11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:05:11.76 ID:lkaTPDqTO
妹「兄さん、明けましておめでとうございます」

兄「え?ああ、うん……おめでとう」

妹「着物、どうですか?せっかくのお正月ですから、ちょっと着てみたんです」

兄「……あ、ああー……うん、似合うよ、すごく」

妹「はい、ありがとうございますっ」

兄「あー……うーん……」

妹「兄さんったら、何を惚けてるんですか?もう」

兄「いや、なんでもない……です」

妹「~♪」



妹(ふふ……着物姿で兄さんの心を鷲掴み、大成功ですね)

兄(言えない……それは着物じゃなくて浴衣だなんて、とても言えない)

引用元: 妹「えへへ、みてーお兄ちゃん。お正月だから着物着てみたの」 





12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:12:36.39 ID:lkaTPDqTO
妹「お……おもちうにょーん……」

兄「年明け早々何をしてるんだ」

妹「……いつから見てたんですか」

兄「お前が雑煮とにらめっこしてたあたりかな」

妹「………………」

兄「………………」

妹「兄さんが見てたアニメのせいですよ」

兄「まだ何も言っとらん」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:18:44.71 ID:lkaTPDqTO
妹「ところで、このお雑煮なんですけど」

兄「何も頑張って話題を変えなくても」

妹「黙って聞いてください兄さん」

兄「……すいません」

妹「それで、お雑煮なんですけど……兄さんは、お雑煮ってどんな漢字で書くかおわかりですか?」

兄「わからいでか、雑に煮ると書く」

妹「それです」

兄「?」

妹「こんなに彩りも綺麗で美味しいのに、なぜ雑な煮物などと書くのでしょう」

兄「あー……確かに、不思議と言えば不思議だな」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:22:13.51 ID:lkaTPDqTO
兄「で?」

妹「はい?」

兄「それで、なんで雑に煮ると書くんだ?」

妹「………………」

兄「………………」

妹「……兄さん、私は兄さんの妹ですよね」

兄「それはもちろん」

妹「つまり兄さんは、私よりも年上というわけです」

兄「そりゃあ兄だからな」

妹「調べもせずに、年下に質問ばかりではいけません」

兄「いや、でもこの話題は妹から……」

妹「恥を知りなさい」

兄「……はい、ごめんなさい」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:29:34.47 ID:lkaTPDqTO
妹「ところで兄さん、今日の晩御飯は何が良いですか?」

兄「妹が良いです!」

妹「……正月早々から盛らないでください」

兄「初い奴め、可愛いのう可愛いn」

スコーン

妹「さ……三度目はありませんからね、兄さん」

兄「わかった、わかったから落ち着け、落ち着いて両手に持ったおたまを置け」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:34:55.47 ID:lkaTPDqTO
妹「もう一度聞きます、今日の晩御飯は何が良いですか?」

兄「うーん……そうだなぁ」

妹「………………」

兄(……なんでこんなに、期待の眼差しを向けられてるんだろう……)

兄「か、カレー……とか」

妹「カレー、ですか?」

兄「そうそう、良く言うでしょ?おせちも良いけどカレーもね、って」

妹「あの、まだ元旦ですよ?」
兄「まあまあ、朝と昼はおせちなんだから、夜くらいは……」

妹「はぁ……わかりました、カレーですね」

兄「ありがとう妹!愛してる!」

スコーン

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:43:08.75 ID:lkaTPDqTO
妹「あ……」

兄「どうした?」

妹「うーん、ニンジンが足りませんね……」

兄「ああ、雑煮に使ったからなぁ」

妹「ふぅ……仕方ありません、買ってきますよ」

兄「え、あ……え、今?今から?」

妹「?……もちろんです、晩御飯の支度に間に合いませんから」

兄「……いや、それは……」

妹「あの、何か問題が?」

兄「問題というか……」

兄(……さすがに、浴衣のまま出歩いたら奇異の目で見られるだろ……)

妹「?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:51:17.41 ID:lkaTPDqTO
兄「良いよ、俺が行ってくる」
妹「え……?そんな、良いですよ」

兄「お前も、大掃除やら正月の準備やらで疲れてるだろ?」

妹「で……でも、それは兄さんだって……」

兄「気にすんな、で……買ってきたら、カレー作るのも手伝うよ」

妹「え……」

兄「一緒に作ろう。作業は半分、楽しみは二倍ってやつだ」

妹「でも、その……良いんですか?」

兄「それに、兄としては……可愛い妹の艶姿を独り占めできるのなら、お使いの一つや二つ!」

妹「なっ……何言ってるんですか、兄さんのバカっ!」

兄「わははー、それじゃあ行ってきます!」

バタン

妹「はぁ……もう……」

妹「……お兄ちゃんのバカ……///」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 14:57:45.60 ID:lkaTPDqTO
兄「なんとか妹が浴衣姿で外出するという事態は回避できたな……」

ガチャ

兄「ただいまー」

妹「おかえりなさいっ、兄さん!」

兄「お、おう……なんだ、着替えたのか」

妹「ええ、さすがに着物姿で料理するわけにもいきませんから」

兄「あァ~……ソウネー」

妹「……うんうん、ちゃんと買えたみたいですねー」

兄「当たり前だろう」

妹「余計なものまで買ったりしてないみたいですねー」

兄「……当たり前だろう」

妹「兄さん、ポケットからお菓子がはみ出てますよ」

兄「…………いや、これはね」

妹「残念、没シュートです」

兄「ああん」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 15:59:21.14 ID:lkaTPDqTO
妹「まったく、いつになったらきちんとお使いできるようになるんですか?」

兄「小さな子供扱いするなよう」

妹「余計なものまで買ってくるなんて、小さな子供より質が悪いですよ」

兄「……ごめんなさい」

妹「さて……では作りますね、ぱぱっと」

兄「いやいや、違うぜ妹さん」
妹「え?……あ」

兄「お兄さまは既にエプロンを装備していますよ!」

妹「あーもう、わかりました……では一緒に、作りましょう?……兄さん」

兄「おうとも」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 16:13:10.84 ID:lkaTPDqTO
兄「よっ、と、ていっ」

妹「あ……兄さん、包丁でジャガイモの皮を剥けるようになったんですね」

兄「ああ、いつまでもピーラー頼りじゃかっこ悪いもんなぁ」

妹「偉い偉い」

兄「子供扱いしないでくれ」

妹「兄さん、戸棚からルーを出してもらえますか?」

兄「あいよー……さすが妹、慣れた手つきだなぁ」

妹「当然ですよ、何年この家の台所に立ってると思うんですか」

兄「それもそうだなー……これでよし、と」

妹「ちょっと待っててくださいね、これを切り終わったら鍋で……」

兄「しかし妹よ」

妹「はい?」

兄「……お前、本当に良いお嫁さんになるだろうなぁ」

妹「な……いたっ!」

兄「え?」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 16:23:04.96 ID:lkaTPDqTO
兄「……ごめんなさい」

妹「そんな、兄さんが謝ることじゃ……」

兄「いや、しかし……やっぱり……ごめん」

妹「もう、気にしすぎですよ……深い傷でもありませんし、血も止まってます」

兄「しかし兄としてはね、嫁入り前の妹を傷物にしてしまった罪悪感が……」

妹「誤解を招くような発言は禁止ですっ!」

兄「ん……悪かった、後は俺に任せとけ」

妹「でも、私はもう……」

兄「染みるだろうし、傷が悪化しても大変だろ?心配なら横から見てても良い、でも作業はしちゃ駄目だ」

妹「……でも……」

兄「お返事は?」

妹「…………はい」

兄「よろしい」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 16:31:23.73 ID:lkaTPDqTO
兄「で、火の通りにくいものから……と、ふんぬっ!」

妹「ああっ、そんなに力任せに炒めたら駄目ですよ!」

兄「そうか、具が崩れちゃうからな……」

妹「そうです、あとはきちんと下からかき混ぜないと……」

【……しばらくお待ちください……】

妹「はい、あとはゆっくりとアクを取りながら……」

兄「はは、なんか料理教室の生徒になった気分だ」

妹「あ……ふふっ、確かにそうかもしれませんね」

兄「君が教師で生徒が俺で!」

妹「……はいはい、わかりましたから作業に集中してください」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 16:48:39.66 ID:lkaTPDqTO
兄「それで妹先生、傷の具合はどうですか?」

妹「え?ああ……もう全然平気です、痛みも殆どありません」

兄「そっか、それなら良かった」

妹「だから心配し過ぎですよ、兄さんったら……今からでも、お手伝いしましょうか?」

兄「駄ー目、妹はそこで先生をしときなさい」

妹「……過保護」

兄「ああ!よく言われる!」

妹「……シスコン?」

兄「ああ、それもよく言われる!……けど……妹から直接言われると、なんかこう、複雑です」

妹「……わかりました、兄さんに任せます……火加減に注意してくださいね」

兄「アイサー!」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 18:22:04.87 ID:lkaTPDqTO
妹「…………すぅ……」

兄「おーい……妹よ、おーい」
妹「……んぅ……」

兄「おーい、妹……ゴロンボー」

妹「んっ……あれ、兄……さん?」

兄「まったく、気づいたら椅子に座ったまま寝てるんだもんな」

妹「あ、え……はれ?あ、あの、兄さん?」

兄「よっぽど疲れてるのかな……どうする?晩飯の準備、できてるけど」

妹「晩御飯……カレー?準備?終わった?あれ?」

兄「あー、こりゃまだ寝ぼけてるな……ほら立って、一緒にリビング行くぞ」

妹「うん……じゃない、はい……」

兄「………………」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 18:28:41.95 ID:lkaTPDqTO
兄「ささ、どうぞお座りくださいませお姫様」

妹「変な呼び方はやめてください……って」

兄「どうだ、お兄様お手製のディナーでございますぜ!」

妹「……………………」

兄「固まるなよ」

妹「……これ、兄さんが?全部?」

兄「当たり前だろ、他に誰がいるんだ」

妹「……すごい、すごいですよ兄さん」

兄「カレーと付け合わせのサラダ、スープくらいでそこまで感動されるってのもなぁ……」

妹「その……食べても良いですか?」

兄「ん、もちろん」

妹「……では、いただきます」

兄「俺も、いただきまーす」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 18:37:14.01 ID:lkaTPDqTO
 【 食 後 】

兄「片付けは俺に任せて、妹はテレビでも見てなよ」

妹「いえ、でも……と言ったところで、兄さんは譲らないんでしょうね」

兄「わかってるじゃあないか」

妹「……わかりました、お言葉に甘えますね」

兄「うむ、任された!」


バタン


妹「………………」

妹「……本当に、ちょっと指先を切っただけなのに」

妹「……本当に、ちょっと、うとうとしただけなのに」

妹「……私の好きな甘口のカレー、私の好きなポテトサラダ、私の好きなコンソメスープ……」

妹「本当に過保護で、どうしようもないシスコンで……優しくて……」

妹「……ほんとに……ずるいよ、お兄ちゃん……」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 18:45:46.11 ID:lkaTPDqTO
兄「洗い物も終わりー、っと……」

妹「お疲れ様でした、兄さん」
兄「おうよー……あれ、テレビは?見てなかったのか?」

妹「はい、面白くない特番ばかりだったので……」

兄「ああ、まあそれも正月の醍醐味みたいなもんだからな」

妹「ということで兄さん、ゲームでもしましょう」

兄「ん?別に良いけど……お前、テレビゲーム得意じゃないだろ?」

妹「はい、苦手です」

兄「コントローラーのボタン押すだけで指にマメができるもんな」

妹「ですので……これをやりましょう、二人で」

兄「これは……また懐かしいボードゲームを」

妹「先日、大掃除をしていたら出てきまして。退屈なお正月を過ごすにはちょうど良いかな、と」

兄「まあ確かに、これなら二人とも楽しめるしな……よし、いっちょやるか!」

妹「ええ、やりましょう」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 18:51:45.73 ID:lkaTPDqTO
カラカラ……

妹「兄さん、いい加減定職に就いた方が……」

兄「わ、わかってるよわかっていますとも」

カラカラカラ……

妹「あ……はい兄さん、祝い金を払ってください」

兄「ちょっ妹!お前子宝に恵まれすぎ!」

妹「そのマスに止まるんだから仕方ないじゃありませんか!」
兄「そろそろ車に乗り切らないでしょ!ぎゅうぎゅう詰めで可哀想でしょ!」

妹「何と言おうとルールですので、はいありがとうございまーす」

兄「くそう……見てろ、次こそ起死回生で一発逆転!」

カラカラカラカラ……

妹「台風が直撃らしいですね」

兄「………………」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:04:11.68 ID:lkaTPDqTO
妹「……ふふっ……」

兄「んん?」

妹「兄さんも相変わらずですね、すぐに熱くなって……子供みたいに」

兄「いつまでも少年の気持ちを失わない大人でいたいのです」

妹「ほんとにもう……兄さんったら」

兄「そんなに笑うなよぅ」

妹「ふふふっ……でも、本当に……」

兄「んん?」

妹「……私たち、ずっと変わりませんね」

兄「……そうだな」

妹「兄さんが、私よりずっとずっと大きくなっても……」

妹「一人では決してできなかったような家事を、難なくこなせるようになっても……」

妹「……この家に、私と兄さんだけの、二人しかいなくなっても……」

兄「………………」

妹「私たちはずっと、二人きりでボードゲームに熱中してた、あの頃のまま……です」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:15:52.59 ID:lkaTPDqTO
妹「ねえ、兄さん」

兄「うん?」

妹「私たち、これからもずっと……このままで、いられますか?」

兄「…………それ、は……」

妹「今のまま、ずっとこのまま、この生活を続けて……いけますか?」

兄「……………………」

妹「……………………」

兄「……それは……難しいと、思うよ」

妹「……っ……」

兄「それは俺だって、ずっとこのままでいられたら良いって、思う。このままでいたいと、思う」

妹「……はい」

兄「でも近い将来、俺も妹も必ず大人になって……この生活が、変わる日が来る」

妹「今の生活が、変わる日……ですか?」

兄「変えなきゃいけなくなる、って言った方が正しいのかな?俺も、そんなにはっきりとは言えないけど」

妹「………………」
 

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:27:08.71 ID:lkaTPDqTO
妹「どうして……変わらないと、駄目なんでしょうか」

兄「うーん、恥ずかしい言い方かもしれないけど……生きてるからじゃない、かな」

妹「…………?」

兄「生きているから、進まなきゃいけない。進むためには、変わらなきゃいけない時もある。俺はそう思う」

妹「……そう……ですか……」


兄「でも、さ」

妹「……?」

兄「変わらなきゃいけないものがあるとして。いつか、変わる時が来るとして」
兄「それは終わりじゃないよ。変わるかもしれないけど、終わりじゃない」
兄「暮らしが変わって、身分が変わって、世界がどんどん変わっていっても、それは終わりじゃないよ」

妹「………………」

兄「心の根っこの部分さえ変わらなければ、絶対に、終わりにはならない」

妹「……はい」

兄「俺は、妹のことを大切に思ってる」

妹「それは……私だって、その……」

兄「その部分さえ変わらなければさ、きっとどんなに変わっても、俺たちは俺たちじゃないかな」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:36:09.89 ID:lkaTPDqTO
妹「そう……ですね」

兄「それに人間ってさ、表面はどんなに変わっても、内面はそうそう変わるもんじゃないし」

妹「……ふふっ、兄さんが言うと説得力がありますね」

兄「失礼な、これでも色々と成長してるんだぞ?」

妹「そうでしょうか?」

兄「おうとも……ようやく軽口を叩けるようになったか、妹」

妹「まさか兄さんに諭される日が来ようとは、目から鱗です」

兄「くそう、相変わらず可愛いけど生意気な妹だなチクショウ!」

妹「さて、退屈なお正月はまだまだ続きますし……次は何をしましょうか」

兄「え、まだこれゴールしてないぞ?」

妹「例え最後まで続けたとして、兄さんに逆転の余地があるとでも?」

兄「…………さて、次は何をしようか」

妹「そうだ、アルバムを見ませんか?先日の大掃除で……」

兄「ずいぶん大掃除の進行が遅いとは思っていたが、今ようやくその理由がわかったよ」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:44:06.20 ID:lkaTPDqTO
妹「ほら兄さん、これ覚えてますか?」

兄「ああ、妹が小学校に入学した時の……」

妹「この時の私ったら、すっかり大はしゃぎしちゃって……」

兄「これでお兄ちゃんとおんなじだよー、って大喜びだったなぁ」

妹「……どうして本人ですら忘れているようなことを」

兄「いやー、しかしこの頃の妹は可愛いなぁ」

妹「……今は?」

兄「とても可愛いです」

妹「……へー、そうですかー」

兄「顔が赤いぞ妹よ、耳まで真っ赤だ」

妹「知りません聞こえません赤くありませんっ、次のページいきますよ」

兄「はいはい」


ペラッ

バタン!!

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 19:52:59.44 ID:lkaTPDqTO
妹「…………………」

兄「いやー、なんともまあ」

妹「……あ、あぅあ……あ……」

兄「うん、チューしてましたなあ」

妹「い、言わないでくださいっ!」

兄「しかも頬っぺたとかじゃなくて口で。唇と唇で。マウストゥーマウスで」

妹「あーあーあー聞こえません何も聞こえませーんっ」

兄「そんなに照れることもないだろうに」

妹「に、兄さんは恥ずかしくないんですか?」

兄「んん?そりゃ、ファーストキスの相手が最愛の妹だと考えると嬉しさもあり恥ずかしさも……」

妹「……もう何も言わないでください、聞いてるこっちが恥ずかしくなります」

兄「なんだよー、そんなに嫌がることないじゃんかよー」

妹「い、嫌がってなんかいません!ただ恥ずかしいというか、心の準備というかですね……」

兄「……君は今とっさにすごいことを言ったよ、シスコンが心の底から喜ぶようなことをね」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:02:39.25 ID:lkaTPDqTO
兄「落ち着いたか?」

妹「はい、なんとか……ただ、兄さんが終始落ち着き払っていることが解せないのですが」

兄「まあ良いじゃないの、次行こうぜ」

妹「これは……七夕の写真ですね」

兄「年は……妹が小学校を卒業する前、か」

妹「確か兄さん、この時蚊に刺されて大変だったんですよね」

兄「虫除けスプレーのあの匂いが駄目だったんだ。というか、今でも駄目だ」

妹「ふふっ……おかげで兄さん、一晩中かゆいかゆいって……」

兄「あれはまさに地獄だった……痒みで寝れないことがあれほどの苦痛だとは」

妹「それで結局……あれ、どうしたんでしたっけ?」

兄「お前がかゆみ止めを塗ってくれたんだろう」

妹「はい?……あ、そういえば」

兄「それはそれは嬉しそうに……俺の肌に直接、全身を余すところなく」

妹「ストップです兄さん、シャラップ!」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:11:03.91 ID:lkaTPDqTO
兄「いやー……しかし、ついさっき俺が言ったことだけどさ」

妹「はい?」

兄「人間、根っこの部分はそう変わるもんじゃない、って話。この七夕の写真を見たら、やっぱりそうだなーって」

妹「そう……かもしれませんね」

兄「この頃の願い事、覚えてるか?」

妹「覚えてます……けど、言いませんよ?恥ずかしいですから」

兄「わかってるって……まあ、俺も覚えてるんだけどさ」

妹「…………?」

兄「願い事、今も昔も変わってないってことがさ……なんて言うか、やっぱりあの頃のままだ、と思って」

妹「……私、も……」

兄「ん?」

妹「私も……変わってないです。あの頃からずっと、同じ願い事を……」

兄「おー、そうかそうか」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:18:23.69 ID:lkaTPDqTO
妹「やっぱり、本当に心から願うことって……そう簡単には変わりませんよね」

兄「まあ、それだけ真剣に願ってるんだから……いつか叶うだろ、絶対」

妹「……はい、そうですね」

兄「妹の願い事も、いつか叶うと良いな!」

妹「…………そう……ですね」

兄「んー、ちょっとお茶でも淹れてくるわ。妹も飲むだろ?」

妹「……え?あ……はい、お願いします」

兄「あいよー」


バタン


妹「………………」

……ペラッ

「妹が ずっと しあわせでいられますように」

「おにいちゃんの およめさんに なれますように」

妹「……叶うわけ……ないのに、ね」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:27:16.86 ID:lkaTPDqTO
兄「ほい、お茶と菓子……あれ?さっきのアルバムは?」

妹「あとは同じような写真ばかりだったので、次はこっちを見ようかと」

兄「妹が中学に入った頃……ってことは、うちにある最新で最後のアルバムか」

妹「そうなりますね、これ以降は撮影する人がいなくなっちゃいましたから」

兄「おーおー、妹の制服が新品だな……でも、今着てるやつもそんなに古くは見えないが」

妹「今のもわりと新品に近いですよ、サイズが合わなくなりましたから……」

兄「……なるほど、サイズねぇ」

妹「兄さん、目つきがいやらしいですよ」

兄「……ごめんなさい」

妹「よろしい。……それにしても兄さん、この頃はずいぶん恥ずかしそうに写ってますね」

兄「それはまあ、わりと多感なお年頃だからな」

妹「ああ、確かに……そんな感じはありましたね」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:35:46.91 ID:lkaTPDqTO
妹「でも、私は……本当に嬉しかったんですよ」

兄「嬉しいって、何が?」

妹「兄さんは、同級生に笑われても……からかわれても、私を邪険に扱ったり、しなかったから」

兄「ああ、なるほど……」

妹「みんな言ってました。私の年で、実の兄とそんなに仲が良いのは珍しい、と……」

兄「愛情の深さが桁違いだからな、そこらの兄妹とは」

妹「……こうも言ってました。そんなに優しくしてくれるお兄さんも珍しいよ、と……羨ましい、と」

兄「……それこそ、愛深き故に、ですよ」

妹「……兄さんが、同級生にからかわれているたびに……私が、友達から兄さんを褒められるたびに……」

兄「………………」

妹「私は、本当に……嬉しくて、申し訳なくて、誇らしくて……とても、幸せでした」

兄「……うん」



妹「……だから、ありがとう……お兄ちゃん」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:45:40.87 ID:lkaTPDqTO
兄「……礼を言うには早すぎるぞ、妹よ」

妹「……え?」

兄「春には、お前も中学を卒業して……俺の後輩になるじゃないか」

妹「それは……はい、そうです」

兄「楽しみに待ってろよ、バンバン校内を連れ回してやる」

妹「え……」

兄「学食のおすすめメニューに、絶好の昼寝スポット……こっそり屋上に上がれる抜け道、教えてやれることはいっぱいある」

妹「でも、そんなこと……また、兄さんが……」

兄「構わないよ、同級生に何を言われようと。それこそ、既にシスコンの烙印を押されてるしな」

妹「……そんな……でも……」

兄「言ったろ?俺の願いも、あの頃から変わってない、って」

妹「…………」

兄「お前が嬉しそうに笑っててくれれば百人力、クラスメートのヤジなんか蹴散らしてやるよ」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 20:52:16.82 ID:lkaTPDqTO
妹「まったくもう、兄さんは……もう」

兄「妹を溺愛する兄として、やれることはやってあげたいのさ!」

妹「……では私も、入学早々に、ブラコンの烙印を押されることを覚悟しなければいけませんね」

兄「おう、むしろそれで悪い虫がつかなくなるのなら僥倖だぜ」

妹「……なるほど、兄さんに悪い虫がつかない理由はそれですか」

兄「……率直かつ胸をえぐるような意見をありがとう」

妹「でも……楽しみです、春が来ることが」

兄「うんうん、楽しみに待っているが良いぞ」

妹「はい、期待しちゃいますね」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:08:59.58 ID:lkaTPDqTO
妹「……ところで、兄さんって……」

兄「うん?」

妹「お友達とかいらっしゃるんですか?」

兄「ずいぶん率直に聞きにくいことを、ある意味聞いてはいけない質問してくるね君は!」

妹「いえ、ただ……本当に、ふと思ったことなんですけど」

兄「……大丈夫だよ、ちゃんと友人と呼べる奴だっているから」

妹「それなら良いのですが……良かった、兄さんがいじめられていたらどうしようかと」

兄「妹にそこまで心配されるというのも、兄としてどうなんだろう……」

妹「兄が妹を心配するように、妹も兄が心配なものですよ」

兄「そうですか……」

妹「でも……でももし、私のことを気にして交友関係に支障があるようでしたら……」

兄「無い無い、大丈夫だって。みんな俺がそういう人間だって理解してくれてるし」

妹「……はい……」

兄「……なーんでそこまで気にするかな、うちの妹さんは」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:20:16.27 ID:lkaTPDqTO
妹「……では兄さんが、その……えっと、その……こっ、恋人を作らないのは……?」

兄「かいしん の いちげき !! こころ が おれそう だ !!」

妹「ああっ、ごめんなさい兄さん!」

兄「……その答えは簡単だよ妹さん……それはね、君のお兄さんはモテないからさ」

妹「………………」

兄「……いや、そんなじっと見られても」

妹「兄さん」

兄「はい?」

妹「兄さんの容姿は決して悪くはありません。運動も人並みにできますし、気配り上手ですし」

兄「は、はあ……ありがとうございます」

妹「そんな兄さんに、生まれてこの方一度も恋人ができないというのは……やっぱりおかしいですよ」

兄「照れくさいやら嬉しいやらだけど……でも、それは妹から見た場合だろ?」

妹「血の繋がった実の妹がそう言ってるんです、間違いはありません」

兄「あー、えっと……はい、ありがとうございます」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:28:52.90 ID:lkaTPDqTO
妹「……兄さん、正直に答えてください」

兄「はい、正直に答えましょうとも」

妹「……………………本当に、恋人はいないんですか?」

兄「いませんです、はい」

妹「……本当に?」

兄「はい、天照大神に誓って」

妹「……はい、わかりました」

兄「しかしまさか、妹からこんな尋問を受けるとはね」

妹「……私だって、一応は気にしてるんですよ」

兄「何をさ?」

妹「もし私がいることで、恋人が作れないんだとしたら……と」

兄「……妹、それはお前の悪い癖だぞ?」

妹「はい?」

兄「私がいるせいで、とか……私さえいなければ、って考えるのは、お前の悪い癖だ」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:37:07.79 ID:lkaTPDqTO
妹「でも……」

兄「自分が枷になっているとしたら……とか、考えてるだろ」

妹「……う……」

兄「難しいかもしれないけどさ、大事な何かってのは枷にもなるし、推進力にもなると思うんだ」

妹「……それは、どういう意味ですか?」

兄「んー……例えばさ、大事な何かのために、自分はこうしなければいけない、自分はこうでなければならない……」

妹「……………………」

兄「そう思うことで、自分の選択肢を狭めてしまう、いわば枷にもなるよね」

妹「……はい」

兄「でも、大事な何かのために……こういうことをしてあげたい、そのために自分はこうなりたい、こんな自分を目指したい」

兄「……そう思うことは、その人にとって枷なのかな」

妹「……あ……」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:46:44.51 ID:lkaTPDqTO
兄「少なくとも俺は、妹のために何かしてあげたいと思うし……妹がいるから、頑張れてるんだと思う」

妹「…………はい……」

兄「だからさ、妹がそこまで気に病む必要は無いんだ。俺が妹に何かしてあげて、妹はそれを喜んで、俺はそれが嬉しくて」

妹「……ふふっ、風と桶屋みたいですね」

兄「うん、最終的にみんなが幸せなら、それで良いんじゃない?深く考え込まなくてもさ」

妹「兄さんらしい意見ですけど……そうですね、私もそう思います」

兄「おう……それにしても、今夜はやたらと話してる気がするぜ」

妹「二人で遊んで、何かを見て、そして語り合う。良いじゃないですか、たまにはこんな夜も」

兄「そんなもんかなぁ」

妹「そんなものですよ、兄さん」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 21:54:28.05 ID:lkaTPDqTO
兄「あー……しかし、喋り続きで喉が乾くな」

妹「今度は私がお茶のお代わり、持ってきますよ」

兄「頼みます……って妹、そういえば指は」

妹「どこまで過保護なんですか、もう……お茶を淹れるくらい平気ですってば」


バタン


兄「恋人、ねぇ……」

兄「そういや、さっきの七夕のアルバム……もうしまったのかな」

兄「……短冊の裏に、小さく書いてた願い事……は、さすがに写真に残ってはいないよな?」

兄「……妹の旦那さんになりたい、なんて……今あいつに見られたら……」

兄「……さすがに引くよな、うん」

兄「あの頃から変わってない、なんて……本当に、何言ってんだろうな、俺」
 

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 22:13:34.47 ID:lkaTPDqTO
妹「はい兄さん、お茶です」

兄「おう、サンキューな」

妹「いえいえ」

兄「…………そういえば」

妹「はい?」

兄「お前の、俺への呼び方が変わったのって……いつからだっただろうな」

妹「確か……中学校に入って少ししてから、だったはずです」

兄「あれ、そんなもんだっけ?なんかすっかり定着したから、もっと昔からのような気がしてたよ」

妹「そういう兄さんこそ、昔は私のことを呼び捨てにはしていなかったですよ」

兄「……一回やってみようか、昔の呼び方。こう、昔を懐かしむ感じでさ」

妹「え?……まあ、別に良いですけど……」

兄「では…………妹ちゃん」

妹「……お……お兄ちゃん」

兄「………………」

妹「………………」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 22:17:40.77 ID:lkaTPDqTO
兄「だ、駄目だなこれは……恥ずかしい、すごく恥ずかしい」

妹「よ、よくありませんね、これは……ソファーで軽くバタ足したくなる気分です」

兄「……………………」

妹「……………………」

兄「ま、まあ……とりあえず、昔を振り返ったということで」

妹「何を綺麗にまとめようとしてるんですか」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 22:26:40.55 ID:lkaTPDqTO
兄「ところで妹よ、高校に入学したら部活はどうするんだ?」

妹「部活、ですか」

兄「強制ではないとはいえ、部活やサークルの種類はかなり豊富だからな……せっかくなら、入ってみても良いんじゃないか?」

妹「なるほど、それもそうですね……」

兄「何かないのか?やりたいものとか、やってみたいものとか」

妹「そうですね、私としては……運動部の方が良いです。体をかすこと、わりと好きですから」

兄「ふむふむ……」

妹「それに、その……体型をアレしたりとか、体重をアレしたり、とか」

兄「……その見事なスタイルは、そんな努力の結晶というわけか」

妹「女性の体をジロジロ見ないでください、特に腰回り」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 22:33:46.46 ID:lkaTPDqTO
兄「ということで、我が校のパンフだ」

妹「用意周到ですね……あ、この水泳サークルとか、結構面白そうですね」

兄「却下だ」

妹「…………はい?」

兄「部活の時間に?プールで?ス、ススススス、スク水?却下だ、断固として却下!」

妹「そんな理由だとは思いましたが……ではこの、テニスサークルなどは」

兄「テニスコートを駆け回るたびにアンダースコートがチラチラするじゃないか!却下だ!」

妹「……では、このバレーボールのサークルは」

兄「ジャンプしたり背伸びしたりした時におへそとかが見えちゃったりするだろう!同じ理由でバスケも却下だ!!」

妹「…………どうして露出が選択の基準なんですか」

123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 22:48:10.76 ID:lkaTPDqTO
兄「うん、無理して運動部に入る必要も無いと思うんだよ俺は」

妹「……まあ私も、兄さんの反対を押し切ってまで入りたいわけでは……あ、この調理サークルは面白そうかも」

兄「おお、あのお菓子とか作ってるところか!」

妹「ええ、もともと料理をするのは好きですし……見学くらいはしてみようかな、と」

兄「うんうん、そこは俺もおすすめするぞ!良い人ばっかりだしな!」

妹「……?どういう意味ですか?」

兄「そこの人たちはな、お菓子やら何やら色々とお裾分けしてくれるんだ」

妹「…………へえ」

兄「ついこの前も、部室の前を通ったらたくさんクッキーをわけてくれてなぁ」

妹「……………………へえ」

兄「そこなら安心だ!うん、見学くらいはしてみると良いかもな」

妹「入部します」

兄「え?」

妹「入部します。ここに。私は。絶対」

兄「え?あ、そう……うん……」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 23:02:11.59 ID:lkaTPDqTO
妹「……そういえば兄さんは帰宅部でしたっけ」

兄「その通り、日夜帰宅のトレーニングに励んでおりますとも」

妹「どんなトレーニングかはわかりませんが……でも、たまにサークルの手伝いとかで帰りが遅れますよね?」

兄「ああ、それは役員としての手伝いだよ」

妹「役員、ですか?」

兄「おう、学生会の役員。正直入るつもりは無かったんだけど、人手が足りないって会長に頼まれてな」

妹「会長というと、このパンフレットに写真が載っているこの人ですか?」

兄「ん?あーそうそう、この人だ」

妹「……へえ……美人ですね」

兄「ああ、何気にファンも多いらしいからな。会長も、人手が足りないならそっちから人材を探せば……」

妹「……つまり学生会には人手が足りない、ということですね」

兄「え?あ、おう……そうらしいが」

妹「そうですか…………入学早々、サークルと学生会……なかなか忙しくなりそうですね」

兄「え、あ……あれ?」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 23:20:51.41 ID:lkaTPDqTO
妹「ふぅ……でも、本当に」

兄「うん?」

妹「本当に……楽しみです。この学校に通うことが、とても楽しみです」

兄「そうか、それは……先輩としても嬉しい限りだぜ」

妹「ふふっ……期待してますね、先輩?」

兄「……センパイと言われるのも悪くないな、うん」

妹「良かったらこれから先輩と呼びましょうか?予行演習の一つとして」

兄「どんな予行だよ」

パタン

妹「さて……元旦も、もう少しでおしまいですね」

兄「そうだな……と言っても、正月はまだ続くんだが」

妹「そうですね……お正月が終わっても、次には春が来て、それから夏が来て……」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/01(木) 23:26:11.57 ID:lkaTPDqTO
妹「んしょ、っと」

兄「お、もう寝るのか?」

妹「……はい、なんだか……たくさんお話をしたら眠くなっちゃいました」

兄「そうか、ゆっくり休めよ」

妹「うん……あ、そうだ」

兄「ん?」





妹「おやすみなさい…………今年もよろしくね?…………お兄ちゃん」



兄「…………ああ、こちらこそ、よろしく」

199: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 07:56:52.00 ID:zE6f6eUMO
妹「おはようございます、兄さん」

兄「おはよう、妹」

妹「珍しいですね、兄さんがこんな早くに、一人で起きてるなんて」

兄「ああ、まさか残っているとは思わなくてなぁ……」

妹「…………???」

兄「ごめん、こっちの話だ」

妹「はぁ、そうですか……」

兄「明けましておめでとう、妹」

妹「はい兄さん、明けまして……って、もう2日ですよ?」

兄「年が明けるのは年に一回だが、夜は毎日明けるだろ?だったら問題無いはずだ」

妹「……どんな理屈ですか、もう……」

兄「まあ良いじゃないか。夜が明けて、また可愛い妹に会えたよおめでとう、ってことでも」

妹「まったく、またそういうことを…………はい、おめでとうございます、兄さん」

200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 08:09:19.79 ID:zE6f6eUMO
妹「朝御飯の支度、出来てますよ」

兄「ありがとう……おお、まさかの洋風!」

妹「お蕎麦におせちにお餅と続きましたから、今朝は趣向を変えてみました」

兄「素晴らしい!あんたは最高の妹でおま!」

妹「……はい、とにかく座ってください。兄さん」



兄「このスクランブルエッグの絶妙な火の通り具合……妹、やるようになったな!」

妹「そんな大袈裟ですよ」

兄「俺が作ろうとすると、何故か卵そぼろみたいになっちゃうんだよなぁ」

妹「兄さんは何でも強火にし過ぎなんですよ。もっと弱火で、バターと空気を含ませるように……」

兄「……なんか、すっかり料理の先生が板についてますね、妹さん」

妹「ええ、教えがいのある生徒のおかげかもしれません」

兄「……褒められているんだか、いないんだか……」

202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 08:19:14.25 ID:zE6f6eUMO
兄「ところで妹、いや先生」

妹「はい、なんでしょうか?」

兄「スクランブルエッグのエッグはわかるだ、スクランブルってなんだ?」

妹「はい?それは…………あれ?」

兄「間違っても、ぐるぐる回るあのマンガじゃないということは俺にもわかる」

妹「はい、っていうかそれを連想するのは兄さんくらいです」

兄「んー……あれかな、飛行機の」

妹「ああ、あの緊急事態があった時に離陸する……スクランブル発進、でしたっけ」

兄「そうそう、それ」

妹「……まあ確かに、作るのも簡単で、大して時間もかかりませんね」

兄「つまり本来は、本当に急いでいるときに作るものなのか」
妹「……でも、慌てている時にフライパンで卵料理を作るなんて……」

兄「余裕があるようにしか見えないよなぁ」

妹「はい」

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 08:27:49.48 ID:zE6f6eUMO
兄「ごちそうさまでした」

妹「お粗末さまでした」

兄「お茶淹れるよ、妹も飲むだろ?」

妹「はい、お願いします」



兄「ほい」

妹「あ、ありがとうございます」

兄「んー、昼飯はどうしようか?」

妹「そうですね、とりあえず……お昼には、おせちの余りを食べちゃいましょうね」

兄「……今の最後の言葉、ワンスアゲイン」

妹「え?…………えっと、食べちゃいます」

兄「……何だろう、なんかゾクゾクする」

妹「どこが兄さんのツボに入ったのかはわかりませんが、テーブルの下で身悶えるのはやめてください」

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 08:40:31.50 ID:zE6f6eUMO
妹「落ち着きました?」

兄「おう、なんとか」

妹「……で、何の話をしていたんでしたっけ」

兄「お昼におせちを食べてしまおう、って話だ」

妹「そうそう、それです」

兄「初日はついつい好きなものばかり食べちゃうから、二日目にはだいぶ偏りが出てくるんだよなぁ」

妹「兄さんは好きなものばかり食べ過ぎです、栗きんとんとか、昆布巻きとか……」

兄「……ごめんなさい、来年から気をつけます」

妹「それも毎年聞いてますよ、兄さん」

兄「……ところで妹は、おせちの中では何が一番好きなんだ?」

妹「露骨に話題を逸らしましたね」

兄「いや、妹はわりと好き嫌いなく何でも食べるから……ちょっと気になっただけです本当です」

妹「……うーん……まあ確かに、好き嫌いは無いつもりですが……」

 

207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 08:51:57.00 ID:zE6f6eUMO
妹「うーん……基本的に好きなものばかりですから、特に一番というのも……」

兄「じゃあ、これが無くなったら寂しい!とか、これが無いと物足りない!……みたいなのは?」

妹「これが無いと寂しい……」

兄「うんうん」

妹「……………………」

兄「……………………」

妹「………………か、かまぼこ?」

兄「……kmbk?」

妹「はい」

兄「……可愛いなぁ」

妹「か、からかわないでくださいっ」

兄「……しかも妹の場合、普通の紅白のかまぼこじゃなくて、動物の絵柄が描いてあるやつだよな」

妹「そっ……それは、普通のものだと味気ないというか物足りないというか、だから決してその」

兄「毎年毎年入ってると思ったら、なるほど……可愛いなぁ」

妹「変な目で見ないでください!」

208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 09:20:29.36 ID:zE6f6eUMO
妹「別に良いじゃないですか、動物かまぼこ……美味しくて可愛くて、栄養もあって彩りも良くて……」

兄「いや、その、ごめんなさいからかい過ぎました」

妹「……誠意が感じられません」

兄「あー……ほら、撫でてやるから許しておくれ」

妹「そんな……子供扱いで、私が許すと思ったら、大間違い……です」

兄「そう言いながらも目を細めて嬉しそうにしている妹を見ていると、お兄さんは無性に抱きしめたくなるよ」

妹「はい、頑張って我慢してくださいね」

兄「……頑張ります……さて、もう良いか?」

妹「……………えっと………」

兄「ん?」

妹「…………まだ、許すとは……言ってません」

兄「……はいはい、よしよし」

妹「……はふ」

216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 10:34:21.86 ID:zE6f6eUMO
妹「兄さん、兄さんっ」

兄「おお、どうした妹よ」

妹「うやらこの手のスレは飽きられているようです」

兄「妹好きの増加による供給過多か……由々しき事態だな」

妹「……どうすれば良いんでしょうか」

兄「考えられる対策は一つ、思い切って方針を変えることだな」

妹「おおっ」

兄「……で、何か良い案は無いかね、妹よ」

妹「肝心の部分は妹頼みですか、兄さん」

218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 10:40:37.58 ID:zE6f6eUMO
兄「まあつまり、今までに無いような斬新なものにすれば良いわけだ」

妹「それが思い浮かばないから苦労してるんですよ、業界も」

兄「業界とか言わないの」

妹「しかし、斬新で飽きられていないもの……ですか」

兄「要するに、萌えも●●も無い妹スレにすれば良いわけだ」

妹「……あの、兄さん」

兄「うん?」

妹「私が言うのも何ですが、そ、その…… ……●●、とか……萌えが無い、妹スレって」

兄「うんうん」

妹「そんな妹スレに、果たして需要はあるのでしょうか」

兄「……………………無い、かなぁ」

219: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 10:46:48.35 ID:zE6f6eUMO
兄「いやいや、まだ諦めるような時間じゃないぞ妹!」

妹「そ、そうですね……もう少し考えてみましょうか」

兄「甘ったるい萌えや、キュンとくる●●だけでなく……何かそこに加わる、一つまみのスパイス……」

妹「……あ。兄さん、あれなんてどうでしょう」

兄「ふむ、あれとな」

妹「以前、兄さんが聞いていた……何でしたっけ、ヤンデレな妹に死ぬほど愛さr」

兄「ストォーップ!」

妹「ひゃいっ!?」

兄「それはね、駄目。需要もあるだろうけど、駄目」

妹「駄目なんですか?」

兄「駄目」

223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 10:54:20.74 ID:zE6f6eUMO
兄「顔真っ赤wwwwwwww」

妹「やめてください兄さん、大人気ないですよ」

兄「いや、でもさぁ……」

妹「こう考えてください、ツンデレなんだと。兄さんはツンデレ好きですよね?」

兄「好きです!けど!妹にそれを言われるのは何だかなあ!」

妹「そして、このスレのタイトルを見てください」

兄「ふむふむ……?」

妹「本当に妹スレが嫌いな人が、こんな場所に来ると思いますか?」

兄「…………!!!!」

妹「そういうことです。さ、気を取り直して」

兄「おう、新たな方向性を模索しようか」

229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 10:59:29.00 ID:zE6f6eUMO
妹「ヤンデレ、は駄目なんですか?需要もあるのに?」

兄「需要というか、それはわりとコアな人たちが嗜むものでね……」

妹「でも……兄さんだって聴いてたじゃありませんか、そのCD」

兄「…………いや、それはね」

妹「ヘッドホンで。嬉しそうに。ニヤニヤしながら」

兄「どこから?ねえどこから見てたの?」

妹「需要もあるし、兄さんがヤンデレ好きなら問題無いじゃありませんか」

兄「視聴者でいるのと当事者になるのは別物なんだよ!」

妹「わがままですね、もう」

238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:09:22.56 ID:zE6f6eUMO
妹「でも兄さん、無理に方向性を変えなくても良いんじゃないですか?」

兄「そんな……もんかなぁ」

妹「このままのんびり、気の向くままでも良いと思います」

兄「……妹がそう言うなら、それで良いか」

妹「ほのぼの日常系と言っておけば、多少中身が無くても許される。そんな時代ですから」

兄「うん、わかるけどそういう発言は慎もうね。色んな人に怒られちゃうから」

妹「ツンデレさんの暖かい応援のおかげで、スレも盛り上がって来ましたし」

兄「うん、もうちょっとのんびりしてみようか」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:17:25.42 ID:zE6f6eUMO
兄「しかし妹も、髪伸びたよなぁ」

妹「ええ、わりと自慢なんですよ?友達も綺麗だと褒めてくれますし」

兄「普段はまとめてるけど、おろしたら腰くらいまであるんじゃないか?」

妹「はい、おかげで毎日のお手入れが大変ですよ。お料理の時も気を使いますし」

兄「そっかぁ……小学生の頃から伸ばしてるんだもんな」

妹「毛先を整えるくらいはしてますけどね」

兄「なんで伸ばし始めたんだっけ?」

妹「……さあ?なんとなくです」

兄「理由はどうであれ、俺は好きだなー、妹の髪」

妹「……はい、ありがとうございます」




妹「……小学生の頃も同じことを言ったのに……覚えてないんですかね」

兄「うん?なに?」

妹「なんでもありませんよ、兄さん」

254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:24:50.24 ID:zE6f6eUMO
兄「でも、そんなに長かったら色々できそうだよなぁ」

妹「色々、って……」

兄「こう、ビシッと髪の毛でビンタしたり」

妹「言っている意味がわかりませんが、一部から不人気などと馬鹿にされそうなのでお断りします」

兄「えー」

妹「そもそも自分の意志で髪の毛が動くはずないじゃありませんか、もう」

兄「え?妹、よく動いてるぞ?」

妹「……え?」

兄「びっくりした時とか、機嫌が良い時にこう、ぴこぴこと」

妹「………………」

兄「………………」



妹「………………………」

兄(……鏡とにらめっこを始めて一時間……今さら冗談だったとは言いづらいな……)

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:35:26.38 ID:zE6f6eUMO
兄「メイドさん」

妹「はい?」

兄「ナース服。教師。巫女さん。袴姿」

妹「どうしたんですか、兄さん?春にはまだ早いですよ?」

兄「誰が4月バカか」

妹「そんな単語を連続でぶつぶつと呟くなんて、天下の往来なら通報されるか防犯ブザーを押されるかの二択ですよ」

兄「失敬な。俺にもちゃんと考えがあってのことだぞ」

妹「あるんですか?」

兄「メイドさんや巫女さんって、二次元だとハズレは少ないのに……現実はむしろハズレのほうg」

妹「聞いた私がバカでした」

兄「冷たいな」

妹「そもそも、巫女さんや先生や看護士さんをそんな対象として見る時点でおかしいんですよ」

兄「えーそうかなー、それはどうかなー」

妹「ああもう、この人は……」

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:43:18.82 ID:zE6f6eUMO
妹「それに……一生懸命仕事に励んでいる人に、当たりだのハズレだのを言うなんて失礼ですよ?」

兄「まあ、確かに……そうだなぁ」

妹「兄さんのような人たちは、あの服をコスチュームとして見ますが……その時点で間違いです」

兄「間違いなのですか」

妹「あれは仕事用に使う、いわば作業着と同じようなものなのですよ」

兄「な、なるほど……確かに、実用性も考慮されてるもんな」

妹「はい、その通りです」

兄「自動車工が青いツナギを着たり、配管工が赤いツナギを着るようなものか……」

妹「どうして色を決めつけてるかはわかりませんが、そんな認識でよろしいかと」

276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 11:51:48.21 ID:zE6f6eUMO
兄「ところで妹さん」

妹「はい?」

兄「妹さんは、そういう服を着てみたいとは思わないのかな?」

妹「……あの兄さん、私の話を聞いていましたか?」

兄「妹ならきっと何を着ても似合うと思うんだ、うん、すごく思う」

妹「……ここが我が家で、言っている相手が実の妹で良かったですね。場所が場所なら国家権力のお世話になりますよ」

兄「そんな、半年くらい放置した流し台を見るような目で見ないでください」

妹「まあ確かに、世の中にはコスプレとしてそういった衣服を着用する人もいると聞きますが」

兄「うんうん」

妹「少なくとも私は着るつもりはありませんし、今後そういった職業に就くつもりもありません」

兄「………………えー……」

妹「そんな死刑宣告を受けたような顔をされてもですね……」

 

286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:00:41.15 ID:zE6f6eUMO
妹「兄さん、そんながっかりされてもですね……」

兄「…………はぁ……」

妹「……ああもう!仮に、仮にですよ?私が着てみたいと言ったところで、そんな服が簡単に手に入るわけが……」

兄「……………………」

妹「……………兄さん、なぜ目をそらすんですか?」

兄「…………いや、あのね、誤解しないでほしいんだけど」

妹「…………さ、さすがに私も……その、どうリアクションをすれば良いのか」

兄「あのー妹さん、とりあえず話をですね」

妹「ま、まあ兄さんの趣味を否定するつもりはありませんけど……間違っても、そんな格好のまま出歩かないでくださいね」

兄「俺が着るわけじゃないよ!!!!」

296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:08:40.87 ID:zE6f6eUMO
妹「なるほど、去年の学園祭の出し物で使った服……ですか」

兄「学生会で保管することになったんだが、何せ置き場が無くてな」

妹「ご、ごめんなさい……誤解してしまって」

兄「いや、理解してもらえたようで嬉しいよ」

妹「しかし、こんな服が必要になるなんて……何をやったんですか、兄さんのクラスは」

兄「コスプレ喫茶」

妹「……………………」

兄「そんな目で俺を見るなよ、言い出したのは俺じゃないぞ!……賛成はしたけど!」

妹「まったくもう……最近はそういう催しも増えていると、噂には聞いていましたが」

兄「考えるんだ、それもお祭り騒ぎの内だと……考えるんだ」
妹「はいはい」

 

304: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:21:23.32 ID:zE6f6eUMO
妹「メイド服にナース服、巫女服に……スク水まであるんですか」

兄「うん…………さて、しまおうか」

妹「あ、あれ?しまっちゃうんですか?」

兄「ああ……着てくれる人がいなきゃ、こいつらもただの布切れさ……へへっ」

妹「……………………」

兄「可哀想になぁ……せっかく作られたのに……またしばらく、真っ暗な押し入れの中……」

妹「……ああもう、わかりました!着ますよ、私が着てあげますから!」

兄「おおありがとう妹!さあ選んで!何を着るか選ぶんださあ!」

妹「え、あ……はい……あれ?」

兄「いやあ嬉しいな!とても嬉しいぞお兄さんは!うん!」

妹「…………はあ」

308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:29:18.88 ID:zE6f6eUMO
兄「……………………」

妹「……あ、あの……兄さん」

兄「……グゥレィトォ!!」

妹「ひゃうっ!」

兄「素晴らしい!こんなに素晴らしい巫女さん!はじめて見たよ素晴らしい!」

妹「あ、あはは……ありがとうございます」

兄「俺は今猛烈に感動している!今なら一秒間に16回素晴らしいと言うことも可能なくらいに!」

妹「わかりました、わかりましたから落ち着いてください」

兄「…………ふぅ……」

妹「……あの、これ……ちょっとサイズが合わないというか、少しきついというか……」

兄「……うん、見てるとなんとなくわかるよ」

妹「袴はぴったりだったんですけど……上が、その」

兄「俺の同級生でちょうど良いなのに……育ったなあ、妹」

妹「じ、じろじろ見ないでくださいっ」

312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:36:14.08 ID:zE6f6eUMO
兄「見事にぱつんぱつんというか、はちきれんばかりというか」

妹「微妙にいやらしい表現は禁止ですっ!」

兄「でも、全体的に上にずらせば良いんじゃないか?こう、空間を作る感じで」

妹「で、でもそんなことしたら……スースーして落ち着かないですよ」

兄「え?スースーって……え……」

妹「……あぅ……」

兄「い、いいいいい妹さん、あなたまさかままままままさか」

妹「え、だって普通は和服を着る時は……その、下着は……」

兄「……………………」

妹「……………………」

兄「……………………ゴクリ」

妹「……き、着替えてきますっ!」


バタン


兄「…………なぜ!!なぜもっとじっくり見なかったんだ俺の馬鹿ぁああああああああああああああああ!!」

317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:44:28.05 ID:zE6f6eUMO
兄「はぁ……俺の馬鹿……あんなことになったら、もう何も着てくれないだろうなぁ……」

妹「…………あ……あの、兄さん?」

兄「んん?……って、妹……」

妹「まったく……口から魂が半分くらい出ちゃってましたよ?もう」

兄「……そ、そそそそその格好は」

妹「これは……見た目も可愛いですし、これなら着てみても恥ずかしくないかな、と」

兄「うん……可愛い、すごく可愛い……」

妹「は、はい……ありがとうございます、兄さん……じゃなくて」

兄「うん……?」

妹「…………えーっと、その……」

ヒラリ

妹「ありがとうございます、ご主人さまっ」

兄「ブホァーッ!!!!」

妹「ひゃあっ!?」

323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 12:52:45.86 ID:zE6f6eUMO
妹「だ、大丈夫ですか?兄さん」

兄「ああ、大丈夫だ……ちょっと色んなものが同時出過ぎたな、危ない危ない」

妹「どれだけ興奮してるんですか、もう……」

兄「ん……しかし、妹……」

妹「はい?」

兄「……本当に、よく似合ってるなぁ」

妹「えっと、そうです……か?」

兄「普段からの丁寧な言葉遣いとか、清楚で貞淑な雰囲気とか……何て言うか、ベストマッチだ」

妹「褒めすぎですよ……まあ、嫌ではないです、けど」

兄「うん、本当に可愛いよ」

妹「も、もう…………兄さんったら……」



兄(本当に可愛いなぁ……)

兄(またバストがぱつんぱつんで、しかもフリルの隙間からちらちらと太ももが見えたりしてるけど)

兄(口に出して雰囲気をぶち壊すわけにはいかないよな…………眼福、眼福)

326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:01:33.61 ID:zE6f6eUMO
妹「ふふっ」

ヒラヒラ

兄「……それにしてもこの妹、ノリノリである」

妹「フリルがいっぱいついた服って、実は憧れだったりするんです……昔から」

兄「確かに、妹の普段着はわりとさっぱりしてるよな……飾り気があまり無い、っていうか」

妹「小さい頃からずっとそんな服ばかりだったので、こういう服も……本当は、着てみたかったんです。ずっと」

兄「母さんに言えば買ってもらえたんじゃないかな?」

妹「よく言われましたよ、妹ちゃん、もっと可愛いお洋服は欲しくないの?って」

兄「言われたのに……買ってもらわなかったのか?なんで?」

妹「簡単ですよ、ヒラヒラのついた可愛いお洋服を着ていたら……」

妹「兄さんと一緒に、走り回って遊べないでしょう?」

330: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:08:58.46 ID:zE6f6eUMO
兄「……そんな、もん……か」

妹「私にとっては……どんなに可愛いお洋服で着飾るよりも、周りの大人から、どんなに可愛いと褒められるよりも」

兄「……ん」

妹「泥だらけになっても、兄さんと一緒に遊べることの方が……ずっと楽しくて、ずっと……嬉しかったから」

兄「……そう、か」

妹「ふふっ、着慣れない服を着たら、なんだかお喋りになってしまいました」

兄「ん、そんなもんか?」

妹「借り物ですし、汚したら大変ですから……着替えてきますね」

兄「そっか……ありがとうな、わがままに付き合ってくれて」
妹「いえ……私こそ、憧れが叶って良かったです」


バタン


妹「……まあ、こういう服も…………たまには、良いかな」

336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:18:41.87 ID:zE6f6eUMO
妹「お待たせしました、兄さん」

兄「おう……うん、やっぱり良いな」

妹「はい?」

兄「ご主人さまってのも捨てがたいけど……やっぱり兄さんって呼ばれるのが、一番良いかな」

妹「あ……もう、兄さんったら……もう」

兄「なあ妹、今度一緒に買い物でもしようか」

妹「買い物、ですか?」

兄「うん。妹の服を買って、アクセサリーを買って……バッグとか、小物を買うのも良いな」

妹「……兄さん?」

兄「俺たちはもう、泥だらけになって遊ぶことも無いだろうからさ」

妹「……………………」

兄「妹がお洒落をして、可愛い服を着ても……一緒に遊べるよ。一緒に、歩けるよ」

338: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:22:59.66 ID:zE6f6eUMO
妹「…………兄さん」

兄「荷物持ちくらいならいくらでもするからさ、今度……どうだ?」

妹「はい、本当に……本当に、楽しみに、してますから」

兄「……おう」

妹「……ふふっ」

兄「ん?」

妹「なんだか、デートのお誘いを受けたようだな、と」

兄「……そう言われると俄然恥ずかしくなる」

妹「男性の方として、きちんとエスコートしてくださいね?」

兄「……はい、努力します」

妹「ふふっ」

兄「ご機嫌だな」

妹「……何を着て行こうかなー……」

兄「しかも気が早いな」

341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:28:55.26 ID:zE6f6eUMO
妹「それにしても、兄さんの通う学校は……ずいぶんと自由な校風なんですね」

兄「お祭り騒ぎに関しては日本一を自負してるからな、コスプレ喫茶だけでも5つはあった」

妹「……普通の学校なら却下されそうですよね」

兄「どこも喫茶店ばかりだったよ、そんなにお茶ばかり飲めるかっての」

妹「ふふっ……でも、そう考えると」

兄「ん?」

妹「入学したら、私も参加するかもしれないということですね」

兄「…………コスプレ喫茶に?」

妹「クラスの催しものがそれになれば、ですけど」

兄「……………………」

342: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:34:10.97 ID:zE6f6eUMO
妹「…………あの、兄さん?」

兄「許さんぞ」

妹「はい?」

兄「絶対に許さない  絶 対 に だ  」

妹「落ち着いてください兄さん、落ち着いて、ね?」

兄「可愛い妹のあんな姿やこんな姿を人目にさらすわけにはいかない!俺は断固阻止する!」

妹「……クラスの女の子にはさせてたんですね、あんな姿やこんな姿を」

兄「それはそれ、これはこれ」

妹「……どんな理屈ですか」

兄「理屈が必要か?否、必要無いのだ!シスコンの行動、いわゆるシス行動に理屈は不要!」

妹「はぁ……まったくもう」

344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:40:33.57 ID:zE6f6eUMO
妹「仮にそうなったとして、私は調理役に回してもらうから大丈夫ですよ」

兄「…………おお」

妹「接客に回らなければ、人目につくこともないでしょうし……ね?」

兄「なるほど、その手があったか」

妹「私だって、あんな格好で人前に出るのは恥ずかしいですし……」

兄「そう言われると、こう質問したくなるのが男というもの」

妹「はい?」

兄「俺の前なら?」

妹「……………え……」

兄「俺の前なら?」

妹「……えっと……その…………」

兄「……………………」

妹「……兄さん、なら……恥ずかしくない……です」

兄「…………ああ!もう!可愛いなぁ!可愛いな妹!!」

妹「……もう……」

346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 13:47:52.71 ID:zE6f6eUMO
妹「可愛い、可愛いって……そんな言葉、気軽に言ってはいけませんよ」

兄「うん?」

妹「例え他人でも……肉親でも、そんなに安売りして良い言葉ではありません」

兄「あー、大丈夫だって。妹にしか言わないよ、こんな恥ずかしい言葉は」

妹「そう……ですか」

兄「おう」

妹「……………………」

兄「よーしよし」

妹「……そういう言葉をさらっと言うの、ずるいです……」

兄「ん?ごめん、聞こえなかった」

妹「……いえ、なんでもありませんよ」

367: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 14:48:10.90 ID:zE6f6eUMO
兄「なあ妹よ、その……買い物に行くのは、明日だよな?」

妹「何言ってるんですか、当たり前ですよ」

兄「いや、わかってるなら良いんだ……けどさ」

妹「?」

兄「……なに、この服の山は」

妹「なにって……明日着ていく服を選んでいるんですよ」

兄「……まだ昼過ぎだぞ?」

妹「私、あまりお洒落な服を持っていませんから。今のうちに決めておかないと」

兄「いや、そりゃあそのために買い物に行くんだからさ……」

妹「これは……色的に合わないかな、こっちは……もう、なんで季節の流行色って毎年変わるのかな」

兄「………………」

妹「兄さん、こっちとこっちだと……って、兄さんに聞いちゃ駄目ですよね」

兄「あ、うん……?」

妹「…………~♪」

兄「……まあ、楽しみにしててくれるってこと……だよな」

370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 14:50:55.55 ID:zE6f6eUMO
次の日

妹「こんにちは、兄さん……お待たせしてしまいましたか?」

兄「いや、俺も今来たとこ……って」

妹「?」

兄「わざわざ外で待ち合わせる必要はあったのか?しかも、うちのマンションの真下って……」

妹「まあまあ、細かいことは良いじゃないですか」

兄「細かい……のかなぁ」

妹「そんなことより、どうですか?……兄さん」

兄「え?あ、ああ……よく似合ってるよ、うん」

妹「ふふっ、ありがとうございます」

兄「あー……髪、おろしたんだな」

妹「今日くらいは気分を変えてみようかと……おかしいですか?」

兄「いや、おかしくない……綺麗だよ、本当に」

妹「……はい、ありがとうございますっ」

374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 14:57:57.13 ID:zE6f6eUMO
兄「……じゃあ、行くか」

妹「はい」

兄「えーっと、まずは……」

ペラペラ

妹「兄さん、ガイドブックを見ながらエスコートするのはどうかと思います」

兄「え?駄目なのか?」

妹「スマートさに欠けます、一般的な女性なら減点対象ですよ」

兄「……今のところ、一般的なそこらの女性をエスコートする予定は無いので平気です」

妹「まったくもう……もう」

兄「ん?」

妹「一般的な女性なら、機嫌を損ねてもおかしくないのに……なぜでしょうね」

兄「なぜ、って?」

妹「私、今……少しだけ嬉しかったから。不思議だ、なぜだろう、と」

377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:04:06.95 ID:zE6f6eUMO
兄「よし、とりあえずはここで服を見ようか」

妹「ここ、お友達の間でも評判良いんです……兄さん、きっちりチェックしたみたいですね」

兄「そりゃまあ、あれだけ期待されればな……ほら、入るぞ」

妹「はいっ」




兄「あー……なんか、居心地が……」

妹「?兄さん、どうしました?」

兄「ん?ああ、何でもないよ」

妹「そうですか……?」

兄(なんだろう、俺だけ場違いというか、招かれざる客というか……)

妹「兄さん、兄さんっ」

兄「お、どうした?」

妹「この二つだと、どっちが良いでしょうか?」

兄「右……いや、左かな」

妹「はい、わかりました」

378: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:09:27.72 ID:zE6f6eUMO
兄「なんか、さっきから俺が選んでばっかりのような……」

妹「は……はい、第三者の意見も大事ですから」

兄「そんなもんかね」

妹「あとは……あ」

兄「んん?」

妹「下着も買わないといけませんね……最近、またサイズが」

兄「…………すいません妹さん、それだけは勘弁してください」

妹「え?あ……あ、当たり前です!さすがに下着まで選ばせるわけないじゃないですかっ」

兄「そ、そうだよな……じゃ、すぐそこで待ってるから」

兄(……ああ……心臓に悪い……)

382: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:23:05.19 ID:zE6f6eUMO
兄「うーん……ずいぶん買ったな」

妹「冒頭から、ちょっと張り切り過ぎましたね……」

兄「これを両手にぶら下げて次の店、ってのもなぁ……うーむ……」

店員「……あの、お客様?」

妹「はい?」

店員「当店には、後日ご自宅までお届けするサービスがございますが……よろしければ」

兄「本当ですか?助かった……じゃ、ぱぱっとお願いしてくるぜ」

妹「あ……はい、お願いします」

店員「あちらのカウンターで承っております」

兄「あーはいはい、お願いしまーす」

妹「……ふぅ……」

384: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:33:31.39 ID:zE6f6eUMO
店員「……ふふ、素敵な彼氏さんですね」

妹「え?……あ、いや、そんな……彼氏だなんて……」

店員「エスコートに慣れてはいないようですが……優しくて、頼れる人だと思いますよ」

妹「……あの、兄さ……兄を、ご存知なんですか?」

店員「いえ、もちろん初めてお会いしますが……店の中でもきちんと隣にいてくれる彼氏って、けっこう珍しいんですよ?」

妹「……そうなんですか?」

店員「多くの方は、外で時間を潰しながらお待ちに……このような店、男性にとってはあまり居心地の良いものではありませんから」

妹「……そんなもの、ですか」

店員「ええ……一人の女としては、羨ましくも感じます」

妹「……はあ……」

兄「お待たせー」

妹「あ、はい……では行きましょう?兄さん」

兄「おう……あ、お世話になりました」

店員「いえ……またのご来店、お待ちしております」

387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:39:49.71 ID:zE6f6eUMO
兄「さっき……店員さんと話し込んでたみたいだけど、何を話してたんだ?」

妹「あ、えーっと……兄さんは、女性のエスコートに慣れていないみたいですねー、と」

兄「……知らぬ内にダメ出しされてましたか」

妹「ふふっ……大丈夫です、ちゃんと褒められてましたよ」

兄「?……なら良いけど」

妹「はい。それで、次はどちらに?」

兄「もう昼だから、食事にしようかと思うんだけど……どうだ?」

妹「ええ、賛成です。私もちょうど、お腹が空いてきましたので」

兄「じゃ、このまま商店街までだな。美味しい店があるみたいだから、そこにしよう」

妹「わかりました」

389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:45:38.08 ID:zE6f6eUMO
兄「どうだった?」

妹「美味しかったです、お店の雰囲気も良かったですし……兄さん、よくあんな店を見つけましたね」

兄「ガイドブックを端から端まで、隅々まで読みまくって探し出したからな」

妹「それは……ご苦労様です」

兄「喜んでもらえたなら何より、だよ」

妹「はい」

兄「で、次は……どうする、まだ何か買いたいものあるか?」

妹「うーん……午前中にほとんど買えてしまったので、これといって……」

兄「……じゃあ、とりあえず歩こうか」

妹「そうですね、のんびりと」

兄「おう」

393: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 15:53:18.19 ID:zE6f6eUMO
妹「……ねえ、兄さん」

兄「うん?」

妹「今の私たちって、知らない人の目からは……どう見えるんでしょうね」

兄「それは……うーん……」

妹「私としては……やっぱり兄妹か、せいぜい仲の良い友人か……そのくらいだと思うんです」

兄「そんなもん、かなぁ」

妹「たぶん、これが私たちの……自然な距離なのかも、しれませんね」

兄「……………………」

妹「……ふふっ、やっぱり……デートになんて、見えませんよね」

兄「…………よし、妹」

妹「はい……え?」

兄「手、繋ぐぞ」

妹「は……え?はえ?」

兄「はい、離したら駄目だかんな」

妹「え、ちょっと……兄さんっ……?」

402: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:02:16.65 ID:zE6f6eUMO
妹「に、兄さん……強引すぎますよ」

兄「良いから良いから」

妹「良いから、って……」

兄「兄としてはね、妹に寂しい顔をさせたくないの。わかるだろ?」

妹「……私、そんな顔してましたか?」

兄「ああ。今の距離感が不満で、不安で、寂しいって。そんな顔だったぞ」

妹「……………………」

兄「俺はお前の兄だから。お前が遠くで寂しそうにしてたら、俺から迎えに行く。寂しくなくなるまで、そばにいる」

妹「…………はい」

兄「だからとりあえず、手を繋いでみました。どうだ?この距離感も、嫌か?」

妹「……ううん、平気……」

兄「ん……良し。これならデートにも見えるだろう、な!」

妹「ふふっ……もう……兄さんの、バカ」

 

409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:11:23.81 ID:zE6f6eUMO
妹「……………………」

兄「あんまり手をにぎにぎしないの、くすぐったいから」

妹「あ、はい……」

…ニギニギ

兄「……あの、妹さん?」

妹「……兄さんの手、大きくなりましたね」

兄「それはまあ、背も伸びれば手もでかくなるわな」

妹「最後に手を繋いだ時は、私とそんなに変わらなかったのに……」

兄「当たり前だろ?小学校の頃と比べれば」

妹「確かに、そうですね」

兄「……でもそう考えると、手を繋ぐくらいは兄妹でも普通にやるのかな……」

妹「はい?」

兄「よし、もうワンステップ上を目指そうじゃないか」

妹「……上、って」

兄「さあ妹よ、腕を組もう!」

412: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:18:26.46 ID:zE6f6eUMO
妹「う、腕を……?」

兄「そう、腕を!」

妹「……こ、こうですか?」

兄「誰が腕組みをして仁王立ちしようと言いましたか」

妹「で、でもですね……さすがに恥ずかしいというか、その」

兄「手を繋ぐくらいは兄妹としては初歩中の初歩!ドラクエなら【こんぼう】【ぬののふく】くらいの初歩!」

妹「それは小さい頃の話で……」

兄「人一倍仲の良い兄妹だからこそ、人一倍距離感も近くあるべきなのです」

妹「……うぅ……」


?「天下の往来でかよわい女性を虐めるのは見過ごせないな、男くん」

418: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:24:21.52 ID:zE6f6eUMO
妹「…………はい?」

兄「あ……ああ、会長」

会長「まさか、年明け早々に君と会うことになるとはね……うん、元気そうじゃないか」

兄「会長こそ、相変わらずですね……買い物ですか?」

会長「軽い散歩だよ、まさか、冬季休暇が終わる前に新年の挨拶ができるとは思わなかったが」

兄「あ、そういえばそうですね……明けましておめでとうございます、会長」

会長「ああ、おめでとう……今年もよろしくな」

兄「はい」

妹「……………………」

会長「…………ところで、君の後ろにいる女性を、そろそろ紹介してはくれないか?」

妹「!!」

兄「ああ、はい」

422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:33:20.82 ID:zE6f6eUMO
兄「えーっと、俺の妹です」

妹「はじめまして、兄さ……兄が、いつもお世話になってます」

会長「ああ、はじめまして……なるほど、君が噂の妹さんか」

妹「え?」

会長「君の兄上から、しょっちゅう自慢話を聞かされているよ……うん、会えて光栄だよ」

兄「……俺の羞恥心のためにも、あまり余計なことは言わないでくださいね」

会長「余計なこととは心外だ……さしずめ、今日は兄妹でデート中かな?」

妹「…………!!」

兄「あ、やっぱりそう見えますか?」

会長「男女がそれだけ仲睦まじく、寄り添い合って歩いていれば……そう見えない方がおかしいさ」

兄「いや、なんか知り合いに見られるってのは恥ずかしいな……」

426: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:41:13.12 ID:zE6f6eUMO
会長「しかし、それはそれで妬けるなぁ……」

妹「……な……」

兄「はい?」

会長「私が今まで、あれほどデートに誘ったというのに……なるほど、君は妹さんに操を立てていたんだな」

妹「……な、なっ……」

兄「デートじゃなくて、あれは学生会の買い出しでしょう!?」

会長「私がどれほどの勇気を振り絞って君を誘ったか……君もわかっているはずなのに」

兄「ニヤニヤしてたじゃないですか!廊下で!周囲から視線が刺さりまくってオロオロする俺を見て笑ってたでしょう!!」

妹「………………」フルフル

兄「妹さん!?どうしたの妹さん!!」

会長「……くくっ……すまないすまない、からかい過ぎたかな?」

兄「むしろ謝るのが遅過ぎます!!」

428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:47:46.51 ID:zE6f6eUMO
会長「うんうん、君の狼狽える表情は実に良いな……日々の生活に潤いとハリが生まれる」

兄「できれば早く代用品を見つけてほしいところです……」

会長「さて、ずいぶん長く話し込んでしまったな……私はそろそろ戻るよ」

兄「そうですか……ではまた、休み空けに」

会長「ああ、また学校でな……妹さんも、また」

妹「………………」ペコリ

兄「じゃあ会長、また……ぬおっ!?」グイッ

妹「………………」グイグイ

兄「ちょっ妹!!腕!!腕が……引っ張らないで痛い痛いいt……」





会長「仲の良さは噂通り……いや、噂以上、かな」

434: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 16:56:39.94 ID:zE6f6eUMO
兄「……なあ、どうしたんだよ?」

妹「……別に、何でもありませんよ」

兄「何でもない、って……」

妹「………………」グイグイ

兄「さっきまであんなに恥ずかしがってたのになぁ……」

妹「え?…………あ」

兄「まあこれはこれで、俺の望むかたちになったわけだが」

妹「あ……う」

兄「会長のことか?まあ、多少性格に難はあるかもしれないが……うん、悪い人ではないんだ」

妹「それは……わかりますけど……」

兄「何せ、他人をからかうのが趣味みたいな人だからなぁ……」

妹「………………」

兄(ああ……ご機嫌斜め、か……会長、今日ばかりは恨みますよ……もう)

437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:03:02.53 ID:zE6f6eUMO
兄(どうしたもんか……)「……あ」

妹「…………?」

兄「あー……妹、ちょっとこのベンチで待っててくれ」

妹「え?あ、はい……良いですけど」

兄「じゃ、すぐ戻るから!」

妹「……………………」



妹(あの人……兄さんのこと、デートに、って……)

妹(兄さんは、からかってるだけって言ってたけど……あの目は、違う)

妹(……私の知らない、学校での兄さんを知ってる人……すごく、綺麗な人)

妹(何だろう……嫌だ、胸の中がぐるぐるして、もやもやして……)

妹「…………はぁ……」

440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:12:36.54 ID:zE6f6eUMO
兄「…………お待たせ、妹」

妹「……兄さん」

兄「ほら妹、お手」

妹「…………?」ポン

兄「……素直にお手をしてくれる妹に、お兄さんはもう胸キュンですよ」

妹「何を言って……って、兄さん?」

兄「そこの露店で見つけたんだ、そんなに高いものじゃないけど……」

妹「シルバーの、フェザーリング……ですか」

兄「あんまり派手でもないし、妹が好きそうなデザインだったから……どう?」

妹「はい、すごく良いと思いますけど……あの、いただいても良いんですか?」

兄「もちろん、そのために買ってきたんだから」

妹「でも、こんな……」

兄「……ほら……今日はデートだから、さ。これはその記念、ってことで」

妹「…………あ……」

442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:19:51.06 ID:zE6f6eUMO
妹「……その……ありがとうございます……」

兄「ん、どういたしまして」

妹「大事にしますね……すごく……すごく嬉しいです、兄さん」

兄「いや、うん……何て言うか、ごめんな」

妹「……え?」

兄「せっかくのデートなのに、上手くやれなくて……結局それらしいことなんて、そのプレゼントくらいで」

妹「そんな、そんなことないですよ!」

兄「うん、まあ……そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ」

妹「………………」

兄「俺も、こういうのははじめてだから……ちゃんとエスコート、できなくてさ」

妹「…………あ……」

妹(そっか……兄さん、あの人に誘われても……頷かなかったんだ)

妹(……今日まで、誰とも……誰にも……)

444: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:26:17.16 ID:zE6f6eUMO
妹「…………兄さん」

兄「うん?」

妹「私も……はじめてなんですよ。こんな風に、誰かとデートするなんて……」

兄「……うん」

妹「私も、兄さんもはじめてで……全てが上手くいくほうが、きっとおかしいんです」

兄「……そうかもなぁ」

妹「でもね、兄さん……大事なことは、上手くいったかどうかじゃありませんよ」

兄「え……?」

妹「私……楽しかったです、とても。ずっと兄さんの隣で、兄さんの近くで、同じものを見て、同じものを聞いて、同じものを感じて……」

兄「………………」

妹「とても楽しくて、嬉しくて……はじめてのデートが、兄さんと一緒で……良かった」

兄「……妹」

妹「兄さんは……どうですか?」

兄「…………俺も……はじめてのデートが、妹と一緒で……良かった」

454: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:41:17.13 ID:zE6f6eUMO
妹「ねえ、兄さん……」

兄「ん?」

妹「兄さん、言いましたよね。前に進むためには、変わらなきゃいけない時もあるって」

兄「うん……」

妹「でも、心の根っこの部分さえそのままなら……ずっと変わらないものも、あるんですよね」

兄「……うん、俺はそう思うよ」

妹「……兄さん、私、今から我が儘を言います……前に進むために……ずっと変わらなかった、心の根っこの部分を、兄さんに伝えます」

兄「妹……?」

妹「……ごめんなさい、兄さん……これは身勝手かもしれません、ひどく……自分勝手かもしれません……」

妹「……っ……今までの兄さんの優しさも、今までの私たちの生活も、全部、全部……壊してしまうかもしれない……」

妹「でも……伝えたいんです、兄さんに……私の我が儘を……私の、気持ちを……」

妹「……っ……お願いです、兄さん……聞いて、ください……」

兄「……ああ、聞くよ」

妹「……わた、し…………私っ……」


妹「……わたし…………兄さんが、好きですっ……!」

456: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:51:20.77 ID:zE6f6eUMO
兄「…………うん」

妹「わかってるんです、これはいけないことなんだって……血の繋がった兄さんに、こんな感情を抱くなんて」

兄「………………」

妹「この気持ちを伝えれば、もう後戻りはできないって……今までの生活には戻れないって……」

兄「…………妹」

妹「でも、もう……抑えられなくて……我慢、できなくて……」

兄「……妹」

妹「…………はい?」

兄「この気持ちがいけないことだって、誰が決めた?誰かが誰かを好きになる気持ちに、善悪なんてあるのかな?」

妹「……それ、は……」

兄「何も悪くなんかない。誰かを真剣に好きになることに、悪なんて無い。そう、思うよ」

妹「…………兄、さん?」

兄「だから俺も、妹に伝えます。今までずっと変わらなかったもの。ずっと変わらずに、願い続けたこと」

兄「誰よりも妹のそばに、妹の近くに、妹の隣にいて……妹を、幸せにしてあげたい。妹と、幸せでいたい」


兄「……俺も、妹のことが好きです……」

460: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 17:58:54.24 ID:zE6f6eUMO


兄「……泣き止んだ?」

妹「う……とっくに泣き止んでますよ、もう」

兄「そっか、そりゃ良かった」

妹「…………兄さん」

兄「ん?」

妹「私たち、何か変わったんでしょうか?」

兄「……どうなのかな」

妹「お互いの……その、ですね……気持ちを、確認したとして」

兄「うん」

妹「なんだか、急激に何かが変化する……なんてことは、ないのかもしれません」

兄「それはだって、ほら」

妹「?」

兄「昔から心の中は同じまま、ずっと一緒にいたんだから……変わらないよ。今までも、これからも」

妹「そう、ですね……」

463: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:07:28.79 ID:zE6f6eUMO
妹「でも、大丈夫なんですか?兄さん」

兄「何が?」

妹「その、世間の目というか、ですね……風当たり、というか……」

兄「……ああ、やっぱり厳しいだろうなぁ」

妹「兄さんは逆境とプレッシャーに弱いですから、今から心配です」

兄「……失礼だな」

妹「でも、やっぱり……実の兄妹なんて、社会的に認められるものではありませんからね……」

兄「そんなもんを軽く耐え抜いて、伴侶も守り抜くのが男の甲斐性ってもんだよ」

妹「……ふふっ、期待してますよ」

兄「おうよ」

妹「でも兄さん……肝心なこと、忘れてませんか?」

兄「え?何かあったっけ?」

妹「もう……父さんと母さんに、どう話をするつもりですか?」

兄「……………ジーザス……」

466: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:12:39.43 ID:zE6f6eUMO
兄「……まあ、積もる話は後にして……そろそろ帰ろうか?」

妹「そうですね、いつの間にか暗くなってきましたし……」

兄「よし、いざ我が家へ」

妹「ふふっ……はい、帰りましょう」

兄「そうだ、せっかくだから……」

妹「はい?」

兄「……さっきの露店、もう一回寄っても良いかな?」

妹「別に構いませんけど……忘れ物ですか?」

兄「まあ、そんなところかな」

474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:22:14.48 ID:zE6f6eUMO
妹「……予想外の出費、じゃないですか?」

兄「ああ、おかげで財布が軽くなったよ」

妹「……まったくもう」

兄「まあ良いさ、後悔なんかしてないし」

妹「…………ねえ、兄さん」

兄「ん?」

妹「……大好きですよ」

兄「なっ……い、いきなりだな」

妹「ふふっ、今まで我慢していたぶん、いっぱい言っちゃいますから」

兄「嬉しいけど……嬉しいけど!ああもう」

妹「あははっ……兄さん、お顔が真っ赤ですよ?」

兄「誰のせいだ、誰の」

妹「…………ねえ、兄さん」

兄「もう不意打ちは食らわないぞ、耳を塞いででも……ん、むっ!?」

妹「……ん………ー………っ」

485: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:29:23.27 ID:zE6f6eUMO











兄「……ぬ………んぅ………」

妹「兄さーん……?……もう」

妹「ほら、兄さん……起きてください、朝ですよ?」

兄「……んー…………うん……」

妹「今日はお日様も出て、ぽかぽかですよ?兄さんの大好きな、甘いフレンチトーストもできてますよ?」

兄「……うーん…………うん……」

妹「……はぁ……まったくもう……」

489: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:34:33.60 ID:zE6f6eUMO
妹「………………」スッ

兄「……んー…………」



妹「……起きてください……あなた」




兄「っんぬっはぁ!?」ガバッ

妹「おはようございます、兄さん」

兄「え、あ、ああ……うん、おはよう」

妹「朝ご飯はもうできてますから、お顔を洗ってきてくださいね?」

兄「あ、うん……わかった」


パタン




兄「……なんだろう、すごく良い起こされ方をしたような気がする」

495: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:42:04.26 ID:zE6f6eUMO
兄「ごちそうさまでした、妹」

妹「お粗末さまでした、兄さん」

兄「時間は……なんだ、まだ余裕だね」

妹「今朝は兄さんもすんなり起きてくれましたし……私も、入学早々に遅刻はしたくありませんから」

兄「それもそうだな……片付け、手伝うよ」

妹「ありがとうございます、兄さん」






兄「なんかさ、懐かしい夢を見たんだ」

妹「懐かしい……ですか?」

兄「うん、ちょうど今年の正月くらいの夢……かな?」

妹「……ふふっ、そうですか」

兄「カレー作ったり、ゲームしたり、アルバム見たり、妹がコスプレしてくれたり……」

妹「ず、ずいぶん細かい夢なんですね……」
 

500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:49:30.40 ID:zE6f6eUMO
兄「それから、はじめてデートして、それで……」

妹「……昨日のことのよう、ですね」

兄「うん……はい、片付け終わり、と」

妹「ありがとうございました」



兄「なんだか、本当に……全部が夢だったような、そんな気さえするんだ。幸せ過ぎて、本当に現実なのかな、って……」

妹「……兄さん」

兄「うん?」

妹「今までの幸せな思い出も、現実です。今の幸せな時間も、現実です」

兄「うん……」

妹「そしてこれからも、たくさんの幸せを現実にするために……ずっと、ずっと一緒にいましょう……兄さん」

兄「……うん、そうだね」

503: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 18:57:51.19 ID:zE6f6eUMO
妹「忘れ物、ありませんか?」

兄「ん、ばっちり」

妹「……でもこれ、本当に大丈夫なんでしょうか?」

兄「シャツの内側に入れてしまえば大丈夫だよ、見えないから」

妹「……でも兄さんも考えましたね、紐に通して首にかけるなんて……」

兄「俺も妹も、金属にアレルギーとかが無いからできることだけどね」

妹「……でも、本当に……懐かしいです」

兄「うん……あの日、露店で買ったフェザーリング」

妹「兄さん、帰りに慌ててペアのものをもう一つ買って……」

兄「おかげで財布の中身が寒くなって、さ」

妹「ふふふっ、ほんとにもう、兄さんったら」

505: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 19:09:16.99 ID:zE6f6eUMO
兄「じゃあ、行こうか」

妹「はい……あ、その前に」

兄「なんだ、忘れ物か?」

妹「……ええ、そんなところです」




兄「それなら、待ってるから今の…………っ……!?」




妹「……ん……っ…………ふふっ」






妹「…………愛してます、兄さん」





       終わり

 

543: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 20:25:58.48 ID:zE6f6eUMO
妹「兄さん、兄さんっ」

兄「おお、どうした妹よ……って、まだ落ちてないのか」

妹「落ちてないどころか、なんか保守までされてますよ」

兄「なんだって……なあみんな、こいつのID末尾を見てやってくれ!!」

妹「もう携帯が手汗でびちょびちょです、勘弁してくださいと中の人が」

兄「…………あー、妹さん。携帯が手汗で……何だって?」

妹「もうびちょびちょです、と」

兄「…………ワンスアゲイン」

妹「もうびちょびちょ……あの、兄さん?なんで前屈みになるんですか?」

565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 21:30:16.64 ID:zE6f6eUMO
妹「失礼します」

会長「ん?ああ、君か……久しぶりだな」

妹「お久しぶりです、先輩……その、兄さんは?」

会長「彼なら使った備品を片付けに、二階の事務倉庫まで行っているよ。そろそろ戻るとは思うが……」

妹「そう、ですか」

会長「……なるほど。用件はその、ポケットの中の包みかな?」

妹「え、あっ……」

会長「こうも頻繁に、手作りの菓子をプレゼントしてもらえるとは……彼も、男冥利に尽きる、と言ったところか」

妹「こ、これはただ……調理部で作った物が余っただけですから」

会長「ふぅーん、ほぉーう……」ニヤニヤ

妹「な、なんですか?」

会長「いや、これは調理部に所属する友人から、軽く耳に挟んだことなんだが……」

妹「は、はあ……」

会長「他の部員の倍も材料を使っていれば、確かに毎回余るのも納得できるなぁ……と、ね」ニヤニヤ

妹「!!!!」

570: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 21:44:19.93 ID:zE6f6eUMO
会長「くくっ……そんなに照れることでもないだろう、妹が兄に菓子を手渡すくらいで」

妹「せ……先輩は、誰かに料理を作ってあげたりはしないんですか?」

会長「今のところはそんな予定もないし、願望もないよ……貢がれるのは良いかもしれないが、僕から何かを贈るというのも、な」

妹「み、貢がれる、って……」

会長「軽い冗談だよ……それで、彼の所には行かないのか?」

妹「あ、はい……二階の事務倉庫、ですよね」

会長「ああ、場所はわかるな?……ならば餞別だ、受け取れ」ポイッ

妹「わっ、と……鍵、ですか?」

会長「そうだ、鍵だ……無くさないでくれよ、スペアもマスターキーも無いからな」

妹「それで、これは何の鍵なんでしょうか?」

会長「決まっているだろう、君が今から向かう事務倉庫の鍵だ」

妹「?……鍵、開いてないんですか?」

会長「いや、通常は常に解放されている。学生会役員の一部くらいしか、使用することはないからな」

妹「???」

573: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 21:53:13.40 ID:zE6f6eUMO
会長「ここまで言えばわかると思っていたが、君はよほど純真なのか、よほどの正直者なのか」

妹「あの、つまりどういう……?」

会長「良いか?めったに使われない倉庫、鍵は君の手の中、スペアキーもマスターキーも存在しない……つまりだ」

妹「…………はい?」

会長「……内側から鍵を閉めてしまえば、完全な密室というわけだな」ニヤニヤ

妹「なっ……な、なあっ!?」

会長「ただでさえ窮屈な校舎の中、二人きりになれる空間は貴重だろう?青春を謳歌したまえ、後輩」

妹「し……知りません、もう行きますっ!」

会長「防音設備も一応は存在するから、そんなに心配する必要は無いぞー」

妹「してませんっ!」


バタンッ!


会長「んー……良いなぁ、あの兄妹はいじりがいがあるなぁ……」ニヤニヤ

576: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:02:15.84 ID:zE6f6eUMO
妹「まったくもう、先輩ったらいつもからかってばかりで……」

兄「あれ?妹?」

妹「……あ、兄さん」

兄「どうしたんだ?こんな場所で……部活は?」

妹「今日はもう終わりました。先輩から、兄さんはこちらだと伺いましたので」

兄「そっか……あとはこれだけ中にしまえば終わりだから、ちょっと待ってて」

妹「ではお手伝いします、それほど重たいものは無さそうですし」

兄「良いのか?……じゃあ、お願いするよ」

妹「はいっ」



兄「保管用のファイルは……ここで、接着剤は……こっちか」

妹「……兄さん、終わりましたか?」

兄「ああ、ちょうどこれで終わりだよ。そっちは?」

妹「お疲れ様です、私も先ほど終わりました」

579: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:09:34.31 ID:zE6f6eUMO
兄「ふぅ……お疲れ様、助かったよ」

妹「いえ、このくらいなら全然平気です」

兄「そうか、ありがとう……はい、妹のぶん」

妹「あ、ありがとうございます……って、このジュースはどうしたんですか?」

兄「こっちの作業が終わったら一息ついて、そのまま帰って構わないぞ……と、会長に手渡されてなぁ」

妹「……はあ」

兄「最初はなんで二つも?と思ったが……最初からこうなることはお見通し、ってわけか」

妹「先輩が鋭いのか、私たちが単純なのかわかりませんね……」

兄「まあ良いさ、ありがたくもらっておこうぜ」

妹「そうですね、せっかくのご厚意ですし」

兄「ん、かんぱーい」

妹「はい、お疲れ様です」

582: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:17:58.68 ID:zE6f6eUMO
兄「そういえば、何か用事があったんじゃないのか?」

妹「あ……はい、その……ですね?」

兄「?」

妹「あ、あの…………こっ……これ、どうぞ!」

兄「え?あ、ああ……うん、ありがとう」

妹「ど、どういたしまして……」

兄(もう入学して四回目なんだから、そろそろ慣れても良いと思うんだが……)

妹「……………………」

兄「……えーっと、今食べれば良いのかな」

妹「作り手としては、やはり感想が気になりますから」

兄「じゃあ、その……いただきます」

妹「はい、どうぞ」

兄「……………………」サクサク

妹「……………………」じっ

兄(嬉しい……嬉しいんだけど…………食べづらいなぁ)

588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:33:24.30 ID:zE6f6eUMO
兄「うん……美味いよ、お世辞抜きに」

妹「ほ、本当ですか?」

兄「ああ、どんどん上達してるな……えらいぞ、妹」

妹「は……はい、ありがとうございます」

兄「よーしよしよし……えらいえらい」

妹「もう、兄さんったら……子供扱いしないでください、もうっ」

兄「そう言いつつも嬉しそうだな、妹よ」

妹「それは……兄さんの気のせいです、たぶん」

兄「まったく、可愛い奴だなお前は」

妹「ん……ねえ、兄さん」

兄「うん?」

妹「……………………」じっ

兄「ああ……何だろうね、その期待に満ちた視線は」

妹「……それを……私の口から……言わせるん、ですか?」

兄「……う……」

589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:34:28.67 ID:zE6f6eUMO
うっかり電源ボタンを二連打しただけで打った文章が全て消える



……これだから携帯は……

594: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:41:15.12 ID:zE6f6eUMO
妹「……軽く、触れるくらいで良いですから……」

兄「でも、誰かに見られたら……」

妹「……外からは見えませんよ」

兄「で、でも中に入ってきたら……」

妹「……さっき……鍵、閉めちゃいました」

兄「……う……」

妹「……お願いです、兄さん……軽く、一度だけで良いですから……」

妹「……私は、それだけで満たされますから……」

妹「…………今……キスしてください……」

兄「……ああ、わかった」



妹「…………んっ…………」

601: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:49:43.11 ID:zE6f6eUMO
兄「……ごちそうさまでした」

妹「……はい、お粗末さまでした」

兄「あー……なんだろう、すごい恥ずかしい」

妹「兄さんの唇、甘かったです……お菓子のせいでしょうか?」

兄「はい妹!恥ずかしい台詞禁止!」



兄「さて、そろそろ帰るか……」

妹「はい、さっきは……その、ごめんなさい」

兄「んん?」

妹「また、わがままを聞いていただいたみたいで……」

兄「わがまま、って……あのくらいなら可愛いもんだよ、気にすんな」

妹「本当に?は、はしたない、とか……思われていませんか?」

兄「好きな人からキスを催促されて、嫌がる男なんかいないっての」

妹「そう、ですか……」

兄「ああ。ほら、帰ろうぜ」

605: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 22:59:03.04 ID:zE6f6eUMO
ガラッ

兄「……………………」

妹「……………………」

会長「……………………」

兄「…………………あー」

会長「……やあ、お疲れ様!」

兄「………………何してるんすか」

会長「おっと誤解するのはやめてもらおう、僕はただの通りすがりだ、それ以上でもそれ以下でもない」

兄「なんでただの通りすがりの歩行者が、通路にしゃがみ込んだまま扉に方耳をあてる体勢をとってるんですか」

会長「……………………」

妹「……………………」

会長「そうだ妹くん、鍵を返してもらえるかな?なにぶん貴重品だからな、うっかり紛失しては大変だ」

兄「話をそらさないでください」

会長「それでは、僕はまだ仕事があるので失礼するよ。さらばだ諸君、アデュー」

兄「人の話を聞けっ!!」

620: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 23:24:44.28 ID:zE6f6eUMO
妹「兄さん、ご飯ですよ」

兄「おーう」




妹「兄さん、お風呂が沸きましたからお先にどうぞ」

兄「ん、ありがとう」




妹「兄さん……テレビを見るのも良いですけど、課題は終わってるんですか?」

妹「…………まったく、もう」

622: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 23:28:32.27 ID:zE6f6eUMO
妹「…………………」

兄「なんだ妹、まだ起きてたのか?」

妹「は、はいっ?」

兄「明日休みだからって、夜更かしは美容に良くないぞ」

妹「あ、そうです……ね」

兄「ん、それじゃあおやすみ……」

妹「……はい、おやすみなさい」




妹「……………………」


妹「……はぁ………………」



妹「………………よしっ……」

627: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 23:37:37.56 ID:zE6f6eUMO
妹「………………兄さん、起きてますか?」

兄「おう……どうした?」ガチャ

妹「あ、いえ……どうしたというか、その……」

兄「?まあ、入りなよ」

妹「はい……」

兄「それで……どうしたんだ?悩み事か?」

妹「悩み……というか、相談、というか……その」

兄「んん?」

妹「っ……兄さん、率直に聞きますから……正直に答えてください」

兄「え?あ……はい、わかりました」

妹「………………」

兄「………………?」

妹「……………っ……」



妹「兄さん……私に、女としての魅力は……ありますか?」

636: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 23:43:43.97 ID:zE6f6eUMO
兄「…………はい?」

妹「ですから……私に、女性として至らない点は……ありますか?」

兄「至らない、って……そんなことないよ。妹は可愛いし、性格も良いし……魅力的な人だと、思うよ」

妹「……はい、兄さんなら……そう答えてくれると、思いました」

兄「うん……」

妹「……それなら、どうして……」スッ

兄「っ……妹、近すぎ……」

妹「どうして、兄さんは……私を、求めてはくださらないんですか……?」

兄「……え……」

妹「兄さんは……どう、して……」



妹「……私を抱いて、くださらないんですか……?」

648: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/02(金) 23:50:36.63 ID:zE6f6eUMO
兄「……抱、いて……って……」

妹「私が兄さんを慕っていると……愛していると、知っていて……」

妹「……それでもなお、私の肌に、触れてくださらないのは……」

妹「……私に、それほどの魅力が……無いからですか?」

兄「……………………」

妹「…………っ…………」

兄「うん……ごめんな、妹」

妹「え……?」

兄「そんなに、妹が思い詰めてたなんて……知らなかった。妹の気持ちを、ちゃんと考えてなかった……だから、ごめん」

妹「……兄、さん」

兄「……えー、正直に答えます」

妹「……………………」

兄「妹のことはずっと、魅力的だと思ってたよ。触れたいとも思ったし……抱きたいとも、思った」

664: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 00:00:04.37 ID:3SsIWit9O
妹「……それなら、どうして……っ……」

兄「妹の魅力は、俺が一番わかってるつもりだよ。だから……その魅力が、楽に手に入ったものじゃないってことも……わかってる」

妹「………………?」

兄「自分を磨いて、自分を高めて……たくさんの努力と研鑽を積んで、その魅力を維持してることも、わかってる」

妹「……にい、さ……」

兄「だから俺も、それに見合うだけの努力をして、自分を磨いて……妹に釣り合うだけの、自分にならなきゃいけない、って思ったんだ」

兄「そうしないと……結局、妹に魅力に溺れるだけのような気がして……」

妹「…………兄さん」

兄「うん……?」

妹「兄さんは……優しいけど、やっぱり少しおバカです」

兄「バカ、って……う、わっ!?」ドサッ

671: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 00:07:56.61 ID:3SsIWit9O
兄「ちょっ、妹……ん、むっ!」

妹「んっ……ぅ……ちゅ……」

兄「……っ、は……い、妹?」

妹「私だって、誰よりも……兄さんの魅力を、知っているつもりです」

妹「いつも周りに気を配って……誰よりも優しくて……私を、守ってくれました」

妹「私は、そんな兄さんを好きになったんです……ありのままの兄さんを、愛しているんです……」

兄「…………妹……」

妹「だから、兄さんも……」



妹「ありのままに、私を……求めてください……」

765: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 02:20:59.06 ID:3SsIWit9O
妹「……ん……んぅ……」

兄「……妹さーん、起きてくださーい」

妹「んっ……あ……兄さ、ん……?」

兄「ああ。おはよう、妹」

妹「おはようございます……あれ?ここは?……あれ?」

兄「そろそろ起きてくれないと、シーツが片付けられないんですけど……」

妹「はい……?…………あ、きゃっ!」ガバッ

兄「……はは、やっと目が覚めた?」

妹「に、兄さん……私、その……えっと……」

兄「ん……大丈夫か?まだ痛みとか、あるか?」

妹「……あ……」

兄「…………?」

妹「大丈夫です、兄さっ……だい、じょ……う、ぐすっ」

兄「ほ、本当に大丈夫か?具合が悪かったりとかするか?」

妹「ちが、う……です……ちがっ……ふ、ぅええっ……」

771: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 02:26:50.01 ID:3SsIWit9O
妹「……ぐすっ……えぅ……」

兄「あー……ほら、よしよし……」

妹「にい、さん……夢じゃ、ないっ……です、よね?」

兄「え?」

妹「私、ちゃんと兄さんにっ…………抱いて、もらって……兄さんと……兄さん、に……ぐすっ」

兄「……うん、夢じゃないよ。夢なんかじゃ、ない」

妹「うれ、しいっ……です……兄さん…………好きです、大好きっ……」

兄「……うん、俺も……好きだよ、妹」

妹「っ……ふ、う……ぅええええ……」

兄「あーもう……こんなに泣き虫だっかな、うちの妹は」

773: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 02:35:07.66 ID:3SsIWit9O








妹「失礼します」

会長「やあ、君か……彼ならまだ着ていないよ?」

妹「そうですか……待たせていただいても?」

会長「もちろん構わないとも。おおかた、愛しの彼にまた贈り物かな?」ニヤニヤ

妹「……ええ、いつものお菓子ですけれど」

会長「……ほぉーう、今日はなんだか雰囲気が違うみたいだ」

妹「私も、いつまでも子供ではありません。日に日に少しずつ、大人へと成長しているんです」

会長「ふむ……なるほどなるほど、胸を張ってそう言えることは立派だが……足、がに股になってるぞ」

妹「な、えっ……ええっ!?」

会長「冗談だ。大人への道は遠く険しいぞ、可愛い後輩」

777: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 02:45:10.29 ID:3SsIWit9O
会長「しかし今の反応……なるほどなるほど、そういうことか……ふぅーむ」ニヤニヤ

妹「な、何ですか?私、何を聞かれても答えませんから!」

会長「もちろん、僕も鬼や悪魔ではない。かよわい乙女で、可愛い後輩である君から無理に聞き出すようなことはしない」

妹「……本当ですか?」

会長「もちろんさ、信用したまえ」

妹「……わかりました、信じます」

会長「うむ……と、いうことでだ」

妹「はい?」

会長「かよわい女性である君は見逃して、今から来る彼に聞き出すとしよう」

妹「……は?」

会長「彼も君に負けず劣らず弄り甲斐があるからな、きっとつつけばつつくほどにボロが……」

兄「うぃーっす」

会長「…………………」

妹「…………………」

兄「…………ん?」

781: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 02:52:17.66 ID:3SsIWit9O
兄「ちょっとなに!?俺はなんで引っ張られてるの妹さん!!」

妹「良いから逃げるんです兄さん、あの場所は危険です!!」
兄「危険って何が!?何がどう危ないの!?」

妹「私や兄さんの、こう……プライドというか、羞恥心というか……とにかく、あそこにいるのは危険です!!」

兄「わかったから!!わかったから走るから!!実はさっきから右足の方向が危ういんです!!わかったから引き摺らないで!!」








会長「ふむ……今日も元気だな、あの兄妹は。実にからかい甲斐がある」

会長「……しかし、まさか後輩に先を越されるとは、ね……」

会長「……まあ良いさ。僕は僕らしく、気長にのんびりやるとしよう」

796: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 03:07:31.28 ID:3SsIWit9O
兄「……ゼェ、ハァ……な、何がなんだか……」

妹「と……とりあえず、今日は逃げ切りましたね……ふぅ」

兄「だいたいの予想はつくけどな……おおかた、勘の良い会長にあれこれ尋問されそうだったんだろ」

妹「……ご名答です、兄さん」

兄「しかし、昨日の今日でこんなに走らせないでくれよ……俺はもう、体の底から精根尽き果てt」

ベチーン

兄「あ痛っ!!」

妹「き、急に変なこと言わないでくださいっ!」

兄「いや、だって仕方ないだろ!休日だからって一日中、しかも後半は妹の方からさs」

ベッチーン

兄「ぁいっだぁっ!!」

妹「に、兄さんの●●●、変 っ!」ギチギチ

兄「ちょっ痛い!本当に痛いこれ赤くなる!内出血になる!」

804: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 03:19:47.39 ID:3SsIWit9O
妹「ふぅ……まったくもう」

兄「いったぁ……やばいよこれ、マジで内出血ものだよ本当」

妹「……それで、これからどうするんですか?」

兄「これから?」

妹「学生会室に戻るわけにもいきませんし……まっすぐ下校しますか?」

兄「うーん……そうだなぁ」

妹「私は何でも構いませんよ、兄さんに付き合いますから」

兄「それじゃ……たまには、遊びに行くか」

妹「遊びに、ですか?」

兄「そう。普通にカラオケとか、ゲーセンとか」

妹「……なるほど……なんだか、今時の若者って感じがします」

兄「妹にそう言われるってのも、年長者としては複雑です」

813: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/01/03(土) 03:33:15.31 ID:3SsIWit9O
兄「じゃあ、行きますか」

妹「ええ、行きましょうっ」グイッ

兄「……おっ、と」

妹「ふふっ、良いですよね?腕を組むくらいは」

兄「ああ、良いけど……珍しいな、いつもはもっと人目を気にするのに」

妹「だって……もう、今までの私とは違いますから」

兄「ん?」

妹「確かに、妹であることに変わりはありませんが……」

兄「……うん」

妹「……今の私は、兄さんの恋人ですから」

兄「そう、だな……うん」

妹「兄さん、お顔が赤いです」
兄「うるせい」

妹「ふふっ……兄さんっ」

兄「え?」

妹「 大好きですっ! 」