1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 03:55:16.98 ID:EbJ2FcUy0
P「そう、アイドル。君をスカウトしたいと思ってね。これ、名刺」

美嘉「……聞いた事のない事務所だね」

P「まだ小さな会社だからね。けど、君も知ってるアイドルがウチにいると思うよ?」

美嘉「へー、そうなんだ」

P「うん。それでどうかな? もちろん、今すぐ返事が欲しいってわけじゃないよ。ゆっくり考えてからでいいから」

美嘉「今答えるよ」

P「本当? こっちは助かるけど」

引用元: 城ヶ崎美嘉「アイドル?」 



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:00:31.81 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「お断り。アイドルに興味なんてないし、変なとこに連れて行かれるのも勘弁」

P「変って……。いや、ウチに子らはみんな個性的だろうけど」

美嘉「そういう意味じゃないよ。単純に、アンタが信用出来ないってだけ」

P「そっか。いや、そうだよね。急に声かけてアイドルにならないか、なんて言われたら」

美嘉「わかってくれた? じゃあ、アタシは行くけど、着いて来ないでよ」
美嘉「身の回りで変な事が起こったら、真っ先にアンタを警察に突き出すから」

P「しないよ。約束する」

美嘉「そ? ならいいけど」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:05:33.92 ID:EbJ2FcUy0
城ヶ崎宅


美嘉「アイドルねぇ。アホらし。こんな名刺なんて、ぐしゃっとしてゴミ箱にポーイ……外しちゃった」

莉嘉「お姉ちゃんお姉ちゃん! あっ、ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てないといけないんだからね」

美嘉「残念だけど、アタシの投球精度は低いみたい。捨ててくれない?」

莉嘉「仕方ないなー、もう」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:10:21.93 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「それよりどうしたの? 勢い良くアタシの部屋に飛び込んで来て」

莉嘉「そうそう、聞いてよ、お姉ちゃん! アタシ、アイドルになる事になったんだ!」

美嘉「……は?」

莉嘉「アイドルだよ、アイドル。今日、友達と街をフラフラしてたらスカウトされちゃった、えへへー」

美嘉「えっと……もしかして、莉嘉がいたのって○○ら辺?」

莉嘉「そうだけど、よくわかったね」

美嘉「アイツか……」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:15:24.85 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「アイツって誰の事?」

美嘉「莉嘉に声をかけたやつに心当たりがあってね。全く、そういうのはちゃんと断らないとダメじゃん」

莉嘉「で、でも、悪い人には見えなかったよ?」

美嘉「莉嘉は単純なんだから。上っ面は綺麗でも、腹の底がドブより汚いやつなんて腐るほどいるんだよ」

莉嘉「た、単純じゃないもん!」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:20:12.75 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「とにかく、アタシがちゃんと断ってあげるから安心しなさい」

莉嘉「えっ、断っちゃうの?」

美嘉「莉嘉はアイドルやってみたいの?」

莉嘉「うん……」

美嘉「そっか。でも大丈夫。アタシが責任もって、安全なとこを探してあげるから。莉嘉ならすぐにアイドルになれるよ」

莉嘉「ホント? でも……」

美嘉「お姉ちゃんに任せなさい。だから、さっき莉嘉が捨てた紙、拾って」

莉嘉「もー! 変なところでアタシに面倒かけるんだから!」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:25:13.06 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「これも莉嘉のためを思ってね」

莉嘉「はいはい。あっ、くしゃくしゃになってた紙、アタシが貰ったのと同じ名刺だ」

美嘉「同じ人にアタシも声かけられたからね」

莉嘉「声をかけられたって、お姉ちゃんもスカウトされたの? あと、はいこれ」

美嘉「ありがと。ま、アタシの場合はその場で断ったけどね。えっと、電話番号はこれかな」

莉嘉「姉妹で同じ日にスカウトされるなんてすごい偶然だね。お姉ちゃんもアイドルやってみようよ!」

美嘉「気が向いたらね。それより、電話かけるから、ちょっと静かにしてて」

莉嘉「はーい」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:30:26.26 ID:EbJ2FcUy0
P『はい、Pです』

美嘉「もしもーし。今日、アンタに声をかけられた者なんだけど」

P『その声に口調……もしかして、ピンクの髪の子?』

美嘉「よくわかったね。そうだよ」

P『職業柄、話した人の声も覚えておかないといけなくてね。それよりどうしたのかな?』

美嘉「あのさ、今日、アタシの他に長い金髪の中学生にも声をかけたよね?」

P『莉嘉ちゃんの事? 君と知り合いだったんだ』

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:35:32.33 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「莉嘉を名前で呼ぶな。虫酸が走る」

P『……ごめん』

美嘉「莉嘉はアタシの妹。なに言って誑かしたか知らないけど、アンタんとこに行かせる気はないから」

P『そうだったんだ』

美嘉「もう契約書にサインさせてて、違約金がどうのって言うんなら、こっちも出るとこ出るけど?」

P『言わないよ。契約書は、君たちのご両親に説明させて頂いて、納得された上で書いて貰う物だから』

美嘉「その辺は良心的なんだ。でも、アタシの意見は変わらないよ。莉嘉も納得してくれた」

P『……うん。わかった。ごめんね、わざわざこんな事に時間を割かせちゃって』
P『後日、君たちと君たちのご両親にちゃんと謝罪を――うわっ』

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:40:20.07 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「?」

みく『どうしたにゃ? Pチャン、すっごい悲しそうな顔をしてるにゃ』

美嘉(この声、どこかで聞いた事あるような……)

P『なんでもないから、みくはあっちに行ってなさい。つーか、アイドルが無暗に抱きつくな』

みく『にゃははっ、スキンシップにゃ』

美嘉「あのさ、こっちは真面目に話してるんだけど? よくわからないけど、●●り合わないで貰える?」

P『ごめん! 本当にごめん! あと、そんな事してないから! 本当だから!』

みく『なんのお話にゃ?』

P『いいから黙ってなさい!』

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:45:37.31 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「……ま、どうでもいいよ。謝罪とかもしなくていいから。二度とアタシたちに関わらないで」

P『二度目になるけど約束するよ』

美嘉「用件はそれだけ。それじゃ」

P『あっ、ちょっと待って。すごく身勝手だけど、一つだけ我儘を聞いてくれないかな?』

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:50:26.32 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「女優にも歌手にもなるつもりはないよ」

P『そうじゃないよ。今、俺の近くにいるのは前川みくって言うアイドルなんだけど、知ってる?』

美嘉「前川みく? 莉嘉は前川みくって名前、どう思う?」

莉嘉「前川みくって、この前友達が貸してくれたCDの人? 最近、雑誌とかテレビとかにもよく出てるよね」

美嘉「やっぱり猫の人だよね?」

莉嘉「うん」

P『知っててくれたんだ。よかった』

21: >>19了解 2013/02/17(日) 04:56:56.35 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「その人がなに? ウチの事務所と繋がりがあれば、そんな人とも知り合いになれるぞって言いたいの?」

P『そうでもなくて、良ければみくを応援してくれないかな? CDを買ったりしなくてもいい。心の片隅だけでもさ』

美嘉「随分アイドル思いのスカウトマンなんだね。こんな時にもお仕事なんて」

P『スカウトマンじゃなくて、プロデューサーだけどね。それと仕事でもなくて、個人的なお願い』

美嘉「なんでもいいよ。ま、そっちの方だけは考えてあげる」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 04:59:24.81 ID:EbJ2FcUy0
P『ありがとう。華やかな舞台に立つ君たちを傍で見られないのは残念だけど、それだけで満足だよ』

美嘉「じゃあね」

P『うん。今回の事は本当にごめん。妹さんにもごめんね、って伝えてくれないかな?』

美嘉「はいはい」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:02:23.62 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「お話、終わったの?」

美嘉「終わったよ。莉嘉にごめんね、だって」

莉嘉「そうなんだ。……すごく短い約束だったなぁ」

美嘉「約束?」

莉嘉「アタシだったら、絶対アイドルのトップになれるって。そのためならいくらでも協力するって」

美嘉「ふーん、あいつがそんな事をねぇ」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:05:21.12 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「指切りもしたけど、ごめんねだけだったね」

美嘉「そんなもんだよ。怪しい人との約束なんて」

莉嘉「ところで、どうしてみくちゃんの名前が出て来たの?」

美嘉「名刺の人、前川みくと仲がいいプロデューサーみたい」

莉嘉「そうだったの!? すっごーい! 本当に普段もにゃあにゃあ言ってるのかな?」

美嘉「電話じゃ、にゃあにゃあ言ってたけどね」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:08:18.53 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「みくちゃんとお話したの!?」

美嘉「名刺の人との話声が聞こえただけだよ」

莉嘉「いいなー。アタシもみくちゃんとお話してみたい」

美嘉「莉嘉がアイドルになったら、きっとできるようになるよ」

莉嘉「……ねぇ、お姉ちゃん。本当に名刺の人の事務所じゃ駄目だったのかな?」
莉嘉「有名な所でも変な噂は耳にするよ? 誰々は何々をしてたー、って」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:11:10.43 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「うーん、そう言われるとね。けど、用心に越した事はないよ」

莉嘉「用心すればいいんだね」

美嘉「うん」

莉嘉「じゃあ、みくちゃんの事務所を調べてみようよ!」

美嘉「……え?」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:14:23.04 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「そこは大丈夫って証明すれば、お姉ちゃんも納得してくれるよね?」

美嘉「まーね」

莉嘉「だから調べてみよ。ネットで検索すれば、すぐに色々見つかるよ」

美嘉(……ほんの少しの濁りもアタシが見逃さなきゃいっか)
美嘉「仕方ないなー。付き合ってあげる」

莉嘉「お姉ちゃん大好き!」

美嘉「どういたしまして」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:17:28.03 ID:EbJ2FcUy0
――――――
――――
――


美嘉(考えられる限り検索してみたけど、これと言って黒い情報はなかった)
美嘉(でもって、アタシに向かって目を輝かせる莉嘉。これは、あれだよね?)

莉嘉「お姉ちゃん。クリーンな事務所だったね」

美嘉「ソウダネ」

莉嘉「所属してる人は少ないけど、みんな知ってるアイドルだったね」

美嘉「ソウダネ」

莉嘉「悪い噂、一つもなかったね」

美嘉「ホントニネ」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:21:04.31 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「って、事は?」

美嘉「……危ないとこがない、安全な事務所って事だね」

莉嘉「じゃあじゃあ、この事務所でアイドルになってもいいよね?」

美嘉「全部をダメ、とは言えなくなっちゃったなー。けど、直で見るまで安心するのは早いからね」

莉嘉「もちろん! なにかされかけたら大声で叫んで噛みついちゃうもんね。がおー!」

美嘉「ただ、莉嘉だけじゃ心配だから、アタシも最初の方はついて行くよ」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:24:05.63 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「ついて来るだけ? お姉ちゃんはアイドルにならないの?」

美嘉「特別なりたいわけじゃないから。なりたくないってわけでもないけど」

莉嘉「じゃあなろうよ。そしたら、ずっとアタシの傍にもいられてお姉ちゃんも安心だね」

美嘉「とか何とか言って。最初一人だけだと心細いんでしょ?」

莉嘉「えへへー」

美嘉(ま、そっちの方が都合がいいし、そうしようかな)
美嘉(……ただ、あんなに色々言っちゃったのに、事務所に入らせてくれるかなー?)

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:28:01.57 ID:EbJ2FcUy0
後日


美嘉「教えて貰った住所だとここみたい」

莉嘉「ボロッちいビルだね」

美嘉「露出が増えてるアイドルが居ても、まだ駆け出したばかりらしいから」

莉嘉「それにしても良かったね。最初は見学だけでもいいなんて」

美嘉「電話かけ直した時は断られると思ってたけどね」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:31:22.36 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「お姉ちゃん、すっごく怖い顔してたもん。莉嘉を名前で呼ぶな! って」

美嘉「い、言うなー!」

莉嘉「こんなに妹思いのお姉ちゃんでアタシは幸せ者だよ、うんうん」

美嘉「アタシの恥ずかしい過去を話す莉嘉なんて置いて行くよ」

莉嘉「あーん、ごめんお姉ちゃん!」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:34:44.54 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「この階だから、ここが事務所だね」

莉嘉「ドアに貼ってある会社名も間違ってないよ。それじゃ、お邪魔しまーす!」

美嘉「こら、ノックぐらいしなって」

莉嘉「忘れてた。でも、もう開けちゃったからいいよね?」

美嘉「この子は……」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:37:53.44 ID:EbJ2FcUy0
P「いらっしゃい。時間通りだね、二人共」

莉嘉「やっほー、Pくん」

P「おはよう。寒くなかった?」

莉嘉「大丈夫だよ。マフラーでしっかり防寒」

P「それはなにより。でも、すぐに温かい飲み物を出すね。すぐに出発するわけじゃないから」

莉嘉「ありがと!」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:40:52.87 ID:EbJ2FcUy0
P「城ヶ崎さん、見学だけでも許してくれて本当にありがとう」

美嘉「アタシはまだ信用してないから、お礼なんていらない」
美嘉「あと、莉嘉と名字が一緒でややこしいし、今日だけは美嘉でいいよ」

莉嘉「アタシも莉嘉って呼んで。それとこの前はごめんね、お姉ちゃんがアタシの名前で怒っちゃったりして」

美嘉「また余計な事ばっかり……」

P「気にしてないからいいよ。それより来客室に行こうか」

莉嘉「うん」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:44:00.33 ID:EbJ2FcUy0
P「ソファーに座ってて」

莉嘉「ウチのよりふかふかー」

P「お茶と紅茶とコーヒー、どれがいい? お砂糖とミルクも」

美嘉「コーヒー。ミルクだけで」

莉嘉「同じの!」

美嘉「プラス砂糖五つ」

莉嘉「むぅ……もうお子様の舌じゃなくなったもん!」

美嘉「そうだねー」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:47:32.82 ID:EbJ2FcUy0
P「二人は本当に仲がいいんだね。はいコーヒー」

莉嘉「ありがとう。えへへ、アタシたちの仲、羨ましい?」

P「羨ましいよ。一人っ子だから、昔から兄弟が欲しくてね」

莉嘉「お姉ちゃんとお兄ちゃん、妹と弟、どれが欲しかったの?」

P「お兄ちゃんかな。いざって時には頼りになりそうだから。でも、弟ともキャッチボールとかしてみたかった」

莉嘉「お姉ちゃんと妹は欲しくなかったの?」

P「そんな事はないって。お姉ちゃんだったら甘えられただろうし、妹だったら可愛がったと思う」

莉嘉「じゃあねじゃあね、アタシが妹になってあげようか?」

P「その気持ちだけで嬉しいよ」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:50:53.76 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「で、今日の予定なんだけど、見学って言ってもなにを見せてくれるの?」

P「みくの仕事の様子を見て貰おうと思ってる。派手なイベントがあるわけじゃないけどね」

莉嘉「みくちゃんとお話できるの!?」

P「出来るよ。明るくて気後れしない性格だから、すぐ仲良くなれると思う。みくも楽しみにしてたしね」

莉嘉「いつ来るの?」

P「もうすぐ来るよ」

みく「Pチャン、おっはにゃ~!」

P「ほらね」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:54:23.28 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「本物のみくちゃんだ! 本当ににゃあにゃあ喋ってる!」

みく「ん? どちら様にゃ?」

P「昨日話しただろ? 今日みくの仕事っぷりを見学する二人だよ」

美嘉「アタシが城ヶ崎美嘉。こっちは妹の莉嘉ね」

莉嘉「莉嘉だよー。よろしくね」

みく「前川みくにゃ。よろしくにゃ」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 05:57:38.02 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「アタシね、みくちゃんの歌はよく聞いてるんだよ!」

美嘉(知り合いに借りた物ってのは黙っててあげるよ、莉嘉)

みく「ありがとうにゃ! すっごく嬉しいにゃ!」

莉嘉「えっとね、色紙とボールペン持って来たんだ。サインお願い!」

みく「気分がいいから、サインならいくらでも書いてあげるにゃ」

莉嘉「わーい!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:00:56.09 ID:EbJ2FcUy0
P「と、こんな感じの子。テレビかラジオで見たり聞いたりした事があるなら、そのままの人物って思っていいよ」

美嘉「キャラ作ってるってわけじゃないんだ」

P「その辺はご想像にお任せ」

莉嘉「お姉ちゃん、サイン貰っちゃった!」

美嘉「よかったね、莉嘉」

莉嘉「えへへー」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:03:32.01 ID:EbJ2FcUy0
みく「PチャンPチャン、サイン書いちゃったにゃ!」

P「いや、みくはサイン会もやってるし、それなりに書いてるだろ?」

みく「全く違うにゃ。場所を設けられてるのと、サプライズで求められるのは別にゃ」

P「みくを驚かそうって気は莉嘉ちゃんにはないだろうけど、理解は出来るよ」

みく「昔と比べたら大成長にゃ。褒めてにゃ褒めてにゃ」

P「本当にみくはいっぱい頑張ったもんな。よしよし」

みく「ふにゃぁ~」

P「人も揃ったし、少しのんびりしたら現場に向かうかな」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:06:25.02 ID:EbJ2FcUy0
車内


莉嘉「やっぱりみくちゃんって猫が好きなんだね」

みく「もちろんにゃ」

莉嘉「アタシも好き。かわいいよねー。けど、カブトムシも好きなんだ」

みく「カブトムシ……にゃは、いい事を教えるにゃ」

莉嘉「なになに?」

みく「猫チャンはカブトムシを食べちゃうにゃ」

莉嘉「……えっ?」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:09:31.83 ID:EbJ2FcUy0
みく「バリバリって食べちゃうにゃ」

莉嘉「ええぇぇっ!」

みく「もっと言うと、ゴキも食べちゃうにゃ」

莉嘉「ひぇぇええっ!」

みく「その舌で莉嘉ちゃんの顔をペロ  ……」

莉嘉「や、やめてえええ! もうそのお話しないでぇええ!」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:13:00.13 ID:EbJ2FcUy0
みく「けど、それは主に野良猫チャンだけだから、清潔にしてるペットショップや猫カフェの猫チャンは平気にゃ」

莉嘉「よかったぁ……もう、怖がらせないでよー!」

みく「にゃははっ。ただ、綺麗に見えるお家にもゴキは――ううん、これ以上は知らぬが仏にゃ」

莉嘉「……えっ?」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:18:42.24 ID:EbJ2FcUy0
P「すっかり仲良くなっちゃって」

美嘉「そうだね」

P「美嘉ちゃんもみくと交友を深めてもいいんだよ? 莉嘉ちゃんみたいに」

美嘉「今日の目的はそれじゃないから」

P「手厳しいなぁ。気持ちはわかるけどね」

美嘉「アンタにわかるの?」

P「そりゃ、可愛い大切な妹が、変なやつに誑かされるなんて許せる事じゃないから」

美嘉「妹なんていないのに?」

P「実の妹はいないけど、俺にとってみくがそれに近いよ」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:22:25.68 ID:EbJ2FcUy0
みく「Pチャンは嬉しい事言ってくれるにゃ!」

P「あぶねっ!」

みく「でも、みくはPチャンの妹ってだけじゃ不満にゃ」

P「運転中にいきなり後ろから抱きつくな!」

みく「次は予告するにゃ」

P「すんな!」

莉嘉「みくちゃん!」

P「おぉ、莉嘉ちゃんからもこいつにガツンと言ってやってくれ」

莉嘉「次は莉嘉の番だよ。順番は守らないと!」

P「そうじゃないんだ、そうじゃ……」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:26:45.72 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「莉嘉、はしたない真似はやめなって」

莉嘉「その次はお姉ちゃんね」

美嘉「コイツには絶対しないから」

P「そこまで拒否されるのもなんだか……いや、正しい姿だけどね」

みく「……」

莉嘉「みくちゃん、どうしたの? 急に静かになって」

みく「なんでもないにゃ。それより、野良猫の食べ物パート二にゃ」

莉嘉「いやー! 聞きたくないー!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:33:42.10 ID:EbJ2FcUy0
ラジオ局


美嘉「こういう場所のパスカード首にさげてると、なんか変な気分。電車で使うカードとほとんど同じだと思うけど」

莉嘉「ドアの近くにあるセンサーにかざして、ピッ、って鳴らすの、改札口っぽかったね」

美嘉「……にしてもみくちゃん、すごいね」

莉嘉「……うん。ブーブーなるブザーとほとんど会話してる」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:36:43.80 ID:EbJ2FcUy0
P「みくは基本的に自由だからなぁ。真似されたら少し困るけど、主に俺が」

美嘉「仮にアイドルになったら、みくちゃん以上に自由を満喫しないと」

莉嘉「ホント、今日のお姉ちゃんはいじわるな発言が多いよね」

美嘉「そんな事ないって」

莉嘉「過保護も程々にしたいとモンスターになっちゃうよ?」

美嘉「その時は莉嘉を食べちゃうぞ!」

莉嘉「キャー!」

P「すみませんすみません! もう少し静かにさせますので、スタッフの皆さん、睨まないで下さい!」

莉嘉「あっ、みくちゃんがクッションでブザーの音が鳴るスピーカー塞いじゃった」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:39:58.77 ID:EbJ2FcUy0
テレビ局


みく「今日ご紹介する猫チャンはこちらにゃ!」

みく「そう、ヒマラヤンにゃ。愛嬌のあるアホっぽい顔をして身体と尻尾は丸々ふかふかにゃ」

みく「でも、隠された筋肉は意外とびっくりにゃ」

みく「性格は穏和であまり鳴かない上に、人懐っこくてお昼寝も大好きにゃ」

みく「一緒にゴロゴロすると最高の気分になるにゃ。このまま寝てもいいにゃ?」

みく「あっ、ダメなんだ……けど、みくは自分を曲げないよ!」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:43:10.59 ID:EbJ2FcUy0
莉嘉「みくちゃん、渡された台本読まずに喋ってるけど、いつの間に全部覚えたのかな?」

P「覚えてるどころか、読んですらいないな」

莉嘉「えっ? なんで?」

P「猫知識半端じゃないから、諳で大体の猫を説明出来るんだ。試したら、台本より詳しくてスタッフさんが驚いてた」

莉嘉「じゃあ、どうして台本を作って渡してるの?」

P「万が一とか、形式上とかかな。堅苦しく読みあげるより、ああやってみくが実物の猫と戯れている方が人気だけど」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:46:19.88 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「……みくちゃん、本気でウトウトし始めたけど?」

P「あー……スタッフさん、今日も黒衣役の衣装をお借りします」

莉嘉「なにするの?」

P「叩き起こして来る」

美嘉(いつもみくちゃんをはたいて起こしてた黒衣って、コイツだったんだ……)

莉嘉「……プロデューサー業も大変なんだね」

P「泣きたくなるから優しく肩に手を置かないで」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:50:35.45 ID:EbJ2FcUy0
喫茶店


記者「グングンと人気を掌握し、トップアイドルに迫る勢いと囁かれていますが、その辺りはどうお考えですか?」

みく「まだまだ通過点にゃ。みくが止まるのはてっぺんだけにゃ」

莉嘉「みくちゃん、カッコイー! アタシも一度はそんなセリフ言ってみたい!」

みく「それほどでもあるにゃ。にゃははっ」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:53:29.46 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「莉嘉、取材の邪魔をしたらダメだって」

莉嘉「はーい」

記者「こちらのお二人も可愛らしい子たちですね。新人アイドルの方ですか?」

P「いえ、まだそこまでは。今日はみくの仕事の見学と言う形で、同行して貰っているんですよ」

記者「なるほど。では、デビューした暁には、ウチを贔屓して下さいね」

P「ずっとお世話になっていますからね。こっそりお伝えしますよ」

記者「それは心強い」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:56:12.89 ID:EbJ2FcUy0
みく「みくの取材はこれで終わりかにゃ?」

記者「これは失礼。では、最後の質問です。前川みくさんにとって、成長の秘訣とは何でしょう?」

みく「Pチャンのおかげにゃ。Pチャンに拾って貰ったからここまで頑張れたにゃ」
みく「そしてこれからも伸び続けるにゃ、Pチャンと一緒に」

記者「ありがとうございます。いや、それにしてもいつも通り羨ましい絆ですね」
記者「中にはプロデューサーやマネージャーを道具にしか思っていない子もいますのに」

P「みくがそれだけ素直でいい子だって事です」

みく「にゃははっ。褒められた上にナデナデして貰っちゃったにゃ」

美嘉(ふーん……)

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 06:59:35.37 ID:EbJ2FcUy0
車内


P「さて、次が最後だよ」

莉嘉「なにがあるの?」

P「仕事じゃないけどね。ちょっとみくのレッスン風景を見て貰おうと思ってるんだ」

美嘉「あんなにお仕事した後なのに?」

P「まぁ、普段はここで――もごっ」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:02:33.03 ID:EbJ2FcUy0
みく「余裕にゃ。このくらいやらないと成長出来ないんだにゃ」

莉嘉「すごーい」

美嘉「みくちゃん、そんなに頑張ってたんだ」

P「……みく、冗談抜きに危ないから運転中に口を塞がないでくれ」

みく「ごめんなさいにゃ」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:05:12.88 ID:EbJ2FcUy0
レッスン場


P「トレーナーさん、今日もよろしくお願いします」

みく「よろしくお願いしますにゃ」

トレーナー「こちらこそ。そちらのお二人が見学される方ですね」

P「はい」

美嘉「アタシが美嘉だよ」

莉嘉「莉嘉だよー! ってこのやり取り、今日で何回目だろ?」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:09:17.37 ID:EbJ2FcUy0
みく「……Pチャン、始める前にお願いがあるにゃ」

P「ん?」

みく「―――――」


莉嘉「二人、なに話してるのかな?」

美嘉「さぁ?」


P「なんでまた急に」

みく「お願いにゃ! ここはみくに任せてほしいにゃ」

P「……とりあえず、トレーナーさんと相談してみるよ。なんとかみくの希望に添えるように」

みく「ありがとうにゃ!」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:12:29.56 ID:EbJ2FcUy0
P「けど、ギリギリの判断は俺かトレーナーさんがするからな」

みく「絶対大丈夫にゃ。みくを信じるにゃ」

P「ったく、普段から進んでこういう事言ってくれたら嬉しいのに」

みく「猫チャンは気紛れなんだにゃ」

P「そうだったな。トレーナーさん。ちょっとお話が」

トレーナー「なんでしょう?」

P「実はですね――」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:17:53.64 ID:EbJ2FcUy0
みく「美嘉ちゃん、莉嘉ちゃん、二人もレッスンを体験してみないかにゃ?」

莉嘉「いいの? あっ、でもアタシたち私服だから……」

みく「ジャージは借りられるんだにゃ。シャワー室もあるから、汗を掻いても平気にゃ」
みく「メイクだけは、ちょっと我慢して欲しいけどにゃ」

莉嘉「お姉ちゃん、やってみてもいい?」

美嘉「やりたいんでしょ?」

莉嘉「うん!」

美嘉「じゃあ、アタシも付き合うよ。練習風景見ているだけじゃ退屈しそうだから」

莉嘉「流石お姉ちゃん」

みく「決まりにゃ。更衣室に案内するにゃ」

美嘉「うん、よろしく」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:21:59.02 ID:EbJ2FcUy0
――――――――
――――
――


美嘉(キッツい……ダンスって、こんなにしんどかったんだ……)

莉嘉「もう、ダメ……はぁはぁ……」

みく「まだ準備運動が終わってから十数分程度にゃ。ファイトにゃ!」

美嘉(なんでこの運動量で口が利けるんだろ、みくちゃんは……っ!)

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:26:44.58 ID:EbJ2FcUy0
みく「美嘉ちゃんも遅れて来てるにゃ。大丈夫にゃ?」

美嘉(大丈夫じゃないって……)

トレーナー「美嘉ちゃん、少し休みましょう。足が縺れ始めています」

美嘉(大丈夫じゃないけど、このままじゃカッコ悪過ぎるよね、アタシ)

美嘉「もうちょっと平気――わっ」

美嘉(足が絡まってっ!)

トレーナー「危ない!」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:29:37.65 ID:EbJ2FcUy0
P「よっと」

トレーナー「ほっ。プロデューサーさん、助かりました」

P「見ていて危なっかしい姿だったので近付いていたんですが、正解でしたね。美嘉ちゃん、大丈夫?」

美嘉「……ありがとう」

P「お礼なんていいよ。それよりごめん。美嘉ちゃんの肩掴んじゃって」
P「離すから、ゆっくり膝を着くんだよ?」

美嘉「……うん」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:33:04.53 ID:EbJ2FcUy0
P「トレーナーさん。二人を壁際まで運んで貰えませんか? 男の俺が運ぶのは嫌でしょうし」

トレーナー「わかりました」

莉嘉「アタシはPくんがいい」

P「本当に?」

莉嘉「変なとこ触らなかったらね」

P「触らないよ」

莉嘉「そう言われると、悔しいかも」

P「俺にどうしろと?」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:36:26.32 ID:EbJ2FcUy0
みく「みくはこのまま続けてるにゃ」

トレーナー「大丈夫ですか?」

みく「余裕にゃ」

トレーナー「そうですか。では、美嘉ちゃん、腕を私の肩に回します」

美嘉「お願い、します……」
美嘉(情けないなぁ。みくちゃんはまだ息切れすらしてないのに……)

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:41:39.37 ID:EbJ2FcUy0
三時間後


トレーナー「では、本日のレッスンは以上です。お疲れさまでした」

みく「はぁ、はぁ……お疲れさまでした、にゃ」

美嘉「はぁはぁ……」

美嘉(休み休み参加したけど、もう喋る力さえ残ってないよ。莉嘉は壁際でぐったりしてるし)

美嘉(なのにみくちゃんはずっと続けてた)

美嘉(休みなんて、水分補給の十数秒くらいしか取らなかったのに……)

美嘉(……なんか、悔しい)

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:45:02.33 ID:EbJ2FcUy0
P「お疲れ様、みく。はい、スポーツドリンクとタオル」

みく「ありがとにゃ、Pチャン」

P「美嘉ちゃんもお疲れ様。タオル、首にかけるね。ペットボトルは持てる?」

美嘉「無理、そう……」

P「じゃあ座って休もう。近くに置くから、少しでも力が戻ったら水分補給だね」

美嘉「……うん」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:48:17.08 ID:EbJ2FcUy0
P「一人で座れる? 無理そうならトレーナーさん呼ぶよ? 今は莉嘉ちゃんの様子を見てるけど」

美嘉「ちょっと、ヤバいから、アンタで、いい……」

P「じゃあ、ちょっとごめん」

美嘉「うん……」

P「よいしょ。大丈夫?」

美嘉「もう良いよ。ありがと」

P「どういたしまして」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:56:42.01 ID:EbJ2FcUy0
みく「Pチャン、莉嘉ちゃんは寝ちゃったにゃ」

P「そのままってわけにはいかないな」

トレーナー「どうしましょう? ソファーで申し訳ありませんが、使いますか?」

P「いえ、車に運びましょう。いつ起きるかわかりませんし、何度も抱きあげて移動させると莉嘉ちゃんの負担になりますから」

トレーナー「着替えはどうしましょう?」

P「車の窓を全て閉めてから、体力が戻った美嘉ちゃんにして貰う形で」
P「俺は論外として、初対面の人だと同じ女性でも莉嘉ちゃんには抵抗があるでしょうし」

トレーナー「そうですね。では、とりあえず車まで私が運びます」

P「俺も付き添います。と言うわけで、悪いけどみく、美嘉ちゃんの方頼むな」

みく「任されたにゃ」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 07:59:07.30 ID:EbJ2FcUy0
P「美嘉ちゃん。俺たちは莉嘉ちゃんと一緒に車の方にいるよ。絶対に俺と二人っきりにはならないから、今だけは信じて欲しい」

美嘉「……莉嘉をお願い」

P「あぁ。では、トレーナーさん、行きましょう」

トレーナー「はい」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:03:33.02 ID:EbJ2FcUy0
みく「Pチャンたちは行っちゃったけど、大丈夫にゃ?」

美嘉「大丈夫。大分呼吸は落ち着いて来たから」
美嘉(まだ体は言う事聞かないけど。みくちゃんの半分も動いてないのに……)

みく「でも、みくにとっては好都合な状況にゃ」

美嘉「なにが?」

みく「ちょっと美嘉ちゃんと二人でお話がしたかったんだにゃ」

美嘉「アタシと?」

みく「そうにゃ」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:37:45.94 ID:EbJ2FcUy0
みく「……莉嘉ちゃんは素直で、本当にアイドルになりたいって思ってたにゃ。だからみくは応援するにゃ」
みく「けど、美嘉ちゃんは違ったにゃ。アイドルに本気でなりたいのかさえ朧気で、挙句にPチャンを悲しませてたにゃ」

美嘉「もしかして、電話の時の事?」

みく「今日一日もそうにゃ。少しも信じないなんて……そんなのないにゃ」

美嘉「よく見てるね」

みく「気付かない方がおかしいにゃ。もちろん、Pチャンは正常にゃ。その上で普通に接してただけにゃ」

美嘉「なるほどね。けどみくちゃん、ちょっと回りくどい言い方に聞こえるよ?」

みく「……Pチャンの邪魔をするつもりなら、アイドルを目指さないで欲しいにゃ。なったとしても、Pチャンのいないところでやるにゃ」

美嘉「電話で声が聞こえた時から思ってたけど、随分慕ってるんだね、アイツの事」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:39:54.67 ID:EbJ2FcUy0
みく「アイツって呼ぶなッ!」

美嘉「……」

みく「みくがこうしてアイドルを続けられてるのは、全部プロデューサーのおかげなんだ。二度とそう呼ばないで」

美嘉「……なにがあったの?」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:42:53.64 ID:EbJ2FcUy0
みく「つまらない話。アイドルになりたての時は別の事務所で、別の人が担当だった事が始まり」

美嘉「最初から今の人じゃなかったんだ」

みく「ろくにレッスンさえ受けさせて貰えなかった。毎日毎日新人のアイドルとライブバトル」
みく「仕事なんて一切しない。なんにも面白くないから、いつも手を抜いて負けてた」

美嘉「それで、みくちゃんはその担当の人に叱られてたの?」

みく「なにもしなかったよ、あの人は。ただ淡々と相手を連れて来るだけ。会話をした記憶もない」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:45:38.41 ID:EbJ2FcUy0
美嘉(想像するしか出来ないけど、そこまで無関心に徹されると辛いだろうなぁ)

みく「何度も辞めようかと思った。惰性で続けてただけだから。そんな時に会ったんだ」

美嘉「今のプロデューサーに、ね」

みく「誘われた後、初めてまともなレッスンをさせてくれた。楽しかったなぁ」

みく「簡単なお仕事をさせてくれた。プロデューサーが頑張ったな、って褒めてくれたんだ」

みく「今のプロデューサーの元で初めてライブバトルをした。……負けちゃったけど」

美嘉「その時は真剣にしたの?」

みく「プロデューサーに恥を掻かせたくなかったから。悔しくて、情けなくて。でも、すぐには泣かなかったよ」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:51:00.15 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「我慢したの?」

みく「プロデューサーがね、泣いてたの。嗚咽を漏らしながら、子供みたいに。ごめんな、って」
みく「わけがわからなかったよ。全部みくのせいなのに。俺がしっかりしてれば、って。気付いたらみくも泣いちゃったけど」

美嘉「感受性が強いというか、涙脆いって言うか」

みく「そう思えるかもね。けど、みくはその姿がプロデューサーさんの全てなんだって思った」
みく「この人のためにトップアイドルになろうって。誰にも負けないほど強くなろうって」

美嘉「……」

みく「レッスンもまともに出来ない人が、みくのプロデューサーの価値を勝手に決めないで」
みく「みくのプロデューサーを勝手に馬鹿にしないで。みくはそれが許せない」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:54:26.60 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「……ごめん」

みく「……ただ――」

美嘉「?」

みく「ただ、一緒に上を目指す気があるなら、みくは美嘉ちゃんの力になるにゃ」

美嘉「途中から変だった口調が、元に戻ってるよ」

みく「なんの事にゃ? みくはずっとかわいい猫チャンなのにゃ」

美嘉「食えない人だね、みくちゃんは」

みく「猫チャン食べる人なんて許せないにゃ! プンプン!」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 08:59:29.89 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「どこまで本気なんだか。……けど、もうプロデューサーを疑ったりしないよ。それと本気でアイドルやってみる」

みく「……なら、すっごく嬉しいにゃ。本当に、ね」

美嘉「悔しかったからね。年下の子が出来る事も出来ないのは」

みく「それは経験の差にゃ。美嘉ちゃんならすぐに上達するにゃ」

美嘉「だといいけどね」

みく「美嘉ちゃんと莉嘉ちゃんは、Pチャンが選んだ子にゃ。絶対にゃ」

美嘉「さっきの話を聞いた後だと、ずっしり来る言葉だね」

みく「……」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 09:02:10.49 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「どうしたの?」

みく「……白状するね。正直、最初にプロデューサーが見つけた二人が羨ましくて、ちょっと妬んじゃった」

美嘉「……仕方ないよ。女の子だもんね」

みく「すーはー……これで惑星ミクミンのみくにゃん星人は消滅にゃ。もう姿を見せないにゃ」

美嘉「ちょっと残念。さっきのみくちゃん、カッコよかったよ」

みく「Pチャンに可愛いって言って貰えたら、それでいいんだにゃ」

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 09:05:42.98 ID:EbJ2FcUy0
美嘉「それもそっか。……そうそう、大切な話を聞かせてくれたお礼に、アタシからも一つ告白するよ」

みく「なにかにゃ?」

美嘉「レッスン中、倒れそうだったところをプロデューサーに受け止めて貰ったよね、アタシ」

みく「みくはずっと心配で冷や冷やしてたにゃ」

美嘉「それはいいよ。でね、抱きしめられちゃった時に不覚ながらドキッとしちゃった」

みく「 、 乱にゃ! 抱きしめられただけで感じちゃう変 さんにゃ!」

美嘉「へ、変 じゃない!  乱でもない! 男の人にそんな事された経験がなかっただけ!」

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 09:11:47.80 ID:EbJ2FcUy0
みく「えっ? その見た目で?」

美嘉「口調が普通になるほど驚かないでよ!」

みく「だって、にゃ?」

美嘉「こ、こっち見るなー!」

みく「にゃはは、耳まで真っ赤にゃ」

美嘉「フシャーっ!」

みく「にゃー♪ にゃー♪ にゃー♪」

美嘉「……もう、どうにでもして」

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 10:20:37.42 ID:EbJ2FcUy0
みく「いじけないで欲しいにゃ。それより、体はどうにゃ?」

美嘉「……少し動くくらいならもう大丈夫」

みく「じゃあ、ぱぱっとシャワー浴びるにゃ。これ以上Pチャンたちを待たせたら悪いにゃ」

美嘉「そうだね」

みく「シャワー室まで、レッツゴーにゃ!」

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 10:25:49.92 ID:EbJ2FcUy0
数日後


P「電話? あぁ、美嘉ちゃんからか。もしもし」

美嘉『もしもし、プロデューサー?』

P「俺だけど、体調とかは大丈夫?」

美嘉『大分楽になったよ。レッスンの次の日は学校休むくらい筋肉痛が酷かったけどね』

P「それもそうだよ。美嘉ちゃんたちがやったレッスン、一番キツイやつだから」

美嘉『そんなのみくちゃんはいつもやってるんだ。改めて感心するよ』

P「いや? いつもはもっと楽で、基本を押さえてる程度。しかも、仕事の後は普通やらない」

美嘉『……はい?』

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 10:29:58.21 ID:EbJ2FcUy0
P「始まる前、みくが俺にお願いして来てたよね?」

美嘉『してたね』

P「その時に変更したんだ。本当は教える人も別だし、内容もスタミナお化けのアイドルですら泣きを入れるレベル」

美嘉『でも、みくちゃんは最後までやったよね?』

P「相当のやせ我慢だったなぁ。俺はともかく、トレーナーさんでさえ気付かないくらい」
P(もっとも、なんのためにしたかは、大方見当がついたけど)

美嘉『当の本人はどうしてるの?』

P「泣きながら仕事してる」

美嘉『だからテレビで見た時、顔が引きつってたんだ』

168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 10:38:08.15 ID:EbJ2FcUy0
P「そうそう。それより、なにか用だったんだよね?」

美嘉『あーうん。一応所信表明的な奴。演説するわけじゃないけど』

P「なにを?」

美嘉『えー、城ヶ崎美嘉は、本気でアイドルの頂点を目指す事を誓います。どうせやるならオンリー1よりナンバー1だもんね』

P「……しかと受け取ったよ」

美嘉『改めて、妹共々これからよろしくね、プロデューサー』

P「こちらこそよろしく、美嘉ちゃん」

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/17(日) 10:44:01.88 ID:EbJ2FcUy0
美嘉『あっ、もうちゃん付けしなくていいよ。莉嘉も、子供扱いされてるみたいで嫌って言ってたし』

P「了解。次はご両親にご挨拶するから、都合がいい日を教えて欲しい。そっちに合わせるから」

美嘉『わかった。それじゃあ、またね、プロデューサー』

P「体には気を付けるんだよ、美嘉。莉嘉にもよろしく」

美嘉『うん』



P「さーて、これから美嘉と莉嘉のご両親の挨拶を考えて、レッスン諸々も予定を立てて」

P「体を張って美嘉を説得してくれたみくも労わらないと」

P「賑やかになって、これから忙しくなるなぁ」


終わり