16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 06:40:15.54 ID:C3IL+b9d0

「えー……、今日からしばらくの間、二組でお世話になることになった織斑一夏です。よろしくお願いします――」

例の如く、興味好奇、観察する視線で穴が空きそうなほどに、自己紹介をした織斑一夏を新しいクラスメートたちは見つめていた。



「二組にクラス替えですか?」

その日の朝。職員室に呼び出された織斑一夏に、その姉、織斑千冬から実に唐突に告げられた。

「一週間の間だけだがな」

落ち着いた口調でそう言うと、準備は出来てるから今日からは二組のクラスに入れと数枚のプリントを渡し、
理由は告げずに追い出された。

引用元: 一夏「二組に移ることになった……」 


17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 07:07:57.65 ID:C3IL+b9d0

そんなわけで回想、終わり。


セカンド幼馴染み凰鈴音もニヤニヤとした笑顔で見つめている。

「え~っと……、初対面じゃないし、いいですよね……?」

いつぞや味わったキツイ雰囲気の中、簡素で今さらな挨拶を済ますと、ここでの自分の席に誘導される。

「――はい! じゃあ、織斑君は凰さんの前の空いている席に座って下さいね!」

二組の担任に促され窓際、後気味の席に腰を下ろした。


「歓迎するわ、一夏♪」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 07:16:01.04 ID:C3IL+b9d0


「……こんなの許されることではありませんわ」

一方、こちらもまた唐突に彼の異動を知ったクラスの全員の心情を、セシリア・オルコットがぼつり呟いた。

「え~、SHRはこれで終わりますね……」

一組担任、山田麻耶がギリギリと殺気だった教室内の圧に負け気味になりながら言う。

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 08:38:39.52 ID:C3IL+b9d0
 
二組のほうは和気藹々とした、一組のほうは殺伐とした、午前中の授業はずっとそんな雰囲気だった。


昼休み。

一夏が学食に向かって歩いていると、その前でシャルロット・デュノアが待っていた。他に一組のクラスメートはまだいなかった。

「あ! 一夏。一緒にね昼食を……」

そこまで言ったシャルロットを、一夏を囲んでいた『二組の女子たち』が遮る。彼女たちは少し自分たちが優位だと示すよう前に出る。

「ダメダメ! 今日からは私たちが織斑君とお昼は一緒に過ごすんだから!」

「え……?」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 08:53:28.16 ID:C3IL+b9d0
困惑した。

彼に会いたくて誰よりも早くここに来て待っていたシャルロットは一夏の顔を見る、彼はそういうことだから
ゴメンなっと困った感じの笑みで申し訳無さそうに二組の女の子たちと学食へと入っていった。

「織斑くんってどんなご飯が好きなの~? あ、ちなみに今二組じゃね……――」

「!? 一夏!?」

「はいはい、一組はどいたどいた」

「あー! 席順は守ってよ、さっき決めたでしょ!」


シャルロットはしばらく呆然と突っ立っているだけだった。
後から来た篠ノ之箒、セシリア、ラウラ・ボーデヴィッヒたちに肩を叩かれるまで。そして今のことを戸惑いながら話した。

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 09:06:19.36 ID:C3IL+b9d0

「腑抜けが! たるんでいる!!」

「一夏さん……!」

「私の嫁を……!」

三人とも憤然とする。


「別に一回、一夏を取られたからって何ムキになっちゃってるのよバーカ! それにね、元々一夏はあんたたち
一組のものなんかじゃないのよ――」

「…………」

四人が振り向くと、遅れてきた鈴が余裕綽々といった笑みで後ろを通り過ぎ、ヒラヒラと手を振りながら学食へと入っていった。

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 09:23:07.04 ID:C3IL+b9d0

一先ず四人も中に入る。いつもの学食、いつもの座席に座って食事を始めるが、いつもの中心、織斑一夏はいない。
少し離れた席で、いつもの自分たちのポジションに、大勢の二組の女子たちが座っている。

歓迎会といった感じの賑やかな昼食。クラス代表である鈴が乾杯などの取り決めなどをしながら嬉しそうに跳んだり
周りからからかわれたりして跳ねたりしている。一夏も既に和に溶け込み実に楽しそうである。


「……なんなのだ、これは?!」

「絶対に認められませんわ……――?! あの娘! あんなに一夏さんにくっ付いて!!!!」

「離れろ、離れろ、離れろ、離れろ、離れろ、離れろ、離れろ、離れろ、離れろ」

「………………………………………………(無言で皿にフォークを何度も突き立てる)」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:08:38.62 ID:C3IL+b9d0


そして放課後。

アリーナへと続く廊下で、今度は箒とセシリアが一夏を待っていた。

「待っていたぞ。一夏」

「放課後は私たちと特訓ですわ!!」

その二人の前に、またも彼を囲んでいる『二組の女子たち』から今度は鈴が立ち塞がる。

「ゴメンだけどそれは無理だわ」

そういって二人の前に一枚の文書を突き出して見せた。

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:18:35.68 ID:C3IL+b9d0

出された紙切れを二人が読み出す、簡単に要約するとそこにはこんなことが書いてあった。

《今期間中、彼、織斑一夏を混ぜたISの訓練等は一年二組に属する生徒を優先するものとする

                                                      織斑千冬》

「「……なっ!!」」


「千冬さんからのお墨付きなの? わかった? わかったらさっさと道を譲りなさい! 一組!!」

「「ぐっ!?」」

彼らを通すしかなく、二人は端による。
そして勝ち誇った顔で鈴たちが進む。

一夏はまたも悪いねっといった感じで彼女らと行ってしまった。

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:41:04.71 ID:C3IL+b9d0

「どういうことなのですか、教官!!」

その後、二人から話しを聞いたラウラは織斑千冬の元へと走った。この件は彼女が推しているということを
知って、直訴に来たのだ。

「我々は全体が満遍なく成績が上がることを良しとするだけだ。 どうやらあいつが他の教室にも出れば成績が上がるらしい」

少し自嘲気味に答えた。

「考えてみればお前たちを少し優遇しすぎたのは事実だ。しばらくはこれを続けて行く。わかったらさっさと戻れ」

「……・ッ!!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:47:51.34 ID:C3IL+b9d0

夜になっても二組による独占は続き、結局、初日、一組勢は一夏と挨拶の言葉さえ交わすことが出来なかった。

そして二日目に入っても彼らの独占は続いた。

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:55:35.56 ID:C3IL+b9d0

「この時間は一組と二組の合同実習のはずだろう」

「ええ、そのはずですわね」

箒とセシリアの目線の先は二組の女の子に囲まれている一夏である。
二組のものから優先して、何てルールがあるから一夏と二組の女子がキャッキャうふふしているのを
一組はただ見ているしか出来なかった。

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 10:59:56.76 ID:C3IL+b9d0

昼、今度こそと学食の前で一夏を待つシャルロットとラウラ、しかしいつまで経っても一夏たちは
訪れず、それは徒労に終わった。

どうやら二組で屋上を使って昼食会を開いていたらしい。

「「…………………………」」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:02:30.90 ID:C3IL+b9d0

放課後はまた例の特権を使い一組は締め出されてしまった。

「ほらほら! 私たちは忙しいの! あんたたちに構ってられないんだから♪」


二日目、三日目がこのように過ぎていった。

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:12:07.13 ID:C3IL+b9d0

四日目。
一組の朝のSHRは今から戦場にでも行くのかといった雰囲気だった。

何人かの生徒は完全に俯き、副担任の話を聞いていない。
また何人かの生徒はノートに無軌道にペンを走らせ何事かを呟いている。
またまた何人かの生徒は彼の名前を呼びながら妄想にでもふけっているのか不気味な笑い声を出している。
またまたまた……――


「い、以上でSHRは終わりです!」

その日の連絡事項を伝えた山田麻耶は半泣きで逃げるようにその場を去った。

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:17:24.62 ID:C3IL+b9d0

「織斑君のいない一組なんて……」

「おーーーーーりーーーーーむーーーーーーーー」

「はぁ……」

「今日やっと半分だっけ……?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:24:48.72 ID:C3IL+b9d0

「一夏、一夏一夏一夏一夏一夏一夏いちいちいちいちいち……」

「一夏さーん……わたくしはここですわー……あぁん……そんなところ触っちゃ……」

「うっ……うぅ……嫁ぇ……」

「…………………………………………………………………………………………………………………」


そして事件は加速する。

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:28:53.05 ID:C3IL+b9d0

「織斑一夏の二組異動を今日から更に一週間延期する。 またそれが終えた後に、他のクラスにも行ってもらう事が先ほど決まった」

「「「「「ええぇぇぇっーーーーーーーー!!!!!!!!!!!?」」」」」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 11:32:47.39 ID:C3IL+b9d0

「織斑先生!! 一、織斑君はいつになったら一組に帰ってくるんですか!!?」

「まぁ、最低でも一ヶ月は先だろうな」

「そ、そんな…………」

 
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 13:55:09.41 ID:C3IL+b9d0

「一夏♪ はい、あーん」

「ちょっと恥ずかしいぞ?」

「いいからさっさと食え! どう? 美味しいでしょ私の酢豚♪」

「織斑君、私のも食べてー!」

「こっちも!」

「こんなに食べきれないってっ!?」

今日も昼休みの屋上では、二組昼食会が催されている。
やはり二組でも一夏争奪戦が激しく繰り広げられており、二組で専用機持ちは鈴一人。
あまり親しくなかった平凡な生徒でもチャンスがあるはずと虎視眈々と――。

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 14:07:53.95 ID:C3IL+b9d0
私→あたし

こまかいとこはかってに修整しててくれ





う~ん

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 14:38:24.54 ID:C3IL+b9d0

「もう食えねぇ……」

「ちょっと鈴、そこ代わってよ~」

「う~ん、そうね。一週間も延長されたんだし、公平さを出すためにもうちょっと細かい順番を決めないとかもね!」

88: もう訳が分からなくなってきた 2011/07/02(土) 14:48:37.90 ID:C3IL+b9d0

そんな笑い声の響く楽しかった屋上からの帰り道、二組の集団は一組の集団と鉢合わせた。


「一夏さぁぁぁーーーん……」
「織斑くーーーん……」

そこから幽かな声を上げてセシリアや何人かが近づいてきた。そして一夏に向けて伸ばした手を鈴たちが払う。

「触れるな! 何よちょっとの間、一夏と離れたからってそろいも揃って! 大体あんたたちは一夏分を毎日取り過ぎなのよ!!」

「少し! 少しだけでいいんだ! 一夏ぁ!!!」

「しっしっ!」

「お、おい鈴!?」

91: もう訳が分からなくなってきた 2011/07/02(土) 15:15:05.12 ID:C3IL+b9d0

「ふんっ! いつもいつも二組二組とバカにしてるくせに! いい気味だわ、行こっ! 一夏」

そうやって言って一夏の手を引っ張って鈴はここを抜けようとした。


「……ふ、うふふふふふふふふ。 ……もうわたくし我慢の限界ですわ」


セシリアが、陰湿に笑い始めた。

「ああ、そうだな」

「もういいよね。どうしようと」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 15:31:23.63 ID:C3IL+b9d0

一分後、そこには破砕した壁とぐったりと横たわる鈴。跪き項垂れる二組。そして戦利品を抱え上げる一組の姿がそこにあった。

現実は非情であった。こうして二組の一夏天下は終えることになった…………かと思われた。




騒ぎを聞いて駆けつけた織斑千冬によって一夏はまた二組に戻されることになった。

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/02(土) 16:12:56.98 ID:C3IL+b9d0

翌日もまた、織斑一夏は二組で授業を受けていた。
ただ事情を考慮し、織斑一夏の異動は元の一週間にまでに戻り、更に他のクラスへの異動はしばらく無くなることになった。
ついでに暴れた一組の四人には鬼の容赦ない鉄拳制裁が下った。

朝、一夏は二組の席に着き、真後ろのぐったりとした鈴に話しかける。

「鈴、大丈夫か……?」

「怪我だらけよ……・。でも気にする必要はないわ」

「なんで?」

「あいつらの気持ちも分かるし、一夏はまたこうして戻って来たし、それに」

こちらを見るクラスの視線を見返しながら、



「二組はまだ諦めないわ」

そう言って鈴は笑った。


オシマイ