【あらすじ】
 ブラック系IT企業でデータ変換業務を行なう男は
神楽坂班のプロジェクトマネージャー。
 歴戦のウォリアー女先輩(指先から唐揚げを出したい)
 陽気な同僚のB男(さすらいの忍者マスター。灰は消失に通じる)
 口数少ないC男(捨てることに対する美学をもった職人)
 そして新規加入した新人女(スイーツでゆとりでとろくさい)
をくわえた5人パーティー。

 なんだかんだでうだうだ底辺仕事をやってた五人だが
池袋で働いていた同僚パーティーが壊滅したことから仕事量が急増。
不穏な空気が流れ始める。
 こなしてもこなしても終わらない仕事。悪いのは誰だ?
 上司か、会社か、クライアントか……?
 それとも男が悪いのか?

 萌え成分皆無。
 現代日本における残酷唐揚げ童話。
 あけてもあけてもまた徹夜なブラック物語。

引用元: 04_同僚女「信用したいって云うたら嫌いになる?」 



2: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:35:22.53 ID:qv6ULQoP
【こんかいのぱーてぃー】
・男:体力5 精神力5 技術5 集中力3 把握力5 黒さ5
 ぷろじぇくとまねーじゃー。みかけよりくろい。

・女:体力4 精神力5 技術5 集中力5 把握力3 黒さ1
 からあげおんな。ぼうりょくがとくい。うぉりあー。

・B男:体力5 精神力4 技術3 集中力5 把握力2 黒さ4
 にんじゃ。ごびがござる。いがいにも、おとなだ。

・C男:体力4 精神力3 技術3 集中力4 把握力1 黒さ1
 はいきせいじん。をたく。おんなにほれている。

・新人:体力3 精神力3 技術2 集中力2 把握力3 黒さ2
 すいーつ。そしてゆとり。なにかになりたい、あこがれるきもち。


3: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:35:36.41 ID:qv6ULQoP
――5/28、火曜日 14:00 神楽坂作業室

女「……おっけ。いいよー、このまま進めて」
新人女「……。ん」

新人女:カタカタカタ

C男「了解」

女「えーっと……。ふぅ」

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「……大丈夫ですか? 女さん」
女「へ? なんで?」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「いえ。体調」
女「へいきへいき。うち、ウォリアだもん」
新人女「でも、顔色悪いです」

4: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:36:07.86 ID:qv6ULQoP
女「まぁ、時期がね。忙しいから体力はきついけどね」
新人女「はい」
C男「――」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「笑えているうちは平気」
新人女「?」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「いやね。人間、忙しいから気持ちが折れるんじゃないよね。
 笑えないから、気持ちが折れるんだよ。
 だから、忙しくても笑うんよ。そうすれば、平気」

新人女「――」
C男「サボりマネジは捨てよう」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「男はクライアント回ってる。締め切り交渉含めて。
 うちらには出来ない仕事してるんだよ」

5: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:36:40.04 ID:qv6ULQoP
新人女「……」にこっ
C男「!?」
女「うん、そうだよ。くわ、新人女ちゃんは反則だなっ。
 その微笑みで何人犠牲者にしてきたことか」
新人女「……こんなの役に立たないですよ」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「そうなん?」
新人女「欲しくないものが増えて、
 欲しいものとは交換できないです」

女「いや、それも大概リア充な意見だと思うけど」
新人女「……」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「ね、C男も可愛いと思うよね」
C男「戦場豚はかわいさを捨てる」

6: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:36:55.13 ID:qv6ULQoP
新人女「ほら」
女「そこは空気を読め、C男っ!」べきっ
C男「……かわ、いい」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「――わらにでもすがるって言うかさ。なんにも
 出来ないときは、せめて笑うくらいしないと。
 それくらいしか身内にしてやれない時ってのもね。
 あったりしちゃう困った業界なんだな」
新人女「……」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

C男「……そうだ」ニカッ
女「あんたは笑わないでいいや。けふんっ」
新人女「……」

7: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:37:07.44 ID:qv6ULQoP
――5/29、水曜日 9:00 神楽坂作業室

ピロリ

C男「メール着信」
女「あー。うちだ。仕事のにはアラーム設定してある」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

新人女「男さんでしょうか? でも今日は直行で蕨って
 行ってましたよね」
女「なんか訂正じゃないのかなー? んーっと」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「……」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「……っ」

新人女「どうされました?」

8: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:37:24.31 ID:qv6ULQoP
C男:カタカタカタカタ

女「ん」
新人女「……」

C男:カタカタカタカタ

女「仕様漏れ。……設計前でトラブってる」
C男:ぴたり

新人女「よく判りません」
C男「……いつの? 何件?」

女「池袋が持ってた仕事。もうほとんど終わらせてた。
 件数は10万以上。ってか、データ構造に手をつけて
 リテイクだ」
新人女「……?」

C男「――捨てよう。捨てる。いや捨てさせる」

新人女「……??」

女「後ろから撃たれるんか……。あはは」
どくん


9: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:38:05.23 ID:qv6ULQoP
新人女「トラブルなんですか?」
C男「……捨てよう」

女「ま、ね。うん。この件はうちと男で相談するから。
 いまのところは、目の前の仕事進めておいて」

どくん どくん

新人女「はい。……女さん?」
女「へ?」

新人女「いえ、汗が」
女「もう暖かいしね。ちょい、たんまね」

どくん どくん

C男「本部に行って首の十や二十は捨てたい」
女「ま、ま。そう言わないで。えへへ」

どくん どくん

女「だいじょぶ。うち、せふせふ」
新人女「……っ」

C男:カタカタカタカタガガガ

10: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:39:09.41 ID:qv6ULQoP
――5/29、水曜日 13:00 神楽坂作業室

男「ん。概要はわかった。で、電話は誰から?」
女「部長」
男「……おっけ。ま。仕事してて」

女:カタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「もしもし? はい。神楽坂です。はい、お疲れ様です。
 部長いますか? はい、おねがいします」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「……」すとん

女:カタカタカタカタカタ

男「はい。話の概要を聞きました。――はい? はい。
 ふむ。はい。……そうです。はい。
 ――要件定義ですよね? それは」

男「ふむふむ。うちに降りてきている書類では、
 前回のデータ構造ですよ。
 いえ、僕はそのクライアントとはお会いしてないんです」

C男「ボクを捨てよう」

11: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:39:29.59 ID:qv6ULQoP
男「管理部の人間は呼ばれていませんよ。え? ああ。
 池袋班が? なるほど……。はい」

女「……っ」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「そうなりますね。……いえ、お受けできないです。
 体力? ……は、まぁ、はい。相当きついですが。
 それは今回のボトルネックではないですよ。
 はい、はい……」

男「いえ、そうではないです。
 ただし、このリテイクの作業を行うとなると、現在業務に
 手をつけている7社分はすべて期限内の実行が
 不可能となります。体力よりも、すでに実時間レベルの
 問題になっていますから……。はい」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「もちろんです、はい。……そうなりますね。
 池袋班? ……池袋班は、実働体制にないですよね。
 人数補充の予定は先週でしたが……。いえ、聞いていません。
 はい。……そうですか」

12: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:40:01.86 ID:qv6ULQoP
男「いえ。そうですね。……では直接伺ってみます」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「そう言う訳にも行きませんよ。
 あははは……はい、仕事ですから。
 えっと、その足で開発に回って、時間があったら
 そちらにお邪魔しても良いですか?」

女「……っ」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「いえいえ。では、そうですね。はい。
 17:00過ぎにはお伺いできると思います」

新人女「……」 C男「……」

女「あんな。……どうやった?」

男「やっぱ出向いて聞かないと判らないかな。
 ――やだなぁ。
 そう思い詰めた顔しないで。先輩らしくもない。あはは」
男「こんな逆境今までいくらでもあったでしょ?
 話聞いてきますから」

13: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:40:20.89 ID:qv6ULQoP
――5/29、水曜日 20:00 神楽坂作業室

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ
女:カタカタカタカタ

新人女「帰ってきませんね。男さん」
C男「捨てよう。マネジは」
女「……」

C男「マネジが仕事断れないから、
 俺たちが地獄に捨てられる」

新人女「……」

C男「俺たちががんばっても全力だしても、
 終わらないし、終わらせられない。
 それなら捨てるのが正しい。捨てよう」

新人女「……」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ
女:カタカタカタカタ

どくん

14: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:40:36.42 ID:qv6ULQoP
C男「M野の仕事なんだし。拾うのが間違い」
女「そうやんね。けふんっ」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ
女:カタカタカタカタ

女「うちも、そうやって男を何回も、
 あの会議に行かせたなぁ。たくさんやった」

C男「マネジが断れば、それで丸く収まる」

女「そやな。そうかもしれないね……けど。
 そしたら、男は首にされて、
 次はうちがマネジやるんだろな……。けふんっ」

C男「そうすれば無茶な仕事しないで済む」

女「そかな。うち、もたんと思う。それこそ一月さえ」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタガ
女:カタカタカタカタ

16: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:40:58.15 ID:qv6ULQoP
女「うちが辞めたら、B男かな。C男かな。けふっ」
新人女「……」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタガガ
女:カタカタカタカタ

女「大根おろしみたいに、一人ずつ削り取られて、
 誰もいないようになってしまうと思うんだよ」ぽそり

新人女「……」 C男「……」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタガガガガ
女:カタカタカタカタ

女「だから……」

C男「だから、仕方ない?」

C男「いつも、いつまでも、ずっと使い捨て」

C男「捨てられて、捨てられて、仕方ない?」

C男「――笑止。マネジが弱い、捨てるべき」

17: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:41:25.18 ID:qv6ULQoP
――5/29、水曜日 23:00 神楽坂作業室

きぃ。きぃ……。がちゃん。

男「ただいま、っと」
C男「おか」
男「お。C男だ。どした? 終わらない? みんなは?」
C男「帰った」

男「そか。……プリン食う?」
C男 こくり


男:カタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「ほい、どうぞ」
C男「……」もそもそ。もぐっ

男「今日は、風が強いな」
C男「雨がくる」

男「うん」
C男「仕事」


18: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:41:41.06 ID:qv6ULQoP
男「ん?」
C男「増えたか?」

男「ん。増えたね。困ってる」
C男「人ごとじゃない」

男「人ごとじゃないね」
C男「……」
男「……」

C男「断って」
男「……だめ」

C男「断れないのは、弱い」
男「……それでもだめ」

C男「なぜ」
男「断れば強い訳じゃない。強ければ勝てる訳じゃない」

C男「生き残るのが勝利。クライアント捨てよう」

男「……もぐっ」

C男「捨てるべき」

19: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:41:57.21 ID:qv6ULQoP
男「それが勝ちなら」
C男「……」

男「生き残りさえすれば勝ちなら、
 明日全員辞めればそれで勝ちか」

C男「……っ」

男「それは勝ちじゃない」
C男「……」

男「負けないのと勝ちは、違う」
C男「でも、みんな死ぬ」

男「――」
C男「気持ちも、身体も、折れる」

男「――」
C男「それでも、まだ仕事引き受けた方がよいのか」

男「そう」
C男「捨てたい」

男「許可できない」
C男「籠城してどうなる」

20: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:43:06.54 ID:qv6ULQoP
C男「舐められてる。くだらないバカに。
 会社を人質にして。俺たちの意地を利用して。
 働かせようとしている」

男「そうだよ」

C男「がんばっても、笑うのは、あっちで
 俺たちは貧乏くじ」 ぎりっ

男「そうだよ」

C男「それでもか」

男「そうだよ」

C男「なんでだ」
男「理由かー……」

C男「……」

男「理由は、無いな。
 でも、これが一番良い選択肢なんだ。
 いまは地獄だけど、他の選択肢は『地獄以下』だと
 思うんだよ」

21: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 13:44:43.00 ID:qv6ULQoP
C男「捨てちゃダメなのか」

男「いや。判らないよ、そんなのさー。
 でも、捨てて良いものと、捨てちゃいけないものは
 あるっしょ。いま捨てると、すり落ちちゃうものもある」

C男「……」

男「まぁ、俺たち野良だから。C男が受けられないって
 云うのは仕方ない。身を守るのが大事なのは重々判ってる」

C男「……ん」

男「だから、気に入らないのなら仕事は振らない」

C男「……」

男「でも、なんつか。ここは逃げちゃいけない
 タイミングだと思うんだわ」

C男「プリン」
男「?」

C男「ごちそうさま」

男「いえいえ」

C男「――プリン一個分だけ拾う」

30: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:00:54.90 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 08:00 神楽坂作業室

女「おっはよー」

男:カタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「おはよー」
C男「夜を捨てよう」

女「あれ? C男泊まったの? めずらし」
C男「プリン」

男:カタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

女「へ?」
男「……そゆこともあるよ」

新人女「おはようございますっ」

女「おお。おはよう新人女ちゃん」
男「おはよー」

C男:カタカタカタカタ

31: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:02:12.01 ID:qv6ULQoP
女「うっし、けふっ。うちもいこかなっ」
男「大丈夫? 女先輩」

女「んー。ちょっと頭痛い。週末に病院いく」
男「体調管理してね。無理させてるこっちが悪いんだけど」
女「まーかせてっ」

男:カタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタ
女:カタカタカタカタ

新人女「……」もそもそ
男「あれ、何してるの? 新人女さん」

新人女「あ、いえ。……作業着をと思って」
女「うわ、可愛いなー。それ」

新人女「ひらひらのはやっぱり不便ですよね。袖とか」
女「着実に場慣れしていくなぁ」
C男「戦場豚」

男:カタカタカタカタ

新人女「あはは。自分でもびっくりの順応です」

32: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:02:32.22 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 10:20 神楽坂作業室

男「んー。新人女さん、ドキュの準備」
新人女「あ、出来てます」

男:カタカタカタカタカタカタ

男「概要をメールになげてー」
新人女「はいっ」

男:カタカタカタカタカタカタ

男「女先輩、麹町用のマクロって?」
女「ああ、うん。保険屋のマクロの改造でいけたよ。
 テストおわってる」

男:カタカタカタカタカタカタ

男「B男のとこに投げておいてくださいな。りどみつけて
 あれば勝手にやるでしょ」

男:カタカタカタカタカタカタ

C男「俺は15、8、2、26終わった。全部aで」
男「先読みするなぁ。んじゃ+1してbやって。
 で、おわったら」
C男「判ってる」

34: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:04:29.96 ID:qv6ULQoP
女「男、メチャクチャ飛ばしてるなぁ」
新人女「今日はいつにもましてすごいですね」

女「なんやろなぁ、仕事はうちの方が早いんやけど
 こういう時は敵わない感じで悔しいな」
新人女「ですか?」

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

女「ちょっとね。ウォリアの血」
新人女「判りますけれど。圧倒されますよね」
C男「……」

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタカ

男「女先輩。俺昼前に出ちゃいます」
女「はいはい。留守番してるよー。今日はどっち?」

男「本部と、麹町に。帰りは15時過ぎの予定で」

女「うち、今日はシュークリーム食いたいな」
男「は?」

35: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:06:07.35 ID:qv6ULQoP
女「シュークリーム食いたい」
男「何言ってるんですか?」

男:カタカタカタカタカタカタ

女「シュークリームってふわふわ&さくさくで、
 ひんやり甘いよね? ね、ね? 新人女ちゃん」

新人女「ええ。……そうですね。はい?」

男「なんだかなぁ。お使いですか?」
女「ううん、マネジの奢り」

男「んなわけいかないでしょ、女先輩!」

女「新人女ちゃん、ね。ね。今日は何色?」
新人女「えっ!? あ。あ、あ……そのぅ」ぼそぼそ
C男「!?」

女「……ふむふむ。……うぉ、後で見せてっ。
 で、……ふむ。おとこーっ♪」

男「ううう」

女「んじゃ、二人の分を発表するねー。あんな、あんな!」

男「シュークリーム買って参りますっ」


36: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:08:00.38 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 14:00 神楽坂作業室

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタカ

女「シュークリーッム、シュークリーッム」
新人女「ご機嫌ですね」

女「うち、安上がりな女なんだ。シュークリーム期待で
 テンションあがっちゃうくらいで」
新人女「あははっ。私も楽しみですっ」

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタカ

女「そうそう、甘いものがあるから、日々を生き抜いて
 いけるよね。けひゅんっ」

C男「……」ぽいっ

女「おお、ティッシュさんきゅ!」 もそもそ

女:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカ

女「うちはティッシュも持ってないと思われたんかーっ!」

37: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:09:31.79 ID:qv6ULQoP
C男「鼻をかんだら捨てよう」
女「捨てるよ、それはっ」

新人女「あははっ」にこっ
女「C男にはハンニバル・レクター式学習法でも
 生ぬるいみたいやんねっ。こうなったら禁断の
 虎眼流式学習方法で……」

C男「それは捨てよう」

女「遠慮しないでいいんよ。うちが一撃必殺で
 教授したげるから。授業料はあばら二本で」

C男「デスマ。仕事」

C男:カタカタカタカタカ

女「ちぇっ。C男も遊んでくれない」

女:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタカ

とうぅるるるる。とぅるるるる。

38: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:10:46.26 ID:qv6ULQoP
新人女「電話ですよ」
女「誰かな。本部かなぁ、こんな時間に。クライアントかな」

女「はい。もしもし。神楽坂作業室です」
「もしもし? 神楽坂さん?」

女「そうです」
「目黒のDM興業だけど」

女「先月納品させていただいた。はい、お世話になって
 おります。どのようなご用件でしょうか?」
「あー。用件? わかんないの?」

女「申し訳ありません。把握していませんが……」
「昨日納品だろう? どんなことになってるんだよっ?」

女「え? 先月の」
「それは第一期だろっ? こっちは二期の話してるんだよっ」

女「すみません、どういったご予定だったのでしょうか?」

「予定もクソもないよ。そっちがスケジュールだして
 くれるはずだろ。こっちは昨日納品としか聞いてない」

どくんっ

39: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:13:50.39 ID:qv6ULQoP
女「では、お手元のプロジェクトシートの右肩の番号を」

どくんっ

「だから神楽坂さんってのかい?
 俺はイヤだって云ったんだよなぁ。
 M野さんにさ。聞いてるよ。
 仕事もしないくせに何でもいちいち
 書面確認しなきゃサボってばっかりのお荷物なんだろう?
 そっちの神楽坂ってのはさ。
 池袋さんなら口頭発注で良いって言うからお願いしたのにさ」

どくんっ

女「いえ、しかし。スケジュール確認を」

「M野さんのほうでフォーマットは作ったんだろ?
 流し込みなんだからさっさと済ませてくれよ。
 で、どうなの? いつあがんの?」

どくんっ

女「それは、確認して」

「御託はいいからさぁ。そっちに仕事は引き継いだって
 聞いてるよ。こっちの仕事、待たせてんだよなぁ」

40: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:14:57.96 ID:qv6ULQoP
女「それは、私達のほうでは連絡を受けていなくて」

どくんっ

「それは、お宅の都合でしょ? こっちは発注してるんだよね。
 そっちの社内のこととか、お荷物とかさ。
 そういうの関係ないんだ。
 あー、M野さんがいってたのはこういうことなのねー」

どくんっ――きーんっ

「お宅、あれでしょ? 派遣でしょ?
 派遣は責任取らないもんね。話にならないや。
 良いよ良いよ、判ったから。変わって」

女「はい?」

――きーんっ

「いいから正社員に変わってよ。
 派遣じゃ話が通らないって云ってるんだよ。
 こっちはあんたらみたいに、遊んで金もらってられる
 立場じゃないんだからさ。
 神楽坂のそこの責任者、出して」

女「申し訳ありません。ただいま席を外して」

「言い逃れしてるんじゃねェよ」

――きいぃぃぃぃんっ

41: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:17:34.53 ID:qv6ULQoP
「――。――」
女「はい?」

 新人女「おんな、さん?」

「――。――」
女「申し訳ありません。ただいま席を外して」

 新人女「女さん」

「――。――」
女「はい。……はい、早急に、はい」

「――。――」
女「ご連絡させていただきます」

「――。――」
女「――申し伝えさせていた――きま――す」

「――。――」
女「はい。はい。申し訳ございませんでした。
 ――失礼――させて――いた――きます」

 新人女「女さん……?」

42: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 15:21:22.77 ID:qv6ULQoP
かちゃり

女「……」
新人女「女さん……顔色が」

女「C男。――目黒のDM屋さん。連絡行き違い。
 昨日納品分の発注漏れ。男に連絡で確認
 優先度最大」

新人女「女さんっ?」

女「あはは……」

女「うちら。甘え、過ぎだ。これ、やらせてたの――か」

C男「っ」
新人女「女さんっ?」

女「――ごめん」

どさっ

新人女「女さんっ!!」

66: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:41:33.59 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 19:00 神楽坂作業室

新人女「――過労とストレス性の過呼吸だそうです」
男「うん」

新人女「点滴で一晩様子を見て、とは仰ってました」
男「了解。大変だったね。ありがとね」

新人女「いえ……」
男「……」

新人女「……」
男「……」

男「ん。新人女さん、今日のところは、上がってください。
 みんなの身体にも気をつけないとね」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ

新人女「男さん……」
男「ん?」

新人女「お見舞い、行かないですか?」
男「早くて、週末かな」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ

67: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:42:43.83 ID:qv6ULQoP
新人女「でもっ」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ

男「だめ」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

新人女「……」

男「いま、そっちに気持ちを振ったら
 踏みとどまれないでしょ。
 ここが、正念場だよ」

C男 こくり

新人女「え?」

男「いまパニックになったら、女先輩の帰ってくる
 場所がなくなるよ。それは酷い話だ」

新人女「――」

男「悪いけど、手加減できなくなった。だから新人女さんは
 今日のところは沢山寝て。明日から、仕事増やすよ」

新人女「はい……」

68: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:43:33.90 ID:qv6ULQoP
――5/30、木曜日 19:30 神楽坂作業室

C男:カタカタカタカタカ

男「大体判った?」
C男 こくり

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「半日以下で終る細かい仕事は全部新人女さんに振って。
 引継ぎ業務も、納品データの管理も。
 彼女のほうがそういう業務には向いてる」

C男「判った」

男「悪いな」

C男「問題ない」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「……」

C男「プリン一個の仕事。まだまだ受けれる」

69: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:44:11.77 ID:qv6ULQoP
男「そか」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

C男「男は、怖くないのか」
男「?」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

C男「ずっと終らないかもって、思わないのか?」
男「ん……」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「なんだろう。……思ってる。けど、それって怖いか?」
C男「……」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「だって、ずっと続くって、要するに続くだけだろ」

70: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:45:49.15 ID:qv6ULQoP
男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「だいたい、終るって良く判らない。デスマが終るのは
 嬉しいけれど、それってインターバルだよな。
 デスマがある世界にいる限り、やっぱり終ってないよ。
 終わらないって、今回がどうこうじゃなく、そういう連鎖だろ」

C男「うん」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「ここはデスマのある世界だし」
C男「うん」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「デスマのない世界には行きたくない」
C男「そうなのか?」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ

男「うん」

71: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:47:35.36 ID:qv6ULQoP
男「俺は学生のころから、酷いバイト沢山やってきて
 感覚が麻痺しちゃってるだけかもしれないけれど
 この世にデスマの全く無い業界とか、会社なんて、
 無いんじゃないのかな……」

C男「……」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「いや、デスマっていうと、曖昧だけどさ。
 銀行とかだって潰れるし、
 公務員だって削減されっちゃうような時代だよ。
 どんな仕事してても、泣きたくなるほど青ざめる瞬間って
 絶対あると思うんだよ。血の気が引いて足がすくむような
 瞬間がくると思う」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

C男「……」

男「そんな事は起きないって言える業界や社会人がいるとしたら
 それって、たぶん、責任感が無いってだけだと思うんだ」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「じゃなければ、本当に幸運で『見たことが無い』だけか」

72: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:48:51.66 ID:qv6ULQoP
男「もちろん、毎日青ざめるよりは、週一のほうが良いし
 週一で青ざめるよりは、月一、年一のほうが良いよ」
C男「うん」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「身体を壊すようなデスマーチだって、
 金輪際やりたくなんか、無いよ」
C男「うん」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「でも『そういうのが絶対に無い世界』には、行きたくない。
 それって幸せかもしれないけど
 ――なんか間違ってる気がするんだ」

C男「……」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

男「……」

C男「ここは、捨てちゃダメな場所か?」
男「いまは、捨てちゃダメな瞬間だよ」

73: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:50:10.56 ID:qv6ULQoP
――5/31、金曜日 23:30 小さなアパート

(昏いな……)

(やっちゃった……)

(うち、やっちゃったんだな。……ああ)

けふっ。けふっ

(やっちゃった……)

(絶対イヤだったのに。倒れちゃったか……)

(まだまだ平気のはずだったのに)

(――頭、痛い)

(身体重い、なんでこんなに布団が石みたいで……)

(倒れたんだっけ……)

(耳鳴りが、飛行機みたいにうるさくて……)

74: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:51:08.29 ID:qv6ULQoP
(ハケンダカラ……アソンデテモカネモラエテ……)

(やっちゃった……うち、迷惑、掛けた……)

(何でこんなことになっちゃったのかな)

(うち、ウォリアーなのに)

けふっ。けふっ

(男のこと、助ける役なのに)

(助けて無いじゃんっ)

(真っ先に倒れて、足引っ張ってるじゃん)

(うち、ウォリアーちがう)

けふっ。

(こんなのウォリアーちがう)

(……)

(痛い……)

75: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:51:43.82 ID:qv6ULQoP
けふっ

(昏いな……部屋、真っ暗……なんでこんなに寒いのかな……)

(誰もいないよ)

(当たり前か……友達、いないもんな……)

(1人やし)

(いま、何時かな……)

(23:46……真夜中、前か……)

(……頭、痛い。……昏い。……怖い)

(会社、首になるよね……)

けふっ。けふっ

(首にならなくても、十日も休めば、現場から外される、か)

(ハケンジャハナシニナラネェンダヨ)

(外される……外されて……)

(大丈夫、なんかな……うち……)

76: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:52:24.02 ID:qv6ULQoP
(病院、幾らだったんだろ……保険なんて、無い……)

(働けなくなったら、どうしよう……)

(家賃払えなくなったら、追い出されるのかな)

(……そしたら、住むとこないやん)

(家なき子やん……)

けふっ。けふっ

(……昏いよ。寒いよ)

(住むとこなくなって、新しいとこ、借りられないよ。
 保証人なんか見つけられないもんな……)

(一人で……ずっと一人で。帰る場所なんて無くて)

けふっ。……っぐ。

(みんなにも、会えなくなって……)

77: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:53:15.52 ID:qv6ULQoP
(夜はやだな……)

(真っ暗の中で、石みたいに固くなって、
 ずっとこうなんかな、うち……)

(ずっとこれが、続くのかな……)

(23:50――五分しか、たってない……)

(痛いよ……ずっと一人で……真っ暗の中で……)

(仕事首になったら)

(二度と会えないじゃんね……)

(ウォリアじゃないから)

(うち役に立たないから……)

けふっ。けふっ。……ずっ。ひゅぇ。

(甘えてて役に立たないから)

(終わったのかな……)

78: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 18:53:58.41 ID:qv6ULQoP
(うちの終わりってこういうのなんだ……)

(遠くで自動車の音――酔っぱらいの声――)

けふっ。あ。……ぁ。

(でもうちは暗くて寒くて……)

(ずっと時計の針を追いかけて……)

(もう会えないのかな)

けふっ。けふっ

(一人でずっと泣いてるのかな……)

(――23:52)

(ずっと真っ暗な中で)

(ずっとずっと真っ暗な中で)

79: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:07:38.33 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 15:20 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

新人女「おはようございますっ」
男「おはよー」
C男 こくり

男「わるいね。日曜日に」
新人女「いえ、良いんです。私も神楽坂班ですから。
 あ……」

男「ん?」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

新人女「いえ、神楽坂班って始めて自分で云いました」
男「うん」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

新人女「えっと、つまり……。ううん、説明できません」
男「――そか」

新人女「あはは~。ゆとりは困りますね」

80: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:08:17.13 ID:qv6ULQoP
C男「ご飯」
新人女「あ、はい。ご注文通り途中で買ってきましたよ」

男:カタカタカタカタカカタカタカタカタカ
C男:カタカタカタカタカ

C男「感謝」
男「あんがとうね。んじゃ、食っちまおう。C男」

新人女「こっちにだしますね」

がたん。かたたん

男「いただきまっす」
C男「いただき」
新人女「いただきます」

C男「……ん。こくっ」
男「まぐもぐっ……」
新人女「ん……」

C男「ん……」
男「もぐ、もぐ……」

新人女「えっと」

81: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:09:17.52 ID:qv6ULQoP
男「ん?」
新人女「静か、ですね。……その」

男「女先輩がいないとね」

新人女「……はい」

C男「もぐっ。もぐっ」

男「うん。静かすぎてかえって落ち着かないよ」
C男「同意」

新人女「ですよね」

C男「録音」
新人女「え?」

C男「『女はうるさい』と新人女が発言した。
 録音完了。……あとでチクる」

男「ぷっ」
新人女「え、あ。……そんなこと云ってませんよっ!」

C男「……」ニカッ
男「いやー」

82: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:10:11.48 ID:qv6ULQoP
新人女「云ってませんよっ。男さんまで」

男「いや、笑わないとまずいよなって思って」
新人女「?」

C男「笑ってないと、勝てない」
男「勝てないな」

新人女「??」

C男「チクろう」
男「おー。チクらんとね!」

新人女「もーっ」

男「まずはここを凌いで。女先輩を迎えに行かないと」
C男 こくり

新人女「女先輩……どうしてるかな」
C男「メールは?」

男「あー。メールの返事、来ないんだよな。困ってる」
新人女「携帯ですか?」

男「うん。女はたしか自宅にPCないんだよなー」

83: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:11:44.21 ID:qv6ULQoP
新人女「私も出してみましょうか」

男「うん、やってみて」

新人女 ぽぴぴぽぴぱぽぴあぽぴぴ

男「うわ、すごい早い」
新人女「そうですか?」

C男「異次元生物だ」

男「俺、携帯でメール出せない」
新人女「えっ!? どうしてですか?」

男「おかしいだろ、普通に考えて。なんであんな15個も
 キーがないような入力デバイスで文字が打てるんだよ」
新人女「だって、それは普通じゃ」

新人女 ぽぴぴぽぴぱぽぴあぽぴぴ

男「普通に考えてキーボードが必須だろう」
新人女「そうですか? ん……」

新人女「出来ました。送信……っと」

――う゛う゛う゛う゛う゛う゛。

84: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:13:03.83 ID:qv6ULQoP
男「なんか聞こえない?」

――う゛う゛う゛う゛う゛う゛。

C男「バカを捨てよう」

がちゃ。かちゃんっ

新人女「女さんの携帯、ここにあるじゃないですかっ」

C男「まさに捨てるべきバカ」

男「だって気がつかないって!!」

新人女「……」じぃっ
C男「廃棄」

男「いや、すみません」
新人女「いえ。考えてみれば、付き添いの
 私が確認していくべきでした。あああ。
 無いと困ってますよね。女さん」

C男「同意」

男「?」
新人女「自分で救急車も呼べない訳ですし」

85: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 19:14:56.73 ID:qv6ULQoP
男「でも、過労だしな。点滴うって家に帰ったら、
 激しい労働しない限り普通のはずだよ」

新人女「そうなんですか?」
男「俺も何回か点滴うったし」

新人女「……」

C男「全然自慢にならない」
男「面目ない」

新人女「でもそれじゃ、余計におかしいかもしれません」
男「なんで?」

新人女「日常行動できる程度にはすぐ回復するなら、
 連絡くらいあったり携帯取りに来たりしても良いような」

男「ほんとだ」

新人女「……」 C男「……」

男「んー。心配だなぁ。女先輩、天然なとこあるからな」

159: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:19:13.35 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 20:00 小さなアパート

(……なんだろ)

(……動いてる? ……あ、そか)

(アルファとブラボーとチャーリーだ)

(初めまして、ご挨拶します。うち女です)

(長い間放置して済みません)

(うちも別に悪気があった訳じゃないんですよ)

(ただちょーっと忙しかっただけでして)

(反省してます)

男「目、覚めた?」

女「反省してます、今度は捨てるから」

男「C男ネタか?」

160: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:19:55.19 ID:qv6ULQoP
女「……」ぼへぇー
男「……」

女「……おはようございます」ぼけっ
男「おはよ」

女「うち会議室で寝ちゃった?」
男「いや、大丈夫。家まで帰った」

女「そか……」こしこし
男「うん」

女「……」
男「……」

女「夢違うよね?」
男「ちがうね」

女「うち、なんかとてつもないピンチの気がする」

161: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:20:27.94 ID:qv6ULQoP
男「ま、過呼吸じゃしかたない。ストレスだもん」
女「いやいやいや」

男「?」
女「そんなピンチとちがう。我が人生のピンチ。
 てか、なんで男はそんなにけろりとしてるん?」

男「へ?」
女「乙女の部屋にコッソリ上がり込んだりして」
男「ああ。ごめん。お邪魔してます。
 大家のおばさん心配してたよ」

女「あ、あわ……。ぐっ」
男「なに?」

女「見たな」
男「何を?」

女「固形化した鍋とかっ。洗濯の山とかっ。
 コンビニの残骸とかっ。箱から出してないケロロとかっ」
男「うん」

女「我が忠実なる三人の騎士アルファ、ブラボー、
 チャーリーは何を警護してたんよっ」

男「ゴミなら捨てておいたよ」

164: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:27:51.70 ID:qv6ULQoP
女「なっ!? なん……だと……」
男「なんだっけ、それ?」

女「カレーつけて食べるパンみたいな食い物」
男「ナンだっけ、それ?」

女「っていうか、うちの寝顔見たなっ!!」
男「そんなの沢山見たことあるし」
女「ですよね」

男「でも、良かった」
女「へ?」

男「意外に元気で」
女「――」

男「や。女先輩、布団の上に布団かけて、その上にコートまで
 掛けてさ……がたがたしながら寝てるし」
女「――」

男「鼻すんすんならしてさ、ほっぺた濡れてるし」
女「――」

男「良かった」
女「それは、寝汗やん。うちがこれくらいで
 へこたれる訳無いやんっ」

165: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:29:01.56 ID:qv6ULQoP
男「おう。安心した」
女「……」ぷいっ

男「これ、携帯ね。こいつを届けに来た訳だ」
女「うん」

男「だいたいさ。ゴミ出せないとか、
 ゴミ袋がお出迎えとか云うからどんだけゴミ屋敷かと思えば、
 埃は積もってるけどそんなに酷くないじゃん」

女「散らかせるほど家帰れてなかったし」
男「そりゃそうか」

女「あんな、男。……うち、やっぱり」

男「女先輩は、一週間療養ね」
女「そっか……。やっぱり……」

男「その後、待ってるから」
女「へぁ?」

男「間抜けな顔しないでくださいって。派遣本社の方は
 適当な事言っておいたから。派遣先の都合と休養とか。
 大丈夫。日割りで減るかもだけど、このまま」

女「あ、うち……」

167: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:36:13.82 ID:qv6ULQoP
男「来週月曜から出れるかな」
女「うんっ」

男「いや、今回はごめんなさい。マネージャーとして
 本当に不徳というか、酷い有様でした。
 せめてこんな風になる前に一回診察に行かせるべきだった」

女「いや、強がって無茶したの、うちだし」

男「ゆっくり治してよ」
女「いや、平気。なんか元気出た。明日からいけるっ」

男「全然ダメ」
女「うー」
男「療養がいやなら、謹慎と思ってもらっても良いからね」
女「だってさ」

男「なに」
女「現場、どうなってるんよ」

男「黙秘」
女「どうせ地獄みたいな有様のくせに」

168: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:40:21.66 ID:qv6ULQoP
男「どうせ地獄ですよ」
女「じゃうちが行った方が良いじゃん。猫の手だって
 借りたいくせに」

男「地獄だったら復帰しなくても良いよね?」
女「う」

男「大丈夫だって。女先輩が復帰した後だって
 地獄の醍醐味は残ってっから」
女「嬉しいような嬉しくないような」

男「ウォリアーっしょ?」
女「……うち」

男「ん?」

女「うん。うち、ウォリアー」

女「うち、ウォリアーやしっ」にこっ

男「偉いぞ」
女「うん。褒めてっ」

男「偉いぞっ」
女「うんっ」ぱぁっ

177: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:47:15.73 ID:qv6ULQoP
男「そういえば、なんか食います? コンビニで
 色々買ってきたけど。あ、あとレトルトも」ごそごそ
女「うん、おなか減ったかな」

男「じゃ、台所借りますよー」
女「ほいさ」

がたがた。しゅぼっ……。

  女「おとこー。おとこー」

男「はい?」

  女「用意してくれてるとこわるいけど、
   うち、先にお風呂ってかシャワーする」

男「どぞどぞ。そもそも女先輩の家でしょ」

  女「んー。おもてなしもせんで、悪いね」

男「お構いなく」

ごそごそ

  女「んじゃ、用意する」もそもそ

181: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:48:42.71 ID:qv6ULQoP
男「先輩?」
女「ほい?」

男「服は着ようよ」
女「着てるやん」

男「履こうよ」
女「履いてるっしょ。ぱんつは」

男「……さっさと入ってくださいよっ」
女「なに意識してるん? 目そらしちゃったりして」にまっ

男「さっぱりですよ」
女「もしかし、うちの脚に萌えた?」

男「萎えた」
女「えーっ!?」
男「萎えました」
女「何度この防御に破れたことか……」

男「無駄に誇示しないで良いですから」
女「女バスなめるな。すべすべなんだぞっ」

男「いまや完全引きこもり系人間なんだから
 過去の栄光にすがってないで早くシャワー行ってください」

188: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 22:55:45.63 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 20:40 ユニットバス

ざぁぁぁー

女(……終わってないんだ)

女(来てくれた。うちは、まだあそこにいられる)

女(……暖かい)

ざぁぁぁー

女(うち、まだがんばれるんだ)

女(男と一緒に、まだ戦えるんだ)

女(……なんだろ。うち、うれしいんやろか。
 めちゃくちゃ、顔ゆるんでない?
 すごい、情けない顔してない?)

女「ばれたりしないだろなぁ」にこぉ

193: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:01:08.10 ID:qv6ULQoP
女「あ、そだ」

女(せっかく来てもらったし、お茶くらい……)

女「お茶ってあったっけ? 去年の正月使ったような……」

女(いや、違うだろっ)ずびしっ

女「そ、そうじゃなくてっ」

女「色々考えるべき事は他にある訳でッ。
 いやいやいや。ちがいますよ。そういうことじゃなくっ。
 うちは一人のウォリアーとして乙女としてですね
 自分の矜持は守らなきゃならない訳でですね」

女(ぱんつだけは一杯洗濯しておいて良かったぁ……)

女「いやちがう。そこホっとするところでも
 照れるところでもない。なんですか、うち。
 はしたないにもほどがありますよっ」

女(つか、いまこそおにゅーのぱんつ卸すべきでは?)

女「だからちゃぅーっ! そうゆんじゃないってっ」

200: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:08:36.56 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 21:00 小さなアパート

がちゃり

男「お疲れ様」
女「あ、あがったよ?」

男「先輩」きりっ
女「え、ぁ。はい」

男「大事なお話があります」

女「なんでしょうか。いや、まて。
 いま卸すから。――ちゃんと可愛いのだから」

男「良いからこれを見る」
女「……」

男「これいつのタマネギですか? なんでこんな
 とろけるチーズも真っ青な粘液状ですか。
 ラヴクラフトも真っ青な神話的恐怖ですよっ」

女「う゛ー」

男「他のものも一通り整理しときましたからね。
 火曜日の朝にだせばいいようにしてありますから」

女「なんでかなぁ、もうっ」

201: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:10:22.73 ID:qv6ULQoP
女「なんでうちだけ布団かぶらなきゃならんの」
男「寒いんでしょ」

女「暖かいよ。おかゆ食べてるから」
男「なんで部屋着がジャージしかないんですか」

女「部屋着って云ったらジャージでしょ」
男「じゃ、そのジャージを洗濯しておいてくださいよ」
女「無茶いわないでってば。臨死してたんだから」

男「じゃ、文句言わないで布団かぶる」
女「むー」

男「……」
女「……もぐ……美味しい」

男「何食ったんですか? 今日は」
女「おかゆ食べてるよ?」

男「……」
女「……」

男「……もう一杯食います?」
女「食う」


207: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:17:27.45 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 22:00 小さなアパート

女「そっか。C男そんなにがんばってるんだ」
男「うん。すごいよ。鬼気迫ってるかも」

女「そっかー」にこにこ「あとでメールしたげよう!」
男「それがいいかも」

女「あ! そだ」
男「なに?」

女「うち、今週は暇になる訳だし。
 お勧め風 を検索して探してあげようっ♪」

男「あ、いや……」
女「どしたん?」

男「ほら。趣味ってのは、人様々だから」

女「ん? 男はC男の趣味知ってるの?」

男「いや。……それは、その。ねぇ。
 いくら先輩が●●トーク好きのウォリアーでも
 おのずとプライバシーってものが」

女「云っえっ」

208: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:22:39.48 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 22:20 小さなアパート

女「ふむふむ」
男「で、新人女さんが一番早いんですわ」
女「そんなに?」

男「うん、いままで見た中で一番早いね、アレは。
 指先がぶれて見えるほどだし、なにより腕が動かない。
 指先だけ高速に動かして携帯操作するんだ」

女「それは一度みたいなー」

男「それでけろっとしてるんだ。これがまた。
 『これくらいは常識ですよ』って顔で。
 俺始めてリア充っていうんですか?
 遭遇した気がしたもん」

女「ま。でも、携帯は元々女の子の方が得意でさ」
男「そうなの?」

女「指が細い方が、あのキーの大きさは楽だよね」

男「そういえばそうかぁ」

212: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:28:12.57 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 22:40 小さなアパート

男「B男もね。なんだか池袋の気合い入れてるみたいだし」
女「そうなん?」

男「女の人が一人残ってるって言ってたでしょ」
女「うん」

男「昼飯とか作ってもらったらしいよ」
女「まじでっ!?」

男「まじですよ。女先輩。この平成の鳳雛。
 マネジの諜報力を舐めてもらっては困りますよ」
女「孔明よりはずいぶん落ちる気がするなぁ、それ」

男「で、それが」
女「なになに」

男「あげたパンの耳のランチだったらしくて」
女「え?」

男「あげたパンの耳。きなこまぶしてあったって」
女「……」

男「忍者だしねっ」
女「そだね、忍者だしねっ!」


221: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:34:33.04 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 23:00 小さなアパート

女「うっわぁ。そんで?」
男「それでもなにも。仕方ないからマクロ直しましたよ」
女「ぷくくくっ。そっか。災難やったね」
男「全くですよ」

女「あはははっ」
男「……女先輩だって後から参戦ですよ」

女「OK,OK。判ってる。ちゃんと働くから」
男「期待してます」
女「うち、ウォリアーやしっ」

男「ふぅ……。えーっと時計は?」
女「いま、23時きっかり」

男「そっか、ずいぶん居座っちゃってごめんね」

女「ううん。ひきとめたの、うちやし。忙しいのに。
 ごめんね、ほんと」

男「いえいえ。良い時間。引き上げますよ~」

女「へ? 泊まっていかんの?」

男「何いってんですか。気軽なことを」

227: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:40:06.56 ID:qv6ULQoP
女「だいたい、男は練馬でしょ? どやって帰るの?」
男「電車で」

女「もう、ないよ?」

男「何言ってるんですか。まだ23時でしょ」

女「無いよ?」

男「え、うそ。だって終電01:12って見たし」

女「それ下りだよ。練馬は東京の向こう側でしょ?
 ここ千葉だもん。上りと下りは逆になるんだよ。
 上りの終電なんて、もう終わってるよ」

男「……そうなの?」
女「うん」

男「なんでそんなに早いの?」

女「千葉だから」

男「……」
女「ま、諦めて。ほら、プリンあげるから」

男「俺が差し入れしたヤツじゃないですかっ」

231: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:44:26.18 ID:qv6ULQoP
男「なんかインチキだよなぁ」

女「そんなにこだわらないでもええやん」

男「いや、こだわるよー。泊まるつもりなんて無かったし」
女「いいじゃない。もう一回泊まっちゃったんだし」

男「自宅じゃないでしょ、あれは」
女「同じだってば。一回も二回も」

男「……そう言ってもですね」
女「そんなにやかなー。うちとじゃ」

男「そういう問題じゃなくて」
女「うー。良い方の布団かしてあげるからさ」

男「そういう問題じゃなくて」
女「それともうちの肉布団とかっ? きらっ☆」

男「……」
女「ごめん。引かないで。自分で困った」

男「判ってくれれば良いんです」

237: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:49:50.98 ID:qv6ULQoP
重ねて云う。

萌ってのは、人外幼女とかなのだっ。
それで魔王とか異形の落とし子とかそういうのが萌えだ!
あとは皇族と内侍司。
猟奇とかメンヘルも萌え。
夕日を見つめながら唇から血が出るほど噛みしめてる
娘さんなんて萌えまくり。月下で薄ら笑いを浮かべて
揺れている病院パジャマの幼女とか。

だが、唐翌揚げとゆとりはない(´∇`)ノシ

243: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:54:39.93 ID:qv6ULQoP
――6/2、日曜日 23:15 小さなアパート

女「んじゃ、電気けすね」
男「はーい」

かちっ。

女「ん、っしょっと」もそもそ
男「……」

女「ごめんね、ろくな寝具無くて」
男「いや、一人暮らしだもん。当然ですよ」

女「……」
男「……」

こぉぉぉぉぉーーー

女「……車の音、遠く響くでしょ?」
男「はい」

女「幹線道路があるからね。遠くに木霊みたいに音がするのだ」
男「……」

女「ごめんね」

247: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/23(木) 23:58:47.66 ID:qv6ULQoP
男「どうしてです?」

女「うち、倒れちゃってさ。無理させてるよね」

男「気にしないで」

女「それに、派遣の方もさ。……手を回してくれたんでしょ。
 コネ一杯使わせたよね。うっすらとだけ、判る」

男「マネジとしてなんでもない。
 むしろそんなリカバリをする事態になる前に
 手を打てなかった不明を恥じるばかりですよ」

こぉぉぉぉぉーーー

女「……」
男「……」

女「おとこ」
男「はい?」

女「ちょっとだけ、触って良い?
 ううん、袖だけでもいいから」

251: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 00:02:15.17 ID:lPBcTgUP
男「……」もそもそ

きゅっ

女「――うち、感謝してるから」

男「……」

女「うち、色々判ってなかった。ううん、たぶん、
 いまでも本当は判ってないんだと思う」

男「……」
女「うち、返しきれないほど、恩がある」

男「身体のことは、恩とか返すとかじゃないです」

女「それだけじゃ、ないよ」
男「……」

女「うち、おっかなくて、泣いてた。……あはは。
 いや、身体がおかしくなると、ダメだよね。
 不安になって、黒い気持ちが止まらなくてさ」

女「忙しいのに、あんなにバカ話に付き合ってくれたのも
 感謝してる」

255: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 00:08:45.89 ID:lPBcTgUP
男「電車のって千葉くんだりまで来たから
 移動するのがおっくうになっただけです」

女「うちは、その……」

こぉぉぉぉぉーーー

女「……」
男「……」

女「――萎え人間なので。
 そういう用途には低ランクなんやけど
 ほら。工業用の軽油みたいな?
 あはははっ……」

女「でも、今度は。今度こそは
 ウォリアーとしてやるから。次は折れないから。
 こんどはちゃんと男の分まで斃しちゃうから。
 うち、ウォリアーやしねっ。
 そんで男と唐翌揚げ食べに行く。ううん、みんなと行くから」

女「それで、恩がえしさせて。
 すぐ行くから。ほんとは明日からでも行きたいからさ」

265: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 00:17:12.41 ID:lPBcTgUP
男「何言ってるんですか。らしくもない」

女「ん……」

男「先輩が唐翌揚げマニアなのもウォリアーなのも
 バイオレンス&スパルタなのも昔からでしょ。
 だいたい俺をこういう風に育ててくれたのも
 女先輩じゃないですか」

男「それをいちいち恩に着るとか
 返すの返さないの軽油だレギュラーだバイオ燃料だと
 水くさいを通り越してミミズくさいですよ」

女「――」

男「そもそも女先輩がウォリアーなのは当然ですけど
 俺だってB男だってC男だって、その上いまは
 新人女さんだってウォリアーでしょ? ちがいます?
 ウォリアーだとかキャラ作って線引いてないで
 皆殺しレベルの仕事してくださいよ。
 それが先輩だったでしょ。
 二人っきりでデスマーチ終わらせたことあるでしょ、俺たち」

男「先輩は、ずっと勇者なんだから。
 ウォリアーだなんて甘えたこと抜かさないでくださいよ」

271: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 00:23:26.33 ID:lPBcTgUP
女「あんな、おとこ」

男「なんすか」

女「偉いぞ」ぐすっ

男「ふふん」

女「偉そうにしてても、偉いぞ」

男「ふふふん」

女「信用しても良いかな」
男「どういう風の吹き回しですか」

女「信用したらうちのこと嫌いになるくせに」
男「8時間だけ執行留保します」

女「あんがとうな」
男「これについては恩に来てください」

女「任せて。――勇者の仕事を見せてやるから」

329: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 12:44:12.12 ID:lPBcTgUP
――6/3、月曜日 黎明 小さなアパート

(暖かいな……)

(……布団、ぬくい。――なんだっけ。
 こんなに暖かいの、久しぶりって云うか……。
 すべすべで、ぷにぷにで……。
 腕の中が幸せで……幸せで……)

(こういうのって他ではちょっと無いよなぁ、
 本人達自覚がないみたいだけどさぁ~。
 軽ければいいってもんじゃないんすよ。
 ……重さが贅沢って言うかさ~。
 抱きしめたときの確かさって言うかさ……)

(……こればっかりは女には分かんないんだろうなぁ
 こんなしょーもないことで、
 俺らがどうしようもなく幸せだとかさー)

(……ぬくいなぁ)

(でも、目が覚めちゃい……そう……)

(微睡んでいたいけど……)

330: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 12:46:07.02 ID:lPBcTgUP
ん……

(ところで……これ誰?……)

こつん

(すごい良い匂いだけど……彼女っていたんだっけ)

すりすり……

(……そか女先輩か。この鎖骨の形は)

(そゆことね。おけおけ。判って良かった……)

くてんっ

(ぬくいなぁ……)

え?

(なんで女先輩なの!?)

331: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 12:46:41.41 ID:lPBcTgUP
(……)



(う、ううううううっ……)

ぎくっ

(そだ。無くなった千葉が終電で布団の中諦めたんだっ)

(お、落ち着け、俺っ)

(……えっと、服は……着てる……)

(右手……動く。左手……はなんか腕枕してるしっ!?)

ぎくぅっ!

(なんでこんなに顔近いんだよっ……)

ぎくぎくっ!

(脚、脚からめられてるっ)

(刺激が強いっての。まじ頼むからっ。女先輩は
 もうちょっと武力行使の自覚持て、自分の身体にっ)

332: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 12:47:10.12 ID:lPBcTgUP
(腕、抜ける……かな。起こしたくない……)

女「……すぅ。……くぅー。んにゅ……」くてっ

(天然なのか。こいつ天然かっ!?)

女「んぅ……。……すぅ」すりっ

(寝顔の方が、美人なんだ。……まつげなげー)

(疲れてるんだなぁ。そういえば、頬の線がシャープに
 なった気がするもんなぁ……)

(……こんなになるまで追い込んだの俺だもんな)

(それなのに腕枕なんかして)

(俺、M野かよ)

(マネージャー笠に着て女食ってんじゃねぇよ)

男「ん……しょっと……」

337: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:00:23.96 ID:lPBcTgUP
――6/3、月曜日 08:00 小さなアパート

女「すぅ……。んっ……んぅ」

女「うー。ん……」ぼへぇっ

女「なんやろ。なんか、すごい幸せな感じやったんやけど」

女「……」ぼへぇっ

女「……なんでうちこんな体勢なん?」

女「……」

女「……」

女「……っ!? いないやんっ!!」

女「あ、あれ? どした。いっちゃったん!?」

女「そか……。月曜だもんね」

342: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:04:24.55 ID:lPBcTgUP
女「あ、そだ。メールあるかな」

ポ。ピ、ピ

「件名:帰る
 社に戻ります。お身体お大事に。
 冷蔵庫の中に缶詰とレトルトおかゆがあります。
 一日二食食べること。
 トイレの洗剤を買い足しておくこと。
 野菜室にはものを入れないこと。
 以上、男。

 追記//
 へこたれてたことはみんなには内緒にしておくので
 週明けに勇者の力で仕事をなぎ倒してください。
 こちらはお任せを。先輩のいまの敵は、過労」

女「……ん」

女「元気。でた。
 うちは、うちのやれることから、しよ」

女「まずは……。ご飯やね」

346: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:13:59.17 ID:lPBcTgUP
――6/3、月曜日 08:00 神楽坂作業室

男「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

男「C男ー」
C男「?」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

男「進捗どう?」
C男「順調。先行半日」

男「余裕は?」
C男「ある。いまならどんな仕事でも捨てられる」
男「捨てないでこなしてよ」
C男「了解」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

男「池袋の仕事さ。……C男がいやがってたヤツ」

347: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:18:50.62 ID:lPBcTgUP
C男「……」
男「回しても良いかな?」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「……」
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「ikebukuroフォルダ?」
男「そう」

C男「なんで手が着いてる?」
男「俺と女先輩がやってたから」
C男「半分くらい終わってる」
男「終わらせた」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

348: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:20:21.10 ID:lPBcTgUP
C男「これが、女先輩を倒れさせた?」
男「……そうとも言えるね」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「巻き込んだんだ?」
男「うん」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「そんなマネジは捨てるべき」
男「うん」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「やる」
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタ

C男「先輩が戻ったとき、こいつは残ってるべきじゃない」
男「さんきゅ」

353: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:38:09.82 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 19:00 神楽坂の小料理屋

部長「まぁ、一杯やってくれ。今日は常務の奢りだそうだから」
常務「ははは。男君だったよね。話は聞いてるよ?」
開発リ「どうも。開発リーダーです」

男「ありがとうございます」

部長「四人もいるしね。ボトルいっておこうか」
常務「ん、そうだね。おーい」
開発リ「なかなか忙しいでしょう?」

男「そうですね。いまはちょっときつい時期ですね」
部長「男君のところは特に集中しているからね」

常務「ははは。営業の、なんだっけ? M野君かい?
 彼が新しく班を立ち上げたんだろう?
 これでぐんと楽になるんじゃないかい?」

部長「はははは」

常務「彼はなかなか成績がよいからね」

男「……」

354: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:39:11.83 ID:lPBcTgUP
部長「男君は、ずいぶん強いのかね?」

男「いえ。まったくですよ。ですから
 お酒を頂くときは、いつも緊張気味です」

常務「ははは。リラックスしてくれたまえよ?
 今日は最近迷惑をかけているというキミへの
 慰労のためだからね」

部長「そう言うことがあったら、食べたいものが
 あったら遠慮無くいいんだよ」

常務「そろそろ、ふぐもくるんじゃないかな」

 からり
 仲居「お鍋の方の準備、始めてよろしいでしょうか?」

常務「ああ、たのむよ」
部長「これは美味そうだ」

部長「どうだね、開発リーダー君も」

開発リ「いただきます」

 仲居「お取りしますよ」

356: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:42:36.47 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 19:20 神楽坂の小料理屋

常務「で。どうなんだろうね? 開発リーダーくん。
 男君の能力というのはね」

開発リ「そうですね……」
部長「そうだね。開発の方の視点からも聞きたいね」

開発リ「自分が入ってからも、管理の方も……
 7人ですか? マネージャー変わりましたけど
 上位を争うと思いますよ」

常務「ほほう」
部長「やっぱりねぇ。根を詰めてるからね、男君は」

開発リ「会社にいればいいってもんでもないんでしょうが。
 ――作業の組み立て能力と危機対応力は
 ずば抜けてるんじゃないかな……。
 ボクもよく判って無くて、聞きたかったんだけど」

開発リ「去年の年末の、代々木上原に納品したDBだけどさ」
男「――」

開発リ「あれ、要件定義書書いたの、男さんだよね?」
男「はい」

開発リ「そっか。開発経験は?」
男「ありません」

358: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:43:13.34 ID:lPBcTgUP
開発リ「うちのK菅がDB書いたんだけど、
 要件定義書なかったはずだよね、あれは」
男「現物から逆算でクライアントに問い合わせて再構築しました」

開発リ「そっか」

部長「どういうことなのかな?」
常務「?」

開発リ「いえ。訂正です。組み立てと聞き取りだけじゃ
 なかったですね。彼がここ数年で一番です」

部長「そうか、そうかっ。まぁ、飲んでくれ」
男「ありがとうございます」

常務「ま、しかし。マネージャーってのは人員管理、
 労務管理業務だからね。技術畑だけで判断するのも
 なんともいえんが、そうか。そんなに逸材かね」

開発リ「技術以外の判断は手に余りますね」

男「現場で冷や汗をかいて辻褄を
 合わせているだけですよ」

359: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:44:51.29 ID:lPBcTgUP
常務「M野君なんてどうだい? 彼は」

開発リ「判断不能ですね」

部長「そうなのかい?」

開発リ「仕事が出来るかどうかは仕事をしないと
 判りませんから……。一緒に仕事をしたことが
 ないんですよ。あの人、なんで給料もらってるんで」
男「池袋班はまだ発足日が浅く、現状チームの
 初期編成の段階ですから」

常務「そうかね。そうだろうね」

開発リ「ふむ」
男「……こく、こく」

部長「さ、煮えたんじゃないかな」

常務「おお。食おう、食おう。美味いぞ」

361: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:46:38.30 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 19:50 神楽坂の小料理屋

開発リ「でも、実際良い腕ですよ」
男「ありがとうございます」

常務「ははは。ずいぶん惚れ込んだものだな」
開発リ「どうだい? 男君はさ。開発来ないかい?」

男「いえ……」
部長「おいおい。抜け駆けはよしてくれ。ははは。
 男君を抜かれたら神楽坂が持たんよ」

常務「ははは。そうかもしれんな。だが、M野君が
 ゆくゆくは、管理の2つの班を統括するんだろう?」

開発リ「――っ」

部長「そうですね。やはり対外的なスタンスがありますからね」

常務「おお。それで思い出した。今日の本題だ」

開発リ「?」 男「なんでしょう」

部長「実はね」
常務「いやいや、僕から云おう」

369: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 13:55:01.91 ID:lPBcTgUP
常務「君たち二人も、我が社に長いだろう? 法改正の
 問題もあるしね。どうだろうね? そろそろ正社員に
 なってみないかということなんだ」

開発リ「……」
男「……」

部長「もちろん、待遇なんかは考えさせてもらうよ。
 当社規定でだがね」

常務「君たちが即戦力なのは重々判っている。社会的には
 不況だが、我が社の業績はここらで弾みをつけるべき
 時期だというのが社長の意向でもあるのでね。
 人員の拡大を行うためにも、君たちを迎え入れたいのだよ」

開発リ「……ことわ」
男「申し訳ありませんが」

常務「ん? 何か条件でもあるのかね?」

男「いえ。良くしていただいている恩は
 身にしみているのですが、管理部は実作業人員の
 ほぼ全員が派遣です」

部長「そうなるね」

373: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:01:00.10 ID:lPBcTgUP
男「モチベーション維持的にも、マネージャーである
 自分もこのままの身分の方が、ここ当面は有用かと
 思うんですよ」

開発リ「――」

常務「そうなのかね?」
部長「そう言うことも、あるかもしれませんなぁ」

常務「しかし、正社員登用の可能性を示した方が
 長い目で見ればモチベーションが上がるんじゃないかね」

男「ええ。もちろん、そのとおりです。
 しかし、班の人間と心理的な垣根を作るよりは、
 現場で一緒に汗をかく関係の方が有意義な
 ときもあると思うんです。
 お申し出は本当にありがたいのですが、
 いま神楽坂、というか管理部の方はかなり仕事がきつい
 時期でして……」

部長「ふむ」

開発リ「開発の方も立て込んでますね」

374: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:02:23.96 ID:lPBcTgUP
男「仕事の方がハードですし、ここ最近神楽坂班は
 泊まり込みも続いていますし」

常務「そうなのかい?」
部長「もちろん、規定時間以内の残業ですよ」

常務「はははっ。やはりもうちょっと作業効率を
 高めるべきだろうね。新生池袋班のほうは
 手際よく仕事をこなしているのだろう?」

 開発リ「……はンっ」

男「幸い、うちのメンバーはモチベーションあるので、
 こじれさせるようなことは今は手をつけたくないんです。
 ですから、お時間を頂くか辞退させていただいて構いませんか?」

常務「ふむ……。ところで開発リーダー君はどうだね?」

開発リ「そうですね。考えてみれば、うちも派遣所帯ですから」

部長「そうか……」

常務「いやいや。なかなか厳しそうだね。
 うん、いや時間の方はもちろん構わんよ。はははは」

378: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:12:01.57 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 20:15 神楽坂の小料理屋トイレ

開発リ「まだ20代だっけ」
男「はい」

開発リ「A派遣だよね? そっかぁ。
 ……まじで、開発やる気ないか? B派遣社のほうでも
 腕のあるヤツだったらなんぼでも取ってくれると思うぜ」

男「あはは。……や。そうしたい気もするんすけど」

開発リ「……」
男「いろいろと」

開発リ「……そか。いや、そうだよな。修羅場に生きてりゃ
 そりゃ、いろいろあるよな。判るよ」
男「すいません」

開発リ「いや。いいよ。考えてみれば、結構疎遠だったな。
 開発のリーダーやってる。よろしくな」
男「こちらこそよろしくお願いします」

開発リ「実を言えばちょっとむかついてたんだ」
男「?」

開発リ「こっちで作ったDBやらマクロやらいじくるやつが
 管理の方にいるのは判ってたからさ。文句があるなら
 手前でやりやがれっていうヤツもいてさ」

379: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:13:03.81 ID:lPBcTgUP
開発リ「でも、考えてみればお門違いな話だよな。
 現場で修羅場だもんな。そりゃ、生き残るためには
 何でもやるよな。武器がなけりゃつくるし、
 竹槍だって命かけるなら、けずるよな」

男「……」

開発リ「いや。悪かった。半端なもん渡してた。
 うちの連中にも云っておく」
男「いえ。こちらこそも独断で事を沢山進めました」

開発リ「キミ、ほんとに20代なんか?
 そつなさすぎだぞ~。あははははは」
男「必死ですから」

開発リ「――なんか、やってんだ?」
男「はい」

開発リ「M野のせいか?」
男「……おおむね」

開発リ「そっか。で、気配けしてるんだ」
男「もうすこしだけ」

開発リ「じゃ、もうちょい茶番付きあっとこうか」
男「はい。よろしくお願いします」

385: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:20:20.59 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 20:30 神楽坂の小料理屋

常務「いやいや。今時熱心な若者じゃないか。あははは」

開発リ「唐翌揚げいただきます」
男「うわ、ふぐの唐翌揚げ始めて食べましたよ」

部長「そうかい?」
常務「若いんだからふぐくらいは食べないとな」

  開発リ「良く判らん理屈だ」ぼそっ

男「美味しく頂いてます。立派で緊張しますね」

部長「そうかね」
常務「たまには休憩しないとね、仕事もな」

  開発リ「デスマやってる理解あんのかよ」

男「あんまり美味しいもの食べてると、班の仲間に
 呪いかけられたりしそうですよ。あはは」

部長「や、苦労をかけるね。いま新しい派遣の会社も
 当たっているからね」
常務「そうなのかね?」

386: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:21:30.95 ID:lPBcTgUP
部長「ええ、A派遣もB派遣者も適当な人材確保が
 難しいようでしてね。池袋班はこの間、トラブルがあって、
 人の入れ替えですから」

常務「ああ。派遣か。居着いてくれる人間を取ってくれよ」

  開発リ「……ちっ」
  男「……もぐもぐ。あ、すいません。醤油を」

  開発リ「ほいよ。――キミも相当タフだな」
  男「目の前に出たものは何でも美味しく食べるってのが
   スパルタな先輩の戦闘教育なもので」

部長「多少どうにかしませんと」
常務「30は出過ぎだろ。切れんのかね」
部長「はぁ、交渉してみますが」

常務「こう入れ替わりが激しいと、部長も大変だな。
 ははは。面接の基準がぬるいと云うこともあるんじゃないかな」

部長「そんなことはありませんが、最近の若者は
 ゆとり、とかいいますからね~」

  開発リ「……」ギリっ

常務「そうなのかね? なぁ、男くん」

男「そうですね。うちの班にもゆとりが
 一人いるくらいですからね。あははは」

387: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:26:05.42 ID:lPBcTgUP
常務「やっぱり苦労してるのかな? それとも
 若い人は若い人同士で和やかに仕事が進められるのかね」

男「いえいえ。ゆとりなんて言葉だけの問題ですから。
 一緒に仕事をしてきつい峠を一つ二つ越えれば、
 そんなマスコミのカテゴライズ意味ないですよ。
 付いてくる人と、来ない人がいるだけで」

常務「そうか。なかなかシビアだな。これなら正社員でも
 すぐにいけるよ、きみは。はははっ」

部長「M野くんのところは運が悪かったって云うことですかな。
 付いてくる人間がそろった神楽坂はラッキーだね、男君」

男「そうですね。いつも感謝してます」

  開発リ「タルタロスにでも落ちろ」ぼそっ

常務「労務管理ってのはツキだけじゃないからね。
 これからは僕も目をかけることにしよう」

男「ご指導お願いします」ぺこり

常務「そうだ。他に何かないかね? 職場のこととか」

部長「常務がせっかく言ってくださってるんだから。
 なにかあれば遠慮無く云うと良いよ」

394: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:34:35.78 ID:lPBcTgUP
開発リ「……無いっすね」
男「あーっと、そうですね」

常務「なにかな」

男「いえ。ものすごく美味しかったので。
 さすがに本当に班のメンバーに呪われそうです。
 仕事が一段落したら打ち上げに行っても良いですか?」

常務「なんだ、そんなことか。あははは。
 もちろん構わないよ。そうだね、キミの立場じゃまだ
 交際費を使う訳にもいかんものなぁ。
 しかし意外につつましい願いだね」

男「現場で追われてるだけですから」

常務「そうだ、ほら。部長。業者からもらった食事券が
 残ってただろう? 営業が接待に使ってた」
部長「ああ、ありましたな」

常務「アレが結構残ってただろう。ちょうど良い。
 アレを使えるように渡してやってくれ。
 打ち上げだったら十回やそこらは出来るだろう」

部長「良い考えですな。判りました」

401: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:39:44.16 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 21:00 神楽坂の小料理屋前

常務「じゃ、済まんね。僕はタクシーで帰るから」
部長「いえいえ、本日はご足労ありがとうございました。
 ほら、君たちも」

男「ごちそうさまでした。美味しかったです」ぺこり
開発リ「ごちそうさまでした」

常務「ははは。こんなの安いものさ」
開発リ「……」

部長「じゃぁ、私も帰るが。君たちは。あー」

開発リ「自分も帰りますよ。や、一応開発に電話するかな」
男「自分は神楽坂作業室に戻ります」

部長「ふむ、そうか」

開発リ「ちょうどいいや。近くにコンビニある?」

男「ありますよ、この坂の途中で」

開発リ「じゃぁ、自分はコンビニまで一緒に行きます」

部長「そうか。じゃぁ、よろしくたのむよ。では!」

404: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:53:13.84 ID:lPBcTgUP
――6/4、火曜日 21:05 神楽坂の路上

開発リ「クソむかつくな」
男「ですね」

開発リ「良いのかよ。食事券なんかで。
 キミがM野の事ぶちまけるつもりだったら
 援護射撃しようと思ってたんだぜ」

男「それじゃ、リーダーさんだって泥かぶるじゃないですか」

開発リ「SEってのは手に職なんだよ。
 泥かぶるくらいなんでもない」

男「こっちは……そう云えないかなぁ」

開発リ「……」

男「ほら。派遣不況でやっとの人もいますしね」

開発リ「そうか……。すまんな」

男「いえいえいえ。俺がビビリなだけかもしれませんし」

開発リ「俺って云ったなっ。あはは」

男「ほら、上役いませんし」

405: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:55:45.43 ID:lPBcTgUP
開発リ「だいたい士気を鼓舞しようってのなら
 賃金あげるかボーナスよこせってのな。
 それを食事おごってだぜ? それも全員じゃなく
 上二人に『だけ』おごって手懐けようってさ
 そういう浅ましさがむかつくわ」

男「美味かったですよ。ふぐ」

開発リ「そうか? まぁ、刺身は旨かったな」

男「食い物に罪はないですよ」

開発リ「腹が立たないのかよ」

男「特には。――それに」
開発リ「ん?」

男「メシ一回で手懐ついた忠誠心なんて
 トイレに一回行けば流れて消えますよ」

開発リ「あははははははは」

男「ね?」

開発リ「だよなっ。まったくだ」

406: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 14:59:37.66 ID:lPBcTgUP
開発リ「あんなんで良かったのか? 食事券なんて」
男「あー。あれは、はい。予想以上でした」

開発リ「そうなのか?」

男「ですねー。打ち上げ用の交際費で、
 宴会代が出ればいいと思ってましたから。
 この会社、結構けちくさいですからね。
 そのくらいのおねだりが、重役のプライドの
 限界だと思うんですよ」

開発リ「奢ることで向こうも気持ちが良いと」

男「そのプライドにも出入り業者の金券絡めてくる
 程度なんですけれどね」

開発リ「でも、あれだ。みんなでメシにいくんだろ?」
男「はい」

開発リ「さっきの話じゃないけど、メシ一回で買える
 忠誠心だのモチベーションなんてクソすりゃ
 流れるって話じゃないのか」

男「メシの内容も忠誠心も流れますけど。
 打ち上げの満足感と楽しい感じは残りますよ。
 茶番の接待と、本当の打ち上げの違いですから。
 うちの班の面子は、アホ揃いですからね」にこっ

開発リ「そうだな」にこっ

407: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 15:03:31.28 ID:lPBcTgUP
男「それにね、この商品券は……」

開発リ「なんかあるのか?」

男「多分、営業が。
 ――M野が派遣の女を口説くのに使ってたヤツですよ。
 女口説くのにすら会社の経費でやってた訳だ。
 帳簿に残らない食事券で」

開発リ「……」

男「別に、腹建ててる訳じゃないんですけどね」

開発リ「……顔はそう言ってないぞ」

男「いえ……」

開発リ「……」

男「なんにせよ。あの口調だと残り物処理で
 こっちに回ってくると思いますよ。それで、多少はね。
 素行に歯止めがかかったりはしないと思いますけど」

開発リ「そうだな」

男「その辺が『上出来』でした」

408: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 15:08:10.59 ID:lPBcTgUP
開発リ「キミは面白いなぁ」
男「そうですか」
開発リ「開発は独学なんだろう」
男「はい」

開発リ「どこで覚えたんだい?」
男「ここに来てから、何となく」

開発リ「修羅場で?」
男「修羅場で」

開発リ「要件定義書なんかの書き方は?」
男「えっと、すみません。開発課の資料を見ました。
 共有ドキュメントの中とか」

開発リ「社内資料だ、構わないよ。そっか、それで
 ときたま用語で変なところがあるんだな」
男「あー。やっぱり判っちゃうもんですか」

開発リ「大したことじゃないよ。理解できる言葉で
 書いてあれば、仕事は回るしな」
男「……」

開発リ「これ、これな」カチカチカチ「携帯の番号だ」
男「はい」

開発リ「今度はもっとゆっくり飲もう」
男「はい。ありがとうございました」
開発リ「こけるなよ? 見てるからな」にこっ

436: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:18:29.33 ID:lPBcTgUP
――6/5、水曜日 9:00  神楽坂作業室

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「……ダブルスコア」
男「へ?」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「あっ。いえ……あの」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「単位時間あたりの仕事の処理速度が、私と女さんだと
 倍以上違うんです。……ダブルスコアです」

男「そっか、そんなにかぁ」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「お恥ずかしいです」

男「いや、ちがうよ」

439: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:22:56.98 ID:lPBcTgUP
新人女「はい?」
男「それに気がつくほど、上達したんだ」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「え?」
男「仕事始めたばっかりの頃は、周りがどれくらいの作業を
 しているかなんて判らなかったでしょ?
 始めて恥ずかしかったときは、圧倒されただけでしょ?
 今は速度の差も、相手が何をやってるかも、
 ぼんやりとでも判るようになったんだね」

新人女「はい……」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

男「もっかい云うよ」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

441: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:23:56.16 ID:lPBcTgUP
男「『もっと上手になりたい』と思ってれば、
 必ず上手になるよ。もっと早くなりたいと思って、
 自分より早い人を追いかければ、仕事なんて
 誰よりも上手になるよ」

新人女「はい……」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

男「伸びてるもん。すぐだよ」にこっ

とくん

新人女「――あ」

新人女:カタカタ
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「なれるでしょうか、上手に」
男「なれるよ」

新人女「なれるでしょうか、何かに」
男「もちろん」

442: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:25:48.00 ID:lPBcTgUP

新人女(なんだろ……これ。
 大事なのに、苦しくて、
 言いたいのに、うまく言えなくて。
 抱えているのはつらいのに、いつまでも取っておきたいような)

新人女:カタカタ

新人女(こんなの知らない。こんなの、持ったことがない。
 全然楽しくないし、焦るような、急かされるような
 心細いような、恥ずかしいような気持ちなのに……。
 なんでこんなに大事にしたいんだろう)

新人女:カタカタ

新人女(これ、なんなんだろう。
 これが『何か』なのかな……。
 なんで私は、こんなに焦ってるんだろう。
 どこかへ急がなきゃいけない気持ちなんだろう)

新人女:カタカタ

新人女(なんで悲しくないのに、
 こんなに泣きたいような気持ちになるんだろう)

445: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:27:59.99 ID:lPBcTgUP
――6/5、水曜日 12:00  池袋/ドーナツ屋

B男「やぁ、男氏」
男「食べてる?」

B男「食べてるでござるよ。フレンチクルーラー。
 やっぱりドーナツはこれでござるよねーむしゃむしゃ」

男「俺はエンゼルクリーム派だな」
B男「それは女子供の食い物でござるよ」

男「ドーナツ食ってる時点ですでにそうだ」

B男「そんなことはないでござるよ。服部氏も
 ドーナツを食べてたでござるよ」

男「それは服部半蔵じゃなくて忍者ハットリくんだ」

B男「もぎゅもぎゅ」

男「ほおばってごまかしたっ!?」

446: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:29:12.14 ID:lPBcTgUP
B男「……もぎゅ」
男「どうしたの?」

B男「いや。んー」
男「歯切れ悪いな。珍しい」

B男「拙者の方の案件は進んでいるんでござるが
 別件では多少問題が発生しているでござる」

男「なに?」

B男「M野でござるよ」
男「……」

B男「実は、どうも新しい派遣を取るのが
 難しくなっているらしく」

男「その話は聞いたな。俺らの派遣会社、
 どうも人出すの渋ってるらしいね」

B男「使いつぶす姿勢の出向先なんかに
 送りたくはないでござろう。
 それは理解できるでござる」

男「それで?」

447: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:30:36.18 ID:lPBcTgUP
B男「それで、どうも。――眼鏡女氏でも仕方なし
 という判断をしたらしいのでござるよ」

男「……は?」

B男「ここ数日、ちょっかいが五月蠅く
 なっているのでござるよ。
 彼女も辞める訳にはいかないので、耐えるしか」

男「正社員餌にしてデートに誘うとか?」

B男「いや、そうではなくて」

男「どういう事?」

B男「彼女が実家暮らしで子供がいるとか、
 生活が厳しいこととか知ってしまったらしいので
 ござるよね。そのせいで、もっと露骨な」

男「セクハラか」

B男「拙者ならそんな軽い言葉は使わないでござるね」

男「……」

B男「眼鏡女氏を神楽坂に移すことは出来ないでござろうか?」

449: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:34:48.03 ID:lPBcTgUP
男「……」
B男「ダメでござるか」

男「時期が悪い、というかきっかけがないんだよな。
 前回は一人を残して壊滅で、M野がいなかったから
 新人女さんを持ってくることが出来たたけれど」

B男「拙者、見るに堪えかねるでござるよ」

男「酷いんだ」
B男「胸が悪くなるでござる」

男「……」

B男「社内で自分の地位が下がっているのが
 M野にも判るのでござろ。つまり憂さ晴らしでござるよ。
 女好きで、ただただデートがしたいだけなら
 下卑た男でござるが、それはそれで判らなくはないで
 はないのでござる。拙者も男でござるから。
 やはりもてたいでござるよ。……切実に。
 餌をぶら下げるのも嫌いでござるが、
 それを歓迎する女性がいるのも事実でござろう。
 ――しかし、足元を見るのは
 それは別ではないかと思うのでござる」

450: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:35:49.53 ID:lPBcTgUP
男「助けたい?」
B男「助けたいでござるね」

男「大事なんだ」
B男「そういう関係ではござらん」

男「……」じー

B男「そうではなく」ぷいっ

B男「拙者がM野のにやけた顔に我慢が
 出来ぬと言うだけでござる」

男「……」
B男「ダメでござるか?」

男「大事なのはその眼鏡さんの意見だね」

B男「……抵抗は出来ないと云っているでござる。
 それほど職場が無くなることが怖いのでござる」

男「そうか」
B男「愉快では、ござらんよ」

男「野良だからな」
B男「野良でござるから」

453: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 19:40:18.93 ID:lPBcTgUP
男「――判ったよ。案件は前倒そう」
B男「了解でござる」

男「ネゴシエートはこちらで行うよ。
 B男は眼鏡さんともう一度話してみて。
 根性がある人なんでしょ?」

B男「そうでござる」

男「持ってる根性でも、使えなきゃ意味がない。
 使えるようにしてあげて。じゃなければ、意味がない」

B男「トラブルを抱えても?」

男「抱えてもやる気でしょ?」

B男「さようでござるね」

男「現時点から、その眼鏡女さんも神楽坂班だ」

B男「――感謝するでござる」

男「B男が面倒見るんだよ」
B男「判ったでござる」

男「しくじらないでな」
B男「承った、マネジ殿」

458: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:00:09.65 ID:lPBcTgUP
――6/5、水曜日 14:00 神楽坂作業室

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「はい……。そうです。……お話は伺っております。
 はい、はい……144番以降すべてですね?」

男「いえ、それには及びません。こちらの現場に複製が
 ありますので。はい、はい……タイムスタンプの確認だけ
 よろしいでしょうか?」

新人女:カタカタカタ
C男:カタカタカタカタ

男「はい、はい……そうです。いえ、とんでもない。
 では、失礼します」

ぴょろりん

C男「メールだ。俺」
男「変な音にしてるのな」

C男「営業。――仕事増えた」

459: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:01:16.01 ID:lPBcTgUP
男「どうして?」

C男「作業中の春日のやつ。発注忘れだって」ぎりっ

男「……」
C男「営業は捨てよう」

新人女:カタカタカタ
男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

男「うん、いいぞ。でも仕事は捨てないで」

C男「……捨てよう」
男「ダメ。試合壊すなよ」

新人女「……」おろおろ

C男「捨てたい」
男「同感」

新人女「……」おろおろ

男「それでも守れ」
C男「同意」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタカタ

461: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:04:29.17 ID:lPBcTgUP
――6/5、水曜日 19:00 神楽坂作業室

男(――予想より進捗が遅いな)

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男(無理もないか……二人とも、デスマなんて初めてだ)

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男(……どうする。残すか、帰すか)

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男(どうすればいい? どう使えばしのげる?)

465: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:05:34.10 ID:lPBcTgUP
かたり

新人女「男さん」
男「ん? どうした?」

新人女「あの……わたし。今日は」
男「ん。了解。かえって。ゆっくり休んで」
男(ここが限界か……)

C男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「はい。では失礼します。ちょっと急ぎますから」
男「はいはい。おつかれー!」
新人女「お先しますっ」

男「C男はどうする?」
C男「家なんて捨てた」

男「そっか」
C男「いっそ気楽」
男「それも同感、かな」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「夜明けまでには、まだ10時間
 ――限界を捨てるにはちょうど良い」

467: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:09:13.47 ID:lPBcTgUP
――6/5、水曜日 23:40 神楽坂作業室

男「なーんていってから約5時間ですが」
C男「おおっ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「限界見えた?」
C男「言葉尻をとらえるマネジは捨てよう」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「なんか、最近さ。だんだんC男と話せるようになってきたよ」
C男 ぷいっ

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「やっぱ、修羅場を過ごしてみるもんだな」
C男「惰弱なマネジは嫌いだ」

男「すいません」

469: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:11:17.36 ID:lPBcTgUP
C男「仕事を断れないから下のものが苦しむ」
男「まったくだ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「無能な中間管理職に死を」
男「さすが先輩の弟子だなぁ。容赦がない」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「勝たないと許さない」
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「捨てたものより大きな物を拾わないと許さない」
男「……」

C男「一生」
男「一生なのかよっ! 重いよっ!」

471: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:15:08.28 ID:lPBcTgUP
男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男 ぐー
男「腹減ったな」

C男「食欲を捨てよう」
男「いや、食おうよ。身体壊すよ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「そんな時間はない」
男「効率落ちるぞ」

C男「出前?」
男「時間遅いしなぁ」

C男「備蓄をくれ」
男「カロリーメイト? どれがいい? フルーツとチョコ」
C男「フルーツ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「了解。ちとまって」ごそごそごそ

かんかんかんかん……がちゃり

478: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:21:18.83 ID:lPBcTgUP
新人女「新人女ただいま戻りましたっ」

男「え?」 C男:カタ

新人女「家かえってシャワー浴びてきました。着替えも」

男「……だって、さっき帰ったでしょ?」

新人女「はい。準備を整えて再出撃で」

男「こんな時間、泊まりになっちゃうよ?」

新人女「いえ。8時間早く出勤しただけです」

男「――」

新人女「ずるいですよ。二人だけで全部仕事しようだなんて。
 私だって神楽坂班ですし……。解かなきゃならない
 謎だってありますし」

男「……」

新人女「いえ。それは私事ですけど。あ、そうです。
 サンドイッチ買ってきましたよっ。補給物資です」にこっ

483: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:26:59.17 ID:lPBcTgUP
C男「……ん。もぐ、もぐ」
新人女「……こくん」
男「もぎゅ、もぐ」

C男「新人女」
新人女「はい?」

C男「ナイス」ぐっ
新人女「ありがとうございます。紅茶もどうぞっ」

男「それにしてもこうくるとはね~」

C男「?」
新人女「はい?」

男「いや、なんか可笑しくって」
新人女「そうですか?」

C男「もっぎゅもっぎゅ」

男「うん。なんか悩むのもばからしい気分」

新人女「??」

484: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:32:35.78 ID:lPBcTgUP
男「『どう使えば』とかバカの言いそうな台詞だよな。
 あははははっ。や、最高だわ」

新人女「はい? はい?」

男「要請無しでも兵站補給に援軍だもんな。ははははっ」

新人女「?」きょとん

男「C男、残りどうだっけ?」

C男「夜明けまで4時間と38分」

男「ブリッツクリークにはちょうど良いか」

C男「中央突破」

男「んじゃ、新人女さんも。無理はしないで」

新人女「女さん程度に自重します」

男「そっか。あはははっ。じゃぁ、4時間。
 いってみようか」

488: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:38:14.90 ID:lPBcTgUP
――6/6、木曜日 06:30 神楽坂作業室/会議室

新人女「……失礼します」そぉ
男「くぅ……。すぅ……」

新人女「わぁ……。ぼろぼろだ」

男「……んぅ。……すぅ」

新人女「こんなになっちゃうまで、働くんだ。
 男の人って……」

男「……」くてっ

新人女「前髪、ぱさぱさ。身体中ぼろぼろだし」

男「……んぅ」

新人女「全然ステキじゃないんだけどな。お洒落じゃないし。
 きっと音楽とかにも詳しくないし、ドライブなんて
 絶対に連れて行ってくれないし」

男「……すぅ」

新人女「全然違うのに」

491: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/24(金) 20:40:35.80 ID:lPBcTgUP
男「すぅ……」

とくん

新人女 なでなで

男「んぅ……」

新人女(…………っ!?
 触っちゃったっ。
 そんなつもり無かったのに……。
 そ、そうなのか。私やっぱりそうなんだ。
 気持ちがあふれてる。こぼれちゃってる。
 わたしは、やっぱりだったんだ)

男「…………ん」ぼぉっ

新人女「あの、男さん? 時間ですよ」

男「ん。……わかった。10秒待って」むぅっ

新人女「はい……」じぃっ

男「おけ。再起動した。目覚ましさんきゅ」

新人女「はいっ」

528: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:06:08.15 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 11:30 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「んぅー。ぅ」ぽきゅ
男「ああ、やっぱり変な音。ははっ」

新人女「そんなに変ですか-?」
C男 こくり
男「小さくて可愛いよっ。あははっ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「うーん……」ぽきゅリコ。
C男「ぷくすー」
男「あははっ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「こんなはずじゃないんだけどなぁ」

529: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:06:26.90 ID:b1AJlvQP
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「……」ちらっ
新人女「……んぅ。……こっち、っと」

男「新人女さん。ちょっとお使い頼めるかな?」
新人女「はい?」

C男:カタカタカタカタカタカタ

男「書類届けて欲しいんだ。巣鴨まで」
新人女「いけますよ、はいっ」

C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「バイク便じゃダメ?」
男「忙しいのは忙しいんだけどね~。ちょっと大事なヤツなのだ」

新人女「いいですいいです。急いで行ってきます」

男「いや、それはだめで」
新人女「はい?」

530: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:07:08.70 ID:b1AJlvQP
男「煮詰まってるでしょ。風に当たってきて、食事も」
新人女「良いですよぉ、そんな。えーっと……ほら」

C男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「デスマーチっていうんですよね?」にこ

男「まぁ、ね」 C男「●●卒業」ぐっ

男「行ったのか!? この忙しいのに!? いつ行ったんだっ」
C男「は、はぁ!?」

男「いや。すまん。……びっくりした」

新人女「超特急で行って参ります」

男「ううん。そうじゃなくて」
新人女「はい?」

男「ゆっくり雑談でもしてきて。
 出来れば、顔を覚えてもらってきて」

新人女「……?」

男「いってらっしゃい」にこっ

 

536: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:19:39.75 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 12:00 神楽坂作業室

C男「フルーツもういっこ」
男「ほいよ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「よく判らない」
男「なにが?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「マネジ何考えてる」
男「俺もC男との会話は判りづらいよ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「なんでこの時期に散歩?」
男「この時期だからつぶれられたら困る」

537: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:20:32.01 ID:b1AJlvQP
C男「俺、デスマした。生きてる」
男「そだな」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「●●卒業」
男「やっぱSM系なのか?
 この付近にそんな店あったっけ……」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「俺一人前」
男「うん。C男は早くなったよ。戦闘能力はもう
 俺に迫ってるんじゃないかな」

C男「ふふん」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「立派な前線豚だ」
C男「文句は言わせない」

538: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:21:26.78 ID:b1AJlvQP
C男「でも、俺。見えてないみたい」
男「……?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「捨てたい」
男「話判らんな」
C男「なんで見えてない」
男「……?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「男には見えてる。俺には見えてない。
 それがあると考えないと、説明付かない
 捨てたいけど、見えてないから捨てられない」

男「……」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「それじゃ一人前じゃない。捨てたい」
男「他人の見てるものなんて、見えない方が当たり前だよ」

539: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:22:44.98 ID:b1AJlvQP
C男「男はマネジ」
男「うん?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「ウォリアー」
男「うん」

C男「ウォリアーになれば変わると思ってた」
男「……?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「まだまだ判らないことがある」
男「うん」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「時間の問題だよ」
C男「……」

C男「時間の問題か。首を洗っていやがれ」
男「上等だ」

544: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:47:32.51 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 16:20 神楽坂作業室
――電話

部長「――」
男「はいっ!? ……はい、それで。はい?
 病院は? ……そうです、か」

部長「――」
男「そうです。……それは二人とも? はぁ。
 いえいえ。はい。……判ります。
 お騒がせしてしまって申し訳ありません」

  C男「何があった」

部長「――」

男「はい、それは重々。いえ……はぁ。
 そうなりますね。はい。……いえ。はい」

男「それは、自分の監督責任の問題でもあります。
 ――いえ。……いいえ。
 M野さん就任後の離職率については?
 いいえ、そういう意図はありませんが。
 しかし、派遣会社側でもそう言ったデータは統計していますし
 はい。……そうですね。はい」

男「それは出来ます。はい、今日のところは興奮しているかも
 しれませんから……ええ。週明けまでには、はい
 話を聞いてみます。ええ、もちろんです」

545: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 07:48:34.01 ID:b1AJlvQP
がちゃり

男「うーん」
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「どうしたんですか?」
C男「何があった?」

男「なんというか」
男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「……」 C男「……」

男「つまり、まだ良く把握してないんだけどね」

新人女「はい」
C男「早く言え、鰯マネジ」

男:カタカタカタカタカタカタ

男「B男がM野殴って、辞めた」

新人女「!?」 C男「っ!」


567: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:45:18.42 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 17:00 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「……いいんでしょうか」
男「ほい?」

新人女「こんなことしていて。B男さん探して連れ戻らないと」
C男「ニセ忍者が脱落とは」

男「いまは、ちょっと無理」
新人女「そうなんですか?」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「B男も頭に来てると思うしね。
 探し出しても、話にならなければ同じだよ。
 メールはちゃんと打っておいたから、大丈夫」

新人女「なんでこんな事に」

男「向こうに残った新人の女の人が一人いてね
 まぁ、家の事情で辞めるに辞められない人
 だったらしいんだけど」

新人女「……」ぎゅっ

568: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:47:04.52 ID:b1AJlvQP
男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「お察しの通りM野がゲス野郎でさ。
 ――ちょっかい、かけてたらしい。
 で、その女の人が、とうとうなんだろうな
 泣きながら辞めるという話を切り出して。
 それでBが、おそらく、代わりに殴った」

新人女「B男さん悪く無いじゃないですかっ」

男「辞めるって決めたのはB男だし。
 殴った後も居残れる場所じゃないでしょ」

新人女「おかしいですよ」ぎゅっ

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「おかしいね。だから、ちゃんと話を聞いて対処する」
新人女「……っ」

C男「新人女、手」
新人女「はい?」

C男「手、動かせ」
新人女「はい……」

569: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:47:48.50 ID:b1AJlvQP
男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

C男「マネジ男」
男「なんだかなぁ、その呼称は」

C男「仕事終わったぞ、新しいのくれ」
男「ん。ちょっと待って」

新人女「……」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

C男「静かだ」
男「C男は昔から静かでしょ。んー。こっち、かな。
 一個ずつ終わらして行っちゃおう。池袋の残務処理」

C男「んむ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

571: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:49:41.85 ID:b1AJlvQP
新人女「私が神楽坂に拾われたのは
 ――ラッキーだったんですよね」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「わたしも、きっと辞めちゃっていたと思うんです。
 M野さんにつきまとわれて。わたし、根性のないゆとり
 ですから……。多分三日も持たないと思うんです」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「何が言いたいのか、自分でも判らないんですけど。
 その人も、もしかしたら、ここ辞めて。
 他にも行くところが無くて」

新人女「……すみません」

男「言い忘れてたけど、彼女は昨日付で神楽坂班だから。
 会社の方の所属判断は知らないけれど、
 うちの人間はそのつもりでいるように」

新人女「はいっ」

573: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:51:00.75 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 19:10 神楽坂作業室/会議室

「――。――」
新人女「違う。そうじゃないのっ……。
 仕事してるんだよ。ふつうだよっ!」

「――。――」
新人女「……いいもん。……母さんが、そうじゃなくてっ!
 やだ。そんなのやだよっ。……好きにさせてよっ」

「――。――」
新人女「良い会社だよ。……いいじゃないっ。
 派遣で何がいけないのっ? ちゃんとするもん
 ちがうもんっ。
 ――そうじゃないもんっ」

「――。――」
新人女「母さんが判ってないだけだよ。……ちがうのっ」

「――。――」
新人女「まだ仕事だから。切るね。……もうっ!
 知らないっ!」

ばむんっ

男「こほんっ」
新人女「あ……」

574: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:52:00.27 ID:b1AJlvQP
――6/6、木曜日 19:15 神楽坂作業室/給湯室

新人女「えっと」
男「ん」

新人女「……」
男「……もうちょいでお湯沸くから、待ってね」

新人女「はい……」
男「……」

しゅんしゅんしゅんしゅん

男「このビル、ぼろいでしょ?」
新人女「え? あ、はぁ」

男「築何年か判らないけれど、なんかコンクリ湿ってる
 感じだしね。だめーなビルなんだけどさ。
 ガス台とヤカンは良いよね。オール電化っての?
 便利かもしれないけれど、なんか風情はないよね」

新人女「はい……」

男「そういや、うちの班はタバコ吸う人いないしね」
新人女「ですね……」

575: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:53:05.81 ID:b1AJlvQP
新人女「あの……」
男「ん」

新人女「さっきのは、うちの……母でして」
男「うん」

新人女「母は、なんかお嬢様気質なんです。
 別にうちはお金持ちでもなんでもないのに。
 近所づきあいとか、世間体とか、母だけの常識とか
 そういうのが大事な人で……」

男「うん」

新人女「この仕事、気に入らないんです」

男「そか」

新人女「あ、でも。わたしは気にいってますからっ」

男「またまたぁ。ブラック会社だよ。ここ。あはは」

新人女「いえ。そうじゃなくて、確かに仕事はきついんですけど」
男「だよね」

576: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:54:24.64 ID:b1AJlvQP
新人女「この間起きたら肩が上がらなくてびっくりしました!」
男「なうなる。俺も油断するとすぐなるよ」

新人女「お風呂で良く揉まないとダメですね」
男「身体って、メンテが必要なものだから」

新人女「仕事は、きついんですけど」
男「……」

新人女「パーティーにいったり、ドライブに行ったり、
 遊びに行ったりとか、そういう楽しさも無いんですけど」
男「……」

新人女「がんばってる感じがして、何か変わりそうで
 気に入ってるんです」

新人女「もうちょっとで何かがどうかなりそうなんですっ」

男「……うん」

新人女「すいません。意味不明で」

男「いや、うん。……判るよ」

新人女「え?」

男「俺も、何かになりたかったから」

578: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:57:14.52 ID:b1AJlvQP
新人女「……」

男「俺がここに来たときにさ
 半年先輩なだけなのに、すっごい仕事の出来る
 古参兵士みたいな人がいてさぁ。これがまた。
 ――強烈に仕事できるんだなぁ」

男「俺は要領が良かったし、仕事を覚えるのとか
 あんまり苦労したことなくてさ。
 仕事なんて自分で全体を把握して、工夫をすれば
 一人前になるのなんて難しく無いじゃない?
 その意味では、新人女さんと似てるんだ。
 あんまり苦労してこなかったという意味では」

新人女「……」

男「そのひと、ものすごいのよ。
 理屈とか通じないんだもの。
 脳みそまで筋肉で出来てるんじゃないかなぁ。
 筋肉で仕事してるんだよね。
 精神力と体力が同じメーターなんだもん。
 わけ判らないよね。ほとんど動物だもん。
 でも、それが、もう。
 あはははっ」

男「嘘みたいに格好良いんだ」

新人女「……」

579: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 11:59:01.01 ID:b1AJlvQP
男「なると良いよ」
新人女「……」

男「自分の好きなものになると良いよ」
新人女「はい」

男「野良はいいぜー」

新人女「?」

男「苦しいしさ、逃げ場はないし、いつでも崖っぷちだけど」
新人女「……」

男「もうどうにもならなくなっても
 誰も助けてなんかくれないけれど、いつも怖いけれど。
 それでもルール無用だもの。何になってもいいし、
 どんなに成長しても良いんだよ。
 それに、どんな場所でも歩いてゆける。
 野良って、全員が王様なんだよ」

新人女「わたし、男さんの」
男「ん?」

新人女「……」ぎゅ
男「――」

581: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:02:12.56 ID:b1AJlvQP
新人女「男さんの――神楽坂班で良かった」
男「いや、そいつはどうかなー?」にこっ

新人女「へ?」

男「間抜けた顔してるな。
 そう言えるためには、まずは生き残らないと」

新人女「はいっ。あはっ」

男「きっついぜぇ」
新人女「大丈夫ですよ」

男「B男に投げてた仕事が戻ってくるかもしれないんだよ?」

新人女「でも、格好良い人はこう言うと思うんです」にこっ

男「?」

新人女「『ウォリアーのうちがいれば、なんでもない』」

男「――うん」

新人女「だから大丈夫ですよ」

590: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:36:31.55 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 04:15 神楽坂作業室/仮眠室

男「おーい。C男。起きろー」
C男「……にく」

男「起・き・ろ」
C男「……仕事……捨て」

男「眠りを捨てろよ」
C男「……拾…う…」くてっ

男「起きろ」ゆさゆさ
C男「……む」

男「起きたか? 麦茶のむか?」
C男「……」ぼへぇ

男「どだ?」
C男「……こきゅ、こきゅ」

男「起きたか?」
C男「月は出ているか?」

男「まだ四時過ぎだから出てるんじゃないかな」
C男「僕らが求めた戦争だ」

男「いいから目を覚ませ」

591: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:37:16.65 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 05:30 神楽坂作業室

C男「マネジ男は寝ないのか?」
男「その呼び方、定着するのかよ」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男 こくり

男「んー。まぁ、今日のところは持ちそうだし、いいや」
C男「そうか」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

男「後でコンビニでドリンク剤でもかってくる」
C男「内臓を捨てよう」
男「捨てたいな、実際。胃が痛むってのな」

男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「新人女は」
男「昨日は早めに返したから、朝は普通にくるんじゃないか」

C男「がんばるな」
男「うん」

592: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:38:06.03 ID:b1AJlvQP
男:カタカタカタカタカタカタ
C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「残務も終わった。マネジ男」
男「ん。了解」
C男「次はどこにかかる」

男「……んじゃ、見えてるものをちっと見せるよ。
 こっち見て」

C男「これは?」
男「進捗表」
C男「規模が大きすぎる」

男「プロジェクトじゃなくて、全体俯瞰だよ。
 この細いラインと球根みたいな膨らみが
 一個のプロジェクトだ」

C男「……」

男「赤が危険度が高くて、青が低い」
C男「赤いサングラスかけてるような画面だ」
男「まーねー」

C男「なんでこんなに多い?」

男「開発とか営業の進捗も追跡してるから」
C男「――っ」

593: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:39:05.96 ID:b1AJlvQP
男「ここまでやっても不意打ちを受ける」
C男「……」

男「世知辛いね、会社ってのは」

C男「この巨大な赤い固まりは? 画面に入りきらない」

男「それは巣鴨。今は気にしないでいいよ」

C男「これは?」
男「想像通り、保険屋だね。不発弾に近い」

C男「……」
男「把握?」

C男「把握した」
男「どれに行く?」

C男「マネジの配置指示」
男「だるいよ」

C男「?」

男「指示なんてだるいって」

594: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:39:34.78 ID:b1AJlvQP
C男「職務放棄。捨てるな」
男「マネジの仕事は指揮でもみんなの仕事の様子を
 チェックして叱ることでもないよ」

C男「……」

男「C男はもう十分戦闘能力がある。戦う気もある。
 マネジの仕事なんて、あとは『仕事をやっつけようぜ』
 って言うだけだよ。
 ――どれと戦りたい?」

C男「これ」

男「でかいとこ食うね。錦糸町か」

C男「形が唐翌揚げに似てる」

男「……唐翌揚げ独り占めすると女先輩にどつかれるよ?」

C男「いないのが悪い」

男「そう言えばそうだな」

C男「資料は?」
男「用意する」

597: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:44:59.54 ID:b1AJlvQP
唐揚げ、唐揚げー

598: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 12:45:52.21 ID:b1AJlvQP
これでどうだ、唐揚げー

604: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:01:43.39 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 12:30 神楽坂作業室
――電話

男「はい。……そうです。そこらにありませんか?
 あははは。こっちも地獄ですよ。
 いえ。開発と話が出来るようになったので、
 援軍三個師団気分ですよ。
 ……はい? はい。
 あ、手直しくらいならします。とりあえず、
 送ってくれれば。はい、感謝します」

男「ああ。聞かれました? あはははは。
 うちの忍者なんですけどね。
 へ? 忍者ですよ。いるんですよ、うち。そういうの。
 うん……殴っちゃったみたいです。
 ……。
 …………。
 いえいえ、そう言ってもらえると忍者も喜ぶと
 思いますよ。あいつはアレでなかなか大器ですから。
 ……。
 …………。
 ああ、はい。お心遣いありがとうございます。
 いえ、B派遣社には一度自分もご挨拶に行くつもりでした。
 いや。違いますよ。あははっ」

606: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:02:26.48 ID:b1AJlvQP
男「はい。お願いします。はい、はい?
 んー。どうした方がいいでしょうかね?
 周辺機材のあまりってあります?
 うちはケーブルは5mクラスしかないんですけど」

男「あー。判りました。いえ、いいんですか?
 すみません。では、お願いします。
 はい、はい。……ではまた」

がちゃり

C男「開発か?」
男「そう」

C男:カタカタカタカタカタカタ

C男「関係改善」
男「んだね」

C男:カタカタカタカタカタカタ

新人女「なにかお手伝いできること、ありますか?」

男「いや、これはC男の仕事なんだな」
C男「捨てよう」

607: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:03:48.24 ID:b1AJlvQP
男「いま、開発から追加機材届くから。
 C男は荷物と手持ちのツールディスクまとめて」

C男「夜逃げか?」

男「近いね。錦糸町に移動。クライアントさんのところで
 作業するよ。クライアントさんは、訂正用の顧客情報を
 社外へ持ち出ししたくないらしい」

C男「Netは?」

男「開発の方で、臨時にFTP立ち上げてくれるから、
 Toolとかはそこで受け渡し。いまやってる作業の継続も
 そのまま持ってって、向こうでやることになる。
 新人女さん?」

新人女「はいっ」

男「そんな訳で俺とC男出るから。ああ、俺は挨拶だけ
 だからすぐ戻る」

C男「俺が捨てられるっ!?」

新人女「はい」

男「その間だけ、留守番お願い。電話は留守電でOK」

新人女「判りました」

609: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:09:38.75 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 16:00 総武線の内部

C男「……機材捨てよう」
男「重いのは判るけど、捨てるなよ」

C男「ちょうど橋だ。うまく捨てればばれない」
男「ばれるよ。どうやって電車の窓から捨てるんだよっ」

C男「……」
男「……」

C男「大丈夫か?」
男「なにが?」

C男「俺まで移動して平気か?」
男「しゃぁないでしょ」

C男「――」

男「今はこれが一番早く仕事が進む。錦糸町を
 処理できれば、後は細かいドキュメントや残務処理、
 ミスの修正なんかだ。
 これは指示をして、資料さえ完全にそろえていれば
 新人女さんがペースは遅くてももれなくつぶしてくれる」

C男「不発弾」
男「ああ」

610: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:11:20.88 ID:b1AJlvQP
C男「保険屋」
男「B男が抜けたのが痛いね。まぁ、そいつは俺がやるよ」

C男「つぶれる」
男「……」

C男「つぶれたマネジ男。かっこ悪っ」
男「あんなー」

C男「捨てよう」
男「……」

C男「捨てたいな」
男「ん?」

C男「結局M野が生き残る」
男「ああ」

C男「殺すべき」

男「殺しても仕方ないよ。
 あんなのは、どこにでもいる。多分ね。
 出くわす度に殺すの殺さないのなんて
 面倒でやっていられないよ」

C男「マネジ男は草食過ぎる」
男「ものぐさなんだ」

611: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 13:12:14.84 ID:b1AJlvQP
C男「……」
男「……」

 ゴオオオオオ。ぷしゅーっ。
 あさくさーばーしーあさーくさーば

C男「しのげるのか?」
男「保証が欲しけりゃ公務員やってやがれ」

C男「女先輩の場所だ」
男「しのげるよ」

C男「即答か」
男「即答しないと捨てられる」

C男「捨てるだけで済ますものか」
男「……」

C男「一生呪うからな」
男「だから、重いんだって」

C男 ぷいっ

男(なんてんだっけ、これ……。
 あ。そうだ。ツンデレ……なのか?)

653: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:23:13.56 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 18:20 神楽坂作業所

新人女:カタカタカタ

新人女「できた。……よし、もう一個」

がちゃり

男「たっだいま」
新人女「お帰りなさい~。どうでしたか」

男「こちらは問題なし。C男は週明けまで缶詰だね」

新人女「作業はこんな感じの進捗になってます」ぺらっ

男「さんきゅ。まとめてもらえるとすごく助かる」

新人女「いえ。出来ること自体がまだ少ないですから」

男「……ん。この緑のラインは?」

新人女「ちょっと自信がないところです。帳票の内容を
 チェックして欲しいです」

男「了解」

654: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:24:37.35 ID:b1AJlvQP
男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「ん……。問題なし。調べた方がいい点は
 別紙にプリントした」

新人女「ありがとうございます」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「いえいえ。実際助かる」
新人女「細かい仕事をこなすのは楽しいですね」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「そうゆうもの?」
新人女「小さい人形を修理してショーケースに
 ちまちまっと並べていく感覚に近いです」

男「ああ。うん、それ、判りやすいね」
新人女「はい」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「でも、貴重な人材だ」
新人女「そうですか?」

655: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:25:16.62 ID:b1AJlvQP
男「うちは大物狙いが多いからね。でかい仕事に突っ込んで
 腕力で倒しきると言うか。体当たり主義的な」

新人女「女さんですか?」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「先輩もそうだけど。実は最近C男もそうだよね。
 B男はそのへんは自在派で、俺がどちらかというと
 雑用処理が多かったからさ」

新人女「個性が出るんですね」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「そりゃそうだよ。仕事ほど個性でること無いよ」

新人女「……友達なんかは、サラリーマンになったら
 個性が無くなるっていってたから」

男:カタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「そんなこと無いよ。というか、消そうと思って
 消せるくらいなら個性じゃないんだよ」

新人女「そうですね」
男「個性ばりばりで仕事する人ばっかりだけどね
 うちの班は」

656: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:26:44.12 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 19:40 神楽坂作業所

新人女「ん……」ちらっ

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「――」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「あのぅ」
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「あの、男さん?」
男「はいっ?」

新人女「聞かれる前に云いますけど、私、土日出ます」
男「きついでしょ?」

新人女「いえ出ます。ここが正念場だって言う気がしますし」

男「そう言ってくれるなら願ったりかなったりだけど」

658: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:29:47.68 ID:b1AJlvQP
新人女「やた」にこっ
男「そんなに仕事楽しい?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「いえ、そういうのじゃないですけれど。
 ううん、……楽しいのかな?
 がんばってる気がして嬉しいです」

男「ああ、充実?」
新人女「そうそう、それです! 言いたかったの」

男「そっか」にこっ
新人女「はい」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「――」
新人女「……」ちらっ

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「そか。明日来るなら、今日はもう切り上げよう」

660: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:30:58.67 ID:b1AJlvQP
新人女「男さんも帰りますか?」
男「いや、俺はもうちょいいるけれど」

新人女「それじゃ私も付き合います」
男「いやいや。切り上げましょう。女性なんだし」

新人女「仕事忙しいですし……」

男「却下で」

新人女「だめ……ですか?」じぃっ

男「そういう反則くさいポーズしてもダメです」

新人女「反則なんかじゃないですよっ」おろおろ

男「……」
新人女「……」しょぼん

男「自分はもうちょい残りますけど、
 良い時間だからご飯に行きます。事務所一緒に出ましょう」

新人女「はいっ」
男「いや、そうでもしないと残りかねないからね、
 新人女さんは」

661: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:31:49.80 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 19:50 神楽坂の路上

新人女「土日は雨らしいですね」
男「そっかぁ。滅入るね」
新人女「どこでお食事するんですか」

男「ん……。そだね。美味しい親子丼
 食べさせるところがあるんだ」

新人女「わぁ。いいですねっ」
男「行くよね?」

新人女「はいっ。お供します」
男「ちょっと裏手のおそば屋さんなんだけどね」

新人女「この辺のお店沢山知ってるんですか?」
男「うん。職場に入ると付近の探検しない?」

新人女「あんまりしたことはなかったです」

男「座ってデータ管理の仕事とかしていると、
 食事がストレス発散みたいになるしさ。
 散歩がてら店を探したりするよね」

新人女「そうなんですか」

男「こうゆうのは忍者が抜群に上手いんだ。みつけるの」

662: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:33:25.49 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 20:00 蕎麦処『酉伊勢』

新人女「緊張しますね」
男「そう?」

新人女「結構高そうなお店ですよ」こそっ
男「奢ってもらえるでしょ? 男の子に」

新人女「和食のお店って選択肢にないんですよ。
 ――独特の気配ですね」
男「ああ。音楽とか流さないもんね。静かだよね」

男「親子丼二つ。と、茶碗蒸しも二つ」

 店員「はい、ただいまぁ~」

新人女「メニューが出てこないってすごいプレッシャーですよね」
男「あ、それは判る」

新人女「『判ってないやつは帰れよ!』みたいな」
男「うんうん。それはあるなぁ」

新人女「変な注文したら奥で
 笑ってるかもしれないとか考えませんか?」

男「結構小心だなぁ、新人女さんは。ははは」
新人女「いえ、小心者ですから」

男「その時は二人で笑いものになると言うことで」
新人女「そうですね」にこっ

663: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:36:42.60 ID:b1AJlvQP
男「ここもB男がさがしてきてさ」
新人女「ふむふむ」

男「看板にメニューも出て無いじゃない?
 鶏料理、蕎麦だけで」

新人女「はい。真っ黒壁ですしね」

男「それなのに一人でランチ食いに入ったらしいんだよ。
 で、美味い美味い! って今度食いに行こうって。
 そりゃ、ござるござる言うわけさ」

新人女「あはははっ」にこぉっ

男「ん」

新人女「はい?」

男「いや、まだ元気があるみたいで良いことだ」

新人女「……B男さん、なにしてるでしょうか」

男「元気してるよ」

新人女「そうだ。メールの返事は来ましたか?」

男「うん、きてる」

664: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:37:49.45 ID:b1AJlvQP
新人女「どうでした?」
男「さっぱりしたものだよ」

新人女「戻ってくるんですよね?」
男「――」

新人女「おかしいですよね。こんな事で、辞めちゃうなんてっ」
男「うん、おかしい」
新人女「……」

男「でも、おかしいことは世の中に沢山あるから」
新人女「……っ」

男「新人女さんはこの先どうなるのかな」
新人女「……はい?」

男「まだ19だもんね。他の会社に行くかもしれないし、
 誰かと付き合ったり結婚するかもしれないでしょ」

新人女「……」

男「でも、B男はあれで、野良だからさ。
 ――ちゃんと生き抜くよ。
 まぁ、仕方ないよね。殴りたければ殴る。
 やってはいけないことだけど、野良は王様だからなー。
 あれは俺もびっくりしたよ。
 よっぽど腹に据えかねたんだな」

665: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:39:02.86 ID:b1AJlvQP
新人女「……」

男「そういう顔してると、まずくなるよ? せっかくなのに」
新人女「はい?」

男「さっきの顔がいいね」
新人女「え?」

男「笑った顔の方が美味しいよ。
 ――親子丼ってさ、どんぶりの中で卵が蒸されて、
 どんどん加熱されてる訳。つまり、1秒を争う
 デスマーチな食い物なんだよ。
 だから、笑いながら食べないと、負けちゃうよ?」

新人女「え?」

 店員「お待たせしました。親子丼二つ、茶碗蒸し二つ。
  本日の香の物は蕪菁にしてみました。ごゆっくりどうぞ」

男「食おうぜ」
新人女「はい」

男「いただきます」
新人女「いただきます」

男「まぐっ。……もぐっ。ん」
新人女「……もぐ」

男「どうよ」

666: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:40:09.05 ID:b1AJlvQP
新人女「……美味しいです」にこっ
男「そんな感じの顔で」にこっ

男「もぐっ。……まぐ、まぐっ。ん」
新人女「美味しい……本当に」

男「まぁ、あれだよ」
新人女「……?」

男「野良になりたてのちび猫に心配されたら
 忍者だってへそを曲げるよ」

新人女「わたしも、野良ですか?」

男「じゃない? もぐ、もぐっ。あ、茶碗蒸しもどうぞ」

新人女「はい……、いたきます。あの、野良ですか?」

男「違うの?」

新人女「いえ。……嬉しいです」

新人女「びっくりでして……。こんなに嬉しいんだ」

男「あはははっ。変なの。野良なんてウォリアー並に
 底辺なんだぞ?」

667: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:41:14.98 ID:b1AJlvQP
新人女「ええ。そうなんですけど。
 お母さんに云ったら卒倒しちゃうくらいなんですけど」

男「だよ。……もぐっ。……ん」

新人女「卵とろとろですね」

男「そこが美味い訳だ」

新人女「はいっ」

――偉いぞっ

男「?」

新人女「あ、いえ……。その」

男「茶碗蒸し美味い?」

新人女「美味しいです。いや、そうじゃなくて」

(褒めてもらう、あの姿が。――欲しくて)

新人女「あの。なんでもないです。美味しいですっ」

668: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/25(土) 16:43:19.25 ID:b1AJlvQP
――6/7、金曜日 20:45 神楽坂路上

男「それでは、お疲れ様ー」
新人女「はい。ごちそうさまでしたっ」ぴょこっ

男「いえいえいえ。奢りのお礼は労働で!」
新人女「了解しました。マネージャー!」

男「ゆっくり寝てください」
新人女「休養してきます」

男「お休みなさい~」
新人女「あのっ」

男「はい?」
新人女「あ……いえ。なんでもありません。
 お休みなさい、また明日がんばります」

男「はい。ではまたね!」

ぱたぱたぱたぱたっ。

男「さーってと。んじゃ、こっちはもうひとがんばり。
 ……と、そ、の、ま、え、にっ」

男「食事券は残念だけど、全部換金して、振り込んじゃうかな。
 ま、これも先行投資のスカウト料金だ」

781: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 11:33:31.49 ID:OTso.pkP
――6/8、土曜日 11:00 神楽坂作業室

ざぁぁぁぁぁああぁああ

新人女「すごい降りですね」
男「早い台風が来てるらしい」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「でも、悪くないですよ」
男「そう?」

新人女「雨の中でも、暖かい部屋で集中して
 キーボード叩いているのって。いいですよね」

男「……うーん」
新人女「外に買い物行くのよりは」にこっ

男「そうかもなぁ」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「夜は困りますね」
男「あー。そういえばさ」

782: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 11:34:52.66 ID:OTso.pkP
新人女「はい?」
男「なんにもないと思うけれど、雨もすごいし
 今日は早々に切り上げた方が良いよ」

新人女「いえ……あの」
男「?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「実は、お泊まり……じゃなくて、徹夜の準備を
 してきてますので」
男「はい?」

新人女「わたしも、そろそろ完徹デビューを」
男「……えーと」

新人女「今回は引きません」
男「引かないのか」

新人女「男さんのこと見てましたから」
男「はい?」

784: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 11:45:34.40 ID:vuHK/qM0
新人女「わたし技術もないですし、手も早くないです」
男「そんなこと無いと思うんだけど」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「男さん、結構焦ってますよね」
男「……」

新人女「今週末、危ないんですよね?」じぃっ
男「なんで?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「共有フォルダの日付別作業予定がどんどん
 圧縮されてます。私には教えてくれてない
 仕事があるんですよね?」

男「えー」

新人女「まだへたくそだから、真似っこしないと
 仕事のやり方が判らないですけど
 真似をずっとしてるから気がついたんです。
 真似をしたくても出来ない、変な仕事があるって」

787: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 11:57:27.44 ID:vuHK/qM0
新人女「わたし技術もないですし、手も早くないです」
男「そんなこと無いと思うんだけど」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「男さん、結構焦ってますよね」
男「……」

新人女「今週末、危ないんですよね?」じぃっ
男「なんで?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「共有フォルダの日付別作業予定がどんどん
 圧縮されてます。私には教えてくれてない
 仕事があるんですよね?」

男「えー」

新人女「まだへたくそだから、真似っこしないと
 仕事のやり方が判らないですけど
 真似をずっとしてるから気がついたんです。
 真似をしたくても出来ない、変な仕事があるって」

789: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 11:59:57.59 ID:vuHK/qMo
男「……びっくり」
新人女「?」

男「いやいやいや。『「男子三日会わざれば刮目して見よ』
 って、あれずいぶんセクハラな台詞だよなぁ。
 男子だけしか成長しないみたいじゃんね」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「……」
男「C男といい、新人女さんといい。すごいわ」

新人女「当たりましたか?」
男「うん、当たってる」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「別に隠してた訳じゃないけどね。ほら、前に話していた
 保険屋の仕事がね。B男がいなくなって凍結されてる。
 これを火曜日までにやらなきゃならない。
 まぁ、実際この週末だね」

新人女「……」

男「でも、これは。多分俺が無理すれば仕上げられる。
 幸いマクロは手の込んだヤツを作っておいたからね。
 ディスクの入れ替えが手間だけど、自動処理で
 チェックの洗い出しまで終わるはず」

790: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:01:20.69 ID:vuHK/qMo
新人女「ディスク交換と、マクロのセットアップくらい出来ます」
男「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「今晩はあの……お付き合いしますから」かぁっ

男「えっと……うん。いや、いや、ダメっ」

新人女「なんでですか?」じぃっ

男「C男がいるならともかく、初泊まり込みでしょ。
 それなのに、男女二人っきりはダメ。許可できません」

新人女「大丈夫です。男さんのこと信用してますから」
男「安易な信用よくない」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

新人女「そうですか?」
男「そうですっ」

新人女「――そんなこと無いと思うんですけど」
男「信用しちゃダメですっ」

791: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:02:59.37 ID:vuHK/qMo
新人女 びくっ

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「――世の中にはね。『僕を信用して』とか誘って
 『正社員にするから、いいよね?』とか、
 そんな甘いことを云って女の人を
 食べちゃう人もいる訳ですよ」

新人女「はい……」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「だから、そう言う隙はダメ」
新人女「でも、男さんは違いますよね?」

男「マネージャーですから違いません。
 野良の基本は自助努力と自己防衛です」

新人女「……わたしも入門野良ですもんね」

男「そうそう」

新人女「でも、野良は自分の王様ですから」

792: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:04:31.69 ID:vuHK/qMo
男「うん」
新人女「入門王様として、今晩は男さんと一緒にいます」

男「ぐっ」
新人女「王様だから自分で決めて良いですよね?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「新人女さんさ」
新人女「はい?」

男「ほんとはめちゃくちゃ口が上手いよね?」
新人女「そんなことありません。ゆとりですから」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「嘘だぁ~」
新人女「でも、男の人にわがままを言うのは
 慣れてるのかもしれません」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「はぁ……。そういえば、リア充だったんだ。この娘」

793: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:06:09.27 ID:vuHK/qMo
新人女「コツがあるんです」
男「どんな?」

新人女「三回に一回は、相手が
 嬉しくなっちゃうようなことを云うんです」にこっ

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「……」
新人女「……」にこにこ

男「……はぁぁ。だ、ダメだ。この娘。
 タイプが違うけど、先輩並にたちが悪い。今気がついた」

新人女「一緒にいていいですよね?」
男「……」

新人女「仕事がんばりますからっ」
男「了解」

新人女「がんばりますっ」ぱぁっ


799: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:16:57.01 ID:vuHK/qMo
――回想:秋

男「生きてますー?」
女「うち生きてるよ。半分くらい」
男「さすが先輩。おれ3割くらいですよ」

女「やっほー。うち2割勝った」くてっ

男「……」
女「……ふぅ」

男「終わらないっすね」
女「終わらないね。むしろ増えてるね」

男「子だくさんですね」
女「仕事ってなー。ほら、台所の食器みたいに増えるんね」
男「それは皿洗いしてないせいじゃないですか?」

女「なぜその秘密を? さては男……能力者だな!?」
男「全然判りません」

女「うはは……はは。けふんっ」
男「先輩、帰ってくださいよ」

803: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:20:09.69 ID:vuHK/qMo
女「ヤダヤダヤダヤダ。やだもん」
男「そんなに会社が好きですか」

女「xxxx off!! これは男に対するただの反抗期やん」びしっ
男「こんなに躊躇いなく中指立てる女見たことない」
女「えへんっ!」
男「褒めてませんよ?」

女「うちパリカリやしね」
男「なんですかそれ」

女「覚悟完了ってことよ。Pallhkari(パリカリ)。
 しらない?」
男「知りませんよ。何語です? それ」

女「ギリシャ語。
 まぁ、戦士のことやね。……勇ましくて諦めなくて、
 不屈で……。なにより死地にあって笑いを忘れないんよ。
 つまり、あれや。大阪人のことやねっ」

男「そうなのっ!?」

女「そうなんやって。まじで! ギリシャは大阪の領地やし」
男「あなどれねー」

804: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:23:23.75 ID:vuHK/qMo
女「やー。ほら、デスマじゃない?」
男「ですね」

女「毎日がクライマックスじゃない?」
男「俺はエンディングロールが見たいです」

女「そういうピンチの中でも、笑いを忘れない人間で
 いたいわけよ。うちはっ。
 そして毎日のように男にセクハラ発言をしたい」きりっ

男「ありがた迷惑な主義ですね」

女「嬉しいよね」にこっ
男「えー」
女「嬉しいと、云っえっ」

男「痛っ。嬉し、嬉しいです。すいませんっ。
 ってでも、それって戦士と云うよりは、勇士じゃない?
 諦めない、挫けない、退かないって。
 いや、むしろ勇者かなぁ?
 RPGでいえばハーレムポジションじゃないですか、女先輩」

女「んー。勇者かなぁ。
 うち、勇者って云うほどじゃまだないんだよね。
 いいとこ、戦士じゃない?」

男「ウォリアーですか」

女「それだっ! それ。強そう! なんか男に勝ちそう!!」
男「負けてくれたことねーじゃないですか」

805: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:24:49.32 ID:vuHK/qMo
女「年期が違うよ」にこっ
男「たかが半年差で」

女「良いね。それ、いただき。うち、ウォリアー!」
男「ウォリアーなんだ」

女「うん。これでいけたね。唐揚げ力がわいてきた」
男「また、およそ女性らしさとは無縁な」

女「うちウォリアーやしっ!」
男「そうですか、って」

女「で、男はどうすんの? 何になるのよ」
男「……」

女「ん? ほらほら。お姉さんのうちに教えてごらん?」
男「年上ぶらないんで欲しいんすけど」

女「うりうり」つんつん
男「……」ぷいっ

女「なにさ。ケチ」

男「俺はそういう根性無いからなぁ」
女「そんなことはないよ」

806: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:28:27.65 ID:vuHK/qMo
女「みんな辞めちゃって二人っきりになったけど、
 うちと男は残ってる。根性がないなんて
 誰にも云わさないよ。xxxxM野にも」
男「……」

女「うち、ゆずらんし」
男「……」

女「舌噛んで死ぬし」
男「痛いですよ」
女「牛タンくらい食ったことある。うちがびびるかぁ!」
男「いや、話ずれてるし」

女「男は、うちより視界が広いもん。おまけに遠くまで
 見えてると思うよ。うちら組めば最強! どんとこい!」

男「……」

女「だいじょぶだいじょぶ。男の能力は知ってる。
 うちなんてかなわないよ!」

男「女先輩……」

女「『ウォーリーを探せ』ではねっ!」
男「仕事と関係ないじゃんっ」

807: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:29:52.57 ID:vuHK/qMo
女「ほいじゃま」
男「それじゃま」

 ドサッ
   ドサササッ!!

女「行ってみますか、デスマーチ」
男「開けてみますか、ヘルゲート」

女「連結準備はいい?」
男「6台2セット完了」

女「次に帰るのは?」
男「限界考えて戦うほど歳取っちゃいません」

女「む。うちを年増扱いする気だな?」
男「セクハラやめてくれたら控えます」

女「今日は男の携帯に●●画像送ろうと思ってたのに」
男「いや、まじでごめんなさい。
 それより、ほら。セットアップできましたよ。
 マクロ片っ端から当ててっちまいますからね」

女「偉いぞっ」くしゃ
男「先輩こそ、寝ないでくださいよっ」

808: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 12:31:11.72 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 13:00 千葉、アパートの一室

女「……えら……い……ん」

女「……んぅ」

女「……」くてん

女「……んぅ」むくっ

女「……ゆめ?」こしこし

女「おとこどこ?」きょろきょろ

女「……」ぼー

女「いない……」

女「……おきた」

女「起きましたよぅ。……ん。うぅーん、んっ」

女「……んっ」

女「腕、軽くなったね。もう、ちょっとだ」

815: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:03:30.27 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 15:00 神楽坂作業室

がちゃり

M野「ああ、酷い雨だな。……だいなしだ」
男「ああ、M野さん。こんにちは」

新人女 びくっ「……こんにちは」

M野「よう」
男「どうされましたか? 突然に」にこにこ

M野「いや、こっちも休日勤務だよ。誰かのおかげで一日
 つぶれたもんだからね」
男「ははぁ、災難でしたね。お疲れ様です」

M野「いずれ統括になる神楽坂の様子でも見ておこうかとね」
男「はぁ」

M野「どう、新人女ちゃん。慣れた?
 こき使われたりしてない? 何かあったら俺に云うんだよ?
 マネジが横暴だったら俺がすぐ飛ばしてやるからね」

新人女「……は、はい」

M野「可愛いなぁ。来週にでも俺が統括になるからね。
 そうしたら、発足コンパをやろうね。
 もちろん奢るからさ」なでなで

新人女「……」びくっ

820: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:08:40.17 ID:vuHK/qMo
男「今日はどの案件ですか?」
M野「ん。あ? ああ。巣鴨だよ」

男「巣鴨――?」
M野「うん。月曜の朝一までだろ」

男「はい?」

M野「二次納品だよ」

男「……あ、新人女さん。お茶をお出しして。
 M野さん、外は雨すごかったでしょう?
 いま、暖かいのを入れさせますから」

M野「おう、気が利くな」

男「あははは。いえ」

M野「新人女ちゃんの入れてくれたお茶か、
 美味しいの頼むぜ」

男「会議室の方が暖かいですよ」
M野「じゃいくか」

男「はい」

822: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:09:41.67 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 15:05 神楽坂作業室/会議室

M野「で、出来てるのか?」
男「巣鴨ですよね。納品は先月に一回したと思いますが」

M野「二次納品の話だよ。修正分を含めての」
男「それは月末では?」

M野「月曜の朝一だよ」
男「突然ですね。つらいなー」

M野「お前のところの騒がしい女がいただろう?」
男「女先輩ですか?」

M野「あの女に火曜日に云った」
男「火曜日、先輩はお休みでした」

M野「じゃぁ、月曜日だ」
男「先輩は今週はお休みしてたんですよ」

M野「じゃぁ、先週云ったはずだ」
男「……」

M野「連絡不行き届きか? 神楽坂マネージャー」

男「判りました。申し訳ありません」にこっ


825: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:12:59.53 ID:vuHK/qMo
M野「あの女、むかつくよな。切れよ」
男「いえ、彼女の戦力は高いんですよ」

M野「あのな。俺は来週から統括をすることになってるんだ。
 課長クラスだよ。お前は俺の直下に入る」

男「伺っています」

かちっ。しゅぼっ

M野「すぐ飛ばせっから」
男「はい」

M野「いや。お前は誤解してると思ってな」ぷはぁ
男「……」

M野「俺はお前のこと買ってるんだぜ?
 お前処理能力高いし、クライアント受けも悪くないしな。
 俺が統括になった後も使ってやろうとは思ってる。
 正社員になれば、もっと待遇も良くなるだろう?
 こないだ常務からも話が行ったよなぁ。
 あれ、俺だから」

男「ありがとうございます」にこっ

827: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:16:17.58 ID:vuHK/qMo
M野「だから変な考え起こすなよ。
 多少、クライアント受けしたってお前は派遣なんだから。
 仕切りが出来るからって、お前は態度がでかいんだよ。
 営業が仕事取って来なきゃ、結局お前らの
 給料だって払えないんだからな。
 開発だの管理だのってのは、営業の云うこと聞いてれば
 それでいいんだよ」

男「はい、理解しています」

M野「で、だ。巣鴨の件は判ったか?」

男「月曜の朝一ですね? 正確な時間をいいですか?」
M野「先方に11時に到着だ」

男「11時ということは、余裕を持って10時くらいに
 本社にお届けでいいですかね?」

M野「ああ、お前が持ってきてくれ」
男「もちろんです」

M野「なんだか、巣鴨のクライアントな。お前のこと
 妙に褒めててな。なんだ? ケアしといたのか」

男「はぁ、DBの設計段階の話などで何回か
 ご質問させていただきました」

M野「お前も来い」

834: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:19:07.71 ID:vuHK/qMo
M野「一緒に来い。営業の現場ってもんを見せてやるよ」
男「了解しました」

M野「ああ、そうだ。あの女、あれは月曜日から来るのか?」
男「その予定です」

M野「ちょうどいい、あいつも連れてこい」
男「女先輩ですか?」

M野「ああ。あいつは昔から気にくわない。
 俺がせっかく誘ってやったのに……。ふん。
 それはいいや。どうでもいい(ぎりっ)。
 クライアントの前で絞ってやれば逃げ出すだろ
 ――判ってるんだろうな? お前がやるんだぞ」

男「……M野さん、今後も営業との二足のわらじですか?」

M野「ああん? ああ。そうだな。巣鴨は俺の案件だしな。
 譲る訳には。これさえ仕留めれば……。
 お前には関係ないな。口を挟むな」

男「はい」

M野「何でも手を出していかないとな。あははっ」

男「はい。M野さんならば、どちらの仕事でも結果が
 残せると思います」にこっ

M野「あたりまえだ」

847: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 13:30:31.43 ID:vuHK/qM0
――6/8、土曜日 15:45 神楽坂作業室

M野「判ったな。やっておけよ。
 やり終わらなかった場合はお前の能力不足だって事で
 上には報告させてもらうからな」

男「はい、もちろんです」

M野「新人女ちゃん? これからオイスターバーでもどう?」

新人女「いえ、あの……。今日は雨が酷いので……」

M野「そうかぁ。そうだよねぇ。今日は験が悪いよね。
 それじゃ、打ち上げの時にでも遊ぼうっ」

新人女「……あの」
男「では、二人で急いで巣鴨を仕上げますので」

M野「ん? ああ。判った。……新人女ちゃんまたね?」にま

男「お疲れ様でした」ぺこり

M野「あー。おつかれさん」

ぽいっ。ぐちゃっ。がちゃ。かん、かん、かん……。

男「……ふむ」
新人女「……」

 

876: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 14:51:30.96 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 16:10 神楽坂作業室

男「……」
新人女「……」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「……新人女さん? 15番系統のマクロ換えてくれる?」
新人女「はい」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「……」
新人女「……」

かたん

新人女 びくっ

男「あ。ちょい飲み物入れ直す」

新人女「あ、はい」

新人女:カタカタカタ

新人女:カタカタカタ

877: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 14:52:12.85 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 16:20 神楽坂作業室

ことんっ

男「はい」
新人女「ありがとうございます。……あ」

男「いいでしょ?」にこっ
新人女「これは?」

男「ホットチョコ」
新人女「……ん。――。甘くて美味しい……」

男「でしょ?」
新人女「はい」

とさ

男「こくん……、熱っ」
新人女「あははっ」くすっ

男「熱いくらいが美味しいんだよ」
新人女「そうですね」にこっ

878: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 14:54:08.40 ID:vuHK/qMo
新人女「これ、インスタントなんですか?」
男「いや。違うよ、チョコ溶かすんだよ」

新人女「へぇ」

男「でも、溶かすだけだからインスタントみたいなものかなー」
新人女「すごく美味しいです」

男「貴重品だからね。ヴァローナって会社のチョコを
 コッソリ隠し持ってる訳だ。冷蔵庫にね。
 内緒だよ? 食べられちゃうから」

新人女「判らないけれど、すごく美味しい……」

男「気分が暗いときは、暖かくて甘いものだよね」

新人女「……」

男「……」こくん、こくん

新人女「……これ」

男「どした?」

新人女「二度目ですよね」
男「そうだっけ?」

879: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 14:54:54.44 ID:vuHK/qMo
新人女「あったかい……」
男「雨、強いしね」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「あんまり、気にしないで」
新人女「はい」

男「大事なことの優先順を自分の中でつけるとさ」
新人女「……」

男「すごく腹立たしいことでも、納得できないことでも
 それが一番大事って事はまず、無いじゃない」
新人女「……はい」

男「目下は目の前の仕事をこなす。『気持ち』は
 バックアップフォルダに格納しておくって事で」

新人女「はいっ」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

881: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:00:28.91 ID:vuHK/qMo
――6/8、土曜日 21:15 神楽坂作業室

ピザ宅配「では、3250円、確かに」
男「お疲れ様でした。雨、お気をつけてー」
ピザ宅配「あざーっす!」にこっ

男「よし、食べちゃうよ」
新人女「はーいっ」

新人女:カタカタカタ

男「ごめんね。こんなんで」
新人女「いえいえ。雨ですから!」

男「そだね、強いね」
新人女「すごいですね」

ざざざざああああああ

新人女「あ、お先にどうぞ」
男「いただきます。はい……」

新人女「二人だと、なんか寂しいですねー」
男「そうだね。一日中残業気分だね」

新人女「ですね」くすっ

882: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:00:53.88 ID:vuHK/qMo
男「まぁ、食いながらやりますか」
新人女「はい」

 ぺらっ

男「そっちは、どう? もぐ」

新人女「細かい仕事のほうは8割前後です。
 これは仕事の手順は判ったので苦じゃないです。
 一つ一つは15分もかかりません」

男「残りはどんな風になる予定? もぐもぐ」

新人女「時間の問題ですけど、専任でずっとならば
 んっと……どれくらいかな」

男「ん」

新人女「それでも数日はかかりそうです」

男「30時間くらい?」

新人女「おそらく、それくらい……かな。
 あ、食べます。
 食べますって云うか、食べてます。
 そんなに入らないですっ」あせあせっ

男「遠慮は良くない」

883: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:01:17.18 ID:vuHK/qMo
新人女「こんな時間のピザなんて火の付いたダイナマイトですよ」
男「女先輩なんて大喜びで食うぞ?」

新人女「女さんは体質的に太らないんです。
 ……スタイル良いし」

男「そうなのか?」
新人女「ものすごくもてたと思いますよ」

男「女子校だったらしいから」
新人女「余計だと思います」

男「……」
新人女「……もぐもぐ」

男「うわっ!? リアルなイメージがっ!!」
新人女「ね?」にこっ

男「でも、ラブレター出してたのは
 全部下級生の女の子だぞ!?」

新人女「はい」にこ

男「この話は胸に秘めよう」
新人女「ですねっ」

884: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:02:45.22 ID:vuHK/qMo

男「こっちは、不発弾と平行して巣鴨の修正納品」
新人女「巣鴨」

男「うん、先月に納品した大きな会社のね。本拠地は
 四国にある有名な通販会社なんだけど。その支部の
 データ移行の仕事。その修正分」

新人女「……それ、さっきの?」

男「うん、そう」

新人女「……」

男「見えると悩んじゃうのは判るけれど、
 ここは集中力も大事。新人女さんは目の前の
 細かい敵を倒しちゃって」

新人女「はい」

男「そしたら遠慮無く援軍に来て欲しいって云うから」

新人女「はいっ」

男「んじゃ、食べますか」

新人女「そうですねっ」

885: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:03:44.57 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 02:15 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「――」
新人女「……んっと」ぺらっ。ぺらっ

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタカタカタ

男「――」
新人女「男さん。破損データの問い合わせの書式で、
 クライアント用の、ちょっと改まった物って
 ありませんか?」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

男「どういうの?」
新人女「会社用って云うか、礼儀正しいような」

男「メール?」
新人女「いえ、FAXの方が良さそうです」
男「じゃ、キャビネットの大きな引き出し左側の
 緑色のファイル探してみて」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

新人女「――ん。これだっ」にこっ

889: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:07:53.34 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 03:30 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:カタ

新人女「……」こくっ
男「――」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ
新人女:タ

新人女「……んぅ」こくっ

男「新人女さん。新人女さん?」
新人女「あっ。はい」

男「そろそろ仮眠しておいで?」
新人女「いえ、がんばれますっ」

男「3時間で起こしてあげるから」
新人女「……」

男「その方が能率あがるしさ。寝てる間にマクロだけ
 走らせておくので」

新人女「……はい、すいませんです」

890: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:11:58.80 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 07:20 神楽坂作業室

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

男「――」

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

男「んな、もん。かな……よっしと」

 とてて。
 かちゃん

男「新人女さん?」

新人女「……すぅ」

男「これは……。女先輩とは違う種類の破壊力だな。
 うっわ、おまえ、これはチーム崩壊するだろ」

新人女「……くぅん。……くぅん」くてん

男「えーと。……色々やりにくいなぁ。
 なんで女先輩いないんだよ。役たたないな、あのウォリア」

新人女「んぅ」

男「……目覚ましおいて引き上げよ」

892: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:21:30.29 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 07:40 神楽坂作業室

  じりりりり。

男「あー。鳴ってる鳴ってる」
男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

  とて。とてて。がしゃっ!

男「起きた起きた」
男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

  ドテッ。ぐしゃ。ぽきょ。

男「……平気かね」

  ぱたたた。
  ぱたっ。

男:カタカタカタカタカタカタカタカタ

  ざぁぁっ。きゅっ。きゅっ。

新人女「おはようございますっ」

男(そんなラップタイムで身支度できるのか!?)

893: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:34:29.59 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 10:50 神楽坂作業室

りるらりら♪ りるらりら♪

新人女「あ、すいません。電話みたい」
男「いえどうぞー」

ぽぴっ

新人女「はい、もしもし
 ……うん、そうだよ?
 会社……うん……うん」

「――ッ!」
新人女「……違うよ。そうじゃなくて、今大変なのっ。
 違うってば。……うん……関係ないもん。
 それはお母さんの見栄でしょ……ちがっ。
 子供扱いしないでっ。
 お母さんのバカっ! 判らず屋っ!!」じわっ

「――。――!」
新人女「……遊びじゃないんだから、当たり前だよ。
 ううん。いらない……。平気だよ、帰らない。
 ちゃんと……。
 ちゃんとしてるよ、わたしっ。
 ……ちが、そうじゃ」

男 ぽむぽむ

新人女「へ? あ……」

男「お電話変わりました。お嬢様の直接の上司を
 させていただいております、神楽坂班マネージャーの
 男と申します」

895: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:45:34.66 ID:vuHK/qMo
新人母「あなたですね、うちの娘を会社に閉じ込めて」

男「新人女さんにはお世話になっています」

新人母「娘をすぐにでも帰してくれませんか?
 非常識でしょっ。休日にもかかわらず呼び出すとかっ」

  新人女「お母さん、お母さん、やめてよっ」ぎゅっ

男「ごもっともです」

  新人女「やめて、やめてってば」ぐすっ

新人母「あの子は19なんですよ? 嫁入り前の娘を
 外泊させて、あなたたちはちょっとおかしいわ。
 これだから派遣なんて賛成できないの。
 あなたみたいな人間に食い物にされるのよね。
 恥を知ってくださりませんかっ」

  新人女「違っ。恥ずかしいよっ。私が恥ずかしいよ
   お母さんのバカっ!!」ずっ。ぐすっ。

男「おっしゃるとおりです」

896: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:49:16.28 ID:vuHK/qMo
新人母「では帰してくださいね。これ以上非常識を
 続けるようなら派遣会社か、いっそ労務局に
 通報させていただきますからねっ」

男「はい、すぐ帰宅させますので」

  新人女「やです。私いやですっ。男さんっ」

新人母「ふんっ。娘が派遣だなんて只でさえ
 世間体が悪いのに……。
 そんなおかしな職場だなんてまっぴらですよ。
 うちの娘に非常識を吹き込まないでください」

  新人女「違っ……おかあさんが……」ぐすっぐすっ

男「一点だけよろしいでしょうか?
 お嬢さんは入ってまだ日は浅いですが、
 業務の覚えも早くて責任感のある立派な仕事をしています。
 チームのメンバーからも信頼されていますよ。
 いつもお世話になっています。ありがとうございます」

新人母「――っ」

男「本日は直ちに帰宅させまして、明日を振り替え休日と
 させていただきます。よろしいでしょうか?」

新人母「――っ! 結構よ。もう話していたくもないわ」

がちゃ。つーつーつー。

900: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:56:38.34 ID:vuHK/qMo
新人女「……」きゅっ
男「そういうわけで。本日は解散」

新人女「いやです。おかしいのはお母さんです」
男「……」

新人女「お母さんは働いたことがないからっ。
 うちだって全然普通の家なのに。いつまでも昔のつもりでっ。
 今はデスマーチで大変だって事が判って無くて
 だから暇つぶしにあんな嫌がらせをっ」ぽろぽろ

男「おかしくないよ」
新人女「おかしいです」

男「心配してるんだよ。
 ――嫁入り前の娘を外泊させるな。っていうのは、
 まさに常識だよ。もっともだ」

新人女「……」ぐすっ
男「……」

新人女「……」ぐすっ「帰りたく、ありません」

男「それはもうちょっと色っぽいシーンで云わないと」

新人女「私は、これで。もうちょっとで、ぐすっ。
 なにかに。ずっ……なにかを、判る気がして」ぽろぽろ

902: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 15:58:34.76 ID:vuHK/qMo
男「悔しい?」

新人女「――はい。悔しいですっ」ぐずっ

男「なんで?」

新人女「……ずっ。それわ」
男「それは?」

新人女「私の仕事、取り上げられた……から……」ずっ
男「もうなってるよ」

新人女「……そんな」

男「『私の仕事』って云えるなら。なってると思うよ」

新人女「私は、男さんのっ!!」

 (偉いぞっ)

新人女「男さんの隣で、男さんにっ」ぽろっ


905: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 16:03:42.74 ID:vuHK/qMo
男「偉いよ」ぽむっ

新人女「――あ」

 (偉いぞっ)

男「新人女さんのこと、ほんとはきちんと理解できて
 ないんだと思うけれど……。
 がんばったのはよく知っているよ。
 ――でも今回は、ここまで」

新人女「……っ」

男「意地、張りすぎててはダメだよ。本当に野良を
 続けるなら、お母さんくらい言いくるめられないと
 口先三丁で騙してこないと」にこっ

新人女「……」ぎゅっ

男「いや、先輩みたいに家出するってのもあるけれど。
 マネージャーとしてはお勧めも許可も出来ないなー」

新人女「――そんな」ぐすっ

男 ぽむっ

新人女「男さんは……本当に、女さんのこと
 好きなんですねぇ」――にこっ

男「はぁ!?」

910: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 16:10:18.24 ID:vuHK/qMo
新人女「えへへ」くすんっ
男「話の接続が見えないよっ」

新人女「ゆとり特有の会話の断絶ですよ」ぐずっ
男「逆手にしちゃダメでしょ」

新人女「帰ったら、お母さんは
 二度と出してくれません……」ぷいっ

男「出してくれるよ」
新人女「分からず屋なんです」ずっ

男「デスマよりも手強い両親なんていないよ」
新人女「……」

男「勝ってくるように。業務命令でもいいよ」

新人女「交渉が難航したら援軍に来てくれますか?」

男「マネジとして、可愛い部下を見捨てる訳にはいかないな」

新人女「あははっ……男さんだって、口が上手いです」

男「むぅ」

新人女「判りました。正々堂々、中央突破で家に帰還しますっ」

913: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 16:13:22.16 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 11:10 神楽坂、路上

(よろしく)

新人女(……)

(新人が仕事が遅いのは当然です)

新人女(……っ)

(少し視界広がったみたいだね)

新人女(……嬉しかったんだ)

(野良の生き方はどこでも通用するから)

新人女(……女の子じゃなくて。つれて歩ける
 自慢げなトロフィーじゃなくて)

(なれるよ)

新人女(一人前じゃなかったけどっ。いまでも
 足を引っ張ってばかりだけどっ)

(ちゃんとなれるよ)

新人女(いつか一人前になるって
 信じてもらえて、嬉しかったんだ……)

916: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 16:20:01.87 ID:vuHK/qMo
(悪いけど、手加減できなくなった)

新人女(一緒に過ごせて嬉しかった)

(それに気がつくほど、上達したんだ)

新人女(好きだったんだ……)

(小さくて可愛いよっ。あははっ)

新人女(これが好きって感じなんだ)

(美味しいでしょ?)

新人女(私、とろくて今まで知らなかっただけなんだ)

(内緒ね?)

新人女(あんなに合コンもデートもしてたのに……)

(その顔がいいね)

新人女(ははっ。ゆとりはこれだからっ。まいっちゃうなぁ)

 ぽろぽろ ぽろぽろ

新人女(遅かったなぁ。ずっと……。悔しいなぁ……)

921: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 16:51:27.72 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 12:00 神楽坂作業室

男「さぁって。時は正午。残る時間は20時間」

男「兵力確認~。
 神楽坂方面抽出遊撃部隊!
 将軍、俺!
 大佐、俺!
 少佐、俺!
 兵長、俺!
 機械化歩兵、俺! なお、補給の予定は無し!」

ぽきっ、ぽきっ。

男「敵軍の数、計測不能で退路無し!
 ドラゴンボールだったらオラわくわくしすぎちゃって
 心停止とかそういう状況。いや、精神と時の部屋があれば
 デスマーチってこの世から無くなるのか?
 ああ、そう考えると、アレって奴隷制復活のための
 発明品だなぁ」

男「……」

男「ま、いいや。相手にとって不足無し。
 むしろこっちに不足有り。久方ぶりの8連結。
 いっちょ、デスマといきますかっ」

男:カッ――カタカタカカカカカ、カカカカカカカカカカ

 
928: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:02:27.88 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 15:00 神楽坂作業室

男(――おし)

男:カタカタカカカカカ、カカカカカカカカカカ

男「あがり。次……」

男:カタカカカカカカカカカカカカ

男「――」

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

男「――」

かちゃ

男「もしもし? ああ、助かりました!
 開発の方で見て欲しい資料あるんですけど。
 えっと共有のPDFフォルダの中なんですけど」

男:カタカカカカカカカカカカカカ

男「……はい、はい。お願いします。
 恩に着ます。あははは。ええ、はい。
 決戦ですか?
 ――今です」

930: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:05:30.96 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 18:00 神楽坂作業室

男:カタカカカカカカカカカカカカ

男(……指が痙攣してるわ。うざいな。
 取っ替えられねぇかなこれ)

男:カタカカカカカカカカカ

 ガッ!!

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

男「よし、なおった」

男:カタカタカカカカカ、カカカカカカカカカカ

男「――」

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

男「あはっ。おしきた……。こいつも、あ・が・りっっと」

933: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:08:15.46 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 18:00 神楽坂作業室

男(トイレ行くのがロスだな)

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

男(――水分取らなきゃいいのか)

男:カタカタカカカカカ、カカカカカカカカカカ

男「そいつは道理だ」

男:カタカタカ

くるっ

男(……次のマシン)

男:カタカカカカカカカ

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

935: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:09:17.37 ID:vuHK/qMo
――6/9、日曜日 21:00 神楽坂作業室

男(これで、2割ってとこか? 9時間使って2割か……)

男:カタカタカカカカカカカガカカガガカカカ

男(マクロ仕掛けた分があがってきて、
 後半は作業効率がアップする分を含めても……)

男:カタカタカカカカカ、カカカカカカカカカカ

男「今は考えるのも無駄だな」

男:カタカタカカカカカカカカカ

男「――」

男:カカカカカカカガカカガガカカカ

男「ウォリアーの相棒としては、これっくらいはね。
 ピンチのうちに入らないって設定で」

男:カカカカカカカガカカガガカカカガガ

938: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:12:24.88 ID:vuHK/qMo
――神楽坂作業室/給湯室

こぷこぷこぷ

男「……」

男(握力、落ちて来てるなぁ……)

男(まぁ、いいや。指なんてついてれば用は足りる)

男「……ん」

男(別に泥水飲ませることもないか。
 ――女先輩の出社は一日ずらそう。
 見せなくて良いもんだしな。電話しとくか、んっと……)

 ぴ、ぽ。ぴ、ぴ、ぽ。ぴ。ぱ。
 とぅるるるるー。かちゃ

男「もしもし」

女「はろー。ヤングなボーイ。うちは季節外れの
 サンタクロース。ただしプレゼントは唐揚げのみじゃよ」

男「ローストチキンじゃないんですか?」

女「ノルヴェーにいってみなさい? この素人ボーイ。
 そんなものを食べている人間はいないよ?
 各ご家庭は工夫を凝らしてニンニクやショウガ味の
 唐揚げを作っている」

940: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:14:00.17 ID:vuHK/qMo
男「まぁ、いいや。先輩。元気出たみたいですね」
女「うん、もちっ。うち無敵やしっ♪」

男「よかった。体調はどうです?」

女「完璧ですよ。いまのうちならどんな案件でもこなせるよ。
 それこそ花でも摘むようにねっ。
 どれくらい強まっているかと云えば
 ヘル・ミッショネルズと戦ったときのスグルと
 同じくらいかなっ」

男「あのとき、なんか地球に土下座して
 勝負のヒントもらってませんでしたっけ?」

女「ちっ。細かいことにこだわってちゃ
 理不尽だらけの世の中でヒマラヤナキウサギのような
 可愛い悲鳴を上げちゃうよ」

男「一週間ぶりだとすごいパワーっすね」

女「まぁねっ!」

男「で、明日なんですが」
女「はいー? ごめっ。風が強くて」

男「ああ、台風ですしね」

942: 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/26(日) 17:15:51.80 ID:vuHK/qMo
男「で、明日なんですが、休養を一日」
女「ん、あしたー?」

男「はい。ちょっと案件があって、一日お休みを」

女「ちょっ、ザザザまじ……ザザ雨強いな」
        “……ザザな”

女「チキンザザザ……これじゃね」
        “……買ってきてもこれ……ザザ”

男「なにやってんですか」

女「そんなのきまってるやん」
        “……まってるやん”

男「へ?」

がちゃり

  ――6/10、月曜日 00:00 神楽坂作業室

女「月曜日を連れてきたんだよっ」にこっ

男「女先輩っ!?」