1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:08:01.84 ID:MbkrKxJl0
QB「久しぶりだね」

喪黒「えぇ、ちょうど一年ぶりくらいでしょうか?」

喪黒「しかし、お元気そうでなによりです」

QB「君こそ元気そうでよかったよ」

喪黒「ホッホッホ……」

QB「きゅっぷい」

引用元: QB「やぁ、福造」喪黒「こんばんは、キュゥべえさん」 



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:12:21.83 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「ところで、キュゥべえさん」

喪黒「どうです? 私の行きつけの店で、一杯」

QB「そうだね」

QB「飲みながら互いの近況報告なんてのもいいかもしれないね」

喪黒「では参りましょうか」

QB「うん」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:16:19.84 ID:OBKiNhlZ0
<バー『魔の巣』>

喪黒「ホッホッホ。どうですか、キュゥべえさん」

喪黒「少女を魔法少女にするお仕事、順調ですか?」

QB「う~ん」

QB「最近はほとんど契約してもらえてないよ」

QB「君こそどうなんだい?」

喪黒「私もですよ」

喪黒「目をつけたお客様に対し、なかなか深く入り込めずにいます」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:22:02.89 ID:OBKiNhlZ0
QB「これはどういうことなんだろうね?」

喪黒「世の中全体が悪くなっている、ということなんでしょうなぁ」

喪黒「皆さん、自分のことに精一杯になってしまっていて」

喪黒「我々のような外部からの話を受け入れる余裕がないんでしょう」

喪黒「以前は警戒しながらも話くらいは聞いてくれるものでした」

喪黒「一度話をしてしまえば、こちらのペースに持ち込めるのですが」

喪黒「最近は話をする前に門前払いにされてしまいますよ」

QB「たしかにね」

QB「ぼくも、素質ある少女に話しかけても相手にされないケースが増えてきたよ」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:25:22.36 ID:OBKiNhlZ0
QB「でも世の中が悪くなったというなら」

QB「君のターゲットである“心にスキマのある客”は増えるんじゃないのかい?」

喪黒「ところがそうでもないんですよ」

喪黒「こうまで世の中が悪くなってしまうと」

喪黒「心のスキマが他のもので埋もれてしまう、という事態になってしまうのです」

QB「どういうことだい?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:28:55.23 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「例えば、女性にモテないというスキマを抱えている男性がいるとしましょう」

QB「うん」

喪黒「これまでならば、私が可愛い女性をあてがってやるなどしてスキマを埋めて」

喪黒「その後のお客様の挙動を、楽しむことができていました」

QB「うん」

喪黒「ですが、こうまで世の中が悪くなってしまいますと」

喪黒「そのスキマに、他のさまざまな問題がみっちりと入り込んでしまうのです」

QB「さまざまな問題、というのは?」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:33:15.01 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「金銭、学業、仕事、人間関係……挙げていけばキリがありません」

喪黒「もちろんいつの世も、人は複数の問題を抱えているものなのですが」

喪黒「これまでは、その複数の問題をどうにかやりくりできていました」

喪黒「しかし、現代人はそれらに押しつぶされてしまっているのですよ」

QB「人間というのはつくづく不合理な生き物だね」

QB「今、君が例として挙げた問題の数々は、ずっと昔から存在していたはずだ」

QB「つまり時間はたっぷりあったはずなんだ」

QB「なのに人間は、そのどれもを未だに解消できていない」

QB「解消できていないだけならまだしも、君の話によると悪化してしまってる」

QB「わけが分からないよ」

喪黒「まったくもっておっしゃる通りですな」

喪黒「しかしだからこそ、あなたや私のような商売が成り立つのですがね」

QB「まぁね」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:37:03.43 ID:OBKiNhlZ0
QB「といって、ぼくたちもこのまま手をこまねいているわけにはいかないよ」

QB「障害があるんなら、それを取り除かねばならない」

喪黒「そうですなぁ」

喪黒「私には人々の心のスキマを埋めるという仕事があり」

喪黒「あなたには宇宙を守るという使命がありますからな」

QB「なにかいい方法があるのかい?」

喪黒「我々は似たような商売をしていますが、やり方はちがいます」

喪黒「どうでしょう、試しに仕事を交換してみるというのは?」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:40:31.11 ID:OBKiNhlZ0
QB「つまり、こういうことかい?」

QB「君が魔法少女の契約をして、ぼくが人々の心のスキマを埋めると」

喪黒「そうなりますな」

喪黒「もちろん、互いの成果は相手のものにするということで」

QB「やってみる価値はあるかもしれないね」

QB「じゃあ一週間ほど、君とぼくの仕事を交換してみようか」

喪黒「では一週間後、またここでお会いしましょう」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:44:33.54 ID:OBKiNhlZ0
~喪黒の場合~

さやか「でさぁ~」

まどか「へぇ~そうなんだぁ」

喪黒「オ~ホッホッホ……」

さやか「うわっ!?」ビクッ

まどか「きゃあっ!?」ビクッ

喪黒「おっと、これは失礼いたしました」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:47:23.13 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「私、こういう者──」スッ

さやか「行こっ、まどか!」

まどか「えっ、でも」

さやか「でもじゃないよ、アイツ明らかに怪しいじゃん」

さやか「きっと変質者かなんかだって」

喪黒「いえいえ、私はただのセールス──」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:50:22.03 ID:OBKiNhlZ0
さやか「あっち行けっ!」

ブシュウウウウ……

喪黒「消火器ですか、これは手厳しい」

喪黒「ゴホッ、ゴホッ」

喪黒「元気がよろしいですなぁ、ゴ~ッホッホッホ」

さやか「消火器浴びせても笑ってる……ありゃヤバイって。逃げよう!」ダッ

まどか「う、うん!」ダッ

喪黒「やっぱりこうなりますか、ゴホッ、ゴホッ」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:54:30.09 ID:OBKiNhlZ0
~キュゥべえの場合~

会社員「はぁ……」

会社員(仕事キツいし、つまらないし、給料安いし……)

会社員(出世コースからも完全に外れてる……最悪だ)

会社員(かといって辞めても、今よりいい仕事につける可能性は低いし……)

会社員(あげく同期は次々に結婚、同世代で独身は俺だけ……)

会社員(ホントろくなことがねぇや)

会社員(どうしてこうなったのかなぁ……)

QB(あれは素質がありそうだね。アプローチしてみよう)

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 00:57:19.07 ID:OBKiNhlZ0
QB「やぁ」

会社員「!?」ビクッ

QB「ぼくが見えるということは、君の心にはスキマがあるということだ」

QB「ぼくには君の心のスキマを埋める力がある」

QB「だからぼくと契約して、心のスキマを埋めさせてよ!」

会社員(なんだこれ……? 猫? ウサギ? ……いやこんな動物はいないよな)

会社員(ってことは、よくできたヌイグルミか……)

会社員(どうせ中に声を出す機械が入ってるんだろ……)

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:00:25.67 ID:OBKiNhlZ0
QB「ぼくと契約すれば、君の心のスキマはすぐに埋まるよ!」

会社員(うるっせぇな、なんなんだよこのヌイグルミは……)

QB「だからぼくと契約して──」

会社員「うるせぇっ! なにが契約だ、こっちは全然契約が取れなくて困ってんだ!」

会社員「どこのオモチャ会社がテストしてんのか知らないが、ジャマだ!」バシッ

QB「………」

QB「やっぱりこうなるよね」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:06:04.44 ID:OBKiNhlZ0
一週間後──

<バー『魔の巣』>

QB「やぁ、福造」

喪黒「こんばんは、キュゥべえさん」

喪黒「どうでしたか? 成果はありましたか?」

QB「ないよ」

QB「変なヌイグルミかペットだと思われて、誰も相手にしてくれないよ」

QB「少女が相手だった時の方が、まだマシだったね」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:09:22.24 ID:OBKiNhlZ0
QB「君こそどうだったんだい?」

喪黒「ホッホッホ、変質者だと思われて散々な目にあいましたよ」

喪黒「消火器を浴びせられたり、CDを投げつけられたり、バットで殴られたり」

喪黒「ひどいものです」

喪黒「近頃の女の子というのは過激ですなぁ」

QB「君も大変だったんだね」

喪黒&QB「まぁ……」

喪黒「こうなることは分かり切ってましたがね」
QB「こうなることは分かり切ってたけどね」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:13:07.28 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「しかし仕事を交換しても結果が同じとなると……」

喪黒「やはりこのところの商売不振は、お客様側に問題があるようですな」

QB「そうだね」

QB「今の世の中じゃ、だれがやっても成果は出ないよ」

喪黒「となると……やはり我々で世の中を変えなければならないようですなぁ」

QB「そういうことだね」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:18:03.83 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「私どもの力で」

QB「ぼくたちの力で」

喪黒「人々の心のスキマが余計なもので埋まらなくなるぐらいの世の中を」

QB「少女たちが奇跡や魔法に目を向けられるくらいの余裕がある世の中を」

喪黒「作りましょう」

QB「作ろう」

カチン

二人は乾杯した。

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:26:03.38 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「やはり国を変えるとなると、政治家になるのが手っ取り早いですな」

喪黒「まず我々で政党を作りましょう」

QB「名前はどうするんだい?」

喪黒「キュゥべえさんのQと、私の黒で、『救国党』というのはいかがでしょう?」

QB「うん、悪くないね」

喪黒「では明日から活動を開始しましょう」

QB「そうだね」

QB「でも、ぼくは一部の人間にしか見えないんだけど、どうしようか?」

喪黒「大丈夫です」

喪黒「ドーンッ!!!」

QB「うわっ」

喪黒「これで、あなたの姿はみんなに見えるようになりました」

QB「便利だね、ドーンって」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:29:50.39 ID:OBKiNhlZ0
こうしていくらかの人員を「ドーン」で集め、二人は『救国党』を立ち上げた。

そして知名度を上げるため、全国を行脚する。

喪黒「私どもに政治をお任せ下されば、国のスキマをお埋めいたします」

QB「ぼくらに政治を任せて、幸せになってよ!」

黒スーツの不気味な男と可愛い小動物という組み合わせは嫌でも目立ち、

彼らと『救国党』の知名度は急速的に高まっていった。

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:34:12.63 ID:OBKiNhlZ0
<バー『魔の巣』>

喪黒「オ~ホッホッホ……」

喪黒「順調ですな、キュゥべえさん」

QB「うん、そうだね。今や日本にぼくたちの名前を知らない人はいないだろうね」

QB「人間というのは、知ってる、というだけでどこか安心してしまうものらしい」

QB「これでぼくらの政治活動は、だいぶやりやすくなったよ」

喪黒「そういうことですな」

喪黒「あとは選挙で勝利し続け、着々と議席を増やし与党となり」

喪黒「総理大臣となって日本を立て直しましょう」

QB「もう一息だね」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:38:31.16 ID:OBKiNhlZ0
選挙活動を行う二人。

喪黒「私ども、『救国党』喪黒福造とキュゥべえに清き一票をお願いします」

喪黒「ドーンッ!!!」

QB「君たちには日本を変える力があるんだ」

QB「ぼくたちと契約して、日本を変えようよ!」

とびきりの怪物が二人そろえば、もはや普通の政治家など敵ではない。

二人は順調に人と票を集めていった。

瞬く間に救国党は与党となり、政権を握った。

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:41:56.03 ID:OBKiNhlZ0
そして喪黒福造は総理大臣となり、キュゥべえは副総理となった。

喪黒「やりましたね、キュゥべえさん」

QB「うん。ここまで政治というものが面倒だとは思わなかったよ」

喪黒「しかし大変なのはここからです」

喪黒「この国には問題が山ほどございますから」

QB「やれやれ」

QB「まぁこれも宇宙存続のためだって思って働くよ」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:50:15.32 ID:OBKiNhlZ0
疲れを知らない喪黒とキュゥべえは精力的に働き、画期的な施策を次々打ち出した。

喪黒の不気味なスマイルとキュゥべえの冷徹な口上に逆らえる者はなかった。

仮にいたとしても「ドーン」でカタをつけた。



──

───

QB「日本はだいぶ変わったね」

QB「GDPは世界一となり、なおかつ外交問題も安定している」

QB「失業率はほぼ0パーセント、平均寿命は90歳を超えた」

QB「社会は格差を維持しつつも、底辺とされる人々も豊かな生活ができるようになった」

QB「にもかかわらず、年金や医療・福祉関係のフォローもバッチリだ」

QB「年間の自殺者もついに五千人を切った」

QB「これでようやく……」

喪黒「我々も元の生活に戻れるというわけですな」

二人は政治の世界から忽然と姿を消した。

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:53:41.68 ID:OBKiNhlZ0
一年後──

QB「やぁ、福造」

喪黒「こんばんは、キュゥべえさん」

QB「久しぶりだね」

喪黒「えぇ、ちょうど一年ぶりくらいでしょうか?」

喪黒「しかし、お元気そうでなによりです」

QB「君こそ元気そうでよかったよ」

喪黒「ホッホッホ……」

QB「きゅっぷい」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 01:56:25.85 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「ところで、キュゥべえさん」

喪黒「どうです? 私の行きつけの店で、一杯」

QB「そうだね」

QB「飲みながら互いの近況報告なんてのもいいかもしれないね」

喪黒「では参りましょうか」

QB「うん」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 02:00:13.25 ID:OBKiNhlZ0
<バー『魔の巣』>

喪黒「どうですか、キュゥべえさん」

喪黒「少女を魔法少女にするお仕事、順調ですか?」

喪黒「人々から私どもが日本のトップだった記憶は消しましたが」

QB「まったくお話にならないよ」

QB「みんな、満足そうな顔をしていて」

QB「ぼくが願いを叶えてやる余地なんてないよ」

喪黒「私もです」

喪黒「心にスキマがある人間がいなくなってしまいました」

QB「やりすぎたかな」

喪黒「やりすぎましたな」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/20(火) 02:05:10.95 ID:OBKiNhlZ0
喪黒「しかしまぁ……この状態をいつまでも維持できるはずもありません」

喪黒「山があれば、必ず谷があるというものです」

喪黒「かつてのバブル崩壊がいい例ですな」

QB「そうだね」

QB「どうせ近いうちに、また世の中はぼくたちが待ち望んでいた状態になるだろう」

QB「なにせ、人間というのは学習をしない生き物だからね」

喪黒「おっしゃる通りです」

喪黒「では近い将来訪れるであろう、心のスキマがある人間だらけの世界と──」

QB「少女たちが魔法や奇跡に目がくらんでしまう世界を祝して──」

喪黒&QB「乾杯」

カチン


<END>