1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:09:26.68 ID:3RtGxj8g0
純一「という夢を見たんだよね、へへ」

薫「え? するよわよ?」

純一「?」

薫「だから、みんなでパーティするわよって言ってんの」

純一「……いや、僕の夢の話だよこれって?」

絢辻「あら、勝手に夢にされるなんて……」

純一「あれっ!? 絢辻さんっ!?」

七咲「先輩、皆でパーティするって嘘ついたんですか?」

紗江「えっ……嘘…なんですか?」

純一「七咲に紗江ちゃんも!?」

森島「もちろんっ! わったしもいるわよ~!」

純一「先輩!?」

引用元: 橘純一「女の子全員とクリスマスパーティすることになったよ」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:18:39.35 ID:3RtGxj8g0
純一「ど、どうして皆僕の部屋に……っ!」

七咲「先輩が呼んだからです」

純一「呼んでないよっ!? あ、いや……確かに薫は僕の部屋に元から居たけど」

絢辻「……。棚町さん、どういうことかしら」

薫「へ? フツーにコイツのお見舞いに来ただけであって……なにその疑ってる感じ!」

紗江「……先輩、大丈夫ですか?」

純一「さ、紗江ちゃんっ……こんな夜遅くにどうしたっていうの?」

紗江「えへへ……あのですね、今日は先輩が学校をお休みになられたとのことでしたので…」

紗江「……こうやって、お見舞いにきました」

純一「さ、紗江ちゃん……」

森島「もう、橘君って意外とひ弱なのね~。クリスマスって日に風邪をひいちゃうなんて」

純一「せ、先輩も…もしかしてお見舞いに来てくれたんですか?」

森島「グゥート! 正解よ!」

純一「あ、ありがとうございます! え、でも……どうして皆で一緒に…?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:25:25.82 ID:3RtGxj8g0
七咲「ですから、先輩が呼んだからですよ」

純一「……七咲、もう僕を翻弄させるようなことをいうのはやめてくれ…」

七咲「ふふ、ばれてます?」

純一「…今は病人だよ、もうちょっと労わってください」

七咲「ええ、十二分に理解してるつもりです。……ですが、先輩」

純一「え、なにかな?」

七咲「その風邪、どのようにして引かれたんですか」

純一「………」

七咲「どうして黙ってしまうんです?」

純一「……言葉にできないような、深い訳があってだね…」

薫「また水泳部覗いてたんでしょ?」

純一「えっ?! あ、ちょっと薫っ!?」

紗江「え……また、…?」

純一「いやいやいや! 違うよ紗江ちゃんっ!? こ、コイツの言ってることなんて信用しちゃだめ!」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:31:48.88 ID:3RtGxj8g0

絢辻「……橘くん覗いていたって、何?」

純一「違います! そんなこと僕がするわけないよ! あ、あは、あはは!」

絢辻「ねえ、橘くん。あのね?
   これだけは一つ言っておくけれど…覗きというのは立派な犯罪で──」

森島「──わぁお! やるわね橘くん! ……それでそれで? どうたったのかしら?」こそこそ

純一「え……? な、なにがですか?」

森島「ひ・び・き、ちゃんの水着姿のことに決まってるじゃない! どうたったのっ? ねぇねぇ!」つんつん

純一「あ、塚原先輩ですか……それはもう、しっかりとした引き締まった太ももがもう素晴らしくって…」

絢辻「ごほんッ」

純一「……という僕の妄想でした」

薫「どちらにしたってアウトよ、純一」

絢辻「橘くん?」

純一「いやその、なんていうか…違うんです、魔がさしたっていっても過言でもなくて…
   僕としてはやっぱり、しかるべき据え膳食わぬが恥と申しますが…」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:40:39.59 ID:3RtGxj8g0
七咲「ということは、覗いたんですね」

薫「覗いたんでしょ」

絢辻「……」

森島「いいなぁ~! どうして私も誘ってくれなかったの?」

紗江「せんぱい……」

純一「……」ダラダラダラ…

ぴんぽーん

純一「あっ! 誰か来たよ! ちょうどうまい具合に僕以外、この家にいないし! 僕が応答しなきゃね!」ばっ だっ!

七咲「あ、逃げた」

絢辻「橘くんっ!」

薫「…アイツはヘン  なんだから、今後は気をつけなきゃダメよ?」

紗江「は、はいっ」

森島「あ、この本ってビーバー三国志!? 新刊じゃない!」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:45:23.81 ID:3RtGxj8g0
~~~~

純一「はぁっ……はぁっ……ふぅ」

純一「…一体ぜんたい、なんだっていうんだ…みんな僕の部屋に集まってるよ…」

純一「どんな偶然が重なってそうなるのかまったくもって分からない…」

純一「あの中の誰かが皆を集めたのかな? …待てよ? そうしたら薫の奴が怪しいな」

純一「……」

純一「確かに……今日はクリスマス、僕はその日に風邪をひいてしまった。
   そのお見舞いに学校帰りの薫が見舞いに来た…」

純一「家には家族全員、美也と両親で外食に行ってしまっている」

純一「寂しかった僕は薫を上がらせ、それから…」

純一「……何時の間にか、みんなが僕の部屋に居た」

純一「おかしい、薫からみんな登場あたりの記憶が…」

純一「すっごく曖昧な気がする…突然現れたような……」

ぴんぽーん

純一「──あ、しまった。はいはい! 今あけまーす!」がちゃり

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:51:26.71 ID:3RtGxj8g0
純一「どなたですか───」

梨穂子「やっほ~、純一~!」

純一「り、梨穂子!」

梨穂子「うん、そうだよ~! 今日も寒いね~あ、ごめんね突然……迷惑だった?」

純一「いや、そうじゃないけど……どうしたんだこんな夜中に」

梨穂子「ちょっと近所を通りかかってね、そういえば純一ってば風邪をひいたって言ってたなぁと思って」

梨穂子「ちょっと顔を見に来た感じかな~」

純一「そうか……ありがとう、わざわざ…」

梨穂子「あ、いいっていいって! なんにもお見舞いの品持ってきてないし」

梨穂子「…でも、その様子だといらないみたいだよね?」

純一「あ、うん。お陰さまで……一日ぐっすりと寝てたらよくなったよ」

梨穂子「そっか、それは良かったよ~」

純一「…えっと、立ち話もなんだし。あがってくか?」

梨穂子「え、でも…」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:58:02.78 ID:3RtGxj8g0
純一「ああ、大丈夫。今日はクリスマスだろ?
   両親と美也で外食に行ってるから、僕一人ぼっちなんだ。だから気兼ねなく上がれるよ」

梨穂子「えっ……純一、ひとりだけ?」

純一「うん、そうだけど?」

梨穂子「……えっと…その…」もじもじ

純一「?」

梨穂子「あのその…えーっと…」ちらっ

純一「……あ、そうか。そうだよな」

梨穂子「ふぇっ!? なにがかなっ!?」

純一「梨穂子だって、今日は家でお祝のはずだもんな。引きとめたら親御さんに怒られるか」

梨穂子「あ、あー………う、うん! そうだねっ! そうだよねっ! あはは~!」

純一「ん? どうかした? 顔が赤いみたいだけど…」

梨穂子「ん、ん~? そ、そうかなぁ? 見間違いだと思うよ~!」

純一「そ、そっか。じゃあ長くひきとめるのもあれだし、梨穂子───」

「──ねぇー! たっちばなくぅーん! ビーバー三国志の十二巻ってどこかしら~!」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:08:25.10 ID:3RtGxj8g0
純一「……」

梨穂子「……」

「あれっ? 聞こえてないのかしら…? 橘くーん! たーちーばーなーくぅううううんっ!!」

純一「……」ダラダラダラダラ…

梨穂子「今の声って……」

純一「り、梨穂子! あれはだな! そ、そう! テレビの音だ! テレビ!」

梨穂子「テレビ……」

純一「そうそうっ…! ま、前にね!? 文化祭で先輩を録画したことがあってさ!
   そ、その時の映像を流しっぱなしにしててさ! あーまいっちゃったな~近所迷惑だよな~大音量だとな!」

梨穂子「そ、そうなんだっ…えっと、音量は小さくして見なきゃね…」

純一「お、おう!? そうだよな! まるっきり梨穂子の言う通りだ! 僕ってば風邪がまだ治ってないんだろうなあははは!!」

梨穂子「あはは~…」

純一(──しまった! この家、僕一人じゃないよ! みんないるよ! 五人居るよ!
   しかも夜中だし、しかも僕一人とか言っておきながらみんないるから梨穂子騙してるみたいな空気になっちゃってるし!)

純一(……いや、テレビの音って言ってる時点で騙してるのか……いや、でもこれは正しい判断のはずだ!)

梨穂子「……」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:16:38.16 ID:3RtGxj8g0
純一「…り、梨穂子。そういうワケだからさ」

梨穂子「あ、うん…」

純一「えっと、明日には学校出られると思うし…」

梨穂子「う、うん! わかったよ~……純一が元気だってわかれば、それでよかったから~…」

梨穂子「……良かったから、ね…」

純一「あ、うん……そっか…」

梨穂子「……」

純一「……」

梨穂子「……あ、あのね純一」

純一「な、なんだ梨穂子?」

梨穂子「……私は、別にね…その、純一がどんなことしてても別に怒ったりしないよ…」

純一「え……?」

梨穂子「だから、私は……純一にとって幼馴染だから、純一が……その…」

梨穂子「…ごめんね、上手く言えないや…えへへ」

純一「……」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:22:10.90 ID:3RtGxj8g0
梨穂子「……うん、急に変なこといってごめんなさい」ぺこり

梨穂子「純一が元気そうでよかったよ、また明日……学校で」

純一「梨穂子…」

梨穂子「ん? なに、純一?」

純一「…えっと」

純一「……ごめん、なんでも無い…よ」

梨穂子「そっか、それじゃあまた明日! じゃあね純一!」

純一「ああ、また明日……」

梨穂子「……ばいばい」くるっ

たったった…

純一「………」

純一「……なんで、キチンと言わなかったんだろう」

純一「梨穂子のしている誤解を、僕はなんで弁解しなかったのだろう」

純一(…言っても信用されるようなことじゃないから? いや、それは違う…実際に皆に逢わせれば、
   誤解なんてすぐになくなるはずなのに…僕は、どうして梨穂子を止めなかったんだろう)

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:27:27.67 ID:3RtGxj8g0
────ズキンッ……

純一「痛っ…!?」ぐらっ…

純一「っ…?」

純一「なんだ───一瞬、頭が痛く…なって…っ」がたっ

純一「っ……」

純一(なんだ…頭が少し、朦朧とする…風邪がぶり返したのかな…?)

純一「……はぁ~、これじゃあ明日も学校行けないかな」

純一「………」

純一「…部屋に、戻るか」

すたすた…

~~~

薫「あ、コラ! それアタシのでしょ! なに勝手に食ってるのよ!」

絢辻「あらそうだったの? てっきり皆で食べるようかと思っちゃった」

紗江「あ、ごめんなさい……私もそう思って…」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:33:29.32 ID:3RtGxj8g0
薫「あ、中多ちゃんはいいのよ? もっと食べても」

紗江「え、いいんですか…っ? これとっても美味しくて…!」

薫「ふっふー! でしょでしょ? それって限定品の奴で、今はもうどこにも売ってないのよっ」

紗江「ほぇ~! す、すごいですっ!」

七咲「え、でも駅前で同じようなもの見ましたけど……」

薫「え、うそ」

七咲「は、はい。多分このパッケージだと思います……やっぱり、見覚えがあるかな」

薫「…」

絢辻「プッ」

薫「っ」カチン!

森島「あ、やっと帰ってきた~! 橘くん、ちゃんと本は整理しなきゃだめだぞ!」

純一「……えっと、なんだかすごく馴染んでるね…みんな」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:38:47.41 ID:3RtGxj8g0
森島「ふぇ? どういうこと?」

薫「……絢辻さん、今、笑ったかしら? んんッ?」

絢辻「いいえ、喉にお菓子が詰まっただけよ」

薫「へ、へぇ~…」

絢辻「……」フキフキ

紗江「はわわっ…あ、逢ちゃん…!」

七咲「…あっちで一緒に本読もうよ、中多さん」

森島「あ、じゃあそこの二人! 一緒にビーバー三国志を読みましょ! ねぇねぇ!」

七咲&紗江「えっ!?」

絢辻「…棚町さん、さっきから眉間にしわを寄せ過ぎよ。しわが増えて大変な老後になりそうね…ふふ」

薫「ねえ絢辻さん…心配は十分ありがたいんだけど、最後の言葉は余計じゃない?」

絢辻「そうね、ごめんなさい…確かにそうだわ、しわが出来て行くことは仕方ないことだもの…」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:44:40.84 ID:3RtGxj8g0
薫「っ……っ~~~~~~!!」ぐぐっ…

薫「……ねえ絢辻さん喧嘩売ってる? さっきから?」

絢辻「……」

薫「……」

絢辻「今頃?」

薫「っ……上等、じゃないのッ~……!」

絢辻「ふふっ、ほらまたしわが増えた」

薫「」ブツン

純一「おい、薫……そして絢辻さん」

薫&絢辻「なによ!」

純一「……喧嘩しないでください、お願いします」

薫「喧嘩ぁ? …馬鹿言っちゃ困るわよ純一!」

絢辻「…そうよ、橘くん。これは喧嘩だなんて、そんなお子様のやるようなものじゃないわ」

純一「え?」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:49:46.82 ID:3RtGxj8g0
薫「──決闘よ、決闘!」

純一「け、決闘…っ?」

薫「今からあたしとッ!」

絢辻「…この私が」

薫&絢辻「──命と名誉と美貌をかけたッ……!」

薫&絢辻「トランプでのババ抜きをするのよッ!」

純一「仲良いんだね、君ら…」

薫「トランプあるんでしょ、純一。さっさと出しなさいよ!」

純一「ええ……めんどくさいよ…」

絢辻「覗き魔」

純一「すぐに探してまいります!」だっ

~~~~

純一「……はぁ、面倒なことになった」

純一(あの二人って、仲が良かったんだな……知らなかった。
   喧嘩するみたいな雰囲気出して置いて、決着方法がトランプだもんな)

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 22:58:19.87 ID:3RtGxj8g0
純一「……何時の間に、あんなに仲良くなったんだろう」

純一「あの二人って、同じクラスだったけど…そこまでの深い接点なんて──」


───ズキンッ!


純一「痛ッ!?」

純一「っ……? ……っ??」ドッドッドッ…

純一「なん、だ───今の痛みっ……また頭が痛くっ…!」

がたっ…

純一「っ…っっ……今度のは、また酷い…な…っ」ズキズキ…

「───だ、大丈夫ですか…っ?」

純一「…え? あ、うん……ごめん、心配かけちゃったね…」

紗江「廊下で物音がして……みんな気付いてないようでしたので、私だけ様子を見に来ました…」

純一「そう、なんだ……」

紗江「は、はい……先輩まだお身体が良くないんじゃ…?」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:05:19.89 ID:3RtGxj8g0
純一「う、うん。かもしれないね…でも、大丈夫…また直ぐに収まるから…」

紗江「で、でも…」

純一「───ん、ほら。収まった…平気だよ、紗江ちゃん」

紗江「……」

純一「…うん、僕は大丈夫だよ」

紗江「そう、ですか…」

純一「ありがとうね、心配してくれて。みんなで本を読んでたんだよね、もう戻ってもいいよ?」

紗江「……」

純一「紗江ちゃん?」

紗江「──……先輩は、どうして怒らないんですか」

純一「え?」

紗江「……」

純一「どういうこと……かな?」

紗江「……こうやって皆で、押しかけてきたことについてです…」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:09:28.26 ID:3RtGxj8g0
純一「どうしてって……それは…」

紗江「それは…?」

純一「……その、嬉しいからだよ」

紗江「嬉しいんですか…?」

純一「うん…多分、そうだと思う」

純一「だって僕の為にこんな夜中に見舞いに来てくれたんだよ?
   ただの風邪だって言うのにさ……それなのに、沢山人が来てくれた」

紗江「……」

純一「これって嬉しいことじゃないかな?」

紗江「…だから、怒らないんですか」

純一「うん、そうだよ。まぁ……夜中に来るってのはちょっと非常識だけど、
   そこまで心配してくれてたんだなぁーっておもったりして…」

純一「怒るに怒れないんだ、僕は」

紗江「……優しいんですね、先輩」

純一「えっ? そ、そうかな? でも、お見舞いに来てくれた人達…それに紗江ちゃんだって優しいじゃないか」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:14:12.10 ID:3RtGxj8g0
紗江「そんなことないですよっ…! わ、私はただっ……」

純一「ただ?」

紗江「……逢ちゃんの後ろを、着いてきただけ……ですから」

純一「七咲の? ということは、七咲が行こうっていいだしたのか」

紗江「………」

純一(ということは、みんな偶然に集まっただけ? でも、変に協調性があるから…)

紗江「……センパイ」

純一「あ、うん? えっとなにかな紗江ちゃん?」

紗江「センパイは、本当は怒ってるんじゃないですか」

純一「……え? だ、だからさっきも言ったけど僕は別に──」

紗江「───出来れば、あの娘と一緒に居たいって……」

紗江「みんなとじゃなく、その娘と…二人だけで居たいんだって…」

紗江「──思ってるんじゃ、ありませんか?」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:19:46.75 ID:3RtGxj8g0
純一「あの娘…? えっと…紗江ちゃん? 何をさっきから言ってるの?」

紗江「……私はひ弱で、世間を知らなくて、怖がりで、寂しがりやで」

紗江「人の気持ちとかを、上手く察してあげることが……苦手で」

紗江「臆病だから、本当のことがわかっていても……伝えることはできなくて」

純一「紗江ちゃん…?」

紗江「そんな私は、臆病で馬鹿な私は……センパイの傍に……いられなくて」

紗江「…いられ、なくて」

純一「……」

紗江「……」

紗江「……この想いも、これからずっとずっと……伝えることはないんだって思います」すっ…

純一「紗江、ちゃん…?」

紗江「……今日は、もう帰りますね、センパイ」

純一「え…?」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:25:40.63 ID:3RtGxj8g0
純一「あ、いや……そうだよね、夜も遅いし…親御さんも心配してるだろうし…」

紗江「……」

純一「で、でも! 夜道は危ないから、僕が送って行くよ───」

紗江「───いんですね……」ぼそっ

純一「え、なに? 紗江ちゃん今…?」

紗江「………」

純一「紗江ちゃん?」

紗江「……私は、平気ですよセンパイ。一人でも帰れます」くるっ

純一「いや、でもっ…一人で帰るのは駄目だよっ?」

紗江「……大丈夫です」ちら

紗江「───いつまでもセンパイにおんぶにだっこでは、駄目ですから」すっ

すたすた…

純一「あっ……」

純一「……紗江ちゃん」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:30:55.19 ID:3RtGxj8g0
純一「………」

純一(急に、急にどうしたっていうんだ……
   なにやら凄く思いつめたような表情をしてたけど…紗江ちゃんが、あんな表情するなんて…)

純一(僕、悪いことさせちゃったのかな……でも、思いいたる節が全くない)

純一(……怒っている、か)

純一(怒ってるだなんて、そんなわけ無いのに。
   僕は彼女らを怒ることなんて、絶対にあり得るわけ無いのに)

純一(こんなにも大切に思っているんだ、そんなこと、絶対にあり得ない───)

純一「───……」

純一「……トランプを、探そう」

~~~~~

がちゃ

純一「おーい、トランプあったよー」

絢辻「あら?」

薫「ん?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:35:51.65 ID:3RtGxj8g0
純一「……なにやってるの、二人とも?」

薫「見ればわかるじゃない、腕相撲よ」

絢辻「貴方が帰ってくるのが遅いから」

純一「探し回ってたんだよ……それよりも、もうトランプはいらないのか?」

薫「いらないわねェ…! だって、今んところアタシが勝ち越しだしぃ?」

絢辻「…卑怯な手を使っておいて、良く言うわね」

薫「…先にお痛を始めたのは、そっちじゃない? ん?」

絢辻「っ…わかったわ、それじゃあ………」

薫「なになに? 本気だそうってワケ? あっはは、この状況でどうやっても覆すことなんて──」

ゴッ!!

薫「──いッッ!?」

絢辻「……あんまり、本気なんて出したくないのよ。疲れるから」ふりふり

純一「勝利、絢辻さん」

薫「な、なんてコトっ…!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:41:32.29 ID:3RtGxj8g0
絢辻「これで同点ね、棚町さん」

薫「ぐがっ……やるじゃないッ…ちょぉーと優等生だからって、舐めてかかってたわッ…!」

薫「──アタシも、中学以来のマジの本気……見せてあげるわ!」

絢辻「たかが知れてるんじゃなくて?」

薫「上等ッ! 純一! トランプ貸して、やっぱ使うから!」

純一「…ほらよ、あんまり熱くなるなよ薫」

薫「燃えてこそアタシじゃない! 燃えて燃えてチリになっても、尚燃えて!」

薫「───勝利を握りつぶすのが、棚町薫って女よ!」

純一「握りつぶすな握りつぶすな」

絢辻「……」

薫「…ババ抜きよ、いいわよね」

絢辻「いいわよ、かかってきなさい」

薫「ハンッ! その余裕に満ちた顔に、ババを叩きつけてやるわよッ!」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:46:48.74 ID:3RtGxj8g0
絢辻&薫「「───デュエル開始ッ!!」」

純一(仲が良いなぁ)

くいっくいっ

純一「…ん?」

七咲「センパイ」

純一「おお、七咲……どうかしたの?」

七咲「いえ、その…」ちらっ

純一「そういえば本を読んでたんだよね、森島先輩と。さっきから凄く静かだけど───」

森島「すやすや…」

純一「………」

七咲「先ほど「眠たくなってきちゃった……逢ちゃん、膝枕して?」と言いながら寝てしまわれたようです」

純一「なんていうか、この人は本当に凄いね…どうして寝れるんだろう」

七咲「…私にも、わかりません」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:50:55.89 ID:3RtGxj8g0
純一(お見舞いに来たのに…人の家でお昼寝感覚で寝てしまうとは、やはり大物だなぁ)

七咲「センパイ、それとなんですが…」

純一「あ、うん。紗江ちゃんのこと?」

七咲「ハイ、姿が見えないのでどうかしたのかなと」

純一「……えっと、帰ったかな」

七咲「帰った? それはその、家にですよね?」

純一「う、うん……やっぱりだけど七咲には言ってなかった?」

七咲「……そう、ですね。私には何も…」

純一「そっか……あ、紗江ちゃんカバンも置きっぱなしじゃないか」

七咲「………」

純一「うっかりしてるなぁ、明日にでも届けるかな…いや、先に電話で用件を伝えるべきかな」

七咲「…私がやっておきます、センパイ」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 23:56:15.08 ID:3RtGxj8g0
純一「え? いいの?」

七咲「モチロンです、というか先輩に任せた方が心配ですから」

純一「……反論できない」

七咲「当たり前です」

純一「あはは……あれ? そういえば紗江ちゃんのカバンについてる
   キーホルダーって七咲も持ってない?」

七咲「え? あ、はい。そうですね……美也ちゃんと中多さん、私と三人でお揃いを」

純一「そうなんだ、へぇ~……可愛い猫だね」

七咲「…美也ちゃんが選んでくれたんです、三人で買おうって」

純一「アイツは本当に勝手だな…」

七咲「ふふっ、いえそんなこと言わないで上げてください。
   私も中多さんも、美也ちゃんがそういってくれて……」

七咲「……本当に、ありがたかったんですから」

チャリ…

七咲「……本当に、本当に」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:05:19.01 ID:xqPG6Idx0
純一「……」

純一(凄く大切にしてるんだな……七咲、その人形を。
   美也もにくいことするなぁ、やるじゃん美也!)

純一(……それにしても七咲、凄い聖母のような表情を浮かべるな)

七咲「………」

純一(膝枕されてる森島先輩と相まって、何処かの油絵みたいに見える…おお、後光が…!)

七咲「…でも」

純一「うん?」

七咲「……でも、置いて行っちゃったんだ」

純一「…七咲? えっと、中多さんのこと?」

七咲「えっ? あ、ハイっ…でも別に帰ってしまったことに、じゃなくて」

七咲「このキーホルダーが付いてるカバン、忘れて帰っちゃったことがちょっと…」

純一「…寂しい?」

七咲「…ちょっとだけ、ですけどね」

純一「七咲は変だなぁ、普通は帰っちゃったことの方がショックじゃないのかな?」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:10:58.41 ID:xqPG6Idx0
七咲「……そう、でしょうか」

純一「うん、僕はそう思うよ」

七咲「……。でも中多さんは、今日は私に連れられて来ただけであって」

七咲「中多さんが一人で帰ったことは、私には……」

七咲「連れて──引っ張ってきて、自分勝手な…方は私であって…」

純一「…七咲?」

七咲「っ……な、なんでもないです。すみません、変なこと言ってしまって…」

純一「あ、うん。大丈夫だけど……もしかして七咲、ちょっと眠い?」

七咲「そ、そうですね……森島先輩の寝顔を見てたら少し、眠たくなってきたかも知れません」

純一「……もう、家に帰った方がいいんじゃないかな?
   時間も時間だし、家の人も心配してるんじゃない?」

七咲「…まだ、平気です」

純一「そうなの?」

七咲「ええ、まだ」

純一「七咲がそう言うのなら…僕も強くは言わないけど」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:17:08.26 ID:xqPG6Idx0
七咲「…ありがとうございます、身勝手なことを言ってるのはわかってますから」

純一「身勝手だなんて…僕はお見舞いに来てくれたことはとっても嬉しいんだよ?」

純一「…だから気が済むまで居ればいいよ──」

純一「──僕も付き合うからさ」


────ズッキンッ!!!


純一「───ッッ!!!?」

純一「がッ……んだッ…ッ? たまッ…がッ、痛…!?」がたっ

純一(なんだこれッ…! 今までで、一番頭痛が酷いッ?
   頭が割れそうだッ…どうしたって、いうんだよ急に…ッ!)

七咲「………」

純一「ななッ……さきっ…!」

七咲「…先輩、やっぱりごめんなさい」

純一「ッ? ッ……?」

七咲「───私、やっぱり帰りますね」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:23:10.94 ID:xqPG6Idx0
純一(え…? 急にどうしてって、いうんだ…?)

七咲「……」すっ

純一(というか、僕のこの苦しみようはっ…七咲に伝わってない、のか?)

純一「なな、さきッ…?」

七咲「……私は、やっぱり」

七咲「───中多さんを一人で帰らすのは、駄目って思うんです」チャリ…

純一「ッ……」

七咲「ですから、急にこんなこと言ってしまってすみませんけど……」

七咲「───帰ります、ごめんなさい、先輩」

すたすた… ぎぃ……ばたん

純一「七咲ッ……!」ぐらっ  ぼすっ

純一(だ、駄目だ……頭が痛くて、立ち上がれない…七咲、急にどうしたっていうんだよ!)

純一「って、うわぁあ!」

森島「すやすや…」

純一(寝てる森島先輩の顔近ッ!)

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:29:11.55 ID:xqPG6Idx0
森島「すぴぃ~……うーん……むにゃむにゃ」

純一(お、おおっ……なんだコレ! やばいっ…!
   頭痛なんて収まってしまうぐらいに、なんていうか…)

純一(凄いよね! うん!)

森島「ふにゃ…ふぇ…ふぇ……ぶえっくしょんっ!」バシュッ!

純一「……」

森島「すんすんっ……っはぁー……むにゃむにゃ…」

純一「……ティッシュとか、あるかな」すっ…

純一「………」

純一「いや……もちょっと…」

純一「もうちょっとだけ乾燥してから、うん、そうだよ! もうちょっとだけ乾燥してからね! 拭こう!」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:36:27.87 ID:xqPG6Idx0
純一(…その、詳しくは言えないけれど。せっかくだし、日常的にありえないしな!
   こう、上手くは言えないけれど、浴びるとか、そんなこと普通ないからね…!)

純一(まだ、ちょっと暖かいし……もったいないっていうか、まだ抱えて居たい問題って言うかさ…)

純一(拭こうって思っても、それはやっぱり…ね?)

純一(確かに大切なことかもしれないけれど、でも、拭こうって思うには……まだ、僕は)

純一(森島先輩には気付かれてないし……あ、でも知られたら怒られそう…その時はちゃんと)

純一(きちんと、拭こうって思わなきゃダメだよね!)

純一「……だめ、だよね?」

純一「………」

純一「あれ?」

純一「──絢辻さんと、薫は?」

 

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:44:48.97 ID:xqPG6Idx0
純一「………」

純一「やりかけの、トランプ……」すたすた…

純一「……あれ? どっちの手札にも、ババが無い?」

純一「どうして、もとからトランプの中に入って無くて……失くしちゃったのかな」

純一「元から入って無くて、それをお互いに引き合ってたなんて…二人もおっちょこちょいだなぁ」

純一「……」

純一「ずっとずっと、互いに牽制しながら…」

純一「ありもしないババに怯えて、自分の所に来るんじゃないかってちょっと期待しながら」

純一「恐がって、でも少しだけ楽しくて、でも負けたく無くて」

純一「───ババを最後に手にしたものが、この勝負を終わらせる」

純一「互いに競い合うことに、終止符を打つ。
   ババと言う存在は、負けと思いながらも……それを手にすることは勝負を終わらせるということ」

純一「ある意味、勝ちというそのものよりも」

純一「価値があるもの」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:48:47.12 ID:xqPG6Idx0
純一「……だけど、そんなのは無かったんだ」

純一「両方の手札に、自分が切れるカードの中に……」

純一「───そんなもの、存在なんてしてなかったんだ」

純一「…あは」

純一「あはは、馬鹿……だなぁ。二人とも……」

純一「どうしてそんなに競ってるのか……本当に、本当に…」

純一「…………」

純一「……そんなもの、あるわけ無いのに」


───ズキン…

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:55:06.61 ID:xqPG6Idx0
純一「最初から、ずっとずっと」

純一「無いものに対して、みんな頑張りすぎなんだよ」

純一「……それじゃあ僕も、周りを見渡したくなっちゃうだろ」

純一「僕のことを見てくれる人のことを──」

純一「──お見舞いに来てくれる人たちのことを、嫌いになんて出来ないよ」


───ズキンッ…


純一「期待……なんて、するもんじゃないって分かってるのに」

純一「僕はあれだけのトラウマを抱えたんだ……結局は変われないことは」

純一「自分自身が一番知ってることだったから…」

純一「だから……だから、僕は……」


───ズキンッ!…

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 00:59:44.27 ID:xqPG6Idx0
純一「もっともっとそれ以上に……」

純一「幸せを、楽しいことを、みんなが僕をもっと欲してくれるように……」

純一「変われないのなら、忘れさせてほしい」

───ズキンッ!

純一「もう、あの夜のことは忘れたいんだ…っ!
   誰かに裏切られることは、もうっ…もうっ…!」

純一「全てが嘘だったんだよって……!
   なにもかも、僕の勘違いだったんだよって…っ!」


───ズキンッッ!


純一「僕は幸せなんだッ…! 女の子に囲まれて……ッ!
   あの時の僕はもういない…ッ! トラウマを抱えた僕なんて……ッ!」


───ズキンッッッ!!

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:05:26.23 ID:xqPG6Idx0
純一「一人の女の子を思い続けてる!
   振られたって言うのにッ! その娘をひたすら思い続けてるッ!」

純一「そんな卑しい僕はもう居ないんだよ! 居るわけがない!」

純一「僕は! 僕は僕は僕はッ! 一人じゃない!」

純一「もう答えはそこまで出てるんだ! 忘れられる…あとちょっとで、あとちょっとで!」

純一「あちょっとでッ! 僕は! 僕は僕は僕は僕は僕は……!」

純一「───僕は幸せになれたはずだったんだッ!!」



───ズキンッッ……


「──でもそれは、叶わなかった」

「──貴方は結局、なにもえらる事は出来なかったの」

「──何が駄目か、そんなこと今の君には理解できないと思うけど」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:11:41.37 ID:xqPG6Idx0
純一「…………」

がらり…

「貴方は失敗したの。過去の自分を忘れようとして、忘れようとし過ぎて」

ひた…

「必要以上に幸福を求めすぎたんだよ、過度に自分を良くしようとし過ぎちゃったの」

ひた…ひた…

「もしかしたら、貴方にはそれほどの幸福が必要だったのかもしれない」

ひた…ひた…ひた…


ひた

「だけどね、それはやっぱり不幸なんだよ。橘くん───」


すっ………



裡沙「───橘純一君……」ぎゅう…

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:18:41.90 ID:xqPG6Idx0
純一「…………」

裡沙「こんな話、知ってるかな」

裡沙「──人の交友関係は『家』で例えることが出来る」

裡沙「家って言うものはね、ある意味その人にとって『世界そのもの』でもあったりするんだよ」

裡沙「その家に住人、その家に訪れるもの……足を踏み入れ、住人に声を交わし」

裡沙「他人が自分のテリトリーに入る様子が、親密度を表してくれることもあるんだよ」

純一「…………」

裡沙「………今日はいっぱい女の子が来てくれたね、橘くん」

裡沙「『貴方の世界に、貴方の心に踏み込んできた人たちがいっぱい来た』ね。橘くん」

純一「…………」

裡沙「あ、でも…踏み込むことができなかった娘が…ひとり居たっけ」

裡沙「──桜井梨穂子、あの娘だけは入れなかった」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:25:16.08 ID:xqPG6Idx0
裡沙「ううん、きちんと言うと……あの娘は自分から入らなかった」

裡沙「沢山女の子がいる家の中に……『部屋』の中に」

裡沙「あの娘は自分から入ることを、やめたんだよね」

裡沙「入ることが怖かったのかな、橘くんの関係を……深めることが」

裡沙「深めた先に、玄関を超えた先に。その後に分かる貴方の『部屋』の状況を見ることが……」

裡沙「……彼女は、怖かったのかもしれないね」

裡沙「だから、彼女は帰った。幼馴染という言葉を残して、貴方の元から去ったんだよ?」

裡沙「……でも、あなたはそれを止めなかった」

裡沙「それは何故? どうして? 大事な女の子なのに……自分を幸福にしてくれる人なのに」

裡沙「…ねえ、橘くん。それはさ───」

裡沙「──邪魔だと感じたじゃないかな、その娘のことを」

裡沙「コレ以上、自分の部屋に、自分の交友関係を深める人は要らないと」

裡沙「……貴方はそう思ったから、彼女を引き止めることはしなかったんじゃないかな」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:31:57.63 ID:xqPG6Idx0
純一「…………」

裡沙「だから貴方は、桜井梨穂子を追いかけなかった」

裡沙「弁解を、言い訳を。部屋に上がらせ、部屋の彼女たちと会話させることを」

裡沙「──理性的に、拒んだ」

裡沙「まず一つ目、貴方が駄目だった所だね」

裡沙「次に2つ目だよ、橘くん……君はどうしてダメだって言ってあげなかったの?」

裡沙「あの娘とことだよ、一年の───中多紗江」

裡沙「あの子は……とても貴方のことを慕ってた。
   まるで親のように、生き別れた兄のように」

裡沙「橘くんのことを尊敬し──好意を持ち──そして、心から愛していた」

裡沙「凄いよね、キュンとしちゃうよね。高校生で愛をおぼえるなんて、凄いことだよこれって」

裡沙「でもね? だからといって、彼女は強いわけじゃなかったの」

裡沙「自分の想いに正直に慣れるほど傲慢じゃなくて、気弱で

裡沙「──自分というものに、自分という価値に圧倒的に自信がなかったんだよ」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:38:36.27 ID:xqPG6Idx0
裡沙「愛をおぼえるほどに、彼女は凄い娘だったのに」

裡沙「…彼女自身が強くなかったから、その愛を伝えることは出来なかった」

裡沙「だからね? 貴方がもう少し、もうちょっとだけ、ほんのちょっぴり」

裡沙「──彼女の想いを後押しさせてあげるような、フォローが必要だったんだよ」

裡沙「貴方が、橘純一くんが。彼女の想いを受け身になるだけじゃなくて」

裡沙「男らしく同等と、彼女を引き止めるべきだったんだね」

裡沙「貴方の『部屋』から居なくなることを。貴方の『関係』から消えてしまうことを」

裡沙「察して、感づいて、優しくして、引き止めてあげて」

裡沙「…彼女の想いを、引き止めておくべきだったんだよ」

裡沙「でも、貴方はしなかった。どうして? わからなかったの? 彼女の思いが?」

裡沙「違うよね、貴方はちゃんと気づいてた」

裡沙「自分の『部屋』に『お見舞い』に来てくれる程だったんだから…」

裡沙「…少なくとも、好意的なものを向けられていると。そう感じてたはずだよ」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:44:16.43 ID:xqPG6Idx0
裡沙「だけど、だけど貴方は……」

裡沙「……それを、知らないフリをした」

裡沙「彼女から向けられる想いに、貴方は知らない風に装った」

裡沙「どうしてかな? ううん、ごめんね? あたしにはわかってるよ」

裡沙「───重かったんだよね? 彼女の思いが?」

裡沙「自分が果たして、彼女の想いを受け取れるほどの器量があるのだろうかって」

裡沙「貴方はとても不安になってしまったんだよ」

裡沙「だから貴方は逃げた。彼女が貴方の元から、貴方の『部屋』から居なくなることを」

裡沙「止めることが、できなかったんだよね」

純一「…………」

裡沙「これが3つ目、次に行くよ?」

裡沙「あの娘は本当に──貴方を大切に思ってたんだろうって思う」

裡沙「七咲逢……彼女は、本当に凄いって思っちゃった」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:50:04.82 ID:xqPG6Idx0
裡沙「あの娘は好きだと思った相手に、全力で努力を惜しまないんだろうね」

裡沙「…橘君、ほんのちょっとの期間だったけど」

裡沙「『彼女と付き合えてよかったね』」

裡沙「…彼女はそれを我侭だって思ってたみたいだけど、ううん、あたしはそうは思わない」

裡沙「だって、そうでしょ? 自分が大切だって思ってる───」

裡沙「自分の親友が『部屋』から居なくなったと気づいたのに」

裡沙「…彼女はそれを悲しまず、好きな人を悲しませたくないと」

裡沙「交友関係を犠牲にしてまで、あの娘は貴方の幸せを望んだんだから!」

裡沙「凄いよ、誰もが真似できるようなことじゃないよこれって」

裡沙「安っぽくて、上っ面のような友人関係を壊すんじゃない」

裡沙「──同じキーホルダーを持った、本当に大切な友達だったのに」

裡沙「彼女はそれを、『貴方と付き合ってから、見せることはなかったよね?』」

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 01:55:59.68 ID:xqPG6Idx0
裡沙「『友情の印』である、その『キーホルダー』を貴方に見せることはなかった」

裡沙「それってどういうことか分かるかな? つまりだよ──」

裡沙「──自分の弱みを、友達を無くしてでも貴方を取ったという醜さを」

裡沙「──決して吐露することなく、ずっと隠し続けながら貴方を幸せにし続け」

裡沙「──聖母のような笑顔で、君を魅了し続けたんだよ」

裡沙「……っはぁー……凄い、本当に…彼女は本当に凄いよ」

裡沙「理想の彼女だといってもいいんじゃないかな? 誰もがこぞって結婚を申し込んでもいいって思う」

裡沙「絶対に付き合ったら誰もが幸せになると思うよ? あんだけ人のことを思うことが出来るんだもん」

裡沙「だから貴方も、ずっごく幸せになれたよね」

裡沙「……だけど、だけど」

裡沙「───彼女は、幸せだったのかな?」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:02:13.95 ID:xqPG6Idx0
裡沙「彼女自身は、本当に幸せだったかな?」

裡沙「いつまでも自分に笑顔を振りまいてくれるけど、本当にそれは心からの笑顔だったのかな?」

裡沙「好きだって想いに、努力を惜しまない彼女だったけど……」

裡沙「……自分自身の幸福を、ないがしろにしては無かったかな?」

裡沙「貴方はそれを、理解してあげるべきだったんだよね」

裡沙「おかしいなって、そんなの変だなって言ってあげるんじゃなくて」

裡沙「彼女が抱えている、彼女の原動力にもなっている──もはや病気とも呼べるような───」

裡沙「──その彼女の本質を、理解してあげるべきだったんだよ?」

裡沙「それは違うんだよって、それじゃあ僕は幸せだけど、君の幸せはどこにあるのって」

裡沙「きちんと訂正して、彼女を……救ってあげるべきだったね、橘くん」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:06:56.65 ID:xqPG6Idx0
裡沙「そうすれば、彼女が自分の……力に押しつぶされることはなかったんだよ」

裡沙「かけがえのない『キーホルダー』を無理矢理にでも見るべきだったんだよ」

裡沙「そうすれば、彼女は上手く……行ったはずだったのにね」

純一「…………」

裡沙「3つ目はこれでおしまい」

裡沙「じゃあ4つ目だけど……これはもう、なんて言ったらいいのかな」

裡沙「あたしも重症だって思うけど、だけど橘くん…もしかしたら貴方はここらへんで」

裡沙「おかしくなってたのかもしれないね」

裡沙「森島はるか……彼女は…」

裡沙「……」

裡沙「……強い、と思う」

裡沙「……私だって、できるかどうかわからないよ」

裡沙「──『寝たフリ』だなんて…」

123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:13:24.86 ID:xqPG6Idx0
裡沙「これってどういう意味か分かるかな?」

裡沙「…貴方の部屋に多分、『一番踏み込んだのは彼女』のはずなのに」

裡沙「──彼女はその『部屋』で『寝たフリ』をした」

裡沙「それは、はっきり言えば『知らないフリ』だよ」

裡沙「橘純一の『部屋』で『知らないフリ』」

裡沙「…いい変えれば、『貴方の関係性を知っておきながらも、知らないふりをした』ってことになるんだよね」

裡沙「多分、寝たふりをし始めたのは……七咲逢と貴方が付き合い始めた頃だと思うんだけど」

裡沙「…彼女はそれを寝たふりをして見逃したんだね」

裡沙「そしてずっと寝たふりをしながら、貴方と七咲逢が別れる様子を見続けた」

裡沙「……そして、貴方の動向を観察し続けた」

裡沙「『寝たフリ』をし続けながら」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:19:46.21 ID:xqPG6Idx0
裡沙「そして寝たふりをし続けながら、彼女は見てしまった────」

裡沙「──自分の顔に見惚れる、貴方の顔を」

裡沙「彼女は多分、ショックだったと思うよ。自分を慕っていて、そしてまた自分も好意を持っていた…」

裡沙「…そんな可愛い可愛い後輩が、こんなにも…」

裡沙「…醜い人間だなんて、ね」

裡沙「付き合っていた可愛い彼女の悩みも知ってあげる事もできなくて」

裡沙「なのに別れた後すぐさま、違う女の子にうつつを抜かす」

裡沙「森島はるかという女の子は、そんな貴方に絶望し、恐怖して」

裡沙「──心から、嫌悪した」

裡沙「だよね、多分」

裡沙「……だから、唾なんだよね」

裡沙「本来、そんなことはしたくないのに。やりたくはないけど、知ってしまったから」

裡沙「彼女は貴方に、クシャミをした。『唾を吐きかけたんだよ、貴方という人間に』ね」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:27:09.19 ID:xqPG6Idx0
裡沙「唾を吐きかける、それは敵意に表れって言うよね?」

裡沙「貴方はもう、自分の知ってる人じゃない。もう赤の他人で、それよりも以下で」

裡沙「──私が嫌いな人間だという証明なんだよね」

裡沙「だけど、貴方もそれはわかってたよね」

裡沙「その唾をかけられたこと、それが彼女の意思でやられたってことを」

裡沙「寝たふりをしながら、唾を吐きかけられたけど」

裡沙「『何も知らないような態度を取られながら、彼女からそんな事言われたけど』」

裡沙「……貴方は、ちゃんとわかってた。問題として受け止めようとしてた」

裡沙「だけど、やっぱりそれは怖くて出来なかった。だから君はその問題を先送りして」

裡沙「───『不幸』と思うことを、『拭こう』と思うことを」

裡沙「先へ先へと、先延ばしにした」

裡沙「まだ……わかってないから。彼女にはバレてないはずだから」

裡沙「その拭こうという思いを、思わないことにした」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:33:17.00 ID:xqPG6Idx0
裡沙「……壊れてるね、橘くん」

裡沙「貴方は確かに、誤魔化されながら彼女から嫌われていたけれど」

裡沙「そんな想いに、実は気づいていたけれど」

裡沙「自分がそんな最低なやつじゃないって気づかれてないと思えるなら」

裡沙「……自分が不幸じゃないって、どうして思えたのかな」

裡沙「…ふふ、わからないよ。だけど、これで4つ目はおーしまい」

純一「…………」

裡沙「ふぅ、疲れちゃったね。あたしも長いこと喋って疲れちゃったんだよ…」

裡沙「う~んっ…!」ぐぐっ…

裡沙「っはぁ~……あ、そういえば後二人残ってたけど」

裡沙「あの二人は、別に説明いらないよね? 途中から橘君もわかってたみたいだし」

すっ…

裡沙「ねえ…橘君、あたしね」

裡沙「ずっとずっと……いたんだよ?」

裡沙「───貴方の『部屋』の中に。気付かれないように、ずっと」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:40:01.16 ID:xqPG6Idx0
裡沙「貴方の『人間関係』の中に。ひっそりと、影からずっと見てた」

裡沙「貴方の 『部屋』 の中に。ひっそりと、影からずっと見てた」



裡沙「貴方の『押入れ』からずっと見てたんだよ」

裡沙「貴方の 『後ろ』からずっと見てたんだよ」



裡沙「貴方の『交友関係を深めるもの』を盗んだこともあったね」

裡沙「貴方の『ビーバー三国志十二巻』を盗んだこともあったね」



純一「…………」

裡沙「…だけど、だけどね? それは、それは…」ぎゅうっ…

裡沙「全部全部、貴方のためなんだよ…?」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:44:37.24 ID:xqPG6Idx0
裡沙「貴方がまた、頑張ろうとしたこと」

裡沙「貴方があの冬の公園で知ってしまった───そのトラウマを」

裡沙「自分自身の力で、忘れようとしたコト」

裡沙「だけど、それが失敗して」

裡沙「貴方が壊れていくの、影から見るのは本当に辛かった───」

裡沙「──だから、橘くん。もうこんな夢を見続けるのは…」

裡沙「…もうやめよ?」

裡沙「大丈夫、あたしは……この『部屋』からは居なくならないから」

ぎゅう…

純一「…………」

裡沙「ずっとずっとそばに居てあげるから」

裡沙「ね、ね? 橘くん…もう休んでいいんだよ………」なでなで

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:47:48.75 ID:xqPG6Idx0
裡沙「辛かったね、どうしてって何度も思ったはずだよね」なでなで

裡沙「…あの冬の夜、振られた橘くん……」

裡沙「だけど、あの時のトラウマは……その時の『あの子が好きだったという』想いを消すことはできなくて」

裡沙「──まだ思い続けてる、自分の醜い感情を……」

裡沙「…忘れたかった、だけだったのにね…」

ぎゅう……

裡沙「……橘君」

裡沙「ずっと裡沙が居てあげるから、ね」

裡沙「もう、この部屋で苦しむことはないよ……」

裡沙「──あたしだけが居てあげるから、永遠にずっと」

純一「…………」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:48:55.06 ID:xqPG6Idx0
裡沙「絶対に」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 02:54:41.01 ID:xqPG6Idx0
~~~~~~~~


ピー……ピー……

「───長いこと、コイツの顔を見続けたつもりだけど」

「───なんていうかさ、わらかないかしら? この…言葉に出来ない感じ」


「───わからないでも、ない。あたしだってそう思うから」

「───こういうのは、できれば思いたくないって思うし、だけど思ってしまうわよね」

ピー……ピー……

「───あーイライラする、こいつの事で感情が高ぶるの。ひっさしぶりね」


「───それはもう、当たり前じゃない。とっくに十年以上前の話よ」



薫「…わかってる。わかってるんだけど、さ」

絢辻「……」

140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:04:23.46 ID:x3kjJ0HZ0
薫「やっぱり、ダメ。どうしても…言葉に出来ない」

絢辻「…薫みたいな女が、感情を口にできないなんて」

薫「…当たり前でしょ、何時の時のあたしと思ってるのよ」

絢辻「そうね、ごめんなさい…」

薫「…詞も、ちょっと弱くなったわよね」

絢辻「……」

薫「…ま、いいけど」

絢辻「…それで、他の人達は?」

薫「……」

絢辻「…そっか、そうよね」

薫「……あたしたちだけよ、多分」

薫「今も、そしてコレから先も」

絢辻「…………」

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:09:43.53 ID:x3kjJ0HZ0
薫「……」

絢辻「……なんていうか、こういうことってあるのね」

薫「……」

絢辻「あたしは…不可思議なこととか、めっぽう信じて無いけど」

絢辻「この頃最近、なぜか部屋にいると───」

絢辻「──誰かに後ろから見つめられてるって」

絢辻「そんな気がするってことを、あの時の人たちが全員……思ってたなんて」

薫「…見つめられてる、じゃないわよ」

絢辻「え…?」

薫「『覗かれてる』が、正しいでしょ。あんな嫌らしい視線…」

絢辻「……確かに」

薫「……そしてそれがさ、なんかこう…」

絢辻「そう……上手く言葉に出来ないけれど」

薫「……コイツの顔を、思い出してしまうような感じなのよね」

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:14:49.27 ID:x3kjJ0HZ0
ピー…ピー…

薫「あの日から、十年以上経って……」

薫「……あんた、今更あたしたちに何の用があったのよ」

絢辻「……」

薫「好き勝手しておいて、色んな人達をかき回しておいて」


薫「……勝手に自殺しようとした癖に」


絢辻「……」

薫「もう…あんたと過ごしてきた記憶なんて、殆ど忘れそうになってたのに」

薫「あんたはまた……そうやって人を戸惑わせるのね」

薫「……馬鹿」

絢辻「……はぁ」

絢辻「…本当にそう、貴方はいつまでもそうなのね」

絢辻「…本当に、ずっとそのまんまじゃない、貴方は」

146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:19:32.39 ID:x3kjJ0HZ0
薫「………」

絢辻「はたまた死のうとすれば、自殺にも失敗して……」

絢辻「…なんなのよ、何がしたかったのよ。貴方は…っ…」

絢辻「貴方はっ…本当に…!」

薫「……」

絢辻「…っはぁー、もう嫌。疲れた」

薫「……」

絢辻「──橘くんを怒り続けるのはもう、疲れた」

薫「──もういいのよ、コイツは。純一は」

絢辻「…うん」

薫「最後に…純一、あんたってば何かしたかったみたいだけど」

薫「もう、だれもあんたの見舞いには来ないわよ……ずっと」

薫「わかってるんでしょ…? それだけのことをやったと、自分自身で」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:23:53.20 ID:x3kjJ0HZ0
絢辻「…貴方がどのようなことを思って、あたしたちを翻弄し続けたのかはわからないのよ、橘くん」

薫「そんな事を知ってるの、あんただけじゃないの純一」

絢辻「別に考えることを放棄したわけじゃない、だけど」

薫「…もう時間が経ちすぎてるのよ、わかるでしょ」

絢辻「…だからもう、あたしたちのことは放っておいて」

薫「あたしたちもまた、アンタを怒ることを…やめるからさ」

ぴー…ぴー……

薫「…じゃあ、それだけだから」

絢辻「……」

薫「行くわよ……詞」すた…

絢辻「………」

純一 シュコー…シュコー…

絢辻「……さようなら、橘くん」

……パタン

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:32:35.73 ID:x3kjJ0HZ0
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150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:34:30.03 ID:x3kjJ0HZ0
あああああああああああああああああああああああああ!!!!僕はただた幸せになりたくてなりたくてただそれだけで!!!
なのに僕はどうしてこんなことになったのか全く分からない!!なんでどうして僕は本当に忘れたくてそうやってただけなのに!!
みんなみんなみんな僕から離れていく!!僕が悪かったの!?僕がダメだったの!?どうして!?頑張ったのに!僕は僕は!!
好きになっちゃいけなかったの!?僕は君たちを好きになっちゃダメだったの!?ならどうして僕を見た!!僕を翻弄した!!
弱い僕はダメな僕は流されてしまうに決まってるだろ!!わかってくれとはいわない!!だけど僕は僕は僕は僕は僕は僕は!!

裡沙「くすくす…」

人を好きになりたかっただけだったんだ!!この思いを誰かに届けたいとねがっただけで!!
なにか特別なことが欲しかったわけじゃない!!小さなものでよかった!あの記憶がなくなるだけで!!
だから人を好きになりたかっただけなのに!!もう誰も僕のことを見てくれないの!?ダメなの!?

裡沙「あははっ……ふふ」

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/15(土) 03:35:11.58 ID:x3kjJ0HZ0
例え僕がっどんなに醜くて弱い人間でも!!もっと幸せになってもよかったはずだ!
なのにどうして僕はこうならなきゃいけなかったの!?どうしてどうして!?

裡沙「橘くん……橘君…」

僕は、幸せになりたかっただけだったのに。
あの時の自分を、忘れたかっただけなのに。

裡沙「…もう大丈夫だよ」

僕は、僕は。

裡沙「平気だから、ずっとずっと……」



裡沙「永遠に離れないから、貴方の側から」




裡沙「ずっといつまでもいっしょだよ」