杏「ライブが近いからって、レッスンばっかり……糖分が足りないよ、糖分が」

智絵里「あっ、飴ならあるよ」ｶﾞｻｺﾞｿ

智絵里「りんごと桃とみかんがあるけど、どれがいい？」

杏「桃かなー」

智絵里「はい、どうぞ」

杏「さんきゅ。……んー、あまー」ｺﾛｺﾛ

智絵里「……えへへ」

杏「……どうしたのさ、ニヤニヤしちゃって。トレーナーさんに褒められたの、そんなに嬉しかった？」

智絵里「えっ！　そ、それは……か、顔に出てましたか？」

杏「顔にも出てるし、声も漏れてたよ」

智絵里「は、恥ずかしい……///」

杏「まぁ、智絵里ちゃんのモチベーションが上がってるなら何よりだよ」ｳﾝｳﾝ

智絵里「……今までできなかったことができるようになって、それを認めてもらえるって……こんな私でも、ちゃんと成長してるんだって思えるから」

智絵里「それに、今日はかな子ちゃんがお仕事でいないぶん、ちゃんと頑張ろうって思っててっ」

杏「なんか撮影でケーキ作るんだっけ。朝からめちゃくちゃ張り切ってたもんね」

智絵里「かな子ちゃんの得意分野だもんね♪」

杏「張り切りすぎて空回って、失敗してないといいけどねー」

智絵里「か、かな子ちゃんがケーキ作りで失敗するとは思えないけど……？」

杏「つまみ食いし過ぎて撮影で使うぶん全部無くなっちゃうとか」

智絵里「あっ……い、いえ、さすがにそこまでは……えっと」

杏「……絶対あり得ない、とは言い切れないのが怖いよね……」

智絵里「かな子ちゃん、いつもつい味見し過ぎちゃうって、前に言ってたもんね……」

ｶﾞﾁｬ

かな子「お疲れ様で～す！」

愛梨「お邪魔しまぁすっ」

智絵里「あっ、かな子ちゃん……！　それに、愛梨ちゃんも」

愛梨「智絵里ちゃんに杏ちゃんっ。お疲れ様ですっ♪」

杏「そっか。撮影って、愛梨ちゃんと一緒だったんだ」

愛梨「えへへっ。かな子ちゃんに、付いてきちゃいました～♪」

智絵里「撮影、どうでした？」

かな子「あのね、愛梨ちゃんすごいの！　ケーキ作り、とっても手際が良くって……！　もう、尊敬しちゃうよ～！」

愛梨「ありがとうございますっ。ケーキ作りの時だけはしっかりしてるって、よく言われるんです♪」ｴｯﾍﾝ

杏「料理とかもそうだけどさ、お菓子作りなんて、よくあんな面倒なことできるよねー。杏なんて、コンビニのお弁当レンジであっためるので精一杯だよ」

かな子「またまたぁ。杏ちゃんだって、バレンタインのお仕事で手作りチョコ作ってたくせに」

杏「あぁ、あれ？　あれは手作りっていう設定でスタッフの人が用意してくれたやつだよ」

かな子「そうだったの！？」

智絵里「知りませんでした……」

愛梨「でも、お菓子作り、やってみると楽しいよ？」

杏「いやー、杏は食べる専門でいいよ」

かな子「もぅ……じゃあ、そんな杏ちゃんには、はいっ♪　余ったケーキ、お土産に持ってきたよ！」ﾄﾞｰﾝ

愛梨「私からも、おすそ分けですっ。どうぞ♪」ﾄﾞｰﾝ

智絵里「わぁ……！　す、すごい……！　チーズケーキに、こっちはチョコレートケーキ……」

杏「え、待って待って。多くない？　何ホールあるのこれ」

愛梨「えっとぉ……いち、にぃ……たくさんですっ♪」

杏「そんなアバウトな」

かな子「カメラマンさんに、見栄えが良くなるからたくさん作っちゃっていいよって言われて、つい張り切っちゃって……えへへ」

智絵里「これだけで、ちょっとしたお店ができちゃいそうだね……」

かな子「智絵里ちゃん、余った分は、女子寮に持っていってあげてねっ」

智絵里「う、うん。ありがとう……みんな、喜ぶと思うけど……」

智絵里「……私だけで、こんなにたくさん持って帰れるかなぁ……？」

愛梨「それなら、私たちもお手伝いしますねっ」

智絵里「あ、ありがとうございます」

かな子「今から私たちでたくさん食べて、持って帰る分を少なくすればいいんだよね♪」

愛梨「ですねっ♪」

智絵里「そっち……！？」

杏「知ってた」

かな子「じゃあ、切り分けるから少し待っててね」

智絵里「あっ。それなら私は、お茶を淹れますね」

杏「しょーがない、机を拭くくらいはやっとくよ」

愛梨「えぇと、じゃあ、私は……」ｷｮﾛｷｮﾛ

愛梨「……ちょっと暑いから、ひとまず脱いじゃいますね？」ﾇｷﾞﾇｷﾞ

杏「なんでやねん」ﾋﾞｼｨ

愛梨「ひゃあっ」

智絵里「ポットのお湯を沸かして、と……」

杏「あ、智絵里ちゃーん。今日は冷たい飲み物の方がいいかもー」

智絵里「そう？　だったら、アイスティーにするね」

愛梨「杏ちゃんって、猫舌なの？」ｷｮﾄﾝ

杏「そうじゃなくて……愛梨ちゃん、あったかいの飲んだらまたすぐ脱ぎそうだし……」

かな子「みんな、お待たせー♪」

智絵里「準備できましたっ」

愛梨「二人とも、ありがとう～。それじゃあ早速……」

四人「いただきまーす♪」

智絵里「んっ……美味しい……！　さすが、かな子ちゃんと愛梨ちゃんですねっ」

愛梨「ありがとうございますっ♪」

かな子「ふふっ♪　美味しそうに食べてくれると、私たちも嬉しいな」

杏「……」

かな子「あれ？　杏ちゃん、食べないの？」

杏「いや、よく考えたら、まだ口の中に飴が残ってた」ﾝﾍﾞｰ

智絵里「あっ、ごめんなさい……さっき私があげちゃったから……」

杏「んー、気にしないで。今マッハで舐めてるから」

愛梨「やっぱり、キャンディアイランドのみんなは、キャンディが大好きなんですねっ」

かな子「えっ？」

智絵里「す、好きといえば、好きかも、ですけど……」

愛梨「あれ？　もしかして、そういうわけでもないのかな？」

かな子「うーん……どちらかといえば、マカロンとかクッキーとか、バウムクーヘンとかのほうが好き、かな……？」

杏「うちのキャンディ要素は、杏が一手に引き受けてるからねー」

愛梨「なるほどー……じゃあ、二人は、アイランド担当？」

かな子「あ、アイランド担当って、何をするの……？」

杏「かな子ちゃんはセクシー担当だよ」

かな子「あ、杏ちゃんっ！？　またそんなこと言って……！」

智絵里「でも、三人の中だと、かな子ちゃんが一番、グラビアのお仕事とかも多いですし……」

かな子「智絵里ちゃんまで……！」

愛梨「そうなんだぁ。すごいね、かな子ちゃん♪」

かな子「うぅ……私なんかよりもっとすごい愛梨ちゃんに言われるのは、なんだか複雑だよ～」

愛梨「えへへっ。次はグラビアのお仕事も、一緒にできるといいなぁ」

智絵里「…………私もいつか二人みたいに、せくしーな感じのお仕事もできるのかな……？」ﾎﾞｿｯ

杏「……智絵里ちゃん？」

智絵里「あ、いえ、なんでもないです……なんでも……」

杏「……まぁ、適材適所って言葉もあるし。焦る必要は無いんじゃない？」

智絵里「き、聞こえてたんじゃないですかぁ……///」ﾍﾟｼﾍﾟｼ

杏「ごめんごめん」ｱﾊﾊ

愛梨「……あぁっ、大変！」ｶﾞﾀｯ

かな子「わわっ、愛梨ちゃん、どうしたの？」

愛梨「どうしよう、事務所に戻ったら、プロデューサーさんのところに行くように言われてたの、すっかり忘れちゃってました～！」ｵﾛｵﾛ

智絵里「そうだったんですか！？　じゃあ、早く行かないと……プロデューサーさん、心配してるかも……！」

杏「めんどいなら、このままサボっちゃうって手も」

かな子「そ、そういうわけにもいかないよ……！」

杏「ですよねー」

愛梨「ごめんなさいっ。少し、席を外しますね。あ、ケーキはみんなで食べちゃってくださいね」

智絵里「あ、ありがとうございますっ」

愛梨「それじゃあ、またあとで！　……はぁっ、急がなきゃ～……」

ｶﾞﾁｬ

かな子「行ってらっしゃーい」ﾌﾘﾌﾘ

杏「いってらー」ﾌﾘﾌﾘ

杏「……なんか愛梨ちゃんって、いっつも慌ててぱたぱた走ってるイメージ無い？」

かな子「普段、のんびりし過ぎちゃうからかな？」

智絵里「ふふ……♪　なんだか、前に三人でお茶会したときも、そんな話になったよね」

杏「走って暑くなったからって、走りながら服を脱いでないといいけどねー」

かな子「あははっ！　まさか～」

ｶﾞﾁｬ
卯月「お疲れ様ですっ！」

卯月「……あのー。部屋の前に、ニットのボレロが落ちてたんですけど、三人のうちの誰かのでしょうか？」

杏「……」

かな子「……」

智絵里「……そのまさか、だったね……」

卯月「えっ、えっ！？　どういうことですかっ！？」ﾜﾀﾜﾀ



おわり