2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:04:27.76 ID:Grj/pq8F0
千早「助手? 何を言ってるの? 二人きりの時は名前で呼び合おうって言ったのは岡部でしょ?」

岡部「え? え?」

千早「ほら、早く行きましょう。久々のデートなんだから」

岡部「で、デート? この俺がか?」

千早「あなた以外に誰がいるって言うの? それとも、私をからかっただけ?」

岡部「い、いや……それは」

千早「……はいはい、プロデューサーがそういう態度を取るなら、私ももう帰らせていただきます」

岡部「ぷ、プロデューサーだと?」

岡部「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

千早「……なんですか?」

岡部「う! (こ、この威圧感は助手の物だが……だが、姿かたちは違うぞ!?)

岡部「(胸が小さいのが共通なぐらいか……)」

千早「ど、どこ見てるの! HE  !」

岡部「それだ! 間違いなく助手だ!」

千早「だから、助手ってなんなの……?」

岡部「その前に、お前の名前は牧瀬紅莉栖だよな?」

千早「…………」


引用元: 千早「どうしたの?岡部」岡部「助手・・・なのか?」 



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:25:06.31 ID:Grj/pq8F0
千早「そうですか、あくまで今日は仕事モードだと」

岡部「仕事だと? どういう事だ?」

千早「……まさか、デートの約束忘れただけじゃ飽き足らず、私の芸名も忘れたなんて言わないですよね?」

岡部「芸名だと? どういう事だ……まさか!?」

千早「?」

岡部「……もしもし俺だ……あぁ、厄介な事になった。どうやら機関が本格的に動き出したらしい。

   いや、恐らく彼女は何らかの記憶操作を受け、意識ごと別の器に移植された可能性がある。

   そうだ、彼女も機関のモルモット……哀れな被害者なのだ」

千早「あの、誰と電話を?」

岡部「なに? それは俺には荷が重すぎる……確かに、マインドコントロールを解く事が出来れば、

   機関の情報を思い出させる事も出来るかもしれないが……。しかし……。

   ……そうか、これも運命石の扉の選択という事か……。

   分かった。可能な限りやってみるさ……。あぁ、お前も気をつけろ。

   ……エル・プサイ・コングルゥ」


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:27:45.23 ID:Grj/pq8F0
千早「……やっぱり仕事の電話ですか、プロデューサー? それなら仕事を入れたって、ちゃんと説明してくださいよ」

千早「……私だけ期待しちゃって馬鹿みたい……」

岡部「ん? 何か言ったか?」

千早「な・ん・で・も・あ・り・ま・せ・ん!!(怒)」

岡部「そ、そうか」

岡部「(うむ……信じられん話だが、どうやら変な世界線に紛れ込んでしまったらしい。

   恐らくはDメールが原因だろうが、送りすぎてどれが原因なのかさっぱりだ。

   とりあえずここは話を合わせておくのが得策か……)」

岡部「いやすまない。ちょっとからかっただけなんだ」

千早「……やっぱりからかったんですか」

岡部「そうへそを曲げるなクリスティーナ。さ、デートの続きを」

千早「千早」

岡部「へ?」

千早「ち、は、や、です。デートの続きをするなら、芸名じゃなくてちゃんと名前で呼んでください」

岡部「す、すまない。千早。悪かった!」

千早「…………」

岡部「た、頼む! なんでもするから許してくれ!」


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:36:51.29 ID:Grj/pq8F0
千早「……なんでも?」

岡部「あ、しまった」

千早「……なんでも、してくれるんですか?」

岡部「えっと……それはその」

千早「……マッドプロデューサーに二言はないって、いつも言ってますよね?」

岡部「(この世界線の俺! いつからサイエンティストからプロデューサーに……じゃなくて、

   『二言はない』とか逃げ場なくすような事を迂闊に言うな!)

岡部「も、もちろんだ。可能な限り、何でもしてやる!」

千早「……わかったわ」

千早「とりあえず、仕事はないのね?」

岡部「あ、あぁ、さっきの電話はタダの私用だ。断じて仕事ではない」

千早「それじゃあ、デートに戻りましょう。何をしてもらうかは、後々考えるわ」

岡部「そ、そうか。それじゃあ、張り切ってデートに行こう」

千早「しっかりエスコートしてよね」


18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:56:13.52 ID:Grj/pq8F0
岡部「…………」

岡部「(デートの最中に俺が手に入れた情報を統合すると、とりあえずこう言う事だ。



   ・彼女が牧瀬紅莉栖と呼ばれている事に間違いはないが、本名は如月千早だという事。

   ・俺は彼女のプロデューサーで、765プロと言う事務所に所属している事。

   ・ダルやまゆりはいつも通りである事(これはメールのみで確認)。

   ・プライベートではため口で、本名で呼び合う仲だという事。(デートという言葉と、ダルのメール『裏切り者! リア充氏ね!』から、恋仲だと思われる)

   ・いつもの助手の胸が79に対し、千早助手の胸は72である事。



   これで幾分、事態の把握はできたと思う。このデートはどうにか乗り切れそうだ。

   ……とりあえず、今後の対策はラボに戻ってたてるのが一番最善だろう)





20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 01:59:30.95 ID:Grj/pq8F0
千早「岡部?」

岡部「なんだ?」

千早「何だじゃないわよ。なんか酷く難しそうな顔してたけど?」

岡部「えっと、それはだな……」

千早「そんなに今の映画難しかったかしら……主人公とヒロインが、音楽で愛を深めていく素敵な内容だと思ったのだけれど……」

岡部「いや、映画の内容で悩んでた訳ではない」

岡部「お前の事を考えていたのだ(今後の対策的な意味で)」

千早「わ、私の事を!?(恋人的な意味で)」

岡部「…………」

千早「えっと、その、確かに今日は初めてのデートじゃないし、その、そろそろ関係を発展させても良いとは思うけど、

   でもこういった事は慎重に事を運ぶべきだというか――」

岡部「千早」

千早「は、はい!」

岡部「もうこんな時間だ。今日は帰ろう」

千早「え……あ、そうね」

千早「(……安心したような、ちょっと残念なような)」

千早「……それじゃあ、また明日事務所で」

岡部「あぁ、気をつけて帰れよ」

千早「岡部もね」


21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:08:41.58 ID:Grj/pq8F0
まゆり「あ、オカリン。おかえり~」

岡部「あぁ、ただいま。今日はまゆりだけか?」

まゆり「さっきまでダル君も居たんだけどね~、急に『リア充の臭いがする。貞操の危機だお!』とか言って帰っちゃった」

まゆり「オカリン~、男の人同士はねぇ、●●●な事しちゃいけないんだよ?」

岡部「誰が奴の貞操など狙うか!」

まゆり「そうなの?」

岡部「そうなのだ! まったく」

岡部「考え事をしなければいけない時に、別の頭痛の原因を残しおって!」

岡部「そ~うだ。良い事を思いついた」

岡部「おいまゆり、今度ダルの●●●を全部売って、それを全て唐揚げと新作ガジェットにつぎ込むぞ」 

まゆり「本当?」

岡部「あぁ、本当だ」

まゆり「わ~い! オカリン太っ腹だね~」

岡部「ふーっはっはっは! 狂気のマッドサイエンティストにとって、それぐらい屁でもないわ!」


22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:15:00.22 ID:Grj/pq8F0
『ち~ん!』

岡部「む? 何の音だ?」

まゆり「あ、忘れてた。唐揚げあっためてたんだ」

岡部「まったく、お前はよく食うな」

まゆり「オカリンも食べないとダメだよ。人気アイドルさんをたくさんプロデュースしてるんだから、

    スタミナ付けないと~」

岡部「はいはい、そうだな……」

岡部「(たくさんって、そんなに敏腕なのか……ふ、俺の才能が怖い)」

岡部「(まぁ、それもDメールでなかった事になるのだがな)」

まゆり「あっちっち、温めすぎちゃったよ」

岡部「うっかりさんめ…………って、おい」

岡部「まゆり」

まゆり「ん? オカリンも食べる?」

岡部「お前は、今それを何で温めた?」

まゆり「嫌だな~。もちろん『電子レンジ』だよ~」


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:20:28.34 ID:Grj/pq8F0
岡部「な!?」

岡部「まゆり!」

まゆり「えっと!? な、なに?」

岡部「お前今、『電子レンジ』と言ったか? 『電話レンジ』じゃなくてか?」

まゆり「電話レンジ? なにそれ?」

岡部「!」

岡部「(馬鹿な! そんな訳がない! そうだ、きっとまゆりの勘違いだ。

   きっと電話レンジ(仮)は変わらずそこに!)」

岡部「――な、なんだと!?」

まゆり「オカリン~? どうしたの?」

岡部「電話レンジ(仮)が……なくなってる? どういう事だ!?」

岡部「くそ、これでは、この世界線から脱出できないではないか!」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:37:49.76 ID:Grj/pq8F0
『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

岡部「…………メールか」

『送信者:まゆり 件名:起きた~? 本文:大丈夫? ちゃんと寝れた?』

岡部「……眠れる訳がないだろう」

岡部「(電話レンジ(仮)で脱出すれば問題ないと考えていたが、これはまずい事になった)」

岡部「……とにかく、電話レンジ(仮)を完成させるしかない。まずはダルに連絡を」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:助手 件名:どうしました? 本文:遅刻ですか? 社長、怒ってますよ』

岡部「……ううむ」

『件名:Re:どうしました? 本文:すまない、寝坊した。これから向かう』

岡部「……送信っと」

岡部「……これも運命石の扉の選択という事なのか? エル・プサイ・コングルゥ」

岡部「仕方がない、まずは765プロに行こう。まずは場所をググって――」

岡部「――よし、行くか」


29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:54:05.03 ID:Grj/pq8F0
岡部「…………なぜ、貴様が一緒にいるのだ?」

萌郁「……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:ゴシップ記事! 本文:スキャンダルを取ってアイドルのイメージレベルを下げるのが私の仕事だもん(>w<)』

岡部「……イメージレベル? よくわからんが、アイドルの足を引っ張るってことか?」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:人聞き悪いよ(;;) 本文:私はただ純粋に、私より若い子が失敗し挫折するのを見たいだけだもん(^O^)』

岡部「悪趣味にも程があるわ!」

岡部「もう良い、とりあえず帰れ! ただでさえ入りづらいのに、お前がいると余計に話がややこしくなる!」

萌郁「……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:岡部くん酷い(T T) 本文:男ならなるようになれ、だよd(・v‐)』

岡部「やかましいわ!」


30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 02:57:11.91 ID:Grj/pq8F0
千早「プロデューサー? そんなところで何をしてるんですか?」

岡部「ちは(――そうだ、今は仕事名で呼ぶんだった)……クリスティーナか」

千早「……遅刻するだけならともかく、女性といちゃついてたんですか?」

岡部「違う違う! 性質の悪いゴシップ指圧師が付きまとってきただけだ!」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:牧瀬紅莉栖だ~(^O^) 本文:ターゲット捕捉(>∀<)』

岡部「とにかくいったん事務所に避難だ」

千早「痛い、急に引っ張らないでください!」

岡部「ドアに逃げ込め! 奴もそこまでは来るまい!」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:逃がさないよ♪ 本文:お前達を見ているぞ(・ー・)』

岡部「――!?」

岡部「いや違う。この世界線は違うはずだ」

千早「プロデューサー?」

岡部「とりあえずドアに鍵を!」

千早「は、はい」

岡部「ふぅ……冗談じゃない」

黒い男「何が冗談じゃないんだ?」

岡部「ひ!?」


33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:10:40.29 ID:Grj/pq8F0
千早「社長、連れてきました」

黒い男――社長「うむ、ご苦労だったな」

岡部「(な、なんだこの真っ黒な人間は? まさか、松●し●るか!?)」

社長「君が敏腕プロデューサーなのは分かる。だが、いくらなんでもこの遅刻は酷いんじゃないのかな?」

岡部「す、すいません……」

社長「まぁ、良い。以後気を付けたまえ」

社長「さて、今日はどうするんだね?」

岡部「へ?」

社長「へ?ではない、今日の予定だよ。オーディションかね、営業かね? それとも、必要ないとは思うがレッスンかな?」

岡部「あ、あの……」

千早「プロデューサー。今日の予定は営業のはずですよ」

岡部「え? あ、あぁ、そうです。今日は営業に行きます」

社長「そうか。ならば早くしたまえ。……千早くん、今日の彼はなんだか頼りないが、大丈夫かね?」

千早「大丈夫です。私は、プロデューサーを信じてますから」

岡部「(やばい……頭が真っ白だ。とりあえず、流れに合わせるしかない!)」

岡部「エル・プサイ・コングルゥ……」


34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:25:54.35 ID:Grj/pq8F0
岡部「……今日は、ここで合ってるんだよな?」

千早「はい、合ってますよ。……プロデューサー、予定はちゃんと手帳に書くように言っておいたはずですけど?」

岡部「すまない。次からそうする」

岡部「(まさか沖縄まで来るとはな……しかもここは)」

千早「岡……プロデューサー、そんなにじろじろ見ないでくれますか?」

岡部「…………」

岡部「(水着……元の助手――ルカ子ほどすらもないが、それでも健康的な体じゃ……。

   いかん! 俺は何を考えているんだ!)」

千早「……HE  」

岡部「お、俺はHE  ではない! 狂気のマッドプロ……マッドサイエンティストだ!」

千早「はぁ? プロデューサー、昨日頭でもぶつけたんですか?」

岡部「…………」

千早「……とりあえず、私は撮影に戻りますね。プロデューサーは、しばらく休んでてください」

岡部「あ、あぁ」

岡部「(行ってしまった……それにしても、こんなでかい屋内プールを貸し切るなんて、俺すげープロデューサーだったんだな)」

岡部「……そうだ、とりあえずダルに連絡を」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:31:37.66 ID:Grj/pq8F0
『送信者:閃光の指圧師 件名:尾行失敗(TxT) 本文:今どこ? 教えて(><;)』

岡部「なぜだか知らんが、本能が教えるなと告げている……無視しよう」

『ぴ、ぽ、ぱ……ぷるるるるるるる』

ダル『はいもしもし』

岡部「ダルか、俺だ」

ダル『リア充に知り合いはいねーお!』

『ぷつ……ぷー、ぷー』

岡部「な!?」

『ぴ、ぽ、ぱ……ぷるるるるるるる』

ダル『はいもしもし』

岡部「ダルよ、俺だ。鳳凰院だ」

ダル『あー! あー! リア充と非●●がうつるお!』

『ぷつ……ぷー、ぷー』

岡部「……ダ~ル~!!!」

『ぴ、ぽ、ぱ……ぷるるるるるるる』

ダル『はいもしもし』

岡部「うつるか! バカ者おぉぉぉぉぉ!」

ダル『おおう?』

岡部「良いかダルよ良く聞け! 今すぐ電子レンジに携帯電話をつなげ!」

ダル『な、なんだおいきなり?』

岡部「良いか? これは世界の存亡をかけた指令だ! 今すぐラボに行って、携帯電話と電子レンジをつなぎ、遠隔操作を出来るようにしておけ!」

ダル『オカリ~ン、なんだってそんな事を?』

岡部「良いからやれ! さもなくば」

ダル『さもなくば?』

岡部「事務所の力で貴様とルカ子の●●ビデオを売って儲けてやる」

ダル『ルカ氏なら全然あるあ……ってねーよ! オカリンすげー恐ろしい事言ってるって気づいてる?』


38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:45:43.20 ID:Grj/pq8F0
岡部「恐ろしい目に遭いたくなければすぐにやるんだ! もちろん、褒美も用意してやる」

ダル『褒美?』

岡部「フェイリスの……くっくっく、これ以上は言わなくても分かるな?」

ダル『がってん承知だお!』

岡部「幸運を祈る。エル・プサイ――」

『ぷつ……ぷー、ぷー』

岡部「って、最後まで聞け!」

岡部「……くっくっく。だが、これで電話レンジ(仮)が完成するのも時間の問題。

   あとは適当にやり過ごせば――」

『どん』

岡部「うお!?」

目つきの悪い青年「おい、邪魔だ」

岡部「!?」

目つきの悪い青年「って、なんだあんたか」

岡部「え?」

目つきの悪い青年「この前のフェスで散々痛い目にあわせてやったつもりだったが、まだ足りなかったか」

岡部「……あんた、誰だ?」

目つきの悪い青年「な!?」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:49:10.22 ID:Grj/pq8F0
目つきの悪い青年「あんた、この俺を忘れたのか? この天ヶ瀬冬馬を忘れたって言うのか?」

岡部「忘れるも何も、記憶にない」

冬馬「く! 舐められたもんだぜ!」

冬馬「まぁ、いい。忘れても良いと言ったのは俺だしな」

岡部「なら初めから話しかけなけりゃ良いだろう?」

冬馬「ぐ……くそ、あんたと話してると調子狂うぜ」

千早「プロデューサー! こんなところに……っ!?」

冬馬「ん? なんだ、あの時の小娘か」

千早「……なんの、用ですか?」

冬馬「用? は、何で俺がお前らに用があるなんて思うんだ? 思い上がりもほどほどにしろ」

千早「……なら、さっさとどっか行ったらどうです?」

冬馬「言われなくてもそうするぜ。じゃあな、ザコ」

千早「くっ……!」


41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 03:59:37.83 ID:Grj/pq8F0
千早「……ザコ……くっ!」

岡部「クリスティーナ?」

千早「なんですか!」

岡部「な、なにを怒っているんだ?」

千早「――! すいません……」

岡部「……天ヶ瀬冬馬、か」

千早「……この前のフェスでは大敗しましたが……でも、次は勝って見せます」

岡部「…………(やれやれ)」

千早「ひゃ!? ぷ、プロデューサー?」

岡部「良いから黙って撫でられろ」

千早「で、でも、恥ずかしいです」

岡部「頭を撫でるぐらいなんだ」

岡部「……肩の力を抜け」

千早「え?」

岡部「冬馬と会った時からか? 肩に力が入りっぱなしだ。それじゃあ、実力の五分も出ないぞ」

千早「…………はい」

岡部「分かれば良い。ところで、何か用があったんじゃないか?」

千早「あ、はい。向こうで撮った写真の確認をしたいそうで」

岡部「なら行こう。あんな奴の事は忘れた方が良い」

千早「はい」


42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 04:14:30.66 ID:Grj/pq8F0
岡部「(なんだかんだで、笑顔も戻ったようだな)」

岡部「って、いかんいかん!」

岡部「俺は狂気のマッドサイエンティストだ。他人の笑顔を壊すのが宿命、戻してどうするんだ!」

岡部「やはり、この世界線から早く脱出せねば。ダルに報告を聞こ――」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:ようやく見つけたよ 本文:今あなたの後ろに』

岡部「後ろ?」

萌郁「呼ばれて飛び出てじゃじゃーん……」

岡部「うわあ!」

萌郁「驚いた……?」

岡部「貴様は何がしたいのだ? メリーさんか? 大魔王か? いずれにしてもどうやって突き止めた?」

萌郁「勘……」

岡部「そんな大雑把な!」

萌郁「……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:ゴシップ記事撮らせて♪ 本文:今月お酒代でサラ金ピンチなの(><)』

岡部「知った事か!」

萌郁「……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:本当にピンチなの(+‐+;) 本文:岡部くんは、私に●●に沈めっていうの?(((゜Д゜;)))』



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 04:16:58.88 ID:Grj/pq8F0
岡部「まずは真っ当な仕事を探せ! いやそれ以前に借りるほど飲むな!」

萌郁「ゴシップ記事……」

岡部「あいにく今日はもう仕事は終わりだ! 事務所に帰るだけだからスキャンダルなど起こらん!」

萌郁「……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:一生のお願い! 本文:彼女とラブホに入って♪』

岡部「……指圧師!」

萌郁「あ!」

岡部「貴様は携帯があるからダメなのだ!」

萌郁「――返して!」

岡部「ほれ、取ってこい!」

萌郁「あ!」

『ぼちゃん……』

萌郁「――!」

岡部「よし、今のうちに帰るか」

千早「プロデューサー、お待たせしました」

岡部「おぉ、グットタイミングだ」

千早「あれ? あの人どこかで?」

岡部「気にするな。いつか見た青春の幻影(コスモスオブジメーテル)だ」

千早「はぁ?」


44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 04:30:54.24 ID:Grj/pq8F0
千早「ただ今戻りました」

岡部「戻りました」

社長「おぉ、ちょうどよかった。いま二人とも、時間良いかね?」

岡部「?」

社長「いや実はな、今度大規模な音楽イベントがあるのだが、そこに、千早君を出場させてみてはどうかね?」

千早「私を、ですか?」

社長「うむ。実はそのイベントが、各メディアが大注目しているイベントでな、今年度のアイドルアカデミー大賞に、少なからず影響を与えるのは確実なのだよ」

千早「……という事は、彼らも」

岡部「……天ヶ瀬冬馬か」

社長「当然、そうなるな。君たちは一度彼に負けているから、気は乗らないかもしれないが……」

千早「いえ! やります、やらせてください!」

社長「おぉ、そうか! 出てくれるか」

千早「プロデューサー。今度こそ勝ちましょう」

岡部「あ、あぁ」

岡部「(……アイドルアカデミー大賞か……そう言えば、前の世界線でダルが言ってたな)」

岡部「(全国から、最高峰のアイドル達が集結する歌の祭典……)」

岡部「(いや、関係ないか……電話レンジ(仮)が完成すれば、俺はこの世界とはおさらばなんだから)」


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 04:47:50.39 ID:Grj/pq8F0
『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:岡部くんの鬼畜! 本文:携帯海に投げるなんて信じられない! 人の出来る事じゃないよ! 防水だったからよかったけど……』

『件名:Re:岡部くんの鬼畜! 本文:防水で命拾いしたな。それに俺はマッドサイエンティストだ、人の道を外れた事もするさ。それが運命石の扉の選択だ』

岡部「送信」



岡部「(あれから数日、電話レンジ(仮)の完成を待ちつつ、俺はプロデュース業にいそしんでいた)」

岡部「(とは言っても、素人に出来る事などたいして有る訳もない物で、もっぱらレッスン講師にいちゃもんをつけたり、クリスティーナに猫耳をつけて遊ぶぐらいだった)」

岡部「(そして、前に社長が言っていた大型イベントは目前にせまっていた)」

岡部「って、だから関係ない」

ダル「オカリン、また一人電話なんてやってるん?」

岡部「……知った事か。そもそもこの世界は、俺の知っている世界ではないのだ。

   そうだ。全ては機関の陰謀のせいだ。

   分かっている。無茶はしないさ。……エル・プサイ・コングルゥ」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 04:53:10.13 ID:Grj/pq8F0
フェイリス「凶真、ひょっとしてここにいる凶真は、フェイリスの知っている凶真じゃないのかニャン?」

岡部「あぁ、その通りだ。そしてお前も、俺の知っているフェイリスではない」

フェイリス「そんニャ~。それじゃあ、あの満月と新月が同時に輝く夜に、精霊たちの泉で交わし合った永劫回帰の契約も忘れてしまったのかニャ?」

岡部「あぁ、すまないフェイリス。俺は覚えていないんだ」

フェイリス「な、なんて事ニャ……」

ダル「フェイリスたん、元気出すお。ほら、紅茶入れたお」

フェイリス「ありがとニャン、ダルニャンは優しいニャ」

ダル「君のためなら死ねる!」

まゆり「でもオカリン。せっかくの休みなのに、クリスちゃんと一緒にいてあげなくて良いの?」

岡部「なぜ?」

まゆり「クリスちゃん。仕事の時はオカリンに甘えられないから、きっとさびしがってるのです」

岡部「あのクリスティーナが? ありえんありえん」

岡部「それよりダル、電話レンジ(仮)の開発はどうなっている?」

ダル「ん? あぁ、そこそこ順調だお」

ダル「まぁ、あと数日で完成するんじゃね?」

岡部「そうか……では、引き続き頼む」

ダル「おーきーどーきー」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:03:44.32 ID:Grj/pq8F0
岡部「さて、ドクターペッパーでも」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:助手 件名:海浜公園にて待つ 本文:ねぇ岡部、今から会えない? 事務所近くの公園で待ってるから』

『件名:Re:海浜公園にて待つ 本文:なら久々にラボに来ないか? 皆もいるぞ』

『ぴ』

まゆり「クリスちゃんから?」

岡部「あぁ」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:助手 件名:お願い 本文:どうしても二人で話したいの』

岡部「何?」

ルカ「どうしたんですか?」

岡部「いや……二人で話したい事があるって」

フェイリス「ニャニャニャ!? 凶真がクーニャンから呼び出されたのニャ」

ダル「マジか。女の子から呼び出されるとか、ホントリア充氏ねよ」

まゆり「行かなくて良いの?」

岡部「……やれやれ、仕方ないな」

岡部「ちょっと行ってくる」

まゆり「いってらっしゃーい」


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:10:24.95 ID:Grj/pq8F0
岡部「まったく、助手のくせにこの俺を呼び出すとは、一度きつく言うべきか?」

岡部「(確かこの辺だったな)」

千早「あ、岡部!」

岡部「なんだ? 二人っきりで話したい事って」

千早「うん、あのね……」

岡部「おっと、とりあえずそこのベンチに行こう。久々に長距離歩いて疲れた」

千早「え? あ、うん」

岡部「よっと」

岡部「さて、話とはなんだ?」

千早「うん……」

千早「…………岡部と知り合って、一緒に仕事するようになってから、結構時間が発ったなって思って」

岡部「そうか?」

千早「そうだよ」

岡部「そうか……」

千早「……」

千早「…………ねぇ、岡部」


52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:13:19.83 ID:Grj/pq8F0
千早「…………」

岡部「なんだ? 言いたい事があるなら言ってくれ」

千早「うん……」

千早「…………あなたは」

岡部「あぁ」



千早「本当に……私の知ってる岡部倫太郎?」


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:25:31.06 ID:Grj/pq8F0
岡部「……え?」

岡部「(な、なに!?)」

千早「……ごめんなさい」

岡部「……な、何を言い出すかと思えば」

岡部「(……く、ダメだ。何も言えない。なぜだ?

   どうせなかった事になるなら、騙そうとなんだろうと構わないはずだ。

   なのになんだ。この居心地の悪さは……)」

千早「……思えば、あのデートの時かな。ほんの些細な差だけど、なんかいつもと違ってた。

   あの時は気のせいだって思ったけど、今考えれば、どう考えてもおかしかった」

岡部「……」

千早「それに、今までの岡部は常に強気で、優しくて、頼りがいがあった。

   あ、今ももちろんそうだよ? でも、なんだろう……前とは決定的に違う。

   長い間一緒にいた私達だから、間違えようがない」

岡部「……隠し事は、出来ないか」

千早「……何か、私に言ってない事が?」

岡部「……多分信じないと思うが」

千早「……信じるわ。だから教えて」


54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:38:17.74 ID:Grj/pq8F0
岡部「……という訳なんだ」

岡部「(……信じる訳がない。このクリスティーナは、音楽の知識はあるが、科学の知識は無いんだ。そうでなくてもこんな話、だれが――)」

千早「……そうだったの」

岡部「信じてくれるのか?」

千早「……だって、そうじゃないと説明がつかないから」

岡部「……すまない、今まで騙す形になってしまって」

千早「良いの。私を傷つけないようにって考えてくれたんでしょ?」

岡部「(そうじゃない、そうじゃないんだ! たまたまそうだっただけなんだ)」

千早「……それで、その電話レンジはいつできるの?」

岡部「数日中だそうだ」

千早「岡部は、それが出来上がったら、行くの?」

岡部「その……つもりだ」

千早「そうか……そうだね、その方が良いよ」

千早「岡部は元の世界に戻った方が良い。うん」

岡部「クリスティーナ?」

岡部「(泣いてるのか?)」

千早「だって、岡部の頭の中は、『クリスティーナ』の事でいっぱいだもん。

   残念だけど、『如月千早』の事はあまり考えてくれてないみたいだし」

岡部「!」


55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:49:34.93 ID:Grj/pq8F0
千早「…………」

千早「……ねぇ、あの時の約束覚えてる?」

岡部「約束?」

千早「前に、何でもするって約束してくれた事」

岡部「あ、ああ。あのデートの時か」

岡部「そうか。俺は何をすればいいんだ?」

千早「電話レンジが完成したら、すぐに元の世界線に帰って」

岡部「なんだ、そういう事か。それなら約束なんてしなくても」

千早「良かった。それじゃあ約束ね。たとえイベントと重なっても絶対に来ないで、帰ってよ」

岡部「な!?」

千早「イベントは私一人で行くから、心配しないで。

   大好きな岡部に、これ以上無理させられないから」

岡部「俺は無理なんて」

千早「黙って」

千早「良いの、むしろ好きでもない女の子のために今日まで頑張ってくれて、感謝してるぐらい。

   本当に、ありがとう。ごめんなさい」

岡部「ま、待って」

千早「さようなら」

岡部「(あ、足が動かない!? なんでだよ? 動け! 動けよ!)」


56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 05:57:44.37 ID:Grj/pq8F0
「ぽつ……ぽつ……ぱらぱら……ざー」

岡部「……雨か……」

少女の声「あ、雨が降ってきちゃった」

男の声「ほら傘だ」

少女の声「ありがとう、お父さん」

少女の声「あれ? あ、あの人」

男の声「ん? 岡部じゃねーか」

岡部「……ミスターブラウン?」

天王寺「どうしたんだ? いつにもましてさえない顔しやがって」

岡部「……俺は今、さえない顔をしているか?」

天王寺「あぁ。まるでこの世の終わりが来たみたいな顔だ」

天王寺「傘は持ってないのか?」

岡部「……急に呼び出されたものでな」

天王寺「……綯、一緒にはいるぞ。そんでその傘、岡部に貸してやってくれ」

綯「うん良いよ。はい、オカリンおじさん」

岡部「……感謝する」

綯「?(いつもより怖くないけど……なんか変なおじさん)」

天王寺「とりあえず帰ろうぜ。ほら、立てよ」

岡部「…………」


57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:08:33.95 ID:Grj/pq8F0
ダル「オカリン!? どうしたんだお?」

岡部「…………」

天王寺「おい橋田。こいつを頼むわ。まるで魂抜けたみたいになっちまいやがった」

ダル「わ、分かったお」

ダル「って重! 体重かけすぎだろ常考!」

まゆり「オカリン!」

ルカ「凶真さん!」

フェイリス「凶真!」

ダル「ほら、しっかり歩くお」

ルカ「濡れて体温が下がってる。部屋を温めましょう!」

フェイリス「いま。タオル用意するニャ!」

まゆり「オカリン……!」

岡部「……確かにそうかもな」

ダル「?」

岡部「俺は今まで、元の世界線……元のクリスティーナがいる世界に戻る事だけを考えていた」

フェイリス「元の、クーニャン?」

ルカ「凶真さん、しっかりして!」

岡部「自分の事ばっかり考えていた。世界線が変わって、全てがチャラになるものだと考えていた。

   たとえ世界線は変わっても、クリスティ……いや、千早はここに居続けるのに」

まゆり「オカリン……」

岡部「……俺は……バカ野郎だった……電話レンジが使えなかったのも世界が俺に下した罰だったのかもな」

ダル「もう休めお。みんな、オカリンをソファの上に」

 

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:30:23.86 ID:Grj/pq8F0
岡部「…………」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ~♪』

岡部「う……」

ダル「目が覚めたかお?」

岡部「ん? ダル?」

まゆり「オカリ~ン!」

岡部「まゆり? それに、みんなも?」

フェイリス「2日も目を覚まさなかったから心配したニャ」

ルカ「医者が言うには、何か精神的なショックがあったんじゃないかって事ですけど」

ダル「とにかく無事でよかったお」

岡部「2日も寝ていたのか……」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ~♪』

岡部「そうだ、千早は!」

まゆり「ちはやって……ひょっとしてクリスちゃんの事?」

岡部「あぁ、今日はイベントの日――」

『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ~♪』

岡部「ええい、さっきからなんだ!」

『ぴ』



『送信者:閃光の指圧師 件名:岡部くん、来てる? 本文:牧瀬紅莉栖ちゃんが出てるから、てっきり一緒だと思ったのに。ちょっと残念(;^^)』


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:32:40.68 ID:Grj/pq8F0
岡部「なんだと……?」

『件名:Re:岡部くん、来てる? 本文:千早がそっちにいるのか!? 結果はどうなったんだ?』



『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:千早って、彼女の本名?! 本文:結果はまだだよ^^ でももうすぐ番がくるみたい』



『件名:Re:千早って、彼女の本名?! 本文:俺もすぐ行く。メール、ありがとうな』



岡部「ちょっと出かけてくる!」

フェイリス「無茶しちゃだめニャ! もう少し休んで」

岡部「そんな暇はないんだ。俺は、行かなきゃいけない」

ダル「あ、オカリンオカリン」

岡部「なんだ?」

ダル「電話レンジ、完成したお。確かにゲルバナは出来るみたいだけど、こんな不気味な物作る機械作ってどうするの?」

岡部「完成したのか? 本当に?」

ダル「嘘言ってもしょうがねーじゃん」

岡部「確かにな」

岡部「…………」



『それじゃあ約束ね。たとえイベントと重なっても絶対に来ないで、帰ってよ』



『大好きな岡部に、これ以上無理させられないから』


63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:35:28.04 ID:Grj/pq8F0
岡部「……約束は破棄する」

ルカ「……凶真さん?」

岡部「これは俺のエゴかもしれない。いや、間違いなくそうだ。

   でも、俺の事を好きだと言ってくれた仲間の事を、俺は見捨てておけない」

まゆり「……クリスちゃんの所に行くんだね?」

岡部「あぁ」

まゆり「気をつけてね。いってらっしゃい」

岡部「行ってくる」


64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:44:50.86 ID:Grj/pq8F0
岡部「……ここか!」

冬馬「あん? 何であんたがここにいるんだ?」

岡部「お前は、天ヶ瀬冬馬か」

冬馬「へぇ、覚えてたんだ」

岡部「悪いが構っている暇はない。じゃあな」

ガイアが(ry「待てよ」

岡部「また新しいのが出た……」

ガイアが(ry「俺の名は4℃。そこの天ヶ瀬とユニットを組んでいる」

岡部「で?」

4℃「聞いて驚くな。俺達の次の相手はお前のところの子猫ちゃんだ」

岡部「な!?」

天ヶ瀬「という訳だ。悪いが今回も完膚なきまでにつぶしてやるよ」

岡部「千早は、お前達には負けない!」

天ヶ瀬「千早? あぁ、あいつの本名か」

天ヶ瀬「何でも良いや。どっちにしても、お前達は今日、完全にIA大賞への道を閉ざされることになる」

天ヶ瀬「せめて、今のうちに、傷が大きくならないような対策を考えておくことだな」

4℃「あばよ」

岡部「くっ!」


65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 06:53:45.85 ID:Grj/pq8F0
『ちゃ~らっ ちゃらら ちゃっっちゃ――ぴっ!』

『送信者:閃光の指圧師 件名:見つけた! 本文:岡部くん、出店のあるところを見て!』

岡部「出店?」

萌郁「……」

岡部「萌郁! 千早は?」

萌郁「あっち、早く行こう!」

岡部「……千早!」



『ワイワイガヤガヤ』

岡部「人が多すぎる!」

萌郁「千早さん、出てきた」

岡部「!」

岡部「千早!」



千早「……岡部、帰ったかな」

千早「うん、これでよかったのよね」

司会「それでは牧瀬紅莉栖さんに歌っていただきましょう! 曲は『目が逢う瞬間』!

『~~~~♪』

千早「……たくさんの人の波~」



岡部「……千早、良かった、順調そうで」

萌郁「……!」

岡部「どうした?」

萌郁「隣の中継……これを見て」

岡部「ワンセグ配信か」

岡部「!?」


66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:11:36.75 ID:Grj/pq8F0
『~~~~♪』

天ヶ瀬「嘘の言葉があふれ!」

4℃「嘘の時を刻む!」



岡部「なんだよ……比べ物にならない……これじゃあ千早は」

岡部「く!」

岡部「千早!」

萌郁「だめ……ここからじゃ彼女の耳に届かない」

岡部「くそ! 何か方法は無いのか?」

萌郁「ない訳じゃ……ない」

岡部「え?」

萌郁「一つだけ方法はある」

岡部「本当か!」

萌郁「……でも」

岡部「……?」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:13:49.16 ID:Grj/pq8F0
萌郁「でも、何を言うの? 今の岡部くんも、何を言っていいかわからない、そんな顔をしてる」

岡部「あ……」

岡部「言われてみればそうだ……。ここに来なきゃいけない、

   ただそればっかで、何を言おうかすらまとまってすらいない……」

岡部「……やっぱり、あの時に帰ってしまうべきだったのか?」

萌郁「本当に、そう思うの?」

岡部「……そんな訳!」

萌郁「なら、素直に言えば良い」

萌郁「思ってる事。言いたい事を全部言えば良い」

岡部「思っている事、全部……」

萌郁「どんな事情があるのかは分からないけど、それはきっと、岡部くんにしかできないから」

岡部「……そうか」

岡部「そうだな」

岡部「俺とした事が、そんな簡単な答えすら見えていなかったのか」

萌郁「……」

岡部「くっくっく……はーっはっはっはっは!」

岡部「この鳳凰院凶真今まで毒を抜かれていたらしい!」

岡部「萌郁」

萌郁「うん」

岡部「これより『オペレーション・サラスヴァティー(言葉を司る女神作戦)』を開始する!」

萌郁「これを使って」

岡部「これは?」

萌郁「インカム」

岡部「何だそれは! 一つだけある方法ってこれか!」

萌郁「(コクン)」

岡部「何というご都合主義……だが、それが運命石の扉の選択か!」


68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:31:56.25 ID:Grj/pq8F0
萌郁「……この曲は、次のサビの後間奏が入る。そこを狙って」

岡部「承知した」



千早「振り向かないで~♪」



萌郁「……今!」

岡部「――――――千早!」



千早「!?」

千早「岡部……なの?」

岡部『あぁ』

千早「なんで? 帰ってって約束したのに――」

岡部『俺は……』

岡部『俺は、この世界のお前の事は、多分何一つ分からない。

   だから今の俺には、千早に何も言う権利は無いのかもしれない。

   でも、俺は――知っているから、いくつもの世界線を旅して、

   その全てで、お前が人より天才で……人よりガンバリ屋で……人より寂しがり屋で……』

千早「岡部……!」

岡部『たとえこの世界線では姿かたちは違っても、

   その根本は同じだから……。

   どこに行ってもお前はお前だから……』

『だだだだ~だ~だ~だ~だ~♪』

『着信:ダル』

岡部「ん? ダル?」

萌郁「……岡部くん、これ以上の会話は無理」



千早「目と目が逢う~」


70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:42:05.98 ID:Grj/pq8F0
『ぴ』

岡部「なんだ、どうした?」

ダル『お、オカリン! やばい事になったお!』

岡部「どうした?」

ダル『配線がショートして、今ラボ燃えてるお』

岡部「なにい!?」

ダル『一応みんな逃げだしたし、貴重品なんかは持ち出したから安心するお』

岡部「電話レンジは!」

ダル『あ~、置いてきちゃった』

岡部「ダル! まだ火の気はどんな感じだ!」

ダル『まだ大きくは無いお。でもこのボロビル、すぐにまる焼けだお』

岡部「分かった。一旦切るぞ!」

『ぷつ』

岡部「千早、もう時間が無くなってしまった。すまない……。

   返事は要らないから、一つだけ言わせてくれ』

『宛先:鳳凰院凶真 件名: 本文:Dメール実験 危険だ よく考え直せ』

岡部「俺も……お前が大好きだ」

『送信……送信完了しました。』


71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:51:03.68 ID:Grj/pq8F0
岡部「…………うっ」

岡部「(リーディングシュタイナーが発動した……)」

岡部「戻ってきたのか?」

『ガチャ』

まゆり「トゥットゥルー♪ ただいま~」

ダル「お帰りだお。ちゃんとコーラ買ってきてくれた?」

まゆり「うん、買ってきたよ」

まゆり「オカリンと紅莉栖ちゃんにはドクターペッパーね」

岡部「紅莉栖!?」

紅莉栖「ありがとう、まゆり」

岡部「戻ってきたんだ……」

まゆり「ん? どうしたのオカリン?」

紅莉栖「さっきからそこでブツブツつぶやいてるけど、どうしたの?」

岡部「……千早じゃ、ないんだよな?」

紅莉栖「はぁ? ちょっと誰よ千早って」

岡部「いや、何でもない……そうか……」

岡部「……これでよかったんだ。きっと」

岡部「(千早、勝てたかな……)」

ダル「オカリン今、千早って言わなかった?」

岡部「千早を知っているのか?」

ダル「知ってるも何も」


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 07:57:45.23 ID:Grj/pq8F0
ダル「今人気大爆発中の歌姫の名じゃね?」

岡部「歌姫……」

ダル「ちょうど今野外ライブ対決の中継やってるお」

『ぴ』

岡部「!」

司会『さぁ、如月千早 対 ジュピター、勝つのはどっちだ? 得点を』

岡部「あ!」

司会『如月千早がわずかな差で勝利だ!』

ダル「すげー、あのジュピターに勝っちゃったお」

岡部「そんなにすごいのか?」

ダル「突如現れた謎のイケメンユニットだお。

   それだけで死に値するのに、竜宮小町をつぶしてくれたりした

   超憎いやつらだお。マジで怨むぜ」

岡部「何だかわからんが……そうか、千早は勝ったんだな」

ダル「そういう事。あれ? オカリンってファンだったっけ?」

岡部「いや……タダの気まぐれだ」


73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/28(木) 08:04:02.35 ID:Grj/pq8F0
紅莉栖「岡部? ずいぶん疲れた顔をしてるけど、大丈夫?」

岡部「今はしばらく眠りたいんだ。すまないが、ソファ貸してくれ」

紅莉栖「……断る。私も座りたいんだ」

岡部「…………」

紅莉栖「だ、だが、特別に膝を枕にさせてやらなくもない」

ダル「牧瀬氏デレ期キタ――――!」

紅莉栖「だ、誰がデレるか!」

岡部「それじゃあ、そうさせてもらう」

紅莉栖「え? うわ、ちょっと!」

岡部「すー……すー……」

まゆり「オカリン寝ちゃった」

紅莉栖「まさか本当に寝るとは」

ダル「今のオカリンリア充すぐる。爆発しろ!」



司会『今のお気持ちを、誰に伝えたいですか?』

千早『それはプロデューサーと……あと、名前もわからない人だけど……白衣のマッドサイエンティストさんに』