、まどかは。

まどか「私……ほむらちゃんとおんなじ匂いになっちゃったんだね……えへへ……」

ほむら「っ……!」

またなんとも妖しい発言で、私の不意を突いてくれた。

236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:34:40.83 ID:RrjIIeAk0
頭の中に浮かんだイメージは、私の肌とまどかの肌が触れ合う光景。

裸の私たちが絡み合って、互いの匂いを嗅ぎ取って、じゃれあう……そんな、そんな●●なワンシーン……。

ほむら(……だ、ダメ! 変なこと想像しちゃ……!)

まどかの不意打ちに、良からぬ妄想を繰り広げてしまった。

こ、こんなこと考えて……私まるで、発情しっぱなしの、へ、ヘンタイさんみたいじゃない……。

ほむら「っ……!」

頭を振って、R指定の映像を脳内から追い出して、妙な空気を誤魔化そうとして……

ほむら「えと、その……じゃあ、次は前を……洗う?」

まどか「えっ!?」

……って、何を口走っているのよ私は!

237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/27(金) 19:35:26.30 ID:RrjIIeAk0
まどか「ま、前も……洗ってくれるの?」

ほむら「い、いえ! 前は自分でやるわよね。ごめんなさい、今のは忘れて頂戴」

まどか「え……う、うん……」

流石にそれは絵的にも私の理性にも不味いので、慌てて前言撤回。

期待の籠もった眼差しを向けられていたような気がしないでもないけれど、心を鬼にして無視する。

ほむら(も、もう下手に喋らないほうが良いわね……)

また妙な展開になっても困るので、私は口を閉ざすことに決めたのだった。

まどか「……ほ、ほむらちゃんになら……でも、そんな、ううう……!」

……何も聞こえないわ。ええ、何も。

245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:20:23.82 ID:uWNl1MGt0


黙々と背中を擦り続けること1、2分。

粗方洗い終えたので最後にシャワーで泡を洗い流してやり……私の戦いは終わった。

まどか「ふぅ……気持ちよかったぁ……」

ほむら「それは良かったわ」

まだ心臓がバクバクしているわね……。

それに、まどかの柔らかな、滑らかな肌の感触と温もりが手に残ってる。

こんなの初めて……幸せなような、何かが変わってしまいそうで怖いような……

ぼんやりとした不思議な感覚が、私のなかでいっぱい。

246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:21:04.37 ID:uWNl1MGt0
仁美「はい、終わりですわ」

さやか「ふひー、さんきゅー仁美!」

と、ちょうど美樹さんのほうも終えたらしく、大袈裟な溜め息が聞こえてきた。

さやか「おっ、ほむらも任務完了したとこみたいだね」

ほむら「任務……? ええ、終わったわ」

仁美「ふふ。それじゃあ、交代と参りましょうか?」

ほむら「……! あ……そ、そうね」

247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:21:41.29 ID:uWNl1MGt0
言われて初めて気がつく。

もう全部やり遂げたような気になっていたけれど、よくよく考えればまだ半分。

次は私が洗われる番なのだ。

ほむら(そ、そうよね……当たり前よね)

しかし私は、まどかに直接身体を触られるなんてことに……耐えられるのだろうか。

彼女の前で無防備に背中を晒して、そして優しく撫で回されるなんて……

ほむら(……だ、ダメっ……そんなの私、死んじゃうわ……!)

248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:23:23.61 ID:uWNl1MGt0
想像しただけで、羞恥心やらなんやらで今度こそ本当に気を失いそうになる。

こ、これは、断らなければならないわ……

嗚呼、しかしそれも、その、勿体ないような……。

まどか「じゃ、じゃあ次は私がほむ……」

さやか「よーし、じゃあ次はあたしがほむらを洗って進ぜよう!」

ほむら「えっ?」

まどか「!?」

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:24:57.38 ID:uWNl1MGt0
さやか「ほれほれ、こっち来なよほむら! さやかちゃんが気持ち良くしてあげるよグヘヘ……」

仁美「まあ、さやかさんたら……はしたない笑い方!」

さやか「ぐへへー」

わざとらしい笑い声をあげておどけてみせる美樹さん。

……この展開は想定外だった。

正直に言ってまどかのことしか頭に無かったので、美樹さんという選択肢が存在するなんて思いもよらなかった。

……でも、彼女にしてもらったほうが……そっちのほうが気が楽で良いかも……?

250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/12/28(土) 20:25:35.61 ID:uWNl1MGt0
まどか「ほ、ほむらちゃ……」

……まどかが捨てられる直前の子犬のような眼で私を見ている。

さやか「どしたのほむら、はよはよ」

何も気がついていないのか、美樹さんは私を急かす。

仁美「あらあらまあまあ……! うふふ♪」

……この子は全部察してるわね。

ほむら「その……ええと」

あまり悩んでいる時間はない。私がとっさに返した返事は……

269: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/14(火) 22:01:09.73 ID:tkJefCDF0
ほむら「わ、私は……まどかに洗ってもらいたいわ」

……言った。言ってしまった。もう取り消すことなんて出来ない。

まどか「ほむらちゃん……!」

まどかの方を見やれば、パアッという効果音が聞こえて来そうなほど笑顔を輝かせていた。

……その愛らしい表情を見れただけでも、私の選択は間違っていなかったのだと胸を張れる。

ただ気がかりなのは、美樹さんの反応だけれど……。

270: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/14(火) 22:02:08.36 ID:tkJefCDF0
さやか「ありゃりゃ、フられちゃった。じゃああたしは仁美を洗ってやるーっ」

仁美「ふふ、お手柔らかに」

私の心配とは裏腹に、意外にも美樹さんはあっさり引き下がってくれた。

いつも通りのお馬鹿な……あ、いや、おどけた様子であり、特に私の発言が気に障ったということもなさそうだ。

仁美「……ふふっ♪」

ほむら「…………!」

志筑さんも何やら満足げに頷くと、意味深なウィンクを私に向けて放った。

……やはり彼女は、私達の関係に感づいているみたいね。

いえ、関係といってもやましいことがあるわけではないのだけれど……ええ、やましいことなんて……。

271: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/14(火) 22:03:01.18 ID:tkJefCDF0
まどか「じゃあ、わ、私がほむらちゃんを洗ってあげるね?」

ほむら「え、ええ」

まどか「えへへっ……嬉しい……」

ほむら「お、大袈裟ね……背中を洗うだけなのに」

まどか「でも、嬉しいんだもん」

林檎ほっぺのまどかは、照れ臭そうに指先をもじもじと遊ばせながらも微笑んでみせた。

ほむら「っ……!」

私の心臓が大きく跳ねる。

……その笑顔が、親友に向けるようなものとはまったく別種のものに見えてしまったから。

272: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/14(火) 22:03:59.34 ID:tkJefCDF0
ほむら(そんな顔されたら……まるで……)

それは喜びと、恥じらいと、愛しさが入り混じった……そう、例えるなら初恋が実った少女の微笑み……。

……じゃあ、恋の相手は私なの?

ほむら(……私ったら、また馬鹿な妄想を)

そんなことあるわけないのに。

あるわけないのに……私の胸の鼓動は、この想いが高ぶるのを強く訴えて続けていた。

ほむら(これじゃむしろ、恋してるのは……)

……駄目。考えちゃ、駄目。

279: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/15(水) 20:56:26.96 ID:mugaKr0I0
まどか「さ、どうぞ座って?」

ほむら「……分かったわ」

まどかに促されるまま、私は彼女の前に用意された椅子に腰掛けた。

目の前の鏡には私とまどかが並んで映っており────

ほむら「っ……」

改めてその光景を目にしてみれば、これからされることを嫌でも意識させられる。

全身の筋肉が、無意味に強張ってしまう。

ほむら(このままじゃ、まどかに気付かれちゃう……)

280: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/15(水) 20:57:12.34 ID:mugaKr0I0
こんなガチガチに緊張していることがバレてしまったら、嫌だ。

何とかして平静を装いたい私は、必死の抵抗を始める。

ほむら(……こんなのなんてことないわ。ただ単に、友達とスキンシップするだけ……なんだから……)

変に意識することなんて何もないんだ、と自分に言い聞かせた。

ほむら(そう、なんてことないんだから……だからこうやって鏡を見つめたって大丈夫……)

その自己暗示を真実とするべく、私は鏡に映る二人の少女の姿をじっくりと見比べる。

これは単なる裸。自分の裸。それと、同性の友達の裸……。

281: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/15(水) 20:57:42.42 ID:mugaKr0I0
私とまどか、小柄な体格は似ているけれど細部は全くことなっていた。

肩、二の腕、腰回り、太股。私の身体はどこも筋張っていてまるで鳥の骨のようだ。

でもまどかは私と違って健康的な体つきをしている。

男の子からすれば美樹さんや巴さんみたいにもっと色気があるほうが良いのかもしれないけれど……

私から見れば、まどかも十分過ぎるほどに魅力的な肢体だ。

きっと抱きしめたら柔らかいに違いない……と、想像が勝手に膨らんでゆく。

……どんな感触がするのかな……ぎゅっ、ってしてみたいな……。

まどか「……ほ、ほむらちゃんの●●●」

ほむら「!?」

282: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/15(水) 20:59:30.32 ID:mugaKr0I0
まどか「そ、そんな目で見られたら、その、私……」

まどかは私の身体の陰に隠れながら、小さく呟いた。

どうやら私の視線はイヤらしい意味合いのものに受け取られてしまったようだ。

……●●●、なんて可愛いんだか卑 なんだか良く分からない言葉で非難されたのは初めてだわ。

ほむら「ち、違うわ、そんなつもりじゃ……。その、えと」

しかし言い訳しようにも、まどかの裸体を見つめてしまっていたことは事実。続く言葉は出てこない。

というか、最後のほうは少し邪念が混じっていたような気もするし……尚更後ろめたい。

283: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/15(水) 21:01:15.67 ID:mugaKr0I0
ほむら「ご、ごめんなさい。私、目を瞑ってるわね」

これ以上まどかを視線で汚すわけにはいかない。

私は瞼を閉じて、黒の世界に逃げ込んだ。

まどか「あ……」

まどかの寂しげな声が聞こえたけれど、その真意は考えないようにしよう。

まどか「……べ、別に良いのに……」

もしかしたら本当は……

本当は見てほしかったのかしら、なんて……。

287: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 12:30:33.95 ID:IJ04FkWB0
まどか「んと……じゃあまずはシャワーかけるね?」

ほむら「任せるわ」

返答の直後、私に温かな雨が降り注いだ。

頭頂部から髪が水分を含んでいき、毛先から雫が滴り落ちる。

雫はすぐに滝となり私の肌を洗い流していった。

……と、そこでふと気がつく。

ほむら(……視界を閉ざすと、余計に肌が敏感になるわね)

どの毛穴が濡れているのか、まだ乾いているのか……一つ一つ確認することが出来そうなくらい、触覚から繊細な情報が届いてくる。

288: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 12:32:49.95 ID:IJ04FkWB0
いや、肌だけでない。聴覚も嗅覚も積極的に周囲を『見よう』としている。

美樹さん達の会話。浴槽に注がれる熱湯の音。私に降り注ぐ水の音。

石鹸の香り、小さな子供のはしゃぐ声、わずかに口に入った水道水の味……。

瞼を閉ざしても、私は世界を鮮明にとらえることが出来た。

これはおそらく、戦いに身を置く魔法少女としての本能なのだろう。

ほむら(いえ、魔法少女というよりは……まるで武人。武の境地に至った達人ね……ふふ)

新たな発見に何やら少し楽しくなってくる。

289: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 12:33:48.28 ID:IJ04FkWB0
まどか「……うん、だいたい流せたし……そろそろ、始めよっか」

ほむら「ええ、お願いするわ」

私の発見を余所にまどかの作業は進む。

シャワーの音が止まり、代わりにどびゅ、びゅるっ、とボディーソープが吐き出される音が背後から聞こえてきた。

まどかの小さな手が白濁した液体に覆われていく様子が目に浮かぶ……。

……いよいよまどかの手によって、私の身体が洗われてしまう時が来たのだ。

ほむら(……でも、それだけのことよ)

しかしながら、私は意外にも平静を保つことが出来ていた。

290: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 12:34:41.21 ID:IJ04FkWB0
まどかの吐息が聞こえても、まどかの体温さえ感じ取っても、私の心は驚くほど静か。

波一つない湖面の如き心象風景が私の奥に広がっている。
澄み切った意識の底には邪念の欠片も沈んでいない。

……どうやら感覚が研ぎ澄まされてゆくのと比例して、頭の中も落ち着いたらしい。

これはまさしく……そう、明鏡止水の境地というやつなのではないだろうか。

まどか「と、ところで……ねえ、ほむらちゃん……知ってる?」

ほむら「なにかしら?」

突然のまどかの問いかけにも動じない。凄いわ明鏡止水。

291: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 12:38:34.55 ID:IJ04FkWB0
まどか「身体を洗うときはね……その、えと」

まどかは何やら躊躇うことがあるらしく、二の句を継げないでいる。

ほむら「ふふ、どうしたの? 言ってみて?」

そんな彼女に対して、優しく促してあげられるくらいの余裕が今の私にはあった。

……こんな穏やかな気持ちになれるなんて初めて……もう何も怖くない。

まどかにどんなことを言われたって、きっと冷静に受け答え出来るはずだわ……

まどか「う、うん……あのね、ほむらちゃん。身体を洗うときはタオルを使うよりも……」

ほむら「ええ」

まどか「……て、手で直接こすってあげたほうがお肌に良いんだって……」

ほむら「……えっ?」

……手で、直接?

300: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:15:09.65 ID:8ZkPFrz80
待ってそれはつまりどういうことなの何故このタイミングでそんな知識を披露するの嗚呼分かっているわまどかつまり貴女は……!

まどか「ほむらちゃんのお肌、こんなにきめ細かくて、ツルツルなんだもん……」

ほんの数秒前まで明鏡止水などとぬかしていた愚かな私はもうとっくに居なくなってしまった。

何か喋るどころか呼吸すら危うくなりかけている。

まどか「き、傷付けちゃいけないし、私……私が、手で、してあげるねっ……」

ほむら「ま、待っ……!!」

やけに鼻息が荒いまどかを制止しようとするも間に合わず────

ぬちゃり、と。私の背中にぬめった両手が密着した。

ほむら「────っ!?!?」

301: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:16:07.14 ID:8ZkPFrz80
声にならない悲鳴をあげ、私の身体は大きく跳ねた。

ほむら(なにっ、コレっ……!?)

ずっと目を閉じていた分、研ぎ澄まされていた触覚が鮮明にまどかの指先の柔らかさを訴えかけてくる。

私の肌は、魔法少女としての優れた感覚は……まどかの手の、ボディソープでぬめった指先の感触を、何倍にも増幅して私の脳髄を●していく……!

ほむら「っ……あっ、ま、まど、かっ……!」

一瞬で頭の中は真っ白になってしまった。もはやまともに言葉を紡ぐことも出来ない。

まどか「えへへっ……それじゃ、する、ね?」

そんな私のことなんてお構いなしに……石鹸塗れの手のひらは、身体を撫で回し始める。

ほむら「っ……!!」

302: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:16:58.35 ID:8ZkPFrz80
まどかの指裁きは繊細で、それでいて激しいものだった。

肩甲骨の周りにグルグルと円を描いたかと思えば、背骨をなぞるように下りてゆき……

私の両脇を抱くように挟み込み、そのままなぶるように上下運動を繰り返した。

ほむら「っ……くっ、う……!」

その動きはまどかがしているとは思えないくらい大胆で……

ひょっとしたら私の後ろにいるのは別の子なんじゃないかと想像してしまうほどで……

まどか「んっ……しょっ……」

けれども、時折漏らす可愛らしい声が、間違いなくまどかであることを証明していた。

303: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:18:53.40 ID:8ZkPFrz80
ほむら「やっ……やめっ……!」

辛うじて絞り出した弱々しい声で懇願しても、その手は休まることはない。

ぐちゅ、ぬちゅ、と音を立てて、まどかは私の背を弄り続けた。

……聞こえないほど没頭しているの? それともわざとなの……?

まどか「……はぁっ、はぁっ……ほむらちゃん、どう……私の手、どう……?」

鋭敏な私の感覚は、まどかのその声だけで甘い痺れを覚えてしまう。

全身は燃え上がっちゃいそうなくらい熱くなって、喉はカラカラで、心臓は爆発寸前だった。

ほむら「っ……んぁぁっ……!」

何とかしないと……このままじゃ気がおかしくなっちゃう……!

304: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:19:49.03 ID:8ZkPFrz80
ほむら(……そ、そうだわ、感覚を遮断すれば……!)

突如、天啓の如く閃いたのは魔法少女の秘密の一つとも言うべき特殊能力のことだった。

痛みを無くして戦える私なら、皮膚の感覚を一時的に無くすことも可能なはずだ。

それなら何も感じずに済む。まどかの指でどんなことをされたって、これ以上の醜態を晒さずに済む……!

ほむら(無視するみたいで、一生懸命頑張ってくれてるまどかには悪いけれど……でも)

でも……その、よ、良過ぎちゃうから……刺激的過ぎすぎるから……。

ほむら(……ごめんなさい)

胸中で詫びてから、私は気づかれぬように全身に魔力を走らせた。

305: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 20:21:42.90 ID:8ZkPFrz80
そして感覚を遮断する魔法を発動させる────その直前で。

まどか「ね……ねえ、ほむらちゃん。ちょっとゲームしない?」

ほむら「えっ……?」

不意にまどかは手を止めて、そんなことを言い出した。

ほむら「げ、ゲームって?」

いったい何のことだろうか。この状況で何をするのだろうか。

……何故だか酷く嫌な予感がして、私は思わず唾を飲み込む。

まどか「その……えと、ね? 今から……」

ほむら「え、ええ……」

まどか「ほ、ほむらちゃんの背中に文字を書くから……なんて書いたか当てて欲しいのっ」

ほむら「っ……!?」

325: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:00:25.24 ID:SXQ/Orzi0
まどかが持ちかけたのは……小さな頃に誰でも一度は経験したことがあるだろう、他愛のない遊戯だ。

でも、待って、それってつまり、そのゲームをするのであれば────。

ほむら(感覚を消すことが出来ないじゃない……!)

それどころか……書かれた文字を判別するためには今まで以上にまどかの指の感触を、じっくりと味わう必要さえある。

今の私にとって、これほど恐ろしい遊びはない……!

まどか「じゃ、じゃあ一文字め、いくね?」

ほむら「っ! ま、待っ……!」

慌てて止めようとするが、制止の言葉はまたしても間に合わず……

まどかの指によって、勢い良く大きな横棒が一本引かれる。

326: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:00:57.18 ID:SXQ/Orzi0
ほむら「んぅっ!!」

堪え切れなかった 声が、私の口から飛び出してしまった。

まどか「ん、しょ……」

ほむら「あっ、ひっ……!」

一画、一画、描かれる度に私の身体は電流を流されたように跳ねてしまう。

ほむら(だめ、いけないわ、みんなが見てるし、いえ、その)

まどか「えいっ、えいっ」

ほむら「ん、あっ!」

やめさせようとして説得の言葉を考えるけれど、まとまらない。

327: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:03:04.31 ID:SXQ/Orzi0
まどか「……えいっ!」

ほむら「っ……!!」

一際勢い良く、大きな一画が書き殴られると、

まどか「……ふぅっ♪」

まどかの満足げな溜め息が私の背にかかった。

ほむら「きゃっ!?」

まどか「あっ、ご、ごめんね、これで終わりだよ?」

予想外なオマケまでついてしまったけれど……どうやら出題は終わったようだ。

ほむら「っ……くっ……」

警戒を解き、肩の力を抜く。

全身がグッタリとして重い。気をつけなければ倒れてしまいそうだった。

328: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:04:58.14 ID:SXQ/Orzi0
まどか「えへへ……な、なんて書いたか……わかる?」

ほむら「っ……ご、ごめんなさい、さっぱり……」

背に書かれた文字は一つたりとも読み取ることが出来なかった。

……そんなの当たり前よ、無理に決まってるわ……。

だって、まどかの指……か、感じ過ぎちゃうんですもの……。

まどか「……そっか、残念……」

まどかの声のトーンがいくらか下がる。

どうやら私の不甲斐ない回答に不満な様子だ。

ほむら(……正解を出して欲しかったのかしら……)

……まあ、まどかには悪いけれど、これでこのお遊びは終わ……

まどか「じゃ、じゃあ、第二問だよ!」

ほむら「ええっ!?」

329: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:06:18.21 ID:SXQ/Orzi0
ほむら「ちょ、ちょっと待って。あまり時間もないし、もうやめに……」

まどか「だ、大丈夫だよっ、だからもう一回……しよ?」

ほむら「う……」

そんな甘えた声でおねだりされたら……ずるいわ。

……断ることなんて出来ないじゃない。

ほむら「ちょ……ちょっとだけにしてね?」

まどか「……うん!」

……嗚呼、私ってホント馬鹿ね。

330: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 09:10:17.19 ID:SXQ/Orzi0
まどか「じゃあ、い、いくよ……えいっ!」

私の心の準備が出来るより先に、まどかは一画目を背中に走らせた。

ほぼ真っ直ぐに引かれた横棒だ。

ほむら「ひぁっ……!」

また、身体が過敏に反応してしまう。

ほむら(で、でも……仕方がないわ……!)

また不正解では、きっとまどかは満足してくれないだろう。

私は覚悟を決め、まどかの指の動きに全神経を集中させることにした。

……たっぷり、じっくりと、まどかの感触を確かめるために。

339: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 08:56:48.47 ID:zvP8HY5v0
まどか「つつつ……っと」

ほむら「んっ……んぅっ!」

まどかの指が上から下へ、するりと降りてくる。

……ただ、それだけのことなのに!

ほむら(これっ……マズい、ダメっ……!!)

意識を集中したせいで、指紋のごくわずかな凹凸さえも……き、気持ち良く感じてしまう……!

まどか「……これが一文字目だよ、ほむらちゃん?」

まどかはご丁寧に解説までつけてくれるが、そんなことを言われても……

ほむら「っく、はぁ、はぁ……」

どんな文字だったか、判別するどころではなかった。

340: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 08:57:34.13 ID:zvP8HY5v0
ほむら(こ、これじゃあまた、まどかががっかりしてしまうわ……)

そうなった場合……どうなるのだろうか。

下手をすれば第三問目に突入するかもしれない……。

ほむら(そ、それだけは避けないと)

私は必死に記憶を……肌に残った甘い痺れを再生して、まどかの描いた軌跡を辿る。

ほむら(ええと、一画目は長い横棒だったはず……)

ほむら(そして二画目は、一画目を貫く縦の棒だった……)

ほむら(でも、途中で円を描いていた、ような気がするわ……)

ほむら「……んっ……はぁ……!」

……思い出しただけなのに、身体は勝手に小さく震えた。

341: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 09:04:35.81 ID:zvP8HY5v0
まどか「次、二文字目だよ……」

ぬめり気を帯びた指が一画、二画、とテンポよく平行な横棒を二本引く。

ほむら「あんっ、あんっ……!!」

ほむら(や、やだ、私ったらなんて端ない……!)

まどか「……えへへーっ♪」

羞恥に悶える私の姿は、まどかの瞳にはどう映っているのだろうか……

彼女は楽しげな声と共に、第三画目を引いた。

ほむら「っひ……!」

三画目は斜めの直線。最初の二画を貫きながら、私の左肩から右腋へと降りていった。

まどか「これで……最後っ」

四画目はUの字を描くような曲線だ。

先の三画と比べて随分と下の方に線が引かれた。

ほむら「ひゃんっ!?」

……ちょうどお尻の辺りを撫でられるような形になってしまい、思わず腰を浮かせてしまう。

342: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 09:05:10.00 ID:zvP8HY5v0
ほむら「こ、これで終わり……?」

まどかの宣言通りならこれで書き終わったことになるはずだけれど……。

まどか「うん、そうだよ」

ほむら「そ、そう……」

……良かった。少なくとも今はこれ以上の『責め』を味わわなくて済むようだ。

私はほぅ、とため息を一つ吐く。

まどか「ふふ、でも……」

ほむら「?」

まどか「ほむらちゃんって敏感なんだね……♪」

ほむら「っ……!」

何気ないその一言は……なんだか私には、その……やらしい意味に聞こえてしまった。

まどかに他意はないのだろうけれど……。

……ないわよね?

343: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 09:05:49.81 ID:zvP8HY5v0
まどか「……ね、ほむらちゃん。今度はなんて書いたか分かる?」

ほむら「え、ええと……」

まどかの指の感触を充分に味わった私の身体は、どくんどくんと全身で大騒ぎしている状態だけれども……

でも、先ほどよりは背に書かれた文字を読み取ることが出来た。

ほむら(一文字目は二画の文字。二文字目は四画の文字だった……)

そして、どちらも比較的シンプルな文字だったような気がする……きっとひらがなに違いない。

ほむら(ひらがな二文字で……ああいう字……ってことは)

も、もしかして……?

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:26:22.85 ID:wjSClknf0
恐る恐る、半目を開いて……まどかの表情を伺いながら私は答える。

ほむら「鋤、かしら」

まどか「え、えっ……! ん? え……?」

その解答に彼女は珍妙な反応をしてみせた。

一瞬驚いて、一瞬喜んで、そして一瞬にして眉間に皺を寄せた微妙な表情になる。

百面相ね、まどかったら。

まどか「えっと。ほむらちゃん……今なんて?」

ほむら「だから鋤よ、鋤。農作業で使うやつ」

ええ、分かってるわ。かなり無理があるわよね。

でも……だって、こんな下らない冗談でも言わなきゃ私……その……。

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:27:04.94 ID:wjSClknf0
本当は、まどかの書いた文字は分かっていた。

でもどうしてあんな二文字を書いたのか、それが分からない。

単なる冗談なのかもしれない。私をからかっただけなのかもしれない。

そのどちらでもない、まどかからのメッセージなのかもしれない……。

私にはまどかの真意を伺い知ることは出来なかった。

ただ、あのたった二文字の言葉を口にしてしまうと何かが壊れてしまいそうな、そんな気がした。

私達の関係か決定的に、修復出来ないものになってしまいそうな……

そんな予感がしたから、だから私は逃げたのだ。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:27:44.19 ID:wjSClknf0
まどか「……不正解だよ、ほむらちゃん……」

その結果がこれだ。

ほむら「あ……」

酷く落ち込んだ声だった。

俯き、私の陰に隠れたその表情を伺い知ることは出来ない。

嗚呼……私の答えが、あんな答えがまどかを此処まで傷付けてしまうなんて。

あまりにも軽率だったと後悔してももう遅い。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:28:22.88 ID:wjSClknf0
でも……この反応はつまり、さっきの出題がまどかにとって……その。

と、特別な意味を孕んでいると……そういうことなのだろうか……。

まどか「ほむらちゃんのイジワル……」

ポツリと呟かれた台詞が私の胸に突き刺さる。

いけないわ。このままじゃ間違いなく嫌われてしまう。

まどかの真意はいったん余所に置いて、ここはフォローを入れないと……

ほむら「ねえ、まどか……その、えっと……」

まどか「……なに? ほむらちゃん」

ほむら「ふ、不正解者には……罰ゲームが必要だと思わない?」

まどか「……え?」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:28:53.77 ID:wjSClknf0
ほむら「そう、罰ゲーム。私はクイズに正解出来なかったんですもの」

まどか「う、うん」

ほむら「だから『貴女から』……お、オシオキを受ける必要があるんじゃないかしら」

まどか「オシオキを……わ、私が、ほむらちゃんに……?!」

この展開は予想外だったのか、まどかも驚いた様子で顔を上げた。

ほむら「ええ、そうよ」

私がとっさに考えた償い。

それはまどかに『オシオキ』という名目で好きにさせることだった。

こんなことでまどかの気が晴れるか分からないけれど……

でも、浅はかな私にはこのくらいしか思いつかなかったのだ。

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:29:42.60 ID:wjSClknf0
まどか「お、オシオキ……オシオキかぁ、私が、ほむらちゃんにオシオキを……」

だがどうやら私の案は想像以上にまどかに響いたらしい。

ブツブツと呟く彼女の口元は何となくニヤけたものになっている。

ほむら(そ、そんなにオシオキが嬉しいの……?)

まさかまどかって、加虐趣味だったりするのかしら────。

まどか「もしかしてほむらちゃん……そ、そっちを期待してワザと……?」

ほむら「えっ?」

……いけない、妙なことを考えていたせいでまどかの言葉を聞き逃してしまった。

ほむら「今何か言った?」

まどか「う、ううん! なんでもないよっ!」

私が聞き返すが、大したことではなかったのかまどかは言い直そうとはしなかった。

なんだったのかしら?

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/24(土) 21:30:15.48 ID:wjSClknf0
まどか「そ、そっか……ほむらちゃんがそういう子なら、私も……が、頑張らなきゃだよね……!」

ほむら「?」

まどかはまどかなりに結論を出したのか、良く分からない決意を固めたようだ。

まどか「うん、ほむらちゃん! 私がオシオキしてあげる!」

先ほどまでの沈んだ表情は何処へやら、力強い意志の込められた瞳を鏡の中の私に向けていた。

気合い充分過ぎて怖いわ、まどか。

いったい何をする気なの……。

17: ◆okuJ0cvot2 2014/05/25(日) 18:57:19.57 ID:U525wKad0
さやか「ねえ、あんたらさっきからナニ話してんの?」

と、そこで美樹さんが志筑さんの背中を流しながら口を挟む。

オシオキだのなんだのと騒がれたら気にもなるのだろう。

いやむしろ、今まで何も言ってこなかったのが不思議なのだけれど……。

仁美「ふふっ」

意味深なウィンクが志筑さんから飛んでくる。

ああ、そういうこと。妙な気を回しておいてくれたのね。

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 18:58:11.76 ID:U525wKad0
まどか「え、えと……あのね、ほむらちゃんがゲームに負けたから、罰ゲームをすることになったの」

実に簡潔で分かりやすい完璧な説明ね。素晴らしいわ。

さやか「成る程、良く分からんが分かった」

美樹さんも深く尋ねることはない。

あっさりと状況を把握……したと言えるのかしらこれ。

仁美「罰ゲームですか。どんな罰をお与えになるんですの?」

まどか「うーん、それはまだ……ほむらちゃんの期待に応えられるような罰を考えなくちゃ、って悩んでるところなの」

……期待に応えるって何かしら、まどか。

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 18:58:50.10 ID:U525wKad0
ほむら「い、痛いのはちょっとだけにしてね?」

何故かまどかに包丁を突きつけられる光景が脳裏に浮かんでしまい、念のため釘を刺す。

まどか「ちょっとだけなら良いの……?」

なんでそっちに解釈するの、まどか。

嗚呼、やっぱり……貴女って……?

まどか「や、やっぱり……ほむらちゃんって……」

まどかは奇しくも私の思考をトレースしたような台詞を呟く。

何がやっぱりなのだろう。

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 18:59:42.68 ID:U525wKad0
さやか「罰ゲームは良いけど、あんま陰湿なのはやめてよねー?」

もちろんそんなことはしないだろーけど、と美樹さんは軽いノリで念を押す。

まどか「も、もちろんだよ、私がほむらちゃんを苛めるようなことするわけないもん」

……そ、そうよね。まどかは優しい子だものね。

そんな酷いコトなんて、私にしたりしないわよね。

私は信じているわ、まどか。

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 19:00:54.79 ID:U525wKad0
まどか「でも、何にしようかなぁ……」

仁美「それでしたら、サウナなんかはどうでしょうか?」

悩むまどかに案を提示したのは、意外なことに志筑さんだった。

ほむら「サウナ?」

仁美「はい。勿論、身体に障らない程度に、他のお客様の迷惑にならないように、ですわ」

空気を読んで罰ゲームなどというお遊びに乗りつつも、細かな気遣いは忘れない。

良く出来たお嬢様ね。

どうしてそれを美樹さんにも向けてくれなかっ……いえ、今はこの話は関係ないわね。

まだこの時間軸ではその段階にまでは至ってないのだから。

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 19:01:34.60 ID:U525wKad0
ほむら「そうね……それくらいなら、罰ゲームに丁度良いかしら」

私としても、志筑さんの提案は都合が良かった。

彼女の案に乗り、変にこじれる前に話をまとめてしまおう。

まどか「え……そ、そんなので良いの、ほむらちゃん?」

ほむら「ええ。私熱いのは苦手だから」

さやか「サウナくらいならさやかちゃんも安心ですわー、それでいいんじゃない?」

まどか「……そっか。じゃあ、それでいっか」

美樹さんの発言もあってか、まどかは一応納得してくれたようだ。

何処か物足りなさそうな雰囲気を醸し出しているけれど。

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/25(日) 19:06:01.82 ID:U525wKad0
そんなわけであっさりと、私への罰ゲームはサウナになったのだが────

私はこの時まだ知らなかったのだ。

あの部屋に満ちた蒸し暑い熱気が。

肌が触れるほどの距離で嗅ぐ互いの汗の臭いが。

私から、正常な判断力を奪ってしまうのに十分過ぎる力を持っているということを……。

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:27:01.77 ID:nTLc77V50


タオルで簡単に前を隠しながら、私とまどかはサウナルームへと足を踏み入れた。

むわり、と熱気に迎えられて少したじろいでしまう。

まどか「入ったらすぐ扉を閉めないとダメだよほむらちゃん」

ほむら「あ、ごめんなさい」

まどかに指摘され、慌てて扉を閉める。

サウナも初心者な私はこういう小さなことにも気が利かないから困るわね。

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:27:27.94 ID:nTLc77V50
サウナルームは暖色系のライトによってオレンジ色に照らされていた。

利用者をリラックスさせる目的で意図的に光量を抑えているのか、部屋内は若干薄暗い。

湿度が高く、熱気が籠もった空気は肌にまとわりつくようだった。

ほむら(これは……中々に辛いものがあるわね……でも)

でも、覚悟していたよりは暑くない。

この程度なら辛うじて我慢出来そうだ。

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:29:10.97 ID:nTLc77V50
それに、静かに座っているだけで良いという状況は非常に助かる。

まどかの……その、えと、は、裸を直視しないで済むのは何よりも重要なことだ。

思いの外、楽な罰ゲームになりそうね。

などと私は楽観的な感想を抱く。

まどか「ここのサウナってソルティサウナなんだって」

ほむら「サールティー……何?」

まどか「ソルティだよ、つまり……塩サウナ!」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:29:38.41 ID:nTLc77V50
タイミングが良かったらしく、今サウナを利用しているのは私とまどかの二人きりだ。

こうして話していても迷惑にはならない。

……ちなみに美樹さんと志筑さんは、罰ゲームと関係ないからと言って付き合ってくれなかった。

薄情なのか気を利かせたのか……。

ほむら「ごめんなさい、塩サウナって何かしら」

まどか「えと……ほら、あそこに塩が置いてあるでしょ?」

まどかが指差す先、部屋の中央には容器に盛られた塩が設置されていた。

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:30:15.73 ID:nTLc77V50
ほむら「何に使うの、あれって」

まどか「うん……あれはね、身体に塗るものなんだよ」

ほむら「塩を身体に?」

まどか「汗が出やすくなるとか、色々効果があるみたい」

ほむら「へえ……そうなの」

初耳だ。塩サウナ、そういうものもあるのね。

ちょっと面白そう。

塩を身体に塗るというのはどんな具合なのだろう、と好奇心が芽を出した。

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:30:45.08 ID:nTLc77V50
でも手順とかマナーとか良く分からないのよね……どうしたら良いのかしら?

まどか「……ね、ねえほむらちゃん、ほむらちゃんは塩サウナ初めてなんだよね?」

ほむら「ええ」

まどか「じゃ、じゃあ……まずは私が、お手本を見せてあげるよ!」

私が好奇心と躊躇に板挟みになっているのを察してくれたらしい。

まどかは私に助け船を出してくれた。

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:31:18.83 ID:nTLc77V50
ほむら「助かるわ、私初めてだから……その、良く分からなくて」

まどか「わ、私もあんまり経験ないから、上手に教えられるか分からないけど……」

まどかは視線をあちこちに泳がせながら弱々しい声で謙遜するけれど……

続く最後の一言だけは、室内に響くほど力強く言い切った。

まどか「ほむらちゃんが気持ち良くなれるように、一生懸命教えるね!」

ほむら「……ふふ、ありがとう」

こんなことにも真剣に考えてくれるのね、貴女は。

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:31:45.16 ID:nTLc77V50
ほむら「とりあえず座れば良いかしら?」

まどか「う、うんっ、どうぞ座って」

私はまどかに促されて、備え付けの長イスに座る。

当然まどかも私の隣に腰を下ろしたのだが……何だか、やけに近いような気がした。

私達の間には手のひら一つ分の隙間もない。

ほんの少しだけ温度が上がったような、そんな錯覚を覚える。

ほむら「……え、と? まずはどうすれば良いの?」

それでも私は平静を装って尋ねた。

妙な近さなど意に介していないようなフリをして。

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:32:12.23 ID:nTLc77V50
まどか「う、うん……あのね、えと……」

私に対して、当のまどかは酷く落ち着かない様子だ。

ドアの方を何度も見たり、自身の胸元に視線を落としたり……

頬も赤く、もしかしたらのぼせてしまったのだろうかと心配になる。

ほむら「……どうかしたの?」

まどか「え、ううん! な、なんでもないよ!」

明らかに何でもないという雰囲気ではなかった。

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:32:49.89 ID:nTLc77V50
しかし、私が再度口を開く前にまどかはお尻をもぞもぞと動かして……より一層近くへと寄ってきた。

残された僅かなスペースさえも無くなるくらい、近くへと。

ほむら「ちょ、ちょっと近過ぎないかしら……?」

まどか「こ、これくらいのほうが教えやすいんだよっ?」

ほむら「そう、なの……?」

まどか「うん、そう……だよ……」

ついには私とまどかの太ももが、べったりとくっついてしまう。

ほむら(っ……!)

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/26(月) 22:41:57.90 ID:nTLc77V50
お互いの汗でベタりと接着されるような感じ。

あまり気持ちの良いものではなかったけれど、でもだからと言って逃げてはまどかを傷付けてしまうかもしれないし……。

まどか「ええと……そ、それじゃあ、今からお手本をするから……」

そんな私の葛藤なんて勿論知らないまどかは、さらに身体を寄せてきて────

まどか「……よ、良く見ててね、ほむらちゃん……っ」

ぱさり、という軽い音と共にタオルを落とした。

まどかの身体を隠す、最後の布切れを。

ほむら「え……」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:05:49.07 ID:BJztNYpd0
まどか「ちゅ……注意するのは、力を入れてコスっちゃイケないってことなの」

まどかは山盛りの塩へと手を伸ばし、一掴み握り締める。

私から身体を離そうとしなかったため、かなりぎこちない動作だった。

まどか「優しく……こうやって、乗せてあげるような感じでやるんだよ」

露わになった自身の太ももへ、塩の化粧を施していく。

言葉通り、優しい手つきで。

塩は塗られた先から汗により溶けてゆき、半透明の液体がまどかの肌から滴り落ちる。

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:06:18.86 ID:BJztNYpd0
まどか「こうやって塗っておいて……お塩が溶けたら、マッサージをするの」

塩を持たない反対側の腕にも塗りながら、まどかは説明を続ける。

まどか「それまでは、ガマンしてなきゃいけないんだよ」

作業に集中しているのか、その視線は私の方に向けられていない。

……いや、それだけの理由ではないのかも知れないけれど……

とにかく、まどかの目が私に向けられていないということは私にとって好都合だ。

何故なら、私がどんな表情で彼女を見つめているのか……知られずに済むのだから。

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:06:55.81 ID:BJztNYpd0
鏡が無くても分かる。

今、私は少女にあるまじき酷い顔をしているに違いない。

まどかの一挙一動を一つも見逃さないように、瞬きはしない。

興奮を気取られぬよう呼吸も限界まで押さえ込む。どんなに苦しくても。

これは例えるなら……そう、獲物を狙う野獣のような……。

ほむら(……な、何を考えているのよ、馬鹿ね……)

そんなわけない。だってわたしとまどかは友達だもの。

友達をそんな目で見るなんて、あるわけない。

これは暑さのせいで、ちょっとおかしなことを考えちゃってるだけよ……。

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:07:34.26 ID:BJztNYpd0
まどか「それと……ね? お塩に弱いとこは……塗っちゃダメなんだよ?」

ほむら「弱い、ところ?」

まどか「お顔とか……で、デリケートなところとか……だよ」

デリケートなところ……。

その言葉に連想した私は、反射的に彼女の身体の一部へと目を向けてしまう。

彼女の……その、えと……デリケートな……ところへ、だ。

ほむら「っ……」

無意識の内に、ごくり、と喉が鳴った。

……最悪のタイミングだった。

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:08:05.66 ID:BJztNYpd0
気持ちの悪い汗が一斉に顔から吹き出すのを感じた。

まどか「ほ、ほむらちゃん……?」

余りにも露骨なその音から、まどかが何を感じ取ったのかは想像に難くない。

事実、彼女はそっと腕を下ろしてその場所を隠した。

ほむら「あ……ち、違うのよ、今のは、その……」

嗚呼、違うのまどか。今のは喉が乾いたから、唾を飲み込んだだけなの。

そう、これも暑さのせい。暑さのせいなの……。

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:08:58.85 ID:BJztNYpd0
ほむら「……ごめんなさい」

私は弁明することを諦めた。

何を言っても下手くそな言い訳にしかならなそうだったから。

まどか「う、ううん、いいんだよ……気にしてないよ」

平気であるかのようにまどかは言うけれど……どうだろうか。

まどか「だって私、お手本だもん……も、もっと見ててくれて、良いんだよ……」

……嗚呼、貴女って子は本当に……。

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:09:27.63 ID:BJztNYpd0
まどか「えと、後は……身体にも塗らなきゃ、だよね」

再度塩を手に取ると、まどかはお腹周りに塗ろうとして……止める。

まどか「……そ、そろそろほむらちゃんもやってみよっか?」

そう言って私へと塩の固まりを差し出してきた。

ほむら「え……ええ、やってみるわ……」

受け取った塩は既にまどかの手汗で湿り気を帯びている。

まどかの汗が混じったこの塩を……私の身体に……

ほむら(……いけない、また変な想像を……)

やっぱり、この暑さがいけないんだわ。

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:10:07.65 ID:BJztNYpd0
……などと私がやましさから葛藤していると、まどかは……

まどか「じゃ、じゃあ……」

より一層身体を近付けて、まるで恋人達がするように寄り添って……

ほむら「えっ……ま、まどか……?」

その柔らかな胸が、ささやかな二つの膨らみが私の身体に触れるか否かというところで……

両目を瞑り、告げたのだった。

まどか「じゃあ……優しく、塗ってみて……?」

……どこに?

とは聞けなかった。

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:13:11.51 ID:BJztNYpd0
これは……そういう意味なの、まどか……?

でも、どうして、そんな、私なんかに……

嗚呼、まどかの身体か震えているわ、怖いのね……?

こんな小さな身体で、勇気を出して、こんなことを……?

いや、違うのかもしれない、全部私の勘違いなのかもしれないわ。

きっとそう。まどかがそんな、さ、誘ってるなんて、勘違いなのよ……ええ……。

嗚呼……でも、でも……。

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:15:39.09 ID:BJztNYpd0
…………。

これは……暑さのせい。

そう、全部暑さのせい……暑さのせいでおかしくなっちゃってるから、仕方がないの……。

私の勘違いかもしれないけれど、でも、暑さのせいで勘違いしただけだから……。

だから……。

ほむら(だから……良いんだわ……)

喉が張り付く。汗が全身から吹き出る。身体が熱い、頬が熱い。

本当に、なんて暑いのかしら……この部屋は……。

ほむら「…………」

私は震える手で塩を握り締め、こぼさぬようにまどかの腰の辺りへと運んで……

まどか「っ……」

まどかがびくん、と震えたのを触れあう肌で感じて……。

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/29(木) 00:23:30.95 ID:BJztNYpd0
────そこで突如ドアが開き、私はとっさにキュゥべえ三匹分くらい飛び退いてまどかから離れたのだった。

ほむら「ひゃっ……!?」

ゆま「わー! あっつーい!」

同時に聞き覚えのある幼い少女の声が響く。

ゆま「キョーコ、このナカすっごい熱いよっ♪」

杏子「馬鹿、あんま騒ぐなって何回言ったらわかんだよ」

ゆま「はーい。ごめんなさーい」

闖入者の正体は千歳ゆま。そして、佐倉杏子だった。

まどか「う……ううー……!!」

珍妙なうなり声がまどかの方から聞こえてきたけれど、フォローをしてあげる余力はない。

……い、いま私……まどかに何をしようとしてたの……?

68: ◆okuJ0cvot2 2014/06/01(日) 21:35:23.70 ID:+/E9/9EX0
二人が現れたことでこの場を支配していた妖しい空気が霧散する。

おかげで私の思考も正常なものへと戻りつつあった。

しかしそれはつまり、自分のしでかしたことを嫌でも自覚するはめになるということであり……

ほむら(っ……!)

かぁっ、と頭に血が上ってクラクラする。

耳の奥で血流がマグマのように音を立てていた。

ほむら(わたし……な、なんてことをしようと……)

否定したいけれど否定出来ない。認めるしかない。

私は、越えてはいけない境界を越えてしまうところだった。

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:36:49.40 ID:+/E9/9EX0
私は確かに、まどかのことは好きだ。

でもそれは親愛という意味であり、間違っても……その、そっちの意味ではなかったはずだ。

それなのに……あ、あんな真似を……。

ほむら(まどか……)

怖くてまどかの方を見ることが出来ない。

私はただ自分の痩せた膝に視線を落とした。

正直、逃げ出したい。全てを捨てて逃げ出したい。

でもそんなこと出来るわけない。それは、まどかを拒絶するようなものだ……。

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:37:45.65 ID:+/E9/9EX0
ゆま「キョーコ、あのお塩なに?」

杏子「あー、あれ? あれは……その、お清めってやつだよ」

好奇心を隠そうともしない無邪気な少女と、見栄を張ってデタラメを教える少女。

普段なら微笑ましいと思える光景も、今の私には少し煩わしい。

ちょっと静かにしてくれないかしら……。

一声かけるという考えも浮かんだが、それは憚られる。

杏子は縄張り意識の強い魔法少女だ。下手をすれば厄介事に繋がりかねない。

彼女との対話は私の使命において必要なことではあるが、この場は都合が悪い。

────まどかはまだ、魔法少女のことを知らないのだから。

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:38:52.07 ID:+/E9/9EX0
ゆま「わーい、お塩、おしおー」

……そういえば。魔法少女といえば、この千歳ゆまはもう契約済みなのかしら。

過去の時間軸では杏子を助けるために契約したと聞く。

今回もそうなのだろうか。

ほむら「…………」

確かめるべく、彼女の指に注目するが……。

ゆま「あつーい、いっぱい出ちゃうね、キョーコ!」

ちょこまか動いているせいで確認できない。

子供ってどうしてこうも落ち着きがないのかしら……って、私も子供だけれど。

これじゃあ大事なトコがよく見えないわ。

まどか「……ほむらちゃん……?」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:41:00.89 ID:+/E9/9EX0
私の座っている位置が悪いのもある。

千歳ゆま自身の身体の陰に隠れたり、杏子に遮られたり、で指が見えないのだ。

仕方がないわね、ちょっと身体をズラして……。

ほむら「……ん」

私はお尻を這わせて、長イスの上を移動する。

……よし、この位置なら。

ほむら(もうちょっとで、●●●が見えそ……)

●●●にアレが●●●れているなら、千歳ゆまは魔法少女であると確信出来るのだが。

まどか「……こほんっ」

ほむら「っ!?」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:42:32.43 ID:+/E9/9EX0
わざとらしい咳払いが狭い室内に響く。

発生源は確かめるまでもなくまどかだった。

見やれば彼女にしては珍しく不機嫌そうな表情を露わにしていた。

騒がしい子供が嫌いなのかしら、まどか……意外ね。

あ、いや……さっきの私との遣り取りが尾を引いているのかも……。

杏子「……ほらほら、大人しくしてな。タオルもちゃんと持て」

ゆま「はーい」

アウトロー系魔法少女と幼女も流石に察したのか、入浴態度を改めたようだった。

ただ、しっかりとタオルを手にしたせいで千歳ゆまの大事な場所は隠れてしまった。

ますます確認できない。

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:43:22.47 ID:+/E9/9EX0
ほむら(……仕方がないわね)

それならば、と今度は体つきを良く観察してみる。

千歳ゆまの身体はいかにも幼女といった体型だった。

凹凸が少なく、腰回りもくびれのない寸胴体型だ。

腋だとか脚だとかには体毛は見られず、ツルツルすべすべ。

肌もなめらかでまさしく『玉の肌』といった感じだ。

確か母親から虐待を受けていたという話だけれど……そのような痕跡は見えない。

栄養が足りず痩せ細っているという雰囲気でもない。

それらは、魔法の影響である可能性が高いか────

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:44:30.80 ID:+/E9/9EX0
まどか「ね……ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「っ!?」

と、そこで私の思考は突然耳元で囁かれたか細い声により中断された。

吐息が耳にかかる程近く、いつの間にかまどかは私のすぐ隣まで近付いて来ていた。

その距離につい先ほどの出来事を連想させられ、私の身体はまた熱を帯びてしまう。

ほむら「なに? ど、どうしたのまどか?」

まさか続きをしようとか言い出すのでは……と身構えるがそうではなかった。

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:45:47.56 ID:+/E9/9EX0
まどか「ほ、ほむらちゃん……さっきから何を見てるのかな……?」

私にそう問うまどかは何故か上目づかいで、その両目は潤んでいて、今にも涙がこぼれ落ちそうで……

ある種の危険な色っぽさを漂わせていた。

私にイケない感情を抱かせるには充分過ぎるほどに。

ほむら「っ……! ええと、その……た、ただボンヤリしてただけで……」

芽生えた邪念はひとまず脇に置いておく。

本当のことなんて説明出来るはずもなく、私はまた苦しい言い訳に走った。

幸いまどかは私が何を見ていたのかは気付いていなそうだし……

まどか「な、何だかほむらちゃん……えと、あのちっちゃい子ばっかり見てる気がするよっ……」

ばっちり気付かれていた。

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 21:56:46.29 ID:+/E9/9EX0
ほむら「え、ええと……それは、その」

図星を突かれて言いよどんでしまう。

まどか「ねえ、なんでなのほむらちゃん……? も、もしかして……!」

そんな私の態度が不愉快だったのか、まどかの声は段々と大きなものになってきてしまう。

どうしましょう……まさか、魔法少女かどうかを確認したかったなんて言えないし……。

杏子「……?」

ゆま「ね、あれケンカかな……?」

不味いわね、杏子たちも不審に思い始めているわ。

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/01(日) 22:00:12.93 ID:+/E9/9EX0
面倒なことになる前に上手く誤魔化さないと……。

ええと、理由、千歳ゆまを見ていた理由ね……そうだわ!

ほむら「ごめんなさい。あの子がとっても可愛らしかったから、つい見とれちゃったの」

まどか「っ……!?」

……あら?

まどか「ほむら、ちゃん……それって……」

なんだかまどかが、いつか何処かで見たことがあるような表情になってしまったわ。

まるで世界の終わりを目撃してしまったかのような、悲しい瞳。

いつだったかしら……そう、この顔は確か私が三週目の時に……。

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:41:33.94 ID:KZCTgbfB0
まどか「そ、そっか……そうなんだ……」

ほむら「?」

まどか「ほむらちゃんは……ろ、ロリコンさんだったんだね……っ!」

ほむら「ろっ……!?」

震える声でまどかが口にした単語は、私にとって完全に想定外のものだった。

ロリコン。年頃の女子中学生に相応しくない呼び名だ。

確かに私は幼女を観察していたわけだけれど、私も女の子なんだからロリコンはないでしょうに。

まどか「ううっ……ぐすん」

友人がロリコンであるのが余程嫌なのか、まどかは大粒の涙を零してしまった。

ゆま「ねえキョーコ、ロリコンってなーに?」

杏子「あー、うん。とりあえずオマエは耳を塞いでろ……ったくもー」

……ごめんなさい、杏子。

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:42:26.70 ID:KZCTgbfB0
ほむら「な、何を馬鹿なことを言ってるのまどか、そんな訳ないじゃない」

まどか「じゃあなんで『可愛いから見とれた』なんて……!」

可愛い、と言っただけでロリコン扱いになるの?

いや、見とれた、というのが不味かったのかしら。

どちらにせよ想像力が豊か過ぎるわ、まどか……。

ほむら「それは、その、純粋に『可愛い』って思っただけよ、他意はないわ」

まどか「ホントに……?」

ほむら「勿論よ」

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:43:29.13 ID:KZCTgbfB0
まどか「ほんとにホント?」

ほむら「本当よ」

まどか「ほんとのほんとにホント?」

ほむら「当たり前よ」

随分と疑心暗鬼になってしまっているようだ。

まどかは瞳を潤ませた上目づかいのまま、しつこいくらいに何度も問い正してくる。

捨てられる直前の子犬のような……そんな庇護欲をかき立てられるような仕草に、キュンとしてしまうが今はそれどころではない。

まどか「…………」

疑いの色がその目から消えることはない。

そんなにも私の言動がロリコンっぽく思えたということなのかしら……少し傷付くわ。

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:44:05.68 ID:KZCTgbfB0
何て説明すれば理解してもらえるのか私には検討もつかない。

かと言って黙り込んでしまってはますます後ろめたいことがあるようでいけない。

ほむら「私が見ず知らずの女の子に……その、やましい気持ちを抱くなんてあるわけないわ」

私は思い付くまま、ありのままの事実を口にしていって……

ほむら「相手はあんな小さな子だし、誰かが不快になるようなコトなんて私はしないわ」

そして、つい口走ってしまう。

ほむら「そもそも私が一番好きなのはまどかで……」

まどか「……えっ?」

ほむら「……あ……」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:47:13.19 ID:KZCTgbfB0
まどか「い、今なんて言ったのほむらちゃん?」

ほむら「……何でも、ないわ」

また物凄い勢いで顔から脂汗が吹き出した。

滴る汗は嫌でも喉の渇きを意識させる。

……私は馬鹿だわ……馬鹿さに定評がある誰かさんとコンビを組めるくらいには馬鹿だわ……。

いくらなんでも、何て失言を!

まどかが好きというのは確かに嘘ではないけれど……

それは友達という意味であって、その、変な意味ではない。

要らない誤解を招きかねないし、こんな状況で告げるべきことではないことだ。

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:48:37.12 ID:KZCTgbfB0
それについ忘れかけてしまいがちだが、私とこのまどかはまだ出会って数日の関係なのだ。

こんなことを言ったら気味悪く思われるのは分かり切っている。

嗚呼、貴方は何処まで愚かなの暁美ほむら……。

いえ、これもきっと暑さのせいよ、もういい加減サウナから出るべきなんだわ。

でも冗談だということにしておけば、今ならまだフォローが利くかもしれない。

ほむら「まど……」

そう思い口を開きかけたが……それが言葉にされることはなかった。

まどか「……えへへっ、そ、そっか、そうだよね……」

まどかは頬を朱色に染めながら、自身の前髪を指でくるくると巻いて遊んでいる。

ほんの一瞬前まで世界の終わりのような顔をしていた子とは思えないくらいに、柔らかな頬笑みを浮かべて。

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:49:04.09 ID:KZCTgbfB0
まどか「……良かった♪」

それは小さな囁きだったけれど、たっぷりと安堵の色が詰まっている囁きだった。

思わずドキリとする。

ほむら(それは……私がロリコンじゃなくて良かった、という意味よね?)

他に深い意味なんてないはずよね……?

まどか「……えへへ♪」

まどかはニッコリと目を細めて私を見つめてくる。

釣られて私も見つめ返すと……自然と安堵の溜め息がこぼれた。

ほむら「……ふぅ」

……まあ、とりあえず誤解は解けたようだし、良しとしましょう。

91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/12(木) 08:50:33.27 ID:KZCTgbfB0
ゆま「……ねえキョーコ。あのお姉ちゃん達なんで見つめ合ってニヤニヤしてるの?」

杏子「いや、あれはな、その……」

杏子「……なぁ、ちょっとアンタら」

ほむら「あ……えと」

まどか「は、はい」

杏子「……教育に悪いからどっか余所でヤッてくんない?」

まどか「あぅ……」

ほむら「……ごめんなさい」

……怒られてしまった。

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 19:10:36.72 ID:FES7n+Lk0


真面目な不良少女にお叱りを頂いた後は、特筆すべきことはなく……

私とまどかは美樹さん達と合流してごく普通に入浴を楽しんだ。

志筑さんが私の罰ゲームの様子を執拗に尋ねてきたけれど、その辺りは誤魔化しておく。

種類が豊富なお風呂を順番に巡っていけば、満足いく頃には夕食に丁度良い時間になっていた。

何処かのお店で皆で一緒に食べようかという案も出たけれど、志筑さんが門限があるとのことで今日は解散する運びとなった。

夕暮れに染まる住宅街を並んで歩きながら歓談を楽しんで……そして別れ道に差し掛かったとき。

まどかは私の耳元でこう囁いたのだった。

まどか「今日ね……? パパたち帰りが遅いの……」

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 19:11:23.11 ID:FES7n+Lk0


まどかの部屋はつい先日と変わったところはないようだった。

相変わらず愛くるしいぬいぐるみ達はつぶらな瞳で私を見つめているし、勉強机の上は綺麗に片付いている。

何も変化も異常もない。

だというのに、何処か緊張感が漂っているような気がするのは……私の錯覚だろうか。

ほむら(考えすぎ、よね……)

この時間軸では二度目になる、まどかの部屋への訪問。

一度目はブルマをこっそり返すという目的があったから少しだけ緊張していた。

今回は……。

ほむら(大事な話がある、って言っていたけれど……何かしら)

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/04(金) 19:21:33.81 ID:FES7n+Lk0
まどか「おまたせ。またウーロン茶だけど良いかな」

まどかはこの前と同じようにお茶を持って来てくれた。

お盆に乗ったグラスからは結露が滴り落ちている。

ほむら「ええ、ありがとう」

私にグラスを手渡すと、まどかは対面に腰を下ろした。

先日数学の勉強をしたテーブルを挟んで、向かい合って座る形となる。

まどか「…………」

ほむら「…………」

……奇妙な沈黙が一拍生まれた。

まどか「あ、えと……どうぞ飲んで飲んで?」

ほむら「う、うん。いただくわ」

勧められるままグラスに口をつけ、軽く喉を湿らせる。

当然ながら同じ味だった。

106: ◆okuJ0cvot2 2014/07/07(月) 23:47:35.85 ID:liv52pu10
ほむら「それで……えっと、大事な話って何かしら?」

まどか「う、うん。その……ね? 実はほむらちゃんに見て貰いたいものがあって……」

ほむら「私に?」

いったい何だろうか。

わざわざ改まってこのような場を設けた以上、お気に入りのぬいぐるみだとかテストの点数だとかいうことではないだろう。

わざわざ両親とタツヤくんがいないことを明かしてまで私を呼んだのだから、きっと家族には言えないコト。

……でも私には見せたいモノ。

それは、何?

まどか「ちょ……ちょっと待っててね」

そういうとまどかは立ち上がり洋服タンスへと向かい、引き出しに手をかけた。

引き出し……? まさか、もしかして……?

107: ◆okuJ0cvot2 2014/07/09(水) 22:15:09.14 ID:YscLOWtw0
まどか「えっと、その……こ、これなんだけど……!」

ほむら「えっ……!?」

おずおずとした手つきでテーブルの上にそっと乗せられたそれは、淡い紫色の布地で出来た……

パ  だった。

ふんだんにフリルが施された装飾過多なデザインとは裏腹に布地面積自体はやけに少ない。

穿いたところで殆ど『見えて』しまいそうな……いえ、『見せて』しまいそうな。

そんな下 だった。

ほむら「えっと、その」

……何故これを私に見せるの?

というかこれって所謂……しょ、勝負下 というものよね?

そんなものを見せるってことは……えっ? あれ、今両親が居ないのよね?

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 22:17:15.34 ID:YscLOWtw0
ほむら「ま、まどかっ、その、これって」

まどか「え……ひゃああ!!」

まどかは下 を放り投げると共に奇声をあげた。

……ご両親が在宅中だったら慌てて駆け付けていたところだったでしょうね。

まどか「違っ、これじゃないの! い、今のはママのだよ! 間違えてしまっちゃったみたい、えへへ……」

ほむら「そ、そう」

顔を真っ赤にして取り繕うまどか。

その言葉が真実なのかどうかを確かめる術はないけれど、わざわざ追及する必要は……ないわよね。

……というか、私も変な想像をしてしまった後ろめたさから言葉が出なかった。

気を紛らわせるために再度お茶に口をつける。

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/09(水) 22:20:05.14 ID:YscLOWtw0
まどか「ほ、ほんとだよ! これ私のじゃないからね?」

ほむら「うん、ええ、大丈夫よ、まどか、分かっているわ」

まどか「サイズもあわないし、あ、何なら証拠に穿いてみてもいいよ!」

ほむら「や、やめなさい! 大丈夫、大丈夫だから!」

まどか「でも……」

なにやら話せば話すほど泥沼に陥っているような感覚だった。

ここは仕切り直さないとダメね、ええ。

ほむら「……こほん。それで、見せたいモノっていうのは?」

まどか「あ、う、うん……えっと」

私の軽い咳払いが効果を発揮して、まどかは一応の落ち着きを取り戻したようだった。

まどか「……私が見せたかったのは……こっちなの」

そう言って改めてまどかが引き出しを探り、取り出したのは……。

二着のブルマ。全く同じ外見の、ブルマだった。

ほむら「……!」

114: ◆okuJ0cvot2 2014/07/25(金) 18:45:00.78 ID:TozPC0Np0
まどか「あのね……へ、変なことを言うけど……引かないでね?」

ほむら「……ええ」

まどか「このブルマ……何故か急に二つに増えちゃったみたいなの」

まどかの発言は何も知らない人からすれば酷く珍妙なものに思えるだろう。

だが私にとっては悪事の証拠を突きつけられてはいるようなものだった。

言うまでもなく片方のブルマは、私がまどかに返したブルマなのだから。

ほむら「二つに……?」

まどか「……うん」

平静を装って相槌を打つけれど、内心では冷や汗ものだった。

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:45:31.00 ID:TozPC0Np0
良く考えれば……いえ、少し考えてみればこの展開は予想出来た筈よね。

私がブルマを返したことでこの時間軸には同じブルマが二つ存在することになる。

まどかが不思議に思わないわけがないのだから。

……こっそり返せば問題ない、なんて思っていた私が愚かだったのだ。

ほむら「……元々予備があった、という訳ではないの?」

まどか「ううん、予備のは別にあるの。これが、このブルマが、二つに増えちゃったんだよ」

まどか「ほら、ここに名前が書いてあるでしょ? おんなじ字で……」

念のため確かめてみるけれど、間違いなくまどかの丸っこい字がタグに書かれていた。

まどか「だからね、やっぱりこのブルマはおんなじものだと思うの」

断言はしなかったが、確信している様子だ。

116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:46:43.21 ID:TozPC0Np0
まどか「この前ほむらちゃんが来た後からなの。二つになっちゃったの」

畳み掛けるようにまどかが問いかける。

まどか「だからほむらちゃんが……その、えと、何かしたんだよね?」

ああ、そうよね。状況を鑑みれば私しか疑う相手がいないわよね。

これも、少し考えれば分かりそうなことだったのに……何故私は今まで気が付かなかったのかしら。

自分の迂闊さに頭痛を覚える。

ほむら「……私は何も知らないわ」

それでも、私はあえてしらばっくれた。

後ろめたさを誤魔化すためだけでなく……ある種の『期待』も込めて。

だって、そもそも私が彼女にブルマを返した理由は……。

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:47:18.00 ID:TozPC0Np0
まどか「嘘だよ……今の私には嘘だって分かるよ」

ほむら「どうして?」

それはもしかして……私のことを思い出したから?

あの日の思い出を取り戻したから?

……そう言葉にしたかったけれど、喉の奥で飲み込む。

ほむら(まだダメ。まだ分からないわ……)

先走る心を理性で縛り付けて、私はまどかの答えを待つ。

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/25(金) 18:48:03.35 ID:TozPC0Np0
まどか「だって一緒にお風呂に入ったもん。だから、分かるの」

それは、私の予想していた……期待していた理由とは異なった。

まどか「ほら、だってこれ……」

そして、完全に想像の範疇を越えたものだった。

ほむら「え……?」

私が制止する暇もなくまどかは────

まどか「これ……ほむらちゃんの匂いがするよ……」

吸い込まれるように自然な流れでブルマに顔をうずめて、まどかは大きく息を吸い込むのだった。

125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/14(木) 09:10:27.87 ID:eJ1WuVCe0
まどか「……ごめんね、こんなの訳わかんないよね……気持ち悪いよね……」

ブルマに顔を埋めたままフゴフゴと、くぐもった声でまどかは告白する。

まどか「でもダメなの……! 抑えきれないの、自分でも変だって分かってるのに、我慢できないの」

まどか「このブルマを見てると、ほむらちゃんへの想いが溢れてきちゃって……まるで自分が自分じゃなくなったみたいに、変になっちゃうの……!」

まどかの言葉が胸に、頭に響く。

まどか「ずっとほむらちゃんのことを知ってて、ずっとほむらちゃんのことが好きだったみたいな、そんな風に思っちゃうの!」

私はただ、黙って彼女の言葉を聞くことしか出来なかった。

まどか「う……うう……」

涙をブルマに吸わせる彼女にかける言葉など、一つも思いつかなかった。

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/14(木) 09:12:23.09 ID:eJ1WuVCe0
ほむら「まど、か……」

────私は、身勝手な理由でまどかにブルマを返した。

彼女の記憶が戻るかもしれないという願望から。

彼女が私を思い出してくれたら良いという自分本意な願いからまどかにブルマを返した。

まどか「ごめんね……ごめんねほむらちゃん……」

その結果がこれだ。

まどかは苦しんでいる。どうやら本当にまどかはブルマがきっかけで記憶を取り戻しつつあるようだけれど……

別の時間軸の記憶とのせめぎ合いに、頭が、心が、感情が追いついていないように見える。

思えば今日のお風呂の一件……まどかが過剰なまでにスキンシップをしてきたのもこれが原因だったのかも。

紺色の布地に隠れて見えないけれど、いつも愛らしいまどかのお顔が苦痛に歪んでいることは容易に想像できた。

私は取り返しの付かないことをしてしまったのではないか。

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/14(木) 09:13:46.44 ID:eJ1WuVCe0
いや、ブルマを奪えばまだ何とかなるかもしれない。

まどかの記憶の混濁を生んだのがブルマなら、その原因を無くせば元通りになる可能性はあるはずだ。

それとも魔法で記憶を奪うか?

まったく知らない振りをして誤魔化すのも良いかもしれない。

ほむら(……馬鹿だ)

反射的に思いついた幾つかの案に自己嫌悪する。そんなの責任逃れのためでしかない。

私はまだそんな身勝手なことをする気か。

ならば私のするべきことは、取るべき責任の取り方は……?

149: ◆okuJ0cvot2 2014/08/26(火) 09:05:27.03 ID:ujEbmzLq0
ほむら「まどか……」

私は泣きじゃくるまどかの隣へ移ると震える肩をそっと抱きしめた。

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「大丈夫よまどか、貴女は何も悪くないわ」

嗚呼、なんて小さな身体。こんな彼女に、私は記憶という重荷を背負わせてしまっていたのね。

まどか「ほむらちゃんは、私を赦してくれるの? こんな気持ち悪い私を、受け入れてくれるの?」

ほむら「気持ち悪いだなんてことはないわ。言ったでしょう、貴女は何も悪くないのだもの」

ごめんなさい、まどか。本当のことを貴女に教えるわ。

ほむら「悪いのは、私なの」

もしかしたらもっと貴女を苦しめてしまうことになるかも知れない。でも……

ほむら「私ね、未来から来たんだよ」

まどか「え……?」

馬鹿な私には、これくらいしか責任の取り方が分からなかったから。

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/26(火) 09:16:31.29 ID:ujEbmzLq0


……私は全てを打ち明けた。

時間遡行のこと。過去の時間軸でまどかからブルマを借りたこと。

そして、身勝手な下心からブルマをまどかに返したこと。

全部、隠すことなく話した。

軽蔑されたわよね。絶対に。

でも憎んでくれた方がきっと良い。

私のことを好きだっていう気持ちを、忘れるくらいに嫌いになってくれたほうが、きっと健全だもの。

まどか「……良かった」

そう、思っていたのに。

まどか「私のこの気持ちは、間違ってなんかなかったんだね」

嗚呼、どうして私に微笑んでくれるの、まどか。

まどか「……えへへっ」

どうしてそんなに幸せそうにブルマを咥えているの、まどか。

ほむら「私はっ、貴女を狂わせてしまったのよ? それなのにどうしてそんな、嬉しそうに……」

160: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:41:43.63 ID:7PjXFh7t0
まどか「私ね……ほむらちゃんが話してくれたお陰で全部思い出せたの……」

ほむら「……!」

頬を伝う涙を拭いながらまどかは言う。

その雫は先ほどまでの悲しみの色ではなく喜びの色で輝いていた。

まどか「ほむらちゃんが私のために頑張ってきてくれたこと、全部分かったんだよ……」

まどか「だからこの気持ちは間違ってなんかいないって、そう言い切れるの!」

嗚呼、でも、私は一度だって貴女を助けられなくて。

それに貴女にこんな酷いことまでして。

そんな私が、まどかに好きになってもらうなんて資格はないわ。

まどかは私なんかを好きになってもらっちゃダメなのよ。ダメなのに。

161: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:43:16.87 ID:7PjXFh7t0
ほむら「うっ……うううううう……!」

もう、我慢できなかった。抑えられなかった。

だってやっとまどかが私のことを思い出してくれたんだもの。

ずっと一人ぼっちで戦ってきた私のことを、まどかが分かってくれたんだもの。

私はこみ上げてくるそれを押さえ切れず……。

ほむら「うっ……うう……うあああっ……!」

子供みたいに大声をあげて、恥も外聞も忘れて泣いてしまった。

嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、私はまどかの胸で泣いてしまった。

まどか「ほむらちゃん……」

ふわりと、まどかの柔らかな手のひらが私の髪を撫でる。

162: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:44:20.39 ID:7PjXFh7t0
私はしばらくそのまま泣き喚いていた。

泣いて、泣いて、泣いて……。

ようやく泣き止んだ頃には落ち着きを取り戻していた。

まどかの胸に顔をうずめていることに気恥ずかしさを覚えたけれど……

でも、彼女から離れる気にはなれなかった。

まどか「こうしてほむらちゃんが甘えてくれるのも『久しぶり』だね」

ほむら「……ごめんなさい」

まどか「ふふ、私は嬉しいんだよ?」

163: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:45:08.57 ID:7PjXFh7t0
ああまどか。

私も嬉しいの。でも、同じくらい罪悪感もあって、苦しいの。

大好き。まどかのことは大好き。

まどかも私のことを好きだと言ってくれるなら、その気持ちに喜んで応えたい。

でも……少し、複雑なの。

自分のしたことを全部棚に上げてまどかを愛するのも間違っているような気がして。

この気持ちを整理するのは……ちょっと時間がかかりそう。

ほむら「こんな優柔不断な私でも、臆病な私でも、良い……?」

まどか「勿論だよ、ほむらちゃん!」

そういってまどかは世界で一番美しい華を咲かせた。

まどか「私はほむらちゃんの全部が好きなんだもん。格好良いほむらちゃんも、ちょっと臆病なほむらちゃんも、全部!」

私はもう一度泣きたくなって……まどかを抱きしめ、彼女の控えめな胸に溺れていった。

164: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:47:14.59 ID:7PjXFh7t0
……どれだけの時間そうしていたかは分からない。

気がつけば窓の外はすっかり暗くなっていて、常識的に考えるならば健全な中学生はもう帰宅するべき時間だった。

ほむら「もうこんな時間なのね……」

名残惜しいけれど、私はまどかの胸から離れて立ち上がる。

ほむら「遅くまで付き合わせてしまってごめんなさい、今日はもう帰っ……」

まどか「だ、だめっ」

スカートの裾がずり落ちそうな程に思い切り引っ張られる。

……危うく下 を露出するところだったわ。

まどか「だめ、だめだよほむらちゃん、そんなのずるいよ……」

ほむら「狡い?」

165: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:48:40.58 ID:7PjXFh7t0
まどか「だってほら、私……ほむらちゃんのせいで、こ、こんなに濡れちゃったんだよ……?」

まどかが指さす胸元は、確かにぐっしょりと濡れていた

私が痴態をさらした跡だ。涙と、もしかしたらそれ以外の体液も混ざっているかもしれない。

ほむら「ご、ごめんなさい……」

改めて見ると、自分の仕出かした事がどれだけみっともないかを思い知らされて私は頬が熱くなる。

まどか「ううん、いいの……でもっ、こんなにされちゃったんだもん、だから……」

まどか「今度は、私の番じゃなきゃ……狡いよ」

ほむら「まどか……」

まどか「責任取って、私を……ま、満足させてね……?」

徐々にまどかは私の方へ顔を近付けてくる。

それ以上言葉なんていらなかった。

私達は互いに吸い込まれるように頬を寄せ、触れ合った。

温かい。まどかのほっぺたから温もりが伝わる。そして……。

ブルマの柔らかな感触が私達の頬をくすぐったのだった。

166: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:50:53.65 ID:7PjXFh7t0






こうして私達は、より深い絆で結ばれることとなった。

本当にこれで良かったのか不安になるときもある。

でも、まどかの幸せそうな顔を見れば、それも小さな悩みに思えてワルプルも倒せた。

美樹さんのこと、巴さんのこと、杏子のこと……魔法少女の問題がまだまだ山積みであることは変わらないけれど。

それだってまどかが一緒に居てくれれば全部大丈夫、きっと乗り越えられる。

そうだよね、まどか。

167: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:51:52.15 ID:7PjXFh7t0
ほむら「きゃっ!」

まどか「あっ、大丈夫ほむらちゃん?」

ほむら「ええ……でも少し濡れてしまったわ」

まどか「昨日のスーパーセルで水溜まりが一杯だからね、気をつけて?」

ほむら「ありがとう、まどか」

まどか「……あ、でもまた水浸しになっても、ブルマを貸してあげるから大丈夫だよ♪」

ほむら「ふふっ。もう、まどかったら……」

168: ◆okuJ0cvot2 2014/09/14(日) 16:52:36.13 ID:7PjXFh7t0
~fin~