1 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:39:55.78 ID:HjGwYR9T0
注意事項
・武内Pもの
・武内Pもの
蘭子「むすー」
武内P「私は……私はいったいどうすれば」
タタタタタタタタタッ、ガチャッ
美波「プロデューサーさんっ!」
武内P「新田さん!?」
美波「話は本当ですか? 蘭子ちゃんが、あの蘭子ちゃんが……プロデューサーさんに酷いことを言うなんて」
武内P「はい……私が至らないばかりに。さらに動転していまい、神崎さんのことならば新田さんだとつい連絡してしまいました」
美波「プロデューサーさん……」
美波(無理もないわ。これまでアイドルとすれ違って話がこじれたことは何度かあったけど、相手はあの蘭子ちゃん……我が友、我が友と愛らしく懐いてくれてた子に嫌われたら、いくらプロデューサーさんでも耐えられない)
武内P「新田さん。も、申し訳ありませんが……」
美波「はい、任せてください。私が蘭子ちゃんに事情を聞いてみます!」
蘭子「ぷくー」
美波「蘭子ちゃん、ちょっといいかしら?」
蘭子「……美の女神よ。我が逆鱗に触れるか(ごめんなさい美波さん。私いま怒ってるんです)」
美波「ごめんね蘭子ちゃん、機嫌が悪いのに。でもどうしてプロデューサーさんに怒っているかだけ聞かせてもらってもいいかしら? プロデューサーさんに悪いところがあるのなら、私からも伝えられると思うの」
蘭子「……我が友は……我が友は!」
美波「うん、プロデューサーさんがどうしたの?」
蘭子「儀式場への誘いに……」
美波「レッスン上への移動に?」
蘭子「腕(かいな)を……その……」
美波「ん?」
蘭子「手をつないで行きたいって言ったのに、ダメだって言うんですよ!」ムキーッ
美波「…………………………ん?」
蘭子「勇気を出して言ったのに酷い! 我が友なんてもう知らない! 手にチューしてくれなきゃ許さないもん!」
武内P「神崎さんが反抗期に……私は……私はいったいどうすれば」オロオロ
注意事項
・武内Pもの
・武内Pもの
蘭子「むすー」
武内P「私は……私はいったいどうすれば」
タタタタタタタタタッ、ガチャッ
美波「プロデューサーさんっ!」
武内P「新田さん!?」
美波「話は本当ですか? 蘭子ちゃんが、あの蘭子ちゃんが……プロデューサーさんに酷いことを言うなんて」
武内P「はい……私が至らないばかりに。さらに動転していまい、神崎さんのことならば新田さんだとつい連絡してしまいました」
美波「プロデューサーさん……」
美波(無理もないわ。これまでアイドルとすれ違って話がこじれたことは何度かあったけど、相手はあの蘭子ちゃん……我が友、我が友と愛らしく懐いてくれてた子に嫌われたら、いくらプロデューサーさんでも耐えられない)
武内P「新田さん。も、申し訳ありませんが……」
美波「はい、任せてください。私が蘭子ちゃんに事情を聞いてみます!」
蘭子「ぷくー」
美波「蘭子ちゃん、ちょっといいかしら?」
蘭子「……美の女神よ。我が逆鱗に触れるか(ごめんなさい美波さん。私いま怒ってるんです)」
美波「ごめんね蘭子ちゃん、機嫌が悪いのに。でもどうしてプロデューサーさんに怒っているかだけ聞かせてもらってもいいかしら? プロデューサーさんに悪いところがあるのなら、私からも伝えられると思うの」
蘭子「……我が友は……我が友は!」
美波「うん、プロデューサーさんがどうしたの?」
蘭子「儀式場への誘いに……」
美波「レッスン上への移動に?」
蘭子「腕(かいな)を……その……」
美波「ん?」
蘭子「手をつないで行きたいって言ったのに、ダメだって言うんですよ!」ムキーッ
美波「…………………………ん?」
蘭子「勇気を出して言ったのに酷い! 我が友なんてもう知らない! 手にチューしてくれなきゃ許さないもん!」
武内P「神崎さんが反抗期に……私は……私はいったいどうすれば」オロオロ
2 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:42:42.77 ID:HjGwYR9T0
美波「……」
武内P「新田さん?」
<Prrrrrrrrrrr
美波「あ、もしもしアーニャちゃん。うん、さっきの件だけど何の問題も無かったから大丈夫だよ。二人とも相変わらず仲良しだから」
武内P「新田さん!? 何を言っているのですか新田さん!? 私と神崎さんの件で話をしているのでしたら大問題ですよ!?」
美波「ちょっとプロデューサーさんは勘違いしているけど……アハハ、確かにいつも勘違いしているよね。皆に好かれているのに。うん、それじゃあ撮影がんばってね」ピッ
美波「それじゃあプロデューサーさん。二人の邪魔をしたくないので、私は帰りますね」
武内P「待ってください新田さん! 貴方だけが頼りなんです!」
美波「……ッ!?」
武内P「……新田さん?」
美波(私だけが頼り……!? でもプロデューサーさんには蘭子ちゃんとアーニャちゃんがいるのに。でも私が頼りって……私がいないとダメだって。これはつまり――ッ!!)
人付き合いはヘタだが、真面目で正直な男で、この世のあらゆる残酷さから家族を守ろうとする夫:プロデューサーさん
雪原に舞い降りた純粋無垢な美しい長女:アーニャちゃん
自分のことをクール堕天使だと思い込んでいるキュート天使な次女:蘭子ちゃん
美波(そして妻は――――――――――私!)
武内P「あの……新田さん?」
美波「も、もう仕方がないですねえプロデューサーさんったら! ここは美波に任せてください!」
武内P「あ、ありがとうございます」
美波「うふふ。いいんですよ、私とプロデューサーさんの仲(夫婦)なんですから」
武内P「それにしてもなぜ神崎さんは突然反抗期になってしまったのでしょうか……」
美波「心と体が不安定な年頃なので、突然反抗期(?)になるのはそこまで奇妙ではありませんけど……私は反抗期が無かったので、あまり自信をもって言えません」
武内P「新田さんもですか。実は私も反抗期が無かったので、今の神崎さんの気持ちがわからないのです」
美波(たとえ反抗期の経験があっても、イヤイヤ期と反抗期に恋心が混ざった蘭子ちゃんの複雑な心境はわからないと思います)
蘭子「むくー」
美波「あ、そういえばうちの弟は反抗期があったんですよ。小学校五年生ぐらいの頃から私と一緒にお風呂に入ってくれなくなって、外に出かける時も手をつないでくれなくなったんですよ、もう!」
武内P「それは…………………………反抗期ですね」
3 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:43:23.53 ID:HjGwYR9T0
美波「昔はあんなにベッタリだったのに、はぁ……あ、すいません! 今は蘭子ちゃんのことでした」
美波「そういえば私は思いませんでしたけど、中学生の頃はよく同級生がパパがいちいち口出ししてくるのがうざいって――」
ガタンッ
蘭子・美波『……ッ!?』
武内P「う、うざい……? 神崎さんが私のことを……うざいと」
美波「プ、プロデューサーさん? あくまで反抗期の例えですよ。今の状況には当てはまりませんよ」
蘭子「わ、我が友……?」
武内P「神崎さんが……私のことを……」ポワンポワンポワン
蘭子『下僕風情が、何を思いあがって我に声をかける?』
蘭子『ただ黙して我に仕えるのならば目こぼししてやらんでもなかったが、それも終焉か』
蘭子『失せろ。我の傍らに汝の居場所など無い』
蘭子『我が友キモイ』
武内P「うっ――――」ドクンッ
蘭子「ぴいいいいいいいいいぃぃ!?」
美波「プロデューサーさん? こ、これは……っ」
蘭子「美波さん!? プロデューサーは……プロデューサーはどうなったんですか!?」
美波「心臓が……止まってる」
蘭子「」
4 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:44:11.71 ID:HjGwYR9T0
――
――――
――――――――
武内P「……ご迷惑をおかけしました」
美波「良かった……回復してくれて。近くにスタドリ100があって何とかなりました」
蘭子「ふーんだ」
武内P「神崎さんに今以上に嫌われる未来を想像した途端に、めまいがして倒れこんでしまいました」
蘭子「ほ、ほう」ソワソワ
武内P「あの……神崎さん」
蘭子「……ッ」ササッ
武内P「あ……」
美波「大丈夫ですよプロデューサーさん。プロデューサーさんが倒れた時、蘭子ちゃんは泣きながら駆け寄ったんです。態度は変わっても、プロデューサーさんへの気持ちは少しも変わっていません」
武内P「か、神崎さん」ジーン
蘭子「ぷいっ」
武内P「しかし嫌われたわけではないのなら、今の神崎さんの状況は何なのでしょうか」
美波「そういえば聞いたことがあります。下の子ができたらこれまでいい子だった上の子がワガママを言うようになったと。心当たりはありませんかプロデューサーさん?」
武内P「下の子? 神崎さんより年下の子の相手をすることはありますが、それは以前からで……あっ」
美波「プロデューサーさん? 心当たりがあったんですか?」
武内P「いえ、あの……年下ではないんですが――」
りあむ『うおおおおおおおおおおぉん!』
武内P『……ッ!?』
りあむ『つらい……つらたん。何で、何で毎日がんばって働かないと生きていけないの?』
りあむ『ぼくみたいなクソザコは、生きているだけで褒められるべきじゃないの? それなのにそんなの当然って感じで、さらにアレもしろコレもしろって』
りあむ『チヤホヤされるだけで生きていたい。赤ちゃんにな゙り゙だい゙よ゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉ゙!!!』
武内P『あ、あの……夢見さん。廊下で大声を出すのは』
りあむ『……ッ!? Pサマ!? CPのPサマだ!?』
武内P『は、はい』
りあむ『へっへっへ。今日もご機嫌うるわしゅうございます。相変わらずでけえ とスーツが似合ってやがりますぜ。炎上して厄介なオタクに狙われても、Pサマがその胸筋という名の●●●●でねじ伏せてくれるという安心感のおかげで、ザコメンタルなぼくでも生きていられるんですよ』
武内P『は、はあ』
りあむ『ただ、ただですね! もうちょーーーーーっと安心感が欲しいんですよ! 硬い筋肉による安心感ではなく、柔らかな少女の温もりと包容力が』
武内P『……』
りあむ『だ、だからその……こここ今度ね? みりあちゃんと【ダメです】――なして?』
5 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:45:00.99 ID:HjGwYR9T0
武内P『夢見さん。貴方が年下の女性を中心に、ママと呼んでいることは知っています。しかし……いくらなんでもまだ小学生の女の子に』
りあむ『ち、違わい! ぼくはただ、一人のファンとしてみりあちゃんとお近づきになりたいだけだよ!』
武内P『本当……でしょうか?』
りあむ『うげっ、殺し屋のような眼! あ、いや、そりゃね? あわよくばというか、ワンチャンあるかもというか、どさくさに紛れてママーッて言いながら抱き着けば、優しく赤ちゃん扱いしてくれるかもだなんて、これっぽっちも考えてないですしおすし』
武内P『夢見さん……』
りあむ『P、Pサマだって考えたことあるでしょ!? 過酷な現代ストレス社会の代表みたいなもんじゃん! 毎日毎日残業して、ママみを少しも感じられない常務って人からプレッシャーかけられて! 年下の優しい女の子に無制限に甘えたいでしょ?』
武内P『……申し訳ありません。その、私には理解しかねます』
りあむ『嘘だッ!!!』
武内P『!?』
りあむ『そんなこと言ってみりあママを独り占めしてるんだ! みりあママのお腹に頬ずりしながら甘えてるんだ! おぎゃる時間が減るからぼくにみりあママを紹介しないんだ! Pサマのむっつり!』
武内P『』
りあむ『うええええええええぇぇぇん! Pサマがいじめるよおおおおおおお』
武内P『あの……その……』
りあむ『おぎゃりたいよおおおおおぉ! ぼくなりに頑張っているんだからせめてママに甘えさせてよおおおおおおぉぉ!!』
武内P『よ…………よしよし』
ナデナデ
りあむ『……ふぇ?』
武内P『あ……すみません。やはり女性の頭を気軽にさわるのは……』スゥ
ガシッ
武内P『え?』
りあむ『Pサマが女の子頭なでるなんてさ……もしかしなくてもSSRじゃん』
りあむ『それにカボチャを片手で掴めそうな手を頭にのっけて、コッワイ顔をオドオドさせながら美少女なぼくをなでる』
りあむ『そんなのエモいじゃんっ!』ギュウッ
武内P『夢見さんっ!?』
りあむ『ウワッハアッ! パパの筋肉スゴイ! 熱くて硬すぎるじゃん!』
武内P『あの、夢見さん。離れてもらってもいいですか』
りあむ『え……? ぼくをすこらないの?』
武内P『離れてくれたらすこ【パパが~! パパがぼくを捨てようとするの~!!】夢見さんっ!?』
りあむ『おぎゃあっ! おぎゃあっ! パパはぼくを見捨てないよね? すこってくれるよね?』
武内P『…………………………はい』ナデナデ
りあむ『だぁ! きゃっきゃっ♪ おぎゃあ♪』
蘭子『……』
6 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:46:13.44 ID:HjGwYR9T0
武内P「――ということがあったのですが、それを神崎さんに見られたのかもしれません」
蘭子「むっすうううううぅぅ」
※ ※ ※ よくわかる武内P周辺の精神年齢 ※ ※ ※
6代目シンデレラ>>>莉嘉>みりあ=ランラン>りあむ=25歳児
美波「……19歳のりあむちゃんが、大人のプロデューサーさんに『パパ』と言いながら抱き着いたんですか?」
武内P「え、ええ」
美波「二人を知らない人からしたらパパ活にしか見えないじゃないですか!」
武内P「私もそう思ったのですが……泣きじゃくる夢見さんを引き離せず」
美波(ダメだ……プロデューサーさんは弱っている女の子を突き放せる人じゃない。それを見抜いた女に押し切られて、なし崩しに関係をもってしまいかねない)
美波(ここは私が妻としてしっかりと守らないと! 家族のために!)
美波「――ところでプロデューサーさん。私もりあむちゃんと同じで19歳なんですよ」
武内P「……ッ!?」
美波「もし今度りあむちゃんに流されるままにパパとして甘やかすのなら、私も同じようにさせてもらいますからね?」
武内P「……肝に銘じておきます」
7 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:46:46.03 ID:HjGwYR9T0
美波「はい、わかってくれて何よりです。ところで蘭子ちゃんの件ですが」
武内P「ええ」
美波「私の見立てだと、プロデューサーさんが特に熱心に構っていたのが自分だったのに、年下(?)の子の方に構うようになったのが面白くないんだと思うんです」
武内P「……そうだとすれば、私はどのように対応すればいいのでしょうか」
美波「今でも蘭子ちゃんを大事に思っているのだと伝わる対応が必要なので、とりあえず蘭子ちゃんの要求に応えましょう」
蘭子「……ッ」ピクッ
武内P「つまり――」
蘭子「ああ! 冬の嘆きが我が身をさいなまん! 守護者の熱で我をくべ、儀式場へ誘わんことを切に願う!(ああ、寒いなあ。おててつなぎながらじゃないとレッスンに行きたくないなあ!)」
武内P「あの……神崎さん」
蘭子「背信者よ。我に何用か(あ、おててつないでくれない人だ。何の用ですか、ふんっ)」
武内P「あの……私でよければ、レッスン場まで一緒に行かせてください」
蘭子「……汝の腕(かいな)は?」
武内P「貴方と共に」
蘭子「ほぉう♪ 汝の意思は受け取った。しかし――謝罪はまだ受け取っておらんな」
武内P「……神崎さん。手をお借りします」
蘭子「う、うむ!」
チュッ
蘭子「~~~~~っっっ」
武内P「謝罪を受け取ってもらえますか」
蘭子「……ふ、フフ」
蘭子「フハハハハハッ」
蘭子「アッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
蘭子「我が怒りは紅蓮の炎! されど友である汝の懇願を無下にするほど、魔王は狭量ではない。汝の謝罪、しかと受け取った(すっごく怒っていたけど、謝ってくれたから許します!)」
武内P「神崎さん……ありがとうございます」
蘭子「さあ我が友よ! 共に覇道を歩まん!(プロデューサー! レッスンに行きましょう!)」
武内P「お供します、魔王様」
美波「よし、これで一件落着!」
8 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:47:26.56 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
武内P「……ふう」
武内P(新田さんのおかげで神崎さんの件が解決して、本当に良かった)
武内P(……しかし最初は手をつないでいただけなのに、段々と腕を絡ませながら体重を預ける体勢になってしまいました)
武内P(神崎さんにそのような意図は無いとわかっていますし、まだ中学生の女の子がそういう意図を持っていると勘違いする男もいるとは思えませんが、神崎さんの気持ちが落ち着いた時に今回のことは注意しましょう)
武内P「……ん?」
文香「あの……兄さま(※)」
※ふみふみは武内Pの妹です。いいね?
武内P「鷺沢さん、どうしましたか?」
文香「そ、その……ふんっ」プイッ
武内P(……? 話しかけられたと思ったら、顔をそむけられてしまいました。しかも心なしか顔が赤いような)
文香「兄さまなんか……兄さまなんか」
武内P(次は上目遣いに私を見ながら、何か言いよどんでいます。言いづらいことなのでしょうか……?)
文香「兄さまなんか……だ……だ……だい……っ」
武内P「あの……鷺沢さん?」
文香「 大 好 き で す ! ! ! 」
武内P「……え?」
文香「あ」
9 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:48:29.93 ID:HjGwYR9T0
武内P「……」
文香「……」
文武両道『……』
文香「ち、違うんです! いえ、違うわけではないんですが、この場合はやはり違うんです! 確かに私は兄さまのことを兄さまと慕っていますが、今のは言い間違えてしまったんです!」
武内P「わ、わかっています。わかっているので落ち着いてください」
文香「わ、わかっていただけましたか?」
武内P「ええ、わかっています」
文香「……わかってしまわれるのは、その……少し」
武内P「え?」
文香「んんっ。何でもありません」
武内P「は、はぁ。ところで、今日は何かあったのでしょうか? 様子が普段と違うように見受けられましたが」
文香「その……蘭子さんが反抗期になったという噂を聞き、少し考えたのです」
文香「私には反抗期らしい反抗期はありませんでした。両親と先生の教えに従い、良い子だと褒められて育ちましたが……もしかすると私が自己主張をするのに大きな勇気が必要なのは、反抗期を経験していないからではないかと」
文香「今となっては遅いとも思いましたが、真似事でもやらないよりはまだ良いと考え、では反抗する相手をどなたにしようかとなり……」
武内P「私に反抗しようとしたのですね?」
文香「はい。両親とは離れて暮らし、叔父も考えたのですが……兄さまの姿が視界に移った途端に、体が動いてしまい……」
武内P「それで私に、何と言おうとしたのですか?」
文香「その……大っ嫌いと言おうとしたんです」
武内P(……その結果が顔を赤くしながらそむけ、上目遣いをしながら『大好きです!!!』……まったく真逆ではないですか)
文香「ですがいざ言おうとしたら、兄さまに嫌われてしまう姿が思い浮かんでしまい……とっさに反対のことを言ってしまったんです」
武内P「そういうことでしたか。そう考えると、反抗する相手として私を選んでくれたことを嬉しく思います」
文香「え……?」
武内P「反抗期とはいっても、だれかれ構わず反抗するわけではありません。人によるとは思いますが、反抗する相手は赤の他人ではなく自分と関わり合いの深い方が多いでしょう。鷺沢さんに単なる職場の同僚としてだけではなく、信用していただけて私は嬉しいです」
文香「と……当然です。私は兄さまのことを……お、お慕いしていますから」
文香「……しかしそう考えると、私は蘭子さんが羨ましいです」
10 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:49:09.11 ID:HjGwYR9T0
武内P「神崎さんがですか?」
文香「はい。蘭子さんは今回兄さまに酷いことを言いましたが、それは嫌われてもいいと思ったわけではありません。自分なら兄さまに酷いことを言っても、兄さまにとって大切な存在であり続けると疑いもしなかったらでしょう」
武内P「……ッ!?」
文香「私は兄さまに酷いことを言おうとして、嫌われるのではないかと恐れてしまいました。血を分けた肉親でもないのにそこまで信頼関係を築けた二人を、私は羨ましいと感じるのです」
武内P「信頼……私は神崎さんに、信頼してもらえているんですね」
文香「ええ、良かったですね兄さま」
武内P(そう考えると、先ほどまでの神崎さんの態度も可愛らしく思え――)
カツーン、カツーン
蘭子「我が友……」
武内P「神崎さん? レッスンはどうしましたか?」
蘭子「休憩でジュースを……じゃなくて」
武内P「……?」
蘭子(プロデューサー……なんだか文香さんと良い雰囲気だ)
蘭子(文香さんは美波さんぐらい美人で……頭も良くて、優しくて、●●●●も大きいし……だからって!)
蘭子(さっきまで私とラブラブしてたのに……っ!!!)
蘭子「我が友なんか……だ……だ……だい……っ」
武内P「あの……神崎さん?」
蘭子「大 っ っ っ っ っ 嫌 い ! ! ! 」
武内P「」
武内P(きら……い? 神崎さんは私を……大っ嫌い)
――神崎蘭子に信頼されている。
そう思った直後の脈絡のない罵声は凶悪極まりない気圧差を生み、武内Pの心臓を締めつけ……
武内P「グフゥ……」
文香「に、兄さま!?」
蘭子「ふぇっ!? 我が友!?」
武内P「」
――息の根を止めた。
11 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:50:26.78 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
――救護室
武内P「」チーン
美波「プロデューサーさん……」
蘭子「我が友ぉ……我が友ぉ……」グス
文香「きゅ、救急車を呼んだ方がいいのではないでしょうか」オロオロ
美波「二人とも、落ち着いて」
蘭子「美波さん……でも、我が友が!」
文香「何か……できることはないのでしょうか?」
美波「……プロデューサーさんは今この世で一、二を争うほど愛くるしい天使に否定されて絶望している。だから必要なのは――愛!」
蘭子「愛(リーベ)!?」
美波「そして眠れる王子様に、お姫様が愛を伝える方法は一つだけ」
文香「ま、まさかそれは……っ!」
蘭子「……?」
美波「蘭子ちゃん。プロデューサーさんが今一番必要としているのは、蘭子ちゃんの愛なの。だから――」
――
――――
――――――――
武内P(ここはどこだろう……? 真っ白で、ぼやけていて……何より寒い)
武内P(このままではいけないと、強まっていく寒気が教えてくれる。けどどうすればここから出られるのでしょうか? 手がかりを探そうにも、白くぼやけた世界は私に何も教えてくれない)
武内P(ここは……天国?)
――我が友
武内P(ああ――やはり天国だった)
武内P(この清らかな声は、きっと天使様の呼びかけに違いない)
――我が友よ、許してくれ。そして謝罪を……わ、我の謝罪を――受け取ってくれ)
武内P(天使様はそう告げると、私に熱を与えてくれた。唇から伝わるぬくもりに、死に瀕していた私は思わずすがりつき、さらなる熱を求めて――)
12 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:51:29.47 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
武内P「……ここは?」
美波「プロデューサーさん! 良かった、目が覚めてくれて」
武内P「……私はまた倒れてしまったのですか? ご心配をおかけして――」
蘭子「……」プルプル
文香「ら、蘭子さん。ほら、蘭子さんのおかげで兄さまは助かったんですよ」
武内P(謝罪の言葉は、うつむいた顔を真っ赤にしながら震える神崎さんの姿を見て止まってしまいました)
武内P(改めて周りの様子を見れば鷺沢さんも顔を赤らめていて、新田さんはなぜか満足げな顔をしています)
武内P「あの……いったい何が」
蘭子「我が友……」
武内P「は、はい」
蘭子「我が友の……●●●」
武内P「え?」
タタタタタタタタタタッ
武内P「あ……神崎さん」
文香「あの……兄さま」
武内P「鷺沢さん。いったい何があったのですか?」
文香「その……意識が無いとはいえ、蘭子さんはまだ中学生で、今回が初めてだったんです」
武内P「ん?」
文香「そ、それなのに抱き寄せて、あ、あまつさえ舌を入れるのは……し、刺激が強すぎると思います」
武内P「は?」
美波「うふふ。以外と情熱的なんですね、プロデューサーさん」
武内P「え?」
武内P(顔を赤らめた鷺沢さん。意識が無いとはいえ。中学生、初めて。舌。刺激が強すぎる。情熱的)
武内P(私は白くぼやけた世界に意識がある中で、いったい何を――)
武内P「……ん?」
武内P「――――――――――あ」
~おしまい~
美波「……」
武内P「新田さん?」
<Prrrrrrrrrrr
美波「あ、もしもしアーニャちゃん。うん、さっきの件だけど何の問題も無かったから大丈夫だよ。二人とも相変わらず仲良しだから」
武内P「新田さん!? 何を言っているのですか新田さん!? 私と神崎さんの件で話をしているのでしたら大問題ですよ!?」
美波「ちょっとプロデューサーさんは勘違いしているけど……アハハ、確かにいつも勘違いしているよね。皆に好かれているのに。うん、それじゃあ撮影がんばってね」ピッ
美波「それじゃあプロデューサーさん。二人の邪魔をしたくないので、私は帰りますね」
武内P「待ってください新田さん! 貴方だけが頼りなんです!」
美波「……ッ!?」
武内P「……新田さん?」
美波(私だけが頼り……!? でもプロデューサーさんには蘭子ちゃんとアーニャちゃんがいるのに。でも私が頼りって……私がいないとダメだって。これはつまり――ッ!!)
人付き合いはヘタだが、真面目で正直な男で、この世のあらゆる残酷さから家族を守ろうとする夫:プロデューサーさん
雪原に舞い降りた純粋無垢な美しい長女:アーニャちゃん
自分のことをクール堕天使だと思い込んでいるキュート天使な次女:蘭子ちゃん
美波(そして妻は――――――――――私!)
武内P「あの……新田さん?」
美波「も、もう仕方がないですねえプロデューサーさんったら! ここは美波に任せてください!」
武内P「あ、ありがとうございます」
美波「うふふ。いいんですよ、私とプロデューサーさんの仲(夫婦)なんですから」
武内P「それにしてもなぜ神崎さんは突然反抗期になってしまったのでしょうか……」
美波「心と体が不安定な年頃なので、突然反抗期(?)になるのはそこまで奇妙ではありませんけど……私は反抗期が無かったので、あまり自信をもって言えません」
武内P「新田さんもですか。実は私も反抗期が無かったので、今の神崎さんの気持ちがわからないのです」
美波(たとえ反抗期の経験があっても、イヤイヤ期と反抗期に恋心が混ざった蘭子ちゃんの複雑な心境はわからないと思います)
蘭子「むくー」
美波「あ、そういえばうちの弟は反抗期があったんですよ。小学校五年生ぐらいの頃から私と一緒にお風呂に入ってくれなくなって、外に出かける時も手をつないでくれなくなったんですよ、もう!」
武内P「それは…………………………反抗期ですね」
3 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:43:23.53 ID:HjGwYR9T0
美波「昔はあんなにベッタリだったのに、はぁ……あ、すいません! 今は蘭子ちゃんのことでした」
美波「そういえば私は思いませんでしたけど、中学生の頃はよく同級生がパパがいちいち口出ししてくるのがうざいって――」
ガタンッ
蘭子・美波『……ッ!?』
武内P「う、うざい……? 神崎さんが私のことを……うざいと」
美波「プ、プロデューサーさん? あくまで反抗期の例えですよ。今の状況には当てはまりませんよ」
蘭子「わ、我が友……?」
武内P「神崎さんが……私のことを……」ポワンポワンポワン
蘭子『下僕風情が、何を思いあがって我に声をかける?』
蘭子『ただ黙して我に仕えるのならば目こぼししてやらんでもなかったが、それも終焉か』
蘭子『失せろ。我の傍らに汝の居場所など無い』
蘭子『我が友キモイ』
武内P「うっ――――」ドクンッ
蘭子「ぴいいいいいいいいいぃぃ!?」
美波「プロデューサーさん? こ、これは……っ」
蘭子「美波さん!? プロデューサーは……プロデューサーはどうなったんですか!?」
美波「心臓が……止まってる」
蘭子「」
4 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:44:11.71 ID:HjGwYR9T0
――
――――
――――――――
武内P「……ご迷惑をおかけしました」
美波「良かった……回復してくれて。近くにスタドリ100があって何とかなりました」
蘭子「ふーんだ」
武内P「神崎さんに今以上に嫌われる未来を想像した途端に、めまいがして倒れこんでしまいました」
蘭子「ほ、ほう」ソワソワ
武内P「あの……神崎さん」
蘭子「……ッ」ササッ
武内P「あ……」
美波「大丈夫ですよプロデューサーさん。プロデューサーさんが倒れた時、蘭子ちゃんは泣きながら駆け寄ったんです。態度は変わっても、プロデューサーさんへの気持ちは少しも変わっていません」
武内P「か、神崎さん」ジーン
蘭子「ぷいっ」
武内P「しかし嫌われたわけではないのなら、今の神崎さんの状況は何なのでしょうか」
美波「そういえば聞いたことがあります。下の子ができたらこれまでいい子だった上の子がワガママを言うようになったと。心当たりはありませんかプロデューサーさん?」
武内P「下の子? 神崎さんより年下の子の相手をすることはありますが、それは以前からで……あっ」
美波「プロデューサーさん? 心当たりがあったんですか?」
武内P「いえ、あの……年下ではないんですが――」
りあむ『うおおおおおおおおおおぉん!』
武内P『……ッ!?』
りあむ『つらい……つらたん。何で、何で毎日がんばって働かないと生きていけないの?』
りあむ『ぼくみたいなクソザコは、生きているだけで褒められるべきじゃないの? それなのにそんなの当然って感じで、さらにアレもしろコレもしろって』
りあむ『チヤホヤされるだけで生きていたい。赤ちゃんにな゙り゙だい゙よ゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉ゙!!!』
武内P『あ、あの……夢見さん。廊下で大声を出すのは』
りあむ『……ッ!? Pサマ!? CPのPサマだ!?』
武内P『は、はい』
りあむ『へっへっへ。今日もご機嫌うるわしゅうございます。相変わらずでけえ とスーツが似合ってやがりますぜ。炎上して厄介なオタクに狙われても、Pサマがその胸筋という名の●●●●でねじ伏せてくれるという安心感のおかげで、ザコメンタルなぼくでも生きていられるんですよ』
武内P『は、はあ』
りあむ『ただ、ただですね! もうちょーーーーーっと安心感が欲しいんですよ! 硬い筋肉による安心感ではなく、柔らかな少女の温もりと包容力が』
武内P『……』
りあむ『だ、だからその……こここ今度ね? みりあちゃんと【ダメです】――なして?』
5 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:45:00.99 ID:HjGwYR9T0
武内P『夢見さん。貴方が年下の女性を中心に、ママと呼んでいることは知っています。しかし……いくらなんでもまだ小学生の女の子に』
りあむ『ち、違わい! ぼくはただ、一人のファンとしてみりあちゃんとお近づきになりたいだけだよ!』
武内P『本当……でしょうか?』
りあむ『うげっ、殺し屋のような眼! あ、いや、そりゃね? あわよくばというか、ワンチャンあるかもというか、どさくさに紛れてママーッて言いながら抱き着けば、優しく赤ちゃん扱いしてくれるかもだなんて、これっぽっちも考えてないですしおすし』
武内P『夢見さん……』
りあむ『P、Pサマだって考えたことあるでしょ!? 過酷な現代ストレス社会の代表みたいなもんじゃん! 毎日毎日残業して、ママみを少しも感じられない常務って人からプレッシャーかけられて! 年下の優しい女の子に無制限に甘えたいでしょ?』
武内P『……申し訳ありません。その、私には理解しかねます』
りあむ『嘘だッ!!!』
武内P『!?』
りあむ『そんなこと言ってみりあママを独り占めしてるんだ! みりあママのお腹に頬ずりしながら甘えてるんだ! おぎゃる時間が減るからぼくにみりあママを紹介しないんだ! Pサマのむっつり!』
武内P『』
りあむ『うええええええええぇぇぇん! Pサマがいじめるよおおおおおおお』
武内P『あの……その……』
りあむ『おぎゃりたいよおおおおおぉ! ぼくなりに頑張っているんだからせめてママに甘えさせてよおおおおおおぉぉ!!』
武内P『よ…………よしよし』
ナデナデ
りあむ『……ふぇ?』
武内P『あ……すみません。やはり女性の頭を気軽にさわるのは……』スゥ
ガシッ
武内P『え?』
りあむ『Pサマが女の子頭なでるなんてさ……もしかしなくてもSSRじゃん』
りあむ『それにカボチャを片手で掴めそうな手を頭にのっけて、コッワイ顔をオドオドさせながら美少女なぼくをなでる』
りあむ『そんなのエモいじゃんっ!』ギュウッ
武内P『夢見さんっ!?』
りあむ『ウワッハアッ! パパの筋肉スゴイ! 熱くて硬すぎるじゃん!』
武内P『あの、夢見さん。離れてもらってもいいですか』
りあむ『え……? ぼくをすこらないの?』
武内P『離れてくれたらすこ【パパが~! パパがぼくを捨てようとするの~!!】夢見さんっ!?』
りあむ『おぎゃあっ! おぎゃあっ! パパはぼくを見捨てないよね? すこってくれるよね?』
武内P『…………………………はい』ナデナデ
りあむ『だぁ! きゃっきゃっ♪ おぎゃあ♪』
蘭子『……』
6 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:46:13.44 ID:HjGwYR9T0
武内P「――ということがあったのですが、それを神崎さんに見られたのかもしれません」
蘭子「むっすうううううぅぅ」
※ ※ ※ よくわかる武内P周辺の精神年齢 ※ ※ ※
6代目シンデレラ>>>莉嘉>みりあ=ランラン>りあむ=25歳児
美波「……19歳のりあむちゃんが、大人のプロデューサーさんに『パパ』と言いながら抱き着いたんですか?」
武内P「え、ええ」
美波「二人を知らない人からしたらパパ活にしか見えないじゃないですか!」
武内P「私もそう思ったのですが……泣きじゃくる夢見さんを引き離せず」
美波(ダメだ……プロデューサーさんは弱っている女の子を突き放せる人じゃない。それを見抜いた女に押し切られて、なし崩しに関係をもってしまいかねない)
美波(ここは私が妻としてしっかりと守らないと! 家族のために!)
美波「――ところでプロデューサーさん。私もりあむちゃんと同じで19歳なんですよ」
武内P「……ッ!?」
美波「もし今度りあむちゃんに流されるままにパパとして甘やかすのなら、私も同じようにさせてもらいますからね?」
武内P「……肝に銘じておきます」
7 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:46:46.03 ID:HjGwYR9T0
美波「はい、わかってくれて何よりです。ところで蘭子ちゃんの件ですが」
武内P「ええ」
美波「私の見立てだと、プロデューサーさんが特に熱心に構っていたのが自分だったのに、年下(?)の子の方に構うようになったのが面白くないんだと思うんです」
武内P「……そうだとすれば、私はどのように対応すればいいのでしょうか」
美波「今でも蘭子ちゃんを大事に思っているのだと伝わる対応が必要なので、とりあえず蘭子ちゃんの要求に応えましょう」
蘭子「……ッ」ピクッ
武内P「つまり――」
蘭子「ああ! 冬の嘆きが我が身をさいなまん! 守護者の熱で我をくべ、儀式場へ誘わんことを切に願う!(ああ、寒いなあ。おててつなぎながらじゃないとレッスンに行きたくないなあ!)」
武内P「あの……神崎さん」
蘭子「背信者よ。我に何用か(あ、おててつないでくれない人だ。何の用ですか、ふんっ)」
武内P「あの……私でよければ、レッスン場まで一緒に行かせてください」
蘭子「……汝の腕(かいな)は?」
武内P「貴方と共に」
蘭子「ほぉう♪ 汝の意思は受け取った。しかし――謝罪はまだ受け取っておらんな」
武内P「……神崎さん。手をお借りします」
蘭子「う、うむ!」
チュッ
蘭子「~~~~~っっっ」
武内P「謝罪を受け取ってもらえますか」
蘭子「……ふ、フフ」
蘭子「フハハハハハッ」
蘭子「アッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
蘭子「我が怒りは紅蓮の炎! されど友である汝の懇願を無下にするほど、魔王は狭量ではない。汝の謝罪、しかと受け取った(すっごく怒っていたけど、謝ってくれたから許します!)」
武内P「神崎さん……ありがとうございます」
蘭子「さあ我が友よ! 共に覇道を歩まん!(プロデューサー! レッスンに行きましょう!)」
武内P「お供します、魔王様」
美波「よし、これで一件落着!」
8 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:47:26.56 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
武内P「……ふう」
武内P(新田さんのおかげで神崎さんの件が解決して、本当に良かった)
武内P(……しかし最初は手をつないでいただけなのに、段々と腕を絡ませながら体重を預ける体勢になってしまいました)
武内P(神崎さんにそのような意図は無いとわかっていますし、まだ中学生の女の子がそういう意図を持っていると勘違いする男もいるとは思えませんが、神崎さんの気持ちが落ち着いた時に今回のことは注意しましょう)
武内P「……ん?」
文香「あの……兄さま(※)」
※ふみふみは武内Pの妹です。いいね?
武内P「鷺沢さん、どうしましたか?」
文香「そ、その……ふんっ」プイッ
武内P(……? 話しかけられたと思ったら、顔をそむけられてしまいました。しかも心なしか顔が赤いような)
文香「兄さまなんか……兄さまなんか」
武内P(次は上目遣いに私を見ながら、何か言いよどんでいます。言いづらいことなのでしょうか……?)
文香「兄さまなんか……だ……だ……だい……っ」
武内P「あの……鷺沢さん?」
文香「 大 好 き で す ! ! ! 」
武内P「……え?」
文香「あ」
9 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:48:29.93 ID:HjGwYR9T0
武内P「……」
文香「……」
文武両道『……』
文香「ち、違うんです! いえ、違うわけではないんですが、この場合はやはり違うんです! 確かに私は兄さまのことを兄さまと慕っていますが、今のは言い間違えてしまったんです!」
武内P「わ、わかっています。わかっているので落ち着いてください」
文香「わ、わかっていただけましたか?」
武内P「ええ、わかっています」
文香「……わかってしまわれるのは、その……少し」
武内P「え?」
文香「んんっ。何でもありません」
武内P「は、はぁ。ところで、今日は何かあったのでしょうか? 様子が普段と違うように見受けられましたが」
文香「その……蘭子さんが反抗期になったという噂を聞き、少し考えたのです」
文香「私には反抗期らしい反抗期はありませんでした。両親と先生の教えに従い、良い子だと褒められて育ちましたが……もしかすると私が自己主張をするのに大きな勇気が必要なのは、反抗期を経験していないからではないかと」
文香「今となっては遅いとも思いましたが、真似事でもやらないよりはまだ良いと考え、では反抗する相手をどなたにしようかとなり……」
武内P「私に反抗しようとしたのですね?」
文香「はい。両親とは離れて暮らし、叔父も考えたのですが……兄さまの姿が視界に移った途端に、体が動いてしまい……」
武内P「それで私に、何と言おうとしたのですか?」
文香「その……大っ嫌いと言おうとしたんです」
武内P(……その結果が顔を赤くしながらそむけ、上目遣いをしながら『大好きです!!!』……まったく真逆ではないですか)
文香「ですがいざ言おうとしたら、兄さまに嫌われてしまう姿が思い浮かんでしまい……とっさに反対のことを言ってしまったんです」
武内P「そういうことでしたか。そう考えると、反抗する相手として私を選んでくれたことを嬉しく思います」
文香「え……?」
武内P「反抗期とはいっても、だれかれ構わず反抗するわけではありません。人によるとは思いますが、反抗する相手は赤の他人ではなく自分と関わり合いの深い方が多いでしょう。鷺沢さんに単なる職場の同僚としてだけではなく、信用していただけて私は嬉しいです」
文香「と……当然です。私は兄さまのことを……お、お慕いしていますから」
文香「……しかしそう考えると、私は蘭子さんが羨ましいです」
10 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:49:09.11 ID:HjGwYR9T0
武内P「神崎さんがですか?」
文香「はい。蘭子さんは今回兄さまに酷いことを言いましたが、それは嫌われてもいいと思ったわけではありません。自分なら兄さまに酷いことを言っても、兄さまにとって大切な存在であり続けると疑いもしなかったらでしょう」
武内P「……ッ!?」
文香「私は兄さまに酷いことを言おうとして、嫌われるのではないかと恐れてしまいました。血を分けた肉親でもないのにそこまで信頼関係を築けた二人を、私は羨ましいと感じるのです」
武内P「信頼……私は神崎さんに、信頼してもらえているんですね」
文香「ええ、良かったですね兄さま」
武内P(そう考えると、先ほどまでの神崎さんの態度も可愛らしく思え――)
カツーン、カツーン
蘭子「我が友……」
武内P「神崎さん? レッスンはどうしましたか?」
蘭子「休憩でジュースを……じゃなくて」
武内P「……?」
蘭子(プロデューサー……なんだか文香さんと良い雰囲気だ)
蘭子(文香さんは美波さんぐらい美人で……頭も良くて、優しくて、●●●●も大きいし……だからって!)
蘭子(さっきまで私とラブラブしてたのに……っ!!!)
蘭子「我が友なんか……だ……だ……だい……っ」
武内P「あの……神崎さん?」
蘭子「大 っ っ っ っ っ 嫌 い ! ! ! 」
武内P「」
武内P(きら……い? 神崎さんは私を……大っ嫌い)
――神崎蘭子に信頼されている。
そう思った直後の脈絡のない罵声は凶悪極まりない気圧差を生み、武内Pの心臓を締めつけ……
武内P「グフゥ……」
文香「に、兄さま!?」
蘭子「ふぇっ!? 我が友!?」
武内P「」
――息の根を止めた。
11 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:50:26.78 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
――救護室
武内P「」チーン
美波「プロデューサーさん……」
蘭子「我が友ぉ……我が友ぉ……」グス
文香「きゅ、救急車を呼んだ方がいいのではないでしょうか」オロオロ
美波「二人とも、落ち着いて」
蘭子「美波さん……でも、我が友が!」
文香「何か……できることはないのでしょうか?」
美波「……プロデューサーさんは今この世で一、二を争うほど愛くるしい天使に否定されて絶望している。だから必要なのは――愛!」
蘭子「愛(リーベ)!?」
美波「そして眠れる王子様に、お姫様が愛を伝える方法は一つだけ」
文香「ま、まさかそれは……っ!」
蘭子「……?」
美波「蘭子ちゃん。プロデューサーさんが今一番必要としているのは、蘭子ちゃんの愛なの。だから――」
――
――――
――――――――
武内P(ここはどこだろう……? 真っ白で、ぼやけていて……何より寒い)
武内P(このままではいけないと、強まっていく寒気が教えてくれる。けどどうすればここから出られるのでしょうか? 手がかりを探そうにも、白くぼやけた世界は私に何も教えてくれない)
武内P(ここは……天国?)
――我が友
武内P(ああ――やはり天国だった)
武内P(この清らかな声は、きっと天使様の呼びかけに違いない)
――我が友よ、許してくれ。そして謝罪を……わ、我の謝罪を――受け取ってくれ)
武内P(天使様はそう告げると、私に熱を与えてくれた。唇から伝わるぬくもりに、死に瀕していた私は思わずすがりつき、さらなる熱を求めて――)
12 : ◆SbXzuGhlwpak 2020/12/20(日) 06:51:29.47 ID:HjGwYR9T0
※ ※ ※
武内P「……ここは?」
美波「プロデューサーさん! 良かった、目が覚めてくれて」
武内P「……私はまた倒れてしまったのですか? ご心配をおかけして――」
蘭子「……」プルプル
文香「ら、蘭子さん。ほら、蘭子さんのおかげで兄さまは助かったんですよ」
武内P(謝罪の言葉は、うつむいた顔を真っ赤にしながら震える神崎さんの姿を見て止まってしまいました)
武内P(改めて周りの様子を見れば鷺沢さんも顔を赤らめていて、新田さんはなぜか満足げな顔をしています)
武内P「あの……いったい何が」
蘭子「我が友……」
武内P「は、はい」
蘭子「我が友の……●●●」
武内P「え?」
タタタタタタタタタタッ
武内P「あ……神崎さん」
文香「あの……兄さま」
武内P「鷺沢さん。いったい何があったのですか?」
文香「その……意識が無いとはいえ、蘭子さんはまだ中学生で、今回が初めてだったんです」
武内P「ん?」
文香「そ、それなのに抱き寄せて、あ、あまつさえ舌を入れるのは……し、刺激が強すぎると思います」
武内P「は?」
美波「うふふ。以外と情熱的なんですね、プロデューサーさん」
武内P「え?」
武内P(顔を赤らめた鷺沢さん。意識が無いとはいえ。中学生、初めて。舌。刺激が強すぎる。情熱的)
武内P(私は白くぼやけた世界に意識がある中で、いったい何を――)
武内P「……ん?」
武内P「――――――――――あ」
~おしまい~
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