転がった右足。

投げ捨てられた左足。

床に生えた右腕。

役割を失った左腕。

裂傷の断面。

潰された果実。

赤黒い水溜まり。

開かれた眼。

男「死んだ」

冷ややかに言った。

手に鉈。

無表情。

女「死んだか」

冷ややかな声。

男のそば。

無機質。

男「ショック死だ」

女「ショック死か」

女「臭いな」

男「臭いな」

女「満足したか」

男「満足した」

女「またやるか」

男「またやる」

女「いつだ」

男「そのうちだ」

女「そのうちか」

男「うん」

男「殺すのは疲れるな」

女「殺すのは疲れるか」

男「だが心地良い」

女「心地良いか」

男「達成感がある」

女「良いことだな」

男「ああ」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

老人「ぎゃああぁぁあああああ！！！！

男「どろどろだな」

女「強酸だからな」

男「強酸か」

女「そうだ」

男「溶けるのか」

女「溶けるな」

男「臭いな」

女「臭いな」

老人「ーーーー」

男「死んだか」

女「そうだな」

男「肉になったな」

女「そうだな」

男「高齢者は元気がないな」

女「そうか」

男「もっと反応が欲しい」

女「そうか」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

青年「あああぁぁぁぁあああああああああ！！」

女「熱いみたいだ」

男「焼いてるからな」

女「焼いてるからか」

男「焼いたら美味いかな」

女「美味いかもな」

男「血抜きをしていないな」

女「そうだな」

青年「あああああああああ！！」

男「臭いな」

女「臭いな」

青年「ーーーー」

男「こげこげだ」

女「こげこげだな」

男「食べる」

女「食べるか」

男「まずい」

女「そうか」

男「満足した」

女「よかったな」

男「うん」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

中年「あぁぁぁあぁああぉあああ」

女「びくびくだな」

男「高電流だからな」

女「焦げ臭いな」

男「焼けてるからな」

中年「ーーーー」

男「死んだか」

女「人間は脆いな」

男「脆いか」

女「何をしても死ぬ」

男「そうだな」

女「脆い」

男「人間以外が強いだけかもしれない」

女「なるほど」

男「石は硬い」

女「硬いな」

男「頭骨より硬い」

女「硬いな」

女「電話だ」

男「初期の着信音か」

女「そうだ」

男「俺もだ」

女「そうか」

男「うん」

女「父だ」

男「人形になるのか」

女「うん」

男「またな」

女「またな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

シンプルな部屋。

薄クリームの壁紙。

大きいベッド。

敷かれた女。

跨る父親。

父「お前は素晴らしい人形だ……。人間味が無い。その無表情が最高だ。人間は喋りすぎる。顔を歪ませすぎる」

女「……」

ぎしぎし。

父「愛してる」

女「……」

ぎしぎし。

ーーーーーー
ーーーー
ーー

金属バット。

ばんばん。

中年女性「があああああアああッッ！！」

ばんばん。

ばんばん。

ばんばん。

ばんばん。

ばんばん。

中年女性「ーーーー」

ばんばん。

男「死んだな」

女「死んだか」

男「殺すのは興奮する」

女「どれくらいだ」

男「●●するくらいだ」

女「●●するのか」

男「うん」

女「毎回か」

男「毎回だ」

女「●●は気持ち良いか」

男「●●は気持ち良く無い」

女「気持ち良く無いのか」

男「●●は落ち着く」

女「落ち着くのか」

男「昂ぶりが消える」

女「消えるのか」

男「うん」

男「挽肉みたいだ」

女「そうだな」

男「ぱんぱんだな」

女「そうだな」

男「ハンバーグが食べたい」

女「そうか」

男「行こう」

女「行こう」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

女「ファミレスか」

男「そうだ」

女「そうか」

男「食べないのか」

女「見てるだけだ」

男「そうか」

もぐもぐ。

じー。

もぐもぐ。

じー。

男「人は人を殺しては駄目か」

女「法ではな」

男「法が無ければ良いのか」

女「良いな」

男「そうか」

女「人は人を殺して良い」

男「そうか」

女「でも殺されるかもしれない」

男「そうだな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

少年「たすけて……。たすけてぇ……」

縛られた少年。

懇願。

椅子の下の箱。

真空管。

スイッチ。

ぱんっ。

爆ぜる音。

少年「ーーーー」

散る花弁。

遺った脳漿。

男「つまらない」

女「つまらないか」

男「手応えがないと足りない」

女「足りないか」

男「●●量も少ない」

女「少ないか」

男「爆殺はもうしない」

女「そうか」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

妊婦「……ぁ……かっ……！」

細い紐。

ぎりぎり。

青褪めた顔色。

歪んだ表情。

ぎりぎり。

妊婦「ーーーー」

脱力。

男「死んだ」

女「死んだか」

男「絞殺は良いな」

女「そうか」

男「胎児が見たい」

手にナイフ。

割腹。

血塗れ。

子宮。

胎児。

男「これだ」

女「これか」

男「人間の素」

女「そうか」

男「えい」

放り投げる。

放物線。

着地音。

男「種飛ばし大会」

女「そうか」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

公園。

閑散。

木陰。

蟻。

男「ふふん」

ぷちぷち。

指先。

ぷちぷち。

潰す。

ぷちぷち。

幼女「お兄ちゃん、アリさんをころしちゃ、カワイソウだよ」

男「可哀想か」

幼女「アリさんも生きてるんだよー」

男「だから殺してる」

大きな石。

手に取る。

男「なぞなぞ」

幼女「なぞなぞ？」

男「これなんだ」

幼女「えー？ 石じゃないの？」

男「違う」

幼女「わかんない」

男「正解は」

幼女「正解は？」

ごしゃっ。

男「凶器」

幼女「ーーーー」

男「君用の」

男「殺した」

女『何処でだ』

男「公園だ」

女『分かった』

男「どうすれば良い」

女『ファミレスに行けば良い』

男「分かった」

女『任せろ』

男「任せた」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

女「誰を殺した」

男「女の子」

女「そうか」

男「興奮した」

女「ロリコンか」

男「そうかもしれない」

女「処理はした」

男「業者を雇ったか」

女「そうだ」

男「お金持ちだな」

女「そうだ」

男「お嬢様だな」

女「そうだ」

男「羨ましいな」

女「羨ましいか」

男「金は便利だ」

女「そうだな」

男「硬貨も凶器になる」

女「凶器にもなるか」

男「うん」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

学生「?ああぁぁああああああああああああああ」

刃物。

さくっ。

突き刺す。

さくっ。

何度も。

さくっ。

さくっ。

さくっ。

ぶちゅっ。

学生「ーーーー」

男「死んだ」

女「血塗れだな」

男「そうだな」

女「●●したか」

男「●●した」

女「そうか」

男「学校に通ったことがない」

女「ないのか」

男「勉強はした」

女「独学か」

男「うん」

女「そうか」

男「殺すのにも知識は便利だ」

女「そうか」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

大柄「がああぁぁぁああ！！」

摘出。

まずは左眼。

次に右眼。

大柄「ぎっ！？」

刈取り。

舌根。

xxx。

足の指。

手の指。

裁断。

両膝。

両肘。

大柄「ーーーーっ」

荒い息。

切開。

腸。

大柄「ーーーー」

男「死んだ」

女「死んだか」

男「人は独りだ」

女「そうだな」

男「誰と居ようと独りだ」

女「そうだな」

男「でも、殺す時だけは違う」

女「違うのか」

男「手の中に生命を握ってる間は孤独じゃない」

女「そうか」

男「だから殺す」

女「融合を求めるているのか」

男「求めているな」

女「殺すことは愛か」

男「そうだな」

女「私を愛してるか」

男「愛してるな」

女「殺したいほどか」

男「殺したいほどだ」

女「そうか」

男「うん」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

河原。

薄闇。

ホームレス「がっ」

高校生A「おらっ、社会の塵は消えろ！」

高校生B「目障りなんだよ！」

高校生C「呼吸してんじゃねーよ！ 二酸化炭素増やすな！」

げしっ。

どかっ。

がすっ。

ホームレス「がああっ」

高校生A「はは、死ね！」

高校生B「害悪が！」

高校生C「ははっ！」

ホームレス「ーーーー」

高校生A「……やべぇ」

高校生B「お、おい、死んだのか……」

高校生C「どうする……？」

高校生A「……こんな社会の塵が死んだからって何だってんだよ。帰ろうぜ」

高校生B「だ、だよな！」

高校生C「けど……」

高校生A「警察なんて無能だよ。どうせ捕まんないっての」

高校生B「だ、だよな！」

高校生C「う、ん……」

高校生A「あ！ ほら、Dを自殺させんだよ。そんで、ホームレス殺したって遺書を書かせりゃ完璧じゃん！」

高校生B「お！ 良いなそれ！」

高校生C「名案だ！ あのキモオタは俺等に逆らわねーもんな！」

高校生A「っしゃ！ 明日決行だからな！」

高校生B「おう！」

高校生C「ああ！」





男「……」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

高校生A「……あ？ ここは何処だ？」

暗室。

高校生B「……あれ？ 何がどうしたんだ？」

高校生C「頭痛ぇ……」

スピーカー。

淡々とした男の声。

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

繰り返される。

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

何度も。

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

男子高校生A「な、何なんだよこれ！？」

男子高校生B「殺し合うだと！？ 馬鹿じゃねーの！？」

男子高校生C「とにかく出口を探そう」

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

録音。

反復。

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

男子高校生B「うるせーよ！ 糞が！」

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

ーーーーーー
ーーーー
ーー

男子高校生A「扉らしいもんはあったが、全く空く気配が無い」

男子高校生B「タックルのし過ぎで疲れた……」

男子高校生A「部屋の中央には台。台の上にはナイフが三本」

男子高校生C「……本当にこのまま出れないのかよ」

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

男子高校生A「んな訳有るかよ！ 殺人だぞ！」

男子高校生B「だ、だよな！」

男子高校生C「俺等もじゃん……」

男子高校生A「なんだよ、C」

男子高校生C「もしかしたら、あのホームレス知り合いが、恨みでやってるんじゃねーの」

男子高校生B「ん、んな訳ないだろ！」

男子高校生A「……」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

声は繰り返される。

男子高校生A「……この部屋、暑いな」

汗。

滴る。

男子高校生B「夏だからな……」

男子高校生C「このままじゃ水分不足で死んじまう……」

男子高校生A「……」

男子高校生A(殺し合え、か)

ーーーーーー
ーーーー
ーー

男子高校生A「どれだけ経った……？」

男子高校生B「知るかよ……」

男子高校生C「くそっ……。くそっ……」

男子高校生B「喉渇いた」

男子高校生A「そんなの全員だろ」

男子高校生C「絶対ホームレスを殺したせいだ。
恨まれてるんだ」

男子高校生B「根拠の無いこと言ってんじゃねぇぞ！」

男子高校生C「関係無いわけ無いだろうが！」

男子高校生A(……騒いでさっさとくたばれ)

ーーーーーー
ーーーー
ーー

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

放送。

延々。

コンスタント。

男子高校生B「水！ 水をくれっ！」

『殺し合え。生き残った一人を部屋から出す』

男子高校生B「水が欲しい！ 水っ！」

男子高校生C「うるせーよっ！ けほっ。……くそっ」

男子高校生A(限界が近い。死んでたまるかよ。
……やるしかない)

台。

走る。

ナイフ。

掴む。

三本。

男子高校生B「お、おい！」

男子高校生C「放送の言葉が本当とは限らないだろうが！」

男子高校生A「こんなところで死ねるかよ……！」

二本を仕舞う。

両手で構える。

駆ける。

男子高校生B「ひっ」

胸。

刺さる。

どうして男子高校生になってるんだろう。

男子高校生B「ーーーー」

崩れる。

男子高校生C「……くそがぁぁあ！」

組み合う。

もつれる。

汗の臭い。

漂う。

血の臭い。

混ざる。

なるほど。

男子高校生A「ーーーー」

頸動脈の断裂。

噴水。

男子高校生C「はあ……はあ……」

おぼつかない足取り。

扉に向かう。

放送が止んだ。

扉が開いた。

一条の光。

ぱんっ。

撃鉄音。

男子高校生「え……？」

胸に風穴。

紅く滲む。

ぱんっ。

もう一つ。

男子高校生「ーーーー」

倒れる。

男「死んだ」

女「死んだか」

男「獲物を横取りするからだ」

女「良くないな」

男「前から目を付けてたのに」

女「そうか」

男「銃も悪くない」

女「悪くないか」

男「でも飛び道具は一体感が少ない」

女「少ないか」

男「あまり興奮しない」

女「そうか」

男「何の為に生きている」

女「死ぬ為だ」

男「死ぬ為に生きているのか」

女「人は死ぬ為に生きている」

男「そうか」

女「何の為に生きている」

男「殺す為だ」

女「殺す為か」

男「殺すと生きていると実感できる」

女「おかしい」

男「おかしいか」

女「前提を間違えている」

男「間違えているか」

女「何の為に生きているか説明されてない」

男「されていないか」

女「うん」

男「生きたいから生きている」

女「それなら正しい」

男「正しいか」

女「間違えていない」

男「間違えていないか」

女「健康だ」

男「健康か」

女「一般的にな」

男「一般的か」

女「そうだ」

男「よく分からない」

女「分からないな」

男「うん」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ぎしぎし。

父「美しい」

凝視。

女「……」

自失。

ぎしぎし。

父「愛してる」

抱擁。

女「……」

無反応。

ぎしぎし。

ーーーーーー
ーーーー
ーー

初老「ううぅぅ……」

ごすっ。

殴る。

ごすっ。

頬。

ごすっ。

腹。

ごすっ。

何度も。

鬱血。

ごすっ。

腫れ。

ごすっ。

内臓。

ごすっ。

破裂。

ごすっ。

初老「ーーーー」

男「死んだ」

女「死んだか」

男「手応えは最高だ」

女「素手だからな」

男「かなり興奮した」

女「そうか」

男「でも殺すなら若い女が良い」

女「若い女が良いか」

男「興奮が増す」

女「そうか」

男「殺したい」

女「私か」

男「うん」

女「今度だ」

男「今度か」

女「もう少し見極める」

男「何をだ」

女「他の死に様」

男「そうか」

女「その後に殺されてやる」

男「楽しみだ」

女「楽しみか」

男「凄く」

女「そうか」

男「約束」

女「何をだ」

男「絶対に殺させてくれ」

女「分かった」

男「約束」

女「うん」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

身体障害者「ぎっ……がっ……ぅぁ……」

呻き。

男「苦しそうだ」

女「猛毒だからな」

男「白目だ」

女「そうだな」

男「泡を吹いてるな」

女「そうだな」

身体障害者「ーーーー」

男「死んだ」

女「死んだか」

男「臭いな」

女「臭いな」

男「毒殺もつまらない」

女「観察する分には興味深い」

男「興味深いか」

女「うん」

男「昔は動物を殺してた」

女「動物か」

男「猫とか」

女「猫か」

男「犬とか」

女「犬か」

男「鳥とか」

女「鳥か」

男「でも殺人が一番だ」

女「殺人が一番か」

男「自分と重なる」

女「そうか」

男「でも自分が死んで無いことに興奮する」

女「倒錯してるな」

男「倒錯してるか」

女「うん」

男「お腹空いた」

女「そうか」

男「唐揚げが食べたい」

女「唐揚げか」

男「食べたい」

女「そうか」

男「行こう」

女「行こう」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

女「またファミレスか」

男「金がない」

女「金ならあげてる」

男「貰ってる」

女「うん」

男「もう使い果たした」

女「早いな」

男「昨日から何も食べてない」

女「昨日からか」

男「うん」

女「何に使った」

男「プレゼント」

女「私にか」

男「うん」

女「何だ」

男「指輪」

ポケットから取り出す。

小さな箱。

七号。

女「緩いな」

男「七号で緩いか」

女「うん」

男「細い指だな」

女「うん」

男「失敗した」

女「嬉しい」

男「嬉しいか」

女「うん」

男「良かった」

男「食べないのか」

女「サプリメントとドリンクしかダメだ」

男「ダメなのか」

女「受け付けない」

男「受け付けないのか」

女「だいぶ前からだ」

男「だいぶ前からか」

女「うん」

男「そうか」

むしゃむしゃ。

咀嚼。

じー。

凝視。

むしゃむしゃ。

じー。

むしゃむしゃ。

じー。

むしゃむしゃ。

ーーーーーー
ーーーー
ーー

少女「あぁぁああああっ！！」

甲高い絶叫。

ぶちっ。

太腿。

噛み切る。

咀嚼。

飲み込む。

男「まずい」

女「そうか」

肩。

みちっ。

貪る。

少女「あぁぁあああ！！！！いやぁああ！！！！」

くちゃくちゃ。

ごくん。

●●。

腹肉。

二の腕。

頬肉。

くちゃくちゃ。

くちゃくちゃ。

くちゃくちゃ。

くちゃくちゃ。

ごくん。

少女「あああぁぁ……」

唇。

鼻。

瞼。

耳朶。

噛み砕く。

味わう。

男「まずい」

女「そうか」

少女「あ……」

喉元。

食らいつく。

深く。

ごりっ。

噛み千切る。

強く。

少女「ーーーー」

男「死んだ」

女「死んだか」

男「顎が疲れた」

女「疲れたか」

男「ずっと興奮した」

女「ずっとか」

男「●●が止まらなかった」

女「そうか」

男「下着が気持ち悪い」

女「そうか」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

外国人「ーーーーっ」

鼻と口。

塞がれていた。

もがく。

じたばた。

体を揺する。

じたばた。

外国人「ーーーー」

男「死んだ」

女「死んだか」

男「地味だな」

女「うん」

男「慣れてきた」

女「殺人にか」

男「うん」

女「そうか」

男「物足りない」

女「物足りないか」

男「つまらない」

女「つまらないか」

男「どうしよう」

女「どうしようか」

男「殺したい」

女「私か」

男「うん」

女「少し待て」

男「どれくらいだ」

女「ほんの少しだ」

男「分かった」

女「そうか」

着信音。

男「電話か」

女「電話だ」

男「父親か」

女「父親だ」

男「人形になるのか」

女「そうだ」

男「またな」

女「またな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

夕闇。

男「暇だ」

歩く。

前方。

老婦人「……」

男「……」

近寄る。

男「こんにちは」

老婦人「……はい？」

淑やか。

怪訝な瞳。

警戒した表情。

男「刺殺します」

ナイフを取り出す。

喉元。

突く。

二回。

素早く。

老婦人「ーーーー」

男「死んだ」

男「外でしてもつまらない」

呟く。

後方。

悲鳴。

振り向く。

女性。

男「しまったな」

逃走。



男「つまらない」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

いつもの部屋。

クリーム色の壁。

大きなベッド。

父「愛してる」

抱擁。

愛　。

キス。

舌を押し込む。

女「……」

無反応。

父「最高の人形よ。愛してる」

指を絡ませる。

父「……何だこの指輪は？」

銀の指輪。

父「お前にはそぐわないよ。外してしまおう」

優しい声音。

女「…………いや」

父「なっ……！」

愕然。

頬を強かに叩く。

ぱちんっ。

髪を掴む。

父「木偶が喋るな！ 意思を持つな！」

女「私は人間」

さくっ。

忍ばせていたナイフ。

横向き。

肋骨。

透過。

心臓。

到達。

父「ーーーー」

女「死んだか」

屍体をどかす。

女「殺人は興奮なんてしないな」

服を正す。

女「電話するか」

着信音。

女「ちょうどよかった」



女「終わりにしよう」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

高層ビル。

屋上。

鍵は壊した。

男「要望は有るか」

女「絞殺が良い」

男「分かった」

女「素手で頼む」

男「分かった」

細い首すじ。

両手で掴む。

女「温かい手だ」

男「温かい首だ」

女「力が篭ってない」

男「うん」

女「頼む」

男「うん」

時間が過ぎる。

手を離した。

男「無理だ」

女「何故だ」

男「分からない」

女「殺して欲しい」

男「無理だ」

女「頼む」

男「無理だ」

女「約束は遵守しろ」

男「殺害方法を変更させてくれ」

女「分かった」

男「飛び降りよう」

女「此処からか」

男「うん」

女「一緒にか」

男「うん」

女「心中か」

男「殺人だ」

女「そうか」

男「抱きしめて良いか」

女「うん」

ぎゅうっ。

男「温かいな」

女「温かいな」

男「行こう」

女「行こう」

身を投げ出す。

落下運動。

男「落ちてるな」

女「落ちてるな」

男「愛してる」

女「愛してる」

男「嬉しいな」

女「うん」



ぐしゃっ。

一つになった。

そして散った。

長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいま した！
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです (正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きや　　シーンにおける表現等、 これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じていま す。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのような感情に浸 れたのか、それは人それぞれだと思います。 少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう！」という気持ちに なってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にあり がとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよろしくお 願いします！ ではこれにて。