2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:03:18.31 ID:xpGmcjVbO


それはバレンタイン間近の、ある日のことでした……///

シャロ「エリーさん、チョコの作り方って知ってますかー?」

エリー「うん、本で読んだから知ってるけど……」

シャロ「よかったあ!私チョコを作ろうと思うんです!教えてください!」

エリー「うん、いいよ」

シャロ「ありがとうございます、エリーさん!」

チョコ、手作りするんだ……

シャロって、もしかして好きな人がいるのかな……///

引用元: シャロ「バレンタインデイきっす!」 



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:05:45.35 ID:xpGmcjVbO
早速、私たちは階段を降り、寮のキッチンへ行く。

シャロ「私お菓子とか作ったことなくって…… まず何が必要ですかー?」

エリー「えっと、まずは……材料ってあるのかな……」

冷蔵庫には、ナスと餃子……

シャロ「わ!餃子がいっぱい!」


エリー「んー……これじゃあ、チョコは作れないね……」

シャロ「じゃあ、まず材料の買い出しですね!」

エリー「うん……/// ……あ、でもお金が……」

言い終わらないうちに穏やかな声が聞こえました。

アンリエット「何かお困りですか?シャーロック」

シャロ「アンリエットさん!」

エリー「あの、私も……います……///」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:07:37.88 ID:xpGmcjVbO
私とシャロは近所のスーパーまで来ました。
お金のない暮らしをしている私たちにとってはあまり慣れないところです……。

シャロ「エリーさん!何でも売ってますよ?すごいですねー」

シャロははしゃいで走りまわっています。

シャロ「あ、エリーさん!やっぱりチョコにはかまぼこが必要ですよね!」

エリー「えっと……いらないと……思う」

かまぼこを腕いっぱいに抱えるシャロの後ろから声がしました。

小衣「あれ?あんたたち、こんなとこで何やってんのよ」

シャロ「あ、こころちゃん!」

小衣「こころちゃんゆーな!」

シャロ「あうー……」

明智さんと銭形さんがそこにいたのでした。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:10:52.09 ID:xpGmcjVbO
次子「買い物かい?」

エリー「あ、はい……///」

小衣「あんたたちがスーパーにいるなんて珍しいわね。ここには試食品はないわよ」

シャロ「かまぼこを買いに来ました!」

エリー「シャロ、そうじゃなくてチョコ……///」

シャロ「そうでした!私、チョコを作ろうと思って!」

小衣「あんたが?」

シャロ「はい!エリーさんに教えてもらうんです!お金もアンリエット生徒会長からもらいました!」

小衣「ふーん……」

私にはそのときの明智さんの表情が少し翳ったように見えました。

シャロ「じゃあ、またね!こころちゃん!」

そういうとシャロは楽しそうに駆けていきました。

小衣「こころちゃんゆーなったらぁ!」

次子「お互い大変だな」
エリー「いえ、私は……///」

私は楽しそうに駆けていくシャロの背中を追いました。

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:12:04.03 ID:xpGmcjVbO
シャロ「何が必要ですかー?」

エリー「材料のチョコと、トッピングと、型と……えっとえっと……」

シャロ「あ、この型かまぼこみたーい!これにしましょう、エリーさん!」

エリー「え?……あ、シャロがそれでいいなら……///」

こうして私たちは必要な材料を買いそろえ、帰路につきました。

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:13:10.48 ID:xpGmcjVbO
根津「でもなんでアルセーヌ様はあいつらのチョコ作りに協力するんだろ」

石流「アルセーヌ様のことだ。きっと深いお考えがあってのことだろう」

根津「しかも、アルセーヌ様はちゃんとチョコができるように手伝えっておっしゃるし……」

20「ところで君たち。きっとバレンタインデーには美しい僕のためにチョコが集まってくる。

  そうなってもストーンリバー、嫉妬しないでくれたまへよ」

石流「誰がするかッ!」

ラット「……俺ちょっと偵察してくるわ……」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:14:45.00 ID:xpGmcjVbO
次子「お、このかまぼこみたいなやついいんじゃないか?」

小衣「……え?あ、何だっけ」

次子「小衣、どうしたんだー?」

小衣「別に……なんでもないわよ」

次子「さては、シャーロックのチョコの話か?」

小衣「なっ……何でそんな話になんのよ!」

次子「でも、気になってんだろ?」

小衣「違うってば!もー!さっさと買い物すませて帰るわよっ!」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:16:46.26 ID:xpGmcjVbO
私たちは寮のキッチンに戻り、早速支度しました。

シャロ「まずは何ですかー?」

エリー「えっと……チョコを湯煎するために細かく刻んで……」

シャロ「はーい!」

包丁になれていないシャロはあぶなっかしくチョコを刻んでいく。

エリー「気をつけてね……///」

シャロ「はーい!」

シャロはなれないお菓子作りに一生懸命になって、危なっかしい手つきで包丁を動かしている。
その人のために、ここまで一生懸命になれる。シャロにとってのそんな人……
いったい誰にチョコあげるのかな……

シャロ「こんな感じですか?エリーさん!」

エリー「あ……うん。次はチョコを湯煎して……」

そのとき、階段を駆け降りてくる軽い足音が聞こえました。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:19:15.16 ID:xpGmcjVbO
ネロ「なんかおいしいにおいがするー!あ、シャロ、エリー!何してんの?」

シャロ「チョコを作ってるんですー!」

ネロ「えー!チョコかあー いいないいなー……ねえ、ちょっと味見させてよー」

シャロ「だめですー!」

ネロ「いいじゃんちょっとくらい!けちー!」

ネロはチョコに手を伸ばし、シャロは必死に抵抗しています。

エリー「あ……ちょっとネロ……やめて……///」

そんな時、キッチンの戸口から声が聞こえました。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:21:06.24 ID:xpGmcjVbO
根津「おまえら何してんだよ……」

ネロ「うわっ、根津!」

シャロ「根津くん!どうしたんですか?」

根津「ん?ああ……いや、ちょっと偵察、じゃないや、様子見にな」

ネロ「なんだよ、様子見ってー?あ、実はチョコもらいに来たんじゃないの―?」

根津「べ、別にそんなんじゃねーし!チョコほしい訳じゃねーし!」

エリー「シャロ、とりあえず、つづき……しよっか……///」

シャロ「はい!」

言い争う二人をしり目に私たちはチョコ作りを再開しました。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:22:05.50 ID:xpGmcjVbO
次子「よーっし。これで材料はそろったなー」

小衣「うん……そうね……」

次子「……だからさあ、気になってんなら本人に聞きゃいいじゃんかよー」

小衣「いや、だから別に、そんな……」

次子「ってもさー……」

小衣「あ、そうだ。次子、私、あの、ちょっと行くところあるから先戻ってて!」

次子「あいよー」

次子「……素直じゃないねえ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:24:05.92 ID:xpGmcjVbO
アンリエット(……ふふふ、シャーロックのチョコ作りは順調のようですわね……あのチョコをいただくのはこの私……!)

小衣「……ねえ、あんた何やってんのよ」

アンリエット「あっ小衣さん!?」

小衣「こそこそして何見てるの?」

アンリエット「いえ、わたくしは別に……」

シャロ「なかなか溶けないですー」

小衣「……シャーロックがチョコ作ってるのを盗み見てたの?」

アンリエット「そんな盗み見るだなんて、……失礼ですわ」

小衣「で、あのチョコ、誰に渡すか知ってる?」

アンリエット「いえ、知りりませんわ。……まさか小衣さん、あなたご存じなのですか!?」

小衣「小衣だって知らないわよ」

アンリエット「小衣さん、シャーロックがだれの渡すのか気になっていますのね?」

小衣「だだだ誰があんなアホ探偵のことなんか……!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:26:08.28 ID:xpGmcjVbO
アンリエット「図星……ですのね?」

小衣「そ、そういうあんたはどうなの?なんだかんだで気になってんでしょ?」

アンリエット「な、何をおっしゃっているのかわかりませんわ」

コーデリア「それならぁ、悟られないように遠回しに聞いてみたら、どお?」

小衣「そうね……ってコーデリア、あんたいつのまに」

コーデリア「こまかいことは気にしちゃダメよ。そうよ、それが可憐なお花畑のポリシーですもの」

アンリエット「冗談はともかく、こっそり探りを入れましょう。行きなさい、小衣さん」

小衣「ってなんで小衣なの!あんたが行きなさいよ」

コーデリア「ちっ……えーい☆」

アンリエット「きゃっ……!」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:28:06.10 ID:xpGmcjVbO
シャロの努力の甲斐あってチョコは適度に細かくなりました。

エリー「次は……刻んだチョコを型に入れるために溶かすの」

シャロ「むむむ……これなかなか溶けないですー」

根津「炎で一気に溶かしちゃえば早いんじゃない?」

エリー「あの……チョコは温度が大事だからゆっくり溶かさないと……///」

ネロ「根津ってほんっとバカだよなー」

根津「なんだとっ!おまえに言われると腹立つわ!」

シャロ「みなさん喧嘩はやめてーなんつってー」

そのとき、キッチンの戸口の方からアンリエット生徒会長がやってきました。
少し誰かに押されてよろめいたふうに見えた気がしたような……

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:29:18.04 ID:xpGmcjVbO
シャロ「あ、アンリエットさん!」

アンリエット「み、みなさん、チョコ作りはどうですか?」

シャロ「順調ですー!」

アンリエット「そうですか、それはよかった。あの……ところでシャーロック」

シャロ「なんですかー?」

アンリエット「そのチョコは、その、バレンタインのチョコ……ですわよね?」

シャロ「はいですー!」

アンリエット「そ、そうですわよね……」

そういったアンリエットさんは少しさみしそうな、私にはそんな風に見えたのでした。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:31:29.39 ID:xpGmcjVbO
小衣「もー!あいつあんな当たり前のこと聞いてどうすんのよっ!」

コーデリア「しかたないわねえ……えいっ☆」

小衣「ちょっとコーデリア……!……きゃっ……!」

シャロ「あ、こころちゃん!」

小衣「こ、こころちゃんゆうな!」

明智さんが入ってきたキッチンの戸口にどこかで見たような花が少し見えたような……

シャロ「どうしたんですか、こころちゃん?」

小衣「えっとね……あの……その……今作ってるの、誰かにあげたりすんの?」

シャロ「はい!もちろんですよ!」

アンリエット「あ、屋根裏の猫に……とか?」

シャロ「いえ、猫にあんまりチョコとかはだめな気がします!」

小衣「そんなことも知らないなんて、アンリエット会長IQ低くなーい?……13くらい?」

アンリエット「貴様ッ!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:32:32.66 ID:xpGmcjVbO
小衣「ほら、どうせあれでしょ?みんなにあげます~とかでしょ?」

シャロ「いいえ。大事な、ひとりのひとにですー」

小衣「だだだ大事な!?」

アンリエット「だだだ誰にあげるのですか!?」

シャロ「それは……」

小衣「それは……?」

そのとき、その場にいたみんながシャロの次の言葉を待ちました。

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:34:23.14 ID:xpGmcjVbO
シャロ「ひみつですー」

小衣「なあんだ、ひみつかー☆ ……って、あほー!」

シャロ「あうー……いたいですー」

それにしてもシャロの大事な人……いったい誰なんだろう……
でも、こんなにがんばってるんだから……きっと本当に大切な人なのだろう……

エリー「大事な人に渡すんなら……がんばらなきゃね……///」

シャロ「はい!」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:35:49.70 ID:xpGmcjVbO
アンリエット「それではわたくしはこれで。チョコ作りがんばってくださいね」

小衣「あ、小衣もやることあるんだったー。じゃーね、あほ探偵!」

アンリエットさんと明智さんとが帰っていった頃にはチョコはすっかり溶けていました。

ネロ「……で、なんで根津ははいるのさー」

根津「は?俺ももう帰るし!」

ネロ「帰ってないじゃん。……なに?やっぱチョコ欲しかったりするわけ?」

根津「はあ!?別に欲しくねーし!」

ネロ「でも、もらえるあて、ないんでしょ?」

根津「もらえなくなんかねーし!もらえるし!ってか別にほしくねーしっ!」

ネロはいつもより楽しそうに弾んだ声で根津さんをからかっています。
翻弄される根津さんには申し訳なく思いつつも、私とシャロは黙々とチョコの成形を進めるのです。

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:36:55.89 ID:xpGmcjVbO
溶けたチョコをシャロはそっと型に流し込んでいく。

エリー「シャロ、ゆっくり……丁寧に、入れていって……///」

シャロ「はーい!」

チョコを型に入れおわると、あとは冷えるのを待つだけです。

シャロ「楽しみですー!」

エリー「できあがったら、飾り付けしようね……///」

シャロ「はいですー!」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:38:15.56 ID:xpGmcjVbO
その日の夜……///

平乃「小衣さん、もっと丁寧に、ゆっくり入れてください」

小衣「こ、こう……?」

次子「お、いい感じだねー。初めてにしては上出来、上出来」

小衣「ま、まあ究極の天才美少女のココロにできないことはないのよ!」

平乃「あ。そんなこと言ってるそばから垂れてますよー?」

小衣「きゃっ……もー!こんなの舐めちゃえばいいのよっ」

咲「卑 な会話なうー」

小衣「どこがよ!」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:40:07.90 ID:xpGmcjVbO
その同じ夜、不意にベッドの中でネロがつぶやきました……///

ネロ「ねえ、エリー?」

エリー「なに……?」

ネロ「もし……もしだよ?ボクからチョコもらったら、その……あの……嬉しかったりする?」

エリー「え……それって……///」

ネロ「……迷惑、かな?」

エリー「そ、そんなこと…… ……うれしいよ、ネロ……///」

ネロ「えへへ、そっか」

その時のネロの声はとても幼く、甘えた子供のようだったので少し私はドキドキしてしまいました……///

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:41:58.18 ID:xpGmcjVbO
シャロ「でこれーしょんですー!」

翌日、私とシャロはキッチンのテーブルの上に色とりどりのアイシングやチョコペン、ラッピングのリボンや包装紙を広げました。

冷蔵庫から昨日のチョコを取り出すときれいにむらなく固まっています。

エリー「チョコ、いい感じにできあがってるわよ……///」

シャロ「わー!きれいですー!さっそく飾り付けしましょう!」

黒いチョコの表面をシャロの手からこぼれおちる色とりどりの砂糖が覆っていく。

シャロ「あしたは特別すぺしゃるでぃ♪」

シャロは嬉しそうに飾り付けていく。
きっとこの砂糖のひとつぶに、きっとこのチョコペンのひとしずくに少女の無垢な感情が詰まっている。
きっと大切な人に渡すのが楽しみなんだろうな……///

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:43:14.68 ID:xpGmcjVbO
アンリエット「あら、あなたたち。こんなところでなにを覗いているのですか?」

根津「アルセーヌ様!」

石流「シャーロックがチョコを作っているようなのでアルセーヌ様がおっしゃったとおり監視しております」

アンリエット「シャーロックですか。ならば仕方がありません。わたくしも覗きましょう」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:44:08.82 ID:xpGmcjVbO
根津「あーあ、チョコいいなあ……」

アンリエット「それにしてもかわいいですわね」

20「僕は毎年食べあきてるがね」

石流「シャーロックですか?」

根津「……」

アンリエット「……」

20「……」

石流「……」

20「ストーンリバー、君は変 か」

石流「なんのことだ」

アンリエット「シャーロックはわたくしだけの純潔ですわ」

20「何の話ですか」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:45:36.21 ID:xpGmcjVbO
シャロ「いちねんいちどのちゃんっすっ♪おー、だーりん♪」

アンリエット「だだだダーリン!?」

エリー「でゅーわっ…でゅーわっ……///」

シャロ「だれもがうかれてカーニバル♪彼氏のハートを射止めてー♪」

アンリエット「かかか彼氏!?」

シャロ「ばれんたいんでー、きーいっす♪」

アンリエット「きききキス!?キスってキスですよ!?だめですわだめですわ……」

根津「ねえ、ストーンリバー。あの曲なに?」

石流「バレンタインキッス。4番国生さゆりだな」

根津「……ストーンリバー、おニャン子世代?35くらい?」

石流「貴様ッ!」

アンリエット「……歌詞でしたのね……」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:47:21.32 ID:xpGmcjVbO
エリー「ねえ、シャロ?」

シャロ「なんですかー?」

エリー「どんな人のために今作ってるの?」

それまで聞けなかった質問が知らぬ間に私の口から出ていました。
一生懸命で、楽しそうで……ここまでこの少女の気持ちを動かすいちずな感情に私は強く惹かれていました。
シャロは少し沈黙を置いて口を開きました。

シャロ「えっと……厳しくて、強くて、かっこよくて……」

そのときシャロの顔に浮かぶ表情は、単なる恋愛を語る人のそれではなくって……

シャロ「でも、はかなくて、あたたかくって……とっても、とっても優しい人です」

エリー「そっか……///」

シャロ「はい!」

シャロは幸せそうに微笑みました。この屈託のない笑みに私はつい優しい気持ちになるのでした。

シャロ「ふんふふ~ん♪あのひとだけ~は~♪」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:48:14.74 ID:xpGmcjVbO
アンリエット「ああ、シャーロック。あなたは一体誰にそのチョコを……」

20「今の条件に当てはまるのは……はっ!まさか美しいこのb」

ラット「ねーよ……」

シャロ「……だいじょうぶだなん~て~♪」

石流「……うっか~りしんじたら~」

シャロ「だめだめ♪」

石流「だめ♪」

シャロ&石流「だ~めだめよ♪」

根津「……45くらい?」

石流「貴様ッ!」

アンリエット「……歌詞でしたのね……」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:49:10.23 ID:xpGmcjVbO
シャロ「できましたー!」

シャロの手には可愛らしくラッピングまでされたチョコレート。

エリー「あとは渡すだけだね……///」

シャロ「はいですー!エリーさん、ありがとうございましたー!」

エリー「うん……///」

明日はバレンタインデー。
シャロ、一体誰に渡すのかな……///

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:51:21.85 ID:xpGmcjVbO
その日の夜のことです……///

夜にひとりで誰かがベッドを抜け出していきました。
寝たふりをしながら彼女を見届け、しばらくじっと待つと、私はベッドを抜け出し、階段を下りました。

キッチンから光が漏れています。

テーブルに乗せたボウルをヘラで混ぜているのは……

エリー「ネロ……///」

ネロ「わ!エリー!?なんで!?」

ネロは女の子らしいかわいいフリルのついたエプロンをしていました。
そのエプロンがいつものネロからは想像できなくって、私はつい笑みを漏らします。
でも、ボウルから飛び散るチョコで汚れてしまっているのでした。

エリー「チョコ……作ってるの?」

ネロ「うん…… あんまりうまくいってないけどね」

舌を出して照れくさそうに笑う。ネロってあんまりこういうお菓子作り、慣れてない。

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:52:58.92 ID:xpGmcjVbO
エリー「私、手伝うよ……///」

キッチンに置いたままになっていたエプロンをしながら、私は布巾を手に取ります。

ネロ「いいよ、そんな!それに、それじゃあ意味ないっていうか……///」

エリー「え?」

ネロ「ななな何でもないよっ!もういいってば!」

私はネロのエプロンの裾を少しつまみあげる。

エリー「ほら、かわいいエプロンが汚れてる。せっかく似合ってるのに」

ネロ「なななっ……エリーのばか……」

エリー「ほらネロ、そっとまぜて……///」

ネロの手をとる。

ネロ「あ……もう、仕方ないなぁ、エリーは……///」

こうして私たちはふたりでチョコを作り始めたのでした。

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:54:05.14 ID:xpGmcjVbO
そして2月14日です……///

石流「わかっているな?」

根津「ああ。……シャーロックの相手がいかがわしい相手なら……」

20「食う……!!」

石流「何をだ」

根津「あ、シャーロック」

シャロ「あ、根津くん。アンリエットさん知りませんか―?」

根津「生徒会長室にいると思うけど」

シャロ「ありがとうございますー」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:55:12.38 ID:xpGmcjVbO
石流「ん?まさかチョコを渡す相手というのは……」

根津「あ、警察」

次子「あのさー、シャーロック知んない?部屋にいなくってさー」

根津「今さっき生徒会長室に行ったけど」

次子「おーそっかそっか。あんがとー」

平乃「ほら、行きますよ。小衣さん」

小衣「いやーやっぱり私やめようかなーって……」

咲「往生際悪いよー」

次子「ほらほら!行くよー」

小衣「あー……」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:56:41.63 ID:xpGmcjVbO
シャロ「アンリエットさん?」

アンリエット「シャーロック!? どうしたのですか?」

シャロ「えっと……実はですね……」

……

ネロ「むむ、シャロがチョコを渡す相手って……」

コーデリア「アンリエットさんだったなんてぇ……」

エリー「あの……あまりこういうことはよくないかなって……」

私たちはこっそりシャロの後を追い、生徒会長室まで来ていました。
3人そろって扉に耳を当て、中の様子をうかがっています。

ネロ「なら、エリーは気にならないっていうの?」

エリー「えっと……その……それは……///」

コーデリア「ちょっと、エリーが困ってるじゃない」

ネロ「なんだよ、僕のせいにしないでよ!」

エリー「あ、あの……みなさん、けんかはやめて……ください…/// なんつって……///」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 00:59:03.01 ID:xpGmcjVbO
次子「あれー?こんなとこで何してんの?」

私たちのうしろから声をかけたのはG4のみなさんでした。
でも、いつも元気な明智さんがなんだか元気がないように見えました。

コーデリア「シャロがねぇーいまぁー中にぃー」

小衣「シャーロックが!?」

すると明智さんはすばやく扉まで来て聞き耳をたてました。

ネロ「なに?もしかして明智も気になるの?」

小衣「うるさいわね!ちょっと狭いからつめなさい!」

コーデリア「もーお!ちょっとぉ、押さないでよ!」

エリー「狭い……です……///」

シャロ「じつは……チョコを……」

ネロ「しーっ!しーずーかーにー!」

扉の前で押し合いをしていると、何の拍子にか扉が開いてしまいました。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:00:59.23 ID:xpGmcjVbO
私たちは重なり合う格好で床に倒れこみます。

シャロ「みなさん!」

ネロ「や、やあ……」

コーデリア「ど、どうも~」

エリー「あのっ……そのっ……///」

アンリエット「あなたたち、まさか盗み聞きしていたのですか?」

ネロ「えっと……」

そのときです。明智さんが訴えるように切実な声で言いました。

小衣「シャーロック!そのチョコって……」

シャロ「あ、あの……これは……」

シャロは恥ずかしそうに自分の手元のチョコを見ると、そっとそれをアンリエットさんに差し出しました。

シャロ「アンリエットさん。あの……いつもお世話になっているので……ぜひ受け取ってください……!」

アンリエット「ありがとう。シャーロック」

そう言ってほほ笑んだアンリエットさんは本当に美しかったのです。
照れくさそうに笑うシャロと、優しく抱擁するかのようなアンリエットさんの表情に私はひとつの幸福を見出すのでした。

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:02:32.44 ID:xpGmcjVbO
次子「小衣……」

その声をきっかけににシャロが気付きました。

シャロ「こころちゃん。もしかしてそれ、バレンタインのチョコ?」

気付かなかったけれど、明智さんの手にあったのはハートの形をした、ラッピングされたチョコでした。

小衣「これは……もういいの」

シャロ「こころちゃんも誰かに渡すんですかー?」

小衣「そうね……」

明智さんはそういうとしばらく黙りこみ、そのチョコを私の方に差し出しました。

小衣「エルキュール、あんたにあげるわよ」

ネロ「へー!明智がエリーに?」

コーデリア「なになにぃー意外なカップリングねぇー」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:04:39.30 ID:xpGmcjVbO
私は気付いてしまいました。その時の明智さんの表情に……

シャロ「よかったですね!エリーさん!」

シャロの無垢な言葉を私は目で制す。
私は明智さんからチョコを受け取ると、その場ですぐにそっとリボンをほどき、包装紙を開く。
やっぱりだ。明智さんの表情の変化を私は見逃さなかった。
中に手紙が入っていました。それを見た私はつい笑みをこぼしました。

宛名が書いてあるのです。

エリー「ほら……」

そっとシャロに差し出す。

シャロ「『シャーロックへ』……?」

小衣「あっ……」

シャロ「このチョコ、私に……?」

明智さんは黙ってうつむく。

シャロ「そうですよね?」

小衣「そうよ…… 悪い……?」

シャロ「こころちゃん!!」

シャロはいきなり明智さんに抱きつきました。

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:06:48.28 ID:xpGmcjVbO
小衣「ちょっと……!いきなり何すんのよ……///」

シャロ「こころちゃんにはチョコを作ってないんです。ごめんなさい」

小衣「うん……」

シャロ「だから……だから!今日は私をプレゼントです!!」

小衣「ちょっ……ちょっと何言ってんのよ!あほ!離れなさいよー!ばかー!」

シャロ「離れませんー♪」

私は声も出ないくらいに驚いているアンリエットさんを気の毒にも思いつつ、

明智さんの大切な気持ちの詰まったこのチョコを丁寧すぎるくらいにラッピングされていたもとの状態にリボンを結ぶのです。

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:08:43.38 ID:xpGmcjVbO
ネロ「あ、あのさ。エリー?」

エリー「なに?」

ネロ「あの、これっ!」

そういうとネロは帽子の中からチョコを取りだしました。
ちょっと不格好に包装されたこのチョコって……

エリー「ネロが手作りしてたやつ……?」

ネロ「そ、そうだよ……///

ネロはいかにも恥ずかしそうに私に差し出す。

ネロ「ちょっと見た目はあれだけど……で、でも味は大丈夫だよ!だって……その……エリーが手伝ってくれたから……///」

顔をあからめてそんな風に言うネロがほんとにかわいらしくて、いじらしくって、私まで照れてくる……

エリー「ありがとう。ネロ……///」

ネロ「えへへ……///」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:11:27.50 ID:xpGmcjVbO
コーデリア「なによなによぉ……みんないちゃいちゃしちゃってぇ…… 私だけおひとり様なのぉー?」

コーデリアさんが不満そうな声を上げる。
この状況じゃ、仕方ないか。そう決心して私はあるものを取り出します。

エリー「あの……私もチョコ、作ってきました………///」

コーデリア「わたしにぃ!?」

ネロ「ボクに!?」

エリー「あの……ふたりに……///」

ネロ「うっわー!ありがとっ、エリー!」

コーデリア「ありがとぉー!」

二人にチョコを渡す。
……ほんとは頑張ってチョコを作ってるシャロにおつかれさまの意味であげようと思って用意したものだけれど、

コーデリアさんが寂しそうだし、チョコをくれたネロにもあげたいし、何より……もうシャロはすてきなチョコを貰ったから……

私は、まだ明智さんに抱きついているシャロを横目で見ながらそんなことを思ったのでした。

そのあと、私たちは部屋に帰り、お互いのチョコを交換して食べたりなんかしました。
そんな私たちのバレンタインの思い出です。

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:13:38.20 ID:xpGmcjVbO
根津「とりあえずは一件落着?」

石流「そのようだな。……それにしても……」

根津「ああ。まさか……」

20「なんだい?君たち?」

根津「こいつにこんなにチョコが来るとはな……」

20「ひとつ分けてやろうか?石流?」

石流「いらぬわッ!」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:16:37.38 ID:xpGmcjVbO
根津「俺達、結局今年もゼロかぁ……」

石流「……そうだな……」

ネロ「あれ?こんなとこで何やってんの?」

根津「へ?い、いや?別にー……」

ネロ「ふーん……。あ、そうだ。これあげるよ」

根津「おおお俺に?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/12(土) 01:17:43.58 ID:xpGmcjVbO
ネロ「エリーにあげるチョコ作った時のあまりだけどね。どうせもらえなかったんでしょ?」

根津「う、うっせーよ!」

ネロ「ふふ、ほんとは嬉しいくせにー!

根津「別にそんなんじゃねーし!!」

ネロ「素直じゃない奴だなー。じゃーね!」

根津「お、おう……」

20「……」

石流「……」

根津「な、なんだよ」

20「ひとつ分けてやろうか?石流?」

石流「かたじけない……」

根津「だから何なんだよ!!」

そのあと一週間ほど石流さんが落ち込んでいるような様子だった理由は私たちにはわからないままなのでした。
おわり