ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」 前編 

ぬ~べ~「幻想郷か……厄介なところに引きずり込まれてしまったものだ」 中編

664: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/02(火) 01:35:53.11 ID:xlVR2cqH0

――紅魔館(応接室)――


レミリア「なるほど、こいつ外界から召喚されてきたわけね」

ベベルブブ「ええ、まあ」

咲夜「悪魔の仮契約を交わしたものの本契約には躊躇して文通……」

小悪魔「もー、まどろっこしいですよね。男なら男らしくしないと」

ベベルブブ「だ、だって……今まで800年間の女性に契約を断られ続けて来て……それで……」

咲夜「あら。つまり貴方はド――」

ベベルブブ「う、うううっ……!」

美鈴「そう落ち込まないでいいじゃないですか。もう相手ができたのならそれで」


パチェ「それで、どうするのレミィ」

レミリア「ん、何を?」

パチェ「ベベのような無害な悪魔や、本が好きなだけの無害な浮遊霊がやってくるならまだしも」

レミリア「さっきのような得体の知れないのが現れたらどうするか……ってことね。いい案があるわ」

レミリア「この紅魔館を魔術工房と化してあらゆる侵入者を歓待してあげるのよ――まずは無数のホフゴブリンをその辺に配置して」

パチェ(……本当に大丈夫かしら)



                                         
675: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 22:57:16.93 ID:hy0m+nz/0

――地底(旧都)――


お空「あら、そういえば……私は何のためにここまで来たのだったかしら」

ヤマメ「忘れるのが早いよ。子どもらを守りつつ地霊殿を目指して、場合によっちゃ地上に出て緊急事態(いへん)対応に手を貸そうかってことよ」

お空「え、ちょっと待って……もう一度言ってくれない?」

お燐「ともかく、あたいたちは先に地霊殿に! さとり様やこいし様のことが心配だ」

ヤマメ「私も行くよ。子どもらのことは、貴方たち2人なら……」


ぬ~べ~「ああ、任せてくれ――もともと俺の生徒たちなんだ。ここまで守ってきてくれて助かったよ」


ヤマメ「たいした手間じゃないさ。じゃあね、また後で、落ち合おう」


ザッ!


郷子「茨華仙さんは……お身体のほう大丈夫ですか?」

華扇「ええ、大丈夫よ。百薬枡(おくすり)をいつも携行してるから、怪我も次期に治癒するわ」

広「薬なのか? 酒を注いで呑んだだけに見えたけど」

華扇「この一升枡自体が特殊な力を持っていてね。それにお酒そのものだって良薬なのよ」

美樹「これって、ぬ~べ~が呑んでも効くの?」

ぬ~べ~「いや、そこまでの心配はいらないぞ。俺は車に轢かれようが炎で焼かれようが氷漬けにされようが簡単には死なん!」

676: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:04:28.33 ID:hy0m+nz/0
ぬ~べ~「裂傷した左腕にも茨華仙さんの治癒力を少し分けてもらったから……自分の霊力と合わせて、とりあえずは使いものになる」


郷子「お燐さんがどこからか取って来た誰かの手の骨をヤマメちゃんの糸で包んで丈夫にして――」

美樹「――腕に巻いた包帯を伸ばしてくるんで手首に固定、で義手化。んでもってそれを霊力で動かす……と」

広「鬼の手がなくても、やっぱ半分以上妖怪みたいなもんだな」


ぬ~べ~(だが、力を蓄えたあいつを再度封印するには、あの時以上に骨が折れそうだ)

ぬ~べ~(幻想郷の妖怪達(みな)の力を……貸してもらわざるを得ないかも知れない……)

華扇「半分妖怪……ね。この百薬枡は人間でも効果を発揮する。怪我の回復に加え、怪力を発揮できるほどの力が漲ってくるわ」


広「! それ本当? だったらぬ~べ~先生も呑めば」


華扇「ただし、副作用があるのよね。呑んだ者は一時的にガサツで乱暴な鬼の如き性格となり……肉体は鬼のそれに近づいていく……」

ぬ~べ~「鬼の魂魄に……」


美樹「いいじゃん、もともと鬼の手持ってたんだし」

広「そうだよ先生、ここいらでワンランクパワーアップしないとこの先きつそうだぞ」


ぬ~べ~「簡単に言ってくれるなあ……お前たちは」


郷子「あれ、ということはその枡でお酒を呑んでる茨華仙さんは……」


華扇「はいはい、それ以上詮索されると流石に困るからやめてね(でもまあ、部分的な記憶消去くらいなら……)」




ザッザッザッ!!!



「やっっっと見つけたわー!!!」

677: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:15:54.51 ID:hy0m+nz/0
広「え? ってああ!」

郷子「ゆきめさん! それに玉藻先生も!」

美樹「ついでに緑色の……今度は何妖怪のコスプレ? 脇とかヘソ出しで風俗嬢っぽいわー」




ゆきめ「鵺野先生ーッ!!! ほかのみんなも! ――って何あの逆タラシっぽいピンクな女は!?」

玉藻「鵺野先生の左腕に包帯が。手首から先はカモフラージュしているが――それは義手ですね?」

玉藻「――やはり、あの鬼の封印が解かれてしまったのか」

玉藻「それにしてもあの女、まるで鬼のような強い妖気を発している! もしや……奴が鬼の手解放の引き金に?」

早苗「なるほど! 仙人さん、異変の兆候だなんてうそぶきながら、本当は自分が異変を起こすつもりで――」

玉藻「何だと? あの女が今回の異変とやらに一枚咬んでいたというのか……!」

早苗「そして、地底に向かう意向を私に伝えて……尚且つ霊夢さんにもその旨を知らせろと」

早苗「あっなるほど。私たちにちゃーんと解決役を演じて欲しかったんですね」

早苗「では、ご真意に沿って弾幕ごっこといきましょう!」

ゆきめ「よくわかんないけど、あの女が鵺野先生にたらしこんで悪事を企んでるってことでいいの!?」



華扇「ちょっとちょっと! 貴方たち……大いに勘違いをしているわよ! それと約2名は何者?」

ぬ~べ~「ゆ、ゆきめくん!? それと見知らぬ緑のお嬢さん! それから玉藻までこっちに来たのか!?」

ぬ~べ~「3人とも待て……とにかく待つんだ!! 今は遊んでいる場合じゃ――!!」

華扇「話せば判るわ! 冷静になって――!」

678: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:21:08.98 ID:hy0m+nz/0
「氷嵐『アイスブリザード』――!」

「狐火『空海上人』――!」

「危ない茨華仙さん! 俺が攻撃を受け止めるから後ろにッ! ぐわあああああッ!!」

「何でその女を庇うんですかーッ!!?」

「血迷ったか! 私は知り合いを異変に関わらせないという約束をしているのでな。少し頭を冷やしてもらいますよ」

「さあ皆さん、私にチカラを分けてくださーい。妖怪退治『妖力スポイラー』――!!」

「ちょっと!? これ以上私の力を吸い取らないでぇ―――!!」

「お前ら本気でやってるだろー!?」




ビュォォォォォォォォォゴオオオオオオオオオギュワワワワワワワワワワちゅど~~~ん




美樹「うわー……いい大人たちが楽しそうに遊んでるわよ、こんなときに。まったく状況判断ってものがなってないわ」

郷子「……普段は冷たいくらい冷静な玉藻先生まで熱くなってるわね」

美樹「それはアレよ、恋は盲目ってやつ」

679: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:26:05.43 ID:hy0m+nz/0
広「鯉はもーろく?」

郷子「美樹、ちょっと何ヘンなこと言ってんの?」

美樹「うーん、まぁ広い意味でそーゆーことじゃない? 恋というよりむしろ愛か」




/キ――――――――――――――――――――――――――――――ン\




広「……何かが飛んでくな。あの地霊殿(たてもの)の屋根あたりから……」

郷子「……上の方に向かっていったけど……まさか」

美樹「まさかというか、間違いないんじゃない? これどうやってオチを付けるつもりなのよ?」

680: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:29:03.79 ID:hy0m+nz/0

――博麗神社・裏山の大木――


シュ――――――――――――


絶鬼「いやあ、驚いた」

絶鬼「本当に鉄壁のような体だ。というよりも絶壁かな」

絶鬼「ただの強がりかと思いきや、それ相応の実力も兼ね備えているじゃないか。あれは人間じゃないな」

絶鬼「圧倒的な鏖(みなごろし)もいいが、こうやって邪魔されるのもまあ悪くはない」

絶鬼「ゆっくり(アダージョに)侵略していくとしよう」


ニヤリ


絶鬼「最終的には、同じ未来が待っているわけだからね」




――

ルナ(ヤバそうなのがうちの木の下で寝転がってるよ? どーする?)

スター(まあ、取り敢えず戦ってみる?)

サニー(自然に溶け込むのよ。これには関わらない方がいいと思う)

681: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:32:47.40 ID:hy0m+nz/0

――博麗神社――


ヒュォォォォォォ


天子「愚か者め――我を甘く見た報いよ」


針妙丸「凄いわ……あの鬼の攻撃を受け止めた上に、力技で向こうの大木に叩きつけちゃった」


霊夢「でもね。相手も、本気を出しているわけじゃないのよ?」

霊夢(どうする?)

霊夢(暫く、天子があの鬼と交戦するのを観察するか。あるいはすぐさま介入するか)

霊夢「はぁー」


少妙丸「霊夢さん?」


霊夢「今日は結構アタマ使ってる気がするわ。いつもと勝手が違うわねー」

霊夢(あの小鬼の持っているチカラがどれほどのものなのか)

霊夢(こいつとの戦いぶりを見て見極め――)




グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ

682: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:36:15.95 ID:hy0m+nz/0
天子「おぉー」

霊夢「な!?」

針妙丸「地震!?」




グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ




針妙丸「ちょっと天人さん! まさか貴女が要石を引き摺りだそうと――」

天子「え、まだだよ? まあ、あの小鬼が本気を出してきたら使おうと思ってたけど」


霊夢(来る! 今度は下から――地底から這い上がって!)




バキィィィィィィィィィィィィ!!




覇鬼「ウガァ―――――――――――ッ!!!」




ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ


針妙丸「お、鬼が出たー!! 今度は赤い鬼が地下から!!」

針妙丸「今ので足場まで崩れて……! 下に堕ちちゃうよっ!!」


ガシッ


霊夢「何言ってんのよ。あんたも飛ぶことくらいできるでしょ?」

針妙丸「あ、あはは……突然で焦っちゃって」

683: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:43:00.76 ID:hy0m+nz/0
霊夢(ピンポイントでの襲撃……今度は赤鬼、さっきのは鬼の姿だと青鬼)

霊夢(鬼としての外見は……色を除けば結構似ているわね)

針妙丸「――あ、あれ。さっきの赤鬼はどこ!?」

霊夢「頭上よ。といっても結構高く宙に舞っている」

霊夢「おまけに……今の鬼の登場で私が一瞬ひるんだスキをついて」

針妙丸「あああっ! あの宙に浮いている注連縄の張られた大きな岩はっ!!」

霊夢「ほら、針妙丸は降りて神社跡を見張ってて。あの薔薇の鬼が裏山から戻ってきたらすぐに伝えてね」




――博麗神社・上空――


ゴロゴロゴロゴロ……ゴロゴロゴロゴロ……


天子(曇天かぁ。激しい雷雨にもなり得るし、雲が晴れて陽が差す場合もあり得る、という感じかな)


覇鬼「絶鬼……どこにいる?」

684: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:48:38.75 ID:hy0m+nz/0
覇鬼「ん、何だか周りの天気が悪いうが」


ヒューン!


天子「――うふふ。素晴らしいアシストだったわ」

天子「おかげで期せずして地下に挿しこまれた要石はこうして私の手に戻った」

天子「いよいよ緋想の剣と合わせて、私の真価を再び発揮する時が来たのよ」

天子(さーて、大地に溜め込まれていたエネルギーを活用すれば、局地的な災害どころか一気呵成に破砕することもできる。けど)

天子(それでもまあ、ジワジワいくよ。潰し甲斐のあるところから、少しずつ削っていこう)


覇鬼「誰……だ?」

天子「はい、手を出して」

覇鬼「?」


ぱんっ


覇鬼「何故……手を」

天子「合わせたって? それはハイタッチだから。――我曰く、正しくはハイ・ファイブ」

天子「貴方は私の目的達成に助力してくれたのだから、仲間に加えてあげてもいいかなーって」

覇鬼「ナカマ?」


覇鬼「俺のナカマは絶鬼と眠鬼だけうが。兄妹はどこにいる? 絶鬼は近くにいる!」


天子(ゼッキとミンキ)

天子(近くにいるはずの……鬼……見るからに凶暴で強そうな鬼……その、きょうだい)

天子「ああー。あいつのことなのね」

覇鬼「?」

685: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:53:16.89 ID:hy0m+nz/0
天子「絶鬼(そいつ)のことなら、私知っているわよ――何処にいるのか教えてあげるわ」

覇鬼「本当か! 早く教えるうが」

天子「ええ、教えてあげるから。だから、私についてくるのよ」


天子(この赤鬼は使えそうだ。いや、こいつだけではない――)

天子(こいつをエサにすれば、あの小鬼を上手く服従させることもそう難儀ではないな)


天子(凶暴な異界の鬼どもを率いれば、本格的で鬼気迫る異変を巻き起こせそう。その方がもっと面白そう)

天子「『銭あらば鬼をも使ふべし』――今回の場合は、貴方自身が銭に使えそうね」


覇鬼「?」




天子(……やっぱり私には、幻想郷(なにか)を“守る”よりも“壊す”ほうが向いているみたい)

686: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/03(水) 23:57:03.39 ID:hy0m+nz/0
キョロキョロ


覇鬼「んー?」

覇鬼「向こうに大きな花畑があるうが! 見にいくうが!」


ザッ!!


天子「あ、ちょっとぉ!」

天子(まったく、まるで子どもね。好奇心旺盛で、落ち着きがない――)


ヒュンッ!!


霊夢「待ちなさい、不良天人」

天子「あら、博麗の巫女。何か用? 境内まで崩れちゃって大変ねぇ、ご愁傷様」

霊夢「惚けるんじゃないわ。要石を引き抜いた挙げ句、あの赤鬼どもを利用して悪事を働くって魂胆なんでしょ?」

天子「悪事? 違うわよ――強いて言うなら異変かな。もう二次異変の段階に入るかなー」

霊夢「あんた1人が暴れるだけならまだしも――あいつらを使役しようなんて考えてる時点で」

霊夢「もう遊びの域を超えている」

687: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:07:46.72 ID:xQ1WoxxA0


――グサリッ


霊夢「ッ……あっ!?」

霊夢(背後から――刺された。刀剣……?)

霊夢(緋想の剣じゃない! 鋭利なヤイバが……まさかこれ……アイツが)


――ギューン!!




天子「薔薇の鬼もようやく再起動ね。こっちの様子を覗っていたのかな」

天子「で、巫女に突き立てたのは……あの手刀を先鋭化した妖剣のようなものか」

天子「伸縮自在な上に伸びても尖頭の威力は変わらず。巫女ったら真っ逆さまに地べたへ引き摺り下ろされちゃって」

天子「やれやれ。スペルカードシステムの弊害か、ちょっと体がなまってるんじゃないの?」

天子「決闘というより乱闘なのだから、油断は一切許されないのに。奇襲もあれば騙し討ちもあり、圧倒的な力で押し切るもあり」


天子「――簡単に死なないでよ?」

688: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:10:47.44 ID:xQ1WoxxA0
天子(でも、あの巫女には不思議な力が宿っているし、運も天賦の才もあれば類まれなる洞察力もある)


ニコッ


天子「それに、強大な黒幕と闘う自機(しゅじんこう)なら」

天子「いっぺん痛い目を見てから修行(パワーアップ)して再戦するってのが王道よねー」


天子「次に会う時が楽しみよ、博麗霊夢――時間無制限という真の死闘における貴女の強さ」


天子「とくと堪能させてもらうからね」

689: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:15:56.72 ID:xQ1WoxxA0

――博麗神社・裏山――


ブォンブォンブォンブォンブォンブォン ――グシャッ!!


霊夢「ッ!!!」



シュルシュルシュル……


絶鬼「どうだった? ぼく流のメトロノーム、これで気絶しないとはね。きみも人間じゃないの?」

絶鬼「――いいや。きみは紛れもなく人間だ、ニオイで分かる。だが、ただの人間ではないんだろ?」


ジュゥゥゥ……


絶鬼「大木に叩きつけて、鬼(ぼく)の手刀をきみのカラダから抜き取るが早いか――即効で御札を使った反撃」

絶鬼「なかなか強力だね、これ。両の腕がただれてしまいそうだ」




ムクリ ジワ……


霊夢「……あーもう、やってくれたわね。痛いじゃないの」

690: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:23:40.33 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「まあ、見事に“被弾”しちゃったこっちにも落ち度があるか。天子以外に見られてないでしょうね、こんな恥ずかしい一場面」

霊夢「サラシを始めドロワーズやら振り袖やら、血飛沫で白いとこまでちょっと紅くなったじゃない」

霊夢「後でクリーニング代を弁償しなさいよ?」


絶鬼「……意外だ。痛みでもっと泣き叫ぶかと思ったら……気丈なのか暢気なのか」

絶鬼「もしかして、初撃はあえて急所を外してあげたから余裕があるの?」

絶鬼「きみも掴みどころがないな。ますます面白い、嬲り甲斐があるってものだ」


霊夢「誰が誰を嬲るって? 私、もうプッツンしちゃうわ」

霊夢「あんたは容赦しない。遊びでもなんでもない。あんたは私が退治する」


絶鬼「望むところ――と言いたいけれど」

絶鬼「今はあの目障りな桃帽子を追いかけるつもりだから、きみのことは後回しだ」

絶鬼「どういう経緯か定かではないけど、晴れて解放された覇鬼兄さんと早く再会したいんだもの」

691: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:27:25.84 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「バキ兄さん……ということはさっきの赤鬼――」


パシュゥゥ!!


絶鬼「ふうー。ようやく御札の呪力を弾き返すことが出来た。思った以上に時間を食ったな」


霊夢「ッ!!」


ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン


絶鬼「次は霊光弾? この弾の模様は太極図のようだ――今度は直接触れないで片付けよう」

絶鬼「破壊光弾(ようりょくは)!!」




パァ――――――――――――――ン!!!!




霊夢「……へぇ、威力あるじゃない。美しさの欠片もない毒々しい“弾幕”だわ」



絶鬼「きみは見た感じ、神社の巫女ってやつだね? 巫女も広義には霊能力者の範疇に入るだろう?」

絶鬼「兄さんのように、封印でもされないように気を付けないと。じゃ、また後で、追ってくるならくればいい」


バサァッ!!!!


霊夢「待ちなさいッ!」

692: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:31:37.38 ID:xQ1WoxxA0
絶鬼「ぼくの名前は絶鬼。鬼の三兄妹の次兄にあたる」

絶鬼「……おっと、この無様な虫けらは返してあげるか」


ポイッ!


霊夢「あっ……!!?」


ストンッ


針妙丸「……う、……霊夢……さん」

霊夢「針妙丸……あんた、こんなボロボロになって」

針妙丸「ごめんね……私じゃ……あの天人さんみたいに……対抗できなかった」

針妙丸「私には……無理なんだ……鬼退治なんて……分かってたけど……私はやっぱり無力だった」

針妙丸「役に立たなくて……悪かったわ」

霊夢「バカじゃないの、あんたは。絶鬼(あいつ)が来たら知らせてって言っただけなのに、なんで」

693: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:35:33.73 ID:xQ1WoxxA0
ヒュォォォォォォ


絶鬼「あはははは! 一寸法師なのか何なのか知らないが」

絶鬼「安易に飲み込んで腹の中をいじくられるほど――ぼくはバカじゃないからね」

絶鬼「どうだい。据わっている肝の方から、少しは頭に血が上った?」

絶鬼「きみも人間だったら、こういう風にナカマを虐げられたら怒るんだろう?」

絶鬼「怒って莫大な力を発揮できたるするんじゃないの?」

絶鬼「いや、そもそもナカマですらなかったか? こんな役立たず、捨て石にも使えやしないもんね」




霊夢「許さないわよ

――絶対に許さないわよ、あんただけは」




絶鬼「……」

絶鬼「これは怖い。きみの瞳には鬼が宿っているんじゃないかってくらい怖いよ」

絶鬼「ただし、正真正銘の鬼のおぞましさには到底及びはしない」

絶鬼「きみは、やっぱり人間だ」

絶鬼「ケガを治して再挑戦するチャンスを与えよう――来たらいつでも応じてあげるよ」

絶鬼「ただし、リフレインは一回だけだからね?」


ビュン――!!

694: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/04(木) 00:40:59.21 ID:xQ1WoxxA0
霊夢「――ギリ」


針妙丸(……霊夢さん、貴女……変わったわね)

針妙丸(博麗の巫女と言えば……無慈悲で誰に対しても平等であるがゆえに、誰のことも仲間だなんて思っていない)

針妙丸(故に誰もその心のスキマを埋められない――そんな冷たい人間だって言われてたのに)


霊夢(――いいこと。本当の実力っていうのは、のっけから開けっぴろげにするもんじゃないの)

霊夢(だって、最初から全力で行って――もしそれで太刀打ちできなかったら、おしまいだもの)

霊夢(だから今回は使わなかった。私の究極奥義ってやつも、巫女らしい神通力も。けれども、次は――)


針妙丸「ねぇ、霊夢さん。貴女は……私を味方だって認――」


霊夢「安心なさい、針妙丸。あんたが受けた仕打ち――八百万倍返しで凶鬼(ヤツ)にお見舞いしてやるわ」

霊夢「私の使命(おしごと)の一環とし……て……ね」


フラリ





(第4話:震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼の巻<前編>・終)

713: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:11:09.32 ID:jJNa9ChN0

――境界にある屋敷――


藍(――やっぱり、あのお方の姿形も痕跡も見当たらないわ)

藍(愛用の枕も布団も持って行かれたまま還ってきていない。まさか、外界で冬眠……いえ、仮眠に入っているとか)

藍(流石にそんな筈はないわよね……。あのお方に限って……身に何か起こったとも考えられないし)


藍(何故だ……何故、紫様はお戻りにならないんだ)

藍(現在の論理結界の脆弱性は私が想定していた数値を遥かに上回っている)

藍(これでは私に出来ることなど……)

藍(霊夢の意図によるものでもないな……これは。大結界を恣意的に弱められるにしても限度がある)

藍(霊夢が外来人(まよいびと)を外へ送り返す際の結界の操作とは、ケタが違うわ)


タッ!


橙「藍様」

714: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:14:44.22 ID:jJNa9ChN0
藍「ああ、橙。どうだった、紫様の所在につながるような手掛かりは?」

橙「はい、あのご友人にも……心当たりはないそうです」

藍「そう」


藍(……他にも各地に式神を飛ばしているが音沙汰なし)


藍「やはり、まだ幻想郷にも戻られていないのか」

橙「幻想郷にも?」

藍「ほら、定期的に物資の調達等で外界(ちかくてとおいところ)にお出でになっておられるでしょ」

藍「自由に“外遊”ができるのは基本的に紫様のみ――幻想郷を孤立社会(ビオトープ)として維持する上で大事なことだものね」

橙「そうでしたっけ? やはり紫様は凄いですね!」


藍(……橙は精神面も妖術も未熟なのよね。物で釣らないと言うこと聞いてくれないときもあるし)

藍(そう考えると、私もまだまだだな。あのタマモという妖狐の前では格好つけたが)

715: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:17:19.02 ID:jJNa9ChN0
橙「これからどうします、藍様? 幻想郷のあちらこちらで異変が起きているようですよ」

橙「外来妖怪(よそもの)を退けるために私たちも出向いた方がいいんじゃ?」

藍「うーん、今回の問題は局地的じゃなく幻想郷全土に渡るもの」

藍「大局的な見地に立って動かないと……細部に気を取られて下手に動きまわればかえって歯止めがかからなくなってしまう」

藍「――私はここに残るわ。紫様ももうじき還られるに違いない。そうしたら、すぐに手伝えるように待機しておく」

藍「橙は博麗神社に行って、霊夢に紫様(こちら)の情報を伝えてくれる? まあ、とっくに異変には気付いて動いているとは思うけどね」

橙「……」

藍「あとでもっと上質なマタタビあげるから」

橙「はーい、判りました!」


タッ

716: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:19:20.77 ID:jJNa9ChN0
藍「……」

藍(待機か……。裏を返せば狡猾ともとれるな、この非常時に現場で動かないことは)

藍(従者としての立場に慣れ過ぎてしまったのかな。指示があれば頭の回転も働くが……)

藍(こういう局面をどう乗り切ればいいのか……自分ひとりで考えてもなかなか得策が浮かばない)


藍「式神(コンピュータ)に成りきり過ぎるのも問題だな」

藍「データベースだけでは解決策を見いだせない――ということか?」


藍(……あの妖狐や、もしかしたらその仲間も、否応なく異変に巻き込まれているやもしれん)

藍(仲間に火の粉がふりかかったとき、あの妖狐はどう動くだろうか)

717: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:24:40.28 ID:jJNa9ChN0

――天界――


衣玖「えっ……自信ですか」

衣玖「空気を読むことには自信がありますね」

神子「いえ、違います。地震の方です」

衣玖「えっ……自身の自信ですか? つまり貴女自身の?」

神子「私が地震ですと?」

衣玖「だって、私自身の自信については最初に答えましたよ」

神子「最初に答えられたのは自信のほうで地震ではないでしょう?」

衣玖「えっ……自信には二通りあると言うのですか?」

神子「地震に二通りですか。自然発生型と人為発生型……ということかしら」

衣玖「貴女はどちらの自信家ですか?」

神子「どちらでもありません。というより私は震源にはなりません」

衣玖「武田信玄には転生しないと?」

神子「えっ」

衣玖「えっ」

719: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:30:01.08 ID:jJNa9ChN0
神子「咬み合いませんね。いや、敢えて咬み合わせていませんね?」

神子「地震動のことですよ。地震(なゐふる)のことです。日本書紀にも記述がありますよ」

衣玖「地震動ですね、ええそうですねぇ。でも、貴女は道教ですよね」

神子「ええ、それはそうよ」

衣玖「では教えられません――私の自信道の教えはね」


神子「……はぁ。私は話を聞く側に徹したほうが都合がいいのですがね」

衣玖「私は相手の話を受け流し、神経を逆なでせぬ様に取り繕うことには定評がありますので」


神子「『取り繕う』という言葉には、失言をその場限り何とかやり過ごす、という意味もあります」

神子「『地震動ですね、ええそうですねぇ。』という失言を覆い隠したいがために、受け流そうとしていますね」

衣玖「……」

神子「地震はどの程度の規模で発生しそうですか? 既に、一部の地域で発生しているのかもしれませんが」

衣玖「……はあ、貴女には参ります」

衣玖「少し……基準値をオーバーしていますね。ですがまだ誤差の範囲内」

神子「具体的にどの程度の数値になると誤差の範囲で済まされなくなるのかしら?」

衣玖「前回の異変のことを念頭に置けば、基準値の百倍程度になったら速やかに地上のみんなにお知らせをする予定ですね」

神子「……」

720: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:36:32.30 ID:jJNa9ChN0
衣玖「ああ、勿論、総領娘様――あるいは比那名居様のどなたか――に事前に報告をしてから」

衣玖「各地を逐一周って地震の予兆を伝えます」

神子「なるほど、訓練された無能ですか。事が起きてから災害の警告をしても、それに意味を見出せますか?」

衣玖「意味を考えることは、私の仕事の範疇にはありません」

衣玖「私はあくまで伝達者(メッセンジャー)――」

神子「――でも、出来る限り止めたいと思っているんでしょう?」

神子「貴女は緋想の剣、ひいてはそれを操る者のお目付け役だと聞いている」

衣玖「だから?」


神子「貴女とて、止めたい。地震が引き起こされるのを」

神子「だからこそ、私に伝えたのですね――早い段階で、大規模な地震が起こり得るという予兆を」


衣玖「……」


神子「早めに報告に行きなさい――取り返しのつかないことになる前に」

神子「この幻想郷にとっても、貴女の総領娘様にとっても――という意味で」


衣玖「……」

721: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:38:48.36 ID:jJNa9ChN0
コトッ


衣玖「この(方位)磁針が妙な振れ方をしたら忠告(ほうこく)に向かいます。もし予測が空振りに終わったら」

神子「……」

衣玖「私の自信がなくなります。地震もなくなります。なゐだけに」

神子「空振りに終わらなかったら地震はなくなりませんよ」

神子「このままでは――たぶん、地震はありますよ」


神子「なゐのにある――まず“名”ありて無(天地の始まり)という名と有(万物の母)という名があり」

神子「“名”以前には名もなき概念しか存在しない――それが道(タオ)というものだ」


衣玖「……ですから、何でしょう?」


神子「道(タオ)の教えに従った私が、貴女に代わって“名”を為す者に忠告をするべきかな」

神子「と思いましてね。こじつけではありますが」

722: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:41:12.23 ID:jJNa9ChN0

――人間の里(路上)――


村紗「先程、地鳴りがしましたね」


雲山「……」

一輪「方角的には東側――とすると博麗神社の方からかしらね?」


マミゾウ「何やら、またも良からぬことが起きているんじゃないかのう」

聖白蓮「姿かたちに性質まで凶悪な儘の魑魅魍魎が人里を跋扈するという今回の事変」

聖白蓮「――根本的な原因はやはり結界の管理状態にありそうね」


小傘「結界が?」

響子「 結 界 が ー ! 」

723: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 02:44:15.91 ID:jJNa9ChN0

――(物陰)――


コソ


正邪(結界が? ……何かあったのか)

正邪(まあ、何があろうと私の知ったことじゃない。スキマや巫女の気紛れなのだろう?)

正邪(それにしてもだ。あの鵺と外来狐を振り切ってからここまで来る間、妙にものものしい雰囲気が漂っていたな)

正邪(現に今も……あの新興寺の門徒どもが人里を見回っている)


正邪(――どうやら、私の包囲網が狭まってきているんだな)

正邪(今度は連中全員に殺人弾幕を浴びせられるのか……)


ジャリ


正邪「私は、どこに向かえばいいんだろう」

正邪「いや違う、行くあてなんてどこにもない。だのにどうして東に向かって進んでいるんだ」

正邪「……あの神社に行く用事も必要も縁もなんにもないというのに」


                                      (つづく)

728: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:23:19.02 ID:jJNa9ChN0

――人間の里(寺子屋)――


\\\ かんぱーい ///


魔理沙「ひと汗かいた後の酒は身にしみるぜ――ほら、ついでやるよ」

克也「あ、どもース」

慧音「コラコラー。十歳やそこらでお酒を呑んじゃダメなんでしょ、向こうでは」

克也「えー、でもオレ……不良だしよ。ちょっとくらいはまぁ」

小町「らりほー、わりぃごはいねがぁー!」

克也「ヒイイイイイッ!?」

魔理沙「おお、サボリ魔がまるで死神にみえるぜ」

克也「冗談よしてくれよー……まだ死にたくねーからマジで」

魔理沙「しっかし、はたもんば……だっけか。あいつの刃の切れ味にはビビった」

克也「まさかあいつまでこっちの世界に来てたとはな」

克也「以前オレも襲われて……先生や広達がいなかったらとっくの昔にあの世逝きだった……」

魔理沙「土産話に冥界(あのよ)にも行ってみるか? あいつを倒した妖夢っていう危ない通り魔がいるんだぜ(どうやったかは知らないけどな)」

克也「あいつを倒したって……どんな通り魔だ……。つーか、死んでもないのにあの世なんて行けるかよっての」

小町「それが行けちゃうんだよねぇ。最近は」

729: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:30:21.85 ID:jJNa9ChN0
まこと「ふぁ~あ……眠いのだー」

慧音「そうよね、貴方たちまだ子どもなんだもの――ほら、向こうの部屋にお布団敷いておいたから早く休みなさい」


まこと「……うん、お休みなのらー……おかあさん」

まこと「明日ちゃんと帰るからー……皆で帰るからー。今日は……ごめんなさいなのら」


フラフラ トテトテ……   ゴロリ


慧音「……」

魔理沙「あれ、寺子屋の隠し子だったのか?」

小町「さあ、どうだろうかねぇ。人と獣が交わった割には普通の子どもっぽいけど」

慧音「もう、寝ぼけているだけだわ。純粋で優しい子なんだよ、あの子は」

克也(純粋か……。確かにそうだな……まことのやつは)

730: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:33:11.94 ID:jJNa9ChN0
トンッ


克也「!」

小町「何しょげているんだい? 坊やも母親が恋しくなったり?」

克也「い、いやそういうのじゃ……なくてさ」

慧音「何か引けを感じてるのかい?」

克也「いや、引けっつーか……その」


ドンッ


克也「痛ッ!?」

魔理沙「人は人、お前はお前なんだぜ」

魔理沙「お前にも、あっちの子どもにはない良いとこだってあるだろ?」

魔理沙「別に私はさっき会ったばかりで、お前らのことなんてさっぱりだけど」

魔理沙「学校のキョーシや友達のことが心配で、外からこっちに入って来たそうじゃないか」

克也「……いや、それは」

慧音「自分の危険も省みず、誰かを助けたいがために、敢えて虎穴に入ろうとする君の心意気」

慧音「そういう気持ちを持っていることは、君の長所なんじゃないの? きっと」

克也「……へへ。どうかな……自分じゃよくわからねーけどさ。オレはオレだもんな」

731: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:35:29.39 ID:jJNa9ChN0
魔理沙「さて、ちとお固い話はこんなもんでいいだろ」

小町「坊やは坊やで自分らしく自然体で振る舞ってりゃいいんだ。でも、あんまりワルサばっかしてちゃ賽の河原の石拾いが待ってるよ」

魔理沙「そう脅かすなって。酒の席は無礼講――もっと自分を曝け出しちゃっていいんだぜ」

克也「――ああ。やっぱ悶々としてても……仕方ねぇよな」


ギュッ


小町「なんだい急に抱きついて。あたいは坊やのおかあさんじゃ無いよー?」

克也(あー幸せ……美樹より更にデカイぜ!)


慧音「……」

魔理沙「……ナイーブかと思いきや、ただのス  な餓鬼だったのか」

慧音「まあ、それでも子どもだからね」


ガラッ


阿求「夜分遅く失礼します。賑やかなようで」

小町「おっ、おつまみの宅配かなー! ほらどいて」


ゲシッ


克也「あがっ」

732: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:37:56.29 ID:jJNa9ChN0
魔理沙「何だこんな時間に、丑の刻参りの帰りか? 今日は真剣に辞めておいた方がよさそうだぞ」

阿求「ええ、危険だって御触れだから外に出るつもりなんてなかったんだけれど……」

阿求「さっき小鈴が家を訪ねて来てね。赤いちゃんこ鍋がどうこうって言いながら混乱してて」

阿求「一旦落ち着かせてうちの布団に寝かせて置いたけど。ちょっと心配で」


スクッ


小町「たぶん新手だね――ちゃんこ鍋の付喪神でも出現したんだろうよ」

魔理沙「鍋は鍋でもちゃんこ限定? 赤ってのはトウガラシ? 相撲取りみたいな姿してそうだな」 

魔理沙(一難去って、いやもう二難去ったから三難目か。夜間警備もラクじゃねーな)

魔理沙「もし、はたもんばのようにヤバイやつだったら無視できないからな。――いくぜ」


タッ


克也「うおー……2人とものろけてるときと真剣(ガチ)な時とで面構えが違うな」

慧音「さて、きみもそろそろ横になりなよ。まだ予断を許さない状況だから、今のうちに少しでも休みをとっておくほうがいい」

克也「いや、オレ元気っすから!」

克也「……あ、というよりその……けーね先生。オレ、夜の授業とか受けてみたいなー。ナンツッテ」

733: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:40:46.07 ID:jJNa9ChN0

――


阿求「はい、幻想郷縁起の第○○頁を開いて。この妖怪の紹介文を音読しなさい」

克也「えーと、ワ、ワーハ……クタクとは中国の伝説上の妖怪で……ふああぁ……何ちゃらかんちゃら」

阿求「こら、丁寧に読みなさい。ちゃんとふりがなを振ってあるでしょう?」

慧音「やっぱり貴女より私の方が、教えるのは一枚も二枚もうわてのようだ」

阿求「そんなことはないわ。私は歴史を改竄したりしないもの。私の説明の方が筋が通っていて判りやすいはずだわ」

克也「ZZZZZZ」

慧音「やんちゃな子どもを寝かすのはやはりこれが一番ねぇ」

阿求「……まったくもう」


阿求「――さて、あとどれくらいで事態は収束しそうなの? 早く枕を高くして寝入りたいものですね」

慧音「私にはどうとも言えないわ――ともかく、協力してくれている皆と連携をとりつつ凌ぐしかないだろう」

阿求「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪に怯える」

慧音「幻想郷のあるべきとされる有り様が、露骨に体現されているわけだ」

734: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:43:15.03 ID:jJNa9ChN0

――太陽の畑――


ブチィ! ブチィ!


覇鬼「うがーうがー」


天子「……」

天子(一面の花畑で、向日葵を掘り返し抜き取りしで遊んでいる。子どものイタズラレベルじゃないの)

天子(この図体だから、被害はバカにならないだろうけれどねー)


天子「ねぇ、そんな稚気な遊びじゃなくて――もうちょっと大胆な破壊行為をやってみてよ」

天子「例えば、向こうにひっそりとそびえ立つ山の麓にある吸血鬼(おおきなこども)の館とか」

天子「貴方の実力は火を見るよりも明らかだけど――どうせならはっきり火を見てみたいもの」




グーキュルルル


覇鬼「……腹減ったうが」


ガシィ!


覇鬼「あ~~~ん」

天子「あらら、私を食べるの? 言葉通りの意味で?」

736: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:49:37.55 ID:jJNa9ChN0
要石「――ガッ」


覇鬼「ん!? んーむぐぐ!? ペッ!」


タッ


天子「どうかしら。要石のお味は? 私を食べようだなんて千年早いわ」

天子(本当に心の赴くがままに行動しているわねぇ。関心の対象がコロコロと変わっていく)

天子(そうだ、天界の桃でも食べさせてあげよ。これ天人なら食べ放題だけど、下々の者には物珍しいでしょうね)




ビューン!!


絶鬼「見つけたよ! 覇鬼兄さーん!!」




天子「あ、さっきの小鬼くん。どうだった、あの巫女? もしかしてもう貴方のおなかの中?」

絶鬼「ん? ああ、あの女なら――って、きみには関係のない話だ」

737: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/05(金) 23:56:11.75 ID:jJNa9ChN0
天子「見て見て、私の飛び道具(かなめいし)――畏れ多くて私にかしずきたくならない?」


要石「ゴゴゴゴゴ……」


絶鬼(何だ、この岩は――?)

絶鬼「……そんなことよりも、ぼくに逆らったうえに今度は覇鬼兄さんをかどわかそうとしているのか?」

天子「ええそうよ、だから何?」

絶鬼「愚かだ。嘲笑に値するよ、いったいどれほどの苦痛を与えられて死にたいんだい?」

天子「死なないわよ、自分で望まない限り。死神のお迎えだっていつもあっさり蹴散らしてるもの」

絶鬼「ふん、もうお喋りはしまいだ。さあ、兄さん、まずは一緒にこの女の息の根を止めて殺戮ショーの開演と行こうじゃ――」




シ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ン




絶鬼「あれ……兄さん? 何処に」

天子「私たちがお喋りしている間に、今度は向こうの丘を踏み荒らしながら、竹林方面に向かって言ったわ」

絶鬼「……はあ。何なんだよ兄さん……ようやく、今度こそ、ちゃんとした再会ができたってのに」

絶鬼「ぼくに目もくれず勝手に行っちゃうなんて……」

天子「貴方苦労してるのねー。子どもみたいで扱い易そうに見えて……あまりに力があるから持て余しちゃうわ」

739: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:00:46.99 ID:H23gpj5t0
絶鬼「――ふん、きみは後で始末するよ。今のうちにせいぜい逃げ惑っているといい」




ビュン!




絶鬼「――……。……何でついて来る?」

天子「――え、だって興をそそられるから。迷いの竹林には一筋縄でいかない連中(はぐれものたち)が細々と隠れ住んでいる」

天子「鬼兄弟(あなたたち)の実力をしかとこの目で測るには良い機会だわ。うふふ」

絶鬼「きみは……精神疾患(パラノイア)か? いろいろと倒錯している」

絶鬼「その不可解な頭の中身を、後で覗かせてもらおうかな」

天子「物理的な意味で? ――それとも抽象的な意味でかしら」

天子「でもムダなことよ。所詮は鬼でしかない分際に天人くずれ(このわたし)のことなど理解できやしない」

天子「逆に、貴方や覇鬼お兄さんとやらの本質的なトコロは、もう見抜いちゃったわよ?」


天子「貴方たちの弱点も含めてね」




ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ピシャ――――――――――ン!!!




絶鬼「――……ハッタリかい……?」

天子「ま、いいわ。後でゆっくりお話ししましょう」


ビュ―――――――――――――――――ン!!

740: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:07:04.33 ID:H23gpj5t0

――無名の丘――




ビュォォォォォォォォォォォォォォォォォォ




メディ「……うう、鈴蘭(スーさん)の畑が……こんなことになるなんて」

メディ「あの巨大な赤鬼……低い山を越えて来て……土を荒らしまわっていった」

メディ「こんな荒れ果てた光景……目に毒だよ。こんな毒は……満喫したくないよぉ」

メディ「スーさん……来年も元気に毒を吐いてくれなきゃ……私……」

メディ「もしかしたら……太陽の畑も荒らされたり?」

メディ「向日葵は気持ち悪いから別にいいけど」




幽香「ふ……うふふふ……うふふふふふふ」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


741: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:19:08.91 ID:H23gpj5t0

――博麗神社――





フェフェフェフェ……


ビュォォォォォォォォォ




橙「な……」

橙「な……」

橙「いったい何があったの……!? 博麗神社が……跡形も……」


スー


スター「ちょっと、そこの猫さん」

橙「! 誰? ……妖精か」

スター「巫女と小人の介抱――手伝ってくれないかしら?」


橙「何か……一大事が、あったのね?」

742: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:24:34.13 ID:H23gpj5t0

――迷いの竹林――


ザッ


天子「っと、ここが迷いの竹林よ。お兄さん、何処にいるかなー」


シュタッ


絶鬼「霧は濃いが。なぜ地に降りるんだ? ――飛べばいいじゃないか」

天子「だって、折角だから迷わないと勿体ないでしょう?」

絶鬼「……」

天子「第一、私に倣って降りてくる必要なんてないでしょうに」

絶鬼「……さっき、弱点がどうとかいったね」

天子「緋想の剣は、対象の気質を見極め、それを緋色の霧に変え天候という形で観測可能にすることが出来る」

絶鬼「天候……。まさか、さっき急に集まって来た雷雲は」

天子「貴方の気質――そしてこの剣は気質(ゼッキ)の弱点たる性質を纏う」

天子「だから、私はこの剣を振りかざすことで必ず相手の弱点を突くことができる――それが弱点を見極めたという言葉の真意」

絶鬼「ふーん、なるほど。それは手強いな――だが」

743: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:29:31.43 ID:H23gpj5t0
ヒョイ


絶鬼「!?」

天子「これを奪ってしまえばこっちのものだ、なんて思ったか? これは天人でないと扱えないよ。ただ持つだけならできるが」

絶鬼「……」


ヴン!


絶鬼「……本当だ。“斬れない”な」

天子「第一、その剣に頼らなくとも私はお前ごときに倒せる相手ではない。倒した後で取り返すからね」


パシッ


絶鬼「返しておく、そんなハンデはいらないよ。ぼくはこれっぽっちも本来の力を発揮していない」

絶鬼「弱点を突かれると言うなら、弱点を隠せばいいのさ。鬼っていうのは、もとは隠(おん)という音から来ているんだよ?」

天子「食えない相手ねぇ、貴方は」

絶鬼「そっちこそ」


天子「やあやあ、我こそは天人なり! ――名を比那名居天子という。そっちは?」

絶鬼「ぼくは――絶鬼だ」


天子「知ってた。さっきお兄さんが言っていたもの」

絶鬼「ッ……心底きみは」

天子「あ! 向こうから『うがー』って声が聞こえた気がするよー」

絶鬼「おい待て!」


タッ!

744: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:38:14.83 ID:H23gpj5t0

――地底(某所)――


ウネウネウネウネ……


広「なんでいつかの寄生虫団子がこんなとこに落ちてんだよ!?」

郷子「でもって何でまた拾って食べようとするのよバッカじゃないのー! いい加減凝りなさいよ!!」


美樹「こんにゃろ! こんにゃろ!! こんにゃろ!!!」

広「くたばりやがれッ!!」

郷子「死ねえええっ!!」


グシャグシャグシャグシャグシャグシャ


美樹「ふー、何とか全部踏みつぶせたわね……言ってもまだミミズくらいの大きさだったし」

こいし「あら、皆こんなところで何してるの? 害虫退治?」

745: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:41:03.57 ID:H23gpj5t0
広「本当に神出鬼没だなー。ま、ピンピンしてるし大丈夫だったんだろ」

美樹「便利なキャラね。ねーさぁ、サクッと手軽に上に出られる近道とか知らない?」


こいし「近道? 地上に出たいの?」


広「そうさ! 先生や玉藻たちは遊んでて頼りにならないからな、先に進んでたんだよ」

郷子(普通に地霊殿を目指していたはずなのに……いつの間にか迷っちゃって。でも、こいしちゃんが来てくれて良かった)

美樹「私たちが力を合わせてあの鬼が悪さをしないよう足止めしようと思ってね!」


こいし「あの鬼。あー、あの赤鬼さんね」


広「あいつバカっぽいし、上手に煽てりゃなんとかなりそうだもんな!」

美樹「広にバカって言われちゃ可哀想ねぇ。でも実際何とかなりそうよねー」


こいし「ここの真上に小さな抜け穴があるのよ。あんまり知られてないけど、迷いの竹林に繋がってるの」


広「本当か! 上に出られるんだな」

746: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:44:58.70 ID:H23gpj5t0
美樹「……竹林ねぇ。幻想郷(ココ)って何でもアリっぽいから、光る竹とか普通にありそうね」

郷子「童守小も結構なんでもありだと思うけどね。ひょっとしてかぐや姫とかに会えたりしてー」

こいし「さ、皆私にしっかりつかまって」


シュルシュルシュルシュル


広「おお……そのヒモみたいなの伸びるんだ」

美樹「つかまって、というより私らが捕まったように見えるわね、傍からは」

郷子「……ハァ」


美樹(ごめんなさい先生たち……またまた心配掛けて……でも、広や郷子が勝手に行っちゃうから……もう本当に仕方なくて)


こいし「いっくよー」


ビュ―――――――――――――ン

747: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/06(土) 00:55:46.58 ID:H23gpj5t0

――迷いの竹林――


覇鬼「旨そうな人間捕まえたー」

覇鬼「どっちから食べるうが?」


ギリギリギリギリ


輝夜「ありのまま今起こっていることを語った方がいいかしら?」

妹紅「私は、七人ミサキを片付けて貴女と殺り合いつつ……そろそろ帰路につこうかなと思い始めていたら」

妹紅「気がついたら捕まっていたのよね」

輝夜「ちょっと熱が入り過ぎたかな。高速で移動して降りてきたみたいね。上空から」

輝夜「幻想郷にはこんな鬼もいたのね」

妹紅「幻想郷に定着した鬼ではないと思うわ」


妹紅「この巨大な鬼の邪悪なオーラ……死の恐怖どころではない。本物の恐怖というものを垣間見ている気分だわ」

輝夜「死の恐怖だなんて、それは言葉の綾でしかないじゃないの」


覇鬼「むー、向こうから旨そうなウサギのニオイがー!」


そわそわ


覇鬼「あっちからは人間のニオイが、それもいっぱいいるようだ」

覇鬼「どっちに行こうかうがー?」


妹紅「……」

輝夜「……」

妹紅「どちらにも、行かせるわけにはいかないわよ?」

輝夜「今宵は夜通し遊びかな。私からの美しき難題を受け取りなさい――貴方に幾つ解けるかしら?」


覇鬼「?????」




                                    (つづく)

767: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:43:36.14 ID:B7lETbi00

――迷いの竹林――


ざわざわ……


広「竹林つっても……せいぜい竹藪ぐらいのもんだと思ってたが」

美樹「とてつもなく……広いみたいね。夜霧も出ているし……一面同じ風景で方向感覚狂うわ」

郷子「あのさ、こいしちゃんって……ここの道とか判るんだよね?」




シ――――――――――――ン




広「っていねええ!? またどっか行っちまったのかよー!」

郷子「こ、こいしちゃーん! どこなのー!?」

美樹「あー……これダメだわ。迷子になっちゃったわね」

郷子「どーすんのよ広! 責任取りなさいよ!?」

広「何だよ! お前だってやる気満々でここまでついて来たんだろーが」

郷子「そ……そんなことない! 私はあんたを止めようとして……」

広「止めようとしてって結局ついて来たじゃねーかよ」

768: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:49:02.58 ID:B7lETbi00
美樹「違うわよー広。郷子は別のイミで責任取れって言ってんじゃない?」

広「別のって?」

美樹「フフフ、誰も見てやしないわ。こんな時間帯だし。私は後ろを向いててあげるから……一線越えちゃったら?」

広「はぁ? 何の話だよ」

美樹「ねー、そういうことでしょ? 郷子ったら――」


ぷるぷる


郷子「……っ!」

郷子「美樹のバカ! 広の大バカー!」

広「な、何だよ今度は急に!」

郷子「最初の井戸の時もそうよ! 何度も何度も勝手なことして先生や皆に迷惑かけちゃって!」

郷子「ちょっとは先生が私たちを心配する気持ち……考えなきゃ……」

郷子「ダメじゃないのよ! バカバカバカー!!」


ダッ

広「おい!? 何処行くんだよ郷子!」

美樹「待ちなさいよー! これ以上集団行動を乱すなこのペチャ   !」


\ペチャ   /

\ペチャ  /




――


天子「今度は確かに声が聞こえたわ。割と近そうね」

絶鬼「兄さんの声ではないが」

絶鬼(臭うな。これは人間のニオイだ)

769: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:54:03.23 ID:B7lETbi00

――


てくてくてくてく


広「ったく、郷子のやつどこ行って……」

広「ホント一面竹しかねぇな……出口はどっちだ?」

美樹「広と2人っきりになるなんてねぇ」

広「……」

美樹「あら、何? 一瞬ヤラシイこと考えた?」

広「はあ!? そんなわけねーだろ」

美樹「とか言って~! まあ、美少女爆 美樹ちゃんと誰もいない夜の竹林で2人っきり――男なら欲 して当然よね、ホホホ」

広「バ、バカいってんじゃねーよ。ほら、さっさと郷子探すぞ!」

美樹「――ほんと、郷子(まないた)のことが好きなのねー。広って」

広「うっせーやい! もうオレも勝手に行くぞ」

美樹「あーん! 待ってよー広! 私、か弱いんだから妖怪とかが出たらちゃんと守ってくれなきゃ困るわー」

広「だーれがか弱――」




ジャリ……




広・美樹「「!?」」




天子「あ、人間発見」

絶鬼「……」

770: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 19:58:51.34 ID:B7lETbi00
絶鬼「おやぁ、きみたちは――もしかして」




広「み、美樹ィ!」

美樹「広ィ!」


ヒソヒソ


広「誰だあいつら」

美樹「さあ」

広「あれ、片方はどっかで見たことあるような……けど全然思い出せねーな。たぶん気のせいだ」

美樹「アベックでしょ。たぶん野外   を楽しむためにこんなとこにいるんだわ」

広「やっぱ何かの妖怪なんかな?」

美樹「バラとモモがモチーフっぽいけど。植物系かしら」

美樹「にしてもあの女の人のほう……郷子より胸無いわね。ていうか皆無!」

美樹「あまりに平坦過ぎて戦慄を覚えたわ」



天子「知り合い?」

絶鬼「――。ふん、人間なんて……全部虫けらだ……」

絶鬼「ただの肉塊になったら、みんな同じだ」




――ザッ


広「!?」

美樹「え、今度は誰」

神子「動かないように。縮地のマントを使うとしよう」


――バサッ

771: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:09:00.04 ID:B7lETbi00
シ――――――――――――――――――ン


絶鬼「! 消えた?」

天子「おおー、聖人さんが出てくるとはね。あ、セイジンって成人でも星人でもなくて聖人だからね」

絶鬼「聖なる人間、だろう? 発音で判るよ」

絶鬼(聖人というと、確か徳を積んだ人間という意味だっけ? この――)

天子「この世界における聖人とは、果たしてどういう存在なのか。気になった?」

絶鬼「……」

天子「聖人だけではない。この幻想郷には神もいれば仙人もいるし、不死身の者もいれば閻魔もいる。選り取りみどりよ」

天子「――勿論、鬼もね」

絶鬼「――その鬼って、ぼくのように血も涙もない感じ?」

天子「いいえ。貴方たちの行く手を、彼奴らは必ず邪魔立てしてくるわ」

天子「連中を上手くあしらおうと思うのなら、こっちの世界の住人を先導役にしてもいいと思わない?」

絶鬼「きみの目的は何なの? 世界征服?」

天子「貴方たちの元気凛凛で派手なお遊びに、付き合ってあげてもいいかなーってことよ!」


絶鬼(ぼくらが遊びがてらでやっているとでも思っているのか? それとも口先だけの言葉なのか?)

絶鬼(――まあ、いいか)

絶鬼(これは、お手頃な使い捨ての駒にできそうだな)


絶鬼「いいよ。特別に、ぼくたちの遊び仲間に加えてあげるとしよう」

772: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:13:11.23 ID:B7lETbi00

――異空間の道場――


神子(やり過ごせた)

神子(これは安易に忠告できるような状況ではないようで)

神子「そこの君たち、怪我はありませんか」


美樹「えーホントに!?」

広「あの人がショートクタイシだって!?」

布都「そうじゃそうじゃ」

広「で、誰だそれ?」

布都「おっとっと……なんじゃ、太子様を知らんのか。外界ではそこまで忘れ去られてしまったというのか……嘆かわしい」

美樹「ああ、ちょっと前に壱万円札だった人でしょ。知ってるわよ。ていうか大好き! 拝ませてもらうわ」

布都「おお、存じている者もおったのか! しかも信者だったとは、感心感心」

美樹「私って博学だし」

広「金が好きなだけじゃないのかー?」

布都「じゃあ我のことは誰だか判るかな? 太子様に縁の深い人物だぞ!」

広「んーと……わからん」

美樹「そりゃ、聖徳太子の相方ってことは妹子に決まってるでしょ」

美樹「きっとあっちの太子さんは結構抜けてて『私えらいもん!』とか言ったりして、妹子さんはしっかり者なんでしょ?」

広「へー、美樹詳しいな」

布都「いやはや、そう褒められると照れるではないかー」


神子「……誰が阿呆だ誰が」

773: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:18:41.22 ID:B7lETbi00
広「そんで、ここはどこなんだ?」

布都「知らないで招待されておったのか?」

美樹「いきなり拉致されたのよ」

神子「これこれ、そうではない」


ゴソゴソ


美樹「ほほー、何か見たこともない物がいろいろ飾ってあるわね。一つか二つくらい持ち帰っちゃおうかな」

神子「欲がダダ漏れである」

広「ここって、さっきの竹林の中にあんの? それとも他の場所にワープしてきたとか?」

布都「ここは仙界と言ってだな。一言で言うなら幻想郷ではないぞ」

布都「太子様はこの空間を作ってどこからでも出たり入ったり、ようは瞬間移動ができるのじゃ」

美樹「へぇ~。アホ太子、意外と凄いのね」

神子「君、いい加減にしないか……?」


神子(このふたりはひとまず人里に送るとして)

神子(あの天人は甘やかされた人格者。自ら望み修練を積んで天人となった者とは隔世の感がある)

神子(どの程度の天変地異を起こそうとしているのかは計り兼ねるが)

神子(――なにせ、連れ添っている者がこれまた危うい)

774: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:22:29.00 ID:B7lETbi00

――迷いの竹林――


郷子「……バカ」

郷子「ううん、本当のバカは私だわ」

郷子「ふたりを止めなきゃっ……って、思ってたのに」

郷子「心の中の半分くらいは……私も好奇心っていうか」

郷子「結局流されちゃってた……」

郷子「それなのに……自分のことは棚に置いて広と美樹にだけ当たって……」

郷子「おまけに……右も左も判らない竹林の中に駆けだしちゃった」

郷子「はぐれちゃった……」


フラリ


郷子(……また、さっきと同じ景色)

郷子(だんだん……目が回って来た。真っ暗闇の中、明かりなんて月の光だけ)

郷子「怖い」

郷子(もしかして私、このまま誰にも見つからずに……)

うる……


郷子「誰か……助けに来てくれないの?」

郷子「誰か……」

郷子(……広)




\UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA/




郷子「!? こ、この声は」

775: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:28:34.01 ID:B7lETbi00
ズ……ン


覇鬼「思い出したうがー!」

覇鬼「俺はあの人間達に封じられていた。まだ中にもうひとりがいて邪魔だうがー!!」


郷子(ひっ!? あの鬼だ!! 凄くいらついてる)


コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


郷子「光線を!? ――きゃあああああッ」




ド―――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!


覇鬼「――」


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……


ズン……ズン……








タッ


妹紅「今度は竹林が炎上して……あのパパラッチに確実に記事にされそうねぇ」

妹紅(ヤツの中にもうひとりとは……? 誰かが中にいるというのか?)

妹紅(それは魂(精神)なのかあるいは魄(肉体)なのか)

妹紅「試しにあの鬼に喰われて――内側を覗いてみましょうか?」


ユラリ


絶鬼「――」

777: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:32:36.27 ID:B7lETbi00

――


郷子「……ッ……」


パチッ


郷子「あ、あれ……?」




\があああああー!!!/




郷子「鬼から離れた場所に――?」

輝夜「須臾とは即ち隙間であり、認識できない一瞬である」

郷子「えっ……あなたは……いったい」

輝夜「当然、貴女にもあの鬼にも認識できるはずがない。平たく言うなら、時間を操る能力ってところね」

郷子(綺麗なひと……)

郷子(この世の人とは思えない……それくらい透明感のある美人さん……)

郷子「えーっと、……とりあえず、助けてくれたんですね。ありがとうございます」


ニュルン!


【おい郷子! こっちだ!】


郷子「広……って手だけ!? ……ってどこから出て来ているの!? 空間の割れ目ッ!!?」

778: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:37:09.20 ID:B7lETbi00
【こっちは安全な異空間なんだ!! 美樹もいるし味方になってくれる人達がいる!!】

【いいから掴まれ!!】


輝夜(……この隙間は)

郷子「そんなこと言っても……本当に大丈夫なの!?」


【当ったりめーだろ――オレを信じろ!!】


郷子「……」

郷子「うん。広のこと、信じるよ」

輝夜(ふふ。貴公子のお迎えなのね)




――ガシッ


郷子「助けてくれて、本当にありがとうございました。さよう――」


――ギュン!!




カッ!!  ちゅど~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!


覇鬼「――」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


輝夜「――っと。あの少女、瀬戸際のところで難を逃れたようだ」

輝夜(まったくもう。この鬼ときたら、せっかく難題を出したところで問題の趣旨自体を理解してくれないんだから)

輝夜(もう少し、頭の開店が働くモノノケならば相手のし甲斐があるというのに)


覇鬼「……! 絶鬼ーッ!! そこにいたのか」


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ


輝夜「?」

779: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:40:33.01 ID:B7lETbi00
ジャリ


妹紅『ニヤリ』

輝夜(ちょっと、私の足止めをしている場合ではないんじゃないの)

輝夜「――と、言おうかと思ったのだけれど。貴様、藤原妹紅ではないようね、中身が」

妹紅『だって、きみたちは不死人なんだろう? さっき人伝に聞いたよ』

妹紅『肉体を潰しても意味がないのなら――取り憑いて精神そのものを乗っ取ろうかと思ってね』

妹紅『この人間がぼくの兄さんに気を取られていた、ほんの僅かなスキを突いたんだ』

輝夜「あらら、魂の方を試食されちゃったのね。それで、言の通りならば貴方も鬼の仲間ってことかしら」


ビューン!!


輝夜「今度は上から? せわしないわねぇ」




天子「いやっほーい! ブッ壊れろーッ!!!」


グシャァァァァァァァァ!!!

781: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:47:36.02 ID:B7lETbi00
シュ――――――――――――――――――――――


妹紅『流石に死んだんじゃないの?』

天子「ううん、安心して――この程度で死ぬことはないわ」

妹紅『安心?』


ガシィィィ!!!


覇鬼「絶鬼~~~! 会いたかったぞ~~~~!!!」

妹紅『!? ちょっと兄さん、さっきもニアミスしたよ!』

妹紅『それと再会は嬉しいけれど……力入れ過ぎだよ!!』

妹紅『力弱め――あがががっ!!?』


ギュゥゥゥゥ!! メキメキメキ!! バキボキ!!


天子「……」

覇鬼「ん? 絶鬼、どうした?」


ヒョイーーブンブン


絶鬼「……ぁ……ぁ――ガクッ」


チ―ン


天子「微笑ましい兄弟愛だこと。気絶しちゃった拍子に憑依も解けちゃったわねえ」

覇鬼「おーい、絶鬼ー、起きるうが」

絶鬼「……ぅ……」


輝夜「面白いわね。今日は普段以上にいい運動をしているわ」

天子「流石に復帰の早いことで、おみそれしましたわ。――姫様がお姫様だっこ? 普通逆じゃないのかしら?」

妹紅「……ぅ……」

輝夜「そんなに重くないもの」

783: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 20:54:13.04 ID:B7lETbi00
輝夜「さてと、そろそろ向こうの盛大なボヤを鎮火しておかないと。原因は火の鳥の不始末って永遠亭の皆には伝えておく」

天子「えー、別に私のせいだって伝えてもいいのですけれど。我々はこれから地上を制圧するつもりだもの」

輝夜「そうなの? じゃあ、本格的に地上が制圧されそうになったら永琳と一緒に相手をしてあげる」


輝夜「もしその時が来たら、本気出すからね?」

天子「――ええ、愉しみに待っているわ」


輝夜「ほら、貴方も見てごらんなさい」

覇鬼「?」

輝夜「今宵の月はまだ欠けている。だが、たとえ満ち足りていようとも、地上から見えないときであっても」

輝夜「月は永遠にそこに存在している」

天子「……」

輝夜「地上から見上げる月は永遠に不変――あたかも時間が止まっているよう――に見えて、実のところその裏側では着々と時間が進んでいる」

輝夜「いったい誰が観測者になるかによって、時間の見え方は変わってしまうの」

輝夜「不思議に思うでしょう?」

覇鬼「うが?」

天子「鹿を指して馬となす――例え筋は通っていようとも、判らない者には一生判らないことがある」

覇鬼「うが?」

輝夜「それ、故事の本来の意味とは無関係に、ただこの鬼は馬鹿だといいたいだけじゃないの」

天子「別にいいの、私は不良天人だもの。教訓染みたことをそれらしく取り上げて語るだけで十分なのですわ」

784: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:03:14.08 ID:B7lETbi00
輝夜「――さて」

輝夜「そろそろ迷いの竹林からはお暇願いましょうか。地上制圧、せいぜい頑張ってね」


輝夜「新難題『エイジャの赤石』――!」


バァーン!


輝夜「覇ッ」




ヒュルルルルルルルルルルルルルル  ド~~~~~~~~ン




天子「たーまやー! 綺麗ね、もっと間近で見ましょう」

覇鬼「絶鬼、赤い玉が輝いているうがー! aあれ取りに行くうが!」

絶鬼「ぅ、ぅ~ん……」


ザァッ!




妹紅「うーん……あれ、節々に軽い痛みが。私は確か――って!?」

妹紅「何なの輝夜! 放しなさいよ!」


ガスンッ


輝夜「はい、放したわ」

妹紅「殺し合いの続き!? あっ! そんなことよりさっきの赤鬼は――!」

輝夜「先に竹林火災の後始末をしましょ。人里に飛び火したら面倒だもの」

785: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:14:21.33 ID:B7lETbi00

――太陽の畑――


/ん……赤い玉が消えた。どこいった?\

/ほら見てごらんなさい。赤い玉は弾けて消えたけれど、向こうに紅い建物があるでしょう?\

/あれをブチ壊したらまた綺麗な花火が乱れ飛ぶに違いないわ\

/ハァ……まったく兄さん、もう少し力加減というものを理解して欲しいよ\

/あれか。早速壊しに行くうがー\

/そういえば、さっきの竹林の連中は結局どうなった?\

/一か所にこだわり過ぎるのはよくない。先に他所の連中にも我々の圧倒的な力を見せつけるのよ\

/……。あ、忘れてた。そういや兄さんの中にはまだあの鬱陶しい魂がいるんでしょ? 封印の力を抑えつけるから\


ビューン!!




幽香「……」

メディ「あれがさっきの赤鬼……間違いないと思う。おまけに他にも仲間がいるみたい」

幽香「あの天人風情が、どこからかあの者共を引っ張り出して来たのかしらねぇ」

幽香「さてと、向日葵の代わりにシクラメンを拵えてお見舞いにでもいきましょうか」

幽香「それとも、公衆の面前でお花でも摘ませしょうか」

幽香「ううん、その程度じゃ足りないわね。鉄槌を下してあげなきゃ」

メディ「……」

幽香「摘まれてしまった花たちが受けた苦しみに対する償い――ちゃあんと報いは受けてもらうわよ?」

787: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:32:45.03 ID:B7lETbi00

――人間の里――




ギュ―――――――――――――――ン




一輪「聖様。今、空を駆け抜けて行ったものは――」

聖白蓮「……」

雲山「……」

一輪「ちなみに私たちは化け狸たちと別れてそれぞれ里の見回りにあたっている」

一輪「――と雲山が説明を加え」


ギュゥゥンッ ドサドサドサッ!!!


広「痛たた……落っこちたぞ」

郷子「ふう……本当に怖かった。ありがとうね、広」

広「へへ。でもまあオレよりも、太子さんたちのお陰だよ」

一輪「どいてくれないかなー? もしかして私が下敷きになっていることに気付いてないのかな……」

美樹「ここが人里ー? 人っ子一人見え……なぁぁ!? スイカがふたつ! デカいスイカがぁー!!」

聖白蓮「……この子達は?」

神子「外来人ですが何か?」


雲山「……」

神子「ああ、妖怪の山方面に飛んで行ったのか。人里に降りてこなかったのは不幸中の幸い」

聖白蓮「詳しい事情を話してくださいよ?」

神子「私も全容は掴んではいませんがね。この度は、手を取り合わざるを得ないか」

788: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:38:34.69 ID:B7lETbi00

――紅魔館――


咲夜「……」


レミリア「ふふふ、準備は整った――さあ、侵入者よ。命が惜しくないと言うならば我が館に参るがいいわ」

レミリア「……あら、咲夜?」

レミリア「どうしたの? 窓際で」

レミリア「月でも見ているの? まだ十六夜の月じゃないでしょ」


咲夜「……」


レミリア「ねぇ、どうし――」




咲夜(ナイフ投擲で対抗する? 時間を止めて抑え込む? 否、間に合わない――)

咲夜(迷わば即ち訪れるは死――!)

789: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/09(火) 21:42:48.54 ID:B7lETbi00
天子「直下型地震――!」


グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ!!


覇鬼「ウガハハハ!」


バキグシャドゴメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ――ズドン!!


天子「要石(ロードローラー)だ――!!」

覇鬼「ウガハハハハ!!!」


ギューン!! ――ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴグシャッ!!!


天子「コンボ技も決めよう!」

絶鬼「じゃ、いくよ――」




「「妖力混合極光波ッ――――――――!!!」」




カッ! ちゅど――――――――――――――――――――――――――――ん!!!!




――紅魔館の庭――

美鈴「・・・・・・」

美鈴「えっと」

美鈴「私の責任じゃないですよね?」


美鈴「天空からの侵入者は……門番の守衛の範囲外ですよね?」

美鈴「あ、はは、はは……」



(第4話:震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼の巻<中編>・終)

797: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:14:09.48 ID:itH2tAH30

――紅魔館跡――


シュ―――――――――――――――


美鈴「咲夜さーん! お嬢様! パチュリー様ー! その他数名の方々ー!」

美鈴「生きてますか~?」


バサッバサッバサッバサッバサッ


美鈴「あ、流石はレミリアお嬢様。無数の蝙蝠に分身して難を逃れられましたか」

レミリア「あんた、門番としての役目を果たせなかったってことで解雇ね」

美鈴「えー、そんなあ。今回はちゃんと起きてたんですよ~」

レミリア「ああ、それもそうね。じゃあ、再建費を賄うために里で水商売でもやってもらうから」

美鈴「いやいや、私妖怪ですからそもそも里人たちは怖がって近寄りませんって」

レミリア「ぶっちゃけあんたって妖怪っぽさが殆どなくなってない? 人間と妖怪の境界線ってどの辺りに引けるのかしらね」

美鈴「うーん、私には何とも言えません」

レミリア「ま、雑談は後にして。やられたわねー木っ端微塵に」

レミリア「“餓鬼”の夜遊びか? 鬼以外のも混ざってた気がするけれど。この借りはキッチリ返さないとね」

美鈴「ですねぇ」

レミリア「先刻異界の扉を開いて現れた静なる侵入者に対して、今度は猛烈なパワーと破壊力を以て突撃して来た動なる侵入者」

美鈴「侵入される前に建物が崩れちゃったといいますか。あ、咲夜さん達は大丈夫でしょうか!?」

レミリア「大丈夫。咲夜なら、咄嗟の判断で病弱なパチェの安全を確保しに行ったことでしょう。他のはどうなったか知らないけれど」




ドシュッ!! ギュ――――――――――ン!




美鈴「あ、あれって!!」

レミリア「!?」

美鈴「今、瓦礫の山から飛び出していった、おどろおどろしい波動を放つ少女はもしや」

レミリア「もしや? もう判りきっているでしょ」

レミリア(……あの子じゃないの)

798: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:18:21.16 ID:itH2tAH30

―― (地下・大図書館)――


咲夜(今のは妹様の後姿。光弾で地下まで削られた拍子に牢から抜けだしてしまったのね)

咲夜(どうなさるおつもりかしら? さっきの鬼どもをおひとりで退治に――?)


咲夜「ふうー、ご無事ですか……パチュリー様」

パチェ「私の……私の……図書館がぁ……ゼィ……ハァ」


フラリ


小悪魔「パチュリー様、お気を確かに。無事だった領域もありますから……」

咲夜「……最後のエネルギー弾で、地下の最深部まで貫かれてしまったものねえ」

ベベルブブ「何てことをしやがるんだ……! 人間のやることじゃないッ!」

咲夜「人間では無かったし。ちなみに貴方も一応人間ではないのよね?」

パチェ「――」

小悪魔「パチュリー様、大丈夫ですか!」

咲夜「ショックで気を失われたようで。ともかく、今は安静にしておきましょう」

ベベルブブ「よし! 俺はさっきの悪魔のような連中を叩き潰してくる!」

小悪魔「無理よそんなこと! ベベさんってぶっちゃけ実力はたいしたことなさそうだから!」

ベベルブブ「う……そんなハッキリ言わなくても」

小悪魔「それに、大事な人が人間界にいるんでしょ? こんなところで命を粗末にしちゃダメ」

ベベルブブ「……」

咲夜「そうよ、これはあくまでも幻想郷内部の問題なんだから。何とかしなければならないのは住人達(わたしたち)」

咲夜「でも、片付けくらいは手伝ってもらうわよ。人手が足りないから」

799: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:19:40.27 ID:itH2tAH30

――霧の湖(廃洋館)――


わかさぎ姫「見ました?」

速魚「見えましたー」

影狼「吸血鬼の城が見事に落城したわね。凄い音を立てて」

リリカ「騒々しいわね~」

雷鼓「小細工なしの純粋な弾幕パワーか」

八橋「あはは。とんだ対岸の火事だねー姉さん」

弁々「天空に浮かんでいるのは逆さ城? それとも天空の城?」


ルナサ「はい撤収撤収。空爆が……ありそうだ」

メルラン「上の方で、誰かが指揮棒(タクト)を振るっているわね」




カッ……ド―――――――――ン!! 

800: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:30:42.48 ID:itH2tAH30
ざっぱ~~~~~~~~~~~んっ!


チルノ「やら……れた……ガクッ」

大妖精「チルノちゃん! チルノちゃん……しっかりして……!」

リグル「大丈夫でしょ、そっちは妖精だし」


リグル「にしても、今の攻撃で湖水が波のように押し寄せて……」

ルーミア「あーあ、……おでんの具がぐっしょり」

ルーミア「対岸(あっち)は火事、此岸(こっち)は洪水だわ」

ミスティア「……くそぅ! こうなったら憂さ晴らしに鳥目にしてやるわよ? ……その辺の人間を」


チルノ「これはあたいのハウスに対する宣戦布告に違いない!」

チルノ「あたいたち4人で痛い目にあわせてやるっきゃないね!」

リグル「……たち?」

ルーミア「なぜ4人なのか」

ミスティア「……いやでも、さっきの奴らヤバそうだし」


大妖精(あれ……なぜか私は、頭数に入っいてない?)

801: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:33:52.43 ID:itH2tAH30

――人間の里(寺子屋)――


克也「おおー広ッ!!」

広「克也ー!!」

克也「お前らみんな無事だったんだな……何つーかよ、その」

広「へっ、心配して来たってか? 余計なお世話だ」

克也「んだとコイツ! 心配とかじゃなくてよ、ちょい気になっただけだっての」


まこと「ZZZ」

美樹「まったく、克也もまことも勝手に来るなんて。玉藻先生たちも心労絶えないわねー」

慧音「貴方たちも人のことは言えないんだろう?」

郷子「はい、言えないです……」

阿求「怖い物見たさなのかしらね?」

郷子「ええ、まあ……何ていうか。私たち結構そういうのに慣れっこで、まあ今回も大丈夫かなーて気持ちがどこかにあって」

慧音「そういう気持ちの緩みが、命取りになったりするのよ――皆、少しは反省しなさい」

郷子「はい」


克也「オレさー、あっちのけーね先生たちに夜の授業受けちゃったんだぜ」

広「ええー何だよそれって!? 詳しく聞かせろ!」

美樹「どーせ悪さしてお説教されたってオチなんでしょー?」


阿求(彼らは本当に反省しているのかしら)

まこと「ZZZ」

802: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:40:48.75 ID:itH2tAH30

――人間の里(路上)――


魔理沙「どこがちゃんこ鍋の付喪神だよ」

小鈴「私ちゃんこ鍋だなんて言ってないわ」

小町「口伝えだと、こうやって聞き間違いが往々に生じるものさ」

魔理沙「で、あの『赤いちゃんちゃんこ着せてやるぜ!』っていうのは悪霊の類なのかな」

小鈴「死神さんなら――」

小町「あー、あたいはあくまで船頭だし。素直についてきてくれないタイプはちょっと」

小鈴「……うっ、幻覚が……」

魔理沙「おい大丈夫か」

小鈴「きゃ! 魔理沙さんが全身血塗れになって顔が半分抉れてるー!!?」

魔理沙「おいやめてくれ」

小町「まあ、地道にいこう。もうじき異変のおおもとも収まると思うし、何とかなるって」

803: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:45:08.01 ID:itH2tAH30

――幻想郷(上空)――




要石「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」




天子「あの東端にあるのが博麗神社(跡)。絶鬼が幻想郷入りした際、鬼門が開いた場所ね」

天子「私たちはあそこから太陽の畑と無名の丘に飛んで、その先の迷いの竹林を蹂躙」

天子「そこから再び飛んで人間の里を通過後、紅魔館と霧の湖を襲撃した、と」

絶鬼「いちいち説明はいらない。上から眺めるとよく判るね」

覇鬼「……狭いうが」

絶鬼「別に僕らは勝手に飛べるんだから要石(これ)に腰掛ける必要などないんだけど」

天子「えー? だってこの方が絵になるでしょ? ラスボス達が悪魔城で待ち構えている感じで」

絶鬼(この天人とやら、やっぱり本気で遊んでいるのか?)


ビューン!!


フラン「こんばんは。貴方たちなのね? 私を鳥籠から解放してくれたのは」

天子「――これはこれは、見ない顔ねぇ」

絶鬼「誰だい?」

804: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 00:58:09.85 ID:itH2tAH30
天子「鬼よ」

天子「鬼と言っても吸血鬼だけれどね。先程砕け散った館の、奥の奥に封じられていた問題児」

天子「聞くところによると……誕生以来、五百年くらい館から外に出してもらえなかったとか」

絶鬼「……ほう」


覇鬼「うがー? お前、吸血鬼?」

フラン「はじめまして。私の名前はフランドール――館の主(おねえさま)の操り人形」

覇鬼「おねーさま? じゃあ妹うが?」

フラン「いつもひとりで遊んでばかりだったから。それだけじゃ、つまらなかったから」

覇鬼「……」

フラン「一緒におままごとでもしない? 紅い鬼の――お兄様?」

覇鬼「俺がおにーさま、うが?」

フラン「見渡す限りの玩具の山。これを全部、おままごとのセットにしよう」

フラン「ね、いいでしょ? 私も混ぜて欲しいの」


フラン「貴方たちの楽しげな破壊活動(おあそび)は、まだまだコンティニューするのよね?」

天子「いかにも。ゲームオーバーになるまで――それまでは永遠にコンティニューよ」

覇鬼「よし! やるうが! 皆で遊ぶうが~」

絶鬼「……やれやれ」

805: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:03:42.74 ID:itH2tAH30
天子「ということで異存はないか?」

絶鬼「特に無いよ」

絶鬼(この吸血鬼の娘も使えそうだ。清冽な子どもっぽさはあるが、覇鬼兄さんとはまた違った怖さを内に秘めている)

絶鬼(それに西洋の鬼のチカラってものを、試しに見てみたいしね)


天子「よし決まり! 人数的にも4人って割り切れていい具合だわ」

絶鬼「ふふ、忌数という意味でもいい数字だ」

天子「さらに決めた、我々はこれを機に四天王と名乗ろう。これは絶対事項だ、異論は認めない」

フラン「四天王って、あの朱雀や玄武のようなやつら? お部屋に積まれた本に載っているのを見たわ」

覇鬼「してんのー!」


絶鬼「……これは異論ではなく、提案なんだけれど」

絶鬼「四天王と書いてカルテットって読むことにしない? ――その方が、聞こえがいいと思うんだ」

806: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:23:05.24 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(山麓)――


諏訪子「どうなの、紅魔館(むこう)の様子は」

椛「完全に崩れ堕ちたようですね。敵機は現在、上空から霧の湖周辺に閃光弾を放っています」

にとり「でも、それほど威力のある攻撃ではないね。挑発行為かな」

弥々子「いったい何が起きているんだっぺ? おらにはさっぱりだ」

にとり「こっちだって知りたいよ詳細を。まあ、敵機の数は椛の千里眼もあってはっきりしているけれど」

諏訪子「目視でもあの要石を見ればひとりは確定として、問題は残る二頭だよね」

ぬえ「……」

諏訪子「あの巨大な鬼ってのはもしかして」

ぬえ「……確かめてくる。もともと私はここの者でもないし、これ以上留まる理由もないからね」

諏訪子「はいはい、どうぞ。帰依したくなったらおいで」

諏訪子「あの鬼、うちの山に侵入(い)れないようにしてよ」

ぬえ「……」


ビュンッ!


椛「ところで諏訪子様はなぜあの正体不明とともに?」

諏訪子「いやー別に。それより、山の警戒態勢はどうなってんの?」

807: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:26:55.18 ID:itH2tAH30
にとり「とりあえず、玄武の沢から河童人員を集めて河川一帯は抑えています」

にとり「山童は山麓から中腹域までを見回り中、それより高い域および上空は天狗様方が抑えているわけよね?」

椛「ええ」

諏訪子(神社には神奈子がいるし、大丈夫だね)

諏訪子(でも活きのいい鬼が本気で暴れ回るとなると、ゆっくり傍観しているわけにもいかないか)


弥々子「うー。難しい話だ」

にとり「ま、秩序だった社会が形成されているとね。有事にはその地域社会を維持するために色々動くことになるの」

弥々子「それって何だか窮屈。ようは自由がないってことだっぺ?」

にとり「ま、言われてみればそうかもしれないけれど」

にとり「お陰でうちの山の住人達は連帯意識が強いんだ。いい意味でも悪い意味でもね」

808: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:33:43.42 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(中腹)――


バサッ


はたて「文! 見た、さっきの閃光弾?」

文「ええ、勿論見たわよ。鳥目じゃないもの」

はたて「どう思う? さっきの連中……約一名ははっきりしているけれど」

文「あの赤鬼、たぶん幻想郷の鬼じゃないわね」

はたて「そうなの? 鬼の四天王の一角とかじゃなくて?」

文「たぶん違うと思うわ。あと、紅魔館を狙い撃ちしたのはあくまで序章ってことでしょうね」

文「あそこは何だかんだで、おぞましい吸血鬼の巣食う恐怖の館ってことになっているし」

文「紅魔館が呆気なく崩れ落ちたということになれば、連中のチカラが本物であることを幻想郷中に示すことになる」

はたて「でも、ただチカラを誇示したいだけなら、あんな乱暴なことはしないでしょ」

はたて「あの天人くずれが一枚絡んでいるということは……」


文(博麗神社の焼失という緊急事態の発生は、天子さんが仕組んでいたこと?)

文(あの赤鬼を外から召喚し、また異変――前回よりの更に幻想郷が危ない?――を発生させるに至った)

文(だったら、それに当然気付いたであろう霊夢さんが――博麗神社に残っていた天子さんを野放しにするはずがない)


文「!! 霊夢さんは今どうなって!?」

はたて「文ッ! 攻撃が来るわー!!」

はたて「山の頂上――丁度、守矢神社の辺りに!」




――カッ!!

809: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/13(土) 01:38:18.09 ID:itH2tAH30

――妖怪の山(守矢神社)――


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子(ケサランパサランを囲っていることは隠密にしなければな、効果に影響があるようだ)

神奈子(各々が窒息しないように風通しにも気を付けないと)

神奈子(つい最近巷で話題になっていたなと思っていたが、70年代だったか)


パラパラ


神奈子(『和漢三才図会』の鮓荅(へいさらばさら)との関連性は……参考になるかな)


ケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサランケサランパサラン


神奈子(――む)




/ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ\




神奈子「天(うえ)からだね」

神奈子「風雨の守り神であり五穀豊穣の神であり、軍神でもある――」

神奈子「我の鎮座する守矢神社に、喧嘩を売るつもりか?」


                                  
                                     (つづく)

827: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:45:59.82 ID:krwokibr0

――命蓮寺――


こいし「かくかくしかじかでね」

こいし「とっても楽しかったのよ」

ナズーリン「な、なるほど。それは盛りだくさんな経験をしてよかったね、君」

こいし「ほら見て。道中でこんな物を拾ったの。どっちが欲しい?」

星「ああ! 片方は私の探していた宝塔!!」

こいし「こっちが欲しいのね。はい、あげる」

星「拾ったものをきちんと届け出る邪心なき門徒よ――実に有難い」

ナズーリン(本当に拾ったのか、あるいは無意識に捕っていってまた返しに来ただけなのか)

ナズーリン「ちなみにもう片方の物は何だ?」

こいし「知らないわ。見てみる?」

ナズーリン「ふむ、では失敬。――これは銭入れだな。ヌエノという者の名刺が入っている」

星「鵺の?」


ガラッ


ぬえ「呼んだ?」

828: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:49:21.09 ID:krwokibr0

――


ぬえ「なるほど……そんなことがあったのか」

こいし「あの赤鬼さんはお兄ちゃんなのよ。ゼッキっていう名前の弟と一緒に遊んでいるわ」

ナズーリン「先程から夜空に閃光が走っていたのは、その鬼兄弟らの仕業だったというのか」

こいし「あら、せんせーの財布の中に宝石が? 最初は石ころしか入って無かったのに」

星「いいから、それはそのまま本人のもとへ返しておやりなさい」

ぬえ「……私が預かるよ。後であの人間に返しておくから」

ナズーリン「その方がまだいいだろう」

ナズーリン「しかし、君たちが同時にこの場に居合わせ、こうやって私やご主人様と会話を交わしているとは珍妙な光景だ」

星「確かに、常識では考えられないわ」

ぬえ「べ、別にそんなことはどうだっていい! それよりも、鬼退治の方が先だ!」

こいし「わー面白そうね。でも、相手は鬼だけじゃないわよ」

ナズーリン「確かに、話を聞く限りではなかなかの非常事態ではあるな」

星「聖たちと合流するわよ! 情報を共有して早めに事に対処しないと――」


ガラッ


神奈子「その情報とやらを我々に提供してもらえるか」

829: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:54:19.53 ID:krwokibr0
ぬえ「!」

星「なっ!? 守矢の二柱……どうしてここに」

ナズーリン「……貴女がたの目的は?」

神奈子「別に命蓮寺が最近勢力を伸ばしていて気に喰わないから潰しに来た、などというつもりはない」

諏訪子「うちの神社に喧嘩を売って来た敵機の首謀者に軽く神罰を与えようと思ってね」

ぬえ「……山にも侵攻してきたのね」

諏訪子「侵攻ってほどでもないけどね。信仰心の篤い山の妖怪たちはてんやわんやよ」

神奈子「それで、どれくらいの情報が入ってきている?」

星「まだこちらは承諾もしていないというのに。――彼女が一部始終、見聞してきたことでほぼすべてですよ」

こいし「……」

神奈子「――まずは端的に言ってくれるか。上空ではしゃいでいる連中の内で、主犯格は誰なんだ?」

こいし「んーとねぇ」


こいし「たぶん、ゼッキっていうやつよ――私の友達を本気で殺そうとしてたのは、ゼッキだけだもの」

830: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/15(月) 23:56:53.15 ID:krwokibr0

――地底(地霊殿)――


ぬ~べ~「……」

さとり「『広達、てっきり先に地霊殿に向かったものだと思っていたのに。頭痛が痛い』」

玉藻「……」

さとり「『鵺野先生、文法が間違ってますよ』」

ゆきめ「……」

さとり「『もー、鵺野先生があんな頭の中身もピンク色っぽい女とベタベタしてるからこんなことに』」

華扇「……」

さとり「『頭の中が桃色……って、それはどういう意味なのかしら?』」


さとり「次に貴女はこう言うでしょう。とりあえず挨拶がてら私(この妖怪)に勝負を吹っ掛けようかな、と」

早苗「……。……ハッ!」

さとり「帰れ」

831: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:02:15.58 ID:tSREwYPH0
早苗「ごめんなさい、冗談です。私がちょっぴりはっちゃけちゃったせいで」

ゆきめ「ちょっぴり? ……でも私も勘違いしちゃって悪かったわ」

華扇「いいえ、私だって最初にぬ~べ~さんに会ったときに勘違いをしたし……ひとのことを言えない」

玉藻「私も冷静になるべきだった。後悔しても時既に遅し――ですがね」

ぬ~べ~「今日は妙に素直だな。何かあったのか――さっき、誰かと約束をしたとかどうとか言ってたが」

玉藻「聴きとっていたんですか。あれはただの独りごとだ。特段の意味はありませんよ」

ぬ~べ~「そうかい」


さとり「あの赤鬼は『弟(ゼッキ)が呼んでいる!いかなくちゃ!』などと心術して地上へ向かったんですが、ゼッキという弟に心当たりなどは?」

ぬ~べ~「! 絶鬼だと……!! まさか……ヤツも幻想郷に紛れこんでいるというのか!?」

早苗「ええ!? あのイタリア人ピアニスト兼指揮者のカルロ・ゼッキさんも幻想入りしていたと!」

ゆきめ「誰よそれー?」

玉藻「絶鬼は地獄の中でも最下層の無間地獄に落ちたはずだが。あ、勿論こちらの地獄ではないはずです」

華扇「あの単細胞な赤鬼がすぐさま呼応した点を考えるに、何らかの理由でそのゼッキとやらも幻想郷(ちじょう)に現れたことは確かでしょうね」

早苗「その原因は、大結界の歪みにある――ということなんですね? ゆきめさん、玉藻さん」

ゆきめ「たぶんね、というかそれしか考えられないんでしょ?」

832: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:07:01.28 ID:tSREwYPH0
華扇「通常、外界でもなお健在な幽鬼人妖が安易に幻の世界には入れないような仕組みになっているのだから」

玉藻「そもそも私たちが入って来れたこと自体が異常。あの井戸以外にも結界に亀裂が至る所に発生していると考えれば」

早苗「ゼッキさんがたまたま入り込んじゃったとしてもおかしくはないということですか」


玉藻(例の結界を管理しているのは、あの九尾を式として操る“管理人”と博麗の巫女なる存在だというが)

早苗(きっと八雲紫(あのひと)が陰で糸を引いているに違いない!)

華扇(あの赤鬼だけではなく、さらにその弟分までいるなんて。霊夢は……もう彼らと対峙しているのかしら)

ゆきめ(鬼兄弟のこともだけれど、いなくなっちゃった広君たちのことも)

ぬ~べ~「……」


さとり「……」

さとり「そろそろ、お引き取り下さいね。やるべきことははっきりしているでしょう」

さとり「考えるよりも先に、動くべき時もあります」

ぬ~べ~「……そうだな」

833: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:17:03.51 ID:tSREwYPH0
ザッザッザッ


さとり「お燐、彼らが地上に向かうサポートをしてあげて」

お燐「了解です、さとり様」


さとり「土蜘蛛は子ども3人を探してはくれないかしら。子どもの足じゃ、移動できる距離はたかが知れている」

さとり「地底のどこかを彷徨っているに違いないわ。橋姫と旧都の勇儀(おに)が残っているなら危険な妖怪の山側に出る恐れもないだろうし」

ヤマメ「わかったよ。それと、行き掛けの駄賃に血の池地獄の状態を姐さんに確かめてくるね――先生」


タッ


ぬ~べ~(旧地獄に……血の池地獄?)


さとり「お空は私と一緒に、地霊殿に残って」

お空「え?」

さとり「こういった混乱極まる状況下で貴女が地上に出たら……かえって大事故につながりそうだからね」

さとり「地上で太陽がふたつ輝く必要はないわ。お空が輝くべき場所は、うちの中庭の奥よ」

さとり「私が許す。軽く暴走していいわ」

お空「はーい、わかりました! 私とフュージョンしたい方は誰でもお越しくださいね」


タッ


ゆきめ「暴走って……?」

玉藻「さあてね……」

早苗「つまりはエネルギー革命の一環ですよ」

華扇(自発的に暴走させるなんて……大丈夫なの?)

さとり「念のためです。忘れ去られた灼熱地獄を再度地獄の釜として機能させておきますので」

さとり「神の力を宿した地獄鴉の核融合炉と、舟幽霊でも溺れる底知れない血の池地獄」

ぬ~べ~「……」

さとり「最悪の場合、これらの施設を利用してもらって結構です。何らかの形でね」

さとり「地底には、ならず者や嫌われ者を受け入れる下地が整っていますから」

835: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:22:54.92 ID:tSREwYPH0
さとり「というわけで、よろしいですね?」

玉藻「善後策としては問題ないでしょう」

ゆきめ「3人は地底の妖怪達に任せれば大丈夫そうね。だったら」

華扇「まずは、あの赤鬼を封印することが最優先。それから、弟さんも――話が通じる相手でない場合には」

さとり「言葉は通じるけど通じ合えないそうよ」

早苗「案外、霊夢さんがもうやっつけちゃったりしているかも知れませんけどねー」

お燐「さあさ、行くよ!」


タッ!


さとり「……」

さとり「どうしたんです。早くお引き取り下さい」

ぬ~べ~「すまなかった。俺がしっかりしていないばっかりに……」

さとり「……」

ぬ~べ~「君だけじゃない。地底の妖怪たちには随分と」

さとり「言わなくても判りますから。確かにとんだ傍迷惑ではあったけれどね」

さとり「ほんの少しだけ、……あの鬼が来てくれたおかげで良かったこともあったので」

ぬ~べ~「……、そうか。それは良かったな」

さとり「子どもたちが見つかったら、一通り事が収まるまでは安全な場所でお預かりしましょう」

さとり「そして異変が片付いたら、誰かに地上まで送ってもらいますから」

ぬ~べ~「ああ、頼む! 君たちの親切さには、本当に頭が上がらない」

ぬ~べ~「それじゃあな、さとり君」

さとり「この異変が終結した暁には、二度と私の平穏な日常に一石を投じないでくださいね」

さとり「私は、心から静かに暮らしたいと思っているので」

ぬ~べ~(ありがとう。――妹さんと元気でな)


ダッ

836: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:29:34.08 ID:tSREwYPH0

――幻想郷(上空)――


天子「どこにしようかなてんしさまのいうとおりー、ここだ!」

天子「次は命蓮寺を焼き打ちにしよう!」

フラン「あそこ?」

絶鬼「人里に近い寺院だね。破壊活動によって人間共の懼れの感情を増幅させるにはいい立地だ」

覇鬼「ぶっこわすうがー!」

天子「ゆくぞ――……、……」


天子「……あれ?」

絶鬼「どうしたの?」

天子(天候が……私の意図に反して穏やかに。誰かが私の能力に干渉している?)

フラン「あ、見て! こっちに向かって何か……弾幕かな?」

覇鬼「何か飛んでくる?」


ギュォォォォォォォォォォォォォォ


絶鬼「なんだいアレは? 丸太がミサイルのようにこちらへ向かっているけど」

天子「……あれは御柱だ! 山の神様が喧嘩を買ってくれたみたいね」

覇鬼「こっちに向かってくるうが」

フラン「ひーふーみー……何十本もあるわね。全部壊しちゃいましょ」

フラン「触れることなくね」


どっか~~~~~~~~~~ん!!!!

837: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:35:49.43 ID:tSREwYPH0
フラン「はい、おーしまい」

覇鬼「うがははは」

絶鬼「……なんだ、他愛無い。山の神とやらのチカラはこんなものなのか?」

天子「そんなはずはないよ。全盛期を過ぎたヨボヨボの老婆とはいえ神様なんだから、これからもっと本気で分祀でもして――」




ビューン!!




フラン「あら、今度は空から何か……。あれってもしかして流れ星かしら? 綺麗ね」

絶鬼「流れ星? ぼくには円盤に見えるけれど。宇宙人もいるのかい?」

天子「あれは大きなドーナツじゃないの?」

覇鬼「輪っかだうがー」

天子(他にも何かが周りから飛んで――……何か?)

天子(同じものを見ているはずなのに、皆それぞろ異なるものとして認識している)

天子(そして、そう認識することが恰も自然であるかのように――)

天子「! これは罠だ! 自分の認識を過信するな!」


ドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーンドカーン


神奈子「小手調べの神祭『エクスパンデッド・オンバシラ』に引き続くは」

神奈子「神秘『ヤマトトーラス』と御柱『メテオリックオンバシラ』(今年は祭の年ではないけれどね)」

ぬえ「これらの弾幕そのものが正体を無くせば、敵は対抗しづらいだろう――正体不明『赤マント青マント』」


神奈子「更にひけらかすは『神の御威光』」

ぬえ「それをくらますはアンノウン『原理不明の妖怪玉』」


ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ
ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ

838: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:41:30.38 ID:tSREwYPH0
ぬえ「気がつけば連中を取り囲む正体不明の某かは――神霊の放つ神のチカラ」

神奈子「それだけではないよ。私と諏訪子が天と地の変動に干渉することで、不良天人の悪ふざけに歯止めを掛けている」

ぬえ「意外とこのまま倒せそうじゃない?」

神奈子「倒すのは我々の仕事ではない。差し当たっての目的は統制を乱すこと」


ぬえ「――ところで、山のてっぺんが削られたってことは……守矢神社の方は」

神奈子「ああ、手っ取り早くまるごと一時避難させた。幸福を呼ぶ綿毛の力を少し使った上でだけど」

ぬえ(綿毛? 手っ取り早く……か。簡単に言ってくれるな)

神奈子「さて、休まず攻撃を加えるかな。まったく活きのいい異変首謀者どもだ」

神奈子(触らぬ神は祟ったりしないが、神経に触られた神は――)

ぬえ「烏合の衆といっても、あんな4人組が協力して暴れられると流石に面倒だもの」

神奈子「貴女はあっちのふたりを惹きつけてここから遠ざけてくれるか?」

ぬえ「わかったわ。あの幼児達(ふたり)ね」

神奈子「早苗も他所に行っているらしいし、紅白の巫女もまだ動かない。が、漸次出揃うだろう」

神奈子「それまでの間は、我々が彼奴らの遊びに付き合う。異変解決のお膳立てをしてあげるのさ」

ぬえ(あの赤鬼はやはりあの男の左手から――。どういう事情があったにせよ、足止めをしなければ)

ぬえ「妖怪退治の専門家による異変解決のために、神や妖怪たちがこぞって協力するなんて変な話だが」

ぬえ「今回に限って言えば、皆が手を貸すにふさわしい理由があるわ。かく言う私もね」

ぬえ「だって、幻想郷が壊されたりしては元も子もないんだもの。別に居心地はよくないけどさ!」

ぬえ「だから守る、私の居場所を! 相手がどんなに手強かろうと!」

神奈子「……居場所か。確かに居場所だ」

神奈子(たいして長居しているわけでもないのにね。ここにも随分愛着が沸いてしまったものだよ)



神奈子「御柱『ライジングオンバシラ』――!」

ぬえ「『遊星(PS)よりの弾幕X』――!」


BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!BOMB!

839: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:46:48.09 ID:tSREwYPH0

――


天子「あららー、正体不明の弾幕があちこちで破裂して視界が狭い。皆どこいったー?」

天子(3人とも、術中にハマったのか? 私たちを惑わして分断するのが目的だったようね)

天子(弾幕自体はあの坂好きな神様の物に違いない。が、それに細工を加えているのは鵺だな)

天子(私は天空から眼下をずっと眺めていたから、たいていの者の放つ弾幕を正しく認識できる)

天子(けれど、あの鬼兄弟や狂血鬼は他人の弾幕をほとんど見ていない。見る機会などなかった)

天子(彼らの認識では弾幕の持つ形や音が欠落し、その行動(被弾して炸裂するという結果)だけが残されてゆく)

天子「各々の認識が一致せず混乱を来してしまう上に、相手が繰り出す攻撃を受ける際の危険性の判断が困難になっている」

天子「だって相手の攻撃が“ジャブ”なのか“フックやストレート”なのか、受けた後でないと判断できないんですもの」

天子「いや、私以外はそもそも攻撃(だんまく)で有ること自体を認識し難いからより厄介なもので」

天子(それでもみんな体は丈夫だし、そうそうやられたりはしないと思うけれど)


天子「よく作戦を練ったわね、聖人さん」

神子「彼らとは直接打ち合わせをしたわけではありません。たまたま同じタイミングで反撃するに至ったまでのこと」

天子「あっそう」

神子「眼光『十七条のレーザー』」


ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!


天子「おっとっと、私だけを狙い撃ち?」

神子「――和を以て貴しと為し、忤(さか)ふることなきを宗とせよ」

神子「あなたの胸のうちにはこの宗を収納する料簡はありますか?」

天子「当然。しかれども桃李門に満つる――有能な者共を従えることが出来たのだから、ちょっとくらい諍いを起こしてもいいじゃない!」

神子「はあ……。貴方たちの所業は到底ちょっとという言葉では言いくるめられない」

神子「やはり少し、お説教が必要だ」

天子「天人を目指している方が天人にご高説?」

天子「でも歓迎! どうぞ、物理的な手段でお願いしますわ」


要石「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

840: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:52:53.59 ID:tSREwYPH0

――


ボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッボムッ


絶鬼「ッ!」


ビュン!


絶鬼「見えない敵に囲まれて……いるのか?」

絶鬼「攻撃されているはずがないのに気が付いたら攻撃を受けてしまっている」

絶鬼「『認識を過信するな』だと。どういう意味なんだ?」


ザッ!


諏訪子「要するにね――貴方がただの空気だと思って吸っていたものが実は有毒ガスだった、そして死んだ――ということ」

絶鬼「! 誰だ」

諏訪子「貴方を狙う弾幕はそこかしこに漂っているのに、貴方はそれがただの月やら星やら木々やら虫けらやら何やら……自分とって無害な物としてしか認識できていないのよ」

諏訪子「だって貴方は今までに神奈子の弾幕を目にしたことがないんだから――枯れ尾花が幽霊にしか見えないに決まってる」

絶鬼「……」

絶鬼「疑心暗鬼に陥っていたと言うのか……ぼくは」

諏訪子「そ。鬼のクセに情けない。やっぱり神様の攻撃と聞いて内心は怖さも感じていたのね」

絶鬼「黙れ。正体がわかってしまえば何て事はない。――これは、ぼくたち4人を分断してソロにしようって作戦?」

諏訪子「そうなのよね~。見事に嵌まったね。むしろこういうのは貴方のように多少頭の回転が効く者の方が効果的」

諏訪子「直球バカだったら、ストレートに自分の周りを一切合財吹っ飛ばしてしまうだろうし」

絶鬼(覇鬼兄さん、それと他のふたりはどこに――いや、そう遠くにはいっていないはずだ)


ユラリ


絶鬼「!」

聖白蓮「なるほど確かに、あの道士の推測通り――貴方が一番危うそうね」

841: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 00:56:24.57 ID:tSREwYPH0
絶鬼「おっと、また新手? ――今度は何者かな?」

聖白蓮「そうですわねぇ。魔法使いとでもお答えしておきましょうか」

絶鬼「ふぅん、魔法使いか。手品でも見せてくれるかい? で、そっちは何者なんだっけ?」

諏訪子「そうだねー。カエルの妖怪ってことにしておくよ」

聖白蓮「またまた、とんだ御冗談を」

絶鬼「まあ、かかってきなよ。兄さんたち――いいや、兄さんとはまたいつでも落合えるんだから」


ニュルニュルニュルニュル!


絶鬼「……! ぼくの持つバラが勝手に……伸びて?」


ギチィィィ!!


ユラァリ……


幽香「四季のフラワーマスターという二つ名はダテじゃあないのよ?」

幽香「自分の妖気がこもったバラを操られ、逆に自分を拘束する枷とされた気分はどう?」

絶鬼「またまた新手か。……少しは、骨のある相手のようだな」

諏訪子「唐傘お化け……じゃない方の傘持ちの怪物じゃないの」

聖白蓮「貴女は聞くところによると最強クラスの妖怪とお見受けしますが、人里を守るために私たちに手を貸して下さるので?」

幽香「人里? そうねぇ、あのお花屋さんが閉店したら困りますわね。ただ、主に私怨でこちらに出向いているだけよ」

諏訪子「でもまあ、支援ってことでいいんだね。私も人里というより山を降りかかる火の粉から守るために来たんだけどね」

諏訪子「――神具『守矢の鉄の輪』」


ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!


絶鬼「むっ!?」

842: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:01:03.81 ID:tSREwYPH0
幽香「四肢も拘束されちゃったわねぇ、貴方大丈夫?」


絶鬼「大丈夫? 嗤えるね――キサマらごときに、ぼくの行く手の邪魔はさせない」


幽香「私の弔い合戦の邪魔も、させようとは思わないわ」

聖白蓮「改心する気はございませんか?」

諏訪子「ちなみに神様と殺り合った経験とかある?」




絶鬼「邪魔をするな虫ケラどもがァ――――ッ!!!」


メキメキメキメキメキメキメキメキメキ




幽香「あら変身? 何令幼虫だったのかしらねぇ」

聖白蓮「超人『聖白蓮』」

諏訪子「祟符『ミシャグジさま』」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

843: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:03:01.36 ID:tSREwYPH0

――妖怪の山(山頂)――


文「……」

はたて「……」

文「まるでカルデラみたいな形状になったわね」

はたて「でも、湖はないわね」

文「……」

はたて「……」

文「守矢神社の残骸どころか、風神の湖まで忽然と消えているわ」

はたて「さっきの天空からのエネルギー弾から逃れるために……何処かに持って行っちゃったのかな?」

文「いくらなんでもあの一瞬でそんなことが――……いや、できるかも知れないけれど」

文「何しろある日突然、まるごと幻想入りして来たわけだし」

はたて「じゃあ、どこに持って行っちゃったんだろう?」

文「そりゃあ、どこか安全な場所じゃない?」

はたて「もしかして……一旦外界に逆戻りしてるとか? 特ダネになりそうね!」

文「まさかそれはないでしょ」

844: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/16(火) 01:06:41.11 ID:tSREwYPH0

――中有の道の上空――


ビューン!


ぬえ(本当に子どもだな。特にあの赤鬼……発している気からしてあの鬼の手の正体には違いないけど)

ぬえ(そろそろ、迎え撃たなきゃね! 暴れ出したりする前に――)

ぬえ(ん、向こうからこちらに向かっているあの小さいのは)


覇鬼「あれは猿だ!」

フラン「いいえ、あれはきっと蛇よ」

覇鬼「……そーいやここ、どこだ」

フラン「私も知らないわ。初めて見る景色だもの」

フラン「絶鬼お兄様と天子さんはどこに行ったのかしら?」

覇鬼「どこにいるうがー!」


ヒュゥ


フラン「……あら、お呼びじゃないヤツが来た」

覇鬼「?」


レミリア「へぇ――それが、久しゅう会ったいない姉に対する態度?」

レミリア「あんたを紅魔館(うち)に連れ戻すために、わざわざ迎えに来てあげたというのにね」

レミリア「そこの木偶の坊、さっさとフランを放しなさい」

レミリア「さもないと――鮮烈なる恐怖を味わうことになるわよ?」


 
                                   (つづく)

854: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:34:55.96 ID:wc9nMu9w0

――地底(血の池地獄)――




ゴポッ・・・ゴポゴポ・・・・・・ゴポポッ・・・・・・・・・




勇儀「ほう、鬼の手に封印されていた鬼だけでなくその弟もいるのか」

ヤマメ「そうらしいんだ。もしかしたら、兄弟はもう地上で合流しているかもしれない」

勇儀「く~! これは悔しいな」

勇儀「是非、手合わせしたいというのに……地上にいちゃあね。私が旧都を離れるわけにはいかないし」

ヤマメ「でも、伝えた通り場合によっては――」

勇儀「ここに突き落として封印しようってんだろう?」

勇儀「まだ使えないことはないけど、言っても使い古されて打ち捨てられた地獄の跡だ。猛々しい鬼共を完全に封じ込められるかな」

ヤマメ「そうだよねぇ。どうすれば」

勇儀「簡単なことだ。私がそいつらを子分にする」

ヤマメ「ええー!?」

勇儀「気風が違えども鬼同士だ。何とかなるだろう!」

ヤマメ「そんな……相手が言葉も通じないような凶悪な奴なのに……」

勇儀「別に1年2年での話じゃないよ。10年かかろうが100年かかろうが問題はないんだから」

勇儀「時が経てば人も変わるし鬼も変わる――長い時間を掛けて手懐けるさ」

ヤマメ「何ていうか、姐さんらしい発想だねぇ」

855: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:44:06.66 ID:wc9nMu9w0

――彼岸――


映姫(やれやれ、小町のサボリ癖にも参ったものよ)


映姫「ほら、そこの新入りの方――集中力を切らさず仕事に励むように」

眠鬼「なーんで私がこんな机仕事しなきゃなんないのよぉー!!?」


だーん!!


眠鬼「だいたいここどこ!? 私の知ってる地獄じゃない!」

映姫「それはむしろ、こちらが聞きたいわよ」

映姫「見知らぬ鬼娘が紛れ込んでいるので引き取るよう要請が来たからには仕方ない」

映姫(なぜ私のもとに送還されることになったのかは定かでないが)

映姫「貴女はどこの地域担当だったの? 直属の鬼神長の名は? あるいは獄卒鬼としての等級は?」

眠鬼「知らないわよんなこと、意味わかんなーい!」

856: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:46:55.74 ID:wc9nMu9w0
パシーン!


眠鬼「い、痛いじゃない! 何すんの」

映姫「仮にも使用者・被使用者関係にあるのよ。言葉遣いには気をつけなさい」

眠鬼「鬼を舐めてかかると痛い目に会うんだからっ」

映姫「反抗的な態度を継続するようなら貴女の 着は返しません」

眠鬼「返せ。いや返して!」

映姫「『返して下さい』でしょう?」

眠鬼「……」


むすー


映姫「どうなの? はっきりしなさい」

眠鬼「か、返して……く……ださい」

映姫「わかりました――返しません」

眠鬼「なんでよぉー!?」

映姫「アメとムチは基本中の基本。きちんと仕事をこなしたら、返してあげないこともない」


映姫(しかし、 着がないと人間並みの力しか発揮できない鬼など初めて聞いたわ)

映姫(変わり種の鬼の子どもね)

857: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:54:30.34 ID:wc9nMu9w0
眠鬼「えっと、これ片付けたら返してくれるってこと?」

映姫「返すことも考慮に入れる、と言っているの」

眠鬼「……」

映姫「ほら、するならする。しないならしない。何事もけじめを付けることが肝要です」

映姫「ただし、しない場合には 着は返却しませんので」

眠鬼「あーもうわかったわよ! やるわよ、やってやるわよ! 見てなさい!」

映姫「生憎見ている暇はありません。私は多忙なので、判らないことがあったら周りの事務員(しにがみ)に聞くようにね」

映姫「ちゃんと、貴女の様子を気に掛けておくようにと、みなに伝えているから」

眠鬼「ちょっと……ひとにここまであーだこーだ言っといてあとは放置なの?」

映姫「私の言ったことを理解できましたか? まだ理解できませんか? もう一度最初から説明した方がよろしいですか?」

眠鬼「……う」

858: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 00:59:43.96 ID:wc9nMu9w0
眠鬼「……わ、わかったから。ちゃんと仕事する……しますから」

眠鬼「だから、後で●●●返してくださいー」

映姫「よろしい。後でちゃんと返すわ――だから仕事に励みなさい」

眠鬼「はいはい」

映姫「『はい』は」

眠鬼「一回でって言うんでしょ! は――――――い!!!」




――三途の川(彼岸側)――


映姫「やれやれ、世話が焼けるわ」


スゥー


死神「鬼と言えども、子どもは世話が焼けて大変ですね――こちらの閻魔様」

映姫「ああ、貴女は日雇いの死神の。どう、三途の川の水先案内は?」

死神「順調ですよ。滞りなく幽霊達を捌いています――予定時間よりも早く本日のぶんは終わりそうですね」

映姫「貴女は時間厳守な上に仕事が早くて助かるわ。一層のこと小町の代わりにうちで正規雇用してもいいわよ」

死神「いえいえ、私の一存では決められないことなので」

映姫「ええ、それもそうよね。今のは忘れて頂戴」

映姫「ところで、これはきちんと確認させてもらいたいことなのだけれど」

映姫「ある時点を境に、急に川に流れる死魂の量が増えたみたいなのよね」

映姫「それと、貴女がここに現れたことに関連性はあるのかしら?」

死神「勿論関係がないことはないです」

859: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:02:49.69 ID:wc9nMu9w0
死神「私の担当する人間界とこちらとの境界線が急に緩んでしまったために」

死神「人間界で無事成仏できなかった死霊が多々、こちらに流れ着くようになっているようです」

映姫「ああ、やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ」

映姫「貴女もたまたま流れ着いて、あるいは、気まぐれで幻想郷にいらしたの?」

死神「いえ。近い将来人間界でお亡くなりになる予定の人間がこちらに紛れこんでしまっているので」

死神「きちんと人間界に戻るまで見届ける為に、ここから監視をしているんです」

死神「人間界の神が決めたご臨終にて、きちんとお亡くなりいただかないと困りますので」

映姫「確かにね。その人がこちらで野垂れ死ぬようなことがあれば、外界側の摂理に反するものね」

死神「そういうことです」




\どっか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ!!/




映姫(……あれは中有の道の辺りか。激しい戦闘が発生しているようね)

映姫(何故かくも無益な争いを起こして小さな箱庭を脅かそうとするのか)

映姫(教えを説きに行きたいところだけれど、もう仕事に戻らなくちゃいけないのが口惜しい)


死神「それでは私は監視を続けるかたわら、川の交通整理を続けますので」

映姫「ええ、お願いするわ」

860: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:07:14.69 ID:wc9nMu9w0

――地霊殿(中庭・灼熱地獄跡)――




CAUTION!CAUTION!CAUTION!CAUTION!CAUTION!




さとり「考えることは同じでしたか」

神奈子「絶鬼を封印するならこれが一番手っ取り早いと思ってね」

神奈子(間欠泉地下センターは山の麓から地底にかけての立地だから――)

さとり「『ここを閉鎖しても我々にはデメリットはない。フハハハハ』」

神奈子(最後の間抜けな発声は訂正せよ)


神奈子「だから私自ら出向いてきた――早苗達があれを叩き落としてきたら仕上げを手伝うとするよ」

さとり「おたくの現人神さんって……」

神奈子「ああ、純粋かつ素直で責任感が強くていい娘だろう。最近は妖怪退治にも熱心に取り組んでいるし」

さとり「……。それとですが」

神奈子「何だい? 鳥頭(あの子)に神力を与えた時のことなら――」

861: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:13:59.00 ID:wc9nMu9w0
さとり「そのことはもう根に持ってなどいません。ただ、ここは中庭とはいえ私の住処の地下部分ですからね」

神奈子「判っている。枕を高くして眠れるようにしっかりと――」

さとり「ええ、それもあります。それと、絶鬼というのはあの赤鬼の弟の方でしょう?」

さとり「覇鬼(あに)のように、誰かしらが監督することで制御できる余地は……なさそうなんですか?」

神奈子「そうだね、私の見立てではその見込みは薄い。あれは根っからの悪鬼のようだ」

神奈子「あの弟が側にいる限り、兄を穏便に制御するのは困難だろう。だからこその兄弟分断作戦なんだが」

さとり「『そこに天人と紅魔館の悪魔の妹が絡んでいるから七面倒くさい』と」

さとり(やはり、あの天人が一枚咬んでいたということなのね)

神奈子「そういうこと」

さとり「あの天人はどこまで本気で破壊活動に勤しんでいるとお見受けしますか?」

神奈子「どうだか。自分で心を読みに行ったらいいじゃないか?」

さとり「……」

862: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/18(木) 01:17:22.76 ID:wc9nMu9w0
ザッ!


お空「さとり様ー、順調に危険度が上がっていってますよー」

さとり「いいわ、そのまま続けて」


お空「うにゅ? そちらの方はどなたですか?」

神奈子「誰がお前にその火力を与えたと思っている」


お空「さとり様です!」


神奈子「主ならちゃんとペットに採点減の教養を与えたらどうなんだ」

さとり「頭の記憶領域をいじらない限り、直らないものは直らない。それは性格も同じかもしれませんね」


お空「?」


神奈子「――絶鬼とやらは、二度と太陽を拝めないように最終処分をするということで一致だね」

さとり「ええ、已むを得ない。……と思うわ」
 

                                   
                                      (つづく)

869: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 20:39:08.67 ID:J3NoPAEl0

――地底(間欠泉噴出孔の付近)――


怨霊達「!!」


ササー


お燐「よしよし、ちゃんと道を開けてくれて助かるよ」

ぬ~べ~「正直なところ、時間が許すなら怨霊(かれら)の声をちゃんと聞いて救済の手助けができれば……と俺は思う」

華扇「あの死神と似たようなことを言うのね」

ぬ~べ~「……死神……?」

華扇「いえ、こちらの話よ」

ゆきめ「ちょっとあんた! 先生からもっと離れてよ!」

華扇「あのねえ、周りを怨霊が取り囲んでいるのだから、あまり距離を取れないのは仕方ないでしょう?」

ゆきめ「むぅ……どーなんだか」

ぬ~べ~「まあまあ、ゆきめくん……そうカリカリするな」


早苗「ほら、玉藻さんも積極的にアプローチしないと」

玉藻「研究(アプローチ)ならしてますよ、様々な角度からね」




サラサラサラサラ……

870: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 20:42:25.56 ID:J3NoPAEl0
ぬ~べ~(!? 何だ、突然強大な妖気が……目の前に……!)

お燐「おやおや、とうとうあの鬼まで来ちゃったのか。先生は妖怪だけじゃなく鬼も本当に惹き付けちゃうねぇ」

華扇「あ、……貴女……」


萃香「ごきげんよー!」

萃香「悠長なこったね。地上より地底の方が平和とは、とんだ逆転現象が発生しているよ」


玉藻「! 貴様は何者だ」

ゆきめ「この感じ! 一本角の鬼やそこのピンク女に近い妖気。ということは……」

華扇「私は別に近くないわよ。近くて遠いから。いいえ、全く関係がないから……」


ぬ~べ~「――君もまた、鬼なんだな」

萃香「おうよ」

萃香(まったく、紫(だれかさん)はどこ探しても見当たらないし、霊夢はだらしなく伸びてるしで)


ドボボボボボボ


萃香「そろそろ私も本腰を入れようと思ってねぇ……ごきゅごきゅごきゅっ」

871: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 20:50:51.03 ID:J3NoPAEl0
ゆきめ「うわ、もんの凄くお酒くさーい!! しかも今呑んでるし」

玉藻「……かなり酔いが回っているようだが」

華扇「もともと常時、呑んで酔っているの。そういう鬼なのよ」

玉藻「そういう?」

玉藻「――ああ、そういう鬼ですか。そういう鬼でさえこういう姿とはね。もう見慣れてきましたが」


萃香「ぷはーっ、まあ、手を貸してやるよ。あの赤鬼はお前さんが持ち込んだものだが」

萃香「それを解放しちゃった責任は」


チラ


華扇「ッ……」

萃香「あと、弟だっけ? あれを連れ込んでしまった責任は幻想郷(こちら)側にある」

萃香「だからね。協力する道理は一応立つし、私も折角だからそれなりに力を使いたいし」

ぬ~べ~「そうか。酒呑童子(きみ)も手助けしてくれるのか――俺のことを、信じてくれるんだな」

萃香「強い力ってものは、力の使い道をよく心得ている者にこそ宿るべきだ。その点で、お前は信用できる――そう私は判断した」

萃香「私の力をどれほど使いこなせるものなのか。見せてもらうとしよう」


萃香「文字通り、“手”を貸してやるからさ。そんな包帯(はりぼて)の左手じゃあ心許ないだろう?」

ぬ~べ~「文字通り――?」

872: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 20:57:15.89 ID:J3NoPAEl0


サラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラサラ


ぬ~べ~「!? うお、おおおお――――ッ!!!」


ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュル




ゆきめ「!? 体がまるで霧みたいになって鵺野先生の……左腕の中に……自分から!?」

早苗「これは燃える展開ですね~! 少年誌っぽくていいんじゃないですか?」


玉藻「そちらにとってはどこの馬の骨とも判らぬ人間を簡単に信用するのか。鬼は過去の失策から学ばないのでしょうかね?」

華扇「な! 鬼を侮辱するようなことを言わないでくれない?」

玉藻「おや、あなたは鬼ではないというのに何故お怒りに? しかめ面に角まで生えてますよ」

華扇「ッ……揚げ足を取るのがお上手ね」

玉藻「まあ、揚げ物は嫌いではありませんからね」


華扇(利口な狐と化かい合いをするのは骨が折れるわ……)

玉藻(こんな融和的な思考回路を持つ鬼達には、外ではまず巡り合えないだろう。いや、鬼に限らずか)

玉藻(如何にして妖怪たちの性質が、この閉じた世界の中で変容して行ったのか。なかなかに興味深い)

873: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 20:59:43.27 ID:J3NoPAEl0

――境界にある屋敷――


藍(紫様は相変わらず戻らないし)

藍(橙も報告に戻って来ないな。そういや、博麗神社に行って伝言を頼むと指示しただけだからなぁ)

藍(どこかで道草を食っているのかもしれない)


スクッ


藍「もうここで時間を浪費するのはやめだ」

藍「適切な対処法をよく考えるのも大事だが、考えている間に取り返しのつかないことになったら元も子もないじゃないか」

藍「とにかく私も現場に向かおう」


藍「博麗神社へ――」


シュンッ!

874: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:04:02.22 ID:J3NoPAEl0

――天界――


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


雲山「……」

一輪「……」

屠自古「……」

衣玖「……」


衣玖「そろそろ……危機的な領域に入って来たようです。こんな事態は想定の範囲外」

衣玖「余程強力な物の怪の気質を萃めまくっているのでしょうね。これでは天地を司る神々といえど、これ以上抑えつけるのは困難かも知れません」

屠自古「セヤナ」

一輪「なんで関西弁やねん」


衣玖「天子様の気質である極光(オーロラ)の天候が猛烈な『赤気(せっき)』を帯びて燦々と輝きを放っている」

衣玖「まさに緋色の空――これは古代中国において国に大事(事変)が起きる前兆とされていました」

屠自古「モウオキトルガナ」

一輪「自分どないすんねん」


衣玖「もう手遅れです。天災が起こり計り知れない被害が発生するでしょう。皆さん、早く避難してください」

屠自古「オソイッチューネン!」

一輪「それでええんかいな? 諦めたらそこで試合終了やろ!」


ガタッ


衣玖「よくないわ。こんな事態が名居様の耳に入ったら、比那名居の一族の処遇は一体全体どうなるか」

雲山「……」

衣玖(いいですか総領娘様――前回以上にきついお灸を据えさせてもらいますからね)

875: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:10:23.97 ID:J3NoPAEl0

――三月精の家――


霊夢「……サン…………イナイイナイ……」

霊夢「……ゥゥ……オサイセンガ……タリナイッ……」


橙「霊夢……」

スター「霊夢、うなされてるみたいだけれど……大丈夫かな」

サニー「巫女って人間だったんだね。霊験灼(あらたか)な予知夢でも見てるんじゃない? 霊夢だけに」

スター(サニーが知性のありそうなこと言ってる)

ルナ「あの残酷な鬼、野放しにしていていいのかな(私も残酷な妖精なんだけどね)」

橙(紫様……大事な霊夢がこんなことになっているのに。早く還って来てくれなきゃ……)


霊夢「……アッ」


橙「霊夢!」

ルナ「目が覚めたの?」

サニー「いや、まだ寝てる。半目だし」

スター「もしかして、神が降りてきたとか?」




霊夢「……ラギョウニカヤギョーサン……。

シェー!

……ガラッ。

クマー。

アギョーサン……イナイイナイ……。

オニハウチ……! ……フクハソト……!」

876: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:15:56.93 ID:J3NoPAEl0
橙「!?」

ルナ「は?」

サニー「何この顔芸半目だし怖い」

スター「意味分からないし怖い」


コンコン


ルナ「ん? 誰かが来た――」


ギィィ……


てゐ「夜分遅く失礼するわー」

てゐ「もしかしたらホイミ役が必要かもしれない、って姫様がおっしゃていたから」

てゐ「いいクスリを届けに来たのよ。博麗の巫女宛にね」


ルナ「本当なの、兎さん?」

橙「待って、これは詐欺かもしれない!」


てゐ「そんなことはないわ。この秘薬の効果はテキメンよ。鈴仙で生体実験をして実証済みだから」

てゐ「生命力の高い寄生虫を原料にしてお師匠様が作られた、すごいきずぐすり!」


うねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうねうね

877: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:21:49.36 ID:J3NoPAEl0
サニー「うわ、フツーに虫がいっぱい!」


パチッ


霊夢(――ん?)


わさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさ


ルナ「え、これって飲ませるの?」

スター「いや、塗るんでしょ……傷薬だし」

橙「本当に……効くの?」

てゐ「鈴仙はこれが身体に入ったら立ちどころに云々――」


もぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞ


霊夢(何この状況……気がついたら悪戯好きな妖精たちの家に拉致されていた上に)

霊夢(化け猫や兎詐欺(ウサギ)どもに囲まれて蟲●されそうになってるわ……)

霊夢(とりあえずこいつらを退治するか。ここで邪魔されるわけにはいかないし)

霊夢(絶鬼どもを叩きのめす前の――軽いウォーミングアップとしてね!)


カッ!!!!!!

878: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:27:58.40 ID:J3NoPAEl0

――博麗神社跡――


正邪「なんだ……これ」

正邪「神社が……」


針妙丸「おお、正邪ではないか」


正邪「!」


針妙丸「ふふ、ここに来たということは……やっと降伏する気になったのね」


正邪「違うさ! 誰が降伏なんか――ただの気まぐれで」


フラッ


正邪「……針妙丸……様?」


ヒョイッ


針妙丸「……はあ、ちゃんと手当をしてもらったんだけれどね」

正邪「……こんなにケガをして。一体何が」

針妙丸「うん、悪い鬼を退治しようとね、したんだけどね。何も……できなかったの」

正邪「悪い鬼……」

針妙丸「やっぱり私の相手には……正邪程度のまがいものの鬼がお似合いなんだね」

正邪「……」

879: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:34:33.87 ID:J3NoPAEl0
針妙丸「また悪い妖怪が外から入ってきたらどうしよう……」

正邪「外から……?」

針妙丸「私、何もできないよ……」


スゥ――――――


針妙丸「!」

正邪「唯一焼け残っている鳥居の方から! 何かが……来るっ!」


ぴょーん


座敷童子「……」


針妙丸「……」

正邪「え、これ……小人?」


座敷童子「……」


キョロキョロ


座敷童子「――!」


キッ


貧乏神「……っ……」




針妙丸「正邪や、あの子は悪しき者……ではない?」

正邪「私にはそんなこと」




座敷童子「……」




コォォォォォォォォォォォォォォォォォ

880: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:37:03.10 ID:J3NoPAEl0
針妙丸「あっ――」

針妙丸(私の打出の小槌に魔力が萃まってゆく。まだ魔力の回収期にあったというのに)

正邪(私が持っていた鬼の魔力が小槌のもとへ。いや、それだけではない)

正邪(もっともっと大きな魔力が急速に充填されてゆく。この力の出所はいったい……――)

針妙丸(振れる――再び、小槌を振れる)




ズズズズズズズズズズズズズ……




針妙丸「――!」

正邪「こっちからも、何かが現れて!」

正邪(こいつは一体!?)




??「 あぎょうさん さぎょうご いかに? 」

881: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:45:15.29 ID:J3NoPAEl0

――人里(寺子屋)――


まこと「ZZZ」

克也「はあー、お前らに会えたら急に家のことが心配になって来たぜ」

広「ああ、妹のことが心配なんだな」

克也「ちゃんとメシ食って風呂入って寝てるかなーってよ」

慧音「君の家族を心配に思う心持ちは、先生たちが君に対して抱くものとそれほど違うものだろうか?」

克也「……いや。それほど、違わないだろうな(悪かったぜ、ぬ~べ~先生……他のみんなも心配掛けて)」


こいし「あの薔薇の鬼とは前に会ったことあるの?」

広「おう、あったんだよ。確かに絶鬼とかいったな……アイツ。すっかり忘れてたぜ……」

広「人間に化けてる時の見てくれはあんなんだが性格はまるで鬼のようなやつだ」

郷子「そりゃ……鬼だもの。空の上で戦ってるひとたち……本当に大丈夫なのかな」

布都「なーに、心配はいらぬ。太子様を始め、他にもそこそこの戦力が結集しておるからの」

克也「まだ地底(した)にいるっつー先生たちは大丈夫なんか? ぬ~べ~、鬼の手が無いんじゃ……どうやって」

郷子「うーん、確かにぬ~べ~だけじゃ大変だろうけど。ぬ~べ~にはゆきめさんや玉藻先生」

郷子「それに地底で出会ったたくさんの仲間たちがついているから、きっと大丈夫だと思う」

こいし「それに、貴方たちも妖怪(わたし)たちもついてるものね。皆でここから応援しましょ」

克也「応援か……オレらじゃ、できることはそれくらいしかねーな。その声が届くかどーかもわかんねーし」

広「んなこと言うなよ! いざとなったらオレらがあの鬼達のとこに――」


ゴツン!


広「いだだーっ!!」

慧音「これ以上周りに心配掛けたら先生ツノを出して怒るぞ!」

阿求「貴方たちの担任の先生、さぞ日頃から神経をすり減らしていることでしょうね」

克也「あー、それはどうだろ。ぬ~べ~って眉毛も神経も図太いしなあ」

こいし「おーえん! おーえん!」

郷子「でもただ応援するだけじゃなくて、何とか……もっと直接、力になれる方法があれば」

こいし「ううん、応援は力になるのよ。皆の思いが萃まれば、それは大きな力になるの」

克也「元気玉のこと? ホントにそうなりゃいいのにな」

布都「――うむ、本当にそうなるかも知れんのう」

882: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:48:16.11 ID:J3NoPAEl0
まこと「ぐぅー……まけない……先生は絶対……負けない……のらー」

まこと「正義の味方はー……必ず……勝つー! ……むにゃむにゃ」


広「おいおい、起きたんかと思ったら寝言かよ」

克也「まことらしい夢見てんだろうな」

布都「正義か。太子様のことじゃな」

慧音「今立ち向かっている者は、皆正義ってことでいいじゃないの」


阿求(正義って何なのか。幻想郷においてはあまり意識することはないわね)

阿求(『これこそが悪だ』というものをここで指摘するのは難しい)

阿求(妖怪が即ち悪かと言えば、そう言い切れるものでもないし)


郷子(あれ、そういえば美樹は?)

883: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:53:51.48 ID:J3NoPAEl0

――紅魔館跡――


咲夜「お嬢様がおひとりで妹様を迎えに行った?」

美鈴「ええ」

咲夜「美鈴、私はちょっと――」

美鈴「待って下さい咲夜さん。お嬢様は誰も来ないよう伝えろと仰っていました」

美鈴「『これは私とフランとの姉妹間の問題であって、他の者が手を出すべきことではない』」

美鈴「『それはパチュリー様であろうと従者であろうと同じ――ついては来るな』――と」

咲夜「……そう」


咲夜「じゃあ、お嬢様のもとには向かわないけど。異変解決に向けて私もちょっとは動くから」

美鈴「はい――館の修復の方は、私たちが担いますから。安心して行って来て下さい、咲夜さん!」

咲夜(美鈴に安心しろって言われるとかえって不安になってくるけど、後ろ髪を引かれつつ向かいますか)

咲夜(――とりあえず、目指すは博麗神社かな)


――シュンッ

884: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 21:57:58.16 ID:J3NoPAEl0

――霧の湖(廃洋館側)――


影狼「ッ……流石にあんな攻撃を受けると」

わかさぎ姫「傷の回復に時間が……」


速魚「傷ついたかたは私の血をどうぞすすってください。傷が治りますよー」


弁々「ああー立ちどころに治ったーたりらりらー」

八橋「よかったねーベーンベーおねーちゃん~」


雷鼓「あいつら……立ちどころに頭も軽くなってない?」

チルノ「頭が……。大変だ、あたいがバカになった気がする」

ミスティア「それはギャグでいってるの?」

リグル「そもそも妖精ならどんな怪我をしても問題ないだろうに」

ルーミア「バカになって鳥目になってしまった……周りが良く見えない……」


大妖精(いっそのこと私も馬鹿になったほうがチルノちゃん達の間に溶け込めそうな気がしてきた……)


リリカ「酷いやつらだったね。夜の音楽祭を台無しにするなんて」

ルナサ「ああ、……そうだ。さっきの鬼はこの上無く下種な旋律を奏でて……悦に入っていた……」

メルラン「あんなのに掻き乱されて悔しい。やり返したいけど、私たちに出来ることなんて」


速魚「みんなで歌を歌いましょう」

わかさぎ姫「速魚さん」

速魚「歌は世界を救うんですよー。私たちの歌をみんなのこころに届けるんです」

速魚「きっと、楽しいですよー」

885: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 22:04:19.67 ID:J3NoPAEl0
チルノ「その通りだ!」


大妖精「チルノちゃん」

チルノ「あたいたちはサイキョーだが――さっきの奴らは他の先客が相手をしているんだ」

チルノ「だから今回は特別に見逃そう。だが、それではあたいたちの気が収まらない」

チルノ「だからバカになってバカ騒ぎするのさ! そして奴らの気力をぶちのめすんだ!」


ルナサ「バカみたいなことを言うね。そんなことをしたって意味が……」


弁々「意味なんかー考えないー!」

八橋「それが道具の真骨頂~動き出したら止まらない~!」


雷鼓「何もしないで傍観するより何でもいいからやった方がいいんじゃないの? 道具だろうが妖怪だろうが何者だろうがね」

ルナサ「……」

雷鼓「道具どころの話じゃない」

雷鼓「この幻想郷そのものを玩具のように弄ぶ愚かな侵略者に」

雷鼓「私たちの反戦歌(レジスタンス)を披露しようじゃないか――!」

ルナサ「……。そうだね。やるだけ、やってみようか」

メルラン「私も賛成」

リリカ「お~!」


チルノ「よーし! あたいが指揮を取ろう」

チルノ「あたいにふさわしいサイキョーな曲をぶっ放とうじゃないか!」

速魚「サイキョーですかー。んーと、えーと……――あ、ピッタリな曲を思い出しました」

速魚「みんなで一緒に歌いましょう。バリバリ最強No.1♪」

886: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 22:07:26.10 ID:J3NoPAEl0

――博麗神社の裏山――


ピシピシピシ……ズザァッ!! 


――シュタッ


ぬ~べ~「――ここが、地上か」

《のんびり景色を眺めている場合じゃないよー。どうだい、パワーアップみたいな実感ある?》

ぬ~べ~「ああ、大アリさ」


ドボドボドボドボドボーーゴクゴク!!


ぬ~べ~「ぷっは~! 今ならいくら酒を呑んでも酔う気がしないぞ~!」

《ははは! 酒は異変が片付いてからいくらでも呑めるよー》


スタッ


ぬ~べ~「――!」


霊夢「あらあら、萃香じゃないの。ちょっと見ないうちに成人男性みたいになっちゃって」

887: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 22:12:37.35 ID:J3NoPAEl0
《よ、霊夢。もう身体は大丈夫なわけ?》

霊夢「誰か知らないけど、応急手当をしていてくれたみたいね。たぶん針妙丸かな?」

霊夢「眼が醒めたら何か変な蟲(モノ)挿れられそうになってたから、その場にいた連中を全員退治してきたのよ」

《ふーん》

ぬ~べ~「君、ちょっと上着を脱いでくれないか」

霊夢「えー、出会っていきなりセクハラ発言?」

ぬ~べ~「すぐにその傷を完治させる。傷周りに幽かに残留する妖気で分かる――君は、絶鬼という青鬼に傷付けられたんだな?」

霊夢「あら、ご名答。あれの知り合いだったの。でも」

霊夢「貴方は悪いヤツじゃない――私のカンがそう言っているわ。あまつさえ萃香が手を貸しているんですもの」


スルスルスル……ぱさり 


霊夢「あんまり痛くしないでよ。見知らぬゲジ眉のお医者さん」

ぬ~べ~「俺は医者ではなくて外の世界の小学校の教師だがな。まあ、いろんなことができるぞ。この身に宿る霊能力を使ってな」

888: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/19(金) 22:17:07.91 ID:J3NoPAEl0
ぬ~べ~「ヒーリングも決して不可能じゃない――俺も子どもの頃、恩師によく手当てしてもらったものだよ」

霊夢「恩師ねぇ」

《おまけに私がついている限り百万人力だよ~!》




ぬ~べ~(絶鬼よ。お前はあの時、俺達の見せた“人間の絆”の前に敗れた)

ぬ~べ~(二度と這い上がれぬ無間地獄に突き落とされたあの時も、そして今になっても)

ぬ~べ~(――お前は、何も変わっていないのか?)

ぬ~べ~(人の身体を傷つけ、人の心を踏みにじり、全てのものを破壊し尽くそうとするのか?)

《……》

ぬ~べ~(お前が変わろうとしないのならば――それならば、俺は)




ぬ~べ~・萃香(《    お前を 絶対に許さないからな    》)




ポォォォォォォォォォォォォォ




                                    (つづく)

902: ◇8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:16:59.43 ID:a8HIuLUV0
――中有の道(上空)――


覇鬼「うがーははははっ!」

フラン「アハハハハッ!」




ちゅど~~~~~~~~~ん!!




レミリア「ッ」

ぬえ「迂闊に近づけないわね。あいつらっを引き離さない限り……このままだと押し負けてしまう」

レミリア「ふん。私はともかく、あんたが奴らに手出しする理由なんてないでしょ」

レミリア「目障りだから邪魔しないでくれないかしら」

ぬえ「私は見ての通り闇に紛れているから目障りではないと思うけれど」




フラン「ねぇ覇鬼お兄様。お姉様(あいつ)目障りだからもう他所に行きましょ。ふたりのことも探さなきゃ」

覇鬼「うが? お前は……姉(あいつ)のことが目障り……うが?」

903: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:19:57.21 ID:a8HIuLUV0
フラン「だってあいつ、私の気持ちをこれっぽっちも理解しようとしないんだもの。ず~っと私を閉じ込めて私の自由を奪い続けて」

フラン「私――あんな奴大っ嫌い」

覇鬼「……」




レミリア(あいつ……私の本当の気持ちも知らないで!)

ぬえ(姉へのあてつけとして、あの赤鬼と擬似的な兄妹関係を形成しているのか?)

ぬえ(まあ、ともかくこれ以上元気に暴れ回るのを抑えつけないと……背後に聳え立つ山が崩されたら……)

ぬえ「ねえ、これから――」

レミリア「この先には三途の川が流れているわね。こいつらを向こうまで誘導するわよ、折角だから手伝わせてあげるわ」

ぬえ「……」

レミリア「お遊びは終いだ。子どもはおうちに帰る時間よ」


ギュルンッ


レミリア「神槍――スピア・ザ・グンニグル」

904: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:32:40.29 ID:a8HIuLUV0

――妖怪の山――


ジ――――


椛「……」

はたて「どう、椛。私たちも参戦した方がよさそうかな?」

椛「微妙なところですねぇ……」

椛「あ、そういえば文様はどちらに?」

はたて「博麗の巫女のことが心配だからって、仕事をほっぽり出して神社に行っちゃったわ」

はたて「まあ、山の警備は差し当たって私が指揮をとるから問題ないし」

椛「……そうですか」


ヴ……ン……


はたて「あれー、画像検索しても出てこないわね」

椛「何を調べているので?」

はたて「『守矢神社 現在の場所』ってキーワード入れてるんだけど……1枚も出てこないのよ」

905: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:39:54.71 ID:a8HIuLUV0

――博麗神社の裏山――


霊夢「どうもありがと。さてと――あの悪魔(ゼッキ)を叩き潰しにいくとするか!」

ぬ~べ~「お、おい! ちょっと待て、無理をするな」

霊夢「無理?」

ぬ~べ~「あいつは危険だ。君を躊躇なく傷付けたということは……あいつは以前と何も変わっていない……ということなんだろう」

ぬ~べ~「あまりに残虐すぎる相手だ。年端もいかぬ少女である君があいつに立ち向かう姿を考えると」

ぬ~べ~「重ねてしまうんだよ……あのイタコギャルの中学生と……」

霊夢「イタコのギャル?」

ぬ~べ~「君はここに残ってくれ。何しろ君はこの神社の」

霊夢「博麗神社を護る楽園の巫女・博麗霊夢――でも私の本職はむしろ妖怪退治なのよ」

霊夢「貴方が重ねている人物と、私とは全くの別物なんだから。心配されるのはお門違いよ」

霊夢「私は二度は負けない。それに異変首謀者はれっきとした幻想郷の住人なんだから」

ぬ~べ~「何だって?」

《天人くずれの比那名居天子。天界から降りてきた超問題児。最近は里で占いをやったりして割に大人しくしてたのに》

《天災は忘れたころにやって来るんだねぇ。ま、前回起こした異変はそんなり昔ってわけじゃないけどさ》

906: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:41:24.86 ID:a8HIuLUV0
ぬ~べ~「天人……」

霊夢「私が向かうのがスジっていうものよ。まあでも、協力してくれるっていうのなら、敢えて断るつもりはないけれどね」


スッ……キラキラキラキラ


ぬ~べ~「! 俺の霊水晶――」

霊夢「貴方が幻想郷で体験してきた出来事をちゃちゃっと見せてもらうわね。時間に余裕もないし」

霊夢「私には霊気を操る程度の能力もあるのよ。だから、いわゆる霊能力者っていう範疇にも入ってくると思うわ」

ぬ~べ~「……」

霊夢「それで?」

ぬ~べ~「ん?」

霊夢「貴方の名前は? 先に私が名乗ったのだから、そっちも名乗ってくれないとね」

ぬ~べ~「そうだな。俺の名前は鵺野鳴介。さっき言った通り小学校で霊能力教師をやっている」

ぬ~べ~「ちなみにあだ名は――」

霊夢「鵺野鳴介――じゃ、鳴介さんでいいわね」

ぬ~べ~「え……?」

霊夢「? 何か問題ある?」

ぬ~べ~「い、いや……別に問題はないが」

《おいおーい、時間の浪費は後でやりなさいな》

907: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:45:21.50 ID:a8HIuLUV0
霊夢「時間の浪費? 違うわよ、あんたがみんなを萃めてくるのを待ってるんじゃない」

霊夢「あの貧乏神をぼちぼち神社から追放するためにね」

ぬ~べ~「……。霊夢くんよ、君は……貧乏神に取り憑かれていたのか……?」

霊夢「ええそうよ? 何? 私が見るからに貧相に見えるとでも言いたげだけど。悪かったわね」

ぬ~べ~「違う違う! 何と言うか親近感が」

《うーん、私が萃めなくても――みんなようやく自然と萃まって来るみたいだよ》




ザッ


早苗「霊夢さーん!」

お燐「助っ人外来人達を連れてきたよー」

ゆきめ「鵺野先生~!」

華扇(やっと追い付いた……あれだけ体力削られちゃうと動き回るのも楽じゃないわね)

華扇(あら? ――あの妖狐はどこに)


霊夢「お燐に早苗……仙人も。ついでにどっかの風俗嬢?」

ゆきめ「だ、誰がフーゾクよ! んが、あらがるか!」

霊夢「は?」

ぬ~べ~「おーい、微妙な方言になってるぞ。ん、向こうからも誰か……」

908: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:50:04.74 ID:a8HIuLUV0
文「霊夢さーん! 心配して見に来ちゃいましたよ、山の方は、はたてたちに任せて――って!?」

《やっほー、また職務怠慢かね天狗君》

文「何やってるんですか……。もしかして封印でもされたので? この人は頼光さんの子孫とか? 全然容貌に面影がありませんけど」

ぬ~べ~「いやいやいや」

早苗「あ、静葉様と穣子様!」


トコトコ


静葉「おーい、博麗の巫女。聞いたわよ、火事になったんだって? 火事の御見舞に純米酒を持って来たわよ」

穣子「お芋の一件はもう許してあげるわ。一緒に神社の再建を手伝ってもいいよ!」


霊夢「あんたたち……」

華扇「……って!? 博麗神社が燃えたの!? 何てこと!!」

お燐(あれ、言って無かったっけ……うーん、まあいいか)


ザッ!


咲夜「あらら、何なのこの人だかりは? と言っても純粋な人間はほぼ居ない見たいだけれどね」


タッ!


魔理沙「おーい霊夢、神社のほうが気になってきたから悪霊は死神たちに任せてこっちに来たぜ。って今日も賑やかだなオイ」

909: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:55:23.19 ID:a8HIuLUV0
シュタッ!


アリス「鬼が暴れているってこの子から聞いて妖怪退治の専門家は何やってんのかって心配になって来てみたのだけど……」

メディ「うわ、人間がいる。毒盛らなきゃ。何ていうか使命感的に」

ぬ~べ~「あー、何者だか知らんが後にしてくれ。今は取り込み中なんで……」

アリス「そうよメディ、遊んでいる場合じゃないでしょ。……って、貴方は誰?」

ぬ~べ~・萃香「ああ、俺は《私だっ!》」

アリス「な!?」

ぬ~べ~・萃香「《こんにちはー、孤独な魔法使いく~ん! 今夜も自作のお人形さんで自分を慰めていたのかい? パクパク》」

アリス「……なんだ、腹話術じゃない」


ギロリ


アリス「ち、ちょっと何……今私に向かって何て言った? 早速喧嘩売ってるの……?」

ぬ~べ~「お、俺が言ったんじゃないんですよー本当ですよー……ハハハ」


ゆきめ「うわー何これ、どんどんいろんな妖怪があつまってくる」

ぬ~べ~「萃まっているのは妖怪だけじゃなさそうだがな」

魔理沙「ああ、ここから目と鼻の先に博麗神社があってだな。いつも人外で賑わってるんだ」

ゆきめ「ほっとんど何の妖怪かはサッパリ分かんないけど。あなたは何の妖怪?」

魔理沙「いやいや、私は生粋の人間だぜ……。妖怪みたいなのは霊夢や咲夜のほうだ」

咲夜「霊夢はともかく私に妖怪っぽい振る舞いなんて微塵もないでしょう?」


ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

910: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 01:57:36.51 ID:a8HIuLUV0
霊夢(まったくもう。皆もうちょっと早く萃まって来てたらラクだったってのにね。まあ、仕方ないか)

霊夢(どうやら、流れがこっち側に向いてきたみたいだわ)

ぬ~べ~(こりゃあ、凄いな)

《どうだ? これが本場の泣く子も笑う百鬼夜行よ》

ぬ~べ~(ああ、驚いたよ。実のところ、君のチカラも幾分かは作用しているんだろうが)

ぬ~べ~(萃まってくるおおもとの理由は、彼女に妖怪たちを惹き付ける何かがあるからだろう)

ぬ~べ~(それは性格的なものなのか、体質的なものなのか、はたまた他の魅力があるのか)

ぬ~べ~(会ったばかりの俺には、わかりゃしないけどな)

《これこれ、茶化すようなことを言うでない。そういうのをぜーんぶひっくるめての――博麗霊夢なんだからさ》

ぬ~べ~(――ああ)


トコトコ


霊夢「あら。あんたも戻って来たのね」

雛「ええ」

雛「溜め込んだのを全部あげちゃったはいいけど……何だか、かえって手持無沙汰になったのよねぇ」

雛「やっぱり、貧乏神さんから私の厄を返してもらおうと思ってね!」

911: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:02:27.82 ID:a8HIuLUV0

――博麗神社・上空――


正邪(すっかり大きくなられましたね、針妙丸様)

針妙丸(正邪は妙に素直になったね。どういう風の吹きまわし?)

座敷童子「にこにこ」


正邪(そりゃあ、私だって、勝手に幻想郷を壊されたら困る――ここはいずれ私がレジスタンスを達成すべき場所)

針妙丸(うん。理由はともかく――私たちを始めここに棲む皆の心の砦を決して壊されるわけにはいかない!)

座敷童子「こくりこくり」


正邪「“弱小である我々にできることなど、何一つない!”」

針妙丸「“遠い先祖たる一寸法師のように鬼退治をするなんて、無力な私には到底出来っこない!”」


あぎょうさん「    う    そ    」

912: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:04:13.56 ID:a8HIuLUV0
針妙丸(いざ行かん、正邪や! この場限りのレジスタンス――それは儚い夢なれど)

正邪(私たちが今得たチカラは紛れもなくホンモノだ――この現(うつつ)のチカラ、無法者共に見せつけてやるのです!!)


ビューン!!


座敷童子「(がんばって)」

あぎょうさん「……」


ヒュゥ


玉藻(座敷童子にあぎょうさんか)

玉藻(座敷や蔵に棲む神とも云われる精霊的な存在に、かつて“夜行”と呼ばれた鬼神の系譜に連なる謎かけ妖怪の登場)

玉藻(たまたま現れたという可能性もあるが、この異界に存在する霊能力者が降霊術を用いて呼び寄せたのかもしれない)

玉藻(博麗の巫女とやらが、裏山(あそこ)に確かにいるのだからな)

913: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:09:38.56 ID:a8HIuLUV0

――博麗神社跡――


ヒュォォォォォォォォォォ


藍「そ、そんな……」

藍「博麗神社がこんなことに……なっていたとは……」


藍(これほど事態は深刻化しているというのに……)

藍(それなのに)

藍(それなのに還って来られないというのか、紫様は)

藍(いいや、そんなはずはない。そんなはずはないのなら)

藍(紫様の身に何かが起きた――)

藍(もうその他に考えられる原因はないだろう――?)

藍(あるいはあの紫様が)

藍(このなく愛する幻想郷を……捨てられたとでも言うのか)

藍(いやありえない。そんなことがあるはずない)

藍(……。長年仕えて来ていながら紫様のお考えになっていることを、私はどこまで察せられるようになっている?)

藍(今になっても……あのお方の掴みどころのない胸の内を、私が垣間見ることなんて……)

藍「紫様は……」


ジャリ


玉藻「“紫様は”」

藍「――!」

玉藻「“二度と幻想郷に還って来なかった”」


あぎょうさん「    う    そ    」

914: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:12:08.40 ID:a8HIuLUV0
座敷童子「――♪」


ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ


貧乏神(おらぁ……だんだんここに居づらくなってきたなぁ……)




ピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシ


藍(! ――空間にいびつな亀裂が)

玉藻「“あぎょうさんは、今幻想郷(ここ)にいる”」

あぎょうさん「    う    そ    」


スゥー……


藍「消えたか――今の妖怪は」

玉藻「ウソからマコトを出す程度の能力――とでも言ったらいいか」

玉藻「何せ、型破りなことをやってのけるモノだ。もし敵対者の手に渡れば極めて厄介」

藍「だから、すぐに外へお帰り頂いたわけか。適切な判断だと思うよ――紫様がお戻りになれば大結界の問題は確実に収拾できる」

玉藻(このゆりかごをずっと安定的に維持したきた賢者と言われる大妖怪。それにまみえることができるな)

藍「お前のほうの目的は達成できたのか?」

玉藻「――ええ、勿論。だから私はもうフリーですよ」

玉藻「そして、私が出るまでもなく内的な異変は鵺野先生や酒呑童子、博麗の巫女たちが解決することでしょう」

915: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:15:53.15 ID:a8HIuLUV0
藍「……」

玉藻「だから今度はあなたに同行させてもらっても構いませんか?」

藍「へぇ、それはまたどうして?」

玉藻「まだ会ってもいないが――八雲紫(スキマ妖怪)という存在に少々興味を抱きましてね」

藍「なんだ、紫様の式にでもなる腹積もりか」

玉藻「誰が式になどなるものか。個を失った狐に如何程の存在意義があると言うのです」

藍「おいおい、私の存在意義そのものを全否定か?」

玉藻「いえいえ、意義がないとは言ってません」

藍「まあ好きにしたらいいよ――ただし、来るなら来るで結界の修復を手伝ってもらうからな」

玉藻「ふ、その程度のことは織り込み済み。少しは手伝って差し上げましょう」



ピシシシシシシシシシシシシシシシシ……パカァ――……




座敷童子「!?」

貧乏神「なんだぁ? 狐共がどこぞに消えてしもうたぞい」

916: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/23(火) 02:17:25.67 ID:a8HIuLUV0
ゾロゾロ……


華扇「こ、これは……酷いわ。敷地一帯が滅茶苦茶じゃない。早速修復しないと」

咲夜「……よくぞここまで見事に焼き尽くされたものね。外来妖怪が押し寄せてくる現状にもこれで納得」

魔理沙「本当は上空で跳び回りたいとこなんだが……ま、役割分担に従ってやるよ」

アリス「ミニ八卦炉にキズが入っちゃった上に箒も壊されて手に怪我も負ってるんだから……無理しちゃダメよ」

魔理沙「ああ、分かってるさ」


ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ


魔理沙「よーし! 霊夢達が闘ってる間に、こっちはこっちでやれることをやるぜ!」


\お―――――――――――――――ッ!!!!/




(第4話:震える天空砕ける大地――有頂天の天人くずれと地獄から来た最凶の鬼の巻<後編>・終)

923: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:26:53.40 ID:CYoCy58L0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[XXXX+α年?月?日 AM02:02:19]


<信州北安曇郡白馬村の某所にて>




枕返し「ギャアアアアア!?」

クダ狐「ガツガツガツガツ」


ズズズズズズズズズズズズズズ……




いずな「これで良かったの?」

蓮子「これで良かったのよ」

いずな「枕返しに見せられていた夢から醒めたら……幻想(ゆめ)の世界に還っちゃうだなんてね。皮肉な話だよ」

蓮子「枕返しという妖怪の能力が並行世界の構築であると解釈するならば」

蓮子「私たちはパラレルワールドの存在をこの目で観測することに成功したのよね」

いずな「うーん、まあそういうことか」

蓮子「並行世界の存在を肯定する理論的根拠の一つとして挙げられる超弦理論の複数のヴァージョン――」

いずな「タンマ……イミフだし頭痛くなるから私に語らないでくれない? 専門外だし」

蓮子「そう? 面白いのにー」

いずな「それよりさ蓮子、本当に平気なのかよ?」

いずな「あんたの相棒、もう二度と人間界(こっち)に還って来ないかも知れないのよ?」

蓮子「いいえ、必ず還ってくるわよ」

蓮子「少なくともどこかの世界線で。あの一線を越えた物凄く気持ちの悪い能力は、いくらでも応用できるに違いないわ」

いずな「……ま、それもそうか」

いずな「境界だなんて曖昧なものを操らなくても、陽神の術とか使ってフツーに現れそうでもあるけどさ」

蓮子「あれって一種の自己像幻視ね。脳の側頭葉と頭頂葉の境界領域――側頭頭頂接合部――を操ることができればきっと可能だと思うわ」

いずな「わからん……。分身って言えばいいでしょ分身って。気を練って作り出すドッペルゲンガー的なヤツって」


蓮子「それに、うちのサークルにはめぐみも居るんだから」

924: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:37:05.78 ID:CYoCy58L0
めぐみ「♪」


ニコッ


いずな「いいの~? 霊能力者霊(サイコゴースト)じゃまんま幽霊部員じゃん」

蓮子「いいの。その方がいざという時に頼りになるんだから」

いずな「墓とか暴いちゃダメだよホント……この世には目には見えない闇の住人達が数多漂っているんだから」

いずな「奴らは時として牙を剥き――」

蓮子「それは置いといて。貴女は夢と現には明確な境界が存在すると思う?」

いずな「……有る人には有るし無い人には無い、人によるよ。でも夢と現の区別がちゃんと付けられなくなった人間は精神的に脆くなる」

いずな「――そういう弱った人間の心のスキマに入り込むのが妖(アヤカシ)なのさ」


ヒョコ


クダ狐「フア~ア」

蓮子「それじゃあ、最後にもう一つ質問してもいいかしら?」

蓮子「――貴女は、妖怪と人間のあいだに明確な境界が存在すると思う?」

いずな「それはパス」

いずな「直接的な答えにはなんないと思うけど――人の心の働きが妖怪を作り出すってことは確かだろうね」

蓮子「そう」

蓮子「じゃあ、この話はひと段落置きましょう。さて、貴女が気になっていた超対称性を持つ弦(ひも)についてもう一度判り易く説明――」

いずな「はい結構~! 私ヒモ男なんかにキョーミないから!」

蓮子「だからそういうひもじゃないんだって。でもヒモ男もひもで出来ていることは確かよ」

めぐみ「?」

いずな「どっちにしろ貧乏学生にたかってるほど私はヒマじゃないのさ。もっとお金になる客を見つけないと商売上がったりだもん」

いずな「――じゃね。私はそろそろ東京に帰るから。また迷ったら私のところに来なよ」

蓮子「そうね、実家に帰ったらまたクダ狐に導いてもらうわ。勿論めぐみと――」

蓮子「それから、メリーも一緒にね」

めぐみ「うん」

いずな「そうだね。またいつか4人で会えたら会おう――どこかの並行世界で」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


925: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:41:57.89 ID:CYoCy58L0

――童守小学校――




いずな「うう~ん……、……はっ!!?」


ガタッ!


いずな(ど、どこだここは!? ……って、何だ童守小じゃないか)

いずな(夢……だったのか。今のは……)

いずな(夢の中にいた私は……今の私……じゃなかったと思う……たぶん)

いずな(いや、そもそもあれは本当に私だったのか……?)

いずな(でもって私と一緒にいたやつらは……)


いずな「あれー、よく思い出せないな……誰だっけ?」

いずな「顔も名前も……ぼやけたように思い出せないな……」

紫「それは予知夢かもしれないし、そうでもないかも知れないわねぇ」

いずな「んなッ!!!?」


いずな「強い妖気!? 妖怪かよ!! ――悪霊退散ッ!!!」


ボシュッ パァァァァァァン!!


いずな「……やったか?」

紫「やってない」

926: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:45:36.30 ID:CYoCy58L0
ゴツンッ


いずな「痛ったああああッ!?」

紫「たまに勘違いされるんだけど、“程度の能力”っていうのはあくまで自己申告制なのよ」

紫「私の場合、一線を越えた物凄く気持悪い能力のほうが注目されがちだけど」

紫「妖怪としてそこそこの身体能力を持っているし、人間には到底真似できない体術だって使えるの」

いずな「……くっ」

紫「まだまだ未熟な現在(いま)の貴女(いずな)じゃ、私の手の平から飛び出すこともままならない」

いずな「!? ……な、何で私の名前を……知ってるんだ」

紫「何でって。それは当然――」


ニコリ


紫「――私たちは友達になったからよ」

いずな「――!?」

紫「“友達になった”って表現だと貴女にとっては過去の出来事のように取れるから語弊があるわね。でも、現在の私の視点からは“友達になった”と表現した方がしっくりとくるの」

いずな「意味わかんないこと言うな!!」


いずな「私はお前のようなバリバリ妖しいオバサン妖怪なんか全っ然知らないよ!!」


紫「……酷いわあ、そんなこと言うなんて」

928: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:52:35.39 ID:CYoCy58L0
紫「むこうじゃ貴女の方が少しオバサンだったわよ。第一私は紛れもなく少女なのだけれど、ねえ」

いずな「はあ!?」

紫「それから美神令子並にお金に執着するのは止めなさい。見返りを求めずに気丈に振る舞うのが貴女のいいところなんだから」

いずな「誰だよそれ? ていうかー、さっきから何知った風な口聞いてんだ!」

紫「もうちょっと大人しく話を聞けないの?」


紫「……貴女がかつての葉月いずなじゃなかったら、肝臓でも引き抜いた上で拉致していたところよ? 凶悪な妖怪の餌にするためにね」

いずな「妖怪の……エサだとっ!? あ、貴様さては妖怪・紫ババアだなっ!!!」


ナデナデ


紫「う、ふふ、ふふふ……」

紫「お喋りはこれくらいにしましょ。私も暇じゃないのよね――早く、夢の中で忘れていた大事な幻想郷(こども)を助けにいかなくちゃならないのよ」

いずな「!? 子どもって――」


ギギギギギギ……


いずな(な! ……か、身体が……動かない……)

紫「このまま放っておいたら、私の幻想郷(こども)は死に」

紫「貴女の大切な恩師(せんせい)たちも神隠しに遭ったまま、二度と還って来ない未来になっちゃうんだから」

いずな(!!?)

929: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 21:59:14.97 ID:CYoCy58L0
紫「どうやらまだ、覆水を盆に返せそうだから良かったわ」


紫「“枕をひっくり返された時点”じゃなくて、“この時点”で夢が醒めたのはちょっと不思議ではあるけれど」


紫「それはそれで良いのかもね。松原めぐみがああいう形で救済されたという過去の出来事は、過去のまま変わらないことになるのだから」

いずな(私のセンセイって……まさか……?)

いずな(そうだった! あの0(零)能力者が行方不明になったって聞いて、ここにすっ飛んで来たんだった!!)

紫「だから、もういくわ。今後、貴女と出逢うことはもう無いでしょう――“八雲紫(わたし)”はね」

紫「またね、いずな」

紫「再び縁が巡ってくるならば――秘封倶楽部で」




ニュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルン




いずな「……」




シ――――――――――――――――――――――ン




いずな(ひふうクラブ……だって……?)

いずな(何だったんだよ……今の超ヘンな妖怪は……)

いずな(あ! ボーってしてる場合じゃない)


ピョコッ


くだ狐「キュー!」


いずな「0能力者たちがどっか行っちまった原因を探るんだ!」

いずな(あんたにはまだ教えて欲しいことが山ほどあるんだよ。トンズラされて堪るかっ!)



                                 (第4.5話:境界線上の枕返し の巻・終)

930: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/24(水) 22:11:54.61 ID:CYoCy58L0
○紫がなかなか登場しなかった理由として考えていた案


案その1:普通に長い仮眠をしてた

案その2:チャブクロである歴史を改変しようとしていた

案その3:異次元の魔物に誘われてカオスな異次元空間を楽しんでいた

案その4:仮眠をしている間に枕をひっくり返されて人間(=メリー)になった夢(=並行世界)を見ていた

案その5:ずっと様子見をしていた(霊夢がこの大規模な異変をどういう方法で解決するのかを試し、本当に切羽詰まったら自分が手を出すつもりだった)


☆いろいろ考えましたが、ここまで切羽詰まっててまだ出てこないのなら1、3、5は無いなとカット。2は非常にややこしくなるのであきらめて、結局4を採用した次第。


☆「なぜ枕返しによって紫は人間になったのか?」という理由は突きつめていません。いわゆる「紫=マエリベリー・ハーン説」に今回は乗っかってみた感じです。

☆>>176を書いていたころと比べると話全体的にかなり路線変更をしてしまいました。辻褄の合わない部分があったらごめんなさい。




次回は日曜日の更新で 最終話「 百鬼夜行――そして境界線の向こう側へ の巻」

ここまで大風呂敷を広げてしまったのでまた上中下編に分けることになると思います。ぬ~べ~側の新たな登場人物は今回のいずなで打ち止め、東方側は主なキャラは面霊気以外全員出したはず。

938: ◇8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:11:08.10 ID:0Qgt10aO0

――冥界(白玉楼)――


妖夢「あれ、私ってもう出番なさそうだと思ってたのですが?」

幽々子「きっと妖夢の活躍を期待している人が沢山いるからよ。貴女の春画を描いたり読んだりするような奇特な人間たちが」

妖夢「そうですよね!」

赤蛮奇「それでいいの?」

 
以津真天「いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで!」


青娥「あらあら、西行妖とやらの周りを怪鳥が飛びまわってますわねぇ」

妖夢「ちょっと!? いきなり現れて変な妖怪をけしかけないでくれる!?」

芳香「うーらーめーしーやー」

妖夢「うわ幽霊! ……ってただのキョンシーじゃないの」


以津真天「いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで! いつまで!」


赤蛮奇「何よこいつらは……『いつまで』ってどういう意味なの?」

939: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:16:27.90 ID:0Qgt10aO0
芳香「いつまでも変わることなく~部下で……いよう~」

青娥「誰かを追い求めるのもいいけれど、誰かに追われる身なのも悪くはないもの」

妖夢「幽々子様、あの怪鳥の言う『いつまで』とは一体何のことなのでしょう?」

幽々子「……。妖夢は知りたい? あの妖怪鳥が何を訴えかけているのか」

妖夢「……幽々子様」

幽々子「以津真天曰く、『いつまで死――』」




ニュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルン!!!


シ――――ン




芳香「……」

赤蛮奇(今のは正真正銘あのスキマの仕業だね。怪鳥を全部まとめて絡め捕っちまった)

青娥「ストーカーはお帰りなのね。さ、お家に帰りましょ――私の腐って可愛い下僕(よしか)」


ニコッ


芳香「ほいよー!」


ズズーンッ!!


妖夢「こらー! うちの庭に穴開けて行かないでくれないっ!?」


赤蛮奇「今度こそ一件落着?」

幽々子「そうね。一件はまもなく落着するわ――紫が無事に還って来たようだし」

940: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:19:26.39 ID:0Qgt10aO0

――永遠亭――


鈴仙「……ぁ、あぅ……あっ……」




妹紅「燃え尽きたって顔で放心状態ね、彼女。……何かあったの?」

輝夜「永琳や、鈴仙は何を落ち込んでいるの?」

永琳「ああ、ちょっとてゐの悪戯で実験動物にされちゃってね」


ウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネ


永琳「このフラスコの中の寄生虫をお腹の中で養殖しちゃったのよ」

妹紅「これはこれは……蠱毒(こどく)にでも使えそうな蟲達ねぇ」

輝夜「てゐに持たせた薬の原料はこれだったか。月の兎の腹の中でここまで成長できたの? 興味深いわ」

永琳「そんなことより、上空を元気に飛び交っている小娘たちの様子はどうなの?」

輝夜「月に届くどころか、間もなく地におちよう。あるいは地底に堕ちるか、地獄に落ちるか」

妹紅「できれば鬼兄弟は幻想郷からお帰り頂きたいわね。あの大妖怪がその気になれば何とかできるでしょうに」

輝夜「確かに何とか出来るでしょうけど。それでも、本来あれらを片付けるべき者は別にいるのだから」

永琳「やるべき者がやり果せられる程度のことなら、其の儘やらせるべきか。ふふ、どうやら私の出る幕はないようね」

永琳「月の民が持つ内なる力に作用させる能力――折角だからお披露目しようかと思ってたのに」

941: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:26:50.71 ID:0Qgt10aO0

――香霖堂(魔法の森の入口付近)――


霖之助「あのねぇ、君……今何時だと思ってるの」

霖之助「表の看板を見なかったかい? 営業時間外なんだよ」


ガザゴソガザゴソ


美樹「え~!」

美樹「だって鬼の手異変が解決したら即刻人間界に送り還されちゃいそうだもの。今のうちにお土産をゲットしたりガサ入れとかしておきたいし」

霖之助「鬼の手異変?」

霖之助(送り還すって、もしや外界の人間なのか? こんな時間に1人で魔法の森の近くでうろうろしているとは)

美樹「あ、命名権は私にあるから新聞の記事とかにするから使用料払ってね」

霖之助「新聞の話なら他でもっと適任な相手にしてくれないかな。それと、いきなりガサ入れって……」


ゴソゴソゴソゴソゴソゴソ


美樹「よっこらせっと――そんじゃ、お兄さん。この秘密道具の数々、ありがたく頂戴するわ」

美樹「お代は……んーと人里の阿求さんって人にツケ回しといて。私あの人と親友だから」

霖之助(見え透いた嘘っぽいが、人里に知り合いがいるのなら放っておいても安心だな)

霖之助「いいよいいよ、そんなことは。ほとんどの商品が拾いものだし、この店も半分は趣味でやっているようなものだから」

美樹「あらそうなの? お兄サマったら太っ腹~! 美樹ちゃんサービスしちゃうわ」

霖之助「何のサービスだい……いいから早くお引き取り願おう」

美樹「それではまた今度!」


ガラガラピシャッ


霖之助「やれやれ、騒々しい客だったな」

942: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:33:22.65 ID:0Qgt10aO0

――魔法の森の一歩手前――


美樹「この辺でばらかすか」


ゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソ


美樹「何か、使えそうなもんないかなー。ぬ~べ~がパワーアップできそうな魔法の道具とか」

美樹「……、……思ってたよりあんまりいいの無さそうね。ガラクタっぽいのが多いし」


シュタッ


文「こんな所で何やってんですかー、そこのろくろ首さん」

美樹「ん、今度は誰?」

文「って、ちょっとは絶叫とかしてくださいよ。こんな真っ暗闇の中、得体の知れない妖怪に見咎められてるんですよ貴女」

美樹「でも怖くないし」

文「物腰柔らかに接するっていうのが私のモットーですからね」




\WRYYYYYYYYYYYYY――――――――ッ/

\日出處天子致書日沒處天子無恙云云――――――ッ/


ドォォォォォォォォォォォォォォン!!




美樹「! 今の地響きは何よ、結構近かったけど!?」

文「何って……貴女も状況は大方理解してるでしょ?」

943: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:36:52.81 ID:0Qgt10aO0
ガシッ


美樹「え、ちょっと――!」

文「しっかり掴まっていてくださいよ~。振り落とされても補償はありませんので。高度をもう少し上げます」


ギュゥゥゥゥゥゥゥン


美樹「わっ! わっ! わっ!」

文「貴女はたぶん鵺野さんの生徒の細川美樹さんとやらですね」

文「さっき風の便りで、厳戒態勢の人里の警備網を掻い潜って脱走したグラマラスな小学生の話を小耳に挟みましてね」

美樹「ぬ~べ~のこと知ってんの? じゃ、私の安全は確保されたようね、一安心だわ」

文「せっかく幻想郷にお越しいただいたのですから、戦地に赴く新聞記者の体験でもさせてあげますよ。貴女は好奇心が強そうなので」

美樹「なな、ち、ちょっとぉー!? これ高さが高過ぎよ~!」




ビュ――――ン

944: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 09:56:15.96 ID:0Qgt10aO0

――幻想郷(上空)――


ヒュォォォォォォォォォォ


霊夢「あのブンブン飛んでるのは蚊じゃなくて文ね」

ぬ~べ~「気のせいか……俺の生徒が約一名くっついているように見えるが……気のせいじゃなさそうだ。ハァー」

早苗「むしろ文さんがついていたら安心です。私たちは心おきなく妖怪退治に勤しみましょう」

ゆきめ「一度闘ったことのある鵺野先生や私は兎も角、あなたたち大丈夫? あの鬼が本気を出した時の強さは――」

《大丈夫大丈夫。力を合わせて斃すとしようじゃないか――我々だけではない、幻想郷の住人(みんな)の力をね》

霊夢「魔法の森の上空で暴れている天子と、人里の真上で今のところ足止めされている絶鬼」

早苗「まずはそのお2人ですね。ぎったんぎったんにしてあげましょう!」


ぬ~べ~「覇鬼と、さっきのメイドさんが言ってた悪魔の妹については《現状ではそこまで急いで片付ける必要はない》」

《吸血鬼の姉や“パワーアップ”した天邪鬼と一寸法師の末裔も覇鬼側を止めに入っているようだし、しばらくは持つだろう》

ゆきめ「いっそ三途の川で溺れさせちゃえばいいのよ。妖怪の山を越えたところに誘導しているんでしょ?」

早苗「でも、川の上を普通に飛ばれたら溺れて頂けませんよ」

ゆきめ「あ、そっか」

945: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:01:36.98 ID:0Qgt10aO0
ぬ~べ~「三途の川を渡れば彼岸があって、その先には新しい地獄があるそうだな?」

霊夢「フランドールは館の主が連れ戻せば済む話だけど、覇鬼とかいうのは最終的にどうするのかが問題よね」

ぬ~べ~「そりゃ、俺が再度封印する他には――」

霊夢「いっそ、新地獄に追いやって閻魔達に面倒見てもらったらいいんじゃない? 萃香、あんたも鬼なんだから是非曲直庁のお役人と掛け合ってみてよ」

ゆきめ「ぜ……えー何て?」


《うーん、それはちょっと。というかさー、このまま事態を放置しておいたら勝手に向こうから刺客が来るんじゃないの》

《お迎えを担当する地獄の鬼神長(殺し屋)さんが危険分子を始末する為に。前に水鬼鬼神長が某千人を殺しに現れたこともあったしねぇ》


ぬ~べ~「水鬼……というともしや、平安時代の豪族・藤原千方(ふじわらのちかた)が従えていたといわれる四鬼のうちの一鬼のことか?」

霊夢「鳴介さんって本当にこっち方面は詳しいわね。寺子屋の先生なんかも十分勤まると思うわ」

ぬ~べ~「はは、そうかな? まあ、並の人間に比べりゃゾウケイが深いってやつでな」


ゆきめ「あの女ぁ……初対面のクセにっ! 鵺野先生のコトを下の名前で……馴れ馴れしいったら……!」

早苗「ゆきめさんだってそう呼んだらいいじゃないですか」

ゆきめ「う、いやその……だって……」


ビューン!!


文「ちょっとそこの討伐隊の皆さん、何暢気に談笑してるんですか。早く戦闘シーンを激写したいんですけど」

美樹「そうよぬ~べ~たち、さっさと参戦しなさいよ。こっちは実況と解説役ってことでスタンバってるのに」

946: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:05:44.11 ID:0Qgt10aO0
霊夢「あんたらの方がよっぽど暢気そうだけど――ま、ご要望に答えてあげるとしますか」

美樹「あ、広達は無事よ。ついでに克也とかも勝手にこっちに来てたみたいだけど、一緒に人里で大人しく保護されてるわ」

ぬ~べ~「……そうかそうか、それは魔理沙とか言う子から聞いたがな。まったくお前ら全員後でお説教だぞ。迷惑を掛けた人達にも頭を下げに行かなくちゃな」

ぬ~べ~「美樹、お前はここで何を言ってもあまり意味は成さないだろうから……とにかく天狗のお嬢さんに迷惑を掛けないようにな」


美樹「!」

文「ご心配なく」


ゆきめ「あ、見てよアレ!」

早苗「! 要石が魔法の森方面からこちら側へ接近中ですね!」

ぬ~べ~「……」

《腕がなるねぇ》

霊夢「行くわよーっ!」


ギュ――――――――――――――――――ン!!!

947: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:12:58.08 ID:0Qgt10aO0

――霧の湖の上空――




要石「┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨」




絶鬼「ぐっ……」

天子「もう人型を解いちゃったの? だらしないわねぇ」

絶鬼「フン、相手がそこそこの手だれだったからね。『蚊虻牛羊を走らす』とはこのことだ」

天子「これこれ、そういう発言をするのは私のお役目よ?」

絶鬼「で、そっちはどうだったの? 結構ボロボロになってるようだけど」

天子「聖人はKOしたけど、仲間の道士や命蓮寺の妖怪僧たちの急襲に遭ったりしてね」

天子「一時退避の上、周りを見回したら貴方が危なそうだったから救いの手を差し伸べてあげた次第」

絶鬼「余計なお世話だ。ぼくが全力で行けば五月蠅いハエどもなど一瞬で消し飛んでいたさ」

天子「はたして余計なことなのかしら。仲間同士、持ちつ持たれつは基本じゃないの」

絶鬼「……仲間だと。形だけだろう――お互いに利用し合ってるだけだと」


天子「守るべきものがあり、徒党を組んで挑んでくる者達は実に勇ましい。それこそ死に物狂いって感じで面白いわ」

絶鬼「……」

天子「絶鬼も思わない? あっさりと叩き潰しちゃうよりも、こういう風に一進一退、苦戦を強いられる闘いのほうが尚更面白いと」

絶鬼「全てを破壊し阿鼻叫喚の地獄絵図を現出すること――それこそがぼくにとっての最高の面白さだ」


天子「では聞くけれど――世界を滅ぼし尽くして全てを無に帰してからは、貴方はどうするつもり?」

絶鬼「え?」

天子「幻想郷だけではない。月の裏世界も、人間界も、地獄も、はては宇宙の果てまでも破壊し尽くした後――すべてがマッサラになり畢わった世界の墓場で」

天子「絶鬼は何をするつもりなの?」

絶鬼「何を……って」

948: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:19:16.97 ID:0Qgt10aO0

――命蓮寺の屋根の上――


諏訪子「あーあ、あの2人合流しちゃったよ。全盛期の頃の神力を発揮できないのがもどかしい」

幽香「巫女達がようやく駆け付けたわね。私たちはここで高みの見物でもしましょうか」

聖白蓮「物理的な高さはこちらの方が断然低いですが」

神子?「ふぉふぉふぉ、不良天人に完膚無きに倒されてしまったぞい」
 
諏訪子「道教の手先がやられたか」

幽香「あのお方は私たち四天王の中でも最阿呆」

聖白蓮「天人くずれ如きを相手に後塵を拝するとは、宗教家の面汚しですわ」


ザッ


神子「いやいや、敗れてはおらぬ。第一我々はいつから何の四天王になったのだ」

神子「それとそこの古狸、私に化けて茶化すのはやめよ」


ポンポコッ


マミゾウ「しかし、何故手を引いたのじゃ? 一気呵成で行けば何とかなったであろうに」

神子「私の仕事はもう終わりだ。後は時の流れに任せておけば良いわ」

幽香「無責任ですわねぇ」

神子「そうでもない。私は常に、相手の全てを見通した上で行動している」

949: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:23:27.50 ID:0Qgt10aO0
聖白蓮「では、彼らの本質を見抜いた上で、あえて天人と青鬼を再び面と向かわせたとでも?」

神子「ああ。ほんの少しであっても構わない――あの悪鬼の残忍で冷酷な本質(せいかく)にヒビを入れるような」

神子「そういう化学反応が起きることを期待しての所為なのだよ」

聖白蓮「……」

マミゾウ「道士の考えることは判らぬ。儂にゃ無意味だと思うがのう」


諏訪子「えーと、早苗に博麗の巫女にさっきの雪女の娘に……あともうひとり人間がいるね」

幽香「特殊能力を持った人間なのかしら? それにしましても今夜は夜通し白夜のように明るいものですねぇ」

諏訪子「でも、明るさは闇に包まれているからこそ明々と映えている。闇に喰われた暁には」

幽香「いいえ、明けない夜などございませんわ」



                                       (つづく)

950: ◆8c/Sw4f94s 2014/09/28(日) 10:32:11.17 ID:0Qgt10aO0

<EXボス戦・自機組(対戦相手は流動的になる可能性あり)>


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【 VS比那名居天子&絶鬼 】


――博麗霊夢

○空を飛ぶ程度の能力/博麗の巫女としての能力/霊気を操る程度の能力


――鵺野鳴介(ぬ~べ~)&伊吹萃香

○霊能力を駆使する程度の能力(仮)/密と疎を操る程度の能力/鬼としての能力


――東風谷早苗

○奇跡を起こす程度の能力/守矢の風祝としての能力


――ゆきめ

○凍気を操る程度の能力(仮)


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【 VS覇鬼&フランドール 】


――レミリア・スカーレット

●運命を操る程度の能力/吸血鬼としての能力


――封獣ぬえ

●正体を判らなくする程度の能力


――少名針妙丸

●打ち出の小槌を扱う程度の能力


――鬼人正邪
●何でもひっくり返す程度の能力


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実況・解説:射命丸文×細川美樹

957: ◇8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:24:51.25 ID:cXSQUHda0

――三途の川岸(此岸側)――


ザバザバッ


UMA「ォォォォオオオオォォォォオオオ」




覇鬼「変な生き物がいるうが!」

フラン「覇鬼お兄様、あれ捕まえてみて」



――


ぬえ「思ったより簡単に誘導で来たわね」

レミリア「子どもねぇ……一風変わった物を見つけると目がないんだから」

針妙丸「うーん……」

正邪「我々は手を出すべきなのか……かえって腫れ物に触らない方がいいような気がしてきた」

ぬえ「やめておけ、死ぬぞ」

レミリア「ギャラリーはあっちで隠れて怯えながら見てなさい」

針妙丸「わ、私たちも闘いに来たのよ! 今の私ならかの一寸法師みたいに鬼退治が出来るはずだもの!」

正邪「強大である我々には出来ることなどいくらでもあるのだ!」

ぬえ「相変わらず天邪鬼だな」

正邪「これはホントなんだぞ! ホントはウソだけどウソ妖怪にウソでなくしてもらったからホントなんだ」

レミリア「あっそ。でも、もうこっちの勝ちは確定してるから――不可避弾幕(グンニグル)の投擲によってね」

958: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:27:40.72 ID:cXSQUHda0
ドッボ~~~~~~~ン!!!!


覇鬼「あれ? 捕まえられなかった」


ゴポゴポゴポゴポ……


覇鬼「!? 体が沈むうがー!」

フラン「!? お兄様、元のおっきな姿に戻ったほうがいいわ! 川底に足がつけば大丈夫よ!」


ボンッ!!! ズズズズズズ……


覇鬼「底がないうがー!!」

フラン「ええー!?」


――


ぬえ「馬鹿か……三途の川は泳いで渡ろうとしたら沈むぞ」

レミリア「死神はどうせサボってここにいないだろうし、渡りに船は期待できないわよ。悪鬼はそのまま溺れ死ぬがいいわ」

針妙丸(飛べばいいんじゃないの……)

正邪(今攻撃すればいいんじゃ……)




覇鬼「うがうがっ!」


ゴポポポポッ


フラン「今……助けるわ!」


バシャンッ!!


フラン「わっ!? しまった……これは流れる水! おのれバカお姉様……図ったわね」

覇鬼「うがー!」


バシャバシャバシャバシャバシャ

959: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:33:08.75 ID:cXSQUHda0
レミリア「ククク……紅魔館の主に逆らったらこうなるのよ」

ぬえ「拍子抜け過ぎる展開だわ」

針妙丸「正邪……私たちは折角力を得たと言うのに何も為さずにこのまま事態は解決……」

正邪「そんな弱気になってはいけません。流石にこんな簡単に終わるはずがありませんから」


ビュ――――ンッ!! ――がしっ!!


眠鬼「こんのバカ兄貴~!! なに三途の川で溺れてんのよ!!」

覇鬼「! 眠鬼!!」

レミリア「どれだけバカな妹なのよ! 何であんたまで大バカにつられて跳び込んでるの!!」

フラン「……、お姉様……」

眠鬼「本当に……久々に会えたと思ったら。何やってるのよ全く……!」

レミリア「私に……いらぬ心配をかけるんじゃないわよ、全く」

フラン「……」

覇鬼「眠鬼~~~~!!! 会いたかったぁ~~~~~~!!!!」


ギュゥゥゥゥ!!


眠鬼「ってこらー!? 引きずり込んじゃ駄目! 私まで溺れる!!」


パシッ グイグイグイッ!


眠鬼「えっ」

針妙丸「よーし、皆で赤鬼さん達を引き揚げようぞ!」

正邪「こんな奴らを助ける義理など皆無だが……!!」

眠鬼「お前たち、誰だか知らないが……手伝ってくれるというのか」

ぬえ「全く無縁なわけでもない。私たちは、この赤鬼の“遊び仲間”だからね」

針妙丸(あの青鬼は斃すべき相手だが……この赤鬼さんは、どうも憎めない。凄く怖いけれど)

正邪(――懐柔するんだ。力任せでバカで幼稚な者ほど扱い易い相手はいない! 私の本領を発揮してくれる!!)

960: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:36:25.80 ID:cXSQUHda0
覇鬼「……」

ぬえ「一寸の虫にも五分の魂がある――って言っても判りづらいか」

ぬえ「貴方にとっては私たちは小さく弱き虫けらにしか見えないだろうが、虫けらにも虫けら並の意地があるし」

ぬえ「守りたいものだってあるんだ。助けたいものだってあるんだ。貴方にだってあるだろう、大切なものが」

覇鬼「……」

ぬえ「だから、これ以上壊さないでくれないか? 私たちの幻想郷(たいせつなもの)を」

覇鬼「………………………………………………うが」




ズズズズズズズズズズズズ……




眠鬼「って沈む~!!?」

針妙丸「私が分身して引っ張り上げるわ! 『七人の一寸法師』――!」

正邪「しかし分身しても力の大きさは同じなのでは!」

針妙丸「あ、そうか!」


ギコギコギコギコ


レミリア「あんたらまだ水難ごっこしてんの? それより、私まで虫ケラの仲間みたいな表現はしないでくれる?」

フラン「……」

死神「船を出していますからこちらにご乗船ください。通常は六文を徴収しますが、今回は特例だそうなので無料で送迎します」

961: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:40:39.61 ID:cXSQUHda0

――三途の川(彼岸)――


レミリア「あの死神、とうとう解雇されちゃったのね。あんたが新任の担当者?」

死神「いえいえ、日雇いの者です。まだ仕事が残っていますので私はこれで」


スゥ――


レミリア(わざわざ彼岸(こっち)に渡らせたのは、閻魔の指示によるものかしら)

フラン「お姉様、ええっと……」


ギュッ


フラン「――!」

レミリア「ちょっと、過保護だったのかも知れないわね。でも、これだけは勘違いしないで欲しい」

レミリア「未だ世間を知らず手加減を知らないあんたを自由に外に出したら、本格的な駆逐対象になるんじゃないかって心配だった」

レミリア「心配だからこそ、大切な存在だからこそ、大事に大事に扱おうとしていたわけよ。箱入り娘みたいにね」

フラン「……レミリアお姉様」

レミリア「ま、確かにたまに存在自体を忘れちゃったりすることもあるし」

レミリア「相手をするのが面倒だからパチェに任せっきりにしていた部分もあるけれど」

フラン「むー、お姉様やっぱきらーい」


レミリア「血を分け合った妹のことが嫌いな姉なんて――いるわけないでしょ」


レミリア「それに、あんただって。本気で私のことがキライで殺しにかかってたら、“目”という名の急所を潰していたでしょ?」

フラン「……」

レミリア「もうじき夜も明けるわ。一緒におうちに帰りましょ――私の愛しのフランドール」

フラン「……うん」

962: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:44:57.15 ID:cXSQUHda0
ぬえ(あっち側はもう大丈夫かな。となると問題は……)


覇鬼「……。助かったうが」

眠鬼「だからー……飛べば良かったのよ飛べば」

正邪「お前、先刻そちらさんを兄貴だと呼んでいたが」

眠鬼「あーうん、私は覇鬼お兄ちゃんの妹で、眠鬼って言ってさ――」


ギリギリギリギリ!!


覇鬼「眠鬼ぃぃぃいいい!!!!」

眠鬼「ぎゃーもういいからこれはー!!!」

正邪「……鬼は身内に対しても容赦ないのか」

針妙丸「ちょっと貴方たち、たぶん、もうひとりを含めてみんなきょうだい関係なのよね? あの――」


ザッ


映姫「まあ、急(せ)く気持ちも判らないことはありませんが。ここまで来たのですから少し私の話を聞いて行きなさい」


フラン「あれは誰?」

レミリア「出たわね。お説教の好きな閻魔様とやらよ。元はお地蔵さんなんだっけ」

覇鬼「あれは誰だうが?」

眠鬼「聞いてなかったの……? お説教好きな閻魔様よ……散々扱き使われたわ」


コォォォォォォォォォォ


覇鬼「!?」

正邪「何やら手鏡のようなものをかざしたぞ?」

針妙丸「鏡の中に映しだされた何かが……川面に投影されてゆく」

眠鬼「これは何なの? ……いや、何なん……で、すか……ッ」


映姫「口で何と言おうとあまり意味がないと思いましてね。浄玻璃の鏡といいます。本来は裁判用の道具のひとつなのですが」

映姫「――貴方の過去の所業が全て映し出されます。貴方は自分の行いを客観的に見る必要がある」


覇鬼「きゃっかんてき、うが?」


映姫「まあ、私も暇ではないので――ダイジェスト版になりますが」

963: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:50:31.66 ID:cXSQUHda0

========================================
覇鬼「うがー」

ブチブチブチ

絶鬼「兄さーん、まだ人形(ニンゲン)で遊んでるの? ほら、こっちに新しい玩具があるよ」

覇鬼「うが?」

スタスタ――バキィグシャ!! ズシ――――ン!!

絶鬼「あははは! 落とし穴だよ、ひっかかったひっかかった~!」

ドゴォッ!!

絶鬼「ぐへぁッ!!?」

眠鬼「あははは! お兄ちゃん達大好き~!!」
========================================


フラン「わぁ。3人とも楽しそう」

針妙丸「た、沢山の人間達が……餌食に……」

覇鬼「……」

眠鬼「ちょっとー!? 何で私や絶鬼お兄ちゃんまで映ってるの!? ていうか止めてよ恥ずかしい!!」

レミリア「下手な盗撮より余程使えるわね、この手鏡」

映姫「鬼に限らず、ありとあらゆる生き物には多様な側面がある」

964: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 21:56:12.75 ID:cXSQUHda0

========================================
覇鬼「いただきまーす」

美奈子「あああっ……!」

――

覇鬼「ニワトリうまいうが……ガツガツ」

ぬ~べ~「この子は取り憑かれている……早く除霊しないと」

――

ぬ~べ~「くっ……左手が……。ダメだ……俺の力では……この鬼を封じることなど……」

覇鬼「うっ……グアアアア!」

美奈子「私のかつての教え子で霊能力教師になった鵺野くん! 魂になった私の残留意志が内側からこの鬼の力を抑えているわ」

美奈子「私もろとも、この鬼を封印するのよ――さあ、早く!!」

ぬ~べ~「嘘だ……こんなこと……」

美奈子「あなたは教師なのよ!」

ぬ~べ~「くっ! 南無大慈大悲救苦救難!!白衣観世音の力によりて 我が左手に……鬼を……封じたまえ!!」

ぬ~べ~「美奈子先生……いつか必ず……あなたの魂を鬼から救ってみせます……

ぬ~べ~「その日まで…俺は子供達を悪霊から守ります…あなたの魂の宿った、この…鬼の手で!!」
========================================


ぬえ「なるほどね……」

正邪「あの人間は……こんな経験をしていたのか……」

フラン「?」

レミリア「何勝手に納得してるの。誰よこのゲジ眉のおっさんたちは?」

覇鬼「……」

眠鬼「……お兄ちゃんのバカ!!」


眠鬼「何で鬼がちまちまニワトリを食べてるのよ!」

映姫「突っ込みどころはそこじゃないでしょう?」

965: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:04:12.98 ID:cXSQUHda0
針妙丸「何で……? 何でこんな悪いことをしたの!」

眠鬼「ちょっと、これが悪いことだって言うの? あんただって何か食べて生きてるでしょ?」

眠鬼「例えばあんたがご飯を食べるとしてよ、お椀被ってるし。あんたがご飯を食べることと、お兄ちゃんがごはん(ニンゲン)を食べるのと」

眠鬼「何か違う? 文句言えるの?」

針妙丸「そ、それは……」

映姫「違わないかもしれないわね。でももし貴女のお兄さんが万が一、何者かに食べられたとしたら、貴女はいてもたってもいられないわよね」

眠鬼「そ、そりゃ……だって」

映姫「この過去の映像に出てきた人間が、恩師を鬼に喰われたことを知って感じた怒り憎しみ悲しみ――それらの感情は、貴女にとって全く理解できないことではないでしょ」

眠鬼「……」

映姫「貴方にだって、それは同じはずよ。大事な妹さんが誰かに喰われたりしたらどう思うのか」

覇鬼「……」

映姫「大切な存在を傷つけられたときの気持ちは、鬼であっても人間であっても変わらないと思うわ」

映姫「少なくとも、貴方たちにはわかって欲しいわね。私の言いたいことが、判るかしら?」

覇鬼「……、……たぶんわかる」

966: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:06:44.05 ID:cXSQUHda0
========================================
ぬ~べ~「南無大慈大悲救苦救難!!」

ぬ~べ~「我が左手に封ぜられし鬼よ! 今こそその力を――示せッ!!!」

スパァァァン!!

哀妖「こ、こしゃくな……ギャアアア!!」

――

玉藻「だが勘違いするな! これは助太刀ではない!」

ぬ~べ~「……玉藻」

ブシャアアア!!

霊霧魚「ギョォォォオオオオオ!!?」

――

ぬ~べ~「本当の仲間ってものはお互いの欠点を補いながら成長していくものさ」

ぬ~べ~「そして、克也。お前にはそういう仲間がたくさんいる」

克也「……ぬ~べ~先生」

――

ぬ~べ~「リツコ先生~これを見てくださいよ~!」

リツコ「キャ―――ッ!!?」

ボカッ!

――

ゆきめ「ふふ……あったかいのね。溶けてしまいそう」

CHU!

――

琴美「ありがとう……とても楽しかった……少しの間の命でも」

ぬ~べ~「俺は……生きるぞ」

967: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:09:31.71 ID:cXSQUHda0
――

ぬ~べ~「鬼の手で精神を五十年前に戻し幽体離脱させた」

ぬ~べ~「幽体は精神の年齢だし春子ちゃんにも触れることが出来る」

座敷童子「おかあちゃん おかあちゃん 幸せだあ・・・・・・」

――

ぬ~べ~「人間、バカになって人を救え」

――

ぬ~べ~「俺の生徒に手を出すやつは許さない!」

ぬ~べ~「地獄へ――帰れッ」


絶鬼「これが……人間の力……愛する者を守る力……愛の力……、……ぼくは」

絶鬼「ぼくは……触れてはいけないものに触れて……しまったのか……」

絶鬼「何て……あったかい」


――

華扇「ッ……いやぁぁ! ダメっ……やめて……!!」

ぬ~べ~「く……ぅ……」

華扇「……はぁ……はぁ」
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968: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:18:09.14 ID:cXSQUHda0
覇鬼「……」

針妙丸「うぅ…………ちょっぴり感動……しちゃった……」

正邪「そうですね。最後のがなければ」

フラン「最後のピンクの 乱な女は誰?」

レミリア「ただの 乱女よ」

ぬえ「……このシーンはどういう基準でお選びになって?」


映姫「特段の規則性はありませんが――貴女のお兄さんがこれまでに経験してきたことに違いはありません」

映姫「封印されていた間で、果たして記憶に残っているのかは判り兼ねますが」

眠鬼「……封印なんてされたお兄ちゃんの方が」

映姫「ほうが何です? 可哀想だとでもいうのですか? 先に原因を作ったのはどちらですか? 因果応報という言葉を知っていますか?」

眠鬼「う、それは……」


レミリア(子どもが相手だとお説教もそこそこ効くわね。どちらが悪いかなんて実のところ誰の視点によるかで変わっちゃうけど)

レミリア(自分の判断基準をもってはっきりと白黒つけられると、思考がまだ未熟な相手にはそれが正しいと思い込ませることは容易い)


映姫「貴方の強大な力は、ただ破壊するためだけに使えるわけじゃないのです」

映姫「誰かを助ける為に――人間も妖怪も幽霊であっても、彼は救いの手を差し伸べてきたのです」

映姫「貴方にとっては、封印された上での扱いであり、不本意だったかも知れませんが」

映姫「人間の嘆きや哀しみ――」


覇鬼「うが」


ヒョイッ


針妙丸「ひゃ!?」

覇鬼「俺の中に、さっきの女がいる。絶鬼がそいつの力を抑え込んでいる」

覇鬼「お前が、針で絶鬼のバラを切って、女を解放するうが」

針妙丸「え、え、え!!? 私が!? 何で!? どうしてそんな――」


ごっくん!

969: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:26:01.98 ID:cXSQUHda0
正邪「あ、針妙丸様ーっ!」

眠鬼「お、お兄ちゃん!? ちょっと待ってよ! 女を解放するって……まさか……!!」

覇鬼「人間を食べるのは――やめる」

覇鬼「これからは、酒をたっくさんのむんだうが―――――――っ!!!!」

眠鬼「ええー!?」

ぬえ(こいつやはり単純だったか……)

フラン「覇鬼お兄様……」

眠鬼「!? 何アンタ! うちのお兄ちゃんを気安くお兄サマなんて呼ばないでよ!!」




<ブチィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ>




スゥ――……




美奈子「あっ……あっ……、……あ。助かった、のね……」

覇鬼「ペッ」


ドサッ


針妙丸「う、あああ……切ることはできたけど……唾液とかで体中ベトベト……」

正邪「や、やりましたね針妙丸様! 微妙な形ですが貴女は鬼を退治したのです!!」

レミリア「むしろ全身体液塗れで鬼に“喰われた”みたいにみえるけどね」


コォォォォォォォ


針妙丸「へ?」

覇鬼「お前は少し傷ついている。俺が……治してやる」

針妙丸「あ、えっと……どうも」

美奈子「……」


覇鬼「お前らを全員殺したら、遊び相手が眠鬼と絶鬼だけになる」

眠鬼「別にそれでも……。んっと……ううん、お兄ちゃんが……そういうのなら……」

覇鬼「ここには面白いヤツがいっぱいだ。もっともっと遊びたい。だからこれ以上壊さない」

レミリア「そう。遊ぶだけなら大歓迎よ――あんたたち、面白いわ」

フラン「……」

ぬえ「……」

針妙丸「……」

正邪「……」

970: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/01(水) 22:29:59.08 ID:cXSQUHda0
覇鬼「俺を封じた人間よ」

美奈子「……」

覇鬼「お前たちも……特別にだ。本当に特別うが。許してやるうが」

美奈子「……覇鬼」

覇鬼「鬱陶しいお前とは――これでさよならだ」

眠鬼「お兄ちゃ~ん!!」


ギュゥッ


眠鬼「詳しいことはサッパリだけど、再会できてホントによかったっ!!」




ヒソヒソ


正邪「もしや……私たちを騙しているとか……」

ぬえ「この赤鬼がお前のような二枚舌を操れると思うの?」

針妙丸「正邪じゃあるまいし……そんなことはないと思うわ」

フラン「まったく、人騒がせな連中だわ」

レミリア「あんたが言うか」


映姫「そもそも生前の悪行というものは――」


フラン「あ、まだお説教してたんだ」

レミリア「まあ、結果的に閻魔の話も少しは効果が有ったのかもしれないわね。フフフ」


レミリア「我々の勝利だ! これにて一件落着よ」





            (最終話:百鬼夜行――そして境界線の向こう側への巻<前編>・終 )

981: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 15:47:58.76 ID:zbSeXEhb0
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>>433以後、輝夜不在の永遠亭


――永遠亭――


寄生虫「ウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネ」


永琳「なかなかの成長速度ね。いいサンプルが取れたわ」

鈴仙「うわあ……キモチワルイ。これ、何の蟲なんでしょう?」

永琳「寄生虫の一種だと思うけど。詳しく組織を調べてみるわ、いい原料になるかも」

永琳「永遠亭(ここ)にも時間が流れるようになって以来、人里からの往来も絶えないから」

鈴仙「人間がこれを持ち運んでいて、落として行ったのかも……ということで?」

永琳「あるいは他の妖怪が、かな。ほら前に毒人形が妖蟲の話をしていたでしょ?」

鈴仙「ああ、そういえば。妖蟲の飼っている蟲が何かの拍子に逃げ出してきたのかも」


寄生虫「プチップチップチップチップチップチップチップチップチップチップチップチッ」


鈴仙「お師匠様、大型フラスコの中で……大量に産卵して……孵化して……。大丈夫なんですか……早く焼き払いでもしたほうが」

永琳「ただのフラスコじゃないから中から逃げ出すことなんて不可能よ」

982: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 15:50:33.64 ID:zbSeXEhb0
てゐ「ひぃ……ひぃ……。死ぬかと思った……」


鈴仙「道端に落ちていた団子なんか食べるから寄生(おか)されたりするのよ。気をつけなさい」

永琳「食い意地が張っているわねぇ。ニンジンしか食べないんじゃなかったの?」


てゐ「私が鈴仙みたいに地べたに堕ちたものを拾い食いするわけないわよ、お師匠様」


鈴仙「私も食べないわよ! 食べるわけないでしょ、地上に放られたものなど汚らわしい」

永琳「てゐ、じゃあどうして腹の中まで入られたの?」


てゐ「ニンジンを仕入れて持ち帰る途中に竹林(うちのしきち)でその団子を見つけて」

てゐ「何かと思って持ち上げたらウジみたいなのが沸いていて……」

てゐ「気味悪かったから掃き溜め(地底に繋がる小さな穴)に捨てていったのよ……なのに」


鈴仙「ああ、きっとその時ニンジンに蟲の一部が付着してきたわけね。生で食べたりするからよ」

永琳「そのまま原物ごと持って帰ってくれても良かったのにね」

983: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 15:52:55.42 ID:zbSeXEhb0
てゐ「何で私のような可愛い兎ちゃんがこんな可哀想な目に……こういうのは普通鈴仙の役目でしょ……」


鈴仙「まったく、日頃の行いが悪いからじゃないの? これをいいクスリだと思って今後は――」

永琳「でも、確かにこういう役回りは鈴仙の方が向いているかも知れないわね」


寄生虫「ウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネウネ」


永琳「月兎の体内でも増殖できるかどうか試してみようかな」

鈴仙「え……辞めてくださいよ、お師匠様。そんな冗談は」

永琳「ウドンゲっていうのはね、例の伝説の花のことを指すだけじゃなくて」

永琳「他の生物体に産み付けられた昆虫の卵塊のことを意味する場合もあるのよ?」


ガシィ


てゐ「さあさ、鈴仙(実験動物)を捕えましたよー」

鈴仙「もう、てゐもやめなさいよ。本当に懲りないわね。お師匠様ももっと注意して――」

984: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 15:55:55.17 ID:zbSeXEhb0
ゴソゴソ


永琳「口から入れるのは抵抗があるでしょうから、座薬の中に幼虫を入れておくわね」

鈴仙「え」

てゐ「いやいや、ダメですよお師匠様。鈴仙にはムシカンのシュミがあるの。だからそのまま挿れてあげた方が本人も喜ぶわ」

永琳「あら、そうなの? 知らなかった。それじゃあそのまま入れるわね、下の口から」

鈴仙「え」


グルグルギチギチ……ギュッ


てゐ「念のため、お師匠様所有の拘束具で逃げられないようにしました」

鈴仙「ちょっとてゐ(アンタ)いい加減にしなさい!」

永琳「大丈夫よ。何かあったら私がちゃんと助けてあげるから」

鈴仙「……あの、これ冗談なんですよね? 本気じゃ……ないんですよね?」


寄生虫「ピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチ」

985: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 15:57:48.85 ID:zbSeXEhb0
永琳「最近の鈴仙って少し調子に乗ってるし、元気よさそうなのにしようかな」

てゐ「一匹だけでは心許ない。二、三〇匹は 入したほうがいいんじゃないかしら」


鈴仙「こ、こういう実験って……安易にやったら、ほらその……パンデミックの原因とかになるかも!」

鈴仙「止めた方がいいんじゃないんですかっ……!」


てゐ「心配いらないよ。だって、この部屋を完全封鎖すればいいだけのことよね、お師匠様」

永琳「そうね。ちなみに他の兎達は?」

てゐ「ご安心を、もともと外で待機するよう命令してあります。屋内には入ってきませんので」

永琳「そう、なら大丈夫ね。さてと――では早速」

てゐ「はい、脱ぎ脱ぎしましょうねー」


寄生虫「わさわさわさわさわさわさわざわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさわさ」


鈴仙「いやぁぁあああ――――――――――――っ!!!!」




【地底に捨てられた寄生虫入り団子の行方→>>744】

986: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 16:01:40.22 ID:zbSeXEhb0

――(それからしばらく後)




【>>784以後、竹林の消火活動を終えて永遠亭に戻った輝夜と、ついてきた妹紅】




輝夜「永琳は生体実験中で籠ってるって?」

てゐ「ええ、そうなのよ。鈴仙はそのお手伝いで手が離せない状況でね」

妹紅「悠長なことをやってるのねぇ。人里も竹林も戦禍を被って大変だって言うのに」

てゐ「ほう、戦禍が。ということはもしや、負傷者とかも発生していたり?」

てゐ「薬の需要が急速に高まっているのね?」

妹紅「私たちはともかく、人里の人間たちの中には怪我人も出ているかも……」

987: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 16:04:03.50 ID:zbSeXEhb0
輝夜「人里ならまだいいでしょ。町医者くらい一応いるんじゃないの?」

輝夜「あの鬼共の横暴を野放しにするほど、博麗の巫女は鈍感ではないはず」

輝夜「もしや、既に一戦交えて深手を負ったのやも知れぬ」

妹紅「確かに。他所から闖入した鬼共ならば、外界とのつながりが深い博麗神社を経由して来た可能性は高いだろうし」

輝夜「そういうわけだから、てゐよ。即効性のある良薬を携えて博麗神社へ――」


てゐ「承知しました姫様。お師匠様が先程お作りになられた良いクスリを届けてくるわ」


ぴょーんぴょーんぴょーんぴょーん

988: ◆8c/Sw4f94s 2014/10/05(日) 16:14:33.68 ID:zbSeXEhb0
妹紅「何のクスリを持っていくつもりなのかしら」

輝夜「さあ。永琳が用意したのなら大丈夫でしょう。人間用と妖怪用を取り違えたりしなければ」

妹紅「ええ、そうよね。でも何だかなぁ……変な悪戯しなきゃいいけど」


\ぅううん……んっ……あっ……あっああん!/


輝夜「奥の間から何やら動物の鳴き声が洩れ聞こえてくるわね」

妹紅(いったい何がどんな生体実験を受けているのかしら)




【博麗神社に向かったてゐのその後→>>876】


【生体実験終了後、燃え尽きた鈴仙→>>940】


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