貴音「…これぞまさに本物の味、たいへんおいしゅうございました」

貴音「四条貴音のらぁめん探訪、本日はここまでにございます」

貴音「それでは皆様、また来週」

スタッフ「OKでーす!」

貴音「お疲れさまでした」

スタッフ「あ、四条さん来週は楽屋での撮影になります」

貴音「…なぜでしょう」

スタッフ「予算の都合です」

貴音「…」

貴音「うふふ」

貴音「面妖な」(真剣)

引用元: 赤羽根P「俺が」青羽根P「俺たちが」黄羽根P「プロデューサーだ」 



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 09:49:00.62 ID:61gEGj0C0
貴音「なぜです!本日は3杯しかおかわりしていないはずです!」

スタッフ「ここ高級中華料理店ですよ!?3杯分だけで僕の何日分の食費になるか…ちくしょう!」

貴音「ちくしょうと言いたいのはこちらです!ちくしょう!」

黄P「おら貴音、さっさと次の現場行くぞ」ガシッ ズルズル

貴音「3杯しか…3杯しか食べてないではありませんか…っ!う、うう…!」ズルズル

黄P「そんじゃお疲れさんでしたー」

スタッフ「あ、お疲れ様でした…」

貴音「あなた様はいけずです…うう…」

黄P「もっとそそられる場面で聞きたかったわ」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 09:51:59.75 ID:61gEGj0C0
黄P「お前あんだけ食ったのにまだ足りてねえのかよ」

貴音「3杯だけではありませんか!」

黄P「普通は1杯食えば十分なんだよ」

貴音「…ふふ」

黄P「…んだよ」

貴音「普通とはいったいなんなのでしょうね」

貴音「普通という言葉などでは縛られない」

貴音「そんなあいどるに、わたくしはなりたいのです」

黄P「うるせぇ」

貴音「ああん」


第19話『雲間に隠れる月の如く』

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 09:56:53.98 ID:61gEGj0C0
-移動中の車内-

黄P「ていうか次の仕事が雑誌のモデルなんだからあんまり食うなよ」

貴音「大丈夫です、食が体型に表れるようなやわな鍛え方はしておりません」

黄P「…どういうことだよ」

貴音「ふふ、とっぷしーくれっとです」

黄P「うるせぇ」

貴音「ああん」

黄P「…分かったよ、次の仕事終わったらメシ行くぞ」

貴音「らぁめんですか!?」

黄P「なんでもいいよもう!」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 09:59:29.87 ID:61gEGj0C0
-撮影場所の公園-

ファン1「わー…貴音さんやっぱりきれいね」

ファン2「不思議っていうか…まるで人間じゃないみたいっていうか…」

ファン3「もしかして月から来たかぐや姫じゃねえのか、なんてな」

黄P(月…実はあいつは地球の生命を監視するアンチスパイラルの手先で…)

黄P(…ん?電話か)


カメラマン「はいオッケーです、今日はこれで終わりにしましょう」

貴音「ありがとうございます」


貴音「プロデューサー、本日の仕事はこれで…」

黄P「…ういっす、了解しました…失礼します」ピッ

貴音「どうかされたのですか?」

黄P「あー…すまん、仕事が入ってメシ行けそうにねえわ」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:02:23.54 ID:61gEGj0C0
貴音「…そうですか、いえ、仕事ならば仕方ありませんが…」

黄P「悪いな」

貴音「それでは今日のところは一人で帰ることといたしましょう」

黄P「大丈夫か?タクシー呼んでも構わないんだぜ、お姫ちん」

貴音「ふふ、今日はなんだか歩いて帰りたい心持ちですので…それでは」

黄P「おう、お疲れさん」

黄P「…」

黄P「からかっても動じないってなあ寂しいもんだな」


-街中-

貴音「今日の昼食は…」

貴音「とんこつ…それとも味噌…いえ、塩もいいかもしれませんね!ふふっ!」

貴音「らぁめん♪らぁめん♪」ウキウキ

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:05:39.23 ID:61gEGj0C0
貴音「らぁめん♪らぁめん♪」テクテク

貴音「ら…」テクテ ドンッ

紳士「おっと、これは失礼」

貴音「いえ、こちらこそ……ふふっ!」

紳士(すっごいニコニコしてるけど…うれしいことでもあったんだろうか)

紳士「それでは私はこれで」

貴音「あの、もし」

紳士「?」

貴音「お財布を落とされましたよ」スッ

紳士「む、これはこれは…すまないね」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:07:13.72 ID:61gEGj0C0
貴音「いえ…それでは失礼いたします」

紳士「お嬢さん、よければお礼をさせてくれないか」

貴音「そんな…」

紳士「せめてもの気持ちだ、昼食でもどうだい?」

貴音「…よろしいのですか?」

紳士「お嬢さんがよければ」

貴音「わたくしはなかなか大食いでございますが…」

紳士「はっは、若い女性がお金のことを気にしちゃいけないよ」

貴音「…それでは、ご一緒させていただきます」

紳士「じゃあ私の行きつけの店へ…」

貴音「そのお店はらぁめん屋でございますか?」

紳士「は?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:10:52.07 ID:61gEGj0C0
-後日、765プロ事務所-

貴音「おはようござ…おや、どうしたのです?皆で集まって」

やよい「あ、貴音さん!」

雪歩「四条さん!他の事務所になんて行ったらイヤですぅ!お茶もありますからぁ!」

響「そ、そうだぞ!サーターアンタギーもブタ太もいるからぁ!」

ハム蔵(ちょwwwwwww)

貴音「…はて?」

黄P「…おい貴音、この雑誌に書いてることはマジか?」

貴音「雑誌…?」

貴音「…!この方は昨日の…!」

黄P「昨日…?」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:13:08.30 ID:61gEGj0C0
貴音「ということでして…まさかえるだぁれこーどの社長殿とは知らず…」

黄P「…そうか、よかったじゃねえかメシおごってもらえてよ」

貴音「そんな…わたくしの不注意でこのような写真を撮られてしまい…」

黄P「ちっ…ミスったな、売れてきたころだからこういうことがあってもおかしくねえはずなのによ」

貴音「……申し訳ありません」

黄P「終わったことだ、気にすんな…それでこの記事に書いてあるのは、全部嘘なんだな?」

貴音「事実無根でございます」

黄P「おし、ならお前はいつも通りラーメンむさぼり食っとけ」

貴音「命令とあらば」

響「ち、違うぞ貴音!本当にそういう意味じゃないぞ!」


黄P「……961プロか、くそが」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:15:52.16 ID:61gEGj0C0
-961プロ事務所-

黒井「ふーっははははっ!なかなかいい仕事をしたじゃないか」

渋澤記者「へへ、光栄でさぁ黒井の社長…まさかエルダーレコード社長との食事が撮れるとは思いもよらなかったですよ」

黒井「ふむ、これで765プロの勢いも削がれるというもの…」

黒井「あとは“トドメ”をさせば……」

黒井「…チェックメイトだ……ッ!」

渋澤(この人、一人でチェスの駒並べてて楽しいんだろうか)

渋澤「それでは、あっしはこれで…」

ガチャ

渋澤「…おっと、ジュピターの小僧どもが来やがった、くわばらくわばら…」

冬馬「…なんだ、あのオッサン?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:25:30.91 ID:61gEGj0C0
翔太「あの人ってたしか…765プロの四条さんの記事を書いた…」

北斗「…そういうことか」

冬馬「…なんだと…!」

冬馬「つまり…」

冬馬「どういうことだよ……ッ!」

翔太「冬馬くんはかわいいなあ」


-冬馬に説明が終わったあと-

冬馬「おいオッサン!!」

黒井「なんだ騒々しい、私は今ごましおの黒ゴマと塩を分ける作業で忙しいのだ」

冬馬「気持ち悪い趣味だなオイ!…って違う、そうじゃねえ!」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:29:02.78 ID:61gEGj0C0
冬馬「765プロのあの記事…オッサンが書かせたのか?」

黒井「書かせたわけではない、765プロをマークしろと言った結果、ああいう記事を書いたまでだ」

冬馬「テメェ……!」

北斗「冬馬!」

冬馬「…卑怯な真似してるのはどっちだよ、オッサン!」

黒井「なんとでも言え、お前たちもしょせん私の駒に過ぎんのだ」

冬馬「……!」

翔太「…冬馬くん行こう、このあと仕事もあるんだし」

冬馬「…くそっ!」

ガチャ バタン!!

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:31:43.04 ID:61gEGj0C0
黒井「…ふん、うるさいガキどもだ」

黒井「私の言う通りにすれば失敗などありえない…ありえないはずなのだ」

黒井「…私は、それを証明しなければいけないのだよ、高木…!」


-それから-

春香「貴音さん!一緒にごはんいきましょー!」グイグイ

貴音「え?あ、よろしいですが…」


真美「お姫ちん!一緒にかえろー!」グイグイ

貴音「わたくしとは帰る方向が違うはずでは…」

真「あ、ああ!今日はこっちから帰りたい気分だなー!」グイグイ

貴音「…はて」


渋澤(ちっ!765プロの連中勘付いたか…?他のアイドルたちのガードが固くてパパラッチどころじゃねえ…)

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:33:57.63 ID:61gEGj0C0
渋澤(しょうがねえな、今日はこのへんにしておいて…)

黄P「…うちのアイドルに何か用かい、記者さんよ」

渋澤「!?」

黄P「ストーカー行為は困りますね」

渋澤「へ、へへ…765プロさんは普段から仲がよろしいこって…」

黄P「ああ、うちはみんな仲がいいのが自慢なもんでね…」

黄P「だから…それを崩すような真似ぇしたら」

黄P「…俺は何するか分からねえぞ?」

渋澤「ひっ!し、失礼しやした!」

タタタタ…

黄P「ちっ、おととい来やがれボケナスが」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:40:09.64 ID:61gEGj0C0
渋澤「はぁ、はぁ…なんだアイツ…本当にプロデューサーかよ…!」

渋澤「いや、まだだ…あと1枚決定的な写真を撮れば記事なんていくらでも捏造できる…!」

渋澤「…そういえばあの四条貴音っての、今度1日警察署長のイベントするらしいな…」

渋澤「そこにはあのエルダーレコードの社長も来るとか…」

渋澤「…よし決まりだ、なんとしてもそこですっぱ抜いてやらぁ、へへへ…」


-1日警察署長イベント会場-

『…そのようなことから、わたくしはこの地域の事件発生率の低さを実感し…』

黄P(…ま、仕事自体はいつも通り問題ねえか)

黄P(……ん?あいつはこの前のストーカー記者…)

黄P「野郎…ぶっつぶしてやらぁ…!」

一般記者「」ビクッ

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:43:18.93 ID:61gEGj0C0
署長「すばらしいスピーチでしたよ」

貴音「ふふ、ありがとうございます」

副署長「た、貴音さんと握手できるなんて…わた、私はこの日を一生忘れません!」

貴音「ふふ、面妖な」

紳士「…やあ、どうやら迷惑をかけてしまったようだね」

貴音「あなたは…」

紳士「本当ならすぐに誤解であることを発表したかったんだが…あの記事が出回る直前に海外に出てしまってね」

貴音「いえ、気にしておりません」

紳士「はは、それは助かる…このイベントが終わったらマスコミにすぐ伝えるつもりだ」

貴音「お心遣い痛み入り…むっ!?」


渋澤「ヒャッハー!スクープだー!」ダダダダダ!

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:47:31.15 ID:61gEGj0C0
貴音「…あなたが先日の記事を書いたのですか!?」

渋澤「だったらどうした!今日も激写させてもらうぜ!」

黄P「待てオラ!」ガシッ

渋澤「へっ!甘いな、俺は柔道の段持ちで…えっ!?」

黄P「オラ!オラオラ!どうだコラ!」ボコッ ボコボコッ

渋澤「いたっ!やめて!肩パンやめて!」

黄P「貴音!最後は任せた!」ドンッ!

渋澤「え、ちょ…!」ヨロヨロ

貴音「せいっ!」ガッ

ブワッ ズシーン!!

渋澤「せ…」

渋澤「背負い投げ、だと……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:51:28.65 ID:61gEGj0C0
貴音「…このようなふとどき者には、制裁を加えねばなりませんね」

渋澤「…へっ?」

黄P「ああそうだな、警察署長様がそう言うならしかたねえ」

渋澤「え、ちょ、ちょ…」

貴音「偶然にも、ここに支給された拳銃があります」ジャキッ

黄P「それはすげぇな、撃っちまうか?」

渋澤「じょ、冗談だよな…?へ、へへ…」

貴音「ふふ…さあ、どうでしょう?」カチャリ

渋澤「や、やめ…!」

パァン!!

貴音「…わたくし、じょーくは得意なのです」

黄P「おう、知ってた」

渋澤「」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:55:43.18 ID:61gEGj0C0
-イベント終了後-

貴音「…よかったのですか?あのような大立ち回りをしてしまって…」

黄P「ああ?問題ねえよ、サプライズイベントだって言ったらみんな納得してたしな」

貴音「ふむ…皆さまに喜んでいただけたのなら何よりですが」

黄P「護身術の大切さを広めるきっかけにもなったって警察側も大喜びだったしよ」

貴音「そうですか…」

黄P「それよりお前もいいのかよ?せっかくメシ行こうっつってんのに」

貴音「いえ、それもたいへん魅力的ですが…」

貴音「やはり事務所の皆と食べるのが一番おいしいですからね」

黄P「おう、そりゃあその通りだ」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 10:59:08.96 ID:61gEGj0C0
765プロ事務所-

黄P「おーう帰ったぞー」

真美「お姫ちんおかえり!あ、兄ちゃんも!」

黄P「ついでみたいに言うなよテメェ、買ってきたハンバーガーやらねえぞ」

真美「うあうあ~!そんな殺生な→!」

貴音「ふふ、皆の分を買ってきているので大丈夫ですよ、双海真美」

雪歩「わ、私お茶いれてきますぅ!」

響「あはは、雪歩うれしそうだなー」

やよい「響さんもすっごくうれしそうですよー!」

響「そ、そんなことないぞ!」

貴音「…ふふっ」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:02:58.50 ID:61gEGj0C0
ワイワイ ガヤガヤ ピクルスイラナイノー ダメダヨミキ!

ガチャ

伊織「ただいまー…って何よこの状況」

春香「あ、竜宮小町も帰ってきた」

赤P「これで全員集合か?」

貴音「…いえ、如月千早がいませんね」

青P「如月さんは…その、用事があるとかで早く帰りましたよ」

貴音「そうですか…それは残念」

亜美「チーズバーガー最後の1個いただき→!」

貴音「あ…」

亜美「…半分こしようか、お姫ちん」

貴音「…ふふっ!」パアァァァ

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:06:46.13 ID:61gEGj0C0
「あらあら~、じゃあこのエビバーガーを…」

「あ…」

「…うふふ、半分こしましょうね貴音ちゃん」

「ふふっ!」パアアアアァァァァァ


赤P「やっぱり仲いいな、この子たちは」

黄P「女同士でこんだけ仲良しってのもなかなか無いけどな」

青P「…ええ、そうですね」

赤P「やっぱり仲間ってのはいいもんだよな、うん!」

黄P「クッセェこと言いやがる…ただよ、千早みたいなのはどうにかしなきゃなんねえな」

青P「……ええ、そうですね」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:10:15.69 ID:61gEGj0C0
黄P「…んだよ、真面目に返されても困るだろうが」

青P「……すみません、ジョークは苦手なもので」

赤P「…なにか千早に問題があるのか?今日だって早く帰ったとか…」

青P「いえ、これは俺の問題です…あまり広めるべきじゃないとも思うので」

黄P「ならいいけどよ…」

赤P「俺たちの力が必要だったらすぐ言えよ?俺たちだって仲間なんだから」

青P「…はい、ありがとうございます」


渋澤「くっそ…!なんだよ765プロの連中…無茶苦茶じゃねえか!」

渋澤「…これも普段から良くないことばっかしてる罰かなぁ…いや、でもそうしないと暮らしていけねえし…」

渋澤「えーい!墓参りでもしてご先祖様に詫びでも入れてくっかなー!」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:13:20.56 ID:61gEGj0C0
-墓地-

渋澤「とりあえずお供えの饅頭と…やっべ、じいちゃんの酒忘れてきちまった…」

渋澤「…まあいいか、近いうちにまた来て…」

渋澤「……あれは765プロの、如月…!」サッ


千早「…!……っ!」

女性「…、…」


渋澤(…もう一人もキレイな女だ、母親か?)

渋澤(しかし墓場で言い争いたぁ穏やかじゃねえなあ…)

渋澤(……これを撮れば、あるいは…)

渋澤(いや、ここは墓場だぞ?写真なんて撮ったらもしかしたらご先祖様からの祟りが…)

渋澤(…えーい!じいちゃんばあちゃんごめん!)

カシャリ

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:17:05.93 ID:61gEGj0C0
-961プロ事務所-

黒井「…ふは、ふはは!これは面白い写真じゃないか!」

渋澤「あ、ありがとうございます…ところで霊魂とか写ってないですよね…?」

黒井「何を言ってるんだ、そんなものはどこにも写ってないだろう」

渋澤「…ほっ」

黒井「墓場で親子喧嘩、そして如月千早の知られざる過去…ふふ、この2つの結びつきが私には見える…見えるぞ…!」

黒井「待っていろ765プロ!今度こそ貴様らの息の根を止めてやる!ふぅーははは!」

渋澤(あ、ばあちゃん白あん派だった…明日もう一回行こ…)


青P(如月さんの家庭環境…俺にはまだまだ知らないことがたくさんあります)

青P(弟さんの墓参り、普通なら両親と一緒に行くでしょうが…まさか別居中とは)

青P(……)

青P(…なんだか、嫌な予感がします…)


第19話『雲間に隠れる月の如く』 完!

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:20:20.09 ID:61gEGj0C0
すみませんご飯食べてきます

55: ありがとうございます 再開します 2012/03/25(日) 11:44:46.33 ID:61gEGj0C0
ディレクター「千早ちゃんの声が出ない!?どういうことだよ!!」

スタッフ「わ、分からないんです…さっきの収録で急になったみたいで…」

ディレクター「どうすんだよ!生放送じゃないからまだいいものの…!」

青P「…申し訳ありません、こちらの管理不足です」

ディレクター「765プロさん…どうしたんですか千早ちゃん、急に声が出ないなんてのは…」

青P「すみません、我々にも理由はまだ…」

ディレクター「……今日は他の子に代わりに歌ってもらいます、次はよろしくお願いしますよ」

青P「本当に、申し訳ありません…!」


青P(……歌声が、出ない…)

青P(一体何が…)

青P(如月さん……!)


第20話『約束』

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:50:17.40 ID:61gEGj0C0
-楽屋-

真「…くそっ!なんなんだよこの記事!」

春香「千早ちゃん…」

ガチャ

青P「…お疲れ様です」

真「あ、青羽根プロデューサー!この雑誌…!」

青P「雑誌…?」


……

青P「…これは……」

真「こんな、こんな嘘ばっか書いて…!書いていいことと悪いことが…!」

青P「…いえ、ここに書いてあるのは概ね事実です」

真「…え」

春香「……」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 11:57:45.38 ID:61gEGj0C0
真「そんな…千早の家族が…」

青P「…まあ、この記事には多少誇張表現が含まれていますが……天海さんは知っていたのですか?」

春香「……以前、少しだけ本人から」

青P「そうですか…」

春香「あ、あの!私、千早ちゃんの力になりたくて…!できることがあればなんでも…!」

青P「…この問題は簡単なものではありません、よく考えてから行動した方がよいでしょう」

春香「で、でも…!」

青P「まずは、俺たち大人に任せてください…お願いします」

春香「青羽根プロデューサーさん…」

真「大丈夫かな、千早…」

青P「……」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:01:25.45 ID:61gEGj0C0
青P(…如月さんの家庭状況が週刊誌に掲載されてから数日)

青P(テレビでもこのことは取りあげられ、よほど世の中に疎い人以外は如月さんのことを知るところとなりました)

青P(……マスコミによる過剰な報道、又聞きの又聞きによる情報の錯綜…)

青P(今では、ただ休養している如月さんのことを悪く言う風潮も出てきてしまいました…)

青P(……)

青P(…一体、どうすれば)

青P(如月さんの歌声、それから…)

青P(笑顔を、取り戻せるのでしょうか……)


「日曜午後の新発見!『生っすか!?サンデー』!!」

「千早さんは今日おやすみなの、ごめんねー」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:05:45.07 ID:61gEGj0C0
青P『弟さんを、交通事故で…?』

千早『…ええ、今日は弟の命日なんです』

青P『それで墓参りに…それは分かりましたが、親御さんとは一緒に行かれないんですか?』

千早『…っ!』

青P『…すみません、理由があるのでしたら無理には』

千早『……いえ、単純な理由です…ただ親が離婚して別居しているというだけで…』

青P『それは単純な理由とは言わないのでは…』

千早『プロデューサーに私の何が分かるんですか…!』

青P『え』

千早『…すみません、もう行きます…それでは』

青P『…はい、お疲れ様でした』

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:10:07.03 ID:61gEGj0C0
青P『ストレスから来る、発声の障害…?』

医者『ええ、如月さんの場合はおそらく過去のトラウマが原因でしょう』

青P『…治療方法は』

医者『…本人が乗り越えるしかないでしょうね』

青P『そんな…!』

千早『……私は大丈夫です』

青P『如月さん…』

千早『先に帰ります、失礼します』

青P『……』

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:14:04.78 ID:61gEGj0C0
赤P「…千早、まだよくならないのか」

青P「ええ…あとは精神的な問題だけだと思います」

黄P「家に引きこもってるからいけねえんだよ!さっさと外に引きずりだして…」

青P「ムリヤリはいけません!!」

黄P「…だから冗談だって言ってんだろうがよ」

青P「それでも言っていいことと悪いことが…!」

赤P「…青羽根、お前も疲れてるんだよ…少し休め」

青P「赤羽根くんまで…!」

赤P「これは冗談じゃない」

青P「…っ」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:17:56.62 ID:61gEGj0C0
青P「…それでは俺も今日は帰ります、お疲れさまでした」

黄P「おう、おつかれさん」

赤P「…あんまり考えすぎるなよ」

青P「……すみません」

ガチャ バタン


「私には歌しか無いんだな、と…再確認しました」


青P「…歌、しか」

青P「……ダジャレじゃ、ダメですか」

青P「……」

青P「くそ…!」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:22:46.48 ID:61gEGj0C0
-961プロ事務所-

冬馬「これがあんたの手口かよ、オッサン!」

黒井「……何が言いたい」

冬馬「汚い手を使ってんのはオッサンじゃねえか!こんな卑怯な手を」

黒井「誰に口をきいている!」

冬馬「…!」

黒井「言ったはずだ、お前たちは指示に従って動けばそれでいい」

黒井「3流プロが自滅していくのを、横目で見ながらな」

冬馬「…っ!」

北斗「……」

翔太「……」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:26:15.30 ID:61gEGj0C0
-765プロ事務所-

律子「…千早、まだ戻れないんでしょうか」

赤P「ああ…食事だけはちゃんととるようにいろいろ置いてきたりしてるんだが…」

黄P「家まで行ってもドアを開けようともしねえしな…ぶち破ろうかと思ったぜ」

赤P「…とにかく、今は本人に気持ちの整理がつくまで待つしかないな」

律子「そうですね…もしかしたら、今度の定例ライブも…」

黄P「……悪い方を考えとかなきゃいけねえな」

ガチャ バタン

青P「…おはようございます」

赤P「おはよう、お前は大丈夫か?」

青P「ええ…星井さんの仕事についていかないと…」

律子「無理、しないでくださいね…?」

青P「…はい、ありがとうございます」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:30:23.50 ID:61gEGj0C0
美希「おはようなのー!ハニー、早くお仕事行こ!」

青P「ああ星井さん…そうですね、行きましょう」

美希「…今日って何時入りだっけ?」

青P「今日は…10時だったと思いますけど」

美希「むー、違うの!変更になって9時半入りになったでしょ!」

青P「…そういえばそうでした」

美希「…ねえハニー、疲れてるんだったら今日はミキ一人で…」

青P「いえ、大丈夫です…心配させてしまってすみません」

美希「…分かった、信じてるからね」

青P「それでは、先に行ってきます」

律子「はい、行ってらっしゃい」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:35:00.85 ID:61gEGj0C0
「ハニーそっち違うの!そっちはトイレなの!」

「おやおや…」


黄P「…相当キてんじゃねえか、アイツも」

律子「……とにかく、今は私たちにできることをやりましょう」

赤P「ああ、そうだな…」


-千早宅前-

春香「…」

春香「…すぅ」

ピンポーン

春香「……千早ちゃん、いる?春香だけど」

ガチャ

『…なに?』

春香「!」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:39:24.45 ID:61gEGj0C0
春香「あ、あのさ!ダンスレッスン一緒に行こうと思って!ほら、体動かすと気持ちいいし!」

『……行かない』

春香「…それからさ、みんなからいろいろ預かってきたんだ!お茶とか、のどあめとか、ラーメンとか!」

春香「そんなに持てないよーって言ったのに、私なんだかサンタクロースみたいになっちゃって…」

『もう構わないで』

春香「…え」

『私はもう歌えない…歌えない私に、意味なんて無いもの』

春香「千早ちゃん…」

春香「千早ちゃん、弟さんのために歌うって言ってたよね…もっと簡単じゃダメかな?」

春香「歌が好きだから、歌うことが好きだから歌っちゃダメなのかな?」

『…いまさら、そんなふうには考えられないわ』

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:44:15.51 ID:61gEGj0C0
春香「もっとこう…私は歌いたいから歌うんだって思った方が、気持ちが楽だよ?」

『やめて』

春香「それで、また一緒に歌えたら…私たちもうれしいし!」

『…やめて』

春香「それに、それに…」

春香「天国の弟さんだって、きっと喜んでくれ」

『やめてっ!!!』

春香「!!」

『春香に私の…優の何が分かるのよ!?』

『もう…おせっかいはやめて!!』

春香「…!」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:48:59.79 ID:61gEGj0C0
春香「……」テクテク テクテク

春香「……」テクテク ピタッ

春香「…う」

春香「……うう…」

「アイドルがこんなところで泣いてなにしてるんだ?春香」

春香「!」バッ

春香「あ…」

春香「プロ、デューサー…」

赤P「よう」

春香「あ、ああ…ううう…!ぐすっ…!」

赤P「あああ、おいおい…泣くなって言ったばかりなのに…」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:52:12.08 ID:61gEGj0C0
-765プロ事務所内-

赤P「落ち着いたか?」

春香「……はい、ずびばせん…」

赤P「はは、ほら鼻かめ」

春香「うう…」

赤P「…千早の家に行ってたんだな?」

春香「…分かっちゃうんですか?」

赤P「友達想いの春香のことだ、だいたい想像つくさ」

春香「…」

赤P「それで…うまくいかなかったんだな」

春香「…すみません」

赤P「いや、春香が悪いわけじゃ…誰も悪くないか」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 12:56:37.72 ID:61gEGj0C0
春香「あんな千早ちゃん初めてで…私どうしたらいいか…」

赤P「…実はさっき、千早のお母さんが事務所に来た」

春香「…え」

赤P「それで、これを千早に渡してくれと言って置いていった」

春香「これ…お絵かき帳…?」

赤P「…千早の弟さんのだそうだ、生前のな」

春香「!」

赤P「それで自分より事務所の人から渡した方がいいって言ってな…すぐ帰っちゃったんだ」

春香「で、でも…!やっぱりお母さんから渡してあげた方が…!」

赤P「…なあ春香、ちょっと聞いてくれ」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:00:27.40 ID:61gEGj0C0
赤P「俺さ、千早は大人を信用してないんじゃないかって思うんだ」

春香「そんな…!プロデューサーさんだって、それに社長や小鳥さんも…!」

赤P「…言い方が悪いな、信用しきれてないんだと思う」

春香「……」

赤P「今回の件だってそうだ、千早の家庭環境を調べて暴露したのは誰だ?」

春香「…記者の人」

赤P「そもそも千早の家庭環境を悪くしてしまったのは?」

春香「……千早ちゃんの、ご両親…」

赤P「俺としては交通事故を起こした運転手を言うべきかと思うが…それも全部大人だ」

赤P「……すまん、千早の両親に対しても言い方が悪くなったかもしれない、ただ…」

赤P「これは、それくらい重い、大きい問題なんだ」

春香「…!」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:04:31.17 ID:61gEGj0C0
赤P「…それに、青羽根のやつも言ってたんだ」

春香「青羽根プロデューサーが…?」

赤P「自分は、千早に嘘をついてしまったかもしれないってな」

春香「嘘を…」

赤P「…人ってのは、その人やその言葉を信じているほど、それが嘘だったときほどそのダメージはでかくなる」

赤P「……少なくとも、最初のころの千早は青羽根を信用していたと俺は思う」

春香「それは…私もそう思います」

春香(あのゲロゲロキッチンの収録の後くらいから…千早ちゃんは青羽根プロデューサーとよく話してたし)

春香(多分…ダジャレを教わったのもそのときじゃないかと思う)

赤P「…青羽根が電話しても家を訪ねてもダメだったんだ、おそらく俺や黄羽根、律子じゃ余計にダメだろう」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:08:19.46 ID:61gEGj0C0
春香「だ、だったらどうすれば…」

赤P「…春香、つらい役目を頼んでいいか?」

春香「え」

赤P「千早を連れ戻してくれ、頼む」

春香「…そんな、さっきだってダメだったのに」

赤P「…それでも、俺は春香に行ってほしい」

春香「……どうして、ですか」

赤P「千早のことを一番理解してるのは春香だと思う、それに…」

春香「それに…?」

赤P「簡単にはあきらめない、前向きに他の人を引っ張るのが春香の魅力だと俺は思う」

春香「…!」

赤P「…だから、俺は春香に頑張ってほしい」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:12:11.77 ID:61gEGj0C0
春香「で、でも!私さっき千早ちゃんからおせっかいはやめてって…!」

赤P「おせっかいなんかじゃない!」

春香「!!」

赤P「春香が他のみんな…俺だってそうだ!どれだけその声に元気づけられたか!」

春香「……」

赤P「…お前は覚えてないかもしれないけど、竜宮小町がデビューしたころ俺にくれたキャラメル」

赤P「俺だけ他のプロデューサーから遅れとってるときだったから、正直焦ってたんだ」

赤P「そんなときに春香がくれたキャラメル…あれのおかげで俺はもっと頑張ろうって思えた」

赤P「…いや、正確にはそんな俺にも気を配ってくれる春香に勇気づけられたんだ」

赤P「だから…春香には本当に感謝してる、ありがとう」

春香「プロデューサーさん…」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:16:11.31 ID:61gEGj0C0
赤P「…千早は、不器用だけど人の気持ちが分かるやさしい子だ」

春香「…はい」

赤P「だったら春香の気持ちもきっと伝わるはずだ」

春香「…はい!」

赤P「……お願いしてもいいか」

春香「…ふふ、プロデューサーさんの頼みならしょうがないですね」

赤P「…うん、その笑顔があれば大丈夫だ」

春香「……このお絵かき帳の中の千早ちゃんも、笑ってますね」

赤P「春香なら、その笑顔も取り戻せると思うぞ?」

春香「…はい、がんばります!」

赤P「…ごめんな」

春香「……いえ」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:20:48.28 ID:61gEGj0C0
-それから-

美希「それ、春香が書いたの?」

春香「ち、違うよ…千早さんの弟が書いた絵で…千早ちゃん全部マイク持って笑ってるんだ」

美希「ふーん…でも、そんなふうに歌ってる千早さん見たこと無いの」

春香「美希も、そう思う?」

美希「うん…今はなんか、何のために歌ってるのかなって思うの」

春香「何のために…」

美希「あ、上手いのはホントだよ?でも楽しそうに見えないっていうか…とにかくこの絵の中の千早さんとは全然違うの」

春香「…」

春香(楽しそうに歌う、か…)

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:25:35.44 ID:61gEGj0C0
律子「…それで、今度の定例ライブの曲順はどうしますか?」

青P「……やはり如月さんの出番を削った形で」

赤P「いや、できるだけ千早は最後にまわして曲順を組もう」

青P「そんな…確率的に考えて…」

黄P「バカ野郎、お前が信じねえでどうすんだよ」

青P「…」

黄P「いいか?確率なんてなあアテにならねえ、自分が100%だって思えばそれは100%なんだよ」

青P「…!」

赤P「…だから、千早の出番もちゃんと残しておく」

律子「大丈夫です、まずはライブの成功が第一なのはいつもと一緒ですよ」

青P「…申し訳ありません」

黄P「謝んじゃねえバーカ」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:29:40.94 ID:61gEGj0C0
-千早宅-

ピチョン… ピチョン…

千早「……」

千早(…歌えなくなって、どれくらい経つだろう)

千早(何日?何週間?何カ月?)

千早(……とても短くも感じるし、長くも感じる)

千早(どちらにせよ、歌えない私に意味なんて…)

ピンポーン

千早「…」ガチャ

千早「…はい」

『…千早ちゃん?私です』

『春香です』

千早「……」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:34:59.09 ID:61gEGj0C0
『あのね、今日は渡したいものがあって…ここ、開けてもらえる?』

千早「…何も欲しくない」

千早「私の事はほうっておいて」

『……』

『ほっとかない』

千早「…っ」

『ほっとかないよ!』

千早「……!」

『知らぬが~仏ほっとけない!!』

千早「!?」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:38:54.92 ID:61gEGj0C0
『えへへ…びっくりさせちゃってごめんね』

千早「…?」

『…今の、なんだか分かる?』

千早「それは…竜宮小町の…」

『ううん、ダジャレだよ千早ちゃん』

千早「…!」

『ね、今千早ちゃん笑った?』

千早「…こんな状況で笑えるわけないでしょう!」

『そっか、残念』

千早「……ねえ春香、あなたふざけてるの?」

『こんな状況でふざけてると思う?』

千早「…っ!」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:45:21.68 ID:61gEGj0C0
『私ね、ダジャレを言ってるときの千早ちゃん好きだったよ』

千早「……」

『笑ってて、本当に楽しそうで…』

『まるで子供みたいだなって思っちゃった』

千早「……」

『…私、そんな千早ちゃんの歌がもう一度聴きたい』

『一緒にステージに立って、歌、歌いたい!』

『おせっかいでもなんでもいい、それでも!』

『私!千早ちゃんにアイドル続けてほしい!』

千早「…!!」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:49:23.89 ID:61gEGj0C0
『…それじゃ、荷物ここに置いておくから!中の手紙もちゃんと読んでね!』

千早「…春香」

『じゃあ千早ちゃん、またね!』

キィ バタン カツカツ カツカツ…

千早「……」

千早「…」スッ

千早「……手紙と、楽譜…?」

千早「それから…」

千早「…!」

千早「これ、優の…っ!!」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:54:20.62 ID:61gEGj0C0
春香「…ふぅ、緊張したなあ」

春香「でも、言いたいことは全部言ったもんね、うん」

赤P「お疲れさん、春香」

春香「プロデューサーさん…待っててくれたんですか?」

赤P「当然!なんたってプロデューサーだからな」

春香「あはは、なんですかそれ」

赤P「…どうだった?」

春香「…分かりません、でも…千早ちゃんなら戻ってきてくれると思います」

赤P「……そっか、春香がそう言うなら大丈夫だろ」

春香「…私は、プロデューサーさんのこと誰より信じてますよ?」

赤P「うん、俺もだ」

春香「…ふふ」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 13:58:22.64 ID:61gEGj0C0
-定例ライブ当日-

「すみませーん、マイクチェックお願いしまーす」

「自分は大丈夫だぞー!」


真「…プロデューサー、千早は…」

赤P「……今は信じて待つだけだ」

真美「でも、もし間に合わなかったら…」

黄P「でもとかもしとか言うんじゃねえ、男なら腹ァくくってどっかり待ってろ」

亜美「亜美たち男じゃないよー…」

律子「とにかく、今は各自ができることをやりましょ!ほらあなたたちも早く準備しなさい」

青P「……」

美希「だいじょぶだよハニー、千早さんは絶対来るの」

青P「…絶対などという言葉は軽々しく」

美希「ぜったいなの」

青P「…分かりました」

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:03:20.23 ID:61gEGj0C0
貴音「…もう本番直前ですね」

雪歩「うぅ…千早ちゃんやっぱり…」

春香「…ねえみんな!いつも通り円陣組もうよ!」

やよい「…え?」

春香「ほら、ね!いつも通り!」

伊織「…そうね、いつも通り円陣を組みましょう」

あずさ「うふふ、そうね」

春香「よーっし、いくよ!765プロー…」

タッタッタッタ…

響「…ちょっと待って、なにか聞こえるぞ…?」

春香「……」

ガチャ!

千早「遅くなりました!」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:09:38.42 ID:61gEGj0C0
真「ち、千早…!」

雪歩「よかった、ホントによかった…うぅ…!」

千早「…ごめんなさいみんな、迷惑を」

美希「千早さん」

千早「…?」

美希「謝るくらいなら、早く円陣組むの」

千早「!!」

美希「えへへ、なーんちゃって」

春香「そうだよ千早ちゃん、早くしないとライブ始まっちゃうよ?」

千早「美希、春香…」

真美「ほら千早お姉ちゃん、早く早く→!」

亜美「早くしないと腕がつっちゃうよ→!」

千早「みんな…」


111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:13:54.88 ID:61gEGj0C0
春香「…よし、それじゃ円陣組むよ」

全員「……」スッ

春香「千早ちゃん」

千早「…?」

春香「おかえり」

千早「…!!」

春香「765プロー!ファイトー!」

全員「オー!!」


律子「よかった…千早が戻ってきて」

赤P「…いや、まだ最大の問題が残ってる」

青P「……歌が、残っています」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:17:38.16 ID:61gEGj0C0
-ライブ開始後、しばらく-

千早「……」

青P「お疲れ様です、如月さん」

千早「…プロデューサー」

青P「…よく、戻ってきてくれました」

千早「……その、すみませんでした…迷惑かけてしまって」

青P「いえ、戻ってきてくれたのなら何も問題はありません」

千早「……」

青P「……以前の会話を、覚えていますか?」

千早「…?」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:21:50.19 ID:61gEGj0C0
青P「ゲロゲロキッチンの収録途中です、如月さんがスタジオ裏で発声練習をしようとして…」

千早「あれは…あのときもすみませんでした」

青P「はは、いや…そんなことが言いたいのではなくてですね」

青P「如月さん、あのときもっと大きな場所で歌を歌いたいと言っていたんです」

千早「…そういえば、そんなことを」

青P「…そして俺は、それに応えた」

青P「その“約束”を、俺はまだ果たしていません」

千早「……!」

青P「如月さんはまだまだ大きな場所で、たくさんの人に歌を届けられる」

青P「…そのためにも、今日のライブ…頑張ってください」

千早「…はい!」

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:26:18.28 ID:61gEGj0C0
-ライブ終盤-

赤P「いよいよ千早の出番か…」

律子「ああ、観客もなんだかざわついてる…」

青P「……大丈夫でしょうか」

黄P「…もうステージに上がっちまったんだ、あとは見守るしかねえだろうが」

~♪

赤P「…演奏が始まった…!」

春香「千早ちゃん…!」


千早「…」スゥ

千早「…っ」

千早(…声が、出ない…!!)

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:30:20.00 ID:61gEGj0C0
ザワザワ オイオイダイジョウブカヨ…

千早(ああ、やっぱりダメだった…)

千早(ごめんなさい、優、事務所のみんな…)

千早(…それに、プロ…)

「ねぇ 今 見つめているよ 離れていても」

千早(春香…!)

「もう涙を拭って 微笑って」

千早(みんな…!)


赤P「頼む…!」

黄P「……!」

青P「……」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:35:18.58 ID:61gEGj0C0
「歩こう 果てない道 歌おう 天を超えて」

「想いが届くように 約束しよう前を向くこと Thank you for smile」

千早「……」

千早「…!」

千早「…」

千早「……うん」ニコッ


青P「……!」


千早「…」スゥ



「            」



119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:39:20.19 ID:61gEGj0C0
赤P「やった!」

律子「…!」

黄P「…バッカ野郎、一人だけいち早く泣いてんじゃねえよ」

青P「す、すびば…う、ふぐっ…!ううぅ…っ!」

黄P「謝んじゃねえ、バーカ」グスッ


千早(…歌うのが、こんなに楽しいなんて知らなかった)

千早(……いえ、きっと忘れていただけね)

千早(そうね、まるで)

千早(…全てが楽しかった、子供のころみたい)

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 14:43:44.60 ID:61gEGj0C0
-ライブ後-

春香「それじゃ千早ちゃん、また明日ね!」

千早「ええ、また明日」

やよい「千早さん、さようならー!」

千早「……」

千早「…事務所に向かいましょう」

千早「それにしても、プロデューサー一体どうしたのかしら」

千早「用事があるにしてもわざわざライブ後にしなくても…」

千早「……」

千早「…のどがかわいたわ、まずは給湯室に…」ガチャ

青P「計算通りです」

千早「!?」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:00:29.42 ID:61gEGj0C0
千早「や、やめてください!びっくりしたじゃないですか!!」

青P「おっと、それは申し訳ない」

青P「アイムソーリーヒゲソーリー」

千早「…いつの時代のダジャレですか」

青P「ええ、自分でもこれは無いと思っています」

千早「……それで、用事とは」

青P「…如月さん、ダジャレのことは嫌いになりましたか?」

千早「…!」

青P「以前のライブでスベったでしょう?あれ以来ダジャレをあまり言わなくなったものですから」

千早「…別に、嫌いになってはないです」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:03:29.48 ID:61gEGj0C0
千早「ただ、私には向いてない…歌しか歌えないと思ったから…」

青P「…如月さんは、なぜダジャレが好きになったんですか?」

千早「それは…単純に言葉遊びが面白いと思ったから…」

青P「ええ、俺も同じ理由です」

千早「プロデューサーも…?」

青P「…俺は小さいころからこんな性格で、冗談を言うのがとても苦手でした」

千早「……」

青P「でもある日、テレビでダジャレを言いまくる人を見たんです」

青P「面白いかどうかは別にして、俺はその日からダジャレの虜でした」

千早「…変わってるんですね」

青P「自覚はあります」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:06:26.24 ID:61gEGj0C0
青P「…それからはダジャレを通じてクラスメイトとも話すようになり、友達も増えました」

青P「ダジャレを考える、それ自体が楽しかったのもありますが…」

青P「俺がますますダジャレにのめり込んでいった理由は分かりますか?」

千早「……いえ」

青P「それを聞いた人が笑ってくれるからですよ、如月さん」

千早「…!!」

青P「もしかしたら純粋な笑いではないかもしれない、失笑の方が多かったかもしれない」

青P「でも、自分の好きなことで他人が笑ってくれるんだったら」

青P「…それをやめられるわけ、ないですよね」

千早「プロデューサー…」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:10:19.87 ID:61gEGj0C0
青P「そういった意味では、如月さんには歌を続けてほしい」

青P「…俺も、如月さんの歌に魅力を感じているうちの一人です」

千早「……プロデューサー、私」

青P「それに、ダジャレに対する評価も悪くはないんですよ?」

千早「へ?」

青P「ほら見てください、これは某巨大掲示板の反応なのですが」

青P「『千早ギャグ失敗可愛い』『ちひゃーのためなら何時間でも笑うよ!!!!!』」

千早「な、な…」

青P「他にも『違う意味で伝説のライブになっちゃう!』など、皆さん前向きな反応で」

千早「なんですかこれはーーーっ!!!!」

青P「鼓膜が破れそうで、僕困っちゃう」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:14:40.57 ID:61gEGj0C0
千早「はぁ…はぁ…」

青P「まあ冗談は置いといて」

千早(冗談の基準がおかしいわよ…)

青P「如月さんのダジャレにも魅力があるということです」

青P「やっぱり、ダジャレっていうのは人に笑ってもらわなきゃ意味が無いですからね」

千早「…はあ」

青P「ため池の前でため息をつく溜池さん」

千早「ぷはっ!た、溜池さんて…く、くくっ…!」

青P(即興にしては良い反応です)

青P(…今度の忘年会でぜひ披露しましょう)

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:18:11.99 ID:61gEGj0C0
青P「…おっと、俺はそろそろプレゼントを取りに行ってきます」

千早「プレゼント?」

青P「如月さんの復帰祝い、とでも言いましょうかね」

千早「…そんな大げさな」

青P「如月さんはここで待っていてください、それでは」ガチャ バタン

千早「あ…」

千早「……」

千早(ダジャレ、か…)

千早(そういえば小さいころはどんな些細なことでもけらけら笑ってたっけ…)

千早(それこそダジャレだって言ってたかもしれない)

千早(…いろいろ、忘れてることってあるものね)

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:22:04.84 ID:61gEGj0C0
ガチャ

千早「プロデューサー、おそ…」

千早「……!」

千種「……」

千早「…母さん」

千種「……お墓参りのとき以来ね、千早」

千早「…ええ、今日はどうしてここに?」

千種「あのプロデューサーさんに呼ばれたの、ライブが終わったら事務所に来てくれって」

千早「そう」

千種「……」

千早「…」

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:26:38.10 ID:61gEGj0C0
千早(一体なにを考えているのかしら、プロデューサーは…)

千種「…今日はあなたに謝ろうと思って」

千早「…?」

千種「優のこと、家庭のこと…あなたにはたくさん迷惑をかけたわ」

千早「…そんなこと、今更」

千種「…本当なら、あなたとも笑って会話したかった」

千早「……っ!」

千種「でもごめんなさい、私口下手だから…気の利いたことも言えなくて…」

千早「…わ」

千早「我がママはわがままっ!」

千種「…え?」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:30:10.17 ID:61gEGj0C0
千種「ち、千早…?」

千早「マミーが飲んでるのはもちろんマミー!」

千種「どうしたの?何か悩みごとでもあるの?」

千早「おっかさんが言った、そんなミスは犯さん!」

千種「…何?何のことなの?」

千早「母が笑った、ハハ!」

千種「……ダジャレ、なの?」

千早「…っ!母が笑った、ハハ…」

千種「千早…」

千早「母が、う、わら…笑ってよ…う、うう…!ぐすっ…」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 15:34:37.35 ID:61gEGj0C0
千種「千早」

千早「ぐすっ…お願い、笑ってよ…」

千種「……千早」ギュッ

千早「あ…」

千種「…そういえば優もあなたも、小さい頃はくだらないことでよく笑ってたわね」

千早「…くだ、くだらなく、なんか、ひくっ、ないもん…」

千種「……でも、そんなあなたたちが母さんは大好きなの」

千早「…!!」

千種「ごめんね、今まで苦労かけて」

千早「おか、お母さぁん…!う、うわああああん…っ!!」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 16:01:00.01 ID:61gEGj0C0
青P(……)

青P(これで、よかったのでしょうか)

青P(…今はまだ分かりませんが)

青P(とりあえず如月さんが笑っているなら、今はそれでいいでしょう)

青P(それにしても……)

青P(『約束』の歌詞を考えるとき、ダジャレを入れなくて本当に正解でした)

青P(もし入れてたら…)

青P(ライブが爆笑の渦で大変なことになっていましたからね!)

青P(……)

青P(…今日は、これで帰るとしましょう)

141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/25(日) 16:03:35.53 ID:61gEGj0C0
-961プロ事務所-

黒井「…それで、如月千早は見事な復活を遂げた、と…」

渋澤「は、はい…それはもう見事でして…」

黒井「そんなことは聞いていない!」

渋澤「ひっ!す、すんません…」

黒井「…もういい、下がれ」


黒井「……一体何だ、何がいけないのだ」

黒井「雑誌の表紙、我那覇響の番組、如月千早のライブ…あいつらは全て乗り越えてくる…」

黒井「……」

黒井「…そうか、次はあいつか」

黒井「くく…ふは、ふぅーはっはっはっ!!!待ってろ765プロ!」

黒井「お前たちを絶望の闇に引きずりこんでやる…!」


第20話『約束』 完!