連作短編28
忍「夢の跡の道しるべ」
社長「今の調子はこんなところですね、会っていかれますか?」
P「いえ、元気であれば。また来ます」
社長「いつでもお待ちしています」
P「すみません、わざわざ時間を取って頂いてありがとうございました」
社長「自分を責める必要はもう、ないと思いますよ」
P「少し、考えます。失礼します」
社長「……この二年、背負い続けてきたのかな。彼は……いや、今も背負い続けているのか」
P「これで残りは一人か、一週間の休みもあっという間だな……会ったり会わなかったりだけど」
ホテルマン「お部屋は720号室でございます、ご案内しましょうか?」
P「いえ、昨日も泊ってるので分かってますから。ありがとうございます」
ホテルマン「ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」
P「そんなに高い金も出してないのにいい所だな、社長が少し出してくれたのかな。ああここ……」
少女「」
P「……誰? 倒れてる?」
転載元:ありす「心に咲いた花」
758 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:44:38 8dB5TK.Y
少女「」
P「大丈夫ですか? おーい! 聞こえてますか!?」
少女「ん……」
P「よかった生きてる」
少女「あ、え!?」
P「おあ!?」
少女「えっと、起こしてくれた?」
P「まあ、俺の部屋の前で倒れてるから」
少女「……」
P「待て待て待て待て、何で服を脱ごうとするんだよ!?」
少女「泊めて」
P「それはフロントに言った方が早いって」
少女「私の財布の中身、プライスレス」
P「警察」
759 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:45:56 8dB5TK.Y
少女「通報したらあんたにホテルまで連れ込まれた上に脱がされたって言うから」
P「人の善意を何だと思って」
少女「どうする? ここで犯罪者になる? おじさん」
P「悪いが俺をおじさん呼ばわりする奴に用はない」
少女「待って、本当に待ってお願い!」
P「家出か?」
少女「」
P「図星か、警察に居場所を知られたら困るのはそっちの方なんじゃないか?」
少女「分かった脱ぐから」
P「だからそれは止めろ!」
760 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:46:45 8dB5TK.Y
少女「へー、部屋の中はこうなってるんだ」
P「泊まれもしないホテルの中をうろついてたのは何でだ?」
少女「誰かに買ってもらおうかなって」
P「ほう」
少女「冗談、雨風凌げる場所が他に見当たらなかったってだけ」
P「駅でも公園でもいいだろ」
少女「こんな冬にそんな所いたら死ぬって」
P「お金も持たずに家を出ておいて何を言ってるんだ」
少女「ああもう、アタシをここに置いておくだけでいいんだから」
P「お腹が盛大に鳴ったが」
少女「いいの、別に」
P「家を出た理由は?」
少女「……」
P「警察」
少女「……通報すればいいじゃない」
761 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:48:32 8dB5TK.Y
P「君の言い分が警察に信用される可能性はあんまり高くないと思うが?」
少女「言ったら馬鹿にするに決まってる」
P「喧嘩でもしたのか?」
少女「進路のこと」
P「学生か、年は?」
少女「16」
P「16? 何だ受験生でもないのにもう揉めたのか?」
少女「違う」
P「言わないと俺は最終的な判断を下せないんだが」
少女「……になりたいの」
P「何だって?」
少女「アタシ、アイドルになりたいの!!」
P「アイドルって」
少女「どうせ馬鹿にするんでしょ、アタシじゃ絶対に無理だって」
762 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:49:27 8dB5TK.Y
P「アイドルって、歌って踊るアイドル?」
少女「それ以外にある?」
P「まあ、ないが」
少女「それで新幹線に乗ってここまで来たの」
P「で、お金を使い果たしてこんな所で俺に捕まったと」
少女「文句ある?」
P「文句しかない」
少女「ほらやっぱり」
P「俺が言うのも何だが、家に帰ってもう一度きちんと話し合った方がいい」
少女「無駄だよ、話し合った挙句がこれなんだから」
P「だからって親の承諾もない子が入れるプロダクションなんてどこにもないぞ」
少女「そんなのやってみないと分からない」
P「同意書の提出もなしに受けるところがあればそこは碌な所じゃない」
少女「何でそんな事が分かるの?」
P「関係者だから」
763 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 20:59:31 8dB5TK.Y
少女「は?」
P「アイドルだったから、俺は」
少女「いや、うん。嘘でしょ?」
P「目の前の箱を使って調べようとは思わないのか?」
少女「名前は?」
P「ほれ、字も分からないと調べようがないだろ」
少女「変な名前」
P「芸名だよ、もうあんまり出てこないだろうけどな。事務所も潰れたし」
少女「……本当に出てきた」
P「納得したか?」
少女「何で元アイドルがこんな所にいるの?」
P「元アイドルだったらいちゃいけないのか?」
少女「そんな事ないけど」
P「それから一つ忠告」
764 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:04:23 8dB5TK.Y
少女「何?」
P「こんな簡単な嘘に騙されるならアイドル向いてない」
少女「は!?」
P「そう簡単にアイドルだったのがいると思ったか?」
少女「だってそっくり!」
P「だから嘘になるんだよ、似てなかったら最初から信じないだろ」
少女「最低!」
P「さっきまで人を脅してた子の台詞じゃないな」
少女「じゃあ名前は何?」
P「さあ何でしょうな」
少女「お兄ちゃんとでも呼ぶ?」
P「妹は間に合ってるからいい」
少女「流石に呼び方が決まってないと不便なんだけど」
P「家はどこだ?」
少女「……青森」
765 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:05:31 8dB5TK.Y
P「何だ、俺の目的地だ」
少女「青森に何の用?」
P「ちょっと人に会いに行こうかと思って」
少女「また珍しい」
P「じゃあそこに行くまでの付き合いだ、送るくらいはしてやる。そっから先は知らん」
少女「泊めてくれるの?」
P「ベッドは俺が使う、お前はソファ」
少女「お前……」
P「そう呼ばれるのが嫌なら名乗れ、ちなみに俺はお前でも貴様でも構わないから」
少女「工藤忍」
P「工藤さんね、じゃあとりあえず」
忍「……お腹」
P「何か買ってくる」
766 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:11:44 8dB5TK.Y
忍「東京って何か味気ないね」
P「ここは栃木だ、東京じゃない」
忍「一緒だって」
P「東京はもっと栄えてる。そのツナマヨは俺のだ、手を出すな」
忍「ケチ」
P「ケチでも何でも結構、食わせてやってるだけありがたく思え」
忍「この辺りに住んでるんじゃないよね? ホテルに泊ってるんだから」
P「住んでるのは東京」
忍「東京生まれ?」
P「そうだな」
忍「凄い」
P「日本人の10分の1は東京に住んでるんだ、ありきたりな連中の一人だよ」
忍「でもそこまで行かないと何にもない」
P「何にもねえ、そもそもアイドルになりたい理由は?」
忍「皆に認めてもらうため」
767 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:13:43 8dB5TK.Y
P「認めるって、自分の価値とか?」
忍「田舎に生まれた何の取り柄のない娘でも、輝ける場所があるって」
P「勉強でも運動でもいいと思うが」
忍「ならアイドルでもいいじゃん」
P「……それなりに賢いな」
忍「勉強も運動もアイドルだって、結局は努力次第でしょ?」
P「確かにそうだが、結果が出なかったらどうするんだ? その時に帰る場所がなかったら?」
忍「頑張る」
P「頑張るって」
忍「でもそれしかないでしょ、失敗したらその時に考える。やる前から失敗した時の事なんて考えないでしょ?」
P「それは周りの環境が整ってたらの場合で、工藤さんの場合その前提がないから言ってるんだ」
忍「結果を示せば認めてくれるはず」
P「認めてくれなかったら? いいか? その年でアイドルになろうとするのもはっきり言って遅い。
今までダンスのレッスンを受けたことは? 何か子供の頃からしてたことは?」
忍「……ないけど」
768 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:15:20 8dB5TK.Y
P「なるなとは言わない、だが自分の親も説得できないでなるって言うならそれだけの覚悟が必要なんだよ」
忍「何でそんなことばっかり」
P「明日、もし時間があるなら俺についてくるといい」
忍「人に会うんじゃないの?」
P「会う、元アイドルに。今度は本当だ」
忍「現実を知れってこと?」
P「どう受け止めるかは君次第だ、どうする?」
忍「分かった、行く」
P「なら決まりだ、さてじゃあ大浴場でも。楽しみだ」
769 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:16:37 8dB5TK.Y
忍「アタシも入る」
P「宿泊者でもないのにどうやって入るんだ? 大人しく室内のシャワーで我慢しろ」
忍「そこは譲る優しさとかないの?」
P「今くつろげてる事実を忘れてないか?」
忍「着替えもない」
P「一日くらい諦めろ、自業自得だ」
忍「うー」
P「分かったか、大人しく待ってろ」
忍「じゃあ一つお願い」
P「何だよ?」
忍「何かアイドル雑誌買ってきて」
770 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:19:26 8dB5TK.Y
P「ほい」
忍「もしかしてアイドルオタク?」
P「まあ詳しい方だろうな」
忍「渋谷凛」
P「知ってる」
忍「前川みく」
P「猫」
忍「上条春菜」
P「眼鏡」
忍「水本ゆかり」
P「何でさっきから特定の事務所のアイドルばかりなんだ?」
忍「入るならここがいいかなって」
P「……またどうして」
忍「色んなアイドルがいるから、アタシも刺激になるかなって」
771 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:20:48 8dB5TK.Y
P「埋もれるかも知れないって事だぞ。この事務所、総選挙やってアイドルに順位つけてるんだから」
忍「アイドルやってたら当然でしょ?」
P「入ってくる、あるのは好きに読んでていい」
忍「はーい」
――
―
P「なかなか良かったな……大人しくしてたか?」
忍「ねえ」
P「今度は何だ?」
忍「アイドルだったら誰が好き?」
P「誰が、か」
忍「これだけ詳しいなら誰かのファンなんじゃないの?」
P「敢えて言うなら」
忍「うん」
P「橘ありす」
772 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:21:43 8dB5TK.Y
忍「誰?」
P「まあその程度だよな、まだまだって事が分かっただけでも収穫」
忍「あ、何ださっき話に出た事務所の子だ。へー12歳」
P「その年代では有望株の一人だと思う」
忍「本当だ、順位も高い」
P「続くかどうか分からないけどな、まあそれも目安でしかないよ」
忍「何そのプロデューサーみたいな言い方」
P「……寝よう」
忍「あれ、ベッドじゃないの?」
P「これで本当にソファに寝かせたら後で何を言われるか分かったもんじゃない」
忍「何も言わないって」
P「もう寝た」
忍「……借りは絶対に返すから」
P「はいはい、お休み」
773 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:24:47 8dB5TK.Y
忍「ふぁ……ってもう朝! あれ? あいつ……」
P「よう、起きたか」
忍「どこ行ってたの?」
P「朝飯」
忍「ありがとうございます」
P「何だ気持ち悪い」
忍「アタシだってお礼くらい言う」
P「しかしこんなのばっかり食ってるとちゃんとしたのが恋しくなるな」
忍「あ、これ貰っていい?」
P「何だ、好きなのか?」
忍「ううん」
P「じゃあ何で欲しがったんだ?」
忍「おまけって得した気分にならない?」
P「ペットボトルにストラップ付いてるからって買う理由にはならないけどな」
忍「でも買ったんでしょ?」
774 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:25:45 8dB5TK.Y
P「何となくだよ、何となく」
忍「いいの、こういうの好きだから」
P「さて、もういいか? チェックアウトするから先に外に出てろ。同時に出て見つかったらめんどくさい」
忍「りょーかい」
P「うわっさっむ!」
忍「慣れてないんだね、これくらいでも駄目?」
P「悪かったな貧弱で」
忍「じゃあさっさと移動しようよ、駅も目の前だし」
P「朝っぱらから元気だな」
忍「アタシまで暗かったら何か誤解されそうだし」
P「後ろめたいのはそっちだけだけどな」
忍「こんな平日からうろちょろしてるあんたに言われたくない」
P「言っておくが俺は社会人だ」
忍「……またまた」
P「給料ももらってる、今は有給消化中だ」
775 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:26:55 8dB5TK.Y
忍「世の中、絶対におかしい」
P「失礼にも程があるぞ」
忍「しかも指定席って」
P「自由席でもいいんだけど、まあ確実に」
忍「金持ち? どっかの社長の息子とか」
P「……ソンナワケナイダロウ」
忍「あーあ、やっぱりいる所にはいるんだ」
P「俺がそうとは言わないが、そんなのいくらでもいると思うが。日本に会社がいくつあると思ってん だ」
忍「アタシはそういうのとは無縁だから」
P「最初から途中までの切符買ったのか?」
忍「だってそこまでしか持ってなかった」
P「どうなるか考えなかったところが恐れ入る」
忍「いいの、何とかなったんだから。でも混んでるね」
P「何かイベントでもあるのかな」
776 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:29:07 8dB5TK.Y
ゆかり「すみません、失礼します」
P「ああはい、どうぞ」
ゆかり「」
P「」
忍「え? 水本ゆかり?」
ゆかり「は、はいそうです」
忍「うわ本物だ、凄いなあ。ねえ?」
P「ソウダナ」
忍「何その反応」
ゆかり「ちょっと、席を外しますね」
忍「行っちゃった、でも青森までもしかしたらずっと一緒かも」
P「すまん、俺も席を外す」
忍「もしかして我慢してたの?」
P「まあ」
忍「無理しなくていいのに、早く行ったら?」
777 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:29:40 8dB5TK.Y
P「悪い、ちょっと時間かかる」
忍「気にしなくていいって」
P「また奇遇にも程がある」
ゆかり「やっぱりプロデューサーさんですよね?」
P「互いにそっくりさんではないか、里帰りか?」
ゆかり「お仕事も兼ねて、ちょっとした凱旋気分です。といっても、明日には東京に戻ってリハーサルなのでゆっくりはできないんですけど」
P「一人で移動してるのか?」
ゆかり「いえ、ただこの混雑ですから席がまとまって取れなくて」
P「何でこんなに混んでるんだろうな?」
ゆかり「プロデューサーさんご存知ないんですか?」
P「何かあるんだっけ?」
ゆかり「雪祭です」
P「青森にもあるのか?」
778 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:30:39 8dB5TK.Y
ゆかり「はい、でも札幌ほど有名でもありません。でも本当に奇麗なんですよ」
P「なるほどとんでもない時に合わせちゃったか」
ゆかり「それで、その」
P「ん?」
ゆかり「隣にいた方は?」
P「ああ、あの子か」
ゆかり「お休みを取っているとは聞いていましたけど、妹さんですか?」
P「いや、あのさ」
ゆかり「はい」
P「できれば他人の振りをして欲しいんだ」
ゆかり「何か事情が?」
P「まあ、大した事じゃないんだけど」
ゆかり「どこまで行くんですか?」
P「青森」
ゆかり「同じですね、それまでずっと初対面の振りをしてればいいんですね?」
779 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:31:15 8dB5TK.Y
P「頼めるか?」
ゆかり「分かりました、何とお呼びしましょうか?」
P「アイドルが初対面の男に積極的に話しかけてちゃ駄目だって」
ゆかり「そうですね……分かりました」
P「何で妙に嬉しそうなんだ?」
ゆかり「いえ、しっかりと演じてみせますから」
忍「やっぱり忙しいのかな、座ったらすぐに寝ちゃった」
P「こうなるのかよ」
忍「動いたら駄目だよ、水本ゆかりの枕なんて凄い名誉なんだから」
P「へいへい、分かってますよ」
忍「でもこれも誰かに撮られたらスキャンダル?」
P「上着でも掛けとくか」
忍「でも何か、こうやって見ると普通の女の子だ」
780 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:32:56 8dB5TK.Y
P「アイドルになった瞬間、オーラが出るとでも思ってるのか?」
忍「そうじゃないけど、こうもっと」
P「ステージに立ってるのを見れば分かるんじゃないか? 24時間気を張ってても疲れるだろ」
忍「そんなものなのかな」
P「そんなものだろ」
忍「ねえ、ちょっと変な人がいる」
P「変って?」
忍「何かおかしい」
P「おかしいって、変に熱狂的なファンがいたら厄介だな」
忍「あそこ」
P「どれどれ」
愛海「あー至福だわ」
781 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:33:58 8dB5TK.Y
忍「さっきから隣の人の胸を揉んでる、何か触られてる方は苦笑してるけど」
P「隣の席、くじか何かで決めたんだろうなあ……後で何か奢っておこう」
忍「言いたくないけど、棟方愛海だよね?」
P「……まあそうだな」
忍「あれ、ただのキャラだと思ってた」
P「……うん」
忍「アイドルって、色々なんだね」
P「色々だ、うん」
忍「ああ、着いちゃう」
P「喜ばしいことだ」
忍「何の為に乗ったんだろ……」
P「この世の終わりみたいな顔をするな、これからだろ」
782 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:36:11 8dB5TK.Y
忍「そういえばアイドルやってた人に会わせてくれるんだっけ?」
P「そう」
忍「最初に聞いとくけど、その人は何でアイドル辞めたの?」
P「事務所が潰れたんだよ」
忍「ああ、それはどうしようもないね。移籍とかできなかったのかな」
P「その辺りも聞いてみればいいんじゃないか」
忍「そもそもその人とはどんな関係なの?」
P「友人だよ」
忍「やっぱり社長の息子だと交友関係も派手だね」
P「その辺りはノーコメント、水本さん着くよ」
ゆかり「ん……ふぁ」
P「スタッフとは合流できる?」
ゆかり「はい、大丈夫です」
783 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:36:46 8dB5TK.Y
忍「頑張って下さい」
ゆかり「ありがとうございます。一応、渡しておきますね。時間があったら来て下さい」
忍「わわ、本人から雪まつりのパンフレット貰っちゃった」
P「家宝にしとけ」
忍「必ず行きます」
ゆかり「はい、お待ちしています」
忍「凄くいい人!」
P「物をくれるかどうかでいい人か決まるのか」
忍「もちろん、貴方もいい人だと思ってるよ」
P「はいはい、次はバス」
忍「どこ行くの?」
P「劇場」
忍「劇団とかってこと?」
784 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:37:58 8dB5TK.Y
P「らしい」
忍「らしい? 友達なんでしょ?」
P「伝聞なんだよ、アイドル辞めてからの情報がなくて」
忍「今日、来ること相手は知ってるの?」
P「……一応、家族の方には連絡した」
忍「本当に友達? 年は?」
P「今年で23かなあ」
忍「え、大人?」
P「何だと思ってたんだ?」
忍「そういえば年も聞いてなかったね」
P「俺か? 俺は19」
忍「ああ、うんそんな感じに見える」
P「どうも、まあ世話になった人ではある」
785 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:39:16 8dB5TK.Y
忍「ここ?」
P「そう、会ってやってくれないかって強く言われてさ」
忍「何かあったの?」
P「……入ってみよう」
団員「ああごめん、ここは練習中だから入れないんだけど」
P「おあ、人に会う約束をしていまして」
団員「名前は?」
P「はい、こういう――」
団長「大丈夫、ごめん練習に戻ってくれるかな」
団員「ああ団長の、失礼しました」
P「団長?」
団長「不思議かい?」
P「いえ、確かに似合ってるかもしれません」
団長「女連れで会いに来るとは君もやるようになったようだね」
786 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:42:08 8dB5TK.Y
P「この子ですか? 違いますよ、ちょっとした事情で同行してるだけです」
忍「工藤忍です。あの、私アイドルになりたいんです」
団長「アイドル?」
P「みたいです」
団長「あはは、あはははははははは!!」
忍「やっぱり笑うんですか……」
団長「違う違う、なるほど君はまだその世界にいるのか」
P「……劇団をやってるなら似たようなものでしょう」
団長「雲泥の差だよ、立ち話もなんだね。場所を移そうか」
P「青森に来た感じがしません」
団長「青森に何を求めてるんだい?」
P「りんごとか?」
団長「疑問形で終わるような発想じゃあまだまだだね」
787 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:43:55 8dB5TK.Y
P「元気でしたか?」
団長「君よりは遥かに、体は大丈夫かい?」
P「見ての通り元気ですよ」
団長「そうか、ならいい。久しぶりだ、また会えて嬉しいよ」
忍「アイドルだったんですよね?」
団長「そうだね、アイドルとはいっても売れなかったが」
P「それは謙遜だと思いますけど、9位に入った事もありましたし」
団長「君ほどじゃなかったからね」
忍「結局アイドルだったの?」
団長「何だ聞いてないのかい? それなりに有名だったと思うが」
忍「って、やっぱりアイドル!?」
P「いや、何か反応が面白かったから押し通した」
忍「元アイドルで社長の息子ってどういうこと?」
788 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:46:59 8dB5TK.Y
団長「親が芸能事務所の社長なら、その子供がアイドルになるのも自然な流れだと思うよ」
忍「は?」
P「そこまで言うつもりはなかったんですが」
団長「連れてきておいて何を言ってるんだ、それでアイドルになりたいんだったね」
忍「はい!」
団長「ふーん、なら彼に会えたのは幸運かもね」
忍「そうですか?」
団長「今は何をしてるんだい?」
P「知ってて聞いてません?」
団長「さあ、知らない事は知らないね。だから聞いてる」
P「何というか、普通に話してて拍子抜けなんですが」
団長「何か言って欲しい言葉でもあるのかい?」
P「そういう訳ではありませんけど」
789 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:48:56 8dB5TK.Y
団長「ないよ、何も」
P「……」
団長「私に夢を追わせるだけの魅力がこの世界にはある、君がこの世界に惹かれるのも分かる」
忍「はい」
団長「力になれないのかい?」
P「問題が一つありまして」
団長「問題?」
P「親が反対してるそうで」
団長「親か、私も随分と迷惑を掛けたな」
P「まあ、そうなっちゃいますよね」
団長「結果を示すことも努力を見せる事もできないからな」
忍「う……」
団長「まあ、それを示すのは君なんだろうが」
790 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:50:06 8dB5TK.Y
P「俺ですか?」
団長「何の見込みもないならそのまま家まで送り届けて終わりの話だ、そうしなかったのは」
P「……」
団長「君がこの子に可能性を見出したからだ」
P「そう……なんでしょうか?」
団長「伊達に長く一緒にいた訳ではないよ」
忍「アタシを? それは嬉しいけど」
団長「君が何をしているか分からないが、彼女の願いを叶えられるだけの力はあるんだろう?」
791 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:50:53 8dB5TK.Y
P「それはまあ」
忍「事務所はもう潰れたって言ってなかった?」
P「まあ、そこは色々と」
団長「背中は押さないよ、葛藤があるのならそれは君が乗り越えるべきものだ」
P「何か、いつもこんなんですね。俺達」
団長「いい事さ、さて私は練習だ。君もすべき事はあるんだろう?」
P「はい」
団長「またいつか、一緒に仕事をしよう」
792 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:52:28 8dB5TK.Y
忍「アタシに可能性って」
P「プロデューサーなんだ、これが俺の名刺」
忍「シンデレラ……ガールズ!?」
P「これでもプロデューサー」
忍「ただの雑用とかじゃなくて?」
P「そもそも、見ず知らずの男の隣で水本さんが寝る訳ないだろ」
忍「もう嘘ばっかり!」
P「あそこで身分を晒すとそのまま事務所に連れて行けと言われかねないし」
忍「そのチャンスが潰れた」
P「本当になりたいなら反対はしないさ、だけど親の許可は絶対だ」
忍「その為に一緒にいてくれてるんだ?」
P「どうだろう、まだ悩んでる」
793 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:54:09 8dB5TK.Y
忍「アタシじゃ駄目ってこと?」
P「俺がプロデュースしてるアイドルはいるんだけど、スカウトした事ないんだ」
忍「じゃあアタシを第一号にすればいいんだよ」
P「家族がアイドルを反対してるって珍しい事じゃないし、俺もそういう場にいた事もある。
だけど説得の仕方って便利なマニュアルがどこかにある訳じゃない」
忍「難しいよね」
P「俺が夢を語って納得してくれるのかなって」
忍「何でアタシに可能性なんて見出したの? 自分で言うのも何だけど、取り柄とかないよ?」
P「一度、俺はこの世界に背を向けようとしたから。真っ直ぐ向き合おうとする子はそれだけで眩しく見える」
忍「苦労したんだ?」
P「それはまた別のお話」
忍「それで、どうしよう? 家に来る?」
794 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:55:42 8dB5TK.Y
P「いや、それだとそのまま俺だけ追い出され場合に打つ手がなくなる」
忍「どこか場所を用意するの?」
P「家族と連絡は取れるか?」
忍「うん、実際に何度か掛かってきてるし」
P「なら話は早い」
忍「どうするの?」
P「アイドルがどんなものか見せるしかないだろ」
忍「あのイベント?」
P「多分、世界が遠すぎて分からないんだと思う。アイドルに限らず自分が無知の世界に娘を送り込める親がいたらそっちの方が問題だし」
忍「分かってくれるのかな」
P「分からないなら分かるまで、かな。強硬に反対されるならまたその時に考える。実際に仕事を見てもらうのもいいし、
必要ならアイドルにも協力してもらって仕事を見せるのもいい」
忍「そんなことできるの?」
795 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:56:57 8dB5TK.Y
P「ここにそれを可能にできるのがいるんだから使えばいい。娘を使って金儲けするのか、と言われたらその通りの世界であることは確かだし遠慮はいい」
忍「でもそれだけならこんなにたくさんの子がいようとは思わないでしょ?」
P「その辺りは水本さんとか棟方さんに聞いてみればいいんじゃないか、少しなら話せるかもしれないから」
忍「分かった、呼んでみる」
P「やれやれ、休み中でもこうなるんだから完全に仕事中毒だな」
忍「うん……そう」
P「どうだ?」
忍「とりあえず本当にその事務所のプロデューサーか確認したいから名前と連絡先を教えてって」
P「はい、これは本物の名刺」
忍「終わった。けど、徹底してるなあ」
P「これはちょっとした口裏合わせだけど」
忍「何?」
P「工藤さんは昨日、東京まで来た」
796 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 21:58:23 8dB5TK.Y
忍「うん?」
P「そこで夜、歩いてるところを俺にスカウトされた。考えた結果、翌朝に俺に連絡してきた。もちろん、夜は普通にホテルに泊まった」
忍「何でそんな嘘がいるの?」
P「ホテルに忍び込んでぶっ倒れた挙句、たまたまそこに泊まりに来てた男に部屋に入れろと脅したって言えばいいんだな」
忍「場所は渋谷ってことにしておこう! 時間は夜の8時とかで」
P「いかに自分がやけくそになってたか自覚したか?」
忍「はい」
P「はいPです、はい。はい、ええそれでお願いします。まだ決定ではないんですが、一人スカウトしようと思ってる子がいるので。その関係です、はい。
また改めて連絡は入れますので」
忍「本当に入れてくれるの?」
P「大変なのは入ってからなんだぞ」
忍「分かってるって」
P「うちの事務所じゃなくてもアイドルにはなれるんだからな」
797 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:00:01 8dB5TK.Y
忍「どういう意味?」
P「工藤さんも知ってのとおり、うちはアイドルしかいない事務所だ。歌も踊りもやるし、時には身体を張った仕事だってする事になる。
おまけにこれだけアイドルがいるにも関わらずプロデューサーは四人。新人だからって仕事についてくれるとは限らない」
忍「自主性が大切ってこと?」
P「事務所内の競争に勝ちたいなら、それは前提だな。仮に誰かと仲良くなったって、仕事の取り合いは避けられない。
二人でオーディションに受けて片方だけ落ちたなんて日常茶飯事だ」
忍「それは、うん。総選挙とかやってる事務所だし」
P「別にアイドル事務所はうちだけじゃない。あの765プロだって新人を入れるって話も噂に聞く。
今まで以上に競争が激しくなるなるんだ、もっと力のあるプロダクションを探すのも一つの手」
忍「大丈夫だよ」
P「あのなあ」
忍「アタシをアイドルにしたいって思ってくれたんでしょ?」
P「それはそうだが」
忍「それで充分だよ、頑張れる」
P「知らない番号だな……はい、CGプロです」
798 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:01:15 8dB5TK.Y
母「工藤と申しますが」
P「はい、申し訳ありません。こんな突然、急なお話を」
母「いえ、ご迷惑をおかけしたのはこちらですので」
P「とんでもございません、それで――」
母「ですが結構です」
P「あの、失礼を承知で申し上げますが」
母「事務所の方からイベントに招待したいと連絡が入りました。折角の御好意ですから伺わせて頂きますが、それで終わりということで」
P「そうお考えであるのでしたら、詳細につきましてはまた事務所の方から連絡させますので」
忍「どう?」
P「来てくれるだけありがたい、とりあえず門前払いはされなかった」
忍「アタシ次第か」
P「できることはするけど、工藤さんの頑張りに掛かってるかな。それにしても、吹雪いてるな」
799 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:03:25 8dB5TK.Y
忍「イベント大丈夫かな」
P「雪像とかは外だけど、イベント自体は屋内だから心配はいらないと思う。交通の乱れを考慮してこんな朝早くから移動してたんだろうから」
忍「行かなくていいの?」
P「何も知らない俺が行っても……ああそうか、工藤さんの勉強にはなるか」
忍「アタシも入れる?」
P「入れる……と思う」
忍「思う?」
P「全ての仕事の把握なんて不可能、ほとんど話したこともないアイドルだっている始末」
忍「プロデューサーなのに?」
P「担当してないとそんなもんだ。担当してたって、一か月くらい会ってないのもいる」
忍「それ、ちょっと可哀想」
P「と言われても体は一つしかない」
忍「アイドルって大変だ」
800 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:05:01 8dB5TK.Y
P「積もって足止め食らう前に行こう、雪と風が凌げるだけでも行く意味はある」
忍「ここ、小学校の頃に合唱コンクールした場所だ」
P「何を歌ったんだ?」
忍「Tomorrow」
P「ときのなーがーれー」
忍「いつーでもー」
P「かけぬけてー」
忍「ゆくからー」
P「やさしさーだけー」
忍「わすれーずにー」
P「だきしめてー」
忍「いよー」
P「おおぞらをー」
ゆかり「自由に鳥たちが」
P「あ、聞かれてた」
801 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:06:35 8dB5TK.Y
ゆかり「二人とも上手ですね」
忍「アイドルに褒められた」
P「リハは?」
ゆかり「今は愛海ちゃんが」
P「水本さんも合唱で歌ったりしたの?」
ゆかり「その時に歌ったのは違う曲なんですけど、今日ここでその曲を歌うので」
P「ここで?」
ゆかり「さきほどお渡ししたパンフレットに書いてありますよ」
忍「本当だ、地元も小学生や中学生に……ねえこの人」
P「演出に、青森で活動する若手演出家抜擢。さっきいつか一緒に仕事をしようって言ってたのこういう意味なのか」
ゆかり「お知り合いですか?」
P「はは、ちょっとね」
ゆかり「この方が提案してくれたんです、いい歌だからと」
802 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:07:57 8dB5TK.Y
忍「ねえ」
P「何だ?」
忍「多分、他人の振りする必要はもうないと思う」
P「あ、そっか。みずも――」
忍「やっぱりなし」
P「何でだよ?」
忍「何となく」
P「何となくって」
忍「いいの」
ゆかり「あの」
忍「ああうん、何でもない。後で必ず行きますから」
ゆかり「……はい、待ってますね」
803 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:08:51 8dB5TK.Y
忍「ふう」
P「ふう、じゃない」
忍「何でデコピン!?」
P「身分明かさずどうやってここから先に入る気なんだ? 関係者以外立ち入り禁止の札が見えないとは言わせない」
忍「忍びこめばいいんだよ、忍だけに」
P「悪いが忍者はもう間に合ってる」
愛海「プロデューサー何してるの?」
P「ほらめんどくさいのが来た」
愛海「もしかしてスカウト?」
P「その予定」
愛海「ねえ、柔らかいものっていいよね」
忍「は?」
P「初対面から何を聞いてんだよ」
804 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:10:11 8dB5TK.Y
愛海「アイドルっていいよ! 女の子が一杯で、暖かくて柔らかくて」
忍「あ、はい」
P「安心しろ、工藤さんには当分の間は近づかせないから」
愛海「でもプロデューサー何でいるの?」
P「偶然だよ」
愛海「あたしの為に女の子を増やしてくれてるの?」
P「増えても棟方には会わせないから安心してくれ」
愛海「お願いっ! ワンタッチでいいから!」
805 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:11:04 8dB5TK.Y
P「ない」
愛海「」
P「世界の終りみたいな顔をするな!」
愛海「こうなったら力ずくで」
P「真奈美さんと清良さん呼ぶぞ」
愛海「プロデューサーはあたしの味方だって言ってくれたよね!?」
P「誰がいつどこでそんな事を言ったんだ」
愛海「じゃあプロデューサーで我慢する」
P「馬鹿っ! お前ここでそんな!」
806 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:13:16 8dB5TK.Y
忍「本当に凄いね」
P「あの変 め、覚えてろよ」
忍「でも入れてくれた」
P「水本さんだけに秘密って、可哀想になってきたんだが」
忍「まあ、そこは後で謝るということで」
P「そうだな、謝っとけ」
忍「いや、プロデューサーが」
P「何で俺なんだよ!?」
忍「あ、ここがステージだ」
P「リハーサル中か、ってかこのステージ……」
忍「今、あそこで歌ってるのが子供たちだよね?」
P「そうだな、って事は」
団長「ここに私もいるという事さ」
807 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:15:20 8dB5TK.Y
P「だと思ってましたよ」
団長「あれが暫くの別れなら、あんなあっさりしたものにはしないよ」
忍「今日の構成って全て団長さんが考えたんですか?」
団長「大体ね」
忍「そんな才能もあるんですね」
団長「まあ、今回に限ってはパクったんだが」
忍「パクった?」
P「まあそうですよね、これは」
忍「そうなの?」
P「知ってる人から見ればそのまんま」
団長「君なら分かるだろうね」
P「知ってますよ、これ杏の初ライブの時に似てる」
808 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:16:31 8dB5TK.Y
忍「あんず?」
P「双葉杏って知ってるか?」
忍「あのニートアイドルでしょ?」
P「そのニートアイドルが今の事務所でデビューする前、ちょっとしたライブをした事があって」
忍「デビュー前に?」
P「まあ、身内しか呼ばないちょっとした出し物だったんだけど」
団長「いや、あれは傑作だった」
忍「その時は誰が考えたんですか?」
団長「今、君の隣で苦い顔してる男さ」
忍「そういえば苗字……」
P「そこから先は踏み込まれても困る」
忍「事務所の人達は気付いてるんでしょ?」
P「名乗ってる名字が違うから」
809 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:17:22 8dB5TK.Y
団長「似ていないからね」
忍「へー」
P「何でそれを今更ここでやろうと思ったんですか?」
団長「もちろん、君の事務所との仕事だからさ。まさか当人が来るとは思ってなかったが」
P「それだけですか?」
団長「さあね」
P「まあ、いいですよ。今回は関わってませんし、そこに口を挟むのも失礼だ」
忍「でも綺麗、雪祭りにぴったり」
団長「だろう?」
P「何で俺に視線を向けるんですか」
団長「少し案内しようか?」
忍「いいんですか?」
団長「構わないよ、大切な友人のアイドルだからね」
忍「やった」
810 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:18:28 8dB5TK.Y
P「まあ、時間もあるし」
団長「君は駄目だ」
P「……何でまた」
団長「君が考えたステージ構成を君に案内しても意味がない」
P「分かりました、なら適当に時間を潰してますよ」
団長「そうするといい」
P「あー、あの笑みは何か考えてるな」
ゆかり「そうなんですか?」
P「もしかして一人になるタイミングを待ってた?」
ゆかり「今は普通に話せますよね?」
P「ごめん、変な茶番に付き合わせて」
ゆかり「いえ、お役に立ててますか?」
P「もう凄く」
ゆかり「よかった」
811 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:19:29 8dB5TK.Y
P「ちょっと他の用事があるから満足に見られるか分らないんだけど、できるだけ時間を作ろうとは思うから」
ゆかり「無理しないで下さい、帰ったらまた忙しいですよ」
P「はは、どうしてるのかな」
ゆかり「頑張ってますよ、プロデューサーさんに恥ずかしいところを見せないようにって」
P「怠けてるところなんて想像もできないな」
ゆかり「あの子、スカウトするんですか?」
P「棟方から聞いたのか?」
ゆかり「はい、何だか嬉しそうでした」
P「その嬉しさは単純に仲間が増える嬉しさだけじゃないろうけど」
ゆかり「でも、羨ましいな」
P「工藤さんが?」
ゆかり「プロデューサーさんがアイドルにしたいって思わせるだけの才能があるんですから」
P「才能とかはこれから分かることだよ」
812 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:22:38 8dB5TK.Y
ゆかり「人を惹きつけるってそれだけで才能だと思います、プロデューサーさんに1番最初にスカウトされたんですから。きっと、凄いアイドルになりますよ」
P「1番って、最初ってだけだよ」
ゆかり「女の子は1番になりたいものなんです、それが何であっても」
P「俺の1番なんて名誉もなんもないって」
ゆかり「そんなことありません、絶対に」
P「水本さんの家もこの辺りなの?」
ゆかり「少し離れてるんです。でもいつか……必ず案内します」
P「いつかは行ってたいな」
ゆかり「大丈夫です、必ずです」
P「そこまで気負わなくていいって、軽い口約束なんだから」
ゆかり「いえ、必ず……です」
813 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:24:10 8dB5TK.Y
団長「さて、一通りの説明は終わったと思うが」
忍「これ、雪像ですか?」
団長「そう、中に入れていては溶けてしまうから。とはいえこの程度の冷え込みではもって数日だ」
忍「すごーい」
団長「望みは叶いそうかい?」
忍「それは……これから次第です」
団長「未来があるというのは羨ましい、厭味でも何でもなく」
忍「団長さんもですよ」
団長「ありがとう」
忍「その、何であの人のを?」
団長「私はアイドルそのものに未練はないんだ、それなりに楽しかったが裏方の方が合っているなと思っていたし今もその考えは変わらない。けれど、彼は違う」
忍「どんなアイドルだったんですか?」
814 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:26:26 8dB5TK.Y
団長「輝いて見えた。今、活躍している杏よりもね」
忍「でもそんな凄くは見えない……」
団長「いつか彼のステージを私が演出できたらと思っていたし、それが一つの夢だった」
忍「……」
団長「CGプロから話を受けた時、これはチャンスかもしれないと思った。彼がいるというのは杏から聞いていたし、全身全霊を込めたものにしようとそう決意したのに」
忍「思い浮かばなかったんですか?」
団長「いや、これより出来のいいステージは頭の中にある。だけどどれもしっくりこなかった、気づいたら決定稿として提出していたよ」
忍「まだ、夢を追っているんですか?」
団長「今の彼に後悔なんてものは感じられない、彼も探しているんだろうと思う」
忍「何を?」
団長「かつての自分を超えてくれる誰かを」
815 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:28:01 8dB5TK.Y
P「さて、いつやってくるのやら」
ちひろ「誰がでしょう?」
P「……何をやってるんですか、社長」
ちひろ「ちひろさんですよ」
P「呼べませんよ、そんなフレンドリーな」
ちひろ「つまらない大人に育ってはいけませんよ」
P「今、イベントの準備の真っ只中ですよね?」
ちひろ「優秀なプロデューサーが四人もいるので大丈夫です」
P「帰ったら本気で謝らないと」
ちひろ「どういった心境の変化があったのかと思いまして」
P「別に変わりありませんよ」
ちひろ「自分がスカウトしても父と同じように不幸にしてしまうかもしれないから、スカウトはしない。そう面接の時に聞きました」
P「親の責任は子にもありますよ、知らなかったからなんて言えません」
816 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:29:04 8dB5TK.Y
ちひろ「でもあの子はスカウトした」
P「ただ、それを盾にしてあの子の夢を塞いでしまうのも……わがままなんだろうかって」
ちひろ「引け目を感じたから、スカウトする事にしたんですか?」
P「違います! あの子には才能がある、きっとちゃんとしたプロデューサーがつけば成功するだけの力はある」
ちひろ「であるなら、貴方が担当するべきです」
P「また先読みしましたね」
ちひろ「言い方で分かりますよ」
P「不安なんですよ、あの子の親を目の前にして夢を語れるのか」
ちひろ「肇ちゃんから聞きましたよ、お爺さんを説得したそうじゃないですか」
P「それは肇の意思が通じた結果です」
ちひろ「通じさせたのは、貴方の力ですよ」
817 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:30:20 8dB5TK.Y
P「それは買い被りすぎですよ」
ちひろ「夢を語る人間は、必ずしも光の中にいる必要はないと思います」
P「そうですか?」
ちひろ「そうですよ、だって誰よりもその場所を夢見ているんですから」
P「……」
ちひろ「アイドルの世界から弾き出されて、それでも貴方がこの世界にいようと決めた理由はなんですか?」
P「ただの未練ですよ」
ちひろ「未練だけなら、貴方はここまで真っ直ぐ進めなかった思いますよ」
P「曲がりくねってますよ」
ちひろ「貴方が一番よく分かっているはずです、だから私は貴方を採用したんですから」
P「そういえば聞いてませんでしたね、採用理由」
ちひろ「何だと思います?」
818 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:31:17 8dB5TK.Y
P「若いから」
ちひろ「若いだけなら他にもいます」
P「表舞台を知っているから」
ちひろ「その経験はプロデュースに役立ちましたか?」
P「正直、あまり」
ちひろ「それはそうですよ、そんな事を期待してなんかいません」
P「じゃあ、何ですか?」
ちひろ「誰よりも、アイドルに救われた人だから」
P「」
ちひろ「何でそんな驚いた顔をするんですか?」
P「いえ、考えたこともなかったですから」
ちひろ「珍しいんですよ、普通は関係のない道に進むんですから」
P「そう、なんでしょうか」
ちひろ「765プロのプロデューサーさんに聞きましたよ、最初は荒れてたって」
819 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:32:06 8dB5TK.Y
P「そこをほじくり返すんですか」
ちひろ「でも、救われたんでしょう? 彼女たちに」
P「この世界に……絶望せずに済んだ事は確かです。彼女たちは強い、もちろんうちのシンデレラ達も負けていませんが」
ちひろ「分かっているなら、大丈夫です。信じてますから」
P「大丈夫、か」
忍「どこにいるのかと思ったら、お母さん来たよ」
ちひろ「頑張って下さい、もしここを乗り越えられたなら」
P「なら?」
ちひろ「彼もまた、貴方を認めてくれるはずですから」
820 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:32:49 8dB5TK.Y
忍「こっちこっち」
P「分かってる、そう急かすなって」
母「貴方が……プロデューサー?」
P「はいそうです、Pと申します。すみません、突然お呼び立てする事になってしまいまして」
母「いえ。思ったより若くて、その」
P「意外ですよね、よく言われます。どうぞ、お掛けになって下さい」
母「あの、本当にこの子をスカウトしたんですか?」
P「はい、私がスカウトしました。この子なら、必ず人に夢を与えられるアイドルになると思いましたから」
母「夢、ですか」
P「確かに抽象的で、頼りない言葉です。夢を見るだけでは生きられません、それは確かです」
母「そうでしょう。一応アイドルというものを調べてみましたけれど、この子がその子達の様になれるとはとても」
忍「やってみないと分からない」
821 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:34:41 8dB5TK.Y
母「静かにしていなさい、貴方の事を思って」
忍「本当に思ってるの!?」
P「……私は表舞台で輝くアイドルを知っています、反対に消えていったアイドル達も」
母「消えてしまったら、惨めです。そんな姿を私は見たくありません」
P「それでも私はステージの上に立った日を忘れた事はありません、後悔もしていません」
忍「プロデューサー……」
母「それは……確かに貴方はそうかもしれません。ですが」
P「アイドル達は皆、希望と不安の狭間にいます。明日、仕事があるかも分からない。軌道に乗っても、いつ何が起こるか分からない。
現実を知れば知るほど、語れば語るほどこの世界は醜く見えてしまう。それも皆、分かってこの世界にいます」
822 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:35:43 8dB5TK.Y
母「外で見ているだけで充分です、憧れは憧れのままでいいんです」
P「人に夢を与えられる人はそう多くない、どんな分野でも。ただ……一つ胸を張って言える事があります」
母「何でしょう?」
P「歌が世界を救うとか、そんな大きな事は言えません。それでも確かに」
忍「確かに?」
P「アイドルは、人の夢にも救いにもなれる」
823 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:37:05 8dB5TK.Y
愛海「さあみんな胸張ってー!! うんうん! 凄くいい眺め!」
ゆかり「皆さんの心に届くように、雪のように静かにしっとりと」
団長「次の曲の開始で合わせる!」
愛海 ゆかり「ライブスタート!!」
忍「始まった」
母「あの子達も、知っているのでしょう?」
P「そうですね、全てとは言いませんが」
母「それでも笑わなくてはいけない」
P「失礼ですが、彼女らをそんな風に言われるのは心外です」
忍「うわあ……綺麗……」
P「ステージの上の彼女達に、嘘偽りは一つもありません」
824 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:39:02 8dB5TK.Y
ゆかり「ねえ夢を叶えるって大変だけど」
愛海「止めるのって何か嫌じゃん」
ゆかり「一歩進みだそうって時には!!」
P「どんな世界か分かったら、人はそこで立ち止まります。光なんて表だけだって分かってる世界に踏み込むなんて簡単にはできません」
ゆかり「ススメ☆オトメ壁の向こう」
愛海「まだ知らない世界待っている」
P「それでもなお真っ直ぐその世界に希望を持って進めるからこそ、彼女らは人の心を打つのではないかと……そう思います」
ゆかり 愛海「さあパレードしよう」
母「例え彼女達がそうでも、あの子は違います」
ゆかり「次が、最後の曲です」
愛海「最後はみんなと一緒に合唱だよ、用意はいい!?」
P「さっき言ってたのかな」
ゆかり「地元の子供たちと一緒に歌います、曲はTOMMOROW」
825 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:39:57 8dB5TK.Y
母「あの子!」
P「……団長、やっぱり」
母「こんなの聞いてません」
P「言い訳に聞こえるかと思いますが、いくら私でも契約前の子をステージに立たせたりしません」
母「ならあの子が勝手に?」
P「恐らく、周りの暴走も相まってこうなったかと」
母「早く降ろさないと、恥をかくだけ!」
P「とはいっても、ここまでくるともう――」
母「伴奏が」
P「始まった。何かあったら後で問い詰めますよ、団長」
826 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:40:57 8dB5TK.Y
時の流れ いつでも駆け抜けてゆくから
やさしさだけ忘れずに抱きしめていよう
大空を自由に鳥たちが 光の中飛び交うように
夜空からこぼれた星屑が 波の上をすべるだろう
母「確かに堂々とはしていますが、けれどやっぱり――」
P「……」
母「あの、どうされました?」
P「え?」
母「気付いていらっしゃらないの?」
P「気付いてって、何をでしょう?」
母「……いえ」
P「はい?」
827 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:42:17 8dB5TK.Y
司会「本日のイベントは終了いたしました。皆さん、お忘れ物のないようお気をつけてお帰りください。繰り返します――」
愛海「終わった、けどすぐに寝ないと明日に響くんだよねー」
ゆかり「もう少し余裕があったらよかったんだけどね」
愛海「こればっかりは仕方ないかあ」
忍「えっと」
団長「彼なら二階席だ、まだいるだろう」
忍「ありがとうございます!」
団長「しかし、こうもあっさりとやってのけるとは」
団員「団長! これどこに持って行きましょう?」
団長「それはまだいい、先にあっちを」
団員「分かりました」
団長「先が楽しみだ」
828 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:45:08 8dB5TK.Y
忍「プロデューサー!」
P「ああ、もう上がってきたのか。早いな」
忍「お母さんは?」
P「ロビーにいるんじゃないか、多分そっちに連絡いくだろ。それよりも工藤さん何で勝手に」
忍「プロデューサーお母さんに何か言われたの!?」
P「いや何も、何でいきなり」
忍「だって泣いてる!」
P「……は?」
忍「気付いてないの? はい鏡」
P「本当だ……いつの間に」
忍「いつの間にって、何かあったんじゃないの?」
P「いや、そうか。だから途中で」
忍「ちょっとこんな所で泣かないでよ、人も見てるから」
P「ごめん……ありがとう」
829 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:45:52 8dB5TK.Y
忍「何、いきなり礼なんて言われても」
P「自分が思ったよりも嬉しかったみたいだ」
忍「アタシ何かした?」
P「……アイドルになりたいって、言ってくれた」
忍「それはアタシから言い出したことだから」
P「いいのかな、スカウトしても」
忍「アタシは万々歳だって」
P「もう一度、話すよ。夢も現実も伝えたけど、まだ伝えてないものがあった」
忍「伝えてないものって?」
母「終わったの?」
忍「うん、それでね。さっきのプロデューサーが」
P「あの!」
母「お仕事はよろしいの?」
830 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:47:22 8dB5TK.Y
P「スタッフに任せていますから、それより……工藤忍さんを私に預けてもらえませんか」
忍「預けって、何か違う意味みたいな」
P「荒削りですけど、まだまだアイドルとしては未完成で才能があるかどうかも分かりません。
それでも、私はこの子をアイドルにしたい。それは彼女の願いでもありますけど、何より誰より私 がそう思って、最後までああえっと何ていうか」
母「はい、宜しくお願いします」
P「はい?」
忍「お母さん!?」
母「嫌なの?」
忍「嫌じゃないけど、何であっさり」
母「ここで我慢させたらあんたまた飛び出しちゃいそうだし」
831 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:48:03 8dB5TK.Y
忍「う……」
母「それに」
P「はい」
母「今ここで貴方を信じなかったら後悔しそうで」
P「あの、改めてお聞きしますが」
母「いいですよ、鍛えてやって下さい。放っておくと怠けることばかり考える子ですから」
P「分かりました、精一杯プロデュースさせて頂きます」
832 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/01(土) 22:49:12 8dB5TK.Y
忍「何だか、不思議な気分」
P「東京にはきちんと準備ができたらでいいから。寮は用意しておくし、学校への編入も手続きの用意はしておく。
必要なものがあれば事前に連絡してくれ、できる限りの用意はする」
忍「大丈夫だよ、明日には行くから」
P「明日? そんな急でなくても」
忍「大きなイベントがあるんでしょ?」
P「ああ、あれか」
忍「見ておきたいなって思うから」
P「多分、迎えにはいけないと思うけど会場では会えると思う」
忍「何か、本当にドタバタしちゃったけどありがとう。期待に応えられるように頑張るから」
P「そうだ、最後に言っておこう。これを言うのも初めてだな、何か緊張してきた」
忍「何?」
P「ようこそ、シンデレラガールズへ」
終わり 次回は12日
835 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/07(金) 19:32:55 UT6HyABI
P「あいさん相手にこんな事を言うのも何なんですが」
あい「君がそんな言い方をするという事は、あまり楽しくない話題なのかな?」
P「まさに」
あい「今日が何の日か知った上での発言なんだろうね?」
P「はい、知った上での発言です」
あい「いいだろう、言ってみるといい」
P「女性に対して誕生日を祝うのって、何歳までなんでしょうか?」
あい「誕生日なら祝って貰えれば嬉しいと思うが、何か思うところがあるのかい?」
P「瑞樹さんにあいさんの誕生日の話題を出したら、大人になればなるほどそういう事には敏感になっていくものだと言われたものですから」
あい「なるほど、確かにそういう見方もあるだろうね」
P「それであいさんはどうなのかなと」
836 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/07(金) 19:34:07 UT6HyABI
あい「自分の年齢を君に会うまで気にしたことはなかったよ」
P「今は気にしてるんですか?」
あい「どれだけの時間を私は君と過ごせるのだろうかと思ってね」
P「またまた」
あい「それで、わざわざこうして誕生日の話題を出してくれたんだ。期待はしてもいいのかい?」
P「期待される程の物ではありませんが」
あい「開けてもいいのかな?」
P「その為の箱ですから」
あい「チョコレートか、なるほど」
P「まあ、こんな時期ですから。発想としてはありきたりです」
837 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/07(金) 19:35:36 UT6HyABI
あい「いや、まさか君から貰えるとは思っていなかった」
P「あいさんならチョコレートなんていくらでも貰えてましたよね?」
あい「一応、と答えておくよ」
P「あいさんが持つと全ての物がセンスのいい物に見えるから不思議ですよね」
あい「これに限れば、君がくれたからだよ」
P「喜んで頂けたなら何よりです」
あい「ふふっ」
P「あれ、何か変な物でも入ってました?」
あい「面白いなと思っただけだよ」
P「面白い、ですか? あいさんをそう思わせる何かに興味はありますね」
あい「嬉しさと共に恥ずかしさを感じてしまってね、こんな素の表情を見せるつもりもなかったんだが」
838 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/07(金) 19:36:36 UT6HyABI
P「俺は嬉しいですよ」
あい「年上としての威厳を保とうかと思っていたが、今日だけは崩してしまうのも悪くないかもしれない」
P「折角の誕生日なんですから、別に俺は構いませんよ」
あい「では、少しだけ」
P「あいさん?」
あい「誰かに頭を預けるのも、悪くはない」
P「誕生日おめでとうございます、あいさん」
あい「ああ、ありがとう」
気づけばこの人の誕生日だったので
840 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:13:31 t/Ch5iSc
連作短編29
ニュージェネレーション「シンデレラの夢」
千枝「P-さんがーおやすーみー、あと一週間もあえなーい」
ありす「何の歌?」
千枝「Pさんに会えない悲しみの歌」
ありす「一週間経てば会えるのに」
千枝「こんな孤独が一週間も続くなんて、千枝たん大ピンチ!」
ありす「今まで碌に休んでいなかったんだから、もっと休むべき」
千枝「Pさんがーおやすーみー」
泰葉「自棄になっちゃってるね」
ありす「一週間なんてあっという間です」
泰葉「それまでに少しでも成長しておかないとね」
ありす「当然です」
泰葉「うん、もうすっかりアイドルだね」
841 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:15:07 t/Ch5iSc
卯月「……」
加奈「卯月ちゃん?」
卯月「あ、ごめんね。止まっちゃった」
加奈「少し疲れてるんじゃ――」
卯月「大丈夫、すみません。少し前からお願いします」
トレ「卯月ちゃん少し休憩、こんな時に無理したら駄目」
卯月「でも」
未央「はいはい、お疲れしまむーはこっちこっち」
卯月「未央ちゃん!」
美穂「卯月ちゃんが休まないと、私はいつまで経っても追いつけなくなっちゃうから」
卯月「うう……」
未央「ほらほら、ここで大人しく座ってなさい」
卯月「はーい」
842 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:15:51 t/Ch5iSc
加奈「最近、何か思い詰めてるような」
トレ「大丈夫そう?」
未央「平気ですって、少し休めばまだいつも通り頑張りますロボになりますから」
奈緒「珍し」
加蓮「何? レッスン場に何かあるの?」
奈緒「卯月が休んでる」
加蓮「へー本当だ、本当に珍しい」
奈緒「加蓮はしょっちゅうだけどな」
加蓮「まだ恨みは忘れてないよ?」
奈緒「い、いい加減に忘れろって」
加蓮「どんな水着を着てもらおうかなー」
奈緒「それはもういいだろ……」
加蓮「まあ、真面目な話さ」
奈緒「うん?」
843 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:16:37 t/Ch5iSc
加蓮「楓さんに対するリベンジの場だよね、次のイベント」
奈緒「別に勝負する訳じゃない」
加蓮「でも同じステージでライブする機会なんて滅多にない」
奈緒「まあ、それは確かに」
加蓮「事務所にとってはただの記念イベントかもしれないけど」
奈緒「真剣勝負か」
加蓮「判定する人もいないけどね、自己満足の世界だし」
奈緒「Pさんに聞くか?」
加蓮「判定してくれるかな?」
幸子「それで負けって言われたらどうするつもりですか?」
奈緒「幸子」
加蓮「それでもいいよ、Pさんが認めてくれるまで頑張るだけ」
奈緒「幸子、そういえば統括とはどうだった?」
844 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:17:15 t/Ch5iSc
幸子「どうだったも何も普通に終わりましたよ」
加蓮「ごめん、ありがと」
幸子「いえ。ああ、報告ですが来月はPさんと一週間のロケが入りましたので。あんまり事務所には来れません」
加蓮「一週間!?」
奈緒「まさかそれ」
幸子「ボクにお詫びをしたいと言うので仕方がなくですけどね、まあボクはカワイイので仕方がありませんが」
加蓮「ふーん」
幸子「ひっ」
奈緒「怖がらせてどうすんだよ……」
加蓮「冗談、それにしても凜がいないね」
845 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:18:15 t/Ch5iSc
奈緒「あれから何か話したか?」
加蓮「ううん、お互いに忙しいし」
奈緒「変に思い詰めてないといいんだけどな」
幸子「何だかんだで強い人ですよ、あの人も」
奈緒「強いから問題なんだよなあ」
加蓮「今日も仕事でしょ? えっと確か」
奈緒「楓さんとだ」
幸子「……まあ、大丈夫でしょう」
846 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:19:26 t/Ch5iSc
楓「車が来るまで待機ですか?」
先P「休憩と思ってゆっくりしてればいい、こうも移動だらけだと俺の体が持たん」
凛「頑張れおじさん」
先P「そりゃあいつらと比べたらおじさんだ、労わってくれ」
楓「あ、雪」
凛「イベントも降るのかな」
先P「降ろうがライブだ、高垣はその方が栄えそうだが」
楓「寒いのは嫌です」
先P「俺だって嫌だな」
凛「私は別に」
先P「若いね」
楓「私が若くないみたいです」
先P「25が16相手に何を言ってんだ」
847 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:21:40 t/Ch5iSc
楓「むす」
先P「そのセンスは本当にこっち側に片足を突っ込んでるな」
凛「次はラジオだっけ」
先P「フリートークだが、宣伝だけは忘れるなよ」
楓「パーソナリティーは誰ですか?」
先P「藤原、とはいえこのイベント向けの単発だがな」
凛「12時間も生放送って肇もよく引き受けたね」
先P「最初は一時間ごとに持ち回りにしようとしたんだが」
楓「人が足りなかったんですか?」
先P「いや、一人でやると言い出した。前川、白坂に堀とラジオやってるアイドルは多いからそこら辺を使おうかと思ってたんだが」
凛「それでやらせたんだ?」
先P「休み前のあいつを説得に当たらせようかとも思ったが、スタッフへの引継ぎでてんてこ舞いのあいつに
そんな事をやらせるのもな」
凛「今はどんなコーナーなんだろ?」
先P「車が来たそうだ、中で聞けるぞ」
848 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:23:15 t/Ch5iSc
杏「ふーん、そうなんだ」
凛「杏だ」
楓「杏ちゃんもラジオしてますよね?」
凛「この二人で何を話してるんだろ」
肇「杏さんは不思議に思いませんか?」
杏「流れ星?」
肇「はい、どうして人は星に祈るのか」
先P「ロマンチックだねえ」
凛「何でこっちを見るの」
先P「いや、何も」
杏「暇だから空を見上げるしかする事がなかったんだよ」
肇「杏さんらしい答えですね」
杏「肇がそういうのに興味持つなんて意外だね」
849 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:24:06 t/Ch5iSc
肇「この前、少し見る機会がありまして」
杏「へえ、寒いのに」
肇「その時にこれだけ流れ星があると願い事も願いきれないねってお話をしたんですけど」
杏「人間の欲なんて星がいくつあっても足りないって」
肇「だから3回唱えないといけないんでしょうか」
杏「まあ星からすれば無理難題も吹っ掛けたくなるよね、たまたま通りかかっただけなのに勝手に願われてさ」
肇「ふふっ、そうですね」
杏「それで、その時は何を願ったの?」
肇「トップアイドルになれますように」
杏「それは嘘って分かっちゃうかな」
肇「ばれてしまいましたか」
杏「肇ってそういう願いは自分で叶えようってタイプだと思う、今から来るゲストの内の一人みたいに」
凛「私の事かな」
先P「多分そうだろう」
850 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:25:01 t/Ch5iSc
肇「ではもう一方は?」
杏「うーん、あの人はよく分からないんだよね。何かどうでもいいこと願いそう」
凛「分かる」
楓「私だってちゃんとしたお願いします」
凛「例えば?」
楓「今日のお酒は日本酒にする、とか」
凛「それ、ただの決意表明」
楓「星に欲しいって、ふふふ」
凛「……」
肇「そうですね、ではこんなのどうでしょう?」
杏「どんなの?」
肇「杏さんが妹になあれ、とか」
杏「」
851 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:26:55 t/Ch5iSc
凛「」
先P「ごふっ!」
楓「風邪ですか?」
先P「い、いや、ななんでもない」
凛「何でもありそうだけど」
先P「煙草が喉に詰まっただけだ」
楓「煙草が?」
先P「ああもうこの話は終わりだ!」
肇「杏さん?」
杏「ああうん、また何か凄すぎて絶句しちゃったよ」
肇「でも、そんなとんでもない願いが叶う日が来るかもしれませんね」
杏「はは、そうだね」
先P「おいおい知ってて言ってんのかこの子は」
凛「……」
852 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:27:39 t/Ch5iSc
楓「杏ちゃんが妹」
先P「俺は絶対にごめんだ、なあ? 渋谷もそう思うだろ?」
凛「私はそうだけど楓さんは違うだろうね」
楓「凜ちゃん?」
先P「あいつはハーレムでも作る気なのか」
凛「作ってるのは一人じゃないけどね」
先P「まあな」
凛「私は関係ないけど」
先P「耳が赤いぞ」
凛「……気のせい」
楓「……」
先P「さてご到着だ、ロマンチックな話題の最中だ。場の空気を乱さない様に」
凛「分かってる」
853 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:28:17 t/Ch5iSc
肇「さて、話の途中でしたがまた新しいゲストが到着したようです」
杏「やっと出番が終わった」
肇「まだいてくれてもいいんですよ?」
杏「杏にはこれから大事な役目があるからね、ここでお暇するよ」
肇「ここまでありがとうございました。さて、新しいゲストの紹介です。渋谷凜ちゃんと高垣楓さんです」
凛「凄いね、本当に一人でここまでやってきたんだ」
肇「はい、もう後半戦ですから。何だか時間が経つのが早くて」
楓「それでもう八時間」
凛「流石、集中力凄いもんね」
肇「そんな褒められても」
凛「照れてる肇も可愛いね、話題もロマンチックだし」
肇「聞いていたんですか?」
凛「途中からだけどね」
854 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:29:43 t/Ch5iSc
楓「私の願いは呆れられてしまいました」
肇「何をお願いするんですか?」
楓「日本酒ください」
肇「なら、私が猪口でもプレゼントしましょうか」
凛「ちょこ? お酒に?」
楓「お酒を飲む為の小さな器ですよ」
凛「楓さんはともかく肇もよく知ってるね」
肇「お爺ちゃんが使ってるので」
楓「ここ、お酒は駄目でしょうか」
凛「飲みながらラジオなんて……どうしよう既にいるから強く言えない」
肇「私達が大人になったらそれもいいかもしれませんね」
楓「早く大人になって下さい」
凛「また無理難題を」
855 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:30:28 t/Ch5iSc
肇「でも、その頃にはどんな風に過ごしているんでしょうね」
凛「アイドル」
肇「もう決めてるんですか」
凛「うん、ちょっと前に色んなアイドルのライブを見たんだ。もちろん、映像でね」
肇「どんなアイドルを?」
凛「色々、男も女も関係なく。竜宮小町とかジュピターとか、時代関係なくね」
肇「勉強熱心なんですね」
凛「そんなんじゃないよ、ただ知りたくなっただけ」
肇「アイドルとしての魅せ方とかでしょうか」
凛「アイドルって何でいるんだろうって」
楓「見て分かりました?」
凛「ううん、全然。当然だよね、疑問自体が曖昧すぎて」
肇「それは、確かに難しい答えですよね」
凛「アイドルとしての自分は何を伝えられるんだろうかって考えて、ちょっと迷路に入ってるのかも」
856 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:31:20 t/Ch5iSc
楓「凜ちゃんは、どうしてアイドルをしているの?」
凛「……アイドルになる前、アイドルのライブを見に行った事があるんだ。感動してさ、アイドルって何かも分からなかった私はそこで
アイドルを知った。スカウトされて、事務所に入ってそのアイドルを超えるようなアイドルになりたいって思って、でもその頃にはもう
その人はいなかった」
肇「引退していたんですか」
凛「あの人が、今いるトップアイドル達がしている様に私もできてるのかなって。何も伝えられないまま終わるアイドルなら、いる意味もないのかな。なーんてさ」
楓「流れ星です」
凛「流れ星?」
楓「歌ってる時、何を感じてるかは人それぞれの気持ち次第です。何を願っても星が気にも留めない様に」
凛「確かにそうだけどね」
楓「皆が皆、感動していたら歌っている方も面白くありません」
肇「どんな反応して欲しいんですか?」
楓「エル、オー、ブイ、イー。ラブリー、カエデ!!」
凛「時代が……」
肇「もしかして酔ってます?」
楓「好きな様に楽しんでくれたらそれでいいかなって」
857 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:32:26 t/Ch5iSc
凛「確かにそうだけどね」
楓「皆が皆、感動していたら歌っている方も面白くありません」
肇「どんな反応して欲しいんですか?」
楓「エル、オー、ブイ、イー。ラブリー、カエデ!!」
凛「時代が……」
肇「もしかして酔ってます?」
楓「好きな様に楽しんでくれたらそれでいいかなって」
凛「それは……確かに」
楓「私のライブは比較的しっとりした構成なんですけれど」
肇「そうでしょうね、楓さんは聞かせるタイプですから」
楓「誰もラブリーって言ってくれない」
凛「まだ引きずるの?」
楓「刺網の様に」
肇「漁業の一種ですね」
凛「いや、冷静に解説しないで」
858 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:33:17 t/Ch5iSc
楓「時々、凜ちゃんのライブが羨ましくなる時があります」
凛「私の?」
楓「一緒に飛び跳ねたり、歌ったり。何もかも忘れてその時を共有させる、私にはない力です」
凛「そんな大層な物じゃないって」
楓「感動させるのも、興奮させるのも、ファンとアイドルの共同作業です。アイドルが迷ったらファンの方はもっと迷ってしまいます」
肇「皆で作り上げた結果、何が残るかって楽しみですね」
凛「そうか、そうだね。うん、ちょっと独りよがりだったかも」
楓「きっと皆で歌えば想像も付かない事になります、だからこれを聞いてる皆さんも次のイベントには来て下さいね」
凛「あ、言われちゃった」
肇「綺麗にまとまってしまいましたね」
楓「ですから話題を変えましょう」
凛「どんな?」
楓「どうしたらラブリーって呼んでくれるか」
凛「だからもうそれはいいってば」
859 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:34:16 t/Ch5iSc
奈緒「普通にいい話で終わったな」
加蓮「まだ終わってないけど、もう何もないだろうね」
幸子「この憧れてたアイドルって」
奈緒「もうPさんから聞いただろ?」
幸子「通り一遍は」
加蓮「そうなんだろうね。あーあ、私も行きたかったなあ」
未央「ふーん、そういうことかあ」
卯月「何がそういう事なの?」
未央「しまむーが元気ない理由が分かった」
卯月「え? 今の話で」
未央「しぶりんが悩んでる事に気づいてたんでしょ?」
卯月「う……」
未央「そうだよね、次のライブで一区切りついちゃうんだもんね」
卯月「何か、凜ちゃんが遠くを見る事が多くなって」
860 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:35:07 t/Ch5iSc
未央「落ち込むだろうねえ」
卯月「うん」
未央「で、しまむーまで落ち込んだの?」
卯月「私と未央ちゃんはさ」
未央「統括の妹さんと面識はないよね?」
卯月「……だから凜ちゃんと本当の意味で同じステージに立ててなかったよね」
未央「ってしぶりんが言ったの?」
卯月「言ってないけど……」
未央「目標が違ったら駄目なの?」
卯月「駄目じゃない……」
未央「何か煮え切らないなあ、どうしたのさ?」
卯月「凜ちゃんって」
未央「うん」
卯月「プロデューサーさんにプロデュースして欲しいって思ってるよね」
861 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:35:57 t/Ch5iSc
未央「統括じゃない方?」
卯月「そう」
未央「あー、そっちは否定できないかも」
卯月「私達がいるから躊躇ってるのかなって」
未央「うーん、そういう理由ならもう言ってきてもおかしくないと思うけど」
卯月「だから私、奈緒ちゃんと加蓮ちゃん誘うのに協力しちゃったんだ」
未央「あれ、そういう理由?」
卯月「二人がこっちに来れば、凜ちゃんも考えとか変わるかなって思って」
未央「あー、そういう」
卯月「私、悪い子だ……」
未央「しまむーってあのプロデューサー嫌いなの?」
卯月「嫌いじゃないよ! 凄い人だと思う……けど」
未央「けど?」
卯月「何か、凜ちゃんが取られちゃいそうで」
862 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:37:10 t/Ch5iSc
未央「ぶふっ!」
卯月「笑わないでよぉ」
未央「いや、あははは、しまむーは可愛いなあ!」
卯月「可愛くないよ、こんな私」
未央「もう、だったら会いに行こうよ!」
卯月「会いにって未央ちゃんちょっと!?」
未央「このまま飛び入りゲスト出演しちゃえばいいんだって」
卯月「無茶だよ、誰の許可もないのに!」
統括「その通りだ」
未央「あ、ばれた」
統括「あれだけ大声で話してばれない訳がないだろう」
未央「いい?」
統括「……行ってどうする?」
未央「そっから考える!」
863 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:38:44 t/Ch5iSc
卯月「もう、そんな理由――」
統括「いいだろう」
卯月「統括?」
統括「止めたら諦めると思うか?」
卯月「思いません」
未央「どんな認識なの!?」
卯月「どんなって」
統括「問題が起きる場面が容易に想像できる」
卯月「うん、何とかしようとして事態を悪化させそう」
未央「二人して酷くないかな……」
統括「乗れ」
卯月「いいんですか?」
統括「乗るか乗らないか早く決めろ」
未央「さっすが、話が分かる!」
864 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:39:52 t/Ch5iSc
統括「凜がまだ迷うなら、その原因は俺だろう」
未央「自覚あるのは知ってたけど、何で何もしなかったの?」
統括「何をしろと」
未央「それを言われると困っちゃうけど」
統括「凜が何をしようと俺が何かを言う権利はない」
卯月「でも統括ってプロデューサー気に入ってますよね」
未央「なのにあの態度ってのが分かんないだよなあ」
統括「今、何て言った?」
卯月「統括がプロデューサーを気に入ってるって話です」
統括「そのプロデューサーはあいつの事か?」
卯月「はい」
統括「何を馬鹿な――」
卯月「だって」
未央「ねえ」
865 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:40:48 t/Ch5iSc
卯月「まだあの体でダンス主体の奈緒ちゃんと加蓮ちゃんの担当は無理だって言って」
未央「自分がプロデュースする予定だった楓さんを渡しちゃうし」
卯月「聖来さんが強引に担当になったと思ったら」
未央「ダンス主体の仕事の時は小細工使ってまで仕事から外すし」
卯月「ニューウェーブのレッスンも体を動かすからって」
未央「私達に見張り命じたのはどこの誰だっけ?」
統括「部下の体調管理も上司の仕事だ」
未央「そこが分かんないんだよね、妹さんの事もしぶりんには秘密にしてたんでしょ?」
統括「それがあいつの意志だ」
卯月「だってこのままだと凜ちゃん一人で抱えなくていいものまで抱えちゃって」
統括「最初から凜に全て話したと仮定する」
未央「何か不味いの?」
統括「当然の様にあいつに詰め寄るだろう、何でアイドルを辞めたのか」
未央「そうだろうね」
統括「それがあいつにとって何より辛い事だと、妹が気にしたとうだけだ」
866 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:41:21 t/Ch5iSc
卯月「それは……」
統括「事務所内でもそういう目で見られる、奈緒と加蓮と幸子はその件を気にしてもうPには近づけない」
未央「まあ……」
統括「それが杏が考えた結果だ、凛とPを離しておくと」
卯月「杏ちゃん?」
未央「どっから出てきたの?」
統括「後で分かる」
未央「いや、凄く気になる話なんだけど」
統括「俺個人としてはPと凜を離しておくメリットはないと考えていたが、そういう事ならと放任したまで」
未央「だから止めなかったんだ」
卯月「わざわざスケジュール合わせたもんね」
統括「凜にとってPの存在は大きい事は想像が付く、一緒に仕事をしていてそれはお前たちも分かっているはずだ」
867 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:41:59 t/Ch5iSc
未央「劇を見に行った時は驚いた」
卯月「ゆかりちゃんの?」
未央「そうそう」
統括「あれも凜が行きたいとごねた結果だ」
未央「あれ、何でだったの?」
統括「……水木が凜に話したからだと俺は思ってる」
卯月「何をですか?」
統括「こういう話はあんまり得意じゃないんだが」
未央「珍しく統括が口ごもってる」
卯月「もう、はっきり言って下さい」
統括「笑うなよ」
未央「もういいって」
統括「Pがいかにアイドルから人気があるか知ったから」
卯月「あ、なるほど」
未央「納得」
868 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:43:05 t/Ch5iSc
統括「そうなのか?」
未央「え、統括知らないの?」
統括「そんな事を気を掛けるほど暇ではない」
卯月「奈緒ちゃんに加蓮ちゃんに幸子ちゃんにありすちゃんに千枝ちゃんに」
未央「千秋さんもでしょ?」
卯月「あ、そっか。ゆかりちゃんもそうだし……美穂ちゃんもちょっと怪しい」
未央「それに何て言ったって藤原肇に佐久間まゆ」
統括「藤原肇? まゆと同列なのか?」
卯月「知らないんですか?」
未央「あれはぞっこんだよ」
統括「一度、担当を考え直すか」
卯月「今そんな事したら本当に敵視されちゃいますよ」
未央「しぶりんも焦るよね、ライバルだらけでさ」
869 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:43:57 t/Ch5iSc
卯月「私達が知らないだけで他にもいるかもしれませんし」
統括「なるほど、よく分かった。元アイドルだけの事はあるという事か」
未央「でもどうするの? しぶりんに話すの?」
統括「それは杏次第だ」
卯月「やっぱり杏ちゃんが出てくるんだ」
未央「プロデューサーってそういうの気付いてるのかな?」
統括「双葉杏と佐久間まゆを俺が担当している事に何も言ってこない以上、ある程度の理解はあるだろう」
卯月「その二人がプロデューサーと同じ事務所にいたのは知ってますけど」
未央「仲が良かったとか?」
統括「そういうレベルではないな」
未央「本人に聞くしかないかあ」
卯月「でもいるかなあ、ラジオ終わって帰ってるかも」
統括「それはない」
未央「何で分かるの?」
統括「勘だ」
870 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:45:13 t/Ch5iSc
未央「着いた!」
卯月「えっと、どこに行けばいいのかな」
統括「そのまま凜の所に行け」
未央「通れる?」
統括「お前は通れなくても通るだろう」
未央「そだね」
卯月「そだねって未央ちゃん!?」
統括「早く行け、あいつらの出番が終わるぞ」
卯月「後でしっかり聞きますからね!」
統括「だそうだ」
杏「やっぱり来たんだ」
統括「来ない方がよかったか?」
杏「凜に聞いてよ、そんなの」
統括「さて、未央と卯月が知りたがってるが」
871 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:46:16 t/Ch5iSc
杏「任せるよ」
統括「いいのか?」
杏「どの道、もうすぐ終わる事だから。今は聞こうよ、あの子達が何を選ぶのか」
肇「そろそろ時間ですね」
凛「この後は?」
肇「皆さんの曲紹介をしようかと思っています、ゲストの予定もありませんから」
楓「ライブ前の予習ですか」
肇「正直なところ、これ以上のお話は喉を傷めてしまいますから」
凛「でもやるんだ」
肇「はい、決めた事です」
楓「最後まで聞いてますね」
肇「ありがとございます、それでは次は」
872 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:47:22 t/Ch5iSc
凛「ステージでだね、楽しみにしてる」
肇「はい、よろしくお願いします」
凛「それじゃ――」
未央「ちょっと待ったあ!!」
凛「未央!?」
楓「わーお」
肇「え? ゲストですか?」
卯月「未央ちゃん早いよ!」
凛「卯月!?」
楓「おーわ」
肇「楓さん凄く楽しそうですね」
未央「来ちゃったぜ」
凛「来たって、えっとうんそのあのこの」
873 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:48:45 t/Ch5iSc
楓「私達は席を外しましょうか」
肇「そうですね、後は宜しくお願いします」
凛「え、三人?」
未央「だってさ、ほら二人とも座った座った」
凛「……」
卯月「……」
未央「ちょっと、黙ったら放送事故だよ」
凛「何で来たの?」
未央「直球だね」
凛「だってレッスン中でしょ?」
未央「ぐぬぬ」
卯月「ちょっとラジオだって! 喧嘩したら駄目だよ」
凛「卯月も、止めなかったの?」
874 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:49:33 t/Ch5iSc
未央「だって言い出したのは何よりこの子ですから」
凛「卯月?」
卯月「あの、凜ちゃん。こんな所で聞いていいのか分からないけど」
凛「何?」
卯月「私、凜ちゃんと一緒にアイドルしてていいのかな?」
凛「」
未央「黙ったら駄目だってしぶりん」
凛「ん? あ? は?」
卯月「ああもう怒ってる……」
未央「怒られに来たからね」
凛「それを聞きにここまで来たの?」
卯月「だって凜ちゃん一人で悩んでるし、何も言ってくれないし」
凛「それは、だからって」
卯月「不安になるよ! いつも一人で抱え込むから何も出来ない!」
875 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:51:05 t/Ch5iSc
凛「抱えてるのは卯月の方なんじゃない?」
卯月「私?」
凛「分かんなかったよ、そんな風に思ってたとか」
未央「なかなか見えないよね、一緒にいても」
凛「同じ所を見てた訳でもなかったのかな」
卯月「何で二人ともそんなに穏やかなの……」
凛「さっき怒ってるって怖がってたのに」
卯月「そうだけど」
凛「ニュージェネレーションは、三人でやろうって決めたユニットだよね?」
卯月「三人で名前も考えて」
未央「衣装も合わせてさ」
凛「そこにいる限り、私が卯月や未央と離れようなんて思う訳ないじゃん」
876 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:51:51 t/Ch5iSc
杏「これ、流していいの?」
統括「どうして藤原と高垣が席を外したか分かるか?」
杏「準備がいいね、別室で二人に放送させたんだ。連絡してたとか?」
統括「高垣を働かせるとギャラが高いんだが」
杏「そんなの何とかしなよ、じゃああの三人は?」
統括「誰が出すか」
杏「まあそうだよね、だったらここで待ってた私も欲しいくらいだし」
統括「どうしてアイドルになった?」
杏「その言葉、そのままそっくり返すよ」
統括「俺はアイドルになろうとは思わん」
杏「でもこの世界には入った、プロデューサーとして」
統括「知りたくなった」
杏「何を?」
統括「あいつが命を賭けてまで生きようとした世界に、どれだけの価値があるのか」
877 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:52:27 t/Ch5iSc
杏「知ってたんだ?」
統括「アイドルに興味もなかった、あいつが何をしようと見もしなかった。ただの一度もだ」
杏「こっちも似たようなもんだね」
統括「俺が知ったのは全てが終わってからだった」
杏「それも同じ、似たもの同士かもね」
統括「お前の兄は全てを捨てた訳じゃないだろう」
杏「そうだね、生きてるし」
統括「俺は答えた」
杏「ああ、さっきの?」
統括「他に何がある?」
杏「くだんないよ」
統括「高尚な答えなど最初から期待してないな」
杏「寂しかったんだよ」
878 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:53:22 t/Ch5iSc
統括「ふっ」
杏「笑ったね」
統括「笑われる答えをする方が悪い」
杏「じゃあもう黙る」
統括「冗談だ」
杏「……あいつの歌、好きだったんだ」
統括「意外だな」
杏「どう思う?」
統括「俺がプロデュースしてればそれなりの所まではいけただろうな」
杏「そうじゃなくて」
統括「聞けなくはない」
杏「ふーん」
統括「俺の中の一番は不動でな」
杏「お互いに身内びいきなだけだね」
879 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:54:52 t/Ch5iSc
統括「自分が変わりになろうとでもしたのか?」
杏「最初はね、あいつの歌は私にしか分からないって変な自負もあったから」
統括「ならあのデビュー曲はどうしてあんな形態にした?」
杏「駄目だったから」
統括「出来はよかったが」
杏「あいつの歌とかけ離れてたんだ、自分で驚くくらいに」
統括「当然だ」
杏「だから逃げた、やる気もなくなっちゃったんだよ」
統括「それでヒットするんだから世の中は本当に分からんな」
杏「だよね、何でアイドルやれてるんだろ」
統括「辞めようとは思わなかったのか?」
杏「言えると思う? アイドル辞めたいなんてあの二人に」
880 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:55:43 t/Ch5iSc
統括「俺はごめんだ」
杏「私だってごめんだよ、別につまらない訳じゃないし。何か周りもやる気あるのが多いし」
統括「橘ありすを筆頭にか?」
杏「知ってて担当させたんだ、やるね」
統括「初めて見た時は驚いたな」
杏「雰囲気がそっくり、アイドルとしての方向性は違うけど」
統括「嫉妬したか?」
杏「ちょっとだけ」
統括「だからあいつも力を入れているんだろう」
杏「そういえばさ」
統括「何だ?」
杏「渋谷凛をあんまり近づけないでとは言ったけど、何で統括まで距離を置いてるの?」
881 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:57:48 t/Ch5iSc
統括「俺があいつと仲良くしてどうする」
杏「最初からお前は体が弱いんだから無理するなって言えば、それでよかったんじゃない?」
統括「無理だな」
杏「嫌いなの?」
統括「俺が気づいた時にはもうあの三人を見ていたからな」
杏「ああ、そっか」
統括「今更、実は体が弱いからなんて言える男ではないだろう」
杏「だから楓さんか」
統括「誰でもよかった、ダンス主体のアイドルでなければ」
杏「今はどうなんだろ」
統括「ニューウェーブは判断材料にはなった、後は本人次第だが話は進めている」
杏「何かするの?」
統括「一応はな」
杏「相変わらずの変人だね」
882 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:58:31 t/Ch5iSc
統括「そういえば話は変わるが」
杏「まだ何かあるの?」
統括「あいつはアイドルから人気があるらしい」
杏「今更? 泰葉とか楓さん見れば分かるでしょ」
統括「増えた……だと……」
杏「疎いね」
統括「分かった、仕事の出来によってスケジュールを調整しよう」
杏「うわ、そういうことするんだ」
統括「利益のためなら利用できるものはする」
杏「そういうところが誤解されるんだよ」
統括「そう思っていたんだがな」
883 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 14:59:21 t/Ch5iSc
杏「あれ、もしかして慕われてたりする? トレーナーさんは知ってるけど、増えた?」
統括「さあな」
杏「ふうん、泣かさないように」
統括「もう行くぞ、忙しい」
杏「次のイベントがタイムリミットってのは本当?」
統括「だからこのタイミングだ、他に理由はない」
杏「泣く場所に困ったら、見ない振りくらいはするから」
統括「余計なお世話だ」
884 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:00:07 t/Ch5iSc
卯月「ねえ、あれ」
凛「うん?」
未央「ま、予感はしてた」
卯月「さっきの放送してないんだって」
凛「そうなの?」
未央「何かすぐにCM流して別室で楓さん達で放送してたみたい」
卯月「迷惑かけちゃった」
未央「だからここから最後まで罪滅ぼしって事で」
凛「やろう、最後まで」
未央「多分、ただ働きだろうけど」
凛「ただじゃないよ」
未央「何か貰えるの?」
885 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:01:12 t/Ch5iSc
凛「ううん、でもかけがえのないものがここにあるから」
卯月「凛ちゃん……」
凛「残していこうか、私達の足跡」
未央「出た、しぶりんの決め台詞!」
凛「未央……その目は面白がってるようにしか見えないんだけど」
未央「ほらほら始まるよ、さあ息を吸って!」
凛「分かってる」
未央「3、2、1」
凛「ここからは私達ニュージェネレーションがお送りします、さっきは取り乱しちゃってごめんね。
お詫びに、最後まで精一杯――」
未央「のタイミングでやろうね」
凛「……殴る」
卯月「凛ちゃんそれは駄目! 落ち着いて! ね! お願いだから!」
未央「待ってしぶりんそこは! あ! そこは駄目!」
886 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:02:42 t/Ch5iSc
肇「元気そうですね」
楓「では、このタイミングで」
肇「え、でも」
楓「ぽちっとな」
肇「あ」
凛「未央! 今日という今日はもう絶対に」
楓「はじまりはじまりー」
肇「何も聞いてない何も見てない何も言えない……」
未央「ってしぶりん始まってる!」
卯月「え、嘘!?」
凛「何の合図もなかったのに!」
肇「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
卯月「肇ちゃんがガラス越しに凄い勢いで頭を下げてる」
887 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:03:31 t/Ch5iSc
未央「で、その隣で楓さんがどや顔でピースしてる」
凛「うわ、何か凄く」
卯月「そこから先は駄目だよ凛ちゃん」
凛「……コホン。えっと皆、さっき聞こえた声は置いておいて」
卯月「ここからは私達三人で頑張ります」
未央「ちょっとしたトラブルも何のその」
凛「未央のせいで起きたトラブルは数え切れないけどね」
卯月「そういえば、もっと酷いのが流れちゃったときもあったね」
凛「あの時は本当にどうなる事かと思った……」
未央「まあまあその話は今はさ」
凛「そうだね、次回はそれをメインにしようか」
未央「そんな、あははははは。今日のテーマ、これからの私達」
凛「もしかして決めたの今?」
888 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:05:13 t/Ch5iSc
未央「もしかしなくても今」
卯月「また唐突というか何と言うか」
凛「イベントも近いし、いいかもね」
未央「っ事で私から」
卯月「何か考えてるの?」
未央「新ユニット結成!」
凛「ニュージェネレーション以外にってこと?」
未央「そう、新しい世界って事で」
卯月「想像付かないよ」
未央「でも、これだけアイドルがいたら可能性は無限大だよね」
凛「確かに、もしかしたらそんな日が来るかもしれないね」
未央「誰と組みたいとかある?」
凛「楓さん以外なら誰でも」
889 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:06:08 t/Ch5iSc
卯月「楓さんがあっちで体育座りしてるよ……」
凛「肇も真面目に慰めなくてもいいのに」
未央「さっきの根に持ってる?」
凛「少し」
未央「あははは……まあ、悪気はないって。卯月はどう?」
卯月「美穂ちゃんかな」
未央「へえ、何で?」
卯月「何か、一緒にいるとふわふわするから」
凛「分かる」
未央「癒されるって感じ?」
卯月「そうそう」
凛「言い出した未央はどうなの?」
890 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:07:13 t/Ch5iSc
未央「ふふふ……」
凛「もったいぶらないでいいから」
未央「シンデレラガールズと組む!」
凛「あの二人?」
卯月「大丈夫?」
未央「何で心配そうな顔されてるの!?」
凛「いや、蘭子と愛莉でしょ?」
卯月「未央ちゃんが霞みそう」
未央「失礼な! そうすれば私も一気にトップアイドルに……えへへへ」
凛「何それ」
卯月「駄目だよ、二人の足を引っ張ったら」
未央「何かさっきからしまむーが毒舌なんですけど!」
凛「心配してくれてるんだから」
未央「納得いかない……」
891 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:08:25 t/Ch5iSc
凛「はいはい、じゃあ次は卯月」
卯月「なら、大人になったらしてみたい事」
凛「あ、それさっきちょっと話した」
未央「誰と?」
凛「楓さんと肇、お酒が飲めるねって」
未央「しぶりんってそういうの興味なさそうに見えるけど、もしかして酔うと凄い?」
凛「飲んだことないのに分からないよ、それで卯月は大人になったら何がしたいの?」
卯月「思いっきり長電話したい!」
未央「ああ、これこそ島村卯月だ」
凛「何か安心した」
卯月「何でほっこり!? 今しようと思ってもお母さんがいい加減にしなさいって怒るから」
未央「うんうん」
凛「そうだね、大人になったらしようね」
892 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:10:18 t/Ch5iSc
卯月「何だろう、この感じ」
凛「未央は?」
未央「大人になったらかあ」
凛「そのまんま大きくなりそうだよね」
未央「胸とか」
凛「くっ」
卯月「凛ちゃん……」
未央「勉強したいな」
凛「……へえ」
卯月「未央ちゃん……」
未央「ほら、今ってアイドルと学業と両立してるけどこれって本当に両立なのかなって本田未央は思った訳です」
凛「うん、確かに」
未央「今ってまだまだ与えられた事を何とかこなしてるだけな気がして、自分から何かを得ようって余裕がない」
893 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:11:42 t/Ch5iSc
卯月「そんな事を考えてたんだ」
未央「だから、近い将来は自分が何を得たいかって考えて動ける人になりたいなって思う」
凛「今、目の前にいるの本当に未央?」
卯月「違うんじゃない?」
凛「だよね」
未央「何でそんな扱いなのかな!」
卯月「何か意外だったから」
未央「私もこういう事を考えるときもあるってこと、さあしぶりんの番だよ」
凛「大人になったら、か」
未央「恋かな」
凛「こ……!」
未央「お、図星?」
凛「そんな訳ないでしょ、大体アイドルなんだからそんなの」
894 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:12:32 t/Ch5iSc
卯月「もう未央ちゃんすぐにからかうから」
未央「ごめんって、それで?」
凛「うん、その……さ」
未央「うんうん」
凛「もう少し……素直になりたいなってやっぱりなし!」
未央「もう無しにはなりませんなー」
卯月「素直かあ」
凛「ああもう……そうだよ」
未央「でもしぶりんって顔に出る方だと思うけど」
凛「そうじゃなくて、何か気持ちと言葉がすれ違うって言うか」
未央「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」
895 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:13:06 t/Ch5iSc
楓「ぽいずん」
卯月「凄く普通に入ってきた」
未央「名人芸だね」
凛「もう参加すればいいんじゃないかな、あの人」
卯月「それで、例えばどういう時に思うの?」
凛「こう、何て言えばいいのかな」
卯月「言葉を選んじゃうんだね」
凛「そうなのかな」
卯月「こう言えば傷つかないかなとか、こういう言い方のほうが印象がよくなるかなって」
凛「何か、嫌な奴だ」
卯月「それだけ相手の事を気遣えるって事だよ」
凛「でも、何か飾ってる気がして」
896 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:14:03 t/Ch5iSc
未央「残していこうか、私達の足跡!」
凛「未央」
未央「はい」
卯月「私は凛ちゃんのこと好きだよ」
凛「いきなりどうしたの?」
卯月「凛ちゃんは私をどう思ってくれてる?」
凛「もちろん、仲間として大事に思ってる」
卯月「そういう言い方と、好きって返すのと頭の中で選んだでしょ?」
凛「うん」
卯月「それが凛ちゃんの優しさなんだよ、いつも相手の事を考えてる」
凛「そうなのかな」
未央「つまり対策としては」
卯月「自分の事を考えてみればいいんだよ」
897 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:15:21 t/Ch5iSc
凛「自分の事だけ?」
未央「何か言いたいこと言ってみよう、もう他人の目とか気にせずにさ」
凛「じゃあ」
卯月「うんうん」
凛「一緒にいてくれて、ありがとう」
卯月「う……」
凛「卯月?」
卯月「うわあああああああありんちゃああああああああああああああん!!」
凛「ちょっと凄い顔になってるって!」
未央「泣こうと思ったのにガラスの向こう見ちゃった……」
肇「どうして凄い顔、という一点のみで対抗しようとするんですか……」
楓「何となく」
898 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:16:23 t/Ch5iSc
未央「じゃあ最後のテーマはしぶりんから!」
凛「ファンへのメッセージでいいんじゃない?」
卯月「王道だあ」
未央「未央を見よ!」
卯月「……ギャグ?」
凛「未央」
未央「えっと、最後でいいよ! 卯月から」
卯月「はい、皆さん。私達が全員で歌う最初のライブです! 一人一人、皆と一緒に歌って踊って楽しめる様に頑張りますのでよろしくお願いします!」
未央「普通」
卯月「普通でいいの!」
凛「未央、思いついた?」
未央「も、もうちょっと」
凛「なら言っちゃおうかな」
899 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:17:25 t/Ch5iSc
未央「バトンターッチ!」
楓「私?」
卯月「バトンが場外に飛んでっちゃった」
凛「マイク切って」
楓「ふふふ、させないわリンリン!」
凛「リンリン!?」
卯月「あったなあそんなこと」
未央「さあ楓さんどうぞ!」
楓「来週の夜はライブに行かないと!」
凛「」
卯月「」
未央「」
肇「だから一人でやるって言ったのに……」
900 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:18:17 t/Ch5iSc
楓「夜と行かないとのないとで」
凛「分かってるから、誰よりも私が分かってるから」
楓「肇ちゃんはいどうぞ」
卯月「バトンを放り投げた」
未央「あんなの絶対に受け取りたくない」
凛「元凶は未央だって分かってるよね」
肇「あ……え……」
凛「困るよねこんなの」
卯月「でも助け船は出さないんだ」
未央「出せないでしょ」
楓「3、2、1」
肇「ラ、ライブでブイブイいわせますから!」
凛「後で慰めよう」
901 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/12(水) 15:18:49 t/Ch5iSc
卯月「もう、パニックだったんだろうね。ギャグの事だけで頭が一杯になっちゃって」
未央「魂の抜けたトンボみたいな顔してるよ……」
卯月「じゃ、じゃあ未央ちゃん」
未央「頑張ります!」
卯月「終わり!?」
未央「もう、傷は負いたくない」
卯月「もう最後になっちゃったけど、凛ちゃん」
凛「今、こうして私がアイドルをしてるのって一つの奇跡だと思ってる。
生まれてから今まで、たくさんの人と出会って、その一人でも欠けていたら今の私はなくて。
そんな奇跡の積み重ねがようやく一つの形になる日が来ます。
たくさんの人が集まれば、きっと想像もしない凄いことが起きる。
そんな未来を信じてるから、私はこれからも歌い続けられるのかな。
アイドルマスターシンデレラガールズが送るスペシャルライブ、きっと貴方にも奇跡が起きる」
未央「うん、きっと盛り上がるよ」
凛「皆、待ってるから」
904 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:50:37 iTaRMfL.
モバマス連作短編30
「輝く世界の魔法」
忍「おはようございま……」
P「おはよ、何を途中で固まってんだ?」
忍「こんなに人がいないんだと思って」
P「今日は特別、言ったろ? シンデレラガールズフェスティバル」
忍「あ、そっか」
P「転入手続きは終わったか?」
忍「試験合格してよかったあ」
P「まあ、そういう学校だから」
忍「でも、今日はその準備で大忙しなんだよね?」
P「ああ、だから人も少ないだろ?」
忍「もしかして役立たずだから事務所にいろって言われたとか」
P「休暇中だったって言っただろ! 俺は先月ちょっと入院してたんだよ」
忍「怪我?」
P「ちょっと色々あったんだよ。それにこの前の765とうちのカバー企画の、参考にって送ったと思うけど」
905 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:51:36 iTaRMfL.
忍「あれ? うん見た!」
P「あれ俺が企画した」
忍「へえ、凄いんだ」
P「ちなみに工藤さんなら誰に入れる?」
忍「如月千早さんかな、綺麗だって素直に思った」
P「まあ、妥当だな」
忍「でもよかったよ、渋谷凛も佐久間まゆも橘ありすも可愛かった」
P「これからその仲間入りだ、今日は見てるだけだが。パスは貰っただろ? 気楽に見て来い」
忍「Pさんも来るの?」
P「後で、やる事がないわけじゃないから」
忍「分かった、じゃあまた後で」
P「ただ現地に行っても仕事がなさそうなのが問題だな、本当に見てるだけかも」
聖來「あ……」
906 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:52:39 iTaRMfL.
P「聖來さん、おはようございます」
聖來「お、おはよ」
P「やーっと会えた、このまま会えないかと思ってましたよ」
聖來「えっと、ごめん!」
P「いえ別に、利用させてもらいましたから」
聖來「利用?」
P「誰かが引っ掻き回さなかったら、俺もまゆも渋谷さんも動き出せなかった」
聖來「トラブルメーカーってこと?」
P「まあ、有り体に言えば。聖來さん年の割りにそういうところフットワーク軽いですから」
聖來「と、し、の、わ、り、に?」
P「冗談ですって、助かりました」
聖來「まだアタシも若い……よね?」
P「若いですよ、俺はもうおいさばらえてますから」
聖來「これからでしょ?」
P「プロデューサーって舞台装置だと思ってたんです」
907 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:54:45 iTaRMfL.
聖來「装置?」
P「そうです、アイドルに仕事を提供するだけの機械」
聖來「そんなのって」
P「そうですね、違うのかなって思い始めてきました」
聖來「アタシが言う権利なんてないかもしれないけど、違うよ」
P「アイドルを辞めた時点で、意味なんてなくなると思ったんです。俺の名前も、顔も、性格も、年齢も、
一切誰も気にする事はない。アイドルが輝いていればファンは満足ですし、それ以外に目を向ける必要性なんて全くない」
聖來「そういうところに目を向ける人もいるよ」
P「そんなところに目を向ける暇があったらアイドルの方を向いた方がいいですよ。ただそれでも俺の生きてきた過去が
アイドル達の未来に繋がることもあるのかもしれないって、そんな気がしてきたんです」
聖來「絶対に繋がってる」
P「色んな場所に色んなアイドルがいて、色んなプロデューサーもいる。その中でここにはこれだけの人が集まった。
そこに意味があるなら、プロデューサーとしてこれに勝る喜びもないかなと」
聖來「うん、示すよ。今日のステージで」
P「行きましょうか、待ちに待った夢の舞台へ」
908 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:55:34 iTaRMfL.
凛「大きい……」
奈緒「全員が立つからなあ、これだけ大きくてもまだ足りないんじゃないか?」
凛「4万人だって」
奈緒「完売したのか?」
凛「うん、さっき統括から聞いた」
奈緒「プレッシャーが半端じゃないな」
凛「それだけ期待されてる、まだまだ上には上がいるけど」
奈緒「5位だったもんな」
凛「……本当に掲げられるとは思ってなかった」
奈緒「ま、そんな時もあるって」
卯月「凛ちゃん、ここにいたんだ」
奈緒「おはよ、ニュージェネレーションの残りは?」
卯月「トレーナーさんと最終チェックしてる」
奈緒「大丈夫か?」
凛「始まれば何とかなるんじゃないかな、私達なりに」
909 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:58:15 iTaRMfL.
卯月「後ろにいる人達にまで届くかな?」
奈緒「叫んでみるか?」
凛「一人じゃまだ届かないだろうね」
卯月「皆で?」
凛「これだけいるなら届く、どこまでも」
泉「女P」
女P「調子は……聞くまでもなさそうね」
亜子「ここで一気に名前を売れば億万長者や!」
さくら「そんなにうまくいくかなぁ?」
先P「森久保ぉ!!」
拓海「ったく……本番前にかくれんぼかよ」
美嘉「また隠れちゃったの?」
女P「逃げたというか、プレッシャーに押し潰れてる」
910 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:58:58 iTaRMfL.
莉嘉「楽しいのにねーっ☆」
智絵理「がんばりましょう。がんばれば、きっと何かが変わります……」
女P「そうね、変わった。だから今日はそれを見せる日」
泉「ニューウェーブのまた新しい、一つの波……か」
先P「しかしまたとんでもない所に野外ステージを作ったもんだな」
女P「近くに病院あるけど、許可取ってるの?」
ちひろ「はい、それはもうしっかりと」
女P「……よく出ましたね?」
先P「まあ、出るだろうさ」
女P「何か事情でもあるの?」
911 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 15:59:36 iTaRMfL.
先P「さあね、あるかもしれないしないかもしれない」
ちひろ「お二人とも、宜しくお願いしますね」
先P「あいあいさー」
女P「少し、様子でも見てきます」
ちひろ「もうすぐです」
先P「恨み言の一つも言いませんね、貴方は」
ちひろ「ありませんから、じゃあちょっと外の様子を見てきます」
先P「……敵わんな、あの姉弟にも」
912 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:01:03 iTaRMfL.
あい「始まると思うと、嫌でも緊張してしまうな」
千枝「あいさんでもですか?」
あい「もちろん、千枝と同じだよ」
肇「どうしよう……」
あい「どうしようも何もないだろう、気にし過ぎだ」
肇「どうしてあんな事……」
千枝「あんな事? あ、ライブで――」
春菜「そこまでにしといてあげようね」
千枝「むぐむぐ……」
肇「聞いてました?」
春菜「お、応援の気持ちで」
ゆかり「ラジオのお話ですか?」
肇「はい、あのもしかして」
913 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:02:01 iTaRMfL.
ゆかり「丁度、プロデューサーさんと新幹線が一緒になりましてその時に」
あい「それで、彼は何か言っていたかい?」
ゆかり「楓さんには肇も勝てなかったかって笑ってましたよ」
肇「」
春菜「あいさん、どうフォローすれば」
あい「本人の登場を待つしかないだろう」
泰葉「おはようございます」
あい「おはよう」
肇「……おはようございます」
泰葉「どうかしたんですか?」
あい「触れないでやってくれ」
914 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:02:40 iTaRMfL.
杏「思えばよくここまできたもんだよね」
まゆ「まだ途中です」
杏「そうだけどさ」
まゆ「彼女からのお願い、叶いそうですね」
杏「ま、ちょっと形は違うけど」
まゆ「それでも形になりました」
杏「そう」
まゆ「……ありがとうございました」
杏「何の事?」
まゆ「何の事でしょうか」
杏「自分でも分からないのにお礼?」
まゆ「はい、お礼です」
杏「そう、なら好きに言ってればいいよ」
915 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:04:37 iTaRMfL.
翠「はい、ええ、ここで……」
千秋「私が隣で――」
P「千秋さ……ああ打ち合わせ中ですか、すみません」
千秋「中途半端にしないで最後まで言いなさい」
P「大丈夫?」
翠「ええ、折角の時間をお邪魔はしません」
千秋「何を……」
翠「後でまた来ます」
P「礼儀正しいですよね、仕事してて本当に楽ですもん」
千秋「まるで私が楽じゃないみたいな言い方ね」
P「楽じゃありませんよ。映画の話、正式に決まりました」
千秋「そう」
P「内心、大喜びしてる顔ですね。千秋やったわ! って心の中でガッツポーズしてるのが見えますよ」
千秋「そうね」
P「へ?」
916 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:07:57 iTaRMfL.
千秋「何? 貴方も少しは喜びなさい」
P「まあ意外とお茶目なのは知ってます、今度の誕生日は熊さんのパジャマでいいですか?」
千秋「それを着て貴方の元へと行けばいいの?」
P「誕生日ケーキ作って待ってますよ」
千秋「……無駄に器用よね」
P「友達からお前は女の子かって突っ込まれるようになってきました、男らしい趣味を持ちたいです」
千秋「彼女みたいに?」
P「はい?」
李衣菜「ねえねえロックに決めてみたんだけど! どう!? どう!?」
P「スタッフ相手に何をやってんだあいつ」
千秋「ギターって逆さまに持つ物なのかしら?」
P「……あいつが言うならそうなんでしょう」
917 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:10:01 iTaRMfL.
菜々「ウッサミーン! うーん、違う……」
美穂「違うんですか?」
菜々「ああえーっと、今日はいつもよりもフルパワーのウサミンパワーを」
こずえ「でんしゃでいちじかん?」
菜々「」
こずえ「って、マキノがいってたよー?」
菜々「電車と言ってもですね」
桃華「地球上の電車ではありませんわ」
こずえ「うちゅう?」
桃華「ええ、空よりも高く飛ぶ銀河鉄道ですの」
菜々「そ、そうなんですよ! 桃鼻ちゃんよくご存じですね!」
美穂「へぇーそうなんですか」
未央「そこ、納得するところ!?」
マストレ「本田、まだ話は終わってないが?」
918 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:13:11 iTaRMfL.
未央「誰かー、誰か私を助けてー!!」
星花「今日も未央さんは元気ですね」
ほたる「い、いいんでしょうか」
ありす「星花さん」
星花「ありすちゃん、おはようございます。お久しぶりですわね」
ありす「前に会った時、捨てた物が欲しくなる時ってありますか? って聞きました」
星花「舞台の時のお話?」
ありす「はい」
星花「覚えています、今日はその続きでしょうか?」
ありす「なくす前に気づけました、私にとって絶対になくしたらいけないものだと」
星花「ありす、とても響きのよい名前。心の音色がとても素敵なありすちゃんだから、それを忘れないで」
ありす「はい、もう忘れません。絶対に」
919 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:15:27 iTaRMfL.
みく「ククク……」
春菜「誰かと思えばこの前、私に負けた人」
みく「ふにゃあああああああ!! いつまでそれを言うの!?」
春菜「この眼鏡の輝きが曇らない内は」
みく「今日のみくは一味違うのにゃ! 出てくるのにゃ!」
春菜「……何が?」
みく「あれ?」
千枝「アナスタシアさんとのあさんならあっちで最終チェック中ですよ」
みく「……後で来るのにゃ!」
千絵「みくさんって……」
春菜「それ以上は言わない約束」
P「慌ただしいな、すみません」
友紀「あ、プロデューサー!」
P「別人です」
920 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:16:49 iTaRMfL.
友紀「何で逃げるの? ねえねえ、もう日本シリーズも終わって随分経つよ?」
P「苦い記憶が蘇ってきた」
友紀「忙しくっていけなかったからさ、代わりにキャンプでいいよ」
P「キャンプ? 沖縄ってことか?」
友紀「そうそう、全球団はまあ無理だとしても半分くらいは」
P「んなこと言ったって、来月ツアーあるでしょう」
友紀「……沖縄?」
P「福岡から始まって名古屋、仙台、札幌、広島、千葉、東京、横浜、神戸、大阪、埼玉」
友紀「よりによってその都市……」
P「また今度ですね、シーズン中と被らなくて残念だったなぁ姫川!」
友紀「スターズ最下位スターズ最下位スターズ最下位」
P「……大人げない」
921 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:17:59 iTaRMfL.
加蓮「見つけた」
楓「こんにちは」
加蓮「この時をずっと待ってた、やっと同じステージで歌える」
楓「リベンジですか?」
加蓮「そうだね、楓さんだけにはこだわりたいかな。勝敗決める方法なんてないんだけど」
楓「彼には?」
加蓮「ううん、自己満足だから。あの日、Pさんの期待に応えられなかった自分へのけじめみたいなもの。これは自分勝手な宣戦布告」
楓「では私も宣戦布告です」
加蓮「私に?」
楓「どっちがラブリーって言われるでしょうか」
加蓮「あれ、本気なんですね……」
幸子「それならボクの出番ですね!」
922 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:18:46 iTaRMfL.
加蓮「……」
楓「……」
幸子「何ですかこの空気は!? 折角ボクが出てきたのに!」
楓「偶然、通りかかっったはいいものの」
加蓮「出てくるタイミングを完全に見失ってどうしようかと思いあぐねていたって感じ?」
幸子「そこでこのタイミングを選ぶところがボクのボクたる所以ですね!」
加蓮「そうですねー」
楓「い○ともー」
幸子「何でボクがおちょくられないといけないんですか」
楓「冗談はともかくとして」
幸子「本当に冗談だったんですか?」
楓「ファンの心を掴んでこそアイドル」
加蓮「うん」
楓「ファンの心も掴めないなら、諦めた方がいいですよ」
923 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:21:36 iTaRMfL.
加蓮「ふうん、そういう意味なんだ。宣戦布告って」
楓「私は鳩ですから」
加蓮「アイドルになってよかった、色んな夢ができたから。今日、その一つは叶えるけどね」
P「いい気迫だな」
幸子「Pさん」
P「今日、加蓮に関してはちょっとした発表がある」
加蓮「私? 新しい仕事?」
P「そう、俺が正式に加蓮と奈緒をユニットとしてプロデュースする」
幸子「……あの」
P「幸子はソロ」
幸子「いえ、そうではなく」
P「何だよ、ちゃんと俺が担当するって」
幸子「それならいいんです! 光栄に思って下さい、Pさんが可愛そうなのでボクがプロデュースされてあげます」
924 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:23:11 iTaRMfL.
楓「嫌なら嫌って言った方がいいですよ、幸子ちゃん」
加蓮「そうだよ無理することないって」
幸子「……Pさん」
P「するからそんな目で見るな、ああ言えばこう言われるのは予想ついてただろ?」
奈緒「ステージの反対側にいたのか、誰かいるとは思ってたけど」
加蓮「奈緒」
卯月「私達もいますよ」
加蓮「凛と奈緒は聞いてた?」
凛「ユニットの事なら統括から」
奈緒「ユニット?」
P「プロデューサー目線で申し訳ないんだけどさ」
加蓮「意味があるの?」
P「統括と三人組にしようとは話してたんだ。ニュージェネレーションの真似じゃないけど、そんな感じにしようって」
奈緒「それで何でこの三人なんだよ?」
925 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:24:03 iTaRMfL.
P「統括にとってこの最初にスカウトしたアイドルが渋谷さんで、俺がこの事務所で見た最初の二人は加蓮と奈緒だったから」
凛「何かいつまでも他人行儀だね」
P「他人行儀?」
凛「名前」
P「いいのか?」
凛「嫌ならそんな話題を振らない」
奈緒「ユニット組むのに一人だけ苗字って変だろ?」
P「神谷さんと北条さん」
加蓮「凛でいいでしょ」
P「……り、凛」
凛「何かまだ躊躇いが見える」
楓「きっと嫌いなんです」
P「嫌いじゃありませんよ!」
926 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:24:53 iTaRMfL.
卯月「でもそうすると私達の活動は減っちゃうんですか?」
統括「違うな」
P「統括」
統括「卯月、未央にも新ユニットを既に検討中だ」
卯月「私達も?」
凛「色々と動いてるんだね」
P「このままずっとって訳にもいかないさ。残すべき部分を残しながら、少しずつ変わっていく」
凛「そうやって、続いていくんだ」
P「そうだな」
統括「感傷に浸る時間はない」
P「そろそろ開場時間ですね」
凛「見せるよ。私達のこれまでと、これからを」
927 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:27:32 iTaRMfL.
愛莉「皆さんお待たせしました、凄い歓声……」
蘭子「歓喜の声が祭壇に満ち、同胞たちの命の高鳴りが天に響く!」
愛莉「この瞬間を私達もずっと待ってました、今から何が始まるんだろうって胸がドキドキします」
蘭子「聞くがいい! 私たちが奏でる魂の歌声を! 」
愛莉「皆さんにとって、今日が忘れられない1日になります様に。始めましょう!」
蘭子 愛莉「シンデレラガールズフェスティバル!!」
凛「お待たせ!」
卯月「最初は私達です!」
未央「ニュージェネレーションが魅せちゃうよ!」
凛「うん、いい空気。今日を皆のホントの記念日にするよ」
928 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:29:18 iTaRMfL.
みく「やーっとみくの出番にゃ! 皆、待ってたかにゃー!?」
のあ「涼やかな……沈黙」
アナスタシア「スニェーク……雪降る夜のようですね」
みく「どうしていきなり静かになるの!?」
麗奈「アーッハッハッハッ!!」
みく「ど、どこにゃ!?」
麗奈「このライブはこのレイナ様が主役、魚も食べられない猫は引っ込んでなさい!」
みく「さ、魚!?」
麗奈「ハッ! いいザマね」
「そこまでだ!」
みく「今度は何!?」
のあ「……上」
アナスタシア「геро?й 、ヒーローですね」
929 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:32:00 iTaRMfL.
光「魚が食べられなくてもいい。それでも猫キャラを演じようというその姿勢、感動した!!」
みく「キャラじゃないのにゃ!!」
光「今日は皆の希望が一つになった日、好き勝手にはさせない!」
麗奈「ヒーロー気取りがアタシに勝てるなんて思わないことね! このスペシャルバズーカ改を食らいなさい!」
光「やめろ! そんな事をしたらまた――」
みく「読めたにゃ」
麗奈「はっ、もう遅いわ! 食らえ――」
光「……成功作だったのか、照準が逆だけど」
みく「思いっきり自分に掛かったにゃ」
麗奈「せ、折角……」
のあ「誕生日おめでとう、みくちゃんと書いてあるわ」
みく「誕生日?」
アナスタシア「С Днем Рождения ……誕生日ですね、みく」
930 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:33:56 iTaRMfL.
みく「お、覚えててくれたのにゃ!?」
麗奈「たまたまよ、次は覚えておきなさい!」
愛莉「はーい、ケーキの入場ですよー!」
かな子「二人で作ったんですよ、そんなに大きいの作れなかったんですけど」
みく「……凄い」
春菜「では、これがアイドル一同からの誕生日プレゼントです。今日のイベントと誕生日が被った幸運は見事だね」
みく「う、う、嬉しい……」
春菜「じゃあ折角なので、ファンの皆さんもよければご一緒に!!」
ハッピーバースデーみくにゃん!!
931 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:35:58 iTaRMfL.
瑞樹「さて、さっきまでの余韻が残っている中で出てくるのが私達っていうのも」
早苗「誕生日、いつまで楽しみだった?」
志乃「私は今も好きよ、お酒が飲めるもの」
瑞樹「別に誕生日じゃなくても飲んでるじゃない」
楓「誕生日に飲むお酒は特別なんです」
あい「飲みすぎにはくれぐれも注意してくれたまえ、今日の打ち上げで子供達の前で醜態を晒さないように」
早苗「大丈夫よ、もう立派な大人なんだから!」
あい「その言葉、信じてもいいのかな?」
早苗「もっちろん!」
あい「では、後ろのスクリーンに注目してもらえないだろうか。面白いものをお見せしよう」
瑞樹「ファンの人たちに? 聞いてないけど」
早苗「え、何?」
あい「見てのお楽しみさ」
932 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:36:49 iTaRMfL.
早苗「いやー、あーもう美味いわ! 本当にサイコー!!」
志乃「あら美味しそう」
瑞樹「これ肇ちゃんのドラマの時の……」
あい「私も出演したドラマだが、これは撮影後の映像だ。当然、薫もそこにいた」
楓「ざわ……ざわ……」
早苗「反応をそのまま口に出さないで! いつ撮ったの!?」
あい「メイキング映像のおまけだが、なかなかいい笑顔だ」
瑞樹「こういう年の取り方はしたくないわね……」
早苗「ちょっと、どっちの味方なの!?」
933 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:38:46 iTaRMfL.
みりあ「えーっと、お酒って美味しいのかな?」
薫「お歌はすっごくきれいだったよ!」
舞「飲んだら歌も上手くなるの?」
仁奈「お酒の気持ちになるでごぜーますか?」
みりあ「なれるかな? 菜々さんに聞いてみよっか?」
舞「ステージ裏から悲鳴が聞こえたけど……」
みりあ「後でステージに出たときに答えを教えて下さいね! じゃあみりあ達でRomantic Now!!」
934 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:39:45 iTaRMfL.
菜々「Romantic Nowって、何だか懐かしい響きですよね。だ、れ、か、ロマンティック、と、め、て。なーんて、え? 古い?」
礼子「発売1985年だけど、菜々さんって呼んだ方がいいのかしら?」
菜々「そ、そそそんな事ないですよ礼子さん!!」
礼子「20歳くらいの子からちゃん付けで呼ばれるって厳しくないの?」
菜々「17歳ですから!!」
礼子「それで答えだけど」
菜々「本当にナナが答えるんですか?」
礼子「お酒で歌が上手くなるの?」
菜々「えー、あ! そうですウサミン星では15歳からお酒が飲めるんですけど、やっぱり歌はその人の持つ才能といいますか努力といいますか!」
礼子「……そう」
菜々「そうなんです!」
935 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:40:58 iTaRMfL.
法子「お酒が15歳からって凄い星!」
ゆかり「お酒が15歳なら結婚も15歳なんでしょうか」
響子「け、結婚!?」
ゆかり「例えばです、私達はまだ早いお話ですけど」
法子「可愛いかなあ、ドーナツ型のウェディングドレス!」
響子「でも、まだまだ遠いお話です!」
ゆかり「そうですね、10年経てばあるいは」
留美「10年ですって」
美優「そ、そんなお話をしてましたね」
留美「どうしてMCの順番がこうなのか分かったわ」
美優「10年……」
留美「どうして笑いが起こるのかしら」
美優「ほら、皆さんもそこは! えっと」
留美「そういえばこの前、ウェディングドレスを着た仕事があったのよ」
936 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:41:48 iTaRMfL.
美優「はい! 凄くお綺麗でした!」
留美「その反響でファンレターが男の子から届いたの」
美優「将来、僕が貰います! とかでしょうか?」
留美「るみちゃん結婚してって書いてあったわ」
美優「良かったですね」
留美「最初それを読んだ時に、子供から婚期を心配されてるのかしらって不安になったのだけれど」
美優「……」
留美「大丈夫よね?」
美優「……」
留美「まだ大丈夫よね?」
937 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:43:49 iTaRMfL.
若葉「ファンレターですかぁ」
珠美「珠美はここでファンの方に申し上げたいことがあります!!」
若葉「珠美ちゃん?」
珠美「ファンレターは非常にありがたく読ませて頂いておりますが、珠美にランドセルはもう似合いませんから!!}
若葉「珠美ちゃん分かるよ!」
珠美「分かりますか!」
若葉「お酒も飲めますから、ブログで心配するコメントを頂けるのは嬉しいんですけどー」
珠美「年相応に扱って頂ければと思います!」
泰葉「年相応ですか」
ほたる「あんまり、考えたことなかったですね」
泰葉「やっぱり子役からこの世界にいると、どうしても大人びたっていうか」
ほたる「普通の子とは違う世界にいる事になりますから……」
泰葉「子供らしさって考えると、どうしても深く考えすぎて不自然になっちゃうもんね」
ほたる「まずは自分らしくです」
泰葉「そう、そこから」
938 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:44:54 iTaRMfL.
友紀「やっぱりそうだよねー!!」
比奈「もう少しアイドルらしくするのもありとも思うんすけど」
友紀「いいんだって! さっきの二人もそう言ってたし!!」
ありす「とはいえ、キッチンでごぼうを持って構えるのはどうかと思いますが」
比奈「今日はリベンジって事すけど、審査は?」
ありす「柚さんはちょっと具合が悪いそうですので」
友紀「だからここにいるんでしょ?」
比奈「……聞いてない」
ありす「教えてませんでしたから、さあどうぞ。きっと食べれば黙ります」
友紀「ほらほら遠慮しないでいいから! ね!?」
939 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:46:07 iTaRMfL.
藍子「ど、どんな味だったんでしょう」
美嘉「あんまり考えない方がいいと思う」
裕子「サイキックパワーで当ててみせます!」
藍子「料理の味をですか?」
裕子「はい、目を瞑れば見えてきますから……」
美嘉「……莉嘉」
藍子「……?」
裕子「むむむむむ……見えます、見えてきました! 分かりました!」
莉嘉「食べてみた方が早いって!」
藍子「あ」
940 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:46:38 iTaRMfL.
真奈美「見事な騙し討ちだった」
千枝「ありすちゃん、舞台裏で不思議そうな顔で裕子さんを見てましたよ」
真奈美「私とて、目を開けていきなり料理を放り込まれた平静を保てるかどうか」
千枝「真奈美さんは料理もできるんですか?」
真奈美「そこまでではないよ、趣味のレベルだ」
千枝「クリスマスの時に、ありすちゃんがケーキを作ってくれたんです」
真奈美「ほう、あの子も丸くなったね」
千枝「それで食べて、味は普通だったんですけど」
真奈美「……ああ」
千枝「次の日、お腹が痛くなって」
真奈美「それ以上はやめてあげなさい」
941 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:47:52 iTaRMfL.
イヴ「クリスマスと言えば私でーすっ!!」
泉「一日で世界を一周……必要とされる速度は」
亜子「というか飛行機で回ったら交通費が凄いことになりそう」
晶葉「前から聞いてみたかったんだが、ブリッツェンは本当に生物なのか?」
イブ「ちゃんと生きてますからぁー!」
泉「生物でなければ何?」
晶葉「この世には不思議な現象が五万とある、もしかしたら精霊の類かもしれない」
亜子「なんぼや!?」
イヴ「売りませんよ!?」
942 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:52:38 iTaRMfL.
茄子「不思議なことですか」
千秋「そうね、貴方のことね」
卯月「茄子さんは凄いですよねー」
千秋「どうして私がこの二人に挟まれることになったのかしら」
茄子「秋茄子コンビって言われてるじゃないですか」
千秋「本当に誰が言い出したのよ……」
卯月「美味しそうですよ?」
千夏「さて、もしかしたら今日の最大の盛り上がりかもしれないわね」
千秋「何、その箱?」
千夏「この中に三枚のくじが入ってるの。一枚は大吉、一枚は吉、一枚は凶」
千秋「……私に凶を引かせたいだけ?」
卯月「そんなのひいてみなければ分かりません!」
千夏「もちろん、対策は考えてあるわ」
943 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:53:31 iTaRMfL.
千秋「生半可な対策じゃ意味ないわよ?」
千夏「まず、最初に卯月ちゃんが箱に手を入れる」
卯月「はい!」
千夏「茄子ちゃんがそこに手を入れて」
茄子「こうですかー?」
千秋「何、この茶番?」
千夏「いいから見てなさい、二人とも選んだ?」
茄子「一枚ですよねー?」
卯月「大丈夫です」
千夏「いつもの通りなら、茄子ちゃんは大吉で卯月ちゃんは吉。残った一枚は」
千秋「私が引くんでしょうね」
千夏「さあ選びなさい、とはいっても余り物だけど」
千秋「……これでいいの?」
千夏「ええ、ありがとう」
944 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:55:45 iTaRMfL.
卯月「私が大吉なんでしょうか?」
千夏「開いてみたら?」
卯月「……吉です」
千夏「え!?」
千秋「どうして貴方がそこまで驚くのよ、ほら凶よ」
茄子「大吉ですー」
千夏「……結果がねじ曲がってる」
千秋「どういうこと?」
千夏「晶葉ちゃんに頼んで、それぞれ三人に反応するくじを作ってもらったの」
千秋「反応?」
千夏「それぞれ三人特有の波長に反応して、その手に吸い込まれるように引かれるくじを。
実験もして、その時は成功したのに……」
卯月「吉ですよ?」
茄子「大吉です」
千秋「どういうことなの?」
千夏「未来が彼女達の思う様に動いた、としか」
945 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:56:31 iTaRMfL.
都「これは謎ですね!!」
あい「謎なんだろうか」
都「謎ですよ、そして事件です」
あい「美羽、君は何をしているんだい?」
美羽「死体がしたいんです」
あい「……その迷走ぶりは嫌いではないよ」
薫「じけんー!?」
都「そうです、何者かに殺害されて」
あい「ちょっと待ってくれ、この台本のない寸劇は私も参加するのか?」
薫「はーい、かおるに逮捕されたい人は手をあげてー!!」
あい「喜ぶといい名探偵、容疑者は数万人規模だ」
都「この中に犯人が……?」
あい「というより、美羽くんはどれだけの人間から恨みをかっていたのだろうか」
946 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:58:56 iTaRMfL.
P「盛り上がってるな」
凛「ここにいたんだ」
P「しぶ……凛」
凛「しぶりん?」
P「……いや、えーっとだな」
凛「もしかして嫌われてる?」
P「……似てるんだよ」
凛「誰に?」
P「あいつに」
凛「ふーん、何となく分かった」
P「統括から言われたことないか?」
凛「ないけど、そう思わせる素振りは何度かあったかな」
P「なるほど、何とも言えないな」
947 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 16:59:51 iTaRMfL.
凛「そう?」
P「だって……ああ俺が言うことでもないか」
凛「私に兄がいたらあんな感じなのかなって」
P「統括みたいな兄?」
凛「変なのかな?」
P「そんなの人それぞれだ」
凛「あの人も、もう少し踏み込んだら普通の人だったりするのかな」
P「あっち」
凛「トレーナーさん……」
P「凛のライブを見てる時も穏やかな顔してるよ、あの人は」
凛「よく見てるんだ?」
P「凛が俺にアイドルとしての理想を重ねたように、俺はあの人にプロデューサーとしての理想を重ねているところがあるから」
948 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:02:22 iTaRMfL.
凛「……分かるかも」
P「違うのは態度だけだな、それともう一つ聞いておくが」
凛「もう出番」
P「そんな普通の男だって分かった相手にプロデュースして欲しい理由って何だ?」
凛「それを私も知りたい、それじゃ」
P「……女ってめんどくさい」
ルキトレ「本当だよねー」
P「アイドル見てなくていいのか?」
ルキトレ「ここがステージが一番よく見える場所だから」
P「凛と加蓮と奈緒でユニットを組むって言って、その後でユニット名の話になったんだ」
ルキトレ「決まりそう?」
P「全員、案が一緒だった」
ルキトレ「え? 一緒?」
P「俺が最後にライブをした場所の名前、そんなとこに気を遣わなくてもいいのにな」
949 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:04:29 iTaRMfL.
凛「今日、皆に発表があるんだ」
奈緒「三人でユニットを組むんだよな」
加蓮「それで、名前だけでも発表しちゃおうかなって思って」
奈緒「本当にあれでいいのか?」
加蓮「案が同じだったんだから文句なし、だよね?」
凛「奈緒と加蓮が同じこと考えてるとは思わなかった」
奈緒「いいだろ、このメンバーだとあれしか思い浮かばなかったんだから」
加蓮「ついに、かあ」
奈緒「泣くなよ」
加蓮「泣いてないって、でも……嬉しい」
凛「うん、私も嬉しい」
加蓮「凛と一緒だからってのも、当然あるからね」
奈緒「そこいちゃいちゃするなって、発表はどうするんだ?」
950 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:20:59 iTaRMfL.
凛「曲も何もかも未定だけど、名前だけは決まったから発表します」
加蓮「奈緒、言っていいよ」
奈緒「え、いいのか?」
凛「ほら、緊張しないで」
奈緒「わ、分かってる」
加蓮「3」
凛「2」
奈緒「よ、よし!」
加蓮「1」
奈緒「じゃあ発表する!」
凛「トライアドプリムス!」
奈緒「」
加蓮「凛……前のラジオでやられたのまだ根に持ってた?」
凛「やられた側の痛みを知って欲しかったから」
奈緒「だからってあたしにやるなよ!」
951 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:23:15 iTaRMfL.
凛「さて、もうそろそろ終わりが近づいてきちゃったね」
奈緒「次は何だ?」
凛「……観客に後ろを向く様に指示を出して? ってカンペが出てる」
加蓮「何だろ、奈緒は知ってる?」
奈緒「あたし達の視界の先って事だろ? 暗くてよく――」
春香「リベンジですよ! リベンジ!」
雪穂「春香ちゃん……」
伊織「一人で負けただけじゃない、こっちにまで押し付けないでくれる?」
真「そうだよ春香、僕たちは今日はゲストなんだから。勝負とかじゃないよ」
952 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:24:38 iTaRMfL.
美希「立ち直るのに時間かかりすぎなの」
千早「せ、接戦だったじゃない」
響「5位と8000票差って接戦って言うのか?」
貴音「響、数が全てではありませんよ」
真美「あの時に限れば全てだと思う」
あずさ「ま、まあ今日はお祭りだから……」
亜美「そうそう、そんな細かい事は気にせずにさー」
やよい「うっうー! 皆さん楽しみましょう!!」
先P「で、勝手に呼んだのは誰だ?」
女P「もう答えるまでもないでしょ」
953 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:28:27 iTaRMfL.
P「出てくるのかなって思ってましたよ」
765P「ばれてたか」
P「一週間の休みなんて不自然すぎますから、俺を抜きにして進めたい話があるんだろうなあと」
765P「あれはそんなんじゃない、ちひろさんからの善意だよ」
律子「そうやってすぐに人を勘ぐる癖は治した方がいいわよ」
P「勘繰られるような事をするからです」
765P「前の企画はいい布石になったよ」
P「ありがとうございます、忘れられないライブになります」
765P「いや、こっちこそいい経験だ」
954 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:30:11 iTaRMfL.
凛「あ、6位」
春香「ろく……」
美希「事実なの」
加蓮「凛は何位だっけ?」
春香「5位です!」
凛「たった1票!」
奈緒「変わらないだろ」
加蓮「負けは負けだって、だから次が楽しみになるんだから」
奈緒「次か、今日は……後で聞けばいいか」
凛「何の話?」
加蓮「何でも、始まるみたいだよ」
春香「皆と一緒に! 輝きの向こう側へ!!」
955 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:33:17 iTaRMfL.
律子「懐かしい?」
P「……そうだな」
昨日までの生き方を 否定するだけじゃなくて
これから進む道が見えてきた
奈緒「凄いな……」
加蓮「やっぱり上には上がいるね」
凛「進んでるのは私達も同じ」
加蓮「うん、そうだね」
奈緒「ああ、あたし達だってこれからだ」
輝いたステージに立てば 最高の気分を味わえる
全てが報われる瞬間 いつまでも続け
肇「春香さんと同じステージに立って、歌ったんだもんね」
ありす「歌っただけです、まだ同じステージには立てません」
肇「また明日から」
ありす「始まります。私だけの、橘ありすの道です」
どんなに遠くても行こう 憧れの世界
夢だけでは終わらせたくない
956 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:33:59 iTaRMfL.
未央「ついに! 最後の曲になっちゃっいました!」
卯月「初めて全員で歌うから上手くいくか分かりませんけど」
凛「どこまでも届く歌にしたい。ここにいる……ううん、世界中に響かせるから!」
お願い シンデレラ夢は夢で終われない
動き始めてる 輝く日のために
――
―
957 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:35:08 iTaRMfL.
エピローグ
花が咲いて、そして
女「おはようございます!!」
女P「おはよう、退院したの先週よね? もう大丈夫なの?」
女「はい、お陰様でもう元気です」
先P「まさかプロデューサーになろうとするとはな」
女「いいんです、春香も杏もまゆも頑張ってます……それに、彼がいますから」
女P「もったいないわね」
女「そんな事ありません。それで今日、私が同行するアイドルって――」
凛「ふうん、アンタが私のプロデューサー?」
女「……り……ん?」
凛「まあ、悪くないかな」
女「凛!!」
凛「やっと――」
未央「しぶりんの友達!? 私はね――」
卯月「島村卯月!! しまむーじゃないよ! 島村卯月だからね!」
958 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:36:21 iTaRMfL.
女「しまむー?」
未央「そう、この子の名前。シマ・ムー」
卯月「違うからね!!」
凛「……もう」
先P「めでたしめでたし、ですか?」
ちひろ「いえ、これから新しいステージが始まるんです」
統括「当然だ」
ちひろ「おはよう」
統括「凛」
959 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:37:43 iTaRMfL.
凛「あ、曲できたんだ?」
統括「トライアドプリムスの旗となる曲だ」
女「トライアドプリムス?」
凛「新しいユニット、奈緒と加蓮の三人で。担当はプロデューサー」
未央「いいなー、しぶりんだけ」
統括「何を言っている、お前達もだ」
卯月「あるんですか!?」
統括「ニュージェネレーションも平行して活動を行う、覚悟しておけ」
凛「もちろん、これからだって残していくから。私達の足跡」
960 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:38:17 iTaRMfL.
千枝「Pさんお出かけかー」
加蓮「恋しい?」
千枝「ライブいくなら、ブイブイで!」
肇「聞こえなーいなんにもきこえなーい!!」
加蓮「寂しいからって人の古傷を抉るのはやめてあげなよ」
奈緒「Pさんの机に座ってたって何にもないだろ?」
千枝「あるもんっ」
泰葉「何があるの?」
千枝「ぱんぱかぱーん!」
泰葉「アルバム?」
藍子「あ、もしかして撮ってくれてるんでしょうか」
春菜「カメラあげてたもんね」
泰葉「カメラ……」
奈緒「千枝、ちょっと待て」
961 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:39:13 iTaRMfL.
千枝「まずいちまいめー!」
加蓮「何……あ……」
奈緒「ああああああああああああああああ見るなああああああああ!!」
千枝「PCに取り込んで送信しちゃいました」
奈緒「誰に!?」
千枝「まゆさんに」
奈緒「」
加蓮「まさか幼馴染だったなんて衝撃的だったよ……」
泰葉「あの、千枝ちゃん?」
千枝「制服姿、とってもお似合いですね」
泰葉「うん、いい笑顔で言ってくれるのは嬉しいんだけど」
千枝「楓さんに送っておきました!」
泰葉「」
962 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:41:11 iTaRMfL.
肇「よかった……私は撮られてない」
楓「制服で征服、しちゃう?」
千枝「楓さんそれどこから持ってきたんですか?」
奈緒「セーラー服……」
加蓮「何かあれだよ、あれ」
楓「うふふ」
奈緒「うふふって」
肇「Pさんって制服好きなんですか?」
泰葉「いえ、そういう訳ではないと思いますけど」
杏「あいつにそんな趣味ないって」
千枝「未来の義妹ちゃん!」
杏「うん、絶対に嫌だ」
963 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:43:16 iTaRMfL.
千枝「飴あげるよ」
杏「お姉ちゃんって呼べばいい?」
奈緒「それでいいのか?」
杏「もう誰でもいいよ、諦めた。そっかー、こうなるのかー」
泰葉「似てないにも程があります」
杏「まあねー、昔からよく言われる」
千枝「Pさんの好きな食べ物は?」
杏「うわ、そういう質問してくるんだ」
千枝「気になってるの千枝だけじゃないよ?」
杏「……あのハーレム男」
964 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:44:03 iTaRMfL.
P「何か噂話されてる気がする」
ありす「自意識過剰です」
P「花粉症じゃないと信じたいんだけどな」
ありす「大人になってから掛かることもあるみたいです」
P「絶対になりたくないな」
ありす「なのに自ら山に行くんですね」
P「目指すは苺だ」
ありす「1年ぶりですね」
P「まさか次に来るのが一年後になるとは思ってなかった」
ありす「懐かしささえ感じます」
P「あの頃はここまで続くとは思ってなかったからな」
965 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:45:47 iTaRMfL.
ありす「私も、そうだったのかもしれません」
P「今はどう受け止めてる?」
ありす「名前、呼んでくれませんか?」
P「名前? ありす」
ありす「Pさんが呼んでくれたから、私はここにいるんです。今まで私の中にいなかった花が心の中に生まれて……咲いたんです」
P「呼んでくれたからか、じゃあ今は咲き誇ってるんだな」
ありす「Pさんが呼ぶ度に咲きますから、だから……」
P「だから?」
ありす「大好きになりました」
P「そうか」
ありす「軽く流しましたね」
P「流して欲しそうだから」
ありす「はい、流して下さい。まだ追いついてませんから」
P「じゃあ何で言ったんだ?」
966 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:46:24 iTaRMfL.
ありす「確認です」
P「確認か」
ありす「はい、1年ごとに」
P「じゃあ俺も確認かな」
ありす「何のです?」
P「憧れは憧れって気づけたのはありすのお陰だから」
ありす「……それは、春香さんへの気持ちですか?」
P「そう、俺自身がよく分かってなかった。あの時になってようやく分かったんだよ」
ありす「……」
P「俺にもいつか花が咲くのかもな」
ありす「かも、ですか」
P「そう」
ありす「私の花は簡単には枯れませんから、待ってます」
P「待てるのか? いつになるかも分からないのに」
967 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:46:57 iTaRMfL.
ありす「背が伸びて、髪形も変わって、見える景色も変わります。それでも名前は変われません、だからいいんです」
P「今日の苺、美味しいといいな」
ありす「レパートリー増えましたから、帰ったら作ります」
P「楽しみにしてる」
ありす「Pさん」
P「何だよ……ありす」
ありす「また、咲きました」
968 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/02/19(水) 17:50:42 iTaRMfL.
以上で完結です。
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