前回 男「感動したい」

1: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:07:26.63 ID:BFm9/bQYO
教室~昼~

男「なぁみんなもそう思うだろ?」

生徒「……」

男「女はどう思う?死にたくならない?」

女「……」

男「くくっ、あはは!みんな何も返事しないのかよ!無視するなんてひどいな、ははっ!」

女「……」

男「まぁ、そりゃそうか。だって、ふふっ」

男「死人は口無し、なんだから」

引用元: 男「今日は晴れだから死にたくなるね」 



3: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:13:36.54 ID:BFm9/bQYO
男「それにしても、死にたかったのは俺なのに、なんで周りの奴らが死んでるんだか」

男「まぁ生きてても死んでても変わらないんだから、こいつらも幸せだろ」

男「こんな糞みたいにつまらない世界に生きてても、それは死んでるのと同じだ」

男「つまり俺はこの世界の救世主ってわけか。あははっ!」

男「さて、隣の教室も見てみるか」コツコツガラッ

4: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:16:48.30 ID:BFm9/bQYO
廊下~昼~

男「おぉ、静かだ」

男「……」シン……

男「普段の喧噪がなくなると、学校ってのはこんなにも心地いいのか」

男「最高だね、ますます最高だ」

男「この分じゃ、全校生徒が死んだのかな?」

男「はい、じゃあ確認でーす」ガラッ

5: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:21:39.36 ID:BFm9/bQYO
隣教室~昼~

男「こんにちはー、みなさん元気ですかー?」

生徒「……」

男「あらー、みなさん机に突っ伏してー、眠いんですかねー、くくっ」

教師「……」

男「先生、床の上に寝たら風邪引きますよ。あははっ!」

男「本当に全員死んでるわ。よーし、この調子で校舎全部回りますかー」

男「みんな死んでますようにー」パンパン

男「生きてたらうるさくてかなわないからな」

6: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:25:33.39 ID:BFm9/bQYO
グラウンド~昼~

男「ふぅ、やっぱり全員死んでたな」

男「もう授業も続けられないだろうし帰るか」ザクザク

男「それにしても、授業中にいきなりこんな力が手にはいるなんて、日頃の行いが良かったからかなぁ」

男「死が伝播する力……だったっけ」

男「長ったらしく脳内で説明されたんだよな」

男「ちょっと思い出してみるか」

8: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:31:39.23 ID:BFm9/bQYO
回想~教室~

女「男!男!当たってるよ!」

男「……ん?」

女「先生がこの問題を当ててるの!」ピシッ

教師「男、寝てんなよ。早くここを答えろ」イライラ

男「はい?あぁ、そうですか。わかりました答えます答えます」

教師「チッ、なんだその口の利き方は?」

男「いい加減俺の性格わかってくださいよ先生ーははっ」

女「あんたもうそれ何回目よ……」ボソッ

男(毎度毎度面倒だわ……死にたい……)

10: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:35:54.79 ID:BFm9/bQYO
?「死にたいのか?」

男(え?誰?つーかどこから?)

教師「……」イライラ

?「死にたいのか、そう聞いている」

男(まぁ、死にたいよ)

女「男……早く答えた方が……」

?「……ならば、死ね」

男(えっと、これは……幻聴?)

11: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:40:21.80 ID:BFm9/bQYO
生徒・教師「……」ドサッ

男「ん?あれ、みんないきなり倒れてどうしたの?」

?「お前を殺した」

男「はぁ?俺ピンピンしてるけど」

?「お前が死を望むと、周りは死ぬ」

男「そうなんですか。で、あなたは誰?」

?「そうしてお前は死ね。生きながらに死ね」

男「うわー、完全に無視された」

男「あれ?もしもしー?いなくなったのー?」

12: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:43:46.17 ID:BFm9/bQYO
男「はぁ……」

男「マジでコイツら死んでるのか?」

男「女ー、俺の大好きな女ー?」

女「……」

男「反応無し。こいつの脈はーっと」ピトッ

女「……」

男「あぁ、マジで死んでるじゃん、これ」

男「……死にたくなったら、周りが死ぬ」

男「じゃあ例えば」

男「今日は晴れだから死にたくなるね」

13: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:49:22.66 ID:BFm9/bQYO
下校途中~昼下がり~

男「ふんふーん」

老婆「こんにちは」

男「こんにちは。ところでですね、太陽が眩しいから死にたいんですよ、俺は」

老婆「……」ペタン

男「あぁ、俺とすれ違ったばかりに」

男「ですが、大丈夫。この死に方は一瞬ですから」

男「痛みも、未練も、悔しさも感じる間もなく死ねますから」

14: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:52:11.38 ID:BFm9/bQYO
男「俺は歩く安楽死かよ、ははっ」

男「……」カキカキ

男「今のは面白くねーな、死にたいわ」

カラス「……」ボトッ

男「うわ、ビックリした、死にたい」

カラス「……」ボトッ

男「うわ、ビックリっ」

カラス「……」ボトッ

男「って無限ループじゃねーか」

男「……」カキカキ

スズメ「……」ボトッ

15: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 22:58:09.41 ID:BFm9/bQYO
男「うーん、一体どれくらいの範囲まで死は伝播するんだ?」

男「試してみるか」

男「確か、家までは残り300mだったな」

男「家にいるのは……この時間なら妹はいないな。よし、電話だ」

男「妹だけは死なせたくはないからなぁ」プルルルル

男「まぁ死んだら死んだで無問題なんだけど」プルルルルガチャッ

男「あ、母さん?」

母「こんな時間にどうしたの?学校は?」

男「嫌なこと聞かれたから死にたいなぁ」

17: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:03:24.21 ID:BFm9/bQYO
母「っ!死にたいなんて言わないで!」

男「あぁごめんごめんことばのあやってやつだよ」タッタッタッ

母「冗談でも絶対やめて!」

男「ところで、今家の100m手前なんだよね」スタッ

母「話を逸らさないで!ちゃんと約束しなさい!」

男「俺が出来る親孝行は、母さんを苦しみから救うことみたいだわ」

母「あんた、何を」

男「そんなわけで、他に親孝行を何も出来ないから死にたい」

母「……」

男「ふーむ、100mか。結構長いな」

18: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:06:50.22 ID:BFm9/bQYO
家~昼下がり~

男「ただいまー」

男「……」シーン

男「母さーん、心臓は大人しくしてたー?」トテトテガチャッ

母「……」

男「良くできたみたいだねー。よしよし」ナデナデ

母「……」

男「さて、妹が帰ってきたらどう言い訳しようかなぁ」

20: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:11:50.61 ID:BFm9/bQYO
家~夕方~

妹「ただいまー」

男「おかえり。ところで母さんが死んでしまったんだが」

妹「だろうと思ってた。お兄ちゃんの通学路に死体が転がってるんだもん」

男「さすが妹は賢いなぁー、抱き締めてやろう」

妹「わーい!」ダキッ

男「よしよし。ところで、今日学校にいる時、変な声を聞かなかったか?」ギュー

妹「したよ。なんかね、私は死にたくても死ねない身体になったんだってー」

21: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:16:54.54 ID:BFm9/bQYO
男「へぇ?そうなのか。俺は死にたくなったら周りが死ぬような体質になったんだって」

妹「そうなの?じゃあ私とお兄ちゃんは相性ピッタリだね!」

男「そうかもなぁ。お前みたいに出来の良い妹がいて良かったよ」

妹「えへへ。ところで、今日のご飯は何にする?」

男「んー、スーパーにでも行って、そこで決めるか」

妹「わかった。そしたら財布を取ってくるから」

男「いや、みんな物要らない身体になるから、タダでいいよ」

妹「あ、そっか!お兄ちゃん便利!」

男「まぁな。お兄ちゃんは凄いんだぞ」

22: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:20:45.28 ID:BFm9/bQYO
スーパー~夕方~

店員「いらっしゃいませー」

妹「今日は何がいいのかなぁー」

男「何だろうなぁー」

妹「お兄ちゃんの食べたい物を教えてください!」

男「そしたら……マツタケ!」

妹「お金払わなくていいからって、えげつないチョイスだね!お兄ちゃんのそんなところが大好き!」

男「だろぉ?もうカゴ一杯に詰め込め!俺が許す!」

24: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:24:16.32 ID:BFm9/bQYO
店員「103500円になりまーす」

男「高っ高過ぎだろ!妹もそう思うだろ?」

妹「うん!スーパーで見るような桁じゃないね!」

店員(絶対買う気ないだろ……マツタケしかカゴに入ってねーよ)

男「……今不愉快な目線を向けられた」

妹「死にたいのー?」

男「あぁ、死にたい」

店員「……」ドサッ

25: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:28:16.51 ID:BFm9/bQYO
妹「凄い!本当にこんな簡単に死んじゃうんだね!」

男「そうなんだよ。本当に人の命って儚いねぇ」

妹「お兄ちゃんいつも言ってたもんね!死ぬように生きるくらいならいっそ……って!」

男「……なんかそう真似されると恥ずかしいんだが」

妹「えー、格好良いから良いんだよぅ!」

男「そ、そうか?俺格好良い?」

妹「うん!」

男「……くふふ」

26: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:32:52.48 ID:BFm9/bQYO
妹「でもその力って、私達がしたいことをするのには不向きだね」

男「したいこと?なんだっけ?」

妹「まさか忘れてないよね?」

妹「あのクソ男に復讐するって誓ったこと、忘れてないよね?」

男「ははっ、クソ男って結構ひどいなそれは」

男「もっとオブラートに包みなさい」

男「一応、俺達の父さんなんだから」

28: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:52:04.25 ID:BFm9/bQYO
妹「お兄ちゃんは優しすぎるんだよぉ」

兄「そうなのか?」

妹「うん!早く帰ってご飯にしよ!」

兄「あぁ、そうするか」

妹「お兄ちゃん大好きだよ!」

30: 名も無き被検体774号+ 2012/11/10(土) 23:56:20.74 ID:BFm9/bQYO
家~夜~

妹「ごちそうさまー」

男「ごちそうさま。美味しかったよ」

妹「えへへー、作った甲斐がありました」

男「テレビ付けるか」ポチッ

妹「……お兄ちゃん」

男「……なんか、全然話題になってないな」

妹「うん……あれだけ人が死んだら、大事件になってもおかしくなさそうなに」

男「そうだなぁ……少し心配してたんだが、杞憂だったかな」

31: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:00:29.04 ID:BFm9/bQYO
妹「ね、お母さんもいないんだし、今日は一緒に寝よう?」

男「あぁ、そうだな」

妹「あはっ、お兄ちゃん大好きー」スリスリ

男「俺も大好きだぞ、妹」

妹「すぐ死にたくなっちゃうお兄ちゃんには、もう私しかいないんだからね?」

男「わかってるわかってる」

妹「うん、ならよろしい!」ニコッ

32: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:06:19.77 ID:/degnXgUO
?~?~

?「流石精神がぶっ壊れた奴は違うな」

?「絶望すらしないんだから、驚きだわ」

?「でも、僕ちょっと怖いよ……」

?「まぁ、正常な精神の奴からしたら、そうかもな」

?「なんかその言い方はっきりしないな……一応僕はまだ普通の人間の精神持ってるつもりなんだからね?」

?「私だって普通の精神だぞ!」

?「はは……まぁ、どんな精神だろうが好きだよ、俺は」

?「「……///」」

33: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:09:33.88 ID:/degnXgUO
家~朝~

妹「おはよーお兄ちゃん」

男「ん……おはよ」

妹「学校はどうするー?」

男「みんな死んだから学校閉鎖だろ……」

妹「それもそうだねー。あ、そしたら私の学校にも来てよ!」

男「ん。わかった……」

妹「そうと決まれば、もうご飯は作ってるから、さぁ早く食べた食べた!」

男「うーい……」

34: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:13:31.02 ID:/degnXgUO
通学路~朝~

妹「……お兄ちゃん」

男「あぁ、死体が消えてるな」

妹「……誰かが片付けたのかな?」

男「さぁ、どうだろう。眠くて考えられない……」

妹「本当にお兄ちゃんは朝に弱いよね……」

男「まぁ誰か来ても、俺が死にたくなったら勝手に死ぬしな」

妹「それもそだねー。気にしたら負けって奴だね!」

男「そゆこと。考えるのなんて面倒です」

35: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:18:40.41 ID:/degnXgUO
妹の学校・校門~朝~

妹友「あ、妹ちゃんおはよー!……?後ろの人は?」

妹「おはよー。この人は……私の彼氏!」

男「実妹と結婚出来ないから辛いね、死にたい」

妹友「っ!?あっ、あっ!」ガクガク

男「あれ……何か、すぐ死なないな、この子」

妹「本当だぁ。やだ、妹友ちゃん白目向いてがくがくしちゃってる」

妹友「ひぁっ!いだっ!やめっ、あっ、かはっ……」ドサッ

男「……死んだみたいだな」

36: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:24:29.02 ID:/degnXgUO
妹「友ちゃん凄く苦しそうだったねー」

男「あぁ……他の奴でも試すか」

妹「わかった!じゃあ、友ちゃんの死体で脅して一カ所に集めようよ!」

男「お、名案だな。一気に死んでもらえば、苦しむ奴らの間に何か共通点が見つかるかもな」

妹「そうと決まれば、お兄ちゃん、それ背負って?」

男「はい……おぉ、この子結構巨 だな。勿体無い」

妹「私だって巨 になるもん!他の子で鼻の下伸ばしちゃだめ!」

男「わかったわかった。冗談だよ。さぁいこうか」

37: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:29:43.76 ID:/degnXgUO
妹の学校・教室~朝~

妹「みんなおはよー!さぁ、これを見てください!お兄ちゃん、床におろして!」

男「はい」ドサッ

生徒A「……?何も見えないよ?」

生徒B「というか、なんでお兄さんが」

妹「え?みんな妹友ちゃんが見えないの?」

生徒C「妹友……?誰、それ」

男「……意味分からなさすぎて死にたくなってきた」

生徒「あがっ……」ドサッ

38: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:34:27.84 ID:/degnXgUO
妹「あ、もうお兄ちゃん!勝手に死にたいと思っちゃだめだよー」

男「悪い、つい。でも、今なんか全員同じくらい苦しんで死んだな……」

妹「どういうことなんだろうねぇ……」

男「それがわかれば、父さんへの復讐も上手くいきそうだけど……」

妹「それに友ちゃんの死体がみんな見えてなかったっていうか、存在が無いことになってたね」

男「もしかしたら、俺の力は存在まで消してしまうのだろうか……?」

39: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:38:13.63 ID:/degnXgUO
妹「そういえば、お母さんの死体はどこへやったの?」

男「えーっと、普通にリビングに放置してたはずなんだけど」

妹「スーパーから帰ってきた時には、もう無くなってたね」

男「しばらくしたら消えちゃうのだろうか」

妹「うーん、だからニュースにもならなかったのかなぁ?」

男「そういうことだろうな」

妹「でもそう考えると、便利な力だよね」

男「どうやっても完全犯罪になるからな」

40: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 00:45:42.84 ID:/degnXgUO
?~?~

?「ん、やっと気付いたか」

?「この二人にはどんなことをしたの?」

?「推理してみろよ」

?「私はわかったから黙っておこう」

?「あー、それはズルいよ!」

?「ははっ、まぁ見とけば嫌でもそのうちわかるさ」

?「お前、こいつを殺すのを楽しんでるところが、質が悪いな」

?「お陰様で、楽しめてるんだよ。誰かさんが俺を殺そうとしたからな。こういう話は慣れてんのさ」

?「ふっ、懐かしいな……」

46: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 15:29:18.70 ID:/degnXgUO
男の学校~昼~

男「さて、一旦俺の学校に戻ってきたわけだけど」

妹「やっぱり死体はないねー」

男「そうだな……やっぱり死体は消えるみたいだなぁ」

男「……一体どういう仕組みなんだか」

妹「そうした人に聞ければいいんだけどね」

男「それだ」

47: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 15:33:34.28 ID:/degnXgUO
男「おーい!謎の人ー!」

妹「私を不死にした人ー!」

男「もう一回出てきてくれー!」

妹「……出てこないねぇ。というか、人なのかな?」

男「さぁ……頭に直接話しかけてくる人なんて聞いたこと無いけど、いるんじゃね?」

妹「神様……とか?」

男「もしかしたらもしかするかもなー、ははっ」

48: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 18:55:57.49 ID:/degnXgUO
?~?~

?「行ってあげないの?」

?「まだ早いな」

?「一年も待たされてたんだから、1日なんか甘いってこと?」

?「いや、そういうわけじゃ」

?「結構根に持つタイプだったのか。見損なったぞ」

?「ていうか元はといえばお前のせいだろ」

?「そのお陰で美女二人に囲まれて過ごせているのだから、私に感謝するべきだな」

?「はいはいありがとうございますー」

49: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 19:00:51.86 ID:/degnXgUO
家~夕方~

男「ふー、もうこんな時間か」

妹「お兄ちゃん帰ってきたのにダラダラしてるからだよー」

男「妹もダラダラしてたくせに」

妹「それはお兄ちゃんのがうつったの。私が始めたんじゃないもーん」

男「わかったわかった。じゃあダラダラするのやめようか」

妹「じゃあ何するー?」

男「今日の考察でもするかな」

50: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 19:44:11.22 ID:/degnXgUO
男「俺の死が伝わって死ぬ人間には二パターンいた」

男「一瞬で死ぬ人間と、苦しんで死ぬ人間だ」

妹「苦しそうにしてたのは、友ちゃんと、クラスのみんなだね」

男「あぁ。そして、妹友の方が明らかに苦しんでいた」

男「これから導かれることは……」

妹「場所が関係あるのかも?」

男「俺もそう思った。学校が関係するのかなぁ」

51: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 21:46:48.82 ID:/degnXgUO
妹「じゃあ試してみようよ!」

男「適当に人を連れてきてやってみようか」

妹「うん。今からやろうよ!」

男「いや、今日やったら夜になるだろうしなぁ。明日にしないか?」

妹「えー……うー、わかった」

男「よし。じゃあ飯にしようか」

妹「はーい」

52: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 21:53:46.35 ID:/degnXgUO
男「ごちそうさま。妹は料理が本当に上手だなぁ」

妹「えへへ、お粗末様でしたー」

男「ところでさ、父さんへの復讐の方法は、父さんを苦しめるってことでいいんだよな?」

妹「うん。そうだよ。それがどうかしたの?」

男「他には何かしなくていいのか?」

妹「えっと……無いかなぁ。苦しむところが見れたら、それでいいよ」

男「わかった。そういえば、父さんはどこにいるんだっけ?」

妹「さぁ?ずっと前に家出しちゃったし。まだ死んでなきゃいいけどね」

妹「時間は沢山あるんだから、きっと見つけられるよ」

男「そうだな。余計な心配だったか」

53: 名も無き被検体774号+ 2012/11/11(日) 21:59:25.63 ID:/degnXgUO
妹「ねぇ!久しぶりに一緒にお風呂に入ろうよ!」

男「別にいいけど、俺に見られても恥ずかしくないのか?」

妹「何で?私見られても恥ずかし無い体してるもん」

男「ならいいんだ……じゃあ入ろう」

妹「わーい!お兄ちゃんとお風呂!お風呂!」

58: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 06:56:48.30 ID:W2Ew/a0pO
風呂

妹「こうやって一緒に入るの、何年ぶりだろう」

男「さぁな。頭洗ってやろうか?」

妹「やったー!」

男「昔はよくこうやってたんだよなぁ」シャカシャカ

妹「んー……」

男「昔も今みたいに気持ちよさそうな顔してたっけ」シャカシャカ

妹「ふへぇ……?だって気持ちいいんだもん……」

男「そっか……昔話は湿っぽくなっていかんな。俺のキャラじゃない」シャカシャカ

妹「キャラなんて無いよ……お兄ちゃんは、お兄ちゃんなんだから……」

男「どんな理論だ。流すぞ」バシャッ

妹「ん。ありがとう。相変わらずお兄ちゃんは上手だね!」

59: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:04:16.84 ID:W2Ew/a0pO
妹「次は私が洗ってあげる!」

男「わかった。よろしく頼む」

妹「♪」シャカシャカガリッ

男「痛っ、今爪で頭引っ掻いたろ」

妹「あっ、ごめんごめん」シャカシャカ

男「以後気をつけるように」

妹「はぁい。うーん、これ結構難しいねぇ。流すよ?」シャカシャカバシャッ

男「ふー。今妹の気持ちがわかったよ。これ、気持ちいいな」

妹「でしょ?じゃあ今日から毎日これやろうね!」

男「ははっ、毎日か。あぁ、そうしようか」

妹「わーい!お兄ちゃん大好き!」ダキッ

60: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:13:10.62 ID:W2Ew/a0pO
男「裸で抱きつくな裸で」

妹「別に兄妹なんだからいいでしょ?スキンシップは大切だよ!」

男「いやさ、確かにそうは思うんだけど、ね?」

妹「もしかして、私に欲 してるの?」

男「そりゃ、妹は可愛いからな。当然だろう」

妹「えへへ……私、お兄ちゃんになら何されてもいいよ?」

男「そういうのは、結婚した相手に言え」

妹「じゃあお兄ちゃんと結婚してから、もう一回言ってあげる」

男「……そ、そうか」

妹「あはっ、心臓がドキドキしてる。照れてるの?」

61: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:20:48.12 ID:W2Ew/a0pO
男「ゆ、湯冷めするから湯船に浸かるか」

妹「ふふ、いーよー。照れてるお兄ちゃんってなんか新鮮だなぁ」

男「ふぁー、良い湯だわ」チャポン

妹「む、2人じゃ結構狭いね」チャポン

男「そりゃそうだ」

妹「じゃあお兄ちゃん足伸ばして。私はその上に座るから」

男「……わかった」

妹「よいしょ。えへへ、こんな入り方初めてかも」

62: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:29:11.70 ID:W2Ew/a0pO
男「妹」ギュッ

妹「何?お兄ちゃん」

男「……何でもないよ」

妹「何か不安なの?」

男「……いなくなったりしないよな?」

妹「しないよ。だって私は死なないんだよ?」

男「なら、いいんだ。でも、もう少しこのままでいさせてくれ」

妹「うん。ずっと一緒にいるよ、お兄ちゃん」

63: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:38:50.04 ID:W2Ew/a0pO
寝室~夜~

妹「今日も一緒に寝よー!」

男「あぁ。そうだな」

妹「シングルベッドに二人で寝ると狭いね」

男「大きくてもどうせくっついて寝るから、変わらないさ」

妹「それもそっか。んー、お兄ちゃんいい匂いがするー」

男「妹もいい匂いするよ」

妹「なんか安心するねー……」

男「なー……」

妹「……すー……すー……」

男「……zzz……」

64: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:46:37.86 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

?「あの二人、仲良いねー」

?「そうだな」

?「兄と妹で結婚の約束を交わすあたり、微笑ましいな」

?「でもあの兄と妹なら本気で結婚しそうだよね」

?「男はお兄ちゃんと呼ばれると弱いものなのか?」

?「いや、俺は呼ばれたこと無いからわからないけど」

?「お兄ちゃん、僕と結婚しよ!」

?「……これはなかなか」

?「私、お兄ちゃんのお嫁さんになるー!」

?「……」

?「だめ……だったか?」

?「……可愛すぎて意識飛んでた」

65: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:54:40.62 ID:W2Ew/a0pO
?「僕も今のにはどうやっても勝てる気がしないよ……」

?「私お姉ちゃんも大好きだよ?」

?「ふぇっ、僕もお姉ちゃんのこと大好き!」

?「いや、どっちも姉かよ」

?「お前的にはどっちが姉でどっちが妹だ?」

?「んー、こっちが姉かな」ビシッ

神姉「え?僕がお姉ちゃん?」

神兄「確かに見た目はお前が妹っぽいが、ギャップ萌えを狙ってみた」

神妹「私が妹か……わかった。そうしよう」

66: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 07:58:56.71 ID:W2Ew/a0pO
家~朝~

妹「んっ……ふぁー、朝かー」

男「……zzz……」

妹「お兄ちゃーん、朝だよー」ユサユサ

男「……おはよー」

妹「うん、おはよう。じゃあ私ご飯作ってくるから、起きててね?」スタッ

男「わかったー……」

妹「♪」トコトコ

男「よし、起きないと……」スタッ

67: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 08:07:52.40 ID:W2Ew/a0pO
男「適当に人を連れて行かないといけないけど、どうやる?」

妹「うーん、いきなり学校に来て下さいなんて言っても、怪しまれるよね」

男「脅すしかないのかなぁー」

妹「でもお兄ちゃんの力で死んだ人は存在ごと消えちゃうよ?」

男「そうなんだよなぁ……んー、どうしよ」

妹「それじゃあ私が連れてくるから、お兄ちゃんは学校の門で見張ってて」

妹「もし私が行く前に誰かが通ったら、呪文を唱えて試してみてね」

男「わかった。そうしよう」

68: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 08:12:43.31 ID:W2Ew/a0pO
妹の学校~昼~

男「誰も通らないな……」

男「妹はまだだろうか」

男「大丈夫かなぁ……」

男「いや、あいつはしっかりしてるから、大丈夫さ、うん」

男「……はぁ」

妹「お兄ちゃーん、連れてきたよー!」

男「お、やっと来たか」

70: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 08:42:11.91 ID:W2Ew/a0pO
通行人A「こ、こんにちは」

男「はい、こんにちは。じゃあ、ここに立ってもらっていいですか?」

通行人A「えっと、はい。これでいいですか?」

男「はい。では、空を見上げて下さい」

通行人A「え?あぁ、はい」

男「天気はどうですか?」

通行人A「曇り、です」

男「曇り……はぁ、憂鬱ですね。死にたくなるくらい」

通行人A「っ……」ドサッ

妹「んー、一瞬苦しんだね。というか前振り長いよお兄ちゃん」

男「悪い悪い。ていうか、どうやってこの人連れてきたんだ?」

妹「道に迷っちゃったので、学校まで誰か案内して下さい!って言ったの」

71: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 08:50:56.06 ID:W2Ew/a0pO
男「その割には妙に聞き分けが良かったな」

妹「案内してもらってる途中で、学校で変人な兄が待ってるって言ったからじゃないかなぁ」

男「変人ですか……否定はしないけれど」

妹「それに、兄は格好良いですよって言ったからかも」

男「そ、そうか」

妹「顔赤いよ?」

男「妹が変なこと言うからだろ」

妹「えー?だって私にとっては本当だもーん」

72: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 09:30:15.74 ID:W2Ew/a0pO
男「やっぱり場所が関係するみたいだな」

妹「そうだねぇ。でも妹友ちゃんの方が随分苦しそうだったのはなんでだろ?」

男「んー、時間も関係あるのかな?」

妹「時間?」

男「どれだけここで時間を過ごしたかってこと」

妹「沢山過ごせば過ごすだけ、苦しむのかな?」

男「そうなのかなと俺は思った。よし、実験だ。お、丁度良いところに人が。こんにちは」

通行人B「?こんにちは」

73: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 10:24:10.09 ID:W2Ew/a0pO
妹「あの、もし暇だったら、私達とお話しませんか?」

通行人B「まぁ、確かに暇ですけど。ですが、何故でしょうか?」

男「ナンパ、という奴ですよ、お姉さん」

通行人B「ふーむ、しかしあなた達2人はカップルなのでしょう?」

男「いえ、兄妹ですよ?」

妹「えぇ、そこはカップルって言おうよー」

通行人B「む、まさか近   という奴なのですか、いけませんそれは」

男「いえいえとんでもない。こいつの冗談ですよ」

74: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 10:29:08.12 ID:W2Ew/a0pO
通行人B「そうなのですか?妹さんは不服そうな顔をされていますが」

男「ほら、妹。冗談だって言いなさい」

妹「うー、冗談ですよ」

男「ね?違うでしょ?」

通行人B「何だか釈然としませんが、そういうことにしておきましょうか」

男「助かります。ところで、あなたは何をしていたのですか?ここらへんは何もないと思いますが」

通行人B「静かなのが好きなんですよ。特に、誰もいない校舎が好きなので」

男「おぉ、俺と気が合いそうですね。どんなところが好きなんですか?」

75: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 10:36:43.71 ID:W2Ew/a0pO
通行人B「何もかもが死んだような雰囲気、でしょうか」

妹(この人……どこかお兄ちゃんと似てる気がする)

男「俺もなんですよ。あの人がいるべきところに誰もいない、まるで世界から人が消えたような、あの空気が最高に好きなんです」

通行人B「今度、誰もいない学校へ一緒に行きませんか?あなたとは気が合いそうだ」

男「えぇ、そうですね。是非」

通行人B「妹さんも行きませんか?」

妹「ふぇっ?あ、あぁ、行きたいです。お兄ちゃんと一緒ならどこでも!」

通行人B「ふふ、お兄さんが大好きなんですね、妹さん」

妹「は、はい。あ、そうだ、今からここの学校に行きませんか?誰もいませんから」

77: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 10:49:33.67 ID:W2Ew/a0pO
妹の学校・校舎内~昼~

男「おい、妹。ここに連れてきて本当によかったのか?」ヒソヒソ

妹「大丈夫。それに出来るだけ長い時間校舎にいてもらった方が、苦しむ時間も長くなりそうだし」ヒソヒソ

通行人B「今日初めて中に入ったのですが、良いですね」

男「でしょう?」

通行人B「えぇ……」

男「……」

妹(何だか良い雰囲気だなぁ、この2人)

78: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 10:55:39.92 ID:W2Ew/a0pO
男「屋上に行きませんか?」

通行人B「屋上、ですか」

妹「普通屋上には出れないんだけどね。誰もいないから大丈夫だよ?」

通行人B「学生時代にもついぞ行ったことはありませんでした。ここで行ってみるのも、良いかもしれませんね」

妹「よし、じゃあ早速出発!」

妹「屋上に行ったら、よろしく頼んだよ、お兄ちゃん」ヒソヒソ

男「ん?あぁ、そう、だな」ヒソヒソ

妹(……この人が死ぬのは、嫌なのかな?)

79: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:01:29.32 ID:W2Ew/a0pO
屋上~昼~

通行人B「……気持ちのいい空ですね。さっきまでは曇っていたのに」

男「……えぇ、本当に」

妹「お兄ちゃん?」

男「悪い、あと少しだけ、話させてくれないか?」

妹「……わかった」

男「あなたは、死にたいと思ったことはありませんか?」

通行人B「?んー、自分が死にたいとは思いません。逆のことはよく思いますが」

男「逆?」

通行人B「えぇ、他の人がみんないなくなって、一人静かにいれればなって」

81: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:07:50.97 ID:W2Ew/a0pO
男「そうですか……」

通行人B「あなたは、死にたいんですか?」

男「……はい。良くそう思います」

妹「……」

通行人B「でも、あなたは死ねませんよ。あなたのことが大好きな妹さんがいるんですから」

男「!……えぇ、そうですね。妹は、大切ですから」

妹「お兄ちゃん……」

通行人B「あなた達が、少し羨ましくなっちゃいました」

82: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:16:58.73 ID:W2Ew/a0pO
通行人B「今日は楽しい時間を下さって、ありがとうございました」

通行人B「ここらへんでお暇させて頂きます」

通行人B「また、ここで会えたら良いですね」

男「……一つ、教えて下さい」

通行人B「はい?」

男「死は、救いだと思いますか?」

通行人B「……さぁ、どうでしょうか。さっきまでは答えを知っていたはずなのに、あなた達を見ていたら、わからなくなってしまいました」

男「そう……ですか」

通行人B「答えられなくてごめんなさい。それでは、さようなら」

83: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:23:07.78 ID:W2Ew/a0pO
男「……」

妹「……不思議な人だったね」

男「……」コク

妹「……お兄ちゃん?」

男「……ごめんな。俺、死にたいと思えなくなっちまった」

妹「……」

男「お前の復讐のためには、俺の力が必要なのにさ」

男「ごめんな……ダメな兄貴で」

妹「そんなこと、ないよ。お兄ちゃんとずっといれるなら、復讐なんて、いらないよ」

男「妹……」

84: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:29:26.63 ID:W2Ew/a0pO
妹「ねぇ、私のこと、好き?」

男「好きだよ」

妹「私が死んだら、死んじゃいたくなる位好き?」

男「多分」

妹「ずっと一緒にいたい?」

男「うん」

妹「私は死ななくて、お兄ちゃんが死んだらきっと自棄になるけど、その時はどうする?」

男「どうにかする」

妹「何それ。ふふ、適当だなぁ」

妹「でも、きっとお兄ちゃんならなんとかしてくれるって信じてるよ」

妹「大好き」

85: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:39:35.32 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

神兄「……運命の力って奴かもな」

神姉「ん?何が?」

神兄「あの2人が出会ったことが、だよ」

神姉「んん?どういうこと?」

神兄「その内、わかるよ」

神妹「私は前から運命という奴を信じているがな」

神妹「お前たちと出会えたのを、運命と呼ばずして何と言う」

神兄「確かに、そうかもな」

神姉「妹ちゃん良いこと言った!お姉ちゃんは感動した!」

神妹「何か子供扱いされてるように感じる……」

87: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:43:15.41 ID:W2Ew/a0pO
家~夕方~

妹「お兄ちゃーん」

男「何だ」

妹「今日も帰ってきてからダラダラしちゃったねぇ」

男「そうだなぁ」

妹「明日からもダラダラしようねぇー」

男「だなぁ」

妹「む、もうこんな時間か。ご飯を買いに行こうよ」

男「いきなりシャキッとしたな。はいはい、わかったよ」

89: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:50:32.90 ID:W2Ew/a0pO
家・寝室~夜~

男「今日は色々あったなぁ」

妹「そうだね」

男「これからは、妹が死ねる方法を探さないといけないのか」

妹「なんか、死についての話ばっかりだね、私達」クスッ

男「じゃあ……逆の話でも、する?」

妹「えっ、えーっと、それって……」

男「こ、子供は何人欲しい?」

妹「あ、あわわ、い、一杯!」

男「そ、そっかー!じゃあ頑張らないとなー」

妹「ふぇっ、が、頑張る!」

90: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 11:56:39.04 ID:W2Ew/a0pO
男「ま、まぁ、流石にまだ色々段階があるからな!うん!」

妹「そそそ、そうだよ!まだまだだよ!」

男「じゃ、じゃあ今日のところは」

妹「えっと、キス?」

男「……」

妹「……」チュッ

妹「しちゃった、ね///お、おやすみ」ギュッ

男「……おやすみ」ギュッ

91: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:04:48.03 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

神兄「さて、もうそろそろ、種明かしと行こうかな」

神姉「具体的にはどうするの?」

神兄「そうだな……簡単に言えば」

神兄「あいつらの父親に、全て説明するのさ」

92: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:06:17.65 ID:W2Ew/a0pO
家~朝~

男「ごちそうさま」

妹「お粗末様でした」

男「ふー、今日は何をしようかなぁ……」

妹「ダラダラでしょ?それとも、デートでも行く?」

男「それも良いかもなぁ」ドンドン

男「ん?玄関が騒がしいな。見てくるよ」ドンドン

男「はい、今開けますねー」ガチャッ

?「男……母さんを、母さんを殺したのか!?」

男「なんで、今更父さんが来るんだよ……?」

93: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:20:47.44 ID:W2Ew/a0pO
父「お前、お前ぇぇぇ!」バキッ

男「っ!相変わらず、暴力的なところは変わっていないんだな」

父「何故だ!?何故殺した!?」

男「はぁ?俺が殺したわけじゃない。俺が死にたいと思ったら、勝手に死んだだけだ」

父「ふざけるな!それはただの責任転嫁だ!」

男「黙れ!俺は殺してなんかいない!妹を虐待したあんたみたいな人間に、そんなこと言われる筋合いは無い!」

父「っ!それは!」

妹「朝からどうし……」

父「妹……?」

妹「あ、あ……嫌ぁぁぁ!」

94: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:27:06.15 ID:W2Ew/a0pO
男「妹!おい、しっかりしろ!」

妹「あ、あぁっ……うぅ……」

男「何でだ、何で現れたんだよ!?」

父「……男」

男「何だよ……」

父「お前は、妹のことが好きだったな?」

男「だから、だから何だよ」

父「今も好きか?」

男「そうだよ」

父「そうか……俺はな、昨日力をもらったんだよ」

父「不死を殺せる力を、な」

95: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:32:23.44 ID:W2Ew/a0pO
男「それで、どうするんだ?」

父「妹は不死なんだろう?だから、殺しに来たんだよ」

妹「嫌だっ、私、まだ死にたくないよ!やめてっ!」

男「何でだ?何で殺すんだよ!?別に殺さなくてもいいだろ!?」

父「黙れ。非力なお前には、俺を止めることは出来ないだろ?」

父「折角の力も、お前は死にたいと思えないから、使えない。そんなお前は、俺を止められない」

男「何で、それを……?」

父「力をもらうときに教えてもらったんだよ」

96: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:39:53.57 ID:W2Ew/a0pO
父「忘れたのか?お前は力を得るときに、こう言われただろう?」

父「生きながらに死ね、と」

男「っ!?」

父「妹が死んだ後、絶望の中で生きながらに死ぬんだよ、お前は」

父「それがお前の受ける報いだ。人を殺した、その報いだ」

男「……殺す。お前を殺してやる……殺す殺す殺す!!」

父「へぇ、良いのか?お前、そんなことしたら、」

男「っ!?痛っ、あ、あぁっ!」

妹「お兄ちゃん!?ねぇ、どうしたの!?お兄ちゃん!?」

父「死ぬぞ?」

97: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:48:08.08 ID:W2Ew/a0pO
父「お前が死にたいと思えば、周りが死ぬんだ」コツ

男「うるさっ、がはっ、だま、れっ!」

父「ならその逆は?殺したいと思えば?そしたらな、お前が死ぬんだよ」コツ

妹「やめてっ!お兄ちゃんっ!死んじゃうよ!」

父「あとな、お前の力で殺された人間は、痛みも何も感じなかったわけじゃない」コツ

父「ショック死を引き起こす致命的な痛みを与えていただけだ」コツ

男「はっ、はっ、はっ」

父「痛いだろう?それがお前が殺した人間の痛みだ」コツ

98: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 12:54:20.67 ID:W2Ew/a0pO
父「妹と関係のある人間程、生きている時間は延長される」コツ

父「不死のもたらす影響力という奴だ。まぁそのせいで苦しむ時間は長くなるのだが」スッ

男「やめっ、ろっ、いだっ、はっ、はっ」

父「お前は妹から愛されているが故に、苦しむのさ」

父「皮肉な物だな。そのせいで目の前にいる俺を止めることも出来ない」

妹「お兄ちゃんっ、やだよっ……死なないでぇ……」

父「このナイフで妹を貫いた瞬間、妹は死ぬんだ」

男「お前ぇぇ!殺してやるっ、殺してやるっ!」

100: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:02:10.86 ID:W2Ew/a0pO
父「妹、お前、自分の心配をした方がいいんじゃないか?」

妹「う、うるさいっ!私は、私はっ」

父「……俺は一応お前達の父親だ。だから、お前に兄を救うチャンスをやろう」

妹「な、なに?」

父「このナイフで兄を殺せ」

妹「無理だよっ!そんなの、私出来ないよっ!」

男「やめろっ、妹をっ、傷つけるなっ」

父「兄を楽にしてあげたいだろう?どうせそいつは死ぬんだ。遅いか、早いかの違いじゃないか」

妹「でもっ!私はっ!」

父「わがままを言って、やめるのかい?君の兄は、ちゃんとやれたのに?」

妹「お兄ちゃんが……?どういうこと……?」

兄「俺は何もやってなんてっ、いなっ、ぐぁっ」

101: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:10:13.57 ID:W2Ew/a0pO
父「この世界で、男が殺した人間の存在は、消えてしまったよな?」

男「ぐっ、それがなんだっ」

父「これも、逆があってしかりだろう」

妹「……?」

父「死んでいたはずの人間が、存在しているのだって、ありえるんだよ」

妹「そんな……じゃあっ、私はっ?」

父「妹は、兄に殺されているんだよ」

妹「嘘…?なんで、お兄ちゃんが、私を……?」

父「度重なる虐待で衰弱していくお前を見て、男はお前を殺したんだ」

男「なんだよっ、それっ……嘘だ!そんなのは嘘だ!」

102: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:15:48.92 ID:W2Ew/a0pO
父「それからだろう?お前が死を救いだと考えるようになったのは」

兄「違うっ!違う違う違うっ!」

父「妹を殺したのでは無く、救ったのだと思い込んだのだろう?」

兄「やめろ……やめろっ……」

父「大好きな妹のところへ行くために、死にたかったんだろう?」

兄「……」

妹「……お兄ちゃん?ねぇ、何か言ってよ!お兄ちゃん!」

父「精神が崩壊したか。さぁ、妹。早く兄を殺せ」

103: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:28:43.33 ID:W2Ew/a0pO
父「そいつももう限界だ。さぁ、早く殺してあげなさい」

妹「嫌だっ……嫌だ!」

妹「お兄ちゃんは、心が壊れてしまうくらい、私を殺したことを後悔してた!」

妹「私はそれを知って、凄く苦しい」

妹「私のために、お兄ちゃんは苦しんだんだって思うと、どんなことより辛い」

妹「折角生き返れたんだもん。私がどうにかしてお兄ちゃんを救う!こんな辛さを味あわせない。そして2人で絶対、絶対幸せになる!」

父「……お前がもしここで男を救っても、現実世界でお前が生き返ることは、無いんだとしてもか?」

妹「現実、世界?」

104: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:33:10.17 ID:W2Ew/a0pO
父「現実で、存在が消えたり蘇ったりするわけ、ないだろ」

父「ここは神が作った仮初めの世界なんだ」

父「お前が男を殺すことで、この世界は終わる」

父「この世界での記憶は、現実には持っていけない」

父「妹、お前の死は覆ることは無いんだ」

妹「……」

父「だから、わかったら、早く兄を殺してくれ……お願いだから……」

妹「なんで、お父さんが泣くの?」

105: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:43:20.60 ID:W2Ew/a0pO
父「……うるさい。お前の行動が役立たずなことは、わかったろ。早く殺せ」

妹「……それでも、やだ」

父「何故?現実に戻りたくないからか?」

妹「違う。神様がこの世界を作ったのなら、こうして私を生き返らせた意味が、きっとあるはずだから」

父「そんな、根拠の無いことを」

妹「私が不死の力をもらうときに、女の人が、こう言ったんだ」

妹「これは、諦めない力だ」

妹「どんな無茶に見えることでも、絶対に諦めるな、って」

妹「だから、私は諦めない。私がお兄ちゃんを救ってみせる!」

106: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 13:52:54.05 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

男「……ここは?」

神兄「俺の家だよ」

男「あんた、誰?」

神兄「お前に力をあげた張本人」

男「それなら、頼みがある」

神兄「何?言ってごらん?」

男「現実世界で、妹を生き返らせてくれ」

神兄「俺もそうしたかったんだけどね、無理だわ」

男「何故?」

神兄「無理なもんは無理だから」

男「……じゃあ、俺が生きている意味なんて、無いじゃないか」

107: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:02:22.89 ID:W2Ew/a0pO
神兄「妹が、お前を救うのを諦めないって言ったの、聞いてたろ?」

男「あぁ、だけど、妹がいないなんて、そんなの救いなんかじゃない」

神兄「一番辛いのは、お前じゃなくて妹なのに、なんでお前が後ろ向きなわけ?」

男「じゃあ、じゃあどうしろっていうんだよ!?妹が生き返ることは、無いんだろ!?」

神兄「ああ。それだけは出来ない。ごめんな。でも、だから、それ以外での救いは、なんだ?」

男「……妹に、辛い思いをさせない。俺が彼女に付けた傷を埋めることが、俺の救いだ」

108: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:13:55.93 ID:W2Ew/a0pO
神兄「そのためには何をすればいい?」

男「俺が妹を……殺、した事実を受け入れて、彼女のせいでおかしくなる、なんてことが無いようにする」

神兄「そうだな。出来るか?」

男「……妹が諦めてないんだ。兄貴の俺が諦めたら、格好が付かない」

神兄「うん。よく言った。そんなお前のために、3つアドバイスをしよう」

神兄「1つ、お前が現実世界に戻るトリガーは、お前が『さされる』こと」

神兄「2つ、この世界は精神世界であること」

神兄「3つ、お前の記憶は、間違っているところがある。そうして、さっきまでのやりとりで、それに気付きかけてる」

神兄「以上だ。じゃあな」

109: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:20:55.67 ID:W2Ew/a0pO
男「ぐっ、痛っ……」

妹「お兄ちゃん!?気付いたの!?」

男「ちょっと、神様に会ってきたっ、いっ!」

父「馬鹿な……死ぬほどの痛みの中で理性を保てるのか……?」

男「あぁ、くっ、はぁっはぁっ、おい、父さんっ」

父「な、何だ?」

男「妹を虐待してたわりにはっ、優しすぎやしないかっ?」

父「……」

男「本当の、くっ、ことを、言ってくれよっ」

父「……俺は、本当はお前達の義父だ。妹を虐待していた父とは、違う」

男「くっ……はぁっ、やっと痛みから解放された……」

110: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:34:29.38 ID:W2Ew/a0pO
妹「えっ、どういうこと?」

男「俺も詳しくはわからないんだ。説明してくれ」

父「……これは母さんから聞いた話なんだが、お前達の父は、ある時から妹に虐待を始めたらしいんだ」

父「勿論母さんは止めようとしたんだがな、やはり大の男には太刀打ち出来なかったそうなんだ」

父「ある時、隙を見つけて3人で逃げ出してな、そうしてある民家に飛び込んだそうだ」

父「それが俺の家でな。その時の妹と母さんはひどい有様だったよ」

父「それから、俺の家で暮らし始めたんだけど、妹は心的外傷を負ってしまっていたんだ」

父「幻覚、幻聴は当たり前。それによるストレスで、飯を食べてもすぐに戻していた」

父「日に日にやせ細っていく妹を見かねた俺は、入院させることにした」

111: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:48:17.83 ID:W2Ew/a0pO
父「しばらくして帰ってきた妹は、精神的にも肉体的にも回復していたように見えた」

父「そうして安心していたんだがな。あれは、きっと我慢を覚えてきただけなんだろう」

父「俺と母さんは共働きだったんだが、ある日家に帰ってくると、部屋の中央で血まみれのまま抱き合う男と妹を見つけた」

父「表情を無くした男の手に握られた包丁を見て、全て理解したよ」

父「そうして、妹を殺したのは俺だと警察に言い、そのまま逮捕された。妹のことに気づけなかったことへの、罪滅ぼしをしたかったのかもしれない」

父「だから本当は、義父だと名乗る資格も無いんだろうな……」

父「でも、信じれないかもしれないが、俺はお前たちを本当に愛してる」

父「男を早くこんな世界から出してやろうと悪役を演じたのに、それも失敗してしまったがな……すまない」

112: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 14:53:49.66 ID:W2Ew/a0pO
男「……」

妹「……お父さんも、辛かったんだね」

父「俺には、父の資格なんて……」

妹「私達のお父さんは、お父さんだよ。ありがとう。私も大好きだよ」

父「……くっ、うぅっ……」

男「父さんが泣いてどうすんだよ。大黒柱なんだろ?しっかりしろって」

父「あぁ……すまない……うぅっ……」

114: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:03:35.52 ID:W2Ew/a0pO
男「神様が言ってたんだけど、この世界は精神世界なんだってさ」

妹「どういうこと?」

男「多分、この世界の人の精神は本物なんだ。そして、肉体だけが仮初め」

妹「確かに私も小さい頃死んだはずなのに、ちゃんと成長した体だもんねー。」

男「そうだ。つまり、妹の精神は、まだちゃんと存在しているんだよ」

妹「それじゃあ……」

男「うん。全部生き返らせるのは無理だけど、精神だけなら、一緒にいれるかもしれない」

妹「方法はある?」

男「一緒に、この世界から抜け出す」

115: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:15:54.75 ID:W2Ew/a0pO
男「ここでは、俺は『さされる』と現実に戻ってしまうらしい」

妹「うんうん」

男「逆に言えば、俺が『さされる』までは現実には戻らない」

妹「どういうこと?」

男「別の原因で死んで、肉体を捨てて精神だけになっても、すぐに現実に戻るわけじゃないってことだ」

妹「?」

男「多分ね、俺が力で殺した人の精神は、まだその場に残っているはずなんだ」

父「じゃあ、母さんの精神はまだここにあるのか?」

男「うん。まぁ、見れないことが問題なんだけど……」

116: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:22:53.16 ID:W2Ew/a0pO
男「でもさっき神様に会った時に、優しそうだったから、きっと俺達にも新しい力を与えてくれてるはず!」

妹「お兄ちゃん、他力本願だね……」

父「母さーん!」ガチャ

妹「父さん部屋の中に行っちゃった」

男「追いかけよう」ガチャ

父「この青い人魂みたいなのが、精神なのか?」

男「多分。話しかけてみて」

父「母さん?俺だよ。久しぶりだね」

母「……っ、あなた……?」

父「会いたかったよ、母さん」

母「あぁ、夢でも見ているのかしら?」

117: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:30:48.17 ID:W2Ew/a0pO
父「~こんなわけで、今みんなここにいるんだ」

母「そう……大変だったわね。2人とも、不甲斐ないお母さんでごめんなさい」

妹「そんなことないよ?ね、お兄ちゃん」

男「あぁ、そうだ。だから、気にしないで。あと、死にたいなんて言ってごめんなさい。もう言わないし、思わないよ」

母「うん。その言葉が聞けただけで、十分」

父「母さん、妹と男の精神だけを抜くって、出来るかい?」

母「目覚める少し前に、何処かから声が聞こえてきてね、それを出来るようにしてあげるって言われたわ。あれが神様って奴かしら?」

118: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:36:25.00 ID:W2Ew/a0pO
男「何か他に言ってなかった?」

母「えーっと、久々にあいつの苦虫を噛み潰したような顔を見れたから、神使いが荒いのは許してやるって言ってたわ」

女「多分私の時と一緒の神様だね!」

男「当番でもあるのか?」

父「はいはい。早く魂になって。男が『さされる』と、現実に戻るんだよな?」

男「そうだよ。お父さん、よろしく頼んだ」

父「任せろ」

母「じゃあ、行くわね。よいしょっ」

119: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 15:42:56.44 ID:W2Ew/a0pO
男「おぉ、本当に抜けた」ホワホワ

妹「お母さん、よいしょはどうかと思うよ……」

母「私ももうおばさんなのよ」

男「これ動けるのかな?」ススッ

妹「うん、出来るみたいだね」

母「じゃあ、2人共手を繋いで……あ、手は無いのか。適当に引っ付いて」

男「はい、これでいい?」ピトッ

母「うん、大丈夫。じゃあお父さん、お願い」

120: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:03:02.25 ID:W2Ew/a0pO
父「わかった。男、ちゃんと母さんの言うことは聞けよ?妹、お兄ちゃんと幸せにな」

母「妹、お兄ちゃんを助けてあげてね。男、お父さんの話、私からちゃんと聞いて、お父さんに会いに行ってね?」

男「わかった。ありがとう。2人とも」

妹「記憶には残らなくても、ここであったことは、きっと魂に刻まれるよね?」

男「この世界は、精神、つまり魂は本物なんだ。きっとそうさ」

母「最後に。男、妹とずっと一緒になれたんだから、それは結婚と一緒よ?おめでとう。指輪は買いなさいね?」

妹「ふぇっ、親公認だよお兄ちゃん!?」

男「なっ、どんなタイミングだよ!父さん!はやく指で『さして』!」

父「ははっ、おめでとう。丁度、一回は言ってみたかったセリフがあるんだ。こほん」

父「どこの馬の骨かわからぬ奴に、娘は渡さん!」ビシッ

男「お前の子供だよー!」シュンッ

121: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:12:34.59 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

神姉「あははっ、あの家族面白いね!」

神兄「普通はもっと湿っぽくなりそうなだけどなぁ……」

神妹「ふふっ、お疲れ様だ、お兄ちゃん」

神兄「お前楽しそうだなぁ……」

神姉「ねぇねぇ、結局、なんであんな世界を作ったの?」

神兄「あぁ、それはな、現実世界で、男は死を救いだと思って、大量殺人をするのさ」

神妹「それを止めるには、ああする必要があったのだ」

神姉「妹を死なせないことは、出来なかったの?」

神兄「俺達が世界を変えることが出来るのは、俺達が神になってから後の世界だけだ」

122: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:19:01.67 ID:W2Ew/a0pO
神妹「私は世界の全てを平和にすることは、出来なかった。彼の妹が死んだのは、私のせいだ」

神兄「またそうやって1人で抱え込むなよ。その後悔は、三等分してみんなで持てばいいんだ」

神姉「そうだよ。私たちは、三人で1つなんだから」

神妹「ふふ……ありがとう」

神姉「あ、そういえば、あの通行人Bは、なんだったの?」

神兄「あれはな……いや、見ていればわかるさ」

123: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:28:50.31 ID:W2Ew/a0pO
教室~昼~

女「男!男!当たってるよ!」

妹「お兄ちゃん!起きて!」

男「ん……妹?」

女「先生がこの問題当ててるの!」ビシッ

教師「男、寝てんなよ。早くここを答えろ」イライラ

妹「んー、これは3x-5だね」

男「……3x-5?」

教師「……わかってても、寝ないように」

女「どうしちゃったの、男?真面目に答えたのなんて初めてじゃない?」

男「いや、なんか、妹の声が……」

女「妹?」

男「あー、気のせいだ。ごめん」

妹「気のせいじゃないよ?」

男「うわぁっ!?」ガタッ

教師「何だ?」

男「いや、その、体調が悪いので保健室に行ってきます!」タッタッタガラッ

124: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:36:34.03 ID:W2Ew/a0pO
学校・校門~昼~

男「幻聴のため早退か……初めてだな」

妹「だから、幻聴じゃないよ?」

男「……あーもう!わかったわかった!何だ?本当に妹なのか?」

妹「うん!そうだよ、お兄ちゃん!」

男「何がどうしてこうなったんだ?お前は俺がこ、殺したじゃないか?」

妹「うーん、確かにそうなんだけど、お兄ちゃんが好きだから戻ってきた……ような気がする」

男「気がするだけか……まぁ、いいか。俺も妹のこと好きだしな」

妹「そ、そう?えっと、じゃあ……指輪!指輪買いに行きたい!」

男「指輪?また何でそんなものを?」

妹「えーと……私達、結婚してる、から?」

男「ごめん、全く意味が分からないぞ。妹よ」

125: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 16:53:21.72 ID:W2Ew/a0pO
妹「お兄ちゃんと結婚するんだもん!結婚したいしたいしたい!」

男「頭の中で暴れるな、頭痛いくなるからっ」サッ

?「あの、大丈夫ですか?」

妹「あっ、通行人Bさん!」

男「通行人B?」

?「なんて失礼な呼び方でしょうか。自分にはちゃんとした『妹』という名前があります。」

男「それって、妹と同じ名前……?」

妹「えぇ!?そんな運命的な存在だったの通行人Bさん!?」

?「む、妹さんが自分と同じ名前なのですか?珍しい名前だと思っていたのですが……運命を感じますね」

妹「じゃあ、その子は妹Bちゃんか……」

126: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:00:47.22 ID:W2Ew/a0pO
男「は、はぁ……運命ですか」

妹B「あなたの名前は?」

男「『男』です」

妹B「っ!?」

妹「まさか兄弟と一緒の名前とか、無いよね?」

男「そ、それはないだろ。おい、大丈夫?」

妹B「……」

男「もしもーし?妹Bさーん?」

妹B「……私は妹Bじゃない。『男』だ。」

127: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:04:53.93 ID:W2Ew/a0pO
妹「に、二重人格がその名前だったの!?予想外すぎるよ!?」

男B「もうこれは運命以外の何物でも無いだろう。さぁ、私の家に来るといい」

男「は、はぁ……」

妹「お兄ちゃん!?行くの!?」

男「あぁ、これ行かないといけない奴だと思うんだ、なんとなく」

妹「も、もう!お兄ちゃんの浮気者!馬鹿!あんぽんたん!もう知らない!」

男「い、妹?おーい?返事してよー?」

男B「何を1人でブツブツ言ってるんだ?」

男「いや、妹が拗ねちゃって」

妹B「呼びました?」

男「いや、君じゃなくて、俺の妹の方!」

128: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:13:08.73 ID:W2Ew/a0pO
妹B「あれ?でも妹さんなんてどこにもいませんよ?」

男「いやー、その、俺の中にいるみたいなんですよ」

妹B「私と一緒のようなものですね。ますます運命を感じます」

男「そ、そうですか?妹、指輪買ってあげるよ?」

妹「……結婚してくれる?」

男「わかったわかった結婚するから」

妹「うん。機嫌直すね!」

男「現金な奴だ……ん?」クイクイ

妹B「その……まだプロポーズされたばかりで気が早いのは承知していますが、こ、子供は何人欲しいですか?」

妹「お兄ちゃぁぁあん!?」

男「勘弁してくれぇぇぇ!!」

129: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:22:07.23 ID:W2Ew/a0pO
?~?~

神姉「な、なんかまた凄い人だね」

神兄「妹がいなかったら、2人でどんどんネガティブを増幅しあってたんだけど……あれぇ?」

神姉「妹さんが入ると、こんなに変わるものなのなんだね……」

神妹「いや、多分あれは相当特殊なパターンだろう……」

神兄「な、何はともあれ、一件落着……かな?」

神妹「そうだな。そろそろこの名前も面倒になってきたしな。えいっ」

女神「あぁ、結構気に入ってたのに」

神「それはさておき、だ。男、もうそろそろ私達も、指輪が欲しいのだが」

男神「わかったよ。じゃあ、行こうか」

130: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:30:08.13 ID:W2Ew/a0pO
結婚指輪専門店

店員「はぁ、同じ指輪を3つ、ですか?」

男神「えぇ、三人ペアで」

女神「神ちゃんこれも可愛いよね?」

神「可愛いな。だがこっちもなかなか良いのではないか?」

男「な、何かすごい三人組がいる」

妹「あれ……あのお姉さんの声どこかで……」

131: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:34:06.56 ID:W2Ew/a0pO
妹B「これがいいです!男さん!」

男「え?あぁ、そうだな。でも金が無いから……」ゴソゴソ

神「……えいっ」

男「……あれ、なにこの紙の塊……さ、札束?」

妹「!お兄ちゃん、それ、神様からのプレゼントだよ」

男「え、使っていいのか?」

妹「うん!大丈夫!」

男「すいません、この指輪3つ下さい」

店員「が、学生が3つこれを!?世も末だわ……ビックリか?何なんだ?」ブツブツ

132: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:40:03.14 ID:W2Ew/a0pO
男「妹Bさん、手を出して下さい」スッ

妹B「だからBはやめて下さい。ですが……嬉しいです。ありがとうございます」

男「あはは、喜んでもらえたんなら、嬉しいです。妹の分は、どうしようかなぁ……」

女神「やぁっ!」

男神「うわぁっ、ビックリした!いきなり叫ぶな」

神「女は相変わらず使うのが下手だなぁ……」

133: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 17:48:41.07 ID:W2Ew/a0pO
異空間

男「ここは……って妹……?」

妹「あれ、なんか、今だけ体が見えるみたいだね」

男「っ、妹……」ギュッ

妹「ふふ、お兄ちゃん……もう、こんなこと出来ないかと思ってた……」

男「妹、俺さ、妹B……いや、妹さんと結婚すると思うんだ。なんか、そう、運命みたいなもんだと思う」

妹「そっか……」

男「でも、その、うまく言葉に出来ないけど、俺は妹が大好きなんだ。だから、手、出して」

妹「……はい」

男「妹、ありがとな。これからは、ずっと一緒だ」スッ

妹「うん……うん!」

134: 名も無き被検体774号+ 2012/11/12(月) 18:02:42.64 ID:W2Ew/a0pO
結婚指輪専門店

男「っ!……指輪が、無くなってる。さっきの、幻じゃなかったのか」

妹B「さぁ、帰りましょうか」

男「ん、わかりました。あの、これだけは言っておきたいんですが」

男「俺は、妹と結婚してます。妹さん、あなたは、それでもいいですか?」

妹B「ふふっ、別に構いませんよ?それを言うなら、自分だって男と結婚していますから」

男「ははっ、そうでした。俺達、似たもの同士でしたよね」

妹「複雑な関係だねぇ、私達」

男B「妹Bをよろしく頼む」

妹B「男!勝手に出てこないで!えっと、ふつつかものですが、よろしくお願いします」

男「ふふっ、えぇ。じゃあ、まずは俺の大好きな母と父に挨拶に行きましょうか」



おわり