1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:40:55.47 ID:nOXteA6Z0
―――エリア11 ブリタニア政庁・キャメロット開発室―――

セシル「もうロイドさんったら、またそんな事言って……」

ロイド「だってキミねぇ、いくらボクでもあとの展開読めるよ?」

セシル「どういう意味ですか?」イラッ

プシューッ

スザク「二人とも、お疲れ様です」

ロイド「あは~枢木卿、おかえんなさぁ~い♪」

スザク「今はプライベートだし、普通に呼んで下さいよ。ところで、どうしたんです?」

セシル「それが休憩にしましょうって言ったのに、ロイドさんが遠慮しまぁすなんて……」

ロイド「セシルくんが休憩誘うって事はさ、まぁ~た何か作ったんでしょお?」

スザク「ああ、はい……」

引用元: セシル「そろそろ休憩にしましょうか」ロイド「遠慮しまぁす」 




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:42:35.11 ID:nOXteA6Z0
セシル「もう、二人して酷い……」

スザク「いえ、僕はそういう意味で言ったのでは」

ロイド「キミは相変わらずいい子だねぇ~、でも今までだって酷い目見たでしょぉ?」

セシル「ロイドさん?(にっこり)」

ロイド「セシルくん、笑顔が怖いよぉ!?」

スザク「ロイドさん、いくらなんでも女性に失礼ですよ」

セシル「さすがスザク君、紳士よね♪」

セシル「丁度いいわ、三人揃ったところでお茶にしましょ。ちゃんとおやつも作ってあるから♪」

スザク「」

ロイド「あは~、予感的中~! お~め~で~とぉ~……」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:44:37.54 ID:nOXteA6Z0
セシル「ふんふ~ん♪」カチャカチャッ

ロイド「(こんなにさ、待つのが憂鬱になる食卓もないよねぇ?)」ヒソヒソ

スザク「(でも、咎めるわけにも……)」ヒソヒソ

セシル「お待たせしました。さぁ、召し上がれ♪」

ロイド「……スザクくん、先にどぉぞ」

スザク「あ、いえ。ロイドさんこそ疲れてるでしょうし、先に」

ロイド「あは、僕は結構でぇ~す! お茶だけで十分……」

セシル「二人とも。どうしたんですか?」ニコリ

スザク「あ、いえ……その……」

ロイド「なんでも、ございませぇん……」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:46:51.16 ID:nOXteA6Z0
ロイド「はぁ……んで、これが今日のメニュー?」

スザク「見た目はまぁ、美味しそうですよね……」

ロイド「見た目は、ねぇ」

セシル「何か?」

スザク「い、いえ……それじゃあ、いただきますっ!」ヒョイッ

セシル「あっ、そのクッキーは!!」

ロイド「あぁ、また悲劇がぁ……」

サクサクサク……

スザク「あっ、美味しい!」

ロイド「えぇっ!?」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:50:12.48 ID:nOXteA6Z0
セシル「えっ、本当に?」

ロイド「スザクくん、キミ舌大丈夫!?」

スザク「いや本当に美味しいですよこれ。ロイドさんも食べてみればわかりますって」

ロイド「まっ、まさかそんな!」ヒョイッ

サクサク……

ロイド「……うそぉ……」

スザク「ね?」

セシル「やったぁっ♪」

ロイド「セシルくん、キミ熱でも出た!? それともボクらがおかしいのかなぁ?」

セシル「ロイドさぁ~ん、少ぉし黙りましょうかぁ?(にっこり)」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:54:58.15 ID:nOXteA6Z0
セシル「嬉しいわぁ、このクッキー思ったようにできなかったから自信なかったんだけど」

スザク「そんなことないですよ、すごく美味しいです!」

ロイド「はぁ~、奇跡ってあるもんなんだねぇ……」

スザク「違いますよロイドさん、きっとセシルさんも料理の腕を上げたんですよ!」

ロイド「味に目覚めたって事ぉ? ……セシルくんがぁ?」ジーッ

セシル「もう、私だって頑張って作ってるんですからね!」

ロイド「あ~はいはい、ごめんなさ~い」

スザク「いやー本当に美味しいなぁこのクッキー……じゃあもう一つ」ヒョイッ

セシル「うふふ♪」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 12:57:29.87 ID:nOXteA6Z0
セシル「じゃあスザク君、今度はこれを食べてみてくれない?」

スザク「これって、大福? 僕の大好物ですよ!」

セシル「前にそう言ってたの思い出して作ってみたの。ただの大福じゃなくて、いちご大福よ」

ロイド「へぇ~、これはもしかするとぉ、セシルくんってばそういう事なわけぇ?」ニヤニヤ

スザク「? そういう事って……」

セシル「もう、ロイドさん! そういう深い意味はありませんったら!」

ロイド「あは~、これは失礼ぇ~」

セシル「ほらスザク君、早く食べて! こっちのが自信作なんだから!」

スザク「あ、はい! いただきまーす……はぐっ」

モグモグ……

セシル「どう?」

スザク「」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:00:38.06 ID:nOXteA6Z0
スザク「あの……セシルさん」

セシル「ん? なぁに?」

スザク「いちご大福、ですよね? これ……」

セシル「そうよ。お姉さん頑張っちゃった♪」

スザク「なんか、普通入ってないモノが入ってるんですけど……」

セシル「ええ、餡子の甘さがくどくならないように粒マスタードを混ぜてみたの」

ロイド「」

スザク「いちごもなんだか、違うような……」

セシル「塩スイーツってあるじゃない? 塩で甘さが引き立つと思って、いちごは塩焼きにしてみたわ♪」

スザク(セシルさん……作り方が著しく誤っています!)

ロイド「おめでとぉ~、いつものセシルくんだったねぇ」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:04:44.82 ID:nOXteA6Z0
セシル「それでスザク君、お味はいかが?」

スザク「え!? あ、えーっと……」

ロイド「スザクくんさぁ、ちゃんと素直に言った方がいいよぉ?」

セシル「ロ・イ・ド・さん?」

ロイド「……何でもございませぇ~ん!」

スザク「ま……」

セシル「ま?」

スザク「ま……真似、出来ないような、その……独創的な味ですね……」

ロイド「」

セシル「あら本当? ありがとね、お姉さん嬉しいわぁ♪」

ロイド「スザクくん……君のその優しさはさ、いつか君の舌を殺すよ……」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:08:30.59 ID:nOXteA6Z0
ロイド「セシルくん、一つしつもぉ~ん」

セシル「はい?」

ロイド「君さぁ、いつも料理するとき味見ってしてるわけぇ?」

スザク「ロイドさん!」

セシル「してますよ?」キョトン

スザク「……してて、こうなんだ……」

ロイド「君の舌、ホントに大丈夫ぅ?」

セシル「どの食材も、ホントに美味しい物でしたよ」

ロイド「……へ?」

セシル「美味しいもの同士を組み合わせたんだから、美味しくないはずありません♪」

ロイド・スザク「「 」」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:14:19.22 ID:nOXteA6Z0
ロイド「あのさセシルくん、味見ってどういうものかは知ってるよねぇ?」

セシル「馬鹿にしないで下さい。それぐらいもちろん」

スザク「セシルさん。味見は調理中にしないと、その……意味が」

セシル「でもほら、私はみんなに食べてほしくて作ってるから」

ロイド・スザク「「へ?」」

セシル「私が食べて美味しくても、食べてほしい人にとって好ましくない味だったら困るでしょ?」

セシル「それに、私が食べて量が減っちゃっても嫌だしね……だから、私は手をつけないの」

ロイド「」

スザク「あの、せめて調理の過程でも味見しないと! 失敗したら大変じゃないかと……」

セシル「そうかしら……そうね、このクッキーはあまりいい出来じゃなかったし」

スザク「……はい?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:17:27.27 ID:nOXteA6Z0
ロイド「あの~、君が失敗作っていうこのクッキー、普通に美味しかったんですけど?」

セシル「そうです、普通過ぎたんです。もうちょっとアレンジしたかったんですけど」

スザク「セシルさん。料理は普通の、基本が一番大事だと思うんですけど」

セシル「ダメよ。いろんな挑戦をしないと先へは進めないわ」

ロイド「人の口に入るものなんだからさ、挑戦はほどほどにした方がいいと思うんだけど?」

セシル「……挑戦を繰り返し、成功と失敗を重ね、それでも前へ進む」

セシル「科学も料理も、同じじゃないですか?」

スザク「!!」

ロイド「スザクくん、何感銘受けてんの!?」

スザク「あ、すみません。つい」

ロイド「困ったねぇ……これじゃ料理じゃなくて化学じゃ――」

セシル「何か?(にっこり)」

ロイド「」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:21:21.52 ID:nOXteA6Z0
プシューッ

ジノ「おースザクぅ! おつかれ~」

アーニャ「ただいま」

セシル「あら、ヴァインベルグ卿にアールストレイム卿。学校帰りですか?」

ロイド「そういえばお二人は一緒じゃなかったんだねぇ~、今更だけど」

スザク「僕は片付けたい事があったから、一足先に」

ジノ「俺らは生徒会の職務を全うしてきたワケ♪」

アーニャ「ミレイ卒業したから、仕事増えた」

ジノ「そんなわけだからスザクぅ、次はサボんなよ?」

スザク「サボったわけじゃ……僕だって、仕事だし」

セシル「まぁまぁ、喧嘩はダメですよ……そうだ、お二人もよろしければどうです?」

ジノ「お、何? おやつ?」

スザク・ロイド「「!!」」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:25:58.56 ID:nOXteA6Z0
ジノ「へぇ~、こんな菓子見た事ないなぁ! なぁなぁ、何これ?」

スザク「ジノ、それは……」アタフタ

セシル「いちご大福っていう日本のお菓子です。スザク君の好物で……」

ジノ「へー初めて見るなぁ和菓子って! もしかして、セシルさん作ったの?」

セシル「ええ♪ お口に合えばいいんですが……」

ロイド「ヴァインベルグ卿、悪い事言わないからやめといた方が……」

ジノ「手作り大福かぁ! へへっ、いっただっきま~す♪ はぐっ」

スザク・ロイド「「ああ……」」

ジノ「……(むぐむぐ……)」

アーニャ「ジノ、どうなの?」

ジノ「……うはははははっ! 何だこれ! 不っ味いなぁ~~~っ!」

セシル「……え?」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:30:48.68 ID:nOXteA6Z0
ジノ「いやー俺結構舌は肥えてるつもりだけどさ、こんな不味いもん初めて喰ったわ!」

セシル「不味、い……?」

ロイド「あは~、やっとまともな意見言う人がぁ♪」

スザク「ギルフォードさんも言葉濁してましたしね……」

セシル「」

ジノ「スザクぅ、お前こんな不味いもの好物なんて変わってんなぁ!」

スザク「いや、その……えと、なんていうか」

アーニャ「味覚もマゾ?」

スザク「そんな事! それは、その……特殊な例、というかね」

セシル「……」ユラリ

ロイド「んん? セシルくん、どしたの?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:35:55.52 ID:nOXteA6Z0
ジノ「いや~やっぱ世界は広いなぁ! 知らない食べ物たくさんあるわ~アッハハハ!」

セシル「……おい」ガシッ

ジノ「おぉっ?」

セシル「テメェ今なんつった……!」

一同「「「「!!??」」」」

セシル「気のせいだよなぁ……不味いぃ? そう言ったのかぁ」

ジノ「え? あぁ、はい……」

セシル「人が丹精込めて作ったモンが、不味いだぁ!? さすがに黙っちゃねぇぞ!!」

スザク「せ、セシルさん!?」

ロイド「セシルくん、キャラ変わってない!?」

ジノ「いやだって、事実不味いし……」

セシル「冗談も休み休み言いやがれ……ちっと美形だからって甘やかされっと思うんじゃねぇぞクソガキ!」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:42:58.18 ID:nOXteA6Z0
セシル「わぁったか? 取り消せよ……」

ジノ「と、取り消すって何を……」ブルブル

セシル「さっきの言葉に決まってんだろぉが! 頭のネジ飛んでんのかコラ!」

セシル「いいか、てめぇは不味いなんて言ってねえ……そうだよなぁ!? あ゛ぁ!?」

ジノ「そ、それ……は……」

スザク「セシルさん止めて下さい! それ以上は不敬罪に――」

セシル「法律が怖くて食い物作れっかってんだよ! なめてんじゃねぇぞこの(ピーッ)野郎がぁ!」

スザク「しかし、ナイトオブラウンズに恫喝なんて!」

セシル「上等だよ、ラウンズがなんぼのもんだ! 食わせてもらって文句たれてんじゃねえ!」

アーニャ「セシル、怖い……」ウルッ

ロイド「完全にキャラ壊れてるよ……ど、どぉしましょぉ~っ!?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:47:25.13 ID:nOXteA6Z0
セシル「ほら早くちゃんと言ってみろよ坊主。怒らねぇからよぉ!」

ジノ「」

アーニャ「どう見ても、怒ってる……」

ロイド「えっと、ヴァインベルグ卿! とりあえず謝っといたらぁ!?」

スザク「しかしロイドさん、ジノは率直な意見を……」

ロイド「状況見なよキミはさぁ!」

ジノ「お、俺はその……」

セシル「あ゛ぁ?」ギンッ

ジノ「……その、不味いなんて、言ってない……です」

セシル「聞こえねぇなぁ」

ジノ「と、とても美味しかったですっ!……すみません、でした……」

セシル「あ~らそう、ならよかったわ♪」ニコッ

一同「「「  」」」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:52:03.78 ID:nOXteA6Z0
セシル「お口に合ったのなら嬉しいわ、うふふ♪」

ジノ「あ、あはははは……」

セシル「たくさん作ったから、好きなだけ食べて下さいね♪」

ジノ「い、いえ! もう腹いっぱいなんで……はは」

セシル「あら残念……アールストレイム卿はいかがです?」

アーニャ「ごめんなさい……帰りに、アイス食べて来たから……」

スザク「アーニャ、下校時に買い食いなんて」

ロイド「(スザクくん、彼女なりの言い訳なんだから! 空気読みなってぇ!)」ヒソヒソ

スザク「(しかし!)」ヒソヒソ

セシル「……仕方ないわね。じゃあ冷凍庫に入れておきますね、解凍すればまた食べられますし」

一同((((勘弁して下さいっ!!))))

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 13:55:04.79 ID:nOXteA6Z0
セシル「では私は片付けしておきますから、皆さんごゆっくりどうぞ♪」テッテッテッ

ロイド「あはー、はぁ~い! ……皆様、ちょいと集合ぉ!」

スザク「は、はい……で、なんですか?」

ロイド「提案なんだけど、本日フタヒトマルマルからセシルくん対策会議を開こうと思いまぁす……異議のある方?」

スザク「そんなロイドさん、味方のセシルさんに対策なんて!」

ロイド「そんなキミに一言。ほら周り見てみよっかぁ?」

ジノ「負けた……ナイトオブスリーのこの私が、騎士でもない女性に……」

アーニャ「怖い……セシルとセシルの料理、怖い……」ガクブル

スザク「……これは……」

ロイド「わかったかなぁ、これじゃ士気にも影響出るでしょ? 対策……要らない?」

スザク「必要、ですね……はい」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:00:44.22 ID:nOXteA6Z0
――21:00 談話室にて――

ロイド「みんな集まったね? そぃじゃ早速始めましょぉ~」

スザク「よく、セシルさんにバレませんでしたね?」

ロイド「彼女この時間はバスタイムだからねぇ。結構長いんだこれが」

ジノ「へぇ~、ちょっと見に行きたいなぁ」

アーニャ「ジノ、ス  」

ロイド「死にたいなら止めませんよぉヴァインベルグ卿。んじゃ改めてぇ」

ロイド「本日の議題はセシルくんの料理をどうすれば改善・阻止できるかでぇっす! 意見のある方はぁ?」

スザク「……」

ジノ「……」

アーニャ「……」

ロイド「あらら。誰も何もなしぃ? 困ったねぇ……」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:04:43.26 ID:nOXteA6Z0
スザク「そうは言いますが……ロイドさんはどうなんです?」

ロイド「ボクぅ? そうだねぇ、やっぱり作らせないのが一番じゃない?」

ジノ「賛成。あんな地獄はこりごり」

アーニャ「私も」

ロイド「おめでとぉ~、あっという間に過半数だねぇ! じゃあ作らせないようにするで決定って事でぇ」

スザク「待って下さい! 自分は反対です」

ロイド「キミさぁ、あんだけ変なもの食べといてまーだ懲りないわけぇ?」

アーニャ「やっぱりスザクはマゾ」

スザク「でも! セシルさん、あんな楽しそうに用意してくれるのに……」

ジノ「その楽しい顔の裏で涙流すのは周りなんだけど?」

スザク「う……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:08:29.24 ID:nOXteA6Z0
スザク「しかし、セシルさんあんなに頑張っているのに……」

ロイド「頑張った結果、今日まで何人泣いたんだい?」

アーニャ「少なくとも、今日だけで二人」

ジノ「さすがの俺ももう嫌だね。喜々として食べる奴の気が知れない」

スザク「でも……あんな嬉しそうに用意してくれるセシルさんを泣かせるような真似……」

ロイド「そのためなら自分は泣いてもいいわけ? 紳士にも程があるねぇ」

ジノ「スザク、大事のためには小事を切り捨てる覚悟もいるぞ?」

スザク「わかってる……けど!」

ロイド「じゃあ訊くけどさぁ、彼女の料理が総督の口に入っちゃったらどうするのぉ?」

スザク「!!」

ロイド「彼女の料理、見た目で既に凄いのもあるよねぇ? でも……」

アーニャ「総督は盲目。見た目で危険がわからない」

スザク「し、しかし……」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:12:05.71 ID:nOXteA6Z0
スザク「でもロイドさん! 作らせないなんて考え、問題の先送りでしかない!」

ロイド「確かに彼女なら頼まれなくても作るだろぉねぇ」

スザク「でしょ!?」

ジノ「作ってもそれが口に入らなきゃいい話だ。簡単だろ?」

アーニャ「先におなか満たしておく。これで解決」

スザク「けどそれじゃ、せっかく作った食べ物を粗末に……」

ロイド「セシルくんが腕を振るう方が、よっぽど食べ物への冒涜だと思うけどねぇ?」

スザク「それでもっ! きっとセシルさんだって変われるはずです!」

ジノ「あー確かに変わったよなぁ、昼間のキャラの変わりっぷりには驚いたわ」

アーニャ「やけに庇うけどスザク、ああいうのが好み?」

スザク「好みとかそういう問題じゃないよ……なんて言ったらいいかなぁ……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:14:58.96 ID:nOXteA6Z0
ロイド「そんなに彼女に料理続けさせたいんだったらぁ、キミが協力するしかないんじゃない?」

スザク「え?」

ロイド「ほら彼女、スザクくんの事気に入ってるしさぁ♪ キミのアドバイスくらいなら聞くかもよぉ?」

ジノ「へぇ~、スザクとセシルさんってそういう関係?」

アーニャ「……不潔」

スザク「違うって。……でも、そうですね」

スザク「わかりました……変えてみせます、自分が! セシルさんの料理を!」

ジノ「お~っ、さっすがぁ! 頑張れよぉ!」

ロイド「おめでとぉ~っ、じゃあ調理場という戦場で新たな伝説築いちゃって下さ~い!」

スザク「じゃあみんな、セシルさんにどうアドバイスすればいいかのアドバイスを下さい!」

一同「「「  」」」

ロイド「あはー、ここまで無策とは思わなかったねぇ……」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:20:24.94 ID:nOXteA6Z0
ロイド「あ、そぉ~だ。昼間のクッキーあったよね?」

スザク「あ、はい。あれは美味しかったですね」

ロイド「そうそう、同じ人が作ったとは思えなかったよね?」

スザク「でもセシルさん、あれは思ったように出来なかったって……」

ジノ「つまり失敗ってことかぁ? ……あ、な~る!」

ロイド「そーゆーことぉ! つまりぃ」

スザク「!? まさか!!」

アーニャ「セシルにとっての失敗になるよう、仕向ける」

ジノ「それを繰り返す事でマトモな料理を覚えさせるってわけか! ははっ、さっすがロイド伯爵だぁ♪」

ロイド「ご明察~♪ どぉ、これなら出来そうでしょお?」

アーニャ「トライ&エラー。物事を覚える基本」

ロイド「セシルくん料理については基本がエラーだからさ、修正するならこれが一番じゃなぁい?」

 

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:30:17.16 ID:nOXteA6Z0
スザク「……ロイドさん、自分は反対です!」

ロイド「……はい?」

ジノ「スザクぅ、お前何言ってるかわかってる?」

スザク「はじめから失敗を狙っていくなんて、そんな間違った方法で覚える料理に価値なんてない!」

ロイド「ま~たキミの得意な『過程が大事』論? でもさぁ」

ジノ「スザク。悪いがセシル女史の料理は既に間違ってるんだぞ?」

スザク「けど間違いを正すために間違いを犯すなんて事、あってはならない!」

ロイド「水掛け論だねぇ~……じゃあキミはどうしたいわけ?」

スザク「僕はセシルさんも納得する方法で変えてみせます……セシルさんのセンスを!」

アーニャ「無理だと思う」

スザク「無理でもやるんだ! どうしてもというなら……そう」

スザク「僕はブリタニアの、世界の味覚を中から変える! このエリア11から!」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:36:12.49 ID:nOXteA6Z0
プシューッ

セシル「ふぅ、いいお湯だった……って、皆さんお揃いでどうしたの?」

アーニャ「……もう、一時間も経ってた」

ロイド「あはー、絶妙なタイミングだったみたいだねぇ」

ジノ「おぉっ、湯上がり美人! 眼福でっす」

スザク「なんでもないですよ。ところで、セシルさん」

セシル「? 何かしら?」

スザク「明日料理するとき、僕もつき合わせて頂きたいんですけどいいですか?」

セシル「あら嬉しい。でも、何で?」

スザク「実は考えがあって。いろんな人に料理を食べて貰って意見を聞けば、セシルさんの腕もまた上がるんじゃないかと思って」

セシル「そこまで考えてくれたの? お姉さん本当に嬉しいわぁ♪」

スザク「それで、まずは―――」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:40:39.53 ID:nOXteA6Z0
―――翌朝・特別虜囚室―――

カレン(ナナリーの計らいで独房から出られて、こんな待遇になったけど……捕虜ってことは変わらない)

カレン(やっぱこんなヒラヒラしたドレス落ち着かないわね……早く、黒の騎士団に……みんなのところへ戻りたい……)

カレン(……ルルーシュ……信じてるからね……)

プシューッ

スザク「おはようカレン。何か話す気にはなったかい?」

カレン「……お生憎様。あんたに喋る事なんて何もないわ」

セシル「ふふっ、話に聞いた通り気が強いのね」

カレン「あんた……確か、スザクの取り巻きの」

セシル「面と向かって話すのは初めてかしら。枢木卿専属開発チーム・キャメロット所属のセシル・クルーミーです。よろしくね」

カレン「人のよさそうな女連れてくれば、尋問しやすくなると思ったわけ? それとも何か企んでるのかしら」

スザク「違うよ。今日は朝食を持ってきただけだ」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:45:33.47 ID:nOXteA6Z0
カレン「わざわざナイトオブセブン様直々に持ってくるって事は、自白剤でも入ってるのかしら?」

スザク「見くびらないでくれ。そんな食べ物に対する冒涜のような真似はしないよ」

カレン「ふんっ」

セシル「大丈夫よ、心配しないで。作ったのは私、彼は横からアドバイスくれただけだから」

カレン「それはご丁寧にどうも、とでも言えばいいわけ?」

スザク「僕に当たるのは構わない、だがセシルさんを悪く言うのはやめてもらおう」

カレン「はいはい、わかったわよ……で、何作ったっての?」

セシル「うふふっ、彼と総督から聞いたあなたの好物よ♪」

カパッ……

セシル「じゃーん♪ おろしハンバーグです、冷めないうちにどうぞ♪」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:52:57.09 ID:nOXteA6Z0
カレン「ハンバーグ?……確かに、好物だけど」

スザク「学園祭のときとか、美味しそうに食べてたよね。憶えてるよ」

セシル「あなたは日本の誇りを誰より大切にしているって聞いたから、日本生まれのハンバーグにしてみたの」

カレン「ふ、ふんっ……こんなもの出したからって、丸め込めると思わない事ね……」

セシル「顔が赤いわよ? ふふっ、照れてるのかしら」

カレン「うっさい!」

スザク「ほら、食べなきゃ体ももたない。早く食べるといい」

カレン「……言われなくとも食べるわよ。それじゃ……」カチャッ

カレン(……見た目は普通……だけど、おろしハンバーグってこんな香りだっけ?)

カレン「……いただきます」パクッ

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 14:59:16.13 ID:nOXteA6Z0
カレン「……(むぐむぐ)」

セシル「どうかしら?」ワクワク

カレン「」

スザク「カレン、素直な意見を言ってほしい。今は遠慮は要らない」

カシャン!

カレン「……ッ!!」ポロポロ

セシル「っ! カレンさん、どうしたの!?」

スザク「急に泣きだすなんて……」

カレン「~~~っ、~~~~~ッッッ!!」ポロポロ

セシル「言葉も出ないなんて、そんなに……」

スザク「それほどに美味しかったのか……よかったよ、カレン!」

カレン(んなわけあるかぁ~~~っ! 何なのよこれぇぇぇっ!)

 

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:08:58.36 ID:nOXteA6Z0
カレン「……(ゴクンッ!)はぁっ、はぁっはぁっ……」

セシル「一口にそこまで時間かけて味わってもらえるなんて嬉しいわ♪」

スザク「さぁカレン、感想を聞かせてくれ」

カレン「……けるな……」

セシル「え?」

カレン「ふざけるなスザクッッッ!! 朝食使って拷問なんて、そこまで汚い真似するのかぁっ!!」

スザク「カレン、何を言って!?」

カレン「こんな味覚壊しそうな劇物出して、そうまでしてあたしに吐かせたいのかっ!!」

セシル「あの、それはどういう……」

カレン「決まってんでしょ。こんなもん人が食べるものじゃないわよ! こんな不味いもの!」

セシル「!!」

スザク(こ、これは! まずい!!)

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:14:27.50 ID:nOXteA6Z0
カレン「とことんまで堕ちたものねスザク……日本を裏切るどころか、日本の料理まで貶めるなんて!」

スザク「カレン、違う! そうじゃないんだ!」

カレン「何が違うってのよ……もう日本の心すら忘れたわけ!?」

スザク「そういうつもりじゃない、今は抑えてくれ!」

カレン「おさまらないわよ、こんな……どこまでも泥塗るような真似してっ!!」

セシル「……おい……」ユラリ

スザク「!! セシルさん!?」

セシル「さっきから聞いてりゃよぉ、なんだ小娘? あたしの作ったもんにケチつけるってのか、あ゛?」

カレン「!?」ビクッ!

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:23:41.08 ID:nOXteA6Z0
スザク「せ、セシルさん、あの……」

カレン「な、何よ……素直な感想っていったの、そっちじゃない」

セシル「どうでもいんだよンな事ァ……テメさっきなんつった?」

セシル「不味いだ? 人の食うもんじゃないだ? そりゃ料理人に喧嘩売ってんのかゴラァ!」

カレン「言いたくもなるわよ、こんな……だいたい、味見とかしたわけ!?」

セシル「てめぇのために作ってやったんだ、あたしが味見してどーするってんだ、あ゛?」

カレン(な、何よこいつ……まるで人の話聞いてない!)

スザク「セシルさん、彼女はナナリー総督お抱えの捕虜です! 扱いは丁重に……」

セシル「今更何言ってんだてめぇ……味付けにGOサイン出したのてめぇだろうがスザク、あ゛ぁ!?」

スザク「」

カレン「……スゥザァクゥゥゥゥッッッッ!!!!」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:29:47.95 ID:nOXteA6Z0
セシル「言ったよなてめぇ、『すごく独創的だー』とか『これは唯一無二の味だー』とかよ?」

セシル「忘れたとは言わさねぇぞ、あ゛ぁん?」

スザク「そ、それは確かに……その」

カレン「スザク……あんた、自分の壊れた味覚をあたしにまで押し付けようっての!?」

スザク「違う、誤解だよカレン! それに僕の味覚は正常だ!」

セシル「こいつの味覚どうだのは知ったこっちゃねんだよ……おい小娘」ギロリ

カレン「っ!!」ビクッ

セシル「さっきの聞かなかった事にしてほしけりゃ、ちゃんと謝れよ。あたしと料理に対してなぁ!!」

カレン(な、何なのこの人……理不尽すぎる!)

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:34:50.05 ID:nOXteA6Z0
セシル「おらちゃんとあたしの目ェ見て言ってみろよ。ほらぁ!」

スザク「セシルさん、どうか落ち着いて!……カレン、ここはどうか謝ってほしい!」

カレン「そ、そんな事……!!」

スザク「この場を収めるためだ、頼む!」

セシル「何ゴチャゴチャくっちゃべってんだガキ共!」

カレン「っ……お……」

セシル「”お”?」

カレン「美味しい……なんて、言わないんだからね……」

セシル「聞こえねぇなぁ……もういっぺん言ってみろ」

スザク「カレン! それじゃだめだ!」

カレン「た、例えどんな味でも……美味しいなんて、言ってあげないんだからっ!!」ウルッ

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:42:34.31 ID:nOXteA6Z0
セシル「何意味わからねぇ事いってんだ……剥いちまうぞ、あ゛?」

カレン「っ、や、やぁっ!」

スザク「セシルさんっ! 彼女は気が強くてその……す、素直じゃないんです!」

セシル「あ゛ん?」

スザク「だから、その……ホントは、美味しいって意味だと……だよね、カレン?」

カレン「っ!? あ、その……ハイ……」ビクビク

セシル「あーらそういう事だったのぉ? ごめんなさいねぇ、お姉さん勘違いしちゃったぁ☆」ケロッ

カレン「」

スザク(危なかった……ジノが教えてくれたツンデレタイプの特徴ってのが役に立ったよ)

スザク(助かったよジノ、君のおかげで丸く収まった! ありがとう、ナンパオブスリー!)

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:51:20.11 ID:nOXteA6Z0
カレン「あの……聞いても、いいですか」

セシル「? 何かしら」

カレン「これ、何入ってるんですか?」

スザク「聞かないほうが幸せな事もあるよ」

カレン「あんたは黙ってて……ちゃんと、教えて下さい。あたしの知ってるおろしハンバーグとその……違うから」

セシル「いいわよ? そのハンバーグにはね……」

スザク「セシルさん!」

カレン「スザクは黙れ! 聞こえないでしょうが」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 15:58:10.44 ID:nOXteA6Z0
セシル「おろしハンバーグのレシピ見たけど、フルーティさが足りないと思ってね」

セシル「ほら、ハンバーグの中にチーズ入ってたりするでしょ? かわりにスライスしたドリアンを入れてみたの」

カレン「ど……」

セシル「お肉も脂肪分高くなったら困るだろうと思って、ほら女の子だし」

セシル「牛豚合挽き肉に刻んだコンニャクを混ぜて、つなぎには摩り下ろしたオクラを使ってみました♪」

カレン「」

セシル「トッピングの大根おろしも、それだけじゃ味気ないと思ってワサビとゴーヤ、リンゴの摩り下ろしを混ぜてみたの。清涼感も増したと思うんだけど」

カレン(き、聞かなきゃよかった……)

スザク「ね? 独創的な組み合わせだったろ……」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:03:02.28 ID:nOXteA6Z0
セシル「でも喜んでもらえたようでよかったわ、素直じゃないのが難だけど」

セシル「あなた、もうちょっと素直になった方がいいわよ? 好きな男の子の前とかは特にね♪」

カレン「余計なお世話よ……」

スザク「カレン、その……なんというか、すまない」

カレン「捕虜でさえなければぶん殴ってやりたいわ」

セシル「だめよ、女の子がそんな事言っちゃ……あぁ、これも愛情表現かしら?」

カレン「絶対違います」

スザク「本当にすまない……次は、もう少しマシになるとは思うから……」

カレン「次ね……って、え? 次!?」

 

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:12:09.43 ID:nOXteA6Z0
カレン「ちょっと待ってよ、次ってどういう事!?」

セシル「これからあなたの朝食は私が作る事になったの。頑張って作るから、期待してね」

カレン「っ!?」ガタッ

スザク「大丈夫だカレン、心配要らない。僕も全力でサポートするつもりだ」

カレン「本気で言ってるの!?」

スザク「君を死なせるわけにもいかないからね。まして食べ物に関する事だ、妥協はしないよ」

セシル「私達はそろそろ行くけど、食器はあとで係の人が回収に来るから大丈夫よ」

セシル「ハンバーグ、味わって食べてね? 残しちゃいやよ」ニコリ

カレン「」

スザク「……そういうわけだ、カレン。それじゃ」

プシューッ

カレン(いや……いやぁぁぁ……っ! 助けて、助けてルルーシュ!)

カレン(あたし、このままいたら……料理に殺される……ッ!)ガクブル

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:20:55.97 ID:nOXteA6Z0
―――翌朝・談話室―――

ジノ「なぁスザクぅ。昨日カレンと話にいったんだけどさぁ」

スザク「ああ……うん」

ジノ「なんか元気なかったんだよなー。あんな感じのコじゃなかったと思うんだけど」

スザク「大丈夫だよ、きっとそのうち元気になるって……多分」

アーニャ「理由、想像つくけど……」

セシル「あ、みんなこれから学校? 丁度よかったわ」

スザク「? セシルさん、何ですか?」

セシル「ふふっ、実はね。お弁当作ったの! みんなの分♪」

ラウンズ一同「「「  」」」

セシル「冷めないような工夫もしてるから、お昼でも出来たて同然のはずよ。はい♪」

スザク「あ……ありがとう、ございます……」

セシル「それじゃ授業がんばってね、いってらっしゃ~い♪」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:30:48.22 ID:nOXteA6Z0
―――昼・アッシュフォード学園 生徒会室―――

リヴァル「さぁーてメシだメシ~。もうこの時間だけが楽しみだよなー」

ルルーシュ「ずいぶんと寂しい発言だな、リヴァル」

リヴァル「うるへー、しゃーないでしょーが」

シャーリー「会長卒業しちゃったからねー」

リヴァル「学園公認カップル様にはわっかんねーよなぁ、この気持ち……ああ、会長……」

ルルーシュ「……っ」

シャーリー「ルル、どしたの? 難しそうな顔して」

ルルーシュ「いや、なんでも……」

プシューッ

スザク「やっぱり、みんなここにいたんだ」

ジノ「ちわーっす」

アーニャ「おなか減った」

リヴァル「おーラウンズの皆様! これで生徒会全員集合だなー」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:40:40.38 ID:nOXteA6Z0
リヴァル「そぃじゃー全員揃ったところで、手ぇ合わせて下さいっ、それじゃあ!」

一同「「「いただきまーす」」」

スザク「……」

ルルーシュ「?……スザク、食べないのか?」モグモグ

スザク「あ、いや……」

ジノ「なぁスザク。これ、お前にやるよ」

アーニャ「私も」

スザク「え?……ってこれ、二人のお弁当じゃ!」

ジノ「うん、俺購買でパン買ってきたからその……パス」

アーニャ「同じく」

スザク「そんな……! 僕一人でこれ3人分食べろというのか!?」

ルルーシュ(妙だな……スザク、たかが弁当で何を怯えている?)

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:45:58.00 ID:nOXteA6Z0
スザク(そんな、こんな展開になるなんて考えてなかった!)

スザク(いくら僕でも、セシルさんのお弁当を3人前なんて無理だ!)

スザク(でも、残したりしたらセシルさんも悲しむ! 棄てるなんて食べ物を粗末にすることも出来ない!)

スザク(僕は、僕はどうしたら……)

リヴァル「な~にボーっとしてんのよスザク。開けちゃうよん?」

スザク「あっ、リヴァル!?」

カパッ

ルルーシュ「こ、これは!?」

シャーリー「何これ、お弁当が七色に光ってる!?」

ロロ「兄さん、僕こんな食べ物見た事無いよ!」

ルルーシュ「安心しろ、俺もだ」

スザク(セシルさん……一体何を作ったんですかあなたは!?)

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:51:30.58 ID:nOXteA6Z0
スザク「こ、これは……その」

ジノ「なぁスザク、これ見た目からヤバくね?」

アーニャ「怪しい……」

ルルーシュ「スザク、お前の食の好み変わったのか?」

リヴァル「なんかすげー形のまであんだけど……」

シャーリー「!? これ、今動かなかった!?」

ロロ「ナイトオブラウンズって、こんなの食べてるんだ……」

ジノ「まぁあれだ、頑張れ」

アーニャ「グッドラック」

スザク(ど、どうしよう……!)

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 16:57:35.69 ID:nOXteA6Z0
スザク(食べ物を粗末にするなんて事……ロイドさんやカレンにああいった手前、絶対に出来ない!)

スザク(でも食べたら危なさそうだ……でも残すとセシルさんのためにならない……)

ルルーシュ「何難しそうな顔してるんだよ、スザク。らしくないぞ?」

スザク「っ、ルルーシュ……」

ルルーシュ「その弁当のことで悩みがあるなら、言ってみろよ。俺達、友達だろ?」

スザク「……っ、だけど……」

リヴァル「まぁ、さ。話すだけ話してみてもいいんじゃない?」

シャーリー「そうそう。悩むなんて、スザク君らしくないよ?」

スザク「みんな……」

スザク「……わかったよ。それじゃあ、聞いてくれるかい?」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:04:59.11 ID:nOXteA6Z0
スザク「実は、このお弁当は僕の大切な人が作ってくれたんだけど」

リヴァル「何、大切な人って! カノジョ!?」

ルルーシュ(こいつ、ユフィのことも吹っ切ったというのか!?)

スザク「いや、そういうわけじゃないよ。でも大切な人だ」

ルルーシュ(……)

アーニャ「まどろっこしい」

スザク「いいだろ、事実だし。それで、その人の料理はその……すごく独創的で」

ルルーシュ「まぁ、見た目どおりってわけか」

スザク「その人はどうにも既存のレシピをアレンジしたがってね。どうにか軌道修正してあげたいんだけど」

ルルーシュ「出来ないのか?」

ジノ「それが難しい人だから困ってんですよ、ランペルージ卿」

アーニャ「うん……すごく、恐ろしい」

ルルーシュ(一体どんな奴なんだそれは……)

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:11:07.68 ID:nOXteA6Z0
スザク「それで……ちょっと頼みづらいんだけど」

ルルーシュ「いいから言ってみろ。言わなきゃわからんぞ」

シャーリー「うんうん」

スザク「……みんな。このお弁当を試食して、感想を聞かせてほしい」

一同「「「!!??」」ガタタッ

アーニャ「スザク……正気!?」

スザク「もちろんだよアーニャ。彼女の料理を正すには、より多くの意見が必要だ」

スザク「それが無理なら、逆にみんなが彼女の味に適合すれば!!」

ルルーシュ「スザク……お前!?」

ジノ「目を覚ませスザク!」

スザク「僕は正気だ! 言っただろう、中から変えてみせると!」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:13:16.67 ID:nOXteA6Z0
あ、今更だけど時間軸的にはTURN12「ラブ・アタック!」でキューピットの日終了~オレンジ登場前ってところでオネシャス

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:19:31.53 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「本気で言ってるのか……これはどう見ても食べられるものじゃないぞ!」

スザク「だけど頑張って作ってくれたものだ、粗末には出来ない!」

シャーリー「ね、ねぇスザクくん……これ作った人って、他にどんなの作ったの?」

スザク「そうだなぁ……ブルーベリージャムを具にしたおにぎりとか」

スザク「あとはワサビペーストと和三盆をはさんだサンドイッチに」

スザク「あとは粒マスタードと塩焼きのいちごが入った大福とか……」

ルルーシュ「……もういい、聞いてるだけで食欲が失せる」

ロロ「あの、素直に不味いって言うのはダメなんですか?」

ジノ「さっきも言ったけど無理なんだよね~……試しに俺言ってみたんだけど」

リヴァル「そしたら?」

ジノ「普段優しい人なんだけど、なんかこう男っぽくなって……すっげー怖かった」

アーニャ「怖い……セシルも、セシルの料理も……」

リヴァル「どんだけだよ……」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:26:52.27 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「つまり……その人は自分の求める感想以外は聞き入れないと」

スザク「うん」

ルルーシュ「素直にレシピ通りに作らせようとすれば」

スザク「どうにもアレンジしたがるんだ」

ルルーシュ「要約すると、自分のアイデアに自信があり、それを頑として譲らない。否定意見は切り捨てる」

スザク「さすがだねルルーシュ。君の言う通りなんだ」

ルルーシュ「どうにもならんじゃないか!」

スザク「それをなんとかしたくて困ってるんだ!」

ルルーシュ「よし、その人に料理をさせるな。これで万事解決だ」

スザク「ダメだ、それでは目の前の問題を看過しているに過ぎない」

ジノ「あーダメだなこりゃ。堂々巡りだわ」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:33:35.40 ID:nOXteA6Z0
スザク「でもね、一度だけマトモなものを作れた事があるんだ」

ルルーシュ「ほう?」

スザク「それはその人にとってはアレンジを忘れた失敗作だったけど、僕らにとっては至福の一品だった」

ルルーシュ「という事は、アレンジさえしなければマトモなものは作れるんだな?」

ジノ「で、俺達はその失敗作を狙えるように誘導しようって言ったんだけど」

アーニャ「スザクがイヤだって」

スザク「当然だ、間違いを狙うなんて方法で作っても価値はない!」

ルルーシュ(全く、面倒な奴め!!)

シャーリー「あのー、料理は結果が全てだと思いまーす」

スザク「シャーリー。それ以上は不敬罪にあたるよ」

シャーリー「っ!?」ビクッ

スザク「これで全部だ。みんな、彼女に正しい料理をさせるために、腹を括ってくれ!」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 17:41:29.98 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ(しかしこんなものを試食なんて、明らかに自殺行為だ!)

ルルーシュ(ナナリーとカレンを取り戻す前に、こんなところで果てるなど……)

ルルーシュ(いや待てよ。政庁内でこの殺人料理が蔓延れば、ブリタニアも勝手に自滅するんじゃないのか?)

ルルーシュ(ふはははは、なるほどスザクめ。中から変えるというお前の持論はこういう事か!)

ルルーシュ(ならばむしろこれを後押しする方法で―――)

スザク「頼むみんな、総督の口にこれが入る前にはなんとかしたいんだ!」

ルルーシュ「!!」

ルルーシュ(っ……そうだ、失念していた! 蔓延った果てにいずれはナナリーの口にも入ってしまう!)

ルルーシュ(ナナリーだけではない、カレンにも食事という名の拷問となって襲ってくるやもしれん……カレンほどの精神力の持ち主でも、これでは!)

ルルーシュ(かくなる上は……止むをえんか!)

ルルーシュ「……わかったよスザク。協力する」

スザク「ありがとうルルーシュ、さすがだよ!」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 18:58:22.17 ID:nOXteA6Z0
ロロ「兄さん、止めておいた方がいいよ!?」

シャーリー「そうだよルル、危ないよ!?」

ルルーシュ「大丈夫だよ、さすがに毒物で調理したわけじゃないだろうし……」

リヴァル「ルルーシュ……お前って男はぁ!」グスッ

ジノ「ランペルージ卿……骨は拾うからなぁ!」グスッ

アーニャ「最後かもしれないから……記録」カシャッ

ルルーシュ「勝手に殺すなよ……そのかわり、スザク」

スザク「うん?」

ルルーシュ「俺が食べたら、お前もちゃんと食べろよ?」

スザク「」

ジノ「まぁ、当然だよな」

アーニャ「必然」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 19:07:27.31 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ(わかっているさ……分の悪い賭けという事は)

ルルーシュ(だが俺には立ち止まることも、引き返すことも許されない)

ルルーシュ(道は我が目の前にしかない……ずっとそうだったじゃないか)

ルルーシュ(目指すべき道は、ナナリーとカレンへ繋がる道はこの先にこそある!)

ルルーシュ(そしてキングが動かなければ兵はついて来ない……ならば、俺はっ!)

ルルーシュ「……」ゴクッ

ロロ「兄さん……!」

シャーリー「ルル……!」

ルルーシュ「みんな! 刮目せよ、俺の生き様をっ!……往くぞっ!」

ぱくっ!!

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 19:39:30.09 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「……」モグモグ

スザク「る、ルルーシュ……」

ルルーシュ「……」ガタッ

ロロ「兄さん! 大丈夫なの!?」

ルルーシュ「問題ない……すまない、少しトイレに……」タタタッ

リヴァル「お、おいルルーシュ!……俺、ちょっと見に行って来るわ」タタタッ

シャーリー「あ、ちょっとリヴァル!」

ジノ「ランペルージ卿、大丈夫かな……」

アーニャ「とりあえず。アーメン」

スザク「ぼ、僕は……」ゴクッ

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 19:46:34.00 ID:nOXteA6Z0
スザク(あのルルーシュが食べてみせたんだ……僕が退く訳には、しかし)

シャーリー「……」チラッ

ロロ「……」チラッ

シャーリー「ルルの……」

ロロ「兄さんの……」

シャーリー「食べかけって事は……」

ロロ「これを食べれば……」

シャーリー・ロロ「「間接キス!?」」バッ!

シャーリー・ロロ「「!!」」

シャーリー「えと……」

ロロ「……あの」

シャーリー「……ロロ、半分こしよっか!」

ロロ「うんっ!」コクッ

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 19:58:35.76 ID:nOXteA6Z0
―――トイレ―――

ルルーシュ「はぁっ、はぁっ……うぅっ……」

ドンドンッ

リヴァル『おいルルーシュ! ホントに大丈夫なのか!?』

ルルーシュ「リヴァルか……ああ、だ、大丈夫だよ」

リヴァル『いや大丈夫じゃねーだろ!』

ルルーシュ「すまないな、心配かけて……大丈夫さ。たぶん、すぐ楽になる……」

リヴァル『おいルルーシュ!! しっかりしろぉっ!!』ドンドンッ

ルルーシュ(すまないリヴァル……心配をかける、だが!)

ルルーシュ(俺だってこんなところで死ぬつもりはない……軽く戻せば、きっと大丈夫……)

ルルーシュ(フ、未知の物を一口食べてこうなるなんて、我ながら細い神経だ……相変わらず)

ルルーシュ「……うぅっ!!」

ルルーシュ「ウボァーーーーーーーーッッッ!!」(※自主規制)

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:07:06.26 ID:nOXteA6Z0
ザバァ~~~……ッ

リヴァル「なんかすっげー叫びが聞こえたけど……大丈夫かぁ!?」

ガチャッ

ルルーシュ「ハァッ……ハァッ……ふぅ、リヴァル……待たせたな」フラフラ

リヴァル「おぉーっ! ルルーシュ! 生きてたかぁっ!!」

ルルーシュ「フ、俺を誰だと思ってるんだ? そう簡単にくたばりはしないさ」

リヴァル「いやー、ホンットよかったぜ! 出てこなかったらどーしようかと!」

ルルーシュ「トイレで朽ちる趣味はないさ……だがすまない、肩貸してくれるか?」

リヴァル「ああ、まだフラフラしてるしな……無理すんなよ?」

ルルーシュ「わかってるさ……ありがとな、リヴァル」

リヴァル「いいってことよ。んじゃ、生徒会室戻ろうぜ?」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:15:00.28 ID:nOXteA6Z0
―――再び、生徒会室―――

プシューッ

リヴァル「着いたぜ~、ルルーシュ」

ルルーシュ「ああ、わずかな道のりが随分長く感じたよ……」

リヴァル「って……あれ!?」

シャーリー「」

アーニャ「シャーリー、しっかり!」

ロロ「」

ジノ「おい少年、大丈夫か! 意識はあるか!?」

ルルーシュ「シャーリー、あとロロ!」

リヴァル「おいおいおい! 何なんだよこれぇ!」

ルルーシュ「スザク、俺が出てる間に何があった!?」

スザク「何てことだ……止めておくべきだった……」

ルルーシュ「何!?」

スザク「彼らは知らなかったみたいだ……人が手をつけたものを食べちゃいけないって、初歩的なマナーを!」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:24:48.51 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「ちょっと待て……どういう事だ!?」

スザク「シャーリーとロロはね……君が食べ残したものを、仲良く半分こして食べたんだ」

ルルーシュ「なんだと!? お前はそれを黙って見ていたのか!!」

スザク「止められなかった……! だがルルーシュ、君にも原因はある!」

ルルーシュ「何っ!?」

スザク「君が出て行く前に『問題ない』なんて言わなければ、きっとこうはならなかった!」

スザク「それに、ロロにぐらいあんな簡単なマナー教えてあげてもいいだろう……!」

ルルーシュ「そんな……俺が、悪いというのか……!?」

スザク「君の行動の、これが結果だ! 受け入れろ!」

ジノ「いやスザクだろ」

アーニャ「スザクが発端」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:34:23.91 ID:nOXteA6Z0
シャーリー「う、うぅん……」

アーニャ「! シャーリー、大丈夫?」

シャーリー「アーニャちゃん……なんだ、ルルじゃないか……」

アーニャ「」

ロロ「うっ、うぅ……兄、さん……」

ジノ「目が覚めたか少年! 指、見えるか? 何本だ?」

ロロ「えぇと……たくさん……」

ルルーシュ「二人とも問題ないようだな……よかった……」ハァ

スザク「ダメじゃないか二人とも。人の食べたものに手をつけちゃダメだって知らないのか?」

ジノ「ちょい待ちスザク。お前も責任取らなきゃいけないぞ?」

スザク「……え?」

アーニャ「当然の報い……それに、約束」

ルルーシュ「そうだなスザク。約束したよな? 俺が食べたらお前も食べると」

ルルーシュ「さぁ……果たしてもらうぞ、その約束!!」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:49:28.36 ID:nOXteA6Z0
スザク(そ、そんな……僕が、これを……!?)

ルルーシュ「どうした。何を恐れる事がある? ナイトオブセブン、枢木スザク」

ルルーシュ「俺は食べた。例え戻すことになってもだ。シャーリー、ロロもそれは同じ!」

スザク「う、ううっ……」

ジノ「スザク、男だろ? 日本男児は約束は守るって聞いたぞ」

アーニャ「その会話、ちゃんと記録してる。証拠あり」

ルルーシュ「さぁスザク、お前の男をみせてみろ!!」

スザク「ぼ、僕は……僕は……っ!!」ゴクッ

スザク(やるしかない……僕はもう、逃げられない!)

スザク(ナナリーのためにも、セシルさんのためにも! 犠牲になったシャーリー達のためにも!)

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 20:58:26.94 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「スザク! 腹を括れ!」

スザク「う……うおおおおおおおおおおっ!!」

キュイィィィン!

スザク「ッ! お、俺は……生きるッッッ!」

タタタタタッ! ガラッ

ジノ「お、おいスザク!?」

スザク「はああああああああああっ!!」

ブォン!! ……キラーン

ルルーシュ(今のは、まさか……『生きろ』のギアスが!?)

スザク「っ、はっ! ぼ、僕は……」

ジノ「スザク、お前……」

アーニャ「約束、破った」

ルルーシュ「……これではっきりしたな」ポムッ

スザク「ルルーシュ、僕は……」

ルルーシュ「スザク。それは食べ物じゃない」

140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 21:07:25.91 ID:nOXteA6Z0
スザク「そんなルルーシュ、じゃあこれは何だというんだ! セシルさんが何を作ったと!?」

ルルーシュ「セシルさんていうのか。その人のセンスは凄まじいな」

ルルーシュ「簡潔に言おう。それは食べ物では決してない、むしろ兵器だ」

ジノ「一昨日よか破壊力上がってるなんてすっげーな……俺にゃもう無理だわ」

アーニャ「やっぱり、料理させない方がいい」

ルルーシュ「こんな意見も出るくらいだ。そのセシルさんには申し訳ないが、やめさせるべきだ」

スザク「しかし!」

ルルーシュ「お前は学園でバイオハザードでも起こす気なのか?」

スザク「やめてくれ、ゲームと現実をごっちゃにする気はない!」

ジノ「いや、普通にある言葉だから」

アーニャ「生物的災害。なんで知らないの」

ルルーシュ「学園でそんな事起きたら、最悪閉鎖になってしまう。お前の望むところではないだろ?」

スザク「それは……その」

ルルーシュ「お前の気持ちもわかるが、諦めろ。それが世のためだ」

144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 21:25:27.86 ID:nOXteA6Z0
スザク「でも! 折角楽しそうに作ってるのに」

ルルーシュ「なぁスザク。お前がブリタニアを中から変えようとしてるのは知ってる」

ルルーシュ「それにさっき、みんなをこの味に適合させるって……味覚の点で中から変えるみたいな事も言ったな?」

スザク「うん……そうだよ」

ルルーシュ「悪いが断言できる。これでは中から変える以前に、中から滅ぶぞ」

スザク「っ!!」

リヴァル「ウチの誇る料理の達人が吐くくらいだし、やばいってこれ」

シャーリー「一瞬、お父さんが見えちゃった……」

ロロ(学園中停止させるよりキツかったかも……)

スザク「でも僕は諦め切れない! なんとかする方法はあるはずだ!」

ジノ「お前ホンット頑固だよなぁ。認めることも必要だって」

アーニャ「石頭」

スザク「で、でも……」

ルルーシュ(フン……仕方ないな)

147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 21:41:33.52 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「なら……ちょっと待ってろ」カキカキ

スザク「ルルーシュ……?」

ルルーシュ「……よし。このレシピを持っていけ」

スザク「これは……」

ジノ「何々?……えらく基礎的なレシピばっかりだなー」

ルルーシュ「それらは少数の食材だけで完成する、シンプルな料理のレシピだ。だがシンプル故に、調理者の腕が如実に現れる」

ルルーシュ「試しにそのレシピ通りに実践させて見るといい。俺からの挑戦状みたいなもんだ」

スザク「ルルーシュ、君は……」

ルルーシュ「シンプルすぎるものほど、完璧に作るには修練が必要だ。それを徹底的に作らせてみろ」

ルルーシュ「完璧に作りこなせるようになれば、もう妙なアレンジなどいらないくらい腕が上がってるはずだ」

ルルーシュ「挑戦心も大事だが、料理は基礎が一番大事だ。伝えておいてくれ」

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 21:54:39.31 ID:nOXteA6Z0
ルルーシュ「あとな、調理中の味見は欠かさない事。自分で食べて大丈夫なら、ああはならないはずだ」

ルルーシュ「それと、不安なうちはチームの中で食べるだけに留めておけ。滅ぼすんじゃなく、変えるんだろ?」

スザク「そうか……そうだね」

アーニャ「……これなら、私にも出来そう」

ルルーシュ「そう思うならやってみるといいさ。マスターまでは厳しいぞ?」

シャーリー「わっ、私もっ!」

ルルーシュ「シャーリーの不器用さは知ってる。……止めといた方がいい」

シャーリー「」

スザク「……礼は言わないよ、ルルーシュ」

ルルーシュ「わかってるさ、親友」

リヴァル「あのー、ところで!」

一同「「「??」」」

リヴァル「残ったこれ、どーすんの?」

ルルーシュ「……スザク。任せた」

スザク「」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 22:04:20.45 ID:nOXteA6Z0
――翌朝・ブリタニア政庁 特別虜囚室――

カレン「……」シュン

セシル「ダメよ、朝ご飯食べるのにそんな暗い顔してちゃ」

カレン(暗くもなるってのよ、もう……)

セシル「はい、本日の朝食です」

カパッ……

カレン「……オムレツ?」

セシル「そう。いわゆるプレーンオムレツだから、具は入ってないんだけど……」

カレン「……」

セシル「警戒しなくても大丈夫よ。レシピ通りに作ったつもりだから」

カレン(信用できるかってのよ……どうせまた変な仕掛けでも――)

セシル「どうしたの? 冷めちゃうわよ」

カレン「う、うぅ……」

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 22:12:48.87 ID:nOXteA6Z0
カレン(食べるも地獄、食べないも地獄……あたしは……)

セシル「カレンさん?」キョトン

カレン(こっ! 紅月カレンは屈しないっ! いってやるぅっ!)

カレン「い、いただきますっ……」パクッ

カレン「……(むぐむぐ……)」

セシル「どうかしら?」

カレン「……あれ? 美味しい……」

セシル「そう! よかったわー♪」

カレン(っていうかこの味、前に食べた事あるような気がする……)

157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 22:17:54.74 ID:nOXteA6Z0
セシル「スザク君のお友達がくれたレシピ通りに作っただけだから、何のアレンジもできなかったんだけどね」

セシル「すごく料理の上手な子みたいでね、いいお婿さんになるわよこの子♪」

カレン(――ルルーシュだ! 男で料理上手なんて、ルルーシュしかいない!)

セシル「ごめんなさいね、つまらないものしか出せなくて……これからは、ちゃんと厨房の人に作ってもらうから」

カレン「あの、さ」

セシル「ん?……何かしら」

カレン「あたし……その、こういうシンプルなの……嫌いじゃないから」

セシル「……そう。ありがとね♪」

カレン「……ふんっ」

セシル「うふふっ♪ じゃ、また明日ね」

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 22:57:51.67 ID:nOXteA6Z0
――政庁内 談話室――

ジノ「いやーしかし昨日の弁当凄まじかったなー」

スザク「演習用のターゲットにして、ハドロンブラスターで処分したよ。証拠も残ってないと思う」

アーニャ「あんなの、もう勘弁」

ロイド「あは~、ボクは何も聞かなかった事にしておきまぁ~す」

ジノ「正解っ。さっすがロイド伯爵、思考が柔軟なことで」

アーニャ「スザクはロイドの爪垢煎じて飲むといい」

スザク「アーニャ、どこでそんな言葉?」

アーニャ「内緒」

プシューッ

セシル「皆さん、おはようございます。朝ご飯にしましょう」

ラウンズ3人「「「!!!」」」

ロイド「きょ、恐怖の時間の始まりですかぁ~っ!?」

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:03:43.84 ID:nOXteA6Z0
セシル「もう、あなた達まで警戒しないで下さい……はい、これ」

スザク「これ、オムレツですか?」

ジノ「もしかして、これって」

アーニャ「昨日もらったレシピと、同じ」

セシル「ホントにレシピのままに作っただけだから、味気ないかもしれないけど。捕虜の彼女にも、同じものを出したわ」

ジノ「へぇ~。で、カレンの反応は如何に?」

セシル「ふふっ、上々です♪」

アーニャ「なら、安心……かも」

ロイド「ホントに大丈夫なわけぇ?」ジーッ

スザク「レシピ通りなら大丈夫ですよ……多分。じゃあ、頂きましょう」

一同「「「「いただきまーす」」」」

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:09:48.68 ID:nOXteA6Z0
カチャッ モグモグ……

スザク「ああ、美味しい!」

ジノ「うまっ!」

アーニャ「奇跡……じゃ、ないよね?」

ロイド「こりゃーびっくりだねぇ……セシルくん、何で今までこう出来なかったわけ?」

セシル「もう、ロイドさんったら酷いんだから!」

スザク「いやでも本当に美味しいですよ! やりましたねセシルさん」

セシル「あなたのお友達のくれた、魔法のレシピのおかげかしらね♪」

スザク「……そうですね、そうかもしれませんね」

ジノ「いやー別に魔法でも何でもないんだけど」

アーニャ「ジノ。空気読む」

169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:16:52.77 ID:nOXteA6Z0
ロイド「いやそれでもびっくりだよぉ。朝からこう明るい食卓だと、いい気分で過ごせそうだねぇ今日は♪」

ジノ「そーですねぇ……食は全ての基本ですから。な、スザク?」

ロイド「スザクくんとしては刺激がなくなって寂しいかなぁ? あは、ざぁんねんでしたぁ~♪」

スザク「もう、ロイドさん……でもまぁ、おっしゃる通りですね」

スザク(ルルーシュ……君のレシピが僕らに明るい食卓をくれた。カレンもきっと感謝してる)

スザク(だけど礼は言わないよ。僕らは道を違えたんだから……そうだろ?)

スザク(塩を送ったなんて思うな、覚悟しろルルーシュ……いや、ゼロ!!)

セシル「ところで……」

一同「「「「???」」」」

セシル「一昨日冷凍しておいた大福の残りがあるから、デザートにいかがです?」

一同「「「「   」」」」

171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:26:01.84 ID:nOXteA6Z0
セシル「まだ解凍してないけど、凍っててもそれはそれで美味しいかもしれませんよ?」

スザク「い、いやぁ、その……」

セシル「学園に持っていけば、お昼時には丁度いい具合に解凍されてるかもね」

ジノ「お、俺はその……結構です」

アーニャ「スザクの好物なんでしょ? 全部、あげる」

スザク「ちょっと!?」

ロイド「そういえばそんな負の遺産残ってたんだっけねぇ、あはぁ……」

セシル「それと、はいっ。今日の3人のお弁当♪」

ラウンズ3人「「「!!!」」」

セシル「朝と同じで申し訳ないんだけど、オムレツとサラダのセットよ」

ラウンズ3人(((ホッ……)))

ロイド「……でもなんかヤ~な予感するの、気のせい?」

172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:30:59.70 ID:nOXteA6Z0
セシル「おまけってわけじゃないけど、私のオリジナルのソースもかけてみたの。味見したから大丈夫よ?」

スザク「……セシルさん。そのソース、味見させてもらっていいですか?」

セシル「いいわよ? はい、どうぞ」

トンッ

ロイド「ちょっと!? 何で七色に光ってるの!?」

ジノ「いわゆるオーロラソース……とは違うよなぁ、絶対……」

アーニャ「……」タジッ

スザク(で、でも味見したから大丈夫だって……そう、大丈夫だ! セシルさんの舌も狂ってはないはず!)

スザク「えと、じゃあ失礼して……」ペロッ

セシル「……どうかしら?」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/14(水) 23:44:47.74 ID:nOXteA6Z0
スザク「」

ロイド「……スザクくん、どうなわけ?」

スザク「……ロイドさん……」フルフル

ロイド「あはー、やっぱり味覚狂ってましたかぁ!? お、お~め~で~とぉ~っ……」

ジノ「……スザク。実は俺、自分で弁当用意してたんだった」

アーニャ「同じく。だからスザク、いっぱい食べて」

スザク「」

ジノ「ってわけで俺達先に学園行くから。じゃな!」タタタタッ

アーニャ「スザク、グッドラック」タタタタッ

ロイド「ち、ちゃんとしたもの作れるようになっても……」

スザク「変わる事のないものも、あるんですね……」

セシル「もう……じゃあ、そのお弁当はスザクくんとロイドさんでちゃーんと分けて食べてくださいね?」

セシル「それでは! セシル・クルーミー、これからも科学と料理の発展に向けて日々邁進致しまーす♪」

スザク・ロイド「「いやあああああああああっっっ!!!!」」

―おしまい。―