1: Mii 2019/03/31(日) 10:37:38 ID:iLEqj1bw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。

遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。





パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。

     ・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
      勝ち越せない程度の実力しかありません。
      戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
      むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
      読むようにしてください(最重要)。

     ・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
      白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
      別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
      
     パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」

引用元: ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」 




2: Mii 2019/03/31(日) 10:43:49 ID:iLEqj1bw
――長いようで短い、大会期間。
――戦いの幕開けが切って落とされ、各フィールドで乱闘が始まる…!
――特に、「3強」が出場するカードともなれば、否応なしにも人が集まるもの…!



リンクVSアイクVSフォックスVSヨッシー



ワー!ワー!
リンク、ユウショウメザセー!

リンク「ハハ、いやあ照れるなぁ…ああ、でもファイはやっぱりいないかあ。
    …本当にどこに行ったんだろう」ポリポリ

アイク「剣士として、リンクのような強敵と幾度となく戦えることは最上の喜びだ。
    今回もよろしくな」

フォックス「剣士ってわけじゃないが…分かるぞ、その気持ち!
       俺のブラスターもこの時を心待ちにしていたようだ!生半可な気持ちでは勝てないとは分かっていてもな!」

リンク「ああ、よろしくな!熱いバトルにしてやろうぜ!
    …だが、俺も俺の武器たちも日々成長しているんだ、そう簡単には負けてやらないぞ!」

ヨッシー「モグモグ…」パクパク

3: Mii 2019/03/31(日) 10:45:46 ID:iLEqj1bw
アイク「…いや、まあ。同じ剣士と言えど、ハイラル王国と違って時間軸が
    『だいたいは』正常に作用している俺やマルスは、その…
    世代交代のせいで獲得経験値がリンク程にはよろしくないから実力差は結構付いているんだが…」

リンク「あ、そういや最近はアイクにもマルスにも負けたことなかったっけ」

アイク「」ズーン

リンク「……なんか、ごめん」

アイク「…いいさ。…俺も鍛え方、変えてみたほうがいいんだろうか」

リンク「だったらキノコ王国に入り浸るのがマジでオススメだぞー。
    …そういや前から気になってたんだが、時間軸が正常に作用してる上に、
    アイクたちのことが伝説の英雄として語り継がれている『現在の世代』があるってことは…」





アイク「死人とか言うな」

リンク「…………」

アイク「誰が『お盆祭りに呼び出されるだけの存在』だ!
    誰が『天下一武道会にあの世から参戦したサイヤ人』だ!」

リンク「そこまで言ってない言ってない」

フォックス(…俺はまだ恵まれてるんだな)

4: Mii 2019/03/31(日) 10:49:05 ID:iLEqj1bw
アイク「確かに、帰る故郷なんてもうないけどな、時代って意味で…!
    ある日突然、尋常じゃない速度で時間が経過して…世代が一気に進むんだぞ!
    理解できるか!?なぜか知らないが、俺の世代から…もう千年単位で時が経ってるらしいんだぞ!?」

リンク「…すまない、ハイラル王国でその辺の…時間軸系の感覚は麻痺してるからあんまり驚かない」

アイク「…霊体になって子孫たちの活躍を温かく見守るくらいしかできないんだよ!
    あーあ、寿命や老化の概念がご都合主義でなくなる王国や、
    歴史が重なってる王国のファイターはいいよなあ!」

フォックス「アイク、キャラがぶれて来てるぞ」

アイク「なあ、俺たちの国の今の世代からの参戦者に…ルフレっていう軍師見習いがいるんだが、
    そいつは早いうちから気にかけて鍛えてやってくれないか!?
    俺みたいなことにならないように!」

リンク「それはまあ、いいけど…って、やっぱり死人じゃないか!怖いよ!
    あと、そういった人たちは俺含めてすさまじく苦労してきたからな!?」





アイク「あ、ちなみに…このスレでは、大会の開催期間的に…
    DLC組は出番がないからよろしくな」

リンク「あっ(察し)」

5: Mii 2019/03/31(日) 10:54:42 ID:iLEqj1bw
ヨッシー「ちょっと、リンクさん!」

フォックス「…あ、相手にしなかったからヨッシーが怒って…」

ヨッシー「あの魚、わざわざありがとうございました!中々美味でしたよ!」

リンク「おー、そっか。釣り上げた甲斐があるってもんだ!
    俺は釣りの過程を楽しめればそれで満足だからな!」

フォックス「ここに来て食い物談義をするのか…あ、さっき食べてたのって魚だったのか」

ヨッシー「今食べてたのはメロンですよ?」

フォックス「何故にメロンなんかを…え、特産品だって?」

アイク「おい、雑談は一旦やめて…みんな配置につけ。
    



    そろそろ…始まるぞっ!」

6: Mii 2019/03/31(日) 10:56:50 ID:iLEqj1bw
マスターハンド「それでは、今日も相変わらず――試合開始のカウントダウンですっ!」

観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」

フォックス「先手必勝!ブラスターを食らえ!」バビュン!

リンク「よっと」

アイク「フンッ」

ヨッシー「当たりませんっ!」

フォックス「…ま、これでいきなり当たってくれるとは思ってないが。
      開幕即撃ちは俺のバロメータサインみたいなものだからな。
     ――『フォックスイリュージョン』っ!」

7: Mii 2019/03/31(日) 10:59:41 ID:iLEqj1bw
リンク「置きソードで対処――」



フォックス(甘いぜっ!)スライデイング!



リンク(ぐっ!?ムーブ変化を身に付けてたか!?)

フォックス「――からの、フリップキック!」

リンク「うぉっと!コンボは許さないぞ!」ガキィン

フォックス「ちっ…単発に終わったか」ササササッ

アイク(…しかし、素早い。俺にもあれくらいの速度があれば…
    いや、無い物ねだりはやめておこう、俺には俺の戦闘スタイルがある)



リンク「よっし、サンキューフォックス、目が醒めた。最初から動くのには俺も賛成。
    さぁて、じゃあ派手に飛ばしていくぞ!」ヒョイッ

8: Mii 2019/03/31(日) 11:03:14 ID:iLEqj1bw
バチバチバチバチバチ……!



アイク「ふむ、バクダンか…だが、分かっていればそれほど怖くはない!」

フォックス「そ、そうか?無茶言うなよ、割と怖いぞ…
      スマートボムほどじゃないにせよ、当たったらドカンだぞ」

リンク「チッチッチ。言ったろ、『俺の武器たちも日々成長している』って」

アイク「…おい、種類違いのバクダンとか別の武器とかを繰り出して必殺技を増やすのは大会規約に逆らう反則行為だぞ?」

リンク「あれ、アイクは知らないんだ。あくまで武器の本質を変えずに『派生させる』のなら問題ないんだぞ?
    …そして、俺はそのルールの穴を…最大限、利用するっ!!」



マスターハンド「おや?リンク選手、おもむろに爆発間近のバクダンを…トン、と地面に押し付けた!」

アイク「なに?」

フォックス「…設置型?」

9: Mii 2019/03/31(日) 11:06:01 ID:iLEqj1bw
リンク「武器合成により強化され…更に、わざわざ出向いて、
    プロのバクダン屋に監修してもらったバクダンの使い方、見せてやるぞ…!せーの!






   下必殺派生!      『ラ イ ン ボ ム』!」ダンッ!





シュイン! シュイン! シュイン! シュイン! シュイン!

バクダン×30「」ズラズラズラズラッ

マスターハンド「なんと、足場がビッシリ…バクダンで埋まったー!!」

リンク「最大ボム袋のざっと半分だけ並べてみました」

フォックス「ハドソンッ!?」

アイク「あ、足の踏み場もないな、これは…!」

リンク「そして先頭の1個の爆発前に、自分はクローショットで逃げーる」ガシィッ

フォックス「のわぁ!?」

10: Mii 2019/03/31(日) 11:09:31 ID:iLEqj1bw
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァッ!

アイク「火を噴いて連鎖誘爆っ!?やることがえげつない……!それでも剣士か!
    くそっ、俺も上空に逃げるしか…!!」

リンク「はっはー!俺の場合、選択肢の一つに剣があるだけなんだよなー!
    …そして、アンタのジャンプ力の低さも踏まえて、その動きは当然読めているわけでして!下突きぃ!」ブォッ・・・ズンッ!

アイク「そんなもの――重戦車パワーの振り回しで叩き斬ってや…」



ドッズゥン――!!

【リンク  E:ヘビーブーツ】



アイク「――ぐがっ!?」

実況「いきなり大技が炸裂っ!開始早々、鮮やかな攻撃が決まりました!
   アイク選手、最初から厳しい攻撃を受けました!……しかし、挽回のチャンスはまだ十分にあります!」

ヨッシー「フウゥゥーーン!」バタバタ

フォックス「ゼェ、ゼェ…間一髪爆風は避けられた――!
      というより、ヘビーブーツ履いてたのか!?それであの速度か!?
      俺並の速度だった気がするんだが…!さすが、リンク!倒し甲斐がますます出てきた!」

11: Mii 2019/03/31(日) 11:12:01 ID:iLEqj1bw
リンク「俺を倒すことを目標にしてくれるのは光栄なことだけど…
    さあ、果たしてタイマンで倒せるかな?」

フォックス「……とりあえず今日は3対1で勝つことが目標だな!」

リンク「わあ潔い」

リンク(まあ俺のバクダン袋はバクダン製造能力なんてないから、
    あと1回使うとバクダンがスッカラカンになるデメリットもあるんだけどな!)



マスターハンド「お、おや!?ヨッシー選手がどこかに消えてしまいました!
         爆風に巻き込まれて大きく吹き飛ばされたのでしょうか!?」



ヨッシー「フウゥゥーーン!フウゥゥゥーーン!」バタバタ

実況「しかしヨッシー選手は空にいて当たらないっ!ヨッシー選手、どんどん加速していきますっ!
   ……もう、これ以上あがりませんっ!」

マスターハンド「…え?……い、いつの間に」ミアゲ

リンク「おーい!無限踏ん張りジャンプで『画面外』まで逃げるのやめろ!
    ええい、もうそのままバーストしてしまえ!」

12: Mii 2019/03/31(日) 11:14:57 ID:iLEqj1bw
ヨッシー「爆発なら、私も負けていませんよ!せーの!
      てやてやてやてやてやてやーっ!」サッ



バァン! バァン! バァン!



フォックス「あがっ!いてっ!爆撃機か何かかお前は!」

リンク「いたた…そりゃそうだよな、ヨッシーも本気になればタマゴ6連投なんて余裕だよなっ!
    結構爆発範囲広いんだよな、これっ!

    …いや、本当に広いな!?というか連投しすぎじゃないか、10発以上投げてるような!」

ヨッシー「試合直前にメロンを6個連続で食べてきました!」

フォックス「?」

リンク「……………………その後追加で、幸せなフルーツ食べたろ!?
    こらー!ドーピングするなー!薬物NO!ゼッタイ!」

マスターハンド「ヨッシー、一気に攻撃の態勢に移ります!連打が決まっています、これがじわじわと効くっ!
          リンク選手、フォックス選手、アイク選手、同時にヒットしました!」

13: Mii 2019/03/31(日) 11:20:19 ID:iLEqj1bw
リンク「キリがない!スカイウォードで撃墜…いや、ファイがいないと使えないな。
    よし、じゃあ弓矢で上を狙って…ハッ!ハッ!ハッ――!」グググ・・・



観客「フィールド上方でタマゴが次々と破裂して…たーまやー!!」

観客「昼間の花火も綺麗ねぇ!」

実況「両者一歩も譲らず、いきなりの乱打戦となりました!」

アイク「ぐうっ……」

実況「おおっと、アイク選手、動くことができません!ここから逆転を狙う秘策はあるのでしょうか!」

アイク(背に腹は、代えられない…恥を忍んで…!)ヨロッ

リンク(アイクが主戦場を離れたな、体力温存に出たか。まあ、追い打ちにでるまでもないだろう。なら、その隙に…残りの2人を各個潰す!そろそろ――)

ヨッシー「あ、ハッピー状態解けた」シュウ・・・

リンク「チャーンス!これで狙い放題、仕留めて見せる!」

ヨッシー(――と動かれることは、分かってました、ので!接近戦にSwitchのためヒップドロップでーす!)クルリン

14: Mii 2019/03/31(日) 11:22:57 ID:iLEqj1bw
リンク(来たっ!いくら急降下と言えど、わざわざ一直線に降りて来てくれるなら好都合だ!
    狙いの的だぞ、ヨッシー!)カマエ







――地球には、引力というものがあります。

――引力、引力…。

――引力、引力…。





ヨッシー「ねっ?」グニョン ゴウッ!

リンク「だぁあ!?」ガツンッ!

フォックス「不自然なほどクイッと方向転換したな…!
      まさか、ヨッシーの周りだけ一瞬重力方向が変わったのか…!」

15: Mii 2019/03/31(日) 11:26:24 ID:iLEqj1bw
ヨッシー「ふふーん、私のとっておきですよー。…まあ、あんまり効いてないのはちょっと想定外ですけど。
     怒涛のベロ攻撃ですー!」

リンク「ぐぐ…なんとか踏ん張れてよかったよ、今ので場外とか悲しすぎるし。って、今度は舌か!
    ほっ、よっ…!避けるのはいいけど…一度後手にまわっちゃうと、変に弓やバクダン構えたら食われそうだなあ、はは…!」バックステップ

フォックス(……!これは!チャンスか?剣をしっかり構えられる前に、ヨッシーに乗じて押し込むか!)ダッ

フォックス「どうしたリンク、俺だっているぞー!ハイ、ハイ、ハイ―っ!」ブンッ ブンッ

実況「フォックス選手、連続して攻撃を繰り出します!軽やかにヒットしました!」

リンク「こ、これは本当に…フォックスのジャブ速度にも押されて、中々、剣を振る暇がないなっ!」アトズサリ



ドンッ。



リンク「…げっ」クルリ

アイク「セコイ真似して、済まないな…でやあああぁぁぁ!!」ガキイィン!

16: Mii 2019/03/31(日) 11:30:56 ID:iLEqj1bw
ボオオオオォォォーー!!





実況「アイク選手、噴火が決まったぁ――!」

リンク「ぶっ!?く、クローショット復帰っ!!」

シュルルルルルルルル…!



リンク「…ふぃい、やばいやばい…いてて」

アイク「うむ、最大火力っ!油断したな、リンク!」

フォックス「俺たちが弱いせいで本気を出せないとかなら、まだまだギアは上げさせてもらうぜ!
       足元をすくわれないようにな!」

リンク「…はははっ!やっぱり皆、凄いよな!スマブラはやっぱり、こうじゃないと!
    さあ、まとめて相手にしてやるぜ、覚悟しておけよ!」

17: Mii 2019/03/31(日) 11:33:51 ID:iLEqj1bw
ワー ワー!!

ピーチ(控室)「あらあら、ようやくリンクも本気になったみたいね。
        全く、たるんでるんだから…。ゼルダもそう思うわよね?」

ゼルダ(控室)「……ええ。そうですね。若干慢心しているのでしょうか。あとでしっかり怒らないといけませんね。
         まあ、力を温存しているようですし…なんだかんだ言ってリンクは負けませんから」

ピーチ「ふーん…なんだか詰まらない反応ですこと。

    うーん、今日はもう参戦するつもりもないし、いつまでもモニターを眺めていないで城下町に繰り出そうかしら。
    その方が面白そうね。ゼルダも一緒に、どうかしら。懇切丁寧に案内させてもらうけど」

ゼルダ「…いえ。私は、ロゼッタの監視…いえお守りをしに向かいます。
    ちょっと目を離すと、また無理な特訓でもしかねませんから…本当に呆れますが」グッ

ピーチ「そんな、握りこぶしを作ってまで力説しなくても。お守りって、酷い言い草ね――」

18: Mii 2019/03/31(日) 11:36:23 ID:iLEqj1bw
キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…ハァ。今の私は『ピーチ選手』でしょう?
     全く、まだ完全には区別できていないのね。
    それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

キノピオ「そ、それが…」オズオズ

ピーチ「じれったいわね、別に敵が現れたとかでもないんでしょ?どうしたのよー?」フフフ

ゼルダ「ピーチ、子供みたいにストローでドリンクをかき混ぜないでください」

ピーチ「敵じゃなければ、多少のアクシデントはスパイスよ、暇つぶしになるのよー。
    『3強の3人が星を潰し合わないよう、中盤までは2人以上が対戦しないように試合を組む』っていうシード制度があるから、
    ゼルダの言う通り…マリオ、クッパ、リンクの試合はある程度は消化試合になることは否めないわー」

ゼルダ「そ、それは流石に他の選手に失礼なのでは…」

19: Mii 2019/03/31(日) 11:39:41 ID:iLEqj1bw
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…
      対戦がなくて城下を散策中のマリオさんに、ピッチピチのスーツを着たグラマラスな金髪の女性が激しく迫って…
      しまいにはマリオさんの脚に抱き着いてまで泣きじゃくって、修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!
      …あれ?姫様がいない?あれ?」

ゼルダ「な、なに?ギャルが抱き着いてきた!?一体どういうことですか!」

20: Mii 2019/03/31(日) 11:42:54 ID:iLEqj1bw
~キノコ城 城下~



ヒソヒソ… ヒソヒソ…



ゼロスーツサムス(以下サムス)
「グズッ……ヒック…どうして!どうしてだっ!マリオ、私を裏切ったのか!?
 お前の、こと、信じてた、のに……酷い、酷いよう…こんなことって……!」ポロポロ

マリオ「まままま待て、こここここは餅付こう餅付こう。胸が当たってる、当たってるから!?そそそ素数を数えるんだ!」

サムス「私の体くらいなら好きにしていいから、考え直してくれっ!お願いだ!」ギュウッ



マ、マサカ、ソンナコトニナッテルダナンテ…!
ウワァ、マリオッテオンナゴコロモテアソブワルイヤツダッタンダ、ゲンメツー!
オトコノカザカミニモオケナイヤツメー!

マリオ「なんか知らんが凄く悪評をばら撒かれているような気がしてならない!
   意図しない  チラ構図フォトで難癖つけられた昔のスマブラを思い出すぞっ!?
   くっ、よりにもよって周りに仲裁できる者が誰もいないだなんて!
   ええい、スマブラはCERO:Aなんだぞっ!」

21: Mii 2019/03/31(日) 11:45:40 ID:iLEqj1bw
マリオ「…あっ!」



ピーチ「」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

マリオ「ピーチ、ちょうどいい所に!ちょっとサムスを落ち着かせて、
    即刻、周囲の誤解を解いてほしいんだけd」

ピーチ「マリオの馬鹿ァ――――――――!」SMAAAASH!!

マリオ「」ガフッ



ピーチ「マリオ、サイテー!サイッテー!こんなのってないわ…!」グズッ

マリオ「……」ガシッ

ピーチ「何よ、言い訳する――」







マリオ「……正座」ズゴゴゴゴゴゴゴ

ピーチ「……………………アッハイ」

22: Mii 2019/03/31(日) 11:52:26 ID:iLEqj1bw
野次馬「「「「「…………」」」」」





ピーチ「……あのう、マリオさん。いつまで私は城下町のど真ん中で、衆目の面前で、
    惨めに正座しなきゃならないんでしょうか」プルプル

マリオ「タイマーでセットしておいた、30分が経過するまでな」

ピーチ(完全に子供へのしつけ扱い!?)

マリオ「俺だって怒るときは怒るぞー!もちろん親友の慣れ合いの範疇ではあるけれどもー!
    なんなら、舗装された道の上じゃなくて、裏道の…小石や泥が混じる土の上でもいいんだぞ。
    確かに人の目は少なくなるかもしれんが。別に痛くはないだろうし、そっちにするか?」ゴゴゴゴゴゴゴ

ピーチ「惨めすぎるのでヤメテクダサイゴメンナサイゴメンナサイ…」ガクガクブルブル

サムス「」

23: Mii 2019/03/31(日) 11:54:15 ID:iLEqj1bw
ピーチ「で、でも、こんな情けない姿を写真に収められてばら撒かれたりしたら、キノコ王国の威厳が…」チラッ

マリオ「大丈夫だ。カメラにベシィと叩きつけられて固まった姿のピーチの写真・動画が散々人気を博してる時点で
    今更こんな写真で威厳は落ちないって」ハハハ

ピーチ「…………………………………………
    それは、私の築いてきた信頼と実績を自画自賛すべきなのかしら。
    改めて、そんな間抜けな写真の流通を鬼の形相で食い止めるべきなのかしら。
    まあ…ともかく……それもそうね!」アッケラカーン

マリオ「皆さんっ!偉大かつ寛大な、王国民に近い目線で物事を見ることのできるピーチ姫に、
    改めて大きな拍手をお願い致します!」

野次馬「「「「「ウオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!」」」」」パチパチパチパチ

サムス「」

24: Mii 2019/03/31(日) 11:55:57 ID:iLEqj1bw
マリオ「これにて一件落着…は、まだしてなかったか…」

ピーチ「…!そ、そうよマリオ!どうしてあんなことになってたのよ!?
    さあさあ、ようやく落ち着いたサムスさん?
    正座しながら尋ねるけど、一体マリオが何をしたの!
    事と次第によっちゃ、やっぱりマリオをとっちめて…!!」

マリオ「だからー!俺の関与するところじゃないんだって!」

ピーチ「マリオは黙ってて!…さあ、サムス、答えなさい!!」

サムス「――あ、ああ……グズッ、また、涙が…。
    マリオが、私を酷く、傷付けたんだ…!癒えようのない心の傷を与えたんだ…!
    ピーチも、聞いてくれ…!」

ピーチ「もちろんよ……!」





サムス「実は――」

ピーチ「…………」ゴクリ

25: Mii 2019/03/31(日) 11:57:50 ID:iLEqj1bw










サムス「間もなく世に繰り出される『マリオメーカー』のコース設計パネルに――
     坂道が搭載されていないというんだ!最低、最悪な……話、だろう!?」ポロポロ








ピーチ「……………………」

ピーチ「……え?もう一回お願いできる?」

マリオ「だから…俺、関係ないって言ったのに…」

26: Mii 2019/03/31(日) 12:01:18 ID:iLEqj1bw
サムス「だ・か・ら!高低差のある平地と平地を滑らかにつなぐ地形が…実装されていないんだ!
     シャインスパークのチャージエネルギーを維持できない、だなんて…!

     マリオメーカーが企画開始されたとき、私がどれだけ心躍らせ胸を膨らませたか分かるか!?

     何千、何万、いや何億もの…数えるのも馬鹿らしくなるほど数多の駆け抜けコースが世に産声を上げ、
     その中を縦横無尽に駆け回り、最高に恍惚とした表情と晴れやかな心意気でゴールを目指す私…
     
     というのを何年も何年も思い描いていたんだぞ!その…あまり出番に恵まれなかったというのも、あるし…。



    それが、ふらりと城下町に降りてみれば、なんだ!
    どこぞのスタッフたちが昼間から酔っぱらいながら、
    『坂道とか作ったら、どうせすり抜けや滑りでバグの温床になるだけっしょー!』とか言いながら
    ケラケラ居酒屋で飲んだくれているじゃないか!

    私は…私はぁ!!一気に、地獄へと、叩き落とされたんだっ!!
    マリオ!みんながみんな、4~5マスあれば十分すぎるだけのダッシュができるわけじゃないんだぞ!」

ピーチ「ええええ……」

27: Mii 2019/03/31(日) 12:03:57 ID:iLEqj1bw
マリオ「しつこいように繰り返すが、俺は全然企画に関与してないってば!」

サムス「そんなのは嘘だ、嘘に決まってる!
    …いや、仮にそうだとしたら…今すぐ開発室に殴り込んで――
    延期してでも実装させるよう直談判しに行け!
    マリオなら…マリオの影響力があれば、無碍にはできないはずだ!」

マリオ「…ったく、弱ったな。他に誰か、味方になってサムスをなだめてくれるやつはいないのか…
    おっ!あれは!」







ソニック「走るー走るー俺―たーちー!流れーる汗もそのまーまーにー!」

ネス「テレポ―テーショーン!今、時を飛ぶー!」

ピカチュウ「ピッカチュ ピッカチュ ピッカッチュウ!」ピカァ



マリオ「くそぅ碌な奴がいない!」

28: Mii 2019/03/31(日) 12:28:43 ID:iLEqj1bw
マリオ「と、とにかく今回は諦めてくれ!
    次に機会が有ったら、一応坂道について進言しておくから」

サムス「次とはいつだ!10年後か、20年後か!?
     私でも予想が付くぞ、こういった人気間違いなしのクリエイト物は
     互換性とか販売展開とかの関係でそうそう更新企画が出ないだろうってことくらい!」

マリオ「…5年以内になんとかしてやるから!!なっ!なっ!?」

サムス「…………本当だろうな!?
     もしも嘘だったら…ヨースター島じゅうの三角コーナーを
     奪い尽くして持って帰ってやるからな!?ふんっ!」

マリオ「三角コーナーって何さ…あ、あの赤い三角ブロックか。
    あれがないと大多数の冒険者がつまずくからやめてくれ。
    …じゃあ、周囲の誤解も解けたし、俺は散策続けるな?」

サムス「………………………………ああ、そうか。
     呼び止めてしまって悪かったな。

     あ、だったら。これも何かの縁だ、私を案内してくれな――」

29: Mii 2019/03/31(日) 12:32:41 ID:iLEqj1bw
ガシィッ!



ピーチ「サムスちゃんは、ちょーっと私が預かるから。マリオ、また後でねー。散策楽しんできて」

サムス「え、何を言っているのだピーチひm」ビクゥッ!

サムス「」



マリオ「…あ、30分経ってたか、わかった。じゃあ、2人仲良くなー」テクテク

ピーチ「ええ、仲良く『話し合ってくる』から、心配しないでー!
    …さぁてと、適当なフィールドで非公式戦、やりましょうー」

サムス「…せめて、スーツを着させてくれないか?」ガクブル

ピーチ「それだと衝撃が吸収されちゃうじゃない、ふふふ」

サムス「ああああああぁぁぁぁ……」ズルズルズルズル



マリオ「平和が戻ってよかったよかった」

33: Mii 2019/05/05(日) 20:56:44 ID:7C2DmCl6
~数日後~

マスターハンド「それでは、今日も元気よく――試合開始のカウントダウンですっ!」



マリオVSルカリオVSネスVSパルテナ



ワー!ワー!
マリオ、ガンバレー!

マリオ「どもどもー!」ブンブン



パルテナ「こ、今回の大会…マ、マリオと相対するのはこれが初めてですね…。
      もともと、初出場の私が上の立場になれる相手などそうはいませんが…
      とりわけこの方は…強者のオーラ、やはり隠し切れていません…!」グッ

マリオ「うん?パルテナ、そんなに固くならなくてもいいぞ。悔いのないよう、精一杯楽しもうな!
    ピットが散々自慢していた女神の実力、俺も目の当たりにするのが楽しみだ!」

パルテナ「は、はいっ!よろしくお願い致しますっ!」ビシッ!



ピット(観客席)「パルテナ様が気おくれしているだなんて…!
          い、いや!弱気になっちゃ駄目です!頑張って下さーい!」

34: Mii 2019/05/05(日) 20:58:10 ID:7C2DmCl6
観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!



実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」



ダダダダッ!

ルカリオ「ハァッ!セイッ!」

ルカリオ(ダメージを受けての高火力波導弾がセオリー…。だがマリオが相手では、
     最後の最後で迂闊に繰り出してもマントで跳ね返されてこちらが大火傷するのみ。

     神速特攻、シールドを不定期に挟みつつ……
     ダメージ蓄積量に囚われず、最初から臨機応変に…動く!)ババッ

35: Mii 2019/05/05(日) 21:00:03 ID:7C2DmCl6
マリオ「なるほど、初っ端から動いてくるか…!受けて立つ!手数なら早々負けん!」



シュッ!シュッ!ゴウッ!…シュバババッ!



ルカリオ(…さんざん知り得てきたことだが、とにかく発生が疾い!
     ジャブからキックに至るまでの弱攻撃連携、程よく浮かせるアッパーに投げ!
     くっ、威力を主張しようとしても対応力で追いつかん!
     …いや、そもそもレベル差から威力でも負けている気がするぞ!)



ルカリオ「…一旦切り返して――ハアァァ……!」チャージ!



マリオ(む…ワンステップ引いてからの波導弾!
    跳ね返されることは百も承知か、それともブラフか?
    見極めたいとこだが、俺は三者全員から狙われる立場だし、なっ!
    期待値の高い行動を取りつつ、万が一も強引に押し通す…要するにいつも通り!)

36: Mii 2019/05/05(日) 21:02:12 ID:7C2DmCl6
ルカリオ「フンッ!」バッ

マスターハンド「ルカリオ選手、作り掛けの波導弾を地面に叩きつけた!」

ドカーン!パラパラパラ……!

マリオ「まさかの目くらましかよ!」

ルカリオ(神速、フルスピード!…からの――)シュタタタ

ルカリオ「八頸!……くっ!?」ガキンッ!

マリオ「よし、読み通り!ちょっと背中側が忙しいから待っててくれな!
    ――振り向きざまに、ファイアっ!」クルリ

ネス「PKファイアー!…あちゃあ、相殺されたかぁ!
   なら…PKサンダー!避けられるものならやってみてよ!」

マリオ「いいだろう…ほらほらどうした、追尾が甘いぞ!」ヒョイ ヒョイ

実況「いきなりの大乱戦となりました!まさに波乱の幕開けです!」

ネス「やるなあ!でも、まだまだぁ!」

ルカリオ(ジャストタイミングのみシールドで回避するとは…!
      おまけに、既に後ろを向いて対応しているだと、恐れ入る…!
      こうなっては、崖捕まり時に狙うくらいしか確実とならないか!

      しかし、目が逸れた今はチャンス!隙を見計らって神速で…!)グルル

37: Mii 2019/05/05(日) 21:03:50 ID:7C2DmCl6
ネス「いっくよー!PKフラッシュを出し……!」ボッ

マリオ「何度でも相殺してやるぞ――」



ネス「PKサンダーを自分の脇腹に最高速度で当てる!」ドゴッ

マリオ「…え、崖復帰?」



ネス「ぐふっ…そのまま吹っ飛びながら、落ちてくるPKフラッシュの光に…
   勢いそのままバット…スゥウィングゥ!!」カッキーン!

マリオ「強引だなぁ!?うわっと!」

パルテナ「リンチ状態となり心苦しいですが…!背に腹は、代えられません!
     そのPKフラッシュ、利用させてもらいます…反射板っ!!」ドンッ!

実況「おっと!攻撃を返したぁ!これは集中攻撃だ!」

マリオ「やっぱり実質1対3かぁ…チッ、中々に厄介な…!」





ルカリオ「――っ!好機!」ダッ

38: Mii 2019/05/05(日) 21:06:31 ID:7C2DmCl6
マリオ「お、このタイミングで――!」

ルカリオ「上に浮かせて…連続で蹴り上げるっ!オラァ!デエィ!」ドガガガガッ!
   
実況「連続して攻撃を繰り出します!」

マリオ「ぐふっ!いてっ!やったなぁー!」

ルカリオ(…いや、声の割にほとんど効いているように見えない!)

実況「このままでは耐えきれなくなります!このピンチを切り抜けることができるのか!」



マリオ「…あったり前だ!」ガシッ

ルカリオ「ま、まさか最初から脚を狙って…!?離せっ!」

マリオ「うおおおおおおおっ!ジャイアント――スイングゥ!」ブンッ ブンッ ブンッ

ルカリオ「ぐわあっ!」ブワッ

ネス「あ」

パルテナ「こ、こっちに!?きゃあっ!!」ドガッ! ゴリゴリゴリゴリ!

ネス「…うわ、フィールド端まで飛んでったなぁ、すっごい威力の投げ」

39: Mii 2019/05/05(日) 21:10:00 ID:7C2DmCl6
ルカリオ「…くっ、やはり慢心してしまったということか…引き際を誤ったな…ん?」

ピット「う、うわあああ!?大丈夫ですか、パルテナ様ぁ――!!」

パルテナ「――――っ!!」ガクッ

パルテナ「…お腹に……鋼の、棘が、刺さったんです、けどぉ…!
      許す、まじ、ルカリオ…!」ドクドク

ルカリオ「私のせいか!?」



マリオ「余所見してて、いいのかなっと!」キュイィィイン――! バシュッ!

パルテナ「ポ、ポンプ水流…!もう一回、反射板で…!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――!!
ピキピキピキピキィ――――ッ!!

パルテナ「!?…………え、押し返し、切れない!?
なんですかこの濁流…いえ、奔流は!こんなことって――!?」ズズズズズ・・・

ネス「レベル差の暴力で反射板がキャパシティオーバーしてるんだ!
   ただでさえ押し出し能力特化の必殺技なのに、勢いで対抗しても無駄だよ!」

40: Mii 2019/05/05(日) 21:12:30 ID:7C2DmCl6
パリイィン!!



パルテナ「反射板が――時間切れすら許されず、割れ、た!?――ぶふっ!?」

ピット「パルテナ様ぁー!!…
    ああ、どうにかこうにか崖に捕まることができましたか!」

パルテナ「ぐぐぐ…なんて、パワー」ブラーン

パルテナ(棄権したい、ところですが。せっかくピットが見ていることですし、
      無様なままでも頑張っているところを…見せたい、というのは…やっぱりありますね!)

パルテナ「よいしょっと」

ルカリオ「えっと…棘、大丈夫だったか?あながち軽い傷でもなさそうだな、一応謝っておく。
      ――すまない」

パルテナ「…冗談、ですよ。さあ、まだまだ参りますよ!
      あの男はやはり強い、か弱い私と言えど、味方を失うのは勿体ないでしょう?」

ネス「…だね!」

パルテナ「んもう、ちょっとは否定してくださいよ」

実況「何とか持ちこたえた!さあ、鍔迫り合いが続きます!
   何処まで反撃することができるのでしょうか!」

41: Mii 2019/05/05(日) 21:16:57 ID:7C2DmCl6
マリオ「…そうか、まだ鍔迫り合いと思われる程度の戦いだったか――
    じゃあ、そろそろ加速するとするか。
    ――さあ、着いて来られるかな?」

ルカリオ「――!フッ、やはり恐ろしい男だ…来るぞっ!」ゾクッ

ネス「――な、なにおー!」ゾクッ

パルテナ「――っ!この位でたじろいでいてどうするのですか、私…!」タジッ





マリオ「いっせーのー……でっ!!」シュンッ!





ピーチ(控室)「あらやだ、マリオったら大人げない」

ヒルダ(控室)「…わあ!?」

42: Mii 2019/05/05(日) 21:20:04 ID:7C2DmCl6
パルテナ「…………!?き、消えた!?」

ルカリオ「こ、こら!目を切るんじゃない!超スピードで攪乱しているだけだ!
      特にパルテナは、死角を掻い潜られたら終わりだぞ!」

パルテナ「そのようなことを言われましても…これがかの有名な、ヤムチャ視点とやらですか!
      ど、どちらですか一体!?」キョロキョロ

ネス「だ、大丈夫!これでもまだ、ソニックよりはよっぽど遅い!」

パルテナ「全然安心できないのです、が――」



トンッ――



パルテナ(思わず、息を飲んでしまいました)

パルテナ「…………あらあら、これは完敗ですね…呆れてしまえるほどに」

マリオ「この状況でそのセリフを吐けるのは大物だと思うぞ、もちろんいい意味でさ。
    …そんなわけで後ろを取らせてもらったぞ、ありがとな」

パルテナ(……背中に拳がトン、と当てられる感覚。…体が、ぶれる)    

パルテナ「ふふふ…なぐさ、めに、も…なりま、せん、ね――
     こんな、ことなら…せめ、て…ロゼッタと被って、でも…
     テレポートを、もっと使っておくべき、でし、た――」ガクッ

43: Mii 2019/05/05(日) 21:22:21 ID:7C2DmCl6
実況「おーっと!ニ撃目には耐えられなかった!ここでダウンです!」

マスターハンド「マリオ選手、気を失い地に伏せたパルテナ選手を優しく担いでステージ外に放り落としました!
          これでパルテナ選手は苦しまずにバーストできることでしょう!
          ある意味ではド外道の行為にも映りますが!」

ピット「こらあマリオ!パルテナ様に酷いことするなー!怒ったぞ、ほんとに!!」

マリオ「ルール上仕方ないだろうがー!じゃあ次の対戦の時は仇討ちに真っ先にかかって来いよー!
    約束だぞー!俺は逃げずに受けて立つからさー!」



ピット「…………………怒ってないからマリオさんは気にしないでー!
    この先も頑張ってくださーい!」

マリオ「」



ネス「…………うん。武者震いだ、そういうことにしておこうっと」

ルカリオ「…ええい、私は1対1でも怖気ずに突貫する!不屈の心、しかと見よ!」

マリオ「そうこなくっちゃあ!伊達や酔狂で映画の看板担いでないだろー!」カマエ

44: Mii 2019/05/05(日) 21:24:36 ID:7C2DmCl6
ピーチ「相変わらずマリオは強いわね…私も、大会中1勝くらいは…したい、なあ」

ヒルダ「そんなことが可能なのでしょうか…」



キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…ハァ。『ピーチ選手』って何回言ったらわかるの?
    全く、アイランドツアーの時から後退しちゃったんじゃない?
    それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

キノピオ「そ、それが…」オズオズ

ピーチ「まどろっこしいわね、今度は何よ?
    ふふ、マリオなら戦闘真っ最中なんだけど?

    ゼルダはロゼッタの監視役とかで全然姿を見せないし、
    ヒルダを無理やり捕まえて観戦するくらいで暇してたの。
    どうしたのよー?」フフフ

ヒルダ「自覚しているなら私の自由時間を奪わないで下さいよ…
    まあ、結果的に楽しめてはいますから感謝していますけれど…」

45: Mii 2019/05/05(日) 21:26:52 ID:7C2DmCl6
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…対戦がなくて城下町を散策中のクッパが、持ち家…じゃなくて持ち城のことで
      デデデ大王と自慢大会を始めて…クッパ7人衆やクッパJr.やカービィがあれやこれやと煽る中、
      修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!」

ピーチ「なーんだ、城自慢対決くらい平和なものじゃないのー。
    ちょっとした突発トークイベントとして、周囲の人たちも喜んでくれるでしょ――」

46: Mii 2019/05/05(日) 21:29:04 ID:7C2DmCl6
キノピオ「その…ワリオまで混ざって、大通りを陣取って、



     軍団勢力の美しい配置の仕方だとか、
  
     正しい大砲の配列の仕方とか、

     さらにはいきなりボーリング工事を行ってのマグマの掘り方とかを
 


     実演して見せているみたいですけど…」

ピーチ「」ガシャーン

ヒルダ「」

47: Mii 2019/05/05(日) 21:32:34 ID:7C2DmCl6
~大通り~

デデデ「ワドルディ部隊っ!高速ゴルドーを設置、設置、設置ぃ!
     更にっ!超巨大扇風機で強風を吹かせる!

    ほれ、そして――こんな感じにMトマトを置いておく!
    ハラハラさせつつ突破できなさそうでできそうで、やっぱりできない!
    この絶妙な難易度構成を見てみるぞい!」ズバババババ

ワリオ「バッカだなお前!まだまだ全然、イタズラ度ってもんが足りてないぜ!
    そんな超強力アイテムを置いておくなら、俺だったら――
    前後50メートルずつは、ゲン・コッツとドン・ガバメンの嵐だな。
    これ以上は負からねぇ!いけっ、タタンガ!仕掛けてこいや!
    オレは適当にマグマ掘っといてやるよ!」ズガガガガガッ!!

クッパ「いや、これでは鬼すぎるし、驚きが足らん。ゆけっ、パタパタ部隊!
    ワガハイの指示通りに設置するのだ!
    ――どうだ、この一糸乱れぬ的確で華麗な動き!
    コインで誘導線を描いておき、一方で忘れたころに孔明ブロックを仕掛けておいてだな…!」

観光客「うわあ、マリオメーカー発売間近なこともあるし、アトラクションの制作実演現場かあ」

観光客「アトラクションにしちゃあ本格的だなあ…あれ?
    ……このマグマ、もしかして――ほほほ本物ぉ!?」ツルッ

カービィ「ハーイ!(コースを上から眺めたい方は集まってくださーい!
     食べ物1つくれるだけで、優雅な空中旅行を提供しまーす!)」ガシッ

プリン「ぷりり!(こっちは自慢の曲を1曲聞いてくれるだけで
    空を飛んであげちゃいまーす!)」フンス

48: Mii 2019/05/05(日) 21:35:39 ID:7C2DmCl6
ピーチ「何やってんのよアンタたちぃーーーーーーっ!!」ズドドドドドドド

デデデ「あ、ピーチ。……え、だって看板に書かれた禁止行為に
    『キャッチ行為』『許可ない露店販売』『違法売買』『ボール遊び』
    『危険物の持ち込み・設置』『歩きタバコ・ゴミのポイ捨て』
    『その他、通行人や住民に対する迷惑行為』
    まではあるが、『ステージ作成』が禁止とは書かれてないぞい?」

ワリオ「『マグマ掘削』とも書かれていないな」ハナホジー

クッパ「通行人の安全はしっかり見張っているし、驚び喜んで貰っているし、
    『迷惑行為』ってわけでもないのだ」

ピーチ「喜んでる人ももしかしたらいるかもだけど、大多数の人は戸惑ってるでしょうが!
    …なにより一般店舗や王国公共物に対する器物破損行為よおぉぉぉぉ――!!」

デデデ「…おお!すっかり忘れていたぞい!ワシ、この王国の大王じゃなかった!」ポンッ

ワリオ「せっかく地下資源(マグマ)を掘り当ててやったってのによー。
     いくら俺様の怪力でも、数万メートルとかを一気に掘り進めるのって大変なんだぞー?」ブツブツ

クッパ「…………………………………………
    よしカメック、急ぎマグマを地底に引っ込めさせるのだ!
    トゲノコ部隊っ!掘り起こされた街道を即刻復旧させろ!
    パタクリボー部隊は、設置物を速やかに除去して回るのだ!」テキパキ

ピーチ「…………デデデとワリオ、正座」

49: Mii 2019/05/05(日) 21:38:45 ID:7C2DmCl6
ヒルダ「まったく、人を連れ出しておいて勝手に飛び出していくんですから…
    ピーチ姫はどちらでしょう。…見つけないと、ですね」タッタッタッ



「フンフンフーン!ようやく、僕もキノコ王国に来ることができました!
いやぁ、数多の敵相手に無双するなんて冷や汗経験、もうこりごりですよ…。
あ、でも色々と戦利品も手に入れられたからホクホクなのは確かですね!
ロウラルに戻ってから活かすことができたら…ヒルダ姫も喜ばれるだろうなあ。

さって、ヒルダ姫はどこかなあ……あ!言ったそばからはっけーん!」ダダダッ



ラヴィオ「大変遅くなりましたー!!ラヴィオですー!」ダダダッ



ヒルダ「ピーチ姫はどこでしょうかね…」スイーッ



ラヴィオ「」ピシィ

ラヴィオ「」

ラヴィオ「手を振って声を上げながら駆け寄ろうとしてたのに――
     気にも留められず無視して駆けて行かれた、だと…!?
     あ、あれ?もしかして、従者でありながら姫を一人きりにさせたこと……
     怒ってますかあ!?あわわわわわ……!?」

50: Mii 2019/05/05(日) 21:41:39 ID:7C2DmCl6
~喫茶店~

アイク「……というわけで、こいつがルフレだ、宜しく頼む。
    才能はあるはずだから、ビシバシ鍛えてやってくれないか!」ポンッ

ルフレ「よ、よ、よろしくおねがいいたしまふっ!!
    ぼ、僕なんかがリンク様の手ほどき受けるなんて、お、恐れ多いのですがっ!」ガチガチ

マルス「そんなに緊張しなくていいって。リンクは気さくな奴だからね。
     ……リンク、よろしく頼めるかな?できれば大会期間中……
     いや、よかったら期間を過ぎてからもいろいろと面倒を見てやってほしい」

リンク「へえ…なになに、肩書きとしては謎多き軍師、かあ。
    どっちかというと頭脳派なのかな、微妙にお門違いな感じもするんだけど…」

アイク「まあそう言わないでくれ。なんだかんだで剣を振るう機会もあるみたいだし。
    …それにお前に取っちゃ、剣は攻撃手段の一つでしかないんだろ?」

リンク「…う、揚げ足を取るのは良くないと思うぞ。
    しかし、今回の大会…FE勢の新規参戦者はDLC除いて2人と聞いてたんだが…」

51: Mii 2019/05/05(日) 21:46:56 ID:7C2DmCl6
ルフレ「は、はいっ!リンク様、申し上げます!」

リンク「リンク様、は止めてくれ。リンクでいいリンクで。せめてさん付けで留めてくれ。
    話し方も特に気を使わなくていいから、うん」

ルフレ「う、うう…じ、実はですね、リンク、さん。
    もともと自警団長のクロムが参戦する予定だったのですが…」

リンク「…が?」

ルフレ「出発前日に、国境付近でちょっと…戦闘がありまして。

    『ルフレ、お前はいろいろと戦術を吸収して帰ってきて、俺たちを驚かせてくれ!
    だが…悪いが、2人とも行くって話は却下だ!団の戦力が下がりすぎる!
    俺は団長として、やるべきことをやることに決めた!』

    …とキッパリ言われてしまったもので」

リンク「うわあ…そりゃあ残念だな…」

ルフレ「……でも、僕としては、皆を纏めるカリスマに溢れたクロムが頼もしくて
    非常に嬉しくもありましたけれどね。自慢の団長ですよ、はい!
 
    事前対応も非常に迅速なものであったために、任天堂さんからも
    ほとんどお咎めなしで済みました!次回はきっと出られます!」グッ

52: Mii 2019/05/05(日) 21:49:23 ID:7C2DmCl6
リンク「そっか。クロムって奴も、ここまで信頼されて幸せ者だなあ」

ルフレ「当然ですよ!」ムフー!

リンク(ニコニコ)

ルフレ「…はっ!?す、すいません!なんだか僕だけ、自分の世界に入ってしまいまして!」

リンク「いやいや、緊張も解けたようでよかったよ。よし、じゃあ…
    どんな特訓内容をこれからやっていくか、本題に移ろうか」

ルフレ「……………………ま、また緊張してきました…わわわわ…」

リンク「えー、面白い奴だなー」アハハ

アイク「…………」

マルス「しかし…リンクは逆に、少しは緊張感を持つべきじゃないか?
    実力があるのは認めるけど…この大会のここまでのリンクの戦績…
    微妙に取りこぼしがあるんだが。

    ほら…一昨日とか、2位に甘んじる試合が3戦もあったし、
    …………1位のときの試合もそれほどポイントを得られていない」ペラッ

53: Mii 2019/05/05(日) 21:52:37 ID:7C2DmCl6
リンク「どれどれ?……あ、ほんとだ。確かに勿体ないことになってるな。
    まあでも、当然他の人から集中攻撃される立場にあるし、こんなもんだろ」

マルス「……うん、どうにも釈然としない態度だね。油断とかしてるんじゃないのか?
    確実にポイントを稼ぎに来てるマリオやクッパに負けかねないよ?
    …いや、大会ももう、2週間が過ぎた。このままのペースでいくと、確実に負ける」

リンク「え、そうかな?…あんまり気にしてなかった。
    でも、お祭りなのは確かだし、楽しむこと優先でも悪くはないだろ?
    その中で優勝できるならなお良しだし、むざむざ負けてやる気もないぞ?」

マルス「…むっ。失礼な言い方かもしれないが、今のリンクには――
    少なからず慢心が見受けられるな…そんなことでは、足元を掬われるぞ?」

リンク「本当に失礼だな……まあ、怒りはしないよ。素直に受け止めるさ。
    ちょいと気合いを引き締めなおすとしますか!
    じゃあ、今度こそルフレの修行内容に移るとするぞ」

ルフレ「は、はいっ!え、ええっと、僕の希望としましては、魔法と剣技をバランスよく教えてもらいつつ、
     基礎体力の向上、スキル応用についても色々と学習したいのですが…!」

リンク「よし、じゃあ剣の素振りと魔法行使の日課をとりあえずこれだけ与えるから、毎日こなすことを前提としたうえで、
    ざっと2時間くらいの模擬戦闘を午前と午後に俺と行ってだな…」サラサラ

アイク「…………」ジトー

マルス(受け止めてる…っていうか、聞き流しているような…やれやれ。
    まあ、この明るさは今のリンクの長所でもあるのは分かってるけどね)

54: Mii 2019/05/05(日) 21:55:55 ID:7C2DmCl6
ルフレ「ふううううううううぅぅぅ…………つ、疲れたー…………」



まさか、伝説といってもいいくらいの存在のリンクさんに、手ほどきを受けることになるなんて。
寝耳に水だ、心の準備をさせてほしかったよ…。すでに精神疲労がやばいことになっている。

クロムが欠席のせいで、世代代表としての負担がぜーんぶ僕に降りかかってきているのは
やっぱり色々ときつい気がする。クロムの決断は間違ってなんかいない、とは分かっているけど。

ルフレ「ヘラヘラしすぎだ、とマルスさんもアイクさんも若干リンクさんに呆れていたけれど、それでも…
    僕の実力をちょっと確かめただけで、無理なく鍛えられる・なおかつ効果的なプランを、特訓計画を――
    ビシッと立てて見せるんだもんなあ…やっぱり凄いや」

軍師としてだけでも、まだまだ成長しなければならないと痛感した一日だった。
ここまでお膳立てしてもらったのだから、先輩たちに失望されないためにも、全力を尽くさなければ。

ルフレ「そ、それに、大会に参戦した以上…10戦は戦わなきゃいけないみたい、だし…はあ。
    やっぱり気が重いなあ……

    こういう時こそ――『あの力』、ちょっとは縋りたく思えてしまう…。
    ――いやいやいや!何、馬鹿なこと考えているんだ、僕!?冗談じゃないぞ!?
    取り返しのつかないことになったらどうするんだよ!?
    もう使えないはずだけど!?」

55: Mii 2019/05/05(日) 21:58:23 ID:7C2DmCl6
…ふう、疲れ切ってるみたいだし、日も暮れようとしているし。
お店でも見て回って…今日は休もう。



――それにしても、ほんと、栄えてる王国だな。
――どこもかしこも、明るく元気な声が響いている。
――通行人も、商人も、皆が笑顔。どこを見やっても清潔感、熱気、活気がある。

――いつかは、僕たちの国も…こんな、平和で豊かな国にしてみたい。
――できるだろうか。…いや、するんだ。僕たちの手で!
――少しずつながら、平和の糸口は見えてきているんだから!



ルフレ「…そうは言いながら、実際、まだまだ不安因子は残ってるんだけどね。
    奮闘しているみんなのために、しっかりとお土産…買って帰ろう!
    心を込めて1人ひとり、選んでいくことにしようか。
    どこから見て回ろうかな…よし、ひねくれて路地裏に迷い込んでみるか!

    …すいません、こっちって行き止まりじゃないですよね?」

住民「大丈夫、ちゃんと通り抜けできますよ。ちょっと道が悪いかもしれませんけれど」

ルフレ「僕の国に比べればよっぽど整備された通りですよ、あはは。
    よし、腕利き職人が営むような、隠れ名店の匂いがプンプンする!行ってみよう!」

56: Mii 2019/05/05(日) 22:00:53 ID:7C2DmCl6
テクテク、トコトコ、歩みは続く。

ウインドウショッピングしながら、買い食いしながら、のんびり観光。
…ホクホク熱い、キノコのホイル焼きつまみセット、10コイン也。
こいつは買って大正解だったかもしれない。お酒があったらなお良かったかもね。

ルフレ(本当に整備されてるなあ、ちょっと土がむき出しになってる程度の物じゃないか。
    
     賭博場はあるけれど、王国運営でキノピオが係員をやっているし。
     古めかしい佇まいの武器屋には保証書付きの立派な武器が並んでいたし。
     …帰りに、ここで何か買って帰ろうかな。

     なんか、変なアイテムがまさかの1コインで売ってたから…買っちゃったよ。
     『なにがおこるかな』って…なんだろう?ま、面白そうだからいいか!

     いやあ、愉しいなあ!時間が経つのを忘れるよ!






     
     …というか、忘れてたよ!好奇心に負けてすっかり夜中だよ!?
     ついでに言っちゃうと、道に迷ったよ!?どこ、ここ!?
     早くホテルに戻らないと野宿になっちゃうんだけど!?)

57: Mii 2019/05/05(日) 22:03:38 ID:7C2DmCl6
左右をキョロキョロ、前後をキョロキョロ。
…まずいぞ、土地勘が全くないというのに夜中に迷ってしまった。
居酒屋の灯りだけが、元気に煌々と輝いている。



キノコ王国のことだから、そうそう命の危険があるとも思えないけれど…
明日から早速、リンクさんから課された特訓が待っているからな…。
寝不足で調子が出ない、なんて白状した日には、皆さんから大目玉だ。

ルフレ「こ、こうなったら!恥を忍んででも、適当に居酒屋に入って…
    中央通りまでの道順、教えてもらおう!
    軍師なのに情けないけど、背に腹は代えられないよな!」





そう思い、一番最初に目に入った暖簾に向かおうとした――ちょうど、その時。

58: Mii 2019/05/05(日) 22:06:39 ID:7C2DmCl6
ルフレ「……ん?んん?んー?」クンクン



僕は、足を止めてしまった。
――いや、止めることができて、僥倖だったというべきか。



なんだろう。…この、臭い。
闇夜のどこかから、また闇夜のどこかへと吹いていく風に乗って、
微かに感じられる、この臭いは。

店の中から漂ってくる、酒の匂いじゃない。
そのあたりからほんのり漂ってくる、泥の臭い、ごみの臭い、とかでもない。



ルフレ「――――――――――――――――っ!」



これでも、戦場を駆け回った一軍師として――。一瞬で、五感が、冴える。
――血の、臭いだ。

たまらず、僕は真剣に駆け出した。

ルフレ(どっかの馬鹿が、酒に酔って殺傷沙汰でも起こしたか!?
    変な勢力争いでも影で起こってるんじゃないだろうな!?
    たくっ、キノコ王国といえど、全部が全部順風満帆じゃ、ない、みたいだっ!!)

59: Mii 2019/05/05(日) 22:09:53 ID:7C2DmCl6
ちょっとくらいのいざこざなら、僕1人で対処してしまうしかない。
こんな僕でも、一般人よりはよほど腕っぷしが強い自信はあるからね。

人間ってのは不思議なものだ。
入り組んだ裏通りに迷い込んだまま出口を見つけることができないくせに――
袋小路が怪しくないか?と闇が深まる方へ、深まる方へ進んでいくことは
案外簡単にできたりする。

……『事故現場』を見つけることは、恐ろしくすんなりできた。



ルフレ「――――――――っ!!!!」

1人の青髪の女の人が、夥しい量の血を全身から流して、うつぶせで倒れている。
まるで、ここで斬り合いが起こっていたかのような有様だ。
意識は――ない。



……ああ、でも。虫の息ながら、辛うじて呼吸はしているみたいで、よかった!



傍に血濡れの剣が落ちているのを見たところ、剣士、だろうか。…いや、そんなことどうでもいい。
一体全体、どうしてこんなことに!そして、どうして誰も気づかなかったんだ!?

60: Mii 2019/05/05(日) 22:11:52 ID:7C2DmCl6
ルフレ「と、とりあえず病院だ!この王国の病院なら、きっとなんとかしてくれる!」



できる限り慎重にゆっくりと、彼女を背負う。
関節の可動域としてありえない方向に…黒ずんだ腕が曲がっている気がするが、今は無視。
そのあたりも、病院に全て丸投げしてしまうことにする。僕にはそれしか術がない。

背負ってわかる、その軽さ。鎧込みなのに軽すぎる。まともに食事を摂っているのだろうか。
――おかしい。この王国で、こんな事態がそうそう起こるとは思えない。



ルフレ(だああっ!だから、余計なことを考えるなよ、馬鹿軍師っ!
    今は一刻も早く走れっ!一分一秒が命取りだぞっ!!)ダダダダダッ!!



シンプルイズベストとはよく言ったもので、
愚直に一方向だけに全力疾走することで…案外簡単に迷路を抜けられた。
若干遠回りになってしまったかもしれないけれど。
流石にもう迷わない、キノコ城へ直行だ!

もう、日付が変わってしまったのだろうか。
満身創痍の女性を背負って全力疾走する僕とすれ違う人が殆どいなかったのは、
幸運なのか不幸なのか。…間違いなく不幸だな、この女性にとっては。

61: Mii 2019/05/05(日) 22:14:43 ID:7C2DmCl6
ルフレ「すいません!大会参戦者のルフレといいます!
    重傷人を発見してここまで連れてきたんです、開けてください!!」ドン ドン ドン!

警備の人が僕の選手カードを…そして、背負った女性の具合を確認して、
慌ただしくどこかに連絡をしているようだ。…頼む、はやく回復してあげてくれ…!



スピーカーから、途端に女性の澄んだ声。



ピーチ『ルフレね!オッケー、おおよその状況を把握したわ、そのままその人を背負って救護室まで入ってきてくれる!?
     私もすぐに向かうから!怪我人の護送、感謝するわ!』

ルフレ「うわっ、ピーチ姫に直通連絡か、凄いなあ…でも本当にありがたいです!
    そ、それで、ええっと、救護室ってどこですか!?」

ピーチ『……ああもう!説明する時間も惜しい!じゃあ、門を入ったところで待機!
    私が全力でそっちに駆け付けた方がきっと早いっ!また後でっ!』プツッ



ルフレ「…………えっ」

62: Mii 2019/05/05(日) 22:16:57 ID:7C2DmCl6
~30秒後~

ピーチ「お待たせぇーーーーっ!」ドッズゥン!

ルフレ「は、はやっ!?どこから飛び降りてきたんですか!!」

ピーチ「城の上を適当に伝って…ま、そんなとこよ。私がまだ起きていてよかったわね、
    もしも寝ていたら到着が1分は遅れていたわ」



ニヤリと笑うピーチ姫だったが、たちまち顔を引き締めて見せる。



ピーチ「酷い怪我ね…!でも……うん、特異な状態異常にはなっていないし、
    私が来たからにはもう大丈夫!
    
    1UPキノコ、救護室にしかなかったから…魔法で回復させるわよっ!
    その人には悪いけど、地べたにちょっと寝かせてちょうだい!」

ルフレ「わ、わ、わかりました!はい…どうか、お願いします!」

ピーチ「それええええええええええっ!!」パアアアアアアアアア!!




ルフレ(すごい…これが、ピーチ姫の回復魔法か…!)

63: Mii 2019/05/05(日) 22:20:01 ID:7C2DmCl6
「…………………………………………っ!」パチッ

ピーチ「…よし!これで、もう心配はないわ。
    ねえ貴方、どこかまだ痛むところがあったら教えて頂戴ね」



――その女性は、ゆっくり、ゆっくりと目を開けていき、ボーッとした後…
――たちどころに目を見開いて、上体を起こした。
――見かけこそ全身が血で染まっているものの、今の魔法で血はとっくに止まったらしく。
――痛みだとか、動作の支障だとかもないらしい。本当にすごい回復魔法だ!

僕も一瞬で緊張が解けてしまって…つい、ヘナヘナと尻餅をついて座り込んでしまった。
一気に汗が湧き出してくる。



――固まっていた女性が、次の瞬間にまず、やったことは。



周囲の確認、状況の確認……ではなく。
身体に異常がないかの確認……でもなく。
鞘の方向に、腕をやり――何も掴めないことを知り、腕を止め蒼白になること、だった。

64: Mii 2019/05/05(日) 22:23:37 ID:7C2DmCl6
ピーチ「あれ?どうしたの――」

ピーチ姫の問い掛けに反射的に飛びのき、警戒心全開で戦闘の構えをとる。
…あれ?なんだか、ちっとも穏やかじゃないぞ?



「――――――――どこに」

ピーチ「え?なんて?」

「私の剣を……何処にやったァ――――っ!!!」

なんだか知らないが、ピーチ姫が自分の剣を奪った悪者と認識しているらしい!
無防備なピーチ姫の懐に、颯爽と拳を叩きこむっ!





ピーチ「てい」バシィッ



……こと叶わず、かわしてからのビンタで空高く吹き飛ばされて地面に叩き付けられた。

ルフレ「わー、人ってビンタで空を飛べるんですね」トオイメ

ピーチ「かんっぜんに剣士一本槍の崩れ体術って感じね、熟練度が低すぎるわ」ハァ

65: Mii 2019/05/05(日) 22:26:46 ID:7C2DmCl6
ルフレ「回復した傍から大ダメージを受けちゃってるよ…容赦ないですね」

ピーチ「事情は分からないけれど、攻撃してくる方が悪いわ」

ルフレ「まあ、それはそうかもしれないですけど…キノコ王国のお姫様、恐ろしや……!
    えーっと、おーい?君、大丈夫?生きてる……よね?これで即死とかしたら…僕泣いちゃうぞ?」



女性は、強かに打ち付けた体を押さえて鋭い眼光でよろよろと立ち上がり…
今更ながら、僕の顔を見やって…………またもや目を見開いて固まった。
あ、そういや、向かい合うのは初めてだったかな。顔にも結構な傷があって…痛々しい。
でも、固まられるのも困るんだけど。そんなに変な顔かなあ、僕の顔。傷付きます。





「――――ル…………ルフレ、さんっ!?」

ルフレ「!?」





彼女は――僕のことを、知っている!?どうして!?

66: Mii 2019/05/05(日) 22:29:04 ID:7C2DmCl6
……………いや、待て。

確かに、彼女の防具……なんだか、似た意匠を見た覚えがあるぞ。



ルフレ(まさか…僕と同じ世界の、大陸の…戦士…なのか?)



彼女は厳しい表情から……一転して泣き顔になって、僕のところに駆け寄ってきた。
ピーチ姫のことなど目もくれないで、僕の右手を両手でしっかり握りしめ、小さく笑った。

…不穏な空気は去ったと言えど、蚊帳の外に置かれたピーチ姫が不満そうにしています。
……なんだか後で僕がとばっちりを受けそうなので、だれか何とかしてほしい。



ルフレ「……あー、すまない。傍に血濡れの剣が転がっていたのには気付いていたんだけど、
    一刻を争う状況だったんで…とりあえず剣はその場に放置して、此処まで担いできたんだ。
    何だったら、すぐに拾ってくるよ」

「……あ、いえ!在処が分かっているということでしたら、別に急ぐことはありません!
 ルフレさんの手を煩わせずとも、私がしっかりこの手で回収しに行きます!」

67: Mii 2019/05/05(日) 22:35:29 ID:7C2DmCl6
ルフレ「あー、それと。勘違いしていたんだと思うけれど。
     今、攻撃をしようとして反撃されたお姫様は、実は命の恩人だったりするから。
     おまけにとっても強いんだ。しっかり謝っておいた方がいいよ?ささやかな助言だ」

彼女は慌て飛び退き、ピーチ姫の方を申し訳なさそうに見る。

「…そ、そうなのですか!?そ、それは失礼いたしましたっ!
 私としたことが、とんだ無礼を…!大変申し訳ございません!
 瀕死の状態の私を慈悲深く救ってくださり、誠にありがとうございました…!


 
私、イーリス聖王国の第一王女、ルキナと申します!貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか…!」













ルフレ(………………………ん?)

68: Mii 2019/05/05(日) 22:37:38 ID:7C2DmCl6
ピーチ「私は、このキノコ王国の元首にしてキノコ城の城主…ピーチよ。
    ま、堅苦しいのは嫌いだから、呼び方は好きにして頂戴。
    察するに、ルフレと親しいようね。ルフレが真っ先に発見したというのも運がよかったみたい。
    …あの怪我の具合だと、5分遅かったら命は無かったわよ」

ルキナ「そうなのですか…重ね重ね、ありがとうございます…!」



――――なんだ、この感覚。
――――喜ばしいはずなのに、動揺が抑えられない、この…不安感。
――――何かが、喉の奥に張り付いたまま離れない。



ルキナ「私もあまり――どうやって、キノコ王国とやらに迷い込んだのか、
    よく把握していないのですが。
 
    それにしても、まさかルフレさんが――こちらで、生き永らえている、だなんて!
    亡くなられたと、ばかり……!

    ああ、まだ我々も……僅かな希望を捨てなくともよい、ということですね!
    久方ぶりの……吉報です――っ!!」グズッ



――――おかしい。
――――歯車が、どこかずれていて…絶望的に噛み合っていない。

69: Mii 2019/05/05(日) 22:39:57 ID:7C2DmCl6
ルキナ「ああ、それで、こんなことを私が言えた義理ではないのですが…。
     ルフレさんも、なにかこちらで準備を整えることに必死であることは
     容易に想像ができるのですが…!それ、でもっ!

     一刻も早く、我々の元拠点へ戻りましょう!闇を光で…照らすためにっ!」



涙を零しながらも、明るさを隠さずに、握り拳を作ってそう…宣言する、彼女。













――だが。

――非常に残念で残酷な話、なんだけれども。
――僕は…彼女に、伝えなければならないことが…ひとつ、ある。

70: Mii 2019/05/05(日) 22:42:09 ID:7C2DmCl6
ルフレ「…なあ。落ち着いて、聞いて、くれないか」



ルキナ「……はい?」












ルフレ「僕、いや僕ら自警団が知る限りの『ルキナ』って人は――
    自警団長クロムの愛娘で齢5つにも満たない『ルキナ』、ただ1人なんだけど。



    君みたいな姿の『ルキナ』に、僕は会った記憶がない。



    君は一体――何者、なんだい?」

71: Mii 2019/05/05(日) 23:41:07 ID:7C2DmCl6
リンク「ふわあああああ……さってと、今日からルフレの奴を鍛えてやるかー」ノビー



大きな欠伸ひとつして、ゆるゆると身支度を始める。
さてと、どこで朝ご飯を食べようかな。
もちろん、登録選手として専用食堂で食べるのも悪くない。
美味しいし栄養バランスはお墨付き。

でも、ちょっとつまらない気もする。
せっかくだから、この時期に張り切ってる喫茶店とかに誘われれば、
思いもよらぬ絶品コーヒーとかにありつけるかもしれない。
そんな夢を見て、城下町に繰り出すのもまた一考だ。

リンク「今日も、いい天気ですねーっと……」



ダダダダダダダダッ!!



ルフレ「ハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!…やっと、見つけましたよっ!」ゼェゼェ

リンク「うおっ!?は、張り切ってるなあ、ルフレ!?
    まさか朝一でお出迎えされるとは思ってなかったぞ!?
    そんなにやる気十分か!こりゃあ、鍛えがいがありそう――」

72: Mii 2019/05/05(日) 23:44:40 ID:7C2DmCl6
ルフレ「リンクさんっ!この…この通りですっ!!」ガバッ

リンク「え、なんだよ突然!?」



朝っぱらからジョギングするオジサン、にこやかに会話する主婦。
そんな周り含めて、場が凍る。
な、何を思って、いきなり土下座なんかしでかすんだ、ルフレの奴!?





ルフレ「せっかく色々と考えて頂いておきながら、申し訳ないのですがっ!
    一旦、僕の特訓の話はおいといて…!

    どうか、どうか彼女を救ってくれませんか!お願いしますっ!
    貴方だけが…頼りなんですっ!!」





――そう血気迫るルフレの前に…訳の分からないまま、
――俺は、首を縦に振ることしかできなかった。

74: Mii 2019/05/05(日) 23:47:56 ID:7C2DmCl6
先導されるまま、王国病院へ。

面会謝絶の表示を無視して、ルフレはズンズンと…とある一室に入っていく。



リンク「お、おい。いいのか?」

ルフレは、ただただ無言。



やれやれと肩をすくめて、病室へ入っていく。

アイクやマルスが辛気臭い表情で集まる中で…
何故か、医者姿のマリオがいる中で…



1人の女性が、傾斜の付いた医療ベッドに横たわっていた。



…妙に、空気が張りつめている。



そんな中でも、最初は、「ふぅん、病人か」程度に軽く考えて覗き込み……。

75: Mii 2019/05/05(日) 23:51:15 ID:7C2DmCl6


















ルフレ「――――や、やめ…て、ください、リン、ク、さんっ!」

リンク「――ルフレ。お前、彼女に――何を、やったぁっ!?」



気が付いた時には、刹那に振るった右腕でルフレの首を絞めている、俺がいた。

――彼女の虚ろな目は――そう。
一切の光を宿していないことが、俺には分かってしまったのだから。

76: Mii 2019/05/05(日) 23:54:36 ID:7C2DmCl6
Dr.マリオ「落ち着け、リンクッ!これはルフレのせいじゃないっ!」

リンク「――――っ!!」ガバッ

一気に、思考が舞い戻る。
反射的に動かしていた体を、緩和させて、ルフレを開放する。



ルフレ「ガハッ、ゴホッ……む、むちゃ、くちゃな速度、でしたよ…」

リンク「とりあえず、悪いなマリオ。どうやら俺、気が立っているみたいだ。
    現状で分かってること、洗いざらい吐いてもらうことってできるか?」

Dr.マリオ「心得た。…茫然自失状態の彼女から聞き出すの、苦労したんだぞ?
      ――彼女の名前は『ルキナ』。
      ルフレの所属する自警団の団長クロムの娘であり、
      『本来ならば』まだ幼子だ」

リンク「…さっそく矛盾が生じてるな。
    俺の経験とかから推測するに…時間経過速度の加速、あるいは未来からの時間遡行だな?」

Dr.マリオ「ご名答。話が早くて助かるぞ。

      彼女は、希望となる仲間が悉く葬り去られ、世界を闇が支配した絶望の未来から、
      『自分たちの世界の過去』に向かって時間遡行をどうにかこうにか行って…
      状況を打破しようと考えたらしい」

77: Mii 2019/05/05(日) 23:59:03 ID:7C2DmCl6
――俺は、ひとまず頷いて見せる。

Dr.マリオ「彼女の生きていた世界を苦しめていた張本人、『ギムレー』。
     そいつとその手下たちによって、世界全体が滅茶苦茶にされちまったらしい。
     ちなみに、ギムレーという存在は…このルフレも戦った強敵、とのことだ」



…何故か、苦虫を噛み潰したような顔をして、ルフレが頷く。



ルキナ「――――みんな、みんな、死んで…いきました。
    同期が…親たちが…支えてくれた兵たちが…ひとり、またひとり、と…
    それも、『未来』と『過去』で、2回も――」

リンク「――っ!!」



――光の無い目を開けて中空を見つめていたルキナが、
――横たわりながら…唐突に呟き始めた。
――あまりにも力弱く、か細く…誰に語り掛けようとしているのかもわからない。



ルキナ「父、上も…母、上も……ルフレ、さんも……!
    全てを投げ打って、縋って追い求めた、『過去の安寧』。
    それは結局失敗に…終わったの、でしょうか――」

78: Mii 2019/05/06(月) 00:03:14 ID:GkZ4yLvE
そこへ、『ここにいる』ルフレが待ったを掛ける。

ルフレ「…でも、おかしいんですよ。

    確かにルキナはクロムの娘として『僕がいる時代』に生まれましたが、
    僕は護衛団の活動中に…ここにいる成長ルキナが、リンクさんが来られる前に述べていた…、

    『自警団の危機に、仮面偽装した成長ルキナが駆け付けて間一髪助ける』だとか
    『正体を明かした成長ルキナが団の一員となって行動する』とかの出来事に
    一切遭遇していません。

    その後、迫り来る危機について知らないことばかりで、後手に回りがちではありましたが、
    どうにかこうにか…その…ギムレーを封印して、決着を付けることができました」



ルキナ「そんなはずは……な、い…の、です」

ルキナは信じられないらしく、布団の裾を握りしめる。



…ええっと。要するに。

ここにいるルフレの体験としては、成長ルキナに遭遇しなかったものの…
自力で、世界をとりあえずは平和にした。つまり、ハナから絶望の未来はなかった。

一方、成長ルキナが知る『ルフレ』の体験としては…
絶望の未来が待っているうえに、そのことを伝えに来た成長ルキナの尽力があってすら
…………未来が覆らなかった?

79: Mii 2019/05/06(月) 00:09:05 ID:GkZ4yLvE
ルフレ「そもそも、戦闘で亡くなることが滅多になかったですから。
    しっかり治癒治療に専念すれば、なんとかなりました。
    少しは僕の撤退策も功を奏したということでしょうか」

ルキナ「そ、んな…!お父様たちは、確かに、戦場で、命を次々と――」











リンク「………………………………………………ちょっと、待て」










かちり、と。
ピースが、繋がった、気がしてしまった。
…これは、マリオでは気付かない類の、ことかもしれない。

80: Mii 2019/05/06(月) 00:10:50 ID:GkZ4yLvE
リンク「2人ともっ!ちょっと、俺の目を見ろっ!」グイッ

ルフレ「えっ!?どうしたんですか、急に?」

ルキナ「…………っ」

やや強引に腕を引っ張り、動転するルフレ、そして未だ生気のないルキナの目を見る。





見る。

見るっ!!

見るっ!!!!





そして…ああ、見えてきた。諸悪の根源が。

81: Mii 2019/05/06(月) 00:18:35 ID:GkZ4yLvE






REFLET    難易度:ノーマル        モード:カジュアル

LUCINA    難易度:ルナティック+     モード:クラシック






リンク「…………」

リンク「…………」

リンク「…………なんて、こった」ガクッ

82: Mii 2019/05/06(月) 00:22:50 ID:GkZ4yLvE
――それからのことは、語りたくもない、のだが…。



何か気付いたのか、と急かされてしまい…口を割ってしまったのが、まずかった。

おそらく、ルキナが時間旅行をすることをトリガーとして…
勝利の女神に愛された世界線と、運命に悉く見放された世界線…
2つの世界に枝分かれしたんだと、そう伝えてしまった。

誰が悪い、とか議論できる話じゃない。
強いて言うなら、運が悪かったとしか言いようがない。
正直、何がトリガーとなって世界線が分岐しうるかなんて、碌に研究は進んでいないらしいから。



だが、難易度だなんて概念がわかりっこないルキナは、呆然と泣き腫らすまま――

「普通に救われた結果もあったはずなのに、自分がとんでもないことを仕出かしたせいで
 親しき者たちを倍苦しめた」という、一番やっちゃいけない受け止め方をした。



慟哭し泣き叫ぶルキナを、ため息を付いたDr.マリオが手刀一発食らわせて気絶させる。

Dr.マリオ「とりあえず、点滴と鎮静剤は処方しておくぞ。
      …最後のは、あまりにも軽率だったな。リンクも悪気があったわけじゃないだろうが」

リンク「…………すまないっ!」

83: Mii 2019/05/06(月) 00:27:02 ID:GkZ4yLvE
Dr.マリオ「お前たち、今日のところは一旦帰った方がいい。
     俺はまだ…いち患者として彼女を扱えるだろうが、
     関わりのあるFE勢や、責任を感じてるリンクが残ったところで
     頭の混乱を抑えきれないで状況を悪化させるだけだろう」

マルス「……………わかった。その言葉に甘えさせてもらうよ。…よろしく、頼む」

アイク「…たしかに、そのようだ。俺も、このやりきれない気持ちをどうにかしたくて
    壁という壁を叩き壊して回りたいくらいだぞ」

Dr.マリオ「……病棟で、絶対やらないでくれよ、それ?情状酌量してやらんぞ?」

アイク「わ、わかってるさ!

    …おいリンク、そんなに気負うな。状況解析してくれただけでも有り難いさ。
    また色々とお世話になりそうだし、今日のところは解散といこうじゃないか。
    ゆっくり頭を休ませてくれ」

リンク「……………………ああ」



…………退出する2人…いや、ルフレ含めて3人に釣られて、俺も無言で、病室を出ていく。
……ここまで自信なく、重い足取りになる時間は…何十年ぶり、だろうか。
俺は、自分自身に、途轍もなく腹を立てていた。

84: Mii 2019/05/06(月) 00:33:55 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「……………………ふう、たんなるオフザケ、ハプニングじゃなくて…
    誰かが不幸になるようなイベントは、勘弁して貰いたいものね…
    大会の方の進行自体が順調なのは、喜ばしいところだけど…」

ピーチ「…よしっ!とりあえず、書類は片付いたわね!
    観戦とかお忍びとかやりたいところではあるけれども、
    しばらくは責任者として城に待機しておきましょうか――」  

キノじい「有り難いお言葉でござますのじゃ、姫様…」



バーンッ!



キノじい「な、何事じゃ!?」

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…………」スゥッ・・・

キノピオ「…あれ?身構えて、どうされたのですか?」

ピーチ「いい加減、身構えたくもなるわよ!…まあ、今回は『姫様』でいいのかしらね。
     …………それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

85: Mii 2019/05/06(月) 00:35:57 ID:GkZ4yLvE
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…窃盗事件が発生してしまいました!
      ファルコ選手のブラスターが、何者かに盗まれてしまったそうです!」

ピーチ「――なんですって!?」

…まだまだ、問題は尽きそうにない。

86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/05/06(月) 02:46:57 ID:GkZ4yLvE
ファルコ「…………」イライライライラ

フォックス「ま、まあ落ち着けってファルコ。
      もしかしたら、自分でどっかに置き忘れたかもしれないだろ?
      こう…机の上にでもポン、と置いてから立ち去ったとか!
      ほかの選手を疑うのはよくないって、なっ!」

ファルコ「んなわけないだろうが!そもそもホルダーから外した覚えがねぇよ!
     バトル時だって、開始前と終了後にしつっこくチェックしてらぁ!
     待機中に…誰かに掠め取られたとしか考えられねえっ!
     どうなってんだよ、ここのセキュリティーはよぉ!」ガンガン!

ピーチ「はいはーい、物に当たるのは止めてくださる?
    とりあえず、そんなことが本当に起こったのならキノコ王国として名折れもいいところだから…
    適切かつ迅速に、全力で解決させてもらうわ。落ち着いて、状況を教えてもらえないかしら?」

フォックス「おおっ、さすがピーチ、仕事が早くて助かる!
      じゃあファルコ、今日のお前の行動…ささっと説明してみろって。
      ほい、今日のスケジュール表」バサッ

ファルコ「…フン。別に、いいけどよ。解決しなかったら承知しねぇぞ。

     ……そうだな、この時間帯は参戦中、そっからここまでは控室で観戦、
     あとはちょいと街で一服して、そのあと絡んできた不良をボコって、
     戻ってきてまた5戦ほど観戦して…」

ピーチ(ファルコクラスにボコられた不良の行く末が割と気になるわ…頭痛い…)

87: Mii 2019/05/06(月) 02:50:00 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「それぞれの時間帯、出会った人とかは覚えてる?
    ファルコクラスのファイターから…一般人が物を盗めるとは思えないわ。
    相当な手練れか…あまり考えたくはないのだけれど、ほかのファイター、としか正直考えられない」

ファルコ「ま、そうだろうな。他の選手とは結構すれ違ったと思うが…逐一覚えているわけじゃないからな…
     覚えている範囲でいいなら、とりあえず並べてみるけれどよ…」





ピーチ「むう……………………むむむ……………………」

ファルコ「わかったかよ、お姫様」

ピーチ「ううん、全然」

ファルコ「おい」

ピーチ「だって私、別に探偵じゃないもの。ある程度のアリバイ確認くらいしかできることがないわ。


  
    …でも、あの子ならきっと何とかしてくれる!うん!」

ファルコ「あの子ぉ?」

88: Mii 2019/05/06(月) 02:52:20 ID:GkZ4yLvE
~とあるバトルフィールド~

ゼルダ「…!!あれ、誰か来ました、ロゼッタ」






ピーチ「…あ、いたわね!」

ロゼッタ「えいっ!えいっ!はっ!」バシッ! バシッ!

ゼルダ「まあ、この通り。私が今度こそしっかり監視しながらのもと、
    こつこつ地道にレベル上げしているところですよ、ロゼッタは」

ピーチ「…だったら貴方が直接指導してあげればいいのに。
    私が見る限り…あれ、まだまだ動きがなってないわよ?」

ゼルダ「……私が教えると、ついつい力加減を誤ってしまうもので」

ピーチ「…ふぅん……?

    あ、こんな会話をのんびりしている暇じゃなかったわ!
    ちょっとロゼッタ、一旦修業は中止してもらえるかしら!
    貴方に、やってもらいたいことがあるのよ!」

ロゼッタ「なんでしょうか、ピーチ姫」テクテク

89: Mii 2019/05/06(月) 02:54:28 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「こんなこと、起こってほしくはなかったのだけれど。盗難事件が発生してしまったの。
    …それも、招いた選手の持ち物を奪うという大胆な事件が」

ロゼッタ「…………ま、招いた選手の持ち物を!?なんて酷い!」

ピーチ「具体的には、ファルコのブラスターね。それで、お願いがあるのだけれど…
    ロゼッタって、空間魔法で失せ物探しとか、できたりするかしら?」

ロゼッタ「…………うーん…………失せ物探し、というわけには行きませんが…
      似たような形状のアイテムがあるなら、それと似た存在を付近から探し出す、
      そしてその場所を追い続けるという芸当なら、できなくはありませんが。

      ただ、空間転移とセットではないので、離れていた場合は…
      場所を突き止めたとしても取り返しに行く必要がありますよ?」

ピーチ「……!今回はそれで構わないわ!フォックスのブラスターを借りましょう!
     どのくらいの距離までなら追跡できる!?」

ロゼッタ「そうですね、とりあえず半径10kmといったところでしょうか。
     それで検索に引っ掛からないのなら、FPをより多く消費して
     まだまだ範囲を広げることができます!」

ピーチ「ナイス!上出来すぎるわ!それじゃあ早速、お願いするわね!!」

90: Mii 2019/05/06(月) 02:57:08 ID:GkZ4yLvE
――控室に移動してきた、私たち。
――ロゼッタの空間魔法を一目見ようと、ファイターたちがゾロゾロと集まってくる。



ロゼッタ「ええっと、緊張してきましたが、さっさと済ませてしまいますね!」

クッパ「うむ、とっとと不届き者を炙り出してしまうのだ!」

ルイージ「えーっと、もしかして、ここに集まってきていない人の中に
     犯人がいるってことなのかなあ」

サムス「…リンクもいないんだが…まさか、アイツが…!?そ、そういえばマリオも…」

マルス「あ、いや、アイツはちょーっと塞ぎ込んでるだけですから…」

ピーチ「マリオは、今は仕事中だから…コホン。
    それじゃあロゼッタ!

    どこかに隠したのか、はたまた隠し持ってるのか…どちらにせよ、
    暴かれた犯人が逆上して暴れ出した時のことは考えなくていいから!
    サクッと答え合わせをしてちょうだい!ズルい気はするけれどね!」

ロゼッタ「は、はい!」

91: Mii 2019/05/06(月) 03:02:16 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタが……杖を片手に目を瞑り、詠唱を行っていき…
杖を、すぅっと一振り。

ブゥン、と鈍い音が断続的に小さく響き続けるだけの、静寂が部屋を支配する。
誰もが、固唾をのんでその様子を見守っている。



30秒ほどして、何かを悟ったようにロゼッタが目を開ける。



ピーチ「…どうだった?それとも、もっと調査範囲を広げる必要がある?」



ロゼッタは首を振り、少し悲しそうな顔をして――二、三度、周囲を見渡した。



ピーチ「…本当に、この中に犯人がいた…のね。はあ…。
    名指しされたところで、盗んだ犯人が悪いんだから。
    さあ、堂々と犯人を暴いちゃいなさい」

ファルコ「そうだぜ。万が一、逆恨みしたソイツがロゼッタに危害を加えようとしてきたら
     俺がブラスターでハチの巣にしてやるってもんだ」

ロゼッタ「…………では――」

92: Mii 2019/05/06(月) 03:05:10 ID:GkZ4yLvE
つか、つか、つか。

皆が注目する中、ロゼッタは――ゆっくり、ゆっくり歩を進め、ある一点で立ち止まって。
持っている杖を、コツンと当ててみせた。



――虫取り網に、対して。



ガシャンと、ファルコのブラスターが零れだしてくる。
慌てて、ファルコが駆け出して、本物かどうか確かめる。

ファルコ「…間違いねえ、まさしく俺のブラスター、そのものだ。恩に着るぜ、ロゼッタ。
     で?なんか言い残すことあるかよ、お前は」

ファルコが、親の仇を見るかのような…侮蔑の目で、暴かれた犯人を見やる。
犯人とは――。





むらびと「…え?ええ??えええええええっ!?」

目を白黒させた、むらびとだった。

93: Mii 2019/05/06(月) 03:06:41 ID:GkZ4yLvE
むらびと「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
     僕、ファルコのブラスターを奪うなんてこと、絶対にしてないよっ!?」

ファルコ「現に…お前の虫取り網から出てきただろうがあ――っ!!!」

血が一気に上り、鬼の形相で殴りかかろうとするファルコ。

ピーチ「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!――あ」

フォックス「ファルコ、落ち着けっ!そう出ると思ったぜ!
      お前の喧嘩っ早さは熟知してるからなっ!」ガシッ

ピーチ「フォックス、ナイスタイミング!そのまま、抑えといてっ!

    …むらびと、一応、釈明は聞いてあげる。
    一体どうして、皆を裏切るようなことをしたの?
    何か深刻な事情があるというのなら、罰を軽くすることも考えるのだけれど…」
    
むらびと「だ、だからっ!僕何も知らない!そもそも何もやってない!」アワアワ

94: Mii 2019/05/06(月) 03:08:36 ID:GkZ4yLvE
ファルコ「往生際が悪いぞ、てめえ!」



周囲の目も、明らかにファルコを応援し、むらびとを糾弾する雰囲気を呈している。
耐えきれず、むらびとは徐々に、徐々に後ずさる。

むらびと「ぐずっ…ふええ…本当に…やって、ないもん……」

ピーチ「…はあ。子供の容姿だからって、それだけじゃ擁護することもできないのよ?
    ここまで決定的な証拠を見せつけられたら、私も主催者側として…
    厳格な対応、判断を下さざるを得ない。

    今のままじゃあ、貴方…どんどん立場を悪くしていること、わかるでしょう?」



むらびと「やって……ないもん……」ジワァ



ピーチ「私の立場も、分かって頂戴!いい加減に――」

ロゼッタ「もう、やめてあげてくださいっ!!」ガバッ



せっかくの大会を台無しにされた――そのせいか、私のボルテージまで、ついつい上がる。
そんな私から、むらびとを守るように…涙顔のロゼッタが、むらびとを抱きしめた。

95: Mii 2019/05/06(月) 03:10:50 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタ「どんな顛末でブラスターを持ち去ったのかわかりませんがっ!
     子供のやったことではないですか!

     もちろん、いち大会参加者として参戦している以上、
     そんな甘ったれたことを言うなとピーチ姫は…皆さんは仰るかもしれませんがっ!
 
     かといって、大の大人たちが寄ってたかって責め立てる、なんてこと…
     私には耐えられませんっ!!黙って見ているなんてこと、できませんよ!!」

ルイージ「…あー、確かに…あんまり見栄えのいい光景じゃあ、なかったよね…」ポリポリ



ロゼッタは涙目のまま、ファルコに向き直る。

ロゼッタ「ファルコさん、どうか、どうかお願いいたします!この通りです!
      私に免じて、水に流してもらうことはできないでしょうか……!」ズサッ

ファルコ「うえっ!?ななな、なんでアンタが土下座する必要があんだよ!?
     というか、それはアンタが決めていいことでもなければ、
     俺が許してそれで済むってことでもないだろ!?」アワワ

96: Mii 2019/05/06(月) 03:13:17 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「……ふむぅ。落ち着くのよ、私。
    私としては、できるだけ穏便に済ませられるに越したことはないから…そうねえ。

    もともと『今大会の参戦停止+成績剥奪+任天堂に報告』くらいに考えていたのを、
    『数週間の参戦不可ペナルティ』くらいに緩和するって処置にしてもいいわよ?
    被害者のファルコが、この場でむらびとを許すっていうのならね」

ロゼッタ「…ああ、それでも重めのペナルティは与えられるのですね…」

ピーチ「あったりまえよ!馬鹿にしないでもらえるかしら!
    これでもだいぶ譲歩したつもりなんだからね!?
    
    …で、どうする?ファルコ?」



皆の注目が、今度はファルコに…集まった。



ファルコ「う、ぐ…なんで被害者の俺が――こんな選択を迫られなければならねぇんだ…」

フォックス「ファルコ―、いつまでロゼッタを涙目のまま地べたに這いつくばらせてるんだー?
      男として恥ずかしくないのかー?」ニヤニヤ

ファルコ「その脅迫は卑怯だぞフォックス!……だが、やっぱり、納得がいかねえ…」ギリッ

97: Mii 2019/05/06(月) 03:14:45 ID:GkZ4yLvE







――ちょっと、待ってくれ!








ファルコ「なんだ!?」クルリ







ピカチュウ「私だ」

ファルコ「」

98: Mii 2019/05/06(月) 03:16:40 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「私の格好が探偵っぽいって?
      確かによく間違えられるが…違うな、それは誤りだ。

      私は…探偵じゃない、『名探偵』さ!」ババーン!

ファルコ「」

フォックス「ピカチュウが…人語を話している!?」





トコ トコ トコ…。





ピーチ「あ、あなたは……!」

ポケモントレーナー「…………」スクッ

99: Mii 2019/05/06(月) 03:18:47 ID:GkZ4yLvE
クッパ「今回は参戦していないはずの…ポケモントレーナーじゃないか。
    応援にでも駆けつけてくれたのか?いい心掛けなのだ」



ポケトレ「…………」ポイッ

ポケトレは ニャースを くりだした!▼



ニャース「ニャースでニャース!」

ピーチ「!?」



ポケトレ「…………」キラーン



ニャース「『さっきのは、ピカチュウがしゃべっているように見せかけた俺の腹話術だ』
      …と言ってるニャ!」

ポケトレ「…………」コク

100: Mii 2019/05/06(月) 03:21:35 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「まあ、そういうことにしておいてくれ。
      この謎は、ズバッと私が解決してみせようじゃないか!」



ポケトレ「…………」パチパチ



ニャース「『がんばれピカチュウ、あと俺もこの調子で頑張ろう』と言ってるニャ」

デデデ「さっきからひたすらに回りくどいぞい!?」

ピーチ(えっと、ちょっと待って。
    そもそも不参戦の彼が、どうしてこの場所に居られるのかしら?)



ポケトレ(……………)



ニャース(『もともと背景的存在だから、任天堂のさじ加減で画面内に映りこむことくらい
     わりと余裕だ』、と思ってるニャ)

ピーチ(…………………………………………あ、そうなんだ)

101: Mii 2019/05/06(月) 03:23:45 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「さて、本題に移るとするか。

       フォックス君、そこに転がってる…むらびと君の虫取り網、
       ちょっと持ってもらえるかな?
       本当はむらびと君本人に実演してほしかったのだが、
       とてもそんな雰囲気ではないのでね」

フォックス「お、おう、この虫取り網か?これでいいか?」シャキッ

ピカチュウ「知っての通り、むらびと君の虫取り網は…
       かぶせる、あるいはキャッチすることで、なんでもしまうことのできる
       便利アイテムだ。むらびと君の戦力の要だな。

       大事なものだから、ファルコ君のブラスター同様、
       常日頃から身に着けており…どこからともなく取り出せる代物だ」

フォックス「ああ、そうみたいだな」

ピカチュウ「このような仕掛けの代物は、時たま…使用者本人も知らない場面で、
      使用者と外界との界面から当該領域を露出させる可能性があってな」

フォックス「…え、なんだって?」

102: Mii 2019/05/06(月) 03:25:52 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「端的に言うと、使用者が気付かないまま当たり判定が出現していて、
      効果を発揮してしまうことがあるということだよ、フォックス君」

ファルコ「そう…なのか!?」

ピカチュウ「私の推理は、こうだ。
      
       午前中に試合を終えて、のんびりしていたファルコ君。
       一方、たしか…むらびと君も、午後に遊びに繰り出していたな?」

むらびと「…う、うん」

ピカチュウ「きままに歩き回っていたファルコ君、
       そして目新しさにはしゃぎ回っていたむらびと君。

       おそらく、ファルコ君の斜め後ろあたりから、注意力散漫だった
       むらびと君がぶつかったのさ。

       2人とも、誰かにぶつかられた・ぶつかった覚えがあったりしないかい?」

ファルコ「…確かに、大通りは凄い賑わいだったからな。
      注意してても、ちょくちょく人ともぶつかった気がするし…
      いちいち顔の確認をしたわけでもねえよ」

むらびと「う、うん!たしかに、ちょっと他の人とぶつかりすぎちゃったかも…!」ハッ

103: Mii 2019/05/06(月) 03:28:28 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「オッホン。さて、フォックス君。

       むらびと君くらいの体格を想定して虫取り網を装備したとき――
       網の先はどのくらいの高さに来るかな?」

フォックス「……あ!ちょうど、ファルコの腰のホルダーあたりに来てもおかしくない位置関係だな…!」

ファルコ「なんだと!?」

むらびと「ええっ!?」



ザワザワ……。

ピカチュウ「ま、あとは語らなくとも…お分かりだろう。
       運悪くぶつかった拍子に、運悪く当たり判定を持っていた虫取り網が…
       ファルコ君の持っていたブラスターを掠め取った。

       お互い、全く気付かないまま…
       ブラスターは、ファルコ君からむらびと君へ。その所在を移した、という寸法だ」

104: Mii 2019/05/06(月) 03:30:30 ID:GkZ4yLvE
シーン…………!

ポケトレ「…………」グッ

ニャース「『これにて一件落着だ』、と言ってるニャ」

ファルコ「…………」

むらびと「…………」ソワソワ

ファルコ「…………チッ。言っとくが、俺は謝らねえからな。
     結局のところ、お前の不注意が主な原因でこうなったってことなんだから」

むらびと「う、うん。でも、わざと盗んだりなんかしてないってこと…
     それが分かってもらえただけでも、いいや。
     えっと…ブラスター、盗んじゃって、ごめんなさい」ペコリ

フォックス「ファールーコー?」

ファルコ「……だあああ!悪かった、悪かったよ疑いすぎたりして!
     こら!お前もとっとと泣き止め!
     このままだと逆に俺の方が悪者になるじゃねえか!」

むらびと「う、うん!…あはは」ニコリ

ロゼッタ「わあ…!これでめでたく、みんな仲直り、ですね!」

105: Mii 2019/05/06(月) 03:33:39 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタ「……あれ?ど、どうしたのですか、みなさん?
      急に、私を見つめられて…」

サムス「ロゼッタ、戦いが不得手と聞いていたが…お前は凄いな!
    あんな気概、凄腕の戦士でもそうは見せられるものではないぞ!」

ファルコ「まったくだな、俺を一瞬でも怖気づかせることができる女は、
     そうそう居るもんじゃないぜ!」

むらびと「本当にありがとうね、ロゼッタさん!すごく、嬉しかった!」

ピーチ「ふふふ、言ったでしょう!
     ロゼッタは凄いんだから!戦いだって…ポテンシャルを持ってるはずだし!
     今後、一層頼れる存在になっていくわよ!
     …あ。もうちょっとむらびとのペナルティ、弱くするべきかしら…」

ネス「なるほど、ピーチが自慢したがる理由もわかるなあ!」

ロゼッタ「あ、あは、ははははは…………や、やめてください、恥ずかしい、ですので…
      ……………………」

ピーチ(ロゼッタの大活躍のおかげで。
    ブラスター窃盗事件は、特に大事にすることなく…
    収束を迎えられることとなった。
    めでたし、めでたし。

                   …めでたし、よね?)

106: Mii 2019/05/06(月) 03:41:12 ID:GkZ4yLvE
~居酒屋~

リンク「………………………………………はぁ」ガコン

アイク「…………なんだか、その、ええとだな…」

リンク「…なんだよ?」ギロッ

アイク「あ、いや、その、なんでもないぞ!?」

マルス「はは、リンク、そうアイクを睨まないでやってくれるかな。
    アイクは、自分が――いや、僕たちが、リンクの調子をすっかり狂わせてしまったことに、
    ちょっと…いや、かなり負い目を感じているのさ」

アイク「ななな、そんなわけあるかマルス!」

マルス「わっかりやすいなあ」

リンク「おいマルス、誰が調子を崩してるって?冗談も大概にしろよ」ギロッ

マルス「なけなしの集中力すらルフレの特訓で消費しつくしているせいで…
    とんでもない戦績を積み上げているじゃないか…。今はこうして、慣れないお酒をがぶ飲みしちゃってさあ。
    僕、リンクが2回も4位で終わる試合日の記憶、どれだけ歴史を遡ればいいか分からないんだけど」

リンク「…………」ゴクゴク

マルス「すいませーん!彼には今後、水だけ持ってきてくださーい!」

107: Mii 2019/05/06(月) 03:44:35 ID:GkZ4yLvE
アイク「…本当は、FE勢のことはFE勢だけで解決すべきことだったのかもな」

マルス「…そうか?結果論になってしまうが、僕は……
    リンクがわが身のことのように真剣に考えてくれて、
    『リンクに伝えてよかったなあ』って思ってるんだけれど」

リンク「…………あの目は――昔の俺を思い出すんだ」

マルス「昔の……リンク、か。なるほど」フムフム

リンク「…いや、そんなこと言ったら、彼女に失礼かな。
    彼女は本当に――救いのない状態が、決定してしまっているし」



アイク「…なあ。今のルキナが俺たちの大陸に、王国に帰ったとして…
    そこは、『今のルフレ』が帰ろうとする王国ということになるのか?

    それとも、ルキナだけ…国境を跨ぐあたりでフッと消えてしまって、
    ルフレ含め大勢が亡くなった世界線の王国に改めて送られるのか?

    リンク、お前なら…もしかして、どっちになるか、わかるのか?」

108: Mii 2019/05/06(月) 03:48:20 ID:GkZ4yLvE
リンク「…………お前たちも知ってる通り、ルキナが希望するなら…
    ルフレに従い着いていくだけで、『平和な方』の王国に辿り着くことはできる、と思う。
    道しるべがあるなら、時間軸を選ぶのって…そんなに難しいことじゃないんだよ。

    でも、その王国は…ルキナが守れた結果の王国じゃあ、ない。
 
    誰も…成長したルキナのことを知らない。
    自分の無力さ、周囲からの疎外感を目の当たりにし続ける拷問が待っている。

    そして、既にいる子供ルキナが順調に成長していけば
    …居座ることすらできなくなるだろうな。

    ルキナ自身、最初から選択肢にはないだろう。
    たぶん…きっと…絶望の世界線の方に、自ら舞い戻るんじゃないか、と」

アイク「それって大丈夫なのか!?」

リンク「大丈夫なわけ、ないだろう!心折れた状態でそんなことして、
    死にに行くようなもんだぞ!」ドンッ!

アイク「じゃ、じゃあどうするというんだ!」

リンク「……それが、わからない。わからないんだ…………」ガクッ



マルス「……あ、店員さん、やっぱり――お酒もばんばん持ってきちゃってください。
    彼には、逆に徹底的に飲ませて…心の底にあるもの、全部吐き出させた方が
    いいみたいですから、はい」

109: Mii 2019/05/06(月) 03:51:11 ID:GkZ4yLvE




リンク「うー、あー、……………………頭が、ガンガンする」





ほとんどマルスに背負われる形で住居に舞い戻り。
爆睡している間に、マルスは去っていったらしい。
時計を見やれば日付変わって、午前2時。うわあ、これは酷い。





リンク「勇者だってのに、だっさいなあ、俺」





またゴロンと寝転がって、もう少し、酒の影響がなくなるのを待つ。
横目で、窓の外をぼんやりと眺める。
月が綺麗だ、以上。

110: Mii 2019/05/06(月) 03:53:35 ID:GkZ4yLvE
リンク「…………」

リンク「確かに、調子が絶不調なんだから…参戦なんてせず、
    おとなしく精神安定に努めていた方が賢かったよなあ。
    惰性で参戦し続けたばっかりに、優勝…えらく、遠のいちゃったなあ」



リンク「……………………」

リンク「まあ、あれだよ。変に俺が絡んで、よその国に干渉するってのも…
    未来を大きく変えちゃうってのも問題だしさあ。これでよかったんだよ、うんうん」



リンク「……………………………………………」

リンク「マルスも、アイクも、ルフレだっているし…ま、なんとかしてくれるだろ、FE勢の中で」



リンク「……………………………………………………………………………………
    ……………………………………………………………………………………
    って、納得できるような奴じゃねえんだよ、俺ってさあ!!」ガバッ!

リンク「ええいっ!とりあえず頭を空っぽにするかっ!!
    とりあえず真夜中のキノコ城城下を適当にマラソンだ!
    うおおおおおおお――――っ!!!」ダダダダダダッ!!

111: Mii 2019/05/06(月) 03:55:13 ID:GkZ4yLvE
リンク「うおおおおおおおおおりゃああああああああ!!」ダダダダッ!!





住民「馬鹿野郎っ!近所迷惑だぞっ!!」ダッ!

リンク「御免よーっ!!」ダダダッ!!





住民「どこの誰よ、下品な足音奏でてるのはっ!!」

リンク「アーアー、オレダヨ、ナクコモダマル ガノンドロフサマダヨー!!」ウラゴエ





居酒屋店主「うおおおおぉい!誰か、勝手に屋根を走ってやがるのか!?
       轟音と共に天井が陥没してるんだがっ!?
       うおっ!?玄関前の石畳まで滅茶苦茶だっ!?」

リンク「いっけねー!お宅に大緑ルピー、投げ込んでおきますからーっ!!」ブンッ!

112: Mii 2019/05/06(月) 03:57:18 ID:GkZ4yLvE
~1時間後~



リンク「……よし、汗は結構かいたけれど…すっきりした。
    のべ100kmくらい走っただろ、うん。さすが俺、エネルギッシュ!」



まだまだ、夜は更けようとはしていない。
まあ、これ以上近所迷惑をするというのもなんだから、終わりにしておこう。
まったく、自分勝手な勇者なこった。

月灯りが、ぼんやりと頭上に。
見上げれば、すぐそばにキノコ城。そして、すこし首を後ろにやれば、王国病院。



リンク「ルキナの奴、大丈夫かな……
    えーっと、位置関係的に…病室、あのあたりだったっけ。
    ま、俺ができること、考えてみるか」



そう自分に言い聞かせて、振り返るのをやめる。
月灯りに反射して、窓際がきらりと光っていた…気がした。

113: Mii 2019/05/06(月) 04:03:46 ID:GkZ4yLvE
~病室~

ルキナ「…………………………………………」



無表情、無感情で見つめるのは、ぼんやりと光る…お父様譲りの聖剣、ファルシオン。
血濡れた剣ではなくなり、汚れ一つなくなった剣。

私は――明かりも付けず、何も考えず、剣だけを見つめている。



涙はもう…枯れ果てた。
体力こそ回復したが、今の私は、壊れ果てているのだなと、自覚した。
自業自得過ぎて、弁解する気も起こらない。



私を庇うあまり命を落としていった人たちの…怨が聞こえてくる。



――ねえルキナ、あなた、なんということをしてくれたのですか?
――あなたを産んだこと、大間違いだったみたい。
――私の娘だなんて…クロム様の娘だなんて、あってはならないことでした――っ!

ルキナ(…………っ!)

猛烈な、吐き気。

114: Mii 2019/05/06(月) 04:07:35 ID:GkZ4yLvE
――わたし、知ってるよー。
――ルキナお姉ちゃんみたいな…ううん、ルキナみたいな悪役は、
――ヒーローによってしっかり滅ぼされなきゃいけないよねー!

――ものども、であえー!絆の力で、あの女をやっつけるよー!
――倒したみんなが、正義の味方だー!世界の救世主だー!

ルキナ(ち、違うっ!そんなこと、言う子じゃ…ないっ!)





――ええっ?僕がギムレーに…呑み込まれることを分かってた?
――だというのに、失敗したの?うわっ、それってすっごく恥ずかしいね。
――模範解答を貰ったのにテストで0点を取ったような大馬鹿ってことだねえ。

ルキナ(あなたは、そんな悪人ではない!
    私は…抗い切ってくれることを、ただ、信じて――)

115: Mii 2019/05/06(月) 04:08:34 ID:GkZ4yLvE








――いつまで、目を背けて生き恥を晒しているんだ?
――俺を…俺たちを二度も殺したのは、お前だぞ、おい。









ルキナ(…………………………………そう、ですね。その通りです、お父様)






完全に、心が、折れた。

116: Mii 2019/05/06(月) 04:10:56 ID:GkZ4yLvE
月灯りが窓から差し込む中、おもむろに立ち上がって…聖剣を掲げる。
刀身にうっすら映った自分の姿は、最期だけあって…そこそこ美しく見えました。

できれば、あまり醜くならないまま――
幾多の敵を葬ってきたのと同様、私の介錯もしてほしい。
5秒と経たないうちに、腕の震えもピタリと収まった。

そして――トン、と無機質に、力を込めた。















ガッシャアアアアアアアアン!!!

リンク「こんの、バッカヤローがああああああああぁ――――――――――っ!!」

一人の勇者が、ガラスを突き破って病室に飛び込んできて、
鋼の拳で私の剣を殴打し、正確に吹き飛ばす、1秒前のことでした。

117: Mii 2019/05/06(月) 04:13:51 ID:GkZ4yLvE
ルキナ「――いたっ……!」

ただの、パンチ。とんでもない、威力。
病室の反対側の壁まで吹き飛んだ剣は壁にグサリと突き刺さり、
持っていた腕も慣性を完全には無効化すること叶わず、強く後ろ側に反らされる。
――よくて脱臼、もしかしたら骨折しているかもしれません。

リンク「おい、ルキナっ!お前、今、なんてことしようとしたんだ!
    必死に命を助けたルフレやピーチ。
    散々心配してくれた、マルスやアイク…ついでに俺!
    その他、大勢の人たちに対する冒涜、侮辱行為だぞ、分かってるのか!?」

ルキナ「……………………」

リンク「まったく、俺が第六感で駆け付けなかったら確実に死んでたぞ…。
    おー、今更ながら…ガラスが何枚か突き刺さってるな、いってぇ。
    そんなに簡単に命を捨てるな!足掻ける間は足掻いてみろよ!」



ルキナ「あなたに……なにが、わかると、いうのですか」



リンク「…なんだって?」

ルキナ「…あなたに、何が分かるというのですかっ!私は、世界を…実質!二度も!滅ぼしたっ!
     こんな疫病神のどこに、生きている価値があるというのですかっ!」ボロボロ

118: Mii 2019/05/06(月) 04:15:35 ID:GkZ4yLvE
リンク「だから、別にルキナのせいで世界が滅んだわけじゃないって。
    そこんところ、勘違いしないでほしいなあ。
    つーか、滅んだって言い方、やめようぜ。挽回が効かないって決まったわけじゃ」

ルキナ「決まっていますっ!
     味方は全員亡き者となり、
     ギムレーは益々勢力を強固たるものとし、
     人々は生きる気力を完全に失っているっ!」

リンク「…………」

ルキナ「私、は…っ!
     これ以上、自分だけのうのうと生き永らえることに、耐えられません…!
     後生です…もう、放っておいて…くだ、さい……」ポロポロ



――なにもかもが、どうでもいい。
――床に座り込んで俯いたまま、ひたすら女々しく泣いている。
――そんな自分が、ますます一層、嫌になる。

119: Mii 2019/05/06(月) 04:17:33 ID:GkZ4yLvE



リンク「……………………ははっ、懐かしいなあ」ククッ



――えっ。



突然の笑い声に、思わずキョトンとなって、顔を上げる。

リンク「ああ、悪い悪い。
    俺もさ、かなり昔の話になるけれど、ルキナみたいに
    自暴自棄になってた時期があったなーって、ふと思ってさ」



ルキナ「…あなたが?」

リンク「おうよ。今や三強と呼ばれるまでになった俺でも、な。
    自分の境遇を恨んで、自分の実力の無さに泣けてきて…
    そんなときが、確かにあったんだぞ?
    ま、それも…俺がルキナをほっとけない理由の一つかな」



――信じられない。マルス様すら、実力負けを認めるというこの男が。

120: Mii 2019/05/06(月) 04:19:50 ID:GkZ4yLvE
リンク「…で、放っておいてほしい、とは言うけれど。
    ルキナは…このまま、境遇から逃げるのか?

    ぶっちゃけると、昔の俺も似たような考えに陥ろうとしたのは事実だから
    全くもって強く言える立場じゃないかもしれないけど…
    それって、要するにただの現実逃避だよな?」

ルキナ「…………っ!」

唇を、血が滲むほど強く噛む。

リンク「自分では為す術なくなったから自ら命を絶つ、だあ?
    責任を取るといえば聞こえがいいけれど、
    ルキナを救ってきた人たちの想い、一切合切踏みにじってるよな?
    想いを無駄なものにしてしまう…それこそ大恥だと思わないか?
    
    そんなことするくらいなら、もう一度、死に物狂いで戦おうぜ。
    いきなり挑むことが余りにも無謀っていうのなら、
    希望の目が見えるまでいくらでも修行すりゃあいい。
    幸い、キノコ王国は環境が整いまくっていることだし。
    なんせ、生きた証人がここにいるしな」

121: Mii 2019/05/06(月) 04:21:47 ID:GkZ4yLvE
ルキナ「…………無理、です。
    私は、そんなことができる才能も、甲斐性も、持ち合わせていないようですから。
    王家の血筋でありながら、このありさま…失望していただいてかまいません。
    …私1人、地獄の世界に舞い戻ったところで…何も、成し遂げられない」

リンク「…………へえ?」

ルキナ「…いま、このキノコ王国で催されている大会のこと…少し、伺いました。
    かつての英雄のマルス様や、アイク様と話をすることができたことは、
    とても光栄でした。…とても、暖かい人たちでした。

    …この大会が終われば、みなさん、元の世界に、
    元の時代にお帰りになられてしまう。

    ルフレさんに付いていくことも、私には考えられない。
    彼には…彼の、彼らの守り上げた世界がある。
    それを私が享受することなど、絶対に許されません。

    今の私には結局…絶望のままここで命を絶つか、
    足掻こうとしてみて無残に魔物たちに惨殺されるか、の二択しか残されていない。
    だったら――」



――はっと、する。
――私を厳しい目で睨んでいた彼が、とても穏やかな表情であったから。

122: Mii 2019/05/06(月) 04:24:48 ID:GkZ4yLvE
リンク「なるほど。纏めると――」

――一旦、彼は、思案顔となり。



リンク「ルキナは…自分の置かれた絶望感に押し潰されるほど、ヤワな戦士じゃない。
    ただ…誰にも頼れない、頼っちゃいけないっていう孤独に耐えられないんだな。
    いやあ、俺にもかつてあった心情のはずなのに、気付くのが遅くなって申し訳ないっ!」ピコーン

ルキナ「えっ…?」

何かに合点がいったのか、人差し指をピン、と突き立てる姿に、目を見開く。
何を…言っているのでしょう。

リンク「わかる、わかるぞその気持ち!
    俺も、マリオやピーチの存在にどれだけ救われたことやら!」ウンウン

私の理解し切れない状況のまま――。



リンク「……よし、決めた。
    そんなに一人が怖いっていうんなら、俺がタッグ、組んでやるよ。
    魔物がなんだ!邪竜がなんだってんだ!
    みんなまとめて成敗して、ルキナの世界にも平和を取り戻そうじゃないか、なっ!」



――私は、固まることしかできませんでした。

123: Mii 2019/05/06(月) 04:27:19 ID:GkZ4yLvE
リンク「というわけで、ルフレには悪いけれども…
    ルキナを鍛えることが最優先事項となりましたーっと。
    …あ、今の精神状態からすると、いきなりは無理っぽいか。
    まずは、ルキナが普通に笑えるくらいまで励ますことにするか。



    という訳で、抱えている不安や愚痴があったら、いつでも俺にぶつけろよー。
    変な遠慮、躊躇はお呼びじゃありません。ただの迷惑ですから。
    吐き出した分だけ、ルキナの心は絶対に軽くなるからな。
    まあ、専門知識持ってるDr.マリオやピーチにも色々尋ねてみるといい」



――景色が、歪む。

124: Mii 2019/05/06(月) 04:30:04 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺なんかが想像もできないくらい、辛いこと、悲しいこと、あったんだよな。
    歯痒くて、夢にまで出て、だけどどうにもならなくて。
    ルキナの性格だから、表の顔では必死に堪えて、陰で散々泣いてきたんだろ?

    …よくここまで、一人で――たった一人で、頑張ってきたな。お疲れさん。
    だけど、今後は…俺や、他の人を頼っても、いいんだ。むしろ頼れ。
    そうすりゃきっと……希望だって見えてくるはずさ」



――ポン、と頭に手を置かれる。
――限界、でした。





ルキナ「うわあああああああああああああああああぁぁぁ――――……」



――堰を切ったように感情が、爆発して、彼に抱き着いて。
――月灯りの元で、嗚咽を漏らしながら泣き叫ぶこととなったのでした。

125: Mii 2019/05/06(月) 04:32:58 ID:GkZ4yLvE
リンク(…………俺、勇者リンク。

    昔、女性に抱き着かれたことがあったようななかったような気もするけれど、
    それほど慣れているプレイボーイじゃないんですけれどもっ!
    さすがに引き剥がすのはルキナが傷つくだろうからしないけれど、
    ファイ、これ浮気じゃナイカラネ!?そこんとこヨロシクッ!)ダラダラ









~とある一室~

ファイ「…ふむ。私は子を生せませんし、マスターに人間の伴侶が居ても…
    それはそれでよいと思うのですが。分け隔てなく接してくださるでしょうし。
    マスターの子供の才能が楽しみです」

任天堂スタッフ「…いきなりどうしたんですか、ファイさん?」

ファイ「…申し訳ございません、電波をダウジング…いえ受信してしまったもので。
    ……それで、この区画をこのように開発してですね…」ピッ

任天堂スタッフ「ほほう、これは中々思い切った改造を…」

126: Mii 2019/05/06(月) 04:34:37 ID:GkZ4yLvE
~病室~

ルキナ「……見苦しいところを、お見せしました」カァァ

リンク「は、はは。大丈夫、当たってはなかったから」

ルキナ「なくはないですっ!!!」

リンク「…はい?なんのことだ?」

ルキナ「……ななななんでもありません!」

リンク「お、おう」

ルキナ「…………」

リンク「うん、よかった。だいぶ、元気は出たみたいだな」

ルキナ「……私の自覚としては、まだまだ絶望の中にいるつもりなのですが」

リンク「…いや、そんなことはないぞ?なんとかなるかもしれないっていう心が、
    目に光を宿らせることになってる。…もう自殺未遂なんてやめてくれよ?」

ルキナ「……はい」コク

127: Mii 2019/05/06(月) 04:36:04 ID:GkZ4yLvE
――――でも、やっぱり。
――――視線は再び、下を向く。

ルキナ「ここまでしていただいて、本当に情けない話なのですが。
    すこし考えてみれば、あなた1人が加わったところで。
    …いくら、あなたが素晴らしい戦士だった、ところで。
    
    …状況が大きく変わることなど、ありえない。
    そう、自覚して…冷め切ってしまう自分が、いるのです」

――敵は、あまりにも強大。
――取り返しのつかないところまで、成長してしまった。





リンク「…………言ったな?」





ゾワッ…。



ビクッと一瞬恐怖して、動転して、何事かと顔を見上げて。
…彼の全身から迸る威圧であることに気付きました。

128: Mii 2019/05/06(月) 04:37:16 ID:GkZ4yLvE
リンク「…じゃ、証明してやるとしますか。
    俺の力があれば、きっと問題を綺麗さっぱり解決できるって…
    ルキナが認めざるを得なくなるまで」

ルキナ「…そ、それは、どういう…」

リンク「じきにわかるさ。
    …身体面としては、もうどこも悪くないんだよな?
    今日は、出かける準備をしておけよ。
    明日も、明後日も、明々後日もだ」



彼が、部屋から出て行こうとします。

――よく、わかりません。
――でも、なにか…とんでもないことを、私のためにやってくれる…
――そんな気がして、なりません。



ルキナ「あなたは…どうして、私のために、そこまで…!」



私の投げかけに、彼は振り向きはせず、ただ少し立ち止まり――。

129: Mii 2019/05/06(月) 04:38:45 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺さー。正直、勇者って肩書き、好きじゃないんだよね。
    色々と苦難の道を強引に歩まされてきたからさ。
 
    まあ、それでも。
    勇者ってなんだろう、自分は何ができるんだろうって、
    最近は考える余裕も出てきた。
    
    …で、アバウトながら俺が出した結論がある。




    勇者ってのは、溢れんばかりの勇気を持って冒険する奴…ではあってほしくない」



ルキナ「…えっ!?」



私の驚きなど気にも留めず、背中を向けたまま。
背中の盾をビシッと親指で示してみせる。

130: Mii 2019/05/06(月) 04:40:25 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺が目指す勇者ってのは…

    どんなにカッコ悪くたっていい。時には怖気づいたっていい。








    『誰かに勇気を与えて、冒険したくさせる奴』だからな!!」






ルキナ「――――っ」



息を、飲む。
今度こそ、彼は…病室を出て行った。

131: Mii 2019/05/06(月) 04:45:16 ID:GkZ4yLvE
リンク「おっ?ピーチじゃないか。見回りか?」

ピーチ「ごきげんよう。ルキナを助けてくれて、ありがとうね。よっ、この色男!」

リンク「色男は余計だ」



小悪魔的笑いを浮かべるピーチの横を、訝しみながら通り過ぎる。



ピーチ「それで?ここから、大逆転優勝でも狙うつもり?
    いくらなんでも、マリオとクッパを舐めていないかしら?
    いくら同情したくなるからって、手加減する2人じゃないわよ?」

振り返りもせず、ピーチは語り掛けてきているのだろう。
横目で悪戯っぽく様子を伺うピーチが容易に想像できた。

リンク「舐めてなんかいないさ、2人の強さは十分すぎるくらい知ってる。
    …だからこそ、だ。

    実力が拮抗しているからこそ――
    勇気を与える使命に燃えた勇者を舐めてると…
    痛い目に遭うからな?」ニヤリ

ピーチ「わあ、怖い。じゃあ、そんなリンクに…去る前に、ひとつ、言っておくことがあるわ」

リンク「へえ?」

132: Mii 2019/05/06(月) 04:48:57 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「ルキナに請求する訳にもいかないから…







     壊した壁代とガラス代、後で請求書出しておくからね?
     特に意匠が施されたガラスは…高くつくわよ?」




リンク「………………………………………………………
    …………………………保険とか効かない?」タラリ

ピーチ「効きません」シレッ

133: Mii 2019/08/17(土) 20:30:37 ID:u/po2OBc
~翌日…観客席~



ルキナ「えっと…Qの101、Qの101…」キョロキョロ



チケットに記載されている座席番号だけを頼りに、
人波をかき分けて、あちらへフラフラ、こちらへフラフラ。
体調が芳しくないわけではなく――単純に、人が多すぎます。

…ああ、ようやく、手を振っているルフレさんが見つかりました。
よかった。間に合わないかと思いました…。



ルフレ「ルキナ―、こっちこっち!」

ルキナ「お待たせして申し訳ありません、ルフレさん。
    
     …これが、試合会場ですか。改めて、圧倒される広さですね。
     それにしても…このエリアって…初見の私でもわかるのですが、
     相当な特等席なのではないですか?」

そう呟くと、同じことを思っていたらしいルフレさんが、非常にばつの悪そうな顔をします。



ルフレ「そ、それがさ…」

134: Mii 2019/08/17(土) 20:33:52 ID:u/po2OBc

・・
・・・

リンク「すいません、S級席ってまだ空席ありますか?
    1つ…いや、2つほど確保したいんですが」

受付「申し訳ございません、全て完売しておりまして…
   …って、リンクさんですか?一体どうされたのですか?」

リンク「急遽、ちょっと招待したい人たちができてですね…そこをなんとか!
    席の増築とか、できませんかね!このとーり!」テヲ アワセル

受付「い、いきなりそう言われましても…。
    と、とりあえず本日分のキャンセル待ちということで…」





リンク「あ、大会終了までの残り2カ月分、固定席が欲しいです」

受付「」

135: Mii 2019/08/17(土) 20:35:34 ID:u/po2OBc
リンク「とりあえず、前金でこれだけ支払っておきますから。
    確保してくれたら更に同額払います」





大金ルピー×100「」ドドン

受付「」





・・・
・・


ルフレ「…という感じだったらしい」

ルキナ「…………そ、そうなのですか。
    …あ、確かに座席が急ごしらえっぽい感じです」

ルフレ「ぼ、僕たちのお尻の下に、
    数年は豪遊して暮らせるお金が眠っている…」ガタガタガタガタ

ルキナ「み、身の毛もよだつようなことを言わないでください!」ブルッ

136: Mii 2019/08/17(土) 20:38:07 ID:u/po2OBc
――来ました。来てしまいました、リンクさん。
――指示されるまま会場に来てしまい、ルフレさんと共に縮こまりながら…
――会場の中央を、ぼんやりと眺めます。

――試合が始まるのを、待っています。




マスターハンド「さあさあ!今日も絶好の試合日和!
         いつも以上に晴れ晴れと――試合開始のカウントダウンですっ!」



リンクVSマルスVSトゥーンリンクVSブラックピット



ブー!ブー!
リンク、イイカゲン、マジメニヤレェー!!コラー!



ブラックピット「フンッ!絶不調の今なら、リンクといえど恐るるに足らず!
         徹底的にボコってやるか、クックック…!腕が鳴るぜ!」シュッ シュッ



ピット「おーいブラピさん!ご都合主義な地獄耳ってことで忠告しておくけどっ!
    お前今、変なフラグ立てたぞ!立てちゃったぞぉ!」

137: Mii 2019/08/17(土) 20:40:54 ID:u/po2OBc
マリオ(控え室)「…こ、こいつは――」

クッパ(控え室)「…どうなっている」





マルス「…………」ジッ

トゥーンリンク「あ、わ、わわわわわ…」ガタガタ

マルス「…君も、感じるんだね?トゥーンリンク?」

トゥーンリンク「あ、あれの、ことだよね、うん。
        マルスさんの戦士としての直感というよりは、
        同じ『リンク』としての共鳴のおかげなんだけど、ね。

        も、もともと『本体』と『分身』の差があるから、
        勝てるとはさらさら、思ってなかった、けど……」

マルス「なるほど、『リンク』だけに共鳴ってことか、うまいなあ!」

トゥーンリンク「そ、そんなネタで笑っている暇じゃないよう…」チラッ

138: Mii 2019/08/17(土) 20:45:29 ID:u/po2OBc



リンク「スゥ―…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



リンクは 闘志を 燃やしている!
リンクの やる気は 満 タ ン だ!▼



ブラックピット「んー?なーにをお目々を瞑ったまま剣を突き立てて、
        微動だにしないのかなー?リンクさーん!
        もしかして、俺にビビった?ビビったかなー?」ケラケラ

トゥーンリンク「ブ、ブラックピットさーん…
        本体さんを煽ってないで…早く逃げた方が…いいよー?」コゴエ

マルス「いやまあ、しかし…不謹慎かもしれないけど、僕は幸せ者だな。
    最高のコンディションの…最強の相手の先鋒を任されるなんて。
    ぼろ負けすると分かっていても、武者震いで疼きが止まらないよ。

    ああ、アイクの羨ましそうな顔がありありと浮かんでくるよ」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「…マルスさんも、たいがい思考が戦闘狂寄りにひん曲がってないかな…?」

139: Mii 2019/08/17(土) 20:51:52 ID:u/po2OBc
マルス「ははは、何を言っているんだい。僕は何時だって戦闘狂だよ?
    相手が強ければ強いほど、ね。伊達に長生きしてないし。
    …あ、生きてるって表現は微妙に間違っているのかな?」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「うう…そうこう言ってるうちにも、本体の覇気に、飲まれそう…
         っていうか、既にガブリと飲み込まれ噛み砕かれてるぅ…!」ガタガタ



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、バトル開始です――!」

ブラックピット「ボーっとしてるなら遠慮しないぜ!食らいやがれ!」ダダッ




リンク「……………………20秒」カッ

140: Mii 2019/08/17(土) 20:53:36 ID:u/po2OBc
私には、何が起こっているのか、わかりません。
目の前で起きたことが、頭で理解できません。

…ああ、どうやら、その感想は少し、間違っていたようです。
「私には」では、ありませんでした。

手にしていた「そふとくりーむ」とやらをポトリと下に落として、
口をあんぐりと開けたままの隣に座っていたルフレさんも。

周りの…いえ、会場全体に詰めかけている観客の皆さんも。
実況解説の人…人?たちでさえも。
しぃんと、静まり返っています。理解を放棄しています。

そして、10秒ほど経ったころ。





――ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!



たちまち、会場は…爆発的な歓声に包まれました。
これでも、称賛には控えめと思わされます――!

141: Mii 2019/08/17(土) 20:57:43 ID:u/po2OBc
マスターハンド「じゅ、じゅ、17秒!?…これ、は、夢ではありませんっ!
          試合開始からわずか17秒です、信じられますでしょうか!?

         リンク選手、突進体勢のブラックピット選手を小ジャンプからの神速の強弓で返り討ち!
         衝撃波を纏いながら、なんと、開始2秒で奈落の底へ!

         間隔も空けずブーメラン投擲、トゥーンリンク選手とマルス選手、辛うじて回避!…したつもりが、なんとしたことだ!
         投擲直前に繰り出されていたと思われるバクダンが括り付けられており背後で爆発ぅ!

         あまりの早業にたたらを踏んだ両選手に、今度は怒涛の勢いで正面強攻!
         トゥーンリンク選手は2合で、マルス選手すら4合で斬り伏せられたぁ!!
         最後は威風堂々、迫力満点の大回転斬りで締めましたぁーーーーっ!!

         た、たった今入った、お知らせですっ!
         初代スマブラ――マリオ選手によってもたらされた、『28秒』が1試合の最短記録でしたがっ!!
         今回、それを大幅に更新する奇跡の1戦となりましたぁ!!」バクバク



マルス「ぐふっ…………剣先鍔迫り合いなんて狙う暇すら…なかった………」チーン

トゥーンリンク「集団虐められ、はんたーい……」チーン

ブラックピット「」チーン

観客「」

142: Mii 2019/08/17(土) 21:01:49 ID:u/po2OBc
ルフレ「す、すごい……!!なんて、強さだ…!」

ルキナ「…………!!」

強い、なんて表現では足りなすぎます。
…これが、勇者の、底力…!!

何か、私の心に、確かに灯るものが、有る気がします――。



ここ最近は、リンクさんの戦績がよろしくなかったようです。
…主に私のせいであるということを知り、申し訳ない気持ちで一杯です。

ま、まあ。そのこともあってか、
突然の復活に、会場のどよめきは収まることを知りません。
彼の名を連呼し続ける、観客のみなさん。
会場全体の雰囲気が、天を駆ける龍のように、躍動しています。

143: Mii 2019/08/17(土) 21:07:07 ID:u/po2OBc
……さらに、リンクさんは、己を、私を、奮い立たせる行動に出ました。



マスターハンド「…あのー、リンク選手?控室に戻られないのですか?」

リンク「あー、次の試合を待っているだけの俺のことは気にしないで。
    フィールド整えたいならどうぞどうぞ、邪魔はしないから」

マスターハンド「ま、まさか休憩を取らず連戦されるつもりですか?
        リンク選手といえど、明らかに不利になってしまいますが?」

リンク「このまま気持ちを途切れさせず、テンションを維持することによるメリットの方が
    デカいと勝手に考えてるので、お構いなくー」ググッ

リンクは まだまだ はりきっている!▼


        
マスターハンド「なんと!?素晴らしい気合いの入りようであります!
          ……では、そのようにさせていただきます!」

ウオオオオオオオオオオオォォォォォ――――!!!

リンクさんの挑戦的な意志に、会場は一層沸き立ちます…!



リンク「…さあ――俺と戦いたい奴、不調に付け込もうと思ってた奴。
    いくらでも、掛かってこいやぁ!!」ドンッ!

144: Mii 2019/08/17(土) 21:11:58 ID:u/po2OBc
~夕方、控え室~

リンク「どっはーぁぁぁ…………ち、ちかれた……。
    よ、よーし、今日はこのくらいにしておくかー。
    いわゆる、勇気と無謀は違うって状況だよな、うん!

    …お、マリオにクッパ!どうよ、俺の活躍見てくれたかー?
    ここ最近で最高に最強だったと我ながら思ってるんだけど」ゼェゼェ

マリオ「…滅茶苦茶なブーストが掛かってたな。
    1000ポイント以上差が開いて、もはやリンクは優勝圏外かと思ってたが。
    今日だけでポイント荒稼ぎして、100ポイント縮めやがった」ゴクリ

クッパ「あれだけ圧勝試合を繰り返したからな。…これはまだまだ油断ならんな。
    だが、リンク。別にお前が強くなったわけではない。
    一時的なテンションの高まりで戦闘力が底上げされているだけなのだ」

リンク「それで結構。理解してるし、気にしないよ。
    現に、今はこうして反動でグロッキー状態だ、しな…。

    でも、だからこそ、だ。分かっているからこそ――この底上げのおかげで――
    今回の大会、俺が、ぜぇったいに、勝ぁつっ!
    勝利に、ただひたすら、貪欲に!行ける所まで突き進んでやるっ!」ビシィッ!

145: Mii 2019/08/17(土) 21:15:50 ID:u/po2OBc
マリオ「言ったな、リンク!」ゴゴゴゴゴゴ

クッパ「生意気な!その言葉、のし付けて返してやる!!」ゴゴゴゴゴゴ

リンク「なんの、それこそ返り討ちってもんよ!」ゴゴゴゴゴゴ



受付「」ブクブク

ディディーコング「」ガクブル

ルイージ「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない
     怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない」

ピーチ「3人とも!さっさと覇気を鎮めなさいよ!
    強烈すぎて受付どころか他の選手まで失神者が続出してるんだけど!」

パルテナ「うう…まともに…立って、いられま…せん。
     キャプテンファルコンさんは、よく仁王立ちしていられます…ね…?」フラッ

キャプテンファルコン「」

パルテナ「……??」チョン

キャプテンファルコン「」バターン

パルテナ「……………………あ、あれ?立ったまま気絶してた?
      もしもし?もしもーし?」ユサユサ

146: Mii 2019/08/17(土) 21:18:39 ID:u/po2OBc


特に取りこぼしらしい取りこぼしもなく、先を行くマリオ、クッパ。



日程の3分の1が過ぎた頃にようやく、猛追を始めたリンク。



まだまだ大勢控える、歴戦の戦士たち。



さて、栄冠は誰の手に――――

147: Mii 2019/08/17(土) 21:21:49 ID:u/po2OBc
マスターハンド「相変わらず、雨知らずの天気っ!晴男でもいるのでしょうか!?
          満員御礼も相変わらずなのは大変うれしいことです、ありがとうございます!
          それでは、今一度、気を引き締めて――試合開始のカウントダウンですっ!」



クッパVSリザードンVSワリオVS Wii Fit トレーナー

ワー!ワー!
クッパ、オウエン シトイテヤルゾー!



クッパ「フンッ、生意気な声援を浴びせる市民どもだ。身の程をわきまえろ」

ワリオ「と言いつつ、内心嬉しいクッパさんでありましたとさ」

クッパ「……そこ、うるさい」

ワリオ「でもよ、俺は納得いかねーのよ。お前に対する声援の方が大きいってのがよー。
    俺様がお前に劣ってるってか?そんな評価、糞くらえってんだ」

クッパ「ほほう、ならば実力を以って知らしめれば良かろう、単純な話なのだ」

ワリオ「まー、そーゆーこったな、分かってるじゃねーか」

148: Mii 2019/08/17(土) 21:25:13 ID:u/po2OBc
リザードン「グルルル…」

クッパ「おっと、リザードン。お前も、もちろん強者であることを忘れてはいないのだ。
    ぶっちゃけると、ワガハイとマリオとリンクは別格だが…
    その少し後ろから…淡々と着実に迫ってきている…くらいの実力は、しっかり認めているのだからな。
    パワータイプであったり、炎を吐いたりという共通点もあることだし」

リザードン(グッ)

ワリオ「俺より評価高くね?それ。ムカつくんだが。
    悪気はねーが、リザードンなんて所詮は…
    数多のポケモンのうちのとある1体に過ぎないじゃねーか。

    言ってみれば『通行人A』みたいなもんだぜ?
    選ばれし戦士でも、ラスボスでもないんだぞ?いやまあ赤版の顔ではあるけど」

リザードン「……」イラッ

149: Mii 2019/08/17(土) 21:28:27 ID:u/po2OBc
クッパ「ワリオ、口が過ぎるぞ」

ワリオ「悪い悪い…そりゃ、俺もこいつの強さは認めてるけどよー。
    というか、なんでこいつ、こんなに強いわけ?おかしくねぇ?」

クッパ「強いものは強いでよいではないか、本人たちの努力の結果なのだ」








パルテナ(観客席)「リザードンは…というか初代ポケモン勢は、その――

            バージョン違いの本編ソフトが各世代、
            外伝ソフトも割とあり、果てにはポケスタ系統にバトレボと
            それこそキノコ王国メンツに劣らないくらい、
            プレイアブルとして出まくってますよね…」

ピット(観客席)「え、赤版とファイアレッド版以外もカウントされるんですか!?
          さすがにアーケードは含んでいないことを祈りますよ!?」

150: Mii 2019/08/17(土) 21:32:21 ID:u/po2OBc
クッパ「で」

ワリオ「だ」



Wii Fit トレーナー(女性)「今日も 一日 頑張りましょう!」ビシッ



クッパ「…どちら様?」

ワリオ「表情が読めん」



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」

151: Mii 2019/08/17(土) 21:35:41 ID:u/po2OBc
Wii Fit トレーナー「……」スゥゥゥゥゥ

クッパ(よく分からんが、精神統一を始めたな。ヨガの類か?
    まあ、すぐに動かないというなら、彼女は放置でいいだろう)

クッパ「よし、リザードン!まずは一発景気づけに、
    灼熱ブレス対決と行こうではないか!怖気づくなら無理強いはせんがな!」ボオオオォォォォ!!

リザードン「ガオオォォォ!」ブオオオオオオォォォォ!!

リザードンの かえんほうしゃ!▼



ワリオ「うおっと、退散退散っと!バイビー!」スタコラサッサ

マスターハンド「フィールドど真ん中でブレスと火炎放射のいきなりのぶつかり合い!
          これは会場の熱気以上に、熱い熱い戦いになりそ――」ゴクリ

152: Mii 2019/08/17(土) 21:42:20 ID:u/po2OBc





ワリオ「そこ、試合開始前からせっせと溜めてた――
    超可燃性ブレンドの透かしワリオっぺ(威力MAX)あるぞ」





ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

実況「大爆発が決まったぁ――――――――っ!!!!!」

クッパ「」

リザードン「」

Wii Fit トレーナー「」ガフッ

153: Mii 2019/08/17(土) 21:52:08 ID:u/po2OBc
マスターハンド「一目散に退避したワリオ選手を除き、不意の大爆発で、
          全員…壁や足場に叩きつけられましたぁっ!!」

ワリオ「ガハハ…ざまあみやがれ。続けて…ニンニクの息っ!!」ムハーッ



クッパは 毒を 浴びた!▼

リザードンは そらたかく とびあがった!▼

Wii Fit トレーナーは 猛毒を 浴びた!
代謝が 良すぎて 毒の巡りが 早い!▼



実況「いきなりの激しい攻防で、状態異常の選手が続出ですっ!
    いきなりの大乱戦となりましたっ!」

クッパ「ぬおお!!ワリオ、流石に卑怯だぞ!!」ボロッ

ワリオ「いやあ照れるぜ」

クッパ「褒めてない!…うぐ、不快すぎる臭いまで充満して…」

リザードン「フッ!!」アセリ

クッパ「くそっ…そうだなリザードン。
    もうこれ以上、下品な攻撃は食らっていられないのだ!」

154: Mii 2019/08/17(土) 21:59:08 ID:u/po2OBc
クッパJr.「パパ、頑張れー!そんな、いろんな意味で汚いやつなんか、
      けちょんけちょんにしちゃえー!」

ラリー「オイラ達の偉大なるクッパ様がお前なんかに負けるかー!」

ロイ「まあまあ。強者同士の対決、暖かく見守ろうよ。どっちも頑張れ!
   …あ。その前に、体操のお姉さんが…あまりにも強烈なニンニクの匂いに
   顔を一層白くして痙攣しだしてるけど…あれ、大丈夫かなあ……」

ウェンディ「ねぇイギー、ロイってこんなに身長高かったかしら?
      こんな立派な剣も持ってなかった気がするんだけど」ヒソヒソ

イギー「ん~…………イメチェン?……強そうだからまあいいんじゃない?」ヒソヒソ

モートン「オラ…あのワリオってヤツ、嫌い。ナマイキ」

レミー「クッパ様が本気を出したらオマエなんてかーんたんに吹き飛ぶぞ!」

ルドウィッグ「皆、そんなに騒ぎおって…。我々は、ただ悠然と構えて
        約束された勝利を目に焼き付ければいいだけだ」シレッ

155: Mii 2019/08/17(土) 22:02:14 ID:u/po2OBc
ピーチ「あーあ、クッパが激怒しちゃってる。知らないわよ…?
    …それにしても、ゼルダもヒルダもロゼッタも付き合い悪いわね、
    ちょっとくらい観戦に付き合いなさいよー。

    というより、せめてゼルダはとっとと1戦くらい戦いなさいよ、
    なーにを日和ってるのかしら」ブツブツ

マリオ「八つ当たり気味に借り出された俺がいるけどな。
    …よし、次はどのドリンクバーを混ぜてくるかなー」

ピーチ「子供かっ!」ビシィッ

マリオ「いやいや、残さないから問題ないし。
    このくらいの糖分なら、1分足らずでらくらく消費できるしな。
 
    …それに、俺は至極真面目に挑戦してるぞ?
    HPやFPを回復する画期的な組み合わせが見つかった例もあるからな」

ピーチ「なにそれもっと聞きたい!」ワクテカ

マリオ「…また今度な」

156: Mii 2019/08/17(土) 22:05:21 ID:u/po2OBc
キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
     た た た 大変です――!」ダダダダダッ



マリオ「…………げげっ」

ピーチ「…………また来たぁ」ガクーン

キノピオ「すすすすいません!なんとお詫び申し上げればよいか!」

ピーチ「…………………………………………で、今度は、なぁに?
    できれば、悪いお知らせでないといいんだけれど」

キノピオ「…………」

キノピオ「えっとぉ、そのぉ。それが…」オドオド

ピーチ「……………………で、どんな悪いお知らせかしら?」

マリオ「どうせまた、ろくでもないことが起こったんだろ…?」ヤレヤレ

157: Mii 2019/08/17(土) 22:07:55 ID:u/po2OBc
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…
      Mr.ゲーム&ウォッチさんのハンマーが――何者かによって持ち去られてしまった模様で、
      悲しみのあまりオイルパニックになったMr.ゲーム&ウォッチさんのせいで
      修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!」

ピーチ「また窃盗事件ですって――!?いい加減にしなさいよ!」ウガーッ!!

158: Mii 2019/08/17(土) 22:10:07 ID:u/po2OBc
Mr.ゲーム&ウォッチ「」ズウウゥゥン



ピーチ「うわ、すさまじいしょげ方をしているわ。
    …しょげているのよね?間違ってない?
    表情じゃあ、ちょっとわからないんだけど」

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ハッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ ババーン

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ デンッ ピコッ ピロロロロロ

ピーチ「本当にごめんなさい、言葉もちょっとわからない!
    この控室に通訳できる方いらっしゃらないかしら!?」

サムス「そもそもどうやって招集できているのか疑問なんですけど」

ピーチ「サムス、だまらっしゃい。…あれ?そういえばキノピオ?
    そもそも…ハンマーが盗まれたって情報、どうやって把握したのよ、キノピオ」

キノピオ「ああ、それなら。偶然通りがかった……」

159: Mii 2019/08/17(土) 22:13:14 ID:u/po2OBc

・・
・・・

ポケモントレーナー「……?」ピタッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

ポケモントレーナー「……」

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

ポケモントレーナー「………………!」フムフム

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」パアアアアア

・・・
・・


キノピオ「といった具合です。あとはニャースさんが通訳を」

ピーチ「そ、そう……ポケモントレーナー、あいかわらず一体何者…」

キノピオ「『万が一見つからないようなら、次の大会には
      自動乱数調整でジャッジ9しか出ないチートハンマーを
      新調してくるから覚えておいてよ』とも愚痴っているそうです」

ピーチ「それはやばいわねはやくみつけてあげないと」ガタガタ

160: Mii 2019/08/17(土) 22:15:17 ID:u/po2OBc



むらびと「ぼくじゃないよ、あれから周囲はよく観察するようにしてるし」ムスッ



ピーチ「う、疑ってないわよ」

むらびと「呼び出しておいて?」

ピーチ「…ごめんなさいちょっと疑ってました」

むらびと「むー…まあ、いいけどさ。事故とはいえ悪いことをしちゃったのは事実だし。
     ほかに、ハンマーを盗めそうなスキルやアイテムを持ってる人はいないの?
     というより、ロゼッタお姉ちゃんにもう一度、調査してもらった方が早くない?」

ピーチ「まあねぇ。でもロゼッタったら、ゼルダやヒルダを誘って…
     観光やら修業やらに勤しんでいるみたいで。あんまり邪魔をするというのもねえ。
     今日は自分に合った戦闘用アクセサリーを探してみます、とか言ってたわ」

むらびと「う、それはちょっと…確かに頼みにくいなあ」

161: Mii 2019/08/17(土) 22:20:02 ID:u/po2OBc
Mr.ゲーム&ウォッチ「」ズウウゥゥン

Mr.ビデオゲーム「とりあえず、俺の『ウルトラハンマー』貸しておくよ。
           最近使ってやれてないし、フル活用しちゃってくれ。…使い方、教えておこうか?」ジャジャーン

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ワーイ




~フィールド~

Wii Fit トレーナー
「――腹式呼吸!  ――腹式呼吸っ!!  ――腹式呼吸っ!!!
 だ…大地よ 海よ そして会場に詰めかけているすべてのMii ファイター………
 このわたしに ほんのちょっとずつだけ 運動貯金を 分けてくれ―っ!!」ゴオオオ!!

格闘タイプMii「うおおおおお!」10プンカンブン!

剣士タイプMii「でやああああ!」30プンカンブン!

射撃タイプMii「まかせろおお!」1ジカンブン!

Wii Fit トレーナー「…ああ、感じます!みんなの、元気の力っ!!」ブウウウウウゥゥン!

ワリオ「」

リザードン「」

クッパ「回復しつつ攻撃力を複利計算で高めるなあぁー!!物言いだ物言い!」

162: Mii 2019/08/17(土) 22:23:14 ID:u/po2OBc
ピーチ「ねえねえ、正直に答えてほしいの。
     彼のハンマー盗んだの、貴方だったりしないかしら?」スッ・・・





ソニック「ないない。なんでそんなことする必要があるのさ。
     そりゃあ、オレの自慢の快速なら――特殊能力なくても奪えないことはないけどな!」



デデデ「ないわー。愛用のハンマー裏切るとかないわー」ヘッ



ドンキーコング「ハンマーなど邪道、己の体で勝負だろ」ハア?



ロボット「…………」

へんけいアームに くみこめたら たのしそうだなと
ロボットは ちゅうにごころから ちょっと ほしそうにしている▼

ゲッコウガ「ゲコゲコ(変幻自在ウッドハンマー欲しいでござる)」ニンッ

ニャース「草結びで我慢しろ…というかそっちのほうがいいだろと言いたいにゃ」

163: Mii 2019/08/17(土) 22:26:21 ID:u/po2OBc
ピーチ「事情聴取も無駄骨だったかあ…
    なんか、一部参考にならない供述をしてくれちゃってるけれど。
    ああ、由緒正しき大会で二度も窃盗事件とか…あたまいたい」ガックリ


Mr.ビデオゲーム「よしっ!教えたとおりにやってみろ!
           タイミングよくボタンを離せ――じゃなかった、
           地面に振り下ろせよ……せーの!」



Mr.ゲーム&ウォッチ「…………!!」ピコッ・・・ ピコッ・・・ ピコッ・・・ パーン!

ピーチ「え、ちょ、ちょっと待って、ここ控え室なんだけd」





Mr.ゲーム&ウォッチの ウルトラジシーン!▼

ピーチ「!?」

164: Mii 2019/08/17(土) 22:28:49 ID:u/po2OBc



ジャッジ判定……………………マグニチュード、9!▼



ドッシイイイイイイイイイイィィィィン!

ピーチ「私はセーーッフ!!でも威力ひゃくじゅうぅぅー!?」フユウデ アタラナイ!

Mr.ビデオゲーム「でぇじょうぶだ、この建物頑丈なうえに免震機能完備だから」



ルカリオ「あばばばばばばば」グラグラグラグラ

ピカチュウ「チャァー!?」グラグラグラグラ

プリン「……ぷり?」ジブンガ フウセンデ ウイテイル!

リザードン「…………」コウカハ ナイヨウダ・・・

ゲッコウガ「…………ケロッ」ツバメガエシ マニアッタデゴザル

ポケモントレーナー「…………」ハイケイ セーフ!

ピーチ「部屋内で一部もろに食らってる選手がいるわよ」

165: Mii 2019/08/17(土) 22:31:52 ID:u/po2OBc
――緊急地震速報です。
――本日午後19時02分ごろ、強い地震が発生しました。
――震源地はスマブラ試合会場付近、マグニチュードは推定9.0、
――震源の深さは地上…地上?15メートルとされます…。
――この地震による津波の心配はありません…。

――え、震度が2しかないから緊急地震速報で流す必要がない?
――た、大変失礼いたしました!誤報です!
――引き続き、スマブラの大会をお楽しみください!



ルカリオ「おいマリオふざけるな」ボカボカ

ピカチュウ「チャァ!(怒)」ポカポカ

マリオ「あ、はい調子のりましたすいません。
    彼の素質が中々の物だったもんでついついイタタタタ」

Mr.ゲーム&ウォッチ「…………!」\アラーム/

ピーチ「そして貴方は二度とやらないで」

166: Mii 2019/08/20(火) 21:24:20 ID:Unt4Zq0c
ピーチ「ほんと、御免なさいね。折角の買い物の途中に呼び出して…
    それではロゼッタ師匠、どうかよろしくお願いいたします」

若干おどけながら、ロゼッタにバトンを渡す。
…結局、頼ることになっちゃったわね。
我ながら、他人任せとは恥ずかしい。主催サイドとして失格ね…。

ロゼッタ「い、いえいえ、お構いなく。
      ゼルダ姫とヒルダ姫のアドバイスもあって、買い物も順調に済みましたから。
      …えっと、また犯人探し…ですか。わかりました。お任せください!
      探索の参考とする類似アイテムとして…マリオのウルトラハンマーをお借りしますね。

     Mr.ゲーム&ウォッチさん、貴方のハンマーと…十分近しいですか?」

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ポーン

ロゼッタ「…ポーン?…えっと。それでは、微力ながら頑張らさせていただきます!
     むむむむむ…………えいっ!」ポワーン

ロゼッタが…杖を片手に目を瞑り、再び行われる、詠唱。
二回目ともなれば、皆、落ち着いて観ていられる。

…そういえば、最近、ロゼッタの周りにチコたちがいないわね。
嫌に珍しい。一体全体、どうしたのかしら。

167: Mii 2019/08/20(火) 21:31:53 ID:Unt4Zq0c
ロゼッタ「……」

ロゼッタ「…………みつかりました」ホッ

おおおおお、という驚嘆が、控え室を包み込む。

むらびと「すごいや!こんなに簡単に見つけ出すなんて!
      ロゼッタお姉ちゃんがいれば、探偵はいらないね!」

ピット「ハックションッ!……あれ、風邪かな?」

ファルコ「見事なもんだな、まったく」

ロゼッタ「あ、あはは。まあ、本当に見つかるまでは疑心暗鬼でいきましょう、ね?」

ピーチ「さすがね!よっ、人気者!…それで、場所はどちらかしら!?」



正直、若干の焦りがあるわ。さっさと解決してしまいたい。



ロゼッタ「どうやら、あっちみたいですね。ちょっと歩きますよ…………」

まあ、ロゼッタが見つけたというなら、確実ね。
さあ、みんなで安心して付いていきましょう。
問題は、誰がまんまと盗んでのけたのか、に尽きるのだけど…!

168: Mii 2019/08/20(火) 21:35:57 ID:Unt4Zq0c


辿り着いた場所…は、意外にも程がある場所だった。



ピーチ「…………ほんと、頭が痛いわ…」コメカミ オサエ

ファルコ「……野次馬の俺だからこそ他人事で言えるが、こりゃ酷ぇな。
     自覚無しに盗みましたパート2ってか。怒るに怒れなくてなお酷ぇ」

ロゼッタ「……そうみたい、ですね」ウーン



Mr.ゲーム&ウォッチのハンマー…で合ってる、はず。
あんなに真っ黒なハンマーだし。うん、間違いない。



ピーチ「動物の本能じゃ、仕方ない…と、言いたいとこだけど。
    悪いけど、私、機嫌が悪いの。すさまじく。2時間ほどお説教ね。
    …自分でも知らずにいつの間にか拾い集めてたとか……」ジロッ

ダックハント「クウゥン……」ショボーン

――会場からちょっと離れた公園に、いつの間にやら設置された…
――犬小屋の中に積まれたガラクタの中に、紛れ込んでいた。
――え、なに?主催者の私をからかうにもほどがあるんじゃないかしら。
――神様、私のこと嫌い?

169: Mii 2019/08/20(火) 21:39:39 ID:Unt4Zq0c
ピーチ「というか、ちゃんとした部屋を用意してあげるから!
     そこで期間中過ごしなさいよ!わかった!?ここ、公共の場所!
     どっからこの犬小屋持ってきたのよ!?…え、自作した?やるわね!」

ダックハント「クゥウン…」ションボリ

ピーチ「『ガンマンのための人用の宿泊施設がいい』ですって?
    そこまで気づかいできるなら人の物盗まないでよ!ああもうっ!」イライラ

ダックハント「クワァ!?」ビクッ

ファルコ「俺が言えた義理じゃねーが、落ち着けよピーチ」アセアセ

ピーチ「いい加減ストレス溜まってきてるのよこっちはぁーーーっ!!
    選手の間で『次は自分の所持品が無くなるんじゃないか』って雰囲気が
    漂い始めているの!神経尖らせすぎにもなるわよ!」

ピット「それより僕は、ピーチが犬の言葉を理解できてることの方が驚きだよ」

ピーチ「ピットだって、フォックスやファルコの言葉理解できるでしょ?」

ファルコ「よし、その喧嘩買った」

170: Mii 2019/08/20(火) 21:47:28 ID:Unt4Zq0c
ピーチ「冗談よ。無口勢や不思議存在勢に比べれば…
    犬の言葉を何となく把握するくらい、たやすいものよ」イライラ

パルテナ「なんだか、ストレスで倒れそうですね…
      無責任かもしれませんが、落ち着いて深呼吸なさってください」

ピーチ「……………………そう、ね。やっぱり、そう見えるわよね。はぁ…。
    いつもはこんなときは、デイジーに助けられてたんだけど、ね」ボソッ

パルテナ「デイジー…ですか?うーん、たしか…サラサ・ランドのお姫様ですね?
     ピーチ姫と親交が深いという」

ピーチ「基本的にダメダメお嬢様で、なんともしがたい、お茶らけた人間だけど。
    絶妙なタイミングでデイジーがボケて、私がツッコミ入れて。あるいはその逆で。
    周りの人のストレスを機敏に読んで、ほどほどに発散させるのが、得意な子なの。
    それこそ、時には自分から貧乏くじ引いてまで…周りを元気にしてくれる。

    天然である可能性もあるけどね。元気はつらつな起爆剤であり続けるいい子よ」

パルテナ「わあ、本人が聞いたら照れくささに身悶えしそうな高評価ですね」

ピーチ(むしろ聞いてても許すから助けてほしいくらいだけど…
    ほんと、今回の大会に参加してくれていないこと、悔やまれるわ……)ハァ





デイジー「クシュンッ。……風邪か?――まあ、どうでもいいや。
      さあ、続けて、行ってみようか…!」ニヤリ

171: Mii 2019/08/20(火) 22:02:49 ID:Unt4Zq0c
ピーチ「しっかし、こんな距離でも捜査可能だなんて。本当にロゼッタの空間魔法は有能ね!」

ロゼッタ「まあ得意分野ですから♪」ニヘラ

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」



マリオ「…………ん~?これで一応、めでたしめでたし、なんだよなあ…?
    …うーん?」

ルカリオ「めでたくない、めでたくないぞマリオ!
     おかげで明日まで療養が必要になった、私やピカチュウの身にもなれ!
     メガ進化からのつるまい適応力インファを食らいたいようだな!」

マリオ「俺が反省しなきゃならないってのは置いておけば、だ!これでいいだろ!?」

ルイージ「この際、しっかりとしたセキュリティシステムで持ち物を預かった方がよくない?」

クッパ「心配せんでも、ルイージの持ち物は取る価値のないような物ばかりだから大丈夫なのだ」

ルイージ「そっか、それなら安心だね…ってちょっと待ってよ!」

ギャーギャー……

ピーチ(もう、みんな呑気なんだから…羨ましい。
    …………お説教終わったら…………そうね、久しぶりに……
    ゆっくりお風呂に入って、美味しい料理でも食べて…さっさと寝ましょう…)

172: Mii 2019/08/20(火) 22:08:47 ID:Unt4Zq0c
~夜、情報管理室~

ピーチ「あ゛あ゛~」ブオオオォォ



リンク「…ワイン片手に、風呂上がりっぽい艶っぽさで、簡易着のまま…
    扇風機に『ワレワレハウチュウジンダ』宣言をしようとする5秒前の王国元首とか。
    こいつは珍しいものを見た。天変地異の前触れ?」

ピーチ「きゃあああっ!?…なんだ、リンクね。驚かさないでよ!」

リンク「んで、この部屋、何?スクリーンがいくつも並んでごっちゃごちゃだけど。
    ちなみに俺はルキナの体調報告ついでに司令部っぽい不思議部屋の探索に来た!
    明日は休養日にする予定だから、息抜きみたいなもんだな!」

ピーチ「よしきた不法侵入、逮捕よ逮捕。…まあ、冗談はおいといて。
     一応、大会を運営すべき立場として、一日の最後のお仕事よ。
    各位置に設置した監視カメラの簡易確認と、集計された報告やデータの解析。
    今はちょっと…疲れて魔が差したというか。忘れなさい。…よし、作業再開」カタカタ

リンク「うへえ、お疲れさん。なになに、どんなことが分かるんだ?
    こういう光景見ると、無性にワクワクするよな!」

ピーチ「純真すぎる勇者ね…」

173: Mii 2019/08/20(火) 22:13:21 ID:Unt4Zq0c
ピーチ「…まあいいわ、説明してあげる。説明しつくすまで帰ってくれそうにないし」
   カタカタカタカタッ

リンク「…………タイピング速すぎない?手元、残像が見えるんですけど」

ピーチ「月で鍛えたわ」フフン

リンク「なるほどわからん」

ピーチ「まずは当然、不審者や不審物の確認。必要ならば排除を検討するわね。

    いざこざが起こったら、周囲の状況を十分に吟味して…

    フラストレーションの適度な散逸と捉えて黙認するのか、
    あるいは介入するのか決めたり」カタカタカタカタッ

リンク「なるへそ、なんでもかんでも法で裁くぞーってわけには行かないのか」

ピーチ「その通りよ。王国民にしても観光客にしても、生活しにくくなるじゃない。

    迷子の誘導や警備の巡回経路決め。

    大会に影ながら貢献をしてくれた商店があったら、
    それとなく口コミ、掲示板で紹介してあげたり。

    物、人の動きの統計を取ることで流通を操作したり、ね。

    ああ、やることが一杯よ!」カタカタカタカタッ

リンク「それ絶対1人でやることじゃないよな」

174: Mii 2019/08/26(月) 21:22:27 ID:OHcTC85.
リンク「それにしても…すごいな、マジで。
    ありとあらゆる情報網も駆使して、大会運営を支えているんだな!
    とても真似できないな…



    でもマリオに聞いたんだけど、ピーチが1人で頑張りすぎると
    キノピオたちが全く成長できないんじゃ――」



ピーチ「…………」ピタッ

リンク「…………」



ピーチ「…………気のせいよ」メソラシ

リンク「…………キノセイカー、ナラシカタナイナー」

175: Mii 2019/08/26(月) 21:32:22 ID:OHcTC85.
ピーチ「ほ、ほかにもね!このボタン、押してみて?」サッ サッ

リンク「……これか?」ポチッ



ババババババッ!!



リンク「…うおうっ!?画面中に…履歴がびっしりと!」

ピーチ「これは、10日前の私の行動記録ねー。

    選手カードをいろんなところにかざして、特典が得られたことがあるでしょ?
    ゲートを通過できるだけじゃなく、食事が無料になったり、
    商品が安くなったり、要管理の特殊アイテムを扱えたり…。

    それらの履歴が、全部、カードの中にしっかり残っているのよ。
    これを調べれば、各選手が求めていることを整理して
    次回以降にしっかりと活かすことができるわ!」

リンク「――へぇ」

176: Mii 2019/08/26(月) 21:40:30 ID:OHcTC85.



ふむ、と俺は一思案。



選手カードがそこまでハイテクだとは、思ってもいなかった。
いや、キノコ王国の技術なら、このくらいお茶の子さいさいか。
もっと前の大会の時からある、ピーチご自慢のシステムなのかもしれない。



――もしかしたら、使えるかも。…いやいや、素人の絵空事か?



リンク「……………………」フム

ピーチ「…………どうしたの?それとも、凄すぎて声も出ないかしら?」フフッ

リンク「あ、いや。素人発想のツマラナイことだから気にしないで」

ピーチ「そう言われると気になるわよ…試しに言ってみなさいよ、ほらほら!
    私だからこそ気付かない盲点を、第三者のリンクがあっさり見つけてくれたのなら…
    それこそ万々歳ってものよ、ね?」

そうピーチはおどけて、ウインクして見せる。――ええい、ままよ。

177: Mii 2019/08/26(月) 21:50:54 ID:OHcTC85.
リンク「それじゃ、言うけど。

    今までの所、盗難騒ぎが2回あったよな?
    あいにく、俺はゴタゴタしてて、あんまり関与できなかったけど」

ピーチ「うぐぅ…改めて、不甲斐ないわね、私…そ、それで?」

リンク「使用した特典の記録だけと言わずさぁ。
    いっそのこと、最低限のプライバシー保護を施したうえで、
    移動履歴まで分かれば楽だったのになーって。
    今は非常事態だし、文句言う奴はそうはいないぞ。
    GPS機能くらい…ついてないの?

    ある2人の移動履歴が同時刻に重なってたら、
    一緒に行動していたか接触があったんだな…なんてこともわかるじゃないか。
    まあ、選手がカードを常に携帯していることが前提だけど」
    
ピーチ「……………………」

ピーチ姫が、目をパチクリと瞬かせる。
…あれれ、本当に盲点だったのか?

178: Mii 2019/08/26(月) 21:58:33 ID:OHcTC85.
リンク「……………………ピーチさん?おーい?」



ピーチ「……………………それよ!!!
    リンク、あなたって天才!?その手があったわ!!」ガバッ



のわっ!?…ビックリした。
がばぁっと上半身を乗り出したせいで寝間着が肌蹴かけたが、気にした様子はないようだ。
はしたないぞ、お姫様。

リンク「ま、まあ…今更って感じがあるけどな」

ピーチ「そんなことないわ!というより、GPS機能ならとっくの昔に機能中よ!
    データは全て本部…つまりここのデータベースに今でも送られてきているはず!」

リンク「そーなの?」

ピーチ「追跡するつもりはなかったから、機能をデフォルトOFFにしているけれど!
     1時間もあれば、ちょちょいとプログラム作成して全員の経路表示くらいやってみせられるわよ!!
    燃えてきたわーっ!!」ゴオオオオ

リンク「へえ、そりゃあ…。
    ……って、今から!?今から1人で取り掛かるのか!?
    抱え込みすぎだろそれ!?社畜か!?」

179: Mii 2019/08/26(月) 22:06:53 ID:OHcTC85.
~1時間後~



ピーチ「ZZZZZ……」クカー

ピーチは ちからつきた▼



リンク「…というわけです」

マリオ「…ったくー。まあでも、ほんとお疲れってところだな。
    おけおけ、メイドの1人か2人呼んで、キノコ城の寝室に放り込んでもらうよ。
    リンクもサンキューな」ピポパ

リンク「そうしてもらえると助かる…」





リンク「…え、キノコ城にメイドっているの?」

マリオ「そりゃあ…いるけど?数は少ないけどな。何をそんなに驚く」

リンク(雑用含めてピーチが全部1人でこなすから知らんかった…!)

180: Mii 2019/08/26(月) 22:16:31 ID:OHcTC85.
ドドドドドドドド――――!



メイド「ししし、仕事ですかぁ――――!?
    お仕事、ですかぁ――マリオ様っ!!」ドドドドドドドドド



マリオ「あ、え、うん」

メイド「広い広いキノコ城に、たった5人しか雇われなかったから!
    どれだけっ!どれだけっ!キツイ毎日になるかと思ったらっ!
    毎日毎日毎日毎日っ!1時間の水やりと、2時間の掃除をやるだけっ!

    大抵の仕事は技術班が製作したロボットや機械がやってくれるっ!
    ちょっとした応用事は、姫様御自ら…あっさりと片付けてしまわれるっ!
    気を使われているとしか思えない雑談にちょっと付き合ってっ!
    あとは寝ているだけで、美味しい料理が勝手に出てきて、高給取りっ!

    大変失礼ながらっ!!姫様は――

    私どもを、不甲斐なさと申し訳なさに苛みながら憤死させるお積りですかぁ!
    どうやら今は、デイジー様やロゼッタ様のような、気を許せるご婦人方もいらっしゃらないようで!

    1年半ぶり…いえ2年ぶりくらい?のまともなお仕事だひゃっほーい!!
    誠心誠意、丁重にキノコ城の寝室までお運びすればよろしいのですねっ!!」

マリオ「」

181: Mii 2019/08/26(月) 22:23:21 ID:OHcTC85.
メイド2「その役割、譲るわけにはまいりませんっ!!」ダダッ

メイド3「私こそが、もっともっと苦労すべき堕落者なのでございますっ!!
     どうかその役目、お譲りください!」フンッ!

メイド4「倒してでも 奪い取る!」ズサァッ

メイド1「よし、では正々堂々…じゃんけんで!」

メイド2「異議なし!」



――じゃーんけーん……



メイド5「こうやってバカ騒ぎして、肝心の姫様を放置する…漫画的ノリが一番ダメ。
     というわけで、冷静沈着な私は勝手な決めごとを無視して
     姫様をさっさと運ばせていただきます。好きなだけジャンケンしておいてください」ヨイショ

ピーチ「ZZZ……」



マリオ「…なんだこのコントは」

リンク「やっぱり俺の感覚の方が合ってたじゃないかマリオさんや」

182: Mii 2019/08/26(月) 22:31:35 ID:OHcTC85.
~深夜~

カタッ カタッ カタタッ…。



リンク「さってと…見よう見まねで、解析解析ぃっと。
    マリオに断ったうえで、今回迷惑をかけた罪滅ぼしも兼ねて
    ひとりぽつんと黙々と、解析を進めてるリンクさんでしたー。
    明日は休みだしなー!

    さっすがピーチ、初心者の俺でも簡単に推測できるところまで
    操作方法を落とし込んでいてくれてるぜ!助かる!
    キノコ王国が誇る頭脳とはこのことだな!」カタッ カタッ

リンク「試しに200時間くらいは、みんなの足取りを地図上で追ってみて…
    実用性を確かめてみるかあ!まずは俺の選手カードのデータから!」バッ



リンク「ここで、食事を摂ってるな…」

リンク「…あー、これは会場で暴れまくってた状態か。光点が動かないや、はは…」



リンク「ここで残機が減ってるな…っておいぃ!変な叫び声の効果音とかやめぃ!
    …シーカーストーン機能?なんだよそれは!」ウガー

183: Mii 2019/08/26(月) 22:40:47 ID:OHcTC85.
~1時間後~



リンク「ようやく終わった…って、もう1時間経ってるのか。
    しみじみと思い出しながらだったから時間食ったなあ。
    次からはテキパキ確認していくか。さあ、2人目っと!」



~更に1時間後~



リンク「なるほど、マリオもクッパも、中々試合会場に入り浸ってたんだな…
    優勝条件が厳しいってのは変わらないな、気を引き締めないと。
    さあさあ、どんどん行くぞ!」



~更に2時間後~



リンク「……ふわぁ…えっと…やべっ、ちょっと寝落ちしてたか…。
    ちょっと巻き戻して、経路を追い直すか…眠くなってきた…」

184: Mii 2019/08/26(月) 22:49:22 ID:OHcTC85.
~更に2時間後~

リンク「…眠い…眠すぎる…でも中途半端にやめたくない…。
    寝るな、寝るなよ、俺。こんなにすぐ寝るから、
    いっつも寝ぼけているところから冒険がスタートするんだぞ…くう…。

    えーっと、次は…ダックハントの移動がぁ……………
    なんだよコイツ、絶対このあたり、人の家の敷地か地下水路通ってるだろ…
    自由奔放すぎる奴だな………ふわぁ…」

リンク「…………あれ、また寝落ちかよ、巻き戻し巻き戻し…………
    あ、そういや…休養日では、あるけど。
    ルフレを修行してやる、約束、してたっけ……」パタリ








~明朝~

マリオ「おーいリンク、おはようさん。調子はどうだ…………」ガチャッ

リンク「ZZZZZ・・・」

マリオ「おい」

ピーチ「あらまあ」

185: Mii 2019/08/26(月) 22:56:12 ID:OHcTC85.
リンク「いやー、引き受けておいて自分が途中で眠るとは面目ない。ふわぁ…
    朝食まで持ってきてもらえるなんて、至れり尽くせりだな」モグモグ

ピーチ「まったく…まあ、有難うね。本当は私の役目なのに手伝ってくれて」

マリオ「でもさ、使い勝手はチェックしたんだから十分じゃないのか?
    あとでピーチと情報共有しておけよ」

リンク「そのつもりだ…と、言いたいとこだったんだが。
    …せっかくだから、先に全員分の行動履歴を見ておきたい。
    ま、引き続き作業したいってことで、いいかなピーチ?」

ピーチ「まあ…好きにしていいけど?興味がわいたっていうんなら」

リンク「よしきた!…さてと、今日も一日頑張りますか!ルフレの特訓はあるけど!」ウーン



リンク(ちょーっと、気になることができたんだよなー…)

186: Mii 2019/08/26(月) 23:04:27 ID:OHcTC85.
キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ



ピーチ「…………きゃああああああああああぁぁぁ!!!
    マリオ、バトンタァァァーッチッ!」ズサァァッ!

マリオ「混乱状態を引き継ぐから嫌です。
    とんぼ返りかボルトチェンジにしてください」

ピーチ「ボケてる場合じゃなーい!もう嫌なのっ!!
    私の精神摩耗がマッハなのよっ!」ウルウル

キノピオ「ににに逃げないでください姫様!
      正真正銘の一大事ですっ!!」

ピーチ「無茶を言わないでー!」ダダッ



マリオ「…………今度は」ヤレヤレ

リンク「…………何さ?」アキレ

キノピオ「あの、ええとっ!!!」マッサオ

187: Mii 2019/08/26(月) 23:13:24 ID:OHcTC85.
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…早朝からの大、大、大事件ですっ!!
      キノコ城の一区画が突如、何者かによって襲撃を受けて…
      宿泊されていたロゼッタさん、ゼルダさん、ヒルダさんが危険な状態ですっ!
      …はぁっ!言えたあ!」

3人「「「!?」」」

188: Mii 2019/09/10(火) 06:05:57 ID:.pV0z6vc


――キノコ城の一画は、異様な光景に包まれていた。
――モクモクと、黒煙が無情にも立ち上る。


――構造物があちこち崩れ、モニュメントが原型を留めず消し飛んでおり…
――まるで、戦争が、あったかのよう。



――ロゼッタの後ろ姿が、見えた。
――一刻も早く駆け付けたいと、走る、走る。



――酷いくらい血まみれで這いつくばって、なおも手を伸ばしてもがく彼女の姿があった。


――手を向ける先には、立ちすくむことしかできていない、ゼルダとヒルダ。
――彼女たちも、ロゼッタ同様…満身創痍であることが見て取れる。
――位置関係からして、ロゼッタを…庇った?

189: Mii 2019/09/10(火) 06:08:17 ID:.pV0z6vc
――そして。

ピーチ「…なに、あれ」ゾッ

リンク「…ブラック、ホール?いや違う、時空の…ハザマ?」

直径30メートルはあろうかという、光と闇が混ぜこぜになった謎の円盤が…
ごうごうと重低音を立てて鈍く回転しながら、こちらに面を向けている。
力なく立ちすくむ2人との距離は――





たったの、1メートルくらいしか残されていなかった。





じり、じりと吸い込まれていく。

ヒルダ「―――――――」

ゼルダ「…こん、なのに。負けてやるもの、ですか。
    …ヒルダっ!死にたくなかったら足掻きなさい!早く!」

激しい陰圧に、対抗し続けていたらしいゼルダ。
しかし、離れること、叶わない。動かないよう踏ん張ることすら、限界が来たみたい。
踏ん張る足元が震え、摩擦の跡を激しく残しつつ――ずる、ずると下がっていく。

190: Mii 2019/09/10(火) 06:11:30 ID:.pV0z6vc
ロゼッタ「ああっ!マリオ、ピーチ姫っ!お二方を…どうかお二方を、
     助けてあげてくださいっ!私ではどうすることもっ!!」ポロポロ

ロゼッタがこちらにようやく気づき、必死の訴えを行う。
声を張り上げることすら、辛くてたまらないはずなのに。

ピーチ「…っ!よし、後は任せてロゼッタ!
    マリオにリンク、無責任で悪いけど分析なしに突っ込んで!
    回復は私がなんとかしてみせる!」

マリオ「了解っ!」

リンク「任せろ!」ザッ!







――そして、絶望的に、救出には時間が足りなかった。

191: Mii 2019/09/10(火) 06:15:06 ID:.pV0z6vc
「――あ」

その放心の声は、一体誰の声だっただろうか。



ヒルダの体が。
そして、間もなく、ヒルダを必死に引っ張ろうとしていた、ゼルダの体が。
吸引に、とうとう捉えられた。

ヒルダ「…い、や。死にたく、な――」ウツロ

ゼルダ「…なんとか、生き永らえてみせます、か――」ギリッ

2人の体が、円盤の中に、消えていく。
体が、光の粒になって、溶けて、いく。

ものの3秒で、完全に――消え去った。

カッと、一瞬だけ、一際眩しく光り輝いたかと思うと…
謎の回転体は――緩やかに動きを遅くしていき…
ぴしり、と音を立てたと同時にひび割れ。ぱりんと、割れた。

そこに、ゼルダとヒルダの姿は…残って、いない。



ロゼッタ「嫌あああああああああああああああぁぁっ!!!!」

192: Mii 2019/09/10(火) 06:18:14 ID:.pV0z6vc
病室は、あまりにも重苦しい空気が立ち込めている。

ロゼッタの治療そのものは割とすぐに終わったものの、
彼女はただひたすら泣くばかりで。己の無力さを呪う言葉を吐くばかりで。
誰も、声をかけることができない。そんなこと、おいそれと、できようがない。

むらびとが、あまりにも不安だったのか、私のドレスをクイクイっと引っ張った。

ルキナが、自分の境遇に重ねてしまったのか、既に涙目になっている。

なんとか慰めてあげてほしい、ということらしい。…わかってる、わかってる、けど…。



ロゼッタ「わ、私が…もっと強ければっ!こんなことには、ならなかった、のに…!!」ポロポロ



――私は、この王国のトップ。今回の大会の、主催者。
――感情のまま、立ち往生してはいられない。必要なのは客観的な即断力。

――城の一画の修復作業は絶賛開始中。ただ、大会中の完了は絶望的。
――事態の収拾に向けて、今ここにいるロゼッタ警護役以外の選手たちは…
   すでにグループに分けてパトロールに向かわせた。



――未だ、ゼルダとヒルダは、見つからない。
――それでも、やらなければならないことは、あるらしい。

193: Mii 2019/10/07(月) 05:11:44 ID:1o4lZnlk
マリオ「精神摩耗の激しいピーチにばっかり、頼ってられないな。
    ここは俺に任せとけ」ズイッ

ピーチ「…悪いわね、私自身も…一杯で」

眩暈も結構ある感じ。心も体も調子が悪すぎる、はぁ…。



マリオは小さく「気にするな」とだけ答えて、ロゼッタの傍に立つ。



マリオ「ロゼッタ、2人が何処かに囚われたのは…断じて、
    ロゼッタのせいなんかじゃない。ロゼッタは最善を尽くしてくれた。
    ロゼッタを恨む奴は…それこそ、ハイラル代表のリンク含めて、誰もいない」

リンク「ああ、その通りだぞ、ロゼッタ。
    むしろ、2人のことをそこまで想ってくれて、本当にうれしいよ」ニコッ

ロゼッタ「で、ですが――――!」ポロポロ



視線を彷徨わせながら、ロゼッタは蚊の鳴くような声で呟く。
ホント、損な性分をしているんだから。

194: Mii 2019/10/07(月) 05:13:39 ID:1o4lZnlk
マリオ「いいか、聞いてくれ、ロゼッタ。
    キノコ王国の、そして俺たちの威信にかけて。
    いなくなった2人は、なんとしてでも取り返す。
    だから、元気を出してくれ」ポンッ

ロゼッタ「…ふ、ふたりが、生きている保証なんて、ど、こにも――」ポロポロ

マリオ「それがあるんだよ、実は」フフン

ロゼッタ「――――――――――ほ、ほんとう、ですか!!」



一瞬固まって目を見開いた後、涙顔のロゼッタが、ようやくまともに顔を上げる。
…ロゼッタの体格が大きいせいで。ベッドに寝た状態とか関係なく。
ロゼッタの目線の高さ>マリオの目線の高さなのは気にしない。



マリオ「ほい、ピーチ解説」

……あ、ここで唐突に振ってくるの?ごめん、分かってないんだけど。
一拍遅れて、ブンブンと首を振る。

195: Mii 2019/10/07(月) 05:15:07 ID:1o4lZnlk
マリオ「あー…ピーチがそこまでポンコツ化しているとは重症だな…。
    いや、別に大したことじゃない。

    『あの不可思議なチカラに、ロゼッタが捉えられなかった』という事実。
    これが全てを物語っているんだ。

    どういう戦いがあったかは知らないが、ロゼッタ。
    お前も、2人と同様に攻撃を受けたんだろう?」

ロゼッタ「…は、はい!その通りです!
      朝起きて、3人で朝食を摂っているさなかに、いきなり激しい爆発音が。
      何事かと駆けつけてみれば、城のあちこちが酷いありさま。

      慌ててピーチ姫に連絡を取りに行こうとしましたが、
      その場を動くことも叶わない怒涛の攻撃と引力を身に受けて、
      あ、あのような…状態に――!」



より発言の自信を増したとばかりに、マリオが腕を組んで頷いた。

196: Mii 2019/10/07(月) 05:16:30 ID:1o4lZnlk
マリオ「そんなところか。…でもそれ、よく考えるとおかしいんだ。

    キノピオが気付いて、一目散に俺たちを呼びに来るまでの時間。
    俺たちがキノピオの一報を聞きつけて向かうまでの時間。
    正直、かなりの時間だけ後手を引いちまってる。それなのにだ。

    言っちゃ悪いが、ヒルダはともかく、ゼルダが太刀打ちできない攻撃に…
    ロゼッタがあそこまで対抗できるはずがないんだよ。
    ゼルダはどっちかというとヒルダを庇うのに専念してたみたいだし」

リンク「…確かに。強さ的にはゼルダ姫>>ロゼッタ>>ヒルダ で合ってるよな?」

クッパ「…ふむ」



…い、言われてみれば。でも…それって、どういうこと?
――――まさか。



マリオ「暗躍する者――何者か未だに分からんが――
    やろうと思えば、ロゼッタだって難なく亡き者にできたはずだ。
    ロゼッタ自身が思い切り白旗を上げていたしな。

    それが、満身創痍とはいえ助かった。
    これは、『あえて助けた』という考え方をするべきだ」


ざわっ…と、限られた人数しかいない病室が騒がしくなる。

197: Mii 2019/10/07(月) 05:18:30 ID:1o4lZnlk
むらびと「そそそ、それって、どういうこと!?」

マリオ「つまり、犯人の目的は、恨みで選手の命を奪うこと…とかじゃない。
    どっちかというと、慌てふためく俺たちをみて愉しみたいっていう愉快犯だな。
    
    都合よく、これまで事故が小刻みに起きてきただろう?
    その情報を何らかの方法で入手して、便乗してやろうとか考えたんだぜ、きっと。
    犯人の思惑通り、今の俺たちのテンションはズタボロだ」

むらびと「最悪じゃん、そんなの!」カッ

マリオ「…だが、逆に言えば、命を奪うことに執着をしているわけではない、と言える。
    いつぞやのディメーンよろしく、むしろ生かして交渉材料に使った方が
    犯人サイドとしても動きやすいからな。

    結論として、生きている可能性も割と高いと言える」



しぃんと病室が静まり返る。
各々が、マリオの言葉を一語一句、頭の中で噛みしめている。

198: Mii 2019/10/07(月) 05:20:15 ID:1o4lZnlk
ピーチ「…でも、今のマリオの推測自体に、わりと多分に希望が混ざってるわよね。
    確実に真綿で締めるように命を奪っていくことに悦を感じる…
    猟奇的な犯人だったらどうするの?」

マリオ「……そんな谷底に付き落とすような発言しないでほしいんですが。
    それを言われると『後の祭です、どうしようもありません』と無慈悲に返すしかないじゃん」


 
…それも、そうか。



でも、周りの皆は、マリオの意見に同調しようとしている。
ゼルダとヒルダの生存を、信じようとしている。

なら、私もそう動くだけ。



マリオ「やれやれ、ピーチの横槍が入っちゃって話の締め方が難しいけど…
    ともかく、ロゼッタ。繰り返すが…2人は、絶対、助けて見せる。
    俺に、俺たちに、任せとけ!!」

ロゼッタは、マリオを見つめる。
更に更に、大粒の涙を流し始める。
そうよね、心配しないで、ロゼッタ。なんとしてでも、彼女たちは――!

199: Mii 2019/10/07(月) 05:22:30 ID:1o4lZnlk
ロゼッタ「――――――――っ!!お願い、いたし、ます――っ!!」ガバッ

マリオ「へぶっ」



感極まってしまったのか。
上半身をガバッと動かしたロゼッタが、反応が遅れたマリオに――
マリオの頭を抱え込む形で、思い切り抱き着いて一層激しく泣き出した。








ピーチ「…………」



ピーチ「……………………」



ピーチ「…………………………………………
    ちょっと待ったああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」

200: Mii 2019/10/07(月) 05:24:27 ID:1o4lZnlk
ロゼッタ「…はい?」ナミダメ

なぜ急に叫ばれたのかがわからないのか、顔だけこちらに向ける、涙目のロゼッタ。



マリオ「」

何気に成長してきた胸を押し付けられて、完全に石と化したマリオ。



リンク(あ、なんかデジャブ)

ルキナ(あ、あ、ああああ…)カァッ

おいそこ、なにがあった。ああ、あの夜の邂逅か。
…って、そうじゃなーい!



ピーチ「感動したのは分かったから、とっととマリオから離れなさいよゴラァ!
    マリオもさっさと引きはがしなさーい!!!」グイッ

マリオ「」



マリオは こおってしまって うごかない!▼

201: Mii 2019/10/07(月) 05:26:02 ID:1o4lZnlk
むらびと「よし帰ろう」クルッ

ファルコ「賛成」クルッ

クッパ「おっと持病の仮病が」クルッ

リンク「管理室で解析の続きしよーっと。あとはヒーローのマリオに任せよう」クルッ

ルキナ「あ、ええと、ええと。私も、お暇させていただきます」クルッ



ロゼッタ「ピーチ姫、痛いです!強く引っ張らないでくださいっ!」ギューッ

マリオ「」

ピーチ「抱きしめる力強くするなぁ――!
     ああもう、なまじ病人相手だから力加減が難しいっ!?
     アンタたちも手伝いなさいよぉ薄情者――!!!」



…結局、ひっぺがすのに5分程度費やしました。
益々、体がふら付いてきた気がする…。

202: Mii 2019/10/07(月) 05:27:50 ID:1o4lZnlk
マリオ「…………」ハッ

ピーチ「よし、とっとと退散するわよ、こんなとこ!」

ロゼッタ「そう、ですか…」ショボン



ようやく、マリオが正気に戻ったし…やってられないわ…。
名残惜しそうにするロゼッタを一切振り返さずにマリオと一緒に病室を出る。
無自覚とはいえ、ロゼッタ、恐ろしい子…!





マリオ「…………」



マリオ「…………」



マリオ「…………」



マリオ「…………………………………………やれやれ」ハァ

203: Mii 2019/10/07(月) 05:31:12 ID:1o4lZnlk
~情報管理室~

リンク「…………」ジーッ

……やっぱり、寝ぼけての勘違いとかじゃなかった。おっかしいなー?
うーん?何故に?どして?



コンコン。



リンク「どうぞー?」

マリオ「お、やってるやってる。どんな感じだ、リンク?」ガチャッ

リンク「お、色男のおでましだ。お疲れさまっしたー」ケラケラ

マリオ「お前だけには言われたくない」

リンク「…なんでさー。
    え、調べてきた内容?あ、マリオも聞いてくれよ。
    みんなの行動履歴を紐解いて行ってるんだけど、なんか腑に落ちないんだ」

マリオ「ほほう?どんな具合に?」

リンク「百聞は一見に如かず、だな。…ちょっとこいつを見てくれ」カタッ カタッ

204: Mii 2019/10/07(月) 05:33:23 ID:1o4lZnlk
パッ!!

リンク「これ、ダックハントの行動記録ね。
    道なき道を、すっげー縦横無尽に動いているのが呆れるけれど。
    選手カードをほっぽり出したりしていなくて助かった」

マリオ「うわ、あちこちで無料食事イベントに有り付いてやがる。
    食欲に忠実だなあ、ははは。…会話とかどうしたんだろ」

リンク「そんでもって……ほいっと」カタッ カタッ



パパパッ!



マリオ「あ、履歴の線が1本増えたな。これ、誰のだ?」

リンク「Mr. ゲーム&ウォッチのだよ。まあ、ダックハントに比べれば
    ずっと行動範囲は狭いな。大して施設利用履歴もないし」

マリオ「あのなりで一般施設に入ったらギョッとされるから自重してるのかな。
    だとしたら悪いことをしたな…。
    
    で、いろんなところで線が交差してるな。
    このどこかで、Mr. ゲーム&ウォッチがハンマーを落として、
    他の人に気付かれる猶予さえなくダックハントがつい拾っちゃったと」

205: Mii 2019/10/07(月) 05:35:30 ID:1o4lZnlk


リンク「いや、それ、違う」



マリオ「…違う?」



リンク「線だけ見ると重なってるけど、どの交点も時間帯がずれてばっかりだ。
    最低でも1時間は…ずれてる。





    ほぼ同時刻に2選手が同地点にいた形跡、なんてものは…………
    この2選手間には――存在しない」




マリオ「…………なんだって?」

リンク「あんな目立つハンマーなのに、通りかかった人が悉く無視するなんて、
    有り得るのか…?まあ気味悪がられ続けた可能性が0とは言えないけど…」

マリオ「……!!」

206: Mii 2019/10/07(月) 05:38:19 ID:1o4lZnlk
リンク「あ、ついでにさ。その後で、むらびととファルコの相互関係についても、
    なんか気になって調べてみたんだよ。

    むらびとは…『シロ』だ。

    さっきと同じく、同時刻同地点の状況がなかった。
    こっちについては、どう言い訳しようが『ぶつからないと』
    アイテムの移動が起こり得ないんだっけ。訳が分からなくなってきてるよ…」

マリオ「……サンキューな、リンク。
    おかげで、ほっそいほっそい俺の仮説が信憑性を増してきたぞ」

リンク「は?なんだよそれ?」ハァ?

マリオ「ときにリンク。もう、全員分の行動履歴を調べ上げたのか?」

リンク「あ、いや。プライバシーのことも考えて、とりあえず女性陣は後回しにしてた。
    ピーチに止められたらそこで素直に止めておくか…って感じで。
    まあ、ようやく男性陣および性別不明陣の解析が終わったから、
    そろそろ申し訳ないが女性1人目のサムスについて調べ始めようと…」

マリオ「そりゃあ、ちょうどいい。
    …順番変更だ。ゼルダとヒルダについて追跡を開始してくれ。
    とりあえず急ぎだから、現在の位置だけでいい」

リンク「…………!!!あ、そりゃあ、最初からそうすべきだったな、迂闊っ!!
    早速やってみるぜ!現在の2人の位置…どうぞっ!」カタッ カタッ

207: Mii 2019/10/07(月) 05:41:58 ID:1o4lZnlk


パッ!!パッ!!



リンク「…ああっ!!」

表示は…………なんと、大会会場を示している!



リンク「と、とりあえず、会場にいる…というか、
    どこかのフィールドに幽閉でもされているのか!?
    くそっ、さすがにこれ以上拡大はできないか…!」カチッ カチッ

マリオ「実は2人とも既に命はなくて、
    俺たちを誘導するために選手カードだけ罠設置されている、
    とかでなければな」

リンク「おっそろしいこと言うなよ…
    よ、よし!急ぎ、みんなで捜索に…!」

マリオ「いや、そのまえに、あと1つ…いや、2つだけ」

リンク「ど、どうしてだよ!急いだ方がいいだろ?」

マリオ「いいから、頼む」

208: Mii 2019/10/07(月) 05:44:44 ID:1o4lZnlk
リンク「……わかったよ。そこまで真剣な顔をされたら断れないよ。
    で、なにをすればいい?」フッ

マリオ「その2人の履歴、なんだが。
    ちょっと時間は掛かるけれど、今の光点の位置が動き始めるまで、
    どんどん履歴を遡っていってくれないか?」

リンク「…は?別に、いいけど。
    昨日までは普通に、ロゼッタとあちこち見て回ってただろ…?」

マリオ「いいからいいから」

リンク「無駄なことが好きだな…じゃあ、いくぞ?」カタッ カタッ



【1時間前 動きなし】

リンク「こんなの見て、なにか分かるのか…?」フゥ



【2時間前 動きなし】

リンク「…………」

209: Mii 2019/10/07(月) 05:46:33 ID:1o4lZnlk
【4時間前 動きなし】

リンク「…………あり?そろそろ動いてもいい頃、だよな…?」



【24時間前 動きなし】

リンク「…………え、なにこれ、おかしいだろ?壊れてるのか?ここまで見させておいて」





【1週間前 動きなし】

リンク「はああああああああ!?」






【1か月前   動 き な し 】

リンク「」

マリオ「はあああああぁぁぁ……………」タメイキ

210: Mii 2019/10/07(月) 05:51:40 ID:1o4lZnlk
リンク「なんだよなんだよ、なんだってんだよ、これ?
    何がどうなってるんだ!?」



訳がまるでわからない。
普通にいたよ!ゼルダ姫とヒルダ、ふっつーにいたよ!?



リンク「…ハッ!?ま、まさかその頃から、
    選手カードを会場に落としてたとか、か?
    おっちょこちょいすぎるだろ」

マリオ「ちゃうちゃう」

マリオは満足と呆れが混ざったような…不思議な顔をしている。
何か合点がいったらしい。幸か不幸か。

マリオ「混乱しているところ悪いが、2つ目のお願いだ。
    …………ロゼッタの履歴、同じように追跡してほしいんだけど」

リンク「お、おう…………わ、わかった…」



それが、マリオの仮説とやらを信じる助けになるのなら。

211: Mii 2019/10/07(月) 05:54:02 ID:1o4lZnlk
~数日後、とあるフィールド~

ロゼッタ「あ、あのう。怪我は完治しましたが、一体どうして私は、
     こちらに連れて来られたのですか?おまけに…」



リンク「それは、俺もマリオに聞きたい」

クッパ「全くなのだ、忙しいというのに」

マリオ「まーまー。ごねるピーチをなんとかかんとか躱して、
    ようやくロゼッタを連れ出せたんだから。

    一応一命を取り止めたとはいえ、現状で一番…
    命を狙われる可能性があるのは、間違いなくロゼッタだ。
    力の弱さを完全に理解されてしまったからな。
  
    というわけで、ちょっと俺たち『3強』が、一夜漬けででも――
    ロゼッタを鍛えてあげた方がいいと考えたまでだ」

212: Mii 2019/10/07(月) 05:55:55 ID:1o4lZnlk
ロゼッタ「……ええっ!?あなた方を相手に、特訓、ですか!?
     私などではとても耐えきれませんよ!?」

マリオ「なに、心配するな。思いっきり手は抜くから。
    それに、3人のうちロゼッタの相手をするのは1人だけ、と決めておく。
    残り2人は、ロゼッタの戦術・身のこなしをじっくり観察して、
    あとでアドバイスする、というスタイルを取ろうと思う」

ロゼッタ「無茶ですよね!ね!」チラッ



リンク「…まあ、3強全員が時間を奪われるなら、優勝争いに不公平は無し、か。
    いいぜ、やってみよう」

クッパ「…やれやれ、なのだ。やるからには徹底的に、なのだ」

ロゼッタ「」

213: Mii 2019/10/07(月) 05:58:20 ID:1o4lZnlk
マリオ「判断がおそーい!バックステップが甘―い!」ドンッ

ロゼッタ「あいたっ!…あ、でもなんとか…耐えられる」ドンッ

マリオ「手加減はするって言っただろ?でも余所見はするなよ、
    うんざりする位の攻撃は繰り返すぞ、反撃してみろ!」ダッ

ロゼッタ「わわわっ…や、やってみますっ!」

マリオ「どうしたどうした、そんなんじゃあ
    キノコ王国の平和は任せられないぞー!」ズガガガ

ロゼッタ「そのような大役、任された覚え有りませんよ!?」





リンク「…………」メモメモ

クッパ「…………」メモメモ

214: Mii 2019/10/07(月) 05:59:38 ID:1o4lZnlk
リンク「当たり前のことを言わせてもらうけど、
    避ける実力も十分にないのに、剣に対して正面から突っ込むなよー!
    冗談抜きで真っ二つになるぞー!俺、みねうちは得意じゃないんだ」ブンッ

ロゼッタ「ひいいいいぃぃっ!手加減の文字はどこに!?」




クッパ「…………」メモメモ

マリオ「…………」メモメモ



クッパ「炎こそが最強!全てを焼き尽くせば解決なのだ!
    ロゼッタの実力だと、掠っただけで全身に火が回るかもしれんぞ!
    服だけ燃えて裸になるとかは気にしなくていい!体ごと燃え尽きるからな!」ゴオォ

ロゼッタ「きゃあああああああああ――――っ!!
     逃げるしかないじゃないですか――!!」タタタッ





マリオ「…………」メモメモ

リンク「…………」メモメモ

215: Mii 2019/10/07(月) 06:01:20 ID:1o4lZnlk




マリオ「これにて特訓、しゅーりょー!!いやあ、よく頑張ったな」



ロゼッタ「はぁ、はぁ、はぁ…………」チーン



マリオ「いやあ、寝そべってピクリとも動かない」

クッパ「全く、特訓と言えどやりすぎなのだ」

リンク「俺はマリオがピーチに天誅受けないか心配だぞー」

マリオ「それは考えない方針で」HAHAHA



ロゼッタ「…で、では。皆さん、お疲れさまでした。
     私は、戻ることに…致します」ヨロッ

216: Mii 2019/10/07(月) 06:04:08 ID:1o4lZnlk
リンク「あ、そのまえに、ロゼッタ。
    最後の保険として、俺からこいつを、大会期間中、貸しておくよ。
    マリオからしつこく頼まれたもんでね」



キラーン!




ロゼッタ「……これは、なんですか?
     とても美しい、腕輪ですね。吸い込まれそうな…」

リンク「『いにしえのシルバーリング』って言っていう、激レア防具でな。
    手首に装着しているだけで、あらゆるダメージを10分の1程度にしてくれる
    失われたはずの国宝級産物だ。ゼルダ姫に激怒されそうではあるけどな。
    しっかり固定できるから、肌身離さず持っておけ…というか装着しておけよ?」

ロゼッタ「じゅ、10分の1!?反則級ではないですか!
      最初からこれをくださいよ!?」スチャッ

217: Mii 2019/10/07(月) 06:06:34 ID:1o4lZnlk
リンク「装着したところで…突然の騙し討ちぃ!」ブンッ!



ガツンッ!!



ロゼッタ「きゃっ!?ああああ、あぶないじゃないですか!?酷すぎます!」ドサッ

リンク「今の剣戟、痛かった?結構本気出してたけど」

ロゼッタ「……………………痛く、ない」

リンク「よしよし、性能はバッチリだな」

ロゼッタ「あ、ありがとうございます!!」パアア

リンク「呼び止めて済まなかったな、じゃあ、今日はゆっくり休んでくれ」

ロゼッタ「本当に、お世話になりました!」タッ タッ タッ

218: Mii 2019/10/07(月) 06:11:07 ID:1o4lZnlk
マリオ「…………」



リンク「…………言われた通り、あのリングを渡したけど…さてと」



クッパ「…………それで」








リンク「俺たちのいる場所と…『ロゼッタたち3人が』いる場所、
     違うのはなんでだ?」

クッパ「ログに有った『FP(フィギュアプレイヤー)』って…なんだ?」

マリオ「  『Rosalina? 再チャレンジ数:0回(3Dワールド)』  は
     いくらなんでも言い逃れできないよなあ…やれやれ…
     抱き着くことでばれるとか、本人と同じく、墓穴は掘りやすいんだなあ…」

219: Mii 2019/10/07(月) 06:13:19 ID:1o4lZnlk
~1か月以上、前     『とある』フィールド~



ゼルダ「はああああああっ!!…ちぃっ、びくともしない!
    こう、強い力をぶつけることで空間に穴が開いたりしないのですか!?
    精神と何とかの部屋みたいに!」バコッ ズドドド・・・

ヒルダ「ゼ、ゼルダ姫。あまり暴れ回らないでください、
    体力を、体力を消耗してしまいます!!」アタフタ

ゼルダ「こうしているっ!間にもっ!
    私たちの『ニセモノ』が、外で悪事を働こうとしているのですよ!
    落ち着いていられるものですか!!」ドガガガ

220: Mii 2019/10/07(月) 06:14:12 ID:1o4lZnlk

・・
・・・

ゼルダ「…!?」

ロゼッタ(分身)「…ああ、ついやりすぎちゃいました」クク

崩れ落ちる、ロゼッタの体。――分身体が、本体を、何故!?

ゼルダ「……貴方!なんてことをするのですか!
    …さては分身体として不完全だったのね、生かしておけない。
    私の全力、受けてみなさいっ!
    ヒルダ姫、緊急事態です!迂闊に動いてはなりませんよ!」

ヒルダ「は、はい!」

ゼルダ「残りの分身のお二人さんも、協力してください!」

ゼルダ(分身)「わかりました!」バッ!

ヒルダ(分身)「ロゼッタを助けるのです!」バッ!

ロゼッタ(分身)「ハ、ハ、ハハハハ――」ブゥゥン

ゼルダ「何をしようとしても、無駄ですっ!!」ダダッ

221: Mii 2019/10/07(月) 06:19:15 ID:1o4lZnlk
ドゴッ……!!

ゼルダ(分身)「…そう、何をしても、無駄なのです」ニヤリ



まさかの、不意打ち。



ゼルダ「がっ――!?い、一体、なに、を」

ヒルダ(分身)「…くく、うまくいきました。今です!!」



ロゼッタ(分身)「…………空間隔離《エア・ロック》――――っ!!」パアアアア



ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・!!



ゼルダ「!?」

ヒルダ「な、なんですかこの――刺さるような空気!?」

222: Mii 2019/10/07(月) 06:20:40 ID:1o4lZnlk



そのとき、反逆した3人の分身体が、想いも寄らぬ行動に出た。



一目散に、フィールドと外とを繋ぐ出口に駆けていく。

つい一斉に飛び掛かってくるものと思い込み、

所詮は私が本気になれば十分張り合えると冷静に判断したつもりで身構えていた、

なにより倒れたままのロゼッタ本体を放置することも出来ず、反応が遅れた。



一瞬安堵しかけて…………
敵の意図を察して、顔面蒼白になった時には、時すでに、遅し。
バタン、と扉は閉められ――――





おぞましい暗黒の結界によって、扉は姿を失った。

・・・
・・

223: Mii 2019/10/07(月) 06:22:33 ID:1o4lZnlk
ゼルダ「これもそれもっ!ロゼッタ、貴方が無駄に空間魔法を使えるからっ!!
    どう落とし前を付けてくれるのですかっ!」クルッ



ロゼッタ「すいませんすいませんすいませーーん!!
     絶賛、誠心誠意、解呪に努めさせてもらっておりまーす!!」パアアアアア

チコ「ママを虐めるなー!頑張ってるんだぞー!!」フヨフヨ

チコ「そうだそうだー!!」フヨフヨ

チコ「ママの力になりたいっ!」フヨフヨ

ヒルダ「ロ、ロゼッタも…あんまり無理はしないでください…
    病み上がりですのに…」

ロゼッタ「おかげさまでといいますか、してやられたといいますか…
     分身体がいなくなった途端に体調不良はコロッと治ったんですよ!
     おかげで言い訳にできませーん!」パアアアアア

224: Mii 2019/10/07(月) 06:25:47 ID:1o4lZnlk
ゼルダ「だいたい、話を聞けば、分身体の魔法レベルは50で頭打ちなのでしょう!?
    ずっとレベルが高い本体なら、あっさり解呪できてしかるべきでしょうが!」

ロゼッタ「発動前なら、分身体の空間魔法をインターセプトする位、楽勝ですよ!
     でも、今回は既に発動しちゃってるんですよぉー!
     秩序を乱すのに比べて、秩序を正すのは恐ろしくコストがかかるんです!

     さすが私、空間庭園《スカイガーデン》の無効化までピンポイントで
     掛けちゃってくれてますし!!ああもう!!」パアアアアア

ゼルダ「…つまり、どういうことですか?分かりやすく話しなさい」

ロゼッタ「パソコンにパスワードを設定するとしますよね!?
     十分パソコンに詳しければ1分でできる行為ですよね!?

     じゃあ、悪戯で出鱈目に設定された100桁のパスワードを
     同じ達人に『ノーヒントで解いてみろ』って命令して、
     1時間で…いえ1日2日でできると思いますか!?

     初期化による強引解除も出来ないおまけ付きです!」パアアアアア

ゼルダ「……!!」サアッ

225: Mii 2019/10/07(月) 06:28:31 ID:1o4lZnlk
ロゼッタ「ここまで『解きにくさ特化』の結界を張られていると、
     正直どうしようもありません!試行錯誤するしか――!」パアアアアア

ヒルダ「……そ、そんな。どの程度、掛かるのですか?」



ロゼッタは一瞬息を飲んだ後、重苦しい声で…返す。





ロゼッタ「…単純計算で、ざっと1000年以上。
     下手をすると桁数がもっと増えるかもしれません」パアアアア





ヒルダ「」

ゼルダ「」

226: Mii 2019/10/07(月) 06:30:37 ID:1o4lZnlk
ロゼッタ「…あ、で、でもですね!『ヒントがあれば』ずっと早くなりますよっ!」



一瞬意識を持って行かれたが、ロゼッタの言葉に息を吹き返す。



ゼルダ「…ヒント?」

ロゼッタ「早い話が、私たちが閉じ込められていることに気付いたマリオ達が、
     この閉鎖された空間に多少なりとも干渉してくれればいいのです。
     それこそ、扉の入り口側を思い切り殴ってくれる…とかでも構いません。
     繋ぐべき先の空間の情報を、一気に入手することができます!

     大会が終われば間違いなく点検が行われるでしょうから、
     私としては最悪でも大会終了時には出られると踏んでいますよ!
     私の努力は割と無駄になりますがっ!」パアアアアア

ゼルダ「ホッ、よかった…ここで死ぬことになるだなんて御免ですよ…
    ……って、よくないですよ!
     大会期間中、分身体たちを野放しにするということではないですか!!!」

ロゼッタ「そうなんですよねぇ…………」パアアアア

227: Mii 2019/10/07(月) 06:35:07 ID:1o4lZnlk
ヒルダ「そ、そんなことよりも、大変です!!」バタバタ

ゼルダ「何ですか!!こんな時に!!
     ヒルダ姫も脱出の為に策を講じてください!」ギロッ



ヒルダ「それはそうなんです、けど!
    




     最長で3か月耐えなければならないとして…
     ライフラインがあるのは僥倖ですが、食料がありません!!」マッサオ

ゼルダ「あ」

ロゼッタ「あ」パアアアアア



私たちは、一体どうなってしまうのでしょうか――。

228: Mii 2019/10/12(土) 20:53:24 ID:VNNXsmsg
~3日後~

ヒルダ「…………」グッタリ

ゼルダ「…………」グッタリ

ヒルダ「…………」

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………おなかが、すきました」グゥゥ

ゼルダ「…………分かりきっていることを言わないでいただけますか?
    ……余計に空腹感が増すのですが」グゥゥ

ヒルダ「…………」チラッ



ロゼッタ「――――ああ、もうっ!空腹、空腹ですっ!
     昔の私なら、この位の食事抜き、全く問題なかったのに!?
     自分の体の変化が恨めしいですよ、後悔などありませんがっ!
     ………………はあああああっ!!!」パアアアア

ヒルダ「…………ロゼッタ、空元気で気合いを高めなくても…
    もう、解呪は断念して…体力温存に努めて…ください。
    助けが来る前に命を落としてしまいますよ」

ロゼッタ「大丈夫です、残機があるのでっ!」パアアアア

229: Mii 2019/10/12(土) 20:55:22 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「…………ロゼッタ。もしかして…勘違いしていますか?
    餓死含めて、体調の都合で死亡した場合――
    残機があったとしても健康、満腹状態では復活しませんよ?」



ロゼッタ「」ピタッ



ヒルダ「…ど、どういうことですか、ゼルダ姫?」

ゼルダ「それが可能なら、不治の病に侵された人は片っ端から残機を与えたうえで
    死んでもらうことが流行りますね。…しかし、無理なことが分かっています。
    ピーチ姫いわく、残機復活は、あくまで体の『ガワ』を元通りにするだけです。
    もちろん、外傷ならば……治ってめでたしめでたしですが。

    今の私たちの場合、餓死からの復活を遂げたとして、
    体内エネルギーの枯渇による機能障害は確かに治りますが…
    機能障害をもたらした…根本の問題は解決されていません。
    復活したそばから、たいした猶予もなく…ふたたび機能障害を起こし始めます」

ヒルダ「…そ、それが延々と繰り返されるのですか…?」ゾッ

ゼルダ「ええ。延々と苦痛に苛まれることとなります。精神に異常をきたしますよ。
     よろしいのですか?ロゼッタ?」

ロゼッタ「よろしくないので休憩します」ザザッ

ゼルダ「そうですね、それが賢明だと思います」フッ

230: Mii 2019/10/12(土) 20:57:46 ID:VNNXsmsg
ヒルダ「ロゼッタ…貴方の空間魔法で、なんとかならないのですか?
    食べ物を出現させる、とか」

ロゼッタ「できなくはないですけど…」

ヒルダ「そうですよね、流石に無理難題ですよね…………
    って、えええええええ!?可能なのですか!?」

ロゼッタ「ちょっと、やってみますね。料理にリクエストはございますか?
     そこの机の上に出現させますから」

ヒルダ「え、え、えええ?……………………
    ………………………………ふわふわ卵のオムライスで」

ロゼッタ「オムライスですね!ふわふわかどうかは分かりませんが…それっ!」パアア



ポンッ!!



ヒルダ「…わああああああ!!ほ、本当に美味しそうなオムライスじゃないですかぁ!
    何故、早く教えてくれなかったのですか!!
    こ、こ、これは頂いても構わないですか!?お願い致します!」グゥゥ

231: Mii 2019/10/12(土) 21:00:00 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「待ちなさいヒルダ姫!先に私が毒味をして差し上げますっ!」ズイッ

ヒルダ「ああっ!勝手に席に着くだなんて、最低ですよっ!
    ゼルダ姫はゼルダ姫で、ロゼッタに何か食べ物を出して貰えばいいではないですか!」

ゼルダ「ふふふ、世の中、弱肉強食なのですよっ!
    ヒルダ姫は改めてロゼッタに依頼しなさい!
    ああ、そうでしたロゼッタ、スプーンをおひとつ頂けますか?」

ヒルダ「どいてくださいっ!!」

ゼルダ「お断りしますっ!!」

ギャーギャー!



ロゼッタ「あのー、盛り上がっているところ、大変申し訳ないのですが…」

ゼルダ「ああ、スプーンは難しいのですか?
    …仕方が有りません、この際、はしたないですが…
    殿方には誰にも見られていないですし、手づかみで――っ!」サッ

232: Mii 2019/10/12(土) 21:02:34 ID:VNNXsmsg





ロゼッタ「それ、私の記憶をもとに構成した……ただの幻影(イリュージョン)ですよ?」






ゼルダ「」スカッ

ヒルダ「じゃあこれに何の意味が!?」

ロゼッタ「美味しそうで、お腹が満たされる…とか?」

ヒルダ「どう考えても余計にお腹がすきますよ!!」

ロゼッタ「結局のところ、空間を切り離されているので、
     私のスターピース倉庫を始めとして他のエリアにアクセスできないんですよ…」

ヒルダ「それを早く言ってください…
     あと、スターピース倉庫って一体なんですか…………」ガックリ

233: Mii 2019/10/12(土) 21:05:29 ID:VNNXsmsg
チコ「ぱくぱく」

チコ「もぐもぐ」

チコ「あんまりおいしくないけど、食べ物なら一杯あるのにー」

ヒルダ「……地面や壁を食べて凌げるのなら苦労しませんよ」



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



ゼルダ「…………はやく、リンク、来なさいよ…」グッタリ

ヒルダ「…………」グッタリ

ロゼッタ(……私の空間魔法で、木製のものを原子レベルまで分解して、
     組み換え直して炭水化物を作る…うん、流石に神の領域ですね、できません!
     どうシミュレートしてもエネルギー的に大損になりますし…)

234: Mii 2019/10/12(土) 21:07:21 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



・・・・・・



チコ「……………………あれ?今、何か、音がしなかった?」

ロゼッタ「気のせいじゃないですか?私たち以外、誰も――」

235: Mii 2019/10/12(土) 21:10:06 ID:VNNXsmsg



ガタンッ!



ゼルダ「…………確かに、あちらの部屋…仮眠室の方から聞こえましたね。
    初日にちょっと覗いたくらいで、利用はしませんでしたけど」

ヒルダ「更に扉をロックされて狭い部屋に閉じ込められてはたまらない…って
    無意識に思っていたみたいです。皆さんも同じですか?」

ロゼッタ「はい」

ゼルダ「ええ」



ヒルダ「…………何の音だと、思います?」

ロゼッタ「時間差で働くトラップを仕掛けられていた、とか」

ゼルダ「…あり得ますね。正直、今の私たちの状態では――
    スマブラでいうところの平均的な強さのファイター1人を仕掛けられた程度でも、
    まず…まともには、張り合えません」

236: Mii 2019/10/12(土) 21:12:55 ID:VNNXsmsg
ヒルダ「ど、どうするのですか!?」

ゼルダ「ヒルダ姫、声を落としなさい。ばれてしまいますよ。
    ……一か八か、扉の前で待機して、不意打ちを仕掛けましょう」ヒソヒソ

ロゼッタ「それを敵が察知して、中々現れずに膠着状態に入ったら…?」ヒソヒソ

ゼルダ「……そうなれば、疲労困憊のこちらが先に倒れてしまうのは自明の理。
    10分待機して動きが無ければ、逆にこちらから特攻する…という作戦で行きましょう。

    ファイターなら、何が何でも殲滅。初撃が運命の全てを左右します。

    爆発物、有毒物の類なら、速やかに翻して反対の部屋に駆け込む。
    ロゼッタ、可能ならば空間魔法で…扉の向こうに押し戻すなり、
    隔離するなり抑制するなりしてください。方法は問いません」

ロゼッタ「――――っ、わかりました。それで、問題は有りません。
     それではここからは無音で行動しましょう」

ヒルダ「…そん、な。わ、わたくし、まだ覚悟が…!」



心が痛みますが、泣き顔のヒルダ姫の口を、手で素早く押さえます。
まだしばらく、ひっくひっくと悲しみに暮れていましたが、30秒ほどして…
ようやく、震えも弱まり、落ち着いてくれました。

237: Mii 2019/10/12(土) 21:14:57 ID:VNNXsmsg
音を立てずに、3人で、扉の傍に近寄ります。
扉は、向こう側に開く、一般的な片開きタイプ。
不意打ちが扉に邪魔されることはありません。



幸い、この間に襲撃されずに済みました。…助かりました。



気配が、悠々と近づいてくるのがわかります。
小物がゴトンと落ちた音、とかなら杞憂で済んだのですが、
そうは問屋が卸さなかったようです。



気配が、扉のすぐ奥までやってきました。
ゼルダ姫とヒルダ姫に、アイコンタクト。理解したのか、すぐに頷きが返ってきます。
さあ、正念場が――。



がちゃり。
扉が、ギイイイと開いていき――

238: Mii 2019/10/12(土) 21:17:35 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「はあああああ――――っ!!」キランッ!

ロゼッタ「やあぁ――――っ!!」パアアアアッ!

ヒルダ「て、てやぁ――――っ!!」ピカーッ!












デイジー「グッドモーニーング!呼ばれて飛び出てお邪魔しまゴフゥッ!?」グサーッ

ゼルダ「……あら?」

ロゼッタ「…えっ」

ヒルダ「……あ」



ありったけの魔法を食らい吹き飛んだのは……
まさかまさかの、デイジー姫だったのでした。

239: Mii 2019/10/12(土) 21:19:58 ID:VNNXsmsg
すったもんだして、落ち着きを取り戻して。
とりあえず、危機なんてものは、はなからなかったみたいです。
そして…ゼルダ姫が、頭を抱えています。



ゼルダ「変装して受付の眼を欺いて適当なフィールドに潜り込んだはいいものの、
     3徹した反動で――――3日間寝てた…ですって?正常ですか?」

デイジー「そーそー!私も驚いたよ、目が醒めてみたら!
      時計の日付表示が3日も進んでいるんだもん!」

ヒルダ「か、仮眠室はちらっと覗きましたけれど、
    デイジー姫の姿など見えませんでしたよ?」

デイジー「ははは、デイジーでいいって。よろしくね、ヒルダ。
      うーん…3日前はフラフラだったからよく覚えていないけど、
      確か…なるべくばれないようにって思考に従うままに、
      若干ホコリっぽいベッドの下で寝てたからなあ。
      改めて考えると、自分でも頭がおかしいとしか思えないね」

ヒルダ「え、えええ…………」アキレ

240: Mii 2019/10/12(土) 21:21:43 ID:VNNXsmsg
――拍子抜けしてしまいましたが、まずは。
――デイジー姫に、現状の厳しさを伝えねば、なりません。



ロゼッタ「実は、いま、私たちは…私の分身体たちの反逆によって、
     このフィールドに閉じ込められているのです。
     巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません」

デイジー「え、ええ、えええええええ!?
     そんな大変なことになってるの!?ってか、分身体ってなに!?
     ロゼッタ、とうとう影分身を使えるようになったの!?」

ロゼッタ「実分身です」

デイジー「名前は変えたけど、実際の所は影分身だったりするんだよn」

ロゼッタ「実分身です」

241: Mii 2019/10/12(土) 21:25:58 ID:VNNXsmsg
デイジー「…あ、うん。わかった。わかったからそんなに睨まないで。
 
      うわ、あのおどろおどろしい結界がそうなのかー。
      それで、脱出するメドはあるの?も、もちろんあるよね?ねっ?
      私、スマブラ大会に参加したいってひたすら思った挙句に
      ここまで素っ頓狂なことをやってきたんだけれど」

ロゼッタ「今の所、大会終了まで出られそうにありません…
     重ね重ね、申し訳ございません…」

デイジー「そんなぁ!?せっかく苦労して苦労して潜りこんだのに!?」



うがーっと頭を抱えて天井に叫ぶデイジー姫。

ある意味呑気なデイジー姫を、ゼルダ姫とヒルダ姫が
何いってるんですかこの人は、という目で見やります。
…私は思っていませんよ。…多分。

242: Mii 2019/10/12(土) 21:27:38 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「そんなことは今はいいでしょう!このままでは飢え死にしてしまいますよ!」

デイジー「…え?なんで?」

ゼルダ「本当に頭、大丈夫ですか!?このフィールドに、食料が一切ないからです!
    もう3日間も、食事を摂っていないのです…………よ…………!」グゥゥ





デイジー「私もスマブラ大会にそこまで詳しくないし、聞いただけの話なんだけど、
     フィールドのルールを『アイテム:おおい』にして
     食べ物を召喚し続けて、それを食べればいいんじゃないの?
     ちょっとアイテムスイッチを探してみるね」タタタッ





ゼルダ「えっ」

ロゼッタ「えっ」

ヒルダ「えっ」

チコ「……?」フヨフヨ

243: Mii 2019/10/12(土) 21:31:41 ID:VNNXsmsg
ゼルダ「…………」モグモグ

ヒルダ「…………」モグモグ

ロゼッタ「デイジー姫、本当に、本当に助かりました」モグモグ

デイジー「いいのいいの。というかゼルダ、アンタは気付きなさいと言いたい。
     普通に前回も出てたでしょ。頭、大丈夫ー?」ニヒヒ

ゼルダ「アイテムありのルールなんて知りません」ムスッ

デイジー「あー、まー、そうか。大会中は基本『アイテム:でない』だって話だからね、ごめんごめん。
      とりあえず、食べ物とマキシムトマトだけをひたすら出るように設定しておいたから。
      これで飢え死にすることはなくなるはずだよ」

ロゼッタ「何から何まで…ありがとうございます」ペコリ

ゼルダ「ま、まあ。礼は言っておきます。ありがとうございました」

ヒルダ「本当にありがとうございました、ふふ、美味しいです…!」パクッ

244: Mii 2019/10/12(土) 21:34:03 ID:VNNXsmsg
デイジー「あと、『アレ』も」ビッ

ロゼッタ「『アレ』……?」クルリ





激辛カレーライス×4「冷める前に食ってくれ」ドサッ





ロゼッタ「…あ、あれは遠慮したいのですが」

デイジー「まあまあ、そんなこと言わずにー!捨てるだなんて勿体ないよ!」アハハ





ロゼッタ「か ら あ い!!」ボオオオオオオオ

ゼルダ「きゃああああああ!!」ボオオオオオオ

ヒルダ「水、み、みず―――――!!」ボオオオオオ

デイジー「あはははは!」ボオオオオオ

245: Mii 2019/10/16(水) 05:58:45 ID:mzEHWB1E
――食後のコーヒーで一息、なんて気の利いたものはありませんが、
――とりあえず食べられるだけ食べて、小休憩。
――デイジー姫はのほほんと、他の皆は、皮一枚繋がったことを噛みしめて。



物思いに、耽る。
冷静になってきて、ようやく考えるべきことを思い出しました。

まず、デイジー姫には、事の顛末をしっかりと伝えます。
私がメインで話し、ゼルダ姫とヒルダ姫が時折、補足説明をする。
時に呆れ、時に驚きながら、彼女は耳を傾けてくれました。

デイジー「そ、そんなことになってたんだ…ロゼッタもついてないね…」

ゼルダ「ロゼッタは自業自得ではないですか。
     一番ついていないのは、巻き込まれた私とヒルダ姫なのですが」

ロゼッタ「うぐっ」



ヒルダ「…ゼルダ姫、大人げないですよ」

デイジー「ないわー。その言い方はないわー」

ゼルダ「…じょ、冗談です!」

ロゼッタ「いえ、間違いではないので…申し訳ございません」

246: Mii 2019/10/16(水) 06:03:09 ID:mzEHWB1E
デイジー「ときに、ロゼッタ。こうなっちゃった、そもそもの原因って
      推測が立ってたりするの?」

ロゼッタ「…分身体を作れば作るほど私の体調が顕著に悪くなったところからして、
     最初は空間魔法にだけ反応する呪いみたいなものを掛けられたと思いました。
     ですがそれだと、今の私が快調なことの説明が付きません。

     実は、解呪がてら、このあたりの空間を解析することができたのですが。
     ……ほんのわずかですが、淀んでいますね」

デイジー「淀んでる?」

ロゼッタ「簡単に言うと、『思念魔素』が薄く漂っているといいますか…」

ヒルダ「簡単ってなんでしょう」

デイジー「できればキノコ王国の言葉で教えてほしいなあ」

ゼルダ「ハイラル王国かロウラル王国の言葉でも全然かまいませんよ」

247: Mii 2019/10/16(水) 06:06:47 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「ええっと…ナノレベルの微細物でありながら、散布者の組み込んだ、
      簡単なプログラムに従って集合や離散、周囲への干渉を行う物の総称、ですね」

ゼルダ「っ!?」バッ

ヒルダ「っ!?」バッ

ロゼッタ「…別に、口を押さえたところで意味がないですよ?
     皮膚からでも余裕で取り込まれるサイズですし。

     それに、悪さをするならとっくに体がおかしくなっています。
     時間差で発動するような高度なプログラムは仕込めないので。
     というわけで、一般には…さして影響のない存在ですね」

デイジー「まあ、そんなことだろうと思ったよ。ロゼッタ落ち着いてたし」

ゼルダ「いつも思いますが、デイジーは暢気すぎますよ」

ヒルダ「…逆に言うと、ロゼッタには思いっきり干渉する代物だったのですね?」

ロゼッタ「そのよう、ですね。実分身を使っているうちに体中に纏わりつかれて、
     コンディションの著しい低下を招いたようです。気持ち悪いですね…。
     幸い…と言っていいのか分かりませんが、今は――
     用済みとなったからなのか、私の体には、皆さんと同じ程度の思念魔素しか
     残留していませんが」

デイジー「…よし。事が全て済んだら、空間もろとも――私たちの体、ロゼッタの魔法で浄化してほしいんだけど。
      無害と分かっていても気味が悪い」

ロゼッタ「は、はい。承りました」

248: Mii 2019/10/16(水) 06:11:56 ID:mzEHWB1E
ゼルダ「で、肝心の事件の犯人は分からない、ということでよろしいのですね?」

ロゼッタ「…はい。ある程度の空間魔法の使い手、ということと、
     膨大な量のFPを所有する者、ということくらいしかわかりません」

ゼルダ「膨大な量のFP?」

ロゼッタ「思念魔素って、陰で悪さをする上で非常に便利なのは確かですが、
     寿命が短くすぐ霧散してしまう、強力な威力を持たせられない、
     空間が大きくなるほど必要量も比例して多くなる…と
     デメリットも相当大きいのですよ。
   
     そんな代物を、おそらく――あちこちのフィールドにまき散らして
     獲物が掛かるのを待っていられる。
     FPを湯水のように使える術者でなければ、とてもできない芸当です」

ヒルダ「…そこまでして、一体何がしたかったのでしょうか」

ロゼッタ「…まず間違いなく、空間魔法に秀でた者を戦力として探していた、
      というところでしょう。それで、私の実力が眼鏡にかなったと」     

ヒルダ「さすがロゼッタです!」

ロゼッタ「ふっふっふ」

ゼルダ「調子に乗らないでくださいます?」バシッ

ロゼッタ「すいません!」ババッ

249: Mii 2019/10/16(水) 06:19:20 ID:mzEHWB1E





デイジー「…………犯人、わかったかもしれない」

――デイジー姫のその一言が、私たちを黙り込ませました。





ゼルダ「……犯人に、心当たりが?」



引き締まった顔のゼルダ姫に対して――デイジー姫は、一息おいて、話し始めます。



デイジー「ピーチが、言ってた。前回の大会で。おまけに私も会場で観戦してたし。



     『亜空の使者事件』っていう事件がキーになると思うな」

250: Mii 2019/10/16(水) 06:23:21 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「別空間に誘う者――『タブー』!?
      そんな存在が前回大会で――!」

ヒルダ「大変じゃないですか――!」

ゼルダ「まさか、そんなことが起こっていただなんて――!」

デイジー「いい加減にゼルダは反省しろと言いたい。
     アンタ、前回大会で何やってたねん」

ゼルダ「」



ロゼッタ「なるほど、そこまで大がかりなことができる敵なら、
     膨大な量のFPを持っている…というか他所から持ってこられることは
     十分に考えられますね。とりあえず、『黒』にしておきましょう――」



デイジー姫から頂いた貴重な情報をもとに、これまでを振り返って分析します。
敵側の描くシナリオが、おぼろげながら見えてきました。

251: Mii 2019/10/16(水) 06:28:47 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「では、私の仮説を披露させて頂きます。
     
     前回大会で大いに暴れようとしたものの、マリオ達によって倒されたタブー。
     倒し切ったと思いきや、潜伏状態で生き延びて、
     野望を捨て切れないからか、はたまた恨み、復讐心からか…
     大会会場で虎視眈々とチャンスを伺っていました。
     
     しかし、このまま単独で挑んでは勝ち目は薄いと判断。
     自分の能力を補強できる空間魔法の使い手を手駒にして
     攪乱させることを目論みました。

     無尽蔵のFPを糧に、着々と準備を進めます。
     大会が開かれず警備が薄いことが災いし、誰も思念魔素に気付きません」

デイジー「いやまあ、それに気づくのはロゼッタか――
      キノコ王国の誇る最新技術くらいだと思うけど。
      常人に気付けというのは酷っす」

252: Mii 2019/10/16(水) 06:34:45 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「そして大会直前、空間魔法を繰り出し続ける私に目を留めます。
     おまけにカンペキな分身体まで作れるとくれば、
     攪乱に使ってくれと言っているようなもの。
     いやぁ、我ながら気前のいいことをしてしまいましたね!
     敵に塩どころか兵糧と作戦ノートと金塊を送っていますね!

     あとは、頃合いを見計らって本体と入れ替わり、
     ついでにラッキーということでゼルダ姫やヒルダ姫もすり替えて。
     ゼルダ姫が強いことは分かっているため、下手に戦うよりは
     本体たちを隔離しておいてとっとと離脱した方が賢い、という判断をして。

     …もしも私が敵の立場だったら…そうですね。
     フィールドから出た後、何事もなかったかのように皆と合流しつつ、
     仕掛けを着々と施す一方で空間魔法を使った選手同士の仲違いを狙い、
     不信感が募りに募ったところで仕掛けの方が準備万端、
     一斉始動させて、してやったり…みたいなシナリオを描くと思います」

デイジー「えっと、ロゼッタが考えるってことは、コピー先の偽ロゼッタが
      考える可能性も高い作戦だってことでいいかな?」

ロゼッタ「実際には、私の思考回路とタブーの思考回路が合わさっていますから、
     より効果的な解が出ていることも考えられますが…」

デイジー「そっかぁ…中々、安心できる要素がないね…」

ゼルダ「状況を理解すればするほど、私達の偽者が間者として暗躍するなんて、と
    目の前が真っ暗になっていくのですが…」

ヒルダ「…………うう」

253: Mii 2019/10/16(水) 06:39:43 ID:mzEHWB1E
――沈み込む皆さん。ただ、沈ませっぱなしの私ではありません。
――振り払ってしまえるよう、ある提案をしてみます。

ロゼッタ「デイジー姫、お願いがあります。
 
  

     ――――私たちを、鍛えて頂けませんか」

デイジー「…………はい?」

突拍子もないことを言われたからか、目をぱちくりさせるデイジー姫。
でも、意図はあるのです。

ロゼッタ「いますぐに、脱出できない。大会が終わるまで、釘付け状態。
     …このままでは敵の言いなりです。あまりにも悔しいではありませんか。
     せめて――敵の裏をかいてやる、最大限の努力をするべきだと思います。
     そのうえで一つ、大きな、かなり大きな期待要素があります」

デイジー「え、なになに?何か希望を見つけたの!?」

ロゼッタ「ええ。私の力というより、思いっきり運によるものですが。
     とりあえず、タブーの知識量は置いておいて…
     分身体は、その他には、分身体を作った瞬間の私の知識しかありません」

デイジー「そりゃあ…そうでしょ?」

ロゼッタ「つまり、立てられる作戦も、そのときの私を基準としたものになります。
     その後に私が知った情報について、分身体は考慮することができません。
     そこを衝けば、敵の作戦の裏をかくことができるはずです」

254: Mii 2019/10/16(水) 06:45:55 ID:mzEHWB1E
デイジー「えっと、何かめぼしい新情報ってあったっけ?」

ヒルダ「…とりあえず、私達が十分生きられそうな環境が整ったというのはありますね。
    でも、どのみち脱出できないのでは敵への干渉のしようが…」

ゼルダ「…ああ、そういうことですか。一番のイレギュラーがありますね」

デイジー「イレギュラー?」



ゼルダ姫と二人して、同じところを見つめます。

…見つめられた「彼女」が、再び目をパチクリ。



ロゼッタ「デイジー姫の存在ですよ」

デイジー「……ほへ?私?」



私は大きく頷きます。まさに僥倖、運はまだ残っているようです。

255: Mii 2019/10/16(水) 06:50:46 ID:mzEHWB1E
もちろん、ゼルダ姫やヒルダ姫がこれからもたらしてくれる知識が、
敵の裏をかく要因になることも多少は考えられます。
ゼルダ姫やヒルダ姫の姿を象った分身体と言えど、知識まで彼女たちのものを
持っているわけではないので。所詮、知識ベースは私なのです。

ですが、分身体の私は、少なくとも――

「本体の私が、ゼルダ姫やヒルダ姫の知識を参考にするだろう」

という推測は、当然ながら立てているはずで、対策もしているはず。
つまり、あまり出し抜くことが期待できません。



その一方で、デイジー姫のことは、あの感じだと…
仮眠室でくぅくぅ寝ていることなど、まるで知らなかったことでしょう。
空間魔法探知に躍起になるあまり、通常の索敵ができなくなっているというのは
なんだかシュールです。…大助かりですけれどね。

言うなれば――デイジー姫を皮切りにした作戦は、裏をかき放題です。

256: Mii 2019/10/16(水) 06:54:02 ID:mzEHWB1E
デイジー「だからって、どうして私が鍛えることになるの?」

ロゼッタ「ではひとつお尋ねします。真剣に答えてください――」

デイジー「…………うん」ゴクリ

ロゼッタ「実は、ここから抜け出す裏口みたいなものをご存知だとか!」

デイジー「ふっふっふ、実はこう見えてフィールド設計の内部事情に詳しくて…
     って、なんでやねーん!」ビシィ

ロゼッタ「でしょう?」

……まあ、さすがにそこまでご都合主義とは思っていません。
冗談であることをさすがに理解しているのか、ゼルダ姫もヒルダ姫も、
とやかく言うことはありませんでした。

ロゼッタ「ですから、愚直に、単純明快に――
     デイジー姫には、私達のレベルアップの手助けをしていただけないかと。
     相手が想定するよりずっと早いペースで力を伸ばすことで、
     強引に結界を破る総合力、あるいはブレイクスルーとなる新技…
     それらを得ることに期待するのです」

257: Mii 2019/10/16(水) 07:00:18 ID:mzEHWB1E
デイジー「本当に地道だね…。うーーーん。
     …………でも、期待されているところ悪いけれど、
     この中でいうと私って…ゼルダとどっこいどっこいの実力しかないよ…?」



ヒルダ姫は、そうなんですか、と言いたげな顔。
ゼルダ姫も、うんうん、と頷いています。






…………そ、そんなゼルダ姫には、すこし耳障りな話を、しようとしているのですが…。
ええい、現状打開のためです!思い切りが大事です!

258: Mii 2019/10/16(水) 07:06:35 ID:mzEHWB1E





ロゼッタ「…………それって、本当に本当ですか?
     実際は、ゼルダ姫の数倍強かったりしませんか?」

ゼルダ「…は?」イラッ





デイジー「…え?いきなり何を藪から棒に。
     ロゼッタも知ってるでしょ、私、ピーチに負けまくってるじゃない。
     冗談はやめてよー」ケラケラ



ロゼッタ「以前、ピーチ姫に伺ったことがあるのですが…」

デイジー「え、何を……?」

259: Mii 2019/10/16(水) 07:09:21 ID:mzEHWB1E

・・
・・・

ピーチ「ふわぁ…今日も平和ね…平和が一番」

ロゼッタ「これも、ピーチ姫の日頃の努力の賜物ですよ」

ピーチ「ふふ、ありがと。まあ、一大事にはマリオ達が駆けつけてくれるし、
    なんだかんだ言ってクッパは協力的だし、それほど憂いがないってのは
    大きいと思うけれどね」

ロゼッタ「1人でこなす仕事量が半端ないことくらい、とっくに知っていますよ…。
     他の誰が代われるっていうんですか…」

ピーチ「あー、それはそうかもしれないわね、我ながら」

ロゼッタ「ちなみに、仮に今、クッパが本気でキノコ王国を侵略しに来たら
     キノコ王国としてはまずいことになるのですか?
     あんまり戦力関係を理解できていないのですが」

ピーチ「…王国のトップに、無邪気な顔して何て話題を振るのよ。
    そうねえ、王国内に戦力を潜伏されてからの不意打ちだとしたら、
    正直な所、王国が半壊してもおかしくないけれど。

    そんな卑怯なことは流石にしないだろうから、
    宣戦布告のうえで陣取って全面戦争するとして…
    結構な痛み分け、くらいの表現ね。まあ耐えられるとは思うわ」

260: Mii 2019/10/16(水) 07:13:22 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「仮に今、マリオが催眠術で操られるとかで――
      キノコ王国に反旗を翻した場合はどうでしょうか?」

ピーチ「え、なに?ロゼッタ、キノコ王国つぶしたいの?
    なんだったら牢屋に放り込んであげましょうか」ユラア

ロゼッタ「めめめ滅相もない!申し訳ございません!」

ピーチ「マリオが反逆、かあ。それはもう、大変なことになるわね。
    王国の弱点という弱点、知り尽くしてるし。

    なにより、マリオとルイージが引いた配管系、何万本あると思ってるのよ。
    その気になれば、全部を計画暴走させて、可燃ガス有毒ガスばら撒いて…
    王国木っ端微塵とかにでもできるんじゃないかしら…うわぁ」

ロゼッタ「うわぁ」

261: Mii 2019/10/16(水) 07:24:13 ID:mzEHWB1E
ロゼッタ「ま、まあ…そんなことあり得ませんし、他の方でそれほど強者などいませんし。
     キノコ王国も、ピーチ姫の御身も、至極安泰ということですね!」

ピーチ「目の前の貴方が不穏なIFを提示してくれていることを除けばね。
    …………あ、私の命については、そうでもないか」

ロゼッタ「…え、えええ?倒したつもりだけれども復活が恐ろしい敵が、
     まだまだいる、とかですか?ディメーンのときみたいに」

ピーチ「いいえ、当然ながら、今は普通に味方の人の話よ?」

ピーチ姫は、小さく笑いながら…





ピーチ「もしも――――

     デイジーに本気で憎み恨まれて、1対1の状況を見計らって襲われたら、
     私の命は1時間…いえ、10分も持たないと思うわ。間違いない、うん」



絶句する私に、ピーチ姫は笑い続けながら、こう続けました。

――もしかしてロゼッタ、私の方が一回りも二回りも…
――いえ、その感じだと五回りくらい強いって思い込んでた?
――本気を出したときのデイジー、おっそろしく強いわよ?

262: Mii 2019/10/16(水) 07:28:03 ID:mzEHWB1E
・・・
・・


ロゼッタ「……と、ピーチ姫が話されていたので。
     どういうわけか、そのあと急に『今の話は忘れてちょうだい』と
     あたふたされていましたが」

デイジー「…………ピーチめぇ」ボソッ

デイジー「…コホン。それ、ピーチがロゼッタを驚かせようと思って、
      テキトーにでっち上げたホラ話だよ、気付いてないの?
      私がそんなに強いわけないじゃーん、おっかしー」

ロゼッタ「神に誓って言えますか?」

デイジー「言えるともさ!」フフン





ロゼッタ「任天堂に誓って言えますか?」

デイジー「……………………いいいいいいいいえると、ともさ!」ダラダラ

263: Mii 2019/10/16(水) 07:29:15 ID:mzEHWB1E










ロゼッタ「嘘を付いてしまうと冒険ができなくなるかもしれませんよ?」ハクシン

デイジー「ロゼッタの鬼ぃぃぃぃ――――!!」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

264: Mii 2019/10/16(水) 07:31:19 ID:mzEHWB1E
デイジー「…………いやいや、ロゼッタ、ここは落ち着こうじゃないか。
     私は、そうだね、本気を出すとちょっとは強くなるかもしれない、
     それは認めてあげようじゃないか。嘘を付いてごめんね?
     でもね、このチカラは厄介なことにね、すっごくリスクを伴うんですわ。
     いわゆる『軽くヤバイ』ってやつ?そうそう、それだよ。それなんだよ。
     とりあえず救助待ちができるこの状況で、行使するようなものじゃないっす。
     おとなしく救助を待ってようよ、ね?それが賢明、最適解だよ。
     もちろん、普通の範囲で特訓に参加するのは全然かまわないからさ?
     別に手を抜いているわけじゃないよ、総合的に判断してこう言ってるんだ。
     一時的に効果があっても、みんなすぐに後悔する羽目になるよ?
     というか私が後悔するので絶対使いたくないし使わない、おーけー?どぅーゆーあんだーすたん?
     ロゼッタはちょっとドジかもしれないけど、賢いからわかってくれるよね?
     ゼルダはハイラルって言う大国を統治する者として、冷静な判断できるよね?
     できないなら大人しく引退してリンクの尻を追っかけてるといいよ。
     ヒルダはいい勉強材料として、落ち着きの有難みを理解しなきゃ駄目だよ!
     いやあ、ロゼッタが変なこと言うもんだからすっかりお腹がすいちゃったよ。
     よし、もっと何か食べようか!よーし食い倒れるぞー!
     激辛カレーライス、一番多く食べた人が勝ちってことでどう?
     よーし燃えてきたぞー!」

ロゼッタ(溢れんばかりの凄まじい拒絶の意志を感じる)





怒涛の勢いで捲し立てるデイジー姫に気圧されて、この日はお開きとなりました。
…デイジー姫に気圧されて、食い倒れ大会をやってから。
仮眠室でみんな横になりましたが、唇がヒリヒリします…………。
それにしても……。

265: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/10/20(日) 18:05:41 ID:kTeQvGU6
~翌日~

ガチャッ……

デイジー「おはよー!みんな、よく眠れた?
     昨日は、私の勝手な食い倒れ大会に巻き込んじゃってごめーん!
     さてと、朝日は特に見えないけど…今日も張り切って、脱出に向けて頑張ろう!」



ロゼッタ「――――」ヒソヒソ

ゼルダ「――――」ヒソヒソ

ヒルダ「――――」ヒソヒソ



デイジー「……3人して小声で、私をのけ者にして何話してるの?」

ロゼッタ「…………あ、いえ、なんでもありません!おかまいなくおかまいなく!
     さあ朝食としましょうか!」タタタッ

ゼルダ「ほぼお腹は空いていないのですけれどもね…デイジーは気にしないでください」

ヒルダ「そ、そうです。つまらない話をしていただけですから」

デイジー「…ふーん?」ハテ

266: Mii 2019/10/20(日) 18:11:41 ID:kTeQvGU6
ゼルダ「ハンバーガーにピザにローストチキンにドーナツに……
     正直、油がきつすぎるラインナップですね…ジャンクフードが多い…」

デイジー「パーティっぽくて私は結構好きだけどね、こういうの。
     パーティといえば、マリオパーティでよく見かけるかな、うん。
     確かに飽きやすそうではある」

ヒルダ「体に悪そう……ランダムで出現するに任せているので
    仕方がないのですが……冷蔵庫もないことですし、食べてしまいますか…」

ロゼッタ(あ、でも最近の私としてはカロリーの心配は全くしなくなりましたね)

ロゼッタ「とりあえず…マキシムトマトを使ってトマトジュースを作ってみました。
     少しはサッパリして口直しとなればよいのですが」

デイジー「お、気が利くじゃーん!ありがとー!
     あとは果物がいくつか湧いてくれると、なおありがたいんだけどね。
 
     それでは席について…いただきまーす!
     さっそく、そのトマトジュースを頂くね。…牛乳ビン?まあ、いいか」サッ

267: Mii 2019/10/20(日) 18:17:20 ID:kTeQvGU6
ロゼッタ「ところで、デイジー姫……」

デイジー「んー?」ゴクゴク







~ケース1 単刀直入に頼み込んでみよう!~

ロゼッタ「昨日話に出た『本気のチカラ』、私達に披露してくださいっ!」

デイジー「ぶふぉっ」ブハッ



ゼルダ「神回避っ!!」ズサーッ!!

ヒルダ「きゃああああああっ!?トマトジュースがぁ――っ!!
    私になすり付けておいて神回避だなんて言わないでください――っ!!」

268: Mii 2019/10/20(日) 18:19:56 ID:kTeQvGU6
デイジー「……ごほごほっ」

ロゼッタ「…………」キラキラ

ゼルダ「…………」

ヒルダ「体中が真っ赤なんですけど。洗いたいんですけど」ポタポタ

デイジー「いやいや、ウチ断るって言うたやん」

ロゼッタ「色々と事情はあるのでしょうが、そこをなんとか!
     私達を助けると思って!」

デイジー「ぜ っ た い 嫌!」

ゼルダ「まあ、私を遥かに超す力というのはハッタリでしょうがね。
    そんな力、デイジーにあるわけがない」

デイジー「言い方がなんか癪だけど、ゼルダの言う通りだよ。
     大したこともないし、期待するだけ無駄、無駄。
     諦め給へ、ロゼッタくん」

ロゼッタ「ゼルダ姫はどちらの味方なのですか!?」

269: Mii 2019/10/20(日) 18:26:52 ID:kTeQvGU6
~ケース2 論破してみよう!~

ロゼッタ「私、思うんです」

デイジー「何を?」

ロゼッタ「何だかんだ拒絶しながらも、デイジー姫は…私達が空想妄想するしかないチカラについて、
     リスクだとか使用条件だとかを少しずつ説明してくれていますよね?
     本当に使う気がないなら、一切合財無視しておけばいいだけというのに。

     これは、あれですよ。深層心理で、自分自身が持てあますチカラとやらについて、
     周囲に理解してほしい、受け入れてほしいという想いがあって、
     自分を言いくるめてみなさい、という立場を取って、
     私達に試練という名のチャンスを与えてくれているのですよ。
     合ってます?合ってますよね!

     さあ、デイジー姫のチカラ、私達は忌み嫌ったりなどしません。
     すべて受け入れますから、思い切って使って見せてください!」ドーン!
     


デイジー「妄想乙」ハッ!

ロゼッタ「鼻で笑われました!?」

ヒルダ(手強いですね)

ゼルダ(というより、ロゼッタの演技が微妙過ぎて…
デイジーにクリティカルヒットしないというのも大きくないですか?)

270: Mii 2019/10/20(日) 18:30:40 ID:kTeQvGU6
~ケース3 罰ゲーム化してみよう!~

デイジー「…その、牛乳ビンに入った…棒?は何なのかな?」

ロゼッタ「あ、はい!キノコ王国で余興として流行っているという、
     『王様げーむ』というものをやってみたいなと思いまして!
     この面子だと『女王様ゲーム』に改名した方がいいかも知れませんが、
     野暮なツッコミは無しということでお願いします!」

ゼルダ「わあ、面白そうですねー」

ヒルダ「さっそく4人でやってみましょうー」

デイジー「…………」



4人「「「「王様だーれだ!!」」」」スッ



デイジー「…の前に、空間魔法で棒のすり替えくらい楽勝と思われるロゼッタと、
     棒の交換を要求しまーす。確認してないからいいよね?異論は認めない」ガシィッ!

ロゼッタ「」

ゼルダ「あ」

ヒルダ「あ」

271: Mii 2019/10/20(日) 18:36:14 ID:kTeQvGU6
デイジー「はーい、王様、わたしー!」パーン

ロゼッタ「そ、そ、それで、デイジー姫。どんな命令を出しますか?
      ちょ、直接名前で指定しての命令は駄目ですよ?
      全員が対象になってしまったり、特定の人を狙えるような命令の仕方も駄目ですよ!」ダラダラ

デイジー「そんなのはいいから、私にチカラの行使を迫るような命令は今後一切禁止ね」

ロゼッタ「な、なんのことでしょう?ははは…」

デイジー「……あれ、引き下がってくれないのー?別の命令に変えろって?」

ゼルダ「ま、まあ、こじつけでもなんでもいいからなりふり構わず、という状況なので…」

ヒルダ「身も蓋もありませんけれどね、ふぅ…」

デイジー「…………………………よーし、じゃあ。命令を実行する番号はすぐ後に発表するとして。
      先に、罰ゲームの内容から宣言しちゃうぞー。マジでやらせるからねー。

      私がこの命令を言い終わった瞬間から、フィールド外に無事脱出して、
      タブーを倒し切るその瞬間まで、周囲の人たちになんと言われようとも、
      ガン見されようと写真を撮られようと、 着含めた一切の衣服を身に付けずに行動するk」

ロゼッタ「さあ特訓の続きに戻りましょうかぁ!!!」ダダダッ

ゼルダ「全くですね!!急ぎましょう!!」ダダダダッ

ヒルダ「こんなことをしている暇ではなかったですねっ!」ダダッ  

デイジー「…………やれやれ」

272: Mii 2019/10/20(日) 18:41:32 ID:kTeQvGU6
~ケース4 脅してみよう!~

スッ…。

ロゼッタ「…………こうなったら、私も、賭けに出ます」

デイジー「な、なにを。危ないよ、ナイフなんて首に当てて!」

ロゼッタ「チカラを使ってくれなければ…もはや光明を見出せません。
     思い直せば、私が原因で皆を苦しめてばかり。
     私、状況に…自分自身に、絶望しました。この命、絶ってしまおうと思います。
     デイジー姫、これまで色々と…お世話に…なりました」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………さあ」ゴクリ

デイジー「いや、『さあ』じゃないよ。ちょっとは驚いたけど…冷静になったらさ、
      そんな勝手な暴挙に出られてもロゼッタのことを見損なうだけなんだけど」

ロゼッタ「えっ」

デイジー「というよりですね。今更、料理用のナイフごときで致命傷を受けるとも思えないし、
     なにより万が一の際は残機で復活するじゃないですか」

ロゼッタ「それもそうでした」

デイジー「…ほんと、ロゼッタはドジだなあ。頭に血がのぼってきたよ」ピキピキ

ロゼッタ「ごめんなさいごめんなさい」ガクガクブルブル

273: Mii 2019/10/20(日) 18:44:31 ID:kTeQvGU6





ズドドドドッ…………。ズガガガガ――――ッ!



デイジー「ゼルダ、さっきの攻撃、いまいち連結が上手くいってないっぽいよ。
     着地硬直の解除も甘い。ゼルダならもうちょっと改善できるはずだから」モグモグ

ゼルダ「ありがとうございます……」イラッ

デイジー「どういたしましてー」モグモグ



デイジー「ヒルダぁ、相手の攻撃に怯むなとは言わないけど、目線を逸らしたまま相手と対峙するのだけはやめた方がいいなあ。
      思い切り、回避位置を探し回ってるのがばれるよ。
      あと、隙あらば虚を突いて突撃する癖があるみたいだけれど、ヒルダの身体能力だと…ぶっちゃけ隙になってない。
      片手間で対処されちゃう。むしろ、無謀さを露わにして斬って捨てられるだけだよ…味方の動きを束縛させる最悪なパターンだ」

ヒルダ「わ、わかっては、いるのですが…申し訳ございません」

デイジー「ま、今は深く考えなくていいよー。じきに理解できるようになるさー」モグモグ

274: Mii 2019/10/20(日) 18:48:17 ID:kTeQvGU6
デイジー「ロゼッタは…魔法は素晴らしい、はずなんだけど。まだまだ活かし切れてない感がある。
      そもそも、何より、発動が遅すぎっ!もっともっとフレーム数を減らさなきゃ!」

ロゼッタ「は、はい!」スタッ

デイジー「せっかくのテレポーテーションもさあ。事前に溜めが必要だなんて、
      見切られやすいことこの上ないよ、もったいない。
      専門外の私が首を突っ込んでいいのかは分からない所だけど」

ロゼッタ「対処を間に合わせないくらい…もっと、発動を早く、ですね。参考になります」

デイジー「それにしても、ロゼッタがここまで基礎体力が上昇しているのは驚いたー。
     その勢いで、レベル上げていこう!」ムシャムシャ

ゼルダ「ところで、デイジー。いい加減、口先ばかりで、結局私任せの特訓とするのは、辞めて頂けませんか?
    一人だけ呑気に物見遊山気分で料理を堪能しながら、というのはどうかと思いますが?」

デイジー「……だって、教え方、ゼルダの方が上手だもん。今更私が直接指導するまでもない気がするしー。
     それに正直、今日はロゼッタの陰謀を掻い潜るので疲れちゃった。
     …うげ、そんなに睨まないでよ。ま、明日からはまた考えるよ」ヒラヒラ

ロゼッタ「…でも、のほほんと観戦しているように見えて、かなり的確に問題点を洗い出してくれているような」

デイジー「経験値は割とあるからねっ」ドヤァ

ゼルダ「どうだか…………」

デイジー「…どうしようロゼッタ、ゼルダちゃんが反抗期だ」

ヒルダ「あはは…」

275: Mii 2019/10/20(日) 18:51:37 ID:kTeQvGU6
時を経るごとにデイジー姫とゼルダ姫との軋轢を生みながら、
特訓は続いて行きます。


デイジー姫を精神的に疲労させた私達――というより私――が悪いのです。
一体、なにをしているのでしょうか、私は…!


私の気持ちは、徐々に、徐々に、果てしなく沈んでいきました。

276: Mii 2019/10/20(日) 18:56:39 ID:kTeQvGU6
~夜~



ロゼッタ「…デイジー姫」

デイジー「どうしたの、改まって」

ロゼッタ「本日は色々と…ご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした」ペコリ

デイジー「あー、そのこと?いいよいいよ、気にしてない気にしてない。
     変にほのめかした私も悪かったよ。

     これでロゼッタの無茶ぶりな作戦は全て攻撃終了、
     ひゃっひゃっひゃっひゃ、やったー!私の勝ちだー!」

ロゼッタ「その、ゼルダ姫とも仲直り…していただければ、と」

デイジー「そんなに悲観的な顔をしないでって。
     そりゃ、ちょっとはロゼッタやゼルダにムッときたけどさ。
     …わかった、適当に下手に出ていればゼルダの気も収まるよ。
     あと…明日からは、やっぱり私もちょっくら直接指導することで
     納得してくれるでしょ」

ロゼッタ「…………はい……………………」ウツムキ

277: Mii 2019/10/20(日) 19:00:28 ID:kTeQvGU6
デイジー「ロゼッタの行動は時として調子っぱずれな音を奏でるけど、
     それはそれでロゼッタの個性だし。何も悪いことじゃないよ。
     今回ヘマをしたと思ったのなら、次に挽回すればいいんだし」



ロゼッタ「……………………」

デイジー「…………ひょ?ロゼッタ?」








ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――
     ずみまぜん、でじだあ゙ぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」ポロポロ

デイジー「」

デイジー「」

デイジー「……いやいや!いやいやいやいや、待って待って!!」ナニゴト!?

ロゼッタ「あああああああああぁぁぁぁ――――――――――――」ポロポロポロポロ

余りの申し訳のなさに、不甲斐なさに、うずくまって。
大粒の涙が、次から次へと溢れ出てきます。

278: Mii 2019/10/20(日) 19:04:54 ID:kTeQvGU6
ゼルダ「……っ!なるほど!ロゼッタのバトルフェイズは、まだ終了していない!」ハッ!?

ヒルダ「何か知っているのですか、ゼルダ姫!」クルッ

ゼルダ「にっちもさっちもいかなくなったときの最終手段……
     速攻魔法発動!『泣 き 落 と し』っ!」

ヒルダ「な、泣き落とし!?」

ゼルダ「プライドを全てかなぐり捨てて、効果発動!
    これは相手の妥協が出るまで、何時間でも情に訴えて、
    理屈や道理による拒絶を選択肢からデリートするモード……っ!

    そしてその時間の分だけ、最大FP1500以下のファイターは――
    精神的に追加攻撃できるっ!」

ヒルダ「最大FP1500以下…?ハッ!?」



    ゼルダ:元々FPが高いうえにトライフォースの加護のおかげで最大FP+3000
    ヒルダ:元々のFPは高くないがトライフォースの加護のおかげで最大FP +3000
    ロゼッタ:大会7日前時点で最大FP896



ヒルダ「ロゼッタったら、そこまで考えて…
    …って、違いますよね、絶対!?どう考えてもこじつけではないですか!?
    何か悪い物でも食べましたかゼルダ姫!?」

279: Mii 2019/10/20(日) 19:07:18 ID:kTeQvGU6
ゼルダ「さあ、ロゼッタが仕掛けますよ!
    まず1時間目!涙をドロー!魔法戦士ロゼッタ、追加攻撃っ!!」ビシッ!

ヒルダ「ゼルダ姫!?正常な思考回路の貴方に戻ってきてください!
    幽閉生活のせいで少しおかしくなっているのですか!?」ユサユサ



デイジー(外野の喧しいやりとりも、丸聴こえ、なんだけど)チラッ



ロゼッタ「うわああああああああああああ――――――――」ポロポロ



デイジー(……………………これ、作戦とかじゃなくて
     正真正銘のマジ泣きだあああああああぁぁぁぁ!?)

チコ「ママを泣かせるなんて、酷いっ!」

チコ「そうだそうだっ!」

デイジー「ちょっとだまらっしゃい!!」

280: Mii 2019/10/20(日) 19:09:58 ID:kTeQvGU6
~2時間後~

ロゼッタ「――――――――っ、えぐっ、えぐっ」グズグズ

デイジー「いい加減泣き止んでくださいなロゼッタさんや!
     女性の涙は女性には効果はいまひとつ、これ基本!
     おまけに私の10倍以上の年齢を重ねてて、そんなにガチで泣いて…
     恥ずかしくないの!?恥ずかしいよね!?だからさっさと泣き止んで!?」

ロゼッタ「年齢の話をしないでくださあああい!!
      そうですよ、私はダメダメな人間なのですよぉ―――――!!!」ポロポロ

ヒルダ「あ、号泣の勢いが5割増しになりました」

デイジー「」

デイジー「」

ゼルダ(…割と効いている感じがありますね)

ゼルダ「ところで私とヒルダ姫はそろそろ就寝しますね」スタスタ

ヒルダ「えっと、えっと、おやすみなさい」スタスタ

デイジー「ちょ」

281: Mii 2019/10/20(日) 19:12:30 ID:kTeQvGU6
~4時間後~

ゼルダ「ZZZ・・・」

ヒルダ「ZZZ・・・」



デイジー「…いい子いい子、だからお願いだからいい加減…
     泣き止んでほしいなあ、日付変わっちゃったんだけど」ナデナデ

ロゼッタ「わ、わだじ、だぢが。……わだ、じが。
     もっど、づよぐで、がじごがっだら。
     …ごんな、ごどに、ならながっだ、のに」

デイジー「いや、別にロゼッタ達の強さや知能に不満があるから使わないとかじゃ…」

ロゼッタ「ぐずっ……おおいに、ありまず、よお!」バンッ

デイジー「どうして、そう思うのさ。一回、涙拭いて落ち着いて、話して、みてよ…」



ロゼッタ「……………………」フキフキ

ロゼッタ「…………」スゥー

ロゼッタ「だ、だって。デイジー姫に、何があったのかは、知り得ませんが。
      私に、話すには、ま、まだ――信頼が足らないって、ことでしょう?」

282: Mii 2019/10/20(日) 19:15:33 ID:kTeQvGU6
デイジー「そんなことないよ!ロゼッタも、ゼルダも、ヒルダも!信頼してるよ!
      いきなり何を言ってくれちゃってるのさ!」

ロゼッタ「――で、も。ピーチ姫は、そのチカラについて、
     目にして、その強さも、もろさも、理解している、んですよね?」

デイジー「うっ…」

ロゼッタ「なのに、だというのに――!
     私は、ピーチ姫と違って、受け止めることができない…と。
     誤って理解してしまう…と、デイジー姫に思われて、気遣われているから、
     今の、今まで、教えてもらえずに、いる。

     そん、な、デイジー姫の信頼を勝ち取れていない自分が、悔しく、て――!」ポロポロ

デイジー「違う、違うからっ!!ピーチが私のチカラについて詳しいのは、
      あくまで成り行き上仕方なかったの!私の方から教えたりなんかしてない!
      ロゼッタにだけ、気に食わないから、信じてないから話さない、なんてこと、
      絶対にありえない!!」

ロゼッタ「私は、ピーチ姫に比べればずっと弱くて、泣き虫で……!
     何をするにも、自分だけでは解決できずに、むしろ問題ばかり起こして……っ!
     自分を責めて反省しているようで、実はそれが一番楽であることも薄々と気付いていて、
     ますます悲しくなっていって…っ!」

デイジー「ちょっとは聴く耳持ってくれないかなあ…!
      ――――――――――――――――――――――――」

283: Mii 2019/10/20(日) 19:17:40 ID:kTeQvGU6











デイジー(あ、れ。



      この感覚…このロゼッタの振る舞い、どこかで…









       いつ、だった、だろう…………?)

284: Mii 2019/10/20(日) 19:21:25 ID:kTeQvGU6

・・
・・・

デイジー「お父様、聞いて聞いて!私、今日も、城下の子供たちと沢山遊んだよ!
  生意気に駆けっこ勝負を挑んできたから、ぶっちぎりの返り討ちにしてやったわ!
  流石に涙目になってて可哀想と思ったから、肉まんの一つでも奢ってあげたら、
  あっさり元気を取り戻してくれてさ。子供って単純だよねー」

国王「おお、そうかそうか、デイジーは元気で偉いなあ。
   でも、遊ぶのもいいけど、家庭教師さんとの約束を放り出したのは
   やっちゃいけないことだったって気付いてるかー?」ナデナデ

デイジー「ぎくっ。……ちょ、ちょっと悪いことしたかなーって。
     でも、あの人、少し間違うだけですぐに怒るしさ。
     勉強中は私語は禁止―、とか居眠りしないー、とかうるさいし。
     だいいち、経済学とか帝王学とか、面白くないしつまんないよ」

国王「…魔法や体術の修業の方は?」

デイジー「…………てへ」コツン

285: Mii 2019/10/20(日) 19:24:11 ID:kTeQvGU6
国王「…はぁ。デイジーも、もう二十歳を過ぎてるだろう?
   いつまでも子供っぽい行動じゃ許されないぞ?
   そんなことを言っていると、将来、立派な女王になれないぞ?
   学問に王道なし、だ。

   かのキノコ王国のピーチ姫は、最近即位したばかりだが、
   それはそれは有能な傑物で、どんな難題もたちどころに解決してしまうそうだ。
   デイジーも、そんな人に少しでも近づきたいだろう?」

デイジー「い、いやね?こう、城下を巡っている間に、
     若者同士の喧嘩を取り押さえたり、迷子を案内してあげたり、
     治安向上に結構貢献してるよ?王国民の立場で物事を見るって大事だよ、きっと。
     最近は、知識を深めるために各国を行脚してみたいなーとも思い始めてるし。
     あ、そのキノコ王国ってところにも行ってみたい!ぜひ!」

国王「稽古事から解放されて、旅行して美味しい物を食べたり観光したりしたい、
    の間違いだろう?懲りないな」

デイジー「…………てへ」コツン

国王「二度目は禁止。……はあ、とにかくすぐに、家庭教師さんに十分謝ってきなさい」

デイジー「かしこまりましたっ!」

286: Mii 2019/10/20(日) 19:27:00 ID:kTeQvGU6
大臣「王よ、いくら愛娘といえど、齢21にもなって、立場を理解しない愚鈍な振る舞い、
   いい加減に本気で矯正してやらねば…サラサ・ランドの将来が危ういですぞ?」アキレ

大臣「全くですな、もはや手遅れの可能性もありますが…
   これは、夜逃げの準備をしておいた方がよいかもしれません」タメイキ

国王「うむ、皆の言い分も至極もっともだ。…だがまあ、
   デイジーはこの明るさが最強の持ち味だからな!
   その分、私と妻がしゃかりき働いて見せるから大目に見てやってくれ」ドーン!

大臣「では、王が退位された暁には…私、お暇を頂きますね」

大臣「あ、私も」

大臣「俺も」

国王「えっ あの それはちょっと困るなあ、我慢してくれないか?
    デイジーも悪い子じゃないんだよ、うん。お転婆なだけで」アセリ

大臣「まあ、元気のないデイジー姫が爆誕したらそれはそれで気持ち悪いな」ヒソヒソ

大臣「言えてる言えてる」ヒソヒソ

287: Mii 2019/10/20(日) 19:31:20 ID:kTeQvGU6
デイジー「大臣さんたちー、聞こえてるよー。というわけで、謝罪しに行ってきまーす。
      のびのびと成長出来て、私はサラサ・ランド、大好きだよぉー!じゃあねー!」タタタッ

国王「うむ、そうしてきなさい」ニッコニコ





大臣「いや、のびのび過ぎだろ。親バカここに極まれりだな」

大臣「全くだ…これでなんとかなっているのが不思議でならん。
    それだけ王が有能ということになるが…本気で次代が心配だ」

大臣「まあ、侵略されたことが一切なければ、こんな王国でもやっていけるってことだろ」

国王「こんな王国で悪かったなー、はっはっは!」

大臣「しょうがないですね」

大臣「まったく、ふふ…」

・・・
・・

288: Mii 2019/10/20(日) 19:33:02 ID:kTeQvGU6
デイジー「―――――――っ」ギリッ



デイジー(状況は全然違う、はずなのに。
     昔の私と、今のロゼッタが、重なって見える)グサッ

デイジー(…………吐き気が、する)






ロゼッタ「私にできることなら、なんでも、しますから。
     何をすれば、デイジー姫の、信頼を、勝ち取ることが、できますかー!」グズッ





デイジー「――――え」

289: Mii 2019/10/20(日) 19:34:55 ID:kTeQvGU6




――――嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だっ!嫌だっ!!
――――こんな自分、要らないっ!何にも守れないなら、死んだ方が万倍まし!
――――いなくなってしまった方が、いいっ!!

――――だから…マリオッ!私の、一生のお願いっ!
――――私に力を。全てを、一切合財を…己でねじ伏せてしまえる、力をちょうだい!
――――それさえあれば、私はどうなってもいい!なんだってする!
――――体を慰み物にされたって、悪魔に魂売ったって構わないっ!!




デイジー「――――っ!!」ハッ!



――――私は…ロゼッタをみて、何を想う?
――――もしロゼッタの立場だったら…自分の無力さに苛まれてたら…
――――それをヒラヒラ手を振りつつ「また今度」と受け流されたら…どんなに絶望する?



デイジー「わ、たし、は」

――――なんて、酷いことを、していたんだろう。

290: Mii 2019/10/20(日) 19:38:43 ID:kTeQvGU6
ロゼッタ「くー」スヤァ

ロゼッタ「……うーん。あら?もしかして…泣いて泣いて…そのまま寝ちゃいました、か…?
     時刻は…ああっ!もう昼過ぎ!?すっかり寝坊ですっ!」ガバッ!



デイジー「…………」ズーン

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」



ロゼッタ「…あのー。これは一体、どういう状況ですか?」

ゼルダ「…ああロゼッタ、ようやく目が醒めましたか。お寝坊さんですね。
     私とヒルダ姫が起きてきたときから、あの調子です。
     時折、聞き取れないくらいの小声でぶつぶつ呟きながら、
     呼びかけにも碌に応じず突っ伏したままの状態で」

ヒルダ「ロゼッタ、あのあと一体…何があったのですか?」

ロゼッタ「何があった、と言われましても。 私がその…無様に泣いて泣いて泣き続けただけで、
     特に何か妥協を得られたわけでは…むしろ、重ねてデイジー姫に無礼を働いたということで
     謝ることが増えたと言いますか…」

ヒルダ「…ロゼッタ、お疲れ様です!」ビシッ

291: Mii 2019/10/20(日) 19:40:27 ID:kTeQvGU6
デイジー姫は、うっすら眼を開けて、無表情のまま、焦点の定まらない視線を…
ただ前方へ投げやっています。

ゼルダ「きっと、ロゼッタの渾身の泣き落としが効いたのですよ。さすがですね」ヒソヒソ

ロゼッタ「何がさすがなのか気になる所ではありますが…本当にそうなのでしょうか」ヒソヒソ

ヒルダ「もうひと押しと言うことですか?ロゼッタ、頑張ってください!」ヒソヒソ

ロゼッタ「わ、私が最後まで押し切るんですか…?
     お二方の助太刀も欲しかったりするのですが」



ゼルダ「私とヒルダ姫では追加攻撃出来ないので駄目です」

ヒルダ「駄目だそうです」

ロゼッタ「何の話ですか!?」

292: Mii 2019/10/23(水) 00:34:29 ID:nJDn.zMQ
デイジー「……………………アンタたち、聞こえてるよー」



ロゼッタ「!!」

ゼルダ「あら」

デイジー「……ああ、別に心配しなくていいよ。……参った、降参。
      私のチカラ、使ってあげても、いい、よ」

ロゼッタ「ええっ、どういう風の吹き回しですか?」

デイジー「まあ、細かいことはいいじゃん。

     ただねぇ、そこは踏ん切り付いたうえで、チカラを使うことを既定路線にして、
     100通りほどシミュレーションしてみたんだけど。

     どう転んでも、この事件の全てが片付いた後に…
     私、3人から絶縁求められる結末しか導けなくて。
     ほとほと困ってたところなんだよ、はぁ」トオイメ

ロゼッタ「私たちが…」

ゼルダ「絶縁を…」

ヒルダ「迫る…?どういうことですか…?」

293: Mii 2019/10/23(水) 00:37:15 ID:nJDn.zMQ
ありえません。そんなこと。
無理を言ってチカラを使ってもらうことになったというのに。

デイジー姫は、やや乱暴に頭を掻きむしってから、諦めの心持から言葉を紡ぎます。
笑って見せていますが、生気が欠けていて、あまり見ていられません。

デイジー「私って、チカラを使っているときの記憶、結構あやふやなんだよね…。
     無意識に忘れようとしているのかな?サラサ・ランドで頻繁に使う割に。
     毎度、気が付いたら全てが片付いてる…って認識が合ってる、か」

ロゼッタ「…あっ!もしかして、サラサ・ランドに戻るたび、
      溜まりに溜まっていた仕事を…その能力を使って超速で片づけていたんですか!?
      それで政務がなんとか持ちこたえている、と」

デイジー「…………妙な所で勘が冴えてるね、ロゼッタ。その通りだよ。
     チカラを使うと、基礎能力も知性も跳ね上がる、からね…」

そんな都合のいいことが起きるなんて、とでも思ったのか。
ゼルダ姫が息を飲みます。

ゼルダ「…そんなに万能な力なら、どう考えてもさっさと行使すべきでしたでしょうに。
     決まりですね、さあ、使って見せてください。フィールドに向かいましょう」



そう、一件落着とばかりに席を立つゼルダ姫。
デイジー姫も、つられてゆっくりと立ち上がり…あら?

向かおうとする先が、フィールドではありません。

294: Mii 2019/10/23(水) 00:40:11 ID:nJDn.zMQ





デイジー「…ごめん。今日はちょっと準備があるから、『明日』になる」テク テク





ゼルダ「はい?まだ昼を少し回った程度の時間帯ですよ?
     それとも、まだ決意が定まっていないので――」

そのとき。
これまで…見たこともないような険しい剣幕で、
デイジー姫が怒号をあげたのです。



デイジー「ほんとに準備があるのっ!!馬鹿にしないでっ!
      それと悪いけど、明日になるまで、一番奥の部屋…貸切るから!
      絶対に、入ってこないでね!!」キッ



さしものゼルダ姫も、あまりの剣幕に、一喝に、思いっきり怯みます。
鼻息荒く立ち去っていくデイジー姫を、止めることすらできません。
ヒルダ姫は、すっかり縮こまってしまいました。

295: Mii 2019/10/23(水) 00:41:46 ID:nJDn.zMQ
ロゼッタ「ま、まあ。明日には披露して頂けるということですし、いいじゃないですか。
      それではゼルダ姫、本日も…よろしくお願い致します!」タッ タッ タッ

ゼルダ「……これで、大した底上げにならなかったら承知しませんからね、デイジー」イライラ



少し進展した、と思いつつ。今日も今日とて、ゼルダ姫に鍛えてもらうことにしました。
明日が楽しみです。















デイジー姫は、夕食の時間になっても、一切姿を現そうとはしませんでした。

296: Mii 2019/10/23(水) 00:44:00 ID:nJDn.zMQ



ガツン。ガツン。ガツン。ガツン。



デイジー「……………………………………………………
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない……」ガンッ ガンッ



ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ。
壁に、床に、やり切れず頭突きの音が響き渡る。
凹むばかりは、壁の方。

297: Mii 2019/10/23(水) 00:45:50 ID:nJDn.zMQ
デイジー「……………………………………………………
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない……」ガンッ ガンッ

デイジー「…………」ピタッ

デイジー「……………………無駄なあがき、かあ」グズッ

デイジー「よし、気持ち、切り替えるよ。私がやるべきことを、するんだ。
     これで、私達が、少しでも、活躍できるようになる…なら」グズッ



デイジー「……………………せーの」スゥー

298: Mii 2019/10/23(水) 00:48:09 ID:nJDn.zMQ
デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

299: Mii 2019/10/23(水) 00:48:48 ID:nJDn.zMQ
デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

300: Mii 2019/10/23(水) 00:50:16 ID:nJDn.zMQ
キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…。



デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

301: Mii 2019/10/23(水) 00:51:00 ID:nJDn.zMQ
キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…。



デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

302: Mii 2019/10/23(水) 00:52:39 ID:nJDn.zMQ
キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…!!!!!!!!

デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……

      私は…わ、た、し、は…………」ウツロ

303: Mii 2019/10/23(水) 00:54:33 ID:nJDn.zMQ
~翌日~



ロゼッタ「いよいよですね!」ワクワク

ゼルダ「ロゼッタははしゃぎ過ぎですよ。
    今頃、大きく出過ぎたかと冷や汗たらたらの状態なのかもしれませんよ?」

ヒルダ「あは、それはちょっと見てみたいです…」



会話をしながら軽く身支度をして、さあ仮眠室を出よう…というところで。



がちゃり。



扉がぎいい、と開けられます。



デイジー姫が、妙に静かに――唐突に、部屋にやってきました。

304: Mii 2019/10/23(水) 00:56:38 ID:nJDn.zMQ
ロゼッタ「おはようございます、デイジー姫!
      えっと、まずは朝食にしましょうか――――」





デイジー「フィールドに、全員、集合。…………以上」

バタン。





どうしたことでしょう、出鼻を挫かれました。
私の言葉を、いともあっさり遮って…デイジー姫は抑揚のない声で短く指示をして。
もう興味をなくしたかのように、また扉の向こうへ行ってしまいました。

ゼルダ「…なんですか、あの態度は。そろそろ許し難くなってきたのですが」

ロゼッタ「ま、まあまあ。デイジー姫の中で何かしらの葛藤があったということで、
     すこーし気が立っているだけですよ!」

ヒルダ「そうですね、とりあえずデイジーの所に向かってみましょう。
    彼女にも何か考えがあるのですよ」

これ以上、デイジー姫とゼルダ姫の仲をこじらせてはたまりません。
ヒルダ姫と協力してゼルダ姫を宥めに宥めて、揃ってフィールドに向かいます――。

305: Mii 2019/10/23(水) 00:59:13 ID:nJDn.zMQ















――――地獄の宴が、開かれようとしていることにも気付かずに。











気付いていた者がいたとしたら…それはきっと、『もともとの』デイジー姫、くらいでしょう。

306: Mii 2019/10/23(水) 01:00:43 ID:nJDn.zMQ
フィールドに向かってみると、既に到着しているデイジー姫。

――目を閉じ、腕を組み、柱の一つに背中を預けて、もたれ掛かっています。
――らしくない振る舞いだなあ、と一瞬思って……。



ロゼッタ「…………!?」ビクゥッ



足を止めてしまった私は、悪くないと思います。

――何か、違う。
――デイジー姫の雰囲気が、纏う何かが、凄まじく、違う気がする。

――いつもなら、満開の向日葵のような…優しく照らす太陽のような…
   明るく朗らかな雰囲気に満ち溢れている、はず。なのに。

――今のデイジー姫からは、それが一切感じられません。

しかし、ゼルダ姫とヒルダ姫は。
違和感こそ感じたものの、さほど気にしないようで。
特に歩みを止めないまま、デイジー姫の元に向かいます。

慌てて私も、付いていく。
…針のむしろの感覚を拒絶する体を、強引に、向かわせて。

307: Mii 2019/10/23(水) 01:04:07 ID:nJDn.zMQ
ゼルダ「…はっきり申し上げますと、その態度、気に食いません。
    私たちを馬鹿にしているのですか?
    コミュニケーションをとるための態度と言うものがあるでしょうに!」

またもや、ゼルダ姫がおかんむり。
そろそろ、実力行使にも出かねない感じです。
それでもなお、デイジー姫は態度を改めません。

…いえ。それどころではありませんでした。
薄く目を見開いて、小馬鹿にするような感じで私たちをすいーっと見渡した後。
信じられない、とんでもない行動に出たのです。



いきなり、指を3本、突き立てて。



デイジー「さてと。今から、私が直々に特訓してやるわけだけど。
     『お前たち』には今後、約束事を3つ、守ってもらおうか。

     ひとつ。順番に特訓してやるから、私に休む暇を与えないくらいの気持ちで
     3人交代で絶え間なく掛かってこい。

     ふたつ。特訓は本気(マジ)でやれ。手抜きと逃げは万死に値する。

     そして、みっつ。      私の命令には 絶対 逆らうな。
                                             ……以上だ」

ロゼッタ「!?」

308: Mii 2019/10/23(水) 01:06:38 ID:nJDn.zMQ
ゼルダ「…なっ!!」カアッ!

ヒルダ「…え?えっ?」



あまりの無理強い、無理難題。
デイジー姫の言い分を飲むなら、主従関係…いえ隷属にも当たるかもしれません。

私は…いえ、私とヒルダ姫は、「いきなりどうして、こんな激変した態度をとるのか?」という疑問が
真っ先に浮上してしまい、腹を立てるどころではありません。

――しかし、ゼルダ姫を怒髪天にするには、十分すぎたようです。

ツカ、ツカと速足でデイジー姫に迫るゼルダ姫。
当然ながら激しい口調で、デイジー姫を非難します。



ゼルダ「フラフラと訳の分からない態度を取っていたかと思えば…
    今度は横柄極まりない、一方的な命令姿勢…!!何様のつもりですかっ!!
    冗談ではありませんっ!ふざけないでください!
    
    これ以上の狼藉は、こちらとしても重く受け止めなければならなくなりますよ!
    ピーチには悪いですが、ハイラルに翻意ありとみなしてもよろしくて?」

309: Mii 2019/10/23(水) 01:08:44 ID:nJDn.zMQ
デイジー「…………」

デイジー姫は、なんとも面倒な物をみるような視線を貫きます。
それが、ゼルダ姫の機嫌をますます急降下させることになるの、分かっていますか!?



デイジー「…………」

ゼルダ「なんとか言ったらどうですか!?」


デイジー「じゃあ言わせてもらう。
     …最後通牒。私の命令に逆らうな。どうなっても知らないが?」

ゼルダ「いい加減にするのはそちらでしょう!
    あいにく、ロゼッタやヒルダ姫はそこまで気に留めていないようですが、
    私はそうは参りません!誇りが、立場が私を奮い立たせます!
    私を誰だと思っているのですか!私はハイラル王国の――」

310: Mii 2019/10/23(水) 01:11:43 ID:nJDn.zMQ
ギュンッ!



――「デイジー姫以外の」全てが、スローモーションに、見えました。
――デイジー姫の、腕が。こう、グイッと、伸ばされたのです。

――ヒルダ姫は、反応できない。
――私も、やっぱり反応できない。

――――ゼルダ姫ですら、何が起こったか分からない。



――伸ばされた腕は、いともあっさりとゼルダ姫の首に届いて…………。








――ぽきり、と。首を折りました。



…え?

311: Mii 2019/10/23(水) 01:14:35 ID:nJDn.zMQ
ヒルダ「…え?」

――私も、ヒルダ姫も。
――ナニガオコッタノカ、ワカラナイ。

ただ、5秒ほどして、ようやく。
ゼルダ姫が、四肢をだらんとぶら下げて…屍に変わったことが、わかりました。
デイジー姫が腕を離せば、たちどころに支持を失った体が崩れ落ちます。
…動き出すことなど、ありません。

ぞわっ!

一瞬で、全身から汗が吹き出します。
心臓がバクバク言って、激しく警鐘を鳴らします。

危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

312: Mii 2019/10/23(水) 01:17:54 ID:nJDn.zMQ
どれだけ、意識を飛ばしていたか。
一瞬のような、永劫のような。
デイジー姫は、全くゼルダ姫を心配する様子もなければ、
自分の愚行に反省する様子もありません。

デイジー「まあ、そんなに気にするな。どのみち…ほら、見てみろ。
     残機があるおかげですぐ復活できるんだから」

ゼルダ姫が、全身を光らせつつ、命を再び宿します。

…ええ、確かに、その通り。
その通り、では、ありますが。

単に吹っ飛ばされて撃墜、と。
非業の死を遂げて骸となる、とでは。
精神負荷に、雲泥の差があります。

ゼルダ姫はうつ伏せのままほんのすこし、目を開けた後。
一瞬で覚醒して立ち上がり、喉に手をやり激しく呼吸。
…目は血走り、完全に過呼吸になっています。

313: Mii 2019/10/23(水) 01:19:53 ID:nJDn.zMQ
何が起こったのか、分からない、動揺。
ちょっと考えて、どうしても「それ」しか可能性が無くて、混乱。
「それ」を引き起こしたのが、目の前の彼女という結論に至り――
それでも、一瞬だけ、決壊を踏み止まって。

ゼルダ「は、はは、は。デイ、ジー。
    気の迷い、ですよね。今なら、土下座、して、くださるのなら、
    慈悲深い、私が、許して、あげ、ても、いいです、よ?」バクバク



デイジー「約束を破った愚か者を制裁しただけだが?
     自業自得なのに慈悲深いとは聞いて呆れる」フッ

ゼルダ「」ブチィッ



激怒。激昂。憤怒。憎しみ。

ありったけの感情を込めて、デイジー姫に襲い掛かります。



ゼルダ「ハアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ――――!」ダダッ!



嘘っ!こんな、本気の殺意を込めたゼルダ姫を、私は知りません。
振るう拳には魔法で力も籠められているのか、鈍く光る。とんでもない速さと威力です。

314: Mii 2019/10/23(水) 01:22:14 ID:nJDn.zMQ



…………それを、デイジー姫は。



デイジー「せめて」ザシュッ

ゼルダ「…………ああああっ!!?」

――――「指一本」の、一振りで、手首から切り落とし。



デイジー「肉弾戦でなくて」ドスッ!

ゼルダ「があ゙っ」ズンッ
    
――――助走動作すらない「足蹴り」で、空高く打ち上げて。



デイジー「純粋な魔法で勝負を仕掛ければ…多少はダメージ、与えられたかもな」ガッ!

ゼルダ「」ベチィッ!

――ハイジャンプで上を取り…
   落下に転じたゼルダ姫を、フィールド目掛けて弾丸の如く叩きつけました。

315: Mii 2019/10/23(水) 01:28:40 ID:nJDn.zMQ
時が、止まっています。…いえ、時だけではなく。ゼルダ姫も、止まっています。

赤い、赤い、赤い。

ほんの一瞬にして、あたりは血の海です。

ゼルダ姫の腹部に……風穴が空いているのが、見えてしまいました。
ヒルダ姫は、先ほどから、目を見開いて、涙を溢れさせて、
痙攣したかのように「あ、あ、ああ」と錯乱するだけです。

またもやゼルダ姫「だったもの」が光に包まれ、ゼルダ姫、復活。

デイジー「あー、ようやく起きた。気分はどうだ?」

ゼルダ「――――っ!!?」

ゼルダ姫は、今度は一転して、後ずさる。
魑魅魍魎を見たかのような、恐怖と怯えが駆け回っている表情です。

デイジー「いい加減、命令に従ってくれると、こちらとしても話が楽なんだが」

ゼルダ「いやあああああああああああぁぁぁっ!!!」

――――明らかに動転しながら、恐怖に怯えながらの破れかぶれな、魔法の連打。
――――ロクに当たらず、意味もなく。

デイジー「…あっそう、もういいや」

無造作に掴んだ腕で、ぽいっとゼルダ姫の体を投げ飛ばします。
フィールドの柱の一つにめり込んだ結果…頭を垂れて、微動だにしなくなりました。

316: Mii 2019/10/23(水) 01:30:52 ID:nJDn.zMQ
ヒルダ姫は、とうとう…余りの惨状に、気絶してしまった様子。
…それで、正解だと思います。

ロゼッタ「…デイジー姫。…デイジー、姫!!どうして!?
     どうして、こんなこと、するのですか!?」

デイジー「どうして…って、お前たちが願ったことだろ?
     私に、鍛えてほしいと散々頼んできたのは…そっちじゃないか」

ロゼッタ「どういった関係があるのですか!?
     行動も、その口調も、性格も、狂いすぎていますっ!!
     いつもの…いつものデイジー姫に、戻って下さい!」



途端に、腕を一振りされました。

…………おかしいですね、私の左腕。
肘から先がありません。何故か、地面に落ちています。
鎌鼬というやつですか。



激痛にたまらず転げまわる私。至って見下す表情で、デイジー姫は私を見ています。
幸い、すぐに命を取られることは…ありませんでした。

317: Mii 2019/10/23(水) 01:35:09 ID:nJDn.zMQ
痛みを涙目で堪えつつ、最後にあがいてみます。



ロゼッタ「では…せめて。デイジー姫の身に今、何が起こっているのかだけでも、
     教えては頂けないでしょうか?」ポタポタ

デイジー「ああ、表の顔の私から…しっかり聞いておくんだったな。
      多少は『今の私』への対策、できただろうに。
      別にいいぞ、つまらない話だが」

…あれ?完全にこちらからの要望が無視される、というわけではないようです。
よかった。事情を話してくれる分には、いつものデイジー姫よりも素直そうで。

ロゼッタ「…………つまらないかどうかは、私が決めます。
      …このちぎれた腕、どうしましょうか。回復魔法でさっさと…
      でも、やっぱり、先に話を聞いておきたいです」



ふと思います。妙に私、冷静ですね。こんな…状況なのに。

318: Mii 2019/10/23(水) 01:38:12 ID:nJDn.zMQ
デイジー「…………………………………………
     昔、サラサ・ランドに、一人の姫がいた。
     素質と言えば人より多いFP量くらいで、大した才能もなければ努力もしない。

     やることなすこと人に頼り切り、父となる国王や大臣たちに任せきり。
     国王は姫を甘やかし、大臣は早々と諦めて、姫はその環境に居直った。
     それでも、優秀な人材たちのおかげで、問題なく王国は動いていた」

ロゼッタ「……………………」



まるで、私が以前やったような――昔話、自分語り。



デイジー「あるとき、不届き者の宇宙怪人が、王国中の人たちに催眠を掛けて、
      王国を乗っ取ろうとした。姫を、自分の妃にしようとするおまけ付きだ。
      それまで外敵など想定すらしていなかった王国は、大混乱に陥った。
      幸い、宇宙怪人を塵のようにあしらえるヒーローに守られる幸運を得た姫は、
      悪の手が及ぶことなく救出された」

319: Mii 2019/10/23(水) 01:41:48 ID:nJDn.zMQ
ロゼッタ「ああ、よかったです」ホッ

デイジー「だが…キノコ王国を襲う魔王が、王国の姫を『魔法の力を邪魔と感じ』、
      第一段階として姫を攫ったのとは状況が違った。
      最初から、一気に王国を潰す気で、塵野郎は動いていた」

ロゼッタ「……え?」

……ああ、姫を妃とすることと王国侵略は別の話で、
姫を攫ったからといって一息ついてくれる敵ではなかったということ…で……。
……………………ま、まさか!

最悪な、予感が、よぎる。
こういう時の予感って、的中してしまうものなんです。



デイジー「…………姫『は』助かった。なんの怪我もなく、ヒーローに連れられて、
     呑気に城へ戻ってきた。

     

     …………催眠による同士討ちと、防衛戦の大失敗により、
     城下の5割と城内の9割の人を失った城にな」

ロゼッタ「な…………!!」

――それは、一体。
――どんなに、おぞましい光景なのでしょう。

320: Mii 2019/10/23(水) 01:43:59 ID:nJDn.zMQ
デイジー「姫は、3日3晩、泣き喚いた。
     1週間経っても、歩くことすらままならなかった。

     1か月後、人員不足から半強制的に政務に駆り出されたものの、
     王国の未来の為に勇敢に散っていった人たちのことを、
     己を生き永らえさせるためだけに散っていった人たちのことを、
     生き残った人から聞くだけで、己の愚かさに気が狂いそうだった。
     
     強くなろうと誓った。ひたむきになった。
     だが、すこし身体能力に自信があるくらいでは、
     怠けていたツケを払えるほど、世の中は甘くない。

     姫はヒーローに縋った。
     『今更ながら、全てを己の手でねじ伏せてしまえるチカラをくれないか』と。
     『そのためなら、己の運命含めて、渡せる限りの物を渡すから』と。

     無理を言われ、思案した彼が姫にもたらした物は――――『仮面の姫』」



――仮面の、姫?それはいったい…?

321: Mii 2019/10/23(水) 01:46:41 ID:nJDn.zMQ
デイジー「弱い自分を『強くする』のがベストだが、
     今すぐ矯正したいなら、強い自分を用意してやればいい。

     嘘八百。自己暗示。自己催眠。

     塗り固めて、塗り固めて、徹底的に…塗り固める。
     少々時間は掛かるけれども、一度『強く』なったら、易々とは解けはしない。
     それが…姫の特技。精神崩壊と隣り合わせで手に入れた、禍々しい宝物。

     『誰よりも強い、賢い。負けるはずがない、負けてはならない』という意識。
     『己の思い通りに物事は動く。動かさなければならない』という自覚。

     これが、姫の全てを支配する。誰も、姫自身すらも、逆らえない。
     親友だとか家族だとかすら、関係がなくなってしまう」

ロゼッタ「そ、んな…………!!」

そんな、ことって…………!
有り得て、いいのですか……!?

デイジー姫は、自嘲気味に続けます。…続けていきます。

デイジー「親の、そして王国の敵の塵野郎と、再会する機会があった。
     敢えて残機を与えたうえで、このチカラを使って、ざっと千回、命を奪った。
     精神崩壊の末に記憶喪失になったらしいんで、適当に捨て置いた。
     今頃は、どこかで小悪党でもやっているのだろうな」

執念深さに、身の毛がよだちます。
…はっと、気付く。あまり、他人事では、ありません。

322: Mii 2019/10/23(水) 01:49:08 ID:nJDn.zMQ
デイジー「…私のつまらない話は、以上だ。何か質問でも?」

ロゼッタ「い、いえっ……!」

デイジー「じゃあ、特訓の続きと行くか」





ザンッ!!!!!!





ロゼッタ(速すぎる…!避ける、いえ避けようと動き始めることすら、できない!?)
     


ぽたり、ぽたり。
繰り出された右腕が、脇腹を掠って、ドレスごと…根こそぎ血肉を持って行きました。

323: Mii 2019/10/23(水) 01:51:33 ID:nJDn.zMQ
ふと。
背中の方から、デイジー姫の囁く声が、聞こえます。

デイジー「そうそう、言っておいた方がいい情報があったな」

汗と、血を、ただただ消費する。――振り向けない。威圧が、凄まじい。

デイジー「流石の私も、マリオやクッパ、リンクに勝てるとは…よもや思っていない。
     あいつらは、基礎体力レベルが飛び抜けている。
     私の記憶なら…マリオがLv.160、クッパがLv.158、リンクがLv.147…だったか」

ロゼッタ「は、はは。マリオについては私も知っていましたが…みなさん、凄いですね!」

そう、乾いた笑いをしたところで。
デイジー姫が、面白そうに、妖絶に続けます。

デイジー「ところで、私は魔法がからっきしでな。
     ピーチと比較されては劣化だの下位互換だの笑われていたから、
     せめて基礎体力だけは負けないと、鍛えに鍛えてきた。
     そのおかげで、気付いてみれば……
     『表』の方の私でも、ピーチにそろそろ追いつく…くらいの基礎体力はある」



ロゼッタ「…え?」

324: Mii 2019/10/23(水) 01:58:11 ID:nJDn.zMQ
デイジー「少し前に、ピーチに勝手に測定された数値だから、
      今なら更にひとつかふたつくらいはレベルが上がっているはずだが…



     『こっち』の私の基礎体力レベルは  1 1 5  だ。
     規格外ポジションの3強のヤツらを除けば…物理面に限って言えば、
     女性の中で、どころか世界全体で見てトップの数値みたいだから。

     …今の私は、『お前たちを鍛える』ことに全精力を費やし出して、止まらない。
     死にすぎたくなかったら、私の機嫌を損なわないよう、必死で足掻くんだな」クスッ



ロゼッタ「」

ロゼッタ「」



追撃を食らって、意識が薄れて行って。
でも、先ほど受けた衝撃は、絶対に忘れないでおこうと誓いました。



とりあえず、残機が尽きませんように。

325: Mii 2019/10/29(火) 00:23:55 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「…………ううっ」ムクッ



短い時間、なのでしょうが。気を…失っていました。

もっとも、一度や二度のことでは、ないのですが。
よろよろと、ふらふらと、身を起こします。



ちらりと右を、見れば。
うつ伏せに倒れ伏し、痙攣して、血の吐いた跡まで残る、見るも無残なゼルダ姫。
私同様、全身が血濡れ、衣装はボロボロであったりします。
手が、脚が変な方向に曲がっている…気がします。
小さく、うめき声を上げているのは、気のせいでしょうか。
ハイラルの人たちが見たら、絶望で心中しそうな光景です。

命を失えば、衣装もろとも残機のおかげで復活します。
半殺しというのは、全身を駆け巡る痛みのせいで、
…惨めさをまざまざと感じなくてはならないせいで、余計に辛いのかもしれません。



あら?ヒルダ姫は…どこでしょう。

326: Mii 2019/10/29(火) 00:31:06 ID:L3Ow0O9U
…あ。

デイジー姫と対峙している…もとい、
蛇に睨まれた蛙以上に委縮していて、何も出来ない状態です。



ヒルダ「あ、ああ、あ゙あ゙あ゙あ゙!?」ガクガクブルブル

デイジー「…あのさ。一撃入れてみろとは言わないから、
     真面目に特訓に参加してくれないか?
     さっきから、泣いてばかり、棒立ちしてばかりじゃないか」



ヒルダ姫は、デイジー姫の挑発にも…泣き腫らしながら首をぶんぶんと振るばかりで、
行動に移せません。目に見えて、デイジー姫の機嫌は下降の一途を辿ります。



デイジー「私が、5数えるまでに向かってこなかったら…」

ヒルダ「…………………え?」



デイジー「5」

ヒルダ「…っ!?」

327: Mii 2019/10/29(火) 00:33:47 ID:L3Ow0O9U
デイジー「4」

ヒルダ「……っ!……っ!!」ポロポロ

なんとか、己を奮い立たせようと。



デイジー「3」

ヒルダ「………………………………」ポロポロ

…しては、いるよう、なのですが。
効果のほどは、お察しください。



デイジー「2」

ヒルダ「…………………………む、り、です」ガクリ

全てを諦めてしまって、その場にペタンと尻餅をついて…
顔を、覆って、うずくまってしまいました。



デイジー「1」

あとはもう、震えているだけ、泣き続けるだけ。

328: Mii 2019/10/29(火) 00:35:43 ID:L3Ow0O9U
デイジー「…………0」ググッ




ヒルダ「……………………」

ビクッと。ヒルダ姫の体が、ひときわ大きく震えます。



しかし、デイジー姫は『その場から』動こうとはしません。



5秒、10秒、15秒。
来たるべき衝撃が来ないことに気付き、
少しずつ、少しずつ手のひらをどかせていき。






ドズンッ!!!!!

329: Mii 2019/10/29(火) 00:39:05 ID:L3Ow0O9U

・・
・・・
ピーチ「これでもマリオは、魔法苦手な方なんだけどねー。
    そうね、物理の方なら多分…もし貴方に対してマリオが本気になれば、
    5メートル離れた所からの『何の変哲もない』パンチの衝撃波だけで絶命だわ」
・・・
・・




ピーチ姫の台詞が、思い起こされてしまいました。



ヒルダ姫の目の前には、拳を振るったあとのデイジー姫が、
動作を終わった姿勢で止まっています。

どうなっているのだろう、向かってこないのか。
それとも、あくまでハッタリだったのか。
…もしかしたら、そんな淡い期待を持ったかもしれません。
一瞬ほっとしたような表情を見せたヒルダ姫は…………





ごぼっと、大量の血を吐きました。

330: Mii 2019/10/29(火) 00:44:34 ID:L3Ow0O9U
そりゃあ、そうです。

ヒルダ姫は極度の恐怖で感覚がマヒしているのか、気付いていませんでしたが…

心臓や肺もろとも、胸のあたり10センチくらいを、
拳からの衝撃波が貫通していきましたから。

今さらながら、現実を受け止められないまま、ゆっくりと、ゆっくりと。

下を向いて行って、胸にぽっかりと穴が空いたことに気付いて、

再度絶望して、そのままフラリと…前に倒れ込んでいきました。



まもなく、復活することでしょう。そしてまた…。



失礼しました。半殺し以上に、死ぬのって、辛いですよね。苦しいですよね…!
明らかに、一番絶望の底にいるのは、ヒルダ姫でしょう。

331: Mii 2019/10/29(火) 00:52:59 ID:L3Ow0O9U
現在、デイジー姫は、私たち3人を…存分に手を抜きつつ、1人ずつ相手しています。

気絶するか、命を失うかで、交代。



自分の順が回ってきても気絶状態なら、とばされて…ではなく。
髪を千切れんかというばかりに強く引っ張られたり、バケツの水を掛けられたりして、
強引に叩き起こされます。

だれがどう見ても、紛うことなく、拷問です。ええ。
本当にありがとうございました。
地獄の終わりが見えません。

デイジー「なんなんだろうな、全く…。
     ゼルダは、まるで歯が立たないとわかったら、いつもの生意気さはどこへやら。
     ろくに戦おうともせず半狂乱になって…這いつくばってでも逃げようとする。
     ヒルダはヒルダで、最初から無気力状態になって。
     ますます一撃で倒されやすくなって、特訓のし甲斐もありゃしない。
     先に私を煽っておいて、舐めているのか…?」ゴゴゴゴ

ロゼッタ「……!!」

デイジー姫が、手首をブラブラさせながら、
詰まらなそうにつぶやいていますが…じょ、冗談ではありません!
これ以上、ゼルダ姫とヒルダ姫に無理はさせられません!
本当に廃人になってしまいます!

332: Mii 2019/10/29(火) 00:55:46 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ「次は、私が行かせていただきますっ!」ザッ!

デイジー「…次はゼルダの番のはずだが?」

ロゼッタ「ゼルダ姫は、もう少し休憩したいそうなので!

     …あ、えええええっと、これも…
     デイジー姫のいうところの『命令に背く』ことになってしまいますか!?」

デイジー「……まあ、それは構わないが。だが、意気揚々と変わろうとする割には、
      ロゼッタも体力の限界の――」

ロゼッタ「なら一回、飛び降りてきますっ!!」ダダッ

デイジー「ようだ、が――――――」





ロゼッタ 残機-1

ロゼッタ「あいたたた…復活ですっ!…お待たせしましたぁ!」シュタッ

333: Mii 2019/10/29(火) 01:00:25 ID:L3Ow0O9U
デイジー「…くっくっく」

ロゼッタ「…あれ?どうされましたか、デイジー姫?
     何か、おかしかったですか?」

いきなりデイジー姫が、おかしそうに笑っています。
機嫌が悪いうえでの空笑い、とかではなさそうです。よかった。
でも、失礼ではないでしょうか。…口には決して出しませんが。それはもちろん。



デイジー「…くく、おかしいさ。おかしいとも。
     
     マリオカートWiiの時のロゼッタの号泣っぷりを思い出してみろ。
     正直、3人の中で…真っ先に音を上げるのはロゼッタとばかり思っていた。
     それが…まさか、回復のためとはいえ、残機減らしを一切躊躇わないなんて。
     なかなかどうして。図太くなったものじゃないか」
     
ロゼッタ「……あー、まー。言われてみれば。
     自分でも、なんでだろうって思うんですけれどね」

なんだか、命を失うための大義名分があるなら、
まるで躊躇しなくなっているような…たしかに、改めて考えると、異常ですね。

まあ、そのおかげで冷静さを保てているというのなら、有難くあやかっておきましょう。

334: Mii 2019/10/29(火) 01:03:12 ID:L3Ow0O9U
デイジー「ゼルダを見てみろ。下手をすれば、次に復活した時には
     手遅れな所まで精神がお陀仏になっているかもしれないぞ?」

ゼルダ「がはっ…だ、れ、が、だず、げ、で…ぐ、ださ…」シンダメ

ロゼッタ「可哀想です…ここまでやる必要があったのですか?」ムッ



デイジー「ヒルダもこのとおり、悲惨なありさまだ。
     今や、復活するから命を奪われるのか、
     命を奪われるために復活しているのかわかりゃしない。

     …おい、復活したのなら、少しは精神統一でもして
     自分の番の準備をしておけよ」ユサユサ

ヒルダ「――――」

ロゼッタ「復活したてで、まだ気絶しているのではないですか?」

デイジー「どうだろうな…?」

335: Mii 2019/10/29(火) 01:05:40 ID:L3Ow0O9U



ピキッ…!



ヒルダ「――――っ!?」

デイジー「さっさと起きた方が身のためだぞ」

ロゼッタ「」



ピキッ!



ヒルダ「いやああ゙あ゙あ゙あ゙アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」ガタガタ

デイジー「そら見ろ、狸寝入りじゃないか」

ロゼッタ「確認のためだけに指の爪をはいでいくのはやめてあげてください!?
     今のデイジー姫、機嫌を損ねるととんでもない暴虐に走りますね!?」

336: Mii 2019/10/29(火) 01:10:04 ID:L3Ow0O9U
デイジー姫は、えぐえぐと泣くばかりのヒルダ姫など、もう放置して…
ふたたび、こちらに歩み寄ります。…歩み寄ってきます。

5センチも離れていない所に、デイジー姫の顔が迫ってきました。



デイジー「やはり、異常だな。
     ここまで、ゼルダやヒルダの状態を気遣い、心配することはあっても…
     虐げることは間違っている、許せない…という主張がほとんどない。
     絶望のあまり泣き叫んで、止めるよう懇願してもおかしくないというのに。

     …むしろ、お前が『ニセモノのロゼッタ』であると言われた方がまだ納得がいく。
     …本物のロゼッタか?こっそりすり替わっていやしないか?」

ロゼッタ「本物ですよ!?本人ですよ!?証拠とかは特にないですけど酷くないですか!?
      …えっと、泣き叫んだら、止まってくれるのですか?」

デイジー「余計に殺意が増すな」

ロゼッタ「ですよねー。分かっていました。
     だったら、私はデイジー姫に応えるべく、やれるだけのことをやるだけです。
     デイジー姫だって、嗜虐心だけで私たちを屠り続けているわけではないでしょう?」



今のデイジー姫は、恐ろしい。それは…確かです。
でも…少なくとも、デイジー姫を責めるのはお門違いだと思うのです。
唆した私達3人の自業自得、あるいは発端の私だけが責められるべきなのです。

337: Mii 2019/10/29(火) 01:12:24 ID:L3Ow0O9U
デイジー「…………面白い。実に面白いぞ、ロゼッタ。
     ならば、こちらとしても丁重に『O・MO・TE・NA・SHI』しようじゃないか。
     その余裕が、どこで悲嘆の顔に変わるのか、あるいは乗り越えてみせるのか…
     非情に楽しみになってきた…!」

ロゼッタ「……あれ?あれれ?藪蛇ですか?
     …あと、なんだかニュアンスが変だったような。

     『とっても楽しみ』なんですよね?
     『あらん限りの絶望を与えることが楽しみ』とかじゃないですよね?」タラリ



デイジー「さあ、いざ、参る!」スッ・・・



ロゼッタ「…っ!こうなったら、当たって砕けろの精神で参りますよっ!」ビクッ

338: Mii 2019/10/29(火) 01:16:38 ID:L3Ow0O9U
すぅっと、しっかりと、デイジー姫の方を向きつつ、身構えます。
…嘘です。格闘におけるポジションなど知りません。
ついでに言うと、心臓を隠せるようにだとか、足腰のバネに力を蓄えてとか…
にわか仕込みの、小手先の動きでどうにかなる相手ではないのです。

身長差からすると、私が有利…なんてことはなく、むしろ掻い潜られそう。
そう思った矢先っ!



デイジー「フッ!!」ゴウッ!

ロゼッタ「……っ!!」

――認識できない、ほどではない、拳。
――余裕を持って躱せる、なんてことはさらさらない、拳。

直感で腕を伸ばして、鳩尾を狙うデイジー姫の腕の軌道を妨害――



ロゼッタ「――しても無駄なのでっ!」



手のひらから…隔壁を、幾重にも展開、展開、展開っ!!
ただし、間違っても真正面から生成してはいけません。
デイジー姫と私との力量差の前では、向こうの拳が貫通弾となってしまいます。
繊細に…力を逃がすべく、斜めに滑らせ、受け流す!

339: Mii 2019/10/29(火) 01:26:43 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ(よし、うまくいきました!!受け流し成功で――)

デイジー「人間の腕が2本あるのはなんでか、知ってるか?
      …交互に拳を絶え間なく繰り出すため、だぞ?」



ドガガガガガガッ!!

ロゼッタ「わっ、わわっ!?」パシン パシン

駄々をこねる子供のように、遮二無二腕を振り回すデイジー姫。
当然ながら、体のひねりなどロクに使えないため、力は籠められないはず…なのですがっ!
1発1発が、凄まじく、速くて重いですっ!山カンで防ぎに行くのが精いっぱい!



右、左、右、左、左――――っ!



フェイントも時たま交えつつ、連続攻撃で弄ばれます。
私はひたすら、体の脇へ脇へと受け流す、受け流す!

ピイイイイイィィィィン――!!

それでも。反発の勢いで、腕が大きく逸らされていきます。
その勢いは凄まじく、体ごと持って行かれます。

その隙を…見逃してくれるわけがありません。

340: Mii 2019/10/29(火) 01:31:18 ID:L3Ow0O9U
くるり、とデイジー姫が身を翻します。



デイジー「セイヤッ!!!」ドゴォッ

ロゼッタ「がはっ」ガフッ ダンッ!



…何回かバウンドしながら、フィールドの反対側まで吹っ飛ばされました。
たいじゅうのこもった、ま、まわしげり、だなんて、は、はんそくです。
そんな威力の体術、秘匿しないでおいてほしかったですね。

…ああ、また口元に血が付いています。
いい加減、血を吐くのは飽きてきました。
このままではドレスが赤く染まって、ファイアロゼッタになってしまうではないですか…なーんて。
…実際は復活のたびに汚れはきれいさっぱりなくなりますが。

袖でグイッと拭って、さっさと立ち上がることにします。
そんな私を、フィールドの反対側から見ている、デイジー姫。
早く戻ってこい、と手招き状態。

…なんだか、にやにや笑っている気がします。
余裕ぶった態度に、少しだけ、カチンと来ました。

341: Mii 2019/10/29(火) 01:33:58 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ「――――よし」ポワアアアン

何食わぬ顔で近づきつつ、こっそりFPを充填していきます。

一歩。また一歩。
歩くたびに、どんどんFPを蓄えます。

デイジー「のんびり歩くな、時間は有限だぞ」

ロゼッタ「すいません、今行きまーす!」

こう、呑気に手なんか振ってみたりして。

相手の視線、および死角の確認、OK。
移動先の座標、OK。
移動後の迅速な正拳を、イメージ。



…なんだか、わくわくしてきました。
ダメージを与えられるかどうかはともかく、
これが当たって、デイジー姫が少しでも驚いてくれたら、と考えただけで。

…準備完了。
最後は、少し小走りになりつつ、残り10メートルになったところで――

342: Mii 2019/10/29(火) 01:38:08 ID:L3Ow0O9U
シュンッ!!

ロゼッタ「それっ!!」ブンッ!

テレポートからの、完全なる不意打ちですっ!
素晴らしい集中力の賜物で、数F程度のラグをもって拳を振るえています!
後頭部…は気が引けたので、背中に…会心の一撃!これは決まりました!





デイジー「……」クルリッ グワシッ!





ロゼッタ「…ふえっ!?」

…あれ?あれれー?
どうして、振り向きざまに拳を掴まれているのでしょう?

デイジー「気配。癖。それに勘。見破る鍵はいくらでもあるぞ。
     妙にワザとらしく手など振って、姑息なことを考えていることがバレバレだ」

ロゼッタ「」アゼン

343: Mii 2019/10/29(火) 01:40:55 ID:L3Ow0O9U
デイジー「…根本的な問題として、移動と攻撃動作、合わせて10Fもあれば…
     余裕を持って対処くらいできるさ。私を誰だと思っているんだ?ん?」

ロゼッタ「あなたはデイジー姫です♪」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」ゴゴゴゴゴゴ・・・

ロゼッタ「…あ、いえ、そのう……せめて楽に死にたいなあって…」

デイジー「ハラワタをぶちまけるくらいまで殴る」

ロゼッタ「やめてください三途の川でも死んでしまいます」ガクガクブルブル

デイジー「フンッ!!!」バキィッ!



ロゼッタ「」チーン

――見失ってからの10Fでも余裕で対処可能だなんて…
――どうしようもないじゃないですか…。