1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:03:08.81 ID:BXn/K86q0
さやか「ふふふ……もう、恭介もなにも関係ない……あたしは、あたしなりの魔法少女を続ける。
    誰かに見返りを求めることも、誰かに感謝されることも無い、けれども誰をも助ける……そんな魔法少女に」

杏子「お、おい……お前……」

さやか「うるさい。お前に何を言われたって、関係ない。
    あたしは……あたしは……! 独りでもやっていってみせる! 正義の味方の……魔法少女をっ!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「……ごめんね……まどか。そういう訳だから、あたし、一人で帰るね」

まどか「そんな……一緒に帰ろうよ、さやかちゃん……」

さやか「ごめん……しばらく、一人にして……」

まどか「…………」

さやか「それじゃあね、まどか。……さようなら」

まどか「さやかちゃん……!」

引用元: 杏子「好き好き大好き」 



4: 冒険の書【Lv=5,xxxPT】 2011/02/24(木) 15:05:11.46 ID:BXn/K86q0
杏子「マズいな……あのままだとアイツ……マジにヤベェんじゃねぇのか?」

まどか「そんな……」

杏子「お前、アイツの親友なんだろ? なんとかしてやれねぇのか?」

まどか「なんとかって言われても……だって私も、どうしたら良いのか、分かんないし」

杏子「ったく、使えねぇな……」

まどか「……ごめんなさい……」

ほむら「そんなこと、言うものではないわ」

まどか「ほむらちゃん……」

杏子「じゃあお前は何か出来るってのか?」

ほむら「私は……美樹さやかが魔法少女になった時点で、もうどうにもならないと思っていたわ」

まどか「そんな……! やっぱり冷たすぎるよ、ほむらちゃん……!」

杏子「ま、全員が全員、なんだかんだ言ってアイツとは他人だ。それが普通なんだよ」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:08:11.42 ID:BXn/K86q0
杏子「なんとかしてやりたいって思うんなら……親友のお前自身が、どうにかするんだな」

まどか「……あなたもなの……?」

杏子「あぁ?」

まどか「あなたも、さやかちゃんを放ってっちゃうの?」

杏子「……アイツは、あたしの忠告を無視した。無視して、自分の道を貫こうとした。
   だったら、あたしからは何も言えないさ。アイツ自身、敵対するならすれば良い、そうなっても恨みっこなしだ、って言ってたからな」

まどか「そんな……」

杏子「だからあたしは、アイツがああなってしまって、敵対することになったら……絶対に躊躇しない」

まどか「…………」

杏子「……そんな泣きそうな顔するなよ」

まどか「え?」

杏子「まだ、アイツが死んじまうって決まった訳じゃなねぇだろ?
   お前が、アイツの気持ちを変えられるかもしれないし、アイツが、お前のために元に戻るかもしれない。
   ……だから、どうしてもって言うんなら……踏ん張りな」

まどか「…………」

杏子「じゃあな、お二人さん。気をつけて帰れよ」

杏子(……明日もう一回、アイツの家に行ってみるか……)

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:10:15.42 ID:BXn/K86q0
ほむら「…………」

まどか「…………」

ほむら「……優しいわね、彼女」

まどか「えっ?」

ほむら「私と違って、諦めそうになっていたあなたを支えた。
    それは何よりの優しさよ」

まどか「……ほむらちゃんだって、優しいよ」

ほむら「冷たいと言ったのは、あなた自身よ」

まどか「でも、さやかちゃんを守ってくれたし……今日だって、見守ってくれていたし……
    今日のは、私が言い過ぎたの。……ごめんなさい」

ほむら「別に。気にして無いわ」

まどか「……ごめんなさい……」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:11:38.87 ID:BXn/K86q0
ほむら「謝らなくても良いわ。……それじゃあ私も、帰ることにするわ」

まどか「うん……」

ほむら「鹿目まどか……夜だから、気をつけてね」

まどか「うん。……ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「……それじゃ、また明日」

まどか「うん。また明日」

まどか「…………」

まどか「さてキュゥべぇ。私たちも……ってあれ?」

まどか「……いない……」

まどか(もしかして……一人にして欲しいって言ってたのに、さやかちゃんについて行っちゃったのかな……?)

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:14:27.38 ID:BXn/K86q0
QB「よくじつ~」


さやか(結局今日も、また学校サボっちゃった……今日は仁美が恭介に告白する日だって言うのに)

さやか「……はは」

さやか(なに考えてんだか……もうそんなの関係ないって、昨日決めたじゃない。
    結局あたしは、アイツの言うとおり……独りだったんだ)

杏子『やっと気付いたのかい?』

さやか「っ!」

さやか『またアンタなの? わざわざテレパシーまで使ってきて、なんの用?』

杏子『アンタと話がしたくてね。これからどうするのかな、と思って』

さやか『……なにが?』

杏子『何があったか知らないけどさ、痛覚を無くして本当に人間らしくなくなったアンタはまだ、正義の味方ごっこを続けるのかい?
   ってことを訊きたいのさ』

さやか『当たり前でしょ。あたしの気持ちは、昨日から何も……変わらない。
    変わってない。変えてたまるもんか』

杏子『そうかい……。ま、それなら仕方が無い。ただ……会って、話せないか?』

さやか『……イヤよ』

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:15:49.94 ID:BXn/K86q0
さやか『もうあたしは……誰とも会いたくない』

杏子『あのアンタの親友とも?』

さやか『っ! まどかに何かしたのっ!?』

杏子『まさか。ただあの子、昨日アンタのこと心配してたよ』

さやか『……それがアンタと、何か関係があるっての?』

杏子『いいや別に。ただ、教えておいてあげようと思っただけ』

さやか『あ、っそ……』

杏子『それで……ツラを拝ましてはくれないのかい?』

さやか『さっきも言ったでしょ。今あたしは……誰とも会いたくない』

杏子『またそうやって引き篭もる生活に逆戻り、か』

さやか『うるさい! っていうかなんでアンタが! あたしに話しかけに来るの!?』

杏子『なんで……か……まぁ、そうだね……なんでだろうね』

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:17:09.21 ID:BXn/K86q0
杏子『ただ昨日も言っただろ? アンタのことが気になるって。
   見てらんないんだよ、そういうの』

さやか『だからって! あたしはいくらアンタと会っても! 気持ちなんて一向に変わらないっ!』

杏子『……ま、そうだろうね。でもさ……それでもあたしは、会いたいんだよ』

さやか『……あたしは、会いたくない……』

杏子『……じゃあしゃあねぇか。強行突破させてもらうぞ』

さやか『……は?』

杏子『忠告はしたからな』

ヒュンッ…!

さやか『ちょ、何言って――』

…ガシャーン!

さやか「な……! え、あ……えぇ!?」

杏子「よう。窓、割らせてもらったぞ」

さやか「ア、アンタねぇ!」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:18:49.49 ID:BXn/K86q0
さやか「なんで蹴破ってまで入ってくるのかなぁ!?」

杏子「なんでって……顔を拝ませてもらいたかったからに決まってんじゃん」

さやか「玄関から入るって考えはないわけ!?」

杏子「いや、あったけど、アンタが開けてくれなかったんじゃん」

さやか「くっ……! ……でも……だからってこんな非常識な……!」

杏子「それだけ心配してやってんだよ」

さやか「えっ……?」

杏子「ほら、お見舞いにエビせんべい買ってきてやったから。食うかい?」

さやか「……なんでお見舞いって銘打ってるのにそんな消化に悪いものを……いらない。
    食欲も沸かないし」

杏子「おいおい……こりゃ重症だな。飯も喉を通らないってやつか」

さやか「アンタと一緒にしないでよ。別に一日食べなくたって、死ぬわけじゃないし」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:19:49.56 ID:BXn/K86q0
さやか「それよりもアンタ、あたしの顔見たんだから、さっさと帰りなさいよ」

杏子「ヤだね」パリパリ

さやか「なんでよ?」

杏子「そんな体調悪そうにされてて、あっさりと帰れるほどあたしも優しくないんでね」パリパリ

さやか「あ、っそ。好きにすれば」

杏子「ああ。好きにさせてもらうさ」ガサガサ

さやか「……っていうか、なんでアンタがお見舞いで持ってきたもの食べてんのよ」

杏子「だってオマエ食べないんだろ? だったらあたしが食うしかないじゃんか」パリパリ

さやか「どういう神経してんだか……っていうかボロボロ零すな!」

杏子「そんな難しい注文されてもなぁ……というより、喉渇いてきたんだけど。なんかない?」パリパリ

さやか「アンタ相当図々しいよ!?」

杏子「好きにしろって言ったのはお前だろ? だから好きにさせてもらってるだけさ」ガサガサ

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:21:29.52 ID:BXn/K86q0
さやか「ああぁ……もう! これ以上あたしの部屋を汚すな!」

杏子「えぇ~?」

さやか「窓蹴破ってガラスの破片まみれにしておいてまだ物足りないかっ!」

杏子「分かった、分かったよ。そこまで言うんならこの部屋で食べるのは止めてやるよ」

さやか「よし……」

杏子「で、飲み物は?」

さやか「だから相当図々しいって! 欲しかったら自分で買いに行きなさいよっ!」

杏子「面倒くさいじゃん。ああ、でもそっか。
   勝手にすれば良いんだったら、あたしが探して勝手に飲めば良いんだ」

さやか「……っ! ……ああもうああもう! むしゃくしゃするなぁ!
    分かったから! 準備するから! 一緒にリビングまで来なさい!
    そこでだったらお菓子食べても怒らないから!」

杏子「え? マジで? そりゃあラッキーだ」

さやか「はぁ……なんでこんな面倒くさいヤツが来るんだか……」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:24:40.32 ID:BXn/K86q0
~~~~~~

まどか(さやかちゃん……また学校休んでる……やっぱり、昨日のことを引きずって……。
    ……そう言えば、今日は仁美ちゃんもお休みしてる……もしかして私の知らないところで、二人に何かあったのかも……)

ほむら「鹿目まどか」

まどか「あっ、ほむらちゃん……」

ほむら「美樹さやかは、また学校に来ていないのね」

まどか「そう、だね……」

ほむら「……心配?」

まどか「うん。やっぱり、大切な友達だから……心配だよ」

ほむら「なら、一緒に見に行きましょうか」

まどか「えっ?」

ほむら「学校が終わってからでも、お昼休みに抜け出してでも良いわ。
    そんなに気になるなら、家に行ってみましょう。
    私も、一緒に行くから」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:26:21.42 ID:BXn/K86q0
まどか「ほむらちゃんも……?」

ほむら「ええ。私だって、諦めろとは言ったけれど……やっぱり、彼女のことは気になるわ」

まどか「ほむらちゃん……! うんっ! それじゃあ放課後、一緒にお見舞いに行こうっ!」

ほむら「ええ」

まどか「それとね、ほむらちゃん……今日、仁美ちゃんもお休みだからさ……
    お昼ご飯、良かったら一緒に食べたりとか……しない?」

ほむら「……構わないわ」

まどか「っ……! ありがとうっ、ほむらちゃん」

ほむら「お礼を言われるほどのことではないわ。気にしないで」

まどか「うんっ。でも、ありがとうっ!」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:28:06.49 ID:BXn/K86q0
~~~~~~

さやか「はい。水」

杏子「ちぇっ、しけてんなぁ……普通はお茶とか出すもんじゃねぇの?」

さやか「アンタ相手に、どうして客人みたいに振舞わないといけないのよ」

杏子「ははっ、違いない」ゴク…ゴク…ゴク…

さやか「……で、どうしてあたしのところになんて来たの? まさかまたお説教か何か?」

杏子「まさか」コト

さやか「じゃあ何の用?」

杏子「ただ単に、アンタと話がしたかっただけ」

さやか「はっ、何よソレ。馴れ合おうって言うの?
    魔女を狩るライバルが多かったら、アンタも困るんじゃない?」

杏子「そりゃそうだけど……それでも、アンタのことは他人事のように放っておけないからさ。
   前も言ったけど、昔の自分を見てるみたいで、このままだと見てられないんだよ」

さやか「また、自業自得を受け入れて生きろって話?」

杏子「それはあたしの生き方で、アンタの生き方にはならない。そう言ったのは、アンタ自身だろ」

さやか「…………」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:29:27.60 ID:BXn/K86q0
杏子「だからあたしは、ただアンタが放っておけないだけ」

さやか「余計なお節介」

杏子「だろうね。でもあたしは、アンタと一緒にいるって決めた。
   魔女狩りとかは別だけど、それ以外は一緒にいる」

さやか「なにそれ? ……気持ち悪い」

杏子「ははっ、そうかもねぇ」

さやか(……なんだ、コイツ……なんか、いつもとは違うような……)

杏子「でも、なんて言うのかな……出来の悪い後輩、目を離せない妹……
   アンタを見てるとさ、そんな感じがしてくるんだよ」

さやか「…………」

杏子「で、あたしはその感覚に、忠実に生きようってだけの話。だから今日は来たのさ」

さやか「……なんか……今日はやけに、私の肩を持つわね」

杏子「そうかい? まぁでも、確かに昨日あらかた話したせいかな……
   拒絶されたって言っても、アンタがあたしとは別の魔法少女になるって言っても、何故か心配しちまうんだよ。
   きっと、情が移ったんだろうさ」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:32:23.71 ID:BXn/K86q0
杏子「まして、昨日のアンタを見てるとさ……こうやって普通に話が出来てるだけ、あたしは十分嬉しいんだよ。
   もう、まともに話しすらさせてもらえなかったような気がしてたからさ」

さやか「……それは、たぶん……アンタのおかげ、かな……」ボソッ

杏子「ん?」

さやか「だから、アンタのおかげだって言ってんのっ。
    もう独りだってしょぼくれて、まどかにも愛想尽かされて、誰もなったことの無い魔法少女になるんだって全員と敵対して……
    もう、独りで全部背負い込まないといけないって……そう、思ってた……」

杏子「…………」

さやか「そんな風にしょぼくれてる時にさ……アンタが無理やりにでも来てくれたから……
    だからたぶん、そのおかげで……あたしはこうして、アンタと普通に、話が出来てるんだと思う」

杏子「……そっか……それなら光栄だな。ただ、アンタのあの親友、お前のことを独りにするつもりもなさそうだったけどな」

さやか「嘘だよ……もう、あんな醜いあたしを見せたのに……」

杏子「それでも一緒にいたいって思うのが、きっと親友ってもんなんだろ」

さやか「…………」

杏子「…………」

さやか「……あんたも……」

杏子「ん?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:34:54.13 ID:BXn/K86q0
さやか「あんたも、あたしがああなったってのに、声を掛けてくれたのは……そうだからなの?」

杏子「……かもな……気になるってのは結局のところ、あんたと仲良くなりたかっただけなのかもしれない」

さやか「あたしさ……アンタとの出会い方が魔法少女とかじゃなかったら、きっと……仲良くなれたと思うんだ」

杏子「それはどうだろうなぁ?」

さやか「えっ……?」

杏子「だってさ、お互い魔法少女ないと出会えなかったじゃん?
   それに、アンタがバカだってことも分からなかったし、バカなりに一生懸命に足掻いてるってことも分からなかった」

さやか「ば、バカとは何よバカとはっ!」

杏子「まあまあ、言葉のアヤだって。……ま、ともかくそういう訳さ。
   ゾンビだって分かっても、どうでも良いって考えられたあたしとは違って、
   そう思うことが出来ないほど想っている人がいるのに、
   それでもそうなったことを受け入れて、足掻いて自分の信念を貫こうと生きている。
   ……そういうのって、アンタが魔法少女じゃなかったら、気付けなかったことなんだよ」

さやか「…………」

杏子「ま、その貫き方に同意も同調も出来ないけどさ」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:38:46.62 ID:BXn/K86q0
杏子「痛みを無くしたからって、痛くないからって、アンタ自身が傷つくあの方法は……見ていて、コッチの心が傷ついてくる。
   辛くなる。
   だから余計に放って置けなくなる。
   だからさ……もっと、自分を大切にしてくれよ」

さやか「…………」

杏子「アンタ自身が犠牲になってまで叶えるその“正義の味方”は、本当にアンタが憧れたものなのか?」

さやか「……違う……あたしは、マミさんみたいになりたくて……マミさんみたいな魔法少女を、目指していて……。
    ……でも……マミさんは、自分を進んで犠牲には、しなかった……」

杏子「そうだな。アイツはきっと、自分が犠牲にならなければ何かを救えない状況じゃない限りは、自分を犠牲にはしない。
   そして、そうならないために――自分を犠牲にしなくても沢山の人を救えるようになるために、強くなろうとしていた。
   それがマミって女なのさ」

さやか「…………」

杏子「あたしたち魔法少女は、結局のところ孤独。誰もあたし達のことは分からない。
   この辛さも、覚悟も、信念も意志も強さも、誰も分からない。例え同じ魔法少女であってもさ。
   ……でも、だからこそ、数少ない絆は大切にしないといけない。
   その数少ない絆のおかげで支えられ、自我を保っていられるものさ。
   それが例え敵であっても、実力を認めてやる程度には……さ」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:39:47.73 ID:BXn/K86q0
さやか「……もしかして、アンタがマミさんを名前で呼ぶのって……」

杏子「ああ。あたしがアイツを認めてたからさ。
   魔女になる前の使い魔を殺したり、誰かのために命を張ったり、そういうのはあたしと相容れなかったけどさ……
   それでも、ソレを実行に移して、維持していけるだけの実力が、アイツにはあった。
   だから、認めていたのさ」

さやか「そっか……だからあたしがマミさんの真似事をしてた時、怒ってきたんだね。
    あたしが、マミさんほど強くもないのに……覚悟も全然足りなかったのに、
    身の丈に合ってないことを、しようとしてたから」

杏子「…………」

さやか「…………」

杏子「……さぁてね」ニヤッ

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:41:24.25 ID:BXn/K86q0
杏子「ま、だからそんな訳で……アンタみたいに、積極的に孤独になる必要性はないのさ。
   結局あたしたちはどこまでいっても孤独。誰にも理解されない。
   でも、ソレを理解したうえで、誰かと絆を結んでおくんだ。
   矛盾しているようだけどさ。
   だってそうしとかないと、本当にアンタは、壊れちまう」

さやか「…………」

杏子「そういうのは本当……イヤなんだよ。同じ魔法少女として。
   数少ない、絆を結べる相手として」

さやか「…………」

杏子「で、結局アンタが目指したいのは、その自分を傷つけてまで得られる強さの先にある“正義の味方”なのかい?
   それとも、自分を傷つけないよう努力して得られる強さの先にある“正義の味方”なのかい?」

さやか「……あたしが、目指してるのは……」

杏子「…………」

さやか「……マミさんみたいな、正義の味方だ……」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:44:30.15 ID:BXn/K86q0
杏子「そうか……だったらもう、分かってるのかい?」

さやか「うん。分かった。あたしってば、自暴自棄になってた。
    恭介に好きになってもらえない身体になって、友人が恭介のことを好きだって言って、でもあたしはどうにも出来なくて……
    あたしが恭介を救ったのに、報われないなんて考えて……
    でも、報われなくても良いから助けたはずなのにとか、見返りを求めないのが正義の味方なんだとか、
    正義の味方を貫くための気持ちを前面に押し出して……
    押し出しすぎて、本来の目標を、忘れてた」

杏子「…………」

さやか「確かにあたしは、恭介を助けたかった。そこに濁りは無いし、今でも間違いだったとは思ってない。
    報われなくても良いって考えで契約したことも、後悔してない。
    一瞬だけしたけれど、今はもう、後悔して無い。
    そう……だからきっとあたしも、一緒だったんだ……」

さやか(まどかと一緒で……ただ、マミさんに憧れてただけなんだ)

さやか「……だから、この恭介を助けたいって願いも、魔法少女になるついでみたいなもの。
    ついでに、好きな人を助けただけ。
    あわよくば、って考えが、全く無いわけじゃないけど……
    求められたら、応えてしまうだろうけど……
    それでも、あたしは……
    恭介が幸せになりさえすれば、彼があたしのことを必要ないと言うのなら、
    もう、彼のことはいらない。
    だってあたしの願いは……本当の願いは、正義の味方に、なることだったから」

杏子「……そうかい」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:46:14.69 ID:BXn/K86q0
杏子「ってことは結局、あたしとは相容れないって事かぁ……」

さやか「ま、そうなるわね。
    確かにあたしはまだまだヒヨッ子で、マミさんみたいに強くは無いけど……
    でもコレが、あたしでも気付いてなかった、あたし自身の魔法少女になった理由だから」

杏子「そっか……残念だな。アンタとは仲良くなれそうだって思ってたのに」

さやか「何言ってんのよ。なれるでしょ」

杏子「は?」

さやか「魔法少女とか、そういうのを抜きにしてさ。ただの一人間――じゃなくて、一ゾンビ同士でさ」

杏子「何言ってんだよ。さっきも言ったけど、魔法少女は孤独だって――」

さやか「そうだけどさ、そうじゃない魔法少女がいても良いんじゃない?」

杏子「…………」

さやか「誰もなれなかった魔法少女……孤独だけれど絆がある魔法少女なくて、
    孤独じゃなくて絆もある、そんな魔法少女がいてもさ」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:49:54.24 ID:BXn/K86q0
杏子「あんた……それマジで言ってんの?」

さやか「マジも大マジ。今のあたしじゃ、アンタに認めてもらうなんて夢のまた夢だしさ。
    だから、マミさんみたいに、ただ互いに認め合うだけの関係にはなれない。
    ……それに、あたしってば誰もならなかった魔法少女になるって大見得きっちゃったしさ……
    ココは一つ、あたしに協力するつもりでさ」

杏子「なんでアンタに協力なんて……」

さやか「良いじゃん良いじゃん。互いの考えは相容れないけれど友人関係、ってのは、よくある話なんだからさ。
   それにあたし個人、アンタと仲良くなりたいってのが本音。
   ……あたしのこと、こんなに考えてくれたのにさ……仲良くなりたくないって考える方が、むしろ難しいよ」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:50:58.13 ID:BXn/K86q0
杏子「……馴れ合うつもりは無いんだよ、あたしは」

さやか「馴れ合う魔法少女、って、新しいでしょ? 魔法少女コンビ、結成だぁ!」

杏子「……本当に、あたしなんかで良いのか?」

さやか「アンタだから良いんだよ。アンタだから……」

杏子「…………」

さやか「むしろ、さ……力及ばないあたしとコンビ組もうって話自体、アンタにとっては、迷惑な話なのかもしんないけど……」

杏子「……力なんてもんは、鍛えればいくらでもつけられるだろ。
   ……あたしが戦い方、教えてやるよ」

さやか「……良いの?」

杏子「良いも何も……魔法少女コンビ、なんだろ……?
   だったら……良いに決まってんじゃん」

さやか「うん……うん! ありがとうっ!」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:52:25.97 ID:BXn/K86q0
杏子「ただなぁ……結成した途端に言うのもアレだけど、あたしたちって喧嘩ばっかしそうだよなぁ……」

さやか「あはは……確かにそうかもね。
    片や、正義の味方を目指して人々を助ける人間。
    片や、魔法少女として魔女を狩るために多少の犠牲は止むなしだと思ってる人間。
    ……普通に考えれば、むしろ敵同士だもんね」

杏子「魔法少女になる上での願い事は似たようなもんでも、人々を憎んで契約した者と、人一人を救うために契約した者だもんなぁ……」

さやか「……でもさ、喧嘩しながらもパートナーっての、魔法少女としてさらに新しくない?」

杏子「……ま、そうかもな。というより、二人組みとして新しいかもな」バリッ

さやか「あ、何新しいお菓子開けてんのよ」

杏子「は? 腹減ったからに決まってんじゃん。もうお昼過ぎてんだからよぉ」

さやか「だったら、あたしがお昼ご飯用意してあげる。
    パートナーとして、魔法少女の先輩に対する敬意として、一つご馳走を作ってあげよう」

杏子「え? 作れんの?」

さやか「んな! 失礼なっ!
    そりゃ……まぁ、簡単なものしか作れないケド……まぁ待ってなさいって。
    さやか様が、おいしい料理を作ってみせようっ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:54:04.26 ID:BXn/K86q0
QB「お昼ご飯、完成だよ!」



杏子「おいしい料理を作ってみせようっ……と言ってたのが、遠い記憶のように感じるな」

さやか「……うん……なんか、ごめん……普通に失敗した……」

杏子「なにこれ? 炭?」

さやか「ハンバーグ! はぁ~……なぁんで作られたタネを焼いただけなのに、どうしてこうなるかなぁ……」

杏子「ま、見た目はこんなでも、食えるんだろ?」パクッ

さやか「あっ、ちょっ……!」

杏子「……うん、焦げは確かに酷いけど、普通に食えるな」モグモグ

さやか「ああぁぁぁ……そんな失敗作、無理して食べなくても……」

杏子「食べ物は粗末にしたらダメなんだって。なんだったら、オマエのも食ってやるけど?」

さやか「良いよ。自分の分ぐらい自分で食べる。というより、そうしないとあたしのご飯が無いし」

杏子「あ、そう言えば、白いご飯はある?」

さやか「あ……炊いてなかった……」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:55:25.90 ID:BXn/K86q0
チンッ

杏子「ま、レンジでチンするご飯も美味しいから、全然構わないさ」モグモグ

さやか「うぅ~……なんか上手くいかないなぁ……あたし」

杏子「最初の契約からして上手くいってないもんな」

さやか「だ、だから恭介のことは良かったって言ってるでしょ! 後悔だってしてないし……それに――」

杏子「そんなことよりも、ソースとかねぇの?」

さやか「――……アンタ、本当に自由よね……」

杏子「食べることに関してはな。で、あるの?」

さやか「えぇっと……確か、冷蔵庫に……」

ガチャッ

杏子「……物の見事に調味料類はねぇんだな」

さやか「うぅ~……」

杏子「ま、ケチャップがあっただけ良しとするか。
   デミグラスソースほどじぇねぇけど、コレでも十分美味いし」

パタン

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:56:45.79 ID:BXn/K86q0
QB「食後!」



さやか「……あ~あ……なぁんで肉焼くだけだったのに失敗しちゃうかねぇ……」

杏子「そうか? あの苦味のおかげで独特の味がしてむしろ美味しさが引き立ってたように思うけど?」

さやか「アンタの舌はどうかしてる……っていうより、もしかしてアンタ、料理とか食べたの久しぶり?」

杏子「あ~……まぁ、確かにそうかもな」

さやか「そっか……っていうか、せっかくの久しぶりにあんな不味いの出しちゃうなんて……あたしってば……」

杏子「だから、不味くなかったって。さやかは気にしすぎ」

さやか「そうかもしれないけ――今なんて言った?」

杏子「だから、不味くなかったって」

さやか「そのあと!」

杏子「…………」

さやか「…………」

杏子「ああもう!」///

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 15:57:46.98 ID:BXn/K86q0
杏子「せっかく恥ずかしくないタイミングでナチュラルに呼んだってのに、改めて聞き返すなよっ!」///

さやか「まさかの逆切れ!? いや、でも、うん……あぁ~……その……ごめん……」

杏子「な、何、謝ってんだよ……」///

さやか「その、さ……せっかく勇気振り絞ってくれたのに、ちゃんと聞いてやれてなくて」

杏子「べ、別に! 勇気振り絞ったとか、そんなのはないし! 普通だしっ!」///

さやか「なんか、言葉遣いが変になってる気がする……」

杏子「なってねぇよっ!」///

さやか「そ、そう……ま、そう言うんなら、そうなんだろうけど……」

杏子「ああ、そうさ」///

さやか「そっか……」

杏子「…………」

さやか「…………」

杏子(……あれ? コイツの名前、なんだっけ……?)

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:00:30.34 ID:BXn/K86q0
さやか(っていうかあたし……聞いたことあるっけ? アイツはまぁ、まどかが叫んでるのを覚えてたんだろうけど……)

杏子「……杏子」

さやか「って、え?」

杏子「あたしの名前。アンタに言ってなかったと思って」///

さやか「そ、そう……」

杏子「そ、そう」///

さやか「…………」

杏子「…………」///

さやか(えっと……呼べってことだよね……。
    ……ってうわっ! なんかまどかと違って恥ずかしい! なんか言葉がつっかえるっ!
    それでも……それでも……! えぇいっ!)

さやか「えぇ~っとさ……きょ、杏子……」///

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:01:29.70 ID:BXn/K86q0
杏子「な、なんだよ……」///

さやか「い、いやっ、その……呼んでみただけ、っていうか……」///

杏子「な、なんだよ、ソレ……」///

さやか「うん……ごめん……」///

杏子「…………」///

さやか「…………」///

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:39:12.20 ID:BXn/K86q0
さやか「……はぁ~……あ……」

杏子「ん……? どうした、欠伸なんてして……眠いのか?」

さやか「うん、ちょっと……じつは昨日とか、色々と考えすぎて、ろくに寝てないんだ」

杏子「んじゃ、部屋に戻ってゆっくりと休みな」

さやか「部屋にって……あの部屋、誰かさんが蹴破ったせいで風通しのよさがとんでもないんだけど……」

杏子「う……んじゃあ、毛布でも持ってきてココで寝れば良いじゃん」

さやか「それでもまだ、結構寒いと思うんだけど……」

杏子「んな真冬ってほどじゃねぇんだし……っつか、あたしにどうして欲しいわけ?」

さやか「えっと……その、さ……一緒に寝て欲しい、っていうか……」

杏子「は、はぁっ!?」///

さやか「や、違う違う! その、やらしい意味とか、下心的な意味じゃなくて……!」///

杏子「あ、当たり前だろ! バカ野郎……」///

さやか「で、でもほら! 一緒に寝た方が暖かいと思うし……さ」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:40:02.15 ID:BXn/K86q0
杏子「…………」

さやか「…………」

杏子「……今回、だけだぞ」フイッ///

さやか「……っ!」

杏子「こ、今回は! その……あたしが窓を蹴破ったのが悪いんだし……
   責任はちゃんと果たさないとならねぇし……仕方なしだぞ!」

さやか「うん……! 分かってるって!」

杏子「本当かよ……」

さやか「んじゃ、毛布持って来るね!」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:41:36.27 ID:BXn/K86q0
さやか「うん……やっぱり一緒に入ると、暖かい」

杏子「そうか? ……いや、そうかもな……」

さやか「こうやって、誰かと一緒に寝るのって、久しぶりだ……」

杏子「…………」

さやか「……そっか……あたし、痛覚無くして……この暖かさも感じられないようになろうとしてたんだ……
    本当、杏子にバカって言われても、仕方ないよ」

杏子「……気付けたんだから、良かったろ?」

さやか「……うん」

杏子「んじゃ、寝るぞ」

さやか「ねえ」

杏子「ん?」

さやか「起きたらいなくなってるとか、止めてよ……?」

杏子「……ああ。分かってるよ。お前が起きるまで、隣にいてやる」

さやか「うん……ありがとう。杏子」

杏子「おやすみ。……さやか」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:42:43.27 ID:BXn/K86q0
~~~~~~

ピンポーン

さやか「……ん……?」ボ~

ピンポーン

さやか(……誰か来た?)ボ~

トコトコトコ…

さやか「……はい?」ボ~

???『あ、さやかちゃん!? 良かった~……てっきりいなかったのかと……」

さやか「あれ……? まどか……? どうしたの……?」ボ~

まどか『どうしたのって……その、さやかちゃんが、心配で……すごく気になってて……ねぇ、もう平気?』

さやか「……うん……へいき……」ボ~

まどか『……本当?』

さやか「うん。ほんとう、ほんとう。……なんだったら、あがっていきなよ」ボ~

まどか『え? でも今ほむ――』

さやか「えんりょすんなって。んじゃ、かぎあけとくから、あがってきて~」ボ~

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:43:30.43 ID:BXn/K86q0
さやか(えっと……まどかが来るんだったら、玄関のカギは開けとかないと……)ボ~

ガチャ

さやか(……あれ? なんであたしカギ開けたんだっけ……? ……まあいいや)ボ~

トコトコトコ…

さやか(……眠い……寝なおそう……)ボ~

モゾモゾ…

さやか(あ……すごい……あったか……い…………)スヤスヤ

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:45:12.31 ID:BXn/K86q0
まどか「えっと……さやかちゃん……? お邪魔しま――ってえぇ!?」

ほむら「どうしたの? って、これは……」

まどか「ど、どうしよう! ほむらちゃんっ!」

ほむら「……これは……これは……」

まどか「あああぁぁぁぁぁ……! ほむらちゃんまでもが動揺しちゃってる……!」

ほむら「そ、そんなことはないわ。至って冷静よ。とりあえず、事情を聞くために、起こしましょう」

さやか(あれ……? 話し声……?)ボ~

まどか「そ、そうだね。えっと……さ、さやかちゃ~ん……?」

さやか「……ん? はれ……? まどか……おはよう……」ボ~

まどか「うん……おはよう。それでね、えっと……どういうことか、教えて欲しいんだけど……」

さやか「? なにが?」

まどか「えっと……どうして、その子が隣にいるのかなぁ、って」

さやか「その子……?」チラッ

杏子「…………」ク~

さやか「」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:46:43.89 ID:BXn/K86q0
さやか「…………」

まどか「えっと……もしかして……さやかちゃんも知らない、な訳ないよね」

さやか「……うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」///

まどか「さ、さやかちゃん!? どうしようほむらちゃん!
    さやかちゃんが顔を真っ赤にしながら謎の呻き声を上げてるっ!」

ほむら「きっと、この姿を誰にも見せる気は無かったのでしょうね。
    ……とりあえず、落ち着くまで待ちましょうか」

まどか「そ、そうだね……」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:48:20.03 ID:BXn/K86q0
さやか「と、とりあえず、さ……この子、起こすから。そしたら事情説明、始めるから」///

まどか「う、うん」

さやか「ほら、起きて」ユサユサ

杏子「……んぅ?」

さやか「えっと……まどかたちに話すから、起きて、杏子」ユサユサ

まどか(名前で呼んでる……)

ほむら(仲良くなったものね)

杏子「んぅ……もう少し寝かせろよぉ……さやかぁ……」

さやか「そ、そういう訳にもいかないって。その……まどかたちも来てるし、さ」///

杏子「いいじゃんべつに~。それともなにか~? さやかはあたしのこときらいになったのかぁ~?」

さやか「いや、その……そんな訳は無いけど……」

杏子「あたしは好きだぞ~」

「「「っ!!」」」

杏子「好き。好き。大好き」

「「「…………」」」///

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:49:07.69 ID:BXn/K86q0
杏子「なんだ~? なんで答えてくれないんだ~?」

さやか「えっと……それは、その……まどかたちがいて、恥ずかしいから……」///

杏子「まどかぁ~? 誰だそれ~?」ムクリ

まどか「あはは……」///

ほむら「っ……」フイ///

杏子「…………………………………………え?」パチクリ

さやか「……えっと……その……まあ、そういう訳で……」///

杏子「…………あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」///

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:50:39.11 ID:BXn/K86q0
QB「落ち着きを取り戻して……」



まどか「えっと……つまり二人は、仲直りしたんだよね……?」

さやか「そ、そうなるかな……」

ほむら「それで、魔法少女コンビを結成したと」

さやか「ま、まあな」

ほむら「……馴れ合いを好まなかったあなたが珍しいわね、佐倉杏子」

杏子「う、うるさいなぁ! あたしだって、心境が変化する時ぐらいあるって!」

ほむら「……そうね。……それで、使い魔が出た時はどうするの?」

さやか「もちろん倒す」
杏子 「もちろん放置さ」

ほむら「……意見がバラバラね。それでも魔法少女コンビと言えるの?」

さやか「これが言えるんだよ、転校生」

杏子「あたし達は、あたし達なりのコンビを結成したのさ」

さやか「そうそう」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:52:28.45 ID:BXn/K86q0
さやか「色々と貫くべき信念は違うけどさ、だからって、手を取り合わない理由にはならないってこと」

杏子「それに、大本である魔女を倒すってところは、結局のところ共通してることだしな」

ほむら「なら……改めて訊ねるけれど、使い魔が出た時はどうするの?」

さやか「全力で杏子を抜いて倒しに行く」
杏子 「全力でさやかを止めてやる」

ほむら「それでも、魔法少女“コンビ”と言えるの?」

さやか「うん」
杏子 「ああ」

ほむら「……理解が追いつかないわ……」ハァ…

さやか「別に、転校生に理解してもらう必要も無いしな」

杏子「そうだな。あたしたちだけが理解できる関係なら、それで良いんだよ」

ほむら「そう……なら、好きにすると良いわ」

さやか「言われなくても」
杏子 「言われなくても」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:53:27.01 ID:BXn/K86q0
ほむら(……まぁ、よく分からない関係だけれど、これで『夜』に備えることは出来てる……
    私一人でじゃない、戦いの準備が整い始めている……)

まどか「えっと……は、始めまして……は、おかしいよね」

杏子「ま、でも自己紹介はしたことなかったか。さやかの親友の……えっと……」

まどか「まどか。鹿目まどか」

杏子「そっか。じゃあまどか、これからもよろしくな。
   あたしは……杏子で良いよ。さやかの親友なんだろ?」

まどか「うんっ。よろしくね、杏子ちゃん」

杏子「ああ」

ほむら(でも……何か引っ掛かる……ここまでの間に……何か……違和感みたいなものが……)

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:54:14.26 ID:BXn/K86q0


























QB「これがキミの望みだったのかい? 仁美」

仁美「ええ。これで、よろしいんですの」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:55:36.26 ID:BXn/K86q0
QB「全く……僕に盗撮カメラをあちこちに仕掛けさせてくるなんて、キミ、魔法少女としてどこかおかしいんじゃないのかい?」

仁美「あら、否定はしませんわ。
   それにキュゥべぇさん、その言葉はわたくしが契約した時にも言っておられましたよね?」

QB「そりゃそうだよ。今まで誰も言ってこなかった願い事を言ってくるんだもの」

仁美「そんなにおかしいかしら?」

QB「当たり前だよ。『自分の知っている魔法少女を素直にさせる』なんて……
  そんな願い事、キミぐらいしかこれから先も言わないんじゃないかな?」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:57:27.67 ID:BXn/K86q0
QB「せっかくの一度きりの奇跡なのに……正直、そんなことに使うなんて、僕からしてみてももったいないよ」

仁美「そうかしら……? わたくしから見てあなたはどうも、
   魔法少女さえ出来上がれば良い、というスタンスのようにお見受けしますけれど?」

QB「……否定はしない。だけど、そんなスタンスの僕にすら、そう思わせている。
  それぐらいおかしなことなんだ」

仁美「……そんなことはありませんよ」

QB「それに、もう一つおかしなことがある」

仁美「あら? なんですの?」

QB「魔法少女になる時、キミは自分の知っている人の中で誰が魔法少女なのかを訊ね、
  その後、魔法少女とはどういうものかまで訊ねてきたよね?
  それなのにどうして、そうやって平然と魔法少女になれたんだい?」

仁美「? 質問の意味が分かりかねますけれど……」

QB「魂をソウルジェムにするという話を聞いても――魂と肉体が分離すると僕に言われても、
  どうして他の人間達とは違って、否定することも拒絶することもしなかったんだい? って言いたいんだよ。
  もしかして、僕と同じ価値観でも持っているのかい?」

仁美「あら、そんなこと」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 16:59:26.65 ID:BXn/K86q0
仁美「簡単なことですわ。あなたと同じ価値観……
   なんてことは、絶対にありえませんし、そんな価値観のあなたでは、理解していただくことは出来ないかもしれませんけれど……
   ただ一言で言ってしまえば、友人のためですわ」

QB「まどかとさやかのことかい?」

仁美「それもありますわ。ただ、それだけじゃないんです」

QB「?」

仁美「わたくしはほら、お金持ちでしょう?
   それを鼻にかけてるつもりはありませんけれど、周りの皆さんは快く思ってくれないものなのです。
   そんな中、まどかさんとさやかさんだけが、わたくしの友人でいてくれたんです。
   習い事のあるわたくしと、数少ない時間しか過ごせないわたくしと、それでもその僅かな時間を一緒にいてくれました。
   ……そんな二人に置いていかれるのは、正直……寂しかったんです」

QB「…………」

仁美「ここ最近……お二人は、お二人だけの秘密を持っていられるようでした。
   それがいけないことだとは思いません。友人関係であっても、友情がそこにあっても、隠し事はあるものですから。
   ……ですが、さやかさんが辛そうにしているのに……まどかさんはわたくしに相談してくれませんし、
   さやかさんも、わたくしにバレぬように気を遣っておいででした。
   ……それが、イヤだったんですの」

QB「そんな時に、僕が来た」

仁美「ええ」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 17:04:01.87 ID:BXn/K86q0
仁美「本当は、わたくしに隠し事を出来ぬようにしても良かったんですけれど……
   あなたと出会って話を聞いた時に、ふと思ったんです。
   他に魔法少女はいないのかと。
   ……そしたら、あとはもう簡単です。
   さやかさんと暁美さんの名前が挙がって、上條恭介くんの腕が治って……となれば、さやかさんが魔法少女になったのは明白。
   そうしたら、最近落ち込んでいたのは、そのせいなのではと思いました。
   ですから、魔法少女とはどういうものなのかを、根掘り葉掘り隅々まで聞かせて頂いたんです」

QB「…………」

仁美「そうして……さやかさんの状態にある程度の目測がたって……
   そんな中でわたくし、さやかさんに告白してもらうために、上條くんを慕っているなどと嘘を吐いて……
   辛い状況であるさやかさんを追い詰めてしまったということに、気が付いたんです」

QB「でもキミは、その段階では何も知らなかったんだろう?」

仁美「何も知らないからと言って、許されることではありません。
   こんな身体になったことに動揺して、上條くんと付き合えないと悩んでいる彼女に……
   わたくしは……最低です」

QB「でも、それと魔法少女の身体を受け入れるのと、どういう関係があるんだい?
  まさか、罪滅ぼしだとか言うつもり?」

仁美「そんなことはありませんわ。さやかさんと同じになることが罪滅ぼしだなんて……とんだ思い上がりです。
   だから……そうじゃありませんの」

QB「なら……どうしてだい?」

仁美「先程も申し上げましたわよ。
   ただ……置いていかれるのが、イヤだっただけですの」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 17:05:39.65 ID:BXn/K86q0
仁美「わたくしだけ蚊帳の外……この状況が、とてつもなくイヤでした。
   わたくしと友人になってくれたお二人に置いていかれるのが、たまらなく怖かった。
   それだけです。
   それだけですけれど……わたくしには、とても大きなことだったんです。
   せっかく出来た、唯一の友人であるお二人と足並みを揃えられないのは……本当に、怖かったんです」

QB「……本当に、理解できないよ」

仁美「ゾンビになってまで友情を取る事が……ですか?」

QB「…………」

仁美「……まあ、人の価値観はそれぞれですものね。
   わたくしにとってあのお二人との友情は……自らを犠牲にしてまで持っておきたい、そんなものでしたの。
   ゾンビになるのと、お二人と離れ離れになるの……天秤にかけたとき恐怖を感じたのは、後者だった。
   ……そういうことです」

QB「……なら、どうしてそんな願い事にしたんだい?
  それこそキミの言うとおり、キミに隠し事が出来ないようにすれば良かったじゃないか」

仁美「あら、でもそれだと、何も嬉しくありませんもの」

QB「嬉しい?」





仁美「はい。わたくし、女の子同士が仲良くしているのを見るのが、とてつもなく嬉しいんです」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/24(木) 17:08:30.00 ID:BXn/K86q0
仁美「隠し事が出来ないなんてお願いでは、ソレが見れないでしょう?
   ですからこのお願い……本当は、仲の悪い暁美さんとさやかさんをくっつけるために考えた方法でしたの。
   ですが……まさか、あのわたくしの知らない魔法少女の方と仲良くなるとは思いませんでしたわ」

QB「キミの願いは、『見ている存在が魔法少女なら、相手に違和感を抱かせることなく発揮させることが出来る』ものだからね」

仁美「ええ。モニター越しでも大丈夫と言われた時は、本当に助かりましたわ」

QB「でもそのせいで、隠しカメラを設置させられるハメになったんだけどね」

仁美「言いっこなしですわ。
   ……さて……それではわたくしも、そろそろあちらの四人と合流いたしましょうか。
   向こう側もそろそろ、話の収集がつきそうですし」

QB「正体を明かすのかい?」

仁美「当たり前ですよ。
   だってわたくしは……
   まどかさんとさやかさんの友人で、暁美さんともう一人の方とも友達になりたい……
   そんな、極々普通の魔法少女ですもの」




終わり