1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:28:01.98 ID:GPpihb790
男「や、やめろ……」

女「早くしないとドア傷だらけになっちゃうよぉお~」ザクッ、ザクッ

男「やめろよ! 早くどっか行きやがれ!」

女「そんな寂しいこと言わないでぇ?」ガガッ、ガキッ

男「いい加減にしろ……警察呼ぶぞ……!」

女「やだやだぁ。どうして? なんで開けてくれないの?」ザクッ、ザクッ

男「うるさいッ!」

女「私はこんなに男くんのことを愛しているのにィ……ねえ、どうしてェ?」ガガッ、バキッ

男「うう、うわぁあッ!!」

引用元: 女「男くぅ~ん、早く出てきてよぉお」ザクッ、ザクッ 




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:33:16.31 ID:GPpihb790
女「あ、ちょっと開いた……うわぁ、男くんが見えるぅ」

男「わ、わ、わ」

女「えへへ、待っててね。すぐに全部開けるから……」ガキッ、ガコンッ

男「うわああああっ!!」

女「あ、男くんどこ行っちゃうのぉ……?」

男(110番、110番だ……!)

男(くそ、手が震えてまともにボタンすら押せねぇ……!)

女「私もすぐにそっちへ行くからねぇ……」ザクッ、ザクッ

男「はあ……はあ……っ!」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:39:26.90 ID:GPpihb790
女「もうちょっと。もうちょっと」ガキッ、ガガガッ

男「や、やめろッ! てめえ、何で俺を狙うんだよ! 恨みでもあんのか!?」

女「恨み……? そんなのあるわけないじゃない、私は男くんのことを愛しているのよ?」

男「意味分かんねえっ! 俺がどれだけ苦しんでるか理解してんだろ!?」

女「ふふ、男くん。焦っちゃって……かわいいっ♪」

女「すぐにそっちへ行ってあげるからぁ……」ザクッ、ザクッ

男「くそ、くそ、くそ……! お、おおお前、自分が好きな相手にこんなこと……!」

女「なんでそんなに怒るのぉ? 私は男くんのことを愛しているのよ?」

女「――コロしたいくらいに」ガコンッ!

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:42:39.09 ID:GPpihb790
女「……?」

男(パトカーの音……警察が来てくれたんだ!)

女「ありり、本当に呼んじゃったの?」

男「い、今更後悔しても遅いぞ」

女「ふうん。ざーんねん。あと、」

男「え?」

女「数十秒あったら足りたのに」バキィッ!

男「うそだろ……と、扉が……!?」

女「あ~あ。それじゃあまたねぇ。男くんっ」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:48:26.56 ID:GPpihb790
男「はあ……はあ……」

警察「大丈夫ですか? 犯人は?」

男「一瞬前に……どこかへ行ってしまって……」

警察「! また近くにいるかもしれん! 早急に探しだせ!」

警察「お怪我は……ないようですね。扉が壊されてますが、これもその人物が?」

男「はい……刃物とか、工具とかで……」

警察「真昼間からこんなことを……。隣人の方たちは何も言ってこなかったのでしょうか」

男「よくあることなんで……」

警察「よくある?」

男「少し前から、俺の部屋に来ては、こういうことをしてるんです。扉を壊されたのは、さすがに初めてですけど」

警察「だから何も反応がなかったんですね……。この地域のパトロールを強めます。後はご安心ください」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:52:52.85 ID:GPpihb790
翌日

男「……ってわけで、超怖かったよ」

友「うわ、そりゃひどいな……。前は冗談半分で聞いていたけれど、さすがに放ってはおけなくなってきた」

男「ありがと。でも大丈夫だよ、警察の人も警備を強めるって言ってくれたし」

友「絶対に安全とは限らないだろ。分かってるのか。お前は殺されかけたんだぞ?」

友「俺が見つけたら、絶対許さねえ……ッ!」

男「はは、あんがとよ。その気持ちだけで……」

友「今日泊まりに行くわ」

男「え?」

友「また来るかもしんないだろ。任せろ、お前は俺が守ってやる」

男「友……」

男(こいつ、ホモじゃないよな……?)

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:56:10.04 ID:GPpihb790
友「とと、男の家はこの辺だったよな」

友「……うん。ここで間違いない」

女「…………」

友「あ、こんばんは」

女「…………?」

友(うおっ、綺麗な人だな……)

友「このアパートの方ですか? 夜は危ないので、気をつけてくださいね」

女「…………」

友「それじゃ、失礼します」

女「…………」

友(やば、惚れそう……)

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 14:59:49.83 ID:GPpihb790
友「男っ! さっきそこでめちゃ綺麗な人見たぞ!」

男「あん?」

友「長い黒髪でさ、一見すると暗そうに見えるんだけど、顔見たらすごい美人だった!」

男「へえ、羨ましいな」

友「羨ましいもなにも、このアパートの人だろ? あー、俺もここに引っ越そうかな」

男「んん? そんな綺麗な人、ここにいたっけ……?」

友「あの可憐で、抱きしめたら折れてしまいそうな華奢な体……!」

友「ああ、すげえタイプだったぁ!」

男(友がここまで熱中するってのも珍しいな。そんな綺麗な人だったのか?)

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 15:03:42.31 ID:GPpihb790
男「そうは言うけど、お前モテんじゃん。綺麗な人ならいくらでもいるだろ」

友「あんな人見たことない。初めてだけど、これが一目惚れってやつなのかな……!?」

男「どうだかね」

友「今度会ったら、絶対連絡先渡そう! 決めた!」

男「おいおい、はしゃぐのはいいが、本来の目的を忘れてないか?」

友「ああ、もちろん忘れてなんかいないさ。任せろ、お前は命に代えても守り抜く」

男「頼むぜまったく……そんじゃ、とりあえず」

友「ん?」

男「乾杯でもしようぜ!」

友「うおっ、用意がいいなっ!」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 15:08:24.51 ID:GPpihb790
翌日

友「うげぇ、二日酔い……」

男「めちゃくちゃ頭イテェ……」

友「そんじゃ、俺一限からだから……」

男「ああ。交通事故とかに遭うなよ」

友「おう、またな」ガチャ

友「さて……ん?」

女「ぁ…………」

友「え……うわぁッ!?」

友(や、やばい! 奇跡の再開ってか、こんなに早く来るとは思わなかった! 寝癖とかないだろうな!?)

友「お……おはようございます」

女「…………」

友(む、無視? そいういや、前も全然喋ってなかったような……)

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 15:12:29.15 ID:GPpihb790
友「こんな朝早くから、ゴミ捨てか何かですか?」

女「…………」

友「今日良い天気ですね。やっぱ晴れの日は気持ち良いです」

女「…………」

友(やっべぇ! 会話がまったく成立してねぇ!)

女「…………ぁの」

友「は、はいっ!」

女「…………そこの家の人の、知り合いですか」

友「え?」

女「……さっき、そこから出てきた……」

友「あ、ああ、男のことですか。そうです、大学の友人なんですよ」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 15:15:41.38 ID:GPpihb790
女「…………」

友「…………」

友(やばい。い、言わなきゃ……)

友「あ、あのォ!」

女「…………」

友「も、ももももし良かったら、僕と連絡先交換してくれませんか!?」

女「…………」

友「……だめ、ですか?」

女「……なぃので」

友「え?」

女「ケータイとか、持ってないので……失礼します」

友「あ、ちょっ…………はあ~」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 15:33:07.05 ID:GPpihb790
男「…………いかん、二度寝をしてしまった」

男「まあ今日は講義ないし、もう少し寝てても……っ!?」

女「男くぅ~ん、遊びに来たよ~」コンコンッ

男「うそだろ、また来やがった……」

女「早く開けてっ。男くんの顔見たいナー!」ゴンゴンッ

男「友を呼ぶか……いやでも今は講義中だろうし、そんな迷惑……」

女「おーとーこーくーんっ」

男「くそ……自分で何とかするしかないか」

女「おっとっこっく~んっ」

男「……おい」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:02:22.10 ID:GPpihb790
男「なあ……人殺し」

女「私はまだ殺してなんかいないよぉ~?」

男「……頼む、もう止めてくれよ」

女「ええー?」

男「ちょっと前までは、面倒だけど、いつか消えるかなって。ほっといてもなんとかなるかなって思ってた」

男「でも、一昨日殺されそうになって……本当、怖かった」

男「頼むから……もう俺に構わないでくれ……」

女「ええ?」

男「あんただって、もう捕まるぞ。警察が見回りしてくれてるんだ。呼べばすぐに来る」

男「でもあんた、まだ若いんだろ? こんな早くに人生棒に振るなんてもっていねえよ」

女「…………」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:08:26.42 ID:GPpihb790
男「もうここに来ないと、俺の前に姿を現さないと約束してくれ。そしたら俺も何もしない」

女「…………なんで……」

男「え?」

女「なんでぇッ!」

男「!」

女「なんでそんなこと言われなきゃいけないの!? 私は男くんのことをこんなに愛してるのに!!」

男「好きな人を殺したいなんて、正気じゃないって言ってんだよ!」

女「っ……!」

男「あんたのそれは病気だ! そして俺はそんな女を、絶対に好きにならない!」

男「いい加減分かれよ! お前は頭がおかしい! 好きになるどころか、話したくもないッ!」

女「私を好きになってくれないことなんか分かってる! だからコロすの! コロして永遠に一緒にいるのよぉッ!」

男「これが最後だ! 俺の前から消えろ!! じゃなきゃマジで警察呼ぶぞ!」

女「っ……」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:12:55.66 ID:GPpihb790
女「…………最後に…………一回だけ、スキって言って…………」

男「…………」

女「お願い……そうしたら、もう来ないから……」

男「…………俺はあんたのことが、嫌いだよ」

女「っ……なんで」

男「あんたも一度経験すればいい。自分を殺そうとしたやつを、冗談でも好きになれないってことを」

女「…………」

男「あと五秒以内に消えてくれ。じゃないと警察を呼ぶ」

女「…………さよう、なら」

男「…………」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:16:37.01 ID:GPpihb790
男「行ったか……」

男「ったく、なんだったんだあのストーカー女」

男「やっぱり警察に連絡しておくか?」

男「……いや、面倒だし、いいや」

男「一応友には言っておこうかな。心配かけただろうし」

男「……ん、つながった」プルプル、ガチャ

友『なんだ?』

男「あ、えっとさ、さっきあの危ないヤツが家に来て……」

友『っ!? わかった、すぐ行く』

男「わっ、おい! ……くそ、切れた。人の話を最後まで聞けっての……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:25:30.10 ID:GPpihb790
友「ふう、着いた。男のやつ、大丈夫かな……」

友(というか、口調は落ち着いていたし、一段落ついたってところか?)

友「…………あ」

女「…………」

友(あの人……なんだ? すごい思いつめたような顔してるけど)

女「…………っ」

友(ん? 手に何か握って……あれは……)

友「ナイフ……?」

女「…………さよなら、男くん」

友「あいつ、何を……! おいッ!」

女「……っ!? こ、こないでっ」

友「あんた何するつもりだ! 今ナイフを自分の手首に向けてただろ!!」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:30:16.93 ID:GPpihb790
友「馬鹿な真似はやめろっ!」

女「やっ、放して! 私はもういいのよ! 死にたいのっ!」

友「死ぬなんて簡単に言ってんじゃねえよ!」

女「放して、放してよ! あなたには関係ないでしょぉっ!」

友「関係あるッ!!」

友「自分が好きになったやつには、死んでほしくなんかないんだよっ!!」

女「ッ……ぇ」

友「あ……っと」

友(や、やべ……どさくさに紛れて何言ってんだ俺……!)

友「……とにかく、あんたには死んでほしくないんだ」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:37:38.08 ID:GPpihb790
女「…………私は、あなたのことを好きにならない」

友「えっ?」

女「永遠に、絶対ならない。それでもあなたは……耐えられる?」

友「耐えるって、何を……」

女「私だったら耐えられない。どんな手段を使っても、その人と一緒にいるよう努力する」

友「…………」

女「たとえその人の命を奪う結果になっても……ねえ、これって病気かな?」

友「……なにいってんだ」

女「言われたのよ、ついさっき。お前は頭がおかしい、病気だって」

友「…………」

女「ねえ、あなた私のこと好きなんでしょう? ずっと一緒にいたいと思うんでしょう? だったら――殺してよ」

友「……意味わかんねえ」

女「そしたらずっと傍にいられるわ。体だって、自由にできるわよ? ねえ、いいでしょ?」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:39:37.90 ID:GPpihb790
女「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して――――ねえ、コロしてよ」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:44:15.53 ID:GPpihb790
友「…………」

女「大丈夫。私の自殺に見せかけるから。あなたは一言、言ってくれるだけでいい」

女「私に――シネってね」

友「…………」

女「ねえ、いいでしょう? 私のこと、好きなんでしょう?」

友「…………」

女「黙ってないで何か言ったら……」

友「嫌いだ」

女「え?」

友「たしかに見た目はいいよな、すっげえタイプ。超可愛いし、超綺麗」

友「でも、嫌いだ。性格はひん曲がってて、暗いどころか、どす黒いときた」

友「だから嫌い――俺はあんたを、殺さない」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:49:07.41 ID:GPpihb790
女「…………」

友「…………」

女「…………じゃあいいわ。勝手に死ぬから」

友「それはイヤだ」

女「……は?」

友「俺は人の死ぬところを見たくない」

女「からかっているの? ならどこかへ消えなさいよ。私もあんたなんかに見られたくなんかないわ」

友「イヤだね。俺が消えたら、あんた死ぬだろ」

友「自分が関わった人間が死ぬということも、俺は納得がいかない」

女「…………なんで、私が、あんたのワガママに、あんたの勝手な言い分に振り回されなきゃいけないわけ……!?」

友「同じだろ。あんたがさっき言ったことも」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:52:21.76 ID:GPpihb790
友「あんたのワガママで、あんたが好きになったやつが死ぬ」

友「あんたのワガママで、あんたを好きになったやつが殺す」

女「…………」

友「一緒じゃねえかよ。だったら俺も、自分のワガママであんたを死なせたくない」

女「…………」

友「ちょっと来い。あ、ナイフは捨ててな」

女「…………」

友「来いって。ほら」グイッ

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 17:55:23.42 ID:GPpihb790
友「おい男。来てやったぜ」

男「わざわざすまん。いらっしゃ――っ」

男「お、おい友……お前、それ……そいつ……!」

友「ああ、この人? さっき自殺しそうになってたから連れてきた」

友「俺が惚れてたのもこの人ね。今は違うけど」

男「分かってんのか、おまえ……」

女「……」

男「そいつは俺を、殺そうとしたやつだぞ……ッ!?」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 18:00:31.33 ID:GPpihb790
友「え。そうなの?」

女「…………」

友「おわ、まじっぽいな」

男「悪いけど、そんな危ないやつに家の敷居を跨がせるわけには……」

友「驚いた。てっきり俺、男性が襲ってきてんのかと思ってたから」

男「分かったらそいつを早くどっかに捨ててきてくれ。顔も見たくないんだ」

友「うーん……それは困るな。そうすると、こいつ死んじまうもん」

男「はあ?」

女「…………いいです。死なないから放してください」

友「うそつくな。お前が生きたいって思うまで俺は逃がさないぞ」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 18:06:21.73 ID:GPpihb790
GIVE UP !!

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:34:06.72 ID:GPpihb790
女「……なんでそんな、私に構うのよ。嫌いになったんなら無視すればいいじゃない……」

友「ごたごた言うな。これから死ぬかもしれないやつを、黙って見過ごせるかよ」

男「…………」

友「そういえば、なんで死のうとしてんだ? その前に……何故男にあんなことを」

女「…………」

友「お前が言ってた、好きだけど手の届かないやつって、男のことなのか?」

女「…………」

友「ふうん。それで男が完璧にフッたと」

男「……いい加減にしてくれよ」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:39:38.88 ID:GPpihb790
友「え?」

男「お前は状況が把握できていないから、そんなこと言ってられるんだ」

男「俺はこの女にいつも迷惑をかけられ、挙句の果てには殺されそうになったんだぞ!?」

男「死ぬとか死なないとか、俺にはどうでもいいんだよ! 友、やるなら一人でやってくれ!」

女「…………」

友「……確かに、そうだな。すまん、お前に迷惑かけちまった」

男(どうせ、惚れた女にかっこつけたいだけなんだろ……。俺を巻き込むな)

友「邪魔したな」

男「いや……」

友「でも、最後に言わせてくれ。この人を助けられるのは俺じゃ無理かもしれない」

友「そのときは……誰かとか関係なしに、友達として、頼っていいか?」

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:42:26.77 ID:GPpihb790
友「さーて、二人になっちまったな」

女「…………」

友「あり、まただんまりモードか?」

女「……ふん、私をホテルに連れ込むなり、好きにすれば? どうせ死ぬんだし」

友「そんな男に見えてたのか? 俺は」

友「……なあ、どうやったら死ぬのを止めてくれる?」

女「あんたが消えたら」

友「真面目に答えてくれよ。じゃないとずっと一緒にいることになるぞ」

女「……男くんに、好きって言ってもらえたら」

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:48:33.67 ID:GPpihb790
友「おいおい、そりゃ無理だろ」

女「……じゃあ、せめて友達になりたい」

友「いや、あいつはお前の顔も見たくないって言ってたぞ? 俺としても迷惑かけらんねえし……」

友「大体、何でそんなにあいつのことが好きなんだよ?」

女「……一度、電車に飛び込もうとしたときがあって」

友「え?」

女「落ちる前に、男くんに話しかけられたの。ここの駅はここからどう行けばいいですかって」

女「答えたら……すごく笑顔になってくれて、お礼を言ってくれて。私でも人の役に立てるんだって……」

女「気づくと、好きになってた」

友「……まあそれはいいとしても、なんであんな家に押しかける脅迫紛いのことをしたんだよ」

女「……好きとは違うのかもしれない」

友「なに?」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:54:20.75 ID:GPpihb790
女「私、また死にたいって思う時があったのよ。でも、勇気が出なかった」

女「男くんに出会う前の私は、完全に自殺をするつもりで、意思も固まってたわ」

女「でも、二度目はそうもいかなくて……なんで男くんは私を助けたのって。助けたくせに見捨てたのって」

友「そりゃまた、超勝手な言い分だな」

女「今でこそ、そう思えるけど、当時の私はおかしかったから……」

友(今もおかしいとは思うが……)

女「恋というよりも、怨念なのかしら。あそこで声をかけてくれなかったら、私は死ねたのに」

友「……もう、男を殺すつもりはないんだよな?」

女「さあね」

友「さあねって……」

女「冗談よ。もうないわ。でも、ただ……友達というか、話せるくらいにはなりたい」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 20:57:36.53 ID:GPpihb790
友「ふうん……じゃ、まあ、仕方ないか」

女「え?」

友「美容院行くぞ。その後は服を買いに行く」

女「あなた何言ってるの……?」

友「元は可愛いんだから、その暗い感じを何とかすれば、別人に見えるはずだ」

女「はあ? つまり、男くんを騙すつもり?」

友「まあそうなるな。んで仲良くなった後にバラす」

女「怒られるだけじゃ済まないと思うわよ」

友「覚悟はしてるさ。お前も、もし変な気を起こしたら二度と男には会えないと思えよ」

女「……ふん」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:00:11.23 ID:GPpihb790
翌日

友「おお、やっぱ見違えてるな」

女「…………」

友「茶髪のセミロング、前髪もバッサリ切って、服は雑誌に載っていた通り……うん、これじゃ誰もお前とは分かんないよ」

女「……ふん」

友「あ、その性格も変えろよ。じゃなきゃ、たとえ見た目変えられても一発でバレるからな」

女「性格を変えるなんて……無理に決まってるじゃない」

友「気になる人と話すときは、いやでも可愛く見せようとするだろ? そんな感じでいいんだよ」

女「はあ……気が重いわ」

友「そんじゃ、行くぞ」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:03:26.55 ID:GPpihb790
友「男~。遊びに来たぁー」

男「はいはい……あれ、隣にいるのは?」

友「友達。この前合コンで会ったんだ」

女「コ、コンニチワ」

友「お前の写真見せたら気に入っちゃってよ。ぜひ会いたいって言うから連れてきた」

男「ふうん……それはいいとして、昨日のやつは?」

友「ああ。やっぱ付き合いきれなくて途中で見捨てたよ。慣れないことはするもんじゃないな」

男「当たり前だろ。それじゃまあ、上がれよ」

友「おっじゃましまーす」

女「お、お邪魔します……」

123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:06:46.83 ID:GPpihb790
男「君、名前は何て言うの?」

女「あ、ええと……女っていいます」

男「へえ。なんかすごく今風の女子って感じだね。可愛いよ」

女「え、や、可愛いなんて……っ!」

友「おいおい二人でイチャイチャしないでくれよ。それより何する? ?むか!?」

男「まだ昼間だぜ? もっと健全な遊びがいいな」

友「うーん、女は何やりたい?」

女「え、ええと……蟻つぶしとかかな」

男「ん? 蟻?」

友「あーあー! なんでもないなんでもない! ち、丁度トランプあるし大富豪でもしようぜ!」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:09:41.78 ID:GPpihb790
・・・・・・・・・・・・。

友「ふいー。遊んだなぁ。もう夕方だ」

男「結構楽しかったな」

友「ああ。女もそう思うよな?」

女「う、うん……楽しかった」

友「っと、ちょいトイレ借りるわ」

男「ああ、場所は……って分かるよな。いってらっしゃい」

友「はいよー」

女(わ、わ、わ。男くんと二人っきり、しかも家の中で……っ!?)

女(ど、どどどどうしようっ!?)

男「…………さて、」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:13:29.75 ID:GPpihb790
女「あ、ええと、今日はとっても楽しかったですっ!」

男「ああうん。俺も。まさか君がこんなまともな人だとは思わなかったよ」

女「ええ? そんなにチャラチャラして見えました?」

男「違う。もっと暗くて、ひねくれてるやつかと思ってた」

女「……え?」

男「見た目を変えたからといって、そう簡単に騙せやしないよ。単純な友が考えそうなことだ」

女「え……え」

男「どうも、昨日ぶりだな」

女「っ…………!」

女「き、気づいてたの……?」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:18:45.64 ID:GPpihb790
男「最初見たときは分かんなかったけど、話しているうちに。声、似てるっていうかそのものだったし」

女「ぅ…………」

男「友がそう容易く人を見捨てられる人間とも思えないしな」

男「あいつがトイレから出てきたらたっぷり説教をするとして……」

男「何が目的なんだよ? 女さん」

女「わ、私は……その、男くんと……」

男「はっきり言って迷惑だ。言ったろ? 二度と会いたくないって」

女「…………」

男「俺以外にも、もっと素敵な男性は山ほどいる。それこそ友とかな」

女「私は……男くんがいいから……」

男「……恋愛とか、したことないの?」

女「……」

男「片思いは?」

女「ないです……」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:22:27.42 ID:GPpihb790
男「……恋愛は、必ずしも叶うものじゃないんだよ」

男「時には諦めたりもしなきゃいけない。分かるだろ?」

女「……うん」

男「俺の答えは変わんないよ。できることなら他の恋を探して欲しい」

女「…………」

男「せっかく、そんな普通の女の子らしくできるんだからさ」

女「……え?」

男「最初に会ったとき、可愛いって言ったのは嘘じゃない。今の時間が楽しいって言ったのも、嘘じゃない」

男「俺は好きにはなれないけれど、きっと君を好きになる人、君が好きになる人はたくさんいると思う」

男「だから頑張りなよ、死ぬとかじゃなくてさ。生きて、これからを楽しみなよ」

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:26:20.45 ID:GPpihb790
男「俺は言えるのはこれくらい。綺麗事に聞こえるかもしれないけど、これで精一杯だ」

女「あ……あの、」

男「なに?」

女「その……分かった。男くんを好きになるのは、もう止める。諦める」

女「だから……と、」

男「と?」

女「と……!」

友「うっはーっ! すっきりしたぁー!」

男「わっ」

女「!」

友「あん? どうした二人して……いちっ、どうして蹴るんだよ女っ」

男「まったく間が悪いというか……なあ、聞いてくれよ、友」

友「なんだ?」

男「僕、友達が出来たんだ。女さんっていう」

女「……え?」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/23(金) 21:31:01.88 ID:GPpihb790
友「へ、へえ。良かったじゃないか」

男「僕んちの扉壊してくれたり、突然見た目変えて訪れたりする人だけど……良い人なんだぜ」

友「そっか~……って、え?」

女「お、男くん……!」

男「さあ、そんじゃ今日は解散な! 最近いろいろあって疲れたし! 久々に思いっきり寝てえっ!」

友「くっ、あははっ! ああ、そうだな! んじゃ帰るぞ、女」

女「……うんっ」

男「また来いよ、二人とも」

友「おう」

女「うん……ありがとう、男くん」

女(幸せはこれから――頑張って見つけてみるよ)

男「またなっ!!」




             END