1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:20:29.88 ID:08rRNfgn0
(クソッ、人間共の城がこんなに広大なものとは……)

(しかしだだっ広いだけで、静かだな……)

(……人間は一人しかおらぬのだ。当然か)

(……いや、奴は本当に人間か?)



引用元: 魔王「勇者! 何処だ!!」 



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:23:31.55 ID:hJG5P2T90
「(私ならここだ)」



(! 人間が魔王にテレパスを送るか? 送れるものか?)

「……玉座か。フンッ」


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:24:44.91 ID:hJG5P2T90
「やぁ、魔王。遅かったね。待ちくたびれたよ」

「ゆうs――え!? お前、女か!?」

「ああ。ロリでも可憐でもツンデレでも巨 でもないが、女勇者だ。済まないね」

「そ、そんな事は、わしは何でもいい!」

「では何だ、その顔は」

「いや、ふ、不満とかじゃなくて、全然、どっちかって言うと、わし的には……」

「魔王のくせに気持ち悪い奴だな。お前●●だろう。歳幾つだ?」

「…………さ、さんぜんさんじゅうろくさい……」

「否定せんのだな」


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:25:25.34 ID:hJG5P2T90
「うるさい! 馬鹿にするな!! おかげで魔法使いになれたんだ!!!」

「魔王じゃないのか?」

「だから! 魔法使いから!! 進化して!! 魔王になったんだ!!!」

「魔王になっても●●か……ハッ」

「鼻で笑うな!! ●すぞ貴様ぁ!!!」

「やってみるか?」……シュル


6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:26:03.14 ID:hJG5P2T90
「い、いい、色仕掛けなどッ

 ロリでも可憐でもツンデレでも巨 でもない人間の色仕掛け、など、き効かぬッ!

 だから服を脱ぐではない!!」

「では目を背けるな。私を見ろ」……シュルシュル

「やめ、やめろ! やめて! わしはそんな事をしに来たのではない!!」

「だろうな。この世界には、もう私とお前しか居ないのだから」


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:27:08.12 ID:hJG5P2T90
「…………分かっているのなら――服を着ろ!!」

「居なくなって見ると広く感じるものだな、この世界を」ゴソゴソ

「どうしてこうなったと思っている。

 どうして人も魔族も、全て滅ぼした!? 勇者とは名ばかりか!!」

「……魔王が勇者を語るか。滑稽だな」

「何故わしと貴様だけが残っている!? これは何の真似だ!!」


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:28:12.23 ID:hJG5P2T90
「男女が二人きりの世界……フフッ、アダムとイブのようだな」

「ふざけるなッ!!」

「お前など願い下げだがな」

「わしだって貴様のような殺人鬼、断固お断りだ!」


10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:29:02.16 ID:hJG5P2T90
「なんと言うか、なぁ……」

「…………」

「出来心だったんだ」

「ハッ、出来心で人も魔族も滅んでたまるか」

「実際滅んでしまったがな」

「ッ……なんだ! その出来心とは!?」


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:29:57.18 ID:hJG5P2T90
「タンスの金品を奪っても、どれだけ民家を物色しても、誰も私を咎めなかったんだ」

「……勇者だしな」

「誰も私に親切だ。崇められもした。

 心の何処かで何かが引っかかっていたが、それでも私は戦った。人々の為に」

「貴様のおかげで魔族はこの様だ」

「ざまぁ」

「黙れ!!」


12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:30:34.34 ID:hJG5P2T90


「お前達の居る魔界への扉も開き、

 私達コチラ側の世界からソチラ側へ行こうとした時、ふと思ったのだ」

「…………」

「何処まで「勇者だから」が通じるのか、と」

「勇者だから?」

「王宮の宝物庫、将来の居城、フィアンセ……

 段々と要求や行動をエスカレートしてやった。そして」

「そして?」


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:31:19.21 ID:hJG5P2T90
「そして誰もいなくなった」

「まだ早いだろう!? 端折るんじゃない!!」

「面倒な奴だな。お前にとって耳の痛い話だぞ」

「魔王に耳の痛い話とは、是非聞かせてもらおうか」

「面倒な奴だな」

「貴様が面倒なだけだろう!?」


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:32:06.29 ID:hJG5P2T90
「魔族に操られていた人間が居た。私がそいつを殺した」

「愚かな人間の心は操りやすい。クックッ……そうやって殺しあうが――」

「だが私は何も咎められることも無く、旅を続けた」

「――なに!?」

「魔族も魔族に操られた人間も、私の前に立ち塞がる者は全て斬って捨てた」


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:32:52.71 ID:hJG5P2T90
「そんな旅を続けていると、私は天界へと召喚された」

「あやつらは勝手だからな」

「何かと思えば、突然、私は勇者には不適格だと」

「……だろうなぁ」

「だから私には消えてもらい、別の勇者を設けると言ったんだ」

「……天界での削除は魂の消滅。輪廻からも抹消か」


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:33:26.70 ID:hJG5P2T90
「そう。だがそんな話、黙って従えるものじゃあないだろう?」

「…………」

「だから、正当防衛さ。まず天界を滅ぼしてやった」

「…………人間の分際で、その意味が分かっているのか」

「あぁ、だからお前はここへ来たんだ」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:34:18.11 ID:hJG5P2T90
「人間界へ帰ると、巫女らは神のお告げが聞こえぬと喚いていたが、

 そこへ行く術は私しかないのだから、バレる心配はなかった」

「もう勇者ではないな」

「世界をもう一巡りしながらも、私は無法を続けた」

「外道め」

「フフッ、言ってくれるな。

 ……まぁ、ゆっくりと人間界を回って再び魔界への扉の前に立った時、

 誰も居なくなっていたんだ」


18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:35:06.24 ID:hJG5P2T90
「なんの為に戦っていたか、誰の為に何を殺してきたか、

 少しづつ感覚が麻痺していったんだ」

「では何のために魔界へ来た」

「だから麻痺していたんだ。何の為に何を成さねばならぬのか。

 ただ最初の目的、魔王を、お前を倒す。それだけが頭から消えなかった」

「あぁ貴様ヤンデレか。眠れないわ」

「ハッハッ、面白くない奴だな。これだから●●は」

「●●の何が悪いんだああああああ!!!」


20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:35:57.06 ID:hJG5P2T90
「ま、天も滅ぼしたし、それから益々自分がおかしくなっていたと思う」

「…………」

「魔界の事はすまないがあまり覚えていない。

 ぼんやりと、ただお前の城へ向かっていた」

「今考えると恐ろしいな」

「そして最後の扉に手をかけた時、やっと気がついたんだ。

 あぁ……私は何をしてるんだろうって」


22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:36:58.26 ID:hJG5P2T90
「遅すぎるだろう」

「誰も居ない世界でお前を殺して何になる。面倒くさい」

「何もならなくても面倒くさいは酷いだろ」

「いいや、面倒くさくなって、私はそこで帰ったのさ」

「…………」


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:37:41.22 ID:hJG5P2T90
「誰も居ない人間界に帰って来て、すぐにその異変に気がついた」

「だろうな」

「魔族は知っていたのか?」

「魔王だから知っていたのだ」

「あぁ、●●だからか」

「●●●●言うんじゃなああああい!!!」


24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:38:28.20 ID:hJG5P2T90
「ならご存知の通り、空が、天が割れていた」

「天界は鼻持ちなら無いが、奴らが“世界”を保っていたんだ」

「何処へ行く当ても無かったから、とりあえず王都へ向かったんだが、

 その途中もずっと天は裂け、落ち、ゆっくりと地上も溶けていった」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:39:33.96 ID:hJG5P2T90
「魔界と同じだな。お前が来た時にも崩壊は始まっていた」

「魔界なんてそんなモンかなって、思ってたんだけどね」

「そのせいでわしは貴様の侵入に気がつかなかったのだ……ッ」

「気付いた所でどうしようも無かったよ。むしろ気付いて出てきてたら、殺してた」

「……天も滅ぼしたのなら、冗談ではないな」


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:40:16.24 ID:hJG5P2T90
「そして此処にたどり着いて、間もなくお前もやってきた」

「わしはずいぶん貴様を探したがな。

 なんだこの城は。客人を迎え入れる気がないのか」

「お前のような侵入者を防ぐ方が重要だからな。

 さぁ事情は分かった? 何か言い残すことがあれば聞いてやろうか。

 私も消えてしまうだろうけど。フフフッ」

「…………」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:41:00.24 ID:hJG5P2T90
「…………」

「……言葉も無いか? じゃあ おろしだけでもやっとく?」

「…………貴様は、本当に人間か?」

「…………どういう意味かな?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:41:56.26 ID:hJG5P2T90
「全てを滅ぼす異常な強さ、歪んだ精神、人から魔王へのテレパス……

 人間ではないと考えた方が納得だ」

「異様な存在は別の存在である、か。存外、排他的だな、魔王」

「貴様自身こそ人間であると疑っておらぬのか。だからすべてを斬り捨てる事が」

「出来るさ。人は脆い。だからお前達魔族に付けいれられる。

 だから簡単に壊れる。それがたまたま、勇者だっただけさ」


31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:42:49.79 ID:hJG5P2T90
「ではわしへのテレパスは――」

「気付いてない? この世界の崩壊が、そこまで進んでいるんだよ」

「どういう事だ?」

「もう全てのものが、少しづつ消えかかっている。

 まだ目には見えないけれど、私達の肉体も崩壊を始めている」

「!?」

「溶けかけた精神を、お前の方へ少し飛ばしてみただけさ」


32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:43:29.95 ID:hJG5P2T90
(●●●目で笑いおって……あの小娘)

(しかし本当に、もうどうしようもないのか……)



「これだけ溶け始めると、お前の考えもだだ漏れだな」

「うぉっ! や、やめろ! 聞くな!! プライバシー侵害だぞ!!」

「好きで聞いてるんじゃないんだが……」


33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:44:11.92 ID:hJG5P2T90
(クソッ……どうする、どうすんの、わし)



「ふむ……」……シュルシュル

「貴様なぜまた脱ぐ!?」

「え? いや、卒業しときたいかなぁって」

「お、おこと、お断りだ!! もし魔法使えなくなったらどうする!?」

「……もう世界も終わるんだし、どうでもいいと思うけど」


34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:44:46.73 ID:hJG5P2T90
「だ、大体、●●●●言う奴に限ってだいたい  」

「悪いが、私は無法の限りを尽くしたつもりだ」

「…………」

「なんだお前、●●厨だったのか。だからか」

「ち、厨じゃない!! それは個人のアレなんて言うかアレだと思っとるわ!!」


35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:45:24.86 ID:hJG5P2T90
「本当に面白くない奴だな。何か心残りでもないのか」

「山ほどあるわ!! だがもう何をしても、何を残しても……意味がないではないか……」

「……魔王のほうがよほど人間らしい気がするな」

「魔族の方が本能に忠実であるのだ。天上人は理性に、人間はそれらが混沌だ」

「なるほど」

「不安定で不確定。だから貴様のような者も出来てしまったのだろう」


36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:46:20.71 ID:hJG5P2T90
「はぁー……」

「…………」

「はぁー…………」

「…………」

「はぁー………………」

「…………そんなに惜しいか?」

「当たり前だ!!」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:47:02.88 ID:hJG5P2T90
「ふむ。では二人で残してみるか?」

「は? 何を? どうやって? どこに? 全部意味ねぇよ」

「ただでさえ面倒くさいのにグレるな」ヒュッ

「リンゴ……? 禁断の果実とでも言うつもりか」

「始まりの実だ。天界を滅ぼした時ついでに持ってきた」

「ッ!!」


38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:47:44.29 ID:hJG5P2T90
「私達の世界では、それが天地創造の種であると伝わっている」

「……魔界でもそうだ。始まりの実から全てが生まれた。

 天上人が腹の子の命を差し出して、その実が育つのだと」

「天界のほうがよっぽど地獄だな」

「あやつらには意思など無いに等しい。だから“世界”の管理者に適任なのだ」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:48:37.08 ID:hJG5P2T90
「さて……始まりの実と、男と女…………どうする?」

「なっ、ど、どうって、きききさっきさっ」

「落ち着け●●。お前の貞操を奪う気はない」

「……え? 初めから?」

「……さぁ?」

(くっ……くそビ  め……ッ!)



「だからだだ漏れだって」


40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:49:18.60 ID:hJG5P2T90
「で、ではどうする!? 始まりの実は腹の子を食って育つのだぞ!」

「あー……子どもじゃなきゃ、いけないのかな?」

「はぁ?」

「私達を食わせる。正確にはそれをノアの箱舟とする」

「……魔界語で説明してくれ」


41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:50:00.59 ID:hJG5P2T90
「今だから出来るんじゃないかと思う。この溶けかけた肉体と精神ならば」

「何をしようと言うのだ!」

「私がお前に精神を飛ばし、お前はそれを受け取った。

 ならば、精神、可能ならば肉体も、始まりの実へと飛ばし、宿らせる」

「……リンゴの中で、生きよと言うのか!?

 だがそれも、始まりの実も世界と共に消滅するのではないか!?」


42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:50:45.81 ID:hJG5P2T90
「産むが安し、なんて言うけど、世界を創造するほどの物だ。

 そうそう消えるとは思えない」

「何の根拠にもならんな」

「始まりの実は本当に子どもを喰うのか?

 子どもを、命を作るモノが揃っていれば、始まりの実は成長し得ると思う」

「……わしと、貴様、か」

「選択の余地が無いだけさ」


43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:51:22.63 ID:hJG5P2T90
「貴様は……」

「うん?」

「貴様の希望は、心残りは何か無いのか?

 始まりの実になるとして、貴様はどう思うのだ?」

「私は…………」


44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:52:30.73 ID:hJG5P2T90
「この世界を滅ぼしたのは私だ。悔いも未練も許されないだろう」

「誰も居ない世界でそんな言葉に意味などあるか!! 貴様の本心を言え!!」

「…………フフッ、今のはちょっと驚いたな。本心、か……」

「…………」

「そうだなぁ……」


45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:52:53.48 ID:08rRNfgn0
支援


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:53:21.68 ID:hJG5P2T90
「お前は嫌いじゃないよ。それ以上でも以下でもない」

「だから貴様の」

「それしか無いんだ。全て失って……いや捨ててしまったから」

「…………」

「いつでも殺せる魔王なんて、恐れるような者でもないし」

「貴様が化け物なんだ」


47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:54:12.87 ID:hJG5P2T90


「お前となら、何か成せるかもしれないし、成せないかもしれない」

「ふん。自己意識の薄い奴め」

「魔王はもっと自己顕示欲の塊かと思っていたけど、存外そうでもないね」

「やかましい。……むっ」


48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:54:58.36 ID:hJG5P2T90
「視覚的にも肉体が薄れてきた、か……でも」

「始まりの実は実体を保っておるな」

「それでも、可能性はゼロじゃない。嫌ならいいさ。どっちでも」

「いまさら雰囲気の無い事を言うな」

「え? どっち?」


49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:55:30.66 ID:hJG5P2T90
「手を貸せ」

「あぁ行くの? 別に手とか繋がなくても」

「やかましい! わしの胸の高鳴りを返せ!!」

「……気持っち悪ッ。私はまだお前と子を成す気はないぞ」

「えぇ!?」


50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:56:05.27 ID:hJG5P2T90
「まぁ始まりの実の中でも意識が保っていれば、考えてやるよ」

「クッ……そんな事も分からん物に頼るしかないとは……」

「確実に消えるよりは、新たな命にかけようじゃないか」

「貴様がどっちなんだ!?」

「どっちでもいいと言っただろう」


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:56:42.87 ID:hJG5P2T90
「いいか、絶対に手を離すなよ」

「……手汗が気持ち悪いから離したいな。お前ら汗も赤いし。カバか」

「…………で、どうやって意識を飛ばすのだ」

「…………魔法と同じ要領だ。一点に集中、放出、拡散だ」


52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:57:42.61 ID:hJG5P2T90
「わしは物理型の魔王だったから、貴様がやれ」

「……こんな奴の為に旅をしていたのか……」

「うるさい!! 早くせんと消えるぞ!?」



「……長い旅だったが、こんな最後もいいか」


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:58:19.07 ID:hJG5P2T90
「待て。それはどういう意味だ。“最後”?」



「あぁ、言葉のあやだ。この世界の物語の、最後さ」



「本当に大丈夫なのか、おい!?」


54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/12(月) 22:58:53.25 ID:hJG5P2T90
「小さなリンゴの物語は、また別の機会に語るとしよう」





そして誰も居なくなった。