キョン「長門が入院って、マジか？」

ハルヒ「マジよ。気胸って病気らしいわ」

キョン「気胸……あの、肺に穴が空くやつか？」

みくる「肺に穴が空いたら、息できないんじゃ……」

ハルヒ「酸素が漏れて、肺を圧迫してしまうのよ。最悪、死ぬらしいわ」

みくる「ふぇっ!?」

キョン「長門……」

長門「……」

長門「…………」

長門「………………」

長門（なにもすることが無い）

長門（情報操作で……）

情報総合思念体（ダメだよユッキー!!）

長門（パパン……）

長門（パパン、こんな病気、情報操作ですぐなのに……）

パパ（ユッキー、これはチャンスだよ。自律進化の可能性を見つけるチャンス）

パパ（有機生命体の病気や痛み、入院のシステムをよく学ぶんだよ）

長門（いたいのはちょっと……）

パパ（ユッキー普段から痛みオフだもんね）

長門（いたいよ、パパン）

パパ（ユッキーかわいそう……）

長門（管が刺さってるんだよ？）

パパ（肺の外にたまった空気を抜くためだね。かわいそうに……
　　女の子のたまの肌に傷が付くなんて……）

長門（なおしていいの、パパン？）

パパ（退院したら、いいよ）

長門（パパンのいじわる）

パパ（一切の情報操作を禁じるからね!!）

長門（頑張る）

学校

ハルヒ「と、いうわけで、今日の活動は、有希のお見舞いよ!!」

キョン「お前にしてはめずらしく、善良的で健全な活動だな」

みくる「いいと思います!!」

ハルヒ「じゃ、早速いくわよ!!」

長門（パパン、パパン!!）

パパ（どうしたんだい、ユッキー）

長門（ドレーンのさきっぽが中でチクチク痛い!!）

パパ（かわいそうに……痛みなんて普段体験しないだろうから、余計に……）

長門（これが……痛み……）ｼﾞﾜﾘ

パパ（泣かないで!!ユッキーがんばって!!）

長門（傷口ズキズキする……）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

パパ（ユッキーーー!!!!）

ちょっとレントゲン撮ってきますね。

長門（パパン!!パパン!!）

パパ（何？）

長門（本読みたい……）

パパ（本無いじゃない……）

長門（座標位置をずらして……）

パパ（だーめー）

長門（パパン!!）

長門（テレビみたい……）

長門（左手を伸ばせば……）

ズキッ

長門「～～～～～～っ!!」

長門（パパン!!テレビに手が届かない!!）

パパ（ユッキー!!そこにリモコンあるよ!!それなら届くよ!!）

長門（さすがパパン!!）

ぴっ

・
・
・
・

長門（………………？）

長門（テレビ……点かない……）

パパ（ユッキー、病院でテレビを見るにはテレビカードが必要なんだ）

長門（初耳）

パパ（売店や、デイルーム、ナースステーションにあるよ）

長門（なるほどなー）

長門（……パパン、ユッキー痛くて動きたくないけど……）

パパ（じゃ、我慢かな……）

長門（パパン!!??）

パパ（ユッキー、歩けるんだよね？）

長門（痛くて……）

パパ（看護師さんに頼めば、ドレーンに繋がったタンクと機械を外して、
　　タンクを持運びできるようにしてくれるよ）

長門（痛いのは……）

パパ（ユッキー……）

長門（痛い……）

パパ（…………）

ハルヒ「ヤホーーッ!!有希いる!?」

キョン「病院なんだから静かにしろ……一人部屋じゃないんだ……」

老人「おやおや……」

みくる「おじゃましまーす……」
長門「涼宮ハルヒ……」

ハルヒ「有希大丈夫？顔色よくないわねー」

長門「胸部に痛みがある」

みくる「長門さんのよこにあるこのチューブ……」

キョン「血が少し中にあるな。まさか、刺さってるのか？」

長門「そう……」ｺｸｯ

みくる「ひぇぇぇ～……」

ハルヒ「しっかし有希が入院なんてねー」

キョン（まっくだ……）

ハルヒ「これ、ホントに刺さってるの？ちょっと見せて！」もぞもぞ

キョン「こらハルヒ!!長門のパジャマをずらすな!!」

ハルヒ「よいしょ」ﾒｸﾘ

キョン（うぉぉぁぁあ!!ちらっと見えた桜色!!）

ハルヒ「うわっ、ガーゼあててるけど、マジね、これ」

みくる「ひぇ…………」ぱたん

キョン「朝比奈さん!!（桜色桜色桜色）」

キョン「朝比奈さんはナースステーションで休んでる」

ハルヒ「病院に見舞いに来て倒れるなんて……」

長門「…………」

ハルヒ「よし、私が有希に必要そうなものを買ってくるわ!!」

長門「……感謝する」

ハルヒ「いいわよ別に。団員のためよ!!キョン、あんたは有希を見ていてね」

キョン「おう（聞きたいこともあるしな）」

キョン「……で、長門」

長門「あなたの言いたいことは理解している」

キョン「話が早くて助かる。ホントにただの病気なのか？」

かくかく

しかじか

キョン「なるほどな。となると、今の長門は宇宙人らしいことは何もできないのか」

長門「…………」

キョン「どうした、長門？」

長門「しゃべりすぎて痛い」ｼﾞﾜﾘ

キョン「大丈夫か？無理するな」

長門「…………」ｺｸｯ

キョン「痛いか？」

長門「ドレーンの先端部分による刺激が強い」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

キョン「な、長門……」

長門「私は、初めて痛みと言うものを体感している」

長門「有機生命体が、これほどつらい感覚を持っているとは……」
キョン「長門……」

無意識だった。目の前に初めてのことに涙する、今や宇宙人でめなんでも無くなってしまった長門は、もはやただの人間と同じなのだろう。
目に涙をためる長門を見ていると、勝手に手が動いた。妹が今よりもいくぶん幼かった頃、風で寝込んだときにも、俺はこうして頭にてをおいていた。
長門の額に手をのせながら、そんな過去の記憶を思い出していた。


長門「…………手」

キョン「お前をうちの妹と一緒にするわけではないが、こうすると、あいつ喜ぶんだ」



なで　なで

長門「…………」

長門「…………」

キョン「い、いやなら、やめるが……」

長門「嫌悪感は感じない」

キョン「そ、そっか」

長門「そう……」

なで　なで

長門「……これは……」

キョン「ん？」

長門「何故、こｒ ハルヒ「今戻ったわ!!」

キョン「お、早かったな」

長門「…………」

ハルヒ「はい、ストロー付きコップに歯磨きセット!!タオルにスリッパにお風呂セットも!!」

キョン「ずいぶん買ったな……」

ハルヒ「だって、有機の荷物見てよ。何もないわよ？履き物も靴だけだし」

キョン「ほんとだ……気付かなかった」

ハルヒ「観察が足りないのよ。あとかえの下着ね」

キョン「こ、ここにだすな!!」

長門「…………」

ハルヒ「あと飲み物やお菓子と、ふりかけ!!」

キョン「ふりかけ？」

ハルヒ「きょーん……。病院食は味気ないのよ？」

キョン「あぁ、なるほど」

長門「涼宮ハルヒ……」

ハルヒ「あと、メモ帳と鉛筆に消しゴムね」

キョン「何に使うんだ？」

ハルヒ「きーょん、有機は文藝部員よ」

キョン「覚えてたのか」

ハルヒ「文藝部員の女の子が入院したら、普通日記をかくのよ」

キョン「そうなのか、長門？」

長門「…………」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

キョン「すごく首を横に振ってるよ」

ハルヒ「あれ？」

ハルヒ「あとは、テレビカードね」

長門「…………っ!!」

キョン「あー、それ無いとテレビ見られないのか」

ハルヒ「ふっふっふ。ーきょん、わたしは見るところが違うのよ」

キョン「お前の発音おかしくね？」

長門「……ーちーょこ」

ハルヒ「こんな感じで発音よ」

キョン「…………」

誤字ひどい……



ハルヒ「これをセットして……うりゃ」

ぴっ

テレビ『ぽーにょぽにょぽにょ……』

長門「…………っ!!」ｷﾗｷﾗ

キョン「テレビうるさくないか？」

ハルヒ「イヤホンも買ってあるわよ」

キョン「その気遣いや気の回しをもっと普段の生活にだな……」

ハルヒ「で、このチューブいつ取れるの？」

長門「レントゲンの経過を見て、肺が膨らんでいれば明後日には……」

ハルヒ「結構早いわね。今のところどうなの？」

長門「肺は膨らんでいる。酸素も抜けていないので、穴は塞がっている様子」

ハルヒ「退院は間近ね」

キョン「入院したのは、昨日の夜からか？」

長門「そう」

長門「帰宅後、突然肺の痛みに襲われた……」

昨日　長門の家

長門「…………」

長門「…………」

長門「……肺に損傷、自然治癒力強化」

パパ（待ってユッキー!!）

長門（パパン、どうしたの？）

パパ（良いことを思いついた）

長門（…………？）

病院

長門「事の発端はこのように」

キョン「ずいぶん地味に処理しようとしたんだな」

ハルヒ「もう耳とじなくていーい？」

キョン「いいよ」

ハルヒ「え？キョンいま何か言った？」

キョン「長門、明日またくるよ」

長門「…………そう」

キョン「何か本でも買ってくるよ」

長門「…………そう」ｷﾗｷﾗ

病院外

キョン「あんな不安そうな長門、はじめてみたな」

ハルヒ「キョンが何言ってるか聞こえないけど、空がキレイねー」

キョン「耳、手はずせよ」

ハルヒ「見て!!カラスが飛んでるわ!!」

キョン「長門大丈夫かな……」

ハルヒ「飛行機雲!!飛行機雲!!」

キョン「あれ、朝比奈さんは……？」

ハルヒ「ゆーふぉー!!!!」




みくる「うぅ～～ん……」

長門（パパン!!パパン!!）

パパ（どうしたの？）

長門（ハルにゃんきてくれた!!いっぱい買ってもらった!!）

パパ（よかったね!!よかったね!!さすが自律進化の可能性だ!!）

長門（キョンくんも来てくれたよ!!頭なでなでしてもらった!!）

パパ（ははは、よーし、パパ娘の王子さまをちょっと懲らしめちゃうぞー）

長門（パパン？）

パパ（娘はまだ嫁にはやらないよー）

長門（お、お嫁さん……って……）ｶｧｧ

パパ（ははは、よーし、何もないところで転ぶが良いさ）

キョン「長門はどんな本が良いかな」

ハルヒ「そうね!!プロテインね!!」

キョン「いや、あいつは何でも読むか……」

ハルヒ「あー、ちょーお腹へったしー☆彡」

キョン「だからこそ……ってうぉあぁ!!」ベシャァ

ハルヒ「ガッシ!!ボグシャァァァアアア!!スイーーツーー!!!!うりゃぁぁああ!!」

キョン「な、なぜ俺は何もない場所で転んだんだ……」

テレビ『奴は大変なものを盗んでいきました……』

長門「…………」

テレビ『わしの心です!!』

長門「……キタコレ」

ズキッ

長門「…………っ!!」じわり



こうして、夜は更ける。

次の日

長門（パパン!!パパン!!）

パパ（おはようユッキー。どうしたの？）

長門（おはようパパン!!昨日からずっとこの態勢だから、背中がすごく痛いよ!!）

パパ（体を起こせば良いよ）

長門（痛いからいやだ……）ｼﾞﾜﾘ

パパ（起きないと背中がもっと痛いよ？）

長門（……うぅ）

パパ（ほら、手摺りに捕まって）

長門（うぅ……）

パパ（ほら、体を真っすぐにして）

長門「…………くっ」

パパ（上半身だけを起こして……）

長門「……っつ」

パパ（もう少し!!）

長門「～～～～っ!!」




長門「……上体を起こすことに成功」

パパ（やったねユッキー!!）

老人（ようやったの……）

長門（背中が楽……）

長門（…………トイレ）

パパ（ナースコールだ!!）

ぴっ

・
・
・
・

『はい、いまいきまーす』

長門「っ!!」ﾋﾞｸｯ

看護師「はい、じゃあこのタンク連れて歩きましょう」

長門「あるく？」

看護師「はい」

長門「…………」

おず

おず

看護師（生まれたばかりの子鹿みたい）

パパ（ユッキーかわいいよ!!）

長門「…………っ」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

ごしゃー……がべがぼごぼ

長門「おわった……」

看護師「じゃあ、ついでにレントゲン行きましょうか」

長門「レントゲン……」

看護師「病棟移動しますので、この車椅子にのってください」

長門「…………？」ぽす

看護師「はい、移動しまーす」ｷｭﾘｷｭﾘ

長門「…………っ!!」ｷﾗｷﾗ

看護師（なにこのこ、かわいい）

医師「はい、レントゲンとりますよ。手はここにおいてくださいね」

医師「顎たかくしまーす。そのまま」

長門「…………」

医師「はい、いきますよー」


機械『息を大きくすって』

長門「…………ぇ？」

機械『そのまま、止めてください』

長門「……すぅ……」

ズキッ

長門「…………っ!!」

がしゃっ　うぃーん

医師「はい、おっけーでーす」

長門（不意打ち……）ｼﾞﾜﾘ

パパ（ユッキーファイト!!）

医師「はい、次よこからとりまーす」

長門「…………」ｽﾞｷｽﾞｷ

医師「では手を上に上げてー」

長門「…………な」

医師「できるとこ迄で良いですよ」

長門「…………」

おず　おず

長門「…………ここ」

医師「じゃ、その位置で腕つかんでー」

長門「…………ほっ」

長門「おわった」

パパ（ユッキー、頑張ったね）

長門（でも何か、昨日より痛みは小さい気がするよ、パパン）

パパ（痛み慣れかな。よかったね）

看護師「おわりました？」

長門「…………」ｺｸｯ

看護師「はい、じゃあまた病室まで移動しますよー」

長門「…………」ｷﾗｷﾗ

看護師（車椅子にこんなに目を輝かせるなんて……）

長門（ごはん……）

パパ（ユッキー、ふりかけだよ!!ふりかけ!!）

長門（ハルにゃんのふりかけ……）

さらっ　さらっ

もぐ　もぐ

長門（これが、おとなの味……）

パパ（おとなのふりかけかー）

長門（昼まで何も予定が無い）

長門（…………暇）

パパ（眠っていれば？からだ休めるのは大事だよ？）

長門（横になるのが怖い……）

パパ（でも、ずっと座ってるの？）

長門（………………）

長門（がんばる）

パパ（おーっ!!）

長門（パパン!!大変、パパン!!）

パパ（え、どうしたの!?）

長門（横になったら、さっきより痛い）ｼﾞﾜﾘ

パパ（あー、ドレーンのさきっぽがずれたのかな？）

長門（息できない!!パパン!!）

パパ（腹式呼吸だよ!!ユッキー!!）

長門「∇∽∽⇔∃ヮγηЙμξДЕ……」

パパ（高速詠唱しないの!!）

長門（痛くて途中までしかできない!!）

パパ（ユッキーーーーー!!!!!!）

パパ（すぅー……はぁー……）

長門「すぅー……はぁー……」

パパ（落ち着いた？）

長門「すぅー……はぁー……」

パパ（ユッキー？）

長門「すぅー……はぁー……」

パパ（…………）

長門「…………」すやすや　

女医「長門さーん、はいりますよー。……あら？」

長門「…………」すぅすぅ

女医「目に涙ためてねてる……」

長門「…………いたい……」すやすや

女医「かわいいわねー。持って帰ろうかしら」

老人「それは……いかんと……」

女医「えー」

老人「…………」

おひる

長門「なんとか起き上がった」

女医「はい、よくできましたー」

長門「ごはん……」ﾓｸﾓｸ

女医「食べながら聞いてくださいね。明日ドレーンを抜きます」

長門「…………漬物」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

女医「ドレーンを抜けば、いまさきっぽが痛いと思うけど、それも無くなります」

長門「………………」ﾋﾟﾀｧ

女医「ドレーンを抜くのと一緒に抜糸をして……」

長門「痛く、なくなる？」

女医「え？……え、えぇ。傷口の痛みはのこるけれど、今よりもずいぶん楽に」

長門「はやく」

女医「え？」

長門「いま、はやく、はやく」ｼﾞﾜﾘ

女医（涙目ですりよってきたぁぁあ!!かわいいわこのこ!!）

長門（ねる）

パパ（お昼寝？）

長門（明日の朝起こしてね、パパン）

パパ（え!!夜を越えるつもり!?）

長門（じゃあはやく明日にして）

パパ（それはできないなぁ）

長門（じゃぁ寝る）

パパ（おやすみー）

長門（…………zzZ）

…………ねてる……

……かえ…………ましょう

……ふぇぇ…………

長門（…………ん）

ぱちり

キョン「お、起きたぞ」

ハルヒ「あんたがうるさいからでしょ!!」

みくる「び、病院では静かにしましょうよぉ……」

長門「みんな……」

長門「本がある」

キョン「三人で買ってきたんだ」

ハルヒ「私は旅行記。やっぱ入院中はこれよね」

みくる「わたしはファンタジーを」

キョン「適当にジャンルも見ずにひっぱってきた」

長門「……感謝する」

長門「これで一日乗り切られる」

ハルヒ（この量で一日……やるわね）

パパ（ユッキー素敵!!）

ハルヒ「はい、学校のプリントに、ノートのコピーを、有希と同じクラスの人からもらってきたわ」

みくる「家庭科で作ったクッキー、よければ……」

キョン「明日にはそれ、抜けるんだろ？がんばれよ」

長門「…………」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

長門（うわーんパパーン!!）

パパ「泣いて良いよ!!泣いて良いよユッキー!!」

しばらくして

ハルヒ「じゃ、帰るわね!!早くよくなるのよ!!」

みくる「おだいじに」

キョン「またな」

長門「…………」ｺｸｺｸ

老人「いいお友達じゃの」

キョン「………………」

長門（みんな帰った）

パパ（いい友達をもったね）

長門（ユッキー泣きそうだよー。うぅ）

パパ（よーし、パパユッキーに胸を貸そう）

長門（遠くて届かないよー）

パパ（はっはっは）

キョン「天井に両手を挙げて、どうしたんだ長門？」

長門「っ!!」ﾄﾞｷｯ

パパ（はっはっは）

長門「今起きる」

キョン「あー、無理しなくていいぞ。忘れもん取りに来ただけだから」

長門「……いい」ﾓｿﾞﾓｿﾞ


ぐぐぐっ

長門「上体を起こすことに成功」
キョン「おー」

ぽん

長門「…………ぁ」

なでなで

長門「…………ん」

キョン「……ん。それだけだ」

長門「…………」

キョン「…………じゃあな」

長門「…………隣」

キョン「ん？」

長門「座る」

キョン「…………あぁ」

キョン「…………」

長門「…………近づいても……？」

キョン「あ、あぁ……」

すりすり　ぺたり

キョン「…………っ!!」

長門「…………」

キョン（くっついてるくっついてるくっついてるくっついてる）

長門「手が触れたとき……」

キョン「え？」

長門「あなたの手が触れたとき、不思議な体験をした」

長門「あなたの手の体温が、私に伝わる。それは自体は不思議なことではない」

長門「その体温を感じ、あなたが私の頭を撫でたとき、……」

長門「適切な言葉をあてるなら…………強い安心感を覚えた」

キョン「長門……」

長門「こうして体を接していても、伝わる。それを感じる」

長門「私は、今まで自分には必要とされない情報を遮断してきた。痛みもそれにあたる」

キョン「あぁ」

長門「この情報は、私がすべての情報を受け入れてから、初めて体感すること」

長門「おしえてほしい。これは、なに？」

キョン「難しいことを聞くな」

長門「そう……？」

キョン「人の体温ってのは不思議なものでな、長門、不安なときや、辛い時ほど、
　　　妙に心地よかったりするんだ。赤ん坊が泣いたときだって、母親がだっこするのは、
　　　赤ん坊に母親の体温を伝えているからだと思うんだ」

キョン「人のぬくもりってのは、科学やなにかに関係なく、人の心に伝わるものなんだよ」

長門「…………」

キョン「長門がこの大事な人のぬくもりを遮断していたから、今初めて体験して、戸惑っているんだな」

長門「…………ぬくもり」

長門「…………」すっ

キョン「長門？」


ぎゅぅ


キョン「な、ななな……!?」

長門「ぬくもり……」

キョン「なが、ながながなが……ああぁぁぁぁがががが……」

老人「わかいの……」

キョン「じゃぁ、またあしたな」

長門「…………」ｺｸｯ

キョン（あぁ、まだ長門がくっついてる気がする……）

長門「…………」

パパ（今あいつ●●●なこと考えていたよ）

長門（ぅ、うわー!!うわー!!●●●なのはだめだよ!!）

翌日


パパ（全部本読んじゃったの？）

長門（だって暇で……）

パパ（それよりも、今日は午前中にドレーン抜けるよ!!）

長門（長かったよ……長かったよぉ）

パパ（あ、女医さんきたよ）

女医「おはよう長門」

長門「…………」ｺｸｯ

長門“さん”付け忘れた。



女医「今日11時にドレーン抜きますね」

長門「麻酔……」

女医「しないわよ」

長門「っ!!??」

女医「大丈夫。一瞬、一瞬」

長門「…………」ｶﾀｶﾀ

老人「……あんまりいじめるのは」

女医「いじめてないわよぉ!!愛ゆえに、愛ゆえによ」

長門「…………」ｼﾞﾜﾘ

女医「ドレーン抜いたらお風呂もOKだから」

長門「……お風呂？」

長門「…………あ」

長門（パパン!!パパン!!大変!!）
パパ（え、どうしたんだい？）

長門（からだ洗ってないよ!!三日洗ってない!!）

パパ（本来必要ないからね。汚れなんて情報操作で消しちゃうから）

長門（でも毎日入っていたもん!!）

長門（どーしよ!!臭いかも!!）

パパ（あっはは。だーいじょうぶ。ユッキーの体はミルキーな甘いかおりさ）

長門（うそ!!どーしよ、昨日キョン君にすりすりしたのに……）

パパ（あっはは。パパンまた殺意わいてきたよ）

長門（ぎゅってしたのに……）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

女医（やーん泣いてるー☆かーわーいーいー☆）

ハルヒ「有希ーやほー!!」

長門「涼宮ハルヒ……」

ハルヒ「今日抜くんでしょ、側にいてあげるわ」

長門「側……」

ハルヒ「どしたの？」

長門「お風呂……入ってない」

ハルヒ「大丈夫。有希の体はミルキーな甘いかおりよ!!」

長門（なん……だと……？）

パパ（ねっ!!）

長門「涼宮ハルヒ……」

ハルヒ「何？」

長門「学校は？」

ハルヒ「サボタージュよサボタージュ」

長門「さぼ……」

ハルヒ「団員の一大事だもん。有希ーぎゅー!!」ぎゅー

長門「…………ぁ」

長門（…………あたたかい）

女医「はい、てなわけで、ドレーン抜くよー」

長門「…………」ｶﾞｸｶﾞｸ

ハルヒ「有希、がんば!!」

看護師「はい、ちょっと出ていってねー」

ハルヒ「あれ？」

長門（……ガーン）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

女医「はい、パジャマめくりますよー」

めくり

女医（あら、キレイな肌）

女医「はい、ガーゼはがすよ」

べりべり

長門「いっ……いぃっ!!」ﾋﾞｸｯ

女医「じゃ、はい消毒ね」

ちょん　ちょん

長門「……っ!!……うぅ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

女医「糸切るよー」

くくっ　ぷちっ

長門「～～～～っっ!!」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

女医「もうダメ。この子持って帰る」

看護師「ず、ずるいです!!」

ハルヒ「私も!!」

消灯時間です



女医「ドレーンぬくよ」

パパ（ユッキーがんば!!）

長門（…………）ﾌﾙﾌﾙ

女医「よいしょ」

ずるるぅっ!!!!

長門「…………っ!!」

長門（なにこれ!!痛いのと気持ち悪いのが!!）

ぬるっ

長門（いやぁぁああぁぁああ!!!!）

ハルヒ（ぐ、ぐろい……）

女医「…………っ!!」ｿﾞｸｿﾞｸｯ

長門（うぅっ……やだぁ……）くたぁ

女医（………………）

看護師（………………）

ハルヒ（………………）

女医（…………）ちょん

長門「ぁぅ……」

看護師（…………）ちょん

長門「ぅぅ……」

つん　つん　ちょん　ちょん

ハルヒ「ちょっ、有希を苛めないで!!!!」

ハルヒ「ゆーきー」ぎゅー

長門「痛くない。痛くない」ｷﾗｷﾗ

ハルヒ「ほっぺー」ｳﾆｳﾆ　

長門「ほっぺ以外痛くない」ｷﾗｷﾗ

ハルヒ「ほっぺすりすりー」すりすり

長門「痛くない、痛くない!!」ｷﾗｷﾗ

女医「いいなぁ」

パパ（いいなぁ）

キョン「うーっす。きたぞー」

ハルヒ「車椅子よ!!車椅子!!」

長門「進む、進む」

キョン「はい、しずかにしろよー」

ハルヒ「キョン、有希の管抜けたわよ!!」

長門「痛くない、痛くない」

キョン「テンションたけー」

女医「じゃ、後日の手術についてだけど……」

長門「……え？」

キョン「手術？」

ハルヒ「…………なに？」

パパ（たはー!!）


終了