1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:11:04.65 ID:XxRASE1T0
小鷹「星奈に暴力振るうの止めてくれないか?」

夜空「暴力だと? ちょっとハエ叩きで叩いただけじゃないか。
    むしろ制裁と呼んでほしいくらいだ」

小鷹「制裁だともっと意味が悪くならないか?」

夜空「どっちでもいい。小鷹は私にどうしてほしいんだ?」

小鷹「星奈をいじめるなよ。それだけだ」

夜空「むむむ……一体どうしたというのだ。
    急に肉の背中を押すようなことを言って」

星奈(小鷹……?)チラッ


真っ赤に張れたオデコを押さえていた星奈が、一瞬だけ小鷹を見る。

部室には理科やマリアも幸村もいて、思い思いの時間を過ごしていた。

今は全員が小鷹と夜空に注目している。

引用元: 小鷹「星奈をいじめないでくれ」夜空「なんだと?」 




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:15:26.23 ID:XxRASE1T0

小鷹「星奈の口が悪いのは確かに認めるよ。
    でも叩かれるほどじゃないだろ?」

夜空「……奴が口答えするのが悪いのだ。だが、
    その言い方はまるで肉に気があるみたいに聞こえるぞ?」

小鷹「なっ……?」

夜空「今まで私と肉のやり取りをスルーしていたおまえが、
    なんで今になって口を出す気になったんだ?
    まさか肉と何かあったんじゃないだろうな?」

小鷹「そっ……そんなこと!!」

あるわけないじゃないかと続けようとしたところで、

星奈「人を疑うのもいい加減にしなさいよバカ夜空!!
    あたしと小鷹はそんな関係じゃないんだからね。
    小鷹は本当はとっても優しい人なのよ」

夜空「ん?」

理科「おや?」

幸村「ほう」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:17:44.16 ID:XxRASE1T0

星奈「な、なによ。こっち見ないでよ」

夜空「本当は優しい人だと? ずいぶん小鷹に詳しいじゃないか」

星奈「小鷹は夜空にいじられてるあたしをかわいそうだって
    言ってくれたの。ただそれだけなんだから」

夜空「ふぅん? ずいぶん仲良さそうじゃないか」チラッ

理科「先輩達ってもしかして友達以上の関係だったりします?」

小鷹「んなわけないだろ。もし恋人同士だったら
    隣人部なんて来てないっつの」

星奈「恋人同士なんてリア充以上の関係じゃない。
    あたしにはギャルゲーの女の子たちがいるから間に合ってるわ」

理科「なんか怪しいです」

幸村「兄貴はすでに星菜と姉御と……」

夜空「影で付き合ってるようにしか見えん」

理科「小鷹先輩は女の子たちのフラグをへし折っていたゲス野郎のくせに、
    結局は巨 好きだったってことですか?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:21:08.83 ID:XxRASE1T0

小鷹「だ、誰がゲス野郎だ!!」

理科「言って見ただけですよ☆ えへ」

小鷹「……」

理科「星奈先輩、付き合ってるなら、はっきり言ったらどうですか?
    理科としてもコソコソ関係を持たれるのは胸がもやもやします」

幸村「兄貴にはもう私は不要ということですか……」ジワッ

小鷹「みんな落ち着いてくれよ。俺と星奈は本当にそんな関係じゃないんだって」

星奈「幸村も泣きそうにならないでよ。
    あたしなら最初から小鳩ちゃん派だから安心しなさいよ」

理科「……」

夜空「……もういい」

小鷹「え?」

夜空「今日の部活はこれでお開きだ。キサマラの言ってることが
    本当かどうかは明日改めて尋問することにしよう」

小鷹「尋問って……」

星奈「夜空、あんたは勘違いして……」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:24:00.00 ID:XxRASE1T0

夜空「うるさい!! 私は先に帰るからな」

力強く扉を閉める夜空。

理科や幸村も言葉少なめに別れの挨拶を交わして帰ってしまった

マリア「お兄ちゃん。今日は夜空の奴機嫌悪かったな。
     ●●●夜空のくせに生意気なのだ」

小鷹「そ、そうだな」

星奈「本当どうしちゃったのかしらね……。あはは」

マリアは残ると言うので鍵を渡して帰ることにした。

帰り道を歩く小鷹と星奈。

家の方向は逆方向だけど、正門までは一緒に歩ける。
肩を並べて歩くその姿はまさにカップルそのもの。

だが実際は友達だった。

星奈「あいつらには勘違いされちゃったわね。
    あんたがあたしをかばうからこうなるのよ?」

小鷹「すまん……。夜空にいじられてる星奈を見てられなくなったんだ。
    一度夜空にはちゃんと言っておこうと思ってたんだがな」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:27:29.33 ID:XxRASE1T0

星奈「理科や幸村だって勘違いしてたわ。これ以上下手なことしたら
    あたしたち、退部させられるかも」

小鷹「おいおい。いくら夜空でもさすがにそこまでは……」

星奈「夜空はリア充は隣人部に不要だと思ってるのよ。
    それにあいつって嫉妬深いしね。
    夜空があんたに気があるの知ってるでしょ?」

小鷹「お、おう……まあなんとなくな」

星奈「あんたがそうやって朴念仁の振りしてるのがいけないのよ。
    理科なんかは気づいてるみたいだけどね」

小鷹「しょうがないだろ? 隣人部に居続けるにはそれしかないんだ。
    俺はまだ同性の友達が出来てない。クラスじゃ孤立したままだ。
    隣人部だけが唯一の癒しの場所なんだ」

星奈「あたしだって同じよ。あの部屋でギャルゲーすると妙に
    落ち着くのよね。まるで家にいるみたいにさ」

小鷹「だったら俺が道化を演じたのも分かるだろ?」

星奈「けどあたしをかばったのは失敗だったわね。
    明日夜空の奴から問いただされるわよ」

小鷹「誤魔化すさ」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:30:22.68 ID:XxRASE1T0

星奈「どうやってよ? あれだけ疑われてるのに今更……」


正門の前にたどり着いた。話し合いの結論は得られなかった。


小鷹「……ここで話してると人目につくからな。
    あとは帰ってから携帯で連絡するよ」

星奈「ええ……そうね。それがいいわ」

星奈とはそれで別れた。

小鷹は星奈の背中を何度も振り返りながら歩いた。

あえて友達のままの関係を続けてる二人。

両想いなのはお互いに知っていた。
でも隣人部のメンバーだからという理由で遠慮していた。


小鷹「ただいまぁ。大人しく待ってたか小鳩?」

小鳩「あんちゃん、おかえりー」タタタッ

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:33:42.71 ID:XxRASE1T0

小鷹「ははっ。小鳩もずいぶんお利口さんになったな?
    最近はレイシスのコスプレもしなくなったしな」

小鳩「……うちはそういうの卒業したんじゃ///」

小鷹「偉いぞ小鳩。今夕飯の支度するから待っててくれ」

冷蔵庫を開けると、中身が残り少ない事に気づく。

今日帰り道にスーパー寄ればよかったと後悔するが、今となっては遅い。

簡単な野菜炒めやパスタを作って食卓に並べた。

小鳩「あんちゃん、今日は帰りが遅かったけん」

小鷹「ちょっと寄り道してたからな」

小鳩「誰と?」

小鷹「独りだよ。俺に友達なんているわけないからな」

小鳩「……最近はあの金髪の女とよく話するようになったたいね」

小鷹「ちょっと相談事に乗ってもらってるからな」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:35:09.99 ID:XxRASE1T0

小鳩「……うそじゃ」

小鷹「小鳩?」

小鳩「今日うちがどうして部活を休んだか知っとる?」

小鷹「どうしてだ?」

小鳩「あんちゃんがあの女のことばっかり見てるからじゃ」

小鷹「何言ってるんだ小鳩。俺と星奈の関係を疑ってるのか?」

小鳩「あんちゃんは最近携帯をよく使うようになったとね。
    いっつも部屋で楽しそうに話しよる。誰と話してるんじゃ?」

小鷹「が、学校の友達だよ」

小鳩「友達はいないんじゃなかったのけ?」

小鷹「く、くだらないおしゃべりはもう終わりだ!!
   食べ終わったら食器を片づけるからな」

自分の分だけさっさと洗面台に持っていき、皿洗いに没頭する。

それは逃げだった。

夜空だけでなく自宅でも最愛の妹にも疑われて怖くなったのだ。

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:37:39.12 ID:XxRASE1T0

小鷹(俺は今の関係を維持したいんだ)

小鳩(あの女にあんちゃんが奪われちゃう)


風呂から上がって自室に籠る。

ここなら誰の邪魔も入らないから、星菜と自由に話せる。

電話帳から星奈の番号をプッシュした。

悩み事は星奈に相談するのが恒例になっていた。


星奈「小鳩ちゃんがそんなことを?」

小鷹「ああ。最近はアニメのキャラになりきるのも止めてくれたから、
    まともになったと思ってたんだがな。俺と星奈のことを
    嗅ぎつけてるみたいだぜ」

星奈「大好きなお兄ちゃんが奪われちゃうから嫉妬してるのね」

小鷹「あいつもまだ兄離れが出来てないみたいだからな」

星奈「でも本気であんたのことが好きみたいよ?」

小鷹「よしてくれよ星奈。俺と小鳩は兄妹だぞ?
    理科たちならともかく、小鳩に限ってそれはない」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:40:53.86 ID:XxRASE1T0

星奈「はぁ……。あんたって男は肝心なとこで抜けてるんだから。
    小鳩ちゃんに恨まれるのはごめんよ?」

小鷹「俺だってそんなのごめんだ。何とか平穏無事に星奈と
    お付き合いがしたいんだがな」

星奈「今はまだ友達でいるべきよ。あたしたちのことが原因で
    隣人部が崩壊したらどうするの?」

小鷹「そうだな。だから小鳩には俺の方から……」


トントントン

ドアがノックされた音だ。

小鷹は少し強引に通話を終えてから小鳩を部屋に通す。


小鳩「あんちゃん、さっき誰と話してたん?」

小鷹「……気になるか?」

小鳩「うん」

小鷹「星奈に相談ごとに乗っててもらったんだ。
    これからの隣人部の活動について真剣にだな……」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:44:02.41 ID:XxRASE1T0

小鳩「またあの女……」

小鷹「小鳩?」

小鳩「あんちゃんは星奈が好きなんじゃ。だから親しげに
    携帯で話したりするたいね。あんちゃんはあの女と
    話す時はうれしそうな顔しよる」

小鷹「いい加減してくれ小鳩。俺が星奈と仲良いのは認めるよ。
    あくまで友達としてはだ」

小鳩「……友達?」

小鷹「友達だよ。仮に付き合ってるとして、それが夜空たちに
    知られたらどうする? 俺たちは首になるだろうな。
    隣人部はリア充立ち入り禁止なんだぞ」

小鳩「あんちゃんは卑怯たい。そうやってすぐ言い訳して」

小鷹「こうするしかないんだよ。分かってくれ小鳩。
    今だからはっきり言うが、俺にとって星奈は特別なんだ」

小鳩「……あんな女のどこが良いんじゃ。
    うちの方があんちゃんのこと分かっとるのに」

小鷹「星奈は思い込みの激しいとこもあるけど根は良い子なんだぞ。
    一応理事長にも認めてもらってる仲でもある」

小鳩「あんちゃんはうちと星奈のどっちが大切なの?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:47:01.52 ID:XxRASE1T0

小鷹「……どっちも大切だよ」

小鳩「本当に?」

小鷹「小鳩は俺の妹だ。他の奴とは比べられないよ。本当ならな」

小鳩「……分かったたい。今日はこれくらいにしてあげる」


そう言って部屋を出ていく小鳩。

一体なんだったんだと頭をかきながら思う小鷹。

少しして小鳩は枕を持って戻ってきた。


小鳩「あんちゃん、今日は一緒に寝よ?」

小鷹「おまえなぁ。中学生にもなって……」

小鳩「でも今日はさみしいの。いいでしょ?」

小鷹「……たまにはいいか。来いよ小鳩」

小鳩「うん……お邪魔します」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:49:20.33 ID:XxRASE1T0

兄のベッドに入り、一緒に布団にくるまる小鳩。

星奈と話し込んでいたら、もう寝る時間になっていて驚く。

最近は時間が過ぎるのが妙に早いものだと小鷹は感じていた。


小鷹(小鳩が近くにいると緊張するな。どうしてだろう)

小鳩(あんちゃんならうちはいつでも……)チラッ


小鷹「どうした小鳩? まだ眠れないのか?」

小鳩「うん……」

小鷹「子守歌でも歌ってやろうか?」

小鳩「子ども扱いしないで。うちはもう子供じゃなかと」

小鷹「俺から見ればまだまだ子供さ」

小鳩「もう」プクー

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:53:18.47 ID:XxRASE1T0

ほっぺたを含まらせる妹は可愛かった。

妹の容姿は母を思い出させるが、星菜にも似ていた。

まるで同じ血が流れるかのように白く美しい肌と金色の髪。


小鷹「小鳩の髪ってきれいだよな。俺みたいな
    くすんだ金髪と違って本物のブロンドだ」

小鳩「気になるならもっと触っていいよ?」

小鷹「いや、ちょっと気になっただけで深い意味はないさ。
    それよりまだ眠くならないのか?」

小鳩「うん」

小鷹「困った子だな。どうしたら眠くなるんだ?」

小鳩「キスして」

小鷹「え?」

小鳩「キスしてくれたら寝るたい」

小鷹「ばっ……バカ言うな。俺達は兄妹なんだぞ?」

小鳩「うちはかまへんよ? あんちゃんになら何をされても」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 11:56:46.57 ID:XxRASE1T0

小鷹は星奈に言われていたことを思いだした。

(あの子は本気でアンタのことが好きみたいよ?)

事実だったことが今分かって驚愕していた。

もちろん口にも顔にも出さないようにしてるが。

純粋無垢だった妹は実の兄とそういう関係を望んでいたのだ。

レイシスごっこを止めたのも、星菜に対抗して
兄に気に入られようとしたと考えれば納得できる。

小鷹は度々そういうのは早く卒業しろと言ってきた。

なるほど。妹に求められてるのは分かった。


小鷹(だが俺には星奈がいるんだぞ?)


問題はそこだった。

近親  はもちろんNGだが、それ以上に星奈に対する裏切りとなる。

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 12:01:49.80 ID:XxRASE1T0

小鷹「おい小鳩。悪ふざけするのはもう止めにしろ」

小鳩「あんちゃん?」

小鷹「俺は兄としておまえとキスなんてできない。
    そういうのは別の男の子としなさい。小鳩にはまだ早い」

小鳩「またうちのこと子ども扱いして……!!」


小鳩はベッドから飛び出して自分の部屋へと帰って行った。

今にも泣き出しそうな声をしていた。

妹の思いの強さを知った小鷹は悩んでしまう。


小鷹(小鳩の奴……俺の知らないうちにすっかり別人のように……。
    俺は一体どう接してやったらいいんだ?)


またしても相談の種が増えてしまった。星奈に相談する必要があった。

思い悩むことがあるからこそ、星菜の大切さも分かるというもの。

小鷹はそれ以上考えないようにして寝るようにした。

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 12:09:10.84 ID:XxRASE1T0

翌朝、小鷹は三組に顔を出した。星奈のいるクラスだ。


星奈「ここに来るなんてめずらしいわね小鷹。また悩み事?」

小鷹「ああ。ここじゃできない話だから、ちょっと出ないか?」

星奈「いいわよ。まだ夜空は来てないわよね?」

小鷹「この時間ならいないだろうな。最近は時間ギリギリに来るから」


星奈を廊下へ連れ出し、教室から遠く離れた渡り廊下で
話し込むことにした小鷹。

そしたらなぜかオタク風味の男が話しかけてきたのだった。


男「ぶっひいいいいい!! 羽瀬川小鷹あああ!!」

小鷹「あん?」

男「ひっ……でも睨まれたからってひるまないブヒイイ!!
   僕の星奈たんを独り占めするなんて許さないんだかんね!!」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 12:14:21.58 ID:XxRASE1T0

小鷹「別に睨んじゃいないけどな」

星奈「見た目が不良だからじゃない?」

小鷹「言うなよ。俺だって気にしてるんだから」

星奈「あっ……ごめんね。今のは言い過ぎだったわ」

小鷹「いや、俺もそこまで気にしてないからいいよ///」


男「そこおおおお!! イチャイチャするなブヒイイイ!!」

小鷹「さっきからこの男うるさいな」

星奈「でもどっかで見たことのある顔ね」


よーく目を凝らしてみると、男の襟には特殊なバッチがあった。

星奈タンファンクラブと書いてあったが、実質的には奴隷認定証である。

星奈「そういえばあたしのクラスメイトだったかしら?
    良く覚えてないけど」

男「せ、星奈様? 僕ちんのことをお忘れで?
   星奈様の椅子代わりにもなったこともあるのに!!」

59: 保守トン 2012/08/16(木) 13:14:37.69 ID:XxRASE1T0

星奈「ごめんなさい。もうそういうの止めることにしたのよ。
    同じ学校の人を奴隷にするとか鬼畜のやることでしょ」

小鷹「ほう。星奈も大人になったもんだ」

男「プ、プヒィ? 星奈様何をおっしゃってるのですか」

星奈「真人間に戻りたくなったの。今までのあたしはどうかしてたわ」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:20:45.30 ID:XxRASE1T0

小鷹「隣人部で過ごすようになってから星奈も丸くなったもんだ」

星奈「そういうわけだから、もうあたしには関わってこないでね」


男は言葉に出来ないほどの衝撃を受けていた。

彼は柏崎星奈親衛隊の中でも特に信仰が厚かった。

ここはミッションスクールだ。

だが彼にとって一番崇めるべきは主や聖母ではなく星奈だった。


神の代行者に等しい彼女に、もう関わってこないでと言われた。


男「ぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


男は不思議な叫びをあげるのだった。

彼の中でアイデンティティが崩れ去ったのだ。

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:25:37.82 ID:XxRASE1T0

理科「さっきから騒がしいですけど何かありましたか?」

小鷹たちがいる場所はちょうど理科室の近くだったのだ。


小鷹「そこの男が勝手に発狂しちまったんだよ。
    どうやら星奈のファンらしくてさ」

星奈「無駄にモテるのも困りものだわ」

理科「ふーん、それより先輩たちってやっぱり付き合ってますよね?」

小鷹「え?」

星奈「え?」

理科「ほら。動揺するタイミングまで一緒ですもん。
    夜空先輩にメールで報告しておきますからね」

小鷹「待てバカ!! 早まるのはよせ!!」

星奈「あたし達はただの友達なのよ!! お願いだから信じて!!」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:30:21.54 ID:XxRASE1T0

理科「信じてと言われましても。朝一から廊下で話するって
    仲良すぎませんか? しかもそこの男の人……」

男「ふぇぇ」


男は倒れて失禁していた。天を仰ぎながら涙を流しており、
この世に神はいなかったんだ、とつぶやいてる。

さらに、僕の大好きな星奈様がヤンキーに奪われてしまった、
などと戯言をぬかしてる。


星奈「ちょっとそこのあんた。勝手なこと言ってんじゃないわよ」

男「ふえ?」

星奈「理科が勘違いしてるじゃない。
    あたしはまだ誰とも付き合ってないんだからね」

男「でも……でも……星奈様はその男のことが好きなんでしょう?」

星奈「なっ……///」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:34:56.76 ID:XxRASE1T0

理科「星奈先輩の顔がりんごみたいに真っ赤になりました。
    これで確定のようですね」

小鷹「言っておくけど俺は星奈のこと好きだぞ。
    もちろん理科のことも夜空のことも好きだ」

理科「それは友達として?」

小鷹「おう」

理科「……先輩はやっぱり卑怯です」

小鷹「あ、あん? よく聞こえなかったなぁ……」

理科「また聞こえないふりですか?
    売れないお笑い芸人みたいなマネは止めてください。
    そのネタはとっくに鮮度切れですよ」

小鷹(ちぃ。こういつには嘘が通用しないんだよな。
    無駄に頭が良いからな。普段は変 のくせに)

星奈(小鷹。逃げるわよ)タタタタッ

理科「あっ。どこ行くんですか先輩達!!」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:40:00.43 ID:XxRASE1T0

小鷹達はなんとかその場をやり過ごし、
適当に授業を済ませて昼休みを迎える。

授業中は夜空の視線が痛かったが、小鷹は気にしない。

普通の男子高校生に見えて鉄の意志を持っているからだ。

下記は星奈から送られたメールだ。

『昼休み屋上で待ってるから。
 あんたの分のお弁当も作ってきたからね』

お昼一緒に食べるのは昨日の段階から約束していた。

小鷹の料理の腕前を知った星奈は対抗して
お弁当を作ってくるようになった。

小鷹「さて、行くか」

友達として。あくまで友達としての付き合いだから問題ない。

そう自分に言い聞かせ、教室を後にするのだった。

夜空(タカ。私を裏切って肉などと一緒になるつもりか……?)

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:45:32.84 ID:XxRASE1T0

待てタカ。そう声をかけたかったが、
そんな資格など夜空にはなかった。

かつての親友は、すでにあの憎らしい女のモノになってるらしい。

思えば星奈が入部したいと言ってきた時に排除するべきだった。

小鷹は女に興味のない方だと安心していたのだが、
思い違いだったことが明らかになった。

夜空(奴のそっけない態度はふりだったんだな。
    くそっ。今更気づいても手遅れか……)

三日月夜空はどこまで恋愛に奥手だった。

勝ち目のない戦いに挑みたくないという慎重さもあるが、
それ以上に振られるのが怖かった。

夜空(私では肉に勝てないのか……)

憎らしい思っても、星菜の容姿だけは認めていた。

事実としてこの学園に星奈以上に美しい少女など存在しなかった。

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:50:23.92 ID:XxRASE1T0

星奈「待ってたわよ」

屋上に着いた小鷹は星奈と同じベンチに腰かけた。

星奈のすぐ隣だ。

小鷹「今日は重箱か。気合入ってるじゃないか」

星奈「小鷹に喜んでもらおうと思ってね♪」

小鷹「ありがとな///」

星奈「早く食べましょ///」

小鷹「ああ、だがその前に少しだけ……」


星奈を抱き寄せてキスしてしまった。

先日の小鳩の件から、少しだけうっぷんが溜まっていたからだ。

本当に好きな女の子とキスもできない世の中じゃ生きていけない。

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 13:55:48.49 ID:XxRASE1T0

軽く唇を重ねただけ。まだ食事前だからだ。

星奈の上気した顔が目の前になるので興奮した。

日が明るい内にこういうことをすると天罰が下りそうだった。


星奈「小鷹ったら意外と積極的なんだから///」


ふと生徒達の信仰心が気になった。

夜空なんかは信仰心のかけらもないし、幸村にいたっては日本男児だ。

科学万能主義の理科なんて神の存在すら信じてないだろう。


小鷹「とつぜん襲っちゃってごめんな。そろそろ食事始めようか」

星奈「うん。早くしないとお昼休み終わっちゃうもんね」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:01:35.38 ID:XxRASE1T0

重箱の中身は豪華だった。

ステラではなく星奈が作ったものらしいが、
見事に高級食材ばかりはいってる。

小鷹「正月に食べるおせち料理みたいだな」

星奈「遠慮しないでどんどん食べてね♪」

小鷹がだし巻き卵を掴んだ箸を伸ばすと、星菜の口まで運ぶ。

今度は反対に星奈が小鷹に食べさせてあげる。

箸は二膳用意してあるのに、お互いに食べさせあっていた。

少しだけ……滑稽だった。


小鷹「今だから言うけど、俺たちって夫婦みたいだよな」

星奈「もう/// 恥ずかしいじゃない」


あえて夫婦という言い方をしたのは、
理事長に認められた婚約者だったからだった。

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:08:02.55 ID:XxRASE1T0

小鳩(あんちゃん。またあの女と一緒に食べてる……)ジー


小鷹は重大なミスを犯していた。

妹の小鳩の分のお弁当は作っていたのだが、
自分の分は用意してない。

明らかに不自然である。

そう思った小鳩が兄の姿を探したところ、この有様だった。


小鳩(どうして星奈のことが好きなんじゃ?
    昨日はうちのことも好きって言ったくせに……。
    しかもあの女の作ったお弁当食べちょる)


今すぐ星奈のもとに怒鳴り込みに行きたかった。

マリアとじゃれつく時のように。

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:12:44.57 ID:XxRASE1T0

だが相手はマリアじゃない。

小鷹の好きな柏崎星奈なのだ。


最近は小鳩にあまり構ってこなくなってきて
せいせいしてたのだが、大好きな兄を取られてしまった。

最も守るべき存在を容易く奪われて納得できるわけなかった。


星奈「お腹一杯になったから眠くなったでしょ?
    膝枕してあげるわ」

小鷹「おう。悪いな。少しだけ休ませてもらうよ」


小鳩(あんちゃん。昨日は寝不足だったからって
    星奈の膝の上で寝るなんて……)

星奈はニコニコしながら小鷹の頭を撫でていた。

小鷹も安心して頭を預けている。

二人の信頼関係の証だった。

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:17:10.54 ID:XxRASE1T0

重箱の中身は多かったが、
朝ごはんを少なくしたのでなんとか食べきった。

小鷹はすでに夢の中の住人だ。

星奈は空を見上げ、ゆったりと流れる雲を眺めていた。

天気も良くて平和な日だった。


小鳩(もうよか。あとで問い詰めてやるけん)


これ以上の見物は不要だった。

仲良さそうな二人に水を差すのもあれだし、
兄とは自宅での生活もある。

小鳩は今日は部活に顔を出そうと決めた。

夜空達と一緒になって小鷹と星奈の仲を
はっきりさせようと思っていたのだ。

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:21:06.76 ID:XxRASE1T0

ついに問題の部活動の時間が来てしまった。


小鷹は迷うに迷った挙句、参加することにした。

公開処刑されることは分かっていても、
出ない事には退部にさせられかねない。

名目上は夜空が部長だが、顧問のマリアを懐柔してる
以上、彼女に采配の権利がある。

一番怒らせたらまずいのは夜空だった。


小鷹(だからこれは仕方なかったことなんだ!!)


彼が言い訳してるのは幸村を買収した件だった。

夜空らが小鷹達に不利な発言をした際、弁護するように命じた。

買収の方法は彼だけの知る秘密である。

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:26:46.09 ID:XxRASE1T0

礼拝堂の談話室4と書かれた扉。

そこが小鷹達の部室だ。


礼拝堂なので神聖な場所である。

聖母様の像があったのでお祈りしておいた。

ついでに幸村を買収してしまったことを懺悔した。


星奈「大丈夫よ小鷹。
    マリア様はきっと私たちを祝福してくれるわ」

幸村「かみの味方するものに、はいぼくはないと言います。
    どうかご安心を」

小鷹「ありがとうな。それじゃあ勇気を出して扉を開けよう」


ガチャ……。

魔界への扉が開かれたのだった!!


小鳩「待ってたばい、あんちゃん」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:35:46.44 ID:XxRASE1T0

小鷹「小鳩か……。他にはマリアもいるのか?」

マリア「遅かったじゃないか、あんちゃん!!
     最近はお弁当くれないからお腹ペコペコだぞー!!」

小鷹(そういえばすっかり忘れてたな……。俺は最低じゃないか)

一方でこれも良い機会だと思い、マリアにコンビニの
焼きそばパン一年分を上げると約束して買収することにした。

自分でお弁当を作るのはもうめんどうになったからだ。

これで幸村に続いてマリアも買収することになった。

怖いのは小鳩と夜空と理科の三人である。

数の上ではこちらが有利となった。


小鳩「貴様ら……コソコソ何をじゃれあっているのだ?」

幸村(小鳩殿が怒ってるようです。少しだけ昔の口調に戻っております。
    >>1は関東出身なので方言はよく分かりません)

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:41:55.69 ID:XxRASE1T0

小鷹「よう小鳩。部室に顔を出すなんて珍しいな」

小鳩「あんちゃんが星奈と食事してるの見たんじゃ」

小鷹「み、見てたのか……」

小鳩「最近は自分の分のお弁当も作らなくなったけん」

小鷹「人に作ってもらうと楽なんだよね。しばらく星奈に
    任せっきりなんだよ。俺って頼る人がいるとサボっちまうんだよね」

マリア(え……? お兄ちゃんってそんな人だったっけ?)

星奈(こらマリア。話を合わせなさい。あとでポテチあげるから)

マリア(うん……)

幸村「なにかごふまんがおありですか、小鳩殿?」

小鳩「おまえはひらがな多くて読みづらいんじゃ!!」

幸村「これは失礼しました。これからは漢字をしっかり使いましょう」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:49:13.54 ID:XxRASE1T0

小鳩「あんちゃんは、うちだけのあんちゃんなんじゃ……」

マリア「吸血鬼の日本語もひらがな多くて読みにくいな?」

小鳩「やかましいんじゃ!!」ウガー

マリア「でも恋愛は個人の自由だってケイトが言ってたぞ」

小鳩「ぐぬぬ……」

星奈「お願いだから怒らないでちょうだい小鳩ちゃん!!
    小鷹と正式に付き合うのは卒業してからにするから!!」

小鳩「うちが認めるわけなかろう」

星奈「あたしのことは星奈ちゃんとでも
    おねえさんとでも好きに呼んでいいから!!」
 
小鳩「呼び方なんてどうでもよかとね!!」ウガー

星奈「結婚式は身内だけでひっそりと行うから!!」

小鳩「……きさま。もしかして我を愚弄しておるな?」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 14:57:06.29 ID:XxRASE1T0

星奈「ああ、なんてことなの小鷹!!
    小鳩ちゃんは私達の仲を認めてくれないのよ!!」

小鳩(こいつ……わざと道化を演じてる?)

小鷹「これは困ったな……。最悪の場合は星奈と心中し、
    永遠の愛を誓い合うしかないじゃないか」

幸村「なんて不幸な兄貴たち。自殺用の短剣は用意しておきましたから
    ご安心ください。遺体は二人仲良く埋葬してあげます」

小鳩「きさまら~」グルグル


夜空「役者はそろってるようだな」ガラッ

理科「先輩たちは茶番劇やるのが好きですね」ギロ


小鷹(ついに来たか……)

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:01:44.24 ID:XxRASE1T0

夜空「そのくだらんお芝居は中止だ。
    小鷹も肉もソファに座れ」


小鷹「はい」

星奈「はい」


大人しくソファに座る二人。

テーブルを挟んで理科と夜空と向かい合った。

幸村やマリアは彼らを遠巻きにするように見ている。


夜空「隣人部の活動目的はなんだと思う?」

小鷹「友達を作ることだな」

夜空「その通りだ。ボッチじゃないと入部できない決まりだ。
    そしてリア充は存在してはならない」


--------------------------------------------------------
欄外  休憩タイム

146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:35:34.43 ID:XxRASE1T0

小鷹「待て夜空。リア充の定義をはっきりさせようじゃないか」

夜空「理科に説明してもらおう」

理科「恋人を作ってる人や、友達がたくさんいて
    毎日が充実してる人ですね。たとえば不純異性交遊してる
    人なんていたら最悪ですよね」

小鷹(たとえばのとこで俺の方を見てきたぞ)

理科「内緒で付き合ってる人がいたとしたら最悪ですよね」

星奈(当てつけじゃない。理科も相当怒ってるみたいね)

幸村「おや。恋愛するのに他人の許可が必要でしたか」

夜空「ここは隣人部だということを忘れるな。
    リア充になるという目的をすでに達した者は
    卒業しなければなるまい?」

星奈「うっ……」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:40:28.80 ID:XxRASE1T0

夜空が星奈を退部させようとしてるのは明らかだった。

夏休みが終わってからショートカットにした夜空。
少年のような雰囲気の中に独特の色気がある。

切れ長の目が星奈を捕えていた。


星奈「あ……あたしは隣人部が好きなのよ。
    誰よりもこの部活を愛してるのよ?」

夜空「今さら何を言ってるのだ?
    人の親友を勝手に奪っておいて」

マリア「星奈が泣きそうになってるのだー。
     ●●●夜空、いじめるのはやめろ」
 
夜空「あん? ガキは黙ってろ」ギロ

マリア「ひいい!! 謝るからぶたないで!!」

幸村(なんてはっきりした上下関係なのでしょう。
    マリア殿は役に立つのでしょうか)

156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:45:47.70 ID:XxRASE1T0

小鷹「そう言ってやるなよ。
    マリアは俺たちの顧問じゃないか」

夜空「名目上はそうだが、実際は十歳の子供にすぎん」

マリア「むむむ、これでも先生なんだぞ」

幸村(十歳で教師とか設定からしてすでにおかしいかと。
    しかも彼女は異邦人でしたね)

夜空「実質的にこの部を仕切ってるのは部長である私だ。
    小学生程度の子供に部の管理など任せられん。
    違うか、小鷹?」

小鷹「……そうだな。否定できないよ。
    この部活を作ったのも夜空だしな」

夜空「私だけじゃないぞ。小鷹も一緒だ。
    二人で一緒に作った部活じゃないか。二人でな」

小鷹(めっちゃ二人ってことを強調してるよ。
    理科が不機嫌そうな顔してるし、星奈は泣きそうだし。
    小鳩は発言の機会が減ったな。カオスだ……)

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:51:36.78 ID:XxRASE1T0

理科「独りだけ抜け駆けしようってんですか夜空先輩?」ギロ

夜空「そんな顔で睨むな。私は事実を言ったまでだ」

小鳩「あんちゃんはうちと一緒に過ごせばいいんじゃ。
    この学校に転校してからすっかり別の女に騙されてる」

小鷹「騙されてるなんてそんな言い方ないだろ……?」

星奈「あたしと小鷹はそんなみだらな関係じゃないわ」

小鳩「嘘ばっかり!! お昼休みにキスしてたやん!!」


隣人部に電流のような衝撃走る。


夜空「ほう? 面白い情報だな」

理科「先輩たちったら十分いけない関係じゃないですか?」

160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 15:56:53.19 ID:XxRASE1T0

小鷹「……あ? なんのことだか分からん。最近耳が遠くてな」

星奈「そ、そうよねぇ。小鳩ちゃんたら夢でも見てたのかしら?」

小鳩「夢とちゃうもん!! うちはちゃんと見てたもん!!」


幸村「おそらく親愛の意味を込めてキスしたのでしょう。
    白人国家での挨拶のようなもので、決して恋人だから
    というわけではありません」

夜空「それは無理があるだろ」

理科「さっきから幸村君の発言おかしくないですか?
    もしかして誰かに言わされてます?」

幸村「そのような事実は一切ありません」

夜空「貴様は何処の政治家だ。
    一緒にお昼ご飯食べてる時点で小鷹らは有罪だ」

小鷹(罪だったの!?)

163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:02:36.39 ID:XxRASE1T0

星奈「ちょっと待ちなさいよ!! あたしと小鷹は確かに
    一緒にお昼ご飯食べたわ!! 認めるわよ!! でもね……」

理科「急に手の平を返しましたね。さすがは星奈先輩」

星奈「何か言った?」ギロ

理科「さあ」トボケル

星奈「話を続けるけど、あたし達が付き合ってるって証拠でもあるの?
    お昼ご飯一緒にするなんて友達同士なら普通じゃない」

夜空「男女で食べるのが普通か?」

理科「しかもわざわざ屋上で?」

小鳩「あれは気合入ったお弁当じゃった」

星奈「うっ……」

小鷹「それでも友達なんだからノーカンだ!!」

168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:08:48.67 ID:XxRASE1T0

夜空「小鷹はあくまで友達だと主張したいらしいな」

小鷹「事実として友達なんだからしょうがないだろ。
    けっこう仲の良い友達なのは認めるけどさ」

星奈「友達でもダメなの? 同じ部員同士なんだし、
    リア充の定義には入らないと思うんだけど」

理科「男女間の友情などあり得りえますか?
    実際は獣のような欲求に従って結ばれてるだけですよ」

星奈「くぅ……じゃあ夜空はどうなのよ?
    あんたは小鷹とは昔の親友だったって話だけど」

夜空「タカは友達だからな。キサマのように汚れた関係じゃない」

星奈「小鷹は親友だと言い張る夜空もリア充じゃない?
    退部すべきなのは夜空も一緒よ」

夜空「貴様っ……」

169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:13:38.15 ID:XxRASE1T0

理科「一理ありますね。ところで夜空先輩?」

夜空「なんだ?」

理科「星奈先輩が追い出されるなら、小鷹先輩も退部しちゃいますね」

小鷹「まあ自動的にそうなるな」

夜空「なにぃ!?」

小鷹「俺は星奈を独りになんてしないよ。友達なんだから」

星奈「ありがとう小鷹。うれしいわ///」

理科「これは小鳩さんの気持ちがよく分かりますね」

小鳩「星奈の奴……調子に乗っとるばい……」

幸村「お二人はあくまで友達として友情を確かめてるのですよ。
    そこを勘違いされないようお願いします」

夜空「あれのどこが友達だ!! 幸村さっきからいい加減にしろ」

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:18:56.22 ID:XxRASE1T0

幸村「いいえ。わたくしは引きませんよ。
    兄貴が誰と結ばれようと最後までお供する所存です」

理科「それってメイド宣言ですか?
    さりげなく小鷹先輩のナンバー2を狙ってますよね?」

夜空「幸村も大人しそうな顔して何考えてるか分からん。
    実に油断ならん奴だ」

幸村「おかしなことを。わたくしはただ主に使える身ですので」

小鳩「……ガルルルル」

マリア「うおー、吸血鬼が怒ってる」

小鷹(マリアが全然弁護してくれない件について)

幸村「人と付き合うのと暴力を振るうのでどちらが悪いといえば……」

夜空「なんだと?」

幸村「兄貴が星奈の姉御を気にかけるようになったのも、
    いじられてるのを気の毒に思ったからでしょう」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:24:23.70 ID:XxRASE1T0

夜空「あれはいじめではなく制裁だ」

星奈「何が制裁よ。ハエ叩きで叩かれるのとか結構痛いんだからね」

理科「ひざまづいて靴を舐めさせられそうになったこともありましたね」

星奈「完全にいじめじゃない!!」

夜空「なんのことだか。あれは肉が勝手に舐めてきたんだろうが。
    私は舐める許可を与えただけで舐めろとは言っていない」

小鳩「星奈は奴隷になってるくらいでちょうどいいんじゃ」

星奈「小鳩ちゃん!?」

小鷹「こら小鳩!! 言って良いことと悪いことがあるぞ!!
    星奈に謝りなさい!!」

小鳩「だって……だってぇ……」オロオロ

小鷹「ちゃんと謝らないと豚骨ラーメン作ってあげないぞ?」

小鳩「ふぇぇ」

178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:31:37.39 ID:XxRASE1T0

星奈(オロオロしてる小鳩ちゃんも可愛いわ。
    さすが小鷹の妹ね)

理科(小鷹先輩ってやっぱりお兄ちゃん気質の人なんですね。
    だったら年下の理科とはうまくいきそうなのに)

小鳩「ごめんなさい」ボソッ

小鷹「もっと大きな声で言いなさい」

小鳩「星奈ちゃん!! ごめんなさい!!」

星奈「はいはい。あたしなら気にしてないから大丈夫よ?」ナデナデ

小鳩「うん……」

小鷹(つまりこういうことだ。俺と星奈は夫婦。
    そして小鳩は子供だ。親子3人で金髪ハーフってことでいいよな?)

夜空「駄目に決まってるだろ。いくら外見が似ててもアウトだ」

理科「小鷹先輩はどっちかというと日本人ですよね」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:39:22.74 ID:XxRASE1T0

小鷹「もう話し合いはたくさんだ!!」


ガッシャーン

大きな音を立ててテーブルがひっくり返される。


いわゆるちゃぶ台返しである。


小鷹「俺と星奈が辞めればいいんだな!?
    なら本当に辞めてやるぞ!?」


夜空・理科「!?」


星奈「ちょ、ちょっと小鷹!? 落ち着いて決めましょう!!」

 

198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:49:50.31 ID:XxRASE1T0

小鷹「こんな部活辞めてやる!!」


今度はソファを放り投げた。


星奈「小鷹……」

理科「冗談ですよね?」

幸村「あの顔は冗談じゃありませんよ。兄貴は本気です。
    どうやら怒りが頂点に達したようですね」

小鳩「ふぇぇ」

夜空「タ……カ……? 何を言ってるんだ?」

小鷹「夜空。おまえには失望した。
    これからは他人でいよう。行くぞ星奈」

星奈「う、うん」

夜空「タカ……? おいどこへ行く? 待ってくれ……」

200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:53:31.11 ID:XxRASE1T0

去っていく親友の背中を見送ることしかできない夜空。

もうタカはいないのだ。

幼い記憶に残るあのタカはいない。


小鳩「あんちゃん待って―!! 置いてかんといて!!」


兄を追いかける小鳩の姿。

彼女の姿が昔の自分の姿に重なるようで腹が立った。


夜空(小鷹が部活を止めてしまった……)


放心し、床だけを見つめる。無様なちゃぶ台返しの跡。

割れたコップの破片。壁に突き刺さっているソファ。

まさにカオスだった。

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 16:58:23.33 ID:XxRASE1T0

理科「どうするんですか夜空先輩。
    小鷹先輩まで辞めちゃいましたよ?」

夜空「……」ボーゼン

理科「先輩!!」

夜空「……」

幸村「もう止めてください理科殿。夜空の姉御は
    心を乱しているのです。しばらく一人にして
    あげると良いでしょう」

理科「でもこれで隣人部は崩壊しちゃいましたよ。
    理科はまた一人ぼっちに逆戻りです」

幸村「兄貴はきっといつか戻って来てくれます」

理科「……」

幸村「後片付けはわたくしにお任せください」

理科「任せっきりじゃ悪いですよ。理科も手伝います」

幸村「どうぞお気になさらず。これも武士の務めですので」

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:02:09.45 ID:XxRASE1T0

隣人部でそんなやり取りをしてるころ、
小鷹と星奈は買い物していた。


店員「シャーセー。シャーセー」

星奈「この時間のスーパーって混むのねぇ」

小鷹「ちょうど主婦たちが買いに来る時間だからな。
    タイムセールとかもやってるし」


二人肩を並べて夫婦気分である。

小鳩は先に家に帰した。


星奈「今日はどんなメニューにするの?」

小鷹「カレーかな。3人で食べる夕食って
    久しぶりだから腕が鳴るぜ」


今日は星奈を自宅に招待することになってる。

小鳩は強引に説得したので問題ない。

209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:06:50.33 ID:XxRASE1T0

じゃがいもや玉ねぎなど必要な材料をカゴに入れていく。


小鷹「小鳩は濃い味が好きだから中辛にするか」

星奈「ステラが作る以外のカレーって初めてだから楽しみね」


カレールーも選択し、必要なものはそろった。レジで会計に進む。


店員「シャーセーwww次のお客さんどーぞーwww」

小鷹「よいしょっと」

店員「ひぃ!!」(不良のオキャーサンが来たっすwwww)

小鷹(あっ、またビビられてる。この店よく来るんだけどなぁ)

星奈(人の彼氏を変な顔で見ないでよね。店員の方がチャラいじゃない)

214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:11:48.17 ID:XxRASE1T0

店員「お会計○○円っすwwwポイントカードはお持ちですか?」

小鷹「あっ、やべー忘れちまった」

星奈「なにやってるのよ」

小鷹「おかしいな。たしかに財布に入れといたのに」

星奈(マメな小鷹にしては珍しいわね)

店員「ではこのまま会計しますねwww」

小鷹「お願いします」

小鷹(この店員さん、悪い人じゃないけどチャラいから
    苦手なんだよな。見た目は俺の方がチャラいんだろうけどさ)

店員「あざーっしたwwwwまたのご来店をwwww」

星奈(なんてくだけた口調なのよ。よく店員が勤まるものだわ)

216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:16:27.11 ID:XxRASE1T0

小鷹の家に着く。


小鷹「小鳩ー。帰ったぞー」

星奈「おじゃましまーす。というより、ただいま?」

小鷹「お、俺はただいまでも構わないぞ///」

星奈「そうかしら///」


小鳩「あんちゃんと星奈……
    また二人でイチャイチャしとるばい……」ジー

小鷹「おう小鳩。そんなことに隠れてたのか。
    今夕ご飯の支度するからな」

星奈「あたしも手伝うわ」

小鳩「な……ならうちも」

小鷹「小鳩はアニメでも見ながら待っててくれるか?」ニコ

小鳩「分かったけん……」

220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:20:43.72 ID:XxRASE1T0

台所は二人の空間だった。

まるで二人で調理するのが当たり前のように!!

自然に!! 仲睦まじそうに!!

カレーを作っていた!!


小鷹「野菜切るの上手になったじゃないか」

星奈「本当? うれいしわ。ステラに教えてもらったからね」

小鷹「こうして台所に立ってると主婦……みたいだよな///」

星奈「え/// 何言ってるのよ」


そんな彼らの会話を一部始終見逃さない者がいた!!


小鳩(星奈め。包丁で指切ってしまえ)ジー

221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:26:24.07 ID:XxRASE1T0

しばらくして夕食が完成。

カレーの他にはサラダとトマトジュースだけだが、
大食いの人はいないのでこれで十分だ。

ジュースは小鳩に気を使って買ってきたものだが……


小鳩「うちはトマトジュースなんていらないもん」

小鷹「あれ? 好きじゃなかったけ?
    ●●の生き血とか言ってたし」

小鳩「そういうのは卒業したの!!」

星奈「まあ小鳩ちゃんったら大人になったわねぇ。
    でもレイシス時代の小鳩ちゃんも可愛かったわよ?」

小鳩「思い出させないでよ。あれはうちの黒歴史なの」

小鷹「小鳩もだいぶ標準語に慣れてきたみたいだな」

星奈「やっぱ育った環境の影響って大きいわよね。
    そのうち完璧な標準語が話せるようになるわ」

225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:31:41.43 ID:XxRASE1T0

小鳩「そういえばクラスで訛ってるの私だけだった」

小鷹「何で今まで標準語で話さなかったんだ?」

小鳩「なんとなく。乗り気じゃなかったの」

小鷹「そんなものか」

星奈「どんな日本語話しても小鳩ちゃんは可愛いわね」


そんな感じで仲良しの夕食は終わる。

暇つぶしにリビングでテレビを見ていらいい時間になった。


星奈「そろそろ帰ろうかしら?」

小鷹「ん? もうそんな時間か」

小鳩(いいぞ。早く帰ってしまえ)

227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 17:35:13.56 ID:XxRASE1T0

時計は夜の8時を指してる。


小鷹「この時間だと星奈の家まで出るバスがないな」

星奈「困ったわね」

小鷹「それじゃしょうがないな。泊まるしかない」

星奈「そうね。仕方ないから泊まるしかないわ」

小鳩(ちょっとおおおお!! 早く帰ってよ!!)

小鷹「悪いな小鳩。星奈はウチに泊まることになった」

星奈「ごめんね小鳩ちゃん。迷惑かけるわ」

小鳩(何なのこの展開!!)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

欄外  休憩タイム

240: 保守トン 2012/08/16(木) 18:02:49.19 ID:XxRASE1T0

小鳩の願いも空しく、夜になってしまった。

深夜である。


小鷹「こんな狭い部屋でごめんな?」

星奈「いいのよ。気にしないで」

小鷹「一緒のベッドで寝ようか?」

星奈「そうね。私達はまだ結婚してないけど、
    マリア様も今日だけは見逃してくれ…」

小鳩「星奈はうちの部屋で寝るの!!」

星奈「へ?」

小鳩「あんちゃんの部屋で寝ちゃ駄目。
    私の部屋で寝なさい」

星奈「……それもそうね。小鳩ちゃんの言うとおりだわ」

小鷹「良く考えたら男女が同じ部屋で寝たら駄目だよな。
    避妊でなかったら怖いし」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:07:54.81 ID:XxRASE1T0

こうして男女別の部屋で寝ることになった。

小鷹も星奈も、自分達は清い付き合いをしてる方だと
思っていたので不満は特になかった。

ミッションスクールに通っていたことも大きい。


日付が変わった。


学生は勉強するのが仕事なので今日も学校に行く。

せっかくなので3人一緒に登校した。


小鷹「ふわぁ。今日も眠いぜ。ちゃんと寝たんだけどな」

星奈「あたしは小鳩ちゃんを抱き枕代わりに
    させてもらったからぐっすりよ」

小鳩(ふぇぇ。身体に星奈の匂いがついちゃったよぉ)

247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:13:05.43 ID:XxRASE1T0

小鷹「今思い返すと俺って昨日とんでもないことしたよな」

星奈「ちゃぶ台返ししてたわね」

小鳩「お兄ちゃんは暴れん坊なんだから」

小鷹「話し合いが長かったから腹が立ってな。
    それ以上に星奈を退部させようとしてるのが許せなかったけど」

星奈「小鷹///」

小鷹「俺、これからも星奈をバカにするやつがいたら許さないから」

星奈「ありがと小鷹。大好きよ?」

小鷹「俺もだよ星奈。朝っぱらだけどキスしようか?」

星奈「うん……」

小鳩「神様がお空から見てるんでしょ。本当にしちゃうの?」

星奈・小鷹「うっ……」

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:17:52.23 ID:XxRASE1T0

小鳩に忠告されたので早まったことは止めることにした。

学生の身分でふしだらなことはするべきじゃないからだ。

人は簡単な理由でどこまでも堕ちていくものなのだから。


小鷹「ういーっす」


教室に入ってまず挨拶。

もちろん返事をしてくれるクラスメイトなどいない。

小鷹が不機嫌そうな顔してるのでみんなが怖がってしまうのだ。


夜空「おはよう小鷹……。さっそくだが昨日のことを謝ろうと思う……」

小鷹「……俺とおまえはもう他人だって言ったじゃないか」

夜空「昨日のことは何かの間違いだったんだろう?
    私はもう気にしてないぞ。理科や幸村だってそうだ」

253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:22:00.29 ID:XxRASE1T0

小鷹「今更言われても納得できないよ。
    星奈のこと散々バカにして酷いじゃないか」

夜空「肉のことはもう苛めないって約束する!!」

小鷹「その言い方」

夜空「え?」

小鷹「肉って言うの止めてくれよ。星奈だって気にしてるはずだ」

夜空「ああ分かったよ。これからは星奈って呼ぶから」

小鷹「……とにかく俺はしばらく星奈と過ごすから。
    あまりちょっかい掛けるのは止めてくれよ?」

夜空「た、たまに話すのはいいだろ?」

小鷹「それくらいなら別にかまわないけど、
    俺がちゃぶ台返ししない程度に頼むよ」

夜空「分かった。約束する」

256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:26:22.65 ID:XxRASE1T0

夜空の豹変ぶりに一番驚いたのは小鷹だった。

昨日までの威勢が消え、今では何かにすがりつきたくて
しょうがない女のいやらしさだけを感じる。

実は現段階で相当やばい状態なのだが、


小鷹(うーん、今日のお昼は星奈の教室で食べるべきかな?)

彼はこの通り能天気だった。

隣人部を辞めた以上はフリー。

星奈とどれだけ仲良くしようが自由。

そう思っていた。

小鷹(うちのクラスだと夜空がいるからな。
    屋上だと小鳩にのぞかれるかもしれないし、
    やっぱり星奈の教室にするべきだろう)

その旨のメールを星奈に送信しておいた。

257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:31:13.61 ID:XxRASE1T0

授業は難なくこなした。

この顔なので先生に指名されることもまずない。

教師が生徒に脅えるなど滑稽の極みだが、事実なので仕方ない。


今日は4時間目にマラソンの授業があったので疲れた小鷹。


小鷹「やっとお昼の時間か」


意気揚々と3組の扉を開ける。


女子A「ひぃ!! 不良が来たわ」

女子B「由美、落ち着いて、この人5組の羽瀬川君よ。
     お金渡せば殴られないそうだから安心して」

小鷹(……)


小鷹はまたちゃぶ台返しをしたくなった。

261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:34:53.73 ID:XxRASE1T0

考えてみてほしい。

彼は人を怖がらせたくないと思ってる。


男子A「うわああ!! 君は羽瀬川君じゃないか!!」


だがこのように理不尽に脅えれらてしまっては
苛立つというもの。自然と顔も不機嫌になってしまう。


小鷹「……」スタスタ


男子B「はわああ!! 僕の方に歩いて来るぞ!!」

男子C「は、早くお金渡さないと大変なことになるよ!!」


彼らはたまたま星奈の席の近くなのである。

星奈の席に近づこうとした結果、彼らを脅す借金取り
のように見えてしまったのだろう。理不尽の極みである。

265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:40:21.86 ID:XxRASE1T0

星奈「よく来てくれたわね小鷹。
    お弁当ならちゃんと作ってきたわよ?」

小鷹「おう。あいにく俺は精神的に結構きついぜ」

星奈「3組の連中はまだあんたの顔に慣れてないからね」


そんな彼らを遠巻きに見る生徒たち。


女子A「なんで羽瀬川君が柏崎さんの席に来てるの?」コソコソ

女子B「やだ、由美知らないの? 
     あの二人は付き合ってるって噂よ」コソコソ

女子A「えー、柏崎さんって男子に興味あったんだー」

女子B「あの容姿で誰とも付き合わないから
     同性愛者なんじゃないかって噂だったもんねー」


星奈「……」


星奈も盛大にちゃぶ台返しがしたくなった。

268: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:46:30.32 ID:XxRASE1T0

クラスメイトらの噂話はまだ止まらない。


男子A「羽瀬川君って同じクラスの三日月さんと
     付き合ってるって噂だったけどな」

男子B「三日月さんと同じ部活に所属してるって言ってたもんな」

男子C「三日月さんが遊びで柏崎さんが本命なんじゃね?」


この惨状で黙々と食事してる小鷹達は大物だった。


小鷹「星奈のクラスはいつもこんな感じ?
    すでに胃が痛くてやばいんだけど」

星奈「あたし達が有名人すぎんのよ。諦めましょう。
    あたしなんて噂されるのはもう慣れっこだけどね」

小鷹「たしか星奈は学校中の女を敵に回してるって設定だったな」

星奈「そうなのよねぇ。困ったわ。さすがに調子に乗りすぎたかしら」

271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 18:53:50.72 ID:XxRASE1T0

ほぼ全てのクラスメイトから監視されてる中の
食事は拷問に等しいが、スルーが基本だ。


小鷹「星奈って何気に理事長の娘なんだよな」

星奈「そうね」モグモグ

小鷹「美人でスタイルは良いし、成績も学年で一番だったか」

星奈「そうだったわね」

小鷹「これじゃ妬まれるのも仕方ないな。
    昔の星奈が威張ってなかったとしても、
    女達から妬まれてるに違いない」

星奈「そうかもしれないわ」

小鷹「星奈の精神力の強さに脱帽かな。
    夜空の苛めに耐えられたのも分かるよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

欄外  食事休憩です

288: 保守トン 2012/08/16(木) 19:40:56.56 ID:XxRASE1T0

星奈「あたしだってムカつかないわけじゃないのよ?」

小鷹「そうなのか?」

星奈「学校中の女を敵に回すって大変なのよ。
    毎日のように陰口叩かれるしね」

小鷹「今の状況がまさにそれだな」

星奈「おまけに男子も一筋縄じゃいかないわ……」チラッ


男「お、おい羽瀬川君……」

小鷹「ん? 俺になんか用か?」

男「……くっ、そんな顔で見られても僕は屈しないからな!!」

小鷹「いや、普通に話してるだけなんだが」

男「僕は星奈さんファンクラブの者だが、君たちは付き合ってるのか?」

291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 19:46:12.85 ID:XxRASE1T0

小鷹「付き合ってるって俺と星奈のことか?」

男「そ……そうだ!! 他に誰がいる?
   これはクラス全員が気になってることでもあるんだ。
   正直に話してもらうからな……」

男はメガネをかけており理知的な雰囲気だが台無しだ。

足がガクガク震えており、小鷹を警戒してるらしい。

星奈「あんた、うちのクラス委員じゃない。
    あんたもあたしのファンだったのね」

男「は……はい。星奈様。お話しできるだけでも光栄です」

星奈「あんたと話するの始めてね」

男「はい……。僕はもう死んでもいい。
   羽瀬川君に殺される覚悟であなたに話しかけたのですから」

小鷹「……」

そろそろ真剣にちゃぶ台を用意する必要がありそうだった。

293: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 19:51:41.85 ID:XxRASE1T0

星奈と付き合ってることが知られるのは良い。

それが覚悟で3組にやってきたのだから。

だがこのクラスの人は小鷹を警戒しすぎてる。


小鷹「おい……おまえ」

男「……ぐぬぬ。僕をドラム缶にコンクリ詰めにするつもりか?
   好きにしろ。あとで法廷が君を裁くことになるだろう」

小鷹「……」

星奈「……なんていうか、ここまで脅えられるのも困りものよね」

男「羽瀬川小鷹。僕は君を恐れないぞ。どんな事実でも厳粛にうけとめ……」

小鷹「付き合ってるよ」

男「?」

小鷹「俺と星奈は付き合ってるよ。これで満足か?」


衝撃のあまり教室がどよめいた。

295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 19:58:44.78 ID:XxRASE1T0

特にうるさいのは女子連中だ。

何処の社会に行ってもかしましいのは婦女子だ。


女子A「うっそー。本当にあの二人付き合ってたんだー」

女子B「だから言ったじゃん。噂によると
     家まで泊まりに行くほど仲良いんだってさ」

女子C「えー!! 家までって信じられない。
     柏崎さんのお父さんって理事長なのに
     何も言わないのかしら?」

女子A「娘が娘だから理事長もそういうのは寛容なんじゃない?」

女子B「柏崎さんのお母さんも外国にいるって話だしね。
     どうせろくでもないお母さまなんでしょうね。愛人だったりして」


小鷹「……」

星奈「……」

もはやちゃぶ台返しでは済まなくなった。

聞きたくない話ほどよく聞こえるものなのである。

298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:04:05.15 ID:XxRASE1T0

小鷹「俺って不良っぽいって言われるけど、実際腕は強いぞ」

星奈「あたしもプールで不良に絡まれたとき助けてもらったわ。
    あの時はありがとね」

小鷹「おう。男として当然さ」


できるだけ彼らの話が耳に入らないよう努力はしたが、無駄だった。


男子A「羽瀬川君ってマジ節操ないよなー。さすが不良」

男子B「三日月さんだけじゃなくて一年生の志熊理科も愛人らしいぞ」

男子C「うわー。きっと肉奴隷なんだぜ。脅して無理やり従わせてんだろうなー」

男子A「一年生の男子も舎弟にしてるっていうし、あの人まじやばいよ」


小鷹は野次馬を撃破するための爆弾でもないかと思った。

だが平和な進学校にそんな物騒なものはなかった。

304: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:10:50.68 ID:XxRASE1T0

今までは隣人部のことがあるから星奈との交際を
公にはしてこなかった。

今思えば、それが正解だったのかもしれない。


世間的には不良転校生として知られる小鷹。

才能に恵まれ、嫉妬と羨望の対象とされてる星奈


この二人が堂々と食事してて波乱に満ちないわけがない。

火に油を注いだようなものだ。


小鷹「星奈、明日からは屋上で食べるぞ」

星奈「そうね……」


二人の絆は強い。

たとえどれだけ精神的なダメージを喰らおうと
不死鳥のように蘇ればいいのだ。

305: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:16:30.88 ID:XxRASE1T0

放課後になった。

小鷹はいつものくせで隣人部のある礼拝堂へ足を運びそうになった。

習慣とは恐ろしいものだ。


小鷹「ふっ。俺は何考えてたんだろうな。
    もうあんな場所に愛着なんてないのに」

夜空「小鷹……。これから帰るのか?」

小鷹「まあな。星奈と待ち合わせしてるんだ」

夜空「私は星奈に謝りたいんだ。
    少しだけでいいから会わせてくれないか?」

小鷹「うーん……星奈がオーケーするかな?」

夜空「頼むよ。このままじゃ何もかも終わりだ。
    星奈と出会うきっかけを作ったのは私じゃないか。
    隣人部が無ければ星奈は遊びに来なかったんだぞ?」


そう言われると弱かった。人の良い小鷹はついオーケーしてしまった。

310: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:20:56.50 ID:XxRASE1T0

待ち合わせ場所は4組の前の廊下だった。

5組と3組の中間点にあるのだ。


星奈「遅かったじゃない小鷹。何やってたのよっ……って」

小鷹「なんか夜空が話したいことがあるそうだ」

夜空「星奈、今まで手荒な真似して済まなかった」

星奈「……」

夜空「謝って済む話じゃないと思う。昨日小鷹が怒ってから
    初めて自分の愚かさに気づいたんだ。今まで本当にごめん」

星奈「……あれだけあたしをバカにして、痛めつけて、
    辞めさせようとして。今更どの口がそれを言うのよ?」

夜空「……」

小鷹「……お、おい。星奈」

313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:25:29.03 ID:XxRASE1T0

修羅場だった。

小鷹は気が利いた言葉が思い浮かばず、黙るしかなかった。


星奈は目に涙をためて夜空を見ていた。

今までの蛮行を思い出しているのだ。


ぶたれたり罵倒されたのはまだいい。

星奈は本心では夜空と友達になりたいと思っていた。

同性の友達を持つのは昔からの夢だった。

だが夜空は星奈を肉扱いするだけで見向きもしてくれなかった。


星奈「あたしがどんな気持ちだったか1ミリでもわかる?」

夜空「……」

星奈「あんたはあたしがどんだけ泣いても容赦しなかった。
    あたしの気持ちを一方的に踏みにじったのよ。
    今度はあんたの番じゃないの?」

319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:31:24.57 ID:XxRASE1T0

夜空「すまない……どうしたら許してくれる?」

星奈「もう2度とあたしと小鷹に関わらないで」


夜空の弱い心は崖の下へと突き落された。


創設当初、最初はこの3人しかいなかった。

3人から始めた部活だった。

だんだんと人数が増えて賑やかになっていったが、
実質的な初期メンバーはこの3人だった。


夜空(肉いじめがこんな結果を招くとは……)


夜空は嫉妬心から入部当初の星奈を警戒していた。

柏崎星奈の噂は女子の間でよく噂になっていた。

高校生離れした美貌を持つ女。

万が一、自分の大切な親友があの女に奪われたり
しないかと思って厳しく当たってしまった。

324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:37:44.03 ID:XxRASE1T0

小鷹「星奈……さすがにそれは厳しすぎるよ」

星奈「どうして? あたしにはそれだけ言う権利があると思うけど」

小鷹「しかしだな……。夜空だって一応部長だったし」

星奈「部長だからって特別な仕事したわけでもないわ。
    あたしに暴力ばっかり振るって最低よ」

小鷹「……」

夜空「……」

小鷹も夜空も黙るしかなかった。

星奈の辛さは星奈にしか分からないのだ。


星奈「バカ夜空。あたしの携帯にイタズラしたことあったわよね。
    変な呪いのメールを連発してきてさ」

夜空「新品の携帯を買った時か。あれはすまないと思ってる」

星奈「あたしと小鷹が同じ携帯使ってるのに嫉妬したんでしょ?」

329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:43:29.69 ID:XxRASE1T0

夜空「うっ……」

星奈「ちなみにあたし、今じゃ小鷹と同じお弁当食べてるのよねー。
    それも毎日よ? 休みの日もできるだけ会うようにしてるし」

夜空「……」

小鷹(星奈、気持ちは分かるが挑発しすぎだ。
    夜空はおまえに謝りに来てるんだぞ?)

星奈「実はあたしのパパ公認の仲なのよねー。つまり婚約者ってわけ。
    初めからあんたに勝ち目はないのよ。分かる?」

夜空「……」

小鷹「よ、夜空。落ち着いて聞いてくれ。星奈も感情の整理が
    出来てないんだよ。さすがに昨日の今日だからな」
 
夜空「私は気にしてないから平気だ」

小鷹「……そうか」

仮にも幼馴染なのだ。小鷹は少なからず夜空に対して情があった。

だから二度と話しかけてくるな、とまでは言わなかったのだ。

334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:49:42.26 ID:XxRASE1T0

今の状態は、夜空という名の敗戦直前のボクサーが
一方的にラッシュを決めらてる状態に等しい。

観衆が見守る中の壮絶な修羅場だ。

夜空にとっては耐え時だった。


星奈「なんでさっきから夜空のことかばうのよ小鷹?」

小鷹「いや、夜空だって一応隣人部の設立者だしな」

星奈「そんなの気にする必要あるの?
    悪いことした奴には罰を与えるのが当然でしょ」


廊下で話してるせいか、またしても野次馬軍団の出現である。


女子A「ちょっと見てよあれー。3人で修羅場ってない?」

女子B「うわー、羽瀬川君を取り合って柏崎さんたちが
     争ってるよ。どっちが本命なのかな?」

女子C「案外どっちも フレとかだったりして」

女子D「羽瀬川君は不良だから女なんて誰でもいいんだろうね」

336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 20:56:08.20 ID:XxRASE1T0

小鷹は大きめのちゃぶ台があれば、勢いよくひっくり返したかった。

大衆は本人たちの気持ちなど知らずに勝手な噂話をするものである。

筆者の個人的な意見だが、彼らの存在はマスコミそのものだと思う。


小鷹「だが夜空も謝ってるじゃないか。許してやってくれよ」

夜空「……星奈。もう二度とあんなことしないと誓うよ」

星奈「本当かしら? 手のひらを返したように性格が変わる人の
    言う事なんて信じられないわ」

夜空「……」

星奈は長い髪の毛をかきあげ、気取ったポーズで言う。

小鷹(まるで昔の星奈を見てるようだ)

部活を始めたばかりの頃は、こんな感じのいけ好かない女だった。

隣人部での仲間との触れ合いを通じて変わってきたのに、
夜空と話すとまた元に戻ってしまうのだ。

341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:02:49.69 ID:XxRASE1T0

小鷹(隣人部は必要な部活だったんだよ。ボッチでいると
    氷のように心を閉ざして自分だけの世界を作っちまう。
    これじゃ駄目なんだ。星奈だって根は悪い子じゃない)

星奈「夜空、今度はあんたがひざまずきなさいよ?」

夜空「くっ……しかしここでは人目が」

星奈「あんただって幸村や理科達が見てる前でやらせたじゃない。
    どれだけ恥ずかしかったか分かる?」

夜空「た……頼む。それだけは勘弁してくれないか」

星奈「嫌よ。あたしの気が済まないもん。さあやるの、やらないの?」

夜空「う……うぅ……お願いだ。考え直してくれ」


ここで恒例の野次が入る。


男A「おい見ろよ。三日月さんは柏崎さんの奴隷みたいだぜ」

男B「三日月さんってきつそうな外見だけど実はMだったんだな」

男C「羽瀬川君に調教されたんじゃないか?」

348: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:08:03.95 ID:XxRASE1T0

度重なる野次。

貴様らは給料でも貰ってやってるのかと言いたくなる。


ただでさえ修羅場で忙しいのに、邪魔以外の何物でもない。

ついに小鷹が切れてしまった。


小鷹「……」スタスタスタ

男A「ひぃ!! こっち来た!!」

男B「おい、逃げないとやばいって!!」


小鷹「なあ君たち?」ニコニコ

男A「」←失神

男B「う……うわあぁぁ。羽瀬川君……僕たちが悪かったよ。
    お金ならいくらでも出すから命だけは……」

小鷹「金はいらない。しばらく黙っててくれないか」ニコ

男B「」←失神

351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:15:29.91 ID:XxRASE1T0

AとBは失神。そして失禁。CとDは50メートル先まで全力疾走中。

中には勇敢にも窓から飛び降りた者までいる。

外では救急車のサイレンが鳴っていた。


小鷹(俺の顔ってそんなに怖かったかな?
    笑顔が特に怖いって言われるからやってみたんだけど)

女子連中を見ると、綺麗に消えている。

うるさいのがいなくなってすっきりした。

さて。これなら修羅場に専念できる。


夜空「……うぅ……これだけ謝ってるじゃないか……
    もう許してくれ……許してくれよ星奈……」ポロポロ

星奈「はぁ? 泣いたって許してもらえると思ってんの?
    泣くならあたしみたいに疾走しなさいよ。
    ただ泣いてるだけじゃつまらないじゃない」

359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:22:46.42 ID:XxRASE1T0

小鷹(どうすんだよこれ。そのうち先生とか呼ばれるんじゃねえのか)


夜空は土下座に近い格好をさせらていた。

厳密には両手を床について星奈を見上げている。

夜空の泣きはらした顔。どれだけ多くの涙を流したのか。



星奈「人に見下されるってどんな気分?」

夜空「……ぐすっ……うっ……」

星奈「この駄夜空が。あんたは家畜以下よ。
    一生あたしの前にひれ伏すがいいわ」

夜空「うえっ……ううっ……ひぐっ……」


小鷹(しかし、この想像を絶する光景が、かつての
    隣人部の日常風景でもあるのが恐ろしい。
    俺たちはどこで道を踏み外したのか)

364: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:27:34.77 ID:XxRASE1T0

小鷹もさすがに止めなくてはならなかったが、
先生方が来てくれた。


先生「こら君たち!! 廊下で何やってるんだ!!」

シスター「神の子羊たちよ。争いを今すぐお止めなさい」


ダダダダダッ

結構な数の教師が駆けてくる。


これにはたまらず小鷹達は逃走した。

小鷹は星奈の手を握りながら、
夜空はふらふらな足で何処かへと消えた。


小鷹「ふぅ疲れたぜ。ここまで来れば大丈夫かな?」

星奈「久しぶりに全力疾走しちゃったわ」

気が付いたら礼拝堂まで来ていた。

366: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:31:58.21 ID:XxRASE1T0

幸村「おやおや。これは兄貴たちではありませんか」

小鷹「幸村……?」

星奈「あんた、こんなとこで何やってんのよ?」

幸村「私は日課の部屋掃除をしていたのです」

小鷹「部屋って、部室のことか?」

幸村「左様です。いつ部活が再開してもいいように
    準備しているのです。ちゃぶ台返しの後片付けも私がやりました」

小鷹「す、すまなかった。お前には迷惑をかける」

幸村「頭を上げてください兄貴。
    舎弟として当然のことをしたまでです」

星奈(この子聖人すぎでしょ。うちの執事にでも採用してあげたいわ)

幸村「今日兄貴たちはどうされましたか?」

371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 21:42:09.57 ID:XxRASE1T0

小鷹「夜空が星奈に謝ったんだけど、泥沼化しちまってな」

星奈「今になって謝られても遅いのよ。
    あたしの気持ちを散々踏みにじったくせに」

幸村「なるほど。大体の事情は分かりました。
    しかし夜空の姉御はショックを受けてるでしょうね」

星奈「え?」

幸村「夜空の姉御は昨日の件でかなり落ち込んでおりました。
    おそらく本気で今までの横暴を謝りたかったのでしょう。
    あの方が人に簡単に頭を下げるわけありませんから」

小鷹は幸村の冷静な観察眼に恐怖さえ抱いた。

幸村「理科殿も同じ気持ちのようです。あとは兄貴たち次第ですよ。
    隣人部は正式には廃部にはなっておりません。事務手続きが
    済んでおりませんから。これからいくらでもやり直せます」

これ以上力強い励ましはなかった。

小鷹達にはまだ希望の光が残っていたのだ。

402: 保守ありがと 2012/08/16(木) 22:46:02.26 ID:XxRASE1T0

星奈「でもあたしは許せないわ。
    あんな奴と部活やりたくない」

幸村「姉御……」

小鷹「分かるだろう幸村? 星奈は見てのとおりご立腹なんだ。
    今までのことがあるから無理もないがな」

幸村「時間を置くとよろしいでしょう。
    無理に部活のことを考えないほうが良いですよ」

星奈「そうね。しばらくは小鷹と恋人気分を味わうわ」

小鷹「はは/// なんだか照れるな」

小鷹(幸村の言うとおり時間がすべてを忘れさせてくれるさ。
    そうすれば、いつか部活だって再開するに違いない)

404: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 22:50:42.70 ID:XxRASE1T0

その日は理科と会えなかったのが
気がかりだったが、帰路に着いた。

見慣れた自宅の玄関だ。

小鷹「帰ったぞ小鳩ー」

小鳩「おかえり、あんちゃん。
    今日は星奈は一緒じゃないんだね?」

小鷹「ああ。今日は自分の家に帰ったよ。
    さすがに二日連続でお泊りはないからな」

小鳩「……おっしゃ」ニコニコ

小鷹「こら。いつかは小鳩のおねえさんになるかも
    知れない人なんだから仲良くしないと駄目だぞ?」

小鳩「……」プクー

小鷹(また頬含まらせてるよ。可愛いな)


いつものように夕食の準備だ。

あまり手間はかけたくなかったのでラーメンにした。

406: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 22:56:14.74 ID:XxRASE1T0

小鳩の好きな豚骨ラーメンだ。

冷凍室にに冷凍餃子があったので揚げる。

出来合いのポテトサラダも用意して完成。

非常にシンプルだが、ご飯も少しだけ炊いてある。


小鳩「いただきます♪」

小鷹「はい。いただきましょう」


星奈がいないから妹が機嫌良さそうだった。

感情に表裏がないとこが妙に愛らしく思えた。


小鷹(やべっ。昨日のカレーも少し残ってるんだったな。
    なんでラーメンなんて作ってんだよ俺。
    残った分は冷凍しておくか)

小鳩(やっぱりあんちゃんの作ってくれるラーメンは最高♪)

407: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:00:58.74 ID:XxRASE1T0

小鷹は星奈のことを考えんがら小鳩を見ていた。

何度見ても容姿がよく似てる。


小鳩「あんちゃんは星奈のこと考えてるでしょ?」

小鷹「……ばれた? ところで今日のラーメンおいしいかな?」

小鳩「おいしい。おかわりにご飯も食べるからね。
    てゆーか話そらさないで」

小鷹「悪いな。お前を見てると、どうしても星奈を
    思い出しちまうんだ。昨日は同じ食卓に立ったからな」

小鳩「そんなにうちと星奈って似てる?
    うちはあんなに胸大きくないからね」

小鷹「髪の色とか肌がそっくりなんだよ。
    英国人の血だな。ゲルマン系白人だよ」

小鳩「忍者?」

小鷹「はは。小鳩にはまだ早かったかな」

小鳩「また子ども扱いしたー!!」

410: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:05:17.95 ID:XxRASE1T0

小鷹「あはは。ごめんごめん。もう言わないから」

小鳩「んもー」プクー

小鷹(やっぱ肉親といると落ち着くな。
    これが赤の他人との違いってやつか。
    でも星奈の顔は早く見たいぜ)


夕食を終えて風呂に入り、いつものように自室へ。

もうやることがないので憩いの時間だ。

星奈に連絡して今日のことを話す。


星奈「今日ね。家に帰ってからよく考えたんだけど、
    夜空には少し言い過ぎたかなって思ってるの」

小鷹「おおっ。どういう心境の変化だ?」

星奈「あんたの言うとおり、あいつがいなかったら
    隣人部は存在しなかったからね。
    あたしを入部させてくれたのは正直うれしかったわ」

電話越しでも星奈の声は可愛かった。

416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:12:36.84 ID:XxRASE1T0

星奈「でもあたしも正気じゃいられないの。
    あいつを……夜空を前にするとね。特に弱ったあいつを
    見るだけでこっちがおかしくなりそうなの」

小鷹「たしかに夜空は別人みたいになっちまったからな。
    まるでイジメられキャラみたいだよな」

星奈「だからかもしれないの。あたしは廊下で皆が
    見てるのにあんなに怒鳴っちゃって」

小鷹「むしろ、あれだけきつく言えば
    夜空も反省したんじゃないか?」

星奈「そうだと信じたいわ。小鳩ちゃんはどうしてる?」

小鷹「俺の部屋の前に居るぞ。枕を片手に持って
    色っぽい目で俺を見つめてる。●●●一枚の状態だ」

星奈「やばいじゃない。もちろん断わりなさいよ?」

小鷹「分かってるよ。近親  なんて神様がお許しにならないからな。
    中世だったら市中引き回しの末、火刑に処されるだろうな」

小鳩「……」ジー

419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:17:51.84 ID:XxRASE1T0

星奈「もう夜遅いわ。そろそろ切るわね?
    くれぐれも小鳩ちゃんの件は断わりなさいよ?」

小鷹「おう。心配すんな。また明日な」


ピッ。

通話の終わりを告げる電子音。

話が終わると空しいものだ。


小鳩「あんちゃん、星奈だけじゃなくてうちのことも見て」

小鷹「高校生をからかうのもいい加減にしなさい。
    早くパジャマ着て自分の部屋で寝なさい」

小鳩「いや。今日はあんちゃんの部屋で寝るの」

小鷹「そういうのはもういい。俺とおまえは兄と妹だ。
    それ以上の関係を望むのは間違いだよ」

小鳩「……」

小鷹「小鳩だっていつか素敵な男性が見つかる時が来るよ」

421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:32:06.76 ID:XxRASE1T0

小鳩「うちにはあんちゃんだけなの」

小鷹「そういう言い方してる時点で子供なんだよ。
    人の縁とはめぐり合わせだ。長い人生を生きてれば
    きっと良い人とめぐり合う機会は訪れる」

小鳩「そうなの?」

小鷹「そのためにはいろんな場所に行ってみることだ。
    もしかしたら、そういう人が小鳩の学年にも
    いるかもしれないぞ?」

小鳩「うーん、よく分からないや」

小鷹「今は分からなくてもいい。そのうちきっと分かるよ。
    一緒に寝るだけなら許可するからこっちおいで?」

小鳩「うん!!」


小鷹のベッドにもぐりこみ、優しく頭を撫でられる小鳩。

それだけで邪な考えは消えていき、夢の世界へと誘われた。

小鷹はひっそりと十字架を手にしてたのだが、小鳩は気づかなかった。

423: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:34:58.27 ID:XxRASE1T0

人間とは間違うように生まれてくる。

だからこそ、正しい方向に導いてくれる存在が必要なのだ。

人生の友が。恋人が。パートナーが。


翌朝、いつものように教室の扉を開く小鷹。


小鷹「ういーっす」ガラッ

生徒ら「……」シーン

小鷹(今日もシカトか。もう慣れたけどな)


夜空「小鷹か。おはよう。昨日は迷惑をかけた」

小鷹「俺は気にしてないからいいよ。おまえこそ
    星奈に怒られちゃって大変だったな」

夜空「……あれはしょうがないんだ。私の自業自得だよ」

小鷹「夜空は変わったよな」

夜空「え?」

427: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:41:35.31 ID:XxRASE1T0

小鷹「例の一件から別人のように弱気になった。
    星奈も驚いてたらしいぞ」

夜空「……だって自己中なのは小鷹に嫌われるだろ?」

小鷹「俺に?」

夜空「今更朴念仁ぶられても困る。私がどうして
    おまえを入部させたか知らないわけじゃないだろ?」

小鷹「……あぁ。まあなんとなくな」

夜空「本当はおまえと二人だけでやる部活だったんだ。
    二人だけでたくさん話ができて親友になれたら
    いいなって思ってた」

小鷹「そうか。それで星奈を邪険にしてたのか」

夜空「星奈が怒るのは当然なんだ。私は罪を償わないといけない」

小鷹「……そこまで深刻に考えなくても良いと思うけどな。
    夜空は信仰心はなさそうだが、聖母様の前で懺悔でもしたらどうだ?」

夜空「その聖母とやらはご利益はあるのか?」

小鷹「うーん、そういうのとはちょっと違うな。
    気持ちが楽になるって感じだな」

431: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:47:37.71 ID:XxRASE1T0

夜空「小鷹に信仰心があった事の方がむしろ不思議だよ」

小鷹「学校で礼拝が出来るのって貴重だから使おうと思ってな。
    俺も初めてだったんだけど、マリアに色々と教えてもらったんだ」

夜空「マリアも伊達にシスターじゃないな」

小鷹「本当にな。そろそろ始業に時間だ。俺は席に戻るぞ?」

夜空「……もうそんな時間か」

小鷹「残念そうな顔するなよ。また空いた時間を見て話をしよう」

夜空「ありがとう。小鷹は優しんだな?」

小鷹「よせよ。言っておくが、星奈に見られたらたぶん激怒するからな?」

夜空「分かってる。あいつの前では親しくしなければいいのだろう?」

小鷹「さすが夜空。聞き分けが良いね」

夜空「褒めても何も出ないがな」

436: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:53:28.62 ID:XxRASE1T0

二人だけで落ち着いて話してみると、割と普通だった。

トゲがなくなったというか、女らしくなったというか。

小鷹を見つめる瞳が、憂いを秘めているようで背中がぞっとした。


小鷹(夜空はまだ何を考えてるか分からない。
    なぜかあいつからはやばそうな気配がするんだよな)


授業中に少しだけ夜空の席を見る。

視線が合うと、夜空は恥ずかしそうに前を向いてしまった。


小鷹(むしろこれは良い傾向なのか? 俺にはよく分からん。
    隣人部が崩壊してから良くないことばかりだ。
    今ではあの選択が正しかったのかどうかも分からん)


余計なことを考えてると授業はすぐに終わった。

今日も昼食の時間がやってきたのである。

438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/16(木) 23:58:09.91 ID:XxRASE1T0

昨日約束した通り、お昼は屋上で待ち合わせだ。

特に雨天でもない限り普通に食べられる。


小鷹「今日は俺の方が早く着いちまったか」


雲を眺めながら待っていると、星奈がやってきた。


星奈「遅くなってごめんね。待った?」

小鷹「今来たばっかりだよ。ってこんなテンプレな会話は止めようぜ」

星奈「ギャルゲーの基本よ?」

小鷹「知るかっつの。今日は俺が作った弁当だから
    存分に食べてくれ。量は十二分に用意したからな」


3組のような集団監視の中と違い、屋上は広々としていて
最高だった。高所から吹き抜ける風が気持ちい。

440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 00:04:33.35 ID:XSE/i6S10

空に近い場所にいるだけで神聖な気持ちになるから不思議だった。


星奈「昨日は小鳩ちゃんとおかしなことしなかったでしょうね?」

小鷹「当たり前だろ? 小鳩には間違いを犯さないように
    しっかり言い聞かせたさ。その証拠に今日は
    隠れて様子をうかがってる奴はいないだろ?」


二人は食べる前にくせ者がないか十分に調べていた。

今日は間違いなく二人きりの昼食となっていた。


星奈「昨日から理科と会ってないわね。ちゃんと学校来てるかしら」

小鷹「確かに心配だな。いくら天才でもまだ一年生だしな。
    修羅場経験させちまったのはかわいそうだったよな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

欄外 体力の限界が来たため、寝る
    もし残ってたら続き書くつもりだ

556: 再開っす 2012/08/17(金) 09:42:09.53 ID:XSE/i6S10

星奈「あの子も隣人部が好きだったみたいね」

小鷹「理科室で孤独な毎日を送ってたから余計にな」

星奈「会いに行くの?」

小鷹「そのつもりだ……。理科は怒るかもしれないがな」


不安そうにうつむく小鷹。

その横顔を見た星奈は、そっと手を握ってあげた。


星奈「大丈夫よ。あの時の選択は間違ってなかったって信じてるわ。
    あそこでちゃぶ台返ししなかったら、あたしだけ首になってた
    可能性もあるもの。夜空の暴走を止めてくれて感謝してるわ」

小鷹「……ありがとう」

558: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 09:46:48.44 ID:XSE/i6S10

夫婦とは支え合うものだという言葉があるが、
まさに彼らの状態がそれだった。

小鷹「頼む星奈。少しだけでいいからキスさせてくれないか?」

星奈はこくりと頷き、小鷹の唇を受け入れた。

お互い目を閉じて唇の感触を味わっていた。


星奈「んっ……」

座ったまま抱き合った姿勢。

服越しに体温が伝わる。

ドキドキしてるのは二人とも同じだ。

鼓動の音さえ聞こえてしまいそうだった。


星奈「好きよっ……小鷹っ……」
 

561: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 09:52:14.70 ID:XSE/i6S10

星奈「んんっ……!!」

苦しそう星奈の吐息。

突然侵入してきた舌の感触に驚いているのだ。

戸惑ってる星奈の顔が可愛くて、胸にまで手を伸ばそうとした。

小鷹「星奈……俺はもう……」

星奈「小鷹っ……これ以上はだめよ……」


カラン。

小鷹の上着から十字架が落ちる。

死への勝利と復活の象徴だ。

黄金色の十字架が小鷹達を見つめていた。


小鷹「すまん……。調子に乗りすぎた」

星奈「いいのよ。あたしは大丈夫だから」


乱れた衣服を戻す星奈。小鷹は気まずそうに視線をそらしていた。

563: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:00:06.38 ID:XSE/i6S10

学生の見である以上、堕落した行為はしたくなかった。

ただでさえ婚約者同士。

そういう行為は結婚してからでも遅くない。


その日の放課後、理科室を目指す小鷹と星奈。

扉を開けるときは緊張した。


理科「小鷹先輩と星奈先輩ですか……。
    わざわざこんなところに何の用ですか?」

小鷹「少し話をしに来たんだ。というより謝りに来た」

星奈「勝手なことしてごめんなさい。あたしたちのせいで隣人部は……」

理科「ちゃぶ台返しの跡、幸村君が一人で片付けしたんですよ。
    まず彼に謝るべきなんじゃないですか?」

566: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:03:40.62 ID:XSE/i6S10

小鷹「もちろん謝ったよ!! 幸村とはもう話はしてある」

星奈「あの子もまだ部活を続けたいって言ってたわ。
    書類上は隣人部は存続してるそうよ」

理科「そうですか。でも部長の夜空先輩が
    あの様子じゃ難しいでしょうね」

小鷹「知ってたのか?」

理科「理科はなんでもお見通しですよ?
    星奈先輩が夜空先輩をひざまずかせてるのも見ました」

星奈「うっ……。あの時は気が動転してたの」

小鷹「星奈も今までのうっぷんが溜まってたんだよ」

570: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:15:07.11 ID:XSE/i6S10

理科「確かに夜空先輩のいじめは度が過ぎてました」

小鷹「理科もそう思うか?」

理科「私や幸村君は常にスルーしてましたけどね。
    星奈先輩の心情を理解すれば復讐するのも当然かなと」

星奈「伊達に天才少女って呼ばれてないわね。
    話が分かるじゃない」

理科「いえいえ。そういう星奈先輩も変わりましたよね。
    性格が丸くなりました。もう奴隷の人はいなくなったんですよね?」

星奈「奴隷ってクラスの男子たちのこと?
    あんな子供っぽい遊びはもう止めたわ!!」

小鷹「隣人部のメンバーは皆変わりつつあるんだよ。
    理科はどう思うんだ? また部活やりたくないか?」

572: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:20:18.59 ID:XSE/i6S10

理科「……隣人部ですか。悪くないですね」

そっけない言い方に驚いた小鷹達。

誰もよりも明るくて変 的だった理科は何処へ行ったのか。

ある意味隣人部を一番満喫していたのは彼女だった。

超最新のゲームを持って来たり同人誌を呼んだりと、
フリーダムの極みを尽くしていた。


星奈「やっぱりあの時のこと怒ってる?」

理科「ええ。普通に怒ってますよ?」


完全に怒ってると言い換えても良かった。

当然だ。隣人部という居場所が無ければこの理科室に籠るしかない。

友達を作るという理想を勝手に奪ってしまったのだ。

576: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:28:13.07 ID:XSE/i6S10

理科「正直に言うと、お二人の姿を見るのもつらいです。
    仲の良さを見せつけられてるようです」

星奈「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの!!」

理科「コソコソ小鷹先輩と付き合ってたくせによく言いますよ。
    性格が丸くなったのは男が出来た余裕からですか?」

星奈「……」

小鷹「頼む。星奈を責めないでやってくれ。
    全部俺の責任なんだ。
    隠すような真似をしなければよかった」

理科「でも星奈先輩との関係を公にすれば、夜空先輩が
    切れるのも確実でしたよね。事実切れましたけど」

小鷹「……俺たちの居場所は隣人部なんだ。
    俺はなんとか部活を再建したいと思ってる」

理科「……理科にとってはそうじゃないかもしれません。
    理科室に籠るようになってから少し考えが変わりました」

577: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:33:34.95 ID:XSE/i6S10

小鷹「考えが変わった?」

理科「独りでいるのも悪くありませんよ?
    誰かに裏切られる心配もないし」

小鷹「うっ……」

星奈「ごめんなさい。今日はこれで失礼するわ。
    あたし達には気持ちを整理する時間が必要だと思う」

理科「そうですね。理科も全く同じ気持ちです。
    何か変化があったら携帯で連絡入れますので」


理科との会合はそれで終わった。

予想はしてたが、やはり理科はご機嫌斜めだった。

普段めったに怒ることのない彼女だけに、
説得の仕方も分からなかった。

小鷹「星奈。すまない……」

星奈「一人で抱え込んじゃ駄目よ。まだ終わったわけじゃないわ」

581: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:40:04.69 ID:XSE/i6S10

その日は礼拝堂に寄ってから帰ることにした。

聖母様の像はいつ見ても慈愛に満ち溢れていた。

お祈りしてから談話室4の扉を開ける。

たぶん誰もいないだろうが、少しだけ気になったのだ。


マリア「んあ?」

ソファでお昼寝してたようだ。

扉の音に反応して目を覚ました。


小鷹「久しぶりだなマリア。元気だったか?」

マリア「お兄ちゃんなのだー!! あははは、本当に久しぶりだなー!!」

小鷹「よしよし。マリアは元気いっぱいだな?」ナデナデ

マリア「うわーい!! お兄ちゃーん!!」

582: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:47:45.92 ID:XSE/i6S10

星奈(元々ここはマリアのお昼寝用の部屋だもんね。
    それを夜空の奴は勝手に奪ったのね)

小鷹「また今度お菓子あげるからな?」

マリア「やっぱりお兄ちゃんは優しいなー。
     昨日、夜空の奴が一人で来たけど何もくれなかったのだ」

小鷹・星奈「え?」


驚愕しながらマリアの話をよく聞くと、
夜空はこっそり部室の様子を見に来てるとのこと。

マリアの姉に当たるケイト先生と話をしたり、
幸村と打ち合わせをしたりと裏で何かやっているらしい。


小鷹「マ、マリア。夜空は何か変わったこと言ってなかったか?」

マリア「んー、私にはよく分からない話だったのだ」

星奈(何かやばそうな感じね。夜空には警戒しておかないと)

583: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:53:23.58 ID:XSE/i6S10

星奈と同様の不安を小鷹も感じていた。

性格が変わったとはいえ、夜空は夜空だ。

どんな考えを秘めてるか分かったもんじゃない。


帰宅した小鷹。

今日は精神的に疲れる日だったのでスーパーのお弁当を買った。

こんなことでは主婦失格と言われるかもしれないが、
あいにく彼は男子高校生だ。

今まで真面目に調理してたことの方がすごいだろう。


小鳩「おかえり、あんちゃん。今日は元気ないね?」

小鷹「あぁ……理科の奴も怒ってて大変だったよ。
    隣人部再建への道は険しいな」

腹が減っていたのでさっそく食べることにした。

584: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 10:59:52.43 ID:XSE/i6S10

小鷹「今日はお弁当で悪いな」

小鳩「いいよ。あんちゃんはいつも頑張ってるんだから。
    たまにはお弁当も新鮮な感じがして悪くないよ?」

小鷹(小鳩……。おまえも少しずつ大人に近づいてるんだな)


また星奈の笑顔が頭に浮かんだ。

そして困ったことに目の前の妹の顔に酷似している。

昼休み、青空のもとで唇を重ねたシーンを思い出す。


あの時の星奈の吐息は熱っぽくて最高だった。

自分の舌を舐めるとあの感触がよみがえるようだった。


小鳩「下向いてどうしたの? 考え事?」

小鷹「な……なんでもないんだ。気にしないでくれ」

小鳩「最近のあんちゃんは疲れてそう。ちゃんと寝たほうが良いよ?」

586: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:06:43.87 ID:XSE/i6S10

小鷹「心配してくれてありがとうな。俺なら大丈夫だから」

小鳩「うん。それならいいけど」


口数が少ないため黙々と箸が進む。

あっという間に夕食は終わり、リビングでくつろぐことにした。

妹が録画したアニメを見ようと言ったのでそれに合わせる。

小鳩は昔ほど熱中しなくなったが、
それでも毎週欠かさず見るようにはしていた。


小鷹「はぁ……」

小鳩「また溜息。本当は疲れてるでしょ?」

小鷹「精神的にな。……アニメも見てみると結構面白いもんだ。
    少しは気がまぎれるよ」

小鳩「最近のアニメは作画とか気合入ってるからね」

589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:12:45.63 ID:XSE/i6S10

背筋を伸ばしてアニメを見てる妹の横顔を見た。

自分と同じ血が流れてるのに、
髪の毛の色が違うのが信じられなかった。

レイシスごっこをしてたころと違って確かに大人びて見えた。


ここに星奈はいない。

いけないと分かっていても、あの髪に触れてみたくなってしまう。


小鳩「うちの髪が気になるの?」

小鷹「少しだけな。俺みたいなくすんだ金髪と違って綺麗だ」

小鳩「触っていいよ?」

小鷹「……いいよ」

小鳩「遠慮しなくていいよ? あんちゃんなら嫌じゃないから」


なら少しだけ。そう思って長い髪に触れてみる。

いつもと違ってロングに下ろしていた。

592: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:18:11.78 ID:XSE/i6S10

星奈を意識してるためか、ツインテールにはしなくなった。

クセひとつない金髪が小鷹の手の中で形を変える。

まるで作り物のように繊細で美しかった。


小鳩「……」

小鳩は無言でテレビを見ていて、兄の方は向いてない。

髪を触られても本当に気にしてない様だった。


小鷹「……っ!!」


瞬間的に星奈とのキスを思い出して息を吸ってしまう。

禁断の果実。

今すぐ小鳩の服を脱がせてソファに押し倒したらどうなるかと想像した。

だがそれは破滅への道だ。


小鳩「覚悟ならできてるよ?」チラッ

594: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:22:55.96 ID:XSE/i6S10

今すぐ飛びかかろうとしたところで思いとどまる。

主はいつでも小鷹達を見守っているからだ。

身体をまさぐって十字架を探すが、見つからない。

あれは制服の上着に居れっぱなしだった。


小鳩「あんちゃん、我慢しないで」

小鷹「小鳩っ……」


妹の方から抱き着いてきて、自然に唇を重ねてしまった。

なぜか小鳩は涙を流してる。

哀れな自分に同情したのかと小鷹は深読みしてしまう。


小鳩「何回考えてもうちにはあんちゃんしかいないの……。
    あんちゃんのことが好きなの……」

行為への抵抗感はまだある。

震える手で妹の華奢な身体を抱いていた。

596: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:28:12.23 ID:XSE/i6S10

妹とはいえ、少女であることに変わりはない。

星奈と違って細身の身体というのも悪くなかった。


力任せに押し倒して言うことを聞かせたくなってしまう。

獣としての本能を解放し、
息も絶え絶えになるまで●●つくしたい。


小鷹「小鳩ぉ……!!」

小鳩「あっ……」


ソファではなく床に押し倒して強引にキスした。

抵抗されないように手を押さえてしまうが、
小鳩には始めから抵抗する気などない。

邪魔な服を脱がそうとしたところで携帯が鳴った。

prrrrr

小鷹「……はっ?」

605: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:35:54.99 ID:XSE/i6S10

夢から覚めて現実に戻された。

沸騰していた頭が急激に冷気で冷やされたのだ。


小鷹(誰だ? この時間だと星奈か?)


制服から携帯をぶんどる様に取って中身を確認。

夜空からのメールだった。


『タカ。どうしても会って話がしたいんだ。例の公園を覚えてるか? 
 幼いころ、私とおまえがよく遊んでいた公園だ。
 あの公園に来てくれ。私はいつまでもお前を待っている』


携帯を持つ手が震えた。今は夜の7時過ぎだ。

余程大事な用で呼び出されたとしか思えなかった。


小鳩「あんちゃん、誰からの連絡だったの?」

小鷹「よ……夜空だよ。会って話がしたいんだってさ」

607: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:41:26.28 ID:XSE/i6S10

小鳩「本当に? 見せてよ」

小鷹「あっ……」


一瞬で携帯を奪われて中身を確認される。

小鳩はあんな奴のとこに行かないでと懇願した。

だが小鷹は首を横に振る。


小鷹「あいつは下手な用事で呼び出したりしないよ。
    あれでも頭は良いからな。きっと今後のことで
    重要な話があるのさ」

小鳩「話なら学校でもできるじゃない。同じクラスなんだし」

小鷹「きっと学校では言えない話なんだろう」

小鳩「……本当に行く気なの?」

小鷹「もちろんだ。俺は何としても隣人部を復活させたいからな」

612: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:50:00.33 ID:XSE/i6S10

名残惜しそうな小鳩と別れ、例の公園へと走る。

私服姿の夜空が待っていた。

ショートカットなので余計に昔を思い出しそうになる。


夜空「来てくれたか。うれしいぞタカ」

小鷹「……ああ。こんな時間に何の用だ?」

夜空「隣人部はもうすぐ再開するぞ。幸村やマリアは説得済み。
    ケイト先生には一時的に休部状態だと報告してある。
    理科の在籍については一時保留にしておこう」

小鷹「……」

夜空「どうした? 不満なのか?」

小鷹「いや、俺だって活動が再開できるのはうれしいよ。
    でも星奈や理科達だって動揺してるんだ。
    まだ素直には喜べないっつーか」

夜空「タカは優しいな」

小鷹「え?」

614: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 11:56:47.15 ID:XSE/i6S10

夜空「おまえは一人一人の部員の気持ちをよく考えてる。
    そういう優しいところは好きだぞ?」

小鷹「あ、ありがとう」


夜空にはっきり好きだと言われたのは初めてだった。

思わず緊張してしまう。

奥手だった夜空に呼び出されたことにも驚いているから余計にだ。


夜空「本当なら小鷹の方が部長にふさわしいのかもな」

小鷹「そんなことは……」

夜空「謙遜しなくていい。新しい隣人部には小鷹を部長として
    推薦しようと思ってるくらいだ。他にみんなも納得してくれる。
    だがその前に……」


夜空は正面から距離を詰めてくる。

警戒する小鷹だが、彼女の瞳に見つめられると動けなくなっていた。

617: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 12:02:32.77 ID:XSE/i6S10

夜空「まずは私達の仲を戻さないいけない。そう思わないか?」

小鷹「何を……言ってるんだ……?」


距離はゼロ。

背中に回された夜空の手の感触にぞっとした。

夜空の髪の毛の匂いがする。


夜空「おまえは私と結ばれるべきだったんだ」

小鷹「ち、違う」

夜空「違わないさ。星奈と関わったせいで全ておかしくなったんだ。
    それを修正しようじゃないか。私とタカの……二人だけで」


軽くキスされた。夜空の顔を見る。女の顔をしていた。

教室で見る彼女の顔じゃなかった。幼いころのソラとも違う。

620: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 12:08:31.41 ID:XSE/i6S10

夜空「お前の服から女の匂いがするな。誰の匂いだ?」

小鷹「……っ!!」

夜空「おまえの大好きな星奈の匂いか? それとも……」


――別の女の匂いか?


それは確信を突く言葉だった。

熱に浮かされて、最悪の間違いを
犯そうとした小鷹を非難してるようだった。

小鷹は今思い出しても自分がどうかしてたと思っていた。

ストレスや 欲のはけ口を妹に求めるなど異常だ。


夜空「ふふふ。タカは浮気性だったんだな?」

小鷹「ち、違うんだ……。これは何かの間違いなんだ……」

夜空「嘘が下手だな。全部顔に出てるぞ。
    おまえは星奈を裏切ったんだな?」

624: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 12:14:42.26 ID:XSE/i6S10

大好きな星奈に嘘をついて生きるなんて考えられない。

小鳩とは最終的には未遂ですんだものの、
キスだけはしてしまった。それは曲げられない事実。

夜空は人の弱い部分を突くのが上手だった。


夜空「なあタカ。全部忘れようじゃないか。
    私と一緒にしてくれれば、そんなつまらないことは
    全部忘れることができるぞ?」

小鷹「でも俺は星奈のことだけを……」

夜空「じゃあこうしよう。今日のことは皆には内緒だ。
    私とタカの胸の中にしまっておこう。これでどうだ?」


身体を密着させ、吐息すら顔にかかる距離で誘惑さていれる。

夜空は小鳩と違って血は繋がってないから、遠慮のいらない相手だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

欄外

すみません。昼飯休憩です

643: 再開っす 保守あざっす 2012/08/17(金) 13:01:05.90 ID:XSE/i6S10

夜空「どうした? 怖いのか?」

小鷹「……」

夜空「気にする必要はないだろう。私とおまえの仲じゃないか。
    あの時は子供だったが、今は違う。
    もう一歩踏み出した関係になれるんだぞ?」


星奈の言葉を思いだした。

小鷹が落ち込んでた時にかけてくれた励ましの言葉。

星奈にどれだけ救われたことか。


小鷹「離れてくれ夜空」

夜空「……!?」

小鷹「俺は星奈を裏切れない。俺には星奈だけなんだ」

夜空「綺麗ごと言うなよ……」

小鷹「綺麗ごとじゃない。俺の本心だ」

652: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:10:17.02 ID:XSE/i6S10

夜空「おまえはまた私を置いていくつもりか?
    親友の私を裏切って星奈の元へ行ってしまうのか?
    まだ一からやり直せるんだ。隣人部を正常な状態に戻そう」

小鷹「こんなの正常とは言えないよ。
    それに星奈を選んだのは俺自身だ。
    誰の意志でもない。俺は星奈だけを愛すると決めた」

夜空「……」


夜空は複雑そうな顔をして黙り込んでいる。

夜の雰囲気ならタカも考えを改めてくれると期待してたが、失敗だった。

勇気を出して露出の多い服を着たのに無駄に終わりそうだった。


小鷹「そういうことだから。今日のことはお互い忘れよう」

夜空「……ああ、分かった。すまなかったな」

小鷹は後ろを振り返ることなく歩き出した。

背後から夜空のすすり泣く声が聞こえたが、
聞こえないふりをするしかなかった。

これでよかったのだと自分に言い聞かせるのだった。

655: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:14:13.57 ID:XSE/i6S10

翌朝になり、学校に行きたくなくなる小鷹。

教室に行けば嫌でも夜空と会ってしまうからだ。

玄関から妹が急かしてくる。


小鳩「あんちゃん。まだ支度できないの?」

小鷹「悪い。今行くからな」


妹だって真面目に登校するのに自分だけ
休んでいられるかと思い、急いで制服に着替える。

結局、甘ったれてても現実は変わらないのだ。

それに悪い方向に進むと決まったわけでもない。


小鷹「待たせたな、小鳩」

小鳩「うん。遅刻ギリギリだから急ごうか」

656: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:22:16.09 ID:XSE/i6S10

教室に着いていつものように挨拶。

皆が怖がって視線をそらす中、夜空だけが小鷹を見てきた。


気まずくなって無視しようとしたが、

夜空「おはよう」

挨拶されたので返すしかない。

小鷹「おはよう……」


それ以上は会話せず、自分の席についてHRの時間を待った。


近くにいる男子達がモンハンの話題で盛り上がってる。

女子たちは昨日見たテレビの内容を話し合ってる。

毎日変わらない教室の風景だった。

659: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:28:09.26 ID:XSE/i6S10

集団の中で感じる孤独という表現があるが、
今の小鷹と夜空の状態がまさにそれだった。

自由な時間があれば、学生たちは雑談するものだ。

学校という場所では娯楽品など皆無だから
必然的に話をすることが多くなる。


その輪の中に入れない小鷹達は、まさしく孤独な存在だった。

小鷹は容姿が怖いから、夜空は人を寄せ付けないオーラを
発しているからという多少の違いはあるが。

小鷹(夜空は隣人部を再建してどうするつもりなんだ?
    俺を部長にしたいと言っていたが、まさか理科たちの
    ことはどうでもいいんじゃないだろうな……)

気になったのが、夜空と話す気にはなれなかった。

その日も大人しい不良を演じて午前の授業を終えた。

665: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:34:49.32 ID:XSE/i6S10

昼休みになる。星奈との食事は一日の最高の癒しだ。

今日も天気が良いので屋上だ。

最近は予報が当たらず、毎日晴れている。

まるで神が雨の存在を忘れているかのようだ。


星奈「あんたねぇ。昨日はどうして電話でなかったのよ」

小鷹「悪いな。色々用事が出来ちまってな」

星奈「用事って何よ?」

小鷹「食べ終わってから話すよ。お腹減ってるんだ」

星奈「しょうがないわね。食べさせてあげるから、あーんして?」


今日も新婚夫婦のような食事風景だった。

改めて自分たちはお似合いのカップルだと実感する小鷹。

だからこそ、隠し事はしたくなかった。

670: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:40:41.40 ID:XSE/i6S10

ゆっくり時間をかけてお弁当を食べ終わる。

小鷹は夜空の不審な様子について報告しようと決めていた。

昨日の公園でのこともだ。


口を開こうとしたら、良いタイミングで小鳩がやってきた。


小鳩「あんちゃん、私も昨日のこと聞きたい。
    昨日聞いても教えてくれなかったよね」

星奈「小鳩ちゃん、お昼ご飯はちゃんと食べたの?」

小鳩「うん。教室で食べた。あんちゃんが
    屋上にいると思ってここまで来たの」

小鷹「分かった。昨日会ったことを話すよ。よく聞いてくれ」


断片的に夜空のことを話した。

もちろんキスされたことは伏せたが、
夜空が星奈のことをよく思ってない事や、
隣人部再建を裏で進めてることなどを語った。

674: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:50:48.53 ID:XSE/i6S10

星奈「あのバカ……。全然反省してないじゃない!!
    あたしの小鷹を公園なんかに呼び出すなんて
    許しがたいことだわ!!」

小鳩「あの人はあんちゃんを奪おうとしてるのね」

星奈「どこまで腐った女なの。また説教してやるわ!!」

小鷹「いや、大事にするのはまずい」

星奈「でもあいつは独りにすると何するか分からないわ」

小鷹「しかし……言いすぎるのも逆効果だと思う。
    夜空は怒らせたらかなり怖い」

小鳩「……こんなので隣人部再開できるのかな?」

小鷹「現状じゃ難しいな」

星奈「ならどうすればいいのよ?」

小鷹「少し様子を見よう。変化があればまた相談する」

675: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 13:57:16.09 ID:XSE/i6S10

なんとも曖昧な返事に落胆する星奈と小鳩。

だが小鷹が思い悩んでるようなので細かいことは
言わないことにした。


放課後、夜空に話しかけられたので無視しようとした小鷹。


夜空「待てよ。どうして私から逃げようとする?
    ここは学校だから間違いなんておきないぞ?」

小鷹「おい、滅多なことを口にするなよ。
    昨日のことは忘れる約束だったじゃないか」

夜空「おっと。そうだったな。うっかり忘れてたよ」


小鷹は怒鳴りそうになったが堪えた。


小鷹「おまえは……星奈のことが嫌いなんだろ?」

夜空「どうだろうな。好きでも嫌いでもないよ」

小鷹「……嘘だな。おまえは星奈のことを憎んでる」

678: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:03:59.61 ID:XSE/i6S10

夜空「ほう。なぜそう思う?」

小鷹「最初は星奈の入部を断ろうとしてたじゃないか。
    その後の新入部員についても難色を示していた。
    幸村は例外だがな」

夜空「元々私達のための部活だからな」

小鷹「他の部員は不要か?」

夜空「本来ならな。だが小鷹がどうしてもと言うなら認めてもいい」

小鷹「……ふざけるなよ。そんなのでみんなが幸せになれるものか」

夜空「おまえこそ崩壊するのが分かっていながら星奈を選んだな」

小鷹「……」

夜空「どっちの言ってることがおかしいだろうな?
    小鷹が大人しく朴念仁の振りをしてれば
    こんな大事にはならなかったのだ」

小鷹「……俺は自分の選択を後悔してない。
    一度星奈を選んだからには最後まであきらめない」

夜空「それが甘ったれなんだ」

682: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:09:00.79 ID:XSE/i6S10

小鷹「なに?」

夜空「星奈と付き合っていながら友達だと偽り、
    隣人部の皆と楽しく過ごせると思うなよ」

小鷹「くっ……」

夜空「理科がどれだけ嫉妬してたか知ってるか?
    一度は星奈を退部させることで私と同意したくらいだ」

小鷹「あの理科が?」

夜空「私が時間をかけて説得したからな。
    あいつは天才だが、所詮は女だったということだな。
    哺乳類で初めて興味を抱いたのがおまえだそうだ」

小鷹「哺乳類か。初めて会った時そんなこと言ってたな」

夜空「分かりやすく言うと初恋の相手だな。
    研究以外のことで夢中になれることが
    初めて見つかったんだろう」

小鷹「それでも俺は……」

夜空「星奈を選ぶか?」

685: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:15:06.13 ID:XSE/i6S10

小鷹「そうだ」

夜空「なら隣人部は諦めろ」

小鷹「……」

夜空「あれから理科と会ったか? あいつはお前たちのことで
    今も怒ってるはずだぞ。下手な謝罪は逆効果だ。
    理科は一度へそを曲げたら大変なんだぞ」

小鷹「……たしかにな。俺たちも痛いほど味わったよ」

夜空「そして私と星奈は相性が悪い。
    どうしたらうまくいくと考えられる?」

小鷹「……」


5組の教室は沈黙に包まれていた。

残ってるのは小鷹と夜空だけ。

ここで何者かが扉を開いた。


小鳩「あんちゃんをいじめるなー!!」ガラッ

692: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:21:39.49 ID:XSE/i6S10

幼さの残る声が響き渡る。

さっきまで沈黙していた教室が
息を吹き返したかのように空気が変わる。


小鳩「あんちゃんは隣人部が好きなの!!
    ただみんなと仲良く遊びたいと思ってるだけなの!!
    あんちゃんのことを悪く言わないで!!」

夜空「小鷹の妹か。勝手に表れて何を言っている?」

小鳩「だって夜空があんちゃんのこと一方的にいじめてるから……」

夜空「これが苛めに入るのか? 私は事実を言ったまでだ」

小鳩「それでもあんちゃんが悲しんでるから駄目なの!!」

小鷹「小鳩……。これは俺と夜空の問題だからな?」

小鳩「星奈に言いつけてやる!!」

夜空「なっ……!?」

698: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:26:21.08 ID:XSE/i6S10

星奈の知ることとなれば大問題になる。

また廊下での鬼畜   が再現されることは想像に難しくない。

もしくは夜空の逆襲も有りえる。


夜空「ば、バカな真似は止めろ。その携帯をこっちによこせ」

小鳩「いやだー!! バカ夜空は星奈に苛めれればいいのよ!!」

小鷹「止めないか小鳩。星奈がまた怒っちゃうから」

小鳩「……ごめん。もう連絡しちゃった」

夜空「」


5分後、星奈が襲来した。


星奈「呼ばれたんで来ちゃいました」

夜空「くっ……星奈……また貴様か」

700: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 14:31:39.80 ID:XSE/i6S10

星奈「夜空、あんたまたバカやったんだって?
    人の彼氏をいじってたとか?」

夜空「ぐぬぬ……ち、違うんだ……
    私たちはただ今後の活動について……」

星奈「言い訳してんじゃないわよ。このバカ夜空」

夜空「うっ……」


何よりビックリなのが夜空の態度だ。

明らかに星奈に頭が上がらないという、この腰の低さ!!

全身からほとばしる星奈への苦手意識!!


戦う前から勝敗は決していた。


星奈「また台座代わりにされたいの?
    二度と小鷹に近づかないって誓ったわよね?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
欄外
       休憩タイム

722: 診察速攻で終わりました 保守あざーっした 2012/08/17(金) 15:33:13.16 ID:XSE/i6S10

夜空「ゆ、許してくれ……。もう足蹴にされるのはごめんだ」

星奈「うふふ。怖がってる夜空を見るは愉しいわね。
    どうしてあげようかしら」

小鳩「きついお仕置きが必要だよ!!」

小鷹「お……おい」

星奈「何よ小鷹。文句でもあるの?」

小鷹「いや、そんなわけじゃ……。
    ちょっと夜空がかわいそうに思えてな」

星奈「ふーん、小鷹ったらずいぶんこいつの味方するのね」

小鷹「仮にも親友同士だったからな」

星奈「その理由、前も聞いたわよ」

夜空「頼む星奈。どうか慈悲をくれ」

725: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 15:41:01.72 ID:XSE/i6S10

夜空にとって星奈は天にいる神と同様だった。

言い換えれば女神か。

かつてイエスは隣人への愛を持って律法を守るべしと説いた。

やがて律法厳守のユダヤ教が旧約とされ、イエスの教えが新約聖書となった。


星奈「安心しなさい。痛めつけるような真似はしないわ」

夜空「ほ、本当か?」

星奈「あたしだってそこまで鬼じゃないわ。
    根に持つタイプでもないしね。
    あんたに苛めらたことなんてもう忘れたわ」


星奈の背後に後光が差してるようだった。

修道服に身を包んだ夜空がひざまずき、
星奈という女神に施しを受けてるような場面。


小鷹(なんて神聖な場面なんだ。俺たちは歴史の生き証人になるぞ)

726: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 15:48:21.74 ID:XSE/i6S10

小鷹は震えが止まらなかった。

聖母様の像を毎日眺めて癒されていたが、
そのモデルとなるにふさわしい人間が身近にいたのだ。


小鷹(星奈は神様みたいな女だったのか。
    俺はなんて素晴らしい人を恋人にしてたんだ……)

小鳩「ふぇぇ」


――イエス様は言いました。汝、人を憎むより愛しなさい


星奈「いやよ。罰を与えないとは言ってないわ」

夜空「へ?」


いきなりの急展開!!

星奈!!

ここでまさかの手のひら返し!!

730: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 15:55:50.08 ID:XSE/i6S10

夜空「待ってくれ!! 手荒な真似はしないんじゃなかったのか!!」

星奈「暴力はNGよね。でもね、お仕置きの方法は他にもあるのよ?」


神でも怒るときはある。

人はそれを畏れて天罰と呼ぶ。

ある世界では四十日間続いた大洪水があったという。


星奈「夜空が小鷹のこと好きなのは知ってるわ。
    だからね。こうすればいいと思うのよ」

小鷹「ちょっ……」


夜空の目の前で小鷹を抱きしめた星奈。

あまりの事態の変化についていけない小鷹は呆然。

豊満な胸の感触にどうかしそうなる。

小鷹の顔は星奈の胸の中に埋まっていた。

732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:00:01.46 ID:XSE/i6S10

夜空は口を開けたまま呆然!!

小鳩も呆然!!

教室も呆然!!


男子A「ほえ?」


偶然忘れ物を取りに来た男子も呆然!!


星奈は確かに手荒な真似はしてない!!

夜空には指一本触れていない!!

だがしかし!!


星奈「小鷹。大好きよ?」

小鷹「……む、むう。俺もだぜ」


夜空への精神的ダメージは計り知れなかった!!

これが女神の怒りなのか!!

741: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:05:08.99 ID:XSE/i6S10

夜空「や、止めてくれ……。私の前でそんなことするのは……」

小鳩(あんちゃんたち、こんなところで……)


星奈「小鷹、こっち向きなさい。キスできないでしょ?」

小鷹「おう……」


人前でする初めてのキスだった。

暖かくて少し切ない味がした。


星奈「小鷹ぁ……もっとちょうだい?」

小鷹「……こ、こうか?」


唐突に始まった大人のキス。

小鷹の舌が星奈の唇を押し分け、内部に侵入する。

絡み合う舌がいやらしい音を立てる。

749: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:14:26.44 ID:XSE/i6S10

こうなったら完全に二人だけの世界だ。

夢中で唾液を交換し合う二人はまさに夫婦。


さて、仮に二匹のオットセイがいたとしよう。

上から餌をつけた竿を吊り下げてみる。

するとオットセイらは唇を前に伸ばしながら餌を奪い合う。


男子Aは目の前の惨状をそのように考えていた。逃避である。


男子A(ぼ、僕は何も見てないんだ。あれは人間じゃなくて
     オットセイなんだ。そうだ。ただの海洋生物なんだ)


他方、夜空は自我が壊れつつあった。


夜空「あ、あはははは……。こんな馬鹿なことが
    現実にあるわけないじゃないか……
    これは悪夢なんだ……きっとそうだ」

752: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:20:58.58 ID:XSE/i6S10

夜空は、小説好きの割には想像力に乏しい現実主義者だった。

彼女では男子Aのようにオットセイには見えなかったのだ。


小鷹「星奈の胸……大きいよな。むにゅって感触がするぜ」

星奈「んふふ。もっと触っていいのよ?」


夜空「嘘だ……こんなの全部嘘だ……」


大好きな彼は自分に振り向くことはなく、
他の女の胸を夢中で触ってる。

夜空には負け犬という言葉がぴったりだった。

自他ともに認める負け犬。敗者だった。

漢字を変えれば歯医者だった。


小鳩(夜空、大丈夫かな? ちょっとやりすぎかもしれないよ。
    見せつけられるくらいなら暴力振るわれた方がましだよね)

757: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:28:55.97 ID:XSE/i6S10

小鳩でさえ同情を禁じ得ないこの状況。

彼女だって本当は兄たちに嫉妬してもいいはず。

しかしそれ以上に夜空の状態が心配だったのだ。


夜空「う……うあああ……」

小鳩「夜空。辛いならもう帰ったほうが良いよ」

夜空「……」

小鳩「どうしたの?」

夜空「……もういい。全部終わりだ」スタスタ

小鳩「え?」

男子A「おい三日月さん? まだ途中なのにどこ行くんだ?」


な、ななななんと!!

夜空!! まさかの途中退席!!

ついに見ていられなくなったのか!!

764: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:35:59.24 ID:XSE/i6S10

男子A「三日月さん!! こんな楽しいショーを
     最後まで見なくていいのか!!」


男子生徒の遠吠え!! 夜空には届かず!!


小鳩(あの様子じゃ明日から学校に来なくなるかも。
    星奈がいじめすぎたからだよ)


あの羽瀬川小鳩が!! 夜空を同情する!!


同情!! 同情!! 同情!!


男子A「羽瀬川君の妹さんって見た目が幼いよね」


まさに童女!! 


小鳩(夜空は立ち直れるのかな……)


童女が同情した!!

779: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:45:27.33 ID:XSE/i6S10

星奈「くだらないナレーションは止めてちょうだい。
    もう少しシリアスなのが欲しかったわ」

男子B「私の演出はお気に召しませんでしたか?」

小鷹「やりすぎだろ。夜空のダメージ3割増しだな。
    おまえ、3組の奴だよな?」

男子B「いかにも。星奈さま親衛隊に所属しております」

小鷹「その中でもトップクラスの奴か。幹部クラスだな?」

男子B「近衛隊の隊長を務めています。あの三日月という
     女が邪魔者と判断したため、排除しました」

星奈「あたしは頼んでないんだけどね。
    せっかく大人のラブシーンだと思ったのに台無しよ」

小鳩「ふぇぇ」

男子A(あれ? 脱いだズボンどこ行った?)

785: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 16:52:54.40 ID:XSE/i6S10

小鷹「Aは何を取りに戻ってきたんだ?」

男子A「パ……」

星奈「パ?」

男子A「●●●だ///」


小鷹「そうか。おまえみたいな男が同じクラスにいたんだな。
    クラスメイトの知らない一面が見れて良かったよ」

男子A「そんなことはどうでもいいんだ」ガン

小鷹「なに?」

男子A「なぜ柏崎さんと最後までやらなかったんだ?
     ヤンキーの割には根性ないじゃないか。あ?」


いきなり暴言を吐いた男子A!!

教室の空気が凍りつく!!

788: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 17:01:53.01 ID:XSE/i6S10

星奈「……」ムカ


まず星奈が切れた!!

女神の怒りである!!

ムカムカして両手を組むと、胸が膨らんで見える!!


巨 !! 巨 !! 巨 !!


小鷹「悪いな。少し黙ってくれるか?」

男子B「はっ。左様ですか」


男子A「逃げんじゃねえよ羽瀬川。かかってこいよ」

小鷹「俺が星奈とどうしてやらないかって?
    庭を見ろ。おまえにはあの聖母像が見えないのか?」

男子A「はっ。あんなの飾りさ。宗教なんて俺は信じてないからな」

小鷹「……まあいい。とにかくそういうことだ。婚姻前の男女は
    ●●●なことしちゃ駄目なんだよ。今回のは特別だ」

794: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 17:11:49.86 ID:XSE/i6S10

男子B「信仰は人の自由です。もし羽瀬川君と星奈様が
     ●●に交われば、本物のDQNカップルになってしまいます」

男子A「ちっ。屁理屈こねやがって。これで隣人部も終わりだな」


Aは捨て台詞を吐いて出て行った。

彼は隣人部の隠れファンだった。

偶然忘れ物を取りに来たら修羅場っていて焦った。

三日月夜空をなんとか説得しなければ終わりだと
判断し、教室に引き留めようとしたのだ。


星奈「あたしもやりすぎたって思ってるわ。全部Bのせいよ。
    あそこまで盛り上げなくてもいいじゃない」

小鷹「俺たちは本当に終わっちまうのか?」

男子B「も、申し訳ありません。私としたことが……」

小鳩「ふぇぇ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
欄外  休憩が必要ですね

809: 冷静になったっス サーセンした 2012/08/17(金) 18:11:36.25 ID:XSE/i6S10

仕切りなおして翌日の放課後である。


小鷹と星奈は談話室4を訪れていた。

ドアのプレートには「隣人部」と名前まで着けた。


ケイト先生から許可をもらったから、正式な部活だ。

もう影で活動する同人サークルみたいな真似をする必要はない。


小鷹「幸村が綺麗にしてくれたおかげでピカピカじゃないか」

星奈「本当に綺麗な部屋ですごしやすいわ。
    ティーセットとかテレビも変わらず置いてあるし」

幸村「これも、もののふの務めです」

ケイト「あー、幸村。もっとコーラちょうだい」ゲップ

小鷹「誰だよ、このだらしない美人は?」

星奈「ケイト先生でしょ。マリアのお姉さんよ」

811: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 18:18:24.07 ID:XSE/i6S10

ケイト先生は快く部活の顧問を引き受けてくれた。

幸村が裏取引をしたおかげだ。


ケイト「三日月さんはまだ復活してないん?」

星奈「学校には来てるんですけど、放課後は直帰してるそうです」

小鷹「教室でも話しかけてこなくなりましたね。
    やっぱりあの日のことがショックだったんだと思います」

ケイト「あの日のこと?」

星奈「……こっちの話です。ちょっと夜空をいじったんです」

幸村「いわゆる公開xxxxというやつですね」

小鷹「ちょ……幸村!! 先生の前でなんてこと言うんだ」

ケイト「あっはははは。若い子たちはお盛んだねぇ」

星奈(先生もめちゃ若いじゃないですか)

813: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 18:26:11.76 ID:XSE/i6S10

今の隣人部はあくまで仮設だ。

本来の人数が戻ってないからだ。


マリア「んー。むにゃむにゃ」スヤスヤ

小鳩「こいつは本当によく昼寝するよね」


欠員は2名。夜空と理科である。


ケイト「あの理科室の天才少女も来なくなったんだって?
     つーかよくあの子を部員にできたね。仕事で忙しいのに」

小鷹「仕事?」

ケイト「大企業の開発部から仕事を貰ってるんだよ。
     本当は遊んでる暇なんてないのに、時間さいて来てたんだろう。
     それだけ隣人部が楽しかったんでしょうに。かわいそうにねぇ」

星奈「そう考えると複雑です。あたし達はこれでよかったのかな」

幸村「今となっては後の祭ですね。己の信じた道を進むしかないでしょう」

815: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 18:34:04.32 ID:XSE/i6S10

小鷹(理科……。あいつとはもう会えなくなるのか?)

小鳩「あんちゃん。元気出して?」

ケイト「人の考えは人それぞれだから仕方ないね。
     色恋沙汰も同じだよ。好いた好かれたは人の自由ってね」

小鷹「そうなんでしょうか」

ケイト「小鷹君が柏崎さんを選んだのも一つの運命だろう。
     女ばっかの部活じゃあ全員が幸せになれるわけないね。
     あたしは立場上、神のお導きだと考えるけど君はどうだい?」
  
小鷹「うーん、運命だと片づけていいのかなぁ?」

星奈「夜空が作った部活なのに、あいつが来ないなんておかしいわ」

小鳩「うちはあんちゃんが星奈のこと好きでも構わないよ。
    あんちゃんと一緒に居られるならそれでいい」

小鷹「小鳩はえらい子だな?」ナデナデ

小鳩「うん///」

817: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/17(金) 18:42:54.50 ID:XSE/i6S10

星奈「本当に小鳩ちゃんは良い子ね。あたしも撫でてあげるわ」

小鳩「ありがと。おねえちゃん」

小鷹「なっ……!!」

星奈「お……おねえちゃん?」

小鳩「うん。将来おねえちゃんになるから呼んでみた」

星奈「こ……小鳩ちゃああん!!」ダキッ

小鳩「うわっ……くるし……」

小鷹「俺も抱き着いちゃうぞ」ダキッ

小鳩「ふぇぇ」


ケイト「仲良さそうで何よりだね。まあ人生なんてこんなものさ。
     どこで運命が変わるか分からないし、未来なんて
     誰も予想できない。天にいる神様だけが知ってるだろうね」

ケイト「今後、隣人部がどんな運命をたどるかはこいつら次第だ。
     これをハッピーエンドかバッドエンドと取るかは
     人それぞれだ。今回の話はここで絞めさせてもらうよ」

                                        完