1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 13:56:23.35 ID:9xDgYOP50
妹「今日から、お兄ちゃんの妹兼彼女♪」

兄「どうしてこうなった」

妹「なにさ。その態度はぁ」

兄「いや…どんだけ迫られようと妹と付き合うとか絶対ありえないって戒めてきたのに」

妹「でも、結局私の魅力にやられちゃったね♪」

兄「何一つつっこめない…」

妹「お兄ちゃん大好きだよ」

引用元: 妹「今日から私がお兄ちゃんの彼女だもんね!」 




2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:03:11.14 ID:9xDgYOP50
兄「…はいはい」

妹「んーなんか変わってない!すきって言ってよ!」

兄「えー…あー…す、す…」

妹「うん…うん!」

兄「…き」

妹「お兄ちゃん!」

兄「…焼き食べたくないか?」

妹「…はぁ」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:09:03.27 ID:9xDgYOP50
兄「はぁとかいうなよ! まぁそのなんだ。俺も真剣に想ってるから…その、もう少し気長に、サ」

妹「うん! 私達のペースでね」

兄「そういえば、すき焼きで思ったんだが、腹減ってないか?」

妹「んーそういえば今日何も食べてない」

兄「じゃ今日は母さんいないし、どこか食べにいかないか?」

妹「それなら、私が作るよ!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:13:49.93 ID:9xDgYOP50
兄「はぁ? お前が料理したとこなんて見た事ないんだけど」

妹「ふっふ。侮るなかれ! 私がお兄ちゃんの為に絶品料理を披露してあげよう!」

兄「いや、無理だろ! お前ついこないだまで卵も割れなかったじゃねぇか!」

妹「…う! な、なに…自分の彼女の手料理を食べたいとか思わないわけ?」

兄「…まぁ。それは」

妹「はいはーい! 決定ー!じゃお兄ちゃんはリビングでTVでも見ててね♪」

兄「大丈夫かよ」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:19:35.50 ID:9xDgYOP50


妹「さてさて…まずは野菜を洗ってっと。で、切る!」

妹「キャ!!」ユビキッタ

兄「! どうしたんだ? 」

妹「い、いやー指を切っちゃって…」

兄「全く…慣れないことするから。ほら、こっちこい絆創膏貼ってやる」

妹「えへへ」ぺリっ

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:25:59.77 ID:9xDgYOP50
兄「なんだよ気持悪いな」

妹「…お兄ちゃんから初めてのプレゼントだなぁって」

兄「はっ? これウチで常備してたもんだけど?」

妹「だってお兄ちゃんが心配してくれたから…お兄ちゃんの気持ちのプレゼント」

兄「…お前は本当に幸せそうだな」

妹「うん。幸せだよ。大好きなお兄ちゃんの彼女になれたんだから!」

兄「…それより、料理手伝うよ。お前だけにやらすのなんか心配だし」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:31:57.19 ID:9xDgYOP50
兄「」

妹「」

そこには物体があった。ここで誰かに質問をしてみよう。その物体の正体はなにか、と。
しかしそれを料理だと回答できる人間は推定してこの地球に2人しかいないと思われた。

妹「どうしてこうなった」

妹「どうして、カレーが物体Xになるのよぉ!!」

兄(…これカレーだったのか…)

妹「あ、あの今更だけど外に食べに出かけようか!」

兄「…いや食べるよ折角、彼女が作ってくれたんだし」パクっ

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:37:47.74 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん?」

兄「子こここれれれれれrはあはああはあ奇抜なんjふぁあじfかhjふぁ」

妹「なんて!?」

兄「おおおおいいいしいぞおおおお…」バクバク

妹(…お兄ちゃん。ありがと)

妹「お兄ちゃんのね。そういう所が大好き…」

兄「はひっ?」

妹「なんでもない」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:44:07.61 ID:9xDgYOP50
兄「さて、飯も食ったし風呂にでも入って寝るか」

妹「私もー!」

兄「はっ?な、なにを言っている」

妹「私も一緒にお風呂はいる!」

兄「いやいやいや」

妹「いやいやいや」

兄「…」

妹「だって、明日お母さん帰ってきちゃうじゃん。そしたら当分入れないよ」

兄「もともと入る気ないよ!?」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:49:45.76 ID:9xDgYOP50
妹「なんでー!? 小さい頃から一緒じゃん!!それに私彼女だよ?」

兄「あ! 忘れてた…」

妹「忘れないでー!」

兄「でも、やっぱりまだ…早いかなーって」

妹「もー!!」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 14:55:54.69 ID:9xDgYOP50
兄「全く…早速風呂に入ろうとするなんて…」ヒトリブロ

兄「彼女…か」

兄「妹を好きになるなんて。おかしいよな…」

兄「でも、しょうがないよな。好きなんだし」

妹「お兄ちゃん? 入るよー」

兄「は!?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:01:04.81 ID:9xDgYOP50
ガラッ

兄「なんで開いた!?」

妹「そんなの決まってるでしょ!?ちゃんと細工してるのさっ」

兄「…細工?」

妹「そうそう。まぁこれは初歩だけどね」

兄「初歩?」

妹「うん! 後はお兄ちゃんビデオとかお兄ちゃんGPSとかあるけど。お兄ちゃんのことならなんでも知ってるよ」

兄「…」

妹「できるなら和 が良かったんだよ?でもお兄ちゃん照れ屋だから」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:05:17.28 ID:9xDgYOP50
兄「わかったから、バスタオルで前隠せ」

妹「お兄ちゃん…あったかいね」フタリブロ

兄「ああ…(なんだよこの状態…)」

妹「お兄ちゃん。キスして」

兄「はぁ?いきなりなんだよ」

妹「だって彼女だもん」

兄「はぁ…(妹の顔火照ってて可愛い…)」ちゅ

妹「お兄ちゃん♪」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:10:32.51 ID:9xDgYOP50
兄「そんで腕枕かよ…」

妹「いいでしょー! 明日にはお母さん達帰ってきちゃうんだし…」

兄「全く、どこがそんなにいいんだか」

妹「お兄ちゃん、あのね…」

兄「はい」

妹「私、ずっとお兄ちゃんの事好きだったの」

兄「知ってるよ」

妹「だからこれからもお兄ちゃんのこと好きだと思う」

兄「あのなぁ…先のことは誰にも分からないんだよ」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:15:26.04 ID:9xDgYOP50
妹「でも、私達おかしいのかな」

兄(…!)

兄「まぁそうだろうな…世間一般から考えたらおかしいだろうな」

妹「やっぱり、そうだよね…でも、私それでもお兄ちゃんの事好きなの止めないから安心してね!」

兄「…もう寝よう」

兄(こいつなりに世間体とか考えていたんだな。いつまでも子供じゃないのかな…)

兄(世間体か…気持悪がられるんだろうな)

兄(親にもいえないんじゃな…)

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:21:57.69 ID:9xDgYOP50
女「さぁ帰ろうか!兄くん」

兄「…ん」

女「どうしたの?そんなボーっとして? 好きな人でもできた?」

兄「ぁ?あ…うん。まぁ」

女「! なんだってぇ!」

兄「そんな驚くことかい…」

女「君は告白されても誰にもなびかないから本気でアッチの人間なんじゃないかってずっと思ってたよ」

兄「俺だって誰かを好きになったりするさ」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:27:00.92 ID:9xDgYOP50
女「ふんふん。それで相手は誰なんだい?」

兄(…妹だなんていえるわけないだろ)

兄「なぜ、そんなことをいわなくちゃいけない」

女「君と私の仲じゃない! 君の義務だよ」

兄「そしたら、俺は全校集会ででも発表する必要があるな」

女「おっと手厳しい」

兄「じゃあ俺は先に帰るからな」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:32:20.33 ID:9xDgYOP50
母「おかえりなさい」

兄「? もう帰ったの? 確か夜中になるはずじゃ」

母「あんた達が心配でね」

兄(! ばれた?)

母「あんた達自炊なんてしないし」

兄「ほっ…まぁ久しぶりに母さんの料理食べれるの楽しみにしてるよ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:35:36.53 ID:9xDgYOP50

兄「そんなことないよ。妹は帰ってきてる?」

母「ついさっき、帰ってきたわよ。何か用?」

兄「いや、別に。じゃあ部屋いくから」タンタンタン

母「…」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:38:59.99 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん、おかえり」

兄「もう母さん帰ってきてたぞ」

妹「そうなの! もっとゆっくりしてくれば良かったのに」

兄「そういうなよ。折角ご飯食べさす為に帰ってきたってのに」

妹「でも、もっと2人きりでいたかったなぁ」

兄「それは俺も同じだよ」

妹「…♪」

兄「なに?」

妹「なんか、ちょっとずつだけどお兄ちゃんデレてきたなって」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:42:00.14 ID:9xDgYOP50
兄「…」

妹「うれしー! あっ! そうだ!お兄ちゃん!日曜日にデートしない?」

兄「デート…?」

妹「うん! 私達の初デート!」

兄「初って…何度も2人で出かけたりしてたじゃないか」

妹「でも恋人になってからは初めてでしょ?」

兄「…買い物でもいくか」

妹「うん!」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:47:24.65 ID:9xDgYOP50
女「おーい兄君! 日曜暇かい? 」

兄「日曜? 悪い。ちょっと用事あってさ」

女「用事? もしやデート?」

兄「ぶっ!! そんなわけないだろ」

女「じゃあなにか言ってみなよ」

兄「妹とちょっと出かけるだけだよ」

女「妹? そんな…妹に負けるだなんて…」

兄「なんだよそのリアクションは」

女「まぁいいよ。しかし、高校生にもなって妹とお出かけなんて仲のいい兄弟だネ」

兄「んーまぁな。 つーかわりぃな」

女「まぁ気にしないでおくれ。誰か他の男探すよ」

兄「そっか。よかった」

女(よかった…? 全く君は…私の気持ちも知らないで)

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 15:52:31.45 ID:9xDgYOP50
妹「デート!デート!」

兄「そんなはしゃぐなよ」

妹「これが騒がずに居られるかい!」

兄「あーはいはい。っていうかお前、そんな調子でいたらすぐに母さんとかにばれるぞ」

妹「それが嫌だからこうやって外に出てるんじゃン!」

兄「まぁそうだけど…」

妹「あーもう、お母さん達のことを考えるのは止めよう!」

兄「そうだな…せっかく2人きりなんだし。楽しむとするか…」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:00:17.67 ID:9xDgYOP50
妹「買い物だぁー」

兄「なんか欲しいものでもあるのか?」

彼女は特にないといって笑った。
欲しいものは全て手に入ったのだ、と白い歯をいつになく輝かせて。
だから、僕達はとりあえず歩いた。
見慣れた道だった。いつもの街だった。
そして歩くことに疲れた僕は、映画でもどうか、と彼女に提案した。

彼女は、2つ返事で了承した。
映画館につくと、何を観覧するのか少し言い合いになった。
しかし、すぐに僕が折れた。
久しぶりに劇場で眺めるということで、僕としては迫力のあるアクションを推したのだが…
こともあろうに、彼女は恋愛映画を選択した。
映画の内容はごくありきたりなものだった。少なくとも僕はそう感じた。
ロミオとジュリエットの焼き増しだった。
そんなありきたりの内容なのに、劇場にはすすり泣く声がこだました。
でも本当に禁断の恋を悲しく感じる人間が沢山いるのなら、僕の気苦労なんて元々ないだろう。、
しかしあろうことか妹まで泣いていた。

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:05:10.98 ID:9xDgYOP50
兄「なに、泣いてるんだか」

妹「だって、可哀想で……お兄ちゃんはなんで泣かなかったの?」グス

兄「そんなこといっても映画の話しだし」

妹「私は感情移入しちゃったなあの2人に…」

兄「…」

女「! あれって兄と…となりは妹ちゃんかな?」

兄「まぁ泣き止めよ」

妹「うぅぅ…」グス

兄「お前はそう思ったかも知れないけど、俺はそんな簡単に離れたりしないよ」

妹「…お兄ちゃん」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:08:31.63 ID:9xDgYOP50
僕は彼女にキスをした。
人目が気になったが、それ以上にこんな気持ちの彼女がいるということが悲しかった。
すぐに彼女は機嫌をとり戻した。めんどくさい女なのかもしれない。
しかし、そんな彼女を真剣に愛しいと思える僕は確かにそこにいた。

女「兄…。今、妹にキスを…?まさか好きな人って…」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:10:31.20 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん!!おきてー!!」

兄「…」

妹「もう!早くおきてー」

兄「なんだよ。もう少し、優しく起こせよ。つーか起こすなよ」

妹「やだよー!少しでもお兄ちゃんと関わりたいの」

兄「はいはい。でも今日からまたしばらく2人きりだろ?」

妹「うん!」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:13:42.19 ID:9xDgYOP50
女「…」

なんだか、ここ数週間女がやけによそよそしかった。

兄「おはよう」

女「…おはよう」

兄「どうしたんだよ。最近ぼーっとして」

女「いや、なんでもない…」

兄「?」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:18:17.03 ID:9xDgYOP50
兄「ただいま」

母「あぁ、帰ってきたの」

兄「うん。これから研修?」

母「そう。4日ほど開けるから。ちゃんとご飯食べるのよ」

兄「はいはい。いってらっしゃい」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:20:26.21 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん!!」

兄「はい」

妹「私、早速ご飯作りましたの!」

兄「えー…」

妹「えーってなんすか!!」

兄「いやなんでもない…」

妹「私ってばあれから、勉強したのです! さぁみてご覧なさい」

兄「…お前頑張ったな」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:23:15.13 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃんに喜んで欲しくて頑張ったよ!!」

兄「ではいただきます」パク

兄「うむ。美味い!!」

妹「ほんと!? やったね!!」

兄「しかし、あの物体からここまでもってくるとは…」

妹「褒めて撫でて!!」

兄「よしよし」なでなで

兄「じゃあ風呂にでも入る」

兄「そして当たり前のように君も入ってくるんだね」

妹「そりゃあ当然だよ! 背中流しますぜ」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:26:54.41 ID:9xDgYOP50
兄「そして、布団も一緒っと」

妹「まぁまぁ」

兄「…」

妹「…」

兄(…とても興奮している)

妹「ねぇ、お兄ちゃん」

兄「な、なんでしょう…」

妹「私達恋人同士なんだよね?」

兄「も、もちろん」

妹「だから、我慢しなくていいよ」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:31:19.37 ID:9xDgYOP50
兄「…」

兄「いいのか?」

妹「うん」

兄「…」

そして僕は電気を消した。
僕は、彼女の寝巻きを脱がせた。背徳の香りが部屋に充満した気がした。
直に彼女の肌に触れた。
それは根本的に男のそれとちがっていた。
そして僕はその柔らかさに顔を埋めようとした。
誰かから、何かから隠れるように…

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:35:55.77 ID:9xDgYOP50
母「何やってるの!?」

兄「え!?」

妹「おかあさん!?なんで?出張のはずじゃ」

母「貴方たちの様子がおかしいと思ってカマをかけてみたらどういうことなの?説明しなさい」

妹「お母さん違うの!」

母「お父さんも、単身赴任から帰ってこさせたから、降りていらっしゃい」

妹「お兄ちゃん…」

兄「…」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:40:15.27 ID:9xDgYOP50
父「どうしてこんなことしたんだ」

母「貴方達、とても仲がよくて、お母さん達信頼してたのに…」

妹「最初に。私が…私がお兄ちゃんを好きになったの。だから…」

兄「妹…」

父「そうだとしても、兄がキチンと拒絶すればすんだ話しじゃないのか?」

兄「それは、違うよ。俺も妹のことが好きなんだ」

言い切るより先に、脳が揺れた。
そして、遅れて頬に痛みがやってきた。
父は僕を叩いたのだ。

父「…何をいっているのか分かっているのか?」

兄「そのつもりだよ」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:44:11.64 ID:9xDgYOP50
父「…お前はだた、お前の内に潜む 欲を解消できていないだけだ」

父「そして、それの矛先が身近で手軽である異性、つまり妹に向いただけだ」

兄「父さんこそ、俺のことわかってるの? 俺は本気で妹が好きだよ」

父「お前は責任も取れないくせになんて事をしたんだといっているんだ!」

兄「…責任はとるよ。妹は俺が幸せにする」

父「高校生のガキがなんて口を聞くんだ!」バシッ

妹「お兄ちゃん!! やめてお兄ちゃんを叩かないで!!」

母「妹、あんたは2階に行ってなさい」

僕は叩かれた。
僕はあまりケンカをしたことがない。
痛いのは嫌だった。
だから今まで大抵相手の要望を飲んできた。
自分さえ、我慢すればその場が丸く収まることを知っていたからだ。
なのに…

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:49:23.19 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん。 大丈夫? 痛くない?」

兄「痛い…」

妹「ごめんね。ごめんね…」

兄「なんでお前が謝るんだ」

妹「だって…」

兄「それより、母さん何て言ってた?」

妹「…なにも言わなかった」

兄「そっか…」

妹「でも私達、やっぱり引き離されちゃうのかなぁ…嫌だよ」

兄「大丈夫だよ」


そう自分にも言い聞かせたが、妹の予想は当たった。
すでに田舎に妹を預けるよう母は掛け合っていた。

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 16:54:00.85 ID:9xDgYOP50
母「じゃあ、行くわよ」

妹「嫌だよ!なんで? なんで病院なんて!!なにがいけないの?」

父「自分の兄を男性として見るだなんて異常この上ないことだろう?」

父「もしも、これ以上症状が進んだら、取り返しのつかないことになる…」

妹「なに、それ。そんなんじゃないよ!」

母「…病院に行って見てもらいましょう? きっと妹は疲れてるだけよ」

妹「…お母さんには私がそんな風に見えてるの? 私の感情が…」

父「いいから行って来なさい、それがお前の為になるんだから」

妹「お兄ちゃん!!」

母「いいから行くわよ…」バタン!

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:01:08.78 ID:9xDgYOP50
兄「…」

父「昨晩はすまなかった。なにも殴ることはなかったかもしれない」

兄「…別に」

父「でも、あの場で止めなかったこと、お前もある程度は理解しているんだろう?」

兄「…」

兄「…でも、俺は妹が好きです」

父「一時の感情、いやこの場合 欲か…振り回されるな。一生後悔することになるぞ。お前だけじゃない、妹まで」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:05:15.72 ID:9xDgYOP50
父「じゃあなんで、あそこで見送った。お前だって感じていたからだろう。このままでは2人ともどうにもならないと」

父「お前ら2人には未来がないんだよ。わかってくれ。お前を傷つけたいわけじゃないんだ」

父「大丈夫。お前達は親の欲目を考慮しても見目の整った人間なんだ。すぐに忘れられるさ」

兄(父は常識が僕たちを傷つけることを知っていた)

結局、妹が母の実家へ行くことは回避された。
だから、今日も僕たちは同じ家で暮らしている。
僕はなにか必要のある時以外、部屋の外にはでない。
だからもう会話はない。
妹も以前のように僕の部屋に入ってくることもない。
あんなに幸せだった日々は本当に存在したのだろうか?


74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:07:36.16 ID:9xDgYOP50
兄「…」

女「おはよう」

兄「…おはよう」

女「まだ、志望校決めてないって本当かい?」

兄「ん…ぁあ。もしかしたら受験しないかも」

女「え? だって君の成績だったら…」

兄「んーなんかさー、もう親の世話になるの嫌だし」

女「一度、お家にお邪魔した時、あっただろう?君の母さんはとても子供思いに見えたけど」

兄「…」

女「なにかあったのかい?」

兄「んん…なにもないよ。じゃ俺帰るわ」

女「…すこしくらい教えてくれてもいいじゃないか」


保守お願いできませんか?

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:11:20.99 ID:9xDgYOP50
兄「…」ガチャ

妹「おかえり」

兄「!…ただいま」

妹「なんか久しぶり…」

兄「うん。そうだな。久しぶりに聞いたかも」

妹「お兄ちゃん、私ね、今日クラスの男子に告白されちゃった」

兄「! 」

妹「あれから散々お父さんにも言われた。やっぱり私達おかしいって」

兄「うん…」

妹「まだ返事してないけど、その人と付き合って、お兄ちゃんの事忘れるね」


保守お願いします。30分で戻ってくるので。

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:20:14.20 ID:9xDgYOP50
兄「…うん」

妹「…じゃ」

兄(すべて、元通りだ。最初から分かっていたことじゃないか…)

兄(世間の望むままに…望まれるままに)

兄(人間は…こうでなくちゃいけない。人には予め決められた道がある)

兄(僕は兄として生まれたから、兄として生きなくちゃいけない)

兄(その道を外れたら、あれこれ側から様々な力が働いて元に戻そうとする)

兄(…お前らの損得になんの影響があるんだ)

兄(妹が好きでなにが悪いんだ)

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:26:47.34 ID:9xDgYOP50
妹「お兄ちゃん…」

兄「! 何?」

妹「なんで、止めないの?」

兄「…」

妹「私の事すきだっていったのに!私、お兄ちゃんの事忘れたくないよ…」

兄「行こう…どこか、誰も知らない場所で2人で暮らそう」

妹「…うん」

兄「だから俺以外のすべてを捨ててくれ。俺もそのつもりだ」

妹「うん!」

次の日、僕たち慣れ親しんだ家に別れを告げた。
お年玉から少しずつ貯めていった預金通帳と、数日分の着替えを持って。
行き先も決めないまま。

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:32:39.76 ID:9xDgYOP50
兄「後悔してないか」

妹「してない。あの家に残るほうがきっと後悔した。ねえこれからどうするの?」

兄「決めてない」

妹「えー…」

兄「後悔した?」

妹「少し」

兄「まぁ仕方ないだろ。実際、親戚の家になんていけるはずないし」

妹「誰も、祝福してくれないんだね。こんなに幸せなのに」

兄「…もう捨てただろ? 俺以外のものは」

妹「…うん。そうだよね。なんか新婚旅行みたい」

兄「全然違う」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:36:47.73 ID:9xDgYOP50
次にホームに降りた街は、ニュースなどで聞き覚えだけあった地方都市。今まで住んでいた街よりも寂しげな街だった。
お金には余裕がなく。僕達はすぐに住む場所を探した。
しかし、身元不明の子供2人に部屋を貸してくれる不動産会社なんてなかった。
僕たちは、インターネットカフェに数日寝泊りした。
そしてそこのパソコンから、寮付きの新聞配達の求人を発見した。

所長「若いねー」

兄「いえまぁ」

所長「うんうん。駆け落ちねぇ。まぁ世間的に褒められたもんじゃないけどね」

兄「…」

所長「でもまぁこんな職場だから、ウチには色んな人がいるよ。働いてみる?」

兄「いいんですか?」

妹「やったね!兄くん!!」

所長「まぁ男なら、女の一人くらい幸せにしてみせなさい」

兄「はい」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:40:02.59 ID:9xDgYOP50
所長「じゃ、ここがウチの寮ね」

兄「寮っていってもアパートを借り上げてるんですね」

所長「うん。そっちの方が安上がりだしね。じゃあ私はこれで」

兄「今日から、ここで2人暮らしかぁ…」

妹「やったね!…やっと2人きりになれた」

兄「…妹。妹のこと俺幸せにするよ」

妹「約束だよ?」

ジリリリリリリリリリリリリリ

兄「引越し初日から出勤か…ねむい…」

妹「行ってらっしゃい。私もすぐに仕事探すからね」

兄「んん」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:44:34.20 ID:9xDgYOP50

新聞配達は想像していたよりハードだった。
それでも妹と2人で暮らせるということが僕のモチベーションを底上げした。この世界には2人しかいないのだ。
だから初めての休みは、色んな場所を2人で見て回った。
でも日本はどこも同じ風景が広がる。どこにいっても、汚らしい看板に地中化されていない電線
アジア特有とでもいうのか、この雑多な風景は僕を見張っているような気がした。どこにいても縛り続けるあの常識の様に。
そんな中彼女は、ある一点で足を止めた。

妹「…」

兄「チャペル? なんだ結婚式でもしてるのか」

妹「いつか、私達もあんな風になれるのかな」

兄(…誰も祝ってなんてくれないだろうな。でも)

兄「いつか、着させてやるよ。ウエディングドレスくらい」

妹「本当にデレてくれるようになったね♪ よろしいよろしい♪」

兄「本心だ」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:48:03.27 ID:9xDgYOP50
妹「不本意とか言ってた時が懐かしいね」

兄「ずいぶん遠くに来ちゃった気がする」

妹「後悔してる?」

兄「してない。するわけない」

妹「本当?  でもお父さん達元気かな…」

兄(妹は迷っているのかもしれない)

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:52:37.38 ID:9xDgYOP50
熱を出した。
アルバイトなんてやったこともない僕だ。
そんな僕に、新聞配達なんて肉体労働はさすがに堪えた。
夜はとても冷え込むのだ。
僕は初めてアルバイトを休んでしまった。
所長は迷惑に思ったに違いない。

兄「ごめん…」

妹「なんで謝るの?お兄ちゃん」

兄(俺には責任があるのだ)

兄(こんなところに連れてきた責任が…それなのに看病なんてさせて)

兄(こんな所で休んではいられない。少しでも…せめて経済的にだけでも不自由にさせたくない)

兄(もっと仕事をしないと…)

妹「また、なにか考えてるの?」

兄「ん…」

妹「無理しないで…しっかり休んで」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 17:56:57.85 ID:9xDgYOP50
そのセリフは彼女にこそ相応しかった。表情をみれば分かる。
高校すら卒業していない彼女がいきなり社会に放り出されて不安に怯えるのは当たり前のことだ。
今まで元気だったから気付かなかった。一番近くにいたのに。
そして病気になって、弱気になって改めて分かってしまった。
2人だけの世界では誰も手を差し伸べてはくれない。
熱が下がったら、もっとしっかりしないと。

だから次の日は意地でも、出勤した。
熱は完全には下がってなかったけど、彼女を不安にさせたくない。

配達員「なんだよ…ふらふらして」

兄「すいません…」

配達員「ったく昨日はサボりやがって。おかげでこっちはえらい迷惑だ!!なめてんじゃねぇぞ!!」

兄「すいませんでした…」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:02:11.20 ID:9xDgYOP50
兄(もっと仕事しないと…貯金だって少ししかないんだ)

妹「なに見てるの? 求人誌?」

兄「ん。もっと稼ごうと思って」

妹「そんないいんだよお兄ちゃん。もうすぐ給料日でしょう?それに私だって働くし!」

兄「お前まだ16だし、そんなに雇ってくれる所ないだろ?今日もアレだったみたいだし…」

妹「…なんで知ってるの?」

兄「そりゃわかるよ。何年お前と一緒にいると思ってるんだ?それと給料が出たら2人で美味いもんでも食いに行かないか?」

妹「うん!でも無理しないでね」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:05:55.79 ID:9xDgYOP50
あっという間に給料日がやってきた。
胸を弾ませながら給与明細を眺めた。

兄「そんな! 話が違います」

所長「何をいってるんだい。税金やら社会保険など色々と引かれるのだよ」

兄「社会保険って…僕は入ってない…それにこの罰金ってなんですか?」

所長「君は1度欠勤して迷惑をかけただろう?当たり前の処置だよ」

兄「でもこれじゃあ…」

所長「はぁ…なんだい。これじゃ、まるで私が悪者のようだね」

兄(部屋を貸してもらっている以上、俺はなにも言えなかった)

兄(他に行くあてなどないのだから…)

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:10:25.50 ID:9xDgYOP50
兄「妹…給料でたんだけど」

妹「本当に?」

兄「…その思ったより少なくて、外食はいけそうにない…」オチコンデル

妹「お兄ちゃん…そんな落ち込まないで。私が安くて美味しい物つくるから!」

兄「ごめん…こんな甲斐性なしで…うっぅ…」ナイテル

妹「いいの。私はこうして2人でいれるだけで、だから泣かないでよ」

兄「ごめん。ごめん。ごめん」

その日僕達は交わった。
男と女として
僕は単純なものかもしれない。
そんな行為で1つでまた、明日も生きていけると思えるのだから。
でも問題は何一つ解決していなかった。

そしてその日はきた。

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:13:21.75 ID:9xDgYOP50
兄「はぁ…はぁ…」

配達員「なんだよ、お前まーた具合わりいのかよ」

兄「いえ、すいません」

配達員「もういいよ、帰れよお前…じゃまだし」

兄「そういうわけには」

配達員「いいから、帰れって」

兄「…すいません」

兄「くそっ…もう妹に心配掛けたくないのに」

兄「ん?なにか声が聞こえる…」

妹「やめてー!!」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:19:15.45 ID:9xDgYOP50
兄「妹!?」バンっ!!

兄「妹! どうした!!」

妹「お兄ちゃん助けて!!」

そこには所長から逃げまどう妹の姿があった。

所長「な!!!なんだい君!仕事は!!!?」

兄「何をしているんだ!?」バシっ

所長「な、殴るとは、貴様なにをしたのか分かっているのか?」

兄「なんでこんな事…」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:23:27.94 ID:9xDgYOP50
所長「なんだね。私が気付いてないとでも思ったか?お前ら兄妹なんだろう?」

所長「どうせ、行くあてもないんだ。最終的にその娘が身体でも売ってかないとどうにもならないだろう?」

兄「…初めからそのつもりで? なんで…」

所長「私はそのレクチャーをしようとしただけだよ。まだその気はないようだがw」

所長「全く、近   だなんて気持悪い」ガチャ

兄「…妹大丈夫だったか?」

妹「うん。なんとか…でも怖かったよぉお兄ちゃん」




111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:28:31.16 ID:9xDgYOP50
兄(クソっ…もうダメだ)

兄「行こう…」

妹「えっ?」

兄「もう、あんな奴の世話になんてなれるわけないだろう?」

妹「でも、他に行く場所なんて…」

兄「…帰ろう」

妹「えっ?でも、そしたらお母さんたちが」

兄「でも…それしか…」

僕は自分の無力さ知ったという事実を土産に、生まれた街へ戻ってきた。
1月も家出したのだ。妹をつれて…
今度こそ、本当に僕達は離れ離れにさせられるだろう。
そんなことを妹も知ってか、電車の中で僕の腕を掴んで離さなかった。

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:34:03.85 ID:9xDgYOP50
妹「母さん怒ってるかな…」

兄「そりゃあもう」

妹「ねぇ…やっぱり帰りたくないよ。もっと違う場所で…」

兄「…」

兄(ごめん)ピンポーン

兄「母さん!!」

母「あんた達…! いままで、どこいってたの…?」

妹「お母さん…」

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:37:10.80 ID:9xDgYOP50
妹は泣き出した。母にしがみついて。
ずっと溜め込んでいた不安は涙になって溢れるように流れ出した。
それを見て、やはり自分のしたことは間違っていたのだと思い知った。

母「兄も…ほら家に入りなさい。すぐにご飯作ってあげるから」

兄「母さん…」

僕にとっても、その救い手には喉から手が出るほど触れたかった。
他人の醜い本心に触れて、常識とは自分を守る為のものであると頭が理解していたからだ。
このまま、ただの兄と妹に戻ろうと思った。…でも

兄「さようなら」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:39:33.84 ID:9xDgYOP50
母「えっ?」

兄「妹。ごめん。俺のせいで。少しも楽しくなんてなかったよな?」

妹「お兄ちゃん…?」

兄「今更、だけど…俺のことは忘れて幸せになって」

僕は妹に背を向けると今来た道を一人で走った。
全速力だ。なんて男だ。

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:43:39.87 ID:9xDgYOP50
女「兄!?」

兄「…うぅ、うぅ…女?」

女「どうしたの? っていうか今まで何処にいたの」

そして女に全てを話した。誰かに慰めて欲しかった。

女「またハードな話だねぇ…」

兄「のワリには驚かないのな…」

女「まぁ知ってたしね」

兄「え?」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:48:36.59 ID:9xDgYOP50
女「ところで、これからどうする気だい?家出少年」

兄「家出少年って…まあ行く当てはない。高校にも戻れないし…」

女「本当に無計画なんだねぇ…でも君、高校は卒業できるよ」

兄「え?」

女「私達3年だし、3学期なんて登校日なんてほぼないじゃない。追試受けてくれば?」

兄「そんなに甘くないだろう」

女「大丈夫だよ。私の父があの学校の理事なんだから。卒業決まったら父のコネで仕事紹介するよ」

兄「…そんなこと」

女「いいからいいから。ついでに私の家で暮らすといいよ」

兄「…はぁ? ずいぶん大規模なついでだな」

女「いいからいいから。でもその代わり親には連絡しておいてね」グイグイ

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:51:39.10 ID:9xDgYOP50
そして、女の家にお世話になることになった。
本当に高校も卒業出来た。
仕事も決まった。
1人暮らしも始めた。

女「仕事は順調みたいだね」

兄「うん。これも全部お前のおかげだと思う」

女「そっか…思う存分感謝していいよ」

兄「なぁ…なんでこんなに俺に良くしてくれるんだ? 俺なんて無計画のシスコンなのに」

女「さぁ」

兄「さぁってなんだよ」

女「よく、わからないけど、幸せになって欲しいって人。兄にもいるよね」

兄「まぁそれは…」

女「所で君、私と付き合わない?」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:55:49.43 ID:9xDgYOP50
兄「いや、それは…」

女「はぁ」

兄「どうしたんだよタメ息なんてついて」

女「今でも妹さんが好きなの?」

兄「…さぁ」

女「あーあー折角仕事まで紹介してあげたのになー」

兄「…好きだよ」

女「で?」

兄「で、も何もないだろ…あんな遁走するような真似したんだ俺にはもう何も出来ない」

女「責任とれよー逃げるなよー男だろー」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 18:59:58.23 ID:9xDgYOP50
兄「…」

女「妹ちゃん気になるー?」

兄「それは…」

女「お母さんから連絡ないの?」

兄「うん。…たまに電話くれるけど」

兄(本当はとてもしたいんだ…妹の事聞きたくて…心配で心配で)

兄(聞きたいんだけど…母さんは妹の近況なんて話さないし…)

兄(本当に自分勝手だよな…俺って…散々振り回して)

prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr

女「電話…母さんから?」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:03:54.56 ID:9xDgYOP50
母「元気にしてる?」

兄「う、うん。まぁ…」

母「全く…女さんには感謝しなさいね」

兄「うん…」

母「…」

兄「…妹は元気?」

母「やっと聞いたわね。元気よ、もうあんたなんて忘れちゃったんじゃない?」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:08:58.19 ID:9xDgYOP50
兄「…そう」

兄(これで良かったよな…)

母「…少し昔話をしていいかしら」

兄「? どーぞ」

母「私って昔それなりにモテたの。だからあんた達のお父さん以外にも色んな人と付き合ったわ」

兄「親の●生活とか気色わりぃからカンベンして欲しいんだけど…」

母「あら?近   なんてしてる人間のセリフかしら」

兄「…あんたがいうかい」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:12:35.54 ID:9xDgYOP50
母「まぁ黙って聞きなさい。 で、その生活の中でとても好きな人に出会ったわ」

母「とても端正な顔で、私はもうベタ惚れだった」

兄(…親父が泣くぜ)

母「でもね。結局ダメになったの。家柄のせいでお爺ちゃんが許してくれなくってね」

母「そんな時にお父さんに出会ったわ。正直自暴自棄ね」

母「お父さんは私に猛アタックしたけど、私は好きになれなかった」

兄「…そんで?」

母「でもね、私もいい歳だった。家族親戚共々収入のいいお父さんと結婚しなさいって…」

母「そもそも私だって、恋愛の延長に結婚があるとは思ってなかったしね」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:16:46.08 ID:9xDgYOP50
母「そもそも第一に、女にとって結婚っていうのはビジネスだからね」

兄「はいはい」

母「他人からみたら稼ぎ良いだけじゃなくて、私を好きでいてくれる。尊敬もできる。こんな幸せなことってないわ」

母「私もそう思ってた。なに不自由ない生活で死ぬまで安泰よ」

母「でも最近、人生の半分を超えたくらいから…満たされていないことに気付いた」

母「どーせ終わりがくるのに、好きでもない人と過ごすっていうことに。長生きだけしても何にもならないって」

母「本能を押さえつけて、あざとく生きようとする私を見つけたの」

兄「おいおい。それってまさか…」

母「まさか…あんたが考えてることなんて私はしていないわ」

兄「ほっ」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:21:22.83 ID:9xDgYOP50
母「でもそれをしないのは、愛情からじゃないわ。義理ね。私みたいな人間を養っている夫への奉公。それか同情かしら」

兄「…おいおい」

母「何度もいうけど、お父さんには感謝してるわ。尊敬もしてる」

母「でももし人生を2回送れるとしたら、少なくとも1回は大好きだった彼に添い遂げたと思う」


兄「…なにが言いたいんだよ」

母「なんか、妹を応援したくなっちゃったのよ。親失格ね」

母「嘘ついたわ。妹は毎日泣いてる。そして人生は1度きり、あんたがどうしたいの?」

兄「でも、俺は…」

母「アレはあんたが幼すぎたね。考えが。でも想いは本物だったんでしょう?」

母「まぁ…最初は 欲ザルがって思ったけどね」

母「妹から聞いたけど、あんた相当頑張ってたんじゃない」

母「もう、あんたは立派に仕事もしているし、子供じゃないわ。あの時とは違う」

母「それに私以外にも理解してくれる人がいるでしょう?」

兄(…女)

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:24:31.91 ID:9xDgYOP50
兄「母さん…ありがとう。妹に代わってくれ」

兄「妹…そのごめんな色々振り回して…」

妹「…」

兄「…その今から会いにいっていいか?」

妹「早くきて…お兄ちゃん」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:26:37.39 ID:9xDgYOP50
女「いくんだ」

兄「うん。今度こそなんとかしてみせる」

女「さっきの質問、答えるよ。なんで兄にこんなに尽くしてるか…」

女「好きだから」

兄「ありがとう女」

女「バイバイ」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:27:30.57 ID:9xDgYOP50
兄「ただいま」

母「おかえりなさい」

兄「父さんは?」

母「赴任先よ。…それより早く行ってあげなさい」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/16(火) 19:31:30.52 ID:9xDgYOP50
兄「妹。入るぞ」トントン

妹「おかえりなさい…元気だった?」

兄「うん。お前はその…なんか痩せちゃったな」

妹「お兄ちゃんが居なくなっちゃうからだよ」

兄「…ごめん。でも、もう何処に何処にもいかない。今度こそ絶対に約束する」

兄「ちゃんと、逃げないで親父を説得してみせる」

兄「常識に立ち向かってみせるよ」

妹「あの時、2人だけで過ごした時間幸せだった…ずっと続けばいいってそう思った。これからずっと続くよね?」

兄「うん。ずっとだよ」

僕は彼女を後から抱きしめ、腕を絡ませた。
彼女の指には、初めて料理をしたときに作った切り傷がまだ残っていた。
僕はその傷を優しくさすり、その指に指輪をはめてやった。 
 
               完