絵里「あ、そういえば真姫。話したいことがあるとか言ってたわよね」

真姫「うっ」

花陽「?」

絵里(何だろう今の反応)

真姫「……まあ、花陽はあの場にいたからいいか」

花陽「どうしたの?」

真姫「ひとまずシャワー浴びるわよ。浴室のドア越しでもしゃべれるし」

絵里「え? 何でわかったの?」

真姫「穂乃果と凛の声、聞こえてたでしょ?」

絵里「なるほど」

引用元: 絵里「つよくてにゅーげーむ」 part2 


19: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/10(日) 23:41:58.54 ID:jklQ1TNP0
花陽「今度は絵里ちゃん、服濡らさないようにね」

絵里「わかってるわ!」

真姫「本当かしら」

絵里「ほ、本当だってば!」

真姫「危なっかしいのよ、絵里は」

絵里「そんなことないわよぉ。ねぇ花陽」

花陽「う、うーん……」

絵里(激しく傷ついた)

20: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/10(日) 23:57:12.88 ID:jklQ1TNP0
真姫「そんな調子でパリなんて行けるの?」

絵里「……もしかして真姫、私がいなくなるの寂しい?」

真姫「……まあね」

花陽「あ、真姫ちゃん素直になった」

真姫「いいでしょたまにはこのくらい」

絵里「いつも素直になればいいのに」

真姫「できるならやってるわよ」

絵里(あれ? その発言自体が素直な気が……)

真姫「わかってると思うけど、私の言いたいことは1つよ」

絵里(何だろう)

21: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 00:00:44.68 ID:WOrqcljr0
真姫「合宿の時はありがとう。それにμ'sを引っ張ってくれてありがとう」

絵里「!」

花陽「これからもよろしくね、絵里ちゃんっ」

絵里「……」

絵里(全然……意識してなかった)

絵里「2人とも……ずるいわよぉ……」

真姫「で、このシャワーどうやって使うの?」

絵里「見えない……」

真姫「泣かないでよ。別に泣かせようと思って言ったわけじゃないわ」

絵里「だって、急に言うんだもん……心の準備っていうのが……全然」

絵里(あー、私、絶対涙もろくなってる)

22: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 00:09:48.38 ID:WOrqcljr0
真姫「ほら、これどうするの?」

絵里(あー、ダメね。このままじゃ)

絵里(もっとしゃきっとしないと!)

絵里「ここをこうやるの」

花陽「絵里ちゃん、鼻水出てる。はい、ティッシュ」

絵里「……ごめんなさい」

真姫「絵里らしいわね」

絵里「うれしくない」

花陽「あ、それで次はどうするの?」

絵里「えーっとえ、ここを回して温度を……」

真姫「あ、絵里!」

花陽「そこに頭置いてたら――――――――」



絵里「同じ手にはかからないわ!」



真姫「!」

花陽「み、水が流れてこない!」

23: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 00:12:22.93 ID:WOrqcljr0
真姫「どうして……? 絵里は確かに水を……」

花陽「真姫ちゃん! 見て!」

真姫「あ、あれは!」

絵里「その通りよっ!」

真姫「……水が蛇口から流れてる」



絵里「ふふふ……こんなこともあろうかと、水栓を蛇口の方へ回していたのよ!」



絵里(ちゃんと学習したんだから)

絵里「あ、ちなみに戻すときはこっちを」

花陽「あっ」

絵里「わ、しまっ――――――――」

24: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 00:17:24.19 ID:WOrqcljr0




絵里「……ことり」

ことり「あ、絵里ちゃんおかえり……」

希「また濡れてる!?」

絵里「こ、今回はヘッドトレスだけよ。かわしたもん」

にこ「当たってるじゃない」

絵里「間一髪だったわ」

凛「それより絵里ちゃん、早く乾かさないと」

絵里「あ、そうね。ごめんねことり、ヘッドトレス濡らしちゃって」

穂乃果「そうじゃないよ! 絵里ちゃんを乾かすんだよ!」

絵里「え」

ことり「そうだよ。衣装は何度でも作り直せるけど、絵里ちゃんは作り直せないんだからね」

絵里「……」

絵里(……また涙が)

25: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 00:25:20.25 ID:WOrqcljr0
絵里「うう、ありがとう……」

海未「ことりー、衣装、これで合っていますか?」

海未「って絵里、また濡れたんですか」

希「はしゃぎすぎたんよ。ほら、後ろ向いて」

にこ「これで風邪引いたら最悪よ? ほら、首もとは濡れてない?」

穂乃果「もー、絵里ちゃんは1人でどこか行っちゃダメだねぇ」

絵里(なんか犬みたいな扱い……)

絵里「みんな、ありがとう」

希「んー、いいよ。いつものことやし」

にこ「そうね」

穂乃果「うんうん」

ことり「絵里ちゃんも早く衣装合わせしよっか」

絵里「うん、わかった」

40: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:03:40.39 ID:WOrqcljr0





絵里(……ああ、もう朝かぁ)

絵里(昨日は衣装合わせして学園祭に備えて……今日は練習なしだったわよね)

絵里「朝ごはん食べよう……」

絵里(……あれ? 起きられない)

絵里「からだ、おも……うっ」

絵里(頭も痛い……)

絵里「……」

絵里(嘘でしょ、私が――――――――)




絵里「私が、風邪引くなんて」

42: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:07:52.28 ID:WOrqcljr0
絵里(せきは出ないから、喉の心配は大丈夫よね?)

絵里(あぁ、この感覚……確実に熱があるわね。体温計どこやったっけ)

絵里「ん、あった」

絵里「……」

絵里(亜里沙は……そっか、今日は雪穂ちゃんとお出かけだっけ)

絵里「なら心配、かけられないわよね」

絵里「……」

亜里沙「お姉ちゃーん」

絵里「なにー?」

亜里沙「お姉ちゃん、朝ごはんチンしておいたよ。一緒に食べよ?」

絵里「まだ寝てたいから先に食べててくれない?」

亜里沙「わかった。お姉ちゃん、ちゃんと起きてね」

絵里「はーい」

43: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:10:30.42 ID:WOrqcljr0
絵里(よし、誤魔化せた……)

絵里「あ、計れてる……って」

絵里(ぴったり40℃かぁ……これは絶対安静ね)

絵里「昨日のシャワーかしら?」

絵里(それだったら本当におバカさんだというかなんというか……)

絵里「はぁ……」

絵里(とりあえず亜里沙が出たら、朝ごはん食べて冷却シートを……)

絵里(……みんなは大丈夫かしら。私みたいに急に風邪ひいてないわよね?)

絵里「メール……してみよ」

44: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:12:46.99 ID:WOrqcljr0
亜里沙「お姉ちゃん、行ってくるね」

絵里「あ、うん。行ってらっしゃい」

亜里沙「ふふ、お姉ちゃん頑張ってたもんね。じゃあ、行ってきます」

絵里「はーい」

絵里(……頑張ってた? 何を?)

絵里(練習かしら……うーん、私の中では頑張ってる、って感じじゃないんだけど……)

絵里「……はーっ」

絵里(吐息も熱い感じするわね)

絵里(朝ごはん、食べよ)

45: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:15:45.56 ID:WOrqcljr0
絵里「……」

絵里(しまった)

絵里「く、うぅぅ」

絵里(立てない)

絵里(……這って行くしかないか)

絵里「よい、しょっと」

絵里「あー……」

絵里(動きたくない)

絵里(でもご飯食べなきゃ、力が出ないし……)

絵里「……立てる、私は立てるはずよ」

絵里(……よし、立てる!)

絵里「あ、っと……立てた」

47: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:18:42.90 ID:WOrqcljr0
絵里「からだ、おもい……」

絵里(普段ならすいすい歩けるのに……熱って嫌ね)

絵里「うんしょ、っと」

絵里「っとと」

絵里(あはは、何だか酔っぱらいみたい)

絵里「千鳥足って言うのかしらね」

絵里「おおっと、危ない危ない」

絵里(……って、私は何しに来たんだっけ?)

絵里「あ、そうだ。ごはんごはん……」

絵里「……」

絵里(今日に限ってお魚……骨が……)

48: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:21:37.49 ID:WOrqcljr0
絵里「……いただきます」

絵里(あー、どうしよ。骨ごとバリバリって食べちゃおうかしら)

絵里(私はオオカミです。きっと食べられます)

絵里「……むりかも」

絵里(うー、お箸ちゃんと持てない)

絵里「先にお茶……わわっ」

絵里(片手では持てないのね、危ない危ない)

絵里「……ストロー、あったかしら」

絵里(えーっと……確か使わないからどこかに……)

絵里「あ」

絵里(椅子に乗らないと届かないとこに置いたんだった……無理だわ)

49: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:23:47.74 ID:WOrqcljr0
絵里「先に冷却シートを……」

絵里「確かこのあたりに残りが……あれ?」

絵里(ない……)

絵里「いたっ、う」

絵里「……うぅ」

絵里(何もないところで転んだ……)

絵里「床、意外と冷たいわね」

絵里「……」

絵里「あたまいたい」

50: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:26:45.42 ID:WOrqcljr0
絵里「……寝ちゃったら立てないわね」

絵里(でも立たないと。ずっとここでこうしてるわけにはいかないし)

絵里「……え? 今、鍵開いた?」

絵里(亜里沙が帰ってきた!? まずい! どうにか……)

絵里(どうにかして平静を装わないと!)

絵里「あ、おかえり亜里沙、忘れ物でも……」




希「ざんねーん、ウチでした」




絵里「のぞ……み?」


51: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:29:25.30 ID:WOrqcljr0
絵里(なんで希が……? 家の鍵も何で……?)

絵里(うう、頭回らない……)

希「えりちが心配で来たんよ」

絵里(心配で?)

絵里「どうしたの希。真面目な顔して」

希「だから、えりちが心配なんよ」

絵里「心配することなんて何にもないでしょ?」

希「ううん、亜里沙ちゃんが血相変えてウチに会いに来たんよ?」

希「お姉ちゃんの様子がおかしい、私じゃ力になれない、って」

絵里「……」

絵里(亜里沙……)

52: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:33:36.06 ID:WOrqcljr0
希「家の鍵をウチに押し付けて、お願いしますって頼み込んできたときはびっくりした」

絵里(亜里沙にはバレてたってわけか……さすが妹ね)

絵里(でも、希にうつしちゃ悪いし……それに、学園祭前にいたずらに不安を与えるのはよくないわね)

絵里「私は大丈夫よ。大したことないから」

希「ふぅん……普通のことは、あるんやね」

絵里(しまった、言葉を間違えた)

絵里「ちょっとここで転んじゃっただけだから」

希「転んだ? なんで?」

絵里「ただの前方不注意よ」

絵里(嘘は言ってないわよね?)

53: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:37:54.64 ID:WOrqcljr0
希「えりち、大丈夫?」

絵里「ええ、もちろん」

絵里(う、しまった。足が震えてきた)

希「えりち、何で冷蔵庫にもたれかかってるん?」

絵里「暑いから、少しでも涼もうと思って」

希「えりち、何で顔が赤いん?」

絵里「パジャマ姿を見られたのが恥ずかしいからよ」

希「えりち――――――――」

絵里「ほら、もうそんな赤ずきんみたいな問答やめない? 私は大丈夫だから、心配しなくていいって」

絵里(今日1日しっかり休めばきっと治る。だから――――――――)

希「ならウチが帰る代わりに1つだけお願い聞いてくれる?」

絵里「いいけど……私ができる範囲でお願いね」

絵里(今はどのくらいできるかわからないけど……)

希「うん、すごく簡単なこと」




希「目を閉じたまま10秒間、片足で立ってくれる?」

54: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:41:15.34 ID:WOrqcljr0
絵里「な、なんで急にそんなこと」

希「えりちはバレエやってたから、バランス感覚はどのくらいいいんかなーと思って」

絵里(さすが希……体温を計らせないのは、不正される恐れがあるからよね)

絵里(すぐに影響の出る身体面で審査する、ってわけ……)

絵里(でもね、希)

絵里「私の実力を舐めない方がいいわ」

絵里(本気で集中すれば、そのくらい簡単にできる――――――――)

希「じゃあ今からやるよ? いい?」

絵里「ええ、来なさい」

希「じゃあよーい……スタート!」

56: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:47:33.52 ID:WOrqcljr0
希「1、2……」

絵里(やれる。そのくらい簡単に)

絵里(頭はふらふらするけど、床の感覚くらいわかる)

希「3、4……」

絵里(つま先だけじゃなくて、しっかり足の裏までついてるんだから簡単よ)

絵里(……本当はすごくつらいけど)

希「5、6……」

絵里(こんなところで倒れるなんて、私のプライドが許さない)

希「7、8……」

絵里(今まで積み上げてきた、穂乃果たちとの日々を……)

希「9……」

絵里「……」

57: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:48:07.27 ID:WOrqcljr0




希「10。はーい、時間切れ」





58: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:50:46.40 ID:WOrqcljr0
絵里「え、じ、時間切れ?」

希「うん。時間切れ」

絵里「10秒間立てって話じゃ……」

希「ウチはその10秒間で、えりちが何をするかを見たかったんよ」

絵里(何をするか?)

希「えりちが目を閉じて片足で10秒、なんて余裕でできるにきまってるやろ?」

希「でも、今の10秒間――――――――」



希「えりちは一瞬たりとも笑顔を見せてないんよ」

59: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:55:32.46 ID:WOrqcljr0
絵里「……ああ、わかったわ。そっちの余裕がなかったって言いたいのね?」

希「うん、そういうこと」

絵里「でもちゃんと10秒立てたでしょ? なら約束を守れたわ」

希「えりち、そうやないよ」

絵里「……?」

希「えりちらしくない」

絵里「私らしく……?」

希「えりちなら、もう10秒くらい簡単なはず」

絵里(……普段ならね)

希「なのに、顔を真っ赤にして汗もいっぱいかいて、苦しそうな表情浮かべて……」

希「……信じろって方が無理だよ」

希「私をもっと……頼ってほしい」

絵里「!」

60: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 22:57:16.45 ID:WOrqcljr0




『……それでもウチを頼ってくれたらうれしいけどなぁ』

『そうねぇ、最初に頼るのは希かも』

『ふふっ、それはうれしい』



61: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 23:05:32.42 ID:WOrqcljr0
希「ねぇ、私はそんなに頼れない?」

希「全部1人で抱え込んで……それって私のせい?」

絵里「ちがう……違うわ希! 泣かないで……!」

絵里(最初からそうだった。希は私に頼ってほしがってた)

絵里(それを私は……)

絵里「希、ごめん、私、そんな……そんなつもりじゃ……!」

希「……」

絵里「あなたに心配をかけたくなくて……ずっと……」

絵里(いや、もう何を言っても無駄ね)

絵里(言いたいことを言わなきゃ)

絵里「……希、顔をあげてくれる?」

希「うん」

絵里「……」

希「あ」

絵里「何か落ちて……」

絵里(……目薬)


63: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 23:10:46.13 ID:WOrqcljr0
希「あ、えりち、これは違うんよ」

絵里「え? 何? 聞こえないわね」

希「いや、この涙は本物であって、決して目薬なんかじゃ……」

絵里「希」

希「や、やからそのグーにしてる手を下ろして!」

絵里「問答無用!」

希「きゃああああ! ……って、あれ? え、えりち? 何で抱きついて……」

絵里「振り下ろした拳の勢いを止められなかっただけ」

希「……えりち、めちゃくちゃ熱いやん。うそつきはダメやのに」

絵里「希もよ。本気で泣いてるくせに、わざわざ目薬なんか隠し持って」

希「ふふ、お互いさまやね」

絵里「うん、そうね」

64: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 23:13:23.39 ID:WOrqcljr0



希「あーん」

絵里「あー……ん」

希「おいしい?」

絵里「……あんまり味わかんない」

希「そっか。じゃあプリンとゼリーやったらどっちが好き?」

絵里「プリンかしら」

希「わかった」

絵里「買って来るの?」

希「ううん、配達してくれる人がいるんよ」

絵里「?」

65: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 23:17:43.03 ID:WOrqcljr0
希「あ、もうすぐ着くみたい」

絵里「速いのね」

希「うん、えりちはきっとプリンって言うって気付いてたみたいで、もう買ってるって返信来た」

絵里(誰だろう……)

絵里「ん、呼び鈴が……」

希「ウチが出るよ。届けに来てくれたんよ」

絵里「じゃあお願い」

希「うん」

絵里(うーん、誰かしら)

66: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/11(月) 23:31:50.58 ID:WOrqcljr0
凛「絵里ちゃんお風邪って本当!?」

花陽「凛ちゃんとおかゆ作ってきたよ!」

真姫「ほら、プリン買ってきたわよ」

にこ「生姜湯とチキンスープも作ったわ、飲みなさい」

穂乃果「絵里ちゃん! お見舞いにチョコ持ってきたよ!」

海未「栄養ドリンクを買ってきました」

ことり「風邪薬と冷却シート買ってきたよぉ」

絵里(予想以上にいっぱい来た)

75: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:02:39.37 ID:QOtLt1uS0
絵里「えーっと……」

海未「絵里、寝ていなくてはダメでしょう」

絵里「今ごはん食べて……」

にこ「とりあえずこれ、冷蔵庫入れとくわよ」

絵里「あ、わかっ……」

凛「お鍋どこに置いとけばいいの?」

絵里「それはコンロの……」

ことり「絵里ちゃん、汗かいてない?」

絵里「うん、平気だから……」

76: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:04:32.61 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「絵里ちゃんの部屋から枕持ってきたよ」

絵里「えっ、ちょっとみんな……」

花陽「お皿、洗っておくね」

絵里「あ、いいわよそんな……」

真姫「絵里、口についてる」

絵里「んむ」

絵里「……」

絵里(最後まで言わせてくれたって……)

希「ふふ、えりち笑ってる」

絵里「忙しいからね……あはは」

77: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:07:58.24 ID:QOtLt1uS0
海未「ことり、冷却シートを」

ことり「うん、絵里ちゃんおでこ出して」

絵里「わかった」

凛「そんな重労働、絵里ちゃんにはさせられないにゃ! 凛が手伝うよ」

絵里「ありがとう」

凛「……すっごく熱い」

絵里「まあ熱出てるからね」

ことり「それじゃ、貼りまーす」

絵里「うっ……つめたい」

絵里(……でもちょっと楽になったかも)

穂乃果「絵里ちゃんまくらー」

絵里「ご飯食べてからね」

79: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:17:13.32 ID:QOtLt1uS0
希「はい、えりち」

絵里「ん、あーん」

にこ「……」

花陽「……」

真姫「……」

絵里(あれ、急にみんなこっち見始めた)

希「お昼はみんなに任せるから、今だけはウチに任せてな」

にこ「ち、違うわよ! そういう意味じゃ……!」

花陽「はぅぅ……」

真姫「別に、そんなこと考えてなんか……」

絵里「?」

80: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:20:11.06 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「……海未ちゃん、ことりちゃん」

海未「どうしました?」

ことり「なに?」

穂乃果「この枕ね……すっごく絵里ちゃんの匂いがする」

絵里「ちょっ……!?」

ことり「ほんと?」

穂乃果「うん、ほら嗅いでみて」

ことり「わーい」

絵里「え、ま、待って!」

ことり「……絵里ちゃんの匂いだ」

穂乃果「だよねだよね?」

凛「凛も嗅ぐにゃー」

絵里(なにこの状況)

81: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:22:45.78 ID:QOtLt1uS0
希「えりち災難やね」

絵里「本当よもう……」

希「でもさっきより元気出てるなぁ」

絵里(……ほんとだ)

にこ「絵里、生姜湯飲む?」

絵里「いただくわ」

にこ「ん。一応水筒に入れて持ってきたけど……どのコップがいい?」

絵里「あ、その1番上の……」

にこ「……」

絵里(にこじゃ届かなかった)

真姫「私がとるわ」

にこ「ぐぬぬ」

82: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:24:59.52 ID:QOtLt1uS0
絵里「ごめんねにこ」

にこ「謝られると傷が広がるんだけど」

絵里「う、ごめん」

希「えりち、謝ってる謝ってる」

絵里「あ」

にこ「もー、何なのよこの食器棚は……縮め!」

絵里(真顔で言うんだ)

真姫「このコップ、絵里のお気に入りなの?」

絵里「どうだろ……あんまり気にしたことないわね」

真姫「そう……ほらにこちゃん、生姜湯」

にこ「あ、うん」

83: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:28:12.80 ID:QOtLt1uS0
凛「お昼は絵里ちゃん何食べる?」

絵里「うーん……今は考えたくないかな」

凛「……そっかぁ」

花陽「そうだよね……ごめんね」

絵里「は、花陽と凛が作ったおかゆがいいわ!」

凛「本当!?」

絵里「本当よ」

凛「よかったね、かよちん」

花陽「うんっ!」

にこ「……」

絵里「にこのも食べるから」

にこ「いや、今の沈黙はコップに注いでたから集中してただけよ」

絵里「あ、そうなの?」

84: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:32:19.71 ID:QOtLt1uS0
希「えりち忙しそう」

絵里「至れり尽くせりなはずなんだけどね」

希「はい、最後の1口。あーん」

絵里「あーん」

海未「花陽、肩に何かついてますよ」

花陽「そうなの?」

海未「はい、今とりますね……」

海未「……」

花陽「う、海未ちゃん?」

海未「私たち以外の髪の毛の色……」

穂乃果「ドラマで見たことある……浮気現場だ!」

凛「修羅場にゃ!」

絵里(亜里沙のだと思うけど……いいか)

85: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:37:39.66 ID:QOtLt1uS0
絵里「ごちそうさまでした」

希「じゃあ食器下げるよ」

絵里「うん、お願い」

にこ「ほら、飲みなさい」

真姫「熱いから気を付けてね」

絵里「ありがとう」

穂乃果「あ、チョコ冷蔵庫に入れてていいかな?」

ことり「ええっ!? 穂乃果ちゃん入れてなかったの!?」

86: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:39:13.93 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「ううん、事後承諾ってやつだよ。ちゃんと入れてるよ」

絵里「うん、いいんだけど……今穂乃果が指さしたとこ、冷凍庫よ」

穂乃果「えっ」

真姫「……なんだっけ。この前爆発するやつテレビで見たんだけど」

穂乃果「ええっ!?」

海未「爆発!?」

絵里(そんなの聞いたことないけど……)

希「真姫ちゃん、それきっと電子レンジにゆで卵、じゃない?」

真姫「あ、それだわ」

穂乃果「なーんだ」

凛「びっくりしたぁ」

91: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:45:51.31 ID:QOtLt1uS0
にこ「今からやってみる?」 

絵里「えっ」 

穂乃果「見たい見たい!」 

凛「気になるにゃー」 

絵里「待って」 

花陽「そうだよ。ここは絵里ちゃんの家だから」 

絵里(よかった、さすが花陽――――――――) 

花陽「せめて絵里ちゃんの風邪が治った時じゃないとダメだよぉ」 

絵里(結局やるんだ)


89: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:44:38.67 ID:QOtLt1uS0
絵里(まあいいか、ラップしてたらたぶん大丈夫よね)

絵里(それより生姜湯飲まないと冷めちゃう)

絵里「……あ、これおいしい」

にこ「ふふん、そうでしょ? ちゃんとハチミツも入れたから飲みやすいと思うわ」

絵里「うん、飲みやすいわ」

ことり「あ、絵里ちゃんだいぶ顔色良くなってない?」

絵里「え? そう?」

希「一応体温、計っとく?」

絵里「うん」

 

92: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:50:03.08 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「はい、手あげて」

絵里「挟むくらいはできるわよ。それにまだ体温計ないし」

穂乃果「じゃ、じゃあ穂乃果……どうすればいい?」

絵里「枕を私の部屋に戻してきて。体温計も私の部屋にあるから」

穂乃果「了解!」

海未「穂乃果、転ばないように気を付けてくださいね」

穂乃果「そんなにドジじゃないよぉ」

穂乃果「……あれ、ドア開かない」

絵里「そこは押して開けるのよ」

穂乃果「あ、そっか」

希「転ばなくてよかったやん」

絵里「そうね」

93: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:52:13.47 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「あったよー」

絵里「持ってきて」

穂乃果「わかった」

ことり「穂乃果ちゃん、きっと枕持って帰って来るよね」

海未「そうですね」

絵里「え? そのくらいは……」

穂乃果「はいっ」

絵里(なぜかブランケットが増えた)

94: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:54:29.78 ID:QOtLt1uS0
絵里「よいしょ……」

絵里(……あ、でも体が軽くなった気がする)

絵里「……」

希「……」

にこ「……」

穂乃果「……熱が下がってますように」

凛「……下がってますように」

花陽「……」

絵里(緊張する……)

95: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 21:59:32.17 ID:QOtLt1uS0
真姫「あ、音鳴ったわよ」

絵里「ん」

絵里(下がってるといいんだけど……)

希「えりち、何度?」

絵里「えーっと……」




絵里「37℃……?」




絵里「って、ものすごく下がってるじゃない」

海未「最初は何度だったんですか?」

絵里「40℃」

海未「えっ」

96: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:03:57.86 ID:QOtLt1uS0
穂乃果「す、すごい!」

にこ「生姜湯……?」

凛「絵里ちゃん、実は超人?」

ことり「冷却シートかなぁ?」

絵里(本当に何でだろう……)

絵里「もしかしたら……」

真姫「?」

花陽「もしかしたら?」



絵里「みんなが看病してくれたおかげかもね」

97: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:12:56.17 ID:QOtLt1uS0
希「……えりちって、熱出ててもそういうことさらっと言うんよね」

絵里「え?」

にこ「もう慣れたわよ」

穂乃果「わーい! 来てよかった!」

花陽「そう言われるとうれしいなぁ」

ことり「一応念のために風邪薬も飲もっか」

絵里「うん」

海未「栄養ドリンクもありますよ」

真姫「プリンもあるわ」

絵里(……よく考えたら、こうしてみんなといる方がたくさん食べるのよね。適当に済ませることもないし)

絵里(なるほど……みんなといた方が健康的な生活を送れるってことね)

98: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:18:24.91 ID:QOtLt1uS0
絵里「ふふっ。みんながいれば、私はずっと健康でいられるわ」

凛「!?」

穂乃果「え、絵里ちゃん!?」

希「みんな気を付けてな、えりちがみんなのエネルギーを吸い取るみたいやで」

絵里「ち、違うってば! そういう意味じゃ……」

にこ「じゃあどういう意味よ」

絵里「え? それは……ずっとみんなと一緒にいたいって意味で……」

にこ「……」

ことり「熱でも絵里ちゃんは絵里ちゃんだね」

海未「ですね」

99: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:31:28.31 ID:QOtLt1uS0
真姫「でもまだ完全に治ったわけじゃないんだし、寝てた方がいいわよ」

絵里「あ、そうよね」

穂乃果「絵里ちゃん歩ける?」

絵里「ええ、もう大丈夫よ」

絵里(本当に熱、下がったんだ……なんだかびっくりしちゃう)

海未「私たちはここにいましょうか」

絵里「……そうね。うん」

希「えりち、気を遣わなくていいって」

絵里(う、バレてた)

絵里「みんなと一緒にいたい……って言ったら怒る?」

ことり「ううん、全然」

凛「凛たちは大歓迎だよ!」

絵里(よかった)

100: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:34:36.74 ID:QOtLt1uS0
にこ「でもどうするの? ベッド下ろすわけにも……」

海未「あ、ソファで寝てもらうのはどうでしょう」

花陽「ソファで?」

海未「はい、少しはしたないかもしれませんが」

真姫「絵里はそれでいいの?」

絵里「うん」

希「なら決まりやね」

穂乃果「穂乃果はきっと、このときのためにブランケットを持ってきておいたんだよ」

ことり「穂乃果ちゃん、えらいえらい」

穂乃果「わーい」

101: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:43:16.44 ID:QOtLt1uS0
希「えりち、何かあったら遠慮せず言ってくれていいよ」

絵里「うん、そうする」

花陽「私は食器とか洗うから、凛ちゃんたちは待っててね」

にこ「花陽、私も手伝うわ」

花陽「うん、ありがとう」

凛「かよちん、にこちゃん。凛たち何してたらいい?」

にこ「絵里の相手してなさい」

穂乃果「……ファイト?」

にこ「そっちの相手じゃない」

絵里「あはは」

102: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:53:41.60 ID:QOtLt1uS0
凛「それじゃ、何の話する?」

穂乃果「何があるかな?」

希「普通に話しててもも面白くないしなぁ……」

海未「では、絵里をもっとも笑わせた人が勝ちというのはどうでしょう」

ことり「あ、それいいかも」

真姫「え? そんな面白い話とか持ってないんだけど」

凛「そこは作り話だよ、真姫ちゃん」

真姫「それダメじゃない!」

103: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 22:56:58.80 ID:QOtLt1uS0
希「大丈夫やって、最後にこのお話はフィクションです、って言えば」

穂乃果「なるほど……それがオチだね!」

真姫「ってもうそれ使えないじゃないの」

凛「あ」

海未「そうですね」

真姫「どうしよう……何か面白い話ってなかったかしら……」

真姫「あ、そうだ。この前花陽がアルパカと10分くらい話してたんだけど……」

花陽「ええっ!? そんなことあった!?」

真姫「あったわよ。私がすぐそばにいたのに気付かなくて」

ことり「すっごく気になる! 話して話して!」

真姫「えーっと……いつだったかしら、たしか4日前くらいなんだけど――――――――」

104: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:01:59.51 ID:QOtLt1uS0


――――――――調子はどう?――――――――

だいぶ楽になった。みんなのおかげでね

――――――――それはよかったわ。ところで、あなたはまだ帰れないの?――――――――

え? うーん……そうね、まだやることが残ってるもの。

――――――――そう……あんまり無茶しすぎないでね?――――――――

ねぇ。

――――――――何かしら?――――――――

あなたは私なの?

――――――――ええ、そうよ。あなたが知らず知らずのうちに意識の外に押し込んでしまった私よ――――――――

105: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:04:03.68 ID:QOtLt1uS0
意識の外へ?

――――――――そう、別に多重人格ってわけじゃないけど、あなたが知らないうちに隠しちゃったのよ――――――――

隠す?

――――――――ええ、ほら、この世界で何か、あなたが忘れていることはない?――――――――

忘れてること……あ! 穂乃果がまだチョコを冷凍庫から出してない!

――――――――ああ、それもあるわね――――――――

え、当たりなの?

――――――――違う違う。もっと大事なことよ――――――――

えー……何だろう。

107: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:06:26.36 ID:QOtLt1uS0
――――――――そのことになると、都合よく考えちゃうの――――――――

都合よく……うーん、わかんない。

――――――――そうよね。簡単にわかるなら、私はいないもの――――――――

ねぇ、あなたは今どこにいるの?

――――――――私? 私はそうね……うん、寝てるわ――――――――

寝てる? 私と一緒ね。

――――――――そう! あなたと一緒よ! 何か思い出すことはない?――――――――

あ、みんなに声かけずに寝ちゃった……。

――――――残念、ハズレよ――――――――

108: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:08:51.51 ID:QOtLt1uS0
何だろう……ヒントちょうだい!

――――――――じゃあヒントね――――――――

やった!

――――――――あなたは夢を見てる――――――――

夢って……このこと?

――――――――ええ、このことよ。あなたが見ているもののすべてが――――――――

すべて? あなたと話してるのが夢だって言うの?

――――――――ううん、違う。すべてよ――――――――

……難しいわね。

109: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:12:35.98 ID:QOtLt1uS0
――――――――現実から逃げようとしたわけじゃない――――――――

――――――――ただこの世界の幸福を捨てられないわけじゃない――――――――

――――――――憶測だけど、長くこっちにいすぎたせいで帰るべき場所が思い出しづらくなってるのよ――――――――

帰るべき……場所?

――――――――そうよ。たぶん私1人なら、難なく帰ることができた――――――――

――――――――でもあなたは、みんなを助けようとしてる――――――――

――――――――今すぐにでも逃げだせるのに――――――――

逃げ出すって……そんな無責任なことできないわ。

――――――――そうよ。あなたは縛り付けられてるの――――――――



――――――――みんなに手を引かれて、後戻りができないくらい奥深くまで――――――――

110: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:17:29.00 ID:QOtLt1uS0
――――――――頼ってくれた自分の仲間を誰1人見捨てずに、ここまで歩いて来ようとしてるの――――――――

仲間を見捨てないことはいいことなんじゃないの?

私は利己的にふるまうの、苦手だから。

――――――――そう。そうやって帰り道を……ううん、逃げ道を自ら消してることに気付いてない――――――――

逃げ道?

――――――――逃げ道よ。ここではまだ帰れない、なんて言って――――――――

――――――――戻ってくることは悪じゃない。でも、いなくなってもいいタイミングがつかめない―――――――

――――――――だからどこか、このままみんなの面倒を見ようとしてる――――――――





――――――――気付いて、あなたのいるべき場所はここじゃない――――――――




111: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/12(火) 23:18:39.49 ID:QOtLt1uS0



絵里「……」

絵里(私のいるべき場所……)

絵里(帰るところ……)




絵里(私の帰る場所は、ここにしかないはずなのに――――――――)

117: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 09:48:32.29 ID:FB+ffn4Q0
絵里(うーん、変な夢だったわね)

絵里「……あれ? 外が明るいような……」

絵里「……」

絵里(ちょっと待って、今何時?)

絵里「時計どこだっけ……ってみんな寝てる」

絵里「えーっと、今は……」





絵里「7時ちょうど……え? 午前?」

118: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 09:50:07.83 ID:FB+ffn4Q0
絵里「あはは、まだ夢の中なのかしら」

絵里「……」

絵里「……」




絵里「みんな起きてえええええええええええ! 遅刻よおおおおおおおおおおおお!」



穂乃果「!?」

海未「んん、どうしたんですか……?」

ことり「まだ眠いよぉ……」

119: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 09:53:41.54 ID:FB+ffn4Q0
花陽「米粉……」

凛「うふふふふ、そんなにたべられないにゃぁ……」

真姫「……」

絵里「起きてってば! 学園祭始まってるから!」

にこ「まだまだ……私たちの夏はこれからよ……」

希「カード……」

絵里(どうすれば……そうだ!)

絵里「早く起きないと朝ごはん抜きよ!」

にこ「」

穂乃果「」

凛「!」

花陽「ごはん!」

120: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 09:57:33.65 ID:FB+ffn4Q0
希「……あれ、えりち元気になってる?」

絵里「え、あ。ほんとだ」

絵里「じゃなくて、もう学園祭の準備始まってるのよ!」

にこ「今何時よ」

絵里「7時」

花陽「7時!?」

凛「え、えーっと……学園祭開始が7時半だから……」

凛「……」

凛「……やばい」

絵里「そうなのよ! 特に私たちは生徒会として、学園祭の挨拶の時、理事長の横でそれっぽい雰囲気出しながら立ってなきゃいけないの」

穂乃果「そ、それっぽい雰囲気……」

希「あながち間違ってないなぁ」

121: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:03:32.86 ID:FB+ffn4Q0
亜里沙「おねぇちゃん……おはようぅ……」

絵里「亜里沙はまだ起きてこなくていいわよ?」

亜里沙「うん……おひる、みにいくからねぇ」

絵里「わかったわ、ありがとう」

亜里沙「おやすみ……」

希「とりあえずウチとにこっちと花陽ちゃんで昨日の残りをお弁当に詰めるから、えりちはシャワー浴びてきて」

絵里「みんなは?」

花陽「みんなは昨日、亜里沙ちゃんに許可もらってお風呂入ったよぉ」

絵里「そうなのね、うん、わかった。よろしくね!」

凛「はーい。真姫ちゃん起きるにゃー」

穂乃果「海未ちゃんもことりちゃんも、朝ですよー」

122: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:05:31.48 ID:FB+ffn4Q0
絵里(みんな、泊まってくれたのね)

絵里(たぶん私に寂しい思いさせないように)

絵里(ことりは枕まで持ってきてたし)

絵里(みんなに……お礼言わなきゃね)

絵里「よし、お湯出てきた」

絵里「……」

絵里(あ、着替え持ってくるの忘れた)

123: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:09:12.48 ID:FB+ffn4Q0



希「よし、詰め終わった……」

花陽「これは向こうについてから食べよっか」

にこ「朝も昼もあっちで食べるとお金かかるしね」

穂乃果「海未ちゃんと真姫ちゃんだけ全然起きない……」

ことり「うん、2人は最後まで起きてたからね」

絵里「ごめーん、着替え忘れたからちょっと通るわよ」

希「バスタオルだけ……えりち刺激的な格好やん」

絵里「えへへ」

凛「刺激……そうだ! 絵里ちゃん」

絵里「んー?」

凛「そこ格好で海未ちゃんと真姫ちゃんを起こして」

絵里「いいわよ」

124: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:11:35.61 ID:FB+ffn4Q0
絵里「ほら、海未、真姫。起きて」

真姫「ん、熱い……」

海未「……熱気が」

真姫「……」

海未「……」

絵里「おはよう」

真姫「」

海未「」

絵里「あれ?」

にこ「あんたオーバーキルよ。さっさと着替えてきなさい」

絵里「え、でも2人は……」

希「ウチがわしわしして起こすから、えりちは早く」

絵里「うん」

125: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:23:38.49 ID:FB+ffn4Q0
希「こ、これは……!」

花陽「どうしたの!?」

希「海未ちゃん……少しおっきくなってる」

穂乃果「ええっ!?」

凛「い、いつの間に!」

にこ「にこ、歯磨いてくる」

花陽「私も行こうかなぁ」

絵里(部屋の外から面白い会話が……)

ことり「念のために歯ブラシ持ってきててよかったね」

穂乃果「制服も持ってきてたし、海未ちゃんの言う通りだったね」

絵里(海未が言ってたんだ……へぇ)

穂乃果「絵里ちゃんはなかなか起きないからって」

絵里(それ、海未が言うんだ……)

126: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:44:11.23 ID:FB+ffn4Q0
絵里「着替えたわ」

希「ん、それならウチらも着替えるよ」

にこ「ほら、2人とも顔洗ってきなさい」

海未「はい……」

真姫「なんかものすごいものを見た気がする……」

ことり「あ、お母さんからメール……」

絵里「理事長から?」

ことり「あ、学園祭の開始時刻、少し遅れるみたい」

希「おお、どのくらい?」

ことり「1時間」

穂乃果「1時間も!?」

ことり「うん、少し雲行きが怪しいから様子を見るんだって」

127: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/13(水) 10:46:39.98 ID:FB+ffn4Q0
穂乃果「あ、穂乃果の携帯も鳴った!」

希「ウチのも来た」

にこ「学校からの連絡ってやつね」

ことり「そうみたいだね」

絵里(前はそんなことあったっけ?)

絵里「まあ遅れたことだし、ゆっくり準備しましょう」

ことり「そうだねっ」

花陽「うん」

133: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:24:33.14 ID:KJOLJiXV0



理事長「本日は天候にも恵まれ、絶好の学園祭日和となりました」

理事長「今まで準備してきたすべてのことを、今日は出しきってください」

理事長「以上です」

絵里「はい、ではこれから各学年の学園祭実行委員は前へ集まってください」

絵里「それ以外の生徒は教室に戻り、担任教諭の指示に従ってください」

絵里(……理事長の言葉通り、本当にいい天気)

絵里(もしかして雨なんか降らないんじゃ……)




絵里(あれ? 雨が降る、なんて何で考えてたんだっけ。天気予報かしら)

134: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:30:28.28 ID:KJOLJiXV0
希「はい、じゃあこの資料を各教室に持って行ってね」

絵里「希、そっちは資料足りてる?」

希「足りてるよ、これで最後……あ、うん。いいよ。またステージ見に来てな」

絵里「希? どうしたの?」

希「あ、いや。さっきの子が握手してほしいって」

絵里「へー、希ってば人気者じゃない。このこのーっ」

希「えりちにも握手、してもらいたかったみたいやで」

絵里「そうなの?」

希「うん、でも本当に握手したら気絶しそうやからやめとくって」

絵里「?」

希「えりち……今自分が学院でどのくらい人気かわかってないやろ?」


135: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:32:51.14 ID:KJOLJiXV0
絵里「うん」

希「やっぱり……」

絵里(何だろう、希の視線が突き刺さるんだけど……)

希「えりち、ファンクラブってわかる?」

絵里「そのくらいわかるわよ」

希「この学校にはえりちファンクラブが公式、非公式にそれぞれ1つずつ存在します」

絵里「……」

絵里「ええっ!?」

希「ふふ」

136: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:35:00.74 ID:KJOLJiXV0
絵里「ふぁ、ファンクラブって……あれでしょ? おっかけみたいな……」

希「それそれ」

絵里(ま、まさかそんなものができてたなんて……)

絵里(うれしい以上に複雑だわ)

絵里「そ、それに公式って何!? 認められないわぁ!」

希「ぷぷ、その口調昔のえりちにそっくり」

絵里「昔?」

希「まあそんなことは置いといて……公式って言うのは、μ'sが公式に許可したファンクラブなんよ」

138: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:44:57.82 ID:KJOLJiXV0
絵里「……ってことは、希たちが立ち上げたってこと……?」

希「そうやね。正確にはウチとにこっちで」

絵里「……」

絵里(何と言うか心境を言葉に表しづらい)

希「えりちがμ'sに入る前から、ファンクラブそのものはあったんよ」

絵里「え、全然気づかなかった」

希「それは仕方ないよ」

希「もともと少なかったファンが爆発的に増えてウチらが気付くようになったのは、えりちが変わってからやもん」

139: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:48:19.23 ID:KJOLJiXV0
絵里「私が……変わって?」

希「そう。えりちが突然丸くなってからやね」

絵里「丸く? 私、もともとこんな感じよ?」

希「まあ今のえりちはね。それでμ'sに加入する前からあるファンクラブを、μ's内の絢瀬絵里ファンクラブをして組みなおしたのがウチとにこっちなん」

絵里「そうだったの……じゃあ前のファンクラブはなくなっちゃったの?」

希「ううん、一応形だけは残ってるよ。近々合併みたいなことしてなくなるけどね」

絵里「そうなんだ」

絵里(……どのくらいファンっているんだろう)

希「えりち、今ファンの人数気になったやろ」

絵里「ぎくっ」

140: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:50:46.48 ID:KJOLJiXV0
希「まあ口で言うのも面白くないし……えりち、手出して」

絵里「こう?」

希「うん。今から数字を指で数字を書くから、その人数がファンの数やで」

絵里「わかったわ」

希「まず1ケタ目は……」

絵里(まあいても2ケタが限度ってところよね)

希「で、2ケタ目」

絵里(ふむふむ……なかなかの数ね。まあこのくらいだったら――――――――)

希「それで3ケタ目」

絵里「えっ」

141: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:54:27.95 ID:KJOLJiXV0
絵里「ま、待って待って」

希「どうしたん?」

絵里「さ、3ケタもあるの……?」

希「この学校でなら」

絵里「え、学校でって……」

希「現代にはインターネットというものがあるんよ?」

絵里「」

希「それでつけたして……ってとこかな」

絵里「えええええ!? お、おかしいでしょ!?」

絵里「ろ、6ケタもいるの!?」

希「これが今のえりちの実力ってとこやで」

絵里「う、うぅ……緊張してきた」


143: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:58:04.46 ID:KJOLJiXV0
希「どこに出しても恥ずかしくないえりちやで」

絵里「私が恥ずかしいわよ」

希「えへへ、そんなこと言ってー。実は嬉しいくせに」

絵里「……それもあるけど」

希「やっぱりなぁ。ちなみに会員番号やけど……」

絵里「え、そんなのもあるの?」

希「うん、1から9がμ'sのみんなと亜里沙ちゃんと、それと理事長やね」

絵里(亜里沙も入ってたんだ……)

144: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 00:59:18.33 ID:KJOLJiXV0
絵里「って理事長も!?」

理事長「はい」

絵里「うわぁ!?」

絵里(け、気配が感じられなかった)

理事長「この学院も公認のファンクラブですよ」

絵里(本人の許可とってないのに)

絵里「あれ? でも1から9でしょ? それじゃ、誰か1人足りない……」

145: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:02:24.46 ID:KJOLJiXV0
希「ウチや」

絵里「え?」

希「ウチが……その中には入ってないんよ」

絵里「……え」

絵里(希は入ってくれてないの……?)

絵里(それはちょっとショックというか……なんだか寂しいというか)

希「ウチは1から9ではなく……ナンバー0なん!」

絵里「0!?」

希「そう、創始者たるウチには始まりの0という数字を冠することで……」

絵里「い、いやいや! 仰々しすぎるでしょ!」

希「うん、みんな入れてったらウチの分の数字がなくなったから、仕方なく作っただけ」


146: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:05:54.47 ID:KJOLJiXV0
絵里「なんだぁ……」

希「えへへ、えりち今しょんぼりしてた」

絵里「し、してないわよ!」

理事長「ふふ、それじゃ2人には、学園祭の見回りをお願いしますね」

絵里「はい、わかりました」

希「了解しました!」

理事長「ふふ、いい返事です。まあ見回りと言っても先生方が巡回してるから、あんまりすることはないんだけど」

絵里(あ、そうなんだ)

理事長「あなたたちのクラスは何をやるんでしたっけ?」

絵里「希、覚えてる?」

希「うーん……なんやったっけ。μ'sはラブライブ出場のために、準備よりも練習優先しろって言われてたからなぁ」

147: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:08:36.38 ID:KJOLJiXV0
絵里(そうよね。前もそんな風に……)

絵里(……また前って。デジャヴかしら?)

希「あ、そうや。確か喫茶店やったような……」

絵里「……あー。そういえばミキサーを運んでたっけ」

理事長「そうですか。私も立ち寄っていいですか?」

絵里「はい。きっとみんな喜んでくれますよ」

希「じゃあウチらでエスコートやね」

理事長「ええ、お願いします」

148: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:10:22.15 ID:KJOLJiXV0



理事長「ミキサーということは、ミックスジュースとかですか?」

絵里「はい、おそらく」

希「えりちはやっぱりココアが好きなん?」

絵里「え、何で?」

希「ほら、チョコやし」

絵里(チョコかぁ……そうね、でも飲み物だったら――――――――)

絵里「って、冷凍庫からチョコ出してない!」

希「あ」

理事長「?」

149: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:13:03.76 ID:KJOLJiXV0
絵里(まあいいか、爆発するわけじゃないんだし……)

絵里「それにしても賑やかね。みんなこっちをよく見てくるような……」

絵里(理事長と一緒に歩いてるのが珍しいからかしら)

希「えりち、ファンクラブのこと思い出して」

絵里「あ、そっか」

理事長「ふふ、こうして歩いていると、学生に戻ったような気分ですね」

希「なるほど……親子でコスプレ、と」

絵里「ちょ、希!?」

理事長「なるほど……その手が」

絵里「理事長!?」

150: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 01:16:35.27 ID:KJOLJiXV0
希「あ、着いたみたいやね」

絵里「ん、本当だ」

理事長「まだ人が来ていませんね。中に入っても大丈夫でしょうか」

希「まあここは生徒会特権ということで……」

理事長「そうですね。では私から失礼して……」



にこ「にっこにっこにー! いらっしゃいませ――――――――」



理事長「ふふ、かわいいですね」

絵里「あ、にこだ」

希「にこっちやん」

にこ「……負けた」

159: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:19:43.53 ID:KJOLJiXV0
希「にこっちウエイトレス?」

にこ「うん、あんたたちにもやってもらおうと思ったけど生徒会だったわね」

絵里「あ、ごめんね」

にこ「ライブは昼からだし、それに遅れなきゃ何も文句は言わないわ」

絵里「えへへ、ありがと」

にこ「あ、そうだ。これ背中に貼っててくれない?」

希「なにそれ」

にこ「チラシ」

絵里(客寄せパンダね。なるほど)

160: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:21:56.35 ID:KJOLJiXV0
理事長「では何を頼みましょうか」

にこ「え」

希「あ、そっか。理事長とはここでお別れかぁ」

絵里「そうね。では理事長、失礼します」

にこ「え、ちょ」

理事長「はい。午後にはライブを見に行きますから、その時に会いましょうね」

希「はーい」

にこ「ま、待ちなさいよ2人とも!」

絵里「へ?」

161: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:25:49.59 ID:KJOLJiXV0
にこ「わ、私をこんな重役と2人きりにするつもり?」

希「重役って……クラスのみんながいるやろ?」

にこ「いるけど……なんか私を有名人扱いするって言うか……」

絵里「ああ、スクールアイドルだから?」

にこ「違うのよ。私を見るたびににっこにっこにーの催促をしてくるんだって」

希「にこっち人気者やん」

にこ「うん、だからなんかくすぐったいくて……」

絵里「わかるわ」

にこ「あんたのとは違うのよ。こっちは近所の犬みたいにかわいがられるというかなんというか……」

絵里(共通点が犬しかない)

にこ「そもそも私は料理作ってる側の手際が悪かったから手伝おうとしただけなの」


162: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:29:55.23 ID:KJOLJiXV0
希「にこっちらしい」

にこ「そう言われるとなんか複雑だけど……まあいいわ」

にこ「とにかくこうやって接客するつもりは――――――――」

絵里「あら、お客様よ」

にこ「にっこにっこにー! いらっしゃいませ! 何名様ですか?」

穂乃果「スマイルください!」

絵里(会話がかみ合ってない)

にこ「なんだ、穂乃果じゃないの」

穂乃果「うんっ、3人を私たちのクラスに招待しようと思って来たの」

希「そうなん?」

穂乃果「うんうん、すごくいい出来だからね」

理事長「高坂さん?」

穂乃果「あ、理事長。おはようございます」

163: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:33:06.02 ID:KJOLJiXV0
にこ「穂乃果、悪いけど私は接客あるから行けないわ」

穂乃果「そうなの? ざんねーん……」

にこ「ライブ終わった後、時間があったら行くわ」

穂乃果「本当?」

にこ「ええ。絵里、希、ライブの後時間あるわよね?」

絵里「片付けの時間を考えると、1時間くらい残るわ」

希「うん、十分回れるなぁ」

にこ「ほら、2人もこう言ってることだし」

穂乃果「じゃあ絶対だよ?」

にこ「はいはい、約束ね」

穂乃果「ゆーびきーりげーんまーん」

にこ「そこまでやるの?」

絵里「ふふ、微笑ましいわね」

理事長「そうですね」

164: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:36:35.17 ID:KJOLJiXV0
穂乃果「よーし、じゃあ2人をごあんなーい……」

にこ「待ちなさい」

穂乃果「え?」

にこ「あんたたちのクラス行くんだから、穂乃果はこの喫茶店に寄るべきよ」

穂乃果「……でも今お金ない」

にこ「大丈夫よ、オレンジジュース1杯50円とかだから」

穂乃果「理事長、自動販売機もそのくらい安くすべきです」

理事長「そうねぇ。どうしようかしら」

絵里「そ、そういうことは生徒会を通して……」

希「えりち、まず業者通さな」

165: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:39:33.83 ID:KJOLJiXV0
にこ「とりあえず、最初の客として有り金全部置いてきなさい」

穂乃果「ひどいよ! にこちゃんの鬼! 悪魔!」

にこ「何とでも言いなさい」

希「えりち」

絵里「なに?」

希「きっとにこっち、理事長と2人きりになるの避けたいんよ」

絵里(ああ、だからあんな必死になって……)

絵里「じゃあ穂乃果、にこ。ライブ前に部室で会いましょうね」

穂乃果「穂乃果たちのクラスの出し物は?」

希「あとで見るよ。ウチらだけ先に見ちゃうより、みんなで一緒に行った方が楽しそうやし」

166: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:42:46.88 ID:KJOLJiXV0
穂乃果「そっかぁ……じゃあ仕方ないね」

穂乃果「夢の国に招待するのはライブが終わってからね」

絵里「夢の国……? 何だか楽しそうね!」

希「あ、えりち。穂乃果ちゃんたちのクラスは……ぷぷ、やっぱり言うのやめとこ」

絵里「え? なんで?」

希「その方が楽しみが増えるやろ?」

絵里「あ、そういうことね」

にこ「ほら、早く行きなさい。凛たちのクラスにも行ってあげたら? あの子たちきっと喜ぶわよ」

絵里「うん、そうする」

167: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:49:42.64 ID:KJOLJiXV0
希「ウチらが来て喜んだのはにこっちも同じやね」

にこ「うっ、うるさい! ほら、行きなさいよ!」

希「あはは、ごめんごめん」

穂乃果「にこちゃんどうしたの?」

にこ「あんたにはわからなくていいの。それより注文しなさい」

穂乃果「じゃあこのメロンソーダで……」

にこ「ジャンボイチゴパフェね。イチゴ1つー!」

穂乃果「えぇっ!? そんなお金ない……ってあれ? お安い……!」

にこ「理事長は何にしますか?」

理事長「私はカフェオレで」

にこ「カフェオレ1つー!」

168: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 22:52:29.58 ID:KJOLJiXV0
絵里「なんだ、普通に接客出来てるじゃない」

希「やるときはやるもんなぁ、にこっちは」

絵里「そうかもね」

にこ「だいたい何がスマイルください、よ。笑顔の化身みたいなあんたにやるほどスマイル余ってないわ」

穂乃果「そう? にこちゃんよく笑うから」

にこ「そんなに笑ってる覚えないわよ?」

絵里「ううん、にこはよく笑ってるわ。かわいいわよ」

にこ「……あんたそれ、真顔で言うのやめた方がいいわよ」

絵里「えっ」

理事長「ファンが増える理由の1つですね」

絵里「ええっ」

169: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/14(木) 23:18:40.96 ID:KJOLJiXV0
希「えりち、ファンを増やしに行くよ」

絵里「いや、ただの見回りで……」

穂乃果「凛ちゃんたち、きっと待ってるよ」

絵里「あ、うん」

絵里(でもこんなこと、理事長の前で堂々と……)

理事長「ああ、私は何も聞いていませんよ」

絵里「あっ、ありがとうございます」

絵里(これが大人、かぁ……)

希「えりちは一生なれそうにないなぁ」

絵里「うっ」

176: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 11:51:46.08 ID:xI7ORNGV0



凛「いらっしゃいませー!」

絵里「わ、びっくりした」

凛「あ、絵里ちゃんだ」

真姫「!」

希「ウチもいるよー」

花陽「うん、2人ともいらっしゃい」

絵里「あれ? 真姫は?」

希「さっきそっちの方に隠れた気がしたんやけど……」

真姫「か、隠れてなんかないわよ」

177: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 11:54:49.87 ID:xI7ORNGV0
凛「ふふ、きっと真姫ちゃんは恥ずかしがってるんだね」

真姫「違うってば!」

絵里「あ、ここメイド喫茶なんだ」

花陽「そうだよぉ。でもね、前から案が出ててたんだけど私たちは知らなかったの」

絵里「ああ、ライブに向けて頑張れって?」

凛「そうそう。みんなおーんなじこと言うの。凛はスタミナ余ってるんだから、頼ってくれたってよかったのに」

花陽「ふふ、そうだね」

希「真姫ちゃんもメイドさんなん?」

真姫「……そうよ」

絵里(ふ、不機嫌そう……)

178: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 11:57:16.51 ID:xI7ORNGV0
絵里「凛と花陽がつけてるの、それ何?」

凛「ネコミミにゃー」

花陽「私は犬で……わん?」

希「おお、かわいいなぁ」

絵里「真姫は何もつけてないけど……」

花陽「ダメだよぉ、真姫ちゃん、ちゃんとつけてないと」

真姫「わ、わかったわよ」

絵里(真姫は何の動物なんだろう)

真姫「……うさぎだぴょん」

希「」

絵里「」

179: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 11:59:38.56 ID:xI7ORNGV0
絵里「……はっ」

希「い、今意識が……」

真姫「似合ってないなら似合ってないって言って」

絵里「似合ってる!」

希「うんうん!」

真姫「え」

絵里「絶対はずしちゃダメよ!」

希「ライブの時も付けてきてな!」

真姫「嫌よ!」

絵里(……残念だわ)

花陽「まあ立ち話もなんだし……そうだ、メニューとってくるね」

180: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:03:33.89 ID:xI7ORNGV0
凛「席はここでいい?」

絵里「ええ」

花陽「凛ちゃん、これメニュー」

凛「はーい。こちらがメニューです」

希「んー、何があるんやろ……」

希「スイーツの中に……おにぎり」

凛「当店のオススメだよ」

絵里(……でもよく考えたら私、昨日昼と夜食べてないのよね)

絵里(朝もおかゆだったし……)

絵里「特製おにぎり1つ!」

花陽「やったぁ!」

真姫「最初に売れたメニューがこれなのね……」

181: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:07:16.13 ID:xI7ORNGV0
凛「生徒会長が頼んだメニューって書いとけば、もっと売れるんじゃないかにゃー」

希「なるほど」

絵里(売れるんだ)

真姫「で、絵里。その背中につけてるの……何?」

絵里「ああ、忘れるところだったわ。私たちのクラスの出し物……というか喫茶店のチラシよ」

凛「た、他店に道場破り!?」

絵里「あ、違う違う。宣伝要員としてね」

真姫「客寄せパンダ……にこちゃんも考えたわね」

希「ここのチラシも貼っとくのはどう?」

真姫「乗った」

絵里「私の意志はどうなるのよ!?」

182: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:10:09.59 ID:xI7ORNGV0
花陽「お待たせしました!」

希「わ、おにぎり……って、でかい!」

花陽「花陽オススメの1品です」

絵里(これならお腹膨れそうね)

絵里「あら? 希は何か頼まないの?」

希「ああ、ウチは……この白玉あんみつがいいかな」

凛「あんみつだよ、真姫ちゃん」

真姫「花陽、とって」

花陽「はーい」

真姫「はい、どうぞ」

希「4秒で出てきた……」

183: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:12:00.78 ID:xI7ORNGV0
凛「作ったものが用意してあるからねー」

絵里「え? じゃあこのおにぎりも?」

凛「それはかよちんがさっき作ったにゃ」

絵里「ええっ!?」

花陽「炊き立てのおいしさを堪能してもらいたくて……」

絵里(プロだわ……)

絵里「じゃあ……いただきます」

希「いただきます」

真姫「……」

凛「……」

花陽「……」

絵里「え、3人は何で見てるの?」

 
186: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:42:05.68 ID:xI7ORNGV0
花陽「一般のお客さんが入ってくるまであと1時間あるから……」

真姫「それに最初はチラシ配りとかあるし」

凛「お客さんが来ないから、こうやって見てるの」

絵里「そうなんだ……」

希「えりちも去年とおととしやったやろ?」

絵里「ああ、そうね」

絵里(うっすらとそんな記憶はあるけど……でも、何やってたかしら)

花陽「絵里ちゃん、冷めないうちにどうぞ」

絵里「あ、うん」

絵里「……」

絵里「お、おいしい……!」

花陽「でしょ? ちゃんと持ってきててよかったなぁ」

希「花陽ちゃんお米持ち込んでたんや……」

187: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:45:18.87 ID:xI7ORNGV0



絵里「ごちそうさまでした」

希「ごちそうさまでしたー」

花陽「ありがとうございました」

絵里「お代は……」

真姫「私がもらうわ」

絵里「うん、ありがと」

希「3人とも休憩はいつ?」

花陽「あとお昼まで休憩ないの。一緒に回れなくてごめんね」

希「ううん、いいんよ。ライブ終わった後、1時間くらい時間あるからそのときみんなで回ろうって言ってるんやけど、どうかな?」

凛「楽しそうにゃ!」

真姫「そうね」

花陽「うん、それなら大丈夫だよぉ」

絵里「なら決まりね」

188: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:47:37.14 ID:xI7ORNGV0
絵里「あー、あと穂乃果たちのクラスには入っちゃダメよ」

凛「なんで?」

絵里「最後にみんなで回るから」

真姫「なるほどね」

希「じゃあまた、お昼に部室で」

花陽「うんっ」

絵里(そっか、まだまだ時間あるんだ……)

希「えりち、行くよ」

絵里「そうね。目いっぱい楽しみましょう」

希「みーまーわーりー」

絵里「あ」

真姫「そんな調子で大丈夫なわけ?」

絵里「あはは……」

189: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 12:48:52.36 ID:xI7ORNGV0

ここまでー
アニメの学園祭ってライブだけだったから、ドラマCDっぽく
続きは夜

192: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:14:03.05 ID:xI7ORNGV0



絵里「ほっ!」

希「おお、えりち上手!」

絵里「ふふん。まあフリースローって言ってもこの距離だからね」

希「えりち運動神経いいもんなぁ」

絵里「希もやってみたら?」

希「よーし……このボールにパワーを……ぷしゅっ!」

絵里「入りそう?」

希「いける! てーい!」

絵里「本当に入る……ええ!? 入った!?」

希「スピリチュアルやね」

193: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:17:34.36 ID:xI7ORNGV0



絵里「もぐらたたき?」

希「えりち、やってみたら?」

絵里「そうね……えーと、30秒で何匹たたけるか、ね」

希「あ、始まってる」

絵里「え、あ、ちょ、速っ」

希「ぷぷぷ……翻弄されるえりち」

絵里「だ、だってこれ、めちゃくちゃ速い……」

希「今なら写真撮り放題やでー」

絵里「希、誰に呼びかけて……うわあああ!? 人が集まってきた!」

194: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:19:41.66 ID:xI7ORNGV0



希「えりち、トルティーヤやって」

絵里「なんだっけそれ」

希「あのほら、巻いてるやつ」

絵里「ああ、あれね」

希「えりち食べる?」

絵里「うん」

希「何にしよか」

絵里「あ、これおいしそうじゃない?」

希「お、ウチそれにするー」

絵里「えー、ずるーい。最初に私が見つけたのにー」

希「なら半分こしよ」

絵里「ええ、そうしましょう」

195: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:22:04.92 ID:xI7ORNGV0




希「えりちー、これやってみて」

絵里「なにそれ」

希「フラフープどこまで回せるか」

絵里「ふふふ、希、私はバレエやってたのよ? そのくらい余裕よ!」

希「じゃあどうぞー」

絵里「うりゃあああ!」

希「え、えりち!? 自分が回る必要はないんよ!?」

絵里「えっ」

196: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:24:24.34 ID:xI7ORNGV0




絵里「……」

絵里(結局お昼まで遊び倒してしまった)

希「楽しかったなぁ」

絵里「そうね。見回り全然できてないけど……」

希「そこは臨機応変に」

絵里「まあそんなに広くないから大丈夫とは思うけど」

希「でもウチら、体育館とか保健室の近くとか全然行ってないよ?」

絵里「……この学校って広いのね」

希「うん」

197: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:27:10.11 ID:xI7ORNGV0
絵里「まあ……きっと大丈夫よ! みんないい子ばっかりだし」

希「えりちのその投げやりな感じ、ウチ好きやで」

絵里「な、投げやりじゃないわよ! 先生たちも見回ってくれてるし……」

希「ふふ、前のえりちやったら、自分以外に任せられないって感じやったのにね」

絵里「そう?」

希「うんうん」

絵里(あんまり覚えてないのよねぇ)

希「じゃあ部室でみんな待っとこうか」

絵里「そうね」

198: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:29:14.93 ID:xI7ORNGV0
希「なぁえりち」

絵里「んー?」

希「ライブ、絶対成功させよう」

絵里「言われなくても」

希「ふふ、そっか」

絵里「ええ。そのためにここまで頑張ってきたんだから」

絵里(このままの天気なら雨も降りそうにないし……臨時ステージに屋根をつける必要はなかったわね)

絵里(そもそも何で屋根つけたんだっけ?)

希「えりち、どうしたん?」

絵里「あ、ううん。なんでもない」

199: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/15(金) 23:32:06.19 ID:xI7ORNGV0
希「きっとみんな、お昼ご飯持ってくるで」

絵里「ええっ、私結構食べちゃったから大変かも……」

希「たぶん花陽ちゃんなんか、えりちがおにぎり気に入ってくれたからたくさん持ってくると思うよ」

絵里「こ、困ったわね……」

絵里(確かにあれはおいしかったけど、量がものすごいから……)

絵里「もしもの時は希……頼んだわよ?」

希「一応踊れるようにはしといてな」

絵里「ふふ、了解」

希「んー」

206: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:19:18.89 ID:DOerz3sZ0



にこ「あんたたち、準備はできてるわね?」

穂乃果「この焼きそばおいしいね」

ことり「うんっ」

にこ「今日でラブライブ出場が決まるのよ、大事な――――――――」

希「へー、かき氷とか売ってたんや」

凛「うん、でも溶けてて大変そうだったにゃー」

にこ「だから、ちゃんと気合入れて……」

絵里「にこ、はい、あーん」

にこ「あーん……」

絵里(……怒ってる?)

207: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:22:59.07 ID:DOerz3sZ0
穂乃果「さっきにこちゃん何話してたの?」

海未「今日のライブ、頑張りましょうと言っていったんですよ」

にこ「まあそういうことね」

真姫「言われなくてもわかってるわよ」

にこ「ならいいんだけど……この空気を見てるとねぇ」

真姫「……まあ確かに」

花陽「にこちゃんもおにぎり食べる?」

にこ「あ、いや。そういう意味で見たわけじゃ……」

絵里「花陽のおにぎりおいしいわよ?」

にこ「……いただくわ」

絵里(なんで残念そうに私を見るの……?)

208: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:25:47.17 ID:DOerz3sZ0
ことり「これを食べて、あと2時間くらいしたら本番だねっ」

凛「でもステージの最終チェックとかあるし……それ入れたらあと1時間くらいかな?」

希「そうやね。あ、穂乃果ちゃんから揚げ食べる?」

穂乃果「食べる食べる!」

海未「ちゃんと野菜も食べるんですよ?」

穂乃果「食べてるよぉ」

真姫「トマト売ってないの?」

花陽「どうだろう……悪くなっちゃうから生野菜はあんまりないんじゃないかなぁ」

209: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:29:59.86 ID:DOerz3sZ0
にこ「あー……本当に大丈夫なのかしら」

絵里「大丈夫よ。私たち、いつもこうやってきたじゃない」

にこ「……それもそれであんまりうれしくないけど」

絵里「えー?」

希「まあまあにこっち、心配ばっかりしてても仕方ないよ」

にこ「そうね。絵里のアホさを見習ってみるわ」

絵里「ひどい!」

にこ「あはは」

絵里「もー……」

絵里(そうよね。私たちはいつもこうやって頑張ってきたんだし……今回もきっと大丈夫よ)

210: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:37:29.50 ID:DOerz3sZ0
穂乃果「あ、そうそう。なんかね、地元のテレビ局の人が取材に来るって」

花陽「ええっ!?」

絵里「何それ!?」

にこ「」

穂乃果「あれ、みんなに言ってなかったっけ?」

希「ほ、穂乃果ちゃん? ウチら以外に……教えてなかったん?」

穂乃果「あれれ、教えたような気がしたんだけど……」

凛「凛は聞いたよー?」

花陽「わ、私たちは聞いてないよぉ!」

絵里「そうよ!」

211: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:39:48.36 ID:DOerz3sZ0
海未「ということは……絵里とにこと花陽だけですか? 聞いていないのは」

真姫「そうらしいわね」

ことり「穂乃果ちゃんと凛ちゃんが3人に教える予定だったんじゃなかったっけ?」

穂乃果「ああ、穂乃果が絵里ちゃんとにこちゃんに……」

凛「凛はかよちんに……」

穂乃果「……」

凛「……」

穂乃果「忘れてたね」

凛「わすれてたにゃ」

212: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:41:27.81 ID:DOerz3sZ0
花陽「凛ちゃんっ!」

絵里「穂乃果ぁ!」

凛「ご、ごめんなさい!」

穂乃果「パンがおいしくてつい……」

希「ていうかにこっち、どうしたん?」

にこ「」

真姫「……生きてるわよね?」

絵里「えっ」

海未「そんな」

にこ「勝手に殺すんじゃないわよ!」

ことり「にこちゃんそっち窓だよぉ……」

213: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:44:12.37 ID:DOerz3sZ0
にこ「だ、誰が緊張してるですってぇ!?」

海未「言ってません言ってません!」

希「にこっち落ち着いて」

にこ「落ち着いてるに決まってるじゃない」

凛「うわぁ!?」

絵里(に、にこが紙コップ握りつぶした)

穂乃果「にこちゃん、今タオルで拭くから……」

にこ「武者震いよ!」

花陽「わ、私たちよりにこちゃんの方が大変そう……」

214: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:47:59.20 ID:DOerz3sZ0



にこ「……」

絵里「にこ、落ち着いた?」

にこ「……ええ」

絵里「よかったぁ……希の言う通りね。抱きしめれば緊張がほぐれるって」

希「うーん……まあえりちパワーってとこかな」

絵里(それならみんなにできるのかしら)

にこ「ありがと。落ち着いたわ。落ち着いたから離れて」

絵里「あ、うん」

にこ「……テレビかぁ」

穂乃果「ごめんねにこちゃん」

凛「凛もごめんなさい……」

にこ「ううん、怒ってないわ」

215: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:51:51.81 ID:DOerz3sZ0
にこ「まあ結局は、μ'sを大々的にアピールするチャンスができたわけだしね」

ことり「そうだねっ」

真姫「ま、普通に動画サイトに載せるよりはいいわね」

にこ「そうそう。それにこれは海外デビューの足掛かりになるわ……」

希「野望が出てきてるで、にこっち」

花陽「か、海外!?」

にこ「そうよ! 世界を制覇したら次は宇宙よ」

穂乃果「宇宙!」

凛「夢が広がるにゃー!」

ことり「あはは……」

海未「宇宙では集客効果は見込めませんよ?」

にこ「え、いや、そうじゃなくて……」

絵里(海未って真面目ね)

216: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 00:58:54.87 ID:DOerz3sZ0
真姫「でも逆に、ここで失敗したら大変よね」

花陽「」

凛「」

穂乃果「」

絵里「ま、真姫!」

真姫「あ、ちがっ……成功すればいいってことよ」

ことり「き、緊張してきたぁ……」

希「……ま、まあ誰かが気付いたことやし、早めに意識してた方がいいのは確かやね」

海未「そうですね」

絵里(海未はなんだか余裕あるわね……なんでだろう)

217: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:02:19.12 ID:DOerz3sZ0
海未「絵里」

絵里「え? なに?」

海未「今回の事態は非常にイレギュラーです。何が起こるかわかりませんから、気を付けてくださいね」

絵里「う、うん。わかってるわ」

絵里(確かにイレギュラーね……スクールアイドルのライブにテレビ局が来るってことは、相当人気が出たってことで……うわああああ)

絵里「みんな、今は食べるのよ!」

穂乃果「わかった!」

花陽「そ、そうだね。緊張して食べてないと倒れちゃうかもしれないし……」

ことり「うんっ、食べよう!」

219: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:11:08.08 ID:DOerz3sZ0




絵里「……ついに本番かぁ」

絵里(結局みんなそわそわしちゃってたし……ああ、心配になってきた)

希「えりち」

絵里「はい」

希「まだ本番までちょっと時間あるけど……アレやってみる?」

絵里「アレ? ……ああ、円陣のこと?」

希「うん」

絵里「そうね。やってみましょうか」

絵里(みんなの緊張がほぐれるといいんだけど……)

絵里「ん? それなら私が抱きしめていった方が……」

希「えりち、それはみんな違う方に緊張するから」

220: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:14:15.91 ID:DOerz3sZ0
絵里「みんなー、集まって」

穂乃果「なになに?」

凛「そのフレーズ……日曜日の夜に聞いたことが……」

絵里「真似したつもりはありません」

ことり「どうしたの、絵里ちゃん?」

絵里「いや、ね。ここでみんなの心を1つにするのよ!」

にこ「何言ってんの」

絵里「円陣が組みたいです」

にこ「最初からそう言いなさいよ」

絵里「ぐぬぬ」

221: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:16:42.54 ID:DOerz3sZ0
真姫「でもアイドルだし、円陣ってガラじゃないわよね」

穂乃果「ぶるるんぶるるん」

真姫「ツッコまないわよ」

穂乃果「ううっ、真姫ちゃんの芸人殺し」

絵里(えっ、アイドルじゃなくて?)

花陽「アイドルらしい円陣……?」

海未「そういう時は……こうやるんですよ、ね?」

絵里(海未が手を……ああ! 重ねるのね!)

絵里「ええ、こうやって、ね」
 
224: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:20:52.94 ID:DOerz3sZ0
絵里(ん……? でもなんだか違和感があるような)

絵里「海未、ここは……ほら、こうしてピースサインにしたほうがよくない?」

海未「ええ。そうですね」

海未「……忘れていたわけではないんですね」

絵里「忘れる?」

海未「いえ、独り言です」

226: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:37:55.40 ID:DOerz3sZ0
穂乃果「じゃあ穂乃果ここにするっ! 絵里ちゃんの隣!」

ことり「私は穂乃果ちゃんの隣にしようかなぁ」

真姫「じゃあ私は海未の隣ね」

希「ならウチは真姫ちゃんの隣」

花陽「私はその隣で……」

にこ「ちょっとぉ、にこにーが真ん中よ! 花陽の隣いただきっ!」

凛「円だから真ん中はないよにこちゃん。じゃあ凛はことりちゃんとにこちゃんの間だね」

海未「さて、掛け声は……絵里、あなたに任せますよ」

絵里「うん、任せて!」

227: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:40:25.56 ID:DOerz3sZ0
絵里「まずは……点呼!」

にこ「点呼? 何で今……」

絵里「ちゃんと9人いるかどうかの確認よ」

穂乃果「なるほどぉ。絵里ちゃん緊張してるなー?」

絵里「ふふ、ちょっとね」

ことり「誰から行く?」

穂乃果「私から行くよ。みんな、被っちゃダメだよ?」

花陽「ええっ? そういうルールなの?」

希「ここは1発で決めたいなぁ……」

穂乃果「よーし、スタート!」

228: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:41:50.64 ID:DOerz3sZ0
穂乃果「1!」

ことり「2!」

海未「3!」

真姫「4!」

凛「5!」

花陽「6!」

にこ「7!」

希「8!」

絵里「9!」

229: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 01:43:29.52 ID:DOerz3sZ0
μ's、ミュージック――――――――







                     ――――――――スタート!

237: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:20:16.83 ID:DOerz3sZ0



大丈夫よ、私ならやれる。

ここまで頑張ってきたんだもの。

前とは違う。

前みたいに――――――――誰も欠けずに私は――――――――

238: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:24:21.67 ID:DOerz3sZ0




ことり「……絵里ちゃん、次の曲だよ」

海未「絵里、少し右に」

穂乃果「絵里ちゃん……?」

絵里「あ、うんっ」

絵里(何も起きなかった……)

絵里(ってそうだ。テレビの人たちが来てるんだし、恥ずかしい格好見せられないわね)

239: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:25:36.25 ID:DOerz3sZ0




誰も欠けずに?

前とは違う?

私は、いったい何と比べているの――――――――?

240: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:27:44.34 ID:DOerz3sZ0



凛「絵里ちゃん、次でラストだよ」

花陽「頑張ろうね、絵里ちゃん」

真姫「ほら、絵里はそっち」

絵里「うん」

絵里(無事に2曲目も終わった……)

絵里(……踊ってる時の記憶がない。緊張し過ぎかしら?)

241: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:29:50.41 ID:DOerz3sZ0




もしかして――――――――こうやって以前、ライブをしたことがあった?

だって見覚えがあるもの。

この景色はもっとどんよりしてて。

空は泣いているように濡れていて。




何より、思い出したくないような嫌なことが起こって――――――――

242: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:30:35.74 ID:DOerz3sZ0





――――――――でもそれ、本当に私が経験したことかしら?





243: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:32:00.49 ID:DOerz3sZ0





絵里「終わった……?」

希「えりち、まだ終わってないよ」

にこ「そうよ。絵里、挨拶が残ってる」

絵里「あっ、そ、そうよね……」




絵里「ありがとうございました!」



ありがとうございました――――――――

244: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:34:46.76 ID:DOerz3sZ0





穂乃果「……お客さん、帰っちゃった?」

凛「うん、もうみんないなくなっちゃったみたい」

希「なんかがらーんとしてる」

真姫「そうね。この屋上の様子が、正しい景色のはずなのに」

にこ「意外とファンに迫られる、みたいな展開はなかったわね。ざんねーん」

花陽「で、でも屋上いっぱいに人が集まってたよねぇ……今思うとすごいなぁ」

ことり「でも、私たち……ちゃんとできたよね?」

海未「はい。無事に終わらせることができました!」

245: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:37:22.30 ID:DOerz3sZ0
にこ「だーかーら、これからが始まりでしょ?」

海未「ふふ、そうでしたね」

ことり「なんだか実感わかないけど……私たち、ちゃんとできてたよね?」

凛「うん! みんなちゃんとできてたよ!」

真姫「ええ、どこもおかしなところはなかったわ」

穂乃果「うんっ! 練習の成果だね!」

花陽「まだお客さんの拍手が耳に残ってるよぉ」

希「うん、すごかったもんなぁ……。ね、えりち」

絵里「……」

希「えりち?」

絵里「え、は、はい!」

246: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:41:53.52 ID:DOerz3sZ0
にこ「どうしたのよ。まだ緊張してるの?」

絵里「あ、いや。違うのよ。ちょっと考え事してて」

凛「そう言うにこちゃんも、手が震えてるのバレバレにゃー」

にこ「うっ」

花陽「ふふ、でも……私たち、精一杯やれたよね?」

ことり「これ以上ないってくらいね」

海未「ええ、そうですよ」

穂乃果「……よく考えたら穂乃果たち、テレビに出たんだよね? それって今考えると……」

凛「……ま、真姫ちゃん。凛のリボン、曲がってなかった?」

247: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:43:30.87 ID:DOerz3sZ0
真姫「今更確認してどうするのよ」

凛「で、でもぉ……」

希「にこっち、口に焼きそばのソースついてる」

にこ「ええええええええ!?」

希「じょ、冗談やってにこっち」

にこ「……許さないわ」

希「や、やめてーっ!」

ことり「あ、そんなに暴れちゃダメだよぉ!」

穂乃果「そうだよ。ここ、ステージの裏なんだから……倒れちゃったらどうするの!?」

真姫「それはないわよ」

穂乃果「えへへー、だよね」

248: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:44:30.78 ID:DOerz3sZ0



違う。

違う。

私の思ってることは、考えていることは1つ違う。




 

251: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:49:01.54 ID:DOerz3sZ0



誰かがそう言ってる気がする。

私をさっきから、ずっと呼んでる誰かがいる。


252: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:50:02.81 ID:DOerz3sZ0



それは誰なんだろう。

私はそれを覚えてるはずなのに。

知らないわけがないはずなのに。



253: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:50:33.87 ID:DOerz3sZ0



何が違うの?

もしかして――――――――




254: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:51:19.12 ID:DOerz3sZ0





――――――――私が感じる既視感が違うって言うの?




255: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:55:08.63 ID:DOerz3sZ0
絵里「それなら……納得がいくわ」

希「えりち?」

絵里「ううん、何でもないわ」

絵里「ほら、早く着替えて穂乃果たちのクラスに行かないと」

穂乃果「ああっ、そうだった! 早くしないとみんなで回れなくなっちゃう!」

凛「かき氷も溶けちゃうにゃ!」

花陽「か、かき氷?」

凛「そうだよかよちん。出し物においしそうなかき氷があってね」

真姫「ほら、早く着替えなさい」

256: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/17(日) 23:57:42.34 ID:DOerz3sZ0
にこ「ちょ、絵里。何で私の服掴むのよ」

絵里「あれ? 着替えさせなくていいの?」

にこ「」

ことり「ふふ、にこちゃんいいなぁ」

海未「そうですね。うらやましいです」

にこ「ば、バカにするんじゃないわよ!」

絵里「あはは、ごめんごめん」

にこ「絶対反省してないわよね……覚えてなさい!」




絵里(だって私は、最初からここにいたじゃない)

絵里(テレビに出る経験だって、こうしてライブ終わりに語り合うのだって初めてなのよ?)

257: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/18(月) 00:32:59.94 ID:CP4kmUX70
海未「絵里?」

絵里「え? なに?」

海未「あ、いえ……少々眠たげだったので」

絵里「そう?」

海未「はい、疲れているように見えましたよ?」

絵里「ライブ中は大丈夫だったかしら……」

海未「はい。大丈夫でしたよ」

絵里「ほんと?」

海未「ええ。それに雨も降らずにいい天気でしたし……私は思い残すことはありませんよ」

絵里「なんか死んじゃうみたいで縁起悪くない? 私たちはまだまだこれからなんだから」

海未「そうですね。絵里はまだやることがありますから」

258: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/18(月) 00:36:09.35 ID:CP4kmUX70
絵里「え? 海未も一緒よ?」

海未「ふふ……私は少し、休憩したいんです。あともう少しだけここに留まっているのが精いっぱいな気がするんです」

絵里(それは……疲れて眠いから早く帰りたい、とかそういう類のものかしら)

絵里「それなら今日は、早めに眠ることをオススメするわ」

海未「そうですね。私が倒れたら受け止めてくださいよ?」

絵里「ええ、任せなさい」

絵里(私も前倒れたし……支えるのは私の役目よね?)

259: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/18(月) 00:38:23.87 ID:CP4kmUX70
――――――――

絵里「……」

希「あれ、えりちの寝言がなくなったなぁ」

花陽「そうだね。さっきまでは色々言ってたのに……大丈夫なのかな?」

希「たぶん大丈夫やとは思うよ? さっきも一定間隔で黙ってた時あったし」

花陽「そっかぁ……もしかして寝てるのかな?」

希「ん、そうかも」

花陽「夢の中で眠るって、なんだかちょっと神秘的かも」

260: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/18(月) 00:41:51.39 ID:CP4kmUX70
希「そうやね。まあ眠りすぎもよくないんよ」

花陽「そうなの?」

希「うん。ウチもあっちに行ってて気付いたんやけど、長いこと寝すぎると記憶があやふやになってまうんよ」

花陽「え、ええっ!? それって……何日とか何ヶ月とか?」

希「ううん、そんなのじゃなくて、同じ日に長く眠りすぎると、ちょっと」

花陽「そうなんだぁ……」

希「でも心配しなくても大丈夫やで。ちゃんと自分の後悔を覚えてたら、帰り道はわかるから」

花陽「そうなの?」

希「うん。ウチの経験上、そうやったもん」

――――――――

274: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/18(月) 23:58:45.19 ID:CP4kmUX70



絵里「それでそれで、夢の国って言うのは……」

穂乃果「もうすぐ着くから待っててね」

絵里(楽しみね。どんな夢なのかしら)

海未「穂乃果、夢の国とはどういうことですか?」

穂乃果「え? だって遊園地とかには絶対あるでしょ?」

海未「ですが……」

ことり「うーん……まあサプライズってことでいいんじゃないかな?」

海未「まあ、それもそうですね」

絵里「希、何だと思う? メリーゴーランドとか?」

希「えりちは素直すぎるなぁ……」

にこ「もうオチが読めてきたわよ」

275: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:01:39.94 ID:tAzZ2WFB0
真姫「何なのかしらね」

凛「あ、真姫ちゃんも楽しみ?」

真姫「まあ、少しは」

花陽「でも何なんだろう……夢の国、夢の国……」

凛「凛知ってるよー。夢の国って言うのは3つの黒い円が――――――――」

希「凛ちゃんその話はやめよか」

凛「え? なんで?」

にこ「大人の事情よ」

凛「なんだかかっこいいにゃ」

276: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:03:59.42 ID:tAzZ2WFB0
穂乃果「はい、つきました!」

絵里「えっ? どこどこ?」

穂乃果「ここだよ、ここ」

絵里「……」

絵里「……え?」

希「あー、やっぱりなぁ」

にこ「そうだと思ったわ」

絵里「ほ、ほのっ……夢の国って……」

穂乃果「そうです……遊園地なら絶対ある、夏の定番スポット――――――――」




穂乃果「心も冷えて気分は夢心地のお化け屋敷!」

277: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:07:00.89 ID:tAzZ2WFB0
凛「わー! 楽しそう!」

花陽「結構本格的だねぇ」

真姫「おばけ役は誰なの?」

ことり「ま、真姫ちゃん!? そんな夢のないこと聞かないでよぉ!」

真姫「ああ、ごめんごめん」

穂乃果「クラスのみんなで頑張って作ったんだよ!」

希「あれ? 穂乃果ちゃんたちお手伝いしてたん?」

海未「はい。少しの間ですが、一般のお客さんが来るまでの1時間だけ」

ことり「衣装のチェックしたり、メイクしたりしたんだよ」

にこ「へー……でも確かになかなか雰囲気あるわね」

278: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:10:44.87 ID:tAzZ2WFB0
穂乃果「でしょー? 最初はみんなに見せたかったんだよ」

穂乃果「だけど穂乃果は急いでたから、絵里ちゃんたちに会いに行ったときメイク忘れてたんだ。えへへ」

にこ「いや、メイクしてこなくて正解だったわ」

穂乃果「え?」

絵里「……」

にこ「絵里、こんなになってるもの」

希「物言わぬ生徒会長……学校の七不思議みたいやん」

真姫「ちょっと絵里、しっかりしなさいよ」

絵里(しっかりしてるわ! 大丈夫よ!)

絵里「こ、怖い……」

希「たぶんえりち、混乱して本音と建前が逆になってる」

282: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:29:56.06 ID:tAzZ2WFB0
亜里沙「あ、お姉ちゃん!」

絵里「え? 亜里沙?」

穂乃果「亜里沙ちゃん! どうしてここに?」

亜里沙「えーっと……そのぉ……」

海未「?」

絵里(どうしたんだろう……あ、もしかして)

絵里「サインもらいに来たの?」

亜里沙「ぎ、ぎくっ!」

希「わかりやすい姉妹やなぁ」

絵里「え、そう?」

にこ「その意外そうな声はどこから出てるのよ」

283: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:30:34.10 ID:tAzZ2WFB0
絵里「でも意外ね。亜里沙、そんな欲しがるタイプじゃないのに」

亜里沙「それはね、雪穂に聞いたら穂乃果さんはサインを配ってるって言ってたから、もしよければと思って」

にこ「穂乃果……?」

穂乃果「ち、違うよ! ただ近所でサイン欲しいって人が多かったから……その……」

ことり「穂乃果ちゃん、断るの苦手だもんね」

穂乃果「はい……」

絵里「まあいいんじゃない? 悪いことではないし」

にこ「えー!? サインよサイン!」

にこ「これから売れ行く未来が決定したと言っても過言ではないμ'sのメンバーのサインよ!」

花陽「う、売れ行く!?」

にこ「そうよ。あんたたちがいて、ラブライブ優勝できないわけないじゃない」

284: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:31:43.23 ID:tAzZ2WFB0
凛「に、にこちゃん……」

真姫「信頼してくれてるのね」

にこ「ええ、もちろんよ。ここまで来たら一蓮托生で死なばもろともの精神で行くわ」

絵里(不吉すぎる)

希「あれ? でも雪穂ちゃんは?」

亜里沙「ああ、雪穂は家の手伝いをするって言って帰っちゃって……」

穂乃果「え? 今日ってそんなに忙しい日だっけ?」

ことり「穂乃果ちゃん、私たちテレビに出たんだよ」

穂乃果「あ……」

花陽「よく考えると私たち、ものすごいことしてたんだね……」

海未「そうなりますね」

285: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:34:55.13 ID:tAzZ2WFB0
希「実感わく?」

絵里「ううん、全然」

絵里(というかライブ中の記憶もあやふやなくらいだし)

亜里沙「あ、今からみなさん何か用事でしたか?」

穂乃果「あ、ううん。そんな大したことじゃないよ」

亜里沙「……インタビューとかないんですか?」

希「ああっ、この天然具合えりちそっくり」

真姫「わかるわ」

絵里「えっ」

亜里沙「?」

286: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:45:45.61 ID:tAzZ2WFB0
穂乃果「そうだ、亜里沙ちゃんもお化け屋敷に一緒に入る?」

亜里沙「えっ、いいんですか!?」

海未「はい。今の時間帯は、私たちの貸切ですし」

花陽「え? どういうこと?」

ことり「クラスのみんながね、最後はμ'sだけで楽しんでほしいって言ってくれたの」

凛「そうなんだ……じゃあ思いっきり楽しまないと!」

穂乃果「うんっ! 私たちは中に入って準備するから、その間に入る順番を決めておいてね」

絵里(あ、それなら……)

ことり「ああ、3人以上入っちゃうと通路が込み合うから、2人組で来てね」

絵里(1人余る)

287: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:50:18.07 ID:tAzZ2WFB0
絵里「……どうやって決めましょうか」

絵里(1人は嫌だ……)

亜里沙「やっぱりここはあみだくじとかがいいと思う!」

にこ「姉妹でこの空気の差……」

希「えりち、だいぶグロッキーやね」

真姫「そりゃあ夢の国から突き落とされたわけだし」

花陽「だ、誰か絵里ちゃんと一緒に組まなきゃ……」

凛「よーし、じゃあ凛があみだくじ作るよ!」

希「えりちのフォローお願い」

凛「任せて!」

288: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:53:31.26 ID:tAzZ2WFB0



凛「できたよ!」

希「おお……」

にこ「あからさまに1本だけ別のところにあるわね」

凛「これを選ぶと1人になっちゃうから、絵里ちゃんにバレないようにね」

真姫「まあ7本もあるし、絵里がそう簡単に選ぶはず……」

絵里(なんだろう。この1本だけ目立つ線は)

絵里(これを選べば……もしかしたら誰かとペアになれるかも!)

絵里「私これにするわ」

希「」

にこ「」

凛「」

289: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 00:56:42.20 ID:tAzZ2WFB0
希「え、えりち。考え直そう?」

絵里「ダメよ。私はこの線に運命を感じたもの」

花陽「え、絵里ちゃん。ほら、こっちのとかにしない?」

絵里「これがいいの。お願い」

絵里(きっとこれだわ。私を闇から救ってくれる希望の光はきっとこれよ!)

真姫「絵里……落ち着いて。それだけ変な位置にあると思わない?」

絵里「だからこそオンリーワンなのよ」

亜里沙「じゃあ亜里沙はこっちにするね」

絵里「ペアになれるといいわね」

亜里沙「うんっ」

290: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/19(火) 01:00:22.06 ID:tAzZ2WFB0
花陽「ど、どうしよぉ……」

凛「り、凛があんな風に書いちゃったから……」

希「……まあ大丈夫やって、死んじゃうわけやないもん」

にこ「そうね。何かあったら穂乃果たちが何とかするだろうし」

真姫「ええ、所詮お化け屋敷なんだから」

にこ「……絵里、怖くなったら出てきていいからね」

凛「怖かったら凛たちを呼んでね! すぐ駆けつけるから!」

絵里「だ、大丈夫よ。私はそんなに怖がりじゃないってば……」




絵里(やだ、そんなに怖いのかしら……)

296: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:30:29.36 ID:CoaUCf7+0



絵里(……結局1人になった)

希「え、えりち。元気出して」

絵里「うん……」

絵里(すごく怖いわ)

亜里沙「お姉ちゃん、こんなときは楽しまないと! えいえいおー!」

絵里(ツッコむ気力もない……)

凛「絵里ちゃん、みんなちゃんと外にいるから大丈夫だよ!」

絵里(外かぁ……遠いなぁ)

297: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:33:32.90 ID:CoaUCf7+0
花陽「絵里ちゃん、すぐに終わるから大丈夫だよぉ」

絵里(子どもの頃、注射するときもそんなこと言われたわね……痛かったなぁ)

真姫「しっかりしなさいよ絵里。この世の終わりってわけじゃないんだから」

絵里「うん……」

にこ「とりあえずその体育座りやめなさい。パンツ見えるわよ」

絵里「」

真姫「あ、立った」

希「おお、さすがにこっち」

にこ「ふふん」

298: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:39:51.98 ID:CoaUCf7+0
凛「そうだ! 絵里ちゃんは怖くないように、最後に入るのはどう?」

絵里「最後?」

花陽「あ、そうだね。みんなの反応を見れば、ちょっとは安心できるかもしれないよ?」

希「ああ、どこで穂乃果ちゃんたちが出てくるかわかるってことやね」

絵里(そ、そっか。驚かされる場所がわかれば怖く――――――――)

絵里「……でもやっぱり暗いの怖い」

亜里沙「電気つけてもらう?」

絵里「それなら……」

真姫「それ、もはやお化け屋敷じゃないわよ」

299: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:43:44.27 ID:CoaUCf7+0
穂乃果「みんなー、準備できたよー」

にこ「準備できたみたいよ」

絵里(私の心の準備はできてないわ)

真姫「絵里、部屋の中に入っててもこのくらいの声が聞こえるなら大丈夫じゃない?」

絵里「なるほど」

希「ウチらが外からえりちを呼んでれば、怖くなくなるんと違う?」

絵里「それはちょっと恥ずかしい」

花陽「そ、そっか……どうすれば……」

穂乃果「最初は誰にするのー?」

凛「あ、じゃあ凛たちにしよっ! 行くよ真姫ちゃん!」

真姫「え、ちょ、ちょっと……!」

300: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:46:36.87 ID:CoaUCf7+0
穂乃果「2名様ごあんなーい!」

希「あれ、穂乃果ちゃん入り口に見えてなかったけど……」

にこ「3人だから、おばけ役で出てるんでしょ」

希「あー、なるほど」

絵里(どれくらい怖いのかしら……)

亜里沙「楽しみですね、花陽さん」

花陽「え? 楽しみ……あ、うん。そうだねっ」

にこ「どうして姉妹なのにそこは似なかったの?」

絵里「そうね。なんでかしらね」

301: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:48:41.85 ID:CoaUCf7+0


「あれー? お化け出ないよー?」

「そんなにすぐ出るわけないでしょ」


絵里(あ、結構聞こえるのね)

絵里(周りが静かだからって言うのもあるのかも……本当にこのあたりは人いないし)


「んー……あ、真姫ちゃん。何かあるよ」

「え? どれ?」

「ほら、これ――――――――」





「にゃあああああああああああああああ!?」



絵里(!?)

302: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:53:23.54 ID:CoaUCf7+0


「ま、まきちゃんっ!?」

「凛、落ち着いて」

「まきちゃんまきちゃん!」

「わかったから……く、苦しい……」


絵里(えっ、の、呪い!?)

希「えりち、そんな顔で考えてることはきっと違うで」


「真姫ちゃん……」

「私はここにいるから。抱き着くのはやめて。わかった?」

「うん……」


絵里(なんだ、抱き着いてただけね)

303: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 00:56:50.92 ID:CoaUCf7+0


「凛、しっかりして。これは作りものだから」

「で、でも……凛が昨日食べた手羽先に似てて……」

「……何よそれ」


にこ「ぶふっ」

花陽「ああ、そっか。チキンスープの中にあった……」

絵里(手羽先が落ちてる……逆に怖いわ)


「あ、ことりちゃん!」


にこ「最初はことりなのね……」

亜里沙「ドキドキしてくるなぁ」

絵里「私もよ」

絵里(怖くてね)

304: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:00:51.24 ID:CoaUCf7+0


「よかったにゃー、ことりちゃんがいてくれて……」

「あ、凛ちゃんに真姫ちゃん。いらっしゃい」

「おじゃまします!」

「普通にしゃべるのね」


絵里(なんだ。それならあんまり……)


「凛ちゃん、真姫ちゃん、ここからは……あっ」

「えっ……」


希「ん? 今なんか、音した?」

にこ「ゴトって音がしたわね」


「ひっ……い、いやにゃああああああああああ!?」


絵里(!?)

305: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:04:20.29 ID:CoaUCf7+0
凛「うわあああああああん! にゃああああああ!」

絵里「うわっ、り、凛!? 大丈夫!?」

花陽「凛ちゃん!?」

凛「絵里ちゃん! かよちん!」


「ちょっと凛、駆け抜けることないでしょ」

「あはは、びっくりさせすぎちゃったかなぁ?」


凛「怖いにゃ! あれはひどいよことりちゃん!」


「えへへ、ごめんごめん。真姫ちゃんそれとって」

「はいはい。ていうか凛、よく壁にぶつからずに外に出られたわね」


凛「……超音波?」

にこ「あんた、こうもり……こうもりんだったのね」

凛「……ちょっと寒くないかにゃ?」

306: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:07:40.08 ID:CoaUCf7+0
亜里沙「凛さん、何があったんですか?」

凛「あのね、ことりちゃんの……」

絵里「……」

凛「……言ったら絵里ちゃん、気絶しそうだからやめとく」

絵里「ぎくっ」

真姫「そうね。やめた方がいいわ」

にこ「真姫ちゃんは案外怖がらないのね」

真姫「知り合いが出て来るってわかってるから当然よ」

希「うーん、でも凛ちゃんの驚きようを見たら、結構ハードなんが来そうやね」

307: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:10:47.20 ID:CoaUCf7+0
穂乃果「あれれ? 穂乃果の出番なかったの?」


「私の出番もありませんでしたね」


穂乃果「ざんねーん。じゃあ次は誰と誰が来るの?」

花陽「亜里沙ちゃん、どうする?」

亜里沙「はい! 行きたいです!」

花陽「にこちゃん、希ちゃん。それでいいかな?」

にこ「ええ」

希「うん。いいよ」

穂乃果「2名様、ごあんなーい!」

308: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:14:25.50 ID:CoaUCf7+0


「あ、雰囲気がすごいなぁ……」

「ワクワクしますね!」

「そう言われるとそうかも」


絵里「え、花陽って怖いの大丈夫なの?」

凛「かよちんはよくびっくりするけど、凛みたいに慌てたりしないんだ」

絵里(そうなんだ……)


「最初は凛ちゃんの言ってた手羽先が……」

「あれですか?」

「あ、そうだね」


真姫「手羽先で通るのね……」

希「ちょっと怖くなくなったんやない?」

絵里「うん、ちょっとだけね」

309: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:16:38.67 ID:CoaUCf7+0


「あれ? でも、これって人の……」


絵里(人の……?)


「花陽ちゃん、亜里沙ちゃん」

「ことりさん?」

「そうだよぉ」


絵里(き、来た!)

真姫「凛が怖くて逃げだしたところね」

凛「ま、真姫ちゃん!」

真姫「ふふ、ごめんごめん」

310: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:18:58.63 ID:CoaUCf7+0


「ああ、そうだ。そこに落ちてるの、私のなんだ」

「そこに落ちてるって……まさか……」

「手羽先ですか?」

「あはは、手羽先じゃなくてね、これは――――――――」


絵里(……花陽の言ってた、人のっていうのはもしかして)




「それ、私の足なんだ。あ、腕もとれちゃった」



絵里「」

311: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:23:41.28 ID:CoaUCf7+0


「あ、足……本当だ、よく見たら足の形してる……」

「ことりさん、どうやって立ってるんですか?」

「えっ」


絵里(あし、あし……)

真姫「え、絵里。凛と同じ行動するのやめて。絞まってるから」

絵里「あ、ご、ごめんなさい」

希「亜里沙ちゃんフリーダムやなぁ」


「片方の足で立つ……まさか、これが1本足打法?」

「あ、亜里沙ちゃん? どこで覚えたの?」

「打法じゃないよ? それより足と腕をとってほしいなぁ……」


にこ「あの音は腕がとれた音だったのね」

絵里「それはびっくりするわ……」

凛「うん。すっごくびっくりしたよ……」

312: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:26:08.13 ID:CoaUCf7+0


「足……でも、骨だけになってるけどいいの?」

「うん。大丈夫だよ」

「じゃあ……ひゃあっ!?」

「花陽さん!?」


絵里「こ、今度は何!?」


「す、スライムがついてた……」


真姫「用意周到ね……」

絵里(び、びっくりした)

にこ「スライムかぁ……」

希「うーん、どのくらい怖いんやろ」

313: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:29:48.40 ID:CoaUCf7+0
「はい、これ」

「ありがとう。これで私も成仏できるよっ」


にこ「ずいぶん明るいわね」

真姫「そうね」


「このままちょっと進んでから右に曲がると、次のチェックポイントに着くよ」

「チェックポイントですか?」

「うん、気を付けてね」


凛「次は誰なんだろう……」

希「穂乃果ちゃんか海未ちゃんやんな?」

絵里(ん? でも右ってことは、この教室の奥に向かうってことよね?)

絵里(だとしたら、穂乃果は近い方から聞こえて来るから……次は海未かしら)

314: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 01:34:03.03 ID:CoaUCf7+0


「えーっと、ここを曲がって……」

「あ、これって壁なんですか?」

「うん。そうみたいだよ」


絵里(あ、やっぱり声が遠ざかっていく)

にこ「そんなに見えないものなの?」

凛「うん。ほとんど見えないから壁伝いに行くんだよ」

真姫「凛は駆け抜けたけどね」

凛「うん」


「チェックポイント、どこかなぁ……」




「――――――――呼びましたか?」


絵里「!」

にこ「この声……海未ね」

319: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 21:49:03.60 ID:CoaUCf7+0


「う、海未ちゃん……?」

「ええ、私は海未ですよ」


希「ちょっと聞こえづらいなぁ」

にこ「気になるわね」

絵里(海未はどんな役を……)


「ああ、血のニオイがしますね……生きている人間の血のニオイが!」

「ひゃあっ!?」


絵里「!?」

真姫「声だけでもかなり……」

絵里(そ、そういえば亜里沙は? さっきから声が聞こえないけど……)

320: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 21:58:57.56 ID:CoaUCf7+0


「血ってまさか……ことりちゃんの足のこと?」

「そんなことどうでもいいんです……私は今、とても血を欲しているんですから……血を!」


希「う、海未ちゃんってあんなキャラやった?」

にこ「……なんか乗り移ってんじゃないの」

絵里「えっ」


「私にもその生をくれませんか……? あなたの命を……この刀の錆に――――――――」

「海未さんストップ! そのポーズもう1回お願いします!」

「えっ」


絵里(……亜里沙の声だ)

321: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:04:16.90 ID:CoaUCf7+0


「あ、亜里沙ちゃん?」

「くっ、カメラを持ってきていなかったことが悔やまれます……」

「ま、待ってください亜里沙、その……」

「そのままキープしてください! 海未さん素敵です!」

「え、あ、ありがとうございます……」


絵里(あれぇ……?)

凛「かよちんが置いてけぼりにゃー」

にこ「亜里沙ちゃん、本当に怖いもの知らずね」

絵里「何で私を見ながら言うの?」

322: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:33:36.58 ID:CoaUCf7+0
穂乃果「だ、ダメだよ! 撮影は困ります!」


「あ、あともう少しだけ目に焼き付けさせてください!」


穂乃果「海未ちゃんが武士の格好しちゃうのバレちゃうからダメだよぉ!」

絵里(あ、そうなんだ)

希「穂乃果ちゃんの声でバレてるで」

穂乃果「あっ」


「また後で、この格好のまま出ていきますから。その時にちゃんと見せますよ」

「ありがとうございます!」

「よかったね、亜里沙ちゃん」

「はいっ!」


絵里(何だろう、この微笑ましい会話は……)


323: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:41:07.43 ID:CoaUCf7+0


「では出ましょう、花陽さん」

「うん」

「海未ちゃん、私の足とってー」

「あ、今行きます」


凛「準備中って感じだね」

真姫「そうね」

花陽「みんな、ただいまー」

希「おかえりー」

亜里沙「楽しかったぁ……」

穂乃果「あ、あれ!? 穂乃果の出番は!?」

にこ「え、出てこなかったの?」

324: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:44:33.77 ID:CoaUCf7+0
穂乃果「うう、次は出るもん!」

絵里(お化け屋敷ってそんなシステムだったかしら)

穂乃果「次は……にこちゃんと希ちゃんだね。きっと驚かせるよぉ……」

にこ「やれるもんならやってみなさい。行くわよ希」

希「はーい」

絵里「あ、これが終わったら私の番かぁ……」

亜里沙「大丈夫だよ! すごく楽しかったから!」

絵里(ごめんね、お姉ちゃん、亜里沙の言うこと信じられないの)

325: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:48:54.08 ID:CoaUCf7+0
真姫「まあ怖いって言うか、びっくりするだけよ」

凛「そうだよ。顔はみんなの顔だから、全然怖くなんか……」

花陽「え? ことりちゃん、メイクしてたよね?」

凛「えっ……?」

真姫「……凛、何見たのよ」

絵里「」

穂乃果「2名様、ごあんなーい!」

326: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:54:36.57 ID:CoaUCf7+0


「あー。なかなか雰囲気あるわね」

「そうやね」

「あ、これが手羽先ね」

「うん、そうみたい」


真姫「スムーズね……」

凛「で、でも次はきっとびっくりして……」


「にこちゃん、希ちゃん」

「ことり、骨は拾っといたわよ」

「え、あ、ありがとう」

「端っこの方がベタベタしてないから、そこを持つんよ」

「うん」


絵里(……怖がる素振りすらない)

327: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 22:59:14.96 ID:CoaUCf7+0


「待ってください」

「海未? どうしたの?」

「いえ、私を無視して通り過ぎようなんて……」

「海未ちゃん、もしかしてその衣装、弓道のやつ?」

「え? そうですが……って違います! 私はあなたたちの――――――――」

「こちょこちょー!」

「わっ、ちょ、ちょっとっ!? やめっ、あはは。あはははは!」


花陽「楽しそうだねぇ」

凛「こ、こんなのお化け屋敷じゃないにゃあああ!」

328: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:06:32.06 ID:CoaUCf7+0


「さて、次は穂乃果ね」

「どんなのが来るんやろ」


亜里沙「あ、あの海未さんまでも倒してしまうなんて……」

絵里「そういうアトラクションだっけ……?」


「穂乃果ー、出てきなさーい」

「んー、どこにいるんかな?」


穂乃果「ふっふっふ、すぐ近くだよっ」

凛「え?」

穂乃果「穂乃果は――――――――



――――――――ここだよ!」



真姫「え、今変な音が……」


「ぬーりーかーべー!」

「うわぁ!?」

「きゃああああああ!」

329: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:13:05.65 ID:CoaUCf7+0


「がおー!」

「……ってなんだ。壁かと思ったら穂乃果だったのね」

「穂乃果ちゃん、顔だけ出てるやん。かわいいなぁ」

「ええっ!? もっと驚いてよぉ!」


凛「今のって壁が動いた音だったの?」

真姫「何か引きずってるみたいな音でびっくりしたけど、そんなことだったのね」

絵里(何かの唸り声かと思った……)


「あ、ここがゴール?」

「そうだよ……もっとびっくりしてほしかったなぁ」

「壁が動くって言うのは悪くなかったで」

「だよねっ!」


絵里(おばけと普通に話してる)

330: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:39:49.00 ID:CoaUCf7+0
にこ「結構それっぽかったわね」

希「うん」

凛「2人とも、怖くなかったの?」

にこ「場所はわかってるんだから、当たり前じゃない」

絵里「すごい……」

真姫「次は絵里の番よ」

絵里「はっ」

亜里沙「お姉ちゃん、頑張ってね」

絵里「う、うん」

絵里(希とにこの反応からするに、そんなに怖くなさそうだけど……)

331: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:44:04.33 ID:CoaUCf7+0


「ちょ、ちょっと待って!」

「絵里ちゃん、穂乃果ちゃんが元の位置に戻るまで待っててくれないかな?」


絵里「え、どうしたの?」

にこ「穂乃果はね、ダンボールの壁の一部を切り取って、そこの裏に隠れてたの」

希「だからぴったりはめ込むまで時間がかかるんよ」

絵里(ああ、だから近くで聞こえたのね)


「穂乃果、順序を入れ替えましょうか」

「え?」

「私が時間を稼いでいる間に、ことりと穂乃果は用意しておいてください」

「な、なるほど!」

「じゃあ海未ちゃん。穂乃果ちゃんは私に任せてね」

「はい」

332: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:46:23.86 ID:CoaUCf7+0
絵里(最初は海未かぁ……)


「絵里、どうぞ」

「違うよ海未ちゃん。1名様、ごあんなーい、って言わなきゃ」

「1名様、ごあんなーい」


凛「棒読みだにゃ!」

絵里(……よし、行くわよ。海未なら怖くない……怖くない!)

絵里「お邪魔します!」

花陽「絵里ちゃん、普通に何も言わなくてもいいと思うよ」

絵里「あ、そっか」

333: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:52:43.36 ID:CoaUCf7+0


絵里「……」

絵里(暗い)

絵里(怖い)

絵里(帰りたい)

海未「絵里」

絵里「!?」

海未「そんなに驚かないでくださいよ。私はメイクなんてしていませんから」

絵里「……ほんとだ」

334: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/20(水) 23:55:02.51 ID:CoaUCf7+0
絵里「で、でも腕がとれたり足がなくなったり……」

海未「ふふ、しませんよ。私はただあなたと話がしたいだけです」

絵里「話……?」

海未「はい」

絵里(話って何かしら)

海未「これはあまり聞かれても困りますし……そうですね。ここのダンボールをずらしておきましょう」

絵里(聞かれたら困る?)

335: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/21(木) 00:18:29.75 ID:8T59VAik0
海未「まあ、簡単なことです」

海未「……別れの挨拶をしておこうと思いまして」

絵里「別れって……」

海未「大丈夫ですよ。ちゃんと……こっちの私にあとは任せますから」

絵里「海未、こっちの私って」

海未「絵里、もう時間がないんです」

海未「……やっぱり、あなたといると満たされてしまいますね」

336: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/21(木) 00:19:53.72 ID:8T59VAik0
海未「私が伝えたいのは、この一言です」

絵里「待って海未、行かないで――――――――」




海未「ありがとうございました。それと……」




――――――――私のことを受け止めてくださいね――――――――

337: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/21(木) 00:21:36.64 ID:8T59VAik0
絵里「海未!?」

海未「わ、っと……」

海未「あれ? ここは……ああ、お化け屋敷の中で……」

絵里「海未」

海未「え、絵里!? どうしてここに!?」

海未「あ、ど、どうやって驚かせるんでしたっけ……?」

338: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/21(木) 00:26:14.91 ID:8T59VAik0
絵里(行かないで、って……それは何に対する言葉だったの?)

絵里(……わからない、わね)





――――――――私、1人ぼっちになっちゃった――――――――


――――――――そんな感じがする――――――――





339: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/21(木) 00:28:52.59 ID:8T59VAik0
絵里「前にもこんなこと、どこかで……」

海未「……絵里? どうしました?」

絵里「いや、なんでもないわ」

絵里(何でだろう。みんなはちゃんと、私の側にいてくれるのに)





絵里(すごく、さびしい)

344: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:43:55.73 ID:59xkUy+u0




絵里(結局何だったんだろう。あの変な感じは)

絵里(……考えても仕方ないわね。今はそれよりも、ことりとの留学に向けて準備しなくちゃ)

絵里「着替えと……あとはなんだっけ?」

絵里(全然考えがまとまらないわね……やっぱり、今日は疲れたのかしら)

絵里(帰って来る間の記憶も曖昧だし)

絵里「ちょっと寝ようかしら」

絵里(うん、まだ3日後まで時間はあるし……今日くらい休憩したっていいわよね……?)

345: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:45:47.51 ID:59xkUy+u0
絵里「あ、お風呂入らないと……」

絵里「パジャマは……あれ」

絵里(私、もうお風呂入ったわよね?)

絵里(パジャマを着てるし……)

絵里「ああ、寝ぼけてるのかしら」

絵里(また熱が出てきたら大変よね。今日はやっぱり早めに寝ましょう)

絵里「おやすみなさい……」





346: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:48:01.16 ID:59xkUy+u0
――――

絵里「んん……」

希「あれ、えりちの反応が薄いような……」

花陽「確かに、はっきりとは話さなくなったね」

希「うーん、ちょっと心配やなぁ」

希「……見に行ってみようかな」

花陽「ああ、前みたいに?」

希「そうそう」

347: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:50:00.52 ID:59xkUy+u0
花陽「あ、今呼び鈴が……」

希「ん、誰やろ。亜里沙ちゃんは今遊びに行ってるし、ウチが出るよ」

花陽「うん、お願いするね」

希「はいはい、どちら様ですかー?」

海未「私です。海未です」

希「海未ちゃん?」

海未「はい、絵里のことで少し話が……」

348: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:52:52.97 ID:59xkUy+u0
希「ああ、なら入って。海未ちゃんもおまじない、やってたんやろ?」

海未「はい。それで気になることが――――――――」

海未「……う」

希「海未ちゃん!?」

海未「大丈夫です。少しめまいがしただけで」

希「……起きてすぐ来たん?」

海未「ええ、まあ」

希「言ったやろ? 起きてすぐはふらつくかも、って」

海未「すみません。ですが重要なことですので」

349: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:55:36.93 ID:59xkUy+u0
希「とりあえず中に入ろ。海未ちゃん、そのままやったら……」

海未「あ、あれ……力が―――――――――」

希「わ、海未ちゃん!」

海未「……」

希「……寝ちゃった、かぁ」

希「何とか受け止められたからよかったものの、海未ちゃんが道端で倒れてたりしたら大変やったんよ?」

希「でも重要なことって一体、何のことなんやろ……」

351: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 00:59:16.53 ID:59xkUy+u0
花陽「希ちゃん、どうしたの……って海未ちゃん!?」

花陽「海未ちゃんがどうして?」

希「海未ちゃんにも実は、おまじない教えてたんよ」

花陽「そうだったんだ……でも、寝てるの?」

希「そうやね。ウチもなったことあるよ」

花陽「え?」

希「最後に、もう少しあっちにいたかったって気持ちが出てると、同じように寝ようとするん」

希「花陽ちゃんはそんなんはなかったと思うけど、どうやった?」

花陽「うん、私は大丈夫だった」

352: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 01:02:08.25 ID:59xkUy+u0
希「海未ちゃん、何かに気付いたんかも……」

花陽「絵里ちゃんのことに?」

希「うん」

海未「……」

希「まあすぐ起きると思うから、中で寝かせとこ」

花陽「その寝ちゃったのって、おまじないの効果はあるの?」

希「ううん、ないよ。それを防ぐためのお供え物なんよ」

353: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 01:05:13.33 ID:59xkUy+u0
花陽「へぇ……でも希ちゃん。それって誰から教えてもらったの? 調べたりとかした?」

希「ううん、ウチは……えりちから聞いただけなん」

花陽「絵里ちゃんから……ってそれ、変じゃない?」

花陽「だって絵里ちゃんは希ちゃんから聞いたんじゃないの?」

希「……ウチも本当は、どこかで知ったはず」

希「でもそれがわからなくなってるってことは――――――――」




希「……だいぶあっちに毒されたってことやね」

――――

354: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 01:06:13.04 ID:59xkUy+u0

ここまで
短くてすまぬ

結構終わりに近づいてきたかも

356: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:03:27.07 ID:59xkUy+u0



絵里(……あれ? 私、寝てたんだっけ?)

絵里(意識がぼーっとしてる)

亜里沙「お姉ちゃん、起きてよぉ」

絵里「ん……? 亜里沙?」

絵里(何で亜里沙がここに……)

亜里沙「今日はパリに行く日でしょ? 早く準備しないと」

絵里「ああ、うん」

絵里(出発は3日後だったような……いや、私の勘違いかしら)

絵里(うん、そうよね。旅行の準備もしてあるし)

357: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:07:13.60 ID:59xkUy+u0



絵里「じゃあ行ってきます」

ことり「行ってきます」

亜里沙「行ってらっしゃい!」

絵里(あれ、ことりがいる……?)

絵里(それに私、朝ごはん食べたっけ?)

ことり「絵里ちゃん」

絵里「え?」

ことり「これからみんなと一緒に空港に行くけど……大丈夫? 眠かったりする?」

絵里「ううん、そんなことないわ」

絵里(うん。ただちょっと記憶が微妙なだけで)

358: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:11:43.78 ID:59xkUy+u0



にこ「風邪とか引かないようにね」

花陽「帰って来るときもまた、迎えに来るよぉ」

凛「楽しんできてね!」

穂乃果「お土産よろしくね」

海未「絵里、ことりのことは頼みましたよ」

希「寂しくなるなぁ……ことりちゃん、えりちの面倒見てあげてな」

真姫「ラブライブ出場の合否はネットでチェックできると思うから、ちゃんと見ておくのよ」

絵里(……まただ、ここまでどうやって来たか覚えてない)

359: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:15:16.02 ID:59xkUy+u0
ことり「みんなありがとう。ちゃんと開催前には帰って来るからねっ」

絵里「ええ、そうするわ」

海未「はい、遅れないでくださいね」

希「ふふ、ウチらはちゃんと待ってるから」

花陽「うんっ」

ことり「あ、絵里ちゃん。もう飛行機に乗らないと……」

絵里「そうね……行ってきます!」

ことり「行ってきまーす」

真姫「行ってらっしゃい」

凛「また5日後にね」

360: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:17:59.93 ID:59xkUy+u0
にこ「向こうには私たちはいないんだから、2人でしっかりやるのよ!」

穂乃果「頑張ってね!」

絵里「ええ、みんなも私たちがいないからって練習サボっちゃダメよ!」

ことり「みんな、またね!」





362: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:23:35.33 ID:59xkUy+u0
――

海未「……私は」

花陽「あ、海未ちゃん起きた?」

希「おはよう、海未ちゃん」

海未「おはようございます……あれ、確か私は……」

海未「……そうです。絵里が、絵里が確か……」

希「えりちがどうしたん?」

海未「絵里の様子がおかしかったんですよ」

花陽「絵里ちゃんの様子が?」

364: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:26:52.82 ID:59xkUy+u0
海未「はい、こちらへ戻ってきてすぐ、おかしなところがあるように感じて……」

希「具体的にどんなところが?」

海未「なんというか……絵里があっちの世界に馴染んでいるような気がして」

花陽「それって――――――――」

希「海未ちゃん!」

海未「は、はいっ!」

希「あっちでえりちが、ずっと眠るようなことあった?」

海未「ありました。絵里が熱を出した時です」

希「そっか……」

365: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:29:32.78 ID:59xkUy+u0
花陽「ど、どうしよう希ちゃん」

希「ウチが様子見てくる」

海未「様子って……」

希「大丈夫。ウチがなんとかするから――――――――」



――――――――えりち、えりちの後悔はもう……ないはずやろ?――――――――


――

366: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:31:42.23 ID:59xkUy+u0



希「……っと」

にこ「はー、無事行ったわね」

穂乃果「そうだねぇ」

希(ここは……空港? 何でこんなところに?)

希(まさかことりちゃん、留学したん?)

希(そういえばえりちの姿が見当たらない……まさか)

希「にこっち」

にこ「ん? 何よ。お腹でもすいた?」

希「ううん、そうじゃなくて……えりちはどこかなーって」

367: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:34:36.74 ID:59xkUy+u0
にこ「あんたどうしたのよ。寝不足?」

希「ご、ごめん。ぼーっとしてたから」

にこ「私たちでさっき送り出したじゃない」

希(送り……って)

穂乃果「あ、飛行機飛んでるよ!」

凛「絵里ちゃんとことりちゃん、あれに乗ってるんだよね?」

花陽「2人とも、頑張ってね……」

希(乗ってる……ああ、やっぱり――――――――)

にこ「絵里とことりは、あれでパリに留学したでしょ。短期だけど」

希「……そっか。そうやね。変なこと聞いてごめん」

にこ「?」

368: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:36:44.58 ID:59xkUy+u0
希(ここにいてもウチは……何もできない)

希(帰ろう)

希(対策を練って、出直そう)



――――――――ウチのせいでこんなことに……――――――――

――――――――どうにかして連れ戻さないと――――――――

370: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:38:52.71 ID:59xkUy+u0


希「……海未ちゃん」

海未「はい」

希「えりちの短期留学って……どのくらい?」

海未「5日です」

希「5日……ならギリギリかも」

花陽「留学? 留学ってどういうこと?」

希「うん、海未ちゃん。ウチらに教えて」

海未「わかりました」

371: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:42:49.16 ID:59xkUy+u0



花陽「そっか、絵里ちゃんはそれで……」

海未「はい、それならことりの夢も、ラブライブ出場も叶う、と」

希「えりちはそういうこと言うもんなぁ……」

海未「それで、私たちはどうしたらいいんですか?」

希「ううん、今ウチらにできることはないよ」

花陽「え、でも……」

希「えりちが決めたことやもん」

海未「そう、ですか……」

希「だから、えりちが日本に帰って来る日に捕まえるしか方法はないよ」

372: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/22(金) 10:44:28.87 ID:59xkUy+u0
海未「捕まえる?」

花陽「あ、網とかで?」

希「いやいや、そうじゃなくて……」

希「意識をこっち側に引き込むってこと」

花陽「引き込む?」

希「うん、次にえりちに会う時は――――――――」




希「えりちはウチらのこと、覚えてない」

382: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 00:45:52.18 ID:hLchV91y0
希「まあこうなってしまったら、ウチ1人では解決できそうにない……だから2人も手伝ってくれる?」

海未「そうですね、私たちも協力を……」

花陽「でも、協力って言っても何をすればいいの? 私たちはもう、あっちの世界に行けないんじゃ……」

希「あ、もうこの際やし言ってしまっても大丈夫かな」

花陽「?」



希「実は、後悔なんてなくてもできるんよ。このおまじないは」

383: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 00:47:46.42 ID:hLchV91y0
海未「えっ」

花陽「ええっ!?」

希「だってウチ、何回も行ってるやろ?」

希「そのたびに後悔なんてしてたら大変やん」

花陽「そ、そんなぁ……」

海未「どうして教えてくれなかったんですか?」

希「うん、それにはちゃんとした理由があるよ」

384: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 00:51:23.73 ID:hLchV91y0
希「まあ簡単に言うと、戻ってくるときのトリガーになってるからっていうことやね」

海未「トリガー? どういうことですか?」

希「まず後悔を考えながらあっちに行くと、誰だってその後悔を解決するために動くやん?」

花陽「そうだね……私もそうしてたよ」

海未「はい。私もです」

希「うんうん。それで2人も体験した通り、満足すればここにいる必要はない、って自然と思い込む」

希「それで無事、戻ることができるって話なんよ」

花陽「そっか、必要以上にあっちにいないために、そうやって制約をつけたんだね」

希「そういうこと」

385: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 00:54:53.46 ID:hLchV91y0
希「で、きっとえりちはその後悔を忘れてしまってる……というか、もうすでに満足してるはずなん」

海未「え? そうなんですか?」

希「海未ちゃんの言ってたように、えりちは早くμ'sに加入したがってた」

希「でもそれは、花陽ちゃんのサポートで叶ったんやろ?」

海未「はい、絵里は遅れましたがちゃんとμ'sに加入しましたよ」

花陽「あれ? でも戻れないんでしょ? 何でかなぁ……」

海未「結局加入が遅かったからでしょうか」

花陽「そうなのかな?」

386: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 00:58:26.30 ID:hLchV91y0
希「ううん、たぶんそれは違うと思う」

海未「え? それでは何が……」

希「えりちは海未ちゃんの後悔についても干渉した」

希「つまり、自分以外のためにあっちに残ったわけやね」

海未「……それじゃ絵里は」

希「ううん、海未ちゃんのせいじゃない。えりちはどっちにしろ、困ってる人をほっとけないもん」

花陽「え? じゃあ海未ちゃんの後悔を解決すれば、絵里ちゃんは出てこられるんじゃない?」

387: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:02:31.14 ID:hLchV91y0
海未「違います。絵里は私以外も助けようとしています」

希「そう。ことりちゃんの留学、やね」

花陽「それなら、留学が終わったら?」

海未「いいえ。その後にはラブライブ開催が待っています」

希「出場は確定なんやろ?」

海未「はい、よほどのことはない限り」

花陽「じゃ、じゃあ、ラブライブが終わったら」

海未「いえ、それでもきっと、絵里には何かしらの背負うものができるはずです」

花陽「そ、そんなぁ……」

388: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:08:59.05 ID:hLchV91y0
花陽「……あれ? それだと、絵里ちゃんは未来に行っちゃうの?」

希「まあそうなるなぁ」

海未「あちらの1日は、こちらで言うとどのくらいの時間なんですか?」

希「だいたい1日は5分から15分くらいやね。遅くまで起きてたり、何か内容の濃いことをやってると時間がかかるけど」

花陽「あ、そっか。私がいたのは2週間くらいだから……それでも3時間以上経ってるんだ」

海未「ということは、未来へ行くことも可能なんですね」

希「まあウチはその使い方しかしてなかったんよ」

389: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:11:41.26 ID:hLchV91y0
海未「え?」

希「まあ、その話は置いといて……とにかくえりちを戻すには、あっちの居心地のよさを打ち消す何かが必要になるんよ」

花陽「夢だって気付かせるのは?」

希「それは難しいかもなぁ。えりちはあっちが元の世界やと思ってるもん」

海未「希はそういうの、大丈夫だったんですか?」

希「なにが?」

海未「居心地が良くて忘れてしまう、ということがあったかどうかが気になりまして」

390: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:13:46.64 ID:hLchV91y0
希「あー……ウチは失敗ばっかりしてたから、居心地がいいって言うのはあんまりなかったかも」

希「最後に数回だけ成功して、そのことに気付いたんよ」

希「ああ、頭が都合よく解釈しようとしてる、って」

海未「失敗……?」

花陽「成功って何のこと?」

希「んー、ウチの後悔のこと」

391: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:17:14.57 ID:hLchV91y0
希「まあとにかく、えりちが帰って来るまではまだ時間あるし……どうする? 行ってみる?」

海未「あちらへ、ですか?」

希「うん」

花陽「あ、でもお供え物を用意しないと」

希「じゃあ各自、お供え物を持ってここに再集合しよ」

花陽「うんっ」

海未「……そういえば希は、先程お供え物なしにあちらに行きましたよね?」

花陽「本当だ……」

392: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:20:10.34 ID:hLchV91y0
希「ああ、ウチは慣れてるから」

海未「えっ」

希「集中して、あっちに行くぞーって思いながら寝るとできるようになったんよ」

希「でも2人はまだ、お供え物のありなしでオンオフ切り替えてないと、寝るだけであっちに行ってしまうから」

花陽「な、慣れってすごいね」

希「オカルトでも眉唾物でも慣れは慣れやで」

海未「そうだったんですか……では私は1度、家に戻りますね」

花陽「うん、私もそうするよ」

393: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 01:22:07.88 ID:hLchV91y0
希「うん、そんなに焦らんでもいいから、また後で」

海未「はい」

花陽「待っててね」

希「はーい」

希「……」




希「……えりち、気持ちよさそうに寝てるなぁ」


408: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 09:55:22.37 ID:hLchV91y0


海未「持ってきました」

花陽「私も持ってきたよぉ」

希「海未ちゃんのは……それ何?」

海未「絵里の作った折り鶴です。まあ鶴には見えませんけど……」

希「えりち、そんなの作ってたんや」

海未「はい」

希「花陽ちゃんは、写真?」

花陽「うん。μ'sのみんなで撮った写真だよぉ」

409: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 09:59:20.52 ID:hLchV91y0
希「じゃあみんな、カレンダーを持って」

海未「カレンダー?」

希「うん。過去に戻ったとわかるものが必要やから。まあこれも、意識をそっちに向かせるってだけでなくてもいいんやけどね」

花陽「これもなくていいんだ」

希「うん、こういう儀式めいたものはそんなの多いよ」

希「じゃあお供え物を枕の下に敷いて……」

海未「枕の下ですよね、肝心の枕はあるんですか?」

希「うん、まあクッションとかでもいいから」

花陽「ちょ、ちょっと待って、絵里ちゃんの枕の横に置いてあるのって……」

希「……チョコやね」

410: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:03:52.19 ID:hLchV91y0
花陽「枕の下に……敷いてないよね。たぶん」

海未「……ですね」

希「ちゃんと言ったのに、やってなかったんや……」

海未「ど、どうなるんですか?」

希「まあ一応、お供え物って考えて置いたなら大丈夫かな」

希「うーん、でもウチは枕に敷いてたからなぁ……まあこれも一種の意識的なものやし……大丈夫なはず」

海未「まあどちらにせよ、5日後に絵里を連れて来るだけですね」

希「うん」

花陽「あ、好きなもの、何にしよう」

411: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:05:27.84 ID:hLchV91y0
希「好きなものは傍にいるやろ?」

花陽「え? それって……」

海未「ああ、そういうことですね」

希「うん。ウチらはみんな――――――――」





――――――――えりちのことが、大好きだから――――――――

412: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:15:27.48 ID:hLchV91y0




希「よいしょ」

凛「わっ!? か、かよちん!?」

穂乃果「海未ちゃん!?」

花陽「……あれ、ここは」

真姫「ど、どうしたのよ。気分でも悪いの?」

海未「穂乃果がいる……ということは」

希「うん。成功やね」

にこ「あんたたち、何の話してるの?」

413: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:19:27.71 ID:hLchV91y0
希(あ、にこっちはえりちのこと知ってるって海未ちゃんが言ってたなぁ)

希「にこっち、ちょっとこっち来て」

にこ「何よ、どうしたの?」

希「えりちの話」

にこ「?」

海未「穂乃果、もう大丈夫ですから……離してくれませんか?」

穂乃果「し、心配だもん!」

花陽「凛ちゃん、私は大丈夫だよ」

凛「か、かよちんまで絵里ちゃんみたいに倒れられたら、凛はどうしていいか……」

希(えりちが倒れた……これも海未ちゃんが言ってた)

希(それでこの慌てよう……こっちのμ'sの精神的支柱はやっぱりえりちになってたんやね)

414: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:22:46.24 ID:hLchV91y0
希「にこっち、率直に言うで」

にこ「うん。だから何のこと?」

希「ウチと花陽ちゃんと、それに海未ちゃんは未来から来たんよ」

にこ「え、あんたと花陽も?」

希(よかった。わかってくれた)

にこ「何よ、そんなに出入りしていいわけ?」

希「うーん……それでちょっとした問題が起こってて」

真姫「どうしたの2人とも、こそこそ隠れて」

希(うーん、どうしよう……もうこの際やし、みんなにも話してしまおうかな)

415: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/24(日) 10:24:45.16 ID:hLchV91y0
希「みんな、聞いて」

花陽「希ちゃん?」

海未「話すんですか?」

希「うん。もうここまで来たら、みんなの協力が必要不可欠やもん」

穂乃果「?」

凛「凛たちの協力?」

希「そう、協力」



希「えりちを助けるために、みんなの力が必要なん」

422: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:43:49.16 ID:HWmm+Id80




穂乃果「ええっ!? 絵里ちゃんって未来から来てたの!?」

凛「全然わからなかったにゃ……」

花陽「うん、でもこれは本当のことなの」

海未「はい」

真姫「にわかに信じがたいわね……」

にこ「まあそうでしょうね。私も最初は疑ったもの」

希「え? そうなん?」

にこ「そうよ……ってああ、あんたはこっちの人間じゃなかったわね」

423: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:46:17.67 ID:HWmm+Id80
穂乃果「未来から来たってなんだかすごいね」

凛「タイムマシンとか?」

真姫「タイムマシンなら入れ替わりはありえないでしょ」

にこ「それなら何なの?」

希「んー……なんて言えばいいんやろ」

海未「そういえば希、この世界っていったいなんなんですか?」

花陽「そうだね。私たちもよくわかってないし……」

424: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:48:43.77 ID:HWmm+Id80
穂乃果「ううん、今はそんなこと考えてる場合じゃないよ。一刻も早く絵里ちゃんを助けないと」

海未「そうですね。穂乃果の言う通りです」

希(やっぱり真っ先にこう言ってくれるのは穂乃果ちゃんなんやね……)

凛「うん。絵里ちゃんが未来から来てたとしても、凛たちはすごくお世話になったもん」

にこ「で、具体的には何をすればいいの?」

希(具体的には、かぁ)

希「まあ決まってると言えば決まってるんよ」

425: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:51:08.40 ID:HWmm+Id80
真姫「決まってるの?」

希「うん」

穂乃果「どうやればいいの?」

凛「教えて、希ちゃん」

希「みんなが考えてもわかることやで」

花陽「私たちが考えてもわかること?」

海未「……どういうことでしょうか」

426: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:52:25.01 ID:HWmm+Id80
希「みんなはえりちにどうしてたかってこと」

にこ「絵里に?」

希「そう。えりちが帰れなくなってる理由は、みんなの中にあるんよ」

花陽「……」

海未「……」

凛「絵里ちゃんが帰れないのは……」

穂乃果「……なんだろう」

427: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:55:20.84 ID:HWmm+Id80
真姫「わかったわ」

花陽「えっ?」

凛「真姫ちゃんわかったの?」

真姫「ええ、考えればわかることじゃない。絵里の後悔とやらが叶っても、帰ってこられない理由が」

希「じゃあ真姫ちゃん、言ってみて」

真姫「私たちは絵里に頼りすぎてる……そうでしょ?」

真姫「知らず知らずのうちに、絵里をここへ束縛してる」

428: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 00:57:21.93 ID:HWmm+Id80
希「その通り。正解やね」

海未「あ……」

花陽「そっか、それで……」

海未「どうして気付けなかったんでしょうか……1番近くにいたというのに」

希「それはきっと、えりちが頼ってほしがってたからやない?」

海未「え?」

希「えりちはみんなに頼られて、みんなの悩みを解決したかったんよ」

希(……ずっと人のことばっかり考えてるもん。えりちは)

429: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 01:01:44.59 ID:HWmm+Id80
希「海未ちゃんがえりちを頼ろうとしたのは間違ってない。みんなもそう」

希「本人が望んだことを、そのままかなえてあげてるだけやもん」

希「でもえりちは頼られるせいで、ここから離れられなくなってる」

にこ「悪循環って言うか……」

希「そう。本当にやりたいことをやろうとして、それをみんなが叶えてあげればあげるほど、えりちは帰ってこられない」

凛「ど、どうすればいいの? 絵里ちゃん、このままじゃ元の世界に帰れないよ!」

希「それは簡単なことやで。つまり――――――――」

穂乃果「……つまり、私たちが絵里ちゃんを頼らなくなればいいんじゃないかな?」

430: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 01:04:23.97 ID:HWmm+Id80
花陽「穂乃果ちゃん、どういうこと?」

穂乃果「だって、絵里ちゃんは私たちが心配でここに残ってるんでしょ?」

穂乃果「だったら簡単だよ。絵里ちゃんを頼っちゃダメなの」

海未「絵里に頼らないようにして、絵里の不安をなくせばいい……そういうことですか?」

穂乃果「そういうこと!」

真姫「なるほどね」

希(ふふ。ウチのポジション、とられちゃったかな)

431: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 01:07:13.72 ID:HWmm+Id80
海未「私がもっと早く、そのことに気付いていれば……」

希「仕方ないよ、海未ちゃん」

海未「ですが」

希「海未ちゃんは1番近くで頑張ってたんやろ? なら、もう1人で背負う必要はない」

希「それとも後悔を増やしてここに留まりたい?」

海未「……いいえ」

希「うん、なら大丈夫。みんなで頑張ろ」

海未「はい」

432: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 01:12:09.90 ID:HWmm+Id80
にこ「ことりにはどうやって伝えるわけ?」

穂乃果「あ」

凛「凛知ってるよ! エアメールっていうのがあるにゃ!」

真姫「それはいい考えね。だけどスピード便でも2日はかかるわ」

花陽「なら電話を使えばいいんじゃないかな?」

海未「そうですね。電話ならすぐ連絡が取れますし」

にこ「でも国際電話でしょ? 高くない?」

海未「……なんとかなります!」

希(言い切った)

433: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/26(火) 01:17:35.20 ID:HWmm+Id80
希「まあ電話するにしても、まだ向こうには着いてないと思うし……」

花陽「それまで時間があるね。どうする?」

穂乃果「あ、海未ちゃんたちの話、聞いてみたいなぁ」

凛「凛も気になるにゃー。未来ってどんな感じなの?」

真姫「それは私も気になるわね」

にこ「ここにいるのもなんだし、お昼でも食べながら話しましょう」

海未「そうですね」

希(お腹すいてたんにこっちの方やったんや)

442: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 00:51:19.19 ID:JYnXOUbQ0



絵里「ことり、自分の荷物とった?」

ことり「うん、大丈夫だよっ」

ことり「絵里ちゃんのは?」

絵里「え……あ、流されてる!」

ことり「空港あるある……なのかなぁ?」

絵里「はぁ、気付いてよかった……」

443: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 00:53:02.88 ID:JYnXOUbQ0
ことり「ふふ、絵里ちゃんって意外と抜けてるところあるよね」

絵里「よく言われるわ……」

絵里「ん? 誰に言われたんだっけ」

ことり「?」

絵里「ううん、何でもない」

ことり「そうなの?」

絵里「うん。ほら、早く行きましょ」

ことり「はーい」

444: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 00:55:17.16 ID:JYnXOUbQ0
絵里「……あれ」

ことり「どうしたの?」

絵里「外に誰もいない……?」

ことり「え?」

絵里「っていうか、霧がかかってるみたいな……」

ことり「霧? 何のこと?」

絵里「んー……景色が見えない」

445: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 00:59:33.48 ID:JYnXOUbQ0
――――――――初めて来たからよ。私はこんなところ来たことがない――――――――

――――――――だから想像できないの。たとえ、それが夢の中であっても――――――――



絵里「今日は早起きしたから寝ぼけてるのかも……」

ことり「そう? なら向こうについたら休憩しよっか。手続きの書類が来るまで時間あるし」

絵里「そうさせてもらうわ」



――――――――私の声も聞こえなくなったのね……――――――――

――――――――希たちはこのこと、気付いてくれてるのかしら――――――――

446: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:02:53.69 ID:JYnXOUbQ0





希「とりあえずえりちが帰ってきたらまずやることは……」

凛「やることは?」

希「みんなが自分のことを自分でやる!」

穂乃果「……え?」

にこ「そんなことでいいの?」

希「そんなこと?」

にこ「う、な、何よ」

447: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:05:05.77 ID:JYnXOUbQ0
希「さっき言ったばっかりやろ? えりちに依存し過ぎって」

海未「それはそうですが……絵里にここは夢の世界だと認識してもらう方がいいのでは?」

真姫「そうよ。その方が手っ取り早いわ」

希「それが出来たら、えりちは自力で帰ってこられるよ」

花陽「?」

希「うーん……じゃあ凛ちゃん、質問です」

凛「はーいっ」

448: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:07:51.26 ID:JYnXOUbQ0
希「来月までに済ませないといけない宿題が、目の前にあります」

凛「うぅ、絶対多いにゃ」

希「でもその隣に、1週間ラーメン食べつくし旅行に行けるクーポン券があります」

凛「にゃっ!?」

希「凛ちゃんはどうしますか?」

凛「ラーメン旅行に行く! できればみんなと一緒がいいなぁ」

希「うんうん。普通はそうやろ?」

449: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:09:48.80 ID:JYnXOUbQ0
凛「え?」

希「そして凛ちゃんがラーメン旅行から帰ってきたとき……」

凛「うん」

希「宿題のこと、覚えてる自信ある?」

凛「ない」

真姫「言い切ったわね……」

凛「だって1週間だよ? 凛、幸せすぎて忘れちゃうにゃ」

450: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:11:36.44 ID:JYnXOUbQ0
希「それが今のえりちなんよ」

穂乃果「……絵里ちゃん、ラーメン留学したの?」

海未「言うと思いましたよ……違いますよ穂乃果、これはただの例えです」

穂乃果「あー、だよね。ラーメンよりパンだよね」

海未「」

希(海未ちゃんも大変やなぁ……)

451: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:15:00.07 ID:JYnXOUbQ0
希「まあ簡単に言うと、えりちは帰りたくないなぁって思ってるわけじゃない」

花陽「こっちにいたいって思ってるせいで、帰りたくなくなってるんだよね?」

希「そういうこと」

にこ「でもそれ、ほとんど一緒じゃないの?」

凛「違うよにこちゃん。宿題をやりたくないわけじゃなくて、目の前に楽しいことがあるから思い出すのを忘れてるだけなんだよ」

希「おお、凛ちゃん正解」

花陽「そうだね」

凛「え? 凛、あってた?」

452: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:20:01.95 ID:JYnXOUbQ0
希「帰らないといけないのはわかってる」

希「でもこっちにいる時間が長くなるにつれて、帰ることを忘れてる」

希「だから、こっちが自分のいる場所やと思ってるんよ」

真姫「ってことは、絵里は帰り方を完全に忘れてるわけじゃないのね?」

希「うん。覚えてるけど、それはきっと無意識のうちに抑制されて、思い出せなくなってる」

穂乃果「絵里ちゃんの頭の中は大変なことになってるんだね」

海未「穂乃果も嫌なことはすぐ忘れてしまうでしょう? それと似たようなものです」

穂乃果「なるほど! 絵里ちゃんも嫌なことは忘れて……」

穂乃果「大変だ……!」

にこ「だから今それを話してたのよ」

453: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:24:07.35 ID:JYnXOUbQ0
希「今のえりちに直接そんなこと言っても、わかってくれないはず」

希「だから、この世界のえりちのすることをウチらで取り上げてしまうんよ」

凛「そしたら絵里ちゃんは、役目がなくなって帰ることができる……ってこと?」

海未「いいえ、元の世界が思い出せないのなら、そんなに単純にはいかないでしょう」

凛「む、難しいにゃ……」

にこ「ここじゃなくて別のところにまだ役目は残ってるって、わからせてやればいいんじゃないの?」

希「うん。ちょっと大変やけど、みんな力を貸して」

真姫「ま、当然よね」

穂乃果「頑張るよ!」

454: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:26:21.40 ID:JYnXOUbQ0
にこ「で、あんたたちいつから来たの?」

花陽「え?」

凛「凛も気になる! かよちんたち、どのくらい先の未来から来たの?」

海未「えっと……希、言ってもいいんでしょうか?」

希「大丈夫大丈夫。タイムパラドックスとか起きないと思うし」

海未「ああ、それなら――――――――」

希「たぶん」

海未「……」

花陽「……」

455: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:29:28.43 ID:JYnXOUbQ0
真姫「でも花陽が別の世界から来た、みたいなのは気付いたわよ」

花陽「あ、真姫ちゃんにはついてきてもらったもんね」

凛「ええっ、凛はそんなの知らなかったよ!?」

真姫「凛は寝てたでしょ?」

凛「……うん」

にこ「それに絵里も、私と希に話してたけど」

希「ああ、そうやったっけ」

希(うーん……実際どうなるか、検証したことなんてないしなぁ)

希(ここに入り浸ってると、こっちの変化の影響を受けやすいって言うのは知ってるけど……)

456: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:33:11.93 ID:JYnXOUbQ0
希(それも、ウチみたいに何度もパターンを変えてやってないとわかりにくいやろうし……)

希(そもそもこの世界が何なのかすら……1種のパラレルワールドみたいなものやとは思ってるけど)

希(……)

希「うん、話してもいいんと違う? えりちが色々話しても、ウチには影響なかったみたいやし」

海未「そうですか……なら大丈夫そうですね」

穂乃果「……あれ? そういえば海未ちゃんも未来から来てたの?」

海未「はい。結構前からですよ」

460: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 01:38:22.00 ID:JYnXOUbQ0
穂乃果「ぜ、全然気づかなかったよぉ……」

海未「バレないようにしていましたからね」

穂乃果「えー? 何で?」

海未「私が穂乃果に負い目を感じていたからですよ」

穂乃果「?」

海未「向こうでは色々あったんです」

凛「そうなの?」

花陽「そうだよ」

海未「希、どこから話しましょうか」

希「うん。最初はやっぱり、穂乃果ちゃんたちを目の敵のように嫌っていた、意地悪な生徒会長の話からやね――――――――」

469: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:22:55.28 ID:JYnXOUbQ0



穂乃果「……」

希「とまあ、短くまとめるとこんな感じやね」

海未「色々ありましたが、結果として私たちの絆は深まりましたから、そう悲観しないでください」

花陽「うん。みんなで乗り越えられたからこそ今の私たちがあるんだよ」

穂乃果「そ、それでも穂乃果は……自分勝手なことばっかり言ってたんだよね」

海未「違いますよ。穂乃果は私たちのために、一生懸命突き進んでくれましたから……」

穂乃果「うぅ……でもぉ……」

にこ「……なんか、今の絵里みたいね」

470: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:25:14.57 ID:JYnXOUbQ0
花陽「え?」

凛「絵里ちゃんがどうかしたの?」

にこ「あ、いや。絵里も私たちの為を思ってやってくれたけど、結果として自分が一番割を食ってるじゃない」

希(……確かに。そう考えてみると、えりちは穂乃果ちゃんに似てるかも)

真姫「それすら自分で気づいてないんじゃないの?」

凛「あー、絵里ちゃんのことだから、ありそうにゃ」

花陽「うん……」

471: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:27:50.11 ID:JYnXOUbQ0
穂乃果「でも穂乃果は損してないよ?」

真姫「何言ってるのよ。穂乃果が一番困ったんでしょ?」

穂乃果「へ?」

海未「そうですよ。熱まで出して倒れて、責任をすべて自分のせいだと抱え込んでいましたから」

穂乃果「うーん……そうなのかな? 海未ちゃんたちに迷惑をかけたっていう方が、穂乃果は嫌だなぁ」

希「それが嫌ってことは、穂乃果ちゃんも損してるってことやろ?」

穂乃果「あ、そっか」

472: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:31:23.75 ID:JYnXOUbQ0
凛「でもそんな時、凛たちは何にもできなかったんだよね? 凛はそれが1番悔しいよ」

花陽「そうだね、全部海未ちゃんと穂乃果ちゃんに任せきりになってたし……」

海未「ですが私も、穂乃果の押し付けたような形をとってしまって……」

希(……あれ? みんな後悔ばっかり?)

希(あっちでみんなに教えてたら、案外みんなこっちに来ちゃってたのかも……)

希(それは困るなぁ)

希「ま、今はえりちの救出が先やで」

真姫「そうね」

473: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:34:30.71 ID:JYnXOUbQ0
にこ「で、私たちは5日間どうするの? 絵里が帰って来るまでにやること、たくさんあるんじゃない?」

希「うん。まずはウチが生徒会の仕事を全部終わらせるようにする」

穂乃果「一応ネットでのメールのやりとりはできるから、こっちで練習メニューとか全部決めちゃおうか」

凛「うん。絵里ちゃん頼りだったからね」

真姫「……こうして考えると、私たちって本当に絵里に依存してたのね」

希「そうやね」

474: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:38:13.25 ID:JYnXOUbQ0
海未「あ、ネットでやり取りできるなら、ことりにもメールで絵里のことについて送れば……」

にこ「それがいいわね」

花陽「でもことりちゃん、私たちからの連絡だったら絵里ちゃんと一緒に読んじゃうかも……」

凛「だったら題名に、1人で読むことって書いとくといいにゃ」

穂乃果「うん、そうしよう!」

希(なんかそれ、呪いの手紙みたいやなぁ)

希「まあそれもそうやけど、ラブライブの出場についての連絡も大切やで」

真姫「出場が決まってたら、すぐにこっちからスケジュールをたてて行かなくちゃね」

475: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:43:30.32 ID:JYnXOUbQ0
にこ「まああれで出場できないっていうのはありえないでしょ」

花陽「そ、そんなにすごかったの?」

海未「はい。お客さんもたくさん集まってくれましたし、地元のテレビ局も取材に来たくらいですよ」

花陽「て、テレビ!?」

凛「あ、凛のお家にその時の映像、録画してあるよ」

穂乃果「穂乃果の家にもあるよー」

476: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:45:58.13 ID:JYnXOUbQ0
にこ「普通みんな録画してあるわよ。私は希からコピーもらったけど」

穂乃果「ご、ごめんねにこちゃん」

にこ「次からは気を付けなさいよね、まったく」

希「?」

真姫「取材が来るの、にこちゃんと花陽と絵里は知らなかったのよ。穂乃果と凛が教えるの忘れてて」

希「ああ、そうなんや」

花陽「え? じゃあ私の家では録画されて……」

凛「凛がコピーあげたから大丈夫にゃ!」

477: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:50:58.01 ID:JYnXOUbQ0
花陽「あ、よかったぁ」

凛「元はと言えば凛のせいだからね」

花陽「そっか。でもちゃんとコピーくれたなら、こっちの私も怒らないよぉ」

希(花陽ちゃんでも怒ることってあるんかな? 想像できない……)

海未「どうします? 誰かの家に集まって、その映像でも見てみますか?」

凛「あ、じゃあ凛のところに来て! たぶん穂乃果ちゃんたちのお家は、すごく人がたくさん来てると思うから」

穂乃果「え、なんで?」

海未「前も言いませんでしたか? テレビに出てるんですから、知名度は上がったでしょう」

穂乃果「あ、そうだったね」

478: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:55:20.83 ID:JYnXOUbQ0
真姫「だったら決まりね」

にこ「5日後のシミュレーションをしつつ、ラブライブに向けての注意点の確認をしなくちゃ」

海未「はいっ」

希「えー。映像見るときくらいゆっくりしようやぁ」

にこ「ダメよ! アイドルに休息なんかないんだから!」

花陽「に、にこちゃん、あんまり大きな声出すと気付かれちゃうよ」

にこ「……それ、いいわね」

花陽「えぇっ!?」

希(ちょうどお昼時で人が集まってきたし……戻るなら今やね)

479: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/27(水) 23:58:56.75 ID:JYnXOUbQ0
希「じゃあ凛ちゃんのお家にしゅっぱーつ」

凛「はーい」

海未「お会計は私が済ませておきますね」

花陽「うん、あとで凛ちゃんのお家に着いたときに払うよぉ」

真姫「サングラスとか、買った方がいいのかしら」

にこ「そんなときのために肌身離さず持っておいてよかったわ」

真姫「え、今もあるの?」

希(必需品なんや……)

490: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:01:30.00 ID:1peV4b/D0



ことり「どう? 絵里ちゃん、具合は大丈夫?」

絵里「ええ、なんとか落ち着いてきたかも」

ことり「そっか。よかったぁ……」

ことり「あれ? メールが来てる」

絵里「穂乃果たちから?」

ことり「あ、うん。そうみたい……だけど私だけに用があるみたいだね」

絵里「そうなのね。ラブライブについてかと思ったわ」

491: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:03:37.39 ID:1peV4b/D0
ことり「絵里ちゃんは気にしすぎだよ。ゆっくり休んでね?」

絵里「わかった。そうさせてもらうわ」

ことり「えーっと、なになに? ……ふむふむ」

絵里「……」

ことり「……なるほど」

絵里「ことり? 何を読んでるの?」

ことり「ん? 何でもないよっ」

絵里「そう……」

492: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:06:04.32 ID:1peV4b/D0




希「いやー、暇やね」

にこ「何よ唐突に」

希「だって、えりちとことりちゃんが帰ってくるのは4日後やろ?」

真姫「ま、そんなものよ。9人そろってないんだからできることも限られるしね」

海未「そうですね」

凛「うーん……せっかく未来から来たっていうのに、なんだかやってること普通だにゃ」

穂乃果「何か面白いことでもする?」

493: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:08:41.03 ID:1peV4b/D0
花陽「面白いこと?」

真姫「たとえば?」

穂乃果「……し、しりとり」

希(わーお、それって暇潰しの最大手やん)

凛「どうせならもっと楽しいことがいいよ」

穂乃果「たとえば?」

凛「……王様ゲームとか」

にこ「そんなことやってる場合じゃないでしょ!」

494: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:10:41.76 ID:1peV4b/D0
花陽「まあまあにこちゃん、みんな落ち着かないんだよ」

にこ「それはわかってるけど……」

真姫「ことりが留学した時の未来って見たことないわけ?」

海未「ええ、ありませんよ。何せ短期留学自体がなかったんですから」

真姫「じゃあ何で変わったの?」

海未「それは……私にはわかりません」

495: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:14:56.72 ID:1peV4b/D0
希「ウチも見たことないなぁ」

凛「ふーん……でも不思議だね。今まで変わらなかったのに、今回だけ変わるなんて」

希(それは確かに……何かが影響してるんかな?)

にこ「いろいろ変えてきたからじゃないの? μ'sに遅く加入したり、ラブライブを辞退しなかったり」

希「まあ些細な変化じゃなくなってるもんなぁ」

花陽「些細な変化なら、結末は変わらないの?」

希「うん、まあそうやね。たとえば1日風邪を引くとか、お昼ご飯を食べないとか……そのくらいなら何も変わらないよ」

496: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:17:40.59 ID:1peV4b/D0
穂乃果「ならどんなことで変わるの?」

希「それはほら、μ'sに入る入らないとか、生徒会を辞める辞めないとか。その先の未来に大きくかかわることで変わるよ」

にこ「……あんた、何回もやったことあるって言ってたけど――――――――」

希「え」

にこ「μ'sに入らなかった未来があるってわけ?」

希「あー……」

希(しまった。にこっちは鋭いんやった……)

497: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:20:29.55 ID:1peV4b/D0
穂乃果「ええっ!? 本当なの!?」

凛「の、希ちゃんがいないμ'sなんてμ'sじゃないにゃ!」

海未「それに9人でないなら、μ'sの意味が……」

希(うーん、言ってしまうしかないなぁ)

希「もう隠しててもバレちゃいそうやし、話すよ」

希「これはえりちには絶対秘密やで?」

真姫「ええ、わかったわ」

花陽「うんっ」

498: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:21:48.91 ID:1peV4b/D0




希「……ウチが何のためにこのおまじないを使ったか、それは――――――――」




499: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:25:15.37 ID:1peV4b/D0



「起きて。ねぇ、起きてったら」

んん……なに……?

「おはよう」

……あ、あれ? 私?

「あら、成功みたいね」

「そうよ、私も絢瀬絵里。あなたも絢瀬絵里よ」

う、うん。そうよね、私は私よね。

あ、ここって確か、前も来たことが……。

「そうよ、あなたが風邪を引いたときぶりかしら?」

500: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:28:02.64 ID:1peV4b/D0
「今回は最後の忠告に来たわ」

忠告? なにそれ。

「もう手段は選んでられないの。ちょっと痛いと思うけど、我慢してね」

痛いって? え? な、何する気!?

ちょ、ま、待って! その右手を振りかぶるのは何!?

「目を覚ましなさい!」

痛っ!? 何でビンタなんか……。

……あれ? 痛い?

「そうよ、痛いでしょ」

うん……。

501: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:30:06.87 ID:1peV4b/D0
「さっきまで、何かを握ったとか触ったとか、そんな感覚あった?」

ううん、全然なかった。

「そうよね。じゃあここはどこかわかる?」

えっと……パリよね?

「ええ、その通り」




「なら、帰る場所はわかる?」

502: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:32:58.56 ID:1peV4b/D0
帰る場所?

日本じゃなくて?

違う、わよね。もっと抽象的なところ……。

「そうよ。その調子」

……ああ、思い出せない。

「そこまでは無理かぁ……ま、仕方ないわね」

え? どういうこと?

「おっと、時間がなさそうね」

何が?

503: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:37:43.40 ID:1peV4b/D0
「率直に言うわ」

は、はい!

「ここはあなたの深層心理よ。無意識に思い出したくなくなった記憶の詰め込まれる場所と思ってくれていいわ」

何でそんなところに私が……?

「運がよかったのよ。本当に偶然、ラッキーだっただけ」

「いらない記憶を排除して、整理して片付けてしまう……それが夢よ」

夢……? 夢って、どこかで……。

504: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:43:41.89 ID:1peV4b/D0
「この意識は無意識として避難してるだけだから、自分からは思い出せないわよ」

避難? どうして避難するの?

「忘れられないように、よ」

「希のオカルトチックなおまじないのおかげで、こうして私がたたき起こせたけど……もうこんな無茶はできないわ」

おまじない……。

「無理に思い出せとは言わないわ。だけど忘れないで」

「あなたには後悔がある。それを振り払うためにここに来た」

505: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:46:34.16 ID:1peV4b/D0
……そうね。何だかそんな気がしてきたわ。

「まあそうでしょうね。夢の中の夢なんて、仕組みがしっかりしてる方がおかしいもの」

「だからこうやって、私は脱出の糸口を見つけることができたの」

ならまた会えるの?

「ううん、寝てしまえばあなたの記憶は薄れていくわ。さっきまでみたいにね」

そうなのね……。

「ええ、その違和感をしっかり覚えていて」

506: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:49:06.71 ID:1peV4b/D0
「そろそろ起きなさい。必要以上に寝てしまうと、もう2度と思い出せなくなるわ」

時間がないってそういうことだったの?

「まあね。じゃあ起きる感覚をイメージして」

ま、待って。

「なに?」

あなたは私……よね? でも誰なの?

記憶の番人みたいな人?

「ああ、まあそんな感じだと思ってくれていいけど……まあわかりやすく言うと――――――――」

507: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/29(金) 00:50:04.81 ID:1peV4b/D0






「ハッピーエンドを迎えられなかった私たち、かしら」






514: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 00:56:47.48 ID:qy5cwc5r0



絵里「はっ……」

ことり「あれ、絵里ちゃんもう起きたの?」

絵里「ここは……」

ことり「パリだよっ。もうこっちの学校に向かうところだったんだけど、絵里ちゃんも一緒に来る?」

絵里(……たぶん見えないんでしょうね、私には)

絵里「ううん、ごめん。まだ気分がすぐれないから……」

ことり「うん、わかった。じゃあ行ってくるね」

515: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 00:58:06.51 ID:qy5cwc5r0
絵里「ええ、行ってらっしゃい」

絵里「……」

絵里(行った……わね)

絵里(ちょっと考える時間が欲しかったし、好都合かしら)

絵里「っと、その前にペンと紙の準備ね」

516: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:00:31.71 ID:qy5cwc5r0





絵里「まず私、絢瀬絵里には帰る場所がある」

絵里「それはたぶん、日本とかそういう具体的な場所じゃない」

絵里「次に私は、何かを思い出せないからここにいる」

絵里「……うーん、何か解決の糸口がつかめればいいんだけど」

517: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:03:17.09 ID:qy5cwc5r0
絵里「そういえば確か、夢の中の私は言ってたわね……」

絵里「ハッピーエンドを迎えられなかった私たち……って」

絵里(もしかしたら私って、たくさんいるのかしら?)

絵里(……夢の中に?)

絵里「いや、それは絶対違うわね」

絵里「うーん……」

518: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:06:14.80 ID:qy5cwc5r0
絵里「……ん? でも、ハッピーエンドを迎えられなかったって言ってたってことは……」

絵里「私はどうなの?」

絵里「私もそのうちの1人?」

絵里「うーん、それもなんだか違うような」

絵里「ていうか、夢に出てきた私って、もう結末が決まってたのかしら?」

絵里(結末が決まる……つまり、死んで――――――――)

絵里「いやいやいや、それはないわね」

519: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:09:50.42 ID:qy5cwc5r0
絵里「何か思い残していることがあるってことよね……?」

絵里「そうだといいけど……」

絵里(……ん、そういえば私、前にもこうやってメモを取ってたような気もする)

絵里「何だったかしら……? あの時は確か――――――――」



絵里(そう、あの時は確か……すごく怖かったのよね)

絵里(ただただ不安だった。そんな気がしてたような……)

520: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:12:18.61 ID:qy5cwc5r0
絵里「えっと……μ'sのCDを持って、時計をはめて、チョコを枕元に置いて……」

絵里(何でだろう。こんな変なところは覚えてる)

絵里(重要なことだったから? それともただ偶然?)

絵里「そのまま、寝てたような……」

絵里(この行動がどこか、大切なことのような気もする)

絵里(……私はこうやって、何かを叶えようとしてた)

521: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:14:55.35 ID:qy5cwc5r0
絵里「……もしかして、やってみればわかるかしら?」

絵里(夢の中の私は必要以上に寝ちゃダメって言ってたけど、少しくらいなら大丈夫よね?)

絵里「一応アラームをセットして……と」

絵里「μ'sのCDはないから、何か別の……そうだ。髪を結ぶリボンでいいわね」

絵里「時計はあるし、チョコもある」

絵里(よし、これならできるわね)

522: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 01:15:22.54 ID:qy5cwc5r0





絵里「おやすみなさい」