1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/15(木) 23:55:18.22 ID:OMx/MLq00
~夜 橘家にて~

美也「にしししっ。お風呂、気持ちよかったなぁ~ ……うん?」

橘父『……純一、あとで少しいいか』

純一『どうしたの?』

橘父『あぁ、ちょっと大事な話があってな』

純一『今じゃダメなの?』

橘父『……美也が寝てからにしてほしいんだ、いいか?』

純一『わ、わかったよ、父さん』

美也(私に隠れて内緒話? そんなことさせるもんですか、にししっ)

引用元: 美也「みゃーとにぃにが本当の兄妹じゃないって!」 純一「……」 




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/15(木) 23:56:21.95 ID:OMx/MLq00
美也「お風呂あがったよ~」ガチャッ

橘父「は、早かったな」

橘母「美也ちゃん、ちゃんと髪を乾かしなさい。またボサボサになっちゃうわよ」

美也「も~わかってるよぉ」

橘母「ほら、こっち来て」

美也「は~い」

純一「ぼ、僕もお風呂に入ってくるね」

橘母「純一が最後だから、お湯は抜いておいてね」

純一「わかった」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/15(木) 23:57:28.02 ID:OMx/MLq00
~橘家 浴室にて~

純一(父さんが話って珍しいな……)

純一(大事な話ってなんだろう? 成績のことかな? 進路のことかな?)

純一(まさか……あのことがバレたのか?!)

純一(いやいや、だとしたら学校で何か言われてるだろうし……)

純一(梅原から、何か連絡があるはずだ……)

純一(う~ん……)

美也『それじゃ、もう寝るね。おやすみなさ~い』

純一(美也、寝るのか……今日はずいぶん早いんだな……)

純一(それにしても、美也が寝てから……か)

純一(美也に聞かれたら、何かマズいことでもあるのか……)

純一(…………)

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/15(木) 23:59:18.73 ID:OMx/MLq00
~橘家 廊下にて~

美也(にっししし~ 私だけのけ者にするなんて、許さないもんね~)

美也(気づかれなように……そーっと……)

  …………

純一『えぇ!? 僕と美也の血が繋がってない?!』

美也(えっ!? どういうこと?)

橘父『こら、声が大きいぞ純一!』

純一『ご、ごめん』

美也(……な、なんの話)アセアセ

橘母『正確にいうとね……が私の姉の子供…………なの』

純一『そん……な話……なの?』

橘父『あぁ…………まで、美也には……だからな』

美也(よ、よく聞こえないよ……)

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:01:46.67 ID:CmIkCSiS0
純一『う、うん……までは……内緒………………』

橘父『あぁ……そういう…………頼むぞ』

純一『そんな…………話、…………ね』

美也「(も、もう少し……)あっ!?」ガタッ

美也(……静かになっちゃった)

橘父『……美也か?』

橘母『……美也ちゃん?』ガチャッ

橘母「あぁ、やっぱり」

橘父「どうしたんだ? いきなり物音がしたから、泥棒かと思ったぞ」

美也「え、え~と、トイレに行こうとしたんだけど、寝ぼけちゃって……」

純一「あはは、美也はおっちょこちょいだな」

美也(にぃに……どうしてそんなに困った顔してるの?)

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:03:00.34 ID:CmIkCSiS0
橘父「……ところで美也、私たちの話を……」

橘母「お父さん」

橘父「あ、あぁ……」

美也(お父さん、お母さん……どうしてそんなに困った顔してるの?)

美也「は、話って?」

純一「うん、僕の成績のことで……ちょっとね」

美也(にぃに! どうしてそんな嘘つくの!!)

橘父「……あぁ。実は近頃、純一の成績が芳しくなくてな」

美也「に、にししっ、にぃにはちゃんと勉強しないとダメだよ!」

純一「う、うるさいな」

橘父「うるさいとは何だ。美也の言うとおりだぞ」

純一「……ご、ごめん」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:03:56.83 ID:CmIkCSiS0
橘母「美也ちゃん、もう遅いから、おトイレに行って早く寝なさい」

美也「う、うん……」

橘父「どうした?」

美也「な、なんでもない…… おやすみなさい」

純一「おやすみ、美也」

橘父「おやすみ」

橘母「おやすみなさい、美也ちゃん」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:06:08.49 ID:CmIkCSiS0
~美也の部屋にて~

美也(さっきの話……どういうこと?)

美也(よく聞こえなかったところもあったけど……)

美也(にぃにが言ってたのは、ハッキリと……)

美也(……私とにぃにの血が繋がってない?)

美也(どういうこと……)

美也(お父さん! お母さん! にぃに!)

美也(……嘘、だよね)

美也(……わかんない、わかんないよ! 美也とにぃには兄妹じゃないの?)

美也(……盗み聞きなんてするんじゃなかった)

美也(……全部夢だったらいいのに)

美也(…………)

美也(明日になったら……全部……)

美也(……全部……夢……)

美也(にぃに…………)スゥスゥ

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:07:46.57 ID:CmIkCSiS0
~翌朝 橘家にて~

美也(ね、寝坊しちゃった! 早くにぃにを起こさないと!)

美也「にぃに、早く起きないと……あれ?」

美也(にぃにがいない……)

純一「……美也~ 起きたのか~?」

美也(下からだ……)

純一「おはよう、美也。お前が寝坊なんて珍しいじゃないか」

美也「お、おはよう。……にぃに、起きてたの?」

純一「それじゃあ、まるで僕が寝坊ばかりしてるみたいに聞こえるぞ」

美也「う、うん……ごめん」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:10:11.06 ID:CmIkCSiS0
純一「父さんと母さんは仕事に行っちゃったから、朝はトーストとハムエッグでいいよな?」

美也「もしかして、にぃにが作ったの、これ?」

純一「僕だってこれくらいは出来るさ。それより早く準備しないと、食べる時間がなくなっちゃうぞ」

美也「う、うん。ありがと……」

純一「ほら、待っててやるから」

美也(今日のにぃに……なんだか変)

美也(昨日の……あの話のせい?)

純一「どうしたんだ、美也? 気分でも悪いのか?」

美也「だ、大丈夫! わ、私、着替えてくるね!」

純一「うん、急げよ」

美也(やっぱり変だよ……今日のにぃに)

美也(確かに、にぃにはいつも優しいけど……)

美也(…………)

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:11:57.60 ID:CmIkCSiS0
~お昼休み 食堂にて~

中多「美也ちゃん?」

美也「…………」

中多「ど、どうかしたの、美也ちゃん?」

美也「……え? な、何?」

七咲「さっきから中多さんが呼んでるよ」

中多「美也ちゃん、具合でも悪いの?」

美也「だ、大丈夫、ほら! こんなに元気だから! にししし」

中多「そ、そう?」

七咲「美也ちゃん、何かイヤなことでもあった?」

美也「え? な、なにもないけど?」

七咲「ふ~ん、今日は一日上の空だったし、お昼もあまり手をつけてないし……」

美也「…………」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:14:29.14 ID:CmIkCSiS0
七咲「橘先輩……お兄さんとケンカでもした?」

美也「そ、そんなことないよ~ 今日だって、にぃにと一緒に学校に来たし……」

七咲「そっか」

中多「美也ちゃん、何か悩み事でもあるの?」

美也「な、悩みなんてないよ~ にししし」

中多「だ、だったらいいんだけど……」

美也「ね、ねえ、逢ちゃんにちょっと聞きたいんだけど……」

七咲「……?」

美也「も、もしもだよ? 逢ちゃんが郁夫君と本当の姉弟じゃなかったとしたらどうする?」

七咲「ん~ 本当の兄弟だから、考えたこともないかな」

中多「やっぱり、今日の美也ちゃんおかしいよ?」

美也「だ、だから、もしもの話!」

中多「…………」ビクッ

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:15:31.56 ID:CmIkCSiS0
七咲「もしも…… 仮にそうだったとしても、郁夫とは姉弟だと思う」

美也「どういうこと?」

七咲「うん。たとえ血がつながってなかったとしても、今までずっと姉弟だったんだもの」

美也「…………」

七咲「だから、今までそうだったみたいに、これからだって姉弟のままなんだと思う」

美也「そっか…そうだよね……」

中多「美也ちゃん……」

七咲「何があったかのか、私にはわからないけど……」

美也「うん……」

七咲「美也ちゃんと橘先輩も、同じじゃないのかな?」

美也「そうだよね……心配かけてゴメンね、紗江ちゃん、逢ちゃん」

中多「ううん、早く元気出してね」

七咲「何か困ったことがあったら、いつでも言ってね」

美也「……ありがとう」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:18:43.88 ID:CmIkCSiS0
~放課後 通学路にて~

美也(紗江ちゃんと逢ちゃんに心配掛けちゃった……)

美也(……元気出さなきゃ)

美也(また二人に心配掛けちゃう……)

美也(…………)

森島「み~やちゃん!」ギュッ

美也「きゃあ!?」

森島「あれ? どうしたの?」

美也「も、森島先輩?」

塚原「はるか、いきなり後から抱きついたら、美也ちゃんじゃなくても驚くよ」

森島「ふふっ、美也ちゃんの後姿がと~ってもキュートだったから、つい♪」

美也「塚原先輩も……」

塚原「今帰り?」

美也「は、はい。塚原先輩は部活じゃないんですか?」

塚原「うん。もう3月になったし、さすがにね。泳ぎたくなった時は顔を出させてもらってるけど」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:21:04.51 ID:CmIkCSiS0
森島「美也ちゃん……元気がないみたいだけど、何かあったの?」

美也「そ、そんなことないです!」

塚原「うん、橘君が言ってたとおりだね」

美也「にぃ……お、お兄ちゃんが?」

森島「今日のお昼に会った時にね。橘君が『美也の様子がおかしい』ってすっごく心配してたのよ」

美也「お兄ちゃんがそんなことを……」

森島「橘君が美也ちゃんのことをいじめたんなら、『めっ!』ってしなきゃ、って思ってたんだけど」

塚原「うん。二人の様子から、ケンカをしてる訳でもなさそうだし……余計な口出しだったかな」

美也「そ、そんなこと……ありがとうございます」

森島「こ~んなにキュートな美也ちゃんの元気がなかったら、誰だって心配するわよ」スリスリ

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:23:02.04 ID:CmIkCSiS0
塚原「えっと……美也ちゃんは、これから時間あるかな?」

美也「え、は、はい」

森島「あのね、これから、ひびきちゃんとお買い物に行くんだけど、よかったら一緒に行かない?」

塚原「はるかが、どうしても見たいお店があるっていうからね」

美也「で、でも……」

森島「ダッ君の新しいグッズが出たみたいなの♪ ね、美也ちゃんも一緒に見に行きましょ?」

塚原「美也ちゃんが来てくれると助かるんだけどな~ 私一人じゃ、はるかの相手をするのも大変なの」クスッ

森島「も~ ひびきちゃんたらヒドい!」プンプン

美也「そ、そういうことでしたら……」

森島「わお。ホントに? やったね♪」

塚原「ありがとう、美也ちゃん」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:24:33.28 ID:CmIkCSiS0
美也(森島先輩と塚原先輩……すごく優しい……)ポロポロ……

塚原「ど、どうしたの!?」

美也「……何でもないんです。何だか、とても嬉しくって……」

森島「ひびきちゃん、美也ちゃんを泣かせたら『めっ!』なんだから!」

塚原「わ、わたしのせいなの?」

美也「…………」フルフル

森島「美也ちゃん、女の子が涙を見せていいのは、好きな男の子の前だけよ?」ニコッ

美也「……に、にしし」

森島「うん、グーよ美也ちゃん♪」ナデナデ

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:27:50.89 ID:CmIkCSiS0
~夜 帰り道にて~

桜井「……美也ちゃん?」

美也「あ、りほちゃん!」

桜井「こんな時間に珍しいね~ 今帰り?」

美也「うん、森島先輩たちと買い物してたの」

桜井「へ~そうなんだ? 純一は一緒じゃないの?」

美也「にしし 今日はみゃーと先輩たちだけだよ」

桜井「そっか~ 純一が聞いたらきっと悔しがるね~」

美也「……たまにはいいもん」

桜井「どうして?」

美也「先輩たちと一緒にいるにぃには、鼻の下が伸びてるから、あんまり好きじゃないの……」

桜井「しょうがないよ~ 森島先輩たちはあんなにキレイなんだもん」

美也「キレイなだけじゃなくて優しいの……にぃにが鼻の下を伸ばすの、わかるんだけど……」

桜井「う~ん……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:31:24.63 ID:CmIkCSiS0
美也「りほちゃんみたいに可愛い幼なじみがいるのに……にぃにったら、どうしようもないんだから」

桜井「そ、そんなことないよ~///」

美也「ううん、最近だってりほちゃんのこと、ほったらかしだし」

桜井「でも、昔は三人でよく遊んでたよね~」

美也「うん、毎日三人で遊んでたもんね」

桜井「また三人で遊べたら楽しいだろうな~」

美也「……うん。りほちゃんはお買い物?」

桜井「そうなの。お醤油が足りなくなっちゃったから、買ってきてって頼まれちゃって」

美也「……ねえ、りほちゃん」

桜井「な~に、美也ちゃん?」

美也「りほちゃんは、にぃにのことどう思ってるの?」

桜井「ふえ? じゅ、純一は幼なじみだし……い、今でもいいお友達かなって///」

美也「そうじゃなくて……りほちゃんはにぃにのこと好き?」

桜井「え、えと……ぁ……///」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:34:21.98 ID:CmIkCSiS0
美也「……にぃにのこと、好き?」

桜井「……うん、好きだよ///」

美也「そっか……良かった」

桜井「……どうかしたの、美也ちゃん?」

美也「うん、なんでもないの……」

桜井「純一と……何かあったの、かな?」

美也「…………」

桜井「…………」

美也「りほちゃん」

桜井「なにかな?」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:35:57.62 ID:CmIkCSiS0
美也「……また三人で遊びたいね、昔みたいに」

桜井「……うん、遊べたらいいね」

美也「そうだ! 今度、三人で遊園地に行かない?」

桜井「三人で? で、でも、純一が……」

美也「にぃにには、みゃーが話をするから、ね?」

桜井「……美也ちゃんがそう言ってくれるなら……喜んでお願いするよ」

美也「うん、約束だからね!」

桜井「わかった、約束だよ」ニコッ

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:38:12.04 ID:CmIkCSiS0
~夜 橘家にて~

美也「ただいま~」

純一「おかえり、美也。ずいぶん遅かったな」

美也「にしししっ 森島先輩と塚原先輩と三人で買い物してたの♪」

純一「も、森島先輩たちと……何てうやらましい」

美也「ダッ君の新しいグッズが出たから、森島先輩と一緒に買ったんだ~♪」

純一「も、森島先輩とお揃い……ずるいぞ、美也!」

美也「はい、にぃにには、これ!」

純一「こ、これは……」

美也「にしし、まんま肉まんだよ♪」

純一「ま、まんま肉まんかぁ……」

美也「いらないなら、みゃーが食べちゃうよ」

純一「い、いらないなんて言ってないだろ……ありがたくもらうよ」

美也「そうそう、素直なのが一番だよ、にししし」

純一「…………」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:40:38.40 ID:CmIkCSiS0
美也「どうしたの、にぃに?」

純一「うん、美也が元気になったみたいで良かったな、って」

美也「にぃに……みゃーのこと、心配してくれてたんだよね、ありがと」

純一「……バカ、妹のこと心配しない兄がどこにいるんだ」

美也「にぃに……」

純一「どうした、美也?」

美也「お願いがあるんだけど……聞いてくれる?」

純一「お願い? なんだよ」

美也「今度のお休みなんだけど……」

純一「うん」

美也「遊園地に連れてってほしいの」

純一「遊園地に? どうしたんだ急に?」

美也「どうもこうもなくて……にぃにと遊園地に行きたいの!」

純一「う~ん」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:42:37.83 ID:CmIkCSiS0
美也「……だめ?」

純一「……いいよ、今度の日曜だな」

美也「やった! にぃに、だーい好き!」

純一「こ、こら、現金なやつだな」

美也「それでさ……りほちゃんも一緒なんだけど、いいかな?」

純一「り、梨穂子も?」

美也「昔みたいに、三人で遊びたいの……だめ?」

純一「で、でも梨穂子が何て言うか……」

美也「りほちゃんには、みゃーから話をするから!」

純一「わ、わかったよ。美也がそこまで言うなら」

美也「にしししっ。約束だからね、にぃに」

純一「わかった、約束する」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:45:20.52 ID:CmIkCSiS0
~土曜日夜 美也の部屋にて~

美也(にぃにと、りほちゃんと三人で遊園地かぁ)

美也(なんだか昔に戻ったみたい……)

美也(血が繋がってるとか本当の兄妹とか……)

美也(そんなこと……)

美也(紗江ちゃん、逢ちゃん……)

美也(森島先輩、塚原先輩……)

美也(りほちゃん、にぃに……)

美也(……ありがとう)

美也(…………)

美也(早く日曜日にならないかな……)

美也(すごく……楽しみ……)

美也(約束……だからね……)

美也(…………)スゥスゥ

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:46:58.01 ID:CmIkCSiS0
~日曜日 橘家にて~

美也「ほら、にぃに早く早く!」

純一「そ、そんなに急かすなよ」

美也「だって、遅くなっちゃうよ!」

純一「まだ、約束の時間まで、かなりあるじゃないか」

美也「りほちゃん、絶対に早く来てるはずだから。だから、は~や~く!」

純一「こ、こら、引っ張るな、美也!」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:49:27.35 ID:CmIkCSiS0
~待ち合わせ30分前 駅前にて~

桜井(は、早く来過ぎちゃったかな……)

桜井(でも、遅刻するよりはいいよね?)

桜井(…………)

桜井(服……変じゃないよね?)キョロキョロ

桜井(……うん、大丈夫、かな)

桜井(純一と美也ちゃんと三人で遊ぶなんて、久しぶりだよ~)

桜井(ど、どうしよう……緊張してきちゃった~)

美也「……ほら。やっぱり、りほちゃん来てるよ」

純一「ほ、ほんとだ……」

桜井(あ……)

桜井「純一、美也ちゃん、はお~♪」

美也「はお~♪」

純一「それ、もう流行ってないんだろ?」

桜井「いいじゃない、別に~」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:52:22.66 ID:CmIkCSiS0
美也「りほちゃん、今日の服すっごく可愛いね~」

桜井「えへへ。そ、そうかな?///」

美也「うん、その帽子もすっごく可愛くて似合ってる!」

桜井「あ、これはお母さんが似合うからって。美也ちゃんも今日の服、すごく可愛いよ」

美也「にしし、ありがと///」

純一(何だか……話に入っていけない……)

純一(確かに今日の梨穂子は……ちょっと見違えた感じがする、かな?)

純一(美也も今日は……朝から頑張ってたみたいだし)

美也「にぃにも黙ってないで、りほちゃんに何か言ってあげたら!」

純一「え?」

桜井「ふえ?」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:54:24.47 ID:CmIkCSiS0
美也「ほら、早く!」

純一「え、えーと、なんだ……」

桜井「う、うん///」

純一「その……うん、似合ってるんじゃないか///」

桜井「あ、ありがと///」

美也「にししし。良かったね、りほちゃん♪」

桜井「う、うん///」

純一「ほ、ほら、そろそろ行くぞ」

桜井「そ、そうだね///」

美也「は~い♪」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:57:45.73 ID:CmIkCSiS0
~キビトランド園内~

桜井「遊園地に来るのなんて、久しぶりだよね~」

純一「そうだな、たまにはいいかもな」

美也「ねぇねぇ、最初は何に乗ろっか?」

純一「11時からきびにゃんショーがあるみたいだけど、見るんだろ?」

美也「もっちろん!」

桜井「それなら、最初はあまり並ばない乗り物の方がいいかな?」

純一「そうだな、じゃあこれなんか……」

美也「あれがいいよ! 行こっ!」

純一「こ、こら! 引っ張るな」

桜井「み、美也ちゃん、転んじゃうよ」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 00:59:31.42 ID:CmIkCSiS0
美也「いいから、早く~」

純一(何だか昔に戻ったみたいだな……)

桜井(美也ちゃん……ありがとう)

美也「ほら! にぃにとりほちゃんも手をつないで!」

純一&桜井「……え!?」

美也「ほら、早く!」

純一「え、えと……ほ、ほら///(さ、流石にこれは……あり、なのか?)」ギュッ

桜井「ん、んと……う、うん///(ちょ、ちょっと積極的過ぎ、だよね?)」ギュッ

美也「にししし!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:01:11.17 ID:CmIkCSiS0
~お昼 園内食堂にて~

桜井「あの爆発が起きた時は、もうダメかと思ったよ~」

純一(僕にもダメに見えたぞ。ぬいぐるみに火がついてたし)

美也「ほんと、ほんと! きびにゃんがガケの上から出てきた時はびっくりしちゃったもん」

純一(いや……あれは別のきびにゃんだろ……火がついてるきびにゃんは池に飛び込んでたから)

桜井&美也「ほんと、面白かったよね~」

純一(色んな意味で面白かったのは確かだな)

桜井「このあとはどうしようか?」

美也「う~ん、観覧車は……ダメだよね」

純一「うん、乗るなら二人で行ってくればいいよ、僕は下で待ってるから」

桜井&美也「そっかぁ……う~~~ん」

純一(二人とも、まるで小さな子供だな……)

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:03:17.76 ID:CmIkCSiS0
純一「ほら、二人ともついてる」スッ

桜井&美也「えっ?」

純一「ほっぺたに食べかす。ほら?」

美也「に、にぃに!///」

桜井「は、恥ずかしいよ~///」

純一「あはは、恥ずかしいのは二人の方だろ。まるで、子供みたいだよ」

美也「むぅ~~~」

純一「それで、どうするか決めたのか?」

桜井「やっぱり、三人で遊べるのがいいよね~」

美也「うんうん」

純一「う~ん……じゃぁ、これなんてどうだ?」

桜井「あ、あはは。これは……どうなのかな?」チラッ

美也「だ、大丈夫……だと思う」チラッ

純一「じゃあ、これに決まりだな」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:05:31.63 ID:CmIkCSiS0
~ホラーハウスにて~

桜井「ね、ねえ、思ってたより怖そうじゃない?」

美也「う、うん……」

純一「そうかな? 三人で入るんだから平気だよ」

桜井「あはは、平気……だよね?」

美也「い、いざとなったら、にぃにが助けてくれるよ!」

純一「う~ん、どうだろう?」

桜井「じゅ、純一?」

美也「に、にぃに?」

純一「あはは、僕で良かったから助けてやるから」

桜井&美也「……ほっ」

純一「それじゃあ、入ろうか?」

桜井&美也「う、うん……」

  …………

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:08:50.31 ID:CmIkCSiS0
美也「く、暗いね……」

桜井「そ、そうだね……」

純一「暗くないと雰囲気が出ないだろ」

美也「そ、そうだけど……」

桜井「きゃっ!?」

美也「り、りほちゃん?」

桜井「きゅ、急に床が……」

純一「何だこれ……床が柔らかくなってる」

美也「大丈夫、りほちゃん?」

桜井「へ、平気だけど……歩きにくいね」

美也「う、うん……」

純一「二人とも大丈夫か?」

桜井&美也「う、うん」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:11:01.57 ID:CmIkCSiS0
純一「じゃあ、先に進もうか」

桜井「ま、待ってよ、純一」ギュッ

美也「お、置いてかないで、にぃに」ギュッ

純一(はぁ……仕方がないか)

  …………

美也「あ……向こうの方、なんだか明るくなってる」

桜井「ほんとだ~ もう終わりかな?」

純一「いや、まだ真ん中ぐらいじゃないかな? かなり大きな建物だったから」

桜井「そっかあ……」

美也「なんだろう、これ?」

純一「いかにも怪しい台の上に、怪しい水晶玉が置いてあるな」

桜井「何か書いてあるよ? えっと『宝を求める者。我に手をかざせ』だって」

美也「お宝は欲しいけど……やっぱり罠だよね?」

純一「うん、どこからどう見ても罠だろうな」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:13:38.12 ID:CmIkCSiS0
桜井「どうしよう?」

純一「せっかくだし、三人一緒に手をかざさないか?」

美也「……わ、わかった」

桜井「ふ、二人がそういうなら……」

純一「それじゃあ」スッ

桜井&美也「う、うん」スッ

  ゴゴゴゴゴッ!

純一「な、何だ!?」

桜井「な、何の音?」

美也「わ、わかんないよ……」

  ゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!

純一「だんだん、音が大きくなってきてる……」

??『我が財宝を盗みに来たのはお前か~~』

美也「きゃあ!?」

桜井「な、えっ?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:15:57.22 ID:CmIkCSiS0
??『我が財宝を盗みに来たのはお前か~~』

  ウオオオ~~~~~ン!

桜井「み、ミイラ!?」

美也「に、にぃに!」

キング『我が財宝を盗みに来た愚か者よ! 千年王国の呪いをその身で受けるがいい!』

   ウオオオ~~~~~ン! ボゥーン!

純一「うわっ!? な、何だこの煙!?」

美也「ごほっ、ごほっ、に、にぃに! りほちゃん!」

桜井「ごほっ、じゅ、純一? 美也ちゃん? ……ごほっ、大丈夫?」

純一「ぼ、僕は大丈夫……」

桜井「わ、私も……け、煙が晴れてきたみたい……」

美也「すごい煙だったね……」

純一「……あ、あれ?」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:18:40.06 ID:CmIkCSiS0
美也「どうしたの、にぃに?」

純一「い、いや……美也、だよな?」

美也「何言ってるの! みゃーはみゃーだよ!」

桜井「あれ……?」

純一「こ、こっちは……梨穂子か?」

桜井「う、うん……ふ、ふぇ? ……美也ちゃん?」

美也「う、うん……あれ? えっと……りほちゃん?」

純一「ふ、二人が小さな子供になってる?!」

桜井&美也「えええぇぇぇぇぇえええ!!」

美也「こ、これ……どういうこと?」

桜井「わ、わかんないよ~」

美也「どうして、にぃには何も変わってないの?」

純一「それはこっちが聞きたいよ。どうして二人は子供になってるんだ?」

桜井&美也「……わかんない」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:19:57.12 ID:CmIkCSiS0
??『宝を求めし愚か者よ。呪いを解きたければ先に進むがよい』

純一「……アトラクションの仕掛けなのか?」

美也「こんなアトラクション、聞いたことないよ!」

桜井「どうしよう……」

純一「あ、アトラクションなら、とにかく先に進むしかないんじゃないか?」

桜井「そ、そうだよね」

美也「……うん」

  …………

 

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:23:20.72 ID:CmIkCSiS0
純一「今度はガレキで足場が悪くなってきたな……」

美也「きゃっ!?」ドテ

桜井「み、美也ちゃん?」

純一「大丈夫か、美也?」

美也「いたたたたっ……大丈夫だけど、歩きにくくて……」

純一「ほら。美也、手をかせ」

美也「ありがと、にぃに」ギュッ

純一「梨穂子も。歩きにくいだろ?」

桜井「あ、ありがとう、純一///」ギュッ

純一「転ぶと危ないから、ゆっくり先に進もう」

桜井&美也「う、うん」

純一「……どうしたんだ、梨穂子?」

桜井「こうして純一に手を引かれていると、小さい頃のこと思い出すな~」

美也「うん……遊びに行く時も帰る時も……こうしてにぃにが手を引いてくれたよね……」

純一「ああ……そんなこともあったかな……」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:26:48.83 ID:CmIkCSiS0
美也「もっと遊びたい時でも、帰る時間になったら、みゃーたちの手を引いて……」

桜井「あの頃の純一は、時間にうるさかったもんね~」クスッ

純一「それじゃあ、今の僕が時間にルーズみたいじゃないか」

桜井「えへへ、そんなこと言ってないよ」

美也「に、にぃに……」

純一「うん? どうした美也」

美也「も、もしもだよ? みゃーたちが元に戻れなくても……」

純一「うん……」

美也「にぃには、みゃーたちと一緒にいてくれる?」

桜井「み、美也ちゃん……」

美也「これからも……みゃーが困ったら、こうして手を引いてくれる?」

純一「……それは無理だよ」

美也「……え?」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:30:50.97 ID:CmIkCSiS0
純一「美也には美也の、梨穂子には梨穂子の、僕には僕の人生があるんだから……」

美也「で、でも……」

純一「それに……まだ先の話かもしれないけど……」

美也「……?」

純一「大学生になったら、家を出ようかって考えてるんだ」

美也「う、うそ……」

純一「まだ、大学に受かった訳じゃないから、わから……」

美也「そ、そんな話聞いてない!」

桜井「……美也ちゃん?」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:31:51.30 ID:CmIkCSiS0
美也「にぃにと離れ離れなんてイヤ! みゃーはにぃにとずっと一緒がいいの!」

純一「……美也」

美也「そんなこと言うにぃになんて、だいっ嫌い!」ダッ

純一「み、美也! どこに行くんだ!」

桜井「み、美也ちゃん」

純一「一体どうしたっていうんだ……」

桜井「は、早く美也ちゃんを追いかけないと!?」

純一「そ、そうだな。行こう!」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:33:47.98 ID:CmIkCSiS0
~ホラーハウス 出口にて~

純一「で、出口か? 美也は……い、いない」

桜井「……あっ!? も、元に戻ってるよ~」

純一「ほ、本当だ。ってことは美也も」

桜井「うん、きっと元に戻ってるはずだよ~ で、でも……」

純一「……ほっとけばいいよ。あいつが一人で勝手に怒り出して、どこかに行ったんだから」

桜井「純一!」

純一「な、なんだよ……」

桜井「本気でそんなこと言ってないよね?」

純一「……っ!?」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:36:09.78 ID:CmIkCSiS0
桜井「ねえ……私の知ってる純一は、そんなこと言わないはずだよ?」

純一「…………」

桜井「もし、もし、本気で言ってるなら……」

純一「……すまない。僕が悪かった」

桜井「うんっ」ニコッ

純一「それにしても美也のやつ……一体どこに行ったんだ」

桜井「手分けして探した方がいいかな?」

純一「そうだな……いや。中を探す前に、出口で係員に美也を見かけていないか確認しよう」

桜井「そ、そうだね」

純一「よし、行くぞ!」

桜井「うん!」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:38:40.59 ID:CmIkCSiS0
~キビトランド 出入り口ゲートにて~

純一「そ、そうですか、ありがとうございます!」

桜井「ど、どうだった?」

純一「うん、美也らしい女の子が、凄い勢いで走って出て行くのを見たって」

桜井「ど、どうしよう……」

純一「うん、多分だけど……そんなに遠くには行ってないと思う」

桜井「どうして、そんなことがわかるの?」

純一「美也が……僕の妹だから」

桜井「純一……」

純一「梨穂子。悪いけど、もう少しつきあってくれないか?」

桜井「もちろんだよ! 行こう、純一」

純一「ありがとう、梨穂子」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:40:52.91 ID:CmIkCSiS0
~夕方 繁華街にて~

伊藤「どうしたの、梅原君?」

梅原「いや……今の美也ちゃんか?」

伊藤「……美也ちゃん? もしかして、橘君の妹さんの?」

梅原「ああ、その美也ちゃんだな」

伊藤「その……梅原君は、橘君の妹さんとも仲がいいの?」

梅原「まぁ、大将とは昔からのつき合いだからな」

伊藤「うん」

梅原「だから、『梅ちゃん』って呼ばれてるぐらいには、仲がいいと思うぜ?」

伊藤「『梅ちゃん』かぁ……なんていうか、梅原君は交友関係が広いよね」

梅原「もしかして、妬いてる?」ニヤッ

伊藤「ば、バカ言わないでよ///」

梅原「それにしても……凄い勢いで走って行ったけど、何かあったのかな?」

伊藤「うん、ちょっと普通じゃない感じ……だったよね?」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:43:18.60 ID:CmIkCSiS0
梅原「そうだな……って今度は大将と桜井さんか?」

伊藤「さ、桜井!?」

純一「くそ……美也のやつ、どこに行ったんだ……」ハァハァ

桜井「ご、ごめんね。私の足が遅いから……」ハァハァ

梅原「おーい大将!」

純一「う、梅原? それに……伊藤さん??」

桜井「あ、あれ? ……香苗ちゃん?」

梅原「よぉ、どうしたんだ? 二人して血相変えて」

伊藤「さ、桜井……どうかしたの?」

桜井「えへへ、ちょっとね」

純一「み、美也を、美也を見なかったか?」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:44:55.57 ID:CmIkCSiS0
梅原「ああ、美也ちゃんなら、あっちの方に走って行くのを見たぜ」

純一「そうか……梨穂子、行けるか?」

桜井「うん!」

梅原「なあ、大将」

純一「うん?」

梅原「……大丈夫か?」

純一「ああ、さっきので十分だ」

梅原「……そっか。頑張れよ」

純一「……あとでちゃんと聞かせろよ? 行くぞ、梨穂子!」ダッ

桜井「香苗ちゃん、またね」ダッ

  …………

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:48:50.81 ID:CmIkCSiS0
伊藤「あっ、行っちゃった…… ねえ、良かったの?」

梅原「ああ。大将が『十分』って言うんだから、大丈夫なんだよ」

伊藤「そうなの?」

梅原「本当に助けが必要なら、ちゃんと言うだろうからさ、大将は」ニカッ

伊藤「へえ、男の友情ってやつ?」

梅原「まあ、そんなもんかな」

伊藤「こっちの方が妬けるなぁ……私じゃちょっと太刀打ち出来そうにないもん」

梅原「『先輩のことなんて、私が忘れさせてあげる!』んじゃなかったっけ?」

伊藤「ばーか/// ……橘君は特別なんでしょ?」

梅原「まあ、親友で心友かな大将は」

伊藤「そっか……やっぱり妬けちゃうなぁ……」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:51:27.17 ID:CmIkCSiS0
~夕方 公園にて~

美也「にぃにのばーか……」

美也「……おたんこなす」

美也「……嘘つき」

美也「…………」

美也(せっかく、三人で楽しかったのに……)

美也(りほちゃんに、悪いことしちゃったよ……)

美也(ちゃんと謝らないと……ダメだよね……)

美也(……二人とも、今頃どうしてるかな?)

美也(…………)

純一「……やっぱり、ここだったか」ハァハァ

美也「えっ!?」

桜井「美也ちゃん!」ハァハア

美也「り、りほちゃん……にぃに……どうして」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:54:02.78 ID:CmIkCSiS0
純一「小さい頃、三人でよく遊んだ公園だからな。ここじゃないかって思ったんだ」

桜井「無事で良かった……すっごく心配したんだよ」

美也「りほちゃん……」

純一「美也、まずは梨穂子に謝るんだ」

桜井「じゅ、純一!? わ、私はいいから」

純一「良くない。僕は美也の兄だからいいけど、梨穂子に心配を掛けたことは謝らなきゃダメだ」

美也「…………」

純一「梨穂子は美也のことを心配して、僕と一緒に美也のことを一生懸命に探してくれたんだ」

桜井「み、美也ちゃんは、私にとっても妹みたいなものだから……」

純一「なぁ、美也がそんなに怒っているのには、理由があるんだろうけど……」

美也「…………」

純一「だけど、梨穂子に心配を掛けたことはちゃんと謝るべきじゃないか? それはわかるよな?」

美也「……うん」

桜井「美也ちゃん……」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:56:33.67 ID:CmIkCSiS0
美也「…………りほちゃん、ごめんなさい」

桜井「……うん、いいの」

純一「美也……どうしてこんなことをしたのか、理由を聞かせてくれないか?」

美也「…………」

純一「……最近、元気がなかったことと、何か関係あるのか?」

美也「そ、それは……」

純一「僕には言えないことなのか?」

美也「に、にぃにだって……」

純一「……えっ!?」

美也「……にぃにだって、みゃーに隠しごとしてるじゃない!」

純一「ぼ、僕が? 美也に? そんなものあるはずないだろ!」

美也「にぃにの嘘つき!」

桜井「ふ、二人とも落ち着いて!」

美也「ふーーっ!」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 01:58:41.25 ID:CmIkCSiS0
純一「……どうして僕が嘘をついてるって思うんだ?」

美也「みゃーは知ってるんだよ! ちゃんと聞いてたんだもん!」

純一「……ま、まさか、お前」

美也「にぃにたちが『血が繋がってない』って言ってたの、聞いてたんだから!!」

桜井「え? あ……ど、どういうことなの、純一?」

純一「やっぱり……」

美也「みゃーとにぃにが本当の兄妹じゃないって!」

純一「……聞いてたのか」

美也「そうだよ! みゃーだけのけ者にして……」ポロポロ

桜井「み、美也ちゃん、泣かないで……」

純一「美也……あれは違うんだ」

美也「何が違うの? にぃにが本当の兄妹じゃないって……だから、怖くて……うぇ……」

純一「…………」

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:01:04.96 ID:CmIkCSiS0
美也「すっごく怖くて……どうしたらいいか……ぐすっ……わからなくて……」

純一「ごめんな……美也に辛い思いをさせて……」

美也「いやぁ……ぐすっ……もぅ……いやなのぉ……」

桜井「あのね、私には何の話かよくわからないんだけど……」

純一「あ、あぁ」

美也「うっ……ぐすっ……」

桜井「『違う』って言うなら、ちゃんと説明してあげないと、美也ちゃんもわからないと思うな」

純一「そうだな……聞いてくれるか、美也?」

美也「ぐすっ……うぅっ……」

純一「あの話は本当に違うんだ。僕と美也の『血が繋がってない』なんてことはありえない」

美也「じゃ、じゃあ、どうしてあの時……」

純一「美也……お前、去年のこと憶えてるか?」

美也「……きょ、去年?」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:03:11.03 ID:CmIkCSiS0
純一「ああ、父さんと母さんがお前のことを騙そうとして、すぐにバレたことがあっただろ?」

美也「……もしかして、エイプリルフールの時?」

純一「美也に言うのもなんだけど、父さんと母さんは相当悔しかったらしくてさ」

純一「『今年は絶対に美也を騙してやるんだ!』って馬鹿みたいに張り切って……」

美也「で、でも、まだ3月になったばっかりだよ?」

純一「だから、成功させるために準備をするから、僕にも『協力しろ』って……」

  …………

純一『えぇ!? 僕と美也の血が繋がってない?!』

橘母『正確にいうとね、純一が私の姉の子供って設定なの』

純一『そんバカな話、本気なの?』

橘父『あぁエイプリルフールまで、美也には内緒だからな』

純一『う、うん。それまでは、美也に内緒……』

橘父『あぁ……そういうことだから頼むぞ』

純一『そんなふざけた話、よく思いつくね』

  …………

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:05:46.25 ID:CmIkCSiS0
純一「美也が聞いたのは、その話なんだ」

美也「じゃあ、私とにぃにが『血が繋がってない』って……」

純一「父さんと母さんの悪ふざけ……じゃ、済まないよな」

美也「バカ!」ドン

純一「うっ!?」

美也「お父さんのバカ! お母さんのバカ! にぃにのバカ!」ドンドンドン

純一「うぐっ……悪かった、美也が気の済むまで叩いてくれていい」

美也「バカ! バカ! バカ! バカ……うぅっ……」

純一「…………」

美也「じゃ、じゃあ、みゃーとにぃには本当に?」

純一「あぁ、正真正銘血の繋がりのある兄妹だよ」

桜井「……良かったね、美也ちゃん」

純一「変なことに巻き込んで、悪かったな、梨穂子」

桜井「ううん、いいの。でも、純一のお父さんとお母さん、ちょっと酷いんじゃないかな?」

美也「そうだよ! ヒドいよ!」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:08:57.32 ID:CmIkCSiS0
純一「……流石に僕もどうかな?って思う。それでどうするんだ、美也?」

美也「え? どうするって?」

純一「父さんと母さんに仕返しでもするのか?」

美也「ん…… 確かに許せないと思うけど」

純一「うん」

美也「……仕返しなんて意味ないもん」

桜井「うん……そう、だよね」

美也「でも! ちゃんとみゃーに謝ってほしい!」

純一「そうだな……じゃぁ、まずは僕から……ごめんな、美也」

美也「に、にぃにが謝ることなんてないよ!」

純一「いや、美也に辛い思いをさせてたことには、変わりはないからさ。ごめん」

美也「……だめ、許してあげない」

桜井「美也ちゃん……」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:10:47.16 ID:CmIkCSiS0
美也「みゃーとりほちゃんに、まんま肉まんご馳走してくれなきゃ、許してあげないもん」

純一「美也はわかるけど、どうして梨穂子まで」

美也「さっき自分で言ったでしょ。りほちゃんにも迷惑掛けたって!」

純一「た、確かに…… くっ、仕方がない。みんなで今からまんま肉まんだ!」

桜井「もう、純一ったら」クスクス

美也「やった♪ まんま肉まん祭りだぁ~♪」

純一「……ほら、二人とも行くぞ」

美也「待って。こうしてみゃーが真ん中で……こっちがにぃに、こっちがりほちゃん」

桜井「えっと、これでいいかな?」ギュッ

美也「ほら、にぃにも早く!」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:12:24.95 ID:CmIkCSiS0
純一「うう……遊園地でもないのに、三人で手を繋いで歩くなんて……さらし者だ」

美也「にぃに!」

純一「わかったよ……これでいいんだろ?」ギュッ

美也「にししし まんま肉まん、おなかいっぱい食べちゃうもんね~♪」

桜井「わあ、好きなだけ食べていいの?」

純一「こ、こら! 僕の懐も少しは考えろ」

美也「だって、お祭りだも~ん。ね、りほちゃん?」

桜井「うん、お祭りだもんね、美也ちゃん」

純一「僕は不幸だ……」

美也「にしししっ♪」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:13:59.02 ID:CmIkCSiS0
~それから数ヶ月後~

純一(あれから、美也と梨穂子にお店の在庫と財布の軍資金が尽きかけるほど……)

純一(大量のまんま肉まんを買わされてしまった)

純一(痛い出費だったけど、梨穂子に迷惑を掛けたのは確かだし……)

純一(何より、美也の機嫌を直すことが出来たから『良し』としておいた)

純一(それよりも、家に帰ってからの方が大変で……)

純一(『本当の兄妹じゃない』だ『家を出て行く』だのと、美也が大騒ぎをして……)

純一(父さんと母さんが平謝りに謝り倒して、ようやく美也の機嫌が戻った)

純一(まあ、騒ぐように美也に吹き込んだのは、僕なんだけど……)

純一(二人のせいで、しばらくは極貧生活を送る羽目になったんだから、これぐらいは当然だと思う)

純一(でも、本当のところ……)

純一(……いや、関係ないよな)

純一(…………)

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:15:52.80 ID:CmIkCSiS0
純一(そうそう、梅原と伊藤さんのことだけど……)

純一(あの事件の少し前から、二人はつき合い始めていたらしい)

純一(卒業間近だった憧れの剣道部の先輩に対して、未練たっぷりの梅原に……)

純一(『先輩のことなんて、私が忘れさせてあげる!』『だから、私とつき合ってよ!』と……)

純一(伊藤さんが、強引に梅原のことを押し切ったそうだ)

純一(そのことで伊藤さんは……)

純一(ことあるごとに、梅原のやつにからかわれているみたいで……)

純一(『あんな告白、するんじゃなかった……』って……)

純一(梨穂子にグチをこぼす伊藤さんを、見かけることが増えたと思う)

純一(ただ、僕と梨穂子から言わせれば、どう見てもあれは伊藤さんの『ノロケ』なんだけどね)

純一(…………)

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:17:26.18 ID:CmIkCSiS0
純一(そういえば、今回の事件のお陰って訳じゃないんだろうけど……)

純一(あれから梨穂子とは、昔のように遊ぶ機会が増えたと思う)

純一(もちろん二人っきりという訳ではなく、美也と梅原や伊藤さんも一緒のことが多いけど……)

純一(今も……)



美也「にぃに、早くしないと置いてっちゃうよ!」

梅原「なんだ大将、もうお疲れかあ?」

伊藤「ほら、橘君。早く早く!」

桜井「純一、大丈夫?」

純一「うん、僕がしばらく荷物を見てるから、みんなで遊んできなよ」



純一(……こうして、高校生活最後の夏休みを、みんなで満喫している)

純一(どこで調べてきたのか、梅原オススメの穴場スポットらしく……)

純一(海もキレイな上に人も少なく……)

純一(おまけに、今日泊まる宿には温泉までついてるらしい)

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:18:28.68 ID:CmIkCSiS0
純一(もちろん、大学入試を控えているから、たった一泊の旅行だけど……)

純一(『高校最後の夏だから』と、皆の家も快く僕たちを送り出してくれた)

純一(家の場合は、美也が一緒に行くっていうのが、決め手だったんだけど……)

純一(…………)

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/16(金) 02:37:51.33 ID:wxspTSMK0
純一(それにしても、女の子たちの水着姿はいいなぁ……)

純一(揺れる胸、弾けそうなお尻、眩しいフトモモ……時間を忘れてしまいそうになる)

純一「(この時間が永遠なら……)……うげっ?!」バフッ!!

純一「……な、なんだ? ビーチボール?!」

美也「にぃに。……また鼻の下が伸ばしちゃって。●●●なこと考えたんでしょ?」

伊藤「橘君……いったい何しに来たの?」

梅原「いつまでもボーッとしてないで、大将も一緒にビーチバレーやろうぜ?」

桜井「ほら~純一もおいでよ」

純一「くそっ、よくもやってくれたな……いくぞ!」

美也「にしし、にぃになんかに負けないよ~♪」



おわり

『ドキドキ♪ イチャイチャ♪ 夜の湯けむり温泉宿編』に……続かない