4: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:34:34.27 ID:iIcDz7fHO
_深夜の事務所
ガチャ
P「…………」スイッチパチッ
シーーーーーーーーーーン
P(誰もいないな)キョロキョロ
P(打ち合わせが長引いたからな…社長と音無さんも帰っちゃったか)
P(みんなは…さすがにもう家で寝てるかな)
P(さて…)スタスタ…イスニコシカケ
P(今日も一人で残業か)PCスイッチオン
カタカタカタカタカタ…
ガチャ
P「…………」スイッチパチッ
シーーーーーーーーーーン
P(誰もいないな)キョロキョロ
P(打ち合わせが長引いたからな…社長と音無さんも帰っちゃったか)
P(みんなは…さすがにもう家で寝てるかな)
P(さて…)スタスタ…イスニコシカケ
P(今日も一人で残業か)PCスイッチオン
カタカタカタカタカタ…
5: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:35:34.15 ID:iIcDz7fHO
カタカタカタ…カタッ
P「ふぅ…」
P(音楽でも聴くか)
P(おっ…あんなところに)スタスタ
コンセントブスッ
(レッスン用のCDプレーヤー)
P(みんなの曲を聴くのもいいが…今日はこれにしよう)CDスチャ
P(おっと、このままだと近所迷惑だな…ヘッドホン装着っと)スッ
P「っし…もうひとふんばりだ」
ガチャ
6: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:36:41.50 ID:iIcDz7fHO
P(♪ ♪ ♪ ♪)
カタカタカタカタ…
P(ちょっと音大きいかな)クルクル
夢を見ていた。
カタカタカタカタ…
みんなが私を見ている。
カタカタカタッ
ここがステージならみんなに手を振るだろう。
でも、ここはステージじゃないし、いつものリボンは付けてないし、何よりみんな私を応援しているようには見えない。
カタッカタッ
無表情で、微動だにせず、ただ私を見つめている。
怖くなった。私は逃げだした。そこで目が覚めた。
まだ真っ暗だ。喉が渇いた。
P(♪ ♪ ♪ ♪)チラッ
7: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:39:00.40 ID:iIcDz7fHO
眠れなかった。
特に思い当たる節はない。ただ、なんとなく眠れなかったのだ。
こんなとき私は本を読む。
P(~♪)
いや、正確には本ではない。今度の新曲の楽譜だ。
音符一つ一つを読み、歌詞の一字一句を、ゆっくりと咀嚼する。
いつものソファに寝転がり、ランプの明かりをつけ、楽譜を読む。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
…誰かに見られている気がした。
そんなはずはない。この部屋は自分しか住んでいないのだから。
少し気味が悪くなった。今日はもう寝よう。眠れなくてもベッドに入っていればいい。
カタカタカタカタカタ…カタッ
ランプのスイッチに手を伸ばした。
8: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:39:56.45 ID:iIcDz7fHO
カタカタカタカタカタ
目が覚めた。
カタカタカタカタカタ
ベッドではない。ソファの上だ。
カタカタカタカタカタカタ
目の前のテレビが行きかう人を映している。
カタカタカタカタカタカタカタ
少しずつ思い出す。独りでテレビを観ていたが途中で寝てしまったようだ。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
亜美はもう寝たようだ。早くベッドに入って寝よう。でもその前に。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタ
目の前のテレビに歩みを進める。
カタカタカタカタカタカタ…カタッ
9: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:41:19.43 ID:iIcDz7fHO
怖かった。
内緒で遅すぎるお風呂に入っていることだけではない。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
はっきり言って、自分は貧相などうしようもない、ただの一人の少女だ。
みんなが、プロデューサーが、両親が、家のお弟子さんたちが、
私を応援してくれていることは分かっている。
P(時間は…まだ大丈夫だな)チラッ
でも、そこにある期待が怖くて。応えられない気がして。
P(~♪)
どうすればいいか分からなかった。逃げるように、視線を上に向けた。
カタカタカタカタッ、カタカタッ
10: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:42:08.47 ID:iIcDz7fHO
P(ふむ…)ポリポリ
許せなかった。
いつもと同じ、父さんとの口喧嘩。
堂々巡りの口論がイヤになって、外に飛び出した。
すぐに戻る気になれなくて、そのまま河川敷を走る。
P(~♪ ~♪ ~♪)
いつだって同じ口喧嘩。でも慣れなくて。
適当にあしらえばいいのに、部屋にでも篭ればいいのに。
P(~♪ ~♪)カタカタッ
また外に飛び出して。河川敷を走って。
その頃には、怒りはもう収まっていて。
また、家に帰っていく。
カタカタ
11: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:43:05.57 ID:iIcDz7fHO
分からなかった。
もっとキラキラしたい。
おにぎりをたくさん食べたい。
イチゴババロアも捨てがたい。
もっとラクしてトップアイドルになりたい。
P(~♪ ~♪ ~♪ ~♪)
選びきれなくて。分からなくて。
どうでもよくなって、さっさとベッドに入って眠りに落ちる。
悩んでいたことなんて、眠ることで忘れてしまって。
P「ふぅ………」
12: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:44:42.03 ID:iIcDz7fHO
P(………)
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
考えていた。
キーボードを叩き、考える。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
言うまでもなく、仕事のことだ。
深夜に事務所でやるとプロデューサー殿に追い出されてしまう。
なので、少し家に持ち帰っている。
『カワハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
しかし、思うように進まない。
営業、衣装、演出、レッスン…
あの人のように、上手くいかない。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
諦めた。今日はもう寝てしまおう。
明日また考えればいいのだから。
『マダミエテナイ マダミエテナイ』
諦めたことが悔しくて、
諦めきれなくて、
また、PCに向かってしまう。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
13: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:46:06.83 ID:iIcDz7fHO
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
見えなかった。
朝起きて、朝ご飯食べて、いっしょに事務所に行って。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
別々の仕事に行って、歌って踊って、レッスンもして。
帰ってきて、晩ご飯食べて、お風呂に入って、寝る。
『カワハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
『消えた』
そんな日常は、いつまで続くのだろう。
やることは分かっているつもりだった。でもその先がまだ見えない。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
先が見えないことが、どこか怖かった。
『マダミエテナイ マダミエテナイカラ』
14: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:47:16.13 ID:iIcDz7fHO
P「ふーーー…」ノビー
P(コーヒーでも淹れるか)
コポコポコポコポコポ…
疲れていた。
ズズ…
P(打ち間違いは無いかな…)ズイッ
バスルームから出て、身体を拭く。
手がおぼつかなくて、あちこち濡れたままだ。
髪を乾かす気力もない。
いつもならいぬ美たちに構ってやれるが、今日は勘弁してほしい。
ベッドに倒れこむ。
意識が薄れる中で、投げっぱなしの洗濯物が最後に見えた。
15: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:48:33.02 ID:iIcDz7fHO
イヤになった。
相変わらず子ども扱いして。
コト…
自分のすごさを認めようとしなくて。認められなくて。
勢いに任せてベッドに飛び込む。
カタカタッ カタッカタッ カタカタッ
そばにシャルルがいなかった。でも今日はそんなことはどうでもよかった。
見るとなぜか向こう側に投げられている。まるで、
P(♪ ♪ ♪ ♪)
こんな自分を見ていたかのように。そこにいた。
16: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:49:53.37 ID:iIcDz7fHO
P「あー…肩いてぇ…」モミモミ コキッ コキッ
P「うわ…もうこんな時間か」
P(早いところ終わらせないと…)
ピロリンッ
P(メール…?こんな時間に?)
スッスッ
P(あずささん…まだ起きてたんですか)
P(………)
P「早く寝ないと明日に響きますよ…っと」スッスッ
P(って…それは俺も同じか)
P(あともう少し…)
ピロリンッ
P「返信はやっ!」
P「…あ、違う。生っすかのディレクターさんか」
17: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:51:17.63 ID:iIcDz7fHO
スッスッ
不安になった。
アイドルのお仕事が忙しくなって、家事仕事を手伝う機会が減った。
今は長介やかすみ、浩太郎に浩司まで、総出で家事を手伝っている。
スッスッ スッスッ
P フム…
アイドルのお仕事に専念できるように、助けてくれていることは嬉しい。
でも、ときどき、今みたいに不安になる。
このままでは、自分は家での立ち位置を失ってしまうのではないかと。
スッスッ スッスッ カチッ
頭を振る。そんなことはない。大丈夫だ。
不安を振り払うように、布団にもぐりこんだ。
18: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:52:22.64 ID:iIcDz7fHO
寂しかった。
P(よいしょっと…)コシカケナオシテ
目が冴えてしまって。誰かと関わりあいたくなって。
(~♪)(~♪)P「ふぁ……」
なんとなくメールをした。
返信の中身は、自分を労ってくれる言葉だった。
嬉しかった。温かみを感じた。
いい具合にまどろんできた。いい夢が見られるかもしれない。
19: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:53:28.12 ID:iIcDz7fHO
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
眺めていた。
今宵は綺麗な月明かりだ。
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
頬に当たる心地よい風もこの雰囲気に一役買っている。
こんな夜はいつ以来だろうか。
『ヨルハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
20: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:54:11.02 ID:iIcDz7fHO
暗闇を照らす月明かりは、自らの秘密をも顕にしてしまいそうだ。
でも、今宵だけなら…月になら、その秘密を明かしてもいいかもしれない。
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
……………ふふっ。
『ナイテハイナイ ナイテハイナイ』
21: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:55:53.28 ID:iIcDz7fHO
『触れた』
P(……………)
夢があった。
13人の少女たちを、トップアイドルに導く。
道端で突然、初老の男にスカウトされて、みんなに出会ってからの、夢。
『触れた』
P(……………)
必死になって営業をこなして、
嬉しいことがあったらいっしょに喜んで、
悲しいことがあったらいっしょに泣いて、
『ヨルハナガレル』
22: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:57:04.33 ID:iIcDz7fHO
なんでそこまで頑張れるのかって?
そうだな…アイドルがアイドルをする理由に似ているのかもしれない。
『君が』
…なんで、そう見えたんだろうな。
『ナイテイタ ナイテイタカラ』
23: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:58:00.91 ID:iIcDz7fHO
アイドルになりたい。
自分を変えたい。
もっと可愛くなりたい。
『振り返った 季節に立って』
カタカタカタカタカタカタ
この場所には、たくさんの願いが詰まっている。
たくさんの願いが、ここで叶った。
その記憶は、もう数え切れない。
『思い出せなくて 嫌になって』
カタカタカタカタッ カタッ カタカタッ
でも、願いの為に、苦しんだことも、泣いたこともあった。
その度に、みんなで乗り越えてきた。
『流れ流れてた 鳥だって』
カタカタカタカタカタカタ
いや、だとしても、どんなに乗り越えても、
まだ、俺の見えない所で、
少女たちは、泣いているのかもしれない。
『街で鳴いてたろ』
カタカタッ
P(あとちょっと…)ウデマクリ
『鳴いてたろ』
カタカタッ
24: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 20:59:14.42 ID:iIcDz7fHO
カタカタカタカタカタカタ
『過ぎ去った 季節を待って』
ちっぽけな願いを持って、この場所の門を叩いたあの日。
あの日だけは、鮮明に覚えている。
ポリポリ
『思い出せなくて 嫌になって』
カタカタカタカタカタカタ
叶った夢、叶わなかった夢。
叶わなかったことに、何度泣いたのだろう。
でも、ただ「願う」だけだった自分を
カタカタカタカタカタカタ
『離ればなれから 飛びたって』
カタカタカタッ カタカタッ カタッ カタッ
「叶えたい」って思わせてくれたのは
他でもない、「あなた」なんですよ。
『鳥も鳴いてたろ』
P(『鳴いてたろ』♪)
25: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:00:09.52 ID:iIcDz7fHO
_プロデューサーさん!
_プロデューサー。
『いつだって僕らを待ってる』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_兄ちゃん!
_プロデューサー!
_へへっ、プロデューサー!
『疲れた痛みや傷だって』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_ハニー!
_プロデューサー殿!
_兄ちゃん!
『変わらないままの夜だって』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_はいさーい!プロデューサー!
_プロデューサー!にひひっ♪
『歌い続けるよ』
_うっうー!プロデューサー!
_プロデューサーさ~ん
_あなた様。
『続けるよ』
26: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:01:28.38 ID:iIcDz7fHO
『いつだって僕らを待ってる』
P(~♪)
ここから先の未来。
それは、誰にも分からない。
何度も泣くことが、あるかもしれない。
『まだ見えないまま ただ待ってる』
P(~♪~♪)
でも、それと同じくらい、
笑っていけるかもしれない。
なら、これから先、みんなで笑いあう為に、
『だらしなくて弱い僕だって』
誰かがひっそりと泣いていることにも気づけない俺でも、
俺であったとしても。
『歌い続けるよ』
『続けるよ』
27: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:03:16.88 ID:iIcDz7fHO
P「ふぅ……やっと終わった…」ノビー
P「ふぁ~ぁ…いま何時だ…?」チラッ
時計<A.M. 3:40>
P(うわぁ…もう夜明け前じゃないか…)
P(……………)
何も、変わっていない。
投げっぱなしの俺のスマホ。
付けっ放しの電気。
丸めたクシャクシャの書類。
電源の落ちたパソコン。
そして…目の前の俺のデスクと椅子。
いろんなことがあって、いろんなことが変わった。
でも、この場所は変わっていない。
P(このまま寝てしまおうかな…気休め程度だろうけど)
28: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:04:43.17 ID:iIcDz7fHO
眩しかった。
いつもの朝が今日もやってきた。
顔を洗って、朝ごはんを食べて、
身支度をして。
今日も、あの場所に行く。
自分の「願い」を叶えるために、あの場所へ行く。
みんなと楽しく過ごすために。
自分の歌を極めるために。
楽しいことを見つけるために。
自分を変えるために。
もっと可愛くなるために。
もっとキラキラするために。
憧れの人に追いつくために。
イマをもっと楽しむために。
カンペキになるために。
見返すために。
みんなの助けになるために。
運命の人を見つけるために。
それはトップシークレットですよ。
29: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:05:36.14 ID:iIcDz7fHO
さあ、今日も前に進もう。
悲しいことも、辛いことも、きっと乗り越えられる。
きっと、みんなと笑いあえる。
新しい一日が、始まる。
30: ◆lxd9gSfG6A 2014/08/07(木) 21:06:27.32 ID:iIcDz7fHO
P「すぅ…」Zzz
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