――――――――……ちゃん、……り……ん――――――――

んん? 誰?

私まだ、寝たばっかりなのに。

――――――――……りちゃん、絵里ちゃん――――――――

あれ、私の名前を呼んでるのは……誰?

あの部屋には他に誰も……。




穂乃果「絵里ちゃん! 起きてよぉ!」

絵里「……え? 穂乃果?」

引用元: 絵里「つよくてにゅーげーむ」 part2 


534: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 23:57:43.95 ID:qy5cwc5r0
絵里「え、ちょ……ここ……どこ?」

穂乃果「き、記憶喪失!?」

絵里「いや、そうじゃなくて」

穂乃果「た、大変だ! だ、誰か保健の先生を……!」

穂乃果「絵里ちゃん待ってて、今救急車を……」

絵里「穂乃果!」

穂乃果「はい」

536: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/30(土) 23:59:55.49 ID:qy5cwc5r0
絵里「私は記憶喪失なんかじゃないわ」

穂乃果「うん」

絵里「だけどここがどこかわからないの。教えてくれる?」

穂乃果「ここは学院の屋上です! 現在午後5時であります!」

絵里(何なのかしら、このテンションは……まあいいか)

絵里「ありがとう穂乃果」

絵里「……ってあれ? そういえば、他のみんなは?」

537: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:04:38.80 ID:87+dcHq60
穂乃果「えっとねー……海未ちゃんとことりちゃんは、次のステージの衣装の生地を買うって言ってて……」

穂乃果「凛ちゃんと真姫ちゃんは用事で……」

穂乃果「にこちゃんと花陽ちゃんが、校内に次のライブのチラシを貼ってるの!」

絵里「そうなのね……で、私たちは何をしてたんだっけ?」

穂乃果「ああ、絵里ちゃんが穂乃果と話したいって言ったから、今こうして屋上に来たの」

絵里(話したい? 私が?)

絵里(ここはなんだかいろいろと違うみたいね。いる場所も違うし……それにまだ、そんなに陽射しがきつくない)

538: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:06:27.04 ID:87+dcHq60
絵里(時期も違うってことは……夢なのかしら?)

穂乃果「絵里ちゃん?」

絵里「穂乃果、ほっぺをつねってくれる?」

穂乃果「いたたた」

絵里「あ、そうじゃなくて、私のをよ」

穂乃果「え? そうなの? じゃあいくよー」

絵里「いたたた」

絵里(……夢じゃない)

539: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:09:03.41 ID:87+dcHq60
絵里「……ていうか希は?」

穂乃果「え? 希ちゃん?」

絵里「そうよ。さっきの説明の中に希がいなかったけど……」

穂乃果「希ちゃんはたぶん、生徒会の仕事をしてると思うよ?」

絵里(生徒会の仕事……? 1人で?)

絵里「なら私も手伝いに……」

穂乃果「だ、ダメだよ絵里ちゃん!」

絵里「え、どうして――――――――」




穂乃果「生徒会は希ちゃんに任せて、スクールアイドルとして廃校を阻止するって約束したでしょ!」

540: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:11:27.93 ID:87+dcHq60
絵里「……なにそれ」

穂乃果「希ちゃんと約束したもん。穂乃果はちゃんと聞いてたよ」




穂乃果「絵里ちゃんはスクールアイドルとして、希ちゃんは生徒会役員として学院を存続させる、って」




絵里(どういう意味よ、それ……)

絵里「じゃ、じゃあ、希はμ'sに入ってないの?」

穂乃果「みゅーず? せっけん?」

絵里「いやいや、そのボケはいいから……」

穂乃果「じゃあ何だろう……」

541: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:14:39.78 ID:87+dcHq60
絵里「……まさか、本当に知らない?」

穂乃果「何だっけ? お菓子?」

絵里(嘘でしょ……信じられない。まさか希がμ'sに入ってないなんて)

絵里(どうなってるの? 夢……じゃなかったわよね)

絵里「なら、私たちのアイドルグループの名前って……?」

穂乃果「それはもちろん、音ノ木坂学院スクールアイドルグループ、だよっ!」

穂乃果「名前は募集してるんだけど、なかなかいい名前が見つからなくて……」

絵里(ってことは本当に、私たちはμ'sじゃないってことね)

542: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:17:14.02 ID:87+dcHq60
絵里「ちょっと希に会って来てもいい? 生徒会の仕事には関わらないから」

穂乃果「うん。それなら希ちゃんも許してくれると思うよ」

穂乃果「あ、話ってなんだったの?」

絵里「えーっと……また後で話すわ!」

穂乃果「はーい」

絵里(……いったい何がどうなってるの?)

絵里(生徒会室の場所……そこは間違ってないわよね?)

544: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:19:29.77 ID:87+dcHq60
絵里「急がないと……あれ?」

絵里(ポケットから何か――――――――)

絵里「……何よこれ」

絵里(退部、届け……? いったい誰の――――――――)





絵里「うそ……私の……?」

545: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:21:37.62 ID:87+dcHq60
絵里(まさか私が穂乃果に話そうとしてたことって……)

絵里「……何よ、どうなってるのよ」

絵里(ううん、考えちゃダメ。希のところに行かなきゃ)

絵里(……きっとこれは、私が書いたものじゃない)

絵里「希は無事でいてくれるわよね……」

547: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:23:59.49 ID:87+dcHq60



絵里「希!」

希「わ、びっくりした。どうしたん?」

絵里(よかった。希がちゃんといる……)

絵里「希、ちょっと聞きたいことがあるの」

希「んー? また生徒会の仕事の捗り具合?」

絵里「違うわ」

希「なら遊びに来てくれたとか」




絵里「……何で穂乃果たちの仲間に入らなかったの?」

549: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:30:22.65 ID:87+dcHq60
希「……えりち?」

絵里「ねぇ、何でよ。希に生徒会の仕事押し付けるみたいな形、私は気に食わないわ」

希「それは、約束したやろ?」

絵里「いつ」

希「えりちがμ'sに入る時に」

絵里「μ's……? 今、μ'sって言った?」

希「え? あれ? μ's?」

絵里(何よその反応……。覚えてないの?)

551: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:33:33.63 ID:87+dcHq60
希「μ'sって……何やったっけ?」

希「すごく聞きなれた……変な感じ。聞いたことないのに……デジャヴ?」

絵里「言葉だけしか覚えてないの?」

希「うん、何でやろ……テレビで聞いたりしたんかな?」

絵里(どういうこと? 希はμ'sって言葉を知ってる……)

絵里(でも、その意味が分かってない……)

553: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:37:46.48 ID:87+dcHq60
絵里「希、思い出して。μ'sって何だった?」

希「μ's……うぅー……喉の奥でつっかえてる感じがする」

絵里(希がμ'sに加入してないってことは、もしかするとパラレルワールドみたいなものなのかしら……)

絵里(夢のはずなのに……そんなの有り得るの?)

絵里(でもそれ以上にしっくりくる言葉はないわね)

絵里「希」

希「なに? 今、思い出してる途中で……」

絵里「私たち、同じステージで歌ったり踊ったりしたじゃない」

希「え……? でも、ウチはスクールアイドルなんてやったこと……」

554: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:40:13.46 ID:87+dcHq60
絵里「あるわよ!」

希「!」

絵里「あるのよ。今は違うかもしれないけど……私たちが一緒にスクールアイドルをやってた時が!」

希「……ある、かも」

絵里(思い出した……!)

海未「どうしたんですか?」

ことり「何してるの?」

絵里「あ、あれ? 海未? ことり?」

555: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:42:41.65 ID:87+dcHq60
海未「はい、そうですよ」

ことり「生徒会室から絵里ちゃんの声がしたから見に来たよっ」

絵里(あ、そうか。2人は衣装の……)

絵里(うぅ、でも希が思い出したかどうかわからない)

絵里「あの、ちょっと今、希と大事な話をしてて……」

希「μ's……」

ことり「え? みゅーず?」

海未「……μ's?」

556: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:45:51.00 ID:87+dcHq60
ことり「石鹸の話をしてたの?」

絵里(ああ、2人はやっぱり覚えて――――――――)

海未「いえ……違いますよ」

絵里「……う、海未?」

海未「あ、すみません。いや、なんとなくそんな気がして……」

絵里(海未も覚えてるの……?)

希「μ's、μ's……あー! あとちょっとで思い出せそうなんやけど」

海未「しかしその言葉、妙に頭に残りますね……μ's」

559: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:51:52.58 ID:87+dcHq60
絵里(穂乃果やことりは全然わかってないみたいだけど、2人は反応がある……)

絵里(どうにかして2人にこのことを伝えられれば……)

絵里(夢でもパラレルワールドでもいい、私は9人一緒じゃなきゃ――――――――)




絵里(え? 夢?)

560: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:54:42.76 ID:87+dcHq60
絵里(夢って……まずいわよね?)

絵里(必要以上に寝たらいけないって……)

絵里(起きなきゃ!)

絵里(私がここでダメになったら、2人に伝えられないじゃない!)



――――――――急いで戻らなきゃ……間に合わなくなる!――――――――




――――――――

――――

――

561: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 00:57:29.37 ID:87+dcHq60



絵里「はっ!?」

絵里(あれ、ここは……)

絵里(見慣れない部屋……ってことは、戻ってきた……?)

絵里「ふー……間に合った」

絵里(でも最後、私は何であんなに焦っちゃったのかしら……)

絵里(それよりあの夢、いったいなんだったの?)

絵里「μ'sが存在しない世界……」

絵里「今思うだけでもぞっとするわね」

563: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 01:03:37.61 ID:87+dcHq60
絵里「……落ち着いて、話を整理しましょう」

絵里「まずあの夢……というかパラレルワールドみたいな夢は、μ'sが存在しなかった」

絵里「そして希が私の代わりに生徒会の仕事を全部受け持ってくれていた」

絵里「希がいなかったから、μ'sの名前もなかったのかと思ったけど……希はその名前を知ってた」

絵里「海未も何か気が付いたみたいだったし……」

絵里(……それに私の持ってた退部届)

絵里(なんで私は辞めようとしてたのかしら?)

564: ◆eyH5F3DPSk 2014/08/31(日) 01:06:09.97 ID:87+dcHq60
絵里「うーん、全然わからない……」

絵里(もう1度夢を見ればわかるかしら?)

絵里「それは……ううん、やっぱりやめておきましょう」

絵里「必要以上に寝ちゃいけない……って忠告されたものね」

絵里(なら、夜寝るときにもう1回……それならいいわよね?)

584: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 14:58:06.89 ID:AXDJBkaN0



ことり「ただいまっ」

絵里「あ、ことり。おかえりなさい」

ことり「絵里ちゃん、書類もらってきたよ」

絵里「じゃあ私が目を通しておくわ」

ことり「うん、でも半分は私がやるよ」

絵里「え? 私に任せてくれればいいのに」

585: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 14:59:58.79 ID:AXDJBkaN0
ことり「ううん、自分のことだから」

絵里「そう?」

絵里(まあことりも思うところがあったのかもね……)

絵里「でも半分は多すぎるわ。半分の半分なら余裕を持ってやれるはずよ。それでどう?」

ことり「うん、そうする!」

絵里「ええ、じゃあ残りは私がやっておくわね」

586: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:02:55.80 ID:AXDJBkaN0
絵里「で、その大きな紙袋は何?」

ことり「う」

絵里「……何かしら?」

ことり「え、えーっと……そのぉ……」

絵里「怒らないから言ってみて」

ことり「こっちのお店にね、すごくいいデザインの服があったの!」

ことり「それにこんなにいい生地も!」

絵里(ことりらしいというかなんというか……)

587: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:05:44.20 ID:AXDJBkaN0
ことり「日本に帰ったらすごくいい衣装が作れそうで……ほら見て見て! たとえばこの色とこの色で……あとこれもつけて……」

絵里「え、えぇ?」

絵里(私、服のこととかあんまりわからないのよね)

絵里(でもことりが楽しそうだし、それでもいいかな)

ことり「こうやってリボンをつけて、スカートにこれとこれと……それからこれもっ!」

ことり「……かわいい!」

絵里(めくるめくことりワールド……そして着せ替え人形にされる私)

絵里(まあ、悪くない……か)

590: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:12:59.64 ID:AXDJBkaN0




絵里「あ、もう夜かぁ……」

ことり「でも日本とは時差があるよ」

絵里「そうね」

絵里(ここ、今気づいたけどホテルだったのね)

絵里(最初はどうやって来たのかもよくわからなかったけど、今ははっきりわかる……)

絵里(というより、何で最初はわからなかったのかしら?)

ことり「ホテルの晩ご飯おいしかったね」

絵里「そうね。パンも焼き立てだったし」

592: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:15:45.95 ID:AXDJBkaN0
絵里「お風呂は……って、シャワーしかないのよね?」

ことり「うん」

絵里「どっちから入る?」

ことり「私から入るよ。絵里ちゃんはシャワーに弱いから」

絵里「あー……」

絵里(確かにシャワーには弱いわね)

絵里「うん、じゃあお願い」

ことり「はーい」

593: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:21:29.68 ID:AXDJBkaN0
絵里(……寝るときは、また様子を見てみないとね)

絵里(あれは一体なんだったのかしら。パラレルワールドみたいな感じだったけど……)

絵里「でもやっぱり夢……よね?」

絵里(……それにしてもやけにはっきりしてた)

絵里(歩いてる感覚もあったし、もしかしたら誰かに触れることもできるかもしれない)

絵里(試してみよう)

594: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:26:22.07 ID:AXDJBkaN0
ことり「ねぇねぇ絵里ちゃん」

絵里「んー?」

ことり「こっち来てー」

絵里(何かあったのかしら)

絵里「今行くわ」

絵里「……ってことり、何してるの?」

ことり「ほらほら、これって映画とかによく出てくるやつじゃない? シャワーカーテン! 私の影映ってる?」

絵里(あ、確かに……)

595: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:27:48.18 ID:AXDJBkaN0
絵里「じゃなくて、ちゃんと浴びないなら私が先に……」

ことり「きゃああああっ!?」

絵里「!?」

絵里「えっ、ちょ、な、何で服着てないの!?」

ことり「だ、だってまだ浴びる前だったから……」

ことり「……絵里ちゃんの●●●」

絵里「ごめんなさい」

596: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:30:15.90 ID:AXDJBkaN0
ことり「……」

絵里「……」

ことり「え、絵里ちゃん? 何でじっと見てるの?」

絵里「あ、つい……すぐ閉めるわね!」

ことり「も、もう……急に入ってきちゃダメだよ?」

絵里「ええ、気を付けるわ」

絵里(……ことりの髪の毛はどうなってるんだろう。気になる)

597: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:33:26.49 ID:AXDJBkaN0
絵里(どうやってあの髪型を作ってるのかしら……)

絵里(さっきも髪型変わってなかったし、今のシルエットも髪型が崩れてない)

絵里(もしかするとクセ? 寝ぐせみたいな……)

ことり「絵里ちゃん、何でじっと見てるの……?」

絵里(……何て言おう)

絵里「ことり、スタイルいいわよね」

ことり「えっ!?」

598: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:36:34.39 ID:AXDJBkaN0
絵里(うん、正直に髪型どうやってセットしてるの、なんて聞いてもね)

絵里(シャワー浴びてる最中だし、困っちゃうだろうし)

ことり「え、絵里ちゃんの方が綺麗だよっ」

絵里「私が?」

ことり「そうだよ、うん、私は……その……普通だし」

絵里「えー? 私は綺麗だと思うけどなぁ」

ことり「……どのくらい?」

絵里「上の上くらい」

ことり「あ、ありがとう……」

絵里「?」

599: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:40:43.25 ID:AXDJBkaN0





希「なんかえりちがウチらをよそに、ことりちゃんとイチャイチャしてる気がする……」

海未「奇遇ですね、私もそう感じました」

にこ「何その電波」

穂乃果「凛ちゃん、これの5巻どこー?」

真姫「今私が読んでるわ。もうすぐ終わるから待ってなさい」

穂乃果「はーい」

花陽「……なんだか普通にくつろいじゃってるけど、いいのかなぁ?」

凛「凛は大歓迎だよ?」

花陽「そういう意味じゃなくて……」

600: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:43:06.97 ID:AXDJBkaN0
希「まあ花陽ちゃんの言うことも一理あるんよ」

花陽「え、じゃあ……」

希「でもなぁ、えりちが生徒会の仕事残して行くはずがないんよ……」

花陽「あっ」

にこ「あー……」

海未「出鼻をくじかれた感じですね……」

にこ「そうね」

穂乃果「真姫ちゃんまだぁ?」

真姫「待ってなさい、あと6ページだから」

603: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:49:46.72 ID:AXDJBkaN0
凛「あれれ? なら凛たちがするのって、ラブライブについてのことだけ?」

にこ「そうなるわね」

凛「……それまでどうするの?」

海未「待機、でしょうか」

希(具体的にやることって言っても、ラブライブが始まらないとできないことばっかりやしなぁ)

真姫「はい終わった」

穂乃果「やったー!」

真姫「ていうか穂乃果、私まだ4巻読んでないんだけど」

穂乃果「えっ」

604: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:52:44.95 ID:AXDJBkaN0
花陽「明日にならないと何もできないね」

希「うん」

にこ「まあ確実に20位以内には入ってるでしょうけど」

海未「ランキングは見られないんですか?」

凛「今は集計中なんだよね?」

花陽「うんっ」

真姫「穂乃果が4巻読んでたからよ」

穂乃果「真姫ちゃん飛ばして読んでくれてたの……?」

真姫「まあね」

605: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 15:56:24.08 ID:AXDJBkaN0
海未「……」

にこ「……」

希(ああ、やっぱり出場できる自信はあっても緊張するんやね)

凛「大丈夫だにゃ、凛たちなら」

花陽「うん……私は出てないんだけどね」

凛「こっちのかよちんもちゃんとできたよ!」

花陽「それならいいけど……」

穂乃果「じゃあ真姫ちゃん、一緒に6巻読もう!」

真姫「何の解決にもなってないじゃない」

穂乃果「えー」

606: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 16:02:22.98 ID:AXDJBkaN0
海未「ですが、本当にラブライブに出場するとなったら……」

凛「なったら?」

海未「どこでやることになるんでしょうか。ラブライブ本戦のステージとは……」

花陽「海未ちゃん、ラブライブ本戦のステージは特設ステージでね」

海未「えっ」

希(おお、花陽ちゃんに火がついた……ってよく覚えてるなぁ)

穂乃果「あ、そっか。真姫ちゃんが4巻を読んで、穂乃果が5巻を読めばいいんだね」

真姫「そういうことよ」

穂乃果「でもそれだと、6巻はどうするの?」

真姫「それは読み終わったら……あ」

607: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/01(月) 16:07:56.08 ID:AXDJBkaN0
凛「まあ気にしてても仕方ないよ! こういう時はみんなでゲームでもするにゃ!」

花陽「凛ちゃん……」

海未「凛……」

希(凛ちゃん頼もしいなぁ)

海未「私、ゲームとかやったことがないのでわからないのですが……」

凛「えっ、そこから?」

真姫「6巻はその……一緒に読めばいいんじゃない?」

穂乃果「だよねだよねっ!」

真姫「はぁ、仕方ないわね」

にこ「あんたたちいつまでやってんのよ」

616: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:18:57.98 ID:eR4By+ff0



絵里「ことり、寝た?」

ことり「……」

絵里(寝てるみたいね)

絵里(ちゃんと枕も持ってきたみたいだし、よかったわ)

絵里「じゃあ私も……」




絵里「おやすみなさい」

617: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:21:17.12 ID:eR4By+ff0


――――――――……り! 起き……!――――――――

ん……今度は誰?

ていうかまた私、倒れたのね。

――――――――絵里! ……さい……!――――――――

ごめんごめん、心配かけちゃって。

今すぐ起きるから……!



にこ「絵里! 起きなさいよ!」

絵里「はい、おはよう」

618: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:23:37.01 ID:eR4By+ff0
にこ「よかった……起きたわね。心配したんだから」

絵里「ふー、ごめんごめん。大丈夫よ」

絵里(ここは……部室ね。まずは希のことについて聞かないと)

にこ「ちょっと、あんた大丈夫なの?」

絵里「うん。もう平気よ。ちょっと眠かっただけだから」

にこ「本当に? 無理してないでしょうね」

絵里「大丈夫だって」

にこ「もー……この前もそんなこと言って、無理して倒れたじゃない」

619: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:25:23.48 ID:eR4By+ff0
絵里「え? それって……」

絵里(前にこっちに来た時のことを言ってるのかしら? もしかして結構時間が経ってたり……)




にこ「生徒会の仕事とスクールアイドルの活動を一緒にこなすの、やっぱり難しいんじゃないの?」




絵里「……え?」

絵里(私、生徒会の仕事……してるの?)

620: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:28:41.74 ID:eR4By+ff0
絵里「ね、ねぇ。それっていつのことだっけ?」

にこ「確か1週間前くらいよ。大丈夫大丈夫なんて言って、寝不足で倒れたんじゃない」

絵里「う、そ、そうね。ごめんなさい」

絵里(どういうこと? 希が私の話を聞いて、生徒会の仕事を任せてくれるようになったの?)

絵里(うーん……わからないわね)

絵里「にこ、私たち音ノ木坂のスクールアイドルグループって、何人だっけ?」

にこ「え……まさか記憶喪失とかじゃ……」

絵里「ち、違うわよ! えーっと……ほら、私の記憶と違うところがないかチェックするの」

にこ「あー、そういうことね」

621: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:31:14.78 ID:eR4By+ff0
にこ「……じゃああんた、言える?」

絵里「えっ」

にこ「このアイドルグループが何人なのか……忘れてないわよね?」

絵里「そ、それは……」

絵里(まずい、これじゃ怪しまれる……!)

絵里(でも、きっと前とは変わってないと思うから――――――――)

絵里「8人! 8人よ!」

622: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:32:56.38 ID:eR4By+ff0
にこ「……」

絵里(え、ま、間違えた……?)

にこ「正解ね。頭の方は問題なさそう」

絵里「ほっ……」

絵里(……って、何で私はにこと2人きりなのかしら)

にこ「で、何なの話って」

絵里「へ?」

にこ「いや、だから私をわざわざ呼び出したじゃない。練習抜けてまで呼び出すって一体何の用なわけ?」

623: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:37:34.91 ID:eR4By+ff0
絵里(また呼び出し……? 前は穂乃果で今度はにこ……)

絵里「……あ、ごめん。今日渡そうと思ってたもの、持ってくるの忘れちゃってたわ」

にこ「何よもう……で、何持ってくる気だったの?」

絵里「……おいしいお菓子! いつも頑張る部長さんにサプライズ、みたいな?」

にこ「ふーん……」

絵里(うっ、これは厳しいかしら)

にこ「次は忘れず、みんなの分も持ってきなさいよ」

絵里(にこ……素敵な部長さんね)

624: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:40:17.36 ID:eR4By+ff0
希「あ、えりち! いたいた!」

にこ「ん? どうしたの希」

希「えりちに生徒会の仕事頼もうとしたんやけど、屋上にいなかったから探してたんよ」

にこ「ああ、ごめんね。みんなの様子はどうだった?」

希「うん、みんながんばってたよ」

にこ「そう……じゃあ私は先に練習に戻ってるから、仕事終わり次第来なさいよ」

絵里「あ、うん!」

絵里(私が誰かを呼び出すってことは……やっぱりあれよね)

絵里(……うん、ポケットの中に封筒っぽいものが入ってる)

625: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:43:41.21 ID:eR4By+ff0
希「えりち、生徒会室行こ」

絵里「ええ、そうしましょう」

絵里(希は練習着を着てない……練習に向かう様子もなさそうだし、おそらくμ'sには入ってない)

絵里(時間が経ったと考えると、結局希はμ'sに入ってくれなかったのかしら?)

絵里(まあ私もあの場で加入できてたわけじゃないし、仕方ないのかもしれないけど)

希「あー、今日は仕事が多くてなぁ。えりちのヘルプなしでもいけるかと思ってたんよ」

希「でもやっぱり多くて……」

絵里(生徒会室の場所も一緒……って当たり前と言えば当たり前よね)

626: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:46:26.37 ID:eR4By+ff0
希「ごめんなぁ。ウチがもうちょっと仕事できれば……」

絵里(ここは聞いてみるのが得策よね?)

絵里「希」

希「え? なに?」

絵里「私たちが生徒会の仕事をやるようになったのって、いつからだった?」

希「なんでそんなこと……」

絵里「少しは思い出に浸りたい時だってあるでしょ?」

希「あー、そうやね」

627: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:49:26.23 ID:eR4By+ff0
希「まあえりちと生徒会入ってから、ウチらずーっと一緒に仕事してきたやん?」

絵里「ええ、そうね」

希「まあ途中で、スクールアイドルの活動と、生徒会の仕事でえりちが大変になった時もあったけど……」

絵里「……けど?」

絵里(それじゃまるで今まで変わらずに仕事を続けてきたってことに――――――――)




希「結局えりちが強引に押し切って、生徒会のしごともやめなかったんよね。あの時のえりちはすっごく頑固やったなぁ」

628: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 00:52:17.01 ID:eR4By+ff0
絵里「え? 希が1人でやる、とか言うので揉めた……とかなかったっけ?」

希「そりゃあ揉めに揉めたやん。でも最後はえりちが頑張るって言って、ウチはそれをサポートすることにした」

絵里(……じゃあ私は今までずっと、生徒会の仕事をしてきたの?)

絵里(違うじゃない、あの時の希と穂乃果の言ってたことと)

絵里(……まさか)




絵里「違う夢に、来ちゃった……?」

629: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 01:02:00.45 ID:eR4By+ff0
絵里(そんなの有り得るの? それとも、夢だから設定があやふやになってる、とか……)

希「ど、どうしたんえりち。顔色悪いで?」

絵里「大丈夫よ」

希「うーん……熱でもあるんと違う? ちょっと触らせてくれる?」

絵里「いいけど、ないから大丈夫……」

絵里(……希の手、私のおでこに触れてる)

絵里(夢なのに……?)

630: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 01:06:00.45 ID:eR4By+ff0
絵里「希、ちょっと生徒会室で待ってて。すぐ戻るから」

希「えりち!? 廊下は走ったら危ないで!」

絵里(思い出した。最初からそうだったじゃない)

絵里(私は初めてこっちに来たとき、穂乃果にほっぺをつねってもらった……)

絵里(どうして忘れてたのかしら……)

絵里(ううん、そんなことより今は、このポケットの中の封筒の中身を確認しないと)

631: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 01:09:09.56 ID:eR4By+ff0



絵里「……やっぱり、退部届ね」

絵里(部室に誰もいなくてよかったわ。こんなところ見られたら大変だもの)

絵里(確か退部届には、理由を書かなきゃいけないのよね)

絵里「私は何を書いてるのかしら……」

絵里(……字が震えてる)

絵里(えっと……生徒会の仕事に手が回らなくなったため、退部がしたい……って?)

絵里「……なるほど」

632: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 01:11:09.30 ID:eR4By+ff0
絵里(うーん、でも今の私たちなら、ちゃんと生徒会を運営できてたわよね?)

絵里(それが何でこっちでは――――――――)




絵里「希がいないから……かしらね」




絵里(そうね。そう考えるのが普通だわ)

絵里(……それがどこか、当たり前に思えてるからかもしれないけど)

633: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/02(火) 01:19:44.51 ID:eR4By+ff0
絵里「こっちにいた私と会話できたらいいんだけど……」

絵里(そればっかりはどうしようもないわね)

絵里(みんなは今練習してて、希は生徒会の仕事……)

絵里(まとめてみんなと話す機会があれば、少しは私の状態がわかったかもしれないのに)

絵里(ここは一旦戻ろうかしら。また来ることのできる保証はないけれど)

絵里(思い出に長く浸りすぎるのは、あまりいいこととは言えないしね)



――――――――

――――

――

640: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:18:09.02 ID:njU9ZRCB0




絵里「おはよう、ことり」

ことり「んー……えりちゃん?」

ことり「あれ? 何で絵里ちゃんが……」

絵里「短期留学2日目の朝よ」

ことり「あー!」

絵里(本当に覚えてなかったのかしら)

ことり「そ、そうだ! 今日から学校で……!」

絵里「朝ごはん、できてるわよ」

641: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:20:09.44 ID:njU9ZRCB0
ことり「ごはん?」

絵里「ええ。ホテルじゃ夜しかご飯出ないから」

ことり「そういえば……」

ことり「も、もしかして絵里ちゃんの手作り?」

絵里「そうよ。まあ簡単なものしか用意できなかったけどね」

ことり「えへへ……なんだかうれしいなぁ」

絵里「喜んでもらえてうれしいわ」

642: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:24:21.92 ID:njU9ZRCB0
ことり「メニューはなになに?」

絵里「きのこたっぷりマッシュルームスープと、今朝買ってきたフランスパンよ」

ことり「ええっ!? 絵里ちゃん外で買ってきたの?」

絵里「まあ、ホテル出てすぐのところにお店があったから。そこでついでに食材も」

ことり「……フランス語、話せたの?」

絵里「ううん。指さしたりして頑張ったわ」

絵里(ジェスチャー大変だったけどね)

643: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:28:37.15 ID:njU9ZRCB0
ことり「マッシュルームスープってロシア料理だったりする?」

絵里「まあそうかもね。きのこは多いから」

ことり「そうなんだぁ……うん、いい匂いがしてきたよっ」

絵里「ええ、冷めないうちにどうぞ」

ことり「あれ? そのお鍋とかってどこから持ってきたの?」

絵里「ああ、備え付けのものがあったのよ」

絵里(ちょっと大きすぎるけどね)

644: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:31:38.51 ID:njU9ZRCB0
絵里「それじゃ、いただきましょう」

ことり「あ、いただきまーす」

絵里(塩コショウもここで買ったものだから、分量とか間違えてないといいけど……)

ことり「ん、おいしい!」

絵里「あ、そう? それならよかったわ」

ことり「おいしすぎる……これ、お店に出せるよ。制服作りは任せてっ!」

絵里「それはいくらなんでも気が早いわ」

ことり「そうかなぁ?」

645: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:33:58.05 ID:njU9ZRCB0
ことり「絵里ちゃん」

絵里「どうしたの?」

ことり「お金は持ってたの?」

絵里「え、まあ……」

絵里(知らないうちに持ってたのよね。財布の中に)

絵里(でも誰からもらったのかさっぱりわからない……でも留学用、って書いてたし、大丈夫よね?)

ことり「あ、そっか。絵里ちゃんはお母さんからお金渡されてたもんね」

絵里「そ、それよそれ!」

絵里(たぶん)

646: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:38:00.21 ID:njU9ZRCB0
絵里「そういえば今日、ラブライブの結果が発表される日よね」

ことり「でも時差があるよ?」

絵里「あ、そうね。何時間くらいずれるのかしら」

ことり「7時間くらいじゃなかった? 日本の方が7時間くらい早いはずだよ」

絵里(サマータイムとかってどうなるんだろう……)

絵里「ん? ってことは、今は6時だから……向こうでは昼の1時?」

ことり「……もしかしたら公開されてるかも」

647: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:39:35.58 ID:njU9ZRCB0
絵里「……」

ことり「……」

絵里「と、とりあえずことりは学校に行く準備をして」

ことり「う、うん……」

絵里(なんだか緊張してきたわね……連絡が来るとすれば、ことりの持ってきたノートパソコンに、よね?)

絵里(朝から心臓に悪いわ……)

648: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/03(水) 00:41:53.79 ID:njU9ZRCB0
ことり「あ、絵里ちゃん。こんなに早く起きて大丈夫だった?」

絵里「え? なんで?」

ことり「昨日は時差ボケでつらそうだったから」

絵里(ああ、あのもやもやしてた時ね)

絵里(そっか、ことりには時差ボケで疲れてたように見えるんだ……)

絵里(まあ、そっちの方が好都合かしら)

絵里「大丈夫よ。もうすっかり慣れちゃったし」

ことり「それならよかった」

651: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:22:47.35 ID:1hzKIMNR0




絵里「それじゃ、いってらっしゃい」

ことり「うん、いってきます」

ことり「たぶん穂乃果ちゃんたちからメールが来ると思うから、パソコンはつけたままにしておくね」

絵里「ええ、わかったわ」

絵里(パソコンかぁ……正直あんまり操作方法わからないのよね)

絵里(生徒会の作業も書類ばっかりだったし)

652: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:25:52.27 ID:1hzKIMNR0
ことり「……や、やっぱり最後にもう1回だけメールのチェックを!」

絵里「ダメよ。初日から遅刻しちゃ印象最悪よ? 私が見ておくから大丈夫よ」

ことり「うん……お願いだよっ!」

絵里「もちろん」

ことり「そこのアイコンをダブルクリックしたらチェックできるからね」

絵里「それくらいわかってるわ。心配しないで」

ことり「……じゃあ、いってきます!」

絵里「いってらっしゃい」

653: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:27:16.07 ID:1hzKIMNR0
絵里「……よし」

絵里(ふふふ、ダブルクリックくらい知ってるもの。余裕ね)

絵里「早速メールのチェックを……」

絵里「……あれ?」




絵里(こ、ことりのパソコン……マウスがない!?)

654: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:29:56.56 ID:1hzKIMNR0
絵里「どうやって操作してたの……?」

絵里(マウスがないとカーソルが動かせないはずじゃ……)

絵里(ということは、ことりがマウスを持っていっちゃったの?)

絵里(いやいや……でも……)

絵里「……どうしよう」

655: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:32:26.22 ID:1hzKIMNR0
絵里(ん? でも確か、この前どこかでマウスを持たずにパソコンを操作してた人がいたような……)

絵里(飛行機の中……だったかしら? よく覚えてないわね)

絵里(キーボードの面を指でなぞってたような気が……)

絵里「……あっ! 矢印がある!」

絵里「なるほど、これで動かすのね!」




絵里(動きませんでした……)

657: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:35:50.93 ID:1hzKIMNR0
絵里「魔法? 何か特殊な器具が必要なの?」

絵里「キーを押す以外の操作は……」

絵里「……何かしら、この余白みたいなの」

絵里(ここを削ればもっとコンパクトにできそうね)

絵里「付箋でも貼るところなのかしら?」

絵里「……ん? 今、カーソルが動いたような……」

絵里「……!」

658: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:37:39.44 ID:1hzKIMNR0
絵里「ま、まさか……そんなことが許されるの!?」

絵里「だってこれじゃ……マウスの立場がないじゃない!」

絵里(きっと何かの間違いよ。ええ、そうに違いないわ)

絵里(こんな風に指で触れたって、きっとカーソルは動いたりなんか……)




絵里「……ハラショー」

659: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:39:20.68 ID:1hzKIMNR0
絵里「動いてしまった……」

絵里(うう、マウスが不憫でならないわ)

絵里「あら? でもクリックってどうするのかしら」

絵里「指でつついたら反応してくれたり――――――――」

絵里(した)

660: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:43:49.22 ID:1hzKIMNR0
絵里「……」

絵里(ちょっと楽しい)

絵里「じゃなかった。メールをチェックして……あ、これね」

絵里「ラブライブ最終結果発表……件名だけでも緊張するわね」

絵里(大丈夫よ。みんなで頑張ったんだから、きっと受かってるはず)

絵里(1位通過じゃなくたって、20位以内には確実に入ってる!)

絵里「ふー……」

絵里「よし! 覚悟は決めたわ!」

絵里「ダブルクリック――――――――」


661: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:44:53.66 ID:1hzKIMNR0
絵里「……」

絵里(嘘、でしょ……?)












絵里「なんで本文がないのよ!?」

662: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:47:12.80 ID:1hzKIMNR0



希「穂乃果ちゃん焦りすぎやって!」

穂乃果「て、手が滑ったんだもん!」

真姫「2人とも落ち着きなさいよ」

海未「真姫、そのコップもう空ですよ。何回飲むんですか」

凛「海未ちゃんもうろうろしすぎにゃ」

にこ「はー、はー……」

花陽「に、にこちゃんしっかりして!」

663: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:49:41.60 ID:1hzKIMNR0
海未「は、早く送らないと心配するでしょう!」

真姫「貸しなさい、私が送るから」

穂乃果「真姫ちゃん手が!」

希「震えすぎやって!」

真姫「大したことないわよ」

凛「真姫ちゃん、まず全角に……」

にこ「」

花陽「にこちゃんしっかりしてー!」

664: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:52:36.13 ID:1hzKIMNR0
穂乃果「ああっ、真姫ちゃん押しすぎ! 111位通過になってるよ!」

真姫「パス」

希「逃げた!?」

海未「こ、こんなことになるなら、もっといろいろ準備しておくべきでした!」

にこ「花陽、これ、夢?」

花陽「え? あ、私たちの中ではそんな感じだけど……」

凛「かよちん、にこちゃんの元気が見る見るうちになくなっていくにゃ」

にこ「」

花陽「あ、ご、ごめんなさいっ! 現実です!」

665: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:55:15.73 ID:1hzKIMNR0
希「……ウチらだけでどうにかしないと」

穂乃果「うん、2人がいなくても、μ'sは強いって証明しなくちゃ!」

海未「ああ、でもインタビューと言われても、何を話せばいいか……」

花陽「いつも通り自然に……うぅ、今から緊張してきちゃったよぉ」

にこ「あんたたち! こんな時こそしゃきっとしなさいよ!」

凛「にこちゃん、それ壁だよ」

真姫「……はぁ。もうなんなのよ」

667: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 00:57:27.66 ID:1hzKIMNR0
希(これは予想外やったなぁ……)

希(ラブライブ出場グループは、インタビューがあるなんて)

希(それに――――――――)






希(まさかA-RISEにダブルスコアで堂々の1位になるとは……地元だけじゃなくて普通のテレビ局も来るなんて)

希「えりち……思ったよりこっちも大変そうやで」

678: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:38:22.65 ID:1hzKIMNR0




絵里(はぁ……受かってたのね。よかったぁ)

絵里「それにしてもインタビューって……私たちがいなくても大丈夫なのかしら?」

絵里「っと、その前にことりに連絡入れないと」

絵里「今、繋がるかな……」

  ことり「もしもし!」

絵里(ええっ!? まだワンコール鳴り終えてないのに)

絵里「も、もしもし、授業とかは……」

  ことり「大丈夫だよっ! 絵里ちゃんどうだったの!?」

絵里「落ち着いてことり、大丈夫、ちゃんと教えるから」

絵里(まあ予想通り、いろいろ集中できてなかったみたいね)

679: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:40:01.76 ID:1hzKIMNR0
絵里「率直に言うわ」

  ことり「……うん」

絵里「1位通過よ」

  ことり「……」

絵里(あれ? 反応がない……)

絵里「もしもし、ことりー?」

  ことり「な、何グループ中の?」

絵里「いや、何グループあっても1位は1位だけど……」

680: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:42:21.22 ID:1hzKIMNR0
  ことり「何位までが本戦出場だっけ?」

絵里「20位以内」

  ことり「20位……あれ? 私たちは?」

絵里「1位」

  ことり「……うふふ、あはは」

絵里「こ、ことり?」

  ことり「お赤飯炊かなきゃ!」

絵里(ことりが壊れた)

681: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:44:38.17 ID:1hzKIMNR0
絵里「落ち着きなさいことり、今あなたは何してるの?」

  ことり「何かな? ことりは今何してたのかな?」

絵里(錯乱状態じゃないの)

絵里「とりあえず深呼吸して。話はそれからよ」

  ことり「わかった! すー……」

  ことり「あっ、焼き立てのパンの匂い! 買ってくるね!」

絵里「ことりー!?」

682: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:47:22.71 ID:1hzKIMNR0




絵里「よし、何とかなった……」

絵里(やっぱりうれしかったのね。ふふ)

絵里(ことりもああいう感じになったりするんだ)

絵里「……ま、私はパソコンの操作で精いっぱいだったけど」

絵里(ううん、ポジティブに考えましょう。これでマウスなしでも操作ができるようになったってわけよ!)

絵里(希たちにも自慢できるわね)

絵里「でもやっぱり紙媒体の方が好きかな……壊れないし」

683: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:49:55.13 ID:1hzKIMNR0
絵里「さて、一応書類も一通り片が付いたし……」

絵里(ふふん。書類の扱いには慣れてるからね)

絵里(みんなからのメールが来る間に終わらせるなんて朝飯前ってやつよね)

絵里「……そっか、私って今、やることないんだ」

絵里「ライブ関連のことは全部あっちでやるしかないし、無理にこっちから仕切ることはできないものね」

絵里(だったら……ちょっとだけ、様子を見に行くっていうのもいいかしら?)

684: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:53:54.28 ID:1hzKIMNR0
絵里(また5分セットして……)

絵里(うん、5分くらいならきっと大丈夫よ。実質、起きても3分くらいしか経ってないし)

絵里「長く眠りすぎるのはいけないっては言われたけど、あっちに行けば何かがつかめるかもしれないし……」

絵里「あ、その前にまとめておこうかしら」

絵里「今までにあった変化は、希についてのことばっかりだった……わよね?」

絵里「どっちもμ'sに加入してなかったし、それにμ'sって名前すらなかった」

685: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/04(木) 23:56:28.84 ID:1hzKIMNR0
絵里「私はというと、1回目は穂乃果、2回目はにこを呼び出して、退部届を渡そうとした……」

絵里「退部したい理由は……えっと」

絵里(……なんだっけ?)

絵里「うーん、すごく単純だったはずなんだけど……思い出せない」

絵里「あ、確か、人に触れられるかどうかを試したのも忘れてたわね」

絵里「起きたら忘れちゃうのかしら? うーん、寝ぼけてるせい?」

686: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:01:21.51 ID:J5YUYXiE0
絵里「一応メモに残してるから大丈夫よね、うん」

絵里「……そういえば私、何でこんなの知ってたのかしら」

絵里「また忘れてたり……」

絵里(それももう1度夢の中に行けばわかるのかもしれないわね)

絵里「ことりが帰って来る前に済ませましょう」

絵里「……おやすみなさい」

687: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:03:19.21 ID:J5YUYXiE0





絵里「うわっ、っとと」

真姫「ん? どうしたのエリー」

絵里(な、なんとか倒れずに済んだ……って)

絵里「え、エリー?」

真姫「?」

絵里(エリーって何? 私、そんな風に呼ばれてたっけ?)

688: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:07:09.47 ID:J5YUYXiE0
海未「絵里、あまり無茶をしてはいけませんよ? ただでさえあなたは1人で背負い込もうとするんですから」

ことり「困ったときは、私たちを頼ってね?」

絵里「え? あ、うん。大丈夫よ」

絵里(みんなはいる……けど、何だか違うような……)

にこ「絵里ちゃんしっかり! ニコも絵里ちゃんの力になるために、精一杯応援するニコ!」

絵里「えっ」

絵里(誰この子)

690: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:10:12.93 ID:J5YUYXiE0
にこ「やだなぁ絵里ちゃん、視線がニコに釘づけだよぉ?」

にこ「あぁ、もしかしてニコに惚れちゃった、とか?」

にこ「ダメダメっ! ニコはみんなのものだからぁ……ねっ?」

絵里(このニコニコ言ってる子って一体……)

絵里(にこだ)

凛「絵里ちゃんもしかして眠いの? えへへー、じゃあ凛の膝枕で寝ちゃう?」

花陽「あ、凛ちゃん昔やってもらってたもんね」

凛「にゃっ!? そ、そんなのあったっけ!?」

絵里(昔? 何それ)

691: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:14:21.14 ID:J5YUYXiE0
穂乃果「絵里ちゃんは昔から頼れる大人の女性! って感じだったからなぁ……」

絵里「昔からって……」

真姫「穂乃果ちゃんのその話、何回も聞いたってば。何かして何とかして結局エリーが助けに来るやつでしょ?」

穂乃果「全然覚えてないよ真姫ちゃん!」

にこ「あれれ? マッキーって暗記苦手だったりするの?」

真姫「だっ、誰が! この天才真姫ちゃんにできないことなんてないわよ!」

絵里(……うん、わかった。何だかここは色々と違う)

693: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:18:36.35 ID:J5YUYXiE0
希「お、君たちちゃんと練習してるー?」

絵里「希!?」

希「んん? どうしたんエリチ。感動の再会?」

絵里(ほとんどそんな感じだけど……もしかしてこれって、希がμ'sに入ってたり――――――――)

海未「ああ、希先輩」

絵里(……先輩?)

希「海未ちゃん、そんなん堅苦しいからやめやめ。気軽に希ちゃんって呼んでちょーだい!」

にこ「希ちゃん」

希「ニコにはもう呼ばれ慣れてます」

にこ「てへっ」

694: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:21:21.79 ID:J5YUYXiE0
絵里「希? あなたネクタイだった?」

希「へ? ああ、ウチはずーっとネクタイやで? ほしい?」

絵里「いや、いらないけど……」

絵里(どうなってるの? いろいろと違いすぎて対応に困るというか……)

希「エリチカ会長、表情がかたーい!」

絵里「え、そう?」

希「そんな時は……このあげまんじゅうを食べてにっこり笑顔になるのだーっ! はい、おひとつおすそ分け」

絵里「あ、ありがとう」

穂乃果「あー! それ穂むらのあげまんじゅうだ!」

希「いつもお世話になってます!」

695: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:23:37.64 ID:J5YUYXiE0
凛「凛もおまんじゅう食べたーい!」

希「ちゃーんとみんなの分あるで」

海未「……」

絵里(海未が物欲しげな表情で見てる……)

絵里「海未は食べないの?」

ことり「そうだよ海未ちゃん。大好物でしょ?」

海未「で、ですが私はこれから剣道の稽古が……」

絵里(剣道? 弓道じゃなくて?)

697: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:27:45.91 ID:J5YUYXiE0
にこ「花陽ちゃんも一緒に食べようよぉ」

花陽「わ、私はちょっと……おにぎり食べすぎちゃって」

凛「そうだね。かよちん今日でもう5つも……」

花陽「り、凛ちゃん! それは内緒だよぉ!」

にこ「うーん、しょうがないなぁ。じゃあマッキーと一緒に1枚……」

真姫「こ、コラ! 許可なく撮るのはやめてよ!」

絵里「ああもう、2人ともケンカしないの」

にこ「怒られたニコ……」

絵里「あ、いや。そこまで怒ったつもりじゃ……」

にこ「でもニコのアイドル伝説は始まったばかりニコ!」

絵里(なにこれどうしたらいいの)

698: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:31:00.75 ID:J5YUYXiE0
絵里(とりあえず誰か、情報をくれそうな人は……)

希「うん、やっぱりうまい! もう1つ食べよ」

真姫「太るわよ」

希「そこはスピリチュアルパワーで」

花陽「ぜ、ぜひ教えてください!」

希「おっ、なら是非ともオカルト研究部に……」

絵里「希、今なんて?」

希「エリチかわいい、って!」

絵里「違うわよ。さっき言ってたこと」

希「て、照れもせず……オカルト研には脈なしかな、ぐすん」

699: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:33:24.60 ID:J5YUYXiE0
絵里「希!」

希「はいはい、わかったわかった。そんなに怖い顔してたら美人が台無しやで」

絵里「えっ、そんな顔してた……?」

希「ふむふむ自覚アリ……のぞみんの診療が必要やね! 穂乃果ちゃんメス!」

穂乃果「はいっ!」

海未「穂乃果!? それは私の竹刀で……!」

ことり「海未ちゃん、お口についてるよ」

海未「す、すみません……」

凛「いきなりオペから始まるの?」

700: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:34:54.31 ID:J5YUYXiE0
絵里(こ、このままじゃあやふやにされる!)

絵里「もう、希ってばいい加減に……」

希「エリチ、今なら抜け出せる」

絵里「えっ、ちょ、ちょっと……!」

絵里(抜け出すってどういう……)

701: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:37:29.02 ID:J5YUYXiE0





希「はー、ここまで来れば大丈夫。希ちゃんの絶好の隠れスポットなのだ!」

絵里「隠れスポット? ここ、空き教室じゃないの?」

希「うーん、エリチは知ってても、エリチは知らないんかぁ」

絵里「……どういう意味?」

希「ウチにはわかる。今のエリチはエリチであっても絢瀬絵里じゃない」

絵里「!」

絵里(まさか……バレてる?)

702: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:39:32.75 ID:J5YUYXiE0
絵里(ていうかこれって、自分の正体バラしちゃっていいのかしら)

絵里(……夢だし)

絵里「よく見破ったわね、希」

希「お、ウチの読み通り!」

絵里「なんでわかったの?」

希「だってエリチ、わかりやすくオロオロしてたもん。ウチじゃなくてもすぐにわかるよ」

絵里「うっ」

703: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/05(金) 00:42:13.96 ID:J5YUYXiE0
希「まあ座って。ここはウチのオカルト研究部の部室やし」

絵里「オカルト……やっぱりμ'sには入ってないのね」

希「うん。μ'sには入ってない」

絵里(……あれ? 何でμ'sって知って――――――――)

希「おっと! みなまで言わんでもウチにはわかる!」

希「μ'sって名前、何で知ってるか聞きたいんやろ?」

絵里「……すごいわね。どうしてわかったの?」

希「それはこの、とっておきのクッキーを食べながらでも」

711: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:40:29.45 ID:dwChzZYR0



希「まあ単刀直入に言うと、違和感があったんよ。エリチには」

絵里「違和感?」

絵里(……このクッキーおいしい)

希「そうそう。なんか違うっていうイメージがビビビって」

希「それがそっくりやったってだけ」

絵里「そっくりって……何と?」




希「……ウチに憑りついたユーレイさんと」

713: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:43:51.49 ID:dwChzZYR0
絵里「ゆ、幽霊?」

希「うん。ちょっと前までウチは、自分の意志で動いてなかった時期があってな? それはもう疲れて疲れて」

希「毎日毎日オカルト研に顔を出さずにエリチにアプローチかけて、とっておきのおやつもいつの間にか食べちゃって」

希「もー、何でなんやろ?」

絵里(私にアプローチ……?)

希「まあレアな体験ができたとは思ってるんやけど……あの限定50個のケーキはウチが自分の手で食べたかったなぁ」

714: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:45:30.21 ID:dwChzZYR0
絵里「ちょ、ちょっと待って。憑りついたって……何が?」

絵里「本格的にマズいんじゃ……」

希「ううん、たぶんあれは悪いやつじゃなさそう」

絵里「わかるの?」

希「ビミョーなところやけど……なーんか波長が合うっていうか」

絵里「?」

715: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:47:36.90 ID:dwChzZYR0
希「自分の意志はあるけど、自分では動けない……って感じ?」

絵里「金縛りみたいね」

希「うーん、どうかな。あんまり覚えてはないけど自由に動けたりできたし」

絵里「自由?」

希「そうそう。精神的なもので」

絵里(何だろう、よくわからないわね)

716: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:50:05.38 ID:dwChzZYR0
希「まあ、ウチが覚えてるのはそれだけ」

希「誰かがウチの体を使って、エリチに何かをさせようとした……ってことかな」

絵里「……幽霊に恨まれるようなこと、したのかしら」

希「たぶん大丈夫やとは思うよ。怒ってるって感じじゃなかったし」

絵里「そういうのまでわかるの?」

希「ふっふっふ、何をおっしゃる。ウチはオカルト研究部の部長やで!」

絵里(あ、そういえばそうだったわね)

717: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:52:38.26 ID:dwChzZYR0
希「でもなぁ、そのユーレイさんはとにかく焦ってたみたいなんよ」

絵里「焦ってたの?」

希「そうそう。その時はさすがのウチでも、ユーレイさんに心の余裕がなくてよく状況が呑み込めてなかったんやけど……」

希「んーと、途中で何かをきっかけに心の余裕が生まれたみたいで、その時にやっと自分がどうなってるか自覚できたってわけ」

絵里「じゃあ焦りっぱなしだったら何もわからなかったかもしれない、ってこと?」

希「うん」

718: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:55:31.59 ID:dwChzZYR0
希「あ、その時に、μ'sって名前が頭をよぎったんよ」

希「ユーレイさんの考えかも……って考えるとスピリチュアルやね」

絵里「幽霊の……」

絵里(でも、μ'sって名前の言いだしっぺは希よね?)

絵里(……それも幽霊のせいなのかしら)

絵里(ん? もし今までの希に、同じ現象が起こっていたとしたら……それに違和感を感じてなかったのは、焦った幽霊に憑りつかれたせい?)

719: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 00:57:21.57 ID:dwChzZYR0
絵里「うー……考えすぎて頭が疲れてきた」

希「そんな時には甘いもの! はいどーぞ」

絵里「あ、チョコね。ありがとう」

希「……エリチもユーレイさんに憑りつかれてるかも」

絵里「えっ」

希「って、最初は思ってたんやけど……これは違うかも」

720: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:01:21.43 ID:dwChzZYR0
絵里「違うの?」

希「うん。ちょっと混ざってる感じかな?」

絵里「ま、混ざってる!? 幽霊と!?」

希「んー……ウチもそこまで詳しくはないから……でもなんていうか、エリチのこと嫌ってはないみたい」

絵里「ならいいんだけど……」

希「ウチももっと修行を積むべきかなぁ?」

絵里「ううん、今の希の助言、抽象的だけどかなり手掛かりになったわ。ありがとう」

721: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:03:11.60 ID:dwChzZYR0
希「お、それならよかった! のぞみんパワーが役に立ったんやね」

絵里「あ、それで希は今μ'sには入ってないの?」

希「うん。一応撮影係としてアイドル研究部にくっついてるよ。何せオカルト研は部員が1人でなぁ……」

絵里「……」

希「ん? エリチどうしたん?」

722: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:05:49.08 ID:dwChzZYR0
絵里「今からでも遅くないわ」

希「へ? 何が?」

絵里「μ'sに入って!」

希「ええっ!? そ、そんな無茶な……」

絵里「無茶なんかじゃないわ。私の知ってる希は、オカルトも好きだけど、歌やダンスもすごく好きだったもの」

絵里「こっちでもプロポーションは相変わらず抜群だし……よーし! 引き抜き決定!」

希「えー!?」

723: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:09:00.73 ID:dwChzZYR0
希「ちょ、ちょっと待って」

絵里「んー?」

希「そんな急に言われても困るって。第一ウチにはオカルト研究部が……」

絵里「生徒会の力でくっつければいいじゃない。オカルト研究部 with μ's! ほら完璧!」

希「しょ、職権乱用や!」

絵里「まあまあ、そんなことは気にしないの」

希「あー、ウチのしってるエリチに似てきた気がする」

絵里「何言ってるのよ。私はいつだって私のままよ?」

724: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:11:05.53 ID:dwChzZYR0
希「うー……ウチの勝ち目がない」

絵里「元々勝ち負け云々じゃなくて、希はμ'sに入る運命なのよっ」

希「……ふふ」

絵里「え、何かおかしいところ、あった?」

希「いやまあ、それ言うと全部おかしいけど……」





希「エリチは全然、性格変わってないなぁ」

725: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:12:19.58 ID:dwChzZYR0
絵里「それ、褒めてるの?」

希「ほめてるほめてる」

絵里「あやしい」

希「こんな時はチョコで買収!」

絵里「いただきます」

希「あはは」

絵里「ふふ」

726: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:14:27.91 ID:dwChzZYR0
希「エリチ」

絵里「なに?」

希「エリチって別のところにいるウチも見たことあるん?」

絵里「まあそうなるわね」

希「へー……」

絵里(詳しく……は、話しづらいわね。なんて説明すればいいのかしら)

希「じゃあ別のウチにもよろしくって伝えといてくれる?」

絵里「え? あ、うん。別にいいけど……」

絵里(希はわかってくれるのかしら?)

727: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:16:32.54 ID:dwChzZYR0
絵里「……って、あんまり長居するわけにもいかないわね」

希「胸のカラータイマーが鳴っちゃうから? 正義の味方も大変やね」

絵里「そうそう、3分間だけ……って、そんなわけないでしょ!」

希「あ、久しぶりにエリチのノリツッコミ見た」

絵里「レアだから、きちんと覚えておいてね?」

希「はーい!」

728: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:18:22.97 ID:dwChzZYR0
絵里「じゃあ希、さよなら」

希「またね、じゃなくて?」

絵里「ええ。もう1度来られるかはわからないもの」

希「そっか……エリチ、頑張ってな」

絵里「任せなさい。希もね」

希「うん」




絵里「それじゃ、こっちの私をよろしくね」



――――――――

――――

――

729: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:20:08.37 ID:dwChzZYR0



絵里「ん……」

絵里(あ、やっぱり3分経ってる)

絵里「……?」



絵里「……こっちの私って、何?」



絵里「あれ? 何で私、そんなこと言ったのかしら」

730: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 01:21:53.42 ID:dwChzZYR0
絵里「それに希と話してるとき、変な感じが……」

絵里「まるでだんだん、別の自分になるような――――――――」

絵里「……」

絵里(……幽霊のせい?)




絵里「こ、ことり、早く帰ってきて!」

738: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:24:57.02 ID:dwChzZYR0



希「……みんな、がんばろ」

にこ「頑張るも何も、ただのインタビューでしょ?」

希「にこっち、それウチやなくて壁」

真姫「まだ緊張してるわけ?」

穂乃果「そうだ! みんなで手を繋いでいけば緊張しないんじゃないかな?」

海未「ええっ!?」

花陽「あ、でもそれは意外と名案かも……」

739: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:28:45.67 ID:dwChzZYR0
凛「ミュージカルみたいにゃ!」

海未「で、ですが、そんな……恥ずかしい」

穂乃果「インタビューで何も答えられずにあわあわしてる方が、海未ちゃんはいい?」

海未「横1列になりましょう」

希(海未ちゃん変わり身早いなぁ……)

にこ「ねぇ花陽、最後にもう1度だけ確認させて」

花陽「夢じゃないよ。ここは現実」

にこ「そうよね……うん、もう大丈夫」


740: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:30:53.66 ID:dwChzZYR0
凛「にこちゃん、本当に大丈夫なの?」

真姫「おうよ、さっきから様子が変だし」

にこ「いや、実際に夢が叶うと……なんか想像以上にふわふわしてくるのよ。まるでとんでもないこと口走ったりしそうで」

希(意外やね。にこっちって本番に弱いタイプなんや)

海未「あ、そろそろ出番みたいですよ」

穂乃果「よーし、みんな位置について」

にこ「なんかその掛け声は違うと思うわ」

741: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:32:55.38 ID:dwChzZYR0
穂乃果「え?」

希「確かに、リレーでもしそうな言い方やったよ」

凛「リレーは得意にゃ!」

真姫「違うから。聞いてるのはそこじゃないわよ」

にこ「はー……ここまで来られたんだから、絶対優勝するわよ」

穂乃果「もちろん!」

花陽「うんっ!」

742: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:35:00.91 ID:dwChzZYR0
海未「では……みんな、手を繋ぎましたか?」

凛「うん」

真姫「……ねぇ、これ本当にやるの?」

花陽「印象には残ると思うよ。アイドルなんだから、そうやって覚えてもらわないと!」

希「お、花陽ちゃん燃えてるなぁ」

にこ「ん、呼ばれたみたいね」

穂乃果「よし! 行こう!」

743: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:39:12.88 ID:dwChzZYR0



穂乃果「みなさん、初めまして。高坂穂乃果と申します」

穂乃果「私たちμ'sは、応援してくれるみなさんのおかげでここまで来ることができました。ありがとうございます」

希(うぅ……いくら夢の中とは言えども、こんなに人がいたら緊張するのに……)

希(やっぱり穂乃果ちゃん、すごいなぁ)

穂乃果「えっと……」

希(……もしかして)

穂乃果「次は部長の矢澤にこさんからです!」

にこ「!?」

希(投げた! 話すこと忘れたからって全部飛ばして次に行った!)

希(えりちたちがいないことも説明してないのに……)

744: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:40:46.44 ID:dwChzZYR0
にこ「あ……コホン」

にこ「えー……矢澤にこです!」

にこ「……」

希(……にこっち?)

にこ「に……」

希(に?)




にこ「にっこにっこにー!」

745: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:45:14.95 ID:dwChzZYR0
希「!?」

海未「!?」

にこ「アイドル研究部部長の矢澤にこですっ! みんなのハートにラブにこっ!」

にこ「今回はみんなのおかげで無事に本戦に出場することができてとてもうれしいです」

にこ「だから本戦も、みんなの期待に応えられるように頑張ります!」

にこ「やるからには全力で……優勝目指して頑張ります」

穂乃果「以上です!」

花陽「……」

凛「……」

真姫「……」

希(あれ、ウチらの挨拶は……なしなん?)

746: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:51:27.35 ID:dwChzZYR0




穂乃果「うわぁぁん! ごめんねみんな! 穂乃果が忘れちゃったからぁ!」

海未「大丈夫ですよ。にこに繋いだだけよかったです」

真姫「でも絵里たちのこと、何も話してないわよ」

穂乃果「うっ」

にこ「仕方ないわよ。穂乃果だって緊張してたんでしょ」

希「ウチはにこっちが持ちネタをやりだした辺りから心臓バクバクやったよ」

にこ「他にいいのが思いつかなかったのよ」

747: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:55:34.87 ID:dwChzZYR0
海未「……でも、案外あっけなかったですね」

凛「凛たちトップバッターだから……もしかしたら今頃、みんなインタビューの内容を短くしてるかもしれないよ?」

真姫「私たちの真似して、ってこと?」

凛「うん」

花陽「ああ、それはありえるかも」

穂乃果「ほ、穂乃果のせい……?」

にこ「違うわよ」

海未「そうですね……穂乃果も緊張するんですよね。よしよし」

穂乃果「ううー……」

希(一応えりちとことりちゃんがいなくても、なんとかなったってわけやね)

748: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/06(土) 23:59:09.71 ID:dwChzZYR0
海未「そういえば私たちの次は……」

希「A-RISEやね」

真姫「一番厄介な相手よ」

にこ「どんなインタビューをするのかしら」

凛「要チェックにゃ」

花陽「うんっ」

749: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:01:00.68 ID:l3FFoWPF0
海未「……」

希「……」

海未「あの、希」

希「A-RISEが何言ってるかわからない、って?」

海未「はい。どうしてわかったんですか?」

希「それは夢やから。自分の見たこと、聞いたことないものまでは再現できないんよ」

海未「なるほど……確かにA-RISEのメンバーは、画面越しにしか見たことがありませんし、直接話したこともありませんからね」

750: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:05:06.21 ID:l3FFoWPF0
凛「ま、真面目なことばっかり言ってる……」

真姫「それを言ったら私たちが不真面目みたいじゃないの」

にこ「でも予想はしてたけど、落ち着いてるわね……」

穂乃果「すごいなぁ……」

花陽「大勢の前に立つのが慣れてるって感じがするね」

海未「……あれ? おかしくないですか?」

希「……あれ」

希(なんで花陽ちゃん、話してることわかるんやろ)

751: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:08:45.48 ID:l3FFoWPF0
希「は、花陽ちゃん」

花陽「え? 何?」

希「A-RISEに会ったこととか……あるん?」

花陽「あ、ライブとかはちょっと見たことあるよ」

希「そうじゃなくて、直接しゃべったり、とか……」

花陽「そ、そんな! 確かにA-RISEは頻繁にライブやってお客さんとコミュニケーションをとることに積極的なのはあるけど……」

花陽「春にも握手会やサイン会は数回やってたし、ライブ事態の数は他のアイドルグループに類を見ない多さで……」

希「ストップストップ!」

752: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:10:38.21 ID:l3FFoWPF0
花陽「え? 何か間違ってたかな?」

希「いやいや、そういうことじゃなくて」

希(ていうかそもそもわからないし)

希「なんで花陽ちゃんは、A-RISEのインタビューがわかるのかってことを聞きたくて」

花陽「……き、緊張で聞こえなくなっちゃったとか!?」

希「ち、違うって! ウチらがおかしいってわけじゃなくて!」

海未「花陽、ちょっとこっちに来てください」

花陽「あ、うん……」

753: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:15:09.71 ID:l3FFoWPF0
海未「私たちが来たこの夢の世界では、A-RISEと面識がない限り脳内補完ができないそうなんです」

花陽「……?」

希「たとえば、見たことも聞いたこともない料理の味は、絶対にわからないやろ?」

花陽「そうだね」

希「だからこっちも同じように――――――――」

花陽「あ、A-RISEのことをちゃんとわかってなかったら、こっちでもわからないってこと?」

希「そういうこと……なんやけど」

754: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/07(日) 00:16:55.94 ID:l3FFoWPF0
花陽「……」

海未「……」

希「……」

花陽「……何でだろう?」

海未「さあ……」

希「ウチにもさっぱり……」

希(どうしたんやろ。なんでこんなことが――――――――)

765: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 09:58:00.10 ID:kogWAWxx0




絵里「……そういえば最近、夢の中の私に会ってないわね」

絵里(前に助言してくれてからそれっきりだし)

絵里「また寝たら出てきてくれるのかしら?」

絵里「もしかしたら私が見てる夢について知ってたり――――――――」

絵里(そうだ、意識を集中させてみれば……)

766: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:02:20.66 ID:kogWAWxx0
絵里(出てこい私!)

絵里「むむむ……」

絵里(あ、でも自力では思い出せないとか言われたような……)

絵里(ああ、それならどうやって――――――――)

絵里(あれ? なんだか眠くなってきた気が……)

絵里「う……」

767: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:06:56.92 ID:kogWAWxx0




……あれ? ここは……。

「おはよう」

……あ! 私!?

「ええ」

なんで? どうして会えたの?

「誰かが無理やりに私たちを引っ張り出そうとしたせいかしら。結局はあなたが引きずり込まれちゃったみたいだけど」

な、なるほど……。

そうだ、私には聞きたいことが色々あるの!

「それは今から説明してあげるわ。夢の迷路で迷子になられても困るしね」

768: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:09:44.13 ID:kogWAWxx0
わかるの?

「もちろんよ。まあさすがに2回目のおまじないを行うとは思ってなかったけど」

2回目?

「気にしないで。こっちの話よ」

そうなのね。

あ、もしかして私が見た夢の世界について、わかったりする?

「ええ、わかるわ」

本当? なら教えてくれないかしら?

「そうねぇ……少し長くなるけどいい?」

ええ。

769: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:11:50.58 ID:kogWAWxx0
「言ってしまえば、あっちはパラレルワールドと一緒よ」

ぱ、パラレルワールド!?

「そうよ」

私ってそんな大変なことを……。

「パラレルワールドと言っても、あれは夢とは紙一重なの」

夢と一緒なの?

「そうよ。あの世界は――――――――」




「夢だと思えば夢になってしまう世界よ」

770: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:15:43.72 ID:kogWAWxx0
夢……どういうこと?

「オカルト的なものだからね。それは使用者の意識に関わることなの」

意識。

「そう、意識。言霊ってわかる?」

ああ、言ったことが本当になるみたいなやつよね。

「だいたいあってるわ。私たちもそういうのをあまり気にしてなかったから、気付くまでに時間がかかったんだけど……」

気付くって……まさか、あなたも行ったことがあるの?

「ええ、あるわ」

771: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:19:23.41 ID:kogWAWxx0
「というか私たち全員が、そのおまじないを試してるからね」

前から気にはなってたんだけど、私たちってどういうことなの? あなたは1人じゃない。

「ああ、それね。みんなを呼んだ方がいい?」

うん、いいわ。

「みんな、出てきて」

「んー?」

「何かあったの?」

「あれ、もしかしてそこにいるのって……」

わ、私が4人に増えた!?

772: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:23:26.92 ID:kogWAWxx0
「本当は7人いたんだけどね」

7人!? 7人もいたの!?

「あなたも迷った絵里?」

「いいえ、彼女は私たちを元の場所に置いてくる私よ。ずっと私が相手してたのはこの絢瀬絵里」

「ハラショー!」

「ハラショー!」

「ハラショー!」

……みんな同じこと言うのね。

「同じ人間だもの。仕方ないわ」

773: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:27:43.01 ID:kogWAWxx0
「とりあえず、ややこしくなるから戻りなさい」

「はーい」

「わかったわ」

「ありがとうね、私!」

え? 感謝されることなんて……。

「何を言ってるのよ、あなたは……って、まだ説明してないのね」

「そうよ。今から説明するところだから」

うん、まだ何も聞いてなくて。

「そっか、うんうん。自分がいかにすごいことをしてるかちゃーんと理解してね」

774: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:31:15.36 ID:kogWAWxx0
すごいこと……?

「まあ聞きなさい」

はい。

「さっき、あなたが見る夢のことをパラレルワールドって言ったじゃない?」

うん。

「で、行く先々であなたは別の役割を持っていた……そうでしょ?」

役割?

「ええ。ただの生徒会長ってだけじゃなかったわよね?」

ああ、生徒会の仕事をしてなかったりしたわ。

775: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:36:35.90 ID:kogWAWxx0
「その時、あなたは別の絢瀬絵里になってるのよ。パラレルワールドの別の時間軸にある自分に乗り移ってるってこと」

……よくわからないけど、もともとその世界にいた私の体を借りてる……ってことでいいの?

「そういうこと」

そっか……パラレルワールドにいたんだ。

だから物に触れたりできるのね。

「ええ。体を借りてるから」

なるほど……自分でも気づかないうちに、かなり壮大なことをしてたわけね。

776: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:43:19.83 ID:kogWAWxx0
「そしてもう1つ。その体を借りた時、もともといた絢瀬絵里はどこに行くと思う?」

え……あ、そっか、もともとの私がいるんだ。

えっと……その……どこかに行ってる、とか?

「正解よ」

やった!

「体を借りるときは、もともとの持ち主がいないとき、もしくは持ち主に憑依するような形で借りるしかないの」

憑依……あ、希がそんなことを言ってたわ。何かに憑りつかれたみたいな感じって。

「希は霊感とか強い方だものね。まあ行く先々でその強さが変わってくるけど」

777: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:45:23.66 ID:kogWAWxx0
ん? でも、持ち主がいないときってどういうこと?

「それはもちろん、あなたと同じようにパラレルワールドに行ってる時とか」

……そっか、なるほど。そんなことがあるんだ。

「あともう1つの可能性としては――――――――」





「私たちみたいに、帰る場所がわからなくなった場合ね」

778: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:50:20.29 ID:kogWAWxx0
帰る場所が……え?

「帰れない場合は、体がずっと抜け殻として残るのよ。行く先々で倒れたりよろめいたりしそうになったでしょう?」

したわ。今は結構慣れたけど……。

「おまじないって言っても、ただ寝る以外にもいろいろあるのよ。立ったままでも意識を集中させるだけ、とか」

え、そんな簡単なものでもいいの?

「ええ。オカルトってそんなものよ」

なるほど……。

779: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 10:56:29.15 ID:kogWAWxx0
「まあどういう仕組みかはわからないけどね」

そうよね。

あ、でも体が抜け殻のままなら、倒れたまま時間が進んだりしたら……。

「その辺はたぶん大丈夫よ」

え?

「だってあなたが向かったところでは、いつも倒れる寸前とかばかりだったでしょう?」

そうね。

「パラレルワールドでの時間の進みが私にもよくわからないんだけど……たぶん倒れるタイミングぴったりに時間が合わせてあるみたいなのよね」

780: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:00:09.23 ID:kogWAWxx0
す、すごいわね。

「そうなの。全ての世界の時間が、同じように一律で進んでいるとは限らないみたいなの」

「実際に過去に戻っていたりすることもあるし」

そういえば確かに、夏っぽくなかった時期もあったような……。

「それと同じで、あなたが行った先の世界で滞在していた時間と、こっちに戻ってきたときに立っている時間も違うでしょ?」

あ、違う。

「そういうことよ。このあたりは何度考えてもわからないままなの」

へぇ……。

781: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:06:05.22 ID:kogWAWxx0
「それであなたは、別の世界に行くついでに私たちを元の位置に戻していくってわけ」

へー……。

ん? 今さりげなく、ものすごいこと言わなかった?

「ああ、そのために私たちがあなたを導いてるってことよ。どの世界に行くか、とか」

ええっ!? ど、どういうこと!?

「私たちは帰れなくなったって言ったでしょ?」

うん。

「だからついでに、元の位置に戻してもらうの」

!?

782: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:13:26.29 ID:kogWAWxx0
え、それって……あなたたちがいた場所に、私が夢を通して行ってるってことなの?

「そうよ。普通は望んだ場所に近いところへ行けるみたいだけど、あなたはそういうのがなかったからこっそりと、ね」

そう、だったのね……。全然気づかなかった。

「そうして私たちは、自分の意識をあなたから切り離すことで元の場所に帰ることができる……」

「ふふ、導かれてるのは私たちの方かもね」

そういうことになるんだ。

「ええ」

783: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:16:46.03 ID:kogWAWxx0
「あ、忘れてたわ。言霊の話だけど」

うん。

「あの世界を、夢だ夢だと言い続けたり思い続けたりしたら夢になるわ」

……?

「わからないって顔ね……まあ私も最初はわからなかったわ」

「簡単に言うと、現実だと思えば現実になるし、夢だと思えば夢になるの」

わかったような、わからないような……。

「そうよね。ただ、あっちはそういうふわふわした世界だってことに気付いてくれればそれでいいの」

784: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:22:07.15 ID:kogWAWxx0
「あっちの世界を夢だと思わせることによって、現実の戻ってこられる場所をしっかりと記憶させる」

「これが正しい使い方なのよ」

本当は夢じゃなくて現実の世界なのに?

「ええ、だって現実の世界が2つもあると、どっちに戻っていいかわからなくなるでしょ?」

そうね……。

「まあ現に、誰かさんはその状態に陥ってるんだけど」

……?

「ま、これは自分で気づかないと意味がないからねぇ……他人に教えられた答えじゃ、本当に元いた世界がすぐにわからなくなるもの」

785: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:24:58.89 ID:kogWAWxx0
あ、ずっと聞こうと思ってたんだけど……。

「何かしら?」

なんで私にくっついてるの?

「それは私が、もともとの体の持ち主だからよ」

えっ。

あ、ご、ごめんなさい。

「いいのよ別に。ずーっと迷って迷って出てこられたら、あなたがいたんだもの」

迷ったって……あなたもなの? 他の私たちと同じで?

「迷った理由はまた今度ね。あなたが違和感に気付いたときに教えてあげるわ」

786: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:27:32.82 ID:kogWAWxx0
……あ! そうだ!

「どうしたの」

眠りすぎるといけないんだった! どうしよう……かなリ話し込んじゃった。

「大丈夫よ」

え、でも……。

「あなたはこうして私を呼べた。それは、いつでも私がその違和感を教え続けてあげられるってことよ」

あ、そっか。

「だから心配しないで」

わかったわ。

「でもあまりに長く眠りすぎると、私のことまで忘れちゃうから気を付けてね」

ええ。

787: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:29:49.06 ID:kogWAWxx0
あ、次にあっちの世界に行ったときは、4人の内誰かがいた世界ってことね。

「3人よ。私の世界はここだもの」

ああ、そうだったわね。

じゃあ後3回はアレをやらなきゃいけないってわけね。

「そうよ。ただ訪れるだけでもいいけど、あなたの好きなようにやってくれて構わないわ」

え? どうして?

元の人がいるのに。

788: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:31:43.52 ID:kogWAWxx0
「ふふ、何を言ってるの」

え?

「あなたの行動は私たちの行動よ」

「あなたは私たちよりもはるかにポジティブで前向きだけど、それ以外はほとんど同じ性格なんだから」

あー……。

そっか、そうよね。私なんだから……。

「でもあんまり無茶な行動はしないでね」

ええ、気を付けるわ。

789: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:33:22.11 ID:kogWAWxx0
「……よし、そろそろ起きる時間よ」

うん。

「目を覚ます準備をして」

「あなたは戻って元の世界へ戻るのよ」

790: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/08(月) 11:33:48.85 ID:kogWAWxx0




「あなたのいるべき場所へ、戻りなさい」





805: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:35:17.68 ID:/PygjeT50




絵里「……ん、今何時かしら」

絵里(寝たのがお昼過ぎくらいだったから……)

ことり「おはよう絵里ちゃん。晩ご飯食べに行こっか」

絵里「うん」

絵里(……)

絵里「晩ご飯!?」

806: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:37:07.49 ID:/PygjeT50
ことり「そうだよ。晩ご飯」

絵里「こ、ことり、いつの間に帰ってきて……」

ことり「2時間前くらいかなぁ。絵里ちゃんがぐっすり寝てたから、起こすのは忍びないなぁと思って」

絵里「そ、そんな……」

絵里(でもさっきまで太陽が見えて――――――――)

絵里「……月が綺麗ね」

ことり「きゃっ、絵里ちゃんプロポーズ?」

807: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:38:39.27 ID:/PygjeT50
絵里(えー……ってことは私、相当話し込んでたみたいね)

絵里(ん? でもあっちにいたのって10分……長くて20分くらいよね?)

絵里(……あ、普通に寝てたんだ、私)

絵里「そうね。晩ご飯食べに行きましょう」

ことり「はーい」

808: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:41:29.32 ID:/PygjeT50
絵里(……私は最低あと3回、あのおまじないをやらなきゃいけないのよね)

絵里(今日の晩と、明日のお昼と晩で終わり……よね?)

絵里(あと1人はここにいる私だったみたいだし――――――――)



『それは私が、もともとの体の持ち主だからよ』



絵里(……あれ? この体の持ち主って、私じゃないの?)

809: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:43:29.92 ID:/PygjeT50
絵里(うーん、また何か変なことが起こってるのかしら。今度聞いてみよう)

ことり「それにしてもびっくりだよぉ。絵里ちゃん1日で書類書き終えちゃうんだもん」

絵里「ああ、そのくらいは慣れてるわ。生徒会の仕事でよくやってたもの」

ことり「すごいね絵里ちゃん」

絵里「それほどでもないわ」

絵里(って言っても、生徒会の仕事はあんまりなかったけどね)

810: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 00:45:52.76 ID:/PygjeT50
絵里(希だけじゃなくて、花陽も手伝ってくれてたし)

絵里(……)

絵里(なんで花陽が? どうして手伝ってくれてたんだっけ?)

絵里(何か忘れてるような気がするわね……うーん)

絵里(まあ今は食事を優先しなきゃね)

絵里「ことり、準備できた?」

ことり「ばっちりだよ!」

絵里「今日はお昼食べてないから、いっぱい食べちゃおうかしら。ふふっ」

818: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:15:05.33 ID:/PygjeT50



絵里「ふー、食べた食べた」

ことり「絵里ちゃん、普段あんなにたくさん食べるの?」

絵里「ううん、今日は少し多かったわ」

ことり「少しって……あ、そういえば絵里ちゃんが風邪ひいたときに食べてた朝ごはんの量も結構あったような……」

ことり「むむむ……絵里ちゃん太らないタイプ?」

絵里「どうかしら。ちゃんと運動はしてるんだけど」

絵里(夢の中で走ったりしたし)

819: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:21:28.17 ID:/PygjeT50
ことり「ずーるーい」

絵里「そんなこと言われてもねぇ……ことりも太ってないじゃない」

ことり「……最近二の腕にお肉が」

絵里「そうなの? 全然わからないけど」

ことり「このままじゃ腕が丸太みたいになっちゃうかも」

絵里「逆に見てみたいわね」

ことり「絵里ちゃんのいじわる」

絵里「ふふ、だってしょうがないわよ」

820: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:23:02.64 ID:/PygjeT50
絵里「さ、もうお風呂……じゃなかった。シャワー浴びて寝ましょうか」

ことり「そうだね。今度は覗かないでね?」

絵里「はいはい」

ことり「じゃあ昨日と一緒で私から入るよ」

絵里「ええ」

ことり「着替え着替えーっと」

821: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:28:59.57 ID:/PygjeT50



絵里「……さて、今日聞いた話をまとめてみようかしら」

絵里「まずは……そうね。私が行ったのは夢じゃなくてパラレルワールドってところね」

絵里(夢と紙一重って言うのはよくわからなかったけど、とりあえずあっちも現実なのには変わりない、ってことよね?)

絵里「後は何があったっけ……」

絵里(ああ、私はこれから、意識の中にいる私たちを元いた世界に返して行かなきゃいけない)

絵里(7人いたって言ってたけど……残り3人はどうしたのかしら?)

822: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:32:46.83 ID:/PygjeT50
絵里「まあそれは置いといて……」

絵里(私はあっちに行くときに、別の自分の体を借りてる)

絵里(その体を借りれるのは、そこに私の意識がないからで……)

絵里「うぅ、このあたりがわかりにくいわね」

絵里(体をコップ、意識を水と考えたらわかりやすいかしら?)

絵里(空のコップに何も入ってないから、水は入ることができる)

絵里(……こんな感じかしら)

823: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/09(火) 15:39:06.17 ID:/PygjeT50
絵里(それで、もともと水が入っていた場合は、一旦別の容器に移しておいてから水を入れる……)

絵里「……ふむ。それで戻るときにちゃんと戻すわけね」

絵里(希みたいに移し替えられたのがわかることもあれば、わからないこともある……)

絵里「まあそんなところ……よね」

絵里(難しいことは考えずに、単純にパラレルワールドに3回行けばいいってわけね)

絵里(よし、おしまい!)

絵里「ふー……考えたら疲れた。シャワー浴びよう」

ことり「きゃあああああ!?」

絵里「あっ」

835: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:00:28.89 ID:f8slL2AH0


絵里「ことり、起きてる?」

ことり「……」

絵里(寝てる……わよね)

絵里(本当に寝つきがいいのね、ことりって)

絵里(何か枕に秘密でもあるのかしら)

絵里(……よし、私も早く行かないと)

絵里「おやすみなさい」

836: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:04:10.35 ID:f8slL2AH0


――――――――ねぇ……ちゃん、お……!――――――――

んん? あれ、何でだろう。

今までだったら普通に起きられたのに。

なんだか普通に眠い気が……。

――――――――ねぇ、お姉ちゃん、起き……!――――――――

お姉ちゃん? ってことは亜里沙が……。

でもこの声、どこかで……。

――――――――こうなったら凛のくすぐりこうげきを……――――――――




絵里「ええっ!? 凛!?」

凛「やっと起きた! もー、お姉ちゃんったら。昨日夜更かししたでしょ?」

絵里(な、なんで凛が……?)

837: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:06:55.99 ID:f8slL2AH0
凛「今日は生徒会の活動があるんだよね。凛はかよちんと待ってるにゃ」

絵里「え、う、うん。そうね」

絵里(なんで凛が妹に……)

絵里(……なるほど、パラレルワールドってそういうこと)

亜里沙「凛お姉ちゃん、起きた?」

凛「亜里沙、それだと凛が寝坊してるみたいだよ」

亜里沙「いつものことでしょ?」

絵里(亜里沙はちゃんといるのね。よかった)

838: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:10:22.04 ID:f8slL2AH0
亜里沙「凛お姉ちゃん、いつも絵里お姉ちゃんに起こしてもらってるから」

凛「……そういえばそうだね」

絵里(そうなんだ)

亜里沙「トースト、用意してるから早く来てね」

凛「晩ご飯はラーメンがいい」

亜里沙「自分で作るならいいよ?」

凛「亜里沙の作るラーメンは絶品で……」

亜里沙「イ・ン・ス・タ・ン・ト・で・す!」

絵里(料理は亜里沙が作ってるんだ……こっちの私は料理しなかったのかしら)

839: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:12:58.93 ID:f8slL2AH0
凛「お姉ちゃん作ってぇ……」

絵里「別にいいわよ。そのくらい」

凛「えっ」

亜里沙「えっ」

絵里「ど、どうしたの2人とも……」

亜里沙「絵里お姉ちゃんが……料理!?」

凛「し、信じられない!」

絵里(こっちの私は一体何をしてたのやら)

840: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:16:50.95 ID:f8slL2AH0



絵里「行ってきます」

亜里沙「行ってらっしゃい」

絵里(あれ、私の家ってこんな場所だったかしら)

凛「亜里沙は学校行かないの?」

亜里沙「今日は2時間目からなの」

凛「へー。そんなのあるんだ」

亜里沙「昨日話したでしょ」

絵里(しっかり者の亜里沙……なかなか見られないわね)

841: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:19:30.38 ID:f8slL2AH0
花陽「おはよう絵里ちゃん、凛ちゃん、亜里沙ちゃん」

凛「あ、かよちん! おはよう!」

亜里沙「おはようございます」

絵里(ああ、花陽の家が隣になってるのね。凛と花陽が幼馴染っていうのは変わってないんだ)

絵里「おはよう花陽」

花陽「……」

絵里「……?」

842: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:24:06.03 ID:f8slL2AH0
花陽「きょ、今日はいつもの……やらないの?」

絵里(いつものって何だろう)

絵里(両手を広げて花陽が待ってる……なんとなく抱きしめたいような)

絵里(試す価値はあるわね)

絵里「おはよう花陽!」

花陽「お、おはようっ」

絵里「いつもの……これよね?」

花陽「うん、そうだけど……」

絵里(あってた!)

843: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:27:35.19 ID:f8slL2AH0
凛「お姉ちゃん、そういえば凛たちにはそれ、やってくれなかったね」

亜里沙「寝ぼけてたの?」

絵里「そういうことよ」

絵里(あ、でも花陽の抱き心地、いいわね……思わずずっと抱きしめていたくなっちゃう)

絵里(それにそこはかとなく炊き立てのご飯の匂いが)

海未「せ、生徒会長!? 何をしているんですか!」

絵里「え、海未?」

海未「!?」

844: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:30:21.66 ID:f8slL2AH0
凛「あ、園田さんおはよう」

亜里沙「おはようございます」

海未「はい、おはようございます……生徒会長? 何故私を名前で呼んだのですか。急に」

絵里(えっ、もしかして今度は海未がμ'sに入ってないとかそういう――――――――)

海未「今まではずっと書記さんだとか役員さんだとか……いつまで経っても名前を覚えていなかったのに!」

絵里(あ、これ違う。海未が生徒会役員なんだ)

845: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:35:22.69 ID:f8slL2AH0
絵里「えっと……あの、穂乃果とことりは?」

海未「先に行ってもらいました。生徒会長がちゃんと起きているか心配でしたので」

凛「とか言いながら毎日来てるにゃ」

亜里沙「きっと絵里お姉ちゃんのこと慕ってくれてるんだよ」

絵里(それならうれしいんだけど……なんだか海未怒ってる)

花陽「え、絵里ちゃん。そろそろ……」

絵里「あ、ごめん花陽」

846: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:39:51.98 ID:f8slL2AH0
海未「……そろそろ時間ですね。行きますよ」

絵里「何かあるの?」

海未「朝礼があるでしょう。生徒会長……まさか何をやるか忘れたとか言いませんよね?」

絵里(忘れた)

絵里(というか知らないわよそんなこと!)

花陽「新入生の部活勧誘のお知らせじゃないかなぁ?」

海未「そうですよ。わかっていますね生徒会長」

絵里「も、もちろんですとも!」

凛「あ、そういえば凛たち、まだ何部に入るか決めてなかったね」

847: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:44:43.64 ID:f8slL2AH0
絵里(そっか……まだ春なんだ)

絵里(やけに眠いのはそのせいよね。こっちの私が疲れてる、とかいうわけじゃないのよね)

絵里(……そうだ! 今のうちにクラスを聞いておこう!)

絵里「凛、花陽。2人ともクラスどこだっけ?」

凛「何言ってるのお姉ちゃん。1年生はクラス1つしかないよ?」

亜里沙「そうだよ。入学者数が年々減っていってるからね……オトノキ、大丈夫なのかなぁ」

絵里「ああ、そうだったわね」

絵里(……ってことはもしかして、廃校のお知らせが出る前の時期なの?)

848: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:47:29.63 ID:f8slL2AH0
絵里(今は色々考えても仕方がないわね)

絵里「じゃあ行きましょうか」

花陽「うん」

凛「亜里沙、戸締りはしっかりね」

亜里沙「大丈夫」

絵里(いつもの亜里沙見てると心配だけど、こっちなら大丈夫なのかも)

850: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:49:52.63 ID:f8slL2AH0
海未「生徒会長。軽い原稿を用意したので目を通しておいてください」

絵里「え? これ何の原稿?」

海未「朝礼の時に使う物です」

絵里(そのためだけにこれを……? 私がやった朝礼は、こんなにしっかり用意してなかったけど……)

絵里「ありがとう海未。読んでおくわ」

海未「だ、だからその海未と呼ぶのは……」

絵里「えー、でも私も園田さんって呼ぶの嫌よ。他人行儀で」

凛「仲いいね」

花陽「うんっ」

851: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:55:57.00 ID:f8slL2AH0



海未「生徒会長、舞台袖で待機していましょう」

絵里「あれ? 副会長がいないけど……」

絵里(希は朝礼の時に前に出てたわよね?)

海未「何を言ってるんですか生徒会長。生徒会に副会長はいませんよ」

絵里「え」

絵里(あれ、生徒会のシステムが破たんしてる気が……)

海未「そもそも今年度は立候補者が少なかったせいで、生徒会は会長と穂乃果、ことりに私だけで運営しているじゃないですか」

絵里(わ、すごい! 身内だけだ!)

絵里「って希は?」

852: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 11:58:25.26 ID:f8slL2AH0
海未「え?」

絵里「希よ。希」

海未「希ですか?」

絵里(あれ、何で海未は名前で呼んで……)

海未「希は生徒会役員に立候補するようなタイプではないでしょう」

絵里「……そうだっけ?」

海未「そもそも希は2年生ですよ。生徒会長、希と交流があったんですか?」

絵里「に、2年生!?」

海未「ええ、そうですけど」

853: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/11(木) 12:00:18.10 ID:f8slL2AH0
絵里(希が2年生……ってことはどういうこと?)

絵里(凛と花陽は幼馴染で1年生。でも凛は私の妹)

絵里(穂乃果とことりと海未も幼馴染っぽくて、3人とも生徒会役員……)

絵里(にこと真姫がまだわからないけど――――――――)

絵里「変わりすぎでしょ……もう」

海未「?」

861: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/13(土) 00:55:19.61 ID:oGLt3wkQ0



絵里「ふー。終わった」

絵里(演説とかは何度もやったことあるし、たいして緊張しなかったわね)

海未「……」

絵里「どうしたのよ海未」

海未「いえ、変だと思いまして」

絵里「えっ」

862: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/13(土) 00:57:23.38 ID:oGLt3wkQ0
海未「いえ、いつもの生徒会長なら、確実にやりたがらないと思いまして……」

絵里(ま、まずい!)

絵里(ていうかこっちの私はどれだけ怠慢だったのよ!)

絵里「いや、そんなことはないわよ。やる気に満ち満ちてるっていうか……」

海未「こんなことより帰ってキルティングしたい、とか言いそうですし」

絵里(キルティングって何)

863: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/13(土) 00:59:57.44 ID:oGLt3wkQ0
海未「どうしたんですか? 変ですよ会長」

絵里「そ、そんなことないって……それより穂乃果たちは?」

海未「向こうの席に座っていますよ。穂乃果たちはこういう場にあまり立つ役職ではありませんから」

絵里「書記が何をおっしゃる」

海未「それは生徒会長が、1人じゃさびしいから出ろと言ったんじゃないですか」

絵里(ますます私がわからない……私は何をしていたの?)

864: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/13(土) 01:01:58.34 ID:oGLt3wkQ0
海未「一応昼休みにも生徒会の会議……まあただの集まりですけど……がありますから、ちゃんと出席してくださいね」

絵里「ええ。わかったわ」

海未「……本当に?」

絵里「わかったってば!」

海未「はい。では失礼しますね」

絵里「もう……」

絵里(海未はあんまり変わってなさそうだけど……穂乃果やことりはどうかわからないわね)

865: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/13(土) 01:04:55.24 ID:oGLt3wkQ0
絵里(……ん? 希が2年生だとしたら、3年生は私とにこだけ……)

絵里(……)

絵里「にこ、私と知り合いじゃ……ないわよね、うん」

絵里(上手くしゃべれるかしら……1つ前の世界のにこみたいな感じだったら……)

絵里「雰囲気が違いすぎて……ダメね」

絵里(……うう、困ったわね)

870: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:28:53.12 ID:KUbO1wFM0




絵里「……」

絵里(まるで他のクラスに来てしまったような疎外感が……)

絵里(そう、よね? ただでさえ誰と交流があるかわからないんだから……)

絵里(……ん? あのツインテールには見覚えが)

絵里「あ」

にこ「あ」

絵里(にこだ)

871: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:31:20.37 ID:KUbO1wFM0
絵里(見た目は何1つ変わってない)

絵里(……でもさっき、私に反応したわよね?)

にこ「……」

絵里(うわわ!? こっちに来る!?)

にこ「絵里!」

絵里「は、はいっ!」

絵里(……あれ? 私のこと、知って――――――――)




にこ「今日はお弁当取りに来てって言ってたわよね。どうして来なかったの」

絵里「……へ?」

872: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:33:17.05 ID:KUbO1wFM0
にこ「へ? じゃないわよ! あんた自分でした約束も守れないの?」

にこ「もうお弁当作ってあげないわよ!」

絵里「え、あの、その……」

にこ「何よ。遺言なら聞いてあげるわ」

絵里「まだ死にたくないわ」

にこ「……もう」

絵里(なんでにこは怒ってるんだろう……それにお弁当って何?)

873: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:35:35.18 ID:KUbO1wFM0
絵里(もしかしたらにこの立ち位置も変わってたりするの?)

絵里(実は幼馴染だったり、とか……?)

にこ「ぬぬぬ……」

絵里(いや、絶対聞けない)

絵里「ご、ごめんねにこ。今朝は急いでて、つい……」

にこ「はいはい。その言い訳は聞き飽きたわ」

絵里(私の信用ゼロじゃない!)

874: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:38:47.95 ID:KUbO1wFM0
絵里「悪かったってば。この通り!」

にこ「しょーがないわねー……いっつもそうやってのらりくらりと逃れようとするんだから」

にこ「ちょっとくらいやる気出しなさいよね」

絵里「あはは……」

絵里(何、こっちの私は一体何をしてたっていうの)

絵里(さっぱりわからない……凛に聞いて来ようかしら)

にこ「次やったら許さないわよ」

絵里「ええ、わかったわ」

875: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:41:40.13 ID:KUbO1wFM0
にこ「ったくもー……ちっちゃいころは、にこ姉、にこ姉って何をするにもちょこまかとついてきてたくせに……」

絵里「ちっちゃいころ……?」

にこ「何よ。忘れたとは言わせないわよ?」

絵里(忘れた)

にこ「今では身長もこんなに差がついちゃったし……ケッ」

絵里(にこがやさぐれてる……やさぐれにこだ!)

絵里(って、そんなこと考えてる場合じゃなくて)

絵里「にこ、もう少し小さいころの話してみない?」

絵里(これは情報を仕入れるチャンスよね)

876: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:43:41.25 ID:KUbO1wFM0
にこ「何よ突然」

絵里「にこ姉、お願いっ!」

にこ「……」

絵里(あ、今のはさすがに失敗した――――――――)

にこ「ふ、ふん! しょーがないわね。あんたがどれだけ私を慕ってたか、改めて教えてあげようじゃない」

絵里(わー、すごくうれしそう)

絵里(もしかしたらこっちの私もこんな風に頼んだりしてたのかしら)

877: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:45:53.00 ID:KUbO1wFM0
にこ「あんたはいっつもそうやって、私に宿題見せてもらったりお弁当作ってもらったり――――――――」

絵里「えっ」

にこ「え? 何?」

絵里「……にこさん、得意科目は?」

にこ「数学だけど……って、あんたに教えるせいで、どの科目もそれなりにできるようになったわ」

絵里(……)

絵里(私、バカだったのね)

絵里(あ、いや。にこが賢いって可能性もあるわよね。うん)

878: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:48:20.39 ID:KUbO1wFM0
絵里「にこ、2年次の学期末テストの平均点は?」

にこ「89」

絵里(ば、バストにしてはひどすぎる虚偽申告ね)

絵里「わ、私の平均点は……」

にこ「46」

絵里(……ウエストかしら。ほそーい)

にこ「本当に……なんであんた生徒会長になれたのよ」

絵里「ごめんなさい」

879: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:52:35.73 ID:KUbO1wFM0
絵里(そ、そんなに残念な子だったの……私)

にこ「あんた、とことんやる気出さないタイプだったものね」

絵里「え」

絵里(救いがあるんですか?)

にこ「たぶんあんたなら、学年上位を軽く狙えると思うわよ。本気出せば」

にこ「だって実際チョコで釣ったらテスト平均96点だったでしょ」

絵里(うわああああ! 私のとってたテストの平均より高い! なんかむしゃくしゃする!)

880: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:55:24.76 ID:KUbO1wFM0
絵里(あの時は答えもわかってたっていうのに……すごい罪悪案に押しつぶされそうだったけど)

絵里(……あれ? なんで知ってたんだっけ)

にこ「ん、何だか外が騒がしいわね」

絵里「え?」

絵里(あ、確かに教室に人がいないような……)

絵里「……言われてみればそんな気が」

絵里「って、移動教室じゃないの!?」

にこ「バカ。1時間目は英語よ」

881: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:57:56.85 ID:KUbO1wFM0
絵里「じゃあ何で……」

にこ「行ってみればわかるわ」

希「大変大変! 大ニュース! えりち先輩! にこっち先輩!」

絵里「え、希?」

絵里(あ、やっぱりネクタイだ)

にこ「どうしたのよ、そんなに慌てて」

希「廊下の掲示板! 早く!」

絵里「え、っわ、ちょっと、引っ張らないでってば!」

にこ「?」

882: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 01:59:59.30 ID:KUbO1wFM0
にこ「希、少しは落ち着きなさいよ」

絵里(希とにこは知り合いなのね)

絵里(……ていうか希に、先輩って呼ばれるのはなんだかくすぐったい気分かも)

希「落ち着いてられるわけないやん! ほらこれ!」

絵里「え? ……あ」

にこ「……何よこれ」

希「ウチもさっきクラスの子に聞いて、初めて知ったんやけど……」

883: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 02:01:35.07 ID:KUbO1wFM0




にこ「廃校のお知らせって……何なのよ!」






884: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/14(日) 02:04:02.18 ID:KUbO1wFM0
絵里(やっぱり来たわね……)

絵里(私はどうしようかしら)

絵里(とりあえずいつも通り希に話を聞いてみたいところだけど……この状況じゃ無理そうね)

絵里(ちゃんとみんなの関係も知っておきたいし、まだ残っておくべきかしら)

絵里「……こっちのみんなの様子も心配だからね」

891: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:45:12.16 ID:sSbIZiY10
絵里(うーん、廊下がざわざわしてる……これじゃ授業始められないわね)

絵里「みんな、びっくりしたのはわかるけど教室に戻りましょう。きっと理事長からお話があるわ」

絵里「私も後で聞いてみるから戻りなさい」

希「おお、みんな言うこと聞いた……」

絵里(よかった。一応発言力はあるみたいね)

希「えりち先輩、生徒会長みたい」

絵里「私はれっきとした生徒会長よ」

892: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:46:43.84 ID:sSbIZiY10
にこ「ねぇ、絵里」

絵里「んー?」

にこ「……なんでそんなに落ち着いてるわけ?」

絵里「それは―――――――」

絵里(今の私には頼れる仲間がいるもの)

絵里(なんて、言うわけにもいかないわね)

絵里「びっくりしすぎて逆に落ち着いてるのよ」

にこ「……」

893: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:49:40.13 ID:sSbIZiY10
絵里(……にこが睨んでる)

絵里「何よ。そんなに私の言葉が信じられない?」

にこ「……嘘が上手になったわね。あんた」

絵里「えっ」

にこ「他のみんなの目が誤魔化せたって、私にはそうはいかないわ」

にこ「あんたと何年幼馴染やってきたと思ってるのよ」

絵里「ええっ!?」

894: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:51:33.19 ID:sSbIZiY10
絵里(お、幼馴染だったの!? え、でも家が近くになかったような……)

にこ「引っ越しでちょっと家が離れたくらいで、そんなに変わるものなの?」

絵里(……なるほど、幼馴染だったけど、私が引っ越したわけね)

希「なーんか険悪な雰囲気やね……どうしたん?」

にこ「希は教室に戻ってなさい」

希「うー……ウチにも教えてくれたって――――――――」

にこ「希!」

895: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:53:13.13 ID:sSbIZiY10
希「っ!」

絵里「!」

絵里(にこが……怒ってる)

にこ「お願い。絵里と2人きりにして」

希「……ちゃんと仲直りしてな」

にこ「ええ、だから今は……」

希「うん」

896: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:54:21.86 ID:sSbIZiY10
絵里「……にこ、あの」

にこ「……」

絵里「ごめんなさい、私――――――――」




にこ「ああああああ! もう!」




絵里「!?」

897: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 00:56:37.62 ID:sSbIZiY10
にこ「ごめんなさいって何よ!」

絵里「え、その」

にこ「急に人が変わったみたいに真面目になって、嘘も吐いて」

絵里「いや、ちょっと」

にこ「花陽ちゃんや希とばっかり仲良くして!」

にこ「生徒会だから忙しいとか……何なのよもう!」

絵里(え、そっち?)

にこ「……そんなに私が嫌い?」

898: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:00:41.91 ID:sSbIZiY10
絵里「そ、そんなわけないでしょ! にこは大事な友達で――――――――」

にこ「友達、ね……幼馴染じゃなくて」

絵里(しまった)

にこ「はぁ……悪かったわね、むやみに突っかかって」

にこ「気が動転してるのよ、きっと」

絵里(こんな時……私だったら何て声をかければいいの)

絵里(幼馴染の絢瀬絵里だったら、どう答えるの?)




「ごめんねにこ。不器用な私でごめんなさい」

899: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:04:11.75 ID:sSbIZiY10
絵里「!」

絵里(今、誰かの声が……)

にこ「だから、謝らないでって言ってるでしょ……?」

絵里(誰が謝ってるの?)

絵里(……一体今のは、誰の声?)

「にこ。覚えてる? 私が夏休みの宿題を1つだけ家に忘れてきたときのこと」

絵里(違う、知ってる。この声は――――――――)



絵里「先生に、絵里は普段バカだけど、そんなズルは絶対しませんって言ってくれたのは誰だった?」



絵里(……私の声だ。私が勝手にしゃべってるんだ)

900: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:06:48.66 ID:sSbIZiY10
にこ「ふん。そんな昔のこと言われたって覚えてないわよ」

絵里「にこの嘘吐き」

にこ「あんたも嘘吐きじゃない」

絵里「あんたも、って言った! やっぱりにこ、嘘吐いてたんだ……ひどい!」

にこ「何言ってるのよ、あんたが先に……!」

絵里「許して。大好きよ、にこ」

にこ「……またそうやって、抱き着いてくるのね」

絵里「ふふ、私たちはずっとこうして仲直りしてきたじゃない」

901: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:08:59.62 ID:sSbIZiY10
にこ「……バカなのに記憶力だけはいいんだから」

絵里「大切な思い出よ? 忘れるわけありません」

にこ「そんなこと言えるなら、大切な英単語の1つや2つ覚えてみなさい」

絵里「えー、やだー」

にこ「やる気出しなさいよ」

絵里「私のやる気は、いつか来る試練の為に蓄えてあるの」

にこ「燃費の悪い高校生ね」

絵里「えへへ」

902: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:13:30.68 ID:sSbIZiY10
絵里(これってもしかすると……いや、確実にそうね)

絵里(体が本来の持ち主の元に還った……ってわけ)

絵里(あの世界の希はこんな体験をしていたのかしら)

絵里「あ、にこ。先に教室戻ってて」

にこ「え?」

絵里「ちょっとお手洗いに……」

にこ「……バカ、早く行ってきなさい」

絵里「はーい」

絵里(うわわ、体が勝手に動いてる。変な感じ……)

903: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:16:14.64 ID:sSbIZiY10



絵里「っと、ついたついた」

絵里「もしもーし。私、聞こえますかー?」

絵里(……えっ? 私に呼びかけてるの?)

絵里(何て返事すればいいのかしら……)

絵里「あれ? 聞こえてない?」

絵里「ならもっと大きな声で――――――――」

絵里(まずい! このままじゃトイレで叫ぶ変 になってしまう!)

絵里(聞こえてるわよ! もしもし!)

絵里「あ、聞こえてた」

907: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:21:23.53 ID:sSbIZiY10
絵里(た、助かった……)

絵里「うん、ギリギリだったわ」

絵里(そうね……って、わかってるなら何でやるのよ!)

絵里「へ?」

絵里(へ? じゃなくて)

絵里「あ、もしかして私もトイレ?」

絵里(へ?)

905: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:19:51.93 ID:sSbIZiY10
絵里「でも私が先に行っていいかしら? もう我慢の限界で……」

絵里(……そっちのギリギリね)

絵里(早く行きなさい。待ってるから)

絵里「はーい」

絵里(……くっ、言動の1つ1つにバカっぽさが垣間見える)

絵里「よく言われるわ」

909: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:23:46.12 ID:sSbIZiY10




絵里(ねぇ、あなたってこっちの世界の私よね)

絵里「ええ」

絵里(やっぱり……でもどうして? 今まではこんなこと1度もなかったのに)

絵里「いやー、にこは寂しがり屋だから、ちゃんと一緒にいてあげないとダメなのよ」

絵里(寂しがり屋……そのあたりは変わってないのね)

絵里「あと可愛いものが大好き」

絵里(そこまで聞いてない)

910: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:26:13.73 ID:sSbIZiY10
絵里「まあ、何で急に出てきたかって言われると……よくわからないんだけど」

絵里(うん)

絵里「なんかひゅーっていってぽーんって感じに出てきたわ」

絵里(わからない)

絵里「お、同じ私なのにこうも理解力の差が……」

絵里(同じ私なのにどうしてこんなに残念に)

911: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:28:17.74 ID:sSbIZiY10
絵里「ねぇ」

絵里(なに?)

絵里「そっちの世界では、学院は本当に廃校になっちゃうの?」

絵里(なるわ)

絵里「ええっ」

絵里(でもそれは、私たちが阻止するの)

絵里「阻止……?」

912: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:33:02.67 ID:sSbIZiY10
絵里(μ'sってスクールアイドルグループを作ってね)

絵里「スクールアイドル……あ! 希が教えてくれたやつね」

絵里(希が?)

絵里「そうよ。この前までは特別仲がいいって感じじゃなかったんだけど、いつだったか……そうね、2週間前くらいによく話すようになって」

絵里「その時にスクールアイドルっていうのを教えてもらったの。もちろんにこは知ってたわ」

絵里(学年が離れてても希と仲が良かったのはそういうわけね……)

913: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:36:50.42 ID:sSbIZiY10
絵里「へぇ……でも私がスクールアイドルになるんだ……へぇ……」

絵里(まあいろいろと違うところはあるけどね。希が3年生だったり、凛が妹じゃなかったり)

絵里「ええっ!?」

絵里(いわゆるパラレルワールドってやつよ。あなたも知ってるんでしょ?)

絵里「……ああ! あれね!」

絵里(心配だわ……)


914: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:38:36.58 ID:sSbIZiY10
絵里(それより気になることがあるんだけど)

絵里「何?」

絵里(……どうしてあなたはおまじないを使ったの?)

絵里「なんでだっけ」

絵里(……もはや何も言うまい。予想通りの返事をありがとう)

絵里「ちょ、ちょっと待って!」

絵里(ん? 思い出した?)

915: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:42:02.37 ID:sSbIZiY10
絵里「引っ越しちゃって、花陽と仲良くなって……にことあんまり遊べなくなったの」

絵里「生徒会の仕事も以前より……書記の……えっと」

絵里(海未)

絵里「そう、書記田さんに、仕事はしっかりやれって言われちゃって」

絵里(やってなかったのね……あと書記は園田海未よ。園田)

絵里「あ、そうね」

916: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:45:45.13 ID:sSbIZiY10
絵里「さっきも言ったみたいに、にこは寂しがり屋だから……だから、もっとにこと遊ぶ時間を増やしたいと思ってやったの」

絵里(おまじないを?)

絵里「そう。せめて夢の中でシミュレーションすれば、もっと仕事も捗るかもしれないと思って」

絵里「まあ夢じゃなくてパラレルワールドだったんだけどね」

絵里(待って、シミュレーションってどういうこと……?)

絵里「え? だってこのおまじない、未来を見ることができるでしょ?」

絵里(……えっ)

917: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:49:14.86 ID:sSbIZiY10
絵里(いや、冷静に考えればそうね。そうよね)

絵里(もしかしてそれを……あなたはやったの?)

絵里「そう。生徒会の仕事も先を見ればすいすいできちゃうかもーって」

絵里(で、結果はどうだったわけ?)

絵里「……みんなと一緒にいるのが楽しすぎて、帰り方を忘れちゃったの」

絵里(そんなことがあるのね……)

絵里「なんとなく覚えてた帰り道を辿ろうとしたんだけど、失敗して別のところについちゃったってわけ」

絵里(それが私の元の世界の体?)

絵里「そういうこと」

918: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:52:07.14 ID:sSbIZiY10
絵里(ふーん……)

絵里「あれ、思い出さない?」

絵里(何が?)

絵里「あ、いや。私が言ってもダメなの。自分で実感して気付かないと、ちゃんと元の居場所へと帰れない……って私は言ってたから」

絵里(どの私?)

絵里「ううん、何でもない」

絵里(……誤魔化すのが下手ね)

絵里「よく言われるわ」

919: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:54:49.19 ID:sSbIZiY10
絵里「で、どうするの?」

絵里(どうするって?)

絵里「あ、その前にお礼を言っておくわ。ありがとう」

絵里(ああ、元の世界へ連れてきたから?)

絵里「ええ。ありがとう」

絵里(どういたしまして)

絵里「それで、どうするって聞いたのは、あなたはいつでも帰ることができるからどうするのって聞いただけよ」

絵里「もうすぐに帰っちゃう? それとももう少しこの世界を眺めたい?」

920: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 01:56:24.77 ID:sSbIZiY10
絵里(あ、ちょっとだけ見てみたいものがあるわ)

絵里「何が見たいの?」

絵里(生徒会よ。この世界の生徒会)

絵里(ちゃんと運営で来てるか気になって)

絵里「で、できてるわよ」

絵里(嘘が下手ね)

絵里「ぐぬぬ」

921: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 02:00:36.07 ID:sSbIZiY10
絵里(……って、花陽は幼馴染じゃなかったの?)

絵里「違うわ。ただのご近所さん」

絵里(それにしては凛が仲良さげだったけど)

絵里「やっぱり同じ学年だからっていうのが大きいんじゃない?」

絵里(そんなものなのね)

絵里「たぶん」

絵里(他の世界で関わりが深いから、とか勘ぐっちゃったわ)

絵里「……難しいこと考えたらお腹すかない?」

絵里(……)

922: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 02:03:35.40 ID:sSbIZiY10
絵里「あ、もう授業始まっちゃうわね」

絵里(え、もう?)

絵里「でも結構話し込んでたわよ?」

絵里「まあそのおかげで人が少ないんだけど」

絵里(そうね。トイレに入ったら1人で話してる人がいるなんて軽くホラーよね)

絵里(ん? でも朝礼あったんだし、もうとっくに授業は始まって……)

絵里「あ、この時計、電池切れたんだった」

923: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 02:05:02.64 ID:sSbIZiY10
絵里(……もういいわ。一緒に怒られましょう)

絵里「せ、生徒会長なのに……」

絵里(本当に何で生徒会長になれたのよ……)

絵里「そういえば他の世界でも、私は生徒会長だったわね。生徒会長好きなのかしら」

絵里(私も生徒会長よ)

絵里「そうよね……あなたの今いる世界も生徒会長でしょ?」

絵里(ええ)

924: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 02:07:55.42 ID:sSbIZiY10
絵里「あ、考えてたらお腹すいて来た」

絵里(……)

絵里(って、未来を見たなら廃校のお知らせが出ることくらい知ってるんじゃないの?)

絵里「ううん。そんなこと1度もなかったわ」

絵里(そうなの?)

絵里「うん」




絵里「そもそも、どの世界の私もスクールアイドルなんてやってなかったからね――――――――」

930: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:31:10.49 ID:sSbIZiY10



絵里「あれ、生徒会の集まりっていつだっけ」

絵里(昼休みよ)

絵里「ああ、そうだった」

絵里「……あれ? この公式、どこかで……」

絵里(代入)

絵里「あー、それね」

にこ「……あんた何1人でぶつぶつ言ってるのよ」

絵里「え? あ、なんでもない。全然たいしたことないわ」

931: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:33:13.30 ID:sSbIZiY10
にこ「いや、大したことあるでしょ。見せてみなさい」

絵里「え、ちょっとにこ、ノートとらないで、あー……」

にこ「……嘘」

絵里「な、何?」

にこ「あの絵里が公式に当てはめてる……」

絵里「え、えへへ。すごいでしょ」

にこ「でも掛け算間違えてる……」

絵里「」

絵里()

932: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:35:46.23 ID:sSbIZiY10
にこ「どうしたの。お腹すきすぎて頭おかしくなった?」

絵里「え、そんなことないってば。確かに4時間目だけど……」

絵里(頭つかうとお腹すくって、にこにも言われるのね)

絵里「幼馴染だから」

にこ「?」

絵里(ちょっと、にこが首かしげてるわよ)

絵里「あれ? どうしたのにこ。寝違えた?」

にこ「あんた、誰としゃべってるの」

絵里「あっ」

933: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:37:45.99 ID:sSbIZiY10



絵里「はー……やっとお昼ね」

絵里「さて、待ちに待ったご飯を――――――――」

絵里(生徒会)

絵里「あーう」

にこ「ちょっと、本当に大丈夫なわけ? さっきからふらふらしてるけど」

絵里「大丈夫大丈夫」

絵里(雑な誤魔化し方ね……もっと何かないの?)

絵里「えーっと……じゃあ……」

934: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:40:21.88 ID:sSbIZiY10
絵里「あ、そう。生徒会があるでしょ?」

にこ「そうね」

絵里「でもにこは一緒に行けない」

にこ「うん」

絵里「……それでちょっと、二兎追う者は三兎も得ずみたいな……」

絵里(なんで増えたのよ)

にこ「安心した。いつも通りね」

絵里「ひ、ひどい!」

935: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:42:31.92 ID:sSbIZiY10
にこ「ほら、遅れないように行ってきなさい。みんな待たせてるんでしょ?」

絵里「あ、うん。いってきまーす」

にこ「待ってるわよ」

絵里「なるべく早く抜け出してくるわ」

絵里(抜け出すんじゃありません)

にこ「はぁ……そんなんだから先生から、今日のボケは冴えてるなとか言われてるのよ」

絵里(にこ……ごもっともよ)

936: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:45:15.41 ID:sSbIZiY10




絵里(あ、そうだ)

絵里「え?」

絵里(……いきなりしゃべると変に思われるから、イエスの時は手をグーに、ノーの時は手をパーにしてくれる?)

絵里「わかったわ」グー

絵里(わかってない)

絵里「……」グー

絵里(よろしい)

937: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:47:36.37 ID:sSbIZiY10
絵里(こっちの世界の真姫に会ってみたいの。今日は会えるかしら)

絵里「」グー

絵里(1年生?)

絵里「」パー

絵里(えっ、真姫は1年生じゃないの?)

絵里「」パー

絵里(ど、どっち?)

絵里「」チョキ

絵里(……ごめん、主語を抜かして悪かったわ。あなたは3年生ね。それで真姫が1年生)

絵里「」グー

938: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:53:11.70 ID:sSbIZiY10
絵里(で、真姫はどこにいるの? やっぱり音楽室?)

絵里「」パー

絵里(……直接話してもらえる?)

絵里「ぐー」

絵里(ちがうちがう)

絵里「?」

939: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:55:05.18 ID:sSbIZiY10
絵里(直接話すって言うのは……)

絵里「真姫ちゃんは凛と花陽のお友達よ」

絵里(あ、そうそう。そういうことよ)

絵里「?」

絵里(続けて。気にしないでいいから)

絵里「え、気になる」

絵里(話止まるから! 後で教えてあげるから!)

絵里「」グー

940: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:56:55.21 ID:sSbIZiY10
絵里「真姫ちゃんは凛と花陽のお友達」

絵里(あなたは面識がないの?)

絵里「」パー

絵里「よくお菓子もらったりするわ」

絵里(……二言目で一気に関係が複雑化したわね。あなたの立ち位置はなんなの?)

絵里「友達の姉」

絵里(……うん、そういうことにしておきましょう)

941: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 05:59:28.96 ID:sSbIZiY10
絵里「あ、もう生徒会室ね」

絵里(ああ、やっぱり場所は変わってないんだ)

絵里「?」

絵里(ううん、何でもないわ)

絵里「そう?」

絵里(ええ)

絵里「じゃあ入るわね。失礼しまーす」

943: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:03:07.45 ID:sSbIZiY10
海未「おや、生徒会長にしては早いですね」

穂乃果「あ、絵里ちゃん。ちょうどお茶が入ったところだよー」

絵里「ありがとう。えっと……おまんじゅうの子よね?」

絵里(穂乃果よ。高坂穂乃果)

絵里「ほの……え? ほのおちゃん?」

穂乃果「穂乃果は穂乃果だよ、ほーのーかー」

絵里「ほーのーかー」

絵里「よし、覚えた」

絵里(絶対嘘だわ)

944: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:04:43.13 ID:sSbIZiY10
海未「穂乃果、敬語を使いなさいとあれほど……」

穂乃果「絵里ちゃんは良いって言ってるもん。ねー?」

絵里「ねー」

海未「では生徒会長。せめて役職名くらい覚えてください」

絵里「……ほのちゃん役職何だっけ」

絵里(さっそく違う)

穂乃果「……海未ちゃん、穂乃果は何する人だっけ」

海未「……」

絵里(海未、同情するわ)

945: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:07:21.21 ID:sSbIZiY10
ことり「遅れてごめんなさい! あれ? 絵里ちゃんがもう来てる?」

絵里「ふふふ、ことりは4着ね」

絵里(なんでことりは覚えてるの?)

絵里「……ひらがなで覚えやすいから?」

絵里()

ことり「?」

絵里「あ、そうそう。このかちゃん」

絵里(苗字と名前が混ざってる)

946: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:10:00.79 ID:sSbIZiY10
穂乃果「え? なに?」

絵里「ほら、今朝廃校のお知らせって言うのがあったじゃない。もう見た?」

穂乃果「うん。3人とも見たよ」

絵里「へー。私はあんまり覚えてないけど」

絵里(……まあいいわ。よくないけどいいわ)

絵里(でも変ね。穂乃果は1番ショックを受けてたって聞いてたんだけど……)

947: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:14:04.49 ID:sSbIZiY10
絵里「ショックじゃなかった?」

穂乃果「そんなことないよ! もうショックで死んじゃうかと思ったくらい」

絵里「ふふ、本当に死ぬわけないじゃない」

絵里(……ああもう面倒ね。代わりなさい)

絵里「え、ちょ、そ、そんな電話代わるみたいな……」

絵里「……」

絵里「よし」

絵里(うぅ……普通に入れ替わられるなんて)

948: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:18:38.28 ID:sSbIZiY10
絵里「穂乃果ならもうちょっとショックを受けたんじゃないかと思ってね」

絵里「でもどうして? そんなにすぐ立ち直るなんて、何か理由があるの?」

穂乃果「それはもちろん、解決策が見つかったからだよ!」

絵里(解決策? なにそれ)

絵里「どんな?」

穂乃果「スクールアイドルだよ、スクールアイドル!」

絵里(あ、さっき言ってたやつだ)

絵里「……やっぱりね」

949: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:22:15.24 ID:sSbIZiY10
海未「だから、スクールアイドルなんて私には……」

穂乃果「ええっ!? 海未ちゃんがいないとスクールアイドルが始められないよ!」

海未「無理です!」

ことり「海未ちゃん……美人なのに」

海未「何と言われても絶対やりません」

絵里「ラブアローシュート」

海未「」

絵里(あれ、固まっちゃったわよ?)

950: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:26:02.99 ID:sSbIZiY10
絵里「みんなのハートを……」

海未「会長!」

穂乃果「?」

ことり「?」

海未「ど、どこでそれを……まだ誰にも言っていないその決め台詞を……!」

海未「まさか弓道場に……? いや、そんなはずは……それに生徒会長の記憶力はそんなによくないはず……」

絵里(失礼な)

絵里「事実よ」

951: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:29:34.80 ID:sSbIZiY10
ことり「絵里ちゃん、今の何?」

絵里「海未は言わないだけで、本当はスクールアイドルをやりたいってことよ」

穂乃果「ほんと!?」

海未「うっ」

絵里(あ、照れてる。かわいいわね)

海未「そ、それより仕事をしましょう。生徒会の仕事を」

絵里(誤魔化し方、下手ねー)

絵里「……何も言わないでおくわ」

952: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:32:45.41 ID:sSbIZiY10
海未「ほら、まだ溜まっている仕事はあるんですよ」

穂乃果「えー? スクールアイドルは?」

海未「今は関係ありません!」

ことり「ふふ、今は……ねっ」

海未「ことり!」

ことり「きゃー、海未ちゃんこわーい」

穂乃果「きゃー」

953: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:35:34.26 ID:sSbIZiY10
海未「会長も、たまには手伝ってください」

絵里「ええ」

穂乃果「絵里ちゃんがやる気だ……これは穂乃果も負けてられないよ!」

ことり「うんっ、じゃあやろっか」

絵里「……」

絵里(どうしたの?)

絵里「……ううん。なんでもない」

絵里(誤魔化せてないわよ?)

絵里「ふふっ、それでも構わないわ」

絵里(?)

954: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:37:59.27 ID:sSbIZiY10
絵里「穂乃果たちが生徒会、ね……」

絵里(そうよ、ほの……ほのかたちが生徒会、よ)

絵里「海未、ちょっと席を外してもいい? すぐに戻るから」

海未「ええ、構いませんが……ちゃんと戻ってきてくださいよ?」

絵里「わかってるわ」

絵里(どこ行くの?)

絵里「……すぐにわかるわ」

955: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:39:54.48 ID:sSbIZiY10




絵里(なんだ、トイレね)

絵里「そうよ。帰ろうと思って」

絵里(家に帰るの? 学校をサボっちゃうの? それはダメよ。にこに怒られるわ)

絵里「だから、私が元の世界に帰るのよ」

絵里(ああ、そういうことね)

絵里(……ええっ!? もう?)

絵里「長居しちゃ、あなたみたいに帰り道を忘れちゃいそうだもの」

絵里(……そっか)

956: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:43:42.27 ID:sSbIZiY10
絵里「ねぇ、穂乃果たちの生徒会って……どう?」

絵里(そうねぇ……楽しそうよ)

絵里「どんな風に?」

絵里(私がいなくても、ちゃんと仕事してくれるわ!)

絵里(ああ、あとね、ほのかは元気いっぱいで、書記の……そう、海未! 海未はそのサポートができてるわ)

絵里(ことりは2人をまとめてくれてて……あれ? 私、いらない……?)

絵里「あはは……やっと名前、覚えたんだ」

絵里(あ、本当ね。いつの間に)

957: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:45:49.62 ID:sSbIZiY10
絵里「あなたが言うならそうなのね。私の考えだもの」

絵里(えー? 言っちゃなんだけど、私とあなたじゃ頭の作りが違うわよ?)

絵里「本当に説得力あるわね……でもいいの。私の目に狂いはないはずだもの」

絵里(せ、責任はとれないわよ?)

絵里「いいわよ、そんなこと」

絵里(?)

絵里「ただ、安心しただけだから」

958: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:47:18.70 ID:sSbIZiY10
絵里「それじゃ、もうお別れね」

絵里(寂しくなるわね……また会える?)

絵里「どうかしら。でももう会わない方がいいのかもしれないわ」

絵里(どうして?)

絵里「ここはあなたの居場所だもの」

絵里(ふーん……難しいわね)

959: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:50:44.09 ID:sSbIZiY10
絵里「きっとスクールアイドルの活動を始めたら、今までにないくらい楽しくなると思うわ」

絵里(そう? 私は……その、何事にも全力でやれないから――――――――)

絵里「ううん、虜になるわ。今までに感じたことがないくらい、楽しくて、素敵で、面白い……」

絵里「最高の日々が始まるわよ。覚悟してなさい」

絵里(……ちょっとワクワクしてきた)

絵里「ええ、その心を忘れないで」

絵里(うん……じゃあ)

絵里「ええ」

960: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:51:27.34 ID:sSbIZiY10




絵里「さよなら」

絵里(さよなら!)





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961: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 06:52:38.25 ID:sSbIZiY10



絵里「……今度は2時間も経ってる」

絵里「……」

絵里「……生徒会、かぁ」





絵里(任せてみるのも、いいかもしれないわね……)

964: ◆eyH5F3DPSk 2014/09/15(月) 07:00:27.34 ID:sSbIZiY10



にこ「希」

希「ん? どうしたん、にこっち」

にこ「ねぇ、希……あんたはここを夢だ夢だっていうけど……」




にこ「私たちにとっては紛れもない現実なのよ?」



     つづく