前回 大臣「あなたは私たちの期待に足りうる人材ですか」勇者「……あっ」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 11:29:32.73 ID:M+sBJ7Rj0
大臣「あなたは私たちの期待に足りうる人材ですか」勇者「……あっ」の続きです


―東の王国―

王様「いやー、しっかし俺たちの国は平和だねー。政治が楽ちん楽ちん」

大臣「王様!王様!」タッタッタ

王様「なんだよ大臣、人がせっかくまったり玉座に座ってるっつうのにそんなに慌てて」

大臣「勇者からの手紙が来たんですよ!」

王様「え!? マジで!?」

大臣「はい! 現在勇者は魔法使い、僧侶、戦士の四人のPTで『商人の街』へ入ったとのことです」

王様「……無事に旅はできているんだな」ホッ

大臣「それまでの経過がまとめてあるので読み上げます」

引用元: 王様「他の国王ども張り切り過ぎだろ……引くわ」 



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 11:33:25.61 ID:M+sBJ7Rj0
『東の勇者です』。

俺たちはまず、魔法使いと僧侶の三人で『東の王国』を出てから『観光と貿易の街』へ向かいました。

なんやかんやあったんですが、そこで戦士を仲間にし続いて森を抜けたところにある『霧の村』へ行きました。

そこでもなんやかんやあったんですが、そこで『北の勇者』に出会いました。

無事に魔王討伐できるかわかりませんけど、『北の勇者』はとても強くてもしかしたら倒してくれるかもしれません。

だから、安心して王国を守っていてください。

それと、遅かれ早かれいつかは知ることになると思うので、ここで報告します。

『北の王国』からの暗殺者に命を狙われました。

俺は大丈夫ですけど、仲間たちがやけに強いんで。そこらへんの外交とかは王様頑張ってください。

東の王国の勇者から、以上です。

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 11:40:34.01 ID:M+sBJ7Rj0
大臣「……とのことです。勇者一行は順調なようですな、面接の時はどうなることやと思いましたが」

王様「……」

大臣「王様?」

王様「北の連中めんどくせええええええええええええええ!!!」

大臣「そっち!?」

王様「まー、なんかやってくんだろうなとは思ったけど、だから俺はそういうのが嫌いなんだっつうの!」

大臣「……いかがなさいますか?」

王様「決まってんでしょ。俺は『北の勇者』は狙わねえ、やるのは北の刺客どもだけだ。目には耳栓をってね」

大臣「……招集させるんですね、彼らを」

王様「……ああ。舐められっぱなしは性に合わねえ。こりゃあ俺の国の勇者にゃ関係ねえ俺たちの仕事だ」ニヤ

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 11:50:11.43 ID:M+sBJ7Rj0
―巨大都市『商人の街』―

ガヤガヤガヤ

戦士「……」

僧侶「うわー、人がさくさん!」

魔法使い「道の真ん中で店開いてる商人もいるわね。歩くのが大変」

勇者「……うー(うっわうっわみんな俺の方見てるんじゃね?ジロジロ見てるんじゃね?)」

魔法使い「……大丈夫?勇者」

勇者「人がいっぱいで……吐きそう」オエッ

魔法使い「ちょっとちょっと、こんな人の多い所で吐くのはやめてよね!?」

僧侶「は、早く宿を見つけましょう!」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:00:08.35 ID:M+sBJ7Rj0
―宿―

勇者「えっと、あっと、あのその……四人、二部屋でとりあえず一泊」ドキドキ

店主「はい、かしこまりました。こちらが鍵でございます」

勇者「あっ、へへぇ、ありがとうございまふ」

戦士「……」

勇者「魔法使いー、俺一人でできたよー!」

魔法使い「はーいよくできました! 荷物置いたらさっそく街へ繰り出すわよ!」

勇者「ふぇぇー……」

魔法使い「ふぇぇー……じゃない! 人に慣れるのは修羅の道なの!」

勇者「ふ、ふ、ふぇぇー……」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:10:10.30 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「戦士と僧侶はどうする?」

戦士「俺は宿で休んでら。今外に出たらなんかの拍子にスッちまいそうで」

魔法使い「はあ……相変わらずねー」

僧侶「私も少し休憩しています。勇者さんほどではないですけど、人ごみ歩くの疲れたので」

勇者「ふぇぇ……」

魔法使い「わかったわ、出かけるときはメッセージでも置いておいて」

僧侶「わかりました!」

魔法使い「さあ行くわよ勇者」グイグイ

勇者「ふぇぇー……」ズルズル

戦士「……あいつ、あれで本当に勇者なのかよ」

僧侶「……戦ってる時とか料理作ってる時とかはカッコイイんですけどね」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:20:53.21 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街―

勇者「……ま、まま。魔法使い、これからどこ行くんだ?(今の人こっち見てなかった?なんかチラッと見てたよね?)」

魔法使い「ふっふっふ。魔王の城を目指す道中でここを訪れることは地図を見てわかっていたからね」

勇者「……?(うっわ絶対こっち見てた!さっきの人すれちがった瞬間こっち見てた!)」

魔法使い「銀行よ!」

勇者「ぎ、ぎぎぎ銀行?」

魔法使い「『貿易の街』でかっぱらったお城のへそくりをこの都市に送っておいたの。デキル女でしょ私」

勇者「……かっぱらったって自覚はあるんだな」

魔法使い「……旅の商人たちの話し聞いて、多少罪悪感は感じちゃったからね……」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:30:15.50 ID:M+sBJ7Rj0
―宿―

僧侶「……あの壁にかかってるのは、この国の国旗なんですかね」

戦士「みたいだなー。袋を持った手なのかあれは?」

店主「あの袋は道具袋さ、道具袋は商人たちの象徴だからな」

戦士「ふーん」

店主「そしてあの国旗にはもう一つ、『商人たちによる盗賊たちへの勝利』という意味も込められている」

戦士「……勝利?」ピクッ

僧侶「どういうことですかー?」

店主「ある商人がね、十年ほど前に『盗賊の王』を倒したんだよ。殺したんだ」

戦士「……」

僧侶「商人さんなのに凄いですねー!」

店主「この国の英雄だよ。実はな、今その商人がこの国に滞在しているんだ」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:40:02.21 ID:M+sBJ7Rj0
店主「それで今、世界各国から大商人を夢見る商人たちがその商人を一目見ようとこの国に集まっているんだ」

僧侶「それでこんなに人がいっぱいいたんですかー」

戦士「……」

店主「君たちは良いタイミングで来たよ。世界中の掘り出し物に巡り合えるチャンスだからね」

僧侶「良い物があったら買いたいなー! 魔法使いさんに相談してみよっと!」

店主「この国の中心に建っているお城には行ったかい?」

僧侶「ここにはさっき来たばかりなのでまだ行ってないんですよ」

店主「なら行ってみると良い。城のてっぺんに巨大な袋が括り付けてあるんだ」

僧侶「へー、面白そうですね! なんなんですかそれは?」

店主「商人たちの勝利の象徴。商人の英雄が奪い取った、『盗賊王の盗人袋』さ」

僧侶「すっごーい! 私とっても興味あります! 戦士さん一緒に行ってみましょう!」

戦士「……ああ、そうしようぜ。俺もとっても興味あるからよ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 12:50:04.54 ID:M+sBJ7Rj0
―銀行―

銀行員「た、確かにこの額預かっております……」

ワイワイガヤガヤ、オイナンダアイツラ、ミタメスゲービンボウソウナノニ

勇者「おっおっおっ、おいおいおい魔法使い! 何もそんなに目立つように聞かなくても良かったんじゃないか!?」

魔法使い「別に良いじゃなーい? 私正直、商人たちってあんまり好きじゃないのよ。稼いだ金の多さで優劣つけるあたり」

ワイワイガヤガヤ、アイツラショウニンジャナイダロ、ナンデアンナニカネモッテンダ、ワイワイガヤガヤ

勇者「目立ってるって目立ってるって……」

魔法使い「ふふふふふ、外にまで観衆が集まってきてるわね? とっても良いわ!気分が!」

???「そこの君たち、少しいいかな?」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:00:33.83 ID:M+sBJ7Rj0
―城の近く―

僧侶「うう……ここまで来るの大変でした。戦士さん人ごみの中歩くの速すぎですよぉ」

戦士「俺はスラねえように我慢するのが大変だったよ」

僧侶「もー」

戦士「……お」

僧侶「あー! 見えました! あれですね店主さんが言ってた『盗賊王の盗人袋』って!」

戦士「……ああ、間違いねえな」

僧侶「すっごい、国旗と並んではためいてる! でもあれ大きすぎて使えなさそうですね」

戦士(……間違いねえ、あれは親父の物だ)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:10:10.81 ID:M+sBJ7Rj0
ワイワイガヤガヤ、エ……アノヒトッテモシカシテ、マサカ? ワイワイガヤガヤ

魔法使い「あのー、どちらさんですか?」

商人「いやあ、ただのしがない商人だよ」

勇者「……ふ、ふぇっ(ふざけんじゃねえよ、なんかさらにざわついてきてるじゃねえか)」

ワイワイガヤガヤ、ヤッパリソウダヨナ、アアゼッタイソウダ

魔法使い「しがない商人が私たちに何の用で?」

商人「ははは、俺は商人だよ? 用と言ったら商売に決まってるじゃないか」

魔法使い「押し売りも立派な商売、ですか?」

ワイワイガヤガヤ、ナンダアノオンナナマイキダナ、アノオカタニタイシテ

商人「ここではギャラリーがうるさいな……。少し人の少ない所に行こうか」

魔法使い「あら? もしかしてナンパだったの?」ニヤ

商人「ははは! そうしたい所だけど、隣に彼氏がいるのに声を掛けるほど馬鹿じゃないよ」ニヤ

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:20:17.33 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街の路地裏―

勇者(……ああ、やっと人気のないところへ来れた)ドンッ

少女「きゃっ!」コテン

勇者「あっ! ああ、その、うっわ、その」

少女「すみませんすみません、俺の不注意でぶつかってしまいました!」ペコペコ

勇者「こ、っこちらこそぶつかってシュミマセン(あれなんかデジャヴ)」

魔法使い「女の子にビビりすぎだっつの(あれなんかデジャビュ)」

少女「そ、それじゃっ!」テコテコテコ

魔法使い「……行っちゃった」

商人「この国で人気のない所を探すのは至難の業だね……やっと辿りつけたよ」ハハハ

魔法使い(……っていうか女の子が俺って可愛いなおい)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:30:02.07 ID:M+sBJ7Rj0
―中心街の外れ―

頭髪の薄い商人「おいおい、ついに俺の所もやられちまったぜ」

太った商人「え、お宅の所もですか!?」

戦士「おっ、なんかの事件か?」

僧侶「嬉しそうにしないでくださいよもう……。どうしたんですかー?」

戦士「首突っ込むのかよ……」

頭髪の薄い商人「あんたらは……この国の人間じゃないのか?」

僧侶「はい、ついさっき来たんです」

頭髪の薄い商人「なら、最近この国一帯で起こってる怪事件は知らないのか」

僧侶「怪事件……ですか?」

太った商人「……ええ、その名も『笑う怪盗事件』」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:40:43.14 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「……で、あんたの商売ってのはなんなの?」

商人「そんな怖い顔しないでくれよ」

魔法使い「商人は嫌いなのよ」

商人「ははは、まいったな。出会う前から嫌われていたのか、女の子にはモテる自信があったのに」

魔法使い「さっさと用件言ってくんない? こっちは早く宿で休みたいの」

商人「わかったわかった、せっかちな子は好きなんだけどね……」ゴソゴソ

魔法使い「……? これは、お面?」

勇者「……ッ!?!?!?!?!?」

商人「……ああ。遠い南の小さな島の部族からもらった『飛躍の仮面』さ」

勇者(超かっこいいいいいいいいいいいいい!!!!!!)

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 13:50:21.47 ID:M+sBJ7Rj0
僧侶「『笑う怪盗事件』?」

太った商人「そうなんですよ」

戦士「……」

頭髪の薄い商人「夜中にな、どこからともなく笑い声が聞こえるんだ」

太った商人「そうすると、翌日にはその笑い声が響いた一帯の商人の店からお金が消えてしまうんですよ」

僧侶「……それはなんか怖いですねー」

太った商人「それだけならただの泥棒ですが……お金だけではなく、そこの商人の道具袋も消えてしまうんです」

僧侶「……道具袋ですか? 道具とかではなくて?」

頭髪の薄い商人「そう、そこが怪事件と言われる由縁なんだが……道具袋だけが金と共に消えるんだ」

太った商人「何が目的なんですかね……怪盗は」

戦士(……あの糞ガキィ)

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:00:34.16 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「『飛躍の仮面』?」

商人「……そう。一回切りだがこの仮面をつけると攻撃力、防御力、素早さが一時的にアップするのさ」

魔法使い「だから『飛躍の仮面』なのね」

商人「見た所、君たち二人は旅人のようだね。それも、何か重大な役目を背負った」ニヤ

魔法使い「……あら、わかる?(……こいつ)」

商人「ははは、その役目が何かまでは知らないさ、聞く気もない。……でもこのアイテムは買った方が良いと思うよ?」

魔法使い「ナメないで欲しいわね。それが本当に能力アップのアイテムだという保証もないしそもそも偽物かもしれないじゃない」

商人「あれま、これは痛いところを突くな。能力アップは一回切りだ、本物ということを証明しては価値がなくなってしまう」

魔法使い「なら仕方無いわねぇ。残念でした、この話しは」

勇者「買おう!!!!!!」

魔法使い「は?」

勇者「これ欲しい!!!!!」キラキラ

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:10:15.14 ID:M+sBJ7Rj0
―宿―

僧侶「まだ勇者さんと魔法使いさんは帰ってきてないんですね」

戦士「二人楽しくデートでもしてんだろ」

僧侶「へ? ええええええええええ!? なんですかそれえええええ!?」

戦士「うおっ! そんな驚くことねえじゃねえか……」ビクッ

僧侶「だだだだってそんなの知りませんでしたもん! ……でも確かに最近ちょっと二人の距離感……っええええええ!?」

戦士「だからそんな驚くなって! 冗談だよ冗談!」

僧侶「あ、なーんだ冗談ですか。ビックリさせないで下さいよー」

戦士「へっへっへ……なんだ僧侶ちゃん、勇者に気でもあんのか?」ニヤニヤ

僧侶「いえ、ありませんよ?」

戦士「……へ?」

僧侶「勇者さんはただの幼馴染なので」ケロッ

戦士「そ、そうか(……すげえな、不死身ゆえの線引き、か)」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:20:54.67 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「ちょーっと待ちなさい勇者」

勇者「それいくらですか!?」キラキラ

商人「100万Gだ」ニコッ

魔法使い「お前も待てやァ!!なんだその値段!!」

勇者「買える買える全然買える!」

魔法使い「だから待てや勇者ァ!!!」

勇者「だって俺たち今超お金持ちじゃん!余裕で買えるじゃん!」キラキラ

魔法使い「そういう問題じゃねえだろ!!!」

勇者「どういう問題なんだ!?」

魔法使い「信用性のない品物にんな値段出せるかってこったよ!!!」

勇者「信用? 別に効果とかはどうでもいい! 俺はこのデザインに100万出しても良いと思ったんだ!!」

魔法使い「勇者お前目ぇ覚ませよ!!!」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:30:38.57 ID:M+sBJ7Rj0
僧侶「……それにしても不思議な事件ですね」

戦士「……そうだな(恐らく、この事件の犯人は『あいつ』だろう)」

僧侶「夜中に響く笑い声、翌日になると消えるお金と道具袋」

戦士「……不思議だな(だが、事件そのものの犯人は問題じゃねえ……裏で操っているやつが問題だ)」

僧侶「お金はまあわかりますけど、怪盗さんは道具袋を盗んで何に使うんでしょうね? あ、お金を詰めるとか!?」

戦士「……何に使うんだろうな(都市の外の不穏な静けさ、あれは何者かが周囲の空間ごと『息を潜めていた』。盗賊の技だ)」

僧侶「ちょっと戦士さん、今私物凄い名推理したと思うんですけどー。聞いてましたー?」

戦士「……ああ、名推理だな(だが、これは親父と俺しか使えない『お家芸』だ)」

僧侶「せーんーしーさーん、きーいーてーまーしーたーかー」ポカポカ

戦士「……聞いてた(それにこの事件、俺が盗賊時代にやってたののまんまじゃねえか)」ポカポカ

戦士(間違いねえ……あのガキだ)ポカポカ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:40:01.15 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「……いいか、おいコラ。これで偽物だったら地獄の果てまで追っかけて殺すからな」

商人「はっはっは、俺も昔はいろんな女の子にストーキングされたもんだよ。困っちゃうな」

魔法使い「そりゃおめえ、偽物ってことで良いのかよ。あ?」

商人「君ぐらい可愛い子ならむしろストーキングされても良いんだけど、残念だよ」

魔法使い「……っち」

勇者(超かっけええええええええ!)キラキラ

商人「……それに、100万Gなんて、そこの彼氏が言うようになんてことないじゃないか。見てたよ、銀行で」

魔法使い「人の預金気にしてんじゃねえよ(目立たなきゃ良かったなちくしょう)」

商人「ふふっ、じゃあ俺はこれで失礼するよ。なにかと忙しいんでね。他のお仲間にもよろしく、特に男の子の方に」

魔法使い「……は?(なんだ、こいつ)」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 14:50:10.53 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街―

勇者「うわー嬉しいなー、やったやった」キラキラ

ヒソヒソ、ナニアレ、ダサ、ヒデエ

勇者「うふふあっはは」キラキラ

魔法使い(……恥、ず、か、し、い!)

勇者「やった、ありがとう魔法使いこれ買ってくれて!」

魔法使い「……勘違いしないでよ勇者。あれは銀行に入ったお金を四人で山分けした内の、あなたのお金で買ったんだからね?」

勇者「……え?」キラ……

魔法使い「はい算数のお時間です、勇者はお小遣の何割使っちゃったでしょうか?」

勇者「……ッ!(一日で二割も使ってしまった!!!!!)」

魔法使い「……あ」チラッ

――南の島のお面(『飛躍の仮面(偽)』) 100G

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:00:23.34 ID:M+sBJ7Rj0
…夜…―宿―

僧侶「……は?」

勇者「……はぁ」ゲッソリ

戦士「はあああああああ!? 100万Gぼったくられたああああ!?」

魔法使い「今度会ったらぜってえ燃やしてやる、楽には死なせねえ、じっくり燃やしてやる」イライラ

戦士「どんなやつだったんだよ?」

魔法使い「なんかひょろっちい長髪の女みてえな野郎だったよ」

戦士「他に特徴とかは?」

魔法使い「覚えてない。……ああ、だけどやたら周りのやつらが騒いでたな。有名人なのか?」

戦士「……有名人、か(まさか、例の親父を殺したっつう商人か?)」

僧侶「……ちなみに買った品物ってどれなんですか?」

勇者「……これ。カッコイイでしょ?」

戦士(うわだっせえ)

僧侶(……ああ、なるほど。やっぱりださいです)

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:10:26.14 ID:M+sBJ7Rj0
…深夜…―僧侶・魔法使いの部屋―

魔法使い「……」

……
――ねえねえ見て『アレ』、魔女の子よ。

――……魔女って、まだ小さい自分の娘に無理矢理『悪魔』を召喚させたっていう?

――そうそう、それでできたのが『アレ』。魔女の子は悪魔、って怖いわねー。

――クマの人形なんか抱きしめちゃって、悪魔のくせに。

――『アレ』がこっち見たわよ。

――うわ、『アレ』に呪われるわ。

『アレ』、『アレ』、『アレ』、『アレ』。

どうしてみんなわたしのなまえをよんでくれないの?

どうしてみんなわたしのことを『あれ』ってよぶの?

おかーさん、どうして?

――……近寄らないで。

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:20:17.66 ID:M+sBJ7Rj0
魔法使い「……はあ」チラッ

僧侶「……」スヤスヤ

魔法使い「……くそ」ギュウゥゥ

魔法使い「……嫌なこと、思い出しちゃったな」

僧侶「……」スヤスヤ

魔法使い「お母さん」

魔法使い「……嫌い」ギュッ

僧侶「……」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:30:15.21 ID:M+sBJ7Rj0
―勇者・戦士の部屋―

勇者「やった、やった! カッコイイ!カッコイイ!」キャッキャ

勇者「……」

勇者「100万G……」ズーーーーン

勇者「……でも」チラッ

勇者「レプリカとは違うこの質感! 部族の匂い!」キャッキャッキャ

勇者「……」

勇者「うん、多分、これはレプリカじゃないよね。うんだって安く売ってたやつとほんのちょっと違うもん。多分」

勇者「……」

勇者「戦士のやつ、こんな夜中にどこ行ったんだ?」

勇者「……それと、魔法使いには黙ってたけど」

勇者「……また財布失くしちゃった」ズズーーーーーン

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:40:06.88 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街・屋根の上―

ヒュウウウウウウゥ

戦士「今夜も例の笑い声は聞こえてくるのかね」タッタッタ

戦士「しっかし広いな。俺でも一晩じゃこの国全部回りきれねえぞ」タッタッタ

戦士「……」タッタッタ

戦士「……親父。あいつ、商人なんかに殺されちまったのかよ」タッタッタ

戦士「……」

戦士「……ざまあねえな、糞親父」タッタッタ

ワッハッハ、ギャーハッハッハ、イヒヒヒヒ、ゲラゲラゲラゲラ

戦士「お、っと? 聞こえてきたぜぇ……」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 15:50:05.90 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街・銀行前―

戦士「……ちっ」

戦士「ここらへんで聞こえたはずなんだけどな」

戦士「くそ、『痕跡』を探そうにもこう暗いとわからねえな」

戦士「昔なら真っ暗闇の中でもアリの巣探せてたっつうのに……」

戦士「あの馬鹿野郎がこんな職につかせっから勘が鈍っちまったよ」

戦士「露天商の馬鹿野郎」

戦士「明日、明るくなってからにでも探ってみるか」

戦士「嫌な予感が大正解だとしたら……」

戦士「城の周りも調べてみた方が良さそうだな」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:00:22.26 ID:M+sBJ7Rj0
…翌日…―銀行―

ザワザワ

魔法使い「っはあああああああああ!? お金が盗まれたですってええええええ!?」

銀行員「申し訳ございません申し訳ございません申し訳ございません!」

魔法使い「謝ってすむなら銀行なんざいらねえんだよ!!!てめえそれでもプロか!!!あァ!!!」

僧侶「ま、ま、魔法使いさん落ち着いて」

魔法使い「私は落ち着いてらぁ!!!おいコラてめえ一人で責任取れんのか!!!上のやつ出せ上のやつ!!!」

戦士「……僧侶ちゃん僧侶ちゃん」チョイチョイ

僧侶「あわわわわ。ってあれ、戦士さんいつの間にいらしてたんですか?」

戦士「ちょっとな、例の『怪事件』についてあと少しで謎が解けそうなんだ。その捜査に僧侶ちゃんも協力して欲しくてよ」

僧侶「えっ!?本当ですか!?私も捜査したいです! ……あ、でも魔法使いさん」

戦士「ほっとけほっとけ」

魔法使い「うっがあああああああああああああああ!!!!」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:10:26.32 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街・大通り―

ギャータスケテー、ヒハヤメテー、グワアアアアア! ナンカミミハエタゾー!

僧侶「で、で、捜査って私は何やれば良いんですか!?」ドキドキ

戦士「言っとくが遊びじゃねえからな、本物の捜査だ」

僧侶「い、イエッサー!」ビシッ

戦士「よしその意気だ!」

僧侶「私が行う任務はなんでございましょうか!?」

戦士「僧侶ちゃんには中心街を歩き回って、ある痕跡とある場所を探してほしいんだ」

僧侶「……ある痕跡と、ある場所でありますか?」

戦士「まずはあの巨大な道具袋がはためいてる城の周辺から、徐々に広がるように探してほしい。多分そっちのが見つかる確立高いから」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:20:22.49 ID:M+sBJ7Rj0
―中心街・城周辺―

ワイワイガヤガヤ

僧侶「それにしても戦士さん、無茶なこと言ってくれちゃいますよ」

ワイワイガヤガヤ

僧侶「この、人がどこにもかしこにもギッシリいる中心街の中で『空家』を探せなんて」

ワイワイガヤガヤ

僧侶「……それと」キョロキョロ

僧侶「曲がり角や建物の角に『ロープの痕跡』とかいうものがあると言ってましたけど」

僧侶「ずっと歩き回ってるのに全然見つからないじゃないですか!日も傾き始めてますし!っていうか広すぎますよこの国!」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:30:09.42 ID:M+sBJ7Rj0
僧侶「ふぐぅ……私が捜査するのは無理があったんだ」シクシク

僧侶「足遅いから探す範囲も限られちゃうし、今まで見てきた場所だってもしかしたら見落としてるかも……」シクシク

僧侶「うわーん、戦士さんが悪いんですよー! 私なんかに頼むからー」ヒエーン

僧侶「……あ、れ? あの曲がり角のところ?」スタスタスタ

僧侶(……あ、近くで見たら思った通りだ。ここの建物の角だけ他と違って泥が付着してる)

僧侶「……何か強い力でここの角に抑えつけられたような、線状に付着した泥?」

――戦士『……多分、痕跡の方は一か所見つけられさえすれば、あとはその痕跡の周囲に次々と見つかってくるはずだ』

僧侶「戦士さん……ホントなのかなぁ。この周囲? 近くってことですかね……あ!」

僧侶「また曲がり角のところに線状の泥発見! あ! よく見たらあっちにも!」

――戦士『その痕跡を、ずっと辿って言ったら恐らく……』

僧侶「……わぁ、私、今まで人がいっぱいのところにいたはずなのに」

――戦士『この国じゃビックリするほど珍しい、人気のない『空家』に辿りつくはずだ』

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:40:22.29 ID:M+sBJ7Rj0
――「がっはっは! てめえじゃ俺の財宝は見つけられねえよ、糞ガキぃ」

――「うるせえくそおやじ! ぜってーおれはみつけてやる!」

――「いーや、見つけられねえったら見つけられねえな!どうせお前じゃ一生見つけらんねえよ!」

――「ばかにすんじゃねえよ! とうぞくのくせに『ぎぞく』とかいわれやがって!」

――「おっ! あんなところに俺の隠した財宝が!」

――「えっ!? うそ、どこ!?」キョロキョロ

――「嘘だよバアアアアカ!!!」ガッハッハ

――「てっめーこのくそおやじ! ばか!しね!だいっきらい!」

――「……別に俺だって、『義賊』なんて言われるつもりはねーよ」

――「うるせー!」

――「……ただ『質の悪い金』を盗んで、『質の良い金』にしてるだけだ」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 16:50:10.69 ID:M+sBJ7Rj0
―商人街・大通り―

戦士「……やっぱこっちの方は見つからねえな」キョロキョロ

戦士「本命の方を任せたのはちと僧侶ちゃんには荷が重かったか……」

戦士「……いや、ここは僧侶ちゃんを信じよう。きっと見つけてくれるはずだ」

戦士「……」

戦士(……糞親父)

戦士「んだよ、んで商人なんかに殺されちまったんだよ。聞いてねえぞそんなの」

戦士(……っくそ。感傷に浸ってんじゃねえよ俺、どうでもいいだろうが親父のことなんざ)

戦士「……違うな。親父じゃねえ、俺が今考えなきゃいけねえのはあいつの隠した財宝だ」

戦士「……やっとだ。やっと少し前に進んだ。俺はぜってえ見つけ出してやる!」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:00:19.02 ID:M+sBJ7Rj0
―中心街・空家―

僧侶「……すごい。ここだけ世界が違うみたいにひっそりしてる」

僧侶「それに……この山積みにされた大量のロープ」

僧侶「これが建物の角とかに泥を残していたのかな……」

僧侶「でもいったい、何に使われていたんでしょうか」ウーム

僧侶「……しかも、このロープ。微かに魔力を感じます」

僧侶「それにしても……」

僧侶「私すごい! 名探偵!」キャッキャッキャ

僧侶「とりあえず宿に戻って、戦士さんに報告しなくては!」タッタッタ

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:10:04.48 ID:M+sBJ7Rj0
ワイワイガヤガヤ、オーホンモノダゾ!ワイワイガヤガヤ、マサカオメニカカレルトハ!

戦士「……ん? あの騒ぎは。有名人でも来たってのか?」

「盗賊王の永遠のライバルだったんだってな」

「え、でも見た目凄く若くないか?」

「いや、あれでもいい歳らしいぞ」

「すっごーい全然見えない!」

戦士「ちょっとごめんよー」ヒョイヒョイ

戦士(……あいつがこの騒ぎの中心か)ヒョコッ

戦士(ひょろっちい長髪の女みてえな野郎。魔法使いの言ってたやつと丸被りだな)

戦士(……それにこの周りの盛り上がり)

戦士(あいつ、例のぼったくり商人なんじゃねえか?)

商人「……悪いがみんな、俺は忙しいからこれで失礼するよ」スタスタスタ

戦士(……ちょっくらつけてみるか。スレたらスッちまお)

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:20:07.99 ID:M+sBJ7Rj0
―宿―

僧侶「……戦士さん帰ってきてるかなー」ガチャ

魔法使い「おお、おかえり僧侶」

僧侶「ま、魔法使いさん(今は怒ってないのかな……)」

魔法使い「大丈夫よ、今は怒ってないから」

僧侶「ああ、あふー、良かった」ホッ

魔法使い「ただの盗みだと思ったけど、この件、国中でおこってるみたいね」

僧侶「魔法使いさんも聞いたんですね」

魔法使い「聞いた聞いた。規模から言っても一人じゃ無理な犯行よね」

僧侶「……そうですね(ふっふーん、それを今、戦士さんと私で解決しようとしてるんですよっ!)」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:30:01.01 ID:M+sBJ7Rj0
ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

戦士「っかしーな、あいつこっちの方に行ったはずだろ」

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

戦士「俺がつけてんだぞ、見失うことなんてぜってえねえはずなのに」

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

戦士「完全に気配も殺したつもりだ、向こうが気付くなんてありえねえって」

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

「目元が彼によく似ている。君が『盗賊王』の息子だね」

戦士「んなっ!?」

「彼の財宝たちが、君に見つけられるその時を待ちわびているよ。また会おう、必ず」

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ

戦士「……どこにもいねえ」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:40:00.32 ID:M+sBJ7Rj0
戦士「……」ガチャ

魔法使い「おかえりー戦士。どこほっつき歩いてたのよ」

戦士「別にどこだって良いだろうが。それよりお前こそ、銀行の件はどうしたんだよ」

魔法使い「あーそれね。事件が事件だし、銀行怒鳴るんじゃなくて犯人にキレることにした。私って大人でしょ?」フフン

戦士「……へいへい、大人ですねー」

僧侶「……戦士さん、戦士さん」ボソッ

戦士「……どうだった僧侶ちゃん?」ボソッ

僧侶「見つけましたっ。怪しい空家」ボソッ

戦士「でかした、後で場所を教えてくれ」ボソッ

僧侶「イエッサー!」

魔法使い「わぁ! 急に大声出さないでよ僧侶!」ビクゥッ

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 17:50:13.56 ID:M+sBJ7Rj0
勇者「……あ、みんなここにいたんだな」

戦士「おお、勇者。なんか久しぶりだな」

僧侶「……勇者さんって、今日一日何してたんですか?」

勇者「えっ、何って。何って、え。部屋でずっとあの仮面眺めてた(その質問つらいよ僧侶)」

魔法使い「うっっっわー……。うっわぁ……。引きこもってたってことじゃん」

僧侶「……勇者さん」グスン

勇者「え、ちょ、どうして泣いてるの僧侶!? ごめん! なんかごめん! 泣かないでお願いだから!」

戦士「一日眺めてるってマジかよおい」

勇者「だって凄くカッコイイんだもん! なんか知らないけど他人とは思えなくて!」

魔法使い「なんであんなのにシンパシー感じちゃってるのよ……」

勇者「あ、でもあれ、一応アイテムだから戦士に預かってて欲しいな」

戦士「え? また俺?」

魔法使い「そういやあんたアイテム管理係だったわね……」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 18:00:26.63 ID:M+sBJ7Rj0
…夜…―戦士の部屋―

戦士「……ん? 懐に何か入ってるな」スッ

戦士「……? なんだこのナイフ。俺こんな物持ってたっけか」

戦士「……っ! まさか」

戦士「あの時、あの商人が俺の懐に忍ばせたってのか!?」

戦士「くっそ。……あいつ。あの商人の野郎、何者なんだよ!?」

戦士「この俺が今の今まで気付かねえとは」

戦士「うぜえ、うっぜえ。スラれるならまだ良い……いやよくねえけど!」

戦士「……俺に全く気取られることなく、物を渡してくるなんて」

戦士「ふざけんじゃねえぞ。今度会ったらぜってえぶん殴ってやる」

戦士「……持ち手の底に、文字が彫ってある」チラッ

戦士「なんだよこれ、親父の……名前?」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 18:10:05.11 ID:M+sBJ7Rj0
…深夜…―宿―

勇者「……あ、僧侶、魔法使い」

魔法使い「んお、勇者まだ寝てなかったのか」

勇者「うん、戦士がいないのが心配でさ」

魔法使い「え? 部屋にはいなかったの?」

勇者「気付いたらいなくなってたんだよ、こんな夜中にどこ行ったんだろう」

魔法使い「ふーん、まあ、でもアイツがふらふらしてるのはいつものことじゃん。気にしなくて良いんじゃない?」

勇者「……それもそうか。……僧侶?」

僧侶「……はい」ブスー

勇者「……な、なんでふくれてんの?」

僧侶「なんでもありませんっ(私も犯人見たかったのに、『お前は来るな』ってひどいですよ!)」ブスー

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/19(火) 18:20:21.32 ID:M+sBJ7Rj0
―中心街・屋根の上―

ワハハハハ、ギャハハハハ、ケラケラケラ、アハハハハハ

戦士「おーおー笑ってる笑ってる」スタッ

戦士「僧侶ちゃんの教えてくれた場所もこの笑い声のする辺り……」

戦士「どうやらビンゴだったみてえだな。大感謝だよ、僧侶ちゃん。あとで素敵な帽子でもプレゼントすっか」

戦士「……だが、僧侶ちゃんには悪ぃがこれは俺の問題だ」

戦士「巻き込むわけにはいかねえ」

戦士「……ったく、世話のかかる糞ガキだ」

戦士「……兄貴の俺が懲らしめてやらねえとな」

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 00:49:58.06 ID:Wt4iA86G0
―中心街・空家―

ワハハハハハハ、ゲラゲラゲラ、グハハハハハ、キャハハハハハ

???「ふっふっふっふ、完璧だ! これで俺の計画も成功するぞ!」

???「なにが『商人の街』だ、何が盗賊から勝利しただ!」

???「俺たちは負けた覚えなんてないんだよっ!」

???「お父ちゃんの仇がこの国に来てて、全世界の商人たちも集まってくるこのタイミング!」

???「『貿易の街』に商人たちが行けなくなってもっと商人だらけになったのは予想外だったけど、それは嬉しい誤算!」

???「今日だけなぜかアホみたいに大金を盗めたのも嬉しい誤算! ……あと、少しの臨時収入」

???「上手くいってくれるとうれしいな……」

???「世界中の商人をまとめて潰す計画!」

「よーお、ようやく見つけたぜぇ」

???「そうそう、ようやく見つけたんだ……盗賊たちの希望を。ってえ?」

戦士「やっぱりお前だったのかよ、盗賊」

盗賊「えっ? 嘘、その声、ってまさか! お兄ちゃん!?」

191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:00:06.67 ID:Wt4iA86G0
戦士「おーおー、こりゃあ元気のいい『わらいぶくろ』どもだ。そりゃ魔法使いの大事な金もごっそり取られるわな」

ギャハハハハ、イーッヒッヒッヒ、ヒーヒヒヒ、ゲラゲラゲラ

盗賊「ど、えっ? どうしてお兄ちゃんがここに?」

戦士「いろいろあんだよ、お兄ちゃんにもよ」

盗賊「いまさら……いまさら俺の前に出てきても遅いよ!バカ!大っきらい!」

戦士「仕方ねえだろうが。ま、嫌いって言うわりには尊敬するお兄ちゃんの編み出した盗みの手口パクッてるみてえじゃねえか」

盗賊「うぐっ、こ、これは、これが俺の計画には必要だったからだ!バカ!」

戦士「『わらいぶくろ』を一体ずつロープに括り付け街に放つ。『質の悪い金』を収集する習性のある奴らは街の金を片っ端から吸収していく」

戦士「……そして、笑い声が聞こえなくなってきたあとでロープを手繰り寄せ、『おどるほうせき』を回収する」

戦士「だが詰めが甘ぇよ。手繰り寄せた時につくロープの痕跡は消しとけばーか」

盗賊「……うぅ、くっそぉぉぉ」プルプル

戦士「お兄ちゃんがこの街にたまたまいたなんて、相変わらずお前は運が悪いな」

戦士「……素直に負けを認めるんだ、真犯人!(一回やってみたかった!)」

194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:10:17.77 ID:Wt4iA86G0
盗賊「ふっふっふ」

戦士「あ? 何がおかしい!?」

盗賊「残念だったね、お兄ちゃん。もう俺の計画は止められないところまできてるんだよ!」

戦士「……計画、ねえ」

盗賊「さすがのお兄ちゃんでもそこまで予想することはできなかったみたいだな!」

戦士(ばーか、お前が商人を目の敵にしてんの知ってんだから、これからすることぐれえお見通しだわ)

盗賊「もう遅いんだよ!何もかも!」

盗賊「商人どもも嫌い!お兄ちゃんも大っ嫌い!お父ちゃんもお兄ちゃんも俺を置いて盗賊団からいなくなって!」

戦士「だーかーらー、いろいろあったんだって。話すと長くなるんだよ。お前馬鹿だから長い話し聞けねえだろ」

盗賊「この国中の全ての空家に『おどるほうせき』をロープに括り付けて待機させてる!」

戦士「今ですら話し聞いてねえじゃねえか!」

盗賊「ロープは時限式で切断される!解き放たれた『おどるほうせき』はより大きな額になろうと『ある所』を目指す!」

198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:19:59.37 ID:Wt4iA86G0
―宿―

魔法使い「ッ!」ガタッ

勇者「弱い魔力を感じるな。でも……なんだこの数の多さは」

魔法使い「凄まじい数の微弱な魔力が、どんどん一か所に集まって行ってるわ!」

勇者「……お、おお、さっきまで弱かったのに、尋常じゃないレベルの魔力の密度になってってるぞ」

魔法使い「行くわよ! そう……りょ?」

僧侶「…ぐー…ぐー」

魔法使い「……なんかわかんないけど、ふて寝してる」

勇者「なんか、今日すごい疲れてたみたいだし、僧侶は宿に残して二人で行くか」

魔法使い「そうしましょう」ヤレヤレ

201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:30:22.32 ID:Wt4iA86G0
戦士「……(相変わらず馬鹿っぽいが、こいつもなんだかんだで成長してんだな)」

盗賊「わっはっはっはっは! もう遅えんだよ!」

戦士(『あれ』を使うって発想は、妹ながらあっぱれだ)

盗賊「もうじきわかるよお兄ちゃん! 俺の計画が」

戦士「俺がわからねえとでも思ったのかよ、ばーか」

盗賊「わっはっは……っは、ふ、え?」

戦士「親父の形見、使うんだろ? そんでもって、この国を文字通り『潰す』んだ」

盗賊「え、ええええええええええ!? なんでわかったのおおおおお!」

戦士「お兄ちゃんナメんな、糞妹が……お?」

ガーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!

盗賊「よっしゃきたっ! もう間に合わないよ!」

戦士「……別に、止めるつもりなんざなかったよ(魔力にあてられて『わらいぶくろ』になったか)」

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:40:12.34 ID:Wt4iA86G0
―商人街―

勇者「おあっ!? なんだあれ、遠くの方で袋が飛び跳ねてる!」タッタッタ

魔法使い「え!? なになにどこどこ!?」タッタッタ

勇者「屋根づたいにいっぱい袋が!数えきれないぐらい飛び跳ねてる!」タッタッタ

魔法使い「見えないわよ! 勇者目良すぎなのよ!」タッタッタ

勇者「あの袋たち、お城の方に集まってるぞ!」タッタッタ

魔法使い「見えないってだから!」タッタッタ

勇者「俺たちもお城へ向かおう!」タッタッタ

魔法使い「一応わかったって言っとくわよ!」タッタッタ

勇者「あ、あれ見てよ魔法使い! あの袋ズッコケたよ!」アハハハハ

魔法使い(……眼鏡、買おっかな)タッタッタ

206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 01:50:17.42 ID:Wt4iA86G0
―中心街・空家の屋根―

盗賊「ふっふっふ、どうだお兄ちゃん。国中から俺の努力の結晶たちがどんどん集結していってるぜ」

戦士「……ああ、『わらいぶくろ』になった親父の道具袋に吸収されていってるな」

盗賊「まんぱんに道具を詰め込んだら大人100人でも持てないほどデカイ道具袋だ。ホント、大量の材料作りには苦労したぜ」

戦士「飽き性の俺にはできねえな、とてもじゃねえが。よくやったよ盗賊」

盗賊「……うえっ!? え、えへへへへへへ、そんなことねえよぉー」

戦士「……」

ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ……。ピタッ

戦士「あのうっぜえ笑い声が止まったな」

盗賊「くるぜくるぜくるぜえええ!」

210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:00:08.24 ID:Wt4iA86G0
―中心街―

勇者「もう見える!? 魔法使い!」タッタッタ

魔法使い「見える見える! あいつら全部『おどるほうせき』じゃない」タッタッタ

勇者「それ知ってる! 勉強したわ。そういえばあんな感じだったな」タッタッタ

魔法使い「何がどうなってこうなってるかは知ったこっちゃないけど、大体理解したわ」タッタッタ

勇者「何を!?」タッタッタ

魔法使い「あの袋の中の何割かが私たちのお金ってことよ!!!」タッタッタ

勇者「えっと、それってどういうこと!?」タッタッタ

魔法使い「盗まれちまったんだよ!正確にはあそこで飛び跳ねてる奴になったんだけどなぁ!」タッタッタ

勇者「盗まれた!? えっと、今は銀行にどれくらい残ってるの!?」タッタッタ

魔法使い「……すっからかんなんだよ!」タッタッタ

勇者「……(仮面買っといて良かったああああ!!!)タッタッタ」

213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:10:22.36 ID:Wt4iA86G0
戦士「……(さーてここからどうやってぶっ倒すかだな)」

勇者「あれは……戦士!」タッタッタ

戦士「おお! お前ら来たのか!」

魔法使い「あんた、こんな時間に、どこ、ほっつき歩いてたのよ!」ゼエゼエゼエ

戦士「すまん、心配させちまって。私的なことだったから巻き込みたくなかったんだ」

魔法使い「こんなことになったら嫌でも巻き込まれるしかないでしょうが!」ゼエゼエハア

戦士「いや、ははは。スマンスマン」

勇者「……あれ、隣の子。……ああ!昨日ぶつかった女の子だ!」

盗賊「あっ! あの時のちょろいカモ!」

魔法使い「……カモ?」

勇者「あ、いや、なんでもないですよ!」ドキッ

盗賊「なんだ、お前ら知り合いだったのかよ?」

215: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:20:19.38 ID:Wt4iA86G0
魔法使い「私たちとしては、あんたとそこの女の子がなぜ一緒にいるのかが知りたいんだけど」ハアハアハア

戦士「……」

盗賊「わはははは! 俺の兄貴だ!」

勇者「戦士、妹いたんだ!?」

魔法使い「兄弟がいるのは別に驚くほどのことじゃないけど、なぜこの状況で、こんな所で一緒にいるのかってのが気になるわね」

戦士「そこらへんは探んねえでくれよ。だから巻き込みたくなかったんだ」

魔法使い「……はいはい、わかったわよ(家族の問題ってこと、ね)」

勇者「うわうわうわっ、魔法使い! 城のてっぺんのでっかい袋が大変なことになってるぞ!」

魔法使い「……これは、もしかしてそこの妹さんがやったことなのでしょうか?」イライライラ

戦士「……はい、ソウデゴザイマス」

盗賊「わはははは! そうだ俺がやったんだ!」

勇者「ちっちゃい袋たちが……全部デカイ袋に吸収された」ポカーン

ピョンッ、ピョンッ、クルクルクル、ジャーン!!!ズシン、ドシン、ズズン、ドシン

魔法使い「……冗談じゃねえぞ。なんなんだあの規格外のデカさの……『おどるほうせき』はあああああ!!!」

219: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:30:53.92 ID:Wt4iA86G0
ピョンッ、ピョンッ、ピョピョンピョン、クルクルクルル、ジャーン!!!ズシン、ドシン、ズズン、ドシン

勇者「……お城の屋根が重さに耐えられずに折れちゃった」ポカーン

魔法使い「このまま街へ移動されたらとんでもねえ被害が! 私らで足止めするぞ!」タッタッタ

戦士「俺も行くぜ!」タッタッタ

勇者「……うし、みんな、頑張ってあいつを止めるぞ!!!」タッタッタ

盗賊「わっはっは! 無駄だ無駄だ! もうこの国はあいつに潰されるんだよ!」

盗賊「お父ちゃんの仇のこの国を、盗賊たちの敵のこの国を! 盗賊王の形見で踏み潰してやる!」

盗賊「……」

盗賊「……うぅ」ウル

盗賊「……また、三人で、ご飯だべだがっだよぉー」ヒック、グス

222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:40:13.28 ID:Wt4iA86G0
―城門前―

魔法使い「これ以上前にも後ろにも行かせねえぞデカブツ!」

勇者「でか過ぎて上の方が見えない!」

クルルン、ピョンピョン、ピョンクルルン、ジャーン!!!ズシン、ドシン、ズズン、ドシン

魔法使い「でけえクセに軽快に踊りやがって!!!」

戦士「俺は後ろに回り込む! お前らこいつの注意を引きつけといてくれ!」タッタッタ

勇者「こんなデカいのにダメージ与えられるかな……。くっそ、おりゃあっ!」ボキンッ!

勇者「……(えっ、嘘っ、また剣折れちゃった!……また折れちゃった!)」

魔法使い「勇者の剣あの糞村でぼったくられたボロ剣のまんまだったんじゃねえか!くそっ、火炎魔法!」シーーーン

魔法使い「……(えっ、嘘っ、MP空っぽじゃん!……空っぽじゃん!)」

戦士「頼んだぞお前ら!」タッタッタ

勇者・魔法使い「お、おう! 任せとけ!!!」

224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 02:50:16.82 ID:Wt4iA86G0
勇者「やっべえどうしよう魔法使い! 剣折れちゃった!」

魔法使い「こっちもそれどころじゃねえよ! あいつの踊りのせいで魔法が使えねえ!」

王様「な、なんじゃなんじゃこの地響きは!?」

勇者「ッ!? ……あ、王様ですか? あの、その、俺、勇者で今旅してて、少し前にこの国来ました。ウィッス、へへへ」ドキドキ

王様「おお、勇者様ですか!? ようこそ『商人の街』へ!」

魔法使い「おめえらなにのんきにあいさつ交わしてんだ!今それどころじゃねえだろうが!!」

勇者・王様「ごめんなさい!!!」

勇者「こうなったら、痛いの覚悟で殴り倒すしかねえ!」

魔法使い「……」

魔法使い「私が一番無能じゃねえか!!!」

228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:00:10.17 ID:Wt4iA86G0
勇者「おっらぁぁぁぁぁ!」ドガッ!

ピョンッ?ズシイン

勇者「中身パンパンでかってえええええええええええ!」ズキズキ

ピョンッ!

魔法使い「おわわわわ!」

勇者「あぶない魔法使い」バッ!

ドシンッ!

魔法使い「あ、ありがとう。危うく踏みつぶされる所だった」

勇者「戦士が俺たちに注意を引かせるようにって言ったけど、何か策があるのかな!?」

魔法使い「知らん! だがもうその可能性を祈るしかねえよ!」

勇者「魔法使い!」

魔法使い「おう!」

勇者「全力で祈るぞ!!!」

231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:10:18.73 ID:Wt4iA86G0
戦士「くそっ、こうデケえと回り込むのも楽じゃねえなっ!」タッタッタ

戦士「……おっらあ!」ザンッ!

ピョンッ?ケロッ

戦士(傷一つつかねえ。伊達に親父の頑丈な道具袋でできてねえなこいつ)

戦士(……久しぶりに使って改めて思ったが、やっぱ斧よりナイフの方が使いやすいな。大発見だ)

ピョンッ!ピョンッ!ピョンッ!ドシンドシンドシン

戦士「あいつら大丈夫なのかよ!?」タッタッタ

戦士「……いや、今は俺ができることを全力でやろう」タッタッタ

戦士(これが親父の道具袋でできてるなら……)

戦士「……必ず『傷』があるはずだ!そこを突く!」タッタッタ

234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:20:21.27 ID:Wt4iA86G0
――「おい糞ガキこら、また俺の道具袋ナイフで突っついてるんじゃねえだろうな!」ズシンズシン

――「うるせー! うえにのってたらひまなんだよ!」

――「てめえが歩くのだりいって言うから一緒に運んでやってんだろうが!」

――「うるせーくそおやじ! どうぐぶくろにあなあけてやるよ!」ツンツン

――「だーかーらー突っつくんじゃねえって! 振り落とすぞこら!」ブンブン!

――「うわー! やめろやめろやめろ!」

――「がっはっはっはっは! しっかりしがみついてねえと落ちて死ぬぞ!」ブンブン!

――「やめろー! おやじのばか!しねええええ!だいっきらいだああああ!!!」

――「がっはっはっはっは!てめえにゃ俺の道具袋ぜってえ破かせてやんねえ!どうせお前じゃ一生無理だよ!」

236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:30:11.54 ID:Wt4iA86G0
戦士「確か……。でか過ぎて上の方が見えねえなちくしょう!」タッタッタ

戦士「城門の上から探すしかねえ」ピョンッ

戦士「どこだ、どこだどこだ!」キョロキョロ

「ぐっわああああああー! 手いってえええええええええ!!」

戦士「手? 勇者のやつ頑張って注意引いてくれてんだな!」キョロキョロキョロ

戦士「早く見つけねえと!」キョロキョロ

「くっそ魔法使えねえええええええええ!」

戦士「魔法使い!もう少しだけ耐えてくれ!」キョロキョロ

戦士「どこだっ!? どこにあるっ!?」

戦士「……あった! 俺がナイフでずっと突いてた『傷』だ!」

戦士「見てろよ糞親父ィ! てめえの大切な道具袋、てめえのナイフで切り裂いてやらぁ!」スタンッ!

戦士「おっ、らあああああああああああああああ!!!!」ザクッ!

238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:40:09.76 ID:Wt4iA86G0
勇者「ぐっわああああああー! 手いってえええええええええ!!」ジンジン

魔法使い「すぐ折れちまうボロ剣買ったてめえを恨め!!!!」

勇者「魔法使いも戦ってくれよ!」

魔法使い「魔法使えねえんだよ!」

勇者「それでも魔法使いかよ!」

魔法使い「うるせえええ!!! こっの、雷撃魔法!」シーーーン

勇者「なるほど、いくらMPバカの魔法使いでも『おどるほうせき』数百体分の『ふしぎなおどり』には敵わないのか」

魔法使い「くっそ魔法使えねえええええええええ!」

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!

魔法使い「んだこの音は!?」

勇者「布の破ける音だ!」

ピョッ……ン。……ン。シーーーーン

魔法使い「デカブツの動きが止まったぞ!?」

241: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 03:50:12.06 ID:Wt4iA86G0
――「おい、糞親父」

――「んだこら糞ガキ」

――「お前がいつも言ってる、『質の良い金』『質の悪い金』ってどういう意味だよ」

――「あ? うるせえよ、教えなーい」

――「んだとてめえ!」

――「それはてめえで見つけるんだな。じゃなきゃ意味がねえだろ、馬鹿かお前」

――「こっんの糞親父こらあああ!」

――「はー、じゃあ馬鹿なお前にヒントやるよ。俺は『質の悪い金』しか盗まねえ。でもな、俺の道具袋に入れるのは『質の良い金』だけだ」

――「ハア? いっみわっかんね」

――「がっはっはっはっは!どうせお前じゃ一生わからねえよ!」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:00:07.97 ID:Wt4iA86G0
ぶっあああああああああああああああ!!!キラキラキラ

魔法使い「おい、おいおいおい! 嘘だろおいなんだそれ!」

勇者「うわー、綺麗だなー。手めっちゃいてえ」ジンジン

戦士「おう、お前ら無事か!?」タッタッタ

魔法使い「無事もなにも、これどういうことだよ! 戦士お前が何かやったのか!?」

戦士「俺がやったのは、こいつの背中にあった小さい傷からナイフで大穴開けただけだ」シレッ

勇者「すっげー、じゃあ戦士が倒したのか!手いってえ」ジンジン

戦士「おうよ! 『東の勇者』のPTの戦士さんナメんじゃねえっつうんだよ!」

魔法使い「……なんで」

勇者「……?(手いてえ)」ジンジン

魔法使い「なんでこのデカブツ、腹に貯め込んだ金を夜空に向かって吐きだしてんだよおおおおおおおお!!!」

勇者「ははは、綺麗だから良いじゃん良いじゃん手いてえぇ」ジンジン

戦士(……『質の悪い金』を入れられるのが嫌だったんだろうな、コイツは。糞親父の道具袋らしいぜ)

戦士(……コイツは使える)

246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:10:09.82 ID:Wt4iA86G0
―中心街・空家の屋根―

盗賊「お、俺の計画が……」

盗賊「失敗しちまったよー……」ヘナヘナ

盗賊「うう、ひっぐ、頑張ったのに、俺、すげえ頑張ったのにぃ」グスングスン

盗賊「ううぅ、ぐすん、ひっぐ、うえっ」グスングスン

盗賊「これからどうしようぅぅ」グスングスン

盗賊「ぜってえ怒るだろうけど……お兄ちゃんに相談しよぉ」グスングスン

盗賊「……」グスン、ヒッグ

盗賊「……眠いぃ」コテン、ヒッググスン、スースー

247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:20:27.27 ID:Wt4iA86G0
…翌日・朝…―宿―

僧侶「ま、魔法使いさん?」

魔法使い「……なに?」ボー

僧侶「あ、あの、どうしたんですか?」

魔法使い「……どうもしないわよ」ボー

勇者「……僧侶、そっとしてやって」

僧侶「は、はい」

魔法使い「勇者……私たちのお金が」ボー

勇者「……魔法使い、仕方ないだろ。諦めようよ。ありゃもう、世界中に散らばるような勢いだったから」

魔法使い「……お金のバラまきって、最低な行為よね」ボー

勇者「俺たちがやったんじゃないんだから、そう悲観するなよ」

魔法使い「……私たちはどこで生まれ、どこへ行くのだろうか」パクパクパク

僧侶「……」

勇者「……魔法使いが壊れた。俺たちのブレーンが」

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:30:14.95 ID:Wt4iA86G0
―中心街・空家―

戦士「……」

盗賊「……」ビクビク

戦士「……まあ、まだまだお兄ちゃんは越えられないってこったよ」フー

盗賊「……え? 俺のこと怒らないのか、お兄ちゃん」

戦士「……コラ」ゴツン!

盗賊「いってええええ! やっぱ怒るんじゃねえかよ!」ズキズキ

戦士「当たり前だろうが! 俺の仲間危険な目にあわせやがって!」

盗賊「……ごめんなさい」ズキズキ

戦士「ちゃんと、みんなの前で謝るんだぞ」

盗賊「あのカモと、おっかない姉ちゃんがお兄ちゃんの仲間なのか?」

戦士「……ああ、そうだよ。一緒に旅してる、大切な仲間だ」

251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:40:32.74 ID:Wt4iA86G0
盗賊「……俺、これからどうしよう」

戦士「てめえがやりてえようにやりゃあ良いさ、死ぬのも生きるのもてめえの勝手だ」

盗賊「お兄ちゃああん」グスングスン

戦士「俺たちはいつだってそうだったろうがよ」

盗賊「で、でもぉ」ウルウル

戦士「お前は、あの糞親父の娘で俺の妹だ。絶対強いんだよ」

盗賊「うっ、うう」

戦士「実際、お前のあの計画はすげえと思ったよ。お兄ちゃんびっくりしたぞ」

盗賊「ほ、ほっ、本当か!?」

戦士「ああ、だから自信持て。お前は強いんだから、俺を頼らなくても大丈夫だ」

254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 04:50:19.29 ID:Wt4iA86G0
盗賊「わ、わかった! 俺、お兄ちゃんのこと信じるぞ!」

戦士「ばーか! 自分を信じるんだよ!」

盗賊「それもする!」

戦士「よし、良い子だ。さすがは俺の妹だ」

盗賊「えっ、えへへへへ」

戦士「……」

盗賊「お兄ちゃんは、もう行っちゃうのか……?」

戦士「……ああ、この旅はゆっくりできねえんだ」

盗賊「た、大変だな」

戦士「そうかもしんねえけど、俺は楽しいぜ」

盗賊「仲間と一緒は良いな!」

戦士「……そうだな。まあ、これから俺はしばらくあいつらと一緒に旅はできねえんだけどな」

盗賊「そうなのか?」

戦士「……『こいつ』と一緒に、見つけなきゃならねえ。これは俺の戦いだから」

256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 05:00:25.07 ID:Wt4iA86G0
―宿―

盗賊「……ゴメーワクヲおけけシテマコトニごめんなさいでした!」

僧侶「いやあああああ!!!かわいいいいいいいいいい!!!」キラキラ

勇者「お、落ち着け、落ち着けって僧侶!」

魔法使い「……」

勇者「……ま、魔法使い?」ドキドキ

魔法使い「……っはあー。こんな女の子にキレるわけないでしょ? 安心しなさい」

勇者「よ、よかったぁ」ホッ

魔法使い「話しを聞いてみると、それなりにワケありって感じだしね。さすがに怒れない怒れない」

僧侶「……(かわいい)」

戦士「申し訳ない……そんでもって、ありがとう」

258: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 05:10:43.30 ID:Wt4iA86G0
―街の門―

魔法使い「盗賊ちゃんは一人で大丈夫なの? 途中くらいまでは一緒に来ない?」

盗賊「いやっ! 俺はここから一人でも大丈夫だ! 強いからな!」

魔法使い「へー、そうなの」

僧侶「本当に良いんですか?」

盗賊「大丈夫だい!」

勇者「どこか、目指す所とかは決まってるの?」

盗賊「とりあえず、『貿易の街』に行ってみる!」

戦士「あー、なら俺の知り合いがいるから、そいつんとこ訪ねてみると良いぞ。ムカツクけど良い奴だ」

盗賊「ありがとうおにい……兄貴! それじゃあな!」タッタッタッタッタ

260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 05:20:33.52 ID:Wt4iA86G0
僧侶「……行っちゃいましたね、盗賊ちゃん」

勇者「……なんで残念そうなんだよ」

魔法使い「あれで良かったの?」

戦士「あいつは俺が思ってるよりもずっと強い。心配ねえさ」

魔法使い「ま、それならとやかく言わなくていいか」

勇者「次に俺たちが目指す街はどこなんだ? 魔法使い」

魔法使い「えーっとお、魔王城を目指しながらとなると……かなり遠いわね。次はずっと南にある『ギルドの街』よ」

勇者「『ギルドの街』……」

魔法使い「様々な職業の人間たちが同じ職業同士で組合を作り、その中で腕を磨きその職を極めんとする『職人の街』」

勇者「なんか気難しそうな人たち多そうだなー」ドキドキ

僧侶「職人って確かにそんなイメージですよね」

魔法使い「でも、その街まで行けば魔王の城にはぐっと近づくわ」

勇者「『西の勇者』も『北の勇者』も、きっと魔王城へ着実に近づいてるんだろうな。よし、俺たちも先を急ごう!」

264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 05:40:18.66 ID:Wt4iA86G0
戦士「ちょっとすまん」

魔法使い「ん? 街に何か忘れ物でもした?」

戦士「……いや、悪いんだが俺にはここから別行動を取らせてほしいんだ」

勇者「え、っど、どうしてだ?」

魔法使い「……あんたも重要な戦力なのよ? 理由も聞かずにさようならはできないわよ」

僧侶「わ、わわわ私たちのこと嫌いになっちゃったんですか?」

戦士「違う違う、大丈夫だから僧侶ちゃん安心して」

魔法使い「……説明してくれる?」

戦士「……そうだな、俺だけ隠してるってのもズルいしな」

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 05:50:32.20 ID:Wt4iA86G0
勇者「盗賊王の……息子?」

僧侶「驚きました……戦士さんがそんな有名人の息子さんだったなんて!」

戦士「黙ってて悪かった」

魔法使い「んーでもまあ、最初会った時から戦士2盗賊8って感じだったし。驚きは薄いわね」

戦士「お前や僧侶ちゃんが規格を軽く越えてるんだよ……」

勇者「俺普通にめちゃくちゃ驚いてるけどねっ」

魔法使い「で、何? 父親の隠した遺産を探したいから私たちと別れるの?」

戦士「ああ、そうだ」

魔法使い「……私もできれば爽やかに頑張ってねって見送りたいんだけど、役回り上、聞くしかないのよ」

戦士「それは魔王討伐の後でもよくないか、だろ?」

269: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 06:00:12.17 ID:Wt4iA86G0
魔法使い「……その通り」

戦士「……」

勇者(魔法使い、お前ってやつは。申し訳ない、俺が頼りないばっかりに)

僧侶「……戦士さん」

戦士「その質問もごもっともだあな。それに対して魔法使いが納得いく答えは、はっきり言って持ってねえ」

魔法使い「……そう」

戦士「でも、なんか、『今行かなきゃダメだ』って思ったんだ。魔王を倒しに行く前に、行かないとダメだって」

魔法使い「……何それ、盗賊の勘ってやつ?」

戦士「盗賊じゃない、俺を信じてくれ」

魔法使い「……」

戦士「……」

魔法使い「……はあ、しょーがない。せいぜい死なないようにしなさいよ」ハー

戦士「……ありがとう」

272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 06:10:16.27 ID:Wt4iA86G0
勇者「じゃあ、戦士、気をつけてな」

戦士「ああ、お前たちもな」

僧侶「見つかると良いですね! お父さんの宝物!」

戦士「ぜってえに見つけてやるさ! そしたらさっさとお前らの旅に追いついてやるよ!」

魔法使い「もしかしたら、あんたがお宝見つける前に私たちが魔王倒しちゃってるかもねー」ニヤニヤ

戦士「うるせー、どうせすぐに俺がいなくて泣くことになんだよ!」

勇者「それじゃあ、俺たちはこっちへ進むよ」テクテクテク

戦士「ああ、ここで一旦お別れだ、あばよ」スタスタスタ

戦士「……」

戦士「……うし、じゃあ行くぜ『わらいぶくろ』」

ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!

戦士「せいぜい俺を、お前の大好きな『質の良い金』、糞親父の遺産の所まで案内してくれ!」

273: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/20(水) 06:20:10.02 ID:Wt4iA86G0
商人の街の話しお終い
そして俺の書き溜めもお終い
こんな時間まで読んでくれたみんなありがとう

関係無いけど、『ジャバウォッキー』って漫画が面白いよ
セリフ回しがいちいちカッケエんだ