1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/06(月) 19:41:57.11 ID:qFtZ6YEJ0
佐々木「キョンは今まで異性と付き合ったことはあるかい?」

佐々木「まぁキョンくらい顔の造形が整っていれば、今まで数回は異性と付き合った経験があることは容易に想像できるが」

佐々木「つまり僕が聞きたい本心は、キョン、君がモテるのか?ということなんだが」

佐々木「まぁあれだけ男性的視点からみて美少女と言えるような子に囲まれていては、僕の想像をはるかに上回ることも想定しているんだが」

佐々木「どうなのかな?くっくっく」


キョン「ないが」

引用元: 佐々木「キョン、つかぬことをお伺いするんだが」 



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/06(月) 19:44:43.86 ID:qFtZ6YEJ0
佐々木「!?な、なんだって?」

佐々木「はは、冗談はよしてくれたまえ。およそ高校生という生理学的に見て人生で最も 的欲求が高まる時期に、
彼女のひとつやふたつ、あってしかるべきだと思うんだが?」

佐々木「ましてや君のような女 的に見てイケメンといえるような容姿だ。僕とは親友だろう?嘘はつかないでくれたまえ」

キョン「だから・・・ねえって」

キョン「大体なんでそんなことを聞く?お前くらい聡明なら俺がモテるなんて考えは起こさないと思っていたんだが」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/06(月) 19:48:07.53 ID:qFtZ6YEJ0
佐々木「え!?」

佐々木「い、いや、決して君がもてないことを想定していなかったわけではないよ。少し驚いただけだ」

佐々木「僕の周りに居る男子というのは皆女子に対して媚び、彼女をつくろうと必死な輩ばかりだからね」

佐々木「たまに僕もその標的になることもあるよ。キョンは本当に彼女がいないのかな?」

キョン「だからいねえってば・・・お前も言い寄られてんならつきあえばいいだろ」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/06(月) 19:50:43.04 ID:qFtZ6YEJ0
佐々木「へ、へえ?君は例えば、僕が彼氏を作ったとして、少したりともショックを受けたりはしないのかな?」

キョン「?ふつうにおめでたいことだと思うが。むしろお前みたいな変人に彼氏ができるなんて奇跡だと思ってパーティーを開きたいくらいだ」

佐々木「そ、そうなんだ・・・」

キョン「変なやつだな。」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/06(月) 23:57:34.13 ID:OBnXsl3U0
佐々木はそこまで言うと、濡れたブラウスの胸のあたりを指でつまんだまま、
悪戯っぽい笑顔を先ほどまで俺が無理やりに視線を逸らしていた、空へと向けた。

佐々木「・・・雨が上がったね、キョン」

いつの間にか、あの南国のスコールかとも思えた豪雨は止み、黒い雲の切れ目から
夕焼けというには暗い、それでも暖かみのあるオレンジ色をかろうじて保っている、夕日の
残滓がうかがい知れた。

キョン「ああ、やれやれ、だ」

佐々木「くっくっ。『やれやれ』だな本当に」

俺は傍らで何がそんなにおかしいのか、肩を震わせて笑う佐々木に視線を落とし・・・そうに
なりながら、二人でついさっきまで浴びていたバケツをひっくり返したような雨水で濡れた胸・・・
というよりは、胸を覆う 着に眼をやった。
そう、ほんの一瞬だけど確認した。
純白の、・・・その、そいつはほれ、よく解らんが、ブ    と呼称されるものだ。

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:02:29.99 ID:C5JzlXU20
佐々木「・・・また、僕の胸を見たね、キョン」



キョン「うっ! いや、その。胸・・・というよりはおまえを」

しどろもどろになってしまう自分も情けないが、そんな自分を微笑を湛えたままじっと、

そうだな、まるで隠しておいた●●本を見つけられて慌てふためく弟でも見るかのような

微妙な表情で見上げる佐々木に、どういう言い訳も陳腐な感じがした。



佐々木「さっきも言ったね、健康な中学生の男女がだよ、自然現象による回避不能な

状況でこうしたあられもない格好になってしまった。お互い、照れくさいのは同じだよ」



キョン「あ、ああ・・・すまん」

尻のポケットに手をやるが、ああ、今日もハンカチを忘れちまったようだ。



佐々木「くっくっ、別に照れることはないよ。僕はむしろ・・・。いや、まあいい」



キョン「あっ、そうだぞ、おまえ話があるって」


83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:08:00.99 ID:C5JzlXU20
佐々木「僕の話というのは・・・ね。本当はこんな突発的な現象によって置かれた、

不可抗力の結果と言えるような状況下で話すようなことじゃあないのだと思う」



佐々木はまた、わずかばかりの軒先の先、雲の切れ間で次第に夜へと変わっていく

空を見上げて言った。



佐々木「・・・君は僕のことをどう思っているかを」

そこで佐々木は一歩踏み出すとくるりと踵を返し、そう、真っ正面で俺を見つめて言った。



佐々木「知りたいと、かねがね思ってきたんだ」

キョン「え・・・それはどういう」

佐々木「異性として、と言ったら?」



キョン「・・・」


87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:14:41.73 ID:C5JzlXU20
何を言ってるんだ、佐々木は・・・?



さっきまでの俺たちは、佐々木をいつものように自転車の後ろに乗せ、塾へと急いで

ペダルを漕いでいた。そこへまるで熱帯のスコールのような大量の水を浴びせられ、

這々の体でこの、たまたま目に入った何屋なのか定かでない店の軒先を借りて雨宿りを

したってわけだ。

佐々木は俺の横で、ぐっしょりと水を吸って透けたブラウス・・・というよりは 着を

気にして、そう、俺にあまり見るなと言ったんだ。



佐々木「このまま、塾へ行ってもいいんだけど」

佐々木は珍しく、そうだな、恐らく知り合ってから初めてだろう、悪戯っぽい笑顔で口角を

ちょいと釣り上げて言ったのだった。

佐々木「もうちょっと、この時間を楽しまないか」と。



そうして他愛のない会話を交わし、いつの間にか雨の上がった空を二人で眺めている。

佐々木が会話を切り出したのはそんな瞬間だった。



俺がここまでのやりとりを反芻していると、佐々木はじっと俺の顔を無言で眺めている。


89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:20:57.31 ID:C5JzlXU20
俺が思わず視線を佐々木に向けると、その、否応なしに視界に入ってくるのは・・・。

ああ、美少女と褒め称えても誰にもとがめられることはない、十二分な容姿を持った

中学生の女子が、制服のブラウスをぐっしょりと濡らし、あまつさえその下の・・・

ええと何だ、二つの膨らみ・・・をだな、隠すところの 着的なものまで透けさせて。



キョン「あっおい佐々木、おまえ・・・その。透けてるから」

俺はさきほどやんわりとたしなめられた手前、チラ見しただけですぐ視線を斜め下に

落としつつ、言い訳のように言う。



佐々木「もういいよ、キョン。無理しなくても。健康な男子中学生が目の前の女子が

・・・そうだね、●●●までずぶ濡れになってしまっていたら。当然見たいだろう」

キョン「うっ、その」

佐々木「うん、逆に見たくないと言われればそれは僕にとっては」

佐々木はここでくくっ、といつもの笑い声を発したかと思うと、

佐々木「女子としては屈辱かも知れないね」



キョン「あっ・・・いや、おまえがそんなことを」


91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:25:07.27 ID:C5JzlXU20
佐々木は俺がうろたえるのを、まるで猫がネズミをいたぶるように・・・いやそんな猫を

実は俺は見たことはないが、いわゆる慣用句としてのそれであるが如く、じっと見ている。

反応を明らかに楽しんでいる。

そういえば、佐々木のこうした表情、というより言動は見たことがないな・・・。



佐々木「思わぬシチュエーションになったことで、僕も少々動揺しているのはキョン、

君と同様さ。ただ、かねがね君に聞こうと思っていたこと、先の質問は」

すっと一息おいた。

佐々木「本気なんだよ」



キョン「あ・・・おまえを、異性として、どう、思うか・・・だったか?」

俺は塾で居眠りをしていたために聞き逃した質問を、講師から噛んで含められ反復

させられるが如く、間抜けな返しをしてしまった。



佐々木「そうだよ。聞かせてもらいたい、是非とも」


93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:32:09.87 ID:C5JzlXU20
雨はすっかり上がり、雲は足早にどこかへ流れて行っちまった。

夕焼けという頃合いはもう過ぎて、そろそろ等級の大きな星がまたたいている頃合いだ。

塾・・・どうしよう。



佐々木「くっくっ。つくづく君は考えていることが顔に出るタイプだね、キョン」

キョン「えっ?」

佐々木「今、君は、これまで一緒に塾へ通うクラスメイト・・・でしかなかった僕という対象を

初めて異性として意識した・・・はずじゃないのかい?」

キョン「えあ、あ、まあ・・・あんなこと言われたら。その」

佐々木「その上、その相手がたった今認識した、新しく得た『異性』というフィルタを通じて

見た僕をどう思うのかと聞いたのだから、ひどく混乱している」

佐々木はまだ乾かぬ、ぐっしょりと濡れた制服のブラウスと、その下に透ける・・・アレも

隠すことなく、胸を張って少し得意げな笑みを浮かべた。



キョン「全く・・・おまえは俺の心を読む特殊な能力でも持っているのか」

佐々木「そうだね、じゃあその先も言うとしよう。『いきなり言われても困る』だろう?」


97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:39:29.35 ID:C5JzlXU20
キョン「ご名答だよ・・・やれやれ」

佐々木「おや、その言いぐさは・・・くっくっ、まあいいさ。説明しておくよ」



佐々木はシャッターを背にしたままの俺に向かい合うかたちで、そのまま話し始めた。



佐々木「僕は男女の間の恋愛感情というものは、あまり重要ではないと考えているんだ。

恋愛という『感情』はどういう発露から生まれ育まれ、成熟しどこへ帰結するのか、それを

一目惚れという言葉、交際を経ての結婚などという大人たちの手垢にまみれた『説明』では

どうしても、僕には理解できかねるんだよ、キョン」



キョン「でも、普通世の中のカップルや・・・夫婦ってそういうもんじゃないのか」

佐々木「そうだね。じゃあ、どうして僕たち・・・僕とキョンはそうならないのかな?」

うっ・・・確かに、傍からみたら、毎日こうして俺の家まで一緒に帰り、俺の自転車の後ろに

乗り塾まで通う・・・こんな関係は普通『彼氏彼女』以外に考える方が無粋というものだ。

でも、俺たちは・・・。


100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:46:00.81 ID:C5JzlXU20
 

キョン「く、国木田はどうなんだ。おまえと数少ない洋楽の趣味が合う仲間じゃないか。

おまえたちは成績もいいし、何だ、頭の回転も似ている。交際が発展しても」

佐々木「ふん、そうだね。確かにキョンの言うことには整合性はある。でも、大事なことが

欠けているよ」

キョン「なんだ」

佐々木「僕は、国木田君を異性としては見ていない」

キョン「あ・・・そうなの、か」

佐々木「僕は知りたいんだよ。キョン、君のことを僕がどう思っているか、君が僕のことを

どう思っているのか」

キョン「おい、ちょっと待てよ。おまえが国木田のことを異性として考えていない、じゃあ俺

のことをどう考えてるのか、そっちが先じゃないのか?」



佐々木は珍しくちょっとだけ困ったような表情を浮かべた・・・が一瞬で、すぐにいつもの

優等生的な美少女の笑顔に戻った。

佐々木「君にしては核心をついたつもりかな。でも、いいよ。元々僕から話を振ったんだから」

佐々木はそこで、くるりと俺に背中を向けた。ええと、ブラウスの背中には・・・まあいい。

佐々木「僕はキョン、君が好きだ」

キョン「えっ」

佐々木「・・・と思う。キョンはどう思っているか、それを知りたい」

キョン「俺もだ」


105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:54:09.78 ID:C5JzlXU20
佐々木「えっ?」

佐々木はついぞ俺に見せたことのない、そうだな、明らかに動揺し、驚いた表情を

あからさまに・・・浮かべて振り向いた。



キョン「佐々木、俺はおまえが好きなんだ。ずっと」

佐々木「あ・・・えと・・・その答えは・・・正直に言うよ、想定外だった」

キョン「なあ、俺たちはまだ中三だ。でももう、中三だよな」

佐々木「あ、うん・・・」

珍しく佐々木は顔をほんのり赤らめて、突然はっとしたようにブラウスの胸のあたりを

右手で隠すようにして俯いた。



キョン「おそらくお前とは違う高校へ行かなきゃならない。そんなことはもう承知してるさ。

で、こうしたお前と塾に行くことも、その前に終わることもな」

佐々木「あ・・・そうだね。当然の帰結だよ、キョン」

キョン「好きでもない女のコを自転車の後ろに乗せて、ひいひいペダルを漕ぐだけの、

マヌケな厨房に見えてたのかな、佐々木には」

佐々木「うあ・・・」

今までに見たことのない表情で佐々木が動揺している。

キョン「好きだ。佐々木。おまえのことが」

佐々木「あ、あ、キョン・・・」


106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 00:57:33.49 ID:C5JzlXU20
キョン「好きで好きでたまらない。正直に言う。さっきからおまえの 着がその・・・

透けて見えるのを見て、このまま何もなかったら俺は塾をサボり、家にとって返し、

そうだな、一晩で十五回は」

佐々木「そういうのは!・・・やめてくれないか」

佐々木は耳まで真っ赤にして、顔をそむけるように斜め下に向けている。

足はエックスの形になり、小刻みに震えていた。



キョン「佐々木。どうした? 好きだ。ああ、好きだともおまえが」

佐々木「あああああ。キョン・・・うれ、しいよ・・・」


109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 01:02:28.89 ID:C5JzlXU20
キョン「俺はきっとこの先、おまえと高校が別れるだろう?そうしたら疎遠になると思う。

お互いに最初は何となく気にするさ、しかし中学生にとって、高校という新天地の刺激、

日々経験するさまざまな事象は魅力的で記憶への刻まれ方も格段に違うと思う」



佐々木「わ、解っているよキョン・・・」



キョン「聡明な佐々木のことだから、俺の説明なんか無粋だろうけどな。つまり、このまま

俺たちは、お互いに新しい生活、新しい友人関係に慣れ、つまり中学の時の今、この

瞬間さえもどんどん上書きされていくと思うんだ」



佐々木「正直、キョンがそんなことまで考えていたとは・・・驚きだよ。僕は今とても吃驚し、

そして・・・感激している。なぜだか解るかい?」

佐々木の表情は上気していて、そしてとても多幸感に満ちた笑顔に見える。



佐々木「僕とキョン、君が好き合っているということをその前に確認出来たことが嬉しいんだ」


110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 01:05:43.92 ID:C5JzlXU20
キョン「ああ、俺も嬉しい。おまえから振ってくれなかったら、たぶん言えなかったし、

言えなかったことを後悔しつつ高校へ進み、いつしか後悔したことも忘れてしまうのかと」

佐々木「そうだね。うん、それはとても寂しいことだよキョン」

佐々木はそう言うと、突然俺の胸に飛び込んできた。

佐々木の頭は先ほど軒下で並んだ時に改めて確認したように、頭一つ低い。

俺の胸のあたりにちょうど顔が来て、俺の鼻孔を佐々木の・・・雨に打たれた水が乾くのと

同時に立ち上る女のコの甘い香りが・・・刺激する。



キョン「いいのか、佐々木」

佐々木「・・・・・いいんだ、キョン」


111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 01:11:23.50 ID:C5JzlXU20
佐々木は何かを悟ったような、覚悟を決めたような口調で言った。

体を俺から離し、近い距離から真正面に俺を見据える。

佐々木「今日、君のしたいことを・・・して欲しい」



佐々木の決意を秘めた、しかし女のコらしく可憐で美しい凛とした表情を、

いつの間に灯ったのか、街灯が上から照らしている。

あれだけのスコールの後のせいか、俺たちの視界には野良犬一匹たりとも歩いていない。



キョン「・・・わかった・・・佐々木。ありがとう」

俺はそう言うと、深く深呼吸をした。こんなセリフ、普段ならとても言える台詞じゃないが・・・

そうだな、いまこの刻、まさに魔がさしたのかも知れない。



キョン「おまえのブ    をくれないか」


115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 01:16:29.91 ID:C5JzlXU20
それからのことを少しだけ話そう。



俺は俺のしたいことをしていいという許可をだな、他ならぬ佐々木本人から、

しかもその場で聞いたというのに、それを告げた瞬間にバッグで張り倒された。

シャッターに派手に後頭部から倒れ込んだ俺が佐々木を見上げる間もなく、

俺の顔に自転車の前カゴに入れてあった俺自身の鞄が叩き込まれた。

前歯が欠けた音がした。



佐々木は俺の自転車を思い切り蹴飛ばして派手な音を立てて転がした後、

先ほどのエックス脚とは真逆の歩調で去って行った。



おかしな話じゃないか。

好きだと言った、その好きな子の  透けを見て 情した。

持ち帰って好きなだけ蹂躙したかった。そう、素直に言っただけなのに。

やれやれ・・・女ゴコロってやつは、げに不可思議なもんだぜ・・・。



ああ、俺の口グセ・・・な、これはこの時からのもんだ。すまない。


133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:36:09.05 ID:C5JzlXU20
――世界が、俺たちの暮らす日常が2つに分裂してしまったあの騒動・・・そう、佐々木も巻き込まれたあの一件が終わって、何となく寂しげな佐々木の後ろ姿を見送った時、俺は何て言ったんだっけ、あいつの後ろ姿に。

休日の朝、前の番早く寝てしまったせいで珍しく平日なら学校へ出かけるよりも早い時間に目が醒めた。

妹は夕べからミヨキチの家に遊びに行っちまったし、家の中はシンと静まりかえっている。

「ふわあああ・・・」

俺は声をあげて思い切り欠伸を一つ吐き出すと共に、大きく体をベッドの上で伸ばした。そのまま天井を眺めて二度寝しようかと考えていると、なぜか佐々木のことが浮かんだんだ。



思考の時間実を今に戻そう。何を考えていたんだ、そうだ、去って行く佐々木の後ろ姿・・・ああそうだ。「じゃあな親友、同窓会でまた・・・」俺はそんな言葉を投げかけたんだっけ。

何であんなどうでもいい、いや、どうでもいいことにか


134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:37:14.64 ID:C5JzlXU20
あっ誤投下すまん。

ノープランで書いたものが残っていたので。



――世界が、俺たちの暮らす日常が2つに分裂してしまったあの騒動・・・そう、佐々木も巻き込まれたあの一件が終わって、何となく寂しげな佐々木の後ろ姿を見送った時、俺は何て言ったんだっけ、あいつの後ろ姿に。

休日の朝、前の番早く寝てしまったせいで珍しく平日なら学校へ出かけるよりも早い時間に目が醒めた。

妹は夕べからミヨキチの家に遊びに行っちまったし、家の中はシンと静まりかえっている。

「ふわあああ・・・」

俺は声をあげて思い切り欠伸を一つ吐き出すと共に、大きく体をベッドの上で伸ばした。そのまま天井を眺めて二度寝しようかと考えていると、なぜか佐々木のことが浮かんだんだ。



思考の時間軸を今に戻そう。何を考えていたんだ、そうだ、去って行く佐々木の後ろ姿・・・ああそうだ。「じゃあな親友、同窓会でまた・・・」俺はそんな言葉を投げかけたんだっけ。

何であんなどうでもいい、いや、どうでもいいことにかけては俺の友人中でも一、二を争う谷口の野郎にだってもうちょっと心のこもった台詞をかけただろう。



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:38:18.65 ID:C5JzlXU20
何の話をしていたか、今回の「一件」の解釈は古泉と長門を呼んだ時に、わけのわからない図を書かれてわかったようなわからないような総括を自分なりにはした。

佐々木と会って、佐々木の感想も、聞いた。

何しろハルヒ様でさえ、ヤスミというもう一人の自分を創り出しちまったほどの「大事件」だった。

正直、俺の方はそっちが無事に終わったことへの安堵と、脳内に「2つの記憶」が混在することへの適応などで手一杯だった。

佐々木だってじゅうぶん「被害者」だったと言える。利用され、巻き込まれ、翻弄された可哀想な少女じゃないのか。その佐々木が、あの時何でどこか寂しげに見えたのか・・・。

ベッドの上で思い出そうとするが、思考や記憶がぐるぐると天井下1mくらいのところで二重銀河を構成しているかのように渦巻いている。



俺はこの一年でトンデモな経験をたくさんしちまった。そこらへんの老獪な政治家のオッサンなんぞよりは何十倍も密度の濃い時間を過ごした自信はあるが、だからといって俺は単なる一介の高校生であることに変わりはない。オッサン臭いとはよく言われるが。

とにかく、要するに、あの一件をこのキャパの小さい頭の中で理解する、それ以外に余裕が無かったんだよ。


136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:41:35.21 ID:C5JzlXU20
かわりに思い出したのが、そう、中学の何てことはないある日の記憶だった。

そう、あえて特別な名前をつけるとするなら「レイニーデイ」とでも言おうか、それも南国級のスコールに襲われたあの夕方の光景だ。

あの後・・・佐々木は俺に鞄を叩き付けたあとすぐ、怒って帰っちまった。

塾はどうしたか? そんなことは記憶しとらん。たぶん倒された自転車をマヌケに立て直し、俺は溜息をつきながら意気消沈して自宅へ帰ったんだと思う。

ああそうだ、思い出した。コンビニで●●本を買った。あとは・・・解るな?



次に顔を合わせた時はいつもの佐々木だったと思うが、あれからかな、塾へ一緒に行くのも本当に事務的になっちまって、お互いに何となーく「男女の感情」をタブー視するようになって、そうして・・・。

俺たちはそのまま卒業したんだ。俺の唯一甘酸っぱいと言えないこともない、それにしては痛い(物理的に)記憶だ。


137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:42:22.97 ID:C5JzlXU20
一番新しい佐々木との記憶・・・公園での「別れ」の寂しい後ろ姿。

そしてなぜか同時に鮮明に思い出す、あの雨に濡れた中学時代の・・・。



ああ、あの時佐々木は俺に告白したんだっけ。俺も佐々木に。

どこからか天の声みたいなものが聞こえたっていうかな、『「好きだ」「俺もだ」で終わんじゃん、なに引き伸ばしちゃってんの』――。

あの瞬間、佐々木のまわりくどい説明口調も、他の連中に言わせりゃもっとややこしい俺の語り口も、他ならぬ俺自身が面倒臭くなったのは事実だ。だからストレートに「好きだ」と言った。



俺は佐々木を好きだった。

中学生の健康な男子が目の前で好きな女の子のブ    を目にしたら、眼福どころではない。目のキャプチャ解像度を最大限まで引き上げ、脳をデフラグして連続する最大領域を開けて動画及び静止画を保存せしめ、消去されぬように家に用心深く持ち帰るだろう。

何のために? それを聞く人間は二種類しかいない。バカと、鈍感なガキだ。


138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:43:05.79 ID:C5JzlXU20
好き同志ならてっとり早く、そのプラトニックな関係の歯車を前に回すために、まずやることもあるだろう、ああ、今なら解るさ。

だが厨房の俺、それまで何らこれといって甘酸っぱい経験もしたことのない人間にとって、まず考えるのは好きな子で妄想し、自分の 的な欲求を自らの手で解放すること・・・。

つまり日常的に自分が行っていた行為のグレードアップが最優先されたんだ。

しかるのちにしかるべき手順を踏み、しかるべきダイレクトな行為へと進展していくのかも知れないが、要するに、俺は、テンパってたんだ。



ああそうか、佐々木が怒って帰っちまったのは、俺が両者告白の後に、しかるべき手順に進まなかったからなんだな。俺は「自分のこと」しか考えていなかった・・・。

俺はガバリと布団の上に半身を起こした。

そして、つい先日、佐々木は公園で俺に・・・そうだ、恋愛相談に来たと言っていた。あいつ告白されたとか言っていたじゃないか。

あいつは最後に俺の気持ちを確かめに来たんじゃないか。中学んときのお互いの気持ち、あれがいまだに・・・くそっ、俺って奴は!!

俺はベッドから飛び出すと、すぐに携帯で佐々木に電話をした。


139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:46:14.72 ID:C5JzlXU20
1コール、2コール・・・。4コール目で佐々木が出た。

佐々木「どうしたんだい、親友。こんな朝早くから」いつもの佐々木の声、いつもの口調だ。

キョン「俺、おまえに言い忘れていたことがあった」

佐々木「・・・なんだいキョン。改まって。次に逢う予定の『同窓会』とやらで言えばいいじゃないか」

佐々木の口調はほんの少しだが、不満げなものに変化したように聞こえた。



キョン「すまん。今言っておかないといけない気がしてな。ええと、いいか」

佐々木「あ、ああ。いいよ。何を僕に言い忘れたんだい、キョン」



俺は大きく息を吸って、受話器の向こうの佐々木に告げた。

キョン「あの時・・・雨に濡れて透けたおまえのブ    は反則的なまでに扇情的だったぞ」


140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:49:04.69 ID:C5JzlXU20
佐々木「なっ! ・・・何かと思えばそんなことかい。君は本当にしょうがない男だね」

キョン「おまえ、告白されたと言ったよな。返事はしたのか」

佐々木「えっ? ・・・いや。ま、まだ、だよ」

キョン「断れ」

佐々木「はい?」



キョン「そして俺とつきあえ。いや、つきあって下さいお願いします」

佐々木「キョン・・・? 君は本当に・・・このタイミングでなのかい?」

キョン「本当にすまないと思っているさ。俺自身朴念仁とか唐変木とかフラグクラッシャーとか、

果てはゲイ疑惑とか色々言われていることは知っている、でもそんなことはどうでもいい」

佐々木「そこまで自覚していたのかい」

キョン「中学の時にお互いに確認し合った気持ち、時間がたった今だからこそ落ち着いてもう一度

よく考えた。やっぱりおまえが好きだ、佐々木」



佐々木「・・・ありがとう、キョン」

佐々木は電話の向こうで少しだけ沈黙した後に、静かな口調でそう言った。

佐々木「でも。君は涼宮さんを選んだ。世界が2つに別れても、涼宮さんといる世界を選択した。

それほどまでに、君たちの結びつきは強固なものだったのではないのかい」


141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:52:25.92 ID:C5JzlXU20
キョン「俺とハルヒは・・・誰が言ったんだっけな、ああ国木田か。原子だか陽子がどうしたとか

よく解らんが、強く引き合う力を感じる。たぶん、友人や恋人よりも強い、肉親とも違う・・・

とにかく、理屈じゃ説明できない強い力で惹かれ合っているんだ、本人の意志に関わらず」

佐々木「それならなおのこと、僕の入る余地などないさ」

キョン「違うんだ、その意志とは無関係に引き寄せられてしまう『力』と『現象』を、後付で

俺はいつも頭で理解するために追認してきた。つまりそれは俺の意志や感情ではないんだよ」

佐々木「・・・だから?」

キョン「俺自身の意志、感情は――お前を『異性として好き』ということなんだ何度も言わせんな

恥ずかしい」

俺は説明しているうちに自分でとてつもない羞恥の感情に襲われ、かつてないほどの早口になっちまった。

しかし佐々木はその一言一句を聞き漏らすはずもなく

佐々木「・・・了解したよ。ありがとう、改めて礼を言うよキョン。嬉しいよ」

キョン「じゃあ」

佐々木「待って欲しい。確かに、告白してきた男子にまだ返事はしていないよ。でも、どう返事を

するかはもう決めてあった」


142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 10:56:05.67 ID:C5JzlXU20
キョン「え? どういうことだ」

佐々木「くっくっ、お受けすることにしたんだよ、その『彼』の告白を」

キョン「そ・・・そんなバカな・・・」

佐々木「おや、心外だな。中学の時に恋ゴコロを寄せた、唯一心の許せる初恋の相手に、ロマンチックな

雨上がりの夕闇の中で勇気を振り絞って告白をした。その結果は忘れていないよね、キョン」

キョン「あ、ああ。だからこそこうして今」

佐々木「僕は今でも君が好きだよ、キョン。正直に言う。他の誰よりも君が好きだ。告白してきた

男子など比較の対象にするのさえ失礼なくらいにね」

キョン「だったら何の問題もないじゃないか」



佐々木「君はずるいよ。涼宮さんや長門さんたちとの面白おかしい日常を楽しみつつ、涼宮さんの

自覚するしないは別にして、君への明かな好意をこれまで同様にいなし、意図的か無意識にかは

解らないけれども男女の関係へと発展させることさえせずに『説明できない惹かれ合い』などと

ごまかしつつ、僕と付き合おうと言うのかい」



キョン「・・・うっ。そ、それはその」

佐々木「僕は君に持った恋愛、的な感情以外に異性に同様の感情を抱いたことはない。今もそうさ。

だから余計に告白を承諾して、それが他人に一から芽生えて育まれるものかどうかを試してみたい」



143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 11:00:24.04 ID:C5JzlXU20
佐々木はたたみかけるように珍しく早口でそこまで話すと、一呼吸置いて静かに言った。

佐々木「有り体に言うと、女子高生として人並みの、普通の恋愛というものを体験したいんだ」

キョン「でもそれなら俺とだって」

そこまで言いかけて、ハルヒや長門に朝比奈さん、なぜか古泉や朝比奈さん(大)の顔までが走馬燈の

ように頭に浮かぶ。

ああ、普通の高校生同士の交際なんか・・・絶対無理だな。

すまなかった、佐々木。

佐々木「くっくっ、いいんだよキョン。君が、そうだね、何年越しかでこうしてまた僕に告白して

くれた、そのことは本当に嬉しいし感謝している。このことで友情が壊れたりはしないと誓うよ」

キョン「本当かい。それは助かる」

佐々木「僕は、リビドーとプラトニックな恋愛の差くらいは理解しているつもりだ、もちろん実際の

経験はないに等しいけれどね。つまり正常な、健康な男女の高校生が付き合うということになれば」



早くなった俺の心拍数を悟られぬようにしたが、絞り出された声は震えていた。

キョン「おまえまさか・・・」


144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/07(火) 11:02:54.19 ID:C5JzlXU20
佐々木「『そういう行為』へと進展するであろうことも予測の範疇にあるよ。ただ、僕が今回承諾して

付き合うことになる彼との関係がそこまで成熟するかどうかは未知数だ。そうだろう?」

キョン「ああ、そうだな。そうだ。その通りだよ佐々木」

佐々木「どうなっても、僕たちは親友だ。そうだね、友人関係が恋愛関係に進んだとする、しかし

さらにそれさえも包括して大きく包み込むような関係・・・かな。僕たちは」

キョン「そうか・・・。うん、解ったよ佐々木。親友だな、俺たちはずっと」

佐々木「そうだとも。今でも君に頼まれれば何でもする覚悟はあるよ。それこそ『彼』を置いてでもね」

キョン「そこまで言ってくれるならもう、俺は・・・諦めるよ、異性・恋愛対象としての・・・おまえを」

佐々木「ん? どうしたんだいキョン。鼻をすすって。風邪でもひいたのかい

キョン「ちが・・・、何かおまえが他の男と・・・って考えるとやっぱりさあ・・・

佐々木「バカだなあキョン。まだ僕が肉体を許すと決まったわけじゃないし、僕たちはずっと親友だよ」

キョン「・・・親友として頼んでもいいか」

佐々木「ああ、何でも言ってくれたまえ。僕に出来ることなら何でもする。

あっそうだ、くっくっ、ブ    をくれというのならあげてもいいよ」



キョン「・・・じゃあパ    とセットでお願いします」



電話はブツッ、とそこで切れた。



とりあえずEND