1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:38:18.06 ID:ER9JoE5x0

――童守小学校――


キーンコーン カーンコーン


美樹「だからさー、ホントなんだって」

美樹「北区に死の森ってあるでしょ?」

美樹「あそこの森の奥にね、古~~~い井戸があって……」

美樹「黄昏時にその井戸の中を覗いたものは……」


美樹「おぞましい怪物によって異界に引きずりこまれてしまーう! キャーこわ~い!」


郷子「あっそ、作り話にしてもありきたりで面白みがないわね」

美樹「ってホントなんだからー!」

広「で、その噂を確かめに見に行こーって話なのか?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406371088

引用元: ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」 



3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:45:19.39 ID:ER9JoE5x0
美樹「その通り! 広珍しく察しがいいじゃない」

広「珍しくってなんだよ?」

郷子「でもあそこの森って確か私有地なんじゃなかった?」

郷子「勝手に入ったら怒られるでしょ」

広「ふーん。じゃ仕方ねーな」

美樹「え、何? もしかしてビビっちゃった?」

広「は? 違えよ」

美樹「そういやあそこって雑木林が広がってるし、案外珍しい虫とかいたりして」

美樹「カブトムシとかー、クワガタとかー、案外高く売れそうなのもいるかも~!」

広「……確かにいろいろいそうだ」

美樹「それにムシムシして暑いからさ、肝試しも兼ねて……なんてどう?」

広「そーだなー」

郷子「あんたバカねー、何カンタンに乗せられてるのよ」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:47:19.49 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「おーい、お前たち。何の話をしているんだ?」


郷子「あ、ぬ~べ~」

広「いやさ、森に虫捕りに行こうかって話」

美樹「そうそう!」


ぬ~べ~「そうなのか? だが今日はもう日も暮れるしな」

ぬ~べ~「虫取りは休みの日にでも行って……良い子はさっさと家に帰りなさい」


「「「はーい」」」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:50:38.12 ID:ER9JoE5x0

――死の森――


カァー カァー


広「う~ん、いねえなーカブトムシ」

広「美樹、そういやカブトムシって1本角だっけ、2本角だっけ?」

美樹「え、本気でカブトムシ捕るつもりで来たの?」

郷子「ちょっと、良い子は家に帰るんじゃなかったの?」

美樹「何言ってんの、私達悪い子でしょ?」

郷子「やめなさいよ……変なのに襲われるわよ」

広「しっかしこの森気味悪りいな……その辺にペットの墓がゴロゴロあるし」

美樹「案外人間も埋まってたりしてね」

郷子「だからそういうこと言うの止めなさいって」


広「……お、おい。あれ見ろよ」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:53:44.43 ID:ER9JoE5x0
郷子「……嘘、ホントにあった……古井戸……しかも結構大きいし」

広「横に腐った木の板が転がって……あ、これが井戸の蓋だったのか?」

広「ボロボロになって苔がびっしり生えてら……」

郷子「周りは雑草とか蔦とかに覆われて……凄い薄気味悪い」

美樹「これはこれは……お菊さんでも出てきそうな雰囲気ね」

美樹「じゃ、広。早速井戸の中を覗いてみて」

広「! おい、何でオレが覗くんだ」

美樹「何言ってんのよ、男でしょ。それとも何、ぷぷぷ……そんなに怖い?」

広「ッ!」

郷子「やめた方がいいって……今はぬ~べ~もいないし……もし何かあったら」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 19:57:30.54 ID:ER9JoE5x0
広「いーや、見る!」

広「こんなの全然怖かねーし!」

郷子「ちょっと広……」

広「ダイジョブだって。妖怪だろうが何だろうがもう慣れっこだっての!」

広「心配すんなよ郷子、何か出てきたらオレがぶっ飛ばしてやるから」

美樹「さっすがー、よっ男前!」

郷子「もー……ホント……」


広(どうせ何も出てこねーよ……いてもタヌキか野良猫くらいだろ)


美樹「じゃ、広が見終わったら次は私達ってことで」

郷子「……」


広「……ゴクリ」


美樹「……どう、何か見えた?」


広「いや、別に……普通の井戸だぞ。完全に涸れちまってるようだけど」

広「特に何――ってうわぁぁぁあああああああっ!!!」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:01:59.09 ID:ER9JoE5x0
美樹「!?」

郷子「どうしたの!?」


広「手だ! 手だ! 何か青白い手に掴まれたっ!!」

広「スゲー力で! 中に引っ張り込む気だ!!!」

郷子「もうホントバカなんだから!!」

郷子「美樹! あんたも広を引っ張るの手伝って! 私だけじゃ踏ん張りきれない!!」


美樹「えー、何その言い方。まるでこの美樹ちゃんが太ってるとでも言いたげね」


広「ますます引っ張る力が強くなってく!!」

郷子「いいから早く手伝え!!」

美樹「分かったわよ――て、何よぉ!? この馬鹿力っ!!」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:07:05.72 ID:ER9JoE5x0
ボワァァァァァァァァ


広「!? 何か手が這い出て来た先に! 何だありゃ!」

郷子「だから何なのよ!?」

広「分っかんねーけど!! 変な空間が広がってる!?」

美樹「ダメだわ、これ無理! 私スリムだからもう限界!!」

郷子「全員引っ張り込まれるー!!」


ダッ


ぬ~べ~「お前たちっ!」


「「「うわぁぁきゃぁぁああああああああっ!!!」」」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:11:09.83 ID:ER9JoE5x0

――??――


ドスンッ


美樹「痛たたた……って何処よぉ……ここ?」

郷子「い、井戸の中……じゃないわね」

郷子「何だか物凄く……広いみたいだし」

美樹「確かに、井戸の中に落っこちたんだったら……井戸の口が上に見えるはずだもんね」

郷子「……洞窟の中……みたいな」

美樹「出口は見えないけれど。あーあ、困ったことになったわー」

郷子「誰のせいだと思ってるのよ」

美樹「ノコノコついてくる方にも責任はあるんじゃないかしらー」

郷子「いい加減に――」


ぬ~べ~「美樹、郷子! 大丈夫か」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:13:51.79 ID:ER9JoE5x0
郷子「あっ、ぬ~べ~!」

美樹「どうしてここに?」

ぬ~べ~「……どうしたもこうしたもないだろ」

ぬ~べ~「お前たちのことだ。また危ない所に勝手に足を踏み入れたんじゃないかと思ってな」

ぬ~べ~「幸い克也達が、お前たち3人が北区の森の方に向かったのを見ていて」

ぬ~べ~「仕事を切り上げて急いで駆け付けたんだよ……」

美樹「さっすがぬ~べ~! 頼りになるわ」

美樹「ついでに克也もたまには役に立つじゃないの」

郷子「本人がいないからってそういう言い方は、……ううん本人の前でも変わらないか」

郷子「――あれ、そういえば広は?」


広「おーい! こっちだよこっち!!」

??「キシシシシシ」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:18:10.90 ID:ER9JoE5x0
美樹「あ、あそこ!! 上の方にぶら下がってる……桶? ……から広の顔が見えるわ」

美樹「もしかしてあれ、井戸水を汲むための桶?」

郷子「よく見て、桶の中に別の誰かもいるわよ!」



キスメ「お前たちが落とした死体はこれかい?」

広「オレは死体じゃねーよ!!」



郷子「広の奴、あいつに捕まったみたい!」

美樹「ぬ~べ~、あれって」

ぬ~べ~「釣瓶落としだな」

美樹「……それって確か、木の上から落ちてきて人間を襲うってやつ?」

郷子「でも見た感じ子どもじゃない? 私達と……そんなに変わりないくらい」

ぬ~べ~「ああ、見た目は子どもだが……妖怪であることは間違いなさそうだ」

美樹「ついでに郷子と同じくらいぺっちゃんこね、クワバラクワバラ」

郷子「ちょっと! 私と同じくらい何がどうなんだって……?」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:24:43.53 ID:ER9JoE5x0
キスメ「人間ひとり連れ去るつもりだったのにねぇ」

キスメ「ヤマメの友釣りみたいになっちゃった……いや、それはアユだったかな」

広「ごちゃごちゃ言ってないで放せよこんにゃろー!」

キスメ「ジタバタするなら首切っちゃうよ?」

広「ひっ」



美樹「ねぇ、あいつ手にカマ持ってるわよ!」

郷子「ぬ~べ~! 早く広を助けないとこのままじゃ……!」

ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「おい、広を……いや、その子を放してやってくれないか?」


キスメ「どうして?」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 20:29:51.20 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「広は、いやここにいる子どもたちは……俺の大事な生徒だからだ」


キスメ「せいと? ああ、じゃあ、お前はせんせぇ?」

キスメ「寺子屋で教えてるの?」



郷子「寺子屋って……」

美樹「例えがやたら古いわね~」

ぬ~べ~「とにかく、お前が広を連れ去ろうとしたのがただのいたずら目的だったとしたら」

ぬ~べ~「俺はこの子達を引き連れて、さっさとここから立ち去る。ここはお前の棲みかなんだろうしな」

ぬ~べ~「それ以上の干渉は一切しない。聞き入れてくれるか?」


広「……ゴクリ」

キスメ「……」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:35:31.58 ID:ER9JoE5x0
キスメ「大丈夫、私はこれを殺さない」


ぬ~べ~「!」

美樹「良かったじゃない、話が通じる相手みたいよ」

郷子「だったら、早く広を降ろしてあげて」


キスメ「子どもはねぇ」

キスメ「たんまりと太らせてから喰っちまうのさ」

キスメ「だから今は、殺さない」

広「そっか、それは助かった……て、助かってねぇええっ!?」


美樹「あちゃー、交渉決裂ね」

美樹「ぬ~べ~!!」

ぬ~べ~「そうか、それなら――仕方がないな」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:40:58.36 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「『南無大慈大悲球苦救難(なむだいじだいひきゅうぐきゅうなん)

広大霊感(こうだいれいかん)

白衣観世音(びゃくえかんぜおん)』

白衣観音に封ぜられし鬼よ

今こそ――その力を示せ」


キスメ「!」

キスメ「お、鬼ッ!?」


ブチィ……ッ……!!!


美樹「やった! あいつの入ってた桶に繋がってた縄か何かを切っちゃったわよ」

郷子「真っ逆さまに落ちていく!」


広「落ちるー!!」

美樹「オウ!?」

郷子「こっち来るなー!!」


ドスンッ

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:45:15.82 ID:ER9JoE5x0
広「痛つつ……」

郷子「痛いのはこっちよ! ってドサクサに紛れてドコ触ってんの!!」

広「んだと!? これは不可抗力だろ!」

美樹「いーから早くどいてって」



キスメ「……ッ……」

キスメ「! 桶……私の桶は……どこ……?」

ぬ~べ~「お前が落とした桶は――これか?」


キスメ「……!」

ぬ~べ~「いいか、よく聞け」

ぬ~べ~「妖怪(おまえ)が単にいたずら目的だったら、ここまでしない」

ぬ~べ~「だが、お前が俺の生徒達に危害を加えるというのなら」

ぬ~べ~「俺は心を鬼にする」

ぬ~べ~「この左手に宿りし鬼の力を――躊躇なく使えるように」

ぬ~べ~「そうするために」

キスメ「……ひ……ひぃ」

ぬ~べ~「だから……これに懲りたらもう二度と」


ヒュルルルルルルルルル


広「!? 危ないぬ~べ~!」

美樹「何かがまた上から来るわ!」

郷子「何あれ、太い糸みたいな!!」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:51:02.16 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「!」

キスメ「!」


シュルン!


ぬ~べ~(俺への攻撃――じゃない。釣瓶落としを回収した?)

美樹「あっ、あれ見て!」

広「上にでっかい蜘蛛の巣が張ってあるぞ!」

郷子「さっきまでは何もなかったのに! いつの間に」

広「ってやめろよ! 電話線のアレ思い出したじゃねーか!」

郷子「って言わないでよ!? 私も思い出しちゃったじゃない!」


??「私は巣(いえ)を作るのが得意でねぇ。勿論、貴方たちが住めるような建物も一昼夜で作れちゃうよ」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 20:54:38.58 ID:ER9JoE5x0
広「……」

郷子「また女の子なの……」

美樹「今日やたら女妖怪出没してるけど、ぬ~べ~女難の相でも出てるんじゃないの?」

ぬ~べ~「やめてくれ……何だか背筋が寒くなるから」


キスメ「……ヤマメ」

ヤマメ「まったく何やってんだい、あんたは」

ヤマメ「外界(そと)の人間をこっちに引っ張り込んでくるのに飽き足らず……」

ヤマメ「どうやら随分と厄介なモノまで連れてきてしまったようね」


広「……ぬ~べ~の鬼の手のこと言ってんのか?」

郷子「案外美樹のこと言ってるんじゃない?(首が伸びるし)」

美樹「おんどりゃ! 誰が厄介者じゃ!」

ぬ~べ~「3人とも少し黙っていてくれないか」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:01:01.98 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「巣から逆さに吊り下がっているお前は十中八九――土蜘蛛のようだな」

ぬ~べ~「『土蜘蛛草紙』という絵巻物には、平安時代の武将源頼光とその郎党が土蜘蛛退治をした様が描かれている」

ぬ~べ~「土蜘蛛はこういったジメついた空間を好み、強靭な糸を張って営巣をするし、粘着質の糸は人を捕えるのにも使う」

ぬ~べ~「ただ、糸を口ではなく手から放つのはなかなかに珍しいが」


ヤマメ「ほほう……貴方はやたら妖怪に明るいようで」

ヤマメ「先生がどうとか言っていたけれど、民俗学者か何かなのかい?」


ぬ~べ~「いや、俺はただの小学校の教師だが」

ぬ~べ~「ひとつだけ普通の教師と違うのは、俺が霊能力を持っているということだ」

ぬ~べ~「日本では唯一の霊能力教師、といったところさ」


ヤマメ「……なるほど。通りでやたら察しがいいわけだ」

ヤマメ「そうなると、もしかして貴方は今自分達が置かれた状況も、ある程度理解できているの?」


ぬ~べ~「まあ――大体な」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:07:21.34 ID:ER9JoE5x0
広「?」

郷子「私達が置かれている状況って……どういう意味なの?」

美樹「ぬ~べ~、もったいぶらずにハッキリ言ってよ」

ぬ~べ~「要するにだ。どうやら俺達4人は“神隠し”に遭ってしまったらしい」

ぬ~べ~「さっきの釣瓶落としによってな」

広「神隠しだって?」


スルスルスルスル


ヤマメ「大方間違ってはいないかな」

ヤマメ「貴方達、有名な心霊スポットにでも行ったの?」

ヤマメ「スキマ以外の妖怪が外の人間を引きずり込むには……余程境界が薄くなっている結節点じゃないと」


郷子「って何か言いながら、降りて来たわよ!?」


ヤマメ「安心しなさいな。私はキスメ(あれ)ほど手が早い妖怪じゃないから」


美樹「って言ってるけど……」

広「大丈夫なのか、先生?」

ぬ~べ~「……、こいつは大丈夫だろ」

郷子「えーそんなあっさりと?」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:12:38.05 ID:ER9JoE5x0
ヤマメ「おやおや。ちゃんと話が通じる人間で、こちらしてもありがたいね」

ヤマメ「何しろ、鬼の手だなんて……こんな厄介モノを持っている相手に襲いかかるのは、腫れ物に触るようなもの」

ヤマメ「触らぬ神に祟りなし……いや触らぬ鬼だね」

ぬ~べ~「それはいいとしてだ」

ぬ~べ~「ここで面倒事を起こしたくないのなら、俺達をここから追い出す手引きをしてほしい」

ぬ~べ~「この異界に通じる“入口”が存在するということは、当然“出口”も存在するということだろ?」

ヤマメ「まあ、込み入った話は後でゆっくりしてあげるからさ」

ヤマメ「まずはキスメのやつに桶を返してあげてくれないかい?」


キスメ「……」


ヤマメ「これは滅法内気な妖怪でね。宿を取られるとヤドカリみたいに縮こまってしまうのさ」


ぬ~べ~「……。わかった、ほら」

キスメ「……ペコリ」


広「どこが内気なんだよ……オレ普通に襲われたんだぞ」

美樹「まーまー、過ぎたことはもういいじゃないの」

広「何だよ人ごとだと思って!」

美樹「だって人ごとだし」

郷子「はいはい、大人げないわよ……広」

広「何でオレが責められんだ!」

郷子「妖怪が出たらぶっ飛ばすって言ったのはどこの誰だった?」

広「……っ」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:19:27.55 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「キスメ……というのか、あの釣瓶落としの名前は。桶を取り返したらもう闇に紛れて行ってしまったが」

ヤマメ「ちなみに私はヤマメだよ。川魚じゃなくてさっき貴方が言った通りの土蜘蛛」

ヤマメ「好んでここに棲みついているかといったら、少し微妙なところもあるけどねぇ」

ぬ~べ~「……まぁとにかく、ヤマメくん。詳しい話を聞かせてもらえるか?」

ヤマメ「うーん、こんなところで立ち話ってのも難だし」

ヤマメ「いい機会だから、私が案内してあげても良いわ――この旧地獄をね」


広「へー……ってここ地獄なのかよぉ!?」

郷子「えっ、じゃあ閻魔大王とかがいるわけ!?」

ヤマメ「よく聞きなって、旧(ふる)い地獄さ――今ではもう本来の地獄としては機能していない」

美樹「ま、とにかくその旧地獄とやらを観光案内してくれるのね。面白そうじゃない!」

ぬ~べ~「美樹は適応力が高いなー」

ぬ~べ~(しかし、かつての地獄だと? 逆に言うならば……現在の地獄は……)



ヤマメ「付け加えるなら――蛇の道は蛇ってやつだ」

ヤマメ「貴方の話し相手は、私では不釣り合いだと思ってね」

ぬ~べ~「……!」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:25:41.87 ID:ER9JoE5x0
広「どういう意味だ?」

郷子「ヘビが出てくるから気をつけろってことでしょ?」

美樹「確かにいろんなモノが出てきそうよね。ハイスケールなお化け屋敷って感じ」


ヤマメ「とまあ、そういうことさ。どうだい、ついてくるかい?」

ヤマメ「別にイヤなら無理にとは言わないけど。私は勝手に闇にでも紛れるから」


ぬ~べ~(この妖怪の纏う妖気の感じからして、敵意はなさそうだが)

ぬ~べ~(万一、これが罠だとしたら……広達を危険にさらすことになる)

ぬ~べ~(だが、仮にこのままこの場に残ったとしても)

ぬ~べ~(食糧はおろか水さえも入手できるとは限らない……何しろ未知の環境だ)

ぬ~べ~(そして、この土蜘蛛が言う蛇の道は蛇という言葉の本意は)

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:32:43.53 ID:ER9JoE5x0
ぬ~べ~「分かった――案内を頼もう」

ヤマメ「よし来た――それでは、楽しい楽しい地底の旅へ外来人4名様をご案内~」


広「地底って……ここ地下だったのかよ」

美樹「そりゃ地獄なら地下にあるでしょ」

広「でも本当に大丈夫なのか……ついて行って?」

郷子「ぬ~べ~がそう言うんだし……大丈夫なんじゃない?」

美樹「それにしても、今日のぬ~べ~ってやたらマジメな感じよね?」

郷子「うーん、そう言われると……いつものぬ~べ~っぽくないかも」

ぬ~べ~「あのなぁ、もう少し危機感を持て」

ぬ~べ~「それから……お前たちはいつもの俺にどんなイメージを持っているんだ……」

ヤマメ「いつもはどんな感じなの?」

広「んーと。普段はおっちょこちょいなス  だけど、やる時はやるって感じかな」

ヤマメ「へー、やる時はやるねぇ。一体ナニをやるんだか」

ぬ~べ~「……広、言葉足らずだぞ」


美樹「さーて、地獄の底に埋もれたお宝探しの旅にしゅっぱーつ!」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:44:39.47 ID:ER9JoE5x0

――妖怪の山(茨華仙の屋敷)――


華扇「――何かな、この胸騒ぎ」

小町「お、不整脈かい? ようやくあたいが一仕事する時が来たか」


華扇「生憎そっちの方面でお世話になるつもりはないわ」

小町「そうかいそうかい。まあ、あんまりお仕事増やされちゃ……こちらとて身が持たない」

小町「今も邪仙が悪さをしないか監視するのに忙しくて……ああ、肩が凝るなあ」

華扇「監視って……うちに来てお菓子を食べてお茶を飲んで油を売っているだけでしょ?」

小町「うーん、あたいは菓子よりやっぱり旨い酒に美味い肴が一番かな?」

華扇「……貴女の食の好みを聞いているわけじゃないから」

華扇「第一私が邪仙って失礼ね……過去によこしまな行いをしたことも無ければ、これからするつもりもないというのに」

小町「あんたがそう思うんならそうなんだろうけどさ。あんたにとってはね」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:49:45.21 ID:ER9JoE5x0
小町「それで、さっきの胸の空騒ぎってやつは?」

華扇「――間欠泉の一件以来、地上に残留した怨霊が、わずかながら活発になっている様子」

華扇「もともとそれらは地底に蔓延(はびこ)っていた怨霊達……」


ヒョイ


野良怨霊「Oh…」


パァンッ


華扇「その怨霊達が妙に敏感になっているのが気になってね。地底に何らかの動きがあったのかな、と」

小町「それだけのことで? わざわざ地底に結びつけるなんてこじつけじゃないのさ」

小町「それより、あたいの目の前で平然と怨霊を握りつぶすのはさすがにやめなよ……」

華扇「これこそ、それだけのこと、で済ませてもいいんじゃないの?」

小町「やれやれ」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 21:52:21.03 ID:ER9JoE5x0
華扇「それよりも貴女、いい加減本業に戻りなさい」

華扇「三途の川の渡し船が欠航続きじゃ、さ迷える魂達も密になり身動きがとれなくなって彷徨うこともできなくなるでしょう?」

華扇「貴女の上司もさぞ気に掛けていることでしょうね」

華扇「まずは自分の職分に対する責任というものをもっと自覚して――」

小町「あーはいはい、もういいから! 説教は映姫様(ボス)だけで十分だよ」

小町「もともと、そろそろお暇するつもりだったのさ。けれど、貴女の監視もあくまで仕事の一環なんでね」

小町「それじゃ、また来るから。今度はこっちが他所へ連れて逝ってもいいんだよ?」

華扇「はいはい、いいからさっさとお行きなさい」


スゥ……


華扇「――さて、地底の方で妙な気配を感じるっていうのは本当なのね?」

ヒョコリ

管狐「コクリ」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 21:56:37.40 ID:ER9JoE5x0
華扇(前に霊夢に憑いて、解放した管狐――わざわざ私を頼ってここまでやってくるとは)

華扇(私達にはまだはっきりとは感じられない小さな“異変”を鋭敏に感じ取ったのかも知れない)

華扇「……少し探りを入れてみましょうか」


ザッ


竜「……」


華扇「鬼が出るか蛇が出るか、何も出てこないのか――あるいは」


44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 22:03:31.54 ID:ER9JoE5x0

――地底(旧都周辺)――


??「ったく、この世の掃き溜めってのはまさに此処のことだな」


正邪(けれども、さすがにこんなところまで追ってくる輩はいないだろ)

正邪(お尋ね者もラクじゃないな――ほとぼりが冷めるまでしばらく地底を流離っとくか)


??「お! 貴女はもしかして、お尋ね者の天邪鬼さんかな? 噂だけは耳にしているよ」


正邪「あァ? 誰だおま……、え……?」


勇儀「喜びな! お前の仲間の鬼だよ。と言っても、お前は正確には鬼に似て非なるモノか」

正邪(あ……モノホンだ……)


ガシッ

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/26(土) 22:08:22.63 ID:ER9JoE5x0
勇儀「丁度いい。酒盛りしようと思ったんだが今日はモリ(呑み仲間)があつまって無くてね」

勇儀「さっき正体不明の妖怪が珍しく地底に戻っていたから捕まえたが」

勇儀「二人酒ってのも興が足りない」

勇儀「折角だからお前も交えてやるよ。たまには気ごころの知れない者同士呑むのいいだろう」

正邪「あの……、申し訳ありませんがお断りさせてもらってもよろしいでしょうか」

勇儀「よし快諾だね! お前さんは天邪鬼らしく素直だな」

勇儀「鬼の酒盛りに誘われて物怖じしないとは、案外度胸があるじゃないか!」

正邪「……」


ズルズル……


正邪(捕まっちまった……ヤバいやつに……)

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/26(土) 22:11:21.61 ID:ER9JoE5x0

――死の森――


殺人犯「……おお、こんなところに古井戸があるじゃねーか」

殺人犯「この中に死体を入れちまえば、わざわざ穴掘って埋めることもねえ」


ドサッ


殺人犯「……よし、これでいい」

殺人犯(……念のために、ちゃんと底まで落ちたか確かめてみるか)


殺人犯(!? ない、嘘だろ……! 確かに下に落ちたはず!?)


ザッ


殺人犯「!? 上から……何か……」


「オマエガオトシタシタイハコレカイ?」「ぎゃぁぁぁぁああああああああああっ!!?」


ブシャァァッ


                      (第1話:地の底の釣瓶落としの巻・終)

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/27(日) 23:46:29.09 ID:qR/+qlng0

――童守小学校――


キーンコーン カーンコーン


玉藻「何ですって? 鵺野先生と生徒3人が行方不明になっている……と?」

リツコ「そうなんです……昨日の放課後から連絡が取れなくなっていて」

リツコ「……念のために警察には通報したんですが」


克也「そうなんだよ!」 

克也「あいつらが北区の方に向かってるのを見かけてよ……そん時は気にも留めてなかったんだが」

まこと「その後、念のためにって先生が3人のあとを追って行ったのだ……」

克也「ぬ~べ~がついてったら大丈夫だろうと思って、オレらは日が暮れたら帰ったんだ」

まこと「でもみんな、夜になっても家に帰って来なかったらしくて……」

まこと「ぼくの家にも家族の人が心配して『遊びに来ていないか』って電話があって……」


玉藻「そして――そのまま、現状に至るというわけか」


ヒュゥォォォォ


ゆきめ「鵺野先生が……行方不明っ!?」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:50:51.72 ID:qR/+qlng0
リツコ「……ええ」


克也「ああ、そうなんだよ……広達3人も」

まこと「きっと妖怪の仕業なのだ! 悪い妖怪に4人とも連れ去られてしまったのだ!!」


ゆきめ「そんな……」

玉藻(鵺野先生がついているならば、よもや大事はあるまいが……万一ということもあり得る、か)

玉藻「今日の健康診断は中止させてもらいます――いいですね、校長先生」


校長「う、うーん……」


リツコ「……あ、校長先生もいらっしゃったんですね」

ゆきめ「私も探しに行きます!」

ゆきめ「鵺野先生が苦戦するような敵だったら、少しでも戦力があったほうがいいでしょ?」

玉藻「……それはそちらの勝手だ。私が特段口を挟むことではありませんよ」

玉藻「私は私の目的に沿って行動するだけのこと。別に彼らを助けんがために向かうわけではない」

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:57:05.42 ID:qR/+qlng0
克也「オレも探しに行くッ! あいつらが行方不明じゃいてもたってもいられねぇ!!」

まこと「ぼくも行くのだ!」

玉藻「君たちはダメだ! ――更に生徒を危険に巻き込んでしまったら鵺野先生に顔向けできないからね」

克也「ッ! でもよ……」

ゆきめ「ふたりとも心配しないで。みんなは私達が必ず連れ戻してくる……だから、待っていて」

克也「……畜生、……わかったよ」

まこと「……絶対……なのだ。絶対みんなを連れ戻して……ほしいのら……」

克也「おい、泣くなよ……まこと」


玉藻(――何しろ鵺野先生は私にとって大事な研究対象だ。まだいなくなってもらっては困る)


リツコ「クラスの皆のことは私に任せて。……お願いね」

ゆきめ「――コクリ」

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/27(日) 23:59:28.82 ID:qR/+qlng0

――博麗神社――


霊夢「はー、……相変わらず誰一人参拝客が来ないわね」

萃香「何を言ってんの? 私が今参拝してあげているじゃない?」

霊夢「あんたは参拝客に含まれてないわよ」

霊夢「昼間っから酒を浴びて、お酒臭いからさっさとどっか行って頂戴」

萃香「んー? まあ、言われなくてもそろそろ出かけるつもりだったんだ」

萃香「ちょっと興味深いモノを見つけてねぇ。ちらほら様子見にでも行こうかな」

萃香「それじゃあ――また今度」


サラサラサラ……


霊夢「……」

霊夢「さて、萃香はどっか行ったからいいとして……あんたはいつまでうちに居座るつもり?」

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/28(月) 00:03:46.21 ID:iWjHv62D0
貧乏神「……いつまで?」

霊夢「さっさと帰るべき場所に帰ったら?」

貧乏神「オラァ現世でニンゲンに存在忘れ去られただ」

貧乏神「そしてこっち流されて……まったく日蔭者の棲みづらい世の中になってしもたわ」

霊夢「嘘おっしゃい。あんたが忘れ去られるって、外は共産主義に彩られて格差社会が解消されたの?」

霊夢「そんなハナシ、早苗からは聞いてないわ」

貧乏神「……」

霊夢「博麗神社は幻想郷と外の世界とを隔てる境界線上に存在する」

霊夢「――だからどちらの側にも存在しているといえるし、逆に存在していないともいえる」

霊夢「あんたはたまたま外界の博麗神社に潜り込んで、たまたま大結界を通過してこっち側に来てしまったってことじゃないの?」

霊夢「外界に今でも息づく妖怪や神霊の類は、こっちの常識にもそっちの常識にも馴染み得るもんね」

貧乏神「難しいことなぞ分からん。オラァ発想も貧困だでな」


霊夢(それとも、誰かさんが気まぐれでこっちに連れ込んだ? むしろそっちの方があり得るか)

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/28(月) 00:08:53.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「ま、理由はどうあれ私は気にしないけどね」

貧乏神「?」

霊夢「あんたが居ようが居まいが、たいして何も変わらないからよ」

霊夢「もっとも問題を起こすつもりがあるんだったら、容赦なく退治させてもらうけど」

霊夢「ただいるだけなら、問題ないってこと。もともとうちは妖怪神社なんて呼ばれてるし」

霊夢「何なら博麗神社に祀ってあげてもいいわ」

霊夢「この神社、もともと何の神様を祀っていたのか私も良く知らないし」


貧乏神「これまた……食えない巫女さんもおったもんぞ」

貧乏神「そんではいつまでも居座らせてもろうて。この神社の守り神になるがな……フェフェフェ」


霊夢「……え、さすがに今のは冗談よ」

霊夢「こっちだって、いくらなんでも貧乏神を祀ったりしたら商売上がったりだわ」


??「あら、こんなところにいたの?」


霊夢「え? そりゃ居るわよ、ここは私の神社なんだから」

霊夢「それより厄神がうちに何の用? 用が無いならとっとと山に帰ったら」


雛「はい、貧乏神さん。人間達の災厄を引き受けて、貴方に渡しに来たわよ」

貧乏神「おお、ありがたや、ありがたや。ここで使わしてもろう」

雛「そう。役に立てて良かったわ」


霊夢「はーいあんたたち――さっさと表に出なさいな」

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 00:11:05.59 ID:iWjHv62D0
――

雛「うう……ひどいじゃない……」

雛「私何もしてないのに……どうして襲われなきゃいけないの」

霊夢「何被害者ヅラしてんのよ。間接的にこっちに迷惑がかかることを自覚しなさいよね」

雛「服がボロボロに破けちゃったわ……どうしてくれるのよ?」

霊夢「いーじゃん、あんたお色気担当ってことで」

霊夢「その格好で帰りなさい」

雛「厄い……厄いわ……」


霊夢「さてと……貧乏神のやつはどこ行っちゃったのかしら」

霊夢「ま、吹っ飛ばしたから守矢神社にでも行ったのかもね」


ツンツン


貧乏神「なーに言っとるだ、まだまだ健在やがな」

貧乏神「代わりはいくらだでおるからの」

霊夢「……ったくしつこいわね」

 
89: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:18:03.58 ID:iWjHv62D0
霊夢「この際はっきり言っておくわ。うちは賽銭箱の中身は少ないけれど」

霊夢「だからといって生活に苦労しているわけじゃないのよ?」

霊夢「ほら、そっちに守矢神社の分社だって建ってるし。間欠泉の(将来的な)権益だって握ってるし」

霊夢「どちらかというと裕福な方なんだから」

霊夢「あんたがそうそう付け込むスキは――」


パチパチパチパチ……ホカホカ……


霊夢「ん?」


穣子「もう少しでお芋が焼けるわね、お姉ちゃん」

静葉「そうね、いい感じにキツネ色になってきたね」


霊夢「……」

90: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:19:50.17 ID:iWjHv62D0
霊夢「ちょっと、そこの野良神ども」


穣子「な!? 人を捉まえていきなり野良神って何よ無礼者!」

静葉「そうよ。折角いい芋が収穫できたから、貴方にも食べさせてあげようかと思って」

静葉「わざわざここの境内までやってきて焼き芋をしているってのに」


霊夢「ごちゃごちゃ言わないでいいからこっちの質問に答えなさい」

霊夢「あんたたち、そこで何を焼いているの……?」


穣子「何って……見ての通りお芋を焼いているのよ?」


霊夢「そうじゃなくて……火種に何を使ったのかって聞いてるのよ?」

91: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:22:44.38 ID:iWjHv62D0
静葉「そりゃ、私が落とした落ち葉を敷いて……」

穣子「あ、でもいまいち火の勢いが良くなかったから、神社の中にあった紙束を加えたっけ」

静葉「そうそう、壺の中に入ってた紙束を全部……そう言えばあれ、一円札の束だったかも」


霊夢「……」


穣子「でも、お陰で火の勢いが強くなったもん、別にいいよね」

静葉「あら、そんなことを言ってたら芋がちょっと焦げちゃったわ」

穣子「でも、美味しそうに焼けたみたい!」

静葉「ほら、貧乏巫女も食べる?」


ゴゴゴゴゴ


霊夢「ええ、食べさせてもらうわ――黒コゲに焼き尽くしたあんたたちをね」

92: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:26:33.80 ID:iWjHv62D0

――人間の里――


??「油揚げください、いつものやつ」

豆腐屋「はいよ、いつもご贔屓にしてもらってるから1切れサービスしとくね」

藍「あ、これはどうも」


スタスタ


藍(ふふ……あの店のお揚げは絶品だからなぁ)

藍(さて、紫様は“限りなく近くて遠いところ”にバカンス中だから)

藍(しっかりと仕事をこなさないと)

藍(――もっとも、博麗大結界は協力だから余程のことが無い限りは弱まったりしないのよね)

藍(そうだ、ちょっとマヨヒガに寄って行こうか)

藍(お土産ってことで、橙に新しいマタタビを買ってあげよう!)

93: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:30:53.39 ID:iWjHv62D0

――死の森――


ギュォォォオオオオォォォォオオ……


玉藻「――どうやら、ここで間違いないらしい」

玉藻「この古井戸の前で、鵺野先生の気がプツリと途絶えている」

ゆきめ「……井戸の奥に、穴が開いてる! 穴の向こうに……あれは……?」

玉藻「強い妖気を感じますね――どうやら、4人はあの結界の向こう側に取り込まれてしまったらしい」

ゆきめ「でも、これほどの妖気を放っている場所……どうして今まで誰も気づかないで」

玉藻「おそらく、何らかの原因で異空間と人間界を隔てる結界に歪みが発生したんでしょう」

玉藻(それが意図的なものなのか……偶発的なものなのかは定かでないが)

玉藻「だから今まで存在すら気付かなかったものが、あたかも突然現れたかのように認識できるようになった」

ゆきめ「……この結界の向こう側には、一体何が」

94: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:34:52.63 ID:iWjHv62D0
玉藻「さあて。どうやら私が人間界に来る前にいた空間とはまったく別物の様子」

玉藻「しかも、これほどの妖気を放つ結界――仮に何者かが意図的に作りだしたものだとしたら」

玉藻「相当の実力を持つ妖怪の仕業に違いない。あの鵺野先生もあっさりと飲みこまれてしまったのだ」

ゆきめ「……」

玉藻「私はこの結界の向こう側へ侵入しますが、あなたはどうします?」

玉藻「結界の向こうに何が待ち構えているか見当もつかない。何かあってもすべて自己責任――」

ゆきめ「行くに決まってます!」

ゆきめ「鵺野先生達がひどい目にあっているかも知れないのに……放っておくことなんてできない!!」

玉藻「――そうですか」


玉藻(――まったく、何故かくも非合理的で無謀な行動に駆り立てられているのか)


ゆきめ(鵺野先生、みんな……! どうか無事で……!!)


シュルルルルルルルンッ



                    (第1.5話:博麗の巫女と貧乏神の巻・終)

95: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/28(月) 00:48:14.39 ID:iWjHv62D0
【今後の予定(場合によっては変更あり)】



第2話「 旧都に佇む怪力乱神 の巻」(来週末までには更新)



第3話「 片腕の仙人と鬼の手を持つ男 の巻」(再来週末くらい)



最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」(8月中くらい)



※時間軸は指摘にあった通りぬ~べ~側は覇鬼と和解する以前の段階におけるパラレルワールドです

※毎回、何らかの形で鬼の手の出番がありますが……
 ガチガチなバトル展開は多くないかも知れないので、その点で期待外れになったらすみません

128: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:45:22.03 ID:doHbD9dS0

――地底――


コツ……コツ……


ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」

ヤマメ「貴方のその左手も相当厄介だろうよ……幻想郷の連中にとってもね」

ぬ~べ~「しかし、そのスペルカードシステムとやらはなかなか良くできていると思うぞ」

ヤマメ「いやいや、私が考えたわけじゃないんだけどね」

ぬ~べ~「おーい、お前たち――何が出てくるかわからないんだから、ちゃんと離れずについてこいよ」


広「分かってるよー!」

郷子「……て、あれ? そういえば美樹は……?」

129: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:47:40.19 ID:doHbD9dS0
――


シーン……


美樹「う~ん、なかなかピーンとくる反応が無いわね」

??「貴方、そこで何をしているの?」

美樹「何って、これはフーチってやつ」

美樹「ま、占いの一種みたいなので、これを使ってお宝の埋まっそうな場所を探してんの」

??「へぇー、それで何か見つかったの?」

美樹「うーん、まだ何にも」


美樹「……」

??「……」

130: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:50:50.94 ID:doHbD9dS0
美樹「え……あんた、誰……」

??「誰なのかしら。いいえ誰でもないわ――私はただの路傍の小石」

??「滅多に見つけてもらえない」

美樹「……い、いま……見えている……じゃない……」

??「貴方は私が見えるのね。だったら私と遊びましょ?」

美樹「あ、遊ぶって……何を? ゲーム? それともドッジボールとか……そういうの……?」


??「楽しい楽しい弾幕ごっこ――はじまりはじまりー!」

??「表象『弾幕パラノイア』」



ポワッ!



美樹「え」

美樹「……キャァァァアアアッ!!」

131: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:54:37.90 ID:doHbD9dS0
美樹「何これヤバイ! 死ぬ! まだあの世は見たくな~い!!」


ダッ!!


ぬ~べ~「美樹ッ!! そこを一歩も動くな!!」


??「今度は誰?」


シュパパパパパパパパパ!!


美樹「ぬ~べ~!!ナニコレ爆弾!? こっち来るー!!」

ぬ~べ~「南無ッ!!」


コォォォォォォ


美樹「これは!」

ぬ~べ~「お前の周りには防御結界を張った――しばらくは持ちこたえられるだろ」

ぬ~べ~(これが弾幕か! 敵の姿は見えないが――とにかくは向かってくるタマを鬼の手で斬る!!)


シュパァァァァァァァン!!!


??「! えぇ、腕一振りで弾幕を弾いちゃったの?」


ぬ~べ~「本体は――そこか! 闇に紛れし物怪よ、その正体を現せ!」


カッ!


こいし「!」


ぬ~べ~「お前か! 美樹に攻撃を仕掛けたやつは」

美樹「私は最初から見えてたけどね! ていうか、また女妖怪!?」

132: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 13:58:56.14 ID:doHbD9dS0
こいし「貴方にも私の姿が見えるの?」

こいし「……うふふ、やっぱり注目を浴びるのも悪くはない気分だわ」


こいし「それじゃ、次行くわよ――本能『イドの解放』」


シュンシュンシュンシュン!!


美樹「アンビリーバボー! ハート型の爆弾が一杯、ステキじゃないの」

ぬ~べ~「自分は安全圏にいるからって、悠長なことを……」


ぬ~べ~(落ち着いて避けていけば――何とか回避はできそうだが)

ぬ~べ~(ここは一気に片付けるか。うまく行くかは五分五分――無数の霊気が充満し、妖怪にとって非常に棲みよいこの環境)

ぬ~べ~(こいつの秘める力も、一段と発揮できるはずだ)


シュポンッ!!


ぬ~べ~「俺の可愛い管狐よ――飛び交う弾幕を吸い取ってしまえ!」


くだ狐「クウ――――ン!!」

133: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:01:32.78 ID:doHbD9dS0
ギュォォォォォォォォォォォン!!


こいし「!!」


くだ狐「……ごっくん♪」


ぬ~べ~(よし――どうやら上手く飲み下せたようだな)


こいし「すごーい! 貴方、変わった遊び方をするのね」

こいし「私もペット、持ってるわよ。前にお姉ちゃんに貰ったんだー」


ぬ~べ~「そうか、機会があれば――また見せてもらいたいものだな」


こいし「さあ、もっともっと遊びましょ!」


ぬ~べ~(どうやら、こいつは美樹を襲うつもりだったわけじゃないな)

ぬ~べ~(単純に、見つけてもらって喜んで、遊びのつもりで勝負を吹っ掛けただけ)

ぬ~べ~(頭よりも先に手が動く――無邪気な子どものようだ)

136: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:23:10.63 ID:doHbD9dS0
 

――

こいし「行くよー」

ぬ~べ~「よし、来い」

ぬ~べ~「お前が遊び疲れるまで――俺が相手になってやる」

ぬ~べ~「もし、先にこちらがバテてしまった場合には――後は頼むぞヤマメくん」

――



134: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:11:35.85 ID:doHbD9dS0
――

ヤマメ「はいはい、分かったよ」

美樹「ありがと、土蜘蛛さん……私を安全圏に引っ張りこんでくれて」

美樹(それにしても……管狐ってあんなビジュアルだったんだ……)

郷子「先生が結界を張ってたのに、何でヤマメさんの糸で美樹を回収できたの?」

ヤマメ「――どうも、私がその子を助けることを想定したうえで弾幕が止んだ間に結界の強さを弱めたらしい」

ヤマメ「意外なくらい信用されちゃったもんだ、私もアブナイ妖怪なんだけどさ」

ヤマメ「しかしなかなかデキるねぇ、貴方たちの先生さんは」

広「当然さ。先生はこういう方面だったらホント頼りになんだよ」


ヤマメ(さすがにアレが覚妖怪の“変種”だということまでは考え至っていないだろうけれど)

ヤマメ(その性質については、この短い交戦の中である程度見抜いている様子)

ヤマメ(わざわざ引き連れてきちゃったけど、傍から見ているだけでも結構面白いね――この人間達)

137: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:25:12.79 ID:doHbD9dS0

――人間の里(郊外)――


ザワザワ……


妖夢(おかしい……何かしら、このざわつきは)

妖夢(いくら博麗神社に続く獣道が近いとはいえ……普通じゃない)

妖夢(明らかに何か、変調が生じているわ)

妖夢(幽々子様からお買い物を仰せつかって人里まで来たけれど、これは霊夢に会って確かめた方が)


里人A「助けてくれぇぇええええッ!!」


妖夢「!」

138: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:26:54.71 ID:doHbD9dS0
ダダダダッ ドテッ


里人A「痛ッ!」

妖夢「! どうした――」

里人A「悪かった……もう二度と……道端に 画雑誌(●●本)なんか捨てねえッ!!」

里人A「だから……命だけはぁッ! 許してくれッ!!」


ダダダダッ


妖夢「おい!! 一体何に追われて――」




??「罪人」

139: ◆8c/Sw4f94s 2014/07/30(水) 14:29:48.18 ID:doHbD9dS0
妖夢「誰?」


ギラリ


はたもんば「斬る」

はたもんば「罪人は、首を斬る!」




妖夢「――何者なの、貴方は」

                             (第2話につづく)

161: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:03:14.30 ID:Hh5NDJrr0

――地底――


コツ……コツ……


郷子「はぁー、もう足がクタクタだわ……」

広「そーか? じゃ、……背負ってやってもいいぞ」

郷子「な、何よ急に! 別にいいわよ、そんなに疲れてないから」

広「む……何だよ、折角ちょっと親切心でっていうか……」

郷子「いいのいいの! 余計なお世話」

広(んだよまったく……郷子を巻き添えにしちまったのはオレなんだから……ちっとは罪滅ぼしにって思ったのによぉ)

郷子(自分だっていくらサッカーで鍛えてるっていっても疲れてるでしょ……)

郷子(それに私が2人をちゃんと止めていたら……ぬ~べ~にも迷惑かからなかったし)



美樹「いやはや、アツアツ過ぎて妬けますね~あのお2人さ~ん」

ヤマメ「そうだねぇ、気をつけないと“橋”のたもとでまた危ない目に合うよ」

美樹「橋って?」

ヤマメ「ようは地上と地下を結ぶ縦穴のことさ――そこの門番として橋姫がいる」

美樹「ハシヒメ?」

162: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:07:26.39 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「橋姫というのはだな、ハァハァ……簡単に言うと橋に宿った心霊をだな……ハアハア」

ぬ~べ~「橋を守る女神として……ゼーゼー……たてまつったもので……」

ぬ~べ~「“嫉妬に狂った女性”や……“愛する人を待ち続ける女性”の象徴でもあり……フー」

ぬ~べ~「そもそも橋ってのは……こちら側と向こう側を隔てる境界と言う意味で……」


美樹「やだ、ぬ~べ~。何ヤラシイこと考えながら説明してんの?」

美樹「しかも女神って……誰のことを想像してるのかしら~」


ぬ~べ~「お前なぁ……こっちはずいぶん体力消耗してるんだぞ……」


ヤマメ「結構な時間付き合わされたもんねぇ」

美樹「でもつまり、また女妖怪が出てくるってことで間違いないわけね」

美樹「……もしかして、このゲンソーキョーってとこ、実は女しかいないの?」

ヤマメ「男もいないことはないけれど……まあ、遭遇しやすさの問題かな」

163: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:09:53.77 ID:Hh5NDJrr0
ぬ~べ~「その点を深くは追及しないが……ここに棲む妖怪が“少女”の姿で現出する場合が多いのに理由はあるのか?」

ぬ~べ~「妖怪が本来持っている怖さ、ありのままの姿がすっかり裏側に隠されてしまっているような印象を受ける」

美樹「むー、良く分からん」

ヤマメ「ありのままねぇ」

ヤマメ「それじゃ、試しに私のありのままの姿ってやつを見せてやろうか?」

ヤマメ「この膨らんだ下腹にナニが隠されているのかわかるかい?」

美樹「え、ヒミツ道具とかを隠してんの? 見せて見せて~」

ぬ~べ~「違う違う……たぶん蟲の神秘を見ることになるから止めておけ」

164: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:13:06.38 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「ま、今のは軽い冗談だよ」

ヤマメ「至極大雑把に言うならば、ここに棲む妖怪達はすっかり丸くなってしまってるから……かな」

ヤマメ「箱庭の中で妖怪や内側の人間その他が共生するためには、力のあるほうが丸くならないとしょうがないのさ」

ぬ~べ~「ふーむ……言わんとしていることは分かるぞ」

ぬ~べ~「“弾幕ごっこ”という決闘方法も、箱庭を壊さずに維持する上で有効と言えるものな」

美樹「いや、全然わかんないんだけど。だからなんで女の子ばっかになるの?」

ヤマメ「……」

ぬ~べ~「……」

ヤマメ「神も妖怪も幽霊も、つまるところは人間の心の作用によって生れて来るんだ」

ヤマメ「よく言う所の“偶像(アイドル)化”だね」

165: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:17:18.90 ID:Hh5NDJrr0
ヤマメ「現世の人間が思い描く妖怪達は、怖いものから少女(アイドル)に変化していったからなんじゃない?」

美樹「はーなるほど。要するにぬ~べ~や克也みたいなス  連中のせいでここの妖怪が女の子になっちゃったってことか」

美樹「おまけに、みんなペチャ  ばっかで張り合い無いわね~!」

ぬ~べ~「妖怪のアイドル化……確かにそういう解釈も可能なのかもな」

ぬ~べ~「だが俺は断じて小  愛者なんかじゃないぞ……」

ヤマメ「あれ、そうなの? 先生なのに?」




「きゃああああああああっ!!」「おいお前、郷子を放せ!!」

「貴方達に恨みはないけれど、襲う理由ならいくらでも拵えられるわ。見せつけられて妬ましいからよ」




ぬ~べ~「またなのかー……まったく」


ダッ!


美樹「私達に迷惑ばっかかけて、2人とも子どもよねー」

ヤマメ「貴方達、妖怪に付け込まれる才能があると思うよ」


ぬ~べ~(宇治の橋姫の伝承では“嫉妬の鬼”という側面も取り上げられている)

ぬ~べ~(ヤマメくんが言っていた“蛇の道も蛇”とは――もしや橋姫を指して言った言葉なのだろうか?)

166: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:21:36.55 ID:Hh5NDJrr0

――無縁塚――


ざわ・・ ざわ・・


てけてけ「足……いるか……」

屠自古「……イラネ」

てけてけ「足いるか?」

屠自古「……ヤルヨ」

てけてけ「……大根」

屠自古「……ア?」


小町「う~ん、自称仙人が怨霊の動きがどうこうっていってたから、一番そういう影響が顕著に出そうなところにやってきたけど」

小町「特に問題はないかな」

布都「うむ、何の問題も無かろうぞ」

布都「我が主も何やらイヤな予感がすると案じておられてな」

布都「とりあえず適当なところに行って、様子を見て、報告して安堵してもらおうと思っての」

167: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:30:23.71 ID:Hh5NDJrr0
布都「さてと、屠自古。もう私は帰る」


屠自古「……オウ。アバヨ!」

てけてけ「……」


ポンッ


てけてけ「っ……」

小町「冥土の土産に、お足なんかつけないでいいんだよ」

小町「ここの住人達は、(ほとんど)誰も貴女のことを怖がったりしないし、成仏するのを妨げたりもしない」

小町「外界の者達は、すっかり貴女のことを忘れてしまった――ま、形の上ではそういうことになるからね」

てけてけ「……もう、足を引っ張られることはないのか?」

小町「当然。もう誰も邪魔なんてできやしないさ」

小町「じゃ、逝こっか。輪廻転生――貴女の翻弄された魂を救済する、永い旅への船出だよ」

てけてけ「うん」

168: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 01:34:28.96 ID:Hh5NDJrr0
布都「霊ではなくあくどい妖怪でも現れたならば、一肌脱いでも良かったのだが」

布都「ふふ――昔の血が騒ぐというものよ」

屠自古「……」




屠自古「……ナニモノダ」

怪人A「……」


スゥー




布都「え、何じゃと?」

屠自古「……ヤレヤレ」

173: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:06:04.07 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


布都「んー、誰じゃ、おぬしは」

屠自古「……」


怪人A「……」


布都「何とか言ってくれんかのう?」

屠自古「……」


ヒソヒソ


布都「こやつ、何者じゃ? ――人間にも見えるし妖怪にも見えるし亡霊の類にも見えるし」

布都「私のカンで見抜けぬ相手など……初めてだぞ!」

屠自古「……ウソツケ」

174: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:08:42.95 ID:Hh5NDJrr0
怪人A「……」


ヒソヒソ


布都「どうする、とりあえず火でもつけて燃やすか?」

屠自古「……ナンデヤネン」

布都「あまり良からぬ雰囲気を醸し出しているのでな。こういった面妖な輩は早めに叩いた方が」

布都「いな、まずは道教の教えを説いてとりあえず改心させる契機を与えてから潰すか」

布都「宗教家たるもの、一応それらしい手続きを踏んでからの方が――」

屠自古「……オイミロ」


シーン


布都「――む、消えたか」

布都「まあ消えてしまっては仕方あるまい、帰るとしよう」

屠自古「……ホウコクスル?」

175: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:13:56.72 ID:Hh5NDJrr0
布都「ふむ」

布都「……この程度の瑣末なこと、わざわざ太子様のお耳に入れるまでも無かろう」

屠自古「……オイミロ」


ザッザッザッザッザッザッザッ


ミサキABCDEFG「「「「「「「……」」」」」」」


シャン…… シャン…… シャン…… シャン……


布都「……」

屠自古「……チョットヤバクネ」

布都「ほほう――修験者の一行か。無縁塚で鍛錬を積むとは見上げた心構え」


スタスタスタスタスタスタ……


布都「おう、貴方達はどちらへ向かうつもりじゃ?」

屠自古「……」

布都「ようし、我らも一行についてゆくぞ――何処に向かっているのか気になるのでな」

屠自古「……ソレデイイノ?」

176: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:21:54.08 ID:Hh5NDJrr0

――魔法の森――


ザワザワ……


蓮子(ここは……どこなのだろう)


蓮子(星や月が見えるような時間帯ではない)

蓮子(周囲は見渡す限りの原始林、加えて高温多湿――)

蓮子(ううん、原始林とは言い切れないか、原生林とみなすのが妥当ね)


蓮子「ごほっ……ごほ……」


蓮子(この気管から肺臓を蝕む異様な空気……毒性のあるガスが漂っている? あるいはまさか枯葉剤?)

蓮子(それとも、到るところに生えている茸の胞子がアレルゲンになって……?)

蓮子(この見るに堪えない無数の茸の群生……これは食用になるのかしら)

蓮子(うぐ、何だか視界がぼやけてきた……幻覚作用なんかじゃないよね?)

蓮子(……まるでマジックマッシュルームにでも手を出したような、奇妙な感覚)

177: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:23:57.85 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私はXXXX年7月Y日午前Z時00分00秒にメリーと会う約束をして)

蓮子(案の定遅れて、待ちくたびれていたメリーに声を掛けた――)




蓮子「ごめーん……待った、メリー?」


??「かえして・・・」


蓮子「え、……?」




メリーさん「わたしのお人形……手足が……ないの」

メリーさん「かえして……手足を……かえして……」




蓮子(違う……メリーじゃない)

178: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:26:21.05 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(全身真っ白な服を着た女の子、手足の無い人形を抱えている)

蓮子(まるで辺り一面暗闇の底から響き渡るかのような……暗く淀んで、そして悲しみ愁いを帯びた声)

蓮子(とてもミステリアスな存在だけれども……同時にそれはとても怖い存在でもある)

蓮子(これは、メリーが見ている夢なのかも知れない――そして、私は今それを幻視している?)

蓮子(それはおかしい――だって今夜はまだ本物のメリーと落合ってないんだから)

蓮子(だとしたら、やはり夢――これは私の夢?)


メリーさん「わたしの……」


蓮子(この女の子と四肢をもがれた人形は、何かの暗示?)

蓮子(女の子と人形の関係――四肢をもがれた人形を弄ぶ女の子?)


メリーさん「わたしの手足……かえして……!」


ブチィっ!!!!


蓮子「あ――」

179: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:28:58.87 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(切られた……違う、斬られた? ううん違う、これはもがれたって言うやつだ)

蓮子「いや、それも違う」

蓮子(もがれたと思っていたけれど……もがれていない。やはりこれは夢の中)

蓮子(とするならば、女の子と四肢をもがれた人形はやはりの暗示)

蓮子「私がもがれた人形ということは、その人形である私を弄ぶ女の子は――」


スゥ……


蓮子「女の子が消えた! え、何この手の平のうちの感触――」


人形「かえして」

180: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:31:06.41 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「っ!」


ポトッ


蓮子(握っていた。握らされていた……いつの間にか。――私の手に)


人形「……すてたね」


キィィ


人形「……すてたね!」


キィィィィィ


人形「……すてたね!!」


キィィィィィィィィィ


蓮子「ぐ……」

蓮子(どうすればいい? どうすればこの悪しき夢から逃れられるの、ねぇ、メリー)

181: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:33:36.23 ID:Hh5NDJrr0
蓮子(私が人形を思わず手放した行為――それを彼女は『捨てた』と表現した。強い憎悪と憤怒の感情を伴って)

蓮子(まずは、この人形を拾い直して――よく調べてみることが先決なの?)


ヒョイ


蓮子「あ……」


??「……この人形には、霊魂がこもっているわ」

アリス「普通の人間は、生ける人形に触れてはいけない。だから貴女の手元にあるべきじゃない」

上海人形「シャンハーイ」


蓮子(――また別の操り人形? そして、この人は……)


人形「……かえ……して……」


ジタバタ


アリス「――ずっと、探していたのね。でも、見つからなかった。ううん、見つかるはずがなかった」

アリス「とても長い時間――あなたにとっては永遠に感じられるように永いときを費やして、ずっと探していたのね」

182: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 07:36:33.60 ID:Hh5NDJrr0
蓮子「貴女は?」

アリス「ついておいで、近くに私の邸(いえ)があるわ。もしかしたらあなたの力になれるかもしれない」




蓮子「え、私――の―――力、に―――――」

シュルルルルルルルン……シーン……




アリス「あ……ごめんね。人間(あなた)に言ったんじゃなくて」


アリス「――人形(あなた)にね、言ったのよ」

メリーさん「……」


アリス「あたたかい紅茶を淹れてあげる。ゆっくりと、人形(あなた)の気持ちを聞かせて頂戴」


                                        (つづく)

185: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:40:18.89 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


ジリ……


妖夢「何者だ――と聞いているでしょう」


はたもんば「許さん」


妖夢(……見たところ、刃物類の……付喪神?)

妖夢(けれど、この妖怪らしさをありありと残す姿――この幻想郷において存在する物怪とは相容れない凄みを持っている)

妖夢(この前起きた異変の鍵になった、打ち出の小槌の影響で突然変異が……?)

妖夢(でも、あの一件は終息したわけで、もう問題ないって霊夢も言ってたわ)

妖夢(だったら、どこからこんなヤツが沸いて……)

妖夢(――外から? 外界から流入してきたというの?)

妖夢(でも、道具自体は結界を無条件ですり抜けることができるのと違って)

妖夢(付喪神になったら容易にはすり抜けられないハズよね?)

186: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:45:14.99 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「む!」


タッ……ヒョイ


はたもんば「許さんぞ」


妖夢「この雑誌を捨てたから斬るとか言って……」

妖夢(なになに……『白玉楼の淫美な庭師~禁断の剪定   ~』……?)


パラパラ


妖夢「……、……、……な!?」

妖夢「なんだこれはぁー!!!!」


スパーン!


妖夢「あの里人(ケダモノ)めぇ!! 許さん!!」

はたもんば「我ははたもんば、罪人は――」

妖夢「刀の錆にしてくれるわーっ!!!」

187: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:51:01.93 ID:Hh5NDJrr0

――アリス邸――


アリス「ふふ。どう、お口に合うかしら?」

メリーさん「……コクリ」

アリス「そう、良かったわ」

メリーさん「……」

アリス「早く本題に入って欲しいのね――」


上海人形「ソウチャーク」

人形「!」


アリス「右手、左手、それから右足――これらはあの人間(女の子)のいた場所の周りに隠されていた」

アリス「あの子の代わりに私の操り人形が回収して来たわ」

アリス「これらは元々貴女が持っていて、貴女が自分で隠したのね?」

メリーさん「……、……」

アリス「そして」


スッ


人形「あ・・・・」


アリス「――これが、人形(あなた)がずっと、本当に探し求めていたもの」

アリス「――貴女の世界から失われた貴女自身(あなたの心の拠り所)なのね」


メリーさん「左足・・・・・・私の・・・私の左足・・・!!」


188: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:55:09.35 ID:Hh5NDJrr0
人形「――」


……スゥ


アリス「四肢を取り戻した人形は消えた――貴女が貴女自身を取り戻したことで」

アリス「貴女が自らの遺志を仮託した人形は役割を終えて、貴女の中に戻っていった」

アリス「辛かったのね、苦しかったのね」


めぐみ「・・・・う・・・ひっく・・・・」


アリス「貴女にとっては本当に永い時間だったんだと思う――他の誰からも、貴女自身からも忘れ去られた人形の左足は」

アリス「いつしか私の手元に渡っていた――私が、たまたま人形遣いだったからかもしれないし、そうでもないかもしれない」

アリス「そしてこのもがれた人形の左足を、私はどうしても手放せなかったのよ」

アリス「理由は分からない――でも、いつかこの左足が、本来あるべき場所に帰ってゆく」

アリス「そんな予感がしていたから、ずっと捨てずにしまっておいた」

アリス「そして、今、無事あるべき場所に帰っていった――“お帰りなさい”」


めぐみ「ただいま・・・・」


アリス「さ、もう貴女は何にもこだわる必要はない。私の存在にこだわる必要もない――“お帰りなさい”」


めぐみ「・・・・さようなら。ありがとう」


スゥ


アリス(帰って行った――けれども、これであの子が成仏できたのかどうかは私には分からない)

アリス(強い怨恨や辛苦……それらの負の感情を伴って彼女と一心同体と化していた人形)

アリス(その人形と彼女をつなぐ“糸”を切り落としただけ――彼女の傀儡子としての側面を剥ぎ取り、普通の幽霊に戻したにすぎない)

アリス(それから先のことは、私にはどうしようもない)

アリス(私は死神でもなければ、幽霊(にんげん)の心に寄り添える人間でもないのだから)

189: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 22:59:15.11 ID:Hh5NDJrr0
アリス「……」

アリス(それにしても、外来人と外来霊が同じ頃合いに幻想入りして、同じ魔法の森で居合わせるなんて)

アリス(偶然にしては出来過ぎよね――おまけに測ったようなタイミングで人間はスキマ送り)

アリス「ったく、あいつが何か企んでるの?」

アリス「――でも、これ以外に目立った兆候はまだ見受けられないし、私があれこれ考えることでもないか」


アリス(――さてと、ティーカップを洗ってきましょう)


スタスタ


上海人形「……」

上海人形「……」


ピョンッ ピョンッ


上海人形「マリサーキヲツケテー」

190: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:03:32.82 ID:Hh5NDJrr0

――人間の里(郊外)――


妖夢「魔理沙ー!」

魔理沙「ん、何だ妖夢。また通り魔でもやってんのか?」

妖夢「またって何よ! それよりこの辺りで、顔が卑猥そうな里人を見なかった?」

魔理沙「見てないぜ。というか、どんな顔のやつだよそれ」


ギィィィィ


はたもんば「罪人は、何処だ!!」


魔理沙「わっ! 何だコイツは!」


妖夢「く、あの下劣者め! 私はあちらを探す――はたもんばはそちらを探して!」

はたもんば「よかろう」


ダッ――ストンッ


魔理沙「! 妖夢ー。お前買い物袋落としたぞ。中身も入って……」

魔理沙「ってもう行ったか――仕方ない、ありがたく頂戴するとしよう」




妖夢「て、ちょっと! 返しなさいよ泥棒!」


クルッ


はたもんば「盗人?」

191: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:09:02.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「ん? おい妖夢、あのゴッツイ奴が振り返って」


はたもんば「盗人は、首を斬る!!」


ギュィィィィン!!


妖夢「!? 危ない、魔理沙!!」


ガスッ!! ギギギギギギ……


はたもんば「斬る!!」

魔理沙「お、おいおい……いきなり襲ってくるとはよ!」

魔理沙「幻想郷のルールってモンをお前分かってんのか?」


ギギギギギギ……


妖夢(――ミニ八卦炉であの車輪状になった剣を受け止めたか)


はたもんば「……」

魔理沙「八卦炉(こいつ)にはいろんな能力が備わっていて――魔除けにも使えるんだ」

魔理沙「さーて――売られたケンカは掛け値なし、きっちり買い取るからな!」

魔理沙「恋符『マスター」


ピシピシピシッ……

192: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:12:22.69 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「んなっ!?」

はたもんば「罪人め、許さんッ!!」




妖夢「八卦炉にヒビがっ! 回避して魔理沙!!」


シュンッ!!


魔理沙「言われなくてもそうするぜ! クソッ、私の宝物によくもキズを……!」


はたもんば「許さんぞォ!!」


魔理沙(とりあえず空中に逃れたが――コイツ、まるで会話が成り立たないな)

魔理沙(妖怪らしさ丸出しってやつだ! スペカなんてハナから理解できてねーだろ!)

魔理沙(第一、私が罪人だと? 何言ってんだコイツ……私はただのシーフなんだぜ!)

魔理沙(――どうして私が首を斬られないといけないんだよ!!)

193: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:16:42.60 ID:Hh5NDJrr0
キラーン


妖夢「魔理沙、貴女の箒が! 早く下に降りた方がいい!」

魔理沙「なに、私の箒がどうしたって……痛ッ!」

妖夢「側面が――鋭利な刃物に変化しているわ!」


シュタッ


魔理沙「手が・・・! 手がー・・・!!」

妖夢「ちょっと大袈裟ね……」


はたもんば「罪人、逃してなるものか」


ジリジリ……


魔理沙「あんにゃろ、よくも……やりやがったなッ……! 降りた拍子に帽子も落としちま――」


ギラリ


魔理沙「って何だこりゃ、帽子のつばも刃先になってる!」

195: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:23:41.09 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(――今のはたもんばの力、幻想郷流に言うなら“あらゆる物を刃物に変える程度の能力”ってところかしら)

妖夢(――変質者、魔理沙と、たとえ悪事を働いたと言えども問答無用で殺しにかかっている)

妖夢(このまま放置していたら、マズイわ)

妖夢(外界から連れてこられた人間と違って、人里の人間が妖怪に殺され続けたら――)


はたもんば「斬る」


魔理沙「ちっ……今度は油断しねぇぞ」

妖夢「――待って、魔理沙」

妖夢「もともと、はたもんばを魔理沙の前まで引き連れて来たのは私なんだから」


妖夢「私が、こいつの相手をするわ」


ジャリ……


はたもんば「……」

196: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:28:44.96 ID:Hh5NDJrr0
魔理沙「おい待て妖夢! それじゃ私の腹の虫が納ま――」


スゥー


魔理沙「! 誰だ」




??「――赤が好き? ――白が好き?」




魔理沙「は?」


怪人A「それとも――青が好き?」


魔理沙(何なんだよ今日は……ヘンな連中がやたらめったら現れやがって!)

197: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:39:41.96 ID:Hh5NDJrr0
妖夢「この魂魄妖夢、斬れぬものなどあんまり無い! ――尋常に勝負せよ」


はたもんば「我を邪魔立てするか!」


妖夢(――とはいえ、八卦炉にヒビを入れるとは尋常じゃないわ、あの切れ味)

妖夢(考えられる理由は、この妖怪が外界でも力を失っていないから?)

妖夢(本来なら外界で居場所を失い、力を発揮しづらくなった妖怪が流れ着く場である幻想郷)

妖夢(一方で、現世においても外界で力を発揮している外来妖怪なら……相対的な強さが上がるということ)

妖夢(――いや、それは憶測にすぎないし、今は考えていても仕方がない)

妖夢(――ともかくも、今やることは目の前にいる敵を斬ること!)


はたもんば「退け」

妖夢「食らえ! ――断霊剣『成仏得脱斬』」


ブォン!!

199: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:44:34.64 ID:Hh5NDJrr0
はたもんば「退けッ」


ギュルギュルギュルギュル!


妖夢「! 弾幕(剣捌き)を斬られたか――」

妖夢(両刀を交差させて舞い上がらせた剣閃の柱――それを意図もあっさりと)

妖夢(やはり、弾幕勝負ではケリをつけられないわ)

妖夢(かくなる上は、体術・妖術を駆使して――直接的な斬撃でこいつを仕留める!!)


はたもんば「退けッッ!」

妖夢(――楼観剣!)


キィ――――ン!!  ズザザザザザザザ!!


はたもんば「ぬぅ!」

妖夢「くッ!」

200: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:49:56.22 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(タテに廻る車輪剣を楼観剣の腹で受け止めることができた!)

妖夢(相手の勢いに押されてここまで後退りしてしまったけど――魔理沙(ターゲット)から距離を置くことになり好都合ね)

妖夢(後は押し負けないこと!! 機を見計らって相手の急所を貫く!!)


ミシィ……!


妖夢(! 馬鹿な、一太刀で霊十匹を片せる楼観剣に……亀裂がッ!!)


はたもんば「退けッ!!!」


ギュォォォォォオオオオ!! ――パーンッ


妖夢「しまった! ――車輪剣の回転速度が急激に増して、勢いで楼観剣が弾かれ――」




ブシュァァァァ!!

201: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:51:30.58 ID:Hh5NDJrr0
妖/夢――シュルルン!

半霊「ホッ……」




はたもんば「!!」


ザッ


妖夢「――こっちよ」

妖夢「貴女の刃の餌食になる寸前に、半霊と入れ替わったわ」

妖夢「魂符『幽明の苦輪』で私の“みがわり”に仕立て上げて」


ヒュルルル ストンッ


妖夢「宙を舞った楼観剣も私の手元に戻った――少し歯毀れしたけれど、まだまだ十分使えるようね」



はたもんば「……」

202: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/01(金) 23:57:58.07 ID:Hh5NDJrr0
妖夢(とはいえ、あの車輪剣に対抗するには――やはり家宝(白楼剣)を使うしかない)


はたもんば「……」


妖夢「私はまだまだ修行の足らぬ未熟者――けれども、お前を倒すためには」

妖夢(私ではあの妖刀(はたもんば)を斬ることなどできない――その迷いを断ち斬れ)

妖夢(これほどまでに罪人を裁き殺めんと執心するこの怪異――その混迷なる精神を断ち斬れ)


はたもんば「おおおッ!!」


ギュォォォォォォォォォォォ


妖夢「私の師である妖忌様に、無様な姿を曝け出すやも知れないという――心の弱さ」

妖夢「私の魂と魄の弱さを、断ち斬れぇ―――――――ッ!!!」




パリィィィィィィィン

203: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:02:55.61 ID:gBEcaEdI0
妖夢「……、……った……」


フラリ


はたもんば「見事。我、あるべき場に……帰らん」


シュウウウウン……


妖夢「度し難い敵を、斬ることができました。お祖父様……幽々子……様」


ジャリ……


??「ほら、あんたの大事な買い物袋――ここに置いてくよ」

赤蛮奇「首がどうだこうだって、大騒ぎしてたから……気になって陰から様子を見てたの」

204: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:08:50.46 ID:gBEcaEdI0
妖夢「zzzz……」

半霊「zz……」


赤蛮奇(あら、寝てる。今ので相当精神力を費やしたのか?)

赤蛮奇(そして、あのはたもんばとか言う付喪神……元の妖刀の姿に戻った途端、消えてしまった)

赤蛮奇(けれども、それは折れてはいなかった――物理的に斬られたわけじゃない)

赤蛮奇(じゃ、何を斬られてしまったんだ? 私にはよく分からないね)

赤蛮奇(そして消えた先は……たぶん、結界を超えて外の世界へ)

赤蛮奇(でもあれほど強い妖怪なら――普通は大結界に遮られて出入りなどできないはず)

赤蛮奇(何者かが結界に干渉して、異変でも引き起こしてるんじゃないでしょうね?)


赤蛮奇「まー私には関係ないけど」


里人A「助けてくれぇえええッ!! ――生首が空を、飛んでるゥっ!」


ダダダダダダッ


赤蛮奇(え、私のことばれた!? 上手く溶け込んで里に棲んでるってのに!)


ハゲ頭「ぱたぱた、ぱたぱた」


赤蛮奇(え、な……何アレ、は……)

207: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:21:46.12 ID:gBEcaEdI0

――??――


メリー「おーい、蓮子。いい加減起きなさいよー」


蓮子「……うう~ん……うん……? はっ!」


蓮子(――夜空が見える。現在時刻午前2時22分22秒、……胡蝶の夢としては少し長かったかも知れない)

蓮子(それにしても、なぜあの女の子は私に対してあの人形を見せたんだろう)

蓮子(いや、私が見たかったのか? 私があの人形を見たかったから、あの女の子が私の夢に現れたのだろうか)

蓮子(でも、夢の現象学の知見からすると――あ、ううん、あれこれと思索を巡らすのは後にしよう)


ガタッ


蓮子「メリー! メリーなのね!! 良かった、メリーはちゃんといてくれたのね」

メリー「何言ってるの……今更? いつも貴女の隣にいるじゃない」

208: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:27:23.05 ID:gBEcaEdI0
蓮子「ふふ……ほんのちょっぴり怖い夢を見ていてね。夢と現(うつつ)の境界が曖昧になっていたのよ」

蓮子「……もう少し時間があれば、理論的な解析も可能だったかもしれない」

メリー「ふぅん。――でも時差の引き算がパッとできない蓮子なんだから、そんなことがあってもいいんじゃない?」

蓮子「それとこれはまたベツモノなのよー」

メリー「まあ、それより――早速今夜の秘封倶楽部の活動を始めようじゃないの」

蓮子「そうね。……えーと、今日は何をする予定だったっけ?」

メリー「ほら、あの有名な怪談的都市伝説について調べようって言ってたでしょ。降霊術で呼び出しを試みようと」

蓮子「うん。あれ、それで何を呼びだそうとして――」


メリー「――私、メリーさん。今貴女の眼の前にいるの」


蓮子「きゃぁぁあああああっ!!!」

ギュ

メリー「あらら、何を怖がっているのよ――よしよし」

209: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:30:38.00 ID:gBEcaEdI0

――地底――


美樹「嫉妬深い妖怪だったわね……ああイヤだわ、ああいう大人にはなりたくない」

郷子「あ、ありがとう広……私を助けようと、あの妖怪(ひと)に……その、立ち向かってくれて」

広「……最初に言ったろ。何かあったらオレが敵を吹っ飛ばすってよ」

美樹「でも、突っ込んでって吹っ飛ばされたのは広のほうでしょ――ぬ~べ~がすぐ駆け付けなかったら危なかったじゃないの」

広「……う、それは」

ヤマメ「にしてもよく、掠り傷程度で済んだもんだ」




ヤマメ「しかしその手、いろんなことができるねぇ。便利そうで少し羨ましいよ」

ぬ~べ~「いや……確かに色々と使いようはあるが……その代償も大きいからな」

ヤマメ「……、まあ、それはそうだろうね」

ぬ~べ~「……」

210: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:34:40.28 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~「――それで、この先にいるんだな」

ぬ~べ~「――俺、いや鬼(こいつ)に面通しさせてみたいって鬼(やつ)が」

ヤマメ「まぁね」

ヤマメ「でも、そんなに気張ることも無いと思うよ」

ヤマメ「おそらく、貴方が想像している鬼(それ)とは相当乖離していると思うから」

ぬ~べ~(確かに……これまでに見て来た幻想郷の妖怪のことを思えば、それはそうかも知れないが)

ぬ~べ~(俺が最も恐れているのは――)


チラリ


ぬ~べ~(その鬼を前にして、コイツが一体どういった反応を見せるのか)

ぬ~べ~(そこのところだ)

212: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:40:28.97 ID:gBEcaEdI0
ぬ~べ~(それから――やはり餅は餅屋ということだな)

ぬ~べ~(もしその鬼が、コイツを封印する上で……代替できる方法を知っているとしたら)

ぬ~べ~(どうにかして……聞き出したい)

ぬ~べ~(あなたを助け出すためにです――先生)


グッ


ヤマメ(鬼の力を得た代償は、そんなに大きいものかい?)

ヤマメ(いや、それはそうか……何せ、鬼の力なんだから)

ヤマメ(でも、その鬼の力がなければ――いくら霊能力先生といえども、ここまで子どもらを守って来れたとは限らないんだろう?)

ヤマメ(皮肉な話だね)

213: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/02(土) 00:51:58.48 ID:gBEcaEdI0

――??――


??(博麗神社は倒壊しても、大結界はビクともしなかった


だが、本殿を炎上させることによって、大結界を弱め、局所的なねじれを発生させることに成功した


これで、一時的に境界を超越しやすくなった外界の魑魅魍魎が博麗神社に押し寄せることになった


う~ん、他所からも沸き出てるみたいだけどね



なぜならこの幻想郷(せかい)ほど、連中の力が発揮される場所はないだろうから本能的に引き寄せられちゃうんでしょうね


元来は幻と実体の境界であり、現在は博麗大結界として二重に外界を遮断する結界にあけた風穴――


単に外界で忘れらさられ、“勢力の弱まった妖怪”達だけではない――


未だに文明化の進んだ外界の闇(かたすみ)に潜み、畏怖の対象とされている“残忍な猛者達”も――



今、この瞬間に、結界という見えない壁を乗り越えて幻想郷に押し寄せてこよう!


ならば“幻想郷流の戦い方(おあそび)”の枠に囚われないホンモノの決闘をすることができる!


暇潰しにはもってこいのイベントよね!




――さあ来い、平和(タイクツ)な日常に水を差すナラズモノ達よ


                    私の隙(ヒマ)を――突き崩せ~っ!!)



   


                                    (第2話・旧都に佇む怪力乱神の巻<前編>・終)

239: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:50:41.26 ID:l9umTQmh0

――守矢神社――


フキフキフキ キュキュ


早苗「ふう、床の雑巾掛けはこれで終わりですね」

早苗「はあー、毎日のことですけれど……結構腰にくるんですよねー」

早苗「でも、境内をはじめ神社の隅々までピカピカにしておくことは、信仰獲得の上でもとても大事なことです」

早苗「神社の清潔さは、すなわち神聖な空気感そのもの――」

早苗「それは日常から離れた尊い価値あるものとして人々を惹きつけ、ひいては篤い信仰心を育みます」

早苗「潔癖症のひとはいても不潔好きなひとなんて普通はいないんですから!」

早苗「まずは日々の心がけが大事なんですよね」


早苗「さてと――使い終わった雑巾をしっかり洗って干しておきますか」

早苗「白うねりになったりしないように――あら?」

早苗「まだ、隅っこのほうに埃が残って」


ヒョイ


早苗「あれ……これは……、……生き物?」


フワフワ……


??「……」

241: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:54:21.57 ID:l9umTQmh0
――


パフパフ パフパフ


神奈子(よしよし、いつもより肌の潤いが増して艶やかになった気がする)

諏訪子「んー、神奈子。今日は随分とお化粧凝ってるね」

神奈子「ああ、人里に買い物に行ったときに新しい化粧品の試供品をもらってね」

神奈子「試してみてるんだ」

神奈子「やはり神というもの、身だしなみには細心の注意を払わないとね」

諏訪子「ああ、最近神奈子、肌荒れ気味だもんね。もともと小ジワも」

神奈子「ん、今何て?」

諏訪子「ううん、何でもないよ」

242: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 16:57:30.59 ID:l9umTQmh0
神奈子「――それより、諏訪子は気付いたか」

諏訪子「――そりゃ、まあ気付くよ」


諏訪子「博麗神社の脇に立てた守矢の分社に、何かあったようだね」

神奈子「ああ。ま、おそらく火の不始末でボヤでも起こしたんじゃないかと思うが」

諏訪子「うん、あの巫女ならありそうな話だね」

諏訪子「案外、後々私達が博麗神社を乗っ取る布石なんじゃないかって勘繰って潰したのかも」

神奈子「流石にそれはないだろう、分社と言ってもちんまりとした鳥小屋のようなものなんだから」


スタスタ


早苗「神奈子様ー、諏訪子様ー、ちょっとこれを見てくださいよー!」

243: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:00:52.88 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山――


ザワザワ……


ゆきめ「いろんな妖気が入り乱れていますね……この山」


玉藻「確かに」


ゆきめ「それで、ここは一体どこなんでしょ?」

ゆきめ「実は童守町から遠く離れたどこかの山の中ということも――」


玉藻「それも可能性としてはなくはないと思いますが……」

玉藻「あなた、雪女なら山の神との関わりが深いのでしょう?」

玉藻「この地に何か心当たりはないんです?」


ゆきめ「う~~~ん……」

244: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:05:05.56 ID:l9umTQmh0
玉藻(――てっきり結界を張った張本人にすぐにでも御目見えできると思っていたが)

玉藻(そうも上手くはいかないらしい)

玉藻(だが、古井戸(パワースポット)で感じた妖気に近いものが……うっすらとこの周辺にも残っている)

玉藻(割とそう遠くない場所に、あの結界の生成に関与している者がいると見た)


ゆきめ(故郷の山でもないのに……微妙に懐かしい感じがするのよね、ここ)

ゆきめ(そして――この山の上には一体何が? 無性に気になる!)


玉藻「この際、二手に分かれて探すとしましょう――事は一刻を争う」


ゆきめ「ええ――でも、もし先に鵺野先生達を見つけたら、すぐに狐火か何かで知らせてくださいよ!」

ゆきめ「それか小さな手掛かりでも、とにかく何か見つけたらすぐにすっ飛んで行きますから!」


玉藻「……」


ゆきめ「絶対ですよ!!」


玉藻「……善処しましょう」


ダッ

245: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:08:18.72 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山(マヨヒガ)――


ニャー ニャー


橙「おや、藍様もうお帰りになるので?」

藍「ああ、少し野暮用が出来たらしいからね」

藍「もし猫の手も借りたい状態になったら橙を呼ぶだろうから、その時は」

橙「はい、何なりとお申し付けください。マタタビも頂きましたから!」

藍「うん。それじゃ」




――

藍(やれやれ……これは霊夢がわざと大結界を弱めているのか?)

藍(誰よりも幻想郷を愛してやまない紫様が、こんなリスクの高い行為をなすとは思えないし)

藍(あるいはまた別の原因があって……)

藍(ともかく早めに状況を分析して対策を講じる必要があるな)

藍(油揚げ(これ)を味わうのは、一仕事終わらせてからになりそうね)

246: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:15:49.97 ID:l9umTQmh0

――妖怪の山(茨華仙の屋敷)――


華扇(う~ん)

華扇(なかなかあの子、戻って来ないわね)

華扇(まさかとは思うけど……危険な目に遭っていたりして……心配だわ)


華扇「やっぱり――私が直接向かった方がいいわね」

華扇(それに地底に行くこと自体は、満更でもないし)


華扇「あ、その前に――」

華扇(守矢神社に寄って行きますか――私が感じた不穏な予感のことを一応伝えに行きましょう)

華扇(地底と地上をつなぐ穴として一番ポピュラーなのは、ここ妖怪の山にあるものだしね)

華扇(天狗達には……まあいいか。もし事が起これば、彼らなら組織的かつ迅速な対応できるだろうし)


タッ

247: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:20:29.97 ID:l9umTQmh0

――人間の里(郊外)――


怪人A「……」


魔理沙(! ……刃物と化した箒と帽子のつばが、元に戻った)

魔理沙(ということは、妖夢のやつ……あのバケモノ刀を倒したのか?)

魔理沙(しっかし、ミニ八卦炉にキズをつけるたぁ……たいしたやつだ)

魔理沙(まあ、表面のコーティングが少し削られた程度で――これから使うのに支障はないだろ)

魔理沙(あとで香霖堂に行ってもう一度……ったく、迂闊だったな。でも、普通考えられねーよ……コイツにキズが)

魔理沙(……)


魔理沙「っと、後悔はあんまり先にも後にも立たないな――とりあえず今はお前だ」


怪人A「……」


魔理沙「何者なんだ? 人間か? それとも――」

魔理沙「はっきり言っていい感じがしないぜ、お前」

248: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:23:57.33 ID:l9umTQmh0
怪人A「赤? 白? 青?」

怪人A「 ど れ が 好 き ? 」




魔理沙(……こいつ、これしか言葉知らねえのか?)

魔理沙(おまけに何なんだこの薄気味悪さは――掴みどころがねぇ)

魔理沙(とりあえず、答えてみるか?)

魔理沙(好きな色って聞かれたら……魔術師的にはアレだが、3つの選択肢には挙がってない)

魔理沙(だったら――)

249: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:28:28.93 ID:l9umTQmh0

――人間の里(移動屋台)――


ジュー ジュー グツグツ


ミスティア「メッチャメチャ苦しい敵機(かべ)だって不意にぃ~なぜか~♪」

ミスティア「撃ち落とす勇気とパワ~湧いてくるのよ~♪ 微笑みの弾幕~♪」


小町「最近この店、人間の里に出しているの多くない?」


ミスティア「まあね、場所代だけでも高くつく時代だから、いろいろ考えて移動してるわ」


美鈴「そういえば前に博麗神社に屋台を出してましたよね」


ミスティア「ああ、それ話はこれ以上止めてくれない?」


小町「いやー、あれは不幸な事件だったね」

チラ

小町「あれ……?」

美鈴「どうかしましたか、小町さん?」

250: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:30:34.17 ID:l9umTQmh0
小町「さっきそこの傘立てに私のカマを立てておいたハズなんだけど……知らない?」

美鈴「……いえ、知りませんけど。そこにありませんし」


ミスティア「本当に持ってきてたの? 私にも心当たりはないよ」


小町「そりゃ、お仕事中だから持ってないわけないさ」

美鈴「またまたー、貴女サボっているだけでしょ?」


小町(……ヤバイな。さすがにあれを無くしたとなっちゃ……ヤバイわさ)

小町(早く見つけ出さないと……映姫様にカミナリ落とされちゃうよー!)

251: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:33:27.10 ID:l9umTQmh0

――人間の里(中心部)――


里人B「なんだ……ありゃッ!」

里人C「首が沢山飛んでるぞ!!」

里人D「落ち着け、皆の衆!!」




ハゲ頭達「パタパタ、パタパタ」




ビューン


妹紅「い、今の見た、慧音? あれって確か……」

慧音「飛頭蛮の群れ。中国発祥の妖怪だけれど、同じように首とかかわりの深いろくろ首に比べたら、知られていない方よ」

妹紅「全員、頭皮が薄いようだが……そういう種族なの?」

慧音「うーん、それは……」

赤蛮奇「ちょっと、あんなハゲ連中と一緒くたにしないでよ!!」

252: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:36:13.34 ID:l9umTQmh0
妹紅「え、貴女も……もしや飛頭蛮」

慧音「さっきのは貴女の仲間?」


赤蛮奇「違うわよ! あんなのと同視されたら迷惑だわ」

赤蛮奇「たぶん、外界に残っている僅かな生き残りが……今回の騒動に紛れて入って来たんじゃない?」


妹紅「今回の騒動って、どういうことよ?」


赤蛮奇「とにかく、おかしなことが起きてんの。あんたら、里の人間達を案じてるなら気をつけな」

赤蛮奇「話の通じない連中が攻めてくるかも知れないよ!」


タッ!


妹紅「お、おい!」

253: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:39:25.38 ID:l9umTQmh0
妹紅「――さっきの群れを追いかけて行ったのか。今のあいつの言葉――どう思う、慧音」

慧音「……、妖怪が人間の安全に関してわざわざ忠告してくるなんて……そうそうないことよね」

慧音「念のため、里周辺を見回りに行く」

慧音「里で妖怪退治を専門としている人達にもこのことを伝えて、警戒に当たってもらおう」

妹紅「そう。それじゃ――私も手伝うよ」




――


ザッザッザッザッザッザッザッ


ミサキA「……」

ミサキB「……」

ミサキC「……」

ミサキD「……」

ミサキE「……」

ミサキF「……」

ミサキG「……」


スタスタ


布都「再思の道を通り過ぎて、魔法の森を越えて、命蓮寺を素通りか……となるともうじき辿り着くのは」

屠自古「……ヒトザトカ」

254: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:41:50.83 ID:l9umTQmh0
布都「……さすがにマズイの。この連中、どうも亡霊っぽいし、人里に入ったら混乱を招く恐れが」

布都「とりあえず足止めをして、我らが太子様の道場にでも連れてゆくぞ」

布都(といってもこの連中、さきほどから声を掛けても全く反応を示さない)

布都「よし、少し強引にでも連中の動きを止めてやるとするか!!」


屠自古「ヤッテヤンヨ!」


バッ!!


ミサキFG「「!?」」

布都「よし、とりあえず最後尾の2人から錫丈を奪ってこちらに惹き付けたぞ!(※強盗)」


屠自古「オンリョウ『イルカノイカヅチ』(※殺人)」


ピシャ――――――――ン!!!!!


255: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:46:01.56 ID:l9umTQmh0
シュ―――――――――


ミサキABCDE「「「「「・・・・・・・」」」」」



ミサキFG「「・・・・・にっこり」」


シュウン


布都「! 今の一撃で……む! 2人は……もしや成仏したのか!?」

屠自古「……ヤッタナ」

布都「ふふ、まさか迷える亡霊の魂を救うことになるとは――増長するわけではないが、悪い気はせぬなぁ」


ミサキA「はぐれぇ!!」

ミサキB「はぐれはおらんかァ!!」

ミサキC「向こうじゃー!! 人間のニオイじゃー!!」

ミサキD「人間がおるぞー!!」

ミサキE「いま、迎えに参らんッ!!!」


ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ


布都「……」

屠自古「……」

256: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/03(日) 17:48:52.75 ID:l9umTQmh0
??「ぎゃあああっ!!」

小傘「何なのよ今のは!? すんごい怖そうな奴らが人里に向かってったよ!? ああ……吃驚した」


布都「……」

屠自古「……」


小傘「ねぇ、貴女たち……アレほっといていいの? 何だか、でんじゃらすな様子だったけれど」


屠自古「……ヤバイネ、オウヨ!」

布都「うむ、これは少し見過ごせぬな、追うぞ!」

布都「ついでにここで出くわしたのも何かの縁よ、お主も来るのじゃ!!」


ガシッ


小傘「え? ちょっと待って、私暇じゃないからイヤ! 遊びって雰囲気じゃないしとにかくイヤ!」


ダダダダッ


小傘「嫌ぁぁあああぁぁ行きたくな――――――いっ!!」


                                   (つづく)

276: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:05:31.52 ID:4wDqOJ3f0

――守矢神社――


??「……」


早苗「これ、何なんでしょう」

早苗「さっき、お掃除中に見つけまして……最初は埃かなって思ったんですけど」

諏訪子「何だろうねこれ、植物の綿毛っぽく見えるけど、目ん玉がついてるし」

神奈子「目玉がついているんなら動物なんじゃないかい?」


??「……」


早苗「動物なのか植物なのか。とりあえず、今夜のおかずにでも」

諏訪子「ちょっと待って、私は味噌汁の具の方が合うと思う」

神奈子「いや待って、こいつもしかしたら小妖怪の一種かもしれないよ」


??「……」

277: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:07:44.96 ID:4wDqOJ3f0
早苗「妖怪? こんなフワフワしたのがですか?」

神奈子「ほら諏訪子――以前にこういう感じの生物の話題が巷で噂になっていたことがあったろう?」

諏訪子「あったっけ?」

神奈子「ちょっと、よく見せてくれ」

早苗「わかりました、どうぞ」


ジー


神奈子(これは……確か……)

神奈子「諏訪子、そこのおしろい入りのケースを取ってくれ」

諏訪子「これ? 厚化粧にさらに上塗りするの?」

神奈子「こうするんだよ」


サラサラサラサラ……


\ポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッ/

278: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:11:07.17 ID:4wDqOJ3f0
諏訪子「わわっ」

早苗「えっ急に数が増えちゃいました!? おしろいの粉を振りかけただけで!」

神奈子(やっぱりか、……これに反応して増殖した)

神奈子(――よし、ならば次は)

神奈子「――早苗、何か欲しい物でもないか?」

早苗「え、欲しい物?」

早苗「そうですねー、うーん……神社の参拝者さんですかね」

早苗「それからー、高級スイーツとか」


トントン


「あら、華扇さんじゃないですか。どうしてこちらに」「うーん、まあ参拝客ってことかな。ちょっと貴女たちに伝えたいことが」

「あ、これ訪問ついでにお土産ね」「わー! 美味しそうなお菓子ですね、これはどうも」



諏訪子「あら、ちょうどいいじゃない。動物に詳しいひとが来たから聞いてみれば――」

神奈子「いいや、もうその必要はないな」


\ポーンッ/


神奈子「一匹消えたか……間違いない」

諏訪子「え、何が間違いないって?」

280: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:18:03.26 ID:4wDqOJ3f0
ガタッ


諏訪子「あ、ちょっと何処行くの神奈子?」

神奈子「諏訪子も手伝ってくれ。上手く量産できれば――」

諏訪子「量産って、この小玉なやつを?」


神奈子(フフフ、囲いには紙垂(しで)を使うかな。この小妖怪、早苗とともに我々が上手く扱うことができれば……!)

神奈子(地道な産業革命を推進するよりももっと手っ取り早く、膨大な力を手に入れることができる)

神奈子(僥倖だ。こいつはまさに僥倖のタネ――)

神奈子(手軽な奇跡を起こすなら、わざわざ頼ることもないが――)

神奈子(大いなる奇跡を起こすには、多大な労力とそれ相応の代償を伴うからね)

神奈子(そして――代償が大きすぎるから、実現不可能なこともままある)


神奈子「貴方たちのチカラ――幸運をもたらす程度の能力――を活用させてもらうとしよう」

神奈子「――ケサランパサラン達よ」


\ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン/

281: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:22:57.49 ID:4wDqOJ3f0

――霧の湖――


わかさぎ姫「へぇ、外の世界からはるばる幻想郷(こちら)に?」

速魚「いやー、それほどでも」

わかさぎ姫「でも、ここ淡水よ。貴女の肌に合う?」

速魚「あー、私、人間に変身して歩くこともできますし大丈夫ですよー」

わかさぎ姫「本当に? 凄いわね、今度コツを教えてくれない?」

速魚「いいですよー」

速魚「それにしても霧が濃いですねー、ここ。どうして?」

わかさぎ姫「……さあ、どうしてかしらねぇ」


ザッ


咲夜「あら、湖の周辺の掃除でもしようかと思ったら……見慣れぬ半漁人が二匹いるわね」

咲夜「外来魚かしら? 一応駆除したほうがいいか」

282: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:26:40.80 ID:4wDqOJ3f0
わかさぎ姫「って!? 貴女、私とは面識あるでしょ!」

速魚「こんにちは」


咲夜「丁度いいわ、今夜は魚料理にでもしましょうか――魚の血液ってカリウム分多そうよね」


わかさぎ姫「ちょっと、食べる前提で話をしないでよ!」

速魚「どうぞどうぞー、私を食べたら不老不死になりますよ」


咲夜「あら、そうなの。特段面白くもなんともない冗談ね」

咲夜「じゃ、私は忙しいから」


スタスタ


速魚「あれー、行っちゃいました」

わかさぎ姫「それで、貴女はこれからどうするの? 一緒に歌でも歌う?」

速魚「えーと、人を探してて。とりあえず一緒に歌いましょう」


「「おぼえていますかー♪ 眼と眼があったときー♪」」

283: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:35:09.97 ID:4wDqOJ3f0

――地底(旧都)――


くだ狐「スリスリ」


竜「~!!?」


ザッ!!


くだ狐「クーン(はぁと)」




ぬ~べ~「おいおい、驚いて逃げちゃったじゃないか……まだ子どもの竜のようだったな」

ヤマメ「うーん、そのペットよりもむしろ鬼の手を見て驚いていたような」

広「出逢っていきなりナンパするあたり、性格が飼い主にそっくりだよなー」

郷子「ほんとよねー」

ぬ~べ~「おいおい……俺は初対面の女性相手にそんなことは……」

美樹「でも、こんなところに竜なんていたのね。捕まえたら高く売れそうだったのに……惜しかったわー」

ぬ~べ~「お前なぁ! 神聖な生き物に対してそういう賤しいことを考えるな……罰が当たるぞ」

ヤマメ(竜なんて地底にいたかな?) 

ヤマメ(まあ、地底は広いし何がいても不思議じゃないからねぇ)

284: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:43:10.55 ID:4wDqOJ3f0

――

勇儀「くー! やっぱり酒はいいねぇ」

正邪「さあさあどうぞ、お注ぎいたします」

勇儀「おう、頼むよ」

ぬえ「……」

正邪「さ、さあ……そちらも」

ぬえ「ねえ、何でこんな小物妖怪がこの場にいるの?」

正邪(居たくているわけねーだろ。誰が好き好んでこんな連中に酌なんかするか!)

勇儀「何でって、そこらへんをほっつき歩いてたから捕まえたんだよ」

ぬえ「あらそう? つまり、地上を追われて地下へ逃げて来たってわけ」

正邪(違う! 逃げたんじゃない、あえて地底を逃げ道に選んだんだ!!)


ぬえ「確かこいつ、弾幕ごっこの域を超えてもいいから殺害しろって御触書が出てたよね」

ぬえ「あれ、まだ有効なのかしら?」

正邪「……」


勇儀「そんなことは別にいいだろう。ここは地底だ――ならず者だろうが天邪鬼だろうがとりあえずは受け入れてやる」

勇儀「もともと忌み嫌われて地上を追われた者達の最後の砦だったんだから、来る者は拒まない」

勇儀「――最近は、去る者を追わないことの方が多かったけれど」

勇儀「今日は無礼講よ。何にも気にせず、ほらお前も呑め」

正邪「……い、いえ私はがぼっ!?」

285: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:47:01.25 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「ほら呑め呑め。瓶を逆さに一気に呑み干せばいいのよ。酒はいくらでもあるから気にしなくていい」


正邪「んっ……んぐぐっ……っ……」


勇儀「ところで貴女は何しに地底に舞い戻ったんだい?」

勇儀「あのお寺、破門になっちゃったのかな?」

ぬえ「違うわ、私はその……在家信者だから。どこでどういう修行をするかは自分で考えているの」

勇儀「ふーん、でも酒を呑むのは飲酒戒(おんじゅかい)ってやつでダメじゃなかった?」

ぬえ「う、……確かに聖はお酒を完全に断っているわ。でも妖怪僧達はほとんど戒律を守ってないし」

ぬえ「だからちょっとした気晴らし……気分転換というか」


正邪「……むぐ! んーんー!」


勇儀「そうだねぇ。ま、妖怪に戒律を守れって縛りつけること自体そもそも無理があるんだ」

ぬえ「! それでも、聖の行いは間違っては――」

勇儀「ああ、ひとえに間違ってるとは思わないよ。この話はあんまり深入りするもんじゃないね」

勇儀「で、さっきの話に戻ろう――ここに何しに来たんだ?」

ぬえ「それは……その……、たまには自分が封じられた忌々しい場所を再び訪ることで、えーと」

勇儀「ああ、未だに他の門徒(やつら)と打ち解けられないのか。だから寂しくて昔馴染みな地底に――」

ぬえ「ち、違う!!」


正邪「……げぽっ、げほ」

286: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:53:05.80 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「打ち解けられないんじゃないのよ! 向こうが私を仲間外れにしてるんだ!!」


シュポンッ


ぬえ「ほらもっと呑め」


正邪「がぼっ!? んぐっ……んっ……!」


勇儀「そういや地上(うえ)と通じてて情報通な輩が言っていたけれど、なんでも貴女、外から古狸を寺に連れ込んだらしいね」

勇儀「老獪な妖怪に間を取り持ってもらえば、連中とも仲良くできるんじゃないの?」

ぬえ「……だって。私達は一足遅れて入門したのよ。それだけでも居心地悪いのに」

勇儀「でもほら、見越入道や舟幽霊とかは一緒に地底に封印されていた仲だろう?」

ぬえ「でも、別に仲良くなんかなかったわ。誰も私に話しかけてくれないのよ?」

正邪「う……げっぷ……」


カラーン


ぬえ「あの存在感が希薄な坊主なんざ……私をつっけんどんに“鵺さん”呼ばわりしてたんだぞ!」

ぬえ「どいつもこいつも……私をのけものにするな! ほらもっともっと呑め!」


正邪「う……うぐっ!!」


ぬえ(……あいつらは決してイヤな奴らではない。むしろ良い奴だと思ってる……だから尚更私は……)

勇儀「で、寂しいから地底の知己と久々に酒酌み交わそうってわけで来たのか?」

ぬえ「いいえ、別にそういうつもりじゃないわ」

勇儀「確かに、今残ってる面子でも……取り立てて貴女と仲いい輩はいないね」

ぬえ「どいつもこいつも……ほら、次の酒だ」


正邪「うぐー……うぅ……うぇっく……」

287: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:55:46.07 ID:4wDqOJ3f0
勇儀「そうだなー。あ、それじゃあいつ、土蜘蛛のやつを探して来ようか」

勇儀「あれは割に顔が広いものね、貴女も話しかけられたことくらいあるんじゃないの?」

ぬえ「……うん。でも知らんぷりしてたら話かけられなくなった」

勇儀「あらら。誰かに話しかけて欲しかったんじゃなかったの?」

ぬえ「だって……だって」


カラーン


正邪「ぷはっ……」


勇儀(生まれつきのアマノジャクはともかくとしても、こっちも結構に天邪鬼だねぇ)

ぬえ「ほら、また次の酒だよ――お前もどうせひとりぼっちなんだろ」

ぬえ「……、一緒に……」


正邪(うるさい! ほざけ! まっぴらごめんだ!! お前のような強い妖怪と一緒にするな!)


勇儀「よしよし、お前もいい感じに酒が回ってきたから」

勇儀「そんじゃ、ここいらでちょいと一発芸でも見せてくれよ」


正邪「え……」

288: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 00:58:25.52 ID:4wDqOJ3f0
ぬえ「……そうだな、何か見せてみて。お前、天邪鬼なんだからさ」

ぬえ「私達が吃驚して笑い転げるようなことをやってくれそうだ」


正邪「え……」


ぬえ「言っておくが、もしつまらなかったらお前はこの場で終わりだがな――覚悟しておけ」


正邪「……」


勇儀「はははは、お前さん顔が真っ青だよ! 全体的には赤いってのに」

勇儀「何でもいいから堂々とやってみなよ――別にちゃぶ台返しとか逆立ちとか、なーんでもいいから」


正邪(何でもいい? 嘘つけぇ!! つまらなかったら八つ裂きにするつもりだろ!!)


ぬえ「どうした、早く何かやってよ、興が覚めるじゃない」


正邪(くそぅ……この際、下剋上だなんて大きいことはいわない……!)

正邪(だから! この状況に、変化が欲しい!)

正邪(私が今望むもの……それはこの追い詰められた状況をひっくり返すほど程度の変化だ!) 

正邪(生まれ変わるほどじゃなくていいから……何か……!!)

289: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:03:44.71 ID:4wDqOJ3f0
――


ガラッ……


勇儀「おおー、何だい何だい。今日は風変わりな連中が続々現れるじゃないか」

ぬえ(……何だ、こいつらは。人間か?)

ぬえ(……いや、2人は人間のようだが、残り2人は……妖怪?)


邪正「!!」

邪正(やった! 誰だか知らんが客人だ――流れが変わったぞ!!)


広「真っ黒いパン……グハッ!?」

郷子「何ガン見してんのよバカァ!!」


美樹(少女……? 何なのよあのオーバーFカップはっ!?)

美樹(ま、まあまだ慌てることはないわ。私のナイスバディは発展途上……これからよこれから!)


ヤマメ「おやおや勇儀の姐さん、今日は随分とレアな面子と酒盛りしているねぇ」

ヤマメ「で、そこの天邪鬼はひっくり返したちゃぶ台の上で逆立ちして何してんの? 露出   ?」


ぬ~べ~「おおッ!!」

290: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:06:31.77 ID:4wDqOJ3f0
ぬ~べ~「何とお美しい!! こんなところであなたのような素敵な女性に巡り合えるなんて!!」

ぬ~べ~「どうです? これから僕と一緒に舟幽霊が炊いた怪火の見える海岸沿いのレストランでお食事でも!」

勇儀「ほう。鬼を相手にいきなりナンパかい? 舟幽霊のくだりは船の難破とかけているのかな?」


ヤマメ「舟幽霊はいるけど海岸沿いのレストランなんて存在しないよ――幻想郷に海はないからね」


広「良かった、これでようやくいつものぬ~べ~だな」

郷子「もー。リツコ先生やゆきめさんがいるのに、……まったく男ってこれだから……」

美樹「あー、疲れたわ……何かデッカイモノみちゃって余計にショックで疲れたわ」


美樹「にしてもここ滅茶苦茶お酒臭いわねー……何とかならないの?」

正邪「私のせいじゃない。ろくろ首も幻想入りしてたんだな。調子に乗って退治されたザコい飛頭蛮なら知っているが」

美樹「おなかペコペコなんだけど、そこの珍味っぽいのじゃなくてもっと普通の料理用意してくれない?」

ぬえ「お前……誰に向かってそんな軽口叩いてると思ってるのよ? 私のことが怖くない?」

美樹「ぜーんぜん」

ぬえ「……」

291: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:22:27.26 ID:4wDqOJ3f0

――人間の里――


ザワザワ……


里人甲「危険な妖怪が出るかもしれないって言うから、人里の見回りをしているが」

里人乙「ああ、これといった変化もないし……さっきの飛んでいたハゲ頭もどっかいっちまったもんな」

里人甲「ま、妖怪といってもせいぜいあの唐傘お化けが出てくるくらいだろ」

里人乙「宵闇の妖怪とかも、そんなに積極的に襲ってくるわけじゃないしな」

里人甲「あの毒を撒くヤツはやばいよな……」

里人乙「一応対抗策はある――ま、いずれにしろそんな大したことはないだろうよ」

里人甲「案外、人里全体で肝試し大会でもするってことじゃないか? 妖怪達のお遊びに付き合うって感じで」

里人乙「ああ、あるかもな意外と。あはははっ……はは……」

里人甲「? どうした」

里人乙「う、後ろ……!!」


ミサキABCDE「「「「「は~ぐ~れ~」」」」」

292: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/05(火) 01:37:11.96 ID:4wDqOJ3f0
里人甲乙「「うわぁぁぁぁああああああああああああっ!!!!」」

ミサキA「迎えに参ったッ!!」


バッ

妹紅「させるか!!」


ブォォン!


ミサキA「ッ!」


ドサッ


ミサキBCDE「「「「  !!  」」」」


妹紅「どうやら、先程の忠告は間違いではなかったようだ」

妹紅(今は妖術を使って相手を足止めし、里人2人が逃げる隙を与えたけれど――)


ミサキA「はぐれはおらんかー!!」


妹紅(気休め程度か――こいつら、なかなかに厄介そうね)

妹紅(相手は5人、すべて……亡霊か?)

妹紅(もう里まで侵入を許してしまった以上――早急に叩くしかないけれど)

妹紅(周りには人家をはじめ多くの建物、そしてまだ状況を把握しておらず里を歩く人間達もいる)

妹紅(派手な戦い方は……やりづらい環境だわ)


                                    (つづく)

316: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:34:10.59 ID:guCPHHKY0

――旧都(酒場)――


勇儀「それじゃ、準備はいいかい?」

ぬ~べ~「ああ、準備オーケーさ」

ぬ~べ~(星熊勇儀――名前から察するに、元はあの星熊童子か)

ぬ~べ~(ということは、この幻想郷には他にも複数の鬼が存在するとみて相違ない……な)


ヤマメ「それでは――始めっ」


グギギギギギギ!!


勇儀「!」

ぬ~べ~「……ッ!」


ヒソヒソ


美樹「ねぇ、なんでぬ~べ~と鬼のヒトが腕相撲やってるの? ――あむっ、この得体の知れない料理結構イケるわ」

広「“腕試し”って言ってたな――要するに鬼の手の強さを肌で感じたいってことだろ」

郷子「でも勇儀さん、自分は右手に抱えた盃のお酒が零れた場合も負けでいいって条件付けたよね」

広「んな条件付けなくても、ぬ~べ~なら勝てるだろ。……ただの腕相撲なんだから」


ぬえ「それはどうかな。今のままだったら、たぶん勝てないよ」


美樹「ちょっと! ぬ~べ~の力を甘く見ちゃだめよ、ぬ~え~」


ぬえ「そのヘンな呼び方は止めろ――喰い殺すぞ」


美樹「ひぃ!」

広「う……やっぱこう、その……姿はこんな感じでも、妖怪らしい凄みって奴はちょくちょく見えるなー」


ぬえ「……」


郷子「ちょっと……あんたさっきからぬえちゃんに微妙に見とれてない?」

広「んだよ。いちいちうるせえなー、別にそーいうのじゃねぇよ! 郷子にゃ関係ねーだろ」

郷子「ええー! 関係ないですよーだ! 広がどんだけ鼻の下伸ばそうが私の知ったことじゃありませーん!」


ぬえ「はぁー……この私を“ちゃん”づけか……」

正邪「そう気を落とさずとも」

正邪「我々のような弱小妖怪は、鬼に逆らうことなど儘なりません。人を喰いたいという衝動は抑えがたいものでしょうが」

正邪「ここは星熊様の謂いの通りに大人しく――」

ぬえ「別に本気じゃないわよ。そもそも私は弱小じゃないし――こういう場だからね」

317: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:40:05.61 ID:guCPHHKY0
ググググググ


勇儀(ほう? ――この程度かい、鬼(あなた)の力は)

ぬ~べ~(! ――まずい、コイツまさか!)


グォォォォォォォ!!


勇儀「おぉ!」

ぬ~べ~「ぐぬぅ!!」


メキメキメキメキメキ!!


ヤマメ(これは!?)


広「や、やばいぞ!!」

郷子「ぬ~べ~の腕!!」

美樹「ちょっと、これ以上はダメっ!! 止めて……ぬ~べ~が!!」


正邪(鬼の手とやらが、暴走しつつある? 今は封印していると言っていたから――)

正邪(それを自力で解いて這い出ようと言うのか?)


ぬえ(ここから見ているだけでも感じる――かなりの強者だな、封じられた鬼は)

ぬえ(そのパワー、破壊力と言った面では幻想郷に陣取る鬼の力に勝るとも劣らないだろう)

ぬえ(それをこの人間が1人で封じ込めた? そんなことが、外界の人間に容易くできるものなのか?)

ぬえ(まあ、何にせよ――この場でそいつを解放するのは賢明な策とはいえないな)

ぬえ(たとえ、ここが地底と言えども――最低限のルールを守ってくれるような輩じゃなかったら)

ぬえ(地上をも巻き込んだ一大事件になってしまうぞ)

ぬえ(そこのところは、怪力乱神も心得ているとは思うけれどね)




\ピチューン/




ぬ~べ~「!!」

勇儀「――今回のところは、そちらに軍配が上がったな。盃から一滴垂れてしまったんでね」

318: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:49:13.16 ID:guCPHHKY0
シュ―――――


ぬ~べ~(――よ、よし完全に封印が解ける前に、寸止めしてもらえたか)

ぬ~べ~(鬼の手が落ち着きを取り戻してゆく……心配をかけて済みません、美奈子先生)


勇儀(触れた掌(てのひら)から、私の力を吸収して、それを糧に封印を解こうとしたのか?)

勇儀(完全体に戻ったら、一体どれほどの力を発揮してくれるのか――是非見てみたいし、闘ったら愉しめそうだ)

勇儀(――が)


ぬ~べ~「……」

ぬ~べ~「勇儀の姐さんよ――実は、こいつに関して」


勇儀「耳、貸しな」


ヒソヒソ


勇儀「大方、貴方の言いたいことは分かる」

ぬ~べ~「それならば、話は早い! 俺は――」

勇儀「だが、待て――今は酒宴の真っ最中だ。それに、そこで不安そうな目をしている子らの前で」

勇儀「あんまり重い話はしたくないんじゃないかねぇ?」

ぬ~べ~「……」

勇儀「だから、その話は後だ――今はゆっくり盃を交わすとしようじゃないか」

勇儀「鬼は嘘はつかない――後でちゃんと、お悩み相談に乗ってやるよ」

ぬ~べ~「……。ええ、そうですね」

319: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:54:05.97 ID:guCPHHKY0
広「おーいぬ~べ~! 何2人でヒソヒソ話してんだよ?」


ぬ~べ~「いやいや! 今度何処でデートしようかって内緒話をしていただけだ!!」


美樹「またそんなこと言って。鬼の手の方は……もう大丈夫なの? あーもう……ホント心配したんだから……」


ぬ~べ~「大丈夫、全然ヘーキだ! もう何の問題もない!」


美樹「……ならいいのよ。はーまったく、腕相撲ひとつでここまで大騒ぎさせちゃって……もー」



ヤマメ「ほら、貴方達でも口に入れられそうなものを持ってきたよ」

美樹「あ、どもー」

ヤマメ「私はちょくちょく地上(うえ)に行って、いろんなモノを手に入れてるからね」

美樹「手に入れるって、盗むってこと? それとも単に買い物? お金とかはどうしてんの?」

ヤマメ「んーそうだね。例えば病気になった人(原因は私だけどね)に施しをして、その礼に……とかかな」

美樹「ふーん。薬とか、そういうのに詳しいの?」

ヤマメ「まあ、私の特性上ね。詳しくなっても損はないから」


ヤマメ(だからこそ、いつでも貴方達に毒牙を向けることもできたんだよ?)

ヤマメ(だが、貴方達は幸運だ――それはひとえに、あの先生がついていたからさ)


ぬ~べ~「さ、お前達も一緒に飲もう! まさかここで本物の天邪鬼や鵺にまで会えるとは思ってなかったぞ!」

ぬえ「私もこんなところで半人半鬼に遭遇するとは思わなかった。しかも外界から来たとはね」

正邪「ふん。その手の力は測り知れんが、お前ニンゲンとしては軽薄でバカそうだな」

ぬ~べ~「お、何だ天邪鬼くん! そんなに俺のことを褒めてくれるのか? いやぁー先生嬉しいぞ!」


ナデナデ


正邪「キサマ気安く触れるな! 撫でるな! 馬鹿にするなぁ!!」



ヤマメ「ほら、貴方達も呑むかい?」

広「……そうだなー」

美樹「ま、一杯くらいは減るもんじゃないしね」

ぬ~べ~「コラコラコラ! 未成年はお酒はいけませーん!!」

郷子「えーと、ジュースとかは……ないですよね」

勇儀「そうだねー、御冷やで我慢してくれるかな?」

320: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/06(水) 23:58:18.14 ID:guCPHHKY0

――守矢神社(参道)――


コツコツ


早苗「はあ、つまり異変の兆候ですか?」

華扇「うん、まだ憶測の段階なんだけれど――」


ビュゥゥゥ!!


竜「~~~~!」


華扇「! 無事に戻ってきたのね!」

早苗「あ、その子は以前に――」


華扇(何かに怯えている様子――そう、怖かったのね。早速、貴方が体験したことを私に聞かせて頂戴)


スッ


華扇「……」

竜「……」


早苗「……」


華扇「“鬼の手”を持っている人間!?」

華扇「ペットとしておぞましい怪物を使役し、土蜘蛛とろくろ首を仲間にして地底を闊歩?」

華扇「そして旧都で、反逆者(アマノジャク)と落合おうとしていたようなの?」

竜「――コクリ」


早苗「え? え? え?」



華扇(――こうしてはいられないわ、異変でも起こりそうな要素が揃いに揃っているじゃない)

華扇(それから、これは私がずっと探しているモノの手掛かりが得られるかもしれない!)


早苗「あのー、華扇さん。今の話っていったい」


華扇「――私は地底に向かうわ」

竜「コクッ!」

華扇「貴方達も気をつけて! ――霊夢達にも状況についての説明をお願い」


ヒュンッ!!!

321: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:05:26.80 ID:Rqku3eO70
早苗「はい、分かりましたよー……ってもう影も形もありませんね」

早苗「やっぱり華扇さん、テレポーターなんじゃ?」

早苗「あ、それよりもさっきの話」

早苗「“鬼の手”がどうのこうの……っていうのに、強く反応していたような」

早苗「うーん、“鬼の手”ですか――どこかで聞いたようなことがあるような、ないような」

早苗「それと華扇さんとの関係――」

早苗「あ、なるほど――やっぱりあの人の正体は仙人じゃなくて鬼だったってことで」

早苗「それで、以前から探していたという失くした腕こそ……その“鬼の手”のことだったんですね!」

早苗「納得しました」




ビュォォォォォォォォォォ




ゆきめ「なるほどね――“鬼の手”を奪うために、鵺野先生を異世界に引っ張り込んだってわけなのね!」




早苗「はい? どちら様ですか? 鵺って……あのUFOのことで?」

早苗「それにしても急に冷え込んで……もう日没も近いからかしら。って、もしかして貴女の仕業です?」

322: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:08:11.24 ID:Rqku3eO70
ゆきめ「教えて! 鵺野先生は今どこにいるの?」




早苗「どこって……たぶん命蓮寺にいるんじゃないんですかね?」




ゆきめ「えーと、そこって……何処にあるの?」




早苗「よければご案内いたしましょうか?」




ゆきめ「えーホントですかー! 助かります!」




早苗「でも、その前に――貴女、この山に棲んでいるひとじゃないっぽいですね」

早苗「というわけで、侵入者ってことですよね?」

早苗「侵入者に対しては、それ相応の対応をしなければ――妖怪退治も私の仕事のひとつなんですから」



ゆきめ「え……」



早苗「さあ、挨拶代わりに始めましょうか」

早苗「――弾幕勝負を!」


カッ!!

323: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:11:19.81 ID:Rqku3eO70

――旧都(酒場)――


広「zzz」

郷子「zzz」

美樹「zzz」


ヤマメ(おやまあ、皆疲れてもう眠ってしまったか。ここまで結構な道のりだったろうしね、人間の子どもにとっては)

ヤマメ(もう宵の口だもんねぇ――地上(うえ)では本物の月が穢れない姿を晒している頃合いか)



広「……ぐっ……父ちゃん……、悪い……」

郷子「……心配……かけてごめんなさい……いつもいつ……も」

美樹「うぎぎぎぎ……それは私が見つけた……か、え、して、……」


ヤマメ「……よく聞こえる寝言だねぇ」

ヤマメ(――今晩はここでゆっくり休みな、明日にはちゃんと、地上まで送ってやるよ)

324: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:16:33.90 ID:Rqku3eO70
ぬ~べ~「――というわけでだな、その天邪鬼な俺の生徒は」

ぬ~べ~「自分から積極的に輪の中に入って行ったんだ。今ではクラスの生徒達と仲良くやっている」


ぬえ「……」

正邪「霊能力がどうとか言いつつ、ただの人形で餓鬼をおちょくっただけだろうが」

正邪「しかもアマノジャクを利用して騙すとは、お前はとんだ反面教師だね」


ぬ~べ~「そうかそうか、そんなに俺を褒めてくれるのか。お前本当に可愛い奴だな~」


正邪「うるさい! 本物のアマノジャクを舐めやがって! 雑魚のクセに!!」

勇儀「何だって? 鬼の手持ちの人間がザコっていうなら、鬼の私もザコだといいたいのか?」

正邪「そんなことは言っていない……ません」


ぬ~べ~「その通りだそうですよ、勇儀姐さん」


勇儀「こりゃちょっと、ヤキ入れる必要があるねぇ」

正邪「違うから! ううん違わないから!」

勇儀「そういや、お前さんだって曲がりなりにも“鬼”だったか」

ぬ~べ~「いいか正邪、いくら自分に自信がないからと言って……そんなに卑屈にならなくてもいいんだぞ」


正邪「くぅ……馬鹿にしやがっ……ごふっ!?」


勇儀「苛々している時はやっぱり酒が一番だ!」

勇儀「お前が好きそうな“逆さ富士”だよ、ほら一息にグッといけ!」

正邪「んぐっ……んん!」

ぬ~べ~「ぬえの方はどうなんだ?」


ぬえ「……何のこと?」


ぬ~べ~「君は色々あって封じられていた地底を出、恩を仇で売るに近い行為をしながらも」

ぬ~べ~「快く自分を受け入れてくれた“人間”につき従い、地上の妖怪寺に入門した」

ぬ~べ~「――だが、今でもなかなか寺の妖怪たちと打ち解けられないでいる」

ぬ~べ~「と、ヤマメくんや姐さんがこっそり教えてくれたぞ……さっき」


ぬえ「余計な御世話だ」

325: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:26:00.43 ID:Rqku3eO70
ぬえ「第一、お前にどうこう言われる筋合いはない」

ぬえ「私は正体不明の妖怪なのに、どうしてお前は恐れない?」


ぬ~べ~「……」


ぬえ「いや、お前だけとは言わない……外界の人間の子どもにすら怖がられないなんて」

ぬえ「私は正体不明がウリなのに、正体(かお)が売れてしまったら……誰にも怖がってもらえない」

ぬえ「だから私は封じられてしまった。そして居場所を失ってしまった……それだけのこと」


ぬ~べ~「なるほど。お前はやはり単純な天邪鬼じゃなくよく考えている天邪鬼だな」

ぬ~べ~「――さすがはいにしえより恐れられし鵺だ」


ぬえ「……」


ぬ~べ~「お前のような由緒ある妖怪に対して、まるで生徒に対するように馴れ馴れしくして済まなかった」

ぬ~べ~「お前はさっき、俺が怖がっていないと言ったが……決してそんなことはない」

ぬ~べ~「もしお前が仮に子ども達に襲いかかってきたとしたら、俺は命を賭けてでも彼らを守るために闘うだろう」

ぬ~べ~「その時は、俺はお前を畏怖していたにだろう――鵺を相手に自信を持って勝てるとは言い切れない」

ぬ~べ~「たとえ、今は丸くなったとはいえ――正体不明という、枯尾花を幽霊と思わせるような力は健在なんだろう?」


ぬえ「……」


ぬ~べ~「鬼の手にできることにも限界がある。ましてや、これを扱おうとする俺自身は結局のところ生身の人間だ」


ぬえ「ならば、もし怖気づいたら逃げる?」


ぬ~べ~「逃げないさ、それでも闘う」

ぬ~べ~「子ども達を守るために、どんな時も決して逃げない。必ず守り切る」

ぬ~べ~「なぜなら俺は、あの子達の保護者(せんせい)だから――彼らの前でくらいは、最強じゃないとな」

ぬ~べ~「もっとも、逆に子ども達に助けられることだって……結構あるんだよなあー」


ぬえ「……お前は信念だけは強いらしい」

ぬえ「それはお前のエゴではあるが、エゴでも貫き通せば救われる者もいるだろう」

ぬえ「守りたいなら守れ――だが妖怪は弱い者ほど狙いやすいから容赦なく襲いかかる」

ぬえ「それは妖怪の持って生まれた性質――宿命のようなもの」

ぬえ「妖怪は決して力を失ってはいけないんだ――その存在意義を確保するためにもな」

ぬえ「お前はせいぜい、他人を救おうとして自分の足元を掬われることがないよう……気をつけるがいいよ」


ぬ~べ~「――ああ、気をつけよう」


ヤマメ(この先生さん、不思議なほどに妖怪を惹きつけるものを持ってるねぇ)

ヤマメ(それを言ったら――幻想郷にも、やたら妖怪を惹きつけてやまない人間はいるけれど)

326: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:29:31.41 ID:Rqku3eO70

――

ぬ~べ~「うっぷ……う、オエエエエエっ……」


勇儀「おいおい大丈夫か? こんなもんで潰れてちゃ、幻想郷で生きていけないよ」

ぬえ「別にこいつ、これから幻想郷で生きるわけじゃないだろう?」


ぬ~べ~「……ぐふっ……それは当然……俺には向こうにも……大切な……人達がたくさ」

ぬ~べ~「うおおおおぇぇ……」


正邪「ふふ……愚か者め……、我を侮辱した……罰が当たったのだ……うっ」

ぬえ「お前も無理をするな。潔く全部出せ、反吐を出すように逆流させるのよ」

ぬえ「そしてもう一度出したモノを呑みこめば、吐き気は治まる」

正邪「喋りかけ……ないで……うぅ……」

ヤマメ「出したモノを再び呑むといいのは船酔いの時じゃないの?」

ぬえ「あ、そうだったかも。船長が前に言ってたのを聞いたから」


――

勇儀「もう大丈夫なのかい? もう一杯水を飲む?」


ぬ~べ~「……ふぅ、いやー、だいぶ落ち着きました」


ヤマメ「さて、今日はそろそろお開きってことにするか」


ぬ~べ~「あ、そう言えば……3人は!? そこに転がってた筈だが……何処に」


ヤマメ「そこの休憩所で寝かせてある。心配しないでも、ちゃんと生きてるよ」

ヤマメ「姐さんの手前、手出しなんざできないさ」


ぬ~べ~「はは、そうか……良かった」


勇儀「子煩悩な先生だねぇ、本当に」


正邪「クソッ……こんな屈辱を受けたのは初めてだ! いや……初めてでもないかも」

正邪「でももう二度と地底になんか来るもんか!」

正邪「地上の馬鹿どもに追い回される方がマシだ! あばよ!!」

ぬえ「……そっちに行くよりこっちに行った方が近道になるよ?」

正邪「そっちに行くつもりなんかなかった! こっちに行くつもりだったからそっちに足先向けたんだ!」

ぬえ「じゃ、またね――私がこの小物を地上まで送って行くわ」

正邪「余計な御世話!」


タッ


勇儀「ひとりで寂しくなったらまた来なよ」

ヤマメ「地底はどんな厄介者でも来るモノ拒まず、去るモノ追わずだからね」

ぬ~べ~「……」

327: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:31:18.68 ID:Rqku3eO70

――

ぬ~べ~「ヤマメくんはこの地底のどの辺りに住んでいるんでしょう?」

勇儀「さぁね――土蜘蛛なんて何処にでも巣を張れるし、何処に住んでいてもおかしくはない」

勇儀「あの子らが起きる頃にまた来ると言っていた。そしたら地上へ上がる道を教えてもらいな」

ぬ~べ~「――ええ、本当に助かりましたよ。良い妖怪(ひと)達に遭えて」

勇儀「さて、ようやくふたりきりになれたところで、肝心の話をするとしようか?」

ぬ~べ~「そうですね」


ぬ~べ~「いやー、照れるなあ!」

ぬ~べ~「やっぱり最高のデートコースは怨霊の飛び交う無縁仏の埋もれた原っぱで、楽器の付喪神達が奏でる妖艶な旋律に耳を傾けながら」


バシャーン


勇儀「おいおいおい、まだ酔いが覚めてなかったか? 水掛けたから、そろそろ正気に戻りな」

ぬ~べ~「あ、あれー……」


勇儀「その左手に封じられた鬼について、だ」

ぬ~べ~「……!!」

勇儀「分かる範囲で、私の意見ってものを語ってやろう――勿論鬼に二言はないから安心しな」

328: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:36:55.50 ID:Rqku3eO70
勇儀「まず、そいつはこの幻想郷にいる鬼とは――無関係。もとから貴方のいた世界のどこかしらに潜んでいたらしい」

ぬ~べ~「……そうですか」

勇儀「今すぐ引っ張り出して手合わせ願いたいぐらいだね――なかなかの強者と見た」

ぬ~べ~「こいつを引っ張り出すことによって――封印を解くことによって」

勇儀「だが、引っ張り出すわけにはいかないね」

ぬ~べ~「……それはどうして」

勇儀「今はまだその時ではないということ――いずれ決着のつく時が来るさ」

勇儀「いつその時が来るかと言えば……私には分からん! 先のことを聞かれても、鬼は笑うしかないからね」

勇儀「そして貴方がその鬼を封じることによって抱えてしまった呪縛も……いずれ解ける」

勇儀「まだ今は、耐える時だ」

ぬ~べ~(……、驚いた。ここまで見抜けるものなのか。やはり鬼というものは……底が計り知れない)


勇儀「それに、無理矢理にでもそいつを引っ張り出してしまうと――たぶん本当の異変(めんどうごと)になっちまうね」

ぬ~べ~「……確かに、コイツは怖ろしい奴だった」

勇儀「手の平を重ねた時――そいつの声が幽かに聞こえたよ」

ぬ~べ~「!! コイツは一体、何て!?」


勇儀「『うがー』って言ってた。それだけ」

ぬ~べ~「……は、はあ。それだけ、ですか……」

329: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:43:48.55 ID:Rqku3eO70
勇儀「ま、とにもかくにも、これ以上刺激しない方がいい。仮にそいつが幻想郷にのさばることになると」

勇儀「――そうなると貴方はおろか、向こうで寝てる子らにも更なる危険が降りかかるだろう」

勇儀「そこまでして、自分の目的を達成しようとするほど――エゴな人間じゃないんだろう?」

勇儀「貴方はね」

ぬ~べ~「……」

勇儀「期待には添えなかったかも知れないけれど。こんなもんで、いいかなー?」

ぬ~べ~「……ええ、どうも。勇儀姐さん」


ぬ~べ~(幻想郷――最初はどうなることやらと思ったが)

ぬ~べ~(ここに暮らす妖怪達と人間との関係性の維持は、ここを一種の理想郷として成り立たせているんだな)

ぬ~べ~(もちろん、この箱庭を保ち続けるために――見えない所で犠牲が生じていることは間違いないだろうが)

330: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:46:35.34 ID:Rqku3eO70

――妖怪の山(上空)――


ビューン!!


文(厄介なことになってしまったわねぇ)

文(――博麗神社の炎上、大結界の弱化、……その一翼をまさか私が担ってしまうとは)

文(もっとも、他の約3名の方が明らかに過失割合が大きいけれどね)

文(博麗神社の方は霊夢さん達なら滞りなく修繕アンド水際での危機回避ができるでしょ)


文「――だったら、今の私の役割は妖怪の山に異変の余波が押し寄せていないかを確認すること」

文「そして、有事の際には外敵の侵略行為を鎮圧――」


??「クックックッ」

331: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 00:54:12.39 ID:Rqku3eO70
文「って言った端から余所者登場――何者ですか、貴方は」

文「いえ、その風貌を見るに大方察しはつきましたがね」


岩天狗「山の神さま最強の使い手――岩天狗」

岩天狗「よもや、このような異界に闖入することになるとは驚いたぞ」


文「山の神……おそらく、私が知っているそれとはてんで別物のようですね」

文「それから本当の猛者ならば、自分が強いなどと豪語しません――能ある鷹は爪を隠すもの」


岩天狗「……フン」


文「貴方も天狗なんだったら、山のタテ社会ってものを理解できるでしょう? 外界はそうでもないんです?」


岩天狗「大差はなかろう――山の掟は厳しいものだ」

岩天狗「いずれは山の神さまに命じられ、あの雪女と人間を始末するときも来るだろう」


文「その雪女の件はさっぱりですが、どうやら対話は可能なようで安心しました」

文「私は清く正しく美しいパパラッチ――鴉天狗の射命丸文」

文「この山は私をはじめ上司たる大天狗様、ひいては天魔様の管轄下にあります」

文「余所者の立ち入りは固く禁じているんです――事情を斟酌のうえ、速やかにお帰りいただけたらありがたいのですが」

332: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:04:48.56 ID:Rqku3eO70
岩天狗「ここは我らが山の神さまの統括とは異なる場――早々に立ち去ろう」

岩天狗「だが、その前に――同じ天狗を名乗る同士、一度手合わせしてやってもいい」

岩天狗「もっとも、鴉のか細い嘴が岩を打ち砕けるとは思えんが! ひーひひひっ!」

文「私は暇ではないのですが――そこまで挑発されると乗らなきゃ損な気がしますね」

文「貴方のその高慢ちきな長鼻を――へし折って差し上げますよ」


文「風神『天狗颪』」




ギュォォオオオオオオォォォォオオオ




岩天狗「不幸の風!」




バサッ――




文「おやおや、この程度の風撃、カマイタチの方が断然マシですね」

文「やるならやるでもう少し頑張ってもらわないと、私も手加減の匙加減に困りますから――」


文(ん、これは)

文(あやややや……何でしょう? 少し視界が……ぼやけて来たような)

333: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:08:38.50 ID:Rqku3eO70

――地底(地霊殿)――


ピョンっ


お燐「さとり様!」


さとり「……、あら、お燐――久しぶり」

さとり「どうしたの? 何か用?」


お燐「い、いやー……その……」


さとり「……、……、……、……そう」

さとり「でもそれ、わざわざ私に報告するほどのことなの?」

お燐「えー、そりゃだってさとり様……事は地上で起こっているとはいえ、地底も余波を食らってしまったら……」

お燐「万一、妖怪退治の請負人や賢者が下手を打った場合……幻想郷そのものが」

さとり「『最悪の場合、壊れてしまうかも知れない?』――大袈裟ねぇ」

さとり「それに、別に私は構わない」

さとり「私の居場所なんて幻想郷(ここ)に有って無きがごとし――幻想郷(ゆりかご)が失われたところで、何も変わらない」

お燐「あらら……そうですか。それじゃ、あたいはとりあえず行ってきますね」

334: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:12:29.34 ID:Rqku3eO70
さとり「『念のため、旧都の鬼達にも状況を伝えに行く』って? 別に、私は止めたりはしないわ」

さとり「お燐にも責任の一端があるのなら、後始末には参加してくれないと――」

お燐「さとり様にまで火の粉がかかってきたら、あたいはペットとして立つ瀬がありませんもの」

お燐「――それでは」


ニャー……タッ!


さとり(――度重なる不幸が重なって、博麗神社が炎上)

さとり(その事態に意図せずとも加担する結果となってしまったのがお燐を含む4名……ねぇ)

さとり(お燐のように、博麗神社に半分棲みついているような者を除くと、残るは……)

さとり(案外――その人物がその事態を引き起こした黒幕かもしれない)


パラッ


さとり「さてと――読みかけになっていた小説の続きでも読みましょうか」

335: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:18:28.63 ID:Rqku3eO70

――??――




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




??「――光だ


見えるはずのない天から光が見える


ヘェ、この暗澹たる地獄に一筋の光が差すなんて


出られるのか……ここから


何が待っている、あの光の先に




……


感じる


感じる……かすかに




覇鬼兄さんなんだね?

いるんだね……その光の向こう側に




待っていて――今、会いに行くよ

そして共に奏でようじゃないか――破壊と殺戮に彩られた、すてきな鎮魂歌(レクイエム)をね」




                          (第2話:旧都に佇む怪力乱神の巻・終)

336: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/07(木) 01:22:00.89 ID:Rqku3eO70
次回




第2.5話「 里人たちを守れ――妖怪大戦争勃発! の巻」




355: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 00:58:11.96 ID:p6smnOcF0

――人間の里――


カァー……   カァー……  




ミサキABCDE「「「「「・・・・・・・」」」」」


ジリ


妹紅(黄昏時か――昔から逢魔時(おうまがとき)と言われ、昼と夜が移り変わり、魑魅魍魎に出会いやすい時間帯とされる)

妹紅(いわんや夜になれば、いよいよ妖怪が本領を発揮するわ)

妹紅(亡霊は幽霊と違って、その目的を成就するか、自分の肉体が供養されない限り成仏しないという)

妹紅(できれば、彼らの遺志を探って、供養してあげたいところだけれど)

妹紅(話が通じる連中ではないようだし――ここは退治するしかない!)



妹紅「まずは炎で五体の動きを封じる! 不死鳥フェニ――」


ザッ!!


屠自古「……イタゾ!」

布都「さっきの2人は雷を落としたら成仏しおった! 屠自古、もう一度じゃ!!」

小傘「ちょっと!? こんなところでぶっぱなったら――」




屠自古「ライシ『ガゴウジトルネード』」

356: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:05:58.72 ID:p6smnOcF0
バリバリバリバリバリバリッ!!!


妹紅「ちょっと!?」


ゴォォォォォオオオオォォォォ!!




「キャァァァァァ!!」

「おい、火事だぞ!!」

「やばい、木造家屋が多いので、火の回りが早くなっているゥ!!」




布都「……あー、囲い込むように放たれた炎に屠自古の弾幕が飛んできて」

布都「火の玉状になって軌道が拡散、里のあちこちに飛び火してしまったか。これは大変じゃな」

屠自古「……アーア」

小傘「あのヤバそうな5人組、今の混乱に乗じて里の中へ散って行ったけど」

小傘「これって……マズいんじゃ」


妹紅「何邪魔してくれたんだキサマらはァ!!」


布都「こうなったら、私の力で鎮火して見せようぞ!」

妹紅「やめて! この流れだと火に油を注ぐ未来しかみえないから!」

布都「むむ……そうか? よし、皆落ち着け! 誰にだって失敗はあるものよ!」

布都「今は、あの連中を追うのが先決じゃ! 人間に襲いかかる気満々だったからの!」

屠自古「……ソウダナ」

妹紅「……そうね。今は言い争っている場合じゃない」

妹紅「そこの唐傘お化けの貴女!」

小傘「は、はい! って私!?」

妹紅「今すぐ近隣の命蓮寺に行って、応援を頼んで頂戴! 人里が緊急事態だからって」

妹紅「私達だけでは火災の鎮火まで手が回らない。あの5人組、分かれて人里を闊歩したら――」

小傘「えー!? でも私もともと関係ないのに! しかもお寺の近くからここまで無理矢理」

妹紅「いいから早く行くのよ!!」


クワッ


小傘「ひぃ!! 分かりました、今すぐ行きます!!」


タッ!

357: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:08:42.64 ID:p6smnOcF0

――移動屋台――


ギャーギャー ワーワー


ミスティア「おやぁ……何だか、辺りが騒がしくなってきたね」

小町「喧嘩でもやってんのかな」

美鈴「それより小町さん、早くカマを探さないと、まずいんじゃないですか?」

小町「ふふ、まあ、果報は寝て待てっていうじゃない」

小町「慌てて探すよりも、ゆっくり待っていたら意外と身近なところから出てきたりするものさ」


バキグシャッ!!! 


怪人A「――」


ダダダダッ


魔理沙「もう逃がさねぇぜ!! ――彗星『ブレイジングスター』」


ちゅど~~~~~~~~~~~ん!!

358: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:11:19.01 ID:p6smnOcF0
シュ――――――――――


ミスティア「……」

小町「……」

美鈴「……」


魔理沙「クソッ! また避けやがったか!!」

魔理沙(自慢じゃないが、空を飛ぶ早さにゃ結構自信あんのによ! 狭い小路を上手く走り抜けて、あと一歩のところで被弾を回避)

魔理沙(あいつ、無駄に身体能力が高いぞ。おまけにどっかで見たようなカマを振り回して来る!)

魔理沙(追いかけっこをしてるうちに、人里のど真ん中まで来ちまった!)

魔理沙(これ以上、好き勝手させるわけにはいかねぇ!!)


ミスティア「ちょっとアンタ!! うちの店が全壊したんだけどどう責任取ってくれんだよ!!」


魔理沙「ん? 悪い! 今それどころじゃなくてよ――後にしてくれ!!」


ヒュン!!


ミスティア「く……くぅ……ッ……」

359: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:14:30.04 ID:p6smnOcF0
美鈴「不幸な出来事がまた起きてしまいましたね……」

小町「って、こりゃ尋常じゃないね――あたいらも様子を見に行こう」

美鈴「そういえば、さっきの仮面の妖しいひと。手に持ってたのは」

小町「ああ、間違いなくあたいのカマだ」

美鈴「そもそもアレって、ただの飾りじゃなかったんですか? その、死神的なアイテムってことで」

小町「そんなわけないだろう。あれは半人半霊の(楼観)剣や、不良天人の緋想の剣に負けずとも劣らない威力を持ってるんだ」

美鈴「ということは、もし悪い輩に悪用されたら……」

小町「ああ、ヤバイね。そんなことになったら、今度はあたいの首が本当に飛んじまうよ……」


ミスティア「グダグタ言ってないでとっとと行っちまいな!! 私は今ひとりで静かに鳴きたい気分なのよ……」


キィィィ……

360: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:17:59.04 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山――


ザザザザザッ


玉藻「フフ、まさか九尾の狐様があの結界の生成に関与していたとはな!」


藍「様呼ばわりされる筋合いはない。私は貴方のことなどまったく知らないからね」


玉藻「確かに、私もあなたを知らない――だから、もう様付けはしないことにしよう」

玉藻「鵺野先生や生徒達の居場所について、早く教えてもらえませんかね?」


藍「知らないっていってるでしょう! 私は今とても忙しいのよ、邪魔しないでくれない?」


玉藻「いいえ、聞き出させてもらいます。この場で逃したら、もうあなたは二度と捉まらないと思うんでね!」


藍「狐のカンっていう意味かしら? その通り、この場を凌いだら敢えてこちらから出向くことはないでしょうね!」


藍「式神『四面楚歌チャーミング』」


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


玉藻(む! ――無数の弾丸か? いや、式神の類を変化(へんげ)させたものだ)

玉藻「はッ!!」


シュキラーン!!

361: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:23:24.11 ID:p6smnOcF0
藍「弾幕を強引に斬り裂くか。ここの住人ではないな――境界のゆらぎに乗じて迷い込んだはぐれ狐ということか?」


玉藻「私は迷いこんだわけではない。ちゃんと目的を持ってここに来た」

玉藻「そして、首刺又(これ)は武器としても使えますが、本来こう使うものなんですよ」


グニャ~……スゥ


藍「! 頭部から人間の骸骨が抜き出て――ということは、それを使って人間に化けていたのだな」

藍「そして、お前の真の姿が――それか!」


玉藻「ご名答! あなたは間違いなく強力な妖怪だ――私は人間としての姿ではなく、本来の妖狐として闘わせてもらおう!」


藍「ふふふ。ならば、私も今は“式神”としてではなく、ひとりの“九尾の狐”として闘わせてもらおうか」

藍「もっとも、気持ちとしての問題だけれどね」


玉藻「あなた自身が……式神だと? あなたのような伝説クラスの妖狐が何者かの手下に甘んじていると言うのか」

玉藻「解せない」


藍「甘んじているというわけではない、ひとりの妖狐であるよりも紫様(あのお方)につくほうがいい」

藍「それくらいに、私はあのお方に魅せられ、敬意を払っているというということよ」


玉藻「敬意、……だと」

362: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:27:15.29 ID:p6smnOcF0
藍「親愛――と言い換えても差し支えないかも知れないわね」

藍「貴方だって、そういう気持ちは分かるでしょう? ――詳しい事情は分からないけれど」

藍「貴方はヌエノとかいう者のことをとても気に掛けている。だから、ここまでして私に付き纏うわけだ」


玉藻「気に掛けていることと、親愛という言葉は、全く別物でしょう? 私はそういうつもりであなたに突っかかっているわけではない!」


藍「だったら、どういうつもりよ。私があなたと近い種族だから? ……ハッ、そうか!!」




藍「油揚げ(これ)を奪うのが目的なのね!!」

藍「確かに気持ちは分かる! ――私とて、これを前にしては周りが見えなくなってしまうことがあるからな!」




玉藻「……。ふふ、あなたは、たいそう挑発が御得意なようだ!!」


ダッ


玉藻「火輪尾の術・役小角!!」

藍「! 超人『飛翔・役小角』」


ドシュ――――――――ン!!

363: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:31:42.19 ID:p6smnOcF0
玉藻「むぉぉッ!!」


藍「そちらの力負けだ。妖狐の力を前面に押し出したところで、まだまだ青二才なのが見てとれる」


玉藻「……この程度で全力だと思ってもらっては困る。ここから本番ですよ」


藍「いいだろう。少しばかりおままごとに付き合ってもいい! ――私の油揚げ、奪えるものなら奪ってみよ!」


玉藻「生憎だが、私は油揚げそのものよりも――稲荷寿司の方を重宝しているのでね」


藍「む、そうか。米も一緒がいいのか」

藍「だったら後で、酒の選り好みに長けた巫女を紹介してもいいわよ!」

藍「旨い酒あるところに美味い米あり、いい寿司が味わえるぞ?」

玉藻「……、考えておきましょう」


カッ!!!

364: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:34:49.70 ID:p6smnOcF0

――妖怪の山(大蝦蟇の池・上空)――


ヒュォォォォォ!


ゆきめ(! すっかり暗くなった山の中腹あたりから火の手が!)

ゆきめ(ということは、もしかして鵺野先生が見つかったという知らせ!?)


ドシューンドシューンドシューンドシューンドシューン!!


ゆきめ「わわわ……!」


早苗「ちょっとちょっと! 逃げてばかりじゃなくて貴女も弾幕を使ってくださいよ」

早苗「いかに美しく弾の華を咲かせることができるか。そこが弾幕ごっこの醍醐味でしょ?」


ゆきめ「私知りませんよ、そんなの!」


早苗「まあ、仕方がないですね。そんなにやる気がないのなら、そろそろ打ち止めとしますか」

早苗「すっかり辺りは闇の中――あんまり夕食が遅くなっては私としても困りますんで」

早苗「これで、トドメにしましょう!(勿論、殺すとまでは言ってません)」


ゆきめ「くっ……!!」

ゆきめ(このままだと、鵺野先生と再会する前に、私は)

ゆきめ「そんなのイヤよ!! 私は鵺野先生と結ばれるまで――」

ゆきめ「こんなところで、斃れるわけにはいかない!!」




コォォォォォォォォォォォォ!!




早苗「!! 池の水面を一瞬で氷漬けにっ!?」

365: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:37:33.36 ID:p6smnOcF0
ゆきめ「弾幕ってやつ、よくわからないけど――こういう感じでいいんですか?」




パキパキパキパキパキパキ……ズドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!




早苗「水面の氷をつらら状に砕いてこちらに発射! 氷ミサイルですか!?」




ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ




早苗(危ない危ない……下手を打ったら貫かれるところでした!)

早苗「あれ、あの雪女(ひと)は、何処に――」

ゆきめ「おりゃあああッ!!」


ガキーンっ!!


早苗「ッ! 尖った氷を腕に纏わりつかせ、剣のように振りかざすとは!」

ゆきめ「たかが氷と思ってたんでしょうけど、いろんな使い方があるんだから!」

早苗「ていうか、今の闇討ち……ちょっと危ないじゃないですか。御祓い棒で受け止めなかったら私ケガしてましたよ」

ゆきめ「そっちが最初に仕掛けて来たんでしょ!!!」


シュルルルルルルッ!!


ゆきめ「わっ!?」

早苗「ひゃっ!?」

366: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:45:21.04 ID:p6smnOcF0
大蝦蟇「ジトー」


ゆきめ「何この大きなカエルは!? 捕まっちゃいましたよ!」

早苗「あ。そういえば、この池の水は神事に使われていて……池を冒涜した者は」

早苗「大蝦蟇(池の主)に懲らしめられて――」

早苗「え……どうして私まで?」


大蝦蟇「ペ ペ ペロ」


ゆきめ「いやぁ! 唾液で全身ベトベトにぃ!!」

早苗「これってやっぱアレですね!? 何故か服だけが溶けてしまうっていうアレなんですね~!!」




キャアアー!!




――妖怪の山(上空)――




ヒュォォォォォ




文(あ……霊夢さん、……死んじゃったんですか?)

文(仕方がありませんね……新しい博麗の巫女を早急に用意しないと)

文(巫女の代わりなんて……いくらでもいるんですから)

文(……いくらでもいる?)

文(それは……私の本心なのでしょうか?)

文(そういえば、霊夢さんが博麗の巫女になって以来……随分とあの神社に取材に行く機会が増えましたね)

文(私が今まで過ごしてきた時間に比べれば、……ほんの刹那に過ぎないここ数年なのに)

文(……霊夢さんの代わりになる人なんて……今後……果たして……)


岩天狗「この俺様の実力、見くびり過ぎたようだな」

367: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:49:52.81 ID:p6smnOcF0
岩天狗「いったいどんな幻覚に惑わされているのか、わしには分からんが」

岩天狗「こやつが抱いている何らかの不安な考え、それに取りつかれているな!」

岩天狗「“不安の風”と言いたいところを、“不幸の風”と言い間違えちゃったけど……まあいい」


文「――」


岩天狗「だが、幻術にかかりながらも宙に浮いたままでいられるとは……なかなか」

岩天狗「ま、待てよ……今なら、この女天狗に、その……触れたりとかできる……な」

岩天狗「生れてこの方800年、女にはとんと縁がなく……手さえ握ったことなどないこの岩天狗だが」

岩天狗「今なら……いけるぞ! よくよく見ればこいつ……まあまあ顔もいいし……」

岩天狗「手ぐらい……触っても……。い、いや……いっそ、他のところも――」


ヒューン!!


??「はたてちゃんキ―――ック!!!」


ドゴッ!!


岩天狗「グボォォッ!!?」

368: ◆8c/Sw4f94s 2014/08/08(金) 01:51:39.76 ID:p6smnOcF0
――妖怪の山(麓)――


ジー


にとり「……」

弥々子「何が見えるっぺ?」

にとり「何なんだろ……とりあえずあっちこっちで楽しそうに遊んでるっぽい光景かな?」

弥々子「見せて見せて!」

にとり「いいけど……この高性能望遠鏡、私が手塩にかけて作ったんだから傷とかつけないでよ?」

弥々子「分かってるっぺ!」


バキッ!


弥々子「ごめん、おら、力加減とか上手くなくてー」

にとり「わ、私の……自信作がぁ……!」