(女の家)


 ……ピンポーン


女「ん?誰だろ」

 「宅配便でーす」

女「あれ?今日配達の予定とかあったっけ…」

 「受け取り票にサインいいっすか」

女「あっ、はい……」



 ガチャ…

引用元: 女「ねえ、デートしよ」男「は?」 


2: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:45:54.61 ID:XAbnQ4lo0
 


 ドン!!!


女「…痛ッ!」

男「喋るな。大声出したら殺す。いいな?」

女(え?何この状況・・・強盗??)

男「いいかって聞いてんの」ドン!

女「ひゃっ・・・はい・・・」コクリ…

男「よし」

3: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:47:23.15 ID:XAbnQ4lo0
男「・・・女は信用出来ないもんなあ」ボソッ

女「・・・強盗なの?」

男「強盗じゃねーよ、脱獄してきたの」



 ……

女「ちょ!いきなり何を・・・」

男「椅子に縛る」

女「外してよ!もう!」ガチャガチャ!!

男「大声出したら殺すって言ったよな?」

女「・・・」ゴクリ

4: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:48:21.42 ID:XAbnQ4lo0
女「・・・臭いよ」

男「俺が?」

女「あんたしか居ないじゃん」

男「・・・服を洗濯しろってか」

女「洗濯というか、まずお風呂に入って欲しい」

男「・・・逃げるなよ?」

女「逃げようにも縛り付けられたんじゃ逃げられないよ」

男「そっか、なら風呂に入ろうかな」

女「そこの扉入ってすぐだから」

男「おう」

5: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:49:15.28 ID:XAbnQ4lo0
男「~♪」


 ……

女「・・・」ガチャガチャ

女「外れない・・・」ガチャガチャ

 ……


男「気持ちよかった♪」

女「・・・あっそ」

6: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:50:11.43 ID:XAbnQ4lo0
男「何だよ、せっかく可愛いのに素っ気ない女だな」

男「勿体ないぞ?」

女「・・・」プイ

男「・・・あぁそうかい、分かったよ」プイ

7: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:53:15.39 ID:XAbnQ4lo0
男「まあ、こんな狭い部屋じゃたとえ逃げれても隠れることも出来ないしな」

男「要はこれから少しの間は嫌でも共同生活になるってことだ」

女「・・・」プイ

男「なあ、諦めて俺の女になれよ」

女「はあ?誰がお前なんかと」

男「・・・だよな、じゃあ俺の女にはならなくていいからもう少し辛抱してくれよ」

女「・・・」プイ

8: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 22:55:27.69 ID:XAbnQ4lo0
(女家 夜)

男「・・・俺は寝る」

女「え? 待ってよ」

男「ん?」

女「私はこのまま?」

男「まあ、そういうことになるな」

女「座ったままじゃ寝れないよ」

男「でも外したら逃げるだろ? 何をするか分からん奴は信用出来ないな」

女「……死んじゃうよ」

男「あ?」


 ……

女「・・・そんな恐い声出されても困るよ」

男「・・・分かったよ」ボソッ

男「いつも寝てるベッドは? そこに置いてあるのでいいよな?」

女「うん・・」

11: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:21:13.38 ID:XAbnQ4lo0
男「椅子に縛るのは止めるけど、それでも手足は縛るからな?」

女「・・・うん」

男「・・別に何もしないから」

女「分かってるよ」

男「じゃあ俺も横で寝ていい?」

女「・・・」

女「やだよ」

男「しょうがない。それなら床で寝るか」

12: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:22:15.08 ID:XAbnQ4lo0
男「・・・」

女「・・・」

男「・・・布団貸してくれてありがと」

女「気にしなくていいよ」

男「まあ気にはしてないけどな」

女(思ってたよりも話の通じるヤツだな・・・)

13: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:24:14.59 ID:XAbnQ4lo0
男「・・・」ムズムズ

女「・・・」


 ……

女(なんであんなにムズムズしてるんだろう・・・)

女(気になって眠れない・・・)


男「…あのさ、」

女「どうした?」

男「煙草持ってる?」

女「持ってないよ、私吸わないもん」

男「ちょっと金貸してくんない? 煙草買ってくるわ」

女「ダメだよ!」

男「えっ?」

14: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:25:25.28 ID:XAbnQ4lo0
女「指名手配中なんでしょ? そうじゃなくても脱獄犯が夜中うろうろするなんて捕まりに行くようなもんでしょ」

男「そ、そうか。ありがとう、また今度買いにいくわ」



女(ヤバ・・なんか私が心配してるみたいになってるよ)

女「その、どうしても? 買いにいきたいって言うなら、止めはしないんだけどさ?」

男「いや、やっぱいいや。萎えた」

女「萎えたってなんだよ」

15: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:27:29.47 ID:XAbnQ4lo0
女「・・・それと、」

女「思ったんだけどさ」

男「なに?」

女「刑務所って煙草吸えるの?」

男「は? え? さ、さあ? わかんねえなあ」

男「吸えたんじゃないかー? うん、吸えたよー」

女(いやいや、絶対お前刑務所いなかったろ)

女(というか嘘が下手くそ過ぎるだろ)

女(でもこれ以上問い詰めると可哀想だからここは騙されとくか)



女「ふーん、そうなんだ。規則が変わったのかもねー」

男「そ、そうだな、規則が変わったんだよ、たぶん。」ホッ

女(なんか可愛いなコイツ)

16: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:28:49.47 ID:XAbnQ4lo0
男「……Zzz」

女(お、寝たか)

女(私も寝よっかな)

男「……Zzz」

女「……」

女「……Zzz」

17: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:30:10.07 ID:XAbnQ4lo0
(二日目 朝)

女「……うわ!」バッ!!

女「遅刻する!」

女「あれ? 動けない?」ガチャガチャ…

男「・・・一人言多いんだな、ボケるぞ」

女「うわッ!びっくりしたあ~」ビクッ!!

男「・・・勝手にパン焼いて食べてるから」

女「え? あぁ、いいよ、勝手に食べてて」

女「私仕事行かないと」

男「あ?」

18: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:31:22.04 ID:XAbnQ4lo0
男「いいわけないだろ」

女「・・・どうしても?」

男「俺は口答えする女は嫌いだな」モグモグ

女「・・・わかった」

女「そこにある電話取ってよ」

男「なんで?」

女「今日は行けませんって会社に連絡しないと」

男「理由は変な男に拘束されていますってか」

女「そんなこと言わないからさ・・・お願いだよお」


 ……

男「・・・わかったよ、3分で終わらせろよ」

男「それと必要以上のこと言ったら殺すから」

19: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:33:10.76 ID:XAbnQ4lo0
女「あ、はい。ちょっと風邪気味で・・・すいません、しばらく出れそうになくてですね・・・」

女「本当にすいません・・・はい、すいません・・・」

 ガチャ…

女「ふう、なんとか休めた」

男「・・・」ナデナデ

女「キャッ!何すんのよ!!」ビクッ!!

男「いや、風邪なら熱があるのかなーって思って」

女「ただの嘘だよ・・・」

男「あ、嘘なのか。なんで嘘なんて付くの?」

女(コイツ抜けてんなあ・・・)

20: 名も無き被検体774号+ 2014/04/22(火) 23:34:19.27 ID:XAbnQ4lo0
女「それが一番つきやすい嘘だし、休み易い嘘だからかな?」

男「ふーん」モグモグ

女「その明らかに興味無さそうな返答止めろや」

26: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/22(火) 23:52:40.86 ID:XAbnQ4lo0
女「ねえ、」

男「うるせぇなあ、食事中は静かにしろよ」モグモグ

女「私も食事したい」

男「じゃあしろよ」

女「・・・」ガチャガチャ…

男「あ、そっか・・・なら俺がパン焼いてやるよ」

女「ありがとう」

27: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/22(火) 23:56:48.17 ID:XAbnQ4lo0
男「ほら、口開けろ。食べさせてやるよ」


 ……

女「熱ッ! 熱いって! 火傷したらどうするの!」

男「そんなに怒らなくてもいいじゃんか……」

女「自分で食べる! 食事中は外して!」ガチャガチャ!!

男「・・・分かったよ」

29: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:00:38.01 ID:oWanEiI30
女「・・・」プン!

男「・・・ごめんなさい」

女「・・・」プン!

男「謝ったから許してよ・・・」

女「・・・」プン!

男「分かった。ちょっと外出るわ」

男「昼までには帰ってくるから」

女「・・・」プン!


女(コイツからかうのめっちゃ面白い!!)ニヤニヤ

 
34: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:19:13.14 ID:oWanEiI30
女「本当に出ていくとは・・・」

女「いいヤツなのかわるいヤツなのか・・・」

女「そういえば一人言ばかり言ってるとボケるとか言ってたな・・・」

女「黙ろう」

女「……」

女「……」

女「……Zzz」

35: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:20:19.67 ID:oWanEiI30
(外 午前中)

男「金もないしなあ」

男「公園にでも行ってみるか・・・」

男「・・・煙草吸いたいなあ」

36: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:23:02.78 ID:oWanEiI30
男「……」スタスタ…

警官「そこの君、ちょっと来てくれる?」

男「……」ギロ…

男「なんすか…」

警官「いやいや。ただの職質だから、すぐ終わるから!」

男「はあ…」

男(あっぶねえ・・・。捕まるかと思った)

37: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:25:16.49 ID:oWanEiI30
警官「仕事は?」

男「無職です」

警官「ずっと?」

男「はあ、仕事がなかなか見つからなくて」

警官「なるほど・・・大変だねえ。なら家は?」

男「女と同棲してます」

警官「ふーん、それは女性の家なの?」

男「そうですけど、何か文句あるんですか?」イラッ

38: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:27:18.75 ID:oWanEiI30
警官「いやいや!! そういう意味じゃないよ、安心して」

男「はあ…」

男「じゃあ俺はこれで」

警官「ちょっと待って!」

男「?」

警官「最後に所持品見せてくれる?」

男「見せるもん無いんで」スタスタ…

警官「ちょっと! コラ! 待て!」

40: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:35:44.71 ID:oWanEiI30
男「なんですか」

警官「見せるもの無くても形だけでもいいからさ?」

男「・・・はい」

警官「じゃあポケットの中身見せて」

男「えっと、・・・ライターと、」



 ……

男「・・・ライターだけです」

警官「本当に何も持ってないんだね・・・」

警官「未成年? 身分証明書は?」

男「……分からないです」

警官「は?」

男「じゃあさよなら!」ドタバタ!!

警官「あ! 待て!」ドタバタ!

42: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 00:37:21.71 ID:oWanEiI30
男「ふう・・・」

男「やっと逃げ切れた・・・」

男「外はやっぱり危険だな・・・」

男「年が分からないだけであんなに追い回されるとは」

男「もう帰ろう」スタスタ…

70: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 20:43:22.86 ID:oWanEiI30
男「ただいま」

女「……Zzz」

男「寝てるのか」

男「…喋らなきゃ可愛いんだけどなあ」

71: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 20:44:40.70 ID:oWanEiI30
(夕方)

女「……ん」

男「お、やっと起きたか」

女「ん……」

男「寝起きの顔もまた可愛いな」

女「うるさいあっち向いてろ」

73: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 20:50:07.18 ID:oWanEiI30
男「……風呂入りたい?」

女「うん・・・」

男「じゃあ入っていいぞ」

女「いいの? 窓から逃げるかもよ?」クスクス

男「逃げたいなら逃げろよ」

女「警察行くかもよ?」

男「彼氏ですって言い通すから」

女「なんだよその理由は」

女「ってかさ、……脱獄犯じゃないの?」

74: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 20:52:17.34 ID:oWanEiI30
男「うーん、脱獄犯ってのは正しいんだけどさ」

女「脱獄したのは刑務所じゃないってこと?」

男「そうそう」

女「じゃあどこ?」

男「政府の施設ですね」

75: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 20:56:44.05 ID:oWanEiI30
男「最近さ、変な疫病が流行ってるじゃん?」

女「うん」

男「その病気に耐性を持った人がいるらしい。んでその人達の血液で薬を作る予定らしいんだ」

女「じゃあ、あなたは耐性を持った人なの?」

男「いいや、違うよ」

男「俺はその試薬を試験的に受けてみる人」

76: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:01:00.94 ID:oWanEiI30
女「・・・んで怖くなって逃げてきたと」

男「逃げてはないんだぞ! ちゃんと受けた」

女「生きてるってことは成功したってこと?」

男「いやー、それがよく分からなくてさ。研究者さん達が俺を切り刻もうとしてたから逃げてきた」

男「ドアの鍵が開いてて本当に良かった」



 ……

女「嘘臭い」

男「本当の話なんだけどな」

77: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:02:15.42 ID:oWanEiI30
男「まあそういうことだから警察行っても無駄だぞ」

女「・・・」

78: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:04:14.52 ID:oWanEiI30
(女 風呂)

女「~♪」

女「久しぶりのお風呂~♪」

女「…幸せ……♪」

79: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:05:04.13 ID:oWanEiI30
女「風呂上がったから次はあんた入ってもいいよ」

男「おう、すぐ入るわ」

81: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:14:58.59 ID:oWanEiI30
(男 風呂)

男「・・・」ゴシゴシ

男「・・・」ゴシゴシ

男「・・・」ゴシゴシ

82: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:17:07.53 ID:oWanEiI30
男「気持ち良かった」

女「…ご飯は?」

男「食べたい。作って」

女「・・・分かった」

女「包丁持つけどいいの?」

男「おう、お前じゃあ、たとえ包丁持っても俺には勝てねーよ」

女「……いつか刺し殺してやる」イラッ

84: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 21:25:06.45 ID:oWanEiI30
女「……」

男「……何作ってんの?」

女「カレー」

男「おおカレーか! 久しぶりだ」

女「カレー好き?」

男「うん」

女「カレー味の●●●と●●●味のカレーだったらどっちが食べたい?」

男「食べたいのはカレー味のカレーだろうな」

女「うむ」

86: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:02:38.38 ID:oWanEiI30
男「…サラダも食べたい」

女「買っておいでよ」

男「無理。外は危険が一杯なんだ」

女「何言ってるかよく分からないけど今うちに野菜はないんだよ?」

男「……ダメ。今日は外には行かない」

女「じゃあサラダは我慢だね」

男「……分かった」

88: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:07:38.04 ID:oWanEiI30
男「……椅子に縛るのはもうやらなくてもいいよな?」

女「まあやらないでくれると嬉しいけど」

男「裏切ったり・・・しないよな?」

女「どうかなー?」ニヤニヤ

男「・・・」

女「普通の仕事をしてくれるなら裏切らないよ」

男「わかった約束する」

女(意外と素直なヤツなんだな)

89: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:12:37.63 ID:oWanEiI30
男「いただきまーす」

女「いただきまーす」

男「ん、・・・ウマイ」モグモグ

女「カレーは美味しいね」モグモグ

男「食うと言えばさ、お前何歳?」

女「確か今年で19くらいかな」

男「…俺は何歳くらいに見える?」

女「うーん、若く見えるけど成人にも見えるなあ」

女「私と同じくらいじゃない?」

男「じゃあ今度からは19と言うか…」ボソボソ

女「…あんた自分の年が分からないの?」

90: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:15:59.54 ID:oWanEiI30
男「長く施設に居たからさ、よく分からなくなっちゃった」

女「誕生日は?」

男「さあ? 分からないな」

女「施設はどのくらいの年から入ってるの?」

男「物心ついたくらいからかな」

女「施設で彼女とか作った?」

男「作ったってか特定の女を回してたから」

女「最低だな、お前。死ね」

男「ごめんなさい・・」

91: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:19:02.59 ID:oWanEiI30
男「お前は?」

女「私? 私は昔カッコいい彼氏がいたから!」ドヤァ

男「まあ昔のことなんかどうにでも言えるよな」

女「うるせぇ! ホントだよ!!」

男「じゃあ百歩譲ってイケメン彼氏だとして、どうして別れたんだ?」

女「・・・最低なヤツだったから」

92: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/23(水) 22:20:27.99 ID:oWanEiI30
男「ふーん」

男(あえて聞かないでおこう、辛そうだし)

女「・・・」モグモグ

男「・・・」モグモグ

女「・・・ごちそうさまでした」

男「ごちそうさまでした」

120: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/25(金) 21:15:37.73 ID:vdJMt78G0
(夜)

女「ねえ」

男「ん?」

女「ちょっと寒いよね?」

男「そうかー? 俺は別に…」

女「布団入ってもいいよ!」

男「ん? あ、そうか」

男「床も痛いし、お前が言うなら一緒に寝てあげてもいいぞ?」

女「・・・お願いします」

138: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 08:45:38.36 ID:w+1hxyid0
(朝)

女「おはよ」

男「うん」

女「今日暇だね」

男「そうだな」

女「ねえ、デートしよ」

男「は?」

139: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 08:47:53.61 ID:w+1hxyid0
女「いいじゃん暇なんでしょ?」

男「脱獄犯とデートする奴なんてそうそういないと思うぞ」

女「でもまあ仮にも同居してる訳じゃん?」

女「ならデートくらい付き合ってくれる義理はあるんじゃないの?」

男「・・・うむ、一理あるな」

女「やった!」

140: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 08:49:37.13 ID:w+1hxyid0
男「でもこの服じゃねえ・・・」

女「服は買ってあげるよ」

男「なんか悪いな、俺文無しなんだよね」

女「分かってるって」

男「じゃあ朝飯食ってデート行くか」

女「おー!」

141: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 09:00:35.49 ID:w+1hxyid0
(服屋)

男「んー、どれが似合うか分からないな」

女「選んであげよっか?」

男「頼む」

女「任しとけ! こういうのは得意なのだ!」

女「えーっと、これとこれと…」


 ……

男「これでいいのか?」

女「うん、バッチリだよ!」

146: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 18:48:05.13 ID:w+1hxyid0
店員「あっしたー」


(外)

男「…あっしたーってどういう意味なんだ?」

女「ありがとうございましたってのを略してるの」

男「なんか誠意がないな」

女「まあ年が同じぐらいだったから……許してあげなよ」

男「うん」

147: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 18:50:00.63 ID:w+1hxyid0
男「…どこ行きたいの?」

女「どこでもいいけど……」

男「今日は暑いし、室内がいいな」

女「デパート行く?」

男「人が多いのはちょっと……」

女「じゃあ水族館行こう!」

男「わかった。水族館なら人は少ないだろうし」

148: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 18:54:08.70 ID:w+1hxyid0
(水族館)

男「水族館って金取るのか」

女「維持費もタダじゃないからさ」

男「魚見るのに千円も払うのか」

女「デートだからいいじゃん!」

男「怒るなよ…」

150: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 19:02:59.97 ID:w+1hxyid0
女「涼しい♪」

男「中は暗いんだな、あの大きいのは何だ?」

女「サメ」

男「美味しそう」

女「美味しいよ」

151: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 19:04:45.04 ID:w+1hxyid0
男「これは形が違うな」

女「深海魚って書いてるね」

男「……気持ち悪」

女「そう? これはこれで良いと思うけど」

男「……この魚光ってるぞ」

女「アンコウだね、美味しいよ」

男「魚を食べ物としか見てないんだな」

153: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 19:07:46.41 ID:w+1hxyid0
男「これ知ってる、カメ」

女「カメって子供生むとき泣くらしいよ」

男「可愛いな」

156: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 21:55:28.34 ID:w+1hxyid0
女「……」ギュッ

男「何すんだよ離れろ」

女「いや」ギュッ

男「ほら周りの人が見てるぞ、恥ずかしいから離れろって」

女「んん……」

男「……喫茶店で休憩しよう」

女「わかった…」

157: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 21:58:28.81 ID:w+1hxyid0
(喫茶店)

男「……」

女「……」

店員「あの、……ご注文は?」

男「…コーヒー2つ」

女「……」

男「…砂糖とミルクも持ってきて」

店員「は、はい……分かりました」

158: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/27(日) 22:00:57.01 ID:w+1hxyid0
女「……」ザクッ ザクッ

男「砂糖入れすぎ太るぞ」

女「…ごめんなさい」

男「いや謝らなくていいからさ」

女「そうじゃなくて」

男「ん?」

女「勝手に抱きついたこと」

男「ん、ああ。デートだしな、気にすんな」

女「……ありがとう」

165: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/28(月) 10:34:16.17 ID:9MgEq/H30
女「……先帰る」

男「一緒の家なのに?」

女「一人になりたい」

男「夜遅いから危ないぞ、いいのか?」

女「いい、この辺りの道は知ってるから」

男「分かった」

店員「ありがとうございました」

……ガチャ…

166: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/28(月) 10:42:50.27 ID:9MgEq/H30
男「……おい」

店員「はい?」

男「ちょっと席空ける、金を家に忘れた」

店員「え? ちょっと! 待ってくださいよ!」

男「なんだよちゃんと戻ってくるって」

店員「堂々と食い逃げですか、警察呼びますよ?」

男「俺の言う事が信用出来ないってか」

店員「ええ、何か担保を置いて行って頂かないと」

男「……ん、何も持ってないしなあ。」

男「……このライターでいい?」

店員「それじゃあ困りますね……。そのネックレスでどうですか?」

男「え……、まあいいけどさ。すぐ戻る。テーブルは片付けるなよ」

店員「ありがとうございました」


 ガチャ…

167: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/28(月) 10:57:43.18 ID:9MgEq/H30
女「……」スタスタ…

チンピラ「なあ姉ちゃん、なあ!」

女「……」ビクッ!

女「なんですか…」

チンピラ「ちょっとお金貸してもらえないかなー? 絶対返すから!」

女「え?……いやですよ」

チンピラ「楽しいこともさせてあげるから! この通りだから!」

女「私急いでるんで……、ごめんなさい」

チンピラ「なんだあ? このアマ! 人が頭下げてんのによぉ! おい!聞いてんのか!」ドン!

女「ひゃっ……」ビクッ!

チンピラ「いいから来いよ、●してやるからさあ!」

女「止めて!」

男「いやぁー、待たせてごめんね!」

男「ん? お取り込み中? ってかどなた?」

チンピラ「お前こそ誰だあ? ぶっ飛ばすぞコラ!!」ドン!

男「あ?」ギロッ

168: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/28(月) 11:00:06.20 ID:9MgEq/H30
チンピラ(コイツはヤバい奴だ・・・)

チンピラ(絡むと大怪我する!)

チンピラ(逃げよう!)

チンピラ「……すまんな、彼女だとは知らんかった」

チンピラ「あばよ」


 ……

男「?」

男「なんだったんだ? アイツ」

女「助けてくれてありがとう」ギュッ

男「……おう」

169: ◆CiBH9t3vahcS 2014/04/28(月) 11:07:13.94 ID:9MgEq/H30
(喫茶店)

女「……」ゴクゴク…

男「……」ゴクゴク…

女「…何時間いるつもり?」

男「もうそろそろ外出たいの?」

女「うん」

男「俺バーに行きたい」

女「え? 未成年でしょ?」

男「だから年は分からないんだって」

女「そうだった……」



女「あの、お会計します」

店員「はい」




店員「ありがとうございましたー」

 ガチャ…

224: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:32:22.21 ID:SrRdSbSt0
(家)

男「おやすみ」

女「おやすみ」

225: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:40:54.81 ID:SrRdSbSt0
男「……」

女「……」

男「……」

女「…楽しかったよ、ありがとう」

男「そっか。楽しんで貰えて嬉しいよ」

女「とても最初に殺すぞとか言ってた人には見えないね」

男「あはは、演技だよ演技。家に入れてくださいなんて言っても誰も家に入らせてくれないだろ?」

女「脅して入り込むのも犯罪だけどね」

227: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:44:05.87 ID:SrRdSbSt0
女「途中で縛るのも止めたよね? あれはなんで?」

男「ああ、この女俺に惚れてんなって分かったから。なら通報とかしないだろ?」

女「ほほほ惚れてねーよ」ドキドキ

男「デートまでしてやったんだから通報するなよ、約束するなら明日仕事行ってもいいよ」

女「うん」

228: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:48:14.84 ID:SrRdSbSt0
女「そこまで言うならさ」

男「ん?」

女「付き合ってくれる?」

男「んーっと、ダメ」

女「…なんで?」

男「まだ施設に彼女いるから。二股でもいいよってんなら付き合うけど」

女「最低、死ね」

男「怒んなって」

229: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:50:41.79 ID:SrRdSbSt0
女「施設に彼女置いてきたの?」

男「一応誘ってはみたんだけど、ねぇ」

女「お断りされちゃった?」

男「うん、まああそこは安定して飯が食えるしな」

男「向こうとしてはわざわざ脱走する理由がなかったんだろうな」

女「ふーん」

女(なんだか悲しそうだな…)

230: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:52:34.25 ID:SrRdSbSt0
女「友達居なかったの?」

男「いたとでも思うの?」

女「うーむ……」

男「いや悩むなよ、悲しくなるだろ」

231: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:54:51.22 ID:SrRdSbSt0
女「……好き」

男「おう」

女「…彼女さん元気にしてるのかな」

男「さあな」

女「今も彼女さん一筋なの?」

男「別に」

女「……ふーん」

232: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 20:57:57.28 ID:SrRdSbSt0
女(一筋なのかな…)

女(……こんなに好きなのに)



 ……

女「…おやすみ」

男「うん、おやすみ」

233: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 21:07:18.94 ID:SrRdSbSt0
(朝)

男「おはよう」

女「ん……、早起きだね」

男「今日から仕事? 頑張ってね」

女「うん、悪いことしちゃダメだよ?」

男「おう。分かってるつもり」

女「……よし、信じた」



女「いってきます!」

男「いってらっしゃい」

236: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:04:10.37 ID:SrRdSbSt0
男「……」

男「…外の世界を見てみるか」


 ガチャ……

237: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:06:09.89 ID:SrRdSbSt0
男「うーん、まずは公園かなあ」スタスタ…

(公園)

男「ふう、結構距離あるんだな。疲れた」

爺さん「……」ジー

男「……見られてる。怒ってるのかな…」

男「公園にはいちゃいけないみたい。他を当たってみよう」スタスタ…

238: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:07:42.13 ID:SrRdSbSt0
(路地裏)

男「……ここは誰もいないなあ」スタスタ…

男「じめじめ…」

男「暗いし……」

男「……」

ヤンキー達「よお兄ちゃん、ちょっと待てよ」

239: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:09:33.27 ID:SrRdSbSt0
(家)

女「ただいま!」

男「おかえり」

女「悪いことした?」

男「してない。」

女「偉い偉い」

男「けど喧嘩売られた」

女「悪いことしてんじゃねぇか」

240: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:12:22.22 ID:SrRdSbSt0
男「売られたからさ、買っちゃった」

女「はい通報」

男「待て待て、早まるな」

女「ん?」

男「ヤンキーの兄ちゃん達に小遣い貰った」

女「こんなにたくさん?」

男「うん」





女「…嘘つくな」

男「ごめん、殴り倒して金盗ってきた」

女「最低、」

241: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:16:19.92 ID:SrRdSbSt0
男「だから、この小遣いお前にあげる」

女「私困るんだけど」

男「金盗って使ったらクズじゃん? なら人にあげた方が良いと思う」

女「……使うのはヤバそうだから、一応貯金しとくね」

男「オッケー」

女「……怪我は?」

男「ないよ」

女「喧嘩強いんだね、でも次やったら通報するから」

男「反省します」

243: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:23:05.34 ID:SrRdSbSt0
男「でも喧嘩って手っ取り早く稼げるから意外と楽だよ」

女「さては常習犯か」

男「この家に来るまでの生活費は喧嘩でむしり取った金である」ドヤァ

女「どや顔で言ってるけどそれそこら辺のチンピラと変わんないから」

244: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:32:03.92 ID:SrRdSbSt0
男「まあ俺は喧嘩強い自慢がやりたかったわけじゃない」

女「ほうほう」

男「仕事で疲れて俺のために料理まで作って人を1人養ってる女として」

女「うん」

男「少しの金銭的援助をしてやりたいと思ったからで…」ゴニョゴニョ…




女「……最後の方は聞き取り難かったけど気持ちは伝わった」

女「今回限りは許す」

女「次やったら通報、いいね?」

男「おう!」

246: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/01(木) 22:54:58.73 ID:SrRdSbSt0
 ……

男「おやすみ」

女「おやすみ」

278: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 10:58:07.99 ID:reqCsBui0
(朝)

女「いってきまーす」

男「……Zzz」

女「寝てたらかわいいんだけどなぁ……」

男「……Zzz」

279: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 11:09:51.72 ID:reqCsBui0
(夜)

男「おかえり」

女「ただいまー」

女「……血生臭いんだけど」

男「……んー」ポリポリ…

女「やっちゃった?」

男「うん…」

女「はぁ…」

280: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 11:19:27.07 ID:reqCsBui0
女「ダメって言ったじゃん?」

男「……」

女「…通報するよ?」

男「……」

男「……ごめんなさい」

女「止められないの?」

男「止められないってかよく絡まれるわけ」

女「んー、なんとか喧嘩強いの利用出来ないかなあ」

283: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 11:30:55.03 ID:reqCsBui0
女「!!」

女「思いついた!」

男「教えて」

女「バイトしてみるってのはどう?」

男「バイト?」

女「お金も貯まるし喧嘩もしなくてもいいし、力仕事出来そうだし」

女「完璧だね!」

男「うーん、でも俺身分証明出来ないし」

女「大丈夫だって! そこら辺のお店なら大丈夫!」

男「そっか、ならバイトやってみるか」

女「偉い!」

288: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:25:54.08 ID:reqCsBui0
男「あれだろ?」

女「ん?」

男「『キュウジン広告』ってのを見ればいいんだろ?」

女「求人広告ね。確かにそうだけど、そういう広告出す所は大抵身分証明書出せって言うよ」

男「じゃあ無理じゃん」

女「だから地道にお店巡って働かせて下さいって言うほかないね」

男「そんな簡単に働かせてくれるのだろうか……」

289: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:44:58.66 ID:reqCsBui0
(深夜)

男「おやすみ」

女「やだ」

男「は?」

290: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:47:15.37 ID:reqCsBui0
女「まだおやすみしたくない」

男「なら1人で起きててくれ。俺はおやすみするから」

女「んー」ジー

男「……分かったよ。もう少しだけ起きててやるよ」

女「偉そうだ」

男「俺は今すぐ寝てもいいんだぞ?」

女「んー」

男「……はあ」

291: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:49:25.78 ID:reqCsBui0
男「何する? ってか何したい?」

女「キス」

男「張り倒すぞ」

女「倒されてキスもいいかも」

男「…酔ってんの?」

女「んん、」

男「……じゃあ添い寝してあげるから寝てくれ」

女「んん」ウトウト

292: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:55:01.36 ID:reqCsBui0
女「……んん、」

男「酔うって気持ちいい?」

女「うん」

男「俺も酒飲んでみたい」

女「未成年には早すぎるなあ」

男「だから年は分かんないんだって」

女「……チューして」

男「やだ」

女「お願い、バイト探すの手伝ってあげるから」

男「むむ、……わかった」

女「よしよし」

293: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 19:56:03.47 ID:reqCsBui0
女「ん、……」

男「んん、……」



 ……

男「…酒臭い」

女「うるさいはよ寝ろ」

294: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/03(土) 20:06:02.10 ID:reqCsBui0
(朝)

女「おはよう」

男「おはよう」

男「今日は一緒に出るから」

女「おお、職探しか。頑張ってね」

男「一緒に探してくれないの?」

女「私も仕事あるからなあ、時間が出来たらということで」

男「えー」

女「大丈夫! 元気出して! それじゃあいってみよう!」


 ガチャ…

318: 名も無き被検体774号+ 2014/05/04(日) 21:24:02.99 ID:rYjjJOnE0
(外)

男「……」スタスタ……

男「あ、お店。」

『パン屋』

男「パン屋か……力仕事ありそうだな、入ってみるか……」

 ガチャ…

319: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/04(日) 21:26:02.41 ID:rYjjJOnE0
爺「いらっしゃい。ん? 見慣れない顔じゃのう」

男「あ、あの、」

爺「いやいや、過去に来たことがあるならすまんの。まあ色々見ていってくれ」

男「いや、そうじゃなくて」

爺「ん? どうかしたかの」

男「……ここで働かせてくれませんか?」

321: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/04(日) 21:38:55.88 ID:rYjjJOnE0
爺「おお! そういうことじゃったか!」

爺「ちょうど人手が足りんかってな!」

爺「まさに猫の手も借りたい所だったのじゃよ! はは!」

男「……」

322: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/04(日) 21:43:15.86 ID:rYjjJOnE0
爺「まあそんなくだらんジョークはさておきじゃ!」

男「うん」

爺「早速働いて貰うぞ! まずは接客からじゃ! 」

男「俺お金数えるの得意じゃない」

爺「はは! 最初から得意な奴なんておらんのじゃよ。何事も慣れじゃよ、慣れ」

男「うん、わかった」

爺「あと仮にも店長様に向かってタメ口とは解せぬなあ」

爺「まあわしはいいとして、お客さんには敬語を使うのじゃよ? それが出来ないならクビじゃ」

爺「いいな?」

男「うん」

324: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/04(日) 22:00:28.27 ID:rYjjJOnE0
男「あんたさ」

爺「なんじゃ?」

男「この間公園居なかった?」

爺「はて? そうだったかの? そんなこともあったような気がするが」

男「そっか…あんたにじろじろ見られてたような気がしたんだけど」

爺「……最近物覚え悪くての、すまんな」

334: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 00:22:46.42 ID:8oOSUNXs0
男「……」サクッサクッ

爺「随分包丁捌きが上手じゃの」

男「そうか?」ザクッザクッ

爺「…何人殺した?」

男「え?」

爺「いやいや、何でものうて! はは!」

男「……三人だよ」

爺「ほう」

336: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 00:27:33.31 ID:8oOSUNXs0
男「一人目は追われてて、警備員だった。とっさに」

爺「その感じだと撃ったのじゃな?」

男「うん」

爺「二人目は?」

男「二人目は警官だった。留置所とか言うのに無理矢理連れて行かれそうになって」

男「近くにあった鉄の棒で、やった」サクッサクッ

爺「一回くらいじゃ死なないんじゃないのか?」

男「一回で気絶させられたんだけど。楽しくなっちゃって」

男「殺しちゃった」

爺「なるほど。なかなか肝っ玉の太い男じゃな」

337: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 00:30:17.26 ID:8oOSUNXs0
爺「三人目は?」

男「……」

男「…なんとなく」

爺「快楽目的じゃな?」

男「んん、多分ね」

爺「一回覚えたら止められないんじゃな?」

男「ううん、もうやめた。好きな人が出来たから」

爺「ほう」

338: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 02:03:51.66 ID:8oOSUNXs0
男「……なあ、じいちゃん」

爺「爺でいいぞ、新入りよ」

男「慣れるってのは罪だよ。少なくとも俺はそう思う」

爺「なるほどな。心に隙が出来るなどという簡単な理由でないことは汲み取れるぞ」

爺「あえてその理由は聞かんが、まあしっかり働けよ、新入り」

男「うん」

352: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 20:00:56.91 ID:8oOSUNXs0
男「いらっしゃ・・・」

女「・・・なんで、ここにいるの」

男「ここで働くことにしたから」

女「あ、そう。ここ気になるお店だったんだよね。皆美味しいって言うし」

男「そ。俺は初めてだから分かんないけど、適当に買っといて」

女「店員でしょ、接客しなさいよ」

355: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 20:08:48.22 ID:8oOSUNXs0
男「あっしたー」

女「誠意が全くないわね」

男「はよ出てけ」

357: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 20:33:40.64 ID:8oOSUNXs0
男「・・・」

爺「今日のところはもういいよ」

男「うん、お疲れ……様でした」

爺「ん、お疲れ」

360: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/05(月) 23:06:57.56 ID:8oOSUNXs0
男「ただいまー」

女「お、帰ってきたか非行少年」

男「なんだよただのバイトだろ?」

女「ふふ、冗談だよ」

男「はいこれ今日の分のバイト代」

女「要らない。それはあんたの」

男「俺の?」

女「そ。人から分取った金より100倍は価値がある金だから、大切に使えよ」

女「いい?」

男「うん……」

女「じゃ、私は先に寝る。机の上の酒飲んでいいよ、ご褒美」

男「俺はそんなに安い男じゃない」

女「強がんな非行少年、ふふ」

371: 名も無き被検体774号+ 2014/05/06(火) 10:40:27.28 ID:SfwA7/bA0
女「指名手配中なんでしょ? そうじゃなくても脱獄犯が夜中うろうろするなんて捕まりに行くようなもんでしょ」

男「そ、そうか。ありがとう、また今度買いにいくわ」



女(ヤバ・・なんか私が心配してるみたいになってるよ)

女「その、どうしても? 買いにいきたいって言うなら、止めはしないんだけどさ?」

男「いや、やっぱいいや。萎えた」

女「萎えたってなんだよ」

372: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(2+0:8) 2014/05/06(火) 10:40:53.49 ID:SfwA7/bA0
(二日目 朝)

女「……うわ!」バッ!!

女「遅刻する!」

女「あれ? 動けない?」ガチャガチャ…

男「・・・一人言多いんだな、ボケるぞ」

女「うわッ!びっくりしたあ~」ビクッ!!

男「・・・勝手にパン焼いて食べてるから」

女「え? あぁ、いいよ、勝手に食べてて」

女「私仕事行かないと」

男「あ?」

380: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 11:45:15.37 ID:WnFkgY8a0
(女家 朝)

男「ん……」

女「ほら起きて」

男「……パン屋行かなくちゃ」

女「明日は何時からってのは聞いてなかったの?」

男「うん」

女「じゃあ早めに行っておいた方がいいね、待たせるといけないから」

男「うん」


 ……

女「……じゃあいってらっしゃい」

男「いってきます」

382: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 11:49:28.39 ID:WnFkgY8a0
(パン屋)

男「……」

爺「おお、もう来たのか。早かったの」

男「おはよう…ございます」

爺「ん、おはよう。じゃあ早速働いて貰うぞ」

男「うん」

393: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 23:47:17.39 ID:W3OwPf3k0
(パン屋 昼)

男「いらっしゃい」

客「あの、その、……」

男「なに?」

客「クロワッサンをいくつか……貰えませんか?」

男「えーと……」

男(クロワッサンってなんだっけ……ヤバいヤバい分からない)

男「ちょっと待ってて!」

客「え、あ! はい……わかりました」

394: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 23:50:02.22 ID:W3OwPf3k0
男「爺! クロワッサンってなに?」

爺「クロワッサン? バカ野郎朝教えたばっかりじゃねぇか!」

男「分かったから早く! お客さんが待ってる」

爺「クロワッサンってのはくるくるした小麦色のパンさ、探してみろあるはずだ」

男「くるくるしたパンね、わかった」

爺「なかったら明日にでもまた来てもらえ、いいな?」

男「うん」

395: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 23:52:33.68 ID:W3OwPf3k0
男「・・・」ジー

男「いや無くね?」

客「あの・・・」

男「ごめん! 無いみたい」

客「あ、そうですか……じゃあ他の買っていきます」

男「ごめんね! 欲しがったら明日にでも買いに来てよ」

客「はい…」

396: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 23:55:31.94 ID:W3OwPf3k0
(閉店後 夕方)

爺「二日目はどうじゃった? ちゃんと敬語は使えたかの?」

男「うーん、そこそこ」

爺「はは! 初めの頃は皆そんなもんじゃ! わしも若い頃は……」

男「お疲れーっす」ガチャ

爺「こら話を聞け!」

398: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/06(火) 23:57:35.23 ID:W3OwPf3k0
(女家 夜)

男「ただいまー」

女「お、帰ったか不良少年」

男「少年って年でもないけどな」

女「ご飯作ってあるから暖め直して食べて」

男「おう」

女「……ちゃんと働けてる?」

男「まあ、そこそこには」

女「そ、ならいいけど」

399: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:01:46.63 ID:W3OwPf3k0
女「よく給料とか見てないけどさ、ちゃんと労働に見合うお金貰えてる?」

女「足りないってなら増やすように要求出来るからね? わかった?」

男「わかった。まあ煙草買えるくらいは貰えてるし、要求するつもりはないけどね」カチャ…

女「室内で吸わないでよ」

男「お、久々に怒った?」

女「うっせ、兎に角吸うなって」

男「わかったよ」

400: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:05:56.00 ID:aPNQBOK20
男「でもお前なんでそんなに煙草が嫌いなんだ?」

女「前の彼氏がよく吸ってたから」

男「ああー、暴力彼氏だったわけ?」

女「……うん」

男「女に手をあげるとはダメ男だな。俺もあんまり人のこと言えないけど」

女「あはは、男はいいよ。まだましな方」

男「さらっと恐ろしい事言うなよ」

女「…クズな人って母性本能をくすぐられるよね」

男「もう語らなくていいから寝てくれよ」

女「うー」

401: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:08:08.11 ID:aPNQBOK20
(深夜)

女「……Zzz」

女「……Zzz」

男「……」

男「……」ガサゴソ……

402: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:09:20.34 ID:aPNQBOK20
(外)

男「はぁ……」スパー…

男「旨い」スパー……

男「……」ジー

男「明日から禁煙してみるか」



  ……ポイ

403: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:14:19.06 ID:aPNQBOK20
(女家 朝)

男「おはよう」

女「おはよ」

男「爺がね、あんまり早くに出てこなくてもいいぞって言ってた」

女「爺?」

男「うちの店長」

女「店長? ……なかなかフレンドリーな職場だね」

男「おう、結構楽しいぞ」

404: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:16:37.07 ID:aPNQBOK20
女「じゃあ今日は一緒の時間に出ようか」

男「そうだな」

406: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 00:21:11.86 ID:aPNQBOK20
男「いってきます」



 ……ガチャ…

女「いってらっしゃい」

女「……男ちょっと変わったような気がする」

女「どこかとげとげしく無くなったような……」

女「はは! 気のせいか!」

429: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:20:32.84 ID:aPNQBOK20
男「……」

爺「それにしてもお前さんは黙々と働くなあ」

男「お喋りしてやらないとダメか?」

爺「いやいや、嫌味というわけではなくてな。最近の若者は怠け癖があるとよく聞いていたのでな」

男「そうか、期待に添えなくて申し訳ないな」

爺「はは! 上手いこと返されたわい!」

男「……」

爺「じゃあ残りはわしがやるから店を開けてくれ」

男「うん」

430: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:23:55.81 ID:aPNQBOK20
男「……」

 チリンチリン…

男「いらっしゃい」

客「……」

男「昨日の人かな?」

客「あ・・・はい、クロワッサン食べたくて」

男「へぇ、朝イチ来たんだ、可愛いね」

客「え?・・・そんな、やめてくださいよ!」



 ……

男「…はいじゃあお釣りはこんだけね」

客「……また来ます」

男「うん、待ってるよ」

 ……ガチャ…

431: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:25:16.13 ID:aPNQBOK20
爺「今までそうやって女の子をたぶらかして来たんかい」

男「そう見える? 立派な営業だと思うけど」

爺「…お前この仕事向いとるかもしれんな」

432: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:27:50.66 ID:aPNQBOK20
男「……」

爺「そろそろ昼飯の時間かな」

男「そうか、じゃあ適当に作るから待ってろ」

爺「いや、今日は外食にせんか?」

男「は?」

爺「たまにはピザだのパスタだの食べたいじゃろ! ほれ、はよせんか! 行くぞ!」

男「……爺が食べたいならついていくけど…」

爺「さすがは我が弟子。物分かりも早い! 偉いぞ!」

433: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:37:05.05 ID:aPNQBOK20
(ピザ屋)

店員「ご注文は…」

爺「パスタ!」

男「バカ、ピザ屋なんだからまずはピザだろ」

爺「さすがは我が弟子! もっともなことを言うわい」

爺「ではピザ二枚にパスタ!」

男「パスタは絶対食べるんだな」

店員「……かしこまりー」

434: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:39:08.84 ID:aPNQBOK20
男「……トイレ」

爺「おう! 我慢するなよ、病気しちゃうからの」

男「食べ物屋では機嫌が良くなるんだな」

435: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:40:04.83 ID:aPNQBOK20
(トイレ)

男「……」

男「……」

 シャー……

 シャー…

 ガチャ……

436: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:40:33.47 ID:aPNQBOK20
男「あれ?」

男「なんでアイツがいるんだ?」

437: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:41:29.10 ID:aPNQBOK20
女「いやー美味しいね!」

女同僚「ほんとだね!」

女「うんいゃー!! 旨い!」

女同僚「やー!!!」

438: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:46:27.15 ID:aPNQBOK20
男「よ、」

女「・・・あ!?」

男「そんなに驚かなくてもいいじゃん」

女「あんたとはどこでも会うわねぇ・・・」

女同僚「あれれぇ?? これが噂の彼氏くぅん? 結構カッコいいじゃない! あんたもやるわねえ!」

女「あはは、ははは…」

男「はあ? 俺コイツと付き合ってなんか……」

女「あー!!!!」

女「私サラダ取ってくるね! 一緒に行こう! ダーリン!」ドタバタ!!

男「え? あ、ちょっと待てって!」ドタバタ!!

女同僚「ん? なんだったのかな?」

439: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:53:27.63 ID:aPNQBOK20
(サラダバー)

女「はぁはぁ・・・」

男「彼氏ってどういうことだよ」

女「強盗が家に住み着いていますっては言えないでしょ? だから建前上そういうことにしてるの!」

女「だからアンタはあははとか言って笑って誤魔化しなさい! わかった?」

男「お、おう……先に言っててくれよ、焦ったじゃん」

女「……それは謝る………ごめん…」




 ……

男「なあ、お前って建前上は彼女なんだろ?」

女「ん? ままままあ、そういうことだけど?」ドキドキ

男「ならちょっと俺のテーブルまで付き合え。爺に一言言わないと」

女「ななななんでよ! いいでしょ言わなくても!」ドキドキ!!

男「いやあ、俺が真面目に営業やってんのに女たぶらかしてるとかほざくからさ」

女「あぁ~……そういうこと…」ガックリ…

男「分かってくれた? とりあえずお前彼女ってことにして女たぶらかしてるとかねーよって言いに行くから」

女「うん」

440: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:57:21.66 ID:aPNQBOK20
(爺・男のテーブル)

爺「ずいぶんと長いトイレじゃったの」

爺「お! 早速おなごを連れてきてからに!! 我が弟子も大概の女好きよのー!」

男「これ彼女」

爺「なに!?」

女「あはは・・・、まあ一応そういうことなんで・・・うちの奴を宜しくお願いします・・・」

爺「はは! 任しとき!」

441: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 21:59:50.41 ID:aPNQBOK20
男「な? 俺が他の女たぶらかしてるとか無い話だろ?」

爺「ぐぬぬ……そう言われると…そうじゃの」

女「あはは……」

男「同棲までしてるから」

爺「なに!? まさか男女の交わりを!?」

男「ねーよ」

爺「なんじゃ萎えるのぅ……」

男「萎えるってなんだよ」

450: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:37:39.68 ID:aPNQBOK20
(パン屋)

爺「今日は良かった! 楽しかったぞー!」

男「ああ、そうかい。そりゃなによりだ」

爺「ん? 男は楽しくなかったのか? そりゃあよくないな」

男「俺は普通かな。飯は旨かった」

爺「そうかそうか! ならあの店はお気に入りの店じゃな!」

男「そうだな、じゃあ俺は早めに帰るわ」

爺「おう、気をつけるんじゃぞ!」

451: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:39:21.22 ID:aPNQBOK20
男「……」スタスタ…

男「……ん?」

男「こんな所に花屋なんてあったっけ?」

男「……女に買っていってやるか」


 ガチャ…

452: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:43:01.63 ID:aPNQBOK20
(花屋)

客「ごめんなさい、今日はもう閉店・・・」

男「お? 今日朝にクロワッサン買いに来た子だよね? ってか閉店? しゃーない、また明日来るよ」

客「……待って!」

男「ん?」

客「…折角来てもらったんだし、ちょっとうちに上がって行きませんか?」

454: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:47:30.72 ID:aPNQBOK20
(客の家)

客「あの、お菓子なんかこれだけしかないんですけど……」

男「ああ、いいよいいよ。気にしないで」

男(完全に惚れられたな・・・マズイかも)

客「あの・・・パン美味しいです」

男「あ、ほんと? 嬉しいなあ!」

客「・・・」

男「・・・」

男「じゃあこの辺で俺は……いいかな?」

客「……はい」

男「じゃあ、また今度」

客「…ごめんなさい、そこにあるコップ取って貰えますか?」

男「あ、うん、いいよ」クルッ



 ……ゴツ!!!

男(痛ッ!……視界が…暗……)

455: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:50:17.09 ID:aPNQBOK20
男「・・・う、」

男「痛ッ!」ズキン!!

男「……」ガチャガチャ…

男(捕まっちゃった・・・のかな)

男「…」ガチャガチャ…

456: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:53:28.49 ID:aPNQBOK20
客「あ、目覚めました?」

男「・・・うん」

客「・・・ごめんなさい、でも側にいて貰いたくて」

男「なら今度からは気絶させずにちゃんと言葉で側に居てって言おうな」

客「・・・ごめんなさい」

男「俺は怒ってないんだけど、ちょっと今日は帰りたいな。そろそろ時間も遅いし」

客「・・・やだ」

男「うーん、そっかあ。」

男(拘束されてんからなあ)

男「しょうがない。一晩だけ側に居てやるよ」

客「・・・うん」

457: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:54:42.67 ID:aPNQBOK20
(女 家)

女「男遅いなあ・・・」

女「まさか変な女と!!」




女「なわけないか! あはは!」

458: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/07(水) 23:56:37.55 ID:aPNQBOK20
(客 家)

男「・・・逃げないからこれ外してくれよ」

客「まだダメ」

男(縛られるってこんな感じなのか、女もこんな気持ちだったのかな)

客「・・・キスして」

男「俺なんかに汚されていいのか」

客「汚して欲しいくらい」

男「わかった」

461: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:01:06.28 ID:klsCm0Ct0
客「・・・んん」

男「・・・ん、」



 ……

男「これで許してくれる?」

客「わかった。約束通り外してあげる」

 カチャカチャ……

男「俺帰っていい?」

客「ダメ」

男「じゃあ次は何して遊ぼうか」

客「●●●して」

男「ゴム持ってんの?」

客「ないけど大丈夫」

男「……信じるぞ?」

客「神様に誓うよ」

男「わかった、xxxxしよう」

464: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:07:45.29 ID:klsCm0Ct0
客「思ってたより……優…しいんだね……」

男「だろ?……はぁ、はぁ」

客「もう……いいよ、出し…て」 

男「う、・・・」



 ……

客「好きな人いる?」

男「いるよ」

客「その人と●●たことある?」

男「ないよ」

客「その人より先に興味ない女と●●ってどういう気持ち?」

男「本当に好きな人とはそう簡単にxxxx出来ねえよ」

客「傷つくこと言うなあ」

465: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:09:48.14 ID:klsCm0Ct0
男「じゃ、俺はこれで」

客「前言撤回」

男「ん?」

客「やっぱり君、優しくないよ」

男「はは、知ってる」

客「淡白だなぁ…」


 ガチャ…

466: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:12:47.73 ID:klsCm0Ct0
(女家 深夜)

男「ただいまー……」

男「起きてるわけねえか」

女「おい!」

男「わ! びっくりした!」ビクッ!

女「とりあえず正座しろ」

男「はい…」

女「何やってたんだよ」

男「パン屋の残業」

女「嘘つくな」

男「ごめん嘘ついた。」

女「本当は?」

男「知らない女と●●てた」

女「ぶっ殺すぞてめぇ」

470: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:17:33.00 ID:klsCm0Ct0
女「……」

男「傷ついた?」

女「……別に」

男「抱いてやろうか?」

女「触んな汚ねぇ」

男「なあ、何がそんなに気に食わないんだよ」

女「うるせぇ」

男「……こういうのを弄ぶって言うのかな」

女「……」シクシク…

男「……」

女「……」シクシク……

男「……今日はもう遅いしさ? …寝ようぜ……」

女「……」シクシク……

472: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:23:05.32 ID:klsCm0Ct0
(女家 朝)

男「……」

男「おはよ」

女「……」

男「…俺先出るから」

男「……」

男「……いってきます」


 ガチャ……


女「ばか……」

475: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:26:48.98 ID:klsCm0Ct0
男「……はぁ」

爺「どうしたんじゃ浮かない顔して」

爺「元気出さんとお客さんも来ないぞ! はは!」

男「俺だって悩み事の1つや2つくらいあるんだ、ほっといてくれ。仕事はやっとくから」

爺「どーせお前のことだ、全部自分で蒔いた種だろう」

男「……」

男「うん…」

爺「まあ気にするな! 若いんだからまだまだ取り返しがつく! 頑張れ若者!」

爺「いいか!」

男「うん、頑張ってはみる……」

476: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:28:28.83 ID:klsCm0Ct0
爺「よしじゃあ、そろそろ店を開けてくれるか」

男「わかった」

478: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:30:52.02 ID:klsCm0Ct0
(パン屋)

 チリンチリン……

男「いらっしゃい」

客「・・・」

男「なに?」

客「クロワッサン、くれる?」

男「いくつ? 」

客「3つ」

男「太るぞ、2個にしとけよ」

客「君余計な所でお節介だよね」



 ……

男「クロワッサン2つまいど」

 チリンチリン……

479: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/08(木) 00:37:31.68 ID:klsCm0Ct0
爺「察するに昨日のおなごじゃろ?」

男「喧嘩した。ってか爺だけには言うけど彼女じゃないんだよね」

男「なのに束縛的っていうかなんというか……」

爺「本当に束縛しとるのは誰じゃろうな」

男「どういう意味だよ」

爺「さあ? そんなことより仕事仕事!!」

517: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 19:54:00.46 ID:YWzVWTID0
爺「よしじゃあ今日はこのくらいにしとこうかの」

男「まだなんかあるだろ? 帰るには早すぎだって」

爺「いやいや、昨日もこのくらいの時間に……」

爺「なるほど、家に帰りたくないんじゃな?」

男「うん…ちょっと気が引ける」

521: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:08:12.77 ID:YWzVWTID0
爺「ならうちに泊まってき」

男「え? いいの?」

爺「本当は帰るべきなんじゃろうが、昨日の今日だからな」

爺「焦るのはいかんと思うのじゃ」

男「ふーん・・・そっか、なら泊まらせて貰おうかな」

522: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:12:26.61 ID:YWzVWTID0
男「・・・」

爺「奥の部屋が空いてるから適当に使ってくれ」

男「うん」

爺「食い物は自分でなんとかしろよ?」

男「・・・なら飯食いに行かない?」

爺「そうじゃな! 元気出して飯食いに行こうか!」

524: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:21:13.64 ID:YWzVWTID0
爺「ならこの間のピザ屋やな!」

男「そうそう、そこ行こう」

526: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:22:46.25 ID:YWzVWTID0
(ピザ屋)

店員「いらっしゃーい」

男「おれピザ二枚」

爺「じゃあわしはパスタとピザ1つずつ!」

店員「……かりこまりー」

528: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:28:44.15 ID:YWzVWTID0
男「……」モグモグ……

爺「……なんじゃしんきくさいのう! 元気出さんかいバカちんが!」

男「うん……」モグモグ

爺「わかったならオッケーじゃ…」モグモグ

529: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:32:16.52 ID:YWzVWTID0
男「女に本気で嫌われたのこれが初めてだからさ」

男「もう相手してくれなくなるのかなって」

男「こんなに嫌われるって経験したことないからさ」

男「…どうにかもう一回いつもの関係に戻りたい」

爺「……Zzz」

男「って寝るなよ」

530: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:35:46.25 ID:YWzVWTID0
男「……」

男「…トイレ行こうかな」

 (トイレ)

男「……」シャー…

男「……」ジャー……

531: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:39:57.55 ID:YWzVWTID0
男「…お、」

男「……奇跡だ」


 ……

女「……」モグモグ……

女同僚「最っ低だね! その彼氏!」

女「う、うん……」モグモグ…

女同僚「信じらんない!」

男(酷い言われようだな・・・)

536: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:49:03.26 ID:YWzVWTID0
男「よお、」

女「・・・え」

女同僚「・・・」アセアセ…

男「どうも、最っ低な彼氏です」

女同僚「いや、・・・そんな」

女「言わないであげてよ、性格最悪だよ?」

男「分かった。同僚をいじるのはここまでにしておこう」

537: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:55:40.54 ID:YWzVWTID0
男「外出ようよ」

女「うん、そうだね」

女同僚「じゃああたしはそろそろおいとまさせて貰おうかな・・・?」

女「お気になさらずに」

男「お疲れ様」

女同僚「ごめんね?」

538: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 22:59:58.82 ID:YWzVWTID0
(外)

男「ちょっと歩くか」

女「うん」

男「・・・」

女「・・・」

539: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:05:48.49 ID:YWzVWTID0
男「・・・」

女「・・・」

男「夜デートだな」

女「そだね」

540: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:12:16.16 ID:YWzVWTID0
男「川越しの工場綺麗だな」

女「ここ結構有名な観光スポットだよ」

男「へえ! ならもう少し見たいな」

女「あそこのベンチに座ろ」

男「うん」

541: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:18:55.24 ID:YWzVWTID0
(ベンチ)

男「・・・怒ってる?」

女「劇おこだよ」

男「許してくれる?」

女「許してあげない、あはは」

男「・・・好きだよ」

女「そんな甘い言葉じゃ許してあげない」



男「…何をやろうか」

女「キスして」

男「いいよ」



 ……

542: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:26:27.72 ID:YWzVWTID0
男「なあ」

女「なあに?」

男「お昼にお客さんに聞いたんだけどさ」

女「なにを聞いたのさ?」

男「この間水族館行ったじゃん? あそこ、この時期夜も開いてるらしい」

男「カップルがよく行くらしい、ムード盛り上がるってよ」

女「ふーん、良いね」

男「…一緒行かない?」

女「・・・良いよ、一緒に行こう」

545: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:38:19.35 ID:YWzVWTID0
(路上)

男「・・・好きだよ」

女「ふーん」

男「もうそんなでもない感じ?」

女「ううん、私も好きだよ」

男「好きそうには見えないよ」

女「いいや、そこら辺のカップルより濃密な生活してきたからそんなに単純でもないなあっと思ってさ」

男「あー、なるほど・・・」

男「まあいいんじゃない? 出会いってそんなもんだろ」

女「そだね」

546: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:45:05.31 ID:YWzVWTID0
(路上)

男「・・・他の女と●●たことについてはどう思ってんの?」

女「やっぱり好きな人が自分じゃない人とやるのは辛いよね」

男「ごめん……。そういうつもりじゃ無かったんだ」

女「わかってるよ。彼女でもない私がいくら頑張っちゃった所でそれはお門違いだと気付いた」

男「……そういう言い方やめろよ」

女「そうだね、……ごめんね」

547: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/09(金) 23:49:43.23 ID:YWzVWTID0
(水族館)

『夜の水族館―カップルで入ってみませんか?―』



店員「しゃーっす、あぁー、カップルっすねぇ、カップル割適用されるんでお得っすよー」

女「これはまた堂々と・・・」

男「厳密にはカップルではないんだけどな」

店員「いってらっしゃーい」

586: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:08:06.41 ID:+Fnb/ThL0
男「……綺麗だな」

女「綺麗だね」

男「人少ないな」

女「人少ないね」

男「……なあ」

女「なに?」

男「…も一回キスしてもらっていいかな」

女「いいよ」


 ……

587: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:10:23.35 ID:+Fnb/ThL0
男「この間来た時とは違う雰囲気だな」

女「ちょっと地味な感じの魚が多いね」

男「この安定感好きだけどな」

女「そうだね、魚も人間もこのくらいがちょうどいいかもしれない」

男「俺は地味な魚?」

女「見た目はね」

男「内面は派手な魚なのか」

女「内面は魚じゃない別の何かだね」

588: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:13:14.61 ID:+Fnb/ThL0
男「出口に来ちゃった」

女「……私クラゲの所もう一回見てくる」

男「俺もついてくよ。クラゲ好きなの?」

女「一番綺麗だったから」

男「そっか、確かに一番綺麗だったね」

女「じゃ行こうよ」

589: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:15:59.47 ID:+Fnb/ThL0
男「……」ジー

女「……」ジー

男「……」ジー…

女「……」ジー

女「……」ジー




 ……

男「……もうそろそろいいんじゃないか?」

女「あ、うんそうだね。じゃあ出口に行こっか」

男「この中レストランとカフェあるらしいけど寄ってく?」

女「…じゃあカフェで。夜ご飯はもう食べちゃったし」

男「そうだな、じゃあカフェ行って休憩して帰ろう」

女「うん」

590: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:19:15.59 ID:+Fnb/ThL0
(カフェ)

店員「ご注文は?」

男「コーヒー」

女「アイスティー」

店員「……うぃ」

女「ねえ私思うんだけど」

男「ん?」

女「これデートだよね」

男「デートだよ」

女「なんでデートなんてしたの?」

男「んーっと、なんとなく。」

女「そう、ありがとう」

男「どういたしまして」

592: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:27:50.01 ID:+Fnb/ThL0
店員「……うぃ」

男「ありがとう」


 ……

女「人にお礼の言葉が言えるようになったんだね」

男「仕事柄な、どうしようもなく身に付くもんさ」

女「そういう人好きだよ」

男「知ってる。だって最初の方俺お前に嫌われてたもん」

女「はは、分かってた?」

男「当たり前じゃん」

593: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:32:02.70 ID:+Fnb/ThL0
男「……」ゴクゴク…

女「……」ゴクゴク…

女「帰りたくないね」

男「ロマンチックなこと言うのな」

女「そうかな? 自分の気持ちに素直なだけだよ」

男「じゃ帰らなきゃいいじゃん」

女「そういうあんたのぶっ飛んだ発言も好きなとこの一つ」

594: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:42:56.22 ID:+Fnb/ThL0
男「……じゃあ帰ろうか?」

女「そうだね」

595: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/11(日) 20:50:36.12 ID:+Fnb/ThL0
(帰り道)

男「おお、寒」

女「……」ブルブル…

男「おいちょっと傍に来いよ、二人いれば暖まるだろ」

女「うん…」

男「ここからお前の家って遠いだろ?」

女「まあ、ちょっとは…遠いかな」

男「パン屋のが近いからパン屋に泊まってけよ」

女「いいの?」

男「おう、爺の許可は下りてるから」

女「……お言葉に甘えて」

608: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 18:23:55.98 ID:cyDM5Dt10
(パン屋)

男「爺はこのパン屋の二階に住んでるんだ」

女「ふーん」

男「奥の部屋空いてるから使っていいって今日言われたんだけど…」

男「とりあえず爺が帰ってきてるか見てみるね」

女「うん」

609: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 18:25:39.16 ID:cyDM5Dt10
(爺の部屋)

 ガチャ……

爺「……Zzz 」

爺「わしの弟子が……」ムニャムニャ……

男「お、ちゃんと自力で帰ってこれたんだな」

男「おやすみ」


 ガチャ……

614: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 23:18:33.46 ID:cyDM5Dt10
男「おはよう」

女「おはよう」

男「下降りようか、朝飯はあんまり期待出来ないけどな」

女「パンだね・・・」

男「間違いないな」

615: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 23:24:28.93 ID:cyDM5Dt10
(一階)

爺「おお、泊まってたんかい」

男「おう。ゆっくりさせて貰ったぜ」

女「あはは、……私まで泊まらせて貰ってます……」

爺「いいとも! 気にせんでくれどーせ使っとらんかった部屋での」

爺「それにひょろひょろがいくら増えたところで床が抜ける心配もないしの」

男「……」ムカッ

男「俺ガタイいい方だと思うけど?」

爺「はは! 笑わせるわ。ガタイ良いが自慢にしたいなら少なくともあと1. 5倍は必要じゃな」

男「……」

爺「ただでさえチビだと言うのに」

女「…」

女(このお爺さん厳しい人なのかな・・・)

616: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 23:30:09.07 ID:cyDM5Dt10
爺「ささ、そんなことよりはよ食べてはよ働くぞ」

男「おう」

女「あの・・・」

女「私はどうすれば・・・?」

爺「仕事は何かしとるのか?」

女「はい、一応」

男「辞めてパン屋で働こうぜ」

男「んでここの二階に家も移そうよ」

女「え? ・・・そんないきなり言われても」

爺「・・・仕事はともかく、家を移動させるのはわしも良いと思うぞ」

爺「アパートか何かなんじゃろ? ここなら家賃も取らんし、その横のきったない部屋にコイツを入れればお前さんのプライベートルームも出来るでの」


男「俺きったない部屋やだなんだけど」

617: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 23:39:17.88 ID:cyDM5Dt10
女「・・・そうですね、ではお言葉に甘えて」

爺「今日から皆ファミリーじゃな!」

男「どうせ大したもんも無かったし、今日の午前中俺女と引っ越しの準備と、もう引っ越しまですませるわ」

女「私仕事が・・・」

男「休め」

女「またそんな勝手な事言って……」

619: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/12(月) 23:42:07.81 ID:cyDM5Dt10
爺「そうかそうか、早い方がこっちとしても何かと都合はいいからな。頼むぞ」

女「はい!」

男「おう」

640: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/13(火) 22:43:03.48 ID:ODcdn9sN0
(女 家)

女「……」ガサゴソ

男「……Zzz」

女「寝るならパン屋に帰って」

男「ん、ごめん。ここ落ち着くからさ。眠くなる」

女「……それ箱に詰めて」

男「うん」

642: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/13(火) 22:46:50.93 ID:ODcdn9sN0
男「お前アルバムとか持ってないのな」

女「うん、それがどうかした?」

男「……普通の可愛い女の子って写真とか大切にするもんじゃないの?」

女「私写真より思い出派だから」

男「・・・そ。ならいいんだけど」

643: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/13(火) 22:53:41.28 ID:ODcdn9sN0
女「・・・燃やされた」

男「そんなことだろうと思った」

女「髪の毛もちょっと燃やされた。本当に怖くて逃げよって思った。」

女「彼とはそれっきり。逃げるようにここにやって来たの」

男「ふーん」

女「もう2度と彼氏は作らないでおこうって誓った」

男「たった一回で誓ったんだ、もったいねぇな」

女「・・・関係ないじゃん」

男「まあ、そうだけどさ」

708: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:11:14.76 ID:qSdSCxJs0
女「あらかたこのくらいかな」

男「じゃあ小分けした荷物を運ぼうか」

女「荷物多いし車借りれないのかなあ」

男「こんな道の狭い街じゃ車借りても使えねーよ、我慢しろよ」

女「・・・じゃあそこはあんたが頑張ってくれるということで。私は手続きするから」

710: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:24:17.43 ID:qSdSCxJs0
(パン屋)

爺「・・・暇じゃのう」

 ……チリンチリン…

爺「お、いらっしゃい」

客「……あの、クロワッサンを…」

爺「はいはい、これじゃな」

客「2つ・・・」

爺「2つじゃな、まいど」

客「……」

爺「アイツは今日は休みじゃな」

客「あ・・・そうですか・・」


 チリンチリン……

爺「・・・アイツも大変じゃなあ」

711: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:29:38.93 ID:qSdSCxJs0
(路地)

客「……」スタスタ……

客「なんでこんなバカなことしてるんだろ……」スタスタ…



男「お、久しぶり」

客「あ! ・・・うん」

男「パン買ったの? ありがとう」

客「・・・うん」

男「……」

客「……」


男「ちょっとここで待ってて、俺この荷物置いてくるから」

客「え? ・・・うん」

男「じゃ! すぐ戻るから!」バタバタ!!

712: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:32:58.83 ID:qSdSCxJs0
男「ごめん待たせて」

客「いいよ」

男「ちょっと話そうよ、話したくてここに来たんだろ?」

客「うん、・・・まあ」

男「・・・ならさ、」

客「ん?」

男「一緒にどっか飛んじゃおうか」

715: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:41:45.76 ID:qSdSCxJs0
客「・・・やだ」

男「そう?」

客「今持っていったのは彼女さんの荷物でしょ? そんな仲良しなのを壊せないよ」

男「そっか」

客「なんでそんなこと言うの?」

男「俺は女に会わなかったとしたら、お前と一緒になっても良かったよって意味」

客「・・・最低、あはは」

男「お前も別のいい人見つけなよ」

客「当たり前」

716: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:45:30.33 ID:qSdSCxJs0
(女家)

女「遅い!」

男「ごめんごめん」

女「何ちんたらしてるの! このでくのぼう!」

男「そんなに怒らなくてもいいじゃん……」

女「大家さんが今日中って言って聞かないから急いで!」

男「お、それは急がないとな」

女「分かったなら早く早く!」

717: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 12:52:40.36 ID:qSdSCxJs0
(パン屋 夕方)

爺「そろそろ終わりかの」

男「おう、次女が持ってくるのが最後」

爺「こんな道の狭い街じゃ引っ越すだけでも丸一日掛かるんじゃなあ、初めて知ったぞい」

男「爺はずっとパン屋住みなの?」

爺「そうじゃな」

男「この街で生まれてずっと?」

爺「この街に来たのは二十歳くらいじゃったな、親と喧嘩してな、電車に乗って来たんじゃ」

男「ふーん」

爺「最後から2つ目の駅に住もうと思ってな、全然知らないこの街にやって来た」

男「パン屋作ったの?」

爺「わしもお前と同じじゃよ、先代に弟子入りしてここを継いだ」

男「へえ、知らなかった」

爺「わしはお前が継ぎたいなら継げばいいと思う、強要するつもりはない」

男「……考えとくよ」

718: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 13:00:19.14 ID:qSdSCxJs0
 チリンチリン……

女「ふう、疲れたー!」

男「お疲れ様」

爺「お疲れー!」

女「もう今日は寝る!」

男「じゃあ明日は部屋を模様替えするんだな。おやすみ」

爺「ちゃんと朝御飯は食べるんじゃぞ、精はつけんとな! おやすみ!」

726: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:45:17.75 ID:RCmJ7ckI0
女「……おはよ」

男「うーん・・・」Zzz……

女「こら! はよ起きる!」

男「ん、・・・よいしょっと。」

女「よし、じゃあ下降りよっか」

727: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:48:21.19 ID:RCmJ7ckI0
(パン屋 一階)

爺「お、起きておったか」

女「おはようございます」

男「爺は毎日早起きなんだな」

爺「はは! 早起きは年寄りの特権じゃわい!!」

男「……お腹空いた」

女「私作ります」

爺「お、そうか。流石はおなごが一人いるだけでだいぶ違うな!」

728: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:50:46.79 ID:RCmJ7ckI0
男「いただきます」

爺「いただきます」



 ……

爺「旨い! お前もいい女選んできたのう!」

男「朝からうるせぇな」

爺「はは! 朝から冗談言えるくらいにテンション上げて行こうぜ! なあ!」

女「え?・・・あ、はい・・・うえーい・・・」

729: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:52:33.73 ID:RCmJ7ckI0
女「じゃあ私は仕事なんで……」

爺「おお、そうか、いってらっしゃい」

男「いってらー」


 チリンチリン…

731: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:55:14.60 ID:RCmJ7ckI0
爺「……」

男「……」

爺「……」

男「いや、なんか喋れよ」

爺「むっさい男同士じゃ萎えるわい」

男「手出すなよ」

爺「分かっとるわい、そんなことしたら殺される勢いじゃしな」

732: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 22:58:31.65 ID:RCmJ7ckI0
(パン屋)

爺「人事発表するぞ!」

男「うむ」

爺「わしは裏方、お前は接客じゃ!」

男「わかった、頑張り…ます」

爺「まあお前のやりたいようにやったらいいと思う、お前にはそういう才能があるからの」

男「わかった、じゃあ模様替えからな」

爺「模様替え?」

734: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:01:11.50 ID:RCmJ7ckI0
男「外にテーブルと椅子があるじゃん?」

爺「あるな、よくお客さんが食べて帰る所じゃ」

男「雨の日はどうしてんの?」

爺「お持ち帰りじゃ」

男「店のなかにテーブルと椅子を二組くらい置いてみたら?」

男「そうすれば良いと思うんだけどなあ」

爺「採用!」

男「やったー」

736: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:03:02.42 ID:RCmJ7ckI0
男「あとね、飲み物がコーヒーだけなのもやだ」

爺「目の付け所がなかなかシャープじゃな」

男「紅茶をメニューに追加すべきだな」

爺「採用!」

男「やったー」

737: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:04:27.37 ID:RCmJ7ckI0
男「というわけであとは爺宜しく」

爺「任しとけ! 机と椅子買ってくるから店番は任せたぞ!」

男「分かった、あと紅茶の葉っぱも買ってこいよ」

爺「うむ!」ドタバタ!!

 チリンチリン…

738: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:05:42.79 ID:RCmJ7ckI0
 ……

男「……」グター

男「暇だ……」

男「…爺はどうやって暇潰してたんだ?」


 ……チリンチリン…

男「お、いらっしゃい」

739: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:08:00.45 ID:RCmJ7ckI0
子供「あのね、あのね、あのねー!」

男「そんなに言わなくても一回で分かるぞ」

子供「ママがパン屋さんでパン買ってきてって!!」ウキウキ!!

男「ふーん。どんなパン?」

子供「・・・」

子供「んーっとね、・・・パンだよ!!」

男「パンか・・・」

740: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:10:21.58 ID:RCmJ7ckI0
子供「パンだよ!! お兄ちゃん! 聞いてる?」

男「ああ、聞いてるよ。パンか、一回家に帰ってどんなパンだったのか聞いてみてくれよ」

子供「そんな時間ないよ! ぼく急いでるの! ビジネスマンなの!!」

男「そっか、それは大変だな! お兄ちゃんがパン探し手伝ってやるよ!」

子供「うん! お兄ちゃんありがとう!」

741: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:14:08.82 ID:RCmJ7ckI0
男「ママここには来ないのか?」

子供「うーん、分かんないけどママが心配するから早く早く!」

男「まあ焦るなって、ビジネスマンは焦って失敗しちゃいけないだろ?」

子供「うーん・・・そうだね・・・ここはゆっくり考えるよ」

男「それがいいな」



 ……

子供「分かんない・・・」

男「ママは今日何を作るつもりだったんだろうな」

子供「んーとね、あ!! カレーだよ!」

男「なるほど、それならナンだ」

子供「!! お兄ちゃんすっごいなあ!」

男「だろ?」

742: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:16:57.21 ID:RCmJ7ckI0
 チリンチリン……

母親「すいません……ここに小さな男の子が……」

子供「ママ!! ナン買ったよ!」

母親「あなた私何も言ってないのによく分かったわね! スゴいわ!」

子供「ええとね、このお兄ちゃんが手伝ってくれたの!」

母親「そうなの、・・・手伝って貰ってありがとうござ・・・」

男「よお、久しぶり」

744: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:19:52.74 ID:RCmJ7ckI0
女同僚「このことは秘密にしてもらえないかしら」

男「なんでだよ、孤児院の子供引き取って育ててることはそんなに問題か?」

女同僚「そんなことはないけど・・・」

男「若いのに引き取ったことが気にかかってるのか?」

女同僚「・・私の会社の人たちに知られたくないの・・・」

男「みみっちいちっせえ女だな、お前は」

女同僚「・・・」

745: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:23:50.28 ID:RCmJ7ckI0
女同僚「私子供が生めないの」

男「そうか、だから孤児院の子供しか自分の子供に出来ないわけだ」

女同僚「あなたってそういう言い方ばっかり・・・」

男「お前も大概その思わせぶりな雰囲気で男喰ってきたんだろ?」

女同僚「それはあんたも同じでしょ」

男「似た者同士ってわけだ。そろそろ本音で語ろうぜ」


 ……

女同僚「・・・はあ、慣れない嘘は付くものじゃないね、あはは……」

747: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:28:49.32 ID:RCmJ7ckI0
女同僚「誰かの子なの」

男「誰の?」

女同僚「分からない」

男「なんでおろさなかった」

女同僚「・・・」

男「まあそんなこと聞いてもしゃーないな」

男「あの子はいい子だ。ちゃんと育ててやれよ」

女同僚「・・・うん」コクリ…

子供「ママー!! あれ?なんでママ泣いてるの?」

男「おいビジネスマン」

子供「なあに?」

男「ちゃんとママ支えてやれよ」

子供「うん!」

748: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:32:46.12 ID:RCmJ7ckI0
(パン屋 夕方)

男「……暇だなあ」

 チリンチリン……

爺「買ってきたぞ! これでパン屋がもっとお洒落になるな!」

男「お、なかなか趣味のいいもん買ってきたじゃん」

爺「じゃろ? もっと誉めてくれても全然構わんのじゃぞ?」

男「紅茶の葉っぱは?」

爺「あ、」

男「机と椅子は俺がセットしとくから買って来いよ」

爺「おう! 店番とセッティング頼んだぞ?」

男「わかった」

750: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:48:22.68 ID:RCmJ7ckI0
(パン屋 閉店後)

爺「ただいまー♪」

男「おかえり。女帰ってきてるから」

爺「おお、頑張って仕事してきたのかの」

男「さあ? でも機嫌良く夜ご飯作ってるぞ」

爺「そうかそうか! ええのう!」

751: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/17(土) 23:57:52.06 ID:RCmJ7ckI0
男「いただきます」

女「いただきます」

爺「いただきます!」

 ……

爺「旨いのう! 幸せじゃ!」

男「そっか、良かったな」

女「そんな誉めないでくださいよ……恥ずかしい」

爺「その恥ずかしがる姿もまた可愛いのう!」

752: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/18(日) 00:05:18.57 ID:9mBaA9Mu0
男「お、テレビあんじゃん、付けていい?」

爺「いいが・・・最近のはなあ」

女「そうですよね・・・」

男「ん? どういうこと?」

爺「政府が絡んどるからの、あんまり面白いテレビは放送出来んのじゃ」

女「結構影響力あるからね……最近の政府は」

男「そーなんだ、知らなかった」

爺「だからそのテレビもそろそろ捨てようかと思うてな、情報が必要ならラジオで事足りとるし。」

男「なんだか空気悪くなったな、ごめんなさい」

女「気にしないで、そういうものだから」

753: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/18(日) 00:10:52.95 ID:9mBaA9Mu0
アナウンサー「政府の研究機関の制作したロケットは火星への移動時間をさらに短くしたとして一層の火星への期待を膨らませており……」


 ……

男「なにこれ意味分からない」

女「政府が火星行きのロケット作ってるの」

爺「金持ち専用のな、火星をリゾートにするつもりらしい」

女「科学の発展とか言ってるけど最終的にはそういう人のことも絶対視野に入れてますよね」

男「難しい話だな、テレビ切るわ」

爺「そうじゃな、早く切ってくれ」

802: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/20(火) 22:52:37.49 ID:RkBHOu6z0
(パン屋二階 女部屋)

 ドンドン……

女「はーい、誰ですか~?」

男「俺だよ」

女「入っていいよ」

 ガチャ…


男「まだ汚い部屋が片付いてないからここで寝ていい?」

女「いいよ。ちょっと狭いけど我慢してね」

男「うん、我慢する」

804: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/20(火) 22:57:44.57 ID:RkBHOu6z0
男「……」

女「……」ガサゴソ…

男「…寝ないの?」

女「もうちょっと整理して寝る。電気明るいけどごめんね」

男「…仕事は辞めないの?」

女「折り合いつけて辞めようとは思ってるよ。」

女「……もしかして人手余ってる? 私パン屋の邪魔になるかな?」

男「ならないならない。安心して」

女「そっか。なら良いんだけど」


男「…おやすみ」

女「おやすみ」ガサゴソ…

805: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/20(火) 23:07:29.91 ID:RkBHOu6z0
(パン屋 朝)

男「おはよう」

女「おはよ」

男「降りよう」

女「うん」

(一階)

爺「お、来たか! おはようさん。今日はわしが朝飯作ったぞ」

男「旨そうだ」

女「お! 食べたい!」

806: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/20(火) 23:11:32.20 ID:RkBHOu6z0
男「……旨いな」

女「確かに…なんかちょっと意外な感じ」

爺「なんじゃその反応は! 傷付くのう……」

807: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/20(火) 23:16:31.67 ID:RkBHOu6z0
女「いってきまーす」

男「うん」

爺「いってらっしゃい!!」


 ……

男「……さてさて、働こうかな」

爺「付き合っとるように見えるが、本当に付き合ってないんじゃな?」

男「付き合うとかそういうのじゃないよ、クズが慰め合ってるだけの関係」

爺「……お前さん達はクズじゃったのか…」

815: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 19:19:46.62 ID:Ov83e7Rz0
(朝 パン屋)

爺「今日はお前がパン焼いてみ」

男「焼いたことない」

爺「最初から出来る奴なんていない」

男「うん。それならやってみる」

爺「不味かったらお前のせいな! はは!」

男「責任持って全部食べるよ」

爺「はは! 冗談じゃ! コロッと騙されよってからに!」

817: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:09:59.43 ID:Ov83e7Rz0
男「……意外と疲れるのな」

爺「おうよ! パン屋はそこらの力仕事くらいはあるわい」

男「…あらかた出来たし、残りは爺やってくれ。俺は店を開けてこよう」

爺「お、もうそんな時間か。よろしく頼むぞ」

818: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:10:57.45 ID:Ov83e7Rz0
男「……」

 ガチャ…

819: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:13:24.32 ID:Ov83e7Rz0
男「……」

 チリンチリン…

男「いらっしゃい」

客「やあ、久しぶり」

男「おう、元気してる?」

客「まあまあだね。まあ彼氏出来たけど」

男「良かったじゃん。彼氏はいい感じ?」

客「うん、でも男のがいいかな」

男「俺はもう売り切れてるから」

客「あはは! 何それ自慢?」

男「うん」



 ……チリンチリン

男「まいどー」

820: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:15:00.05 ID:Ov83e7Rz0
男「暇だなあ…」

爺「……」ヒョコッ

男「何だよ」

爺「ここにラジカセ置いとくから適当にラジオ付けて聞いていいぞ」

男「お、いいね。ありがとう」

爺「お客さん来たら音小さくするのを忘れんでくれよ」

男「わかった」

821: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:15:33.92 ID:Ov83e7Rz0
男「……」

 チリンチリン…

男「…いらっしゃい」

822: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:18:54.52 ID:Ov83e7Rz0
役人「よお、俺のこと覚えてくれてるかな?」

男「何の用だよ」

役人「お前を拘束しに来たってのと……」

男「帰れ。殺すぞ」

役人「まあ落ち着けって、もうひとつの理由は美味しいパン屋さんのパンを食べに来たって用件」

男「……なるほど」

役人「どっちの用から済ませて欲しい?」

男「好きな方選べよ、前者なら今殺す、後者ならパン食って殺す」

役人「俺結局殺されるのね……ならパン先に買うわ」

男「まいど」

823: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:21:58.40 ID:Ov83e7Rz0
役人「おすすめのパン教えてくれよ」

男「クロワッサン」

役人「なんで?」

男「俺クロワッサンしか食べたことないから」

役人「……ならクロワッサンくれ」

男「了解」

824: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:26:01.11 ID:Ov83e7Rz0
男「……で?」

役人「ん?」モグモグ…

男「何故このタイミングで来たんだよ」

役人「ちょっと待ってくれ、俺クロワッサン味わいたい」モグモグ……

男「そっか。ならちょっと待つわ」



 ……

役人「クロワッサン旨いな」

男「ありがとう、それ俺が焼いたんだわ」

役人「マジで? 天才だな」

男「おお、天才だぞ」

825: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:30:18.57 ID:Ov83e7Rz0
役人「……拘束します」

男「いやです」

826: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:37:06.05 ID:Ov83e7Rz0
役人「なんでよ?」

男「痛いことされるし」

役人「注射嫌いとか小学生かよ」

男「彼女? みたいなのもいるし」

役人「へえ、お前クズなのによく彼女出来るよな?」

男「なんでなんだろうな。母性本能くすぐってるんだろうな」

役人「なるほどなるほど、分かってきた。つまり施設には戻りたくないと」

男「うん」

役人「お前施設にも彼女いたろ? その人どうすんの?」

男「……分かんない」

829: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:42:20.02 ID:Ov83e7Rz0
役人「なるほど、じゃあ取り引きしよっか」

男「ん? どんな?」

役人「お前が血を少し分けてくれればお前の要望叶える」

男「何でもいいの?」

役人「いいよ。出来る範囲でお手伝いする」

男「あの人に会いたい」

役人「わかった。血は病気に対して耐性を持ってるか判断するために使うから」

役人「いい結果だったらまた採血しに来るわ」

男「うん」

役人「じゃあ俺はこの辺で」

男「まいどー」



 チリンチリン……

830: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:47:49.64 ID:Ov83e7Rz0
男「……」

爺「なにやら話し込んでおったな。どういう関係じゃ?」

男「国家公務員様」

爺「なんと! スゴいな」

男「…友達だよ。今は。」

男「多分ね、アイツがどう思ってるかは知らないけど」

爺「なるほど、友達多くて羨ましいのう…」

831: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:51:57.61 ID:Ov83e7Rz0
女「ただいまー」

男「おかえりー」

爺「おかえり!」

832: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 20:54:48.75 ID:Ov83e7Rz0
男「俺いつか出掛けるかも」

女「なんで?」

男「友達が遊びに来た」

女「ふーん、ってか友達居たんだね」

男「友達ってか、……うん、まあ、友達だけどさ」

女「楽しんで来てね」

男「おう、ケリつけてくるわ」

835: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:00:48.23 ID:Ov83e7Rz0
(一階 風呂)

爺「わーしーはー♪」

爺「てーーんかーのー♪」

836: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:02:52.54 ID:Ov83e7Rz0
女「テンション高いね」

男「ちょっと酒入ってるから」

男「弱いくせに本気出すからああいうことになる、見苦しい」

女「そんなこと言わないで。暖かい目で見守ろう」






爺「わーかだいしょー♪」

爺「ふぉーーい♪」

837: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:10:44.80 ID:Ov83e7Rz0
(パン屋 朝)

女「おはよ」

男「おはよ」

男「今日休みだっけ」

女「今日は日曜日」

男「お、1日暇じゃん」

女「そだね」

男「デートする?」

女「うん」

838: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:14:17.96 ID:Ov83e7Rz0
男「どこがいい?」

女「植物園」

男「なんで?」

女「植物園暖かいから」

男「なら植物園行こっか」

女「うん!」

839: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:16:26.51 ID:Ov83e7Rz0
爺「・・・なんじゃ二人してお洒落して」

男「ちょっとデートしてくるわ」

女「あはは……そういうことなんで…」

爺「ん? まあいいや、楽しんでな」

男「いってきまーす」

女「いってきます」

爺「いってらっしゃーい」


 ……ガチャ…


爺「……本当に付き合ってないのか?」

爺「わしアイツら付き合っとると思う」

841: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:25:40.43 ID:Ov83e7Rz0
(植物園)

男「確かに暖かいな」

女「でしょ? 花も綺麗だし」

男「この花はバラ?」

女「うんバラの花だね、私個人的にランが好きなんだけど」

男「知らない花だな」

女「この植物園ランの専門コーナーあるから行こうよ」

男「うん、そのランって花俺も見てみたい」

843: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:34:46.10 ID:Ov83e7Rz0
男「キレイだな」

女「うん、私あんまり花のこと知らないけど好きだよ」

男「知れば知るほど好きになる物ってないよな」

女「そう?」

男「女も花も一緒。見る奴が糞ならいくら良くても、ね」

女「難しいこと言うね、らしくない」

男「脱走する前の日に施設にいる彼女に言われた言葉」

男「難しくて意味はよく分かんないけど」

女「そんなに固くならなくても大丈夫だよ」

男「ごめん」

844: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:38:33.91 ID:Ov83e7Rz0
女「人居ないしここでキスして」

男「うん」



 ……

男「喫茶店いこ」

女「いいよ」

845: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:44:25.18 ID:Ov83e7Rz0
(喫茶店)

男「本音言っていい?」

女「うん」

男「友達ってのは立場が上な奴でね、どーにかこーにか施設から逃げた俺を探してたみたい」

女「ふむふむ」

男「んで見つかったと。それで1日だけ施設に引き戻って欲しいらしい」

女「まあいいんじゃない? 友達は友達なんだし、楽しくやっておいでよ」

男「ありがと。次いでに彼女振ってこようと思う」

男「これで晴れて念願のカップルだろ?」

女「酷い事言うね」

男「まあアイツもそれだけのことを言われて当然の女だし」

女「じゃあ詳しく聞かせてよ」ワクワク!!

846: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 21:52:08.28 ID:Ov83e7Rz0
男「xxxxするだけの関係のつもりだった」

男「いつの間にか俺にしか寄り付かなくなって、んん。まあそんな感じ」

女「男ってほんとクズだよね」

男「俺求められたことしかやってないんだぞ? 客の時も俺が発情してやったわけじゃないし…」

男「彼女だって俺から求めたことなんか無かったし……」

女「言い訳してるんだ、可愛い」

男「な? 俺思ってたよりもクズじゃないだろ?」

女「ふふ、そうだね。そういうことにしといてあげるよ」

848: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 22:13:21.11 ID:Ov83e7Rz0
男「帰ろっか」

女「そだね」

男「楽しかった?」

女「楽しかったよ」

853: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 22:43:27.11 ID:Ov83e7Rz0
爺「おかえり、楽しかったかの」

男「うん」

女「楽しかったです」

爺「そう言えばお客さん来とったぞ、明日には来るとかなんとか」

男「ふーん、意外と早いのな」

女「男が友達いるなんて意外だなあ」

男「本当は友達作れない残念な奴なんだけどな、ってか友達かどうかも定かじゃないし」

女「またまたそんなこと言っちゃって~」

854: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 22:47:15.36 ID:Ov83e7Rz0
(翌日 パン屋)

爺「今日はわしが全部やっとくから」

女「あ、私今日休みなんで手伝います」

爺「お? そうかそうか律儀な子じゃのう! 嬉しいわい!」

男「途端にテンション上がるな……」

男「じゃ、いってきます」

女「いってらー」

爺「おう! 楽しんでな!」

858: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 22:58:42.44 ID:Ov83e7Rz0
男「ごめん待たせた」

役人「この街車入れないよな」

男「うん」

役人「電車で政府まで行くことになります」

男「了解」

役人「お前の言ってたその子会いたくないってよ」

男「え? ほんと?」

役人「もう新しい彼氏いますって」

男「最低だな・・・でも不思議と憎めないな」

役人「まあ顔だけでも合わせるから、後はお前次第な」

男「ああ、元々ケリを付けるために行ってるようなもんだし」

859: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 23:02:49.26 ID:Ov83e7Rz0
(電車)

男「お前彼女いんの?」

役人「俺? 俺は居ないよ」

男「お前イケメンだな、帰ったらいい女紹介してやるよ」

男「ちょっと病んでるけど。特別にお前に譲ったげる」

役人「要らない」

男「なんで?」

役人「昔メンヘラ女に腎臓えぐられたから」

男「わあ、痛かったろうに」

役人「それ以来女性とはそういう関係には成ってない」

男「お前もそこそこ面白い人生送ってきたみたいだな」

862: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/21(水) 23:11:42.55 ID:Ov83e7Rz0
男「なあ俺がもし耐性を持ってたらどうなるんだ?」

役人「血を少し分けて貰って、クスリを作る」

男「それで皆治るの?」

役人「多分ね。俺専門じゃないから詳しくはないんだ」

男「でも周りに病気で死んだ人なんていないよ」

役人「お前の周りの人間が死に始めたら道は死体の山が出来てるだろうな」

男「なるほど。そうなってからじゃ遅いんだ」

役人「そういうこと。幸いまだ被害は食い止められてるけど、急がないと」

役人「お前の脱走のせいで皆死ぬところだったんだぞ?」

男「それは責任重大だな・・・」

872: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 00:26:19.13 ID:1U3wN8t90
(政府)

役人「着いたぞ」

男「駅のすぐ前ってのは楽チンでいいな」

役人「政府は金持ってるからな。移動楽にするには金を惜しまないらしい」

男「税金の無駄遣い?」

役人「そんな難しい話はわかんねーよ」

男「だよな」

873: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 00:30:03.58 ID:1U3wN8t90
役人「行くのは地下だから」

役人「着いてきて」

男「うん」

874: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 00:32:02.04 ID:1U3wN8t90
(政府 地下)

男「痛ッ!」

役人「我慢しろよ糞ガキかよ」

男「俺って何歳なの?」

役人「18じゃなかったっけ」

男「じゃあ糞ガキじゃんか」

役人「いや認めんなよ」



男「ってか俺女より年若かったんだ・・・」ボソボソ…

876: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 00:35:14.87 ID:1U3wN8t90
役人「よし採血完了」

男「残りは自由?」

役人「そうだけど、とりあえず帰りの電車賃と採血のバイト代渡しとく」

男「ありがとう」

役人「どういたしまして」

男「あの人は?」

役人「3階中庭に来るようには言ったけど、居ないかもしれない」

男「その時は潔く帰るよ」

役人「そっか。健闘を祈る」

877: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 00:43:07.91 ID:1U3wN8t90
(3階 中庭)

男「・・・」スタスタ…

男「やっぱ、いないか」

男「・・・もうちょっと待とう」


 ……

男「帰ろうかな・・・」

あの人「・・・男くん」

889: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 18:55:32.51 ID:1U3wN8t90
あの人「・・・久しぶり」

男「うん」

あの人「元気してる?」

男「めっちゃ元気」

あの人「あはは、じゃあいっぱい女の子と遊んだんだ?」

男「いいや、あんまり、遊んではないし・・・」ゴニョゴニョ…

あの人「あはは。やっぱり男くんは可愛いなあ」

890: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 18:58:41.72 ID:1U3wN8t90
男「でもやっぱりお前の事が一番好きだ」

あの人「あはは、そう? 嬉しいお世辞言ってくれるね」

男「お世辞じゃないって」

あの人「・・・」

891: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 19:04:29.79 ID:1U3wN8t90
あの人「君色んな人に会ったでしょ」

男「うん、楽しかったよ」

あの人「楽しいのが一番だね、そういう言葉が聞けて嬉しいよ」

あの人「最後に一目だけ男くんを見れてよかった」

男「え? どういうこと?」

あの人「実は私、もうあんまり長くないんだ」

892: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 19:14:28.72 ID:1U3wN8t90
あの人「私やっぱり耐性なかったみたい、あはは」

男「・・・そっか」

あの人「ごめんショック受けた?」

男「あとどのくらい持つの?」

あの人「いつ倒れてもおかしくないってさ」

男「俺耐性あるかもしれないんだから希望はあるだろ!」

あの人「もういいんだ。色んな人に迷惑掛けてきたし、男くんに手を握って貰いながら死にたいの」

男「……」

あの人「お願いしていいかな?」

男「……分かった、約束な」

893: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 19:21:38.57 ID:1U3wN8t90
(一階)

役人「お、思ったより早いのな、もうおしまいか?」

男「うん」

役人「じゃあ帰ろうか」

男「もうちょっとここにいたいな」

役人「ん? …まあ俺は大歓迎だけど、お前なんで急に気が変わったの?」

男「あの人が死ぬときにすぐ駆けつけたいからさ」

役人「……分かった」

894: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 19:28:56.54 ID:1U3wN8t90
男「だから泊めて」

役人「俺家持ってない」

男「え?じゃあどこに住んでんの?」

役人「政府のこの建物には泊まれる所が何ヵ所かあるんだ。俺はそこに泊まってる」

男「じゃあ1つ分けてくれよ」

役人「あいにく埋まってるからなあ……」

男「そっか……」ガックリ…

役人「あはは嘘だよ! 俺の部屋に泊まってっていいよ」

男「マジで? ありがとう!」

895: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 19:42:08.10 ID:1U3wN8t90
(政府 寝床)

男「……ベッドふかふか」

役人「だろ? 寝心地良いんだなこれが」

男「好きなやつほどものにならないよな」

役人「往々にしてそんなもんなんだよ」

男「そんなもんなのかなあ・・・」

役人「俺本当はまだ彼女居るんだけどさ、これがまた色々と厄介なのよ」

男「へえ? 腎臓1個くらいじゃ物足りないわけだ?」

役人「はは、本当にそのつもりらしいから怖いぜ」

男「お互いものに出来てないな」

役人「恋愛なんてそんなもんだろ」

男「そうだな、折角ものにできると思ったらいつ死ぬか分からないってんだ。本当にまいったなあ」

901: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:21:06.15 ID:1U3wN8t90
(三日後 役人部屋)

役人「残念だけどもうそろそろダメみたいだな」

男「そっか・・・すぐ病室に向かうよ」

役人「何だかんだ言ってもお前に会いたかったんだろうな。会ったら未練なんか無いとばかりにすぐ体調崩した」

男「じゃあ最後まで看取ってあげないとな。変な薬は打たないでくれ、本人が苦しむだけだから」

役人「分かった。指示しとく」

902: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:26:59.17 ID:1U3wN8t90
(病室)

あの人「男くん・・・遅いよ・・」

男「・・・ごめんな」

あの人「特別に許したげる」

男「・・・」ギュッ

男「・・・」

あの人「そんなに締め付けないでよ・・・苦しいって」

男「離したくない」

あの人「・・・」ギュッ

男「・・・」

あの人「・・・愛してたよ」ギュッ






 ……

903: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:28:52.32 ID:1U3wN8t90
(パン屋)

 ……チリンチリン

女「いらっしゃいま・・・」

男「ただいま」

女「・・・おかえり、ケリは付いたの?」

男「付いたよ」

女「とりあえず休みなよ」

男「おう。じゃあ先上がっとくわ」

904: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:36:16.18 ID:1U3wN8t90
爺「お、長い休暇じゃったな」

男「ただいま」

爺「女はよく働いたぞ~♪ とても良かったでの」

男「女は仕事は?」

女「あ、仕事ね。もう辞めたの。私もパン屋したいなあって思って」

男「そっか、おめでとう」

女「ありがとう」

905: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:38:31.45 ID:1U3wN8t90
男「……夜デートしないか?」

女「……いいよ」

爺「まあわしを置いてけぼりか!」

男「なら爺も来る?」

爺「いや、それは・・・わしはやっぱり幸せな二人には割っては入れん!」

爺「だからはよ行ってこい!」

女「爺さんツンデレだね」

906: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:42:17.22 ID:1U3wN8t90
(外)

男「水族館行こう」

女「いいよ」

女「それにしても、」

男「ん?」

女「男から誘って一方的にコース決められるのは初めてかも」

男「たまには押しの強い俺を見せてやろうかと思ってな」

女「じゃあ受け身で女の子っぽい私を見せてあげるよ」

男「どんとこい」

908: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:47:38.08 ID:1U3wN8t90
男「あそこのベンチに座ろ」

女「いいよ。・・・話したいことあるんでしょ? 言いなよ」

男「・・・昔の彼女が死んだんだ」

女「え?」

男「病気に耐性が無かったらしい。俺が行ったときは手遅れで、もう死を待つだけの状態だったらしい」

女「そんな状況で会ってきたんだ・・・」

男「それから色んな話したよ、んで最後には死んでしまった」

女「・・・」

男「彼女は最後に俺にね、『愛してたよ』って言ったんだ」

女「え? それって・・・」

男「そう。そういうこと」







男「改めて言います。俺と付き合ってください。」

909: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:49:55.61 ID:1U3wN8t90
(水族館)

店員「しゃーっす、あぁー、カップルっすねぇ、カップル割適用されるんでお得っすよー」

女「じゃあカップル割お願いします」

店員「ういーす」

910: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:53:34.49 ID:1U3wN8t90
男「夜の水族館って地味な魚が多いよな」

女「そうだね。だけどきっと地味なくらいがちょうどいいんだよ」

男「そうだよな、俺もそう思う」

女「ねえキスして」

男「いいよ、俺らもう付き合ってるし人目を気にする必要もないな」

女「でも恥ずかしいから隅っこでやろうよ」


 ……

912: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 21:56:17.52 ID:1U3wN8t90
男「なあ」

女「何?」

男「世間的に見て俺は病気で死んだ彼女を見て、その翌日に別の女と付き合う最低な彼氏に見えるのかな」

女「まあ本命でない女の子と●●●するだけで最低な奴だから合ってるんじゃない?」

男「結構傷付くな…」

914: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 22:02:50.55 ID:1U3wN8t90
女「まあでも、」

男「でも?」

女「皆クズなあんたに惚れたんだからしょうがないんじゃないのかな」

女「パン屋初めてちょこっとだけ真人間に近づけたし、彼女さんとの複雑な話も解決出来たし」

男「誉めてくれてるの?」

女「正直言って私だけ得してないじゃん!」

男「カップルになれたじゃん?」

女「今までと違いないじゃん!」

男「それもそうだな。否定出来ない」

915: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 22:05:13.10 ID:1U3wN8t90
男「じゃあ●●●する?」

女「なんでこのノリで一生を棒に振らないといけないのか」

男「たぶん俺とお前はずっとこのままでいいんだよ」

女「・・・そうだね。私もそう思うよ」

918: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 22:17:07.56 ID:1U3wN8t90
男「俺がもし」

女「ん?」

男「フラッと出て行って帰って来なかったら」

女「うん」

男「どこかの街でパン屋さんしてると思ってくれ」

女「分かった。でも私はいつまでも私のパン屋さんで待ってるから」

男「そっか、ありがとうな」

女「いえいえ、どういたしまして」

919: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 22:27:09.65 ID:1U3wN8t90
女「最初に私の部屋に押し入って来たときさ」

男「うん」

女「狙って入ってきたの?」

男「いいや、適当。山勘で入った」

女「へぇ、じゃあ本当に偶然だったんだ」

男「あの時は泊めてくれるなら本当に誰でもいいって思ってた」

女「泊めてくれるならってか泊めざるを得ない状況だったし」

923: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 23:49:10.62 ID:1U3wN8t90
男「喫茶店行こうか」

女「行こう、喉が渇いた」

男「女って生まれ変わりとか信じる?」

女「私? 私は信じる派かな。違う世界に自分と同じ人がいるなんて素敵じゃない?」

女「願わくば幸せになってもらいたいなーってなんてね!」

男「俺も信じる派、そういうのって面白いよな」

女「生まれ変わっても彼氏とかにならなくてもいいから男に会いたいな」

男「俺も人生で一回くらい女に会うような生まれ変わりをやってみたい」


女「・・・バカップルだね、あはは」

924: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 23:55:11.68 ID:1U3wN8t90
(喫茶店)

店員「何にしますか?」

男「コーヒーと……」

女「私もコーヒー」

店員「かしこまりました」


男「そうそう、役人が薬が出来たって手紙送ってきたよ」

女「へえ! 良かったね!」

男「まだまだ安全性が分かってないけど実用化出来る可能性は大きいって」

女「男が人類を救ったね!」

男「俺は試薬を受けてみただけだから」

女「人類を救ったパン屋さん、で売り出そうよ!」

男「恥ずかしいから止めてくれよ」

925: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 23:57:41.80 ID:1U3wN8t90
女「……」ゴクゴク…

男「……」ゴク…

女「……」ゴクゴク……

男「……」ゴクゴク…


女「ここのコーヒーって意外と美味しいよね」

男「同じこと考えてた」

926: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/22(木) 23:59:29.45 ID:1U3wN8t90
男「じゃあそろそろ帰ろっか」

女「そうだね」

927: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:00:43.87 ID:R5N2LtKv0
(帰り道)

男「……寒いな」

女「冷え込むよね」

男「早く帰ろ」

女「急いで帰らないと風邪引くね」

928: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:03:52.33 ID:R5N2LtKv0
(パン屋)

男「ただいまー」

女「ただいまー」

爺「おお! 待っておったぞ! おかえり!」

男「いつ見ても爺は元気いいな」

女「爺さん可愛い」

爺「じゃろ? もっと誉めてくれてもええよ?」

929: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:06:11.93 ID:R5N2LtKv0
(パン屋 二階)

男「パン屋って生きてるって実感出来るよな」

女「人と直接触れ合えるからね、男なんかにはぴったりの仕事だと思うよ」

男「俺パン屋継ごうと思う」

女「いいんじゃないかな? 私も出来る限りの手伝いはさせてもらうから」

男「頼む」

930: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:08:30.08 ID:R5N2LtKv0
男「おやすみ」

女「おやすみ」

931: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:10:20.87 ID:R5N2LtKv0
男「おはよう」

女「おはよう」

爺「お、今日も早いのう! 早速びしびし働いていこう!」

男「ん、じゃあ俺焼くわ」

爺「よしよし、じゃあわしは男の監督をしようかの」

女「私はお店開けてきますね」

爺「おう! 頼んだぞい!」

932: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:13:40.43 ID:R5N2LtKv0
女「開けて来ました」

爺「ご苦労さん!」

爺「ちゃんと店の前は箒ではわいてきたかの?」

女「はい、ちゃんと」

爺「さすがは女の子! やっぱりさすがじゃなあ!」

男「焼けたぞ~」

爺「よし皆で運ぼう!」

934: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:15:37.83 ID:R5N2LtKv0
(パン屋 一階)

爺「じゃあわしと女は昼から店番、午前中一杯は男頼んだぞ!」

男「おう、良さそうな家具買ってきてくれよ」

爺「任しとけ! じゃ!」

女「いってきまーす」

男「いってらっしゃーい」

935: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:18:27.15 ID:R5N2LtKv0
男「・・・」



 ……チリンチリン…


男「お、いらっしゃい」



これはそんなパン屋の物語。

936: ◆CiBH9t3vahcS 2014/05/23(金) 00:18:54.76 ID:R5N2LtKv0
【完】