1: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 20:57:19.62 ID:v7RmfUVAO
ガヤガヤ...

「そんでよー。あいつ失敗しやがってさ」

「ギャハハハ!ざまねぇな!」

「そんじゃあな!」

「おう!」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


ジャラッジャラッ

「……」コツコツ

「……この辺はなんつーか。うすぐれぇし気味悪りぃよな……」

「……」カチッ

「……ふー」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「……あぁ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408795039

引用元: 観測世界の艦娘達 



2: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:00:34.79 ID:v7RmfUVAO
「……今、あの影。動かなかったか?」

「……」

「……気のせい……だよな」コツコツ


ドクンッ


「さっさと帰って……酒でも呷るか」


ドクンッ


「……ふー」


ドクンッ


「……」ピタッ

3: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:03:15.99 ID:v7RmfUVAO
「……」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「あ、な……なんだ……」

ポロッ...

「……」ギョロッ

「ば、化け物……!?」

「……」ガバァッ!!

「う、うあああああ!?!?」

グジュッ


「あ、そういえば。あいつに借りたDVD返すの忘れてたな」

「今ならまだ追いつくか?」ダッ

4: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:07:59.85 ID:v7RmfUVAO
「はっ……はっ……」タッタッタッ

「……」

「お、おーい!!ちょっと待ってくれ!!」

「……ぅ」フラッ

「……?」タッ...

「ゥ……ア……」

「……おい?どうした……?」

クルッ

「ア……ガ……」

「ひっ……お、おい……お前……!!」

「……グァァ!」ダッ

「な、なんなんだ!!なんなんだよ!!!」


「うわあああああ!!!!」

5: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:20:06.98 ID:v7RmfUVAO
「……」コツコツ

(目撃情報があるのはこの辺りか)

(古いビルが建ち並び道幅はそれ程広くはない)

(路地裏が多くあまり綺麗ではないな)

(街灯も少ないせいか夜になれば薄暗く、路地裏はほぼ死角になる)

「……」コツコツ


ウアアアアア...


「……どうやら当たりを引いた様だな」ダッ


「やめろ!!やめてくれ!!」グッ

「シャアアアアア!!」ガチッ!!ガチッ!!

「……!」ダッ

(組み合っている男二人。一人は……まだ無事か)

(もう一人の方は……血走った目、顔中に浮かび上がる黒い血管)

(身体からはどす黒い血を流している)

(間違いない)


「深海棲艦化している」

6: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:24:26.25 ID:v7RmfUVAO
チャキッ!!

「……」

パンッ!!パンッ!!

「グガッ……!」

ドシャッ

「無事か?」

「な、なんなんだよ。なんなんだこれよぉぉぉ!!!」ダッ

「おい!待て!」

「これじゃまるでゾンビ映画じゃねえか!!ふざけるな!!」タッタッタッ!!!

ガバァッ

グジュッ!!

「かはっ……!?」

「グジュッ……グジュッ……」

「……!!」

7: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:32:17.61 ID:v7RmfUVAO
「……」コォォ...

「……本当の当たりを引いた……のか」

(深海棲艦。鋼鉄の様な装甲を纏った異形の化け物)

(並の武器で立ち向かえる様な相手ではないが……)

(俺の装備は……ベレッタM92F。コンバットナイフ)

(装填されている弾倉には13発。予備弾倉と合わせて27発)

「……いささか、分が悪いな」

8: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/23(土) 21:37:45.71 ID:v7RmfUVAO
パンッ!!パンッ!!

キンッキンッ

深海棲艦「……」

「……」

(やはり、装甲部分にダメージは皆無)

(人間からすれば戦車を相手に戦っているようなものだが……)

(体躯の小柄さにおおよそ深海生物を思わせる見た目から奴は恐らく……駆逐艦)

(あれで最弱の類に入るのだからこちらとしてはたまったものではないな)

深海棲艦「……」ジャキッ

「!!」ダッ

バララララ!!!

17: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 08:33:07.54 ID:M4eJ4O1EO
(機関砲掃射ッ……)

ザッ

「……」パンッパンッ

深海棲艦「……」

「悪いがまだ貴様の仲間になるつもりは無いぞ」ダッ

バララララ!!!

(だがこの銃撃、いつまでもかわし続ける事など……)

ドカッ

「ぐっ……!」

18: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 08:37:37.23 ID:M4eJ4O1EO
「ア……アガアアア!!」

(さっきの……!)

「……っ!!」ググッ

「アァ……」ガチンッ!!

「……喰われるつもりも……」ガシッ

「ないッ!!」ブンッ

ドサッ!!

パンッパンッパンッ

「……」

深海棲艦「……」カァァ

「しまった……」

19: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 08:42:04.42 ID:M4eJ4O1EO
「……」

深海棲艦「……」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「……去って、いく……」

(いや、ここでみすみす逃せば更に被害者が……)

(……だが、今の武装で奴には)

「……」スッ

(とりあえず、連絡はしておいた方がいいだろう)

「……」

スッ

「電波障害……」

20: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 08:55:24.11 ID:s50R0fGpO
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ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


今やインターネットの世界は広大だ。最初こそ小規模であったであろうそれは徐々に拡大していき、人間では抱えきれないほどに成長した

ある人はそれをもう一つの世界だと言った。人間が新たに世界を作り上げた、と


今から十数年前になる。とある施設でかたわの少女や孤児を使った実験が行われていた

つい数年前に日本でも導入された二足歩行人型戦車、そして艦娘技術

それの研究が行われていたのだ

21: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 09:01:02.70 ID:s50R0fGpO
だがその始まりは兵器運用の実験ではなかった

あまりにも広大になったもう一つの世界。電子世界に"生物"が生まれた事から始まる

様々な情報の切れ端から生まれたエラー。それが電子世界で生物として生息を始めた


ーーーーー深海棲艦だ


深海棲艦は人間に様々な影響を与えた。データの破壊、通信の妨害……

ファイアウォールやウイルス対策ソフトでもそれは駆逐出来なかった

22: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 09:09:40.81 ID:mEzcr1qkO
様々な腕のあるハッカーもそれに挑んだが敵う事はなかった

「それなら人間が"直接"攻撃すればいい」

最後の手段として運用を開始した艦娘技術。だがそれは深海棲艦を駆逐出来る唯一の技術となった

情報の海を自在に移動し圧倒的火力で情報の海に住まう者を沈める。艦娘の名前はそこから来ている


だが何故それが少女である必要があったのか?

それは艤装と呼ばれる艦娘が使用する兵器と一番馴染んだのが少女だったからだ

男性でも大人の女性でもなく"少女"である必要があった

正確に言うなら十代後半から二十代前半の女性。それでなければ火力も速度も十分に出す事が出来なかった

23: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 09:19:39.23 ID:mEzcr1qkO
当たり前だが異形の化け物との戦いに少女を駆り出すのだ。批判は当然避けられない

だからその研究施設を医療施設、孤児院に偽装して艦娘の運用、さらなる実験に利用していた


しかし、それも長くは続かなかった

艦娘達や施設関係者が一斉蜂起を起こしたのだ

それがきっかけで艦娘の存在や次世代兵器の情報が全世界中に流れ出した

内閣は当然解体を余儀無くされた。そして日本も各国から批判を浴びたが……

他の先進国でも同様の研究が行われていた事も露呈した

26: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 22:51:11.12 ID:mEzcr1qkO
だがそれで全てが終わる事はなかった。むしろそれがきっかけになり、世界中にこの技術は浸透していくことになる

蜂起から数ヶ月が経ち、艦娘の利用も永久的に無くなる予定であったが

深海棲艦の攻撃の激化により再び艦娘は電子の海での死闘を余儀無くされる

それも健全な少女が、公式的にである

批判する者は後を絶たなかったがそれ以外に解決する方法は無かった

世界の情勢、安定とほんのわずかな少女の命。どちらが大切かと問われれば……答えは明白だった

27: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 22:54:25.50 ID:mEzcr1qkO
さらに、次世代兵器の研究も続けて行われる事になった

災害や救助に役立つ、という建前で開発される人型戦車……

それは核抑止力をも消してしまう程の影響力を持つまさに最強の兵器であった

核をこの戦車一体で持ち歩く事が可能であり、どの様な場所からでも発射を可能とする

さらに迎撃でさえも迅速的かつ確実にこなすポテンシャルがその戦車にはあった

29: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 23:00:35.86 ID:mEzcr1qkO
その結果、世界情勢は悪化を辿りついに……


ーーー第三次世界大戦が勃発したーーー


だがそれだけの理由ではやがてすぐに終結へと向かうだろう。そうでない理由がこの大戦にはあったのだ


深海棲艦の現実世界での出現ーーー


突如として現れた深海棲艦の群れはたちどころに小国を制圧した。それも世界のあちこちでである

どうして深海棲艦は現実に現れたのか?自分達の世界から自力で這い出てきたとでも言うのだろうか

彼らの身体はどうしたのだろうか?一説によれば虫の遺伝子を掛け合わせ組み合わせ、深海棲艦の情報を取り込み作り上げられたとも言われている

なんにせよ、何者かの手引きがあったはずだ。それも小規模でなく大規模な研究であったはずだ

30: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/26(火) 23:06:00.74 ID:mEzcr1qkO
疑念が疑念を呼び負の連鎖はたちどころに広がる。最早簡単に済む様な事態ではなかった


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ーーーーーー
ーーー

33: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 10:17:25.95 ID:iDNhuQZrO
少佐「これが例の事件からの背景だ。なおその蜂起に参加したと思われる艦娘及び関係者だが……」

男「……」

少佐「まず現実世界での主力に……加賀、赤城、扶桑、山城、伊19、伊58」

少佐「この先は自分で目を通しておいてくれ」

少佐「次に電子世界での主力だが……」

少佐「翔鶴、金剛、霧島、長門、木曾、電……」

少佐「これが蜂起の首謀者が統率していたと思われる艦隊編成だ」

少佐「他に支援艦隊として暁、雷、不知火、青葉、陸奥……」

男「何故……」

少佐「ん?」

男「何故、蜂起が起こったのでしょうか」

34: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 10:25:31.09 ID:iDNhuQZrO
少佐「……彼女達からすれば。地獄そのものだっただろう」

少佐「不本意に連れて来られ命がけの戦いを強いられていたんだ」

男「……」

少佐「それと妙な事があってな」

男「妙な事……?」

少佐「蜂起の首謀者と翔鶴の行方だけがわからないんだよ」

男「……」

少佐「それならいいんだが……首謀者に関しては情報が一切無い」

少佐「綺麗さっぱり消されたみたいにな」

男「……当時公開されるとまずい事があった?」

少佐「そうかもしれないな」

35: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 10:35:52.00 ID:iDNhuQZrO
少佐「まぁ、俺が知ってるのはこれくらいだ」

少佐「次に今回起きている事件についてだが……中尉。まずは君の報告から」

男「はい。感染者出現報告のある地区を巡回していた所、駆逐艦級と思われる深海棲艦を発見しました」

男「それがこの地点になります」

少佐「ふむ……」

男「感染者も二名、そちらは……当時の装備では射殺以外の対処方法が無かった為射殺」

男「深海棲艦の方は行方を眩ませました」

少佐「……人員を割くのはこちらとしても厳しいが、小隊以上中隊以下の規模で巡回任務を行うのが最善か」

36: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 10:40:53.71 ID:iDNhuQZrO
少佐「何故防衛ラインの後方にあるこちらに深海棲艦が現れているのか……」

少佐「偶然防衛ラインを抜ける事が出来たかそれとも何者かの手引きか……」

男「国防軍の防衛ラインを偶然で抜けられるとは思えない……」

少佐「何者かの手引きだったとしても何故その様な事をするのか……」

少佐「餌でも使って引きずり出してやりたい所だが、今は被害を抑えるのが先決だ」

少佐「今まで通り巡回任務を頼む。深海棲艦を発見次第射殺出来るのなら射殺して欲しい」

男「はい……」

40: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:28:26.37 ID:MLNZLEMkO
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

カチンッ...

男「……」パチンッ

男「……ふー」

男「……」

「なにを黄昏ている」

男「……武蔵か」

武蔵「随分、思い詰めた顔をしているじゃないか」

男「……すぅ」

ジジ...

男「はーっ……」

男「……深海棲艦が市内に現れた。丁度俺が巡回していた場所にな」

男「感染者を……二人殺した」

男「人を撃つのは……気持ちのいい物じゃない」

41: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:32:37.91 ID:MLNZLEMkO
武蔵「……ふむ。だがそれとは違う事で思いつめている様に見えるがね。どうだい?」

男「……」

武蔵「私には……相談出来ない内容か?」

男「……すまない」

ポトッ

武蔵「……煙草を吸うのはいいが始末はどうにかしたらどうだ」

男「灰皿を忘れた」

武蔵「……」

サッ

男「……」スッ

武蔵「準備がいいだろう?」

男「いつもいつも助かっているよ」

42: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:38:54.42 ID:MLNZLEMkO
武蔵「私は提督の姉の様なものだろう?」

男「姉……か。そうだな」

男「……確かに、姉の様な……存在だと思う」

武蔵「ところで、隣に座っても構わないか?」

男「勿論だ」


男「……」

武蔵「……」

男「……」カチンッ

武蔵「なぁ……提督よ」

男「ん……?」パチンッ

武蔵「何故ここからだと星空が見えない。何故だ……」

43: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:44:36.69 ID:MLNZLEMkO
男「ふー……」

武蔵「雲一つ無い夜空だと言うのに、どうしてここからは見えない」

男「……武蔵は、星空が見たいのか?」

武蔵「そうだ。きっと美しいだろう」

男「俺は……星空は見たくない。ここでは……の話になるが」

武蔵「何故?」

男「星が見えるということは文明の明かりが消えたと言う事。交戦によって起こる炎も煙も無いと言う事」

男「深海棲艦に全て、飲み込まれたという事になる」

武蔵「……」

男「……」ジジ...

男「ふー……」

44: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:49:21.27 ID:MLNZLEMkO
武蔵「……それほどにこの街が好きなのかい?」

男「……嫌いじゃないさ」

武蔵「……そもそも何故提督はこのかなみ市防衛機構に入ろうと?」

男「……この街に探し物があったから、か」

武蔵「探し物?」

男「探し物だ」

武蔵「……」

45: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/27(水) 22:52:00.12 ID:MLNZLEMkO
武蔵「大事な物?」

男「物……ではないが、大切ではある」

男「俺はただ、知りたいんだ」

武蔵「……」

男「そこにあった事を知りたい。記憶に留めておきたい」

男「それだけで、いい」


49: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/28(木) 19:32:30.60 ID:RtvAPZWvO
かなみ市防衛機構は有志が集まり結成された自警団だ

市内での深海棲艦関連の事件や凶悪犯罪が起きた場合に市の要請で動く

その他にも自分達で街を巡回したりと自主的に活動する

むしろ昔は後者が主であったが今では報酬をもらい任務に就く事もあり、PMCに近い存在となっていた


それの一員として活動を始めてもう4年は経つ。真実を知りたい、ただそれだけの為にここに来た

50: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/28(木) 19:36:48.28 ID:RtvAPZWvO
武蔵は俺がここに来てから俺の指導役として付き添ってくれている

武術、射撃、その他いろいろ……

確かに姉と言われれば姉の様な存在であるのかもしれない

武蔵「……どうした、顔なぞじろじろ見て」

男「いや……」

年齢は……俺よりも下だろう。だが明らかに俺よりタフでたくましい

そして俺の率いる艦隊の旗艦、つまるところ部隊のリーダーとしても共に戦ってくれている

54: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/30(土) 22:08:24.60 ID:QT2OABMRO
武蔵「そういえば、今度この艦隊に新しく艦娘が入隊するそうだ」

男「それは初耳だが……」

武蔵「あくまで噂だからな。だが人員不足のこの隊に艦娘が増えるのは自然だし信用性もある」

男「そうか……なら正式な話も近々あるだろうな」

武蔵「電子世界での戦闘も、実戦も苦労しているから助かる」

男「実戦はほぼ俺と武蔵の二人で行っているからな」

55: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/30(土) 22:16:20.53 ID:QT2OABMRO
男「……」

武蔵「……」

キィィィン...

武蔵「……国防軍か」

男「あれは……九十九里の方へ向かうのか」

武蔵「先日の九十九里海戦もかなり苦戦したようじゃないか」


ここ数ヶ月、深海棲艦の攻撃は激化している

パプアニューギニアを実質制圧した深海棲艦だが、そこからオーストリアやインドネシア、そして日本への攻撃が続いている状態だ

沖縄、鹿児島に防衛線を敷いている国防軍であったが、つい先日九十九里沖合に深海棲艦の船団が現れ急襲を仕掛けてきた

56: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/30(土) 22:22:54.37 ID:QT2OABMRO
少数精鋭の部隊が配備されてはいたものの深海棲艦の数は尋常では無く、海岸の防衛線を破り揚陸まで許す寸前まで陥ったそうだ

多少時間を稼いだお陰で国防軍の増援が到着し、更にミッドウェイからの米軍の援軍が後方から襲撃を掛けなんとか撃退に成功したらしい

男「……」

武蔵「……」

男「戦火になど飲まれたくはないな……」

武蔵「その為に私たちがいるのだろう?」

男「……」


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ーーーーーー
ーーー

61: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/31(日) 18:40:23.36 ID:kGf/BgQRO
男「……」

男「……」パチッ

ムクッ

男「……」ポリポリ


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ーーーーーーー
ーー


男(今日は……どうするか……)

男「……」ガチャ

男(ここでは艦隊毎に寮での生活となっている)

男(各個人の部屋があり、中央には談話室兼執務室)

男(トイレと風呂は各部屋に付いているが、ダイニングは共用なので食事は全員で取る)

男(寮を出ると運動場に射撃場などがあり一通りの訓練は行える)

62: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/31(日) 19:11:00.87 ID:kGf/BgQRO
男(車両格納庫に兵器庫。そしてかなみ市防衛機構の本社ビルとも言える五階建ての建物)

男(そこそこに広い敷地ではあるがこれも地道に活動をしてきたからか)

男(今では国防軍一個大隊程の数の人間がここで生活、または働いている)


男「今日の朝食の当番は……」

63: ◆SOkleJ9WDA 2014/08/31(日) 19:22:01.46 ID:kGf/BgQRO
あぁぁ……ダメだ。どうしても他の艦娘が決まらない……

という訳で男の艦隊に所属している艦娘を募集したいのですがお願いできないでしょうか?

巡洋艦他派生、空母、軽空母、戦艦他派生からお願いします。あと最近新しく増えた艦娘とかはわからないかもしれません

75: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 09:54:13.56 ID:yf9cMQI7O
龍鳳「はい。今日の当番は私です!」

男「今日は龍鳳か……楽しみだな」

(小柄なこの少女は龍鳳という。もちろんコードネームだが)

(必ずヘアバンドに桜をモチーフにしたなにかを身につけているのはこだわりがあるのだろうか)

男「さて、いい香りもしてきた所だが……皆を起こさなければな」


男「……」コンコン

「は、はい!」ガチャ

76: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 10:11:29.45 ID:yf9cMQI7O
男「おはよう、古鷹」

古鷹「おはようございます提督!」

男(活発そうなこの少女は古鷹)

男(まず彼女に目をやるなら普通とは違う色をした左眼だろう)

男(網膜色素変黄症……という病気で彼女自身ほとんど左眼は見えていないらしい)

男「朝食がもうすぐ出来るようだ。他のみも呼んで来るから先に待っていてくれ」

古鷹「それなら私が……」

男「構わないさ。一人厄介者もいる事だ」


男「……」コンコン

77: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 10:29:25.84 ID:yf9cMQI7O
「なんだ……君か」

男「おはよう。日向」

男(この女は日向。あまり明るい方では無く活発ではないが)

男(逆に言えば冷静沈着、慌てる事なく物事に対処出来る)

男(ちなみに何故女と言ったかというと……)

日向「……どうした?」

男「いや、なんでもない……もうすぐ朝食が出来る」

日向「わかった。すぐに行くよ」

男(年齢は聞いていないが……少なくとも少女には見えないからだ)

男(……)

78: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 10:54:52.35 ID:yf9cMQI7O
「あれ?提督じゃん」

男「北上か。今起こそうとしていた所だ」

男(このどこぞの女子高生の様な話し方の少女は北上)

男(よく親友の『大井っち』という人物の話を聞かされるのだが)

男(一体どんな人物なのだろうか)

男「朝食の時間だ」

北上「今日の当番は誰なんですかー?」

男「今日は龍鳳だ」

北上「っしゃ、重雷装巡洋艦北上、出撃しまーす!」トテテ...

男「……さて」

79: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 11:00:50.02 ID:yf9cMQI7O
「おはようございます」

男「む、神通か」

男(大人しそうなこの少女は神通)

男(性格も大人しい……というか少々気弱なのだろう)

男(だが電子世界での戦闘では人物が変わったかの様に勇猛果敢になる)

男「朝食の用意が出来そうだ」

神通「はい。今すぐに参ります」

男「……あとは」

神通「武蔵さんですか?」

男「あぁ。いつもの事で慣れたがな」

80: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 11:06:30.69 ID:yf9cMQI7O
男「……」コンコン

男「……」

男「……」コンコン

男「……失礼する」ガチャ


武蔵「……」スピー

男「……相変わらずだらしのない寝相だな」

男(腹丸出しで寝てる"これ"は武蔵)

男(褐色肌で金髪。現実世界での戦闘は彼女と俺の二人をメインに行っている)

男(故にやはり身体つきもしっかりしているしその……)

男「……目の毒なのだがな」

81: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 11:12:13.62 ID:yf9cMQI7O
男(しっかりとした性格なのだがどうも……所々男くさい)

男「起きろ、もう朝だ」

武蔵「あと少しだけ……寝かせてくれ……」モゾッ

男「では朝食は不要だな。存分に寝ているといい」

武蔵「なんだ、もう少し粘ってはくれないのだな」

男「しっかり起きているのは承知だからな」

武蔵「わかったわかった。すぐに行く」

男「全員揃っているからな」

武蔵「あぁ」ヒラヒラ

82: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 11:13:53.47 ID:yf9cMQI7O
男(まぁ……気持ちもわからないではない)

男(秘書艦としていつも遅くまで仕事に付き合わせているからな)

男(一番苦労しているのは確かだろう)


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ーーーーーー
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86: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 23:33:46.06 ID:o9HmQuexO
男「では、いただきます」

「「「いただきます!」」」

男(今日の朝食は白米に納豆。ほうれん草のおひたしに焼きジャケか)

古鷹「この鮭身がふんわりしていて美味しい……」

武蔵「塩加減も抜群だな。脂も乗っていて……おかわり」ドン

日向「……」モクモク

神通「おひたしも鮭に合わせて普通よりも薄味なんですね」

北上「いいねー。これなら毎日食べられるよー」

龍鳳「ありがとうございます!」

男「これは俺ももう少し腕を上げなくてはな」

龍鳳「提督のお料理も十分美味しいですよ」

男「いや、ここまで繊細な味付けは出来ないさ。バリエーションも少ないしな」

87: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/02(火) 23:38:42.76 ID:o9HmQuexO
武蔵「朝食の後はどうする?」

男「ん、いつもの訓練だな。各自割り振られたメニューをこなす様に」

男「電子世界の警備は明日だ。今日は訓練が終われば自由に過ごせる」

男「食事の後は片付け。一時間後に寮の入り口に集合としよう」


ーーーーーーーーーーーー
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ーーーーーー
ーーー

88: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 00:04:54.00 ID:txp9ATkeO
ジャキッ...スルスル...

男「……」

男(装備を一度確認しておくか……)

男(SCAR-L、米軍の主力小銃でありM4の後続)

男(M4の前身であるM16の欠点であったガス周りの問題を改善したのと同時に多少命中精度は落ちている)

男(5.56×45mm弾を使用し)

男(ストックの長さ調節は6段階。CQBにも対応出来る)

男(専用のグレネードランチャー、FN40GLを装備可能)

男(要は汎用性の高く信頼性のあるアサルトライフルだという事だな)

89: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 00:10:32.66 ID:txp9ATkeO
男(サブウェポンにはM1911)

男(1911年から今に至るまで使用され続けている。それだけ信頼性が高いという事か)

男(45ACP弾を使用。殺傷能力は極めて高い)

男(今の自動拳銃に採用されている機構の元となったものが利用されており、当時としては革新的なものだっただろう)

男(今ではカスタムパーツも多く出回っており、俺も自分に合わせて多少カスタムしてある)

90: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 00:21:07.55 ID:txp9ATkeO
男(それに加え、コンバットナイフ、グレネード……)

男(対深海棲艦装備にはジャベリンやスティンガーなどのミサイルを装備する事もあるが今回は不要だ)

男(ほぼ米軍が採用した武器ではあるが、同盟国である米国から武器が流れてくるのはごく当たり前の事だろう)

男「……さて、いくか」

94: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 09:35:09.15 ID:8gf39eUnO
男「皆揃ったか」

古鷹「はい!」

龍鳳「頑張ります!」

北上「今日のメニューは軽くしようよー……」

神通「日頃の鍛錬が……勝利に繋がるの」

日向「……」

武蔵「実戦にも出る私と提督はより怠る事は出来んな」

男「そういう事だな。仮にも戦闘を生業にしているのだから、鍛錬を怠れば即死にさえ繋がりかねん」

95: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 09:43:15.85 ID:8gf39eUnO
男「という訳だ。各自与えられたトレーニングをこなし、昼食は個別に取る様に」

男「解散」


武蔵「それではいつも通り、提督の訓練の指導を行わせてもらう」

男「よろしく頼む」

武蔵「まず言うと射撃からだ」

武蔵「どうしても重心を固定するのが苦手なようだな。連射していようが多少足場が不安定でも重心は一定を保たねばならん」

武蔵「しっかりと脇を閉め、肩の力を抜き、多少腰を落とす」

96: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 09:47:37.64 ID:8gf39eUnO
武蔵「確実に狙った部位に当てられる様に」

男「あぁ……」スッ

チャキッ

タタタンッタタタンッ!!

男「……」

武蔵「止まるな!撃ち続けろ!」

タタタンッタタタンッタタタンッ!!

男「……っ」タタタンッ!!

タンッ...

男「……」ジャキッ

ジャコン

武蔵「……だいぶマシにはなったか」

100: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 22:12:42.01 ID:8gf39eUnO
タタタンッタタタンッ...


男「……」ジャキッ

ポタッ

武蔵「……まぁ。それくらいでいいだろう」

武蔵「次は格闘の訓練を行うぞ。小銃の弾は抜いておけ」

男「いつも通りで構わないか?」

武蔵「小銃も拳銃も装備していて構わない。ナイフも抜刀しなければいいだろう」

男「……」

武蔵「私は……素手でいこう」

武蔵「ついてこい」ザッ...

101: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 22:21:17.13 ID:8gf39eUnO
男「……」

ザッザッザッ...

武蔵「この辺りでいいだろう」

武蔵「……こい、提督」スッ

男「……」スルッ

カシャン

武蔵「ほう……ナイフコンバットか」

男「……」スッ

男(さて……どう攻めるか)

男(先に言うと武蔵はかなり強い)

男(小銃を使った格闘を繰り出した所で掴まれて終わりだ)

男(ハンドガンは……弾が撃てない以上殴打以外の使い道はない)

男(必然的に素手かナイフを使ったスタイルになるが……)

102: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 22:29:09.82 ID:8gf39eUnO
武蔵「どうした?来ないのか」

男「……」

男(隙が見出せない……)

武蔵「ならば私からいくぞ!!」ダッ

男「……ッ!!」グッ

ビュッ!!!

男(右脚からのハイキック!!)

ガッ...

男「……ッ」

武蔵「腕が折れるぞ?」

男「タダで受けた訳じゃない!」

シュッ!!!

ガシッ

武蔵「右手に握ったナイフでの一撃……見えているぞ」

103: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 22:33:35.96 ID:8gf39eUnO
男「シッ!!」ブンッ!!!

男(本命は攻撃の隙を突いた脚払い!!)

武蔵「……」

バッ!!!

男「なっ……」

武蔵「まだまだ甘いぞ?」

男(跳んだ……ッ!?)

ガッ!!

男「かはっ……!!」

武蔵「首刈り……落とし!!」

ブンッ!!!!

ドシャアアア...!!

104: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/03(水) 22:42:59.25 ID:8gf39eUnO
男「……」

武蔵「……」

男「けほっ……げほっ……!!」

武蔵「まだまだだな……」

男「実戦で……そんな攻撃をする敵がいるか……ッ!」

武蔵「居ないとは言い切れないだろう?」

男「く……げほっ……」

武蔵「私たちが相手にするのは人間だけでなく深海棲艦もだ。なにがあってもおかしくはない」

男「……とりあえず、今日は"普通"の組手で勘弁してもらえないだろうか」

武蔵「仕方ない……この技は別の機会に試すとしよう」

男「……」

109: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/05(金) 00:28:49.63 ID:Rv7SEFqDO
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


神通「……ッ!」パンッパンッパンッ

チャリンチャリン...

日向「……」チャキッ

パンッパンッパンッ

神通「全弾命中……」

日向「いつまでも提督と武蔵に実戦を任せる訳にもいかないだろう」

日向「……指揮官を失うのはどんな状況であれ気持ちの良いものではないさ」

110: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/05(金) 00:32:43.15 ID:Rv7SEFqDO
北上「はぁ……はぁ……」

タッタッタッ...

古鷹「っ……」

龍鳳「はぁ……っまだ」

タッタッタッ...

北上「は、走り込みなんてなんの意味があるのさぁー……っ」

古鷹「電子世界の戦いに少しでも耐えられる様に身体をっ……鍛えないと……!」

龍鳳「そうですねっ……!」

北上「ひぃ……少し休もうよぉー!」

114: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/06(土) 19:41:37.24 ID:vphaa/mhO
ザッザッザッ...

男「ん……」

ワーワー...

男「……走りながら会話とは随分余力があるようだな」

武蔵「……」

男「……そういえば。今日の夜間巡回はどうなっている?」

武蔵「今日は例の深海棲艦出現位置を重点的に巡回しよう」

男「それが妥当だな……援護は?」

武蔵「私服部隊を展開させるようだ」

男「そうか。わかった」

115: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/06(土) 20:10:44.56 ID:vphaa/mhO
男「……」


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ーーー


コツ...コツ...

男「……」

武蔵「……」

男「……通信する」

少佐『そこが深海棲艦の確認された位置か』

男「はい」

少佐『重点的に見て回る必要がありそうだ。路地裏、空いている店があれば聞き込みも頼む』

男「了解した。援護は?」

少佐『既に私服の人間を展開させている』

男「……」チラッ

「……」サッ

男(路地裏や後方に待機しているな)


117: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/06(土) 20:21:10.47 ID:vphaa/mhO
少佐『他の小隊も各個巡回を行っている』

少佐『敵を発見した場合は援護に向かってくれ』


男「……」

武蔵「……」

男「夜になるとやはり……この辺りは特に死角が多い」

武蔵「電灯も……所々消えているな」

男「……」

武蔵「……」

コツコツ

118: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/06(土) 20:25:56.70 ID:vphaa/mhO
男「……しかし。何故こんな所に」

武蔵「さぁな。奴らの考えている事は分からん」

男「……ただ迷い込んだかあるいは……」

男「……」

武蔵「考え事もいいが周りにも気を配るべきだな」

男「……敵か?」

武蔵「いや、もしもという事だってあるだろう?」

125: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:09:30.32 ID:ota5KG/OO
男「……とにかく、巡回を続けよう」

武蔵「巡回というよりは最早捜索の様な気がするがね」

男「……」


コツコツ...

男「……」

武蔵「……」

男(……やはり、薄暗くて危険だな)

男(歩行者が少ないのはいいが……一人で歩くには危なすぎる)

男「……」ザッ

武蔵「……どうした、急に立ち止まって?」

男「誰かに……見られている気がしてな」

武蔵「援護の部隊じゃないのか?」

男「……」

126: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:14:38.05 ID:ota5KG/OO
男「……」

コツコツ...

「……」

男(歩行者か……)

武蔵「……」

男「……」スッ

男「こちら捜索隊、応答を」

援護部隊『どうした。なにか見つけたか?』

男「歩行者が一人、念の為少し警護してもらいたい」

援護部隊『あぁ……今のサラリーマンか。わかった』

男「……」

武蔵「……」

127: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:29:27.65 ID:ota5KG/OO
男「……」

武蔵「このまま何事も無ければいいがな」

男「……そうだな」

少佐『中尉、聞こえるか』

男「はい」

少佐『近くで電波障害が起こっている。確認の為にそちらの援護部隊の一部を借りてもいいだろうか』

男「問題ありません。他の捜索隊は?」

少佐『その電波障害の中にいる。連絡が取れない』

少佐『それと捜索隊とはなんだ?巡回部隊の間違いか?』

男「あぁ……はい。そうです」

少佐『……まぁいいだろ。とにかくそのまま巡回を続けてくれ』

男「了解」

128: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:35:33.87 ID:ota5KG/OO
男「……聞こえてたな」

武蔵「電波障害か……」

男「……妙に引っかかるな」

武蔵「なにがだ?」

男「電波障害……そういえば」

男「俺が駆逐艦級と遭遇した時も電波障害だった」

武蔵「……」

男「……本部、応答を」

『ザザッ……ザザザ……』

男「……ッ」

武蔵「……」チャキッ

男「周辺の歩行者の避難を優先!急げ!」

129: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:39:09.75 ID:ota5KG/OO
男「……」チャキッ

男(正面に人影……)

少女「……」

男(パーカーを来た少女に……)

男性「……」

男(あれもサラリーマンか)

ダッ!!

男性「な、なんだ!?」

男「かなみ市防衛機構だ。すぐにこの周囲から避難して欲しい」

男「あちらに向かって急いでくれ!」

男性「あ、あぁ……」

130: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 08:46:26.40 ID:ota5KG/OO
武蔵「少女よ、話を聞いて欲しい」

少女「……」

武蔵「この辺りは少々危険なようでな、避難してもらいたいのだが」

少女「どうすればいいの?」

武蔵「あちらに向かってくれ。なるべく急いでな」

少女「わかった」

男「……」

武蔵「彼らは援護部隊に任せればいい。それで?」

男(援護部隊はかなり人数を割かれている。もし深海棲艦と遭遇しても……)

男「……このまま捜索を続ける」

男「壁際に寄って移動する」

131: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 09:00:58.97 ID:ota5KG/OO
武蔵「さて、どうなるかな」

男「……」

武蔵「肩に力が入っているぞ。もう少し落ち着け」

男「……あぁ」

武蔵「よし、それでいい。強張る必要は全くない」

武蔵「落ち着いて、普段通りに行動するんだ」


コツコツコツコツ...

男「……」チャキッ

武蔵「……」スッ

男「……」

武蔵「……」

男「……静かだな」

武蔵「……」

男「援護部隊は付いてきているのか?」チラッ

武蔵「誰もいない、な」

男「……無線も繋がらない。退却するか?」

武蔵「そうだな。その方がいいだろう」

132: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 09:05:23.28 ID:ota5KG/OO
武蔵「出来るのなら……な」チャキッ

「ア……アァ……」

ザッ...ザッ...

男「感染者……!!」

武蔵「それも随分いるな……30くらいか?」

男「それにあの服……」

武蔵「一般人も混ざってはいるが、大部分は……多分他の巡回部隊の人間だろうな」

男「……」スッ

カチンッ...シュボッ...

パチン

男「……ふー」

男「……突破するぞ」

武蔵「言われなくても分かってる」

137: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 22:59:34.97 ID:qQ5NA296O
スッ...ジャコン

男「……」タタタンッ!!タタタンッ!!

「グゴッ……」

武蔵「……」パンッ!!パンッ!!

男(武蔵が使っているのはP226か……)

男(P220の後続機種で装弾数は15発)

男(泥水に浸して尚機能する程に頑丈で信頼性がある)

男「というか何故ハンドガンなんだ……」タタタンッ!!タタタンッ!!

武蔵「持ってきた弾薬も少ないだろ、温存するべきだ」

男「そうは言うが……」

「ア……アガアアア!!!」

138: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 23:02:57.26 ID:qQ5NA296O
男「くっ……四方から囲まれては……」

武蔵「ふん……なら、とっておきを披露するか」

男「……とっておき?」

スッ

武蔵「……」ニィッ

カララララッカシャンッ

男「なっ……」

武蔵「シングルアクションアーミーだ」

ヒョイッ

男「っ……」

武蔵「すー……ふぅ……」

139: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 23:10:34.75 ID:qQ5NA296O
男(シングルアクションアーミーは西部開拓時代から使用されているリボルバーだ)

男(愛称はピースメーカー。今でも尚生産され続けている伝統ある銃だ)

男(装弾数は6発、.45弾を使用。M1911に更新されるまで米国陸軍で採用されていた)

男(西部劇には必ず登場する程に……と)

男「……まさか」

武蔵「そのまさかだ。まぁよく見ていろ」

スッ

武蔵「……フッ」

パンッパンッパンッパンッパンッパンッ!!

「グガッ!!」

「グォォ……」

武蔵「……」カララララッ

チャキッチャキッチャキッ...

男「全弾……命中か」

武蔵「まだまだ鈍ってはいないな」

140: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/09(火) 23:12:53.84 ID:qQ5NA296O
男「……いや、鈍っているんじゃないか?」

「グゥゥ……」

スタッ...スタッ...

男(奴らは痛みを感じながらそれでも獲物に向かってくる)

男(殺し切らなければ無意味だ)

武蔵「ふん……」

男「チッ……」

タタタンッ!!タタタンッ!!

148: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 09:10:10.32 ID:f5EdH/WCO
男(まずい……包囲が縮まっている)

タタタンッ!!タタタンッ!!

武蔵「今度は頭に一発ずつだ……」スッ

パンッパンッパンッパンッパンッパンッ!!

「グァァ……!」

ドサドサドサッ...

武蔵「……一発ハズレか」

男「リロード……」ジャキッ...ジャコンッ

男(それに先程から路地裏から奴らが増えて来ている……!)

「シャアアア!!!」ガバッ!!!

ガシッ

男「ぐっ……!」グッ

ブンッ!!!

ドシャアアアッ!!!

149: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 09:16:11.95 ID:f5EdH/WCO
武蔵「ハッ!!」シュッ!!

ドゴォッ!!!

男「接近されている……ここままでは奴らに押しつぶされてしまうぞ!!」

武蔵「ふっ……面白い……!!潰せるものなら潰してみろ!!」

男「……」スッ

チャキッ

男「……ナイフ格闘は苦手なのだがな」

ジリ...ジリ...

男(ナイフでは射程も威力も足りない……)

男(軍刀か……あるいは……)

ピトッ

武蔵「これ以上は下がれないぞ」

男「……」

150: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 09:22:00.45 ID:f5EdH/WCO
男「これだけの数……一体どうして……」

男(まるで待ち構えていた様だ……)

男(俺たちを殲滅する為に?だがその目的はなんだ)

男(俺たちを殲滅する事で得られる何か)

武蔵「覚悟を決めろ、提督!」

男「……」ギリッ


「うああああああ!!!」

バラララララララ!!!!!

男「なんだ!?」

武蔵「伏せろ!!」ガシッ

男「ぐぅっ!」

ドシャグシャグジュッ

バラララララララ!!!!!

151: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 09:33:58.35 ID:f5EdH/WCO
男「……」チラッ


日向「うおおおおお!!!」バラララララララ!!!!!

男「日向!!!」

バラララララララカチンッ

日向「た、弾切れ!?」

武蔵「今だ!!」ダッ

男「……」スッ

「グォォ!!!」

武蔵「邪魔だッ!!」ゴッ!!

タッタッタッ!!!

男「日向!!どうしてここにいる!!」

日向「私だって、提督と戦いたいさ」ガチャガチャ

男「これは……」

男(ミニミ軽機関銃か……5.56×45mm弾を使用。日向が身体に巻きつけているのはM27弾帯。装弾数は200発か)

男(二脚を使用した伏射だった事であまりブレもなく奴らに当たっていた)

152: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 09:39:22.07 ID:f5EdH/WCO
男「まだ弾はあるか」

日向「もう一つ……くすねてきたよ」ジャラッ

男「貸してくれ、お前にはこれを……」

日向「アサルトライフルか」ジャキッ

男「こいつらを殲滅していくぞ。これを街に放つ訳にはいかない」

武蔵「逃げるんじゃなかったのかい?」

男「……時と場合による」

男「日向!!俺の後方に着けてくれ。退路の確保と後方からの支援を」

日向「わかった」

男「武蔵は俺の横で、奴らを一掃する」

武蔵「いいだろう」

男「……攻撃開始」

157: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 22:39:00.50 ID:f5EdH/WCO
ーーーーーーーーーーーー
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ーーー


男「……」

少佐「……なるほど。わかった」

男「それで、他の巡回部隊は?」

少佐「君たち以外全滅だ。戦闘後回収した遺体で全員確認した」

男「……」

少佐「……一度、市庁に掛け合うべきだな」

男「このかなみ市以外でなにかそういった事件の報告は?」

少佐「いや、これほどまでの規模のものは確認されていない」

男「……なにか、狙いが?」

少佐「さぁな。詮索しようにも証拠が足りなすぎる」

少佐「想像だけならいくらでも膨らませる事は出来るがそれではキリがない」

158: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 22:49:33.06 ID:f5EdH/WCO
男「……」

男(いや、これだけの事件だ。必ず何者かの意図があるに違いない……)

男(……まさか)

少佐「ん、どうかしたか?」

男「いえ……」

男(可能性としては十分あり得る)

男(だが……それを証明する証拠が無いのもまた……確かか)

159: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 22:55:11.15 ID:f5EdH/WCO
男「……それでも、いずれは」

少佐「……なんだ?なにか思い当たる節でもあるのか?」

男「いえ……証拠が無ければただの妄想に過ぎません」

少佐「ふむ……そうだな。今はこの事件の解決と……奴らの目的を探らなければな」

男「はい」

少佐「では、もう夜も更けている。ゆっくり……」

プルルル...

少佐「こちらかなみ市防衛機構所属少佐」

少佐「……はい。わかりました」

ガチャ

少佐「すまないがもう少し、頑張ってはもらえないだろうか?」

160: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 23:03:30.32 ID:f5EdH/WCO
少佐「現在国防軍かなみ市駐屯部隊のシステムが電子攻撃を受けているそうだ」

少佐「現在国防軍所属の艦娘部隊は別件で動いているらしい」

少佐「よって救援は困難。我々にお役が回ってきたという事だ」

男「艦隊出撃による敵深海棲艦の撃破」

少佐「そうだ。奴ら国防軍の電子攻撃やファイヤウォールを物ともせず攻撃を続けているらしい」

男「わかりました。ではすぐに出撃を」

少佐「頼んだ。第一進水室へ向かってくれ」

男「了解」

161: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/10(水) 23:31:22.22 ID:f5EdH/WCO
ガチャ

男「……」

バタン

武蔵「……休憩くらいくれてもいいとは思うがな」

男「そうも言ってはいられないだろう」

168: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/13(土) 09:30:08.79 ID:F9ELvNssO
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男「作戦概要はこうだ」

男「まず目的だが、攻撃に晒されている国防軍の救援。深海棲艦を殲滅または撃退出来ればいい」

古鷹「でも、何故私たちなのでしょうか?」

男「国防軍の艦娘部隊は別作戦で出払っているらしい」

男「それに加え俺たちはここ所属の部隊の中では一番練度も高い」

男「成功させて恩を売りたいのだろう」

169: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/13(土) 09:36:45.21 ID:7hPKYGCTO
龍鳳「作戦決行はいつなのでしょうか」

男「直ぐにだ。叩き起こした様で申し訳ないが、よろしく頼む」

神通「一刻も早く救出しなければなりませんね……」

北上「ふあ……まー眠いけど……頑張りますか」

男「日向、やれるな」

日向「あぁ、問題ない」

武蔵「私の心配はどうなっている?」

男「ん、体調でも悪いのか」

武蔵「冗談だ」

172: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/13(土) 23:05:04.04 ID:7hPKYGCTO
男「それでは、第一進水室へ向かう。気を引き締めて、誰も欠ける事の無いように」


男「……」ピッピッピッ...

『暗証番号確認。第一進水室扉を解放します』

スー...

男(進水室とは。文字通り進水する為の部屋だ)

男(部屋の中心にある母体機器からベッドが七つ花開く様に設置されている)

男(一つは指揮官。残り六つは艦娘用だ)

男「全員位置へ。ヘッドギア装着」

173: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/13(土) 23:14:03.68 ID:7hPKYGCTO
男(ヘッドギアを装着する事で俺たちを電子世界。"電子の海"へ誘う)

男(理論やらはわからんが、肉体や精神などの自分を構成している情報を電子世界へ投影するらしい)

男(母体機器がその繋ぎ目の役目をしており、電子世界でダメージを受けるとその繋がりが削られていく)

男(もし仮に電子世界で死んだ場合。その繋がりは絶たれ現実世界での死を意味する)

男(ようは、非現実的な紛れもない現実だという事だな)

174: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/13(土) 23:24:47.31 ID:SvVfZcTGO
男「進水後すぐに俺の指示に従ってくれ」

カチャ

男「全員装着したな。少佐」

少佐『中尉、準備は整ったか?』

男「はい。いつでも向かえます」

少佐『よし。では早速カウントを始めさせてもらう』

男(今回は少佐がオペレートしてくれるが本来は部隊所属の者がする事になっている)

男(国防軍では妖精システムと呼ばれる武装やオペレートの自動、効率化ソフトを利用しているらしいが……)

男(高価で導入にも手間が掛かる。一般への使用も制限されている為防衛機構では採用していない)

177: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 09:22:03.86 ID:oVcrIrCXO
少佐『カウント開始。10、9、8、7……』

男(ベッドに横たわり目を閉じた)

少佐『6、5、4……』

男(カウントが終わった瞬間に意識が全て電子世界に引きずり込まれる)

少佐『3、2、1……ゼロ』

ゴォォォ...!!

男「……」

男(身体を地の底に引かれているような感覚……そのまま……意識も……)


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ーーー

178: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 09:32:21.66 ID:oVcrIrCXO
男(一面の水、天候は良好。ただ普通の海と違う所は……)

武蔵「全員進水完了か」

日向「周囲に敵影は無し……」

男(全員が水面に立っている。という所だ)

男(まるで水面がコンクリートの様に硬く、しっかりと足をつけているのだと感じる)

男(そして水底には……)

北上「相変わらずすごい光景だよねこれって」

古鷹「なんだか……神秘的ですね」

男(ビルに道路、街灯に木々……都心にあるような光景が水の中に映されている)

179: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 09:45:05.53 ID:oVcrIrCXO
男(そして一番異様なのが……)

龍鳳「艦載機、放ちますか?」

神通「まだ早いわ……」

男(各々先程とは違う……特徴的な服装に変化している)

男(まるで舞台衣装の様であったり、少々きわどいと思わせる様なものなど)

男(そして……)

男「全員、武装はどうだ」

日向「問題ない。いつでもいけるよ」

古鷹「私も問題ありません!」

男(砲に機銃……といった武装を身に纏っている。という所だ)

男(まさに人間兵器……そう言わざるを得ないだろう)

180: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 10:14:33.25 ID:oVcrIrCXO
少佐『そこから東へ進んでくれ。国防軍の防衛基地が見えてくる』

男「全員移動を開始する。艦載機はもう少し接近してからだ」

ザァァ...

男(水面を滑る様に移動する。先頭に武蔵)

男(その後ろに龍鳳。左翼には日向、北上)

男(右翼には神通、古鷹を配置した)

男(ところで全員武装はしているが、俺は進水以前と変わらない姿でいる)

男(武器も現実世界で使っていたものと同じだ)

男(元々指揮官であるが故に戦う必要性が無いからだ。護身が出来ればそれでいい)

男(旗艦である武蔵についていく形で後方にいるが……)

男(立ち尽くしているだけで勝手に移動出来るのだから楽なものだ)

185: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 22:15:27.17 ID:oVcrIrCXO
バララララ...

男(しばらく東に向かって進むと海上プラントの様な施設が遠くに見えた)

男(外周に沿って備え付けられたタレットから弾丸が忙しなく発砲されている)

ドゴォォォ...

男(だがそれも効いていない様だ。正面に深海棲艦の一団が隊列を成してプラントに砲撃を加えている)

男「ファイアウォールも破られ陥落寸前か」

男「龍鳳。艦載機を飛ばしてくれ」

男「奴らに気どられる前に先制するぞ!」

龍鳳「はい!」

男(艦娘にはそれぞれ艦種がありそれに寄って戦闘のスタイルも大きく変わってくる)

男(桜色の着物に似た服を纏う彼女は軽空母に属する)

男(故に彼女は艦上戦闘機を発射して戦うのだ)

186: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 22:28:16.59 ID:oVcrIrCXO
龍鳳「行きます!」キリリ

男(空母系統の艦娘は弓などを装備している)

男(それを放つ事によって戦闘機を発進させる)

パシュッ!!


ゴゴゴゴゴ...

男(空に弓を向ける龍鳳の後方に黒い空間が現れる)

キィィィン...!!

187: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 22:44:26.39 ID:oVcrIrCXO
ビュオッ!!!!

龍鳳「艦載機発艦成功。敵深海棲艦への攻撃を開始します!」

男(艦名などは大日本帝国軍の物であるが使う兵器兵装がその当時とは同じであるはずがない)

キィィィン...

男(龍鳳が使う戦闘機はF-14D。通称トムキャットだ)

男(艦上戦闘機の一種で米軍やイラン軍などで採用されていた)

男(F-4。ファントムの後続として採用された第四次ジェット戦闘機)

男(長距離ミサイル運用やRGM-84ハープーン。対艦ミサイルなどを運用。ドッグファイトに深海棲艦の攻撃二役をこなせる)

188: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 22:52:08.49 ID:oVcrIrCXO
少佐『まずは、予定通りだな』

男「トムキャットでの攻撃成功後、砲撃で殲滅するつもりです」

少佐『うむ。なるべく施設への被害が少なくなるよう頼むぞ』

男「はい」

少佐『ん、敵も艦載機を発艦させた様だな』

男「予想よりも対応が早い……」

少佐『艦娘による攻撃は勿論想定済みなはずだからな』

少佐『確認したぞ。ファントムだ』

男「F-4か。機体性能ではこちらが有利か」

龍鳳「発艦直後を狙えるのでまず押し負ける事はないと思います」

男「それに当たり前だが誰も搭乗していない。融通もあまり効かないだろう」

189: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/14(日) 22:58:07.67 ID:oVcrIrCXO
男「まさに"ファントムライダー"か……」

武蔵「くだらん洒落を言う前に私達も前進した方がいいんじゃないか」

男「いや、もう少しだけ亡霊を墓に送り返してもらってからでもいいだろう」

男(奴らの戦闘機の特徴として、全てが黒塗りである事が上げられる)

男(夜間では捉えるのは難しいが昼間は目立つ)

男(みるみるうちに猫にハエが叩き落とされていく)

日向「出番がない様で残念だな」

男「いや、これから大いに戦ってもらうさ」

193: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 08:24:57.76 ID:V+iuPsMBO
少佐『敵艦を識別した。どうやら空母が二隻、戦艦が二隻、軽重巡洋艦が五隻』

少佐『駆逐艦が十隻。と言った所か』

男「……」

男「日向、艦載機を発艦させてくれ」

日向「あぁ。航空戦艦の力、見せてやろう」

男(彼女は戦艦。通常では艦載機運用能力はほぼ無いがそれを付与したのが航空戦艦だ)

日向「少し離れてくれ」

男(日向に言われるがままに彼女と距離を取る)

ガッ

男(左手の盾の様な……甲板らしいが。それを前に突き出し、目を見開いた)

日向「艦載機、発艦」

194: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 08:30:14.13 ID:V+iuPsMBO
ゴゴゴゴゴ...

男(水面が揺れ、彼女の周囲を取り囲む様に黒い空間が姿を現す)

ゴォォォ...!!!!

男(けたたましいエンジン音を鳴らしながら、海面に出来た穴から戦闘機が"垂直"に上昇していく)

男「ファントムは龍鳳に任せろ。戦艦、空母を狙って攻撃してくれ」

日向「うん。分かった」

キィィィン!!!!

男(垂直上昇を続けた戦闘機はそのまま前へ飛び出していく)

195: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 08:49:29.84 ID:V+iuPsMBO
男(彼女の運用する艦載機はAV-8A ハリアー)

男(ホーカー・シドレー社開発のV/STOL機体。つまり通常の離着陸に加え、機体を水平に保ったままでの垂直離着陸が可能、という事だ)

男(その為エンジンを巨大化、多少機動性を失ってはいるが。狭い空母でもスペースを取らず)

男(例え甲板を損傷したとしても運用が可能な点でそれを凌駕している)

男「全艦!側面より敵深海棲艦を攻撃する」

男「対空砲を撃たせる余裕を与えるな」

武蔵「やっと、殴り合いか」グッ

神通「……」キュッ

古鷹「が、頑張ります……!」

北上「魚雷でパパーっとやっちゃうからねー?」

男「うむ。龍鳳はそのまま後方で戦闘機運用を続けてくれ。制空権は絶対に奴らには渡すな」

龍鳳「はい!」

男「日向も、航空攻撃をしながらの戦闘になるが。余裕はあるか?」

日向「航空戦も、海上戦も両役こなせての航空戦艦だからな」

196: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 08:56:22.61 ID:V+iuPsMBO
男「よし。全艦、進軍開始」


「へぇ……あれがそうなんだ……」

「まずはお手並み拝見。って所かなー?」

「ふふ……」


キィィィン!!!!

バララララ!!!バララララ!!!

男「まずは斉射をお見舞いしてやろう。全艦構え」

ジャコン!!ジャコン!!ジャコン!!

男「撃て!」

ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!!!!!

ドゴォォォ...

男「重巡洋艦に命中したか……」

バララララ!!!!

北上「わわっ!撃ち返してきた!」

男「武蔵!日向!」

武蔵「わかっている。いくぜ!!」

日向「……」

203: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:16:02.96 ID:V+iuPsMBO
 
男「他の艦も後に続け!」

武蔵「この戦艦はもらうぞ」グッ

ブンッ!!!

戦艦ル級「……!」


男(深海棲艦にも種類がある。そして完全に人ならざる姿をした様な者やあの戦艦リ級の様な艦娘に似た姿の者がいる)

男(四肢があり二足歩行であり、人の、女性の様な顔立ちはしているが。怪しく光る眼光はやはり人ではないのだと分からせてくれる)

男「さて……戦局はどう動くか……」

204: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:16:40.57 ID:V+iuPsMBO
 

ゴッゴッゴッ!!!

武蔵「その程度かい?」

戦艦ル級「……」

ジャコン!!ドンッドンッドンッ!!!


武蔵「おっと!当たるわけにはいかないな!」

日向「武蔵!下がれ!」

武蔵「む……」

バッ!!!

武蔵「チッ……」


キィィィン...

バシュッバシュッ...

戦艦ル級「……」チラッ

戦艦ル級「……!!」

ドゴォォォッ!!!!

205: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:24:33.64 ID:V+iuPsMBO
日向「余計な事、しない方が良かった?」

武蔵「いや……」

武蔵「久々だから少し、昂ぶっているだけだ」グッ


古鷹「斉射!!」ドンッ!!!!

ドンッドンッドンッ!!!

古鷹「きゃっ!?」

ドゴォォォ!!!

北上「弾幕が激しすぎるっ!!」ドンッドンッドンッ

神通「……」キュッ

206: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:29:11.25 ID:V+iuPsMBO
神通「提督に頂いたこの刀があれば……」シュッ

チャキッ

北上「ちょっと、どうする気ー!?」

神通「神通、参ります」

ドッパァァァンッ!!!!!


男「っ……!」

男(刀を抜き放った神通は踏み込むと、水柱を上げて敵の弾幕へ飛び込んで行った)

男「神通!焦るな!」


神通(大丈夫……私なら……!)

タタタタタッ!!!

バララララ!!!!

神通「……」ダッ

207: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:34:58.80 ID:V+iuPsMBO
神通「一太刀……!」チャキッ

シュッ

駆逐イ級「……!?」ブシュウウウウウ!!!!!

神通「みんなを守る為になら、侍にだって、鬼神にでさえ、なってみせます……」

シュバッ!!ヒュッヒュッヒュッ!!


男(ギリギリの体勢で弾をかわしながら一刀で深海棲艦を斬り伏せていく)

男(肉薄する戦法は強いが命を最も危険に晒す戦法でもある)

208: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:48:56.03 ID:V+iuPsMBO
古鷹「今が攻撃のチャンス!」ドンッドンッドンッ

北上「魚雷ありったけ撃ち込んであげなきゃね~」

ボシュッボシュッボシュッボシュッボシュッ

北上「まぁ、私って基本は雷撃だし~」

ドバァァァンッ!!!!!


キィィィン!!!!!

バララララ!!!!!

龍鳳「制空権確保しました!」

男「よし、兵装を空対空ミサイルから対艦ミサイルに変更。一気に叩き込むんだ」

日向「私も加わろう」

209: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:53:31.20 ID:V+iuPsMBO
男「全艦一時後退!戦闘機団のハープーンで一掃する!!」

武蔵「ハッ!!」

ゴスッゴスッゴスッゴスッ!!!!

武蔵「呆気ないな」

ザァァ...


男「全機に隊列を組ませろ。一斉攻撃だ」

バララララ!!!!!

古鷹「対空砲を撃たせないで!」

神通「私たちも出来るだけ弾幕を張りましょう」


龍鳳「全機、攻撃目標を捉えて!」

日向「いくぞ……」

龍鳳、日向「攻撃!!」

バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ

210: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/16(火) 22:55:54.08 ID:V+iuPsMBO
男(空から大量のミサイルが深海棲艦の頭上へと降り注ぐ)

男(その光景はまるで流星群を見ているかのようでもあった)


ドンッドンッドンッドンッドンッ
ドンッドンッドンッドンッドンッ
ドゴォォォォォォ!!!!!


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213: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:19:06.53 ID:fuZxqko9O
男「少佐」

少佐『よくやった。なんとか凌いだな……』

男「これより帰投を……」

少佐『いや、待ってくれ』

少佐『国防軍からの要請でな。施設の仮修復が終わるまでそこで駐留してもらいたいそうだ』

男「……どれくらいかかるのですか」

少佐『さぁ?だがそう長くは拘束させんよ』

男「……わかりました」

214: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:28:04.93 ID:fuZxqko9O
男「聞いたな?」

武蔵「まぁそうだろうな。今ここは丸裸の状態だ」

男「龍鳳、艦載機を飛ばして周囲を警戒してくれ」

龍鳳「はい」

男「小休止だ。だがいつでも戦闘態勢に入れる様にしておくんだぞ」


男「……」

サァァ...

男(ふんわりとした風が吹き、静かに水面が揺れている)

男(ここが……先ほどまでの戦場で、深海棲艦の住処になろうとしているとは)

男(到底……思えない)

215: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:34:43.46 ID:fuZxqko9O
男(思えば何故だ。何故深海棲艦と人間は敵対している?)

男(戦争にまで発展してしまった原因はどちらなんだ)

男「……」

武蔵「煙草は吸わないのかい?」

男「なるべく人前では吸わない様にしている」

武蔵「煙草にはストレスや緊張を解す効果もある。戦場に兵士が煙草を持っていくのはそういう側面もあるからだ」

武蔵「ま、大概は単に吸いたいからだろうが」

男「……」

スッ

男「……」カチンッシュボッ

パチン

男「……はぁー」

216: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:42:48.25 ID:fuZxqko9O
武蔵「私も一本貰おう」

カチンッシュボッ...

武蔵「ふー……」パチン

男「……」

男(まぁ……どちらに非があったにせよ。戦争に発展してしまった以上もう……どうしようもない)

男(戦争を起こした理由は覆せない。後には戻れない)

武蔵「……」チラッ

男「すー……」

武蔵「……」

武蔵「なにか、迷っている様な顔だな」

男「いや……」

217: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:47:09.17 ID:fuZxqko9O
武蔵「この間の探し物の事かい?」

男「……それとは違う」

男(いや、俺が知りたい事を知れればもしかしたら。発端がわかるかもしれないな)

男(……)

武蔵「どうしても言えない内容か?」

男「……言いふらしたくはない」

武蔵「……そうだな。悪かった」

男「いや、構わないさ……」

218: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 09:55:03.47 ID:fuZxqko9O
北上「ねぇ~提督~」

男「む、どうした北上」

北上「暇だよ~なんかしようよぉ~」グデー

男「暇なのはいい事だ。特に戦場ではな」

古鷹「それなら、なにかお話しませんか?」

古鷹「流石に……ボードゲームを始めたりしたら怒られそうですけど。お話くらいならいいですよね?」

男「それは構わないだろうが……何を話すんだ?」

男「それに……あまり皆が面白がる様な話は出来ないと思うが……」

神通「それなら大丈夫ですよ。私もあまり面白いお話は……」

日向「……」

龍鳳「……異常なし」

219: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 10:00:26.51 ID:fuZxqko9O
男「すー……」

北上「はいはいはい!!じゃあ提督好きな人はいないの~???」

男「ゴホッ!?!?」

武蔵「ほぅ……それは私としても気になるな」

龍鳳「……」ジー...

日向「艦載機が乱れているぞ」

龍鳳「ひゃいっ!?」

北上「んで、どうなのよ提督ー!」

男「い、いやまて少し落ち着け……」

古鷹「提督の好きな人……えへへ」

神通「て、提督が困って……」

220: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 10:04:42.61 ID:fuZxqko9O
北上「さぁさぁさぁ!このスーパー北上様にガツンと言っちゃいなよ!」

男「むぅ……」

武蔵「顔が赤くなってるぞ、うん?」

男「そういう話はその……苦手なのだが……」

古鷹「でも……気になりますっ!」

神通「あのー……」オロオロ

男「好きな人は……まだ居ない」

北上「ふむふむ、それじゃあ気になってる人は?」

龍鳳「……」ジー

日向「墜落するぞ?」

龍鳳「うひゃぁっ!?」

221: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 10:12:30.67 ID:fuZxqko9O
男「その……なんというか。色恋沙汰はよくわからん……」

武蔵「顔真っ赤にして言った所でなんの説得力もないぞ」

男「……むむむ」プスプス

北上「うーん……じゃあ仕方ない。他の質問にしよっか」

古鷹「ちょっと残念ですね」

男「質問というより詰問ではないのか……」

北上「そ~んな事はないよ。それじゃあ……好きなタイプは!」

神通「あの……そろそろ別の話題にした方が……」

北上「でも気になるでしょ?」

神通「そ、それは……その」

222: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 10:20:15.80 ID:fuZxqko9O
男「た、頼む。話題を変えてくれ……」

北上「むー……」

武蔵「珍しくたじろぐ姿も見れたしそろそろ勘弁してやるか?」

北上「わかった。それじゃあ他の話題にしようか」

男「……助かった」ボソ


神通「家族は何人いらっしゃるんですか?」

男「うむ。両親に……歳が少し離れた姉が一人だな」

古鷹「今はどうされてるんですか?」

男「両親は今も働きながら生活している」

神通「お姉さんはどうされているのですか?」

北上「歳が離れてるって事は……結婚はしてるんじゃない?」

男「姉はもうこの世にはいない」

武蔵「……」

神通「ごめん……なさい」

男「構わない。気にするな」

223: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 10:23:01.41 ID:fuZxqko9O
男「もう十年以上も前の話だ。今更どうとも思わんさ」

男「皆の両親は健在か?」

北上「そうだね~。うちはのんびり暮らしてるかな」

古鷹「たまに遊びに行ったりもしていますし」

男「仕送りもちゃんとしているだろうな?」

神通「はい。毎月必ず」

男「うむ。それがいい」

日向「……」

龍鳳「……異常なし」

227: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:01:41.03 ID:fuZxqko9O
少佐『中尉、たった今国防軍から連絡が入った』

男「はい」

少佐『防衛システム復旧の目処が立ったそうだ。全員帰投させてくれ』

男「了解、帰投します」

男「龍鳳、艦載機を収容してくれ。ご苦労だった」

龍鳳「わかりました」

男「全員退却ポイントまで移動するぞ」

武蔵「やっとか……」

北上「お腹空いたよー」

古鷹「早く戻ってシャワーを……」

神通「私は……少し稽古を……」

228: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:03:44.50 ID:fuZxqko9O
男「……」

男「ん……」チラッ

日向「どうした、提督」

男「いや……今、あそこから視線を感じたのだが……」

日向「……疲れているだけじゃないのか?」

男「……そうかもしれないな」

武蔵「……」


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229: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:25:17.31 ID:fuZxqko9O
「へぇ……そういう事だったんだ……」

「厄介だなぁ……すぐにでも……」

「ふふ……」


男(国防軍の救援に向かったあの戦いから一週間が経った)

男(今も尚連日、深海棲艦によるものと思われる一般人の深海棲艦化が続いている)

男(メディアでは単なる行方不明事件として扱われているが……)

男(既に深海棲艦が街に現れていると噂が広まっている)

男(いくらサイレンサーを装備しているからと言って銃声を隠しきれる訳でもない)

230: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:31:05.98 ID:fuZxqko9O
日向「提督、少しいいか」

男「ん、どうした?」

日向「私も……現実世界での戦闘に参加させてはもらえないか?」

男「……」

日向「鍛錬が足りていないのはわかっている。二人に実力が追いつかないのもわかっている」

日向「……」

男「日向、人を殺せるか?」

男「自分の命に危機が迫った時、仲間の命が危機に晒された時」

男「例えそれが普通の人間であっても、殺せるか?」

231: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:42:29.20 ID:fuZxqko9O
日向「……」


『それが道を誤らぬ者に対してなら良かっただろうが』

『本当に恩義があるのなら!!その者の誤りを正してやるのが道理であるはずだ!!』

『ただみているだけついて行くだけ、そんなもの。ただの臆病風に吹かれただけのものだ』


日向「……あの頃の私は、自分でも驚くくらいに愚直だった」

男「……」

日向「場合による」

日向「もしそれが正しい行いであるなら。自分で間違っていないと思える判断だったなら」

日向「私は従うよ。躊躇いはしない」

232: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:49:08.24 ID:fuZxqko9O
日向「……」

ガチャ

武蔵「……どうした?」

男「……わかった。そこまで言うのなら」

男「次から一緒に来てもらおう」


男「という訳だ。次から日向にも付いてきてもらう」

武蔵「まぁ……いいだろう。無茶はするなよ」

日向「あぁ……わかってる」


233: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/17(水) 22:55:39.26 ID:fuZxqko9O
男「それで……連日の事件の話だが……」

男「これは誰かの意志があって起きているものだと、予想する」

武蔵「……」

日向「……」

男「まず全ての案件で共通しているのは」

男「深夜である事」

男「目撃情報が少ない事」

男「数人の被害者を出して終わっている事」

男「この三点だ」

238: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 06:35:06.03 ID:rTj128mNO
男「まず、何故深夜にだけ現れるのか」

男「奴ら深夜棲艦は昼間に行動出来ない訳じゃない」

男「昼だろうが夜だろうが構わず戦争は続いているからな」

男「次に目撃情報だが……」

男「いくら深夜と言えど目撃情報が少なすぎる」

男「広まるのが噂程度で助かってはいるが……」

男「そして、いつも被害者は数名。俺と武蔵が苦戦した時は例外として……」

男「大抵がそうだ。被害者は数名にとどまっている」

 
244: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 07:30:52.95 ID:rTj128mNO

男「そして、重要な事が一つ」 

男「俺が見たのは駆逐艦級の深海棲艦だ」 

男「奴らに物事を計算して行動する程の知能は無い」 

男「考えられるのは、深海棲艦側に加担している人間がいる」 

男「または……知能の高い深海棲艦がかなみ市に潜伏している……」 

男「少なくとも、空母、戦艦のそれ以上であると思う」 

武蔵「だが目的はなんだ?一体なんの目的があって奴らは行動しているんだ?」
240: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 06:53:45.52 ID:rTj128mNO
男「……ここからは俺の仮説になるが」

男「これはなにか大きな攻撃の陽動なのではないかと思う」

日向「大きな攻撃……?」

男「……」

武蔵「……」

男「……十数年前の、あの事件」

男「蜂起の首謀者である人間は、かなみ神社を拠点に当時攻撃をしていたと」

男「かなみ神社が目的ではないだろうかと考えている」

日向「だがあそこは機材や武器も調べた時にはほとんど無くなっていたらしいじゃないか」

日向「なにも無い所を調べたって仕方ないだろ」

241: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 07:00:59.38 ID:rTj128mNO
男「奴らがそれを知らないか。それとも何かある事を掴んでいるのか」

男「だがおかしい部分もある」

武蔵「……」

男「おそらくあの蜂起では電子世界での戦闘もあったはずだ。インターネット上からの攻撃で施設情報が破壊されていた事は公表されている」

男「あの施設では大規模な戦闘が行われていた。進水する暇など無かっただろう」

男「ならば外部に逃走しかなみ市という離れた場所から抗戦していた首謀者が一番怪しい」

男「だがそこには、進水をする為の大規模な装置さえ無かった」

男「一晩であれが片付くか?まず無理だろう」

242: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 07:06:11.50 ID:rTj128mNO
男「まだ何か残っているのではないだろうか。あそこには」

男「それに深海棲艦の現れるポイントはどれもそのかなみ神社から離れた場所にある」

男「陽動だとすれば大成功だろう?」

武蔵「……それで、どうする?」

日向「……」

武蔵「それを上に報告するか?ハッキリ言うがそう簡単に聞き入れるとは思えないがな」



246: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 18:51:10.38 ID:rTj128mNO
男「奴らにとって必要な情報があるのか……それとも。奴らにとって邪魔なものがあるのか……」

男「それはわからないが、本当だとすれば……」

男「なんにせよ、どうにかするしかあるまい」

武蔵「それが問題だと思うんだがな……」

日向「いっそ上層部を騙してなんとかするか」

男「……そうだな」

男「それなら、なんとかなるかもしれない」

武蔵「おいおい、流石にそれはタダじゃ済まないぜ……?」

男「防衛機構に損害を与えない様に俺たちがあそこへ近づく方法はある」

247: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 18:55:14.31 ID:rTj128mNO
男「あの地域はかなみ市防衛機構が警備に当たっている」

男「私的に近づく事は基本的に無理だが……」

男「一時的に警備を交代出来ればいい」

武蔵「それはまた……どうやる?」

男「少佐に話を通せば……やってみるさ」


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248: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 19:01:57.64 ID:rTj128mNO
少佐「話とは?」

男「はい。現状俺たちの部隊は実戦に参加出来る者は二人です」

男「連日深海棲艦の被害が増える中これは少々由々しき事態かと」

少佐「ふむ……そうだな……」

男「それで、他の者にも現場を少し体験させてやり。訓練を行いたいのですが……」

少佐「構わない。好きにするといい」

男「はい。ですが、今受け持っている地域は一般人の深海棲艦感染の報告が上がっています」

男「いきなり危険地域での訓練は厳しいと判断し、数日の間だけ他の地域を当たりたいのですが……」

249: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 19:14:40.91 ID:rTj128mNO
少佐「ふむ……」

男「……」

少佐「本当なら構わないと言ってやりたいが……戦力である君たちが前線から引くというのは……」

男「しかしこのままでは……」

少佐「ならば実戦経験のある者をそちらの人間と交換するというのはどうだ?」

男「それはお断りします」

少佐「……そう言うとは思っていたが」

少佐「少し考えさせてくれ。改めて答えを出そう」

男「はい。よろしくお願いします」

少佐「ちなみに……地区の希望はあるか?」

男「かなみ神社がいいかと」

250: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/18(木) 19:16:05.76 ID:rTj128mNO
男「神社の境内でなら訓練をしてもある程度迷惑にはならないでしょう」

男「それにあそこなら比較的安全と判断したので」

少佐「わかった。検討しよう」

男「ありがとうございます」

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254: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 13:39:01.73 ID:0JhVhJPzO
男「さて……」

男(一応出来る事はこれくらいか……)

男(後は……)

カタカタ

男「ある程度……出来るうちでも調べておかなければな」

男(と言っても事件の詳細などは隠蔽されておりどこにも載っていないのは知っている)

男(深海棲艦の研究……)

カタン

255: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 13:44:37.90 ID:0JhVhJPzO
男「……」

男(これは……鹵獲された深海棲艦の解体研究か……)

男(深海棲艦、駆逐イ級の報告……)

カチッ

男(本来駆逐艦クラスの深海棲艦に手足の様なものは無く、地上での活動は出来ないとされていたが)

男(それに代わるもの、又は手足が存在する個体が確認されている……)

男「……俺が見た深海棲艦にも脚の様なものがあったな……」

男(彼らの身体には、虫、魚、鳥、人間などに見られる特徴的な器官に似たものが確認されている)

男(電子世界で確認されている彼ら本来の姿に似せる為に様々な生物の遺伝子を取り込んで進化したものと思われる)

256: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 13:51:37.64 ID:0JhVhJPzO
男(進化の速度も異様なまでに早く、これらはここ数年、または十数年のうちに行われたものだと推測している)

男(彼ら独自の力でここまでの進化を遂げたとは推測され難く、何者かの助力を得て進化したと思われる)

男(また、深海棲艦に襲われた人間の深海棲艦化について)

男(現段階の研究に寄れば、深海棲艦の体液には、特殊なDNAが存在し)

男(そのDNAを体内に取り込む事によりこの現象が起こるとされている)

男(人間の身体を構成するDNAの一部を破壊し侵入。遺伝子レベルでの再構築が行われる)

男(その結果、深海棲艦に襲われた人間は自我。脳細胞を破壊され、急激な身体の再構築に耐えきれず凶暴化、身体が豹変していくものと発表されている)

257: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 13:54:53.43 ID:0JhVhJPzO
男「……」

男「つまり、奴らの体液を身体に入れた時点で。奴らに近づいて行く、という事か……」

男(という事は、あのまま放置していればいずれ深海棲艦と同じになるのか?)

男「ならば尚更無視出来んな……」

男(それに万が一アレがなにかの意思の下に動けるとしたら……)

男「……」

男「最悪の事態ではないのかこれは」

258: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 14:33:26.72 ID:0JhVhJPzO
男(という事はだ、現状ワクチンの様なものかそのDNAを殺せるものが無ければどうにもならないという事ではないか)

男「……」

男(喰われた人間は……その場で処分する必要がある……)

男(そのデメリットは……誰も言わずとも分かるはずだ)

259: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 14:43:25.20 ID:0JhVhJPzO
男「……」

男(なんとも言えない絶望感と、脱力感と)

男(先の事を考え、どうにもならないという思考が俺の中を駆け巡った)

男「……」ギリッ


男(だが、これらに対抗する兵器が無い訳ではない)

男「……」カタカタ

男(つい数年前に実戦配備され、第三次世界大戦の引き金にもなった次世代兵器)

カチッ

260: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 14:50:54.96 ID:0JhVhJPzO
男(深海棲艦の情報や艦娘の技術を取り入れる事で完成した戦車)

男(六足歩行、蜘蛛型駆逐艦)

男(一番初めに完成を迎えた次世代戦車の一つ)

男(駆逐艦クラスであるが多彩な兵器を搭載出来、前線での戦闘に加え輸送、難所を行軍するのにも使える)

男(これは従来の戦車同様人間が乗り込み操作するようだ)

男(そして、四足歩行、無線操作により活動する)

男(通称『猟犬』狼型駆逐艦)

男(蜘蛛型に比べると搭載出来る兵器の量も少ないが無線で動く為人員的被害はまず無い)

男(更に蜘蛛型よりも機動力があり、コストもこちらの方が軽い)

261: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 14:56:54.10 ID:0JhVhJPzO
男(そして、二足歩行。傀儡型軽巡洋艦)

男(人型戦車のうちの一つであり、これも狼型同様無線で操作するようだ)

男(体躯は狼型と比べても大きく、それよりも兵器を装備出来る)

男(四足では出来ない戦術もこれでならこなせるがコストは重い様だ)

男(それと、大蜘蛛型重巡洋艦)

男(蜘蛛型駆逐艦を巨大化させたものだと思えばいいか)

男(動きはさらに鈍くなったが、火力、積載量などが格段に大きくなっている)

262: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 15:00:39.06 ID:0JhVhJPzO
男(そして、二足歩行。大戦の原因にもなった人型戦車)

男(虚構型戦艦)

男(傀儡型と比べさらに巨大であり、人間が搭乗し操縦を行う)

男(様々な兵装を装備し、近接武器や小型の核でさえ装備出来る)

男(機動力、火力、装甲どれを取っても現段階では最高峰とされているが……)

男(虚構型戦艦一番艦は現実には存在しない)

263: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 15:03:53.46 ID:0JhVhJPzO
男(十数年前の蜂起事件がきっかけでその情報が発見されたが、何者かの手により情報の殆どが破壊されていたらしい)

男(虚構型戦艦二番艦から現実での完成を迎えているが)

男(どれも一番艦の劣化版にしかならなかったらしい)

男(劣化版と断言出来てしまう程に、情報の断片だけでも性能が良かったのだろう)

男(だがそんなもの現実に製造が可能なのだろうか)

264: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 15:06:51.60 ID:0JhVhJPzO
男(他にも軽空母や空母、潜水艦などが存在するがもういいだろう)

男(かなみ市防衛機構にはそもそも配備されていない上、高価であるが故に配備は相当先になるはずだ)

男(結局、今の俺たちには遠距離から奴らを倒すという方法しか残されていない)

男(近づかれれば近づかれる程に危険性は増していく)

265: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/19(金) 15:09:22.65 ID:0JhVhJPzO
男(それと……与太話でしかないが)

男(人間の身体能力を上昇させる方法があるらしい)

男(それがあれば深海棲艦と対等に戦えるのだろうか……)

男「……いや、流石に非現実的すぎる」

269: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 08:38:32.32 ID:HJ+6mWEFO
男「あとは……これと言った情報は無い……か」

男(亡霊の具現化やら宇宙からの侵略者やら、未開の地の原生生物であるとか)

男「どこから来たにしろ脅威である事に違いはない」

男「……」


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270: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 08:45:42.99 ID:HJ+6mWEFO
少佐「中尉、来てもらったのは他でもない君の頼みの話なんだが……」

男「はい」

少佐「君の実績などを見て今回は許可が降りた。かなみ神社への移動を許そう」

男「ありがとうございます」

少佐「明日の早朝より移動を開始してくれ」

男「わかりました」


武蔵「なんとかなったみたいだな」

男「あぁ……」

日向「かなみ神社とその周辺の地図をプリントしておいた」パサ

男「すまない」

日向「仮にここが攻撃目標だったとして。防衛出来るかどうかが問題だ」
 
272: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 08:51:17.26 ID:HJ+6mWEFO
 
男「一応近くには数個小隊が配置されているらしいが……」

武蔵「当てには出来んな」

日向「オートタレットが神社境内に数機配置されているらしい」

男「では、タレットの射線内に入らず、尚且つ防衛に最適な配置を考えなければな」

日向「古鷹に神通、北上は」

男「補給に回ってもらう。戦闘を行うのはこの三人だ」

武蔵「まぁ……それが妥当だろうな。下手なパニックを起こされてもたまらないから奥に引っ込んでいて貰ってもいいが……」

男「きっとそれは彼女達が許さないだろう」

273: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 08:57:33.69 ID:HJ+6mWEFO
日向「それと……日頃の訓練をみて思ったのだが」

日向「龍鳳は狙撃手に向いているんじゃないか?」

武蔵「確かに視力はかなり良いと思うが……」

男「……それも訓練次第だな。一応まともに行うつもりでいるから、それを見て考えるさ」

男「とりあえずこの配置を考えて、彼女達にも知らせよう」


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武蔵「という訳だ。かなみ神社で実地訓練を行う」

古鷹「はい!頑張ります……!」

男「深海棲艦が攻撃してくるものと思って訓練する。皆、気を抜かないようにな」


274: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 09:02:38.53 ID:HJ+6mWEFO
神通「日頃の訓練の成果が試されますね……」

北上「パパッとやっちゃおパパッと!」

龍鳳「なんだか緊張しますね……」

男「そう硬くなる事はない。落ち着いてやれば何も問題はないさ」

男「それでは、明日早朝四時より移動を開始する。全員それまでに身支度を整えておくように」

275: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 09:05:24.77 ID:HJ+6mWEFO
男(こうして俺たちはかなみ神社へと赴く事となった)

男(あの事件の首謀者が潜んでいた場所……)

男(必ずなにかあるに違いない)


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276: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 09:12:32.63 ID:HJ+6mWEFO
チュンチュン...

男「……」ザッ

男「ここがかなみ神社……」

男(落ち着いた面持ちの社、一応手入れはされているようだが……)

男(砂利が道に沢山散らばっているのを見るとあまり丁寧には扱われていないようだな)

男(道を挟んで立つ灯篭を背にそれぞれタレットが一機ずつ。正面の鳥居の向こうに向けられている)

男(これは深海棲艦の姿を認証して自動で攻撃を行うらしい)

277: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/23(火) 09:22:03.94 ID:HJ+6mWEFO
男「まずは各々簡単に朝食を済ませてから、境内をマラソンする」

男「基本の練習を終えたら射撃訓練、昼の休憩を挟んで対深海棲艦を想定した実地訓練を行う」

男「俺は少しここを見て回る事にする。武蔵、頼んだぞ」

武蔵「任せておけ」

男(さて……どのようなものか……)

280: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 06:49:01.53 ID:+x/VmeoCO
男「……」ザッザッ...

男(特にこれと言っておかしなものがあるわけではないな……)

男「……」カチンッ...

パチン

男「……ふー」

男「……一つ一つ丁寧に見て回るか」


男(まずは入り口正面に構えてある鳥居だが……)

男(石造りで足の辺りには若干苔が生えているな……)

男(多少汚れているのは年季が入っているからなのだろう)


北上「……なにやってんのあれ?」

龍鳳「さぁ……」

神通「なにか特別な鳥居なのでしょうか……」

古鷹「そうなんですか?」

281: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 06:55:53.16 ID:+x/VmeoCO
男(そして賽銭箱まで続く石畳)

男(所々ずれていたり端が欠けていたりするが……)

ザッザッ

男(タレットの裏側の灯篭)

男(見慣れた形の灯篭だ。帽子に正方形をくり抜いたもの。そして土台)

男(火を入れる代わりに球状の物が置かれているな)

ザッザッ

男(賽銭箱。これも年季が入っているようで、木の色もかなり黒くなっている)

男(……賽銭を投げ入れる場所になにか詰まっているな)

282: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 07:05:01.17 ID:+x/VmeoCO
ザッザッ

男(社の正面だが……)

男(小さな階段があり、その先には障子がある)

男(頭上には縄の括り付けられた大きな鈴)

男「すー……ふぅ」

男「……裏手にも回ってみるか」


男(表同様砂利の敷き詰められた社の裏側だ)

男(社自体は骨組みや装飾が木、壁は土壁のようだ)

男(土壁の下の木の部分には丸い穴を掘った装飾がされている)

283: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 07:10:04.84 ID:+x/VmeoCO
男(次は社の中を見てみるか)

ザッザッ

サー...

男(……なにもない)

男(恐らくここが調べられた時に全て持っていかれたのだろう)

男(畳だけの空間になっている)

ザッザッ

男(残るは休憩所の様な建物だが……)

男(あれは後から建てられたみたいだな……調べても無意味だろう)

284: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 07:16:29.38 ID:+x/VmeoCO
男(……正直おかしな所は全く見当たらない)

武蔵「どうだい成果は?」

男「いや……まだだ」

日向「なにかあるとしたら……地下か」

男「そうだな……隠すならそれしかないだろう」

武蔵「その社の下の空間は見たのか?」

男「見たがなにも無い。野良猫はいたが……」

日向「なにかで地下への入り口が隠されている……」

男「見つけるしかないさ」

287: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 19:23:40.23 ID:5+EOejE9O
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男「射撃!遅いぞ!」

タタタンッタタタンッ!!

神通「っ……!」

男「もっと重心を低くするんだ。反動で弾がばらけている」

神通「はい!」

北上「結構……難しいよね」タタタンッタタタンッ

男(北上はそこそこだな……)

男「目標の胸を狙って撃つんだ。まずは当たればそれでいい」

男「一撃で仕留めようとは思うな」

北上「魚雷なら楽なのになー……」

288: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 19:27:49.97 ID:5+EOejE9O
古鷹「……」ガチャガチャ

男「弾倉交換でもたついていたらその間に撃たれるぞ」

古鷹「は、はい!」

男「……」


武蔵「あの目標が視認出来るか?」

龍鳳「はい」

武蔵「ゆっくり、落ち着いて狙ってみろ」

龍鳳「……」チャキッ

タァンッ

龍鳳「……」

武蔵「スコープ無しでもここまでか……予想以上ではあるな」

武蔵「もう少し頑張れば狙撃手にもなれるかもしれないぞ」

龍鳳「頑張ります……!」

289: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 19:36:08.81 ID:5+EOejE9O
男「……そろそろ日が落ちる」

男「全員、今日の訓練はここまでだ。夕食を取り明日に備えて休養するといい」

古鷹「今日は私が料理当番ですね」

男「今日は古鷹か……楽しみだな」

男「俺の分は取っておいてくれ。後で食べるよ」

古鷹「ご一緒にはならないんですか?」

男「一応見張りが居なくてはならないだろう?」

日向「それなら私が……」

男「日向も疲れただろう、遠慮せずに休んでいるといい」

武蔵「……そうだな。では見張りは提督に任せよう」

日向「……!」

日向「……わかった。そういうならお言葉に甘えるとしよう」

290: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/24(水) 20:18:19.92 ID:5+EOejE9O
男「うむ。ではゆっくりと休養を取るといい」スタスタ


男(さて……)

チャキッ

男(暗くはなったがフラッシュライトがある。とりあえずは大丈夫だろう)

男(どこから調べるか……)

294: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 06:35:14.93 ID:ZtorkUegO
男(その場所があるなら地下。地下への入り口がありそうなのは……)

男(物の下に隠すとしたら社が一番怪しいな)

男(社をコの字で囲む様に廊下が備え付けられている。縁の下を覗いてみたが特になにも無かった)

男(賽銭箱の下も怪しいがそこはなんとなくだが、既に調べられている様な気がする)

男(灯篭の下も怪しいがどうだろうか……鳥居の下はまず無いだろう)

男(物の下でなく地面に隠されているとしたら相当厄介だな)

295: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 06:42:31.11 ID:ZtorkUegO
男(探索範囲が広がりすぎて間に合わない気がする)

男(物の下にあると割り切って調べた方が良いな)


男(そう言えば……賽銭箱になにか引っかかっていたな)

コツコツ

男「……」カチッ

パッ

男(手を伸ばせば取れそうだな……)

スッ

男「……っ」グッ

男「もう……少し……」ググ...

296: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 07:18:15.26 ID:ZtorkUegO
男「……」

男(掴んだ)

ガチャガチャ

スッ

男「……」

297: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 07:22:00.24 ID:ZtorkUegO
眠気で首かっくんかっくんしててやばいっす

かなみ市自体は実際のモデルがしっかりあるので特定しやすいと思います

電子世界の艦娘達で出た研究所(鎮守府)は都内某所……という事になってます。どちらかと言うと神奈川寄りかなぁ……

お仕事です

300: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 18:42:10.32 ID:tUSTQprCO
男「鉄パイプ……」

男「何故こんなものが挟まっているんだ……?」

男(上の部分を破壊して賽銭を盗もうとでもしたのだろうか)

カラン...

男「……」

男「賽銭箱の中身も調べてみるか……」

男(賽銭箱は対外横部分に取手が付いていてそこが引き出しの様になっている)

男「鍵は……掛かっていないな」

ガララ...

301: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 18:52:59.58 ID:tUSTQprCO
男(中に入っていたのは賽銭ではなく空の薬莢だった)

男(錆びていて随分前のものなのだとわかった)

男「……当時のものがここに?」

男(いや、そんなはずはないか)

スッ

男「ここには……なにもなさそうだな」


男(灯篭だが見た目にはおかしな部分は無い)

男「……」グッ

男(押してみてもズレたりすることも無いな……)

男「どこかの一部が外れたりもするか?」

スッ

男(屋根は動かない。中心の球体は……)

ゴロッ

男(どうやらこれは取れるようだが下になにかある訳でもない)

302: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 19:01:14.05 ID:tUSTQprCO
男(反対側の灯篭も同じく球体が取れる以外にはなにも無かった)


男(一応鳥居も調べてみるか……)

男(石製の鳥居だ。所々切り傷の様なものが入っているな。それに銃痕も付いている)

男(何者かがここで戦闘をしたか……的にでもしたのか)

グッ

男(もちろんこれが動くはずもない)


男(一番怪しい社だな。縁の下には潜れそうだが、外から見た分にはなにも無い)

ザッザッ

男(裏側に回ってみた)

男(丸い形の窪みが等間隔で刻まれている)

男(何個か傷が着いていたり凹みがあったりしたが、古くからあるからこれだけ劣化しているのだろうか)

303: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/25(木) 19:51:17.29 ID:tUSTQprCO
男(社の中には、なにもない)

男(小さな障子窓に畳が敷いてあるだけだ)

男(畳は……端に手を掛けて持ち上げられそうだがしっかりとはめ込まれていてそう簡単にはいかなそうだ)


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ーーー

312: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:02:46.03 ID:Irf9kK2dO
男「これだけ探してなにも無し……か」

男(いや……必ずなにかあるはずだ……)

男「……神社の中に無いならその外周か……?」

男(かなみ神社のすぐ脇には小さな川がある。だが反対脇は民家に店だ)

男(もし外にあるなら川沿いが怪しいが……)

男(下水道の入り口の様なものは無いし、川の中から入れるほど深い訳ではない)

男(それになにかあったとすれば既に見つかっているだろう)

男(巧妙に隠蔽されているからこそまだ見つかっていないのだから)

313: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:05:39.68 ID:Irf9kK2dO
男「それなら……」

コンコン

男(やはり……石畳の下が怪しい。入り口があるなら空洞があるはずだ)

コンコン

男(音の変化でわかるはずだが……)

コンコン

男(……)

男(いや、これくらいの隠蔽では暴露るはずだ)

コンコン


男「やはり石畳のに音の変化は無い……」

男(わからない……一体……)

314: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:09:48.00 ID:Irf9kK2dO
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パンッ!!パンッ!!

男「……」チャキッ

男(残りの時間も少ない……早く見つけなければ……)

武蔵「提督よ」

男「む……」

武蔵「なにか進展は?」

男「……いや」

武蔵「そうか……」

日向「……多分だが」

日向「……当時は緊急事態だったんだろ?」

日向「手の込んだ入り方ではない……気がする」

315: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:13:10.44 ID:Irf9kK2dO
男「……」

日向「合理的に考えるなら簡単な方法なはずじゃないか?」

男「……確かに」

男(手の込んだトリックだったとして、入るのにいちいちそれを戻すのは面倒極まりないはず)

男(実用的なものと考えるなら簡単な仕掛けになるか……)

日向「漫画に出てくる様なややこしいものじゃないと思う」

男「そうだな……」

男(こうなるなら首謀者や周囲の艦娘がどのような人物であったか聞いておくべきだったか)

316: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:16:56.82 ID:Irf9kK2dO
北上「なにさ三人して~。面白い話でもしてるの?」

男「あぁ、新しい訓練内容についてな」

北上「げ……あんまり無茶な内容にはしないでよねー……」

武蔵「そう言われるとやりたくなるのが人間の性じゃないかい?」

日向「さて、それじゃあキツい内容にされる前に真面目に訓練をするとしようか」

男「そうした方が賢明だな」

北上「ちぇ……」

317: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:37:37.59 ID:Irf9kK2dO
男「俺も射撃を続けるか……」パンッ!パンッ!

チャリン...

男「……」

男(……ん。そういえば……)

男(M1911は45ACP弾を使うが……)

男(賽銭箱で見つけた銃弾も形状や大きさが似ていたな……)

男「……また今夜調べてみるか」

318: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:39:59.59 ID:Irf9kK2dO
男(もしかするとなにか見落としていた可能性もある。今度は注意して調べるとするか)


「……」

「……なにか、動き出そうとしてる」

「……」


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ーーーーーー
ーーー

319: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/28(日) 19:57:41.97 ID:Irf9kK2dO
ガタッ...

男「……」

男(皆が寝静まった頃合いを見計らって表へと出た)

男(賽銭箱をまた開けて錆び付いた銃弾を調べるとやはり俺が使っている45ACP弾だった)

男「……」

男(別に特別な種類の銃弾ではない。誰が使ったまでは特定出来ない)

男「……成果にはならないな」スッ

カラン...

男「む……」

男(足元で乾いた音が鳴った。みると昨日の鉄パイプだった)

男(よく見るとこれも錆びているな。それに……先端が少し潰れている)


「……」


男「……」

男(まるでなにかを持ち上げた様な……)

男「……!!」

男(そこまで言って俺はなにを持ち上げたのか直感で理解した)

323: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:22:15.82 ID:BYfN0ZojO
男「持ち上げたとするなら……ここだろう」

男(先端の潰れた鉄パイプ。そして……)

ガッ

男(僅かに隙間の空いた畳)

ググッ

男「くっ……」

男(浮いた……やはりな)

ガシッ

男「後は手で持ち上げればいい」グッ

バタンッ!!

324: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:25:43.69 ID:BYfN0ZojO
男「……」

男(床板が見えたが……特になにも……)

男(ん……なにか傷の様な物が……)

パッ

男(フラッシュライトで照らしてみるとその傷は彫られたものだと分かった)

男「これは……」

『平和の礎に』

男「……これは、どういう事だ?」

男(なにかのメッセージだろうか。なにか重要な意味が?)

日向「平和の礎に……か」

男「……!」

日向「すまない。目が覚めてしまってな」

325: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:30:46.55 ID:BYfN0ZojO
男「そうか。しかしこれは?」

日向「……」

男「……どうした。なにか思いつめた様な顔だが」

日向「いや、なんでもないよ。それよりも他の場所を探すべきじゃないかな」

男「そう……だな。後めぼしいのは照らして……」

日向「屋根裏や縁の下は私も探してみたよ」

男「本当か」

日向「屋根裏に上がる方法が分からなくてね。探していたんだけど……」

日向「裏からよじ登って入ったら……これが」チャリ

男「これは……鍵か」

日向「保管が良かったのか場所が良かったのか。錆はほとんど出てないね」

326: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:35:51.61 ID:BYfN0ZojO
男(日向が手渡してくれたのは小さな鍵だ。重みもある事から金属で出来ているのは分かるが確かに錆び付いてはいない)

男「……もう一度、探した場所を入念に調べている。手伝ってくれ」

日向「分かった」

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ーーーーーー
ーーー

男「灯篭も鳥居も怪しくはない。石畳だが……」

男(賽銭箱の周囲だけ僅かに音色が違った。だが石畳はしっかりとはめ込まれていて動かす事は出来なかった)

男「次は……社の裏だな」

日向「って事は、あの模様が怪しいんじゃないかな」

男「そうだな……」

327: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:41:06.16 ID:BYfN0ZojO
男(あの丸い模様を入念に調べていく)

男「……」

日向「……」

男「ん……ここになにか……」

男(穴の一つに奇妙な"穴"を見つけた)

男(球状の模様の中心にさらに奥まった穴が開いていた。そして模様の左側にも浅い穴……)

日向「……」

男「……」

日向「……もしかして」ダッ

男「……」

男(日向はなにか思いついた様で小走りに表へと消えていった)

男「怪しい……怪しいが……」

男(俺にはなんとも……)

328: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:43:40.32 ID:BYfN0ZojO
日向「これ……もしかして丁度いい大きさなんじゃないか?」

男「それは……」

男(日向が持って来たのは灯篭にはめられていた球体だった)

男(よく見ると、小さな突起部がついていた)

日向「この球を、突起が中心に向く様にはめれば……」

ゴトッ...

男「……ぴったりだな」

日向「……」

男「……」

329: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:46:59.82 ID:BYfN0ZojO
男「……なにも起きないな」ガタガタ

男(揺すってみたり、押しても回してもなにも起こらない)

ゴトッ

男「……そもそも。この突起と穴の大きさが合わな……」

男(そこまで言って俺はまた……思い出した)

チャコン

日向「ん……その銃の弾倉なんか抜いて……」

チャリン

男「45ACP弾。賽銭箱の中に錆びたものが落ちていた」

男「この穴……大きさも丁度良さそうじゃないか」

330: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:51:23.41 ID:BYfN0ZojO
男(弾倉から抜いた弾を中心の穴にはめ込む……)スッ

カチャン...ガチャ

男「……聞いたか?」

日向「あぁ……!」

男(鍵を開ける様な音。僅かにだが聞こえた)

男「こいつが……鍵だったか」

日向「……それなら」

男(日向は球体を再び手に取ると今度は突起を左の浅い穴にはまる様にして……押し込んだ)

男「……」

日向「この球。鍵じゃなくて……」

男(そしてそのまま球体を、右に回す)

日向「ドアノブだと思うんだ」

331: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:56:18.21 ID:BYfN0ZojO
カチャ

日向「っ……」

男(そのまま手前に引くと……)

ギギギ...

男「これは……!」

男(壁の板が……ドアの様に開いた。そしてその中には……)

『電源……作動。パスワードを入力して下さい』

男(青く光る小さな画面。マイクの様な入力装置に……)

男「パスワード……」

男(パスワード……そんなもの……)

男(首謀者達が考えそうな……なにか……)

男(おそらく音声入力でパスワードを入れるのだろう)

男「……」

日向「……平和の礎に」

男「日向?」

332: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 09:58:51.64 ID:BYfN0ZojO
ピピッ

男(その音と同時に……隣の木製部分と、土壁が前に開く……)

男「……」

男(そこには……人一人が移動できる広さと。地下に続く階段が隠されていた)


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ーーー

335: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 22:59:29.85 ID:BYfN0ZojO
男「……っ」

日向「随分……埃っぽいな……」

男(ここが……蜂起の主犯達が隠れていた場所……)


男(階段を降りるとリビングの様な場所に出た。埃を被ってはいるが確かにここには人がいたのだと分かった)

日向「扉が三つ。入ってみるか」

男「あぁ……それと口元は塞いでおけ」


男(リビングから続く部屋にはベッドルーム。シャワー、小さな執務室の様なものがあった。そして……)

336: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:06:14.76 ID:BYfN0ZojO
男「これは……」

日向「進水室……だな」

男(古いタイプであろう。母機にベッドが敷き詰められている。そして電算機器……)

男(暗闇をフラッシュライトで照らしながら入念に調べていく)

男(……)

男「これは……」

男(床に転がる様に落ちていた武器)

男(UZIにAK-74……L96……)

男(スタングレネード……)

スッ

ガチャ...

男(流石に状態が悪いのか、引っかかりはあったが弾倉を抜き出す事が出来た)

男「……弾薬数が少ない」

男(恐らく、道中交戦したのだろう)

男(この部屋に交戦の後が無い以上そう想像は出来る)

337: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:10:32.54 ID:BYfN0ZojO
日向「こっちにも扉がある」ガチャ...

男「……」コツコツ


日向「ここは……電算室か」

男(狭い部屋に電子機器が並べられている。一つの椅子を囲う様にコの字型に置かれていた)

男「オペレーターに……全ての計算は一人で行われた……?」

男(この規模だ。恐らくだが補助のシステムなどは最小限だっただろう)

男(しかしその全てをこなせる人間などいるのだろうか?)

男「いや……いたからこそ……対抗出来た」

男(当時最先端だったであろう技術と互角に渡り合ったのだ。そう考える他ない)

338: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:14:23.52 ID:BYfN0ZojO
男「データなどは……引き出せないだろうか」

日向「いや……めぼしい外部メモリは全て外されてる」

男「そう残しておいてはくれない……か」


男(その後もあらかた探してはみたが、なにか重要そうな物は見つからなかった)

男(深海棲艦が狙うものはここにはない?)

男(あると勘違いしているのか?)

男(それとも……)

339: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:20:48.38 ID:BYfN0ZojO
日向「おい、ちょっと来てくれ」

男「……」コツコツ


日向「これを……」

男(日向に呼ばれるままに執務室に向かう。すると日向がデスクの下を覗き込んでいた)

男「なにかあるのか」

日向「鍵の掛けられた……金庫の様だ」

男「引きずり出すぞ」

ズッ...ズッ...

男(出てきたのは重みのある。小さな箱だった)

男(確かに。中央に鍵穴がある辺り金庫の様だが……)

340: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:24:32.78 ID:BYfN0ZojO
男「鍵……」ゴソゴソ

男(鍵なら……持っていた)

ガチャ...

男(重い音を立てて開く金庫。その中には……)

日向「書類……の様だが……」

男(黄ばんだ三枚の紙。それだけが金庫の中に仕舞われていた)

男(フラッシュライトを当てて、内容を伺う)

男「これは……!」

日向「……」


(やはり……俺はあそこに行かなければならないのか)

(いや、最初から。そのつもりだった)

(全ては。あの場所に……)


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ーーーーーー
ーーー

341: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:30:34.61 ID:BYfN0ZojO
バララララ!!バララララ!!!!

男「なんだ!?」

男(一通り見終わった後、書類を懐に仕舞いこむと銃声の様なものが木霊した)

日向「表かっ!!」

タッタッタッ!!!!


武蔵「幸い、弾薬はたんまりある。タレットもあるから問題はない」バララララ!!!

北上「提督と日向はなにやってるのさ!」パンッパンッパンッ!!!

古鷹「あれって……人ですよね……」カタカタ

武蔵「人の皮を被った化け物だ。撃たなければ殺されるぞ」

神通「……」

342: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:39:34.13 ID:BYfN0ZojO
男「なにがあった……!」

日向「あれ!」

男(真っ先に俺の目に飛び込んだのは銃を構え撃ち続ける皆。そして鳥居の先から迫る……)

男「感染者……!」

男(タレットが炎を上げ銃弾をばら撒く。だがそれに押されつつも徐々に感染者の群れはこちらへ近づいてくる)

武蔵「奇襲だ。タレットの発砲音で気がついたが……」

日向「ものすごい数だ……!」

古鷹「嫌……撃てないよ……!」

神通「……なら。私が古鷹さんの代わりに……撃ちます!」チャキッ

バララララ!!!バララララ!!!

男(くっ……まずいな……!)

男「全員体制を立て直し配置に着け!」

男「俺と武蔵は灯篭裏に!日向は賽銭箱裏!ミニミを固定し援護射撃!」

343: ◆SOkleJ9WDA 2014/09/30(火) 23:44:18.34 ID:BYfN0ZojO
男「北上、神通、古鷹それに……龍鳳」

男(別棟の影からM14を構える龍鳳)

男「狙撃か……やれるか!」

龍鳳「はい!!」

北上「私だって……やる時はやるんだからね~!」

神通「私も……みんなを守ります!」

古鷹「……」カタカタ

男「北上、神通は援護射撃をしつつ弾薬の輸送を!古鷹」

古鷹「撃てません……だって。だってあれは……!」

「ヴァァ……!」

男「……後方に隠れていろ」

男「全員!援軍が来るまで耐えきるぞ!」

 
347: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/01(水) 06:44:57.50 ID:oyBw8DyhO
 
男「少佐、応答を……」

『ザザッ......ザザザ……』

男「……」スッ

バララララ!!!

男(しかし……本当にこれだけの数をどこに溜め込んでいたんだ……)

男(統率や戦闘能力はともかく。これを隠し通せた隠蔽工作能力は凄まじい)

バララララ...キュィィィン......

男「タレットの弾の補充を!」

348: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/01(水) 06:49:42.62 ID:oyBw8DyhO
武蔵「ダメだ。タレットの弾は装填されているだけだ」

男「なに……」

男「あまり良い状況ではないな……!」チャキッ

タタタンッ!!タタタンッ!!

日向「準備出来た。いつでも撃てるよ」

男「頼むぞ、日向!」

バララララ!!!

男「奴らを一歩も近づけるな」

パァンッ!!

龍鳳「……」チャキッ...

パァンッ!!

349: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/01(水) 06:59:54.92 ID:oyBw8DyhO
「ふふっ……」

「どうなるかなぁ?」


バララララ!!!バララララ!!!

男「流石に……敵の勢いも落ちてきたか」

北上「ほい!置いておくよ!」

男「そのまま頼むぞ」

神通「どうぞ……」

武蔵「うむ。助かる」

男「このまま持ちこたえれば……」

「ア゛ア゛ア゛!!」ガバッ

男「!?」

ドサッ

「カァァ……!!」ガチンッガチンッ

男「横から来ているぞ!!」ググッ


350: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/01(水) 07:05:22.64 ID:oyBw8DyhO
北上「……!」

北上「へっ!スーパー北上さまに任せな~!」チャキッ

パンッパンッパンッ

神通「一体どこから……」タタタンッタタタンッ

男「ぐっ……いい加減退いてもらおうか!」ドカッ

タタタンッ!!!

男「……」

古鷹「……」

男「っ……今ので前方が押されているか……!」

武蔵「数が多いというのも厄介だな」

353: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/02(木) 00:23:19.77 ID:mHQwYnKCO
男(しかしこれだけの数……やはり奴らはここを狙いに?)

武蔵「どうやら横からの敵は渡河してこちらに進入してきているのと」

武蔵「民家を突き破っているようだ」

男「被害は……」

武蔵「言うな。今はこの状況を打破するだけだ!」タタタンッタタタンッ!!!


(……)

バサッ

354: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/02(木) 00:29:08.66 ID:mHQwYnKCO
男「攻勢を弱めるな。射撃を続けろ」

北上「あいつら、撃たれてるのに普通に立ってくるけどー!?」

男「一撃で仕留めなければ攻撃の意味はない」

男「だが頭部を撃ち抜いて一撃で倒せとも言わない。とにかく奴らを撃て!」

神通「それだけの腕がまだ無いという事ですね……ッ!!」ギリッ

日向「弾倉を交換する」ジャコンッ

男「最初から完璧にこなせる者などそうそういないさ」タタタンッタタタンッ


龍鳳「……」

龍鳳「狙い澄まして……撃つ!」パァンッ!!!

グジュッ...

355: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/02(木) 00:50:42.65 ID:mHQwYnKCO
龍鳳「私だって。戦えますよ」チャキッ

男「……」

男「よし。そのまま攻撃を続けるぞ」


古鷹「私は……私は……!」

359: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 06:44:08.34 ID:QXVEza6zO
男「射撃続けろ!」

バララララ!!!

日向「弾倉交換……」ピタッ

男「どうした日向!」タタタンッ

日向「変えの弾倉がもう無い……」

男「弾帯に弾込めして使うしかないな……」

日向「やってみる」

北上「こっちくんなー!!」パンッパンッパンッ!!

「グァァ!!」ガバッ

パァンッ!!

北上「た、助かった……」

360: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 06:56:11.62 ID:QXVEza6zO
神通「敵が多すぎる……」

神通「……」ポイッ

カシャンッ

スッ

神通「……!」

武蔵「あいつ……居合いで戦うつもりか……!?」

男「なにっ……!」


神通「私はここに来た時に神通の名前を頂きました」

神通「最後は仲間の為に囮となり、探照灯で照らし、船体が大破しても攻撃を続けたそうです」

パッ

神通「……」グッ

キュッ

361: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 07:02:15.03 ID:QXVEza6zO
チャキッ

神通「提督、私に任せて下さい」

男「神通!!まだ死に急ぐ時ではない!!」

神通「死に急ぐつもりはありません。ただ……」

神通「この化け物を屠るだけです」バッ!!

男「違う……!!」

男(接近戦に持ち込んではまずい!!)

男「龍鳳!武蔵!神通の援護に回ってくれ」

男「北上と日向と俺で他を食い止める」

武蔵「援護もなにも彼女から接近戦に持ち込んでいてはな……」

武蔵「まぁいい。久しぶりに面白くなって来たぞ……!!」

364: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:07:56.30 ID:QXVEza6zO
神通「疾ッ!!」シュッ!!!

ザバァッ!!!

「ゴフッ……ゴボ……」

男(一瞬の居合いで感染者の首を刎ね落とした)

神通「単調な動きであれば回避も一撃も容易です!!」ダッ

ズシュッ!!ドッ...ズブッ!!!

男(まるで剣舞を見ているかの様だ。一撃の元感染者を屠っていく)

男(血飛沫が花の様に開き神通の周囲を彩っていく)

男「まさに鬼神……だな」

男(銃撃はまだまだ使えるものではないが、剣の腕は圧倒的だ)

365: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:13:22.71 ID:QXVEza6zO
男(しかし敵の湧きが収まらない。やはり……)

男(近隣の住人を食らっている……!!)

男「防衛機構の兵士はどうしているんだ……」

男(それ以前にこれだけの戦闘だ。国防軍が既に動いていてもおかしくはない)


武蔵「まさかこの程度とは言うまい?」タタタンッ!!!

「ゴキュッ……」

龍鳳「……」パァンッ

ジャコンッ

龍鳳「……」

男「……ッ」タタタンッタタタンッ

カチッ

男「……弾切れか」

366: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:16:08.02 ID:QXVEza6zO
男「予備の弾薬も……ない」

スルッ

男「あとはこいつだけ……」チャキッ

パンッパンッパンッ!!!

北上「こっちも弾がやばいって!」

日向「弾帯に込める弾薬もこれで最後だ……」

男「チッ……」

男(これほど長期戦になるとは思わなかった)

男(采配を誤ったか……)

367: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:18:06.86 ID:QXVEza6zO
タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

男「む……!誰かまだ弾を保持しているのか!」


古鷹「……」

チャリンチャリン...


男「……」

古鷹「……私はまだ、撃てます」

男「……やれるのか」

古鷹「……やってみせます」

チャキッ

タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

368: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:23:43.50 ID:QXVEza6zO
男(だが……まだまだ射撃のブレが激しい)

男(ほとんど掠めるだけで当たっていない……!)

男「……」

男(それでも……今はあの弾を奪う訳にはいかない)

古鷹「私だって……撃てるんです!」タタタンッタタタンッ!!!

男(さて……この状況。どう打破する)

369: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:25:33.45 ID:QXVEza6zO
「……」タタタタッ

シュッ

ドスッドスッドスッ


男「……」パンッパンッパンッ


チャキッ

シュッ!!!

ドシュッ!!!

「……」

370: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:29:37.29 ID:QXVEza6zO
男「……」

男(前方からの湧きが緩くなった)

男「前進するぞ!ここから撤退する!」

男「武蔵、神通を後方に。俺が先頭に立つ」

男「全員動け!!」


神通「後方からの敵は任せて下さい」

武蔵「撤退戦か……まぁ。ここに籠城するよりは余程いい」

北上「頑張ったね」

古鷹「私は……」

日向「精密な狙撃、素晴らしいものだった」

龍鳳「ありがとうございます!」

371: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:33:30.66 ID:QXVEza6zO
男(鳥居を潜り、階段を降りたら左手へ向かえば……)バッ

男「な……」

男(角を曲がり見たのは。倒した覚えのない感染者の屍体だった)

男(何故すぐに屍体だと分かったのか。それは……)

男「頭部に刺さっているのは……ナイフの刃か……」

男(柄の無いナイフが感染者の頭部に突き刺さっていたのだ)

男「誰だかは分からんが……感謝しておこう」

男「全員このまま進む……」

バララララ...

372: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:39:27.02 ID:QXVEza6zO
男「……今度はなんだ」

龍鳳「あ、あれ!空に赤い光が!」

男(空を見上げると闇の中に赤い光点が点滅しているのが見えた)

武蔵「ヘリか!今頃お出ましとは……」

バララララ

「いけいけいけ!!」

男(ヘリ……暗くてよく見えないがあれはV-22オスプレイ)

男(国防軍のヘリだ。近くの空中で止まったかと思うと垂らされたロープから兵士が降りてくる)

タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

「かなみ市防衛機構の方々ですね」

男「あぁ。防衛機構所属、中尉だ」

男「残弾も残り少なく戦闘を行う余力はない」

「はい。誘導しますのでこちらへ」

373: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/03(金) 22:48:15.13 ID:QXVEza6zO
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


男(その後事態は収束したが死傷者は百人近いものとなった)

男(流石に隠蔽工作も難しい状況ではあったが、政府はこれを敵対国のテロリストの仕業であると発表)

男(まぁ、妥当な言い訳ではあると思うが)

男(これにより政府の信頼が落ちた事は明白であり。軍備の増強や一層の深海棲艦に対する対策を余儀なくされただろう)

376: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 06:26:44.57 ID:5yRQvRr3O
少佐「……」

男「以上が報告です」

少佐「ふむ……それだけの感染者が……」

少佐「……奴らが何故ここを狙うかはわからないが」

少佐「これは最早戦争だ」

男「……」

少佐「各国、いや。日本国もだが」

少佐「異形の勢力を認めたく無い様だが……そうも言っている場合ではないだろう」

377: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 06:29:49.33 ID:5yRQvRr3O
少佐「我々もなんとか対策を練らねばならない」

少佐「……と。その前に」

少佐「中尉。よく死線を乗り越え誰一人失う事無く帰還した」

男「はい」

少佐「しばらく休暇を与えよう。想像を絶する戦闘であった事は私も承知している」

少佐「戦いの疲れを癒し、次に備える様に」

男「ありがとうございます」

378: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 06:39:13.37 ID:5yRQvRr3O
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ーー


男「皆、よく頑張った。誰も傷を負った者が出ず良かった」

神通「あれが……提督や武蔵さんが戦っていた相手だったんですね……」

北上「あんまり気分が良くなる相手ではないよね」

龍鳳「はい……」

男「深海棲艦に汚染され人で無くなった存在。それがアレだ」

男「奴らに傷を負わされ体内にその分泌液が混じる事でああなる。神通、正直かなり焦りを感じたぞ」

神通「申し訳ありません……」

男「次は……頼む」

379: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 06:44:16.41 ID:5yRQvRr3O
古鷹「あ、あの!」

男「どうした?」

古鷹「本当に……ごめんなさい。私……」

男「……普通の人間であれば当然の反応だ。慣れるしかない」

男「俺も最初は奴ら感染者を手に掛けるのは抵抗があった。だが……」

男「やらなければ殺られる。だからやるんだ」

古鷹「……」

日向「……」

武蔵「……」

380: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 06:47:36.09 ID:5yRQvRr3O
男「だが全員成長はよく見られた。足りない部分は多いがな」

男「苦手部分、訓練の足りない部分を補える様に訓練内容を考えるとしよう」

男「少佐からしばらくの休暇をいただいている。今日はもう少ないが……明日明後日は各自自由に過ごすといい」

男「それでは。一時解散」

381: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 07:04:13.85 ID:5yRQvRr3O
男「……」コツコツ

スッ

カチッ

武蔵「……」

男「ん……」

男「すぅ……はー」

日向「他のみんなは部屋に戻ったよ」

男「そうか……」

武蔵「あのナイフ。どこかで見た事がある」

男「……あの感染者の頭部に刺さっていたものか」

武蔵「刃だけが残っていた。柄と刃が分離するもの……そう多くはないだろう」

384: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 22:53:29.74 ID:5yRQvRr3O
男「……スペツナズナイフか」

男(スペツナズとはソ連の特殊部隊の名前だ)

男(そのスペツナズが使っていた事からスペツナズナイフと呼ばれている)

男(ロシア語では弾道ナイフとも呼ばれる)

男(グリップ内部に仕込まれたバネの力で刃を飛ばす。5メートル程の射程を持っていたらしいが)

男(そもそもスペツナズの存在自体が疑問視されている以上この武器も架空の存在である可能性はある)

男「だが仮にスペツナズナイフだったとして。使用者はロシア所属か?」

日向「ロシアは……一応敵国だからな……」

男(同盟の関係上ロシアとは敵対してはいるが、実際は中立程度の関係である)

386: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 22:58:25.59 ID:5yRQvRr3O
男「まぁ……なんにせよあの状況から脱する事が出来たのもあのナイフ攻撃の影響は大きいとは思う」

武蔵「そうだな……さて。それもいいが……」

武蔵「成果は上がっているのか?」

日向「……」

男「……数枚だが資料を見つけた」スッ

武蔵「……随分黄ばんでいるな」

武蔵「これは……どこかの施設の見取り図か」

武蔵「大規模だな……」

387: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 23:14:36.06 ID:5yRQvRr3O
武蔵「もう一つは……」

武蔵「……これは」

男「……」

日向「……」

『深海棲艦を利用した兵器の運用、活用について』

武蔵「……」

『深海棲艦の攻撃能力、装甲を流用した次世代戦車の開発』

『現段階ではパワードスーツ、又は戦車に代わるものを想定しているが……』

『……開発テストは最終段階に入っており、電子世界を経由した精神接続を行い、これの成功を持って試作機の完成を目標とする』

武蔵「……これはどういう事だ」

男「恐らく、当時行われていた虚構型戦艦の開発レポート、報告書ではないかと思うが……」

日向「精神接続は結局今の段階では成功していない……な」

男「存在しない虚構型戦艦一番艦の事ではないだろうか」

男「実験が成功せず一番艦は未実装と考えれば……」

武蔵「……もう一枚は」ペラッ

388: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 23:20:10.11 ID:5yRQvRr3O
武蔵「……手紙か」


『もし俺たちがこの作戦を失敗に終えていたとしたら。今頃これを読んでいるお前たちの周りでは次世代兵器が完成しているのだろう』

『もし、平和を求め。これを拒む人間であるなら。立ち上がって欲しい』

『現政府はこの兵器を各国に売りさばき、死の商人に成ろうとしている』

『戦争が起こる前に、これを止めて欲しい』

『研究やその目論みの全ては、この施設にある』

『元帥が全てを握り、計画を推し進めている』

『平和の礎に。平和を維持する為に……』

389: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/04(土) 23:21:36.31 ID:5yRQvRr3O
武蔵「……この先はよく読めないが」

武蔵「私たちは、とんでもないものを見つけてしまったのではないか?」

男「もしこれに書いてある事が本当なのであれば……」


男「時間はもう残されていない」

393: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/05(日) 20:28:35.17 ID:p6OAGFmWO
武蔵「……この手紙を鵜呑みにするのなら。兵器はほぼ完成しているに等しい」

武蔵「そして。他国よりも抜きん出た技術を擁し、高度な兵器開発を行っているのも確か」

日向「……だが当時の内閣と今の内閣は閣僚も総入れ替えを行っている。別物だ」

男「……」

男(なんだ……この妙な不安感は)

男(違う……これだけでは……)

男「なにか。別に特別な何かがあるような気がする」

男「深海棲艦が狙っていたのはこんなものではないだろう。もっと重要ななにかがあるはずだ……」

394: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/05(日) 20:33:02.56 ID:p6OAGFmWO
男「……」スッ

日向「……いくのか?」

男「あぁ」

武蔵「行くとは言うがそもそもここはどこなんだ?」

日向「今ここは国防軍が警備を行っているはずだ」

日向「容易には近づけないし入れない」

男「……それでも、行かなければ」

男(そうだ。俺は最初から……)

395: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/05(日) 20:40:39.99 ID:p6OAGFmWO
武蔵「……なんだ。私を差し置いて話を進めるな」

武蔵「そもそもその不安感とはなんだ?」

男「……いや。こんなにも落ち着いた話だったのかと思ってな」

男「強力な兵器を開発して他国に売りさばく。たったこれだけの話か?」

男「兵器を売るだけ売ってどうする?また新たな兵器を開発するのか?」

男「こんな大それた事をするなら一回きりではないだろう」

男「そもそも。強力な兵器を売りさばくなどして各国からの批判は免れないはずだ」

男「行き着く先は誰にだって想像出来る」

396: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/05(日) 20:43:17.91 ID:p6OAGFmWO
男「現に、日本はこの兵器を公にした時。各国の批判や国民からの批判を一斉に浴びたはずだ」

男「国際社会での立場を危うくするような事を自ら行うか?」

男「これはあくまで代わり身であって本質的な部分は別にあると思う」

男「深海棲艦はそれを狙っているのではないか」

399: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 06:38:00.47 ID:dLMMsNpQO
武蔵「……借りにそうだったとして」

武蔵「そこまで深入りする必要などあるのか」

男「……」

武蔵「国家の重要機密を暴くんだ。深海棲艦の目的を知るよりもはるかに高いリスクがある」

武蔵「今現在この研究が行われていないとしても公にすべき事ではないし、もし今現在も続いているとしたら……」

武蔵「最悪消されるかもな」

男「……」

日向「……」

武蔵「そこまでして調べる理由がどこにある?」

400: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 06:47:55.23 ID:dLMMsNpQO
武蔵「全員を納得させられる理由があるのか?」

男「……」

男「……煙草、一本吸っても構わないか?」

武蔵「あぁ」

スッ...カチン

男「……」ジジ...

パチン

男「……ふー」

男「……」

401: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 06:52:05.19 ID:dLMMsNpQO
男「……日向には話していなかったと思うが」

男「そもそもここに入ったのは……ある事が知りたかったからだ」

日向「……ある事?」

武蔵「……」

男「すー……はぁ……」

男「ただその事の真実を。知りたかった」

男「それがこの場所にある」

日向「……!」

武蔵「……」

402: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 06:57:01.01 ID:dLMMsNpQO
男「……俺には父と母、姉の三人の家族がいる。という話はしたな」

日向「聞いたよ」

男「姉は既に他界しこの世にはいない。両親は未だ健在」

男「……そう話したが本当は」

武蔵「……」

男「父も既にこの世にはいない」

男「自殺したんだ」

日向「……」ガタンッ

男「どうした。日向」

日向「い、いや……なんでもない……」

武蔵「で、その話がこれとどういう関係が?」

403: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 07:13:03.51 ID:dLMMsNpQO
男「……俺の父は。この施設の……所長だった」

日向「……っ」

武蔵「この施設この施設と言うがこの場所は……」

男「表向きは病院兼孤児院」

男「本当はそこに適当な人間を収容、研究材料として利用する」

武蔵「……まさかッ」

男「あの蜂起の……起きた場所だ」

404: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 07:25:31.54 ID:dLMMsNpQO
男「姉は……自殺した父の代わりとして所長となり、あの蜂起に巻き込まれ。死んだ」

男「当たり前だな。そこで父と姉は次世代兵器の開発と艦娘の研究を主導していたのだから」

武蔵「……提督、私は」

男「俺はそこで。父と姉がどのように生活し、研究を行い。そして死んだのか」

男「その全てが知りたいんだ」

男「勿論俺と母には知らせが入った。だがそれが真実の全てであるとは思っていない」

男「……ここ最近の深海棲艦の動向。深海棲艦の狙うものときっと、関係がある」

男「深海棲艦の欲する何か。それが……俺の、求めているものなのではないか。そう思った」

405: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 07:31:51.19 ID:dLMMsNpQO
男「まぁ……そうでなくともいずれこの場所に行くつもりではあった。同じ事だよ」

武蔵「……すまない」

日向「……」

男「いや、いいさ。こうでもしなければ納得して貰えないだろう」

男「もしこの話でも納得して貰えないのなら……一人でもここに向かうつもりだ」

武蔵「……提督の母は、無事なのか」

男「……家族が国家の、国民の汚点として晒し上げられたんだ。風当たりは……言わなくても分かるだろう」

男「まともに出歩く事も出来ず、匿われならが過ごしてきた」

男「俺も素性を隠して今まで……生きてきた」

男「俺よりも余程辛かっただろう……」

男「今は……施設に入って過ごしている」

男「まともに会話すら行えないほどに……壊れてしまった」

410: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:02:59.78 ID:dLMMsNpQO
男「家族の存在や自分を失って、考えたのは……」

男「真実を、全てを知りたい。ただそれだけだった」

男「父や姉が追い求めていたものは何か。研究所での暮らしはどうだったのか、それだけが知りたい」

男「母と二人残され、なにも知らないままになにもかも奪われた一人の人間の我儘だ」

武蔵「……その全てを知った後。提督はどうするつもりなのだ」

男「……それは。わからないな」

男「それだけ考えて、今まで生きてきたようなものだ」

411: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:07:06.72 ID:dLMMsNpQO
武蔵「……」

日向「……」

男「今夜すぐに出発する。皆には母の元に帰ったとでも言っておけばいい」

ガタンッ

男「……」コツコツ

武蔵「待て」

日向「誰も一人で行かせるなんて言ってはいないだろ」

男「……」

男「付いて来た所でなにもないぞ」

武蔵「提督の過去を無理に掘り起こしたのは私だ。けじめは付けさせてもらうぞ」

日向「……きっと。私がいた方が早く辿り着ける」

男「……」

412: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:09:28.52 ID:dLMMsNpQO
男「……すぐに準備をしてくれ」

男「都内までは電車を使う。ある程度まで進んだ後はタクシーでも拾えばいい」

男「足がつかない……というのは難しいが分かりにくい方がいいだろう」

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

413: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:15:46.74 ID:dLMMsNpQO
男(こうして俺たちは、俺の求めていた場所へと。足を運ぶ事となった)

男(自然と心臓は落ち着き払い、頭は冷えていた)

男(ただ……全て知った後に俺はどうするのだろう。それをずっと考えていた)

男(答えは出ないまま目的地へと近づいていく)

男(研究所。国防軍の警備ラインよりも少し遠くでタクシーを降りる)

男(生温さの抜けた少し冷たい夜風がいよいよだと物語っていた)

414: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:18:26.12 ID:dLMMsNpQO
タッタッタッ

男「止まれ」スッ

武蔵「……」

日向「……」


「……」

「……異常無しか」

「気を抜くな。ここは……」

「あぁ……いつ来るかわからない、だろ」

「かなみでの事件もある。警戒をより厳しくしておく必要がある」

「そうだなぁ……」

415: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:21:50.14 ID:dLMMsNpQO
男「前方に二人……」

日向「こっちに迂回路がある」

武蔵「警備の配置情報を盗めなかったから辛いものがあるな……」

日向「大丈夫だ。道は知っているから…すぐに辿り着ける」

武蔵「来た事があるのか?」

日向「……こっちだ」タッタッタッ

男「……」

武蔵「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

416: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:26:36.94 ID:dLMMsNpQO
日向「こっちも警備がいるのか」

武蔵「周辺の家々は今無人だろう?通り抜けられないか?」

男「いや……変に物音を立てるのは良くない」

武蔵「かと言って昏倒させる訳にもいかない……か」

日向「……ん」スッ

男「む……石でどうするつもりだ」

日向「これを向こうに投げて気を引けないだろうか」

武蔵「……」

男「……やってみる価値はあるか」

日向「それじゃあ……投げるぞ」グッ

ヒュッ...

417: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:29:53.76 ID:dLMMsNpQO
カツンッ

「……!」チャキッ

「……聞こえたな」

「様子を見てみる。バックアップを頼む」

「了解」


男「……今だ」

武蔵「……」

日向「……」

スッ...


「……なにもないな」

「一応報告はしておくか?」

「いや……物音だけでは……」

「少し散開して調べるぞ」

「あぁ……」

418: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:40:34.85 ID:dLMMsNpQO
男「……近くにあるのに遠く感じるとは」

武蔵「それだけ国防軍の警戒が厳しいという事だ」

武蔵「それでも……私たちがここまでこれるくらいには弛んでいるがな」

日向「この坂を登れば研究所の正面に出る」

男「……だが恐らく。正面に陣地が構成されているだろうな」

武蔵「……だがここで足踏みしている時間はないぞ。身を低くしろ」

日向「……!」


「……」コツコツ

「こちら第四巡回部隊。ポイントB異常無し」


日向「……この林に入ろう」

男「林に隠れてやり過ごすか……」

日向「いや、ここに研究所の敷地への抜け道があるんだ」

武蔵「……何故それを?」

日向「それは後で。早く行こう」

419: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 22:50:17.04 ID:dLMMsNpQO
ザ...ザ...


日向「……」

男「……」

武蔵「……」

日向「この先に……」


日向「あった……」

男「……フェンスか」

武蔵「匍匐すればなんとか通れそうなくらいの穴……だな」

男「……最近のものではない。随分……時間が経っている」

日向「……ここから身を低くして外周に沿って進めば施設に進入出来そうだ」

男「日向……」

日向「行こう。私に付いて来てくれ」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

420: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 23:02:31.11 ID:dLMMsNpQO
男「……ここが」

男(ガラス張りの壁、病院とは思えない程に美しい形状。海外の公園をイメージした正面広場)

男(最先端の医療技術が集結した日本有数の巨大医療施設)

男(それと同時に孤児や様々な理由で保護者と生活を送れなくなった子供達の収容、育成施設)

男(だがその裏ではそれを偽装として非道な軍事研究を行っていた研究所)

男(の……成れの果てだ)

421: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/07(火) 23:05:04.84 ID:dLMMsNpQO
男(敷地は荒れ果て、外周は草が伸びきり、中央部には軍車両が止められ、陣地が形成されている)

男(病棟だったものは……)

男(ガラスは割れ、柱は削れ、一部は崩れていた)

男(鉄筋が剥き出しになり錆びが見えている部分もある)

男(巨大な廃墟と化していた)

426: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:28:22.44 ID:pr8TeP/mO
男「正面突破は不可能だな」

日向「……」

武蔵「日向」

日向「あ、あぁ。うん」

日向「こっちから行こう……」


男「……」

日向「……」

武蔵「……」

ザッザッ

男「止まれ……」

「……」ザッザッザッザッ

「……」ザッザッザッザッ

ザッザッ...


男「……行ったか?」

日向「急ごう」

427: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:33:20.59 ID:pr8TeP/mO
日向「ここに裏口が……」

「ん?なにか聞こえなかったか?」

日向「ッ!?」

男「……」

武蔵「……」

「いや……気のせいだろう」

日向「……」スッ

日向「……」クイッ

男「……ん」

武蔵「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

428: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:37:58.90 ID:pr8TeP/mO
日向「裏口がダメなら……」

武蔵「ん、あそこ。ガラスが割れているぞ」

男「あそこからなら進入出来るが……」

日向「ガラスが散らばってるね」

武蔵「物音は避けられないが進入経路もあそこだけ……」

男「兵士がより離れてから移動する……」

日向「……」


男「今だ……」スッ

日向「……」

武蔵「……」

タッ

429: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:40:23.66 ID:pr8TeP/mO
パキッパキッパキッ...


男「……」

武蔵「……」

日向「……」


パキッパキッ...バキッ!!


日向「ッ!早くこっちに!」

男「……」

武蔵「向こうさん音に気がついたみたいだな……」

タッタッタッ!!!

430: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:47:24.47 ID:pr8TeP/mO
「今の音は……!」

「小隊三つで施設内部をクリアリングする」

「いけ!いけ!」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男(内部に進入し出たのは病室の前の廊下らしい)

男(白く清潔であっただろう壁や床は最早見る影もない)

男(患者を運ぶ器具や細かな道具が床に散乱している)

男(と……あまりゆっくりと観察している時間は無さそうだ)

男(後方からフラッシュライトの光が揺れながら複数こちらに近づいてきていた)

431: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:54:46.49 ID:pr8TeP/mO
日向「こっちに地下に行くエレベーターがあるんだ」ダッ

男「見取り図にもあったものか」

日向「そう。そこから……研究区画に行けるよ」

武蔵「だが電力など供給されているのか?」

日向「必要最低限の電力はあるかもしれない」


男(埃の舞う通路を抜け、奥まった場所まできた)

男(そこには光の消えた掲示板と半開きになった扉があった)

日向「チッ……」

武蔵「ここから降りるか?」

日向「無理だ。降りるには少し深すぎる」

男「梯子にも……届かなさそうだな」

432: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 06:59:35.51 ID:pr8TeP/mO
コツコツコツコツ...


男「……中まで捜索しに来たのか」

日向「それならこっちに……!」

武蔵「まだ通路が?」

日向「非常用階段がすぐそこにあるよ」

男「ならば向かうとしよう」


ギギギ...

日向「……凄い埃だ。口元を塞いだ方がいい」

男「ここから下に行けるんだな」

日向「最下層までね」

武蔵「よし。すぐに行くぞ」

433: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 07:03:44.81 ID:pr8TeP/mO
男「……」スッ

チャキッ

パッ

男(扉を閉めると光は完全に消え失せ、暗闇になった)

男(三人でフラッシュライトを点けなんとか視界を確保する)

日向「付いて来て」

男(人二人分ほどの広さの階段を降っていく)

男(強烈なまでの埃が視界と呼吸を遮ろうとする)

434: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 07:15:36.41 ID:pr8TeP/mO
日向「……ここだよ」

男(階段を降りきると目の前に巨大な障壁が現れた)

男(すぐそこには先ほどのものであろうエレベーターのドアがあった)

男「人一人分の隙間はある……」

日向「……この障壁から先が」

武蔵「……」

男「……行こう」

男(口元を塞ぎ俺たちは、障壁の隙間を潜り抜けた)


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

437: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 23:51:00.97 ID:pr8TeP/mO
男(障壁を潜ると先ほどよりも埃が舞い、視界を塞ぐ)

男(フラッシュライトの光も先までは届かず、目の前がぼんやりと照らされる程度だ)

男(まるで深海を探索しているようだ……)

男「……」

男(あちこちに銃撃の跡が残されている。床のいたるところに付いている染みは血痕だろうか)

日向「……」

武蔵「……それで。日向」

男「……」

武蔵「この施設の周囲だけでなく内部まで詳しく知っていた」

男「……」

日向「……」

男(歩みを進め、探索しながら日向に問う)

男(その表情は重く、どこか遠くを見つめていた)

438: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/08(水) 23:58:32.70 ID:pr8TeP/mO
日向「……それは」

武蔵「……」

男「……」

日向「かつて私は……この場所に……」

日向「元帥……君の姉の元にいた」

男「……」

武蔵「……」

日向「君の姉のしていた事も、少しは見ていたつもりだ……」

日向「……あぁ」

日向「私は……」

武蔵「……」

日向「……止める……べきだった」

439: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/09(木) 00:09:32.66 ID:/3ykypFQO
日向「過去を悔いても仕方がないのは分かっているさ」

日向「けれど……気がついた時に。止めるべきだったんだ」

日向「彼女に拾われ、命を救われて……紛い物の忠誠心に……縛られていた」

男「日向……」

日向「……すまない」

男「……いや。いいさ」

武蔵「……」

男(そうか……そうだったのか)

男(まさか……こんなにも近くに。姉を知る人間がいるとは思いもしなかった)

440: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/09(木) 00:22:33.71 ID:/3ykypFQO
男(正直驚きと困惑と……様々な気持ちが混ざり合って……なんとも言えない様な気持ちになる)

男(今すぐにでも話を聞きたいが……)

男「今は……探索を続けよう」

日向「そう……だな」

武蔵「……」


男(地上の施設とは違いこのフロアは相当な広さだ)

男(娯楽施設に食事処、銭湯に買い物をする場所まで併設されていた)

男(どれも埃をかぶり、廃れていたが……)

男(そういえば……)

男「この施設群の中には戦闘の跡は無かったな」

日向「戦闘が行われた場所は居住区画の方だからな」

男「区画分けされ、これだけの施設があるとは……一体どれだけの人間がここにいたんだ」

日向「防衛機構の人間よりもずっと……」

男「よく存在が露呈しなかったな……」

日向「ここで過ごしていた人間はほとんど地上に出る事は無かった。生活の全てがここで補える様になっていたのはそのせいだ」

男「……まるで檻の様だ」

441: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/09(木) 00:32:04.33 ID:/3ykypFQO
男「……区画……か」

男「見取り図には地上の部分しか示されていなかった。ここはどの様な構造に?」

日向「中央部……今私たちがいる施設群のある区画を中心として、六角形に居住区画が割り振られている」

日向「十二時方向から時計回りにA、B、C、D、E、F」

日向「東西南北に地上への昇降機が取り付けられていて。私たちは南、六時方向の入り口からここまで来た」

武蔵「蜂起の首謀者もここに?」

日向「あぁ……彼は……少佐と呼ばれていたが」

日向「Eブロックが彼とその仲間の艦娘達が過ごしていた場所だ」

男「……」

日向「君の姉は……Aブロックに……」

日向「私もそこで……暮らしていた」

447: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/10(金) 18:44:25.53 ID:20dVFxEeO
武蔵「さて、どこから探索する?」

男「……あまり時間がない。先にEブロックから探索しよう」

日向「……」


男(埃被った通路を進み、Eブロックとの境目の扉の前まで辿り着いた)

男「扉が閉まっている」

男(重く頑丈そうな扉がぴっちりと口を閉じている。丁度右に液晶画面と数字キーがあるが……)

日向「そうだ……この扉は電子ロックだった……」

男「手動で開けないのか?」

日向「多分……非常用に開ける様にはなっているとは思うけど……」

武蔵「……見当たらないか」

男「……ここで手詰まりとは」

448: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/10(金) 19:04:35.22 ID:20dVFxEeO
武蔵「……」

男「……」

日向「……いや、まだある」

日向「施設内部では戦闘が行われていたが、その場所はFブロックだったらしい」

男「という事は……」

日向「Fブロックの扉が破壊されていればEブロックにもAブロックにも移動出来る」

武蔵「だったらしい……というのは?戦闘には参加していないのか」

日向「私は……電子世界で戦闘を行っていたから……現実世界での事はよくわからないんだ」

日向「終わってすぐに……捕まってしまったしな」

453: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/11(土) 23:04:38.32 ID:6KSd+EPtO
男「だが可能性があるなら向かうしかないだろう」

武蔵「では、向かうとするか」


男(戦闘の跡とは言ったが想像以上だった)

男(厚みのある扉は切断され、内部に進入する事が可能だったが……)

男(銃痕が壁中に撃ち込まれ、床には大量の血痕と錆びた空薬莢が転がっている)

男(爆発跡に、壁が抉れ崩れていたり)

男(想像を絶する戦闘が行われていたと考えるには容易かった)
 
455: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/11(土) 23:12:14.90 ID:6KSd+EPtO
 
男「これは……」

武蔵「酷いな……」

日向「……」

男(暗闇の中だが日向の表情が悲しいものに変わったように見えた)

男(かつての仲間がここで殺し合いをしていたのだ。当然だろう)

日向「……ここに調べるものはないだろう」

男「そうだな。先へ進もう」

男(空薬莢を足で退けながら俺たちは先へと進んだ)

456: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/11(土) 23:15:36.15 ID:6KSd+EPtO
男(破壊された扉を抜けると、先ほどまでの惨状が嘘の様に落ち着きを取り戻す)

男(細い廊下の片側に扉が並んでいる)

男(一つずつ調べていく必要があるか……)

男「手前から一つ一つ進入して調べるぞ」

男「他人のプライバシーに踏み込んでいるようであまり気分は良くないが」

武蔵「仕方ないだろう」

日向「……」

462: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 06:37:40.02 ID:gLoMH3iDO
ガチャ

男「……」

日向「……」

武蔵「……」

男(最初に入った部屋は最低限の生活用品以外置いていない様な部屋だった)

男(だがよく見渡してみると……)

男「写真……だな」

武蔵「ここにもあるぞ」

日向「……」スッ

男(写真の埃を払いフラッシュライトで照らす)

463: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 06:44:40.99 ID:gLoMH3iDO
男(気の強そうな少女と優しそうな少女二人が写った写真だ)

武蔵「少女二人か……」

男「どの写真もそうか?」

カタッ

男「ん……この写真だと、片方の少女は眼帯をしているな」

武蔵「そういえば、日向ならこの首謀者達と関わりがあるのではないか?」

日向「少し話したくらいだが……」スッ

日向「この二人は……うん。確かに知っているよ」

日向「天龍に龍田。そう呼ばれてた」

男「天龍に龍田……」

日向「こっちの眼帯が天龍、片方が龍田」

464: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 06:49:18.52 ID:gLoMH3iDO
男「何故眼帯をしているんだ……」

日向「さぁ。そこまではわからないけど」

日向「ある日から突然着けていた気がする」

男「それに龍田という名前は少佐に見せてもらった艦娘リストには……」

日向「龍田は……その時には死んでいたからね」

武蔵「……」

日向「死因は……確か……」

日向「心臓の何かだったと聞かされた覚えがあるけど……」

男「心臓……」

465: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 07:01:15.47 ID:gLoMH3iDO
武蔵「他にめぼしいものはないな」

男「そうだな。次の部屋に向かおう」


男「……」

男(次の部屋は入って女性の部屋とわかる様な部屋だった)

男(淡いピンクを基調にした落ち着いた雰囲気の部屋)

男(だが……壁に竹刀が掛かっていたり、引き出しの中から自動拳銃が出てきた)

男(手入れをしていなかったからか。当然動作は悪い)

武蔵「ここにも写真があるぞ」

468: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 22:39:54.52 ID:uN/X2G21O
男「……これは」

日向「天龍に龍田」

武蔵「という事はここと前の部屋が天龍と龍田の部屋だった場所。という事か」

男「だがここにも……これと言って目ぼしいものは無い」

武蔵「次の部屋に向かおう」


男(次の部屋はぬいぐるみや置物が沢山置かれた少女らしい部屋だった)

武蔵「ここは……子供部屋の様だな」

武蔵「勉強机。引き出しの中には……」スッ

武蔵「……どうやらここでは学習も行われていた様だな」

武蔵「いくら強引に連れてきたとは言え、やはり教育は必要か」

男「名前は……電」

469: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 22:43:21.64 ID:uN/X2G21O
男(あまり綺麗な字ではないが……)

日向「彼女はこの施設の中でもかなり幼い部類に入っていたと思う」

男「そんなに小さな子供まで……」

ギリッ

武蔵「む、床になにか落ちているな……」

男「それは?」

武蔵「手紙……の様だが」

男「読めるか?」

武蔵「所々色褪せているが……大体読める」

470: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 22:52:19.65 ID:uN/X2G21O
『みんなへ 』


『急で本当にお父さんとお母さんもごめんなさい、……います 』

『これから二人で少し遠い所へ行かなければいけなくなりました 』

『…………の友達の元帥さんについて行って下さい 』

『……は優しい人だから、きっとみんなを……してくれると思います 』

『今までお金が無くて、みんなを…………なさい。忙しくて構って……くてごめんなさい 』

『が元帥さんの所に行ってくれるおかげで、お父さんとお母さんは沢山お金がもらえます 』

『次に会う時はみんなで…………ましょう。それまで……下さい』

471: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 22:55:42.56 ID:uN/X2G21O
男「……」

武蔵「……」

日向「……人身……売買……!!」

男「……」

武蔵「……」ギュッ

男(心の底から……怒りがこみ上げてきた)

男(俺の家族は……こんな事までしていたのか)

日向「……」

武蔵「こんなに大切な手紙を放置していくほど、状況は切迫していたのか」

男「……ッ」

武蔵「……お前が気にする事じゃない。何も悪くない」

男「……あぁ」

472: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/14(火) 22:58:07.21 ID:uN/X2G21O
男「……次の部屋に……行こう」


武蔵「……この部屋だけ、扉が鉄製なのか」

日向「……」

男(次の部屋の扉は何故か鉄製だった)

男(錆び付いた扉はどこか牢獄を思わせる様な佇まいだ)

武蔵「フンッ……!」

ギギッ...ギギギ...

武蔵「……入るぞ」

476: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 06:22:06.93 ID:rYsQUIW4O
男(錆びた扉を潜るとそこには……)

日向「……なにもないな」

武蔵「……あぁ」

男(この部屋は最初に入った部屋よりもより殺風景だった)

男(棚やテーブルはあるものの肝心の置いてあるものが無い)

男(壁を見るとなにか引っ掛けていたのだろうか。ラックの様なものが幾つも取り付けられているが……)

日向「……奥の方に水と食料が散らかってる」

男「それ以外はなにも無いか」

477: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 06:27:12.51 ID:rYsQUIW4O
武蔵「……所々荒らされた形跡があるな」

武蔵「壁にはなにかで殴りつけた様な凹み……ベッドもよく見るとシーツが破かれている」

武蔵「それに部屋の端に染み……これは血痕か?」

パッ

日向「なにか書いてある」

男「……血文字」


『死にたい』


武蔵「……」

日向「……」

男「まるでこの部屋は……獄中だ。一体ここで何が……」

478: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 06:44:53.66 ID:rYsQUIW4O
武蔵「なにか……当時不穏な噂などはなかったのか?」

日向「いや……なかったよ。何も」

日向「ここの提督も艦娘も仲が良いイメージならあったけど……」

男「……次に行こう」


男(次に入った部屋はまた今までの部屋とは違った雰囲気だった)

男(おしゃれなインテリアに、目を引くのは壁際の棚に沢山並べられたティーセット)

男(紅茶の葉の様なものまで置いてある)

男「……」

日向「……」

武蔵「……ここにも無いか」

男「そう簡単に重要な情報をくれたりはしないだろう」

479: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 06:51:35.17 ID:rYsQUIW4O
男「次の部屋だ」


男(次の部屋は落ち着いた印象の部屋だった)

男(家具も綺麗に纏められている)

男「……」

日向「……」

武蔵「……」

男「所で……当然事後には警察やら特殊部隊やらがここに入ったはずだな」

日向「……」

男「なのに探られた形跡もないとはどういう事だ?まともに調べていないんじゃないか?」

日向「間も無くすぐにここは廃棄され、立ち入り禁止になったから……それとなにか関係がある気がする」

武蔵「むぅ……それでも、確かにおかしいな」

武蔵「現場検証ぐらいはするだろう」


480: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 06:56:03.91 ID:rYsQUIW4O
男「……次だ」


ガチャ...

男「なっ……!?」

武蔵「なんだこれは……!」

日向「散乱しているな……」

男(次に入った部屋は……どうやら男の部屋らしい)

男(壁に掛かったスーツ。小物が少し散らかっている)

男(そして何より目を引いたのは……)

武蔵「……何故こんなにも武器が。まるで投棄された様だ」

男(小銃や自動拳銃。果ては軍刀に手榴弾まで)

男(入ってすぐの場所に散乱していた)

484: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 07:09:08.82 ID:rYsQUIW4O
 
武蔵「貰って行ったらどうだ?」 

男「いや……人のものを勝手に持っていくのは……」 

武蔵「どうせそれはもう誰にも使ってもらえんよ」 

男「……」 

日向「まぁ……いいんじゃないか?」 

男「……」 

男(押されるがままに俺は落ちていた軍刀を帯刀した) 

男「……少々借りる」

482: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 07:02:19.13 ID:rYsQUIW4O
武蔵「貰って行ったらどうだ?」

男「いや……人のものを勝手に持っていくのは……」

武蔵「どうせそれはもう誰にも使ってもらえんよ」

男「……」

日向「まぁ……いいんじゃないか?」

男「……」

男(押されるがままに俺は落ち着いた軍刀を帯刀した)

男「……少々借りる」

483: ◆SOkleJ9WDA 2014/10/15(水) 07:07:59.35 ID:rYsQUIW4O
男「しかしこの量の武器が……こんな所に投げ捨てられているのは異常ではないか」

武蔵「もしかしたら蜂起の時に皆に武器を配布する為にここにぶちまけた……というのは考えられないか」

男「あぁ……それなら」

武蔵「男の部屋ならここは蜂起の首謀者の部屋だろう。武器を集めてきて……」

日向「……」

男「……この部屋は念入りに調べる必要がありそうだ」

武蔵「そうだな……」