2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:17:06.25 ID:5hfY6wCc0
今日から俺は765プロのプロデューサーとして働くことになる

社長「おはよう、P君
   いきなりだけど今日からわが社のアイドルをプロデュースしてもらうよ」

P「はい!がんばります!」

俺に出来るんだろうか?
大学を出て就職に困っていた俺は高木社長に拾われてこの会社に
勤めることになったが当然プロデュース経験なんてない

引用元: P「三年後までの伊織」伊織「はぁ?あんた誰よ?」 



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:17:34.24 ID:5hfY6wCc0
P「あのアイドルは何人いるんでしょうか?」

社長「12人だね、まあ仕事で分からないことがあったら
   そこにいる音無君か律子君に聞いてくれれば分かるはずだよ
   彼女たちは優秀だからね、ははは」

律子「もう社長なに言ってんですか
   今日からよろしくお願いしますねプロデューサー」

小鳥「私もよろしくお願いしますね」

P「よろしくお願いします、律子さん、音無さん」

律子「やだなあ、プロデューサーの方が年上ですよね?
   呼び捨てで構わないですよ」

P「じゃあ…律子よろしく」

小鳥「ふふ、私も小鳥ちゃんで構いませんよ」

P「ちゃんはちょっと…
 じゃあ小鳥さんって呼ばせていただきますね」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:18:01.42 ID:5hfY6wCc0
同僚のみんなはみんないい人みたいでよかった
あとは所属アイドルを覚えないとな

春香「おはようございまーす」

千早「おはようございます」

春香と千早の第一印象は対照的だった
明るく元気で人懐っこそうな春香と
他人をどこか寄せ付けないクールな雰囲気の千早

P「おはよう、今日から君たちのプロデューサーになるPだ
 よろしくな、天海さんに如月さん」

春香「えー!すごいです!プロデューサーですか!?」

千早「あなたが私たちの…」

P「うん、そうだよまだ新人だから
 分からないことも多いと思うが精一杯頑張るからな」

春香「うれしいです!ね?千早ちゃん!」

千早「えっ、ええ、そうね」

あれ如月さんにあんまり歓迎されてないような…

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:18:37.24 ID:5hfY6wCc0
P「天海さんと如月さんは今日この後レッスンだったよな?」

春香「ちょっとープロデューサーさん、春香でいいですよ!春香で!」

千早「私も千早とよんでいただいて構いません」

P「そ、そうか、春香、千早レッスンがんばれよ!」

この後も次々に事務所にはアイドルたちがやってきた
真、雪歩、亜美、真美、貴音、あずささん、やよい、美希、響
みんなそれぞれ個性的で魅力的ないい子ばかりだ
あと来てないのは水瀬伊織って子か…

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:19:09.58 ID:5hfY6wCc0
ガチャ
伊織「こんにちは」

P「こんにちはー今日からプロデューサーとして働くことになったPだ
 よろしくな」

伊織「あらそうなの?
   まあいいわ下の自販機でオレンジジュース買ってきてよ新人さん」

P「えっ?」

律子「こら!伊織自分で行きなさいよ」

伊織「なによ…ふん別にいいわよ喉も乾いてないし」

P「えっと伊織ちゃん」

伊織「なによ気持ち悪いわね、伊織ちゃんとか…
   普通に伊織でいいわよ
   
   あんたがどうしてもっていうなら
   伊織様とか伊織姫とか呼ばせてあげてもいいわよ、にひひっ」

P「そ、そうか、伊織って呼ばせてもらうよ」

伊織の第一印象はいいものではなかった
なんていうかわがままな子なのかなくらいの印象だった

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:19:34.12 ID:5hfY6wCc0
しばらくして仕事にも慣れてくるにしたがって
アイドルたちの仕事が増えてきた

アイドルとのコミュニケーションも増え
次第にみんな心を開いてくれるようになってきた

美希「ハニー今日仕事終わったらデートしよ」

P「ハニーって人前ではやめとけって…」

真「ずるいぞ美希!ボクも今日午後暇なんでどっか連れてってくださいよ」

P「ごめんな、午後からはやよいと伊織の現場に行かなきゃいけないんだ」

美希「なーんだ、つまんないの」

真「そうなんですか…」

P「それじゃ、俺は行くから気をつけて帰れよ」

美希「うん!じゃあ真君、美希とデートしよ」

真「デートって…まあいいか、行こう」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:20:01.50 ID:5hfY6wCc0
そのあと急いで事務所まで伊織とやよいを迎えに行った

P「二人ともお待たせ」

やよい「こんにちはープロデューサー!」

伊織「遅いわよ」

P「はは、悪かったよ、じゃあ行くか」

やよい「はい!」

P「元気いいな、やよい」

伊織がツンツンしてるのにも慣れてきていた

やよい「今日の収録楽しみだねー伊織ちゃん」

伊織「そうね、料理番組だったかしら」

P「そうだぞ、たしか二人のおふくろの味を作るとか」

やよい「うっうー!お母さんの料理ですね!がんばりまーす!!」

伊織「料理はいつも専属の料理人がやってるから
   ママの味なんかほとんど知らないわね…」

やよい「えー、そうなんだーなんかすごいですねプロデューサー」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:20:29.47 ID:5hfY6wCc0
伊織はいいとこのお嬢様で家も超のつくくらいの豪邸だ
でもおふくろの味がないってのは予想外だった

伊織「まあなくはないんだけどね…」

P「へーどんな料理なんだ?」

伊織「ママは子供の誕生日にケーキを焼いてくれるのよ、それくらいかしらね」

P「じゃあそれでいいじゃないか、エピソードも含めて」

伊織「ただね、見た目はきれいなんだけどすっごくまずいの…」

P「そこはアレンジしとこうか…」

伊織「ええ、そうするわ…」

やよい「私の作る料理はカレーなんですけど、どうですかね!?」

P「いいじゃないか、俺も食べてみたいな」

やよい「うっうー!じゃあプロデューサーにもあげますね!」

P「おっ!楽しみにしてるよ」

やよい「伊織ちゃんもたべてね」

伊織「ありがとう、楽しみにしてるわ」

こんな会話をしながらスタジオに向かった

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:21:14.92 ID:5hfY6wCc0
P「さて、がんばってこいよ」

そう言って見送り収録が始まった

やよいは毎日料理をしているだけあって滞りなく進んでいたが
伊織はふだん料理なんてしないらしいので四苦八苦していた

やよいの料理は実際出来上がってみるととてもおいしそうで
歓声の上がっている

一方伊織のケーキは黒こげのスポンジの上に
生クリームを塗り苺を乗せたもので
正直おいしくなさそうだった

そして試食の時やよいのカレーは審査員に好評でやよいは喜んでいた
一方伊織は全員に酷評をもらい、気丈にふるまってはいるが
明らかに落ち込んでいた

そんな様子を見ていたやよいが審査員に向かって何か言おうとする動きをみせるが
伊織はやよいの腕を掴んで止める

伊織の方を振り返るやよいは
伊織の目をみるとなにか察した様子で
なにも言わずに下がった

そうして収録は終わり
二人が戻ってきた

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:21:40.78 ID:5hfY6wCc0
P「お疲れ様、二人ともよく頑張ったな」

やよい「はい…」

伊織「………」

P「さて俺もおなかすいたから二人の料理もらっていいか?」

伊織「別に無理して私のまでたべなくていいいわよ…」

やよい「伊織ちゃん…」

P「いいから食べさしてくれよ、おなか減って限界なんだ」

それから三人で作ったものを食べることにした

P「カレーおいしいなー!やよい、さすがだよ」

やよい「よかったです…」

伊織「おいしいわね、このカレー」

やよい「そうですかね、えへへ」

あっというまに食べてしまった俺たちは続いて
伊織の作ったケーキを食べることにした

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:22:38.05 ID:5hfY6wCc0
P「ん!なんだ結構おいしいじゃないか」

やよい「ほんとですーおいしいよ、伊織ちゃん!」

P「まあ見た目はひどいけど味はいいじゃないか」

伊織「悪かったわね、見た目が悪くて…」

P「素直に喜べよ、おいしいぞこのケーキ」

伊織「ふん…」

俺とやよいに褒められた伊織はちょっと頬を赤くしてそっぽを向いてしまった
しばらく三人で話した後遅くなったので
やよいと伊織を家まで車で送っていくことにした

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:23:29.36 ID:5hfY6wCc0
やよいを先におろし伊織の家に向かっているとき伊織が口を開いた

伊織「さっきのケーキほんとにおいしかった?」

P「ああ、ほんとにおいしかったよ」

伊織「そう、よかった」

P「まあテレビの流れでそういうしかなかったんだろ向こうも」

伊織「そう言ってもらえると気が楽ね」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:23:46.53 ID:5hfY6wCc0

P「着いたぞ、伊織」

伊織「ええ」

P「じゃあまた明日」

伊織「今日は……ありがと」

それは夜の静かな空気の中でなかったのなら
聞き逃してしまいそうなくらい小さな声だった
普段ぶっきらぼうで不器用な彼女が
俺に言ってくれた初めてのお礼だった

P「どういたしまして…」

照れ隠しで同じくらい小さな声

伊織からの声も聞こえたんだ
きっと聞こえてるだろ

そう思って俺は家路についた

 

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:30:36.24 ID:5hfY6wCc0
プロデューサーがきて一年がたった
事務所のアイドルはみんなあいつのことを気に入っている
もちろん私も

やよい「ねぇ、伊織ちゃん」

伊織「どうしたのやよい?」

やよい「この前ね、プロデューサーが家に来てみんなでもやしパーティーやったんだ!」

伊織「へー、楽しそうね」

やよい「弟たちもすっごく喜んでたの!」

伊織「それはよかったわね、私もまたよんでね」

やよい「うっうー!もちろんです!」

やよいと二人で事務所で話しているとドアが開きプロデューサーと美希が来た

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:31:01.74 ID:5hfY6wCc0
P「おはよう、伊織、やよい」

美希「おっはよーでこちゃん、やよい」

でこちゃんじゃないっつーの、まったく

美希「ハニー、ミキ今日もお仕事がんばるね!」

P「がんばれよ、あと人前ではハニーって呼ばないようにな」

たぶん事務所のみんな美希のようにプロデューサーに甘えたいはずだ
でも今はみんなで牽制し合っている感じである程度の距離は保っている
美希と亜美真美という特例を除いては

なぜ事務所のみんなはあいつに惹かれるんだろう?
別に特別かっこいいわけでもなく
たしかにやさしいけどやさしいだけならほかの人でもいいはずだ
だから事務所のみんながあいつを好きになる理由にはならない

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:31:27.72 ID:5hfY6wCc0
伊織「ねえ、美希」

美希「なぁに?でこちゃん」

でこちゃんじゃないっつーの
まあ長くなるからここではスルーしとくけども

伊織「プロデューサーのどこがいいわけ?」

美希「んーっとね、ミキのこと一番見てくれて、信頼してくれることかな」

伊織「ふーん」

美希の理由はわからなくはなかった
というか納得できるものだった
たしかにあいつは私たちをよく見てくれている
いいところも悪いところも
それでいて信頼もしてくれているのはわかるから

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:31:52.03 ID:5hfY6wCc0
美希「あっ!もしかしてでこちゃんもハニーのこと好きになっちゃった?
   駄目だよ!ハニーはミキのなんだから」

伊織「ばっ、ばかいってんじゃないわよ!だれがあいつなんか…」

美希「ならよかったの」

でもまさか私の初恋が年上のプロデューサーだなんて…
予想外にもほどがある

今すぐにでも抜け駆けしたい気持ちはある
でもそれをすると後には戻れない
いまの日常が大切だから下手に失いたくない 

そんな葛藤の中アイドル活動をしていた

ある現場の帰りなんとなく事務所によると
中から話し声が聞こえた

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:32:23.69 ID:5hfY6wCc0
プロデューサーと社長が話しているようだ
何となく重苦しい空気だったので入るに入れず聞き耳を立てる形になってしまう

どうやらプロデューサーが社長に悩みを相談しているようだ
自分がプロデューサーとして今後もっとおおきな仕事をやっていけるのか
ほんとに私達をトップアイドルにできるか自信がないらしい
そこで資金面にも余裕のでてきた765プロだから
別のプロデューサーを雇った方がいいのではないかということだった

結局20分ほど聞いていたら話が終わり社長が部屋から出てきた
思わず物陰に隠れて息をひそめてしまった

社長が出て行ってから少したって私は事務所に入ることにした

伊織「あら、あんたまだいたの?
   ちょっと明日の予定を忘れてしまって」

P「はは、そんなことならメールでよかっただろ」

作り笑いが下手ね…
笑う人間がそんなに悲しい目をするわけないでしょ

伊織「まあ予定はわかったわ」

P「そうか、俺ももう帰るし送ってくか?」

伊織「ええ、お願いしようかしら」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:32:51.80 ID:5hfY6wCc0
いつものように車で家まで送ってもらう
いつもは車中とりとめのない会話ばかりであったが
今回はあんな話を聞いた後であるからそんな話する気になれなかった

伊織「じつはねさっきあんたと社長の会話を聞いてしまったのよ」

P「ほんとか?」

伊織「勘違いしないでね、わざと聞いたわけじゃなくて入りづらかったの」

P「そうか…まあいいよ」

伊織「んで、あんたやめちゃうの?」

P「さあな、でもこのままお前たちをトップアイドルにできる自信がないんだ」

伊織「そう、別にあんたにやってもらわなくても
   みんな勝手にトップアイドルになるわよ」

P「はは、そうか頼もしいな」

伊織「だからやめる必要はないわ」

P「ありがとう、やさしいよな伊織は…」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:33:18.35 ID:5hfY6wCc0
伊織「いまのは冗談じゃないわよ
   事務所のみんなあんたのこと気に入ってるんだから
   あんたが来てからの方が事務所の雰囲気いいの
   知ってた?

   律子だって小鳥だって生き生きと仕事をしてる
   
   あんたは自分じゃなくても、
   とか思うかもしれないわ
   
   でもこれだけは言わせて
   
   私はあんたにプロデュースしてほしいのよ」

P「うん…わかった」

伊織「まったくこんなこと言わせんじゃないわよ、バカ…」

家についたので、恥ずかしさもあって
すばやくプロデューサーの車から降りた

伊織「じゃあね」

P「ああ、また明日な」

伊織「バイバイ」

私の伝えたかったことは伝えることができた
これからどうするのかはあいつ次第ね…

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:34:20.02 ID:5hfY6wCc0
俺が765プロに来てもうすぐ三年がたつ頃


P「なあ、伊織」

伊織「なによ?」

P「一年前、俺に自分たちの力でトップアイドルになるっていったよな」

伊織「ええ、いったわね」

P「今のお前たちはトップアイドルって言っても過言じゃないくらいに成長したよ」

伊織「当たり前でしょ、スーパーアイドル伊織ちゃんが率いる765プロよ
   まあなるべくしてなったってとこかしらね」

P「ああ、よくやってるよ、みんな」

あれから
765プロのみんなでライブもやった
テレビの冠番組も始まった
CDの売り上げでも一位をとった
みんなよく成長してくれたと思う

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:35:57.32 ID:5hfY6wCc0
伊織「ところでちょっと相談があるんだけどいいかしら?」

P「ああ、今日の夜でいいか?」

伊織「ええ、それじゃあまたあとで」

そういって各々の仕事へいくことにした

伊織の相談かなんだろうな?
そんなこと考えて仕事をこなしてゆく
なによりこの後伊織と二人でいられる時間が楽しみだった
最近自分の中にある直視するにはむずがゆいく罪悪感もある感情

この感情に気がついているが
素直に受け止められない

だって俺はあいつのプロデューサーだから
仕事の邪魔にはなりたくないしなっちゃいけない

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:36:15.61 ID:5hfY6wCc0
仕事を終え事務所に戻るとソファに伊織が座っていた

P「またせたな、ほかのみんなは?」

伊織「さあ?帰ったんじゃないのかしら」

P「そっか、今日の仕事はどうだった?」

伊織「まあまあってとこかしらね」

P「ははは、なんだよそれ」

伊織「それで相談のことなんだけど…」

P「ああ、相談ってなんだ?」

ふぅっと一息つくと意を決したように伊織が言った

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:37:12.44 ID:5hfY6wCc0
伊織「私アイドルやめるわ」

あまりに予想外な言葉だった

P「は?……どうして急に?」

伊織「私の目標覚えてるかしら?」

P「それはトップアイドルになって伊織の父親と
  お兄さん方に認めさせるためだろ」

伊織「正解、パパと兄も私のこと認めてくれたからもうやめようと思って」

伊織はいまやトップアイドルだそんな急にやめるなんて

P「でもまだ続けたいんじゃないのか?アイドル活動楽しいだろ?」

伊織「ええ楽しいわね、でもそれ以上にやりたいことがあるのよ」

P「なんだよそれって?」

伊織「あの時はやめるなって引きとめたくせに
   わがままだと思うけど、普通の子として生きたいの…」

P「少し考えさせてくれ…」

伊織「私としてはできれば
   今年中にはアイドル活動はやめたいと思ってる」

伊織が事務所から帰ったあと俺は一人で考えることにした

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:39:43.28 ID:5hfY6wCc0
事務所としては売れっ子アイドルを手放すなんてできるわけがない
でも伊織がやめたいって言うなら俺としてはやめさせてあげたい気持ちがある
二つの選択肢が相反していた

さらに
普通の子として生きたいと
伊織が言った言葉が俺の心に刺さる

まだ十代の女の子に仕事を押しつけてしまっていた
そう思えてくる言葉だった

それから一週間ほど考え伊織に自分の考えを伝えることにする

P「伊織この間の話だけどな、
 伊織が本心からアイドルをやめたいって思うなら
 俺は伊織の思う通りに動いてやりたい
 
 でもその前にお前がどうしてやめるのか
 本当の理由が聞きたいんだ」

伊織の眼をまっすぐみて問いかけてみる

伊織「だから言ったじゃない、父たちにも認めてもらったし
   もう普通の子として生きたい」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:40:20.68 ID:5hfY6wCc0
P「そんなの嘘だろ?ずっと伊織のことを見てきたけど
 アイドルの仕事やってる時、楽しそうじゃないか
 ちゃんと見てるんだからな」

伊織「だから楽しいって、でももう普通の子に戻りたいの」

P「じゃあどうして普通の子に戻りたいのか教えてくれよ」

伊織「そ、それは…」

P「悩んでるなら俺が聞くよ、なんでも話してくれ」

伊織「………」

しばらく黙った伊織は顔を赤くし目に涙を浮かべながら
俺の目を見て答える

伊織「あんたと仕事するのがつらいから…」

P「えっ…」

伊織「だからよ…悪い?」

そんな告白に頭が真っ白になる

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:41:17.07 ID:5hfY6wCc0
P「それって俺と仕事したくないからってことか?」

伊織「ええ…」

P「ちょっと待てくれよ!俺が原因なら辞めないでくれよ
 気に食わないことがあったら直すし
 なんなら俺がプロデューサーやめたっていいからさ」

伊織「別にあんたが嫌いなわけじゃないわ」

P「だったらなんで!?」

駄目だとは分かっていても
ついつい口調が粗くなってしまう

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:41:43.49 ID:5hfY6wCc0
伊織「だってアイドル続けてたら
   あんたにとって私はプロデュースしてるアイドルでしょ」

P「ああ、それはそうだけど、だから」

伊織「ちょっと黙って私の話を聞いて」

P「あ、ああ、分かった」

伊織「私はあんたに普通の女の子として見てほしい
   だからアイドルをやめるの」

P「どういうことだよ?」

伊織「あーもう!鈍いわね!!
   
   わ、私はあんたが好きなの!
   一人の男として!!」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:42:30.79 ID:5hfY6wCc0
P「それって…伊織が俺のこと好きってことだよな?」

伊織「だからそう言ってるじゃない…」

P「それは嬉しいけどさ、そんな急に…」

伊織「急に返事くれなんて言わないわ
   ていうか今は結論出さないでちょうだい
   返事はアイドルやめてから聞きたいから」

P「ちょっと待てよ、本当にそんな理由でアイドルやめるのか?」

伊織「そんな事ですって?
   私にとってトップアイドルでいるよりもあんたに振り向いてもらう方が
   大切だと思ったからやめることにしたのよ
   アイドル活動を軽くなんて考えてないわ」

P「そうか…わかった、後悔しないんだな?」

伊織「しないって言ってるでしょ、じゃあお願いね」

確かにこの時伊織は迷いのない顔をしていた
俺はどんな顔をしていたかも考えたくない

それほど驚いていたし
うれしい気持ちもある反面
俺が原因で伊織がアイドルをやめることになる
そう考えると複雑だった

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:43:03.74 ID:5hfY6wCc0
あれから事務所を出た私は執事の新堂に迎えに来てもらうことにした
あいつが送ってくれると申し出たがあんな告白をした後だから
二人でいるのは気まずい

それにしてもあいつ困った顔してたな
あいつを困らせるのは、私の本意じゃない

ただ単純に、私の心の声を聞いてほしかった
言葉にしなきゃ誰がきくこともない声を…

結局この日あいつの困った顔が頭から離れず眠れなかった


こんな抜け駆けみたいなやり方フェアじゃない
自分でわかってたからずっと気持ちを我慢してた
美希や春香、ほかにも事務所であいつが好きな人はいるはずだ

あいつだけでなく
事務所のどんな顔をして会えばいいのか分からなかった

けれども事務所に行かないわけにはいかないので
いつものように事務所へ向かう

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:43:52.76 ID:5hfY6wCc0
伊織「おはよう」

P「お、おはよう、伊織」

そんな困った顔しないでよ
こっちだって平静を装うので余裕ないんだから

こんな感じでしばらぎこちない関係が続いていた中
ある休みの日社長に呼び出された

事務所にはだれもおらず社長室に向かった

伊織「おはようございます」

社長「おはよう水瀬君、P君から大体は聞いているが
   やはり君の口から話してもらいたいんだ」

伊織「はい、プロデューサーから
   どこまで聞いたかわかりませんが簡潔に話します」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:44:19.75 ID:5hfY6wCc0
社長「ああ、頼むよ」

伊織「私はプロデューサーが好きです
   
   アイドルとしてではなく
   一人の異性として見てもらう為に
   わがままですがアイドルを引退させてください

   おねがいします」

社長「ははは、そうか

   好きにするといい
   アイドル活動で君が幸せになれないのならやる意味はないよ
   気にすることはない
   
   それでP君から返事は聞いたのかな?」

伊織「いえ、まだです」

社長「うまくいくといいね、応援してるよ
   事務所としては痛手だけどね、ははは」

伊織「本当に…ありがとうございます」

社長室のドアを開けるとプロデューサーがたっていた

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 00:44:44.44 ID:5hfY6wCc0
伊織が目を赤くさせて部屋から出てきた

P「どうした泣いてるのか?」

伊織「な、泣いてなんかないわよ!」

P「そっか、それであの時の返事だけどさ今でもいいかな?」

伊織「いま!?」

P「駄目かな?」

伊織が凛と背筋を伸ばす
改めてこの三年間で成長を感じた

伊織「ううん、いいわ、聞かせて」


俺は、目の前にいる一人の女の子へ気持ちを伝える
俺の中のその女の子を巡る思いのすべてを届けられるように

終わり

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:10:47.51 ID:5hfY6wCc0
後日談

美希「でこちゃん、ハニーとっちゃいやー」

伊織「ごめんなさいね、にひひっ」

春香「おめでとう、伊織!」

伊織「ありがとう、春香、あんたも頑張ってね」

やよい「プロデューサーはお兄ちゃんだから、伊織ちゃんはお姉ちゃんですー」

伊織「やよいはいい子ね」

やよい「えへへー」

真「いいなー、ボクも結婚したいなー」

事務所のみんなも祝福してくれてとても幸せな日々が訪れていた

アイドルをやめすぐに結婚をすることになった
私はみんなに呼ばれ事務所に遊びに来ていた

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:11:09.05 ID:5hfY6wCc0
千早「伊織はアイドルやめるなんてよく思いきったわね」

伊織「だってこっちの方が大事に思えたから…」

春香「うわー!惚気ちゃってー!」

伊織「う、うるさいわね!いいでしょ!」

美希「もしもでこちゃんがハニーを傷つけたら
   ミキがハニーを慰めてあげるの」

伊織「あんたハニーっていうのやめなさいよね」

美希「ハニーはハニーなの」

伊織「はぁ、あんたは…もういいわよ…」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:16:50.87 ID:5hfY6wCc0
律子「いやー伊織に先越されるとはねー」

小鳥「…………」

あずさ「あーあ、私の運命の人はどこにいるのかしらねー」

伊織「あずさならきっとすぐ見つかるわよ」

あずさ「あらあら、うれしいわねー、ありがとう伊織ちゃん」

貴音「まさかプロデューサー殿と結ばれるとは、わからないものですね」

響「いいなー、自分もしたいなー、なーハム蔵」

伊織「もうみんなしてからかってるの!?」

 

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:21:08.30 ID:5hfY6wCc0
亜美「いいなー兄ちゃんとラブラブで!」

伊織「あーもう、うるさい!」

真美「いおりん顔真っ赤ー」

雪歩「ほんとですぅー」

伊織「あ、赤くなんてないわよ!」

みんなと久しぶりに話していたらもう夕方になってしまったので
新しく引っ越した新居に帰ることにした

伊織「相変わらずぼろいわね…」

つい独り言をいってしまう

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:21:31.94 ID:5hfY6wCc0
P「おかえりー」

伊織「ただいま」

P「楽しかったか?」

伊織「ええ、とっても」

P「よかったな」

伊織「今日の夕飯何がいい?」

P「カレーかな、俺も手伝うよ」

伊織「ありがと」

二人で立つには狭い台所で調理を始める

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/03(火) 01:21:50.49 ID:5hfY6wCc0
伊織「なんか私ね、改めて気がついたことがあるのよ」

P「なんだよいきなり」

伊織「事務所のみんなと話したりして
   思ったんだけどね
   
   アイドルやって大切なものが一つ、また一つってどんどん増えていたの」

P「そっか」

伊織「きっとこれからも増えていくわね、にひひっ」

これからずっとあんたと一緒にいれるから

その言葉は今は言わないでおこう


これを言うのはまた今度ね

終わり