1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:46:22.98 ID:oqalnPqK0

※ストーリコミュ微ネタバレ注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1593967582

引用元: 樋口円香「ここでキスして」 


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:47:29.23 ID:oqalnPqK0
円香「キスシーンですか?」

P「今度のドラマでそういうシーンがあるんだ」

円香「高校生アイドルがそういうシーンを演じるのはどうかと思います」

P「まあそうだな。だからこそ話題性もある」

円香「最悪」

P「ちなみにキスシーンとはいえフェイクだ」

円香「フェイク?」

P「それっぽいシーンをつないで実際にキスするシーンはカット割りで見せない」

円香「実際にキスする訳ではないのですね」

P「それこそ女優志望のアイドルならガチでするが、円香はそういう訳じゃないだろ?」

円香「はい。そうですね」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:48:29.05 ID:oqalnPqK0
P「ノクチルとしての売り出し方もあるからちゃんと制作陣ともコンセンサスは取れている」

P「ただ、そういう目で見られるようにはなる」

円香「……キスシーンを演じた女としてですか?」

P「そうだな」

円香「……少なくとも普通の高校生とは見られませんね」

P「それで、受けるか?」

円香「……考えさせてください」

P「即断られるかと思ったが」

円香「断ってもいい仕事ですか?」

P「断ると今後が厳しくなる仕事だな」

円香「ならそう言ってください」

P「でも選択肢は円香にある」

円香「……」

P「申し訳ないが週明けには返事をしたい。明後日には返事をくれるか?」

円香「わかりました」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:50:31.69 ID:oqalnPqK0
・・・

円香「……はあ」

雛菜「やは~?円香先輩がため息ついてる~!」

円香「うるさい雛菜」

雛菜「ため息ついてるとしあわせにげちゃうよ~?」

円香「別に私がため息ついていたからって雛菜が不幸になるわけないじゃん」

雛菜「あは~!そうかも~!」

円香「……はあ」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:50:58.17 ID:oqalnPqK0
雛菜「それでぇ~どうかしたの?」

円香「しつこい」

雛菜「だって円香先輩珍しく悩んでいる感じだし~」

円香「私にだって悩みくらいあるわよ」

雛菜「たまには~お悩み相談ってのもいいかもって!」

円香「雛菜に相談するくらいなら――」

円香「ねえ雛菜、キスってしたことある?」

雛菜「……やは?」

円香「ごめんやっぱなし」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:51:29.56 ID:oqalnPqK0
雛菜「円香先輩ついに小糸ちゃんに手を出したの?」

円香「何でそうなるの」

雛菜「じゃあプロデューサー?」

円香「仕事の話だから」

雛菜「やは~!納得~!」

雛菜「……やっぱり生放送でやらかした責任を円香先輩が背負ってギョーカイの人たちに」

円香「違うから!ドラマの撮影!」

雛菜「という名目で実はとか?」

円香「……流石にないと思う」

雛菜「なんで?だって雛菜たち干されてるよ?」

円香「……あの人がとってきた仕事だから」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:52:10.67 ID:oqalnPqK0
雛菜「やは~!円香先輩プロデューサーの事信用してるんだ~!」

円香「……話が伝わってなさすぎなんだけど」

雛菜「んでキス?雛菜はしたことないかも~」

円香「そう」

雛菜「ん~?キスってどうなんだろうね~?しあわせでいっぱいになるのかな~?」

円香「普通はそうなんじゃないの?今回は幸せなんて感じないだろうけど」

雛菜「なんで?」

円香「だってああいうのは好きな人とするから幸せになれるんじゃないの?」

雛菜「円香先輩って意外とロマンチスト?」

円香「……忘れて」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:52:36.80 ID:oqalnPqK0
・・・・

小糸「ぴゃ!?きききききききききっす!?!?」

円香「動揺しすぎ」

小糸「やっぱり私たちが衣装をずぶ濡れにした責任をとってギョーカイの偉い人たちに」

円香「それ雛菜からも聞いた」

小糸「えっっとえっと…!円香ちゃんがやりたくないならしなくてもいいと思うよ…!」

円香「そうね」

小糸「だってプロデューサーも強要してないんだし」

円香「でも受けないと今後が厳しくなるともいわれた」

小糸「うっ…」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:54:06.15 ID:oqalnPqK0
円香「小糸は……まあキスしたことなんてないよね?」

小糸「うっうん…」

円香「小糸は、私がキスしたらどう思う?」

小糸「えっ!?えっとえっと、すごくびっくりすると思う…」

円香「うん。そうだよね」

小糸「でっでも!円香ちゃん凄く大人っぽいから似合うと思う!」

円香「……似合う?」

小糸「うーん…なんかあこがれちゃうというか…進んでいるなって思うのかな?」

円香「うん。何となくわかった」

円香「飴食べる?」

小糸「あっありがとう!レモン味だね!」

円香「ちょっと酸っぱくて甘い味だって」

小糸「甘くて酸っぱい……」

小糸「キスってどんな味がするのかな?」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:55:21.37 ID:oqalnPqK0
・・・・・

透「キス?天ぷらで食べたいかな」

円香「違う違うそうじゃない」

透「ふふっ。分かってる分かってる」

円香「一応聞くけど浅倉はキスしたことないよね?」

透「いやあるよ」

円香「んえっほ!?げほげほ…」

透「むせた?」

円香「誰と?私も知ってる人?」

透「うん」

円香「……まさかプロデューー」

透「お母さんとお父さん」

円香「……だと思った」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:55:48.90 ID:oqalnPqK0
透「キスか。考えたことなかったわ」

円香「ホント、アイドルにやらせる仕事じゃない」

透「やる気になったの?」

円香「何が?」

透「アイドル」

円香「……」

円香「浅倉だったらこの仕事受ける?」

透「わからん」

円香「だと思った」

透「子供の頃にしたキスとは違うか」

円香「当り前じゃない」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:58:02.65 ID:oqalnPqK0
透「樋口はちゃんとしたキスしたことあるの?」

円香「当然ないから」

透「じゃあおそろいかな?」

透「だとしたら――」

透「そうか。うん」

円香「……何?」

透「樋口が私より先に進むんだなって」

円香「どういう意味?」

透「樋口」

透「たまには追いかけられる側になってみる?」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 01:58:36.26 ID:oqalnPqK0
・・・・・

P「すまない円香。この前のドラマの仕事、なしになった」

円香「……どうせそんなことだろうと思っていました」

円香「あんな放送事故を起こすようなアイドル、向こうから願い下げでしょうから」

P「いや、俺の方から断った」

円香「……どうして?」

P「円香を含めたノクチルのユニットイメージを崩したくなかった」

P「幼馴染。高校生。透明感」

P「そういうイメージで売り出したい」

円香「キスはそういうイメージを崩してしまう?」

P「そうだ。どうしてもキスの描写は進んだ印象がある」

円香「進んだ……か」

P「……円香?」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 02:00:17.11 ID:oqalnPqK0
円香「この仕事、正直断るべきかどうなのか迷っていました」

P「断るつもりだったんだろ?」

円香「まあ」

円香「でも、この仕事、ユニットの事を考えると必要な仕事なのかと思って」

P「……」

円香「誰かが泥をかぶらなきゃいけない。透にその役目は出来ない。小糸も雛菜も」

円香「でも、私だったら」

円香「私さえ泥をかぶれば」

円香「ノクチルは救われるのかもって」

P「円香」

円香「透より前に出れるかもって」

P「……」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 02:00:44.61 ID:oqalnPqK0
円香「別に追い抜きたいとは思わないけど、だけど」

円香「ずっと透が先頭に立っているだけじゃ、小糸の頑張りも雛菜が楽しむことも」

円香「もしかしたら透も――」

円香「並び立つものがないからどこかへ行ってしまいたくなるんじゃないかって」

円香「ねえ」

円香「飛ぼうとして助走をつけて走り出して」

円香「飛び立つ瞬間に翼を奪れるのってどんな気分かわかる?」

P「すまなかった」

円香「ふふっ、どうしてくれるんですかミスターお節介焼き」

P「でもそういうことなら間違っていなかった」

円香「何が?」

P「円香が無理に急いで嵐の中を飛び立とうとしていたのなら、それを止めるのも俺の役目だから」

円香「……」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 02:01:14.39 ID:oqalnPqK0
P「誰かになる必要なんてない」

円香「クサいキャッチコピーですね」

P「でも当たっている」

P「円香は、円香でいい」

円香「最低」

P「なんでさ」

円香「そういうところが」

P「これでも傷ついているんだぞ?」

円香「ならちゃんと叱ってください。私だって不安なんですから」

P「いや、まだ大丈夫」

円香「……ねえ」

円香「――ここでキスして?」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 02:01:53.87 ID:oqalnPqK0
P「……円香」

P「……まだ、やめとく」

円香「……ふふっ、『まだ』?」

P「いや、絶対しない」

円香「賢明な判断ですね。思わず阿久井さんにリークしてしまうところでした」

P「本当にそれはやめてくれ」

円香「ではお疲れ様です」

P「お疲れ様、円香」

円香「……髪の毛にゴミがついています」

P「えっ?マジ?」

円香「相変わらずだらしのない人ですね。取ってあげますので屈んでください」

P「……ん」

円香「……」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 02:02:20.42 ID:oqalnPqK0
円香「はい、取れました」

P「……あれ?」

円香「何ですかその顔は?キスされるとでも思ったのですか?」

P「……円香にはかなわないな」

円香「まだ、ですから」

P「うん。まだだな」

円香「はい」

円香「プロデューサー」


おしまいっ!