1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:11:37.49 ID:uIIaXhB/0
11月――

毎年この時期、オークの畜産農家は大忙しとなる。
「オーク・ヌーヴォー」が解禁されるためである。



オーク・ヌーヴォーとはオーク売買法によって定められた
「最低売買年齢」である15歳を迎えたばかりの若いオークを指す。
ヌーヴォーとは、“新しい”という意味なのである。



通常、市場に出回るオークは18歳以上のものがほとんどなのだが、
年に一度、その年のオークの仕上がりを見るための試金石のような役割で、
まだ若いオーク・ヌーヴォーの出荷が行われるのである。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1605755497

引用元: 女騎士「今年の『オーク・ヌーヴォー』が解禁だ! 絶対買うぞ!」 



2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:12:26.68 ID:uIIaXhB/0
オーク農家の手によって、若いオークたちが次々にトラックに積まれていく。

トラックの荷台で正座をする若いオークたちは皆、緊張の面持ちである。



――今のお気持ちはいかがですか?

オーク・ヌーヴォー「ドキドキしてます。どんな人に買ってもらえるのか楽しみです」



こうして各地に運ばれた若いオーク「オーク・ヌーヴォー」は店先に並び、
11月の第三木曜日に販売が解禁されるのだ。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:12:57.30 ID:uIIaXhB/0
そして、解禁当日の午前0時。

店主「オーク・ヌーヴォー、解禁です!」



ワァッ……!



大勢の女性客、特に女騎士がオーク・ヌーヴォーに群がる。

若いオークが次々に女騎士によって購入される。

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:13:41.16 ID:uIIaXhB/0
オーク・ヌーヴォーを購入した女騎士たち。



――毎年購入されているのですか?

女騎士A「もちろんだ。オークはヌーヴォーに始まり、ヌーヴォーに終わるからな」



――今年のオーク・ヌーヴォーはいかがですか?

女騎士B「肉質、肌のツヤ、あふれる野性、どれをとっても素晴らしい」



――あなたにとって、オーク・ヌーヴォーとは?

女騎士C「私の生活の一部……いや、人生の一部といっても過言ではなかろう」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:14:13.27 ID:uIIaXhB/0
ちなみに今年のキャッチコピーは、ずばり――





『ここ50年で最高の出来』

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:15:03.88 ID:uIIaXhB/0
過去10年間は以下の通りである。

「ここ数年で一番の仕上がり」

「豊富な精力と 欲は、30年に一度の出来といってよい」

「昨年以上の仕上がり」

「脂肪と筋肉を程よく兼ね備えている」

「10年ぶりの当たり年」

「100年に一度の凶暴性」

「過去10年間のいずれをも凌駕する、最高のオーク」

「野性と気品を併せ持つ、エレガントな仕上がり」

「一昨年、昨年と比べても遜色ない出来栄え」

「ここ20年はなかった、最上級のクオリティ」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:15:37.20 ID:uIIaXhB/0
しかし中には、過熱する「オーク・ヌーヴォーブーム」に批判的な意見もある。



「オーク・ヌーヴォーなんて、ただの未成熟なオークじゃない」

「あんなのありがたるのは、女騎士ぐらいのものだわ」

「畜産農家やマスコミの宣伝に乗せられてるのよ」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:16:36.36 ID:uIIaXhB/0
こうした意見に対し、“オークソムリエ”の異名を持つある女騎士はこう反論する。



女騎士「たしかに、オーク・ヌーヴォーは一般的なオークに比べて未成熟だ」

女騎士「しかし、だからこそ自分の手で育て、調教するという楽しみがある」

女騎士「自分の手によって育て上げたオーク・ヌーヴォーによって追い詰められ」

女騎士「“くっ、殺せ!”と言わせられることこそが、私にとっては最上の幸福なのだ」



ちなみに彼女は今年、30頭ものオーク・ヌーヴォーを購入したという。

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:17:35.21 ID:uIIaXhB/0
かつて、オーク・ヌーヴォーとして出荷された経験を持つオークはこう語る。



オーク「まだ15歳だった私を買って下さったのは、ベテランの女騎士さんでした」

オーク「厳しく、そしてなまめかしく調教されました」

オーク「おかげで今はこんなに立派になり、独立することができました」



彼は多くの著作を発表しており、いずれもオークはもちろん、
オーク以外の種族にも高い人気を誇っている。

『女騎士に「くっ、殺せ!」と言わせる100の方法』

『オークよ、ブヒるな、ブヒらせろ』

『襲う時は容赦なく、抱きしめる時は甘く優しく』

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/19(木) 12:18:31.56 ID:uIIaXhB/0
――ところで今、なんの行列に並んでいるのですか?

オーク「ああ、これは商品購入のために並んでいるのです」

オーク「今年の“女騎士・ヌーヴォー”が今日解禁なのでね」



彼の並ぶ行列の先には、ぎこちなく鎧を身に付けた若い女騎士たちが、
不安そうな、そしてどこか期待したような表情で陳列されていた。







終わり