1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:33:21.92 ID:3Sn00U2Y0
妹「ねえ、兄ちゃん」

兄「なんだよ?」

妹「もしも、明日せかいが滅びるんだとしたら、兄ちゃんはどうする?」

兄「う~~~~ん、急には思い浮かばねぇな」

妹「あたしは好きな人といっしょにいたいなぁ」

引用元: 妹「海は青いね」 兄「大きいな」 



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:34:40.93 ID:3Sn00U2Y0
兄「ありきたりだな」

妹「でもそこにロマンがあるじゃない」

兄「まあな」

妹「兄ちゃんは好きな人といっしょにいたくないの?」

兄「そりゃ居たいさ」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:36:31.77 ID:3Sn00U2Y0
妹「だったら、兄ちゃんずっとあたしのソバを離れないでよね?」

兄「なんでだよ」

妹「そんなの、兄ちゃんが大好きだからに決まってるじゃん♪」

兄「よくもまあ、恥ずかしげもなく、そんな台詞がポンポン出てくるな」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:38:18.56 ID:3Sn00U2Y0
妹「だって本当だもん♪」

兄「はいはい、分ぁったよ」

兄「もしも明日世界が滅びる事になっても、俺がそばにいてやるよ」

妹「約束ね!」

兄「ああ、約束だ」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:39:38.00 ID:3Sn00U2Y0
妹「じゃあ、はい!」スッ

兄「?」

妹「誓いのチュー」

兄「おいこら」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:40:39.53 ID:3Sn00U2Y0
妹「え~、してくれないの?」

兄「あのなぁ、俺たち兄妹だぞ?」

妹「兄妹でもお互いを好きあってるなら良いでしょ?」

妹「それとも兄ちゃんはあたしの事好きじゃないの?」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:42:42.67 ID:3Sn00U2Y0
兄「いや、好きに決まってるだろ?」

兄「でもキスするとかそういう間柄でもねーだろ」

妹「なんで~~~?好きならキスくらいふつうだよ!」

兄「そういうのは家族以外とやりなさい」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:44:52.12 ID:3Sn00U2Y0
妹「ぶー」

兄「ぶーたれてもダメ。それよりもう遅いから、俺も戻るぞ?」

妹「え~~~、いっちゃ、ヤダァ」

兄「我儘いわない…」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:46:13.08 ID:3Sn00U2Y0
妹「だったらチュウ~~~…」ンー

兄「はぁ…」

妹「む~~~~」

兄「キスしたら納得?」

妹「うん♪」

兄「じゃ、目つぶれ」

妹「は~~~い♪」スッ

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:47:21.01 ID:3Sn00U2Y0
兄「ん」

チュ♪

妹「え~~~、おでこ~~~?」

兄「キスしてやったんだから文句言わない」

妹「ぶ~~~」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:49:25.32 ID:3Sn00U2Y0
兄「じゃ、俺もう行くから」

妹「は~~~い…」

兄「やれやれ」

妹「む~~~…」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:50:45.16 ID:3Sn00U2Y0
翌日。


兄「よう」

妹「あっ、兄ちゃん。遅かったね」

兄「ああ、学校の帰りに海よってたから」

妹「えっ、一人で?」

兄「ばーか、友達とだよ」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:53:56.01 ID:3Sn00U2Y0
妹「それって、女の子もいっしょ?」

兄「え?ああ、男4人と女3人だったからな。女子もいるよ」

妹「むぅ!」

兄「なに怒ってんだよ?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:55:50.89 ID:3Sn00U2Y0
妹「あたしの知らない所で勝手に浮気するなんて信じらんない!」

兄「浮気って、おまえ…」

妹「兄ちゃんにはあたしがいるでしょ!」

兄「おいおい…」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 11:59:45.62 ID:3Sn00U2Y0
妹「兄ちゃんはあたしのなんだから」プンプン

兄「はぁ……」

兄「プレゼント渡そうと思ったんだけど、なんだかなぁ…」

妹「えっ!?プレゼント?」クルッ

妹「もしかして、あたしに?ありがとう、兄ちゃん♪」パァ

兄「身代わり、はやっ」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:02:19.56 ID:3Sn00U2Y0
妹「ねぇねぇ、なになに?」ダキッ

兄「こら、そんなにがっつくなって…」

妹「プレゼント~♪プレゼント~♪兄ちゃんからあたしにプレゼント~♪」ワクワク

兄「そんなに目ぇキラキラ輝かさなくても……」

兄「あんま凄いもんじゃねーから、期待しすぎで落ち込むなよ?」ゴソゴソ

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:06:02.74 ID:3Sn00U2Y0
妹「兄ちゃんからもらえるんなら、たとえシャネルのバッグでも
  あたしはとことん喜ぶよ♪」

兄「こら、いらんハードル上げんな!」

兄「ったく……これだよ」スッ

妹「これって……貝殻?」

兄「そ、巻貝のな。綺麗だから拾って来たんだ」

兄「一応洗ってあるし、置物にでもどうかなって……」

妹「わぁ…」

兄「だから期待しすぎんなよって言ったんだ。しょうもなかったろ?」

妹「ううん!あたしこの貝殻もらって嬉しいよ!すごく綺麗だもん!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:07:12.13 ID:3Sn00U2Y0
兄「そ、そか?」

妹「うん!一生の宝物にするね♪」ギュ

兄「まあ、喜んでくれたんなら何よりだけどさ…」

妹「えへへ~~~♪」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:10:11.12 ID:3Sn00U2Y0
兄「……」

妹「♪」

兄「なあ…」

妹「うん?」

兄「今度、海行くか?いっしょに」

妹「え?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:13:56.53 ID:3Sn00U2Y0
妹「でも兄ちゃん、今日行ってきたばっかでしょ?いいの?」

兄「ばーか、この狭い日本。ちょっと歩けばすぐ海だ」

兄「だったら、そんなにわざわざかしこまって、気合入れる必要なんてねーよ」

兄「今日だって、なんとなくあいつらと出かけたら海岸着いただけだしさ」

妹「兄ちゃん…」

兄「だから俺に気ぃ使わなくても大丈夫」

兄「ふてりでブラブラ砂浜でも歩こうや」

妹「うん♪」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:16:39.31 ID:3Sn00U2Y0
兄「よし、いい返事だ!」ワシャワシャ

妹「えへへ~♪」

兄「じゃ、行くまえに外出許可貰わなくちゃな」

妹「貰えるかなぁ?」

兄「おまえが良い子にしてたら、きっと貰えるさ」

妹「うん!あたし良い子にしてるよ♪」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:18:27.16 ID:3Sn00U2Y0
兄「じゃ、家帰ったら父さんや母さんにも言っとくから」

妹「お願いね!ついでに外泊許可も取れないかなぁ?」

兄「どうだろな、ついでに先生にそれも聞いといてやるよ」

妹「ありがと、兄ちゃん♪」

兄「うん」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:20:19.29 ID:3Sn00U2Y0
兄「そんじゃ、今日は帰るな」

妹「うん、明日が楽しみ♪」

兄「そうだな、取れるといいな」

妹「うん♪」

兄「それじゃ…」

妹「あっ、兄ちゃん。ちょっと待って!」

兄「ん?」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:22:52.68 ID:3Sn00U2Y0
妹「さよならのチュウ~~~」ンー

兄「……ったく、おまえは」

妹「おねが~~~い」ムー

兄「仕方ねーな……」

兄「ほら」

チュ♪

妹「今度はホッペ?」

兄「我儘いわない」

妹「は~~~い」ションボリ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:25:30.36 ID:3Sn00U2Y0
兄「じゃ、また明日な」

妹「うん、また明日♪」


こうして、俺は妹の入院している病院をあとにした。
これが、妹とまともに交わした最後の言葉になるとも知らずに。

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:28:17.66 ID:3Sn00U2Y0
翌日、早朝。

まだ俺が学校に行く準備をしている途中に、妹の主治医から
家の方に連絡があった。

容体が急変したらしい。


俺はおやじとお袋と一緒に車に飛び乗って、一目散に病院を目指した。

妹のベッドは空だった。

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:30:58.37 ID:3Sn00U2Y0
院内は慌ただしく、妹は集中治療室とかに運ばれたそうな。

どうやら脈も呼吸も弱いらしい。

「娘は、娘は助かるんですか!?」

俺の隣でおやじが叫ぶ。

「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁ…」

近くでお袋が泣き崩れる。

そして、俺は……。

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:32:50.19 ID:3Sn00U2Y0
俺は、ひとり、その場に立ち尽くしていた。

この惨状を受け入れられずに。


当り前だ。

俺は昨日約束したんだ。妹と。

いっしょに海に行こうって。

それが、どうして、こんな……。

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:35:41.71 ID:3Sn00U2Y0
妹の笑顔が思い出される。

……ちくしょう、チクショウ、畜生!!!

この世には神もいないのか!?

なんで俺の妹が、こんなに苦しまなくちゃいけないんだよ!?
なんで俺の妹が、こんなにつらい目にあわなくちゃいけないんだよ?

なんで、どうして、なぜ……?

頭の中はそんな事ばかりが渦巻いている。

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:37:03.96 ID:3Sn00U2Y0
そんな折に、ふと、一昨日の妹との会話が思い出される。


妹「ねえ、兄ちゃん」

兄「なんだよ?」

妹「もしも、明日せかいが滅びるんだとしたら、兄ちゃんはどうする?」

兄「う~~~~ん、急には思い浮かばねぇな」

妹「あたしは好きな人といっしょにいたいなぁ」


49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:38:44.82 ID:3Sn00U2Y0
「ありきたりだな」

「でもそこにロマンがあるじゃない」

「まあな」

「兄ちゃんは好きな人といっしょにいたくないの?」

「そりゃ居たいさ」

「だったら、兄ちゃんずっとあたしのソバを離れないでよね?」

「なんでだよ」

「そんなの、兄ちゃんが大好きだからに決まってるじゃん♪」

「よくもまあ、恥ずかしげもなく、そんな台詞がポンポン出てくるな」

「だって本当だもん♪」

「はいはい、分ぁったよ」

「もしも明日世界が滅びる事になっても、俺がそばにいてやるよ」

「約束ね!」

「ああ、約束だ」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:41:42.89 ID:3Sn00U2Y0
気付けば、涙が頬を伝っていた。

隣に目をやると、おやじはそこにはもういなかった。
お袋は泣き崩れたまま。

いったい、どのくらいの時間立ち尽くしていたのか……分からない。

ふらふらとした足取りで、治療室に向かう。



しかし、治療室のランプは、すでに光を失っていた。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:43:08.87 ID:3Sn00U2Y0
近くを通りかかったナースに訊ねる。

「あの……ここに運ばれた女の子は……」

ナースは暗い顔で俯いた。

それだけで、すべて分かった。

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:44:54.26 ID:3Sn00U2Y0
3ヶ月後。


妹の葬儀も終わり、俺は海に来ていた。

もう夏も終わって、少し寒くなってきたというのに。

海は、依然として青いままだ。

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/08(月) 12:52:21.19 ID:3Sn00U2Y0
「青いな」

ひとり、呟く。

となりを歩く妹の姿は無い。

「海は青い。そして大きい」

誰に言った訳でもないが、風が俺の台詞に反応するようにヒュルルルルと
音を立てて巻く。

少し冷たい。

いつか妹に手渡した貝殻に似たものを拾い、耳に当てる。

波の音が、よりいっそう強く聞こえた、そんな気がした。



どうそ、安らかに。

笑って、その場をあとにした。




妹「海は青いね」 兄「大きいな」   終わり