2: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:09:48.26 ID:7KJLb7DR0
______  

突然ですがほむらちゃんは魔法少女です。 

それも謎の美少女天才転校生というオマケつきの。 

ただもう転校生と呼ぶには少し長い時間がすぎているかもしれません。 

さて、そんなほむらちゃんと私が出会ったのは一ヶ月ほど前のことでした。 


引用元: まどか「ほむらちゃんと凄く仲良しになりたい」 




3: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:15:39.84 ID:7KJLb7DR0
~☆ 

その日転校してきたほむらちゃんは教室中をどよめかせました。 

ほむらちゃんはとても可愛いのでそれは当然の事ですが、 

男子逹が興奮しているのをほむらちゃんに悟られ引かれないように、 

静かに意見交換してる姿はとても怖かったです。 

私はその時はただ綺麗でかっこいい女の子だなあなんて思っただけでした。

4: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:17:20.36 ID:7KJLb7DR0
しかし彼女は突然私をじっと見つめてきました。 

目が合う事十数秒の間、彼女はずっと無言でした。 

私、何かしちゃったかな? 

そんなことを考えながらドキドキしていると突然彼女はにっこりしました。 

その満面の笑みは女の子の私ですらさっきとは違う意味でドキドキしてしまうもので、 

男子逹のあの常軌を逸した騒ぎっぷりも必然と言えるかもしれません。 


5: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:19:51.77 ID:7KJLb7DR0
______ 

そんな笑みを見せられた私は彼女に親近感を感じていました。 

朝起きる前に彼女と夢で出会っていたのも理由の一つです. 

ならなぜ教室に入ってきた時にはただ綺麗としか思わなかったのかと聞かれると困るのですが、 

あまりに突拍子のないことなので私の中でその二つの情報がうまくつながらなかったのでした。 

…よく親友のさやかちゃんにもまどかはおっちょこちょいで抜けていると言われます。

6: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:21:20.12 ID:7KJLb7DR0
ただ私とほむらちゃんは思ったほどなかなか仲良くなれませんでした。 

ほむらちゃんはすごい無口です。 

そしてクラスメイトの誰かに話しかけようという姿勢が見られません。 

話しかけられても必要最小限の返事しか返しません。 

でも私だけには毎日自分から話しかけてくれます。 

…朝の「おはよう、まどか」だけですが。

7: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:38:06.82 ID:7KJLb7DR0
しかし他の人には挨拶されても 

「ええ、○○さん」と答えるところしか私は見たことがありません。 

いや、さやかちゃんは違う返事をよく返されているのをうっかりしていました。 

「美樹さやかは朝からうるさいわね。少し黙っててもらえるかしら」 

…確かに朝のさやかちゃんの声は慣れない人にはうるさいかもしれません。

8: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:40:01.26 ID:7KJLb7DR0
そういえば朝は少し苦手だと、 

ほむらちゃんが他のクラスメイトからの質問の中で言っていたのを思い出しました 

そういえばほむらちゃんは一人暮らしをしていて、 

この学校に来るまでは病院暮らしが長く友達がいなかったとクラスメイトの質問に…。 

私は悔しくなんかありません。 

クラスメイトに対抗意識なんか燃やしていません。だって私は特別なのです。

9: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:41:05.24 ID:7KJLb7DR0
とにかく私はクラスの中で名前で呼ばれているのと、 

挨拶をされるのが私だけであることが凄く誇らしいのでした。 

こんな感じでなかなかほむらちゃんとは仲良くなれない私ですが、 

彼女との思い出はたくさんあります。 

例えば魔法少女についてです。 

10: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:42:53.74 ID:7KJLb7DR0
~☆ 

ほむらちゃんが転校してきた日、さやかちゃんとCDショップに行きました。 

仁美ちゃんはお稽古で来れませんでした。 

すると 

  「助けて、助けてまどか!」 

と誰かが私の頭の中に話しかけてきました。

11: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:44:17.77 ID:7KJLb7DR0
今思えば行ったところで私に何ができたとも思えないのですが、 

私は愚かにもその切羽詰まった様子にせっつかれ、 

立ち入り禁止の場所に入り込んでしまいました。 

やはり知らない人には何を言われてもついて行ってはいけない、 

というのは大切な金言だと思います。

12: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:46:02.91 ID:7KJLb7DR0
するとそこにはぼろ雑巾みたいなになったQBがいました。 

今でも私はQBのことが実はよくわかりません。 

ただ、ほむらちゃんがそれこそ親の敵のように彼?を嫌っているのできっと悪い奴です。 

QBとは一体何なんでしょうか? 

私にしつこく「契約」を迫ってくるセールスマンみたいな奴です。

13: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:46:49.28 ID:7KJLb7DR0
QBは一目見るとぬいぐるみのようです。 

動くけど。 

気さくにしゃべりかけてきます。 

口は動かないけど。 

つまり魔法少女におけるマスコットみたいな奴なのです。 

結局よくわからないということです。

14: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:47:54.92 ID:7KJLb7DR0
QBがしっぽを振る姿は少し猫に似ています。 

私は猫が大好きなのでQBを放っておけませんでした。 

今となってはQBのことは別にどうでもいい話です。 

あくまで思い出話の都合上必要なだけです。 

そんなことよりほむらちゃんが猫が好きだったりしたら、 

それはとっても素敵だなあって思ってしまうのでした。 

15: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:49:56.29 ID:7KJLb7DR0
「危ない!鹿目まどか!ここから早く逃げるか僕と契約して魔法少女になるんだ!」 

自分から呼びつけておいてこの言いぐさです。何が起こっているのと茫然としていると、 

周りの景色が突如まがまがしいものに変わってしまいました。 

とても現実の事のようには思えません。 

まるで何か悪い夢でも見ているような曖昧な感じがしました。

16: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:53:09.77 ID:7KJLb7DR0
「ああ、もう逃げるのは無理だね。 

さあ、まどか願い事を言ってごらん。僕は君の願いを一つ叶えてあげるよ。 

その代わりに君は魔法少女になってあの使い魔達と戦うんだ」 

何を言っているんだろうこのぬいぐるみは? 

自分がどれほど危機的状況かも気付かず呆けている私でした。 

そんな時、彼女が現れたのです。

17: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 07:54:39.19 ID:7KJLb7DR0
「その必要はないわ」 

まばたきをしたと思ったら目の前にQBと私の間に割って入るように彼女がいました。 

こっちを窺う彼女を見てわたしはふと、 

QBの話についていけずポケーとしていた間抜けな表情を 

彼女に見られたかもと思って、それが凄く気になってしまいました。

18: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:04:24.31 ID:7KJLb7DR0
「暁美ほむら…やはり君は僕とまどかとの契約を認めないつもりなんだね」 

「ええ、何があっても私のこの意見は変わらない。 

…でも話は後。こいつらを片づけてからよ」 

すると彼女はどこからかサーベル?とにかく剣を取り出しました。 

そしてそれを使ってまるでお城の舞踏会でダンスをするかのように、 

おぞましい化け物たちを切り裂いていきます。 

その姿は本当に美しくて、 

私は今まで生きてきた中で一番感激しました。 

ちょっとキュンとしてしまいました。

19: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:05:36.70 ID:7KJLb7DR0
化け物が皆動かなくなるとほむらちゃんはその剣を大事そうにタオルで拭いていました。 

たぶんあのマークは近所の変なおじさんが配っていたタオルについてたのと同じ奴です。 
   
「君は魔法で作った剣を大事にするのかい? 

ほおっておいたら消えるしまた作ればいいじゃないか。わけがわからないよ」

20: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:07:38.83 ID:7KJLb7DR0
ほむらちゃんの物を大事にする心を理解しないQBに心はないに違いないです。 

この頃になると私はほむらちゃんの笑顔とカッコよさにだいぶやられていた気がします。 

「これは私が作ったものじゃない。友達がくれた大切な形見の品の一つ…友達の証なのよ」 

そういってほむらちゃんは優しい表情を浮かべます。 

私は胸の奥が少しチクッとするのを感じました。

21: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:08:56.63 ID:7KJLb7DR0
「そんなことよりまどか、怪我はない?こいつになにか変なこと言われなかった?」 

指差されたQBは「きゅっぷい?」といった感じに首をかしげます。 

ほむらちゃんに「ほむぅ?」って感じに首を傾げてほしいなって思いました。 

なにを言ってるのか自分でもわかりません。

22: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:10:01.72 ID:7KJLb7DR0
「大丈夫だよ、ほむらちゃんが助けてくれたおかげだね。ありがとうほむらちゃん」 

体の弱い…弱かったらしいほむらちゃんを、 

休み時間保健室に案内してあげた時に名前で呼んで欲しいと言われたのです。 

今思えばこれは脈ありのサインなのでしょう。だったらいいな。

23: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:11:28.14 ID:7KJLb7DR0
「そう、よかったわ」 

そういってほむらちゃんは本当に嬉しそうな笑みを浮かべました。 

顔を見る限りさっきの話の友達には勝った気がします。 

それに私を心配してくれての笑みなのです。もうこんな幸せなことはありません。

24: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:12:47.61 ID:7KJLb7DR0
「その「僕の名前はQB!」QBから魔法少女になってって言われたけど何が何だか…」 

するとほむらちゃんはクワツ!という感じの怖い表情をして近づいてきました。 

そして怖がる私を見るとほむらちゃんは少し表情を緩めて私を強く抱きしめました。 

こんな幸せなことはないと先ほど言いましたがあれは嘘です。 

今度のはほむらちゃんに包まれてしかも天にも昇るような気持ちよさです。 

恍惚とするという言葉がぴったりな体験でした。そこは天国でした。

25: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:13:21.72 ID:7KJLb7DR0
ほむらちゃんの髪からさっきの化け物の血生臭いにおいがして、 

こんな美しいほむらちゃんからそんなにおいがすると思うとその倒錯した感じにちょっとその、 

…ムラッとしたのは内緒です。 

このころにはほむらちゃんの虜でした。間違いありません。

26: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:14:10.17 ID:7KJLb7DR0
「お願い、まどか。魔法少女になんかならないで。私が何でもするから」 

なんでもする。なんて   なことばなんでしょう。 

「うぇひぃ!わ、わかったよほむらちゃん。な、何してもらっちゃおうかなあ……ウェヒ、ティヒヒヒヒヒ」 

「うわあ…」

27: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:14:54.97 ID:7KJLb7DR0
そういえば今まで忘れてたけど、 

この時さやかちゃんも私を心配してついてきてくれていたのでした。 

ごめんね、さやかちゃん。 

親友だけどほむらちゃんのことを一つでも多く思い出したかったから。 

ちょっとだけ、ちょっとどうでもよくなっちゃった。ティヒヒ 

28: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:15:56.48 ID:7KJLb7DR0
「QB…今日という今日はお前にまどかと契約しないと言わせて見せるわ」 

「暁美ほむら…あんなことを何度しても無駄なことだというのがまだわからないのかい?」 

ほむらちゃんが私から離れてしまいました。名残惜しすぎて噛んだ唇から血が出ました。 

当たり前です。 

そして彼女はどう見ても女子中学生が向けていいレベルでない憎悪をこめてQBを見ています。

29: ◆2DegdJBwqI 2012/12/19(水) 08:16:52.58 ID:7KJLb7DR0
少し離れてQBにまっすぐ射抜くような視線を向けていた彼女は徐々に頭を下げて行き… 

腰を曲げて…膝をついて綺麗、いや華麗な土下座をしました。 

あんな優雅で洗練された彫刻のような土下座なら何度だってみたい。 

ほむらちゃんが土下座してくれるなら 

なんだってできる気がする。これもほむらちゃんには内緒です。

39: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 05:56:35.21 ID:OyamoDma0
【第一話 馴れ初め編】 

______  

突然ですがほむらちゃんは魔法少女です。 

それも謎の美少女天才転校生というオマケつきの。 

ただもう転校生と呼ぶには少し長い時間がすぎているかもしれません。 

さて、そんなほむらちゃんと私が出会ったのは一ヶ月ほど前のことでした。

40: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 05:58:33.39 ID:OyamoDma0
「いや、だから土下座されてもどうしようもないんだけど」 
  
「私がどれほどの恥辱にまみれてこの行為をしているかわかる…? 

巴マミさえいなければ今頃あなたなんて…!」 

マミさんにまみれる。すごい   いなあって今になって思いました。 

マミがまみる。良い響きです。

41: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:00:25.42 ID:OyamoDma0
マミさんと初めて会ったのはこんなことがあった次の日のことでした。 

よくよく考えたら魔法少女って何? 

と後から気になった私とさやかちゃんは、 

QBに話を聞くのもなんか胡散臭いなあ…って思ったので、 

学校でほむらちゃんに聞いてみたら紹介された3年生の先輩で魔法少女です。

42: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:02:27.89 ID:OyamoDma0
ほむらちゃんは無駄の一切ない機能美から連想される清楚な   さを持つ女子中学生ですが、 

マミさんはその大きなお胸とプロポーションが問答無用で想起させる、 

扇情的でなんというかアクロバティックな   さを持つ女子中学生です。 

マミさんにはマミさん。ほむらちゃんにはほむらちゃんの良さがあるので、 

願わくばほむらちゃんには今のまま、 

さながらミケランジェロのダヴィデ像を思い起こさせる美しさのままでいてほしい、 

と思います。…女性に対する賛辞としてはいささか不適切かな?

43: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:04:47.61 ID:OyamoDma0
「君はマミと仲良くしたがってるみたいだからね。 

僕は君が得体のしれない奴だと思うけど、 

マミはまんざらでもなさそうだ」 
   
「インキュベーターに胡散臭いって言われるなんて…ショックだわ… 
    
かなり頑張っているというのにこれでもまだ不信感はぬぐえないというの…?」 

「!?暁美ほむら…!君はいったい何者なんだい?つくづく謎な存在だ」

44: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:08:16.63 ID:OyamoDma0
インキュベーター。 

家に帰ってからインターネットで検索してみたら、 

どうやら孵化器とか何とかそういう意味らしいです。 

絶望に苦しむ人間から魔法少女という希望を孵化させるとかそういう意味なのかな? 

わからないけどほむらちゃんがやめてって言ってたので契約は出来る限りしないつもりです。

45: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:09:20.29 ID:OyamoDma0
だってほむらちゃんに頼まれた数少ないお願いだからです。 

…ってあれ!?私まだ「なんでもして」もらってないよ! 

ひどいよ!!こんなのってないよ!あんまりだよ! 

約束したのにほむらちゃん忘れちゃったのかなぁ…?

46: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:11:02.55 ID:OyamoDma0
「さあ、二人とも送って行くわ。 

ここもすぐ元の状態に戻る。早く帰りましょう」 

「お、おう転校生ありがと」 

さやかちゃんはこの頃ほむらちゃんを転校生と呼んでいました。 

しかし今はほむらと呼んでいます。 

なにがあったのか要調査です。 

ほむらちゃんは手に持った剣を地面に突き刺すと、 

そのまま何事もなかったかのように歩きだしました。

47: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:11:58.60 ID:OyamoDma0
「いやいや待ちなよ転校生それっておかしくない?」 

「…?ああ、剣ならほっといたら消えるから大丈夫よ、美樹さやか」 

「そうじゃなくて、あれ友達の形見の剣なんでしょ!?大切に使ってあげてよ!」 

「大切に使った後ちゃんと拭いておいたからいいでしょ多分。たくさんもらったし」 

「どう考えてもあげた本人は気にすると思うけどなあ…」

48: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:14:32.63 ID:OyamoDma0
「これをくれたのはまるであなたのように心の広い美樹さやかだから大丈夫だと思うわ」 

何かおかしい気もするけど、 

ほむらちゃんが良くわからない事を言うのは良くある事なので、 

気にしないことにしています。 

「こ、心が広い…!今日来たばかりの転校生に言われると、 

幾らさやかちゃんでも少し照れちゃいますなあ…たはは」 

「これをくれた人が使い捨てみたいに使ってたから2回目以降使うのが怖いのよね」

49: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:16:12.99 ID:OyamoDma0
「それ壊れたことあるの?」 

「今のところは一度もないわ」 

「じゃあさ、やっぱり使ってあげてくれない?一応形見なんだしさ、 

私が言うのも押しつけがましいかもしれないけどなんか可哀想だよ。 

もちろん転校生に悪気がないのは私もわかるけど」 

「あなたがそういうなら今日からそうするわ。ご忠告どうも、美樹さやか」 

「なんかお礼言われた気がしないなあ」 

50: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:18:03.94 ID:OyamoDma0
______ 

ほむらちゃんと少しでも長く一緒にいるために先輩魔法少女のマミさんに頼み込んで、 

魔法少女体験ツアーを開催してもらおうとしてほむらちゃんに断固反対されたこともありました。 

いつのまにかさやかちゃんが魔法少女になって上条君に告白して振られていたこともありました。 

その後上条君と仁美ちゃんが仲良くしてるのを見てあっそういうことですかと私は察しました。

51: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:19:57.75 ID:OyamoDma0
______ 

さやかちゃんが告白に失敗した次の日は、 

私も彼女ののあまりの憔悴具合に胸が張り裂けるような気持ちでしたが 

次の日の次の日学校に来たさやかちゃんは今度は違う感じに憔悴していました。 

元気いっぱいさやかちゃんの負のエネルギーをあそこまで無気力に持っていったのは何か、 

と大変興味を抱いた私は直接さやかちゃんに聞いてみました。 

するとそれはほむらちゃんらしいのです。

52: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:21:02.63 ID:OyamoDma0
~☆ 

「私も昨日はちょっとおかしくなっちゃっててさ、私の願いは結局何だったんだろうってね。 

告白した後ソウルジェムは私たちの魂そのものだとか急に知っちゃってさ…」 

ちなみに私はそのことをこの時のさやかちゃんの言葉で初めて知りました。 

凄い疎外感を感じます。

53: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:23:18.91 ID:OyamoDma0
「それで自暴自棄になってああ、もう全部やめてやるとか思ったら突然ほむらが来てさ、 

美樹さやか、確かにあなたは告白に失敗したかもしれない。それでもあなたは戦った。 

それは称賛されるべきことだ。とか言い出してさ。 

ほらあたしとあいつってあんまり仲良くなかったじゃん。 

だからあたしもカーッ!てなってあんたみたいな冷血ロボット人間に恋の何がわかるってのよ、 

オイルでも飲んで帰って寝てろ!って言っちゃったの。 

いや、あたしも今思えばひどいこと言ったな-って思うけどさ。」

54: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:27:30.79 ID:OyamoDma0
本当にひどいのはせっかく心配して来てくれた優しいほむらちゃんに、 

ついそんな暴言を吐いちゃったさやかちゃんの頭の程度そのものだよ、 

とか言ってやりたくなったけど黙ってました。さすがに今親友を追い打ちしたくないです。 

わたしはさやかちゃんのことを   じゃない意味で大好きだからです。 

ほむらちゃんはもちろん   な意味でも大好きです。私結構恥ずかしいこと言ってます。

55: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:30:49.19 ID:OyamoDma0
「そしたらあいつまどかたちとのいつもの待ち合わせ時刻1時間前まで徹夜で、 

愛について語っちゃってさ。 

恋にこんなに苦しんでる奴がいるんだ…とかあれ?私愚痴を吐かれてるだけじゃないのこれ? 

とか色々考えてたらなんか悩んでたのが全部どうでもよくなっちゃった。 

ほむらもソウルジェムを100メートル圏内に置いておいたら生きてるのと同じって言ってたし。 

私、あいつみたいに何かに全力で今を生きてみたいって思っちゃったわけですよ。 

…いやあ今日はやけに暑いねぇ。たはは」

56: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:35:30.32 ID:OyamoDma0
…これは私の知らないほむらちゃんの側面です。 

熱血ほむらちゃんなんていくら妄想してもこれっぽっちも浮かんでこない。 

冷血ほむらちゃん(女王様)ならいくらでも浮かんでくるんだけどなぁ…

57: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:38:51.05 ID:OyamoDma0
______ 

そんなこんなでさやかちゃんは失恋のショックからどうにか立ち直りました。 

しばらくするといつのまにか杏子ちゃんが魔法少女グループに加わっていました。 

ほむらちゃんとの会話に凄い困っていた私は、 

根掘り葉掘り杏子ちゃんについて聞いたので結構色々な事を知っています。 

マミさんの元パートナーでよくゲームセンターに行くホームレス中学生だったらしいです。 

なんでほむらちゃんが彼女の事にそこまで詳しいのかは深く考えないようにしています。 


58: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:40:04.40 ID:OyamoDma0
ほむらちゃんはちょっと変わった子です。趣味を聞かれて昼寝と詰将棋と答えたりと、 

とても女子中学生とは思えません。おばあちゃんというよりはおじいちゃんかな? 

よくほむらちゃんが学校でどこかからお湯を入手して自分の席でコーヒー豆を挽いて、 

コーヒーを淹れているのを見ます。 

またそれが実に様になっています。凄く自由人です。 

そういえば前はこんな事がありました。 

59: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:42:10.10 ID:OyamoDma0
ほむらちゃんに一秒でも早く会いたい私はさやかちゃんを急かして学校に来ました。 

仁美ちゃんは最近上条君と登校しています。ちょっと寂しいです。 

しばらくするとほむらちゃんが70インチの液晶テレビを担いで教室に入ってきました。 

ちょっとでかすぎです。 

そして教室でTVを見るのは無理だということに気づくとプルプル泣きそうな顔をして 

そのまま教室を出て行ってしまい戻ってきませんでした。

60: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:45:04.42 ID:OyamoDma0
その日はそれ以外でほむらちゃんに会えませんでしたが、 

ほむらちゃんのプルプルをデジタルカメラに収めることができたので私は幸せです。 

後日さやかちゃん情報によると、 

「大画面で見たかった試合があるのだけれど、 

丁度運悪く家の電気を止められてしまったのよ。 

結局誰もいなかった巴マミの家で勝手に見ることにしたわ」

 
62: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:50:10.53 ID:OyamoDma0
そんな感じだそうです。 

つまり上手くやれば家にほむらちゃんを呼べたわけです。 

惜しい事をしました。 

さやかちゃんの主観ですが、 

その言い方はまるで試合がどうなるのか事前に分かっていたみたいな言い方だったらしいです。 

不思議に思ったさやかちゃんがその事について尋ねてみると、 
   
「あなたも好きな映画だったら何度も再放送を見たりビデオを借りに行ったりするでしょ? 

繰り返し見るってつまりそういうことよ」

63: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:51:35.04 ID:OyamoDma0
つまりほむらちゃんはその試合の再放送またはビデオを見るために、 

あんなにてんやわんやしていたのでしょうか? 

再放送は録画してしまう私にはよくわからない世界の話でした。 

試合をその時間に見る臨場感とかならまだ私にも理解できます。 

やっぱりほむらちゃんは変な子です。 

64: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:54:31.91 ID:OyamoDma0
______ 

最近私が魔女に襲われたらいけないからとほむらちゃんが私を毎日家まで送ってくれます。 

最初はさやかちゃんが送ってくれていたのですが、 

新米魔法少女のさやかちゃんに任せるのは不安だと、 

ほむらちゃんが送ってくれるようになりました。 

確かに私にも誰かを守りながら戦えるほどさやかちゃんが器用なイメージは湧きません。

65: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:55:48.75 ID:OyamoDma0
さやかちゃんはもっと直情的ないい子なのです。 

脳が筋肉でできた正義の味方というイメージが近い感じです。 

うっかりしてちょっと言い過ぎちゃいました。 

私は頑張ってほむらちゃんに話しかけます。 

しかしほむらちゃんは当たり障りのない反応しかしてくれません。

66: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 06:56:55.21 ID:OyamoDma0
それだけならまだいいのですがやっぱり自分から話しかけてはくれません。 

毎日私と帰るのは退屈なのかなという不安にかられてしまいます。 

しかし家の前につくといつもほむらちゃんは必ずどこか違うところを見ながら、 

「今日も楽しかったわまどか、また明日」 

と照れくさそうにちょっとにこってします。

67: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:06:24.12 ID:OyamoDma0
これを見ると私はよし、明日こそはいける。 

これは誘ってるに違いないと毎日飽きずに勘違いしてしまうのです。 

そして何もできないのです。  

ですが今日からの私は違います。 

私は変わります。 

ほむらちゃんを虜にするニュー鹿目まどかに。 

68: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:08:05.18 ID:OyamoDma0

~☆

私がこんなことを考え始めたのは 

「ワルプルギスの夜」という魔女が原因です。 

今から1週間ほど前、 

この魔女を倒すことがほむらちゃんの目的だと、 

さやかちゃんから聞かされた私は決意しました。 

QB曰く私には魔法少女としての凄い才能があるらしいから、 

契約してほむらちゃんを助けようって。

 
70: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:13:14.16 ID:OyamoDma0
しかし私達の話をどこで聞いていたのか、 

突然ほむらちゃんが私の傍に近寄ってきて言いました。 

「まどか、お願い。私のために魔法少女になるなんてやめて。 

あなたが魔法少女になったら私はこの町にいる意味をなくしてしまう。 

あなたは優しいありのままのあなたでいて。お願いよ、私達を信じてまどか」

71: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:14:38.25 ID:OyamoDma0
私の胸にしがみついて号泣してしまうほむらちゃん。 

私は今までごくごく普通の中学生でしかない自分を変えたいと思っていました。 

しかしもしわたしがこのままでいることが、 

ほむらちゃんを喜ばせるならそうでありたいと思います。

72: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:15:59.28 ID:OyamoDma0
ただ、それ以上にこの時のほむらちゃんの様子、声、そして話。 

全部からほむらちゃんがどれほど、 

私を魔法少女にしないために苦心して来ていたかが伝わってきました。 

それはおそらくほむらちゃんの思いのごくごく一部です。 

それでも私はもう抑えきれなくなってしまいました。 

もっとほむらちゃんのことが知りたい、 

もっとほむらちゃんと仲良しになりたいっていう私自身の欲望が。

73: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:18:07.50 ID:OyamoDma0
~☆ 

しかしほむらちゃん達の邪魔をするわけにはいきません。 

私は無事にワルプルギスの夜を、 

ほむらちゃんたちが倒せるようにただただ何日も祈り続けるしかありませんでした。 

そして、それは昨日叶ったのです。 

どうやってみんながその魔女を倒したのかはわかりません。

74: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:19:45.85 ID:OyamoDma0
私はその魔女の起こしたスーパーセルから身を守るために 

家族皆揃って避難所で身を潜めているしかなかったからです。 

あのときさやかちゃんから届いたメールを私は一生忘れないでしょう。 

【やっつけた。みんなちゃんといきてる】 

私はその後警報が解除されて家に戻るとぐっすり眠りました。英気を養うためです。

75: ◆2DegdJBwqI 2012/12/20(木) 07:21:24.19 ID:OyamoDma0
そして今日がきました。 

きっと昨日は魔法少女生還パーティーかなんかが、 

マミさんの家で開催されたに違いありません。 

しかしそれはもう過去のことです。 

今日から私、鹿目まどかは雌豹になります。 

それはさながら獲物を狙うハンターのよう。 

私の戦いは今日から始まるのです。 

【一話 終わり】

85: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 06:50:02.32 ID:ZIWyrKtz0
【第二話 実践編】 


~☆ 

私がほむらちゃんと仲良くなろうと決意して行動し始めてから一週間が経ちました。 

確かに私は自分が以前と比べて変わったであろうことを実感しています。 

……それとも変わってしまったと言うべきでしょうか? 

朝目が覚めるとまずはほむらちゃんに送る朝のメールの文面について考えます。 

「ワルプルギスの夜」をみんなが倒してくれた次の日、 

つまりちょうど一週間前にメールアドレスと電話番号をゲットしました。

86: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 06:51:22.60 ID:ZIWyrKtz0
一か月経ってようやく普通の友達らしきことを初めてできた気がします。 

ここ数日私が一番最初に思いつく文面はたいていその、 

…ラブレターじみたものになってしまうので、 

毎日どれくらいまでだったら引かれないで済むか悩むのが最近のちょっと嬉しい悩みです。 

今日の文面は最終的にこういう感じになりました。

87: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 06:54:50.38 ID:ZIWyrKtz0
【ほむらちゃんおっきろー! 

ほむらちゃんに会えると思うとなんだか今日という一日が凄く楽しみに感じられます。 

今日も朝からほむらちゃんに元気の出るおまじないをかけてあげるね。 

ちゅっ…☆キャー恥ずかしいよー!】

88: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 06:58:19.05 ID:ZIWyrKtz0
…恥ずかしいにも程があります。 

しかしこれは仕方のない事なのです。 

さやかちゃんや他のクラスの人と比較すると、 

私は控え目に見ても彼らよりほむらちゃんに好かれているように思えます。 

そんな私がメルアド一つに一カ月もかかったという事は、 

ほむらちゃんと仲良くなるのに、 

自分から何もせず相手を待ったりなどの消極的な姿勢は禁物ということです。

89: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:02:30.86 ID:ZIWyrKtz0
ここでえ?いったいこの子朝からどうしたの? 

とか思われるくらいのほうがいいはずなのです。 

ちょっとスリリングですが、 

このままだと仮に付き合えたとしても、 

その頃には二人とももう老婆になってそうなので、 

やはりここは無理をしてでも押せ押せで行きます。

90: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:03:54.06 ID:ZIWyrKtz0
ほむらちゃんからのメールが返ってきました。 

ほむらちゃんのメールの返信は私に比べて凄く早いです。いつも3分を切ります。 

【おはよ、まどか。私も会いたい。まどかわいい】 

まどかわいいってなに…? 

凄い気になりますがそれはさておき、 

やはりほむらちゃんは絵文字とかチャラチャラしたものを使いません。

91: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:04:42.98 ID:ZIWyrKtz0
今日もさやかちゃんとメールするときみたいな絵文字を使わなくて正解だったみたいです。 

それと多分まどかわいいについての疑問が解かれることは、 

おそらく一生ないんだろうなあと思います。 

毎日幸せなこの時間ですが、困ったことがあります。 

こうやってメールを送ったり返事が返ってくるたびに一喜一憂してしまうのです。

92: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:06:28.53 ID:ZIWyrKtz0
ほむらちゃんの返信が速いのは私とのメールの内容をさほど気にしていないからなのか、 

それともできるだけ早く返そうとしてくれているのか、 

とか一見どうでもよさそうな所を気にしてしまったり面倒臭い子だなって自分でも思います。 

さやかちゃんはこんなやっかいな気持ちを小さい頃から上条君に寄せていたと思うと、 

ただただ尊敬の念が浮かぶばかりです。 

振られてしまったあの時のさやかちゃんにはもうちょっと優しくしてあげるべきでした。
 
417: ◆2DegdJBwqI 2012/12/30(日) 11:41:45.58 ID:GXNOq3JO0
 

~☆ 

「おはよーまどかー」 

「おはよーさやかちゃん」 

最近仁美ちゃんは付き合いが悪くて、 

その代わりというわけではありませんが、 

最近は毎日ほむらちゃんと3人で登校しています。 

ほむらちゃんとはもう少し先の場所で待ち合わせです。

94: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:11:33.41 ID:ZIWyrKtz0
さて、今日私は重大な計画を決行します。 

その腕慣らしというわけではありませんが、 

今日は朝からさやかちゃんの技を参考にしつつ、 

少し大胆な接触をしてみたいと思います。 

前方にほむらちゃんの立ち姿が見えました。

95: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:12:32.27 ID:ZIWyrKtz0
特別何かをしているわけではないのに、 

ほむらちゃんの居るその空間だけが、 

まるで絵画として現世から切り取られてしまったようです。 

なんかちょっとずるいと思いました

96: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:13:43.52 ID:ZIWyrKtz0
「やっほー!ほむらー!しけた面してると幸せがどっかに逃げるぞー!」 

「……」 

「無視は酷くない!?」 

…よく考えると朝に弱いほむらちゃんにこんな事したら凄く嫌がられるんじゃ? 

ダメダメ、今までが消極的すぎたんだよ。私はもう生まれ変わったんだから。 

こんなことで怖気づいてたらいつまで経ってもほむらちゃんと仲良くなんてなれないよ。

97: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:15:22.36 ID:ZIWyrKtz0
「ほっほっほむ、らちゃんは鹿目まどかの嫁になるのだー!」 

顔を見るのは恥ずかしすぎるので、 

ほむらちゃんの胸の辺りを見ながらそこに顔を押しつけるように抱きつきます。 

いい匂いがしました。さやかちゃんとのスキンシップは恥ずかしいだけですが、 

ほむらちゃんとやるとそれだけじゃなくて凄く幸せな気持ちになりました。

98: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:16:17.79 ID:ZIWyrKtz0
こんなことして嫌われたりしないかな? 

自惚れじゃなかったらクラスメイトの中では、 

私は一番好かれてるんじゃないかなって思います。 

でもそれとこんなお触りを許してくれるかどうかは別問題な気がしてきました。 

ほむらちゃんは飛びついてきた私の腰を、 

少し触れる程度に抱きしめるだけでうんともすんとも言いません。

99: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:17:16.94 ID:ZIWyrKtz0
ほむらちゃんはどう思ってるんだろう? 

私みたいにドキドキしてくれてるかな? 

そう思って顔をあげてみると無表情なほむらちゃんと目が合ってしまいました。 
  
「おはようまどか。行きましょう?遅刻してしまうわ」 

ほむらちゃんは私の体を優しく引き離すとそのまま私の手を取って歩き出しました。

100: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:18:58.69 ID:ZIWyrKtz0
ほむらちゃんにとって今繋いでる手は何を意味するのかな? 

私のことが好き…というよりは私が迷子にならないように、 

手を引いてくれてるだけのように思えてなりません。 

結局ほむらちゃんの表情からはどんな感情も読み取ることはできませんでした。 

時間が経てば経つほど、 

私のしたことは取り返しのつかないことだったんじゃないかという気がしてきます。

101: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:19:48.30 ID:ZIWyrKtz0
もしアホな子だと呆れられていたらどうしよう。 

…さやかちゃん式スキンシップの盲点でした。 

攻撃力は高いけど守備力は低かったわけです。 

ほむらちゃんとの久しぶりに感じる気まずい沈黙。 

それを壊すべく動き出したのは、 

やっぱりというかなんというかさやかちゃんでした。

102: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:20:43.15 ID:ZIWyrKtz0
「やーやー御二人さん!朝から手なんか繋いじゃってお暑いですねー! 

さやかちゃん置いてけぼりで困っちゃうよ!いっそのこと結婚でもしたら?」 

あ、熱い!?結婚!?そ、そんな私たちにはまだ…  

「こんなの友達同士によくあるスキンシップの一種よ」 

予想通りの答えではあるのですが、 

胸の中には安心とも苦しさとも判別のつかない感覚が広がっていきました。

103: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:21:43.40 ID:ZIWyrKtz0
「それだとさっきのまどかの行動が…まっ、いいとしましょう!」 

さやかちゃんの顔はどう見ても納得してる顔なんかじゃありませんでした。 

「そんじゃさ、ほむらは今私とその空いてる手つなげる?」 

えっ、ちょっとさやかちゃん!? 

いくら親友でもさすがにお邪魔虫だよ!あっち行って!しっ!しっ!

104: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:23:11.04 ID:ZIWyrKtz0
「え…純粋にあなたと手を繋ぎたくないのだけれど…」 

「……本気で言われるとさすがにへこむわ!グスッ」 

あ、ああさやかちゃんが涙目になっちゃった。この空気は良くないです。 

いつもだったら私が止めに入る所だけれど、 

今この騒ぎを収めたら3人仲良く手を繋いで登校って事になって無茶苦茶になりそう。 

それにほむらちゃんの手は私だけのものであってほしい。

105: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:24:25.22 ID:ZIWyrKtz0
「くっそー、ちょっと茶化すだけのはずがさやかちゃんだけ大ダメージなんて納得いかない。 

こうなったらまどかにでも手を繋いで貰って慰めてもらうしかないじゃん」 

そ、その手があったかー。まずいよこれ。 

カワイイカワイイほむらちゃんかと思った?残念さやかちゃんでした!の流れだよー。

106: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:25:58.56 ID:ZIWyrKtz0
「美樹さやか、この際だからはっきり言わせてもらうわ」 

「ん?なに?」 

さやかちゃんのこういう切り替えの速さはほんと凄いと思います。 

「あなたはまどかに過度なスキンシップを取りすぎる。 

少し自重するべきよ。やりすぎると『さやか』がまどかにうつるからやめて頂戴」

107: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:27:24.34 ID:ZIWyrKtz0
「そ、そりゃさすがに言いすぎでしょほむら!私だってなりたくて馬鹿な訳じゃないやい!」 

なんだかちょっと空気がギクシャクした感じです。 

「忠告してあげるけどもう少し空気は読んだほうがいいわよ。 

今の私とまどかとの絡みは仲睦まじいなあって優しく見守る所でしょ明らかに」

108: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:28:07.25 ID:ZIWyrKtz0
ああ、ほむらちゃんダメだよダメ。ストップだよー。 

などと心の中で思っても臆病な私にはとても言い出せる雰囲気じゃありませんでした。 

ほむらちゃんもさやかちゃんに本気で怒ってるわけじゃなさそうですが凄く怖いです。 

「いや、そりゃ、そうだろうけどさ…ちょっとまどかのアシストでもって…」 

「なに?今度はまどかのせいにする気なの?あなたって本当…」

109: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:30:36.09 ID:ZIWyrKtz0
言葉に詰まった様子のほむらちゃんは、 

凄い何かを悩んでいるような表情をしました。 

「ほむらちゃん、いったいどうしたの?」 

「いえ、ちょっと面白いギャグを思いついた気がしたから言おうと思ったけど 

これはまどかに失礼な気がするわ」 

その苦しそうな表情を見ていられなかった私は思わず言ってしまいました。

110: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:31:32.07 ID:ZIWyrKtz0
「よくわからないけど、 

私は冗談だってわかってる事を言われても怒ったりしないよ。 

言っちゃったほうが楽になるんじゃないかな?」 

「まどか、今の話の流れだとどう考えても私に対する悪口なんだけどそれ忘れてない?」 

すっかり忘れてました。

111: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:32:38.29 ID:ZIWyrKtz0
「あなたってホント馬鹿さやかって言おうと思ったのだけれど、 

鹿の字が入ってるしまどかに失礼かなーなんて 

…だったらアホさやか、いやア↑ホさやかならいけるかしら?」 

このギャグって面白いのかな? 

私にはよくわかりませんが言い終わった後ほむらちゃんは次第に、 

顔を真っ赤にしてもじもじしだしたので私としてはありです。

112: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:33:40.90 ID:ZIWyrKtz0
「いや、まあそのなんだ、ほむら。どんまい」 

「慰めないでよ…余計恥ずかしくなるじゃない…」 

どうやら二人のあわや喧嘩という雰囲気もこれで解消のようでほっと一安心です。 

「てかそもそも私が鈍感口下手転校生暁美ほむらに、 

空気の読めなさで上回ってるらしいのが一番きついわ… 

まどかぁ、私のほうが空気読めるよね…?」

113: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:35:03.84 ID:ZIWyrKtz0
う、うーんさやかちゃんは確かに空気は読めます 

読んだ上でそれを壊していく子です。 

石橋は叩いて壊す派です。 

しかしほむらちゃんが空気が読めるかどうかを判断するには 

ほむらちゃんに関しての情報が足りなさすぎる気がします。

114: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:36:49.91 ID:ZIWyrKtz0
彼女はさやかちゃんとは良く話しますが、 

これはさやかちゃんがつっかかって、 

ほむらちゃんが返すみたいなもはや形式美みたいなもので、 

空気が読めるかはそんな関係ない気がします。 

かといってほむらちゃんがほかの人に話しかけるのなんてほぼないと言っていい事例です。 

私との会話は…どうなんだろ?やっぱりよくわかりません。

115: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:37:38.31 ID:ZIWyrKtz0
「ティ、ティヒヒ…?」 

「うわー!親友に裏切られたよー!チクショー先に行ってやるー!」 

さやかちゃんはそのまま走り去ってしまいました。 

あーあやっちゃったなーと思いながらも、 

これはさやかちゃんの優しさなのかもとも思います。

116: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:39:30.24 ID:ZIWyrKtz0
だとしたらナイスアシストですさやかちゃん。 

今はこの幸せをただ享受して細かい事は後で考えればいいかと、 

さやかちゃんの事は頭からしばし追い出します。 

一仕事終えたような清々しい顔をしてほむらちゃんの方を向くと、 

ほむらちゃんは何故かちょっと泣きそうな顔をしていました。 

事情はよくわからないけど凄くそそられる表情だというのはわかります。 

117: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:40:37.36 ID:ZIWyrKtz0
「ど、どうしたの?」 

「さやかを本気で怒らせてしまったわ…どうしましょ…」 

いや、あれは私が原因だしさっきのいざこざはその前に解決してたよほむらちゃん。 

もしかしたらほんとにほむらちゃんは周りの空気とかを感じるのが下手なのかもしれません。 

こんだけかわいいとそれすらもいわゆるただの萌え要素にしかならないのが怖いところです。 

ほむらちゃんがしっかり者に見えてどこか抜けてる…間違いなく最高です。

118: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:41:33.44 ID:ZIWyrKtz0
オロオロする姿がいじらしすぎてもっと見たいので罪悪感もありますが、 

これは私のせいだとは言わず励まします。 
   
「悪い事をしちゃったらまずはどうするの?」 
   
「…謝ります」 
   
「!?」

119: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:42:44.13 ID:ZIWyrKtz0
突然のしおらしい丁寧語に私は腰を抜かさんばかりの、 

まさに雷に打たれたような衝撃を受けました。 

これは反則です。アウトです。 

いつもと違って急に弱々しくなったほむらちゃんは、 

今までになくぎゅっと抱きしめたくなります。 

しかしここは我慢しなくてはなりません。

120: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:43:16.91 ID:ZIWyrKtz0
「大丈夫だよ、さやかちゃんは怒ってないよ」 

「そんなことない。きっと怒ってたわ」 

少し元に戻ったようなそうでもないような微妙な感じがきわどくて良いです。 

どんなほむらちゃんもいいものだということを再認識しました。

121: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:44:24.72 ID:ZIWyrKtz0
「仮に怒ってたとしてもちゃんと謝ったら許してくれるよ。ほむらちゃんだって、 

さやかちゃんが空気読めないなんてほんとは思ってないんでしょ?」 
   
「うん。、さやかは話すのが下手な私のために 
    
いっつも張り合ってくるだけで本当はすごいいい子なのはわかってるんです」 

ふむふむ、てっきり仲悪いのかと思ってたけどそうでもないみたいだね、良かった良かった。

122: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:45:56.50 ID:ZIWyrKtz0
「さやかがすることでイラっとするのは日常茶飯事だし、 
    
割と本気でどっか行って欲しいと思う時もあるけど、 
    
それがさやかの数少ない長所だから頑張って伸ばして欲しくて、 

いつも我慢できる所まではなるべく我慢してるんです」 

…それは本人の前では言わないであげてほしいなって。

123: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:46:28.07 ID:ZIWyrKtz0
きっとほむらちゃんは純天然かそれとも相当な腹黒かの二択なのでしょう。 

しかし私はこう思うんです。 

かわいいんだからそんなこと気にする必要はないって。 

…この反応はたぶん本物の天然さんな気がするけど。

124: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:51:41.14 ID:ZIWyrKtz0
「だけど今日はいつもと違ってさやかのいじりが、 

我慢ならないくらい不愉快に感じられて… 

やっぱりまどかが関係しているからかしら?」 

「…でもやっぱり彼女は私がどう思ってるか知っているはずなのに、 

それをからかうなんていくらなんでも酷過ぎるわ」 

だいぶ普段通りの様子に戻ってきたほむらちゃんは、 

突然意味深長な言葉を蚊の鳴くような声で小さく呟きました。

125: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:58:41.09 ID:ZIWyrKtz0
ほむらちゃん、さやかちゃんはもう大丈夫だから今言ったことについてちょっとお話ししよう? 

こう言えたらどれだけ楽なことか… 

がくりと首を落とすとほむらちゃんの左腕についたデジタル時計が目に入りました。 

この時計をほむらちゃんがつけ始めたのは「ワルプルギスの夜」を倒した次の日からです。

126: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 07:59:58.12 ID:ZIWyrKtz0
彼女が少なくとも一日一回は毎日休み時間に、 

ストップウォッチ機能で時間を止めては動かして、 

止めては動かしてを繰り返しているのを見ます。 

その顔はとても遊んでいるような表情ではないので、 

きっと何かほむらちゃんにしか分からない意味があるのでしょう。 

いつか教えてもらいたいような、 

そっとしておいてあげたいようなひどく定まらない心持ちです。

127: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 08:01:03.60 ID:ZIWyrKtz0
しかしそんなことより今重要なことが他にあります。 

このまま歩いていたら確実に遅刻するということです。 

学校に向かって歩いていることなんて、 

まったく意識していなかったことを考えると当然の結果ともいえます。 

私は今までずっと繋いでいたほむらちゃんの手を、 

断腸の思いで泣く泣く離し早足になりました。

128: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 08:02:28.27 ID:ZIWyrKtz0
「ほむらちゃん!急がないと学校遅刻しちゃうよ!」 

そのまま走りだそうとすると袖口を少し引っ張られている感触を感じます。 

振り返るとほむらちゃんが下を向いて親指と人差し指だけで引っ張っているのでした。 
   
「もうちょっとだけ…つないでちゃ…ダメかな?」 

そう言ってちょびっと首をかしげ上目遣いでおずおずと尋ねるほむらちゃんの頼みを、 

私が断れるはずもありません。 

卑怯だと思います。

129: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 08:03:18.07 ID:ZIWyrKtz0
「しょ、しょうがないからちょっとだけだよ!」 

心の中では万歳三唱町内三周くらいしてるというのに何がしょうがないというのか。 

素直じゃない自分が嫌になります。 

するとほむらちゃんはしっかり顔をこちらに向け少し口角を上げこう言いました

130: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 08:04:32.54 ID:ZIWyrKtz0
「やっぱりまどかは優しいわね。ありがとう」 

私にありがとうなんて言われる資格なんてないよ…。 

あなたにこんな思いを抱いてる私なんて…。 

胸がきゅうっと締め付けられました。 

ほむらちゃんは私のそんな心境も知らず、 

無邪気に私と手のひらをぴったりと合わせるように握ってきました。

131: ◆2DegdJBwqI 2012/12/21(金) 08:05:49.40 ID:ZIWyrKtz0
私もその手をもう離れることのないようにしっかりと握り返しながら、 

それでも今日はきっといい日になるに違いないと強く予感していました。 

【二話 終わり】

140: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:04:50.94 ID:fvXcJjEM0
続きを投下します 

三話の途中からしばらくシリアスですが第一部十二話構成の六話までだから…結構長いじゃん 
第二部?全部シリアスですね、はい

142: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:15:22.53 ID:fvXcJjEM0
 
【第三話 まどか暴走編】  

~☆ 

二人で手を繋いで登校する幸せな時間は、 

名残惜しい限りですがいつまでも続くものではありません。 

ほむらちゃんと私が学校に到着した時には朝のHRは終わっていて、 

一時間目の授業が始まる直前でした。 

それから普通に一時間目の授業を受けて休み時間になりました。 

チャイムが鳴ったとほぼ同時に立ち上がったほむらちゃんは、 

ゆったりとした歩幅で歩きさやかちゃんの机の前で仁王立ちしました。 



143: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:16:51.21 ID:fvXcJjEM0
「ほ、ほむらさん…?」 

「美樹さやか」 

ゴゴゴゴゴゴって効果音が聞こえてきそうです。 

これでこれから謝罪しようとしてるんだから驚きです。 

「いやだーなんかよくわからんけど私まだ死にたくなーい!」 

「ごめんなさい。」 

「へ?」

144: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:18:09.90 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃんの頭は芸術的な曲線を描いて「礼」の姿勢をとりました。 

「朝言いすぎてしまってごめんなさい」 

「ああ、うん別に気にしてないよ。てか頭上げてよ、 

クラスメイト達の私を非難する視線が辛いんですけど」 

ほむらちゃんの土下座や今回のお辞儀からは、 

長い年月をかけて積み上げてきた技術を感じます。

145: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:18:57.55 ID:fvXcJjEM0
素人は土下座の形を気にしますがそれでは足りないのです。 

土下座というものは許されることを待つことではなく動の作法なのです。 

それは指先、つま先、背中など体全体で謝意を表現する一種の舞の形だと私は考えています。 

土下座は頭を下げる前からすでに始まっているのです。 
   
「許してくれてありがとう。何かしてもらいたいことはある?」

146: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:19:55.73 ID:fvXcJjEM0
お辞儀で本当に重要なのは頭を下げることではなく頭をあげるその瞬間です。 

ほむらちゃんの顔からは普段何の表情も読み取れません。 

しかし今その面には悲痛な申し訳なさがにじみ出ています。 
   
「お願いだからそんな気にしないでください。 

朝はほむらの気持ちを考えないで無遠慮におちょくりすぎました。 

こちらこそごめんなさい」

147: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:21:15.53 ID:fvXcJjEM0
さやかちゃんのお辞儀はそれこそ普通の女子中学生のお辞儀で、 

とてもほむらちゃんと比べられるようなものではありません。 

しかしお辞儀の本質は謝罪の気持ちを表現すること。 

さやかちゃんの申し訳ないという気持ちと恥じらい、 

困惑といった気持ちがこちらにひしひしと伝わってきます。 

ほむらちゃんの謝罪がさやかちゃんにも通じたのです。 

…そもそもさやかちゃんは怒っていないので通じるも何もないのですが、 

細かいことは気にしないでおくほうが幸せです。

148: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:22:30.01 ID:fvXcJjEM0
「あっそうだ…じゃあ。」 
   
「2時間目の数学の宿題の答えは写させないわよ。」 
   
「ピンポイントで読まれた!?やはりおぬし天才か!」 

さやかちゃんが2時間目の宿題を無事提出出来なかったのは、 

おそらく言うまでもないことでしょう。 
 

149: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:25:11.02 ID:fvXcJjEM0
~☆ 

2時間目が終わると3時間目は体育なので、 

女子は皆更衣室に行って着替えることになります。 
   
「今日寝坊して朝ご飯食べ損ねちゃってさー、 

お昼ご飯の前に運動ってやだよねー。お腹空くもん」 

すでにさやかちゃんのお腹からはくーと可愛い音が聞こえます。

150: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:26:32.80 ID:fvXcJjEM0
「食後すぐよりましよ」 

今日のほむらちゃんはさやかちゃんに対してそっけなさ6割減といった所です。 

やっぱりまだ気にしてるのかな? 

「お?今日はほむらいつもより話に付き合ってくれるし言葉に棘が少ない。 

…もしかしてついにデレが来たというのか!?」 

「はっ」 

「鼻で笑われた!?」

151: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:28:45.33 ID:fvXcJjEM0
いっつもこんな感じで仲良くしてくれたらいいのになあ…。 

「よっしゃー着替え終わったぞー。 

まどかよ、はやくするのじゃ。余は待ち切れぬぞ」 

さやかちゃんは体育の時間だけは明らかに気合いが違います。 

…しかし体育の時間の前に私にはしたいことがあります。 

よし今日こそは成功させよう。

152: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:30:20.57 ID:fvXcJjEM0
「ごめんねさやかちゃんもうちょっとかかりそうだから先行ってて」 

「ん、わかった。ほむらー行くぞー急げー」 

「なんであなたに命令されなきゃいけないのよ」 

口では嫌がりつつもほむらちゃんはちゃんとさやかちゃんを追いかけて行きました。 

…さてここからまずはトイレに行って時間調整です。 

 

413: ◆2DegdJBwqI 2012/12/30(日) 11:24:51.29 ID:GXNOq3JO0
 

授業開始の時間までもうギリギリなので更衣室には誰もいません。 

私はぐるりと周囲を一度見渡し誰もいない事をもう一度確かめると、 

ほむらちゃんの制服に顔を押しつけました。 

それは朝ほむらちゃんに抱きついた時にも感じた香り。 

いったいどこのメーカーのシャンプーを使ってるんだろう。 

時間がないので私はそのにおいを脳に記憶させながら、 

自分の今着ている体操着を素早く脱ぎ捨て、 

生まれたままの姿になります。 

154: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:34:17.99 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃんは普段から替えの下着を持っています。 

なんでも魔女退治の後怪我をした時などに汚れた下着のままでいるのが嫌なそうです。 

どこで着替えてるのかな?私はほむらちゃんの   を履きました。 

なんだかすごいいけないことを…思いっきりしてます。 

ほむらちゃんは私より背が高いけど細身なので今より少しでも太ったら履けなくなりそうです。 

幼児体型で良かったとこういう時だけ思います。

155: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:36:18.15 ID:fvXcJjEM0
そしてほむらちゃんのブラジャーの扱いに少し悩んで、 

ハチマキのように頭に巻きつける事にしました。 

ブラジャーつけてるってことは胸が成長してきて痛いのかな?そうじゃないことを祈ります。 

この間わずか30秒。前の失敗を反省して家で早着替えの練習をしていた成果です。 

そしてほむらちゃんの制服を着ると自分の体を触ります。 

出来るだけほむらちゃんを触っているように、 

またはほむらちゃんに触られているような意識で触ります。

156: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:37:24.29 ID:fvXcJjEM0
ブラジャーがないおかげでほむらちゃんの制服と私の●●がこすれるのがグッドです。 

罪悪感と急がなきゃという焦りから完全に没頭することはできませんが、 

そもそも没頭したら不味いのでこれぐらいがぎりぎりの線です。 

  「あっ、ほむらちゃん…。あっ…あっ、あっ」 

いつもより気分がのります。

157: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:38:52.14 ID:fvXcJjEM0
私はいつも家で確かに、 

こういうことをほむらちゃんとしたいなんて考えてしまっています。 

それでもこれはやっぱり違うんじゃないかな? 

そう思ったとたんに勝手に涙が出てきました。 

これだとほむらちゃんの制服が濡れてしまいます。 

慌てて自分がさっき脱ぎ捨てた自分の体操着で目を押さえました。

158: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:39:36.15 ID:fvXcJjEM0
「うっ…うう…うっ…」 

嗚咽が口から洩れてしまいます。 

私の涙でほむらちゃんの制服を汚さぬよう手早く脱ぐには骨が折れました。 

そして畳み終って次はほむらちゃんの   を脱ぎます。 

湿っていました。 

私の口から嗚咽が止まることはしばらくありませんでした。   

159: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:41:40.94 ID:fvXcJjEM0
よっしゃ問題の場面終わった 

ここからはこんな描写は少なくとも第二部まではないのでご安心ください 

あってキスまでです

160: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:42:31.05 ID:fvXcJjEM0
その後私の顔はとても見れたものじゃなくなってしまったので、 

こんな姿はほむらちゃんに見せたくないと思って保健室に行きました。 

…本当はほむらちゃんに合わせる顔がなかったのです。 

やっぱりこんなことしてはいけなかったんだ。 

どうしようもない後悔が私を襲います。 

きっと私が変わろうなんて思わなかったらこんなことしなかったに違いありません。

161: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:43:54.49 ID:fvXcJjEM0
うん、テンションあがりすぎて~☆入れ忘れた 
脳内で補完しといてください 
全然進んでないからって焦り過ぎですね 

162: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:46:38.16 ID:fvXcJjEM0
保健室の先生に気分が悪いと言うと、 

そこで寝ていなさいとだけ言って先生はどこかに行ってしまいました。 

何か用事でもあるのでしょう。 

私は今一人でいたい気分だったので助かりました。 

…とりあえず言われた通りに横になっていると本当に気分が悪くなってきました

163: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:47:40.38 ID:fvXcJjEM0
私みたいなグズで間抜けで何のとりえもないただの女子中学生が、 

ほむらちゃんにちょっと優しくしてもらっていたからって、 

いったい何を勘違いしていたんでしょう。 

こんな事をしちゃうような子がほむらちゃんと釣り合うわけがないよ…。 
   
「うっ…うあああぁぁぁ…」

164: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:50:01.90 ID:fvXcJjEM0
仲良くなるための道を自分から閉ざしててしまったことに今更気づいてまた涙が出てきます。 

何故こうなるだろうって今まで気付かなかったのでしょう。 

気付かないようにしていたからです。幸せだと思えば思うほど、 

ほむらちゃんと気持ちが繋がってない事が我慢出来なくなっちゃったんです。 

そしてその事実から逃げ出すために行為はどんどん過激になっていくばかりで…。

165: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:52:33.03 ID:fvXcJjEM0
今までは友達…だったかどうかも怪しい所だけど…の皮を被っている事が出来たけど、 

今となってはそれすらも私の良心が許してくれそうにありません。 

そもそもこれは本当に良心なのかな? 

本当のことを言ってほむらちゃんを傷つけて、 

完全に拒絶されることを恐れてるだけじゃないのかな。 

現に私は本当の事をほむらちゃんに言える気がしません。

166: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:53:46.49 ID:fvXcJjEM0
「どうしてこんなことになっちゃったのかな?」 

ガラガラと音を立てて保健室の扉が開きます。 

誰だろうと思っていると声が聞こえてきました。 

今ちょうど会いたくなかった二人です。 

「フヒヒヒヒヒヒッヒ。ほむらの顔面レシーブは何度思いだしても笑えるわ。 

バレーの歴史に名を残すレベルだよあれは。 

ほむらが鼻血を出しながらあおむけに倒れてる姿とかもう最高だったよー! 

ああ、笑いすぎて腹が痛い!」

167: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:54:40.68 ID:fvXcJjEM0
「ちょっと、保健室は静かにしなさい。 

あのベッドカーテン閉まってるし誰か寝てるのよ」 

「あちゃー…さやかちゃん反省しまーす」 

「あなたってホントアホさやか」 

「それ気にいったの?」

168: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:55:51.01 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃん怪我しちゃったんだ…。 

心配だけど今は顔見せたくないし、 

カーテン閉めてたらばれないだろうから安心かな。 
   
「…?まどかの気配がするのだけど」 
   
「おいおい、ホラーかよ。カーテン指さすのやめて。 

仮にホントだとしたらなんでわかるのよ。怖いんだけど」

169: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:57:28.00 ID:fvXcJjEM0
ホントになんでわかるのほむらちゃん。 

シャーと勢いよく音を立ててほむらちゃんの手でカーテンが引かれます。 
   
「うわ、まじでまどかじゃん。なんなの愛ゆえになせる業なの? 

…ってまどかどうしたのその顔!? 

日本が沈没したニュースを外国で聞いたかのような顔してるよ!」

170: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:59:00.52 ID:fvXcJjEM0
「なんでもないよ…」 
   
「なんでもないわけあるかー!さやかちゃんにちゃちゃっと相談してみなさい楽になるから!」 

相談出来る様な事じゃないしほむらちゃんが… 

ちらりとほむらちゃんの様子を見遣ると、 

彼女はこちらを無表情でじっと見つめていました。

171: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 07:59:55.04 ID:fvXcJjEM0
「ごめんね」 
   
「へ?いや別にいいよ。親友がこんな思いつめた顔してたらそりゃ心配するよ」 

私の卑怯なほむらちゃんへの謝罪の言葉をさやかちゃんはそう解釈したようです。 

訂正する勇気もなくこの顔の原因は言えないことを伝えようとすると、 

珍しくほむらちゃんが大きな声を出しました。

172: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:02:41.54 ID:fvXcJjEM0
 「美樹さやか。あなたはここにいなさい。 

わたしはまどかが保健室にいた事を体育の先生に言ってくるから」 

そう言われて初めて私は誰にも言わずに勝手に保健室に来ていた事に思い至りました。 

ほむらちゃんに本当に迷惑ばっかりかけて…恥ずかしい。 

もうここからいなくなってしまいたいよ。

173: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:03:28.91 ID:fvXcJjEM0
「…でもあんた鼻の傷はどうすんのさ」 
   
「魔力でもう塞いだわ」 
   
「え?でもほむらの魔法って…」 
   
「もう塞いだわ」 

「お、おう」

174: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:05:23.53 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃんの迫力は朝さやかちゃんに向けた物の比ではありませんでした。 

それは邪魔をする者は容赦なく排除しそうな程の勢いで、 

これがおそらく魔女に対峙する時のほむらちゃんの表情なのでしょう。 
   
「それに健康な人は授業に戻らなくてはいけないわ」 
   
「いや、ほむらよりは私のほうが戻る身としては自然でしょ。ただの付き添いだし」

175: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:06:11.67 ID:fvXcJjEM0
食い下がるさやかちゃんに、 

ほむらちゃんは少し考え込む様子を見せるとこう言いました。 
   
「さやかにまどかを任せたいの。お願いできるかしら」 
   
「…わかったよほむら。 

そうと決まればこのさやかちゃんにドンとお任せなさい!大船に乗ったつもりでね!」

176: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:07:17.75 ID:fvXcJjEM0
それを聞くとほむらちゃんは小さくコクリと頷いて、 

そのまま扉を音をたてないように開け閉めして保健室を出て行きました。 

さやかちゃんはほむらちゃんが出て行くまで、 

それを目で追いそして私のほうに向き直りました。

177: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:10:45.49 ID:fvXcJjEM0
「さあまどか、話してもらおうかな。 

ほむらがわざわざ二人きりの状況にしてくれたしね。 

ほむらにあんなに心配させちゃってさーまどかも罪な女だよホント。 

あいつが一番ここに残りたかったはずなのにさ」

178: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:13:23.11 ID:fvXcJjEM0
それはないよさやかちゃん。 

私なんてきっと彼女に面倒な奴だと思われているに違いないのです。 

一刻も早くここから出て行きたかったから、 

食い下がるさやかちゃんにわざわざ頼み込んだに違いありません。 

ただほむらちゃんは優しいから、 

私なんかができるだけ傷つく事のないよう、 

それを面に出さないようにしてくれただけなのでしょう。

179: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:15:30.58 ID:fvXcJjEM0
「うっ…うっ…」 

さやかちゃんの前だというのに思わず泣いてしまいました。 

こんなに辛い物だというのなら恋なんて知らなくてよかった。 

ほむらちゃんの邪魔になりたくなんてないのに気持ちが抑えられない。 

私はこんなに醜い人間でそれがたまらなく悔しい。

180: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:16:47.08 ID:fvXcJjEM0
「泣きたい時は泣けばいいんだよ。 

落ち着いてからでいいから話してみなよ。 

大丈夫。絶対笑ったりなんてしない。一緒に私も考えるから」 

さやかちゃんは恋に関して大先輩です。 

それにこの事は私が一人で訳もわからず抱えているには、 

あまりにも重すぎました。 

ぽつりぽつりと口から言葉が漏れます。

181: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:18:03.16 ID:fvXcJjEM0
「好きな…人がね……出来たの」 

「えっ!?まどかが!?マジで…うわーあちゃー…マジでかー」 

さやかちゃんは私の発言にまず驚愕した様子でしたが、 

その後はなんだか腑に落ちない態度を見せました。 

茶化しているという訳ではもちろんないのですが、 

思案に暮れているというか茫然としているという言葉がぴったりです。 

私だって女の子なのに…ひどいよさやかちゃん。

182: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:20:02.99 ID:fvXcJjEM0
「その相手はさ、まどかと親しい奴?」 
   
「ううん、仲良くなりたいんだけど私ばかり空回りしてて…」 
   
「そっか…そっか…」 

それからさやかちゃんは誰に言うでもなく、 

「これであいつも私と同じ失恋組かー」とか、 

「まああいつなら何があってもまどかを見守ってくれるよね」 

なんて小さな声でぼそぼそと呟いていました。

183: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:20:44.11 ID:fvXcJjEM0
誰か私のことが好きな人がいてくれてるのかな? 

多分考えすぎだよね。 

私のことを好きになる人なんているわけないし。 

それにいたとしてもほむらちゃん以外の愛なんていらない。 

欲しくない。

184: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:22:24.92 ID:fvXcJjEM0
「でもそれだけじゃなさそうじゃん?なにがあったの?」 

「えっとね…。その子の制服の匂いを嗅いだりね…しちゃったの」 

全部じゃないけど仕方ないよね。 

いくらさやかちゃんでもこの事だけは全て言う訳にはいきません。

185: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:24:29.64 ID:fvXcJjEM0
「それはまたやってしまいましたなー…」 
   
「私どうしたらいいのかな?」 

こんな事は本来人に聞くことじゃなくて、 

自分で考えなければいけないことのはずです。 

それでも私はさやかちゃんに尋ねずには居られませんでした。 
   
「難しいねーやっちゃった事を告白するかどうかはまどかしだいだと思うよ。 

…それでもひとつだけ、絶対にわかりきってる事があるよ」 

そう言ってさやかちゃんは私の目を覗き込みました。

186: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:27:32.03 ID:fvXcJjEM0
「もし、自分の思いから逃げ続けたら絶対後悔するってこと。 

自分の思いを汚したくないんだったらその思いに正直になるしかないんだよ」 

最近振られたさやかちゃんが言う言葉としてはその言葉はとても重くて、 

でもだからこそ私を真摯に思ってくれてるのが伝わってきます。 

やっぱりさやかちゃんは私の親友です。 

きっと私達がいつか死んでしまうまで、ううん死んじゃった後もずっと。

187: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:28:48.76 ID:fvXcJjEM0
だから私もさやかちゃんの思いを無駄にしない為に決めました。 

自分がしてしまったことを全部、 

そしてこのあふれんばかりの思いをほむらちゃんに伝えようって決めました。 
   
「…さやかちゃん、私今日その人に告白するね」 
   
「そっか…がんばって」

188: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:31:02.99 ID:fvXcJjEM0
さやかちゃんは私の頭をわしゃわしゃし撫でて微笑みながら激励してくれています。 

さやかちゃんはやっぱり私の最高の友達。 

でもほむらちゃんは叶うなら…もし叶うとしたら…。 
   
「じゃあ私は先に教室に戻ってるね。落ち着いたと思ったら戻ってきなよ。」 

そう言ってさやかちゃんは保健室を出て行きました。 

誰もいなくなった保健室の中で、 

私は自分の顔が自然とほころんで行くのを抑えることができませんでした。 

189: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:35:07.86 ID:fvXcJjEM0
~☆ 

放課後にほむらちゃんに告白しよう。 

そう決めて教室に戻ると、 

なにやらほむらちゃんとさやかちゃんは俯き気味に何かを話しこんでいます。 

ほむらちゃんは何があったのかとても苦しそうな笑みを浮かべていました。 

それに対してさやかちゃんは軽く涙を浮かべていて、 

どちらにも凄く話しかけ辛い。

190: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:37:56.57 ID:fvXcJjEM0
しばらく私がどうしようか右往左往していると、 

ほむらちゃんが私が教室に戻って来た事に気づいて、 

いつもの無表情に戻りやっぱりいつもの調子で言いました。 
   
「まどか、大丈夫?もう少し休んでいたらどうかしら?」 

声の調子はいつも通りですが、 

それでも私にはほむらちゃんが私を心配してくれているのが伝わってきました。

191: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:39:20.26 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃんはやっぱり優しい。 

私は彼女の優しさと、 

やはり距離は縮まっているのだという事に嬉しさを隠しきれませんでした。 

「むしろ上機嫌っぽいじゃん。てかさっきも体のほうはどうともなかったって言ったでしょ」 
   
「心配なものは心配なのよ」

192: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:40:21.60 ID:fvXcJjEM0
二人とも仲がいいなーと思いながら、 

放課後ほむらちゃんを誘おうと声をかけます。 
   
「あ、あのね…「ほむらー!今日はゲーセン巡りしよーぜ!」 

えっ…?

193: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:42:02.13 ID:fvXcJjEM0
「なんであなたと二人で…」 
   
「…今日一人でいるのは辛いと思ってさ。いいでしょ?」 
   
「…わかったわ。まあ、今日も私に勝てると思わないことね」 
   
「ぐぬぬ、一部の格ゲーと音ゲー。 

UFOキャッチャーが上手いだけで偉そうにしやがって…!今日は寝かさんぞホムラァ!」 
   
「ふふ、何よそれ」

194: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:42:45.74 ID:fvXcJjEM0
楽しそうに話す二人を尻目に私は衝撃の事実に打ちのめされていました。 

二人とも普段から遊んでいるの? 

私、ほむらちゃんと帰りどこかに行ったことなんて一度もないよ。 

やめてよほむらちゃん。 

そんなウキウキした顔で笑わないでよ。

195: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:43:35.81 ID:fvXcJjEM0
その顔は私まだ見たことないんだから。 

さやかちゃんだけのほむらちゃんの表情…? 

そうか普段の喧嘩みたいなやりとりは二人の照れ隠しだったんだ。 

本当は私なんかよりずっと仲がいいさやかちゃんがいるのに、 

私はクラスの中で私が一番ほむらちゃんと親しいなんて自惚れてたんだ。

196: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 08:45:52.52 ID:fvXcJjEM0
でも、それでも私は負けないよ。 

背中を押してくれた大好きなさやかちゃんが相手でも。 

この気持ちを嘘にしたくないから。さやかちゃんは敵なんだ。 

先ほどの幸せな気分はどこに行ってしまったのか。 

私は自分の中から、 

どす黒い塊の様な物が吹き上がって来るのを抑えることが出来ませんでした。 

【三話 終わり】

203: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 18:59:22.96 ID:fvXcJjEM0
【第四話 泥棒猫マミさん編】 

~☆ 

現在私は4時間目の授業を受けています。 

しかし先生が何を言ってるのかなんていつも以上に頭に入ってきません。 

今頭にあるのはほむらちゃんとのこと、ただそれだけです。 

私はほむらちゃんに放課後告白するのを諦めました。 

しかし今日はそれにうってつけといえる程ではないのですが、 

きっかけになるような事をちょうど計画していました。

204: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:06:10.86 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃんはお昼ご飯をカロリーメイトで済ましていると、 

以前帰り道家まで送って貰っている途中に言っていました。 

なので、今日私はほむらちゃんをお昼に誘うべく、 

こっそりお弁当をパパに手伝ってもらいながら朝作ってきたのです。 

しかしドジな私は登校中にほむらちゃんと仲良く手を繋げた事に浮かれてしまい、 

ついさっきまでそんな大事な事を忘れていました。

205: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:09:50.57 ID:fvXcJjEM0
先ほどようやく浮かれ気分から嫌でも覚めて、 

鞄を持ち上げるといつもより重いという事を意識して気づきました。 

あのまま浮かれたままだったら下手をすると家に帰ってから気づく所でした。 

危機一髪と云った所です。お昼休みになったらすぐ誘おう。 

そしてお弁当を食べてもらってから思いを伝えよう。 

そう思って今はただただこの時間が過ぎるのを待ちます。

206: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:12:43.74 ID:fvXcJjEM0
~☆ 

予定通りにチャイムが鳴りました。 
   
「ほむ…」 

急いで立ち上がって、 

前の方の席にいるほむらちゃんに後ろから呼びかけようとしますが、 

チャイムが鳴るか鳴らないかの時点で既に立ち上がり、 

早足で教室を立ち去ってしまいました。 

いつもはお昼休みになるといつの間にかいなくなっているという認識でしたが、 

まさかこんなに速くどこかに向かうなんて。慌ててほむらちゃんを追いかけます。

207: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:14:52.01 ID:fvXcJjEM0
「おーいまどかーどこ行くのー?」 

さやかちゃんには悪いけど 

私には振り返る余裕なんて全くありませんでした。

208: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:16:49.95 ID:fvXcJjEM0
~☆ 

ほむらちゃんが向かった先は屋上でした。 

まさか誰かと待ち合わせ?…そのまさかです。 

そこにいたのは私もよく知っている人物でした。 
   
「マミ…あなたどうやってここに来てるのよ…」 
  
「ほむらちゃーんこっちこっち!」 

209: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:17:57.20 ID:fvXcJjEM0
ほむらちゃん呼びだなんていったいいつそこまで親しくなったのでしょうか? 

ほむらちゃんの表情はこちらからは伺い知ることはできません。 

私の目に映るのはマミさんの笑顔とそちらに歩いていくほむらちゃんの背中だけでした。 
   
「巴マミ。私をほむらちゃんと呼ぶのだけはやめなさい。 

あの子以外にその呼び方で呼ばれるのは我慢ならない事だから」 

それはいったいどういう意味なんでしょうか。 

マミさんの笑顔が少し強張りました。

210: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:18:54.94 ID:fvXcJjEM0
「ご、ごめんなさい次から気をつけるわ」 

ほむらちゃんがマミさんの隣に腰をおろしました。 

マミさんはなにか言いたそう顔をしています。 

ほむらちゃんはそれに構わず無表情でお弁当を開けています。 

マミさんが言いました。 
   
「だったらほむほむって呼んでも構わないかしら?」

211: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:23:40.43 ID:fvXcJjEM0
そんな…馬鹿な…。 

私は足から力が抜けてしまい地面にぺたりと座り込んでしまいました。 

それは前に私がマミさんにほむらちゃんと仲良くなるにはどうしたらいいかを相談した時に、 

うっかりほむらちゃんをこう呼びたいと漏らしてしまったニックネームです。 

…マミさんも敵なのかな?

212: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:25:47.83 ID:fvXcJjEM0
一度心に膨れ上がった疑惑はとどまる所を知らず私の心をじわりじわりと蝕んでいきす。 

…でもほむらちゃんはそんなおちゃらけた呼び方嫌がるに違いありません。 

だから私も今までどういう話題を出していいのか困っていたのだから。 

「別にかまわないわ。さっきの呼び方以外ならあなたが呼びたいように呼べばいい。 

ただ前もって言っておいてくれないとそれに返事ができる保障は出来ないけれど」

213: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:26:37.34 ID:fvXcJjEM0
「それじゃ呼ぶのが鹿目さんだったら?」 
   
「ダメよそんなの」 
   
「え!?」 

そんな…そんなのってないよ…あんまりだよ… 

私はもうほむらちゃんがマミさんに盗られてどこか遠くに行ってしまったような気がして、 

そこから走って逃げ出してしまいました。  

   

214: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:29:35.66 ID:fvXcJjEM0
______ 

「鹿目まどか。どうやら彼女の精神は今非常に不安定な状態にあるようだね」 

まどかが走り去る姿を遠くから眺めながら誰に言うでもなく呟く。 

僕は毎日まどかのことを遠くから見守ってきた。 

たとえどんなにほむらから土下座をされてもそれは変わることがなかった。 

ほむらの土下座の厄介な所はそれを否定する事によって、 

周りの空気が僕を非難する物に自然と変わってしまう事だ。

215: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:31:25.54 ID:fvXcJjEM0
美樹さやかにも邪魔をされるようになった。 

佐倉杏子はボク達の姿を見かけると八つ裂きにするようになった。 

ちょうどワルプルギスの夜が来た次の日くらいからだったか。 

おそらく暁美ほむらに何か言われたのだろう。 

それ以来彼女たちの距離は目に見えて接近している。

216: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:32:57.25 ID:fvXcJjEM0
ソウルジェムが彼女らの魂であることを知ってからマミも僕を邪魔するようになった。 

ソウルジェムはボク達がエネルギーを回収出来るようにするためのシステムであると同時に、 

彼女たちが少しでも闘いという運命に抗っていける様にという、 

人類でいう所の親切心が込められている。 

どう考えてもソウルジェムを守っていれば死ぬことはなく、 

痛みも無意識のうちにセーブできるというシステムは、 

彼女らにとっても戦闘のリスクを単純明快にできるという点で合理的なはずだ。

217: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:37:01.25 ID:fvXcJjEM0
それを事前に何も言われなかっただとか魂の在処とかいう些細な事で、 

人間はすぐどちらに味方するかといった事を変えてしまう。 

感謝してくれてもいいくらいの事だというのに、まったくもって訳がわからないよ。 

確かにボク達は契約通りに彼女たちの願いを叶えた。 

その契約内容について事前に尋ねなかったのは彼女たちの責任だというのに、 

それをなぜかボク達だけのせいにしようとする。

218: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:39:57.09 ID:fvXcJjEM0
彼女らは皆勝手に僕たちを、 

願いを叶えてくれるボランティアか何かと勘違いしただけだというのにずいぶん身勝手な話だ。 

誰だって自分にとって何らかの利益をもたらす事以外をしようとなんて思わない。 

精神的な喜びとかいったものは人間にとって利益たり得ても、 

ボク達インキュベーターにはそれを感じることができない。

219: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:42:58.16 ID:fvXcJjEM0
ボク達が理解出来ないのは例えばマミについてだ。 

マミとボク達が築いてきた時間は、 

暁美ほむらがこの見滝原に来てマミと過ごした時間よりずっとずっと長い。 

それが今となってはボクはただのグリーフシード回収係となり下がり、 

対して暁美ほむらは「母性」とかいう曖昧かつ奇妙キテレツなものを感じさせると、 

マミのお気に入りとなった。 

隠し事をしているのは彼女も変わらないというのに。

220: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:44:45.93 ID:fvXcJjEM0
ボクたちに何もマミに対して特別な思い入れがあるわけではない。 

しかし彼女は優秀な魔法少女であり、佐倉杏子、そして美樹さやかに多大な影響を与えている。 

彼女がまどかが魔法少女になる様動いてくれれば僕の仕事もより容易くなるに違いない。 

もっとも彼女の寂しさといった感情は、 

既にさやかという後輩を得たことと杏子との一応の和解。

221: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:48:11.44 ID:fvXcJjEM0
そしてソウルジェムの秘密。 

…僕自身このような言い方をするのは甚だ遺憾で、 

機会があるならぜひ反論させて欲しいところだ。 

それを知った辺りから、 

ワルプルギスの夜襲来までの暁美ほむらのマミへのメンタルケアとそれに対する信頼。 

こういった事のせいでそれはだいぶ薄らいでおり、正直なところ望み薄ではあったのだが。

222: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:49:17.24 ID:fvXcJjEM0
宇宙のため信頼回復に努めた健気なある一個体はマミに向けて何と冗談を言ったのだ。 

これは感情のない僕たちにとっては相当な努力を必要とする。 

理解できないものを再現する苦労というのはそれこそ並大抵のものじゃあない。 

そんな一個体も最近凶暴化している杏子の凶刃に一昨日散った。 

まあ代わりはいくらでもいるけれど。

223: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:50:09.35 ID:fvXcJjEM0
「なるほど、ボセイね。僕たちにも母星があるよ。その星のためにボクは働いてるのさ」 
   
「QB、茶化すなら早く出て行って」 

人間というものは実に自分勝手なもので「場の空気」とかいう存在しないもの物に呼応して、 

「面白さ」「悲しさ」「怒り」などとといった感情の度合いを変化させる。

224: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:51:08.33 ID:fvXcJjEM0
理解し難い事に同じ事をしてもその都度感じ方が違うのである。 

いつも同じ様に物事に対処できないというのは実に不便だろうと思うが、 

おそらくそれが感情という莫大なエネルギーを扱うことの代償なのだろうね。 

さて、このまま校舎に出向いても構わないのだが、 

そうすれば必ず暁美ほむらに邪魔されてしまう事だろう。

225: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:51:54.35 ID:fvXcJjEM0
今はまどかが外に出てくるまで待つのがおそらく最善の手だ。 

情報収集のためにもボクはマミたちの話に耳を傾ける。 
   
「ど、どうしてし鹿目さんはダメなの?」 
   
「そんな恥ずかしい呼び方まどかにさせられるわけないじゃない。 

まどかに恥をかかせるわけにはいかないわ」

226: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:53:00.09 ID:fvXcJjEM0
「あなたって本当に世界の中心鹿目さんよね…。 

その百分の一でも自分の事に気を使ったらいいのに…」 
   
「だからあなたは私を毎日お昼に誘っているというの? 

どうせ一人さびしく教室で食べるのが嫌なだけでしょ」 
   
「…それも理由の一つだというのは否定しないわ。 

でもいくらなんでもお昼がカロリーメイト一本なんて…」

227: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:55:03.86 ID:fvXcJjEM0
「死なない程度には普段から栄養を摂取しているつもりなのだけれど」 
   
「それが良くないのよ。 

確かに見た目としては私もそのすらっとした細い体はうらやましいわ。 

…でもどう見ても体に悪いじゃない」 
   
「私はその胸の   脂肪の塊のほうがよっぽどうらやましいのだけれど」 
   
「これも結構あると大変なのよ? 

みんなから見られるし肩は凝るし…嫌な所はこれだけじゃないわ。 

ただそういうないものねだりは良くないと思うのよ私もあなたも」

228: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:57:33.30 ID:fvXcJjEM0
「なるほど確かに。 

私から見たらあなたの肉付きはどこも文句の付けようがないように見える。 

私の体にも客観的に見れば何か魅力があるという事なのかしら? 

自分ではごぼうみたいだって思ってるのだけど」 

「じゃあもっと食べればいいじゃないの。 

毎日少しそのお弁当の中身貰ってて思うけど、 

暁美さんって料理ちょっと引いちゃうくらい上手じゃない。 

なんでわざわざカロリーメイト食べるのよ」

229: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 19:58:48.78 ID:fvXcJjEM0
「なにも死ぬわけじゃないのに、 

料理なんかに時間をかけて味覚を喜ばせる必要を感じないのよ。 

栄養分は必要最低限とれていれば構わない。 

私が料理を覚えたのはまどかと話すきっかけ作りのためだし」 
   
「そのためにプロ並みの腕前ってあなたどんだけ鹿目さんのことが好きなのよ…」 
   
「そこまで褒めて貰える程とは思わないけど時間は腐るほどあったのよ」

230: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 20:00:41.21 ID:fvXcJjEM0
「…はあ、まあいいわ。 

じゃあ何か呼ばれたい呼び方とかある? 

私誰かお友達の名前をお友達っぽく呼んでみたいのだけれど、 

佐倉さんに暁美さん、美樹さんに鹿目さん。 

みんな名前だけで呼ぼうとするとしっくりこないのよね」 
   
「好きに呼んでくれてかまわないわ。 

ただ美樹さやかなら自分でさやかちゃんって言ってるし、 

もしかしたら親しく呼びやすいかもしれないわね」

231: ◆2DegdJBwqI 2012/12/22(土) 20:02:25.27 ID:fvXcJjEM0
「…ふふ、やっぱりほむほむは優しいわね。 

第一印象はもっと冷たい人かと思ってたけど、 

いざ深く接してみたら心の底ではなんだかんだで私達を心配してくれてるのが良くわかるわ。 

今だって私の相談に何だかんだでのってくれるし」 
   
「…私が気にかけてるのはあなたたちとまどかだけよ。他の人なんてどうでもいい」 
   
「それでも思ったり思われるのって嬉しいものよ。 

一人ぼっちじゃないってことだもの。…ごちそうさまでした」 
  
「ごちそうさま」 

236: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:29:51.12 ID:401vb9yj0
どうやら二人とも昼食を終えたようだ。 

マミが立ち上がりほむらの後ろに立ってほむらの髪をいじり始める。 

ほむらはそれを特に制止することなく黙って空を見上げていた。マミの口が開く。 
   
「どうしたら佐倉さんとまた仲良くなれるのかしら?」 
   
「…少なくとも杏子自身の感情はあなたと別れる前とさほど変わっていないはずよ。 

ただあなたと同じようにどう接していいのかわからないだけ」

237: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:30:54.27 ID:401vb9yj0
「それは私もわかってるわ。ただ二人きりになると会話が続かないの。 

失った時間をどう取り戻したらいいのか私良く分からなくて…」 
   
「時間を取り戻すことができるのはやはり時間だけよ。 

あなたたちは互いのことを大事だとまだ思いあっているのでしょう? 

ならその思いを忘れないことね。 

忘れないってことは何よりも願いを叶える為に必要なものだから」

238: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:33:32.47 ID:401vb9yj0
「…やっぱり暁美さんはお母さんが似合うわ。 

厳しいようで本当に困ってるときには精いっぱい助けようと優しく手を差し伸べてくれる。 

母なる海のような温かさね」 
   
「海で例えるのはやめて。 

ぺったんこな事が嫌でも頭を掠めるから。 

どうせだったら山にして頂戴。山の幸ってよく言うじゃない」 
   
「胸の事どんだけ気にしてるのよ…」

239: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:36:40.79 ID:401vb9yj0
「それはそうとあなたのお母さんって、 

なんだかあなたの事をただひたすら甘やかしていそうなイメージがあるのだけれど、 

私で代わりになるのかしら?」 
   
「暁美さんは暁美さんよ。私のお母さんとあなたは別人でしょう? 

誰かの代わりになる人なんていないわ。 

私はただ暁美さんがお母さんが似合うって思ってるだけよ」

240: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:37:14.55 ID:401vb9yj0
「…確かに死んだ人の代わりなんているはずないわね」 

おや?鹿目まどかが屋上に戻ってきたようだ。 

さっきも見たがお弁当を二つ持っているね。 

しかもどちらも開けた様子がない。わけがわからないよ。

241: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:39:08.84 ID:401vb9yj0
______ 

どうしても様子が気になって戻ってきてしまいました。まだです。まだ諦めません。 

もしかしたらほむらちゃんは私だけにほむらちゃんと呼ばれたい…。 

私にはほむらちゃんと呼んで欲しいからあんな事を言ったのかも知れないからです。 

ただ告白はいったい何時したらいいんだろう…

242: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:40:09.71 ID:401vb9yj0
お弁当も前日に言っておかなかった私のせいだけど渡せなかったし…。 

頭の中に色々な事がぐるぐる回っています。 
   
「ほむほむー。ほむほむー」 
   
「暑苦しいからやめて。その二つの邪魔な塊を私の頭の上からどけなさい巴マミ」

243: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:42:02.30 ID:401vb9yj0
何事かと二人のほうを見ると、 

マミさんがその胸の脂肪の塊をほむらちゃんの頭に載せて、 

後ろからぎゅーとしがみつくように彼女を抱きしめています。 

今私の疑念は確信に変わりました。 

今まで尊敬していたマミさんは実はあんな姑息な泥棒猫という正体を隠し持っていたのです。 

こんな反則技を使われてしまっては私はどうすればいいのでしょう。

244: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:45:17.52 ID:401vb9yj0
魔法少女という共通点。 

料理もお菓子作りもできる。    が大きい。 

優しくて気配りができる。    が大きい。 

たとえ私の気持ちがわかっていて、 

その上で私に見せつけるかの様に彼女をほむほむって呼ぶ。 

なんていう姑息な事をしていたとしても、 

私なんかと比べたら月とすっぽんといったスペックの差です。

245: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:46:51.67 ID:401vb9yj0
いや…そもそもあんなに素晴らしい人間であるマミさんが、 

そんな事をわざわざするでしょうか? 

私は「ほむらちゃんと凄く仲良しになりたい」って相談したんだから、 

マミさんは私がほむらちゃんに恋している事なんてわかるはずがないよね。 

きっとマミさんはただ今までの寂しさをほむらちゃんに甘えることで解消しようとしてるだけ。

246: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:49:21.20 ID:401vb9yj0
ほむほむ呼びは私が呼んでいいか確認するために呼び始めたと考えるとしっくりきました。 

…頭ではわかってもこの心の奥底のもやもやはむしろ膨れ上がるばかりです。 

じゃあこんな事になってしまっているのはいったい誰のせいなの? 

私が全て悪いに決まっているのですから。 

マミさんのお胸がほむらちゃんから離れて今度は肩がくっつくまで近くに座ります。 

そしてほむらちゃんの頬を指で突っつくマミさんに私はもう我慢できませんでした。 

そのまま今来た道を走って戻ります。 

何にたいしての涙を流しているのかは自分でもよくわかりませんでした。 

247: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:51:17.65 ID:401vb9yj0
______ 

「いったい何がしたいのあなたは?面倒だからその頬を突っつくのやめてもらえるかしら」 
   
「その必要はないわ」 

マミの顔は何故だか凄く誇らしげだ。 

おそらくロッソ・ファンタズマと杏子の技を命名した時以来の顔ではないかな?  

「…あなたまさかわざと私に叱られようと、 

そんなふざけた事をしてるんじゃないでしょうね?」 
   
「…」

248: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:52:32.92 ID:401vb9yj0
図星のようだね。 

マミの表情は見ていてずいぶんわかりやすい。 

ほむらにもそれが通じたようだ。 
   
「全くあなたはいつまでそんな子供っぽい事を…。大体思うのだけれど…」 

それを聞くマミの表情は実に穏やかなものだ。

249: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:53:01.95 ID:401vb9yj0
そういえば同じ怒りにも敵意からくる「怒り」と、 

相手を思った愛ゆえの「怒り」があるらしいと前にマミから教わったことがあったね。 

さて、そんな二人を眺めていると視界の隅の方に鹿目まどかが映る。 

彼女はまだ授業が終わっていないだろうに昇降口を出て校門へ一直線に走っていく。 

これは絶好のチャンスだ。僕はタイミングを見計らった。 

 
414: ◆2DegdJBwqI 2012/12/30(日) 11:30:52.24 ID:GXNOq3JO0
 

~☆ 

私は学校から逃げるようにどこを目的地とするわけでもなくただ走ります。 
   
「やあ、鹿目まどか」 

どこからともなくQBが現れました。 

止まらなくてはQBを踏んでしまう。 

慌てて勢いのついた足をどうにかその場に固定しました。 

251: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:56:51.11 ID:401vb9yj0
突然全力で走るのをやめたから息がうまく吸えない。 

QBは何も言わず私が息を整えるのをじっと見ていました。 

私の息がある程度整ったのを確認するとQBはいつもの動かない口で喋り出します。 
   
「なにか、君に叶えたい願いができたんじゃないかな?僕が叶えてあげるよ」 

そのQBの言葉を聞いてとたんに私の感情が爆発しました。

252: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:57:43.66 ID:401vb9yj0
ほむらちゃんは私が契約したらこの街にいる意味はなくなると言っていました。 

どういう意味かはわからないけど私がそれを無視することはできません。 

それにどうせQBが言うのは 
   
「暁美ほむらが君を好きになるように仕向けたらいい」 

とかそういう類の事でしょう。

253: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:59:03.98 ID:401vb9yj0
そんな事をして彼女を手に入れて何の意味があるというのか。 

誰も私を理解してくれない。 

そんな気持ちがQBを全てのはけ口にしようと私を駆り立てます。 

QBは私を心配してくれて言ってくれてるのかもしれないのに。 
   
「どいてよQB!私なんかほっといてよ! 

わたしなんかがなにをしたってもうどうしようもないんだよ!」

254: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 10:59:50.70 ID:401vb9yj0
「だから願い事を決めてくれれば…」 
   
「うるさい!どいてって言ってるでしょ!」 
   
「やれやれ…今の君は冷静な判断力を失っている。 

今の君に何を言っても無駄なようだ。またあとで来るよ」 

そういってQBは現れた時と同じように忽然と消えてしまいました。

255: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 11:01:30.04 ID:401vb9yj0
QBに八つ当たりなんかして私って本当に大バカ者だ…。 

周りの皆は良い人達なのに私一人でカラ回って足を引っ張って…。 

こんな私なんかいないほうがいいんじゃないかな? 

もうこんな世界からいなくなってしまいたい。

256: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 11:02:26.67 ID:401vb9yj0
そう思うと突然私の頭の中に声が聞こえてきました。 

それは甘く脳を痺れさせ誘惑するような声でした 
   
【だったらこっちに来なよ。こっちはいいよ。楽しいよ。 

みんな誰も君を邪魔をしない。君も誰も邪魔しなくて済むんだよ】

257: ◆2DegdJBwqI 2012/12/23(日) 11:04:22.69 ID:401vb9yj0
誰も邪魔せずに済む。 

ほむらちゃんが幸せになれる。 

そう思うといてもたってもいられなくなった私は、 

その声が聞こえた気がする方角に足を向け、 

ふらふらと歩き始めたのでした。 

【四話 終わり】

263: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:37:14.78 ID:fXPiva+l0
【第五話 まどか懺悔編】 

~☆ 

ここがどこなのかよくわからない。 

周りのなんだか悪い夢でも見ているような浮ついた感じ。 

そうだ、ほむらちゃんが私に初めて魔法少女としての姿を見せてくれた所もこんな感じだった。 

いや、思えばほむらちゃんがあの後魔法少女の姿を私に見せてくれた事なんて、 

他に一度もなかった気がする。 

やっぱり私、ほむらちゃんの事何も知らないんだ。

264: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:38:34.31 ID:fXPiva+l0
【辛い?苦しい?速くこっちに来なよ。そうすればすぐに楽にしてあげるよ】 

もし、このまま楽になったらほむらちゃんとももう会えなくなっちゃうのかな? 

それは嫌だなって思うと少し頭がはっきりしてきたような気がします。 
   
【そのほむらちゃんにとってあなたは本当に必要な人間なの? 

あなたは自分が何の役にも立たない邪魔な存在だって事を理解したからこそ、 

私を呼んだんじゃないの?】

265: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:39:39.53 ID:fXPiva+l0
そうだ、私はほむらちゃんに何ができるんだろう。 

あんなことをしちゃったんだ。 

きっと許してなんてもらえないよね。 

また頭の中が霧がかかったようになりました。 
   
【さあ急いで…!気付かれてたみたいだ…!奴が来る…!】 

奴…?こんな変な所に来る人って誰だろう? 

そうだほむらちゃんだ。私は歩みを止めました。

266: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:43:02.16 ID:fXPiva+l0
【いったいどうしたの?そんな所にいても苦しいだけじゃないの? 

あなたがどんなに周りに迷惑をかけてきたかようやくわかったんじゃないの?】 

ほむらちゃんと一緒に居られるならどんなに辛く苦しい事だって乗り越えて行ける。 

たとえ全てが間違っていたとしても私のこの本当の気持ちにだけは嘘をつきたくない。 

そんなことしちゃダメだって誰かに言われた気がするから。

267: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:46:33.42 ID:fXPiva+l0
【あなたはまた間違えようとしてる。わかったわ。私が迎えに行くから】 

しばらくその場で何もせず、 

ただじっと立っていると何かが前方からやってきました。 

あんな妙な姿をした奴を前にどこかでで見ました。 

恐ろしい姿をした怪物。 

こうやって私がピンチになるといつも決まってほむらちゃんが助けに現れるのです。 

私は嬉しい気持ちになりました。

268: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:48:30.91 ID:fXPiva+l0
【しくじった…しくじった…引き際を間違えたんだ。 

でもせめてこの子だけは楽園に連れて行ってあげなくちゃ…】 

「そいつ」は私の眼前に迫りました。 

ほむらちゃんはまだ現れません。 

何だか嫌な予感がして思わず腰が引けてしまいます。 

「まどかぁああああああ!」 

後ろからの突然の大きな声にびっくりした私は思わず尻もちをついてしまいました。

269: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:49:34.46 ID:fXPiva+l0
【!?】 
   
「もらったぁああああああああああ!」 

へたりこんだ私の頭上を飛び越えて飛んできた大きな槍が、 

「そいつ」の体を突き破って地面に突き刺さります。 
   
【ごめんね…あなたを救ってあげられなくて…。 

苦しみから助けてあげられなくてごめんね…】

270: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:51:44.90 ID:fXPiva+l0
そういうと「そいつ」、 

初めてみたけれどおそらく「魔女」という存在は跡形もなく消滅しました。 

異様だった周囲の景色もすぐに元に戻りました。 

まるで今ここで起こったことは本当にすべて悪い夢であったかのように。 
   
「きょ、杏子ちゃんありがとう」

271: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:53:15.86 ID:fXPiva+l0
「はぁ、はぁ、びびらせんなよな。 

ったくよー、アタシはマミたちに、 

使い魔は倒さないって話をつけてこの街の魔女狩ってるつうのにさー。 

あんたがやばそうな感じだったから来る途中に出てきた使い魔みんな倒しちゃったじゃん。 

お前には凄い素質があるんだろ。 

なにもあんなド低級中の低級な魔女に引っかからなくてもいいだろうが」

272: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:54:33.59 ID:fXPiva+l0
さっきはあれほどいなくなりたいと思っていたのに、 

いざ自分が本当に死にかけていたと思うと震えが止まりません。 

どうしよう、今になって自分が置かれていた状況が凄く怖い…。 

でもあの魔女は本当に悪い魔女だったのかな? 

そんな事がふと頭をよぎります。

273: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:56:14.86 ID:fXPiva+l0
「おいおい、大丈夫かよ。 

…このまま家に帰してもし明日になってもこのままだったら、 

アタシほむらに殺されるな」 

ほむらちゃんたちには一般人を結界に巻き込んだら死とかいう鉄の掟でもあるのでしょうか? 
   
「まあ落ち込んだ時には何か食うのが一番さ…食うかい?」 

杏子ちゃんはそう言って今開けたばかりらしいポッキーの箱から、 

ポッキー一本をこちらに向け差し出しました。  

 
415: ◆2DegdJBwqI 2012/12/30(日) 11:32:11.51 ID:GXNOq3JO0
 
~☆ 

「だいぶ落ち着いてきたみたいだな」 
   
「うん…何から何までごめんね杏子ちゃん」 
   
「気にすんなよ。あたしらその…みんな友達だろ? 

それにたまにはああいうのも悪くない。気分がすかっとする」 

杏子ちゃんは照れ臭そうに頬をポリポリ掻きながら言います。 

その様子が可愛らしくて、 

なんだかいつもの杏子ちゃんとのギャップに少し笑ってしまいました。

275: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 13:59:31.09 ID:fXPiva+l0
「へへ、笑うなよ。言ってるこっちも結構恥ずかしいんだぞ、今の」 

今までの緊張が急に緩んでしまったからでしょうか? 

尋ねるつもりのなった事が口からついこぼれてしまいました。 
   
「魔女の口付けを受ける人っていったいどういう人なの?」

276: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:00:59.74 ID:fXPiva+l0
杏子ちゃんの穏やかな表情が少し厳しいものに変わります。 

みんなにはせめて日常の中ではこんな顔をさせたくないのに。 

私は慌てて取り消そうとしましたが杏子ちゃんはそれを遮るようにしてしゃべり始めます。 
   
「まず心に何か抱えてるやつさ。だれだって何かを嫌だと感じることはある。 

その心のしこりを大きくして殺すのが魔女っていう存在。アタシら魔法少女の餌。これが一つ」 

杏子ちゃんは私じゃないどこかを見ながら話を続けます。

277: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:03:05.81 ID:fXPiva+l0
「あともう一つアタシにわかってるのはその魔女の波長との相性があるってことだな。 

これが合うことで魔女とそいつとの間で架け橋が生まれて魔女の結界へと誘われるわけだ。 

…なあまどかは今何を抱えてるんだ?これを取り除かない限りお前の素質とかを考慮すると、 

今日みたいなことがまた起こらないとも限らない。 

アタシに話してみなよ。なーにアタシは教会の娘だったからね。 

懺悔の一つや二つしてくれて構わないよ、秘密も守る。 

…もっともアタシはずいぶん薄汚れちまった。したくないならしなくてもいい」

278: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:04:33.76 ID:fXPiva+l0
杏子ちゃんはまた私のほうを見ます。杏子ちゃんは汚れてなんかないよ。いい子だよ。 

しかし杏子ちゃんの質問には答えず私は自分の質問を続けます。 
   
「…じゃあそもそも魔女っていったいなに? 

本当に悪い人…じゃないけど、 

とにかく本当にそれだけなのかな?QBは魔女は悪いものだとしか言わないけど」

279: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:06:16.16 ID:fXPiva+l0
杏子ちゃんの今までの険しい表情は今度は無表情に変わりました。 

しかしほむらちゃんの表情からの感情の読み取れなさはこんなものじゃありません。 

杏子ちゃんの目は私にこう語りかけていました。 

…おまえはいったい何を知っている?と。

280: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:11:11.74 ID:fXPiva+l0
「あのね、さっき杏子ちゃんが魔女を倒すまで魔女の声が聞こえていたの。 

多分魔女の口付けを知らないうちに受けていたんだと思う。 

それでね、結果的に彼女は私を殺そうとしたけど、 

途中話しかけてきたのは「苦しいことから逃れられる」とか、 

「こっちのほうが楽しい」みたいな事で、 

私にはそれがただ私を誘うためのトラップだったとはどうしても思えないの。 

なんだかまるで本当に私のためだと思ってくれてたような…」

281: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:14:10.47 ID:fXPiva+l0
杏子ちゃんは私の話を聞く間なにやら苦しげな表情をしています。 

私は聞いちゃいけないことを聞いちゃったのかな? 

そう思って喋るのを止めると、 

杏子ちゃんは囁くような声で語り始めました。

282: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:15:20.01 ID:fXPiva+l0
「わからねえよ…そんなこと。アタシは魔女じゃないからね。 

ただアタシの経験上言えるのは例外なく魔女は周りの人間を殺すってことさ。 

どんな過程があっても結果はあんたの言った通り殺すんだよ魔女は。 

そしてアタシたち魔法少女はそれを狩る必要がある。 

たとえそいつがどんなにいい魔女だったとして、不幸をばらまくなら殺すしかねえだろ」

283: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:18:26.48 ID:fXPiva+l0
そんな勇ましい事を言ってはいても、 

それを口にする杏子ちゃんの様子はどこか悲しげでした。 

そう、何かに悩んでいるのは私だけじゃないのです。 

それにこんな事でいつまでもうじうじしていたら杏子ちゃん 

…マミさん、さやかちゃん、そしてほむらちゃんに心配をかけるに決まっています。 

だって私達は友達なのだから。 

私は杏子ちゃんに自分の罪を懺悔することに決めました。 
   
「あのね…杏子ちゃん、私ほむらちゃんのことが好きなの。 

友達としてじゃないの。恋の対象として好きなの」      

284: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:19:45.54 ID:fXPiva+l0
~☆ 

「そっか。そりゃまた大変だったな」 

杏子ちゃんに私の気持ちをすべて話しました。 

私のした事もすべて話しました。 

ほむらちゃんの   を履いた辺りのくだりはさすがに杏子ちゃんの顔も引きつっていたけど、 

これは仕方のない事です。明らかに正常な反応です。

285: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:21:37.30 ID:fXPiva+l0
「ねえ、杏子ちゃん。私いったいどうしたらいいんだろう? 

ほむらちゃんを傷つけたくないの。 

それに友達だったらマミさんにさやかちゃん。そして多分杏子ちゃん。 

魔法少女の皆のほうがふさわしいと思う。 

…私もほむらちゃんの事友達だってそりゃ思ってるけど、 

やっぱりみんなより少し遠いの。 

もう嫌だよ…こんなに苦しいのは…こんなに好きなのに…。 

こんな気持ちを知られてほむらちゃんに迷惑かけたくないよ…嫌われたくないんだよ」

286: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:22:57.07 ID:fXPiva+l0
杏子ちゃんは私の両肩に手を添えて私の顔を覗き込むようにして言いました。 
   
「なあ、まどか。そんなお前のしたくない事なんてどうでもいい。 

お前自身はいったいどうしたいんだ」 
   
「え?」 
   
「お前の本当の気持ちさ」

287: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:24:17.08 ID:fXPiva+l0
私の本当の気持ち…。 
   
「ほむらちゃんが欲しい。ほむらちゃんには私のことだけ見ていてほしい」 

自分の強欲さが情けなくなって杏子ちゃんから目をそらそうとしますが、 

杏子ちゃんは肩に置いていた手で私の頬を挟み込みそれを許してくれません。

288: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:26:24.37 ID:fXPiva+l0
「ならそれでいいじゃんか。周りに障害がいっぱいだなんだが重要なんじゃねえ。 

結局お前が戦うかどうかなんだよ。自分が欲しいと思った物の為にな。 

大切なのは相手に伝えることだ。自分の思いをさ」 

戦う。その言葉に私の奥底の何か凄く熱い気持ちが滾るのを感じます。 

そうだ、私の戦場はここなんだ。気持ちを伝えるんだ。

289: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:28:16.37 ID:fXPiva+l0
「私ほむらちゃんに会いたい…」 
   
「ああ、それなら心配しなくていい。アタシが連絡しといたから」 
   
「え?」 
   
「お前が魔女に襲われてあわや死にかけてた事、 

正直にメールで送っといてやったからな。こってり絞られてこい」 

そう言って杏子ちゃんは私から少し離れます。 

なんで杏子ちゃんが自分の携帯を持っててほむらちゃんのアドレスを知ってるの? 

凄く嫌な予感がしたので聞いてみました。

290: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:29:34.04 ID:fXPiva+l0
「どうして杏子ちゃんが携帯を持ってるの?」 
   
「ん?ああ、ほむらに連絡用として持たされてるんだよ。 

…この街に来てからはアタシは毎日ほむらの家に泊まってるくらいの仲だからな」 
   
「へーそうなんだ。ふーんそっか。そうなんだね…」

291: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:30:17.40 ID:fXPiva+l0
こんなところに予想外の伏兵がいました。 

さやかちゃんやマミさんとは比べ物にならないほどの強敵がいたのです。 

思わずまた心の中にいやーな感じ、 

あなたなんかに絶対負けないといった気持ちが膨れ上がってきます。 

それを必死で沈めようとする私でしたが、杏子ちゃんは笑って言いました。

292: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:31:48.22 ID:fXPiva+l0
「そう、その気持ちさ。忘れるなよ。 

願いを叶えるために絶対に必要なのは奇跡じゃない。 

ちょっとした偶然と想いさ。 

お前がつかむのは奇跡じゃない。偶然であれ必然であれそれが運命なんだ」 

そう言って杏子ちゃんは背を向けてどこかに歩きだしました。

293: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:33:50.16 ID:fXPiva+l0
ありがとう杏子ちゃん。 

きっとこの思いは言わなくても彼女に伝わっていることでしょう。 

しかし思いは伝えることが重要なのです。黙っていたら何も伝わらない。 

私がいつまでも黙って我慢していたところで、 

都合良く誰かが手を差し伸べてくれるかはわからない。 
   
「ありがとう杏子ちゃん」 

杏子ちゃんは足を止めました。

294: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:35:36.69 ID:fXPiva+l0
「もしお前らが凄く仲良くなったとしたらほむらの家も居心地が悪いからな。 

これからマミと仲直りでもしに行くよ。 

あの時あんな別れ方してごめんなさいって思いを伝えてな。 

いいか、まどか。これは仕方のない事なんだからな」 

なんで私に弁解しているのだろう。思わずおかしくて笑いだしそうになります。

295: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:37:36.19 ID:fXPiva+l0
「ああ、そうだ…あなたの未来に幸多からんことを祈って…。 

こういう時には何か食うのが一番ってね」 

そう言って杏子ちゃんは振り返り早足で戻ってきて言いました。 
   
「食うかい?」

296: ◆2DegdJBwqI 2012/12/24(月) 14:39:12.09 ID:fXPiva+l0
差し出されたさっきのポッキーの箱にはもう残り一本のポッキーだけ。 

いったいいつのまに食べていたんだろう。 

なんだかそれが妙におかしくって私は思いっきり大笑いしてしまったのでした。 

【五話 終わり】

305: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:34:45.92 ID:Tm9ZgNDG0
【第六話 告白編】 

~☆ 

杏子ちゃんにそこで待ってろと言われたのでしばらくその場で待機していると、 

ほむらちゃんが前方から走ってきました。 
   
「ほ!ほむらちゃーん…」 

彼女の姿を見た私は大きな声で名前を呼び注意を引こうとしますが、 

その声は次第に小さく尻すぼみに消えてゆきました。 

ほむらちゃんが鞄を大事そうに抱えながら走り泣いていたのです。

306: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:36:44.51 ID:Tm9ZgNDG0
私は自分が彼女にどれほど心配をかけていたのかを今更理解して、 

ほむらちゃんにいったい何て謝ったらいいのか分からなくなりました。 

ほむらちゃんにとって私も大切な友達であるのはわかっていたはずなのに、 

それを自分に自信がないからって勝手に妄想の産物みたいに思っていました。

307: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:37:57.62 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃん自身の気持ちは何も聞こうとせずに。 

ほむらちゃんはそのまま私の胸に飛び込むとそのまま泣き続けました。 
   
「ほむらちゃん心配かけてごめんね」 

しばらくほむらちゃんが泣きやむまで私はずっとその頭をなで続けました。

308: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:40:07.31 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

「ほむらちゃん…ちょっとは落ち着いた?」 

落ち着いて話をしようと、 

泣きやんだほむらちゃんを近くの公園まで引っ張ってきてベンチに隣同士で座りました。 

ほむらちゃんはここに来るまで私の腕に必死でしがみついて離そうとしなかったので、 

歩くのが凄く大変でした。

309: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:41:28.35 ID:Tm9ZgNDG0
その姿はまるで迷子になった幼児がようやく親に巡り合えたようで、 

少しほほえましくもありましたが、 

ほむらちゃんにそんな思いをさせたのは私なんだと思うと、 

そんな浮かれた気持ちもすぐにどこかに消えてしまいました。 
   
「まどか、本当にごめんなさい…」 
   
「ほむらちゃんは何も悪いことなんてしてないよ」

310: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:42:49.93 ID:Tm9ZgNDG0
そう、悪いのは卑怯だった私。 

しかしほむらちゃんは首を横に振って続けます。 
   
「私がまどかから目を放さなければ… 

私がまどかの悩みにもっと早くに気がついていたら…。 

私がもっと…」

311: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:44:46.34 ID:Tm9ZgNDG0
私が私が私が…ほむらちゃんはいつもそればっかり。 

いっつも私を甘やかそうと優しくするばかりで私には何も返させてくれない。 

私の心の中にはほむらちゃんへの愛しさがこんなに溢れているのに。 

あなたの傍を歩く資格は私にはないのかな? 

何だか悔しくなったので、 

ほむらちゃんが私を凄く大切に思っている事がわかった今だからこそ出来る悪戯をします。

 

313: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:50:06.60 ID:Tm9ZgNDG0
 

「もう一度言うけどほむらちゃんは何も悪くないよ。悪いのは全部私なんだから」 
   
「だって…」   

「だってもへちまもないんだよほむらちゃん。 

…もう私は怒ったんだから。ほむらちゃんのことなんか嫌いだよ」 
   
「まどかぁ…」 

ああ、ほむらちゃんが泣いてしまいそうです。慌ててフォローします。

314: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 00:52:29.40 ID:Tm9ZgNDG0
「で、でも仲直りして欲しいんだったら一つ我儘を聞いてほしいなあ…なんて」 
   
「まどかの頼みなら出来る事は精いっぱいやらせて貰うわ。」 
  
「そ、それじゃあほむらちゃん。この後私と二人で学校を少しおさぼりしなさい」 
   
「ああ、何だそんなことね。それならむしろ丁度良かったわ」 

丁度良かったというのはいったいどういう事なのでしょう?

315: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:03:22.07 ID:Tm9ZgNDG0
「私お昼休みにお弁当を屋上で食べて、 

5時間目の始まる直前くらいに教室に戻ったの。 

そしたらまどかが昼休みになってすぐどこかに行ってからずっと帰ってこないと、 

さやかに言われて慌ててまず校内を探したわ。 

その結果校内のどこにもまどかがいないことがわかったから、 

騒ぎにならないようすぐにまどかと私の早退許可をとって街中探しまわったの。 

けれど一人で探しても埒が明かなかったから、 

杏子に手分けして探して欲しいとメールをしてみた。 

するとしばらくたってあんな内容が返ってくるものだから本当に驚いて、 

怖くてもうどうにかなってしまいそうだったわ」

316: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:05:12.53 ID:Tm9ZgNDG0
「ほむらちゃん本当にごめんね…」 

ほむらちゃんの目の前でそれこそ土下座でもしないといけないのでないか、 

というくらい派手に迷惑をかけています。 

でも土下座にかけて一流のほむらちゃんに中途半端な土下座なんて見せたら、 

それこそ私の誠意を疑われてしまうのではないでしょうか? 

私って何をやってもホントうまくいかないなあ…。

317: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:07:00.44 ID:Tm9ZgNDG0
「あなたが無事元気でいてくれることが私にとっての幸せなの。そんなに謝らないで」 

ほむらちゃんは本当に優しい。 

なんだか今度は私が泣かされてしまいそうです。 
   
「あなたにもこれから何か用事とかがあるかもしれないけど、 

私は今日もうあなたが学校に戻る気がないようで嬉しいわ」 

「え?どうして?」

318: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:07:55.86 ID:Tm9ZgNDG0
なにげなく尋ねたその質問は、 

時間が経って普段通りの無表情に戻ったほむらちゃんを少し動揺させました。 

そこにはほむらちゃんが動揺するような何かがあるんだ…。 
   
「ねえ、どうしたの?私凄い気になるよ」

319: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:10:43.07 ID:Tm9ZgNDG0
「…あなたには今魔女を呼び寄せるほどの悩みがあるのでしょう? 

出来るだけ今日は家で大人しくしていて欲しいの。 

ここで下手に無理をするとまどかに一生消えないトラウマが残ってしまうかもしれないわ」 

そう述べるほむらちゃんの表情には何の変化もありません。

320: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:12:19.69 ID:Tm9ZgNDG0
しかしその左手の人差し指は小刻みに彼女の膝を叩いています。 

私は直感しました。 

ああこれは嘘なんだなって。 

しかしこれ以上ほむらちゃんの主張を否定してまで聞くわけにはいきません。 

私は話題を変えることにしました。

321: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:13:59.26 ID:Tm9ZgNDG0
「でも鞄とかどうしようね…」 
   
「ああまどかの鞄なら大丈夫よ。ここにあるから」 

そう言ってほむらちゃんは自分の膝の上の鞄を指さします。 

「あれ?ほむらちゃんの鞄は?」 
   
「まどかがもし早退するなら鞄がないと困るでしょう? 

私の鞄は邪魔だから置いてきたわ。大丈夫、ほとんど必要なものは入ってないから」 
   
「もうほむらちゃんったら…」

322: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:16:02.45 ID:Tm9ZgNDG0
これは優しいとかそんな言葉で表す限度を超えてる気がしてさすがにやりすぎだと思います。 

もっと私なんかじゃなくて自分の事を考えたほうがいいよ。 

心の中でそうは思っても、 

ほむらちゃんが私の事を第一に考えてくれたと思うと幸せで、 

私は彼女に結局何も言うことはできないのでした。 

323: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:22:05.37 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

「はい、まどか」 

「ありがとうほむらちゃん」 

ほむらちゃんが「何か買ってきて欲しい飲み物はある?」と聞いてきたので、 

私達二人分のペットボトルのお茶を買って来て貰う事にしました。 

だいぶ予定とはずれましたが、 

今がチャンスなので私手作りのお弁当を二人で食べるのです。 

返して貰ったので今は私の膝の上に置いてある鞄を覚悟を決めて開けました。

324: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:25:30.62 ID:Tm9ZgNDG0
「ねえ、ほむらちゃん、見て」 
   
「これは…お弁当が二つあるわ」 

わけがわからないという顔をほむらちゃんはしていますが、 

私にも腑に落ちないことがあります。

325: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:26:25.44 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃんは確かに先ほど、 

全速力で泣きながらこちらに向かってきていた様に見えました。 

しかし私の眼前にあるお弁当はパパと朝一緒に詰めた時と比べてまったく変わっていない様子で、 

ほむらちゃんはなんだか無駄な所で凄いんだなあと感心してしまいます。

326: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:27:25.10 ID:Tm9ZgNDG0
「こっちのお弁当をね、ほむらちゃんに食べて欲しいの」 
   
「え?」 

ますます不思議そうな顔をするほむらちゃん。それも当然のことです。 

しかしここは折れてはならない場面です。 
   
「なんでかはね、聞かないでほしいの。 

たださっきわがままを聞いて欲しいって言ったでしょ。それじゃダメかな?」

327: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:29:53.13 ID:Tm9ZgNDG0
我ながら無茶苦茶な事を言ってると思います。 

そもそもさっきほむらちゃんはマミさんと一緒に自分のお弁当を食べているのです。 

やっぱりこんなお願い叶いっこないよ。そんな思いが頭を掠めます。 
   
「構わないわ。私もあなたとこういう事をしてみたいと思っていたの」 

お弁当を私から受け取って蓋を開けお箸を持つほむらちゃん。

328: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:34:04.31 ID:Tm9ZgNDG0
しかし中々おかずに手をつけようとはせず何かについて真剣に考え込んでいるようです。 
   
「私も彼女のように覚悟を決めるべきなのかもしれないわね…」 

「彼女」が誰なのかわかりませんがそんなに食べたくないのでしょうか? 

ほむらちゃんに慌てて申し出ます。 
   
「め、迷惑だったよね私のお弁当なんて…。ごめんね…」

329: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:38:53.53 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃんの手からお弁当を取り上げようとします。 

しかしほむらちゃんは箸を持っていないほうの手でピシリと私の手を払いのけました。 
   
「そうじゃないわ。先ほども言ったでしょう。 

私はあなたとこういう事をしてみたいとずっと前から思っていたの」 

やっぱりほむらちゃんの表情は私に何も情報をもたらしてくれません。 

しかし彼女の態度、声の迫力、払いのける手の強さは、 

確かに彼女が私のお弁当を食べたいと思っているのだと私に語りかけているようでした。

330: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:42:46.30 ID:Tm9ZgNDG0
「まどか、私からも一つお願いがあるのだけれど」 

ほむらちゃんのお願い。 

私にも何かほむらちゃんに頼られる事があるんだ。 

そう思うと私は顔がニヤケてしまいそうなくらい嬉しくなりました。 
   
「うん、いいよ。誰でもないほむらちゃんのお願いだからね。私出来るだけ頑張っちゃうよ」 

いや、もうすでに多分顔がどうしようもないくらいにやけちゃってる気がします。 

なんだかすごく恥ずかしいです。

 

416: ◆2DegdJBwqI 2012/12/30(日) 11:38:07.63 ID:GXNOq3JO0
 

「そう、ありがとう」 

そういってほむらちゃんは美しい自身の長い黒髪をファサッってかきあげます。 

この仕草はほむらちゃんがカッコつけたい時と照れてる時にしているんだろうなあって、 

私は勝手に思ってます。可愛いです。 

「あなたのお弁当をこれから食べる事が出来るのはとても嬉しい」

332: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:47:54.90 ID:Tm9ZgNDG0
「ただ私は先ほど昼休みに巴マミとともに自分のお弁当を食べたから、 

こんなにたくさんの量を食べ切ることはとてもできそうにないわ。 

無理だと思う理由は他にも元々私はかなり小食な方だというのもあるわね。 

そこでまどかにお願いしたいのだけれど私と一緒にこのお弁当を食べてくれないかしら?」

333: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:49:48.07 ID:Tm9ZgNDG0
「な、なんだ良かった…。てっきりもっと大変なお願いかと思ってたよ」 

私もパパに作ってもらったほうのお弁当があるけど、 

ほむらちゃんに私のお弁当を食べてもらえるならお安いご用です。 

334: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 01:53:03.04 ID:Tm9ZgNDG0
これで徹夜したら馬鹿なのでひとまず寝ます 

起きれたら五時から再開します 

六話が終わってようやくだいたい一部の二分の一とかいうこの長さ 

ここからはお弁当食べさせあいパートです 

告白してないのに普通にいちゃいちゃしてる気がするけど気にしない気にしない 

338: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:37:01.78 ID:Tm9ZgNDG0
おはようございます 

起きたら嫌になるくらい寒くて布団から出る気がしなかったので 

もう一回寝てさらにもう一回寝てもう一回の計四度寝しました 

今から六話を多分終わらせます 


339: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:39:44.24 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

私たちは先ほどよりほんの少し離れて座っています。 
   
「はいまどか、あーん」 

いったいほむらちゃんは何を考えているのだろう? 

そんな事を頭の隅で考えつつも私は素直にほむらちゃんのお箸からおかずを受け取ります。 

「どう?おいしい?」 

自分の作ったお弁当について感想を求められるのも変な話です。

340: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:41:27.22 ID:Tm9ZgNDG0
「う、うんおいしいと思うよ」 

パパの監修の元で作ったので味に特に問題があるようには思えません。 
   
「本当は私のお弁当でやりたかったのだけど全部食べてしまったし仕方ないわね。…はぁ」 

ほむらちゃんはため息をつきました。 

今なんだかよくわからないくらい幸せです。 

私このまま幸せすぎて死んでしまうんじゃないかな?

341: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:42:52.48 ID:Tm9ZgNDG0
「じゃ、じゃあほむらちゃん。あーん」 
   
「あ、あのねま、まどか。恥ずかしいからあまりこっちを見ないで…」 

先ほど私にあーんした時にはあれほどなんともなさそうだったのに、 

いざ私にあーんされる番になるとまるで別人のようです。 

私だって恥ずかしかったんだからね。 

でも私はほむらちゃんにあーんするのも恥ずかしいのになあ…。

342: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:44:15.34 ID:Tm9ZgNDG0
「ほむらちゃんは私にあーんするの恥ずかしくなかったの?」 
   
「もし手元が狂ったら可愛い可愛いまどかの口の中を傷つけてしまうでしょ? 

恥ずかしがっている場合ではなかったのよ」 
   
「も、もうほむらちゃんったら…」 

そんなこと急に言われたら勘違いしてしまいそうです。 
   
「ほら、ほむらちゃん。あーんだよ」 
   
「は、はい」

343: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 11:57:46.26 ID:Tm9ZgNDG0
ごくりと息を呑み込んだほむらちゃんはギュッと目を瞑り、 

大きく口を開け勢いよくこちらに向かって飛び込んできました。 
   
「わっ!わっ!ほむらちゃん!めっ!」 
   
「まどか?」 
   
「まどか?じゃないよほむらちゃん。 

危ないでしょそんな事したら。可愛い可愛いほむらちゃんが怪我でもしたらどうするの」

344: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:00:15.11 ID:Tm9ZgNDG0
…これは予想以上に恥ずかしいです。 

ほむらちゃん、 

そしておそらく間違いなく私も顔が真っ赤になりました。 
   
「…ほむらちゃん。次は目を瞑っちゃ駄目だからね。大丈夫だから落ち着いて」 
   
「わ、わかったわ」 

多少ぎこちないけれど今度はうまくいきました。

345: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:04:38.72 ID:Tm9ZgNDG0
「どう?おいしい?」 

「…ごめんなさいまどか。緊張しすぎて良く味わう前にうっかり飲みこんでしまったわ」 

「もう、ほむらちゃんたら」 

二人でほむらちゃんの可愛い失敗をひとしきり笑った後には、 

さっき二人でこのベンチに座った時の陰鬱な空気なんてもうどこにも見当たりませんでした。

346: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:09:57.12 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

それからしばらくして徐々にコツをつかんだ私達は、 

互いの口に箸を順番で効率良く向け続けています。 

ほむらちゃんの持っていたお弁当がついに空になりました。 
   
「食べ終わったわね」 
   
「うん」 

もし私の勘違いでないならば、 

二人共が楽しい時間が終わってしまったことへの、 

ちょっとした寂しさを感じていました。

347: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:11:50.41 ID:Tm9ZgNDG0
ふと自分の膝元を見るとほとんど手つかずのお弁当がありました。 
   
「あのね、ほむらちゃん」 
   
「なにかしら、まどか」 
   
「私はこれから自分の分のお弁当を食べなきゃならないんだけれど…。 

ほむらちゃんが食べさせてくれないかな?」 
   
「…ええ、もちろん喜んでやらせて貰うわ」

348: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:13:12.89 ID:Tm9ZgNDG0
私達のしようとしている行為は間違いなく無意味で支離滅裂です。 

でもその行為のまとまりのない意義は決して不愉快なものではなく、 

なんだか理由もなく互いの心が通っているようなそんな気持ちにさせるものでした。

349: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:16:14.40 ID:Tm9ZgNDG0
「はい、まどか。あーん」 

そう言いながらにっこりするほむらちゃんを見て、 

私はこれからしなくちゃならない告白という案件を、 

一度全部忘れてしまいたいと思ってしまいました。 

そしてこの幸せを今日という一日が終わるまで続けることができればいいのになんて、 

贅沢な事を考えてしまいます。 

…ただ少なくともこの幸せはまだしばらくは終わりそうにありません。

350: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:17:21.86 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

名残惜しいけれど最後の一口がほむらちゃんの手により私の口に運ばれます。 
   
「ごちそうさまでした」 
   
「ごちそうさま」 

もう何も食べれそうにありません。今日の晩御飯どうしようかな。 

そんな事を考えているとほむらちゃんが突然立ち上がりました。

351: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:19:40.30 ID:Tm9ZgNDG0
「もう、こんな時間ねまどか。日が暮れる前に帰りましょう」 

ほむらちゃんは私のほうに手を差し出しました。 

確かに慣れない食べさせあいっこは予想以上に時間がかかっていました。 

こんな絶好なチャンスはもう今しかない。 

さあ言わないと、ほむらちゃんに。

352: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:23:13.17 ID:Tm9ZgNDG0
「あのねほむらちゃん。私ほむらちゃんに言わなきゃいけないことがあるの」 
   
「だけどその前にまどかに一つ言いたいことがあるの」 

二人の口から同じ内容が飛びだします。 

驚いた私たちは口を開けているのにしばらく何も話そうとしません。 

先に話の口火を切ったのはほむらちゃんでした。

353: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:24:18.52 ID:Tm9ZgNDG0
「まどかからでいいわ」 
   
「でもほむらちゃんは…」 
   
「大丈夫、私のほうは急ぐ話ではないから」 

私にとってこれは急ぐ話でした。 

今言わなくてはこの勇気がなくなってしまうかもしれない。 

さやかちゃん、そして杏子ちゃんにもらったこの決意。 

自分のために戦うと決めたのです。

354: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:25:39.75 ID:Tm9ZgNDG0
「わかったよ、私から言うね。 

…でも私も何から話していいかわかんないんだ」 

あなたに伝えたい事が多すぎる。 

きっと全てを言葉になんてできない。 

だから本当に必要な事だけを言わなくちゃ。

355: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:35:31.71 ID:Tm9ZgNDG0
「そういう時にはなるべく言い辛い事から言うといいわ。 

そしたらもうそれ以下はないもの。 

それに私はまどかが何を話したとしてもそれを否定する事はないから安心して話して頂戴」 

なんだかさっきの時間がまだ続いているようです。 

いつもどうやってとったらいいのか悩むほむらちゃんとの距離感は、 

どこかに溶けてなくなってしまったようでした。 

でも…。それでも…。

356: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:38:03.19 ID:Tm9ZgNDG0
「私ね、今日の体育の時間の前の休み時間にね、 

ほむらちゃんの制服の匂いを嗅いでたの」 

言葉が途切れます。 

やはり怖い。 

戦うって決めたのに。 

思わず俯いてしまいます。

357: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:44:36.79 ID:Tm9ZgNDG0
すると一度下に向けた顔をほむらちゃんの方にまた向けることが出来なくなってしまいました。 

言葉が何一つ口から出てこない。ただただ体を強張らせるばかり。 

そんな私をほむらちゃんはいきなり優しく抱きしめました。 
   
「続けて」

358: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:46:54.86 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃんの体温と言葉が私の中にある恐怖を溶かしていくようでした。 

促されるままに抱きしめられたほむらちゃんの胸辺りから少し顔を浮かしてまた喋り始めます。 

「…それでね、ほむらちゃんの   を履いて、 

ほむらちゃんの     を頭に巻いて、 

ほむらちゃんの制服を着てその…   なことしてたの」
 

360: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:50:07.69 ID:Tm9ZgNDG0
言葉にすると何だか笑えてきます。 

しだいに涙もこぼれ始めて嗚咽交じりになった私の口から漏れる音は、 

私にも笑ってるんだか泣いてるんだか判別のつかないものでした。

 

363: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:53:32.13 ID:Tm9ZgNDG0
「気持ち悪いよね…。私もそう思うよ…。 

ただ仲良くなりたかっただけだと思ってたのに、 

どうしてこんなことになっちゃったのかな…? 

グスッ 

ほむらちゃんと私とでそういうことしたいって確かに思ってたの。 

それにほむらちゃんと思ったように仲良くなれてる自信がなくて寂しかったの、怖かったの…。 

だからやっちゃったんだと思う…。 

グスッ 

嫌な事から救ってくれるのはやっぱりほむらちゃんだったから。 

だけど人の持ち物を勝手に使うなんてやっぱり間違ってるって思ったら私、 

もうわけわかんなくなっちゃって…。 

グスッ」

364: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:57:23.28 ID:Tm9ZgNDG0
もう駄目だお終いだよ。 

今度こそ完全に嫌われたに決まってる。 

まだ私の思いは言えていないのに私はもう諦めてしまいました。 

私はほむらちゃんを振りほどこうともがくけどほむらちゃんは私をさらに強く強く、 

それでいて私が傷つくことのないよう抱きしめて離そうとしてくれません。

365: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 12:58:43.53 ID:Tm9ZgNDG0
「それで今日のあなたは様子がおかしかったのね…やっと納得がいったわ」 
   
「ごめんなさい…ほむらちゃん許して…」 
  
「別に怒ってなんていないわ。暴れないでまどか。 

まだ話は終わっていないのでしょう? 

まさかこれ以上悪い事があるというの? 

どちらにしても私はちゃんと聞くから私を信用して頂戴」

366: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:05:13.38 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃんに気持ち悪がられてない? 

まさかそんな奇跡みたいな事が…。 

おそるおそるほむらちゃんの顔を見上げて見ると、 

ほむらちゃんが今まで見たことがないくらい優しい表情をしていました。

367: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:06:46.23 ID:Tm9ZgNDG0
「やっと私を見てくれたわね。 

さあ、続きを話してもらえるかしら? 

これから話してもらえるのはいい話?それとも悪い話?」 
   
「…いい話だよ」 

さやかちゃん、杏子ちゃん、そしてほむらちゃんに勇気をもらって、 

私はほむらちゃんに思いを伝えるべく全てを語ります。

368: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:09:21.13 ID:Tm9ZgNDG0
「私ね、ほむらちゃんと初めて会った日、 

ほむらちゃんに会う前の朝に夢を見たの。 

まずね、私…なんでかこの体は自分の物だってわかるの…。 

とにかく私とほむらちゃんがどこかのお家で二人で裸で密着して抱き合ってるの。 

私は突然綺麗な女の子と裸で抱き合ってるからすごいびっくりしてね。 

退こうとするけど体がびくともしないの。 

ただ感覚だけはいくら夢にしてもおかしいくらいリアルに感じられて…。 

そしてね…時々まるで意思が通じ合ってるみたいに目が合ってそのままキスをするの。 

初めてのキスだったから凄い身構えたんだけど凄い良い気持ちだったの、 

びっくりしたんだからねほむらちゃん」

369: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:11:08.02 ID:Tm9ZgNDG0
夢の中の事をほむらちゃんに言ってもしょうがないのに、 

ついほむらちゃんに文句じみたことを言ってしまいます。 

ほむらちゃんは何を考えてるのかな? 

ほむらちゃんはただ私の頭をなでるばかりで何も言いません。

370: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:12:39.02 ID:Tm9ZgNDG0
「そんな事がしばらく続いてだんだん慣れてリラックスしてきた頃に気付いたの。 

窓の外はすごい嵐だって。 

ちょうどワルプルギスの夜が来たときみたいな。 

いよいよ私とこの綺麗な子は二人で何をしてるんだろ? 

逃げなくていいのかなって思ってたら突然私の指についてた指輪がきれいな宝石。 

…ソウルジェムになったの」

371: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:16:23.08 ID:Tm9ZgNDG0
それを聞いたほむらちゃんの表情がどこか悲しげなものに変わります。 

やっぱりほむらちゃんは魔法少女になった私を想像して悲しんでくれてたりするのかな? 

でもどうしてそこまで私が魔法少女になったらいけないんだろう? 

…今はそんな事よりまずほむらちゃんに私の思いを伝えなきゃ。

372: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:18:53.40 ID:Tm9ZgNDG0
「そして私がこう言うの、「私、ほむらちゃんの事が大好き」って。 

それにほむらちゃんが答えて「私もよ、まどか。あなたの事を愛してるわ。」って。 

その時のほむらちゃんの悲しそうに笑う姿に私胸が締め付けられるような気持ちになってね、 

多分それと一緒にもうあなたに恋をしていたんだと思う。夢の話なのにおかしいよね」

373: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:19:47.39 ID:Tm9ZgNDG0
「いいえ、そんな事はないわ」 

話を遮ってまでのほむらちゃんの強い否定。 

少しびっくりしましたがそのまま話し続けます。

374: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:22:20.17 ID:Tm9ZgNDG0
「これが私のあなたとの…やっぱりおかしいと思うんだけど初めての思い出。 

朝起きた時に変な夢だなーって思ってそれはなんだかすぐにぼやけちゃったの。 

そしてその日にほむらちゃんが登校してきたけど、 

教室に入って来た時はただ綺麗な子だなーって思うだけだったんだ。 

でもあなたがにっこり私に笑いかけたのを見て、 

夢の中のあなたの笑顔を思い出してまたあなたに恋をしたの。 

そしたらだんだん夢の中の事をリアルに思いだしていって、 

それにつれてどんどんあなたのことが気になっていって…」

375: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:24:58.60 ID:Tm9ZgNDG0
先ほどのほむらちゃんのあの悲しげな表情はもうどこかに消えてしまっていました。 

こんなに悲しむ顔が気になるなんて私はほむらちゃんの悲しんでる顔が好きなのかな? 

…やっぱり違います。 

ただほむらちゃんに心から笑っていて欲しいって思ってるに違いありません。 

だって教室で初めて会った時のほむらちゃんの笑顔は私にとってあんなに眩しかったんだから。

376: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:25:58.56 ID:Tm9ZgNDG0
「ほむらちゃんはあの日私を使い魔からかっこよく助けてくれたよね。 

それで確信したの。ほむらちゃんと私はきっと運命の赤い糸で結ばれてるんだって。 

それからほむらちゃんの事を他にもいっぱい知って行くうちに、 

知れば知るだけあなたの魅力の虜になって…」

377: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:27:40.97 ID:Tm9ZgNDG0
そして一息つきます。もう気持ちを伝えたらどうなるかなんて考えない。 

少なくともほむらちゃんはどんな私でも友達でいてくれるってわかったから。 
   
「初めて会った日からあなたの事が大好きでした。 

日が経つにつれてあなたの事をどんどん好きになっていきました。 

私のしたことを許してなんて言いません。 

ただ、ずっとずっと私の最高の友達でいてください」

378: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:28:55.16 ID:Tm9ZgNDG0
そう言ってほむらちゃんの胸に顔を埋めます。 

何だかんだ言ったってやっぱり気になるものは気になります。 

「…まどか。先に私の話したかった事から言わせてもらうわね」 

そう言ってほむらちゃんは私の頬を両手で挟み自分の顔のほうに向かせます。 

ほむらちゃんの目を見ながら杏子ちゃんといい最近こういうのが流行ってるのかな? 

なんて考えます。

379: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:30:21.11 ID:Tm9ZgNDG0
「私はまどかの事が前からずっと好きでした。愛しています」 
   
「…嘘だよ、そんなの」 

ただの友達だって言われると思っていた不意を突かれて、 

私は思わず思った事がすっと口に出てしまいました。

380: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:31:27.86 ID:Tm9ZgNDG0
「嘘なんかじゃないわ。 

あなたと初めて会った日からとは言わないけどずっとずっと前からあなたのことが好きでした。 

私だってあなたとその…キスくらいしたいって思ってるのよ」 
   
「そんな冗談やめてよ!私なんかを好きになるわけないもん…。 

そんな幸せすぎる事いきなり言われても信じられない…」

381: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:32:17.21 ID:Tm9ZgNDG0
思わず大きな声が出てしまいました。 

涙がこぼれます。 

ほむらちゃんが嘘をつくはずなんてないのに何かが私を邪魔してる。 

素直になれない。 

私とほむらちゃんとの間にまるで壁があるみたいだ。 

言葉がうまく届かないし届いてこない。

382: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:33:29.16 ID:Tm9ZgNDG0
「…まどか。 

自分を必要以上に卑下するのはやめて。 

私もあなたの事が本当に大好きなの。 

ただ私はあまり話すのも空気を読む事も得意じゃない。 

だから私の気持ち、こうやって今示すから」

383: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:38:13.05 ID:Tm9ZgNDG0
「ほむらちゃ…ンッ!」 

突然ほむらちゃんの唇が私の唇を塞ぎます。 

私はもう心臓が止まっちゃうんじゃないかってくらいびっくりしてしまいました。 

自分の体温で頭が沸騰してしまいそうなくらい顔が熱いし恥ずかしい。、 

何が何だか訳もわかっていないのですから、 

もちろんファーストキスの味なんてまったくわかりません。 

ただそれは間違いなく幸せの味でした。 

384: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:39:07.06 ID:Tm9ZgNDG0
~☆ 

「さあ、帰りましょうまどか」 

ほむらちゃんがまた私のほうに手を伸ばします。 

でも、私は思います。 

まだほむらちゃんと一緒にいたいって。 

だから私はほむらちゃんに少し嘘をつきました。

385: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:40:00.33 ID:Tm9ZgNDG0
「今日魔女に襲われたせいで一人で眠るのが怖いの…。 

ほむらちゃん、泊まりに来てくれないかな?」 
   
「…今から急におたずねしても迷惑だと思うわ」 
   
「じゃ、じゃあ許可がとれればいいんだね!」 
   
「ちょ…ちょっと待ってまどか」

386: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:41:37.96 ID:Tm9ZgNDG0
ほむらちゃんの制止を無視して家に電話をかけます。 
   
「え、あ、うん。今帰るよごめんね。 

それでね、今日急なんだけど友達連れて行っちゃダメかな…。 

そうそうほむらちゃん…ってなんでわかったの!? 

…うんうんわかった。じゃーねー」 

電話を取ったのはママでした。それにしてもなんでほむらちゃんってわかったんだろ? 

そんなに色々ママに話した覚えないのに。もうびっくりしたよ。

387: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:43:00.04 ID:Tm9ZgNDG0
「それでご両親は?」 
   
「ああ、ママがね、「ほむらちゃんなら大歓迎さ。 

早くあんたのお気に入りの子の顔をみせとくれ。 

くれぐれも迷子になるなよー」だって。 

私がほむらちゃんが大好きだって事ママにばれちゃってるのかな?」

388: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:44:10.15 ID:Tm9ZgNDG0
「…まあいいわ。 

速く行きましょう。ご家族が心配するから」 

そう言って私の手をとって早足で歩きだしました。 

あっ、照れてる照れてる。 

顔に出ないからこそ感じる事が出来るのがより一層嬉しいです。

389: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:45:27.62 ID:Tm9ZgNDG0
「…まどか、さっきの告白の答えなのだけど…」 
   
「うん」 
   
「最高の友達と恋人。 

どちらかあなたにとって親密なほうに私をカテゴリーしてくれて構わないわ」 
   
「ふふ。じゃあ恋人だね」 

なんだかほむらちゃんらしい言い方にほほえましくなります。 

こんなに可愛い恋人が出来てやっぱり今日は朝の予感通り最高の一日です。

390: ◆2DegdJBwqI 2012/12/25(火) 13:47:12.18 ID:Tm9ZgNDG0
「…その、まどか。歩きながらでいいからもう一回かまわないかしら」 
   
「ええーまたー?せめて家まで待とうよー」 
   
「そしたらご家族が寝静まるまで待たなきゃいけないじゃない。 

大丈夫周りに誰もいないわ。魔法少女を信用して。一回だけだから」 

「もう、仕方ないんだからほむらちゃんは。」 

急ぎ足でちょっと触れたか触れないくらいのキスをします。 

              



それはやっぱり幸せの味でした。 

【六話 終わり】