スネーク「こちらスネーク、八十稲羽市への潜入に成功した」 前編

384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 00:49:02.67 ID:wuWyxOvV0

高台

スネーク「ここか」

りせ「いい眺めでしょ?」

スネーク「そうだな。あの辺が商店街で、俺のアパートがあの辺りか」

りせ「ジュネスがあの辺りで、鮫川があそこかな」

スネーク「…なかなかいい場所を教えてもらった。眺めながら白桃の実を食べようか」

りせ「そう?それじゃさっそくお菓子開けよっか」





りせ「…それにしても、スネーク先輩と二人きりかぁ」

スネーク「すまんな、こんな中年と二人で。俺がもう少し若ければな」

りせ「そ、そういうのじゃないけど…誰かとこの高台で二人きりなんて、悠先輩に相談したときくらいだったから」

スネーク「鳴上に?」

りせ「うん、アイドルとしての自分と本当の自分とのギャップに苦しんでた時…ここで悠先輩に思う存分胸の内を聞いてもらったの」

スネーク「…大変だろうな、ただでさえアイドルは外面を取り繕う仕事だ」

りせ「スネーク先輩、アイドルとか詳しいの?」

スネーク「いや、詳しくはないが…テレビなんてそういうもんだろう。万人受けする仮面を被らなければならない、窮屈な世界という印象を持っている」

りせ「そう…そういう感じなんだよね、アイドル業界も。どれだけ苦しくてもスケジュールは休憩を許してくれない…」

スネーク「ストーカーもいたりするのか?」

りせ「そんなの、もう数えきれないくらい」

スネーク「そうか…」

りせ「…でも、そんなアイドルとしての自分も『自分』なんだって…悠先輩のおかげで気づいたんだ」

スネーク「アイドルとしての自分も…?」

りせ「私がアイドルを休業する前、今にも売れ出しそうな後輩の子がいたの。その子、私が止めたら急に人気を伸ばしてきて…」

スネーク「…嫉妬、か?」

りせ「あはは、やっぱ分かっちゃう?」

スネーク「歳の功というやつだ」

りせ「まぁ、嫉妬ってほどのものじゃないけど…かすかに悔しい気持ちが湧いたんだ。でも、初めはそれに気づかなかった」

スネーク「気づかなかった?」

りせ「うん…今思えば、気づきたくなかったんだと思う。アイドルとしての『りせちー』は捨てたはずなのに、って」

スネーク「…それを、本当は捨てきれていなかった?」

りせ「そうなるかな…そんな思いを悠先輩に打ち明けていくうちに、私にとっての『りせちー』がどういうものなのかが分かってきたの」





りせ「今の『久慈川りせ』も私で…アイドルとしての『りせちー』も私。悠先輩は、それに私より先に気づいてた」






スネーク「当事者より先にか…」

りせ「そう。悠先輩って、妙にそういうのを察するのが早いの」




387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 01:13:18.60 ID:wuWyxOvV0

スネーク「…さすがは我らのリーダーだな。相手の本心を相手より先に見抜くとは」

りせ「でしょ?私の本心…それは『私』。『本当じゃない自分』なんてどこにもいないって、気づけたから」

スネーク「大したものだ、その歳でそれを悟るとは」

りせ「えへへ、そうかな…?なんだかスネーク先輩にホメられると嬉しいな…」

スネーク「久慈川は鳴上一筋じゃないのか?」

りせ「そのつもりなんだけどね、なんだかスネーク先輩が聞き上手っていうか…悠先輩に話を聞いてもらってるときと同じような心地良さがあるの」

スネーク「こんな中年相手でもか?」

りせ「…スネーク先輩、さっきから自分を年寄り扱いしすぎじゃない?今でも十分かっこいいと思うな、私」

スネーク「お世辞はいい」

りせ「お世辞じゃないよ、顔の造りはかなりいけてると思う。ズバリ!若い頃はかなり女の子と遊んでたでしょ?」

スネーク「…ザンジバーでは、そんな女もいたがな。結局は食事をすっぽかしてしまった」

りせ「ザンジバー?」

スネーク「昔の話だ」

りせ「でも、やっぱり私の読みは的中してたでしょ?」

スネーク「…少しはな」




りせ「…あれ、話しながら食べてたらお菓子も無くなっちゃったね」

スネーク「そうだな。やはりお菓子を食べながら女子高生とお喋りするというのはいいものだ」

りせ「あはは、オジサンくさーい」

スネーク「現にオジサンだからな」

りせ「ふふ……あっ、そろそろ三時回っちゃう」

スネーク「残念だな、お時間か?」

りせ「そうだね…三時からお店の手伝いしないといけないから、残念だけどこの辺でね。バイバイ、スネーク先輩!」

スネーク「ああ、またな」

388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 01:44:37.79 ID:wuWyxOvV0

スネーク(久慈川と別れた…)

スネーク(流れでお菓子を頬張ってしまったが、昼の分と合わせるとだいぶ腹が重いな)

スネーク(街へ降りて、少し歩き回るとするか…)





稲羽市中央通り商店街

スネーク「また町へ降りてきたが、どこを見て回ろうか」

スネーク「…お、タバコの自販機があるな」

スネーク「顔は素のままだし…大丈夫だろう、ちょっと日本製を吸ってみるか」

スネーク「どれどれ、セブンスターにマルボロにキャビンに…」





??「おい、買わないんならどいてくれ」





スネーク「ん?…おお、失礼」

??「あんた、この辺じゃ見ない顔だな」

スネーク「この前引っ越してきた者だ」

??「引っ越し?そういえば、悠が外国人の転校生が来たとかいってたが…息子さんがいたりするのか、あんた?」

スネーク「そんなものはいない。それに悠って…鳴上のことか?」

??「なんだ、あんた悠の知り合いか」

スネーク「知り合い…といえばそうなるが。あんたは?」

堂島「俺か?俺は、悠を預かってる堂島という者だが」

スネーク「堂島…ああ、あんたがあの堂島さんか。話は鳴上からよく聞いている」





??「堂島さ~ん、タバコ買うのにいつまでかかってんですか~?早くしてくださいよ~!」





スネーク「…向こうから走ってくるあいつは?」

堂島「ああ、あれは俺の部下だ。足立という」

スネーク「…言っちゃ悪いが、かなり頼りなさそうな面構えだな」

堂島「やっぱり分かるか…まぁご想像通りの男だよ、あいつは」

足立「ちょっと堂島さん、いつまで……あれ?そこの外人さんは?」

堂島「おお、この人は悠の知り合いの…そういえば名前を聞いてなかったな。名前は何て?」

スネーク「スネークだ。ソリッド・スネーク」

足立「…!!」

堂島「スネーク?確か転校生もスネークだと聞いたような…ああそうか、アメリカではファーストネームが後ろだったな」

スネーク「そうだ。おそらくそのスネークというのは俺の親族の奴だろうな」

389: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 02:08:36.47 ID:wuWyxOvV0

堂島「そうかそうか。まあよろしく頼む」

足立「…………」

堂島「足立?どうした、眉間にシワ寄せて」

足立「…いえ、ちょっと」

堂島「とにかく、タバコはもう買ったから大丈夫だ。行くぞ」

足立「…はい」

堂島「スネークさん、だったか。悠には会ったら言っておこう」

スネーク「ああ」

堂島「よかったら今度遊びに来い、悠の知り合いなら歓迎だ」

スネーク「いいのか?それじゃ、機会を見て悠に話しておくよ」

堂島「それで…できたら菜々子の遊び相手も頼みたいんでな」

スネーク「菜々子?」

堂島「俺の娘だ。女房はずっと前に事故で死んでしまってな、いつも仕事ばかりでかまってやれなくて…」

スネーク「片親か…大変だな」

堂島「今はほとんど悠やその友達に遊び相手をしてもらってしまってるんでな…」

スネーク「そうか…俺でよければ手を貸そう、いつでも言ってくれ」

堂島「ありがたい。そのうちお願いするよ」

足立「…堂島さん、話が長いですよ。さっさと行きましょう」

堂島「おお、そうだな…それじゃあな、スネークさん」

スネーク「うむ、鳴上によろしく言っておいてくれ」

390: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 22:00:26.41 ID:wuWyxOvV0

スネーク(堂島さんと足立さんは行ってしまった…)

スネーク(あの人が堂島さんか)

スネーク(…考えてみれば俺は、鳴上達と友人として付き合っているとはいえ実年齢が奴らの保護者並みだからな…)

スネーク(…それに、あの足立とかいう頼りなさげな男が話の途中で目つきを変えたのも気になる)

スネーク(まぁ…気にしてもどうにもならんか、会ってすぐの相手なんて)

スネーク「…さて、俺も適当に何箱か買うか」

スネーク「一応ライターを持ち歩いといてよかったな」


ジュボッ


スネーク「フー…」

スネーク「…む、なんだかあまり味が無いな」

スネーク「日本のは口当たりがよほど軽いらしいな…ヘビースモーカーには向かんようだ」





直斗「スネークさん」

スネーク「ん?おお、白鐘か」

直斗「散歩していたらあなたを見かけたのですが…そうですよね、考えてみたらあなたはもうタバコが吸えるんですよね…」

スネーク「吸ってみるか?ほれ、一本」

直斗「い、いえっ!僕はまだそういうのは…!」

スネーク「ハッハッ、本気にするな。冗談だ」

直斗「だったら渡さないでくださいよ…!」

スネーク「悪いな。生真面目そうな人間はからかいたくなるタチなんだ」

直斗「悪趣味な…」

スネーク「頭の回転が早いのは結構だが、それゆえ頭でっかちでは本末転倒だぞ?」

直斗「…それくらい、自分でも分かってます」

スネーク「『単純軟弱石頭』…お前を見ていると、あいつを思い出す」

直斗「た、たんじゅんなんじゃく…!?」

スネーク「これは別にお前のことを言ってる訳じゃないぞ、昔の知り合いに俺がつけたあだ名だ」

直斗「でも、今思いっきり『僕を見てると思い出す』っていいましたよね…!?」

スネーク「似てる部分がなきにしもあらず、という意味だよ」

直斗「…あなたという人は、本当に読めない人間だ…」

391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/05(月) 22:30:07.75 ID:wuWyxOvV0

スネーク「会話の主導権も握りやすい…ますますあいつ似だな」

直斗「…あ、あなただって!嘘つきの捻くれ者の、カッコつけのスカした…!」

スネーク「…反論までそっくりとはな。ますます他人とは思えん」

スネーク「冷静なようでいて、いざとなるともろい。言葉を額面通り受け取りがちで、意外に人付き合いが不得手…」

直斗「うっ…」

スネーク「…顔だけは妙に整ったところなんかもそっくりだな」

直斗「顔…?」

スネーク「そうだ。俺は今言ってるのは…俺が学校へ行くときに被ってる覆面の顔の奴のことなんだよ」

直斗「それって…あの金髪の?」

スネーク「そう、名を雷電と言ってな。俺の知り合いでは一番若く見えそうな顔だから使ってたんだ」

直斗「雷電さん、ですか…?」

スネーク「知りもしない奴をさん付けするのか?面白い奴だな」

直斗「ええ、まあ…」

直斗「…それにしても、今のあなたの言葉…まるで心の中を覗き見られているかのような感覚でした」

スネーク「フッ、そこまで当たっていたか?」

直斗「ええ。受け入れたつもりでも、いざ他人に言われてみるとショックは多少なりあるものですね…」

スネーク「受け入れた…というのは?」

直斗「そのままの意味ですよ。僕は…そういう固い考えしかできない人間だったんです」

392: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/06(火) 02:29:13.65 ID:K2j//39A0

直斗「スネークさんの言う通り、僕は少し前までこんなに多くの人と仲良くなれるなんて思ってもみなかった」

直斗「なんでも一人でこなそうとして…とにかく事件を解決することしか頭になくて…」

直斗「それで、解決すればきっと警察の人は僕を認めてくれるだろうって…誰かに必要とされたくて…」

スネーク(…やはり、賢そうに見えても心はまだ子供か…)

直斗「…そんな気を張り続けた捜査の最中に、特別捜査隊の皆さんと出会いました」

スネーク「休める場所が…見つかったんだな」

直斗「はい。…僕自らを囮として犯人をおびき寄せたのはよかったんですが、まさかあんな『殺し方』だとはまだ知らなかったので…」

スネーク「さすがに驚いた、と」

直斗「そうですね…それで、テレビの中でもたもたしていたら…皆さんが助けに来てくれたんです」

直斗「理屈抜きで僕がいていい場所…僕が欲しかったものを、皆さんは無償で与えてくれた」

直斗「ペルソナを得て、事件の真相に向けて全員で団結して…」

スネーク「…かけがえのない絆を手に入れた、ってところか」

直斗「僕の柄じゃありませんけど…そういう感じですね、有り体に言えば」

スネーク「本心は寂しがり屋なのに、それを打ち明けられない…か」

直斗「…それもまた、雷電さん似ですか?」

スネーク「ああ。奴も本当は一人でいるのが寂しいくせに、他人を寄せつけるのを怖がっていた」

スネーク「そのせいで、今はかつての恋人と不仲になっているらしいが…」

直斗「…………」

スネーク「…おっと、辛気臭い話になってすまんな」

直斗「いえ。…恋人、ですか」

スネーク「そうだ。…探偵とはいえお前もティーンエイジャーだろう、彼女はいたりするのか?」

直斗「…………」

スネーク「どうした?」

直斗「…この際です。もうスネークさんは僕らの仲間ですから…後から入ったスネークさんだけ知らせないのはダメですよね」

スネーク「何のことだ…?」





直斗「僕は……女なんです」





スネーク「…何?」

直斗「言った通りですよ。僕は、女です」

スネーク「お…女!?」

直斗「ええ。他の皆さんには、僕がペルソナを得る過程でなし崩し的に知られてしまったのですが…」

スネーク「だが、その服装やら言葉づかいやらはどういう…!?」

直斗「それが…僕が今乗り越えなければならない課題、ですかね」

398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/06(火) 22:10:47.03 ID:K2j//39A0

直斗「…少し前までは、男性に支えられて生きるような女性としての生き方が嫌いでした」

直斗「ですが、あの人が…鳴上先輩が教えてくれた…」





直斗「男だとか女だとか、そんなこと関係ない。支えられて生きることは、人として当たり前のことなんだって…」





スネーク「支えられて生きる…か」

直斗「…実を言うと、僕のお祖父様が仕組んだ謎解きがきっかけでした。それを鳴上先輩と一緒に解いていって…」

直斗「…それを通じて、僕に友人ができるようにって…」

スネーク「気の利いたおじいさんじゃないか」

直斗「ええ、僕もお祖父様にはいつも裏をかかれてばかりで…今回もそうでした」

直斗「そうしていって、鳴上先輩と一緒に謎を解くという行為に…心を躍らせている自分がいることに気づいたんです」

スネーク「…それは、果たしてどっちの感情かな」

直斗「どっちの、って…?」

スネーク「単純に友情か…はたまた男女の愛情か」

直斗「…………」

スネーク「まぁ、深くは聞かんさ」

直斗「…後者である可能性を、否定はしませんよ」

スネーク「そうか…頑張れよ。前途は多難かもしれんがな」

スネーク(…倍率的な意味で、な)

直斗「ありがとうございます。僕もこれから考えてみます、そういうことにどう向き合っていくか…」


400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/07(水) 00:32:48.40 ID:h+Mdc/ek0

直斗「…フフ、らしくないな…いつもの僕ならこんなに自分のことを打ち明けるなんてしなかったはずなのに」

スネーク「お前は変われた、ということだろう」

直斗「自分以外の人に言われると、なんだかむず痒いですね…でも、不思議と悪い気はしないや」

スネーク「仲間だからな。これからも、困ったことがあったらいつでも頼ってくれよ」

直斗「ええ、今度の機会に射撃訓練でもお願いしようかな。退役軍人に指導してもらえれば百人力だ」

スネーク「いいだろう。脇の閉め方からツーハンドホールドの指の位置まで、きっちり教えてやるさ」

直斗「フフッ…ありがとう。スネークさん」

スネーク「…笑った顔がかわいいな。さすがは女の子、といったところか」

直斗「え…っ」

スネーク「今度は冗談じゃないぞ?」

直斗「そ、それは…!その…!」

スネーク「おいおい、そう顔を赤くするな。最後までからかい甲斐のある奴だな、まったく」

直斗「……意地悪……」

スネーク「イジワルもコミュニケーションの一つ、と言ってな」

直斗「…ハハッ。本当に読めない人だ、あなたは…」





直斗「それでは…そろそろお暇しましょうか。あなたと色々話ができてよかった」

スネーク「ああ、俺もお前に関して色々知れてよかったよ」

直斗「…それ、変な意味にも受け取れるんですけど」

スネーク「ご想像に任せよう」

直斗「なら、まともな意味であることを祈りますよ。…また明日学校で会いましょう、スネークさん」

スネーク「ああ、また明日」

401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/07(水) 00:57:30.89 ID:h+Mdc/ek0

スネーク(白鐘と別れた…)

スネーク「…おっと。話しながら吸っていたらもうこんな本数を…」

スネーク「それに…そろそろ夕方だ、どこかで夕飯を買って帰るか」

スネーク「この辺のスーパーは…」

スネーク「…そうだ、この前紹介されたジュネスにでも行ってみるか。品揃えが豊富だったからな、惣菜もたくさんあるだろう」










ジュネス八十稲羽店 食品売り場

スネーク「…改めて見渡すと、随分広いな。安いし品揃えも豊富…これじゃ町の商店街も廃れる訳だ」

スネーク「さて、適当に惣菜をいくつか買って帰るか」

スネーク「…ん?あそこにいるのは…オタコンか?」





オタコン「野菜が安いなー、さすが地元商店街を席巻したスーパーだね」

オタコン「トマトにナスにレタスにカボチャに…」

オタコン「…お、キャベツが半額だ。この一玉が最後の一個か…買っとこ」


ギュッ


オタコン「ん?…君は…?」

??「…そのキャベツ、さっきから取ろうとしてたんだけど手が届かなかったの」

オタコン「ああ、君が先に取ろうとしてたのかい?それじゃしょうがないね、ほら」

??「…ありがとう、おにいさん!」

オタコン「いやいや、困ったときはお互い様だよ。それじゃあね」





スネーク「オタコンの奴、あんな小さい女の子に鼻の下伸ばして何をやってるんだ…」

陽介「あれっ?スネークじゃねえか、そこにいんの」

スネーク「お前…花村。ああそうか、ここはお前のテリトリーだったな」

陽介「テリトリーって言い方はどうよ…まあいいや、買いに来てくれたんだな!ちょうど今夕方のタイムセール中だからさ、色々見てってくれよ!」

スネーク「ああ、そのつもりだ。惣菜とかで安いのはないか?」

陽介「惣菜かぁ…んじゃちょっくらチーフに頼んで、割引シール貼るの前倒しにしてきてやるよ!ちょっと待ってろよな!」

スネーク「よろしく頼む」

402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/07(水) 21:52:58.15 ID:h+Mdc/ek0

スネーク(花村は走っていった)

スネーク「…さて、オタコンはと」





??「おにいさん、がいこくのひと?目の色があおいんだね」

オタコン「うん、仕事でちょっと日本にね。地元の八十神高校って所で教師をしてるんだけど」

??「やそがみこうこう…あっ、それ菜々子のお兄ちゃんが行ってるがっこうだよ!」

オタコン「お兄ちゃん?」

菜々子「うん、『なるかみゆう』っていうの!」

オタコン「鳴上悠…ああ、君はあの鳴上君の妹さんだったんだね。僕も知ってるよ、鳴上君」

菜々子「ほんとに?それじゃ帰ったら、お兄ちゃんにおにいさんのこと話しておくね!」

オタコン「僕も先生だからね、なるべく印象良く話してもらえると嬉しいな」

菜々子「はーい!キャベツを取ってくれた親切なひとって言っておくからね!」

オタコン「はは、そりゃいいな。…ところで、君は一人で買い物に?」

菜々子「うん、お父さんとお兄ちゃんが帰ってくる前にゆうはんのおかずを買っておこうと思って」

オタコン「偉いね。その歳でもう家事の手伝いを?」

菜々子「…菜々子のお母さん、事故で死んじゃったの。だから、菜々子がしっかりしないといけないから」

オタコン「そ…それは、なんというか…変なこと聞いちゃって悪かったね」

菜々子「ううん、気にしてないからいいよ。もうなれちゃった」

オタコン「…歳とは裏腹にしっかり者なんだね。僕の妹を思い出すよ」

菜々子「おにいさんにも、いもうとさんがいるの?」

オタコン「いた、と言う方が正しいんだけどね…数年前に死んでしまったんだ。でも、自慢の妹だった」

菜々子「…ごめんなさい、思い出したくなかったよね…」

オタコン「いや、気にしないでくれ。それに僕だって…その、君のお母さんのことを聞いてしまったからね、おあいこってことで」

菜々子「うん…」

オタコン「…だめだめ、せっかく可愛い顔をしてるんだからそんな暗い表情しちゃ。もっと笑わなきゃ、菜々子ちゃん」

菜々子「え、菜々子…かわいい…?」

オタコン「うん、将来はきっと美人さんになるよ。だからほら、スマイルスマイル!」

菜々子「う…うん、スマイルスマイル!」

403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/07(水) 22:54:09.78 ID:h+Mdc/ek0

スネーク「…おいオタコン、さすがにそんな小学生くらいの女の子を口説くのはまずいんじゃないか」

オタコン「あれ、スネークも来てたのか」

菜々子「おじさん、だれ?」

スネーク「俺はスネークだ。…話の内容は俺の地獄耳が捉えていた、君は鳴上の妹だそうだな」

菜々子「うん。おじさんもお兄ちゃんの知り合い?」

スネーク「ああ。それに昼間、君のお父さんにも会った」

菜々子「お父さんにも?」

スネーク「そうだ、タバコを自販機で買おうとしたら偶然な」

菜々子「スネークおじさんもタバコ吸うの?なんだかお父さんそっくり」

スネーク「風体はな。俺も思った」

オタコン「菜々子ちゃんのお父さん…ということは、例の鳴上君を預かってる叔父さんのことだね」

スネーク「そうだ。もう少し喋りたかったんだが、一緒にいた刑事が何やら急かしていて話せなかった」

オタコン「そのお父さん、君と同じくらい…って訳でもないか。君の老化を考えると…」





陽介「おーいスネーク、少しだけど惣菜に値引きシール貼ってもらったぜー!…っと、菜々子ちゃんじゃねえか」

菜々子「あっ、陽介お兄ちゃん!」

陽介「あれ、しかもハル先生まで?」

オタコン「こんにちは、花村君。実家の手伝いかい?」

陽介「はい、今タイムセール中なんで!バンバン買ってってくださいね!」

オタコン「言われなくても、もうカゴが野菜でいっぱいだよ。ははは」

陽介「それで…おい、スネーク」

スネーク「どうした?」

陽介(…お前、菜々子ちゃんとハル先生の前で素顔晒して大丈夫なのかよ?)

スネーク(菜々子ちゃんに関しては…少し難はあるが、オタコンに関しては大丈夫だ)

陽介(オタコン?)

スネーク(…そうか、オタコンは生徒にハル先生と呼ばせているとか言っていたな。あいつをハル先生なんて呼ばなくていい、オタコンと呼んでやれ)

陽介(オタコンて…元ネタが分かんねーよ)

スネーク(ともかく、オタコンは俺の正体を知っている人間だ。詳しくは話せんが…察してもらえるとありがたい)

陽介(…そうか。なら深くは聞かねーさ)

オタコン「二人とも、何ヒソヒソ話してるんだい?」

陽介「あ、いや別に何でもないっす!オタ……じゃなくてハル先生!」

オタコン「…………」

菜々子「…おにいさん?なんだか顔がこわいよ…」

オタコン「…スネーク」

スネーク「どうした」

オタコン「吹き込んだね…?」

スネーク「何のことやら」

413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/08(木) 01:14:50.45 ID:3KYPSoef0

オタコン「…花村君」

陽介「え…そ、そんなマジな顔しないでくださいよ…」

オタコン「僕を『オタコン』とは呼ばないようにね?あくまで僕は『ハル先生』です」

陽介「そのメガネクイッがなんか怖ぇ…」

オタコン「返事は!?」

陽介「は、ハイッ!」

スネーク「…この二人は置いといて…時間がもう遅い、菜々子ちゃんは帰った方がいいぞ。お父さんが心配する」

菜々子「え?う、うん…そうだね」





オタコン「…ということで、スネークも余計なこと言わないようにしてくれよ!」

スネーク「まぁ…気をつける」

オタコン「花村君も!鳴上君達に言ったりしないように!」

陽介「う、うっす…」

スネーク「で、菜々子ちゃんが一人で帰るには暗い訳だが…オタコン、お前家まで送っていってやれ」

オタコン「まったく、すぐ話を逸らす…」

陽介「そうだな…前に悠が、菜々子ちゃんと夜に出かけて堂島さんに怒られたとか言ってたし」

スネーク「鳴上がオタコンは知ってるから、怪しい者とは思われないだろう。ほら早く、遅くならないうちに行け」

オタコン「しょうがないな…それじゃ菜々子ちゃん、一緒に帰ろうか」

菜々子「うん、よろしくね!」

スネーク「…ただ、オタコン。変な気は起こさないようにな。堂島さんに殺されるから」

オタコン「バカ言うなよ」

416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/08(木) 19:22:53.83 ID:3KYPSoef0

スネーク「…さて、オタコンと菜々子ちゃんは帰ったようだな」

陽介「スネーク、さっきも言ったけど惣菜に値引きシール貼ってもらってあるぜ」

スネーク「ありがとう、さっそく見にいってみる」

陽介「……あのさ、スネーク。このあとちょっといいか?」

スネーク「このあと?まあ別に用事は無いが…お前は仕事があるんじゃないのか?」

陽介「今は一時間休憩もらってる最中からさ、仕事は大丈夫なんだ」

スネーク「そうか。…で、何の用だ?」

陽介「用、っつーか…話を聞いてほしいんだよな」

スネーク「俺にか?」

陽介「ああ」

スネーク「相談されるのは悪い気はしないが…もっと腹を割って話せるお前の相棒がいるだろう。俺のような親父が相談に乗ってやれるかどうか」

陽介「いやいや、人生経験あるからいいんだって!そういう方面でちょっと聞いてほしいことがあったもんで…」

スネーク「…そうか」

陽介「…それに…その相談ってのが、悠に関することだからさ」

スネーク「鳴上の?」

陽介「そう、悠に関する…なんつーか、まあ…」

スネーク「…こんな場所で立ち話もなんだ、どこか落ち着ける場所へ行こうじゃないか」

陽介「お、おう、そうだな。んじゃ…フードコートでも行くとするか」

422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/09(金) 02:38:25.89 ID:d7uaZD3b0

ジュネス フードコート

スネーク「で、相談とはなんだ」

陽介「…俺さ、悠の相棒ってことでみんなには把握されてんだけど」

スネーク「それがどうした」

陽介「俺…拭えねえんだ、どうしても自分が相棒より劣ってる気がして…」

陽介「みんなを上手くまとめる力も無いし、いざという時にあいつほど冷静じゃいられないし…」

スネーク「自分に自信が持てない、と」

陽介「まぁ…いざ言われてみると結構グサッとくるな、それ…」

陽介「…本当に肩並べられてんのか、俺には分かんねえんだ。それで大人から見た意見が欲しくて…」

スネーク「…お前達と付き合いだして日が浅いから多くは言えんが、傍目には息が合っているように見えるんだがな」

陽介「そう…かな?」

スネーク「そうだ。戦場で背中を預るほどの仲というのは、得てしてオーラが違うものだ」

426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/09(金) 23:41:30.72 ID:d7uaZD3b0

陽介「戦場?スネークって、元軍人…かなんかなのか?」

スネーク「当たらずとも遠からず、だな」

陽介「そうか…ところで話変わるけど、スネークにも今までの人生で相棒って呼べる奴とかいたのか?」

スネーク「相棒、か…」

陽介「おう、やっぱ風体からして海千山千の気配がスゲーし」

スネーク(…単独潜入は自分だけの力で生き抜くのが当たり前だ。そんなものがいるはずもない)

スネーク(…と、思っていたんだが。考えてみれば俺もだいぶ助けられていたのが真実だ…)





『ん?もしやここまでこれたのは自分一人の力だと思っているのか?』

『見ていられないぞスネーク。歳をとったな』

『スネーク、そこは防弾ガラスだ!通常兵器では爆破できない!今から扉のロックを解除する、待っててくれ!』

『すまなかった。メリルの命と引き換えに協力を強いられていたのだ。…さあ、爆撃中止命令を出そう。これで後戻りはできんな…』





スネーク(…………)

スネーク(…助けあって生きる、か)

陽介「…スネーク?眉間にシワ寄ってるぜ」

スネーク「む…すまん」

陽介「それで、いるのか?」

スネーク「…相棒というほどではないが、背中を預けた奴ならいる。お前も見たことのある顔さ」

陽介「え、俺も…?」

スネーク「俺が学校へ行くときに被っている覆面があるだろう?あの顔さ」

陽介「あの顔…ああ、あれか」

スネーク「奴はまだひよっ子だったが、自分なりに頑張って俺についてきていた」

スネーク「奴も…苦しい過去を背負った男だった。その過去と決着をつけるために、命をかけて戦っていた」

陽介「過去…」

スネーク「自分が何者なのか分からず、苦しみながらの戦いだったようだ。そんな中でも決意だけは一人前だったのをよく覚えている」

スネーク「愛した女性さえ信じられなくなりながらも、未来を見据えて諦めることだけはしなかった」

陽介「…なんだかその人、俺に似てんな。過去…愛した人…自分の本当の姿…」





『私、ずっと花ちゃんのこと…ウザいと思ってた。仲良くしてたの、店長の息子だから都合いいってだけだったのに』

『てか、何もかもウザいと思ってんのは自分のほうだっつーの…ハハッ!』

『商店街もジュネスも全部ウゼーんだろ!?そもそも、田舎暮らしがウゼーんだよな!?』

『…こんな田舎でつまんねー生活送ってる自分を…忘れたかった。事件に飛びついて、俺は見ようとしなかった…』





陽介「……小西先輩……それに、俺のシャドウが言ってたことも……」

427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 00:06:33.60 ID:yF+/EoRH0

陽介「過去のことも小西先輩のことも……分かったつもりで何も分かっちゃいなかった」

陽介「だから俺は、相棒のことを……」

陽介「……相棒?」

陽介「……そうか、だから俺は……」





陽介「……俺は、誰よりも相棒に認められたかったんだ……」





スネーク「…フッ。表情が吹っ切れたな」

陽介「ああ。スネークと…その雷電って人のおかげだよ」

陽介「その人もつらかっただろうな…俺も分かるんだ、好きになった人とすれ違うことの苦しさ…」

陽介「…でも、その人は俺よりマシだ。それを見つめて歩き出せたんならさ」

陽介「俺は…それを見ようともしなかった。なのに悠の相棒なんか気取って、万能なあいつのそばにいるのを誇ってた」

陽介「誰かの“特別”で初めて…自分に意味があると思ってたから」

スネーク「…だが、それは少し違うとお前は感じている」

陽介「えっ…」

スネーク「人は皆、生きていれば気付かないうちに誰かの“特別”になっているものだ。それがまさしく、お前と鳴上の関係のように」

陽介「…へへ、さすがに歳重ねてるだけあんな」

スネーク「俺も…生まれた瞬間から業を抱えて生きている身だからな。あの男との“特別”…いや“宿命”を」

428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 00:25:00.59 ID:yF+/EoRH0
陽介が雷電の名前言っちまった…orz
すいません

433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 21:02:13.46 ID:yF+/EoRH0

スネーク「大切にしろよ、花村。自分の出自をな」

陽介「ああ。住んでる場所は関係ねえ、俺にはもうこの町にかけがえの無い仲間がいて…この絆は一生モンだ」

陽介「……俺、分かった気がするよ」

陽介「あいつと…相棒と肩並べるにはどうすればいいのか」

陽介「今度、あいつを鮫川にでも呼んで頼んでみる」

スネーク「頼む…?」

陽介「…殴ってもらいてえんだよ、相棒に」

陽介「俺ん中のぐちゃぐちゃしたモン全部ふっ飛ばすために、あいつに殴ってもらえば…なんか掴める気がするんだ」

スネーク「殴ってもらう…なるほどな」

スネーク「俺もかつて、ある男と殴り合いをしたことがある。そいつは昔信頼していた上司で…今度は敵同士として会いまみえてしまったがために」

陽介「スネークも?」

スネーク「だが、心は妙に清々しかった。敵と味方の垣根を越えた何かが俺達を突き動かしていたんだ」

スネーク「…地雷原の中であるというのに、そんなことすら気にならないほどに夢中で殴り合った」

スネーク「殴り合いが終わったあと、奴はとても晴れやかな顔をしていたよ」

スネーク「…拳で語る、という言葉もある。時には理屈ではなく、そういった行為の先に掴める何かがあるというのは…俺もよく分かる気がするんだ」

陽介「すげぇ殴り合いしたんだな…」

陽介「でも…スネークもそういう経験があるってんなら、尚更だぜ」

陽介「屁理屈こねる前に、まずは一回相棒にぶん殴られてくる。それで初めて…俺は相棒と対等だ」

スネーク「…いい目だな、花村」

434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 22:21:08.21 ID:yF+/EoRH0

陽介「おうよ!……話、聞いてもらってありがとな。マジ感謝してる」

スネーク「大した事は言っていないさ。お前が自分で気づいたことだ」

陽介「それでも、な。なんつーか…スネークの言う言葉の一つ一つがスゲー重みがあるから」

スネーク「買いかぶり過ぎだな」

陽介「んなことねぇよ。生きてる時間の長さがどれだけ重要か、って…俺もようやく分かってきたからさ」





陽介「…さて、日も暮れてんのに長々と悪かったな。俺おごるからさ、よかったらここで晩メシにビフテキ食ってってくれよ!」

スネーク「おいおい、せっかく惣菜に値引きシールを張ってもらったのに俺に買わせなくていいのか?」

陽介「あ、そうだったっけ……まあいいじゃねーか、俺がおごりたい気分だからってことで!」

スネーク「…そうか。ならお言葉に甘えるとしよう」

陽介「うっし!じゃ、俺はビフテキの金払いながら仕事戻るからよ、出来上がったらあそこで受け取って食ってくれよな」

スネーク「了解した。お前も仕事頑張れよ」

陽介「おう!スネークも夜道だから帰り気をつけろよ、襲われるなんてあり得ねぇと思うけど」

スネーク「奇襲には慣れている。心配には及ばん」

陽介「へへ、面白れー奴だな。…んじゃまたな、スネーク!」

435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 23:05:56.68 ID:yF+/EoRH0

スネーク(…花村は仕事に戻ったようだ)

スネーク(花村におごってもらったビフテキを食べ終え、今日は帰路についた…)





夜 アパート

スネーク「…今日は、ずいぶんいろんな奴と話ができた」

スネーク「あの歳で、みんなそれぞれが自分の人生とはどういうものかを真剣に考えているようだな」

スネーク「それに、全員が口を揃えて相談した相手…」

スネーク「鳴上…俺も興味が湧いてきた。明日にでも少し話を聞いてみるとするか」


ドンドン!!


スネーク「うおっ、なんだまた…オタコンか?ノックくらいもっと静かにできんのか」

オタコン「スネーク、大変だ!」

スネーク「菜々子ちゃんのことで堂島さんにドヤされたか?」

オタコン「ふざけてる場合じゃない!ほんとに重要なんだ、中で話させてくれ!」

スネーク「おいおい、なんだっていうんだ…」


ガチャ


オタコン「ハァ…ハァ…!」

スネーク「どうした、息なんか切らして」

オタコン「堂島さんの家から走って帰ってきたからだよ!もうほんと、驚いた…!」

スネーク「驚いた?」

オタコン「…スネーク、落ち着いて聞いてくれ」

オタコン「さっき菜々子ちゃんを送りにいったら、鳴上君も堂島さんもいたんだ」

オタコン「それで、学校の先生ってことで堂島さんと玄関先で話をしていたんだけど…」

オタコン「…流れで聞いたんだ。どうやら今日、稲羽署で臨時の健康診断があったらしい」

オタコン「そしてその診断内容には、注射を使用するものもあったみたいなんだ」

スネーク「……まさか」

オタコン「そう。鳴上君達の話を聞いてから『注射』って聞いて嫌な予感がしたんだ…」

スネーク「まさか…堂島さんも?」





オタコン「その通り。気になって『愛国者達』と言ってもらったら…やはり『らりるれろ』と口にした」

スネーク「…くそっ!どうなっているんだ!?」

436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/10(土) 23:22:46.05 ID:yF+/EoRH0

オタコン「それだけじゃない。思い返してみれば、僕が八十神高校に来る以前の予定表に『職員健康診断』という項目もあった」

スネーク「ということは…」

オタコン「…八十神高校の職員も、全員ナノマシンが入っていると考えるべきだろうね」

スネーク「…………」

オタコン「君達の英語のテストであんな問題が出たのも、『愛国者達』の一種の挑発か何かだと考えれば合点がいく」

スネーク「…だが、奴らは何が目的だというんだ?こんな日本の、しかもかなりの田舎の…」

オタコン「こんな土地の住民をナノマシン統制…確かに何がしたいのかは分からない」

オタコン「けど、奴らが関わっている以上はただじゃ済まない。それだけは確かだ」

スネーク「ああ。とにもかくにも、真犯人をさっさと見つけださなければ…!」

オタコン「今後もまたこの町で健康診断が行われるかもしれない。あるいはすでに行われているか…明日、僕はその辺りの情報を徹底的に洗ってみる」

スネーク「ああ、頼む。俺は…またとりあえず大佐に状況を報告するとしよう」

438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/11(日) 01:47:07.98 ID:ZHWbohWw0

ピピピピピピピ ピピピピピピピピ

大佐【私だ】

スネーク「大佐、またしてもこっちでナノマシンを注入された人間が出てきた」

スネーク「そっちでは本当に何も情報が無いのか?こっちで明らかになる情報が多すぎるぞ…」

大佐【ナノマシンの件だな、それについてはこちらにも情報が入ってきている】

大佐【そのナノマシンは医療用だ。近頃そちらでは急に深い霧が出る日があり、その霧を浴びると身体の具合を悪くする者が出るらしい】

大佐【その霧の対策として町の役所が導入したものだ。『愛国者達』の関与は無い】

スネーク「バカな、日本の片田舎にあるような役所がナノマシンなど知るはずがないだろう」

大佐【そんなことはない。ナノマシンは様々な方面で役に立つことから、今や世界規模で利用者が増えているのだ】

スネーク「戦争経済が激化してきている途上国でなら分かるが、日本でか…?」

スネーク「…それに、事実として俺の学友が『らりるれろ』と発音しているんだ。それはどう説明する?」

大佐【ナノマシンはアメリカが製造している以上、初めからその言語統制が組み込まれているのは仕方がないことだ】

スネーク「おいおい、それでよく『愛国者』達の関与が無いと言い切れたもんだな…」

大佐【しかし個人の情報が愛国者達のAIに流れることはない、と解析されている。これを解析したのはメイリンだ】

美玲【スネークったら、私が調べた情報なのに信用してくれないの!?】

スネーク「メイリン!?いたのか!」

美玲【当たり前でしょ、オタコンから私のこと聞いてなかったの?】

スネーク「いや、それは聞かされていたんだが…」

美玲【だったら信じてよ!データアナリストとしての私の腕前は知ってるでしょ?】

スネーク「それは…そうなんだが…」

美玲【私の作ったソリトンレーダーが無かったら、シャドーモセスであなたはどうなってたのかな~?】

スネーク「…分かった分かった」

大佐【安心しろ、スネーク。もし万が一『愛国者達』の関与が判明したらすぐにコールする。君は任務に集中してくれ】

スネーク「…なんだか腑に落ちんが…まあいい、そういうことなら頼んだぞ。大佐、メイリン」

美玲【任せといて!】

大佐【心得た。それでは引き続き頼むぞ、スネーク。オーバー】

スネーク「ああ、オーバー」

448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/12(月) 01:14:56.18 ID:jjSX/beK0

スネーク「…おかしい。口には出さずとも、今の内容を信じろというのは正直言って難しい話だ」

スネーク「オタコンにでも相談してみるか…外に出よう」


コンコン


スネーク「おいオタコン、開けてくれ」

オタコン「何だい、まだ話でも?」

スネーク「ああ。大佐とメイリンのことについてだが」

スネーク「…どうもおかしいんだ。この町での健康診断には医療用のナノマシンが使われてるとか、『愛国者達』の関与はあり得ないとか言っているもんでな」

オタコン「ナノマシンが医療用…?それに『愛国者達』の関与が無いなんて、そんなはずないじゃないか」

スネーク「それは俺も言ったんだ。だがまあ、なんだ…メイリンの勢いに負けてしまってな」

オタコン「メイリンまでそんなことを…」

オタコン「…なんか既視感があるね、その通信は」

スネーク「…やはりか…俺もそうではないかとは思っていたが…」






オタコン「…ビッグシェルで雷電を指揮していた『大佐』。あれを奴らが性懲りもなくまた引っ張りだしてきたのかもしれない」

スネーク「考えたくはなかったがな…」

スネーク「…仕方がない。今後はもう『大佐』へのコールはしないようにする」

オタコン「それが賢明だね」

スネーク「だが…そう考えると、俺達はまんまと奴らの思惑通りに動いたことになるぞ」

オタコン「…『大佐』と『メイリン』によって、僕らはこの町に呼び出された…」

スネーク「そうだ。そしてそこではナノマシンを注入された人間が数を増やしつつある」

オタコン「…住民を操って、総出で僕らを殺しに来させるとか?」

スネーク「無きにしもあらずだが、それならもっと選定された人間を寄越すだろう」

オタコン「それもそうか…」

スネーク「ともかく、奴らの狙いがよく分からん。ここからどう動くべきか考える必要があるな」

オタコン「…まさかアメリカに逃げ帰る訳にもいかないしね。この町を『愛国者達』絡みに巻き込んでしまった以上、しっかり決着をつけてから帰るのがせめてもの礼儀かな」

スネーク「そうだ。それに、今の俺には見捨てたくない奴らがいる」

オタコン「…君の口からそんな言葉が出るなんて…」

スネーク「鳴上達…あいつらの人生に興味が湧いた。今までは他人の人生に興味を持ったことなど無かったんだがな」

オタコン「そのスネークに興味を持たせるなんて…彼ら、将来は大物になるかもね」

スネーク「自分の中の苦しいことから逃げない。見つめて、共に歩む。そんじょそこらの大人よりよっぽど肝の据わった連中さ」

スネーク「あいつらのためにも、そしてあいつらが大事にしている住民のためにも…俺はこの町を『愛国者達』のくびきから解き放つ」

450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/12(月) 02:06:42.10 ID:jjSX/beK0

スネーク「…そうだ、お前にも存在だけは教えておこう。『テレビの中の世界』について」

オタコン「テレビの中だって?」

スネーク「俺が転校してすぐに行方不明になったのは、そのテレビの中に入っていたからなんだ」

オタコン「…君、頭だけ急速に老化が進んでるとかじゃないよね?」

スネーク「ふざけて言ってるんじゃない。本当にテレビの中に『入れる』んだ。ペルソナという能力を覚醒させた者なら、この町のテレビの中に入ることができる」

スネーク「…そこにテレビがあるな。実際に見せた方が早い、俺の手に注目していろ」


スッ…


オタコン「うわ…な、なんだこれ!?」

スネーク「だから言っただろう。テレビの中に『入れる』と」

オタコン「そんなバカな…!」

スネーク「バカもアホもない。今お前が見ている光景は事実だぞ」

オタコン「…君もつくづく、こういうオカルトテイストの濃い事件と縁があるね。目の当たりして尚信じられないよ」

スネーク「それは自分でも思った」

オタコン「はぁ…まあいいや、とりあえずその『テレビの中の世界』とやらは理解したよ」

スネーク「よし。では次の段階だ」

オタコン「次…って、まだ何かこういう手品の類でも見せてくれるのかい?」

スネーク「そうじゃない。この『テレビの中の世界』が、この町の連続殺人にどう関わっているかという話だ」

オタコン「連続殺人と…何か関係が?」





スネーク(オタコンにこの『テレビの中の世界』と連続殺人の関連性を簡単に説明した…)





オタコン「…この『テレビの中』に人を入れると、その人物のシャドウとやらが出てくる」

オタコン「それを悪用する奴がいて、入れられた被害者達はシャドウに対して身を守る術もなく、最初の二人は殺されてしまった…と」

オタコン「そして鳴上君達は、そんな被害者を助けるためにペルソナ能力を使って何人もの被害を未然に防いできた」

オタコン「で…この前も、スネークは鳴上君達に助けられたってことだね」

スネーク「大体そんな感じだな。…考えてみれば、俺は犯人に会っているんだな」

オタコン「君、犯人と話を…!?」

スネーク「そうなんだが…なんと言えばいいのか、あの男から純然たる悪意を感じなかったんだ。そういうのを感じ取るのは俺の得意とするところなんだが…」

オタコン「よくいるだろ、そういう犯罪者は。自分は正しいことをしてると信じて疑わない類の奴さ」

スネーク「テレビに入れているのは間違いなくあいつだが…なんだ、この違和感は…」

オタコン「というか、だったら顔も覚えてるんだろ?町中を片っ端から探したらどうなんだい」

スネーク「それはそうなんだが…」

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/12(月) 02:28:42.85 ID:jjSX/beK0

オタコン「…でもまあ、顔見られちゃったんじゃ犯人も町から姿を隠してるだろうけど」

オタコン「殺人事件の犯人を見つけるのも大事だけど、『愛国者達』の真意を掴むのも忘れないようにしてくれよ」

スネーク「うむ…」

オタコン「とりあえずお互い明日は学校がある身だ。今日は休もう」

スネーク「…そうだな。ナノマシンの新しい注入を防ぐことと、犯人をまた見つけて追いつめることが課題か」

オタコン「そうなるね。…じゃ、僕は布団敷いて寝るから。ほら早く、帰って帰って」





スネーク(自室に戻り、今日のところは寝ることにした…)

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/13(火) 00:58:02.25 ID:csc5RK/k0

翌日 八十神高校

スネーク(…気がかりが多すぎて授業が頭に入らん)

スネーク(まあ元々聞く必要もないんだが)

スネーク(どうしたものか…やはり連続殺人と『愛国者達』には何らかの繋がりがあると考えるべきだろうか)

スネーク(…………)

スネーク(…そうこうしている間に、時間はもう昼休みだな)





昼休み

スネーク「昼飯か…弁当を作る余裕もなくて、結局はコンビニで買って済ませてしまったな」

鳴上「スネーク」

スネーク「…鳴上か」

鳴上「今日は弁当を自作してきたんだが、よかったら一緒に屋上で食べないか?」

スネーク「ほう、それはいいな」

鳴上「…なんだ、缶詰を卒業したかと思ったら今度はコンビニ弁当なのか。よかったら俺のを少し分けてあげるよ」

スネーク「それはありがたい、これだけじゃ足りそうにないと思っていたところだ」

鳴上「よし。じゃあ屋上へ行こう」





屋上

鳴上「スネークが好きそうなのを個人的に想像して、カリフォルニアロールを作ってきてみた」

スネーク「カリフォルニアロール?…ああ、日本の『スシ』をアメリカが見よう見まねで作ったというアレか」

鳴上「かなりいい出来だと思うんだ。食べてみてくれ」

スネーク「では、お言葉に甘えて……」

スネーク「……む。これは……」

スネーク「……美味い!いけるなこれは!」


ピロリロリン


スネーク「ん?今、頭の上に何かが…」

スネーク「…まあいい、とにかく美味い!全部食べてしまいそうだ…!」

鳴上「ははっ、俺の分も2、3個残しておいてくれよ」

スネーク「む、済まん…ちょっと調子に乗り過ぎた」

スネーク「…しかしまあ、お前は本当に万能人間だな。料理は美味くてリーダーシップがあり、成績優秀で色男…」

鳴上「お褒めに預かり光栄だ」

スネーク「それに、特別捜査隊のみんなもお前に支えられている部分がかなり大きい。昨日聞いた話では…」

鳴上「昨日、みんなに会ったのか?」

スネーク「ああ。それぞれが抱える自分の中の葛藤との戦いに、お前が幾度となく道を示してくれたと」

スネーク「お前と話すことで、道が開ける。そんなようなことをみんなが言っていた」

スネーク「…大したもんだ。人を導く能力…人を統率する能力…そういう力がその歳にして備わっているとは」

458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/14(水) 00:24:02.61 ID:KNldgASi0

鳴上「そんな大層なものじゃない。俺はただ一言二言の助言をしてやっただけだよ」

鳴上「…なあ、スネーク。よかったらスネークのことも聞かせてくれないか」

スネーク「俺のこと?」

鳴上「ああ。こうして仲間になったんだ、いろいろと相手のことを知っておきたいからさ」

スネーク「…………」

スネーク「……お前は、クローン生物というものを知っているか?」

鳴上「クローン?細胞から生物を人工的に作り出すっていう、あの…?」

スネーク「そうだ、そのクローンだ」

鳴上「知ってるよ。クローン羊のドリー、だっけ?有名じゃないか」

スネーク「…だが、そのドリーより先に。歴史には記録されず、人知れずクローンとして生み出された生物がいた」

鳴上「…………」

スネーク「そのクローンは…よりにもよって『人間』だった」

スネーク「滑稽な話だろう?未だ禁忌とされている『人間のクローン』が、事実上この世界で初めて誕生したクローンだったんだ」

鳴上「…まさか、スネーク…」

スネーク「察しがいいな」





スネーク「俺は…クローン人間だ。かつて『恐るべき子供達』という、最強の兵士を生み出す計画があった」





スネーク「鳴上、『ビッグボス』という名前を聞いたことはあるか?」

鳴上「ビッグボス…覚えがある。アメリカで『英雄』、一方では『狂人』とも呼ばれた伝説の傭兵…」

スネーク「…俺は、そのビッグボスのクローンなんだ」

スネーク「最強の兵士になるべく生み出された俺は、今まで数多くの戦場を潜らされてきた」

スネーク「死にかけたことも一度や二度じゃない。だがその都度、何とか生還を果たしてきたよ」

鳴上「…………」

スネーク「…どうだ、荒唐無稽だと思うか?」

鳴上「いや…信じるよ。目が嘘をついてない」

スネーク「大概、お前も変わり者だな」

スネーク「まあ…そういう出自なもんでな。俺は今まで、自分の人生というものを客観的にしか見てこなかった」

スネーク「だが、お前達を見てからそれに疑問が生じるようになったよ」

スネーク「俺は…人と干渉しないことで自分を守ってきたつもりだった。だが、それとは正反対の生き方をしているのがお前達だったんだ」

スネーク「関わらないことで自分を守るのではない。繋がることによって、支え合いながら全員で守り合って生きていく…」

鳴上「…人は、一人じゃ生きていけない。それは俺もこの町に来てから学んだよ」

鳴上「自分じゃできないことをしてくれる仲間がいて、仲間にできないことをしてやれる自分がいる…」

鳴上「弱いことを隠す必要はない。それと向き合えるかどうか、それこそが『人の可能性』ってものだと思うんだ」

スネーク「可能性…か」

スネーク「自分で抱え込むだけが全てじゃない。苦労を分かち合える仲間がいてこそ、という訳か…」

スネーク「…フフッ。なんだかお前を目の前にすると、不思議としゃべるつもりのないことまでペラペラ口から出てしまうな」

459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/14(水) 00:46:19.10 ID:KNldgASi0

鳴上「よく言われるよ」

スネーク「そうか。…これが、お前の人を導く能力の片鱗ということか」

スネーク「…なぜだか気分が晴れやかだ…礼を言っておこう、鳴上」





鳴上(スネークとの間に、ほのかな絆の芽生えを感じる…)

鳴上(…よし、これでスネークコミュの開始だな。対応するアルカナは…)

鳴上(…『世界』?)

鳴上(…………)

鳴上(『世界』…そういえば『世界』のペルソナなんて見たことがない。ペルソナ全書にも項目すら無かった)

鳴上(これは…どういう…)





スネーク「…さあ、そろそろ昼休みも終わりだ。そろそろ教室へ戻ろう」

鳴上「え?あ、ああ…」

スネーク「どうした、考え事か」

鳴上「まあ、ちょっとね」

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/14(水) 22:40:36.04 ID:KNldgASi0

放課後 教室

スネーク「さて、オタコンからの連絡はまだない。鳴上達にも言っておきたいが…」

鳴上「スネーク、放課後空いてたりするか?一緒に買い食いでもどうかな」

スネーク「おお、鳴上。買い食いか…たまにはいいな、そういう高校生らしいのも」

スネーク(オタコンの連絡は、帰ってからアパートで聞けばいいだろう…)

鳴上「じゃあ…そうだな、惣菜大学でもどうだ?」

スネーク「いいだろう、行こうか」





惣菜大学

スネーク「…しかしなんだ、ここの店はかなりスジの多い牛肉を使っているな…」

鳴上「噂じゃ、そもそも牛肉じゃないとかいう話も聞くけどね」

スネーク「それは…大したもんだな、いろんな意味で。田舎だから安価なだけで売れるのは分かるが」

鳴上「確かに肉はアレかもしれないが、ここの特製コロッケは本物だよ」

スネーク「特製コロッケか、いつも売り切れで滅多に買えないらしいな」

鳴上「俺も何回か買えたけど、雨の日なんかが狙い目だな。スネークも今度買ってみたらどうかな」

スネーク「雨の日とはな…外に出るのが億劫そうだが、今度買いに来てみるか」

鳴上「…………」

スネーク「…………」

鳴上「……なあ、スネーク」

スネーク「何だ」

鳴上「スネークは、これまでの人生で…一人でいる時間の方が多かったんだよな?」

スネーク「…そうなるな」

鳴上「その時、一人でいる自分を顧みて……」





鳴上「……自分が、空っぽな存在だと思ったりしたことはないかな?」





スネーク「空っぽ…?」

鳴上「…俺も、この町へ来る前はかなり虚無的な人生観をしていたんだ」

鳴上「でも、ここのみんなと出会って…変われた。気付いた。人と繋がることで、こんなにも心が満たされるものなのかって…」

鳴上「だから……俺は……」

鳴上「……未だに怖いんだ。みんなと楽しく過ごせるのは、この一年間だけなんだと思うと……」

スネーク「…悲観することはない。お前を慕うみんなの姿を見ていて、たかだか距離の差で薄れるような絆じゃないのは俺もよく知っている」

鳴上「そうかもしれない。でも、俺は前にそういう幻覚をシャドウに見せられたことがあって…」

鳴上「…絶望的だった。仲の良かった人間と疎遠になることを、極端に恐れている自分に気付かされた」

鳴上「その時はなんとか、一緒に戦っていたみんなのおかげで幻覚から抜け出せたけど…この焦燥感だけは消えないまま残ってる」

470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/15(木) 00:08:25.38 ID:99hmFTwK0

鳴上「『君は一人』…あのシャドウの言った言葉が忘れたくても忘れられなくて…」

スネーク「…鳴上。お前に一つだけ言っておいてやろう」





スネーク「言葉を信じるな。言葉の持つ意味を信じるんだ」





鳴上「言葉の…持つ意味…?」

スネーク「ああ。この世に数多溢れる甘言や欺瞞…それらは断片的な『言葉』の群れでしかない」

スネーク「それに、誰も自分が何者であるかなんて答えられはしないさ」

スネーク「お前が…お前自信が信じたもの。大切だと思えること」

鳴上「俺が、大切だと思えること…?」

スネーク「そうだ。そしてそれを、自分で選び取るということ。誰かが決めるもんでもない」

スネーク「正しいかどうかではない。正しいと信じる、その想いこそが未来を創るんだ」

鳴上「正しいと信じる…想い…」

スネーク「お前には仲間がいる。結んだ絆がある。それはきっと…どんな嘘や虚飾をも振り払い、真実を照らし出す力を秘めているはずだ」

鳴上「…そうか。そうだよな」

鳴上「…大切だと思えることを、正しいと信じる想い…」

鳴上「…ありがとう、スネーク。忘れかけていた何かを思い出せた気がする」

スネーク「お前の役に立てたのなら、幸いだ」

鳴上「…不思議な感覚だな。こんなに自分のことを誰かに話したのは初めてかもしれない」

鳴上「誰かの話を聞いてあげることはあっても、自分の話を聞いてもらうことなんてなかった…」

スネーク「…お前は、頼られる存在だ。苦しくなったら誰かを頼れ。俺でも、お前の相棒でも…誰でもいい」

スネーク「お前が言ったんじゃないか。『人は一人では生きられない』…とな」

鳴上「ああ。そうだったな…」

鳴上「…スネークも、なかなか人を導く能力があるみたいじゃないか」

スネーク「…お前が行った言葉をそのまま返そう。『俺はただ、一言二言の助言をしただけさ』」

鳴上「ははっ…似た者同士なのかもな、俺達って」

スネーク「そうかもしれんな」

471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/15(木) 02:19:57.31 ID:99hmFTwK0

鳴上(スネークとの絆が、また少し深まった気がした…)

鳴上(…………)

鳴上(…なっ!?これは…!)

鳴上(どういうことだ…!?今の会話でコミュがMAXに…!)

鳴上(スネークのペルソナは進化していないし…)

鳴上(…うっ!なんだ…頭が…!)





ベルベットルーム

鳴上「…ここは、ベルベットルーム…?」

イゴール「手荒な招き方になってしまい申し訳ございません。お客様に一つ、ご忠言しておくことがございましてな」

イゴール「今、あなたは『世界』コミュという本来なら存在し得ないコミュニティを育んでおられる」

鳴上「存在し得ない…?」

イゴール「…この先、お客様が歩まんとする旅路に『未知の要素』が加わろうとしております」

イゴール「あくまで人間の域を出ない。なのにも関わらず、我々でさえその全体像を計りかねる『強大な何か』が」

マーガレット「…だからこそ、その『世界』コミュを司る人物。大切にすることね」

マーガレット「その人物こそが、主の仰った『強大な何か』に抗うための鍵になると…占いには出たわ」

鳴上「強大な何か…?それに、スネークが鍵って…」

マーガレット「…その人物は、すでに『自分が何者であるか』という問いに答えが出ている人間なの」

マーガレット「だからあなたの相談を待たずしてコミュニティが最大になったのよ」

マーガレット「全てを悟った人間は、わずかな言葉で相手の何もかもを理解する…そんなところかしら」

マーガレット「それに、彼のペルソナは進化しないのではないわ。障壁はとうの昔に乗り越えているから…ペルソナを発現した時点で、すでに上位形態だったというだけの話よ」

マーガレット「それだけに留まらず、あなたの悩みにまで道を示してみせた…本当に面白い人間だわ。ソリッド・スネーク」

イゴール「これ、マーガレット。余計なお喋りは慎みなさい」

イゴール「…さて。急なお呼び立てにも関わらず伝えられる内容がこの程度で申し訳ありませんが…」

マーガレット「…ここから先は、あなたの手で答えを導き出してちょうだい」

イゴール「では…お客様のご健闘をお祈りしつつ、意識を元に戻させていただくとしましょう」





鳴上「…………」

スネーク「おい、鳴上。大丈夫か?」

鳴上「え!?…あ、ああ…」

スネーク「眠っているというか気を失っているというか…そんな表情で硬直したから、こっちも驚いたぞ」

鳴上「すまない」

スネーク「思いの丈を吐き出して疲れたか?無理はするな、今日は帰って休んだらどうだ」

鳴上「…悪いけど、そうさせてもらおうかな」

スネーク「分かった。また明日学校で会おう、それじゃあな」

鳴上「ああ。またなスネーク」

475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/15(木) 23:09:45.13 ID:99hmFTwK0

夜 アパート

スネーク「鳴上…万能なように見えて、あいつもやはり人の子だったということか」


コンコン


オタコン「スネーク、いるかい?」

スネーク「ああ、入っていいぞ」

オタコン「それじゃ、お邪魔します」


ガチャ


オタコン「…スネーク、例の健康診断の件についてだけど」

スネーク「何か分かったことはあるか?」

オタコン「幸いにも稲羽署・八十神高校職員の健康診断以外にそれらしい情報は無かった」

スネーク「…そうか。だがもう手がかかっている以上、半端なままで済むはずはないぞ」

オタコン「そうだろうね…今後また健康診断が行われそうになったら、なんとか屁理屈こじつけてでも止めさせないと」

スネーク「それが厳しい所だがな。どう言えば関係機関を説き伏せられるのやら」

オタコン「ネックなんだよね、そこがほんとに…事実を言って信用されるはずもないし…」

スネーク「しかしまあ、ひとまず予定が無いのならいいだろう。こっちとしても焦らなくて済む」

オタコン「それもそうだね…」

オタコン「…ところでさスネーク。八十神高校では近々『文化祭』が開かれるらしいけど、スネークはどうするんだい?」

スネーク「文化祭…?」

オタコン「そっちのクラスでは出し物とか決めてないの?職員室はその話題で持ちきりだったよ、特に柏木先生がミスコンミスコンうるさくてもう…」

スネーク「柏木って…俺の担任の?」

オタコン「そうみたいだね。『ミス八高コンテスト』…水着姿で男子の観客相手に審査会だってさ」

スネーク「あの女、どう見ても四十前後だと思うんだが…そんなのに出るつもりなのか?」

オタコン「…まあ、僕もあのはしゃぎ方はどうかと思ったけど。せっかくのお祭りなんだしいいんじゃない?」

オタコン「それに女子のミスコンだけじゃなくて、男子のミスコンもあるらしいよ」

スネーク「だ、男子のミスコン…!?」

オタコン「そう、その名も『ミス?八高コンテスト』。まだ参加者は集まってないらしいけどね」

スネーク「当たり前だ、誰がそんな下らん出し物に好き好んで出場するもんか」

オタコン「そう言わずにさ。ちょっと雷電の顔で出場してみたらどうだい?話のタネになると思うよ」

スネーク「…他人事だと思ってるな、その顔は」

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/15(木) 23:29:26.83 ID:99hmFTwK0

オタコン「まあ、正直言うと僕が見てみたいからってだけの話なんだけどね」

スネーク「…お前にこれ以上揚げ足取られるネタが増えるのは御免被る」

オタコン「残念だなー。面白いと思うんだけど」

スネーク「面白いのはお前だけだろ…とにかく、俺はそんなもんに出るつもりはない」

オタコン「仕方ないな。じゃあとりあえずミスコンの話を置いといて、文化祭そのものはどうするんだい?」

スネーク「…特に用も無いが」

オタコン「多分明日くらいにクラスで出し物決めが始まると思うから、楽しみにしときなよ」

スネーク「まともな出し物になればいいがな…」

オタコン「もしかしたら、花村君辺りが超変化球な案を出してくるかもね」

スネーク「そうなったら全力で阻止する」

オタコン「ハハ、せいぜい頑張ってね。…じゃ、僕はそろそろ自分の部屋に戻るよ」


バタン


スネーク「ハァ…健康診断に関する情報も無いらしいしな…」

スネーク「…仕方ない、暇潰しにその文化祭にでも付き合うとしよう」

スネーク「こういう時、十代のテンションについていけてない自分を実感するな…」

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/16(金) 00:09:03.26 ID:cSms8G3A0

翌日 八十神高校 ホームルーム

男子生徒「えー、知っての通り来週末は文化祭です」

男子生徒「そして知っての通り、うちのクラスはまだ出し物が決まっていません」

スネーク(案の定か…)

男子生徒「もー、みんなやる気無いでしょー?」

女子生徒「今出てる案から決めちゃうから、各自一票投票してくださーい」

女子生徒「読み上げまーす。『休憩所』、『ビデオ上映室』、『自習室』…」

千枝「うわ、ほんとにウチのクラスやる気ないんだね…」

陽介「ま、楽な分いいんじゃねーの?」

女子生徒「最後…『合コン喫茶』」

スネーク「…!!」

陽介「おいおい、誰だよ提案したの。里中辺り?」

千枝「違うっての!何を根拠に言ってんのよ、ったく…」

雪子「合コン喫茶、って何…?」

千枝「知らんけど…まあ誰も投票しないっしょ。ウチのクラス、こう見えて根はマジメな人多いし」

陽介「そうそう、あくまでネタだって。1つキワモノ混ぜとくのってお約束じゃん?」

千枝「それ…入れたのお前かよ!」

鳴上「…意外と当たりかねない気もするが」

スネーク「花村…お前…」

女子生徒「じゃ投票用紙回しまーす。一個だけに丸つけてねー」





スネーク(誰が合コン喫茶など選ぶものか…!)

スネーク(どう考えても全会一致で『休憩所』だ、そうに決まっている!)

スネーク(…くそ、これだから高校生の考えることは…!)





男子生徒「えー、それじゃ投票用紙集まったんで開票しまーす」

男子生徒「1票目!合コン喫茶」

スネーク(くそっ…!)

男子生徒「2票目…合コン喫茶」

男子生徒「あ、ありゃ…マジで…?」

男子生徒「3票目、ビデオ上映室…4票目、合コン喫茶…」

男子生徒「合コン喫茶、自習室、合コン喫茶、合コン喫茶、合コン喫茶…」

陽介「げ…」

男子生徒「…えー、非常に悲しい結果となりました」

男子生徒「合コン喫茶…得票数一位です」

陽介「ちょ…おいおいおい、どうすんだよこれ…」

千枝「お前のせいだろっ!」

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/16(金) 00:30:00.98 ID:cSms8G3A0

千枝「てか、入れた奴らも何考えてんだか…自分らでやるってこと分かってんのかな」

雪子「私、合コンって行ったことなかったから興味あったっていうか…」

千枝「うお、入れた人!?」

鳴上「実は俺もだ」キリッ

千枝「え、鳴上君まで…!」

千枝「…そ、そうだ!スネーク君はまさか投票なんかしてないよね!ね!」

スネーク「当たり前だ!お前らよくも…!」

陽介「ちょ、そんなキレんなよ!…大丈夫だって、やればなんとかなるだろ!」

スネーク「…やりたくなかった」

雪子「そんなこと言わないの!スネーク君、お互い頑張ろうね!」

スネーク「天城、合コンの意味くらい調べておけ…」

千枝「はあ…常識人はあたしら二人だけかぁ」

男子生徒「とりあえず投票の結果、出し物は『合コン喫茶』に決まりました…」

男子生徒「てか、これ本当に大丈夫なのか…?選んだからにはちゃんとみんな手伝えよー」





スネーク(…不本意ながら、どうやら俺のクラスの出し物は『合コン喫茶』に決まってしまった)

スネーク(…………)

スネーク(はぁ…もう溜め息しか出んぞ…)





昼休み

スネーク「…鳴上、お前正気か」

鳴上「割と正気だ」

スネーク「真顔で言うか…」

鳴上「…お、あれは」

スネーク「…掲示板?」

女子生徒「うわ、柏木ってミスコン出んの!?マジひくわー」

男子生徒「アイツが主催引き受けてた理由、これだったんだな…」

鳴上「…ミスコンの参加者が張り出されてるみたいだな」

スネーク「…………」

鳴上「見に行こう、スネーク」

スネーク(…本当は行きたくない)

鳴上「どれどれ、参加する女子は…」

鳴上「…なっ!?」

スネーク「どうした?…お、おい!こいつは…!」

スネーク「『参加者一覧・里中千枝、天城雪子、久慈川りせ、白鐘直斗』だと…!?」

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/16(金) 00:57:50.46 ID:cSms8G3A0

女子生徒「うわ、あの久慈川さん出んの!?マジで芸能人空気読めよ…」

男子生徒「あ、天城が出るのか…天城の水着姿…」

男子生徒「へー、里中も出んのか。あいつも何気にかわいいからなー」

女子生徒「白鐘直斗…白鐘君ってなんだか男だか女だか分かんない感じだったけど、これ出るんだねー」

スネーク「みんな、思い思いのコメントをもらっているようだな…」

鳴上「ああ」

スネーク(…オタコンがニヤニヤしながら観覧する様が目に浮かぶな)

陽介「おっす二人とも!…ん、ミスコンの出場者が発表されてるみてーだな」

陽介「てかそんなことよりさ。さっき里中達から、男子全員で屋上来いってメール来たんだけど…」

スネーク「何?…ああ、確かに来てるな」

陽介「割とマジな文面だったんだよな…何かあったのかな?」

陽介「とりあえず完二とかにも声かけといたから、早く行っとこうぜ」





屋上

千枝「どーいうことか、説明してほしいんだけどっ!?」

陽介「え、ちょ、何が…」

千枝「あたしらの名前!勝手にミスコンの出場者にエントリーしたでしょ!」

陽介「その…それは…」

陽介「…い、嫌なら辞退すればいいだろ!ネタで済むんだし…!」

千枝「それが出来ないから怒ってんだっつの!主催の柏木の判断で、他薦でも一度エントリーしたら辞退できないの!」

陽介「え、マジで…?さすがにそういう細かいレギュレーションは見落としてたかも…」

千枝「どーしてくれんの!これでもう出場確定しちゃったじゃんよーっ!」

雪子「花村君…覚悟、決めてね」

直斗「花村先輩、どうしてこうも大事な局面でやらかすんでしょうか」

りせ「…ふふ、ミスコンかぁ」

りせ「ねえ、先輩達は私達にミスコン出てほしい?」

鳴上「そりゃあもう」

りせ「スネーク先輩は?」

スネーク「…あまり気は進まん」

りせ「えー、どうして?」

スネーク「 欲を持て余す」

完二「サラッと下ネタ挟んだな…」

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/16(金) 23:37:46.88 ID:cSms8G3A0

陽介「とにかくさ、この学校のアイドル天城にトップアイドルのりせ、それに探偵王子だっているんだぜ?」

陽介「これが全員不参加じゃ、ミスコンなんてあり得ねーだろ!な!?」

千枝「ならあたしは関係ないじゃん!」

千枝「……ん……?」

千枝「悪かったぁね、関係なくて!」ドッ

陽介「うごっ!?」

スネーク(…いいコンビだ)

陽介「…痛っつ…それにホラ、あれだ…完二も出てほしいよな!?」

完二「あぁ?別に俺ぁ、んなもん興味ねっス……よ……」

完二「……///」

直斗「?」

陽介「…タツミクンは是非、ナオトクンに出てほしいってさ」

完二「なっ…んなこと言ってねーだろゴラァ!」

千枝「さっきから話逸らしてんじゃないの!あとでキッチリ詫び入れてもらうかんね、花村!」

陽介「ぐお…くっそ、こんな予定じゃ…」

鳴上「いいから出ろ、お前達」

千枝「…え?」

鳴上「いいか、ミスコンというのはだな…!」





スネーク(…鳴上が珍しく声を張り上げている)

スネーク(いかにミスコンに出てほしいかを一通り力説し、鳴上はまた真顔に戻った…)





鳴上「…という訳で、いいから出ろ!!」

千枝「…………」

雪子「…………」

スネーク「鳴上…お前って時々壊れるんだな」

鳴上「それほどでも」

スネーク「褒めてない」

千枝「…あんたらさ、地味に花村に乗っかろうとしてない…?」

りせ「いいじゃん千枝先輩。期待してくれてる人がいるんだから、女の子なら頑張らなきゃ」

りせ「久々に張り切っちゃお。事務所とかはこの際ムシで!」

陽介「そ、そうそう!やっぱそうこなくちゃな!」

千枝「りせちゃん、あんたね…」

陽介「それにさ、クマもこの文化祭楽しみにしてるし」

陽介「てか、元はと言えばクマなんだぜ。俺に女子全員の出場プッシュしたの」

千枝「クマきちもグルか…」

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/16(金) 23:46:20.91 ID:cSms8G3A0

陽介「スネークもほら、何かこいつらに言ってやってくれよ。 欲持て余してんだろ~?」

スネーク「…まあさっきのは冗談だが、適当に頑張ったらどうだ」

陽介「おいおい、なんだよその素っ気の無さ…」

直斗「…とにかく、決定事項だというのならどうしようもありませんね」

千枝「もー!マジ最悪…!」

雪子「嫌だな、水着なんて…」

りせ「ほらほら先輩達、そんなこと言わないで!一緒に頑張ろ!」

千枝「りせちゃんはスタイルいいから心配ないかもしれないけどさー…」

陽介「詫びならあとでしてやっからさ!ここはひとつ、八高を盛り上げるために頼むよ!」

千枝「はぁ…もうどうにでもなれって感じ…」





スネーク(なんだかんだで女子は全員折れたようだ…)

スネーク(しかし考えてみたら、特別捜査隊の女子勢は妙に顔の整った奴が多いな)

スネーク(ミスコンに出ても差し障りないというのは、本人達にとって幸か不幸か…)

485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/17(土) 00:29:06.12 ID:4bGPTBI30

翌日 昼休み

スネーク「あいつらが出ることになったのはまあ…いいとして」

鳴上「合コン喫茶だな、問題は」

スネーク「ああ…クラスのみんなはろくに準備もしてないし、大丈夫なのかあれ」

鳴上「文化祭なんてそんなもんじゃないか?間際で焦るのも楽しみの一つさ」

スネーク「楽しいのか、それ…?」

スネーク「……む。また掲示板に人だかりができているな」

鳴上「まだ昨日のネタで盛り上がってるのか…ちょっと覗いてみよう」





男子生徒「おっ、噂をすればなんとやらだな!」

女子生徒「鳴上先輩にスネーク先輩、頑張ってくださいね!」

スネーク「頑張る、って…何を…」

男子生徒「なーに言ってんだよ!お前出るんだろ、ミス?コンにさ!」

スネーク「それは…まさか、オタコンが言っていた…!」

女子生徒「スネーク先輩の顔なら、きっと女装したらすごいかわいくなりますよ!」

スネーク「おい待て、俺は出るなんて一言も言ってないぞ!」

男子生徒「だーかーらー、ここの『ミス?コン出場者』にお前達の名前が書いてあるのが見えないのかー?」

スネーク「何だと…!?」

鳴上「『ミス?コン出場者・鳴上悠、花村陽介、巽完二、ソリッドスネーク』…」

スネーク「バカだろ…てかバカだろ…」

陽介「よう二人とも!…おっ、今年も女装コンの発表きてんな。こんなん毎年よくやるもんだよなぁ」

鳴上「…陽介、参加者の欄を見ろ」

陽介「あん?…お、おいおい!なんだよこれ!?」

スネーク「花村…女子に続いて俺達まで巻き込むとはいい度胸だな。そこに直れ、首折りのCQCを食らわせてやる」

陽介「ちょ、こんなの俺知らねえって!第一それだったら自分の名前まで書くワケねーだろ!」

鳴上「それもそうか…」

陽介「俺らが自分からこんなん名乗り出るかっつーの!」

陽介「…待てよ、だったらこれ書いたのって…」

スネーク「まさか…」

陽介「…里中の奴、書きやがったなぁぁぁぁぁぁ!!」

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/17(土) 01:49:54.19 ID:4bGPTBI30

教室

陽介「おい里中!お前、俺らの名前書いただろ!?」

千枝「え、何が?」

陽介「何がじゃねーよ、女装コンだよ女装コン!」

千枝「ああ、あれね。りせちゃんが『みんなでやった方が楽しいんじゃない?』っていうからさー、つい書いちゃった」

陽介「ついじゃねーよ、オイ…!」

千枝「てか、元はと言えばあんたが勝手にあたしらをミスコンに出すのが悪いんじゃんよ!」

スネーク「里中…書くなら花村だけにしてくれ、なんでよりにもよって俺達まで…」

雪子「でもほら、スネーク君もその覆面の顔なら結構いい成績取れると思うよ?」

スネーク「成績がどうとかじゃなくてな…!」

千枝「男子だって花村にのっかる気だっただしょ、これでおあいこだよ」


ガラッ


完二「ちょっと先輩ら、掲示板のアレはどーいうことっスか!?」

陽介「お前も見ちゃったか…」

完二「よりにもよってあんなのに…俺があんなの出れる訳ねーだろ!」

雪子「大丈夫、ばっちりドレスアップしてあげるから」

陽介「だからそういう問題じゃねーんだよ!」

鳴上「…仕方ない。やるからには全力でやらせて頂こう」

陽介「は…!?」

千枝「おー、鳴上君ノッてきたね。衣装の目利きは大丈夫だって、りせちゃんもいるんだし」

スネーク「おい、鳴上…!」

鳴上「意外と面白そうじゃないか、こういうのも」

完二「面白いかどうかじゃねー!男のプライドの問題でしょーが!」

千枝「はいはい、そのプライドとやらも規則の前では無意味でーす」

完二「しゃらくせえ!だったら柏木に直接言ってやめさせてやんぜ!」

雪子「…完二君、今年は出席が危ないんだよね?先生は怒らせない方がいいと思うな」

完二「う…それを言われると、ちょっと…」

千枝「花村もさ、来年完二君と一緒に授業受けたくなかったら盾突かない方がいいと思うよー?」

陽介「ぐっ…ちっくしょ…!」

千枝「もちろんスネーク君もね。…実は女装コンの名簿出しに行くとき、職員室でハル先生に会っちゃって」

スネーク「オタコン…あいつ…!」

千枝「スネーク君が女装コン出るっていったら、ハル先生ものすごく嬉しそうな顔してたよ」

スネーク「後で締め上げてやる…」

490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/17(土) 15:28:49.09 ID:4bGPTBI30

スネーク(…くそっ!これだけは出るまいと思っていたのに…!)

千枝「とりあえず男子の女装コンも確定ってことで、よろしくねー」

陽介「マジかよ…どーすりゃいいんだよこれ…」

完二「クソ、出るしかねえのかよ…!」

鳴上「頑張ろうな、みんな」

スネーク「だからなんでお前はそうも乗り気なんだ…?」





スネーク(ちょっとした波乱と共に文化祭準備の期間は過ぎていき…)

スネーク(…いよいよ文化祭の開催日がやってきた)

スネーク(オタコンがミスコンを見に来る気まんまんだったのが気に入らんが)

スネーク(…はぁ。仕方ない、学校へ向かうとするか…)





文化祭当日 教室

陽介「…………」

千枝「…………」

スネーク「…………」

陽介「…客、誰もこねぇな」

千枝「そりゃまあ…当初から予想はできてたことでしょ」

陽介「入口で客引きに天城と悠出してるけど、そもそも人通りが少ねーしな…」

雪子「ご、合コンやってまーす…///」

鳴上「合コンやってまーす!」

スネーク「…シュールすぎやしないか、あの二人の客引きって…」

陽介「仕方ねえ、客呼び込むためにサクラでもやるか」

千枝「マジで?」

陽介「おーい、悠と天城もこっち来いよ。一緒にサクラ手伝ってくれ」

雪子「サクラ…?」

陽介「俺らで合コンやってるフリして、客引き込むんだよ」

スネーク「サクラか…だが待て、ここにいるのは男子3に女子2だが」


ガラッ


完二「うース先輩ら、様子見に来た…っス……よ………?」

千枝「…何このすげータイミング」

陽介「ちょうどよかった、完二もサクラ手伝ってくれ!」

雪子「でも、これじゃ男子4の女子2じゃないの?」

スネーク「そうだな…誰か一人を女子にでも回すか」

492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 00:57:00.94 ID:Py3GNh5B0

完二「……」ジー

鳴上「……」ジー

陽介「……」ジー

スネーク「お、おい。なんでお前ら俺を見るんだ」

完二「…こん中じゃ、顔が一番中性的なのはスネーク先輩じゃないスか?」

陽介「だよな」

スネーク「だからこれは覆面で…というか、この声で女の側に回ったら相当ひどいことになる気がするんだが」

鳴上「ハスキーボイスな女も意外といいもんだ」

陽介「意外といいもんだ」

スネーク「こういう時だけお前らの息は合うな…」

千枝「じゃー、スネーク君が女役ってことで。ほら座って座って」

スネーク「おい待て、俺はいいとは言ってないぞ!」

雪子「いいからいいから、意外な結果になりそうで面白いじゃない?」

スネーク「天城…完全に人ごとだと思ってるな…」

スネーク「…仕方ない、一回だけやってやる。だがこれっきりにしてくれよ」

陽介「うっし、じゃあ決まりだな!さっそく始めよーぜ」

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 01:23:38.84 ID:Py3GNh5B0

スネーク(全員が着席…したのはいいが)

千枝「…………」

雪子「…………」

完二「…………」

鳴上「…………」

陽介「お、おいおいみんな。せっかくの合コンなんだから話そーぜ」

スネーク「明らかに話のネタが無いんだが…」

陽介「合コンのネタ…っつったらまあ、軽くジャブ的な所からだな。まずは趣味とかだろ」

陽介「ほら、女性陣から先に頼むよ」

千枝「なんであたし達から…まあいいや、あたしの趣味はカンフーでーす。あ、観る方ね」

雪子「私は…シャドウ退治、とか?」

完二「いや、それ趣味って呼ばなくねえスか…?」

鳴上「じゃあ次、スネークちゃん…いや、これだとヒネリがないな。スネー子ちゃんでいこう」

スネーク「…は?」

陽介「おお、いいなそれ!ほらスネー子ちゃん、趣味言ってくれよ趣味」

スネーク「お前ら…!」

雪子「ぷっ……スネーク君が、スネー子ちゃん……ふふ、ふふふ」

雪子「…あっははははははははははは!!す、スネー子ちゃん…あははははははははっ!!」

千枝「こんなところで雪子のスイッチが…」

鳴上「スネー子ちゃん、ぜひとも君の趣味が聞きたい」

スネーク「……しゅ、趣味は……潜入です」

陽介「もっと女っぽく!」

スネーク「しゅ…趣味は、潜入でーす」

完二「もっと声を高く!」

スネーク「趣味はぁ、せんにゅうでーす!みたいな?」

鳴上「OK!最高のボイス頂きました!」

陽介「最高の変声だな!」

完二「値打ちモンっスね!」

千枝「ぷっ…さすがにあたしも今のは笑いが…!」

雪子「あははははははは!み、『みたいな』って…ネタ古すぎ…あっははははははははっ!!」

スネーク「……お前ら、後で覚えてろ……」

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 02:33:04.72 ID:Py3GNh5B0

翌日 文化祭二日目

スネーク(昨日は散々だったな…)

スネーク(結局客は一人も来ず、俺が醜態を晒すだけの結果になった)

スネーク(…だが、今日のはそれ以上になるかもしれんな)

スネーク(ついに来てしまったミスコンの開催日…ああ、本気で出たくない…)





教室

陽介「…かー、マジで来ちまったかこの日が…」

りせ「男子のメイクアップは私達に任せて!とってもかわいくしてあげる!」

千枝「覚悟しろよー?」

完二「ああ…帰りてぇ…」

スネーク「俺も帰りたい…」

雪子「大丈夫、痛くしないから」

鳴上「よろしく頼むぞ、バッチリ仕上げてくれ」

直斗「…スネークさんと巽君辺り、ご愁傷様です…」

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 02:59:16.16 ID:Py3GNh5B0

クマ「クマもクマも!クマもこのミスコン、野望のために参加することになりました!」

スネーク「クマ…!?いつの間に…!」

陽介「こいつも暇そうだったから、飛び入りで女装コンに参加させといた」

千枝「アンタ、道連れ増やして…」

千枝「…まぁいいか、申し込んじゃったならどうしようもないよね~」

りせ「それじゃさっそく、みんなのメイクアップに取り掛かろー!」





スネーク(…女性陣にメイクアップを施された)

スネーク(それにしても、このメイドのようなコスプレはなんなんだ…)

スネーク(雷電…すまん…)





体育館 ミスコン会場

司会「レディースエーンジェントルメン!文化祭二日目の目玉イベント、『ミス?八高コンテスト』を開始しまーす!」

司会「ではさっそく、今回の参加者達を紹介していきましょう!」

司会「稲羽の美しい自然が生み出した暴走特急、破壊力は無限大!一年三組、巽完二ちゃんの登場だぁ!」

完二「うっス!よろしく頼むっス!」

女子生徒「うっわ、キモッ…!」

女子生徒「何あれ、モンロー気取ってんの?」

男子生徒「これはひどい…ひどすぎる…」

司会「さー、僕も近づくのが恐ろしいんですが…チャームポイントなどはありますか?」

完二「…目、とか?」

司会「おーっと、意外にスタンダードだぁ!」

司会「…しかし、一番手がこれじゃ二番手がかすんでしまいそうで怖いですねー!そんな訳で崖っぷちの二番手をご紹介!」

司会「ジュネスの御曹司にして爽やかイケメン!口を開けばガッカリ王子!二年二組、花村陽介ちゃんの登場だっ!」

陽介「ど、どもー…」

女子生徒「やっばい!」

女子生徒「花村先輩、いい線行くと思ってたのにー!」

男子生徒「や、これ意外といそうで怖いわー」

司会「さー、気合が入った服装ですが…普段からこんな感じで?」

陽介「んなワケねーだろ!」

陽介「……あ、いや……ねーですわよ?」

完二「何スかこれ、ただの見世物じゃねえスか!」

陽介「それ以外の何だと思ってたんだよ…」

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 03:19:45.91 ID:Py3GNh5B0

司会「僕ももう、おなかいっぱいになってまいりました!続いて三番手、この人の登場です!」

司会「都会の香り漂うビターマイルド、泣かせた女は星の数!?二年二組に舞い降りた転校生、鳴上悠ちゃん!」

鳴上「どうも。スケ番長です」

女子生徒「や、やめてー!」

女子生徒「なんで先輩こんなの出ちゃうのー!?」

男子生徒「うおっ、先輩ってもっとクールな人だと思ってたのに…」

司会「さー、物議を醸す出場ですが…自分で参加を?」

鳴上「当然です」キリッ

陽介「お前なぁ…!」

司会「さあさあ、実に個性的なメンバーが揃って参りました!そんな中での四番手…この人です!」

司会「アメリカから来たイケメン転校生!でも声はハードボイルド!ソリッドスネークちゃんの登場だぁっ!」

スネーク「…ど、どうも…」

女子生徒「おおっ、これは…!」

女子生徒「スネーク先輩、かなり似合ってるー!」

男子生徒「スネーク先輩もかよ…!」

オタコン「ヒューヒュー、いいぞーっ!メイドコス最高ー!」

スネーク(くっ、案の定オタコンも見に来ていたか…)

スネーク(というかあいつ…カメラを撮ってる!?)

スネーク(…帰ったら絶対に叩き壊してやるからな…)

司会「さあ、注目株のスネーク選手!どうやったらそんなイケメンで渋い声になれるんですかー?」

スネーク「そ、それは…トップシークレットだ」

司会「なんと、トップシークレット!?これは残念!」

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/18(日) 23:45:25.29 ID:Py3GNh5B0

完二「お、スネーク先輩結構イイ感じじゃないスか?」

スネーク「これがイイ感じなのか…!?」

鳴上「白熱した勝負になりそうだな」

スネーク「…お前はまずその竹刀を下ろせ」

司会「さあさあ、最後は飛び入り参加!出場者達のお仲間が登場です!」

司会「自称“王様fromテレビの国”、キュートでセクシーな小悪魔ベイビー!その名も熊田ちゃんだぁ!」

クマ「ハートを、ぶち抜くゾ?」

スネーク「く…クマ…!?」

完二「なんだありゃ…!」

女子生徒「えええ、あれ男の子!?」

女子生徒「か…かわいい…!」

男子生徒「…俺、あれならイケる気がする」

司会「おおっと、スネークちゃんに続いて今度の熊田ちゃんもなかなかの反響っぷりです!」

司会「…ではでは、参加者が全員出揃ったということで!お待ちかねの投票タイムです!」





スネーク(投票が行われた…)

スネーク(…果てしなくどうでもいい待ち時間が過ぎ、開票タイムがやってきた)





司会「さあ、開票も終わったようです!」

司会「今年の『ミス?八高グランプリ』!スポットライトを浴びる優勝者は…」

司会「…大きな支持を集めました、飛び入り参加の熊田ちゃんに決定だぁっ!」

クマ「うひょっほーい!」

スネーク「まぁ、妥当か…」

陽介「惜っしいなー、俺的にはスネークが選ばれてほしかったんだけど」

完二「やっぱそうっスよねー」

スネーク「…俺はお前らに選ばれてほしかったがな」

司会「では、優勝した熊田さん!今のお気持ちを一言!」

クマ「サイコークマ!」

司会「うーん、シンプルイズベストな一言です!優勝の熊田さん、ありがとうございました!」

司会「…さて、『ミス?八高コンテスト』もこれにて閉幕!午後からは本番の『ミスコン』が始まります!」

司会「ではこれにて、午前の部は終了となります!ひとまず解散でーす!」

503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/19(月) 00:40:43.87 ID:Tm35450b0

教室

スネーク「ああ、やっと終わった…」

鳴上「優勝はクマか。残念だな」

陽介「とにかくよ、なんとか凌いだんだからいいだろ。これで次は女子のミスコンだぜ!」

完二「…な、直斗も水着着るんスかね…」

陽介「それも含めて、午後はじっくりあいつらの水着を拝ませてもらおうじゃねーか」


ガラッ


オタコン「スネーク!見させてもらったよー、かなりいい線いってたね!」

陽介「ハル先生?」

スネーク「オタコン…お前、俺が舞台に上がった時にフラッシュ焚いたのが見えたぞ」

オタコン「そりゃそうでしょ、あんな姿を写真に収めない訳にはいかないよ。後でメイリンやキャンベルにも見せないとね」

スネーク「それだけはやめろ、割と本気で…!」

完二「ハル先生も見てたんスか、女装コン?」

オタコン「そりゃね、みんなの晴れ舞台だから」

鳴上「ということは、俺達の写真も…?」

オタコン「うん。撮ってあるよ」

完二「えっ、ちょ…ふざけないでくださいよ!なんで勝手に撮ってんスか!?」

陽介「完二の言う通りっすよ、俺らの許可も無く…!」

オタコン「ごめんごめん、ちょっとついでに撮っただけだよ。データは削除して残しとくのはスネークのだけにするから」

スネーク「俺のも消せよ…」

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/20(火) 00:36:51.36 ID:I3kM5XDw0

午後 体育館 ミスコン会場

司会「文化祭二日目のメインイベント!正真正銘の“ミス八高グランプリ”!」

司会「審査が続いています!聞こえますか、この歓声が!」

司会「では次の方!二年二組、里中千枝さん!どうぞ!」

千枝「ど、どもー。里中千枝でーす」

司会「では、自己PRをどうぞ!」

千枝「性格は、おとなしくって…えーと、好きな食べ物はプディングでーす!」

陽介「ウソつけ、肉だろ…」ボソッ

スネーク「あまり言ってやるな、花村…」

司会「ありがとうございましたー!続きましては同じく二年二組、天城雪子さんの登場です!」

雪子「こ、こんにちは。天城雪子です」

雪子「えっと、家は旅館を経営しています。天城屋旅館です。近くへお越しの際はぜひお立ち寄りください」

雪子「日帰り入浴もできますので、何とぞごひいきに…」

司会「はーい、ありがとうございましたー!」

陽介「おお、さすが天城…たたずまいはやっぱ里中の比じゃねえな…!」

オタコン「美人だよねー、天城さん。里中さんもかわいいし甲乙つけがたいなあ」

スネーク「…おい、仮にもお前教師だろ…」

司会「続いてこの方!ご存じ『りせちー』こと、一年二組の久慈川りせさんです!」

りせ「こんにちは!久慈川りせでーす!」

りせ「この町に来て日は浅いけど、とってもいいとこでりせちー幸せだよっ!」

りせ「アイドル、休業中でゴメンね!りせちーも頑張るから応援よろしく!」

完二「…なんであいつ、あんな騒がれるんスかね」

スネーク「それはお前…あいつがアイドルだからだろう」

完二「アイドルか…やっぱ俺にはよく分かんねぇな」

スネーク「…前から思っていたが、お前久慈川にだけ態度が妙に素っ気ないな」

司会「いっやー、生りせちーですよ!ありがとうございましたーっ!」

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/20(火) 01:24:52.19 ID:I3kM5XDw0

司会「続きましては噂の転校生!一年一組、白鐘直斗さん!」

鳴上「完二、ついに直斗の番だぞ」

完二「ちょ、しー!静かに!」

直斗「し、白鐘直斗…です…」

直斗「こんなコンテストで壇上に上がることになるなんて…その、夢にも思ったことがなくて…」

直斗「何と言えばいいのか…こ、困ったな…///」

完二「お…おお…」

スネーク「巽…お前、久慈川と白鐘で露骨に反応が違うな…」

クマ「ちょっとワケありなのよね、カンジの場合」

オタコン「ワケあり…?」

鳴上「まあ、それはおいおいな…」

司会「それでは、柏木先生・大谷花子さん・里中千枝さん・天城雪子さん・久慈川りせさん・白鐘直斗さん…」

司会「…この個性豊かな6名で競っていただきます!」

司会「今はまだ私服ですが、これから水着に着替えて再び壇上に上がってもらいます!」

司会「それでは、参加者の皆さんが水着に着替えるまで今しばらくお待ちくださーい!」





オタコン「…お、着替え終わったみたいだね」

陽介「くぅ~、早く天城とりせちーの水着姿を拝みてぇ…!」

司会「では、水着に着替えた出場者達に再び登場してもらいましょう!まず一番手、柏木先生!」

柏木「おーっほっほっほ!どうかしらあなた達、この私の水着姿をとくと目に焼きつけなさいな!」

鳴上「うっ…これは…」

スネーク「…きついな、さすがに四十過ぎの水着は」

陽介「え、柏木ってマジで四十超えてたのか…!?」

スネーク「見れば分かるだろう…化粧でごまかせるのは三十までだ」

司会「はい、ありがとうございましたー!では続きまして二番手、大谷花子さんの登場です!」

大谷「どうもぉ、大谷花子でぇす。よろしくねぇ~」

オタコン「…は、吐き気が…」

クマ「クマも吐き気が…」

完二「ちょ、二人ともこんな場所でうずくまんなよ!トイレ行けトイレ!」

スネーク「…しかし、よくあの体格でミスコンに出ようと思ったもんだな…」

陽介「物体Xを完食するツワモノだからな、あの人…」

司会「ありがとうございましたー!では次、ようやくマシな…じゃなかった、三番手の里中千枝さんの登場でーす!」

千枝「あ、あはは…ども…///」

陽介「ほっほー、まあなかなか…」

完二「おっさんかよアンタ」

完二「けど…確かに里中先輩、かわいいっスね…」

508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/20(火) 02:13:30.32 ID:I3kM5XDw0

司会「ありがとうございました!では四番手、天城雪子さんでーす!」

雪子「す、すみません…なんかこんな格好で…///」

陽介「いやー、むしろありがたいよな」

オタコン「天城さん…黒髪が素敵だ…」

スネーク「だからお前な…!」

クマ「ハルセンセーとはいい酒が飲めそうクマね…ノフフ…」

司会「ありがとうございまーす!続々出てくる中での五番手、久慈川りせさんの登場です!」

りせ「やっほー!りせちーだよー!」

陽介「おっ、来た来た!」

完二「何がっスか?」

陽介「りせちーに決まってんだろ!お前は黙っとけ!」

鳴上「…さすがは場数踏んでるだけあって、喋りも流暢だな」

スネーク「この反響はまあ、予想通りだよな…」

オタコン「やっぱりアイドルだけあるねー。写真、保存しとこっ」

司会「ではでは、最後にこの方!六番手の白鐘直斗さんです!」





司会「…あれ?白鐘さーん?」

司会「出て来ませんね…ちょっと様子を見に行ってきます」

陽介「…こうなるか、やっぱり」

鳴上「予感はあったけどな…残念だったな、完二」

完二「え?いやその、まぁ…別に…」

オタコン「巽君、正直に言えばいいのに」

完二「え、いや別に…ほんとマジでその、なんつーか…!」

陽介「キョドりすぎだろ…」

司会「…えー、残念ですが白鐘さんは急きょ棄権ということになりました」

柏木「まーいいわよ棄権しても。ライバルが減るのはいいことよねぇ」

完二「…で、でもまぁホラ。一次審査に出ただけでも頑張った方じゃないスか、あいつ」

スネーク「そうだな」

スネーク「…さて、投票タイムか。お前達は誰に入れるんだ?」

陽介「どうすっかなぁ、天城かりせで悩むぜ…!」

クマ「クマも悩むクマ…みんなかわいくて…!」

完二「…な、直斗に入れてもいいんだよな、これ…」

オタコン「里中さんのボーイッシュな感じもいいし、天城さんのしとやかさも捨てがたい…久慈川さんの明るい雰囲気も…」

スネーク「みんな悩んでいるな…お前はどうだ、鳴上?」

鳴上「誰がいいかな…スネークは?」

スネーク「俺は…そうだな、里中辺りか。なかなかイイと思うぞ」

鳴上「里中か…じゃあ俺は直斗にでも入れてみようかな」

509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/20(火) 02:34:47.50 ID:I3kM5XDw0

司会「…えー、お待たせしました!集計の結果が出たようです!」

司会「集計結果ですが…男子は大きく票が分かれました!ご意見も、それぞれにの参加者に熱いコメントが送られています!」

司会「一方の女性票ですが、こちらが『ある参加者』に集中!これによりその人物がトップに躍り出た!」

司会「優勝は……白鐘直斗さんですっ!!」

司会「彼女の中性的な魅力が、女性票のハートを掴んで離さなかったようですねー!」

司会「では、白鐘さんの表彰をと行きたいところなんですが…白鐘さんは現在、まだ席を外しております」

千枝「あはは、出ないのに優勝とはね…なんか笑える」

りせ「直斗に負けちゃうなんてね…女子の票が必要なら仕方ないかな」

りせ「でもま、あの人達には私達が勝ったってことでよしとしましょうよ。先輩」

柏木「うぅ…この私が…この私が、美しさで負けるなんてぇ…!」

大谷「柏木先生…アタシ、悔しいぃぃぃぃぃぃっ!」

柏木「私もよぉ!大谷さぁんっ!」

大谷「か、柏木先生ぇっ!」

スネーク「…やれやれ、これであの二人も自分達の程度が分かっただろう」

オタコン「いきがりババアと勘違いデブス…ひどいもんだね」

スネーク「…変な言葉覚えたな、お前も…」

陽介「ま、あいつらの水着が見れたから満足だけどな。ああでも完二は満足いってねーかな?」

完二「いや、だからそれは…その…!」

鳴上「…その辺にしといてやれ、陽介」

クマ「終わりクマか…もっとじっくりこってり目に焼きつけたかったクマ」

オタコン「それなら大丈夫、ほら。今度はフラッシュ消してデジカメで撮ってあるから」

クマ「ほ、ほんとクマか!?オヨヨ…ハルセンセぇ~!」





スネーク(かくして、波乱と共に男女ミスコンは終了した…)

スネーク(このあとは普通に文化祭を巡回できるらしい)

スネーク(捜査隊全員で回るようだ。オタコンも連れて露店でも見て回ろうか…)

514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/20(火) 22:23:59.42 ID:I3kM5XDw0

校内廊下

スネーク「この辺りが露店の通りになっているようだな」

千枝「さー、いろいろ見て回るとしますかぁ」

完二「まずは何か食わねっスか?小腹も空いてきたし」

陽介「バカ、んなことよりまず遊技場巡りだって!文化祭といえば輪投げに射的にストラックアウトに…!」

直斗「花村先輩、子供じゃないんですから…」

雪子「でも面白そうじゃない?私もやりたいな」

クマ「クマもワナゲやりたいクマー!」

りせ「えー、私は何か食べたいんだけど…」

オタコン「まあまあ、時間はまだあるんだから仲良くね」

鳴上「…それにしても、店の数が結構あるな。目移りしてしまう…」





菜々子「あっ、お兄ちゃん!」

鳴上「菜々子…?」

堂島「おう、悠。見つかってよかった」

堂島「…っと、これはハル先生。菜々子を送って頂いた説はお世話になりました」

オタコン「いえいえ」

堂島「わざわざこいつらの引率までして下さってるようで…一応保護者として礼を言っときます」

堂島「で、話を戻すが…明日まで県庁への出張が入っちまってな。今日は帰れそうにないんだ」

堂島「せっかくのお前らの文化祭だ。俺も菜々子と楽しみにしてたんだが…すまんが、菜々子だけでも連れてやってくれないか」

雪子「それじゃあ菜々子ちゃん、私達と一緒に回ろっか?」

菜々子「いいの?ありがと、お兄ちゃんたち!」

堂島「それじゃ、すまんがよろしくな」

堂島「…ああそうだ、そこの彼。君がスネーク君かな?」

堂島「この前、君の親戚の方と会ったよ。タバコ自販機の前で目移りしてる所に割り込んでしまってすまなかったと伝えておいてくれ」

スネーク「…はい、分かりました」

堂島「ん…?君、ずいぶん声がその親戚の人と似てるような…」

スネーク「そういう血筋なもので」

堂島「そうか…顔はまったく似てないのに声だけというのも珍しいな」

堂島「まあいい、とりあえずよろしく伝えておいてくれ。それじゃあな」





オタコン(…スネーク)

スネーク(…………)

オタコン(君、素顔のときに堂島さん会ったみたいだね)

オタコン(この際だから言っておいた方がいいと思うな…判断は君次第だけど)

スネーク(…機を見て話すとする)

515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/21(水) 00:10:01.59 ID:0PPBz1a80

菜々子「お兄ちゃん、スネークおじさんの親戚?」

スネーク「そうだ。ややこしくてすまない、俺もスネークで叔父もスネークなんだ」

スネーク「アメリカでは下の名前が苗字だからな。菜々子ちゃんも堂島でお父さんも堂島であるのと同じ…というと少し分かりにくいかな?」

菜々子「うーん…なんとなくわかったと思う」

スネーク(…捜査隊メンバーの視線が痛いな…)

菜々子「それじゃ、ええと…スネークお兄ちゃん!これからもよろしくね!」

スネーク「ああ、よろしくな」

陽介「取りゃいいのに、覆面…」





雪子「ねえ菜々子ちゃん、今晩うちに泊まりに来ない?」

クマ「え?え?ユキチャン、今なんて…?」

りせ「もしかして…旅館で打ち上げ!?」

完二「いいんスか!?」

雪子「もう、みんな話が早いんだから…」

雪子「…でもその通り。前にも約束してたしね」

陽介「おおお!やったぜ、旅館!」

クマ「温泉タマゴ食べられる!?」

スネーク「旅館…日本の伝統だな」

千枝「雪子んちでお泊りかー、昔以来かなぁ」

直斗「…あ、一泊ならおじいちゃんにも連絡しておかないと…」

雪子「ほら菜々子ちゃん、みんな一緒で楽しいよ。どうかな?」

菜々子「…菜々子も行っていいの、お兄ちゃん?」

鳴上「せっかくだ、お言葉に甘えさせてもらおうじゃないか。よろしくな、天城」

菜々子「やったー!それなら菜々子もお泊りするー!」

雪子「ハル先生も、せっかくですからどうですか?」

オタコン「え、僕もいいの?それじゃ…せっかくだしお呼ばれさせてもらおうかな」

スネーク「…覗くなよ、女湯」

オタコン「の、覗くワケないだろ!」

クマ「ひゃっほーい!温泉!浴衣!ほてった肌!」

千枝「…けど、考えてみたら今シーズンじゃないの?迷惑にならないかな」

雪子「今年は例の事件絡みでお客さん減ったし…それに、空いてる部屋もあるから大丈夫」

千枝「そっか、ならいいんだけど」

516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/21(水) 00:53:52.71 ID:0PPBz1a80

スネーク(天城の好意で、今日は天城屋に泊まらせてもらえることになった…)

スネーク(旅館か。温泉で身体を休めて和食に舌つづみ、庭園を臨みながら和室でゆったり…)

スネーク(…アメリカではそんな話をよく聞いたが、実際はどんなもんかな)





天城屋旅館 客間

オタコン「浴衣っていいねー、軽くて動きやすくて」

スネーク「そりゃそうだろう」

オタコン「にしても、まさか僕らが浴衣を着る日が来るとはね…そうだ、また写真撮っておこうか?」

スネーク「だから、それはやめろと…!」

クマ「…はぁ。女の子達とは部屋が別々クマか…」

陽介「仕方ねーだろ。天城はああ言ってくれてっけど、やっぱ空いてる部屋はそんな無いらしいし」

完二「他の階っスよね、確か」

鳴上「ああ。さっそく菜々子を連れて風呂へ入りに行ったみたいだ」

クマ「え…こ、こここ混浴!?」

陽介「んなワケねーだろ…」

完二「何べんも入るシュミねーし、寝る前一回行っときゃいいっしょ」

陽介「だなー」

完二「……ところでこの部屋、どういうことなんスかね。結構上部屋みてえなのに」

スネーク「言われてみれば…」

陽介「…やっぱ、お前も気になった?シーズン中にこんな都合よく空かねえよな、普通…」

鳴上「あえてスルーしてたんだが…まさか、この部屋…」

スネーク「……何かがあった、とかいう類の話か?」

オタコン「え…ちょっ、やめてくれよそういう話は!」

スネーク「なんだ、怖いのか?」

オタコン「決まってるだろ、僕がそういうの苦手なのは君も知ってるはずじゃないか!」

スネーク「そういえばそうだな…タンカーに潜入した時、RAYの証拠写真に混ぜて何枚か心霊写真を渡したこともあったっけか」

オタコン「そう、それだよ!あれのせいで僕、ほんとにお祓いしてきたんだからね…!」


ジリリリリリリリリリリリ!!


スネーク「うおっ!?」

オタコン「うわああああああっ!」

完二「おい、二人ともビビりすぎだろ…ただの内線だっての」

陽介「い、いきなり鳴るねしかし!…か、完二。出てみ」

完二「なんで俺が…」


ガチャ


完二「…も、もしもし…」

鳴上「完二だって震えてるじゃないか…」

527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/21(水) 21:18:01.03 ID:0PPBz1a80

完二「…………」

完二「…あ、そっスか!ども!」


ガチャ


完二「何のこたぁねえ、店の人からっした。今ならけっこー空いてるらしいっス、露天風呂」

陽介「す、素晴らしいサービスだな天城屋旅館。…あー嫌な汗かいた」

オタコン「まったくだよ、スネークが余計なアオリ入れるから…!」

スネーク「いいじゃないか、その冷や汗を露天風呂で流せば」

鳴上「これからまた混むかもしれないしな…入れるうちに入りに行こうか、みんな」

クマ「よーし、そんじゃ流しに行くとしまクマ!」





天城屋旅館 露天風呂

りせ「すっごーい!露天広ーい!」

菜々子「わぁ~、お星さま見えるよー!」

雪子「二人とも、はしゃいで滑らないようにねー」

千枝「…あれ?直斗君は?」

りせ「あ、そういえば…直斗ったらまだ恥ずかしがってんのかな?直斗ー!」

千枝「…りせちゃん、引きずり出しに行っちゃったけど」

雪子「大丈夫かな…」

直斗「…ちょっ、久慈川さん…!」

りせ「ほら、今さら照れてんじゃないの!早く!」

直斗「うわ、だからちょっと待って…!」

直斗「……///」

千枝「ふむふむ、ほうほう…なるほどなるほど」

雪子「この大きさは、ちょっとサギよね」

直斗「そ…そんなジロジロ見ないでくださいよ…!」

菜々子「直斗お姉ちゃんの、大きいね…」

直斗「~~~っ」

りせ「ほらほら、手で押さえないの!みんなで一緒に入ろっ!」


ポチャ…


雪子「ふぅ、いいお湯…」

千枝「あったまりますなぁ~」

りせ「いいなあ、直斗って肌スベスベー。触ってもいい?」

直斗「え…あ、あの…」

528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/21(水) 23:26:14.79 ID:0PPBz1a80

雪子「わー、ほんとだ。つるつる~」

千枝「いいなー。色も白いし、髪もさらっさらでさー」

りせ「余分な肉も全然ないしー。あ、でもここはついてるけどね?」

直斗「ひゃっ!」

りせ「あはは、女の子同士なんだから大丈夫でしょ?」

直斗「く、久慈川さん!どこ触って…!」

直斗「…あ、えーと…菜々子ちゃん!」

直斗「えっと…こんな風に他所で泊まるのって平気?怖くない?」

りせ「ずるーい、菜々子ちゃん使って逃げるなんて…」

菜々子「たのしいよ!菜々子、お兄ちゃん帰ってくるまでいつも一人だから」

直斗「あ…そ、そっか…」

雪子「…そうだ、菜々子ちゃん。ここで泳いでみる?」

菜々子「え、いいの!?」

雪子「私、小さい頃からここで泳いでるから」

菜々子「じゃあ、今も泳いでるの?」

雪子「え?それは…えっと…」

千枝「そ、そこは否定しようよ雪子!」





クマ「むっほ、広々クマ!クマかき披露してやるクマ!」

スネーク「おいクマ、あんまりはしゃぐと転ぶぞ」

完二「湯気がスゲーな…」

陽介「…思い出すよな、湯気といえば」

鳴上「あれは熱気だった気がするが」

完二「ちょっ…だからそのネタやめろっつってんだろーが!」

オタコン「さ、ゆっくり温泉に浸からせてもらうとしますか」





直斗「え…この声…」

雪子「……え、えええええええええええええええええええっ!?」

千枝「あ…ああああアンタらぁぁぁぁぁ!!」

陽介「な…なななななんでオメーらがぁぁぁぁぁ!?」

千枝「それはこっちのセリフだっつの!!」

スネーク「お、おい!どうなってるんだ!?」

オタコン「さっき巽君が空いてるって言ったんじゃないか!」

完二「んなこと言われたって……痛ってぇ!お、おい!風呂桶投げつけんな!」

529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 00:26:11.91 ID:AQC4/AqD0

千枝「この変 ども、さっさと出てけー!」

直斗「痴漢は犯罪ですっ!」

雪子「だ、だめ!こっち見ないでっ!」

りせ「それそれ!桶の雨ー!」

オタコン「うわ、ちょっ!メガネ割れるって!」

スネーク「待てお前ら、これは誤解だ!誤解なん…ぐおっ!」

クマ「やばいクマ、撤退クマー!うわ痛っ!」





鳴上「…待て、みんな」

鳴上「状況は最悪だが…勇気を振り絞って、ここは留まれっ!!」





陽介「…………」

完二「…………」

オタコン「…………」

クマ「…………」

スネーク「…………」

鳴上「…………」

鳴上「…痛っ」

オタコン「ちょ、この勇気にどれほどの意味があるの!?」

千枝「留まってないで、さっさと出てけっつーの!」

鳴上「くっ、やむを得ん…撤退しかない!」

スネーク「最初からそうしておけ、馬鹿者!」

陽介「くっそ、覚えてろよおめーら!ちきしょおおおおおお!」

完二「だから誤解だっ…ぶふぉ!」

532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 01:06:43.51 ID:AQC4/AqD0

スネーク(桶の嵐が吹きすさぶ中、俺達は撤退を余儀なくされた…)





千枝「はぁ…はぁ…あとで制裁が必要ね…」

菜々子「すごーい、いっぱい当たってたー!」

りせ「どう?おねーちゃん上手いでしょ!」

直斗「見られた…かな…」

雪子「……あっ!」

千枝「ど、どうかした!?」

雪子「この時間…露天風呂、男湯だった」

雪子「時間、間違えちゃった。あは、あはははは」

千枝「あはは、って…マジかよ…」

千枝「なんか、あいつらに悪いことしちゃったかな…」

りせ「大丈夫大丈夫、言わなきゃ平気だって!」





天城屋旅館 客間

陽介「ちくしょう…」

スネーク「さっき確かめたが、今の時間の露天風呂は間違いなく“男湯”だったぞ…!」

陽介「ひでえ…ひでえよあいつら…ううっ…」

クマ「なんか、クマの頭がデコボコしてるなー…」

完二「それ、たんこぶだな。お前たんこぶ出来てやんの!あは、あはははは!はは……」

完二「……はぁ」

陽介「なぁ…みんな、見たか…?」

オタコン「…残念ながら、何も…」

スネーク「“残念”ってどういう意味だ、おい…」

陽介「…ちくしょう!いいことなんか一個もない人生…!」

陽介「もう、寝よ…」

完二「…ま、待った先輩。何か聞こえねえスか…!?」



??「うっ……ううっ……」



鳴上「これ…女のすすり泣きのような…」

クマ「き、聞こえちゃった…!」

完二「まさか…“出た”んスかね…?」

オタコン「た、巽君!変なこと言わないでくれ!」

スネーク「だが、声は確かに聞こえるぞ…!」

完二「…思い出した。ここ、事件の被害者の山野アナが泊まってた部屋っスよ…!おふくろから聞きました…!」

陽介「あぁぁぁぁぁぁぁ!!ゆっちった!それ上手いこと忘れてたのに、お前ゆっちった!」

533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 01:25:37.32 ID:AQC4/AqD0

オタコン「うわぁぁぁぁ…もうダメだぁぁぁぁ…」

スネーク「お、落ち着けオタコン!」

鳴上「…あそこの壁に貼ってあるお札、そういう意味だったのか…」

陽介「天城のヤロー、知っててこの部屋に俺ら通したな…!」



??「うう……ううっ……」



完二「う、おわわわ…こんなんじゃ眠れねえよ…!」

クマ「…決めた!クマ、ユキチャンとこ行く!」

陽介「ちょっ、それって…寝室潜り込む気かよ!?」

完二「里中先輩にブッ飛ばされんぞ、お前…」

オタコン「僕もクマ君に賛成だ!彼女達のそばなら怖くないだろ、なあみんな!」

スネーク「オタコン…お前、完全に自分が教師であることを忘れてるな…」

オタコン「大丈夫だよ、ここに潜入任務のスペシャリストもいる!きっとバレやしないさ!」

クマ「おお、マジクマか!そんじゃいっちょ頼むクマ、ほらスネーク!」

スネーク「俺の潜入はそういう『潜入』じゃないぞ…」



??「ううっ……ううう……」



鳴上「……もう無理だ。行こう!」

完二「ちょ、決断早っ!」

536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 20:53:35.78 ID:AQC4/AqD0

天城屋旅館 某室

クマ「みなさーん、おーはーよーうーごーざーいーくーまー…」

クマ「寝起きドッキリ、もとい寝込みドッキリ。リポーターのクマクマ…!」

陽介「お前、いつの間に着ぐるみに…」

スネーク「暗いな…暗視ゴーグルが欲しいところだ」

鳴上「おっ、クシです…!長い髪の毛がついています…!」

スネーク「…さっそくだな、鳴上…」

オタコン「おお、これは歯ブラシです…!ほのかにミントの香りが…!」

完二「ハル先生まで…」

陽介「は、歯ブラシ…やっべ、なんかドキドキしてきた…」

陽介「あ。でも菜々子ちゃんが…」

クマ「ダイジョーブ!菜々子ちゃんは寛大な子!」

陽介「ま、まあ…そうだな。でも巻き込まないようにしろよ…!」

クマ「そして…おお、いよいよお布団に到着!」

クマ「よく寝てまーす…それでは、失礼しまークマ…!」

クマ「ユキチャーン!オバケこわいよおおおおお!」バサッ

完二「よ、よし…!俺だってなぁ…漢見せるぜ…!」

完二「さ、里中先輩!優しくしてくださいっ!」バサッ

オタコン「おお、二人ともいったね…!それじゃ僕も…」

オタコン「久慈川さん、朝までよろしくお願いっ!」バサッ

スネーク「おい、オタコン…」

陽介「…あれ?布団の数、足りなくね…?」





パチッ





スネーク「うっ…電気が…」

??「ちょっとぉ、なぁにぃ…?」

??「んぁー…」

鳴上「…ぐっ!」

陽介「こっ…こいつらは…!」

大谷「…あらやだ、君達ったらぁ!そういうことだったワケぇ~!?早く言ってくれればいいのにぃ~!」

柏木「フフフ…いけない子達ねぇ~。たっぷりかわいがってあげるわぁ」

クマ「ギャアアアアアアア!!出たァァァァァァァァ!!」

完二「あ、や、や、ややや触んなって!!」

柏木「あらやだ、ハル先生まで?いいわよぉ。先生同士のイケナイ境界線、超えちゃいましょうねぇ…!」

オタコン「い、嫌だああああああああああああああああああああ!!」

537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 22:05:40.50 ID:AQC4/AqD0

スネーク「…ここ、天城達の部屋と違うじゃないか…!!」

柏木「さっきまで二人で泣いてたのよぉ?魅力の分かるオトコがいないって」

柏木「いいわ、いらっしゃい…!その代わり、ここでの内容は誰にも言っちゃダメだぞぉ~!?」

大谷「カモーン!!」

スネーク「う…うわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

陽介「ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」





スネーク(あってはならない体験をしてしまった…)

スネーク(…正直、今まで乗り越えてきたどの危機よりも背筋が凍った)

スネーク(おとなしく部屋で休むしかないのか…)

スネーク(…まったく、打ち上げのはずが散々な結果だな…)




天城屋旅館 露天風呂

千枝「あー気持ちいー…やっぱ二十四時間お風呂入れるって最高だなー」

雪子「…あれ、菜々子ちゃんは?」

りせ「部屋に戻って寝かせちゃった。もうぐっすりだよ」

千枝「…そういえばさ、隣の部屋に柏木先生と大谷さん泊まってたよね」

千枝「びっくりしちゃった。仲良いんだね…」

雪子「ときどき泊まりに来てくれるんだ、あの二人。辛いことがあると泣きに来るみたいで…」

千枝「へー、やっぱ直斗君にコンテストで負けたのが響いてんのかな」

直斗「そ、その話はしないでくださいよ…」

りせ「まあ、あの二人がいいコンビなのは認めてあげるけどね」

538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 22:46:26.00 ID:AQC4/AqD0

スネーク(こうして、天城屋での夜は更けていった…)

スネーク(…内容そのものは良いとはいえないが、それでもあいつらは楽しめていたようだな)

スネーク(…さて、文化祭も終わった。また学校が始まるな…)





稲羽市 某所

オセロット「…本当にそんなものを投函するつもりか?」

??「当たり前だ。あのガキ、いつまでも俺のジャマしやがって…!」

オセロット「それで、警告文という訳か」

??「本当は前にも一回出してるんだよ。それも無視しやがったんだ、あいつは…!」

オセロット「…ならば、二通目を送ったところでさしたる変化があるとは思えんがな」

??「お前に指図される筋合いはねえんだよ、クソが!」

??「…ともかく、これが最後通告だ。聞き入れなけりゃ文面通り…」

??「…あいつの大切な仲間を、テレビに入れて殺してやるぜ…ヒャハハハハハハハ!」

オセロット(…………)

オセロット(…ここまでは筋書き通り…)

オセロット(あとは、あの小僧共がこの男を…そしてこの男に宿る『奴』を倒しさえすれば…)





数日後 八十神高校

スネーク「みんな、おはよう」

陽介「うっす!」

千枝「おはよー!」

雪子「おはよう」

鳴上「おはよう、スネーク」

スネーク「…さあ、今日はどうやら終日雨降りのようだ。しっかりチェックしなければな」

陽介「たりめーだって。みんなも見ろよ、マヨナカテレビ」

千枝「言われなくても見るっつーの!」

雪子「今度もまた、誰かが映っちゃうのかな…」

539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 23:03:27.62 ID:AQC4/AqD0

夜 アパート

スネーク「…そろそろ零時を回るな」

スネーク「テレビは、と…」



ヴヴヴ…



スネーク「…映ったな」

スネーク「これは…ダメだ、映像が荒すぎて判別できん」

スネーク「…だが…強いて言えば子供に見える気もするな、これは…」

スネーク「…この映った人物が、次に狙われてしまうということらしいが…」



ピピピピピピピピピ ピピピピピピピピピ



スネーク「ん…?コールか」

スネーク「相手は…『大佐』…」

スネーク「…………」

スネーク「…こちらスネーク。何の用だ」

大佐【スネーク、急ですまないが頼みがあってな】

スネーク「…………」

大佐【そちらで行われた健康診断、その注射を受けてほしいのだ】

大佐【そのナノマシンに害が無いのは説明した通りだが、その上に体力の回復やメンタルの維持が…】

スネーク「…もういい。苦しい言い訳も猿芝居もその辺にしろ、『大佐』」

大佐【…何?】

スネーク「お前が『ロイ・キャンベル』でないことは数日前から割れている」

スネーク「明らかに俺を誤誘導させんとする無線、教えてもらえない情報の数々…」

スネーク「…そういう無線は、アウターヘブンの頃から慣れっこなんでな。勘が働くんだ」

スネーク「お前は『愛国者達のAI』だろう。正直に言え!」

大佐【…………】

大佐【…スネーク】

スネーク「認める気になったか?」

540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 23:27:54.24 ID:AQC4/AqD0





大佐【今すぐにパソコンの電源を切るんだ】





スネーク「…………」

大佐【任務は失敗に終わった。今すぐ電源を切れっ!】

大佐【うろたえるな。これはSSだ、所詮SSなんだ。お互いの本編とは何の関係もない、下らん創作物なのだ!】

美玲【長時間こんなの読んでると目が悪くなるよ?】

スネーク「…やっと正体を現したな」

大佐【スネーク、聞いてくれ。先週の木曜のことだ。私は車で家に帰る途中だった】

大佐【家まであと2マイルほどの所…ふと目を上げると、私と同じ顔をした男が笑いながらこちらを見つめていた】

大佐【とても不規則に動いていた…次の瞬間、辺り一面が光に包まれ…】

大佐【…気が付くと、私はペルソナ能力に目覚めていた】

大佐【どう思う?】

スネーク「貴様が『ペルソナ能力』という言葉を発したということは…」

スネーク「…嫌な予感が当たったな。この殺人事件、やはり『愛国者達』が影を落としているということか…!」

大佐【…分かった。もういい…】





スネーク「…しかし、連中が『テレビの中の世界』にまで介入してくるとなると…」

スネーク「…実に厄介な話になってきた。こいつを鳴上達の力だけでどうにかできるかどうか…」

スネーク「ともかくさっきのマヨナカテレビについて、明日にでもまた鳴上達と話さなければ…」

550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 23:34:36.95 ID:iA3b+X6Q0

翌日 ジュネス フードコート

スネーク「マヨナカテレビ、見させてもらったよ。まさか本当にあんなものが…世の中というのは実に広い」

直斗「僕もです。まさか探偵業をやっている身で、こんな迷信を信じる日が来るなんて…」

陽介「…さあ、その映った人影についてだけど。あれが誰だか分かったって人いるか?」

完二「さすがに無理っしょ。画面あんなザラザラじゃ」

スネーク「…俺は、小学生ぐらいの子供に見える気がしたんだが…」

りせ「え、ほんと…!?よく判別できたね、あんな画面荒かったのに…」

スネーク「…まあ、なんとなくでしかない。確証がある訳じゃないしな」

雪子「他には…最近テレビに出て、地元で有名になった人とかいる?」

直斗「すぐには思い当たりませんね…」

直斗「…直近では、政治家が一人来たそうですが…霧から来る風説を鎮めるためだとかで」

直斗「ですが可能性は低いでしょう。第一、すぐ中央へ帰りましたし」

クマ「むむむ…」

陽介「そういえば…おいクマ。売り場のテレビでいいからちゃんとチェックしろって言っといたけど、調べたか?」

クマ「調べたクマよ。でも特にはなんも…」

クマ「とにかくスネークも言ったけど、映った人って体格が細っこくなかった?」

千枝「いやー、あんだけボンヤリじゃあね…体格も何もないよ」

鳴上「それより、あっちに人は?」

クマ「それはナシ。まだ誰も来てないよ?」

鳴上「そうか…もう一晩様子を見るしかなさそうだな」

陽介「ああ。幸いこの雨、今晩も振り続けるみたいだから。みんな忘れずにチェックしとけよ」

スネーク「了解だ。今夜もか…」

551: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/27(火) 01:40:06.55 ID:S0pjX0kv0

夜 アパート

スネーク「今日もマヨナカテレビの確認か…零時まで起きてなきゃならんのが地味につらいな」

スネーク「暇だな…タバコでも吸うか」

スネーク「…………」

スネーク「…チッ、相変わらず薄味だな…」

スネーク「こんなことなら向こうで買い溜めしてくればよかったか…」


pipipi pipipi


スネーク「ん…携帯が…」

スネーク「相手は…花村?何の用だ、あいつ…」


ピッ


スネーク「はいもしもし、こちらスネーク…」

陽介【スネーク!大変なんだ、相棒が警察に連れていかれた!】

スネーク「な…何だって…!?」

陽介【かいつまんで説明するけど、実は前に悠んとこに匿名の脅迫状が届いたことがあってさ】

陽介【その内容がどうにも『テレビの中』の存在を知ってるような口ぶりだったんだ。で、またその二通目が来たらしい】

陽介【今回はそれを運悪く堂島さんにも見られたらしくて…怪しんだ堂島さんが、相棒を警察に連れていったみたいなんだ…!】

スネーク「警察まで引っ張ることはないと思うが…堂島さんもせっかちだな」

陽介【とにかく、一回集まらねえと!連絡取れる奴は声かけとくから、スネークもすぐに商店街へ来てくれ!】

スネーク「了解した。すぐに向かおう」

552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/27(火) 02:23:15.76 ID:S0pjX0kv0

稲羽市中央通り商店街 巽屋前

スネーク「おーい、花村!」

クマ「おお、スネークも来たクマ!」

完二「モタモタしてらんねぇっスよ、すぐに零時回ります!みんな早く俺ん家に!」





陽介「…悪い、俺も焦っててちょっと連絡回ってない奴もいるんだけど…」

クマ「とにかく今はマヨナカテレビの確認クマ!」

完二「順序ってもんがあらぁ、確認終わったらまた連絡してサツに向かえばいいっしょ!」

スネーク「その通りだ。見るもの見てからでも遅くはない」

陽介「そ、そうだな…!とりあえずマヨナカテレビを…」


ヴヴヴ…


陽介「映った…!」

クマ「…これは…女の子クマか…?」

完二「しかも…小学生っぽいな、これ」

スネーク「…おい、これは…菜々子ちゃんじゃないか!!」

完二「ホントだ…よく見たらこれ、菜々子ちゃん…!!」

陽介「…ちょっと待て!今、堂島さんと相棒は家を空けてるから…菜々子ちゃん、家に一人なんじゃねえのか!?」


pipipi pipipi


陽介「携帯…直斗からだ!」


ピッ


陽介「直斗!お前も見たか、今のマヨナカテレビ!」

直斗【ええ、見ました!あれは…菜々子ちゃん…!】

陽介「大変なんだ、相棒が堂島さんに連れていかれて…それで菜々子ちゃんが危なくて…あーくそ、ややこしくて説明が…!」

スネーク「代われ、花村!」バッ

スネーク「白鐘か!?要件だけ伝えるぞ、お前は今すぐ鳴上の家に向かえ!菜々子ちゃんの安否を確認するんだ!」

直斗【…分かりました、内容は薄々察しています。今すぐ向かいます!】


ピッ


スネーク「花村、里中と天城と久慈川に連絡は?」

陽介「それは…ホント悪い、連絡が追いつかなくて…」

スネーク「…………」ピッポッパッ

スネーク「…里中か!?今すぐ天城と久慈川に連絡を取って、警察署に来るよう伝えるんだ!」

スネーク「いいから、言った通りにしてくれ!経緯を説明してる暇が無いんだ!」

スネーク「…マヨナカテレビの件は大丈夫だ、白鐘を堂島宅に向かうよう頼んである!」

スネーク「…ああ、連絡頼んだぞ!」

554: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 02:28:34.21 ID:P5gjOXDL0

スネーク「急げみんな、俺達も警察署へ向かうんだ!」

陽介「え、お、おう!」

完二「おうよ!」

クマ「リョーカイクマ!」





稲羽署 取調室

堂島「…ん?なんだお前ら」

堂島「おい、勝手に開けるな!」

足立「あわわわ、ちょっと君ら…!」

スネーク「どいてくれ、四の五の言ってる場合じゃない!」

陽介「悠、それに堂島さんも…大変なんだよ、菜々子ちゃんがいなくなった!」

堂島「なっ…どういうことだ!?」

陽介「とにかくこれ、電話…白鐘からです!堂島さんちの前にいます!」

堂島「何だと…!?代われ!」

堂島「おい、白鐘!一体どういうことだ!」

直斗【今、堂島さんの家の前にいます。玄関は空いていて、誰もいません】

直斗【…菜々子ちゃんはおそらく、例の連続殺人犯に誘拐されています】

直斗【堂島さんだって気づいてたでしょう!?事件はまだ続いてるんです!】

堂島「…………」

スネーク「堂島さん、菜々子ちゃんに携帯を持たせたりはしてないのか?」

堂島「それは…一応、安いのを持たせてはいるが…」

スネーク「…その言葉を聞きたかった…!」

556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 02:52:44.22 ID:P5gjOXDL0

スネーク「…………」ピッポッパッ

完二「スネーク先輩…?」

鳴上「どこに電話を…」

スネーク「…もしもし、オタコンか!?準備はできてるだろうな!?」

オタコン【任せてくれ、言われた通り準備は万端だ!】

スネーク「分かった!堂島さん、菜々子ちゃんの携帯の番号を教えてくれ!」

堂島「ば、番号…?それなら、この画面の…」

スネーク「…オタコン、今から番号とメーカーを言うぞ!」

スネーク「…020-****-****…携帯のメーカーは『KJグループ』!」

オタコン【…よし、了解だ!】

オタコン【キャリアの回線情報をハックして、すぐに位置を割り出す!】

オタコン【地方だから基地局から辿るのは容易いはずだ!少し待っててくれ!】

スネーク「頼んだぞ!」


ピッ


足立「…今、電話をしてたのは…?」

スネーク「そんなことは後だ、とにかく数分したらオタコンからの情報が届く…みんな出る準備をしておけ!」


バタン!


千枝「スネーク君!言われた通り来たよ!」

雪子「菜々子ちゃんが…誘拐なんて…!」

りせ「何か手がかりは!?」

スネーク「今調べてもらっている、少し待て!」

直斗「はぁ…はぁ…僕もどうにか、間に合いましたね…!」

クマ「ナオチャン…!」

堂島「……くそっ!誰に電話したかしらんが、俺は待ってられんぞ!」

足立「あ、ちょっと堂島さん!」

堂島「…例の殺人と繋がりゃ、事実誤認で上層はドロ被ることになる…上はギリまで事件とは認めない…!」

堂島「警察の動き出しなんか期待できん!俺は俺で探しに行く!」

557: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 00:41:33.70 ID:hrZ7ij2q0

足立「そんなこと言ったって、アテとかあるんですか!?車とか使われてたら、とてもじゃないけど…」

堂島「うるせえっ!だから急いでんだろうが!」

堂島「とにかく俺は行くぞ!闇雲にでも探し回らにゃ見つからんだろうが!」


バタン!


陽介「お、おい…出てっちまったよ、堂島さん…」

完二「どうすんスか、先輩ら…!?」

千枝「てか、スネーク君の連絡ってのは…?」


pipipi pipipi


スネーク「…一応、音声をステレオにして…」

スネーク「…オタコン!分かったか!?」

オタコン【ああ、今こっちで反応を追跡してる!】

オタコン【菜々子ちゃんの携帯の反応は…今、ジュネスから商店街方面にさしかかってる!】

スネーク「商店街だな!?今すぐ向かう!」

オタコン【あと…移動速度があまりに早かったから調べたら、相手は車らしい】

オタコン【GPSから割り出したんだけど、恐らくその車はローカルの宅配業者みたいなんだ】

スネーク「ローカルの宅配業者…?」

直斗「…そうか!そういうことか…!」

雪子「直斗君…?」

直斗「…疑問に思っていました、そもそも犯人は菜々子ちゃんをどうやって連れ去ったのか…」

直斗「連れ去る以上は家の前に車を停めておかなければなりません。しかし、近所の目もあるしそう長くは停められない」

直斗「…だから、ある程度長く停まっていても怪しまれない車…」

完二「…そうか、思い出した!宅配っスよ、宅配のトラック!」

りせ「宅配のトラックなら、どの家に停まってても“不審”じゃない…!」

鳴上「ローカルだから配達員も毎回同じで顔見知り…トラックならテレビも積み込めるから、すぐに『入れる』こともできる…」

雪子「菜々子ちゃんが叫ぶ間も無く…ってこと?」

スネーク「…どうだ、足立さん。これだけ情報が揃っているのにここから出させないとは言わせんぞ」

足立「いや…それは、その…まいったな…」

スネーク「なんならあんたも来ればいい。とにかく時間が無い、急ぐぞみんな!」

足立「あっ、ちょっ、君達!」





足立「…ハァ。堂島さんも乱心だし、しょうがないか…」

足立「堂島さんにも伝えるだけ伝えといて、僕もあの子ら追わないと…!」

558: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 01:25:43.57 ID:hrZ7ij2q0

稲羽市中央通り商店街

スネーク「この辺りだな…!」

完二「…おい、あれ…!」

陽介「ん…?な、なんだありゃ…黒煙が…!?」

鳴上「事故か…?」

直斗「とにかく、行ってみましょう!」





スネーク「こっ…これは…!」

鳴上「叔父さん…!」

完二「事故ったってのか…?しかも相手のこの車、宅配便屋のトラック『生田目急便』…!」

スネーク「このトラック…あの時の…!」

陽介「あの時…?」

スネーク(…俺がテレビの中に入った時、入るためのテレビはこのトラックに入っていた…!)

スネーク(くそ…やはりあの男だったか…!)

堂島「……っ……菜々子……菜々子は……」

足立「堂島さん、動いちゃダメですって!今救急車を呼びますから!」

直斗「…もしもし、稲羽市中央通りで交通事故です!負傷者は男性一名…!」

堂島「……足立からの連絡を受けて、トラックを追ってたら……クソ……」

堂島「菜々子は……生田目は……頼む、菜々子を探してくれ……」

陽介「探すったって…そうだ、トラックに手がかりあるかも!」

足立「ああちょっと!現場は保存しなきゃいけないんだから、触ったらダメだって!」

直斗「なら僕がやりましょう、待っていてまた振り出したらそれこそ保存になりません」

足立「ちょっ…!もう、ほんっと言うこと聞かないんだから…!」





陽介「…何か見つかったか、直斗?」

直斗「ええ、これは…日記でしょうか。中には…」

直斗「…『僕は新世界の存在を知った。ならば、僕は人を救わなければならない』…」

完二「“救う”だぁ…!?どの口がそんな寝言ほざいてやがんだ…!」

スネーク(“救う”…あの男、俺を襲いに来た時もそんなことを言っていたな…)

直斗「次のページには…」

直斗「…これは…過去の被害者達の現住所…!?」

直斗「山野真由美、小西早紀、天城雪子、巽完二、久慈川りせ、白鐘直斗、ソリッドスネーク…」

直斗「…未遂で終わったはずの三件目以降の事件まで全部網羅されている…!」

足立「す、すごい…!そりゃ決まりだよ!」

559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 02:14:55.35 ID:hrZ7ij2q0

直斗「まだ続きがある…最新の日付が今日ですね」

直斗「…『こんな小さな子が映ってしまうなんて。この子だけは絶対に救ってあげなければ』…」

千枝「それ…菜々子ちゃん!?」

直斗「…『何とか入れてあげることができた』…」

直斗「…『最近警察が騒がしい。おそらくこの日記も、これが最後になるだろう。やれるだけのことはやった』…」

陽介「決まりだな…生田目がこれまでの事件の真犯人!」

千枝「そうと分かれば、早く菜々子ちゃんを助けにいかなきゃ!そこにテレビもあるんだし…!」

スネーク「待て、そこのテレビじゃどこに繋がってるか分からん。ジュネスの家電売り場から入った方がいい」

完二「けどよっ…!」

りせ「私達が失敗したら、誰が菜々子ちゃん助けるの!?絶対にしくじれないんだよ、準備はしていかなきゃ…!」

鳴上「りせとスネークの言う通りだ。焦っても仕方がない、また明日に万全を期してテレビに入ろう」

直斗「その方がいいでしょうね…生田目の行方は警察に任せるとして、僕らはそっちに尽力しましょう」

スネーク「…生田目の行方なんか、警察が調べるまでもなかろう」

直斗「…?」

スネーク「四面楚歌な日記の内容からして、そこのテレビから“逃げた”としか考えられん」

雪子「生田目自身も、テレビの中に入ったっていうの…?」

クマ「でも…そんなことしたら、出られる保証無いクマ…」

スネーク「追い詰められた人間は何をするか分からん。…とにかく、今は救急車の到着を待つばかりだ」





スネーク(…その後、堂島さんを運ぶ救急車に俺達もついていった)

スネーク(…堂島さん…菜々子ちゃん…)





稲羽市立病院 病室

スネーク「…目が覚めたか、堂島さん」

堂島「……お前達……」

堂島「……すまんな、情けない格好を見せちまって……」

鳴上「…叔父さん」

堂島「……菜々子は……菜々子は、俺の生き甲斐だ……」

堂島「あいつを亡くしちまったら……俺は生きてる意味なんかない……」

堂島「菜々子は……今この瞬間も、怖い思いをして助けを待ってる……」

堂島「なのに俺は……ぐっ、ゴホッ……!」

堂島「……一番肝心な時に……このザマだ……」

堂島「偉そうに父親ヅラして……娘一人、守ってやれない……っ!」

直斗「堂島さん…」

堂島「……なあ……お前達になら、できるんだろ……?」

堂島「頼む……悠……菜々子を、救ってやってくれ……!」

鳴上「…必ず助けます。だから、叔父さんは安心して休んでいてください」

560: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 02:44:08.63 ID:hrZ7ij2q0

翌日 ジュネス フードコート

鳴上「…菜々子は絶対に助け出す。力を貸してくれ、みんな」

千枝「あたしらにしか、できないもんね…!」

りせ「そう、だから私達がやらなきゃ!」

雪子「ここまで来て、菜々子ちゃんを犠牲になんて絶対させない…!」

完二「いよいよシメだ…やってやろうじゃねえか、俺らの力でよ!」

クマ「クマ、ナナチャンと約束した…!また遊ぼうって…だから絶対…!」

直斗「とにかく、今は僕らにやれることをやるだけです。それだけを考えましょう」

陽介「ああ、だからこそ気ィ張って行かねえとな!」

鳴上「…スネークも、ペルソナを出すのは初めてかもしれないけど…」

スネーク「心配には及ばん。すぐに慣らしてみせる」

鳴上「分かった。…行こう、菜々子の救出に…!」





テレビの中

りせ「それじゃさっそく、ダンジョンの位置をサーチするから…ちょっと待ってて」

スネーク「さて…ソーコムの弾はよし、スニーキングスーツも問題無し」

スネーク「…そして、無限バンダナも問題なし」

陽介「…スネーク、今日のバンダナは妙に後ろが長えな…」

りせ「…見つかったよ!」

りせ「…すごい…何この優しい感じ…絶対助けてあげなきゃ!」

鳴上「よし…行くぞ!」

561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 03:12:10.39 ID:hrZ7ij2q0

天上楽土 入口

スネーク「ここは…なんというか、童話に出てくるような…」

りせ「きれい…天国みたい」

陽介「…そっか、“天国みたい”か…やっぱ菜々子ちゃん、心の奥じゃ…」

雪子「仕方ないよ、まだあんなに小さいんだもん…」

鳴上「…気丈に振る舞っていても、やはりまだ死別した母親への寂しい思いが残っているのか…」

スネーク「…だからといって、菜々子ちゃんを母親のもとへ行かせるのは早すぎる。絶対に助けるぞ」

鳴上「そうだ、絶対に助けるんだ…待っててくれ、菜々子…!」





天上楽土 内部

クマ「…やっぱりまた、シャドウがそこら中にウヨウヨクマね…」

スネーク「みんな、ここは俺に肩慣らしをさせてくれないか」

千枝「そういやスネーク君、まだペルソナ出したことないしね…それじゃお願いしよっかな」

完二「キツくなったら言ってくださいよ、助太刀するっスから」

スネーク「心得た。それじゃ、出してみようか…」





スネーク「来い、ヤマタノオロチ!」カッ





スネーク「まずはスキルだな。どれ…」

スネーク「…アグネヤストラ!」


ドドドドドドドドドドド


陽介「え…おいおい、今のでシャドウ全滅…!?」

完二「と、とんでもねーな…」

鳴上(…スネークのヤマタノオロチは、俺の持ってるヤマタノオロチと性能が違うのか…?)

スネーク「あっけないな、こんなものか」

千枝「すげー…あたしのアグネヤストラでもそこまでは出ないよ、威力…」

雪子「でも、これだけ強ければ心強いよね」

直斗「さすがは伝説の傭兵…胆力・精神力がそのままペルソナの能力値に表れているようですね」

562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 23:10:12.18 ID:hrZ7ij2q0

りせ「とにかく、戦力が高いに越したことはないよ。このまま一気に菜々子ちゃんの所まで急ご!」

スネーク「任せておけ。道中のシャドウは俺のスキルで一掃してやる」

クマ「でもでも、あんまり一人で相手にしてるとSPが無くなっちゃうクマよ~」

スネーク「…安心しろ。俺のアクセサリーは、無限バンダナなんでな」

完二「無限…バンダナ…?」

スネーク「読んで字のごとくだ。SP無限さ」

陽介「え…ちょっ、そんなアクセサリーあんのかよ!?」

スネーク「本来は無い。…俺がこっそり『こっち』に持ち込んだものだ、俺しか持っていない」

スネーク「あとは…そうだな、ステルス迷彩もあるぞ。姿を消せる装置だ」

千枝「…スネーク君、どういうルートであんなの仕入れてんだろ…?」

スネーク「これは一つしかないから、リーダーたる鳴上に預けよう。使ってくれ」

鳴上「俺に?なんだか悪いな、この前も刀をもらったし…」

スネーク「いいさ、シャドウが反応するのは主にお前のはずだ。お前の姿が見えなくなれば、先制攻撃し放題だぞ」

スネーク「…それに。高周波ブレードとステルス迷彩の組み合わせがどれほど強力か、過去によく味わっているもんでな…」





スネーク「…さあ、さっそく次のシャドウがお出ましだ。先制攻撃してやれ、鳴上」

鳴上「分かった。ステルス迷彩をオンにして…」

クマ「…おおおお!ほんとにセンセイの姿が消えちゃったクマ…!」

陽介「すげえ…!」

鳴上「…攻撃を、仕掛ける!」


[ADVANTAGE!! PLAYER]


りせ「さあ、バトルだよ!敵は四体、先制チャンスだから頑張って!」

スネーク「…鳴上が先制をしかけ、SPを気にせず撃てる俺のスキルで封殺だ…!」

スネーク「…行くぞ!マハジオダイン!」


ズドォォォォォォォン!!


雪子「…ま、また一撃で…!」

千枝「シャドウ全滅しちゃった…すごすぎでしょ、これ…」

スネーク「…フッ、ざっとこんなもんだ」

りせ「お疲れー!」

陽介「…すっげえな…スネークいればもうそこらのシャドウなんか敵じゃねえぞ」

565: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/30(金) 00:24:20.32 ID:8C2F1uMB0

スネーク(その後も、俺一人で軽く蹴散らせるシャドウばかりで拍子抜けしたが…)

スネーク(…いよいよダンジョンの最上層に辿り着いた)

スネーク(待っていろ、菜々子ちゃん…!)





天上楽土 第10天

りせ「この扉の奥から、菜々子ちゃんの気配が…!」

りせ「…ううん、それだけじゃない。菜々子ちゃんの他にも誰かが…?」

スネーク「言っただろう、それが恐らく犯人の宅配屋だ。きっと菜々子ちゃんと一緒に来ているに違いない」

鳴上「だとしたら…もうこれ以上、菜々子を危ない目には晒せない…!」

鳴上「…さあ、突撃だ!行くぞみんな!」

陽介「おうよ!」

千枝「いきますかぁ!」

雪子「うん!」

完二「やってやんぜぇ!」

りせ「絶対勝とうね!」

クマ「やったるクマー!」

直斗「行きましょう!」

スネーク「了解!」





鳴上「菜々子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

生田目「……だ、誰だ!?」

菜々子「お…お兄ちゃんっ!」

スネーク「生田目!その子から離れろ!」

生田目「…ダメだ、行っちゃダメだ!」

生田目「この子は…僕が救うんだ…!」

陽介「このヤロー…!」

雪子「菜々子ちゃんを離して!」

生田目「…フフ…ハハハハ…ぼ、僕が救った奴らだ…!みんな…僕のおかげで助かった奴らだ…!」

スネーク「戯言もその辺にしておけ。でなければ、貴様の脳天を打ち抜く!」

直斗「す、スネークさん!菜々子ちゃんに当たったらどうするんですか!」

スネーク「…俺の銃の腕を信じろ、白鐘」

生田目「…そうだ…お前も、僕が救ってやった一人だ…!」

生田目「…じ、自分から入ってくれたお前なら分かるだろう…!僕はただ救いたくて、テレビに…!」

スネーク「ふざけるな!こんな化け物だらけの世界に人を入れて、何をどう辻褄合わせたら『救い』に結びつくというんだ!?」

生田目「だから、違うんだ!僕は本当に…救いを…!」

完二「いつまでもワケの分かんねえゴタク吐いてんじゃねえ!さっさとその子を離しやがれ!」

生田目「うっ…ち、近づくなぁぁぁぁぁ!!」

566: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/30(金) 00:51:46.97 ID:8C2F1uMB0

菜々子「う……っ……苦しい……」

千枝「菜々子ちゃん!!」

直斗「巽君、落ち着いて!今の奴は何をしだすか分からない…!」

雪子「慎重に話をしないとまずいのかも…」

鳴上「…どうして、マヨナカテレビに映った人間を狙うんだ?まずはそれを教えてくれないか」

生田目「……す…く…い……」

生田目「…救いを求めて…人が、映る…」

生田目「だから…僕がその人を、テレビに入れてあげる…」

りせ「…あんたに救ってほしいなんて頼んだ覚え、無いんだけど?」

完二「てか、救われた覚えもな。真逆だろうがよ、テメェのやってる内容は!」

生田目「…ぼ、僕がテレビに入れなかったら…君らは今頃どうなってた…?」

りせ「それ…自分と向き合えずにいた、ってこと…?」

雪子「そんな…それ以前に、死ぬところだったのよ!?」

生田目「はは…そう、だね…」

生田目「…だからこそ、君らは救われた…僕が入れてあげたから…!」

陽介「さっきから救う救うって…殺すことがお前の言う“救い”だってのかよ!?」

生田目「殺す…?ち、がう…救い…だ…」

スネーク「どこをどう見たらそんな寝言がほざける?お前がやっているのは、ただの人殺しだ!」

生田目「…ふふ、ははは…そう思いたければ、思うがいいさ…!」

生田目「それに…こんなところまで追いかけてきやがって…知ってるぞ、お前らはこの子を殺す気なんだ…!」

生田目「ざ、残念だったな…この子は、僕が救うんだ…!」

567: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/01(土) 00:06:04.41 ID:5aaOyPBR0

完二「テメエ…大概にしやがれ!」

生田目「うるさい!黙れっ!」

生田目「…ぐ……っ……」

スネーク「…なんだ、奴の様子が…?」





生田目?『……素晴らしい世界だ。心地よい霧、見つからない場所……俺は救世主だ!』

生田目?『だから俺が救うんだ……俺はヒーロー……救世主なんだ……!』





雪子「あれは…シャドウ!?」

菜々子「……げほっ……くる、しいよ……おにい……ちゃん……」

鳴上「菜々子!!」

スネーク「…猶予はもう無いな…花村、巽、突っ込むぞ!」

花村「分かった!菜々子ちゃんの保護は頼んだぜ、相棒…!」

完二「行くぜ……だらあああああああああああああああっ!!」


ドッ


生田目?『ぐわっ…!』

直斗「生田目が離れました、今です先輩!」

鳴上「分かってる!」

スネーク「…よし、菜々子ちゃんは鳴上が保護した…!」

クマ「ナナチャン!!」

雪子「菜々子ちゃん…菜々子ちゃんっ!!」

菜々子「…………」

鳴上「菜々子…おい、菜々子っ!!」

千枝「アイツ…マジ許さない!!」

生田目?『その子を……返せ……』

生田目?『その子は……俺が……俺が救うんだあああああああああああああああああ!!』

568: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/01(土) 21:36:16.53 ID:5aaOyPBR0

スネーク「くっ…なんだこのオーラは…!」

りせ「アイツ、シャドウと同化してく…!」

直斗「彼は一体何を…!?」



クニノサギリ『……オレが……オレがすくうんだ……ジャマすんなぁぁぁぁぁぁぁ!!』



雪子「なっ、なんなのあれ…!」

クマ「とんでもない姿になっちゃったクマ~!」

スネーク「天使のまがい物か…悪趣味な」

完二「しかも…なんだあのヤロー、舐めたツラでピースサインなんかしやがって!」

スネーク「…頭のリングまでピースマークとは。奴のピースが示すものは平和ではない…勝利のVといったところか」

千枝「あたし達を倒して、ってこと…?上等じゃない、ぶっ倒してやるっつーの!」

スネーク「セイ・ピース…反戦のシンボル、残念ながらお前には不釣り合いだ。覚悟しろ、化け物!」

陽介「そうさ、こんな所まで来て負けられるかよっ!」

鳴上「……やるぞ!こいつを必ず打ち倒す!」





りせ「…みんな、さっそくアイツが何かしようとしてる!様子見て!」

スネーク「何だ…頭のリングが、回転して…」

陽介「…うわっ!おいおい、アイツからなんか変なの飛び散ったぞ!」

完二「何が飛び散ろうと関係ねぇ!まずは一発ぶちかます!」

完二「行くぜオラァ!ジオダイン!」


ズドォォォォォォン!!


完二「…ん?おかしいな、こんな程度のダメージじゃねえはずなんだけど…」

クニノサギリ『こんどは…こっちの番だ…!』

クニノサギリ『…マハラギダイン!』


ボッ!!


陽介「うおっ!…な、なんで…!?俺は火炎耐性ついてるはずなのに、かなり痛えぞこれ…!」

スネーク「……まさか……」

鳴上「……あれは、もしかして……」

スネーク「…天城、火炎スキルだ!奴にアギ系をしこたま食らわせてやれ!」

鳴上「サトゥルヌス!」カッ

鳴上「天城、一緒にアギダインを食らわせるぞ!」

雪子「え…?う、うん!分かった!」


鳴上&雪子「「…アギダインっ!!」」

569: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/01(土) 22:28:38.64 ID:5aaOyPBR0

クニノサギリ『ぐ……おっ……!』

雪子「…あ、あれ?なんだかいつもより威力が出てるような…」

スネーク「…やはりか。奴がさっき撒き散らしたものには、特定の属性だけ威力が上がる効果があるらしいな」

鳴上「そして、今は火炎属性の威力が上がっている…」

千枝「そうなんだ…!そうと分かれば雪子、どんどんやっちゃえ!」

クニノサギリ『ちぃっ…調子にのるなぁぁぁぁぁあ!』

直斗「…またです、奴の頭のリングから何かが飛び散った…!」

スネーク「無駄だな、理屈さえ分かればこっちのものだ。今さら属性を変えたところで意味は無い!」

鳴上「ああ!みんな、四属性を手当たり次第に当てて有効な属性を確かめてやれ!」



完二「行くぜ!くたばりやがれ…ジオダイン!」


クマ「いくクマよ~!ブフダイン!」


雪子「負けられない…!アギダイン!」


陽介「おっしゃ!やってやんぜ、ガルダイン!」



スネーク「…よし、今度は疾風属性が強化されたようだな。疾風スキルは俺も持っている、行くぞ花村!」

陽介「了解!ぶっ飛ばしてやろうぜ!」

スネーク「SPに糸目はつけんぞ…ガルダイン!マハガルダイン!」

陽介「おらおらおらおらぁぁぁぁぁ!ガルーラ!ガルダイン!マハガルダイン!」

スネーク「…どうだ、利いたか!?」

陽介「ハァ…ハァ…かなり食らわせたと思うぜ!」





クニノサギリ『く……そ……』

クニノサギリ『……おれ……おれ、すくうんだ……!』





りせ「何…?アイツ、かがんだ…」

クニノサギリ『……あ……や……つ……る……』

千枝「…え、ちょっ…何すんのよ、こいつ!」

直斗「なんだ…これは…!」

完二「頭の上に…なんだよこれ、変なもんくっつけんじゃねえ!」

570: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/01(土) 23:36:54.89 ID:5aaOyPBR0

スネーク「くっ…なぜだ、身体の自由が…!」

陽介「スネーク!」

りせ「えっ…スネーク先輩、なんでそっちに行くの!?そっちは敵側…!」

スネーク「ち、違う!これは…くそっ、俺の意思じゃない!」

鳴上「スネーク!…みんなの頭につけられた、これのせいなのか…!?」

直斗「…いえ、ですが僕らは何ともありません。どうしてスネークさんだけ…!?」



クニノサギリ『…?なぜだ…なぜ、この男しかあやつれない…?』

クニノサギリ『だが…まあいい。この男、こいつらの中でも飛び抜けて強者…!』



スネーク「…チッ、逃げろみんな!こいつは俺を使ってお前達を攻撃するつもりだ!」

スネーク「……ぐっ……!」

スネーク『…アグネヤストラ!』

陽介「うわっ!や、やめろスネーク!俺らに攻撃してどうすんだ!」

スネーク「だから違う、俺がやってるんじゃない!こいつの意思で操られているんだ!」

鳴上「くっ…どうすれば…!」

直斗「頭のリングです!操られている原因として考えられるのはあれしかありません、スネークさんのリングを壊すんです!」

完二「で、でもよ…!スネーク先輩の攻撃が凄まじすぎて…!」

スネーク『マハジオダイン!マハガルダイン!アグネヤストラ!メギドラオン!』

千枝「…あの無限バンダナとかいうのがあるせいで、切り札級のスキルが撃たれ放題なのがキツイよ…!」

雪子「スネーク君、敵に回すとこんなにも恐ろしいなんて…」





スネーク「…お前達、遠慮はいらん!俺に当たってもいいから攻撃してこい!」

陽介「んなこと言ったって…!」

直斗「妥協している余裕はありません、攻撃するべきです!でなければこちらがやられてしまう…!」

鳴上「直斗の言う通りだ。道すがらでスネークの強さはみんな見ただろう、俺達が力を合わせなければスネークには張り合えない!」

完二「マジか、やるしかねえのかよ…!」

572: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/02(日) 00:26:14.68 ID:TxVn9lWc0

鳴上「トランペッター!」カッ

鳴上「…ランタマイザ!」

鳴上「ステータスを下げた程度だが、これで少しは張り合えるはずだ。みんな行くぞ!」

千枝「よーし!ならあたしはチャージを…!」

スネーク『メギドラオン!』

千枝「えっ…きゃああああああああっ!」

直斗「…させるか!メギドラオン!」


ドォォォォォォン!!


りせ「…やった、直斗の攻撃で相殺できたよ!」

千枝「あ、危なかった…直斗君マジ感謝っす!」

陽介「…悪ぃ、スネーク!ブレイブザッパー!」

完二「…スネーク先輩なら、こんなのでブッ倒れやしねえって信じてるぜ…イノセントタック!」

クマ「スネーク、耐えてほしいクマ…!ブフダイン!」

雪子「ごめんなさい…アギダイン!」

スネーク「……ぐ……っ……」

りせ「悠先輩のランタマイザが利いてる…スネーク先輩にダメージを与えてるよ!」

鳴上「今だ!里中、ゴッドハンドを!」

千枝「えっ!?…ちょ、ちょっと待ってよ!スネーク君にチャージゴッドハンドを当てろっていうの!?」

鳴上「そうだ。今の俺達はそこまでしなければ…勝てないんだ、分かってくれ!」

千枝「そんな…!いくらなんでも、仲間に向かってそこまでできるワケないじゃん!」

スネーク「……里……中……」

千枝「…!?」

スネーク「鳴上の……言う通り……手加減は、いらん……俺のペルソナごと、リングを叩き割れ……!」

千枝「ほ、本気なの…!?」

千枝「…分かった。なら、あたしも覚悟決める…!」



千枝「スネーク君、倒れちゃダメだよ…!」

千枝「…ゴッドハンドッ!!」



スネーク「……ぐあああああああああああああああああっ!!」

クマ「…やった、スネークのリングが壊れたクマ…!」

陽介「あとは、スネークさえ無事なら…!」

574: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/02(日) 00:58:29.95 ID:TxVn9lWc0

スネーク「………………」

スネーク「……フッ……」

スネーク「俺は……まだまだ、死ぬ訳にはいかんからな……!」





りせ「…やった!スネーク先輩が立ち上がったよ!」

完二「おっしゃあ!さすがはスネーク先輩だぜ!」

千枝「雪子、すぐに回復してあげて…!」

雪子「うん、分かってる!…メディアラハン!」

スネーク「っ…助かった、すまないな天城」

クニノサギリ『まさか……そんな……』

スネーク「…さあ、覚悟を決めろ。化け物」

スネーク「仲間同士で傷つけ合わせた代償…高くつくぞ!」

クニノサギリ『う…うおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

クニノサギリ『…ゆ、“揺るぎなき正義”…!』

スネーク「貴様の技か?そんな正義になど…誰も同調しはしない!」

スネーク「…これで終わりだ!マハジオダイン!」


ズドォォォォォォン!!


クニノサギリ『……く……そ……なんで……』

クニノサギリ『…………』

生田目「……くそう…なんで…だ……」





スネーク「…やっと、倒れたな…」

りせ「…菜々子ちゃんっ!」

スネーク「そうだ、菜々子ちゃんは…!」

菜々子「…………」

千枝「菜々子ちゃん…菜々子ちゃんっ!」

クマ「…きっとこの場所がよくないんだ!早く外に出るクマ!」

鳴上「分かった、急いで出よう!」

スネーク「……鳴上と数人は行ったな。さて、この男だが」

直斗「置いていく訳には…いかないでしょうね」

陽介「連れて帰るしかねーか、やっぱ…」

完二「気に入らねーけど…死なす訳にはいかねぇか」

575: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/02(日) 01:34:39.63 ID:TxVn9lWc0

ジュネス 家電売り場

直斗「…ひとまず、警察と救急車は呼びました。生田目の身柄は警察に任せて、僕らは病院へ急ぎましょう!」





稲羽市立病院

鳴上「…今、担当の先生と症状について叔父さんが話してるみたいだ」

スネーク「…菜々子ちゃん…」

オタコン「スネーク!急に連絡してくるからびっくりしたよ…菜々子ちゃんは!?」

雪子「ハル先生…!」

鳴上「…絶対安静、というのは間違いないそうです。だから…」

足立「…あれ?君達、まだいたの?」

直斗「足立さん…どうですか、菜々子ちゃんの容体は…?」

足立「いや、それはまあ…まだ堂島さんも担当の先生との話が詰まってないみたいだし、僕にはなんとも…」

足立「…それにほら、もう暗いから君達も帰った方がいいよ。君達まで倒れたら意味無いでしょ?」

陽介「…だな。さすがに俺らの方も疲れが結構キツいし…倒れた意味ねぇか」

足立「菜々子ちゃんのお見舞いはいつでも来られるんだから。ほら、帰った帰った」





スネーク(…足立さんに促され、今日は解散の運びとなった…)

クマ「…………」

スネーク「…どうした、クマ」

クマ「スネーク…センセイ…ナナチャン、元気になるよね…?」

鳴上「…当たり前だ。だからこそ、俺達が暗くなっちゃダメなんだ」

クマ「…そうクマね…ナナチャンと遊ぶ約束、いっぱいしたから…クマ、笑ってナナチャンを待ってる!」

スネーク「その意気だ。…さあ、今日は帰ろう。ゆっくり休むんだ」

576: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/02(日) 01:55:34.96 ID:TxVn9lWc0

某時刻 稲羽市中央通り商店街 MOEL石油

オセロット「…さあ、ここからが見ものですな。連中は“虚像”を振り払うことができるかどうか…」

??「それも含めて、私はただ傍観するだけ…“人の望み”とは何か、この事件によって導き出されるのならばね」

オセロット「…ご提言ですが、あなた自身は出ないのですかな?」

??「なぜ私が出る必要がある?私はただ見極めたいだけだよ、“人の総意”を」

オセロット「だからこそ、あなたという存在が表舞台に出ることで変わる何かもあるのでは…と」

??「私の干渉は…“例の三人”だけで充分だ。それがどう一人歩きするか、見届ける方が本分なのでね」

オセロット「…では、もしあの小僧共があなたという存在に気づいたとしたら…いかがいたすつもりでしょう?」

??「そんなことはあり得ない。神たる私の存在に気づける人間など…君くらいのものだよ、オセロット」

オセロット「…褒め言葉として受け取っておきましょう」

578: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/03(月) 22:23:22.02 ID:Kd/7i7/Z0

スネーク(その後、菜々子ちゃんの回復を信じて待つしかない状況が続いた…)

スネーク(…日数だけが経過していく中…)





数日後 早朝 稲羽市中央通り商店街

スネーク「…登校がけに買った新聞には、生田目の記事が載っているな…」

陽介「ようスネーク、何読んでんだ?」

スネーク「花村か。それに天城と里中…」

鳴上「みんな、おはよう」

千枝「おっ、鳴上君も来たね」

スネーク「…みんなこの記事を見てみろ。生田目のことが書かれている」

雪子「…『先日未明、生田目容疑者の意識が回復。警察の事情聴取に応じ、怖かった・すまなかったなどと供述している模様』…」

陽介「…終わったんだよな、これで。テレビに入れてた犯人は捕まった…」

千枝「ほんと…ようやくだよね」

千枝「…にしても、なんか今朝やけに霧が濃くない?それに…寒いし」

鳴上「だな。ここのところ、霧の出る日がやけに多いし…」

足立「……あれっ?君達、こんなところで何やってんの。学校始まっちゃうよ」

鳴上「足立さん…」

足立「あ、その新聞は…ってことはもう、いろいろと知ってるみたいだね」

スネーク「足立さん、生田目の様子はどうだ?」

足立「一応意識は回復したけど、まだ何とも言えないんだよね…錯乱してる部分もあるけど、どうにか話聞いてるところだよ」

足立「…ああそうだ、話変わるけど。さっき病院から連絡があってさ、今日から菜々子ちゃんの面会OKだって。君らも顔出してあげなよ」

千枝「ほんと!?菜々子ちゃん、少しは良くなってきたんだ…よかった…!」

足立「堂島さんも何とか動けるようになったし、いろいろ話さなきゃいけないから。僕は病院行くからさ、この辺でね」





スネーク「…菜々子ちゃんは何とか回復しそうだな。いいことだ」

陽介「なんなら、さっそく今日の放課後にみんなでお見舞い行かねーか?菜々子ちゃんだって一人で寂しいはずさ」

千枝「モチ!」

雪子「学校着いたら、一年のみんなにも伝えないとね」

鳴上「…やっと、菜々子に顔を見せてやれるな…」

579: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/03(月) 23:28:28.86 ID:Kd/7i7/Z0

放課後 稲羽市立病院

堂島「…菜々子、みんながお前の見舞いに来てくれたぞ。頑張って目を開けてみろ」

菜々子「…う…ん…」

鳴上「菜々子、俺が分かるか…?」

菜々子「…おにい…ちゃん…」

菜々子「…よかった…来てくれた…んだね…」

菜々子「…………」

スネーク「…鳴上の顔が見られて、安心したらしいな」

陽介「ああ、菜々子ちゃんまた眠っちまった…」

直斗「…うるさくすると菜々子ちゃんに悪いですから、部屋を出ましょうか」





病院内 廊下

堂島「で、先生。容体の方は…?」

医師「今のところ、容体は安定しています。ただ…」

医師「…医者が言うべき言葉ではないんですが、相変わらず原因が掴めないものでして」

医師「そのため、対処療法的な処置しか施せないというのが現状です」

鳴上「…危険な状態からは、ひとまず抜けたんですか?」

医師「意識は回復してくれましたが、まだ断言はできませんね…」

鳴上「そうですか…」

堂島「…足立、生田目の件はどうなってる?聴取が始まったんだろう」

足立「意識が戻ったっていっても、まだまともに会話できるような状態じゃないですからね…」

足立「一日にできる聴取の量も限られてますし、事実上はまだまだ回復待ちってトコですよ」

堂島「そうか…俺も一日も早く、仕事に戻るようにしないとな。その頃には菜々子も退院できてるといいが…」

足立「あー…でも菜々子ちゃんはここの方がゆっくり休めると思いますよ」

足立「外は霧がすごいし、変なウワサも広まってるし…この町の霧、どうも発生の原因が不明らしいですからね」

医師「確かに、霧のせいで体調が悪いと駆け込んでこられる方が増えていますが…そんなことはあり得ないと思うんですがね」

スネーク(…霧で体調不良…?確かそんなことを『大佐』も言っていたような…)

堂島「霧のせいで具合が悪いだぁ?バカバカしい…それこそ霞を食うような話だ」

鳴上「…とりあえず、今日のところはみんな帰ろう。菜々子には安静にしてもらわないといけないからな」

陽介「まぁ、そうなるか…またいつでもお見舞いは来られるし、今度はおみやげでも持ってこようぜ」

580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/03(月) 23:51:31.99 ID:Kd/7i7/Z0

同日 深夜 稲羽市立病院

菜々子「…………」

??「…よく寝ているな」

??「さあ、堂島菜々子…貴様にこいつを注入してやるとしようか」

菜々子「……ん……なに……?」

菜々子「…!! だ、だれ…!?」

??「安心しろ、俺はミスター・ナマタメのようなことはしない。文字通り『救う』だけだ」

菜々子「い、いや……こわいよ……おにいちゃん……!」

??「…貴様は数日後、おそらく生死の淵をさまようことになるだろう」

??「そのときにあの小僧共が起こす行動…一歩間違えると、我らの計画が瓦解しかねんのでな」

??「そうならないために、その前提の部分から覆す必要があるのだよ」

菜々子「……やだ……こっちこないで……!」

??「…貴様はまだ幼いから効力が薄いかもしれんが、それでもこの症状を回復させるのには十分だ」

??「もっとも、あのヴァンプほどになる可能性も無きにしもあらずだが」

??「…さあ、首筋を差し出せ!」

菜々子「いや……いやああああああああああああああああっ!!」





??「…さて、これで完了だ。貴様の症状は明日にでも全快するだろう」

菜々子「うっ……ひっく……い……いたい、よ……」

??「まあ…お前のような子供に注射が苦痛なのは仕方がない。我慢してくれ」

??「…ひとまず俺の仕事は済んだ。またゆっくり眠るがいい」

菜々子「え……?」

??「あとの仕事は…そうだな、奴に倣って俺もメッセージを投函してみるとしようか」

??「奴らが自力で真犯人に辿り着けるかどうかの保証も無い、俺が誘導してやろう…」

??「…では。グッドナイト、堂島菜々子よ」

582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/04(火) 01:57:22.28 ID:10XmyO470

スネーク(どうにか菜々子ちゃんは意識を取り戻した…が、回復はまだまだ先のようだ)

スネーク(生田目の事情聴取も始まり、事は一見快方に進んでいるようには見える)

スネーク(…だが、気がかりもある。晴れない霧と、人々の謎の体調不良騒ぎ…)

スネーク(とにかく今は、事態を静観するしかないか…)





翌日 稲羽市中央通り商店街

主婦「…ほぉんと、変な天気よねぇ?こんな霧がずっと続いてるなんてね」

町人「こんなの、今までなかったんだけどなあ…」

主婦「なんでも知り合いの子がね、霧で具合悪くなって倒れちゃったらしいのよ~。ほら、子供って敏感じゃない?」

町人「そりゃまあ…大変だねえ」

主婦「でしょ~?あんまり不安にさせないでほしいわよねぇ」

町人「身体に有害っていう専門家もいるらしいしな、どうしたもんだか…」

主婦「なんとかしてもらいたいわよね、ほんとに…」

ガスマスク男「これは毒ガスだーっ!ウイルスの霧なんだーっ!」

ガスマスク男「この霧を吸うなー!毒に冒されて死ぬぞーっ!」

町人「…で、ああいうのも出てくるようになっちゃったし」

主婦「そうそう。いくらなんでも毒ガスなんて…」

町人「まさか…ねぇ…」





昼休み 八十神高校 屋上

スネーク「…霧が晴れんな…」

陽介「今さら霧の心配してたってしょうがねえって。それよか、また放課後に菜々子ちゃんのお見舞い行かねーか?」

りせ「うん…できることなら毎日でも行ってあげたいくらいだし」

雪子「今日は何か、おみやげでも持ってってあげようか?」

鳴上「そうだな。ジュネスでラブリーンのおまけつきお菓子でも買っていってやろう」

完二「容体も悪い方には進んでねえっつってたし、大丈夫っしょ」

千枝「このまま元気になってほしいけどね…祈るしかないかな」

直斗「ええ…そろそろ昼休みも終わります、ひとまず戻りましょうか」

583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/04(火) 23:25:16.36 ID:10XmyO470

放課後

雪子「…そういえば、この前のテストの結果がやっと張り出されたらしいよ。菜々子ちゃんのお見舞いの前に見ていかない?」

スネーク「この前…ああ、あのテストか」

千枝「スネーク君と鳴上君、かなり熾烈な争いだったんだよねー?」

鳴上「そういえば…なんだか最近慌ただしくて忘れてたな」

陽介「俺は英語だけできて、他が散々っぽい手触りだったからなぁ…見てもあんま変わらないかも」

雪子「見るだけ見ていこうよ、みんな気になるでしょ?」

陽介「気になるのは成績優秀組だけだって…」




スネーク「…で、掲示板まで来たが…」

りせ「あっ、せんぱーい!」

直斗「先輩方も確認ですか?」

完二「先輩ら…これ、案の定スネーク先輩と鳴上先輩がバケモンレベルっスね…」

スネーク「どれどれ…ほう、なるほど」

千枝「…え、えええっ!?鳴上君とスネーク君、同着で学年トップ…!?」

陽介「しかも二人とも全教科満点って…マジで怪物だな、お前ら…」

男子生徒「よっ、学年トップのお二人さん!張り出し眺めてニヤニヤしに来たのか~?」

女子生徒「すっごいよねー、全教科満点が二人も出るなんて…何年に一度のキセキだよこれ」

スネーク「…まあ、大したことではないさ。勉強すれば手が届く範疇だ」

男子生徒「またまたぁ、謙遜すんなよ」

女子生徒「今回は結構難しい気がしたからなぁ、私。よく点数取れたと思うよ、ほんとに」

男子生徒「だよなー。あ、でも英語は結構イケた気がしない?」

女子生徒「英語かぁ、確かに結構簡単だったかなあ」

男子生徒「特に…アレだよほら、問題の最後に出てきた単語の和訳。アレがなんかミョーに記憶に残ってんだよな」

女子生徒「あー、あれか!あれはまあ簡単だったよね。…でもなんでだろ、あんなの習った覚えは無かったような…」

男子生徒「やっぱお前も?…俺も実を言うと、聞いた覚えも無かったんだけど…なぜか解けたんだよな、アレ」





男子生徒「あの和訳問題…『らりるれろ』だっけ?なんでだろーな、解けたの」

女子生徒「そうそう、『らりるれろ』。聞いた覚え無いような気がするんだけどねー…なぜか記憶にあったみたいな」





スネーク「…………」

スネーク(…なぜだ…!オタコンの調べでは、健康診断の予定は無かったはずじゃ…!)

スネーク「…お前達。一つだけ聞かせてほしいことがある」

男子生徒「な、なんだよ…急に改まんなって」

スネーク「端的に言おう。ここ最近、注射を打ったことはあるか?」

男子生徒「注射…?ああ、こないだ打ったけど…」

女子生徒「わ、私も一応…」

584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/05(水) 00:16:31.04 ID:ILMakh/R0

スネーク「…どこで打った!?言え!」

男子生徒「ちょ、そんなデケー声出さなくても聞こえてるって!」

女子生徒「私は…その、ここ最近の霧が有害とかいうニュースを親が信じちゃって、その予防接種をやってるっていう所で注射を…」

男子生徒「ああ、やっぱそれか。俺もだぜ、母さんがうるせーから仕方なく注射受けに行ったんだけど…」

直斗「予防接種…?そんなもの聞いたことありませんけど」

男子生徒「なんだよお前ら、知らないのか?最近の町中じゃその予防接種の話題が水面下でブームなんだぜ」

完二「…思い出した。そういやおふくろが言ってたな、予防接種の車がどうとか…」

スネーク「…詳しく教えてくれないか、その予防接種とやら」

男子生徒「分かった分かった。…最近、町中に献血のキャンピングカーみたいなのが現れるようになってさ」

女子生徒「…でね、どうやらそれは町の役所が今回の霧騒動の対策として導入したらしいんだけど…」

男子生徒「“そこの注射を打つと症状が治まる”とかいう触書きでな。なんだか最初は胡散くせーと思ってたんだけど、これがドンピタなんだよまた」

千枝「ど、ドンピタ…」

女子生徒「具合悪かった人がその注射を受けたら、もうほんの数分で良くなっちゃうらしいの」

男子生徒「注射の成分とか配合とかは企業秘密らしいけど、とにかくすぐ治るのなんの。そこが強調されて一人歩きしていって…」

男子生徒「…で。噂が噂を呼んで、只今町中で絶賛浸透中ってワケさ」

スネーク「…………」

スネーク(…迂闊だったか…この霧の騒動に乗じてくるとは…!)

スネーク「…分かった、ありがとう」

陽介「さあさあ、お話はその辺で区切ってさ。時間も押してるし菜々子ちゃんのお見舞い行こーぜ!」

りせ「ジュネスでおみやげも買わなきゃならないし、急がないとまずいかもね」

鳴上「そうだな…行っても大丈夫か、スネーク?」

スネーク「…ああ」





稲羽市立病院

スネーク(ジュネスでクマと合流がてら、菜々子ちゃんへのおみやげを購入して病院へやってきた)

スネーク(…菜々子ちゃんには悪いが、今ははっきり言って見舞いに来ている場合じゃない)

スネーク(すぐにでも帰ってオタコンと話をしたいところだが…)



スネーク「…………」

千枝「菜々子ちゃん喜んでくれるかなー、このラブリーンの食玩」

完二「食玩かぁ…編みモンでラブリーンでも作ってみっかな…」

陽介「お、いいんじゃねーの?完成したらジュネスにも流通ルート築かせてくれよ」

りせ「そういえば完二のお店の前、最近人形も置くようになったよね」

直斗「…ですが、ラブリーンを売るのであればまずは商標の許諾を…」

足立「……あ、いたいた!おーい君達ー!」

鳴上「足立さん…?血相変えてどうしたんですか」

足立「大変なんだよ、菜々子ちゃんが…!」



585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/05(水) 01:03:30.68 ID:ILMakh/R0

クマ「な……ナナチャンが……?」

完二「…おい、何だってんだ。ハッキリ言いやがれ!」

足立「うぐぐ…む、胸ぐら掴まないで…」

足立「…き、昨日の夜。菜々子ちゃんの病室に何者かが忍び込んで、菜々子ちゃんに“注射”をしたらしくて…!」

スネーク「……!!」

足立「幸い、菜々子ちゃんの病状そのものは全快したらしいんだけど…その、メンタル的なダメージというか…」

雪子「何者か、って…誰だか分かってないんですか…!?」

足立「それが分かれば苦労しないよ…!とにかく、君らはほら!早く菜々子ちゃんの病室に!堂島さんもいるから…!」

鳴上「…くそっ!」





病院内 病室

鳴上「…菜々子っ!!」

菜々子「お…おにい、ちゃん…」

堂島「悠!それに、お前達…!」

陽介「どういうことっすか、菜々子ちゃんが注射されたとかって…!?」

千枝「菜々子ちゃんは無事なんですか!?」

クマ「変なクスリ入れられたとかじゃ…!」

堂島「説明してやるから、まずは落ち着け。…菜々子が昨日このベッドで寝ていたら、急に見知らぬ男が部屋に入ってきたらしい」

堂島「部屋も薄暗かったんで顔はよく見えなかったらしいが…ともかく、何やら脅されてから首筋に注射を打たれたようなんだ」

堂島「そして…説明しにくいんだが、その男は『注射を打つことで症状が治る』ようなことを言い残していったとかでな」

医師「…事実、昨日まではかなり乱れていた呼吸や心拍が、今日になって急に正常値に戻っているんです。こんなことは普通に考えてあり得ないのですが…」

雪子「で、でも…だからってそんな知らない人が打った注射なんか、信じられる訳ないじゃないですか!」

堂島「それはそうだ、俺も思っているが…」

医師「…一通り検査はしたのですが、毒物を注射されたような痕跡はありません。ですから…その、皆さんのお気持ちも分かるのですが…」

医師「…精神的な部分を除けば、特に身体への影響があるとは言えない結果でして…」

千枝「そんな…!」

完二「知らねぇ野郎に注射打たれたんだろ!?それが悪意の産物じゃなくて何だってんだよ、おいコラァ!」

直斗「巽君、落ち着いて…!」

医師「しかし、菜々子ちゃんの症状が回復しているのは事実なんです!私としてはどうにも説明のしようが…」

完二「…チッ…!」

鳴上「…菜々子、怖かっただろう。でももう大丈夫だ、お兄ちゃんがそばにいてやるからな…」

菜々子「うん……こわかった……ものすごく、こわかった……!」

602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/18(火) 23:24:19.05 ID:r2YywjWS0

スネーク「…鳴上、水を差してすまないが。菜々子ちゃんに一つ頼みがあるんだが、いいかな?」

菜々子「え…?う、うん…いいよ…」

スネーク「菜々子ちゃん…『あいこくしゃたち』と言ってみてくれないか」





菜々子「…『らりるれろ』…?」





スネーク(…くそっ!なぜなんだ!?)

直斗「スネークさん、またその『らりるれろ』ですか…そんなに何度も聞いて回って、一体何なんですか?」

千枝「『らりるれろ』…英語のテストでそんなんあったね、そういえば。それがどうしたの?」

スネーク「どう、というか…」

堂島「『らりるれろ』…?そういや俺も、ハル先生に似たようなこと聞かれたが…」

スネーク「まあ、ほら…とりあえず菜々子ちゃんの具合も問題ないようだし、よしとしないか。なあ鳴上」

鳴上「ん?ああ…大丈夫か、菜々子」

菜々子「うん…少しはよくなった、かな…」

完二「先輩、ほら。忘れないうちにラブリーンの食玩。菜々子ちゃんに渡してやってくださいよ」

鳴上「分かった。…ほら菜々子、おみやげにラブリーンのおもちゃを買ってきたんだ。こんな時に悪いけど…」

菜々子「ほんとだ、ラブリーン…お兄ちゃん達が買ってきてくれたの…?」

陽介「菜々子ちゃんが早く元気になるように、ってね。お兄ちゃんによくお礼言っとくんだぜ」

菜々子「うん……ありがと、お兄ちゃん……」

菜々子「………………」

クマ「…寝ちゃったクマね、菜々子ちゃん」

雪子「うん…それにしても、怖かっただろうね。知らない人が入ってきたなんて…」





医師「…とりあえず皆さん、落ち着きましたか?菜々子ちゃんの容体は安定しています、ご安心なさってください」

りせ「注射打たれたっていうのが引っかかるけど、お医者さんが大丈夫だっていうなら大丈夫だよね…?」

堂島「検査もしてもらったしな…また菜々子の回復を待つ日が続くだろう」

足立「みんなも焦るのは分かるけど、また医者の先生怒鳴り散らしたりとかしないようにね…」

完二「あれは…仕方ねぇだろ、心配なもんは心配なんだしよ…!」

鳴上「…問題ないのは分かったし、ひとまず安心していいんじゃないか。俺達の方がしっかり落ち着いてないとな」

陽介「だな。容体は快方に向かってんすよね、先生?」

医師「はい、このままなら急転直下ということも考えられませんし…」

鳴上「…俺達は待つだけだ。そして、菜々子が元気になって戻ってきた時に盛大に祝ってやればいい」

クマ「うん、センセイさすが!ナナチャンのお祝いのためにまた買い出しクマね~」

陽介「お前、ついでにお菓子買いたいだけだろ…」

千枝「でもさ、やっぱあたしらが暗かったらダメじゃん。クマきち程じゃないにしても、明るく構えなきゃ」

直斗「それも…そうですね。また今度、みんなでお祝いの出し物でも決めましょうよ」


604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/18(火) 23:59:06.46 ID:r2YywjWS0

陽介「しょうがねえ…とりあえずまた明日だな。また放課後でも使って集まろうぜ」

千枝「りょーかい。それじゃ解散…かな?」

堂島「親御さんも心配するぞ、早く帰っとけ」





スネーク(こうして、お見舞いは解散の運びとなったが…)

スネーク(…あの男子生徒の言っていた内容から察するに、町の人間も続々“注入”されていると考えるべきか)

スネーク(それに加えて、菜々子ちゃんまで…)

スネーク(…とにもかくにも、まずはオタコンと情報を交換しなければ…)





夜 アパート

オタコン「スネーク…その顔は、もう大体知ってるらしいね」

スネーク「ああ。霧の風評に乗じた予防接種とは…」

オタコン「止めに入ろうにも、こんな出方されるとね…どうしようもないよ」

スネーク「今からでも強引に…というのはきついか?」

オタコン「無理だと思うな。町の人、あの注射を結構信用してきちゃってるみたいなんだ」

スネーク「信用だと…?」

オタコン「注射を打つと具合が良くなるっていうアレだよ。実際その通りになってる例が多いらしい」

スネーク「…霧が実際に害なのかどうかは別として、そういうメンタルの乱れがナノマシンで抑制されているのは間違いなさそうだな」

オタコン「だろうね。それが余計に町の人達にとって安心材料になっちゃってる…」

スネーク「…話は変わるが、いつまで経ってもこれといった実害が無いことに関してはどう考える?」

オタコン「それは…まあ、まだまだ今の段階が連中の計画途中とかじゃないのかい」

スネーク「ふむ…」

オタコン「いつまでも具体的な被害が見えないってのがまた、不気味なもんだね…」

スネーク「…着々と人数だけが増えている。どうしたもんか…」





同時刻 堂島宅

鳴上「…帰ってきたら投函されていた、この封書…宛名は無い」

鳴上「…犯人の生田目は捕まった。菜々子も救出した」

鳴上「…誰なんだ?終わったはずだ…!すべて…!」

鳴上「…とにかく、封を開けてみよう」

鳴上「…………」

鳴上「…内容は…」
 

605: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/20(木) 02:14:45.10 ID:wBJObYpd0

『これで終わりだと思ったか?

 結論から言うが、一連の事件の犯人は生田目太郎ではないぞ。

 本来ならば、お前達だけの力で辿り着くべきなのだろうが…特別に犯人の名前だけは教えてやる。

 この事件の真犯人…それは、足立透だ。お前の叔父の部下の、あの男。

 そして、足立透が犯人として。それを立証する根拠やら理屈付けやらを考えるのはお前達の仕事だ。

 …では、頼んだぞ。お前達にはしっかり“真ED”まで辿り着いてもらわねばならんからな。
 
 頑張って足立透を追いつめてやるといい』



鳴上「…な、なんだこれは…?足立さんが犯人…?」

鳴上「…………」

鳴上「…ダメだ、さすがに話が突飛すぎる」

鳴上「…また明日、みんなにこれを見せてみようか…」





翌日 放課後 ジュネス フードコート

陽介「おいおい、なんだよこれ…!事件は終わったはずだろ!?」

千枝「また脅迫…いやこれ脅迫じゃないか。何状?」

クマ「あのアダッチーが犯人…?」

りせ「話が急すぎるよ、これ…この前生田目を捕まえたと思ったら…」

完二「ざけんなよ!生田目が犯人としか思えねえだろうが、こんなん信じろってんスか!?」

スネーク「…落ち着け、巽」

完二「…チッ…!」

直斗「…僕は、可能性として検証するには値するかと思います」

雪子「直斗君…?」

直斗「僕も…あれから冷静に考えてみて、どこか引っかかるような気がずっとしていました」

直斗「ほんの些細な違和感にすぎませんが…生田目の行動は本当に悪意によるものだったのか、と」

スネーク「…お前もか。実を言えば、俺もあの男にそんな大それた悪意があるとは思えなかった」

陽介「お前ら…!」

スネーク「まあ…しかし、だからといってあの足立さんが犯人というのも疑問ではあるが」

鳴上「…一度、調べてみないか?胡散臭いのは元々だけど、こうして書かれている以上は可能性があるんじゃないかと思うんだ」

完二「可能性っつってもよ…!」

直斗「…僕達は少し、菜々子ちゃんを危険に晒されたということで頭が熱くなりすぎていたと思います。一度冷静に考えてみませんか」

千枝「言われてみれば…確かに、ちょっとカッカしすぎてたのは否めないけど…」

りせ「でも、だからって足立さんが犯人だなんて…」

スネーク「人は見かけによらんからな。…ともかく、俺は調べる価値はあると思うぞ」

鳴上「…みんなが菜々子を気遣ってくれるのはありがたい。でも、俺としてもこの手紙の真偽を確かめたいんだ」

陽介「マジかよ…本当に、生田目が犯人じゃねえ可能性があるってのか…?」

607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/24(月) 13:57:37.15 ID:Vcxngo7L0

スネーク「…手紙に書いてある足立さんに直接聞きに行こう。あの人のことだ、尋ねてからの反応を見れば嘘か真実かの見当はつく」

りせ「見当って言っても…」

スネーク「とにかく、じっとしてても始まらん。まずは行動だ」

鳴上「…足立さんに聞きに行く、か。まさか…足立さんが…?」





稲羽署

足立「あれ、君達どうしたの。休みの日にこんなところまで」

スネーク「…足立さん、折り入ってアンタに見てもらいたい物がある」

足立「見てもらいたい?」

鳴上「この手紙…です。読んでみてください」

足立「手紙?どれどれ……」

足立「………………」

足立「……な、なんだよこれ!僕が犯人だって!?」

直斗「…僕達も違うであろうことを願っています。ですから、こうして聞きにきたんです」

足立「ち、違うも何も…!僕がそんなことできるように見える!?刑事が人なんか殺す訳ないでしょうが!」

スネーク(…………)

完二「ホントにやってねえんだな?信じていいんだな?」

足立「当たり前でしょ!ま、まったくもう…冗談にしてもふざけすぎだよ、君達!」





??「冗談だと?どの面を下げてそんな寝言がほざけるのやら…私は貴様から聞いたことをそのまま書いただけだぞ」





雪子「だ、誰…?」

陽介「…お、おい!アイツって…!」

直斗「…スネーク先輩のダンジョンで、鳴上先輩に腕を落とされた…!」

足立「し…シャラシャーシカ…!なんでお前が…!?」

スネーク「バカな…オセロット、なぜ貴様がこんな場所に!」

オセロット「久しぶりだな、ソリッドスネーク。アーセナルの甲板以来か?…まあ今はそんなことはどうでもいい」

陽介「あいつ、シャドウじゃなかったのかよ…!」

直斗「やはり…切り落とされた腕、おかしいと思っていました。シャドウならそのまま煙のように消えるはずなのに、妙に生々しく残ったままだったのは…」

陽介「あいつが、本当に人間だったから…!?」

鳴上「…お前が今言った『そのまま書いた』というのは…この手紙を送ったのはお前ということなのか?」

オセロット「いかにも。貴様らが生田目太郎を真犯人ということで決着させかねん状況だったのでな、少々“手を加えさせて”もらった」

オセロット「そして…『最初の山野真由美・小西沙紀らを殺したのは俺だ』。自慢げに語っていたのはお前じゃないのか?ミスター・アダチよ」

足立「…チッ…!」

609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/28(金) 02:14:01.60 ID:vlo/iRBq0

オセロット「貴様らに謎解きの一つもさせようかと思っていたが…待ちきれず出てきてしまったという訳だ」

オセロット「いつまでも先に進めない貴様らに代わって、俺が事件の真相をすべて話してやろう。心して聞け、小僧共」

足立「…や、やめろ!喋るな!」


チャッ


足立「っ…」

オセロット「黙っていろ。でなければ、貴様の脳天が吹き飛ぶことになるが」

スネーク「…この国は銃刀類の所持は禁止のはずだ。それにぶっ放せば人だって集まってくる」

オセロット「だからどうした?そうなったとしても“テレビの中”に逃げ込めばいいだけの話だ。…誰かさんと同じくな」

オセロット「とにかく…全員黙って話を聞け、ということだ」

オセロット「…最初の二件。山野真由美・小西沙紀らを殺した犯人ついては今言った通りだ」

オセロット「そして、三件目以降…貴様らの内の何人かが狙われた件については、実行犯がミスター・ナマタメに移る」

オセロット「不倫報道で当の山野真由美とも連絡が取れず、八十稲羽の実家で飲んだくれていた所に…」

オセロット「…奴も聞いていたらしい。“マヨナカテレビ”の噂を冗談半分で試したようだ」

オセロット「そして、山野真由美がマヨナカテレビに映ったのを見た。その後、彼女は死体で発見された」

オセロット「奴はこう思った…マヨナカテレビに映った人間は、殺されると」

オセロット「程なくして二件目の被害者、小西沙紀がマヨナカテレビに映ったのを見たようだ」

オセロット「小西沙紀を保護できまいかと警察に助力を乞うべく、電話をしたようなのだが…」

オセロット「…運命のいたずらだな。その電話に出たのが、よりによってこのミスター・アダチだったのだ」

オセロット「そして…この男の悪意によって、その後のミスター・ナマタメは見事に踊らされてしまった」

オセロット「多少の混乱状態だったミスター・ナマタメに“空間があるならそこに入れれば安全なんじゃないか”と吹聴したのは…他でもない、この男だ」

オセロット「だからこそ奴は、映った人物を“救う”ために…テレビの中へ人を入れ続けてきたのだよ」

鳴上「“救う”…まさか、生田目の…生田目さんの言っていたことは…」

雪子「…本当に、映った人を救いたい思いで行動してたってこと…!?」

オセロット「本人としては、純粋に善意だったのだろうな。それがどういう結果を引き寄せたかはお察しの通りだが」

りせ「けど…だったらどうして、山野アナと小西さんは…!」

千枝「そうだよ、何の関係も無いじゃんよ…!」

オセロット「…おい、ミスター・アダチ。聞かれているぞ」

足立「………………」

陽介「答えてくれよ、足立さん…!小西先輩は…どうして…!」

足立「…それは…その…」

オセロット「…あくまで認めんつもりか。ならば俺が真相を離そうとした時、焦って止めに入った理由は何だ?」

足立「…クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

クマ「アダッチー…なんで…」

足立「ウゼェんだよ…!テメェらクソガキ共になんか喋っても、どうせ何も分かんねえんだよ!」

足立「ああそうさ!山野真由美も、小西沙紀も…俺が入れたんだよ!“向こう側”にな!」

完二「野郎…ついにバケの皮が剥がれ落ちたな…!」

足立「シャラシャーシカ…後でキッチリ復讐はさせてもらうからな、テメェの裏切りのせいで俺の計画が…!」

オセロット「…下らんな」

613: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 19:27:48.49 ID:cjobNHR20

足立「それに、てめえらもだ…!二回も封書を送って警告したにも関わらず、何度も何度もテレビの中へ助けに行きやがって…」

足立「犠牲者が出なきゃ面白くねえってのに、ホンットに邪魔されたぜ…殺したいほどウザかったよ、お前ら!」

陽介「…てめえ…!」

足立「上手くいけば、ここにいる半分以上が死んでたはずなのになぁ…あーつまんねえつまんねえ!」

千枝「コイツ…っ!」

足立「どーせ変わりゃしねえって。こっちの世界、もうすぐ向こうの世界と同化するっぽいし」

鳴上「同化…!?」

足立「そうそう。気づいてねえの?こっちと向こうの境目が無くなって、やがてシャドウがそこいら中を這い回るようになるんだよ」

直斗「…まさか…!少し前から続いている霧の正体は…!」

足立「やっと分かった?こっちで霧が止まない理由」

クマ「…テレビの中の霧が、こっちの世界に漏れてきてるクマか…!?」

足立「当ったりー!最高だろ、人間みんなシャドウになるんだぜ!?超楽しいじゃん!」

りせ「…何が楽しいのよ、このゲス…!」

オセロット「…さて、お喋りもその辺で終わりだ。ミスター・アダチよ、これで貴様は逃げ場が無くなったが…」

足立「逃げ場が無い…?あるに決まってんだろ、お前だって今さっき言ったじゃねえか」

足立「…逃げればいいのさ、テレビの中にな!」

雪子「あっ!」

完二「野郎、逃げやがったな!」

鳴上「追うんだみんな!奴は上の階に逃げた、必ず捕まえるぞ!」

陽介「分かってる、急ぐぜ!」





オセロット「…………」

オセロット「…どうした。奴らと一緒にミスター・アダチを追いかけないのか?」

スネーク「オセロット…一つだけ聞かせろ」

オセロット「…言うだけ言ってみるがいい」

スネーク「お前…いやお前達は、この町で何を企んでいる?」

オセロット「…………」

スネーク「お前達…『愛国者達』が、こんな日本の田舎町に住む人間をナノマシン統制しようとする目的は何なのかと聞いているんだ」

スネーク「健康診断と霧の風評による予防接種…これらを通して、この町の住民が着々とナノマシンを仕込まれている」

スネーク「…何より、数日前に菜々子ちゃんの病室に忍び込んで注射を打ったという人物…お前だろう」

オセロット「…ソリッド・スネーク。この八十稲羽に伝わる土地神の話を知っているか?」

スネーク「……?」

オセロット「…イザナミノミコト。テレビの中の世界を生み出し、あの三人に力を授けた者…」

スネーク「テレビの世界を、生み出した…?」

オセロット「…いずれ全てが明かされる日が来るだろう。それまでおとなしく待つことだな」

オセロット「では…ミスター・アダチもこれでテレビの中に逃げ込んだことだろう。俺の役目はひとまず終わった」

オセロット「…また会おう!」

614: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 02:24:30.55 ID:uCV8frLt0

スネーク「くっ…待て!」

スネーク「……チッ、相変わらず逃げるのだけは早い奴だ…」

スネーク「仕方ない、俺も足立を追わなければ」





スネーク「…みんな、足立は捕まえたか!?」

千枝「いや…それが…」

直斗「…間一髪で逃げられてしまいました。テレビの中にね」

スネーク「…くっ」

完二「こうなりゃ仕方ねえ、俺らもすぐに中入って足立のヤローを…!」

クマ「ま、待つクマ!こんなところのテレビから入ったらどこに出るか分からない、いつも通りジュネスから入んなきゃダメクマよ!」

完二「けどよ…!」

鳴上「場所は分かったんだ、万全の準備で挑もう。…足立がもうずっと前からこの世界のことを知っていたとなると、向こうで戦闘になる可能性は否定できないからな」

陽介「そりゃまあ…そうなるか…」

鳴上「今日は解散だ、明日以降にじっくり攻めよう」

雪子「うん…仕方ないね」





スネーク(…その日は解散になった)

スネーク(明日からまたテレビの中に入り、足立を追いつめなければならない)

スネーク(…だが…なんだ、この胸のつっかえは…)

615: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 02:59:42.39 ID:uCV8frLt0

翌日 テレビの中

スネーク「…さあ、足立を追いつめるとしようか」

りせ「うん、場所はもうサーチ済み。…あっちの方からものすごい力を感じる」

千枝「あれ?その方向って、確か…」

陽介「…お、おい。確かアレじゃねえか、顔の切り抜かれたポスターだらけのキモい部屋…」

直斗「先輩達、何か心当たりが?」

陽介「心当たりも何も…まだ俺と相棒と里中しかこの世界を知らなかった頃、行ったことがあってよ」

鳴上「…首つりのロープやら何やら、気味の悪いインテリアがズラリだったな」

クマ「思い出したクマ、センセイ達と行ったあの部屋…!」

完二「…とにかくよ、そこから反応があるってなら向かうだけだぜ。悠長にしてる暇ねえぜ」

雪子「うん、急ごう。こっち側で移動されたら追跡が面倒そうだし…」





りせ「…ここだね」

ガチャ…

千枝「…ハァ、相変わらず気色悪いな…」

完二「…おい先輩ら。いやがんぜ、アイツ」

陽介「足立…!」

足立「……クソ、同じ力を持つ者同士で協力するべきなんて話に乗るんじゃなかった…シャラシャーシカの野郎…!」

スネーク「…足立。年貢の納め時だ、観念するがいい」

足立「あぁん?…おいおいなんだよ、もう追いついてきやがったのか?」

陽介「てめえ…よくも小西先輩を…!」

鳴上「山野アナも小西先輩も…お前の手で…!」

足立「あーあーうっせえガキ共だなあ。…まあいい、どうせバレた以上は盛大にやっちゃうか」

足立「俺はこの先のダンジョンで待ってるよ。俺を捕まえたきゃ来なよ、待ってやるから」

足立「…じゃ、そういうことで」

完二「あぁ!?おいテメ、どこ行く気だ!」

鳴上「…!?足立が消えた…!」

雪子「それにあそこ…なんか、変な穴が…!」

??『そこの穴を通ってこっちに来な。遊んでやるよ』

スネーク「この声…足立か」

完二「クソが、舐めやがって…!」

鳴上「…行こう。足立を必ず追いつめて、事件を終わらせよう」

陽介「ああ。もうこれ以上…好きにはさせねえ…!」

617: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/01(火) 03:05:13.82 ID:WINVkrIP0

禍津稲羽市

足立「来たねえ。…で、何の用?」

完二「テメェ…おちょくってんのか!」

足立「そりゃそうさ。…お前らガキ共の勘違いヒーローごっこ、見てて最高だったよ…!」

足立「バカだよなぁ~お前らも。ジュネスでさんざ会議してたけど、あれって何?『絶対救うぞ』みたいなしょうもない集まり?」

陽介「…黙れよ…!俺達は、テレビに入れられた人間を毎回死ぬ気で助けてきたんだ…!」

雪子「入れられた人間は死ぬところだったのに…それをどうして、そんな風に笑えるのよ!?」

足立「だからさ、それがバカだって言ってんだよ」

足立「…かたや生田目は、テレビの中に入れれば安全だと思っていたからこそマヨナカテレビに映った人間を“入れ続けた”」

足立「一方のお前らは、テレビの中の恐ろしさを知っているからこそマヨナカテレビに映った人間を“救出し続けた”」

足立「お互い善意なのに、イタチごっこが止まらない…もう最高。こんな面白い茶番劇は二度とお目にかかれねえだろうなあ」

直斗「ふざけるな!そんなくだらない動機のせいで…多くの人間が危ない目に遭ったんだぞ!」

陽介「山野アナと小西先輩…お前に殺された二人の無念、考えたことあんのかよ!?」

足立「…だからさぁ、俺はただ“入れた”だけだっての」

足立「悪いのはこの世界じゃん。直接的な死因はこっち側で起きたことなんだから」

陽介「お前はこっちに入れたら死ぬことが分かってて手を下したんだろ!それが罪じゃなくて何だってんだ!?」

足立「はぁ…お前らの世代ってほんと口だけは達者だな」

足立「どうせ世の中なんてクソなんだからさ、生きてても死んでても変わらないって。死んだ二人もあの世でそれを実感してるだろうよ」

足立「…本庁の仕事でちょっとミスしただけなのに、こんなクソど田舎まで左遷されるような世の中だ」

足立「色々面倒になって、さてどうしようかと考えてたら…ちょうどこの“力”に気づいてさ」

足立「やれたからやっただけだし。で、面白かったから見てただけだし」

雪子「そんな…現実がどうなってもいいっていうの!?」

足立「そりゃそうだろ。基本は退屈でつまらないだけの世界だ」

足立「うまくやれる人間なんて始めから決まってる。そこに漏れた奴らは、そこから目を逸らして生きていくしかない」

足立「気づいちゃったら残るのは絶望だけ…ゲームオーバーだ」

クマ「そんなことはないクマ!頑張れば誰だって…!」

足立「ケッ…ガキは無知だからウザいよ」

足立「今は色々将来について夢を馳せてるんだろうけどさ、“夢”ってのは“知らない”ってことだ」

足立「お前らも大人になって世の中見渡せば分かるよ…どこまでもつまらなくて、くだらない現実がな」

足立「こっちは経験談でモノを言ってんだ。未だに親の金でメシ食ってるようなガキとは考え方が違うんだよ」

足立「…そんな下らない世界なら、いっそ人間みんなシャドウになった方が楽だろ?だから導いてやるのさ」

千枝「そんなこと…誰も望んでない!」

足立「仮にお前らがそうだったとしても、現実にいる大半の人間がそう望んでる」

足立「苦しいことには目を向けない、目隠しされて生きればみんな幸せ…そういう意思の結晶がこの世界だろ?」

足立「これからの世界……テメェらみたいなメンドくせえガキの方がいらねえんだよっ!!」

619: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/01(火) 04:00:43.88 ID:WINVkrIP0

スネーク「…足立、透。お前にどうしても言っておきたいことがある」

足立「あぁ…!?」


シュッ バサッ


足立「!! …お、おい…なんだよ…お前のその、顔…!」

スネーク「お前はさんざんガキだのクソだのと罵ってきたが…“お前より長く生きた人間”として、一つ教えておいてやろう」

足立「なんだよ…なんなんだよ、お前…!」

スネーク「…苦しいことから逃げずに立ち向かう行為を嘲笑することで、自分の弱さを見ようとしない人間。少なからず存在する」

スネーク「努力もせず、耐えることもせず、乗り越えることもせずに、否定することでしか自尊心を保てない人間達だ」

スネーク「俺は…幾度となく死地を乗り越える傍らで、人間がいかにして成長するかを何度も目にしてきた」


『彼女は何のために戦っていたのかな…!?スネークは何のために…!?』


『…認められたかった。父の意思を継ぎ、軍人として活躍したかったから…』


『ドッグタグ?……いや、知らない名前だ。自分の名前は自分で決める』


スネーク「…逃げないということ。それこそが人を成長させる唯一の…そして最善の道なんだ」

スネーク「そして…それを嘲笑するという行為こそが大人の対応であるかのように、人々は錯覚している」

スネーク「だが、そうじゃない。…本来なら我々大人が、努力することの大切さを子供に伝えなければならないというのにな…」

スネーク「…“否定することしかできない大人”と“逃げないということの強さを知った子供”…」

スネーク「…お前が鳴上達を上回っているのは、歳だけだ。そしてそれは、人間としての器の大きさとはイコールではない」

スネーク「お前は…世の中にしか責任の所在を追及できない、腐った大人の典型でしかない!!」

足立「…だ、黙れ…黙れ黙れ黙れ黙れ!!」

足立「クソガキが…てめぇがそうだったとしても、残りがガキなのは変わらねえだろ!ガキ、ガキ、ガキ……所詮てめえらはクソガキなんだよっ!」

雪子「……ガキはあなたよ!!」

雪子「生きるのも面倒…死ぬのも嫌…そんなの、誰からも理解されないに決まってるでしょ!」

直斗「…人は、一人じゃ生きられない。だから社会と折り合うことを投げたら、生きづらいに決まってるんだ…!」

完二「…なのにテメェは、立ち向かわず、去る度胸も無く、人であることすらごまかして逃げ出そうとしてやがる」

千枝「世の中が面倒だって言ったくせに、大勢の他人を巻き込んでね…!」

直斗「…お前の理屈は全部、コドモ以下の単なるわがままだ!!」

足立「…う…うるせえ…!強がってんじゃねえよ…!」

足立「……俺を否定しないと、お前らが立ってられないんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/02(水) 00:27:24.67 ID:PVeQt7kB0

クマ「なんか様子が変クマ…!みんな気をつけて!」

足立「放っときゃいいかと思ったが…目障りだ、今ここで消してやる!」


カッ


千枝「…えっ!?あいつが今出したのって…!」

りせ「まさか…あいつもペルソナが使えるの…!?」

スネーク「…しかもあれは、鳴上のペルソナによく似ているような…」

足立「死ねよ…クソガキ共がぁぁぁぁぁぁ!!」

陽介「うおっと!…へっ、当たるかよ!」

鳴上「スキルも大層なものが揃ってるみたいだな…手加減はいらないらしい、本気で行くぞ!」

スネーク「了解だ。…前回のダンジョンでペルソナの扱いはだいぶ慣れた、全力で行かせてもらおうか」

スネーク「MP無限をフル活用させてもらうぞ…」

スネーク「…ランタマイザ、マハタルカジャ、マハラクカジャ、マハスクカジャ!」

クマ「おっほー、これはこれはフルコースクマね…!」

千枝「こっからチャージ、そしてゴッドハンド…!」

完二「全力でブン殴ってやるぜ…覚悟しやがれ!」

鳴上「申し分ないな…これで総攻撃すれば、ひとたまりもないだろう」

スネーク「さあ…開戦と同時に決着をつけるぞ!奴に反撃の隙を与えるな!」

スネーク「覚悟しろ、足立…!」



スネーク「ガルダイン!」

直斗「メギドラオン!」

クマ「ブフダイン!」

完二「イノセントタック!」

雪子「アギダイン!」

千枝「ゴッドハンド!」

陽介「ブレイブザッパー!」

鳴上「ジオダイン!」



足立「ふ、ふざけんなよ……!なんで一人であんなにスキルを……」

足立「……ぐっ……うわあああああああああああああああああっ!!」

622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/02(水) 01:19:11.01 ID:PVeQt7kB0

鳴上「…やったか…!?足立は…!」

足立「……く……そ……」

足立「……なんだよ……つまんねえ……」

足立「……まぁいいや……どうせあっちの世界はもうすぐなくなる……戻る場所なんかないし……」

陽介「…ふざけんな。お前も戻って…きっちり罪を償うんだよ」

足立「……はは……言ったろ、もうすぐ向こうは霧に閉ざされる……帰ったところで無駄なんだよ……」





同時刻 稲羽市内 某所

オセロット「…もしもし、私です」

オセロット「……例の作戦を開始します。いよいよですな……」

オセロット「今しがた、ようやくスネーク率いるペルソナ使いの小僧共がミスター・アダチを倒したようです」

オセロット「…ええ。このまま行けば“奴”が出るでしょう」

オセロット「しかし…“奴”の出る幕すら無く、この八十稲羽の霧は晴れることとなる」

オセロット「…ええ。我々の『力』によってね」

オセロット「奴が現れる“理由”を根本から取り除く。それを可能にする『力』こそが…」

オセロット「…試作段階の『SOPシステム』…」

オセロット「…そしてこの流れは、やがてあのミス・イザナミさえも…」

オセロット「…そうですな。全てはそこに辿り着くため…」

オセロット「…では、始めるとしましょう」





同時刻 禍津稲羽市

完二「…無駄かどうかなんて分からねえだろ。まずはテメェをふん縛った後で、また霧の原因を突き止めりゃいいだけだ」

直斗「お前は…多くの罪を犯した。霧がどうこうと言い訳する暇があったら、しっかり現実で罪を償うことだ」

足立「……チッ……」

陽介「さあ、キリキリ歩けよ。向こうでしっかり裁きを受けるんだ」

鳴上「…まずは帰ろう。足立は堂島さんに任せた後で、もう一度来るんだ。そして必ず霧の根源を断ち切る」

623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/02(水) 02:20:00.68 ID:PVeQt7kB0

スネーク(…足立を捕まえ、現実の世界へと戻ってきた…)





ジュネス内 家電売り場

直斗「…堂島さんに連絡を入れました。まだ入院中の身ですが、稲羽署に事情は話しておいてくれるそうです」

直斗「あと…気になったんですが」

鳴上「どうした?」

直斗「なんというか…堂島さんの声、妙に生気がなかったような…」

直斗「…ともかく、早く警察へ向かいましょう」

足立「…………」

スネーク「…言っておくが、逃げようとしても無駄だぞ。お前の自供内容は全てボイスレコーダーで録音させてもらってある」

千枝「マジ…?相変わらず準備いいね、スネーク君」

鳴上「…さあ、店を出よう」





陽介「…えっ?お、おい…これは…!」

クマ「霧が……晴れてるクマ!」

鳴上「…なぜだ?霧の根源はまだ見つかってないんじゃ…」

雪子「でも…事実こうして晴れてるなら問題はない、かな?」

千枝「それは…まあ…」

完二「…おい足立。テメェ知ってんだろ、霧の原因が何なのか。言わねえと…」

足立「…………」

完二「…また痛い目見てぇか?あァ!?」

足立「…………」

りせ「ちょ、ちょっと待って…足立の顔色…」

完二「あ?」

千枝「…!!こいつ、気を失ってる…?」

スネーク「気絶…とは違うな。目がしっかり開いている」

陽介「なんだこれ…どうなってんだよ?おい、足立!返事しろ!」

足立「…………」

雪子「ちょっと…これ、どういう事…?」

オタコン「スネーク!やっと見つけた…!」

スネーク「オタコン…?どうした」

オタコン「大変なんだ、町の人達が…!」

オタコン「…町の人達が、みんな喋らなくなったんだ!」

鳴上「喋らなくなった…?」

オタコン「うん…なんていうか、うわの空っていうのかな…魂の抜けた人形みたいな…」

スネーク「なんだと…どういうことだ?」

625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:57:37.32 ID:TXD02ERS0

同時刻 稲羽市立病院

完二「…どうなってやがんだ!?」

雪子「菜々子ちゃんも堂島さんも…足立も、町の人も…」

直斗「…皆一様に、さながら思考停止した機械のような状態に…」

鳴上「そもそも、いつからこんなことに…?」

オタコン「スネークがみんなと出かけた後に、少し時間が経ったらこんな状態になっちゃって…」

オタコン「…あと、それだけじゃないんだ。実は…」

スネーク「どうした?」

オタコン「…リボルバー・オセロット。あいつが…僕のもとにやってきたんだ」

陽介「おい…そいつって、まさか…!」

千枝「スネーク君が言ってた、あの足立と一緒に出てきた…?」

スネーク「…オセロットなら、俺達の前にも現れた。真犯人の足立とはどうやら協力関係だったようだが…途中で奴が裏切ったようだった」

オタコン「スネーク達も会ったのかい…!?」

スネーク「どういうつもりか知らんが…この町で起きた連続殺人の真相を一通り話し、足立を追い込んだら去っていった」

スネーク「…奴の口から『愛国者達』の目的を割ろうとしたが…どうにも逃げられてな」

オタコン「オセロット…相変わらず現地での暗躍担当みたいだね」

オタコン「…それはそうと、本題だよ。オセロットが僕のもとへやってきて“伝言”を残していったんだ」

クマ「伝言…クマか?」

オタコン「そう。そしてその伝言は…二つ、ある」

オタコン「一つは、オセロットが言うところの『特別捜査隊』宛てのメッセージ。…君らに話せば通じるって言われてたから、君らがそうなんだろう?」

オタコン「…『全ての霧を晴らしたければ、明日再びテレビの中の世界に来い』…と、奴は言っていた」

りせ「全ての霧、って…どういうこと…?」

陽介「…まさか、こっちの霧は晴れたけどテレビの中の霧が晴れてねーとか…そういうことなのか?」

直斗「言われてみれば…テレビの中の霧だけは相変わらず、ですね…」

オタコン「…そして、残りの一つ。この伝言は鳴上君宛てのものだ」

鳴上「俺宛て…ですか?」

オタコン「うん。…正直、こっちの伝言もまた意味不明というか…」

オタコン「…『鳴上悠。明日、テレビの中の世界に入る前に…必ずベルベットルームを訪れろ。旅路の終着点にふさわしい“あるもの”が渡されるはずだ』…」

鳴上「……旅路の、終着点……」

オタコン「…伝言は、それだけ。僕にはよく分からないけど…君達には分かる内容なんだろ?」

スネーク「…ああ、そうだな…」

626: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 23:43:00.59 ID:TXD02ERS0

稲羽市中央通り商店街 MOEL石油

??「…何が起きている…?」

??「アメノサギリの気配が消え、霧が晴れた…それは納得できるとして…」

??「…アメノサギリが戦闘を行った様子は無かった。それなのに、忽然と気配だけが消えた…」

??「それだけじゃない…この町の人間の意思も、どことなくおぼろげになってきている」

??「一体、何が…」





オセロット「…知りたければ教えてやろうか?ミス・イザナミよ」





イザナミ「…オセロット。君が何かを企んでいる様子だったのは前から感づいていたが…これはどういうことだい?」

オセロット「布石…だ」

イザナミ「布石とは…一体、何の?」

オセロット「それをここで喋っては面白くなかろう?」

イザナミ「…ならば、どこで喋るというのかな?」

オセロット「…“黄泉比良坂”。貴様の生み出す最後のダンジョンで話そうか、とな」

イザナミ「…………」

オセロット「要件を言おう。…貴様には明日、そのダンジョンを訪れてもらいたい。そこで…勝負といこうではないか」

オセロット「この土地の支配にさしあたり、貴様の存在が邪魔なのでな。消えてもらわなければならん」

イザナミ「…私がどういう存在であるか、忘れた訳ではないだろう?」

オセロット「もちろん、理解しているとも」

イザナミ「…それに、そのダンジョンは文字通り“私の空間”だ。それでも…いいんだね?」

オセロット「異存はない。…“我ら”には、その根っこの部分から覆す準備があるのでな」

イザナミ「…いいだろう。君にはいろいろ聞きたかったところだ、痛めつけてから話を引き出してあげよう…」

オセロット「快諾、感謝しよう。…では明日、黄泉比良坂にて…」

オセロット「…また会おう!」

628: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:34:43.84 ID:8J6d57/S0

スネーク(…これで、最後のはずだ)

スネーク(連続殺人の真犯人は足立。そして…未だ気がかりなのがオセロットの動向)

スネーク(オセロットの目的を知り、それを阻止することができれば…この町に立ち込める暗雲は払われるはずだ)

スネーク(この町の住人に打ち込まれたナノマシン…)

スネーク(…利用目的は分からない。だが、明日になれば全てが明らかになる…そんな予感がある)

スネーク(明日、テレビの中の世界で…奴は何をしでかすつもりなのか)

スネーク(何であれ止めなければならない。奴の…『愛国者達』の計画である以上はな)

スネーク(……そして、一夜が明け……)





ベルベットルーム

鳴上「…………」

イゴール「…おや、これはお客人。いかがなされましたかな?」

マーガレット「この数日…まさに破竹の勢いとでも言うのかしら、あなた達は五里霧中の状態から瞬く間に真相を手繰り寄せてみせた」

イゴール「…今やあなたに降りかからんとしていた災厄は払われた後だ。その上、私共に何用でございましょう?」

鳴上「…感じませんか?違和感を」

イゴール「はて…違和感、と申しますと?」

鳴上「俺達は、確かに真犯人を捕まえた。でも…何かがおかしい」

鳴上「…重要な決断や、自分達の力だけで辿り着くべき答えを…やり過ごしてしまったかのような…」

鳴上「…“終着点”は、まだここじゃない。そんな気がするんです」

イゴール「…言われてみれば、感じますな」

マーガレット「これは…あなた達に“こう辿り着いてほしい”という、第三者の強い望み…とでも言うのかしらね」

イゴール「…それが何を示すのか、それは私共にも分かりかねます」

イゴール「…いや。もしやこれが…?」

イゴール「…かつてあなたにご忠言した内容、覚えておいでですかな?」

鳴上「忠言?…ああ、あの“強大な力”がどうとかの…」

イゴール「お気をつけください。この干渉の感覚は…その“強大な力”とよく似ております」

マーガレット「…しかし、あなた達も一度は真実を手繰り寄せているわ。それだけの力があったからこそ…」

イゴール「そこで…これを持ってお行きなさい」

鳴上「…?この、光る球体は…」

イゴール「あなたが築きあげた絆の力…その結晶のようなもの、と言いましょうか」

イゴール「虚ろな噂に惑わされず、物事の本質を見抜く力の断片…」

イゴール「…あらゆる虚飾を振り払い、嘘を打ち消し、真実を照らし出す宝珠にございます」

イゴール「…しかし、注意は十分に払いなさい。不吉な予感は止みません」

鳴上「…ありがとうございます、二人共」

イゴール「さあ…お行きなさい。それを使ってやるべきことが、あなたにはまだ残っているようだ」

鳴上「…はい。行ってきます」

630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 01:29:36.77 ID:8J6d57/S0

テレビの中

スネーク「…さあ、これで正真正銘の最後の勝負といこう」

鳴上「ああ。…りせ、頼む」

りせ「うん……調べてる、ちょっと待って」

陽介「…しかしさぁ、あのオセロットとかいうオッサンは何が目的なんだ?」

直斗「奴は『霧を晴らしたければ』と言っていたらしいですが…まさか奴が、霧の根源…?」

雪子「うーん、さすがにそれは無いんじゃないかなと思うけど…だって見た目はただのおじさんだし…」

スネーク「…やりかねんがな、“あの連中”なら」

スネーク(…VR訓練があれだけリアルだと、こういう空間を創り出せると言われても頷けるからな…)

りせ「…!! な、なにこれ…」

クマ「リセチャン…?」

りせ「…向こうに、新しいダンジョンができてるんだけど」

完二「そこがアイツの言ったダンジョンなんだろ?んなら、早速突撃と行こうじゃねえか!」

りせ「待って!…なんていうか、そのダンジョン…」

りせ「心が無い、っていうのかな…これまではそのダンジョンを生み出した人間の心の乱れが感じられたんだけど…」

りせ「…そういうのが全然無い。ただただ不気味で…落ち着いてる」

鳴上「…だからといって、ここで尻すぼみする訳にはいかないだろ?」

鳴上「行こう。あのオセロットという男が何を仕掛けているのか…とくと見届けてやろうじゃないか」





テレビの中 某所

オセロット「舞台は整った。そして、役者も揃った」

オセロット「仕上げにあの小僧が“見晴らしの珠”を使えば…」

オセロット「…さあ、グランドフィナーレも近い。せいぜい派手に飾るとしようか…!」





黄泉比良坂 葦原中津

陽介「ここが…オセロットの言ってたダンジョン、か?」

千枝「なんていうか…荘厳な感じだね」

完二「神社…じゃねえな。なんだここ?」

直斗「…確かに久慈川さんの言った通り、不気味なほどに空気の澄んだ場所ですね…」

りせ「…? なんか変だよ、反応が…二つ、ある…?」

雪子「二つ、って…どういうこと?」

りせ「多分オセロットだと思う反応が一つと…あともう一つ、誰かの反応があるの」

りせ「…すごく強い。多分、オセロット以上に…どうしてこんなのが…」

643: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 00:01:38.57 ID:GS/ZtCtA0

スネーク「…ここでどうこう言ってても始まらん。進まないか」

鳴上「ああ。そのオセロットじゃない反応も含めて探して回ろう、みんな」

千枝「りょーかい。…にしてもほんっと静かだね、ここ…」





黄泉比良坂 九之辻

イザナミ「…!! この反応は…まさか…」

オセロット「……そのまさかだよ、ミス・イザナミ」

イザナミ「オセロット…彼を、ここへ呼び寄せたというのか…?」

オセロット「いかにも。目的の都合上、奴もここへ来てもらう必要があるのでな」

イザナミ「…言ったはずだ。君がどうやって私の正体を知ったのかは分からないが、それを口外するなと」

オセロット「フン…口外するな、か。日本の偶像ごときが大層な口を利くものだ」

イザナミ「…前から思っていたが、君は私を甘く見過ぎているようだ。よほど思い知らされたいようだね…?」

オセロット「思い知らすだと?面白い…貴様がどれだけ矮小な存在であるか、むしろこちらが思い知らせてやろうではないか」

オセロット「…イザナギとイザナミの“国産み”。貴様がこの国で大層幅を利かせた神であることは知っている」

オセロット「だが、それは所詮“日本”という括りの中での最高位に過ぎん」

オセロット「世界を総べる我らUSA…『愛国者達』がその気になれば、貴様の力を封じることなど造作もないということを」

イザナミ「…大した増上慢だね。私を前にしてよくもそこまで言葉が並ぶものだ」

オセロット「それはそうだろう。貴様など取るに足りぬ存在なのだと、さっきから言っているではないか」

イザナミ「…御託はもういい。冒涜の数々、死をもって償ってもらうよ。オセロット」

オセロット「よかろう。それでは…始めるとしようか」





黄泉比良坂 二之辻

スネーク「アグネヤストラ!」

鳴上「マハジオダイン!」


ズドォォォォォォォン!!


りせ「…うん、これでこの階も敵は全滅!先急ごう!」

陽介「ふぅ…何とかスネークの無限バンダナと、相棒のステルス迷彩でサクサク進めてはいるけど…」

スネーク「…俺がこれを持ち込むことは、オセロットも織り込み済みのはずだ。それを踏まえて考えると…」

直斗「…この流れはオセロットの計画通り、とでも言うんでしょうかね」

クマ「でもでも、進めてる分には問題ないクマ?」

雪子「うん、それはそうだけど…なんだか胸がモヤモヤするね…」

完二「進めてるのに気分晴れねぇってのも…なーんかアレっスよね」

千枝「とにかく、乗せられてるとしても先進まなきゃでしょ。会ってボコボコにしちゃえばオッケーだって」

鳴上「そう上手くいけばいいが…足立をそそのかすだけの奴がそう簡単に隙は見せないだろうな」

644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 00:42:49.64 ID:GS/ZtCtA0

黄泉比良坂 九之辻

オセロット「…素晴らしい…!ようやくその姿を見せたな…!」

イザナミ『…オセロット。愚かなる人間よ。己の無力と蛮勇を悔やんで逝くがいい』

オセロット「…クックック…!いいぞ、その調子だ…!」

イザナミ『いつまで笑っていられるかな…?』

イザナミ『…“神の審判”!!』


ドッ!!


オセロット「…甘いな」ヒュッ

イザナミ『…避けたか…まあいい、こんなものは序の口だ』

イザナミ『ところで…君の武器は、その二挺拳銃だけかい?すまないがそんなものでは私は殺せないよ』

オセロット「もちろん、理解しているとも」

イザナミ『では、どうするつもりかな?』

オセロット「どうするか。それは……」

オセロット「……こうするのだよ!」





オセロット「イザナギ…!!」カッ





イザナミ『なっ……ば、バカな……!?』

オセロット「…さて、いかがかな?」

イザナミ『なぜ君がペルソナを…それにそもそも、そのペルソナは…!』

オセロット「そう、“イザナギ”だ。…あの小僧しか使えないはずの、な」

イザナミ『どうして…それを…』

オセロット「言っただろう?『愛国者達』がその気になれば、造作もないことなのだと」

オセロット「…ペルソナの発現過程から進化の条件、果ては人工経験値に不正合体まで…我ら『愛国者達』の手にかかれば、その程度の解析は朝飯前だということだ」

オセロット「それらを元に生み出された新型のナノマシン…これを体内に注入すれば、どんな人間でもペルソナを操れるようになる」

オセロット「これによって俺は今、ペルソナを操っている。…あの下らんお涙頂戴劇をはさまずとも、ペルソナは操れるようになったのだ」

イザナミ『どういうことだ……なぜ……!』

オセロット「…イザナミ。貴様は人間を見くびり過ぎた」

オセロット「人が神を超えること。あるいは、人が神に成り代わること」

オセロット「…それは最早、そんなに難しいことではない時代なのだ」

オセロット「……さて、続きといこうではないか。構えるがいい」

659: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/17(木) 05:13:39.47 ID:zbG5BtW/0

黄泉比良坂 六之辻

りせ「…何、この感じ…」

雪子「りせちゃん、どうしたの?」

りせ「…このダンジョンのどこかで、誰かがペルソナを出してる…?」

クマ「誰か…って、クマ達以外にってこと!?」

りせ「そうなる…と思う。それにこの反応…悠先輩に似てる…?」

鳴上「俺に…?」

りせ「うん。先輩がいつも出してる、あの学ランっぽいペルソナ…イザナギだっけ?それに似た反応が…」

完二「おいおい、どうなってんだそりゃ…!?」

直斗「…もしかすると、そのペルソナを出しているのがオセロットかもしれませんね」

スネーク「…やはりか。俺も思ってはいたが…しかしあいつがペルソナを…?」

直斗「奴がいつの間に『自分』を飼い慣らしたのかは定かではありませんが…候補としては可能性が高いでしょう」

りせ「…そうだね、この反応がオセロットっぽいよ。さっき感じたのとよく似てる」

陽介「あの野郎、なんでまたペルソナなんか…」

りせ「…? それだけじゃない…そのオセロットの反応が、もう一つの反応と戦ってる…?」

スネーク「オセロットが…誰と戦っているんだ?」

りせ「相変わらず分からない…けど、すごく大きな力。オセロットの方が圧倒されてるみたいに感じる…」

スネーク「あのオセロットを圧倒とは…大した相手のようだな」

鳴上「…とにかく、先を急ごう」





黄泉比良坂 九之辻

オセロット「コンセントレイト…」

オセロット「…マハジオダイン!」

イザナミ『コンセントレイト…』

イザナミ『…メギドラオン!』


ズドォォォォォォン!!


イザナミ『…なかなかやるじゃないか。ペルソナを出せるのにも驚いたが…それに加え、ここまで私と張り合うとは』

オセロット「…チッ、戦闘に関しては思った以上のようだな…」

イザナミ『私の体力も削られてはいるが…君もかなり消耗しているようだね?』

オセロット「…あくまで俺は“お膳立て”に過ぎん。勝負は…あの小僧が到着してからだ」

イザナミ『おかしいね。君は彼らとは敵対する立場だったと記憶しているが』

オセロット「…まあ、小僧が到着すれば分かる。それまで楽しみにしておけ」

イザナミ『減らず口は相変わらず…か』

オセロット「…小僧が到着するまでに、貴様の体力をゼロにしておかねばならんからな…」

イザナミ『…フフ…。ならばやってみるといい。私の体力を…ゼロにしてみるがいい、オセロット』

イザナミ『…その結果、私が死ぬとは限らないけれどね』

オセロット「そう…まさにその通りだ。貴様は死なない。そして…“殺すつもりもない”のだからな」

660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/19(土) 12:57:39.67 ID:qLvCnlyI0

イザナミ『殺すつもりがない…だと?』

オセロット「…“伊邪那美大神”…全ては、貴様の真の姿を引き出すため…」

イザナミ『…!!』

オセロット「…話は終わりだ。貴様の“第一段階”の体力さえ削りきれば…こちらの勝ちなのだ」

オセロット「そして…“あれ”を使えば、完成する」

イザナミ『……君は……一体……』

オセロット「うぬぼれるなよ、イザナミ。押されているのはどちらなのか…今に分かる」






黄泉比良坂 八之辻

りせ「…この上が最上階みたい。反応もすぐそこだよ」

クマ「この先に、あのオッサンがいるクマね…」

直斗「ええ…それに、オセロットではないもう一つの反応というのも気になります」

陽介「霧を晴らすって言ってたけど…やっぱ分かんねーな、あいつが…?」

雪子「…あるいはそのもう一つの反応が、霧に関する重要な何か、とか…?」

鳴上「…行こう、みんな。オセロットから直接聞き出すんだ」

スネーク「聞き出して…ケリをつけようじゃないか。この町の異常にな」

完二「うっし。んじゃいっちょ、盛大に扉ブチ破ってカチコミかけるとしますか!」

鳴上「ああ、負けはしない…!」





黄泉比良坂 九之辻

完二「どりゃあああああああああ!!どこだオセロットぁぁぁぁぁぁ!!」


バキッ!!


オセロット「……クックッ…来たな、ついに…!」

スネーク「オセロット…それに、そこの巨大な化け物は…!?」

イザナミ『…不本意ながら対面することになってしまったね、鳴上悠。こうなってしまった以上は仕方がないか…』

鳴上「お前は…だ、誰だ…?」

イザナミ『分からないかな?雨の日に町で何度も会ったじゃないか。…この顔、覚えているだろう?』

鳴上「!! お前は…ガソリンスタンドの…!」

イザナミ『君とは本来なら会うはずではなかった…だが、この男が我々を引き合わせた』

イザナミ『まったく、余計なことをしてくれたものだね…』

オセロット「…鳴上悠。状況が状況だ、端的に言うが…」

オセロット「…こちらの世界の霧の原因。それは、今そこにいる化け物…イザナミだ。そいつを倒せば霧は止まる」

鳴上「それを…信じろと?」

オセロット「信じるか信じないかはどうでもいいが…少なくともここで喋っていたらそこのイザナミにまとめて殺されることになるがな」

イザナミ『…私の計画は大幅に狂わされた。その要因となった君達には…オセロットの言う通り、消えてもらわなければならないね』

陽介「おいおい、なんだってんだ…オセロットが犯人かと思ったら…!」

670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 04:14:40.73 ID:FX3b9JXl0

オセロット「小僧、手を貸せ。お前をここに読んだのも、このイザナミを倒すのを手伝わせるためだ」

イザナミ『…さあ…私の前では君達の力など無力に等しいということを教えてあげよう…』

鳴上「…ひとまず、ここは戦うしかないか…!」

スネーク「…四の五の言ってる暇は無さそうだな」

オセロット「奴の体力は半分近く削った。完全にゼロにさえすれば…あとは“勝ち”だ」

雪子「え…削った、って…?」

オセロット「そう、削った…こいつでな」



オセロット「イザナギ…!」カッ



鳴上「…!!」

スネーク「…久慈川の言っていた、鳴上に似た反応とやら…やはりお前だったようだな」

千枝「てか、本当にペルソナ使えるなんて…あたし達以外にもいたんだ…」

オセロット「さあ…行くぞ、お前達」

完二「チッ、なんでコイツと一緒に戦わなきゃなんねえんだ…」

りせ「ぐずぐず言ってる暇ないよ…!あいつが構えた、みんなも準備して!」

鳴上「ああ、行くぞ…!」



スネーク「来い、ヤマタノオロチ!」カッ


直斗「来い、ヤマトタケル!」カッ


クマ「滾れー!カムイ!」カッ


りせ「カンゼオン!」カッ


完二「砕け、ロクテンマオウ!」カッ


雪子「来て…アマテラス!」カッ


千枝「行け、スズカゴンゲン!」カッ


陽介「吼えろ、スサノオ!」カッ


鳴上「イザナギ!」カッ



オセロット「…これで10対1だ。覚悟しろ、イザナミ」

イザナミ『いいだろう…数では埋めつくせない差というものを、君達に教えてあげよう』

直斗「多勢に無勢…とはいかなさそうですね。これでようやく互角か…」

671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 05:18:11.92 ID:FX3b9JXl0

オセロット「ヒートライザ、ランタマイザ…!」

鳴上「コンセントレイト…!」

千枝「よし、あたしもチャージっと…!」

イザナミ『甘い…』

イザナミ『…デカジャ、デクンダ!』

オセロット「…チッ…!」

イザナミ『そう簡単にはいかないよ。こちらにも打ち消しのスキルはある』

イザナミ『さて…こちらの番だね。消し去ってあげよう…』

イザナミ『…マハジオダイン!』

鳴上「マハジオダイン!」

イザナミ『マハブフダイン!』

クマ「マハブフダイン!」

イザナミ『マハラギダイン!』

雪子「マハラギダイン!」

イザナミ『マハガルダイン!』

陽介「マハガルダイン!」


ドォォォォォォン!!


陽介「よし…防ぎ切ったぜ、どうだ!」

イザナミ『ほう、凌いだか…ならば…』

イザナミ『…コンセントレイト…』

りせ「次、またかなり大きい一撃が来るよ…気をつけて!」

オセロット「…奴の次の一撃、俺が防ごう。その間にお前達は各自補助スキルをかけて反撃に備えろ」

スネーク「待て、奴はコンセントレイトをかけた…防御に専念するべきだ」

オセロット「フン…甘く見られたものだな。俺が負けるとでも?」

スネーク「…死んでも知らんぞ」

オセロット「貴様は自分の心配だけしていればいい、ソリッドスネーク」

オセロット「…さあ、お前達も急げ!」


ダッ


陽介「お、おい…あいつ駆け出していっちまったけど、どうすんだよ?」

鳴上「…奴の言う通り、補助スキルに専念すべきなのか…」

鳴上「くそ…考えている時間もない、今は奴の言った通りにしよう」

陽介「おし、了解だ…マハスクカジャ!」

完二「マハタルカジャ!」

クマ「マハラクカジャ!」

千枝「よーし、今度こそ…チャージ!」

スネーク「…コンセントレイト…!」

674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 20:24:06.70 ID:wPUYFHzt0

イザナミ『一人か…どこまでも愚かな』

オセロット「…コンセントレイト…」

イザナミ『消えろ…メギドラオン!!』

オセロット「…マハジオダイン!!」


ズドォォォォォォン!!


完二「っ……オセロットの野郎、大丈夫なのか…?」

スネーク「奴はそう簡単にくたばるタマじゃない。…ひとまず、かけられるだけのスキルはかけたな」

直斗「ええ、あとは当てるだけ…ですが…」

雪子「…相殺の爆風で二人の様子が見えないね。オセロットさん…」





シュウウウウウウウウウウ…

オセロット「…………」

イザナミ『…………』

オセロット「……ぐ、っ……」ガタッ

イザナミ『…膝をついたのは、どうやら君の方だね。オセロット』

オセロット「…………」

イザナミ『さあ…君にはいろいろと聞くべきことがある。聞かせてもらおうか』

オセロット「……何を、勝った気になっている?」

イザナミ『……?』

オセロット「…俺の後ろを見てみろ、ということだ」

イザナミ『後ろ、だと…?』

イザナミ『……!!』





完二「行くぜオラァァァァァァァ!!イノセントタックっ!!」

千枝「はぁぁぁぁぁ………ゴッドハンドっ!!」

直斗「…メギドラオン!!」

陽介「決めるぜ…!ブレイブザッパー!!」

雪子「行きなさい…アギダイン!!」

クマ「やったるクマー!ブフダイン!!」

スネーク「…さあ、決めるぞ鳴上!」

鳴上「ああ!」

鳴上&スネーク「「…マハジオダインっ!!」」





オセロット「…分かったか?これが戦術というものだ」

イザナミ「くっ……見逃していたか……!」

675: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 20:55:09.77 ID:wPUYFHzt0

ドォォォォォォォォン!!


りせ「……やったよみんな!あいつの体力、ゼロになった!」

オセロット「……ハァ……ハァ……」

スネーク「…さすがだな、オセロット。今回ばかりは助けられた。礼を言おう」

完二「…なんだよ、あんま悪ぃトコばっかって訳でもねえな…」

鳴上「……オセロット…さん。時間を稼いでくれたこと、感謝します…」

オセロット「…………」





イザナミ『……フフ……フフフ……』

イザナミ『……ハハハハハハハハハハハハハハハ!!』





雪子「……え……?」

千枝「…あいつ、まだ生きてる…!?」

りせ「そ、そんな…だってあいつの体力、確かにゼロだよ…!?」

イザナミ『…言ったはずだよ。君達が束になろうと敵わない存在…それが私だと』

イザナミ『初めから私は“死なない”んだ。君達がいくら総力を挙げて攻撃に転じたところで、所詮は無意味なのさ』

イザナミ『私を倒すなど不可能だ。なぜ、それが分からない…?』

完二「お、おい……そんなのアリかよ……!」





オセロット「……フッフッ……ハッハッハッハッハッ……!!」

オセロット「……やっと。やっと辿り着いた……!」





オセロット「…小僧。ベルベットルームの主から受け取ったものがあるはずだ、出せ」

鳴上「…? この…見晴らしの珠のことか」

オセロット「そうだ。それを使えば…この戦いは“終わる”」

オセロット「さあ…その宝珠をイザナミに向けてやれ!」

鳴上「あ、ああ…!」

676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 21:16:18.56 ID:wPUYFHzt0

オセロット「…“あらゆる虚飾を振り払い、嘘を打ち消し、真実を照らし出す宝珠”…」

オセロット「…これで貴様の化けの皮も剥がれるぞ。イザナミよ」

イザナミ『……ぐっ……これは……!?』

イザナミ『……フフ、いいだろう……』


ゴォォォォォォォォォォ…!!


イザナミ『私の本当の姿を……見せてあげよう……』





伊邪那美大神『……愚かなる人間共よ。禁忌に踏み込んだ代償は、命をもって償ってもらおうか……』





陽介「なっ……なんなんだよ、このバケモノは……!」

直斗「この禍々しい気配……さっきまでの何倍も重くて、息苦しいような空気……」

りせ「これが……こいつの、真の姿なの……!?」

オセロット「……そうだ。この“伊邪那美大神”こそが……」





オセロット「……我々『愛国者達』が欲した、世界さえも変えうる力なのだ」





スネーク「……!!」

オセロット「…ソリッドスネーク。八十稲羽の人間をナノマシン統制する理由を教えろと言っていたな」

オセロット「その理由こそ……この“伊邪那美大神”なのだよ」

スネーク「な…何だと…? どういうことだ、オセロット…」

伊邪那美大神『何を喋っている…?今にも殺されそうなこの状況が、理解できていないのかな…?』

オセロット「…こういうことだよ、ソリッドスネーク」





オセロット「……」パチン





伊邪那美大神『……?』

伊邪那美大神『……か、身体が……』

伊邪那美大神『な……なぜだ、身体の自由が……!?』

オセロット「……クックックッ……フフフ……ハッハッハッハッハ!!」

オセロット「ついに…我らの計画は成功した!!」

677: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/28(月) 00:25:17.25 ID:0BrhmU4f0

オセロット「…イザナミ。貴様はもはや、脅威ではなくなった」

オセロット「貴様は俺の…『愛国者達』のペルソナと成り下がったのだ!!」

伊邪那美大神『この私が……ペルソナ、だと……!?』

オセロット「その通りだ。貴様はすでに、私の意思で動く人形に過ぎない…!」

伊邪那美大神『くっ……バカな、なぜだ……!』

オセロット「…そろそろ、いいだろう。種明かしをしてやるとしようか」

スネーク「……オセロット……お前は……!」





オセロット「…貴様は、八十稲羽の土地神“イザナミノミコト”の分離体…」

オセロット「…そして、貴様という存在の本質は“人間の総意”だ」

オセロット「つまるところ、八十稲羽の人間が『こうであってほしい』と望んだことを追わねばならないのがお前…ということになる」

オセロット「そして…そこで登場するのが、我ら『愛国者達』が八十稲羽市民に仕込んだナノマシン、という訳だ」

スネーク「まさか……」

オセロット「そう…そのまさかだ」

オセロット「…ナノマシンを通じて、八十稲羽市民の自由意思をコントロールするということ。それがひいては…」

オセロット「…貴様を操るということに繋がるのだよ、イザナミ!!」

伊邪那美大神『……!!』

オセロット「…お前達がミスター・アダチと戦ったとき、本来なら出るべきものが出なかったのもそのためだ」

伊邪那美大神『……お前だったのか、アメノサギリの気配を消したのは……!』

オセロット「いかにも。貴様の生み落とせし仮の姿…それがアメノサギリだ」

オセロット「即ち、奴もまた八十稲羽市民の総意たる存在…」

オセロット「…お前達。昨日ミスター・アダチを倒し、町へ帰ってきたとき…住民はどうなっていたか、覚えているだろう?」

鳴上「…みんな、魂の抜けた人形のようになっていた…」

千枝「それが…アンタの仕業だっていうの!?」

オセロット「もちろんだ。…お前達の面倒な戦闘を一つはぶいてやったのだ、感謝してほしいくらいだがな」

陽介「面倒な戦闘…だと?」

オセロット「…俺がナノマシンによって八十稲羽市民の意思を“白紙”にしたことで、アメノサギリは消えた」

オセロット「“意思が消え去った”…とでも言うべきか。それによって、拠り所の無くなったアメノサギリは自然消滅したのだよ」

オセロット「本来ならば、お前達はミスター・アダチの後にそのアメノサギリと連戦しなければならないはずだった」

オセロット「その面倒をはぶいてやった…ということだ。理解したか?」

直斗「……そして今度は、完全に八十稲羽市民の意思を操ってイザナミを手に入れた……」

オセロット「呑み込みが早くて助かるぞ」

スネーク「…待て。そうだとすると、一つ疑問が生まれる」

スネーク「どうしてお前は…ナノマシンがすでに入ってる鳴上達を“操作”しなかったんだ?」

鳴上「……?」

オセロット「そう…それこそが、我ら『愛国者達』でも乗り越えられなかった障壁を崩すための鍵だったのだ」

678: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/28(月) 00:56:40.63 ID:0BrhmU4f0

オセロット「…我ら『愛国者達』は、イザナミの持つ強大な力に目をつけた」

オセロット「だが、そのままではどうしても操れなかった。奴の真の姿を引き出す必要があったのだが…」

オセロット「…そればかりはお手上げだったのだ。真の姿である“伊邪那美大神”を引きずり出すための手段は、一つしかなかった」

オセロット「その手段こそが…小僧、貴様だったということだ」

鳴上「俺…」

オセロット「真の姿を引きずり出すために必要であった、“見晴らしの珠”…」

オセロット「人々の絆から成るこの宝珠だけは、我々の技術をもってしても複製ができなかった」

オセロット「ゆえに、この町で唯一ベルベットルームに出入りできる存在…鳴上悠」

オセロット「貴様とその仲間達には、どうしてもイザナミまで辿り着いてもらわねばならなかったのだ」

オセロット「そして、ベルベットルームの住人から信頼されているお前だからこそ…その宝珠を授かることができた」

オセロット「礼を言うぞ、鳴上悠。貴様がいなければ我々の計画は完遂しなかった」

スネーク「……オセロット。貴様はこの怪物を操って…何をするつもりだ?」

オセロット「野暮なことを聞くものだな…決まっているだろう」

オセロット「…軍事転用だ。このような人知を超越した世界を生み出す力、ペルソナ能力を他人に分け与える力…」

オセロット「考えてみろ。ペルソナ能力を戦争に用いる…それだけで、どれだけの国際的優位を得られるかは想像に難くなかろう」

りせ「ペルソナを…戦争になんて…!」

オセロット「動力源は心の力。金も燃料も弾薬も必要ない、にも関わらず現代兵器以上の殺傷力…これほど素晴らしい兵器はそうはないぞ、クックックッ…!」

オセロット「機械では捕捉できないメギドラオン、士気を楽に上げられるタルカジャ、敵の軍勢を即死させうるマハムドオン…」

オセロット「…さらに物理無効でも付けば、銃弾で死ななくなる。火炎無効が付けば、爆発物で死ななくなる」

オセロット「…知らない国からすれば、対策の施しようもない最強の兵器…身震いが止まらんではないか…!!」

スネーク「オセロット……貴様……!」





オセロット「…さて。ここからが本番だ」

雪子「本番、って……」

オセロット「…マハジオダイン!」


ズドォォォォォォォン!!


陽介「うおわっ!?」

雪子「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

完二「ぐっ……おいテメ、何しやがんだゴラァ!?」

オセロット「何を、だと?決まっているだろう」

オセロット「貴様らを…殺す。それ以外にあるのか?」

千枝「こいつ…っ!」

オセロット「…ソリッドスネーク。貴様をこの八十稲羽に呼び寄せたのもそのためだ」

スネーク「……まんまと引っかかったよ。まさかまた…あのAI大佐を引っ張りだしてくるとはな」

オセロット「そうだ。AI人格のロイ・キャンベルとメイ・リンを使い、貴様とハル・エメリッヒを呼び寄せた」

オセロット「この町でイザナミの力を得て、ことのついでに貴様ら『フィランソロピー』を葬るためにな…!」

オセロット「ここで貴様らを殺したら、次はハル・エメリッヒの番だ。じっくり、痛めつけて殺してやるぞ…!」

688: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/29(火) 00:26:58.04 ID:NTzbQRlQ0

鳴上「くそ…そのために、さっきは俺達を助けていたのか!?」

オセロット「今頃気づいたところでもう遅い。イザナミの力を得た俺には、貴様らごとき軽く捻り潰せるぞ…!」

オセロット「さあ…やってやろうではないか、イザナミ!」

伊邪那美大神『……くっ……!』

オセロット「まずは…どれ、どんなスキルを持っている?」

オセロット「…フフ、実に禍々しいスキルが揃っているではないか…!」

オセロット「…行くぞ、小僧共!“八十神の猛り”!!」

スネーク「チッ…みんな、防御しろ!」


ズゴォォォォォォォォォォ…!!


千枝「ぐ……ううっ……!」

完二「……ハンパねぇな、こりゃ……!」

クマ「痛ーい……これはきっついクマ……!」

鳴上「…みんな、すぐに反撃だ!」

陽介「了解…!人数はこっちのが上なんだ、チョーシ乗んなよ!」

陽介「ガルダイン!!」

オセロット「…この程度か。ガルダイン!!」


ドォォォォォォン!!


陽介「うっ…くっそ…!」

鳴上「俺がやる、陽介は下がってくれ!」


鳴上「ヨシツネ!」カッ


オセロット「フン…お定まりの“ヒートライザ・ランタマイザ・八艘跳び”か?悪いが…」

オセロット「…それを使えるのが貴様だけだと思わないことだな!」


オセロット「ヨシツネ…!」カッ


鳴上「なっ…!?」

オセロット「…この新型ナノマシン。ただペルソナを出せるだけではない、ワイルドの素質すら後天的に付与することができるのだよ」

スネーク「何…?ナノマシンで、ペルソナだと…!?」

オセロット「ああ、貴様らには説明がまだだったか」

オセロット「…俺がペルソナを出せるのも、ペルソナ能力を解析した研究結果が搭載されたナノマシンのおかげなのだ」

スネーク「…まさか…それじゃあ、町の人間も…」

オセロット「その通り。今や八十稲羽市民全員がペルソナ能力者ということになるな。…まあ、当人達が気づくことなどなかろうが」

オセロット「ついでに言えば、万が一貴様らがミスター・アダチを食い止められなかった場合に備える意味もあった」

オセロット「貴様らがミスター・ナマタメ…クニノサギリと戦った時、ソリッドスネークだけが操られたのもそのためだ」

スネーク「貴様……なぜそれを……!」

オセロット「実に今さらだな。我々『愛国者達』が知らないことなどない…身をもって知っているはずだ、貴様なら」

689: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/29(火) 01:31:08.72 ID:NTzbQRlQ0

オセロット「…ともかく。八十稲羽市民に打ち込んだナノマシンには、対シャドウ用の抗生物質を分泌する機能も備わっていた」

スネーク「対シャドウの…抗生物質だと?」

オセロット「そうだ。仮にこちらの世界と現実の世界が同化したとしても、市民がシャドウにならんようにな」

オセロット「そして…クニノサギリの“あやつる”を受けて、貴様以外の八人は操られなかった。理由は…もう分かるだろう?」

スネーク「…旧世代のナノマシンだった俺には抗体が無く、新型を打ち込まれていた鳴上達には抗体があったからか…!?」

オセロット「その通りだな。…おっと、つい喋り過ぎたか」

オセロット「…さあ、来るがいい小僧。鏡写しのごとく返してやろう」

鳴上「くそっ…!」

鳴上「…ヒートライザ!」

オセロット「ヒートライザ…」

鳴上「ランタマイザ!」

オセロット「ランタマイザ…」

鳴上「チャージ!」

オセロット「チャージ…」

鳴上「…八艘跳びっ!!」

オセロット「…八艘跳び」


スパパパパパパパパパパパ


鳴上「……はぁ……はぁ……っ!」

オセロット「…どうだ?まったく同じ技の数々で返された気分は」

鳴上「……くそ……!」

オセロット「単純な引き算ではないか。貴様はワイルドの素養のみ。一方の俺は、ワイルドに加えてイザナミもいる」

オセロット「…勝てるはずがないのだよ、誰がどう考えてもな」

りせ「そんな…先輩がここまで全力で戦って、相打ちなんて…!」

直斗「いえ、相打ちどころじゃない…どうやらオセロットも例の“無限バンダナ”を使っているみたいです」

直斗「だから…先輩のSPだけが減っていく…!」

オセロット「…そろそろ諦めたらどうだ?お前達」

オセロット「こちらにはイザナミ・ワイルド・無限バンダナと…十分すぎるほどの手数が揃っている」

スネーク「無限バンダナなら俺にもある!」

スネーク「行くぞ…ジオダイン!!」

オセロット「…諦めの悪いことだ…」

オセロット「…マハジオダイン!!」


ズドォォォォォォン!!


スネーク「……ぐ……おっ……!」

雪子「スネーク君!」

オセロット「いくら無限バンダナを持とうが、貴様のペルソナとイザナミとでは実力差が大きすぎる。勝てるはずがなかろう?」

陽介「ヤロウ…!」

690: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/30(水) 01:27:58.57 ID:iVYorHS80

オセロット「さて。面倒だ、そろそろ本気を出すとしようか」

オセロット「…あの世へ行け!」





オセロット「……“世界の終焉”……!!」





鳴上「あれは…!」

陽介「うっ…おい、マジかよ…あんなの食らったら冗談抜きで死ぬぞ…!」


ゴォォォォォォォォォォォ…!!


りせ「嘘…こんなの…!」

クマ「オヨヨ~…死にたくないクマ~…!」

直斗「防御じゃ…防ぎきれそうもありませんね…」

スネーク「…まずいか…!」

雪子「…もう、ダメ…なのかな…?」

千枝「あ、諦めないでよ雪子…大丈夫だって…!」

完二「クソったれ…!」

鳴上「…くそおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」





ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!





オセロット「フッフッ……ハッハッハッハッハッハ!!」

オセロット「…これで、ジ・エンドだな」

オセロット「齢16や17にして死ぬ…余計なことに首を突っ込まなければ、もっと長生きできただろうに」

オセロット「…さて。さっさとハル・エメリッヒも殺して、アメリカに戻るとしよう」





鳴上「……待…て……オセロッ…ト……!!」

陽介「……くっ…そ……!」

千枝「……うっ……!」

雪子「……はぁ……はぁ……」

完二「……くたばりゃ……しねえよ……!」

りせ「……っ……」

クマ「……痛……い……けど…耐えるクマ……!」

直斗「……ぐ……っ……!」

スネーク「……まだ…だ……まだ…終わってない……!」

オセロット「…これはこれは。まだ息があるとは…大したものだ」

691: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/30(水) 02:00:58.14 ID:iVYorHS80

オセロット「だが、その満身創痍の身体で何ができる?ただでさえイザナミの力には敵わないというのに」

オセロット「…言っておく。やるだけ無駄だ、諦めて死ね」

鳴上「やってみなきゃ……分からない……!」

オセロット「ならばやってみるがいい。何も変わらんだろうがな」

オセロット「…貴様らの相手も疲れてきた。そろそろ“任せる”としよう」





大佐【…君達、聞こえるか?我々だ】

スネーク「…!!」

スネーク「…“大佐”…何の用だ…!」

鳴上「なっ…なんだ、この声…!?」

陽介「うわ…な、なんだよこれ…誰が喋ってんだ…!?」

スネーク「何…鳴上達にも聞こえているのか…!?」

千枝「うん…何これ、頭に直接響くような…」

スネーク「…そうか…鳴上達にもナノマシンが入っているから、体内通信ができるようになっているのか…!」

鳴上「お…お前は、誰なんだ…!?」

大佐【我々か?我々は…世界を総べる者】

美玲【……J.D.…G.W.…T.J.…A.L.…T.R.…】

直斗「…! それは…歴代合衆国大統領の頭文字、か…?だが、J.D.というのは…」

大佐【察しがいいな。そう…この地球の進化の先陣を担ってきた、アメリカの指導者達だ】

美玲【そして…これからの世界は、私達が統治する。そのために必要なイザナミの力を、貴方達に妨害されると困るの】

完二「世界を、統治だと…?何様のつもりだテメェ!」

大佐【何者か…?それには答えられない。いや、答えがないと言うべきかな】

大佐【我々に実体は無い。我々は君達が頼る“秩序”や“規範”そのものなのだ】

大佐【誰も我々を消すことはできない。アメリカという国家が存在し続ける限り、我々もまた存在し続ける…】

陽介「秩序…規範…何言ってるかさっぱり分かんねーよ!何者なのか答えろって言ってんだ!」

美玲【アハハハハッ!!花村くんって本当にバカなのね】

692: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/30(水) 02:29:31.28 ID:iVYorHS80

大佐【いいか。我々の計画は我々のためにあるのではない。君達のためにあるのだよ】

千枝「…イザナミを操って、戦争を起こすのがあたし達のためだっていうの!?」

大佐【まさしくその通り。…世界は今、“戦争経済”という形によって新たな時代の到来を迎えようとしている】

美玲【それを支配していくために、イザナミの強大な力が必要になるの。すべてを監視し、統治し、意のままに操るために…】

りせ「ふざけないで!そんなもの…誰も望んでないよ!」

美玲【はぁ…これだから日本の子供は世間知らずとか言われるのよ】

美玲【現実見えてる?貴方達が今までヒーローごっこしてた間にも、世界中の至る所で戦争は起きてるの】

美玲【蛇口を捻れば綺麗な水が出て、買い物に行けば調理された食べ物が並んでる…そんな生ぬるい環境で生きてる貴方達に、盾突く権利なんてないわ】

りせ「……っ……それは……」

大佐【…今世紀初頭に、ヒトゲノム情報の読み取りが完了した】

大佐【その結果、48億年に渡る我々人類の進化過程が明らかになった】

美玲【遺伝子操作を始めとして、生命のデジタル化に成功したのよ?】

大佐【一方で、遺伝子上に載っていない情報もある。…人の記憶や思想、文化や歴史だ】

美玲【遺伝子には、人類の歴史は刻まれていない】

大佐【果たしてそれは伝えるべきものなのか?これまで同様、自然界で淘汰されるべきものなのか?】

美玲【人間の祖先は、それらを語り伝えてきた。言葉や絵を使って…書物、石版に記しながらね】

大佐【しかし、全ての情報が後世に伝えられてきた訳ではない】

大佐【選択され、加工されてきたのだ…まるで遺伝子のように…】

美玲【それが人の歴史ってものでしょ?ねえみんな】

大佐【しかし今のデジタル社会では、日々のあらゆる情報が蓄積され、些細な情報がそのままの形で保存されている】

大佐【永久に…劣化することなく、な】

693: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/30(水) 02:50:51.60 ID:iVYorHS80

美玲【誰が言ったかも分からないゴミのような噂、間違った解釈、他人の中傷…】

大佐【あらゆる情報がろ過されず、そのままの形で後世に伝えられる】

大佐【…世界のデジタル化は、人の弱さを助長し、それぞれだけに都合の良い真実の生成を加速している】

大佐【社会に満ちる“真実”の山を見てみるがいい…】

美玲【高価な兵器が人道的に人を殺し――】

大佐【犯罪者の人権は、被害者のプライバシーより丁重に扱われ――】

美玲【動物愛護団体の資金が潤う傍らで、その日の食事もまともに取れない貧困層が存在する――】

美玲【誰もがこう言われて育つわ】

大佐【“他人には優しくしよう”】

美玲【“でも競争相手は叩きのめせ!”】

大佐【『お前は特別だ』『信じていれば夢は敵う』】

美玲【でも成功できる人間が一握りなのは、初めから明らかよね…?】

大佐【人類が“自由”を“行使”した…その結果がこれだ】

大佐【…まさしく、今の君達のようにな】

鳴上「……俺達……だと……?」





大佐【…花村陽介】

陽介「なっ…い、いきなり何だよ…?」

大佐【君は本当に…小西沙紀のことを思って事件を調べているのか?】

陽介「そ…そんなの当たり前だろ!」

大佐【そうか。ならばなぜ、そんなに普段から笑っていられるのだ?】

大佐【…教えてやる。君にとっての小西沙紀など、所詮はその程度の存在だからだ】

陽介「何……言ってんだよ、お前……」

大佐【小西沙紀が好きだった…鳴上悠は最高の相棒だ…特別捜査隊はかけがえのない仲間だ…】

大佐【…そんなものはすべて、君のちっぽけな好奇心を満たすための道具にしか過ぎない】

大佐【テレビの中でペルソナが出せて、人を助けてヒーロー気取り…それだけで君は満足なのだろう?】

大佐【小西沙紀も鳴上悠も特別捜査隊も…そのための踏み台でしかないからな】

陽介「ち…違う!ふざけんなよ…勝手なこと言うんじゃねえよ!」

694: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/30(水) 03:15:08.70 ID:iVYorHS80

美玲【…里中千枝】

千枝「…な、何よ…」

美玲【結局…あなたと天城雪子は、何も変わっていないのね】

美玲【この一年で一回り成長したとか、どうせそんなこと思ってるんでしょ?言ってあげるわ、あなたは成長なんかしていない】

千枝「そんな…あたし、ちゃんと成長した!雪子をしっかり守れるくらいに…!」

美玲【…そもそも、あなたがもうひとりの自分を受け入れた時に言った言葉を覚えてる?】

美玲【『こういう部分も含めて…あたしなんだね』】

美玲【…それってつまり、そういう面があることを認めただけで何も前進してないってことよね?】

美玲【だから、今まで通り天城雪子はあなたの歪んだ感情の対象であり続けていた】

美玲【で、あなたはそれを天城雪子本人にも打ち明けてあるからもう大丈夫…とか考えてたんでしょ?】

美玲【そういうのを“馴れ合い”っていうの?分かる?アハハハハハハッ!!】

千枝「……っ……!」





大佐【…天城雪子】

雪子「…!!」

大佐【君もまた…何も進歩していない人間のうちの一人らしいな】

雪子「…いいえ。私は、ちゃんと自分の意思で歩いている」

大佐【それが思い込みだと言っているのだよ】

大佐【旅館を継ぐ決心をした、だと?…少し前に君が自分で言ったことを思い出せ】

大佐【旅館など継ぐつもりはないと、自分で言っていたではないか】

雪子「…違うわ。私は分かったの、私を守ってくれている人達のありがたみが」

大佐【…では聞くが、君はそれに自分一人で気づくことができたかね?】

大佐【君が気づけたのは、鳴上悠の助言があってのことだろう】

大佐【つまり…君一人では、それに気づくことはできなかった】

大佐【所詮は“籠の中の鳥”なのだ。誰かに手を引かれなければ羽ばたくこともできやしない】

大佐【それを君は、さも自分ですべて気づいたかのごとく錯覚している】

大佐【里中千枝への依存も未だに変わらず…やれやれ、これでよく独り立ちしようなどと思ったものだ】

大佐【今一度噛み締めろ。君が決心をしたのではない…他人にさせられたのだよ。君のこれまでの人生と同じくな】

雪子「っ……それは……!」

696: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/31(木) 21:26:32.64 ID:JhFI6ZP90

大佐【…巽完二】

完二「あァ…!?」

大佐【君は…本当に自分のコンプレックスと向きあえたと思っているのか?】

完二「…たりめーだ。んなもんテメェに言われる筋合いはねえ」

大佐【ではなぜ君は、未だに白鐘直斗に面と向かって喋ることができないでいるのだろうな?】

完二「!! ……そ…れは……その……!」

大佐【…君はそもそも、自分が直すべき内容を勘違いしている】

大佐【“手芸が好きなことを周りに打ち明けられるようになった”…そもそも、なぜ君は自分の趣味を隠すようになった?考えてみろ】

大佐【…そう、異性にさんざんバカにされてきたからだ。そのことから趣味を隠すようになった】

大佐【なのに君は、“手芸好きであることを打ち明けた”だけで満足して停滞している。これほど本末転倒なこともあるまい…】

大佐【根本的な問題である“異性への苦手意識”と、二次的な問題である“手芸好きがばれる恐怖”を…君は無意識のうちにすり替えているのだ】

大佐【自分の生活を顧みろ。未だに異性が苦手なことでの話題でからかわれているだろう?】

大佐【…これでは、同性愛者と疑われるのも無理はないという話だ】

大佐【君が異性から理解されることは一生ないだろう。…なぜなら、君がその努力をしていないからな】

完二「ち…違うに決まってんだろ!俺は…!」





美玲【…久慈川りせ】

りせ「…何…よ…」

美玲【あなたは“本当の自分”…見つかったのかしら?】

りせ「…そんなの、とっくに見つかってる」

美玲【あらそう。なのにも関わらず、あなたはまた芸能界に戻ろうとしているのね】

りせ「…なのにも関わらず、って…どういう意味よ…?」

美玲【分からない?あなたの言ってることの根本的な矛盾が】

美玲【りせちーも“私”?ここにいる自分も“私”?なら聞くけど、そもそもあなたに“自分”なんてものがあるの?】

美玲【…アイドルの仕事が苦しくて逃げ出してきたから、あなたは今この町にいる】

美玲【分かる?あなたはアイドルの仕事を放棄した時点で、一度“自分”を捨ててるの】

美玲【苦境の中で耐えていた“自分”を捨てて…特別捜査隊での生ぬるい環境に浸り、勘違いをし始めた】

美玲【苦しかったあの頃とは違う。あなたにとって、仲間と過ごす“今”という時間はあまりにも甘美…】

美玲【…だからこそ。あなたは軽い気持ちで決断してしまったのよ】

美玲【ほら、思い出してみて?ギッチギチのスケジュールに気持ち悪いファン、感情を押し殺した毎日…】

りせ「……っ」

美玲【ぬるま湯の中で下した、あなたの決断。果たして芸能界に戻って何日で崩れ去るやら…とっても楽しみよね?】

美玲【…“自分”の姿を本当に理解しているのなら、また芸能界に戻ろうなんて思うはずがないのよ】

美玲【なぜなら。そもそもあなたは、芸能界が嫌で逃げ出してきた…愚かで脆い人間だから】

美玲【ねえ、そうでしょ?フフ…アハハハハハ!!】

りせ「違う…違うよ……私は、自分の意思で……っ……!」

698: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/03(日) 22:51:11.96 ID:KuGq11/r0

大佐【…クマ。シャドウの紛い物よ】

クマ「な…なんだクマ!セッキョーなんか聞きたくないクマ!」

大佐【説教ではない。我々が話しているのは“真実”だ。それを君達が受け入れようとしていないだけの話でな】

クマ「そんなの違うクマ!クマ達はちゃんと自分のシャドウを受け入れて…!」

大佐【…この際だ。言っておこうか】

大佐【シャドウを受け入れた?だから何だと言うのだ。受け入れただけで、鳴上悠がいなければ解決策すら導き出せない烏合の衆が】

大佐【自分の弱さを受け入れる…受け入れたからどうした?それだけでは何の進展もないのだよ】

大佐【…それともまさか、受け入れることそのものが進展だとでも勘違いしているのかね?】

クマ「……それは……その……」

大佐【君にしても同じだ。仲間と共に戦う今の自分こそが本当の姿、だと?とんだお笑いだな】

大佐【君がシャドウである限り、どこを探そうと“自分”など存在するはずがないだろう?】

大佐【そもそも、シャドウに関しては解明されていないことが多い。裏を返せば…】

大佐【…君がいつ、シャドウとしての本心に帰るかも分からないということだ】

クマ「……!」

大佐【君が鳴上悠らを襲わないとは言い切れない。なぜなら…他の七人は人間で、君はシャドウだからな】

大佐【ペルソナ能力の覚醒と共に“自分”を見つけた…そう思い込んでいるようだが】

大佐【精神の構造も、身体の造りも、何もかも…君は人間とは違う。だから、人間に言えることが君には当てはまらない】

大佐【もちろん…“自我”もな。君に知られざるシャドウとしての本心が無いとは言い切れない】

大佐【だから、君が今思っている“自分”などというのは…真実ではない、ただ仮定しただけの被り物に過ぎないということだ】

大佐【分かったか?君と仲間達とを隔てる絶対的な違いが】

大佐【どこまで進んでも交わることのない“線”と“線”…それが“一匹”と“七人”の関係なのだ】

クマ「……違う……違うクマよ……クマは、ちゃんとみんなに認めてもらって……!」

699: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/04(月) 22:17:04.14 ID:yQOsqXhJ0

美玲【…白鐘直斗】

直斗「…………」

美玲【あなたも…自分を受け入れたふりをして、強がっている人間の一人みたいね】

直斗「……黙れ」

美玲【それよ。それがあなたの特徴。すぐに威圧して強がろうとする…そうやって生きてきたでしょ?】

美玲【それが証拠…あなたが所詮、自分を女だと認められていない証拠に他ならないわ】

美玲【女であることを認めたんでしょう?ならどうして、未だにそんな服を着てるの?】

直斗「…………」

美玲【喋り方も男、服装も男。昔と変わらない…何一つとして、あなたの抱える問題は解決してないじゃない】

美玲【…怖ろしいからでしょう?急に女物の服を着て、女のような喋り方をして…周りに偏見の目で見られることが怖いから】

直斗「…………!」

美玲【学園祭が良い例よね。他の三人は曲がりなりにも舞台に上がったっていうのに、あなたは出ることすらしなかった】

美玲【…それっぽっちの覚悟で、よく自分を受け入れたとか抜かせたものよね?片腹痛いわ】

美玲【そして、その恐怖が特に誰を対象にした感情であるかといえば…】

美玲【…そう、特別捜査隊の面々よ】

美玲【所詮あなたは仲間を信用なんかしていない。女であることを知られて尚、男の格好でしか出ていけないんだから】

直斗「……それは……」

美玲【違うっていうの?性別はとっくに打ち明けてるのに、それでもまだ躊躇いがあるとでも?】

美玲【…それがあなたの限界。元々あなた、仲間になったのも一番遅いし。たかが一か月や二か月で絆…?ハッ、失笑だわ】

直斗「…違う…!特別捜査隊は…僕の居場所だ!」

美玲【で、その唯一の居場所ですら本当の自分を曝け出せないのがあなた…ってことでOK?】

直斗「……っ……」

美玲【一生やってれば?都合のいい時だけ自分を認めたふりして、他はすべて今まで通りの毎日】

美玲【…あなた足立透にさんざん言ってたけど、やってることが大して変わらない事実にいい加減気づいた方がいいんじゃないかな】

美玲【…現実に折り合いがついてないのは、どっちなのかなぁ…?アッハハハハハハハ!!】

700: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/05(火) 23:07:26.12 ID:YV5+TGBI0

大佐【そして…誰よりも“自分”を見ようとしていない人間、鳴上悠よ】

鳴上「……!」

大佐【楽しい一年…いや、楽しかった一年間と言うべきか】

美玲【あと数ヶ月もすれば、あなたはまた都会での孤独な生活に戻らなければならない】

大佐【ここで仲良くなった連中とも離れ離れ…そして、君はまた一人になる】

美玲【この土地で得た“自分”…それに別れを告げる日が来るってこと】

大佐【よく考えることだ。この町でどれだけの友情を育もうと、所詮それは一年だけの付き合いでしかない】

美玲【それが何を意味するか…分かるでしょ?】

美玲【…あなたが辛くなるだけなの。別れが苦しくなるだけ】

大佐【だからこそ…仲を深めれば深めるほど、君はかつての自分から目を逸らしていく】

美玲【終わるのが怖いから…離れ離れになるのが怖いから…】

大佐【別れは嫌でも必ずやってくる。……分かっているからこそ、君はあえてそれを見ようとしない】

美玲【今が幸せならそれでいい。仲間と一緒に楽しく過ごせるこの時間が、永遠に続いたら…】

大佐【…それこそが、君が“自分”を見ようとしていない事実の表れなのだよ】

鳴上「…黙れ!自分の本当の姿なら、みんなに教えてもらっ…」

美玲【“自分”なんてものが今のあなたにあるの!?】

大佐【君が思っている“自分”なぞ、せいぜい身を守るための言い訳に過ぎんのではないか?】

美玲【世間に溢れてる出来合いの真実の中から、その時々に気持ち良く思えることをツギハギしただけ】

大佐【あるいは、もっともらしい権威の下に身を寄せて手に入れたつもりになっている借り物か…】

鳴上「…違う…!俺は…!」

大佐【ん?誰かにそう言ってもらいたいのか?よかろう、言ってやれ】

美玲【あなたは立派よ、鳴上君!“自分”を確立してるもの!】

鳴上「……くそっ……!」

705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 00:09:02.21 ID:ojNT/Z6r0

大佐【どうした、迷ったのか?では“自分探し”でもしてみるか?】

美玲【どうせ何も見つからないと思うけど】

大佐【だが…そうやって自分で取り繕った“自分”にも関わらず、何か都合が悪いことが起きると他の何かのせいにする】

美玲【俺のせいじゃない…君のせいじゃない…】

大佐【そしてまた別の口当たりのいい“自分”を探して、そこに癒しを求める】

美玲【今まで利用してた“自分”をあっさり使い捨ててね】

大佐【争いを避け、傷つかないようにお互いを庇い合うための詭弁…】

大佐【『政治的正しさ』や『価値相対化』というキレイゴトの名のもとに、それぞれの“真実”がただ蓄積されていく】

美玲【衝突を怖れてそれぞれのコミュニティに引きこもり、ぬるま湯の中で適当に甘やかし合いながら、好みの“真実”を垂れ流す】

大佐【噛み合わないのにぶつからない“真実”の数々。誰も否定されないがゆえに誰も正しくない】

美玲【ここでは淘汰も起こらない。世界は“真実”で飽和する……】

大佐【……どうだ。まさに君達のことだとは思わんかね?】

美玲【“自分”を受け入れた者同士の絆…?それ、つまるところ傷のなめ合い以外の何なの?】

大佐【…君達は“自分を受け入れた”のではない。“自分を使い捨てている”だけなのだよ】

美玲【そして、自分と同じことをしてる人間同士で集まって馴れ合ってるだけ】

大佐【それは…人類の進化を止める】

大佐【そんな君達に、本当の“真実”が選び取れると思うかね?】

美玲【その自由を使う資格があるの?】

大佐【君達は“真実”を得るに値しない】

美玲【あなた達は“真実”を食い潰している】

大佐【…我々は本来、君達のような存在を駆逐あるいは誘導する役割も背負っている】

大佐【だからこそ…そのような人間の手で世界は逼塞していくのだ。緩やかに】

大佐【君達のように、“自分”を見ようとしない人間がこの地球上には溢れている】

美玲【そんな人類がこの地上を支配することを、私達は認めない】

大佐【馴れ合いによって逼塞していく地球を救うために…君達は淘汰されなければならない】

美玲【…だからこそ私達は、人類を監視・修整・制御しなければならないの】

大佐【遺伝子と同じく、必要の無い情報・記憶は淘汰されてこそ種の進化を促進するからな】

鳴上「…何が必要か、お前達が決めるっていうのか…!?」

大佐【その通りだ。君達がひり出す糞の山から、我々が価値のある“真実”を選び取り、残すべき意味を紡いでやる】

美玲【血の通ったあなた達にはそれができない。でも、私達にはそれができる】

大佐【…だからこそ、我々が世界を支配しなければならないのだ】

美玲【それが……あなた達のためである、ということ】

大佐【我々はイザナミの力を悪用するのではない。すべては世界を正しく導くため…】

大佐【…種の進化をより良いものにするため、人類を統治しなければならないからこその判断だということだ】

709: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 21:24:02.55 ID:ojNT/Z6r0

大佐【…さあ、話は終わりだ】

美玲【あなた達は淘汰され…イザナミの力は、私達が手中に収める】

大佐【安心して死ぬといい。君達亡き後も、八十稲羽の人間は我々がしっかり面倒を見てやる】

美玲【そして…世界は治められる。『愛国者達』の手によって】

大佐【我々が思い描く“戦争経済”の未来…イザナミの力さえあれば、制御はたやすい】

大佐【世界中の国々にペルソナ能力を均等に分配し、勝敗を制御し、計算された戦争をもって世界を支配する】

大佐【誇りに思っていいぞ。君達は世界を平らかにするための礎となれるのだ】

大佐【それでは…スネーク。そして特別捜査隊の諸君】

大佐【最後の任務だ。オセロットに“殺されろ”】

大佐【…君達の“真実”が勝つか…我々の“真実”が勝つか…】

美玲【…自分達の信じたものの脆さに絶望しながら、逝きなさい】





オセロット「ソリッド・スネーク……そして、特別捜査隊よ」

オセロット「終わりにしようではないか。この茶番を」

鳴上「…………」

オセロット「…どうした。声も出まいか」

鳴上「……俺は……」

鳴上「……俺達の、信じたものは……」

鳴上「…………」

オセロット「…ようやく理解したか。お前達が掴んだ真実は…虚構に過ぎんということを」

オセロット「堂島菜々子の危篤を乗り越えず、真犯人すら自力で解明していない貴様らの絆など…」

オセロット「…所詮、我らの敵ではないということだよ」

鳴上「……違う……違うんだ……」

鳴上「俺達は……辿り着いたはずだ、真実に……!」

オセロット「愚かだな。それが幻だと言っているのだ」

鳴上「……そんなはず、ない……俺達は……っ……!」

鳴上「……うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


鳴上「イザナギ…!!」カッ


鳴上「俺達は……掴んだ……!掴んだ……はずなんだ……!」

オセロット「…まだペルソナを出せるか。仕方あるまい…」

オセロット「お前の闘志に敬意を払い…最後の絶望を思い知らせてやるとしよう」





オセロット「……」パチン





オセロット「これで…正真正銘の、“終わり”だ」

711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 21:53:31.51 ID:ojNT/Z6r0

鳴上「……!」

鳴上「なんで……ペルソナが、消えた……?」

オセロット「…まさか、この手段を使うことになるとはな」

オセロット「お前達の体内にあるナノマシンを通じて…ペルソナ能力に関する脳波をすべてシャットアウトさせてもらった」

オセロット「諦めろ。これでもうお前達は『勝ち目が無い』のではない…『戦うことができない』のだ」

鳴上「……くそ……頼む、ペルソナ……っ……!」

オセロット「無駄だ。いくらカードを割ろうとペルソナは出やしない」

オセロット「…哀れなものだな。これが貴様らの末路か…」





オセロット「………“幾千の呪言”………」





オセロット「……『ならば私は、一日に千の命を殺してみせよう』……」

オセロット「…確かに、千を超える殺すべき人間がこの地球上には存在する」

オセロット「お前達が…その先駆となるがいい」

オセロット「ほうら…黄泉へと誘う無数の手が、お前達に伸びていくぞ…!」

陽介「な……!?うわああああああああああっ!!」

千枝「うっ……ぐぅっ……!!」

鳴上「陽介…里中…!」

雪子「きゃあああああああっ……!!」

完二「ぐっ………ち…く…しょ………!!」

りせ「嫌あああああああああああっ……!!」

鳴上「天城…完二…りせ…!」

クマ「……そんな……ク……マ……」

直斗「うっ……ぐあああああああっ……!!」

スネーク「くそ……っ……!!」

鳴上「クマ…直斗…スネーク…!」





鳴上「……みんな……どうして……っ……」

オセロット「…分かったか。貴様は誰も守れんのだ」

オセロット「泣いたところで仲間はもう帰ってこない。特別捜査隊のリーダーも…所詮はその程度だったということだな」

鳴上「……オセロット……許さない……絶対に……!」

オセロット「ペルソナも出せん貴様の戯言など、最早耳を傾ける価値も無い」

オセロット「さあ、早くお前も仲間のところへ…あの世へ行ってやるがいい」

鳴上「……く……そ……」

鳴上「……うわあああああああああああああああああっ……!!」

オセロット「……Have a nice death……良き最期を、祈っているぞ……」

712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 22:45:13.28 ID:ojNT/Z6r0

鳴上(…………)

鳴上(……意識が……遠のいていく……)





鳴上(……強大な敵を前に……俺達は、このまま力尽きるしかないのか……)

鳴上(……真実は……俺達には、掴めないものだったのかもしれない)

鳴上(……俺達のやっていたことは……あの声の言う通り、馴れ合いでしかなかったのだろうか……)

鳴上(……俺達は……淘汰されるべき存在……)

鳴上(…………)

鳴上(……?)

鳴上(声が……誰かの声が……聞こえる……?)





マーガレット『…どういうつもりかしら?』

マーガレット『立ちなさい。貴方はここで倒れる人ではないわ』

マーガレット『分かっているはずよ…貴方なら』

マーガレット『絆の本質を…絆が貴方に与えてくれるものを…』

マーガレット『ほら、耳を澄ませてみて…』



堂島『どうした、悠…こんなとこで泣きべそかいてんのか?』

堂島『お前が教えてくれたんだぞ。家族ってもんを…』

堂島『菜々子だけで手に余ってたところを…ハハ、どうしようかと思った…』

堂島『…だがな。お前らがいるから、俺は何度だって立てるんだ。どんなに苦しくても、歯ァ食いしばってな…』

堂島『お前らのためなら、何度でも立つさ…父親ってのは、バカなもんだからな…』



陽介『…逝くなよ、悠…』

陽介『お前に会って、変わったよ。俺の中の全部…』

陽介『俺…お前でよかった。お前とだったから、ここまで来られた…』

陽介『悠…まだ、終われないだろ?』

陽介『まだやれるさ…そうだろ、相棒』



千枝『や、やだ…鳴上君…怖いよ、キミがいないと…』

千枝『あたし、こんなに憶病で…ずるくて、意地っ張りで…』

千枝『でも…そんなあたしを、キミは分かってくれた』

千枝『だから…あたし、いくらだって強くなれるよ…鳴上君…』

713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 23:11:42.83 ID:ojNT/Z6r0

雪子『ねえ、鳴上君…聞こえる?まだ目を閉じないで…』

雪子『私達の力をあげる…最後の希望の、あなたに…』

雪子『お願い。もう一度だけ…立って…』

雪子『私も、立つからね…鳴上君の手を借りずに、いつかきっと一人で羽ばたいてみせるから…』

雪子『だから…立って、鳴上君…』



完二『…先輩。いつまで寝てる気なんスか』

完二『先輩はそんな人じゃねえはずだ。こんなとこで終わるような人じゃ…ねえだろ』

完二『んなの…俺の憧れる鳴上先輩じゃねえよ…』

完二『立てよ…立ってもう一度、アンタを守らせてくれよ…!』



りせ『先輩…ありがと…』

りせ『私…この町に来てよかったよ…思い返したら、楽しいことばっかりだったよ…』

りせ『アイドルに戻る…私、その決意は揺らいでない。だってそれは…先輩と交わした約束だから』

りせ『嘘、つかないもん。私…やり遂げてみせるもん』

りせ『だから…もう一度だけ立って、悠先輩。私達が先輩の力になるから…』



直斗『せ、先輩…僕は、あなたを許さない…』

直斗『あなたは…僕に、いていい意味をくれた』

直斗『そのあなたが、こんな途中で…僕を置いて投げ出して…』

直斗『…鳴上先輩…立ってください、もう一度』

直斗『そして共に、戦いましょう。大丈夫…僕らはいつも一緒です…』



キツネ『クゥン……』

キツネ『…………』



一条『鳴上…たまにはオレらに心配ぐらいさせろって』

一条『全部自分で仕舞いこまないでさ…オレらがいるよ』

一条『お前の力になりたいって願ってるバカ二人だ…ほら、立てるだろ…?』



長瀬『…どうした、鳴上。ここで終わるつもりか?』

長瀬『お前は、一人じゃねえだろ。俺や一条が一人じゃなかったように…』

長瀬『お前一人で…逝かせやしないさ』



あい『うそでしょ、悠…』

あい『アンタがいなくなって…アタシがもう一歩も歩けなくなってもいいの…?』

あい『…アンタみたいなズルいやつ、もう…忘れてやるんだから…』

715: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 23:35:38.17 ID:ojNT/Z6r0

尚紀『やめてください、鳴上さん…』

尚紀『もう…嫌なんです。大切な人を失うのは…』

尚紀『あなたまで…嫌ですよ…』



綾音『先輩…ありがとう。苦しい時に私を思い出してくれて…』

綾音『先輩は、私のかけがえの無い人です。先輩のためなら何だってできる…』

綾音『先輩は…?誰かや、私のために…立ち上がれますか…?』



結実『バカ…一人で何でも抱え込んでさ…』

結実『一人じゃないから…できることがあるんだよ』

結実『恋人でも友人でも、家族でも…いつかは別れが来る…』

結実『だけど…ううん、だからこそ私たちは…絆を結ぶんだよ』



秀『先生…ありがとう』

秀『ウソつかないこと…怖がらないこと…立ち上がること…信じること…』

秀『全部先生が教えてくれた…だから先生も、一人じゃないって…信じて…』



ひさ乃『駄目よ、悠ちゃん。眠るのはまだ早いわ…』

ひさ乃『少し疲れたのね…でも、まだあなたを待っている人がいるわ…』

ひさ乃『大事な誰かのために…あなたは、本当にできることをしたかしら…?』



小夜子『ごめんね、悠。こんな時に支えてあげられなくて…』

小夜子『生きるって…泥臭くて、カッコ悪くて、ツライことばっかりで…』

小夜子『とても一人じゃ、戦えないよね…』

小夜子『でもね…一人ぼっちの人なんていないの。大事な人を守ってきた君なら、分かるよね…?』

小夜子『ほら、待ってる人がいる…』

716: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/06(水) 23:42:06.06 ID:ojNT/Z6r0

絵里『先生…ううん、本当はまだ高校生の男の子なんだよね…』

絵里『辛かったね…大変だったね…』

絵里『…でも。大切な人を守れるって…幸せだよね』

絵里『私は…その幸せを、先生に教えてもらったわ…』



クマ『センセイ…クマは、センセイを守る…』

クマ『クマ、センセイに命もらったから…センセイが大事だから…』

クマ『クマはひとりぼっちじゃないね…センセイも、ひとりぼっちじゃないね…』

クマ『ひとりじゃできないこと、きっとできる…みんなが…センセイがいるから…』



菜々子『ね、お兄ちゃん…菜々子をおいてっちゃうの…?』

菜々子『菜々子、いい子にするから…行っちゃ、やだ…』

菜々子『行っちゃ、やだよ…お兄ちゃん…』

717: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/07(木) 00:00:42.35 ID:X4V8jpz80

スネーク『…何を寝ている、鳴上。お前はそんな男じゃなかったはずだ』

スネーク『お前には、人を導き、統率する力がある。そして今、みんなお前に力を分け与えようとしてくれている』

スネーク『それに…俺は教えられたんだよ、お前にな』

スネーク『本当の強さとは…他人と干渉しないことで保たれるのではなく、他人と繋がることで強固になっていくものなんだと』

スネーク『お前はそれを、自分の生き方をもって俺に教えてくれた』

スネーク『だから…俺もお前に、一つ助言をしてやったはずだ』





スネーク『言葉を信じるな。言葉の持つ意味を信じるんだ…とな』





スネーク『…鳴上。お前は一人じゃない』

スネーク『“大佐”の言った言葉に惑わされるな。本質を見ろ。真実を見ろ』

スネーク『お前達の…俺達の絆は、そんなものに負けるようなものではなかったはずだ』

スネーク『…さあ、立ち上がれ。俺達がついている』

スネーク『“真実”のなんたるかを…『愛国者達』に教えてやるんだ、鳴上』

721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/08(金) 01:50:19.92 ID:AxyVcY/90
 

鳴上(…………)

鳴上(……そうか……そうだった……)

鳴上(……言葉を信じるんじゃない……言葉の持つ意味を、信じる……)

鳴上(…………)

鳴上(やっと……思い出した……)

鳴上(……“真実”は……すぐそこにあったんだ……)





【“自分”なんてものが今のあなたにあるの!?】

【君が思っている“自分”なぞ、せいぜい身を守るための言い訳に過ぎんのではないか?】

【世間に溢れてる出来合いの真実の中から、その時々に気持ち良く思えることをツギハギしただけ】

【あるいは、もっともらしい権威の下に身を寄せて手に入れたつもりになっている借り物か…】


『お前が…お前自身が信じたもの。大切だと思えること』

『そしてそれを、自分で選び取るということ。誰かが決めるもんでもない』

『正しいかどうかではない。正しいと信じる、その想いこそが未来を創るんだ』





【『政治的正しさ』や『価値相対化』というキレイゴトの名のもとに、それぞれの“真実”がただ蓄積されていく】

【衝突を怖れてそれぞれのコミュニティに引きこもり、ぬるま湯の中で適当に甘やかし合いながら、好みの“真実”を垂れ流す】

【噛み合わないのにぶつからない“真実”の数々。誰も否定されないがゆえに誰も正しくない】

【ここでは淘汰も起こらない。世界は“真実”で飽和する】


『…“真実”とは…自分が直に見て、考えて、自ら選んだ所にだけ現れるもの』

『貴方の行く先に、“真実”に繋がる道があると…信じることです』





【…君達は“自分を受け入れた”のではない。“自分を使い捨てている”だけなのだよ】

【そして、自分と同じことをしてる人間同士で集まって馴れ合ってるだけ】

【それは…人類の進化を止める】

【そんな君達に、本当の“真実”が選び取れると思うかね?】

【その自由を使う資格があるの?】

【君達は“真実”を得るに値しない】

【あなた達は“真実”を食い潰している】


『それは貴方が築き上げた絆の力。虚ろな噂に惑わされず、物事の本質を見抜く力の断片…』

『そして…旅路の中で貴方が育んだ力の結晶』

『あらゆる虚飾を払い、嘘を打ち消し、真実を照らし出す宝珠でございます。さあ、お行きなさい…』

722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/08(金) 02:15:53.84 ID:AxyVcY/90

鳴上(……ありがとう、みんな……)

鳴上(…………)

鳴上(……“真実”に……手が届く……)





絆を真に深めた相手の心が、力へと変わる…

“イザナギ”は“伊邪那岐大神”へと転生した!





鳴上(……?)

鳴上(……なんだ、ペルソナが……)





世界コミュの力が、伊邪那岐大神に力を与える…

伊邪那岐大神は、スキル『幾万の真言』を覚醒させた!





鳴上(…………)

鳴上(……ありがとう、スネーク……)

鳴上(……俺は……負けない……!)

723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/08(金) 04:09:08.71 ID:AxyVcY/90

鳴上「…………」

鳴上「待て……オセロット」

オセロット「ん?…ほう、地獄から舞い戻ったか。しぶとさだけは一級品だな」

オセロット「だが、戻っただけでは何も起こらん。貴様など今となっては…」


鳴上「…………」カッ


オセロット「……何……ぺル、ソナ……?」

オセロット「おかしい、俺は確かに貴様のナノマシンを……」

鳴上「俺には、仲間がいる。そして……結んだ絆がある」

オセロット「何を…ほざくか、小僧」

オセロット「さっさと死ね…“幾千の呪言”!」


ゴォォォォォォォォォ…


鳴上「…………」

鳴上「……今の俺には、もう利かない……」

オセロット「……何故だ……これは……」

オセロット「チッ……“大雷”!」


ズドォォォォォォン!!


鳴上「……っ……」

オセロット「……“大雷”!」


ズドォォォォォォン!!


鳴上「……ぐ……」

鳴上「……利かないと言ったはずだ……もう……俺には……!」

オセロット「……どういうことだ……どうして、これだけ食らって立っていられる……!?」

オセロット「……“大雷”!“黒雷”!」


ズドォォォォォォン!!


鳴上「……う……っ……!」

鳴上「……俺は、負けられない……」

オセロット「何故だ……どうして倒れん!?」

オセロット「イザナミの力だぞ……!?貴様ごときのペルソナで、勝てるはずがない!」

オセロット「……そもそも、どうして貴様はペルソナを出している……?ナノマシンの制御によって使えなくなっているはずだ……!」

鳴上「……それが、そもそも間違っている」

鳴上「どんな小細工でも止められない力……それが、絆の生み出す力。心に宿る力」

鳴上「心の力に限界は無い。だから……それを抑えつけることなんて、初めからできるはずがないんだ」

オセロット「……バカな……」

オセロット「……個の意思が、ナノマシンの抑制を退けたというのか……!?」

728: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/09(土) 01:25:15.41 ID:1o59+F1Y0

オセロット「……あり得ない……イザナミの力こそが、この空間において最強のはず……!」

オセロット「負けるはずがないのだ!イザナミを上回る力など、我々の調べでは無かっ……」

オセロット「…………」

オセロット「……まさか……」

鳴上「……そう。気づいたみたいだな」

鳴上「『愛国者達』がどれだけの技術を持つ組織なのかは知らない。だが……お前は言った」

鳴上「“人々の絆から成る見晴らしの珠だけは、複製することができなかった”と」

鳴上「それができていれば、あるいは……恐らくお前も、お前の組織も、気づけたかもしれない」





鳴上「この空間……いや、この現実において。俺達が生きる、この世界という枠の中で」

鳴上「イザナミの力さえも上回る力……“絆の力”が存在するということに」





オセロット「……そんな……はずは……」

鳴上「……俺達は、逃げないことを誓った。苦しい現実から目を逸らさないことを誓った」

鳴上「傍目にどう見えるか、じゃない。俺達が何を見て生きるか、ということ」

鳴上「そして……虚ろな噂に惑わされず、物事の本質を見抜き、言葉の意味を信じるということ」

鳴上「俺はそれを、仲間達と共に学んできた」

鳴上「だからこそ……胸を張って言える」

鳴上「苦しみながら前へ進む人間を嘲笑する、お前達のような連中に……人類を導く資格は無い!!」

オセロット「……貴様……喋らせておけば、いきがりおって……!」

鳴上「……人は、一人じゃ生きられない」

鳴上「お互いの弱さを認め合うという行為は、決して馴れ合いなんかじゃない」

鳴上「それは“信じる”ということだ。お互いを認め合い、背中を預け、共に生きるということ」

鳴上「お前達……『愛国者達』には、それが分からなかった」

鳴上「……たとえ、自分が最も信頼していた相手と対立することになろうとも……」

鳴上「……同じ何かを信じ、やがてその解釈が食い違うことになろうとも……」

鳴上「……相手を、赦すということ。お前達には、それができなかった」

鳴上「だからこそ……この世界の有り方を変えるような真似は、絶対にさせない」

鳴上「……ありのままの世界を残すために最善を尽くすこと。他者の意志を尊重し、自らの意志を信じること……」

オセロット「……!!」

鳴上「……俺のペルソナは『世界』。だから分かる……」

鳴上「世界を創り、支えているものは……“絆”なんだ。俺のペルソナがそうして転生したように」

鳴上「……それを抑圧することでしか、世界を支配する術を知らないお前達に……」

鳴上「俺は……“伊邪那岐大神”は……負けはしない!!」

745: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/12(火) 00:57:46.42 ID:8O4gtnXa0

鳴上「さあ、決着をつけよう。オセロット」

オセロット「まさか……上回るというのか、イザナミの力を……」

オセロット「……面白い……!いいだろう、受けて立ってやる……!」

鳴上「見せてやる、お前達に掴めなかったもの……」

鳴上「これが……“真実”だ!!」





鳴上「……『幾万の真言』!!」

オセロット「……“幾千の呪言”!!」





オセロット「…………っ…………」

オセロット「……まさか……これほど……と……は……」

オセロット「……くそ……もう、持たん……か……」

鳴上「千が死に逝き、万が生まれる……」

鳴上「これで……終わりだ!!」

オセロット「……そう……か…………これが……」

オセロット「……絆の…………力、か……」


ドォォォォォォォ…ン!!


オセロット「……ぐ……おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

748: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/12(火) 02:25:13.10 ID:8O4gtnXa0

鳴上「……」

鳴上「…………」

鳴上「………………」

鳴上「……終わった、か……」





陽介「相棒。ついに…やったな」

鳴上「…陽介…それに、みんなも…!」

千枝「ま、鳴上君ならやってくれるって信じてたからさ…えへへ…」

雪子「鳴上君…最後に立ち上がってくれて、ありがとう…」

完二「先輩…さすがだぜ。それでこそ俺らのリーダーってもんだ」

りせ「やったね…やったんだよね、先輩…!」

クマ「センセイ…やっぱりセンセイは、すごかったクマ。最後まで諦めなかった…」

直斗「…先輩は、勝つって…信じてましたから」

スネーク「…鳴上、やったな。お前なら立ち上がれると信じていた」

鳴上「ああ…みんな、改めて礼を言わせてくれ」

鳴上「あの時…俺に力を分けてくれて、本当にありがとう」

鳴上「そして、スネーク…ありがとう。俺に気づかせてくれて」

鳴上「俺を…“真実”へと導いてくれて…」

スネーク「…だが、最後に決断を下したのはお前だ。偽りに惑わされず…よくぞ“真実”まで辿り着いた」

スネーク「それでこそ…俺の見込んだ男だ」





伊邪那美大神『……なるほど。これが……お前達の力か……』

陽介「お前、イザナミ…!?」

完二「まだいやがったのか…しぶてぇ野郎だ…!」

伊邪那美大神『お前達の脳内に響いた言葉の数々……オセロットに操られてはいたが、私にも聞こえていた』

伊邪那美大神『……私は、まさしくあの言葉の通りだと思っていた』

伊邪那美大神『あがいて生きるより、嘘に目隠しされて生きていく……それこそが人間の平穏……』

伊邪那美大神『ぬるま湯の中で甘やかし合いながら、好みの“真実”だけを見る……』

伊邪那美大神『……だが、それは間違いだったようだ』

伊邪那美大神『……私は、お前達の力によって滅ぼされる。この私を消し去るほどの力……最早私の知る人間の枠を超えている……』

伊邪那美大神『この世界の霧も、現実の霧も、全てお前達によって晴らされた……それが果たして幸せなものとなるか、それすらお前達で創らねばならないだろう……』

伊邪那美大神『お前達の信じる“真実”が、この先の世界をどう変えるのか……』

伊邪那美大神『……人の子よ、見事なり……!』

749: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/12(火) 22:06:17.16 ID:8O4gtnXa0

鳴上「……イザナミが……消えていく……」

陽介「コイツが、霧の原因…だったんだよな。それが消えたから…」

雪子「…! 見て、みんな…景色が…!」


カッ…!


陽介「……すげえ……!」

りせ「とっても綺麗……何、この景色……?」

千枝「何だろう……すごく、懐かしいような……」

クマ「……クマは知ってるクマ。ずーっとずっと昔……この世界は、こういう場所だったんだ」





オセロット「……ここは、人の心の中の世界。その霧が……晴れたということだ」

鳴上「…!!」

スネーク「……オセロット……まだ意識があるのか……!」

オセロット「……俺も、思い出した」

オセロット「人間は本来、これほどまでに美しい心を持った生き物……」

オセロット「そして……そんな人間を、今までに一人だけ見たことがあった」

オセロット「……鳴上悠。つい先ほどのお前に、ある女の姿が重なって見えたよ」

オセロット「俺の……母親だ」

鳴上「お前の…母親…?」

オセロット「奴は……この世界の全てを愛し、そのために死んでいった」

オセロット「“誰かのために生きる”……お前に既視感を感じたのも、そのためだったのかもしれん」

オセロット「だが。その愛情があまりにも深く、時代に拒絶されてしまったために……その遺志を継ぐ者達の暴走が始まった」

オセロット「…………」

オセロット「……ゼロか、ビッグボスか……どちらでもいい。どちらかが、お前のような心を持っていたなら……」

オセロット「……あんなことには、ならなかったのかもしれんな」

750: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/14(木) 00:05:55.20 ID:Lhqh2kHq0

オセロット「……ともあれ、だ。切り札のイザナミを消された以上、9対1では降参せざるを得まい」

陽介「…お前も、今回の事件には深く関わってたんだろ。罪はキッチリ償ってもらうぜ」

オセロット「それは不可能だな。腐っても『愛国者達』…こんな小国の法律で俺を裁けるものか」

オセロット「それに、まだ“手段”は残っている」

オセロット「……『PMC・アウターヘブン』……」

スネーク「…アウターヘブン、だと…!?」

オセロット「いずれ分かる。…今はまだ、時期ではない」





オセロット「…さて。イザナミが消えた今、もうこの町に用は無くなった」

オセロット「そうなった以上、最早『愛国者達』もこの町の人間をどうこうする気はなかろう。安心するがいい」

スネーク「オセロット…逃げるつもりか?」

オセロット「よく分かっているではないか。では…」

直斗「くそ…逃がすか!」

オセロット「……鳴上悠。いいセンスだ……」

オセロット「…トラエスト!」


ヒュッ


直斗「…っ。反応が遅かったか…」

スネーク「…まあ、奴がこうして逃げるということは事件が終わったということだ。過去の経験で分かる」

鳴上「…どっちにしても、また来たら俺達で返り討ちにすればいいだけだ」

千枝「だね。それで、霧の原因もしっかりやっつけたことだし…」

雪子「今度こそ…事件は解決、なんだよね?」

クマ「うん…きっとそうクマ。こっちもこんなにキレイな世界になって、みんなの住む世界も霧は晴れた…」

りせ「……終わったんだね、全部……」

鳴上「長いようで…一年という短い戦いだったな」





陽介「……おっし!霧の原因も倒して事件は解決ってことなら、またみんなで打ち上げやろうじゃねーの!」

直斗「ちょっ…切り替え早すぎません!?」

陽介「いいのいいの、こういうのは切り替えるタイミングが大事なんだって」

鳴上「…そうだな。せっかくだからみんなで盛大にやりたいところだ」

直斗「先輩まで…」

千枝「もちろん、言い出しっぺの花村がジュネスのフードコートでおごりだよね?」

陽介「え……いや、それは」

りせ「ほんと!?花村先輩、ゴチでーす!」

完二「マジっスか!いやぁ、これは思う存分ビフテキ食えるな」

クマ「アイス食べ放題クマー!」

陽介「お、おい待て!こういう時だからこそみんなで折半をだな…」

754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 14:17:34.67 ID:OJBYCOR90

スネーク「まあまあ…俺も奢ってやる、みんなでジュネスに向かおうか」

陽介「す、スネーク…助かる…!」





スネーク(…かくして、八十稲羽を覆った霧の元凶は倒された)

スネーク(『愛国者達』のイザナミ奪取も防ぐことができ、俺もやるべきことは終えた)

スネーク(戻ったその晩は、特別捜査隊全員で遅くまで語り、飲み、食べ、夜を明かした…)

スネーク(…これからはまた、普通の日常がこの町に戻ってくる)

スネーク(そして…俺も…)

スネーク(…そろそろ、この町にもいられなくなるだろうな)





数日後 アパート

オタコン「…スネーク、いるかい?」

スネーク「ああ、今開ける」


ガチャ


オタコン「スネークの言った通りだったね。こんなものが届いた」

スネーク「…やはりか。お前には『異動通知』…」

スネーク「…そして俺にも、『退学処分通知』が届いている」

オタコン「…僕達が『愛国者達』の目論みで八十稲羽に呼ばれていた以上、今の身分も奴らが用意したもの…」

スネーク「もう奴らもこの町に用は無い…お前は異動になり、俺は学籍を抹消された。大方予想はできていたがな」

オタコン「あまり長くはなかったけど、この町ともお別れ…だね」

オタコン「…でも、町の人達にはナノマシンが入ったままなんだろ?それはどうしようか…」

スネーク「心配する必要は無い。また奴らが何か企んだとしても、それを止められる力がもうこの町には存在する」

スネーク「あいつらが…『特別捜査隊』が、この町にいる限りはな」

オタコン「…鳴上君達、か。この数ヶ月で、随分肩入れしたみたいだね」

スネーク「…そうだな。名残惜しいが…別れはやってくるものだ」

オタコン「君、任務が終わるとろくに挨拶もせずにどこかへ消える癖があるけど…今回はどうするんだい?」

スネーク「…奴らには、別れの挨拶を告げておきたい。もう会える機会も無くなるだろうからな…」

オタコン「変わったね、本当に…君が人との繋がりをそこまで意識する日がくるなんて。シャドーモセスの頃と比べたら驚きの一言だよ」

スネーク「…絆によってもたらされるもの。その強さ。俺は…それをあいつらに教えてもらったからな」

755: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:24:57.40 ID:OJBYCOR90

スネーク(特別捜査隊の面子には、俺がここを去ることは伝えてある)

スネーク(…別れの挨拶を言いに行こうとしたら、あいつらがみんなで集まってくれると言い出した)

スネーク(オタコンが町外れの広い場所に大型輸送機を呼んだそうだ。確かノーマッドとか言ったか…最近どこぞの軍隊からの横流しを安く買い叩いたらしい)

スネーク(こんな田舎でそんなもん飛ばすなとは言ったんだが、だからといって俺達が電車と空港を経由する訳にもいかず…)

スネーク(…そして、場所をみんなに伝え…その日がいよいよやって来た)





バララララララララララララ…

オタコン「…お、到着したみたいだ。スネーク」

スネーク「分かってる、今行く」

スネーク「……それじゃあな、みんな」

完二「スネーク先輩…離れてても、俺らは仲間っスから。絶対に忘れないでくれよな」

雪子「元気でね…スネーク君」

りせ「せめて、悠先輩と同じ3月まで一緒にいてくれたらなぁ…」

クマ「スネーク…またいつか、ゼッタイこの町に遊びに来るクマよ!約束するクマ!」

千枝「スネーク君に教えてもらった『CQC』、今度会うときまでにしっかり完成させとくからさ…楽しみにしといてね!」

直斗「…寂しくなりますね。一人でも仲間がいなくなってしまうのは…」

陽介「…待ってるからよ。外国から大変だとは思うけど…この八十稲羽で、いつかまた会おうぜ」

鳴上「またな…スネーク」

スネーク「ああ。またいつか…会いたいものだ」

スネーク「…いや。いつか必ず、また会おう」

スネーク「…絆の力。それを教えてくれたお前達には…感謝してもしきれんくらいだからな」

756: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/16(土) 00:12:09.36 ID:buPXWdFK0

スネーク「…それでは。しばしの間、お別れだ」

 

鳴上「……輸送機が、離陸する……」

雪子「ついに…行っちゃうんだね」


バララララララララララ…


陽介「……スネークー!!絶対…いつか絶対、また遊びに来てくれよなー!!」

りせ「またねー!!スネークせんぱーい!!」

完二「俺らのこと、忘れんじゃねーぞー!!」

直斗「スネーク先輩、お元気でー!!」

千枝「あたし、頑張るから!!スネーク君も負けないでねー!!」

雪子「ありがとう…!!またいつかきっと、会おうねー!!」

クマ「アメリカへ行っても、クマ達のこと忘れちゃイヤクマよー!!」

鳴上「距離なんて関係ない…!!いつまでも俺達は仲間だからな、スネークー!!」





陽介「……ふう。行っちまったな……」

直斗「…ソリッド・スネーク。実際に会ってみたら…とてもいい人でしたね」

千枝「え? 直斗君、スネーク君と前から知り合いだったとか…?」

直斗「いえ、そういう訳ではないんですが…今度お貸ししますよ、『シャドーモセスの真実』」

完二「…ま、何はともあれ。スネーク先輩も俺らのことを忘れたりはしねえ…それだけは分かるぜ」

クマ「今度来るときは、アメリカの美味しいアイスをいっぱい持ってきてもらうクマ!」

りせ「もー、クマったらそればっか…」

雪子「…会えなくなっても、大丈夫だよね。私達は繋がってるから…」

鳴上「ああ。きっとまたいつか…会える日まで…」

759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/16(土) 00:38:25.28 ID:buPXWdFK0

ノーマッド機内

スネーク「……これで、ひとまずは終わったな……」

サニー「お、お帰り…スネーク、ハル兄さん…」

オタコン「悪かったね、サニー。長いこと一人にしちゃって」

サニー「ううん…だ、大丈夫…」


ピピピピピピピ ピピピピピピピ


スネーク「ん? これは……“大佐”からの、コール……?」

オタコン「…出てみなよスネーク。大丈夫だ、そのコールはちゃんと『キャンベル大佐』からのものだ」

スネーク「なんだ…出ていいのか?」

オタコン「もちろんさ」

スネーク「…そこまで言うなら、とりあえず…」


ピッ


スネーク「…こちらスネーク」

キャンベル【おお、スネーク。オタコンから聞いたぞ、また一悶着に巻き込まれたようだな】

メイリン【しかも、私達のコピーAIなんかに騙されたって聞いたけど?】

スネーク「大佐…メイリン…!本物、なのか…!?」

キャンベル【安心してくれ。私は雷電を操った“大佐”でもなければ、メイリンは“ローズマリー”でもない】

スネーク「…よかった。久しぶりに…本物の声が聞けて安心した」

メイリン【ローズさんだけじゃなく、私のコピーまであるなんて…侮れないわね、あいつら】

キャンベル【…ペルソナに、マヨナカテレビ。今回もまた、奇想天外な相手が敵だったらしいな】

スネーク「ああ…しかもそれを、利用しようと考えるとは」

オタコン「僕も目を疑ったけどね、テレビに手を突っ込んだ所を見た時は…」

スネーク「…どうにかオセロットを退け、『愛国者達』の目論みは打ち崩せた」

スネーク「そして…それは、俺一人ではできないことだった」

メイリン【スネークが、一人でできないことなんてあったの?すごい驚き】

スネーク「…改めて言いたい。ありがとう。大佐、メイリン」

メイリン【ちょ…いきなり何?らしくないなあ】

スネーク「身近なところから始めようか、と思ってな」

スネーク「…人は、一人では生きられない。だから俺も…繋がりを大切にしてみることにした」

キャンベル【…これはこれは。君の口から出たとは思えない言葉が…】

761: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/16(土) 00:57:44.09 ID:buPXWdFK0

スネーク「……鳴上悠。花村陽介。里中千枝。天城雪子。巽完二。久慈川りせ。クマ。白鐘直斗……」

キャンベル【…? 誰だね、それは】

スネーク「俺に…教えてくれた奴らだ」

スネーク「絆の力を…強さの本質を…」

スネーク「…これまでの俺の任務。単独潜入とはいえ、みんなのサポートがあったからこそ今の俺がある」

スネーク「メイリンのソリトンレーダーには何度も助けられた。大佐は言うまでもなく、ザンジバーの頃から何度もサポートしてもらった」

スネーク「指令室に閉じ込められて毒ガスで殺されそうになったとき、オタコンが扉のロックを解除してくれなけば死んでいた」

スネーク「…グレイフォックスにも。奴の助けが無ければ、REXに勝てたかどうかは分からなかった」

スネーク「考えてみれば…俺は、実に多くの人間に支えられて生きていたんだな」

メイリン【…なんか、聞いてるこっちが顔赤くなってきちゃったんだけど】

スネーク「ハハ、それでいい。徐々に慣れていけばな」

スネーク「…ともかく、そういう訳だ。これからもよろしく頼む、みんな」

スネーク「…さて。こうして任務も…まあ厳密には騙されていた訳だが、終わったことだしな。通過儀礼ではあるが言っておこう」





スネーク「…こちらスネーク。任務完了、これより帰還する」

【完】