【モバマス】凛・藍子「1・2・3で飛び込め!」 前編

470: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:49:39.29 ID:FqFl7jRq0

~~~~~~~~~~~~~~~~

凛「サザンドラ、火をつけられる?」

サザンドラ「サザ」ボッ

藍子「……うん、いい感じの火加減ですね」

藍子「じゃあ私、扇いでこれをキープしますね!」パタパタ

~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子「ルーを入れました! 混ぜていきましょう!」

藍子「遅すぎず早すぎず……適度なスピードで混ぜてくださいね」

凛「う、うん」

グルグルグルグル……

~~~~~~~~~~~~~~~~

引用元: 【モバマス】凛・藍子「1・2・3で飛び込め!」 



471: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:50:28.99 ID:FqFl7jRq0

藍子「最後にこれを入れましょう」トン

凛「……? これは……?」

藍子「『まごころ』です!」

凛「まごころ……!?」

藍子「そうですよ。こうやって入れるんです。おいしくな~れっ」ポンッ

凛「!?」

藍子「ほら、凛さんも恥ずかしからずに!」

凛「ええっ……えっと……お、おいしく、なーれ」ポンッ

~~~~~~~~~~~~~~~~

472: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:51:13.71 ID:FqFl7jRq0

藍子「できました~!」

アップルカレー おいしさ:ダイオウドウ級

凛「……うん、いい匂いだね」

藍子「じゃあ盛りつけていきましょう――」

凛「あ、ちょっと待って」

凛「実はアイマスから持ってきたものがあるんだ」ガサゴソ

凛「せっかくだし、これに入れて食べようよ」

藍子「それは……わあ! スプーンと食器ですか!」

藍子「すごく綺麗ですね! 凛さんの私物ですか?」

473: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:51:53.51 ID:FqFl7jRq0

凛「うーん、私物というか……ガラルに行く前に知り合いからもらったんだ。これを使って向こうでカレーを食べてみてって」

藍子「へえ、そうなんですね!」

………………………………………

凛「それじゃあ……」


凛・藍子「いただきます!」

474: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:53:37.39 ID:FqFl7jRq0


その夜

パチパチ……

藍子「……こうして誰かとたき火を囲むなんていつぶりかなあ。すごく懐かしい気持ちになります」

凛「そうだね。……そういえば私もだ」

凛「ずっと一人で旅をしていたから、こうして外で一緒に料理を作ったりして過ごすなんて初めてなんだ」

凛「誰かと一緒に旅をするってすごく楽しいことだね。藍子、ありがとう」

藍子「い、いえ……私こそ」

藍子「……凛さん、あの、私」

凛「?」

475: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:54:46.34 ID:FqFl7jRq0

藍子「私、子供の頃はすごく引っ込み思案だったんです。目立つことが苦手で、言いたいことも言えなくて……」

藍子「だから人付き合いも苦手だったんです。……でもそうして交流を避けていったら、どんどん自分だけ置いていかれていく感覚になって」

藍子「このまま自分に言い訳を言い続けているだけじゃ、私、いつまでたっても変われないな、って諦めかけていたんです」

藍子「そんな時にジムチャレンジの広告を見つけて、私もポケモンを持って旅に出たら何か変わるかもしれない……そう思って、サルノリをもらって旅に出ました」

凛「……」

藍子「でも何も変わらなくて……変えられない自分がいて。やっぱり私は駄目なのかな――って思っていたんです」

476: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:56:03.07 ID:FqFl7jRq0

藍子「そんな時に凛さんと出会いました。凛さん、初めて会った私にも優しくしてくれて、駅では困っている人がいたらすぐに助けていましたよね」

藍子「強くて優しくて、誰かのためにすぐに行動できる。その強さや優しさを誰かのために――見返りも求めずに使える」

藍子「そんな凛さんみたいに、私もなりたいって思ったんです」

藍子「人としてもそうですし、バトルでは機転を効かせて立ち回る姿がとてもカッコよくて大好きです。だからトレーナーとしてもすごく尊敬しています」

藍子「私は凛さんとの旅を通して、今までの自分から生まれ変わりたい。強くなりたい。優しくなりたい」

477: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:56:42.23 ID:FqFl7jRq0

藍子「……だから……今は凛さんに頼りっぱなしですけど、いつか独り立ちして、自分の足で歩けるようになれたらいいな、とも思うんです」

藍子「……話がこんがらがっちゃって、すみません。えーっと、その、何が言いたいかと言うと……」

藍子「これからもよろしくお願いします!」ペコリ

凛「……なに、急に改まって」クスッ

凛「私みたいになりたいって思ってくれるのは素直に嬉しいよ。……ちょっと褒められすぎて恥ずかしいけど」

478: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:57:54.85 ID:FqFl7jRq0

凛「でも藍子はもう強くて優しいよ。今日だって女の子を放っておかなかったし、サニーゴを守ろうとしていたじゃない」

藍子「い、いえ……そんな」

凛「私もそんな藍子と旅をできてよかった。こちらこそ、これからもよろしくね」

凛「……そろそろ寝ようか。明後日くらいにはナックルシティに着けるといいね」

藍子「はいっ。……それじゃあ、おやすみなさい」

凛「うん……おやすみ」

479: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:58:26.84 ID:FqFl7jRq0



その夜 エンジンシティ

ギガイアス「ギガ……」ズズゥン

涼「……! ギガイアス……!」

涼「全く……歯が立たなかった……!?」

??「……こんなものか」

涼「……クソッ……」

涼「アンタ、何者だ……アタシ達の町で何を企んでいる!?」

480: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:58:59.56 ID:FqFl7jRq0

??「弱者に語る言葉などない」

??「……サイコキネシス」

ブゥン

涼「!!」

ドゴォッ

涼「かっ……はっ……」

ドサッ

481: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/20(土) 23:59:50.56 ID:FqFl7jRq0

??「……」

ブゥン

涼「!! ぐっ……ううっ……」

??「これ以上命が惜しいようなら、余計な詮索はよしておくことだな……他のジムリーダーにも伝えておけ」

涼「……フン、そんな脅しなんて効かねえぞ」

??「まだ強がるか」

ドゴォッ

482: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/21(日) 00:00:27.52 ID:WNJPTGA40

涼「うあっ……!」

??「……これ以上お前に割く時間などないんだ。じゃあな」

ザッザッザッ

涼「ま、待て……」

涼「……ぐっ……」


バタッ

487: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/26(金) 19:28:41.10 ID:BGiVDDwV0



翌朝


凛「おはよう」

藍子「おはようございます!」

凛「さて、今いる場所は……」ピラッ

凛「ハシノマ原っぱに差しかかった辺りか。ナックルシティまでまだ遠いな……」

488: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/26(金) 19:29:21.43 ID:BGiVDDwV0

藍子「そうだ、凛さん。今日もフィールドワーク、されますよね?」

凛「うん。そのつもりだよ」

藍子「じゃあその間に、私も色んなエリアを回ってきていいですか? ナックルシティに着くまでにもう一匹くらいポケモンをゲットしておきたくて」

藍子「それに、手持ちのポケモンももっと鍛えておきたいんです」

凛「うん、わかった。じゃあ今日は別行動だね」

凛「それじゃ……ここ、砂塵の窪地って場所に岩のアーチがあるみたい。夕暮れまでにここに再集合しようか」

凛「何かあったら連絡して。すぐに向かうよ」

藍子「わかりました!」

489: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/26(金) 19:32:23.17 ID:BGiVDDwV0


ハシノマ原っぱ 天気:曇

藍子(……えっと)

藍子(この先がストーンズ原野って場所で、そこから西に向かうと巨人の帽子、北に行けば砂塵の窪地、東は巨人の鏡池……)

藍子(どの辺りに行ってみようかな)


自由安価
幻・伝説・準伝説・化石・御三家・捕獲済みを除くすべてのポケモンから1匹
選ばれたポケモンがいそうなエリアに藍子が赴きます
藍子がゲットする4匹目>>491

491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/27(土) 00:01:32.10 ID:+ScrHakg0
ドラメシヤ

492: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:40:26.41 ID:7lJjk3Gc0

藍子(……よし、ちょっと遠いけどここに行ってみよう)

げきりんの湖 天気:曇

ザパァ

藍子「サニーゴ、ありがとう!」

サニーゴ「サニー!」

藍子「ここがげきりんの湖……」

藍子「……ずいぶん遠くまで来たなあ。もうお昼も過ぎちゃった」

藍子「ご飯を食べてから探索しようかな」

493: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:41:30.79 ID:7lJjk3Gc0

藍子「……ふふっ、凛さんお手製のおにぎり、いただきま――」

ヒョイッ

藍子「!?」

藍子「お、おにぎりが……!」

フヨフヨ……

ドラメシヤ「ドラー」

藍子「! あのポケモン……」

ドラメシヤ うらめしポケモン ドラゴン・ゴーストタイプ
古代の海で暮らしており、ゴーストポケモンとしてよみがえった
1匹では子どもにも負けるくらい非力だが仲間の協力で鍛えられ強くなる

ドラメシヤ「ドラ」ニシシ

藍子「……よしっ、やってみよう」

494: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:42:01.13 ID:7lJjk3Gc0



その夜 砂塵の窪地

凛(……ふうん、ジグザグマやポニータにもリージョンフォームが発見されてるんだ)

凛(姿だけじゃなく、タイプも変わるなんて……不思議だな)

凛(あと、ここに来る途中にもあった穴……あれは何だったんだろう)

凛(赤い光が差している場所と差していない場所があった……その違いも気になるけど)

凛(赤い光……あの光ってもしかしてガラル粒子?)

495: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:42:30.50 ID:7lJjk3Gc0

藍子「凛さーんっ」

凛「あ、藍子。遅かったね」

藍子「はい、でもそのおかげで……」

ポン

ドラメシヤ「ドラ」

藍子「新しいポケモンもゲットしましたし、レベルアップもできました!」

496: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:43:17.30 ID:7lJjk3Gc0

藍子 手持ちポケモン

バチンキー(しんりょく) Lv31
むじゃきな性格 血の気が多い
ダブルアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル(スイートベール) Lv29
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ(はりきり) Lv28
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ(すりぬけ) Lv27
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/まとわりつく/でんこうせっか/かみつく

497: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:44:02.23 ID:7lJjk3Gc0

凛「へえ。頑張ったんだね」

凛「お疲れ様。ご飯、先に作っておいたよ」トン

藍子「わあ……ありがとうございます! いただきますっ!」

凛「それにしても……ワイルドエリアにこんな岩のアーチがあるなんてね。人工物なのかな」

凛「まあ、おかげで目印になってくれたからありがたいけど」

凛「……明日にはナックルシティに着けそうだね」

藍子「そうですね……私、そろそろシャワーを浴びたいです」

凛「それは同感だね……正直、何日もキャンプするのはきついよ」

498: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:44:47.82 ID:7lJjk3Gc0


翌朝

ナックル丘陵 天気:日照り

ジリジリジリジリ……

藍子「……」ザッザッ

凛「……」ザッザッ

凛「……あっ」

藍子「あ、ああ……あれは……!」

藍子「石の階段です! ということは……!」

凛「うん……!」

凛「あの先が、ナックルシティ……!」

499: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:45:35.57 ID:7lJjk3Gc0


ナックルシティ

藍子「はあ……やっと着きましたね」

藍子「まさかワイルドエリアがあんなに暑いなんて……」

凛「そうだね……しかもずっと登り坂だったし」

凛「……もう少し町まで距離があったら危なかったね」

藍子「はい……私、もう喉がカラカラです」

藍子「一刻も早くポケモンセンターに行きましょう……!」

500: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:46:12.31 ID:7lJjk3Gc0

テンテンテテテン♪

藍子「凛さんもサイコソーダでいいですか?」

凛「うん」

ガゴン

藍子「――ぷはーっ」

藍子「はあ……生き返りますね……!」

凛「……さて、ちょっと休んだらジムに行ってみようか」

藍子「そうですね。それにしてもこの町……」

ズゥン

501: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:46:38.29 ID:7lJjk3Gc0

藍子「まるで町全体がお城みたいですね……すごく雰囲気があります」

凛「そうだね。……へえ、中世の城壁を活かした歴史ある街、だって」

凛「ジムとスタジアムは街の中心辺りかな」

藍子「どんなタイプを使うジムなんでしょう……気になりますね」


ナックルジム

ガラッ

藍子「すみませーん……」

502: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:48:23.64 ID:7lJjk3Gc0

ジムトレーナー「おう! 嬢ちゃんたち、もしかしてジムチャレンジャーかい?」

藍子「そ、そうです」

ジムトレーナー「ハッハッハ! そりゃあタイミングが悪かったなぁ! うちのジムリーダーは今ちと忙しいんだ」

ジムトレーナー「なんでも道場破り気分でうちのジムリーダーを倒しにきた命知らずがいるらしくてな。あまりにも躾がなってねえもんだから、当人が直接お相手してやってるんだとよ」

凛「道場破り……?」

ジムトレーナー「どうだ。今から向こうのスタジアムでバトルが始まるんだ。嬢ちゃんらも見ていかねえかい?」

藍子「それじゃあ……!」

凛「私も。見せてもらおうかな」

503: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:48:54.71 ID:7lJjk3Gc0

ジムトレーナー「うっしゃ!」

ジムトレーナー「ところで嬢ちゃんたち、バッジはいくら持ってるんだ?」

凛「私も藍子も3つだよ」

ジムトレーナー「……ほう」

ジムトレーナー「3つ、か」

ジムトレーナー「……嬢ちゃん達、悪いことは言わねえ。まだアンタらにこのジムは早い」

藍子「えっ?」

ジムトレーナー「ま、べらべら語るより見てもらった方が早いわな。案内するよ」

504: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:49:36.80 ID:7lJjk3Gc0

ナックルスタジアム

凛(……広い。これまで見たどのスタジアムよりも)

ジムトレーナー「あっちにいるのがうちのジムリーダーだ」

藍子「へえ……」

藍子「ってあの小さい女の子がですか!?」

ジムトレーナー「身長なんざカンケーねえよ。実力は確かだ」

??「使用ポケモンはお互い1匹。交代なしの一発勝負です。それでいいですね?」

おぼっちゃま「フン。まあいいだろう」

505: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:50:21.04 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「どうせ結果は同じだよ。アンタはこのボクの前に屈する運命なんだから……!」

藍子「……! 女の子になんて口を……」

凛「……」

ジムトレーナー「気持ちはわかるが、ま、見てな。あんな外道には負けやしねえさ」

??「……言いたいことはそれだけですか?」

おぼっちゃま「……ああ?」

おぼっちゃま「新参者のくせに舐めた口ききやがってよお……」

おぼっちゃま「ほんと気に食わないね。ジムリーダー珠美……アンタの栄光も今日限りだ!」

506: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:51:21.69 ID:7lJjk3Gc0

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

おぼっちゃま「いくぜ、カジリガメ!」ポン

カジリガメ「カジ」

カジリガメ かみつきポケモン みず・いわタイプ
伸び縮みする首を駆使し、離れたところから鋭いキバで敵をしとめる
顎の力は鉄棒を噛み千切るほどだ

珠美「エルレイド、よろしくお願いします」ポン

エルレイド「エル」

エルレイド やいばポケモン エスパー・かくとうタイプ
伸び縮みする肘の刀で戦う居合の名手
なにかを守るためでなければ肘の刀は使わない

507: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:51:51.93 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「カジリガメ!」

カジリガメ「カジ」グググ

珠美「エルレイド、構えてください」

エルレイド「エル」

おぼっちゃま「……」

おぼっちゃま「と見せかけて!」シュゥゥ

藍子「……ボールに戻した? ということは……」

藍子「!? あれはダイマックスバンド!?」

508: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:52:22.80 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「へへっ……」シュゥゥ

おぼっちゃま「パパが大金はたいて買ってくれたんだ。しっかり仕事してもらうぜ」

おぼっちゃま「それっ! キョダイマックス!」ブゥン

カッ

ズドォォォォォン

カジリガメ「ガジィィィィ」ズドォン

509: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:53:12.45 ID:7lJjk3Gc0

凛「立ち上がった……!?」

ジムトレーナー「あれがカジリガメのキョダイマックスした姿だな」

藍子「キョダイマックスするポケモンにダイマックスバンドを持ってるなんて、あのトレーナー……かなり強いんですかね」

ジムトレーナー「いや、そうとも限らないぜ」

藍子「えっ?」

カジリガメ「ガジィィィィ」

おぼっちゃま「お、おおっ……これがキョダイマックス……! すごい迫力だ……!」

510: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:54:16.54 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「これならあのエルレイドなんてペチャンコにできるはず……いくぜ、カジリガメ!」

おぼっちゃま「ダイストリームッ!」

カジリガメ「ガジィィィィ」ググッ

カジリガメ「ガジィィィィィィィ」

ズドォォォン

おぼっちゃま「……! これがキョダイマックスのパワー!」

おぼっちゃま「すげえ……エルレイドが一瞬で消し飛んだ! ……へ、へへっ、この力があれば、ボクは――」

511: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:55:01.41 ID:7lJjk3Gc0

シュゥゥゥゥ……

エルレイド「……」スタッ

おぼっちゃま「はっ?」

珠美「その程度でしょうか?」

おぼっちゃま「……んだと?」

おぼっちゃま「ならもう一回喰らえよ……ダイストリーム!」

カジリガメ「ガジィィィィ」

ズドォォォン

512: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:56:06.55 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「は……ははっ。次は雨が降ってるし威力も増してるぜ……ひとたまりもねえだr」

エルレイド「……」スタッ

おぼっちゃま「……」

おぼっちゃま「……な、なんでだ? なんで効かねえんだ? ちゃんと命中してただろ……」

珠美「効きません。意志のない攻撃は、珠美のエルレイドには届きません」

おぼっちゃま「意志のない……攻撃……?」

513: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:57:15.26 ID:7lJjk3Gc0

珠美「あなたは……ダイマックスバンドは持っているはずなのに、実力が伴っていないようですね」

珠美「先程もパパがどうとか……さしずめ権力を駆使して、わざわざ自分の身の丈にそぐわない代物を手に入れたのでしょう」

おぼっちゃま「なっ……」

珠美「そして強大な力を手にしたと思い込んだあなたは、自分の力を見せびらかすためにこうしてわざわざ珠美に勝負をしかけてきたんですね」

珠美「だけどあなたは自分の力で珠美を倒したいんじゃなく、ダイマックスバンドの力で倒したいだけ。それを意志のない攻撃と呼ぶのです」

おぼっちゃま「……」

珠美「ダイマックスバンドはたしかに強力です。しかしその真の力は、トレーナーとポケモンの意志がシンクロすることで発揮されます。あなたはダイマックス自体を過信しすぎです」

514: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:58:01.18 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「う、うるさい!! 黙ってりゃ調子よくベラベラ語りやがって……!」

おぼっちゃま「おいカジリガメ!! 次はフルパワーでダイストリームを出すんだ、いいな!? できるな!?」

カジリガメ「ガジィィィィ」

珠美「……これ以上の説得は無駄ですね。もう終わりにしましょうか」

チャキッ

凛「!? あれは……」

藍子「どうしたんですか、凛さん?」

凛「……あれは……!!」

515: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:58:31.91 ID:7lJjk3Gc0

珠美「メガシンカ!」

シュウウウウ……

カッ

ズドォン


メガエルレイド「エルッ」スタッ


おぼっちゃま「……なっ!?」

おぼっちゃま「エルレイドの姿が変わった……! ?」

藍子「……い、今のは……」

516: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:59:10.14 ID:7lJjk3Gc0

ジムトレーナー「メガシンカだ。ポケモンを一時的にパワーアップさせられる、進化を超えた進化」

藍子「進化を……超えた……」

ジムトレーナー「ガラル地方で唯一メガシンカを使えるトレーナー。それが珠美なんだよ」

珠美「エルレイド!」

メガエルレイド「エル」スッ

おぼっちゃま「……なっ、いつの間に懐に!?」

ジムトレーナー「……ちょっと前まで 、ガラル最強のジムはバウタウンだった」

517: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 00:59:37.55 ID:7lJjk3Gc0

珠美「リーフブレード!」

メガエルレイド「エル」

ズバッ

カジリガメ「ガジィッ……」

グラッ

ジムトレーナー「だがもう今となっては昔の話さ。珠美はガラルにやって来て間もなく、バウタウンのジムリーダーに完勝した。それも一度でなく、二度もな」

518: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:00:59.67 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「……カ、カジリガメ!」

カジリガメ「ガジィィ」ズシィィィン

ジムトレーナー「別にメガシンカが使えたから、とかじゃねえ。単純に、あの子はあまりにも強かった」

フッ

カジリガメ「カジ……」バタンキュー

ジムトレーナー「どこから来たのか、どこでバトルの技術やメガシンカを会得したのかは知らねえが……」

ジムトレーナー「瞬く間にあの子は時の人になり、そしてこの町のジムリーダーに登り詰めた。ガラルの人間にとっては出自なんてカンケーねえ。強さが全てなのさ」

ジムトレーナー「たくさんのトレーナーがあの子の後を追うようになった。……ま、オレもその一人なんだがな」

519: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:01:47.79 ID:7lJjk3Gc0

ジムトレーナー「それがうちのジムリーダー、珠美さ」

凛「……!」

藍子「……」

おぼっちゃま「そんな……嘘だ……キョダイマックスまでしたのに、一撃で……」

おぼっちゃま「……こ、これは何かの間違いだ。そうだ、不正だ! 自分のホームグラウンドだから何かイカサマを施したんだろ!?」

おぼっちゃま「そうでもしなきゃ、いくらなんでも一撃なんて――」

珠美「もういいでしょう。潔く負けを認めてください」

520: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:02:39.87 ID:7lJjk3Gc0

おぼっちゃま「うるさい! ボクは認めないぞ!! イカサマしてないのならその証拠を出せ!!」

珠美「……」クルッ

おぼっちゃま「散々ボクを蹴落としやがって……そうだ、パパに言いつけてやる! パパがいればお前なんか――」

珠美「……」スタスタ

ジムトレーナー「さて、じゃオレはあの小僧をつまみ出してくるわ」

ジムトレーナー「……これでわかったろ? 嬢ちゃんらにナックルジムはまだ早い」

ジムトレーナー「そうだな……次に挑むなら、ラテラルタウンなんかどうだ? ここから西にある町だ」

ジムトレーナー「とにかく、アンタらにまた会えるのは当分先になりそうだな。んじゃ、オレはこれで」

スタスタ

凛「……」

藍子「……」

521: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:03:18.07 ID:7lJjk3Gc0

その夜 スボミーイン ナックルシティ支店

凛「ふう……さっぱりした」

ガラッ

藍子「凛さん、おかえりなさい」

凛「……藍子、元気ないね。疲れてる?」

藍子「あっ……やっぱりそう見えますか?」

藍子「まあ、ワイルドエリアを歩いてて疲れたっていうのもあるんですけど」

522: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:03:51.59 ID:7lJjk3Gc0

藍子「やっぱり今日の珠美さんのバトルが忘れられないんです」

藍子「私、強くなったと思ってました。涼さんに勝って、ダイマックスバンドをもらって。一人でポケモンをゲットできるようになって、ワイルドエリアを乗り越えて」

藍子「でもまだまだ上には上がいるんだなあって……」

凛「たしかに、珠美のバトルはすごかったね。もしかしたら私も勝てないかも……」

藍子「凛さんが……ですか?」

凛「うん。あんなに強いトレーナーを見たのは久しぶりだよ」

藍子「じゃあ私はもっと勝てないですね……ふふっ」

523: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:05:00.89 ID:7lJjk3Gc0

凛「……でも、いつかは倒さないといけない。越えなきゃいけない相手だ」

藍子「そうですね。私もいつかは……」

藍子「……うん、くよくよしていても仕方ないですね!」

藍子「まずはラテラルタウン、でしたっけ。一歩ずつ進んでいきましょう!」

凛「そうだね」

藍子「ありがとうございます。凛さんも不安を感じることはあるんだって考えたら、なんか気持ちが軽くなりました!」

凛「……それは褒められてるの?」

藍子「もちろんですよ。私にとって凛さんはスーパーヒーローなんですから」

524: ◆7P/ioTJZG. 2020/06/27(土) 01:05:46.74 ID:7lJjk3Gc0

凛「スーパーヒーローだなんて、そんな……」

凛「……私も、特別自分に自信があるわけではないよ。人並みに不安も感じるし、弱気になったりもする。でも」

凛「ここまで旅を続けられたのは、ポケモンがいたからだと思ってる。ううん、ポケモンに助けてもらってばかりの旅だった」

凛「だから思うんだ。ポケモンがいてくれたら、私は何でもできる。どこへでも行ける。って」

藍子「ポケモンがいてくれたら……」

藍子「……そうですね。私もポケモンがいなかったら、ずっとうじうじして、弱い時分を変えられずに生きていたんだと思います」

藍子「……私も、ポケモンに助けられてばかりですね」

藍子「凛さん。いつになるかはわかりませんが……絶対、珠美さんを越えましょうね!」

凛「……うん」

529: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:44:05.64 ID:5Lgl9Cnk0


翌日 5番道路

ザッザッザッ……

藍子「……あっ! 凛さん! 町が見えてきました!」

凛「ほんとだ……あれがラテラルタウンだね」

藍子「いやー、この道路も足元が悪くて大変でしたね――」

??「うわわっ!」

ゴロッ

??「ちょ、ちょっと待って――待って――!!」

藍子「!!」

530: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:44:42.63 ID:5Lgl9Cnk0

ドンガラガッシャーン

凛「ず、頭上から女の子が……!?」

凛「だ、大丈夫……?」

藍子「う、うう……私はなんとか」

??「ああ、私も大丈夫ですっ……ヘルメットをしてたので」

??「ちょっと足はすりむいちゃいましたけど……」

凛「大丈夫……? 町まで送ろうか?」

531: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:45:20.01 ID:5Lgl9Cnk0

??「いえ、ご心配なく! 自分で救急セットを持ち歩いてるので。お気遣いありがとうございます」

??「実はこの上の崖で地面を掘っていたんですが、夢中になりすぎて足元が崩れちゃったみたいなんです。突然すみませんでした」ペコリ

凛「そうだったんだ……」

チラッ

凛(って、あんな不安定な場所を掘っていたの……?)

532: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:46:16.73 ID:5Lgl9Cnk0

藍子「と、とにかくお互い無事でよかったです」

??「あの、お詫びといってはなんですが、これを……」

藍子はトリのかせきを手に入れた!

藍子「これは……?」

??「さっき私が見つけた化石です。どうやら大昔にガラル地方に生きていたポケモンの一部らしいのですが」

藍子「え……そんなものをもらっていいんですか?」

??「ええ。この化石なんですが、何かしらの作用を施せば古代のポケモンを蘇らせることができるそうです。まあ、対になる化石がもう一つ必要なのですが……」

533: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:47:05.68 ID:5Lgl9Cnk0

??「そうでなくても、化石には古代のロマンが詰まっています。持っていればいいことがある……はず!」

むつみ「あ、私はむつみという者です。この地帯で化石の採掘を行っています」

むつみ「この度は本当にすみませんでした」ペコリ

藍子「いえいえ! 化石、たくさん見つかるといいですね!」

むつみ「あ……ありがとうございます!」

534: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:47:50.10 ID:5Lgl9Cnk0


ラテラルタウン

藍子「ここがラテラルタウンですね!」

男トレーナー「ようこそ! ここはラテラルタウン。古代の芸術を中心に栄えてきた山間の町だ」

凛(あ……聞いてもないのに町の説明をしてくれるタイプの人だ)

男トレーナー「あそこの高台にあるのがラテラルジム。そしてその向こうには古代の遺跡もあるんだ」

藍子「遺跡……!」

535: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:48:47.94 ID:5Lgl9Cnk0

男トレーナー「それと、この通りを抜けたらほりだしもの市と質屋があるよ! なにかいいものが見つかるかもしれないし、よければ行ってみてね」

凛「へえ、ほりだしもの……か」

藍子「せっかくだし、ポケモンセンターに行く前にいろいろと寄ってみましょう!」

凛「うん、わかった」



ほりだしもの市

店主「……ようこそ。ここはほりだしもの市」

店主「今日はこんな商品が並んでるぜ――」

536: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:49:48.82 ID:5Lgl9Cnk0

店主「……ん? ちょっと待て。アンタの持ってるそれって……」

藍子「??」

店主「……アンタ、これをどこで見つけたんだ……?」

藍子「え……いや、これは――」

質屋店主「ちょっとちょっと、お嬢ちゃん」

質屋店主「嬢ちゃんの持ってるそれ……もしかしたら高値で売れるかも。ちょっと見せてくれないかい!?」

藍子「???」

537: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:50:41.33 ID:5Lgl9Cnk0



翌日 ラテラルジム

藍子「うう、いい感じに緊張してきました……!」

凛「ずいぶんやる気だね、藍子」

藍子「はい! ワイルドエリアを抜けて……どれだけ自分が成長できたか、確かめたいんです」

凛「……そうだ、藍子。あの作戦のことだけど」

藍子「……はい。覚悟はできています」

538: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:51:22.08 ID:5Lgl9Cnk0

藍子「否定的な意見もあるかもしれません。でもこれが私たちなりに磨き上げてきた戦術なので!」

藍子「自信をもって戦いたいと思います」

凛「そっか……それなら大丈夫」

凛「じゃあ、頑張ってね」

藍子「はいっ!」

ガラッ

539: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:52:34.31 ID:5Lgl9Cnk0

ジムトレーナー「ようこそ、チャレンジャー」

ジムトレーナー「ラテラルジムはでんきタイプを専門とするジムです。マヒ対策はお忘れなく……」

ジムトレーナー「ところで、このジムでは近々、ジムリーダーによるライブが行われる予定となっております」

藍子「ライブ……?」

ジムトレーナー「ええ。うちのジムリーダーはトレーナーとして活躍する傍ら、ギターも嗜んでいるのですが」

ジムトレーナー「定期的に町の人を招いてライブを開催しているのです。もちろん今回は厳重な警備を施しての開催ですが」

藍子「は、はあ」

藍子(今回は……?)

540: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:53:34.35 ID:5Lgl9Cnk0

ジムトレーナー「ただ、ライブをするためには大量の電力が必要になります。そこでチャレンジャーには……」

バッ

ジムトレーナー「こちらの電気コードの配線をお手伝いしていただきたいのです」

藍子「これは……?」

ジムトレーナー「まあ、一種のスライドパズルですね。正しい配線にしていただければ通電し、先へ進むことができます」

ジムトレーナー「ただし、その前にジムトレーナーと対戦していただきます。一人に勝つ度に制限時間3分が設けられ、その間のみ電気コードに触れることができるようになります」

藍子「……つまり配線がうまくいかないと、ずっと戦い続けることになるんですね」

541: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:54:19.37 ID:5Lgl9Cnk0

ジムトレーナー「ええ、チャレンジャーが力尽きるまでエンドレスです。ロックには疾走感も不可欠なので、バトルにもギミックにもスピーディーにお臨みいただければと」

ジムトレーナー「それでは、健闘をお祈りします」ポンッ

デンヂムシ「デンヂ!」

デンヂムシ バッテリーポケモン むし・でんきタイプ
腐葉土や落ち葉を食べるたびに電気エネルギーが生まれる
生まれた電気は体内の電気袋に溜め込まれる

藍子「……! さっそくですか……!」

藍子「バチンキー!」ポン

542: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:54:49.19 ID:5Lgl9Cnk0

……………………………………………………


藍子「――これをこうすればっ……!」

ガチッ

ジジジ……

ギュイイイイイン

藍子「……繋がった!」

543: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:55:24.95 ID:5Lgl9Cnk0

ジムトレーナー「……お見事です。これでまた一歩、ライブの開催に近づけました。ありがとうございます」ペコリ

ジムトレーナー「少々スピードには難がありましたが、根気よく成し遂げましたね」

藍子「スピード……うう、やっぱり私、ちょっとのろまなのかも……」

ジムトレーナー「お気になさらず。それも個性というものです。……さあ、この先にジムリーダーが待っています」

ガラッ

ウィィィィン

藍子(……)

544: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:56:07.13 ID:5Lgl9Cnk0

藍子(思ったよりもバトルが多かったし……判断ミスでマホミルが倒されちゃった)

藍子(残りの3匹で頑張らないと……!)

バッ

??(あっ、チャレンジャーだ……いけない、気を引き締めないと)

ザッザッザッ

??「ようこそ、ジムチャレンジャー!」

李衣菜「ラテラルタウンのロックなジムリーダー、李衣菜です。よろしくッ!」ビシッ

545: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:56:57.02 ID:5Lgl9Cnk0

ワァァァァァ

『だりーなーっ! ファイトーッ!』

『今日もロックだぜーっ!』

凛(……なんでだりーなって呼ばれてるんだろ……?)

藍子「藍子です。よろしくお願いしますっ」ペコリ

李衣菜「藍子ちゃんだね。さっきは配線を手伝ってくれてありがとう!」

藍子「ああやってチャレンジャーの人に少し手伝ってもらったりして、定期的に町の人たちにロックを聴いてもらってるんだ」

李衣菜「やっぱり音楽を聴くと元気が出るからね! こんな時だからこそ……みんなに笑っていてほしいし」

藍子「……?」

546: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:57:48.05 ID:5Lgl9Cnk0

李衣菜「あ、気にしないで! こっちの話!」

李衣菜「……さて、藍子ちゃんは4匹の手持ちポケモンがいるみたいだけど」

李衣菜「どうやら道中で1匹倒れちゃったみたいだね。じゃあ今回は3対3のバトルでどうかな?」

藍子「はい、それでお願いします!」

李衣菜「よーし! それに藍子ちゃん、ダイマックスバンドも持ってるんだね」

李衣菜「最高に熱くて、ロックなバトル……期待してるよ!」

ドォン


ジムリーダーの李衣菜が勝負をしかけてきた!


547: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:58:31.14 ID:5Lgl9Cnk0

ドローンロトム『バトル……スタート!!』

藍子「ドラメシヤ……お願い!」

李衣菜「ゼブライカ、ロックによろしく!」

ポンッ

ドラメシヤ「ドラッ」

ゼブライカ「ゼブ!」

ゼブライカ らいでんポケモン でんきタイプ
気性が激しく怒らせるとかなり危険
全速力で走ると雷鳴が響きわたる

548: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/04(土) 22:59:09.28 ID:5Lgl9Cnk0

藍子 手持ちポケモン

バチンキー ♂(しんりょく) Lv32
むじゃきな性格 血の気が多い
ダブルアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル ♀(スイートベール) Lv30
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ ♀(はりきり) Lv30 持ち物:??
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ ♂(すりぬけ) Lv30 持ち物:??
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/??

555: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:17:07.45 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「いきなりだけど痺れさせちゃうよ! ゼブライカ、でんじは!」

ゼブライカ「ゼブ!」バリリ

ドラメシヤ「ドラッ!?」ビリリ

藍子「!」

李衣菜「よし、決まった!」

ドラメシヤ「ドラ……」ビリビリ

李衣菜「痺れて動けないみたいだね……ゼブライカ!」

556: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:18:04.35 ID:xIyPPKpo0

ゼブライカ「ゼブ……」ザッザッ

藍子(! あの動き……大技がくる!)

李衣菜「ワイルドボルトでぶっとばしちゃえ!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」ドドドド

ドラメシヤ「!!」

凛(……すごいスピードだ。これは大ダメージだっただろうね……)

凛(……マヒしていれば、ね)

557: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:18:36.18 ID:xIyPPKpo0

藍子(……)フッ

ズドォォン

シュゥゥ……

李衣菜「へへ、まずは先制か――」

身代わり人形「」コロンッ

李衣菜「な!?」

558: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:19:09.38 ID:xIyPPKpo0

藍子「本物はこっちですよ! ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ!」

藍子「おどろかす!」

ドラメシヤ「ドラ!」バァッ

ゼブライカ「ゼブ!?」

ドラメシヤ「ドララwww」ケケケ

李衣菜「い、いつの間に!? でんじはを受けたはずなのに……」

559: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:19:49.98 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「……なるほど。クラボの実かラムの実を持っていたんだね。だからみがわりで攻撃を躱すことができた」

藍子「その通りです! まんまと引っかかってくれましたね!」

李衣菜「……へへ、もしかしてうまく嵌めたとでも思ってる?」

藍子「……!?」

ゼブライカ「ゼブ……」ズザァ

李衣菜「マヒ対策をされてるなんて想定済みだよ。みがわりはちょっと意外だったけど……そのおかげで反動ができた!」

560: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:20:40.85 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「ゼブライカ、ニトロチャージ!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」ゴォォ

ドゴォッ

ドラメシヤ「ドラッ……!」

藍子「ドラメシヤ!」

李衣菜「逆境をひっくり返すのもロックだよね!」

凛(……さすがジムリーダー。切り返しが早いな)

凛(マヒ対策やみがわりも、何度も通用する戦法じゃない……ここからが勝負だよ、藍子)

561: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:21:08.96 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「ゼブライカ、でんじは!」

藍子「躱して、ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ

李衣菜「もう一回!」

藍子「躱して!」

ドラメシヤ「ドラ!」

562: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:21:45.72 ID:xIyPPKpo0

藍子「……っ」

藍子(防戦一方だ……でも仕方ない……)

藍子(ドラメシヤはまだひ弱なポケモン……強い技も覚えていないし、守りが固いわけでもない)

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ

藍子(だからこうやって逃げ続けるしかない。逃げ続けて、相手を疲れさせるのがドラメシヤの役割。観客のみんなもそう思っているはず)

藍子(本当はジムチャレンジの舞台で出すようなポケモンじゃないのかもしれない……)

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ

563: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:22:37.19 ID:xIyPPKpo0

『どうした!? 攻撃する気がないなら交代しろー!』

『そもそもドラメシヤなんかでだりーなに勝とうだなんて舐めすぎだろー!』

ブーブー

凛(……予想通りの反応だ)

凛(みんなドラメシヤを相手に優越感に浸っている。攻撃もろくにできないポケモンだって薄々感づいているから)

凛(そしてそんな観客の思いは……確実に李衣菜の心理にも影響している……!)

ドラメシヤ「ドラ……」サッ

564: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:23:03.33 ID:xIyPPKpo0

カツン

ドラメシヤ「!」

藍子「……! スタジアムの壁……いつの間にあんな所まで……!」

李衣菜「追い詰めたよ、ドラメシヤ。もう逃げられないね」

李衣菜「いくよ、ゼブライカ。思いっきり助走をつけて!」

ゼブライカ「ゼブ!」パカラッパカラッ

李衣菜「一気に決めるよ! ワイルドボルト!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」

565: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:23:37.60 ID:xIyPPKpo0

ドドドドドド

藍子「……!」

ドドドドド

藍子「ドラメシヤ……ギリギリまで引き付けて……!」

ドラメシヤ「ドラ……!」

ドドドド

藍子「今だっ!」

566: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:24:33.36 ID:xIyPPKpo0

ドラメシヤ「ドラッ!」

スッ

ゼブライカ「!?」

李衣菜「なっ!?」

ススゥゥ……

『なにいっ!?』

『ゼブライカの身体を……すり抜けたァ!?』

567: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:25:05.93 ID:xIyPPKpo0

ゼブライカ「!!」

李衣菜「しまった……止まれない!!」

ズドォォォォォン

李衣菜「ゼ……ゼブライカッ!」

ゼブライカ「ゼブ……」フラフラ

バタンキュー

ドローンロトム『ゼブライカ戦闘不能! ゼブライカ戦闘不能!』

568: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:26:16.83 ID:xIyPPKpo0

凛(よし……うまくいった!)

藍子「やりましたね、ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドララー」ケケケ

李衣菜「……そうか、そうだった……なんで気づかなかったんだろう、私……」

李衣菜「ドラメシヤはゴーストポケモンだし、そりゃ壁やポケモンをすり抜けたりするよね……」

凛(……そう。李衣菜もたぶん気づこうと思えば気づけた)

凛(だけど観客の熱に呑まれて気づけなかった。スタジアムのみんなが、李衣菜が優勢だと決めてかかっていたから)

凛(ドラメシヤのこと、舐めていたね)

569: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:27:19.30 ID:xIyPPKpo0

ブーブー

『お……おい、ジムチャレンジャー! マジメに戦いやがれー!!』

『こんなの勝負といえるかー!』

『そうだそうだ!これはジムチャレンジなんだぞ! 正々堂々と戦えよ!!』

藍子「……正々堂々……ですか」

藍子「これが私とドラメシヤの戦い方です! 正々堂々とした……私たちなりの戦い方です!」

『うるせー!! 俺達はそんなバトルを見に来たんじゃねえ!!』

『何が熱くてロックなバトルよ……呆れたわ』

『ドラメシヤを引っ込めろー!』

570: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:30:01.20 ID:xIyPPKpo0

藍子「……!」

李衣菜「ちょっと、みんな……!」

ブーブーブーブー

凛(……まあ、こうなるだろうとは思っていたよ)

凛(ダイマックスバトルっていう文化もあるぐらいだし、それだけガラルのみんなは派手なジムバトルを期待しているっていうことだ)

凛(でも藍子は覚悟してこの戦法を使ったんだ。この反応はちゃんと受け止めないといけないし……批判に負けちゃいけない)

凛(……藍子はきっと大丈夫だろう。それより心配なのは……)

571: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:30:41.34 ID:xIyPPKpo0

ドラメシヤ「ド……ドラ……」

藍子「……ドラメシヤ、大丈夫だよ。私が全部受け止めるから……気にしないで」

ドラメシヤ「……!」


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』

572: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:31:21.67 ID:xIyPPKpo0

ドラメシヤ「……!!」


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


李衣菜「みんな! 落ち着いて! いくらなんでも言いすぎじゃないの!?」

李衣菜「たしかに私は負けたけど……ズルをされて負けたわけじゃない! これも立派な作戦だよ!」

573: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:31:48.70 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「それにまだ勝負はついてないし――」

ドラメシヤ「ド……ドラ……」

藍子「……ドラメシヤ?」

ドラメシヤ「ドラッ……!」ピューッ

藍子「えっ……ドラメシヤ!?」

藍子「待って、ドラメシヤ……どこに行くの!?」

574: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:32:31.82 ID:xIyPPKpo0

凛(!!)ダッ

李衣菜「あ……あ……」

李衣菜「ちゅ……中止! 今回のジムバトルは中止、ノーコンテストってことで! えっと、こういう時どうすれば……」

李衣菜「と、とにかく! 藍子ちゃん、ドラメシヤを追いかけよう!」タタタ

藍子「は、はいっ!」タタタ

『え……ちょっと、だりーな!?』

『中止ってなんだよ中止って! 初めて聞いたぞおい!』

ワーワーワーワー

575: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:33:05.78 ID:xIyPPKpo0


ラテラルタウン ジム前

タッタッタッタ……

藍子「はあ……はあ……みなさん、見つかりましたか……!?」

凛「ううん……遺跡の方には何もなかった……」

李衣菜「私もほりだしもの市の辺りで聞き込みをしたんだけど……」

藍子「うう……ドラメシヤ……どこに行っちゃったの……?」

576: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:33:42.33 ID:xIyPPKpo0

李衣菜「藍子ちゃん……ごめんなさい! 私がちゃんとみんなを説得させていれば……」

藍子「……李衣菜ちゃん」

凛「李衣菜は悪くないよ。謝るべきなのは……心ない言葉を投げかけた人たちだ」

李衣菜「それはそうだけど……」

李衣菜「……あっ。あれ……」

凛「……?」


藍子「……! ドラメシヤ!」

577: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:34:29.12 ID:xIyPPKpo0

藍子「……と、あれは……むつみさん?」

タタタタ

むつみ「……あっ! 凛さんに藍子さん! お久しぶりですね!」

凛「むつみ、そのドラメシヤは……」

むつみ「ああ。さっきジムの方から急に飛び出してきて……誰かのポケモンかと思って預かっていたら、私のポケモン達と仲良くなっちゃったみたいで……」

ドラメシヤ「ドララー♪」

パッチラゴン「パッチチー♪」

578: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:35:45.91 ID:xIyPPKpo0

むつみ「ふふ、ドラゴンポケモン同士、気が合うのかな」

凛(!? これは……ポケモン!?)

*パッチラゴン かせきポケモン でんき・ドラゴンタイプ
古代ではたくましい下半身で無敵だったが、餌の植物を食べつくしてしまい絶滅した
この姿が本来の姿であったかどうかは未だ疑わしい

藍子「ドラメシヤ! よかった……もう、心配したんだよ……!」

藍子「……無理をさせちゃってごめんね……ごめんね……!」ギュッ

ドラメシヤ「ドラ……」

むつみ「この子、藍子さんのポケモンだったんですね。見つかってよかったです」

579: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:36:50.52 ID:xIyPPKpo0

むつみ「……ところでこのドラメシヤ、とても怯えた様子だったのですが……何かあったのでしょうか?」

凛「うん、実は――」

カクカクシカジカ

むつみ「……なるほど。そうだったんですか……」

むつみ「私もガラル地方の人たちは派手なバトルを好みがちだと感じます。たしかに藍子さんのやり方は気に入らなかったのかもしれませんが……いくらなんでもやりすぎです」

むつみ「ドラメシヤが負担を感じるのも、無理もないでしょう……」

580: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:37:48.65 ID:xIyPPKpo0

凛「……ともかく、むつみが預かっていてくれて助かったよ。ありがとう」

むつみ「いえいえ、私はただ出くわしただけですので」

李衣菜「ドラメシヤ……本当にごめんなさい。大した慰めにならないかもしれないけど……」

李衣菜「ドラメシヤと藍子ちゃんとのコンビネーション、すごくロックだったよ」

ドラメシヤ「ドラー」

李衣菜「……藍子ちゃん。もしよかったらまた明日、もう一回ジムに挑戦してくれないかな。今日ひどいことを言っていた人たちは、私が何とかしておくから」

李衣菜「あんな仕打ちを受けて、怖いかもしれないけど……どうか、ジムチャレンジはやめないでほしいんだ」

581: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/12(日) 21:38:39.87 ID:xIyPPKpo0

藍子「……わかりました。ありがとうございます」ペコリ

藍子「私も……せっかくダイマックスバンドがあるんです。明日はみんなが大好きな、派手なバトルをしたいと思います!」

李衣菜「藍子ちゃん……!」

李衣菜「……わかった。明日、待ってるね……!」

凛(……)

凛(やっぱり、スタジアムでのデビュー戦があんな感じだったら、誰でもいい気はしないよね)

凛(これが藍子にとってもドラメシヤにとっても、トラウマにならなかったらいいんだけど……)

585: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:11:05.92 ID:s10PoP7/0

翌日 ラテラルジム

藍子「……」ザッ

李衣菜「藍子ちゃん! 待っていたよ!」

藍子「李衣菜さん……お待たせしました」

藍子「今日こそ……よろしくお願いします!」

ザワザワザワザワ

『あのチャレンジャー……まだズルい手を隠してるんじゃないか?』ブツクサブツクサ

『あんな奴にジムバッジ渡していいのかよ……』ブツクサブツクサ

586: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:11:50.07 ID:s10PoP7/0

凛(……まだああ言ってる人たちもいるけど……)

凛(昨日よりは、みんな落ち着いているように見えるな)

李衣菜「バトルは昨日の続きから……私はゼブライカが倒されてるから、まずは藍子ちゃんが一歩リードしているって状況かな。あと2匹を倒せたら藍子ちゃんの勝ち、ってことで」

藍子「はい、わかりました」

李衣菜「それじゃあ改めて……」

李衣菜「エレキでロックなバトル、見せちゃうよ!」

ドォン

ジムリーダーの李衣菜が勝負をしかけてきた!

587: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:12:22.82 ID:s10PoP7/0

李衣菜「いくよ、ゴローニャ!」ポン

ゴローニャ「ゴロー!」

藍子「ゴローニャ……だったらこっちはバチンキーで!」ポン

バチンキー「バチ!」

ゴローニャ「ゴロ……」バチバチ

凛(……? あのゴローニャ……見たことない姿をしている)

凛(あれもリージョンフォームなのかな……)

*ゴローニャ メガトンポケモン いわ・でんきタイプ
アローラのすがた
帯電した大岩を発射して攻撃する
機嫌を損ねると全身から放電し、雷鳴のような声でほえる

588: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:12:52.32 ID:s10PoP7/0

凛(アローラのすがた……)

凛(アローラ地方にもリージョンフォームのポケモンがいるってことか……へえ……)

李衣菜「ゴローニャ、かみなりパンチ!」

ゴローニャ「ゴロ!!」ダッ

藍子「ダブルアタックです!」

バチンキー「バチ!」ブゥン

ダァンッ!!

589: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:13:22.33 ID:s10PoP7/0

『おお……今日は真っ向勝負でいくみたいだな』

『……い、いや、騙されるな! あのバチンキーだって何をしてくるかわからない……!』

ザワザワザワ

藍子(……まだ昨日のことを引きずっている人もいる)

藍子(またドラメシヤで戦うのは……ドラメシヤにとってもよくないかもしれない)

藍子(ドラメシヤ……今はゆっくり休んでいて。私なら、大丈夫)

藍子「バチンキー!」

バチンキー「バチ!」グググ

590: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:13:48.29 ID:s10PoP7/0

ダァンッ

藍子(すごいパワーだ……長期戦になる前に倒さないと!)

藍子「いやなおと!」

バチンキー「バチ!」ォォォン

ゴローニャ「ゴロッ……!」

李衣菜「いいね! ロックな音、響いてるよ!」

藍子「ダブルアタック!」

591: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:14:16.69 ID:s10PoP7/0

李衣菜「じゃあこっちは……ハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロ!!」ギュン

ゴロゴロゴロゴロ

バチンキー「バチッ……!」グググ

ドッ

バチンキー「!!」ドドドド

ズドォン

592: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:14:48.04 ID:s10PoP7/0

藍子「! バチンキー!」

凛(押し負けたか……!)

李衣菜「追撃だよ! ロックブラスト!」

ゴローニャ「ゴロ!」

ドン ドン ドン

藍子「3発……バチンキー、打ち返して!」

バチンキー「バチ!」

ガキンッ ガキンッ ガキンッ

593: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:15:28.96 ID:s10PoP7/0

李衣菜「おおっ、ハードローラーを受けた直後なのに……やるじゃん!」

李衣菜「……でも、ちょっと惜しかったなあ」

藍子「……えっ? 惜しかった……?」

ヒュン

藍子「!」

ドゴオッ

バチンキー「!!」ズザァ

李衣菜「もう攻撃は終わったと思ったでしょ? でも音楽ってね、休符の時間も演奏の一部なんだよ!」

藍子「……! 時間差での攻撃……!」

594: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:16:01.15 ID:s10PoP7/0

李衣菜「そういうこと! ゴローニャ、トドメのハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロ!!」

ゴロゴロゴロゴロ

藍子「……!」

藍子「バチンキー、受け止めて!」

バチンキー「バチッ……!」

グググググ

595: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:16:31.55 ID:s10PoP7/0

『おお……バチンキー、今度は耐えてるぜ!』

『『しんりょく』のおかげですかねー。しかしそれはつまりバチンキーの体力が残りわずかだということ……』

『いいぞーだりーなー! そのまま押し切れー!』

バチンキー「バチ……!」

ダァンッ

ゴローニャ「ゴロッ」ズザァ

バチンキー「バチッ……」ズザァ

596: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:17:26.17 ID:s10PoP7/0

李衣菜「次で決着が着きそうだね」

李衣菜「バチンキー、もう限界が近いけど……どうする? ダイマックス、使っちゃう?」

藍子「……いえ、このままいきます!」

李衣菜「そうこなくっちゃ! ゴローニャ、かみなりパンチ!」

ゴローニャ「ゴロ!」ダッ

藍子「ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!!」

ドゴオッ

597: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:18:30.89 ID:s10PoP7/0

ゴローニャ「ゴロッ……」

藍子「よし……特性のおかげで力では勝っている!」

李衣菜「ならこれはどう!? ロックブラスト!」

藍子「跳ね返します!」

バチンキー「バチ!」

ドン ドン ドン

バチンキー「バチ」

藍子(まだだ……油断するな、私)

598: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:18:59.79 ID:s10PoP7/0

ヒュン

藍子「4発目!」

バチンキー「バチ!」ドンッ

ゴローニャ「……」

藍子「……」

李衣菜「……」

ゴローニャ「――」グッ

藍子「5発目――」

599: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:19:32.01 ID:s10PoP7/0

李衣菜「ハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロッ!!」

ゴロゴロゴロゴロ

『ほう、5回目が来ると見せかけて……か』

『こりゃ決まったな』

ゴロゴロゴロゴロ

藍子「……裏をかいたつもりだったんでしょうが」

藍子「私は予想済みです! バチンキー!」

600: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:19:59.15 ID:s10PoP7/0

バチンキー「バチ!!」

ドンッ

バチンキー「バチィィ……!!」

ダァンッ

『なっ、跳ね返した!?』

ゴローニャ「ゴロッ」スタッ

李衣菜「やるね! でもこれで――」

601: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:20:44.46 ID:s10PoP7/0

藍子「バチンキー!」

李衣菜「えっ!?」

バチンキー「バチ」ダッ

李衣菜「そんな……今攻撃を受けたばかりなのに!?」

藍子「ダブルアタック――2発目です!!」

バチンキー「バチ!!」

ドゴオッ

602: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:21:11.39 ID:s10PoP7/0

ゴローニャ「ゴロッ……!」

ドドォン

李衣菜「ゴ、ゴローニャ!!」

ゴローニャ「~~」バタンキュー

ドローンロトム『ゴローニャ戦闘不能! ゴローニャ戦闘不能!』

『なっ、何だ今の!?』

『ダブルアタック……2回同時攻撃でやっとハードローラーを跳ね除けたはずじゃ……!』

603: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:21:40.62 ID:s10PoP7/0

李衣菜「……もしかして……」

藍子「はい、そうです」

李衣菜(!! 片方のバチだけ傷が深い……)

李衣菜「……まさか、さっきの時間差攻撃をもう自分達のものに……?」

藍子「はい。見よう見まねでしたけど……うまくいってよかったです!」

李衣菜「……すごい。すごいよ、藍子ちゃん!」

李衣菜「藍子ちゃん、最ッ高にロックだよっ!」

604: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:22:17.22 ID:s10PoP7/0

李衣菜「だから私も……最高にロックなポケモンで挑ませてもらうね!」

李衣菜「いっけー、ストリンダー!」ポン

ストリンダー「ストッ!!」

ストリンダー パンクポケモン でんき・どくタイプ
ハイなすがた
胸の突起を掻きむしり電気を起こすとき、あたりにギターのような音が響く
常にケンカ腰で気が短い

凛(最後の相手は……ストリンダー。でんき・どくタイプか)

605: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:22:44.25 ID:s10PoP7/0

凛(まずいな……藍子の手持ちはほとんど相性が悪い……)

凛(それに相手はまだダイマックスを使ってきていない。藍子……ミスは一度もできないよ)

李衣菜「ストリンダー……私のエース、バンドでいえばバンマスってところかな?」

李衣菜「今度は簡単には倒されないからね! ハイパーボイス!」

ストリンダー「スト!!」

ジャァァァァァン

バチンキー「バチッ……!」

藍子(うっ……! すごい音……!)

606: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:23:11.26 ID:s10PoP7/0

藍子「バチンキー、気をつけて!」

藍子「地面に向かってたたきつける!」

バチンキー「バチ!」ドゴォッ

『地面を叩きつけて飛び上がったぞ!』

『……そうか、ストリンダーの背後に回るつもりじゃな!』

藍子(後ろからなら、あの音の攻撃はあまり届かないはず……)

藍子「バチンキー、ダブルアタック!」

607: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:23:45.54 ID:s10PoP7/0

バチンキー「バチ!!」

李衣菜「……」

李衣菜「効かないよ」

パシッ

藍子「!? 片手で受け止めた……!?」

李衣菜「ダストシュート!」

ストリンダー「……」

ストリンダー「スト!!」グワッ

608: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:24:15.39 ID:s10PoP7/0

ドドドドドド

藍子「バ……バチンキー!!」

凛「バチンキーが……あんな高さまで打ち上げられた……!」

凛(威力が上がってるはずのバチンキーの攻撃を片手で受け止めたし……あのストリンダー、相当強い……!)

ドザァッ

バチンキー「バチ……」バタンキュー

ドローンロトム『バチンキー戦闘不能! バチンキー戦闘不能!』

李衣菜「いいね、ストリンダー! ロックだよ!」

ストリンダー「ストッ!」

609: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/20(月) 00:24:54.22 ID:s10PoP7/0

藍子「バチンキー……ゆっくり休んでね」シュゥゥ

藍子「……」チャキッ

藍子「ストリンダー……とても強力なポケモンだ」

藍子「でもあれを越えないと、私はこの先に進めない……」

藍子「……初めてのジム戦が相性の悪い相手でごめんね。でも……きっと勝てる。私も頑張るから……

藍子「……頑張って、サニーゴ!」ポン

サニーゴ「サニ!」

613: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:41:10.51 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「! みずタイプのサニーゴ……!」

李衣菜「苦手なタイプで挑みに来るなんて……いい度胸してるじゃない! ロックだね!」

藍子「あ、ありがとうございます」

李衣菜「でももっとロックなのは私の方! ストリンダー、オーバードライブで痺れさせちゃって!」

ストリンダー「ストッ!!」

ジャァァァァァン

藍子「っ……!」

サニーゴ「サニッ……!」バリリリリ

614: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:42:06.49 ID:fG6jhgSr0

『おいおい、こりゃ直撃だぜ!』

『あれは耐えられなさそうですわね』

李衣菜「どう!? これが私達のロックだよ!」

シュゥゥ……

サニーゴ「……サ、サニッ!」

李衣菜「……耐えてる!?」

李衣菜「す、すごい。ずいぶんタフなサニーゴなんだね!」

藍子「ええ、このためにサニーゴは特訓してきたんですから!」

615: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:42:59.20 ID:fG6jhgSr0

…………………………

ナックルシティ ポケモンセンター


『とくぼうゼミ開講中! あなたのポケモンの守りを固めます! 受講生募集中!
 ※ただし人気ゼミにつき、お一人様一匹のみの参加とさせていただきます。』


凛「へえ、ポケモンの能力を強化するゼミ……か」

凛「で、このゼミに誰を参加させようか相談したいってわけだね」

616: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:43:54.46 ID:fG6jhgSr0

藍子「はい、そうなんです。一匹しか参加させられないみたいなので」

凛「うーん……」

凛「……ポケモンを強化する方向性としては、得意な能力をさらに伸ばしていく方法もあれば、苦手な能力を補わせていく方法もあるんだけど」

凛「たとえば私の手持ち……ドリュウズだったら、得意なスピードとパワーを上げていくか、はがねタイプということを活かして守りを固めるか、って感じだね」

藍子「ふんふん」メモメモ

凛「ただ、方向性を決める上で気を付けなきゃいけないのは、何か捨てる部分を作らないといけないって所かな」

凛「スピードとパワーを上げるなら守りを捨てないといけないし、守りを固めるならスピードやパワーは据え置きになっちゃうし」

617: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:44:45.58 ID:fG6jhgSr0

藍子「ふんふん」

凛「それにトレーナーやポケモンそれぞれのバトルスタイルもあるし……まずは藍子がどんな方向性で手持ちを組み立てたいか決めていかないとね」

凛「さっきの話に戻るけど、藍子は得意な所を伸ばしたい? それとも苦手を克服したい?」

藍子「そうですね……得意な能力を伸ばしていきたいです!」

凛「じゃあ、スピードもパワーもあるバチンキーは今回のゼミは見送りだね」

凛「マホミルは特防がかなり高いけど、長く逃げ回れるスピードや体力もある。候補としては有りだと思うな」

凛「ドラメシヤはどんな風に進化していくのか想像がつかないから……考えるのはもう少ししてからでもいいと思う」

618: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:45:31.33 ID:fG6jhgSr0

藍子「じゃあ候補としては……マホミルかサニーゴですかね」

凛「そうなるね。それで、サニーゴについてなんだけど」

凛「私も特訓の相手をしていて感じたんだけど、やっぱりサニーゴは岩タイプだからスピードはあまりないんだ。それはつまり、相手の攻撃を躱すことも上手くないっていうこと」

凛「だから実際のバトルでは、まず相手から一発喰らうのが前提の戦いになると思う」

凛「相手の攻撃を受ける必要がある……ということは、守りを固めておくことに越したことはないと思うんだ」

619: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:46:38.70 ID:fG6jhgSr0

藍子「……なるほど。つまり凛さんはサニーゴに参加してもらうのがいいと考えているんですね」

藍子「相手から攻撃を受けてからの戦い……なんだか難しそうです」

凛「うん。藍子にとってもサニーゴにとっても、慣れが必要になる戦法じゃないかな」

凛「けど、こういう戦法もあるんだって知っていること、そして使いこなせることは、他のトレーナーを一歩リードできる力になると私は思うな」

藍子「……わかりました。じゃあこのゼミにはサニーゴに参加してきてもらいます!」


……………………………………

620: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:47:10.03 ID:fG6jhgSr0

藍子「私のサニーゴ……出会った時も、大勢の攻撃をたった一匹で受け止めていたんです」

藍子「打たれ強さには自信がありますよ!」

藍子「……反撃です! サニーゴ、アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!」バシュゥ

李衣菜「ストリンダー!」

ストリンダー「ストッ……」グググ

ドゴオッ

621: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:47:49.02 ID:fG6jhgSr0

ストリンダー「ストッ……!」

李衣菜「……ひゅーっ、すごいパワーだ!」

李衣菜「藍子ちゃんのサニーゴ、かなりはりきってるね!」

はりきり
攻撃力が上がるが命中率は下がる

李衣菜「負けてられないね! ストリンダー、オーバードライブ!!」

ストリンダー「スト!!」ジャァァァァァン

サニーゴ「サニッ……!」バリリリリ

622: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:48:20.55 ID:fG6jhgSr0

藍子「サニーゴ!」

サニーゴ「サニッ!」バシィ

藍子「よし……アクアブレイク!」

サニーゴ「サニ!」バシュゥ

ストリンダー「ストッ……」

ドゴオッ

李衣菜「まだまだ! オーバードライブ!!」

ストリンダー「ス……ストッ!!」ジャァァァァァン

623: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:49:10.94 ID:fG6jhgSr0

藍子「アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!」

バシュゥ

ズバァァァン

『……あのストリンダーに真正面から挑むなんて、あのチャレンジャー、命知らずすぎる……』

『しかもサニーゴ、まだまだ戦えそうじゃねえか……水タイプだぜ? とっくに倒れててもおかしくねえのに』

624: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:49:55.55 ID:fG6jhgSr0

『……いいぞー!』

『!』

『なかなかガッツのあるチャレンジャーじゃねえか! いけいけー!』

『サニーゴがんばれー! ストリンダーもがんばれー!』

ワァァァァァァ

藍子「……!」

藍子(少しずつだけど……私を応援してくれる声が大きくなってきた……!)

625: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:50:35.78 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「スタジアムの皆も盛り上がってきたみたいだね!」

李衣菜「それじゃあ……藍子ちゃん」

藍子「は、はい」

李衣菜「ここからは……私、もっとド派手に、ロックに攻めさせてもらうよ!」

李衣菜「ストリンダー!」シュゥゥ

藍子(! これは……ダイマックス!)

626: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:51:26.93 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「ほらほら、藍子ちゃんも!」

藍子「は、はい! サニーゴ、戻って!」シュゥゥ

コォォォォォ……

李衣菜「……へへっ、藍子ちゃんとのバトル、すごく楽しい! どんどん情熱が沸き上がってくるよ!」

グンッ

李衣菜「だから私はその情熱を……勝利へ向かって解き放つよ! ストリンダーと一緒に!」

李衣菜「いくぜっ、キョダイマックス!!」ブゥンッ

627: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:52:27.67 ID:fG6jhgSr0

藍子「サニーゴ、ダイマックス……で……すっ!」ブゥンッ

カッ

ズドォォォォォン

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙」ドォォォォン

サニーゴ「サニィィィィ!!」ドォォォォン

藍子「……!」

藍子「これが……ダイマックス……!」

『出たー!! だりーなの本気のキョダイマックスだー!!』

ドワァァァァァァァ

628: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:53:40.00 ID:fG6jhgSr0

凛(ここからダイマックスバトルか……)

凛(……李衣菜のストリンダー、やっぱりサニーゴより一回り大きいし、四足歩行になっている。あれもキョダイマックスなのか)

凛(ダイマックスとキョダイマックス……違いは何なんだろうか)

李衣菜「ストリンダー、ド派手にいくよ!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙」ググッ

藍子「させません! ええっと……ダイロック!」

サニーゴ「サニィィィ」グワッ

ゴゴゴゴゴ

629: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:54:16.91 ID:fG6jhgSr0

ストリンダー「ズド!!」カッ

凛(あれは……電気で作られたギター……!?)

ブゥンッ

ドゴォォォォ

藍子「そんな、ダイロックが粉々に……!」

李衣菜「これで終わりだァ! ストリンダー……キョダイカンデン!!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」ブゥンッ

630: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:55:08.27 ID:fG6jhgSr0

サニーゴ「!!」

ドゴォォォォォォォン

藍子「サ、サニーゴっ……!」

藍子「――うあっ」

藍子(スタジアムが眩しくて見えない……サニーゴは……!?)

シュゥゥゥ……

サニーゴ「……サ……」

サニーゴ「サ……ニ……」ググッ

藍子「サニーゴっ!」

631: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:55:48.17 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「……! 倒しきれなかった……か」

『お、おお……あんな攻撃を受けても倒れないなんて』

『なんだあのサニーゴ、不死身か?』

『だがもうフラフラだ。次で終いでしょうな』

凛(……今の攻撃……)

凛(とんでもない威力だった。地面をへこませるぐらいの電気エネルギーによる攻撃……)

凛(普通なら水タイプのポケモンは一撃で倒されるだろうね……でも藍子のサニーゴは)

632: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:56:31.63 ID:fG6jhgSr0

サニーゴ「サ……ニッ……」

李衣菜「! そうか……きあいのハチマキ!」

きあいのハチマキ
持たせるとひんしになりそうな技を受けてもHPを残して耐えることがある

藍子「……サニーゴ。苦しい思いをさせてごめんね。でももう少し、踏ん張って……!」

藍子「ダイストリーム!」

サニーゴ「サニィィィィ!」グワッ

ドォォォォン

633: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:57:12.62 ID:fG6jhgSr0

ストリンダー「ズド……」

李衣菜「ス、ストリンダー!」

ストリンダー「……ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」グググッ

李衣菜「……よし、まだまだいけるね!」

李衣菜(とは言っても、ストリンダーも次の一撃で終わり……かな)

李衣菜「なら最後にもう一発、最高にロックな技をお見舞いしてあげる!」

藍子「!」

634: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:58:14.65 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「ストリンダー……キョダイカンデン!!」

ストリンダー「ズド」ブゥンッ

李衣菜「うらぁああああ!!!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!!」

ドゴォォォォォォォン

藍子「……うっ……」

サニーゴ「サニッッ――」

オオオオオオンン

635: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:59:13.63 ID:fG6jhgSr0

『……これは決まったな』

『さすがに耐えられないわな。しかしあのサニーゴ……よく踏ん張ったよ』

『トレーナーがもっと対策でもしてたらねえ。さて、帰りますか』

凛「待って」

『……? なに、アンタ』

凛「勝負は……まだ終わっていないよ」

636: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 22:59:48.59 ID:fG6jhgSr0

『はあ? あれだけの攻撃を受けきれる体力はもうサニーゴには残ってなかっただろ――』

『……!? ちょ、ちょっと、アレ……!』

『……なにぃ!?』


サニーゴ「サニッ……」グググ


『こ、こらえてやがる……!?』

637: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:00:48.39 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「はあ……はあ……そんな……! 全身全霊の攻撃だったのに……!?」

藍子「……ありがとう、サニーゴ。最後にあと少し、力を貸して……!」

藍子「サニーゴ……ダイストリーム!!」

サニーゴ「サニ……」グワッ

サニーゴ「サニィィィィィ!!」

ストリンダー「……!」

ズバァァァン

638: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:01:28.34 ID:fG6jhgSr0

李衣菜「うわあっ!?」

ストリンダー「ズドッ……」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」

ドゴォォォォォン

李衣菜「……!!」

バシュウッ

ドサッ

ストリンダー「スト……」バタンキュー

李衣菜「そ、そんな……」

639: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:02:13.08 ID:fG6jhgSr0

ドローンロトム『ストリンダー戦闘不能! ストリンダー戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者……チャレンジャー・藍子!!』

ワアアアアァァァァ

藍子「っ……か、勝った……!」

バシュウゥ

サニーゴ「サニ……」

藍子「サニーゴ!」

ガバッ

640: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:03:12.05 ID:fG6jhgSr0

藍子「サニーゴ……よく頑張ったね、ありがとう……!」

李衣菜「……お疲れ様、ストリンダー」

李衣菜「……どうやら私の魂より、藍子ちゃんの魂の方がロックに輝いたみたいだね」

李衣菜「うん、すごくいいバトルだった! 私もたくさん刺激をもらえたよ」

藍子「いえ……頑張ったのは私のポケモン達です」

李衣菜「そんなに縮こまらなくていいんだよ。サニーゴがあんなにでんき技を受けても倒れなかったのは、藍子ちゃんを信じていたからなんだから!」

李衣菜「ポケモンにここまで信じてもらえるトレーナーって、すごくロックだと思うな、私」

641: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:05:11.47 ID:fG6jhgSr0

藍子「……!」

李衣菜「そんな藍子ちゃんには、ハイ、これ!」

藍子はエレキバッジを手に入れた!

李衣菜「それからこの技マシンを見たら……今日のバトルのことを思い出してほしいな」

藍子は技マシン「10まんボルト」を手に入れた!

藍子「李衣菜さん……ありがとうございました!」

李衣菜「へへ、敬語はもういいよ。これからもジムチャレンジ、頑張ってね!」

李衣菜「それと……またバトルしようね!!」

グッ

642: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:06:44.61 ID:fG6jhgSr0

…………………………

凛「お疲れ様、藍子。……いいバトルだったよ」

藍子「ありがとうございます! でも今日、一番頑張ってくれたのは……」

サニーゴ「サニ」

藍子「サニーゴですね!」

凛「……ふふ、そうだね」

むつみ「……あっ、凛さん! 藍子さん!」

凛「あ、むつみ」

藍子「ここで会ったってことは……も、もしかして、さっきのバトル、見ていたんですか!?」

643: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:07:45.09 ID:fG6jhgSr0

むつみ「はい、バッチリ見させていただきました!」

むつみ「いやあ……まさに手に汗握るバトル! 素晴らしかったです! まるで化石を傷つけず掘り出す時のような緊張感があって――」

むつみ「いや、私の例えはいいんでした……それよりも、少し気になることがあったんですが」

藍子「?」

むつみ「あの強力なストリンダーの攻撃を、一度ならず二度も受けきるなんて……サニーゴにいったい何があったのでしょう?」

凛「ああ。藍子はサニーゴにきあいのハチマキを持たせていたんだ。きっとそのおかげだろうね」

644: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:08:36.59 ID:fG6jhgSr0

藍子「はい! でもまさか二回もハチマキに助けられるなんて……正直、私もドキドキしてました」

むつみ「へえ……きあいのハチマキってすごいアイテムなんですね! 私も今度使ってみようかな!」

藍子「あ、あはは……」

藍子(……う、うーん、まさかほりだしもの市でむつみさんから譲ってもらった化石と交換した、なんて言えないなあ……)

チラッ

645: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/25(土) 23:09:33.56 ID:fG6jhgSr0

藍子(……い、言わない方がいいですよね?)

凛(……うん……別にいいんじゃないかな)

むつみ「どうかしました?」

凛「あ、いや、なんでも。それじゃ私は今からジムに挑んでくるから……」

藍子「あ、そうでしたね! 私もポケモン達を回復させたらすぐ応援に向かいます!」

むつみ「そうでしたか。では私はこれにて。またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします!」

藍子「はい! むつみさん、お元気で!」

凛「元気でね」

651: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:30:51.33 ID:yQgjJmTf0

その後――

凛「ふうっ……」

藍子「凛さん、お疲れ様です! きょうもすごいバトルでしたね!」

凛「藍子もお疲れ様。これでお互いに4つ目のバッジだね」

藍子「はい! ここまで順調にバッジを集められているのも凛さんのおかげです。ありがとうございます」ペコリ

藍子「次のジムは……ここから北にあるアラベスクタウンですね」

652: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:31:25.69 ID:yQgjJmTf0

凛「この町……もしかして森の中にあるのかな」

藍子「そうみたいでね。……なるほど、この先のルミナスメイズの森を通って町に向かうみたいです」

藍子「森の中にある町……どんな雰囲気の町なんでしょう」

??「あっ、凛さん! 藍子さん!」

凛「!」

藍子「あっ、都さん!」

都「お久しぶりです!」ペコリ

藍子「こちらこそ、お久しぶりですっ」

653: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:32:13.05 ID:yQgjJmTf0

都「お二人は……そうか、ジムチャレンジでこの町に来ていたんですね」

凛「そうだよ。都はどうしてこの町に?」

都「ええ。実は5番道路でポケモンが暴れているっていう情報を聞き受けたもので……今ちょうど、ラテラルの人たちから聞き込みを行っていたところなんです」

藍子「5番道路に……?」

都「といっても、すぐにその場にいたトレーナーの皆さんが抑えてくれたそうなので、大事にはならなさそうです。ただ念のために、怪しい噂がなかったか調べておかねば、と思いまして」

都「……最近は物騒な事件が多くて気が休まりません。この間の涼さんの一件もですし――」

凛「……涼?」

凛「涼がどうかしたの?」

654: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:32:50.56 ID:yQgjJmTf0

都「……あれ? ご存じありませんでしたか?」

都「4日ほど前ですかね。エンジンシティジムリーダーの涼さんが何者かに襲われ、負傷した事件があったんです」

凛・藍子「!?」

都「夜だったのでジムにいた人は少なかったのですが、幸いすぐに清掃員の方が気づき、病院へ運び込まれました。今はまだ大事をとって入院していますが、近々ジムにも復帰するとのことです」

凛「……そんなことが……」

凛(4日前……ちょうどワイルドエリアにいた頃だ。野外にいたから、情報が入ってこなかったんだ)

655: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:33:41.76 ID:yQgjJmTf0

都「現場の状況から推測するに、涼さんはねんりきかサイコキネシスのような技で吹き飛ばされ、壁に強く叩きつけられていたそうです。これは確実にポケモンの仕業です」

都「なので各地でポケモン達が暴れている事件との関連を疑う余地があります。しかしジムの中に、ジムリーダーをも倒すほど凶暴なポケモンが現れるとは……あり得なくはないですが、そんなことがあるのでしょうか?」

都「だとすれば、悪意あるトレーナーがポケモンを利用したのか――しかしジム内に荒らされた形跡はなかったそうです」

都「犯人がポケモンだったにせよトレーナーだったにせよ、目的は何だったのか……たった一つの真実を知るのは涼さんのみ、です」

都「しかし涼さんは人々の混乱を避けるため、という名目で、あの日何があったのかは各地のジムリーダーにしか説明していないそうです」

656: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:34:22.30 ID:yQgjJmTf0

藍子「そんな……私も凛さんもあんなに苦戦した涼さんが倒されるなんて。いったい誰がそんなこと……?」

都「ううむ……どうかお二人も気を付けてください。今、ガラルは見えない恐怖に包まれつつあります」

都「どうにかしてこの事件の真相を解き明かしたいのですが――」



ウワーッ!

凛・藍子・都「!!」

657: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:34:58.02 ID:yQgjJmTf0

ホープトレーナー「ひ、ひいっ!!」

ドテッ

凛(トレーナーだ。かなり怯えている……?)

凛「……どうしたの?」

ホープトレーナー「ル、ルミナスメイズの森でポケモンを捕まえていたら……急にポケモンに襲われて……」

ホープトレーナー「それで慌てて逃げてきたんだ……い、今も追いかけてきてるかも――」

バッ

658: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:35:37.13 ID:yQgjJmTf0

ホープトレーナー「うわあっ!!」

ベロバー「ベロー!」

ベロバー いじわるポケモン あく・フェアリータイプ
人やポケモンが嫌がるときに発するマイナスエネルギーが好物
それを鼻から吸いこみ元気になる

藍子「!!」

都「ひえっ!?」

凛「あのポケモンか……!」

凛「ドリュウズ!」ポン

ドリュウズ「ドリュ」

ホープトレーナー「ア、アンタ……何とかしてくれるのか!?」

659: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:36:09.05 ID:yQgjJmTf0

ホープトレーナー「ってアンタ、なんで自分の後ろにポケモンを――」

凛「藍子、ベロバーを撃退して!」

藍子「は、はい! バチンキー!」ポン

藍子「ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ドンッ

ベロバー「ベロッッ!?」ドゴォ

凛「よし……ドリュウズ、ストーンエッジ!」

660: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:36:44.40 ID:yQgjJmTf0

ドリュウズ「ドリュ!!」ゴゴゴゴゴ

ゴォォォン

ホープトレーナー「い、岩の壁が……!?」

凛「ドリュウズ、すぐ戻るよ! その場所を守っていて!」

ドリュウズ「ドリュ!」

凛「これで町にポケモンが侵入することはないはず……藍子、行こう!」

藍子「はいっ!」

都「私も行きます! 足手まといにはならないんで!」ザッ

都(あのポケモンの様子……今までと確実に何かが違う。ルミナスメイズの森に、何かがある!)

661: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:37:20.90 ID:yQgjJmTf0
ルミナスメイズの森


ベロバーB「ベローッ!」

ベロバーC「ベロババー!」

ベロバーD「ベロベロッッ」

藍子「! ベロバーがこんなに……」

凛「……やっぱり行き止まりを作って正解だったね」

662: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:38:22.45 ID:yQgjJmTf0

凛「サンダース!」ポン

サンダース「ダース!」

都「いきますよ、ヤングース!」ポン

ヤングース「ヤーン!」

ヤングース うろつきポケモン ノーマルタイプ
餌を探してうろつき続け、鋭いキバでなんにでも噛みつく
長い胴体の中身はほとんど胃袋だ

凛「かみなり!」

藍子「ダブルアタック!」

都「とっしん!」

663: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:39:09.93 ID:yQgjJmTf0

ズドォォォン

ベロバーD「ベロッ……」

ベロバーC「ベロババー!」

ザッ ザッ ザッ

凛「! また仲間が……」

藍子「でもどこに……? 暗くてよく見えません……」

都「ルミナスメイズの森は木が生い茂りすぎて太陽の光を遮ってしまっているんです……!」

バッ

664: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:39:40.27 ID:yQgjJmTf0

藍子「!!」

ベロバーE「ベロバ!」ズドン

バチンキー「バチッ……!」ドンッ

藍子「バチンキー!」

ヤングース「ヤング……!」ズザァ

都「しまった……ヤングースッ!」

665: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:40:13.99 ID:yQgjJmTf0

凛「くっ、サンダース! かみなり!」

サンダース「ダース!!」ゴロゴロ

ズドォォン

ベロバーE「ベロバ!!」

ヒュン

藍子「! 凛さん、上です!」

凛「!」

666: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:40:52.29 ID:yQgjJmTf0

ベロバーF「ベーロバ!」バシィ

サンダース「ダース……!」

凛「! 樹の上からも……!」

ザッ ザッ ザッ ザッ

ベロバーH「ロバー!」

ベロバーI「べべ!」

凛「っ……数が多すぎる……」

凛「それに視界も悪い……まだどれだけの数が潜んでいるかもわからない」

凛「……どうする……!?」

667: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:41:21.75 ID:yQgjJmTf0

??「こうすればいいんじゃないかなあ!」

バリリリリリ

凛・藍子・都「!」

パァァァ

藍子「キノコが光った……!?」

凛「……! 李衣菜!」

都「李衣菜さん!?」

李衣菜「こうすれば明るくなるでしょ? みんな暗い中でよく戦ってくれてたね! ありがとう!」

668: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:42:12.22 ID:yQgjJmTf0

李衣菜「あっちの樹の上にも何匹かいるね……ストリンダー!」

ストリンダー「スト」ザッ

藍子(……? 前に見たときと姿が違う……?)

ローなすがた
15000ボルトもの電気を発生させることができる
電気がつくられるとき、ベースのような音が響く

李衣菜「よくも私の町の近くで暴れてくれたね……オーバードライブ!!」

ストリンダー「スト」

バリリリリリ

669: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:42:39.22 ID:yQgjJmTf0

ベロバーJ「ベッ……」ビリビリ

ベロバーK「ベーロ……」ドサッ

李衣菜「よし、あとは地上の相手だけ……みんな、もうひと踏ん張りだよ!」

藍子「はい! バチンキー!」

バチンキー「バチィ!!」ドドン

ベロバーF「ベロ……!」

バチンキー「バチ――」

670: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:43:14.64 ID:yQgjJmTf0

カッ

藍子「!? バチンキー……!」

李衣菜「いいタイミングだね……ジムでの経験が活きたのかな!」

ゴゴゴゴゴゴ

ゴリランダー「ゴリィィ!!」

ゴリランダー ドラマーポケモン くさタイプ
特別な切り株のパワーをドラミングでコントロールし、草木の根っこを操る
ドラムテクニックに優れたものが群れのボスになる

671: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:43:47.75 ID:yQgjJmTf0

藍子「ゴリランダー……!」

藍子「……よし、頑張って、ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴリ!」スッ

ダンッ

藍子「……? ゴリランダー、それは――」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

グワッ

672: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:44:27.35 ID:yQgjJmTf0

ベロバーF「ベロ……!」

ドゴォッ

藍子「! すごい……地面から根っこが生えてきた……!」

藍子「それにあれは……ドラム?」

凛「……なるほど、あのドラムで草木を操ることができるんだね」

都「す、すごいです藍子さん! よーし、こっちも頑張りますよ!」

凛「サンダース!」

ズドォォォン

ベロバー達「ベロォォ……!」

スタコラサッサー

673: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:44:56.89 ID:yQgjJmTf0

李衣菜「……これでもう懲りたかな」

李衣菜「3人ともありがとう!」ペコリ

凛「ううん、こちらこそ。助けてくれてありがとう」

藍子「ありがとうございます!」

都「李衣菜さんが来ていなかったらどうなっていたことか……!」

李衣菜「そうだ、凛ちゃん。この子、ちゃんと連れてきたよ」

ドリュウズ「ドリュ」

李衣菜「おかげで町にベロバーが入ってくることはなかったよ。ホントにありがとね!」

674: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:45:48.85 ID:yQgjJmTf0

藍子「……でもあのベロバー達、どうしてあんなに暴れていたんでしょう」

都「もともとイタズラ心の強いポケモンですけど、ここまで群れで誰かを襲うなんて……」

李衣菜「……たしかにおかしい。今までこんな暴れ方をしているポケモンは見たことがない」

李衣菜「だから何者かがベロバー達を扇動したんだと、私は思う」

藍子「……何者かが?」

凛「だとしたら――」

李衣菜「うん。犯人は……」

675: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:46:22.82 ID:yQgjJmTf0

バッ

李衣菜「すぐ近くにいる!」

ストリンダー「スト」

バリリリリリ

凛「!」

シュゥゥ……

??「……ったく、もう! 危ないじゃない! 焼け焦げちゃうわよ!」

676: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:46:56.11 ID:yQgjJmTf0

凛(……あれ? この声、どこかで聞き覚えが……)

??「ベロバーもみんなどっか行っちゃったし……踏んだり蹴ったりだわ!」

??「まあバレたなら仕方ないわね……そうよ、ベロバー達を動かしていたのはア・タ・シ!」

麗奈「このレイナサマよ!」

バッ

レイナ「ボスから借りたギルガルド……さすがの霊力だったわね」

677: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:47:46.62 ID:yQgjJmTf0

凛「アンタは……麗奈!?」

麗奈「なっ!? アンタは……」

凛「麗奈……どうしてここにいるの? この森で何をしていたの!?」

麗奈「どうしてここにいるかはアタシも聞きたいとこだけど……いいわ! 特別に教えてあげる!」

麗奈「あれから――シンデレラ団が解散してから、アタシは新しいボスと一緒に遊ぶことにしたの。あの方よりもっと面白くて、もっとワルいことを企んでる人とね!」

麗奈「そんなボスからギルガルドの力を試したいって言われてね……ほら、ギルガルドって人やポケモンを操る能力があるでしょ?」

678: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:48:48.11 ID:yQgjJmTf0

麗奈「それでわざわざひとけのない森でベロバー達相手に実験してたってわけ。ま、ちょっと度が過ぎちゃってみんな機嫌が悪くなっちゃったけど!」

麗奈「だからアタシは悪くないわ! ベロバー達が勝手に暴れてただけ!」

麗奈「むしろひとけがないこんな場所を選んでくれたアタシに感謝してほしいわ! アーッハッハッハ…ゲホゲホ」

都「ひとけがないって……それでも町に近い森ですよ!?」

麗奈「あら、そうなの? アタシガラルにはそんなに詳しくないから知らなかったのよね。だからー、今回は無実ってことにしてくれない?」

李衣菜「……!」ギリギリ

679: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:49:39.58 ID:yQgjJmTf0

藍子「……凛さん、この人っ……」

凛「私が黙らせる」ザッ

藍子「凛さん!?」

凛「チャーレム!」ポン

チャーレム「チャー」

麗奈「……あら、やるっての? ちょうどいいわ。アタシもアンタに恨みがあったし」

麗奈「容赦しないわよ! いっておいで、ギモー!」ポン

ギモー「ギモ!」

ギモー しょうわるポケモン あく・フェアリータイプ
土下座して謝る振りをして尖った後ろ髪で突き刺してくる戦法を使う
農作物を育てる力をもつらしい

680: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:50:13.94 ID:yQgjJmTf0

麗奈「ギモー、いばる!」

ギモー「ギモ~」ドヤァ

チャーレム「!」

麗奈「アーハッハッハ! 混乱しちゃいなさい!」

凛「チャーレム、とびひざげり」

チャーレム「チャー」

ドゴォッ

681: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:50:48.19 ID:yQgjJmTf0

ギモー「ギモォ!?」

麗奈「うそ!? もう混乱が解けたの!?」

麗奈「……いや、そもそも攻撃が外れていたのかも」

麗奈「ならこれはどう!? ギモー、おだてる!」

ギモー「ギモォ」スリスリ

凛「チャーレム」

ギモー「!!」

ドゴォッ

682: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:52:01.72 ID:yQgjJmTf0

ギモー「ギモ……」バタッ

麗奈「んなっ……」

凛「そんな小細工は通用しないよ。チャーレムはヨガパワーを最大まで高め上げているんだから」

ギモー「……」グググ

麗奈「くっ……」

麗奈「……まだよ! どげざつk」

パァン

チャーレム「……」

683: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:52:29.27 ID:yQgjJmTf0

ギモー「ギモォ」バタンキュー

麗奈「ひっ……な、何なのアンタ……!?」

凛「麗奈……誰とつるんでいるの。何を企んでいるの!?」

麗奈「……」

麗奈「そんなの……教えるもんですか!」

バッ

都「! これはけむりだま……!」

シュゥゥ……

684: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:53:04.44 ID:yQgjJmTf0

李衣菜「……逃げられちゃったね」

凛「……」ギリ

都(い、いつもは優しい凛さんが鬼の形相になってる……)

藍子「凛さん……」

藍子「さっきの人のこと、知っていたみたいでしたけど……」

凛「……うん」

凛「……ちょっと待ってね。頭冷やすから」

藍子「……いいですよ。ゆっくり話してください」

685: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:54:35.79 ID:yQgjJmTf0

………………………………


都「……話を整理させてください。凛さんはかつて、アイマス地方で悪さを企んでいたシンデレラ団という組織と交戦していた」

都「そしてさっきのトレーナー……麗奈という人もその組織の一員だった」

凛「うん」

都「そして新しいボスというその人の発言から……ガラルにも、シンデレラ団のような犯罪集団が潜んでいる可能性が高い、と思われているんですね?」

都「そしてその集団は、各地のポケモン暴走事件と関わっている……」

686: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:55:17.34 ID:yQgjJmTf0

凛「うん。可能性が高い、というよりも、確実に関わっているって私は考えてる」

藍子「……実際に目の前でベロバー達が操られていたのが何よりの証拠ですもんね」

藍子「ガラルにそんな人たちがいるなんて、想像したくないですけど……」

都「ということは……涼さんを襲った事件にもその集団が関係している……?」

凛「かもしれないね。誰かがポケモンを使って襲わせたのか、ポケモンと一緒に襲ったのか……」

李衣菜「……」

藍子「……李衣菜さん?」

687: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:56:33.92 ID:yQgjJmTf0

都「李衣菜さん、ポケモン暴走事件に関して、ジムリーダーの間だけで共有されていた情報もあるんですよね? たとえば涼さんの事件とか」

李衣菜「!」

都「なにか思い当たる所があれば教えて下さい。これはガラル全土の問題です」

李衣菜「いや……でもこの話は……」

都「今は出し渋っている状況じゃないです!」

凛「うん。李衣菜。私達もこの状況を放っておけないんだ。どんな情報でもいい。……教えてくれないかな」

李衣菜「う、うーん……」

李衣菜「本当は他のトレーナー……ましてやジムチャレンジャーには話したくなかったんだけど……」


688: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:57:32.29 ID:yQgjJmTf0

李衣菜「……わかった。凛ちゃん達には言うよ」

凛「ありがとう、李衣菜」

李衣菜「――涼ちゃんが襲われた事件のこと。あの事件の詳細はジムリーダー達だけの秘密だったんだけど……」

李衣菜「実は涼ちゃん、エスパーポケモン使いのトレーナーに襲われたって話していたんだ」

凛「!!」

李衣菜「あの日……ジムを閉めてから見回りをしていた涼ちゃんは、ジムの中で不審な動きをしていたトレーナーと会ったんだって」

李衣菜「それでその人を問い詰めようとしたら、抵抗してきて……涼ちゃんは手も足も出せなかった、って言ってた」

689: ◆7P/ioTJZG. 2020/07/31(金) 23:59:19.15 ID:yQgjJmTf0

都「でも、ジムの中は荒らされてなかったんですよね……?」

李衣菜「うん。犯人の目的は何だったのか、涼ちゃんもわからなかったみたいなんだけど……」

李衣菜「もしかしたらそのトレーナー、凛ちゃんが話してくれた集団の一員だったかもしれないって、そう思えるようになってきた」

藍子「そんなことが……」

凛(……そうか。たしかにこの事実を公表したら、ガラルはジムチャレンジどころじゃなくなる……)

凛「……李衣菜、話してくれてありがとう。このことは口外しないって約束する」

李衣菜「言わなくてもわかってるよ。大丈夫」

藍子「でも結局、涼さんを襲った犯人は何が目的だったんでしょう……」

都「……ちょっと待ってください」

690: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:00:13.26 ID:Z4Re5Sg10

都「……これまで暴走したポケモンが現れた場所は……キルクスタウン、シュートシティ、ターフタウン、そしてナックルシティやラテラルタウンが近い5番道路……」

都「ほとんど全て、ジムの近くに出現しているということになります!」

藍子「ジムの近く……それって……」

凛「うん。集団の狙いはジムリーダーともいえるし……パワースポットともいえる」

李衣菜「パワースポット……ねがいぼしの力……?」

李衣菜「そんなのを利用して何が起きるっていうの……? 涼ちゃんのことを傷つけてまで……!」

凛「わからない……でも連中は闇雲じゃなくて、計画性のある行動をしているのは確実……だと思うんだ」

691: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:02:13.90 ID:Z4Re5Sg10

藍子「……」

都「……」

李衣菜「……」

凛(……ダメだ。今のままじゃ思う、思うの状態から話が進まない)

凛(とにかく、今できることは……)

凛「李衣菜。涼が襲われた情報……あえてみんなに公表しなかったんだね。私たちには気にすることなくジムチャレンジを続けてほしかったから」

李衣菜「……うん、そうだよ」

凛「その気持ちはよくわかる。でも……麗奈と会ってしまった以上、もう放っておけないんだ」

692: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:02:55.64 ID:Z4Re5Sg10

凛「私も、この件に関わってもいいかな」

李衣菜「……もちろん。凛ちゃんがいれば百人力だよ」

李衣菜「むしろお願いしたいな。私……許せないんだ。涼ちゃんを傷つけた奴らのことが……!」

凛「ありがとう。……とにかく、李衣菜は今はジムに戻って、町を守り続けていてほしい。いつラテラルタウンが被害に遭うかわからないから」

李衣菜「……そうだね。何かあったら私がみんなを守らなきゃいけないもんね」

凛「それからジムリーダー達にも警戒心を持っておくよう 、伝えておいてほしい」

李衣菜「もちろん。ちゃんと伝えておくよ」

693: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:03:32.66 ID:Z4Re5Sg10

都「私も凛さんに助太刀します! 情報ならたくさん集めてきたんです。今こそガラルに巣食う闇を退ける時です!」

凛「都……ありがとう」

藍子「……あ、あの」

李衣菜「藍子ちゃん。こんな事になっちゃったけど、気にせずジムチャレンジを続けてくれて――」

藍子「い、いえ、違うんです! その、あの……」

藍子「ずっと過ごしてきたガラル地方に悪い人がいるなんて、想像したくないんですけど……でも」

藍子「……私も、見て見ぬふりなんてできません。正直、怖いですけど……」

694: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:04:15.41 ID:Z4Re5Sg10

藍子「私の力で誰かを守れるなら……私も、手伝わせてください」

凛「藍子……」

凛「……わかった。藍子もそう言ってくれて嬉しいよ」

李衣菜「うん! 藍子ちゃんも充分強いトレーナーだもんね! 頼もしいよ!」

藍子「た、頼もしいなんてそんな……」

都「藍子さん、ともに頑張りましょう!」

藍子「み、みんな……」

695: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:05:01.74 ID:Z4Re5Sg10

凛「……とはいえ、今のままじゃ情報が少なすぎる」

凛「藍子。まずこの森を抜けてアラベスクタウンに向かおう。何か情報がつかめるかもしれない」

藍子「はい、わかりました!」

都「……あの、もしよければ、私も同行してよろしいでしょうか?」

凛「都も……?」

都「ちょうど私もアラベスクで情報収集をしようと思っていたんです。それに一緒に行動していれば、何か情報を得たときに私の捜査ファイリングと掛け合わせて新たな事実が見つかるかもしれません」

都「この事件の鍵を握るのは凛さんと藍子さん……と私は踏んでいます」

696: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/01(土) 00:05:40.63 ID:Z4Re5Sg10

都「どうでしょうか?」

藍子「歓迎ですよ! ね、凛さん!」

凛「うん、心強いよ。都、よろしくね」

都「はい、こちらこそ!」

李衣菜「アラベスクタウンは森を北に抜けた場所だよ。道は暗いけど、触ると光るキノコがあるからそれを頼りに進めば迷うことはないと思う!」

李衣菜「みんな……気をつけてね!」

凛「うん。李衣菜も……気をつけて」

701: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:51:04.62 ID:T0Q77NHb0

翌日

ザッザッザッ…

凛(……!)

凛「あの光は……ポケモンセンターだ」

藍子「本当ですか!? ということはあの先が……!」

都「はい、アラベスクタウンですね!」


アラベスクタウン
巨木の内側をくりぬいた形の居住区がある町

702: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:51:48.34 ID:T0Q77NHb0

凛(……なんだか不思議な町だ。あちこちに家よりも大きな光るキノコが連なっている)

凛(それにキノコの色も様々だ。まるでファンタジーの世界だな)

凛(……あと、あそこにいるチョンチーはどうやって浮いてるんだろう……?)

チョンチー「チョンチー」フヨフヨ

都「えーっと、今は何時なんでしょうか……」

都「って、もうお昼みたいですよ!」

藍子「そ、そうなんですか? そっか、だから私、なんだかお腹空いてきたなあって思っていたんですね」

703: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:52:40.92 ID:T0Q77NHb0

凛「森の中はずっと薄暗かったからね。時間の経過がわからなかったけど……そんなに経ってたんだ」

都「ということは、この森を抜けるのにかなり時間がかかったみたいですね」

藍子「そうですよね、朝に出発したはずですし――」

男トレーナー「ん? アンタ達、もしかしてこの森を抜けて来たのかい?」

凛「うん、そうだよ」

男トレーナー「こりゃ驚いた……森ではベロバー達が暴れ回ってたんじゃなかったのか?」

凛「いや、もう暴れてないはずだよ。……きっと」

704: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:53:09.64 ID:T0Q77NHb0

都「ええ! 何せ凛さんと藍子さんがベロバーを操ってる張本人を――」

ハッ

都「い、いえ、何でもないです! とにかくもう森は安全ですよ!」

男トレーナー「……? お、おう、そうか」

都(ふー、危なかった……迂闊に情報を漏らしても善良な市民が混乱するだけでした)

凛「この町の人たちは大丈夫だったの?」

705: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:53:54.32 ID:T0Q77NHb0

男トレーナー「いや。昨日から森でケガをしたトレーナーが立て続けにポケモンセンターに駆け込んでる。何人かは被害に遭ったみたいだな」

男トレーナー「そのせいでポケモンセンターはけっこう混雑してると思うぜ」

凛(……なるほど。ベロバーの群れに出くわしてしまった人たちはポケモンセンターにいるみたいだ)

藍子「都ちゃん、ポケモンセンターに行ってみたら何か情報が得られるんじゃないですか?」

都「そうですね。聞き込みをすれば何か知っている人もいるかもしれません」

都「私たちもポケモンを回復させたいですし、さっそく向かいましょう」

706: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:54:29.67 ID:T0Q77NHb0

テンテンテテテン♪

藍子「ふう、やっと一息つけますね」

凛「そうだね。……それにしても」

トレーナーA「イテテテテ……」

トレーナーB「くっそー、俺のモルペコはいつになったら回復すんだよ……」

トレーナーC「おーおー、ごめんよポカブ。痛かったろう?」

707: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:55:05.83 ID:T0Q77NHb0

凛(まだ傷が癒えてない人やポケモンがたくさんいる……)

凛(……罪のない人をこんなに傷つけるなんて。許せない……)

都「あの、すみません」

??「あら、何かしら?」

都「足を挫かれてるみたいですけど、そのケガってもしかして……」

??「ええ、そうよ。森でベロバー達に追い回されてね」

藍子(……ん? この声、どこかで……)

708: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:55:41.07 ID:T0Q77NHb0

藍子「凛さん、聞き覚えのある声がしませんか?」

凛「えっ?」

凛「……」

都「そうでしたか……あ、申し遅れました。私は都です。探偵をしています」ピラッ

??「あら、まだ若いのに探偵なんて……面白そうな子ね。フフッ」

凛「……! この声……レナさん?」

709: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:56:18.90 ID:T0Q77NHb0

レナ「……?」

レナ「あら……凛ちゃん! それに藍子ちゃん!」

藍子「やっぱり……どこかで聞いたことがあると思ったら!」

レナ「久しぶりねえ。エンジンシティ以来かしら。どう、元気してた?」

藍子「は、はい!」

都「あ、あれ? もしかしてお知り合いですか?」

レナ「ええ。前に一度会ったことがあったのよ」

710: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:57:01.23 ID:T0Q77NHb0

レナ「……ここにいるってことは、二人もあの森を抜けてきたの?」

凛「うん。もしかしてレナさんも?」

レナ「そうよ。アラベスクジムの工事の立ち会いに向かおうとしたんだけど、その途中でね」

レナ「はあ、災難だったわ。私、いつもはそらとぶタクシーで各町を行き来してるんだけどね、今回は久しぶりに歩いて向かってみようと思っていたの。そしたら森でポケモン達に追い回されちゃってね」

レナ「その時に思わず転んじゃって、しばらくは杖と一緒の生活。ついてないわ、ほんと」

凛「そうだったんだ……」

711: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:57:45.70 ID:T0Q77NHb0

藍子「大変でしたね……。お大事になさってください」

レナ「ふふ、ありがとう。藍子ちゃんは優しいわね」

レナ「それにしても、二人とも無事で本当によかった。あ、もちろん小さな探偵さんもね」

都(むむっ……小さいとは……!)ムキッ

レナ「二人ともジムチャレンジのためにここに来たのかしら?」

藍子「はい、そうです。……そうです、けど……」

レナ「けど?」

藍子「……あ、いえ、何でもないです」

712: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:58:23.98 ID:T0Q77NHb0

都「そ、そうだ。レナさんに聞きたいことがあったんです。今お時間よろしいでしょうか?」

レナ「ええ、いいわよ」

都「ありがとうございます。ではまず……」

都「最近、各地でポケモン達が暴走している事件はご存知ですよね? 今回のこともそうですし、最近は5番道路でも同じような事件が発生しています」

レナ「ええ」

都「……まだはっきりと確証は持っていないのですが、私、都はこの一件の裏に暗躍している集団があると読んでいます」

レナ「暗躍している集団……」

713: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 22:59:07.52 ID:T0Q77NHb0

都「率直に聞きます。最近、街で怪しい動きを見せている人を見たことはありませんか? もしくは、森でそのような人は見かけませんでしたか?」

レナ「……」

都「……」

レナ「……ごめんなさい。私は身に覚えがないわ。実際にポケモンが暴れている現場を見たのも今回が初めてだったし」

レナ「私が知っていることといえば、ようやくジムリーダー達や警察や動き出してくれそうってニュースだけね。治療してくれた人が教えてくれたの」

都「そうですか……」

レナ「力になれなくてごめんなさい」ペコリ

都「あ、いえいえ、いいんです! こちらこそ突拍子もないこと聞いてすみませんでした!」

714: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:00:03.20 ID:T0Q77NHb0

レナ「それにしても、暗躍している集団がいる、か。つまり都ちゃんは、この一連の事件は人為的なものと考えているのよね?」

都「そうですね、悪意ある何者かの仕業によるものだと推理しています」

レナ「そう考えるきっかけって何だったのかしら?」

都「それは……」

凛「森で見たんだ。ベロバーを操っている人を」

レナ「森で……?」

藍子「はい。少し小柄な女の子でした」

都「なので、そういう怪しい人と遭遇した覚えはないか、聞き込み調査をしているんです」

715: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:00:43.45 ID:T0Q77NHb0

レナ「……そうだったの。でもごめんなさいね。私は何も知らないわ」

都「……わかりました。ご協力、ありがとうございます」

都「あ、凛さん、藍子さん、手持ちポケモンの回復は終わりましたか? それでは手分けして他のトレーナー達にも話を聞いて回ってみましょう!」バッ

凛「わ、わかったから袖を引っ張らないで……」

藍子「レ、レナさん、また今度~……」

レナ「……」

レナ「フフッ、賑やかな子たちね」

716: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:01:32.05 ID:T0Q77NHb0

………………………………

民家

強面男「……コイツはガキの頃からずっと一緒にいるグラエナでな。昨日もコイツを連れて森を散歩していたのさ」

強面男「そしたら何処からともなくあのピンクのポケモンが襲ってきてよ……オレもグラエナも立ち向かったが、数の暴力には敵わなかった」

強面男「結局、隙を見て逃げるしか手立てがなくてよ。命からがらアラベスクまで帰ってきたら、コイツはもうボロボロで……」

グラエナ「グラ……」

717: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:02:04.95 ID:T0Q77NHb0

凛(グラエナ……今も傷が痛むのかな。鳴き声も辛そうだ)

藍子「……そうだったんですか……」

都「グラエナ……ボロボロになりながらも、主人を全力で庇ったんですね」

都「……私、そのベロバー達が暴れていた件について今、独自に調査を行っているんです」

強面男「ああ、そういや探偵って名乗ってたな」

都「はい。最近、各地でポケモン達が暴走している事件はご存知ですよね?」

強面男「まあそりゃな。ニュースでもよく聞くよ」

718: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:02:43.17 ID:T0Q77NHb0

都「……まだ確証があるわけではないんですが、私はこの一件の裏に暗躍している集団があると睨んでいるんです」

都「率直に聞きます。最近、街で怪しい動きをしている人を見たことはありませんか? もしくは、森でそのような人は見かけませんでしたか?」

強面男「ああ、見かけたぜ」

都「!! 詳しく……聞かせて下さい!」

強面男「見かけたというか、声を聞いたって感じだがな。薄暗くてよく見えなかったが、森の奥の方でケタケタ笑ってる奴がいたぜ」

凛(! きっと……麗奈のことだ)

719: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:03:24.78 ID:T0Q77NHb0

強面男「ソイツがポケモンを操ってたのかは知らねえが、とにかく不快な声だった。人をコケにしたような、ポケモンをコケにしたような笑い方さ。……今思い出しても、腹が立つ」

都「その声は他に何か言っていませんでしたか!? どんな些細なことでもいいんです、覚えておられたら、教えて下さい」

強面男「別に何も。ただ笑ってただけだったぜ。オレはソイツのことを何も知っちゃいねえ」

強面男「というか、アンタら誰だ? この探偵の嬢ちゃんの仲間か? それともジムチャレンジャーか?」

藍子「!」ビクッ

凛「私と藍子のこと? まあ、仲間でもあるけど、もともとこの町にはジムチャレンジのために来たからジムチャレンジャーでもあるかな」

720: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:03:54.76 ID:T0Q77NHb0

強面男「はンッ! ならおおかたあのポケモンの群れも蹴散らしてきたんだろうな」

強面男「全く、こんな時にのこのことジムチャレンジとは、お気楽なもんだぜ」

凛「……どういうこと?」キッ

強面男「アンタらは知らねえだろうな! 力を持たねえ奴の気持ちがよ!」

強面男「もしあの声の主がポケモンを操ってたんなら、弱い者イジメも大概だ。オレのグラエナはドイツのエサにされたんだよ」

強面男「どうしてオレ達がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……なあ!!」ガンッ

721: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:04:32.32 ID:T0Q77NHb0

藍子「っ……!」

強面男「アンタらはいいよなあ! 強いポケモンがいるんだ、多少の厄介事があっても気にならないだろ」

強面男「どうせアンタらもこの探偵ごっこに意味もなく付き合ってるだけで、今回の事件なんか興味ねえんだろうな」

都「た、探偵ごっこ……!?」

凛「……ちょっと待ってよ。どうして私達がアンタに説教されなきゃいけないわけ?」

凛「無関心だなんて一言も――」

強面男「うるっせえな!! そんな体裁取り繕うだけならとっとと出てってくれ!!」

722: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:05:14.16 ID:T0Q77NHb0

都「ちょ、ちょっと……落ち着いてください!」

藍子「……!」

藍子(この人……すごく悲しんでる。自分達が不幸な目に遭った理由を、誰かに当てつけないと気が済まないんだ……)

藍子(目の前で、こんなに悲しんでいる人がいる。傷つけられた人がいる。そんな人がいることを知ってても――)

藍子(私は、ジムチャレンジを続けていていいんだろうか……?)

723: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:06:03.01 ID:T0Q77NHb0

藍子「……」

藍子「……そうかもしれません」

強面男「うん? なんだって?」

藍子「……たしかに、こんな状況でジムチャレンジを続けているのは、場違い、なのかもしれません……」

凛「藍子……?」

コンコンッ

724: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:06:36.45 ID:T0Q77NHb0

強面男「……ああ、こんな時に次から次へと……誰だ!?」

ガラッ

強面男「! アンタ……」

??「こんにちは。グラエナの調子はいかがですか? お菓子を持ってきたので、よければ食べてみてください」

??「このポフィン、ダイミツっていう特別な蜜を使って作ってみたんです。きっと今よりも元気になってくれると思いますよ♪」

強面男「……お、おう……」

凛(……? 急に男がしおらしくなった……)

725: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:07:03.71 ID:T0Q77NHb0

藍子「あの人は……」

??「あら、お客さんがいらしていたんですね!」

??「お菓子はまだまだたくさんあるので、よければ皆さんも、はい。食べてみてください♪」

都「あ、ど、どうも……」

藍子「あ、ありがとうございます」

凛(これは……クッキー? 真ん中に水色の……チョコかな? が埋め込まれていて、とても綺麗だ)

凛(……)パクッ

726: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:07:29.97 ID:T0Q77NHb0

凛「……!」

藍子「……わあ、おいしい!」

都「本当ですね! なんだか……ほっこりする味です!」

??「ふふ、ありがとうございます」

強面男「……すまねえな」

強面男「ほら、グラエナ。かな子がお菓子を持ってきてくれたぞ。食ってみな」

727: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:08:20.15 ID:T0Q77NHb0

グラエナ「グラ」パクッ

グラエナ「!!」

グラエナ「グラッ! グラッ!」

強面男「へへ、そうかそうか。……ありがとよ、かな子」

強面男「それと……嬢ちゃんたち、さっきは取り乱しちまって悪かったな。すまねえ」

凛「いや……私こそ。ついカッとなっちゃった。ごめんね」

強面男「いや、カッとさせちまったのはオレのせいさ。気にしないでくれ」

728: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:08:57.74 ID:T0Q77NHb0

かな子「あら、喧嘩でもしていたのかしら? でもまあ、丸く収まったみたいでよかった♪」

凛(……すごい。さっきまであんなに気が立っていたのに、この人が来ただけで何事もなかったみたいに……)

藍子「あの、あなたは……」

強面男「そうか、嬢ちゃんたちはジムチャレンジャーだったか。なら紹介してやるよ」

強面男「この子がアラベスクタウンのジムリーダー、かな子さ」

藍子「! ジムリーダー……!?」

かな子「はい。私がこの町のジムリーダーです♪」

729: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:10:10.04 ID:T0Q77NHb0

かな子「今日はちょうどチャレンジャーがいなかったので、町の皆さんにお菓子を配って歩いていた所だったんです。あ、もしかして、この後ジムに来られたりしますか?」

藍子「あ……」

かな子「すみませんが、もし来られるのであれば、明日にしてくれないでしょうか。よろしくお願いします」ペコリ

凛「うん、わかった。じゃあ明日、ジムに挑戦させてもらうよ」

かな子「それと……」

藍子「……?」

かな子「さっき、窓の外から聞こえてきたのはあなたの声でしょうか。『この状況でジムチャレンジを続けるのは場違いかもしれない』、とか言っておられた気がしたのですが」

730: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/07(金) 23:10:57.35 ID:T0Q77NHb0

藍子「えっ……!?」

かな子「もしその気持ちが本当なのであれば……いえ、本当であったならなおさら、是非ジムにお越しいただきたいんです」

かな子「どういう意味かは、来られてからお話ししたいと思います。待っていますね♪」

かな子「それでは、私はこれにて。お邪魔しました」

タッタッタッ

藍子「……」

藍子(……さっき、あの人……かな子さんは『喧嘩でもしていたのか』って言っていた。まるで知らなかったみたいに)

藍子(あの言葉は本当だったの……? それとも……)

736: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:36:47.41 ID:iR3S4rVw0

翌朝

都(……)

都(う、うーん……)ゴロリ

都「はっ!」

都「……もう朝ですか。町全体が薄暗いからわからなかったです……」

都「うーん……あれ? 凛さんと藍子さんは?」

都「もう起きているのでしょうか……二人とも早起きだなあ」

ガラッ

737: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:37:17.52 ID:iR3S4rVw0

都(!)

都(凛さんと藍子さんだ。いつの間に起きていたんだ)

都(ポケモンバトルをしてる……?)

藍子「ドラムアタックです!」

ゴリランダー「ゴリ!」ドドドン

グワッ

凛「ゲッコウガ、躱して!」

ゲッコウガ「ゲコ」ヒョイッヒョイッ

738: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:37:54.74 ID:iR3S4rVw0

凛「左からいくよ! みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」バシュゥ

藍子「わ、わ……!」

藍子「ええっと――」

ズバッ

ゴリランダー「ゴリ……」ガクッ

藍子「ゴ、ゴリランダー!?」

739: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:38:36.78 ID:iR3S4rVw0

凛「遅い。トレーナーが焦ってちゃ元も子もないよ、藍子」

藍子「す、すみません……」

藍子「防御しようかとも思ったんですけど、ギリギリで躱せるかな……とも思っちゃって、迷ってしまいました」

凛「……進化して図体が大きくなったから、バチンキーの時みたいに素早く攻撃を躱すのは厳しくなる局面もあるかもしれない。少なくとも今の攻撃は、回避はムリだっただろうね」

凛「たった一手のミスが勝敗を分けるかもしれない……だからこそトレーナーは常に冷静でいないとね」

藍子「は、はい」

740: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:39:28.90 ID:iR3S4rVw0

凛「でもさっきのドラムアタックはすごくよかった。地面から攻撃する技だから相手も読みにくいだろうし、使い勝手は抜群だと思うな」

凛「……どうする? そろそろ休憩する?」

藍子「いえ、まだやります!」

凛「そうは言っても……朝から一度も休んでないじゃない。本当に大丈夫なの?」

藍子「はい。私、まだまだ頑張れます!」

藍子「昨日、かな子ちゃんに会って、なんだかただ者じゃないオーラを感じたんです。こう、なんというか……うまく説明できないですけど」

藍子「このままじゃ勝てない気がしていて……だからもっと努力しないといけないなって、一晩中考えていたんです」

741: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:40:22.87 ID:iR3S4rVw0

藍子「だから……もう少しだけお願いします」

凛「……わかった。じゃあ続けようか」

都(……)

都(二人とも頑張ってるなあ……何だかすごくキラキラして見えます)

都(ジムチャレンジはすごく華のあるイベントだけど、その裏ではみんなこうして努力しているんだなあ……)

都(……ふふ、お二人の新しい一面が見れてよかったです! 早起きは三文の徳、ですね!)

都(……あれ? でもさっき、凛さんが「朝から一度も休んでない」って言ってたような……)

都(……)

都「も、もうお昼だぁ!?」

742: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:41:09.61 ID:iR3S4rVw0


アラベスクジム


凛「それじゃ藍子、頑張ってきてね」

藍子「はい! 行ってきます!」

都「今日は私も応援させてもらいます! 的確なアドバイスを届けられるように頑張りますよ!」

凛「まあ、チャレンジャーへの助言は禁止だけどね」

都「な、なんですって……!? 私の推理力を披露するチャンスが……」

743: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:41:49.63 ID:iR3S4rVw0

凛「……言葉は届けられないけど、きっと気持ちは伝えられるよ」

都「り、凛さん……! カッコいいです……!」

都「わかりました。私も全力でエールを送りますね! もし口を開きそうになったら……その時は止めてください」

凛「……善処するよ」

藍子「あ、あはは……それじゃ行ってきます!」

ガラッ

744: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:42:48.22 ID:iR3S4rVw0

志保「いらっしゃ……じゃなかった。こんにちは、チャレンジャー!」

志保「私はこのジムの案内役、志保です。よろしくお願いします!」

藍子「よ、よろしくお願いします」

藍子「あの、案内役って……? それにこの部屋、何もないですけど……」

志保「ふふ、驚いたでしょ? このジムのシステムはちょっと変わっていて……今から説明しますね♪」

志保「まず、チャレンジャー……藍子ちゃんには、左の扉の先に入ってもらいます。そこで今から挙げる3つのアイテムを集めてきてください」

志保「一つはブリーの実。もう一つは赤いミント。 最後にあまいミツです。制限時間は特にないので、頑張って見つけてきて下さい!」

745: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:43:33.90 ID:iR3S4rVw0

志保「3つ集めたらこの部屋に戻ってきてください。これで課題はクリアです!」

藍子「これで……? あの、バトルとかはしないんですか?」

志保「はい。このジムではジムトレーナーとのバトルはありません! 私もトレーナーではないので」

藍子(バトルがない……ガラルにそんなジムがあったなんて、意外だなあ)

志保「ちょっと変わってるジムだけど……以上がチャレンジの説明になります」

藍子「な、なるほど……!」

志保「ではさっそく、アイテム集めに向かってください! 頑張ってね♪」

746: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:44:24.41 ID:iR3S4rVw0

藍子「は、はい!」

藍子「あの扉の向こう……何があるんだろう」

ガラッ

藍子「!?」


藍子「ここは……ルミナスメイズの森!?」

747: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:45:03.30 ID:iR3S4rVw0

藍子「す、すごい……森をジムの仕掛けに使うなんて……!」

藍子「えっと、まず最初に……ブリーの実、ですね」

藍子「木の実がなってる木は……あった、あそこですね」

ザッザッ

藍子(相変わらず暗い……けど)

ポウッ

藍子(キノコを触れば、少しは明るく……)

748: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:45:47.73 ID:iR3S4rVw0

??「……」ノソノソ

ネマシュ「ネマーーーシュッ!!」

藍子「うわっ!?」

ネマシュ はっこうポケモン くさ・フェアリータイプ
薄暗く湿った場所を好むポケモン
夜になるとキノコのカサに詰まった胞子が発光する

ネマシュ「ネマシュ! ネマシュ!」

藍子「や、野生のポケモン……!」

藍子「そうか……ジムトレーナーとのバトルがないってこういうことだったんですね、志保さん!」

749: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:46:35.99 ID:iR3S4rVw0

……………………………


ユッサユッサ

ボトッ

藍子「よし……これがブリーの実ですね――」

ヒョイッ

藍子「えっ」

??「……」タッタッタッ

クルッ

ホシガリス「ホスィ?」

ホシガリス ほおばりポケモン ノーマルタイプ
ガラルのいたるところに生息する
常に左右のほっぺに木の実を蓄えていないと不安らしい

藍子「ああっ、ちょっと……木の実を返してください~!」

750: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:47:30.86 ID:iR3S4rVw0

………………………………


藍子「あった……これがミントですね……!」

藍子「それにしても、こんな草むらの真ん中にあったなんて」

藍子「……あれ? 草むらの真ん中……?」

ザザッ

藍子「!」

バッ

ウツドン「ウツドーン!」

ウツドン ハエとりポケモン くさ・どくタイプ
葉っぱの部分はカッターになって相手を切り裂く
口からはなんでも溶かす液体を吐く

藍子「や、やっぱり!?」

751: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:48:14.57 ID:iR3S4rVw0

……………………………………


藍子「最後はあまいミツ……ですけど」

ドドン

ビークイン「ビーク」

ビークイン はちのすポケモン むし・ひこうタイプ
胴体が子供たちの巣穴になっている
ミツハニーの集めたミツで子供たちを育て、時には自在に操る

藍子「うう、やっぱり倒さないと……ですよね……」

752: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:50:33.22 ID:iR3S4rVw0

……………………………


ガラッ

志保「あら、お帰りなさい! それじゃさっそくアイテムを確認しますね」

志保「……うん、バッチリ! これでジムの課題はクリアですね♪」

藍子「は、はい! 想像以上に大変でした……」

志保「ふふっ。ここは森の中にあるジムだから、なかなかジムのスタッフが集まらなくて。だからこういう仕掛けになっているんです」

志保「……それは置いておいて、では藍子ちゃん。右の扉に入ったらその先にスタジアムがありますよ! 頑張って下さいね!」

志保「……そうそう。かな子ちゃんはフェアリータイプの使い手です。くれぐれもドラゴンポケモンは使わないようにね♪」

753: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:51:19.35 ID:iR3S4rVw0

ガラガラ

ウィーン

藍子(……)ザッザッザッザッ

かな子「こんにちは、チャレンジャーさん♪」

かな子「……あら、昨日町で会ったトレーナーさん! たしか……藍子ちゃん、だっけ?」

藍子「はい! 昨日はお菓子、ありがとうございました。すごく美味しかったです!」

かな子「うふふ、それはよかった♪ 美味しいお菓子を食べたときの、皆の幸せな笑顔が昔から大好きなんです」

754: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:52:21.92 ID:iR3S4rVw0

藍子「……そういえば、かな子さん」

かな子「そんなにかしこまらないでいいよ♪」

藍子「あっ、じゃあかな子ちゃん。私、昨日からずっと気になっていたことがあったんです」

藍子「昨日、喧嘩の仲裁をしてくれた時……もしかして、私たちが男の人と話していた内容、聞いていました?」

かな子「……」

かな子「うん。聞いていた、というよりは聞こえてきたって感じかな。それで気になって、家を訪ねてみたの」

755: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:53:29.16 ID:iR3S4rVw0

藍子「この状況でジムチャレンジを続けるのは場違いかもしれない……私はたしかにそう言いました。あれには色んな意味があったんですけど……」

藍子「でもかな子ちゃんは、そう思うならジムに来てみてほしいって言われましたよね」

かな子「うん、たしかにそう言ったよ」

かな子「もちろんその理由はちゃんと話すね。……今からのバトルの最中に」チャキッ

藍子「!」チャキッ

かな子「使用ポケモンは3匹。そのうちどちらか2匹が戦闘不能になれば終了です。3匹全てではないので、気をつけてくださいね」

かな子「みんな大好きなあ甘いお菓子のように、あなたも私と私のポケモン達の虜になってもらいますね♪」


ジムリーダーのかな子が勝負をしかけてきた!

756: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:54:05.95 ID:iR3S4rVw0

藍子 手持ちポケモン

ゴリランダー ♂(しんりょく) Lv35
むじゃきな性格 血の気が多い
ドラムアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル ♀(スイートベール) Lv33
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ ♀(はりきり) Lv33
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ ♂(すりぬけ) Lv31
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/みがわり

757: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:54:36.40 ID:iR3S4rVw0

かな子「まずはこの子で相手するね♪ ピクシー!」ポンッ

藍子「サニーゴ、お願い!」ポンッ

ピクシー「ピクシー♪」

サニーゴ「サニ!」

ピクシー ようせいポケモン フェアリータイプ
1キロ先で落ちた針の音も聞き分ける優れた耳を持つ
用心深いので滅多に人前に現われない

758: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:55:08.92 ID:iR3S4rVw0

ワーワー

都「おおっ、ここがスタジアムですか……初めて来ましたが、たくさんの人がいますね!」

凛「そうだね。……」

凛(それでも少し空席が目立つ感じはする。森の中のスタジアムだから、っていうのもあるんだろうけど……)

凛(やっぱり、ポケモン暴走事件が影響しているのかもしれない――)

凛(……って、今は考えなくていいか。とにかく藍子を応援しよう)

759: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:55:43.91 ID:iR3S4rVw0


一方その頃 そらとぶタクシー発着所


バサッバサッバサッ

男性「……ん? 誰か来たみたいだな」

男性「こんな辺鄙な場所にわざわざそらとぶタクシーで来るなんて……いったい誰だ?」

男性「よーこそ、アラベスクタウンへ――」

ガラッ

男性「……!?」

男性「アンタ……まさか!?」

760: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:56:39.42 ID:iR3S4rVw0

ワーワー

??「……」スタスタ

??「……」スッ

女性「……?」

ジーッ

女性「!? あなた……もしかして、チャンピ――」

761: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:57:25.02 ID:iR3S4rVw0

??(しーっ)

女性「……!?」モゴッ

??(……知っていても、今はしーっ、ですよ。目の前のバトルに集中していて下さい)

762: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:58:05.92 ID:iR3S4rVw0

藍子(相手はピクシー……どんな攻撃をしてくるんだろう)

藍子(まずは……攻める!)

藍子「サニーゴ、アクアブレイク!」

サニーゴ「サニ!」バシュゥ

ギュン

かな子「コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」コァァァ

763: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:58:36.73 ID:iR3S4rVw0

藍子「!」

ドンッ

サニーゴ「サニ……!」グググ

藍子「サ、サニーゴが止められている……!?」

バチィ

サニーゴ「サニ!」スタッ

ピクシー「ピクシー」

764: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 20:59:04.82 ID:iR3S4rVw0

都「コスモパワー……自分の守りを固める技ですか」

都「かな子さんは手堅く攻めてくるタイプのトレーナーなんでしょうかね?」

凛「……」

凛「なんか、変だ」

都「ん? 変とは?」

765: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:00:40.38 ID:iR3S4rVw0

凛「ピクシーはサニーゴよりも素早いはず……なのにサニーゴの方が先に行動した。相手はサニーゴが動くのを待っていたんだ」

都「ほほう。例えるなら、犯人を逮捕できる状況だったのにあえて逮捕しなかった……みたいなことでしょうか」

凛「……まあそう、なのかな」

都「なるほど。あえて泳がせた……つまり、かな子さんはまず藍子さんやサニーゴに関する情報を集めたいようですね」

藍子「……まだまだ! もう一度アクアブレイクです!」

サニーゴ「サニ!」

かな子「わあ、すごいパワー……でも」

766: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:01:12.33 ID:iR3S4rVw0

かな子「狙いが外れているよ!」

サニーゴ「サニ!?」スカッ

藍子「外れた……そうか、『はりきり』……!」

かな子「空回りしちゃったみたいだね。ピクシー、もう一度コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」コァァァ

都「ま、また能力を上げてきました!」

藍子「っ……どんどん防御力が増していく……」

767: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:02:04.36 ID:iR3S4rVw0

かな子「……なるほど。そのサニーゴ」

かな子「スピードが遅い分、相手の攻撃を受けてから反撃するっていうバトルスタイルなんだろうね」

藍子「!?」

かな子「まず相手の攻撃を受けて、それから攻撃する……そういうカウンターが得意なんだろうけど、だとしたら私のピクシーは苦手だろうな」

かな子「最初から攻撃するつもりのない相手には」

768: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:02:39.90 ID:iR3S4rVw0

藍子「っ……! 全部見透かされている……!?」

かな子「もちろんお見通しですよ♪ これだけコスモパワーで様子を見ているのに、ひたすらに攻撃してくるんだから」

かな子「……藍子ちゃんの戦い方、今のでだいたいわかりました。それじゃあ私はこうさせてもらうね!」

かな子「ピクシー、コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」

藍子「ううっ……このままだと埒が明かない……!」

藍子(どうする……どうしたらいいの!?)

769: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:04:05.74 ID:iR3S4rVw0

凛(……まずいな。藍子はああいう戦法のトレーナーと戦うのは初めてだ)

凛(対策をしようにも、私のポケモンもアタッカーばかりだったし……ずっと特訓しているうちに、藍子にも攻めて攻めて攻めまくるってスタンスが根付きすぎちゃったのかもしれない)

凛(……もっと色んな戦法への対処法を教えていれば……)

藍子(……)

藍子「アクアブレイクがだめなら……サニーゴ、げんしのちから!」

サニーゴ「サニ」ゴゴゴゴ

サニーゴ「サニッ!」ビュン

770: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/15(土) 21:04:47.63 ID:iR3S4rVw0

かな子「ピクシー、バトンタッチ!」

ピクシー「ピクシー!」シュゥゥ

スカッ

ドゴッ

藍子「な……」

凛「バトンタッチ……!?」

凛「……まさか、さっきのコスモパワーはただの様子見じゃなかった……!?」

かな子「……これで準備は整ったね」

かな子「藍子ちゃん、ここからが本番だよ!」

776: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:06:43.77 ID:ziI4odqi0

凛(しまった……バトンタッチは能力変化を交代先のポケモンに受け継ぐ技……)

凛(コスモパワーを引き継がれたら、次に出てくるポケモンに生半可なダメージは通用しない……!)

かな子「いくよ、ペロリーム!」ポン

ペロリーム「ペロ!」

ペロリーム ホイップポケモン フェアリータイプ
人の1億倍以上の嗅覚を持つ
その能力を活かしてパティシエやカフェの手伝いをしたりもする

藍子「っ……苦しい状況ですけど……」

藍子「私は攻めます! サニーゴ!」

777: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:07:12.21 ID:ziI4odqi0

かな子「ペロリーム、マジカルシャイン!」

ペロリーム「ペロ!」ピカーッ

サニーゴ「!!」

ドゴオッ

藍子「!! サニーゴっ!」

サニーゴ「サニ……」

藍子「頑張って、サニーゴ! アクアブレイク!」

サニーゴ「サ……サニ!」

778: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:07:42.49 ID:ziI4odqi0

ドンッ

ペロリーム「……」ズザァ

ペロリーム「ペロッ」

藍子「……全然効いていない……」

藍子(ダメだ、このままじゃ何もできない……!)

藍子(どうする……どうする……!?)

藍子(とにかくこのまま無闇に攻撃しちゃダメだ。まずは……)

779: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:08:33.14 ID:ziI4odqi0

藍子「サニーゴ、戻って!」シュゥゥ

藍子「お願い、ゴリランダー!」ポン

ゴリランダー「ゴリ!」

かな子「ゴリランダー……いいポケモンを持ってるね♪」

かな子「さあ、どんなバトルをしてくるか見せて!」

藍子「ゴリランダー、いやなおと!」

ゴリランダー「ゴリ!」ォォォン

780: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:08:59.50 ID:ziI4odqi0

ペロリーム「ペロッ……」

藍子「よし、怯んだ……その隙に!」

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

グワッ

ペロリーム「!!」

ドドドドド

781: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:09:42.11 ID:ziI4odqi0

かな子「っ……」

藍子「これでどう――」

ボッ

藍子「!?」

藍子「根っこが……燃えてる!?」

かな子「かえんほうしゃ!」

ペロリーム「ペロ!」

ボォォォォ

782: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:10:31.72 ID:ziI4odqi0

ゴリランダー「ゴリ……!」

藍子「そんな……ほのお技があるなんて……」

かな子「ふふっ。どうやら上げた防御力を地道に下げていく戦法を取ったみたいだけど……」

かな子「このままだとゴリランダーが倒れるか、ペロリームが倒されるか……どっちが先になるかな?」

藍子「くっ……」

都「わわわ……藍子さん、大ピンチですね……!」

凛「……そうだね」

783: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:12:08.77 ID:ziI4odqi0

凛(かな子の言う通りだ。この調子じゃ、藍子はまともにダメージを与えられない……)

凛(それにペロリームを倒せたところで、このままじゃまたピクシーに同じ手を使われる)

藍子(だからいやなおとが使えるゴリランダーは温存したい。けどこのままじゃペロリームの攻撃に耐えられない……)

藍子(ゴリランダーが倒されてしまったら、もう成す術がない……でもゴリランダーがいないとペロリームは倒せない……)

藍子(……どうすればいいの……?)

784: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:12:49.04 ID:ziI4odqi0

ボッ

藍子「!!」

ゴリランダー「ゴリッ……」ズザァ

藍子「ゴリランダー!」

藍子「……もう体力も限界だ。これ以上は……」

藍子(……どうしよう……どうしよう……)

かな子「……」

785: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:13:20.72 ID:ziI4odqi0

かな子「藍子ちゃん」

藍子「は、はいっ」

かな子「ごめんね。私がジムに来てみてほしいって言った意味、教えるって言っていたけど」

かな子「やっぱり、今の藍子ちゃんには教えられないよ」

藍子「……!」

786: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:14:12.32 ID:ziI4odqi0

かな子「もう終わりにするね。かえんほうしゃ!」

ペロリーム「ペロ!」

ボォォォォ

ゴリランダー「ゴリッ……!!」

藍子「……」

ゴリランダー「ゴリ……」ドサッ

ドローンロトム『ゴリランダー戦闘不能! ゴリランダー戦闘不能!』

都「ああっ、ゴリランダーが……!」

凛「藍子……」

787: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:14:55.07 ID:ziI4odqi0

『おいおいどうした、戦意喪失か?』

『まあ仕方ないですよ。あの戦法は知識がなきゃ攻略するのは難しいし』

『かな子ちゃんも意地悪だなあ』

??「……」

藍子「……戻って、ゴリランダー」

藍子「っ……」キッ

藍子「まだ……まだ諦めません! サニーゴ!」ポン

サニーゴ「サニ!」

788: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:15:35.70 ID:ziI4odqi0

藍子「アクアブレ――」

かな子「エナジーボール!」

ペロリーム「ペロ!」ボッ

サニーゴ「……!」

ドゴオッ

藍子「えっ……」

サニーゴ「サニ……」ドサッ

789: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:16:47.24 ID:ziI4odqi0

ドローンロトム『サニーゴ戦闘不能! サニーゴ戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、ジムリーダー・かな子!』

ワァァァァァ

??「……」スッ

スタスタ

都「ああっ……そんなっ……」

凛「……!」

790: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:17:49.41 ID:ziI4odqi0

藍子「……」

藍子「……負けた……」

かな子「ペロリーム、お疲れ様」

かな子「ねえ、藍子ちゃん。今のままじゃ私には勝てないよ。だって」

かな子「藍子ちゃんは大事なことを忘れているから」

藍子「大事な……こと……?」

かな子「ごめんね、勝手に期待させちゃって。でもどうしても教えるわけにはいかないんだ。今の藍子ちゃんには、きっと教えても意味がないから」

791: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:18:32.31 ID:ziI4odqi0

藍子「……!」

かな子「もう一度考えてみて。藍子ちゃんがどうしてポケモンと一緒に過ごしているのかを。なんだか今の藍子ちゃん、らしくないよ」

藍子「……らしくないなんて、昨日会ったばかりのかな子ちゃんに何がわかるんですか?」

かな子「……うん、そっか。そうだよね」

藍子「そうだよねって……」

かな子「うん、この話はもう終わり。またいつでもチャレンジしに来て下さいね♪」

792: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:19:09.68 ID:ziI4odqi0



藍子「……」スタスタ

都「あ、あの、藍子さん……」

藍子「あ…都ちゃん。凛さん」

都「あの、あまり落ち込まないで下さいね……? その、やっぱり時には負けることもあるでしょうし……」

都「次にリベンジできたらいいんですよ! ね、凛さん!」

793: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:19:42.15 ID:ziI4odqi0

凛「……うん。そう、だね」

藍子「……凛さん」

凛「……」

都「あ、次は凛さんのチャレンジでしたね! 時間、大丈夫ですか!?」

凛「あ……そうだったね」

凛「じゃあ、行ってくるよ」

都「はい! 私も引き続き藍子さんと一緒に応援しますね!」

藍子「……」

794: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:20:12.15 ID:ziI4odqi0

藍子(その後、凛さんはすぐにスタジアムまでたどり着いて……)

藍子(気づいたら、かな子さんに勝っていました)

藍子(スタジアムは大盛り上がりで、都ちゃんもずっとテンションが高かったけど)

藍子(私は凛さんのバトルを、何も覚えていませんでした)

795: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:20:53.81 ID:ziI4odqi0

かな子「――――」

凛「――――」

藍子(いつも凛さんがバトルしている時は瞬きもせずにその様子を見守っていたんですけど……)

藍子(かな子ちゃんに言われた言葉が頭から離れなくて、バトルの内容はいっさい頭に入りませんでした)

藍子(……凛さんのチャレンジ中、私はずっと考えていました)

藍子(凛さん、なんだか元気がなかった。それってもしかして、私のバトルを見て失望したからなのかもしれない、と。期待に応えられなかったのかもしれない、と)


藍子(私が、もっとしっかりしていれば……)

796: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:21:42.70 ID:ziI4odqi0

ペロリーム「ペロ……」バタンキュー

ワァァァァァァ

凛(かな子には勝った。難なく勝つことができた)

凛(……だけど、素直に勝利を喜ぶことはできなかった)

凛(チャレンジの間もずっと、藍子のことが頭から離れなかった)

797: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:22:18.28 ID:ziI4odqi0

凛(そもそも藍子は夏美さんとのバトル以来、負けを経験していなかった。失敗や敗北を知らないんだ)

凛(私は彼女を、知らない間に甘やかしていたのかもしれない。もっと厳しく接すればよかったのだろうか。いや、でもそうしたら――)

凛(そんな考えを巡らせるうちに、こう思い始めてしまった。こんな私が藍子のコーチになってよかったのだろうか。私はいったい、何をしてあげられたのだろうか)


凛(私が、もっとしっかりしていれば……)

798: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:23:00.15 ID:ziI4odqi0


その夜

都「すぴー……すぴー……」zzz

凛「……」スヤァ

藍子「……」

藍子(結局、あれから凛さんとは一言も交わさなかったな……)

藍子(なんで話せかったのか……理由はだいたいわかる)

藍子(言ってしまったら、今の関係が壊れてしまうかもしれない。今まで保たれていた関係が……崩れてしまうのが怖いから)

799: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/21(金) 23:23:27.80 ID:ziI4odqi0

都「すぴー……すぴー……」スヤァ

藍子(……本当に都ちゃんがいてくれてよかった。都ちゃんがいなかったら、もっと気まずくなっていたかも)

藍子(……)

藍子(……やっぱり眠れないな)

ムクッ

804: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:18:23.03 ID:aBbC9o4U0


ルミナスメイズの森


藍子(なんとなく森の入り口まで歩いてきちゃったけど……)

藍子(……うう、暗いなあ。でもキノコを頼りに進めば迷うことはない……はず)

ザッザッ

ボクレー「ボクー」フヨフヨ

バケッチャ「バケ?」ヒョコッ

藍子「……あ、あそこにキノコがある」

藍子「ちょっと座ってみよう」ポスッ

805: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:18:54.79 ID:aBbC9o4U0

藍子「……」

藍子「この森……好きだなあ。キノコの光が幻想的で落ち着くし、なんだかずっとここにいたくなっちゃう」

藍子「それにあの浮かんでいる光って……昼間に戦ったネマシュだよね」

ネマシュ「ネマ?」フヨフヨ

藍子「……キレイ……」

藍子「……そうだ」

パシャリ

806: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:19:41.91 ID:aBbC9o4U0

藍子「……そういえば写真を撮ったのも久しぶりな気がするなあ」

藍子「ふふっ。明日、都ちゃんや凛さんに見せてあげよっ」

藍子「……」

藍子「凛さん……そういえばもともとガラルにはポケモンの調査をしに来ていたんだっけ」

藍子「それなのに私の目的にばかり付き合わせて……ジムバトルも負けちゃって。私、本当は凛さんに迷惑ばかりかけているんじゃないかな」

藍子「……私は……」

807: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:20:19.29 ID:aBbC9o4U0

藍子「……ん?」クンクン

藍子「いい匂い。これは……カレー?」

藍子「……誰かがキャンプしてる?」

ザッザッ

パチパチパチ……

藍子(焚き火の音も聞こえてきた。キャンプはすぐそこだ……)

ザッザッザッザッ

808: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:21:04.65 ID:aBbC9o4U0

藍子「……あっ」

??「……んんっ?」

??「もしかして、トレーナー……?」

藍子「は、はい、そうです」

??「しかも女の子……? 女の子がこんな夜遅くに一人で出歩いてて大丈夫か? 危なくね?」

心「あ、はぁとも女の子だったわ。てへっ☆」

藍子「……? はぁと……?」

809: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:21:58.01 ID:aBbC9o4U0

心「そーだよ、はぁとはシュガシュガはぁとだぞ☆ 以後お見知り置きを☆」

心「おいそこ、心って表記やめろ☆ シュガシュガはぁとだっつってんだろ☆」

藍子「……?」

はぁと「あ、ごめんごめんこっちの話。で、こんな夜更けにどうしたのー?」

藍子「い、いえ……森を歩いていたら、カレーの匂いがしてきて、その匂いをたどっていたらここに着いたんです」

810: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:22:42.53 ID:aBbC9o4U0

はぁと「へー。まぁ今日は色々あってご飯遅くなっちゃったからなー」

はぁと「って匂いにつられてきたって……たまにそういうポケモンもいるけどさー。もしかしてお腹ペコペコ?」

藍子「い、いや――」

はぁと「なら一緒にカレー食べよ☆ ちょうど作りすぎたと思ってたんだよねー。ほらほら、遠慮せず味わえって☆」

藍子「あ、は、はい……」

811: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:23:29.87 ID:aBbC9o4U0

……………………………………


はぁと「ぷはー、満腹だわー。あー、ビール飲みてー」

はぁと「ってビール切らしてたんだった……まぁいっか、オレンジジュースで乾杯しようぜ☆」

藍子「は、はい」

カキーン

藍子「あの、ごちそうさまでした。すごくおいしかったです」

はぁと「んー? いいっていいってー! むしろ食べるの強制した側だし☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」

812: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:24:48.75 ID:aBbC9o4U0

藍子「そのピカチュウ、かわいいですね。リボンとスカートを着てるなんて」

はぁと「お、わかるー? はぁとのセンスが爆発してるっしょ☆ もっと褒めて褒めて☆」

はぁと「そーいえば藍子ちゃんだっけ、こんな時間まで一人で何してたの?」

藍子「いえ、今はアラベスクタウンで泊まっていたんですけど……眠れなくて 、森を散歩していたんです」

はぁと「あ、そうなんだー。てかそこに住んでるの? それともジムチャレンジ?」

藍子「ジムチャレンジです。今日もジムに挑んだんですけど、負けちゃって……」

はぁと「お、はぁとと同類じゃん☆ じゃあそこそこ強いトレーナーなんだ! うっし、じゃあ勝負しようぜ☆」ザッ

813: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:25:45.38 ID:aBbC9o4U0

藍子「え、ええっ?」

はぁと「ちょうど食後の運動したいと思ってたんだよねー。ねー、ピカチュウ☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」

藍子「い、いいですけど……」

はぁと「よっしゃ☆ じゃあ行ってこいピカチュウ! ぶちのめしてこーい☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」ダッ

藍子「えっと……」

814: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:26:18.61 ID:aBbC9o4U0

藍子「じゃあ……ドラメシヤ、お願い!」ポンッ

ドラメシヤ「ドラッ――」

ドラメシヤ「……!!」ビクッ

はぁと「ピカチュウ、エレキボールッ☆」

ピカチュウ「ピィッカ☆」ギュン

藍子「躱して!」

ドラメシヤ「ドラ……」


『~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~』

815: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:26:51.88 ID:aBbC9o4U0

ドラメシヤ「!!」

ドンッ

藍子「!!」

ドラメシヤ「ドラッ……」

はぁと「よっし命中ー☆ ピカチュウやるぅー☆」

藍子「ドラメシヤ、相手の動きをよく見て!」

ドラメシヤ「ド……ドラ……」

816: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:27:20.32 ID:aBbC9o4U0

はぁと「可愛さ見せつけたれー! ドレインキッス!」

ピカチュウ「ピッカァ!」バッ

藍子(ピ、ピカチュウなのにドレインキッス……!?)

藍子「ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ……!」

はぁと「……」

はぁと「ちょい待ったピカチュウ! ストーーップ!!」

817: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:28:05.25 ID:aBbC9o4U0

ピカチュウ「ピカ?」キキーッ

藍子「……えっ?」

はぁと「いや待て待て。何があったそのドラメシヤ? めちゃくちゃ怯えてますけど?」

ドラメシヤ「ドラ……」ブルブル

藍子「……!」

藍子(まさか……ドラメシヤ、前のジムバトルがトラウマになっていて……!?)

818: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:28:33.99 ID:aBbC9o4U0

はぁと「どうやって育てたらそんなことになる? あれか? もしかして藍子ちゃんの教育方針スパルタか?」

はぁと「……はあ。これじゃ勝負になんねーわ。中止中止っ」

藍子「……」

藍子(……私、ドラメシヤに何てことを……)

はぁと「……藍子ちゃん、これどういうこと――」

はぁと「……!」

819: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:29:18.72 ID:aBbC9o4U0

藍子「……うっ」

藍子「うっ……ううっ……!」

はぁと「あ……ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。いやほんとごめん……」

はぁと「……藍子ちゃん、もしかしてはぁとの想像以上に壮絶な人生歩んできてるカンジ?」

藍子「……」グスン

はぁと「……ツライなら話さなくていいけど。はぁとおねーさんでよかったら話、聞いてやるぞ」

藍子「……はい……」

820: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:30:30.37 ID:aBbC9o4U0

……………………………………………………

藍子「私、内気な自分を変えたくて……今回のジムチャレンジに参加することにしたんです。でも最初は何となく自信がなくて……」

藍子「そんな時に、凛さんというトレーナーと出会ったんです。凛さん、すごくバトルが強くて。カッコいいなって思った私は、凛さんにコーチをしてほしいってお願いしたんです」

はぁと「ふんふん」

藍子「凛さんはもともとガラル地方のトレーナーではなくて、別の地方からポケモンの調査をしに来ていたんです。それでも私のお願いを受けてくれて、一緒に旅をすることになりました」

藍子「……凛さんはすごいトレーナーですし、私なんかのコーチをしてくれてることは奇跡みたいなことで。だから私、なんとか凛さんに見損なわれないように、今まで必死でジムチャレンジをクリアしてきました」

はぁと「ふんふん」

821: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:31:30.83 ID:aBbC9o4U0

藍子「……でも、今回のジムチャレンジは負けちゃったんです。それも手も足も出せずに」

藍子「負けて帰ってきた私を見て、凛さんはすごく落ち込んでいました。それで私……」

はぁと「ガッカリさせちゃったって思ったんだね」

藍子「……はい」

藍子「それで凛さんとは気まずくなってしまって、もう夕方からずっと話せていないんです。私に失望したかって聞くのも怖くて……」

藍子「……こんなことで悩んでいる自分も嫌いなんです。ポケモンを持って旅に出たら、もっと自分を変えられると思っていました」

藍子「でも結局、怖くて閉じこもって逃げてばかり……これじゃ昔の私と同じですよね」

822: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:32:26.95 ID:aBbC9o4U0

藍子「……ドラメシヤは、前のジム戦で色々あって……もしかしたら、トラウマを作っちゃったのかもしれません」

藍子「……いちばん近くにいる人とも向き合えない。手持ちのポケモンのケアもできない……。私、本当にダメダメですよね」

はぁと「……」

はぁと「はい、じゃあはぁとからしつもーん☆ どうしてポケモンを持って旅に出たら変われると思ったんですかー?」

藍子「……」

藍子「……どうして。考えたこともなかったです」

823: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:33:46.20 ID:aBbC9o4U0

藍子「ただぼんやりと、私もいつかポケモンと一緒に旅をすることになる、とは思っていたんですけど……」

藍子「……言われてみればそうですね。どうして変われると思ったんだろう……」

はぁと「まーでもさ、旅に出るのを決めた頃の藍子ちゃんは変われると思ってたわけでしょ?」

はぁと「じゃあ何かしら結びつけるものがあったんだよきっと。ポケモンを持つことと変われること――その二つを繋ぐ何かが。知らんけど☆」

藍子「……」

はぁと「……ま、それを今から考えようよ。そこが曖昧だとさ、そりゃ旅する目的も見失っちゃうよ」

824: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:34:23.43 ID:aBbC9o4U0

藍子「……はぁとさんは、どうしてピカチュウと一緒に旅をしているんですか?」

はぁと「はぁと? はぁとはね……楽しいから、かな!」

藍子「……!」

はぁと「バトルも楽しい。キャンプもカレーも楽しい。ピカチュウと一緒にオシャレするのも楽しい。そう、はぁとの人生は楽しいことだらけ!」

はぁと「どうだ、聞いてるだけで楽しそうだろ☆ まぁカレシとかいないけどな☆ ずっと独り身だわこのヤロウ☆」

藍子「……」

825: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:35:16.45 ID:aBbC9o4U0

はぁと「……でも、ピカチュウがいてくれたら辛いことなんかどっか行っちゃうの。負ける悔しさとか、野宿のツラさとか、旅してたら色々あるけどさ……それ以上に楽しいんだよね」

はぁと「……うん、それに尽きるわ。はぁとの人生はピカチュウのおかげでバラ色なの☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」

はぁと「藍子ちゃんにも、そんな瞬間はあったんじゃない? あ、今めちゃくちゃ楽しいわ☆ 人生バラ色☆ みたいな☆」

藍子「……」

藍子「わからないです。あったかもしれないですけど……今はちょっと思い出せない……」

826: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:35:59.81 ID:aBbC9o4U0

藍子「……はぁとさん。どうやったら、ポケモンと過ごす時間が楽しくなりますか?」

はぁと「え、それ聞いちゃう? んー、そうだなぁ……」

はぁと「……知らねーよ☆」

藍子「……!」

はぁと「まあでも、どうやったら、とか考えてるうちは楽しくないだろーな。だって楽しいって理屈じゃないんだもん。わかる? わかれ☆」

藍子「……」

827: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:36:49.12 ID:aBbC9o4U0

はぁと「うん、とりあえず笑顔な、藍子ちゃん。さっきからずっとしかめっ面じゃんか。笑顔は女の武器だぞ☆ なんてなっ☆」

はぁと「というわけで……今夜は寝かさないぞっ☆」

藍子「……えっ? それってどういう――」

はぁと「よーし! はぁと、藍子ちゃんを笑顔にするまで徹夜するぞー! マジだからなー☆」

828: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:37:16.44 ID:aBbC9o4U0



翌朝

凛「……うーん……」

ムクッ

凛「……もう朝か」

都「すぴー……すぴー……」zzz

凛「都は……まだ熟睡してるみたいだね」

凛「そうだ、そろそろ藍子と朝練の時間だな」

凛「……」

829: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:37:46.35 ID:aBbC9o4U0

凛「藍子は……私をどう思っているのかな」

凛「昨日、何も言えなかった私に……失望してるのかな」

凛「……ん?」チラッ

凛「藍子、もう起きてるんだ……」

ガチャッ

凛「ロビーにいなかったってことは、もう外で待ってるのかな……」

ザッザッ

830: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:38:27.13 ID:aBbC9o4U0

藍子「……」

凛「……藍子、おはよう」

藍子「あ……おはようございます、凛さん」

凛「……」

藍子「……」

凛「……あの」

藍子「凛さんっ」

凛・藍子「あっ……」

831: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:38:55.34 ID:aBbC9o4U0

凛「……」

藍子「……」

凛「……藍子。昨日は本当にごめん」ペコッ

藍子「……!」

藍子「……どうして、凛さんが謝るんですか?」

凛「昨日、藍子が負けたのは藍子が弱かったからじゃない。私がもっとしっかりコーチの役割を果たしていれば……」

832: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:39:47.02 ID:aBbC9o4U0

凛「……それだけじゃない。今までコーチとして付き添ってきた時間が、藍子にとって正しかったのかどうか……ずっと引きずっていたんだ」

藍子「……」

凛「私は藍子のコーチにふさわしくなかったんじゃないか……って考えたりもした。だからあの時、何も言葉をかけてあげられなかった」

凛「……藍子、きっとガッカリしただろうね。情けないコーチで、ごめんね」

藍子「ガッカリしたなんて、そんなっ……」

藍子「……」グッ

833: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:41:22.48 ID:aBbC9o4U0

藍子「……凛さんは悪くないです。悪いのは……ひどい負け方をした私なんです」

凛「……!」

藍子「私も、昨日は凛さんをガッカリさせてしまったと思いました。ひょっとしたら、凛さんに愛想を尽かされてしまうんじゃないか――そう思って、昨日はよく眠れませんでした」

藍子「……それに、私は凛さんにとってお荷物なんじゃないか、とも思いはじめました」

藍子「もともとはポケモンの調査に来られたのに、勝手にコーチにして……凛さんの足を引っ張っているんじゃないかって」

834: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:41:51.49 ID:aBbC9o4U0

凛「……」

藍子「私なんか、凛さんの弟子としてふさわしくないんじゃないか……。そう考えたら、凛さんにどう接すればいいかわからなくなって…… 」

藍子「……こんなに情けないトレーナーで、ごめんなさい!」ペコッ

凛「……」

凛「……そっか。そうだったんだね」

835: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:43:09.65 ID:aBbC9o4U0

藍子「……!」

凛「……でもさ。お荷物なんて、弟子としてふさわしくないなんて……一回負けたぐらいでそんなこと思うわけないじゃんっ……!」ポロッ

藍子「り、凛さん……」

グスッ

藍子「わ、私だって……凛さんのこと、悪く言うわけないじゃないですかっ……! だって、だって、ここまで来れたのは、凛さんのおかげなのに……!」

藍子「うわあああんっっ」ガバッ

凛(……そうか。私たち、ずっとすれ違っていたんだな)

藍子(凛さんは私を、私は凛さんを想いすぎて……)

836: ◆7P/ioTJZG. 2020/08/28(金) 23:43:51.02 ID:aBbC9o4U0

凛・藍子(……私ったら、何を心配してたんだろ。馬鹿みたい)


はぁと「……」

はぁと「……友情って、いいなー。マリナルも、向こうで元気してっかな……」

はぁと(あ、やべ……泣いたらメイク落ちちゃう)

グッ

はぁと「藍子ちゃん……次はちゃんとスウィーティーなバトルしような☆ はぁとは相手が女の子だろうが容赦しねぇぞ☆」

841: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 21:27:05.57 ID:c80CQWaw0

藍子「……あの、凛さん」

凛「ん?」

藍子「私、今までポケモンバトルを楽しいと思ったこと、あまりなかったんです。いつも勝たなきゃ、勝たなきゃって必死になっていて……きっと、負けることで凛さんに見放されるのが怖かったんだって、気づきました」

藍子「私、いつの間にかバトルを楽しむことを忘れていたのかもしれません。……でも今なら、思い出すことができるかもしれないです」

凛(……そっか。私にもそんな時期があったな)

藍子「バトルだけじゃない。私、ポケモンと過ごす時間が好きなんです。ポケモンと一緒に泣いたり、笑ったり、驚いたり――そんな時間が、とても楽しくて愛しいんです。だからこうして旅に出たんだと思います」

842: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 21:28:00.63 ID:c80CQWaw0

藍子「でも、そうやってポケモンと過ごす時間を脅かそうとしている人がガラル地方にいる。そんな事実をルミナスメイズの森で目の当たりにしました」

藍子「……だから私、もっと強くなりたい。強くなって、みんながポケモンと過ごす時間を守りたい」

藍子「かな子ちゃんには教えてもらえなかったけど、自分で答えを出せました。きっと今のジムチャレンジは、私達がガラルの危機に立ち向かうためにあるんだと」

凛「……」

藍子「……だから凛さん。私、今日からまた心機一転、頑張ります。これからもコーチ、よろしくお願いしますっ」ペコッ

凛「……わかった。その覚悟、ちゃんと受け止めたよ」

凛「私こそ、たくさん迷惑をかけるかもしれないけど……これからも、よろしくね」

843: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 21:29:27.34 ID:c80CQWaw0

藍子「はいっ!」

凛「……そうだ、藍子。これを藍子にあげようと思っていたんだ」

藍子「?」

凛「昨日、かな子に勝ったときにもらったんだけど……この道具、マホミルを進化させるために必要な道具らしいんだ」

藍子「! マホミルを……ですか!?」

凛「うん。私には必要ないから……マホミルに渡してあげて」

藍子は>>844を手にいれた!


安価
いちごアメざいく、ハートアメざいく、ベリーアメざいく、よつばアメざいく、おはなアメざいく、スターアメざいく、リボンアメざいくのいずれか

844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/09/04(金) 21:55:40.73 ID:QpG719b70
おはなアメざいく

845: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 22:20:39.17 ID:c80CQWaw0

マホミルにおはなアメざいくをもたせた

マホミル「マホーッ♪」クルクル

藍子「……でも、どうやって進化させるんでしょう?」

凛「うーん……ポケモンによっては道具を与えたらすぐに進化するポケモンもいるけど」

マホミル「~~~♪」クルクル

藍子「……変化なしですね。なにか条件があるのでしょうか」

凛「かもしれないね……」

マホミル「~~~♪」クルクル

846: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 22:21:27.47 ID:c80CQWaw0

藍子「マホミル、さっきからずっとアメざいくを持ってくるくる回っていますね……」

藍子「……ふふっ、なんだか私も楽しくなってきちゃった♪」

藍子「~~♪」クルクル

マホミル「!」

マホミル「マホーッ♪」クルクル

凛(……マホミルと藍子がひたすら回っている)

凛(二人ともよく目を回さないな……それにしても)

凛(……平和だなあ……)フッ

847: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 22:22:12.71 ID:c80CQWaw0

マホミル「マホーッ」クルクル

マホミル「マホッ」クルクルクルクル

藍子「……?」ピタッ

マホミル「」ギュルルルル

藍子「マ、マホミル……?」

カッ

848: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 22:23:16.96 ID:c80CQWaw0

凛・藍子「!!」

ゴゴゴゴゴゴ

マホイップ「マホ~」

藍子「……! 進化、した……!」

>>849
コンマ
0-10 ミルキィバニラ
11-21 ミルキィまっちゃ
22-32 ミルキィソルト
33-43 ミルキィレモン
44-54 ミルキィミント
55-65 ミルキィルビー
66-76 キャラメルミックス
77-87 ルビーミックス
88-99 トリプルミックス

849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/09/04(金) 23:32:07.00 ID:QpG719b70
てい

850: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:35:38.95 ID:c80CQWaw0

マホイップ クリームポケモン フェアリータイプ
ミルキィバニラ おはなデコレーション
クリームを作る細胞が進化のときに揺らぎを受け、フレーバーが変化するポケモン
ホイップされたクリームの味はマホイップの幸せとともに美味しくなっていく

藍子「わあ……!」

藍子「マホイップ……これからよろしくね!」

マホイップ「マホ~♪」

凛(……びっくりした。こんな形で進化するなんて)

凛(もしかして……回転することがカギだったの?)

藍子「……よし! マホミルも進化したことだし……」

藍子「凛さん、改めて朝練、よろしくお願いします!」

凛「……うん、わかった」

851: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:36:36.78 ID:c80CQWaw0

アラベスクジム

かな子「……」ザッザッ

かな子「ようこそ、ジムチャレンジへ♪」

藍子「……かな子ちゃん」

かな子「藍子ちゃん。正直、こんなに早く再挑戦しに来てくれるとは思わなかったよ」

かな子「そんなに知りたかったんだね。私の言っていた言葉の意味を」

藍子「……いえ、それはもう教えてもらわなくて結構です」

かな子「?」

852: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:37:21.78 ID:c80CQWaw0

藍子「かな子ちゃんが言っていた言葉の意味も、私に足りなかったものも。私なりに、答えを出すことができました」

藍子「……こんなに早く気づけたのは、きっと私のすぐ近くに、私を支えてくれる人がいたから……」

藍子「だから私は、もっと強くなります。かな子ちゃんも倒して、もっと強くなります!」グッ

かな子「……!」

かな子「……いい笑顔だね、藍子ちゃん」チャキッ

かな子「ルールは昨日と同じ。3匹のうち2匹が倒れたらおしまいだよ。それと、ダイマックスバンドも使って大丈夫だからね」

かな子「それじゃあ……いくよ!」


ジムリーダーのかな子が勝負をしかけてきた!

853: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:37:51.55 ID:c80CQWaw0

都「藍子さん、ファイトー! です!」

凛「……」

凛(都ったら、今日も聞き込みするぞって意気込んでたのに、藍子の応援を優先してくれるなんて)

凛(……大丈夫、藍子。絶対、勝てるよ。自分を信じて)

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

藍子「……いくよ、ゴリランダー!」ポンッ

かな子「ピクシー、よろしくお願いします♪」ポンッ

854: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:38:21.41 ID:c80CQWaw0

凛(まずはピクシー……ということは昨日と同じ戦法を使ってくるはず)

藍子(でも、対策はできている!)

藍子「ゴリランダー、ちょうはつ!」

ゴリランダー「ゴリィ~??」クイックイッ

ピクシー「ピ、ピクーッ!」キーッ

かな子「あらら……」

かな子「これじゃまともに戦えないね……ピクシー、戻って!」

855: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:38:53.77 ID:c80CQWaw0

かな子「ペロリーム!」ポンッ

ペロリーム「ペロッ」

ゴゴゴ……

ペロリーム「!」

藍子「ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

ペロリーム「ペロッ……!」バババ

856: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:39:21.52 ID:c80CQWaw0

藍子「よしっ……!」

藍子(……けどペロリームはほのお技を持っている。ゴリランダーじゃ危険だ)

かな子「ペロリーム、かえんほうしゃ!」

藍子「ゴリランダー、交代!」シュゥゥ

藍子「いくよ……マホイップ!」ポンッ

マホイップ「マホ~」

857: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:40:05.64 ID:c80CQWaw0

ペロリーム「ペロッ!」ボォォ

マホイップ「!」ボォォ

マホイップ「……マホ~」ケロッ

かな子「なるほど、かえんほうしゃを読んでの交代……いい立ち回りだね、藍子ちゃん!」

都「いい感じですね! 流れが藍子さんに傾いてます!」

凛「そうだね」

凛「でもここからが正念場……勝負のカギは、マホイップにかかってる」

都「……マホイップが、ですか?」

858: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:40:44.81 ID:c80CQWaw0

藍子「よし……マホイップ、いくよ!」

藍子「デコレーション!」

マホイップ「マホ~」サッ

シュシュシュシュシュ

かな子「……!」

都「デ、デコレーション……? どういう技なんですか?」

凛「相手の攻撃力を上げる技だよ」

都「あ、相手の!? そんなの犯人をわざと逃がしちゃうようなものじゃないですか!?」

859: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:41:26.55 ID:c80CQWaw0

凛「……そう、本来はね」

都「本来は……?」

マホイップ「マホ」シャキーン

かな子「……なるほど。自分自身をデコレーションするとは……」

藍子「そうです。……これで準備は整いました」

860: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:41:59.62 ID:c80CQWaw0

藍子「マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~」ピッカァ

かな子「! ペロリーム!」

ペロリーム「ペロ――」

ズバァン

かな子「……!」

ペロリーム「ペロッ……」ドサァ

861: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:42:28.34 ID:c80CQWaw0

『す、すげぇ……』

『なんちゅう威力や……!』

ワァァァァァ

かな子「……っ」

かな子「ペロリーム、サイコキネシス!」

ペロリーム「ペロッ!」ミョミョミョミョ

マホイップ「!」グワッ

862: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:42:57.19 ID:c80CQWaw0

かな子「マジカルシャインを叩き込んでください!」

ペロリーム「ペロッ!!」ピッカァ

ズバァン

マホイップ「マホッ……」ドサッ

かな子「まだまだ……エナジーボール!」

ペロリーム「ペロ!」ボッ

863: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:43:26.51 ID:c80CQWaw0

藍子「マホイップ!」

マホイップ「マホ」サッ

バシュゥ

都「ク、クリームで受け止めた!?」

凛「……いや、受け止めたっていうより、吸収した、って感じかな」

都「そ、そんなこともできるんですか!?」

藍子「トドメです! マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~」ピッカァ

ズバァン

864: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:43:56.97 ID:c80CQWaw0

ペロリーム「ペロッ……!」

ドサッ

ドローンロトム『ペロリーム戦闘不能! ペロリーム戦闘不能!』

藍子「……! す、すごい……」

藍子「すごいよ、マホイップっ!」

マホイップ「マホ~♪」

865: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:44:26.75 ID:c80CQWaw0

かな子「……お疲れ様、ペロリーム」シュゥゥ

かな子「ふふっ。藍子ちゃん、楽しそうだね♪ 私もどんどん楽しくなってきたよ!」

藍子「はい……私、バトルがすごく楽しいです!」

かな子「ふふっ……そう、その気持ち。藍子ちゃん、前の試合ではずうっと眉をしかめていたでしょ?」

藍子「……はい。今までの私は、勝つことに集中しすぎて、バトルを楽しむことを忘れていました」

かな子「でも思い出せたんだよね? よかった!」

866: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:45:11.53 ID:c80CQWaw0

かな子「ねえ、藍子ちゃん。李衣菜ちゃんから聞いたよ。ガラルに怪しい集団がいるって話」

藍子「!」

かな子「しかも、その集団が各地のジムを狙っているかもしれないってことを。その話を聞いて、ジムリーダーの中でもチャレンジを中止にすべきじゃないかって意見が出た」

かな子「でも私は、続行するべきだって考えたんだ。チャレンジを通して強くなったトレーナーが、いつかガラルを守るために立ち上がって、戦ってくれるって信じているから」

かな子「……もちろん、藍子ちゃんもね」

藍子「やっぱり……そうだったんですね」

867: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:47:28.55 ID:c80CQWaw0

かな子「藍子ちゃんは変わってくれた。私はもう心配していないよ。……だから」

かな子「今はただ、私を越えて、もっと強くなってみせて!」ポンッ

かな子のマホイップ「マホ!」

マホイップ ミルキィルビー ハートアメざいく
手から生みだすクリームは、マホイップが幸せなほど甘酸っぱく、コクが深まる

藍子「! かな子ちゃんもマホイップを……!」

かな子「いくよ、藍子ちゃん!」シュゥゥ

都「! これは……ダイマックスが来ます!」

868: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:48:01.38 ID:c80CQWaw0

グンッ

かな子「マホイップ、キョダイマックス!」

ブウンッ

カッ

ズドォォォォォン


かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ」

869: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:48:33.29 ID:c80CQWaw0

ワァァァァァ

都「キョダイマックス……昨日も見ましたがものすごい迫力ですね……!」

凛「そうだね。私はドリュウズがいたから何とかなったけど、藍子にはフェアリータイプに弱点を突ける技がない」

都「……ええ。藍子さんの真の実力が試される場面ですね」

藍子「……あれが、キョダイマックスしたマホイップ……」

藍子「……」

870: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:49:03.43 ID:c80CQWaw0

藍子「いや、このまま戦います! マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ!」ピッカァ

かな子のマホイップ「!」

バシィ

かな子「いい攻撃だね……でも!」

かな子「マホイップ、キョダイダンエン!」

かな子のマホイップ「マァァーーホ!」

グワッ

871: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:49:36.48 ID:c80CQWaw0

かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ!!」

ギュン

藍子(!? あれは……クリームの弾丸!?)

ドドドドドドドドドド

藍子「っ……マホイップ!」

マホイップ「マホ……」グラッ

藍子「マホイップ、大丈夫!?」

藍子「これは……ただダメージを受けただけじゃない……!」

872: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:50:15.96 ID:c80CQWaw0

かな子「そう。いくら甘くて美味しい食べ物でも、食べすぎたら頭が痛くなっちゃうよね? 藍子ちゃんのマホイップは今そういう状態、かな」

かな子「キョダイダンエンは高カロリーのクリームで相手を行動不能にする技だよ。そして同時に……」

ズズズ……

藍子(飛び散ったクリームが……マホイップの所に還っていく……?)

シュゥゥゥ

パァァ

藍子(……!)

かな子「エネルギーを還元して、体力を回復させる技でもあるんだ♪」

873: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:50:49.99 ID:c80CQWaw0

藍子(そんな……能力を上げたマホイップの攻撃が通じなかった……!)

マホイップ「マホ……」フラフラ

藍子「……っ」

藍子「マホイップ、交代!」シュゥゥ

藍子(あの技に対抗するには、どうしたらいい……? 身体がクリームでできたマホイップすらも耐えられないなら……)

藍子(……でもダイマックスは温存したい。ならどうすれば――)

874: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:51:33.03 ID:c80CQWaw0

かな子「藍子ちゃん、また顔が硬くなってるよ?」

藍子「……はっ」

かな子「ふふっ。……藍子ちゃんにはもうわかるはずだよ。どうしたら、キョダイマックスしたマホイップともっと楽しいバトルができるのか」

藍子「……!」

藍子「そう……ですね」

藍子(そうだ……ここで出し惜しみしているようじゃ、この先には進めない)

藍子(私は……かな子ちゃんを倒すんだ!)

875: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:52:02.72 ID:c80CQWaw0

藍子「ゴリランダー!」ポンッ

ゴリランダー「ゴリ!」

藍子「ゴリランダー……力を貸して!」シュゥゥ

グンッ

藍子「ダイ……マックス!!」

カッ

ズドォォォォォン

876: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:52:37.16 ID:c80CQWaw0

藍子「……!?」

藍子「……ゴ、ゴリランダー……なの……!?」


ゴリランダー「ゴォォォォォォォォン!!」


ドワァァァァァァ

都「あ、あれは……凛さん、もしかしてあの姿は……!?」

凛「……!」

凛「まさか、キョダイマックス……!?」

877: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:53:03.74 ID:c80CQWaw0

かな子「……やっぱり」

藍子「……!」

藍子(お、大きい……大きすぎて、ここからじゃドラムしか見えないけど)

ゴリランダー「……」キッ

藍子(……)コクッ

藍子(技の名前はわからないけど……やるしかない)

藍子(ゴリランダーなら……きっと大丈夫!)

878: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:53:34.20 ID:c80CQWaw0

藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドコドンッ

ゴゴゴゴゴゴ

都「うわっ!? ス、スタジアムが揺れてますっ! じ、地震!?」

凛「……落ち着いて、都。これは……」

凛「ドラムアタックを繰り出したときの地響きによく似ている。ということは……」

グワッ

879: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:54:05.87 ID:c80CQWaw0

かな子のマホイップ「!?」

ズドォォォォン

藍子「……! 木の根が、マホイップを貫いた……」

藍子(これがゴリランダーの……キョダイマックス技……!)

かな子「……マホイップ!」

かな子のマホイップ「マホォォォォ」

グググ……

バチィッ!!

880: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:54:37.50 ID:c80CQWaw0

かな子「……なかなか効いたよ、今の技」

かな子「でもね、マホイップの身体は衝撃を受けるほど固くなっていくの! もう次は通用しないよ!」

かな子「反撃だよ、マホイップ! キョダイダンエン!」

かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ!!」

ギュン

881: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:55:04.27 ID:c80CQWaw0

藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドンドコドンッ

グワッ

藍子「攻撃を防いで!」

かな子「!!」

ズドォォォン

882: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:55:33.82 ID:c80CQWaw0

かな子「キョダイダンエンが防がれた……!」

かな子「木の根をダイウォールの要領で使われるなんて……」

ググッ

藍子「このまま攻撃するよ、ゴリランダー!」

藍子「これで……終わりです!!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドコドンッ

883: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:56:03.83 ID:c80CQWaw0

かな子「……マホイップっ!」

かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ」

ズドンッ ズドンッ ズドンッ

かな子のマホイップ「マァホ……ッ」ズザァ

かな子「うっ……! 踏ん張って、マホイップ!」

かな子のマホイップ「……!!」

ズドンッ

884: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:56:46.25 ID:c80CQWaw0

藍子「……!!」


かな子のマホイップ「マァホォォォォォォ……!!」


ズドォォォォォン


ガクッ

かな子のマホイップ「マホ……」

ドローンロトム『マホイップ戦闘不能! マホイップ戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子!!』

ワァァァァァァァ

885: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:57:18.50 ID:c80CQWaw0

藍子「……!」

藍子「やった……勝てた……勝てたよ、ゴリランダー!」

バシュゥッ

ゴリランダー「ゴリ」

かな子「……マホイップ、ゆっくり休んでね」

かな子「いい勝負だったよ、藍子ちゃん!」

886: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:57:55.47 ID:c80CQWaw0

藍子「かな子ちゃん……ありがとうございました」ペコリ

藍子「かな子ちゃんのおかげで……ジムチャレンジを続けようと思えました」

藍子「そして、かな子ちゃんに負けたからこそ……自分に足りなかったものを自覚することができました」

かな子「ううん、そんなに気にしないで。きっと藍子ちゃんなら、乗り越えてくれるって信じてたから♪」

藍子「そうだ……あの、さっき『やっぱり』って言ってたのは?」

かな子「ああ、あれはね……ゴリランダーのこと」

887: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:58:40.06 ID:c80CQWaw0

かな子「最初のバトルで、薄々気づいてたんだ。このゴリランダー、キョダイマックスの素質があるポケモンだって」

藍子「そ、そうなんですか? 私、全然そんなこと気づかなかったです……」

かな子「そうだったんだ。だから最初のバトルではダイマックス、使わなかったんだね」

かな子「私もあんまり詳しくないんだけど、特別な環境で育ったポケモンはキョダイマックスの素質を秘めているんだって。藍子ちゃんのゴリランダーも、もしかしたら特別なポケモンなのかも」

藍子「……私のポケモンが。そんなこと、考えたこともなかったな……」

かな子「ちなみにさっきの技はキョダイコランダ。ゴリランダーのキョダイマックス技だよ」

888: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:59:22.27 ID:c80CQWaw0

かな子「……藍子ちゃん。さっきのジムチャレンジを続行すべきか――って話の続きなんだけどね」

かな子「ジムチャレンジを中止すべきって意見を唱えていた人は、いつかチャレンジャーが変な情報を吹き込まれて、怪しい集団に取り込まれるしれないって危惧していた。でもね、私はこう思う」

かな子「バトルを楽しめたり、バトルを通して自分や相手の価値を高められるトレーナーなら、きっと悪い心には染まらないだろう……って」

藍子「……!」

かな子「……うん、藍子ちゃんなら大丈夫だよね♪ じゃあ……はい、これ!」

藍子はドルチェバッジを手に入れた!

藍子は技マシン「じゃれつく」を手に入れた!

889: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/04(金) 23:59:49.68 ID:c80CQWaw0

かな子「それと、これも」

藍子はしんせんクリームを手に入れた!

かな子「……藍子ちゃん。また必ず、バトルしようね!」

藍子「……はい! こちらこそ!」

グッ

890: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/05(土) 00:00:23.34 ID:dY7cDLqO0

凛「藍子、お疲れ様」

都「いいバトルでしたね! バッジゲット、おめでとうございます!」

藍子「二人ともありがとうございます! でもまさか、ゴリランダーがキョダイマックスするなんて……」

凛「私も驚いたよ。マホイップのように本体が大きくなった、というよりはドラムが大きくなったような感じだったけど」

都「ということは……藍子さんのマホイップもキョダイマックス、するんですかね!?」

藍子「うーん、それはどうなんでしょうか……」

藍子「かな子ちゃんは特別な環境で育ったポケモンがキョダイマックスできるって言っていたんです。特別な環境ってどういうことなのか……」

891: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/05(土) 00:00:56.13 ID:dY7cDLqO0

凛「特別な環境……」

凛「ということは、同じ種族のポケモンでも、キョダイマックスする個体としない個体がいるってこと、なのかな」

凛「うーん、キョダイマックス……まだまだ謎が多いね」

藍子「そうですね。……ところで、次はどの町に向かいましょうか?」

都「あ、そのことなんですけど」

892: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/05(土) 00:02:14.33 ID:dY7cDLqO0

都「実は先ほど、さくらさん――あ、私の助手を務めてくれているんですけど――から連絡がありまして」

都「さくらさんはキルクスタウンのジムリーダー、泉さんと親しいんですが、泉さんが事件の情報を提供してくれるみたいなんです」

都「それで、よければ都さんも来て話を聞かないか、と連絡を受けました」

都「泉さんは一番最初の暴走事件の時も現場にいました。もしかしたら重要な情報を知っているかも……」

893: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/05(土) 00:02:43.58 ID:dY7cDLqO0

凛「なるほど、キルクスタウンか。えっと……」

凛「いったんナックルシティに戻って、東へ進むんだね」

凛「それに今、ジムリーダーって言ったよね。じゃあ次に挑むジムもそこでいいんじゃないかな、藍子」

藍子「私も賛成です!」

都「わかりました! では今日はゆっくり休んで――明朝、キルクスタウンへ向けて出発しましょう!」

 
899: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:04:45.06 ID:O+c1N9Zr0


『小レポート① -ドラメシヤの精神状態と現状についての考察および対策-』


藍子「そうだ、凛さん。少し相談したいことが……」

凛「ん、どうしたの?」

藍子「あの、ドラメシヤのことなんですけど」

藍子「実は先日、夜に森を散歩していたらトレーナーとバトルになって、私はドラメシヤをくり出したんですが……」

藍子「ドラメシヤはずっと怯えた様子で……私の指示も聞こえていなかったみたいで、何もできなかったんです」

凛「……」

藍子「……やっぱり、前のジム戦のこと、まだ引きずっているんでしょうか」

900: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:05:52.47 ID:O+c1N9Zr0

凛「……そうかもね」

凛「スタジアムでのバトルはただでさえプレッシャーが大きいから、もともと臆病なドラメシヤはさらに負担を感じただろうね」

凛「でも私と特訓している時は普通に動けていたよね?」

藍子「そうなんです。だから余計に驚いちゃって……」

藍子「凛さんや私のポケモン相手なら、きっといつも通りに振る舞えるんです。でもいざ実戦になると、そうもいかないみたいで」

藍子「こんな状態で他のトレーナーとバトルをさせるのは、やっぱり厳しいでしょうか」

901: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:06:57.20 ID:O+c1N9Zr0

凛「そうだね。……荒療治って手段もあるけど、やっぱり少しずつ慣れさせていくのが一番いいと思う」

凛「まあ、特訓を通じて少しずつ様子を見ていくしかないね。その分他の手持ちよりレベルアップは遅れるだろうけど」

藍子「……」

凛「藍子、不安なのはわかるよ。バトルに出せないポケモンを連れていくのって、私もすごくモヤモヤするだろうし」

凛「でもせっかく仲間になったポケモンだもん。簡単には手放したくないよね」

藍子「……はい」

藍子「私、信じてみます。この子が、いつかラテラルジムの時みたいに 、笑ってバトルできる日が来ることを」

902: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:08:28.53 ID:O+c1N9Zr0

藍子「それに、ドラメシヤがこうなったのは私の責任です。だからちゃんとドラメシヤと向き合っていかないといけないですよね!」

凛「……」

藍子「……あれ、凛さん? どうかしました?」

凛「……あ、いや。藍子、頼もしくなったなあ、って思っただけ」

藍子「へ、へっ!? ど、どういうことですか……!?」

凛「ふふっ。責任とか、ちゃんと向き合うとか、前の藍子は言わなかった台詞だなって思って」

903: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:10:11.66 ID:O+c1N9Zr0

藍子「ま、まあ……確かにそうかもしれないです。……そうでしょうか?」

凛「……たしかにトレーナーとしてそういう責任感は持つべきだと思う。でもね」

凛「今はそんなに深く考えなくてもいいんじゃないかな。ドラメシヤはいずれ戦えるようになるよ」

藍子「!」

藍子「……そうですね、私もそう信じています!」


※これ以降、ドラメシヤはトラウマを克服するまで対人戦には顔出ししません。

904: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:11:07.67 ID:O+c1N9Zr0


『小レポート② 或る計画』


ナックルシティ マクロコスモス本社

『ID認証をお願いします』

??「……」

【ID:196S#】

ピッ

ウィィン

905: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:11:48.76 ID:O+c1N9Zr0

??「……社長」

つかさ「お、その声は時子サンか」カタカタカタカタ

時子「……明日のスケジュールについて再確認しに来たわ。ちょっといいかしら――」

つかさ「……」カタカタカタカタ

時子「……」

つかさ「……」カタカタカタカタ

つかさ「あ、悪ィ。耳は傾けてるから、話してくれていいぜ」カタカタカタカタ

906: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:12:36.68 ID:O+c1N9Zr0

時子「……そう。じゃあ午前の会議での議題の件だけど――」

つかさ「……」カタカタカタカタ

時子「以上よ。なにか意見はある?」

つかさ「いいんじゃないか?」

時子「……」ハァ

時子「やけに適当な返事ね……いったい何の作業をしているの?」

つかさ「適当じゃないさ。で、今やってるのは作業というより調べもの、かな」

907: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:13:47.55 ID:O+c1N9Zr0

時子「……?」

クルッ

つかさ「時子サン」

時子「あん?」

つかさ「……この地方には、ガラル粒子のエネルギーが至るところに満ちている。そのエネルギーがあるからこそ、ダイマックスバトルという独自の文化も隆盛してきた」

時子「……」

つかさ「でもさ、考えたことはないか? ガラル粒子はポケモンを巨大化させたり、時に姿形を変化させたりするけど、でもあくまでも短時間の、限定的な力としてのみ働く」

つかさ「そんなエネルギーが何時、何処から湧き出てきたのか……」

908: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:16:06.11 ID:O+c1N9Zr0

時子「……うちの社長はいつから考古学者気取りになったのかしら」

時子「ま、でも、少し興味はあるかもね」

つかさ「だろ?」

つかさ「このガラル粒子の出所については、ガラルの地下にそうしたエネルギーが充満していて、少しずつこの大地に漏れてきているって説が有力だ。歴史ある文献にもそう書いてる」

つかさ「けれど、アタシはそれとは違う一つの仮説を立てた」

909: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:19:11.60 ID:O+c1N9Zr0

時子「仮説……?」

つかさ「もしガラル粒子が自然の産物ではなく、第三者から与えられたものだったとしたら?」

つかさ「……この場合の第三者はニンゲンとも言えるし、ポケモンとも言えるし、あるいは別の生命体とも取れる」

時子「……」

つかさ「ま、ニンゲンじゃないだろうな。こんな未知数のエネルギーが故意に生まれたとは考えにくい。何かの弾みって線もナシだ」

910: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:20:37.25 ID:O+c1N9Zr0

つかさ「別の生命体、というのも曖昧だし、裏付けなんて何もないから信用に値しない」

つかさ「じゃあポケモンはどうか。他のポケモンにも影響を与えるほどの莫大なエネルギーを持っているポケモンが存在するのか……」

時子「……それこそ裏付けはないんじゃない?」

つかさ「そうとも限らないぜ? 世界には大地や海を広げたポケモン、感情や時空を司るポケモン、世界を生み出したとされるポケモンまでいるんだから」

つかさ「……もしも、圧倒的な力をもつポケモンの力で、今のガラルが形成されているとしたら。そのポケモンが、今も生きているとしたら」

911: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:21:29.75 ID:O+c1N9Zr0

時子「……それを考えてどうするの? まさか手なずける気?」

つかさ「やろうと思えばできるはずだぜ。時子サンのいた会社で作られていた、アレがあるならな」

時子「……質問が悪かったわ。手なずけて、どうする気?」

つかさ「……へえ。それはまだ考えたことなかったな。よし、何か絞り出してみるか」

時子「……」ハァ

つかさ「おっと、世間話に付き合わせて悪かったな。明日も早いし、今日はもうゆっくり休んでくれ」

912: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:22:08.38 ID:O+c1N9Zr0

時子「……社長は?」

つかさ「アタシはもう少し起きてるよ」

時子「……そう」

ガラッ

つかさ「……」

つかさ「……さて」

rrrrr……

ガチャッ

913: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:23:02.92 ID:O+c1N9Zr0

つかさ「……突然すまないな。アタシはガラル地方に籍を置くマクロコスモスのつかさだ」

つかさ「……ああ。アンタがそこそこ権威のある考古学者だということはネットで調べさせてもらった」

つかさ「折り入って頼みがある。あるポケモンについて調べてほしいんだ。そのポケモンの生態的特徴、活動記録、潜在能力――どんな些細な情報でも構わない」



つかさ「ポケモンの名は――ムゲンダイナ」


914: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:24:57.15 ID:O+c1N9Zr0


『世界が変わった日』



ガチャッ

??「ふう……ただいま」

マーイーカ「マーイーカッ!」ピョンピョン

??「ああ、マーイーカ。ただいま。お腹は空いてるか?」

マーイーカ「マーイーカッ」

??「そうか。なら先にシャワーを浴びさせてもらうよ。夕食はそれからにしよう」

915: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:26:25.51 ID:O+c1N9Zr0

??(……私はこの小さな町に唯一ある図書館で司書として働いている)

??(女手一つで育った私に、母は理知的な人物になってほしいという望みを託した。それを図書館司書という形で叶えた私は、昨年からこの町に移り住み、新しい暮らしを始めた)

??(……正直、生活に余裕はないし、将来の見通しもない。それでも本に囲まれ、優しい町の人に囲まれる暮らしは、質素だが充実したものだった)

??(常に何かに追われていた感覚の中で生きてきた私にとって、この町が与えてくれる安らぎは他の何にも代え難かった。私はこの町が好きだ)

??(いや……今となっては、そんな言葉も遠い過去に置いてきてしまったか)

??(あの日を境に、私の心は壊れてしまった)

916: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:26:58.92 ID:O+c1N9Zr0

八百屋

??「どうも」ガラッ

オヤジ「おー、今日は仕事は休みなのかい?」

??「ああ。今日は第3木曜日だからな」

オヤジ「あらら、じゃあ今月ももう後半なんだ。早いなあ」

オヤジ「っとと、はいよ。今日はちょっとオマケ付きだよ」サッ

??「ありがとう。いつも悪いな」

917: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:27:32.77 ID:O+c1N9Zr0

オヤジ「いいって。アンタが毎日話し相手になってくれてるおかげで、うちの親父のボケが進むのも遅れてるんだぜ」

??「どうだか」フフッ

??「……ん?」

オヤジ「……? どうした――」

オヤジ「……どうにも焦げ臭いな」

??「外で何かあったのか……?」

ガラッ

??「!!」

918: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:28:21.89 ID:O+c1N9Zr0

ゴォォォォォォォォ

??「か、火事……だと!?」

ワァァァァァァ

キャァァァァァァ

??「おい、どうした! 何があったんだ!」

年配の女性「そ、そこの家から急に火が……! きっと家主が火の元の確認をしていなかったんだわ!」

年配の女性「あなたも早く逃げなさい! この辺は家が密集しているから、すぐに火が燃え広がっちゃうわ!」

919: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:29:05.38 ID:O+c1N9Zr0

町長「そ、そうじゃ! ――くんも早く逃げなさい!」

??「町長! 消防隊は!?」

町長「あいにくこの町には消防署がないのじゃ。隣町から来てもらわないと……」

??「隣町だって……!?」

??「そんなの遅すぎる! この町は森に囲まれているんだろう。このまま指を咥えて待っていたら山火事になるぞ!」

町長「じゃ、じゃが……」

920: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:29:41.71 ID:O+c1N9Zr0

??「くっ……」

??(なんとか……この町を守れないのか? 私を受け入れ、愛してくれたこの町が消えるのをただ見ているだけなんて……)

ポンッ

??「!」

ウパー「ウパー!」

町長「ウ、ウパーちゃん! こら、危ないからボールに入っていなさい!」

??「ウパー……」

921: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:30:43.50 ID:O+c1N9Zr0

??「……町長、このウパー、少し借りてもいいか?」

町長「なっ、何を言っておる!? ダメに決まっているじゃろがっ!!」

??「……ウパーはやる気みたいだが?」

町長「なっ……」

ウパー「ウパー! ウパー!」

??「……よし、ウパー! 少しでも火が燃え広がるのを抑えてくれ!」

??「みずでっぽう!」

922: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:31:20.13 ID:O+c1N9Zr0

ウパー「ウパー!」ボッ

ドバアッ

ジュゥゥ……

??「よし……いい調子だ、ウパー!」

ウパー「ウパッ!」

町長「……おおっ……」

町長「……い、いいぞウパーちゃんっ! ナイスファイトじゃっ! さすが私の自慢のウパーちゃんじゃな!」

923: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:32:37.53 ID:O+c1N9Zr0

??「皆は早く高台に避難してくれ! 私とウパーはなるべく火の勢いを抑えておく!」

町長「お、お前さん……なんて健気な若者なんじゃっ」

年配の女性「わかったわ! さ、早く避難しましょ!」

オヤジ「ほら行くぞ爺さん! ……ありがとよ!」

………………………………………………

ゴォォォォォォォォ

??(さすがにウパーだけでは厳しいが……)

??(先ほどより火が落ち着いてきている。効果はあったみたいだな)

924: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:33:13.35 ID:O+c1N9Zr0

??「さて、町の人は避難を終えたのかな」

ウワァァァァァン

??「! 女の子が……母親に引きずられている?」

女の子「嫌だぁぁぁぁ!! ママのいじわるぅぅぅ!!」

ママ「もう、ワガママ言わないで!! 仕方ないでしょう!!」

??「おい、どうしたんだ?」

ママ「あっ、――さん。実は……」

925: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:33:49.35 ID:O+c1N9Zr0

女の子「ブルーが……ブルーがまだお家の中にいるのぉ!!」

??「何っ……あの家の中にか!?」

ママ「は、はい。この子、ブルーとかくれんぼをしていたみたいなんですけど、火事に気づいた私が何とか連れ出して……でもブルーだけはどうしても見つからなかったんです」

ママ「きっとどこかに隠れていて、出られなくなったのかもしれません。私も助けてあげたいのですが……」

ゴォォォォォォォォ

??「……これはたしかに厳しいな」

女の子「うわぁぁぁぁん!!」

926: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:34:22.87 ID:O+c1N9Zr0

??「……」

??「わかった。私が助けに行こう」

女の子「えっ?」

ママ「ちょ、ちょっと、本気なんですか!? あの状態じゃ、ブルーはもう……!」

??「……母にこう教わったんだ。『我が身を顧みず人を助けよ。さすれば人も己も救われる』、と。……だから、もう泣くな」

??「ウパー。さすがにあの中は危険だ。すぐに戻るから、ここで大人しくしていてくれ」スッ

ウパー「ウパー」

??「……!」ダッ

ママ「ああっ……!」

927: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:34:50.37 ID:O+c1N9Zr0

ゴォォォォォォォォ

??「ぐっ……目の前がほとんど見えない……」

??「それに意識が朦朧としてきた……早くしないと」

??「……おい、ブルー! いるなら返事をしてくれ! ブルー!」

??「……」

??「……!」

ヒョコッ

928: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:35:17.01 ID:O+c1N9Zr0

ブルー「ブル……?」

??「ブルー……ここにいたんだな! 無事でよかった――」

ブルー「ブル――」

ガダンッ

??「!!」ハッ

??(しまった、上から瓦礫が……!)

??(……手遅れ、か――)

929: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:35:53.36 ID:O+c1N9Zr0

ブシャァァァァ

??「!?」

ドガンッ

ウパー「ウパーッ!」

??「ウパー!? 助けてくれたのか……!」

??「……いや、なぜ来たんだ! 危険だから待っていろと言ったはずだ!!」

ウパー「ウパー!!」

??「! お前……出会ったばかりの私に、どうしてそこまで……」

930: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:36:24.50 ID:O+c1N9Zr0

??「……いや、まずはこの家から脱出しないと――」

??「!!」

??(そんな……さっき辛うじて通ってきた道が塞がれている……)

ゴォォォォォォォォ

ゴォォォォォォォォ

??「……くそっ……」

ギュッ

??「ブルー、ウパー……せめてお前たちだけでも……」

931: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:36:50.97 ID:O+c1N9Zr0

ウパー「……」

ゴオッ

??「……!」

ウパー「ウパッ――」

ウパー「ウパーーーーーー!!!」

カッ

ズドォォォォン

932: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:37:36.16 ID:O+c1N9Zr0

若い男性「な、なんだ!? なんの爆発だ!?」

ママ「! あれは……!」

ガタッ

ズザァァァァ

??「ぐはっ……」

ブルー「ブル……」

女の子「!! ブルー!!」ダッ

ママ「そんな……本当に助けてくれるなんて……!」

女の子「ブルー! ブルー!!」

933: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:38:12.75 ID:O+c1N9Zr0

??「……うっ……」

ママ「あ、あなた、大丈夫!?」

??「あ、ああ……一体何が……?」

ママ「何がって、あなたとブルーがあの家から飛び出してきたのよ!」

??「あの家から……? いったいどうやって――」

??「……! そうだ、ウパーは!?」ガバッ

934: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:38:45.92 ID:O+c1N9Zr0

??「……!!」

ガラッ

ドガンッ ドガンッ

ゴォォォォォォォォッッ

??「……!! そんな……ウパー!!」


??「ウパァァーーッ!!」

935: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:39:20.65 ID:O+c1N9Zr0


町外れの病院


ガラッ

看護師「……こんにちは」

町長「看護師さん……ウパーちゃんは無事なんですか!?」

看護師「……はい、こちらに」

サッ

町長「……!!」

看護師「全身がひどく火傷していますが、命に別状はありません。意識も戻っています」

看護師「ですが――」

936: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:40:06.14 ID:O+c1N9Zr0

町長「ああ……よかった……ありがとう……ありがとう……!」

町長「ウパー……私だよ、わかるかい……?」

ウパー「……?」

町長「ウパーちゃ――」

ウパー「……ウパ……?」

ウパー「……ウパ……」

町長「……どうしたんだ、ウパーちゃん……疲れてるのかい?」

看護師「……」

937: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:41:19.31 ID:O+c1N9Zr0

看護師「町長さん。解離性健忘というのをご存知ですか」

町長「かいり……何だって?」

看護師「解離性健忘です。強いトラウマや心的外傷によって引き起こされる記憶障害です。自分にとって大事な記憶を忘れたり、記憶に空白期間が生まれることもあります」

看護師「……おそらく、そのウパーは、火事の恐怖とショックで記憶を失って……今は、自分がなぜベッドに横たわっているのかもわかっていないのでしょう」

看護師「そしておそらく……あなたのことも」

町長「……!」

町長「……そんな。そんなの……」

町長「あ……あんまりじゃないか……」ポロッ

町長「あ、ああ……私のかわいいウパーちゃんが……!!」

938: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:42:14.66 ID:O+c1N9Zr0

………………………………………………

??「……それじゃあ、ウパーは……」

町長「……まだあの病院じゃ。退院しても、記憶が戻ることはないだろう」

??「……そんな……」

町長「……」

町長「君は……あの親子のブルーがどうなったのかも知っているかね?」

??「いえ……」

町長「あの時……ブルーは見てしまったんじゃ。私のウパーちゃんが瓦礫に押し潰されてしまう所を」

町長「それ以来、ブルーも火事のショックが脳裏に焼き付いて、家族にさえ塞ぎ込んでしまうようになったらしい」

939: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:43:58.37 ID:O+c1N9Zr0

??「……!!」

町長「……お前のせいじゃ」

町長「私が……どれだけウパーちゃんを大切にしていたか、知ってただろう?」

町長「あの時お前がしゃしゃり出てこなければ、こんなことには……」

町長「全部……全部……お前のせいだ!! 私のウパーちゃんを……返してくれ!!」

??「……!!」

………………………………………………

940: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:44:55.97 ID:O+c1N9Zr0

??「……ええ。そうさせていただきます」

??「……はい。では」

??(……仕事は一時的に休むことになった。職場の人からは、いつも通り優しく接された)

??(でも私にはわかってしまった。彼らも心のどこかで、私のことを厄介者扱いしているということを……)

??「……母にも、事情を伝えておかなければ」

prrrrr

ピッ

??「――もしもし」

母『……』

??「母さん、実は――」

941: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:46:45.13 ID:O+c1N9Zr0

母『あんた、やってくれたわね』

??「……え?」

母『聞いたわよ。町長さんのポケモンを手酷く扱ったそうね。町長さん、あんなに自分のポケモンのことを愛していたのに……』

??「……い、いや、違うんだ、母さん! そもそもあの時私は――」

母『言い訳をするような子に育てた覚えはありません!』

??「……! なぜだ、母さん……話を聞いてくれ!」

母『あんたが調子に乗ったせいで、あたしの職場にも悪い噂が広がったわ。母さん、どれだけ肩身が狭い思いをしたかわかってるの!? あんたはあたしの面汚しなのよ!』

942: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:47:49.49 ID:O+c1N9Zr0

??「……! か、母さ――」

母『……もう口も聞きたくないわね』

母『あんたなんかいらないわ……この町から出ていきなさい!!』

??「……!!」

ブツッ

??「……そんな、どうして……」

??「私はただ……町を守ろうと……皆を助けようと……しただけなのに……」

943: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:48:23.14 ID:O+c1N9Zr0

??「『我が身を顧みず人を助けよ。さすれば人も己も救われる』……そう教えたのは母さんじゃないか」

??「なぜ……なぜなんだ……」

??「――ッ!!」

??「うああああっっっ……!!」

944: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:49:36.46 ID:O+c1N9Zr0

??(その日を境に、私は世界を敵に回した)

??(もう私の味方などいなくなってしまった。何もかもに見放された気分だった。私は周りの全てを憎んだ)

??(それから夜は眠れなくなった。様々な思いが錯綜して、心をさらに深く沈ませた)

??(……だが。私を絶望させた一連の事件は、ある日の夜、幸か不幸か私の幼い頃の思い出の一つを掘り起こした)

??(たまたま図書館で見かけた本――『ガラル史実』、タイトルはたしかそうだった。その話に出てきた1匹のポケモン……)

??(太古の昔、ガラルを統べていたというポケモン、バドレックスの記憶が、私の脳裏にフラッシュバックした)

945: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/11(金) 21:50:23.58 ID:O+c1N9Zr0

世界が変わった日 終幕

次回>>>キルクスタウン編
To Be Continued…

これで1スレ目終了です。次回は新しいスレでお会いしましょう