3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 20:31:11.78 ID:kNFrRh+n0

恒一「いったいどうなってるんだ!?」

赤沢「!!!?」

赤沢「(どういうこと?)」

赤沢「(昨日私が部屋に忍び込んで、父親と私のアドレス以外全部消去しておいたはずなのに)」

赤沢「(……まさか!?)」

鳴「」ニヤリ


引用元: 恒一「携帯の電話帳が見崎とお父さんだけになってる・・・」 




9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 20:39:17.89 ID:66KGn44p0

恒一「おかしいなあ。余計なボタン押しちゃったかな?」ピッ

望月「どうかしたの?」

恒一「うん…。なんか登録していた番号がごっそり消えちゃっててさ、どうしてかなって」

勅使河原「落としたりとかしたんじゃねえの?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 20:53:00.19 ID:66KGn44p0

恒一「うーん、どうだったかな…。
    とにかくそういうわけだからさ、二人とも、もう一回番号教えてもらえる?」

勅使河原「はいはい。ええっと…」ピッピッ…

勅使河原「……よしっ。ほら、望月」

望月「うん」ピッピッ…

恒一「ごめんね、面倒かけて」

望月「ううん、気にしないで。――はいっ、掛けといたよ」

恒一「ありがとう」

鳴「…」

――――――

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:01:32.05 ID:66KGn44p0

恒一「赤沢さん」

赤沢「ん、恒一くんか。どうしたの?」

恒一「あの…悪いんだけど、また電話番号おしえてくれないかな?」

赤沢「え? この前おしえたばかりだと思ったんだけど…」

恒一「そ、それが、いつの間にか消えちゃっててさ」

赤沢「ふうん、随分とピンポイントで消えたのね」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:07:40.58 ID:66KGn44p0

恒一「えっ? ああ、違うよ。別に赤沢さんのだけ消えたわけじゃなくて――」

赤沢「ふふっ、分かってる。さっきの会話、聞こえてたから」

恒一「あ……ははっ、それならよかった」

恒一「じゃあ、そういうわけだから教えてくれる?」

赤沢「もちろんっ」ニコッ

鳴「…」

――――――
 

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:33:24.89 ID:66KGn44p0

~二日後~


風見「他人の目がない時間があったんだろうね」

恒一「祭りの参加者なら、誰でもカレーに毒を入れるチャンスはあった、ってことなのかな」

望月「ぼくたちほどじゃないにしても大事件だね」

勅使河原「俺、当分カレーは食えそうにないなあ…」

鳴「榊原くん、料理が得意って言ってたよね」

望月「へえぇ、そうなんだ。じゃあカレー作ってもらおうか、勅使河原くん」

恒一「ついにぼくの料理スキルを生かす時が来たね」

勅使河原「やめろって言ってるだろ!?」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:36:37.70 ID:66KGn44p0

風見「ふっ…。もう少し勅使河原で遊んでいたかったけど、次は体育だね」

勅使河原「なんだよそれ…。ほら行くぞ」

望月「はやく着替えないと」

恒一「食後の体育は大変だね」

鳴「榊原くんは今日の体育は見学なの?」

恒一「うん。一昨日やってみてわかったけど、まだ無理だったみたい」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:39:33.14 ID:66KGn44p0

鳴「そう…。ところで憶えてる?」

恒一「えっ、何を?」

鳴「いつか、ごちそうしてくれるって」

恒一「あ、ああ。うん、憶えてるよ」

鳴「――そっか」

鳴「楽しみにしてるから」

――――――

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:43:53.95 ID:66KGn44p0

~翌木曜日~


ガサガサ

恒一「はあ…(美術室遠いなあ)」

ボフッ

恒一「ん? うわっ!」

綾野「――どうしたのー?」タッタッタッ

赤沢「えっ! 恒一くんっ?」タタッ

恒一「あ、赤沢さ――」

赤沢「いいから後ろ向いて!」バンバンバン!

恒一「い、いたっ、赤沢さんもうちょっと優しくはたいてよ」

赤沢「文句言わないっ」バシバシ

綾野「わあ、粉まみれ」パタパタ

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:45:22.10 ID:66KGn44p0

恒一「ははは…誰かのイタズラかな」

綾野「それにしても――ペロッ…何だろう?」

恒一「なっ、なにやってるの!?」

赤沢「おなか壊しても知らないわよ」バシバシ

綾野「気にしない気にしない♪」パタパタ

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:47:51.32 ID:66KGn44p0

赤沢「……はあ、これ以上は無理ね」

綾野「あーあ、私たちも手洗わないと」

赤沢「恒一くんジャージ持ってきてる?」

恒一「うん、一応持ってきてるけど」

赤沢「そう。どうする? 着替えてくるなら、私たちから美術の先生に言っておくけど」

恒一「うーん…じゃあお願いしようかな」

赤沢「うん、まかせて」

綾野「そのかわり、今度デートでもしてもらおうかなぁ」

恒一「えっ」

赤沢「いいから私たちも急ぐわよ。じゃあね恒一くん」

恒一「あ、うん。二人ともありがとう」

――――――

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:50:37.72 ID:66KGn44p0

望月「あはは、だからジャージなんだ。大変だったね」

恒一「まったくだよ。こうなったらぼくもやってやろうかな、望月に」

望月「なんでぼくなの?!」

鳴「…」

赤沢「見崎さん、どうしたの?」

鳴「ううん、なんでもない」

赤沢「そう? あ、先生――」

――――――

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 21:53:57.40 ID:66KGn44p0

~恒一の部屋~


榊原「はあ…」

榊原(まったく、誰があんなことを…。でも夏服で助かったよ)

榊原(…おばあちゃんに頼めば、どうにかしてくれるかなあ)

榊原「あっ、携帯出すの忘れてた」ゴソゴソ

榊原「大丈夫…だよな」ピッ

榊原「…」ピッピッ…

榊原「――えっ」

――――――

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:00:59.34 ID:66KGn44p0

~翌金曜日~


勅使河原「またかよ?」

恒一「ごめん…」

勅使河原「ああいや、別にいいんだけどさ」

風見「どうしたの?」

望月「榊原くんの携帯電話のデータが消えちゃったの」

勅使河原「これで二回目だ」

風見「二回目?」

恒一「2、3日前にも消えちゃってさ」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:05:19.05 ID:66KGn44p0

風見「そうだったんだ。故障…とか?」

恒一「うーん、やっぱりそうなのかなあ」ピッピッ…

恒一(操作してても違和感がある気がしないでもないし、やっぱり…故障か?)

恒一(――でもどうして見崎とお父さんだけ?)

恒一「ああ、そういうわけだから度々悪いんだけど、また番号教えてくれるかな?」

勅使河原「おう――って、また消えたら面倒だから、ついでにメモ渡しとくよ」カキカキ

望月「あ、ぼくもそうしようっと」カキカキ

恒一「ごめん、助かるよ」

鳴「…」

――――――

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:10:50.51 ID:66KGn44p0

恒一(すごく……訊きづらい)

恒一(赤沢さんってなんか怖いんだよなあ。でもこのままにしておくわけには…)

恒一「……よしっ」

ゴホンッ

恒一「あ、あの、赤沢さん」ニコッ

赤沢「ああ、恒一くん。どうしたの?」

恒一「ええっと、さ…。あのぉ…」

赤沢「歯切れが悪いわね。告白でもしに来たの?」ニヤリ

恒一「違うよ!」

赤沢「っそ、そう…」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:18:30.16 ID:66KGn44p0

恒一「ああごめん、大きい声出しちゃって。でも本当にそういうのじゃなくて…」

赤沢「ぅん…」

恒一「その…また、番号教えてくれないかなあって」

赤沢「番号って、電話番号?」

恒一「…」コクッ

赤沢「…またなの?」

恒一(お、怒られる!)ゴクリ

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:23:28.93 ID:66KGn44p0

赤沢「もうっ、仕方ないわね」

恒一「――え?」

赤沢「どうしたのよ。まさか私が怒って教えないと思った?」ピッピッ…

恒一「あ、いや、あははは…」

赤沢「まったく。私を何だと思ってるのかしら……はいっ、掛けといた」

恒一「うん…、ごめんね何度も」

赤沢「べつにいいわよ、そんなことじゃ私は怒らないから」

恒一「そ、そっか…。ありがとう」

赤沢「ふふっ。それにしても、どうしてまた訊く羽目になったの?」

恒一「うっ、実は……」

鳴「…」

――――――

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 22:28:47.89 ID:66KGn44p0

望月「じゃあまたね、榊原くん」

恒一「うん、部活頑張って」

鳴「…」

恒一(――さて)ガタッ

鳴「榊原くん」

恒一「わっ、ど、どうしたの見崎? (いつの間に…)」

鳴「今日、一緒に帰らない?」

恒一「ぁ、ああ、そうだね。帰ろうか」

――――――

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:25:45.61 ID:66KGn44p0

トコトコ…

鳴「明日明後日はどう過ごすの?」

恒一「暇だろうから、適当に本屋でものぞいてみようかなって」

鳴「そうなんだ」

恒一「見崎は?」

鳴「――秘密」

恒一「不公平だなぁ…」

鳴「…」

恒一「…」

鳴「――ねえ」

恒一「うん?」

鳴「私に、訊きたいことない?」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:31:12.28 ID:66KGn44p0

恒一「っ…」

鳴「…」

恒一「どうして、そんな質問を?」

鳴「榊原くんが、何か訊きたそうな顔してたから…かな」

恒一「ははっ、どういう顔なんだろ…」

鳴「…」

恒一「…」

恒一「――ないよ」

鳴「…そう」

恒一「うん…」

鳴「…」

恒一「…」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:34:06.32 ID:66KGn44p0

恒一(――『見崎が消した』)

恒一(その可能性を考えなかったわけじゃない。
   どう考えても見崎とお父さんの番号だけ消えてないなんて不自然だ。けど……どうして?)

鳴「…」

恒一(いや、そんなことあるわけがない。
   そうだよ。――これ以上消えなければ、もしくはこの休日中に消えれば)

鳴「榊原くん」

恒一「えっ」

鳴「私、こっちだから」

恒一「あっ、そうだったね。またね見崎」

鳴「うん。またね…」

――――――

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:39:36.25 ID:66KGn44p0

~翌週月曜日~



恒一「…」

風見「自分の血痕を隠すために、遺体の首を切断して誤魔化したんだよ」

勅使河原「なるほど、木を隠すなら――ってことか」

望月「うぅ、それなら何も首じゃなくったって」

鳴「首じゃないと、見立てが成立しないけど?」

恒一「…」ペラッ

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:44:51.15 ID:66KGn44p0

勅使河原「ははっ、そりゃそうだ。――あ、そういえば…」

勅使河原「おい、そこのホラー少年」

恒一「うっ…。どうしたの?」

勅使河原「携帯の中身、また飛んだりしてないか?」

恒一「ああうん、大丈夫だよ。今のところはね。それに、ちゃんともらったメモもある」

勅使河原「そうか、そりゃあよかっ――」

赤沢「恒一くん、何読んでるの?」ヒョコッ

恒一「うわっ、赤沢さんっ」ビクッ

鳴「…」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:50:17.12 ID:66KGn44p0

赤沢「ねえ、何読んでるの?」ピタッ

恒一「え、あ、あのっ…」

赤沢「んー?」ズイ

恒一「だ、『ダーク・ハーフ』っていう…(ああ、背中に当たるこれは)」

赤沢「スティーヴン・キング?」ムギュッ

恒一「し、知ってるんだ…(間違いない、●●●――)」

鳴「赤沢さん」

風見「!」

勅使河原「!」

望月「…」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/25(土) 23:56:12.29 ID:66KGn44p0

鳴「榊原くんが迷惑そうにしてるから、離れたほうがいいよ」

赤沢「ん? そうなの恒一くん?」

恒一「えっ、いや別に――」

鳴「どう見ても迷惑そうだよ?」

赤沢「ふうん? そうは見えないけど」ギュウゥ

恒一(なんて柔らかいんだ――。これはすごいぞっ)

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:00:28.17 ID:8wTyOC+d0

鳴「ううん、目で私に助けを求めてきてる」

恒一「いや見崎、ぼくは大丈夫だよ」キリッ

鳴「ほら、迷惑だ、って」

恒一「え? いや、だからぼくは大丈――」

鳴「いいから」

恒一「何がっ?!」

男子「……」

――――――

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:07:20.01 ID:8wTyOC+d0

~放課後~


鳴「榊原くん」

恒一「っな、なに…?」

鳴「一緒に帰って」

恒一「う、うん。わかった」

鳴「…」

――――――

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:17:39.27 ID:8wTyOC+d0

トコトコ

恒一「…」

鳴「…」

恒一(――見崎が怒っている)

恒一(何となくだけどそう思う…)

恒一(原因は、はっきりとは分からないけど赤沢さんの●●●●にあるだろう。
    そしてぼくが悪いんだろうということも分かる。けど…)

鳴「…」

恒一(どうすればいいのか分からないっ)

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:24:54.43 ID:8wTyOC+d0

鳴「…」チラッ

恒一「はぁ…」

鳴「…」ススス…

恒一「…ん? 見崎?」

鳴「…」スルリ

恒一「え、あっ…」

鳴「…」

恒一「ど、どうして――ぼくと腕組んでるの?」

鳴「…ん」グイッ

恒一「み、見崎?」

鳴「…んっ」ギュウゥ

恒一「…」

恒一(やっぱりどうすればいいのか分からないっ)ドキドキ

――――――

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:27:03.94 ID:8wTyOC+d0

恒一(結局、別れ道まで腕を組んだままだった。一言も口はきいてもらえなかったけど…)

恒一(いい…体験だった…)グッ

恒一「まあでも、あれは赤沢さんの勝ちだな」フッ

ヴーヴー

恒一「ん?」ゴソゴソ


[着信 オヤジ]


恒一「お父さん?」スタスタ

ピッ
恒一「もしもし」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:30:00.60 ID:8wTyOC+d0

陽介「おう恒一か、暑いぞインドはー」

恒一「それはもうわかったよ」

陽介「昨日電話したんだけどな、電源切ってたみたいだな」

恒一「えっ…あー、きっと電波状況がよくなかったんだね。昨日は電源切ってなかったよ」

陽介「そうだったのか」

恒一「たぶんそうだよ。家の中だって縁側まで移動しないと聞こえにくくなっちゃうんだから」

陽介「そうか。――ああそうそう、それでな……」


…………。

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:32:41.20 ID:8wTyOC+d0


恒一「うん、じゃあね」ピッ

恒一(お土産なんて何でもいいのに…)

恒一「…あ、そうだ」ピッピッ…

恒一「……」

――――――

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:49:21.86 ID:8wTyOC+d0

~翌火曜日~


望月「また消えたんだ…」

恒一「うん…。あっ、望月のはもう登録したから大丈夫だよ」

望月「ふふっ、ぼくの番号なら何度だって教えるよ」ニコニコ

恒一「そうかい、ありがとう少年」

望月「ううん、気にしないで。ところで、消えたのは電話帳だけなの?」

恒一「いや、履歴なんかも全部」

望月「じゃあ本当に全部なんだ」

恒一「う、うん。どしてかなあ…」

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 00:52:46.58 ID:8wTyOC+d0

望月「さあ…? でもこれはもう故障だね」

恒一「あぁ、たぶん」

望月「たぶん――って、だってもう三回目なんだよ?」

恒一「それはそうなんだけどさ」チラッ

鳴「…」ジー

恒一「っ!」
バッ

望月「えっ、どうしたの?」

恒一「い、いや、なんでもっ」

恒一(――やっぱり…そうなのか?)

望月「それで、買い換えるならさ、ぼくと同じのにしない?」

恒一「望月のそれはPHSだろ?」

望月「でも安いよ?」

鳴「…」

――――――

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:05:29.62 ID:8wTyOC+d0

恒一「赤沢さーん」

赤沢「ん? どうしたの恒一くん」

恒一「実はまた――」

赤沢「番号が消えちゃった?」

恒一「そうなんだよ。困ったもんだね」

赤沢「へえぇ? 私と話す口実が欲しいためにわざと消してたりして」

恒一「あははっ、どうだろうね?」

赤沢「ふふっ、私はそれでも全然構わないけど」

恒一(ふぅ、『そんなことじゃ怒らない』っていうのは本当みたいだ)

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:07:54.60 ID:8wTyOC+d0

赤沢「――はい、完了」

恒一「ん、ありがとう。本当に何度もごめんね」

赤沢「だから、いいって言ってるでしょ」ニコッ

恒一(あぁ、赤沢さん優しいなあ…)

榊原(うん。なんだか少し…赤沢さんと仲良くなれた気がする)

鳴「…」ジー…

――――――

141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:17:21.77 ID:8wTyOC+d0

~昼休み~


恒一「やっぱり入れ替わってたんだ」

風見「うん、これはもう王道になってるね」

望月「でも車いす生活は苦労したんだろうなあ」

風見「ははっ、そうだね。そういうことを想像するのも面白いかも」

勅使河原「そうまでして結婚したのにな…。なんてビ  だ!」

風見「お前は少し落ち着け」

鳴「私なら、絶対裏切らないけど…」チラッ

恒一「…」モグモグ

…………。

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:19:12.60 ID:8wTyOC+d0

恒一「ふう、ごちそうさま。――見崎、ちょっといい?」

鳴「なに?」

恒一「ちょっと、一緒に来てもらえるかなあって」

鳴「うん、いいよ」

勅使河原「なんだ告白かあ?」ニヤニヤ

鳴「えっ」

恒一「ちがうよ」スタスタ

勅使河原「はあ、もうこのネタには慣れたか…」

鳴「…」

――――――

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:28:53.24 ID:8wTyOC+d0

~屋上~


恒一「来てくれないかと思ったよ」

鳴「どうして?」

恒一「なんか昨日、怒ってたみたいだからさ」

鳴「怒ってないよ?」

恒一「え…だって――」

鳴「怒ってない」

恒一「…」

鳴「怒ってない」

恒一「…わかった。ぼくの勘違いだったよ」

鳴「うん」コクッ

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:31:10.77 ID:8wTyOC+d0

恒一「じゃあ本題に入るけど――」

恒一「何日か前に見崎はぼくに訊きたいことがないか、って言ってたね? それなんだけど…」

鳴「そっか…。やっとか」

恒一「え?」

鳴「やっと、訊いてくれるんだ?」

恒一「『やっと』って…」

鳴「でも、わざわざ場所を移さなくったって…」

恒一(ぼくの質問を待っていたのか。じゃあ、やっぱりそうなのか…)

恒一「それじゃあ、見崎…」

鳴「…」ウズウズ

恒一「――やっぱり、きみがぼくの携帯のデータを消してたんだね?」

鳴「…………」

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:34:18.20 ID:8wTyOC+d0

恒一「なんでこんな…」

鳴「……どうして、私がやったって思ったの?」

恒一「えっ、そりゃあ、お父さんと君の番号だけが消えていなかったからだよ。
    どういう意味があるかはよく分からないけど、もしかしたらきみなのかなって」

鳴「…」

恒一「こういう故障もあるんじゃないかと思ったんだけどね。
    それでいよいよ故障かどうか確かめてもらう前に、見崎に確認しておきたかったんだ。
    きみを疑うようなことは、したくなかったんだけど。まさか本当に見崎が消していただなんて」

鳴「――そっか。そういうことか」

恒一「はあ…。どうしてこんなことを?」

鳴「私じゃない」

恒一「えっ、いや、どうしたのいきなり。だってさっき――」

鳴「本当に私じゃないの」

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:37:26.30 ID:8wTyOC+d0
恒一「ちょっと待ってよ、どういうこと? 
    だってさっきは『やっと訊いた』とか…。このことじゃなかったの?」

鳴「それは…」

恒一「それは?」

鳴「電話番号を…訊かれるかと思ったの」

恒一「どうして、電話番号?」

鳴「榊原くんの携帯のデータが消えてるんだってことは、教室にいて聞こえてた。
  だから私の番号も消えたんだって思ったの。
  それでね、望月くんたちには訊いて回ってたのに、私だけ――って」

恒一(……)

鳴「どうして私には訊いてこないのか、ずっと……」

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:41:19.05 ID:8wTyOC+d0

鳴「でも――それがどうしてかは、さっき分かった」

恒一「…」

鳴「…」

恒一「……じゃあ、改めて訊くけど」

恒一「ぼくの携帯のデータを消したのは見崎、きみなの?」

鳴「ううん――。私じゃない」

恒一「…」

鳴「…」

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:44:02.59 ID:8wTyOC+d0

恒一「…そうか。わかった、信じるよ」

鳴「……随分、あっさり信じてくれるんだね」

恒一「まあね。これでもぼく、見崎のことはかなり信頼してるんだよ?」

鳴「けど、真っ先に疑うんだね」クスッ

恒一「うっ、そうだね…。全然説得力なかったね…」

鳴「ふふっ」

恒一「――見崎、ごめんね疑っちゃって」

鳴「ううん、私も知りたかったことが知れてよかった。あと、ありがとう」

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:46:54.92 ID:8wTyOC+d0

恒一「ど、どうして?」

鳴「信じてくれて。それと、私の番号が消えてなかったこと、みんなに言ってなかったよね」

恒一「あ、あはは…」

鳴「くすっ…」

恒一(そっか、見崎じゃなかったか。――よかった…)

…………。

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 01:53:44.43 ID:8wTyOC+d0

恒一「あーあ、じゃあこれは故障だったのかなぁ」

鳴「…」

恒一「一応、お父さんに連絡しておかないと…」

鳴「榊原くん」

恒一「ん?」

鳴「確かめてみようか」

恒一「――えっ」

――――――

220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 09:26:47.39 ID:8wTyOC+d0

~翌水曜日~


恒一「!(きたっ)」

恒一「先生すみません、ちょっとトイレ行ってきます」
スタスタ…

…………。

タッタッタッ…

恒一「見崎っ」ガラッ

鳴「榊原くん。見つかったよ、犯人」

「……」

恒一「あっ…」

恒一「――赤沢さん」

223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 09:38:10.67 ID:8wTyOC+d0

赤沢「……」

恒一「それ…ぼくの携帯? ど、どうして赤沢さんが…」

鳴「赤沢さん、答えて」

赤沢「……はあ、現行犯じゃしょうがないか」

恒一「赤沢さん…」

赤沢「いいよ、何でも話す。――でもその前に一つだけいい?」

恒一「…なに?」

赤沢「この状況を、教えてほしい」

恒一「――わかった」

225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 09:48:20.46 ID:8wTyOC+d0

~前日~


鳴「確かめてみようか」

恒一「――えっ」

恒一「確かめる? 見崎って機械に強かったんだ?」

鳴「ううん、私が言っているのは、故障かどうかじゃなくて、犯人がいるかどうか」

恒一「犯人って…データを消した犯人? どうやって」

鳴「明日、体育があるよね。榊原くんはこの時ジャージに着替えて見学しててほしいの」

恒一「ジャージで見学?」

鳴「そのとき、携帯電話は制服と一緒に置いていくのを忘れないで」

恒一「ああ――、囮か」

227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 10:00:11.65 ID:8wTyOC+d0

鳴「そう。私が隠れて見張っているから、榊原くんは、誰かに携帯を借りて」

鳴「もし犯人が現れたら、私からそれに合図する」

恒一「なるほど、ぼくが見張り役だったら意味ないもんね」

鳴「うん。犯人に榊原くんのジャージ姿を見せなきゃいけない」

恒一「ま、そんなのがいたとしたら、だけどね」

鳴「そうだね。――どうかな?」

229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 10:06:14.16 ID:8wTyOC+d0

恒一「うぅん…。でも、それだと見崎が危険じゃないかな?」

鳴「私は大丈夫。ここは学校だから、いざとなったら大声を出せば…」

恒一「あははっ、見崎が大声をねえ」

鳴「…」

恒一「あっ、ううん、なんでもないっ。――じゃあその作戦、頼めるかな?」

鳴「うん、いいよ」

恒一「ありがとう。でも見崎、本当に気をつけてね」

232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 10:20:32.71 ID:8wTyOC+d0
――――――
――――
――

恒一「そんなわけで、これが望月のPHS」スッ

赤沢「なるほど、私はまんまと罠にはまったってわけか」

鳴「こんなに簡単に引っかかるなんて思わなかったけど」

恒一「そうだね。じゃあ今度はこっちの質問に答えてもらえるかな」

赤沢「どうぞ」

恒一「――どうしてこんなことをしたの?」

赤沢「んっ…そこからか」

恒一「それだけでいいよ。そこが一番知りたかったからね」

赤沢「一番言い辛いところだったんだけど、仕方ないか」

233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 10:30:32.29 ID:8wTyOC+d0

鳴「――待って」

赤沢「?」

恒一「見崎?」

鳴「まず、どうやってやったのかを教えて」

恒一「え…な、なんでそこからなの?」

鳴「単純に、知りたいから。別にそれを知ったからといって、私が何かしようというわけじゃないの」

恒一「…」

赤沢「…」

鳴「…なに?」

赤沢「…まあ、いいけど」

恒一「えぇ…」

239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 10:48:03.81 ID:8wTyOC+d0

鳴「それじゃあ一回目のときのことを」

赤沢「それなら、この現場が答えよ。
    恒一くんが体育をやっている間に適当な理由で抜け出して、ね」

恒一「まあ、それは何となくわかってたよ」

鳴「じゃあ、二回目は?」

赤沢「あのときは…そうね。恒一くんを着換えさせたところから」

鳴「着換えさせたっ?」ピクッ

赤沢「ふっ、見崎さんが心配するようなことはないわよ」

244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:09:27.62 ID:8wTyOC+d0

赤沢「恒一くん、あの日の――美術室に移動した時のことは覚えてる?」

恒一「あ、うん。ぼくが粉まみれになった時だよね」

赤沢「そう。実はあれをやったの私なの」

恒一「え?」

赤沢「野球のピッチャーなんかが使うあの、滑り止め…でいいのかな?」

恒一「あぁ、えっと…ロジンバッグ、だっけ?」

赤沢「ん、たぶんそれだと思う。粉を出しやすくするために、さらに自分で穴をあけたやつなんだけどね」

赤沢「それを廊下の角に隠れて、恒一くん目がけて、こう――ね」ヒョイ

恒一「赤沢さんだったのか…」

248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:16:29.43 ID:8wTyOC+d0
恒一「…あれっ、ちょっと待って」

恒一「たしか、あの後すぐに赤沢さんはぼくに声をかけてくれたよね。
    そんなものを投げた直後だったら、赤沢さんの手だって……」

――いいから後ろ向いて!

――い、いたっ、赤沢さんもうちょっと優しくはたいてよ。

恒一「……そうか」

――あーあ、私たちも手洗わないと。

恒一「ぼくは、服をはたいてもらう前の赤沢さんの手を見ていなかった」

赤沢「そう。上手く誤魔化せてたみたいね。ま、今となってはどうでもいいけど」

鳴「でも、それで榊原くんが着替えなかったらどうしてたの?
  そもそも榊原くんが携帯電話をジャージのポケットに移したら…」

赤沢「別の手を考える予定だった。
    見つかりさえしなければ、何度失敗したって構わなかったから」

鳴「…そう」

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:19:10.67 ID:8wTyOC+d0

恒一「じゃあ綾野さんは? あのときは彼女も一緒だったはずだけど」

赤沢「そこは完全に計算外。私の注意が足りなかったのね。
    後ろから走ってこられた時には驚いたわ」

赤沢「そのせいで私は、恒一くんに声をかけざるを得なくなったの」

恒一「――そうか、だからわざわざ……。
    とりあえず、綾野さんが共犯じゃなくてよかったよ」

257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:32:30.51 ID:8wTyOC+d0

赤沢「あとは簡単ね。ここでも美術の授業を抜け出して…」

鳴「データを消しに行った」

恒一(この学校、授業抜け出すの簡単だなあ)

赤沢「そう。まあ、ちょっと違うんだけど」

鳴「違うって?」

赤沢「こういうこと」スッ

鳴「えっ」

恒一「あっ!」

恒一「――ぼくの携帯が、二つ…?」

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:37:47.49 ID:8wTyOC+d0

赤沢「うん、正確に言えば、こっちが恒一くんの携帯。――はい、返すね」

恒一「う、うん」

赤沢「そしてこっちが――私が用意した携帯」フリフリ

鳴「……つまり消しに行ったんじゃなくて、入れ替えに行った?」

赤沢「そ。恒一くんのお父さんと見崎さんの番号は一回目のときに覚えたから。
    それを登録したこの携帯と恒一くんの携帯とを入れ替えたの」

恒一(そうか、だから違和感が…)

鳴「何で気付かないの?」

恒一「だ、だって、携帯なんて電話するときくらいしか使わないじゃないかっ」

鳴「それはそうだけど…」

262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 11:49:59.17 ID:8wTyOC+d0

恒一「でも、そのためにぼくと同じ携帯を用意するなんて…」

赤沢「そうね、そこはかなり苦労した」

恒一「……もしぼくが、その携帯から誰かの携帯に電話してたら?」

赤沢「そうなったらもう終わり。全部素直に白状するつもりだった」

恒一「そんな…無茶苦茶だよ…」

赤沢「そうまでして、私は恒一くんを…恒一くんの携帯を持ってみたかった。っていうのもあった」

恒一「…」

赤沢「――ま、そんなわけで、この日は家に戻ってから、恒一くんの携帯をイロイロ使わせてもらったわ」

恒一「イロイロ?」

赤沢「うん、イロイロ…」クスッ

恒一「…」ゴクリ

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:04:31.36 ID:8wTyOC+d0

鳴「……三回目は?」

恒一「はっ! そ、そうだっ。実はぼくもそこは気になっていたんだ」

恒一「だってぼくは、美術があったその日から今日まで、学校では一度も着替えなんてしていなかったし、
    携帯もポケットに入れっぱなしだった。それなのにいつそんなことが?」

赤沢「――三回目は、一昨日だった」

恒一「一昨日…」

鳴「榊原くんが赤沢さんに身体を押し付けられて、恥も外聞も無くマヌケ面を晒していた日だね」

恒一「」

赤沢「そう。恒一くんが私の身体で悦んでいた日」

恒一「」

272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:19:24.44 ID:8wTyOC+d0

赤沢「まあ、やったのはその日というか、そのときね」

赤沢「私が携帯電話を入れ替えたことはもう分かったよね。入れ替えるだけなら時間はかからない。
    あのとき、どさくさに紛れて恒一くんのポケットに手を入れて、携帯を入れ替えたの。
    一回目と二回目のときに、どのポケットに携帯を入れているかは把握していたから簡単だった」

鳴「愚かにも赤沢さんの胸に誑かされた榊原くんは、それに気付かなかったのね。愚かにも」

恒一「」

赤沢「他にはある?」

鳴「榊原くんの携帯に、私とお義父さんの番号を残しておいたのはどうして?」

赤沢「…」

鳴「…」

276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:31:52.15 ID:8wTyOC+d0

赤沢「…それは恒一くんに見崎さんを疑ってもらうため。他は消えてるのに見崎さんのは残ってるって
    やっぱり変だと思うしょ? ――これは謝っとく。ごめんなさい、見崎さん」

鳴「…」
  
赤沢「恒一くんのお父さんの番号は、やっぱり恒一くんが困ると思って…。海外にいるって聞いてたし」

鳴「でも、榊原くんはずっと困ってた」

赤沢「…そう、ね。……うん」

278: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:38:52.45 ID:8wTyOC+d0

鳴「…」

鳴「……私からの質問は、これで全部」

赤沢「そう。――恒一くんは他に訊きたいことある?」

恒一「…」

赤沢「……恒一くん?」

恒一「え、あっ、なに?」

赤沢「ほかに質問は?」

恒一「あ、ああ。って、ぼくの質問は最初から一つだけだったはずだけど」

赤沢「…そうだったね」

恒一「じゃあ、教えてもらえるかな。――どうしてこんなことをしたの?」

279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:41:57.70 ID:8wTyOC+d0

赤沢「……話すと言った以上は、正直に話す」

恒一「うん…」

赤沢「……」

赤沢「……私に、話しかけてほしかった」

恒一「――え?」

鳴「…」

283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:49:00.89 ID:8wTyOC+d0

恒一「話しかけて…って、そんな理由? ぼく、赤沢さんとは結構会話してると思うんだけど…」

赤沢「会話自体は、たしかにそうかも」

赤沢「――けど、恒一くんから話しかけてくれたことは、ほとんどなかった」

恒一「そうだっけ?」

赤沢「そうなのっ! だから、その…もっと私の事を気にかけてほしくて…」

恒一「…」

赤沢「番号が消えれば、恒一くんは私に訊きに来てくれるから」

恒一「それで……」

285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 12:57:54.80 ID:8wTyOC+d0

恒一「ごめん、もう一ついいかな? それならどうして赤沢さんの番号だけを消さなかったの?」

赤沢「私だけが恒一くんから消えるみたいで、嫌だった。あと、さっきも言った通り見崎さんに…」

恒一「そっか…。でも、こんなやりかた」

赤沢「うん……そうだよね」

恒一「…」

287: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:00:19.33 ID:8wTyOC+d0

赤沢「私からも一つ訊かせて。どうして、見崎さんの番号が残っていたことをみんなに言わなかったの?」

恒一「ん? んー。どうしてっていうか、ただ単に…」

赤沢「…」

恒一「誰にも見崎を疑ってほしくなかったから、だよ?」

鳴「…」

赤沢「…そっか。うん、わかった。…ありがとう」

恒一「うん――」

291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:10:50.23 ID:8wTyOC+d0

赤沢「それにしても、こうやって振り返ってみるとよくわかるね。私、なにしてたんだろ」

赤沢「せっかく、ちょっと仲良くなれたと思ったんだけど…」

赤沢「ずっと、迷惑掛けてただけだったんだよね」

恒一「…」

鳴「…」

赤沢「恒一くん。ごめんなさい」

恒一「赤沢さん…」

赤沢「たくさん迷惑かけて、ごめんなさい」

恒一「…」

292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:13:55.15 ID:8wTyOC+d0

赤沢「もうあんなことしないから…」

赤沢「もう、気安く恒一くんに話しかけたり、しないから」

恒一「ぇっ…」

赤沢「私のこと、無視してもいいから。嫌いになってもいいから」

鳴「…」

赤沢「だからせめて…私の番号は、っ…」

恒一「…」

赤沢「…」

294: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:16:40.47 ID:8wTyOC+d0

恒一「――そういえば…」

恒一「赤沢さん、スティーヴン・キング、知ってたよね?」

赤沢「っえ…う、うん。恒一くんが、好きだって聞いて…」

恒一「あ、そうなんだ。じゃあさ、お勧めしたいというか、読んでみてほしい作品があるんだ」

赤沢「…」

恒一「なかなか同じ趣味の人が見つからなくてね、もし読んでそれを気に入ってもらえたら――」

恒一「そのことについても、たくさん話したいな」

赤沢「…ぇ」

恒一「どう、かな?」

赤沢「っ…」

296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:18:25.53 ID:8wTyOC+d0

赤沢「……っう…うん、そうね……。じゃあ、貸して…っ、もらえる?」

恒一「もちろんっ」ニコッ

赤沢「あ…ありがと……。えへへ…」グスッ

鳴「…はぁ」

301: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:36:27.89 ID:8wTyOC+d0

~数日後~


赤沢「はい、返す」

恒一「もう? 随分早かったね」

赤沢「面白かったからね。一気に読んじゃった」

恒一「あはは、それはよかった」

赤沢「うんっ。でもひとつ、よく分からないところがあって……」



勅使河原「サカキ、仲間ができて嬉しそうだな」

望月「最近あの二人仲いいよね…」

風見「まあ、仲がいいのはいいことだと思うんだけどね」チラッ

鳴「…」ジー…

302: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:40:23.94 ID:8wTyOC+d0



恒一「――と、ぼくは考えているんだけど」

赤沢「なるほど、そいう可能性もあったか…」

恒一「ところでこれ、映画になってるんだよ。ぼくはもう観たんだけど、なかなか良くできてたよ」

赤沢「あ、そうなんだ。もうビデオのレンタルとかしてるの?」

恒一「とっくにしてるはずだよ。でもぼく、この辺りのお店はまだ入ったことがないから
   置いてあるかどうかは分からないなあ」

赤沢「そっか。――あ、じゃあ、一緒に探してくれない?」

恒一「うん、いいよ」

赤沢「それで…そのまま一緒に恒一くんの家で観ていい…かな?」

恒一「えっ、ぼくの?」

303: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:42:41.29 ID:8wTyOC+d0

赤沢「だって、これってホラーじゃない? 実は私、本はまだ大丈夫なんだけど、映画となると……うん」

恒一「ん?」

赤沢「だから…あれよ…」

恒一「?」

赤沢「~~~っ、一人で観るのが怖いのっ!」

恒一「えぇっ?」

赤沢「だ、だから…ね?」ギュッ

恒一(うわっ、手…)

赤沢「――お願い」

306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 13:50:56.13 ID:8wTyOC+d0

恒一「う、うんっ」ギュッ

赤沢「ぁ…」

恒一「あっ…(思わず握り返してしまった…)」

赤沢「…」テレッ

恒一「ははっ…、反対の手同士だと、繋ぎにくいね」

赤沢「…ぅん」ギュウ

恒一(おかしい、握手は何度かしたことあるのに…)ドキドキ

308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 14:00:51.60 ID:8wTyOC+d0

ヴーヴー

恒一「うわっ!」

赤沢「っ!」ビクッ

恒一「あ、で、電話が…ちょっとごめん」ゴソゴソ

赤沢「うん…」

恒一「えぇっと――っ!?」


[着信 恋人]


313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 14:08:10.39 ID:8wTyOC+d0

恒一(なんだこれ…。誰だ…?)

赤沢「どうしたの?」

恒一「えっ、ううん何でもないっ」ピッ

『……』

恒一「もっ……もしもし?」

『もしもし、榊原くん』

恒一「? …………はっ」バッ

『ちょっと…』

恒一「…」

鳴「『――来てもらえる?」』

326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/26(日) 14:28:03.56 ID:8wTyOC+d0
本当にすまないと思う






おわり